(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】改良された多孔性膜及び改良された多孔性膜を備える装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/457 20210101AFI20230710BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230710BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230710BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230710BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230710BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20230710BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20230710BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230710BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230710BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230710BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/417
H01M50/489
H01M50/403 Z
H01M50/414
H01M4/136
H01M4/131
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576025
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2021036991
(87)【国際公開番号】W WO2021252886
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】武田 久
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,カン,カレン
(72)【発明者】
【氏名】ドン,アレン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真生
【テーマコード(参考)】
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5H021BB02
5H021CC04
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE15
5H021HH00
5H021HH03
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050HA00
5H050HA04
(57)【要約】
2つの外側層及び少なくとも1つの内側層を有する多層多孔性膜。内側層の平均細孔径は、2つの外側層のいずれかのものより大きい。多層多孔性膜は、例えば、電池セパレータとして、又は電池セパレータの一部として用いられてよい。電池セパレータ用の従来の多層多孔性膜と比較すると、本明細書における多層多孔性膜は、熱特性の改善、抗金属汚染特性の改善、製造の容易さの改善、及びこれらの組み合わせの少なくとも1つを示してよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式プロセス多層多孔性膜であって、前記乾式プロセス多層多孔性膜は、
2つの外側層であって、前記外側層の各々は、ポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的に成る、前記外側層と、
ポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的になる1つ又は複数の内側層と、
を含み、
前記内側層の平均細孔径は、前記外側層の平均細孔径より大きい、前記乾式プロセス多層多孔性膜。
【請求項2】
前記多層多孔性膜の細孔径比率は、1.2以上であり、前記細孔径比率は、以下の数式により決定される、
(前記1つ又は複数の内側層の平均細孔径)/(前記外側層の平均細孔径)
請求項1に記載の多層多孔性膜。
【請求項3】
前記細孔径比率は、1.3以上である、請求項2に記載の多層多孔性膜。
【請求項4】
前記細孔径比率は、1.4以上である、請求項2に記載の多層多孔性膜。
【請求項5】
前記細孔径比率は、1.5以上である、請求項2に記載の多層多孔性膜。
【請求項6】
前記細孔径比率は、1.6以上である、請求項2に記載の多層多孔性膜。
【請求項7】
前記細孔径比率は、1.7~2.5である、請求項2に記載の多層多孔性膜。
【請求項8】
前記多層多孔性膜は、少なくとも1つの外側層を前記内側層と共押し出しすることにより形成される、請求項1に記載の多層多孔性膜。
【請求項9】
前記多層多孔性膜は、両外側層を1つの内側層と共押し出しすることにより形成される、請求項1に記載の多層多孔性膜。
【請求項10】
前記多層多孔性膜は、少なくとも1つの外側層を内側層に積層することにより形成される、請求項1に記載の多層多孔性膜。
【請求項11】
前記多層多孔性膜は、両外側層を前記内側層に積層することにより形成される、請求項1に記載の多層多孔性膜。
【請求項12】
内側層は、ポリプロピレン並びにエラストマー、エチレン/αオレフィン共重合体、ポリプロピレンなどの低分子量ポリマー、ポリプロピレンなどの低融点ポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数である別の成分のブレンドを含む、から成る、又はから本質的に成る、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項13】
前記別の成分は、1重量%~20重量%の量で加えられる、請求項12に記載の多層多孔性膜。
【請求項14】
前記別の成分は、5重量%~20重量%の量で加えられる、請求項13に記載の多層多孔性膜。
【請求項15】
前記別の成分は、エラストマーであり、前記エラストマーは、スチレンエラストマーである、請求項12に記載の多層多孔性膜。
【請求項16】
前記スチレンエラストマーは、スチレン及びイソプレン(SIS)のブロック共重合体、スチレンーエチレンーブチレンースチレン(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン(SEPS)スチレンブロック共重合体、スチレンーエチレンーエチレンープロピレンースチレン(SEEPS)ブロック共重合体、スチレンーエチレンープロピレン(SEP)ブロック共重合体、スチレン末端ブロック及び水素化されても水素化されなくてもよい中間ブロックを有するトリブロック共重合体、並びにこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数であってよい、請求項15に記載の多層多孔性膜。
【請求項17】
前記別の成分は、エチレン/αオレフィン共重合体である、請求項12に記載の多層多孔性膜。
【請求項18】
前記別の成分は、低分子量ポリプロピレンである、請求項12に記載の多層多孔性膜。
【請求項19】
前記別の成分は、低融点ポリプロピレンである、請求項12に記載の多層多孔性膜。
【請求項20】
前記内側層は、JIS K7210に従って測定した場合1.0g/10分未満のMFRを有するポリプロピレンホモポリマーを含む、から成る、又はから本質的に成る、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項21】
前記MFRは、0.1~0.75g/10分である、請求項20に記載の多層多孔性膜。
【請求項22】
前記1つ又は複数の内側層の平均細孔径は、前記外側層のいずれか又は両方の平均細孔径より5%大きい、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項23】
前記1つ又は複数の内側層の平均細孔径は、前記外側層のいずれか又は両方の平均細孔径より10%以上大きい、請求項22に記載の多層多孔性膜。
【請求項24】
前記内側層の平均細孔径は、前記外側層のいずれか又は両方の平均細孔径より20%以上大きい、請求項22に記載の多層多孔性膜。
【請求項25】
前記1つ又は複数の内側層の平均細孔径は、前記外側層のいずれか又は両方の平均細孔径より30%以上大きい、請求項22に記載の多層多孔性膜。
【請求項26】
前記1つ又は複数の内側層の平均細孔径は、前記外側層のいずれか又は両方の平均細孔径より40%以上大きい、請求項22に記載の多層多孔性膜。
【請求項27】
前記1つ又は複数の内側層の平均細孔径は、前記外側層のいずれか又は両方の平均細孔径より50%以上大きい、請求項22に記載の多層多孔性膜。
【請求項28】
前記2つの外側層は各々0.05~0.5μm(50~500nm)の平均細孔径を有し、前記2個の外側層の平均細孔径は、同一であっても異なってもよい、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項29】
前記内側層は、0.05~0.5μm(50~500nm)の平均細孔径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項30】
前記2つの外側層は各々0.25μm(250nm)未満の平均細孔径を有し、前記2つの外側層の平均細孔径は、同一であっても異なってもよい、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項31】
前記内側層は、0.25μm(250nm)超の平均細孔径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項32】
前記内側層は、前記外側層の少なくとも1つに用いられるポリプロピレンとは異なる(小さい又は大きい)MFRを有するポリプロピレンを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項33】
5~25μmの厚さを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項34】
5~15μmの厚さを有する、請求項33に記載の多層多孔性膜。
【請求項35】
1つしか内側層を備えない、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項36】
2つ以上の内側層を備える、請求項35記載の多層多孔性膜。
【請求項37】
前記内側層の1つは、ポリエチレンを含む、から成る、又はから本質的に成り、前記ポリエチレンは、シャットダウン機能を提供してよく、前記内側層の1つは、ポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的に成る、請求項36に記載の多層多孔性膜。
【請求項38】
16μm厚さで300gf超の穿刺強度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項39】
前記外側層及び1つの内側層は、互いに共押し出しされる、請求項1に記載の多層多孔性膜。
【請求項40】
請求項1~11又は39のいずれか一項に記載の多層多孔性膜を備える電池セパレータ。
【請求項41】
被覆は、前記多層多孔性膜の片側又は両側に提供される、請求項40の記載の電池セパレータ。
【請求項42】
前記被覆は、セラミック被覆、ポリマー被覆、シャットダウン被覆、接着/接着剤被覆、又はこれらの組み合わせである、請求項41に記載の電池セパレータ。
【請求項43】
請求項40に記載の電池セパレータを備える電池。
【請求項44】
前記電池の電極は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NMC又はNCM)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムニッケルマンガンスピネル(LMNO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、又はこれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の電池。
【請求項45】
請求項43に記載の電池を備える車両。
【請求項46】
請求項44に記載の電池を備える車両。
【請求項47】
前記車両は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、マイルドハイブリッド電気自動車(MHEV)、又はプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)である、請求項46に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池セパレータとして有用であってよい改良された多層多孔性膜に関する。特に、本明細書に記載される多層多孔性膜は、以下の、熱特性の改善、抗金属汚染特性の改善、及び製造の容易さの改善の少なくとも1つを示してよい。
【背景技術】
【0002】
二次電池に一般的に用いられる電極材料は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、及び他のものを含む遷移金属を含有してよい。例えば、いくつかの例示的な電極材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NMC又はNCM)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムニッケルマンガンスピネル(LMNO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、又はこれらの組み合わせを含んでよい。これらの電極材料のいくつかは、電解質と接触し、電解質に遷移金属イオンが存在することになる。適当な条件では、これらの金属イオンは、金属形に還元されることができる。この金属めっきは、デンドライト成長をもたらすことになる。デンドライトがセパレータを貫通して成長して両電極が接触すると、短絡が起こる。
【0003】
金属汚染の別の供給源は、電池部品及び/又は電池を製造するために用いられる、例えば、ブラシ、ローラーなどの金属製機器であってよい。金属製機器は、電池中のコバルト、銅、又は鉄イオンの供給源となってよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の観点から、電池の金属汚染を低減、軽減、又は除去する方法が望ましくてよい。
【0005】
1つの態様において、本明細書には、電池セパレータとして用いた場合に、とりわけ電池の金属汚染を低減又は除去することができる多層多孔性膜が記載される。多層多孔性膜を、金属軽減特性を備えたセパレータとして用いてよい。多層多孔性膜は、金属汚染が問題となる電池に特に有用であってよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
多層多孔性膜は、以下のような、各々個別にポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的に成る2個の外側層、及びポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的に成る少なくとも1つの内側層の少なくとも3個の層を含んでよい。内側層の平均細孔径は、外側層のいずれか又は両方の平均細孔径より大きい。
【0007】
多層多孔性膜の細孔径比率は、内側層の平均細孔径を外側層の平均細孔径で割ることにより算出することができる。いくつかの実施形態において、細孔径比率は、1.0より大きくてよい。いくつかの実施形態において、細孔径比率は、1.2~5.0、1.2~4.5、1.2~4.0、1.2~3.5、1.2~3.0、1.3~2.5、1.4~2.5、1.5~2.5、1.6~2.5、1.7~2.5、1.2~2.0、1.2~1.9、1.2~1.8、1.2~1.7、1.2~1.6、1.2~1.5、1.2~1.4、又は1.2~1.3であってよい。
【0008】
細孔径に関しては、いくつかの実施形態において、この内側層の平均細孔径は、この外側層のいずれか又は両方の平均細孔径の5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上である。
【0009】
いくつかの実施形態において、この2個の外側層は各々、0.05~0.5μm(50~500nm)、0.1~0.4μm(100~400nm)、0.11~0.35μm(110~350nm)、0.12~0.3μm(120~300nm)、又は0.15~0.3μm(150~300nm)の平均細孔径を有し、2個の外側層の平均細孔径は、同一であっても異なってもよい。この内側層の平均細孔径はまた、0.05~0.5μm(50~500nm)であってよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、この2個の外側層は各々、0.25μm未満の平均細孔径を有し、2個の外側層は、同一であっても異なってもよい。この内側層の平均細孔径は、0.25μmより大きくてよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、この内側層は、一方又は両方の外側層中のポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)と異なる(高い又は低いのいずれか)MFRを有するポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的に成ってよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、この内側層は、JIS K7210に従って測定した場合1.0g/10分未満のMFRを有するポリプロピレンホモポリマー、共重合体、又はターポリマーを含む、から成る、又はから本質的に成ってよい。いくつかの実施形態において、このMFRは、0.1~0.75g/10分であってよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、この内側層は、ポリプロピレン及び別の成分を含む、から成る、又はから本質的に成ってよい。この成分は、1重量%~20重量%、又は5重量%~10重量%の量で存在してよい。この他の成分は、エラストマー、エチレン/αオレフィン共重合体、ポリプロピレンなどの低分子量ポリマー、ポリプロピレンなどの低融点ポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数であってよい。いくつかの実施形態において、このエラストマーは、スチレンエラストマーであってよい。このスチレンエラストマーは、スチレン及びイソプレン(SIS)のブロック共重合体、スチレンーエチレンーブチレンースチレン(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン(SEPS)、スチレンブロック共重合体、スチレンーエチレンーエチレンープロピレンースチレン(SEEPS)ブロック共重合体、スチレンーエチレンープロピレン(SEP)ブロック共重合体、スチレン末端ブロック及び水素化されても水素化されなくてもよい中間ブロックを有するトリブロック共重合体、並びにこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数であってよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、この多層多孔性膜は、1つの内側層を有してよく、他の実施形態においては、2つ以上の内側層があってよい。2つ以上の内側層がある実施形態において、内側層の1つは、ポリエチレンはシャットダウン機能を提供することができるポリエチレンを含む、から成る、又はから本質的に成ってよく、内側層の1つはポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的に成ってよい。
【0015】
多層多孔性膜は、5~25μm又は5~15μmの厚さを有してよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、多層多孔性膜を共押出法により形成してよい。例えば、構造の2つ以上の層を互いに共押し出ししてよい。1つの内側層しか存在しない実施形態において、この内側層を、少なくとも1つの外側層又は両外側層と共押し出ししてよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、2つ以上の層を互いに積層することにより多層多孔性膜を形成してよい。1つの内側層しか存在しない実施形態において、この内側層を少なくとも1つの又は両外側層に積層してよい。
【0018】
多層多孔性膜は、16μmで300gf超、310gf超、320gf超、330gf超、340gf超、又は350gf超の穿刺強度を有してよい。
【0019】
別の態様において、本明細書に記載される多層多孔性膜を備える電池セパレータも記載される。いくつかの実施形態において、電池セパレータは、被覆された多層多孔性膜を備えてよく、被覆は、この多層多孔性膜の片側又は両側に提供されている。被覆はさほど限定されないが、セラミック被覆、ポリマー被覆、シャットダウン被覆、接着/接着剤被覆、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0020】
別の態様において、本明細書に記載される電池セパレータを備える電池も記載される。この電池は、いくつかの実施形態において、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NMC又はNCM)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムニッケルマンガンスピネル(LMNO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、又はこれらの組み合わせを含む電極を有する。
【0021】
別の態様において、本明細書に記載される電池を備える車両も記載される。この車両は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、マイルドハイブリッド電気自動車(MHEV)、又はプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による膜のSEMである。
【
図2】
図2は、本明細書に開示されるいくつかの本発明の実施形態による細孔径データのグラフである。
【
図3】
図3は、本明細書に開示されるいくつかの比較例による細孔径データのグラフである。
【
図4A】
図4Aは、本明細書に記載される本発明の実施例1、2、及び3のデータを含む表である。
【
図4B】
図4Bは、本明細書に記載される本発明の実施例4、5、及び6のデータを含む表である。
【
図4C】
図4Cは、本明細書に記載される本発明の実施例7、8、及び9のデータを含む表である。
【
図5】
図5は、本明細書に記載される比較実施形態のデータを含む表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に記載される多層多孔性膜は、以下の、熱特性の改善、抗金属汚染特性の改善、及び製造の容易さの改善の少なくとも1つを示してよい。これらの特性は多層多孔性膜特有の構造に由来し、この構造には2つの外側層及び少なくとも1つの内側層を有する多層構造が含まれ、この1つ又は複数の内側層の平均細孔径は、この外側層のものより大きい。この微細多孔性膜は、電池の短絡を引き起こす危険をもたらす可能性がある金属デンドライトを形成することができる遷移金属を有する電極材料を含む二次電池に特に有用であってよい。短絡すると、発煙、発火、及び/又は爆発が生じることができる。したがって、短絡を防ぐことで電池の安全性が高まる。
【0024】
多層多孔性膜
この膜の構造はさほど限定されないが、以下のもの、2つの外側層及び少なくとも1つの内側層を備えることが好ましい。いくつかの実施形態において、構造は、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、又は10つ以上の内側層を.備えてよい。少なくとも1つの内側層は、外側層の平均細孔径より大きい平均細孔径を有する。複数の外側層の平均細孔径は、同一であっても異なってもよいが、両層は、少なくとも1つの内側層の平均細孔径より小さい平均細孔径を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の内側層の平均細孔径は、2つの外側層の細孔径より5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、又は50%以上大きい。いくつかの実施形態において、膜の細孔径比率は、1つ又は複数の内側層の平均細孔径の外側層の平均細孔径に対する比率であり、1.05以上、1.10以上、1.20以上、1.30以上、1.40以上、1.50以上、1.60以上、1.70以上、1.80以上、1.90以上、2.00以上、2.10以上、2.10以上、2.20以上、2.30以上、2.40以上、又は2.50以上である。いくつかの特に好ましい実施形態において、1つ又は複数の内側層の平均細孔径の外側層の平均細孔径に対する比率は、1.20以上、1.50以上、又は1.70以上である。このような膜は、金属軽減の改善を示す。
【0026】
いくつかの実施形態において、外側層の平均細孔径は各々個別に、0.05~1.0μm(50~1,000nm)、0.1~0.9μm(100~900nm)、0.1~0.8μm(100~800nm)、0.1~0.7μm(100~700nm)、0.1~0.6μm(100~600nm)、0.05~0.5μm(50~500nm)、0.1~0.4μm(100~400nm)、0.11~0.35μm(110~350nm)、又は0.12~to0.3μm(120~300nm)、又は0.15~0.3μm(150~300nm)であってよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、内側層の平均細孔径は、0.05~1.0μm、0.1~0.9μm、0.15~0.8μm、0.2~0.7μm、0.3~0.6μm、又は0.3~0.5μm、又は0.3~0.4μmであってよい。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態において、内側層の平均細孔径は、0.5μm以上、0.4μm以上、0.3μm以上、0.2μm以上、又は0.1μm以上であり、外側層の平均細孔径は、0.5μm以下、0.4μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下、又は0.1μm以下である。
【0029】
多層多孔性膜の層の組成は、さほど限定されず、いかなる熱可塑性樹脂を使用してもよい。さらに、多層多孔性膜の層の各々の組成は、互いに同一であっても異なってもよい。例えば、2つの外側層及び1つの内側層を有する三層構造においては、外側層の組成は同一であっても異なってもよく、内側層の組成は外側層のいずれか又は両方の組成と同一であっても異なってもよい。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態において、2つの外側層及び少なくとも1つの内側層は、ポリプロピレンホモポリマー、共重合体、又はターポリマーを含む、から成る又はから本質的に成ってよい。外側層及び内側層の各々のポリプロピレンホモポリマー、共重合体、又はターポリマーは、同一であってよく、例えば同一若しくは実質的に同一のメルトフローレートを有してよく、又は異なってよい、例えば異なるメルトフローレートを有してよい。用いられるポリプロピレンは、JIS K7210に従って測定した場合、0.1~2、0.1~1.9、0.1~1.8、0.1~1.7、0.1~1.6、0.1~1.5、0.1~1.4、0.1~1.3、0.1~1.2、0.1~1.1、0.1~1.0、0.1~0.95、0.1~0.9、0.1~0.85、0.1~0.80、0.1~0.75、0.1~0.70、0.1~0.65、0.1~0.60、0.1~0.55、0.1~0.50、0.1~0.45、0.1~0.40、0.1~0.35、0.1~0.30、0.1~0.25、0.1~0.20、又は0.1~0.15のメルトフローレートを有してよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、内側層は、JIS K7210に従って測定した場合のMFRが低いポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的に成ってよい。例えば、内側層は、JIS K7210に従って測定した場合、1.0未満、0.95未満、0.9未満、0.85未満、0.8未満、0.75未満、0.7未満、0.65未満、0.6未満、0.55未満、0.5未満、0.45未満、0.4未満、0.35未満、0.3未満、0.25未満、0.2未満、0.15未満、0.1未満、又は0.05未満のMFRを有するポリプロピレンポリマー、共重合体、又はターポリマーを含む、から成る、又はから本質的に成ってよい。
【0032】
多層多孔性膜の層において異なる平均細孔径を達成する方法は、さほど限定されない。いくつかの実施形態において、内側層を2つの外側層と共押し出しするときに内側層に大きな細孔を形成することを可能にする添加剤を内側層に加えてよい。例えば、無機又は有機の細孔形成剤又は核生成剤を加えてよい。また、この目的のためにポリマー又はエラストマーを加えてもよい。例えば、構造の各層を別々に押し出し、延伸して細孔を形成することにより、層の間で異なる平均細孔径を達成してもよい。次いで、延伸した層を互いに積層して最終構造を形成してよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、大きい細孔を達成するために、内側層は、ポリプロピレン及び1重量%~20重量%、2重量%~20重量%、3重量%~20重量%、4重量%~20重量%、5重量%~20重量%、6重量%~20重量%、7重量%~20重量%、8重量%~20重量%、9重量%~20重量%、10重量%~20重量%、11重量%~20重量%、12重量%~20重量%、13重量%~20重量%、14重量%~20重量%、15重量%~20重量%、19重量%~20重量%の量で加えることができる別の成分を含んでよい。
【0034】
例えば、内側層は、ポリプロピレン及びエラストマーを含んでよい。このエラストマーはいくつかの実施形態によってはスチレンエラストマーであってよい。例えば、スチレン及びイソプレン(SIS)のブロック共重合体、スチレンーエチレンーブチレンースチレン(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン(SEPS)、スチレンブロック共重合体、スチレンーエチレンーエチレンープロピレンースチレン(SEEPS)ブロック共重合体、スチレンーエチレンープロピレン(SEP)ブロック共重合体、スチレン末端ブロック及び水素化されても水素化されなくてもよい中間ブロックを有するトリブロック共重合体、並びにこれらの組み合わせの少なくとも1つを用いてよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの内側層は、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上で約20重量%以下の量のエラストマーを含有してよい。
【0035】
他の好ましい実施形態においては、内側層において大きい細孔を達成するためにエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-ヘキセン共重合体、エチレン/1-オクテン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体、又はこれらの組み合わせなどのエチレン/αオレフィン共重合体を加えてよい。いくつかの実施形態において、このようなエチレン/αオレフィン共重合体を、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上約20重量%以下の量で内側層に加えてよい。
【0036】
他の好ましい実施形態において、大きい細孔径を達成するために、内側層に低融点ポリプロピレンホモポリマー、共重合体、又はターポリマーを加えてよい。低融点は、100℃未満、95℃未満、90℃未満、85℃未満、80℃未満、75℃未満、70℃未満、65℃未満、60℃未満、55℃未満、50℃未満、45℃未満、40℃未満、35℃未満、30℃未満、25℃未満、20℃未満、15℃未満、10℃未満、又は5℃未満の融点である。いくつかの実施形態において、内側層に低融点ポリプロピレンを、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上約20重量%以下の量で加えてよい。
【0037】
他の好ましい実施形態において、大きい細孔径を達成するために、内側層に低分子量ポリプロピレンホモポリマー、共重合体、又はターポリマーを加えてよい。低分子量ポリプロピレンは、JIS K7210に従って測定した場合20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上、160以上、170以上、180以上、又は200以上のMFRを有してよい。いくつかの実施形態において、内側層に低分子量ポリプロピレンを、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上約20重量%以下の量で加えてよい。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態において、多層多孔性膜は、乾式プロセス多層多孔性膜であり、膜が溶媒若しくは油を使用せず又は最小限しか使用せず形成されたことを表す。乾式プロセスは、細孔を形成する又は形作るために押出工程、アニール工程、及び1つ又は複数の延伸工程を含む、から成る、又はから本質的に成ってよい。いくつかの実施形態において、膜を1方向(一軸)又は2方向(二軸)、又はそれ以上の方向に延伸してよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、多層多孔性フィルムを構造の2つ以上の層を共押し出しすることにより形成してよい。いくつかの実施形態において、構造の全ての層を共押し出ししてよい。例えば、多層多孔性膜が2つの外側層及び1つの内側層から成る場合、3つの層全てを共押し出ししてよい。あるいは、1つの外側層及び内側層を共押し出ししてよく、ついでこの構造を、別々に押し出した他の外側層に積層してよい。層を、延伸の前又は後に積層してよい。別の実施形態があれば、2つ以上の層を別々に共押し出しし、これらの共押し出しした層を1つ又は複数の追加の組の共押し出しした層と積層することになる。
【0040】
いくつかの実施形態において、多層多孔性膜を、3つ以上の単層押し出しした層を積層することにより形成してよい。例えば、2つの外側層及び1つの内側層を別々に押し出ししてよく、ついで別々に押し出ししたフィルムを延伸する前又は後に積層してよい。
【0041】
多層多孔性膜の厚さは、さほど限定されず、1~50μm、1~40μm、1~30μm、1~25μm、1~20μm、1~15μm、1~10μm、又は1~5μmであってよい。
【0042】
電池セパレータ
本明細書における電池セパレータは、さほど限定されず、本明細書に記載される少なくとも1つの多層多孔性膜を備える、から成る、又はから本質的に成ってよい。いくつかの実施形態において、多層多孔性膜の片側又は両側に被覆を施してよい。
【0043】
被覆に関しては、この被覆はさほど限定されない。被覆は、セラミック被覆、ポリマー被覆、シャットダウン被覆、接着/接着剤被覆、又はこれらの組み合わせであってよい。被覆の厚さはさほど限定されないが、0.1~10μm、0.2~9μm、0.3~8μm、0.4~7μm、0.5~6μm、0.6~5μm、0.7~4μm、0.8~3μm、0.9~2μm、又は1~5μmであってよい。
【0044】
シャットダウン被覆は、典型的なPP/PE/PPシャットダウンセパレータのようにシャットダウンしない全てのポリプロピレン膜にこの追加の安全特性をもたらすことができる。セラミック被覆を施すと、電池の短絡を起こすことができるデンドライト成長の阻止に役立つことによりセパレータの抗金属汚染機能をさらに追加することができる。
【0045】
電池又は装置
本明細書に記載される膜又は電池セパレータの用途はさほど限定されない。膜を、例えば、二次電池用の電池セパレータ、コンデンサ、及び同種の物の一部として使用してよい。膜はまた、織物、フィルター、HVAC応用、燃料電池応用、及び同種のものにも有用であってよい。
【0046】
電池セパレータが用いられてよい電池の種類もさほど限定されない。いくつかの好ましい実施形態において、電池セパレータは、金属デンドライト成長が懸念されるいかなる電池に有用であってよい。金属デンドライト成長は、本明細書に記載されるリチウム又は遷移金属の析出物及び成長に起因してよい。これらの装置においては、本明細書に記載される膜又は電池セパレータは、金属デンドライト成長の軽減に役立つことができる。
【0047】
車両
本明細書に記載される電池が用いられる車両の種類は、さほど限定されない。例えば、車両は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、マイルドハイブリッド電気自動車(MHEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、又は同種のものであってよい。
【0048】
添付の特許請求の範囲の製品及び装置は、本明細書に記載される特定の製品及び装置によっては範囲が制限されず、本明細書に記載される特定の製品及び装置は特許請求の範囲のいくつかの態様を例示することを意図し、機能的に等価ないかなる製品及び装置も、特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。本明細書に示され、記載されるものに加えて、製品及び装置の各種変形は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。さらに、本明細書には特定の代表的な製品及び装置しか具体的に記載されていないが、製品及び装置の他の組み合わせも、具体的に列挙されていないとしても、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。したがって、本明細書において工程、要素、成分、又は構成物質の組み合わせを明確に記載することができてもできなくても、たとえ明確に記載されていないとしても、工程、要素、成分、及び構成物質の他の組み合わせが含まれる。本明細書において用いられる用語「含む(comprising)」、及びこれの変形は、用語「含む(including)」、及びこれの変形と同義的に用いられ、オープンで非限定的な用語である。用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」は、各種実施形態を説明するために本明細書において用いられているが、用語「から本質的に成る(consisting essentially of)」及び「から成る(consisting of)」を、本発明のより具体的な実施形態を提供するために「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに用いてよく、また開示される。実施例以外、又は別段の記載がある場合、明細書及び特許請求の範囲に用いられる成分、反応条件その他の量を表す全ての数字は、少なくともと理解されるべきであり、特許請求の範囲と等価物の原理の適用を制限しようとする試みとしてではなく、有効数字の数および通常の四捨五入のアプローチの観点で解釈されるべきである。
【0049】
本発明は、その精神および本質的な特質から逸脱することなく他の形態に具現化してよく、したがって、本発明の範囲を示すとして、前述の明細書よりもむしろ、添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。開示される方法およびシステムを実施するのに使用され得る成分が開示されている。これら及び他の成分が本明細書において開示されており、これらの成分の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが、これらのそれぞれの種々の個別及び集合的組み合わせ並びに並べ替えが明確に開示されなくてよい場合がありながら、開示されているとき、それぞれが、全ての方法及びシステムについて具体的に企図されて本明細書に記載されていると理解される。このことは、限定されないが、開示される方法における工程を含め本願の全ての態様に当てはまる。そのため、実施されてよい種々のさらなる工程が存在するとき、これらのさらなる工程は、それぞれが、開示される方法のいずれの具体的な実施形態又は実施形態の組み合わせによっても実施されてよいことが理解される。
【0050】
構造及び方法の前述の記載されている詳細な説明は、説明目的のみで提示されている。例を使用して、最良の形態を含めた好ましい実施形態を開示しており、また、いずれの当業者も、任意の装置またはシステムを作製及び使用すること、並びに任意の組み込まれた方法を実施することを含めた本発明を実施することができるようになる。これらの例は、排他的であること、又は本発明を開示されている厳密な工程及び/若しくは形態に限定することを意図しておらず、上記の教示に照らして多くの変更及び変形が可能である。本明細書に記載される特徴は、いずれの組み合わせで組み合わされてもよい。本明細書に記載される方法の工程は、物理的に可能であるいずれの順序で実施されてもよい。本発明の特許請求可能な範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されており、当業者が思い浮かぶ他の例を含んでいてよい。かかる他の例は、これらが特許請求の範囲の逐語的言葉と異ならない構造的要素を有するとき、又は特許請求の範囲の逐語的言葉と実質的に差異がない等価の構造的要素を含むとき、特許請求の範囲内にあると意図される。
【0051】
添付の特許請求の範囲の製品及び装置は、本明細書に記載される特定の製品及び装置によっては範囲が制限されず、本明細書に記載される特定の製品及び装置は特許請求の範囲のいくつかの態様を例示として意図される。機能的に等価ないかなる製品及び装置も、特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。本明細書に示され、記載されるものに加えて、製品及び装置の各種変形は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。さらに、本明細書には特定の代表的な製品及び装置しか具体的に記載されていないが、製品及び装置の他の組み合わせも、具体的に列挙されていないとしても、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。したがって、本明細書において工程、要素、成分、又は構成物質の組み合わせを明確に記載することができてもできなくても、たとえ明確に記載されていないとしても、工程、要素、成分、及び構成物質の他の組み合わせが含まれる。
【0052】
明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されているとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別途明らかに示さない限り複数の指示対象を含む。範囲は、「約」若しくは「およそ」1つの特定値から、及び/又は「約」若しくは「およそ」別の特定値までとして本明細書において表されてよい。かかる範囲が表されているとき、別の実施形態には、1つの特定値から、及び/又は他の特定値までが含まれる。同様に、値が先行詞「約」を使用して近似値として表されているとき、特定値が別の実施形態を形成すると理解される。範囲のそれぞれの終点が、両方とも、他の終点に関連して、及び他の終点から独立して有意であることがさらに理解される。「任意選択的な」又は「任意選択的に」は、続いて記載されている事象又は状況が、起こっても起こらなくてもよいこと、及び、記載が、当該事象又は状況が起こる場合及び起こらない場合を含んでいることを表す。
【0053】
本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲の全体を通して、用語「含む(comprise)」及び当該語の変形、例えば「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」は、「含むが限定されない」を意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数値、又は工程を排除することを意図するものではない。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」は、本発明のより具体的な実施形態を提供するために「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに使用されてよく、また、開示されている。「例示的な(exemplary)」又は「例えば(for example)」は、「の例(an example of)」を表し、好ましい又は理想的な実施形態を示すものを伝えることを意図するものではない。同様に、「例えば(such as)」は、制限的な意味で使用されるのではなく、説明的又は例示的目的で使用される。
【0054】
注記されている以外の、本明細書及び特許請求の範囲において使用されている幾何学的形状、寸法などを表す全ての数が、少なくともと理解されるべきであり、特許請求の範囲と等価物の原理の適用を制限しようとする試みとしてではなく、有効数字の数および通常の四捨五入のアプローチの観点で解釈されるべきである。
【0055】
別途定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、開示される発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に列挙される公開公報及び列挙される材料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0056】
加えて、本明細書において説明的に開示される発明は、好適には、本明細書に具体的に開示されていないいずれの要素の非存在下であっても実施されてよい。
【実施例】
【0057】
本発明の実施例及び比較例は、ポリプロピレン組成物1(PP1)及びポリプロピレン組成物2(PP2)を共押し出しして以下の三層構造PP1/PP2/PP1を有する膜を形成することを含む、乾式延伸工程により形成された。実施例の各々についてのPP1及びPP2を、
図4A、4B、4C及び
図5の表に定義する。
【0058】
例えば、実施例1において、PP1は、MFR0.8g/10分を有するポリプロピレンであり、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレン及びスチレンエラストマーのブレンドであり、スチレンエラストマーの量は5重量%である。
【0059】
実施例2において、PP1は、MFR0.8g/10分を有するポリプロピレンであり、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレン及びスチレンエラストマーのブレンドであり、スチレンエラストマーは、実施例1において5重量%で用いられたものと同一である。
【0060】
実施例3において、PP1は、MFR0.8g/10分を有するポリプロピレンであり、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレン及び8重量%のスチレンエラストマーのブレンドであり、スチレンエラストマーは、実施例1で用いられたものと同一である。
【0061】
実施例4において、PP1は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレンであり、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレン及び8重量%のスチレンエラストマーのブレンドであり、スチレンエラストマーは、実施例1において用いられたものと同一である。
【0062】
実施例5については、PP1は、MFR0.4g/10分を有するポリプロピレンであり、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレン及び8重量%のスチレンエラストマーのブレンドであり、スチレンエラストマーは、実施例1において用いられたものと同一である。
【0063】
実施例6については、PP1は、MFR0.4g/10分を有するポリプロピレンであり、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレン及び8重量%のスチレンエラストマーのブレンドであり、スチレンエラストマーは、実施例1において用いられたものと同一である。
【0064】
実施例7については、PP1は、MFR0.8g/10分を有するポリプロピレンであり、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレン及び5重量%の、融点が100℃未満である低融点PPのブレンドである。
【0065】
実施例8については、PP1は、MFR0.8g/10分を有するポリプロピレンであり、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレン及びMFR100g/10分を有する10重量%の低分子量PPのブレンドである。
【0066】
実施例9については、PP1は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレンを含み、PP2は、MFR0.8g/10分を有するポリプロピレンを含む。PP2は、ブレンドではない。
【0067】
比較例1については、PP1は、MFR0.8g/10分を有するポリプロピレンを含み、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレンを含む。PP2は、ブレンドではない。
【0068】
比較例2については、PP1は、MFR0.8g/10分を有するポリプロピレンを含み、PP2は、MFR0.5g/10分を有するポリプロピレンを含む。PP2は、ブレンドではない。
【0069】
実施例1~9及び比較例1~2の膜を分析し、結果を
図4A、4B、4C、及び
図5の表に示す。細孔径比率は、内側層の平均細孔径及び外側層の平均細孔径を算出し、内側層の平均細孔径を外側層の平均細孔径で割ることにより取得した。平均細孔径は、以下のように測定した。
【0070】
面積平均主要細孔径
面積平均主要細孔径は、膜の断面走査型電子顕微鏡(SEM)像を画像分析することにより測定した。断面SEMは、以下の手順により測定した。
1)断面SEM用の試料:ルテニウム(Ru)で染色したフィルムサンプルを、割断方向がMDと平行な凍結割断法により処理した。
2)SEM観察条件:試料を導電性カーボンペーストを有するスタブに載せ、載せたサンプルを乾燥し、オスミウムコーター(Vacuum Device Corporation)を用いてオスミウムプラズマコーティングを施して試料に伝導性を与えた。オスミウムプラズマコーティングは、以下の条件;放電電圧ゲイン4.5、放電時間0.5秒で実施した。
3)SEM観察には、以下の条件;加速電圧:1kV、作動距離:5mm、倍率:5,000、検出信号:LA10でS-4800(Hitachi High-Technologies Corporation)を用いた。観察用に3か所を無作為に選択した。
【0071】
細孔区域を樹脂から成る領域と見分けるために、取得したSEM画像をImageJソフトウェアの大津の手法により二値画像に変換した。面積平均主要細孔径を、以下の等式により算出し、
【数1】
は、面積平均細孔径であり、X
iは、特定の細孔の主要細孔径であり、W
iは、細孔の面積であり、nは細孔の数である。
【0072】
【0073】
画像の縁に部分的に含まれる細孔又は画像の0.001μm2未満の細孔は、計算から除外した。
【0074】
実施例1の膜は、
図1に示す構造を有していた。実施例1のサンプルの層中の細孔分布を測定し、
図2に示す通りである。比較例2のサンプルの層中の細孔分布も測定し、
図3に示す通りである。比較例2及び実施例1は、実施例1の内側層がスチレンエラストマーとのブレンドを含むことを除けば同一である。膜が金属成長を軽減する能力についても評価し、実施例6及び8が金属成長軽減を多く示したので、最も良い結果を示した。いかなる特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、細孔径比率の高さは金属成長軽減の大きさに対応すると考えられる。金属成長軽減は、小さなコイン型電池を用いて、電池中のセパレータが充電電池サイクル中、特定の金属が陰極から陽極に成長するのをどのように軽減するかを調査することにより再現することができる。例えば、1.2超、1.3超、1.4超、1.5超、1.6超、1.7超、1.8超、1.9超、又は,2.0超の比率が好ましくて良い。実施例においては、実施例6に示されるブレンドを用いて最も高い細孔径比率を達成した。
【0075】
実施例1は、中間層に大きな細孔を、外側層に小さな細孔を有することが示される。中間層にスチレンエラストマーを添加したことがこの差の原因と考えられるが、同一の結果、すなわち中間層の大きな細孔を達成するための他の方法があってよい。例えば、核生成剤の添加により同一の効果を達成してよい。さらに、中間層に大きな細孔がある構造を形成するために、外側層及び中間層を別々に押し出し、互いに積層し、延伸する例を用いてよい。さらに、中間層に大きな細孔がある構造を形成するために、外側層及び中間層を別々に押し出し、延伸し、互いに積層する例を使用してよい。このような構造においては、大きな細孔を形成するために中間層に何も加える必要がなくてよい。中間層をさらに延伸することにより大きな細孔を形成してよい。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式プロセス多層多孔性膜であって、前記乾式プロセス多層多孔性膜は、
2つの外側層であって、前記外側層の各々は、ポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的に成る、前記外側層と、
ポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的になる1つ又は複数の内側層と、
を含み、
前記内側層の平均細孔径は、前記外側層の平均細孔径より大きい、前記乾式プロセス多層多孔性膜。
【請求項2】
前記多層多孔性膜の細孔径比率は、1.2以上であり、前記細孔径比率は、以下の数式により決定される、
(前記1つ又は複数の内側層の平均細孔径)/(前記外側層の平均細孔径)
請求項1に記載の多層多孔性膜。
【請求項3】
前記細孔径比率は、1.3以上
、1.4以上、1.5以上、又は1.6以上である、請求項2に記載の多層多孔性膜。
【請求項4】
前記細孔径比率は、1.7~2.5である、請求項2に記載の多層多孔性膜。
【請求項5】
前記多層多孔性膜は、少なくとも1つの外側層を前記内側層と共押し出しすること
、又は両外側層を1つの内側層と共押し出しすることにより形成される、請求項1に記載の多層多孔性膜。
【請求項6】
前記多層多孔性膜は、少なくとも1つの外側層を内側層に積層すること
、又は両外側層を前記内側層に積層することにより形成される、請求項1に記載の多層多孔性膜。
【請求項7】
少なくとも1つの前記内側層は、ポリプロピレン並びにエラストマー、エチレン/αオレフィン共重合体、ポリプロピレンなどの低分子量ポリマー、ポリプロピレンなどの低融点ポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数である別の成分のブレンドを含む、から成る、又はから本質的に成る、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項8】
前記別の成分は、1重量%~20重量%
、又は5重量%~20重量%の量で加えられる、請求項
7に記載の多層多孔性膜。
【請求項9】
前記別の成分は、エラストマーであり、前記エラストマーは、スチレンエラストマーであり
、前記スチレンエラストマーは、スチレン及びイソプレン(SIS)のブロック共重合体、スチレンーエチレンーブチレンースチレン(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン(SEPS)スチレンブロック共重合体、スチレンーエチレンーエチレンープロピレンースチレン(SEEPS)ブロック共重合体、スチレンーエチレンープロピレン(SEP)ブロック共重合体、スチレン末端ブロック及び水素化されても水素化されなくてもよい中間ブロックを有するトリブロック共重合体、並びにこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数であってよい、請求項
7に記載の多層多孔性膜。
【請求項10】
少なくとも1つの前記内側層は、JIS K7210に従って測定した場合1.0g/10分未満
、又は0.1~0.75g/10分のMFRを有するポリプロピレンホモポリマーを含む、から成る、又はから本質的に成る、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項11】
前記1つ又は複数の内側層の平均細孔径は、前記外側層のいずれか又は両方の平均細孔径より5%以上
、10%以上、20%以上、30%以上、又は50%以上大きい、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項12】
前記2つの外側層は各々0.05~0.5μm(50~500nm)
、又は0.25μm(250nm)未満の平均細孔径を有し、前記2個の外側層の平均細孔径は、同一であっても異なってもよい、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項13】
少なくとも1つの前記内側層は、0.05~0.5μm(50~500nm)
、又は0.25μm(250nm)未満の平均細孔径を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項14】
少なくとも1つの前記内側層は、前記外側層の少なくとも1つに用いられるポリプロピレンとは異なる(小さい又は大きい)MFRを有するポリプロピレンを含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項15】
5~25μm
、又は5~15μmの厚さを有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項16】
1つしか内側層を備えない、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項17】
2つ以上の内側層を備
え、前記内側層の1つは、ポリエチレンを含む、から成る、又はから本質的に成り、前記ポリエチレンは、シャットダウン機能を提供してよく、前記内側層の1つは、ポリプロピレンを含む、から成る、又はから本質的に成る、請求項
1~6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項18】
16μm厚さで300gf超の穿刺強度を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜。
【請求項19】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層多孔性膜を備
え、被覆が前記多層多孔性膜の片側又は両側に提供され、前記被覆は、セラミック被覆、ポリマー被覆、シャットダウン被覆、接着/接着剤被覆、又はこれらの組み合わせである電池セパレータ。
【請求項20】
請求項
19に記載の電池セパレータを備
え、電極が、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NMC又はNCM)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムニッケルマンガンスピネル(LMNO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、又はこれらの組み合わせを含む、電池。
【国際調査報告】