(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-14
(54)【発明の名称】高分子ポリエステル材料からなる玩具組立要素
(51)【国際特許分類】
A63H 33/04 20060101AFI20230707BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20230707BHJP
A63H 33/08 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A63H33/04 Z
C08L67/02
A63H33/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577472
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2021066247
(87)【国際公開番号】W WO2021255098
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594012623
【氏名又は名称】レゴ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,ビストラ
(72)【発明者】
【氏名】ミッケルセン,レネ
【テーマコード(参考)】
2C150
4J002
【Fターム(参考)】
2C150AA06
2C150BA22
2C150FB14
2C150FB43
4J002BB072
4J002BB082
4J002BB232
4J002CF041
4J002CF051
4J002CF061
4J002FD202
4J002GC00
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤、及び少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を加工することによって製造される、ポリエステル材料からなる玩具組立要素に関する。また、本発明は、このような玩具組立要素の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル材料から製造され、少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤、及び少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を加工して製造された玩具組立要素であって、
前記ポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリエステル(PETポリエステル)、又は、
PETポリエステルのテレフタル酸基の全部又は一部が、アジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、フタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される1つの二酸モノマーに、
及び/又は
PETポリエステルのエチレングリコール基の全部又は一部が、イソソルビド、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される1つのジオールモノマーに、
置換されて変性した、変性PETポリエステルであり、
ただし、前記テレフタル酸基の全部と前記エチレングリコール基の全部を同時に置換することはできない、玩具組立要素。
【請求項2】
前記ポリエステルは、PETポリエステル、又は前記PETポリエステルの前記テレフタル酸基の全部又は一部が、イソフタル酸に置換されて変性した、変性PETポリエステルである、請求項1に記載の玩具組立要素。
【請求項3】
前記ポリエステルは、前記PETポリエステルの前記テレフタル酸基の全部が、フランジカルボン酸基に置換されて変性した、変性PETポリエステルである、請求項1に記載の玩具組立要素。
【請求項4】
前記ポリエステルは、PETポリエステル、又は前記PETポリエステルの前記テレフタル酸基の全部又は一部が、イソフタル酸に置換されて変性した、変性PETポリエステルと、
前記PETポリエステルの前記テレフタル酸基の全部がフランジカルボン酸基に置換されて変性した、変性PETポリエステルと
の混合物である、請求項1に記載の玩具組立要素。
【請求項5】
前記ポリエステルは、前記PETポリエステルの前記エチレングリコール基の一部が、1,4-シクロヘキサンジメタノールで置換されて変性した、変性PETポリエステルである、請求項1に記載の玩具組立要素。
【請求項6】
前記PETポリエステル又は前記変性PETポリエステルの量が、前記樹脂の全質量に対して、75w/w%以上95w/w%以下の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の玩具組立ブロック。
【請求項7】
前記反応性耐衝撃性改良剤の量が、前記樹脂の全質量に対して、0.25w/w%以上10w/w%以下の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の玩具組立ブロック。
【請求項8】
前記非反応性耐衝撃性改良剤の量が、前記樹脂の全質量に対して、0.25w/w%以上15w/w%以下の範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載の玩具組立ブロック。
【請求項9】
前記樹脂が、充填剤、核形成剤、加水分解防止剤、離型剤、潤滑剤、UV安定剤、難燃剤、鎖延長剤、加工安定剤、酸化防止剤及び着色剤並びに/又は顔料及びそれらの混合物からなる群から選択される1つの添加剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の玩具組立ブロック。
【請求項10】
a)少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤、及び少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を供給する、供給工程であって、
前記ポリエステルは、PETポリエステル、又は、
PETポリエステルのテレフタル酸基の全部又は一部が、アジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、フタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される1つの二酸モノマーに、
及び/又は
PETポリエステルのエチレングリコール基の全部又は一部が、イソソルビド、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される1つのジオールモノマーに、
置換されて変性した、変性ポリエステルであり、
ただし、前記テレフタル酸基の全部と前記エチレングリコール基の全部を同時に置換することはできない、供給工程と、
b)前記樹脂を加工する、加工工程と
を含む玩具組立要素の製造方法。
【請求項11】
前記玩具組立要素が、少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤、及び少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む前記樹脂の射出成形及び/又は付加製造によって、製造される、請求項10に記載の玩具組立要素の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂が、充填剤、核形成剤、加水分解防止剤、離型剤、潤滑剤、UV安定剤、難燃剤、鎖延長剤、加工安定剤、酸化防止剤及び着色剤並びに/又は顔料及びそれらの混合物からなる群から選択される1つの添加剤をさらに含む、請求項10又は11に記載の玩具組立要素の製造方法。
【請求項13】
射出成形機への供給時に、前記反応性耐衝撃性改良剤及び前記非反応性耐衝撃性改良剤を前記ポリエステルと混合する、請求項10~12のいずれか1項に記載の玩具組立要素の製造方法。
【請求項14】
射出成形機に混合物を供給する前に、前記反応性耐衝撃性改良剤及び前記非反応性耐衝撃性改良剤を前記ポリエステルと混合して前記混合物を作製する、請求項10~13のいずれか1項に記載の玩具組立要素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポリエステルと、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤と、少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤とを含む樹脂を加工することによって製造されるポリエステル材料からなる玩具組立要素に関する。また、本発明はこのような玩具組立要素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、主鎖にエステル官能基を含むポリマーにカテゴリー分けされる。それは、二酸又は酸無水物とジオールとの脱水を伴う反応、又は環状(ジ)エステルの開環重合によって生成することができる。ポリエステルは主鎖の組成によって脂肪族、半芳香族、芳香族に分類される。一般に、芳香族酸及びジオールは、硬度、剛性及び耐熱性を向上させるが、脂肪族酸及びジオールは、柔軟性を向上させ、融点又は軟化点を低下させ、加工性を向上させる。
【0003】
一般的な脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、1,4―ブタンジオール及び1,3―プロパンジオールが挙げられる。それらは、テレフタル酸、フタル酸、無水フタル酸及びナフタレンジカルボン酸のような芳香族二酸としばしば反応する。ポリエステルを架橋するためにグリセリンや無水マレイン酸のような不飽和酸(無水物)が時々添加されることがある。不飽和酸(無水物)の場合には、その後のフリーラジカル連鎖重合(free radical chain polymerization)によって架橋が達成される。ポリエステルの主鎖における二重結合もまた、高温での軟化及び変形に対する耐性を改善する。
【0004】
ポリ(エチレンテレフタレート)は、PETとも呼ばれ、一般的な熱可塑性ポリマー樹脂である。PETはエチレングリコールとテレフタル酸との反応により製造されうる。今日、PETは、機械的特性及びガスバリア性の優れた組み合わせにより、食品、水、炭酸水及びソフトドリンクなどの容器を製造するために広く使用されている。透明な飲料用容器は非晶質PETをブロー成形することで製造される。したがって、非晶質PETは、例えばリサイクル飲料用容器から広範に入手可能であるため、工学的な合成物を製造するための低コスト原材料であると考えられる。
【0005】
PETは元々射出成形材料としては考えられていなかった。その理由としては、水分感度が高く、衝撃強度が低く、結晶化速度が遅いため、成形プロセスが遅くなるためなどが挙げられる。
【0006】
耐久性のある製品を工業生産できる程度まで、PETの特性を改良及び強化することができる。遅い結晶化速度は、核形成剤の添加により改善することができ、弱い衝撃強度は、ガラス、繊維、鉱物又はカーボンナノチューブ、グラフェン及びグラファイトのような有機強化剤、及び/又は耐衝撃性改良剤の添加により改善することができる。
【0007】
標準的なボトルグレードのPETは、通常は0.75dl/g以上0.85dl/g以下の範囲の固有粘度を有する。コポリマー変性(copolymer modification)(酸又はグリコール変性)を用いて、結晶化速度を低下させ、PET溶融温度を低下させることにより、製造プロセスにおけるエネルギー需要を低減させた。コポリマー変性を有する標準的なPETボトル用ポリマーは、結晶化速度を低下させるために、通常は、0モル%以上3モル%以下のイソフタル酸変性を有し、それにより、最大100グラムの重さの、透明で非晶質のプリフォームの生産を可能としている。
【0008】
ポリ(エチレンフラノアート)は、PEFとも呼ばれ、容易に成形及び熱成形することができる芳香族熱可塑性ポリエステルである。PEFは、エチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合により製造されうる。PEFは、高い引張強さと高い破壊靭性、優れた耐熱性、そしてPETより優れたガスバリア性を有するという、多くの魅力的な特性を持っている。PEFはまた、PETよりも融点が低く、ガラス転移温度が高いため、より魅力的な熱的及び機械的特性を有するが、PEFの衝撃強度に関する情報は非常に少ない。
【0009】
PEFはPETのアナログとして知られており、PEFの化学構造がPETの化学構造に非常に類似しているため、PEFはPETの代替物とすることができる。特に、近年の研究では、PETと比較して、PEFは、より優れたバリア特性、すなわち、より優れた耐ガス(酸素及び二酸化炭素)透過性(ガスバリア性)を有するために、食品及び飲料の包装材料用としてのPEFを使用することが注目されている。
【0010】
PEFはPETのリサイクルと非常に似た方法でリサイクルできることが実証されている。予備試験では、PEFが、強度及び衝撃のようなPETの機械的性質と物理的性質に物質的な影響を与えないことを示した。したがって、PEFは、少なくとも市場でのPEF品目の発売後の移行期間に、PETのリサイクルストリームでリサイクルされる可能性が高いことが示唆される。既存のPETリサイクルストリームでは、2%までのPEFが適合すると考えられており、PETリサイクルストリームにおけるこの2%PEFの上限は、European PET Bottle Platform(EPBP)によって実際に認められている。
【0011】
PEFの衝撃強さと靭性の改善に関する研究はまだ行われていない。しかし、PEFはPETと化学的に類似しているために、PEFとPETで同じ種類及び同じ量の耐衝撃性改良剤を添加した場合、PEFの衝撃強さがPETの場合と同様に改善される可能性があると信じられている。
【0012】
ポリ(エチレングリコール―co―1,4―シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)は、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート又はPETGとも呼ばれ、PETのエチレングリコール基を1,4―シクロヘキサンジメタノール基で部分的に置換することにより調製される。半結晶PETとは対照的に、グリコール変性ポリ(エチレンテレフタレート)コポリエステルは、PETのガラス転移温度と同様の約80℃のガラス転移温度を示す非晶質熱可塑性樹脂である。いくつかの研究では、PETGのガラス転移温度はPETのガラス転移温度より高いことが報告されている。
【0013】
PETGの衝撃強さはエチレングリコールと1,4―シクロヘキサンジメタノールテレフタレートの含有量に依存する。1,4―シクロヘキサンジメタノールテレフタレートの含有量が高いほど衝撃強度は高くなる。
【0014】
耐衝撃性改良剤は、ポリマー樹脂の耐久性及び靭性を改善することが知られている。PET用の耐衝撃性改良剤は、一般に弾性体の化合物であり、通常、弾性率を低下させ、衝撃強度及び伸びを増大させる。衝撃強度を高める効果的な方法として、PETマトリックス内にゴム相を分散させることが挙げられる。ゴム粒子の主な役割として、局所的な現象よりも全体的な変形機構を誘起し、それによって散逸破壊エネルギー(dissipated fracture energy)の量を大きく増加させることが挙げられる。ゴムの変性の効果は、ゴムの種類、ゴム含有量、ゴム粒径及び粒子間距離に依存する。
【0015】
耐衝撃性改良剤は、反応性のもの又は非反応性のものとして特徴づけられる。反応性耐衝撃性改良剤は、PETマトリックスにグラフト化をすることによって安定な分散相を形成するので、PETの強靭化に好ましい。非反応性エラストマーは、集中的に配合することによってPET中に分散させることができるが、配合機の下部で凝集する可能性がある(may coalesce downstream in the compounder)。
【0016】
反応性耐衝撃性改良剤は、官能化末端基(functionalized end groups)を有する。官能化は2つの目的に役立つ。第1には、ポリマーマトリックスに耐衝撃性改良剤を結合させることが挙げられ、第2には、ポリマーマトリックスと耐衝撃性改良剤との間の界面エネルギーを改良して分散性を高めることが挙げられる。
【0017】
非反応性(非官能化)エラストマー耐衝撃性改良剤は、最適なサイズの分散相及び強い界面結合を実現できるほど、ポリエステルマトリックスと十分に相互作用することができないため、ポリエステルの強化にはあまり効果的ではない。非反応性耐衝撃性改良剤は、固有のコアシェル構造をとる場合がある。この構造は、軟質ゴムのコアの周りに硬質のシェルが共重合することで得られる。この構造は、通常はエマルジョン共重合によって得られるので、この構造は、よく定義された粒径を与え、よく制御されたブレンド構造をもたらす。軟質ゴムコアはブタジエンコア又はアクリルコアであってもよく、シェルはPMMAであってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ポリエステルは、玩具組立要素のような玩具の製造に使用するには興味深い材料である。しかし、製品の安全性や遊びの体験の要件を満たすためには、衝撃強度を改良し、床に落としたり、大人が踏んだりしても壊れない耐久性のある玩具組立ブロックを製造する必要がある。改良された衝撃強度については、例えばABSのような従来の材料で製造され長年市場に出回っている従来のLEGO(商標)ブロックの形状のような複雑な形状を有する射出成形品に焦点を当てる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の発明者らは、衝撃強度が向上した玩具組立要素(おもちゃの組立用部品)の製造に使用する新規なポリエステル樹脂を開発した。
【0020】
特に、本発明者らは、驚くべきことに、1種以上のポリエステル、反応性耐衝撃性改良剤、及び非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を玩具組立要素に加工すると、衝撃強度が著しく向上することを見出した。実際、このようなポリエステル樹脂を加工すると、反応性耐衝撃性改良剤のみ又は非反応性耐衝撃性改良剤のみを含むポリエステル樹脂と比較して相乗効果が認められる。
【0021】
本発明の第1の実施形態は、ポリエステル材料から製造され、少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤、及び少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を加工して製造された玩具組立要素であって、
前記ポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリエステル(PETポリエステル)、又は、
PETポリエステルのテレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部又は一部が、アジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、フタル酸、4,4’―ビフェニルジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される1つの二酸モノマーに、
及び/又は
PETポリエステルのエチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部又は一部が、イソソルビド、1,4―シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4―テトラメチル―1,3―シクロブタンジオール、ジエチレングリコール、1,2―プロパンジオール、ネオペンチレングリコール、1,3―プロパンジオール、1,4―ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される1つのジオールモノマーに、
置換されて変性した、変性PETポリエステルであり、
ただし、前記テレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部と前記エチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部を同時に置換することはできない、玩具組立要素である。
【0022】
本発明の第2の実施形態は、
a)少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤、及び少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を供給する供給工程であって、
前記ポリエステルは、PETポリエステル、又は、
PETポリエステルのテレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部又は一部が、アジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、フタル酸、4,4’―ビフェニルジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される1つの二酸モノマーに、
及び/又は
PETポリエステルのエチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部又は一部が、イソソルビド、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4―テトラメチル―1,3―シクロブタンジオール、ジエチレングリコール、1,2―プロパンジオール、ネオペンチレングリコール、1,3―プロパンジオール、1,4―ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される1つのジオールモノマーに、
置換されて変性した、変性ポリエステルであり、
ただし、前記テレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部と前記エチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部を同時に置換することはできない供給工程と、
b)前記樹脂を加工する加工工程と
を含む玩具組立要素の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来の箱型のLEGO(商標)2×4ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、少なくとも1つのポリエステルと、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤と、少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤とを含む樹脂を加工することによって製造されるポリエステル材料からなる玩具組立要素に関する。
【0025】
ここでいう「玩具組立要素」は、上側に凸部が設けられ、下側に相補形の円筒部が設けられた箱型の組立ブロックの形態を有する従来の玩具組立要素(おもちゃの組立部品)を含む。従来の箱型の玩具組立ブロック(おもちゃの組立用ブロック)を
図1に示す。この従来の箱型の玩具組立ブロックは、米国特許第3005282号明細書にて初めて公開され、LEGO(商標)やLEGO(商標)DUPLO(商標)という商品名で広く販売されている。この用語には、LEGOグループ以外の企業によって製造され、LEGO以外の商標で販売されている類似の箱形の組立ブロックも含まれる。
【0026】
「玩具組立要素」という用語は、通常、互換性があるので相互に接続できる、複数の組立要素からなる玩具組立セットの一部となる他の種類の玩具組立要素も含む。このような玩具組立セットは、例えば、LEGO(商標)ブロック、LEGO(商標)Technic及びLEGO(商標)DUPLO(商標)のように、LEGOの商標で販売されている。これらの玩具組立セットの一部は、玩具構築物、例えばLEGO(商標)ミニフィギュア(例えば米国特許出願第05/877800号明細書を参照)を含み、構築物を玩具組立セット内の他の玩具組立要素に接続することができるように、下側に相補形の円筒部を有する。このような玩具構築物は、「玩具組立要素」という用語にも包含される。この用語には、LEGOグループ以外の企業によって製造され、LEGO以外の商標で販売されている類似の玩具組立要素も含まれる。
【0027】
玩具の組立要素は、さまざまな形、サイズ、色で利用できる。LEGO(商標)ブロックとLEGO(商標)DUPLO(商標)ブロックの違いの1つとして、LEGO(商標)DUPLO(商標)ブロックがLEGO(商標)ブロックの2倍のサイズであることが挙げられる。箱型の従来の箱形のレゴ(商標)玩具組立ブロックで、上部に4×2の凸部を持ち、サイズは長さ約3.2cm、幅約1.6cm、高さ約0.96cm(凸部を除く)、凸部の直径は約0.48cmとなっている。一方、LEGO(商標)DUPLO(商標)の場合は、上部に4×2の凸部があり、サイズは縦約6.4cm、横約3.2cm、高さ約1.92cm(凸部を除く)、凸部の直径は約0.96cmである。
【0028】
玩具組立要素は、射出成形法又は付加製造法によって、又は射出成形法と付加製造法との組み合わせによって製造される。
【0029】
玩具組立要素を射出成形法によって製造することは、玩具組立ブロックの従来の製造方法である。この製造技術は長年使用されており、当業者には非常によく知られている。いくつかの実施態様において、玩具組立要素は、ポリエステル樹脂の射出成形によって製造される。他の実施態様では、玩具組立要素は、成分の1つがポリエステル樹脂である二材質射出成形法によって製造される。
【0030】
近年、例えば高分子材料における組立体に新しい付加製造の技術が開発されている。本明細書で使用される「付加製造」又は「付加的に製造される」という用語は、ブロックが付加的な方法で作られることをいい、すなわち、基体の上又は新たに付加された材料の上のいずれかに新しい材料を付加することにより作製されること、又は、基体上又は以前に固化された液層若しくは液滴上に薄い液層若しくは液滴を繰り返し固化することにより作製されること、又は、基体上若しくは以前に印刷されたプラスチック材料上に熱可塑性ポリマー材料を用いて繰り返し印刷することにより作製されること、又は、例えばレーザーを用いてプラスチック材料を付加的な方法で繰り返し溶融(soldering)することにより作製されることをいう。
【0031】
いくつかの実施態様では、玩具組立要素は、射出成形法によって製造される。他の実施態様では、玩具組立要素は、付加製造法によって製造される。さらに他の実施態様では、玩具組立要素は、射出成形法と付加製造法とを組み合わせて製造される。このような複合製造技術は、例えば、国際公開第2014/005591号に記載されており、従来の射出成形された箱型のブロックの表面に、層毎に材料を付加して、デザイン性の高い玩具組立要素を製造できる。
【0032】
したがって、玩具組立要素はポリエステル材料からなり、少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤、及び、少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を加工することによって製造される。
【0033】
本明細書でいう「ポリエステル」は、PETポリエステル、変性PETポリエステルとそれらの混合物を含む。前記変性PETポリエステルは、
PETポリエステルのテレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部又は一部が、アジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、フタル酸、4,4’―ビフェニルジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される1つの二酸モノマーに、
及び/又は
PETポリエステルのエチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部又は一部が、イソソルビド、1,4―シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4―テトラメチル―1,3―シクロブタンジオール、ジエチレングリコール、1,2―プロパンジオール、ネオペンチレングリコール、1,3―プロパンジオール、1,4―ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される1つのジオールモノマーに、
置換されて変性しており、
ただし、前記テレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部と前記エチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部を同時に置換することはできない。
【0034】
本明細書で使用される「ポリエステル樹脂」という用語は、上記で定義された少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤、及び少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を意味する。
【0035】
PETポリエステルは、モノマーのエチレングリコールとテレフタル酸とを重合させて製造される。変性PETポリエステルは、3つの異なる方法で製造されることができる。まず、モノマーであるエチレングリコール、テレフタル酸、及び二酸モノマー及び/又はジオールモノマーである1種以上のさらなるコモノマーを重合させて、二酸変性、ジオール変性又は二酸/ジオール変性を生成させることにより、変性PETポリエステルを製造されることができる。第2に、変性PETポリエステルは、エチレングリコールモノマーと、1種以上の二酸モノマー及び任意に1種以上のジオールモノマーである1種以上のさらなるコモノマーとの重合によって製造されることができる。第3に、変性PETポリエステルは、テレフタル酸モノマーと、1つ又は複数のジオールモノマー及び任意に1つ又は複数の二酸モノマーである1つ又は複数のさらなるコモノマーとの重合によって製造されることができる。いずれの場合も、二酸モノマーは、アジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、フタル酸、4,4’―ビフェニルジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択され、ジオールモノマーは、イソソルビド、1,4―シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4―テトラメチル―1,3―シクロブタンジオール、ジエチレングリコール、1,2―プロパンジオール、ネオペンチレングリコール、1,3―プロパンジオール、1,4―ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0036】
いくつかの実施態様では、樹脂はPETポリエステルを含む。PETポリエステルはエチレングリコールとテレフタル酸とを反応させて製造される。好ましい実施態様では、ポリエステルとしてPETポリエステルが挙げられる。
【0037】
いくつかの実施態様において、樹脂は、エチレングリコールとテレフタル酸と1,4―シクロヘキサンジメタノールコモノマーとの反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。他の実施態様では、樹脂は、エチレングリコールとテレフタル酸とイソフタル酸コモノマーとの反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。他の実施態様では、樹脂は、エチレングリコール及びテレフタル酸と2,2,4,4―テトラメチル―1,3―シクロブタンジオールコモノマーとの反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。他の実施態様では、樹脂は、テレフタル酸と1,4―シクロヘキサンジメタノールとの反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。さらに他の実施態様では、樹脂は、テレフタル酸、イソフタル酸及び1,4―シクロヘキサンジメタノールの反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。他の実施態様では、樹脂は、エチレングリコール、テレフタル酸、及び2,5―フランジカルボン酸の反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。
【0038】
好ましい実施態様において、樹脂は、ポリ(エチレンテレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステルを含む。ポリ(エチレンテレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステルは、エチレングリコールとテレフタル酸とイソフタル酸とを反応させて製造される。好ましい実施態様では、樹脂中のポリエステルとして、変性PETポリエステルが挙げられ、これはポリ(エチレンテレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステルが挙げられる。ポリ(エチレンテレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステル中のイソフタル酸の量は、通常は0.5モル%以上12モル%以下、好ましくは1モル%以上3モル%以下である。
【0039】
ポリ(エチレンテレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステルの化学組成、すなわちポリ(テレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステル中のイソフタル酸の量は、「A.Martinez de Ilarduya,D.P.R.Kint,S.Munoz-Guerra,“Sequence Analysis of Poly (ethylene terephthalate-co-isophthalate) Copolymers by 13C NMR”,Macromolecules 2000,33,p.4596―4598」に記載されている方法に従ってC13核磁気共鳴分光法(C NMR)によって特性化することができる。したがって、イソフタル酸の量は、このC NMR法を用いて測定することができる。
【0040】
固有粘度はPETの重要な特性である。固有粘度は、dl/gの単位で求められ、相対粘度をゼロに外挿することで求める。固有粘度はPETポリマー鎖の長さに依存する。高分子鎖が長いほど鎖間の絡み合いが大きくなり、粘度が高くなる。特定のバッチのPET樹脂の平均長を、そのバッチの重合プロセス中に制御することができる。
【0041】
PETの固有粘度は、ASTM D 4603に従って測定することができる。
【0042】
固有粘度が高いホモポリマーであってコポリマーのPET組成物は、その高い粘度のため、射出成形において加工することが困難である。
【0043】
いくつかの実施態様では、PETポリエステルの固有粘度は0.6dl/g以上1.1dl/g以下であり、好ましくは0.7dl/g以上0.9dl/g以下、より好ましくは0.75dl/g以上0.85dl/g以下の範囲である。
【0044】
好ましい実施態様における、変性PETポリエステルとして、ボトルグレードのPETが挙げられる。「ボトルグレード」という用語は、その技術分野でよく知られている用語で、ボトルに容易に加工することができるPET出発材料のことをいう。ほとんどの実施態様では、「ボトルグレード」のPETは、1モル%以上3モル%以下のイソフタル酸を含むポリ(エチレンテレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステルで作られる。ボトルグレードのPETにおいて、固有粘度は、通常は、非炭酸水について0.70dl/g以上0.78dl/g以下の範囲であり、炭酸水について0.78dl/g以上0.85dl/g以下の範囲である。
【0045】
市販されているPETのグレードの適切な例としては、Far Eastern New Century社(FENC)によって供給されるボトルグレードのEASTLON PET CB―600、CB―602及びCB―608、FENCによって供給される市販グレードの使用済みのrPET CB-602R、FENCによって供給される部分的にバイオベースのボトルグレードのPET CB―602 AB、及びInvistaによって供給されるホモポリマーのPETグレードの6020が挙げられる。
【0046】
いくつかの実施態様では、樹脂はエチレングリコールとテレフタル酸及び1,4―シクロヘキサンジメタノールコモノマーの反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。いくつかの実施態様では、そのような樹脂はポリ(エチレングリコール―co―1,4―シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)ポリエステルを含み、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート又はPETGとも呼ばれる。好ましい実施態様では、ポリエステルとして、変性PETポリエステルが挙げられ、PETGが挙げられる。PETG中の1,4―シクロヘキサンジメタノールの量は通常、0.1モル%以上25モル%以下である。他の実施態様では、樹脂はPCTGとも呼ばれるエチレングリコール変性ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)を含む。好ましい実施態様では、ポリエステルとして、変性PETポリエステルが挙げられ、PETGが挙げられる。PETG中の1,4―シクロヘキサンジメタノールの量は、通常は、25モル%以上49.99モル%以下である。
【0047】
他の実施態様では、樹脂はエチレングリコールとテレフタル酸とコモノマー2,2,4,4―テトラメチル―1,3-シクロブタンジオールとの反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。いくつかの実施態様では、そのような樹脂はPETTとも呼ばれるポリ(エチレングリコール―co―2,2,4,4―テトラメチル―1,3―シクロブタンジオールテレフタレート)を含む。
【0048】
他の実施態様では、樹脂は、テレフタル酸と1,4―シクロヘキサンジメタノールとの反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。いくつかの実施態様において、樹脂は、PCTとも呼ばれるポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)を含む。
【0049】
さらに他の実施態様では、樹脂は、テレフタル酸、イソフタル酸及び1,4―シクロヘキサンジメタノールの反応によって製造された変性PETポリエステルを含む。いくつかの実施態様において、樹脂は、PCTAとも呼ばれるイソフタル酸変性ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)を含む。イソフタル酸の量は、典型的には0.1モル%以上50モル%以下、より典型的には0.1モル%以上5モル%以下である。
【0050】
いくつかの実施態様において、樹脂は、ポリ(エチレンフラノエート―co―エチレンテレフタレート)ポリエステルを含む。エチレングリコールと、テレフタル酸と、2,5―フランジカルボン酸とを反応させて、ポリ(エチレンフラノエート―co―エチレンテレフタレート)ポリエステルが製造される。変性PETポリエステル中の2,5―フランジカルボン酸の量は、通常0.5モル%以上12モル%以下、好ましくは1モル%以上3モル%以下である。
【0051】
いくつかの実施態様において、樹脂は、PEFとも呼ばれるポリ(エチレンフラノエート)ポリエステルを含む。ポリ(エチレンフラノエート)ポリエステルは、エチレングリコールとフランジカルボン酸とを反応させて製造される。好ましい実施態様では、ポリエステルとして、変性PETポリエステルが挙げられ、PEFが挙げられる。
【0052】
他の実施態様では、樹脂は、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリエステル及びポリ(エチレンフラノエート)ポリエステルの混合物を含む。他の実施態様では、樹脂は、ポリ(エチレンテレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステルとポリ(エチレンフラノエート)ポリエステルとの混合物を含む。さらに他の実施態様では、樹脂は、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステル及びポリ(エチレンフラノエート)ポリエステルの混合物を含む。これらの混合物のいずれにおいても、ポリ(エチレンフラノエート)ポリエステルの量は、通常は0.1w/w%以上10w/w%以下であり、例えば、ポリエステルの全量に対して0.1w/w%以上5w/w%以下又は0.1w/w%以上2w/w%以下である。
【0053】
いくつかの実施態様において、ポリエステル樹脂として、非充填ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される用語「非充填ポリエステル樹脂」は、ガラス、ガラスビーズ、繊維などの補強材及び充填材、珪酸アルミニウム、タルク、アスベスト、マイカ及び炭酸カルシウムなどの鉱物補強材、並びにアラミド繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン及びグラファイトなどの有機補強材を含まないポリエステル樹脂を意味する。
【0055】
一実施態様では、ポリエステル樹脂は、ガラス、ガラスビーズ及び/又はガラス繊維を含まない。一実施態様では、ポリエステル樹脂は繊維を含まない。一実施態様では、ポリエステル樹脂は、ケイ酸アルミニウム、アスベスト、タルク、マイカ及び炭酸カルシウムなどの無機補強材を含まない。一実施態様では、ポリエステル樹脂は、アラミド繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン及びグラファイトなどの有機補強材を含まない。一実施態様では、ポリエステル樹脂は、ガラス及び繊維を含まない。
【0056】
別の好ましい実施態様では、ポリエステル樹脂は、樹脂の全質量に対して5w/w%までの量、例えば0.1w/w%以上5w/w%以下、より好ましくは0.2w/w%以上4w/w%以下、最も好ましくは0.5w/w%以上3w/w%以下の1つ以上の充填剤をさらに含む。1つ又は複数の充填剤は、無機粒子材料又はナノ複合材料又はそれらの混合物であってもよい。
【0057】
無機粒子材料の好適な例としては、ガラス、MgO、SiO2、TiO2、及びSb2O3などの無機酸化物、Al(OH)3やMg(OH)2などの水酸化物、CaCO3、BaSO4、CaSO4及びリン酸塩などの塩、タルク、マイカ、カオリン、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ナノクレイ、長石及びアスベストなどのケイ酸塩、ホウ素や鋼などの金属、炭素-黒鉛(炭素繊維、黒鉛繊維及びフレークなど)、カーボンナノチューブ及びカーボンブラックが挙げられる。無機粒子材料の好適な例としては、表面処理された及び/又は表面改質されたSiO2及びTiO2、例えばアルミナで表面改質されたTiO2が挙げられる。
【0058】
ナノ複合材料の適切な例には、粘土/低密度ポリエチレン(LDPE)ナノ複合材料、粘土/高密度ポリエチレン(HDPE)ナノ複合材料、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)/粘土ナノ複合材料、ポリイミド(PI)/粘土ナノ複合材料、エポキシ/粘土ナノ複合材料、ポリプロピレン(PP)/粘土ナノ複合材料、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)/粘土ナノ複合材料及びポリ塩化ビニル(PVC)/粘土ナノ複合材料などの粘土充填ポリマーや、エポキシ/アルミナ・ナノ複合材料、PMMA/アルミナ・ナノ複合材料、PI/アルミナ・ナノ複合材料、PP/アルミナ・ナノ複合材料、LDPE/アルミナ・ナノ複合材料及び架橋ポリエチレン(XLPE)/アルミナ・ナノ複合材料などのアルミナ充填ポリマーや、HDPE/チタン酸バリウムナノ複合材料及びポリエーテルイミド(PEI)/チタン酸バリウムナノ複合材料などのチタン酸バリウム充填ポリマーや、PP/シリカナノ複合材料、エポキシ/シリカナノ複合材料、PVC/シリカナノ複合材料、PEI/シリカナノ複合材料、PI/シリカナノ複合材料、ABS/シリカナノ複合材料、及びPMMA/シリカナノ複合材料などのシリカ充填ポリマーや、LDPE/酸化亜鉛ナノ複合材料、PP/酸化亜鉛ナノ複合材料、エポキシ/酸化亜鉛ナノ複合材料、PMMA/酸化亜鉛ナノ複合材料などの酸化亜鉛充填ポリマーが含まれる。
【0059】
一実施態様では、樹脂は、樹脂の全質量に対して少なくとも50w/w%の量のポリエステルを含む。他の実施態様では、樹脂は、樹脂の全質量に対して少なくとも60w/w%、70w/w%又は80w/w%の量のポリエステルを含む。好ましい実施態様において、樹脂の量は、樹脂の全質量に対して少なくとも85w/w%、例えば少なくとも90w/w%の量のポリエステルを含み、より好ましくは、樹脂の全質量に対して少なくとも95w/w%、97w/w%又は99w/w%である。
【0060】
別の実施態様では、樹脂は、樹脂の全質量に対して50w/w%以上99.5w/w%以下の量のポリエステルを含む。他の実施態様では、樹脂は、樹脂の全質量に対して60w/w%以上97w/w%以下又は70w/w%以上95w/w%以下の量のポリエステルを含む。好ましい実施態様では、樹脂は、樹脂の全質量に対して75w/w%以上95w/w%以下、より好ましい77w/w%以上92w/w%以下、さらに好ましい80w/w%以上90w/w%以下の量のポリエステルを含む。
【0061】
樹脂中のポリエステルは、バイオベースポリマー、ハイブリッドバイオベースポリマー、石油系ポリマー、又はこれらの混合物であってもよい。
【0062】
本明細書で使用される「バイオベースポリマー」という用語は、バイオマス由来のモノマーが化学的又重合は生化学的重合によって製造されるポリマーのことをいう。バイオベースポリマーには、バイオマス由来の1種のモノマーの重合により製造されるポリマー、及びバイオマス由来の少なくとも2種の異なるモノマーの重合により製造されるポリマーが含まれる。
【0063】
好ましい実施態様において、バイオベースポリマーは、全てバイオマスに由来するモノマーが化学的重合又は生化学的重合されることよって製造される。
【0064】
本発明によるバイオベースポリマーは、次の(1)と(2)を含む。(1)は生化学的重合で製造されたポリマーであり、例えば微生物を用いて製造されるポリマーで、モノマーはバイオマスを基材として製造される。(2)は化学重合で製造されたポリマーであり、すなわち化学合成によって製造されるポリマーで、モノマーはバイオマスを基材として製造される。
【0065】
いくつかの実施態様において、バイオベースポリマーは、生化学的重合によって製造される。他の実施態様では、バイオベースポリマーは化学重合によって製造される。さらに他の実施態様では、バイオベースポリマーは、生化学的又は化学的重合によって製造される。バイオベースポリマーは、例えば、2つのモノマーが生化学的反応経路によって二量体に結合され、次いで二量体が化学反応を用いて重合される場合には、生化学的重合と化学的重合とを組み合わせて製造することもできる。
【0066】
バイオベースポリマーには、石油系ポリマーと同じ分子構造を有するポリマーを含むが、バイオマス由来のモノマーの化学的及び/又は生化学的重合によって製造されたポリマーも含まれる。
【0067】
本明細書で使用される「石油系ポリマー」という用語は、石油、石油副産物又は石油由来原料に由来するモノマーの化学重合によって製造されるポリマーをいう。
【0068】
本明細書で使用される用語「ハイブリッドバイオベースポリマー」とは、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって製造されるポリマーをいい、ここで、少なくとも1つのモノマーはバイオマスに由来し、少なくとも1つのモノマーは石油、石油副産物又は石油由来原料に由来する。重合プロセスは、通常は、化学重合プロセスである。
【0069】
ハイブリッドバイオベースポリマーは、全部の炭素含有量当たりのバイオベース炭素の含有量によっても特徴づけられる。本明細書で使用される用語「バイオベース炭素」は、バイオベースポリマー及び/又はハイブリッドバイオベースポリマーの一部を形成するモノマーの製造において基材として使用されるバイオマスから生じる炭素原子のことをいう。ハイブリッドバイオベースポリマー中のバイオベース炭素の含有量は、ASTM D 6866又はCEN/TS 16137又は同等のプロトコルに規定されているように、C14同位体の含有量によって決定することができる。
【0070】
いくつかの実施態様において、ハイブリッドバイオベースポリマー中のバイオベース炭素の含有量は、ハイブリッドバイオベースポリマーの全部の炭素含有量に対して少なくとも25%、例えば少なくとも30%又は少なくとも40%である。他の実施態様では、ハイブリッドバイオベースポリマー中のバイオベース炭素の含有量は、ハイブリッドバイオベースポリマーの全部の炭素含有量に対して少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%である。
【0071】
一実施態様では、エチレングリコールモノマー及び/又はジオールモノマーは、バイオベースのモノマーであり、テレフタル酸モノマー及び/又は二酸モノマーは、例えば、石油系のモノマーなどであって、バイオベースのモノマーではない。別の実施態様では、テレフタル酸モノマー及び/又は二酸モノマーはバイオベースのモノマーであって、エチレングリコールモノマー及び/又はジオールモノマーはバイオベースのモノマーではない。さらに別の実施態様では、エチレングリコールモノマー及び/又はジオールモノマー、並びにテレフタル酸モノマー及び/又は二酸モノマーは、バイオベースのモノマーである。さらに別の実施態様においても、エチレングリコールモノマー、ジオールモノマー、テレフタル酸モノマー、及び二酸モノマーはいずれも、バイオベースのモノマーではない。
【0072】
1つの好ましい実施態様において、エチレングリコールモノマー及び/又はジオールモノマーは、バイオマスに由来し、エチレングリコールモノマー及び/又はジオールモノマー中の全炭素含有量に対して100%に等しいバイオベース炭素含有量を有するバイオベースのモノマーである。他の実施態様では、エチレングリコールモノマー及び/又はジオールモノマーは、エチレングリコールモノマー及び/又はジオールモノマー中の全部の炭素含有量に対して少なくとも25%のバイオベース炭素含有量を有し、例えば、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%である。
【0073】
1つの好ましい実施態様において、テレフタル酸モノマー及び/又は二酸モノマーは、バイオマスに由来し、テレフタル酸モノマー及び/又は二酸モノマー中の全炭素含有量に対して100%に等しいバイオベース炭素含有量を有するバイオベースのモノマーである。他の実施態様では、テレフタル酸モノマー及び/又は二酸モノマーは、テレフタル酸モノマー及び/又は二酸モノマー中の全部の炭素含有量に対して少なくとも25%、例えば、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%のバイオベースの炭素含有量を有する。
【0074】
いくつかの実施態様において、ポリエステル中のバイオベース炭素の含有量は、ポリエステル中の全部の炭素含有量に対して少なくとも25%である。他の実施態様では、ポリエステル中のバイオベース炭素の含有量は、全部の炭素含有量に対して少なくとも50%であり、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%である。最も好ましい実施態様では、ポリエステル中のバイオベース炭素の含有量は、ポリエステル中の全炭素含有量に対して100%である。
【0075】
いくつかの実施態様において、樹脂中のバイオベース炭素の含有量は、樹脂中の全炭素含有量に対して少なくとも25%である。他の実施態様では、樹脂中のバイオベース炭素の含有量は、樹脂中の全部の炭素含有量に対して少なくとも50%であり、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%である。最も好ましい実施態様では、樹脂中のバイオベース炭素の含有量は、樹脂中の全炭素含有量に対して90%である。
【0076】
「バイオベースポリマー」、「ハイブリッドバイオベースポリマー」及び「石油系ポリマー」という用語には、「バイオベースポリマー」、「ハイブリッドバイオベースポリマー」及び「石油系ポリマー」を含む再生ポリマー及び再生材料も含まれる。
【0077】
本明細書では、再生材料とは、再生ポリマーからなる樹脂を加工して得られる材料をいう。リサイクルされたポリマーは、廃棄物から得られる。廃棄物は、メカニカルリサイクルがされた材料であっても、ケミカルリサイクルがされた材料であってもよい。
【0078】
「メカニカルリサイクルがされた材料」とは、材料のメカニカルリサイクルにより回収された材料をいう。メカニカルリサイクルは、例えば粉砕、洗浄、分離、乾燥、再造粒及び配合などの機械的プロセスのみを含む。一般的なリサイクルプロセスでは、汚染物質を除去するために廃棄物を回収し、洗浄する。その後、洗浄されたプラスチックは粉砕されてフレーク状になり、フレークは配合され、ペレット化又は再処理されて粒状になる。
【0079】
「ケミカルリサイクルがされた材料」には、熱分解、化学的解重合、溶媒溶解又はその他の適切な化学的リサイクルプロセスによって得られた材料が含まれる。
【0080】
「熱分解」とは、酸素が存在しない状態で、材料を高温で粗製油に分解することをいう。次に、得られた油から既知の重合プロセスによって、新しいバージンライクポリマー(virgin―like polymer)を製造することができる。
【0081】
「化学的解重合」とは、化学薬品を用いて、ポリマーをモノマー、モノマーの混合物又はそれらの中間体のいずれかに分解するプロセスのことをいう。これらのモノマーを重合することにより、新規なバージンライクポリマーを製造することができる。
【0082】
「溶媒溶解」とは、溶媒を用いてポリマーを選択的に抽出することをいう。抽出されたポリマーは、ポリマーの沈殿又は溶媒の蒸発によって回収される。ポリマー鎖及び構造は分解されない。
【0083】
「再生ポリマー」という用語は、機械的に再生された廃棄物に含まれるポリマー、又は溶媒溶解プロセスにおいて廃棄物から化学的に回収されるポリマーのことをいう。この用語はまた、熱分解リサイクルプロセス又は化学的脱重合リサイクルプロセスで生成されるバージンライクポリマーのことをいう。その用語がバージンライクポリマーを指す場合、それはまた、モノマーの1つ又は2つのみが熱分解又は化学的解重合によってリサイクルされたポリマーを含む。
【0084】
いくつかの実施態様において、樹脂は、メカニカルリサイクルがされたポリエステルを含む。他の実施態様では、樹脂は、メカニカルリサイクルがされたポリエステル及びバイオベースのポリエステルを含む。他の実施態様では、樹脂は、メカニカルリサイクルがされたポリエステル及びハイブリッドバイオベースのポリエステルを含む。さらに他の実施態様では、樹脂は、メカニカルリサイクルがされたポリエステル及び石油系ポリエステルを含む。さらに他の実施態様では、樹脂は、メカニカルリサイクルがされたポリエステル、バイオベースのポリエステル及び石油系ポリエステルを含む。さらに他の実施態様では、樹脂は、メカニカルリサイクルがされたポリエステル、ハイブリッドバイオベースのポリエステル及び石油系ポリエステルを含む。さらに他の実施態様では、樹脂は、メカニカルリサイクルがされたポリエステル、バイオベースのポリエステル及びハイブリッドバイオベースのポリエステルを含む。また、他の実施態様では、樹脂は、メカニカルリサイクルがされたポリエステル、バイオベースのポリエステル、ハイブリッドバイオベースのポリエステル及び石油系ポリエステルを含む。
【0085】
いくつかの実施態様において、樹脂中のメカニカルリサイクルがされたポリエステルの量は、樹脂の全質量に対して、少なくとも10w/w%、例えば少なくとも20w/w%、又は例えば少なくとも30w/w%、例えば少なくとも40w/w%又は例えば少なくとも50w/w%である。他の実施態様では、樹脂中のメカニカルリサイクルがされたポリエステルの量は、樹脂の全質量に対して、少なくとも60w/w%、例えば少なくとも70w/w%、又は例えば少なくとも75w/w%、例えば少なくとも80w/w%、又は例えば少なくとも85w/w%である。
【0086】
いくつかの実施態様において、ポリエステルは、ケミカルリサイクルがされたモノマーを含む。他の実施態様では、ポリエステルは、ケミカルリサイクルがされたモノマー及びバイオベースのモノマーを含む。他の実施態様では、ポリエステルは、ケミカルリサイクルがされたモノマー及びハイブリッドバイオベースのモノマーを含む。さらに他の実施態様では、ポリエステルは、ケミカルリサイクルがされたモノマー及び石油系モノマーを含む。さらに他の実施態様では、ポリエステルは、ケミカルリサイクルがされたモノマー、バイオベースのモノマー、及び石油系モノマーを含む。さらに他の実施態様では、ポリエステルは、ケミカルリサイクルがされたモノマー、ハイブリッドバイオベースのモノマー及び石油系モノマーを含む。さらに他の実施態様では、ポリエステルは、ケミカルリサイクルがされたモノマー、バイオベースモノマー及びハイブリッドバイオベースのモノマーを含む。そして他の実施態様では、ポリエステルは、ケミカルリサイクルがされたモノマー、バイオベースのモノマー、ハイブリッドバイオベースのモノマー及び石油系モノマーを含む。
【0087】
いくつかの実施態様において、ポリエステル中のケミカルリサイクルがされたモノマーの量は、ポリエステルの全質量に対して、少なくとも10w/w%、例えば、少なくとも20w/w%、又は例えば、少なくとも30w/w%、例えば、少なくとも40w/w%又は例えば、少なくとも50w/w%である。他の実施態様では、ポリエステル中のケミカルリサイクルがされたモノマーの量は、ポリエステルの全質量に対して、少なくとも60w/w%、例えば少なくとも70w/w%、又は例えば少なくとも80w/w%、例えば少なくとも90w/w%、又は例えば少なくとも95w/w%である。
【0088】
いくつかの実施態様において、樹脂は、再生ポリ(エチレンテレフタレート)ポリエステル及び再生ポリ(エチレンフラノエート)ポリエステルの混合物を含む。他の実施態様では、樹脂は、再生ポリ(エチレンテレフタレート-co-イソフタレート)ポリエステルと再生ポリ(エチレンフラノエート)ポリエステルとの混合物を含む。さらに他の実施態様では、樹脂は、再生ポリ(エチレンテレフタレート)ポリエステル、再生ポリ(エチレンテレフタレート―co―イソフタレート)ポリエステル、及び再生ポリ(エチレンフラノエート)ポリエステルの混合物を含む。
【0089】
ポリエステル樹脂は、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤と少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤とを含む。
【0090】
本明細書で使用される「耐衝撃性改良剤」という用語は、製造された玩具組立要素の衝撃強度を高める薬剤のことをいう。衝撃強度は、下記に定義するシャルピー衝撃試験(Charpy v―notch test)を用いて測定する。
【0091】
本明細書で使用される「反応性耐衝撃性改良剤」という用語は、官能化末端基を有する耐衝撃性改良剤のことをいう。これらの官能化末端基は次の2つの目的を果たす。その2つの目的とは、1つは、ポリマーマトリックスに耐衝撃性改良剤を結合するためであり、もう1つは、ポリマーマトリックスと耐衝撃性改良剤の間の界面エネルギーを改良して分散を高めるためである。このような官能化末端基の好ましい例としては、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸及びカルボン酸が挙げられる。
【0092】
好ましい実施態様において、反応性耐衝撃性改良剤は、(X/Y/Z)のコポリマーであり、ここで、Xは、2個以上8個以下の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ポリマーであり、Yは、それぞれ3個以上6個以下及び4個以上8個以下の炭素原子を有するアクリレート又はメタクリレートを含む部分であり、Zは、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸又はカルボン酸を含む部分である。
【0093】
1つの好ましい実施態様において、反応性耐衝撃性改良剤は、以下の式によって表すことができる。
【化1】
ここで、
nは1から4までの整数であり、
mは0から5までの整数であり、
kは0から5までの整数であり、
Rは炭素数1~5のアルキル基又は水素原子1個である。
【0094】
Xは反応性耐衝撃性改良剤の40w/w%以上90w/w%以下を構成し、Yは反応性耐衝撃性改良剤の0w/w%以上50w/w%以下、例えば10w/w%以上40w/w%以下、好ましくは15w/w%以上35w/w%以下、最も好ましくは20w/w%以上35w/w%以下を構成し、Zは反応性耐衝撃性改良剤の0.5w/w%以上20w/w%以下、好ましくは2w/w%以上10w/w%以下、最も好ましくは3w/w%以上8w/w%以下を構成する。
【0095】
他の実施態様では、Xは70w/w%以上99.5w/w%以下の反応性耐衝撃性改良剤を構成し、好ましくは80w/w%以上95w/w%以下、最も好ましくは92w/w%以上97w/w%以下の反応性耐衝撃性改良剤を構成し、Yは0w/w%の反応性耐衝撃性改良剤を構成し、Zは0.5w/w%以上30w/w%以下、好ましくは5w/w%以上20w/w%以下、最も好ましくは3w/w%以上8w/w%以下の反応性耐衝撃性改良剤を構成する。
【0096】
本発明の樹脂に用いることができる特定の反応性耐衝撃性改良剤の適切な例としては、エチレン―エチレンアクリレート―グリシジルメタクリレート及びエチレン―ブチルアクリレート―グリシジルメタクリレートが挙げられる。市販されている耐衝撃性改良剤には、PARALOID(登録商標)EXM―2314(ダウケミカル社のアクリル共重合体)、LOTADER(登録商標)AX8700、LOTADER AX8900、LOTADER AX8750、LOTADER AX8950及びLOTADER AX8840(Arkema社製)、ELVALOY(登録商標)PTW(DuPont社製)などがある。
【0097】
本発明の樹脂に用いることができる特定の反応性耐衝撃性改良剤の他の適切な例としては、無水変性エチレンアクリレートが挙げられる。市販の耐衝撃性改良剤としては、LOTADER 3210、LOTADER 3410、LOTADER 4210、LOTADER 3430、LOTADER 4402、LOTADER 4503、LOTADER 4613、LOTADER 4700、LOTADER 5500、LOTADER 6200、LOTADER 8200、LOTADER HX 8210、LOTADER HX 8290、LOTADER LX 4110、LOTADER TX 8030(Arkema社製)、BYNEL(登録商標) 21E533、BYNEL 21E781、BYNEL 21E810及びBYNEL 21E830(DuPont社製)がある。
【0098】
他の実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤は、例えば、BYNEL 1123又はBYNEL 1124(DuPont社製)のような変性エチレン酢酸ビニル、例えば、BYNEL 2002又はBYNEL 2022(DuPont社製)のような酸変性エチレンアクリレート、例えば、BYNEL 22E757、BYNEL 22E780又はBYNEL 22E804(DuPont社製)のような変性エチレンアクリレート、例えば、BYNEL 30E670、BYNEL 30E671、BYNEL 30E753又はBYNEL 30E783(DuPont社製)のような無水物変性エチレン酢酸ビニル、及び例えば、BYNEL 3101又はBYNEL 3126(DuPont社製)のような酸/アクリレート変性エチレン酢酸ビニル、例えば、BYNEL E418、BYNEL 3810、BYNEL 3859、BYNEL 3860又はBYNEL 3861(DuPont社製)のような無水物変性エチレン酢酸ビニル、例えばBYNEL 3930又はBYNEL 39E660(DuPont社製)のような無水物変性エチレン酢酸ビニル、例えばBYNEL 4033又はBYNEL 40E529(DuPont社製)のような無水物変性高密度ポリエチレン、例えばBYNEL 4104、BYNEL 4105、BYNEL 4109、BYNEL 4125、BYNEL 4140、BYNEL 4157、BYNEL 4164、BYNEL 41E556、BYNEL 41E687、BYNEL 41E710、BYNEL 41E754、BYNEL 41E755、BYNEL 41E762、BYNEL 41E766、BYNEL 41E850、BYNEL 41E865又はBYNEL 41E871(DuPont社製)のような無水物変性低密度線形ポリエチレン、例えばBYNEL 4206、BYNEL 4208、BYNEL 4288又はBYNEL 42E703(DuPont社製)のような無水物変性低密度ポリエチレン、又は例えばBYNEL 50E571、BYNEL 50E662、BYNEL 50E725、BYNEL 50E739、BYNEL 50E803又はBYNEL 50E806(DuPont社製)のような無水物変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0099】
他の適切な反応性耐衝撃性改良剤には、無水マレイン酸グラフト化耐衝撃性改良剤が含まれる。このような反応性耐衝撃性改良剤の具体例としては、化学的に変性されたエチレンアクリレートコポリマー、例えば、FUSABOND(登録商標) A560(DuPont社製)、無水物変性ポリエチレン、例えば、FUSABOND E158(DuPont社製)、無水物変性ポリエチレン樹脂、例えば、FUSABOND E564若しくはFUSABOND E589若しくはFUSABOND E226若しくはFUSABOND E528(DuPont社製)、無水物変性高密度ポリエチレン、例えば、FUSABOND E100若しくはFUSABOND E265(DuPont社製)、無水物変性エチレンコポリマー、例えば、FUSABOND N525(DuPont社製)、又は化学的に変性されたプロピレンコポリマー、例えば、FUSABOND E353(DuPont社製)が挙げられる。
【0100】
さらに他の適切な反応性耐衝撃性改良剤には、エチレン―メタクリル酸(EMAA)ベースのコポリマー及びエチレン―アクリル酸(EAA)ベースのコポリマーなどのエチレン-酸コポリマー樹脂が含まれる。エチレン―メタクリル酸ベースのコポリマー耐衝撃性改良剤の具体例としては、NUCREL(登録商標) 403、NUCREL 407HS、NUCREL 411HS、NUCREL 0609HSA、NUCREL 0903、NUCREL 0903HC、NUCREL 908HS、NUCREL 910、NUCREL 910HS、NUCREL 1202HC、NUCREL 599、NUCREL 699、NUCREL 925、及びNUCREL 960(DuPont社製)が挙げられる。エチレン―アクリル酸系共重合体の具体例としては、NUCREL 30707、NUCREL 30907、NUCREL 31001、NUCREL 3990及びNUCREL AE(DuPont社製)が挙げられる。エチレン―アクリル酸(EAA)系共重合体のエチレンの他の具体例としては、Escor(登録商標) 5000、Escor 5020、Escor 5050、Escor 5080、Escor 5100、Escor 5200及びEscor 6000(ExonMobile Chemical社製)が挙げられる。
【0101】
さらに他の好適な反応性耐衝撃性改良剤としては、エチレン酸コポリマーのアイオノマーが挙げられる。このような耐衝撃性改良剤の具体例としては、SURLYN(登録商標) 1601、SURLYN 1601―2、SURLYN 1601―2LM、SURLYN 1605、SURLYN 8150、SURLYN 8320、SURLYN 8528及びSURLYN 8660(DuPont社製)が挙げられる。
【0102】
他の実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤は、アルキルメタクリレート―シリコーン/アルキルアクリレートグラフトコポリマーである。グラフトコポリマーの「アルキルメタクリレート」は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート及びブチルメタクリレートからなる群から選択される1つであってもよい。グラフト共重合体における「シリコーン/アクリル酸アルキル」とは、シリコーンモノマーとアクリル酸アルキルモノマーとの混合物を重合して得られるポリマーをいう。シリコーンモノマーは、ジメチルシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサンからなる群から選択され得る。アルキルモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びブチルメタクリレートからなる群から選択され得る。グラフトコポリマーは、コアシェル構造のゴムの形態であり、5w/w%以上90w/w%以下のグラフト速度、-150℃以上-20℃以下のコアのガラス転移温度、及び20℃以上200℃以下のシェルのガラス転移温度を有する。本発明の一実施態様では、グラフトコポリマーとして、メタクリル酸メチル-シリコーン/アクリル酸ブチルグラフトコポリマーが挙げられる。具体例としては、三菱レイヨン(株)製のS―2001、S―2100、S―2200、S―2501などがある。
【0103】
他の適切な反応性耐衝撃性改良剤には、シロキサンユニットと、カーボネート、ウレタン又はアミドユニットの少なくとも1つとを含む、米国特許第4,616,064号に記載のシロキサンポリマーが含まれる。
【0104】
適切な反応性耐衝撃性改良剤及び非反応性耐衝撃性改良剤には、WO2018/089573の段落[0043]~[0072]に記載されているものも含まれる。
【0105】
本明細書で使用される用語「非反応性耐衝撃性改良剤」は、官能化末端基(functionalized end groups)を有さず、したがって、ポリマーマトリックスと共有化学結合を形成することができない耐衝撃性改良剤のことをいう。非反応性耐衝撃性改良剤は、通常は、集中的な配合によりポリマーマトリックス中に分散されるが、配合機の下部で凝集する可能性がある(may coalesce downstream in the compounder)。
【0106】
非反応性耐衝撃性改良剤は、独自のコアシェル構造を取る場合がある。この構造は、柔らかいゴムコアの周りに硬いシェルを共重合することによって得られる。この構造は、通常はエマルジョン共重合によって得られるため、明確に定義された粒径を与え、その結果、よく制御されたブレンドモルフォロジーをもたらす。
【0107】
非反応性コアシェル耐衝撃性改良剤の適切な例としては、US5,409,967で言及されているもの、すなわち、コアが主にジオレフィン、好ましくは1,3-ジエンを含むコポリマーのようなゴム状コアポリマー、及び主にスチレンのようなビニル芳香族モノマーとヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、又は代替として、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートと同様の方法で作用する別の機能性モノマーから成るシェルポリマーを有するコアシェル耐衝撃性改良剤が挙げられる。他の適切な例としては、例えば、ブタジエンコア、アクリルコア又はシリコーンアクリルコア、及びポリメチル(メタクリレート)(PMMA)で作られたシェルのようなソフトラバーコアを有する耐衝撃性改良剤が挙げられる。
【0108】
いくつかの実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤は、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸及びカルボン酸からなる群から選択される官能化末端基を有する。好ましい実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤の官能化末端基としてメタクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0109】
いくつかの実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤は、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸及びカルボン酸からなる群から選択される官能化末端基を有し、非反応性耐衝撃性改良剤としてコアシェル耐衝撃性改良剤が挙げられる。好ましい実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤はメタクリル酸グリシジルである官能化末端基を有し、非反応性耐衝撃性改良剤としてコアシェル耐衝撃性改良剤が挙げられる。
【0110】
いくつかの実施態様では、非反応性耐衝撃性改良剤としてコアシェル耐衝撃性改良剤が挙げられる。好ましい実施態様では、非反応性耐衝撃性改良剤として、ブタジエンコア、アクリルコア又はシリコーン-アクリルコア、及びポリメチル(メタクリレート)(PMMA)製のシェルを有するコアシェル耐衝撃性改良剤が挙げられる。
【0111】
いくつかの実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤は、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸及びカルボン酸からなる群から選択される官能化末端基を有し、非反応性耐衝撃性改良剤として、エチレン-アクリル酸共重合体が挙げられる。好ましい実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤は、メタクリル酸グリシジルである官能化末端基を有し、非反応性耐衝撃性改良剤として、エチレン-アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0112】
いくつかの実施態様では、ポリエステル樹脂中の反応性耐衝撃性改良剤の量は、樹脂の全質量に対して0.25w/w%以上10w/w%以下である。好ましい実施態様では、ポリエステル樹脂中の反応性耐衝撃性改良剤の量は、樹脂の全質量に対して0.5w/w%以上5w/w%以下であり、例えば、樹脂の全質量に対して1w/w%以上3w/w%以下である。
【0113】
いくつかの実施態様では、ポリエステル樹脂中の非反応性耐衝撃性改良剤の量は、樹脂の全質量に対して0.25w/w%以上15w/w%以下である。好ましい実施態様では、ポリエステル樹脂中の非反応性耐衝撃性改良剤の量は、樹脂の全質量に対して0.5w/w%以上10w/w%以下であり、例えば、樹脂の全質量に対して1w/w%以上3w/w%以下である。
【0114】
いくつかの実施態様では、ポリエステル樹脂中の耐衝撃性改良剤の総量は、樹脂の全質量に対して0.5w/w%以上25w/w%以下である。いくつかの実施態様では、耐衝撃性改良剤の総量は、樹脂の全質量に対して2w/w%以上15w/w%以下であり、例えば、2w/w%以上5w/w%以下又は5w/w%以上8w/w%以下又は8w/w%以上12w/w%以下である。
【0115】
樹脂は、充填剤及び耐衝撃性改良剤に加えて、さらに潤滑剤を含んでもよい。摩擦の低減(外部潤滑剤)及び粘度と熱放散の低減(内部潤滑剤)により、樹脂の加工性と脱型性能を向上させ、射出成形装置の損傷を防止するために、樹脂には通常、潤滑剤が添加される。外部潤滑剤は、溶融樹脂と加工装置の表面の間の界面に移動し、加工時の摩擦を低減し、樹脂の金型表面への付着を低減し、溶融破壊を防止する。また、外部潤滑剤は摩擦係数を低減し、成形品の耐擦傷性を向上させることが多い。内部潤滑剤は樹脂の流動を促進し、型充填を容易にする。
【0116】
本発明の樹脂に使用できる適切な潤滑剤には、脂肪酸の水素化又はZiegler法によるエチレンから生成されるC12からC22までの鎖長を持つ脂肪族アルコールが含まれる。これらの脂肪族アルコールは、ジカルボン酸とエステル化することもできる。これらの潤滑剤は、有効な内部潤滑剤である。適切な潤滑剤には、Abrilube及びAbriflo(Abril Industrial Waxes社製)、Interlite(Akros Chemical社製)、BAEROLUB(登録商標)(Baerlocher GmbH製)、Naftolub(Chemson Polymer―Additive Ges.mbH製)、Loxiol(Cognis Deutchland GmbH製)、Ligalub(Peter Greven Fettchemie社製)、Atmer(Uniqema社製)及びMarklube(Witco Vinyl Additives GmbH製)という商品名で販売されているものが含まれる。
【0117】
他の適切な潤滑剤には、例えば脂肪酸グリセリドのエステルのような短鎖アルコールの脂肪酸エステルが含まれる。適切な例としては、液体のモノステアリン酸グリセロールと固体のモノステアリン酸グリセロール、及び12―ヒドロキシステアリン酸(水素化ひまし油)のトリグリセリドエステルがある。その他の適切な例としては、トリメチロールプロパンとペンタエリスリトールのステアリン酸エステル、及びステアリン酸N-ブチルとステアリン酸イソブチルがある。これらは内部潤滑剤として作用することが知られている。適切な潤滑剤には、Interlite(Akros Chemical製)、BAEROLUB(Baerlocher GmbH製)、Naftolub(Chemson Polymer―Additive Ges.mbH製)、Loxiol(Cognis Deutchland GmbH製)、Lubriol(Comiel(Morton International Group)製)、Syncrolube(Croda Oleochemicals製)、Petrac Waxes(Ferro Corporation製)、Tegomer 9xx(Th. Goldschmidt AG製)、Glycolub、Glycostat、Polyaldo(Lonza Benelux B.V.製)、Radia、Radiasurf(Fina Chemicals N.V.製)、Ligalub(Peter Greven Fettchemie社製)、Realub(Reagens Societa per Azioni Industria製)、Waxso(SO.G.J.S. Industria Chimica S.p.a.製)、Atmer、Estol(Uniqema社製)及びMarklube(Witco Vinyl Additives GmbH製)という商品名で販売されているものが含まれる。
【0118】
ステアリン酸などの脂肪酸も、本発明の樹脂において適切な潤滑剤として作用することができる。これらは良好な放出効果を有することが知られている。適切な潤滑剤には、Interlite、BAEROLUB(Baerlocher GmbHが製造)、Naftozin(SO.G.J.S.Industria Chimica S.p.a.製)、Loxiol(Cognis Deutchland GmbH製)、Lubriol(Comiel(Morton International Group)製)、Crodacid(Croda Oleochemicals社製)、Stavinor(Ceca社製)、Petrac waxes(Ferro Carporation製)、Radiacid(Fina Chemicals N.V.製)、Ligalub(Peter Greven Fettchemie社製) 、Waxso(Chemson Polymer―Additive Ges.mbH製)、及びPRIFRAC(登録商標)、PRISTERENE(登録商標)(Uniqema社製)の商品名で販売されているものが含まれる。
【0119】
本発明の樹脂に使用するのに適した潤滑剤のさらに別の例として、脂肪酸アミドが挙げられる。例としては、オレイン酸アミドやエルカ酸アミド、一般にアミドワックスとして知られるビス(ステアリオール)エチレンジアミンなどがある。これらの潤滑剤は別個の滑り効果を示す。適切な潤滑剤としては、商品名が、Abrilube、Abriflo(Abril Industrial Waxes社製)、Armoslip(Akzo Nobel Chemicals社製)、LICOWAX(登録商標)(Clariant GmbH製)、Loxamid(Cognis Deutchland GmbH製)、Lubriol(Comiel(Morton International Group社製))、Crodamid(Croda Oleochemicals社製)、Stavinor(Ceca社製)、Acrawax、Glycolub(Lonza Benelux B.V.製)、Ligalub(Peter Greven Fettchemie社製)、Realub(Reagens Societa per Azioni Industria製)、Waxso(SO.G.J.S.Industria Chimica S.p.a.に製)、Unislip、Uniwax(Uniqema社製)、Marklube(Witco Vinyl Additives GmbH製)などがある。
【0120】
金属石鹸、特にアルカリ土類金属の石鹸は、本発明の樹脂の潤滑剤としての使用にも適している。これらの潤滑剤は、プラスチックを安定させ、離型剤としても作用することが知られている。適切な潤滑剤には、Haro Chem(Chemson Polymer―Additive Ges.mbH製)、BAEROLUB(Baerlocher GmbH製) 、Lstab(Baerlocher GmbH製)、Licowax(Clariant GmbH製)、Loxiol(Cognis Deutchland GmbH)、Lubriol(Comiel(Morton International Group)製)、stavinor (Ceca社製) 、Glycolub、Glycosperse、LONZEST(登録商標)、Pegosperse(Lonza Benelux B.V.製)、Radiastar(Fina Chemicals N.V.製)、Ligalub(Peter Greven Fettchemie)、Realub(Reagens Societa per Azioni Industria製)及びWaxso(SO.G.J.S.Industria Chimica S.p.a.製)の商品名で販売されているものが含まれる。
【0121】
潤滑剤の重要なグループとしてモンタンワックスが挙げられる。粗モンタンワックスは、全部ではないが一部の褐炭の副産物である。モンタンワックスの化学は脂肪酸の化学に匹敵する。長鎖アルコールのエステル、単官能及び多官能の短鎖アルコールのエステル、及びオリゴマー(複合体)エステルはモンタンワックス酸から合成される。さらに、けん化製品やいくつかの金属石鹸も潤滑剤としての用途を見出されている。モンタンワックスは離型剤として作用し、粘度を下げることが知られている。適切な潤滑剤としては、Interlite(Akros Chemical社製)、Luwax(BASF AG製)、Licowax(Clariant GmbH製)、Stavinor(Ceca社製)という商品名で販売されているものがある。
【0122】
本発明の樹脂に使用するのに適した潤滑剤の例として、極性PEワックス及び極性PPワックスが挙げられる。極性PEワックスは、通常、空気中での酸化によって炭化水素に酸素を含む極性基を導入することによって製造される。極性PPワックスは、通常、無水マレイン酸とのグラフト化によって製造される。適切な潤滑剤には、Interlite(Akros Chemical社製)、BAEROLUB(Baerlocher GmbH製)、Luwax(BASF AG製)、Naftolub(Chemson Polymer―Additive Ges.mbH製)、Licowax(Clariant GmbH製)、Loxiol(Cognis Deutchland GmbH製)、Vestowax(Creanova社製)、Epolene(Eastman Chemicals International AG製)、Petrac waxes(Ferro Carporation製)、A-C Polyethylene、ACLYN(登録商標) Ionomers、ACUMIST(登録商標)(Honeywell社製)、LE―Wachs(Leuna Polymer GmbH製)、Marklube(Witco Vinyl Additives GmbH製)の商品名で販売されているものが含まれる。
【0123】
本発明の樹脂に使用される適切な潤滑剤のさらに別の例として、フルオロポリマー、すなわち一般構造―(F2C―CF2)n―を有するポリテトラフルオロエチレン又はオリゴマーが挙げられる。フルオロポリマーにより摩擦特性が改善される。適切な潤滑剤としては、Dyneon PTFE Mikropulver(Dyneon GmbH製)の商品名で販売されているものがある。
【0124】
さらに他の適切な潤滑剤の例としては、シリコンベースの潤滑剤、すなわちポリシロキサンがある。これらの潤滑剤は、一般構造(―R2Si―O―SiR2)n―を持つ分子に基づいている。ここで、Rは有機基、一般的にはメチル又はフェニル又はそれらの混合物を示し、nは繰り返し単位の数を表す。シリコンベースの潤滑剤、特にポリジメチルシロキサン(PDMS)は、型充填、表面外観、型抜き、表面潤滑性、耐摩耗性を改善することが知られている。適切な潤滑剤には、TEGOPREN(Th.Goldsmith AG製)
及びGENIOPLAST(Wacker Chemical Corporation製)の商品名で販売されているものがある。
【0125】
本発明の樹脂での使用に適した市販の潤滑剤の具体例としては、CRODAMIDE(登録商標)ER、CRODAMIDE VRX、CRODAMIDE OR、CRODAMIDE ORX、CRODAMIDE 212、CRODAMIDE EBS、及びCRODAMIDE EBSV(Croda社製)、IncroMold K、IncroMold T(Croda社製)及びIncroMax PET 100(Croda社製) 、GENIOPLAST(登録商標) PELLET P PLUS、GENIOPLAST PELLET S、GENIOPLAST FLUID 110及びGENIOPLAST PELLET 345 (Wacker Chemical Corporation製) 、KEMAMIDE(登録商標)E―180(ステアリルエルクアミド)、KEMAMIDE P―181(オレイルパルミトアミド)、KEMAMIDE W―20(PMC Biogenix Inc製)が挙げられる。
【0126】
いくつかの実施態様では、ポリエステル樹脂中の潤滑剤の総量は、樹脂の全質量に対して0.1w/w%以上5w/w%以下である。いくつかの実施態様では、潤滑剤の総量は0.2w/w%以上5w/w%以下であり、例えば0.5w/w%以上4w/w%以下より好ましい1w/w%以上3.5w/w%以下、樹脂の全質量に対してさらに好ましくは2w/w%以上3w/w%以下である。
【0127】
樹脂は、充填剤に加えて、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤も、核形成剤、加水分解防止剤、離型剤、UV安定剤、難燃剤、鎖延長剤、加工安定剤、酸化防止剤及び着色剤又は顔料などの他の添加剤を含むことができる。
【0128】
また、本発明の発明者は、反応性耐衝撃性改良剤を使用せずに、非反応性耐衝撃性改良剤を使用すると、場合によっては有益な効果が得られることを驚くほど見出した。
【0129】
したがって、別の実施態様では、本発明は、
ポリエステル材料から製造され、少なくとも1つのポリエステル及び少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を加工して製造された玩具組立要素であって、
前記ポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリエステル(PETポリエステル)、又は、
PETポリエステルのテレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部又は一部が、アジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、フタル酸、4,4’―ビフェニルジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される1つの二酸モノマーに、
及び/又は
PETポリエステルのエチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部又は一部が、イソソルビド、1,4―シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4―テトラメチル―1,3―シクロブタンジオール、ジエチレングリコール、1,2―プロパンジオール、ネオペンチレングリコール、1,3―プロパンジオール、1,4―ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される1つのジオールモノマーに、
置換されて変性した、変性PETポリエステルであり、
ただし、前記テレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部と前記エチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部を同時に置換することはできず、
前記樹脂は少しも反応性耐衝撃性改良剤を含まない、玩具組立要素である。
【0130】
本発明の発明者は、驚くべきことに、反応性耐衝撃性改良剤及び非反応性耐衝撃性改良剤を組み合わせて使用する場合と比較して、非反応性耐衝撃性改良剤のみを使用した場合に、より優れた流動特性が得られることを発見した。また、反応性耐衝撃性改良剤を使用して反応性の複合化プロセスを実行する代わりに、非反応性耐衝撃性改良剤の複合化を制御することがより容易であることも分かっている。
【0131】
また、本発明は、
a)少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つの反応性耐衝撃性改良剤、及び少なくとも1つの非反応性耐衝撃性改良剤を含む樹脂を供給する、供給工程であって、
前記ポリエステルは、PETポリエステル、又は、
PETポリエステルのテレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部又は一部が、アジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、フタル酸、4,4’―ビフェニルジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される1つの二酸モノマーに、
及び/又は
PETポリエステルのエチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部又は一部が、イソソルビド、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4―テトラメチル―1,3―シクロブタンジオール、ジエチレングリコール、1,2―プロパンジオール、ネオペンチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4―ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される1つのジオールモノマーに、
置換されて変性した、変性ポリエステルであり、
ただし、前記テレフタル酸基(terephthalic acid groups)の全部と前記エチレングリコール基(ethylene glycol groups)の全部を同時に置換することはできない、供給工程と、
b)前記樹脂を加工する、加工工程と
を含む玩具組立要素の製造方法である。
【0132】
この方法で供給され、加工される適切な樹脂には、上記のものが含まれる。PETポリエステル、変性PETポリエステル、反応性耐衝撃性改良剤及び非反応性耐衝撃性改良剤の適切な例には、上記のものが含まれる。
【0133】
耐衝撃性改良剤の総量は、通常、樹脂の全質量に対して最大25w/w%である。いくつかの実施態様では、耐衝撃性改良剤の総量は、樹脂の全質量に対して2w/w%以上5w/w%以下又は5w/w%以上8w/w%以下又は8w/w%以上12w/w%以下など、2w/w%以上15w/w%以下である。いくつかの実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤の量は、樹脂の全質量に対して0.25w/w%以上10w/w%以下の範囲である。他の実施態様では、非反応性耐衝撃性改良剤の総量は、樹脂の全質量に対して0.25w/w%以上15w/w%以下の範囲である。
【0134】
いくつかの実施態様では、玩具組立要素は射出成形によって製造される。
【0135】
いくつかの実施態様では、射出成形機への供給時に耐衝撃性改良剤はポリエステルと混合される。そのような実施態様では、樹脂中で耐衝撃性改良剤が適切に分散されるように、耐衝撃性改良剤の総量は、樹脂の全質量に対して最大でも3w/w%であることが望ましい。
【0136】
好ましい実施態様では、少なくとも反応性耐衝撃性改良剤は射出成形機への供給時にポリエステルと混合される。そのような実施態様では、樹脂中で反応性耐衝撃性改良剤が適切に分散されるように、反応性耐衝撃性改良剤の量は、樹脂の全質量に対して最大で3w/w%であることが望ましい。他の実施態様では、反応性耐衝撃性改良剤の量は、樹脂の全質量に対して最大で9w/w%、例えば最大で6w/w%である。
【0137】
他の実施態様では、射出成形機に混合物を供給する前に、耐衝撃性改良剤はポリエステルと混合される。混合は、ドライ混合又は配合によって行うことができる。
【0138】
いくつかの実施態様では、射出成形機への供給前に耐衝撃性改良剤とポリエステルはドライブレンドされる。そのような実施態様では、樹脂中で耐衝撃性改良剤が適切に分散されるように、耐衝撃性改良剤の総量は、樹脂の全質量に対して最大でも5w/w%であることが望ましい。
【0139】
他の実施態様では、耐衝撃性改良剤とポリエステルは、射出成形機に供給する前に配合することによって混合される。このような場合、樹脂は溶融状態にされた後、ポリエステル中に耐衝撃性改良剤が十分に分散するように十分に混合され、その後、混合物は冷却され、ペレットに変化し、ペレットは射出成形機に供給される。
【0140】
耐衝撃性改良剤とポリエステルが配合により混合される実施態様では、耐衝撃性改良剤の総量は、通常、樹脂の全質量に対して最大25w/w%である。いくつかの実施態様では、耐衝撃性改良剤の総量は、樹脂の全質量に対して2w/w%以上5w/w%以下又は5w/w%以上8w/w%以下又は8w/w%以上12w/w%以下など、2w/w%以上15w/w%以下である。
【0141】
いくつかの実施態様では、十分な分散を確保するために耐衝撃性改良剤とポリエステルを十分に混合してから、射出成形機に直接供給する。
【0142】
他の実施態様では、ポリエステルと耐衝撃性改良剤をマスターバッチに混合し、射出成形機の供給時に残りの樹脂と混合することができる。
【0143】
充填剤、核形成剤、加水分解防止剤、離型剤、潤滑剤、UV安定剤、難燃剤、鎖延長剤、加工安定剤、酸化防止剤及び着色剤又は顔料などの添加剤は、射出成形機への供給前又は供給中に、耐衝撃性改良剤及びポリエステルと添加及び混合することができる。
【0144】
いくつかの実施態様において、玩具組立要素は、付加製造によって製造される。付加製造技術の適切な例として、液体ベースの付加製造、トナーベースの付加製造、粉末ベースの付加製造又は粒状ベースの付加製造のような光重合付加製造又は熱可塑性付加製造によって玩具組立要素が構築されるものが挙げられる。
【実施例】
【0145】
以下の実施例では、射出成形によってどのようにして玩具組立ブロック(おもちゃの組立用ブロック)を製造するかについて説明する。その後、製造したブロックについて「シャルピー衝撃試験」を実施した。
【0146】
<シャルピー衝撃試験(Charpy v―notch test)>
寸法が6.0×4.0×50.0mm3(B×W×H)、及び試験対象の関連材料の成形プラスチック棒を、ノッチ先端直径0.5mmのノッチカッター(ZNO、Zwick、ドイツ)を用いてISO 179―1/1 eAに従って切断した。ノッチ付き試験片をVノッチと振り子が反対側となるように配置し、ISO 179―1:2010に記載されている原理に従って振り子衝撃試験機(HOT、Zwick、ドイツ)で試験した。
【0147】
(実施例1:PARALOID(登録商標)EXL-3691JとELVALOY(登録商標)PTWによるPETの改良)
0.80 dl/gの固有粘度を有する使用済みでボトルグレードのPETを150℃で50ppm以上100ppm以下の含水量まで乾燥した。乾燥したPET材料を50℃以下に放冷した後、PETに耐衝撃性改良剤PARALOID EXL―3691 J(Dow Chemical Companyの非反応性耐衝撃性改良剤)及びELVALOYTM PTW(Dow/Dupont Chemical Company製のエチレン、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸グリシジル(エポキシド官能性)の反応性ランダム三元重合体)のドライブレンドを行った。各耐衝撃性改良剤の量を表1に示す。二軸スクリュー押出しによりペレットとした後に、射出成形により引張棒と衝撃棒とすることで、ブレンドを行った。得られた衝撃棒を、上記のようにシャルピー衝撃試験で試験した。結果を表1に示す。
【0148】
【0149】
射出成形パラメータは以下の通りである。
溶融温度:295℃
ホットランナー温度:300℃
金型温度:20℃
【0150】
押出工程パラメータは以下の通りである。
バレル温度:290℃
溶融温度:295℃以上300℃以下
【0151】
試験No.1―3、1―8と1―5を比較すると、4w/w%のELVALOY PTWを耐衝撃性改良剤とする樹脂で作られた成形プラスチック棒のシャルピー衝撃試験の値は15kJ/m2であり、5w/w%のPARALOID EXL―3691 Jを耐衝撃性改良剤とする樹脂のシャルピー衝撃試験の値は8kJ/m2であることがわかる。非常に驚くべきことに、両方の耐衝撃性改良剤を同じ量、すなわち4w/w%のELVALOY PTWと5w/w%のPARALOID EXL―3691 Jを含む樹脂で作られた成形プラスチック棒のシャルピー衝撃試験の値は65kJ/m2であるという結果が示されている。つまり、反応性耐衝撃性改良剤と非反応性耐衝撃性改良剤を組み合わせると相乗効果が得られるという結果が示されている。
【0152】
試験No.1―2、1―9と1―6を比較しても同様の相乗効果が見られる。
【0153】
まとめると、反応性耐衝撃性改良剤(ELVALOY PTW)と非反応性耐衝撃性改良剤(PARALOID EXL―3691 J)を組み合わせると、結果として、シャルピー衝撃試験の値に相乗効果が得られることが明確に示されている。
【0154】
(実施例2:PARALOID EXL―3330とELVALOY PTWによるPETGとPETTの改良)
異なる種類の耐衝撃性改良剤を用いた配合試験で、2種類のコポリエステルを試験した。コポリエステルのある種類は、SK Chemicals社のGreen KN 100であり、ポリ(エチレングリコール―co―1,4―シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)(PETG)である。別の種類のコポリエステルとしては、Eastman社のEastman(登録商標)GMX 201 Naturalであり、ポリ(エチレングリコール―co―2,2,4,4―テトラメチル―1,3―シクロブタンジオールテレフタレート)(PETT)である。PETGとPETTのサンプルを70℃で乾燥し、含水率を50ppm以上100ppm以下にした。乾燥した材料を50℃以下に放冷した後、材料サンプルを表2の通りに、耐衝撃性改良剤であるPARALOID EXL―3330(Dow Chemical Companyの非反応性耐衝撃性改良剤)及びELVALOYTM PTW(これは、Dow/Dupont Chemical Companyのエチレン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル(エポキシド官能基)の反応性ランダムターポリマーである。)をドライブレンドした。二軸スクリュー押出しによりペレットとした後に、射出成形により引張棒と衝撃棒とすることで、ブレンドを行った。得られた衝撃棒を、前述のようにシャルピー衝撃試験で試験した。結果を表2に示す。
【0155】
【0156】
射出成形パラメータは以下の通りであった。
溶融温度:290℃
ホットランナー温度:295℃
金型温度:30℃
【0157】
押出処理パラメータは以下の通りであった。
バレル温度:290℃
溶融温度:295℃以上300℃以下
【0158】
試験No.2―1、2―3、2―4、2―5を比較すると、PETGを含む樹脂で作られた成形プラスチックロッドで、耐衝撃性改良剤が加えられてない場合、シャルピー衝撃試験の結果の値は9.4kJ/m2であることがわかる。2.5w/w%のELVALOYTM PTWを耐衝撃性改良剤として加える場合、PETGを含む樹脂のシャルピー衝撃試験の値は11.0kJ/m2であり、5w/w%のPARALOID EXL―3330を耐衝撃性改良剤として加える場合、PETGを含む樹脂のシャルピー衝撃試験の値は12.9kJ/m2である。非常に驚くべきことに、2.5w/w%のELVALOY PTWと5w/w%のPARALOID EXL―3330の両方を含むPETGを含む樹脂で作られた成形プラスチックロッドが、シャルピー衝撃試験の値が21.6kJ/m2であるという結果が示されている。つまり、反応性耐衝撃性改良剤と非反応性耐衝撃性改良剤を組み合わせると、相乗効果が得られるという結果が示されている。
【0159】
試験No.2―2、2―6、2―7、2―8を比較すると、PETTを含む樹脂で作られた成形プラスチックロッドで、耐衝撃性改良剤が含まれない場合、シャルピー衝撃試験の値は4.5kJ/m2であることがわかる。耐衝撃性改良剤として2.5w/w%のELVALOY PTWを添加する場合、PETTを含む樹脂のシャルピー衝撃試験の値は7.5kJ/m2であり、耐衝撃性改良剤として5w/w%のPARALOID EXL-3330を添加する場合、PETGを含む樹脂のシャルピー衝撃試験の値は7.6kJ/m2である。非常に驚くべきことに、2.5w/w%のELVALOY PTWと5w/w%のPARALOID EXL―3330の両方を含む、PETGを含む樹脂で作られた成形プラスチックロッドは、シャルピー衝撃試験の値が106.4kJ/m2であるという結果が示されている。つまり、反応性耐衝撃性改良剤と非反応性耐衝撃性改良剤を組み合わせると、相乗効果が得られるという結果が示されている。
【0160】
まとめると、PETGを含む樹脂又はPETTを含む樹脂と、反応性耐衝撃性改良剤(ELVALOY PTW)と非反応性耐衝撃性改良剤(PARALOID EXL―3330)とを組み合わせると、シャルピー衝撃試験の値に著しい相乗効果が得られるという結果が明確に示されている。
【国際調査報告】