IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メタサム アーベーの特許一覧

特表2023-530252メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法
<>
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図1
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図2
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図3
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図4
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図5
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図6
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図7
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図8
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図9
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図10
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図11
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図12
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図13
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図14
  • 特表-メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-14
(54)【発明の名称】メタサーフェスを有する多層導波管、アレンジメント、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/12 20060101AFI20230707BHJP
   H01P 1/00 20060101ALI20230707BHJP
   H01Q 13/22 20060101ALI20230707BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
H01P3/12
H01P1/00 Z
H01Q13/22
H01P11/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022575832
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 SE2021050506
(87)【国際公開番号】W WO2021251866
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】2050679-6
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520140659
【氏名又は名称】メタサム アーベー
【氏名又は名称原語表記】METASUM AB
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】アッバス、ボソーグ
【テーマコード(参考)】
5J011
5J014
5J045
【Fターム(参考)】
5J011CA03
5J014DA05
5J045HA01
(57)【要約】
多層導波管(1)として組み付けられる少なくとも3つの物理的な層(21、2a、2b、2c、…2n、22)を備える多層導波管(1)。前記層は、最上層(21)、単数または複数の中間層(2a、2b、…2n)、および最下層(22)である。前記多層導波管(1)は、少なくとも1つの中間層(2a、2b、…2n)における細長アパーチュア(7)である導波管チャネル(77)を備える。少なくとも1つの層(21、2a、2b、…2n、22)は、第1隣接層に対面する第1面(5a)にメタサーフェス(3)を有し、前記メタサーフェス(3)は、前記細長アパーチュア(7)を取り囲むとともに、厚肉セクション(3a)および薄肉セクション(3b)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層導波管(1)として組み付けられる少なくとも3つの物理的な層(21、2a、2b、2c、…2n、22)を備える多層導波管(1)において、前記層は、最上層(21)、単数または複数の中間層(2a、2b、…2n)、および最下層(22)であり、前記多層導波管(1)は、少なくとも1つの中間層(2a、2b、…2n)における細長アパーチュア(7)である導波管チャネル(77)を備える、多層導波管(1)において、
少なくとも1つの層(21、2a、2b、…2n、22)は、第1隣接層に対面する第1面(5a)にメタサーフェス(3)を有し、
前記メタサーフェス(3)は、前記細長アパーチュア(7)を取り囲むとともに、厚肉セクション(3a)および薄肉セクション(3b)を備える、
ことを特徴とする多層導波管(1)。
【請求項2】
前記第1面(5a)は、前記メタサーフェス(3)を取り囲む平坦部分(4)を有し、
前記厚肉セクション(3a)は、前記平坦部分(4)における前記層の厚さ(L1)に対応する厚さを有し、
前記薄肉セクション(3b)は、前記平坦部分(4)における前記厚さよりも小さい厚さ(L2)を有する、
請求項1に記載の多層導波管(1)。
【請求項3】
第2隣接層に対面する前記層(21、2a、2b、…2n、22)の第2面(5b)は、前記細長アパーチュア(7)を除き、平坦面である、
請求項1または2に記載の多層導波管(1)。
【請求項4】
前記層(21、2a、2b、2c、…2n、22)は、当該層(21、2a、2b、2c、…2n、22)間に延びる要素が存在することなく積層された別個の層である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項5】
各厚肉セクション(3a)は、円形、楕円形、三角形、正方形、五角形、長方形、四角形、正方形、六角形、または矩形のうちのいずれか一つの形状を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項6】
前記厚肉セクション(3a)は、前記細長アパーチュア(7)に平行な列(6a、6b、6c、…6n)に配置される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項7】
前記厚肉セクション(3a)は、前記細長アパーチュア(7)から不規則な距離で配置される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項8】
前記メタサーフェス(3)は、前記細長アパーチュア(7)を取り囲む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項9】
前記多層導波管は、各々が細長アパーチュア(7)を備える第1中間層(2a)と第2中間層(2b)と第3中間層(2c)とを備え、
前記第2中間層(2b)は、前記細長アパーチュア(7)内に配置された中央部材(8)をさらに備える、
請求項1~8のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項10】
前記多層導波管は、第1中間層(2a)と第2中間層(2b)と第3中間層(2c)とを備え、
前記第2中間層(2b)は、集積電子チップセット用の非凹凸層である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項11】
前記メタサーフェス(3)の前記厚肉セクション(3a)と前記薄肉セクション(3b)との前記厚さ差(L3)は、波長を20で割った値よりも小さい、
請求項1~10のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項12】
前記メタサーフェス(3)の前記厚肉セクション(3a)と前記薄肉セクション(3b)との前記厚さ差(L3)は、波長を25で割った値よりも小さい、
請求項1~11のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項13】
前記最上層(21)および前記最下層(22)のうちのいずれか一方が、メタサーフェス(3)を備える、
請求項1~12のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項14】
前記多層導波管(1)は、溝付き導波管アンテナ(40)として実現される、
請求項1~13のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項15】
前記最上層(21)は、アンテナスロット(41)を備える、
請求項1~14のいずれか一項に記載の多層導波管(1)。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の多層導波管(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電磁メタサーフェスを備える層を有する多層導波管伝送回線に関する。
【背景技術】
【0002】
導波管は当業界でよく知られており、電磁波を始点から終点まで伝えるために使用される一般的な部品である。導波管は、その最も一般的な呼称において、中空の金属パイプであり得る。
【0003】
開放空間を伝搬する波動について、距離とともにパワーが失われて、伝送可能距離および波動品質の両方が低下する。このため、導波管は、波の広がる方向を少なくとも一次元に制限することにより波をガイドするように適合された構造体である。このコンセプトは、波を強いて特定の方向に伝搬させるように制限することで損失を削減することである。理想的な状態においては、これにより波はパワーを全く損失しないことになるが、このようなことはほとんど、または全くない。導波管伝送回線に応じて損失や漏出があり、波が導波管の縁部に連結することでエネルギー損失が発生する。導波管のコンセプトは、古くから知られており、信号、音または光等の伝送に利用されている。
【0004】
これと同時に、無線通信の利用が増加し、このような技術に基づく導波管やアンテナアレイが市場から求められている。市場の需要では、コンパクトで安価な導波管がさらに求められている。
【0005】
一つの入手可能な解決策は、基板一体化型導波管(SIW)である。これは、印刷回路基板(PCB)技術に基づく、ビアホールを使用して最上層と最下層とを接続したコンパクトな導波管である。ビアホールとは、導波管の層間に延びる孔であって、少なくとも最上層と最下層とを接続する孔である。基板一体型導波管についてはコスト的に有利な製造方法が存在するが、高周波の誘電体が必要なため、周波数が大きくなるにつれてコストが増大する。
【0006】
別の利用可能な解決策は、いわゆるギャップ導波管技術である。ギャップ導波管とは、一般に、2つの部品から構成されている。一方の部品は、意図した導波管方向以外の方向において電磁波が伝搬することを防ぐバリアを形成するピンを有している。これにより、このような構造体における漏出が低減される。ギャップ導波管は、一部の用途に適しているが、サイズの点で制限がある。ピンの典型的な高さは、波長を2~6で割った値、すなわちλ/2~λ/6である。
【発明の概要】
【0007】
コンパクトな導波管に対する技術を利用することができるが、損失および漏出が良好に低減された損失の少ないコンパクトな部品が必要とされている。一例としてのSIWは固有の損失を有しているが、その損失は、例えば空気で充填された中空の導波管の対応する損失よりも高い。したがって、SIWは費用対効果の高い代替案を提供するものの、他の解決策が必要とされている。中空導波管は、一般に他の欠点を有している。例えば、磁界が金属に短距離で浸透するため、漏出が生じる。この漏出は、2つの層の間にギャップが存在している場合、特に、ギャップが水平方向である場合、中空導波管構造を分割ブロックで作製する際に、かなりのものとなる。この理由は、電磁波がしっかりと閉じ込められており、金属にほんの短距離しか浸透しないようにされているためである。
【0008】
誘電体導波管は漏出を低減する別の選択肢であるが、例えば非伝搬エバネセント波を理由として、このような導波管については問題の性質が異なっている。これは、漏出を低減するために、なぜこのような導波管には層間の高レベルの導電性が必要であるかという理由でもある。高レベルの導電性のために、生産コストが大幅に上昇するとともに、製造時の非常に高い精度が要求される。加えて、損失は、一般的に、空気充填導波管よりも依然として高い。
【0009】
ギャップ導波管には、設計およびピン凹凸のサイズの両方で制限があるため、有用な解決策ではあるが、一部の用途には適用できない。
【0010】
導波管の製造に関してさらなる問題が存在する。これは、CNCフライス加工および成形の現行レベルでは、レーザ切断、エッチング、または化学エッチング等の他の方法に比較して、製造方法において公差が不良であることが多いということである。これにより、導波管構造体の製造が困難になる、および/または高価になる。この問題は、ある周波数範囲に関して他のものよりも顕著になる。例えば、CNCフライス加工および成形は、両者とも60GHz未満の周波数に適合された導波管の一般的な製造方法である。より高いEバンドおよびDバンドの周波数範囲、すなわち71GHz~86GHzおよび110GHz~170GHzにおいては、CNCフライス加工および成形は、生産技術がどのように働くかに関して全てが非常に小さいため、非常に高価になる。したがって、場合により適さず、また場合により所望の結果を得ることもできない。
【0011】
ある目的は、生産が容易な空気充填導波管伝送回線に関する新たな実現を提供することである。
【0012】
別の目的は、製造コスト効果の高い導波管を提供することである。
【0013】
別の目的は、アンテナアレイに便利に使用され得る導波管および設計を提供することである。
【0014】
別の目的は、導波管フィルタおよびダイプレクサの設計に便利に使用され得る導波管を提供することである。
【0015】
別の目的は、能動電子回路、すなわち電力増幅器(PA)、アレイアンテナ等の受動部品とのパッケージおよび集積に便利に使用され得る導波管を提供することである。
【0016】
別の目的は、積層されつつ接続ていしない層を有する漏出の小さい多層導波管を提供することである。
【0017】
別の目的は、漏出の低減に層間のガルバニック接触を必要としない多層導波管を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、漏出の低減に層間の接続を必要としない多層導波管を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、従来技術の解決策に比較してコンパクトな多層導波管を提供することである。
【0020】
したがって、コンパクトでありながら従来技術の欠点のうちの少なくとも一部を克服する導波管が有益であろう。
【0021】
したがって、本解決策は、特定の構成で配置された電磁メタサーフェスを有する、コスト効率が良好で製造が容易な多層導波管伝送回線に関する。この解決策は、一体に積層されるが接続していない薄層を有するコンパクトな空気充填導波管であって、従来技術による解決策の欠点の多くを克服する。この解決策は、有利には、λ/10またはλ/15の典型的な厚さ、およびλ/20さらにまたはλ/30未満の漏出抑制構造体の奥行を有する金属層とともに使用され得る。多層導波管は、多層導波管として組み付けられる少なくとも3つの物理的な層を備える。前記層は、少なくとも1つの最上層、単数または複数の中間層、および1つの最下層である。前記多層導波管は、少なくとも1つの中間層における細長アパーチュアである導波管チャネルを備える。少なくとも1つの層は、第1隣接層に対面する第1面にメタサーフェスを有し、前記メタサーフェスは、前記細長アパーチュアを取り囲む。前記メタサーフェスは、厚肉セクションおよび薄肉セクションを備える
【0022】
種々の実施形態において、導波管チャネルは、異なるサイズの細長アパーチュアとして層に配置される。ある実施形態においては、すべての層が異なるサイズの細長アパーチュアを有する。他の実施形態においては、層のうちの一部が対応するアパーチュアを有する。
【0023】
メタサーフェスは、本特定例において通常λ/10未満のサブ波長厚さを有する凹凸面である。凹凸面は、凹凸を形成する厚肉セクションおよび薄肉セクションを備える。
【0024】
1つの利点は、多層アレンジメントにおけるメタ構造が、層とメタサーフェスとの間の小さなギャップにより漏出低減効果を生み出すということである。この効果は、電磁バンドギャップに由来するが、これまでの多層導波管と比較して、メタサーフェス構造は、サイズが小さく、かつ安価に製造できるという利点を有する。
【0025】
一実施形態によれば、前記第1面は、前記メタサーフェスを取り囲む平坦部分を有する。前記厚肉セクションは、前記平坦部分における前記層の厚さに対応する厚さを有し、前記薄肉セクションは、前記平坦部分における前記厚さよりも小さい厚さを有する。
【0026】
一実施形態によれば、中間層の第2面は、細長アパーチュアを除き平坦面である第2隣接層に対面する。
【0027】
メタサーフェスは平坦面に対面して、層の面間に小さい空気充填スペースを形成し、電磁バンドギャップ構造が形成される。
【0028】
一実施形態によれば、前記層は、当該層間に延びる要素が存在することなく積層された別個の層である。
【0029】
本解決策による1つの利点は、漏出を増加させることなく、全部または一部の層間に小さなギャップが受容され得るということである。
【0030】
一実施形態によれば、各厚肉セクションは、円形、楕円形、三角形、正方形、五角形、長方形、四角形、正方形、六角形、または矩形のうちのいずれか一つの形状を有する。
【0031】
1つの利点は、厚肉セクションの形状が種々の層間、または種々の導波管間で変更され得ることである。
【0032】
一実施形態によれば、前記厚肉セクションは、前記細長アパーチュアに平行な列に配置される。
【0033】
一実施形態によれば、前記厚肉セクションは、前記細長アパーチュアから不規則な距離で配置される。
【0034】
一実施形態によれば、前記厚肉セクションは、前記細長アパーチュアを取り囲むランダムなパターンで配置される。
【0035】
一実施形態によれば、前記メタサーフェスは、前記細長アパーチュアを取り囲む。
【0036】
一実施形態によれば、前記多層導波管は、各々が細長アパーチュアを備える第1中間層と第2中間層と第3中間層とを備え、前記第2中間層は、前記細長アパーチュア内に配置された中央部材をさらに備える。
【0037】
種々の実施形態において、層の全部または一部がメタサーフェスを有する。一実施形態においては、中間層のみがメタサーフェスを有する。別の実施形態においては、最上層および最下層の少なくとも一方がメタサーフェスを有する。一実施形態において、メタサーフェスは、隣接層の平坦面に対面するように配置される。すなわち、このような実施形態においては、2つのメタサーフェスは、互いに対面しない。
【0038】
一実施形態によれば、前記多層導波管は、第1中間層と第2中間層と第3中間層とを備え、前記第2中間層は、集積電子チップセット用の非凹凸層である。
【0039】
1つに利点は、非凹凸層、すなわちメタサーフェスを有さない層が、電子チップセットの集積に使用され得るということである。
【0040】
一実施形態によれば、前記メタサーフェスの前記厚肉セクションと前記薄肉セクションとの前記厚さ差は、波長を10で割った値よりも小さい。
【0041】
一実施形態によれば、前記メタサーフェスの前記厚肉セクションと前記薄肉セクションとの前記厚さ差は、波長を20で割った値よりも小さい。
【0042】
一実施形態によれば、前記メタサーフェスの前記厚肉セクションと前記薄肉セクションとの前記厚さ差は、波長を30で割った値よりも小さい。
【0043】
本解決策による1つの利点は、メタサーフェスにより、漏出を増加させることなく、他の利用可能な代替案と比較して小さいサイズの導波管が可能とされることである。別の利点は、メタサーフェスと組み合わせた多層構造において、層間の漏出が大幅に低減されることである。大きなメタサーフェスも可能であるが、1つの明確な利点は、小さいメタサーフェスは、対応する周波数に対する代替品よりも製造が容易であるということである。
【0044】
一態様によれば、本明細書に記載の多層導波管の製造方法が開示される。
【0045】
ある実施形態によれば、多層導波管における異なる層のメタサーフェスは、非対称な構成を有する。
【0046】
本解決策による1つの利点は、メタサーフェスを有する多層導波管における各層のメタサーフェスは、同一である必要がないということである。例えば、メタサーフェスは、層同士の間で厚肉セクションと薄肉セクションとが互いに整列するように配置され得る、または厚肉セクションと薄肉セクションとが整列しない非対称の構成において配置され得る。
【0047】
ある実施形態によれば、厚肉セクションおよび薄肉セクションは、各層の細長アパーチュアの外側の周囲に沿って周期的に配置される。
【0048】
一実施形態によれば、メタサーフェスは、各層において同一でない。
【0049】
ある実施形態によれば、細長アパーチュアの中央部材は、アパーチュアをまたぐ1つの接続タブを用いて層の残りの部分に接続する。接続タブは、層に組み込まれた一部である。
【0050】
ある実施形態によれば、多層導波管の層間の距離は、0~20μmである。
【0051】
ある実施形態によれば、多層導波管の層間の距離は、0~50μmである。
【0052】
ある実施形態によれば、多層導波管は、アンテナ、アンテナアレイ、フィルタのうちのいずれか1つとして実現された伝送回線である。
【0053】
本解決策による1つの利点は、多層導波管が、例えば溝付き導波管アンテナとして実現され得ることである。
【0054】
本解決策による別の利点は、多層導波管がMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)のパッケージ等のチップセットのパッケージのために実現され得ることである。
【0055】
ある実施形態によれば、導波管は、単一材料から作製される。
【0056】
ある実施形態によれば、導波管は、金属でコーティングされた単一材料の層から作製される。
【0057】
ある実施形態によれば、多層導波管は、非導電性接着剤を用いて組み立てられる。
【0058】
ある実施形態によれば、層は直接的に積層される。
【0059】
ある実施形態によれば、層は、接続されずに積層された薄膜である。
【0060】
1つの利点は、多層導波管が、層間のガルバニック接続、電気的接続、または物理的接続のいずれも必要としないということである。すなわち、層間に小さいギャップが存在し得る。このギャップは、例えば、層の製造から制御されないエアギャップであり得る。また、ギャップは、例えばミクロン(μm)、さらには原子レベルであり得る。
【0061】
ある実施形態によれば、層は接続せずに積層された薄い金属層である。
【0062】
ある実施形態によれば、多層導波管の層は、導電性グルー、絶縁性グルー、2つのネジのうちのいずれか1つにより一体に保持される。
【0063】
本解決策による1つの利点は、層を一体に保持するために任意の形態の接合または接着手段が使用され得ることである。この理由は、漏出を抑制するために層間に電気伝導性が必要ないためである。しかしながら、導電性が性能に悪影響を及ぼすことがないことに留意されたい。すなわち、本明細書に記載される本解決策による多層導波管は、層間の導電特性に関係なく良好に機能する。
【0064】
次に、本発明を、添付図面を参照しつつ例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、メタサーフェスを備えた層を有する多層導波管の一実施形態を示し、最上層を分解図として示す。
図2図2は、中間層の等角断面の一実施形態を示す。
図3図3は、メタサーフェスを備える層を有する多層導波管の一実施形態の分解図を示す。
図4図4は、図3に示すような実施形態の断面を示す。
図5図5は、中間層の一部の断面を示し、メタサーフェスの厚肉セクションおよび薄肉セクションが詳細に示されている。
図6図6は、複数の層におけるメタサーフェスの一実施形態の断面を示し、メタサーフェスは化学エッチングを作製方法として利用することで製造されている。
図7図7は、複数の層におけるメタサーフェスを有する同軸多層導波管を示す一実施形態を示す。
図8図8は、メタサーフェスを有する複数の層間に平坦層を有する同軸多層導波管の一実施形態の断面を示す。
図9図9は、最下層にメタサーフェスを有する矩形多層導波管の一実施形態の断面を示す。
図10図10は、メタサーフェスセクションが円形を有する一実施形態を示す。
図11図11は、厚肉セクションおよび/または薄肉セクションがメタサーフェスにおいてに不均一に配置された一実施形態を示す。
図12図12は、複数の導波管が1つのユニットにおいてスロット付き導波管アンテナとして配置された一実施形態を示す。
図13図13は、図12に示す実施形態による最上層の底面図を示す。
図14図14は、スロット付き導波管アンテナとして配置された多層導波管の一実施形態を示す。
図15図15は、スロット付き導波管アンテナとして配置された多層導波管の一実施形態を示し、不要な信号伝搬を低減するための波形部が、導波管チャネルの延在方向に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下において、添付の図面を参照しつつ、本発明の種々の実施形態の詳細な説明を開示する。本明細書におけるすべての例は、一般的な説明の一部と見なされるべきであり、したがって、一般的な観点で任意の方法で組み合わせることができる。様々な実施形態および態様の個々の特徴は、そのような組み合わせまたは交換が多層導波管、アレンジメント、またはその製造方法の全体的な機能に対して明らかに矛盾しない限り、組み合わせる、または交換することができる。
【0067】
簡潔に言えば、本解決策は、層間の電気的接触およびガルバニック接触を必要としないコンパクトな多層導波管に関する。多層導波管は、導波管の層間のエネルギー漏出を低減するための漏出抑制構造体として構成されたメタサーフェスを、層に有している。メタサーフェスは、導波管チャネルを取り囲む複数の厚肉セクションおよび薄肉セクションを備えている。
【0068】
図1は、多層導波管の複数の層21、1a、2b、2c、22を有する多層導波管1の一実施形態を示す。中間層、2a、2b、2c、2d、2eは、細長アパーチュア7を各々有している。細長アパーチュア7は、単独でまたは他の層の細長アパーチュアとともに、導波管チャネル77を形成している。細長アパーチュア7は、メタサーフェスにより取り囲まれた中間層の一部または全部にある。
【0069】
図2は、中間層2bの一部の断面を示す。層は、図2では一部のみが見える細長アパーチュア7を備えている。細長アパーチュア7は、厚肉セクション3aおよび薄肉セクション3bを備えるメタサーフェス3により取り囲まれている。厚肉セクション3aと薄肉セクション3bとは、ともにメタサーフェスを形成している。メタサーフェスは、波のガイドを支援するとともに、波を細長アパーチュア7が一部をなす導波管チャネル77に保持することを支援する態様において、漏出を抑制している。
【0070】
図2は、メタサーフェスメタサーフェス3を取り囲む平坦部分4をさらに示している。一実施形態における平坦部分4は、厚肉セクション3aと同じ厚さを有している。図2に示す実施形態において、厚肉セクション3aは、直線列6a、6b、6cに配置されている。一実施形態において、直線列6a、6b、6cの個数は、細長アパーチュア7のいずれかまたはすべての辺において、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上であり得る。
【0071】
図3は、層同士が離間配置されている、多層導波管1の一実施形態を示す。この分解図は、層間にガルバニック接続、電気的接続、または物理的接続のいずれも必要ないという多層導波管1の重要な特徴を示す。すなわち、小さなギャップが、層間に存在し得る。このギャップは、例えば、層の製造から制御されないエアギャップであり得る。また、ギャップは、例えばミクロン、さらには原子レベルであり得る。しかしながら、図3に示すギャップのサイズは例示に過ぎず、層間のギャップは、典型的には0~15マイクロメートルの間のいずれでもよいことに留意されたい。
【0072】
図4は、入口開口30および出口開口31が見える多層導波管1の一実施形態の断面を示す。これらの開口30、31は、波が導波管チャネル77に入り、そして出る開口である。図4は、1つの中間層2bに対して特定された第1面5aおよび第2面5bをさらに示す。各層が第1面5aおよび第2面5bを備えていることに留意されたい。入口開口30および出口開口31を最下層22に配置する必要はない。別の実施形態において、入口開口30および出口開口31は、代わりに最上層21に配置されている。さらに別の実施形態において、入口開口30および出口開口31は、異なる層に配置されている。例えば、入口開口30は最上層21に配置されるとともに、出口開口31は最下層22に配置され得る。またこの逆であってもよい。
【0073】
図5は、メタサーフェス3を有する中間層2a、2b、…2nの一部、または最上層21または最下層22の一部を示す。図5は、厚肉セクション3a・平坦部分4と薄肉セクション3bと厚さの差を示す。この差は、例えば、層の全厚の50~70%、50~60%、55~65%、または60~70%であり得るが、厚さの差は、当該範囲外でも変動し得る。
【0074】
図6は、メタサーフェス3の一実施形態を示す。メタサーフェス3は、メタサーフェスの縁部に特徴的な形状を形成する金属化学エッチングにより製造されており、メタサーフェスにおける縁部の形状は、丸みを帯びている。CNC、レーザ切断等の他の製造方法も可能であることに留意されたい。
【0075】
図7は、同軸多層導波管1を示す。導波管チャネル77は、1つの中間層2a、2b、2c、…、2nの細長アパーチュア7内に配置された中央部材8を備えている。中央部材8は、中央部材を層に接続してこれを所定位置に維持する単数または複数の箇所において層の残りの部分に取り付けられている。
【0076】
図8は、同軸多層導波管1の一実施形態を示す。最上層21および最下層22がメタサーフェス3を有している。一部の実施形態における最上層21および最下層22はメタサーフェス3を有するが、一部においては有さないことに留意されたい。さらに、一部の実施形態において、例えば図8に示すように、単数または複数の中間層は、メタサーフェス3を有さない。
【0077】
図9は、多層導波管1の別の実施形態を示す。最上層21はメタサーフェスを有さないが、中間層2a、2b、2cおよび最下層22はメタサーフェスを有している。
【0078】
図10は、厚肉セクション3aが丸みを帯びた形状を有する、中間層2a、2b、2c、…、2nの一実施形態を示す。この形状は機能性にとって重要ではなく、メタサーフェス3は、同一のメタサーフェス3においても異なるメタサーフェス3においても、多くの異なる形状の厚肉セクション3aを有し得ることに留意されたい。
【0079】
図11は、メタサーフェス3の厚肉セクション3aが細長アパーチュア7の周囲にランダムに置かれた別の実施形態を示す。図11は、厚肉セクション3aがどのように配置され得るかを示す図であるが、ここで説明されるものは想定可能な種々の実施形態に過ぎず、特許請求の範囲内において厚肉セクション3aの他の配置も可能であることに留意されたい。層とメタサーフェスとの間の小さなギャップにより、電磁バンドギャップ(EBG)構造が提供される。
【0080】
図12は、本明細書に記載の導波管1の一実施例としての多層溝付き導波管アンテナ40の分解等角図を示す。図12に示す実施形態では、最上層21、中間層2a、および最下層22が示されている。最上層21は、導波管1の一端部に配置されたアンテナスロット41および波形部42を備えている。中間層2aは、各導波管1にルート形状を提供する細長アパーチュア7を備えている。最下層22および最上層21は、中間層2aの細長アパーチュア7を取り囲むように配置されたメタサーフェス3を備えている。
【0081】
図12に示す細長アパーチュア7は、層の機械的な支持を強化するための支持構造体を備えている。支持構造体は、細長アパーチュア7内に配置されている。これにより、全長に沿って延びる単一のアパーチュアの代わりに複数の細長アパーチュア7が配置される実施形態が提供される。一実施形態において、これは単に構造的支持のためである。
【0082】
図13は、図12に示す最上層21の底面図を示す。図示のように、一実施形態における最上層21は、中間層2aの細長アパーチュア7を取り囲むように配置されたメタサーフェス3を備えている。理解されるように図12および図13に示す実施形態は、本明細書に記載される解決策がいかにして溝付き導波管アンテナ40として実現されるかについての単なる例示である。図12および図13は、導波管1のルート形状が実現態様に応じてどのように異なり得るかについて、さらに示す。例えば、ルート形状は、ある実施形態においては直線であり得るが、別の実施形態は単数または複数のターンを備え得る。
【0083】
図14は、溝付き導波管アンテナ40として実現された多層導波管1の一実施形態を示す。図15は、溝付き導波管アンテナ40として実現されたもう少し複雑な多層導波管1を示す。ここでは、波形部42が、伝送パターンのリップルを低減するように配置されている。波形部42は、最上層の表面電流を減少させるため、伝搬パターンが向上する。図14に示すように、波形部42は、最上層21および中間層2aを貫通して延びている。溝付き導波管アンテナ40として実現された多層導波管がさらなる中間層2b、2c、…2nを備える別の実施形態においては、波形部42は、最上層21および中間層2a、2b、2c、…2nを貫通して延びる。さらに別の実施形態においては、波形部42は、少なくとも最上層21と、中間層2a、2b、2c、…2nのうちの少なくともいくつかと、を貫通して延びる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】