(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-14
(54)【発明の名称】膜改質器を用いた水素製造
(51)【国際特許分類】
C01B 3/38 20060101AFI20230707BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20230707BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20230707BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20230707BHJP
【FI】
C01B3/38
C01B3/56 Z
C01B3/00 Z
C01B32/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578746
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 US2021036850
(87)【国際公開番号】W WO2021257381
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハラレ、アデシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャマル、アキル
(72)【発明者】
【氏名】パリエーリ、スティーヴン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ファン フェーン、ヘンク
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアーニ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】カチカネニ、サイ ピー.
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
【Fターム(参考)】
4G140AB01
4G140EA03
4G140EA05
4G140EA06
4G140EB01
4G140EB24
4G140EB35
4G140EB42
4G140FA02
4G140FB02
4G140FB04
4G140FB05
4G140FC01
4G140FC02
4G140FC09
4G140FE01
4G146JA02
4G146JB10
4G146JC10
(57)【要約】
炭化水素を予備改質器で水蒸気及び予備改質触媒を介してメタンに変換し、メタンを膜改質器で改質触媒を介して水蒸気改質により水素及び二酸化炭素に変換し、膜改質器で管状膜を介して水素を拡散することを含む、水素を製造するシステム及び方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備改質触媒を有する予備改質器に炭化水素及び水蒸気を供給するステップと、
メタンリッチ混合物である予備改質された中間体を得るために、前記予備改質器内の前記予備改質触媒を介して炭化水素をメタンに変換するステップと、
前記予備改質された中間体を膜改質器に供給するステップであって、前記膜改質器は、容器、前記容器内に配置された改質触媒、及び前記容器内に配置された管状膜を備える、ステップと、
前記管状膜の外部の前記容器内の領域で、前記膜改質器内の前記改質触媒を介して水蒸気改質によって前記予備改質された中間体中のメタンを、水素と二酸化炭素に変換するステップであって、前記領域は、前記管状膜の透過残物側である、ステップと、
前記水素を前記領域から前記管状膜を通して前記管状膜のボアに拡散させるステップであって、前記管状膜は水素選択性であり、前記ボアは前記管状膜の透過側である、ステップと、を備える、
水素を製造する方法。
【請求項2】
水素の製造は、毎時20標準立方メートル(Nm3/hr)から10,000Nm3/hrの範囲で水素を製造するステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メタンに加えて、前記膜改質器内の前記予備改質された中間体中の炭化水素を水素と二酸化炭素に変換するステップであって、前記水蒸気改質は、前記容器内では600℃未満で起こり、前記領域は、前記水蒸気改質のための反応空間を備え、前記管状膜を通して前記水素を拡散させるステップは、前記メタンを前記水素に変換するステップと同時に行われる、ステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ボアにスイープガスを供給するステップと、
前記スイープガスを用いて前記ボアから前記水素を移動させるステップと、
前記スイープガスを用いて前記ボアから前記水素を移動させることにより、前記管状膜を通して前記領域から前記ボアへの水素透過のための推進力を増加させるステップと、
前記ボアから水素流を放出するステップと、を備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水素流中の水蒸気を凝縮し、前記水素流から凝縮した前記水蒸気を除去するステップであって、前記スイープガスは水蒸気を含み、前記ボアから放出される前記水素流は乾燥ベースで少なくとも90mol%の水素を含む、ステップを備える、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも99.9mol%の水素を含む水素生成物を得るために、前記水素流を精製するステップと、
前記水素生成物を少なくとも350バールの圧力まで圧縮するステップと、を備える、 請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記精製するステップは、前記水素流を吸着剤を有する容器に通すステップと、前記吸着剤を介して前記水素流から成分を除去するステップと、を備える、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記精製するステップ及び前記圧縮するステップは、電気化学圧縮機を介して実行される、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記領域から二酸化炭素流を放出するステップであって、前記二酸化炭素流は、少なくとも90モルパーセント(mol%)の二酸化炭素を含む、ステップと、
前記二酸化炭素流の中の水を凝縮するステップと、
凝縮した前記水を前記二酸化炭素流から除去するステップと、
少なくとも99mol%の二酸化炭素を含む液体二酸化炭素生成物を得るために、前記二酸化炭素流を極低温精製するステップと、を備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
電気ヒータを介して前記膜改質器に熱を供給するステップであって、前記膜改質器の作動温度は650℃未満であり、前記予備改質器に供給される前記炭化水素は、ナフサ、ケロシン、ガソリン、ディーゼル、液化石油ガス(LPG)、天然ガス又は炭化水素(C1からC5)の混合物、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む、ステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記炭化水素を前記予備改質器に供給するステップの前に、前記炭化水素から硫黄化合物を除去するステップであって、前記予備改質器に供給される前記炭化水素は、硫黄(S)を含む硫黄化合物を0.1百万分率(ppm)未満含む、ステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記予備改質器は、前記容器の入口部分に前記予備改質触媒を備え、前記予備改質器と膜改質器が一体化されたユニットである、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記膜改質器の出口部分に配置された乾式改質触媒を介して前記メタンを水素に変換するステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
炭化水素を受け取り、予備改質触媒を介して前記炭化水素をメタンに変換するための予備改質器と、
前記予備改質器から前記メタンを受け取るための膜改質器であって、
水蒸気改質によって前記メタンを水素と二酸化炭素とに変換するための容器内の改質触媒と、
前記水素を管状膜を通して前記管状膜のボアに拡散させる前記容器内の前記管状膜であって、前記管状膜は水素選択性であり、前記ボアは前記管状膜の透過側であり、前記改質触媒は、前記管状膜の外部に配置される、前記管状膜と、
前記水蒸気改質のための前記管状膜の外部にある領域を備える前記容器であって、前記領域は、前記管状膜の透過残物側である、前記容器と、を備える、前記膜改質器と、を備える、
水素製造システム。
【請求項15】
前記膜改質器は、前記予備改質器からメタンリッチ混合物中の前記メタンを受け取り、前記管状膜は、パラジウムを含む、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記予備改質器に水蒸気を供給する導管と、前記水蒸気改質のために前記膜改質器に熱を供給する電気ヒータと、を備え、前記容器は円筒形容器を含む、
請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記管状膜は、前記容器と長手方向軸を共有する、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記管状膜は、前記容器内に同心円状に配置される、
請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記膜改質器は、前記容器の出口部分に乾式改質触媒を備える、
請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
前記予備改質器は、前記容器の入口部分に前記予備改質触媒を備え、前記予備改質器と前記膜改質器とが一体化されている、
請求項14に記載のシステム。
【請求項21】
前記炭化水素は、ナフサ、ケロシン、ガソリン、ディーゼル、液化石油ガス(LPG)又はそれらの任意の組み合わせを備え、前記改質触媒は前記管状膜と接触していない、
請求項14に記載のシステム。
【請求項22】
窒素又は水蒸気をスイープガスとして前記ボアに供給するための導管であって、前記システムは、毎時20標準立方メートル(Nm3/hr)から10,000Nm3/hrの範囲の水素生成能力を備える、前記導管を備える、
請求項14に記載のシステム。
【請求項23】
前記ボア内のスイープガスの流れを促進し前記ボアから水素を移動させるために、前記ボア内に同心円状に配置された内管を備える、
請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記ボアからの透過物を処理して、少なくとも99.9mol%の水素である水素生成物を得る水素精製システムであって、凝縮器熱交換器、吸着剤を有する容器又は電気化学圧縮機、あるいはそれらの任意の組合せを含む、前記水素精製システムを備える、
請求項14に記載のシステム。
【請求項25】
前記水素生成物の圧力を少なくとも350バールまで上昇させるための圧縮機であって、前記電気化学圧縮機、機械圧縮機、イオン圧縮機又は金属水素化物圧縮機、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む、前記圧縮機を備える、
請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記領域から透過残物を受け取る精製システムであって、前記透過残物は、少なくとも90mol%の二酸化炭素を含み、前記精製システムは、前記透過残物を処理し、少なくとも99.9mol%の二酸化炭素を含む二酸化炭素生成物として液体塔底流を送り出す極低温蒸留塔を備える、前記精製システムを備える、
請求項14に記載のシステム。
【請求項27】
水素製造システムであって、
炭化水素を受け取り、予備改質触媒を介して前記炭化水素をメタンに変換するための予備改質器と、
前記予備改質器から前記メタンを受け取るための膜改質器であって、前記膜改質器は、容器、前記メタンを水素と二酸化炭素とに変換する前記容器内の改質触媒、及び前記容器内の管状膜を備え、前記管状膜を通して前記管状膜のボアに前記水素を拡散させ、前記管状膜は水素選択性であり、前記ボアは前記管状膜の透過側である、前記膜改質器と、
前記ボアからの透過物を処理して、少なくとも99.9mol%の水素である水素生成物を得る水素精製システムであって、凝縮器熱交換器、吸着剤を有する容器又は電気化学圧縮機、あるいはそれらの任意の組合せを含む、前記水素精製システムと、を備える、
水素製造システム。
【請求項28】
前記膜改質器は、前記水蒸気改質のための前記管状膜の外部の前記容器内の反応空間である領域を備え、前記領域は前記管状膜の透過残物側であり、前記改質触媒は前記管状膜の外部に配置される、
請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記領域から透過残物を受け取る二酸化炭素精製システムであって、前記透過残物は少なくとも90mol%の二酸化炭素を含み、前記二酸化炭素精製システムは、前記透過残物を処理し、少なくとも99.9mol%の二酸化炭素を含む二酸化炭素生成物として液体塔底流を送り出す極低温蒸留塔を含む、前記二酸化炭素精製システムを備える、
請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記予備改質器に水蒸気を供給する導管と、前記水蒸気改質のために前記膜改質器に熱を供給する電気ヒータとを備え、前記容器は円筒形容器を含み、前記管状膜は前記容器と長手方向軸を共有する、
請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
前記予備改質器は、前記容器の入口部分に前記予備改質触媒を備え、前記予備改質器と前記膜改質器とが一体化されている、
請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
前記水素生成物の圧力を少なくとも350バールまで上昇させるための圧縮機であって、前記電気化学圧縮機、機械圧縮機、多段圧縮機、イオン圧縮機又は金属水素化物圧縮機、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む、前記圧縮機を備える、
請求項27に記載のシステム。
【請求項33】
前記ボアから放出される前記透過物は、水蒸気と、乾量基準で少なくとも90モルパーセント(mol%)の水素とを含む、
請求項27に記載のシステム。
【請求項34】
前記水素精製システムは、凝縮して前記透過物から水を除去するために、前記凝縮器熱交換器を備える、
請求項27に記載のシステム。
【請求項35】
前記水素精製システムは、前記透過物から成分を除去して少なくとも99.9mol%の水素を含む前記水素生成物を得るための、吸着剤を有する前記容器を備える、
請求項27に記載のシステム。
【請求項36】
前記水素精製システムは、前記透過物の圧力を上昇させ、前記透過物から成分を除去して少なくとも99.9mol%の水素を含む前記水素生成物を得るための前記電気化学圧縮機を備える、
請求項27に記載のシステム。
【請求項37】
前記水素精製システムは、吸着剤を有する前記容器を備えない、
請求項36に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年6月18日に出願された米国特許出願第16/905,790号に基づく優先権を主張し、当該米国特許出願のすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、水素を製造するための炭化水素の改質に関する。
【背景技術】
【0003】
水素ガスは、地球上に自然に存在するものではない。そのため、水素ガスは化学的プロセスや熱的プロセスを用いて商業的に製造(生成)される。水素は化石燃料から製造することができる。水素は、石炭のガス化、バイオマスのガス化、水の電気分解、あるいは天然ガスや他の炭化水素類の改質又は部分酸化によって製造される。製造された水素は、燃料電池、アンモニア製造、芳香族化、水素化脱硫、炭化水素の水素化又は水素化分解などの化学プロセスの原料とすることができる。
【0004】
天然ガスの改質が、水素製造の最も一般的な供給源(prevalent source)である。水素を製造するための天然ガスの改質は、天然ガスの水蒸気改質を含むことができる。大量の水素(bulk hydrogen)は、通常、天然ガス(メタン)の水蒸気改質によって製造される。従来の水蒸気改質には、水蒸気とニッケル(Ni)触媒の存在下で天然ガスを(例えば、700℃から1100℃まで)加熱することが含まれる。この吸熱反応により、一酸化炭素(CO)と水素(H2)が生成される。一酸化炭素ガスは水-ガスシフト反応を受け、追加の水素を得ることができる。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様は、炭化水素と水蒸気とを予備改質触媒を有する予備改質器に供給するステップと、メタンリッチ混合物である予備改質中間体を得るために、予備改質器内で予備改質触媒を介して炭化水素をメタンに変換するステップと、を含む、水素の製造方法に関するものである。この方法は、予備改質中間体を、改質触媒及び管状膜を有する膜改質器容器に供給するステップと、予備改質中間体中のメタンを、管状膜の外部の容器内の領域で膜改質器内の改質触媒を介して水蒸気改質によって水素及び二酸化炭素に変換するステップと、を含む。この領域は、管状膜の透過残物(retentate、保持液)側である。この方法は、その領域から(水素選択性)管状膜を通して水素を管状膜のボア(bore)に拡散させるステップを含む。ボアは、管状膜の透過側である。
【0006】
別の態様は、炭化水素を受け取り、予備改質触媒を介して炭化水素をメタンに変換するための予備改質器を含む、水素製造システムである。そのシステムは、予備改質器からメタンを受け取るための膜改質器を含む。膜改質器は容器内に改質触媒を含み、水蒸気改質によってメタンを水素と二酸化炭素に変換する。膜改質器は、容器内に管状膜(水素選択性)を含み、管状膜を通して水素を管状膜のボアに拡散させる。ボアは、管状膜の透過側である。膜は、容器を含み、その容器は水蒸気改質のための管状膜の外部で、容器内に領域を有する。この領域は、管状膜の透過残物側である。改質触媒は、管状膜の外側に配置される。
【0007】
さらに別の態様は、炭化水素を受け取り、予備改質触媒を介して炭化水素をメタンに変換するための予備改質器を含む、水素製造のためのシステムに関する。このシステムは、予備改質器からメタンを受け取る膜改質器を含み、その膜改質器は、容器、メタンを水素と二酸化炭素に変換する容器内の改質触媒、及び容器内の管状膜(水素選択性)を含み、その管状膜を通して管状膜のボアに水素を拡散させる。ボアは、管状膜の透過側である。水素製造のためのシステムは、管状膜のボアからの透過物を処理して、少なくとも99.9モルパーセントの水素を含む水素生成物を得る水素精製システムを含む。水素精製システムは、凝縮器熱交換器、吸着剤を有する容器、又は電気化学圧縮機、あるいは、それらの任意の組み合わせを含む。
【0008】
1つ以上の実施の詳細が、添付の図面及び以下の明細書に記載される。他の特徴及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】触媒膜改質器を簡略化して示した斜視図である。
【0010】
【
図2】膜改質器システムのブロックフロー図である。
【0011】
【
図3】
図2の一体化された予備改質器/膜改質器の一実施の形態に係る側面斜視図である。
【0012】
【
図4】実施例1に係る膜改質器システムのASPEN(登録商標)モデルのシミュレーションの概略フロー図である。
【0013】
【0014】
【
図6】
図4に示す概略フロー図に対してASPENモデルを用いて生成された質量収支データ(mass balance data)及び流れ情報(stream information)の表である。
【
図7】
図4に示す概略フロー図に対してASPENモデルを用いて生成された質量収支データ及び流れ情報の表である。
【
図8】
図4に示す概略フロー図に対してASPENモデルを用いて生成された質量収支データ及び流れ情報の表である。
【
図9】
図4に示す概略フロー図に対してASPENモデルを用いて生成された質量収支データ及び流れ情報の表である。
【
図10】
図4に示す概略フロー図に対してASPENモデルを用いて生成された質量収支データ及び流れ情報の表である。
【0015】
【
図11A】実施例2に係る膜改質器システムのASPEN(登録商標)モデルシミュレーションの概略フロー図である。
【
図11B】実施例2に係る膜改質器システムのASPEN(登録商標)モデルシミュレーションの概略フロー図である。
【0016】
【
図12】
図11の概略フロー図についてASPENモデルを用いて生成された質量収支データ及び流れ情報の表である。
【
図13】
図11の概略フロー図についてASPENモデルを用いて生成された質量収支データ及び流れ情報の表である。
【
図14】
図11の概略フロー図についてASPENモデルを用いて生成された質量収支データ及び流れ情報の表である。
【0017】
【
図15】効率高位発熱量(HHV)、膜面積及びH2に対するスイープ比(sweep ratio)に対する水素回収率(HRF)の曲線のプロットである。
【0018】
【
図16】水素の製造方法を示すブロックフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示のいくつかの態様は、水素を製造するための水素選択性膜を有する触媒膜反応器を対象とする。膜は、水蒸気メタン改質のような平衡制限のある反応から、水素の収量(yield、収率)と回収量(recovery)の両方の増加を促進することができる。吸熱改質反応のための熱源は、電気ヒータであってよい。膜反応器は、従来の水蒸気メタン改質と比較して、より低い温度で作動する可能性がある。水素選択性膜の利用は、高純度の水素の製造、及び応用又は隔離のために濃縮された回収可能(capture-ready、取り込み可能)な二酸化炭素の製造をもたらす可能性がある。
【0020】
水素を製造するために広く行われている大規模な方法は、炉内の合金管内のニッケルベースの触媒を介して、高温(例えば、800℃から900℃)、高圧(例えば、15バールから50バール)での天然ガスを用いた水蒸気メタン改質(Steam Methane Reforming、SMR)である。この(吸熱性が高い)改質反応を推進するための熱の供給は問題があり、効率の低下につながる可能性がある。全体の熱効率を上げるために、水蒸気発生を炉と一体化させることができる。従来のSMRは通常、大規模な水素製造用に最適化されており、一般に小規模な水素製造用に効果的にスケールダウンすることはない。吸熱SMR反応の速度は、多くの場合、反応器への外部熱伝達によって制限されることが多い。このため、従来の工業用水蒸気メタン改質の触媒管は、通常、炭化水素燃料の燃焼によって燃焼する大きな箱型炉の中に設置されている。これらの炉は、(天然ガス等の)供給原料(feedstock)の少なくとも3分の1を消費し得るため、プロセスの効率が低下し、比較的大量の二酸化炭素(CO2)を排出することになる。さらに、大規模な工業用SMRプロセスの効率は、炉の廃熱を水蒸気に変換して、プラント(工場)や施設の他の場所で使用することに依存する。そのため、生成した廃熱を利用しない用途のためにスケールダウンすると、プロセスの効率が低下する。この場合、廃熱は放熱されるが、エネルギーを消費する積極的な冷却が行われることが多い。
【0021】
本開示のいくつかの態様は、CO2を含まない(又は実質的にCO2を含まない)水素を製造するための膜改質器システムを対象とする。システムは、毎時10標準立方メートル(Nm3/hr)から8,000Nm3/hrの範囲、又は200Nm3/hrから10,000Nm3/hrの範囲の水素製造速度といった、比較的低い能力を有することができる。このプロセスには、CO2の回収と液化も含まれる。改質のための供給原料は、特に液体炭化水素を含む多様な範囲の炭化水素供給原料であり得る。この膜改質プロセスには、高温の水素選択性膜(パラジウム又はパラジウム合金膜など)を利用した化石原料からのCO2を含まない水素の製造が含まれることがある。膜改質器システムは、単一の膜反応器に一体化された低温水蒸気改質触媒と乾式改質触媒との両方を含むことができる。このシステムは、天然ガス、メタン(CH4)、炭化水素混合物(C1~C5)、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas、LPG)、原油、原油カット(例えば、ナフサ、ケロシン)及び加工原油カット(例えば、ガソリン、ディーゼル)といった炭化水素供給原料からCO2を含まない水素を製造する一体化したプロセスであってもよい。実施(実施の形態)では、膜改質器システムは、メタノール、エタノール、ジメチルエーテルなどの、炭素を含む合成燃料から水素を生成することができる。
【0022】
膜式改質器を電気的に加熱してもよい。電気加熱システムは、エネルギー及び水蒸気の生成のための、燃料の改質及び燃焼を回避するためのエネルギーを供給することができる。実施では、再生可能な電力を電気ヒータに利用し、膜改質プロセスにエネルギーを供給することができる。
【0023】
膜改質器システムは、改質によって水素を生成し、同時に水素を(透過物として)膜分離し、分離された水素を(例えば、電気化学圧縮機又は従来の圧縮機を介して)吐出圧力(delivery pressures)のために圧縮することができる。膜改質器システムは、改質によってCO2を製造し、CO2を(膜透過残物として)その場で分離し、応用又は廃棄のために膜改質器の下流でCO2を液化することができる。
【0024】
従来の水素製造改質システムは、水蒸気改質器、水性ガスシフトコンバータ及び圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption、PSA)システムで構成される。この従来のプロセスは、例えば、約900℃の温度及び8バールから40バールの範囲の圧力で水素を送り出す(discharge、放出する)ことができる。炭化水素供給原料(通常は天然ガス)は、水蒸気改質器の水蒸気改質触媒床に導入される。改質触媒床(reformer bed)では、約1123ケルビン(K)から1223Kの範囲の温度で、ニッケルベースの触媒上で天然ガスの水蒸気改質が行われる。この水蒸気改質反応は、メタンを水蒸気(水H2O)と反応させる、CH4+H2O=CO+3H2を含む。水蒸気改質器で生成された合成ガス(H2とCO)は、水性ガスシフトコンバータに供給され、そこでCOは触媒上の水蒸気との反応によってCO2に変換される。この水性ガスシフト反応は、例えば、約523Kから650Kの範囲の温度で、CO+H2O=CO2+H2として表すことができる。この可逆シフト反応は穏やかな発熱性であり、一般に、より高い変換を達成するために段階間冷却(inter-stage cooling)を伴う複数の段階がある。改質反応とシフトガス反応を通して製造された水素は、PSAシステムにおいて精製される。従来の水蒸気改質では、CO2を含まない水素の製造におけるCO2の回収には、次の2つのソース、(1)(例えば、CO2濃度が約15から18mol%の)改質ガス、及び、(2)改質炉からの(例えば、CO2濃度が約6から10mol%の)排ガス、からのCO2の回収が含まれる。
【0025】
水性ガス反応は、より高温で反応速度(kinetic rates)が速く、穏やかに発熱する。したがって、従来のケースでは、少なくとも2つの断熱段階が含まれる場合がある。第1に、反応は高温シフト(HT-WGS)であり、高温の利点を利用して高速でシフトするが、平衡転化率(equilibrium conversion)は低くなる。第2に、HT-WGSからの生成ガスはより低温に冷却されるため、COの大部分を変換する際に平衡がより高くなるという利点が実現する。しかし、従来のプロセスの欠点は、多くの改質ガスがWGS反応器を通過するため、COの濃度が一般的に低いことである。
【0026】
対照的に、現在の膜反応器では、(a)炭化水素のCO及びH2への変換は、一般に改質反応で高くなり、また、(b)H2Oが変換に用いられ、ほとんどのH2が(熱力学的変換の制限なしに)除去される。WGS反応速度(kinetic)は高温下(250℃以上)で高く、COのWGS変換は通常、膜反応器内で従来よりも高い速度で発生する可能性がある。
【0027】
本プロセスの実施の形態は、水素選択性膜を介した水素分離を伴う改質を含み、主にCO2だけでなく水蒸気、未変換メタン、CO及び残りの水素も含む残留物を加圧下で残す。このように、このプロセスは、水蒸気改質による、及び高温水素膜を介した水素分離とCO2の回収とを伴う、水素生成である。
【0028】
図1は、水素選択性膜が改質触媒床と一体化された膜改質器の実施例を示す。水素選択性膜は、水素を生成している間、連続的に水素を除去することを促進する。水素の生成と分離を同時に行うことで、熱力学的平衡の制限をなくす又は軽減する。反応は、従来の水蒸気改質における温度(例えば、1123Kから1223K)と比較して、より低い温度(例えば、773Kから873K)で行うことができる。この膜改質器システムのこのプロセス強化は、反応、分離及び精製(例えば、初期精製)を単一のユニットに組み合わせることができる。改質で生成したCOは、膜改質器内でCO2に変換することができる。プロセス強化により、膜改質器で水性ガスシフト反応を実行することができる。H2Oが過剰な場合、全体の反応はCO2とH2(CH4+2H2O=CO2+4H2)に進み、さらに温度が低くなると、水性ガスシフト反応により膜改質器内で、CO+H2O=CO2+H2に変換される。
【0029】
実施では、膜改質器システムは、従来のSMRプロセスよりもコンパクトかつ効率的に構成することができる。膜改質器システムのもう1つの利点は、一般に透過残物中のCO2濃度が高い可能性があり、これにより、CO2の回収に関連するエネルギーとコストの増加が軽減される可能性がある。乾燥ベース(乾量基準)での透過残物中のCO2の濃度は、90モルパーセント以上と高い場合がある。
【0030】
図1は、容器102と、容器102内に配置された水素選択性管状膜104とを含む触媒膜改質器100(反応器)の簡略化された斜視図である。数値は「水素選択性」に関連付けることができる。水素に対する膜104の選択性は、通常、1000(無次元-同じパラメータの比率)よりも大きく、選択性は、膜104を通る窒素(N2)などの他のガスのフラックス(flux、流束)に対する水素フラックスの比率である。水素選択性管状膜104(及び後続の図に関して議論される類似の水素選択性管状膜)は、100ポンド/インチ(psi)のΔP H2分圧で、400℃で少なくとも250標準立方フィート毎時/平方フィート(SCFH/ft2)の水素フラックスを有する点で、水素選択性であり得る。水素対窒素の選択性は、300℃及び5バールの膜間圧力で少なくとも50の流速比とすることができる。
【0031】
容器102は、円筒形又は管状の容器であってよい。容器102は、(図示のように)水平方向又は垂直方向を有していてよい。
【0032】
図示のように、管状膜104は、長手方向軸又は中心軸を容器102と共有することができる。管状膜104は、図示のように、容器102内に同心円状に配置することができる。他の構成も適用可能である。膜改質器100は、容器102内に配置された複数の管状膜104を有することができる。例えば、複数の管状膜104は、容器102内に平行に(同じ長手方向軸を共有して)配置することができる。
【0033】
作動中、炭化水素106及び水蒸気108が容器102に供給される。炭化水素106は、容器102内で改質触媒(不図示)を介して水蒸気改質されて、容器102内で水素と二酸化炭素を生成する。実施によっては、水蒸気改質は、主に合成ガス(CO及びH2)を生成することができる。水蒸気の存在下での水性ガスシフト反応によって、COがCO2とH2に変換される。改質器100に供給される水又は水蒸気の理論量(stoichiometric amounts)が多いほど、全体的な反応は、条件によって生成されるCOを介在させて、CO2及びH2に直接進めることができる。
【0034】
特定の実施では、膜改質器中の触媒は、水蒸気改質触媒及び水性ガスシフト反応触媒を有する層状触媒を含む。この層状触媒と、(例えば、従来のSMRと比較して)より低い作動温度では、水性ガスシフトの平衡変換率(equilibrium conversion)がより高くなる(及び、穏やかな発熱反応である)、CH4+H2O=CO+3H2及びCO+H2O=CO2+H2から、全体的な反応は、CH4+2H2O=CO2+4H2になる。
【0035】
(任意の水性ガスシフト反応を含む)水蒸気改質反応は、管状膜104の外部の容器102内の領域110で起こる。この領域110は、反応空間として分類されてもよく、管状膜104の透過残物側である。この膜改質器100における「水蒸気改質反応」の説明は、特定の状況におけるCOのCO2への変換を含むと理解することができる。
【0036】
水蒸気改質反応が起こり、水素が形成されると、水素は、管状膜104の壁を通って管状膜104のボアに拡散111(透過)する。管状膜104の壁は、膜、すなわち膜材料(例えば、パラジウム又はパラジウム合金)である。ボアは、管状膜104の内部空間であり、管腔と呼ばれることがある。管状膜104のボアは、管状膜104の透過側である。
【0037】
この同一ユニット(改質器100)におけるプロセス強化は、触媒を介した反応(改質反応)による水素の生成、膜104を介した二酸化炭素からの水素の分離、及び膜104を介した分離による水素の精製(purification)を含む。
【0038】
管状膜104のボアから及び改質器100から、水素リッチ透過物112が送り出される。この透過物112は、例えば、少なくとも90モルパーセント(mol%)の水素、少なくとも99.99mol%、又は少なくとも99.999mol%であり得る。(以下に説明するように)スイープガス(掃引ガス)が用いられる場合、(膜104のボアから送り出される)これらの報告された透過物112のmol%は、スイープガスを含まない基準(スイープガスフリー(sweep-gas-free)基準)であってよい。一実施では、透過液112は、1バール(bar)から6バールの範囲、2バールから4バールの範囲又は2バールから3バールの範囲の圧力下で、500℃から600℃(例えば、約550℃)の範囲の温度、又は600℃未満若しくは550℃未満で送り出される。
【0039】
二酸化炭素(CO2)リッチ透過残物114は、改質器100から、管状膜104の周囲及び外部の容器102の領域110(反応空間)から送り出される。CO2リッチ透過残物114は、一般に、水素と一酸化炭素との組み合わせを10mol%未満含むことができる。CO2リッチ透過残物114は、一般に少なくとも90mol%のCO2であり、特定の場合では、透過残物114を、地質学的隔離又は石油増進回収(EOR)のためのさらなる圧縮、又はCO2を別のプロセスの供給原料として使用できるようにするために、さらなる精製の準備が整うようにすることができる。透過残物114中の水蒸気は、凝縮されて除去されてもよい。
【0040】
実施の形態では、スイープガス(例えば、水蒸気又は窒素)が管状膜104のボアに供給され、ボアを通して流れ、ボア及び改質器100から透過物(水素)を移動させる。この水素の移動は、管状膜104の外部の領域110(反応空間)から管状膜104の壁を通りボアまでの水素透過の促進力を維持又は増加させることができる。実施の形態によっては、スイープガスは、供給され、炭化水素106及び水蒸気108の供給の流入方向に対して向流方向に流れることができる。透過液112は、改質器100から透過残物114が送り出される端部とは反対側の端部(炭化水素供給端部)から送り出すことができる。
【0041】
スイープガスが用いられる場合、透過物112の水素純度は、場合によってはスイープガスを含まない基準で報告され得る。水蒸気がスイープガスとして利用される場合、透過物112の水素純度は乾燥ベースで報告され得る。水蒸気(水)は、膜改質器104の下流で透過物112から容易に取り除くことができる。例えば、
図2の下流精製システム214(脱水(dehydration)及び研磨(polishing))を参照されたい。システム114の脱水は、スイープ水蒸気を除去し、システム114の研磨は、膜改質器104内の膜を透過し得るH2以外の任意の成分を除去する。しかしながら、上記のように、膜は非常に水素選択的であり、したがって、透過物112では、H2(及び用いられる場合はボアへのスイープガス)以外の成分の有意な量は一般に予想されない。
【0042】
実施の形態によっては、N2がスイープガスとして利用される場合、透過物112の水素純度は、N2を含まない基準で報告され得る。特定の例では、アンモニア合成のためにさらに送られる透過物112(水素及び窒素)のためのスイープガスとして、N2を用いることができる。対照的に、膜改質器システム100のモビリティ用途では、スイープガスとしてのN2は、一般に、特定の場合には回避され得る。
【0043】
容器102内に配置された電気抵抗ヒータ(不図示)により、容器102内の改質反応のために熱を供給することができる。容器102内に配置された抵抗ヒータは、内部ヒータとして分類されてもよい。いくつかの実施では、抵抗ヒータは電気カートリッジヒータである。カートリッジヒータは、通常円筒形の発熱体である。カートリッジヒータ(発熱体)又は他の電気抵抗ヒータは、外側の金属エンクロージャ(例えば、ステンレス鋼)であるシース(sheath)を含んでもよい。抵抗ヒータ(発熱体)は、絶縁体と、金属である(ヒータとしての)ワイヤコイルとを含んでもよい。ヒータワイヤコイルは、ニッケルとクロムとの合金などの金属合金、又は他の金属合金であってよい。作動中、抵抗ヒータ内の抵抗ワイヤコイルに交流電流を流して、ワイヤコイルによる抵抗加熱を生成することができる。この熱エネルギーは、ワイヤから金属シースに伝達され、その後、伝導によって周囲領域に伝達される。電気抵抗ヒータは、800℃以上、又は少なくとも550℃、あるいは少なくとも600℃までの改質器100の作動温度を提供することができる。作動中、改質器100の作動温度は、450℃から650℃の範囲、又は700℃未満、600℃未満、あるいはは550℃未満であってよい。
【0044】
内部抵抗加熱器に加えて又はその代わりに、改質反応のために容器102の外部の熱源により熱を供給することができる。例えば、電気バンドヒータ又はストリップヒータなどの電気ヒータ(不図示)を容器102の外面に配置することができる。別の例では、容器102を炉内に配置し、外部熱源として炉から熱を受け取ることができる。特定の実施では、膜改質器への経路中の炭化水素及び水蒸気は、熱交換器又は電気ヒータを介して加熱することができる。
【0045】
上述したように、改質反応が起こり得る改質器100の例示的な作動温度は、600℃未満、又は550℃未満であってよい。容器102内の反応空間110内の作動圧力は、例えば、20バールから50バールの範囲、又は30バールから40バールの範囲、あるいは、少なくとも15バール、少なくとも25バール又は少なくとも35バールであってもよい。
【0046】
炭化水素106の水蒸気改質のための改質触媒(不図示)は、容器102内に配置される。改質触媒は、一般に、管状膜104と容器102の壁との間の環状容積(領域110)内に配置することができる。改質触媒は、容器102の壁の内面116上に配置することができる。改質触媒は、コーティングであっても、構造化された形態(例えば、発泡金属)であってもよい。特定の実施では、改質触媒は、管状膜104と接触していない。いくつかの実施では、改質触媒は、(用いられる場合には)内部抵抗ヒータ上に配置することができる。したがって、これらの実施では、内部抵抗ヒータ(例えば、カートリッジヒータ)は、改質触媒を(接触を介して)容易かつ直接的に加熱して、改質反応を促進及び進行させることができる。
【0047】
乾式改質触媒118は膜改質器100内で、膜改質器の出口部分で管状膜104の周りに配置されて、CO2リッチ環境での炭素形成及びコーキング(coking、コークス化)に抵抗することができる。乾式改質触媒は、コーキング及び焼結に対する耐性を与える触媒であってもよい。
【0048】
図2は、水素製造のための膜改質器システム200のブロックフロー図である。膜改質器システム200は、水素製造システムとして分類されてもよい。特定の実施の形態では、膜改質器システム200の水素製造能力は、20Nm3/hrから10,000Nm3/hrの範囲である。他の実施では、水素製造能力は、10,000Nm3/hrより大きい。
【0049】
以下で説明するように、(例えば、パラジウム合金ベースの)水素選択性膜は、500℃から600℃の範囲の作動温度などに対して、高活性水蒸気改質触媒と一体化される。いくつかの実施では、CO2を含まない(又は実質的にCO2を含まない)水素製造は、液体炭化水素供給原料(例えば630K、少なくとも630K、又は630K未満の最終沸点)を利用して実施される。以下で説明するように、改質前の液体炭化水素は、硫黄除去(及び他の不純物除去)のために処理することができる。
【0050】
管状膜(例えば、パラジウム合金膜)は、改質反応環境から製造された水素を除去して、単一ユニットで炭化水素変換を高めることができる。生成された水素は、同じ(単一の)ユニット内で水素の生成と同時に分離(反応空間から管状膜のボア内に除去)することができる。
【0051】
膜透過側で回収された高純度水素は、水素圧縮機(例えば、機械圧縮機、多段圧縮機、電気化学圧縮機、イオン圧縮機、金属水素化物圧縮機など)を介して、例えば、350バールから750バールの範囲の放出圧力までさらに圧縮することができる。この比較的高効率のプロセスは、水素燃料補給ステーション用のオンサイト水素生成などの分散型アプリケーションに適している可能性がある。
【0052】
実施では、透過残物は、(例えば、85mol%を超える、又は90mol%を超える)高濃度のCO2であり、残りがH2O、CO、CO2、H2及びCH4である。したがって、いくつかの実施では、CO2の回収は、CO2液化による他の成分(残余)の分離、その後の非CO2流の再利用を介して、間接的に行うことができる。分離され液化されたCO2は、隔離又はCO2変換用途のために輸送され得る。膜改質器に基づく現在の水素製造システムは、CO2フットプリントの低減に貢献できる効率的なCO2回収(間接的又は直接的として特徴付けられる)を提供する可能性がある。
【0053】
膜改質器システム200におけるユニットの作動は、液体炭化水素(例えば、重質ナフサ)を水素に変換するためのものであってよく、(1)炭化水素(燃料)中の硫黄を例えば、0.1百万分率(part per million、ppm)未満に低減するための水素化脱硫、(2)メタンリッチ改質物を製造するための脱硫炭化水素燃料の予備改質、(3)(比較的高純度の)水素及び濃縮されたCO2リッチ流れを製造するための、膜改質器内での、水素分離を伴う、メタンリッチ改質物の水蒸気改質、(4)CO2回収、(5)膜改質器から送り出される水素中の炭化水素やCOを変換・除去して高純度水素(例えば、99.999mol%水素)を製造する水素研磨、及び、(6)下流の需要又はユーザアプリケーションごとの水素圧縮、を含むことができる。
【0054】
膜改質器システム200は、膜改質器202を含む。膜改質器202の態様は、
図1の触媒膜改質器100の態様に類似し得る。膜改質器202(膜改質ユニット)は、水素を高圧側から低圧側へ選択的に透過させる高温の管状水素分離膜(例えば、パラジウム合金膜)を含む。膜改質器202は、300℃から700℃の間、より具体的には400℃から600℃の間で、8バールから50バールの間、より具体的には10バールから40バールの間の圧力で作動することができる。特定の作動(そしてそれは有益な作動又は最適化された作動であり得る)のために、膜改質器202は、上流の予備改質器204と同じ又は類似の条件(温度、圧力)で作動することができる。
【0055】
膜改質器202は、円筒形の容器でもよい容器(例えば、ステンレス鋼)を含む。容器は、米国機械技術者協会(American Society of Mechanical Engineers、ASME)のボイラ及び圧力容器コード(Boiler & Pressure Vessel Code、BPVC)又は欧州連合(EU)の圧力機器指令(Pressure Equipment Directive、PED)などの正式な規格又はコードによる圧力容器であってよい。
【0056】
上述のように、膜改質器202は、容器内に水素選択性管状膜を含む。膜改質器202は、容器内に複数の(水素選択性)管状膜を含むことができる。特定の実施では、管状膜は、(容器が円筒形である場合)容器内に同心円状に配置され得る。管状膜は、円筒形の膜、中空の膜などと分類されてもよい。管状膜の壁は膜、すなわち膜材料である。管状膜のボア(管腔)は、管状膜の内部空洞(例えば、円筒形空洞)であり、管状膜の壁(膜又は膜材料)によって画定される。水素選択性管状膜の材料は、例えばパラジウム合金であってよい。ボアは、管状膜の透過側である。
【0057】
作動中、膜改質器202は、膜改質器202内の改質触媒を介して水素と二酸化炭素とに変換される、メタンリッチ混合物208中の炭化水素(例えば、メタン)を、予備改質器204から受け取ることができる。膜改質器202は、予備改質器204から水蒸気を受け取ることができる。メタンリッチ混合物208は、予備改質された中間体又はメタンリッチ改質油(reformate)として分類することができる。メタンリッチ混合物208中のメタン及び任意の他の炭化水素は、改質器202においてH2及びCO2に変換され得る。改質器202に入るメタンリッチ混合物208は、例えば、H2、CO、CO2及びN2を含むことができる。この場合も、水蒸気はメタンリッチ混合物208内を予備改質器204から改質器202へと流れることができる。さらに、水蒸気又は補助水蒸気は、(外部の水蒸気供給源から)水蒸気導管を介して直接、膜改質器202に、又は膜改質器202への供給導管に供給されてよい。例えば、メタンの変換率を上げるべく改質器202内の水蒸気対炭素比を上げるため、又は炭素の堆積を避ける(又は減らす)ために、補助水蒸気を添加することができる。
【0058】
膜改質器202内の(改質反応によって生成された)水素は、管状膜壁を通過して管状膜のボア(内部空洞又は内腔)に入ることができる。この場合も、管状膜のボアは膜の透過側である。透過水素は、ボアから生成物として回収することができる。管状膜の外部の改質器202の容器容積空間は、管状膜204の透過残物側である。製造された二酸化炭素は、改質器202の容器から透過残物側より送り出されてもよい。
【0059】
膜改質器202は、改質器202容器内に改質触媒(改質触媒床)を含む。改質触媒(例えば、ニッケルベースの触媒)は、容器壁と管状膜との間の領域に配置することができる。改質触媒は、容器壁の内面に(例えば、コーティングされた、又は構造化された形態で)配置されてもよい。実施では、改質触媒は管状膜と接触していない。改質器202における(改質触媒を介した)改質反応は、一般に、改質器202内の管状膜を介した水素分離と作動的に結びついている。
【0060】
水蒸気改質触媒としての改質触媒は、例えば、コストを低減するためにNi系を主体とすることができる。実施では、作動中の膜改質器202(反応器)は、一般に、従来の水蒸気改質器システムのように熱入力が制限される前に、又はその代わりに、膜が制限される可能性がある。したがって、触媒の量は、本発明の膜改質器202では典型的には少なくてもよく、また貴金属ベースの触媒をより容易に利用することもできる。これは、触媒と膜の一体化による現在のプロセス強化の利点となり得る。
【0061】
実施では、膜改質器202の出口部分は、水素の大部分が膜によって分離及び除去され、水蒸気が炭化水素と反応してより高い濃度の炭素種(例えば、CH4、CO2及びCO)をもたらす場所であり得る。したがって、追加的に乾式改質触媒を膜改質器202の出口部分で管状膜の周りに充填して、CO2リッチ環境での炭素形成及びコーキングに抵抗させることができる。乾式改質触媒(例えば、ニッケルモリブデン(Mo)ベース)は、コーキング及び焼結に対する耐性を提供する触媒であり得る。乾式改質触媒(例えば、MgO担体上のNi-MO)は、高炭素濃度領域でコーキング耐性及び焼結耐性を提供することができる。したがって、乾式改質触媒は、管状膜表面上又は触媒(例えば、膜改質器202の容器壁の内面にコーティングされた触媒)でのコーキングを回避又は低減するのに役立つことができる。
【0062】
炭化水素改質は吸熱性であるため、膜改質器202には、改質器202の作動温度を所望のレベルに維持するために外部エネルギーが供給される。外部エネルギーは、電気加熱、二次熱ループを介した近くの熱源、又は炉を介した直接加熱によって提供することができる。
【0063】
実施では、吸熱改質反応のための熱を供給するために、改質器202の容器内又は容器上に電気ヒータを配置することができる。電気ヒータは、電気抵抗ヒータでもよい。容器内で使用される場合、ヒータは、例えば電気カートリッジヒータや、電気管状ヒータでもよい。改質器202容器の外面に配置される場合、ヒータは、例えば、電気バンドヒータ、電気ストリップヒータ、電気プレートヒータなどを含み得る。いくつかの実施では、(改質器202内の熱を保存するため)改質器202から周囲環境への熱伝達を低減し、人員保護を提供するために、改質器202容器に断熱材を配置することができる。
【0064】
管状膜を横切る水素輸送を促進するために、透過側は(管状膜の外部にある透過残物側よりも)低圧に、透過側の水素分圧は(以下に説明するようにスイープガスの利用を介して)低く、それぞれ維持することができる。スイープガスの存在により、管状膜から送り出される透過物中の水素の割合が減少する。しかし、スイープガスを水蒸気として、水素濃度が少なくとも95mol%、少なくとも99mol%、あるいはは100mol%の純水素に近づくように、水蒸気(H2O)を凝縮及び除去することができる。透過物乾燥ベースでの透過物中の水素濃度は、少なくとも95mol%、少なくとも99mol%、少なくとも99.99mol%、あるいは少なくとも99.9999mol%(100mol%の純水素に近づくよう)であってよい。この場合も、スイープガスとして水蒸気を用いると、透過物中の水蒸気(水)は、実施では、水蒸気(水)を凝縮させることによって比較的容易に除去することができる。典型的な透過圧力は、0.5バールから10バールの間、より具体的には1バールから3バールの間であってよい。
【0065】
透過残物側では、残りの水素だけでなく、生成されたCO2、変換されていないCH4、任意のCO及び消費されていない水蒸気は、膜改質器の作動の圧力及び温度、例えば、8バールから50バールの間又は10から40バールの間、並びに、300℃から700℃の間又は400℃から600℃の間で、透過残物226として膜改質器202を出る。
【0066】
膜改質器システム200は、ナフサなどの炭化水素を受け取る予備改質器204を含むことができる。予備改質器204では、典型的には水蒸気が供給されて(予備改質触媒の存在下で)長い炭化水素分子がメタンに分解される。異なる種類の炭化水素供給原料を予備改質するために、異なる触媒が開発される。予備改質器204は、300℃から650℃の間又は400から600℃の間、並びに、8バールから50バールの間又は10バールから40バールの間で作動することができる。予備改質器で生成されたメタンリッチ流は、改質触媒を有する膜改質器202(膜改質ユニット)でさらに改質され、メタンを水素とCO2に改質する。説明したように、水素選択性膜は、膜改質器202内の触媒と一体化され、膜改質器202において改質反応を介して生成されている水素と同時に水素を分離させる。
【0067】
予備改質器204は、高分子量炭化水素206をメタンに変換するための予備改質触媒を有する容器とすることができる。供給導管(feed conduit)は、供給炭化水素206を予備改質器204に流すことができる。水蒸気導管は、予備改質器204に水蒸気を流すことができる。実施では、水蒸気導管は、予備改質器204への供給導管内を流れる炭化水素206に水蒸気を導入することができる。前述のように、予備改質器204は、メタンリッチ流体208中のメタンを膜改質器202に送り出すことができる。実施では、水蒸気は、予備改質器204から膜改質器202にも流れる。予備改質器204に供給される炭化水素206は、例えば、少なくとも630Kの最終沸点を有する液体炭化水素であってもよい。炭化水素206は、天然ガス流からの凝縮物(C5からC6炭化水素)、液化石油ガス(LPG)、ナフサ、ケロシン(灯油)、ディーゼル油(軽油)、重質油(重油)、その他の精製石油製品、天然ガス又は炭化水素(C1からC5)の混合物であってもよい。予備改質器204内の触媒は、予備改質触媒の床(例えば、充填床)であってもよい。予備改質器204内の触媒は、ニッケルベースの触媒、貴金属ベースの触媒、遷移金属ベースの触媒などであってもよい。上記のように、システム200は、炭化水素206を含む水蒸気を予備改質器204に導入するための導管を含むことができる。作動中、炭化水素206及び水蒸気は、予備改質触媒の存在下で反応してメタンを生成する。予備改質器204における反応は、主にメタンを含む改質物を生成することができる。説明したように、予備改質器204内の作動温度は、例えば、500℃から600℃の範囲であってもよい。 実施では、反応のための熱を供給するために、電気ヒータ(例えば、抵抗ヒータ)を予備改質器204の容器内又は容器上に配置することができる。一方、予備改質器204の容器は、電気ヒータなしで断熱(熱的分離(thermal insulation))してもよい。予備改質反応は、一般に、供給原料を投入温度まで加熱し、熱損失を回避するために十分な断熱を提供する以外に追加の熱を利用しない目標作動条件下で、断熱モードで作動することができる。予備改質器204内の作動圧力は、例えば、10バールから50バールの範囲であってよい。
【0068】
実施では、予備改質器204及び膜改質器202を、作動中には、一体化された予備改質器/膜改質器210として、単一の反応器ユニットで一体化させ得る。膜改質器202の反応容器の入口部分は、予備改質器204として予備改質触媒を有する充填床触媒構成を有する。反応容器の第2の部分は、膜改質器204として、水素選択性膜を、膜の周りに(反応器壁にコーティングされているか、膜の周りに巻き付けた触媒でメッシュコーティングされた)構造的形態で充填された水蒸気改質触媒と共に有する。したがって、特定の実施では、膜改質器202及び予備改質器204は、一体化された予備改質器/膜改質器210である単一のユニットに組み合わせることができる。改質器202及び予備改質器204は、一体化された予備改質器/膜改質器210であってよい。例えば、
図3を参照されたい。そのような機器は、運転の効率化と資本コストの低減を提供できる。一体化されると、膜改質器202及び予備改質器204は、一体化された予備改質器/膜改質器210の同じ容器を共有することができる。いくつかの実施では、個別のユニットとしての予備改質器204と膜改質器202との間の相互接続配管及び制御機能は、一体化されたユニット210によって削減又は排除され得る。
【0069】
炭化水素供給原料211は、8バールから50バール(又は20バールから40バール)の圧力で圧縮され、膜改質器システム200に供給されてもよい。実施では、供給炭化水素211は、ナフサ、ケロシン、ディーゼル油、重質油、又は他の精製石油製品であってよい。供給炭化水素211は、例えば、天然ガス、メタン、液化石油ガス(LPG)、又はC1からC6の混合物、あるいはそれらの任意の組み合わせを含み得る。LPGは、例えば、プロパン及びブタンを含んでもよい。供給炭化水素211は、チオール、チオフェン、有機硫化物、二硫化物などの有機硫黄化合物を含んでもよい。
【0070】
圧縮された炭化水素供給原料211は、硫黄化合物を除去するために、硫黄除去ユニット(供給精製システム212内の水素化脱硫ユニット)に供給されてもよい。硫黄化合物は、予備改質器204又は膜改質器202で使用される触媒にとって有害(poisonous、有毒)である可能性がある。硫黄化合物を水素化して、炭化水素供給原料211から硫黄を除去するために、水素が硫黄除去ユニットに供給される。通常、硫黄除去ユニットは、例えば、250℃から450℃の温度及び1バールから50バール(又は20バールから40バール)の圧力で作動することができる。硫黄を含まない炭化水素供給原料206(例えば、1ppm未満の硫黄)は、硫黄除去ユニットを離れ、予備改質器204に供給される。一般に、膜改質器システム200は、供給炭化水素211に対して少なくとも水素化脱硫を行うための供給精製システム212を含むことができる。上記のように、供給精製システム204は、供給炭化水素211から硫黄(S)を除去して、例えば0.1百万分率(ppm)未満の硫黄を有する処理済み供給炭化水素206を得る水素化脱硫ユニットを含むことができる。水素化脱硫ユニットは、除去された硫黄を、送り出されるサワーガス中の硫化水素(H2S)として放出することができる。
【0071】
水素化脱硫ユニットは、触媒の固定床を有する反応容器である固定床反応器といった触媒反応器を含むことができる。作動中、固定床反応器は炭化水素供給原料中の硫黄化合物をH2Sに変換して除去を容易にし得る。実施では、固定床反応器は、水素化を実行する水素化処理装置として特徴付けることができる。いくつかの実施での作動中、炭化水素供給原料211は、(例えば、熱交換器で)予熱され、固定床反応器に供給されてもよい。水素は、水素化反応としての水素化脱硫用の固定床反応器にも供給される。特定の実施では、水素のソースは、膜改質反応器202とすることができる。固定床の触媒は、水素化脱硫触媒であってよい。例えば、水素化脱硫触媒は、二硫化モリブデン(MoS)又はタングステンであってよい。例えば、触媒は、γ-アルミナ上に担持されたMoSに基づくことができる。この触媒は、コバルト修飾(cobalt-modified)MoSであってもよい。水素化脱硫触媒は、コバルト及びモリブデンを含浸させたアルミナ基材(典型的にはCoMo触媒と呼ばれる)を有することができる。
【0072】
水素化脱硫反応は、固定床反応器内の触媒の存在下で、例えば300℃から400℃の範囲の温度と、例えば30バールから130バールの範囲の圧力で起こる。上記のように、固定床反応器における水素化脱硫反応は、水素化反応、すなわち水素(H)の付加を与える反応であってよい。特に、水素化反応のタイプは、C-S結合を切断し、C-H及びH-S結合を形成する水素化分解である。炭化水素供給原料中の硫黄不純物としてプロパンチオール(C3H7SH)を例とした水素化脱硫(水素化)反応は、C3H7SH+H2→C3H8+H2Sである。
【0073】
固定床反応器は、炭化水素(例えば、ナフサ)からH2Sを除去(吸収)するために、吸収剤(例えば、酸化亜鉛又はZnO)の床(例えば、充填床)をさらに含んでもよい。吸収剤へのH2Sの取り込みによって炭化水素から除去されるH2Sは、硫黄化合物の水素化脱硫変換で形成されたH2S、及び炭化水素供給原料内で固定床反応器に流入したH2Sを含み得る。固定床反応器は、例えば、1ppm未満の硫黄を有する炭化水素206を放出することができる。いくつかの実施では、吸収剤は、固定床反応器内ではなく、固定床反応器からH2Sを有する炭化水素を受け取る第2の容器内にある。したがって、それらの実施では、第2の容器は、例えば1ppm未満の硫黄を有する炭化水素206を放出する。いずれの構成でも、H2Sを取り込むZnO床は、メンテナンスサイクルを含めて新しいZnO床に交換することができる。
【0074】
他の実施では、固定床反応器は、形成された硫化水素を有する炭化水素(例えば、ナフサ)を冷却器(熱交換器)及びガス分離器を通して蒸留塔に送り出すことができる。蒸留塔は、例えば、再沸騰されたストリッパー蒸留塔であってよい。ストリッパー蒸留塔は、塔頂サワーガス(例えば、主にH2S)を除去することができる。ストリッパー蒸留塔からの塔頂サワーガスには、水素、メタン、エタン、硫化水素、プロパンなどが含まれる場合がある。ストリッパー蒸留塔からの塔底物は、水素化脱硫ユニットからの最終脱硫液体生成物である可能性があり、予備改質器204への炭化水素供給原料206とすることができる。
【0075】
説明したように、炭化水素供給原料206は、予備改質器204内の触媒床上で水蒸気と反応することができる。予備改質器204は、高級炭化水素(higher hydrocarbons)を、膜改質器202に供給されるメタンリッチ改質ガスに変換する。膜改質器202では、炭化水素は水蒸気改質触媒上で水蒸気と反応する。この場合も、予備改質器204及び膜改質器202の作動は、単一のユニット210に組み合わせることができる。例えば、
図3を参照されたい。
【0076】
膜改質器システム200は、膜改質器202の下流に、透過物(水素)を処理し透過残物(二酸化炭素)を処理するユニットの作動を含むことができる。改質器システム200は、膜改質器202内の管状膜のボア(透過側)から送り出された透過物216(例えば、少なくとも95mol%の水素)を受け取る水素精製システム214(脱水及び研磨システム用)を含むことができる。水素精製システム214は、例えば、最初に水を除去して水素を脱水することができる。例えば、システム214は、透過物216を冷却器(熱交換器)に通し、次に、熱を除去して水蒸気(water vapor)(蒸気(steam))を凝縮し、凝縮水を放出する凝縮器(第2の熱交換器)に通す(流す)ことができる。特定の実施では、凝縮器は、熱を除去して水素中の水分を凝縮する冷却凝縮エレメントを有する容器であってもよい。水は凝縮器容器の底部から放出されてよい。乾燥水素は凝縮器容器から塔頂へ送り出すことができる。冷却凝縮要素は、例えば、冷却塔の水又は冷蔵水などの冷却媒体を受け入れる管又はコイルであってもよい。
【0077】
水素精製システム214において、脱水された水素は、残留CO2及び他の成分を除去することなどによって、水素をさらに精製するために研磨してもよい。研磨は、不純物の最後の痕跡又は濃縮物(traces or concentrations)を実質的に除去するユニットの作動であってもよい。研磨を行うために、脱水された水素は、吸着剤(例えば、多孔性セラミック)を有する容器を通して送られ、脱水された水素から残留二酸化炭素を除去することができる。CO2は、吸着剤への吸着によって水素から選択的に除去することができる。研磨の生成物は、少なくとも99.999mol%の水素である乾燥水素218生成物であり得る。研磨は、炭素不純物を回収する吸着によるものであり、さらに特定の炭素種を変換して回収するための触媒変換を含むことができる。いくつかの実施では、特定の研磨ステップは、電気化学圧縮機を介した研磨と圧縮の組み合わせとすることができ、水素を分配のために目標圧力まで圧縮しながら、水素の精製を促進することができる。電気化学圧縮機は、非水素種を遮断し、非水素種をプロセスの上流に戻すか、熱回収に使用することができる。電気化学圧縮機が使用されるいくつかの例では、水素精製システム214は、水素を処理(精製)するための吸着剤又は吸着剤を有する容器を含まないか、又は利用しない。
【0078】
水素218(例えば、5バール未満)は、機械式圧縮機、電気化学式圧縮機、往復ピストン圧縮機、ピストンダイアフラム圧縮機、イオン圧縮機又は金属水素化物圧縮機、あるいはそれらの任意の組み合わせなどの圧縮機を有する圧縮システム220を通して送ることができる。この圧縮機は、多段圧縮機であってもよい。上記のように、電気化学圧縮機を使用は、水素研磨と圧縮を同時に提供することができる。圧縮機は、(分配のために)水素の圧力を少なくとも400バール、少なくとも500バール又は少なくとも850バールまで上昇させることができる。圧縮された水素生成物222は、分配のために圧縮システム220からパイプライン、シリンダ、チューブトレーラなどの中に送り出すことができる。圧縮された水素222は、一般にガス又は超臨界流体であってよい。
【0079】
膜改質器システム200は、透過残物226(典型的には気体)から水を除去する凝縮器熱交換器と、その後CO2生成物228(例えば、少なくとも99mol%のCO2)である液体塔底流としてCO2を送り出すための極低温分離容器(例えば、蒸留塔)を含むCO2精製システム224を含むことができる。透過残物のオフガス230として、残留成分(例えば、比較的少量の水素、CO、CH4、CO2等)は、極低温分離容器から塔頂へ送り出すことができる。特定の実施では、これらの残留成分(透過残物のオフガス230)は、アフターバーナー内で空気と共に燃焼することができる。
【0080】
したがって、CO2精製システム224は、膜改質器202の容器内の透過残物側(反応空間)から透過残物226(主に二酸化炭素)を受け取る。透過残物226は、例えば、少なくとも90mol%のCO2とすることができる。上記のように、CO2精製システム224では、この高圧透過残物流226を部分的に凝縮して水を凝縮除去(ノックアウト)し、CO2液化システムに供給することができる。CO2液化プロセスは、例えば、-55℃から-20℃の温度で作動する極低温タイプであってよい。液体CO2生成物228は、貯蔵、輸送及び/又はさらなる処理のために、CO2液化システムから出ることができる。説明したように、残留のオフガス(透過残物のオフガス230)は、典型的には、CH4、H2、CO及びCO2を含み得る。オフガス230は放出され、燃焼されるか、又は代わりに予備改質器204の上流を含む膜改質器202の上流に再利用される。この透過残物のオフガス流230(CO2生成物除去後の透過残物流)を、空気を加えて燃焼させ、膜改質器200での熱統合を介してエネルギーを回収することができる。あるいは、この流れ230は、予備改質器204又は膜改質器202の入口に戻して、(燃焼する代わりに)再利用することができる。このプロセス構成により、プロセス以外の二次CO2ソースを回避することを促進し、CO2回収を100%に近づけることができる。
【0081】
CO2精製システム224は、前端に、流入する透過残物226の温度を下げる(及び水などの成分を凝縮する)熱交換器予冷却器(又は凝縮器)と、透過残物226から液体(例えば、水)を除去する分離器容器と、(必要に応じて)透過残物226の圧力を増加させる機械圧縮機とを含むことができる。いくつかの実施では、システム224は、透過残物226(主にCO2)を洗浄及び冷却するための(例えば、物質移動パッキン(mass-transfer packing)を有する)スクラバー容器を含むことができる。水溶性成分(アルコールなど)が存在する場合は、スクラバーで除去できる。スクラバーシステムは、スクラバー容器の底部から送り出されたスクラビング液を、外部冷却器の熱交換器を介してスクラバー容器の上部に再循環させるポンプを含むことができる。スクラビング流体は、パッキンを通って下向きに流れる場合がある。処理された透過残物は、スクラバー容器の上部から送り出すことができる。残留物は、乾燥機、吸着器又はフィルタを介して送られ、硫化カルボニル(存在する場合)などのさらなる成分を除去することができる。透過残物は、さらなる精製及び二酸化炭素の液化のために極低温蒸留塔(容器)に送ることができる。極低温蒸留塔システムは、リボイラ熱交換器と、熱伝達(冷却)媒体として(例えば、冷凍ユニットから)冷媒を受け取る塔頂熱交換器と、を含むことができる。液体塔底流(a liquid bottoms stream)は、少なくとも99.9mol%の二酸化炭素(又は少なくとも99.99mol%の二酸化炭素)である液体二酸化炭素生成物228として極低温蒸留塔から送り出すことができる。液体二酸化炭素228は、供給原料などとして貯蔵又は別のシステムに送ることができる。極低温蒸留塔から塔頂へ送り出される除去ガス(例えば、CH4、H2、CO、CO2、不活性成分などを含む透過残物のオフガス230)は、炭化水素供給原料206に再利用することができる。除去ガス(透過残物のオフガス230)は、代わりに、(空気と共に)燃焼され、燃焼によって製造されたエネルギーは、例えば(予備改質器204への供給、膜改質器202のスイープガスとしての供給などのために)水蒸気を生成するために利用することができる。
【0082】
最後に、膜改質器システム200は、流体流れ(流量を含む)及び関連する制御弁の供給又は送り出し、ヒータ及び熱交換器の制御、作動温度と作動圧力の制御など、改質器システム200の作動を促進又は指示する制御システム232を含むことができる。制御システム232は、プロセッサと、プロセッサによって実行され、膜改質器システム200の計算及び作動を指示するコード(例えば、論理、命令等)を記憶するメモリとを含むことができる。プロセッサ(ハードウェアプロセッサ)は、1つ以上のプロセッサであってよく、各プロセッサは1つ以上のコアを有していてよい。プロセッサは、マイクロプロセッサ、中央処理ユニット(Central Processing Unit、CPU)、グラフィック処理装置(Graphic Processing Unit、GPU)、コントローラカード、回路基板又は他の回路を含むことができる。メモリは、揮発性メモリ(例えば、キャッシュ又はランダムアクセスメモリ)、不揮発性メモリ(例えば、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、又は読み取り専用メモリ)、及びファームウェアを含むことができる。制御システム232は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータサーバ、プログラマブルロジックコントローラ(programmable logic controller、PLC)、分散コンピューティングシステム(distributed computing system、DSC)、コントローラ、アクチュエータ又は制御カードを含むことができる。制御システム232は、計算を実行し、指示を与えるリモートコンピューティングシステムに通信可能に結合することができる。制御システム232は、改質器システム200内の制御装置又は他の制御コンポーネントの設定点を指定する、ユーザ入力又はリモートコンピュータ入力を受信することができる。いくつかの実施では、制御システム232は、制御装置の設定点を計算するか、特定することができる。
【0083】
図3は、
図2の一体化された予備改質器/膜改質器210の実施である。一体化されたユニット210は、膜改質器202の容器300内に予備改質器204を有する円筒形容器300(例えば、ステンレス鋼)を含む。予備改質器204は、充填された触媒床302を含む。充填された触媒床302中の触媒は、ニッケル又はニッケルベースの触媒である予備改質触媒であってよい。予備改質器204(及びその充填された触媒床302)は、容器300の入口部分に配置される。膜改質器202は、管状膜304及び改質触媒306を有する。一体化されたユニット210は、改質触媒306が断面として示される簡略化された斜視図として描かれている。容器300内の一体化されたユニット210の内部は、容器300の壁による視界の妨げなく明瞭にするために示される。管状膜304は、容器300と長手方向軸を共有することができる。図示の実施では、管状膜304は、円筒形容器300内に同心円上に位置し、容器300と中心軸を共有する。
【0084】
膜改質器202の管状膜304は、ボア又は管腔を有する。ボアは、管状膜304の透過側である。膜材料は、例えば、パラジウム(Pd)又はPd合金であってもよい。特定の実施では、管状膜304の膜材料(壁)は、10μm未満など、比較的薄くてもよい。一の実施では、膜の厚さは2μmから4μmの範囲である。さらに、Pdと膜担体は再利用することができる。改質触媒306(膜改質器202内)は、ニッケル触媒若しくはニッケルベースの触媒、又は貴金属若しくは遷移金属に基づく他の水蒸気改質触媒であってよい。図に示す実施では、改質触媒306は、容器306の内側表面に、又は内側表面に隣接して配置される。いくつかの実施では、改質触媒306は管状膜304と接触していない。膜改質器202は、改質反応空間である内部領域308を有する。領域308は、容器300の壁と管状膜304との間の容積空間である。この領域308は、管状膜304の透過残物側である。
【0085】
作動中、炭化水素206(例えば、ナフサ)及び水蒸気は、導管を介して、容器300上の入口(例えば、ノズル又は複数のノズル)など、一体化された予備改質器/膜改質器210に供給される。炭化水素206は、触媒302の充填層(packed bed、充填床)で(触媒302を介して)水蒸気改質され、炭化水素206をメタンリッチガス混合物に変換する。メタンリッチガス310は、予備改質器204から膜改質器202に流れる。特に、メタンリッチ流310は、触媒302の充填層から膜改質器202の領域308(反応空間)に流入する。実施では、水蒸気も、予備改質器204から膜改質器202又は反応空間308に流れる。
【0086】
メタンリッチ流310は、改質触媒306を介して領域308(反応空間)において水素と二酸化炭素に水蒸気改質される。水素が形成されると、水素は管状膜304を通って管状膜304のボア304に拡散する。領域308は、一般に、管状膜304のボアよりも高い圧力にある。透過した(分離した)水素は、ボアから透過物216(例えば、90mol%の水素)として下流のシステムに送り出すことができる。下流のシステムは、例えば、脱水機、研磨機又は機械的圧縮機であってよい。改質反応から生成された二酸化炭素を有する(二酸化炭素リッチな)透過残物224は、領域308(透過残物側)から、容器300から下流のシステムに送り出すことができる。透過残物224は、例えば、少なくとも90mol%のCO2とすることができる。下流のシステムは、
図2に関して説明したように、CO2精製システムであってもよい。
【0087】
特定の実施では、スイープガス312(例えば水蒸気)は、管状膜301のボアに供給されて、ボアからの透過物216の移動を促進する。スイープガス312は、メタン310が反応空間308に供給されるのと同時に(同じ方向に)流れるように示される。他の実施では、スイープガス312は、右側からボアに入り、したがって、反応空間308に入るメタンリッチ流310に対して向流で流れてもよい。これらの実施では、(スイープガス312を伴う)透過物216は、管状膜304からボアの左側を出て、導管を通って下流のシステムに送り出すことができる。
【0088】
特定の実施では、内管をボア内に同心円状に配置することができる。これらの実施では、管状膜304の左側はキャップされている。スイープガス312は、右から内管と膜304壁との間の環状部に流入し、これにより、領域308へのメタンリッチ流310の流れに対して向流の方向に環状部内の透過物(水素)を移動させる。移動された透過物(水素)を有するスイープガス312は、膜304のキャップされた端部で内管に入り、左から右に流れて、透過物216として右側に送り出される。
【0089】
乾式改質触媒314は、膜改質器202の出口部分にある領域308内のユニット210内に配置されて、CO2ガスによる炭素の形成及びコーキングを防止することができる。乾式改質触媒314は、コーキング及び焼結に対して耐性を与える触媒であってよい。乾式改質触媒314(例えば、MgO担体上のNi-MO)は、貴金属又はニッケル合金であってよい。乾式改質触媒314は、MgO担体上のNi-MOであってよい。
【0090】
改質触媒(水蒸気改質)、乾式改質触媒、及び予備成形触媒は、ニッケル又はニッケルベースとすることができる。予備改質触媒又は水蒸気改質触媒は、ニッケルを含んでもよいが、比較的低い反応温度を含む、貴金属ベースの触媒、白金(Pt)又はルテニウム(Ru)であってもよい。乾式改質触媒は、ニッケルを含む場合があるが、触媒を非活性化させる触媒上の固体炭素(コークス)の蓄積を抑制するために、典型的には異なる配合(ニッケル合金又は異なる金属酸化物担体等)である。
【0091】
容器300は、ヘッド(不図示)を有することができる。容器300は、容器の入口側にヘッドを有し、容器の吐出側にヘッドを有することができる。ヘッドは、例えば平らなプレートであってよい。そのプレートは、容器300の壁に溶接可能であり、又はそのプレートは、容器300の壁に(介在するガスケットと共に)ボルト留め可能である。他の実施では、ヘッドは、容器300の壁に溶接された楕円形のヘッドである。
【0092】
一体化された予備改質器/膜改質器210は、改質反応に熱を供給するための内部ヒータとして、容器300内に配置された電気抵抗ヒータ(例えば、電気カートリッジヒータ)を有することができる。一体化された予備改質器/膜改質器210は、改質反応に熱を供給するための外部ヒータとして、容器300の外部表面上に配置された電気抵抗ヒータ(例えば、電気バンドヒータ)を有することができる。容器300は、容器300の外側表面に配置された断熱材を有してもよい。断熱材は、環境への熱伝達を低減し、熱を節約することができる。断熱材は、人員保護のためにも役立つ。
【0093】
膜改質器システム200(
図2)は、従来の水蒸気メタン改質と比較して、運転コスト及び資本コストに関してより効率的であり得る。膜改質器202内の管状膜としての高選択性パラジウムベースの膜は、高純度H2(例えば、90mol%から>99.9mol%まで)の製造を促進し、純水素用途における水素の利用前の下流処理を低減することができる。
【0094】
膜改質器システム200は、高純度CO2を提供することができる。透過残物224は、ミクロンサイズの高純度CO2液滴を含む液体CO2を生成することができる低温CO2分離を受けることができる。透過残物オフガス230(オフガスは、主にCO2量の少ない非凝縮性ガス)を機械的に分離して取り除くことにより、高圧高純度CO2(>99mol%)を貯蔵に直接適したものにすることができる。膜改質器システム200は、現状技術の溶媒ベースのプロセスとは異なり、膜改質器がH2製造で生成されたCO2の>90+mol%の経済的な取り込みを促進することができるという点で、高いCO2回収を提供することができる。これらの溶媒ベースのプロセスは、通常、水蒸気改質プロセスで製造されるCO2を含めて、約65mol%のCO2の回収率に制限される。通常、従来の技術では、追加コストをかけて全体的な回収率を高めることしかできない。
【0095】
膜改質器システム200は、CO2を液体として回収するために提供することができる。対照的に、吸収プロセスの場合、CO2の大部分は大気圧付近でガスとして回収される。膜改質器装置システム200では、回収されたCO2は液体状態であってもよく、圧縮せずに比較的低いエネルギーコストでポンピング(pumping)することによって、輸送のためにさらに加圧することができる。使用されなかった圧縮のエネルギーにより、システム全体の効率を高めることができる。
【0096】
膜改質器システム200の特定の実施は、コンパクト性も提供することができる。システム200は、改質反応で水素が生成されるので、水素の除去を介して膜プロセスに対する分離要求を低減することができ、これはPd膜面積の減少を導き、したがってコスト競争力を高めることができる。膜改質器システム200の作動は、一般に、従来のSMRよりも水蒸気の使用が少ない。従来のSMRでは、生成物側に平衡を作動するために、より多くの量の水蒸気が供給される。逆に、膜支援プロセスの場合、膜改質器(反応器)からのH2の除去によって反応が生成物側に移動するため、過剰な水蒸気の追加を減らすことができる。
【0097】
膜改質器システム200は、一般に、システム又はプロセス強化を伴う。従来のH2製造では、精製工程はアミンによるスクラビング部又はPSA部によって実行される。これらの精製技術では、H2とCO2の両方の分離要求を同時に達成することを困難にしている。逆に、H2とCO2の両方の改質と分離を一体化する膜改質器は、従来のSMR分離プロセスと比較してより高い変換を導き、高炭素リッチ流のCOレベルを低くする。
【0098】
本メタン改質器100又は202の作動について説明したように、COは水蒸気メタン改質の中間体として形成することができる。CH4+H2O→CO+3H2、及びCO+H2O<->CO2+H2。これらの平衡制限反応の両方で、製造された水素の除去は、変換をより多くの生成物に向かってシフトさせる。通常、変換が不完全なため、透過残物流にはいくらかの残留CH4とCOが存在するが、滞留時間が十分に長い場合、透過残物中のCH4とCOの濃度はゼロに近づく可能性がある。全体的な反応CH4+2H2=CO2+4H2は、H2の除去と同様に、理論量以上の水蒸気の存在で発生する。COが形成されるが、還元することができ、必要に応じて水性ガスシフト触媒を改質触媒に添加するか、又は改質触媒と共に添加して、COをCO2及びH2にさらにシフトすることができる。
【0099】
膜改質器システムは、電気加熱膜改質器を含むことができる。膜改質器における改質のためのエネルギーは、電気加熱システム(例えば、電気抵抗ヒータ)を通じて供給することができ、触媒ゾーンに選択的にエネルギーを供給して高い熱統合(thermal integration)を達成することができるとともに、改質のための熱を供給するために炉で燃料を燃焼させることに関連する二次CO2排出源を排除することができる。従来のプロセスでは、液体炭化水素、天然ガス又はPSAオフガスのいずれかを燃焼させて、改質器に必要なエネルギーを提供する。より高い熱効率を達成するために、水蒸気発生を一体化して追加のエネルギーを回収する。また、この排気ガス(flue gas)はCO2の第2の供給源である。電気加熱式改質器を使用して、再生可能エネルギーの統合が可能である。
【0100】
実施例
膜改質器システム(水素製造システム)に関連付けられた2つの実施例、すなわち、実施例1(
図4から
図10)及び実施例2(
図11から
図14)を示す。概略フロー図(
図4及び
図11)は、膜改質器システム200(
図2)に類似している可能性がある。はじめに、透過残物オフガス流(CO2生成物除去後の透過残物流)が空気を加えて燃焼し、膜改質器システムでの熱統合を介してエネルギーを回収し、水蒸気を生成することは、注意すべき事項である。この生成された水蒸気は予備改質器に供給され、実施例1では、スイープガスとして供給される。この生成された水蒸気は予備改質器に供給されるが、実施例2ではスイープガスとしては供給されない。代替の実施では、透過残物オフガスは、(燃焼する代わりに)予備改質器又は膜改質器の入口に戻して再利用することができる。このプロセス構成により、改質反応自体以外の二次CO2ソースを回避することを容易にし、CO2の取り込み(回収率)は100%に近づくことができる。
【0101】
膜改質器システム用の炭化水素供給原料は、例えば、2バールから50バール、又は20バールから40バールの範囲の圧力であってよく、硫黄除去ユニットに供給されて、予備改質器又は膜改質器の触媒に有毒となり得るあらゆる硫黄化合物を除去することができる。硫黄化合物を水素化して炭化水素供給原料から硫黄を除去するために、水素が硫黄除去ユニットに供給される。典型的には、硫黄除去ユニットは、例えば250℃から450℃の温度及び10バールから50バールの間の圧力、より具体的には20バールから40バールの圧力で作動することができる。
【0102】
硫黄を含まない炭化水素供給原料(例えば、1ppm未満の硫黄)は、硫黄除去ユニットを離れ、予備改質器に供給される。予備改質器の目的は、炭化水素の長鎖をより短い鎖に分解し、特にメタンリッチガスを製造することであってよい。予備改質器には通常、水蒸気が供給され、触媒の存在下で長い炭化水素分子がメタンに分解される。予備改質器は産業(industry)で入手可能であり、異なる種類の炭化水素供給原料を予備改質するために異なる触媒が開発された。予備改質器は、300℃から650℃の間、又は400℃から600℃の間、並びに1バールから50バールの間、又は20バールから40バールの間で作動することができる。予備改質器で生成されたメタンリッチは、改質触媒を有する膜改質器(膜改質ユニット)でさらに改質され、メタンを水素とCO2に改質する。水素選択性膜は、膜改質器の触媒と一体化され、改質反応を介して生成される水素と同時に水素を分離させる。さらに、乾式改質触媒を反応器の出口に向かって水素選択性膜の周りに充填することができる。高圧側の膜反応器の出口に向かって、炭化水素が水素とCO2に変換され、水素の大部分が水素選択性膜によって抽出されるとともに炭素リッチ環境が生成される。管状膜の透過残物側で得られるCO2、COリッチ組成物は、改質触媒又は水素選択性膜上で炭素形成/コーキングを開始する可能性がある。作動中のコークス形成を制限するために、反応器床の端部に向かって、コーキング耐性及び焼結耐性の乾式改質触媒を充填(コーティング又は構造化された形態)することができる。
【0103】
膜改質器(膜改質ユニット)は、水素を高圧側から低圧側へ選択的に透過させる高温の水素分離膜(例えば、パラジウム合金膜)を含む。膜改質器は、300℃から700℃の間、より具体的には400℃から600℃の間で、且つ8バールから50バールの間、より具体的には10バールから40バールの間の圧力で作動する。特定の作動(それは有益な作動又は最適化された作動とすることができる)のために、膜改質器は、予備改質器と同じ又は類似の条件(温度、圧力)で作動することができる。
【0104】
炭化水素改質は吸熱性であるため、膜改質器には、作動温度を所望のレベルに維持するために外部エネルギーが供給される。外部エネルギーは、電気加熱、二次熱ループを介した近くの熱源、又は炉を用いた直接加熱によって提供することができる。管状膜を横切る水素輸送を促進するために、透過側は(管状膜の外部にある透過残物側よりも)低圧に維持することができ、透過側の水素分圧はスイープガスを利用してより低く維持することができる。通常、透過圧力は、0.5バールから10バールの間、より具体的には1バールから3バールの間とすることができる。
【0105】
残りの水素だけでなく、生成されたCO2、変換されていないCH4、任意のCO、及び消費されなかった水蒸気は、膜改質器の作動の圧力及び温度:通常は300℃から700℃の間、より具体的には400℃から600℃の間、圧力は1バールから50バールの間、より具体的には20バールから40バールの間、にて、透過残物として膜改質器を出る。この高圧透過残物流は、水を凝縮するために部分的に凝縮され、通常のCO2液化プロセスに供給され、凝縮された水と追加の残留水がシステムからノックアウトされる。CO2液化プロセスは、通常、例えば-55℃から-20℃の温度で作動する極低温タイプのものであってよい。水の凍結とそれに伴うパイプ(配管)の閉塞を避けるために、システムから水が除去される。液体CO2は、貯蔵、輸送及び/又はさらなる処理のために、CO2液化システムから放出される場合がある。残留オフガスは、典型的には、CH4、H2、CO及びCO2を含むことができ、システムから放出され、燃焼されるか又は代わりに膜改質器の上流のプロセスで再利用される。
【0106】
最後に、予備改質器と膜改質器を単一のユニットの作動/反応容器に一体化することができ、膜改質器の入口部分は、(1)予備改質触媒を有する充填床触媒構成である反応器の第1の部分と、(2)(反応器壁上にコーティング、又は膜に巻きつけられた触媒をメッシュでコーティングした)構造形態で膜の周りに充填した水蒸気改質触媒と共に水素選択性膜を有する反応器の第2の部分と、を有する。乾式改質触媒は、説明したように、作動中のコーキングを低減させるために、反応器の吐出部に向けて含み得る。
【0107】
実施例1
図4は、実施例1における膜改質器システム(水素製造システム)のAspen Plus(登録商標)ソフトウェア(バージョン10.0)モデルシミュレーションの概略フロー図である。
図5は、
図4に関連付けられた説明(凡例)である。
図6から
図10は、
図4の概略フロー図に対してAspenモデルを用いて生成された質量収支データ及び流れ情報である。
【0108】
図4の左側は、膜改質器システムへの以下の流れの導入を示している。(1)透過残物オフガス流R6をアフターバーナーR301で燃焼させるための空気F1、(2)水蒸気W5を生成し、その水蒸気の第1の部分W6をスイープガスとして使用し、その水蒸気の第2の部分W9を予備改質器R102に供給するための水W1、(3)水素化脱硫装置R101へのH2(水素化用)、及び、(4)水素化脱硫装置R101で硫黄除去処理を受ける炭化水素供給原料としてのナフサS1(加熱したナフサS2)。
【0109】
脱硫されたナフサ(S2、S3)は、ナフサをメタンに変換する予備改質器R102に流れる。メタン(及び水蒸気)は、S4内で、膜改質器R103に流れ、メタンを(透過残物R1に送り出される)二酸化炭素及び(透過物S5に送り出される)水素に変換する。スイープガス(蒸気W6)は、透過物S5内に出る。透過残物は、(水R5を除去するための)凝縮器E302で処理され、及びオフガスR6を除去するため極低温蒸留塔E303で処理されて、液体CO2生成物R7が得られる。上記のように、透過残物オフガスR6は、アフターバーナーR301内で空気F1を追加して燃焼される。
【0110】
透過物は、(水S10を除去するため)透過物凝縮器容器E105で処理され及びCO(及び他の不純物)を除去するためCO分離容器R104で処理されて、精製された水素S8が得られる。一般に、R104は、流れS8からほとんどの又は本質的にすべての不純物を除去できる多成分吸着床である。吸着剤は、活性炭又はゼオライト材料のようなものとすることができる。水素S8は、多段圧縮機P101で圧縮されて水素圧力が上昇し、水素生成物S9が得られる。水C1からC6は、各段階から除去することができる。水C1からC6の除去により、水素の純度が増す。一般に、圧縮機が、その作動のために飽和水分レベルに通常依存している電気化学圧縮機でない限り、S8流は、圧縮機を通過する前に乾燥する。
【0111】
いくつかの熱交換器の熱伝達は、膜改質器システム内の熱の回収を示す流れの数である。「power(電力)」と記されている場合は、電気ヒータ又は電気加熱を示す。「CW」は冷却塔水などの冷却水である。略語「ref」は、冷媒又は冷却流体である。
【0112】
実施例2
図11は、実施例2における膜改質器システム(水素製造システム)のAspen Plus(登録商標)(バージョン10.0)モデルシミュレーションの概略フロー図である。
図12から
図14は、
図11の概略フロー図についてASPENモデルを用いて生成された質量収支データ及び流れ(ストリーム)情報の表である。
図11の膜改質器システムは、
図2及び
図4の膜改質器システム(水素製造システム)に類似している。
図11の膜改質器システムの部分は、供給水蒸気部、炭化水素供給原料部、スイープ水蒸気部、膜反応器部、CO2分離部、透過残物燃焼部並びにH2分離及び加圧部を含む。
【0113】
本膜改質器システム(例えば、
図1から
図4及び
図11)の実施としての水素製造システムの利点には、プロセスの統合又は強化、エネルギー効率及びCO2の取り込みを含むことができる。実施では、CO2は一般に高圧で取り込まれ、廃棄又は利用のためにCO2を直接液化するのに適している場合がある。さらに、低温水蒸気改質では、水素選択性膜を有する乾式改質触媒を併用してもよい。特定の実施では、膜改質器システムのほとんど又はすべてのエネルギー/熱は、電気ヒータを介して提供される。(太陽光や風力などの)再生可能エネルギーを利用可能である。実施では、非常に低いCO2フットプリントが、製造された水素に関連付けられる。
【0114】
図15は、膜改質器システムの実施の形態について、効率高位発熱量(HHV)(%)、膜面積(m2)及びH2に対するスイープ比に対するパーセント(%)単位の水素回収率(HRF)の曲線のプロットである。
図15のデータは、Aspen Plus(登録商標)(バージョン10.0)モデル上で実行した異なるケースと、次に感度を実行するためのスプレッドシートアプリとを利用して感度解析を行って特定(算出)された。y軸の効率HHVの「熱統合60%」は、60%の熱統合を意味する。熱統合(heat integration)とは、高温流から低温流の加熱のために回収した熱の量のことである。
【0115】
図15の製造基準は、供給原料として重質ナフサを用いて製造される100Nm3/hrの水素である。パラメータとしての効率は、水素回収、炭化水素変換、スイープガス比及び膜面積に関して考慮される。HRFの5つの点(70.2、80.2、90.1、93.5及び98.5)は、4つの曲線1500、1502、1504及び1506のそれぞれに沿って示される。HRF%は、膜を通って拡散するH2の量を改質器内のH2の総量で除した値である。第1の曲線1500は、H2に対するスイープ比が3.00に等しい曲線である。第2の曲線1502は、H2に対するスイープ比が1.00に等しい曲線である。第3の曲線1504は、H2に対するスイープ比が0.52に等しい曲線である。第4の曲線1506は、H2に対するスイープ比が0.33に等しい場合の曲線である。スイープ比(「H2に対するスイープ比」)は、モル流量基準で生成水素流に対して定義される。このスイープ比は、改質器の出口での全水素流に対する透過側でのスイープとしての水蒸気流のモル比である。
図15に見られるように、スイープ比が低いほど効率が高くなる。これは、発生する水蒸気スイープが少なくなるためである。一般に、より高い効率が望まれる。スイープ比が低いほど、同じHRFで効率の高いHHVが得られる。
【0116】
図15に示すように、スイープガスは、水素回収と高純度水素を達成する上で重要なパラメータとなり得る。スイープガスはまた、目標とするプロセス性能を達成する際に、膜の表面積を低減させる(資本支出を減らす)ために提供することもできる。作動プロセスパラメータに基づいて、膜システムは、より広い作動エンベロープを有することができ、より低いスイープ比を使用してより高い効率性能のためにバランスをとることができるが、そのような低いスイープ比は、より大きな膜表面積に適している場合がある。より高いスイープ比(より高い運転コスト)は、プロセスにいくらかのペナルティをもたらすが、より低い膜表面積(より低い資本コスト)を使用して高い水素回収率を提供することができる。
【0117】
図16は、予備改質器及び膜改質器を含む膜改質器システムを用いて水素を製造する方法1600である。実施では、膜改質器システムは、200Nm3/hrから10,000Nm3/hrまでの範囲、又は20Nm3/hrから10,000Nm3/hrまでの範囲など、10,000Nm3/hr未満の水素製造能力を有する。したがって、方法1600は、200Nm3/hrから10,000Nm3/hrの範囲など、10,000Nm3/hr未満で水素を製造する方法であってよい。他の実施では、製造能力は10,000Nm3/hrより大きい場合がある。膜改質器システムは、異なる部、若しくはユニットの作動のための、又は設計若しくは構築の基礎として、それぞれのモジュールを採用又は関与するモジュール式であってよい。
【0118】
方法1600は、予備改質器及び膜改質器を含む膜改質器システムを用いて水素を製造する方法である。膜改質器は、改質触媒及び水素選択性管状膜(例えば、Pd)を有する容器(例えば、ステンレス鋼の円筒形圧力容器)であってよい。管状膜は、長手方向軸及び/又は中心軸を容器と共有することができる。管状膜は、容器内に同心円状に配置することができる。例えば、
図1を参照されたい。
【0119】
ブロック1602では、本方法は炭化水素から硫黄化合物を除去するステップを含む。そうするために、本方法は、炭化水素中の硫黄化合物を水素処理して硫黄をH2Sに変換し、その後、吸収剤又はZnO材料上でH2Sを吸収又は吸着するステップを含むことができる。特に、本方法は、炭化水素から硫黄化合物を除去するための水素処理用の触媒を備えた固定床反応器を有する水素化脱硫装置に炭化水素を供給するステップを含むことができる。硫黄化合物は、例えば硫化水素(H2S)に変換して、それらの除去を促進することができる。固定床反応器又は下流容器内の吸収剤(例えば、ZnO)は、形成されたH2Sを除去することができる。水素化脱硫装置は、硫黄化合物又は硫黄(S)を有する化合物を0.1百万分率(ppm)未満しか含まない、(処理されたままの)炭化水素を送り出すことができる。他の構成も適用可能である。例えば、他の実施では、水素化脱硫ユニットは、固定床反応器からH2Sを有する炭化水素を受け取って処理し、形成されたH2Sを塔頂へ送り出す蒸留塔を含むことができる。蒸留塔が使用される場合、除去された硫黄化合物を差し引いた炭化水素は、蒸留塔から液体塔底流として送り出すことができる。
【0120】
ブロック1604では、本方法は、炭化水素と水蒸気を予備改質触媒を有する予備改質器に導管を介して供給するステップと、炭化水素を予備改質器内で予備改質触媒を介してメタンに変換するステップとを含む。予備改質器は、炭化水素及び水蒸気を受け取るために導管に結合された入口(例えば、ノズル)を含むことができる。炭化水素は、水素化脱硫装置から送り出される処理された炭化水素であってもよいし、又はそれを含んでもよい。炭化水素は、例えば、ナフサ、ケロシン、ガソリン、ディーゼル、液化石油ガス(LPG)又はそれらの任意の組み合わせであってよい。
【0121】
いくつかの実施では、予備改質器及び下流の膜改質器を単一のユニットに一体化することができる。例えば、予備改質器と膜改質器は同じ容器を共有することができる。一体化したユニットにおいて、予備改質器は、容器の入口部分に配置された予備改質触媒を含むことができる。例えば、
図3を参照されたい。
【0122】
ブロック1606では、本方法は、予備改質器から膜改質器にメタンリッチ流を供給するステップと、膜改質器内の改質触媒を介して水蒸気改質によりメタン(及び任意の炭化水素)を水素及び二酸化炭素に変換させるステップとを含む。水蒸気改質は、管状膜の外部の膜改質器容器内の領域で起こる。この領域は、水蒸気改質のための反応空間であってよい。この領域は、一般に管状膜の透過残物側である。水蒸気改質は、例えば容器内では600℃未満(又は650℃未満)で起こり得る。いくつかの実施では、本方法は、膜改質器の出口部分に配置された乾式改質触媒を介してメタンを水素に変換(改質)するステップをさらに含むことができる。水蒸気改質と乾式改質の両方が乾式改質触媒上で起こる可能性がある。これは、ガス混合物にまだ水蒸気が存在するからである。乾式改質触媒の目的は、低い水蒸気対炭素比でのコーキングの制限ができることである。乾式改質触媒は、H2及びCOを形成することによって作用し得る。次に、COはWGS反応を介してH2とCO2とに変換される。
【0123】
本方法は、膜改質器容器上又は膜改質器容器内に配置された電気ヒータを介して膜改質器に(吸熱水蒸気改質のために)熱を供給するステップを含むことができる。膜改質器の作動温度は、600℃未満又は650℃未満であってよい。
【0124】
ブロック1608では、本方法は、水素(透過物)を領域(管状膜の外側の反応空間)から管状膜を通って管状膜のボア内に拡散させるステップを含む。ボアは、管状膜の透過側である。管状膜を通って水素を拡散するステップは、一般に、反応空間内でメタンを水素へ変換するステップと同時に行うことができる。特定の実施では、本方法は、スイープガス(例えば、水蒸気又は窒素)をボアに供給し、水素をボアからスイープガスを用いて移動(置換)させるステップを含む。その移動させるステップが、領域からボアへの管状膜を通る水素透過のための推進力を増加させ得る。
【0125】
ブロック1610では、本方法は、ボア(透過側)から水素流を放出するステップと、領域(透過残物側)から二酸化炭素流を放出するステップとを含む。水素流(主に水素)は、乾燥ベースで報告された少なくとも90mol%の水素を含むことができる。二酸化炭素流(主に二酸化炭素)は、少なくとも90mol%の二酸化炭素を含むことができる。膜改質器容器は、水素流を送り出すための出口(例えば、ノズル)を含むことができる。膜改質器容器は、二酸化炭素流を送り出すための別の出口(例えば、ノズル)を含むことができる。
【0126】
ブロック1612では、本方法は、水素流を精製するステップを含む。水素流は比較的高濃度(純度)の水素であるが、水素流をさらに精製(水除去及び研磨)して、純粋な水素としてより広い範囲の用途に分配することができる。本方法は、水素流中の水を凝縮し、凝縮した水を水素流から除去し、次いで水素流を精製して、少なくとも99.9mol%の水素である水素生成物を得るステップを含むことができる。水素は、水素流中の不純物を取り込むために、吸着剤(例えば、容器内の吸着剤床)で精製(又は研磨)することができる。本方法は、水素生成物の圧力を少なくとも300バール又は少なくとも350バールまで上昇させるために、水素生成物を圧縮するステップをさらに含むことができる。いくつかの圧縮技術(電気化学圧縮機など)は、研磨と圧縮を一緒に実行することができる。
【0127】
ブロック1614では、本方法は、膜改質器容器の領域(透過残物側)から送り出された二酸化炭素流を精製(及び液化)するステップを含む。有利なことに、この送り出された炭素流(透過残物流)は、比較的高純度で比較的高圧であってもよい。炭素流をさらに精製するために、本方法は、二酸化炭素流中の水を凝縮するステップ、凝縮した水を二酸化炭素流から除去するステップ、及び二酸化炭素流を極低温精製して少なくとも99mol%の二酸化炭素を含む液体二酸化炭素生成物を得るステップを含むことができる。
【0128】
一の実施は、水素を製造する方法である。この実施では、本方法は、20Nm3/hrから10,000Nm3/hrの範囲で水素を製造することができる。本方法は、炭化水素と水蒸気を、予備改質触媒を有する予備改質器に供給するステップと、メタンリッチ混合物である予備改質中間体を得るために予備改質器内で予備改質触媒を介して炭化水素をメタンに変換するステップと、を含む。予備改質器に供給される炭化水素は、例えば、ナフサ、ケロシン、ガソリン、ディーゼル、液化石油ガス(LPG)又はそれらの任意の組み合わせを含んでよい。本方法は、炭化水素を予備改質器に供給する前に、炭化水素から硫黄化合物を除去することを含み得る。実施では、予備改質器に供給される炭化水素は、硫黄(S)を含む0.1ppm未満の硫黄化合物を含む。本方法は、予備改質中間体を、予備改質器から改質触媒及び管状膜を有する膜改質器容器に供給するステップと、予備改質中間体中のメタンを、管状膜の外部の容器内の領域で膜改質器内の改質触媒を介して(例えば、600℃未満にて)水蒸気改質によって水素及び二酸化炭素に変換するステップと、を含む。本方法は、メタンに加えて、膜改質器内の予備改質中間体中の炭化水素を水素と二酸化炭素とに変換するステップを含むことができる。管状膜の外部の領域は、管状膜の透過残物側であり、水蒸気改質のための反応空間であってもよい。本方法は、その領域から管状膜(水素選択性)を通って水素を管状膜のボアに拡散させるステップを含む。ボアは、管状膜の透過側である。管状膜を通って水素を拡散するステップは、メタンを水素へ変換するステップと同時であってもよい。本方法は、スイープガスをボアに供給するステップと、水素をボアからスイープガスで移動させるステップと、水素をボアからスイープガスで移動させるステップを介して領域から管状膜を通ってボアへの水素透過の推進力を増加させるステップと、ボアから水素流を放出するステップと、を含むことができる。本方法は、水素流中の水蒸気を凝縮するステップと、水素流から凝縮した水蒸気を除去するステップと、を含むことができ、この場合、スイープガスは水蒸気であり、ボアから送り出される水素流は、乾燥ベースで少なくとも90mol%の水素である。本方法は、水素流を少なくとも99.9mol%の水素である水素生成物を得るために精製するステップと、水素生成物を少なくとも300バール又は少なくとも350バールの圧力まで圧縮するステップと、を含むことができる。精製するステップは、水素流を、吸着剤を有する容器に通して送るステップと、吸収剤を介して水素流から成分を除去するステップと、を含むことができる。いくつかの実施では、精製するステップと圧縮するステップは、電気化学圧縮機を介して実行される。本方法は、(1)管状膜の外部の領域から二酸化炭素流を送り出すステップであって、二酸化炭素流が少なくとも90mol%の二酸化炭素を有する、ステップと、(2)二酸化炭素流中の水を凝縮するステップと、(3)二酸化炭素流から凝縮した水を除去するステップと、(4)二酸化炭素流を極低温精製して、少なくとも99mol%の二酸化炭素を含む液体二酸化炭素生成物を得るステップと、を含むことができる。膜改質器の作動温度は650℃未満であってよい。本方法は、電気ヒータを介して膜改質器に熱を供給するステップを含むことができる。特定の実施では、予備改質器は、膜改質器の容器の入口部分に予備改質触媒を含む。したがってこれらの実施では、予備改質器及び膜改質器は一体化されたユニットであってよい。最後に、本方法は、膜改質器の出口部分に配置された乾式改質触媒を介してメタンを水素に変換するステップを含むことができる。
【0129】
別の実施は、水素製造のためのシステムである。特定の実施では、システムは、20Nm3/hrから10,000Nm3/hrの範囲の水素製造能力を有する。本システムは、炭化水素を受け取り、予備改質触媒を介して炭化水素をメタンに変換するための予備改質器を有する。炭化水素は、例えば、ナフサ、ケロシン、ガソリン、ディーゼル、液化石油ガス(LPG)又はそれらの任意の組み合わせであってよい。本システムは、予備改質器に水蒸気を供給する導管を含むことができる。本システムは、予備改質器からメタンを受け取るための膜改質器を有する。膜改質器は、予備改質器からメタンリッチ混合物中のメタンを受け取ることができる。膜改質器は、(1)容器、(2)水蒸気改質によりメタンを水素と二酸化炭素に変換する容器内の改質触媒、(3)水素を(例えば、パラジウムを含む)管状膜を通って管状膜のボアに拡散させるための容器内の(水素選択性)管状膜、及び(4)水蒸気改質のための管状膜の外側の容器内の領域、を含む。この領域は、管状膜の透過残物側である。改質触媒は、管状膜の外部に配置される。実施では、改質触媒は管状膜と接触していない。ボアは、管状膜の透過側である。システムは、窒素又は水蒸気をスイープガスとしてボアに提供するための導管を含むことができる。実施では、ボア内のスイープガスの流れを促進し、ボアから水素を移動させるために、ボア内に同心円状に内管が配置されている。システムは、水蒸気改質のための膜改質器に熱を供給する電気ヒータを含むことができる。膜改質器容器は、円筒形の容器であってもよい。実施では、管状膜は、容器と長手方向軸を共有する。特定の実施では、管状膜は容器内に同心円状に配置される。いくつかの実施では、膜改質器は、容器の出口部分に乾式改質触媒を含む。特定の実施では、予備改質器は、膜改質器容器の入口部分に予備改質触媒を含み、したがって、予備改質器と膜改質器とを一体化することができる。
【0130】
水素を製造するためのシステムは、ボアからの透過物を処理して、少なくとも99.9mol%の水素である水素生成物を得る水素精製システムを含むことができ、その水素精製システムは、凝縮器熱交換器、吸着剤を有する容器又は電気化学圧縮機、あるいはそれらの任意の組合せを含む。本システムは、水素生成物の圧力を少なくとも300バール又は少なくとも350バールまで上昇させる圧縮機を含むことができる。圧縮機は、電気化学圧縮機、機械圧縮機、イオン圧縮機又は金属水素化物圧縮機、あるいはそれらの任意の組み合わせであってよい。本システムは、管状膜の外部の膜改質器内の領域から透過残物(すなわち、少なくとも90mol%の二酸化炭素である)を受け取るための精製システムを含むことができる。精製システム(使用する場合)は、透過残物を処理し、少なくとも99.9mol%の二酸化炭素である二酸化炭素生成物として液体塔底流を送り出す極低温蒸留塔を含む。
【0131】
さらに別の実施は、炭化水素を受け取り、予備改質触媒を介して炭化水素をメタンに変換するための予備改質器を含む、水素製造のためのシステムである。このシステムは、予備改質器からメタンを受け取る膜改質器を含み、その膜改質器は、容器、メタンを水素と二酸化炭素に変換する容器内の改質触媒、及び、容器内の管状膜を含み、その管状膜を通して管状膜のボアに水素を拡散させる。管状膜は水素選択性であり、ボアは管状膜の透過側である。膜改質器容器は、水蒸気改質のための管状膜の外部の容器内の反応空間である領域を含むことができ、この領域は管状膜の透過残物側であり、改質触媒は管状膜の外部に配置される。電気ヒータは、水蒸気改質のために膜改質器に熱を供給することができる。容器は、円筒形の容器であってもよい。いくつかの実施では、管状膜は、容器と長手方向軸を共有する。特定の実施では、予備改質器は、容器の入口部分の予備改質触媒であってもよく、予備改質器と膜改質器とは一体化されている。
【0132】
特定の実施では、ボアから送り出される透過物は、水蒸気(スイープガス)と、乾量基準で少なくとも90mol%の水素とを含む。水素精製システムは、管状膜のボアからの透過物を処理して、少なくとも99.9mol%の水素である水素生成物を得る。水素精製システムは、透過液から水を凝縮して除去する凝縮器熱交換器、透過液から成分を除去して少なくとも99.9mol%の水素を含む水素生成物を得る吸着剤を有する容器、又は透過液の圧力を上昇させ、透過液から成分を除去して少なくとも99.9mol%の水素を含む水素生成物を得る電気化学圧縮機、あるいはそれらの任意の組合せを含む。電気化学圧縮機が用いられる場合には、水素精製システムは吸着剤を有する容器を含まない。圧縮機は、水素生成物の圧力を少なくとも350バールまで上昇させるために使用されてもよく、圧縮機は、電気化学圧縮機、機械圧縮機、多段圧縮機、イオン圧縮機又は金属水素化物圧縮機、あるいはそれらの任意の組み合わせである。最後に、水素を製造するためのシステムは、管状膜の外部の容器内の領域から透過残物を受け取るための二酸化炭素精製システムを含むことができる。ここで、透過残物は少なくとも90mol%の二酸化炭素である。使用する場合、二酸化炭素精製システムは、透過残物を処理し、少なくとも99.9mol%の二酸化炭素である二酸化炭素生成物として液体塔底流を送り出す極低温蒸留塔を含む。
【0133】
いくつかの実施が説明されてきた。それでもなお、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、さまざまな修正を加えることができることが理解されるであろう。
【国際調査報告】