(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-14
(54)【発明の名称】起毛コーティング創傷被覆材
(51)【国際特許分類】
A61L 15/26 20060101AFI20230707BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20230707BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A61L15/26 100
A61L15/42 100
A61L15/42 310
A61L15/44 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575385
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2021054986
(87)【国際公開番号】W WO2021250547
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ベルバ・サイ
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ・ジャングオ・ジャック
(72)【発明者】
【氏名】フリート・ジュニア・ジョセフ・アール
(72)【発明者】
【氏名】ヤノス・ジェラルド
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA01
4C081BA11
4C081CA161
4C081DB03
(57)【要約】
本発明は、メルトブローされ、表面が起毛された又は緩められた生体適合性繊維布地基材を利用する吸収性止血パッチに関し、この基材は、薄型で、高い柔軟性、強度及び多孔性を有し、架橋性活性分子をコーティングするのに適しており、最終的には問題のある出血の状況で止血剤として使用するのに効果的である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの対向主面を有するメルトブローン基材と、前記対向主面のうちの少なくとも1つに塗布され、共反応性ヒドロゲル形成材料、1種以上の血漿系止血剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるコーティング層とを備える創傷被覆材であって、前記コーティングされた対向主面が起毛されている、創傷被覆材。
【請求項2】
前記創傷被覆材が、起毛前に、約0.30~1.5mmの範囲の元の厚さを有し、前記元の厚さに対して約50~250%の範囲でマトリックス高さが増加している、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項3】
前記創傷被覆材が、起毛前に、約0.6~0.95mmの範囲の元の厚さを有し、前記元の厚さに対して約55~175%の範囲でマトリックス高さが増加している、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項4】
前記創傷被覆材が、起毛前に、約0.85~0.90mmの範囲の元の厚さを有し、前記元の厚さに対して約125~165%の範囲でマトリックス高さが増加している、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項5】
約140~250mg/cm
3の範囲の密度を有する、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項6】
約140~200mg/cm
3の密度を有する、請求項2に記載の創傷被覆材。
【請求項7】
約140~150mg/cm
3の密度を有する、請求項3に記載の創傷被覆材。
【請求項8】
細孔を有し、マイクロCT分析で測定した場合、前記細孔の大部分が0.1~0.3mmの範囲である、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項9】
マイクロCT分析で測定した場合、約85%の総開放気孔率を有する、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項10】
前記メルトブローン基材が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリジオキサノン(PDS)、カプロラクトン/グリコリドポリエステル、ポリ(カプロラクトン-co-グリコリド)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生体吸収性ポリマー材料である、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項11】
前記メルトブローン基材が、グリコリドとイプシロン-カプロラクトンとのコポリマーである、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項12】
前記ヒドロゲル形成材料がそれぞれ、2つ以上の求電子性又は求核性官能基を含む少なくとも2つの異なる多官能性ポリマー又はポリマー前駆体である、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項13】
前記ヒドロゲル形成材料のうちの少なくとも1つが、第2のヒドロゲル形成材料上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成する2つ以上の求核性官能基を有する、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項14】
前記止血剤が、止血活性を有する、プロトロンビン、トロンビン、フィブリン、フィブロネクチン、第X/Xa因子(因子)、第VII/VIIa因子、第IX/IXa因子、第XI/XIa因子、第XII/XIIa因子、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子、エラスチン、アルブミン、血小板表面糖タンパク質、バソプレシン及び類似体からなるバソプレシン群、エピネフリン、セレクチン、プラスミノーゲン・アクチベータ・インヒビタ、血小板活性化剤、合成ペプチド、並びにそれらの任意の組み合わせから選択されている、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項15】
マイクロファイバをウェブ状シートとしてメルトブローすることと、前記メルトブローンシートを積層することと、前記メルトブローンシートの層を結合することと、前記メルトブローンシートの結合した層の露出主面を起毛させてコーティングすることとを含む、請求項1に記載の創傷被覆材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
2つの架橋性成分を含有する吸収性止血パッチは、米国特許出願公開第2011/0045047(A1)号を含む文献に記載されている。そのようなパッチ用の架橋性成分は、1対の共反応性化合物、又は基材上の対応する共反応性基と共有結合架橋を形成することができる利用可能なユニットを有する共反応性化合物でコーティングされた基材であり得る。フィブリン血栓の生成への止血カスケードを開始、増強、及び/又はサポートする血漿由来の生物学的成分もまた、様々な構造及び材料の基材に適用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、封止用の吸収性止血パッチに関し、より具体的には、メルトブローンマイクロファイバから構成され、高い組織接着性のために表面が起毛された又は緩められた経済的に実行可能な弾性層不織マトリックス基材に関する。起毛基材は、比類のない高い表面積を有し、高機能の薄型止血パッチの開発において架橋性活性分子(例えば、PEG)をコーティングするのに適しており、そうでなければ、優れた組織接着特性を欠くことになる。
【0003】
本発明は、メルトブローされ、表面が起毛された又は緩められた生体適合性繊維布地基材を利用する吸収性止血不織パッチ及び創傷被覆材に関し、この基材は、薄型で、高い柔軟性、強度及び多孔性を有し、架橋性活性分子をコーティングするのに適しており、最終的には問題のある出血の状況で止血剤として使用するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】表面繊維が持ち上げられ、起毛方法によってマトリックスロフトが増加した独立型メルトブローンパッチの概略分解図である。
【
図2】基材の断面画像として、起毛なしと異なる程度の起毛との比較を示す図である。
【
図3】均等にコーティングされた非起毛(上)及び起毛(下)基材の空中(左)及び断面(右)SEM画像を示す図である。
【
図4】マイクロCTによる均等にコーティングされた非起毛(上)及び起毛(下)基材の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、起毛表面が、不織マトリックス中の個々のメルトブローン繊維をコーティングするための表面積を増加させることから、コーティングに特に適したマトリックスに関する。好ましい高いマトリックスロフトは、起毛プロセスによって生成され、このプロセスは、きつく絡み合った繊維を緩め、マトリックスロフト及び全体の体積を増加させ、後で塗布されるコーティング層の浸透深さを大きくすることができる。
【0006】
本発明の利点の1つは、起毛された表面が、組織表面に適用されるべき起毛及びコーティング面として容易に識別できるため、得られる創傷被覆材が片側性(sidedness)を有することである。
【0007】
本発明の創傷被覆材は、起毛表面がコーティングされた繊維の量をより多くすると共に表面粗さをより大きくし、これが共にパッチと組織との境界面での接着を強化するため、組織に対して強力なパッチ接着性を示す。
【0008】
本発明の別の利点は、取扱いが容易であり、比較的低い厚さ及び密度を有し、起毛時に機能性を損なわず、より小さな空間で容易に取り扱うことができる薄型パッチである。パッチは、封止するための圧縮時間を短縮する必要がある場合もある。
【0009】
本発明の別の利点は、起毛の程度を調節して、特定の特性、例えば起毛の程度の増加につれて剛性を低下させることを可能にすることである。
【0010】
本発明の創傷被覆材は、組織が拡張又は移動する場合に、弾性層と粗面マトリックスとの組み合わせが組織との高い適合性を可能にするため、高い組織適合性を示す。
【0011】
一実施形態では、メルトブローン不織マトリックスは、生体適合性及び吸収性材料を使用して、例えば、前照射、及び/又は溶融押出及び結晶化中にそれぞれ繊維径及びポリマー構造を調節することによって製造できるため、本発明は、調整された吸収時間/生体適合性を有するように製造することができる。
【0012】
一実施形態では、不織系基材は、グリコリドとイプシロン-カプロラクトンとのコポリマーであるMonocryl(登録商標)などの吸収性及び生体適合性ポリエステル材料から、数百の小さなオリフィスを含む線形ダイを通して押し出すことによって生成される。高温空気の収束流が溶融ポリマーを細くして、非常に細い直径の繊維を形成する。高速の空気が繊維を収集ドラム上に吹き付け、1枚のメルトブローン不織布を形成する。形成されたウェブ上の好ましい繊維径及び繊維の配向を得るために、ドラム速度及びドラムとダイの表面との間の距離などのプロセス因子が選択され、そしてこれが、不織マトリックスの得られる繊維径、細孔径及び密度を支配する。
【0013】
ドラムサイズは、ポリマー押出ダイの長さに依存するが、任意であり、メルトブローンシートの大規模製造のためにスケールアップすることができる。ドラム速度は、単位面積あたりの不織マトリックス密度に反比例し、本質的に繊維径、比表面積、及び層中の全体的な気孔率に関連する。ポリマー押出ダイとドラムとの間のギャップを増加させると、繊維の厚さ及び配向がよりランダムになるため、コレクタとの距離は、マトリックス特性にも影響を及ぼす。
【0014】
本発明は、微孔性、水不透過性及び薄型(厚さ)の不織膜を調整して生成するために、0.08~0.41m/s、より好ましくは0.12~0.37m/s、最も好ましくは0.15~0.2m/sの範囲の好ましいドラム速度、及び10~40インチの範囲、より好ましくは15~35の範囲の距離、最も好ましくは20~30の範囲の距離を特定した。
【0015】
これらの範囲は、Monocryl(登録商標)を使用して確立されたものであり、材料特性(例えば、1.67の固有粘度)が繊維の特性にわずかな影響を与える可能性があり、その結果、マトリックス全体の気孔率、密度、及び剛性に影響を与える。しかし、これらの範囲は、材料の詳細に関係なく同じ傾向を示すはずである(例えば、ドラム速度を増加させると、Monocryl(登録商標)及びVicryl(登録商標)の両方、ポリグラチン910、ポリグリコール酸のパッチ密度が低下し、また、少なくとも、決定された範囲は実行可能な出発点である)。メルトブローすることができる対象となる生分解性ポリマーとしては、ポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA)、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリジオキサノン(polydioxanon、PDS)、及びポリ(カプロラクトン-co-グリコリド)などのカプロラクトン/グリコリドポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明は、起毛前に、0.30~1.5mm、より好ましくは0.6~0.95mm、最も好ましくは0.85~0.90mmの範囲の好ましい厚さを特定した。この出発厚さは変化し得るが、起毛後、本発明は、元の厚さの約50~250%、より好ましくは55~175%、最も好ましくは125~165%の範囲でマトリックス高さの好ましい増加を確認した。
【0017】
本発明は、140~250mg/cm3、より好ましくは140~200mg/cm3、最も好ましくは140~150mg/cm3の範囲の好ましい密度を特定した。密度は、起毛後に顕著に変化するとは予想されない。
【0018】
本発明は、マイクロCT分析に基づいて、0.01~0.5mmの範囲の好ましい細孔径分布を特定し、細孔の大部分は0.1~0.3mmの範囲であった。更に、マイクロCT分析から、本発明は、マトリックスの総開放気孔率が約85%であることを特定した。
【0019】
これらのポリマーをメルトブローすることは、極細繊維を生成する上で独特の利点を提供する。メルトブローン不織布の本発明は、1~250マイクロメートルの範囲、好ましくは1~90ミクロンの範囲の直径の微細繊維を特定した。
【0020】
一実施形態では、起毛前に、独立型メルトブローンパッチを、メルトブローンポリエステル系不織布の別のシートを収集ドラム上に押し出すことによって生成し、その後、前者のシートを結晶化する。複数の個別のシートをドラム上に堆積させて、多層マトリックスを形成する。次に、起毛によって表面を改質してコーティング用の表面積と片側性を増加させる。起毛効果は、研磨技術を使用してパッチの表面上の繊維の端部を機械的に持ち上げ、同時に表面下の繊維の絡み合いがプロセスから緩むにつれてマトリックスロフトを増加させることによって達成される。
【0021】
現在の起毛方法では、手動ツールと自動ツールの両方が使用されている。手動起毛の場合、スチールファイルカード(例えば、3.75インチ)を使用して、繊維が表面から剥がれ始めるまで、不織布の表面を一方向に数回ブラッシングする(この方法では、5~15回が好ましい作業範囲である)。自動起毛の場合、クリンプワイヤホイール(例えば、0.25インチステム、3インチ直径)アタッチメントと共に使用されるベンチトップボール盤を使用する。ガラス、ワイヤブラシ、研磨フラップホイールなどの他の器具も、様々な程度の起毛を達成するために利用することができる。更に、高圧空気、真空、又はウォータージェットを利用してマトリックスを緩めることもできる。破壊的な摩耗なしに広範囲の起毛を達成するために、ブラッシングの前にマトリックスを熱にさらして繊維を柔らかくすることができる。起毛は、架橋性活性分子をコーティングするための断面と比表面積を増加させ(
図1)、これは、最終的には接着を強化するための止血パッチと組織との優れた構造的統合の可能性を提供する。
【0022】
起毛の程度は、プロセスの結果として増加した断面の高さと密度あたりの面積を測定することによって特徴付けることができる。表面を中程度に起毛させる最も好ましいプロセスでは、平均繊維が持ち上げられて、マトリックス高さが161%増加する(
図2、表1)。
【0023】
【0024】
表面を中程度に起毛させる最も好ましいプロセスでは、断面積が152%増加する(
図2、表2)。いずれの場合も、密度の変化は最小である。
【0025】
【0026】
好ましい基材の定量分析は、中程度の起毛がマトリックス高さ、表面粗さ及び体積をそれぞれ642%、672%及び8999%増加させることを示した(表3)。
【0027】
【0028】
起毛なしでマトリックスをコーティングすると、材料の不十分な浸透、及び凝集又は集塊が生じたが、起毛は個々の繊維のコーティングの改善とマトリックスへのより良好な浸透を示した。断面SEM顕微鏡検査では、起毛により、コーティングが表面に固まり、多孔質構造の利点が妨げられ、剛性が高まる「フラットフィルム」の問題が緩和されたことが明らかになった(
図3)。
【0029】
更に、非起毛コーティングには、より多くの亀裂が観察された。画像解析により、非起毛グループは表面に少数の細孔と空隙があり、総表面積の12%しか占めていないのに対し、起毛グループは27%の面積を有することが確認された。
【0030】
起毛基材における個々の繊維のコーティングと凝集の減少は、細孔容積と空隙(15%)が改善されたことを示し、これは血液浸透に有益であり、また、組織へのコーティングされた繊維の結合が強化されたことを示した。これらのマトリックス特性を更に裏付けるために、マイクロCTイメージングを実施して起毛表面のコーティングを理解した。この可視化は、起毛がマトリックスロフトをどのように改善したかだけでなく、コーティングの浸透を改善し、表面の気孔率を増加させたことを再確認した。断面分析は、起毛により、非起毛状態で見られる均一なフィルム状コーティングが破壊され、マトリックス基材の微孔性構造をブロックすることなく架橋剤が効果的に分散されることを示した(
図4)。最後に、気孔率の改善及び剛性の低下は、それぞれ13.8%及び50%であった(表4)。
【0031】
【0032】
組織剥離試験及びヘパリン処理した脾臓のエクスビボ出血モデルを使用して機能評価を実施した。適格な剥離試験では、パッチを子牛の皮膚組織に適用し、トリス緩衝生理食塩水中で圧縮してから剥離し、90°で力を測定した。
【0033】
止血における効力のエクスビボ評価のために、それぞれ不織基材として起毛コーティング済み、非起毛コーティング済み、及び非起毛コーティングなしのものを、出血の減少について評価した。簡単に説明すると、各パッチを1インチx1インチの正方形に切断し、(ヘパリン処理したウシ血液で灌流した)エクスビボ脾臓モデルの10mmの円形生検欠損部の上にタンポナーデで2分間置いた。定量分析により、コーティングされた起毛メルトブローンパッチを使用することで、エクスビボモデルでの出血が最小限に抑えられるか、又は完全に阻止されることが確認された。
【0034】
これらのデータは、止血パッチが、組織接着を改善することに加えて、完全に機能的且つ有効であることを確認した。異なる程度の起毛が止血剤の有効性に影響を与えた。すべてのパッチは出血を減らし、最終的に止めるように封止したが、前述のように軽度又は高度の起毛は、中程度の起毛と比較して効果が低下した。
【0035】
一実施形態では、架橋性コーティングと起毛メルトブローンマトリックス基材との組み合わせで構成される高接着性止血パッチは、Monocryl(登録商標)などの吸収性及び生体適合性ポリエステル材料を使用して、メルトブローンマイクロファイバウェブから、0.17m/s、好ましくは0.09~0.34m/sの試験範囲内のドラム速度、及び25インチ、好ましくは12~25インチの範囲内のコレクタとの距離で製造することができる。コレクタドラム上に直接4つの層を構築することができるが、好ましい範囲は2~10層である。1.6Monocryl(登録商標)に等しいIVを使用した場合、4層構造の密度は約13mg/cm2になる。これらの材料特性及び密度は、起毛前に必要である。
【0036】
好ましい程度の起毛は、研磨技術によって達成され、この技術は、繊維の絡み合いを緩め、表面繊維及びマトリックス全体の高さを約161%、好ましくは55~253%の範囲で上昇させ、その後、断面積を約152%、好ましくは57~434%の範囲で増加させる。得られた基材は、表面粗さ及び体積をそれぞれ約676%及び8999%増加させることができている。
【0037】
起毛方法には、手動ツールと自動ツールの両方が含まれる。手動起毛は、限定されるものではないが、摩耗を生じさせるために使用することができる粗いエッジを有するワイヤブラシ、スチールファイルカード、ガラス又は類似のツール/材料によって達成することができる。好ましい程度の起毛を達成するために、スチールファイルカード(3.75インチ)を使用して、繊維が表面から剥がれ始めるまで、不織布の表面を一方向に数回ブラッシングする(この方法では、5~15回が好ましい作業範囲であり、5回で「軽度」起毛になり、15回で「高度起毛」になる)。あるいは、自動起毛方法には、クリンプワイヤホイール(例えば、0.25インチステム、3インチ直径)又はその他のブラシベースのアタッチメントと共に使用されるベンチトップボール盤が含まれるが、これに限定されない。ワイヤブラシ及び研磨フラップホイールなどの他の動力器具及びアタッチメントも、様々な程度の起毛を達成するために利用することができる。
【0038】
破壊的な摩耗なしにより高度な起毛を達成するために、ブラッシングの前にマトリックスを熱にさらして繊維を柔らかくすることができる。加熱の程度はポリマーによって異なる可能性があり、Monocryl(登録商標)の場合、起毛前に構造物を50℃まで15分間加熱する。
【0039】
完全に機能的な止血剤を開発するために、ポリエチレングリコール活性エステル(例えば、PEG-スクシンイミジルグルタレート)などの架橋性活性物質は、好ましくは、緩衝剤及び添加剤を用いて又は用いずに、順番にコーティングされる。この考えを実践に移すために、起毛後の2インチx4インチのメルトブローンマトリックスを、超音波スプレーコーティング(可溶化法)又は浸漬コーティング(不溶性法)のいずれかで、多孔質基材中に深く埋め込まれた緩衝剤の薄い層でコーティングする。実施例としては、1.25mg/cm2のホウ酸ナトリウム、又は2mg/cm2のビス-トリス又は1mg/cm2の重炭酸ナトリウムが挙げられる。次に、15mg/cm2の4アーム-PEG-アミン-HCl(MW:10Kda)を超音波コーティングし、続いて18mg/cm2の4アーム-PEG-SG(MW:10Kda)をコーティングする。起毛構造により、架橋性活性物質の独特な沈着が可能になり、その結果、組織接着が強化される。
【0040】
例示的な血漿由来(又は関連)止血剤としては、タンパク質及びペプチドが挙げられ、したがって、天然のものに限定されず、組換え形態又は合成形態であってよく、止血活性を有する、プロトロンビン、トロンビン、フィブリン、フィブロネクチン、第X/Xa因子(因子)、第VII/VIIa因子、第IX/IXa因子、第XI/XIa因子、第XII/XIIa因子、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子、エラスチン、アルブミン、血小板表面糖タンパク質、バソプレシン及び類似体からなるバソプレシン群、エピネフリン、セレクチン、プラスミノーゲン・アクチベータ・インヒビタ、血小板活性化剤、合成ペプチド、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0041】
キャリア副層は不織材料の形態であり得る。例示的な構造材料は合成ポリマーである。基材は、D-乳酸、L-乳酸、ラクチド(L-、D-、メソ形を含む)、グリコール酸、グリコリド、カプロラクトン、p-ジオキサノン及びトリメチレンカーボネート、並びにそれらの混合物又はブレンドからなる群から選択される1つ以上のモノマーの脂肪族ポリエステルポリマー及び/又はコポリマーから選択される成分から構成されてもよい。
【0042】
基材は、代替的又は追加的に、脂肪族ポリエステルポリマー、コポリマー、又はそれらのブレンドの織物の層から構成されてもよい。脂肪族ポリエステルは、典型的には、ラクチド(L-及びD-、メソ形を含む)、グリコール酸、グリコリド、カプロラクトン、p-ジオキサノン(1,4-ジオキサン-2-オン)、及びトリメチレンカーボネート(1,3-ジオキサン-2-オン)を含むが、これらに限定されないモノマーの開環重合において合成される。脂肪族ポリエステルは、場合によっては、例えば、D-乳酸、L-乳酸、及び/又はグリコール酸の重縮合によって製造することができる。一形態では、織物は、グリコリドとラクチドとのコポリマーを含み、その量は、グリコリドのモル基準で約70~95%であり、残りはラクチドである。
【0043】
被覆材の多孔質基材は、その表面の少なくとも一部にわたって開口部又は細孔を有する。以下でより詳細に説明するように、多孔質基材を形成するための好適な材料としては、繊維状構造が挙げられるが、これに限定されない。実施形態では、細孔は、多孔質基材の厚さ全体にわたって相互接続するのに十分な数及びサイズであり得る。
【0044】
多孔質基材の1つ以上の副層は、少なくとも0.1cmの厚さ、特定の実施形態では、約0.2~約1.5cmの厚さであり得る。多孔質基材の副層中の細孔のサイズは、約2マイクロメートル~約300マイクロメートル、実施形態では、約50マイクロメートル~約150マイクロメートルであり得る。基材の副層の細孔は、基材内に任意の様式で配置されてもよいことが想定される。例えば、細孔はランダム又は均一に構成することができる。いくつかの実施形態では、アルギン酸カルシウム又はアルギン酸銅を使用して細孔を形成して、ハニカム形状の多孔質基材を形成することができる。更に他の実施形態では、細孔は、多孔質基材に勾配を作り出すように構成されてもよい。勾配は、生理学的流体を吸収し、第1の共反応性成分を運ぶ生理学的流体を第2の共反応性成分に向かって移動させる多孔質基材の能力を更に高めることができる。
【0045】
一実施形態では、基材は、第1の副層上に塗布された第1の共反応性成分と、第1の副層に塗布された第2の共反応性成分とを有する。「第1の共反応性成分」及び「第2の共反応性成分」という用語はそれぞれ、反応に関与してヒドロゲルなどの架橋分子のネットワークを形成することができるポリマー、官能性ポリマー、巨大分子、小分子、又は架橋剤を意味する。
【0046】
一実施形態では、第1及び第2の共反応性成分のそれぞれは、多官能性であり、これは、例えば、第1の共反応性成分上の求核性官能基が第2の共反応性成分上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成できるように、2つ以上の求電子性又は求核性官能基を含むことを意味する。第1又は第2の共反応性成分の少なくとも1つは、求電子性-求核性反応の結果として前駆体が結合して架橋ポリマー生成物を形成するように、3つ以上の官能基を含む。このような反応は「架橋反応」と呼ばれる。
【0047】
特定の実施形態では、第1及び第2の共反応性成分のそれぞれは、架橋反応において求核性及び求電子性前駆体の両方が使用される限り、1つのカテゴリーの官能基のみ、即ち、求核性基のみ又は求電子性官能基のみのいずれかを含む。したがって、例えば、第1の共反応性成分がアミンなどの求核性官能基を有する場合、第2の共反応性成分は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの求電子性官能基を有し得る。一方、第1の共反応性成分がスルホスクシンイミドなどの求電子性官能基を有する場合、第2の共反応性成分は、アミン又はチオールなどの求核性官能基を有し得る。したがって、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、スチレンスルホン酸、又はアミン末端二官能性若しくは多官能性ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)などの官能性ポリマーを使用することができる。
【0048】
第1及び第2の共反応性成分は、生物学的に不活性で水溶性のコアを有し得る。コアが水溶性のポリマー領域である場合、使用できる好ましいポリマーとしては、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」、ポリエチレンオキシド-co-ポリプロピレンオキシド(「PPO」、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマーなどのポリアルキレンオキシド、及びポリビニルアルコール(「PVA」);ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」);ポリ(アミノ酸);デキストラン、キトサン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒアルロン酸などのポリ(サッカライド);並びにアルブミン、コラーゲン、カゼイン、及びゼラチンなどのタンパク質が挙げられる。ポリエーテル、特にポリ(オキシアルキレン)又はポリ(エチレングリコール)又はポリエチレングリコールが特に有用である。コアが本質的に小分子である場合、様々な親水性官能基のいずれかを使用して、第1及び第2の共反応性成分を水溶性にすることができる。例えば、水溶性であるヒドロキシル、アミン、スルホン酸、及びカルボン酸のような官能基を使用して、前駆体を水溶性にすることができる。更に、スベリン酸(subaric acid)のN-ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは水に不溶性であるが、スクシンイミド環にスルホン酸基を付加することにより、アミン基に対するその反応性に影響を与えることなく、スベリン酸のNHSエステルを水溶性にすることができる。
【0049】
特定の実施形態では、第1及び第2の共反応性成分の両方は、架橋可能な大きな分子であり得る。例えば、実施形態では、前駆体の1つは、分子量が約2,000~約20,000ダルトンの多官能性PEGであり得る。求電子性基を有する実施形態では、この多官能性PEGは、約100,000ダルトンの分子量を有するコラーゲンと反応することができる。他の実施形態では、約50,000~約100,000ダルトンの分子量を有するゼラチンを、コラーゲンの代わりに使用することができる。
【0050】
代替的な実施形態では、共反応性成分及び緩衝剤は、パッチ上に提供される。例示的な封止パッチ/パッドは、PEG-NH2*HCl及びPEG-NHS、緩衝塩剤、好ましくは吸収性基材上に堆積されたアルカリ緩衝剤(ホウ砂)を含む。
【0051】
第1及び第2の共反応性成分の反応から生じる生体適合性架橋ポリマーが生分解性又は吸収性であることが望ましい場合、第1及び第2の共反応性成分の1つ以上は、官能基間に存在する生分解性結合を有し得る。生分解性結合は、場合により、1つ以上の前駆体の水溶性コアとして機能することもできる。あるいは、又は更に、第1及び第2の共反応性成分の官能基は、それらの間の反応の生成物が生分解性結合をもたらすように選択することができる。各アプローチについて、得られる生分解性生体適合性架橋ポリマーが、所望の期間内に分解、溶解、又は吸収されるように、生分解性結合を選択することができる。好ましくは、生理学的条件下において非毒性生成物に分解する生分解性結合が選択される。
【0052】
生分解性結合は、キレート、又は化学的若しくは酵素的に加水分解可能若しくは吸収可能であり得る。例示的な化学的に加水分解可能な生分解性結合としては、グリコリド、d-ラクチド、ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートのポリマー、コポリマー及びオリゴマーが挙げられる。例示的な酵素的に加水分解可能な生分解性結合としては、メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼによって切断可能なペプチド性結合が挙げられる。更なる例示的な生分解性結合としては、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、ポリ(サッカライド)、及びポリ(ホスホネート)のポリマー及びコポリマーが挙げられる。実施形態では、生分解性結合は、エステル結合を含有してもよい。いくつかの非限定的な例としては、コハク酸、グルタル酸、プロピオン酸、アジピン酸、又はアミノ酸のエステル、並びにカルボキシメチルエステルが挙げられる。
【0053】
実施形態では、複数のNHS基で官能化されたマルチアームPEGなどの多官能性求電子性ポリマーは、第1の共反応性成分として使用することができ、トリリジンなどの多官能性求核性成分は、第2の共反応性成分として使用することができる。他の実施形態では、複数のNHS基で官能化されたマルチアームPEGなどの多官能性求電子性ポリマーは、第1の共反応性成分として使用することができ、コラーゲン及び/又はコラーゲン誘導体などの多官能性求核性ポリマーは、第2の共反応性成分として使用することができる。複数のNHS基で官能化されたマルチアームPEGは、例えば、4つ、6つ又は8つのアームを有することができ、また、約5,000~約25,000の分子量を有することができる。好適な第1及び第2の前駆体の多くの他の例は、米国特許第6,152,943号;同第6,165,201号;同第6,179,862号;同第6,514,534号;同第6,566,406号;同第6,605,294号;同第6,673,093号;同第6,703,047号;同第6,818,018号;同第7,009,034号;及び同第7,347,850号に記載され、これらの各々の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
パッチの実施形態では、共反応性成分を個々の層としてマトリックス上に堆積させることができる。あるいは、共反応性成分を混合物として堆積させることができる。層の順序は変化し得るが、好ましい順序の封止パッチ又はパッドは、マトリックスと共にPEG-NH2*HCl(又は任意の他のハロゲン化水素)、PEG-NHS、及び緩衝塩(テトラホウ酸ナトリウム、MES、TRIS、ビス-トリス、重炭酸ナトリウムなど)を含み、次に緩衝塩の層、保護されたPEG-アミンの層、及びPEG-NHSの層を含む。更に、材料のアームの数及び分子量は変化し得るが、有効性及び安定性の観点から、4-アーム-10K-NH2*HCl及び4-アーム-10K-NHSが好ましいバリアントである。実施形態を異なるコーティング順序で評価した。性能及び安定性は、スプレーコーティングプロセスを使用してマトリックス上に堆積された緩衝液の位置によって大きく影響を受ける。緩衝液が両方のPEGの下に堆積された場合(即ち、マトリックスが適用された場合に組織から最も遠く離れている)、性能及び安定性は最適であった。
【0055】
第1の共反応性成分は、噴霧、はけ塗り、浸漬、注入、積層などを含むがこれらに限定されない、当業者に周知の任意の好適な方法を用いて多孔質基材に塗布されてもよい。実施形態では、第1の共反応性成分は、止血被覆材を形成することができる任意の濃度、寸法、及び構成で基材上にコーティングとして塗布されてもよい。実施形態では、第1の共反応性成分コーティングは、多孔質基材の細孔に浸透することができる。実施形態では、第1の共反応性成分は、基材の少なくとも一方の側に積層されるフィルムとして多孔質基材に適用されてもよい。
【0056】
同様に、第2の共反応性成分は、噴霧、はけ塗り、浸漬、注入、積層などを含むがこれらに限定されない、当業者に周知の任意の好適な方法を用いて多孔質基材に塗布されてもよい。更に他の実施形態では、第2の共反応性成分を溶液で多孔質基材に塗布し、続いて溶媒を蒸発又は凍結乾燥させてもよい。実施形態では、第2の共反応性成分は、基材の少なくとも一方の側上のコーティングとして、又は基材の少なくとも一方の側上に積層されたフィルムとして、多孔質基材に塗布されてもよい。
【0057】
使用時、パッチ被覆材は、共反応性成分が組織上に直接適用される方向とされる。実施形態では、第1及び第2の部分は、造影剤、表面テクスチャ、着色又は他の視覚的指示を加えることによって互いに区別可能であり得る。例えば損傷組織などの組織と接触すると、被覆材は生理学的流体を吸収し、第1の共反応性ヒドロゲル成分は流体によって溶解される。流体が被覆材に吸い込まれ、被覆材を通って移動するにつれて、この流体は、溶解した第1の共反応性成分を第2の共反応性成分及び緩衝剤へと運ぶ。最終的に、第1及び第2の共反応性成分が反応して生体適合性架橋材料を形成し、それにより、足場が分解する際の血餅の安定化、組織内殖及び再構築を助ける。いくつかの実施形態では、第1及び第2の共反応性成分の反応によって生成される生体適合性架橋材料はまた、被覆材に抗接着特性を提供する。
【0058】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0059】
マトリックス及び起毛プロセスの例:
Monocryl(登録商標)などの吸収性及び生体適合性ポリエステル材料を使用して、最も好ましいドラム速度0.17m/s、ドラムからダイまでの距離25インチでメルトブローンマイクロファイバウェブをドラムに押し出す。1.6Monocryl(登録商標)に等しいIVを使用した場合、4つの層がこの構成でコレクタドラム上に直接構築され、密度は約13mg/cm2になる。これらの材料特性及び密度は、起毛前に必要である。
【0060】
2インチx4インチのメルトブローンマトリックスに切断した後、不織パッチを50℃まで15分間穏やかに加熱して繊維を柔らかくし、次にマトリックス全体の高さが約150%増加するまで、4インチのスチールファイルカードを使用して表面を一方向にブラッシングして起毛させる。
【0061】
コーティングプロセスの例:
2インチx4インチのメルトブローン起毛マトリックスを、超音波スプレーコーティング(可溶化法)又は浸漬コーティング(不溶性法)のいずれかで、多孔質基材中に深く埋め込まれた緩衝剤の薄い層でコーティングする。実施例としては、1.25mg/cm2のホウ酸ナトリウム、2mg/cm2のビス-トリス、又は1mg/cm2の重炭酸ナトリウムが挙げられる。次に、15mg/cm2の4アーム-PEG-アミン-HCl(MW:10Kda)を超音波コーティングし、続いて18mg/cm2の4アーム-PEG-SG(MW:10Kda)を超音波コーティングする。
【0062】
起毛構造により、マトリックスの奥深くへの架橋性活性物質の独特な沈着が可能になり、最終的に接着力が強化された非常に効果的な止血剤が得られる。
【0063】
〔実施の態様〕
(1) 少なくとも2つの対向主面を有するメルトブローン基材と、前記対向主面のうちの少なくとも1つに塗布され、共反応性ヒドロゲル形成材料、1種以上の血漿系止血剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるコーティング層とを備える創傷被覆材であって、前記コーティングされた対向主面が起毛されている、創傷被覆材。
(2) 前記創傷被覆材が、起毛前に、約0.30~1.5mmの範囲の元の厚さを有し、前記元の厚さに対して約50~250%の範囲でマトリックス高さが増加している、実施態様1に記載の創傷被覆材。
(3) 前記創傷被覆材が、起毛前に、約0.6~0.95mmの範囲の元の厚さを有し、前記元の厚さに対して約55~175%の範囲でマトリックス高さが増加している、実施態様1に記載の創傷被覆材。
(4) 前記創傷被覆材が、起毛前に、約0.85~0.90mmの範囲の元の厚さを有し、前記元の厚さに対して約125~165%の範囲でマトリックス高さが増加している、実施態様1に記載の創傷被覆材。
(5) 約140~250mg/cm3の範囲の密度を有する、実施態様1に記載の創傷被覆材。
【0064】
(6) 約140~200mg/cm3の密度を有する、実施態様2に記載の創傷被覆材。
(7) 約140~150mg/cm3の密度を有する、実施態様3に記載の創傷被覆材。
(8) 細孔を有し、マイクロCT分析で測定した場合、前記細孔の大部分が0.1~0.3mmの範囲である、実施態様1に記載の創傷被覆材。
(9) マイクロCT分析で測定した場合、約85%の総開放気孔率を有する、実施態様1に記載の創傷被覆材。
(10) 前記メルトブローン基材が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリジオキサノン(PDS)、カプロラクトン/グリコリドポリエステル、ポリ(カプロラクトン-co-グリコリド)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生体吸収性ポリマー材料である、実施態様1に記載の創傷被覆材。
【0065】
(11) 前記メルトブローン基材が、グリコリドとイプシロン-カプロラクトンとのコポリマーである、実施態様1に記載の創傷被覆材。
(12) 前記ヒドロゲル形成材料がそれぞれ、2つ以上の求電子性又は求核性官能基を含む少なくとも2つの異なる多官能性ポリマー又はポリマー前駆体である、実施態様1に記載の創傷被覆材。
(13) 前記ヒドロゲル形成材料のうちの少なくとも1つが、第2のヒドロゲル形成材料上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成する2つ以上の求核性官能基を有する、実施態様1に記載の創傷被覆材。
(14) 前記止血剤が、止血活性を有する、プロトロンビン、トロンビン、フィブリン、フィブロネクチン、第X/Xa因子(因子)、第VII/VIIa因子、第IX/IXa因子、第XI/XIa因子、第XII/XIIa因子、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子、エラスチン、アルブミン、血小板表面糖タンパク質、バソプレシン及び類似体からなるバソプレシン群、エピネフリン、セレクチン、プラスミノーゲン・アクチベータ・インヒビタ、血小板活性化剤、合成ペプチド、並びにそれらの任意の組み合わせから選択されている、実施態様1に記載の創傷被覆材。
(15) マイクロファイバをウェブ状シートとしてメルトブローすることと、前記メルトブローンシートを積層することと、前記メルトブローンシートの層を結合することと、前記メルトブローンシートの結合した層の露出主面を起毛させてコーティングすることとを含む、実施態様1に記載の創傷被覆材の製造方法。
【0066】
(16) 実施態様1に記載の創傷被覆材を損傷した組織表面に適用することを含む、組織表面を封止する方法。
【国際調査報告】