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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】局所皮膚送達配合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230710BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 5/28 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230710BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 31/7032 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 31/366 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 31/7012 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/04
A61P17/06
A61P17/10
A61P17/00
A61P29/00
A61P43/00 113
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P17/14
A61P5/28
A61P25/04
A61P25/00
A61P17/18
A61K47/34
A61P43/00 121
A61K31/455
A61K31/7032
A61K31/366
A61K31/7012
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022566089
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 GB2021051569
(87)【国際公開番号】W WO2021255483
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】2009437.1
(32)【優先日】2020-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518118297
【氏名又は名称】ライムウェイ ファーマ デザイン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Limeway Pharma Design Ltd.
【住所又は居所原語表記】12 Limeway Terrace Dorking Surrey,England RH4 1HZ
(71)【出願人】
【識別番号】517289077
【氏名又は名称】デイヴィス,エイドリアン
【氏名又は名称原語表記】DAVIS,Adrian
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス,エイドリアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA22
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC05
4C076CC18
4C076CC30
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE27
4C076FF12
4C076FF36
4C076FF63
4C076FF67
4C084AA17
4C084AA27
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA63
4C084NA05
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA901
4C084ZA902
4C084ZA921
4C084ZA922
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC101
4C084ZC102
4C084ZC131
4C084ZC132
4C084ZC521
4C084ZC522
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086BC19
4C086EA01
4C086EA05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA89
4C086ZA90
4C086ZA92
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC10
4C086ZC13
4C086ZC52
4C086ZC75
(57)【要約】
機能性コエンハンサー送達システムを含む製薬、薬用化粧品、又は化粧品有効成分の局所皮膚送達配合物は、ニコチンアミド及びポリヒドロキシ酸を含む補助的な使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復システムと組み合わせて、主要な活性物質を含む。配合物は一般的には、ヒドロカルビルメチルシロキサン、他の揮発性シリコーン、及びシリコーンエラストマーのブレンドと組み合わせて、水溶性溶剤及びC12若しくはC14脂肪酸又はC14アルコールを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所塗布用配合物であって、
皮膚の局所治療用の主要な活性物質と、
1.0~5%w/wのニコチンアミド及び1.0~5%w/wのポリヒドロキシ酸を含む使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復組み合わせと、
一般式:C2n+2(ただし、nは3~5の整数を表す)の構造を有する10~60%w/wの分配係数エンハンサー(PCエンハンサー)と、
12~C14直鎖脂肪酸とC14直鎖一級アルコールから成る群から選択される拡散係数エンハンサー(DCエンハンサー)と、
ジメチコーンマクロマーと、アルキルメチルシロキサン、アリールメチルシロキサン、及びアルキルアリールメチルシロキサンから成る群から選択されるヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエントとを含む第1のジメチコーンマクロマー混合物と、
メチルシロキサン化合物と架橋ジメチコーンマクロマーとを含む第2のジメチコーンマクロマー混合物と、を含み、
前記配合物が、15重量%未満の水を含む、配合物。
【請求項2】
前記第1のジメチコーンマクロマー混合物が、一般的には以下の構造の化合物を含むポリグリコールジメチコーンマクロマーを含み、
【化1】
ただし、RはH又はヒドロカルビル基、特に、C~Cアルキル基を表し、
Yはヒドロカルビル基、特に、C~Cアルキル基を表し、
Xはアミン、第四級アミノ基、又は酸性官能基を表し、
Mとnは独立して1~50の整数を表す、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記配合物は、5~45%w/w、通常10~40%w/w、一般的には20~30%w/wの第1のジメチコーンマクロマー混合物、及び/又は5~45%w/w、通常10~40%w/w、一般的には20~30w%w/wの第2のジメチコーンマクロマー混合物を含み、適切には前記第1のジメチコーンマクロマー混合物は、1000超の数平均分子量(通常2000超)を有するジメチコーンマクロマーと、500未満の数平均分子量を有するヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエント(一般的にはアルキルメチルシロキサン)とを含む、請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
前記第1のジメチコーンマクロマー混合物は、ポリアルキレンオキシド化合物(一般的にはポリエチレングリコール化合物、ポリプロピレングリコール化合物、若しくはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー)と架橋結合される、又はジエンと架橋結合されるポリグリコールジメチコーンマクロマーを含み、一般的には前記第1のジメチコーンマクロマー混合物は、PEGジメチコーンPPGクロスポリマー及びPEGジメチコーンビス-イソアルキルPPGクロスポリマーから成る群から選択されるポリグリコールジメチコーンマクロマーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項5】
前記第1のジメチコーンマクロマー混合物は、ジメチコーン骨格からの1以上の側基を含むポリグリコールジメチコーンマクロマーを含み、前記側基(複数可)が、ポリアルキレンオキシド基(一般的にはポリエチレングリコール化合物、ポリプロピレングリコール化合物、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー)であり、一般的には前記ポリグリコールジメチコーンマクロマーは、前記ジメチコーン骨格からのポリエチレングリコール側基及びポリプロピレングリコール側基を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項6】
ピロリドンカルボン酸官能化ジメチコーンマクロマーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項7】
前記第2のジメチコーンマクロマー混合物は、1000未満の数平均分子量を有するメチルシロキサン化合物と、1000超、一般的には2000超の数平均分子量を有する架橋ポリアルキルシロキサンジオールジメチコーンマクロマーとを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項8】
前記第1のジメチコーンマクロマー混合物は、5~30%w/w、通常10~20%w/w、一般的には12~19%w/wのポリグリコールジメチコーンマクロマーを含み、及び/又は前記第2のジメチコーンマクロマー混合物は、5~30%w/w、通常10~20%w/w、一般的には12~19%w/wの架橋ジメチコーンマクロマーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項9】
0.05%w/w未満の水を含む、又は実質的に水を含まない、請求項1~8のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項10】
前記配合物は、1~10%w/wのポリヒドロキシ酸、好ましくは1~5%w/wのポリヒドロキシ酸を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項11】
前記ポリヒドロキシ酸は、ラクトビオン酸、グルコノラクトン、又はガラクトース、及びこれらのいずれかの混合物から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項12】
一般式C2n+2のジオール(ただし、nは7以上の整数を表す)、一般式C2n+2Oのアルコール(ただし、nは整数2若しくは3を表す)、一般式C2n+2若しくはC2n+2のエーテル-アルコール(ただし、nは1~10の整数を表す)、又はアルキルピロリドンから成る群から好適には選択される、アルコール、エーテル-アルコール、ジオール、トリオール、又はアルキルピロリドンから成る群から選択される第2の相互混和性PCエンハンサー/補助溶剤を含み、一般的には前記第2の相互混和性PCエンハンサー/補助溶剤は、グリセロール又はN-メチルピロリドンである、請求項1~11のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項13】
25~45%w/wのPCエンハンサー、及び/又は10%w/w未満、一般的には5%w/w未満、最適には0.5~2%w/wの拡散係数エンハンサーを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項14】
25~45%w/wのPCエンハンサー、及び/又は0.5~2%w/w、一般的には0.25%w/w未満、最適には0.01~0.25%の拡散係数エンハンサーを含み、たとえば、角質層中に前記主要な活性物質の保持が必要とされる、請求項1~13のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項15】
生成物pHは4.4~6.00の範囲内である、及び/又は平衡pHは、pH3~4の範囲内である、請求項1~14のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項16】
ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、シクロペンタシロキサン、エタノール、イソプロピルアルコール、及び水から成る群から選択される高揮発性溶剤を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項17】
前記活性物質は、レチノイド、レチノイン酸代謝遮断剤(RAMBA)、テトラヒドロカンナビノール及びカンナビジオールを含むカンナビノイド、α及びβ-ヒドロキシ酸及びポリマー及びその誘導体、特にラクトビオン酸及びグルコノラクトン、免疫反応調節化合物、トラネキサム酸、カルシポトリオール(別名、カルシポトリエン)を含むビタミンD類似体、ニコチンアミドを含むビタミンB3類似体、コルチコステロイド、タンパク同化ステロイド、エストロゲン、抗酒さ剤、抗ヒスタミン剤、抗菌剤、抗にきび剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤、紫外線角化症、基底細胞及び扁平上皮細胞癌及びメラノーマに使用される抗細胞毒剤、ソラーレン、抗脱毛剤、抗アンドロゲン、痒み止め剤、角質溶解剤、美白及び脱色剤、ジスラノール、消毒剤、麻酔剤、鎮痛剤、神経障害薬、非ステロイド抗炎症剤、血管作用薬、並びに乾燥肌及び老化肌と闘う薬剤から成る群から選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項18】
前記活性物質は、湿疹、乾癬、にきび、水疱性類天疱瘡、及び酒さなどの炎症性皮膚疾患の治療に使用されるPARP-1阻害剤、好ましくはニコチンアミドから選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項19】
前記活性物質は、紫外線角化症、基底細胞及び扁平上皮細胞の皮膚癌及びメラノーマの化学的予防に使用されるPARP-1阻害剤、好ましくはニコチンアミドから選択される、請求項1~18のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項20】
前記活性物質は、紫外線角化症、基底細胞及び扁平上皮細胞の皮膚癌及びメラノーマの化学的予防に使用される、広域スペクトラム性無機又は親水性UVブロックと組み合わせたPARP-1阻害剤、好ましくはニコチンアミドから選択される、請求項1~19のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項21】
前記活性物質は、紫外線角化症及びメラノーマの治療に使用されるARP-1阻害剤、好ましくはニコチンアミドから選択される、請求項1~20のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項22】
前記活性物質は、紫外線角化症及びメラノーマの治療に使用される、広域スペクトル性無機又は親水性UVブロックと組み合わせてPARP-1阻害剤、好ましくはニコチンアミドから選択される、請求項1~21のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項23】
前記活性物質は、放射線皮膚炎の化学的予防に使用されるPARP-1阻害剤、好ましくはニコチンアミドから選択される、請求項1~22のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項24】
前記活性物質は、皮膚色素沈着の治療に使用されるメラノソーム伝達阻害剤、好ましくはニコチンアミドから選択される、請求項1~23のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項25】
前記活性物質は、5~10重量%のニコチンアミドである、請求項18~24のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項26】
前記主要な活性物質は、ニコチンアミド1~5重量%及びPHA1~5重量%を組み合わせたトラネキサム酸ではない、請求項1~25のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項27】
治療に使用される請求項1~26のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項28】
ヒト又は動物の身体の医学的症状の予防、緩和、又は治療に使用され、前記医学的症状が、痛み及び/又は炎症、色素沈着、掻痒、にきび、湿疹、乾癬、酒さ、水疱性類天疱瘡などの皮膚水泡性疾患、おむつかぶれ、乾燥肌、菌を含む細菌症状並びに/又は酵母感染症及び皮膚糸状感染症などの皮膚感染症を含むバクテリア症状、皮膚又は粘膜のウィルス感染症、いぼ、乾燥又は老化肌、アンドロジェン欠乏症、免疫症状、そばかす、紫外線角化症、基底細胞及び扁平上皮細胞の皮膚癌及びメラノーマ、脱毛症、並びに放射線療法による皮膚炎のうちの1以上によって引き起こされる、又はそれらに関連する、請求項1~26のいずれか1項に記載の配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質の局所皮膚送達での使用に適した配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物治療アドヒアランスに関する2003年報告で、世界保健機関(WHO)は「人々の健康にとっては、特定の療法を改善するよりもアドヒアランス介入の効果を高める方がずっと影響が大きい」と断言している。この報告で、WHOは主に主要な全身病とその後の主に経口による療法について触れている。有効性の開始の緩慢さ又は低い有効度、実際の又は懸念される不所望の影響、ライフスタイルにそぐわない治療計画などの、治療に関連するいくつかの要因が不十分なアドヒアランスに関わっていることが発見された。
【0003】
皮膚及び皮下組織の症状や疾病を治療するために皮膚に薬剤を局所塗布することは分かりやすい治療コンセプトであり、理にかなっている。2020年度の世界の化粧品美容市場の肌ケア製品の年間売上高が1450億ドルであることが実証するように、局所製品は消費者によって広くかつ熱心に使用されている。
【0004】
この2003年のWHO報告以来、局所皮膚薬に対するアドヒアランスの発生とその促進要因に関していくつかの研究がなされてきた。しかし、推奨又は処方される局所皮膚薬製品へのアドヒアランスは期待外れに低い。米国人皮膚科医のSteven Feldman博士は、「Practical Dermatology」の2018年2月の版で、局所医薬品への順守は「悲惨である」と結論付けている。
【0005】
WHO報告と同様、こうしたアドヒアランス率の低さの理由を調査したところ、治療への反応の遅さと不十分さ、局所及び全身の薬物副作用の発生又は発生への懸念(特に局所コルチコステロイドへの恐怖)、ライフスタイルにそぐわない治療計画、そして局所製品に特有の使用時の見た目の悪さと不快さなどが主な原因である(Zschockeら、Venereol.2014年5月;28 Suppl2:4~9;Tanら、Expert Opin Drug Deliv.2012年10月;9(10):1263~71;Devauxら、Acad Dermatol.2012年5月;26 Suppl3:61~7)。
【0006】
下記の表は、アドヒアランスを実施する様々な次元の概要を示す。特にこのコンテキストに関連するのは、バイオ製剤及び化粧品設計の要因、簡単に言えば、1)効能、2)局所及び全身副作用の可能性、3)使用時の時間と労力(全てWHOによって記載されている)、及び4)使用時の消費者体験である。
【表1】
【0007】
受動的局所薬送達技術:コエンハンサーゲル技術
コエンハンサー技術は、機能性成分を高める分配係数及び拡散係数を局所製剤に組み込んで、それにより、活性物質の皮膚浸透力を高めることと定義することができる。
【0008】
更に最近の受動送達コエンハンサー技術は、フィックの第1の拡散法則に具現化されるすべての原理を検討し、以下の要素を組み込んだ最新技術である。
-不揮発性残余相(N-VRP)で飽和又は略飽和である有効量の1以上の活性物質;平衡状態への揮発性物質の蒸発後に残る相
-有効投与量でN-VRP内に分配係数エンハンサーを含めること
-有効投与量で、かつ不揮発性残余相で飽和又は略飽和に、N-VRP内に拡散係数エンハンサーを含めること
【0009】
US8,541,470号は、NSAIDの局所塗布のためのコエンハンサーゲル組成を開示しており、その組成は多価アルコール、グリコールエーテル、高脂肪酸のエステルを含む担持システムにおいてNSAID溶液を備え、担持システムは大気温度で単相として存在する。NSAIDはジクロフェナク酸であるジクロフェナクとすることができる。多価アルコールはプロピレングリコールなどのグリコールとし、グリコールエーテルはジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのジエチレングリコールエーテルとすることができる。高脂肪酸エステルは一般的にはミリスチン酸イソプロピルである。
【0010】
US8,541,470号に記載される製剤は、補助溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)と共に、活性及び機能分配係数(たとえば、プロピレングリコール)コエンハンサー賦形剤及び拡散係数(たとえば、ミリスチン酸イソプロピル)コエンハンサー賦形剤を含む不揮発性単相残余相から設計される。活性成分の製剤依存皮膚浸透力は主に以下の要因に作用される。
-分配係数エンハンサーの投与量
-不揮発性単相残余相中の活性成分の投与量及び飽和度
-不揮発性単相残余相中の拡散係数エンハンサーの投与量及び飽和度
【0011】
上記コエンハンサー型ゲル製剤を完成させるため、エタノール、イソプロピルアルコール、任意選択的に水などの高揮発性溶剤とゲル化ポリマーを不揮発性残余相に追加して、単相可溶性、及び使用時の塗布し易さにとって適切なマクロ粘度を確保することができる。薄膜である皮膚に塗布すると、高揮発性溶剤が蒸発して、不揮発性単相残余相の実質上の理化学的性質が迅速に改質される。
【0012】
活性成分の飽和度を検討に入れることはよく知られているが、US8,541,470号はまず、不揮発性残余相中の拡散係数エンハンサー、この場合はミリスチン酸イソプロピルの投与量及び飽和度の重要性を記載している。US8,541,470号の図1は、拡散係数エンハンサーが飽和している不揮発性単相残余相の組成を示す3相図である。拡散係数エンハンサーの飽和度が低い場合、拡散係数エンハンサー、よって薬剤の角質層への浸透の大幅な低下が観察される。
【0013】
薬物送達のメリットにもかかわらず、US8,541,470号に記載されるようなコエンハンサー製剤は、不十分な塗込みと肌の不快感をもたらし、これらは粘着性と皮膚の乾燥につながる。美的観点、特に肌の不快感は、局所製剤の塗布を含む医学的治療方法への順守を低下させることが広く認識されている。患者は一貫して、ゲル又は軟膏よりもクリームを好むと報告されている。エモリエントクリームとして配合されるコエンハンサーシステムは、不十分なアドヒアランスを招く製剤関連の要因のすべてに対処している。しかしながら、クリーム賦形剤の界面活性剤とエモリエントオイル相の追加は、含まれるコエンハンサーシステムの性能に影響を及ぼして、活性物質の皮膚バリアへの浸透力を弱め、それにより活性物質の目標部位への送達を低下させる傾向がある。したがって、現在の局所コエンハンサー技術の制約は、エモリエントを組み込み、主要な機能成分の高飽和度を維持し、皮膚浸透力を最適化できないことである。
【0014】
特定の理論に縛られるものではないが、これは、クリームのエモリエントオイル相が、コエンハンサーシステムの性能に悪影響を及ぼすためであると仮定した。特に、炭化水素構造元素を含むエモリエントオイル相成分は、拡散係数強化賦形剤、たとえば、C~C22炭化水素のアルコール、酸、又はエステル誘導体を含む賦形剤の溶解度を高めると予測し得る。理想的には、拡散係数エンハンサーは、製剤の不揮発性残余相(N-VRP)中で飽和溶解しているべきである。エモリエント賦形剤は、媒体の残余不揮発性エモリエントオイル相中の拡散係数エンハンサーの溶解度を高めるため、拡散係数エンハンサーが主に亜飽和状態になって、拡散係数エンハンサーの角質層バリアへの分配に悪影響を及ぼし、組み込まれた活性成分の皮膚浸透力を5~10分の1に低減する可能性がある。
【0015】
受動的局所薬送達技術:コエンハンサーシリコーンクリーム技術
英国特許第2549418B号「Topical formulations comprising dimethicone macromers」は、製剤設計関連のアドヒアランス要因の4つ全てに対処することを目的とする局所製剤技術について記載している。最初の3つは、吸収される投与量、塗布される投与量、及び吸収される投与量の速度にそれぞれ関連するバイオ製剤要因である。これらの要件は、分配係数及び拡散係数エンハンサーを含むコエンハンサーシステムの使用によって満たされる。
【0016】
4つ目の要因は、シリコーンエラストマーシリコーン-流体-シリコーンエモリエント連続相内にグリコールコエンハンサーシステムを分散させてクリームを形成することによって満たされる。グリコール-コエンハンサーシリコーン分散体を皮膚に塗布すると、消費者は、混合したシリコーンエラストマー-シリコーンエモリエント流体連続相の柔らかで滑らかな肌触りを体験する。揮発性シリコーンの消失は迅速に発生して、皮膚への吸収を認識させる。
【0017】
ヒトの皮膚上での生体外皮膚浸透力試験が示すように、コエンハンサーシリコーンクリーム技術による角質層バリアへのC14アルコール拡散係数エンハンサーの分配は、カプリリルメチコンなどのシリコーンエモリエントを含めることによって損なわれない。図1は、プロピレングリコール及びシリコーンエモリエントのカプリリルメチコン中のC~C22の脂肪アルコール、脂肪酸、及び脂肪酸エステル拡散係数エンハンサーの溶解度を示す。C~C10の脂肪酸及びアルコール拡散係数エンハンサーはプロピレングリコールに対する可溶性が高いため、皮膚バリアへの浸透力はわずかである。図2に示すように、C12及びC14酸とC14アルコールのみがプロピレングリコールとカプリリルメチコンの両方において適切な溶解度を有し、そのために好適な拡散係数エンハンサーである。図3は、一般的なある範囲のエモリエントエステルとシリコーンエモリエントのカプリリルメチコン中での好適な拡散係数エンハンサーC14アルコールの溶解度を示す。一般的なエモリエントエステル内のC14アルコールの高い溶解度は、角質層バリアへのC14アルコールの分配が、組み込まれる活性成分の皮膚浸透力を5~10倍低減させる程度に損なわれるという仮説にまさしく一致する。
【0018】
英国特許第2549418B号は、活性成分を皮膚の標的部位に効率的かつ予測可能に送達することができる、皮膚浸透力の高い局所クリーム製剤を記載している。また、グリコール-コエンハンサーシリコーンエモリエント/エラストマークリームを皮膚に塗布すると、消費者は、混合したシリコーンエラストマー-シリコーン流体エモリエント連続相の柔らかで滑らかな肌触りを体験する。揮発性シリコーンの消失は迅速に発生して、皮膚への吸収を認識させる。この美容技術は、高級ブランドの化粧品皮膚クリームにおいて広く使用されている。しかしながら、我々の消費者調査では、揮発性物質が失われる際に、消費者は柔らかで滑らかな肌触りを認識及び理解し、皮膚への浸透を認知してはいるが、「でも、本当に良いかどうかは分からない」と付け加えている。
【0019】
ここで、皮膚を天然の健康な状態に修復するだけでなく、治療を確信する理由と主要な治療計画のアドヒアランスを続ける動機付けとを使用者に与えるため、皮膚浸透力の向上と非常に優れた美的感覚に加えて、ニコチンアミド及びポリヒドロキシ酸を含む補助的な使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復システムを伴って主要活性物質(複数可)を含む製剤について説明する。
【0020】
ニコチンアミド、logP O/W -0.38及びポリヒドロキシ酸(ラクトビオン酸/グルコノラクトン、logP O/W -4.8)はどちらも親水性化合物であるため、たとえば、C14アルコール、logP O/W>+4.00などの拡散係数エンハンサーを溶解する能力はほとんどか、若しくは全くない。同じ理由で、両方ともグリコール分散相内に分配され、連続シリコーン相内で極めて低い溶解度を有する。両方ともpH約3.5のpKaを有し、定義上、50%イオン化せず、したがって皮膚への浸透力がより高くなる。しかしながら、pHが低下するにつれて、非イオン化の割合がポリヒドロキシ酸については増加し、ニコチンアミドについては減少する。pHが上昇すると、逆のことが起きる。我々の実施例で実証するように、これにより、たとえば、主要活性物質(複数可)の化学的性質に応じて、pHを最適化する柔軟性が得られる。また、我々のN-VRP製剤コンセプトでは、US10,028,927に記載されるように、任意選択的に、揮発性緩衝剤技術を使用して、異なる個々に最適化されたインパック平衡相pHを実現することができる。
【0021】
上述の問題に鑑み、様々な提案がなされてきたが、従来技術の構成が呈する問題のうちの1以上に対応する改良配合物が依然として必要とされている。これに関して、本発明は、従来技術の構成が呈する問題のうちの1以上に好ましくは対応する配合物を提供することを試みる。
【発明の概要】
【0022】
本発明の第1の態様によると、局所塗布の配合物が提供され、該配合物は、皮膚の局所治療用の主要な活性物質と、1.0~5%w/wのニコチンアミド及び1.0~5%w/wのポリヒドロキシ酸の使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復組み合わせと、一般式:C2n+2(ただし、nは3~5の整数を表す)の構造を有する10~60%w/wの分配係数エンハンサー(PCエンハンサー)と、C12~C14直鎖脂肪酸及びC14直鎖一級アルコールから成る群から選択される拡散係数エンハンサー(DCエンハンサー)と、ジメチコーンマクロマーと、アルキルメチルシロキサン、アリールメチルシロキサン、及びアルキルアリールメチルシロキサンから成る群から選択されるヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエントとを含む第1のジメチコーンマクロマー混合物と、メチルシロキサン化合物と架橋ジメチコーンマクロマーとを含む第2のジメチコーンマクロマー混合物と、を含み、配合物は、15重量%未満の水を含む。
【0023】
好適には、配合物は、1つ以上の活性物質を含む。
【0024】
本発明の配合物は、非常に優れた化粧品及び医薬化粧品技術の使用に関連する美を備えつつ、機能性コエンハンサー活性成分送達システムを含む。また、ニコチンアミド及びポリヒドロキシ酸を含む使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復組み合わせは、皮膚表面を天然の健康な状態に修復し、継続的使用によって使用者に認知され、使用者のアドヒアランスを推し進める。配合物の塗布を含む治療法への患者のアドヒアランスが高まると、医学的な結果も向上する。
【0025】
本発明の別の態様によると、本明細書に記載される配合物と、1以上の薬理的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む化粧品配合物が提供される。
【0026】
治療のために使用される本明細書に開示の配合物が提供される。
【0027】
本発明の別の態様によると、本明細書に記載される配合物の治療上有効量の局所投与を含む、ヒト又は動物の身体の医学的症状を防止し、発生可能性を低減し、緩和又は治療する方法が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によると、ヒト又は動物の身体の医学的症状の予防、緩和、又は治療に使用される本発明に記載の配合物が提供される。
【0029】
医学的症状は、痛み及び/又は炎症、色素沈着、掻痒、にきび、湿疹、乾癬、酒さ、水疱性類天疱瘡などの皮膚水泡性疾患、おむつかぶれ、乾燥肌、菌を含む細菌症状並びに/又は酵母感染症及び皮膚糸状感染症などの皮膚感染症を含むバクテリア症状、皮膚又は粘膜のウィルス感染症、いぼ、乾燥又は老化肌、アンドロジェン欠乏症、免疫症状、そばかす、紫外線角化症、基底細胞及び扁平上皮細胞の皮膚癌及びメラノーマ、脱毛症、並びに放射線療法による皮膚炎のうちの1以上に関連する又はから引き起こされる症状から成る群から選択することができる。医学的症状は一般的には局所塗布によって治療される。
【0030】
本発明の別の態様によると、本明細書に記載される配合物を形成する方法が提供される。配合物は一般的には、生物学的薄膜、具体的には、ヒト又は動物の身体の粘膜を含むヒト又は動物の身体の皮膚に塗布される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明を、添付図面を参照して、例示のために更に説明する。
【0032】
図1】プロピレングリコール及びシリコーンエモリエントのカプリリルメチコン中のC~C22の脂肪アルコール、脂肪酸、及び脂肪酸エステル拡散係数エンハンサーの溶解度を示す。
図2】C12及びC14酸とC14アルコールのみが、プロピレングリコールとカプリリルメチコンの両方において適切な溶解度を有し、このために好適な拡散係数エンハンサーであることを示す。
図3】一般的なエモリエントエステル及びシリコーンエモリエントのカプリリルメチコン中の好適な拡散係数エンハンサーC14アルコールの溶解度を示す。
図4】生体外でのヒトケラチン生成細胞に添加されるNAMに対するセラミド合成の投与反応(図4a)、及び生体外でのNAMに対するPARP-1の投与反応(図4b)を示す。
図5】遅延時間後、8~24時間で達成された定常状態流束(n=6)に関するデータを示す。
図6】クリームの使用時の被験者の体験;美容特性、塗布し易さ、効能、及び耐性を調査したアンケートの結果を示す。
図7】使用した材料を示す。
図8】ニコチンアミドの化学構造と安定度(図8a)と、6ヵ月間の40℃での保管の結果と(図8b)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の態様、実施形態、及び好適な特徴は、明細書を明確かつ簡潔に書くことができるように説明されていると理解されよう。しかしながら、状況が特に反しない限り、態様、実施形態、及び好適な特徴は、本発明により様々に組み合わせる、又は分割することができる。よって、好ましくは、本発明は、本明細書に記載される態様の2以上、3以上、又は4以上の特徴を有するデバイスを提供する。好適な一実施形態では、本発明によるデバイスは、本発明の全ての態様を含む。
【0034】
本明細書の文脈内で、「約」という用語は、±20%、より好ましくは±10%、更により好ましくは±5%、最も好ましくは±2%を意味する。
【0035】
本明細書の文脈内で、「実質的に」という用語は、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、更により好ましくは98%、最も好ましくは99%を意味する。
【0036】
本明細書の文脈内で、「含む」という用語は、「特に含む」を意味し、「のみから成る」を意味すると解釈すべきではない。
【0037】
本明細書の文脈内で、「活性物質」という用語は、薬剤活性を有する分子を意味する。この用語は、薬理活性化合物を含む。
【0038】
「有効」量又は「治療上有効量」とは、信頼できる医学的判断の範囲内で、妥当なメリット/リスク比に相応して、過剰な毒性、炎症、アレルギー反応、あるいはその他の問題又は合併症を起こさずに所望の効果を提供するのに十分である1以上の活性物質の量を意味する。
【0039】
提示されるすべての数値は、好ましくは、提示される数値の10重量%未満と10重量%超を組み込む。
【0040】
分配係数は、平衡状態における2つの相互不混和相の混合物中の物質量の比である。分配係数は以下の式によって算出可能である。
【0041】
partition=[X(phase1)]/[X(phase2)
ただし、Kは分配係数であり、Xは物質であり、X(phase1)は第1の相の物質の量であり、X(phase2)は第2の相の物質の量である。
【0042】
本明細書で使用される際、分配係数(PC)エンハンサーは、配合物の不揮発性残余相と皮膚の角質層バリアとの間の活性物質の分配係数を上昇させ、皮膚又は皮下の目標部位への活性物質の浸透力を高める。
【0043】
本明細書で使用される際、拡散係数(DC)エンハンサーは、皮膚の角質層バリア中の活性物質の拡散係数を上昇させ、皮膚又は皮下の目標部位への活性物質の浸透力を強化する。
【0044】
分配係数(PC)エンハンサーと拡散係数(DC)エンハンサーは、以下のフィックの第1の拡散法則によって定義されるように皮膚又は皮下の目標部位への活性物質の浸透力に影響を及ぼす。
【0045】
F=Cv*PC*DC/h
ただし、Fは流束、つまり、単位時間及び単位面積当たりに角質層を通過する物質の質量であり、CVは不揮発性残余相の溶液中の活性成分の濃度であり、PCは分配係数エンハンサー効果を指し、DCは拡散係数エンハンサー効果を指し、hは角質層バリアの厚さである。
【0046】
好ましくは、フィックの拡散の第一法則の変形が、以下の配合物の設計で使用される。
【0047】
F=~DSvsat sol SCDC/h
ただし、Fは流束、つまり、単位時間及び単位面積当たりに角質層を通過する薬剤の質量であり、DSは不揮発性残余相の溶液中の活性成分の飽和度であり、sat solSCは角質層中の活性成分の飽和溶解度であり(分配係数エンハンサーに影響を受ける)、DCは拡散係数エンハンサー効果を指し、hは角質層バリアの厚さである。
【0048】
本発明の目的上、高揮発性という文言は、皮膚温度の蒸発で5分未満の半減期を有するDow Corning(登録商標)製Q7-9180シリコーン流体(0.65cStヘキサメチルジシロキサンと1.0cStオクタメチルトリシロキサン)、エタノール、イソプロピルアルコール、水などの液体を指す。揮発性という文言は、皮膚温度の蒸発で約1時間の半減期を有するシクロペンタシロキサン(D5)などの液体を指す。不揮発性という文言は、皮膚温度の蒸発で約6~24時間の半減期を有するカプリリルメチコンやポリジメチルシロキサン(Dow Corning製Q7-9120シリコーン流体)などの液体を指す。本発明の配合物は、1日に1又は2回塗布することを目的とする。
【0049】
「不揮発性残余相」という文言は、Dow Corning製Q7-9180シリコーン流体(0.65cStと1.0cSt)、エタノール、イソプロピルアルコール、水などの揮発性溶剤の蒸発後に残る配合物の組成を指し、一般的には活性物質、PCエンハンサー、DCエンハンサー、中間及び高分子量材料を含む。本明細書で使用される際、名目上揮発性シリコーンST、シクロメチコン5-NF、カプリリルメチコンなどのアルキルメチルシロキサンは、局所塗布及び吸収の時間枠内で比較的中間/不揮発性であるとみなす。
【0050】
「カルビノール」という文言は、炭素原子に結合されるヒドロキシル官能基を指すために使用される。炭素原子は、炭素原子(具体的には、炭化水素基の一部を形成する炭素原子)、Si、N、Oなどの非炭素原子に結合することができる。
【0051】
「小アルキル基」という文言は、1~6炭素原子、通常1~4炭素原子の炭素骨格を有するアルキル基を指す。
【0052】
本発明の第1の態様によると、局所塗布用配合物が提供され、局所塗布用配合物は、皮膚の局所治療用の主要な活性物質と、1.0~5%w/wのニコチンアミド及び1.0~5%w/wのポリヒドロキシ酸の使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復組み合わせと、一般式:CH2n+2(ただし、nは3~5の整数を表す)の構造を有する10~60%w/wの分配係数エンハンサー(PCエンハンサー)と、C12~C14直鎖脂肪酸とC14直鎖一級アルコールから成る群から選択される拡散係数エンハンサー(DCエンハンサー)と、ジメチコーンマクロマーと、アルキルメチルシロキサン、アリールメチルシロキサン、及びアルキルアリールメチルシロキサンから成る群から選択されるヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエントとを含む第1のジメチコーンマクロマー混合物と、メチルシロキサン化合物と架橋ジメチコーンマクロマーとを含む第2のジメチコーンマクロマー混合物と、を含み、配合物は、15重量%未満の水を含む。
【0053】
一般に、配合物は、ポリオール-イン-シリコーン分散体クリーム又は美容液である。
【0054】
一実施形態によると、本発明は、活性化合物の局所塗布に適する配合物を提供し、配合物は、担体中の活性化合物を含み、担体は、第二級又は第一級アルコール基を含む分配係数エンハンサー、C12~C14脂肪酸とC14アルコールから成る群から選択される拡散係数エンハンサー、第1のジメチコーンマクロマー混合物、第2の架橋ジメチコーンマクロマー混合物を含む。
【0055】
一般的には、配合物は、担体中の活性物質の溶液、懸濁液、又は分散液を含む。好ましくは、活性成分は溶液中に存在する。
【0056】
本発明の配合物は、活性成分の送達の有効性を実現及び向上させてアドヒアランスを強化させる。具体的には、本発明の配合物は既知の配合物よりも皮膚浸透力が高いために、標的部位での高い治療自由活性物質の濃度を実現及び維持させることができる。一般的には、標的部位での自由活性物質の濃度は、EC50(最大有効濃度の半分)を大きく超過する。標的部位への活性物質への送達効果が最大化されて、有効で確実な投与計画をもたらす。したがって、重篤な症状を治療することができる、あるいは、一般的な患者集団において、より確実な臨床反応を達成することができる。
【0057】
加えて、配合物の使用のアドヒアランスは、肌触りが向上し、塗り込みが知覚されるシリコーン流体及びシリコーンエモリエントの使用により強化される。補助的な使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復システムの継続的な使用により、皮膚の健康だけでなく、信頼し、長期間又は集中した治療期間にわたりアドヒアランスを持続する理由が目に見えて改善される。
【0058】
皮膚活性成分の大半の吸収範囲は、正常な皮膚に塗布される投薬量の1~5%である。浸透可能な皮膚部位では、吸収される投与量が大幅に増大して、局所及び全身副作用につながる。本発明の配合物は、活性物質の投与量を制御して潜在的な副作用を低減するだけでなく、アドヒアランスも向上させる。活性物質の標的部位への送達が本発明の配合物の使用を通じて最適化されるため、配合物に含まれる活性物質の量を、通常は現在の投与量の5~10%まで低減することができる。このため、副作用のリスクと心配が減って医療方法へのアドヒアランスが最大化され、非効率な薬物投与システムの過剰な投与による廃棄物とその関連コストを節減することができる。従来、これは経済的なゴミ問題とみなされてきたが、現在はこれに過剰な薬物を洗い流して環境に放出することから生じる環境汚染問題も加わっている。何よりも、これは重大な治療上の問題である。
【0059】
本発明の配合物は、投薬を低減させるのに十分有効であり、既知の配合物を1日2~6回塗布する必要性を1日1~3回、一般的には1日1回まで低減する。1日1回の治療又は間欠的治療計画は患者と消費者によって広く理解されており、科学上、角質層内の薬物蓄積構造によってサポートされる。本発明の配合物は、治療の有効性を保持しアドヒアランスを向上させつつ、上記投薬計画を可能にする。
【0060】
ユーザは、ジェルと軟膏配合物よりもクリームを好むことが判明している。
【0061】
エモリエントは、有効な分散のために通常は界面活性剤とワックス共賦形剤を必要とするクリーム内の主要な機能美的成分である。エモリエントは、化粧品に展延性、すべり、滑らかさの特性を加えて、アドヒアランスを促す。上述したように、大部分のエモリエントは、媒体の残余不揮発性相中で拡散係数強化賦形剤を可溶化することによって拡散係数強化賦形剤の性能に悪影響を及ぼすと予測される炭化水素構造元素を含有する。
【0062】
配合物は、一般的には、化粧、薬用化粧品、又は製薬活性物質を含む。
【0063】
通常、配合物は、一般式C2n+2(ただし、n=3~5)から成る群から選択される分配係数エンハンサーを含む。
【0064】
通常、配合物はカプリリルメチコン、ラウリルメチコン、ステアリルメチコン、カプリリルトリメチコンから成る群から選択されるヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエント化合物を含む。好適には、ヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエントはカプリリルメチコンである。
【0065】
配合物は、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、エタノール、イソプロピルアルコール、水から成る群から選択される高揮発性溶剤も含むことができる。
【0066】
ヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエント
現在のコエンハンサー技術の制約は、エモリエントを組み込みながら、活性成分の高飽和度だけでなく拡散係数エンハンサーの高飽和度を維持しつつ、皮膚浸透力の最適化を確保できないことである。驚くべきことに、シリコーン中ポリオールエマルジョンは、化学的に異なる賦形剤を組み込むための構造マトリックスを提供することが分かっている。特に、発明者らは、ヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエント賦形剤の化学的種類が、シリコーン油との融和性により非常に重要であることを発見した。
【0067】
本発明の配合物は、任意で、置換ヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエントを含む。本発明の配合物で使用されるエモリエントは、炭化水素とメチルシロキサン骨格構造元素を含有する。メチルシロキサン骨格は軽く、滑らかで、粉状の感覚を足し、結果として生じる配合物の美しさを向上させることに貢献する。メチルシロキサン骨格は、直鎖-、分岐-、又はシクロ-シロキサン化合物の形状をとることができる。エモリエント化合物のヒドロカルビル部は飽和又は不飽和させることができ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、カルボシクリル、たとえばヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール基を含むことができる。エモリエント化合物のヒドロカルビル部は直鎖又は分岐とすることができ、置換又は無置換とすることができる。
【0068】
一実施形態によると、ヒドロカルビルメチルシロキサン基の1以上の炭素原子又はシリコン原子はそれぞれ小ヒドロカルビル基、通常小アルキル基(好適には、1~6炭素原子)、シクロアルキル基、C~Cアルコキシル、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアン、チオ、アミノ、ニトロ、オクソ、ヒドロキシルから成る群のうちの1以上と置換することができる。
【0069】
通常、ヒドロカルビルメチルシロキサン基は、1以上の小アルキル基、ハロゲン基及び/又はヒドロキシル基、一般的には1以上の小アルキル基と置換される。
【0070】
一般的には、ヒドロカルビルメチルシロキサン基は置換されない。
【0071】
ヒドロカルビルメチルシロキサンは、一般的には下記の構造を有する。
【0072】
【化1】
ただし、各R基はヒドロカルビル基又は水素を表し、少なくとも1つのR基はメチル基を表し、少なくとも1つのR基はヒドロカルビル基を表す。
【0073】
一般的には1~3つのR基はそれぞれ、2以上の炭素原子を含むヒドロカルビル基を表し、通常、2以上の炭素骨格を有するアルキル基、アリール基、アリール基に結合されるアルキル基から成る群から選択される。通常、該又は各アルキル基は小アルキル基である。好適には、1又は2つのR基はそれぞれ2以上の炭素原子を含むヒドロカルビル基を表す。
通常、各R基は、2以上の炭素原子を含むメチル又はヒドロカルビル基を表す。好適には、各R基は、メチル、2以上の炭素骨格を有するアルキル基、アリール基、又はアリール基に結合されるアルキル基を表す。通常、該又は各アルキル基は小アルキル基である。
一実施形態によると、ヒドロカルビルメチルシロキサンは、以下に示すような構造を有する化合物を指す。
【0074】
【化2】
【化3】
ただし、Rはヒドロカルビル基、一般的にはアルキル又はアリール基を表す。
【0075】
アルキルメチルシロキサン、アリールメチルシロキサン、アルキルアリールメチルシロキサンに特に言及することができる。一実施形態によると、エモリエントは、アルキルメチルシロキサン又はアルキルアリールメチルシロキサンである。適切なエモリエントは、セチルジメチコーン、ステアリルジメチコーン、フェニルジメチコーン、カプリリルメチコン(たとえばDow Corning製TI-2021AMS)、ミリスチルメチコン、ステアリルメチコン、ラウリルメチコン(たとえばSiltec製)、カプリリルトリメチコン(たとえばClariant製)、デカメチルシクロペンタシロキサンを含む。
【0076】
任意のヒドロカルビルメチルシロキサン(アルキルメチルシロキサンとアルキルアリールメチルシロキサンを含む)の主要な化学的性質と物質の状態は、炭化水素とメチルシロキサンの比及び炭化水素の鎖長から推定することができる。よって、適切なアルキル及びアルキルアリールメチルシロキサンの選択原理は当業者によって認識されている。一般的には、低い割合の炭化水素と短い炭化水素鎖長のために液体であるアルキルメチルシロキサン及びアルキルアリールメチルシロキサンがエモリエントとして好適である。上記液体アルキルメチルシロキサンはカプリリルメチコン、ラウリルメチコン、ステアリルメチコン、カプリリルトリメチコンを含む。
【0077】
通常ヒドロカルビルメチルシロキサン化合物は、1000未満、好適には、800未満、一般的には500未満の数平均分子量を有する。一実施形態によると、ヒドロカルビルメチルシロキサン化合物は100~700、一般的には200~400の数平均分子量を有する。
【0078】
活性化合物と機能拡散係数(DC)エンハンサーの溶解度を研究して、本発明での使用に適するヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエントを選択することができる。本発明の配合物は2以上のメチルシロキサン含有化合物、特に、2以上のヒドロカルビルメチルシロキサン、通常2以上のアルキル-、アリール-、又はアリールアルキル-メチルシロキサン化合物(一般的には1000未満の数平均分子量を有する)を含む。
【0079】
一般的にはヒドロカルビルメチルシロキサンは、カプリリルメチコンから成る、あるいはカプリリルメチコンを含む。
【0080】
好適には、配合物は、シクロペンタシロキサン、特にデカメチルシクロペンタシロキサンなどの1以上のシクロメチコン化合物を含む。
【0081】
アルキルメチルシロキサンエモリエントカプリリルメチコンを含む本発明での使用に適した液体シリコーン中の典型的なコルチコステロイドプロピオン酸フルチカゾン(FP)とフランカルボン酸モメタゾン(MF)の飽和溶解度は十分に低い。よって、活性化合物の投与量を大幅に低減しても、エモリエントが存在する状態で、不揮発性残余相における活性化合物の高飽和度を達成することができる。
【0082】
拡散係数強化賦形剤
上述したように、拡散係数強化賦形剤(DCエンハンサー)は一般的に、C~C22炭化水素のアルコール、酸、又はエステル誘導体を含む。図1~3は、カプリリルメチコン、分配係数エンハンサーのプロピレングリコール、炭化水素ベースのエモリエントエステル中の、23~25℃下での直鎖飽和C~C22アルコール、酸及びエステル誘導体、及び5-NF(デカメチルシクロペンタシロキサン、シリコーン流体)の溶解度を示す。
【0083】
酸とアルコールシリーズの図1では、炭素鎖長がC16を超えて増加するにつれ、C18~C22でカプリリルメチコン中の溶解度は0.1%w/w未満まで低下するため、こうした大きな炭素鎖長は低溶解度-溶解の制約のために本発明の配合物中のDCエンハンサーとして使用するには不適切だとみなすことができる。逆に、C及びC10アルコールやC及びC10酸などの小さな炭素鎖長酸及びアルコールはカプリリルメチコンを含むヒドロカルビルメチルシロキサンに非常に溶けやすいと考えられるため、拡散係数強化賦形剤としての性能に悪影響が及ぶ。同様に、中鎖(たとえば、C14~C16)イソプロピルエステルはカプリリルメチコンなどのヒドロカルビルメチルシロキサンに非常に溶けやすいため、DCエンハンサーとしての性能を可能にする。これらの種類のDCエンハンサーのどちらの場合も、最大50%のDCエンハンサーが不揮発性残余相で飽和する、あるいはほぼ飽和するのに必要である。対照的に、C12~C14酸とC14アルコールはカプリリルメチコン中の適切な溶解度を有する。図3が示すとおり、C14アルコールは、ヒドロカルビルメチルシロキサンでも5-NF(デカメチルシクロペンタンシクロヘキサン)でも適切な溶解度を有する。
【0084】
図1が示すように、分配係数(PC)エンハンサープロピレングリコール中の短鎖C~C10脂肪酸と短鎖C~C12脂肪アルコールの溶解度は高すぎると考えられるため、DCエンハンサーであるアルコールと脂肪酸は悪影響を受けるであろう。逆に、C16~C22の溶解度は十分な性能を上げるには低すぎる。対照的に、C12~C14酸とC14アルコールはプロプレングリコール中の適切な溶解度を有する。
【0085】
図2に詳細に示すように、C12~C14酸とC14アルコールのみがプロピレングリコールとカプリリルメチコンで適切な総溶解度を有する。
【0086】
図3は、一般的なエモリエントエステル及びシリコーンエモリエントのカプリリルメチコン中の好適な拡散係数エンハンサーのC14アルコールの溶解度を示す。一般的なエモリエントエステル内のC14アルコールの高い溶解度は、角質層バリアへのC14アルコールの分配が、組み込まれる活性成分の皮膚浸透力を5~10倍低減させる程度に損なわれるという仮説にまさしく一致する。
【0087】
プロピレングリコール、たとえばC14アルコール拡散係数エンハンサーとカプリリルメチコンとを含む単純なコエンハンサーシステムの概要設計の1例として、我々はまず最終配合物(その他の場合は非溶剤から成る)中のプロピレングリコールとカプリリルメチコンの濃度がそれぞれ25%であると考える。これに基づくと、これらの相の両方を飽和させるC14アルコールの総量は2.44%/4+2.30%/4=1.185%、約1.2%となる。経験に基づき、1~5%w/wの範囲、したがって、選択された拡散係数エンハンサーにとって最適の範囲の濃度の拡散係数エンハンサーが必要とされる。
【0088】
本発明の配合物で使用されるDCエンハンサーは一般的には、C12~C16酸とC12~C14アルコール、通常C12~C14直鎖脂肪酸とC14直鎖第一級アルコールから成る群から選択される。選択された化合物の基は好適には、ヒドロカルビルメチルシロキサンと分配係数エンハンサーの両方に溶けるため、強力な拡散係数強化と効率的な活性物質の表皮送達とが可能になる。
【0089】
本発明の配合物で使用される脂肪酸は、12~16の炭素原子、好ましくは12~14の炭素原子の炭素骨格を有する。本発明の配合物で使用されるアルコールは、12~14の炭素原子、一般的には14炭素原子の炭素骨格を有する。いくつかの実施形態では、脂肪酸/アルコールは、追加の炭素原子を含むことができる炭素骨格からの置換基を含むことができる。特に、脂肪酸/アルコールは1~3の炭素原子を含むヒドロカルビル置換基を含むことができる。
【0090】
一般的には、本発明の配合物で使用される脂肪酸/アルコールは置換されない。
【0091】
DCエンハンサーは一般的には、任意で飽和又は不飽和とすることができる置換C12~C16脂肪酸を含む。一般的には、本発明の配合物で使用される脂肪酸/アルコールは飽和している。
【0092】
通常、DCエンハンサーは、12~14の炭素原子の炭素骨格を有する飽和脂肪酸である。
【0093】
一実施形態によると、脂肪酸/アルコールは不飽和であり、該又は各二重結合に隣接する炭素骨格内の2つの炭素分子は、シス構造又はトランス構造、一般的にはトランス構造をとることができる。
【0094】
もしくは、DCエンハンサーは任意で、飽和又は不飽和させることができる置換C14アルコールであってもよい。一般的にはDCエンハンサーは直鎖第一級アルコールである。
【0095】
一般的にはDCエンハンサーは、12~14の炭素原子、一般的には14の炭素原子の炭素骨格を有する飽和アルコールである。1実施形態によると、酸又はアルコールDCエンハンサーは置換することができる。1以上の炭素原子はそれぞれ、1以上のC~Cヒドロカルビル基、一般的にはC~Cアルキル基と置換することができる。
【0096】
適切な置換C12~C16酸とC12~C14アルコールは、ヒドロカルビルメチルシロキサン及び分配係数エンハンサーでの総合溶解度によって容易に特定することができる。
【0097】
本発明の一実施形態によると、DCエンハンサーは、C12~C14直鎖脂肪酸とC12~C14アルコールから成る群、特に、C12~C14直鎖脂肪酸とC14直鎖第一級アルコールから成る群から選択される。
【0098】
一般的にはDCエンハンサーは、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリスチルアルコールから成る群から選択される。
【0099】
必要なDCエンハンサーの量は、配合物の他の成分、特に上述したように、使用されるヒドロカルビルシリコーンエモリエントとPCエンハンサーの正体と量に依存する。
【0100】
一般的には、本発明の配合物は、約10%w/w未満、通常約5%w/w未満、好適には、約4%w/w未満のDCエンハンサーを含む。配合物は、約0.5%w/w以上、通常約0.7%w/w以上、一般的には約1%w/w以上のDCエンハンサーを含む。
【0101】
一実施形態によると、配合物は、10%w/w未満のDCエンハンサー、一般的には1~4%w/w、通常2%w/w未満、適切には0.5~2%w/wのDCエンハンサーを含む。
【0102】
分配係数強化賦形剤
分配係数エンハンサー(PCエンハンサー)を含めることで、角質層バリア中の活性物質の溶解度が向上し、皮膚浸透力が高まる。
【0103】
本発明の配合物は一般的には、少なくとも1のPCエンハンサー、特に、少なくとも1のOH-末端PCエンハンサーを含む。一般的にはPCエンハンサーは、第一級アルコール又は第二級アルコール、特に、ジオール又はポリオール化合物である。特に、PCエンハンサーは一般式C2n+2の構造を有し、ただしnは3~6の整数である。
【0104】
通常、PCエンハンサーは、1500以下、通常750以下、好適には、150以下の数平均分子量を有する。
【0105】
通常、PCエンハンサーは、(一般名及びIUPAC名):プロピレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、n=3;ブチレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、n=4;又はペンチレングリコール、ペンタン1,5ジオール、n=5である。
【0106】
一般的には、分配係数エンハンサーはプロピレングリコールである。
【0107】
一般的には、第2の相互混和性PCエンハンサー/補助溶剤は、残余相中の活性成分の飽和度を調節するために製剤に存在する。これは、ジオール、トリオール、アルコール、エーテルアルコール、又はアルキルピロリドンの形状をとることができる。適切なジオールは一般式C2n+2である(n≧6)。適切なアルコールは一般式C2n+2Oである(ただしn=2又は3)。適切なINCIリスト上のエーテルアルコールは一般式C2n+2であり、たとえば、ジプロピレングリコールC14;トランスクトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)C14;ブトキシジグリコールC16;ジエチレングリコールC10;ジメトキシジグリコールC14、メトキシジグリコールC12である。適切なINCIリストに上がったエーテルアルコールは、一般式C2n+2O2であり、たとえば、ブトキシエタノールC14;エトキシエタノールC10;エチルヘキサンジオールC18;メトキシエタノールC、メトキシイソプロパノールC10である。適切なアルキルピロリドンはN-メチルピロリドンである。適切なトリオールはグリセロールである。
【0108】
必要なPCエンハンサーの量は、必要な皮膚浸透力の向上の程度と、配合物のその他の成分、特に、使用されるヒドロカルビルシリコーンエモリエントとDCエンハンサーの正体及び量に依存する。
【0109】
一般的には本発明の配合物は、約70%w/w未満、好適には約50%w/w未満、通常約40%w/w未満、より好適には約30%w/w未満のPCエンハンサーを含む。配合物は好適には、約10%w/w以上、通常約20%w/w以上のPCエンハンサーを含む。
【0110】
一実施形態によると、配合物は10~60%w/wのPCエンハンサーを含む。
【0111】
第1のジメチコーンマクロマー混合物
第1のジメチコーンマクロマー混合物は、ジメチコーンマクロマーと、アルキルメチルシロキサン、アリールメチルシロキサン、アルキルアリールメチルシロキサンから成る群から選択されるヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエントとを含む。
【0112】
第1のジメチコーンマクロマー混合物は一般的にはポリグリコールジメチコーンマクロマーを含む。
【0113】
第1のジメチコーンマクロマー混合物は通常、1000超の数平均分子量(通常2000超)を有するポリグリコールジメチコーンマクロマー界面活性剤と、500未満の数平均分子量を有するヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエント(一般的にはアルキルメチルシロキサン)とを含む。
【0114】
第1のジメチコーンマクロマー混合物は、5~30%w/w、一般的には10~20%w/w、通常12~19%w/wのポリグリコールジメチコーンマクロマー界面活性剤を含むことができる。
【0115】
一般的には、ポリグリコールジメチコーンマクロマー界面活性剤は、1以上のポリアルキルシロキサン部(一般的には1以上のジメチルシロキサン部)と1以上のオキシプロピレン又はオキシエチレン部を含む。好適には、ジメチコーンマクロマーは1以上のエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーを含むことができる。
【0116】
特に、第1のポリグリコールジメチコーンマクロマー界面活性剤混合物は、ポリアルキレンオキシド化合物(一般的にはポリエチレングリコール化合物、ポリプロピレングリコール化合物、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー)と架橋結合されるポリグリコールジメチコーンマクロマーを含む。
【0117】
第1のジメチコーンマクロマー混合物は、PEGジメチコーンPPGクロスポリマーとPEGジメチコーンビス-イソアルキルPPGクロスポリマーから成る群から選択されるポリグリコールジメチコーンマクロマー界面活性剤を含むことができる。
【0118】
一般的にはジメチコーンマクロマーは1以上の末端カルビノール基を含む。
【0119】
ジメチコーンマクロマーは、様々な重量%の非シロキサン単位を含有する分子量の異なるジヒドロキシ末端ブロックコポリマーオキシエチレン-ジメチルシロキサン-オキシエチレン;オキシプロピレン-ジメチルシロキサン-オキシプロピレン、又はカプロラクトン-ジメチルシロキサン-カプロラクトンの構造を有することができる。任意で、上記ブロックコポリマーはペンダントオキシアルキレン基を含むことができる。通常、ブロックコポリマーは架橋結合することができる。
【0120】
ジメチコーンマクロマーは、20~70重量%の非シロキサン含有物を有することができる。
【0121】
該又は各ジメチコーンマクロマーの数平均分子量は一般的には800以上、好適には1000以上、通常1000~10000、好適には2000~7000である。
【0122】
一実施形態によると、ジメチコーンマクロマーの数平均分子量が大きいほど、非シロキサン重量%含有量が大きくなる。
【0123】
ジメチコーンマクロマーは、2~5のポリオキシアルキレン基、一般的には2~5のオキシプロピレンに結合されるジメチコーン含有中央結合基の形状をとることができる。一般に、ジメチコーンマクロマーは、3つ、4つ、又は5つのポリオキシアルキレン基を含む。
【0124】
一般に、ポリオキシアルキレン基は、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのポリマー及び/又はコポリマーである。ポリオキシアルキレン基は、一級若しくは二級のヒドロキシル基又はそれらの混合物を含むことができる。
【0125】
一実施形態によると、ジメチコーンマクロマーは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシエチレンとオキシプロピレンのコポリマーから成る群から選択される1以上のペンダントポリオキシアルキレン基を有するジメチコーン骨格を含む。一般に、ペンダントポリオキシアルキレン基は、5~50の繰り返し単位、好適には10~30の繰り返し単位、通常15~20の繰り返し単位を含む。
【0126】
通常、ジメチコーンマクロマー界面活性剤は、1以上のペンダントオキシエチレン基と1以上のペンダントオキシプロピレン基とを有するジメチコーン骨格を含む。
【0127】
たとえば、ジメチコーンマクロマーは、以下のペンダントポリマーPEG/PPG-18/18ジメチコーンの一般構造を有することができる。ただし、mとnはそれぞれ10~30の整数、好適には18を表す。
【0128】
【化4】
【0129】
もしくは又は更に、ジメチコーンマクロマーは、オキシエチレンとオキシプロピレンの1以上のペンダントブロックコポリマーを有するジメチコーン骨格を含むことができる。たとえば、ジメチコーンマクロマーは以下の一般構造を有する。ただし、mとnはそれぞれ10~30の整数であり、好適にはm=20、n=15である。上記マクロマーは、Silsoft(登録商標)SF1540として市販されている。
【0130】
【化5】
【0131】
もしくは又は更に、ジメチコーンマクロマーは、1以上のオキシエチレンエンドブロック、一般的には1以上のPEGエンドブロック、通常2つのPEGエンドブロックを有するジメチコーン骨格を含むことができる。たとえば、エンドブロックコポリマーのビス-PEG-10ジメチコーンを以下に示す。
【化6】
【0132】
好都合なことに、ジメチコーンマクロマーは架橋結合される。特に、第1のジメチコーン骨格は、1以上の架橋基、たとえば置換又は非置換ヒドロカルビル基、特に置換又は非置換アルキレン基を通じて第2のジメチコーン骨格と架橋結合される。特に、架橋基は、非置換アルキレン基とオキシアルキレン基、特に、架橋基は、非置換アルキレン基とオキシアルキレン基、特に、1以上のオキシエチレン又は1以上のオキシプロピレン基から成る群から選択することができる。一般的には、オキシアルキレン架橋基は5~50反復基を含む。ジメチコーンマクロマーは、ジメチコーン骨格と架橋結合しない1以上のペンダントオキシアルキレン基も含むことができる。
【0133】
ジメチコーンPEG-10クロスポリマーはポリエチレングリコール架橋ジメチコーンマクロマーの1例である。
【化7】
【0134】
PEG-12ジメチコーンクロスポリマーはペンダントポリエチレングリコール基を有する炭化水素ジエン架橋コポリマー乳化剤の1例である。
【化8】
【0135】
一実施形態によると、ジメチコーンコポリマーは、オキシアルキレン(特に、オキシプロピレン又はオキシエチレン基)を含む少なくとも1の側基を含む第1のジメチコーン骨格と、それに架橋結合されるオキシアルキレン(特に、オキシプロピレン又はオキシエチレン基)を含む少なくとも1つの側基を含む第2のジメチコーン骨格とを含み、架橋基はオキシアルキレン基(特に、オキシプロピレン又はオキシエチレン基)を含む。繰り返しオキシアルキレン基は、置換又は非置換ヒドロカルビル基、特に、置換又は非置換アルキル基(一般的にはCアルキル基)を通じて該又は各ジメチコーン骨格に結合させることができる。
【0136】
一般的には側基は、5~50、一般的には10~15の繰り返し基を含むオキシエチレン基である。
【0137】
通常、架橋基は、5~50の繰り返し基、一般的には15~30の繰り返し基を含むオキシプロピレン基である。
【0138】
PEG-12ジメチコーンPPG20クロスポリマーは、ポリプロピレングリコールとペンダントポリエチレングリコールを架橋結合したジメチコーンマクロマーとして使用される適切なシリコーンポリエーテルの1例である。
【化9】
【0139】
適切な架橋シリコーンポリエーテルの別の例を以下に示す。
【化10】
【0140】
これらのPPG架橋PEG-12ペンダントジメチコーンクロスポリマーは、溶存C12-C14酸とC12アルコール機能賦形剤とを含有するシリコーン油非水性エマルジョン中のプロピレングリコールを安定化させるのに特に有益である。
【0141】
もしくは又は更に、ジメチコーンマクロマーは、以下に示す一般構造のイオンペンダント鎖を有するジメチコーン骨格を含むことができる。ただし、Xは親水性アミン、第四級アミン、又は官能基を表す。
【化11】
【0142】
特に好ましいのはピロリドンカルボン酸官能化ジメチコーンマクロマー、具体的にはINCI名PCAジメチコーンである。このイオンジメチコーンマクロマーは特にPPG架橋PEG-12ペンダントジメチコーンクロスポリマーと組み合わせて、溶存C12~C14酸とC12アルコール機能賦形剤を含有するシリコーン油非水性エマルジョン中でプロピレングリコールを安定化させるのに適する。
【化12】
【0143】
一実施形態によると、本発明の配合物は、2以上のジメチコーンマクロマー、一般的には2以上のポリジアルキルシロキサンジオール化合物又はイオンジメチコーンマクロマー界面活性剤を含む。
【0144】
一般的にはジメチコーンマクロマーは、ヒドロカルビルメチルシロキサン化合物中に分散、溶存、又は懸濁される、又はその逆である。
【0145】
特に、該又は各ジメチコーンマクロマーは、カプリリルメチコン、ラウリルメチコン、ステアリルメチコン、又はカプリリルトリメチコンなどのアルキルメチルシロキサン中に分散、溶存、又は懸濁させることができる。
【0146】
もしくは又は更に、該又は各ジメチコーンマクロマーは、メチルシロキサン化合物、たとえば、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシクロメチコン中に分散、溶存、又は懸濁させることができる。
【0147】
一実施形態によると、本発明の配合物は、2以上のシロキサン含有化合物、具体的には、1以上のアルキル-メチルシロキサン、アリール-メチルシロキサン、及び/又はアルキルアリール-メチルシロキサン化合物(一般的には1000未満の数平均分子量を有する)と、1以上のジメチコーンマクロマー(通常1000超、好適には2000超の数平均分子量を有する)、一般的には2以上のポリアルキルシロキサンジオール化合物とを含む。
【0148】
一般的には配合物は、1以上のアルキルメチルシロキサン化合物及び/又はアルキルアリールメチルシロキサン化合物(一般的には1000未満の数平均分子量を有する)と1000超の数平均分子量を有する1以上のジメチコーンマクロマーとの混合物を含み、混合物は、50~95%w/wの1000未満の数平均分子量を有するアルキル及び/又はアルキルアリールメチルシロキサン化合物と、5~50%w/wのジメチコーンマクロマー界面活性剤とを含む。
【0149】
一実施形態によると、ヒドロカルビルメチルシロキサン化合物、アルキルシロキサン化合物(一般的にはメチルシロキサン化合物、特に、シクロメチコン化合物)、2つのポリアルキルシロキサンマクロマーを含む配合物が提供される。
【0150】
本発明の配合物は、通常、カプリリルメチコン、ラウリルメチコン、ステアリルメチコン、カプリリルトリメチコン、デカメチルシクロペンタシロキサンから成る群から選択される1以上のアルキル-メチルシロキサン、アリール-メチルシロキサン、又はアルキルアリール-メチルシロキサン化合物;一般的には1以上のポリアルキルシロキサン部(一般的には1以上のジメチルシロキサン部)と1以上のオキシプロピレン又はオキシエチレン部とを含む1以上のジメチコーンマクロマーを含むことができる。通常、ジメチコーンマクロマーは1以上のエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーを含む。
【0151】
一実施形態によると、本発明の配合物は800以下の数平均分子量を有するアルキルメチルシロキサン及び/又はアリールアルキルメチルシロキサンと1000超の数平均分子量を有する架橋ジメチコーンマクロマーとを含み、上記ジメチコーンマクロマーは1以上のエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーを含む。
【0152】
一般的には、ヒドロカルビルメチルシロキサン化合物とジメチコーンマクロマーの混合物の粘度は、200000cSt超、通常250000~1000000cStである。
【0153】
第1のジメチコーンマクロマー混合物は、カプリリルメチコンとポリエチレングリコールジメチコーン/ポリプロピレングリコール架橋ポリマーの混合物を含むことができる。適切な配合物は、Dow Corning製のINCI名カプリリルメチコンPEG-12ジメチコーン/PPG-20クロスポリマー(EL-7040ヒドロエラストマー混合物)から入手可能である。
【0154】
本発明の配合物は、アルキルメチルシロキサン(一般的には1000未満、通常400未満の数平均分子量)とポリアルキルシロキサンジオール化合物の混合物を含むことができる。
【0155】
第2のジメチコーンマクロマー混合物
本発明の製剤は、メチルシロキサン化合物と架橋ジメチコーンマクロマーとを含む第2のジメチコーンマクロマー混合物を含む。
【0156】
本発明の配合物は、1000未満の数平均分子量を有するアルキルシロキサン化合物(通常シクロメチコン化合物、特に、アルキルシクロメチコン化合物)と1000超の数平均分子量を有するジメチコーンマクロマー、通常架橋ポリアルキルシロキサンジオールとの混合物を含むことができる。適切な配合物は、Dow Corning製の商標名ST Elastomer10から入手可能である。
【0157】
第1及び第2のジメチコーンマクロマー混合物
一実施形態によると、本発明の配合物は、ヒドロカルビルメチルシロキサン化合物(一般的にはアルキルメチルシロキサン又はアルキルアリールメチルシロキサン)とポリグリコールジメチコーンマクロマー、通常、架橋ポリアルキルシロキサンジオール化合物とを含む第1のジメチコーンマクロマー混合物;メチルシロキサン化合物(特に、メチルシクロメチコン化合物)とジメチコーンマクロマー、通常架橋ポリアルキルシロキサンジオール化合物とを含む第2のジメチコーンマクロマー混合物を含むことができる。
【0158】
一実施形態によると、本発明の配合物は、50%w/w以下、通常10~40%w/w、好適には20~30%w/wのヒドロカルビルメチルシロキサンを含む。
【0159】
一実施形態によると、配合物は、40%w/w未満、一般的には20%w/w以下、好適には20%w/w以下のアルキルシロキサン含有化合物を含む。
【0160】
配合物は、30%w/w以下のジメチコーンマクロマー、特に架橋ポリアルキルシロキサンジオール化合物を含むことができる。
【0161】
一実施形態によると、本発明の配合物は、30%w/w以下、通常20%w/w以下、好適には10%w/w以下の1000以下の数平均分子量を有するヒドロカルビルメチルシロキサン、一般的には1以上のアルキルメチルシロキサン又はアルキルアリールメチルシロキサン化合物を含む。
【0162】
一実施形態によると、本発明の配合物は、30%w/w以下、通常20%w/w以下、好適には10%w/w以下の1000超、一般的には2000超の数平均分子量を有するジメチコーンマクロマー界面活性剤を含む。
【0163】
1実施形態によると、第2のジメチコーンマクロマー混合物は、1000未満の数平均分子量を有するメチルシロキサン化合物と、1000超、一般的には2000超の数平均分子量を有する架橋ポリアルキルシロキサンジオールジメチコーンマクロマーとを含む。
【0164】
特に、第2のジメチコーンマクロマー混合物は、5~30%w/w、一般的には10~20%w/w、通常12~19%w/wの架橋ジメチコーンマクロマーを含むことができる。
【0165】
配合物は、5~45%w/w、通常10~40%w/w、一般的には20~30%w/wの第2のジメチコーンマクロマー混合物を含むことができる。
【0166】
一般的には第1及び第2のジメチコーンマクロマーは、3:1~0.6:1、理想的には、1.5:1の比で混合される。
【0167】
第1の架橋ポリアルキルシロキサンジオール化合物は、アルキル又はアルキルアリールメチルシロキサンとジメチコーンマクロマーを含む混合物の形状をとることができ、第2の架橋ポリアルキルシロキサンジオールは、アルキルシクロメチコン化合物などのアルキルシロキサン化合物とジメチコーンマクロマーを含む混合物の形状をとることができる。
【0168】
一実施形態によると、第1の架橋ポリアルキルシロキサンジオール化合物は、17.5~19.50%のPEG-12ジメチコーン/PPG-20クロスポリマーを含むDow Corning製の商標名EL-7040ヒドロエラストマーブレンドとして販売されているようなPEGジメチコーン/PPGクロスポリマーであってもよい。
【0169】
通常、第2のジメチコーンマクロマー混合物は、シクロペンタシロキサンなどのシリコーン流体内で膨張するジメチコーン架橋ポリマーを含む。上記ジメチコーンマクロマー混合物は、乾燥した滑らかさと脂っぽくない肌触りをもたらしがちである。シリコーン中水又はシリコーン中ポリオールエマルジョンの連続相を濃縮する際、それらは物理的安定性を高め、クリーミングと相分離を低減するのに役立つ。第2の架橋ポリアルキルシロキサンジオール化合物は、デカメチルシクロペンタシロキサン中に12.5%高分子量シリコーンエラストマーを含むDow Corning製の商標名ST Elastomer10として販売されるようなシクロペンタシロキサンとジメチコーンクロスポリマーの混合物の形状をとることができる。
【0170】
ニコチンアミド及びポリヒドロキシ酸を含む補助的な使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復システム
ナイアシンアミド及び皮膚、美容用途。
美容及び医療皮膚学における局所又は経口投与でのニコチンアミド(NAM)の使用は、約50年前に遡り、いくつかの主要な研究で文書化されている。
【0171】
ほとんどの場合、NAMは、美容目的に局所で使用されている。NAMは、生体外で1~10μMの低濃度でヒトケラチン生成細胞(最大反応75%~100%、1~10μmolのL-1;(μM))中で培養し、生体内で人に局所で使用され、セラミド及び他の角質層脂質の生合成を最大5倍まで大幅に増大させて、皮膚バリア機能を向上させる。図4aは、Tanno O et al.(British Journal of Dermatorogy 2000;143:524-531)から、生体外でヒトケラチン生成細胞に添加されるNAMに対するセラミド合成の投与反応を示す。
【0172】
これと一致して、Soma Y et al.(Int J Dermatol.2005年3月;44(3):197-202)は、2%NAM化粧クリームが、28人のアトピー皮膚炎患者群において標準的なワセリンよりも効果的なモイスチャライザーであると発見した。同様に、Draelos ZD et al.(J Cosmet Laser Ther.2006年6月;8(2):96-101)は、2%NAM含有顔用モイスチャライザーが、酒さの被験者の皮膚バリアを改善させたと非治療対照試験で報告した。また、Kawada et al.(J Dermatol.2008年10月;35(10):637-42)は、プラシーボ対照と比較して、4%NAMを含有する化粧品の顔の皺予防効果を実証した。最後に、広範な研究で、WohlrabとKreft(Skin Pharmacol Physiol.2014;27(6):311-5)は、NAMの痒み止め効果は主にバリア保護/回復効果に基づくと結論付けている。
【0173】
ポリヒドロキシ酸及び皮膚、美容用途
ラクトビオン酸及びグルコノラクトンを代表とするポリヒドロキシ酸(PHA)は、非常に有効な皮膚モイスチャライザー及び抗老化化合物であり(Grimes et al.,Cutis.2004年2月;73(2 Suppl):3-13)、大きな皮膚刺激なくこれらの効果を達成する(Tasic-Kostov et al.,J Cosmet Dermatol.2019;18(6):1705-1710)。
【0174】
基本機構の1つは、たとえば、セリンプロテアーゼ活性を阻害する角質層(SC)深部の酸性化である。Hachem JP et al.(ポリヒドロキシ酸を使用する角質層膜領域の急性酸性化は、脂質処理を向上させ、コルネオデスモソームの劣化を抑制する。J Invest Dermatol.2010年2月;130(2):500-10)は、10%PHA(ラクトビオン酸)をネズミの脇腹の皮膚に塗布し、0.5~1.0pH単位で全てのSC深度でpHを低下させることができた。GB2562270Aにおいて、我々は、プロピレングリコール/ミリスチルアルコール(C14アルコール)コエンハンサー非シリコーンクリーム中の5%PHA(ラクトビオン酸)が、pH生体内で最大1.5pH単位、ヒトのSCを低下させ得ることを実証することができた。結論として、5%PHAは、ヒト角質層においてpH範囲3~4で発生するセリンプロテアーゼ活性を阻害するのに最適である。
【0175】
角質層のセリンプロテアーゼ活性の上昇は、重要な脂質処理酵素の分解、したがって、必須角質層脂質の合成の抑制、更には細胞間を結合するコルネオデスモソームの作用による角質層の一体性/結合の低減をもたらす。
【0176】
これらの効果は、セラミド/必須脂質合成を高めるように作用するNAMの効果を完全に補完する。自然が教示するように、システムを制御下に保つにはポジティブ及びネガティブフィードバックループが必要とされ、たとえば、皮膚発赤などの症状があるとき、ポジティブフィードバックループを増大させ、ネガティブフィードバックループを減少させることによって正常状態を回復することができる。
【0177】
皮膚学における高用量送達)局所ナイアシンアミド(NAM)の治療可能性
2017年初頭、Limeway Pharma Design(LPD)は、LPDプラットフォームのグリコール-in-シリコーンクリームコエンハンサー技術に組み込まれるNAMの皮膚治療可能性に関する文献調査を行った。ストリング(ナイアシンアミド又はニコチンアミド)及び(皮膚又は皮膚科学又はホワイトニング又は黒皮症又は紫外線又は化学線又はメラノーマ又は湿疹又は乾癬)をPubMedに入力したところ、1,787のヒットがあり、そのうち101が関連性があるとみなされて、データベース「ニコチンアミド」に入力された。
【0178】
皮膚への局所ナイアシンアミド(NAM)(高用量、7.5~10%)の生物学的影響は、DNA修復酵素ポリ(ADP)リボースポリメラーゼ(PARP-1)にとって唯一の基質であり、50μMの濃度でPARP-1を66%阻害する(Park J,Photochem Photobiol.2010;86(4):942-948)。図4bは、Park J、2010から、生体外NAMに対するPARP-1阻害の投与反応を示す。50~100μMのNAMの濃度が有意のPARP-1阻害に必要であると予測される。したがって、皮膚バリア機能を向上させ、健康な皮膚を取り戻すために、セラミド及びその他の角質層脂質の生合成の増強に関連付けられるのは、1~10μmolのL-1(μM)の濃度範囲の少なくとも5~10倍である。
【0179】
NAMのPARP-1阻害はNFκB媒介転写を制御するため、IL-12、TNF-a、IL-1、及び一酸化窒素などの接着分子及び炎症誘発性媒介物質の発現にとって重要である(Wohlrab and Kreft、Skin Pharmacol Physiol.2014;27(6):311-5)。Ting L et al.(Signal Transduct Target Therap.2017;2:17023)は、炎症のシグナリングの研究で、IL-1、IL-2、1L-6、1L-8、1L-12、及びTNFαを重要なNFKB制御炎症誘発性サイトカインとして挙げている。Ungerstedt JS.et al.(Clin Exp Immunol.2003;131(1):48~52)は、NAMをIL-1β、IL-6、IL-8、及びTNFαを含む炎症誘発性サイトカインの有力な阻害剤として報告しているが、エンドトキシン誘発モデル濃度では、2,000μMのNAMが有意な効果を達成するために必要であった。
【0180】
Hwang及びSong(Cell Mol Life Sci.2017;74(18):3347-3362)は、NAMのSIRT1阻害のIC50濃度の範囲を50~180μMと報告している。SIRT1はサーチュインファミリーのメンバーであり、その阻害は、MAPK、NF-κB、及びSTAT3の酸化的ストレスシグナリング経路の抑制、炎症性要因の下方制御、炎症及びケラチン生成細胞過剰増殖の抑制、並びに血管形成の抑制をもたらす。
【0181】
Hakosaki et al.(Br J Dermatol.2002;147(1):20-3;Exp Dermatol.2005;14(7):498-508)は、皮膚色素沈着の低減と、共培養中の生体外でのメラノサイトからケラチン生成細胞へのメラノソーム伝達の抑制とについてのNAMの効果を報告している。10mmolL-1(1mM)のNAMは、共培養モデル中のメラノソーム伝達を35~68%阻害した(Hakosaki et al.Br J Dermatol.2002)。Hakosaki et al.(Exp Dermatol.2005)は、同様の共培養モデルを使用して、10μMのNAMがメラノサイトからケラチン生成細胞へのメラノソーム伝達を阻害したが、3日間の治療後わずか14%であったことを発見した。NAMの皮膚濃度を50μM超に上昇させる結果、皮膚色素沈着を低減する効能が高まることが妥当に予測される。
【0182】
よって、NAMは、皮膚に送達される投与量に応じて、皮膚に異なる薬理学的/治療的効果を及ぼすと期待され得る。
【0183】
Tanno et al.(British Journal of Dermatology.2000;143:524-531)に記載されているように、NAMは生体外で1~10μMの低濃度で(最大反応75%~100%、1~10μmolのL-1;(μM))セラミド及び他の角質層脂質の生合成を最大5倍まで大幅に増大させて、皮膚バリア機能を向上させる。これと一致して、Draelos ZD et al.(J Cosmet Laser Ther.2006年6月;8(2):96-101)は、2%NAM含有顔用モイスチャライザーが、非治療対照試験で酒さのある被験者の皮膚バリアを大幅に向上させたと報告した。
【0184】
しかしながら、高用量のNAMが送達されると、PARP-1及びSIRT1経路とメラノソーム伝達が阻害され、関連する生態のダウンレギュレーション、したがって、これまで語られなかった薬理学的可能性が導かれる。この誘発される薬理学の用量依存性は新規なアイデアではない。Paracelus(1493-1541)曰く「すべてのものは毒であり、毒でないものはない。量だけがものを毒でなくする」。
【0185】
実社会の例として、アスピリン(アセチルサリチル酸)は、心臓発作及び卒中の予防として1日100mg未満の経口投与で使用される。頭痛、関節炎、筋肉痛、又は歯痛などによる軽度の痛みの一時的軽減では、アスピリンは1日に1,200~2,600mgが投与される。多くの化学物質は、異なる可能な治療作用を有するため、送達される投与量に応じて異なる薬剤となる。
【0186】
薬物動態モデリングの予測では、50μMの遊離NAM薬物皮膚濃度がグリコールコエンハンサーイン-シリコーンクリーム中の7.5%~10%NAMの局所塗布後に達成可能であり得たため(Zhang Y et al.Pharmaceutics.2019;11:668-681)、高用量NAMの局所皮膚治療可能性について更に調査した。
【0187】
皮膚科学における高用量局所ナイアシンアミドの治療可能性;適応
UV誘発皮膚癌に使用される局所ニコチンアミド(NAM)クリーム
特に科学的に関連性が高いのは、ニューサウスウェールズ州、シドニー大学皮膚科学部の教授Diana Damian主導の研究グループによる、皮膚癌の化学的予防としての経口及び局所NAMの可能性に関する出版物である。
【0188】
NAMを使用する皮膚癌の化学的予防
2008年、Damian et al.(J Invest Dematol.2008;128(2):447-54)は、局所5%NAMが健康なボランティアでUV照射誘発免疫抑制を予防することを証明し、免疫抑制作用と皮膚癌の保護を向上するために、日焼け止め及びアフターサンローションにNAMを添加することを提案した。
【0189】
Moloney-Damian et al.(Br J Dermatol、2010;162(5):1138-9)は、AKにかかりやすい患者の紫外線角化症(AK)を予防する1%NAMゲルの使用に関する媒体-対照試験を行った。AKは、3ヵ月で大幅に軽減されたが6ヵ月では軽減しなかった。著書らは、より高いNAM濃度又は異なる(より効果的なNAM送達)局所媒体の使用したとすれば、効能の増強を導いたであろうと結論付けた。この結論と一致して、Surjana-Damian et al.は、高経口用量NAMが相II二重盲式ランダム化プラシーボ対照試験で紫外線角化症を大幅に軽減したことを報告した。(J.Invest.Dermatol.2012;132:1497-1500)。
【0190】
2015年、Chen-Damian et al.は「皮膚癌の化学的予防のためのニコチンアミドの3相ランダム試験」(ONTRAC)(N.Engl J Med2015;373(17):161-26)を公開し、経口NAMは、新たな非メラノーマヒト皮膚癌(基底細胞(BCC)、扁平上皮細胞(SCC)癌)、及び紫外線角化症(AK)の割合を減少させるのに安全かつ有効であると報告した。
【0191】
ONTRAC組織標本の更なる分析で、Malesu et al.(Photochem Photobiol、2020年2月;19(2):171-179)は、NAMとプラシーボ群の両方から生じるメラノーマについて報告した。腫瘍周囲及び腫瘍浸潤CD4+及びCD8+リンパ球は、NAM治療で発生するメラノーマにおいて、プラシーボで発生するメラノーマと比較して統計的に大幅に増加した。著書らは、ケラチン生成細胞癌に対するNAMの化学的予防作用、メラノサイトでのDNA修復増強効果、及び腫瘍浸潤リンパ球の増大の可能性により、メラノーマの化学的予防のためのニコチンアミドの使用に関する臨床試験が指示されると結論付ける。これらの試験から、ニコチンアミドは、特に広域スペクトル性日焼け止めと共に使用されるとき、AK、BCC、SCC、及びメラノーマを防止するのに役立つ可能性があると結論付けることができる。
【0192】
重要なことに、Malesu et al.(Photochem Photobiol Sci、2020年2月;19(2):171-179)は、(生存可能な皮膚組織内で定常状態で)約50~80μMの遊離薬物血漿NAMがONTRAC経口投与試験で達成されたという我々の2017年の薬物動態分析を確認するものである。これらの予測は、皮膚癌の予防におけるNAMの作用のPARP-1/SIRT1機序を裏付ける。
【0193】
更なるカナダのパイロット臨床試験(NCT03769285);「移植患者の固形臓器のケラチノサイト癌のニコチンアミドによる化学的予防:パイロット、プラシーボ対照ランダム試験」は、2020年12月に完了予定であった。
【0194】
高用量NAMを使用する皮膚癌の治療
Drago et al.(Dept.Dermatology、Genoa、Italy、Eur J、2017年12月;27(4):382-385)は、移植レシピエントにおけるAKの治療としての高用量経口ニコチンアミドの効能について試験を行った。6ヵ月間のニコチンアミド治療後、AKは、18/19名の患者(88%)でサイズが大幅に縮小した。これらの18名の患者の中で、7名の患者(42%)が臨床上完全に症状が軽減し、新たにAKを発症した患者はいなかった。逆に、対照の91%で、AKのサイズの増大が見られた、及び/又は新たなAKが発症した。7名の既存のAKは、扁平上皮癌に進行した。Dragos et al.は、ニコチンアミドがAKの予防と治療の両方で有効であると思われると結論付けた。
【0195】
最近の研究「癌の化学的予防及び治療におけるニコチンアミドの役割」(Biomolecules.Nikas,IP et al.2020年3月;10(3):477-497)は、上述の化学的予防に関する全ての研究を含め、皮膚癌に焦点を当てている。著書らは、化学的予防における役割とは対照的に、化学的予防治療計画としてのNAMの臨床効果に関する証拠はほとんどないと結論付けている。リンパ腫に関する臨床試験の第1段階のみが言及される。しかしながら、NAMは、SIRT1及びPARP1及び皮膚内の腫瘍形成性KRAS/AKT経路を阻害する。血管擬態、転位、侵入、及び増殖への予測される効果により、Nikas,IP et al.は、臨床試験に値する今後の道筋にNAMを用いた既存のメラノーマ治療を含めた。Chen A(Chin J Cancer.2011年7月;30(7):463-471)は、既存のメラノーマを治療するためのPARP-1阻害剤の臨床開発を報告している。
【0196】
AKの存在とNMSC、特にBCCの今後の開発可能性との間の関連性、及びNAMの既存のAKの治療効果は(Drago et al.(Dept Dernarology、Genoa、Italy、Eur J Dermatol 2017;27(4):382-385)、NAMが既存のBCC及びSCCの治療に有効かもしれないと推測するように動機付ける。Nikas,IP et al.は、NAMによるSIRT1阻害は脱制御が腫瘍の原因になり得る代謝を抑制する可能性がある一方で、PARP1の抑制は長期間蓄積される遺伝子の損傷を招く可能性があるとも警告している。したがって、この推論は賢明でないと思われるだけでなく、少なくとも現時点では危険である可能性がある。NMSC治療でのNAMの使用に関する臨床データは現在存在しておらず、米国データベースのClinicalTrials.gov.の検索が示す通り、この証拠を提供する試験は現在企画されていない。NAMが既存のBCC及びSCCの治療に有効であると結論付けるデータは現時点では不十分であると考える。
【0197】
増殖性/炎症性皮膚疾患の治療に使用される局所ニコチンアミド(NAM)クリーム
乾癬の治療に使用される局所ニコチンアミド(NAM)クリーム
Namazi MRの影響力の大きな研究(乾癬に対する武器としてのニコチンアミドの添加可能性。FASAB J.2003;17(11):1377-9)は、まず、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1(PARP-1)阻害剤として(経口)抗乾癬ニコチンアミドの可能性について、核カッパB媒介転写の増強を通じて、炎症性サイトカイン、ケモカイン、接着分子、及び炎症性媒介物質の発現に重要な役割を果たすと述べている。当然ながら、PARP-1を阻害するのに必要なNAMの皮膚濃度に関しては説明されていない。我々は、PARP-1(>50μM)を有意に阻害し、乾癬の局所治療に使用するには、機能性局所コエンハンサー送達システム中、7.5~10.00%w/wの生成物濃度が必要であると結論付ける。
【0198】
Levino D et al.(J AmAcad Dermatol.2010;63(5):775-81)が乾癬患者に12週間の試験を行ったところ、局所カルシポトリオール0.05%と、カルシポトリオール0.05%及び1.4%NAMとの間に有意な差を見出すことができなかった。Siadat,AH et al.(Adv Biomed R.2013;2:90)は、軽度で穏やかな乾癬患者を対象に、局所カルシポトリオール0.005%又はカルシポトリオール0.005%及び4.0%NAMに関して12週間の試験を行った。12週間の最後に、PASIスコアは、カルシポトリオールのみ(83.6±7.9%対77.8±9.7%)と比較して、カルシポトリオール+NAMでは数値が低減された。
【0199】
局所カルシポトリオール+コルチコステロイドクリームは乾癬治療の主力であり、この抗増殖性+抗(NF-κB関連)炎症治療コンセプトの忠実度を証明する。カルシポトリオール+7.5~10.0%NAMクリームの高用量機能性局所コエンハンサー送達は、コルチコステロイドなしで、この医療コンセプトを促進するはずである。
【0200】
皮膚炎、炎症性皮膚症状の治療に使用される局所ニコチンアミド(NAM)クリーム
各種研究が、局所NAMの治療予測が、炎症性皮膚疾患の治療に有効であることを証明している。経口高用量2g/日(約100μMの皮膚目標濃度)のNAM(サイクリン系抗生物質を伴う)(Kolbach DN.et al.BJD1995;13(1):88-90)は、6~8週間で、生命にかかわる可能性のある水疱性皮膚症状の水疱性類天疱瘡の軽減を達成するのに有効であった。
【0201】
しかしながら、我々の仮定では、炎症性皮膚疾患の局所NAMの相対的な非有効性は、皮膚内の標的部位に十分な濃度のNAMを送達できないことによる。たとえば、Grange et al.の研究「ニコチンアミドは、NF-κB及びMAPK経路を通じたケラチン生成細胞内のプロピオン酸菌にきびの誘発するIL-8生成を阻害する」(Grange et al.Journal Dermatological Science.2009;56:106-112)は、ケラチン生成細胞内のP.にきび誘発IL-8mRNAの生成を有意に阻害するために5.0μg/ml(約40μM)のNAMが必要であると報告している。我々の結論としては、にきび、乾癬、湿疹、酒さなどの炎症性皮膚症状、及び水疱性類天疱瘡などの水泡性皮膚症状の治療で大きな抗炎症効果を達成するには、機能性局所コエンハンサー送達システム中に7.5~10.00%w/wの生成物濃度のNAMが必要である。
【0202】
放射性皮膚炎の治療に使用される局所ニコチンアミド(NAM)クリーム
Bowstorm A.et al.(Radiotherapy and Oncology.2001;59:257-265)は、フロ酸モメタゾン、局所コルチコステロイドクリームが、乳癌患者の急性放射線誘発皮膚炎を減少させる際、エモリエントクリームのみよりも大幅に有効であると報告した。この作用モードの主要な要素は、IL-6の阻害であると想定された。Yanez et al.(2019;9:102-19 https://doi.org/10.1038/s41598-019-46678-8)は、生体外でLPS誘発炎症性マクロファージモデルを使用して、高レベルのTNF-α、IL-6、及びVEGFを生成した。NAMは、試験される唯一の用量の500μmで、未治療の対照と比較して、生成されるIL-6を88%低減した。結論としては、放射線誘発皮膚炎を含む皮膚炎の治療で大きな抗炎症効果を達成するには、機能性局所コエンハンサー送達システム中に7.5~10.00%w/wの生成物濃度のNAMが必要である。
【0203】
色素沈着の治療に使用される局所ニコチンアミド(NAM)クリーム
Hakosaki et al.(Exp Dermatol.2005;14(7):498-508)は、10μMのNAMはメラノサイトからケラチン生成細胞へのメラノソーム伝達を阻害したが、3日間の治療後、わずか14%であったことを報告した。全身性色素沈着の79名の女性に臨床試験を実行した。顔面分割設計では、群1(n=1/4 39)は、顔の一方の側に5%NAMモイスチャライザーと顔の他方の側に溶媒モイスチャライザー(NAMなし)を使用し、群2(n=1/4 40)は2%NAMモイスチャライザーと溶媒モイスチャライザーを使用した。著書らは、色素過剰損傷の用量に依存する低減を報告した。しかしながら、8週間後、5%NAMと顔面分割対照との視覚的差異は、統計的には有意なものの、わずか6%だった。結論としては、大きな抗色素沈着効果を達成するには、機能性局所コエンハンサー送達システム中、7.5~10.00%w/wNAMの生成物濃度が必要である。
【0204】
生体外での局所コエンハンサー送達システムからヒトの皮膚にわたるNAMの浸透力
生体外での定常状態へのヒトの皮膚浸透力、及び生体内での遊離NAM表皮濃度の予測:バリア修復
生成物pH約4.60(平衡pH約3.86)で5.0%NAM及び5%PHAを含有する、表9に記載される実施例46のクリーム配合物に対して、生体外で24時間、ヒトの皮膚浸透力試験を行った。レセプタ―流体サンプルを、0、2、4、8、10、及び24時間で、NAMについて分析した。図5は、遅延時間後8~24時間に達成された定常状態流束(n=6)を示す。皮膚への入力速度についての平均定常状態流束値J(μg/cm/時)2.28μg/cm/時が算出された。ここから、表皮基底部位で達成されるNAM遊離薬物濃度を推定した。この試験では、定常状態流束、したがって定義上、定常状態のNAMの皮膚組織濃度が達成され、少なくとも16時間持続した。NAMの経口投与後、血漿と皮膚の両方のピーク濃度は、約90分間の半減期で減少すると予測される(Bongiovanni T et al.Review Proc.Med.Def.Bioscience.1993;1:会議論文)。
【0205】
生体外での皮膚浸透力データからの基底細胞の標的部位組織濃度の推定
表皮基底標的部位での遊離NAMの濃度を式(1)から算出した。
【0206】
=J/P (1)
【0207】
真皮内のNAMの浸透率を式(2)を用いて推定した。遊離NAMの真皮拡散係数Dは式(2)から推定した。
【0208】
DNAM=-4.15-(0.655×log MWNAM) (2)
【0209】
NAMの分子量122.12を式(2)に入力すると、3.04×10-6cm-1のDDNAMの値が得られる。未灌流真皮上層(17)の厚さhについては100μm(0.01cm)を使用し、PDは約1.08cmh-1と算出された。簡潔に伝えると、(3.04×10-6×60×60)/0.01=1.08cmh-1
【0210】
最後に、式(1)から、
表皮基底標的部位での遊離NAMの濃度=J/P=2.28/1.08=2.11μg/cm、NAMの分子量122.12では約17.50μMの濃度である。上述したように、Tanno O et al.(British Journal of Dermatology2000;143:524±531)は、セラミド合成の生体外投与反応が、約10uMのニコチンアミドで最大であることを示す。2.5%ニコチンアミド及び5.0%PHAを含有し、乳酸不揮発性及び液体アンモニア揮発性緩衝剤を使用して生成物内及び皮膚上pHを制御する、たとえば表10、実施例49及び50のクリームは、表皮基底標的部位で約9μMの遊離NAMを達成すると予測される。実施例49及び50は、最大のNAM及びPHAが調製された皮膚バリア修復候補であると予測される。
【0211】
生体外での定常状態へのヒトの皮膚浸透力、及び生体内での遊離NAM表皮濃度:PARP-1/SIRT1 NF-κB媒介治療可能性
平衡pH約3.80~4.00で10.0%NAMを含有する表9の実施例44に記載のクリーム配合物及び2つの変形に対して、3名の異なるドナーの腹部皮膚を用いて生体外で24時間、ヒトの皮膚浸透力試験を行った。レセプタ―流体サンプルを、0、2、4、8、10、及び24時間で、NAMについて分析した。皮膚への入力速度についての平均定常状態流束値J(μg/cm/時)6.64μg/cm/時が算出された。ここから、表皮基底部位で達成される平均遊離NAM薬物濃度が50.40uMであることが式(1)を用いて推定された。平衡pH約5.10を達成するために不揮発性pH調整剤を用いて、NAMがほぼ完全に非イオン化されている表9の実施例47に記載のクリーム配合物は、約70.00uMの表皮濃度のNAMを達成すると予測される。
【0212】
生体外のグリコール-イン-シリコーンクリームからヒトの皮膚への浸透力
GB2549418Bで仮定したように、カプリリルメチコンなどのシリコーンエモリエントを、機能性グリコール-コエンハンサーシステムに含めてクリームを形成することは、コエンハンサー機能に悪影響を及ぼさない。たとえば、0.1%レチノイン酸代謝遮断剤を含有するグリコール-コエンハンサークリームに関する委託試験は、専門家皮膚製剤グループによって処方された従来のクリームの10倍のピーク皮膚濃度を達成した。
【0213】
Ng SP et al.(J Cosmet Dermatol.2020;19(10):2656-2662)は、黒皮症治療用のプラスミン阻害薬のトラネキサム酸の皮膚濃度を、市販の2%クリームと、5%PHA及び4%NAMも含有する2%グリコール-C14アルコール-コエンハンサークリームとで比較した。コエンハンサークリームの塗布後のトラネキサム酸の皮膚濃度は、6時間と24時間の両方で、有効にするために必要とされる濃度範囲内に十分収まったが、市販クリームの皮膚濃度は24時間のみ、より低い範囲内となり、約10分の1に低下した。
【0214】
2%プラスミン阻害グリコール-C14アルコール-コエンハンサークリーム+(5%PHA4%NAM):黒皮症への効果(MASI)及び消費者体験
42~60歳の22名の被験者の未発表の皮膚科医-研究者-対照試験を、日焼け止めと併せて顔皮膚に塗布されるNg SP.et al.によって試験された配合物を用いて、12週間行った。
【0215】
12週(84日)後、MASIスコア(黒皮症面積及び重篤度指数)が、以下に示すように、皮膚科医臨床研究者によって評価された。22名の全被験者が試験を完了した。
【0216】
【表2】
【0217】
黒皮症治療での経口トラネキサム酸の使用に焦点を当てたBala et al.の2018年研究(Dermatol Surg 2018;44(6):814-825)は、これが難治性黒皮症の安全かつ有効な治療であると結論付けている。この結論は、黒皮症治療における経口トラネキサム酸についての2つのごく最近の二重盲プラシーボ-対照試験によって明確に裏付けられており、この試験では、250mg/日の1日2回の投与12週間で、黒皮症(mMASI、MASI)スコアが、プラシーボと大きく異なり約50%低減した。対照的に、局所投与から得られる臨床結果は、現時点では期待外れであるが、トラネキサム酸グリコール-C14アルコール-コエンハンサークリームの局所塗布の12週間後の効能に関する我々の所見は、この局所治療コンセプトを支持する励みとなるものである。
【0218】
加えて、クリームの使用時の体験を調査したアンケート(図6)に回答するように被験者に求め、美容特性、塗布し易さ、効能、及び耐性は全て非常に高い評価を得た。全ての被験者(100%)は2つの評価に対して、はいと答えた。
-(価格に関係なく)この製品をまた購入するか?
-この製品を友人に勧めるか?
【0219】
これらのスコアは特に、被験者が「製品を信頼する理由」を有することを強く示唆するものである。クリームの平衡pHが5.00の場合、そのpHはNAMにとってほぼ最適であるが、PHAは約90%イオン化されておらず、そのために皮膚浸透力がかなり低い。実施例45、49、及び50などの、平衡pH値が3.0~4.0の範囲であるクリームは、NAMとPHAの両方の皮膚浸透力にとって最適のイオン化状態を提供し、よって治療へのアドヒアランスを推し進める。
【0220】
活性物質
好適には、本明細書に記載される配合物に含める活性物質は、レチノイド、レチノイン酸代謝遮断剤(RAMBA)、テトラヒドロカンナビノール及びカンナビジオールを含むカンナビノイド、α及びβ-ヒドロキシ酸、ポリマーとその誘導体、特にラクトビオン酸及びグルコノラクトン、免疫反応調節化合物、トラネキサム酸、カルシポトリオール(別名、カルシポトリエン)を含むビタミンD類似体、ニコチンアミドを含むビタミンB3類似体、コルチコステロイド、抗酒さ剤、抗ヒスタミン剤、抗菌剤、抗にきび剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤、紫外線角化症、基底細胞及び扁平上皮細胞癌及びメラノーマに使用される抗細胞毒剤、ソラーレン、抗脱毛剤、抗アンドロゲン、痛み止め薬、角質溶解剤、美白剤、ジスラノール、消毒剤、麻酔剤、鎮痛剤、神経障害薬、非ステロイド抗炎症剤、血管作用薬、並びに乾燥肌と老化肌と闘う薬剤から選択される。1実施形態では、配合物は2以上の薬理活性物質、塩、又はその誘導体を含むことができる。活性物質の適切な濃度範囲は、活性物質の性質又は活性物質の組み合わせに応じて、配合物の約0.001~約10重量%である。
【0221】
本明細書に記載される配合物に含める好適な活性物質は、レチノイド、トラネキサム酸、ビタミンD類似体、ニコチンアミドを含むビタミンB類似体、コルチコステロイド、免疫調節剤、抗にきび剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤、紫外線角化症、基底細胞及び扁平上皮細胞癌及びメラノーマに使用される抗細胞毒剤、痛み止め薬、角質溶解剤、美白剤、鎮痛剤、非ステロイド抗炎症剤、テトラヒドロカンナビノール及びカンナビジオールを含むカンナビノイド、並びに乾燥肌と老化肌と闘う薬剤から選択される。
【0222】
一実施形態では、治療上の活性物質はレチノイドである。適切なレチノイドの例としては、限定するものではないが、タザロテン、トレチノイン、イソトレチノイン、アシトレチン、エトレチナート、アダパレン、ベキサロテン、アリトレチノイン、レチノール、レチナール、パルミチン酸レチニル、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、リノール酸レチニルを含むレチニルエステル、エチル5-(2-(4,4-ジメチルチオクロマン-6-イル)エチニル)チオフェン-2-カルボキシレート、6-(2-(4,4-ジメチルチオクロマン-6-イル)-エチニル)-3-ピリジンメタノール、及び6-(2-(4,4-ジメチルチオクロマン-6-イル)-エチニル)ピリジン-3-カルバルデヒド、その塩、その誘導体、その混合物が挙げられる。1実施形態では、レチノイドはタザロテンである。別の実施形態では、レチノイドはトレチノインである。別の実施形態では、レチノイドはレチノールである。別の実施形態では、配合物は、第2の薬理活性物質と組み合わせてレチノイドを含む。1実施形態では、その組み合わせはタザロテンと第2の薬理活性物質である。別の実施形態では、その組み合わせはトレチノインと第2の薬理活性物質である。
【0223】
好適には、レチノイドは、プロピオン酸クロベタゾールなどのコルチコステロイド、カルシポトリエンなどのビタミンD類似体、あるいはクリンダマイシン又はその薬理的に許容可能な塩(たとえば、リン酸クリンダマイシン)などの抗菌性物質と組み合わされる。もしくは、一実施形態では、本配合物は、クリンダマイシン又はその薬理的に許容可能な塩(たとえば、リン酸クリンダマイシン)などの抗菌剤と組み合わせたトレチノインを含む。
【0224】
配合物中のレチノイドの適切な濃度範囲は、たとえば配合物の約0.001~約1重量%である。1実施形態では、レチノイドが約0.01~約1重量%存在する。別の実施形態では、レチノイドは約0.025~約0.5重量%存在する。別の実施形態では、レチノイドは約0.005~約0.025重量%存在する。1実施形態では、レチノイドがタザロテンであるとき、約0.05又は0.1重量%存在する。別の実施形態では、レチノイドがトレチノインであるとき、約0.005、0.025、0.05、又は0.1重量%存在する。別の実施形態では、レチノイドがレチノールであるとき、約0.05重量%、あるいは0.1又は1.0重量%存在する。
【0225】
ここで薬理的に許容可能な活性物質として使用される適切なレチノイン酸代謝遮断剤(RAMBA)はタラロゾールである。
【0226】
好適なカンナビノイドは、テトラヒドロカンナビノール及びカンナビジオールを含む。
【0227】
好適なテルペン類は、ミルセン、リモネン、カリオフィレン、ピネン、オシメン、ゲラニオール、及びテルピネン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0228】
別の実施形態では、α及びβ-ヒドロキシ酸、ポリマーとその誘導体は、アルキルヒドロキシカルボン酸、アラルキル1及びアリール2-ヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸である。2-ヒドロキシカルボン酸は酸以外の形状、たとえば、塩又はラクトンで存在する。通常、ラクトン形状は、たとえば、グルコノラクトン、ガラクトノラクトン、グルクロノラクトン、ガラクツロノラクトン、グロノラクトン、リボノラクトン、サッカリン酸ラクトン、パントラクトン、グルコヘプトノラクトン、マンノノラクトン、グルコヘプトンラクトンを含む。2-ケト酸は、遊離酸又はエステル状で、あるいは有機ベース又は無機アルカリを伴い塩状で存在する。代表的な2-ケトカルボン酸とそのエステルは、アスコルビン酸、キナ酸、イソクエン酸、トロパ酸(2-フェニル3-ヒドロキシプロピオン酸)、トレトカン酸、3-クロロ酢酸、シトラマル酸、アガリシン酸、アロイリット酸、パントイン酸、ラクトビオン酸、ヘキスロソン酸である。
【0229】
本明細書で使用される適切な免疫反応調節化合物、免疫阻害剤、免疫調整剤、免疫調節剤は、(抗体形成を刺激し、白血球の活動を阻害することによって)免疫反応又は免疫システムの機能を変更する化学物質又は生物由来薬剤を含む。例示の薬剤又は化合物は、環状ペプチド(シクロスポリンなど)、タクロリムス、トレスペリムス、ピメクロリムス、シロリムス(ラパマイシン)、ベロリムス、ラフルニムス、ラキニモド、ミコフェノール酸、イミキモドなどのイミダゾキノリンアミン、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0230】
適切なビタミンD類似体は、カルシジオール、カルシトリオール、カルシポトリエン、パリカルシトール、22-オキサカルシトリオール、ジヒドロタキステロール、カルシフェロール、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0231】
好適なビタミンB3化合物は、ニコチンアミド(別名、ナイアシンアミド)を含む。
【0232】
適切なコルチコステロイドは、プロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、酢酸コルチゾン、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルクロロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、フルドロキシコルチド、フルランドレノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、フランカルボン酸モメタゾン、塩酸プラモキシン、酢酸プレドニゾン、吉草酸プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド、プレドニカルベート、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0233】
好適なホルモン補充薬剤は、テストステロン及びエストラジオールを含む。
【0234】
ビタミンD類似体とコルチコステロイドの組み合わせ、たとえば、プロピオン酸フルチカゾン又はフランカルボン酸モメタゾンとカルシポトリエン(別名、カルシポトリオール)の組み合わせが好適である。
【0235】
適切な抗酒さ化合物は、クリンダマイシン、エリスロマイシン、メトロニダゾール、ニコチンアミド、アゼライン酸を含むが、これらに限定されない。
【0236】
適切な抗ヒスタミン剤は、セチリジン、バピタジン、ジフェンヒドラミン、トリプロリジン、ピリラミン、クロルシクリジン、プロメタジン、カルビノキサミン、トリペレナミン、ブロムフェニラミン、ヒドロキシジン、テルフェナジン、クロルフェニラミン、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0237】
適切な抗菌剤は、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、セフポドキシムプロキセチル、クリンダマイシン、リンコマイシン、エリスロマイシン、バシトラシン、グラミシジン、バンコマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ホスホマイシン、フシジン酸、ムピロシン、スルファセタミド、メトロニダゾール、ダプソン、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0238】
適切な抗真菌剤は、アニデュラフニン、カスポファンギン、ミカファンギンなどのエキノカンジン;アンホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、フンギクロミン、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ニスタチン、ペシロシン、ペリマイシンなどのポリエン;ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィンなどのアリルアミン;ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルミダゾール、クロコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ミコナゾール、ネチコナゾール、オモコナゾール、硝酸オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾールなどのイミダゾール;リラナフタート、トリシクラート、トリンダート、トルナフテートなどのチオカルバマート;アルバコナゾール、フルコナゾル、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、サペルコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾールなどのトリアゾ-ル;アクリゾリシン、アモロルフィン、ビフェナミン、ブロモサリチルクロラニリド、ブクロサミド、プロピオン酸カルシウム、クロルフェネシン、シクロピロックス、クロキシキン、コポラフィネート、エキサラミド、フルシトシン、ハロプロジン、ヘキセチジン、ロフルカルバン、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルジアニリド、ピロピオン酸ナトリウム、スルベンチン、テノニトロゾール、トリアセチン、ウンデシレン酸、プロピオン酸亜鉛、グリセオフルビン、オリゴマイシン、ピロールニトリン、シッカニン、ビリジアンなどのその他の抗真菌剤、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0239】
適切な抗ウィルス剤は、アシクロビル、デスシクロビル、カルボビル、ファムシクロビル、ホスカルネットナトリウム、ガンシクロビル、インターフェロン、ペンシクロビル、バラシクロビル、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0240】
適切な細胞毒性剤は、アザサイオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ヒドロキシウレア、サリドマイド、ブレオマイシン、ジクロフェナク、フルオロウラシル、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0241】
例示のソラーレンはメトキサレンである。例示の抗脱毛剤はミノキシジルである。
【0242】
適切な抗アンドロゲンは、スピロノラクトン、キプロテロン、フルタミド、フィナステリド、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0243】
適切な抗かゆみ薬は、カラミン、樟脳、メントール、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。その他の適切な抗かゆみ薬はカッパオピオイド作用薬、プロテアーゼ阻害薬、PAR-2阻害薬を含む。
【0244】
たとえば、にきび治療用の適切な角質溶解剤は、ベンゾイルペルオキシド、サルチル酸、尿素、レソルシノール、硫黄、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0245】
適切な消毒剤は、クロロヘキシジン、セトリミド、ポビドンヨード、トリクロサン、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0246】
適切な麻酔剤及び鎮痛剤は、ベンゾカイン、リドカイン、プリロカイン、サルチル酸コリン、その塩、その誘導体、その混合物を含むが、これらに限定されない。
【0247】
適切な非ステロイド抗炎症剤は、ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトロラック、ケトプロフェン、それらの光学異性体、サルチル酸メチルを含むサリチル酸エステル、メントール、樟脳、カプサイシンなどの関連薬剤を含むが、これらに限定されない。
【0248】
COX-1を超えるCOX-2の特異性を持つ適切な非ステロイド抗炎症剤は、セレコキシブとロフェコキシブを含むが、これらに限定されない。
【0249】
好適な他の抗炎症剤は、湿疹、乾癬、及び酒さなどの炎症性皮膚疾患を治療する際に使用されるニコチンアミド、レスペラトロール、クミン、没食子酸塩を含む。
【0250】
適切な血管作用薬は、三硝酸グリセリン、アルプロスタディルなどを含むが、これらに限定されない。
【0251】
乾燥肌及び老化肌の治療に適する薬剤は、乳酸、グリコール酸、ラクトビオン酸、パルミトイルトリ及びテトラ-ペプチド、ヒアルロン酸、及びその塩、例えば、レスペラトロール、クルクミン、及び没食子酸塩などの天然NF-κB阻害剤を含む。
【0252】
好適なUVブロック剤は、チタン、亜鉛、若しくはシリコーン、又はその他の無機酸化物のナノ又はマイクロ粒子を含む。
【0253】
本発明の配合物は、一般的には、クリーム又は美容液の形状をとる。
【0254】
一実施形態によると、本発明の配合物は美容液又はジェル状美容液の形状をとる。
【0255】
一実施形態によると、本発明の配合物はクリームの形状をとる。ポリマー、粒子、共乳化剤を含めて物理的安定性を向上させることができる。
【0256】
活性物質及びその他の成分は、適切な油又は水媒体中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンを形成し、懸濁、安定、及び/又は分散剤などの配合剤を含有することができる。必要に応じて、抗酸化剤、界面活性剤、その他の防腐剤、被膜形成、角質溶解又はにきび溶解剤、香水、香料、着色料から選択される補助剤を追加することができる。
【0257】
本発明の配合物は一般に、約50重量%未満、好ましくは約15重量%未満、より好ましくは約10重量%未満、最も好ましくは0.05重量%未満の水を含む。一実施形態によると、本発明の配合物は水をほぼ含んでいない。
【0258】
本発明の配合物は一般に、自己保存的であり、通常無菌であり得る。適切な配合物の調剤で採用される無菌媒体は、当業者にとって十分に既知な標準的手法によって容易に入手可能である。
【0259】
主に生物学的薄膜への塗布に合わせて調製される泡は、たとえば、クリーム、ミルク、ジェル、分散液、様々な濃度のローション、エアゾール配合物(たとえば、霧若しくは泡)又はローションの形状をとることができる。この目的でのその他の従来の形状は美容液、クリーム、ローション、及びスプレーを含む。
【0260】
本発明の配合物は、1以上の分散剤、可溶化剤、又は懸濁剤を含む水性又は非水性ベースを含むことができる。液状の霧をポンプで押し出す、あるいは圧縮パックから簡便に押し出すことができる。簡易なスポイトキャップボトル、液体含有物を滴状に送達するように構成されたプラスチックボトル、又は特別な形状の筐体を介して滴を送達することができる。無気ポンプパックが、化粧品の使用に特に好ましい。
【0261】
局所配合物に存在する本発明の治療薬の重量パーセントは様々な要因に左右されるが、一般的には配合物の総重量の0.005%~10%、通常0.1~5重量%である。
【0262】
本明細書に言及される活性物質は、自由酸、自由ベース、エステル、その他のプロドラッグ、塩、互変異性体などの様々な形状で存在することができる。たとえば、本発明は活性化合物のすべての変形形状を含む。
【0263】
また、治療用に上記の製品が提供される。
【0264】
治療方法
本発明の1態様によると、本明細書に記載される配合物の治療上有効量を局所投与することを含め、ヒト又は動物の身体の医学的症状を防止し、発生の可能性を低減し、緩和し、又は治療する方法が提供される。
【0265】
本発明の別の態様によると、ヒト又は動物の身体の医学的症状の予防、緩和、又は治療に使用される本発明に記載の配合物が提供される。
【0266】
一般的には、本発明の方法/使用法は、配合物の投与後4時間以上、通常6時間以上、好適には投与後12時間以上、医学的症状を局所的に緩和する。
【0267】
本発明の配合物は局所投与されるため、その効果は通常は迅速な開始と関連する。一般的には、配合物は、投与から30分以内、通常15分以内、好適には投与から5分以内に医学的症状を局所的に緩和する。
【0268】
一般的には、局所緩和は6~8時間、通常少なくとも12時間、好ましくは24時間継続する。
【0269】
本方法は、症状又は障害によって影響を受ける部位とその周囲組織に配合物を局所塗布することを含む。配合物の局所塗布は製薬活性成分の生物学的利用能を向上させて、投与量を更に予測可能にし、副作用の可能性を低減する。
【0270】
本発明の方法及び使用法は一般的には局所的であり、本発明の方法は通常、必要な投与量と副作用リスクを抑えつつ、活性物質又はその組み合わせの有益な作用を利用する方法を提供する。
【0271】
本発明の方法/使用法は一般的には、患者の皮膚又は粘膜への配合物の塗布を含む。1実施形態によると、方法/使用法は、患者の生殖器への配合物の塗布を含むことができる。
【0272】
医学的症状は、痛み及び/又は炎症、色素沈着、掻痒、にきび、湿疹、乾癬、酒さ、水疱性類天疱瘡などの皮膚水泡性疾患、おむつかぶれ、乾燥肌、菌を含む細菌症状及び/又は酵母感染症や皮膚糸状感染症などの皮膚感染症を含むバクテリア症状、皮膚又は粘膜のウィルス感染症、いぼ、乾燥又は老化肌、アンドロジェン欠乏症、免疫症状、そばかす、紫外線角化症、基底細胞及び扁平上皮細胞の皮膚癌及びメラノーマ、脱毛症、並びに放射線療法による皮膚炎のうちの1以上に関連する又はから引き起こされる症状から成る群から選択することができる。
【0273】
本発明の配合物での治療に適する皮膚症状は、白斑、湿疹、乾癬、特定リンパ腫に関連する皮膚疾患などである。
【0274】
本発明の方法は、患部にUV光を照射することを含むことができる。
【0275】
医学的症状は、ウィルス、菌及び/又はバクテリア症状であってもよい。
【0276】
医学的症状は、特にヒスタミンなどの局所免疫反応によって全部又は一部引き起こされる、あるいは関連する場合があり、配合物は1以上の抗ヒスタミン剤、免疫阻害剤、免疫調整剤及び/又は免疫調節剤を含む。
【0277】
一実施形態によると、該方法は、体組織の成長と修復を促進させ、1以上のステロイド化合物、特に、1以上のコルチコステロイド化合物を含む配合物の塗布を含む。
【0278】
医学的症状は、ビタミンD欠乏症によって一部又は全部引き起こされる、又は関連する場合がある。
【0279】
一実施形態によると、該方法はしわ、にきび、又は乾癬の形成を治療、緩和、又は防止しレチノイド化合物、レチノイン酸代謝遮断剤(RAMBA)、α及びβ-ヒドロキシ酸ポリマー及びその誘導体から成る群のうち1以上を含む配合物の塗布を含む。
【0280】
一実施形態によると、配合物は1以上の鎮痛剤又は抗炎症化合物を備え、その症状は局所及び/又は炎症に関連する。
【0281】
医学的症状は一般的には、局所塗布を介して治療される。本発明の活性物質は一般的には、局所、普通は患者の皮膚又は粘膜に投与される。本発明の配合物は一般的には、意図する治療、予防、又は緩和にとって有効な量、このようなルートに適合される薬剤の形状で投与される。
【0282】
投与される治療活性物質の量と、化合物及び/又は配合物を用いて症状を治療するための投与計画は、被験者の年齢、体重、性別、病状、症状の重症度、投与のルートと頻度、採用される特定の化合物、治療対象の個人の薬動力学特性などの様々な要因に依存し、そのために大きく変動する。一般的には、化合物が治療ではなく予防のために投与される場合、投薬量は比較的少ない。上記の治療は、治療する医師が必要と判断する期間にわたって、必要と思われる頻度で提供することができる。当業者であれば、投与計画又は投与される阻害薬の治療上有効量は、個人に合わせて最適化させる必要があることを認識するであろう。
【0283】
本発明の方法/使用法は一般的には1日1~5回、通常1日1~2回、好適には、1日1回の配合物の塗布を含む。
【0284】
本発明の方法は、要求に応じて実行することができる。一般的には治療クールは、治療される症状の性質と重症度に応じて1~6ヶ月間継続される。
【0285】
本発明の配合物は一般的にはヒトに塗布される。
【0286】
特に、以前に同じ医学的症状の兆候を経験したことのある患者の兆候の発生を予防又は最小化する予防方法が提供される。
【0287】
本発明の方法が予防的に使用される場合、治療クールは最大6ヶ月間継続させることができる。しかしながら、この方法が重篤な兆候の治療に使用される場合、この方法/使用法は、初回に大量の活性物質又はその組み合わせを投与することを含むことができる。この後、たとえば1~6ヶ月の第2の長期にわたって比較的低量を投与することができる。
【0288】
1回の投薬で塗布される配合物の総量は一般的には、治療対象の皮膚cm当たり約2.5~10.00mgである。
【0289】
活性物質は、同時に、順次、又は個別に投与することができる。活性物質は一体型パッケージとして提供することができる。一体型パッケージは、各活性物質の同時、個別、又は順次投与のための指示と共に本発明の製品を含めることができる。連続的投与のため、活性物質は任意の順序で投与することができる。
【0290】
本発明の方法/使用法の活性物質は、1以上の薬理的に許容可能な希釈剤、賦形剤及び/又は担体を追加で含有する製薬配合物として提供することができる。これは、固定的又は自由な組み合わせの両方に塗布される。
【0291】
「薬理的に許容可能」というフレーズは、信頼できる医学的判断の範囲内で、妥当なメリット/リスク比に相応して、過剰な毒性、炎症、アレルギー反応、又はその他の問題や合併症を引き起こさずに、ヒトの組織又は、場合に応じて動物との接触使用に適する化合物、材料、及び/又は配合物を指すために使用される。上記担体は当該技術において十分既知であり、緩衝剤、充填剤、希釈剤、結合剤、保湿剤、分解剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸収担体、潤滑剤、保存剤を含む。
【0292】
患者は一般的にはいくつかの実施形態ではヒトであるが、動物を治療することもできる。
【0293】
配合物実施例:具体的配合物
添付の図面を参照して本発明を例示のために以下説明する。
【0294】
本発明の一実施形態によれば、局所塗布用配合物が提供され、該配合物は、
a.活性物質(複数可)と、
b.c.1.0~5%w/wのニコチンアミド及びd.1.0~5%w/wのポリヒドロキシ酸の使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復組み合わせと、
e.分配係数エンハンサー、特にプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、又はヘキシレングリコール(一般に、プロピレングリコール)と、
f.C12~C14飽和脂肪酸及びC14飽和一級アルコールから成る群から選択される拡散係数エンハンサーと、
g.アルキルメチルシロキサン化合物又はアルキルアリールメチルシロキサン化合物から成る群から選択され、500未満の数平均分子量を有するヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエントと、
h.一般的には1000超の数平均分子量を有し、通常、ポリアルキルシロキサン部と、1以上のエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー又はイオン側基とを含む、ジメチコーンマクロマー界面活性剤と、
i.メチルシロキサン、特に、500未満の数平均分子量を有するシクロメチコン化合物と、
j.一般的には1000超の数平均分子量を有し、一般的にはポリアルキルシロキサン部を含む架橋ジメチコーンマクロマーと、を含む。
【0295】
本発明の例示的な配合物は以下を含む:
i.0.001%~約10%w/wの活性物質、
ii.iii.1.0~5%w/wのニコチンアミド及びiv.1.0~5%w/wのポリヒドロキシ酸の使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復組み合わせ、
v.20~70%w/wのプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、又はヘキシレングリコール(一般的にはプロピレングリコール)、
vi.C12~C14飽和直鎖脂肪酸とC14飽和直鎖一級アルコールから成る群から選択される0.5~5%w/wの拡散係数エンハンサー、
vii.500未満の数平均分子量を有するアルキルアリールメチルシロキサン化合物と、一般的には1000超の数平均分子量を有し、ポリアルキルシロキサン部を含む架橋ジメチコーンマクロマー、1以上のエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー又はイオン側基、ピロリドンカルボン酸官能化ジメチコーンマクロマーから成る群から選択される通常1以上との混合物を含む10~25%w/wのヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエントであって、混合物が10~20%w/wのジメチコーンマクロマーを含む、エモリエント、
viii.500未満の数平均分子量を有するシクロメチコン化合物と1000超の数平均分子量を有し、ポリアルキルシロキサン部を含む架橋ジメチコーンマクロマーとの混合物を含む10~25%w/wアルキルシロキサンエモリエントであって、混合物は10~20%w/wのシリコーンマクロマーを含む、エモリエント。
【0296】
表1~7は、1.0~5%w/wのニコチンアミド及び1.0~5%w/wのポリヒドロキシ酸を含む使用者アドヒアランスを改善する皮膚バリア修復組み合わせ、並びに0.001%~約10%w/wの活性物質を含む配合物の実施例をそれぞれ示す。
【0297】
本発明の実施例は、カンナビノイド(実施例1~6)、抗ウィルス物質及び抗真菌物質(実施例7~13)、レチノイド(実施例14~17)、ビタミンB3(実施例18~24)、免疫調節剤(実施例25~26)、湿潤剤(実施例29~34)、及びコルチコステロイド(実施例35~37)からである。
【0298】
工程関連実施例(ニコチンアミド-PHA配合物の工程管理)
表8~11(実施例38~55)は次のセクション後に説明する。
【0299】
クリーム組成技術及び製造工程(0.5~3.0kg実験室規模)
グリコール-イン-シリコーンクリーム技術
活性物質グリコール-イン-シリコーンエマルジョン化粧技術は、非水性エマルジョン、たとえば、オリーブ油内グリセリン分散液に関する1960年代の著作に由来する(Perterson RV及びHamil RD.J Soc.Cos.Chem.1968;19:627~640)。Florence AT et al.は、シリコーン界面活性剤システムシクロメチコン/PEG/PPG-18/18ジメチコーン及びシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-18/18ジメチコーンを使用して、無水ひまし油-イン-シリコーン流体分散体を安定化させる「新規な無水エマルジョン」を報告している。化粧品科学にとって重要なブレークスルーは、1996年のZombec及びDahms(Dow Corning Corporation)による出版物「シリコーン中ポリオール(プロピレングリコール)の非水性エマルジョンに基づく新規配合物」であった。安定した無水プロピレングリコール-イン-シリコーンエマルジョンは、シクロメチコン中のジメチコーンコポリオールとグリコール相から界面活性剤を塩析するための塩化ナトリウムとを用いて調製した。
【0300】
コエンハンサー-イン-シリコーンクリーム技術は、拡散係数エンハンサー、及び任意選択的に更なるグリコール/水溶剤を、プロピレングリコール分配係数エンハンサーに添加し、カプリリルメチコンなどのヒドロカルビルメチルシロキサンエモリエント及びシリコーンエラストマー/流体をシリコーン連続相に添加する。
【0301】
製造工程の概要
工程は、2つのプレミックス段階、まずN-VRP拡散相プレミックス、次にシリコーン連続相プレミックスを使用する。小規模でのトリシロキサンの損失を回避するため、N-VRPプレミックスをシリコーンプレミックスに分散させた後、最終段階で、より小規模(0.50~3.0kg)で、シリコーン連続相の一部であるが高揮発性トリシロキサンが添加される。これは閉製造システムでは必要でない場合がある。少規模(0.50~3.0kg)では、Kenwood Chefプロフェッショナルスタンドミキサー(KVC7300S.1.5kW、4.6l容量ボウル)を使用してグリコール-イン-シリコーンクリーム分散体を形成する。これらの分散体は、シリコーン美容液に関連することが多い灰色ではなく白色である。従来のSilverson型ホモジナイザーは気泡を作り、これらの分散体を形成するのに有用ではない。しかしながら、より大きな規模で使用されるインライン均質化は、これらのクリームの白色を更に改善することができる。
【0302】
下の表は、材料の典型的なリストを示すが、主要な活性物質は省略している。各材料は、機能といくつかのマルチタスクを有するため、通常12~13の成分しか必要ではない。工程内管理(IRC)の重要性を表8~11で説明する。
【0303】
【表3】
【0304】
一般原則として、不揮発性残余相(N-VRP)材料は、極性を低下させる順で、極性の急激な変化を誘発せず、工程中の過飽和を引き起こさないという意図で添加される。
【0305】
N-VRPプレミックス
工程/材料1 塩化ナトリウム
塩化ナトリウムを、0.5kg規模で、500mlデュワーフラスコの秤量容器に量り分ける。
【0306】
工程/材料2 脱イオン水
脱イオン水を、500mlデュワーフラスコに量り分け、フラスコ内で1分間振盪させて、完全な溶液を得る。
【0307】
工程/材料3 プロピレングリコール
プロピレングリコールを、500mlデュワーフラスコに量り分ける。
【0308】
工程/材料4 ナイアシンアミド(図7.1a及び7.1b)
ナイアシンアミド(ふるいにかけた)を、500mlデュワーフラスコに量り分け、透明な溶液が得られるまで回転ベッド上でフラスコを混合させる。
【0309】
工程/材料5/6 PHA(図7.2a、7.2b、及び7.2c)
グルコノラクトン5、次いでラクトビオン酸6を500mlデュワーフラスコに量り分け、透明な溶液が得られるまで回転ベッド上でフラスコを混合させる。
【0310】
工程/材料7 pH調整剤の添加
pH調整剤を適切な目標pHまで滴状に添加する。
【0311】
N-VRPのN-VRPへの添加後
工程/材料8 防細菌剤の添加
フェノキシエタノールを目標重量まで滴状に添加する。フェノキシエタノールは、N-VRP中で完全に可溶性である。
【0312】
工程/材料9 拡散係数エンハンサー、ミリスチルアルコール(C14アルコール)の添加(図7.3a、7.3b、及び7.3c)
ミリスチルアルコールを、500mlデュワーフラスコに量り分ける。ミリスチルアルコールはN-VRPの重量の50%まで可溶性であり、シリコーン連続相への分配を促進する粗分散液を形成するには約30℃までの加熱を必要とする。周囲温度及びそれよりわずかに高い温度で、ミリスチルアルコールは、両相でほぼ等しい濃度で飽和溶解状態となる。
【0313】
シリコーン連続相プレミックス
工程/材料10/11/12 シリコーンエラストマーブレンドとカルボマーの添加(図7.4a、7.4b、7.4c、7.4d、及び7.4e)
Kenwood Chefプロフェッショナルスタンドミキサー(KVC7300S.1.5kW,4.6l容量のボウル)を使用してグリコール-イン-シリコーンクリーム分散体を形成する。最高速度設定が使用されたが、跳ねを起こさないようにゆっくりと加速した。エラストマー-シリコーン流体ブレンド(EL-7040ヒドロエラストマー及びDC-9040エラストマー)をボウルに量り分け、1分間混合する(図7.4a)。ボウルの側面上の材料を、シリコーンスパチュラを用いて中央に掻き落とし(図7.4b)、次いで1分間混合し、シリコーンスパチュラを用いて中央に掻き落とし、カルボマーを添加する。その後、更に1分間混合し、ボウルの側面を中央に掻き起こし、これを繰り返す(図7.4c、7.4d、及び7.4e)。
【0314】
N-VRPプレミックスのシリコーンエラストマーブレンド-カルボマープレミックスへの添加
ミキサー速度設定を最大速度まで1秒間隔まで上昇させ、N-VRP中のミリスチルアルコール粗分散液をシリコーンエラストマーブレンド-カルボマープレミックスに「分断ストリーム」として添加し、0.5kg規模では、添加を完了させるのに約12分間かかる(約20g/分)。最初のグリコール-イン-シリコーンエマルジョンをシリコーンスパチュラを用いてボウルの側面から中央に掻き落とし、次いで、最高速度で2分間、再度混合する。
【0315】
工程/材料13 揮発性シリコーン流体トリシロキサンの添加(図7.5a及び7.5b)
トリシロキサンをKenwoodボウルに量り分け、最初のグリコール-イン-シリコーン混合物に添加する。
【0316】
ミキサー速度設定を1秒間隔で最大速度まで上昇させて、2分間混合する。次に、ボウルの側面を中央に掻き落とし、これを繰り返す。結果として得られたクリームを、500g蒸気気密プラスチックバケツにパックした。
【0317】
実施例39~54(表8~11)
表8は、PHA(ラクトビオン酸:グルコノラクトン)の比が、1:0、3:1、及び1:1にわたって変動する一連の配合物(実施例39~43)を示す。また、配合物(実施例41~43)では、ニコチンアミド:総PHAの比は、2:1、1.5:1、及び1:1の範囲にわたって変動する。これらの配合物の全てにおいて、グリコール相(材料1~7)をpH約4.6とするために揮発性緩衝液(水性)アンモニアのみが使用される。クリームの連続シリコーン相は無水であるため、グリコール-シリコーンクリーム分散体のpHに影響を及ぼさず、したがって、pHは約4.6である。薄膜として皮膚にクリームを塗布すると、アンモニアは蒸発によって失われ、pHは、主にニコチンアミド:総PHAの比に応じて平衡まで低下する。本発明のいくつかの実施形態では、目的平衡pH3.5は適切であり、これは同時にニコチンアミド(塩基)とPHA(酸)の両方のpKaであり、したがって、これらの補助活性成分の皮膚への浸透力を共に最適化するように機能する。pH約4.4で5%NAMを含有する実施例40は、40℃で、6ヵ月にわたってNAMの効能を低下させない。米国特許第10,028,927号(Futura Medical,UKのLimeway発明)は、約7.00の生成物pHを達成する揮発性緩衝液のアンモニアの使用について記載しており、ジクロフェナクは化学的に安定しているが、pKa、pHを約4.00まで低下させ、皮膚への塗布時、皮膚浸透力を最適化する。
【0318】
表9は、ニコチンアミド:総PHAの比が、2:1、1.50:1、及び1:1にわたって変動する一連の配合物(実施例44~47)を示す。平衡pHは、ニコチンアミド:総PHAの比に依存し、2:1の比では約pH4.00である。この平衡pHは、主要な目的が補助活性物質のニコチンアミド成分の皮膚浸透力を最大化することである場合に最適であろう。配合物(実施例47)は不揮発性塩基緩衝剤の25%NaOHを使用して、平衡(及び生成物)pHを約5.00にする。ここで、ニコチンアミドはほぼ完全にイオン化していない。配合物(実施例44~46)では、グリコール相(材料1~7)をpH約4.6にするために揮発性緩衝液(水性)アンモニアを使用し、このpHは皮膚への塗布時、≦pH4.00まで低下する。
【0319】
表10は、ニコチンアミド:総PHAの比が範囲1:1と0.5:1にわたって変動する一連の配合物(実施例48~51)を示す(両方が二重バッチ)。これらの配合物の全てにおいて、不揮発性緩衝乳酸が、平衡pHを低下させるために使用される。次に、揮発性緩衝液(水性)アンモニアが、グリコール相(材料1~7)をpH4.6にするために使用される。クリームの連続シリコーン相は無水であるため、グリコール-シリコーンクリーム分散体のpHに影響を及ぼさず、したがって、pHは約4.6である。薄膜としてクリームを皮膚に塗布すると、アンモニアは蒸発によって失われ、pHは、主にニコチンアミド:総PHAの比と添加される不揮発性緩衝乳酸の量に応じて、約3.6~3.8の範囲の平衡pHまで低下する。表10は、工程内管理/pHの追跡が、これらのクリームの設計及び製造においていかに有用であるかを示す。重量の工程内管理により、特にニコチンアミド及び総PHAのpH再現性が優れている。
【0320】
表11.クリームの質感は、使用体験において重要な部分である。本明細書に記載のグリコール-シリコーンクリーム分散体の質感は、クリームの連続シリコーン相の質感によって決定され、これはエラストマーポリマーと低粘度シリコーン流体、特にトリシロキサンとの比に関連する。実施例52~54は、固定量のエラストマーポリマーの場合、粘度が添加したトリシロキサンの量に比例することを示す。
【0321】
上記の表8、9、及び10の説明では、揮発性物質(たとえば、水と、存在する場合、揮発性緩衝剤)の蒸発による損失後、N-VRPにおいて達成される平衡pHが、どのようにニコチンアミド:総PHAの比に依存するかについて記載している。当然ながら、酸及び/又は塩基不揮発性緩衝剤の添加も、平衡pHを調整するために利用することができる。加えて、米国特許第10,028,927号から得られるノウハウを知ることが有益であろう。たとえば、揮発性塩基緩衝液(水性)アンモニアを使用することによって、NAM化学的安定性と関連付けられる生成物pH値4.5~6.00まで高めることができる。しかしながら、薄膜として皮膚に塗布すると、液体アンモニア揮発性緩衝剤を含む揮発性物質は蒸発して、皮膚浸透力にとって最適pH、たとえば、pH3.0~4.0の範囲のpHをもたらす。
【0322】
本発明の範囲と精神から逸脱せずに本発明の上述の態様の変更及び変形は、当業者にとって自明となるであろう。特定の好適な実施形態に関して本発明を説明したが、請求される発明は上記の特定の実施形態に不当に限定されるべきではないと理解すべきである。事実、当業者にとって自明である本発明を実行するための形態の様々な変更は、請求項の範囲に含まれることを目的とする。
【0323】
ニコチンアミドクリームの化学構造及び安定度
ニコチンアミド(別名、ナイアシンアミド)(NAM)は、図8aに示すような化学構造を有するニコチン酸のアミドである。
【0324】
種類としてのアミドは、エステルよりも酸による加水分解に対してかなり安定しているが、以前としてNAMの分解の主要ルートである。Finholt及びHiguchi(ナイアシンアミドの加水分解に関する速度試験、J.Pharm Sci、1962、51(7);p655-661)は、NAMの加水分解の最低一次速度はpH範囲4.5~6.0で見出されると報告した(適合させた速度図の図8aを参照)。pH4.402で5%ニコチンアミド及び5%PHAを含有する表8の実施例40に記載のクリーム配合物を、密封ガラスジャー内で5℃及び40℃で6ヵ月間保存した。NAMの有意な分解は観察されなかった。物理的安定性は、5℃及び40℃で6ヵ月間、DOMとしてであった。図8bは、5℃で放置された中央のジャーと比較して、6ヵ月40℃での保存時、PHAに起因すると考えられるわずかな灰色化が生じたことを示す。右のジャーは、新鮮な対照サンプルである。
【0325】
5℃及び40℃(平均± SD、n=5)で保存した配合物5%NAM+5%PHA中のNAM含有量;pH4.402(目標4.40~4.80)。
【0326】
【表4】
【0327】
5℃及び40℃で6ヵ月(平均±SD、n=5)保存した配合物NAM+PHA2-6中のNAM含有量;それぞれpH4.490、4.480、4.514、4.495、及び4.440(目標4.40~4.60);下記の表を参照されたい。
【0328】
【表5】
【0329】
NAM+PHA配合物2~6を、密封ガラスジャー内で5℃及び40℃で6ヵ月保存した。NAMの有意な分解は観察されなかった。
【0330】
対照的に、周囲温度で保持されたpH約3.8~3.9のサンプルは、24ヵ月間でNAMの効能の約20%が漸進的に低下した;下の表を参照されたい。
【0331】
【表6】
【0332】
NAMは、pH4.5~6.00の範囲に調節されるという前提で、分解するまで非常に安定する。有機塩基又は無機塩基を使用して、この目標範囲までpHを調整する多くの選択肢が存在する。上述したように、更なる選択肢は、US10,028,927に記載されるように、揮発性緩衝剤技術を使用して、異なる個々に最適化されたインパック平衡相pHを実現することである。
【0333】
【表7-1】
【表7-2】
【表8-1】
【表8-2】
【0334】
【表9】
【0335】
【表10-1】
【表10-2】
【0336】
【表11】
【0337】
【表12】
【0338】
【表13-1】
【表13-2】
【0339】
【表14-1】
【表14-2】
【0340】
【表15-1】
【表15-2】
【0341】
【表16-1】
【表16-2】
【0342】
【表17-1】
【表17-2】
【0343】
上述の実施形態は単に例示のために提供したものであり、当業者であれば、発明の範囲から逸脱せずに多くの変形を行うことができると当然に理解されるであろう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】