(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】繊維補強熱可塑性マトリックス複合材料
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20230710BHJP
C08L 71/10 20060101ALI20230710BHJP
C08G 65/40 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
C08L71/10
C08G65/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576387
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2021064962
(87)【国際公開番号】W WO2021249875
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】エル-ヒブリ, モハマド ジャマール
(72)【発明者】
【氏名】プラット, ジェームズ フランシス
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB22
4F072AD42
4F072AG03
4F072AH04
4F072AK02
4F072AK14
4F072AL02
4J002CH09W
4J002CH09X
4J002DA016
4J002FA046
4J002FD016
4J005AA24
4J005BA00
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】
ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーのブレンドを含む熱可塑性マトリックスを含む繊維補強複合材料、それらの製造方法及びそれらから得られる物品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 繊維と、
- 各PEKKポリマーがT/I比で特徴付けられる第1及び第2のPEKKポリマーを含む組成物[組成物(C)]であって、前記第1のPEKKポリマーの前記T/I比が前記第2のPEKKポリマーのT/I比とは異なる組成物(C)を含む熱可塑性ポリマーマトリックスと
を含む、複合材料。
【請求項2】
組成物(C)は、(T/I)
低<(T/I)
高であるような、T/I比[(T/I)
低]を有する第1のPEKKポリマー[(PEKK
低)]と、T/I比[(T/I)
高]を有する、第2のPEKKポリマー[(PEKK
高)]とを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
各PEKKポリマーは、繰り返し単位(R
T)及び繰り返し単位(R
I)を含むポリマーであり、ここで、繰り返し単位(R
T)は、式(T):
【化1】
で表され、
繰り返し単位(R
I)は、式(I):
【化2】
で表され、
式中:
- 各R
1及びR
2は、それぞれの場合において、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各i及びjは、それぞれの場合において、0~4から独立して選択される整数であり;
前記T/I比は、
【数1】
と定義され、ここで、
【数2】
である、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
(PEKK
高)は、T
高-T
低≦20モル%であるような、単位(R
T)の分子含有量、(T
高)を有し、(PEKK
低)は、単位(R
T)のモル含有量、(T
低)を有する、請求項3の記載の複合材料。
【請求項5】
(T/I)
低は、少なくとも50/50、好ましくは少なくとも54/46、より好ましくは少なくとも56/44、最も好ましくは少なくとも57/43及び/又は最大でも64/36、好ましくは最大でも63/37、より好ましくは最大でも62/38である、請求項2~4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
(T/I)
高は、少なくとも少なくとも65/35、好ましくは少なくとも66/34、より好ましくは少なくとも67/33及び/又は最大でも85/15、好ましくは最大でも83/17、より好ましくは最大でも82/18である、請求項2~5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
ポリマー(PEKK
低)とポリマー(PEKK
高)との間の重量比は、少なくとも60/40の、好ましくは少なくとも65/35、より好ましくは少なくとも70/30、さらにより好ましくは少なくとも75/25のものである及び/又は、最大でも99/1の、好ましくは最大でも97/3、さらにより好ましくは最大でも96/4のものである、請求項2~6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
ポリマー(PEKK
低)及び/又はポリマー(PEKK
高)は、求核PEKKポリマーである、請求項2~7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
組成物(C)は、
- 2回目のDSC加熱スキャンで決定される同じ溶融温度(℃単位でのT
m)を有するPEKKポリマーの結晶化温度よりも高い、2回目のDSC加熱スキャンで決定される、結晶化温度(℃単位でのTc);
- 330℃以下の溶融温度(T
m)、25J/g超の融解熱(ΔHf);及び2回目のDSC加熱スキャンでの、加熱時に結晶化ピーク(「低温結晶化ピーク」)なし;
- 2回目のDSC加熱スキャン時に決定される溶融温度(℃単位でのT
m)と、1回目のDSC冷却スキャン時に決定される結晶化温度(℃単位でのT
c)との関係であって、以下の不等式:T
c≧1.3716×T
m-190℃を満たす関係
からなる群から選択される特徴の1つ以上で特徴付けられ;
ここで、T
m、T
c、ΔHf、及び低温結晶化ピークの不在は、300℃から400℃までの掃引で、20℃/分の加熱及び冷却速度を適用して、ASTM D3418-03、E1356-03、E793-06、E794-06規格に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
組成物(C)は、少なくとも1種の核剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
組成物(C)は、330℃以下の溶融温度(T
m)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項12】
前記繊維は、連続繊維である及び/又は炭素繊維、グラファイト繊維、Eガラス繊維などのガラス繊維、炭化ケイ素繊維などのセラミック繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、高弾性率ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル繊維及びポリベンゾオキサゾオール繊維、例えばポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、アラミド繊維などの合成ポリマー繊維、ホウ素繊維、玄武岩繊維、石英繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項13】
- ASTM D6484に従って測定されるように、320MPa以上の開放孔圧縮強度;及び
- ASTM D3518に従って測定されるように、4.7GPa以上の面内せん断弾性率
の少なくとも1つを示す、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の複合材料からなる第1の層と、前記複合材料の少なくとも1つの表面と接触した熱可塑性ポリマー組成物[組成物(TP)]を含む少なくとも1つの層とを含む、多層複合アセンブリ。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法であって、前記方法が、組成物(C)を含む前記ポリマーマトリックスを、前記繊維の表面の少なくとも一部と接触させる工程を含む方法。
【請求項16】
前記ポリマーマトリックスは、溶融含浸法において、スラリー法において、フィルム積層法において又は乾式粉体塗装/融合法において繊維と接触される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
低空洞の、強化ラミネートの製造方法であって、前記方法が、
- 請求項1~14のいずれか一項に記載の複合材料の層を、加熱デバイスを取り付けた自動レイアップ機で処理して層を同時に溶融させ、前記層が先に置かれた層上に置かれる及び配向させられるように前記先に置かれた層に融合させて、2体積%未満の空洞を有する強化ラミネートを形成する工程と;
- 任意選択的にさらに、典型的には1分~240分の時間、170℃~270℃の温度範囲で、自立運転か又は真空バッグ運転のどちらかで前記強化ラミネートをアニールする工程と
を含む方法。
【請求項18】
複合部品の形成方法であって、前記方法が、
- 請求項1~14のいずれか一項に記載の複合材料のプライをプレ配向させる工程、
- 前記プレ配向させたプライを、加熱及び冷却プレス、二重ベルトプレス又は連続圧縮成形機において強化して、強化ラミネートを製造する工程、
- 任意選択的に前記強化ラミネートを所定のサイズに切断して、成形ブランクを製造する工程、
- 前記成形ブランクを、スタンプ成形プロセスツールにおいて320~360℃の温度に迅速加熱し、成形複合部品を製造する工程
を含む方法。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の複合材料を含む、強化ラミネート、複合部品、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月11日出願の米国仮特許出願第63/038,100号、2020年11月18日出願の米国仮特許出願第63/115,253号の、及び2020年9月2日出願の欧州特許出願第20194026.9号の優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、熱可塑性マトリックスを含む繊維補強複合材料に、より特に、熱可塑性マトリックスが、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーのブレンド、特に、複合部品製造プロセス及び/又は要求される性能に適合させられている溶融温度、結晶化度及び結晶化の速度の組合せを有するブレンドを含む繊維補強複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(エーテルケトンケトン)(「PEKK」)ポリマーは、比較的極限状況で用いられている確立された材料である。それらの高い結晶化度及び高い溶融温度のために、PEKKポリマーは、優れた熱的、物理的及び機械的特性を有する。そのような特性は、航空宇宙及び石油ガス掘削を含むがそれらに限定されない広範囲の要求の厳しい用途設定において、しかしまた複合構造物用の熱可塑性マトリックスとして、PEKKポリマーを望ましいものにする。
【0004】
公称テレフタロイル対イソフタロイルモル比(T/I)が約70/30のPEEKは、熱可塑性の連続繊維複合材用の確立された、証明されたマトリックス樹脂である。例えば、APC(PEKK FC)/AS4D、Solvayによって供給される炭素繊維補強PEKK一方向複合テープなどのPEKK複合材は、スタンプ成形及び連続圧縮成形のような迅速な製造プロセスを用いて様々な飛行機部品を製造するために広く使用されている。コスト効率の良い製造プロセスと組み合わせられた優れた機械的性能及び環境パフォーマンスは、2~3例を挙げると飛行機ブラケット、クリップ、補強材、及び窓枠などの、多数の複合部品用として、それらを比較的に業界標準にした。
【0005】
繊維補強複合材料でのポリマーマトリックスとしてPEKKポリマーを使用することの一制限は、この材料を容易に造形する、成形する、融合させる及び強化するために必要とされる高い溶融加工温度(370℃超)である。この制限は、特に面積基準での、部品のサイズが実質的に増加するときに、より深刻になる。この例は、商業的ジェット旅客機用の複合材主翼又は機体外板を製造することであろう。今日、これらの構造物は、自動テープ積層(ATL)機か又は自動繊維積層(AFP)機かのどちらかを用いて炭素繊維補強エポキシ複合材で製造されている。これらの機械は、プリプレグ一方向複合テープを、設計されたレイアップによってツール上へ堆積させ、真空バッグのみ(VBO)として知られるプロセスで、次いで次にバッグに入れられ、オートクレーブ又はオーブン中で硬化させられる。そのような材料の硬化温度は約175℃であり、それは、PEKK複合材の加工温度の半分未満である。プロセス温度が高ければ高いほど、部品の表面を横切っての温度差がより大きいであろう可能性がより高い。そのような差は、過熱されるいくつかの領域と強化されないいくつかの領域とをもたらし得る。加えて、PEKK複合材のより高いプロセス温度は、AFP及びATL装置での堆積速度を制限する。適正な堆積速度は、経済的な速度を達成するために、炭素繊維エポキシ及び金属構造物などの他の材料とコスト競争力があるために必要とされる。
【0006】
熱可塑性複合材が、特殊なATL又はAFP機を用いて先の層に融合させられるときに強化される、その場強化などの、他の革新的な部品製造アプローチは、圧力下にある間にマトリックスの融合とその冷却との間の大きい温度ギャップのために余りにも遅く、したがって、オーブン又はオートクレーブでの第2の強化工程を取り除くことによりコストを実質的に削減する可能性を有する、そのような革新的なアプローチの履行を制限する。したがって、PEKK複合材の構造的性能を維持するより低い加工温度PEKKポリマーであって、より大きい複合構造物にとってより経済的な加工を可能にするであろうPEKKポリマーを手に入れることが望ましい。
【0007】
より一般的には、特定部品製造プロセス及び/又は性能要件に関連して、溶融温度、結晶化レベル、及び結晶化速度の最適化を提供するように容易に微調整することができるであろうPEKKポリマー組成物を手に入れることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0008】
PEKKポリマーの熱挙動及び結晶化動力学は、異なるT/I比を有するPEKKポリマーをブレンドする、すなわち第1のT/I比を有する第1のPEKKポリマーを、第1のPEKKポリマーのT/I比とは異なる第2のT/I比を有する第2のPEKKポリマーとブレンドすることによって調節できることが今見いだされた。
【0009】
有利には、異なるT/I比を有する2つのPEKKポリマーはまた、異なる溶融温度及び結晶化速度を有し、それらは、2つのPEKKポリマー間の中間にある溶融温度、結晶化レベル及び結晶化速度を有する、ブレンドを、連続繊維補強複合材において達成することを可能にする。ブレンドの組成は、特定の溶融温度、結晶化レベル及び速度を達成するために調節し、用途及び製造プロセスに合わせることができる。
【0010】
ある種の実施形態では、本複合材料は、類似の繊維補強PEKK複合材料よりも低い温度で加工可能である。本複合材料はまた、短いサイクル時間での迅速な製造プロセスを可能にする高い結晶化速度を有し得る。本複合材料は、PEKK組成物の高い結晶化レベルのために、類似の繊維補強PEKK複合材料のそれらに似た複合材機械的性能を示す。本複合材料は、速い製造サイクル時間を、より低いエネルギー消費を同伴する改善された経済学と組み合わせる。これらの組成物における高レベルの結晶化度は、それらを利用する複合構造物における頑強な耐化学薬品性を確実にする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、複合材料であって、
- 繊維と、
- 各PEKKポリマーがT/I比で特徴付けられる第1及び第2のPEKKポリマーを含む組成物[組成物(C)]であって、第1のPEKKのT/I比が第2のPEKKポリマーのT/I比とは異なる組成物(C)を含む熱可塑性ポリマーマトリックスと
を含む、複合材料を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、本発明複合材料の調製方法並びにそれを含む成形品を提供する。本発明のさらなる目的は、それらから得られる物品である。
【0013】
組成物(C)
本発明の複合材料は、各PEKKポリマーがT/I比で特徴付けられる第1及び第2のPEKKポリマーを含む組成物(C)を含むポリマーマトリックスを含む。
【0014】
各PEKKポリマーは、以下で定義されるような繰り返し単位(RT)及び繰り返し単位(RI)を含む。
【0015】
表現「T/I比」、(T/I)は、PEKKポリマー中の繰り返し単位(R
T)のモル含有量と、繰り返し単位(R
I)のモル含有量との間の比を指すために用いられ、ここで、繰り返し単位(R
T)は、式(T):
【化1】
で表され、繰り返し単位(R
I)は、式(I):
【化2】
で表され、
ここで、
- 各式(T)及び式(I)中、各R
1及びR
2は、それぞれの場合において、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各i及びjは、それぞれの場合において、0~4から独立して選択される整数である。
【0016】
誤解を避けるために、繰り返し単位(R
T)のモル含有量は、
【数1】
の通り定義され、繰り返し単位(R
I)のモル含有量は、
【数2】
と定義され、
故に、T/I比は、
【数3】
と定義される。
【0017】
ある実施形態によれば、R1及びR2は、上記の式(T)及び(I)の各位置において、1つ以上のヘテロ原子;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び四級アンモニウム基を任意選択的に含むC1~C12部分からなる群から独立して選択される。
【0018】
別の実施形態によれば、i及びjは、各R
1及びR
2基についてゼロである。言い換えれば、繰り返し単位(R
T)及び(R
I)は、両方とも非置換である。この実施形態によれば、繰り返し単位(R
T)及び(R
I)は、それぞれ式(T’)及び(I’):
【化3】
で表される。
【0019】
別の実施形態によれば、ポリマー(PEKK)は、上で定義されたような、繰り返し単位(RT)及び繰り返し単位(RI)を、PEKKポリマーにおける総モル数を基準として、少なくとも50モル%の総計量で含む。
【0020】
各PEKKポリマーは、上で詳述されたような、繰り返し単位(R
T)及び繰り返し単位(R
I)とは異なる、及び、互いに等しいか若しくは異なる、Ar及びAr’が芳香族基である、Ar-C(O)-Ar’基を含む繰り返し単位(R
PAEK)からなる群から選択され得る少量の繰り返し単位を含み得る。繰り返し単位(R
PAEK)は、一般に、本明細書で以下の、式(J-A)~式(J-O):
【化4】
【化5】
【化6】
(式中:
互いに等しいか若しくは異なる、R’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
j’は、ゼロ又は0~4の整数である)
からなる群から選択され得る。
【0021】
繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部分は、独立して、繰り返し単位中でR’と異なる他の部分に対して1,2-、1,4-又は1,3-結合を有し得る。好ましくは、前記フェニレン部分は、1,3-又は1,4-結合を有し、より好ましくは、それらは1,4-結合を有する。
【0022】
さらに、繰り返し単位(RPAEK)において、j’は、出現ごとにゼロである、すなわち、フェニレン部分は、ポリマーの主鎖における結合を可能にするもの以外の置換基を全く有さない。
【0023】
好ましい繰り返し単位(R
PAEK)は、したがって、本明細書で以下の式(J’-A)~(J’-O):
【化7】
【化8】
のものから選択される。
【0024】
上で詳述されたような、繰り返し単位(RT)及び(RI)とは異なる繰り返し単位(RPAEK)を含むPEKKポリマーが使用され得るが、一般に、好ましいポリマー(PEKK)は、前記繰り返し単位(RPAEK)の量が制限され、好ましくは最大でも40モル%、より好ましくは最大でも30モル%、より好ましくは最大でも20モル%、さらにより好ましくは最大でも10モル%、さらに最大でも5モル%のものであり、モル%は、ポリマーにおける総モル数を基準とすることが理解される。
【0025】
これ故に、ある実施形態によれば、PEKKポリマーにおける繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は実質的に全てが、上で詳述されたような、繰り返し単位(RT)及び(RI)であり、モル%は、PEKKポリマーにおける総モル数を基準としている。表現「実質的に全て」は、PEKKポリマーの構成繰り返し単位に関連して用いられる場合、少量の誤った/欠陥のある繰り返し単位が、例えば1モル%未満の、好ましくは0.5モル%未満、より好ましくは0.1モル%未満の量で存在してもよいことを示すことを意図する。繰り返し単位(RT)及び(RI)以外の繰り返し単位がPEKKポリマーにおいて全く検出されない場合、このポリマーは、全ての単位が単位(RT)及び(RI)であるPEKKポリマーとして適しているであろうし、それは、本発明の好ましい実施形態である。
【0026】
組成物(C)は、これ故、T/I比(T/I)低を有するポリマー(PEKK低)と本明細書では以下特定される、第1のPEKKポリマーと、(T/I)低<(T/I)高であるように、T/I比(T/I)高を有する、ポリマー(PEKK高)と本明細書では以下特定される、第2のPEKKポリマーとを含む。
【0027】
誤解を避けるために、(PEKK
低)及び(PEKK
高)は、繰り返し単位(R
T)及び(R
I)と、任意選択的に上で定義されたような(R
PAEK)とを含む。(PEKK
低)は、
【数4】
の、及び
【数5】
の、したがって
【数6】
でT/I比[(T/I)
低]を定義する、単位(R
T)のモル含有量[(T
低)]及び単位(R
I)のモル含有量[(I
低)]を有する。
【0028】
ポリマー(PEKK
高)は、
【数7】
の、及び
【数8】
の、したがって
【数9】
でT/I比[(T/I)
高]を定義する、単位(R
T)のモル含有量[(T
高)]及び単位(R
I)のモル含有量[(I
高)]を有する。
【0029】
ポリマー(PEKK低)は、少なくとも50/50の、好ましくは少なくとも54/46の、より好ましくは少なくとも56/44の;最も好ましくは少なくとも57/43の(T/I)低及び/又は最大でも64/36の、好ましくは最大でも63/37の、より好ましくは最大でも62/38の(T/I)低を好ましくは有する。57/43~62/38に含まれる(T/I)低のポリマー(PEKK低)は、本発明の複合材料での使用に特に有利であることが分かった。
【0030】
ポリマー(PEKK高)は、少なくとも65/35の、好ましくは少なくとも66/34の、より好ましくは少なくとも67/33の(T/I)高;及び/又は最大でも85/15の、好ましくは最大でも83/17の、より好ましくは最大でも82/18の(T/I)高を好ましくは有する。67/33~72/28に含まれる(T/I)高のポリマー(PEKK高)は、本発明の複合材料での使用に特に有利であることが分かった。
【0031】
本発明のある実施形態では、組成物(C)において、以下の不等式:T高-T低≦20モル%が満たされる。これ故、ある種のT低を有する、特定のポリマー(PEKK低)の選択次第で、好適なポリマー(PEKK高)のT高の選択は、その結果として制限される、及び逆もまた同様である。この理論に制約されることなく、本出願人は、PEKKポリマーが、ほどほどにT単位の分率が異なる場合、組成物(C)の有利な熱的特性に最終的に関与する基本的な共結晶化現象を達成することができるという意見である。
【0032】
さらなる実施形態では、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)は、好ましくは、T高-T低≦17モル%のようなものであり、より好ましくはT高-T低≦16モル%のようなものであり、より好ましくはT高-T低≦15モル%のようなものである。ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)は、一般に、T高-T低≧3モル%のようなものであり、より好ましくはT高-T低≧4モル%のようなものであり、さらにより好ましくはT高-T低≧5モル%のようなものであるようにそれらのT含有量が異なることがさらに理解される。
【0033】
有利な特性を持った組成物は、T高-T低が約10~約13モル%であるようなポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)でとりわけ得られている。
【0034】
本発明のある実施形態では、ポリマー(PEKK低)は、求核PEKKであり、それは、ポリマー(PEKK低)が、ジ-ヒドロキシ及びジ-フルオロベンゾイル含有芳香族化合物の並びに/又はヒドロキシル-フルオロベンゾイル含有芳香族化合物の重縮合によって製造されることを意味する。
【0035】
ポリマー(PEKK高)も、好ましくは求核PEKKであり、それは、またポリマー(PEKK高)が、ジ-ヒドロキシ及びジ-フルオロベンゾイル含有芳香族化合物の並びに/又はヒドロキシル-フルオロベンゾイル含有芳香族化合物の重縮合によって製造されることを意味する。
【0036】
ポリマー(PEKK低)及び/又は(PEKK高)の求核性は、とりわけ、一般に100ppm超、好ましくは200ppm超。さらにより好ましくは300ppm超の量での、フッ素の存在によって証明される。そのような有機的に結合したフッ素は、フッ素含有モノマーの使用の避けられないフィンガープリントである。ポリマー(PEKK低)及び/又は(PEKK高)の求核性のさらなる証拠は、Al残渣の実質的な不在によって提供される、すなわち、Al含有量は、一般に、50ppm未満、好ましくは25ppm未満、より好ましくは10ppmである。Al及びF含有量は、AlについてのICP-OES分析及びフッ素についての燃焼-イオンクロマトグラフィーなどの、元素分析によって都合よく測定される。
【0037】
求核的である場合、ポリマー(PEKK低)及び/又は(PEKK高)はまた、低い揮発性物質含有量で特徴付けられる。揮発性物質の量は、ASTM D3850方法に従って熱重量分析(TGA)を用いて測定することができ;揮発性物質の測定量(例えば、1重量%又は2重量%)が試料を離れる、温度Tdは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下で試料を30℃から800℃まで徐々に加熱することによって測定される。1重量%での熱分解温度は、Td(1%)と言われる。本発明のある実施形態では、ポリマー(PEKK低)及び/又は(PEKK高)は、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下で30℃から800℃に加熱する、ASTM D3850に従った熱重量分析によって測定されるように、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも505℃、より好ましくは少なくとも510℃のTd(1%)を有する。
【0038】
低い溶融温度、高い結晶化度及び低い(速い)結晶化速度の有利な組合せは、少なくともポリマー(PEKK低)が、とりわけ、上述の有利な特徴(F含有量、Al含有量、Td(1%))を有する、求核PEKKである場合に得ることができる。好ましくは両方のポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)は、求核PEKKであり、これ故にまた、ポリマー(PEKK高)は、ポリマー(PEKK低)に関連して上で記載された有利な特徴(F含有量、Al含有量、Td(1%))を有する。
【0039】
この理論に制約されることなく、本出願人は、稀ではあるが、求電子合成ルートでそれにもかかわらず起こり得る、とりわけ「位置選択性」-エラー及び/又は分岐現象の不在などの、求核合成ルートによって達成されるPEKKポリマーの特有の微細構造が、複合材料の製造に好適な、特有の有利な熱挙動の達成を可能にするためのようである、という意見である。
【0040】
組成物(C)は、(PEKK低)及び(PEKK高)を任意の相対的比率で含有し得る。
【0041】
有利には、組成物(C)は、多量のポリマー(PEKK低)と、少量のポリマー(PEKK高)とを含む。表現「多量」及び「少量」は、一般的に理解される意味を有する、すなわち、ポリマー(PEKK低)の量は、ポリマー(PEKK高)の量を上回る。
【0042】
一般に、組成物(C)中のポリマー(PEKK低)とポリマー(PEKK高)との間の重量比は、有利には、少なくとも60/40の、好ましくは少なくとも65/35、より好ましくは少なくとも70/30、さらにより好ましくは少なくとも75/25のものであり、及び/又はそれは、最大でも99/1の、好ましくは最大でも97/3、さらにより好ましくは最大でも96/4のものである。
【0043】
組成物(C)は、2回目のDSC加熱スキャンで測定される同じ溶融温度(℃単位でのTm)を有するPEKKポリマーの結晶化温度よりも高い、2回目のDSC加熱スキャンで測定される、結晶化温度(℃単位でのTc)で有利には特徴付けられる。Tm及びTcは、本明細書で以下に詳述されるような示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。
【0044】
さらに又は或いは、組成物(C)は、
- 330℃以下の溶融温度(Tm);
- 25J/gを超える融解熱(ΔHf);及び
- 2回目のDSC加熱スキャンで、加熱時に結晶化ピーク(「低温結晶化ピーク」)なし
を示す。
【0045】
さらに又は或いは、組成物(C)は、以下の不等式:
Tc≧1.3716×Tm-190℃
を満たす、2回目のDSC加熱スキャンで測定される溶融温度(℃単位でのTm)と、1回目のDSC冷却スキャンで測定される結晶化温度(℃単位でのTc)との間の関係を示す。
【0046】
Tm、Tc、ΔHf及び低温結晶化ピークの不在は、300℃から400℃までの掃引で、20℃/分の加熱及び冷却速度を適用して、ASTM D3418-03、E1356-03、E793-06、E794-06規格に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。
【0047】
低温結晶化ピークの存在/不在の測定に関する限りは、溶融開始温度に先行する0.5J/gを超える発熱ピークが2回目の加熱スキャンでDSCによって全く検出されない場合、これは、低温結晶化ピークの不在を表すものであると理解される。一般に、本発明の組成物では、実質的に発熱ピークが、2回目の加熱スキャンでDSCによって全く検出されず、それは、エネルギーの検出可能な放出が機器の感度限界内で全く観察されないことを意味する。
【0048】
典型的には、組成物(C)の分子量は、60~120g/10分の範囲でTmの温度+30又は40℃で、実施例で定義されるような、8.4kgのピストン荷重下に、ASTM D1238に従って測定される、MFIを得るのに適しているであろう。
【0049】
ある種の実施形態によれば、組成物(C)の総重量を基準とする、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)の総重量は、有利には60重量%以上、好ましくは70重量%以上;より好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
【0050】
ある種の実施形態によれば、組成物(C)は、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)と並んでいかなる他のポリアリールエーテルケトンポリマー[ポリマー(PAEK)]も含まない。言い換えれば、これらの実施形態による組成物(C)は、一般に、その50モル%超がAr*C(O)Ar*’基(互いに等しいか若しくは異なる、Ar*及びAr*’は芳香族基である)を含む繰り返し単位(R*PAEK)である、繰り返し単位を含む、ポリマー(PEKK低)又はポリマー(PEKK高)ではないいかなるポリマーも実質的には含まない。ポリマー(PAEK)中の繰り返し単位(R*PAEK)は、PEKKポリマーの任意選択の繰り返し単位(RPAEK)に関連して上で既に記載されたものと同じ特徴を有する。
【0051】
ある種の実施形態によれば、組成物(C)は、少なくとも1種の核剤をさらに含む。核剤は、ホウ素含有化合物(例えば、窒化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸カルシウム等)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウムマグネシウム)、酸化物(例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモン等)、シリケート(例えば、タルク、ケイ酸ナトリウムアルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等)、アルカリ土類金属の塩(例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等)、窒化物等からなる群から選択され得る。核剤はまた、炭素ベースであることができる。このカテゴリーの核剤には、グラファイト、グラフェン、グラファイトナノプレートレット及びグラフェン酸化物が含まれる。それはまた、カーボンブラック並びに炭素の他の形態であることができる。
【0052】
1つの有利な実施形態では、核剤は、1.3~2.5の電気陰性度(ε)を有する元素の窒化物(NI)の群の中で選択される。電気陰性度値(ε)は、とりわけ、「Handbook of Chemistry and Physics」,CRC Press,第64版、B-65~B-158頁にリストアップされている。
【0053】
本発明の脈絡の中で、表現「少なくとも1種の窒化物(NI)」は、1種若しくは2種以上の窒化物(NI)を意味することを意図する。窒化物(NI)の混合物を、本発明の目的のために有利に使用することができる。
【0054】
1.3~2.5の電気陰性度(ε)を有する元素の窒化物(NI)の非限定的な例は、とりわけ、「Handbook of Chemistry and Physics」,CRC Press,第64版,B-65~B-158頁にリストアップされている。カッコ内のコードは、CRC Handbookによって該当窒化物に属するとされるものであり、一方、εは、窒化物がそれから誘導される元素の電気陰性度を意味する。したがって、本発明の目的に好適な1.3~2.5の電気陰性度(ε)を有する元素の窒化物(NI)は、とりわけ、窒化アルミニウム(AlN、a45、ε=1.5)、窒化アンチモン(SbN、a271、ε=1.9)、窒化ベリリウム(Be3N2、b123、ε=1.5)、窒化ホウ素(BN、b203、ε=2.0)、窒化クロム(CrN、c406、ε=1.6)、窒化銅(Cu3N、c615、ε=1.9)、窒化ガリウム(GaN、g41、ε=1.6)、二窒化三ゲルマニウム(Ge3N2、g82、ε=1.8)、四窒化三ゲルマニウム(Ge3N4、g83、ε=1.8)、窒化ハフニウム(HfN、h7、ε=1.3)、Fe4N(i151、ε=1.8)及びFe2N又はFe4N2(i152、ε=1.8)のような窒化鉄、窒化水銀(Hg3N2、m221、ε=1.9)、窒化ニオブ(n109、ε=1.6)、窒化ケイ素(Si3N4、s109、ε=1.8)、窒化タンタル(TaN、t7、ε=1.5)、窒化チタン(Ti3N4、t249、ε=1.5)、二窒化タングステン(WN2、t278、ε=1.7)、窒化バナジウム(VN、v15、ε=1.6)、窒化亜鉛(Zn3N2、z50、ε=1.6)及び窒化ジルコニウム(ZrN、z105、ε=1.4)である。
【0055】
本発明の組成物での使用のための好ましい窒化物(NI)は、好ましくは少なくとも1.6、より好ましくは少なくとも1.8及び/又は好ましくは最大でも2.2の電気陰性度を有する元素の窒化物である。
【0056】
その上、窒化物(NI)は、好ましくは、元素周期表の族IIIa、IVa、IVb、Va、Vb、VIa、VIb、VIIb及びVIIIから選ばれる元素の窒化物から、より好ましくは元素周期表の族IIIaの元素の窒化物から選ばれる。
【0057】
特に良好な結果は、窒化物(NI)が、好ましい窒化物(NI)である、窒化ホウ素であった場合に得られている。
【0058】
窒化ホウ素の異なる結晶形の中で、六方晶系窒化ホウ素をこの実施形態による組成物に使用することが好ましい。
【0059】
一般に、核剤の、特に窒化物(NI)の平均粒径は、有利には30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、より好ましくは10μm以下であり、及び/又は好ましくは0.05μm以上、0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、1μm以上である。
【0060】
核剤の、特に窒化物(NI)の平均粒径は、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは2μm~18μm、より好ましくは2μm~10μmである。
【0061】
約2.5μmの、核剤の、特に窒化物(NI)の平均粒径が、特に良好な結果を与えた。特に、そのような平均粒径を有する窒化ホウ素が、特に有効と分かった。
【0062】
核剤の平均粒径は、例えば会社Malvern製のそれぞれの装置(Mastersizer Micro若しくは3000)を用いる光散乱技法(動的若しくはレーザー)によって又はDIN 53196に従ってふるい分析を用いて測定され得る。
【0063】
使用される場合、組成物(C)中の、核剤の、特に窒化物(NI)の総重量は、組成物(C)の総重量を基準として、有利には少なくとも約0.1重量%、一般に少なくとも約0.2重量%、好ましくは少なくとも約0.3重量%、より好ましくは少なくとも約0.5重量%のもの、及び/又は最大でも約10重量%、好ましくは最大でも約8重量%、より好ましくは最大でも約5重量%、さらにより好ましくは最大でも約3重量%のものである。
【0064】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、核剤以外の少なくとも1種の添加剤を含む。そのような添加剤には、(i)染料などの着色剤、(ii)二酸化チタン、硫化亜鉛及び酸化亜鉛などの顔料、(iii)光安定剤、例えば、UV安定剤、(iv)熱安定剤、(v)有機ホスファイト及びホスホナイトなどの酸化防止剤、(vi)酸スカベンジャー、(vii)加工助剤、(viii)核剤、(ix)内部潤滑剤及び/又は外部潤滑剤、(x)難燃剤、(xi)煙抑制剤、(x)帯電防止剤、(xi)ブロッキング防止剤、(xii)カーボンブラック及びカーボンナノフィブリルなどの導電性添加剤、(xiii)可塑剤、(xiv)流動調整剤、(xv)増量剤、(xvi)金属不活性化剤並びに(xvii)シリカなどの流動助剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0065】
追加の任意選択の原料が組成物(C)中に存在する場合、組成物(C)の総重量を基準とする、任意選択の原料の総重量は、組成物(C)の総重量を基準として、有利には0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらにより好ましくはより好ましくは2重量%以上、及び/又は30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、さらにより好ましくは5重量%未満である。
【0066】
ある種の実施形態によれば、組成物(C)は、上で記載されたような、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)から本質的になる。本発明の目的のためには、表現「から本質的になる」は、リストアップされたものとは異なる任意の追加の成分が、組成物の特性を実質的に変化させないように、組成物(C)の総重量を基準として、最大でも1重量%、好ましくは最大でも0.5重量%の量で存在することを意味すると理解されるべきである。
【0067】
他の実施形態によれば、組成物(C)は、ポリマー(PEKK低)、ポリマー(PEKK高)、及び、上で記載されたような、窒化物(NI)から本質的になる。
【0068】
さらに他の実施形態によれば、組成物(C)は、ポリマー(PEKK低)、ポリマー(PEKK高)、及び、上でリストアップされたような、窒化物(NI)以外の1種又は2種以上の追加の原料から本質的になる。これらの実施形態によれば、組成物(C)は、上で記載されたような、窒化物(NI)を含み得る。
【0069】
熱可塑性ポリマーマトリックスの製造方法
熱可塑性ポリマーマトリックスは、組成物(C)を含む。熱可塑性ポリマーマトリックスは、組成物(C)から本質的になる、好ましくは組成物(C)からなる。
【0070】
ポリマーマトリックスは、ポリマー(PEKK低)、ポリマー(PEKK高)と、場合により、例えば窒化物(NI)などの、核剤と、及び/又は調合物において望まれるような、上で詳述されたような、任意の任意選択の追加の原料との密接混合を含む様々な方法によって調製することができる。例えば、乾式(若しくは粉体)ブレンディング、懸濁若しくはスラリー混合、溶液混合、溶融混合又はそれらの任意の組合せを用いることができる。本明細書で用いるところでは、ポリマーマトリックスの「他の構成成分」には、場合により、核剤又は上でリストアップされた追加の任意選択の原料のいずれかなどの、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)に加えてポリマーマトリックスに望まれる任意の他の構成成分が含まれる。
【0071】
ポリマーマトリックスは、可溶化の温度で液体である媒体に、場合により他の構成成分と組み合わせて、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)を溶解させる工程を含む方法によって調製され得る。実際に、そのような可溶化は、ジフェニルスルホン、ベンゾフェノン、4-クロロフェノール、2-クロロフェノール、及びメタ-クレゾールの少なくとも1つを有利に含み得る、前記液体媒体中で、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)を加熱することによって成し遂げられ得る。ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)を効果的に可溶化するための好適な液体媒体は、123℃超で液体である、ジフェニルスルホン(DPS)、又は多量のDPSを含む有機溶媒のブレンドである。DPSが使用される場合、混合は、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも275℃、より好ましくは少なくとも300℃の温度で加熱することによって達成される。良好な結果は、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)を約330℃の温度でDPSに可溶化する場合に得られている。
【0072】
ポリマーマトリックスは、液/固分離、結晶化、抽出等などの、標準的な技法によって液体媒体から回収することができる。
【0073】
DPSが使用される場合、液体DPS中の可溶化ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)は、固体を得るために、DPSの溶融温度未満に冷却され、固体は、場合によりすり潰した後に、アセトンと水との混合物で抽出され、場合により水性媒体でリンスされ、最後に乾燥させられる。
【0074】
代替手段として、ポリマーマトリックスは、例えば、溶融混合又は粉体ブレンディングと溶融混合との組合せによって製造され得る。粉体ブレンディングは、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)と、任意選択的に他の構成成分とが粉末の形態で提供される場合に実施できる。典型的には、上で詳述されたような、ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)の粉体ブレンディングは、とりわけHenschel型ミキサー及びリボンミキサーなどの、高強度ミキサーを使用することによって実施され得る。
【0075】
ポリマー(PEKK低)及びポリマー(PEKK高)と、任意選択的に他の構成成分とを溶融配合することによって、並びに/又は上で記載されたような粉末混合物をさらに溶融配合することによって本発明の組成物を製造することも可能である。共回転及び逆回転押出機、一軸スクリュー押出機、コニーダー、ディスク-パックプロセッサー及び様々な他のタイプの押出装置などの、従来の溶融配合デバイスを使用することができる。好ましくは、押出機、より好ましくは二軸スクリュー押出機を使用することができる。
【0076】
必要ならば、配合スクリューの設計、例えば、フライトピッチ及び幅、クリアランス、長さ並びに運転条件は、上で詳述されたような粉末混合物若しくは原料を有利にも完全に溶融させるのに、及び異なる原料の均質な分配を有利にも得るのに十分な熱及び力学的エネルギーが提供されるように有利に選ばれるであろう。最適な混合がバルクポリマーとフィラー内容物との間で達成されるという条件で、ポリマーマトリックスのストランド押出物を得ることが有利にも可能である。そのようなストランド押出物は、ポリマーマトリックスをペレット又はビーズの形態で提供するために、水スプレーを使ったコンベヤ上でのいくらかの冷却時間後に、例えば回転切刃を用いて切り刻むことができる。次いで、ポリマーマトリックスのペレット又はビーズは、部品若しくは複合材の製造のためにさらに使用することができるし、又は粉体製造技法用の粉末形態のポリマーマトリックスを提供するためにすり潰され得る。
【0077】
繊維
本明細書で用いるところでは、用語「繊維」は、当業者に知られるようなその通常の意味を有し、複合構造物の補強に適した1種以上の繊維状材料、すなわち、「補強繊維」を含み得る。用語「繊維」は、少なくとも0.5mmの長さを有する繊維を指すために本明細書では用いられる。
【0078】
繊維は、有機繊維、無機繊維又はそれらの混合物であり得る。補強繊維成分としての使用に好適な繊維には、例えば、炭素繊維、グラファイト繊維、Eガラス繊維などの、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維などのセラミック繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、高弾性率ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル繊維などの合成ポリマー繊維、ポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などのポリベンゾオキサゾール繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、玄武岩繊維、石英繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維及びそれらの混合物が含まれる。繊維は、連続であっても不連続であってもよく、整列していてもランダムに配向していてもよい。
【0079】
ある実施形態では、本発明の複合材料は、連続繊維を含む。本明細書で言及されるところでは、「連続繊維」は、3ミリメートル(「mm」)以上、より典型的には10mm以上の長さ及び500以上、より典型的には5000以上のアスペクト比を有する繊維を指す。本明細書で言及するところでは、「整列繊維」は、繊維の大多数が互いに平行に実質的に整列していることを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、繊維は、その長さの少なくとも約75%(好ましくはその長さの少なくとも約80%、又はその長さの85%さえ)に沿っていかなる1つの場所でもグループに属する各繊維の整列が、すぐに隣接する繊維に対して平行から約25度超逸脱していない(好ましくは約20度、又は15度超さえ逸脱していない)場合に整列している。
【0080】
一実施形態では、繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又は炭素繊維及びガラス繊維の両方を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、繊維は、少なくとも1種の炭素繊維を含む。本明細書で用いるところでは、用語「炭素繊維」は、グラファイト化、部分グラファイト化、及び非グラファイト化炭素補強繊維、並びにそれらの混合物を含むことを意図する。炭素繊維は、例えば、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、芳香族ポリアミド又はフェノール樹脂などの異なるポリマー前駆体の熱処理及び熱分解によって得ることができ;炭素繊維はまた、ピッチ系材料から得られ得る。用語「グラファイト繊維」は、炭素繊維の高温熱分解(2000℃超)によって得られる炭素繊維を意味することを意図し、ここで、炭素原子は、グラファイト構造と同様に配置されている。炭素繊維は、好ましくは、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイト繊維、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0082】
高強度複合構造物を必要とする最終使用は、多くの場合、高い引張強度(例えば、≧3500メガパスカルつまり「MPa」)及び/又は高い引張弾性率(例えば、≧200ギガパスカルつまり「GPa」)を有する繊維を用いることが指摘される。一実施形態では、それ故、繊維は、例えば、3500MPa以上の引張強度及び200GPa以上の引張弾性率を示す炭素繊維などの、連続炭素繊維を含む。一実施形態では、補強繊維は、5000MPa以上の引張強度及び250GPa以上の引張弾性率を有する連続炭素繊維を含む。そのような実施形態では、炭素繊維は、3500MPa以上の引張強度及び200GPa以上の引張弾性率を示す整列した、連続の炭素繊維であることが好ましい。
【0083】
炭素繊維は、サイズを塗られていても塗られていなくてもよい。一実施形態では、炭素繊維は、サイズを塗られた炭素繊維である。炭素繊維用の適切なサイズは、予想される加工温度と熱的に相性がよいサイズであり、例えば、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、及びポリイミドポリマーから選択されてもよく、それらのそれぞれは、繊維の界面特性を改善するための、添加剤、例えば、核剤を任意選択的に含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、補強繊維には、少なくとも1種のガラス繊維が含まれる。ガラス繊維は、円形断面又は非円形断面(楕円形若しくは長方形断面など)を有し得る。使用されるガラス繊維が円形断面を有する場合、それらは、好ましくは、3~30μmの平均ガラス繊維直径、特に好ましくは、5~12μmの平均ガラス繊維直径を有する。円形断面を持った異なるタイプのガラス繊維は、それらが製造されるガラスのタイプに応じて市場で入手可能である。とりわけ、E-ガラス又はS-ガラスから製造されたガラス繊維が挙げられ得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、ガラス繊維は、非円形断面を持った標準的なE-ガラス材料である。いくつか実施形態では、ポリマー組成物は、円形断面を持ったS-ガラス繊維を含む。
【0086】
本発明の複合材料を製造するために好適な繊維は、標的の複合材料の用途に応じて変わる、多数の異なる形態又は構成で複合材料に含まれ得る。例えば、補強繊維は、連続繊維、シート、プライ、及びそれらの組合せの形態で提供され得る。連続繊維は、さらに、一方向、多次元、不織、織り、編み、非クリンプ、ウェブ、ステッチ、らせん状、及び編組構成、並びにスワールマット、フェルトマット、及びチョップドマットの構造のいずれかを採用し得る。繊維トウは、クロス-トウステッチ、緯糸挿入編みステッチ、又はサイジングなどの、少量の樹脂によってそのような構成で所定の位置に保持され得る。繊維はまた、複合材料の全部若しくは一部にわたる1つ若しくは複数のプライとして、又はパッド-アップ若しくはプライドロップの形で、厚さの局所的な増加/減少を伴って含まれ得る。そのような繊維の単層又は断面の面積重量は、例えば、50から600g/m2まで変動することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明の複合材料に関連した使用に好適な連続繊維は、ロービング若しくはトウ(個々のトウ若しくはロービング、トウ/ロービング束又は広がったトウなどの)の形態にあってもよい。ロービングは、一般に、繊維、例えば、任意選択的に化学結合材料で補強された、ガラス繊維の複数の連続した撚られていないフィラメントを指す。同様に、トウは、一般に、任意選択的に有機コーティングありの、複数の、連続した個々のフィラメント、例えば、炭素フィラメントを指す。本明細書で使用されるロービング若しくはトウのサイズは、特に制限されないが、模範的なトウは、例えば、典型的には1K~24Kの範囲である、航空宇宙グレードのトウサイズ、及び典型的には48K~320Kの範囲である、商用グレードトウを含むことができる。トウは、最終使用向けの要求に応じて束にされていても、広げられていても(例えば、撚られていなくても)よい。例えば、広げられたトウの使用は、トウの厚さを減らすことができるのみならず、複合材料における個々のトウ間のギャップの発生を減らすことができる。これは、同じ又はより良好な性能を潜在的に達成しながら、複合ラミネートの軽量化をもたらすことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、繊維は、不連続繊維、例えば、整列した不連続繊維であり得る。そのような不連続トウは、ランダム長さ(例えば、個々のフィラメントのランダム破損によって生み出された)を有し得るか、又は大ざっぱに一様な長さ(例えば、個々のフィラメントの切断又は分離によって生み出された)を有し得る。不連続繊維の使用は、個々の繊維が隣接繊維に対して位置をシフトすることを可能にし、こうして材料の柔軟性に影響を及ぼし、並びに繊維の形成、ドレープ、及び引き伸ばしに潜在的に役立つ。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明の複合材料に関連した使用に好適な繊維は、一方向テープの形態にあり得る。本明細書で用いるところでは、「テープ」は、ストリップ材料の単軸に沿って整列している、長手方向に伸びる繊維を持った材料のストリップを意味する。テープは、比較的複雑な形状を有する複合材料を生み出すためにハンド又は自動レイアッププロセスにおいて使用することができるので、有利である。一実施形態では、複合材料は、一方向の連続繊維補強テープを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明の複合材料に関連した使用に好適な繊維は、マットなどの、不織布の形態にあり得る。不織布は、ランダム配向配置での繊維(連続又は不連続の)を含む。繊維は、ランダム配向であり、不織布は、一般に等方性であり、全ての方向に実質的に等しい強度を有する。
【0091】
さらに他の実施形態では、本発明の複合材料に関連した使用に好適な繊維は、様々な重量、織り方及び幅で織機によって典型的には織られている、織布の形態にあり得る。織布は、一般に、二方向性であり、繊維軸配向の方向(0°/90°)に良好な強度を提供する。織布は速い複合材製造を容易にすることができるが、引張強度は、織りプロセス中の繊維クリンピングのために、例えば、不織布と同じほど高くない可能性がある。いくつかの実施形態では、織布は、連続繊維ロービングが布へ織り合わせられている、織りロービングの形態にある。そのような織りロービングは、厚く、それ故、ハンドレイアップ運転及びツーリング用途での、力強い補強のために使用され得る。任意選択的に、そのような織りロービングは、微細な繊維ガラスを含み得、それ故、プリント回路基板の強化などの用途向けに使用することができる。ハイブリッド布はまた、様々な繊維タイプ、ストランド組成物及び布タイプを使用して、構築することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明の複合材料に関連した使用に好適な繊維は、編組布の形態にあり得る。編組布は、一般に、3つ以上の繊維(例えば、トウ又はロービングの形態での)を、それらが互いに交差し、対角線形成で一緒に置かれ、フラットな又はチューブ状布の狭いストリップを形成するように織り合わせることによって得られる。編組布は、一般に、斜めに連続的に織られ、編みプロセスにおいてクリンプしていない少なくとも1つの軸糸を有する。加撚なしに繊維を撚り合わせると、織布で見いだされるよりも大きい強度対重量比を典型的にはもたらす。様々な形状に容易に従うことができる、編組布は、スリーブ型フォーマットで又はフラット布形態で製造することができる。フラット編組布は、繊維が単層内で0°、+60°及び-60°で配向させられている、3軸アーキテクチャで製造することができ、それは、層間剥離を含む-マルチプル0°、+45°、-45°及び90°布の施工に関連した問題を排除することができる。編組構造における繊維は噛み合っており、それ故荷重事象に関与しているので、荷重は、構造の全体にわたって均等に分布している。それ故、編組布は、大量のエネルギーを吸収し、非常に良好な耐衝撃性、耐損傷性及び疲労性能を示すことができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明の複合材料は、実質的に二次元の材料、例えば、シート及びテープなどの、他の2つの次元(幅及び長さ)よりも著しく小さい1つの次元(厚さつまり高さ)を有する材料の形態で提供される。ある種の好ましい実施形態では、本発明の複合材料は、
- マットなどの不織布、多軸布、織布又は編組布を含むが、それらに限定されない、含浸布のプライ;及び
- 好ましくは繊維が整列させられている、一方向の(連続若しくは不連続)繊維補強テープ又はプリプレグ
からなる群から選択される。
【0094】
ある種の実施形態によれば、繊維は、予備成形物として提供される。予備成形物は、所定の三次元形態へ上記形態の1つ以上の層を積み重ねる及び造形することによって製造される。予備成形物は、層の注意深い選択によって複雑な部品形状を密に近似させることができるので、特に望ましいものであることができる。
【0095】
複合材料
本明細書で用いるところでは、用語「複合材料」は、一般に、含浸させられている、コートされている又は上で記載されたような繊維上に積層されている、のいずれかである繊維とポリマーマトリックス材料とのアセンブリを指す。本発明の複合材料は、組成物(C)を含むポリマーマトリックスを含む。
【0096】
いくつかの態様では、本発明の複合材料は、例えば、公知のPEKKポリマーを含む複合材と比べて、熱的特性と結晶化特性との優れた組合せを示す。いくつかの実施形態では、本発明の複合材料は、
- 330℃以下、好ましくは295℃~328℃の溶融温度を有する組成物(C)を含む、及び
- 同じ形態の、しかしPEKKを含む複合材料の相当する機械的特性の、少なくとも90%、又は少なくとも95%さえの値を有する少なくとも1つの機械的特性(例えば、開放孔圧縮強度、面内せん断弾性率)を示す。
【0097】
本明細書で用いるところでは、「同じ形態の複合材料」は、同じフォーマット(例えば、一方向性の、織られた、不織の等)で及びそのポリマーマトリックスが異なるにすぎない同じタイプの繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維等)を有する複合材料を指す。
【0098】
いくつかの実施形態では、本発明の複合材料は、330℃以下、好ましくは295℃~328℃の溶融温度を有する組成物(C)を含み、
- ASTM D6484に従って測定されるように、320MPa以上、さらにより好ましくは典型的には322MPa)以上さえの開放孔圧縮強度、
- ASTM D3518に従って測定されるように、4.7GPa以上、より典型的には4.8GPa以上の面内せん断弾性率
の少なくとも1つを示す。
【0099】
そのような実施形態では、複合材料は、例えば、中間弾性率炭素繊維と、本明細書で定義される組成物(C)とを含む一方向テープであることができる。
【0100】
例えば、一実施形態では、組成物(C)は、330℃以下の、より典型的には295℃~328℃の溶融温度を有し、複合材料は、ASTM D3518に従って測定されるように、4.7GPa以上、より典型的には4.8GPa以上の面内せん断弾性率を示す。そのような実施形態では、複合材料は、例えば、中間弾性率炭素繊維と、本明細書で定義される組成物(C)とを含む一方向テープであることができる。
【0101】
例えば、一実施形態では、組成物(C)は、330℃以下の、より典型的には295℃~328℃の溶融温度を有し、複合材料は、ASTM D6484に従って測定されるように、320MPa以上、さらにより典型的には322MPa)以上さえの開放孔圧縮強度を示す。そのような実施形態では、複合材料は、例えば、中間弾性率炭素繊維と、本明細書で定義される組成物(C)とを含む一方向テープであることができる。
【0102】
本発明の複合材料は、好ましくは、複合材料の重量を基準として、20~80重量%の繊維と、組成物(C)を含む80~20重量%のポリマーマトリックスとを含む。
【0103】
一実施形態では、複合材料は、30~80、例えば、50~80、より典型的には55~75重量%の連続炭素繊維と、組成物(C)を含む20~70、より典型的には25~45重量%のポリマーマトリックスとを含む。複合材料の一実施形態では、繊維は、単軸に沿って実質的に整列している連続炭素繊維であり、複合材料は、50~80重量%の炭素繊維と、組成物(C)を含む20~50重量%のポリマーマトリックスとを含む一方向炭素繊維補強樹脂マトリックステープの形態にある。複合材料の一実施形態では、連続炭素繊維は、織布又は不織布の形態にあり、複合材料は、45~70重量%の連続炭素繊維と、組成物(C)を含む30~55重量%のポリマーマトリックスとを含む。
【0104】
一実施形態では、複合材料は、30~80、より典型的には50~75重量%の連続ガラス繊維と、20~70、より典型的には25~45重量%の組成物(C)とを含む。複合材料の一実施形態では、繊維は、単軸に沿って実質的に整列している連続ガラス繊維であり、複合材料は、65~80重量%ガラス繊維と、組成物(C)を含む20~35重量%のポリマーマトリックスとを含む一方向ガラス繊維補強樹脂マトリックステープの形態にある。複合材料の一実施形態では、連続繊維は、織又は不織ガラス布の形態のガラス繊維であり、複合材料は、50~70重量%のガラス繊維と、組成物(C)を含む30~50重量%のポリマーマトリックスとを含む。
【0105】
一実施形態では、複合材料は、1平方メートル当たり50~400グラムの繊維面積重量を有する。一方向テープについては、複合材料は、1平方メートル当たり130~200グラムの典型的な繊維面積重量を有する。布については、複合材料は、1平方メートル当たり170~400グラムの典型的な繊維面積重量を有する。
【0106】
本発明の複合材料は、繊維と、組成物(C)を含むポリマーマトリックスとからなる、単層材料であり得る。
【0107】
複合材料は、代わりに、1つ以上の層を含み得る。
【0108】
本発明のさらなる目的は、したがって、複合材料からなる第1の層であって、複合材料が繊維と、組成物(C)を含むポリマーマトリックスとからなる第1の層、並びに複合材料の少なくとも1つの表面と接触した熱可塑性ポリマー組成物[組成物(TP)]を含む少なくとも1つの層を含む多層複合アセンブリである。
【0109】
組成物(TP)は、一般に、組成物(C)を含むポリマーマトリックスよりも低い融点及び加工温度を有するように選ばれる。ある種の実施形態では、組成物(TP)の溶融温度及び/又は加工温度は、高性能ポリマーの溶融温度及び/又は加工温度よりも10℃~20℃低い。組成物(TP)は、繊維を含まない。
【0110】
組成物(TP)は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、PEI及び/又はポリアリールエーテルスルホン(PAES)及び/又はポリフェニレンスルフィド(PPS)とのPAEKコポリマー、並びにPEI、PAES、PPS及び/又はポリイミドの1つ以上とのPAEKブレンドから選ばれるポリマーを好適に含み得る。
【0111】
複合材料の製造方法
ポリマーマトリックスを少なくとも部分的に含浸している繊維の、例えば、シート又はテープの形態でのプライを形成するために、例えば、粉体塗装、フィルム積層、押出、引抜成形、水性スラリー、及び溶融含浸などの、マトリックスが融解形態か又は微粒子形態かのどちらかである、組成物(C)を含むポリマーマトリックスを繊維に含浸させ得る、様々な方法を用いることができる。
【0112】
一実施形態では、複合材料は、溶融含浸法によって製造された一方向連続繊維補強テープを含む。溶融含浸法は、一般に、ポリマーマトリックスを含む溶融した前駆体組成物を通して複数の連続フィラメントを引っ張る工程を含む。前駆体組成物は、含浸を容易にする、可塑剤及び加工助剤などの特有の構成要素をさらに含み得る。溶融含浸法には、例えば、欧州特許第102158号明細書に記載されているような、直接溶融法及び芳香族ポリマー複合材(「APC」)法が含まれる。
【0113】
一実施形態では、複合材料は、スラリー法によって製造される一方向連続繊維補強テープを含む。模範的なスラリー法は、例えば、米国特許第4,792,481号明細書(O’Connorら)に見いだすことができる。
【0114】
一実施形態では、複合材料は、一連の加熱ロール及び冷却ロールか又は二重ベルトプレスかのどちらかによるフィルム積層法によって製造される一方向連続繊維補強テープか又は織/不織繊維補強材(例えば、布)かのどちらかを含む。フィルム積層法は、一般に、繊維材料の少なくとも1つの層を、ポリマーマトリックスの少なくとも1つの層(例えば、ポリマーマトリックスフィルム)上に又は層間に配置して、層状構造を形成する工程と、層状構造を、一連の加熱ロール及び冷却ロールに又は二重ベルトプレスに通す工程とを含む。
【0115】
一実施形態では、複合材料は、乾燥粉末が繊維又は繊維ウェブ(例えば、布)上に一様に堆積させられ、その後粉末を繊維又は繊維ウェブ(例えば、布)に融合させるために熱を加える乾式粉体塗装/融合法によって製造される一方向連続繊維補強テープか又は織/不織繊維補強材(例えば、布)かのどちらかを含む。
【0116】
本発明の複合材料は、マトリックス含浸繊維のプライの形態にあり得る。複数のプライは、プリプレグなどの、未強化複合ラミネートを形成するために互いに隣接して置かれ得る。ラミネートの繊維補強層は、それらのそれぞれの繊維補強材を互いに対して選択された配向で配置され得る。
【0117】
複合材料は、複合材料の層を、モールド、マンドレル、ツール又は他の表面上に堆積させる、又は「レイアップする」ことによって製造され得る。このプロセスは、最終複合ラミネートの層をビルドアップするために数回繰り返される。
【0118】
プライは、所望の物理的寸法及び繊維配向を有する複合ラミネートを形成するために、手作業で又は自動で、例えば、「ピックアンドプレース」ロボティクスを使用する自動テープレイアップによって、又は予め含浸した繊維のトウが、モールド中で若しくはマンドレル上で加熱され及び圧縮されるアドバンスト繊維配置によって積み重ねられ得る。
【0119】
未強化ラミネートの層は、典型的には、完全に一緒に融合されておらず、未強化の複合ラミネートは、X線マイクロトモグラフィーによって測定されるように、例えば、20体積%超の大きな空洞率を示し得る。例えば、複合ラミネートの強化の前の複合ラミネートの取り扱いを可能にするための中間工程として、複合材料「ブランク」を形成するために、熱及び/若しくは圧力を加えるか、又は音波振動溶接を使用してラミネートを安定させ、層が互いに対して移動するのを防ぎ得る。
【0120】
そのようにして形成された複合ラミネートは、造形された繊維補強熱可塑性マトリックス複合品を形成するために、典型的には複合ラミネートを、例えば、モールド中で熱及び圧力にさらすことによってその後強化される。必要ならば、組成物(C)でできているタイ層が、未強化ラミネートの接着層用に使用され得る。そのようなタイ層は、組成物(C)でできている自立フィルムとして提供され得るか、又は、組み立てられる及び強化される未強化複合ラミネートの層の表面の少なくとも1つ上へコートされている、コーティングの形態下で提供され得る。
【0121】
本明細書で用いるところでは、「強化」は、マトリックス材料が軟化され、複合ラミネートの層が一緒にプレスされ、空気、水分、溶媒、及び他の揮発性物質がラミネートから押し出され、複合ラミネートの隣接プライが、固体の粘着物品を形成するために一緒に融合させられるプロセスである。理想的には、強化複合品は、X線マイクロトモグラフィーによって測定されるように、最小の、例えば、5体積%未満、より典型的には2体積%未満の空洞率を示す。
【0122】
一実施形態では、複合材料は、オートクレーブ又はオーブン中での真空バッグプロセスにおいて強化される。一実施形態では、複合材料は、320℃超、より典型的には330~360℃の強化温度に加熱することによって600mmHg超の真空下の真空バッグプロセスにおいて強化され、一旦強化温度に達すると、圧力、典型的には0~20バールが、典型的には1分~240分の時間加えられ、次いで冷却される。加熱、圧縮、及び冷却を含む、全体サイクル時間は、部品のサイズ及びオートクレーブの性能に応じて、典型的には8時間以下内である。
【0123】
一実施形態では、複合材料は、それが前レイド層上に置かれ、配向させられるときに層を同時に溶融させ、前レイド層に融合させて低空洞の、強化ラミネート(2体積%未満の空洞)を形成するための加熱デバイスを装備した自動レイアップ機(ATL、AFP又はフィラメントウインド)によって積層される。この低空洞強化ラミネートは、「そのままで」使用することができるか又はその後、典型的には、1分~240分の時間、170℃~270℃の温度範囲で自立運転か若しくは真空バッグ運転かのどちらかでアニールすることができる。
【0124】
一実施形態では、完全含浸複合プリプレグ材料プライは、それが前レイド層上に置かれ、配向させられるときに層を同時に溶融させ、前層に融合させて2%超の空洞率の予備成形物を形成するための加熱デバイスを装備した自動レイアップ機によって積層される。次いで、予備成形物は、その後、前に記載されたような「真空バッグプロセス」、圧縮モールド、スタンプフォーム、又は連続圧縮成形プロセスのいずれかにおいて強化される。
【0125】
一実施形態では、全含浸複合プリプレグ材料プライは、スタンプ成形プロセスにおいて成形ブランクであるためのサイズに切断することができる強化ラミネートを製造するために、プレ配向させられ、加熱及び冷却プレス、二重ベルトプレス又は連続圧縮成形機において強化され、スタンプ成形プロセスでは、ツール温度は10℃~270℃であり、成形ブランクは、溶融ブランクをツール中で造形する及び強化する前に320℃~360℃の溶融加工温度まで迅速に加熱される。結果として生じた部品は、「そのままで」使用することができるか又は前記成形部品を射出成形ツールに入れてラミネートを中間温度まで迅速に加熱して、ニートの又は充填材入り形態のPEAKなどのより高い溶融加工温度PEAKポリマーを射出して複雑な造形ハイブリッド部品を製造するその後の工程において使用することができる。
【0126】
本発明の複合材料は、複合材が好都合に用いられるか、又は用いられるよう提案されている最終使用用途のどれにも使用され得る。代表的な用途には、航空宇宙/航空機、自動車及び他の車両、ボート、機械、重機、貯蔵タンク、パイプ、スポーツ用品、ツール、生物医学デバイス(人体中へ埋め込まれるデバイスなどの)、建築部材、風車の羽根等用の複合材及びラミネート(二次元及び三次元パネル及びシートなどの)が含まれる。
【0127】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0128】
これから、本開示を以下の実施例に関連してより詳細に記載するが、それらの目的は、例示的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0129】
ポリマー合成のための原材料
1,2-ジクロロベンゼン、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、3,5-ジクロロベンゾイルクロリド、塩化アルミニウム(AlCl3)、メタノールは、Sigma Aldrichから購入した。
【0130】
1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、インド特許第193687号明細書(1999年6月21日に出願され、参照により本明細書に援用される)に従って調製した。
【0131】
ジフェニルスルホン(ポリマーグレード)は、Provironから調達した(純度99.8%)。
【0132】
炭酸ナトリウム、軽ソーダ灰は、Solvay S.A.,Franceから調達し、使用前に乾燥させた。その粒径は、d90が130μmであるようなものであった。
【0133】
d90<45μmの炭酸カリウムは、Armand productsから調達し、使用前に乾燥させた。
【0134】
塩化リチウム(無水粉末)は、Acrosから調達した。
【0135】
NaH2PO4・2H2O及びNa2HPO4は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0136】
1,4-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼン(1,4-DFDK)及び1,3ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼン(1,3-DFDK)は、Gilbらの米国特許第5,300,693号明細書(1992年11月25日に出願され、その全体を参照により本明細書に援用される)の実施例1に従ってフルオロベンゼンのフリーデルクラフツアシル化によって調製した。1,4-DFDKのいくらかは、米国特許第5,300,693号明細書に記載されているようにクロロベンゼン中での再結晶により精製し、1,4-DFDKのいくらかは、DMSO/エタノール中での再結晶により精製した。DMSO/エタノール中での再結晶により精製された1,4-DFDKを重合反応における1,4-DFDKとして使用して、以下で記載されるPEKKを製造し、一方、クロロベンゼン中で再結晶された1,4-DFDKを1,4-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン(1,4-BHBB)の前駆体として使用した。
【0137】
1,4-BHBB及び1,3-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン(1,3-BHBB)を、Hackenbruchらの米国特許第5,250,738号明細書(1992年2月24日に出願され、その全体を参照により本明細書に援用される)の実施例1に記載される手順に従って、それぞれ1,4-DFDK、及び1,3-DFDKの加水分解によって製造した。それらは、DMF/エタノール中での再結晶化によって精製した。
【0138】
メルトフローインデックスの測定
メルトフローインデックスは、3.8kg重量で、示された温度(物質の溶融温度に応じて340~380℃)でASTM D1238に従って測定した。8.4kg重量についての最終MFIは、得られた値に2.35を掛けることによって得られた。
【0139】
ガラス転移温度、溶融温度及び融解熱の決定
ガラス転移温度Tg(中点、半高さ(half-height)法を用いる)及び溶融温度Tmは、ASTM D3418-03、E1356-03、E793-06、E794-06に従って、さらに以下の詳細に従って示差走査熱量測定法(DSC)における2回目の加熱スキャンで決定した。本発明で用いられるような詳細な手順は、次の通りである:キャリアガスとしての窒素(純度99.998%、50mL/分)と共にTA Instruments DSC Q20を使用した。温度及び熱流量較正は、インジウムを使用して行った。試料サイズは5~7mgであった。密封パンを使用した。重量は、±0.01mgで記録した。熱サイクルは、
1回目の加熱スキャン:20.00℃/分で30.00℃から400.00℃まで、400.00℃で1分間等温;
1回目の冷却スキャン:20.00℃/分で400.00℃から30.00℃まで、1分間等温;
2回目の加熱スキャン:20.00℃/分で30.00℃から400.00℃まで、400.00℃で1分間等温
であった。
【0140】
溶融温度Tmは、2回目の加熱スキャンでの溶融吸熱のピーク温度として決定した。融解エンタルピーは、2回目の加熱スキャンで決定し、Tg超から吸熱ピークの終点超の温度まで引かれた線形ベースラインより上の面積として取った。結晶化温度Tcは、1回目の冷却スキャンでの結晶化発熱のピーク温度として決定した。低温結晶化の可能な存在は、2回目の加熱スキャンから決定した:吸熱溶融ピークの開始前の発熱の存在は、0.5J/g超の発熱熱流が見つけられた場合に確かに確認された。
【0141】
ICP-OESによるポリマー組成物中のアルミニウムなどの元素不純物の測定
清潔な、乾燥した白金るつぼを分析天秤上へ置き、天秤をゼロにした。ポリマー試料の1/2~3グラムをボートに量り取り、その重量を0.0001gまで記録した。試料入りるつぼをマッフル炉(Thermo Scientific Thermolyne F6000 Programmable Furnace)に入れた。炉を525℃まで徐々に加熱し、その温度で10時間保持して試料を乾式灰化した。灰化後に、炉を室温まで冷却し、るつぼを炉から取り出し、フュームフード内に置いた。灰を希塩酸に溶解させた。ポリエチレン製ピペットを使用して、この溶液を25mL容量フラスコに移した。るつぼを、およそ5mLの超純水(R<18MΩcm)で2回すすぎ洗い、洗浄液を容量フラスコに添加して定量的移動を達成した。超純水をフラスコ中に計25mLまで添加した。フラスコの最上部に栓をして、内容物を混ざるまで十分に振盪した。
【0142】
ICP-OES分析は、誘導結合プラズマ発光分光計Perkin-Elmer Optima 8300デュアルビューを使用して行った。分光計は、0.0~10.0mg/Lの検体濃度のNISTトレーサブル多元素混合標準液のセットを使用して較正した。48の検体のそれぞれについて0.9999よりも良好な相関係数で濃度の範囲において線形較正曲線を得た。標準物質を、機器安定性を保証するために10の試料ごとの前後にランさせた。結果は、3回の反復試験の平均として報告した。試料中の元素不純物の濃度は、以下の方程式:A=(B*C)/(D)
(ここで:
A=mg/kg(=重量ppm)単位での試料中の元素の濃度
B=mg/L単位でのICP-OESによって分析された溶液中の元素
C=mL単位でのICP-OESによって分析される溶液の体積
D=本手順において使用されたグラム単位での試料重量)
で計算した。
【0143】
燃焼イオンクロマトグラフィー法によるポリマー中のフッ素濃度の測定
燃焼イオンクロマトグラフィー(IC)分析については、清潔な、プレベークした、乾燥セラミック試料ボートを分析天秤上へ置き、天秤をゼロにした。およそ20mgのポリマー試料をボートに量り取り、重量を0.0001gまで記録した。試料入りボートを、900℃の入口温度及び1000℃の出口温度の燃焼炉セットに入れた。燃焼した試料及びアルゴンキャリアガスを、18.2MΩ超純水に通し、電導度検出器を備えたICシステムへ自動的に注入する。
【0144】
燃焼IC分析は、全て三菱アナリテック製の、Dionex IonPac AS19 ICカラム及びガードカラム(又は同等)、50mAでのDionex CRD 200 4mmサプレッサーセット、並びにGA-210ガス吸収ユニットHF-210炉、及びABC-210ボートコントローラーを備えた、Dionex ICS 2100 ICシステムを使用して行った。
【0145】
本方法についての溶離勾配は、次の通りである:
0~10分:10mM KOH
10~15分:20mM KOHへの着実な、一定の増加
15~30分:20mM KOH。
【0146】
機器は、F-について0.1~3.0mg/Lの検体濃度のAllTechによって供給されるNISTトレーサブル7-アニオン混合物からの3点較正を使用して較正した。それぞれの検体について0.9999よりも良好な相関係数で濃度の全体範囲において線形較正曲線を得た。あらゆる試料を分析する前に機械が正しく動作していることを検証するために対照試料をランさせた。試料中のアニオンの濃度は、以下の方程式:
A=(B*C)/(D)(ここで、
A=mg/kg単位での試料中の元素の濃度
B=mg/L単位でのICによって分析された溶液中のアニオン
C=mL単位でのICによって分析される溶液の体積
D=本手順において使用されたmg単位での試料重量)
で計算した。
【0147】
調製実施例1:T/I比=71/29を有する求核PEKK(PEKK高)の合成
撹拌機、N2注入管、反応媒体中に突っ込まれている熱電対付きのClaisenアダプター、並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを備えた500mLの4口反応フラスコに、112.50gのジフェニルスルホン(DPS)、23.054gの1,3-BHBB、16.695gの1,4-BHBB及び41.292gの1,4-DFDKを導入した。フラスコ内容物を真空下で排気し、次いで(10ppm未満のO2を含有する)高純度窒素で満たした。次いで、反応混合物を一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。反応混合物を270℃までゆっくり加熱した。270℃で、13.725gのNa2CO3及び0.078gのK2CO3を60分にわたって反応混合物に粉末ディスペンサーによって添加した。添加の終了時に、反応混合物を1℃/分で310℃に加熱した。310℃で2分後に、1.107gの1,4-DFDKを、反応器に窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。5分後に、0.741gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の0.402gの1,4-DFDKを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。15gのジフェニルスルホンの別の装入物を反応混合物に添加し、それを15分間撹拌下に保った。
【0148】
次いで、反応器内容物を反応器からステンレス鋼パンに注ぎ込み、冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリションミルですり潰した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1~12でのアセトンと水との混合物で抽出した。最後の洗浄のために、0.67gのNaH2PO4・2H2O及び0.62gのNa2HPO4を1200mLのDI水に溶解させた。次いで、粉末を、反応器から取り出し、真空下に120℃で12時間乾燥させ、72gの黄色粉末を得た。
【0149】
調製実施例2:T/I比=58/42を有する求核PEKK(PEKK低)の合成
実施例1と同じ手順に従ったが、下の表1に示される量の試薬を使った。
【0150】
【0151】
調製実施例3:T/I=72/28の求電子PEKK(e-PEKK)の調製
攪拌機、乾燥N2注入管、反応媒体中に突っ込まれている熱電対、及び凝縮器を備えた2000mLの4つ口反応フラスコに、1000gの1,2-ジクロロベンゼン及び40.63gの1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを導入した。乾燥窒素の掃引下で、7.539gのテレフタロイルクロリド、9.716gのイソフタロイルクロリド及び0.238gのベンゾイルクロリドを反応混合物に添加した。次いで、反応器を-5℃に冷却し、温度を5℃未満に保ちながら、71.88gの塩化アルミニウム(AlCl3)をゆっくり添加した。反応を10分間5℃に保持し、次いで混合物の温度を5℃/分で90℃まで上げた。反応混合物を30分間90℃に保持し、次いで30℃まで冷却した。30℃で、250gのメタノールをゆっくり添加して、温度を60℃未満に維持した。添加の終了後に、反応混合物を2時間攪拌下に保ち、次いで30℃まで冷却した。次いで、固体をブフナーでの濾過によって除去した。湿ったケーキを、追加の188gのメタノールで、フィルター上ですすいだ。次いで、湿ったケーキを2時間440gのメタノールでビーカーにおいて再スラリー化した。ポリマー固体をブフナー漏斗で再度濾過し、湿ったケーキを188gのメタノールで、フィルター上ですすいだ。この固体を、2時間470gの塩酸水溶液(3.5重量%)でスラリー化した。次いで、固体をブフナーでの濾過により除去した。湿ったケーキを追加の280gの水で、フィルター上ですすいだ。次いで、湿ったケーキを、2時間250gの0.5N水酸化ナトリウム水溶液でビーカーにおいて再スラリー化した。次いで、湿ったケーキを475gの水でビーカーにおいて再スラリー化し、ブフナー漏斗で濾過した。最後の水洗工程をさらに3回繰り返した。次いで、ポリマーを、6.6重量%のNaH2PO4・2H2O及び3.3重量%のNa2HPO4を含有する0.75gの水溶液でスラリー化し、次いで180℃での真空オーブン中で12時間乾燥させた。メルトフローインデックス(360℃、8.4kg)は、82.g/10分であった。
【0152】
実施例4:溶融ブレンディングによる組成物の調製
実施例1及び2のPEKKポリマーを、30の長さ対直径比(L/D)を有するLeistritz 18mm二軸スクリュー共回転噛み合い押出機を使用して15/85重量/重量の(PEKK高/PEKK低)比で溶融ブレンドした。全て粉末形態か又はペレット形態かのどちらかにある原料を、それぞれの場合に先ずタンブルブレンドした。タンブルブレンディングを約20分間行い、これに、上記の押出機を使用する溶融配合が続いた。押出機は、バレル区域2~6が加熱される、6つのバレル区域を有した。25インチHg超の真空レベルの真空排出を、配合の間中バレル区域5で適用して、化合物から水分及びあらゆる可能な残留揮発物質をストリップ除去した。押出物を、それぞれの場合にコンベヤーベルト上でストランドにし、空冷し、それを直径がおよそ3mm及び長さが3mmのペレットへ切断するペレタイザーに供給した。他の配合条件は次の通りであった:バレル区域2~6並びにダイ区域は、360℃に加熱した。押出機は、約200rpmのスクリュー速度で運転し、押出速度は、約2.7g/時であった。
【0153】
実施例1~3のPEKKポリマーの及び実施例4の本発明組成物の熱的特性を表2に報告する。
【0154】
【0155】
表2のデータは、実施例4のPEKK組成物が、高いTc及び25J/gを超える融解熱ΔHf、すなわち、許容できる高い結晶化度に恵まれていることを示す。その結果として、実施例4の組成物は、特性のバランス:速い結晶化速度(高いTcによって証明されるように)及び好適な最終結晶分画(ΔHfによって証明されるように)と組み合わせられた良好な加工(330℃よりも低いTmによって証明されるように)
を提供する。
【0156】
実施例5及び比較例1:複合材料
Hextow IM8炭素繊維(12Kフィラメント、サイズを塗られていない;公称繊維強度=6067MPa;公称繊維弾性率=310GPa)に、溶融含浸法によって、実施例4の組成物を含浸させて、本明細書では以下実施例5と特定されるテープを得、実施例3からのPEKKを含浸させて、本明細書では以下比較例1と特定されるテープを得た。
【0157】
結果として生じたテープは、305mmの幅、145±5グラム/m2の繊維面積重量、及び34±3重量%の樹脂分重量百分率を有した。次いで、テープを切断し、以下の試験ラミネートレイアップへとレイアップした。
【0158】
【0159】
レイアップを真空バッグに入れ、次いで、635~735mmHg真空を加えながら、連続したランプ加熱及び冷却サイクルを用いてオートクレーブ処理した。23℃から最高プロセス温度までのヒートアップランプ速度は、3~5℃/分であり、一方、冷却速度は、最高温度から戻して室温(23℃)まで5~7℃/分であった。温度が最高温度に達したときに、0.68MPaの圧力を加え、パネルが強化されてしまう後までレイアップ上で保持し、次いで100℃未満に冷却した。2つの材料についての最高温度は、次の表:
【0160】
【0161】
試験ラミネートを、低い気孔率を確実にするためにC--スキャンし、次いで試験クーポンへ機械加工した。試験ラミネートを、23℃周囲条件で試験した。試験の要約を表3にまとめる。
【0162】
【0163】
表3のデータは、実施例5の複合材料が、マトリックス最重要特性である面内せん断弾性率及び開放孔圧縮強度について両方とも比較 例1の基準材料の実験誤差内にあることを明らかに示している。したがって、実施例5の本発明複合材は、20℃より低い温度で成形されたにもかかわらず、基準複合材料と類似の性能を達成することができる。
【国際調査報告】