IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリストル-マイヤーズ・スクイブ・ティージーエフ・ベータ・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-530433形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用
<>
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図1
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図2
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図3
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図4
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図5
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図6
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図7
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図8
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図9
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図10
  • 特表-形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】形質転換成長因子β(TGFβ)結合剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230710BHJP
   C07K 14/71 20060101ALI20230710BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230710BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230710BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230710BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230710BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230710BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230710BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230710BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230710BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230710BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230710BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230710BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/71 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K47/68
A61P43/00
A61P43/00 105
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576434
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 CA2021050795
(87)【国際公開番号】W WO2021248247
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/038,290
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522480584
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ・スクイブ・ティージーエフ・ベータ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB TGF BETA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】オコナー,モーリーン
(72)【発明者】
【氏名】トランブレ,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥニ,ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ガネーシュ,ヴァナカンバディ ケイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC15
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC03
4B065BC07
4B065BD14
4B065BD18
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC26
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA50
4H045BA70
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
TGFβリガンドの中和のための調整されたアイソフォーム特異性プロファイルを有する4価TGFβ受容体-細胞外ドメインベースのトラップ、並びにTGFβ、特に、TGFβ1及びTGFβ3に関連する疾患及び病態の治療におけるその使用方法が提供される。特に、悪影響を最小限に抑えながら特定の疾患適応症における治療効果を最大にするために、TGFβアイソフォーム特異性を調整するように設計されたTGFβ結合剤が提供される。TGFβ結合剤は、多量体化ドメインを介して組み立てられた2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、ダブレットとして連結された2つのTGFβII受容体(TGFβR)リガンド結合ドメインを有し、ここで、リンカーは、アイソフォーム特異性を調整するように選択される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形質転換成長因子β(TGFβ)アイソフォームの影響を阻害するのに有用なポリペプチド構築物であって、前記構築物が、
TGFβ結合領域、及び
多量体化ドメイン
を含み;
ここで、前記多量体化ドメインのN末端が、前記TGFβ結合領域のC末端に結合され;
前記TGFβ結合領域が、N末端からC末端の向きに、N末端領域、第1のTGFβ受容体リガンド結合ドメイン(TGFβR-LBD)、第1のリンカー、第2のTGFβRリガンド結合ドメイン、及び第2のリンカーを含み;
ここで、TGFβ1アイソフォーム活性及びTGFβ3アイソフォーム活性の両方に対する前記ポリペプチド構築物の阻害効力が、TGFβ2アイソフォーム活性に対するより高く;
ここで、前記第1のリンカー及び前記第2のリンカーは、TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記ポリペプチド構築物の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約2.5:1以下であるように選択される、ポリペプチド構築物。
【請求項2】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記ポリペプチド構築物の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約2.5:1未満、約2.3:1以下、約2:1以下、約1.8:1以下、約1.5:1以下、約1.3:1以下、約1:1以下、約1:1以下、約0.8:1以下、又は約0.5:1以下である、請求項1に記載のポリペプチド構築物。
【請求項3】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記ポリペプチド構築物の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約1:1~約2:1である、請求項1又は2に記載のポリペプチド構築物。
【請求項4】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記ポリペプチド構築物の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、又は1.9:1である、請求項3に記載のポリペプチド構築物。
【請求項5】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記ポリペプチド構築物の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約1.4:1~約1.6:1である、請求項4に記載のポリペプチド構築物。
【請求項6】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記ポリペプチド構築物の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約1.4:1、約1.5:1、又は約1.6:1である、請求項5に記載のポリペプチド構築物。
【請求項7】
前記ポリペプチド構築物が、TGFβ1アイソフォーム活性及びTGFβ3アイソフォーム活性の両方を、TGFβ2アイソフォーム活性より少なくとも20倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、又は1000倍高い効力で阻害する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項8】
前記第1のリンカーが、33アミノ酸長以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項9】
前記第2のリンカーが、10アミノ酸長以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項10】
前記第1のリンカー及び前記第2のリンカーの1つ以上が、IDRリンカー、IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー、切断リンカー変異体又は伸長リンカーを含むか又はそれからなる、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項11】
前記第1のリンカー及び前記第2のリンカーの一方が、非IDRリンカーを含むか又はそれからなる、請求項10に記載のポリペプチド構築物。
【請求項12】
前記第1のリンカー部分及び前記第2のリンカー部分の両方が、IDRリンカー、IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー、切断リンカー変異体又は伸長リンカーを含むか又はそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項13】
前記第1のリンカーが、10アミノ酸長以上、15アミノ酸長以上、又は18アミノ酸長以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項14】
前記第1のリンカーが、約15~33アミノ酸長、又は約18~約30アミノ酸長である、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項15】
前記第1のリンカーが、約16、約18、約30、又は約32アミノ酸長である、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項16】
前記第1のリンカーが、18アミノ酸長である、請求項15に記載のポリペプチド構築物。
【請求項17】
前記第1のリンカーが、16アミノ酸長である、請求項15に記載のポリペプチド構築物。
【請求項18】
前記第1のリンカーが、30アミノ酸長である、請求項15に記載のポリペプチド構築物。
【請求項19】
前記第1のリンカーが、32アミノ酸長である、請求項15に記載のポリペプチド構築物。
【請求項20】
前記第2のリンカーが、35アミノ酸長以下、又は10~34アミノ酸長である、請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項21】
前記第2のリンカーが、約15~約35アミノ酸長である、請求項1~20のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項22】
前記第2のリンカーが、約16、約30、約32、又は約34アミノ酸長である、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項23】
前記第2のリンカーが、30アミノ酸長である、請求項22に記載のポリペプチド構築物。
【請求項24】
前記第2のリンカーが、16アミノ酸長である、請求項22に記載のポリペプチド構築物。
【請求項25】
前記第2のリンカーが、32アミノ酸長である、請求項22に記載のポリペプチド構築物。
【請求項26】
前記第2のリンカーが、34アミノ酸長である、請求項22に記載のポリペプチド構築物。
【請求項27】
前記第1のリンカー及び前記第2のリンカーの1つ以上が、配列番号4及び8~26のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~26のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項28】
前記第1のリンカーが、配列番号8、9、10、11、12、13、14、16、21、22、23、及び26のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項27に記載のポリペプチド構築物。
【請求項29】
前記第2のリンカーが、配列番号4、9、11、15、17、18、19、20、22、23、24、25、及び26のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項27又は28に記載のポリペプチド構築物。
【請求項30】
前記第1のリンカーが、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~29のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項31】
前記第1のリンカーが、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~29のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項32】
前記第2のリンカーが、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~31のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項33】
前記第2のリンカーが、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~31のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項34】
前記第1のリンカーが、
(a)配列番号3、配列番号12若しくは配列番号8と比較した、少なくとも1つのN末端アミノ酸残基の欠失;
(b)配列番号3、配列番号12若しくは配列番号8と比較した、少なくとも1つのC末端アミノ酸残基の欠失;
(c)配列番号3、配列番号12若しくは配列番号8と比較した、少なくとも1つの内部アミノ酸残基の欠失;又は
(d)配列番号3、配列番号12、配列番号8と比較した、アミノ酸配列における1つ以上の置換を有するか、或いは(a)~(c)のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~29のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項35】
前記アミノ酸欠失が、配列番号3の16アミノ酸の欠失である、請求項34に記載のポリペプチド構築物。
【請求項36】
前記第2のリンカーが、
(a)配列番号9若しくは配列番号11と比較した、少なくとも1つのN末端アミノ酸残基の欠失;
(b)配列番号9若しくは配列番号11と比較した、少なくとも1つのC末端アミノ酸残基の欠失;
(c)配列番号9若しくは配列番号11と比較した、少なくとも1つの内部アミノ酸残基の欠失;又は
(d)配列番号4、9若しくは11と比較した、アミノ酸配列における1つ以上の置換を有するか、或いは(a)~(c)のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~35のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項37】
前記N末端領域が、IDRリンカー、IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー、切断リンカー変異体又は伸長リンカーを含むか又はそれからなる、請求項1~36のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項38】
前記N末端領域が、配列番号3に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~37のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項39】
前記第1のTGFβR-LBD及び前記第2のTGFβR-LBDの1つ以上が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~38のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項40】
前記第1のTGFβR-LBD及び前記第2のTGFβR-LBDが、同じか又は実質的に同じである、請求項1~39のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項41】
前記第1のTGFβR-LBD及び前記第2のTGFβR-LBDの両方が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項40に記載のポリペプチド構築物。
【請求項42】
前記多量体化ドメインが、非共有結合的方法で、請求項1~41のいずれか一項に記載の第2のポリペプチド構築物による前記ポリペプチド構築物の二量体化を可能にする、請求項1~41のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項43】
前記多量体化ドメインが、共有結合的方法で、請求項1~41のいずれか一項に記載の第2のポリペプチド構築物による前記ポリペプチド構築物の二量体化を可能にする、請求項1~41のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項44】
前記多量体化ドメインが、抗体の1つ以上の定常領域を含む、請求項1~43のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項45】
前記多量体化ドメインが、抗体重鎖の第2の定常ドメイン(C2)及び/又は第3の定常ドメイン(C3)を含む、請求項44に記載のポリペプチド構築物。
【請求項46】
前記多量体化ドメインが、抗体重鎖のFc領域を含む、請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項47】
前記抗体が、IgG抗体である、請求項44~46のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項48】
前記IgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体、任意に、ヒト抗体である、請求項47に記載のポリペプチド構築物。
【請求項49】
前記多量体化ドメインが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4定常領域との少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項48に記載のポリペプチド構築物。
【請求項50】
前記多量体化ドメインが、請求項1~49のいずれか一項に記載の第2のポリペプチド構築物とともに前記ポリペプチド構築物を架橋するためのシステイン残基を含む、請求項1~49のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項51】
前記多量体化ドメインが、前記第2のポリペプチド構築物とともにジスルフィド架橋を形成するための少なくとも2つのシステイン残基を含む、請求項50に記載のポリペプチド構築物。
【請求項52】
前記多量体化ドメインが、凝集を減少させ、又は前記ポリペプチド構築物の二量体若しくは多量体の安定性を調節するように操作される、請求項1~51のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項53】
前記多量体化ドメインが、配列番号49に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~52のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項54】
前記多量体化ドメインが、配列番号50に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~52のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項55】
前記多量体化ドメインが、配列番号49~80のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~52のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項56】
前記TGFβ結合領域が、配列番号27~48のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~55のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項57】
前記TGFβ結合領域が、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~56のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項58】
前記TGFβ結合領域が、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~56のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項59】
前記TGFβ結合領域が、配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~56のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項60】
前記TGFβ結合領域が、配列番号40に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~56のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項61】
前記TGFβ結合領域が、配列番号41に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~56のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項62】
前記ポリペプチド構築物が、配列番号81~103及び105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~61のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項63】
前記ポリペプチド構築物が、配列番号81に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~61のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項64】
前記ポリペプチド構築物が、配列番号84に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~61のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項65】
前記ポリペプチド構築物が、配列番号87に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~61のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項66】
前記ポリペプチド構築物が、配列番号95に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~61のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項67】
前記ポリペプチド構築物が、配列番号96に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項1~61のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項68】
前記ポリペプチド構築物が、前記TGFβ結合剤の発現、検出及び/又は精製に好適なアミノ酸配列をさらに含む、請求項1~67のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項69】
前記ポリペプチド構築物が、配列番号104に記載される配列、又はそれと実質的に同一である配列を有するシグナルペプチドをさらに含む、請求項68に記載のポリペプチド構築物。
【請求項70】
前記ポリペプチド構築物が、少なくとも1つのジスルフィド架橋によってそれぞれの多量体化ドメイン間で連結された請求項1~69のいずれか一項に記載の第1及び第2のポリペプチド構築物を含む二量体ポリペプチドである、請求項1~69のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項71】
前記第1及び前記第2のポリペプチド構築物が、同じか又は実質的に同じアミノ酸配列を含む、請求項70に記載のポリペプチド構築物。
【請求項72】
前記第1及び前記第2のポリペプチド構築物が、異なるアミノ酸配列を含む、請求項70に記載のポリペプチド構築物。
【請求項73】
前記第1及び前記第2のポリペプチド構築物が、同じか又は実質的に同じ多量体化ドメイン、及び異なるTGFβ結合領域を含む、請求項72に記載のポリペプチド構築物。
【請求項74】
前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチド構築物が、コンジュゲーションのための部位をさらに含む、請求項70~73のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物。
【請求項75】
前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチド構築物が、標的化剤、治療用部分、検出可能部分、又は診断部分とコンジュゲートされる、請求項74に記載のポリペプチド構築物。
【請求項76】
前記標的化剤、前記治療用部分、前記検出可能部分、又は前記診断部分が、抗体又はその抗原結合フラグメント、前記TGFβファミリーの別のメンバー若しくは別の治療標的に対する親和性を有する結合剤、放射線療法剤、造影剤、蛍光部分、細胞毒性薬、細胞分裂抑制薬、ナノ粒子ベースの担体、ポリマーにコンジュゲートされた薬物、ナノ担体、造影剤、安定剤、薬物、ナノ担体、又はデンドリマーを含む、請求項75に記載のポリペプチド構築物。
【請求項77】
N末端からC末端に:(i)配列番号40のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列;及び(ii)ヒトIgG1のFc領域を含むポリペプチド構築物。
【請求項78】
請求項1~77のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物をコードする核酸分子。
【請求項79】
前記核酸分子が、選択された発現宿主によって分泌可能である形態で前記ポリペプチド構築物をコードする、請求項78に記載の核酸分子。
【請求項80】
配列番号81~103及び105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと実質的に同一である配列を有する少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項81】
配列番号106~109のいずれか1つに記載される配列、又はそれと実質的に同一である配列を有する核酸分子。
【請求項82】
5’末端に、配列番号110又は配列番号111に記載される配列、又はそれと実質的に同一である配列をさらに含む、請求項80に記載の核酸分子。
【請求項83】
請求項78~82のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項84】
請求項78~82のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項83に記載のベクターを含む細胞宿主。
【請求項85】
請求項1~77のいずれか一項に記載の第1のポリペプチド構築物、及び
請求項1~77のいずれか一項に記載の第2のポリペプチド構築物
を含むTGFβ結合剤であって;
ここで、前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、それらのそれぞれの多量体化ドメインによって一緒に結合され、
ここで、TGFβ1アイソフォーム活性及びTGFβ3アイソフォーム活性の両方に対する前記TGFβ結合剤の阻害効力が、TGFβ2アイソフォーム活性に対するより高く;
ここで、前記第1のリンカー及び前記第2のリンカーは、TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記TGFβ結合剤の相対阻害効力(TGFβ3 TGFβ1に対するIC50比)が、約2.5:1以下であるように選択される、TGFβ結合剤。
【請求項86】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記TGFβ結合剤の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約2.5:1未満、約2.3:1以下、約2:1以下、約1.8:1以下、約1.5:1以下、約1.3:1以下、約1:1以下、約1:1以下、約0.8:1以下、又は約0.5:1以下である、請求項85に記載のTGFβ結合剤。
【請求項87】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記TGFβ結合剤の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約1:1~約2:1である、請求項85又は86に記載のTGFβ結合剤。
【請求項88】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記TGFβ結合剤の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、又は1.9:1である、請求項87に記載のTGFβ結合剤。
【請求項89】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記TGFβ結合剤の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約1.4:1~約1.6:1である、請求項88に記載のTGFβ結合剤。
【請求項90】
TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記TGFβ結合剤の相対阻害効力(TGFβ3:TGFβ1に対するIC50比)が、約1.4:1、約1.5:1、又は約1.6:1である、請求項89に記載のTGFβ結合剤。
【請求項91】
前記TGFβ結合剤が、TGFβ1アイソフォーム活性及びTGFβ3アイソフォーム活性の両方を、TGFβ2アイソフォーム活性より少なくとも20倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、又は900倍高い効力で阻害する、請求項85~90のいずれか一項に記載のTGFβ結合剤。
【請求項92】
前記TGFβ結合剤が、二量体であり、ここで、前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、少なくとも1つのジスルフィド架橋によってそれらのそれぞれの多量体化ドメイン間で連結される、請求項85~91のいずれか一項に記載のTGFβ結合剤。
【請求項93】
前記TGFβ結合剤が、ホモ二量体であり、前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、同じか又は実質的に同じである、請求項92に記載のTGFβ結合剤。
【請求項94】
前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、配列番号81、84、87、若しくは96のいずれか1つに記載される配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項93に記載のTGFβ結合剤。
【請求項95】
前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、配列番号87に記載される配列を含むか又はそれからなる、請求項93又は94に記載のTGFβ結合剤。
【請求項96】
前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、配列番号96に記載される配列を含むか又はそれからなる、請求項93又は94に記載のTGFβ結合剤。
【請求項97】
前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、配列番号95に記載される配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項93に記載のTGFβ結合剤。
【請求項98】
前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、配列番号95に記載される配列を含むか又はそれからなる、請求項97に記載のTGFβ結合剤。
【請求項99】
前記TGFβ結合剤が、ヘテロ二量体であり、前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、異なるアミノ酸配列を含む、請求項92に記載のTGFβ結合剤。
【請求項100】
前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、同じか又は実質的に同じ多量体化ドメイン、及び異なるTGFβ結合領域を含む、請求項99に記載のTGFβ結合剤。
【請求項101】
前記異なるTGFβ結合領域が、配列番号27、29、87及び96のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項100に記載のTGFβ結合剤。
【請求項102】
前記異なるTGFβ結合領域が、配列番号95に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる、請求項100に記載のTGFβ結合剤。
【請求項103】
N末端からC末端に:(i)配列番号40のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列;及び(ii)ヒトIgG1の第1のFc領域を含む第1のポリペプチド構築物、並びに
N末端からC末端に:(i)配列番号40のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列;及び(ii)ヒトIgG1の第2のFc領域を含む第2のポリペプチド構築物
を含むTGFβ結合剤であって;
ここで、前記第1のポリペプチド構築物及び前記第2のポリペプチド構築物が、ヒトIgG1の前記第1及び第2のFc領域を介して一緒に連結される、TGFβ結合剤。
【請求項104】
TGFβ1アイソフォーム活性及びTGFβ3アイソフォーム活性の両方に対する前記TGFβ結合剤の阻害効力が、TGFβ2アイソフォーム活性に対するより高く;TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対する前記TGFβ結合剤の相対阻害効力(TGFβ3 TGFβ1に対するIC50比)が、約2.5:1以下である、請求項103に記載のTGFβ結合剤。
【請求項105】
請求項1~77のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物のホモ二量体であるTGFβ結合剤。
【請求項106】
請求項1~77のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物又は請求項85~105のいずれか一項に記載のTGFβ結合剤及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項107】
前記組成物が、請求項64又は67に記載のポリペプチド構築物又は請求項95又は96に記載のTGFβ結合剤、又はそれらの組合せを含む、請求項106に記載の医薬組成物。
【請求項108】
前記組成物が、請求項66に記載のポリペプチド構築物又は請求項98に記載のTGFβ結合剤、又はそれらの組合せを含む、請求項106に記載の医薬組成物。
【請求項109】
前記組成物が、請求項66に記載のポリペプチド構築物又は請求項103に記載のTGFβ結合剤、又はそれらの組合せを含む、請求項106に記載の医薬組成物。
【請求項110】
前記組成物が、注射又は注入による投与用に製剤化される、請求項106~109のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項111】
前記組成物が、静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内投与用に製剤化される、請求項110に記載の医薬組成物。
【請求項112】
請求項1~77のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物又は請求項85~105のいずれか一項に記載のTGFβ結合剤を製造する方法であって、前記第1のポリペプチド構築物及び/又は前記第2のポリペプチド構築物を、細胞内で発現させることを含む方法。
【請求項113】
前記細胞を培養すること並びに前記細胞内で発現された前記ポリペプチド構築物又は前記TGFβ結合剤を単離及び/又は精製することをさらに含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記ポリペプチド構築物及び/又は前記TGFβ結合剤が、前記細胞によって分泌され、前記ポリペプチド構築物及び/又は前記TGFβ結合剤が、前記細胞が培養される培地から得られる、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
必要としている対象におけるTGFβ関連疾患又は病態を治療又は予防する方法であって、前記TGFβ関連疾患又は病態が、前記対象において治療又は予防されるように、請求項1~77のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物又は請求項85~105のいずれか一項に記載のTGFβ結合剤を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項116】
前記対象が哺乳動物である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記哺乳動物がヒトである、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記対象が、TGFβ1及び/又はTGFβ3によって媒介される疾患又は病態に罹患しているか、又は罹患している疑いがある、請求項115~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記対象が、TGFβ3によって媒介される疾患又は病態に罹患しているか、又は罹患している疑いがある、請求項115~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
対象におけるTGFβ1及び/又はTGFβ3によって媒介される疾患又は病態を治療又は予防する方法であって、TGFβ1及び/又はTGFβ3によって媒介される前記疾患又は病態が、前記対象において治療又は予防されるように、
請求項1~77のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物又は請求項85~105のいずれか一項に記載のTGFβ結合剤を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項121】
前記疾患が、TGFβ3によって媒介される、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記疾患又は病態が、TGFβ1及び/又はTGFβ3の過剰発現又は過剰活性化によって特徴付けられる、請求項115~121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記疾患又は病態が、線維症である、請求項115~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記線維症が、肺線維症、特発性肺線維症、腎線維症、肝線維症、肺線維症、腎線維症、骨髄線維症、全身性硬化症、皮膚線維症、心臓線維症、骨髄線維症、線維増殖性疾患又は結合組織障害である、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記疾患又は病態が、骨髄不全疾患である、請求項115~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
前記疾患又は病態が、シュワッハマン・ボディアン・ダイアモンド症候群又はファンコニ貧血である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
請求項1~77のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物又は請求項85~105のいずれか一項に記載のTGFβ結合剤を製造する方法であって、請求項84に記載の宿主細胞を、タンパク質発現に好適な条件下で培養すること;及び請求項1~77のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物又は請求項85~105のいずれか一項に記載のTGFβ結合剤を収集することを含む方法。
【請求項128】
請求項127に記載の方法によって生成されるポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月12日に出願された米国仮特許出願第63/038,290号の利益を主張するものであり、この仮特許出願の内容は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
本出願は、本明細書と一緒に提出された配列表のコンピュータ可読形態(CRF)の全体を参照により援用する。「14247-632-228_SEQ_LISTING.txt」という名称で、本明細書と一緒に提出された配列表のテキストファイルは、2021年6月7日に作成され、247,915バイトのサイズである。
【0003】
本開示は、TGFβ受容体細胞外ドメイン(TGFβR-ECD)由来融合分子を含むTGFβ結合剤及びTGFβリガンドに結合し、それを中和するための、特に、TGFβに関連する疾患又は病態の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
形質転換成長因子β(TGFβ)は、細胞増殖、移動及び分化を含むいくつかの生理学的過程を調節する30リガンド超のスーパーファミリーの一部である。それらのレベル及び/又はシグナル伝達の変動は、かなりの病理学的影響を生じさせる。TGFβは、多くのヒトの障害の発症に関与しているとされてきた(非特許文献1;非特許文献2)。例えば、TGFβ及びアクチビンリガンドは、線維症及び癌を含む多くの疾患において重大な病因的役割を果たす。TGFβ関連障害の例としては、血液悪性疾患、固形腫瘍、骨髄不全状態、並びに肺、肝臓、腎臓及び血管線維症、肺動脈高血圧症、及び全身性硬化症(SSc;強皮症とも呼ばれる)などの無制御の線維症によって特徴付けられる多種多様な障害が挙げられる(非特許文献3;非特許文献4)。
【0005】
TGFβシグナル伝達の持続的活性化は、線維症の発症において中心的役割を果たす(非特許文献5)。TGFβ標準シグナル伝達は、筋線維芽細胞への線維芽細胞の移行を刺激し(非特許文献6;非特許文献7)、コラーゲン及び細胞外基質(ECM)の他の成分の生成及び堆積(非特許文献8)並びに線維症に関与する他のメディエータの誘導(非特許文献9)において中心的役割を果たす。強皮症及び特発性肺線維症(IPF)などの線維症に罹患した患者において、TGFβは、皮膚及び/又は肺へのコラーゲン沈着を増加させ、皮膚中の筋線維芽細胞への線維芽細胞活性化を刺激する(非特許文献8;非特許文献10;非特許文献11)。さらに、非標準的TGFβ経路も、線維性表現型の維持に寄与する(非特許文献12)。したがって、TGFβシグナル伝達経路は、線維症における治療的介入のための最も明らかな標的として浮上している(非特許文献5;非特許文献13;非特許文献14)。
【0006】
TGFβはまた、腫瘍進行の重要な調節因子であると考えられ、ほとんどの腫瘍型によって過剰発現される。それは、一つには、上皮腫瘍細胞における上皮間葉移行(EMT)を誘導することによって腫瘍発生に有利に働いて、侵攻性の転移をもたらす。TGFβはまた、腫瘍微小環境における免疫応答の強力な抑制因子として作用することによって腫瘍発生を促進する。実際に、TGFβは、腫瘍微小環境中に存在する最も強力な免疫抑制因子の1つであると認識されている。TGFβは、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、好中球、B細胞及びT細胞を含む多くの免疫細胞型の分化、増殖及び生存を妨げるため;それは、自然免疫及び適応免疫の両方を変化させる。腫瘍微小環境におけるTGFβの重要性は、黒色腫、肺、膵臓、結腸直腸、肝臓及び乳房を含むいくつかの腫瘍型において、TGFβリガンドの上昇したレベルが、疾患進行及び再発、転移、並びに死亡率と相関することを示すエビデンスによって強調される。したがって、TGFβ阻害に関与する抗腫瘍治療法を考案するのにかなりの労力が払われてきた。これらの手法は、TGFβリガンドに結合するか又はそれを「捕捉する」TGFβ受容体細胞外ドメインに基づくポリペプチド融合の使用を含む(例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9;特許文献10;特許文献11;特許文献12;特許文献13;特許文献14;特許文献15;特許文献16;特許文献17;及び特許文献18を参照)。
【0007】
TGFβ機能を阻害する治療剤を開発する一手法は、抗体又は可溶性デコイ受容体(受容体細胞外ドメイン(ECD)ベースのリガンドトラップとも呼ばれる)を用いて、リガンドに結合し、それを隔離し、それによって、その細胞表面受容体へのリガンドのアクセスを遮断することであった。一般に、受容体ECDベースのトラップは、選択的にリガンドを隔離することができ、タンパク質工学手法を用いて最適化され得る治療剤の種類である。
【0008】
以前に、ダブレットとして連結された2つのTGFβ受容体タイプII(TGFβRII)細胞外ドメインを有する一本鎖、2価TGFβトラップが、リガンドのTGFβスーパーファミリーのメンバーを中和し得ることが示された(特許文献3、特許文献5)。そのような場合、2価性は、TGFβRII細胞外ドメインの構造化されたリガンド結合ドメインに隣接する本質的に無秩序な領域(IDR)を用いて2つのTGFβRII細胞外ドメインを共有結合することによって達成された。このような2価ダブレットが、N末端又はC末端におけるFc成分などの多量体化ドメインに並んで結合される場合、効力が増加することがさらに示された(特許文献19、特許文献10)。
【0009】
これまで、TGFβを中和するほとんどの治療手法は、特に、癌免疫学において、TGFβ1アイソフォームに焦点を合わせてきた。これは、TGFβ1が、免疫系中(非特許文献15)並びに多くのタイプのヒト腫瘍(非特許文献16)中で主に発現されるアイソフォームであるためである。目的とする標的は、通常、TGFβ1アイソフォームであったが、開発中のほとんどの治療剤は、一般に、様々な効力で他のTGFβアイソフォームを阻害する。例えば、フレソリムマブは、全ての3つのTGFβアイソフォームの汎阻害剤であるモノクローナル抗体である。それは、全てのアイソフォームを中和するが、それは、TGFβ3アイソフォームより約7倍強力に、及びTGFβ2アイソフォームより約14倍強力にTGFβ1アイソフォームを阻害する(非特許文献17)。このモノクローナル抗体は、癌患者において(非特許文献18;非特許文献19)及び糸球体硬化症患者において(非特許文献20)臨床試験において試験されている。
【0010】
TGFβ2アイソフォームは、心臓恒常性(非特許文献21;非特許文献22)、腫瘍休眠の制御(非特許文献23)、及び造血の正の調節(非特許文献24)に関与しているとされ、これは、このアイソフォームが、有益な役割を果たすため、中和を免れるべきであることを示唆している。
【0011】
したがって、悪影響を最小限に抑えながら、特定の疾患適応症における治療効果を最大にするために、調整されたアイソフォーム特異性を有するTGFβRII-ECDベースのトラップを提供することが有用であろう。特に、TGFβ1の効力と同様の効力を有するTGFβ3を中和するトラップを提供することが有用であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第01/83525号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/028517号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/113185号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2008/157367号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2010/0031168号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2010/099219号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2012/071649号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2012/142515号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2013/000234号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2018/158727号パンフレット号
【特許文献11】米国特許第5693607号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2005/0203022号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2007/0244042号明細書
【特許文献14】米国特許第8318135号明細書
【特許文献15】米国特許第8658135号明細書
【特許文献16】米国特許第8815247号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2015/0225483号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2015/0056199号明細書
【特許文献19】国際公開第2017/037634号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Akhurst,R.J.and Hata,A.,2012
【非特許文献2】Akhurst,R.J.,2017
【非特許文献3】Nanthakumar,D.B.et al.,2015
【非特許文献4】Meng,X.-M.et al.,2016
【非特許文献5】Varga,J.and Whitfield,M.L.,2009
【非特許文献6】Desmouliere,A.et al.,1993
【非特許文献7】Midgley,A.C.et al.,2013
【非特許文献8】Prud’homme,G.J.,2007
【非特許文献9】Todd,N.W.et al.,2015
【非特許文献10】Lafyatis,R.,2014
【非特許文献11】Kissin,E.Y.et al.,2006
【非特許文献12】Leask,A.,2008
【非特許文献13】Hunzelmann,N.and Krieg,T.,2010
【非特許文献14】Varga,J.and Pasche,B.,2008
【非特許文献15】Li,M.O.et al.,2006
【非特許文献16】Martin,C.J.et al.,2020
【非特許文献17】Grutter,C.et al.,2008
【非特許文献18】Morris,J.C.et al.,2014
【非特許文献19】Lacouture,M.E.and Morris,J.C.,2015
【非特許文献20】Vincenti,F.et al.,2017
【非特許文献21】Roberts,A.B.et al.,1992
【非特許文献22】Herbertz,S.et al.,2015
【非特許文献23】Bragado,P.et al.,2013
【非特許文献24】Langer,J.C.et al.,2004
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
TGFβリガンドの中和のための調整されたアイソフォーム特異性プロファイルを有する4価TGFβ受容体-細胞外ドメインベースのトラップ、並びにTGFβに関連する疾患及び病態の治療におけるその使用方法が、本明細書において提供される。本明細書において提供される4価TGFβ結合剤は、多量体化ドメインを介して組み立てられた2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、ダブレットとして連結された2つのTGFβII受容体(TGFβR)リガンド結合ドメインを有する。本明細書において提供されるTGFβ結合剤は、悪影響を最小限に抑えながら特定の疾患適応症における治療効果を最大にするために、TGFβアイソフォーム特異性を調整するように設計されている。
【0015】
本発明の技術は、少なくとも部分的に、開発中の他の公知の薬剤と区別されるアイソフォーム特異性を有するTGFβリガンドトラップが、特定のTGFβ関連疾患及び病態の治療のために有利であり得るという本発明者らの認識に基づいている。最近の報告は、線維症などの特定のTGFβ関連病態においてTGFβ3アイソフォームに対する重要な役割を示した。例えば、最近の報告は、miR-29によるTGFβ3の特異的な下方制御が、腎線維症を抑制することを実証することによって、TGFβ3を、腎線維症における重要な治療標的として同定した(Wang,H.et al.,2019)。免疫におけるTGFβ3アイソフォームに対する重要な役割も、免疫細胞によるTGFβ3の産生についての最近の報告によって示唆された(Komai,I.D.and Okamura,T.,2018)。SScに関して、アフリカ系アメリカ人患者におけるゲノムワイド関連解析が、TGFβ3を、新規なSSc感受性遺伝子として同定した(Gourh,P.et al.,2017)。
【0016】
TGFβ2に関して、心臓恒常性(Roberts,A.B.et al.,1992;Herbertz,S.et al.,2015)、腫瘍休眠の制御(Bragado,P.et al.,2013)、及び造血の正の調節(Langer,J.C.et al.,2004)におけるこのアイソフォームの関与は、このアイソフォームの中和を回避することが望ましいであろうことを示唆した。
【0017】
総合すると、このような知見は、TGFβ1及びTGFβ3を同様の程度に中和することが、特定の障害、特に、TGFβ3が関与するものの治療に有益であり得ることを示唆する。TGFβ1及びTGFβ3のほぼ同等の阻害を達成することは、ある場合には、TGFβ1及びTGFβ3の両方が有効に中和され得、これらのアイソフォームの一方が優先的に中和される場合に生じ得る代償機構を防止し得、及び/又は有効性を最大にし得ることを確実にするために有用であり得る。TGFβ2シグナル伝達を中和せずに(このアイソフォームの中和を避けることが有益であり得るため)、TGFβ1及びTGFβ3を同様に阻害することも望ましい。
【0018】
広い態様において、形質転換成長因子β(TGFβ)アイソフォームの影響を阻害するのに有用な新規なポリペプチド構築物が、本明細書において提供される。本開示に係るポリペプチドは、TGFβ結合領域及び多量体化ドメインを含み、ここで、多量体化ドメインのN末端は、TGFβ結合領域のC末端に結合される。TGFβ結合領域は、第1のリンカーによって一緒に結合される、及び第2のリンカーによって多量体化ドメインによって結合される2つのTGFβ受容体リガンド結合ドメイン(TGFβR-LBD)を含む。別の広い態様において、多量体化ドメインを介して組み立てられた2つのこのようなポリペプチド鎖を含み、それによって、TGFβリガンド(TGFβ1、TGFβ2及びTGFβ3)に対する特異的な阻害特異性を有する4価分子を形成する、TGFβ結合剤が提供される。
【0019】
理論によって制限されるのを望むものではないが、本発明は、少なくとも部分的に、このようなTGFβリガンドトラップにおけるリンカー(例えば、2つのTGFβR-LBDを一緒に結合するリンカー及び/又はTGFβR-LBDを多量体化ドメインに結合するリンカー)の1つ以上を修飾することが、異なるTGFβアイソフォームに対する結合剤の阻害効力に特異的に影響を与えるという知見に基づいている。ある場合には、一方又は両方のリンカーを修飾することが、TGFβ2の望ましくない阻害を増加させず、及び全体的な効力を著しく減少させずに(例えば、IC50が低いピコモル範囲内のままである)、TGFβ3:TGFβ1 IC50比を低下させるか又は等しくし得る(両方のアイソフォームに対する同様の又は等しくされた阻害効力を示す)ことが、本明細書に示される。
【0020】
本明細書において提供されるTGFβ結合剤は、一般に、多量体化ドメインを介して一緒に結合される第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、N末端からC末端の向きに:N末端領域;第1のTGFβ受容体リガンド結合ドメイン((TGFβR-LBD);第1のリンカー;第2のTGFβR-LBD;第2のリンカー;及び多量体化ドメインを含む。TGFβ結合剤の一実施形態が、図1(これは、TGFβ結合剤がホモ二量体である、すなわち、第1及び第2のポリペプチドが同じである一実施形態を示す)に概略的に示される。第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、それらのそれぞれの多量体化ドメインを介して、例えば、ジスルフィド結合(システイン架橋)によって、コイル状コイル相互作用などによって、互いに結合され得る。
【0021】
本発明の技術のTGFβ結合剤は、TGFβ3:TGFβ1 IC50比を低下させるか又は等しくするように設計されている。すなわち、それらは、他の公知のTGFβトラップと比較して、TGFβ1の減少した優先的な阻害を示すように設計されている。したがって、本明細書において提供されるTGFβ結合剤は、アイソフォーム阻害に対するそれらの特異性プロファイルによって特徴付けられる:具体的には、TGFβ1及びTGFβ3アイソフォームについての相対的阻害効力(本明細書においてTGFβ3:TGFβ1 IC50比として表される)が、約2.5:1以下であり、TGFβ3及びTGFβ1アイソフォームの両方の活性が、TGFβ2アイソフォームのものよりはるかに高い効力で(例えば、TGFβ3及びTGFβ1に対してピコモル範囲で、並びにTGFβ2に対してナノモルで)阻害される。
【0022】
さらに、ある実施形態において、本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤は、調整されたアイソフォーム特異性に加えて、いくつかの利点を提供し得る。例えば及び限定はされないが、ポリペプチド及びTGFβ結合剤は、例えば、減少したグリコシル化、増加した均質性、発現しやすさなどにより、改善された製造可能性を提供し得る。したがって、ある実施形態において、本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤は、以前のTGFβ結合剤と比べて、以下の利点:特定の疾患適応症、例えばTGFβ3媒介性病態に対する改善された治療効果;減少したグリコシル化;増加した均質性;改善された製造可能性;及び増加した産生の1つ以上を提供する。
【0023】
本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤のある実施形態において、第1のリンカー及び第2のリンカーは、阻害の所望の相対アイソフォーム特異性を提供するように設計される。例えば、ある実施形態において、第1のリンカー及び第2のリンカーの長さが、TGFβ3:TGFβ1 IC50比が約2.5:1以下であるように選択され、TGFβ3及びTGFβ1アイソフォーム活性の両方が、TGFβ2アイソフォーム活性よりはるかに高い効力(例えば、TGFβ3及びTGFβ1に対してピコモル範囲で、並びにTGFβ2に対してナノモルで)で阻害される。
【0024】
本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤のある実施形態において、第1のリンカー及び第2のリンカーは、TGFβ3:TGFβ1 IC50比が、約2.5:1以下であるように選択される。ある実施形態において、TGFβ3:TGFβ1 IC50比が、約2.5:1未満、約2.3:1以下、約2:1以下、約1.8:1以下、約1.5:1以下、約1.3:1以下、約1.1:1以下、約1:1以下、約0.8:1以下、又は約0.5:1以下である。ある実施形態において、TGFβ結合剤に対するTGFβ3:TGFβ1 IC50比が、約1:1~約2:1であるか、又は約1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、若しくは1.9:1である。特定の実施形態において、TGFβ結合剤に対するTGFβ3:TGFβ1 IC50比が、約1:1~約1.5:1又は約1.4:1~約1.6:1、又は約1.4:1、1.5:1、又は1.6:1である。あるこのような実施形態において、TGFβ結合剤は、TGFβ1アイソフォーム活性及びTGFβ3アイソフォーム活性の両方を、TGFβ2アイソフォーム活性より少なくとも20倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、又は1000倍高い効力で阻害する。
【0025】
ある実施形態において、第1のリンカーは、33アミノ酸長以下である。一実施形態において、第1のリンカーは、約10~33アミノ酸長である。実施形態において、第1のリンカーは、約15~33アミノ酸長、又は約18~約30アミノ酸長であり得る。一実施形態において、第1のリンカーは、16、18、30、又は32アミノ酸長である。特定の実施形態において、第1のリンカーは、16アミノ酸長である。別のいくつかの実施形態において、第1のリンカーは、18アミノ酸長である。別のいくつかの実施形態において、第1のリンカーは、30アミノ酸長である。別のいくつかの実施形態において、第1のリンカーは、32アミノ酸長である。
【0026】
ある実施形態において、第2のリンカーは、10アミノ酸長以上である。一実施形態において、第2のリンカーは、約10~約35アミノ酸長である。実施形態において、第2のリンカーは、約10~約34又は約15~約34アミノ酸長であり得る。一実施形態において、第2のリンカーは、16、30、32、又は34アミノ酸長である。特定の実施形態において、第2のリンカーは、30アミノ酸長である。別のいくつかの実施形態において、第2のリンカーは、16アミノ酸長である。別のいくつかの実施形態において、第2のリンカーは、32アミノ酸長である。別のいくつかの実施形態において、第2のリンカーは、34アミノ酸長である。
【0027】
一実施形態において、第1のリンカーは、18アミノ酸であり、第2のリンカーは、16アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、18アミノ酸であり、第2のリンカーは、30アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、18アミノ酸であり、第2のリンカーは、10アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、18アミノ酸であり、第2のリンカーは、32アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、18アミノ酸であり、第2のリンカーは、34アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、16アミノ酸であり、第2のリンカーは、18アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、16アミノ酸であり、第2のリンカーは、16アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、16アミノ酸であり、第2のリンカーは、30アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、16アミノ酸であり、第2のリンカーは、32アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、26アミノ酸であり、第2のリンカーは、26アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、32アミノ酸であり、第2のリンカーは、32アミノ酸である。別の実施形態において、第1のリンカーは、32アミノ酸であり、第2のリンカーは、34アミノ酸である。阻害の所望のアイソフォーム特異性が達成される限り、多くの他の置き換えが可能であることが理解されるべきである。
【0028】
ある実施形態において、第1のリンカー及び第2のリンカーの1つ以上が、本明細書に開示されるIDRリンカー、IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー、切断リンカー変異体又は伸長リンカーを含むか又はそれからなる。例えば、第1のリンカー及び第2のリンカーの1つ以上が、独立して、配列番号4若しくは8~26のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなり得る。ある実施形態において、第1のリンカーは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、16、21、22、23、及び26のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。ある実施形態において、第2のリンカーは、配列番号4、9、11、15、17、18、19、20、22、23、24、25、及び26のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。
【0029】
代表的な実施形態において、第1のリンカーは、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなり、及び/又は第2のリンカーは、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる。別の代表的な実施形態において、第1のリンカーは、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなり、及び/又は第2のリンカーは、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる。阻害の所望のアイソフォーム特異性が達成される限り、本明細書において提供されるリンカーの組合せを用いた他の実施形態が包含されることが理解されるべきである。
【0030】
本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤のある実施形態において、N末端領域は、IDRリンカー、IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー、切断リンカー変異体又は伸長リンカーを含むか又はそれからなる。例えば、N末端領域は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか若しくはそれからなり得る。
【0031】
本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤のある実施形態において、第1のTGFβR-LBD及び/又は第2のTGFβR-LBDは、配列番号2に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。ある実施形態において、第1のTGFβR-LBD及び第2のTGFβR-LBDは、同じか又は実質的に同じである。他の実施形態において、第1のTGFβR-LBD及び第2のTGFβR-LBDは、異なるアミノ酸配列を有し得る。
【0032】
本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤のある実施形態において、多量体化ドメインは、本開示に係る2つのポリペプチドの二量体化を、非共有結合的方法で、例えば、コイル状コイル相互作用などによって可能にする。
【0033】
他の実施形態において、多量体化ドメインは、本開示に係る2つのポリペプチドの二量体化を、共有結合的方法で、例えば、ジスルフィド架橋などによって可能にする。
【0034】
ある実施形態において、多量体化ドメインは、抗体の1つ以上の定常領域、例えば、抗体重鎖の第2の定常ドメイン(C2)及び/若しくは第3の定常ドメイン(C3)、又は抗体重鎖のFc領域を含む。抗体は、例えば及び限定はされないが、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体などのIgG抗体であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト抗体であり、例えば、多量体化ドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の重鎖の定常領域を含む。ある実施形態において、多量体化ドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4定常領域との少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の実施形態において、多量体化ドメインは、ヒトIgG1抗体のFc領域を含むか又はそれからなる。別のいくつかの実施形態において、多量体化ドメインは、ヒトIgG4抗体のFc領域を含むか又はそれからなる。
【0035】
ある実施形態において、多量体化ドメインは、第2のポリペプチド構築物による第1のポリペプチド構築物の架橋のための1つ以上のシステイン残基を含む。例えば、多量体化ドメインは、2つのポリペプチド構築物間にジスルフィド架橋を形成し、それによって、二量体を形成するための少なくとも2つのシステイン残基を含み得る。
【0036】
ある実施形態において、多量体化ドメインは、凝集を減少させ、又はポリペプチド構築物の二量体若しくは多量体の安定性を調節するように操作される。例えば、Fc領域は、天然のFc配列と比較して、凝集を減少させ、及び/又はTGFβ結合剤の安定性を高める1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。ある実施形態において、多量体化ドメインは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体活性化(補体依存性細胞傷害又はCDC)、オプソニン化などの1つ以上のエフェクター機能を提供するように選択される。
【0037】
ある実施形態において、多量体化ドメインは、配列番号49~80のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。特定の実施形態において、多量体化ドメインは、配列番号49に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。別のいくつかの実施形態において、多量体化ドメインは、配列番号50に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。
【0038】
本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤のある実施形態において、TGFβ結合領域(N末端ドメイン、2つのLBD、及び2つのリンカーを含む)は、配列番号27~48のいずれか1つに記載される配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。特定の実施形態において、TGFβ結合領域は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。別のいくつかの実施形態において、TGFβ結合領域は、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。別のいくつかの実施形態において、TGFβ結合領域は、配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。別のいくつかの実施形態において、TGFβ結合領域は、配列番号41に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0039】
別のいくつかの実施形態において、TGFβ結合領域は、配列番号40に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0040】
本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤のある実施形態において、ポリペプチド構築物は、配列番号81~103及び105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。特定の実施形態において、ポリペプチド構築物は、配列番号81に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。別のいくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物は、配列番号84に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。別のいくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物は、配列番号87に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。別のいくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物は、配列番号96に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0041】
別のいくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物は、配列番号95に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。別のいくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物は、配列番号95に記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0042】
ある実施形態において、本明細書において提供されるポリペプチド構築物は、N末端からC末端に:(i)配列番号40のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列;及び(ii)ヒトIgG1のFc領域を含むポリペプチド構築物である。
【0043】
本発明の技術のある実施形態において、TGFβ結合剤は、ヘテロ二量体であり、すなわち、第1及び第2のポリペプチドは、異なる。このような実施形態において、第1及び第2のポリペプチドは、例えば、第1のリンカー、第2のリンカー、LBD、多量体化ドメインなどの配列、並びにそれらの組合せによって、1つ以上の領域又はドメインが異なり得る。したがって、以下のそれぞれが、独立して、2つのポリペプチド中で同じか又は異なり得る:N末端領域;第1のリンカー;第2のリンカー;第1のLBD;第2のLBD;及び多量体化ドメイン。阻害の所望のアイソフォーム特異性が提供される限り、多くの組合せが可能である。
【0044】
TGFβ結合剤のある実施形態において、第1のポリペプチド構築物及び第2のポリペプチド構築物は、配列番号95に記載される配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。TGFβ結合剤のある実施形態において、第1のポリペプチド構築物及び第2のポリペプチド構築物は、配列番号95に記載される配列を含むか又はそれからなる。
【0045】
TGFβ結合剤のある実施形態において、異なるTGFβ結合領域は、配列番号95に記載されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含むか又はそれからなる。
【0046】
TGFβ結合剤のある実施形態において、TGFβ結合剤は、
N末端からC末端に:(i)配列番号40のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列;及び(ii)ヒトIgG1の第1のFc領域を含む第1のポリペプチド構築物、並びに
N末端からC末端に:(i)配列番号40のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列;及び(ii)ヒトIgG1の第2のFc領域を含む第2のポリペプチド構築物
を含み;
ここで、第1のポリペプチド構築物及び第2のポリペプチド構築物は、ヒトIgG1の第1及び第2のFc領域を介して一緒に連結される。
【0047】
ある実施形態において、TGFβ1アイソフォーム活性及びTGFβ3アイソフォーム活性の両方に対するTGFβ結合剤の阻害効力は、TGFβ2アイソフォーム活性に対するより高く;ここで、TGFβ1アイソフォーム活性と比較したTGFβ3アイソフォーム活性に対するTGFβ結合剤の相対阻害効力(TGFβ3 TGFβ1に対するIC50比)は、約2.5:1以下である。
【0048】
ある実施形態において、本明細書において提供されるTGFβ結合剤は、本明細書において提供されるポリペプチド構築物のホモ二量体である。
【0049】
代替的な実施形態において、TGFβ結合剤は、ホモ二量体であり、すなわち、第1及び第2のポリペプチドは、同じか又は実質的に同じである。
【0050】
ある実施形態において、ポリペプチド又はTGFβ結合剤は、標的化剤、治療用部分、検出可能部分及び/又は診断部分とコンジュゲートされ得る。
【0051】
別の広い態様において、本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤をコードする核酸が提供される。このような核酸を含む、及び/又はポリペプチド及びTGFβ結合剤の発現のためのベクター及びプラスミドも提供される。例えば、一実施形態において、配列番号106~109のいずれか1つに記載される配列を有する核酸、並びにこれらの核酸を含むベクター及びプラスミドが提供される。別の実施形態において、配列番号106~109と少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するか、又は高いストリンジェンシーの条件下でそれにハイブリダイズすることが可能な核酸が提供される。本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤を発現する細胞も提供される。
【0052】
さらなる態様において、本発明の技術のポリペプチド及びTGFβ結合剤を製造する方法であって、細胞内で本明細書において提供される1つ以上のポリペプチドを発現すること、続いて、その単離及び/又は精製を含む方法が提供される。ある実施形態において、ポリペプチド構築物及びTGFβ結合剤は、例えば、N末端におけるシグナルペプチドを用いて、細胞によって分泌可能である形態で発現され、培養培地からのポリペプチド又はTGFβ結合剤の回収を可能にする。
【0053】
別の広い態様において、本開示に係るポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤並びに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物が提供される。ある実施形態において、医薬組成物は、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内投与のための、注射又は注入による投与用に製剤化される。ある実施形態において、医薬組成物は、単位剤形で提供される。
【0054】
さらに別の広い態様において、TGFβ関連疾患又は病態を予防又は治療する方法であって、TGFβ関連疾患又は病態が、予防又は治療されるように、治療有効量の、本発明の技術のポリペプチド、TGFβ結合剤又は医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0055】
本開示にしたがって予防又は治療され得るTGFβ関連疾患又は病態の例としては、例えば及び限定はされないが:線維症(例えば、線維症、線維性瘢痕化、線維増殖性疾患);癌(例えば、悪性腫瘍、固形腫瘍、転移);及び骨髄不全(例えば、シュワッハマン・ボディアン・ダイアモンド症候群、ファンコニ貧血)が挙げられる。ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤は、例えば及び限定はされないが、組織及び/又は器官の線維症、及び線維性瘢痕化、例えば、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、腎線維症、肝線維症(例えば、肝硬変)、全身性硬化症、強皮症、皮膚線維症、心臓線維症、骨髄線維症などを含む線維症の治療又は予防に使用される。
【0056】
ある実施形態において、TGFβ1及び/又はTGFβ3によって媒介される疾患又は病態を予防又は治療する方法であって、TGFβ1及び/又はTGFβ3によって媒介される疾患又は病態が治療されるように、治療有効量の、本発明の技術のポリペプチド、TGFβ結合剤又は医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。一実施形態において、必要としている対象におけるTGFβ3によって媒介される疾患又は病態を予防又は治療する方法であって、TGFβ3によって媒介される疾患又は病態が予防又は治療されるように、治療有効量の、本発明の技術のポリペプチド、TGFβ結合剤又は医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0057】
ある実施形態において、必要としている対象における線維症を予防又は治療する方法であって、線維症が予防又は治療されるように、治療有効量の、本発明の技術のポリペプチド、TGFβ結合剤又は医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0058】
さらなる広い態様において、必要としている対象におけるTGFβ関連疾患又は病態を治療するためのキット及びパッケージであって、本開示に係るポリペプチド、TGFβ結合剤又は医薬組成物;任意に、酸、塩基、緩衝剤、無機塩、溶媒、酸化防止剤、防腐剤、若しくは金属キレート剤などの1つ以上のさらなる成分、及び/又はシリンジ、針などのその投与用のツールを含む、キット及びパッケージが提供される。投与又は使用のための説明書も含まれ得る。
【0059】
さらに別の態様において、本明細書において提供されるポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤を製造する方法であって、タンパク質発現に好適な条件下で、本明細書において提供される宿主細胞を培養すること;及びポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤を収集することを含む方法が提供される。
【0060】
さらに別の態様において、本明細書において提供される製造方法によって生成されるポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤が、本明細書において提供される。
【0061】
本開示のさらなる範囲、適用性及び利点は、これ以降に示される非制限的な詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な説明は、本開示の例示的な実施形態を示す一方、添付の図面を参照して、例として示されるに過ぎないことが理解されるべきである。
【0062】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴うこの特許又は特許出願公報のコピーは、要請及び必要な料金の支払い後に特許庁によって提供されるであろう。
【0063】
技術をよりよく理解するため、及びそれが実行され得る方法をより明確に示すために、例として、本発明の技術の非限定的な実施形態に係る態様及び特徴を示す添付の図面がこれより参照される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】特定の実施形態に係る、4価TGFβ結合剤のドメイン組織化の概略的構造を示す。本明細書に示される実施形態は、多量体化ドメイン(2本の線として示される)におけるジスルフィド架橋によって連結される第1のポリペプチド(左側)及び第2のポリペプチド(右側)のホモ二量体である。リガンド結合ドメイン(LBD)は、円として示され、多量体化ドメインは、楕円として示され、N末端領域及びリンカーは、矩形として示される。結合剤がヘテロ二量体である実施形態において、第1及び第2のポリペプチドは、1つ以上の領域又は部分(図示せず)において異なる。
【0065】
図2図2AはTGFβ1(青色)及びTGFβ3(緑色)のモノマー構造のオーバーレイを示す。
【0066】
図2BはTGFβ1二量体(青色)及びTGFβ3二量体(緑色)のオーバーレイを示す。領域における対応するモノマーは、二量体角度でのモノマーの差異を示すために重ね合わされる。
【0067】
図2Cは第2のリガンド結合ドメイン、第2のリンカー、及び多量体化ドメイン(Fc)領域を示すTGFβリガンドに結合されたT22d35-Fc-IgG1-v1(CC)(配列番号6)の代表的なモデルを示す。
【0068】
図3図3Aは代表的なTGFβ結合剤の非還元条件下におけるポリアクリルアミドゲル電気泳動分析を示す。発現及び精製の後、2μgの各タンパク質を、示されるように、ゲルに充填した:Ctl:対照;p61:タンパク質61;p96:タンパク質96;p101:タンパク質101;p107:タンパク質107;p112:タンパク質112。
【0069】
図3Bは代表的なTGFβ結合剤の還元条件下におけるポリアクリルアミドゲル電気泳動分析を示す。発現及び精製の後、2ugの各タンパク質を、示されるように、ゲルに充填した:Ctl:対照;p61:タンパク質61;p96:タンパク質96;p101:タンパク質101;p107:タンパク質107;p112:タンパク質112。
【0070】
図4図4Aは、示されるように、タンパク質61、96、101、107、及び112、並びに対照についてのTGFβ1の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0071】
図4Bは、示されるように、タンパク質61、96、101、107、及び112、並びに対照についてのTGFβ3の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0072】
図5図5Aは以下の代表的なTGFβ結合剤:p112、p111、p108、p105、p104、p101、p99、及びp71の非還元条件下におけるポリアクリルアミドゲル電気泳動分析を示す。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0073】
図5Bは以下の代表的なTGFβ結合剤:p112、p111、p108、p105、p104、p101、p99、及びp71の還元条件下におけるポリアクリルアミドゲル電気泳動分析を示す。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0074】
図6図6Aは、示されるように、タンパク質113、115、及び116、並びに対照についてのTGFβ1の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0075】
図6Bは、示されるように、タンパク質113、115、及び116、並びに対照についてのTGFβ3の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0076】
図7図7Aは、示されるように、タンパク質101、129、及び130、並びに対照についてのTGFβ1の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0077】
図7Bは、示されるように、タンパク質101、129、及び130、並びに対照についてのTGFβ3の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0078】
図8図8Aは、示されるように、タンパク質101、131、132及び133、並びに対照についてのTGFβ1の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0079】
図8Bは、示されるように、タンパク質101、131、132及び133、並びに対照についてのTGFβ3の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0080】
図9図9Aは、示されるように、タンパク質96、134、及び135、並びに対照についてのTGFβ1の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0081】
図9Bは示されるように、タンパク質96、134、及び135、並びに対照についてのTGFβ3の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0082】
図10図10は、示されるように、タンパク質101及び128、並びに対照についてのTGFβ1の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0083】
図10Bは、示されるように、タンパク質101及び128、並びに対照についてのTGFβ3の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【0084】
図11図11は、示されるように、タンパク質61、96及び101、並びに対照についてのTGFβ2の阻害についてのA549/IL-11細胞ベースのアッセイにおける代表的な結果を示す。表は、Graphpad Prismにおいて計算された計算IC50値を列挙する。エラーバーは、標準誤差(SEM)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明の技術は、以下により詳細に説明される。この説明は、技術が実施され得る全ての様々な方法、又は本発明の技術に追加され得る全ての機能の詳細な一覧であることは意図されない。例えば、一実施形態に関して示される特徴が、他の実施形態に組み込まれてもよく、特定の実施形態に関して示される特徴が、その実施形態から削除され得る。さらに、本明細書において示唆される様々な実施形態に対する多くの変形及び追加は、本開示を考慮して当業者に明らかであり、この変形及び追加は、本発明の技術から逸脱しない。したがって、以下の説明は、技術のある特定の実施形態を例示することが意図され、その全ての置き換え、組合せ及び変形を網羅的に記載することは意図されていない。
【0086】
定義
本明細書において使用される用語の明確で一貫した理解を提供するために、いくつかの定義が、以下に提供される。さらに、特に定義されない限り、本明細書において使用される際の全ての専門用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0087】
特許請求の範囲及び/又は本明細書において「含む」という用語とともに使用される場合の「a」及び「an」及び「the」という用語の使用は、「1つ」を意味し得るが、それは、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。同様に、「別の」という用語は、少なくとも第2の又はそれ以上を意味し得る。これらの用語は、本明細書に特に示されない限り又は文脈上、明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈されるべきである。
【0088】
本明細書において使用される際、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(並びに「含む(include)」及び「含む(includes)」などの含む(including)の任意の形態)又は「含有する(containing)」(並びに「含有する(contain)」及び「含有する(contains)」などの含有する(containing)の任意の形態)という用語は、包含的であり、又はオープンエンドであり、さらなる、記載されていない要素又はプロセス工程を除外しない。「からなる(consisting of)」という用語は、クローズエンドであるものと解釈されるべきである。
【0089】
「約」という用語は、値又は量が、実際の所与の値及びさらに当業者によって合理的に推測され得るこのような所与の値の近似値(このような所与の値の、実験条件及び/又は測定条件による当量及び近似値を含む)を指すことを示すのに使用される。例えば、所与の値又は範囲に関して「約」という用語は、所与の値又は範囲の20%以内、好ましくは、15%以内、より好ましくは、10%以内、より好ましくは、9%以内、より好ましくは、8%以内、より好ましくは、7%以内、より好ましくは、6%以内、より好ましくは、5%以内である値又は範囲を指す。
【0090】
本明細書において使用される場合の「及び/又は」という表現は、他の特徴若しくは成分を伴うか又は伴わない、規定の特徴若しくは成分のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば「A及び/又はB」は、それぞれが本明細書において個々に記載されているかのように(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びBのそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。特に記載されない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される際、「又は」という用語は、包括的であるものと理解され、「又は」及び「及び」の両方を包含する。例えば、「A又はBを含む組成物」の一実施形態は、典型的に、A及びBの両方を含む組成物を用いた一態様を示すであろう。しかしながら、「又は」は、矛盾なく組み合わせることができない、示される態様を除外するものと解釈されるべきである(例えば、9~10又は7~8である組成物pH)。
【0091】
「1~20」などの用語が、1及び20内に含まれる及びそれを含む任意の個々の値を含むことが、本明細書において理解されるべきである。したがって、「1~20」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び/又は20を含むことが、本明細書において理解されるべきである。「1~20」などの用語が、1~20内に含まれる及びそれを含む個々の部分範囲も含む。したがって、「1~20」という用語は、「1~9」、「2~9」、「3~5」、5~9」、「5~20」、「8~20」などの部分範囲も含む。同じことが、「1~19」、「1~18」、「1~10」、「1~9」、「5~15」などの同様の表現に適用されるが、それらに限定されない。
【0092】
「約15~約35」などの用語が、15及び35内に含まれる及びそれを含むことが、本明細書において理解されるべきである。したがって、「約15~約35」などの用語は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34及び/又は35などの、15~35の及び15~35を含む任意の数を含む。「約15~約35」などの用語が、15~35、「約16~約34」、「約16~約24」、約24~約34」など内に含まれる及びそれを含む任意の個々の部分範囲も含む。アミノ酸の数に関して「約」という用語は、規定の数のアミノ酸が、具体的に包含され、アミノ酸残基の数の+/-2の変動を許容することを意味する。したがって、「約15~約35」などの用語は、「13~37」、「13~35」、「17~37」、17~35」なども含む。同じことが、「約16~約34」、「約16~約24」、約24~約34」などの同様の表現に適用されるが、それらに限定されない。
【0093】
「少なくとも80%同一である」などの用語が、80%~100%内に含まれる及びそれを含み、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%及び100%を含む任意の個々の値を含むことが、本明細書において理解されるべきである。「少なくとも80%同一である」という用語は、80%~100%内に含まれる及びそれを含む任意の個々の部分範囲、例えば、「85%~99%」、「97%~100%」、「90%~100%」なども含む。同じことが、「少なくとも70%同一である」、「少なくとも90%同一である」というなどの表現などの、同様の表現に適用されるが、それらに限定されない。
【0094】
本明細書において使用される際、「阻害効力(inhibition potency)」という用語は、限定はされないが、タンパク質受容体とそのリガンドとの間の結合、又はそのリガンドによる細胞受容体の活性化などの特定の生物学的又は生化学的機能を阻害する際の物質の有効性を指す。ある実施形態において、阻害の効力は、特定のリガンド又は基質に対する阻害剤のIC50を測定することによって決定される。その場合、様々な阻害剤及び/又はリガンドに対する相対阻害効力は、IC50値を比較することによって評価され得る。例えば、3:1の相対阻害効力は、IC50値の比率が3:1であることを意味する。「阻害効力(inhibition potency)」、「阻害効力(inhibitory potency)」、「阻害の効力」及び「中和効力」という用語は、本明細書において同義的に使用される。
【0095】
本明細書において使用される際、「IC50」という用語は、半数阻害濃度(すなわち、インビトロでの50%阻害に必要とされる物質の濃度)を指す。それは、特定の生物学的又は生化学的機能を阻害する際の物質の効力又は有効性の尺度である。IC50値は、典型的に、モル濃度として表される。阻害剤のIC50は、用量反応曲線を構築し、該当する特定の生物学的又は生化学的機能に対する様々な濃度の阻害剤の効果を調べることによって決定され得る。
【0096】
本明細書において使用される際、「結合力(avidity)」という用語は、タンパク質受容体とそのリガンドとの間の結合相互作用の全体的な強度を指す。結合力は、一般に、例えばタンパク質受容体とそのリガンドとの間の複数の個々の非共有結合相互作用の蓄積された強度を指し、単一の結合相互作用の強度を表す「親和性(affinity)」と異なる。結合力は、多くの要因(局所濃度又は近接性、多量体化、3D構造又は立体構造など)が生体分子相互作用に影響を与え得るため、その構成要素の親和性の単なる合計であることはほとんどないことが理解されるべきである。
【0097】
本明細書において使用される際、「機能的に同等」という用語は、それが由来する元の配列と同じか又は実質的に同じ生物学的活性又は機能を有する、例えば、元の配列と比較して生理学的、化学的、物理化学的又は機能的特性の有意な変化を有さない変異配列を指す。「実質的に同一」という用語は、元の又は参照配列と機能的に同等であり、それに対する高度の配列同一性を有する配列を指す。一般に、実質的に同一の配列は、元の又は参照配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一であり、同じ機能を有する。核酸配列を言及する際のある場合には、実質的に同一の配列は、高いストリンジェンシー条件下で、例えば、ハイブリダイゼーション及び洗浄の両方のための0.5×SSC~約5×SSC及び65℃と実質的に同等の塩及び温度条件で、元の配列にハイブリダイズする。一般に、本開示にしたがって提供される配列と実質的に同一又は機能的に同等である変異配列が、包含されることが意図される。
【0098】
本明細書において使用される際、「多量体化ドメイン」という用語は、ポリペプチド鎖が多量体へと組み立てられるのを可能にするアミノ酸配列を指す。「多量体」という用語は、複数のモノマーから作製される分子を指す。「多量体」という用語は、限定はされないが、二量体、三量体、4量体、5量体、6量体、8量体、10量体などを包含する。
【0099】
「二量体(dimeric)」という用語は、TGFβ結合剤における本明細書に記載される2つのポリペプチドの存在を指す。「ホモ二量体(homodimeric)」は、2つのポリペプチドが同じ配列を有することを意味する一方、「ヘテロ二量体」は、2つのポリペプチドが異なる配列を有することを意味する。
【0100】
「ダブレット」という用語は、ポリペプチド中で並んで一緒に連結されたTGFβRリガンド結合ドメイン(LBD)の2つの複製の存在を指す。
【0101】
「4価」という用語は、TGFβ結合剤におけるTGFβRリガンド結合ドメイン(LBD)の4つの複製の存在を指す。
【0102】
ポリペプチド及びTGFβ結合剤
TGFβ結合領域及び多量体化ドメインを含む新規なポリペプチド構築物、並びに多量体化ドメインを介して組み立てられた2つのこのようなポリペプチド構築物を含むTGFβ結合剤が、本明細書において提供される。TGFβ結合領域は、第1のリンカーによって並んで連結された2つのTGFβRII-LBDを含み、それは、第2のリンカーによって多量体化ドメインに連結される。本開示のポリペプチド構築物及びTGFβ結合剤は、TGFβとのそれらの結合を改善することによって最適化される。具体的には、リンカーは、TGFβ2の望ましくない阻害を増加させずに、及び全体的な効力を著しく減少させずに(例えば、IC50がピコモル範囲内のままである)、TGFβ3:TGFβ1 IC50比が約2.5:1以下である(両方のアイソフォームに対して同様の阻害効力を示す)ようにTGFβアイソフォーム特異性を最適化するように選択される。
【0103】
例示的な実施形態において、本開示のポリペプチド構築物及びTGFβ結合剤は、抗体のFc領域を介して又は定常CH2ドメイン、定常CH3ドメインを介して及び/又はCH2及びCH3の組合せを介して結合される2つのポリペプチド鎖を含む。抗体の定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4抗体に由来するか、又はそれと実質的に同一であり得る。両方のポリペプチド鎖の結合は、一般に、例えば哺乳類細胞内で、タンパク質の発現及び分泌に起こる。ある例示的な実施形態において、TGFβ結合剤は、ホモ二量体、すなわち、配列番号81~103及び105のいずれか1つに記載される配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を有するポリペプチド構築物の二量体を含み得る。他の実施形態において、TGFβ結合剤は、ヘテロ二量体、すなわち、2つの異なるポリペプチド構築物の二量体を含み、ポリペプチド構築物の少なくとも1つが、配列番号81~103及び105のいずれか1つに記載される配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を有する。
【0104】
一般に、ポリペプチド構築物及びTGFβ結合剤は、多量体化ドメインが、TGFβ結合領域のそのN末端からC末端に連結されるように組織化され、各ポリペプチドについて、構築物の配向が、N末端からC末端に、(N末端領域)-(第1のTGFβR-LBD)-(第1のリンカー)-(第2のTGFβR-LBD)-(第2のリンカー)-多量体化ドメインの一本鎖であるようになっている。
【0105】
例示的な実施形態において、多量体化ドメインは、例えば、システイン残基間のジスルフィド結合によって、共有結合的方法での2つ以上のポリペプチド鎖の組み立てを可能にする。或いは、多量体化ドメインは、ポリペプチド鎖が、例えば及び限定はされないが、コイル状コイル構造によるなどの非共有結合的方法で組み立てられるのを可能にし得る(De Crescenzo,G.et al.,2004)。
【0106】
一実施形態において、多量体化ドメインは、二量体化ドメインであり、すなわち、二量体を形成する2つのポリペプチド鎖の組み立てを可能にする。本開示によれば、このような二量体は、一般に、2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、一緒に連結された及び本明細書に記載される二量体化ドメインに連結された2つのTGFβR-LBDを含み、それによって、4価TGFβ結合剤を形成する。本明細書において提供されるポリペプチド構築物のホモ二量体及びヘテロ二量体が包含される。
【0107】
ある実施形態において、ポリペプチドの多量体化又は二量体化ドメインは、例えば、CH2及び/又はCH3ドメインを含む、免疫グロブリン重鎖の定常領域を含む。免疫グロブリンのFc部分が、典型的に使用される。しかしながら、コイル状コイル構造も、二量体化に好適であることが分かっている。Fc部分の例示的な実施形態としては、例えば及び限定はされないが、特定のFc受容体と相互作用する能力を喪失したものが挙げられる。さらなる実施形態において、多量体化ドメインは、IgG様二量体化ドメイン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4二量体化ドメインを含み得る。ある実施形態において、多量体化ドメインは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体活性化(補体依存性細胞傷害、CDC)、又はオプソニン化などの1つ以上のエフェクター機能を提供し得る。
【0108】
ある実施形態において、多量体化又は二量体化ドメインは、ヒト由来のものである抗体重鎖からのCH2、CH3、又はCH2及びCH3を含む。例えば、限定的であることを望むものではないが、抗体重鎖は、ヒトlgG1、lgG2、IgG3、又はIgG4からなる群から選択され得る。実施形態において、構築物における定常ドメインは、CH2自体、又はCH3自体、又はCH2-CH3である。抗体重鎖構成要素は、典型的に、同じか又は異なる一本鎖ポリペプチド構築物間のジスルフィド架橋を提供する。一実施形態において、多量体化ドメインは、一本鎖ポリペプチド構築物間の少なくとも1つのジスルフィド結合を提供する。別の実施形態において、多量体化ドメインは、一本鎖ポリペプチド構築物間の少なくとも2つのジスルフィド結合を提供する。ある場合には、抗体重鎖はまた、二量体ポリペプチド、例えば、宿主細胞内における産生後に、プロテインAベースの単離を提供する。
【0109】
したがって、ある実施形態において、多量体化又は二量体化ドメインは、本発明のポリペプチド構築物の2つの間の架橋を提供する抗体定常ドメインである。これは、例えば、発現されたポリペプチド構築物が、それらの発現宿主から分泌されるときに達成される。したがって、一本鎖ポリペプチドの産生は、2つのポリペプチド鎖が、ポリペプチドのそれぞれの中に存在する抗体定常ドメインのそれぞれの中の1つ以上のシステイン残基を含むジスルフィド架橋を介して架橋された二量体形態の構築物を提供し得る。ある実施形態において、多量体化ドメイン(例えば、定常領域)は、多量体(例えば、二量体)がそれを介して形成され得る構造として働く以外の、特定の活性を有さない。このような最小の定常領域はまた、対応するヒンジ領域を組み込み、任意に、システイン残基組成を変化させることによって、いくらかの利益を提供するように改変され得る。例えば、2つのFcフラグメントを架橋するのに関与するか又は完全中抗体の重鎖及び軽鎖の間の架橋に天然に使用されるシステイン残基のいくつか又は全ては、置換又は欠失され得る。システイン残基の数を最小限に抑えることの1つの利点は、凝集を促進するジスルフィド結合スクランブリングの傾向を低下させることである。Fc二量体の安定性が分子間ジスルフィド架橋の数に依存し得ることに留意しながら、天然のヒンジ間ジスルフィド結合の全てが、Fc二量体化が起こるために形成される必要があるわけではないことが留意されるべきである。
【0110】
本明細書において使用される際、「抗体」及び「免疫グロブリン(Ig)」という用語は、対合された重及び軽ポリペプチド鎖から構築されたタンパク質を指すために同義的に使用される。抗体及びドメインのそれぞれの構造は、十分に確立されており、当業者に周知であり、本明細書において簡単に要約されるに過ぎない。抗体が適切に折り畳まれる場合、各鎖は、より線状のポリペプチド配列によって結合された、いくつかの異なる球状ドメインへと折り畳まれる。特に、Ig軽鎖は、可変(VL)及び定常(CL)ドメインへと折り畳まれる一方、重鎖は、可変(VH)及び3つの定常(CH1、CH2、CH3)ドメインと折り畳まれる。対合されると、重鎖及び軽鎖可変ドメイン(VH及びVL)並びに第1の定常ドメイン(CL及びCH1)の相互作用が、結合領域(Fv)を含有するFab(抗原結合フラグメント)の形成をもたらし;2つの重鎖の相互作用が、CH2及びCH3ドメインの対合をもたらし、Fc(結晶化可能フラグメント)の形成をもたらす。CH2及びCH3ドメインについて本明細書に記載される特性は、Fcにも適用される。
【0111】
本開示の特定の実施形態及び態様において、多量体化又は二量体化ドメインは、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4定常領域又はCH2及び/若しくはCH3ドメインとの少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%の配列同一性を有し得る。IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4は、ヒトに由来し得る。特定の実施形態において、本明細書に記載されるTGFβ結合剤は、IgG1の二量体化ドメインを有するものを含む。別のいくつかの実施形態において、本明細書に記載されるTGFβ結合剤は、IgG4の二量体化ドメインを有するものを含む。
【0112】
多量体化又は二量体化ドメインは、凝集を減少させるか、又は本明細書に開示される2つ以上のポリペプチドの組み立てによって形成されたTGFβ結合剤の安定性を調節するように操作され得る。したがって、例えば、ヒンジ領域における突然変異を有するFc部分が、本開示によって包含される。Fc変異体及び修飾ヒンジ領域の例示的な実施形態が、例えば、国際公開第2018/158727号パンフレット及び国際公開第2017/037634号パンフレットの番号で公開された特許出願において提供される。多量体化又は二量体化ドメインのヒンジ部分が言及される場合、ヒンジは、多量体化ドメインの部分であり、第2のリンカーの部分であると見なされないことが理解されるべきである。
【0113】
例示的な実施形態において、多量体化又は二量体化ドメインは、配列番号49~80に記載される配列、若しくはその機能的に同等の変異体、又はそれと少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%同一である配列を有する。特定の実施形態において、多量体化ドメインは、配列番号49又はそれと少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%同一である配列を含み得る。別の実施形態において、多量体化ドメインは、配列番号50又はそれと少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%同一である配列を含み得る。
【0114】
本開示によれば、TGFβ結合剤の第1の多量体化又は二量体化ドメイン及び第2の多量体化又は二量体化ドメインは、特定の実施形態において同じか又は実質的に同じアミノ酸配列を有し得る。或いは、ある実施形態において、多量体化又は二量体化ドメインは、多量体化に悪影響がない限り、異なっていてもよい。
【0115】
多量体化ドメインは、特に限定されることは意図されていないことが理解されるべきである。所望の機能及びアイソフォーム特異性が維持される限り、本開示に係る4価TGFβ結合剤を形成するポリペプチド鎖の結合を可能にするいずれのアミノ酸配列も使用され得る。
【0116】
本開示によれば、ポリペプチド構築物及びTGFβ結合剤におけるリンカーは、本明細書に開示されるような、IDRリンカー、IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー、切断リンカー変異体又は伸長リンカーを含むか又はそれからなり得る。
【0117】
ヒトTGFβRII細胞外ドメイン(TGFβRII-ECD;配列番号1)は、2つの本質的に無秩序な領域によって隣接される102アミノ酸構造化リガンド結合ドメイン(配列番号2;本明細書において「TGFβR-LBD」とも呼ばれる):N末端における24アミノ酸の領域(配列番号3)及びC末端における10アミノ酸の領域(配列番号4)を含む。
【0118】
本明細書において使用される際、「本質的に無秩序な領域(IDR)リンカー」という用語は、TGFβRII細胞外ドメインの構造化されたリガンド結合ドメインに隣接する本質的に無秩序な領域(IDR)の一方又は両方の少なくとも一部を含むか又はそれからなるリンカーを指す。IDRリンカーは、一般に、TGFβRII細胞外ドメインの本質的に無秩序な領域の少なくとも1つの配列との実質的な配列同一性を有し、それは、TGFβRII細胞外ドメイン又はその部分のN-及びC末端IDRの両方との実質的な配列同一性を有し得る。IDRリンカーが、TGFβRの全IDR若しくはその一部のみ、又は一緒に連結された複数の部分を含み得ることが理解されるべきである。
【0119】
ある実施形態において、IDRリンカーは、ヒトTGFβRII-ECD(配列番号1)のIDR(配列番号3及び4)の一方又は両方の部分を含むか又はそれからなる。TGFβRの2つのIDRのそれぞれの部分が含まれる実施形態において、部分は、直接又は介在するリンカー配列を介して一緒に連結され得る。IDRの部分は、全IDR配列又はその変異体(例えば、置換、切断)を含み得る。
【0120】
一実施形態において、IDRリンカーは、一緒に直接連結された各IDRの部分を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態において、C末端IDR又はその部分は、N末端IDR又はその部分のN末端に直接連結される。このような実施形態の非限定的な例としては、例えば、配列番号8~16、19、22、23、及び26に記載されるアミノ酸配列を有するリンカーが挙げられる。
【0121】
一実施形態において、IDRリンカーは、配列番号4に記載される配列を含むか又はそれからなる。
【0122】
一実施形態において、IDRリンカーは、配列番号7に記載される配列からなっていない。このような実施形態において、配列番号7に記載される配列を含むポリペプチド及びTGFβ結合剤は、本発明から除外される。ある実施形態において、所望のアイソフォーム特異性(例えば、所望のTGFβ3:TGFβ1 IC50比)を提供しないIDRリンカーは、このような配列を含むポリペプチド及びTGFβ結合剤と同様に、本発明から除外される。
【0123】
IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー、切断リンカー変異体及び伸長リンカーは、本明細書に開示されるIDRリンカーの配列に由来する。
【0124】
本明細書において使用される際、「非IDRリンカー」という用語は、TGFβRII細胞外ドメインの構造化されたリガンド結合ドメインに隣接する本質的に無秩序な領域(IDR)との実質的な相同性又は同一性を共有しないリンカーを意味する。本明細書に記載される態様及び実施形態において、非IDRリンカーは、例えば、限定はされないが、グリシン及びグリシン-セリン(GS)リンカーを含むフレキシブルリンカーであり得る。融合構築物を産生する場合、構築物の様々な領域間にGGGGS又は[G4S]n(ここで、nは、1、2、3、4又は5又はそれ以上、例えば、10、25又は50である)などの人工的な高度にフレキシブルなグリシン又はグリシン-セリンリンカーを導入することは一般的な方法である。しかしながら、このような人工的なリンカーはまた、望ましくない免疫原性及びそれらの追加される分子量の可能性のため、不都合であり得る。エントロピー因子も、グリシン及びGSリンカーの潜在的な不利益であり、グリシン及びGSリンカーは、高度にフレキシブルであり、標的結合時に部分的に制限されることになり、結合に不利なエントロピーの損失を生じ得る。したがって、ある実施形態において、本開示のポリペプチド及びTGFβ結合剤は、非IDRリンカーを含まないか、又は非IDRリンカーに加えて少なくとも1つのIDRリンカー若しくはIDRリンカー変異体を含む。本開示に係る非IDRリンカーの非限定的な例としては、配列番号17、20、21及び24が挙げられる。
【0125】
ある実施形態において、リンカーは、IDR及びGSリンカーの混合物、例えば、配列番号18及び25記載されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。このようなリンカーは、本明細書においてハイブリッドリンカーと呼ばれる。ある実施形態において、配列番号4、8~16、19、22、23、及び26のいずれか1つにおける3~7又は3~14個のアミノ酸残基が、グリシン及び/又はセリン残基(グリシン又GSリンカー)を含むアミノ酸配列で置換されたリンカーが提供される。これらのリンカーは、本明細書においてハイブリッドリンカーと呼ばれる。ハイブリッドリンカー変異体も包含され;これらは、1つ以上の挿入、欠失、又はアミノ酸置換、任意に、保存的アミノ酸置換を含むハイブリッドリンカーの機能的に同等の変異体である。変異体が、以下にさらに説明される。
【0126】
ハイブリッドリンカー及びハイブリッドリンカー変異体の例示的な実施形態において、IDRリンカー又はIDRリンカー変異体の少なくとも3つの連続したアミノ酸が、グリシン及び/又はセリン残基で置換される。ハイブリッドリンカー又はハイブリッドリンカー変異体のさらなる例示的な実施形態において、IDRリンカー又はIDRリンカー変異体の少なくとも7つの連続したアミノ酸が、グリシン及び/又はセリン残基で置換される。ハイブリッドリンカー又はハイブリッドリンカー変異体のさらに他の例示的な実施形態において、IDRリンカー又はIDRリンカー変異体の2組の3~7つの連続したアミノ酸が、グリシン及び/又はセリン残基で置換される。2組の3~7つの連続したアミノ酸が、リンカー配列内で間隔を空けて配置されてもよく、又は連続していてもよい。
【0127】
ハイブリッドリンカー及びハイブリッドリンカー変異体において使用するためのグリシン及びGS配列の例としては、限定はされないが、GSG、並びに配列番号17、18、20、21、24、及び25のいずれか1つが挙げられる。
【0128】
ある実施形態において、リンカーは、切断リンカー又は切断リンカー変異体である。このようなリンカーは、本明細書において提供されるIDRリンカーのN末端又はC末端のいずれか又は両方における、例えば、1~約20の連続したアミノ酸(並びに1及び約20内に含まれる任意の範囲、例えば、1~約10、1~約5など)の切断(欠失)を有する。例示的な実施形態において、アミノ酸切断は、配列番号3又は8~26のいずれか1つのN末端にあり得る。例示的な実施形態において、切断は、N末端における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20残基の除去をもたらし得る。別の例示的な実施形態において、切断は、配列番号4及び8~26のいずれか1つのC末端にあり得る。例示的な実施形態において、切断は、C末端における1、2、3、4、5、6、7、8、又は9残基の除去をもたらし得る。別の実施形態において、切断は、C末端における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20残基の除去をもたらし得る。
【0129】
別の実施形態において、切断は、内部の欠失、例えば、配列番号7のアミノ酸番号10又は11から開始する欠失であり得る。一実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20残基が、アミノ酸番号10及び/又は11を含め、配列番号7から欠失される。他の実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20残基が、配列番号4及び8~26のいずれか1つから内部で欠失される。
【0130】
例示的な実施形態において、アミノ酸切断は、配列番号7~26のいずれか1つのアミノ酸残基番号11~20によって画定される領域を包含する1~10アミノ酸の除去をもたらし得る。
【0131】
切断リンカーの他の例示的及び非限定的な実施形態が、配列番号8~16、18、19、22、23、及び26において提供される。
【0132】
本開示は、切断リンカー変異体をさらに提供する。このような切断リンカー変異体は、本明細書に開示される切断リンカーと比較して、アミノ酸置換(保存的又は非保存的)を含み得る。
【0133】
ある実施形態において、第1のリンカーは、(a)配列番号3、配列番号7、配列番号12若しくは配列番号8と比較した、少なくとも1つのN末端アミノ酸残基の欠失;(b)配列番号3、配列番号7、配列番号12若しくは配列番号8と比較した、少なくとも1つのC末端アミノ酸残基の欠失;(c)配列番号3、配列番号7、配列番号12若しくは配列番号8と比較した、少なくとも1つの内部アミノ酸残基の欠失;又は(d)配列番号3、配列番号7、配列番号12、配列番号8と比較した、アミノ酸配列における1つ以上の置換を有するか、或いは(a)~(c)のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。その一実施形態において、アミノ酸欠失は、配列番号3の16アミノ酸の欠失である。
【0134】
ある実施形態において、第2のリンカーは、(a)配列番号7若しくは配列番号9若しくは配列番号11と比較した、少なくとも1つのN末端アミノ酸残基の欠失;(b)配列番号7若しくは配列番号9若しくは配列番号11と比較した、少なくとも1つのC末端アミノ酸残基の欠失;(c)配列番号7若しくは配列番号9若しくは配列番号11と比較した、少なくとも1つの内部アミノ酸残基の欠失;又は(d)配列番号4、7、9又は11と比較した、アミノ酸配列における1つ以上の置換を有するか、或いは(a)~(c)のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0135】
ある実施形態において、リンカーは、伸長リンカーである。このようなリンカーは、本明細書に開示されるような、IDRリンカー、IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー、又は切断リンカー変異体のいずれかのN末端又はC末端のいずれか又は両方における1~10アミノ酸(並びに1及び10内に含まれる任意の範囲、例えば、1~7、1~5、1~3、1、2、3など)の付加(伸長)を有する。これらのさらなるアミノ酸はそれぞれ、独立して、任意のアミノ酸残基から選択され得る。
【0136】
例示的な実施形態において、本明細書に開示されるリンカーは、それらのN末端に1~5つのさらなるアミノ酸残基を含み得る。別の例示的な実施形態において、本明細書に開示されるリンカーは、それらのC末端に1~5つのさらなるアミノ酸残基を含み得る。さらなる例示的な実施形態において、本明細書に開示されるリンカーは、それらのN末端及びC末端の両方に1~5つのさらなるアミノ酸残基を含み得る。このようなさらなるアミノ酸残基は、任意のアミノ酸残基から選択され得、同じか又は異なっていてもよい。伸長リンカーの他の例示的及び非限定的な実施形態は、配列番号4及び8~26のいずれか1つのN末端又はC末端のいずれか又は両方における1~10アミノ酸(並びに1及び10内に含まれる任意の範囲、例えば、1~7、1~5、1~3、1、2、3など)の付加を包含する。付加された配列は、任意のアミノ酸残基を含み得る。
【0137】
伸長リンカーの例示的な実施形態は、そのN末端又はC末端のいずれか又は両方に非IDRリンカー部分を含むものも含む。例えば、IDRリンカー、IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー又は切断リンカー変異体は、そのN末端及びC末端のいずれか又は両方において少なくとも1つの非IDRリンカーによって隣接され得る。或いは、非IDRリンカーは、そのN末端及びC末端のいずれか又は両方において少なくともIDRリンカー、IDRリンカー変異体、ハイブリッドリンカー、ハイブリッドリンカー変異体、切断リンカー又は切断リンカー変異体によって隣接され得る。
【0138】
本開示のポリペプチド構築物及びTGFβ結合剤のある実施形態において、N末端領域は、TGFβRII-ECD(配列番号1)におけるN末端IDR(配列番号3)、又は限定はされないが、その切断又は置換変異体などのそれと実質的に同一である配列を含むか又はそれからなる。所望の阻害効力及び特異性に悪影響がない限り、N末端領域は、切断及び/又は置換され、及び他の形で修飾され得ることが理解されるべきである。
【0139】
本開示はまた、本明細書に記載されるポリペプチド及びTGFβ結合剤の変異体を包含する。本開示によって包含される変異体は、ポリペプチド又はTGFβ結合剤の要素(第1及び第2のTGFβ受容体リガンド結合ドメイン(TGFβR-LBD)、第1のリンカー、第2のリンカー、N末端領域、多量体化ドメインなど)のいずれか1つのアミノ酸配列の変化を有するものを含む。ポリペプチド又はTGFβ結合剤の変異体は、例えば、本明細書に開示されるポリペプチド及びTGFβ結合剤と比較した、同様の又は改善された結合親和性、結合力、アイソフォーム特異性、阻害の効力、安定性、製造可能性、及び/又は減少した凝集を有するものを含む。
【0140】
置換突然変異誘発の対象となる部位は、ポリペプチド又はTGFβ結合剤の多量体化ドメインを含む。本開示のポリペプチド又はTGFβ結合剤変異体の例示的な実施形態は、修飾IgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4定常領域又はその部分を有するものを含み得る。IgG1定常領域(修飾又は非修飾)を含み得るTGFβ結合剤が、ここで包含される。IgG4定常領域(修飾又は非修飾)を含み得るTGFβ結合剤も、ここで包含される。
【0141】
本開示によって包含される変異体は、挿入、欠失又はアミノ酸置換(保存的又は非保存的)を含み得るものを含む。これらの変異体は、除去されたそのアミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基及びその元の位置に挿入された異なる残基を有し得る。
【0142】
一般に、保存的アミノ酸置換は、同様の化学特性(例えば、サイズ、電荷、又は極性)を有する別のアミノ酸残基の代わりのアミノ酸残基の置換である。保存的置換は、同じ基の別のアミノ酸の代わりに以下に列挙されるグループ(グループ1~6)の1つからのアミノ酸を交換することによって作製され得る。
【0143】
保存的置換の他の例示的な実施形態が、「好ましい置換」の見出しで表1に示される。このような置換が、望ましくない特性をもたらす場合、表1中で「例示的な置換」と表示されるか、又はアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載されるより実質的な変化が、導入され得、生成物がスクリーニングされ得る。
【0144】
変異体が、置換突然変異誘発によって生成され、本開示のポリペプチドの生物学的活性(すなわち、機能的同等性)を保持し得ることが当該技術分野において公知である。これらの変異体は、除去されたアミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基及びその元の位置に挿入された異なる残基中に、例えば、1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する。「保存的置換」として同定される置換の例が、表1に示される。このような置換が、望ましくない変化をもたらす場合、表1中で「例示的な置換」と表示されるか、又はアミノ酸クラスを参照して本明細書にさらに記載される他のタイプの置換が、導入され、生成物がスクリーニングされる。
【0145】
アミノ酸残基は、一般的な側鎖特性に基づいて、以下のようにグループに分けられ得る:
(グループ1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile);
(グループ2)中性親水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln);
(グループ3)酸性:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu);
(グループ4)塩基性:ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg);
(グループ5)鎖配向に影響を与える残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro);及び
(グループ6)芳香族:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)。
【0146】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のメンバーの代わりに交換することを伴う。
【表1】
【0147】
一般に、可変鎖間の類似性及び同一性の程度は、デフォルト設定、すなわち、blastpプログラム、BLOSUM62マトリックス(オープンギャップ11及び伸長ギャップペナルティ1;gapx dropoff 50、エクスペクト10.0、ワードサイズ3)及び活性化フィルタを用いて、Blast2配列プログラム(Tatusova,T.A.and Madden,T.L.,1999)を用いて、本明細書において決定される。
【0148】
しかしながら、同一性のレベルはまた、所与の配列の全長にわたって決定され得る。したがって、パーセント同一性は、元のペプチドと比較して同一であり、同じか又は同様の位置を占有し得るアミノ酸を示すであろう。パーセント類似性は、同じか又は同様の位置において元のペプチドと比較して、同一であるアミノ酸、及び保存的アミノ酸置換で置換されるものを示すであろう。
【0149】
したがって、ある実施形態において、本開示の変異体は、元の配列又は元の配列の部分と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0150】
ある実施形態において、アミノ酸配列の変化は、ポリペプチド又はTGFβ結合剤のTGFβ受容体リガンド結合ドメイン(TGFβR-LBD)において起こる。他の実施形態において、変化は、TGFβ結合剤のTGFβ受容体リガンド結合ドメイン(TGFβR-LBD)の外部で起こり得る。本開示によって包含される変異体は、TGFβ受容体(ヒト、動物などにおけるものを含む)の細胞外ドメイン(ECD)に見られる構造化されたリガンド結合ドメインと同一又は実質的に同一であるTGFβR-LBDを有し得る。さらなる実施形態において、アミノ酸配列の変化は、多量体化ドメインにおいて起こる。さらに他の実施形態において、アミノ酸配列の変化は、第1の及び/又は第2のリンカーにおいて起こる。所望の機能が維持される限り、変化は、ポリペプチド又はTGFβ結合剤の複数の領域において起こり得ることが理解されるべきである。
【0151】
ある実施形態において、本開示のポリペプチド又はTGFβ結合剤は、例えば、標的化剤、治療用部分(治療目的のために)又は検出可能部分(すなわち、検出又は診断目的のために)とコンジュゲートされ得る。
【0152】
例示的な実施形態において、本開示のポリペプチド又はTGFβ結合剤は、例えば及び限定はされないが、化学療法薬、サイトカイン、細胞毒性薬、抗線維化薬、抗癌剤(例えば、小分子)、一本鎖抗体などの治療用部分とコンジュゲートされる。
【0153】
別の例示的な実施形態において、本開示のポリペプチド又はTGFβ結合剤は、例えば及び限定はされないが、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的及び/又は他の物理的手段によって検出可能な部分を含む検出可能部分とコンジュゲートされる。検出可能部分は、当該技術分野において周知の方法を用いて、直接又は間接的に(例えば、限定はされないが、DOTA又はNHS結合などの結合を介して)TGFβ結合剤に結合され得る。多種多様な検出可能部分が、使用され得、選択は、必要とされる感受性、コンジュゲートしやすさ、安定性要件及び利用可能な機器に応じて行われる。好適な検出可能部分は、限定はされないが、蛍光標識、放射性標識(例えば、限定はされないが、125I、In111、Tc99、I131及びPETスキャナーなどのためのポジトロン放出同位体を含む)、核磁気共鳴活性標識、発光標識、化学発光標識、発色団標識、酵素標識(例えば及び限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、量子ドット及び/又はナノ粒子を含み得る。検出可能部分は、検出可能シグナルを生じるか、及び/又は生成し、それによって、検出可能部分からのシグナルが検出されるのを可能にし得る。
【0154】
治療用部分は、例えば及び限定はされないが、イットリウム-90、スカンジウム-47、レニウム-186、ヨウ素-131、ヨウ素-125、及び当業者によって認識される多くの他のもの(例えば、ルテチウム(例えば、Lu177)、ビスマス(例えば、Bi213)、銅(例えば、Cu67))、5-フルオロウラシル、アドリアマイシン、イリノテカン、タキサン、シュードモナス菌(pseudomonas)エンドトキシン、リシン、アウリスタチン(例えば、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF)、マイタンシノイド(例えば、メルタンシン)、及び他の毒素を含み得る。
【0155】
別の実施形態において、治療用部分は、TGFβ関連疾患又は病態のための別の治療薬を含み得る。例えば及び限定はされないが、1つ以上のポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤が、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を生成するために、細胞毒性薬に連結され得る。
【0156】
標的化剤は、例えば、ポリペプチド又はTGFβ結合剤を、対象の身体における所望の組織、器官又は位置に送達するためのアミノ酸配列を含み得る。例えば及び限定はされないが、標的化剤は、骨標的化のためのポリアスパラギン酸配列モチーフ、又は抗体若しくは抗原結合フラグメントを含み得る。
【0157】
他の例示的な実施形態において、標的化剤、治療用部分又は診断部分は、例えば及び限定はされないが、抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、一本鎖抗体)、TGFβファミリーの別のメンバー若しくは別の治療標的に対する親和性を有する結合剤、放射線療法剤、造影剤、蛍光部分、細胞毒性薬、細胞分裂抑制薬、ナノ粒子ベースの担体、薬物にコンジュゲートされたポリマー、ナノ担体、造影剤、安定剤、薬物、ナノ担体及び/又はデンドリマーを含み得る。
【0158】
ポリペプチド又はTGFβ結合剤の機能に悪影響がない限り、コンジュゲーションのための部位は、特に限定されないことが理解されるべきである。例えば及び限定はされないが、標的化剤、治療用部分又は検出可能部分は、ポリペプチド又はTGFβ結合剤(例えば、非IDRリンカー中の)のリンカー部分において、又はそのN末端又は多量体化ドメインなどにおける任意の他の好適な部位においてコンジュゲートされ得る。
【0159】
ポリペプチド及びTGFβ結合剤の生成
本明細書に開示されるポリペプチド又はTGFβ結合剤は、組み換えDNA方法を含む、当業者に周知の様々な方法によって作製され得る。
【0160】
ポリペプチド又はTGFβ結合剤を発現するために、本明細書に記載されるポリペプチド鎖をコードすることが可能なヌクレオチド配列が、発現ベクター、すなわち、特定の宿主における挿入されたコード配列の転写及び翻訳制御のための要素を含有するベクターに挿入され得る。これらの要素は、調節配列、例えば、エンハンサー、構成的及び誘導性プロモーター、並びに5’及び3’非翻訳領域を含み得る。当業者に周知の方法が、このような発現ベクターを構築するのに使用され得る。これらの方法は、インビトロ組み換えDNA技術、合成技術、インビボ遺伝子組み換えなどを含む。
【0161】
当業者に公知の様々な発現ベクター及び宿主細胞系は、本明細書に記載されるポリペプチド鎖を発現するのに使用され得る。これらとしては、限定はされないが、組み換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターにより形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターにより形質転換された酵母;バキュロウイルスベクターに感染した昆虫細胞系;ウイルス又は細菌発現ベクターにより形質転換された植物細胞系;及び動物細胞系が挙げられる。哺乳動物系における組み換えタンパク質の長期の産生のために、哺乳動物細胞株における安定した発現が使用され得る。例えば、本明細書に記載されるポリペプチド鎖のいずれか1つをコードすることが可能なヌクレオチド配列が、ウイルス複製起点を含有し得る発現ベクター及び/又は同じ若しくは別個のベクターにおける内因性発現要素及び選択可能な又は可視マーカー遺伝子を用いて細胞株中で形質転換され得る。本開示は、用いられるベクター又は宿主細胞によって限定されるべきではない。本明細書に開示される特定の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド鎖をコードすることが可能な核酸は、発現ベクター中にライゲートされ得る。TGFβ結合剤が異なるポリペプチド鎖から構成される(すなわち、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが同一でない)場合、このようなポリペプチド鎖のそれぞれが、別個のベクター又は同じベクター中にライゲートされ得る。本開示によれば、TGFβ結合剤のポリペプチド鎖は、単一のベクター又は別個のベクター(例えば、ベクターセット)によってコードされ得る。細胞が、所望のベクター又はベクターセットにより形質転換される。
【0162】
或いは、ポリペプチド鎖は、インビトロ転写系又は組み合わされたインビトロ転写/翻訳系のそれぞれ又は任意のこのような無細胞系から発現され得る。
【0163】
ヌクレオチド配列を含む宿主細胞は、対応するRNA(mRNAなど)の転写及び/又は細胞培養物からのポリペプチドの発現及び分泌のための条件下で培養され得る。例示的な実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド鎖をコードすることが可能なヌクレオチド配列を含有する発現ベクターが、原核又は真核細胞膜を通したポリペプチドの分泌を指向するシグナル配列を含むように設計され得る。
【0164】
遺伝子コードの固有の縮退のため、同じ、実質的に同じ又は機能的に同等のアミノ酸配列をコードするDNA配列が、生成及び使用され得る。本開示のヌクレオチド配列は、限定はされないが、遺伝子産物のクローニング、プロセシング、及び/又は発現の修飾を含む様々な目的のためのヌクレオチド配列を改変するために、当該技術分野において一般に知られている方法を用いて操作され得る。遺伝子フラグメント及び合成オリゴヌクレオチドのランダムな断片化及びPCR再組み立てによるDNAシャッフリングが、ヌクレオチド配列を操作するのに使用され得る。例えば、オリゴヌクレオチド媒介性部位特異的な突然変異誘発が、新たな制限部位を生成し、グリコシル化パターンを改変し、コドン選択を変化させ、スプライス変異を生成するなどの突然変異を導入するのに使用され得る。本明細書に記載されるポリペプチド鎖をコードするコドン最適化核酸が、本開示によって包含される。
【0165】
さらに、宿主細胞株は、所望の方法で、挿入された配列の発現を調節するか又は発現されたポリペプチドを処理するその能力のために選択され得る。特定の細胞機構及び翻訳後活性のための特徴的な機構を有する様々な宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293、及びW138)が、市販されており、米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)から入手可能であり、発現されたポリペプチドの適切な修飾及びプロセシングを確実にするように選択され得る。
【0166】
当業者はまた、核酸及びポリペプチド配列が、全体的に又は部分的に、当該技術分野において周知の化学的又は酵素的方法を用いて合成され得ることを容易に認識するであろう。例えば、ペプチド合成は、様々な固相技術を用いて行われ得、ABI 431Aペプチド合成装置(PE Biosystems)などの機械が、合成を自動化するのに使用され得る。必要に応じて、アミノ酸配列は、合成中に改変され、及び/又は他のタンパク質からの配列と組み合わされて、変異体タンパク質を生成し得る。
【0167】
医薬組成物
本明細書に開示されるポリペプチド又はTGFβ結合剤を含む医薬組成物も、本開示によって包含される。医薬組成物は、一般に、本明細書に開示されるポリペプチド又はTGFβ結合剤及び薬学的に許容される担体を含む。
【0168】
医薬組成物の調製は、当該技術分野において公知であるように行われ得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2000を参照)。例えば、治療用化合物及び/又は組成物が、1つ以上の固体又は液体医薬担体物質及び/又は添加剤(又は補助物質)と一緒に、及び、必要に応じて、治療又は予防作用を有する他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて、好適な投与形態は剤形にされ、次に、それが、ヒト又は獣医学における医薬品として使用され得る。医薬品は、添加剤も含有し得、そのうちの多くが当該技術分野において公知であり、例えば充填剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、分散剤、防腐剤、甘味料、着色剤、香味料、香料、増粘剤、希釈剤、緩衝物質、溶媒、可溶化剤、デポ効果を達成するための薬剤、浸透圧を変化させるための塩、コーティング剤又は酸化防止剤である。
【0169】
「医薬組成物」という用語は、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤、並びに、投与方法及び剤形の性質に応じて、薬学的に許容される担体、希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクル、例えば、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味料、着香剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌薬、滑沢剤及び分散剤を含む少なくとも1つの成分を含む組成物を意味する。
【0170】
「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書に記載されるか又は当該技術分野において公知であるように、任意の担体、希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを意味するのに使用される。懸濁化剤の例としては、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天及びトラガカント、又はこれらの物質の混合物が挙げられる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌及び抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にされ得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましいこともあり得る。注射用医薬品形態の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらされ得る。好適な担体、希釈剤、溶媒、又はビヒクルの非限定的な例としては、水、塩溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ゼラチン、油、アルコール、ポリオール、それらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、及び注射用有機酸エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。賦形剤の非限定的な例としては、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及びリン酸二カルシウムが挙げられる。崩壊剤の非限定的な例としては、デンプン、アルギン酸、及びいくつかの複雑なケイ酸塩が挙げられる。潤滑剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、並びに高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0171】
「薬学的に許容される」という用語は、それが、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに、対象、例えば、ヒト及び動物の細胞と接触して使用するのに好適であり、妥当なベネフィット・リスク比に見合うことを意味する。
【0172】
薬学的に許容される担体は、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延剤などを含み得る。一実施形態において、担体は、非経口投与に好適である。担体は、静脈内、腹腔内、皮下又は筋肉内投与に好適であり得る。或いは、担体は、舌下又は経口投与に好適であり得る。他の実施形態において、担体は、局所投与又は吸入による投与に好適である。薬学的に許容される担体は、滅菌注射用溶液又は分散体の即時調製のための滅菌水溶液又は分散体及び滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が、活性化合物と適合しない場合を除いて、本明細書において提供される医薬組成物におけるその使用が考えられる。補助的な活性化合物も、組成物に組み込まれ得る。例えば、本明細書において提供される医薬組成物は、以下にさらに説明されるように、少なくとも1つのさらなる治療剤をさらに含み得る。
【0173】
ある実施形態において、本明細書において提供される医薬組成物は、例えば丸薬、錠剤、ラッカー塗り錠剤、糖衣錠、顆粒、ハード及びソフトゼラチンカプセル、水溶液、アルコール溶液若しくは油性溶液、シロップ、乳剤若しくは懸濁液の形態で経口投与されるか、又は例えば坐薬の形態で直腸投与され得る。
【0174】
他の実施形態において、本明細書において提供される医薬組成物は、非経口的に、例えば皮下に、筋肉内に又は静脈内に、注射又は注入用の溶液の形態で投与され得る。他の好適な投与形態は、例えば軟膏、クリーム、チンキ剤、スプレー若しくは経皮治療システムの形態で、例えば、経皮的若しくは局所投与であるか、又は鼻腔用スプレー若しくはエアロゾル混合物の形態で吸入投与であるか、又は、例えば、マイクロカプセル、インプラント若しくはウエハーである。
【0175】
医薬組成物は、典型的に、製造及び貯蔵の条件下で滅菌及び安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合、必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアレート塩及びゼラチンを含むことによってもたらされ得る。さらに、化合物は、持続放出製剤中で、例えば、持続放出ポリマーを含む組成物中で投与され得る。化合物は、急速な放出から保護する担体とともに調製され得、例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤である。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸及びポリ乳酸、ポリグリコール酸コポリマー(PLG)などの生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。
【0176】
このような製剤の調製のための多くの方法が、一般に、当業者に知られている。滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中で、必要な量の本明細書において提供されるポリペプチド又はTGFβ結合剤などの活性化合物を、必要に応じて、上に列挙される成分の1つ又は組合せと一緒に組み込み、その後、ろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散体は、活性化合物を、塩基性分散媒及び上に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、一般的な調製方法は、予め滅菌ろ過されたその溶液から有効成分及び任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥である。化合物はまた、それらの溶解度を高める1つ以上のさらなる化合物とともに製剤化され得る。
【0177】
投与しやすさ及び投与量の均一性のために投与単位形態で組成物(非経口組成物など)を製剤化することが有利であることが多い。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の動物のための単位投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、好適な医薬担体とともに、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性材料を含有する。本発明の投与単位形態の仕様は、変化し得、(a)治療用化合物の独自の特性及び達成される特定の治療効果、並びに(b)TGFβ関連疾患又は障害の予防又は治療のためにこのような治療用化合物を配合する当該技術分野において特有の制限によって、及び直接それらに応じて決定される。投与量は、以下にさらに説明される。
【0178】
ある実施形態において、有効量の、本明細書に記載されるポリペプチド及び/又はTGFβ結合剤、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。一実施形態において、線維症の治療又は予防のための医薬組成物であって、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。別の実施形態において、癌の進行の遅延のため、癌浸潤、例えば、悪性グリア細胞(MGC)浸潤の阻害のため、癌幹細胞の成長、生存、スフェロイド形成及び/若しくは増殖の阻害のため、転移の阻害のため、癌の再発の阻害のため、及び/又は癌の化学耐性を克服するための医薬組成物であって、本明細書に記載されるポリペプチド及び/又はTGFβ結合剤、並びに薬学的に許容される担体を含む組成物が提供される。別の実施形態において、骨髄不全状態を治療又は予防するための医薬組成物が提供される。
【0179】
本明細書において使用される際、「薬学的に許容される担体」又は「医薬担体」は、当該技術分野において公知であり、限定はされないが、0.01~0.1M又は0.05Mのリン酸緩衝液又は0.8%の生理食塩水を含む。さらに、このような薬学的に許容される担体は、水性若しくは非水性溶液、懸濁液、及び乳剤であり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射用有機酸エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、水、アルコール溶液/水溶液、乳剤又は懸濁液(生理食塩水及び緩衝媒体を含む)が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、ラクトリンゲル液又は固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補給剤、電解質補給剤、例えば、リンゲルデキストロースをベースとするものなどが挙げられる。防腐剤及び例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤(collating agent)、不活性ガスなどの他の添加剤も存在し得る。
【0180】
任意の化合物では、治療的に有効な用量が、細胞培養アッセイにおいて、又はマウス、ラット、ウサギ、イヌ、若しくはブタなどの動物モデルにおいて最初に推定され得る。動物モデルはまた、濃度範囲及び投与経路を決定するのに使用され得る。次に、このような情報は、ヒトにおける投与のための有用な用量及び経路を決定するのに使用され得る。これらの技術は、当業者に周知であり、治療的に有効な用量は、症状又は病態を改善する有効成分の量を指す。治療効果及び毒性は、ED50(集団の50%で治療的に有効な用量)及びLD50(集団の50%に致死的な用量)を計算及び対比することなどによって、細胞培養物中で又は実験動物を用いた標準的な医薬品手順によって決定され得る。本明細書に記載される医薬組成物のいずれかが、限定はされないが、哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、特にヒトを含む治療を必要とする任意の対象に適用され得る。
【0181】
本明細書に記載される医薬組成物は、限定はされないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、又は直腸手段を含む様々な経路によって投与され得る。
【0182】
使用方法
本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤、及びその医薬組成物は、TGFβ関連疾患又は病態の予防又は治療に有用である。したがって、対象におけるTGFβ関連疾患又は病態の予防又は治療のための方法であって、治療有効量の、本明細書に記載されるポリペプチド、TGFβ結合剤又は医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。ポリペプチド及びTGFβ結合剤は、一般に、医薬組成物の形態で投与される。対象は、このような治療を必要とし得、すなわち、TGFβ(例えば、TGFβ1及び/又はTGFβ3)に関連する疾患又は病態に罹患しているか、罹患している疑いがあるか、又は罹患するリスクがある。
【0183】
本明細書において使用される際、「TGFβ関連疾患又は病態」という用語は、TGFβ活性、特に、TGFβ1及び/又はTGFβ3活性の阻害によって改善され得る疾患又は病態を指す。TGFβ関連疾患又は病態としては、限定はされないが、TGFβリガンド、特に、TGFβ1及び/又はTGFβ3の過剰発現又は過剰活性化に関連する疾患又は病態が挙げられる。ある実施形態において、TGFβ関連疾患又は病態は、TGFβ1及び/又はTGFβ3によって媒介される。一実施形態において、治療される疾患又は病態は、TGFβ3によって媒介される。別の実施形態において、治療される疾患又は病態は、TGFβ1及びTGFβ3の組合せによって媒介される。本明細書において使用される際、「改善」という用語は、疾患の発症若しくは進行を減少させ、抑制し、軽減し、低下させ、抑止し、又は安定させることを意味する。
【0184】
本開示にしたがって予防又は治療され得るTGFβ関連疾患又は病態の例としては、限定はされないが:線維症(例えば、線維症、線維性瘢痕化、線維増殖性疾患);癌(例えば、悪性腫瘍、固形腫瘍、転移);骨髄不全(例えば、シュワッハマン・ボディアン・ダイアモンド症候群、ファンコニ貧血);眼疾患;及びの結合組織遺伝性疾患が挙げられる。
【0185】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤は、例えば及び限定はされないが、組織及び/又は器官の線維症、線維性瘢痕化、及び線維増殖性疾患を含む線維症の治療又は予防に使用される。治療又は予防され得る線維症又は病態の非限定的な例としては、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、腎線維症、肝線維症(例えば、肝硬変)、全身性硬化症、強皮症、皮膚線維症、心臓線維症、骨髄線維症、及び骨髄線維症が挙げられる。特定の一実施形態において、全身性硬化症(SSc)が、治療又は予防される。別のいくつかの実施形態において、強皮症が、治療又は予防される。別のいくつかの実施形態において、骨髄線維症(MF)が、治療又は予防される。
【0186】
全身性硬化症(SSc、強皮症とも呼ばれる)は、重度の消耗性線維症である。TGFβは、SScにおける皮膚及び肺における増加したコラーゲン沈着を含むいくつかの病理学的過程の促進のために重要であることが示されている強力な線維性促進(profibrotic)サイトカイン(Varga,J.and Abraham,D.,2007;Varga,J.and Whitfield,M.L.,2009;Gabrielli,A.et al.,2009;Lafyatis,R.,2014;Allanore,Y.et al.,2015)。SScは、大きな満たされていない治療的課難題であり、新たに診断されたSSc患者の平均余命は、約11年である(Mayes,M.D.et al.,2003)。最近の臨床研究は、中和抗体フレソリムマブによるTGFβの阻害の後、線維症の劇的反転の実証により、SScヒト患者における線維症の駆動因子としてのTGFβを実証した(Rice,L.M.et al.,2015)。この臨床原理証明試験は、SSc及び他の疾患における線維症を促進する際のTGFβの重要性を実証する広範な前臨床データとともに、SSc患者の治療のための本開示に係るTGFβ結合剤の使用に説得力のある論理的根拠を提供する。
【0187】
骨髄線維症(MF)において、骨髄線維症は、疾患の特徴であり、その程度は、貧血を含む臨床的特徴と相関する。TGFβ遮断薬の投与は、いくつかの前臨床研究において骨髄線維症の軽減をもたらすことが示され(Wang,J.C.et al.,2006;Vannucchi,A.M.et al.,2005)、MFにおけるTGFβの二重の病理学的役割、すなわち、骨髄線維症並びに骨髄増殖の促進を裏付ける。増加した血小板内、末梢血単核細胞、及び巨核球関連TGFβは、MF患者において実証されている。臨床サンプルにおけるTGFβの過剰発現は、MFモデルにおけるTGFβ中和の影響に対する広範な前臨床データとともに、MF患者の治療のための本開示に係るTGFβ結合剤の使用に説得力のある論理的根拠を提供する。
【0188】
予防又は治療され得る線維症の他の例示的な実施形態としては、例えば及び限定はされないが:間質性肺疾患;ヒト線維性肺疾患(例えば、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症、既知の病因による肺線維症、肺疾患における腫瘍間質、肺を侵す全身性硬化症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、炭鉱労働者塵肺症、石綿肺、珪肺症、慢性肺高血圧症);肺線維症、嚢胞性線維症、肝線維症、心臓線維症、縦隔線維症、腹膜腔線維症、骨髄線維症、皮膚線維症を含む、AIDSに関連する治療可能なタイプの線維症;強皮症;及び全身性硬化症が挙げられる。治療又は予防され得る線維症の特定の形態としては、身体の任意の器官又は組織又は細胞、例えば、ヒトの腱の線維芽細胞、腎臓、肺、腸、肝臓、心臓、骨髄、生殖器、皮膚及び眼を侵すものが挙げられる。これらの疾患としては、限定はされないが、嚢胞性線維症、全身性硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、デュピュイトラン拘縮、糸球体腎炎、肝線維症、梗塞後心筋線維化、再狭窄、眼科手術に誘発される線維症、及び瘢痕化が挙げられる。結合組織の遺伝性疾患も、治療され得、限定はされないが、マルファン症候群(MFS)及び骨形成不全症を含む。
【0189】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤は、筋線維芽細胞への線維芽細胞の分化を阻害するのに使用される。
【0190】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤は、線維増殖性疾患の治療又は予防に使用される。線維増殖性疾患は、線維芽細胞の増殖並びにフィブロネクチン、ラミニン及びコラーゲンなどの細胞外基質の対応する過剰発現によって特徴付けられる。
【0191】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤は、例えば及び限定はされないが、肺癌、頭頸部癌、黒色腫、結腸癌、膵臓癌、結腸直腸癌、肝臓癌、乳癌、上皮癌、胆管癌、固形腫瘍などを含む癌の治療又は予防に使用される。ある実施形態において、癌に関連する「予防」という用語は、主要な腫瘍の浸潤又は転移を予防することを含み得る。ある実施形態において、癌に関連する「治療」という用語は、腫瘍微小環境における免疫応答のTGFβ媒介性抑制を阻害することを含み得る。固形腫瘍に関して、腫瘍微小環境におけるTGFβの免疫抑制の役割は、前臨床的に明らかに実証されている。さらに、臨床研究において、膀胱癌の患者における免疫チェックポイント阻害剤に対する応答の欠如が、腫瘍微小環境におけるTGFβシグナル伝達に関連することが最近示され、これは、TGFβが抗腫瘍免疫を抑制するという考えを裏付け、TGFβ阻害剤が、ある腫瘍環境において単剤活性を有し得、他の腫瘍環境において、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わされるときに抗腫瘍活性を高めるように作用することを示唆している。
【0192】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤は、異常な細胞増殖及び/又は無調節なアポトーシスの疾患の治療又は予防に使用される。このような疾患の例としては、限定はされないが、癌、中皮腫、膀胱癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部の癌、皮膚又は眼内黒色腫、卵巣癌、乳癌、子宮癌、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、骨肉腫、結腸癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、消化管(胃、結腸直腸及び/又は十二指腸)癌、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、食道癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、精巣癌、肝細胞(肝臓及び/又は胆管)癌、原発性若しくは二次性中枢神経系腫瘍、原発性若しくは二次性脳腫瘍、ホジキン病、慢性若しくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞若しくはB細胞起源のリンパ性悪性腫瘍、黒色腫、多発性骨髄腫、口腔癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、小細胞肺癌、腎臓及び/又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂の癌、中枢神経系の腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、脾臓の癌、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫又はそれらの組合せが挙げられる。
【0193】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤は、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、骨髄癌、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、結腸直腸癌、食道癌、肝細胞癌、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞若しくはB細胞起源のリンパ性悪性腫瘍、黒色腫、骨髄性白血病、骨髄腫、口腔癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、小細胞肺癌及び脾臓癌からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防に使用される。
【0194】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤は、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫などの血液癌である疾患又は障害の治療又は予防に使用される。ある実施形態において、癌は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、皮膚B細胞リンパ腫、活性化B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞中心細胞性リンパ腫、形質転換リンパ腫、中分化型リンパ球性リンパ腫、中間型リンパ球性リンパ腫(ILL)、びまん性低分化型リンパ球性リンパ腫(PDL)、中心細胞性リンパ腫、びまん性小切れ込み細胞型リンパ腫(DSCCL)、末梢T細胞リンパ腫s(PTCL)、皮膚T細胞リンパ腫、マントル帯リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、前駆T細胞急性リンパ芽球性白血病、バーキット白血病(バーキットリンパ腫)、急性混合型白血病、慢性骨髄性リンパ腫、慢性骨髄性白血病(CML)、及び慢性単球性白血病からなる群から選択される。特定の実施形態において、疾患又は障害は、骨髄腫である。特定の実施形態において、疾患又は障害は、骨髄異形成症候群(MDS)である。別の特定の実施形態において、疾患又は障害は、急性骨髄性白血病(AML)である。別の特定の実施形態において、疾患又は障害は、慢性リンパ球性白血病(CLL)である。さらに別の特定の実施形態において、骨髄腫は、多発性骨髄腫(MM)である。
【0195】
他の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド構築物又はTGFβ結合剤は、固形悪性腫瘍である疾患又は障害の治療又は予防に使用される。ある実施形態において、固形悪性腫瘍は、癌腫、腺癌、副腎皮質癌、結腸腺癌、結腸直腸腺癌、結腸直腸癌、導管細胞癌(ductal cell carcinoma)、肺癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、及び肺癌からなる群から選択される。
【0196】
ある実施形態において、固形悪性腫瘍は、進行非CNS原発性固形腫瘍である。ある実施形態において、固形悪性腫瘍は、胃/胃食道接合部(GEJ)癌、膀胱/尿路上皮癌、及び非小細胞肺癌(NSCLC)からなる群から選択される。
【0197】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤と組み合わせて投与される免疫チェックポイント阻害剤は、阻害免疫チェックポイント分子の活性を阻害又はブロックする任意の医薬品であり得る。特定の実施形態において、活性は、免疫チェックポイント分子の天然の結合パートナーに対する結合である。免疫チェックポイント分子が受容体である場合、活性は、リガンド結合活性であり得る。免疫チェックポイント分子がリガンドである場合、活性は、受容体結合活性であり得る。
【0198】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤と組み合わせて投与される免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞活性化に関与する陰性チェックポイント調節因子である。いくつかのより具体的な実施形態において、このような陰性チェックポイント調節因子は、細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA-4)、CD80、CD86、プログラム細胞死1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、プログラム細胞死リガンド2(PD-L2)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3;CD223としても知られている)、ガレクチン-3、B及びTリンパ球アテニュエータ(BTLA)、T細胞膜タンパク質3(TIM3)、ガレクチン-9(GAL9)、B7-H1、B7-H3、B7-H4、Ig及びITIMドメイン(TIGIT/Vstm3/WUCAM/VSIG9)を有するT細胞免疫受容体、T細胞活性化のV-ドメインIg抑制因子(VISTA)、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体関連(GITR)タンパク質、ヘルペスウイルス侵入メディエータ(HVEM)、OX40、CD27、CD28、CD137、CGEN-15001T、CGEN-15022、CGEN-15027、CGEN-15049、CGEN-15052、又はCGEN-15092である。このようなチェックポイント調節因子及びそれらを標的とする薬剤の要約が、表1に記載される。特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIM-3、VISTA、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、又はTDOの阻害剤である。
【0199】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体、小分子、又はオリゴヌクレオチド(アプタマー、shRNA、miRNA、siRNA、又はアンチセンスDNAなど)であり得る。特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、米国において米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)(FDA)又は癌若しくは病原体によって引き起こされる疾患の治療のための外国の同等の機関によって承認されている。
【0200】
特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに結合し、免疫チェックポイントの活性を阻害する抗体である。免疫チェックポイント阻害剤であり得る抗体としては、限定はされないが、モノクローナル抗体(Fc最適化モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗原結合活性を保持する抗体フラグメント、例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、二重特異性抗体、線状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、抗体フラグメントから形成された多特異性抗体、及び抗体フラグメントを含有する融合タンパク質が挙げられる。特定の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、抗体は、ヒト化抗体である。
【0201】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1の阻害剤である。特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1に結合し、PD-1の活性(例えば、リガンド結合活性)を阻害するモノクローナル抗体である。
【0202】
いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、ニボルマブ、ピディリズマブ、MEDI0680、ペムブロリズマブ、AMP-224、AMP-514、STI-A1110、TSR-042、AUR-012、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、及びトリパリマブからなる群から選択される。
【0203】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、ニボルマブ、ピディリズマブ、MEDI0680、又はペムブロリズマブである。さらなる特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、ニボルマブである。別の特定の実施形態において、PD-1の阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤は、AMP-224である。別の特定の実施形態において、PD-1の阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤は、ピディリズマブである。別の特定の実施形態において、PD-1の阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブである。別の特定の実施形態において、PD-1の阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤は、MEDI0680である。別の特定の実施形態において、PD-1の阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤は、STI-A1110である。別の特定の実施形態において、PD-1の阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤は、TSR-042である。別の特定の実施形態において、PD-1の阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤は、AUR-012である。
【0204】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1の阻害剤である。特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1に結合し、PD-L1の活性(例えば、受容体結合活性)を阻害するモノクローナル抗体である。
【0205】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、mpdl3280A、デュルバルマブ、アベルマブ、BMS-936559、アテゾリズマブ、RG7446、及びSTI-A1010からなる群から選択される。
【0206】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、mpdl3280A、デュルバルマブ、アベルマブ、BMS-936559、又はアテゾリズマブである。別の特定の実施形態において、PD-L1の阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤は、RG7446である。別の特定の実施形態において、PD-L1の阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤は、STI-A1010である。
【0207】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA4の阻害剤(例えば、イピリムマブ)である。
【0208】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG3の阻害剤(例えば、BMS-986016)である。
【0209】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤と組み合わせて投与される免疫チェックポイント阻害剤としては、限定はされないが:OPDIVO(登録商標)(ニボルマブ);YERVOY(登録商標)(イピリムマブ);レラトリマブ;リンロドスタット;EMPLICITI(登録商標)(エロツズマブ);BMS-986258;BMS 986315;BMS-986207;BMS-986249;及びBMS-986218が挙げられる。
【0210】
本明細書に記載される組合せにおいて有用なPD-1阻害剤は、PD-1の活性又は発現を阻害し、ブロックし、なくし、又は妨げることが可能な任意の分子を含む。特に、抗PD-1阻害剤は、小分子化合物、核酸、ポリペプチド、抗体、ペプチボディ、ダイアボディ、ミニボディ、単一ドメイン抗体又はナノボディ、一本鎖可変フラグメント(ScFv)、又はその機能的フラグメント若しくは変異体であり得る。一例において、PD-1阻害剤は、小分子化合物(例えば、約1000Da未満の分子量を有する化合物)である。他の実施形態において、本明細書に記載される組合せにおいて有用なPD-1阻害剤は、核酸及びポリペプチドを含む。
【0211】
ある実施形態において、治療後、例えば、薬物治療又は外科的切除後に、癌の再発を防止又は阻害するための方法が提供される。ある実施形態において、癌の進行を遅らせるための方法が提供され、ここで、癌の再増殖が、30%超、又は50%超、又は70%超だけ遅延され、及び/又は罹患した対象の生存期間が増加される。切除、化学療法、放射線治療、免疫療法、及び/又は遺伝子治療を含む群から選択される、癌の治療のための癌治療法の有効性を高めるための方法であって、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤を投与すること、及び同時に、別々に又は連続して前記癌治療法を施すことを含む方法がさらに提供される。本明細書において使用される際の「癌治療法の有効性を高める」という用語は、従来の癌治療の改善を指し、従来の癌治療の際に適用される抗癌組成物の量、例えば放射線療法における放射線の量、化学療法における化学療法薬の量、免疫療法における免疫療法薬の量若しくは遺伝子治療におけるベクターの量の減少、及び/又は従来の癌治療法の際に従来の用量又は量で適用される場合の従来の治療法及び抗癌組成物の有効性の増加を含む。一実施形態において、癌治療法の有効性を高めることは、治療を受ける対象の生存率を増加させることを指す。
【0212】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤は、対象、例えば、骨髄不全を有するか又はそれを発症するリスクがあるヒトにおける骨髄不全を治療又は予防するのに使用される。例示的なタイプの骨髄不全としては、限定はされないが、SDS(シュワッハマン・ボディアン・ダイアモンド症候群又はSBDSとしても知られている)、ファンコニ貧血(FA)、先天性角化不全症(DC)、先天性無巨核球性血小板減少症(CAMT)、ブラックファン・ダイアモンド貧血(BDA)、及び細網異形成症(RD)が挙げられる。シュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)患者は、骨髄不全、膵外分泌機能不全、骨奇形、及び急性骨髄性白血病の増加したリスクを抱える。特定の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤は、対象におけるファンコニ貧血(FA)を治療又は予防するのに使用される。別のいくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤は、対象におけるシュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)を治療又は予防するのに使用される。
【0213】
ファンコニ貧血(FA)は、最も一般的な遺伝性骨髄不全症候群である。FA患者は、造血幹及び前駆細胞(HSPC)の減少のため、生後10年の間に骨髄不全を発症する。FAは、19のファンコニ貧血相補群(FANC)遺伝子(その産物がFA/BRCA DNA修復経路で協働する)のうちの1つにおける突然変異によって引き起こされる。FAにおける骨髄不全は、部分的に、遺伝毒性ストレスによって誘導される増殖抑制経路の過活性化の、直接又は間接的な結果であり得る。造血幹細胞(HSC)の標準TGFβ経路媒介性増殖抑制が、FAにおける骨髄不全の原因として最近同定された(Rio,P.and Bueren,J.A.,2016;Zhang,H.et al.,2016)。シュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)は、SBDS遺伝子における突然変異によって引き起こされる別の希少な骨髄不全症候群である(Boocock,G.R.et al.,2003;Rogers,Z.R.,2018)。TGFβ経路が、SDS細胞において調節不全であることが示されている。総合すると、このような知見は、骨髄不全症候群の治療のための本開示に係るTGFβ結合剤の使用に説得力のある論理的根拠を提供する。
【0214】
ある実施形態において、したがって、SDSなどの骨髄不全を治療又は予防するための方法であって、有効量の、本開示に係るポリペプチド又はTGFβ結合剤を、必要としている対象に投与することを含む方法が提供される。このような実施形態において、ポリペプチド又はTGFβ結合剤は、SDSに関連する症状又は後遺症を減少させるか又は阻害し得る。SDSに関連する例示的な症状又は後遺症は、好中球減少症(例えば、絶対好中球数<1500/mLを示す)、貧血、血小板減少症(例えば、50,000個/mm未満の血小板数を示す)、膵外分泌機能不全、成長遅延、慢性脂肪便症、骨幹端異形成症、骨髄異形成、巨核球異形成症、赤血球異形成症、急性骨髄性白血病(AML)、及び全身性骨減少症からなる群から選択される。骨髄不全のさらなる説明については、例えば、国際公開第2016/138300号パンフレット及び国際公開第2019/018662号パンフレットを参照されたい。
【0215】
本明細書において使用される際、「有効量」及び「治療有効量」という用語は、対象への単回又は複数回用量投与時に、治療される対象における所望の効果(例えば、疾患、障害又は病態を改善し、低下させ、又は予防するための、例えば、所望の生物学的又は薬理的応答)を提供する、化合物又は組成物の量又は用量を指すために、同義的に使用される。ある実施形態において、有効量は、本明細書に記載されるように、対象におけるTGFβ関連疾患又は病態を予防又は治療する化合物又は組成物の量又は用量である。ある実施形態において、有効量は、本明細書に記載されるように、対象におけるTGFβ(例えば、TGFβ1及び/又はTGFβ3)の1つ以上の活性を阻害する化合物又は組成物の量又は用量である。
【0216】
「阻害」又は「阻害する」という用語は、本明細書において、一般に、あるプロセスを減少させ、遅らせ、制限し、遅延させ、抑制し、ブロックし、中和し、妨げ、又は防止すること、例えば、限定はされないが、線維症、癌若しくは腫瘍、又は骨髄不全などのTGFβ関連疾患又は病態の成長、転移又は生存を減少又は遅延することなどを指すために使用される。
【0217】
本開示の趣旨での「治療する」又は「治療」という用語は、治療的処置及び予防又は防止措置の両方を指し、目的は、標的とされた疾患又は病態を改善することである。治療を必要としている者は、その障害に既に罹患した者並びにその障害に罹患しやすい者又はその障害が予防されるべきである者を含む。特定の実施形態において、「治療する」又は「治療」は、皮膚肥厚、線維性瘢痕化、又は腫瘍サイズ、増殖、若しくは移動などの少なくとも1つの物理的パラメータを改善することを指す。いくつかの実施形態において、「治療する」又は「治療」は、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、又は両方で、疾患又は病態を阻害又は改善することを指す。いくつかの実施形態において、「治療する」又は「治療」は、疾患又は病態の発症(又は再発)を遅らせることを指す。「治療する」又は「治療」という用語は、軽減;緩和;症状を減少させること又は疾患若しくは病態を対象によってより耐容できるものにすること;患者が感じる疼痛若しくは不快感を軽減することなど、対象の身体的若しくは精神的健康を改善すること;及び、ある状況において、疾患若しくは病態の少なくとも1つの臨床的パラメータをさらに改善することなどの、任意の客観的又は主観的パラメータを含む、疾患又は病態の治療又は改善の成功の任意の指標を指し得る。
【0218】
本開示のある実施形態において、「治療する」は、過剰なTGFβの生物学的活性を中和することを指す。それは、改善の好適な臨床的変数によって;例えば線維症及び/又は線維症の免疫抑制若しくは予防に対する効果の病理学的評価によって;TGFβシグナル伝達の直接の阻害によって;又は治療される疾患若しくは病態に好適な別の尺度によって決定され得る。
【0219】
本明細書において使用される際、「予防する」又は「予防」は、少なくとも、疾患又は障害の取得の可能性、又はリスク、又はそれに対する感受性の減少(すなわち、疾患に罹患し得る又は罹患しやすい素因があるか又はリスクがあり得るが、疾患の症状をまだ生じても又は示してもいない患者において、疾患の臨床症状の少なくとも1つを発症させないこと)を指すことが意図される。「予防」又は「予防する」という用語はまた、このような疾患若しくは病態のリスクがある(又は罹患しやすい)対象への本明細書に記載される化合物又は組成物の投与を表すのに使用される。疾患又は病態の予防のための処置に適した対象は、疾患又は病態のリスクがあるが、症状を示していない個体、並びに現在症状を示している患者を含む。ある実施形態において、「予防」又は「予防する」は、疾患若しくは病態と診断されたか又は疾患若しくは病態のために治療されており、疾患若しくは病態の再発のリスクがある対象への本明細書に記載される化合物又は組成の投与を表すのに使用される。
【0220】
ある実施形態において、治療又は予防は、プラセボ群、ヒストリカルコントロールのメンバーと比較した、本明細書において提供されるTGFβ結合剤、組成物及び方法を用いて処置された対象の成績の間に、又は同じ対象に与えられるその後の試験の間に測定可能な相違がある場合、本発明の文脈の範囲内である。
【0221】
「対象」という用語は、TGFβ関連疾患若しくは病態を有する生物、又はそれに罹患しやすいか若しくはそのリスクがある生物を含む。対象の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、サル、ウシ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、及びそのトランスジェニック種が挙げられる。「対象」という用語は、一般に、線維症又は癌などのTGFβ関連疾患又は病態によって特徴付けられる状態になりやすい動物、例えば、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトを含む。動物はまた、障害のための動物モデル、例えば、マウスモデル、異種移植片レシピエントなどであり得る。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0222】
本明細書において提供される組成物において使用するためのTGFβ結合剤のそれぞれの用量は特に限定されない。例示的な用量は、対象又はサンプル重量のキログラム当たりミリグラム又はマイクログラムの量の化合物を含む(例えば、約50マイクログラム/キログラム~約500ミリグラム/キログラム、約1ミリグラム/キログラム~約100ミリグラム/キログラム、約1ミリグラム/キログラム~約50ミリグラム/キログラム、約1ミリグラム/キログラム~約10ミリグラム/キログラム、又は約3ミリグラム/キログラム~約5ミリグラム/キログラム)。さらなる例示的な用量は、約5~約500mg、約25~約300mg、約25~約200mg、約50~約150mg、又は約50、約100、約150mg、約200mg又は約250mgの用量、及び、例えば、毎日又は1日2回、又はより少ない若しくはより多い量を含む。
【0223】
ある実施形態において、成人の用量範囲は、一般に、0.005mg~10g/日である。ポリペプチド、TGFβ結合剤、及びその組成物が、単位剤形、例えば、このような投与量で有効な単位で又はその複数として、例えば、5mg~500mg、通常、約10mg~200mgを含む単位で提供され得る。投与量単位は、例えば、1~30mg、1~40mg、1~100mg、1~300mg、1~500mg、2~500mg、3~100mg、5~20mg、5~100mg(例えば1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、又は500mg)の、本明細書に記載されるポリペプチド、TGFβ結合剤、又は組成物を含み得る。
【0224】
疾患又は病態の治療的処置のためのポリペプチド又はTGFβ結合剤の有効量は、投与方法、対象の年齢、体重、及び全体的な健康に応じて変化することが理解されるべきである。最終的に、担当医又は獣医が、適切な量及び投薬計画を決定する。単独で又は投与される1つ以上の活性化合物と組み合わせて使用されるポリペプチド又はTGFβ結合剤の投与量又は量が、個々の症例に依存し、慣例であるように、最適な効果を得るように個々の状況に適合されるべきであることが理解されるべきである。投薬及び投与計画は、当業者の技能の範囲内であり、適切な用量は、通常の技能を有する医師、獣医、又は研究者の知識の範囲内でいくつかの要因に依存する(例えば、Wells et al.eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)を参照)。例えば、投薬及び投与計画は、治療される障害の性質及び重症度、及びさらに治療されるヒト又は動物の性別、年齢、体重及び個々の反応性、使用される化合物の有効性及び作用の持続時間、治療が急性若しくは慢性であるか又は予防のためのものであるか、及び/又は他の活性化合物が、治療用分子に加えて投与されるかどうかに依存する。
【0225】
本明細書において提供される化合物及び組成物の投与は、公知の手順を用いて、所望の目的を達成するのに有効な投与量で及びそのような期間にわたって行われ得る。投薬計画は、最適な治療反応を提供するように調整され得る。例えば、いくつかの分割用量が、毎日投与されてもよく、又は用量は、治療状況の事態によって示されるように比例的に減少され得る。ある実施形態において、化合物又は組成物が、対象における線維症を予防又は治療するのに十分な有効投与量で投与される。
【0226】
本明細書において提供される組成物において使用するためのTGFβ結合剤のそれぞれの投与経路は特に限定されない。ポリペプチド、TGFβ結合剤又はその組成物は、任意の好適な経路又は手段を用いて、例えば、限定はされないが、経口、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、舌下、局所、又は経鼻投与によって、吸入、注射、注入、又は当該技術分野において公知であるこのような他の経路によって投与され得る。特定の実施形態において、ポリペプチド、TGFβ結合剤又はその組成物は、注射又は注入によって、例えば及び限定はされないが、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、又は皮下に投与される。
【0227】
本開示の方法に係るある実施形態において、TGFβ関連疾患又は病態の発症又は進行の1つ以上の症状が、対象において少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%軽減される。
【0228】
本開示の方法に係るある実施形態において、線維性症状は、対象において軽減される。例えば、ポリペプチド、TGFβ結合剤又は組成物は、対象における線維症、線維性瘢痕化、又は皮膚肥厚を、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%軽減し得る。
【0229】
本開示の方法に係るある実施形態において、筋線維芽細胞への線維芽細胞の分化が、対象において、例えば、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%阻害される。
【0230】
本開示の方法に係るある実施形態において、腫瘍増殖及び/又は転移は、対象において、例えば、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%阻害される。
【0231】
本開示の方法に係るある実施形態において、骨髄造血幹又は前駆細胞(HSPC)における造血コロニー形成及び/又は造血は、対象の骨髄において、例えば、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%増加される。
【0232】
本開示の方法に係るある実施形態において、肺線維症における好反応が、努力性肺活量によって測定される際、肺機能の低下の速度の持続的な減速として明らかになる。
【0233】
本開示の方法に係るある実施形態において、全身性硬化症に関連する皮膚線維症の好反応が、改変ロドナン皮膚スコア(MRSS)の改善によって決定される。例えば、MRSSは、対象において、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%改善し得る。
【0234】
ある実施形態において、骨髄線維症を含む骨髄不全疾患において、好反応が、貧血の改善によって明らかになる(例えば、ヘモグロビンレベルの増加を示す輸血非依存性患者、輸血依存性患者は、輸血非依存性になる)。
【0235】
ある実施形態において、ポリペプチド又はTGFβ結合剤は、本明細書に記載されるように、治療用部分とコンジュゲートされ得る。望ましい治療用部分は、ポリペプチド又はTGFβ結合剤によって標的とされる同じ疾患又は病態を予防又は治療するその能力のために選択され得る。
【0236】
ある実施形態において、TGFβ関連疾患又は病態が、対象において予防又は治療されるように、有効量の、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤を投与することによって、対象におけるTGFβ関連疾患又は病態の予防又は治療のための方法が提供される。
【0237】
ある実施形態において、TGFβが対象において阻害されるように、有効量の、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤を投与することによって、対象におけるTGFβを阻害する方法が提供される。あるこのような実施形態において、TGFβ3が対象において阻害されるように、有効量の、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤を投与することによって、対象におけるTGFβ3を阻害する方法が提供される。あるこのような実施形態において、TGFβ3及びTGFβ3が対象において阻害されるように、有効量の、本明細書に記載されるポリペプチド又はTGFβ結合剤を投与することによって、対象におけるTGFβ3及びTGFβ1を阻害する方法が提供される。
【0238】
ある実施形態において、インビトロ、エクスビボ、又はインビボのいずれかで、筋線維芽細胞への線維芽細胞の分化を阻害するための方法が提供される。
【0239】
本明細書において提供される治療及び予防的処置のある実施形態において、ポリペプチド又はTGFβ結合剤は、1つ以上のさらなる治療法又は治療剤と組み合わせて投与される。さらなる治療法又は治療剤は、本明細書に記載されるポリペプチド、TGFβ結合剤又は組成物の投与の前、後又は同時に投与され得る。ある実施形態において、さらなる治療法又は治療剤は、同じ組成物中でポリペプチド又はTGFβ結合剤と一緒に製剤化される。他の実施形態において、さらなる治療法又は治療剤は、別々に投与される。さらなる治療法及び治療剤の例としては、限定はされないが、抗線維化剤;抗癌剤;別のTGFβ結合剤又は阻害剤、例えば、抗体、抗体フラグメント、抗原結合フラグメント、可溶性TGFβリガンドトラップなどが挙げられる。一実施形態において、さらなる治療剤は、ニンテダニブ(商標名Ofev(登録商標)及びVargatef(登録商標)で販売されている)である。一実施形態において、さらなる治療剤は、ピルフェニドンである。一実施形態において、さらなる治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。
【0240】
或いは、ある実施形態において、ポリペプチド又はTGFβ結合剤は、ポリペプチド又はTGFβ結合剤、又はTGFβを発現する細胞若しくは組織を追跡するのに有用である検出可能部分又は診断部分とコンジュゲートされ得る。あるこのような実施形態において、TGFβ関連疾患又は病態の診断の方法であって、検出可能部分又は診断部分とコンジュゲートされた本開示のポリペプチド又はTGFβ結合剤を対象に投与すること、及びTGFβ(例えば、TGFβ1及び/又はTGFβ3の過剰発現)に関連する疾患又は病態が診断されるように、ポリペプチド又はTGFβ結合剤を検出することを含む方法が提供される。
【0241】
キット
本開示によれば、本明細書に記載されるポリペプチド、TGFβ結合剤及び医薬組成物は、TGFβ関連疾患又は病態を治療又は予防するのに使用するためのキット又は医薬品システムへと組み立てられ得る。キット又は医薬品システムは、その厳重な閉じ込めの中に、バイアル、チューブ、アンプル、ボトルなどの1つ以上の容器を有し、ポリペプチド、TGFβ結合剤又は医薬組成物を含む容器(例えば、包装、箱、ボール紙、バイアルなど)を含み得る。さらなるキット構成要素は、酸、塩基、緩衝剤、無機塩、溶媒、酸化防止剤、防腐剤、又は金属キレート剤を含み得る。さらなるキット構成要素は、純粋な組成物として、又は1つ以上のさらなるキット構成要素を組み込む水性若しくは有機溶液として存在し得る。キット構成要素のいずれか又は全ては、任意に、緩衝液をさらに含む。キットは、針、シリンジなどの投与用のツールも含み得る。キットは、本明細書に記載される方法にしたがって使用され得、このような方法において使用説明書を含み得る。キットは、ポリペプチド、TGFβ結合剤又は医薬組成物の投与及び使用のための説明書も含み得る。
【0242】
配列が、表2における配列の表に示される。表2において、ヒトTGFβRII細胞外ドメイン及びそれに由来する配列におけるN末端IDRが、下線付きで示され;ヒトTGFβRII細胞外ドメイン及びそれに由来する配列におけるC末端IDRが、二重下線付きで示され;Gly-Serリンカー領域が、斜体及び下線付きで示され;及び多量体化ドメインが、斜体及び太字で示される。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【表2-15】
【表2-16】
【表2-17】
【表2-18】
【表2-19】
【表2-20】
【表2-21】
【表2-22】
【実施例
【0243】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解され、実施例は、本発明を例示するために提供され、決してその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0244】
特に定義されない限り又は文脈上特に明記されない限り、本明細書において使用される全ての専門用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験において使用され得ることが理解されるべきである。
【0245】
実施例1.公知のTGFβ結合剤の特性評価及び構造分析。
TGFβRII細胞外ドメイン(配列番号1)は、構造化部分を含み、これは、本質的に無秩序な領域(IDR;それぞれ配列番号3及び4)によって、N末端及びC末端の両方において隣接されるリガンド結合ドメイン(配列番号2)を表す。
【0246】
以前に、TGFβRII細胞外ドメイン融合分子が記載された(国際公開第2017/037634号パンフレット、国際公開第2018/158727号パンフレット)。このような融合分子は、IDR及びその変異体に由来するリンカーによって並んで一緒に連結された(ヘッドトゥーテール)2つの構造化リガンド結合ドメイン(配列番号2)を含む。国際公開第2018/158727号パンフレットにおいて報告されるように、このようなポリペプチド構築物は、単一のリガンド結合ドメインのみを有する同様の構築物より少なくとも600倍高い阻害効力を実証した(国際公開第2018/158727号パンフレット、2頁、27~31を参照、ここで、「第1の領域が、抗体定常ドメインによりそのC末端で連結された(TβRII-ECD)-(TβRIIECD)ダブレットを含む[構築物]が、抗体定常ドメインによりそのC末端で連結された単一のTβRII-ECDを有する同等の構築物(すなわち、第2のECDが存在しない場合、本明細書においてシングレットとも呼ばれる)より少なくとも600倍高い効力でTGFβ活性を阻害する」ことが記載される)。さらに、このような「ダブレット」ポリペプチド構築物(「T22d35-Fc」と呼ばれる)は、様々な程度に、TGFβの全ての3つのアイソフォーム(すなわち、TGF-β1、β2、及びβ3)に結合し、それを中和し得るが、TGFβ2は、一般に、TGFβ1及びTGFβ3よりはるかに少ない程度に中和された。例えば、T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)変異体の場合、TGFβ1及びTGFβ3に対する中和効力が、酷似していることが記載されたが、この効力は、TGFβ2に対してはるかに低かった(IC50=TGFβ1及びTGFβ3に対するそれぞれ0.003327nM及び0.003251nMと比較して、TGFβ2に対する17.33nM;国際公開第2018/158727号パンフレット、26頁、24~27行を参照)。同様の結果が、ほかの変異体について報告された。
【0247】
このようなTGFβ結合剤の結合及び中和特性をさらに調べるために、本発明者らは、さらなる調査のために、例示的な融合分子、「T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)」を選択した。この融合分子(本明細書における配列番号6;国際公開第2018/158727号パンフレットにおける配列番号14)において、2つの構造化リガンド結合ドメインの間のリンカーは、その順序でC末端及びN末端IDRの融合であり(全リンカー配列が、配列番号7に示される)、第2のリガンド結合ドメイン及び多量体化ドメインの間のリンカーは、TβRII-ECDのC末端IDR(配列番号4)である。この融合分子において、多量体化ドメインは、hIgG1Fc(CC)領域(配列番号49)である。
【0248】
まず、本発明者らは、A549 IL-11放出アッセイを用いて、TGFβの様々なアイソフォーム、特に、TGFβ1及びTGFβ3に対するT22d35-Fc-IgG1-v1(CC)融合の阻害効力(IC50)のより詳細な特性評価を行った。A549 IL-11放出アッセイは、実質的に、記載されるように行われ(国際公開第2018/158727号パンフレット)、以下の実施例2においてさらに詳細に記載される。
【0249】
より詳細に阻害効力を分析し、より高い精度でIC50値を得るために、本発明者らは、A549 IL-11放出アッセイにおいてIC50に近いTGFβのより高い濃度(曲線におけるより多い点)を試験した。代表的な結果が、図4A及び4Bに示され、6つの実験の平均からの結果が、表3に示される。本発明者らは、TGFβ1に対して2.89pM±0.16の平均IC50値を決定し、これは、以前の報告(国際公開第2018/158727号パンフレット)と矛盾していない。しかしながら、TGFβ3に対して、平均IC50は、8.64pM±0.43であり、これは、予想されるよりかなり高い(すなわち、予想されるより低い阻害効力)。結果は、TGFβ3と比較してTGFβ1に対して約3~3.5倍高い阻害効力を示し、これは、T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)融合によるTGFβ1リガンドの優先的な阻害又は中和を示す。以前に報告されるように(国際公開第2018/158727号パンフレット;図11)、TGFβ2に対する阻害効力が、TGFβ1及びTGFβ3に対するよりかなり低かったことが留意される。
【表3】
【0250】
これらの結果は、TGFβ3と比較して、TGFβ1のより高い阻害又は中和を示唆する国際公開第2018/158727号パンフレットにおける記載と一致している(例えば、国際公開第2018/158727号パンフレットの3頁、26~28行を参照、ここで、「Fc-ダブレット(T22d35-Fc)が、非Fc融合ECDダブレットと比較して、TGFβ1に対して少なくとも970倍高く、TGFβ3に対して少なくとも240倍高い効力増強を示す」ことが記載される)。
【0251】
以前の融合構築物によるTGFβ3リガンドと比べた、TGFβ1リガンドの優先的な阻害の根底にある潜在的機序をよりよく理解するために、次に、本発明者らは、2つのリガンドアイソフォームの構造比較を行った。以前の融合構築物のリガンド結合ドメインが、TGFβ1及びTGFβ3リガンドにおける実質的に同一のエピトープと相互作用することが留意されるべきである(Baardsnes,J.et al.,2009)。したがって、TGFβ二量体内のモノマーに対する差動親和性は、TGFβ1リガンドの優先的な阻害を容易に説明しない。TGFβ1(青色)及びTGFβ3(緑色)のモノマー構造のオーバーレイが、図2Aに示される。タンパク質データバンク(PDB)ID 3KFD及び1KTZのそれぞれにおいて観察されるように、TGFβ1及びTGFβ3二量体のオーバーレイが、図2Bに示される(構造についてのタンパク質データバンク(PDB)IDはそれぞれ、3KFD及び1KTZである)。TGFβ1及びTGFβ3は、アミノ酸配列レベルが酷似しており、両方のモノマーは、同様の伸長システインノット折り畳み(図2A)を採るが、生物学的に活性な二量体中の2つのモノマーの配置は、2つのアイソフォームの構造を比較したときにかなり異なることが分かる。各リガンドアイソフォームが、二量体化角度の特定の範囲を有することが明らかである。二量体化角度の範囲は、二量体分子の全体形状、空間的広がり及び稠密度に影響を与える。TGFβ1及びTGFβ3二量体の形状のこの相違は、以前の融合構築物によるTGFβ3よりTGFβ1の優先的な中和をもたらし得、すなわち、融合構築物中のリガンド結合ドメインの特定の間隔が、異なる形状を有するそのアイソフォーム二量体によるTGFβ1リガンドとの優先的な相互作用(優先的な結合力)をもたらした可能性がある。
【0252】
図2Cは、第2のリガンド結合ドメイン、第2のリンカー、及びFc領域を示すTGFβリガンドに結合された融合構築物(T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)、配列番号6)の代表的なモデルを示す。このモデルは、本明細書において、短い(10アミノ酸)第2のリンカーの影響を示すために示される。緑色の線は、リンカー/スペーサーの長さが、結合された結合ドメイン間のリガンド結合を可能にするために、少なくとも25オングストロームだけ短いことを示す。具体的には、T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)における10アミノ酸リンカーの長さは、伸長立体構造においてさえ約35Åであり、これは、分子モデリングを用いて計算される、約20Åだけ最適なリンカー長さより短い。したがって、この融合構築物において、第2のリガンド結合ドメインは、TGFβ二量体を収容することから立体的に制限される。
【0253】
構造化リガンド結合ドメインが、TGFβリガンド、例えば、TGFβ1及びTGFβ3との相互作用界面に寄与する融合構築物の部分であること、及びリンカー領域が、結合リガンドと直接相互作用しないことが留意されるべきである。しかしながら、TGFβ1及びTGFβ3に対する二量体構造の相違及びリンカー領域によって課される構造制約を考慮して、本発明者らの分析は、リンカー領域を修飾することが、そのリガンド結合特異性を改変するようにTGFβ結合剤の結合特性に影響を与え得ることを示唆した。特に、リガンド結合ドメイン間の第1のリンカー領域の短縮、及び第2のリガンド結合ドメインと多量体化ドメインとの間の第2のリンカー領域の延長が、TGFβ1及びTGFβ3リガンドに対する相対阻害効力を改変するように立体及び構造制約を緩和するであろう。
【0254】
実施例2.改変されたアイソフォーム特異性を有するTGFβ結合剤の設計及び特性評価。
本発明者らは、リンカーを修飾することが、TGFβリガンド、特に、TGFβ1及びTGFβ3に対するアイソフォーム特異性及び阻害効力に特異的に影響を与え得るかどうかを調べるために、様々なリンカー配列及び長さを有する分子を生成した。構造分析に基づいて、本発明者らは、2つのリガンド結合ドメイン間の短縮リンカー部分(第1のリンカー部分)及び第2のリガンド結合ドメイン及び多量体化ドメイン間の伸長リンカー部分(第2のリンカー部分)を有する分子に焦点を合わせた。本発明者らの目的は、結合剤に、特定の疾患適応症に対する有益な治療特性を与えるために、全体的な阻害の良好な効力を維持しながら、TGFβ3よりTGFβ1の優先度の低い阻害(すなわち、より低いTGFβ3:TGFβ1 IC50比)を有するTGFβ結合剤を設計することであった。
【0255】
様々な長さ及び配列のリンカーを有する一連のTGFβ-結合剤が設計された。代表的な融合タンパク質の構造が、表4に要約される。配列が、表2に示される。
【0256】
試験結合剤は、ホモ二量体であり、ホモ二量体中の各ポリペプチドは、TGFβRII細胞外ドメインのN末端IDRを含むN末端領域(配列番号3);2つのTGFβ受容体タイプII(TGFβRII)リガンド結合ドメイン(配列番号2);2つのリガンド結合ドメイン間の18アミノ酸第1のリンカー部分(配列番号8又は12);第2のリガンド結合ドメイン及び多量体化ドメイン(配列番号4、9、11、又は15);及びhIgG1Fc(CC)多量体化ドメインの間の10、16、又は30アミノ酸第2のリンカー部分(配列番号49)を含む。T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)融合(配列番号6;国際公開第2018/158727号パンフレット)を、陽性対照(CTL)として使用した。タンパク質61(p61)、タンパク質96(p96)、タンパク質101(p101)、タンパク質107(p107)、及びタンパク質112(p112)の完全な配列がそれぞれ、配列番号81、84、87、89、及び92に示される(表2)。
【表4】
【0257】
組み換え融合分子の生成及び精製。全ての構築物は、発現されるときに、N末端に分泌シグナル配列MDWTWRILFLVAAATGTHA(配列番号104)を含んでいた。構築物をコードする相補的(c)DNAを、合成により調製した(GeneArt,ThermoFisher Scientific)。cDNAを、pTT5哺乳動物発現プラスミドベクターのEcoR1(5’末端)及びBamH1(3’末端)へとクローニングした(Durocher et al.,2002)。融合タンパク質の発現のために使用される代表的なcDNA配列が、表2に示される(配列番号106~109、それぞれp61、p96、p101、及びp128の発現のために使用される)。シグナルペプチドは、発現中に細胞内で切断され、精製された融合タンパク質に含まれない。
【0258】
融合タンパク質を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)の一過性トランスフェクションによって発現させた。簡潔に述べると、融合タンパク質をコードする発現プラスミドをそれぞれ、4mMのグルタミン及び0.1%のKolliphor p-1 88(Sigma)を含有するFreestyle F17培地(Invitrogen)中で、CHO-3E7細胞の100mLの培養物中にトランスフェクトした。
【0259】
全ての細胞培養を、37℃、5%のCOで行った。トランスフェクション条件は、以下のとおりであった:トランスフェクトされたDNAは、融合タンパク質を発現するためのプラスミドDNA及び30%のサケ精子DNAから構成され、これを、比率=1:4でポリエチレンイミン-pro(Polyplus)と混合した。トランスフェクションの24時間後、1%のTryptone Nl飼料(TekniScience Inc.)。0.5mMのVPA(Sigma)を加え、培養器温度を、32℃、5%のCOに低下させた。これを、融合タンパク質の産生及び分泌を促進するために行い、トランスフェクション後(dpt)4日間維持し、その後、培養物を収集した。4日目に、収集上清をろ過し(0.2μm)、AKTA pure 25L(GE)を用いて精製した。上清を、MabSelect PrismAプロテインAカラムに充填し、親和性クロマトグラフィーによって精製した。次に、カラムを、8カラム体積のPBSで洗浄し、タンパク質を5カラム体積の0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH3.2で溶離した。次に、画分は、HiPrep 26/10脱塩カラム(GE)を用いて、製剤緩衝液(20mMのL-ヒスチジン、100mMのNaCl、pH7)へと緩衝液交換した。
【0260】
図3A及び3Bは、非還元(図3A)及び還元(図3B)条件の両方の下での、精製されたタンパク質61、96、101、107、及び112(それぞれp61、p96、p101、p107、及びp112として示されるレーンを参照)及びT22d35-Fc-IgG1-v1(CC)(Ctl)からのサンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動分析を示す。タンパク質(P)を、非還元及び還元条件の両方の下で、12%のビス-トリスアクリルアミドゲル(NuPAGE(商標)12%のビス-トリスタンパク質ゲル、Cat# NP0341BOX、Life Technologies)上で電気泳動させた。これらの融合タンパク質は、4価、ホモ二量体TGFβ-結合剤であり、それぞれが、2つのポリペプチド鎖を含む(すなわち、それらは、2つのポリペプチド鎖のホモ二量体であり、第1及び第2のポリペプチドは、同じであり、各ポリペプチドは、2つのリガンド結合ドメインを含む)。2つのポリペプチド鎖は、還元条件対非還元条件下でサイズの相違によって確認されるように、それらの多量体化ドメイン中に1つ以上のシステイン残基を含むジスルフィド架橋を介して二量体化される。
【0261】
融合タンパク質によるTGFβ1及びTGFβ3活性の阻害。タンパク質61、96、101、107、及び112の阻害効力を決定するために、TGFβ中和を評価し、阻害効力を、陽性対照(T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)、Fc部分を介して結合された2つのTGFβRII-ECDダブレット(配列番号6))のものと比較した。単一の非FC融合TGFβRII細胞外ドメイン(配列番号1)が、TGFβ1、β2、又はβ3のいずれも中和しないことが留意されるべきである(De Crescenzo et al,2004)。「阻害効力」及び「中和効力」という用語は、本明細書において同義的に使用される。
【0262】
精製された融合タンパク質のTGFβ中和効力を、細胞ベースのシグナル伝達アッセイ、特に、比色分析ELISAを用いたA549細胞/IL-11放出アッセイを用いて決定した。簡潔に述べると、ヒトA549肺癌細胞(ATCC-CCL-185、Cedarlane Burlington ON)を、96ウェルプレート(5×10個の細胞/ウェル)に播種し、加湿雰囲気中で、37℃、5%のCOでインキュベートした。翌日、増加する濃度の融合タンパク質の非存在下又は存在下で完全培地中の10pMのTGFβを、室温(RT)で30分間インキュベートしてから、細胞に加えた。24時間(h)のインキュベーションの後、調整された培地を収集し、4℃で貯蔵した。翌日、IL-11 ELISAを、製造業者の説明書(ヒトIL-11 Duoset ELISA Kit、Cat# DY218、R&D Systems,Inc.)にしたがって行った。このIL-11放出アッセイは、TGFβ媒介性シグナル伝達のモデルとして働く:TGFβ処置後の相対IL-11放出が、TGFβ活性の尺度である。試験融合タンパク質の添加後のIL-11放出の減少は、TGFβ活性を示す。データをプロットし、Prism8(GraphPad、San Diego)を用いて分析して、4-パラメータフィットロジスティックモデル(吸光度対濃度)を用いて吸光度値から用量反応曲線を生成した。次に、値を、陽性対照に対して正規化した(任意の阻害剤の非存在下でのTGFβ処置)。
【0263】
代表的な組の実験からの結果が、図4A及び4Bに示され、TGFβ1及びTGFβ3に対するタンパク質61、96、101、107、及び112の阻害効力を、陽性対照(配列番号6)と比較した。最も高い効力が、陽性対照で見られた。しかしながら、陽性対照はまた、TGFβ3:TGFβ1について最も高いIC50比(この実験において3.41)を有していた。対照的に、タンパク質61、96、101、107、及び112のTGFβ3:TGFβ1 IC50比は、この実験においてそれぞれ1.66、1.72、1.51、1.24、及び1.95であった(図4A~4B)。
【表5】
【0264】
結果は、リンカー領域の改変、特に、第1のリンカー領域の短縮及び第2のリンカー領域の延長が、TGFβ3:TGFβ1 IC50比を有意に低下させたことを示し、これは、阻害効力をピコモル範囲内にまだ維持しながら、TGFβ1の優先的な阻害の減少を示す。
【0265】
別の組の代表的な結合剤が、図5A~5Bに示され、これは、非還元(図5A)及び還元(図5B)条件下で、精製されたタンパク質112、111、106、105、104、101、99、及び71のそれぞれからのサンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動分析を示す。
【0266】
図6A~6Bに示される代表的な組の実験において、陽性対照(配列番号6)と比較したタンパク質113、115及び116の中和効力が示される。結果が、表5にも示される。結果は、これらのタンパク質の阻害効力が、TGFβ1に対して対照と同等であったが、TGFβ3に対して有意に高く、有意に低いTGFβ3:TGFβ1 IC50比をもたらしたことを示す。
【0267】
図7A~7Bに示される代表的な組の実験において、陽性対照(配列番号6)と比較したタンパク質101、129、及び130の中和効力が示される。結果が、表5にも示される。結果は、これらのタンパク質の阻害効力が、対照と比較してTGFβ1に対してより低く、TGFβ3に対してほぼ同じ(P101、P130)又はより低く(P129)、有意に低いTGFβ3:TGFβ1 IC50比をもたらしたことを示す。
【0268】
図8A~8Bに示される代表的な組の実験において、陽性対照(配列番号6)と比較したタンパク質101、131、132、及び133の中和効力が示される。結果が、表5にも示される。結果は、これらのタンパク質の阻害効力が、対照と比較してTGFβ1に対してより低く、TGFβ3に対してほぼ同じか又はより高く、有意に低いTGFβ3:TGFβ1 IC50比をもたらしたことを示す。
【0269】
図9A~9Bに示される代表的な組の実験において、陽性対照(配列番号6)と比較したタンパク質96、134、及び135の中和効力が示される。結果が、表5にも示される。結果は、これらのタンパク質の阻害効力が、対照と比較してTGFβ3に対してよりTGFβ1に対してより低下され、それにより、TGFβ3:TGFβ1 IC50比が、対照についてより有意に低かったことを示す。タンパク質134及び135を、タンパク質96と比較して、結果は、第1のリンカー又は第2のリンカーのいずれかを、Gly-Serリンカーで置き換えると、低いTGFβ3:TGFβ1 IC50比を維持しながら、TGFβ1及びTGFβ3の両方に対する阻害効力を有意に低下させたことを示す。
【0270】
多量体化ドメインは、TGFβアイソフォーム特異性に影響を与えない。同じTGFβ結合領域を有し、多量体化ドメインのみが異なるTGFβ結合剤が、もしあれば、多量体化ドメインがTGFβ1及びTGFβ3アイソフォームに対する相対阻害効力に対してどのような影響を与えるかを調べるために試験された。結果が、図10A~10B(これは、陽性対照(配列番号6)と比較したタンパク質101及び128の中和効力を示す)、及び表5に示される。図10A~10Bは、1つの代表的なアッセイを示し;いくつかのアッセイから平均された結果が、表5に示される。結果は、IgG1(タンパク質101)からIgG4(タンパク質128)への多量体化ドメインの変化が、予想どおり、TGFβ1及びTGFβ3に対する阻害効力に対する有意な影響を有していなかったことを示す。同じ結果が、タンパク質61及び96、並びにタンパク質113及び115について得られた(表5)。
【0271】
TGFβ2アイソフォームの中和。本発明者らはまた、TGFβ2の相対阻害が、本明細書において提供されるTGFβ結合剤によって、対照と比較して影響されたかどうかを試験した。代表的な組の実験が、図11に示される。タンパク質61、96、及び101について図11に示されるように、TGFβ2アイソフォームに対する中和効力は、TGFβ1及びTGFβ3アイソフォームに対するより1000倍超低く(言い換えると、IC50が、1000倍超高かった)、これは、対照と同じである。結果は、TGFβ1及びTGFβ3アイソフォームに対する相対阻害効力の均一化又は変化が、TGFβ2アイソフォームの非常に低い阻害に対して有意な影響を有さなかったことを実証する。
【0272】
総合すると、本明細書において報告される結果は、第1のリンカー領域を、34個未満のアミノ酸に短縮すること、及び/又は第2のリンカー領域を、10個超のアミノ酸に延長することが、これらの結合剤についてのTGFβ3:TGFβ1 IC50比を低下させるのに有効であったことを示し、ある場合には2つのアイソフォームに対する阻害効力をほぼ均一化する。ある場合には、TGFβ3:TGFβ1 IC50比は、TGFβ1に対する効力に悪影響を与えずにTGFβ3に対する阻害効力を増加させることによって低下されたことが留意されるべきである(例えば、タンパク質113、115、116)。他の場合、この比率は、主に、TGFβ3に対する効力に悪影響を与えずにTGFβ1に対する阻害効力を低下させることによって低下された(例えば、タンパク質61、96、101、107、128)が、ある場合には、TGFβ3効力のわずかな減少も観察された。それにもかかわらず、全ての結合剤は、TGFβ2に対するよりTGFβ1及びTGFβ3の両方に対する有意に高い阻害効力を維持し、これは、TGFβ関連障害、特に、特に、TGFβ3によって媒介される障害の治療のための治療薬としてのそれらの潜在的な使用と合致している。
【0273】
参考文献
Akhurst,R.J.and Hata,A.Targeting the TGFβ signaling pathway in disease.Nat.Rev.Drug Discov.2012;11:790-811.
Akhurst,R.J.Targeting TGF-β signaling for therapeutic gain.Cold Spring Harbor Perspect.Biol.2017;3;9:a022301.
Allanore,Y.,Simms,R.,and Distler.Systemic Sclerosis.Nat.Rev.Dis.Primers.2015;1:15002.
Baardsnes,J.,Hinck,C.S.,Hinck,A.P.,O’Connor-McCourt,M.D.TbetaR-II Discriminates the High- And Low-Affinity TGF-beta Isoforms via Two Hydrogen-Bonded Ion Pairs.Biochemistry.2009;48(10):2146-55.
Boocock,G.R.,Morrison,J.A.,and Popovic,M.Mutations in SBDS are associated with Shwachman-Diamond syndrome.Nature Genetics.2003;23:97-101.
Bragado,P.,Estrada,Y.,and Parikh,F.TGFβ2 dictates disseminated tumour cell fate in target organs through TGFβ-RIII and p38β/β signaling.Nat.Cell.Biol.2013;15:1351-1361.
De Crescenzo,G.,Pham,P.L.,Durocher,Y.,Chao,H.and O’Connor-McCourt,M.D.Enhancement of the antagonistic potency of transforming growth factor-beta receptor extracellular domains by coiled coil-induced homo- and heterodimerization.J.Biol.Chem.2004;279(25),26013-26018.
Desmouliere,A.,Geinoz,A.,Gabbiani,F.,and Gabbiani,G.Transforming growth factor-beta 1 induces alpha-smooth muscle actin expression in granulation tissue myofibroblasts and in quiescent and growing cultured fibroblasts.The Journal of Cell Biology.1993;122(1):103-11.
Durocher,Y.,Perret,S.,and Kamen,A.High-level and High-Throughput Recombinant Protein Production by Transient Transfection of Suspension-Growing Human 293-EBNA1 Cells.Nucleic Acids Res.2002;30(2):E9.
Gabrielli,A.,Avvedminento,E.V.,and Krieg,T.Scleroderma.New England Journal of Medicine.2009;360:1989-2003.
Gourh,P.,Remmers,E.F.,and Satpathy,A.Transforming Growth Factor Beta 3 (TGFB3)-a Novel Systemic Sclerosis Susceptibility Locus Involved in Fibrosis and Th17 Cell Development Identified By Genome-Wide Association Study in African Americans from the Genome Research in African American Scleroderma Patients Consortium.Arthritis Rheumatol.2017;69 (suppl 10).
Grutter,C.,Wilkinson,T.,Turner,R.,Podichetty,S.,Finch,D.,McCourt,M.,Loning,S.,Jermutus,L.,and Grutter,M.G.A Cytokine-Neutralizing Antibody as a Structural Mimetic of 2 Receptor Interactions.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2008;105(51):20251-6.
Herbertz,S.,Sawyer,J.S.,and Stauber,A.J.Clinical development of galunisertib (LY2157299 monohydrate),a small molecule inhibitor of transforming growth factor-beta signaling pathway.Drug Design,Development and Therapy.2015;5:4479-4499.
Hunzelmann,N.and Krieg,T.Scleroderma:from pathophysiology to novel therapeutic approaches.Experimental Dermatology.2010;19(5):393-400.
Komai,I.D.and Okamura,T.Reevaluation of Pluripotent Cytokine TGF-β3 in Immunity.Int.J.Mol.Sci.2018;19:2261.
Kissin,E.Y.,Merkel,P.A.,and Lafyatis,R.Myofibroblasts and hyalinized collagen as markers of skin disease in systemic sclerosis.Arthritis and Rheumatism.2006;54(11):3655-60.
Lacouture,M.E.and Morris,J.C.Cutaneous keratoacanthomas/squamous cell carcinomas associated with neutralization of transforming growth factor β by the monoclonal antibody fresolimumab (GC1008).Cancer Immunol.Immunother.2015;64:437-446.
Langer,J.C.,Henckaerts,E.,Orenstein,J.,and Snoeck,H.W.Quantitative trait analysis reveals transforming growth factor-beta2 as a positive regulator of early hematopoietic progenitor and stem cell function.J.Exp.Med.2004;199(1):5-14.
Lafyatis,R.Transforming growth factor β--at the centre of systemic sclerosis.Nature reviews Rheumatology.2014;10(12):706-19.
Leask,A.Targeting the TGFβ,endothelin-1 and CCN2 axis to combat fibrosis in scleroderma.Cell Signal.2008;20(8):1409-14.
Li,M.O.,Wan,Y.Y.,Sanjabi,S.,Robertson,A.K.,and Flavell,R.A.Transforming growth factor-β regulation of immune responses.Annu.Rev.Immunol.2006;24,99-146.
Martin,C.J.,Datta,A.,Littlefield,C.,Kalra,A.,Chapron,C.,Wawersik,S.,Dagbay,K.B.,Brueckner,C.T.,Nikiforov,A.,Danehy Jr.,F.T.,Streich Jr.,F.C.,Boston,C.,Simpson,A.,Jackson,J.W.,Lin,S.,Danek,N.,Faucette,R.R.,Raman,P.,Capili,A.D.,Buckler,A.,Carven,G.J.,and Schurpf,T.Selective Inhibition of TGFβ1 Activation Overcomes Primary Resistance to Checkpoint Blockade Therapy by Altering Tumor Immune Landscape.Sci.Transl.Med.2020;12(536):eaay8456.
Mayes,M.D.,Lacey,J.V.,and Beebe-Dimmer,J.Prevalence,incidence,survival,and disease characteristics of systemic sclerosis in a large US population.Arthritis Rheum.2003;48:2246-2255.
Meng,X.-M.,Nikolic-Paterson,D.J.,and Lan,H.Y.TGF β:the master regulator of fibrosis.Nat.Rev.Nephrology.2016;12:325-338.
Midgley,A.C.,Rogers,M.,Hallett,M.B.,Clayton,A.,Bowen,T.,and Phillips,A.O.Transforming growth factor-β1 (TGF-β1)-stimulated fibroblast to myofibroblast differentiation is mediated by hyaluronan (HA)-facilitated epidermal growth factor receptor (EGFR) and CD44 co-localization in lipid rafts.The Journal of Biological Chemistry.2013;288(21):14824-38.
Morris,J.C.,Tan,A.R.,Olencki,T.E.,Shapiro,G.I.,Dezube,B.J.,Reiss,M.,Hsu,F.J.,Berzofsky,J.A.,and Lawrence,D.P.Phase I Study of GC1008 (Fresolimumab):A Human Anti-Transforming Growth Factor-Beta (TGFβ) Monoclonal Antibody in Patients With Advanced Malignant Melanoma or Renal Cell Carcinoma.PLoS One.2014;9(3):e90353.
Nanthakumar,D.B.,Hatley,R.J.D.,and Lemma,S.Dissecting fibrosis:therapeutic insights from the small-molecule toolbox.Nat.Rev.Drug Disc.2015;14:693-720.
Prud’homme,G.J.Pathobiology of transforming growth factor beta in cancer,fibrosis and immunologic disease,and therapeutic considerations.Lab Invest.2007;87(11):1077-91.
Rice,L.M.,Ziemek,J.,and Stratton,E.A.A longitudinal biomarker for the extent of skin disease in patients with diffuse cutaneous systemic sclerosis.Arthritis Rheumatol.2015;67:3004-3015.
Rio,P.and Bueren,J.A.TGF-β:a master regulatory of the bone marrow failure puzzle in Fanconi anemia.Stem Cell Investig.2016;3:75 doi:10.21037/sci.2016.09.17.
Roberts,A.B.,Roche,N.S.,and Winokur,T.S.Role of transforming growth factor-beta in maintenance of function of cultured neonatal cardiac myocytes.Autocrine action and reversal of damaging effects of interleukin-1.J.Clin.Invest.1992;90(5):2056-2062.
Rogers,Z.R.Shwachman-Diamond Syndrome.2018.UpToDate;https://www.uptodate.com/contents/shwachman-diamond-syndrome/print.
Tatusova,T.A.and Madden,T.L. Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences.FEMS Microbiol Lett.1999;174:247-250.
Todd,N.W.,Atamas,S.P.,Luzina,I.G.,and Galvin,J.R.Permanent alveolar collapse is the predominant mechanism in idiopathic pulmonary fibrosis.Expert Review of Respiratory Medicine.2015;9(4):411-8.
Vannucchi,A.M.,Bianchi,L.,and Paoletti,F.A pathobiologic pathway linking thrombopoietin,GATA-1,and TGF-beta1 in the development of myelofibrosis.Blood.2005;105:3493-501.
Varga,J.and Abraham,D.Systemic sclerosis:a prototypic multisystem fibrotic disorder.J.Clin.Invest.2007;117:557-567.
Varga,J.and Pasche,B.Antitransforming growth factor-β therapy in fibrosis:recent progress and implications for systemic sclerosis.Current Opinion in Rheumatology.2008;20(6):720-8.
Varga,J.and Whitfield,M.L.Transforming growth factor-beta in systemic sclerosis scleroderma.Frontiers in Bioscience :a journal and virtual library.2009;S1(1):226-35.
Vincenti,F.,Fervenza,F.C.,Campbell,K.N.,Diaz,M.,Gesualdo,L.,Nelson,P.,Praga,M.,Radhakrishnan,J.,Sellin,L.,Singh,A.,Thornley-Brown,D.,Veronese,F.V.,Accomando,B.,Engstrand,S.,Ledbetter,S.,Lin,J.,Neylan,J.,Tumlin,J.,Focal Segmental Glomerulosclerosis Study Group.A Phase 2,Double-Blind,Placebo-Controlled,Randomized Study of Fresolimumab in Patients With Steroid-Resistant Primary Focal Segmental Glomerulosclerosis.Kidney Int.Rep.2017;2(5):800-810.
Wang,J.C.,Chang,T.H.,and Goldberg,A.Quantitative analysis of growth factor production in the mechanism of fibrosis in agnogenic myeloid metaplasia.Exp.Hematol.2006;34(12):1617-23.
Wang,H.,Wang,B.,Zhang,A.,Hassounah,F.,Seow,Y.,Wood,M.,Ma,F.,Klein,J.D.,Price,S.R.,and Wang,X.H.Exosome-Mediated miR-29 Transfer Reduces Muscle Atrophy and Kidney Fibrosis in Mice.Mol.Ther.2019;27(3):571-583.
Zhang,H.,Korono,D.E.,and O’Connor,K.W.Stem cell defects and bone marrow failure in Fanconi anemia.Cell Stem Cell.2016;18:668-681.
【0274】
本明細書に引用される全ての文献及び参考文献は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0275】
本発明は、その実施形態を参照して詳細に説明されるが、これらの実施形態は、本発明を限定するためではなく、本発明を例示するために提供される。本発明の原理を用いる他の実施形態並びにその趣旨及び添付の特許請求の範囲によって規定される範囲に含まれる他の実施形態を作製することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2023530433000001.app
【国際調査報告】