(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】キメラRSVおよびコロナウイルスタンパク質、免疫原性組成物、ならびに使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/50 20060101AFI20230710BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20230710BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230710BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230710BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20230710BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230710BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230710BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
C12N15/50
A61K39/215 ZNA
A61P31/14
A61P37/04
C07K14/165
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577349
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 US2021037846
(87)【国際公開番号】W WO2021257841
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522485981
【氏名又は名称】メイッサ ヴァクシーン,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEISSA VACCINES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ティオニ,マリアナ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF02
4C085FF11
4C085FF14
4C085GG10
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、概しては、第1のウイルス融合タンパク質のエクトドメインおよび任意選択的に膜貫通ドメイン(例えば、コロナウイルスのスパイクタンパク質)および第2のウイルス融合タンパク質(例えばRSV)の細胞質ドメインを含むキメラウイルス融合タンパク質、そのようなキメラタンパク質を含む免疫原性組成物、ならびにその使用方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質のエクトドメインおよびRSV融合(F)タンパク質の細胞質テイル部分を含むキメラタンパク質。
【請求項2】
N末端からC末端への方向において、前記SARS-CoV-2スパイクタンパク質の前記エクトドメインおよび前記RSV融合(F)タンパク質の前記細胞質テイル部分を含む、請求項1に記載のキメラタンパク質。
【請求項3】
前記SARS-CoV-2スパイクタンパク質の膜貫通部分をさらに含む、請求項1に記載のキメラタンパク質。
【請求項4】
配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択される配列または配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項1に記載のキメラタンパク質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のキメラタンパク質をコードする核酸を含む生キメラウイルスを含む免疫原性組成物。
【請求項6】
前記核酸が、配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される配列または配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアント、または上述のいずれかのRNA対応物、または上述のいずれかの相補的配列を含む、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
RSVのNS1および/またはNS2タンパク質をさらに含む、請求項5または請求項6に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記生キメラウイルスが、RSV Gタンパク質をコードする遺伝子を含まない、請求項5~7のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
アジュバントおよび/または他の医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項5~8のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記アジュバントが、アルミニウムゲル、アルミニウム塩、またはモノホスホリルリピドAである、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記アジュバントが、α-トコフェロール、スクアレン、および/または界面活性剤を任意選択的に含む水中油エマルションである、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
SARS-CoV-2ウイルスに対して対象を免疫化する方法であって、前記対象に有効量の請求項4~11のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記投与が鼻腔内投与である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫原性組成物が約10
3~約10
6の用量で投与される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫原性組成物の投与が、SARS-CoV-2スパイク特異的粘膜IgA応答を誘導するかまたは血清中和抗体を生成する、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1または請求項2に記載のキメラタンパク質をコードする核酸。
【請求項17】
配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される配列または配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアント、または上述のいずれかのRNA対応物、または上述のいずれかの相補的配列を含む、請求項16に記載の核酸。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の核酸を含むベクター。
【請求項19】
プラスミドまたは細菌人工染色体から選択される、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
配列番号54~59、66、67、72、73、78、79、84、85、90、91、96、97、102、103、114、115、および131~136からなる群から選択される配列または配列番号54~59、66、67、72、73、78、79、84、85、90、91、96、97、102、103、114、115、および131~136からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアントを含む細菌人工染色体である、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
RSVのNS1および/またはNS2タンパク質ならびに請求項1または請求項2に記載のキメラFタンパク質を含む、単離された組換え粒子。
【請求項22】
弱毒生キメラRSV-SARS-CoV-2ゲノムまたはアンチゲノムを含む、請求項21に記載の単離された組換え粒子。
【請求項23】
配列番号13~18、65、71、77、83、89、95、101、104~109、および113からなる群から選択される配列または配列番号13~18、65、71、77、83、89、95、101、104~109、および113からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアント、または上述のいずれかのRNA対応物、または上述のいずれかの相補的配列を含む、弱毒生キメラRSV-SARS-CoV-2アンチゲノム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月17日に出願された米国仮特許出願第63/040,193号;2021年3月12日に出願された米国仮特許出願第63/160,445号;および2021年5月27日に出願された米国仮特許出願第63/194,092号の利益および優先権を主張し、これらの各々の開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含有し、該配列表は参照により全体が本明細書に組み込まれる。2021年6月16日に作成された前記ASCIIコピーは、MSA-007WO_SL.txtという名称であり、1,822,459バイトのサイズである。
【0003】
発明の分野
本発明は、概しては、キメラRSVおよび非RSVタンパク質(例えば、非ニューモウイルス科、例えばコロナウイルス)、そのようなキメラタンパク質を含む免疫原性組成物、ならびにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
コロナウイルス科は、鳥、魚、および哺乳動物において呼吸器および胃腸疾患の原因となる大きいエンベロープ型一本鎖RNAウイルスのファミリー(科)である。該科は、最初のコロナウイルス(CoV)系統が発見された1960年代に報告された、ビリオン表面上の冠に似たスパイクタンパク質の電子顕微鏡法下での特徴的外見からその名称が派生されている(Kahn et al.(2005)The Pediatric Infectious Disease Journal,24(11),S223-S227)。CoVの間で共有されるコアとなる特色は、100~160nmの範囲に及ぶビリオン直径、宿主細胞に結合する上述のスパイク(S)タンパク質、膜(M)糖タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質、ヌクレオカプシド(N)タンパク質、および27~32kbの長さの範囲に及ぶポジティブセンス一本鎖RNAゲノムを含む(Cui et al.(2019)Nature Reviews Microbiology,17(3),181-192)。遺伝子系統発生に基づいて、すべての既知のヒトコロナウイルス(HCoV)は、オルトコロナウイルス亜科、特にアルファおよびベータコロナウイルス属におけるものである。
【0005】
ある特定のHCoVは世界的に風土性のものであり、免疫適格宿主において無症候性から中等度の重症度である季節性上または下気道感染症を引き起こす。これらの4つの系統(HCoV-229E、-NL63、-OC43、および-HKU1)は、合わせて成人上気道感染症の10~30%を引き起こし(Paules et al.(2020)JAMA,323(8),707-708)、急性呼吸器病を有する小児の8.2~10.8%において検出されている(Varghese et al.(2018)Journal of the Pediatric Infectious Diseases Society,7(2),151-158)。2002年および2012年に2つの高度に病原性のベータ-コロナウイルスが保菌動物から出現してヒトに感染し、重症の、生命を脅かす呼吸器疾患の多国家での蔓延のトリガーとなった。重症急性呼吸器症候群(SARS)-CoVにより引き起こされたパンデミックは、8か月後に封じ込められる前に、11%の累積致命率(CFR)に直面した29か国において8000を上回る感染個体を結果としてもたらした(世界保健機関(WHO)2020)。対照的に、中東呼吸器症候群(MERS)-CoVは、アラビア半島において依然として蔓延しており、そこで2500近い症例、および34%のCFRと共に27か国において850を上回る死を引き起こしている(WHO 2019)。SARS-CoVまたはMERS-CoVのために利用可能な認可された治療用または予防用ワクチンはない。
【0006】
2019年12月に中国の武漢において始まったCOVID-19の世界的なパンデミックは、高度伝染性の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)により引き起こされる(Coronaviridae Study Group of the International Committee on Taxonomy of Viruses(2020)Nat Microbiol.5(4):536-544)。COVID-19は、高齢者および深刻な基礎となる医学的状態、例えば心臓または肺疾患および糖尿病を有する患者において約2%の全体死亡率を有する。2021年5月18日時点で、世界中で合計3,386,825人の死亡と共に163,312,429人のSARS-CoV-2感染症の症例が確認された(WHOダッシュボード、ウェブサイトcovid19.who.int/)。
【0007】
SARS-CoV-2は、エンベロープ型RNAウイルスであり、宿主細胞への侵入のためにその表面糖タンパク質、スパイクに依拠する(Letko et al.(2020)Nat Microbiol.5(4):562-569、Shang et al.(2020)Proc Natl Acad Sci USA.117(21):11727-11734)。スパイクタンパク質は、I型融合タンパク質であり、電子顕微鏡法下で冠の特徴的な外見をウイルスに与えるウイルス膜上で突出する三量体を形成する(Turonova et al.(2020)Science 370(6513):203-208;Li(2005)Annu Rev Virol.3(1):237-261)。アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)がSARS-CoV-2スパイクのための細胞受容体として同定されている(Letko et al.、上掲;Hoffmann et al.(2020)Cell 181(2):271-280)。ACE2とスパイクの受容体結合ドメイン(RBD)との相互作用の妨害は、ワクチン設計および治療学のコアとなる。現在、3つのCOVID-19ワクチンが米国において救急使用のために承認されている(CDC、「Authorized and Recommended Vaccines」、ウェブサイトcdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/different-vaccines.html)。3つのワクチンは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に基づき、それらの高いレベルの有効性は、感染防御抗原としてスパイクを検証した。しかしながら、既存のワクチンにもかかわらず、2021年5月20日時点で、15.6億回のワクチン用量のみが投与されており、これは100人当たり20用量に等しい。一部の国は、何らのワクチン用量の投与も報告していない。
【0008】
現行で使用されているすべてのEUAワクチンは筋肉内に送達され、それらのいずれも弱毒生ではない。弱毒生ワクチン(LAV)は、多くの場合に、それらが標的化する病原体と同じ侵入の経路を使用し、宿主中で複製されて疾患を引き起こすことなく天然の感染症を模倣する。結果として、LAVは、感染の部位において粘膜免疫を生成させて、感染の最初期相において病原体を遮断するため、全身性の拡散を制御することを助ける(Holmgren et al.(2005)Nat Med.11(4 Suppl):S45-53)。インフルエンザ感染症の場合、LAVは、他のワクチンタイプと比べてより良好な粘膜IgAおよび細胞媒介性免疫を誘導して、天然の免疫により緊密に似ているより長い持続性のより広い免疫応答を誘発することが示されている(Cox et al.(2004)Scand J Immunol.59(1):1-15)。さらには、マウスにおいてSARS-CoVに対して筋肉内におよび鼻腔内に投与されたワクチンの比較は、血清IgAは鼻腔内ワクチン接種後にのみ誘導され(See et al.(2006)J Gen Virol.87(Pt 3):641-650を参照)、鼻腔内ワクチン接種のみが上気道および下気道の両方において保護を提供する(Hassan et al.(2020)Cell 183(1):169-184.e13)ことを示した。特にSARS-CoV-2について、早期抗体応答はIgAにより支配されることおよび粘膜IgAは高度に中和性であることが報告されており(Sterlin et al.(2021)Sci Transl Med.13(577):eabd2223)、粘膜免疫を誘発する能力を有する鼻腔内ワクチンを開発する重要性を強調している。WHOワクチン追跡によれば、現行で101のワクチンが臨床試験されており、それらの3つのみが鼻腔内弱毒生ワクチンである(「The Landscape of candidate vaccines in clinical development」、ウェブサイトwho.int/publications/m/item/draft-landscape-of-covid-19-candidate-vaccines、2021年5月14日の時点で、WHOによる作成)。これらの候補弱毒生ワクチンは、しかしながら、野生型コロナウイルスとの同時感染の間に弱毒化の喪失を結果としてもたらし得るコロナウイルスにおいて観察される高い率のRNA組換えを受けやすいことがある。
【0009】
よって、COVID-19疾患を予防するかまたはその重症度を減少させるための、ワクチンを包含する、免疫原性組成物に対する必要性が当技術分野において存在する。組換えを受けにくい、ならびに粘膜免疫応答および液性免疫応答の両方を生成する、ならびに高い収率で製造され得る、ニードルフリーの鼻腔内ワクチンの開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、ウイルス感染症の予防用の免疫原性組成物(例えば、ワクチン)において使用され得る2つのウイルス融合タンパク質の部分を含むキメラタンパク質の発見に部分的に基づく。本明細書に記載されるキメラタンパク質は、RSVウイルスの構成要素(例えばコドン脱最適化されたRSV遺伝子によりコードされるタンパク質)を含むが、ウイルスの表面上の融合タンパク質を発現するワクチン構築物において使用され得る。第1の融合タンパク質の部分(例えば、融合タンパク質のエクトドメイン)および第2の融合タンパク質の部分(例えば、第2の融合タンパク質の細胞質テイル)を有するキメラタンパク質は、RSV粒子へのキメラタンパク質の適正なアセンブリーを促進する。
【0011】
ある特定の実施形態において、本開示は、コロナウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症)の予防用の免疫原性組成物(例えば、ワクチン)において使用され得る非RSVウイルス(RSVではない任意のウイルス)からの融合タンパク質、例えばコロナウイルススパイクタンパク質または「Sタンパク質」;例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、およびRSV Fタンパク質を含むキメラタンパク質に関する。本明細書に記載されるキメラタンパク質は、RSVウイルスの構成要素(例えばコドン脱最適化されたRSVタンパク質)を含むがウイルスの表面上の非RSV融合タンパク質(例えば、キメラコロナウイルスSタンパク質/RSV Fタンパク質)を発現するワクチン構築物において使用され得る。非RSV融合タンパク質の部分(例えば、エクトドメインおよび任意選択的に膜貫通部分)ならびにRSV Fタンパク質の部分(例えば、細胞質テイル部分)を有するキメラタンパク質は、RSV粒子へのキメラタンパク質の適正なアセンブリーを促進する。
【0012】
他の実施形態において、細胞質テイル部分は非RSV融合タンパク質、例えばオルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)のHAタンパク質;レトロウイルス科のEnvタンパク質;パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザ、麻疹、およびおたふく風邪ウイルス)のFおよび/またはHNタンパク質;コロナウイルス科のSタンパク質;フィロウイルス科のGPタンパク質;アレナウイルス科のGPおよび/またはSSPタンパク質;トガウイルス科のE1/E2タンパク質;フラビウイルス科のE(例えば、TBEVにおけるもの)またはE1/E2(例えば、HCVにおけるもの)タンパク質;ブニヤウイルス科のGN/GCタンパク質;ラブドウイルス科(VSVおよび狂犬病)のGタンパク質;ヘルペスウイルス科のgB、gD、および/またはgH/Lタンパク質;ポックスウイルス科における8つのタンパク質の複合体の1つ以上;ならびにヘパドナウイルス科のSおよび/またはLタンパク質である。
【0013】
ある特定の実施形態において、本開示は、本明細書に記載されているキメラタンパク質を、1つ以上のRSVタンパク質(例えば、NS1およびNS2タンパク質であって、NS1および/またはNS2タンパク質は、任意選択的に、コドン脱最適化された遺伝子によりコードされる)と共に含む免疫原性組成物に関する。本明細書に記載される免疫原性組成物は、ある特定の実施形態において、G遺伝子を含むことができるが、他の実施形態において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)はRSV G遺伝子を含まない。理論により縛られることを望まないが、ある特定の融合タンパク質、例えばコロナウイルスSタンパク質は、受容体付着およびウイルス-細胞融合の両方を媒介するため、RSV G遺伝子は必要とされないと考えられる。実際に、コロナウイルススパイクタンパク質は、ウイルス侵入のために十分に機能的、必要および十分である。本明細書において実施例2に記載されるように、GおよびFタンパク質を欠いた組換えRSV-スパイクウイルスは、宿主細胞に侵入することができ、組換えウイルスは、侵入のためにキメラコロナウイルススパイク/RSV Fタンパク質に完全に依拠することを指し示す。さらに、既知のRSV中和抗体は主にFまたはGに対するものであるため、RSV GおよびFを除去することにより、結果としてもたらされる免疫原性組成物は、既存のRSV免疫により阻害されないはずである。
【0014】
ある特定の実施形態において、本開示は、世界的な免疫化のために有利な鼻腔内にニードルフリー経路で投与される本明細書に記載されているキメラ融合タンパク質を含むワクチンに関する。鼻腔内経路は、SARS-CoV-2の感染の天然の経路に類似しており、いかなるアジュバント製剤もなしにAGMにおいて粘膜免疫応答および液性免疫応答の両方を生成する。本明細書に開示されるワクチンの製造からの収率に基づくモデリングは、高強度バイオリアクターシステムを使用する中サイズの設備において年間数億もの用量の潜在的な用量出力を見積もる。粘膜に送達された弱毒生ワクチン、例えば本明細書に記載されるものは、最小の下流の加工を必要とし、既存のワクチンよりも製造のためにより安価であり得る。さらに、ニードルフリー送達は供給リスクを低減させる。本明細書に記載されるワクチンは、一次ワクチンまたは異種ブースターとして好適である。
【0015】
よって、1つの態様において、本開示は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のエクトドメインおよびRSV融合(F)タンパク質の細胞質テイル部分を含むキメラタンパク質に関する。ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、N末端からC末端への方向において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のエクトドメイン、およびRSV融合(F)タンパク質の細胞質テイル部分を含む。ある特定の実施形態において、キメラタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質の膜貫通ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態において、キメラタンパク質はRSV融合タンパク質の膜貫通ドメインをさらに含む。
【0016】
ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択される配列または配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0017】
別の態様において、本開示は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のエクトドメインおよびRSV融合(F)タンパク質の細胞質テイル部分を含むキメラタンパク質をコードする核酸を含む生(例えば、弱毒生)キメラウイルスを含む免疫原性組成物に関する。ある特定の実施形態において、核酸は、N末端からC末端への方向において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のエクトドメインおよびRSV融合(F)タンパク質の細胞質テイル部分を含むキメラタンパク質をコードする。ある特定の実施形態において、核酸は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の膜貫通ドメインをさらに含むキメラタンパク質を含む。ある特定の実施形態において、核酸は、RSV融合タンパク質の膜貫通ドメインをさらに含むキメラタンパク質を含む。
【0018】
ある特定の実施形態において、核酸は、配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択される配列または配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアントを含むキメラタンパク質をコードする。ある特定の実施形態において、核酸は、配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される配列、または配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するその断片もしくはバリアント、または上述のいずれかのRNA対応物、または上述のいずれかの相補的配列を含む。
【0019】
DNA配列として表現される(すなわち、「T」ヌクレオチドを使用する)ウイルス核酸配列について、「U」ヌクレオチドが「T」ヌクレオチドのために代用される対応するRNA配列もまた想定されることが理解される。さらに、アンチゲノム配列(例えば、発現ベクターにおいて見出されるようなもの)が提供される場合、免疫原性組成物において見出されるような相補的配列(例えば、ウイルスのゲノムおよび/またはワクチン配列)もまた想定されることが理解される。
【0020】
ある特定の実施形態において、生キメラウイルスはRSVのNS1および/またはNS2タンパク質をさらに含む。ある特定の実施形態において、生キメラウイルスは、RSV Gタンパク質をコードする遺伝子を含まない。
【0021】
ある特定の実施形態において、免疫原性組成物は、アジュバントおよび/または他の医薬的に許容される担体をさらに含む。ある特定の実施形態において、アジュバントは、アルミニウムゲル、アルミニウム塩、またはモノホスホリルリピドAである。ある特定の実施形態において、アジュバントは、α-トコフェロール、スクアレン、および/または界面活性剤を任意選択的に含む水中油エマルションである。
【0022】
別の態様において、本開示は、SARS-CoV-2ウイルスに対して対象を免疫化する方法であって、対象に有効量の本明細書に記載されている免疫原性組成物を投与することを含む、方法に関する。ある特定の実施形態において、投与は鼻腔内投与である。ある特定の実施形態において、免疫原性組成物は、約103~約106の用量で投与される。ある特定の実施形態において、免疫原性組成物の投与は、SARS-CoV-2スパイク特異的粘膜IgA応答を誘導するかまたは血清中和抗体を生成する。
【0023】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載されているキメラタンパク質をコードする核酸に関する。ある特定の実施形態において、核酸は、配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される配列または配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアントの断片、または上述のいずれかのRNA対応物、または上述のいずれかの相補的配列を含む。
【0024】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載されている核酸を含むベクターに関する。ある特定の実施形態において、ベクターは、プラスミドまたは細菌人工染色体から選択される。ある特定の実施形態において、ベクターは、配列番号54~59、66、67、72、73、78、79、84、85、90、91、96、97、102、103、114、115、および131~136からなる群から選択される配列または配列番号54~59、66、67、72、73、78、79、84、85、90、91、96、97、102、103、114、115、および131~136からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアントを含むBACである。
【0025】
別の態様において、本開示は、RSVのNS1および/またはNS2タンパク質ならびに本明細書に記載されているキメラSARS-CoV-2スパイクタンパク質-RSV融合(F)タンパク質を含む単離された組換え粒子に関する。ある特定の実施形態において、単離された組換え粒子は、弱毒生キメラRSV-SARS-CoV-2ゲノムまたはアンチゲノムを含む。
【0026】
別の態様において、本開示は、配列番号13~18、65、71、77、83、89、95、101、104~109、および113からなる群から選択される配列または配列番号13~18、65、71、77、83、89、95、101、104~109、および113からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアント、または上述のいずれかのRNA対応物、または上述のいずれかの相補的配列を含む弱毒生キメラRSV-SARS-CoV-2アンチゲノムに関する。
【0027】
本発明のこれらおよび他の態様および特色は以下の詳細な説明および請求項において記載される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明を理解するためおよびそれが実施においてどのように実行され得るのかを実証するために、実施形態がこれより、非限定的な例としてのみ、添付の図面を参照して、記載される。
【
図1】
図1は、MV-014-212の設計を示す概略図である。MV-014-212において、NS1およびNS2遺伝子は脱最適化されており、RSV SH、GおよびF遺伝子は欠失され、キメラタンパク質スパイク-Fをコードする遺伝子により置き換えられている。ジャンクションにおけるアミノ酸配列は、ブロック図の下に示されている。スパイクの膜貫通ドメインはライトグレーで左に表されており、Fの細胞質テイルはダークグレーで右に描写されている。第1の遺伝子位置において蛍光タンパク質mKate2をコードするレポーターウイルスMVK-014-212は、下部またはパネルにおいて図式的に示されている。NTD:N末端ドメイン。RBD:受容体結合ドメイン。S1:サブユニットS1。S2:サブユニットS2。S1/S2およびS2’:プロテアーゼ切断部位。FP:融合ペプチド。IFP:内部融合ペプチド。HR1および2:7回反復1および2。TM:膜貫通ドメイン。CT:細胞質テイル。
図1は配列番号139を開示する。
【
図2】
図2は、候補のC末端の配列を描写する概略図であり、RSV Fタンパク質細胞質テイルとSARS-CoV-2スパイクタンパク質膜貫通ドメインとの間のジャンクションの異なる位置を示す。レスキューおよび培養における増殖を追跡するために蛍光マーカーとしてmKate2遺伝子を含有するように候補を設計した。この図(および表3)に列記される7つの候補を、レスキューする(赤色蛍光フォーカスの生成として定義される)および10
5PFU/mLまたはより高い力価まで増殖するそれらの能力により評価した。MV-014-212をさらなる調査を行うために選択した。SARS-CoV-2スパイクの配列は配列番号23のアミノ酸1198~1273を示す。MV014-210の配列は配列番号1のアミノ酸1198~1278を示す。MV014-211の配列は配列番号2のアミノ酸1198~1278を示す。MV014-212の配列は配列番号3のアミノ酸1198~1290を示す。MV014-213の配列は配列番号98のアミノ酸1198~1284を示す。MV014-220の配列は配列番号4のアミノ酸1198~1275を示す。MV014-230の配列は配列番号5のアミノ酸1198~1268を示す。MV014-240の配列は配列番号6のアミノ酸1198~1271を示す。MV014-215の配列は配列番号110のアミノ酸1198~1260を示す。RSV F(RSV Fタンパク質のC末端部分)の配列を示し、配列番号130において提供している。
【
図3】
図3は、キメラRSV/コロナウイルスワクチンを作出するために使用されたBAC_DB1_mKateベクターの設計を示す概略図である。
【
図4A】
図4A~4Cは、融合スパイク-Fタンパク質により媒介されるMV-014-210の増殖を示す細胞単層の明視野および蛍光画像を提供する。
【
図4B】
図4A~4Cは、融合スパイク-Fタンパク質により媒介されるMV-014-210の増殖を示す細胞単層の明視野および蛍光画像を提供する。
【
図4C】
図4A~4Cは、融合スパイク-Fタンパク質により媒介されるMV-014-210の増殖を示す細胞単層の明視野および蛍光画像を提供する。
【
図5】
図5は、組換えMV-014-212ウイルスおよびそれに由来するウイルスのレスキューを示す概略図である。
【
図6】
図6は、MV-014-212および派生した組換えウイルスにより形成された合胞体を示す顕微鏡写真を提供する。顕微鏡写真は、位相差下でまたはTRITCフィルターを使用して100Xの総拡大(total amplification)で撮影した。
【
図7】
図7は、コロナウイルススパイクタンパク質、そのグリコシル化部位(短い黒バー)、およびそのフューリン切断部位の概略図を示す。
【
図8】
図8Aは、フューリン切断部位を欠いた全長精製SARS-CoV-2スパイクタンパク質(レーン1)、MVK-014-212(レーン2)、MV-014-212(レーン3)、モック感染Vero細胞溶解液(レーン4)、ブランク、(水、レーン5)を示すウエスタンブロットである。分子量マークは、BIO-RAD Precision Plus Protein Dual Color Standards(Cat#1610374)の泳動に対応する。
図8Bは、無血清Vero細胞中でのRSV A2と比較したMV-014-212の複数サイクル複製動態を示すグラフである。細胞を0.01のMOIで感染させ、32℃でインキュベートした。細胞および上清を感染後0、12、24、48、72、96、および120時間において収集した。試料の力価をVero細胞におけるプラークアッセイにより決定した。データ点は2つの複製ウェルの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
図8Cは、無血清Vero細胞中でのMVK-014-212と比較したMV-014-212の複数サイクル複製動態を示すグラフである。細胞を0.01のMOIで感染させ、32℃でインキュベートした。細胞および上清を感染後0、3、24、および72時間において収集した。試料の力価をVero細胞におけるプラークアッセイにより決定した。データ点は3つの複製ウェルの平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
図8Dは、短期熱安定性アッセイの結果を示すグラフである。Williams E+SPG中で調製されたかまたは単独でのSPG中で調製されたMV-014-212のウイルスストックを-80℃、4℃、-20℃および室温において6hインキュベートし、インキュベーション後の力価をプラークアッセイにより決定した。
【
図9】
図9は、実施例3に記載される遺伝子安定性実験の概略図を示す。簡潔に述べれば、MV-014-212の遺伝子安定性を連続継代によりインビトロで調べた。サブコンフルエントのVero細胞の3つのフラスコにMV-014-212のアリコートを感染させ、3つの系列を並行して10継代にわたり継代した。RT-PCR、続いてサンガーシークエンシングを使用して、すべての系列について出発ストック(継代0)および継代10のゲノム全体の配列を決定した。バリアントの蓄積は検出されず、MV-014-212ワクチン候補は安定であることを示唆した。
【
図10】
図10は、MV-014-212、wt RSV、またはPBSを接種されたアフリカミドリザル(AGM)において行ったSARS-CoV-2チャレンジ試験の図式的概観である。鼻スワブ(NS)を1~12日目に得た。気管支肺胞洗浄液(BAL)を2、4、6、8、10および12日目に収集した。NSおよびBAL試料におけるウイルスシェディングを、新鮮な試料を使用してプラークアッセイにより決定した。接種後28日目にAGMをwt SARS-CoV-2でチャレンジした。鼻スワブを29~38日目に毎日得た。気管支肺胞洗浄液を30日目に開始して38日目まで隔日で得た。RT-qPCRをNSおよびBAL試料におけるSARS-CoV-2シェディングの検出のために使用した。
【
図11】
図11A~Bは、アフリカミドリザル(AGM)の上および下気道におけるMV-014-212の減弱を示すグラフを提供する。MV-014-212またはwt RSV A2を接種後のAGMからの鼻スワブ(
図11A)または気管支肺胞洗浄液(BAL)(
図11B)におけるウイルス力価をVero細胞におけるプラークアッセイにより測定した。接種後1~12日目に鼻スワブを、SPGを補充したWilliams E中に収集した。BALにおけるウイルス力価を接種後2、4、6、8、10、および12日目に測定した。グラフ中のボックスは25および75パーセンタイルを定義し、エラーバーは最大値および最小値を示す。ボックス中の水平線は各々の時点についてのデータ点の平均値である。点線はLOD(50PFU/mL)を表す。
【
図12】
図12A~Dは、コットンラットにおいて行った2つの独立した実験の結果のグラフを示す。実験1において、コットンラット(n=5/群)に1×10
5PFUの生物学的派生TN-12、Memphis 37(M37)または組換えA2(rA2)RSV系統を接種した。3、5および7日目にコットンラットの鼻および肺組織をプラークアッセイによる力価決定のためにHBSS+10%SPG中でホモジナイズした。この実験において5日目のみに鼻および肺組織をrA2群について収集した。実験2において、コットンラット(n=6)に5×10
5PFUのrA2を接種した。2、5および7日目にコットンラットの鼻および肺組織をプラークアッセイによる力価決定のためにHBSS + 10% SPG中でホモジナイズした。EMEM中に希釈された清澄化された鼻および肺ホモジネートを使用してHEp-2細胞においてプラークアッセイを行った。プラークを実験1においてRSVポリクローナル抗体での免疫染色および実験2においてクリスタルバイオレット染色により可視化した。
図12Aは、鼻におけるTN-12、M37およびrA2の複製動態を示す。
図12Bは、5日目におけるTN-12、M37およびrA2の鼻力価を比較する。
図12Cは、肺における生物学的TN-12およびMemphis 37およびrA2の複製動態を示す。
図12Dは、TN-12、M37およびrA2の5日目における肺力価を比較する。結果は、rA2鼻力価は生物学的派生TN12およびM37と同等であるが、rA2肺力価は生物学的派生RSV系統と比較して約2log低いことを示した。
【
図13】
図13は、wt SARS-CoV-2チャレンジに対するMV-014-212ワクチン接種AGMの保護を実証するグラフを提供する。チャレンジ後のMV-014-212、wt RSV A2またはPBS(モック)を接種されたAGMからの鼻スワブ試料におけるwt SARS-CoV-2 sgRNA。28日目に、動物を1.0×10
6 TCID
50のwt SARS-CoV-2で鼻腔内および気管内接種によりチャレンジした。wt SARS-CoV-2でのチャレンジ後1、2、4、および6日目に収集された鼻スワブを示した。SARS-CoV-2 sgRNAのレベルをRT-qPCRにより決定した。破線は50ゲノム当量(GE)/mLのLODを表す。(sgRNA=サブゲノムRNA)
【
図14】
図14Aは、スパイク特異的鼻IgAを測定するために使用されたサンドイッチアッセイを示す概略図である。SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、試料(例えば、鼻スワブ試料)からのIgAに結合する抗原(2)として使用される。IgA標準曲線を、スパイクタンパク質をIgA捕捉Abで置き換えることにより生成し(
図14B)、「450nmでのOD」をY軸、「[IgA](pg/mL)」をx軸とした。
【
図15】
図15Aは、MV-014-212接種AGMにおけるスパイク特異的血清IgGを示すグラフを提供する。SARS-CoV-2スパイクタンパク質に特異的な抗体を、MV-014-212、wt RSV A2、またはPBS(モック)を接種されたAGMから25日目に収集された血清を使用してELISAにより測定した。力価は、プールされたヒト回復期血清から生成された標準曲線との比較により算出されたELISA単位(ELU)/mLとして表される。
図15Bは、接種後25日目に収集された鼻スワブを使用したELISAによるSARS-CoV-2スパイクタンパク質に特異的なIgA抗体の測定を示すグラフを提供する。1日目に対する25日目に得られた値の比のLog2を示す。算出されたELU/mL濃度を、捕捉ELISAを使用して全精製ヒトIgAから生成された標準曲線から得た。
図15Cは、MV-014-212での免疫化前(「前」)および25日後(「免疫化」)の、MV-014-212で免疫化された2頭のAGMからの血清での中和力価(NT50)を示すグラフを提供する。WHO標準は、100IU/mLでのヒト回復期血清カクテル対照である。NT50を、阻害曲線をGraphPad Prismにおけるオプション「[Inhibitor]vs.normalized response--Variable slope」にフィッティングすることから得た。WHO標準は、100IU/mLでの回復期血清のプールである。阻害%は、実施例3に記載されるように算出し、阻害曲線を
図16に示している。試料AGM#1 Pre(すべてのウイルス)およびAGM#2(RSV)に対応する曲線は有意な阻害を示さず、フィッティングできなかった。LODは5であり、水平破線で指し示される。データは2つの複製の平均を表し、エラーバーはS.D.に対応する。右の表は各々のレポーターウイルスについての平均NT50を示す。
【
図16】
図16は、中和曲線を示すグラフを提供する。阻害のパーセンテージを方法に記載されるように算出した。下に示された阻害曲線を、GraphPad Prismにおけるオプション「[Inhibitor]vs.normalized response--Variable slope」と共に非線形回帰を使用してフィッティングした。度合は2つの複製の平均に対応し、エラーバーはSDである。各々のアッセイに対応するレポーターウイルスを上に示している。WHO標準は100IU/mLでの回復期血清のプールである。
【
図17】
図17は、MV-014-212での免疫化前(「前」)および25日後(「免疫化」)後の、AGM #1および#2からの血清での中和アッセイを示すグラフを提供する。WHO標準は100IU/mLでのヒト回復期血清カクテル対照である。グラフは、最も高い濃度の血清または対照(1:5)で達成された阻害を示す。阻害のパーセンテージを方法に記載されるように算出した。データは2つの複製の平均を表し、エラーバーはS.D.に対応する。
【
図18】
図18は、実施例3に記載されている中和アッセイの概略図である。
【
図19】
図19A~Dは、MV-014-212はACE-2マウスにおいてTh1にバイアスされた免疫応答を誘発したことを示すグラフを提供する。
図19Aは、ACE-2マウスにおけるIFNg(左)またはIL-5(右)産生細胞についてのELISpotの結果を示す。hACE-2発現マウス(n=5)から単離された脾臓細胞を接種後28日目に収集し、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(プール)、培地、またはマイトジェンコンカナバリンA(Con A)にわたるペプチドプールで刺激した。IL-5またはIFNγ発現T細胞をELISpotアッセイにより定量化した。hACE-2発現マウスに0日目に鼻腔内経路を介してMV-014-212またはPBSを接種した。対照マウスを、ミョウバンでアジュバント付加された精製されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質で筋肉内注射により-20日目~0日目にワクチン接種した。
図19Bは、IL-5発現細胞(
図19Aに示される)に対するIFNγ発現細胞の比のlogを示すグラフを提供する。
図19Cは、IgG1およびIgG2a ELISAの結果を示すグラフを提供する。ELISAにより決定された場合の、PBSもしくはMV-014-212で鼻腔内にまたはスパイク-ミョウバンで筋肉内にワクチン接種されたhACE-2マウスからの28日目の血清に対応するIgG2a(左パネル)およびIgG1(右パネル)のレベル。各々の免疫グロブリンアイソタイプの濃度を、精製されたSARS-CoV-2スパイク特異的モノクローナルIgG2aまたはIgG1抗体を用いて生成された標準曲線から決定した。
図19Dは、IgG2a/IgG1(
図19Cに示される)の比のlogを示すグラフを提供する。統計分析は、対応のあるt検定である。***P<0.0005。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、ウイルス感染症の予防用の免疫原性組成物(例えば、ワクチン)において使用され得る2つのウイルス融合タンパク質の部分を含むキメラタンパク質の発見に部分的に基づく。本明細書に記載されるキメラタンパク質は、RSVウイルスの構成要素(例えばコドン脱最適化されたRSVタンパク質)を含むが、ウイルスの表面上のキメラ融合タンパク質を発現するワクチン構築物において使用され得る。第1の融合タンパク質の部分(例えば、融合タンパク質のエクトドメイン)および第2の融合タンパク質の部分(例えば、第2の融合タンパク質の細胞質テイル)を有するキメラタンパク質は、RSV粒子へのキメラタンパク質の適正なアセンブリーを促進する。
【0030】
ある特定の実施形態において、本開示は、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症)の予防用の免疫原性組成物(例えば、ワクチン)において使用され得る非RSV融合タンパク質(例えば、コロナウイルススパイクタンパク質または「Sタンパク質」;例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質)およびRSV Fタンパク質を含むキメラタンパク質に関する。本明細書に記載されるキメラタンパク質は、RSVウイルスの構成要素(例えばコドン脱最適化されたRSVタンパク質)を含むがウイルスの表面上の融合タンパク質(例えば、Sタンパク質)を発現するワクチン構築物において使用され得る。非RSV融合タンパク質の部分(例えば、コロナウイルスSタンパク質)およびRSV Fタンパク質の部分を有するキメラタンパク質は、RSV粒子へのキメラタンパク質の適正なアセンブリーを促進する。
【0031】
本開示は、第1の融合タンパク質の部分(例えば、エクトドメイン)および第2の融合タンパク質の部分(例えば、細胞質テイル)を含むキメラタンパク質をコードする核酸ならびにそれを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)にさらに関する。ある特定の実施形態において、免疫原性組成物は、F遺伝子に加えてまたはそれ以外にRSV遺伝子を含み、これはコドン脱最適化されていてもよい。本明細書に記載される免疫原性組成物は、ある特定の実施形態において、G遺伝子を含むことができるが、他の実施形態において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)はRSV G遺伝子を含まない。理論により縛られることを望まないが、ある特定の融合タンパク質、例えばコロナウイルスSタンパク質は、受容体付着およびウイルス-細胞融合の両方を媒介するため、RSV G遺伝子は必要とされないと考えられる。実際に、コロナウイルススパイクタンパク質は、ウイルス侵入のために十分に機能的、必要および十分である。本明細書において実施例2に記載されるように、GおよびFタンパク質を欠いた組換えRSV-スパイクウイルスは、宿主細胞に侵入することができ、組換えウイルスは、侵入のためにキメラコロナウイルススパイク/RSV Fタンパク質に完全に依拠することを指し示す。さらに、既知のRSV中和抗体は主にFまたはGに対するものであるため、RSV GおよびFを除去することにより、結果としてもたらされる免疫原性組成物は、既存のRSV免疫により阻害されないはずである。
【0032】
本明細書の全体を通じて、特有の構成要素を有するか、包含するか、もしくは含むとして組成物が記載される場合、または特有のステップを有するか、包含するか、もしくは含むとしてプロセスおよび方法が記載される場合、記載される構成要素から本質的になるか、もしくはからなる本発明の組成物が追加的にあること、ならびに記載される処理ステップから本質的になるか、もしくはからなる本発明によるプロセスおよび方法があることが想定される。
【0033】
本出願において、要素または構成要素が、記載される要素または構成要素のリストに包含されるおよび/または該リストから選択されるといわれる場合、要素もしくは構成要素は記載される要素もしくは構成要素のいずれか1つであり得るか、または要素もしくは構成要素は記載される要素もしくは構成要素の2つ以上からなる群から選択され得ることが理解されるべきである。
【0034】
さらに、本明細書に記載される組成物または方法の要素および/または特色は、本明細書において明示的または暗示的のいずれであれ、本発明の精神および範囲から離れることなく様々なように組み合わせられ得ることが理解されるべきである。例えば、参照が特定の化合物に対して為される場合、文脈から他に理解されなければ、その化合物は、本発明の組成物の様々な実施形態および/または本発明の方法において使用され得る。換言すれば、本出願において、実施形態は、明確および簡潔な出願が記載および図示されることを可能にするように記載および描写されているが、実施形態は、本教示および本発明から離れることなく様々に組合せまたは分離されてもよいことが意図され、そのように理解される。例えば、本出願において記載および描写されるすべての特色は、本出願において記載および描写される本発明のすべての態様に適用可能であり得ることが理解される。
【0035】
文脈および使用から他に理解されなければ、「~の少なくとも1つ」という表現は、該表現の後の記載される対象の各々を個々におよび記載される対象の2つ以上の様々な組合せを包含することが理解されるべきである。文脈から他に理解されなければ、3つ以上の記載される対象との繋がりでの「および/または」という表現は、同じ意味を有することが理解されるべきである。
【0036】
「包含する(含む)」(include)、「包含する(含む)」(includes)、「包含する(含む)」(including)、「有する」(have)、「有する」(has)、「有する」(having)、「含有する」(contain)、「含有する」(contains)、または「含有する」(containing)という用語の使用は、その文法的等価物を含めて、一般にオープンエンドおよび非限定的であるとして理解されるべきであり、例えば、文脈から特に記載または理解されなければ、追加の記載されない要素またはステップを除外しない。
【0037】
「約」という用語の使用が定量的な値の前にある場合、特に他に記載されなければ、本発明はまた、特有の定量的な値それ自体を包含する。本明細書において使用される場合、他に指し示されないかまたは推測されなければ、「約」という用語は、名目上の値からの±10%のバリエーションを指す。
【0038】
ステップの順序またはある特定の行為を行うための順序は、本発明が依然として機能可能である限り、重要でないことが理解されるべきである。さらに、2つ以上のステップまたは行為は同時に実行されてもよい。
【0039】
本明細書における任意のおよびすべての例、または例示的な表現、例えば、「例えば(など)」(such as)もしくは「包含する(含む)」の使用は、本発明をより良好に説明することを単に意図するものであり、クレームされない限り本発明の範囲に対する限定を課さない。本明細書中のいかなる表現も、任意のクレームされない要素を本発明の実施に必須であるとして指し示すと解釈されるべきではない。
【0040】
様々な実施形態を記載する前に、以下の定義が提供され、他に指し示されなければこれらが使用されるべきである。
【0041】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して接合されたアミノ酸を含む化合物を指し、交換可能に使用される。
【0042】
「部分」という用語は、(「所与のタンパク質の部分」におけるように)タンパク質に関して使用される場合、そのタンパク質の断片を指す。断片は、4つのアミノ酸残基から、1つのアミノ酸を欠いたアミノ配列全体までのサイズの範囲に及んでもよい。
【0043】
「キメラ呼吸器合胞体ウイルス(RSV)」または「キメラコロナウイルス/RSV」という用語は、ゲノムまたはアンチゲノムが宿主細胞(例えばVero細胞)中で複製されることを可能とするために十分なRSV遺伝子を含有する核酸であって、配列核酸が、非RSV(例えば、コロナウイルス)遺伝子配列または断片を含有する少なくとも1つの核酸セグメントを含むように変更されているものを指す。キメラRSVは、コドンが、天然に存在するものとは異なるように変更されているが、遺伝子が、天然に発現されるものと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを生成する非RSV(例えば、コロナウイルス)および/またはRSV遺伝子を含むことができる。キメラRSVの異なる系統は、異なるヌクレオチド配列を有し、類似した機能を有する異なるアミノ酸配列を有するタンパク質を発現する。そのため、キメラRSVは、1つの系統からの1つ以上の遺伝子が代替的なまたは第2の系統における遺伝子で置き換えられており、その結果、非RSVまたはRSVゲノム全体の核酸配列が天然に見出される非RSV(例えば、コロナウイルス)またはRSVと同一でない非RSV(例えば、コロナウイルス)遺伝子および/またはRSV遺伝子を含む。ある特定の実施形態において、キメラRSVは、核酸が、タンパク質発現を切断するために翻訳を開始させるためのコドンの後で欠失されており、但しゲノムのためのそのような切断パターンが天然に存在するウイルス中には見出されない系統を含む。ある特定の実施形態において、キメラRSVは、ヒト対象において感染性であり、複製可能なものを含む。本明細書において使用される場合、「非RSV」という用語は、RSVではない任意のウイルスを指す。ある特定の実施形態において、非RSVウイルスは、ニューモウイルス科ではないウイルスである(すなわち、非ニューモウイルスである)。本明細書中に存在する「非RSV」という用語の任意の場合は、ある特定の実施形態において、「ニューモウイルス科外のウイルス」または「ニューモウイルス科ではない」ウイルスという用語で置換され得る。
【0044】
「キメラ」または「キメラの」という用語は、ポリペプチドに関して使用される場合、異なる供給源から得られるため天然の環境中では一緒に存在せず、一緒にクローニングされており、および翻訳後に単一のポリペプチド配列として作用する、2つ以上のコーディング配列の発現産物を指す。コーディング配列は、同じまたは異なる種の生物から得られるものを包含する。本開示は、キメラRSVタンパク質、例えば、非RSV(例えば、コロナウイルス)/RSVタンパク質に関する。ある特定の実施形態において、キメラRSVタンパク質は、非RSV融合タンパク質またはその部分もしくはバリアントおよびRSV Fタンパク質またはその部分(例えば細胞質テイル部分)もしくはバリアントを含む。
【0045】
「融合タンパク質」という用語は、ウイルス膜および細胞膜の融合を媒介して、ウイルスが細胞に侵入して感染することを可能とするウイルスタンパク質を指す。本明細書におけるキメラタンパク質における使用のために想定される融合タンパク質は、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)のHAタンパク質;レトロウイルス科のEnvタンパク質;パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザ、麻疹、およびおたふく風邪ウイルス)のFおよび/またはHNタンパク質;コロナウイルス科のSタンパク質;フィロウイルス科のGPタンパク質;アレナウイルス科のGPおよび/またはSSPタンパク質;トガウイルス科のE1/E2タンパク質;フラビウイルス科のE(例えば、TBEVにおけるもの)またはE1/E2(例えば、HCVにおけるもの)タンパク質;ブニヤウイルス科のGN/GCタンパク質;ラブドウイルス科(VSVおよび狂犬病)のGタンパク質;ヘルペスウイルス科のgB、gD、および/またはgH/Lタンパク質;ポックスウイルス科における8つのタンパク質の複合体の1つ以上;ならびにヘパドナウイルス科のSおよび/またはLタンパク質の少なくとも部分を包含する。
【0046】
「コロナウイルス」という用語は、(例えば、哺乳動物および鳥において疾患を引き起こすRNAウイルスの群を指す。コロナウイルスは、免疫適格宿主において無症候性から中等度の重症度である季節性上または下気道感染症を引き起こす。ヒトコロナウイルスは、HCoV-229E、-NL63、-OC43、-HKU1、重症急性呼吸器症候群(SARS)-CoV、中東呼吸器症候群(MERS)-CoV、およびSARS-CoV-2を包含する。用語コロナウイルスが本明細書において使用される場合、SARS-CoV-2が特有の実施形態として想定される。
【0047】
「ホモログ」または「相同的」(homologous)という用語は、ポリペプチドに関して使用される場合、2つのポリペプチドの間の高い程度の配列同一性、または3次元構造の間の高い程度の類似性、または活性部位および作用の機序の間の高い程度の類似性を指す。好ましい実施形態において、ホモログは、参照配列と、60%より高い配列同一性、より好ましくは75%より高い配列同一性、さらにより好ましくは90%より高い配列同一性を有する。
【0048】
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに適用される場合、「実質的な同一性」という用語は、2つのペプチドまたはヌクレオチド配列が、例えばプログラム「GAP」(Genetics Computer Group、Madison、Wis.)、「ALIGN」(DNAStar、Madison、Wis.)、Jotun Hein(Hein(2001)Proc.Pacific Symp.Biocomput.179-190)により、デフォルトのギャップ重みを使用して、最適にアライメントされた場合に、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性、例えば、少なくとも96パーセントの同一性、少なくとも97パーセントの同一性、少なくとも98パーセントの同一性、少なくとも99パーセントの同一性、少なくとも99.5パーセントの同一性、少なくとも99.9パーセントの同一性を共有することを意味する。好ましくは、ポリペプチドについて、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換により異なる。
【0049】
「バリアント」および「突然変異体」という用語は、ポリペプチド(またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)に関して使用される場合、別の、通常は関連するポリペプチドから、1つ以上のアミノ酸により異なるアミノ酸配列(またはコードされるアミノ酸配列)を指す。バリアントは、置換されたアミノ酸が類似した構造的または化学的特性を有する「保存的な」変化を有してもよい。保存的アミノ酸置換の1つの種類は、類似した側鎖を有する残基の相互交換可能性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。より稀に、バリアントは、「非保存的な」変化(例えば、トリプトファンでのグリシンの置換)を有してもよい。類似した軽微なバリエーションはまた、アミノ酸欠失もしくは挿入(換言すれば、付加)、または両方を含んでもよい。いずれのおよびどれほど多くのアミノ酸残基が、生物学的活性を消失させることなく置換、挿入または欠失され得るのかの決定におけるガイダンスは、当技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えば、DNAStarソフトウェアを使用して見出すことができる。バリアントは、機能アッセイにおいて試験され得る。好ましいバリアントは、10%未満、好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満の変化(置換、欠失などのいずれであれ)を有する。
【0050】
「遺伝子」という用語は、RNA、またはポリペプチドもしくはその前駆体(例えば、プロインスリン)の製造のために必要なコーディング配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を指す。機能的なポリペプチドは、全長コーディング配列により、またはポリペプチドの所望される活性もしくは機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限りコーディング配列の任意の部分によりコードされ得る。「部分」という用語は、遺伝子に関して使用される場合、その遺伝子の断片を指す。断片は、数ヌクレオチドから遺伝子配列全体マイナス1ヌクレオチドまでのサイズの範囲に及んでもよい。そのため、「遺伝子の少なくとも部分を含むヌクレオチド」は、遺伝子の断片または遺伝子全体を含んでもよい。
【0051】
「遺伝子」という用語はまた、構造遺伝子のコーディング領域を包含し、ならびに遺伝子が全長mRNAの長さに対応するように5’末端および3’末端の両方においていずれの末端における約1kbの距離にわたりコーディング領域に隣接して位置する配列を包含する。コーディング領域の5’に位置し、mRNA上に存在する配列は5’非翻訳配列として参照される。コーディング領域の3’または下流に位置し、mRNA上に存在する配列は3’非翻訳配列として参照される。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNAおよびゲノム形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と称される非コーディング配列を差し挟まれたコーディング領域を含有する。イントロンは、核RNA(mRNA)に転写される遺伝子のセグメントであり;イントロンは、調節エレメント、例えばエンハンサーを含有してもよい。イントロンは、核または一次転写物から除去または「スプライシング除去」され;イントロンはしたがってメッセンジャーRNA(mRNA)転写物中に存在しない。mRNAは、新生ポリペプチド中のアミノ酸の配列または順序を指定するために翻訳の間に機能する。
【0052】
イントロンを含有することに加えて、遺伝子のゲノム形態はまた、RNA転写物上に存在する配列の5’末端および3’末端の両方に位置する配列を含んでもよい。これらの配列は、「隣接」配列または領域として参照される(これらの隣接配列は、mRNA転写物上に存在する非翻訳配列の5’または3’に位置する)。5’隣接領域は、遺伝子の転写を制御するかまたは影響を及ぼす調節配列、例えばプロモーターおよびエンハンサーを含有してもよい。3’隣接領域は、転写の終結、転写後切断およびポリアデニル化を指令する配列を含有してもよい。
【0053】
「異種遺伝子」という用語は、その天然の環境中にはない(すなわち、人間の手により変更されている)因子をコードする遺伝子を指す。例えば、異種遺伝子は、別の種に導入された1つの種からの遺伝子を包含する。異種遺伝子はまた、何らかのやり方で変更(例えば、突然変異、複数のコピーでの付加、ネイティブでないプロモーターまたはエンハンサー配列への連結など)されている、生物にとってネイティブな遺伝子を包含する。異種遺伝子配列は、典型的には、異種遺伝子によりコードされるタンパク質のための遺伝子ともしくは染色体中の遺伝子配列と関連付けられて天然に見出されないか、または天然において見出されない染色体の部分(例えば、遺伝子が通常は発現されない座位において発現される遺伝子)と関連付けられる調節エレメント、例えばプロモーターを含むヌクレオチド配列に接合されているという点において異種遺伝子は内因性遺伝子から区別される。
【0054】
「ポリヌクレオチド」という用語は、2個以上、好ましくは3個より多い、通常は10個より多いデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドから構成される分子を指す。正確なサイズは多くの要因に依存し、そして該要因は究極的な機能またはオリゴヌクレオチドの用途に依存する。ポリヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、逆転写、またはこれらの組合せを包含する、任意の方式で生成されてもよい。「オリゴヌクレオチド」という用語は短い長さの一本鎖ポリヌクレオチド鎖を一般に指すが、それはまた「ポリヌクレオチド」という用語と交換可能に使用され得る。
【0055】
「核酸」という用語は、上記されている、ヌクレオチドのポリマー、またはポリヌクレオチドを指す。該用語は、単一の分子、または分子の集合を指定するために使用される。核酸は一本鎖または二本鎖であってもよく、コーディング領域、および、以下に記載されるように、様々な制御エレメントの領域を含んでもよい。
【0056】
「遺伝子をコードする核酸」または指定されるポリペプチド「をコードする核酸」という用語は、遺伝子のコーディング領域を含む核酸配列または換言すれば遺伝子産物をコードする核酸配列を指す。コーディング領域は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNAのいずれの形態で存在してもよい。DNAの形態で存在する場合、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または核酸は一本鎖(すなわち、センス鎖)または二本鎖であってもよい。好適な制御エレメント、例えばエンハンサー/プロモーター、スプライスジャンクション、ポリアデニル化シグナルなどが、転写の適正な開始および/または一次RNA転写物の正確なプロセシングを可能にするために必要な場合に遺伝子のコーディング領域に近接して置かれてもよい。代替的に、本開示の発現ベクターにおいて利用されるコーディング領域は、内因性のエンハンサー/プロモーター、スプライスジャンクション、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、または内因性および外因性の両方の制御エレメントの組合せを含有してもよい。
【0057】
「組換え」という用語は、核酸分子に関する場合、分子生物学技術の手段によって接合されて一緒になった核酸のセグメントから構成される核酸分子を指す。「組換え」という用語は、タンパク質またはポリペプチドに関する場合、組換え核酸分子を使用して発現されたタンパク質分子を指す。
【0058】
「相補的」および「相補性」という用語は、塩基対合則により関係付けされるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、配列「A-G-T」は配列「T-C-A」に相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、その場合、核酸の塩基の一部のみが塩基対合則にしたがってマッチしている。または、核酸の間に「完全な」または「トータルな」相補性があってもよい。核酸鎖の間の相補性の程度は、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率および強さに対する有意な効果を有する。これは増幅反応の他に、核酸の間の結合に依存する検出方法において特に重要である。
【0059】
「相同性」という用語は、核酸に関して使用される場合、相補性の程度を指す。部分的な相同性または完全な相同性(すなわち、同一性)があってもよい。「配列同一性」は、2つ以上の核酸またはタンパク質の間の関連性の度合を指し、全比較長さに対するパーセンテージとして与えられる。同一性の算出は、同一であり、およびそれぞれのより大きい配列中で同じ相対的な位置にあるヌクレオチドまたはアミノ酸残基を考慮に入れる。同一性の算出は、コンピュータプログラム、例えば「GAP」(Genetics Computer Group、Madison、Wis.)および「ALIGN」(DNAStar、Madison、Wis.)内に含有されるアルゴリズムにより行われてもよい。部分的な相補的配列は、完全な相補的配列が標的核酸にハイブリダイズすることを少なくとも部分的に阻害する(または完全な相補的配列と競合する)配列であり、「実質的に相同的」という機能的な用語を使用して参照される。標的配列への完全な相補的配列のハイブリダイゼーションの阻害は、ハイブリダイゼーションアッセイ(サザンまたはノーザンブロット、および溶液ハイブリダイゼーションなど)を使用して低いストリンジェンシーの条件下で調べられてもよい。実質的に相同的な配列またはプローブは、低いストリンジェンシーの条件下での標的への完全に相同的な配列の結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)について競合するおよびそれを阻害する。これは、低いストリンジェンシーの条件は、非特異的結合が許容されるようなものであるというわけではなく;低ストリンジェンシー条件は、2つの配列の互いに対する結合が特異的(すなわち、選択的)な相互作用であることを要求する。非特異的結合の非存在は、部分的な程度の相補性さえも欠いた(例えば、約30%未満の同一性)第2の標的の使用により試験されてもよく;非特異的結合の非存在下でプローブは第2の非相補的標的にハイブリダイズしない。
【0060】
以下の用語は、2つ以上のポリヌクレオチドの間の配列関係性を記載するために使用される:「参照配列」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的な同一性」。「参照配列」は、配列比較のための基礎として使用される定義された配列であり;参照配列は、例えば、配列表中に与えられる全長cDNA配列のセグメントとして、より大きい配列のサブセットであってもよく、または完全な遺伝子配列を含んでもよい。一般に、参照配列は、少なくとも20ヌクレオチドの長さ、頻繁には少なくとも25ヌクレオチドの長さ、多くの場合に少なくとも50ヌクレオチドの長さである。2つのポリヌクレオチドは各々、(1)2つのポリヌクレオチドの間で類似した配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の部分)を含んでもよく、および(2)2つのポリヌクレオチドの間で異なる配列をさらに含んでもよいため、2つ(またはより多く)のポリヌクレオチドの間の配列比較は、典型的には、「比較ウインドウ」にかけて2つのポリヌクレオチドの配列を比較して配列類似性の局所領域を同定および比較することにより行われる。「比較ウインドウ」は、本明細書において使用される場合、少なくとも20個の連続するヌクレオチド位置の概念上のセグメントであって、ポリヌクレオチド配列が、少なくとも20個の連続するヌクレオチドの参照配列と比較されてもよく、および比較ウインドウ中のポリヌクレオチド配列の部分が、2つの配列の最適なアライメントのために参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して20パーセントまたはそれ未満の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよいものを指す。比較ウインドウをアライメントするための配列の最適なアライメントは、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム(Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981))により、NeedlemanおよびWunschの相同性アライメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970))により、PearsonおよびLipmanの類似性検索方法(Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.)85:2444(1988))により、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実装(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison、Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により、または検査により実行されてもよく、様々な方法により生成された最良のアライメント(すなわち、比較ウインドウにかけて最も高い相同性のパーセンテージを結果としてもたらす)が選択される。「配列同一性」という用語は、2つのポリヌクレオチド配列が比較のウインドウにかけて同一(すなわち、ヌクレオチド毎を基準にして同一)であることを意味する。
【0061】
ある特定の実施形態において、「配列同一性のパーセンテージ」という用語は、2つの最適にアライメントされた配列を比較のウインドウにかけて比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列中で起こっている位置の数を決定してマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較のウインドウ中の位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割り、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。
【0062】
ある特定の実施形態において、配列「同一性」は、同一の位置の数を使用して算出されたアライメントの2つの配列の間の配列アライメント中の正確にマッチしているアミノ酸の数を、最短の配列またはオーバーハングを除外した同等の位置の数のうちのより大きい方により割ったもの(パーセンテージとして表される)を指し、内部ギャップは同等の位置としてカウントされる。例えば、ポリペプチドGGGGGG(配列番号19)およびGGGGT(配列番号20)は、5個のうちの4個または80%の配列同一性を有する。例えば、ポリペプチドGGGPPP(配列番号21)およびGGGAPPP(配列番号22)は、7個のうちの6個または85%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態において、本明細書において表現される配列同一性の任意の記載は、配列類似性に置換されてもよい。「類似性」パーセントは、アライメントの2つの配列の間の類似性を定量化するために使用される。この方法は、ある特定のアミノ酸はマッチを有するために同一である必要はないことを除いて、同一性の決定と同一である。アミノ酸は、以下のアミノ酸群:芳香族-FYW;疎水性-A VIL;正荷電性:RKH;負荷電性-DE;極性-STNQにしたがって類似した特性を有する群にある場合にマッチとして分類される。
【0063】
「実質的な同一性」という用語は、本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドが、少なくとも20ヌクレオチド位置の比較ウインドウにかけて、頻繁には少なくとも25~50ヌクレオチドのウインドウにかけて参照配列と比較して少なくとも85パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90~95パーセントの配列同一性、より通常は少なくとも99パーセントの配列同一性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド配列の特徴を表し、配列同一性のパーセンテージは、比較のウインドウにかけて参照配列の合計で20パーセントまたはそれ未満である欠失または付加を含んでもよいポリヌクレオチド配列と参照配列を比較することにより算出される。参照配列は、例えば、本開示においてクレームされる組成物の全長配列のセグメントとして、より大きい配列のサブセットであってもよい。
【0064】
二本鎖核酸配列、例えばcDNAまたはゲノムクローンに関して使用される場合、「実質的に相同的」という用語は、上記されている低~高ストリンジェンシーの条件下で二本鎖核酸配列のいずれかまたは両方の鎖にハイブリダイズできる任意のプローブを指す。
【0065】
一本鎖核酸配列に関して使用される場合、「実質的に相同的」という用語は、上記されている低~高ストリンジェンシーの条件下で一本鎖核酸配列にハイブリダイズできる(すなわち一本鎖核酸配列の相補体である)任意のプローブを指す。
【0066】
「作動可能な組合せで」、「作動可能な順序で」および「作動可能に連結した」という用語は、所与の遺伝子の転写および/または所望されるタンパク質分子の合成を指令する能力を有する核酸分子が産生されるような方式での核酸配列の連結を指す。該用語はまた、機能的タンパク質が産生されるような方式でのアミノ酸配列の連結を指す。
【0067】
「調節エレメント」という用語は、核酸配列の発現の一部の態様を制御する遺伝子エレメントを指す。例えば、プロモーターは、作動可能に連結したコーディング領域の転写の開始を促す調節エレメントである。他の調節エレメントは、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルなどである。
【0068】
真核生物中の転写制御シグナルは、「プロモーター」および「エンハンサー」エレメントを含む。プロモーターおよびエンハンサーは、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用するDNA配列の短いアレイからなる(Maniatis,et al.,Science 236:1237,1987)。プロモーターおよびエンハンサーエレメントは、酵母、昆虫、哺乳動物および植物細胞中の遺伝子を包含する様々な真核性供給源から単離されている。プロモーターおよびエンハンサーエレメントはまた、ウイルスから単離されており、および原核生物中に見出される。特定のプロモーターおよびエンハンサーの選択は、関心対象のタンパク質を発現させるために使用される細胞種に依存する。一部の真核性プロモーターおよびエンハンサーは広い宿主範囲を有するが、他のものは、細胞種の限定されたサブセットにおいて機能的である(総説のために、Voss,et al.,Trends Biochem.Sci.,11:287,1986;およびManiatis,et al.、上掲 1987を参照)。
【0069】
「プロモーターエレメント」、「プロモーター」、または「プロモーター配列」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば、スイッチとして機能して、遺伝子の発現を活性化させるDNA配列を指す。遺伝子が活性化される場合、それは転写される、または転写に参加しているといわれる。転写は、遺伝子からのmRNAの合成を伴う。プロモーターは、したがって、転写調節エレメントとして役立ち、そしてまたmRNAへの遺伝子の転写の開始のための部位を提供する。
【0070】
プロモーターは組織特異的または細胞特異的であってもよい。「組織特異的」という用語は、プロモーターに適用される場合、関心対象のヌクレオチド配列の選択的な発現を、特異的な種類の組織(例えば、種子)に対して、異なる種類の組織(例えば、葉)における関心対象の同じヌクレオチド配列の発現の相対的な非存在において指令する能力を有するプロモーターを指す。プロモーターの組織特異性は、例えば、レポーター遺伝子をプロモーター配列に作動可能に連結してレポーター構築物を生成すること、レポーター構築物を生物のゲノムに導入し、その結果、レポーター構築物が、結果としてもたらされるトランスジェニック生物のあらゆる組織に組み込まれるようにすること、およびトランスジェニック生物の異なる組織におけるレポーター遺伝子の発現を検出すること(例えば、レポーター遺伝子によりコードされるmRNA、タンパク質、またはタンパク質の活性を検出すること)により評価されてもよい。他の組織におけるレポーター遺伝子の発現のレベルと比べた1つ以上の組織におけるレポーター遺伝子の発現のより高いレベルの検出は、プロモーターが、より高いレベルの発現が検出される組織に特異的であることを示す。「細胞種特異的」という用語は、プロモーターに適用される場合、特異的な種類の細胞における関心対象のヌクレオチド配列の選択的な発現を、同じ組織内の異なる種類の細胞における関心対象の同じヌクレオチド配列の発現の相対的な非存在において指令する能力を有するプロモーターを指す。「細胞種特異的」という用語はまた、プロモーターに適用される場合、単一の組織内の領域における関心対象のヌクレオチド配列の選択的な発現を促進する能力を有するプロモーターを意味する。プロモーターの細胞種特異性は、当技術分野において周知の方法、例えば、免疫組織化学染色を使用して評価されてもよい。簡潔に述べれば、組織切片がパラフィン中に包埋され、パラフィン切片が、その発現がプロモーターにより制御される関心対象のヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド生成物に特異的な一次抗体と反応させられる。一次抗体に特異的な標識された(例えば、ペルオキシダーゼをコンジュゲートされた)二次抗体が、切片化された組織に結合させられ、特異的結合が顕微鏡法により(例えば、アビジン/ビオチンを用いて)検出される。
【0071】
プロモーターは構成的または調節可能であってもよい。「構成的」という用語は、プロモーターに関する場合、プロモーターは、刺激(例えば、熱ショック、化学物質、光など)の非存在下で作動可能に連結した核酸配列の転写を指令する能力を有することを意味する。典型的には、構成的プロモーターは、実質的に任意の細胞および任意の組織において導入遺伝子の発現を指令する能力を有する。
【0072】
対照的に、「調節可能な」または「誘導性の」プロモーターは、刺激(例えば、熱ショック、化学物質、光など)の非存在下での作動可能に連結した核酸配列の転写のレベルとは異なる、刺激の存在下での作動可能に連結した核酸配列の転写のレベルを指令する能力を有するものである。
【0073】
エンハンサーおよび/またはプロモーターは、「内因性」または「外因性」または「異種」であってもよい。「内因性」エンハンサーまたはプロモーターは、ゲノム中で所与の遺伝子と天然に連結しているものである。「外因性」または「異種」エンハンサーまたはプロモーターは、遺伝子マニピュレーション(すなわち、分子生物学技術)の手段により遺伝子に並置して置かれており、その結果、遺伝子の転写が、連結したエンハンサーまたはプロモーターにより指令されるようになっているものである。例えば、第1の遺伝子と作動可能な組合せにある内因性プロモーターは、単離し、除去し、および第2の遺伝子と作動可能な組合せで配置し、それにより、第2の遺伝子と作動可能な組合せにある「異種プロモーター」とさせることができる。様々なそのような組合せが想定される(例えば、第1および第2の遺伝子は、同じ種、または異なる種からのものであることができる)。
【0074】
真核細胞における組換えDNA配列の効率的な発現は、結果としてもたらされる転写物の効率的な終結およびポリアデニル化を指令するシグナルの発現を要求し得る。転写終結シグナルは、一般に、ポリアデニル化シグナルの下流に見出され、数百ヌクレオチドの長さである。「ポリ(A)部位」または「ポリ(A)配列」という用語は、本明細書において使用される場合、新生RNA転写物の終結およびポリアデニル化の両方を指令するDNA配列を表す。組換え転写物の効率的なポリアデニル化は望ましく、その理由は、ポリ(A)テイルを欠いた転写物は不安定であり、急速に分解されるからである。発現ベクターにおいて利用されるポリ(A)シグナルは「異種」または「内因性」であってもよい。内因性ポリ(A)シグナルは、ゲノム中の所与の遺伝子のコーディング領域の3’末端において天然に見出される。異種ポリ(A)シグナルは、1つの遺伝子から単離され、別の遺伝子の3’に配置されたものである。一般的に使用される異種ポリ(A)シグナルはSV40ポリ(A)シグナルである。SV40ポリ(A)シグナルは、237bpのBamHI/BclI制限断片上に含有され、終結およびポリアデニル化の両方を指令する。
【0075】
「ベクター」という用語は、DNAセグメントを1つの細胞から別の細胞へ移動させる核酸分子を指す。「運搬体」(vehicle)という用語が「ベクター」と交換可能に使用される場合がある。
【0076】
「発現ベクター」または「発現カセット」という用語は、所望されるコーディング配列および特定の宿主生物における作動可能に連結したコーディング配列の発現のために使用される適切な核酸配列を含有する組換え核酸を指す。原核生物における発現のために使用される核酸配列は、典型的には、プロモーター、オペレーター(任意選択的)、およびリボソーム結合部位を、多くの場合に他の配列と共に、含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結およびポリアデニル化シグナルを利用することが公知である。
【0077】
「宿主細胞」という用語は、異種遺伝子を複製および/または転写および/または翻訳する能力を有する任意の細胞を指す。そのため、「宿主細胞」は、インビトロまたはインビボのいずれで位置するものであれ、任意の真核または原核細胞(例えば、細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥細胞、両生類細胞、植物細胞、魚細胞、および昆虫細胞)を指す。例えば、宿主細胞はトランスジェニック動物中に位置してもよい。
【0078】
「選択マーカー」は、人工的な選択または同定のために好適な形質を付与するポリペプチドをコードする組換えベクターに導入される核酸であり(下記の「レポーター遺伝子」も参照)、例えば、ベータ-ラクタマーゼは抗生物質耐性を付与し、ベータ-ラクタマーゼを発現する生物が増殖培地中の抗生物質の存在下で生存することを可能とする。別の例はチミジンキナーゼであり、これは宿主をガンシクロビル選択に対して感受性とする。それは、予想される色の存在または非存在に基づいて望まれる細胞と望まれない細胞とを区別することを可能とするスクリーニング可能なマーカーであり得る。例えば、lac-z遺伝子は、X-gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド)の存在下で青色を付与するベータ-ガラクトシダーゼ酵素を生成する。組換え挿入がlac-z遺伝子を不活性化する場合、結果としてもたらされるコロニーは無色である。1つ以上の選択マーカーがあってもよく、これは例えば、発現生物がその増殖のために要求される特定の化合物を合成することができないこと(栄養要求性)を補完できる酵素、および化合物を、増殖にとって毒性の別の化合物に変換できる酵素である。URA3、オロチジン-5’リン酸デカルボキシラーゼは、ウラシル生合成のために必要であり、ウラシルについて栄養要求性であるura3突然変異体を補完することができる。URA3はまた、5-フルオロオロチン酸を毒性化合物5-フルオロウラシルに変換する。追加の想定される選択マーカーは、抗菌剤耐性を付与するかまたは蛍光タンパク質を発現する任意の遺伝子を包含する。例は、以下の遺伝子:ampr、camr、tetr、ブラストサイジン、neor、hygr、abxr、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII型遺伝子(nptII)、p-グルクロニダーゼ(gus)、緑色蛍光タンパク質(gfp)、egfp、yfp、mCherry、p-ガラクトシダーゼ(lacZ)、lacZa、lacZAM15、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)、アルカリホスファターゼ(phoA)、細菌ルシフェラーゼ(luxAB)、ビアラホス耐性遺伝子(bar)、ホスホマンノースイソメラーゼ(pmi)、キシロースイソメラーゼ(xylA)、アラビトールデヒドロゲナーゼ(atlD)、UDP-グルコース:ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼI(galT)、アントラニル酸シンターゼのフィードバック非感受性αサブユニット(OASA1D)、2-デオキシグルコース(2-DOGR)、ベンジルアデニン-N-3-グルクロニド、大腸菌スレオニンデアミナーゼ、グルタミン酸1-セミアルデヒドアミノトランスフェラーゼ(GSA-AT)、D-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)、塩耐性遺伝子(rstB)、フェレドキシン様タンパク質(pflp)、トレハロース-6-Pシンターゼ遺伝子(AtTPS1)、リジンラセマーゼ(lyr)、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ(dapA)、トリプトファンシンターゼベータ1(AtTSB1)、デハロゲナーゼ(dhlA)、マンノース-6-リン酸レダクターゼ遺伝子(M6PR)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)、およびD-セリンアンモニアリアーゼ(dsdA)を包含するが、これらに限定されない。
【0079】
「標識」は、別の分子、例えば抗体またはタンパク質に直接的または間接的にコンジュゲートされて、その分子の検出を促す、検出可能な化合物または組成物を指す。標識の特有の非限定的な例は、蛍光タグ、酵素連結、および放射活性同位体を包含する。1つの例において、「標識受容体」は、受容体中の異種ポリペプチドの組込みを指す。標識は、放射性標識されたアミノ酸の組込みまたはマークされたアビジン(例えば、蛍光マーカーを含有するストレプトアビジンもしくは光学的もしくは比色的方法により検出され得る酵素活性)により検出され得るポリペプチドへのビオチニル部分の共有結合性取付けを包含する。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野において公知であり、使用され得る。ポリペプチドの標識の例は、以下:放射性同位体もしくは放射性ヌクレオチド(例えば35Sもしくは131I)蛍光標識(例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される予め決定されたポリペプチドエピトープ(例えばロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、または磁気的剤、例えばガドリニウムキレートを包含するが、これらに限定されない。一部の実施形態において、標識は、潜在的な立体障害を低減させるために様々な長さのスペーサーアームにより取り付けられる。
【0080】
「免疫原性組成物」は、対象において免疫応答を生じさせる能力を有する1つ以上の核酸またはタンパク質を指す。免疫原性組成物は、例えば、ある特定の実施形態において、ワクチンとして投与され得る、ウイルスまたはその部分(例えば、生もしくは死ウイルス、ウイルス粒子、またはウイルス様粒子(VLP))を含むことができる。
【0081】
ある特定の実施形態において、本開示は、アミノ酸配列のアミノ末端または炭素末端が異種アミノ酸配列、標識、またはレポーター分子に任意選択的に取り付けられている、本明細書に開示される配列またはそのバリアントもしくは融合物を含む組換えポリペプチドに関する。
【0082】
ある特定の実施形態において、本開示は、本明細書に開示されるポリペプチドまたはその融合タンパク質をコードする核酸を含む組換えベクターに関する。
【0083】
ある特定の実施形態において、組換えベクターは、哺乳動物、ヒト、昆虫、ウイルス、細菌、細菌プラスミド、酵母関連の複製起点もしくは遺伝子、例えば遺伝子もしくはレトロウイルス遺伝子またはレンチウイルスLTR、TAR、RRE、PE、SLIP、CRS、およびINSヌクレオチドセグメントまたはtat、rev、nef、vif、vpr、vpu、およびvpxから選択される遺伝子またはgag、pol、およびenvから選択される構造遺伝子を任意選択的に含む。
【0084】
ある特定の実施形態において、組換えベクターは、遺伝子ベクターエレメント(核酸)、例えば選択マーカー領域、lacオペロン、CMVプロモーター、ハイブリッドニワトリB-アクチン/CMVエンハンサー(CAG)プロモーター、tacプロモーター、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、SP6 RNAポリメラーゼプロモーター、SV40プロモーター、内部リボソーム進入部位(IRES)配列、シス作用性ウッドチャックポスト調節エレメント(woodchuck post regulatory element;WPRE)、スキャフォールド取付け領域(SAR)、逆末端反復(ITR)、FLAGタグコーディング領域、c-mycタグコーディング領域、金属アフィニティータグコーディング領域、ストレプトアビジン結合ペプチドタグコーディング領域、ポリHisタグコーディング領域、HAタグコーディング領域、MBPタグコーディング領域、GSTタグコーディング領域、ポリアデニル化コーディング領域、SV40ポリアデニル化シグナル、SV40複製起点、Col E1複製起点、f1オリジン、pBR322オリジン、もしくはpUCオリジン、TEVプロテアーゼ認識部位、loxP部位、Creリコンビナーゼコーディング領域、またはマルチプルクローニングサイト、例えば50もしくは60ヌクレオチド未満の連続的なセグメント内の5、6、もしくは7もしくはそれより多くの制限部位を有するものもしくは20もしくは30ヌクレオチド未満の連続的なセグメント内の3もしくは4もしくはそれより多くの制限部位を有するものを任意選択的に含む。
【0085】
「レポーター遺伝子」という用語は、アッセイされ得るタンパク質をコードする遺伝子を指す。レポーター遺伝子の例は、改変型katushka、mkateおよびmkate2(例えば、Merzlyak et al.,(2007)Nat.Methods 4,555-557及びShcherbo et al.(2008)Biochem.J.418,567-574を参照)、ルシフェラーゼ(例えば、deWet et al.,(1987)Mol.Cell.Biol.7:725および米国特許第6,074,859号明細書;同第5,976,796号明細書;同第5,674,713号明細書;および同第5,618,682号明細書を参照;これらのすべては参照により本明細書に組み込まれる)、緑色蛍光タンパク質(例えば、GenBankアクセッション番号U43284;多数のGFPバリアントがClonTech Laboratories、Palo Alto、Calif.から商業的に入手可能である)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ならびにホースラディッシュペルオキシダーゼを包含するが、これらに限定されない。
【0086】
「野生型」という用語は、遺伝子に関する場合、天然に存在する供給源から単離された遺伝子の特徴を有する遺伝子を指す。「野生型」という用語は、遺伝子産物に関する場合、天然に存在する供給源から単離された遺伝子産物の特徴を有する遺伝子産物を指す。「天然に存在する」という用語は、物に適用されて本明細書において使用される場合、物が天然に見出され得るという事実を指す。例えば、天然の供給源から単離可能であり、および実験室において人間により意図的に改変されていない生物(ウイルスを包含する)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。野生型遺伝子は、集団中に最も頻繁に観察される遺伝子であり、そのため「正常」または「野生型」遺伝子と任意に呼称される。対照的に、「改変型」または「突然変異体」という用語は、遺伝子または遺伝子産物に関する場合、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、配列および/または機能的特性における改変(すなわち、変更された特徴)を示すそれぞれ遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に存在する突然変異体は単離可能であり;これらは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に変更された特徴を有するという事実により同定されることが留意される。
【0087】
「アンチセンス」または「アンチゲノム」という用語は、そのヌクレオチド残基の配列が、センス鎖中のヌクレオチド残基の配列と比べて逆転した5’から3’への方向性にあるヌクレオチド配列を指す。DNAデュプレックスの「センス鎖」は、その天然の状態において細胞により「センスmRNA」に転写されるDNAデュプレックス中の鎖を指す。そのため、「アンチセンス」配列は、DNAデュプレックス中の非コーディング鎖と同じ配列を有する配列である。
【0088】
「単離された」という用語は、その天然に存在する環境において通常それと付随するかまたはそれと相互作用する成分を実質的に含まない生物学的材料、例えばウイルス、核酸またはタンパク質を指す。単離された材料は、その天然の環境中の材料、例えば、細胞と共に見出されない材料を任意選択的に含む。例えば、材料がその天然の環境、例えば細胞中にある場合、材料は、その環境において見出される材料にとってネイティブでない細胞中の位置(例えば、ゲノムまたは遺伝子エレメント)に置かれている。例えば、天然に存在する核酸(例えば、コーディング配列、プロモーター、エンハンサーなど)は、その核酸にとってネイティブでないゲノム(例えば、ベクター、例えばプラスミドもしくはウイルスベクター、またはアンプリコン)の座位に天然に存在しない手段により導入される場合に単離される。そのような核酸はまた「異種」核酸として参照される。例えば、単離されたウイルスは、野生型ウイルスのネイティブな環境(例えば、感染した個体の鼻咽頭)以外の環境(例えば、細胞培養系、または細胞培養から精製されている)にある。
【0089】
ウイルスまたは弱毒化ウイルスの「免疫学的有効量」は、作用因子へのその後の曝露に対する個体(例えば、ヒト)自身の免疫応答を増強するために十分な量である。誘導された免疫のレベルは、例えば、中和分泌および/または血清抗体の量を、例えば、プラーク中和、補体固定、酵素連結免疫吸着、またはマイクロ中和アッセイにより測定することによりモニターされ得る。
【0090】
ウイルスに対する「保護免疫応答」は、個体がその後に野生型ウイルスに曝露および/または感染された場合に深刻な下気道疾患(例えば、肺炎および/または細気管支炎)に対して保護的な、個体(例えば、ヒト)により呈される免疫応答を指す。
【0091】
RSV
天然に存在するRSV粒子は、マトリックスタンパク質、および糖タンパク質を含有するエンベロープにより取り囲まれたらせん状ヌクレオカプシド内のウイルスゲノムを典型的には含有する。ヒト野生型RSVのゲノムは、タンパク質、NS1、NS2、N、P、M、SH、G、F、M2-1、M2-2、およびLをコードする。G、F、およびSHは糖タンパク質である。RSVポリメラーゼ活性は、大タンパク質(L)およびホスホタンパク質(P)からなる。ウイルスM2-1タンパク質は転写の間に使用され、トランスクリプターゼ複合体の構成要素であると思われる。ウイルスNタンパク質は、複製の間に新生RNAをカプシド被包するために使用される。
【0092】
ゲノムは、宿主細胞の細胞質中で転写および複製される。宿主細胞での転写は、典型的には、10個のメチル化およびポリアデニル化されたmRNAの合成を結果としてもたらす。アンチゲノムは、複製の間に生成されるゲノムのポジティブセンスRNA相補体であり、次いでこれはゲノム合成のための鋳型として作用する。ウイルス遺伝子は、保存された遺伝子開始(GS)および遺伝子終了(GE)配列により隣接されている。ゲノムの3’および5’末端にはリーダーおよびトレイラーヌクレオチドがある。野生型リーダー配列は3’末端においてプロモーターを含有する。ウイルスポリメラーゼがGEシグナルに達したときに、ポリメラーゼはポリアデニル化を行い、mRNAを放出させ、次のGSシグナルにおいてRNA合成を再開させる。L-P複合体は、プロモーターの認識、RNA合成、mRNAの5’末端のキャップ付加およびメチル化ならびにそれらの3’末端のポリアデニル化の原因となると考えられる。ポリメラーゼはジャンクションにおいて遺伝子から解離する場合があると考えられる。ポリメラーゼはゲノムの3’末端において転写を開始させるため、これは発現の勾配を結果としてもたらし、ゲノムの3’末端における遺伝子は5’末端におけるものよりも頻繁に転写される。
【0093】
ゲノムを複製するために、ポリメラーゼは、シス作用性GEおよびGSシグナルに応答せず、ゲノムのポジティブセンスRNA相補体、アンチゲノムを生成する。アンチゲノムの3’末端においてトレイラーの相補体があり、これはプロモーターを含有する。ポリメラーゼは、このプロモーターを使用してゲノム-センスRNAを生成する。ネイキッドのRNAとして放出されるmRNAとは異なり、アンチゲノムおよびゲノムRNAは、それらが合成される際にウイルス核タンパク質(N)でカプシド被包される。
【0094】
ウイルスmRNAの翻訳後に、全長(+)アンチゲノムRNAが(-)RNAゲノムの複製用の鋳型として生成される。感染性組換えRSV(rRSV)粒子は、トランスフェクトされたプラスミドから回収されてもよい。RSV N、P、L、およびM2-1タンパク質の共発現の他に、全長アンチゲノムRNAは、RSV複製のために十分である。Collins et al.,(1995)Proc Natl Acad Sci USA.92(25):11563-11567および米国特許第6,790,449号明細書を参照。
【0095】
キメラタンパク質
ある特定の実施形態において、本開示は、1つのウイルスからのエクトドメインの少なくとも部分、および第2のウイルスの細胞質テイルを含むキメラタンパク質に関する。ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、第1または第2のウイルスからの膜貫通ドメインをさらに含む。例えば、ある特定の実施形態において、エクトドメインの少なくとも部分および任意選択的に膜貫通ドメインは、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)のHAタンパク質;レトロウイルス科のEnvタンパク質;パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザ、麻疹およびおたふく風邪ウイルス)のFおよび/またはHNタンパク質;コロナウイルス科のSタンパク質(例えば、SARS-CoV-2);フィロウイルス科のGPタンパク質;アレナウイルス科のGPおよび/またはSSPタンパク質;トガウイルス科のE1/E2タンパク質;フラビウイルス科のE(例えば、TBEVにおけるもの)またはE1/E2(例えば、HCVにおけるもの)タンパク質;ブニヤウイルス科のGN/GCタンパク質;ラブドウイルス科(例えば、VSVおよび狂犬病ウイルス)のGタンパク質;ヘルペスウイルス科のgB、gD、および/またはgH/Lタンパク質;ポックスウイルス科における8つのタンパク質の複合体の1つ以上;ならびにヘパドナウイルス科のSおよび/またはLタンパク質に由来する。ある特定の実施形態において、細胞質テイルは、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)のHAタンパク質;レトロウイルス科のEnvタンパク質;パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザ、麻疹およびおたふく風邪ウイルス)のFおよび/またはHNタンパク質;コロナウイルス科のSタンパク質(例えば、SARS-CoV-2);フィロウイルス科のGPタンパク質;アレナウイルス科のGPおよび/またはSSPタンパク質;トガウイルス科のE1/E2タンパク質;フラビウイルス科のE(例えば、TBEVにおけるもの)またはE1/E2(例えば、HCVにおけるもの)タンパク質;ブニヤウイルス科のGN/GCタンパク質;ラブドウイルス科(例えば、VSVおよび狂犬病ウイルス)のGタンパク質;ヘルペスウイルス科のgB、gD、および/またはgH/Lタンパク質;ポックスウイルス科における8つのタンパク質の複合体の1つ以上;ならびにヘパドナウイルス科のSおよび/またはLタンパク質に由来する。
【0096】
例えば、ある特定の実施形態において、本開示は、非RSV融合タンパク質およびRSV Fタンパク質の少なくとも部分を含むキメラタンパク質の他に、キメラタンパク質をコードする核酸を提供する。ある特定の実施形態において、本開示は、これらのタンパク質をコードする核酸を含む組換えベクターおよび前記ベクターを含む細胞を想定する。ある特定の実施形態において、ベクターは選択マーカーまたはレポーター遺伝子を含む。
【0097】
ある特定の実施形態において、本開示は、非RSV融合タンパク質のエクトドメインおよびRSV Fタンパク質細胞質テイルを含むキメラタンパク質に関する。ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、非RSV融合タンパク質またはRSV Fタンパク質の膜貫通ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態において、非RSV融合タンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。
【0098】
ある特定の実施形態において、本開示は、第1の非RSV融合タンパク質(例えば、コロナウイルススパイクタンパク質)のエクトドメインならびに第2の非RSV融合タンパク質、例えば、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザ)のHAタンパク質;パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザ、麻疹、およびおたふく風邪)のFおよび/またはHNタンパク質;コロナウイルス科のSタンパク質(例えば、SARS-CoV-2);フィロウイルス科のGPタンパク質;アレナウイルス科のGPおよび/またはSSPタンパク質;トガウイルス科のE1/E2タンパク質;フラビウイルス科のE(例えば、TBEVにおけるもの)またはE1/E2(例えば、HCVにおけるもの)タンパク質;ブニヤウイルス科のGN/GCタンパク質;ラブドウイルス科のGタンパク質;ヘルペスウイルス科のgB、gD、および/またはgH/Lタンパク質;ポックスウイルス科における8つのタンパク質の複合体の1つ以上;ならびにヘパドナウイルス科のSおよび/またはLタンパク質の細胞質テイルを含むキメラタンパク質に関する。ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、第1または第2の非RSV融合タンパク質からの膜貫通ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態において、第1の非RSV融合タンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。
【0099】
ある特定の実施形態において、本開示は、(1)SARS-CoV-2スパイクタンパク質のエクトドメインおよび任意選択的に膜貫通ドメインならびに(2)インフルエンザウイルスHAタンパク質、パラインフルエンザウイルスFもしくはHNタンパク質、麻疹ウイルスFもしくはHNタンパク質、おたふく風邪ウイルスFもしくはHNタンパク質、水胞性口内炎ウイルス(VSV)Gタンパク質、または狂犬病ウイルスGタンパク質の細胞質テイルを含むキメラタンパク質に関する。ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、おたふく風邪ウイルス、水胞性口内炎ウイルス(VSV)、または狂犬病ウイルスの膜貫通ドメインをさらに含む。インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、おたふく風邪ウイルス、水胞性口内炎ウイルス(VSV)、および狂犬病ウイルスの膜貫通および細胞質ドメインの配列は当技術分野において公知である。以上のための例示的な細胞質テイル配列は表1において提供される。他の想定される細胞質テイル配列は、表1における細胞質テイル配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するものを包含する。
【0100】
キメラタンパク質における使用のためのコロナウイルススパイクタンパク質およびその部分
ある特定の実施形態において、本開示は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)スパイクタンパク質の少なくとも部分およびRSV Fタンパク質の少なくとも部分を含むキメラタンパク質ならびにそれをコードする組換え核酸のある特定の望ましい配列に関する。ある特定の実施形態において、本開示は、これらのポリペプチドをコードする核酸を含む組換えベクターおよび前記ベクターを含む細胞を想定する。ある特定の実施形態において、ベクターは選択マーカーまたはレポーター遺伝子を含む。
【0101】
ある特定の実施形態において、本開示は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)スパイク(S)タンパク質エクトドメインおよび膜貫通ドメインならびにRSV Fタンパク質細胞質テイルを含むキメラタンパク質に関する。
【0102】
図1における概略図に示されるように(スパイク遺伝子部分を参照)、コロナウイルススパイクタンパク質は、フューリン切断部位(S1/S2)により分離されたS1ドメインおよびS2ドメインを含む。S1ドメインは、2つのサブドメイン:N末端ドメイン(NTD)および受容体結合ドメイン(RBD)を含有する。S2ドメインは、2つの7回リピート(HR1およびHR2)、S2’切断部位、ならびにCD26相互作用ドメイン(「CD」)、融合ペプチド(FP)、ならびに膜貫通ドメイン(TM)を含有する。
【0103】
ある特定の実施形態において、コロナウイルススパイクタンパク質は、
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPRRARSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFGGFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDKVEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQYIKWPWYIWLGFIAGLIAIVMVTIMLCCMTSCCSCLKGCCSCGSCCKFDEDDSEPVLKGVKLHYT(配列番号23)、またはその部分もしくはバリアントを含む。
【0104】
ある特定の実施形態において、コロナウイルススパイクタンパク質の部分は、配列番号23のアミノ酸1~1210、配列番号23のアミノ酸1~1254、配列番号23の1~1241、配列番号23の1~1240、または配列番号23の1~1260を含む。
【0105】
ある特定の実施形態において、コロナウイルススパイクタンパク質の部分は、フューリン切断部位(PRRA(配列番号137))(配列番号23のアミノ酸681~684および
図9における概略図を参照)の欠失、またはフューリン切断部位における突然変異(例えば、フューリン切断部位をPRRA(配列番号137)からPQRA(配列番号138)に変化させるR682Q)を含む。ある特定の実施形態において、コロナウイルススパイクタンパク質の部分は、フューリン切断部位のアミノ酸Pの欠失、2つのRアミノ酸の1つの欠失、アミノ酸Aの欠失、アミノ酸PR、RR、RA、PRR、またはRRAの欠失を含む。ある特定の実施形態において、コロナウイルススパイクタンパク質の部分は、アミノ酸Pの置換、2つのRアミノ酸の1つもしくは両方の置換、アミノ酸Aの置換、またはこれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態において、フューリン切断部位のアミノ酸はアミノ酸Qで置換される。
【0106】
ある特定の実施形態において、コロナウイルススパイクタンパク質の部分は、L5、S13、L18、T19、T20、P26、A67、D80、T95、D138、G142、W152、E154、F157、R158、R190、D215、D253、R246、K417、L452、L453、S477、T478、E484、N501、F565、A570、D614、H655、Q677、P681、A701、T716、T791、T859、F888、D950、S982、T1027I、Q1071、D1118、V1176に対応する位置における1つ以上のアミノ酸置換、ならびに/またはアミノ酸69および70、144、156、および157の1つ以上の欠失を含み、アミノ酸番号付けは配列番号23に対応する。ある特定の実施形態において、コロナウイルススパイクタンパク質の部分は、以下のアミノ酸置換:L5F、S13I、L18F、T19R、T20N、P26S、A67V、D80A、D80G、T95I、D138Y、G142D、W152C、E154K、F157S、R158G、R190S、D215G、R246I、D253G、K417N、K417T、L452R、S477N、T478K、E484K、E484Q、N501Y、F565L、A570D、D614G、H655Y、Q677H、P681H、P681R、A701V、T716I、T791I、T859N、F888L、D950H、D950N、S982A、T1027I、Q1071H、およびD1118H、V1176Fの1つ以上を含み、アミノ酸番号付けは配列番号23に対応する。
【0107】
ある特定の実施形態において、コロナウイルススパイクタンパク質の部分は、表2に列記されるバリアントのいずれかに示されるアミノ酸置換および/または欠失の組合せを含む。
【0108】
ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、本明細書に記載されているコロナウイルススパイクタンパク質、またはその部分(例えば、少なくとも約200個のアミノ酸、少なくとも約300個のアミノ酸、少なくとも約400個のアミノ酸、少なくとも約500個のアミノ酸、少なくとも約600個のアミノ酸、少なくとも約700個のアミノ酸、少なくとも約800個のアミノ酸、少なくとも約900個のアミノ酸、少なくとも約1000個のアミノ酸、少なくとも約1100個のアミノ酸、少なくとも約1200個のアミノ酸、少なくとも約1210個のアミノ酸、少なくとも約1220個のアミノ酸、少なくとも約1230個のアミノ酸、少なくとも約1240個のアミノ酸、少なくとも約1250個のアミノ酸、少なくとも約1260個のアミノ酸、もしくは少なくとも約1270個のアミノ酸を含むその断片)、もしくはそのバリアント(例えば、それに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を含むコロナウイルススパイクタンパク質)を含む。ある特定の実施形態において、スパイクタンパク質は、約1~100個のアミノ酸、約1~90個のアミノ酸、約1~80個のアミノ酸、約1~70個のアミノ酸、約1~60個のアミノ酸、または約1~50個のアミノ酸、例えば、約1、約2、約3、約4、約5 約6、約7、約8、約9、または約10個のアミノ酸により切断されている。
【0109】
ある特定の実施形態において、コロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号24またはそれに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するその部分もしくはバリアントによりコードされる。
ATGTTTGTTTTTCTTGTTTTATTGCCACTAGTCTCTAGTCAGTGTGTTAATCTTACAACCAGAACTCAATTACCCCCTGCATACACTAATTCTTTCACACGTGGTGTTTATTACCCTGACAAAGTTTTCAGATCCTCAGTTTTACATTCAACTCAGGACTTGTTCTTACCTTTCTTTTCCAATGTTACTTGGTTCCATGCTATACATGTCTCTGGGACCAATGGTACTAAGAGGTTTGATAACCCTGTCCTACCATTTAATGATGGTGTTTATTTTGCTTCCACTGAGAAGTCTAACATAATAAGAGGCTGGATTTTTGGTACTACTTTAGATTCGAAGACCCAGTCCCTACTTATTGTTAATAACGCTACTAATGTTGTTATTAAAGTCTGTGAATTTCAATTTTGTAATGATCCATTTTTGGGTGTTTATTACCACAAAAACAACAAAAGTTGGATGGAAAGTGAGTTCAGAGTTTATTCTAGTGCGAATAATTGCACTTTTGAATATGTCTCTCAGCCTTTTCTTATGGACCTTGAAGGAAAACAGGGTAATTTCAAAAATCTTAGGGAATTTGTGTTTAAGAATATTGATGGTTATTTTAAAATATATTCTAAGCACACGCCTATTAATTTAGTGCGTGATCTCCCTCAGGGTTTTTCGGCTTTAGAACCATTGGTAGATTTGCCAATAGGTATTAACATCACTAGGTTTCAAACTTTACTTGCTTTACATAGAAGTTATTTGACTCCTGGTGATTCTTCTTCAGGTTGGACAGCTGGTGCTGCAGCTTATTATGTGGGTTATCTTCAACCTAGGACTTTTCTATTAAAATATAATGAAAATGGAACCATTACAGATGCTGTAGACTGTGCACTTGACCCTCTCTCAGAAACAAAGTGTACGTTGAAATCCTTCACTGTAGAAAAAGGAATCTATCAAACTTCTAACTTTAGAGTCCAACCAACAGAATCTATTGTTAGATTTCCTAATATTACAAACTTGTGCCCTTTTGGTGAAGTTTTTAACGCCACCAGATTTGCATCTGTTTATGCTTGGAACAGGAAGAGAATCAGCAACTGTGTTGCTGATTATTCTGTCCTATATAATTCCGCATCATTTTCCACTTTTAAGTGTTATGGAGTGTCTCCTACTAAATTAAATGATCTCTGCTTTACTAATGTCTATGCAGATTCATTTGTAATTAGAGGTGATGAAGTCAGACAAATCGCTCCAGGGCAAACTGGAAAGATTGCTGATTATAATTATAAATTACCAGATGATTTTACAGGCTGCGTTATAGCTTGGAATTCTAACAATCTTGATTCTAAGGTTGGTGGTAATTATAATTACCTGTATAGATTGTTTAGGAAGTCTAATCTCAAACCTTTTGAGAGAGATATTTCAACTGAAATCTATCAGGCCGGTAGCACACCTTGTAATGGTGTTGAAGGTTTTAATTGTTACTTTCCTTTACAATCATATGGTTTCCAACCCACTAATGGTGTTGGTTACCAACCATACAGAGTAGTAGTACTTTCTTTTGAACTTCTACATGCACCAGCAACTGTTTGTGGACCTAAAAAGTCTACTAATTTGGTTAAAAACAAATGTGTCAATTTCAACTTCAATGGTTTAACAGGCACAGGTGTTCTTACTGAGTCTAACAAAAAGTTTCTGCCTTTCCAACAATTTGGCAGAGACATTGCTGACACTACTGATGCTGTCCGTGATCCACAGACACTTGAGATTCTTGACATTACACCATGTTCTTTTGGTGGTGTCAGTGTTATAACACCAGGAACAAATACTTCTAACCAGGTTGCTGTTCTTTATCAGGATGTTAACTGCACAGAAGTCCCTGTTGCTATTCATGCAGATCAACTTACTCCTACTTGGCGTGTTTATTCTACAGGTTCTAATGTTTTTCAAACACGTGCAGGCTGTTTAATAGGGGCTGAACATGTCAACAACTCATATGAGTGTGACATACCCATTGGTGCAGGTATATGCGCTAGTTATCAGACTCAGACTAATTCTCCTCGGCGGGCACGTAGTGTAGCTAGTCAATCCATCATTGCCTACACTATGTCACTTGGTGCAGAAAATTCAGTTGCTTACTCTAATAACTCTATTGCCATACCCACAAATTTTACTATTAGTGTTACCACAGAAATTCTACCAGTGTCTATGACCAAGACATCAGTAGATTGTACAATGTACATTTGTGGTGATTCAACTGAATGCAGCAATCTTTTGTTGCAATATGGCAGTTTTTGTACACAATTAAACCGTGCTTTAACTGGAATAGCTGTTGAACAAGACAAAAACACCCAAGAAGTTTTTGCACAAGTCAAACAAATTTACAAAACACCACCAATTAAAGATTTTGGTGGTTTTAATTTTTCACAAATATTACCAGATCCATCAAAACCAAGCAAGAGGTCATTTATTGAAGATCTACTTTTCAACAAAGTGACACTTGCAGATGCTGGCTTCATCAAACAATATGGTGATTGCCTTGGTGATATTGCTGCTAGAGACCTCATTTGTGCACAAAAGTTTAACGGCCTTACTGTTTTGCCACCTTTGCTCACAGATGAAATGATTGCTCAATACACTTCTGCACTGTTAGCGGGTACAATCACTTCTGGTTGGACCTTTGGTGCAGGTGCTGCATTACAAATACCATTTGCTATGCAAATGGCTTATAGGTTTAATGGTATTGGAGTTACACAGAATGTTCTCTATGAGAACCAAAAATTGATTGCCAACCAATTTAATAGTGCTATTGGCAAAATTCAAGACTCACTTTCTTCCACAGCAAGTGCACTTGGAAAACTTCAAGATGTGGTCAACCAAAATGCACAAGCTTTAAACACGCTTGTTAAACAACTTAGCTCCAATTTTGGTGCAATTTCAAGTGTTTTAAATGATATCCTTTCACGTCTTGACAAAGTTGAGGCTGAAGTGCAAATTGATAGGTTGATCACAGGCAGACTTCAAAGTTTGCAGACATATGTGACTCAACAATTAATTAGAGCTGCAGAAATCAGAGCTTCTGCTAATCTTGCTGCTACTAAAATGTCAGAGTGTGTACTTGGACAATCAAAAAGAGTTGATTTTTGTGGAAAGGGCTATCATCTTATGTCCTTCCCTCAGTCAGCACCTCATGGTGTAGTCTTCTTGCATGTGACTTATGTCCCTGCACAAGAAAAGAACTTCACAACTGCTCCTGCCATTTGTCATGATGGAAAAGCACACTTTCCTCGTGAAGGTGTCTTTGTTTCAAATGGCACACACTGGTTTGTAACACAAAGGAATTTTTATGAACCACAAATCATTACTACAGACAACACATTTGTGTCTGGTAACTGTGATGTTGTAATAGGAATTGTCAACAACACAGTTTATGATCCTTTGCAACCTGAATTAGACTCATTCAAGGAGGAGTTAGATAAATATTTTAAGAATCATACATCACCAGATGTTGATTTAGGTGACATCTCTGGCATTAATGCTTCAGTTGTAAACATTCAAAAAGAAATTGACCGCCTCAATGAGGTTGCCAAGAATTTAAATGAATCTCTCATCGATCTCCAAGAACTTGGAAAGTATGAGCAGTATATAAAATGGCCATGGTACATTTGGCTAGGTTTTATAGCTGGCTTGATTGCCATAGTAATGGTGACAATTATGCTTTGCTGTATGACCAGTTGCTGTAGTTGTCTCAAGGGCTGTTGTTCTTGTGGATCCTGCTGCAAATTTGATGAAGACGACTCTGAGCCAGTGCTCAAAGGAGTCAAATTACATTACACATAA(配列番号24)
【0110】
キメラタンパク質における使用のためのRSV Fタンパク質およびその部分
ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、RSV細胞質テイル(CT)ドメインまたはその部分を含む。Fタンパク質のRSV細胞質テイル(CT)ドメインの位置および構造は当技術分野において公知である(例えば、Baviskar et al.(2013)J Virol 87(19):10730-10741を参照)。ある特定の実施形態において、および当技術分野において一般的に使用されるように、Fタンパク質のRSV細胞質テイル(CT)ドメインという用語は、配列KARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号25)またはKARSTPITLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号26)を指す(例えば、
図2を参照)。
【0111】
ある特定の実施形態において、RSV Fタンパク質細胞質テイル(CT)の部分は、配列番号25もしくは26または配列番号25もしくは26に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を含む配列の少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約20個のアミノ酸、少なくとも約21個のアミノ酸、少なくとも約22個のアミノ酸、または少なくとも約23個のアミノ酸を含むRSV Fタンパク質CTの断片を指す。ある特定の実施形態において、RSV CTドメインは、Nおよび/またはC末端において約1~15個のアミノ酸、約1~10個のアミノ酸、約1~5個のアミノ酸、約1~3個のアミノ酸、約5~15個のアミノ酸、または約5~10個のアミノ酸、例えば、約1、約2、約3、約4、約5 約6、約7、約8、約9、または約10個のアミノ酸により切断されている。
【0112】
ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、RSV Fタンパク質細胞質テイル(CT)ドメインおよびRSV膜貫通(TM)ドメインまたはそれらの部分を含む。RSV膜貫通ドメイン(TM)の位置および構造は当技術分野において公知であり(例えば、Collins et al.(1984)PNAS 81:7683-7687、Fig.3を参照)、配列IMITTIIIVIIVILLSLIAVGLLLYC(配列番号27)またはIMITAIIIVIIVVLLSLIAIGLLLYC(配列番号28)を含むことができる。ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、RSV膜貫通(TM)ドメインの部分(例えば、配列番号27もしくは28、または配列番号27もしくは28に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を含む配列の少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約20個のアミノ酸、少なくとも約21個のアミノ酸、少なくとも約22個のアミノ酸、少なくとも約23個のアミノ酸、少なくとも約24個のアミノ酸または少なくとも約25個のアミノ酸を含むRSV膜貫通(TM)ドメインの断片)を含む。ある特定の実施形態において、RSV TMドメインは、配列番号27または28のNおよび/またはC末端において約1~15個のアミノ酸、約1~10個のアミノ酸、約1~5個のアミノ酸、約1~3個のアミノ酸、約5~15個のアミノ酸、または約5~10個のアミノ酸、例えば、約1、約2、約3、約4、約5 約6、約7、約8、約9、または約10個のアミノ酸により切断されている。
【0113】
ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、RSV Fタンパク質の膜貫通(TM)ドメインに対してN末端にあるRSV Fタンパク質配列の少なくとも部分、例えば、GKSTTN(配列番号29)を含む。よって、ある特定の実施形態において、キメラタンパク質は、GKSTTNIMITTIIIVIIVILLSLIAVGLLLYCKARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号30)およびGKSTTNIMITAIIIVIIVVLLSLIAIGLLLYCKARSTPITLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号31)または以上のいずれかの部分から選択されるRSV Fタンパク質配列の少なくとも部分を含む。例えば、RSV Fタンパク質配列の部分は、配列GLLLYCKARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号32)、YCKARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号33)、CKARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号34)、KARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号35)、ARSTPVTLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号36)、GLLLYCKARSTPITLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号37)、YCKARSTPITLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号38)、CKARSTPITLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号39)、KARSTPITLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号40)、ARSTPITLSKDQLSGINNIAFSN(配列番号41)、または以上のいずれかの部分(例えば、少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約20個のアミノ酸、少なくとも約21個のアミノ酸、少なくとも約22個のアミノ酸、少なくとも約23個のアミノ酸、少なくとも約24個のアミノ酸、少なくとも約25個のアミノ酸、少なくとも約26個のアミノ酸、少なくとも約27個のアミノ酸、少なくとも約28個のアミノ酸、もしくは少なくとも約29個のアミノ酸を含む以上のいずれかの断片もしくはそれに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を含む配列)を含むことができる。ある特定の実施形態において、RSV CTドメインは、NまたはC末端において約1~15個のアミノ酸、約1~10個のアミノ酸、約1~5個のアミノ酸、約1~3個のアミノ酸、約5~15個のアミノ酸、または約5~10個のアミノ酸、例えば、約1、約2、約3、約4、約5 約6、約7、約8、約9、または約10個のアミノ酸により切断されている。
【0114】
ある特定の実施形態において、キメラコロナウイルスSタンパク質-RSV Fタンパク質において使用されるFタンパク質の部分はA2 RSV系統からのものである。ある特定の実施形態において、RSV株19系統からのより熱的に安定なFタンパク質が使用される。理論により縛られることを望まないが、RSV 19株からのFタンパク質の使用は有利なことがあり、その理由は、高度に強力なRSV中和抗体がFタンパク質のプレFコンホメーションに対して誘導されており、19株Fタンパク質はビリオンの表面上にプレFの相対的に高いレベルを維持するからである。
【0115】
キメラコロナウイルスS-RSV Fタンパク質
ある特定の実施形態において、本開示は、コロナウイルスSタンパク質のN末端部分およびRSV Fタンパク質のC末端部分を含むキメラコロナウイルス-RSVタンパク質を提供する。ある特定の実施形態において、キメラコロナウイルス-RSVタンパク質のN末端部分は、本明細書に記載されているコロナウイルススパイクタンパク質、またはそのバリアント(例えば、本明細書に記載されるコロナウイルススパイクタンパク質に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を含むコロナウイルススパイクタンパク質)の少なくとも約200個のアミノ酸、少なくとも約300個のアミノ酸、少なくとも約400個のアミノ酸、少なくとも約500個のアミノ酸、少なくとも約600個のアミノ酸、少なくとも約700個のアミノ酸、少なくとも約800個のアミノ酸、少なくとも約900個のアミノ酸、少なくとも約1000個のアミノ酸、少なくとも約1100個のアミノ酸、少なくとも約1200個のアミノ酸、少なくとも約1210個のアミノ酸、少なくとも約1220個のアミノ酸、少なくとも約1230個のアミノ酸、少なくとも約1240個のアミノ酸、少なくとも約1250個のアミノ酸、少なくとも約1260個のアミノ酸、または少なくとも約1270個のアミノ酸を含む。ある特定の実施形態において、スパイクタンパク質のN末端部分は、約1~100個のアミノ酸、約1~90個のアミノ酸、約1~80個のアミノ酸、約1~70個のアミノ酸、約1~60個のアミノ酸、または約1~50個のアミノ酸、例えば、約1、約2、約3、約4、約5 約6、約7、約8、約9、または約10個のアミノ酸により切断されている。ある特定の実施形態において、キメラコロナウイルス-RSVタンパク質のC末端部分は、RSV Fタンパク質のC末端部分の約10~約100個のアミノ酸、RSV Fタンパク質のC末端部分の約20~約50個のアミノ酸、C末端部分の約25~約50個のアミノ酸、RSV Fタンパク質のC末端部分の約20~約40個のアミノ酸、C末端部分の約25~約40個のアミノ酸、RSV Fタンパク質のC末端部分の約20~約30個のアミノ酸、C末端部分の約25~約30個のアミノ酸、またはRSV Fタンパク質のC末端部分の約24個のアミノ酸を含む。
【0116】
ある特定の実施形態において、キメラコロナウイルス-RSVタンパク質において使用されるコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)およびRSV配列の部分は、野生型タンパク質の対応する部分に対して約70%もしくはより高い、約75%もしくはより高い、約80%もしくはより高い、約85%もしくはより高い、約90%もしくはより高い、約95%もしくはより高い、約96%もしくはより高い、約97%もしくはより高い、約98%もしくはより高い、または約99%もしくはより高い配列同一性を含む。
【0117】
ある特定の実施形態において、キメラコロナウイルス-RSVタンパク質は、配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択される配列、または配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択されるタンパク質に対して約80%もしくはより高い、約85%もしくはより高い、約90%もしくはより高い、約95%もしくはより高い、約96%もしくはより高い、約97%もしくはより高い、約98%もしくはより高い、もしくは約99%もしくはより高い配列同一性を含むタンパク質を含む。
【0118】
ある特定の実施形態において、キメラコロナウイルス-RSVタンパク質は、配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される配列を含む核酸配列、または配列番号7~12、63、69、75、81、87、93、99、および111からなる群から選択される核酸に対して約80%もしくはより高い、約85%もしくはより高い、約90%もしくはより高い、約95%もしくはより高い、約96%もしくはより高い、約97%もしくはより高い、約98%もしくはより高い、もしくは約99%もしくはより高い配列同一性を含む核酸配列、または上述のいずれかのRNA対応物、または上述のいずれかの相補的配列によりコードされる。
【0119】
キメラRSV
RSVを貯蔵するための一般的なベクターはプラスミドおよび細菌人工染色体(BAC)を包含する。典型的には、細菌人工染色体は、選択マーカー、例えば、抗生物質に対する耐性を提供する遺伝子と作動可能な組合せのF因子のoriS、repE、parA、およびparB遺伝子からなる群から選択される1つ以上の遺伝子を含む。核酸配列は、任意選択的に突然変異したウイルス、例えば、任意選択的に突然変異したRSV系統のゲノムまたはアンチゲノム配列であってもよい。
【0120】
大腸菌細菌中でのRSVの培養は、細菌人工染色体(BAC)を利用することにより達成されてもよい。RSVを貯蔵および遺伝子操作するためのBACベクターは、Stobart et al.,Methods Mol Biol.,2016,1442:141-53および米国特許出願公開第2012/0264217号明細書において報告されている。開示されるBACは、RSV系統19株のアンチゲノム配列である、F遺伝子を除く呼吸器合胞体ウイルス(RSV)系統A2の完全なアンチゲノム配列を含有する。
【0121】
よって、本明細書に開示されるキメラタンパク質(例えば、キメラコロナウイルス-RSVタンパク質)は、BAC、例えば、F遺伝子および任意選択的にG遺伝子がキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列で置き換えられている、上掲のStobart et al.(2016)において報告されるBACを使用して貯蔵および培養され得る。
【0122】
ヘルパープラスミドと共に、キメラRSVを含むプラスミドまたはBACは、感染性ウイルスの回収のためのリバースジェネティクスシステムにおいて使用され得る。プラスミド上のアンチゲノム配列は、ウイルス回収の前に突然変異させて、所望される突然変異を有するウイルスを生成することができる。
【0123】
ある特定の実施形態において、本開示は、キメラRSV粒子(例えば、キメラコロナウイルス-RSV粒子)を生成する方法であって、BAC遺伝子およびキメラRSVアンチゲノム(例えば、コロナウイルス-RSVアンチゲノム)を有するベクターを、単離された真核細胞に挿入することならびにRSVのNタンパク質(例えば、NS1またはNS2)をコードするベクター、RSVのPタンパク質をコードするベクター、RSVのLタンパク質をコードするベクター、およびRSVのM2-1タンパク質をコードするベクターからなる群から選択される1つ以上のベクター(例えば、ヘルパープラスミド)を細胞に、RSVビリオンが形成されるような条件下で挿入することを含む、方法に関する。ある特定の実施形態において、Nタンパク質、Pタンパク質、Lタンパク質、またはMS-1タンパク質をコードするベクターはコドン脱最適化されている。細胞へのベクターの挿入は、物理的に注入すること、エレクトロポレートすること、またはベクターが細胞に侵入するような条件下で細胞およびベクターを混合することにより行われてもよい。
【0124】
キメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス-RSV)は、ある特定の突然変異、欠失、またはバリアントの組合せを含むことが想定され、これは例えばRSVの低温継代(cp)非温度感受性(ts)誘導体、cpRSV、例えばrA2cp248/404/1030ΔSHである。rA2cp248/404ΔSHは、4つの独立した弱毒化遺伝子エレメント:一緒になってcpRSVの非ts弱毒化表現型を付与するNおよびLタンパク質中のミスセンス突然変異に基づくcp;Lタンパク質中のミスセンス突然変異であるts248;M2遺伝子の遺伝子開始転写シグナル中のヌクレオチド置換であるts404;ならびにSH遺伝子の完全な欠失であるΔSHを含有する。rA2cp248/404/1030ΔSHは、独立した弱毒化遺伝子エレメント:rA2cp248/404ΔSH中に存在するものおよびLタンパク質中の別のミスセンス突然変異であるts1030を含有する。Karron et al.,(2005)J Infect Dis.191(7):1093-1104(参照により本明細書に組み込まれる)を参照。
【0125】
ある特定の実施形態において、キメラRSVアンチゲノム(例えば、コロナウイルス-RSVアンチゲノム)は、非必須遺伝子(例えば、G、SH、NS1、NS2、およびM2-2遺伝子)中の欠失もしくは突然変異またはこれらの組合せを含有してもよいことが想定される。例えば、ある特定の実施形態において、遺伝子SHは存在しない。ある特定の実施形態において、SH遺伝子とG遺伝子との間の遺伝子間領域は存在しない。ある特定の実施形態において、遺伝子Gは存在しない。理論により縛られることを望まないが、SH遺伝子およびSH遺伝子とG遺伝子との間の遺伝子間領域の除外は、キメラRSV Fタンパク質(例えば、キメラコロナウイルスSタンパク質/RSV Fタンパク質の転写を増加させ、インビボでウイルスを弱毒化し得ると考えられる。
【0126】
ある特定の実施形態において、RSV G遺伝子は、分泌型のGタンパク質を除去するためのアミノ酸48におけるMetからIleへの突然変異を含む。理論により縛られることを望まないが、分泌型のGタンパク質は、抗原デコイとして作用し、インビトロ複製のために必須ではないため、分泌型のGタンパク質の除去は有利なことがあると考えられる。
【0127】
遺伝コードの縮重に起因して、個々のアミノ酸は、場合により同義コドンとして参照される複数のコドンの配列によりコードされる。異なる種において、同義コドンは、より高いまたはより低い頻度で使用され、これは場合によりコドンバイアスとして参照される。遺伝子のコーディング配列中への少数で存在する同義コドンの遺伝子操作は、タンパク質のアミノ酸配列における変化なしにタンパク質翻訳の速度の減少を結果としてもたらすことが示されている。Mueller et al.は、コドンバイアスにおける変化によるウイルス弱毒化を報告している。Science,2008,320:1784を参照。国際公開第2008121992号パンフレット、国際公開第2006042156号パンフレット、Burns et al.(2006)J Virology 80(7):3259およびMueller et al.(2006)J Virology 80(19):9687も参照。
【0128】
RSVにおけるコドン脱最適化の使用は、Meng,et al.,MBio 5,e01704-01714(2014)および米国特許出願公開第2016/0030549号明細書において報告されている。ある特定の実施形態において、本開示は、単離された核酸、コドン脱最適化を有する組換えコロナウイルス-RSV、それから製造されるワクチン、およびそれに関するワクチン接種方法に関する。ある特定の実施形態において、コドン脱最適化は、ヒトにおいてより低い頻度で使用されるコドンを使用することを含む。ある特定の実施形態において、コドン脱最適化は、非構造遺伝子NS1およびNS2ならびに任意選択的に遺伝子Lにおいて為される。
【0129】
ある特定の実施形態において、コドン脱最適化は、配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110またはこれらのバリアントからなる群から選択されるキメラコロナウイルス-RSVタンパク質配列をコードする核酸において為される。
【0130】
ある特定の実施形態において、本開示は、野生型ヒトRSVの脱最適化されたRSV遺伝子(例えば、NS1および/もしくはNS2、および任意選択的に遺伝子L)またはGlyを生成するためのコドンがGGTであり、Aspを生成するためのコドンがGATであり、Gluを生成するためのコドンがGAAであり、Hisを生成するためのコドンがCATであり、Ileを生成するためのコドンがATAであり、Lysを生成するためのコドンがAAAであり、Leuを生成するためのコドンがCTAであり、Asnを生成するためのコドンがAATであり、Glnを生成するためのコドンがCAAであり、Valを生成するためのコドンがGTAであり、もしくはTyrを生成するためのコドンがTATであり、もしくはこれらの組合せであるようにヌクレオチドが置換されたそのバリアントを含む単離された核酸に関する。ある特定の実施形態において、単離された核酸中の遺伝子は、個々のコドンの少なくとも2、3、4、5、6、7、8 9、10個、またはすべての組合せをさらに含む。ある特定の実施形態において、単離された核酸中の遺伝子は、少なくとも20、30、40、または50以上のコドンを含む。
【0131】
ある特定の実施形態において、本開示は、野生型ヒトRSVの脱最適化されたRSV遺伝子(例えば、NS1および/もしくはNS2、任意選択的に遺伝子L)またはAlaを生成するためのコドンがGCGであり、Cysを生成するためのコドンがTGTであり、Pheを生成するためのコドンがTTTであり、Proを生成するためのコドンがCCGであり、Argを生成するためのコドンがCGTであり、Serを生成するためのコドンがTCGであり、もしくはThrを生成するためのコドンがACGであり、もしくはこれらの組合せであるようにヌクレオチドが置換されたそのバリアントを含む単離された核酸に関する。ある特定の実施形態において、核酸を含有する遺伝子は、個々のコドンの少なくとも2、3、4、5、6、7、8 9、10、11、12、13、14、15、16個、またはすべての組合せを含む。ある特定の実施形態において、単離された核酸中の遺伝子は、少なくとも20、30、40、または50以上のコドンをさらに含む。
【0132】
ある特定の実施形態において、コドン脱最適化されたNS1遺伝子は、配列:
ATGGGTTCGAATTCGCTATCGATGATAAAAGTACGTCTACAAAATCTATTTGATAATGATGAAGTAGCGCTACTAAAAATAACGTGTTATACGGATAAACTAATACATCTAACGAATGCGCTAGCGAAAGCGGTAATACATACGATAAAACTAAATGGTATAGTATTTGTACATGTAATAACGTCGTCGGATATATGTCCGAATAATAATATAGTAGTAAAATCGAATTTTACGACGATGCCGGTACTACAAAATGGTGGTTATATATGGGAAATGATGGAACTAACGCATTGTTCGCAACCGAATGGTCTACTAGATGATAATTGTGAAATAAAATTTTCGAAAAAACTATCGGATTCGACGATGACGAATTATATGAATCAACTATCGGAACTACTAGGTTTTGATCTAAATCCGTAA(配列番号44)
を含む。
【0133】
ある特定の実施形態において、コドン脱最適化されたNS2遺伝子は、配列:
ATGGATACGACGCATAATGATAATACGCCGCAACGTCTAATGATAACGGATATGCGTCCGCTATCGCTAGAAACGATAATAACGTCGCTAACGCGTGATATAATAACGCATAAATTTATATATCTAATAAATCATGAATGTATAGTACGTAAACTAGATGAACGTCAAGCGACGTTTACGTTTCTAGTAAATTATGAAATGAAACTACTACATAAAGTAGGTTCGACGAAATATAAAAAATATACGGAATATAATACGAAATATGGTACGTTTCCGATGCCGATATTTATAAATCATGATGGTTTTCTAGAATGTATAGGTATAAAACCGACGAAACATACGCCGATAATATATAAATATGATCTAAATCCGTAA(配列番号45)
を含む。
【0134】
理論により縛られることを望まないが、NS1およびNS2のコドン脱最適化は有利なことがあり、その理由は、NS1およびNS2タンパク質は、感染に対する宿主インターフェロン応答に干渉することが公知であり、インビトロ複製のために必須ではないからである。
【0135】
ある特定の実施形態において、本開示は、キメラ非RSV/RSV Fタンパク質、例えば、キメラコロナウイルスSタンパク質およびRSV Fタンパク質のための脱最適化された遺伝子をコードする単離された核酸に関する。キメラコロナウイルスSタンパク質およびRSV Fタンパク質は、配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択される配列またはGlyを生成するためのコドンがGGTであり、Aspを生成するためのコドンがGATであり、Gluを生成するためのコドンがGAAであり、Hisを生成するためのコドンがCATであり、Ileを生成するためのコドンがATAであり、Lysを生成するためのコドンがAAAであり、Leuを生成するためのコドンがCTAであり、Asnを生成するためのコドンがAATであり、Glnを生成するためのコドンがCAAであり、Valを生成するためのコドンがGTAであり、もしくはTyrを生成するためのコドンがTATであり、もしくはこれらの組合せであるようにヌクレオチドが置換されたそのバリアントまたはそのバリアントを有することができる。ある特定の実施形態において、単離された核酸中の遺伝子は、個々のコドンの少なくとも2、3、4、5、6、7、8 9、10個、またはすべての組合せをさらに含む。ある特定の実施形態において、単離された核酸中の遺伝子は、少なくとも20、30、40、または50以上のコドンを含む。
【0136】
Glenn et al.は、妊娠可能年齢の健康な女性における呼吸器合胞体ウイルス組換え融合(F)ナノ粒子ワクチンの無作為化盲検比較用量範囲研究を報告している((2016)J Infect Dis.213(3):411-22)。ある特定の実施形態において、本開示は、非RSV融合タンパク質(例えば、コロナウイルスSタンパク質)の部分およびRSV Fタンパク質の部分を含むキメラタンパク質、例えば、配列番号1~6、62、68、74、80、86、92、98、および110からなる群から選択される配列またはそのバリアントを含むキメラコロナウイルスSタンパク質およびRSV Fタンパク質、ならびにVLPを形成するために十分な本明細書に記載されている1つ以上のRSVコア構造タンパク質を含有するウイルス粒子およびウイルス様粒子(VLP)に関する。ウイルス粒子は、不活性化されたワクチン(または殺傷されたワクチン)として一般的に使用される。RSVは、培養において増殖させ、次に熱またはホルムアルデヒドなどの方法を使用して殺傷され得る。弱毒生ワクチンは、典型的には、複製および/または感染の速度がより遅くなるように弱体化されている。
【0137】
ある特定の実施形態において、本開示は、全体ウイルスワクチンとしてのキメラRSV粒子(例えば、キメラコロナウイルス-RSV粒子)、例えば、キメラRSVのゲノムが非複製性または非感染性となるように熱、化学物質、または放射線に曝露された全体ウイルス粒子を想定する。ある特定の実施形態において、本開示は、洗浄剤を使用してウイルスを破壊することによりおよびウイルスに対する応答を開始させるために免疫系を刺激するための抗原として本明細書に開示されるキメラタンパク質を精製することにより製造されるスプリットウイルスワクチン中のキメラRSV粒子(例えば、キメラコロナウイルス-RSV粒子)を想定する。
ある特定の実施形態において、本開示は、配列番号13~18、65、71、77、83、89、95、101、104~109、および113からなる群から選択される配列または配列番号13~18、65、71、77、83、89、95、101、104~109、および113からなる群から選択される配列に対して少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有するそのバリアント、または上述のいずれかのRNA対応物、または上述のいずれかの相補的配列を含む弱毒生キメラRSV-SARS-CoV-2アンチゲノムに関する。
【0138】
VLPは、成熟したビリオンに密接に似ているが、ウイルスゲノム材料(すなわち、ウイルスゲノムRNA)を含有しない。したがって、VLPは非複製性の性質である。さらに、VLPは、VLPの表面上にタンパク質を発現することができる。さらに、VLPはインタクトなビリオンに似ており、多価粒子状構造であるので、VLPは、表面タンパク質に対する中和抗体の誘導において有効であり得る。VLPは繰り返し投与され得る。
【0139】
ある特定の実施形態において、本開示は、表面上の本明細書に開示されるキメラRSV Fタンパク質(例えば、キメラコロナウイルスSタンパク質-RSV Fタンパク質)およびインフルエンザウイルスマトリックス(M1)タンパク質コアを含むVLPを想定する。Quan et al.は、インフルエンザウイルスマトリックス(M1)タンパク質コアおよび表面上のRSV-Fから構成されるウイルス様粒子(VLP)を製造する方法を報告している。(2011)J Infect Dis.204(7):987-995。RSV FおよびインフルエンザM1を発現する組換えバキュロウイルス(rBV)を生成することができ、製造のためにそれらを昆虫細胞にトランスフェクトすることができる。
【0140】
使用方法
ある特定の実施形態において、本開示は、免疫学的有効量の本明細書に開示されるキメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス-RSV)、RSVおよび/もしくは非RSV(例えば、コロナウイルス)ポリペプチド、キメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス-RSV)粒子、キメラRSVウイルス様粒子(例えば、キメラコロナウイルス/RSV VLP、ならびに/または核酸を含む免疫原性組成物に関する。ある特定の実施形態において、本開示は、非RSVウイルス(例えば、コロナウイルス、例えばSARS-CoV-2)に対する保護免疫応答を生成させるために個体の免疫系を刺激する方法に関する。ある特定の実施形態において、免疫学的有効量の本明細書に開示されるキメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス-RSV)、ポリペプチド、および/または核酸は、生理学的に許容される担体中で個体に投与される。
【0141】
ある特定の実施形態において、本開示は、本明細書に開示される使用のための本明細書に開示される核酸を含む医薬およびワクチン製造物に関する。
【0142】
ある特定の実施形態において、本開示は、本明細書に開示される使用のための医薬およびワクチン製造物の生産のための本明細書に開示される核酸またはベクターの使用に関する。
【0143】
本開示はまた、他の種類の弱毒化突然変異を分析するためおよびそれらをキメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス-RSV)にワクチンまたは他の使用のために組み込む能力を提供する。例えば、マウスの肺炎ウイルス(RSVのマウス対応物)の組織培養適合非病原系統はGタンパク質の細胞質テイルを欠いている(Randhawa et al.,(1995)Virology 207:240-245)。類似的に、糖タンパク質、HN、GおよびSHの各々の細胞質および膜貫通ドメインは、弱毒化を達成するために欠失または改変され得る。
【0144】
本開示の感染性キメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス/RSV)における使用のための他の突然変異は、キメラRSVミニゲノム(例えば、コロナウイルス-RSVミニゲノム)の突然変異分析の間に同定されるシス作用性シグナル中の突然変異を含む。例えば、リーダーおよびトレイラーならびに隣接配列の挿入および欠失分析は、ウイルスプロモーターおよび転写シグナルを同定し、RNA複製または転写の様々な程度の低減と関連付けられる一連の突然変異を提供した。これらのシス作用性シグナルの飽和突然変異誘発(それにより次いで各々の位置はヌクレオチド代替物の各々に改変される)はまた、RNA複製または転写を低減させる(または1つの場合において増加させる)多くの突然変異を同定した。これらの突然変異のいずれも、本明細書に記載されている完全なアンチゲノムまたはゲノムに挿入され得る。他の突然変異は、RNA複製および転写における変化と関連付けられる、アンチゲノムからのその対応物でのゲノムの3’末端の置換を伴う。さらに、遺伝子間領域(Collins et al.,(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:4594-4598;参照により本明細書に組み込まれる)は、短縮もしくは延長または配列内容における変化が可能であり、天然に存在する遺伝子オーバーラップ(Collins et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5134-5138;参照により本明細書に組み込まれる)は、本明細書に記載される方法により除去され得るかまたは異なる遺伝子間領域に変化され得る。
【0145】
ワクチン用途のために、本開示にしたがって製造されるウイルスは、ワクチン製剤において直接的に使用され得るか、または所望される場合、当業者に周知の凍結乾燥プロトコールを使用して凍結乾燥され得る。凍結乾燥されたウイルスは典型的には約4℃で維持される。使用のために準備済みとなったときに、凍結乾燥されたウイルスは、安定化溶液、例えば、アジュバントありもしくはなしの、食塩水、または、SPG、Mg、およびHEPESを含む安定化溶液中に再構成される。
【0146】
典型的には、本開示のキメラRSVワクチン(例えば、コロナウイルス-RSVワクチン)は、本明細書に記載されるように製造された免疫遺伝学的有効量のキメラウイルスを活性成分として含有する。改変されたウイルスは、生理学的に許容される担体および/またはアジュバントと共に対象に導入されてもよい。有用な担体は当技術分野において周知であり、例えば、水、緩衝化水、0.4%の食塩水、0.3%のグリシン、およびヒアルロン酸などを包含する。結果としてもたらされる水性溶液は、そのままの使用のために包装されるか、または凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は、上記のように、投与の前に無菌溶液と合わせられる。組成物は、生理学的条件を近似するために要求される場合に医薬的に許容される助剤物質、例えばpH調整および緩衝化剤、張度調整剤、ならびに湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、およびオレイン酸トリエタノールアミンなどを含有してもよい。許容されるアジュバントは、当技術分野において周知の材料である、不完全フロイントアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、またはミョウバンを包含する。
【0147】
ある特定の実施形態において、キメラRSVワクチン(例えば、コロナウイルス-RSVワクチン)は、ポリプロピレンクライオバイアルに充填された無菌非アジュバント添加緩衝化水性溶液中で製剤化され得る。製剤は、Williams E無血清培地、スクロース、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、L-グルタミン酸およびpH 7.9へのpH調整のための水酸化ナトリウムを含んでもよい。
【0148】
エアロゾル、小滴、経口、外用または他の経路を介した、本明細書に記載されているキメラRSV組成物(例えば、コロナウイルス-RSV組成物)での免疫化で、対象の免疫系は、ウイルスタンパク質、例えば、S糖タンパク質に特異的な抗体を産生することによりワクチンに応答する。ワクチン接種の結果として、対象は、コロナウイルス感染に対して少なくとも部分的にもしくは完全に免疫性となるか、または特には下気道の、中等症もしくは重症コロナウイルス感染症の発症に対して抵抗性となる。
【0149】
ワクチンが投与される対象は、非RSV(例えば、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2)または密接に関連したウイルスによる感染を受けやすく、およびワクチン接種系統の抗原に対する保護免疫応答を生成する能力を有する任意の哺乳動物であることができる。そのため、好適な対象は、ヒト、非ヒト霊長動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ目動物、齧歯動物などを包含する。よって、本開示は、様々なヒトおよび獣医学的使用のためのワクチンを作出する方法を提供する。
【0150】
本開示のキメラRSV(例えば、コロナウイルス-RSV)を含有するワクチン組成物は、コロナウイルス感染症を受けやすいかまたは他にそのリスクがある対象に対象自身の免疫応答能力を増強するために投与される。そのような量は「免疫原性有効用量」であると定義される。この使用において、精密な量は再び、対象の健康状態および体重、投与のモード、製剤の性質に依存する。ワクチン製剤は、深刻なまたは生命を脅かす感染症から対象患者を有効に保護するために十分な本開示のキメラコロナウイルス-RSVの量を提供するべきである。
【0151】
本開示にしたがって製造されるキメラRSV(例えば、コロナウイルス-RSV)は、複数の非RSV(例えば、コロナウイルス)亜群もしくは系統に対する保護を達成するために他の亜群もしくは系統のウイルスと組合せ可能であり、またはこれらの系統の保護的なエピトープは、本明細書に記載されている1つのウイルス中に操作され得る。典型的には、異なるウイルスは混合され、同時に投与されるが、別々に投与されてもよい。例えば、コロナウイルス亜群のS糖タンパク質はアミノ酸配列において異なるので、この類似性は、キメラコロナウイルス-RSVまたはS抗原で免疫化され、および異種系統でチャレンジされた動物において観察されるような交差保護免疫応答のための基礎である。そのため、1つの系統での免疫化は、同じまたは異なる亜群の異なる系統から保護することがある。
【0152】
一部の事例において、本開示のキメラRSVワクチン(例えば、キメラコロナウイルス-RSVワクチン)を、他の作用因子に対する保護的な応答を誘導するワクチンと組み合わせることが望ましいことがある。例えば、本開示のキメラRSVワクチン(例えば、キメラコロナウイルス-RSVワクチン)はインフルエンザワクチンと同時に投与され得る。
【0153】
本開示のワクチン組成物の単回または複数回投与が実行され得る。ある特定の実施形態において、ワクチン組成物の単回用量は、免疫を生成するために十分である。ある特定の実施形態において、アジュバントは要求されない。十分なレベルの免疫を誘発するために複数回の逐次的な投与が要求されることがある。投与は、人生の最初の月内、または約2か月齢の前、典型的には6か月齢以前に、小児期の全体を通じて間隔をおいて、例えば2か月、6か月、1年および2年時に、ネイティブな(野生型)感染症からの保護の十分なレベルを維持するための必要に応じて、開始されてもよい。同様に、繰返しのまたは深刻なコロナウイルス感染症を特に受けやすい成人、例えば、医療従事者、デイケア提供者、高齢者介護提供者、高齢者(55、60、65、70、75、80、85、もしくは90歳を上回る)、または心肺機能の低下を有する個体などは、保護免疫応答を確立および/または維持するために複数回の免疫化を要求することがある。誘導された免疫のレベルは、中和分泌および血清抗体の量を測定することによりモニター可能であり、所望されるレベルの保護を維持するために必要に応じて投薬量は調整されるかまたはワクチン接種は繰り返され得る。さらに、異なるワクチンウイルスが異なるレシピエント群のために有利なことがある。例えば、T細胞エピトープに富んだ追加のタンパク質を発現する操作された系統は、乳児ではなく成人のために特に有利なことがある。
【0154】
投与は、典型的には、エアロゾル、ネブライザー、または他の外用適用により、処置されている患者の気道に為される。組換えキメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス-RSV)は、所望される遺伝子産物の治療的または予防的レベルの発現を結果としてもたらすために十分な量で投与される。この方法において投与される代表的な遺伝子産物の例は、例えば、一過性発現のために特に好適もの、例えば、インターロイキン-2、インターロイキン-4、ガンマ-インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、エリスロポエチン、および他のサイトカイン、グルコセレブロシダーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンスレギュレーター(CFTR)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、細胞毒、腫瘍抑制因子遺伝子、アンチセンスRNA、ならびにワクチン抗原をコードするものを包含する。
【0155】
ある特定の実施形態において、本開示は、免疫学的有効量の本開示の組換えキメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス-RSV)(例えば、弱毒化された生組換えキメラRSVもしくは不活性化された非複製性キメラRSV)、免疫学的有効量の本明細書に開示されるポリペプチド、および/または免疫学的有効量の本明細書に開示される核酸を含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)に関する。
【0156】
ある特定の実施形態において、本開示は、コロナウイルスに対する保護免疫応答を生成させるために個体の免疫系を刺激する方法に関する。方法において、免疫学的有効量の本明細書に開示される組換えキメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス-RSV)、免疫学的有効量の本明細書に開示されるポリペプチド、および/または免疫学的有効量の本明細書に開示される核酸は、生理学的に許容される担体中で個体に投与される。
【0157】
典型的には、担体または賦形剤は、医薬的に許容される担体または賦形剤、例えば無菌水、水性食塩水溶液、水性緩衝化食塩水溶液、水性デキストロース溶液、水性グリセロール溶液、エタノール、またはこれらの組合せである。無菌状態を確実にするそのような溶液の調製、pH、等張性、および安定性は、当技術分野において確立されたプロトコールにしたがって影響される。一般に、担体または賦形剤は、アレルギー性のおよび他の望ましくない効果を最小化するように、ならびに特定の投与の経路、例えば、皮下、筋肉内、鼻腔内、経口、外用などに適するように選択される。結果としてもたらされる水性溶液は、例えば、そのままの使用のためにまたは凍結乾燥されて包装されることができ、凍結乾燥された調製物は投与の前に無菌溶液と合わせられる。
【0158】
ある特定の実施形態において、キメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス/RSV)またはその構成要素(例えば、キメラ非RSV/RSV融合タンパク質、例えばキメラコロナウイルスSタンパク質-RSV Fタンパク質)は、非RSV、例えばコロナウイルスの1つ以上の系統に特異的な免疫応答を刺激するために十分な量で投与される。換言すれば、ある特定の実施形態において、免疫学的有効量のキメラRSV(例えば、コロナウイルス-RSV)またはその構成要素、例えば、キメラ非RSV/RSV融合タンパク質(例えば、キメラコロナウイルスSタンパク質-RSV Fタンパク質)が投与される。好ましくは、キメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス/RSV)の投与は保護免疫応答を誘発する。非RSV(例えば、コロナウイルス)および/またはRSVに対する保護免疫応答を生成させるために適合可能な、保護的な抗ウイルス免疫応答を誘発するための投薬量および方法は当業者に公知である。例えば、米国特許第5,922,326号明細書;Wright et al.(1982)Infect.Immun.37:397-400;Kim et al.(1973)Pediatrics 52:56-63;およびWright et al.(1976)J.Pediatr.88:931-936を参照。例えば、ウイルスは、投与される用量当たり約103~107pfu(プラーク形成単位)の範囲内(例えば、投与される用量当たり103~107pfu、103~106pfu、103~105pfu、104~107pfu、104~106pfu、または104~106pfu)で提供され得る。ある特定の実施形態において、ウイルスは、投与される用量当たり約103pfuの量で提供される。ある特定の実施形態において、ウイルスは、投与される用量当たり約104pfuの量で提供される。ある特定の実施形態において、ウイルスは、投与される用量当たり約105pfuの量で提供される。ある特定の実施形態において、ウイルスは、投与される用量当たり約106pfuの量で提供される。ある特定の実施形態において、ウイルスは、投与される用量当たり約107pfuの量で提供される。典型的には、用量は、例えば、年齢、身体条件、体重、性別、食事、投与のモードおよび時間、ならびに他の臨床的な要因に基づいて調整される。
【0159】
ワクチン製剤は、例えば、針およびシリンジまたは無針注射デバイスを使用して皮下または筋肉内注射により全身投与され得る。ワクチン製剤は気管内に投与され得る。好ましくは、ワクチン製剤は、鼻腔内に、例えば、液滴、エアロゾル(例えば、大粒子エアロゾル(約10ミクロンより大きい))、または上気道への噴霧により投与される。上記の送達の経路のいずれも保護的な全身性免疫応答を結果としてもたらすが、鼻腔内投与は、ウイルスの侵入の部位において粘膜免疫を誘発する付加的な利益を付与する(すなわち、粘膜免疫応答および液性免疫応答の両方を生成し得る)。液性免疫(循環抗体)は深刻な肺疾患を予防するために重要であるが、粘膜抗体は、呼吸器ウイルスの感染および伝染を遮断するために重要である。鼻腔内投与のために、弱毒化生ウイルスワクチンが多くの場合に好ましく、これは例えば、弱毒化された、低温適合性および/または温度感受性組換えウイルスである。さらに、前臨床および臨床開発中の多くの候補SARS-CoV-2ワクチンとは異なり、ある特定の実施形態において、本明細書に記載されている、生で弱毒化された、複製性キメラコロナウイルス/RSVワクチンの単回鼻腔内接種は、免疫を生成させるために十分であり得る。さらに、追加的にある特定の実施形態において、アジュバントは存在せず、追加の製剤成分の必要性および臨床研究においてアジュバント活性を評価する必要性が回避される。
【0160】
弱毒化生ウイルスワクチンの代替または追加として、Walsh et al.(1987)J.Infect.Dis.155:1198-1204およびMurphy et al.(1990)Vaccine 8:497-502により示唆されるように、例えば、殺傷されたウイルスワクチン、核酸ワクチン、および/またはポリペプチドサブユニットワクチンが使用され得る。
【0161】
ある特定の実施形態において、弱毒化組換えキメラコロナウイルス-RSVは、ワクチンにおいて使用され、ウイルス成分(例えば、本明細書における核酸またはポリペプチド)がワクチンまたは免疫原性成分として使用される実施形態において、感染の症状、または少なくとも深刻な感染症の症状が、弱毒化ウイルスで免疫化された(または他に感染した)ほとんどの個体において起こらないように十分に弱毒化される。しかしながら、軽症または重症下気道感染症がワクチン接種または偶発的対象において典型的には起こらないように、病原性は典型的には十分に妨げられる。
【0162】
単回用量での保護免疫応答の刺激が好ましいが、所望される予防効果を達成するために追加の投薬量が、同じまたは異なる経路により、投与され得る。例えば、新生児および乳児において、十分なレベルの免疫を誘発するために複数回投与が要求されることがある。投与は、野生型コロナウイルス感染症に対する十分なレベルの保護を維持するために必要に応じて小児期の全体を通じて間隔をおいて継続され得る。同様に、繰返しのまたは深刻なコロナウイルス感染症を特に受けやすい成人、例えば、医療従事者、デイケア提供者、高齢者介護提供者、高齢者(55、60、65、70、75、80、85、もしくは90歳を上回る)、および心肺機能の低下を有する個体などは、保護免疫応答を確立および/または維持するために複数回の免疫化を要求することがある。誘導された免疫のレベルは、例えば、ウイルス中和分泌および血清抗体の量を測定することによりモニター可能であり、所望されるレベルの保護を誘発および維持するために必要に応じて投薬量は調整されるかまたはワクチン接種は繰り返され得る。
【0163】
代替的に、免疫応答は、ウイルスでの樹状細胞のエクスビボまたはインビボ標的化により刺激され得る。例えば、増殖性樹状細胞は、樹状細胞によるコロナウイルス抗原の捕捉を許容するために十分な量および十分な時間的期間でウイルスに曝露される。細胞は次に、標準的な静脈内移植方法によりワクチン接種されるべき対象に移される。
【0164】
任意選択的に、ワクチンの投与のための製剤はまた、コロナウイルス抗原に対する免疫応答を増強するための1つ以上のアジュバントを含有する。想定されるアジュバントは、アルミニウム塩、例えばAlhydrogel(登録商標)およびAdjuphos(登録商標)を包含する。想定されるアジュバントは水中油エマルションを包含し、これにおいて、油は水相中の溶質として作用し、乳化剤により安定化された、単離された小滴を形成する。ある特定の実施形態において、エマルションは、スクアレンまたはα-トコフェロール(ビタミンE)を追加の乳化剤、例えば界面活性剤としてのトリオレイン酸ソルビタンおよびポリソルベート-80(PS80)と共に含有する。ある特定の実施形態において、エマルションはグルコピラノシルリピドA(GLA)を含有する。GLAは、キメラコロナウイルス-RSV、粒子またはキメラコロナウイルスSタンパク質-RSV Fタンパク質を単独でまたはスクアレンベース水中油安定エマルション(SE)中で用いて製剤化され得る。Iyer et al.は、RSV Fタンパク質を使用する異なる粒子サイズの水中油アジュバントを報告している((2015)Hum Vaccin Immunother 11(7):1853-1864)。
【0165】
好適なアジュバントは、例えば、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、鉱物ゲル、例えば水酸化アルミニウム、表面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素エマルション、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、および合成アジュバントQS-21を包含する。
【0166】
所望される場合、キメラコロナウイルス-RSVの予防的ワクチン投与は、1つ以上の免疫賦活性分子の投与と組み合わせて行われ得る。免疫賦活性分子は、免疫賦活、免疫強化、および炎症促進活性を有する様々なサイトカイン、リンホカインおよびケモカイン、例えばインターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13);増殖因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)-コロニー刺激因子(CSF));ならびに他の免疫賦活性分子、例えばマクロファージ炎症因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2などを包含する。免疫賦活性分子は、キメラコロナウイルス-RSVと同じ製剤中で投与され得るか、または別々に投与され得る。免疫賦活効果を生成させるためにタンパク質またはタンパク質をコードする発現ベクターのいずれかが投与され得る。
【0167】
特定の亜群の特定の系統のキメラコロナウイルス-RSVでの個体のワクチン接種は、異なる系統および/または亜群のウイルスに対する交差保護を誘導し得るが、交差保護は、所望される場合、例えば、各々が異なる亜群を表す、少なくとも2つの系統からの弱毒化コロナウイルスで個体をワクチン接種することにより増強され得る。同様に、キメラコロナウイルス-RSVワクチンは、他の感染性因子に対する保護免疫応答を誘導するワクチンと任意選択的に組み合わせられ得る。
【0168】
コロナウイルス弱毒生ワクチンについての潜在的な課題は組換え(遺伝子不安定性)である。天然のゲノム組換えは、コロナウイルスおよびニドウイルス目における他のポジティブセンスウイルスの共通の特色である。対照的に、天然の組換えは、ネガティブセンスモノネガウイルス目のRSVおよび麻疹ウイルスのようなウイルス(野生型またはワクチン系統)について希少である。さらには、弱毒生RSVワクチンは、弱毒化突然変異はウイルス遺伝子の大規模なコドン脱最適化または欠失のいずれかを介するという事実に恐らくは起因して、遺伝学的に安定であることが示されている(Stobart(2016)、上掲)。よって、ある特定の実施形態において、本明細書に記載されているキメラコロナウイルス-RSVは遺伝子不安定性をほとんどまたは全く呈しない。
【0169】
さらに、SARSコロナウイルスおよびRSVは、ある特定の種類のワクチン、例えば、非複製性(例えばサブユニット)ワクチンタイプと関連付けられるワクチン関連増強呼吸器疾患(VAERD)の潜在的なリスクを共通して有する。しかしながら、弱毒生コロナウイルスワクチンは、他のワクチン技術、例えば固定化された全体ウイルス、サブユニット、および一部のベクターワクチンとは対照的にVAERDを実証していない。よって、ある特定の実施形態において、本明細書に記載されているキメラコロナウイルス-RSVはVAERDのリスクを増加させない。VAERDは、過度の肺免疫細胞浸潤物、Th2炎症性サイトカインレベルの上昇、および病理組織診断による肺損傷を包含する炎症のマーカーを評価することにより前臨床動物モデルにおいて測定され得る。
【0170】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されているキメラRSV(例えば、キメラコロナウイルス-RSV)は、(1)結合性の非中和抗体と比べた高いレベルのウイルス中和抗体、および(2)カノニカルなTh1抗ウイルス性サイトカインを有するT細胞応答を呈し、ならびに/または高いレベルのTh2サイトカインに向かう不均衡を呈しない。
【実施例】
【0171】
以下の実施例は単に実例的なものであり、いかなる意味でも本発明の範囲または内容を限定することは意図されない。
【0172】
実施例1-キメラコロナウイルススパイクタンパク質-RSV融合タンパク質の構築
MV-012-968に由来する弱毒化RSVベクター中のRSV GおよびFタンパク質の代わりにSARS-CoV2スパイクタンパク質(系統USA-WA1/2020)をクローニングすることにより弱毒生ワクチン候補のシリーズ(attRSV-CoV-2、MV-014シリーズ)を構築した(
図1)。RSV骨格はmKate2蛍光タンパク質のための遺伝子を含有し、DB1 Quad mKateと呼ばれる。((Rostad et al.,(2018)Journal of Virology 92(6)e01568-17)を参照)。
【0173】
RSV Fの細胞質テイルがRSV感染性子孫アセンブリーのために要求される(Baviskar et al.(2013)Journal of Virology 87(19),10730-10741)。したがって、Fを全長S遺伝子で置き換えることは、生存不可能なウイルスを結果としてもたらすという仮説を立てた。よって、
図1において描写されるように、スパイクの細胞質テイルがRSV Fの細胞質テイルで置き換えられたキメラスパイク遺伝子を作出した(緑色S遺伝子の青色CT部分)。SARS-CoV-1の細胞質テイルはスパイク-シュードタイプウイルスの感染力のために要求されなかった(Broer et al.(2006)Journal of Virology 80(3),1302-1310)。しかしながら、SARS-1スパイクの膜貫通および膜近傍領域は、機序は十分に定義されていないが、アセンブリーおよび侵入のために必須である(Corver et al.(2009)Virology Journal 6(1),230;Godeke et al.(2000)Journal of Virology 74(3),1566-1571)。RSV Fの細胞質テイルに融合したスパイクの膜貫通ドメインのアミノ酸配列(下線を引いたテキスト)が
図1の下部において描写される。
【0174】
SARS-CoV2スパイクタンパク質エクトドメインと融合したRSV Fの異なるC末端配列を含有する6つの構築物を設計し、1つの野生型スパイク構築物を設計した(
図2および全長配列のための添付物を参照)。
【0175】
BAC DB1 Quad mKate骨格(
図3中の概略図を参照;BAC DB1 Quad mKateの配列は配列番号46である)にクローニングするための隣接AatIIおよびSalI部位を含有するようにキメラスパイク-F遺伝子を設計し、RSV GおよびFタンパク質のための遺伝子を包含するDNA断片を置き換えた(nt 5,111~nt 8015)。
【0176】
挿入物210(配列番号47)、220(配列番号50)、230(配列番号51)、240(配列番号52)、および300(配列番号53)はGenscriptにより合成され、挿入物211(配列番号48)および212(配列番号49)はTwist Bioscienceにより合成され、凍結乾燥ペレットとして受領した。
【0177】
スパイク-F挿入物およびDB1 Quad mKateベクターを酵素AatIIおよびSal Iで消化した。消化されたスパイク-F挿入物(約4kb)ならびにGおよびFを有しないDB1Quad mKate(約20kb)に対応するDNAをゲルから精製し、T4 DNAリガーゼを使用してライゲートした。ライゲーションの生成物を使用してOne-shot Stabl3化学コンピテント細胞(Thermo C737303)を形質転換した。形質転換体をBAC DNAのシークエンシングにより分析した。BAC中にクローニングされたアンチゲノムを、構築物全体について約2(平均)のカバレージを提供する74個のプライマーを使用してGenewizによりシークエンシングした。
【0178】
RSV-コロナウイルスゲノムワクチン候補(mKate2マーカーあり)をコードするBACの配列を配列番号54~59(それぞれ挿入物210、211、212、220、230、および240)に提供する。野生型コロナウイルススパイクタンパク質を有するRSV-コロナウイルスゲノムをコードするBACの配列(挿入物300)は配列番号60にある。BAC構築物内に含有されるmKate含有ウイルスのためのアンチゲノム配列を配列番号104~109(それぞれ挿入物210、211、212、220、230、および240)に提供する。
【0179】
標識タンパク質mKate2を有しないこれらの構築物のバージョンを、制限クローニングを使用して構築した。特に、mKate2のための遺伝子を含有するBACの断片を、酵素KpnI(BAC中で切断する)およびAatII(アンチゲノムの内側で切断する)での消化を介して放出させた。mKate2なしのDB1 Quadを同じ酵素で消化し、mKate2なしの断片を使用してMV-014構築物中のmKate2ありの断片を置き換える。RSV-コロナウイルスゲノムワクチン候補(mKate2マーカーなし)を含むBACの配列を配列番号131~136(それぞれ挿入物210、211、212、220、230、および240)に提供する。
【0180】
mKate2なしならびに挿入物210、211、212、220、230、および240ありのMV-014構築物をそれぞれ配列番号13~18に提供し、これらはワクチン候補のためのアンチゲノム配列である。
【0181】
すべてのクローンのためのBACを、Macherey Nagel NucleoBond Xtra BACまたはZymo Research ZymoPureII MaxiPrepキットを使用して500mlの終夜培養物から調製した。得られたBAC DNA(mKateマーカーありまたはなし)を実施例2に記載されるように組織培養でのウイルスレスキューのためにさらに使用した。
【0182】
実施例2-ウイルスのレスキュー
Vero RCB2細胞を、4mMのグルタミンを補充した無血清MEM中で培養した。2mLの培地を含有する6ウェルディッシュ中に7.5×10e5/ウェルで細胞を播種し、37℃、5%のCO2において加湿インキュベーター中で終夜インキュベートした。翌日、培地を除去し、細胞単層をOpti-MEMで2回洗浄し、2mLのOpti-MEMと共に37℃、5%のCO2において加湿インキュベーター中でインキュベートした。
【0183】
ウイルスをレスキューするために、Vero RCB2細胞に、DB1-Quad-mKate2 RSVまたはMV-014-210(実施例1に記載されている210挿入物を有するDB1-Quad-mKate2 RSV)のためのアンチゲノムを発現するプラスミドを、pXT7ベクター中にクローニングされたコドン脱最適化されたRSV N、P、M2.1およびLを発現するヘルパープラスミドならびにT7 RNAポリメラーゼを発現するプラスミドと共にトランスフェクトした。
【0184】
トランスフェクション混合物を、15uLのLipofectamine 2000CDを250uLのOpti-MEMに混合し、混合物を室温で5分間インキュベートすることにより各々の条件についてアセンブルさせた。別々のチューブ中で、DB1-Quad-mKate2(RSVベクター)またはMV-014-210のアンチゲノムを含有するプラスミドDNA(1.5ug)を、RSV-N(1ug)、RSV P(1ug)、RSV M2-1(0.75ug)、RSV L(0.5ug)およびT7 RNAポリメラーゼ(1.25ug)を発現するプラスミドと混合した。プラスミドDNA混合物を1.5mLの微量遠心分離チューブ中の250uLのOpti-MEMに加え、室温で5分間インキュベートした。DNA - Opti-MEM混合物をlipofectamine-Opti-MEM混合物と合わせ、5秒間ボルテックスし、次に室温で30分間インキュベートした。6ウェルプレート中の培地を除去し、DNA-lipofectamine混合物を細胞単層に緩徐に加えた。細胞を穏やかな振盪と共に室温で1hインキュベートした。このインキュベーションの終わりに、2mLのOpti-MEMを各々のウェルに加え、細胞を37℃、5%のCO2において加湿インキュベーター中で終夜インキュベートした。
【0185】
翌日、培地を除去し、10%のウシ胎仔血清および1x抗生物質を補充した2mLの1X MEMで置き換えた。
【0186】
図4AおよびBは、MV-014-210およびRSVヘルパープラスミドでのトランスフェクション後に複数回継代したVero細胞単層上のウイルスフォーカスの蛍光および明視野画像(TRITC)ならびに細胞障害性効果(明視野)を提供する。示されるのは、10X拡大での大きいフォーカス(
図4A)ならびに2.5X拡大での大規模な複製および拡散の証拠(
図4B)である。mKate2発現を可視化するためにTRITCフィルターセットを使用して蛍光画像を生成した。ウイルスストックを感染Vero細胞から無細胞溶解液として調製し、それを使用して、異なる希釈で24ウェルプレート中の新鮮なVero細胞単層に感染させた(
図4C)。無細胞溶解液での感染後のフォーカスの形成は、キメラスパイク-Fタンパク質を介して感染したインタクトな感染性粒子の単離と合致する。mKate2発現を検出するためにCeligoイメージング機器セットを使用して蛍光画像を生成した。
【0187】
この実験は、キメラコロナウイルススパイクタンパク質/RSV Fタンパク質を有する組換えRSVをコードするプラスミドはワクチンの調製における使用のために好適であることを実証した。
【0188】
実施例3-MV-014-212でのワクチン接種はSARS-CoV-2チャレンジから霊長動物を保護し、MVK-014-212およびB.1.351バリアントの両方の特異的な中和を結果としてもたらす
MV-014-212およびMVK-014-212-B.1.351の設計および生成
MV-014-212は、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の骨格に基づく、SARS-CoV-2に対する新規の弱毒生組換えワクチンである(
図1)。RSVの付着および融合タンパク質GおよびFを、SARS-CoV-2スパイク(系統USA-WA1/2020)のエクトドメインおよび膜貫通(TM)ドメインならびにRSV F(19株系統)の細胞質テイルからなるキメラタンパク質により置き換えた。スパイクとFタンパク質との間のジャンクションにおけるアミノ酸の配列を
図1に示す。顕著なことに、MV-014-212増殖は宿主細胞との付着および融合に依拠するので、キメラスパイク/RSV Fタンパク質は機能性を保持する。ジャンクション位置において異なる様々なキメラスパイク構築物をVero細胞における増殖について評価した(
図2)。特に、ネイティブなSARS-CoV-2スパイク全体を有する構築物を評価した(MV-014-300、
図2)。この構築物はレスキュー可能であったが、細胞培養において効率的に増殖しなかった。レスキュー実験の結果を表3に示す。
【0189】
異なるキメラスパイク/RSV F融合タンパク質を発現する構築物のうち、レスキューの容易さならびに前臨床および臨床研究のために許容される力価まで増殖する能力に基づいてMV-014-212をさらなる評価のために選択した。
【0190】
MV-014-212を生成するために使用されたRSV骨格を、宿主先天免疫を抑制するタンパク質NS1およびNS2をコードする遺伝子のコドン脱最適化により初代細胞中での複製のために弱毒化した(Meng et al.(2014)mBio 5(5):e01704-14)。さらに、短い疎水性糖タンパク質SHを欠失させて下流の遺伝子の転写を増加させた(Bukreyev 1997)。
【0191】
マイクロ中和アッセイの開発を促すために、MV-014-212に由来するレポーターウイルスもまた、NS1遺伝子の上流に蛍光mKate2タンパク質(Hotard et al.(2012)Virology 434(1):129-36、Shchervo et al.(2009)Biochem J.418(3):567-74)をコードする遺伝子を挿入することにより構築した(MVK-014-212、mKateのためにK、
図1、下)。
【0192】
SARS-CoV-2は突然変異の高い率を有し、新たなバリアントは急速に進化する。最近、SARS-CoV-2のバリアント系統は、中和エピトープの喪失およびSARS-CoV-2 Wuhan-1またはUSA/WA2020の祖先系統(スパイクコーディング領域において同一)でのワクチン接種または天然感染により生じる免疫の結果的な逃避に繋がることが疑われるスパイクRBD中の突然変異を示すため、懸念を生じさせている。留意されるのはバリアントB.1.351であり、これはスパイクタンパク質中に8つの突然変異を有し、それらのうちの3つはRBD中に存在する:K417N、E484KおよびN501Y(Tegally et al.(2020)Nature 592(7854):438-443)。特に、E484Kはまた、中和逃避突然変異体を単離するために中和血清の存在下での繰返しの継代を通じて同定された(Andreano et al.(2020)bioRxiv[Preprint].Dec 28:2020.12.28.424451)。いくつかの研究は、現行で市販されているワクチンにより誘発されるかまたは回復期血清中に存在する中和抗体は、Wuhan-1系統と比較してB.1.351バリアントの中和においてより低い効率であることを示している(Wang et al.(2021)Nature 592(7855):616-622; Liu et al.(2021)N Engl J Med.2021 Apr 15;384(15):1466-1468; Madhi et al.(2021)N Engl J Med.384(20):1885-1898;Wibmer et al.(2021)Nat Med.27(4):622-625)。
【0193】
よって、SARS-CoV-2バリアントB.1.351において観察されたスパイク中の突然変異を組み込んだMVK-014-212のバリアント、MVK-014-212-B.1.351を生成させた。MVK-014-212と比べたMVK-014-212-B.1.351中のバリエーションを表4に列記する。
【0194】
すべての組換えウイルス構築物をVero細胞にエレクトロポレートし、感染性ウイルスをレスキューし、さらなる特徴付けのために増殖させた(Hotard(2012)、上掲)。簡潔に述べれば、Vero細胞に、CMVプロモーターの制御下で、MV-014-212をコードする細菌人工染色体(BAC)(またはレポーターウイルス)を、T7ポリメラーゼならびにRSVタンパク質N、P、M2-1およびLをコードするヘルパープラスミドと共にエレクトロポレートした(
図5)。エレクトロポレーションからの回復の間に、細胞を細胞障害性効果(CPE)の証拠についてモニターした。MV-014-212において、CPEは、多核化ボディまたは合胞体の形成および最終的な細胞剥離として観察される(
図6)。エレクトロポレートされた細胞を、CPEが大規模となるまで拡大増殖させ、ウイルスストックを全細胞溶解液として採取した。MV-014-212および誘導化ウイルスについて得られた力価は同等であり、1~5 10
5PFU/mLの範囲内であった。
図6は、MV-014-212およびMVK-014-212のレスキューの間に撮影された顕微鏡写真を示す。
【0195】
MVK-014-212-B.1.351中のキメラコロナウイルススパイク/RSV Fタンパク質のタンパク質配列を配列番号62に提供し、該タンパク質をコードする核酸配列を配列番号63に提供する。MVK-014-212-B.1.351(mKateマーカーを含有する)の全長ウイルス配列を配列番号64に提供し、MV-014-212-B.1.351(mKateマーカーを含有しない)の全長ウイルス配列を配列番号65に提供する。MVK-014-212-B.1.351(mKateマーカーを含有する)を含むBACの配列を配列番号66に提供し、MV-014-212-B.1.351(mKateマーカーを含有しない)を含むBACの配列を配列番号67に提供する。
【0196】
MV-014-212のインビトロ特徴付け
SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、フューリン様プロテアーゼによりプロセシングされるS1ドメインとS2ドメインとの間の切断部位を含有する(
図7およびHoffmann et al. (2020) Mol Cell 78(4):779-784.e5)。他のコロナウイルスと同様に、SARS-CoV-2スパイクのS1およびS2サブユニットは、切断後に融合前コンホメーションにおいて非共有結合的に結合したままとなると考えられている(Walls et al.(2020)Cell 181(2):281-292.e6、Burkard et al.(2014)PLoS Pathog.10(11):e1004502)。MV-014-212によりコードされるキメラスパイクタンパク質が発現され、タンパク質分解によりプロセシングされるかどうかを決定するために、感染したVero細胞の溶解液から調製されたウイルスストックをウエスタンブロットで分析し、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するポリクローナル抗血清でプロービングした。MV-014-212およびMVK-014-212の両方のウイルスは、全長および切断型のキメラスパイクタンパク質を発現し(
図8A)、これはS1-S2ジャンクションにおける部分的な切断と合致し、予想されるものと合致した見かけのサイズを有する(
図8A、Ou et al.(2020)Nat Commun.11(1):1620、エラータ:Ou et al.(2021)Nat Commun 12(1):2144;Peacock et al.(2020)Nat Microbiol.doi:10.1038)。
【0197】
MV-014-212の増殖動態をVero細胞において野生型組換えRSV A2と比較した(
図8B)。Vero細胞に0.01PFU/細胞のMOIで感染させ、全細胞溶解液からの感染性ウイルスを感染後0、12、24、48、72、96および120時間(hpi)においてプラークアッセイにより定量化した。MV-014-212は、RSV A2と比べて増殖動態の遅延を呈し、約12時間の初期遅延期を示した。両方のウイルスは72hpiにおいてそれらのピーク力価に達し、力価は120hpiまで一定のままであった。MV-014-212のピーク力価は、RSV A2のそれよりも約1桁低かった。mKate2遺伝子の挿入がMVK-014-212の複製動態に影響するかどうかを決定するために、Vero細胞にMV-014-212またはMVK-014-212を0.01PFU/細胞のMOIで感染させ、感染性ウイルスを3、24および72hpiにおいてプラークアッセイにより測定した。MVK-014-212の増殖動態はMV-014-212のそれに類似しており、72hpiまでに同等のピーク力価に達した(
図8C)。これらのデータは、第1の遺伝子位置中のmKate2の挿入はインビトロでRSV A2-19F株を有意に弱毒化しなかったという報告と合致する(Hotard et al(2012)、上掲)。
【0198】
MV-014-212の短期熱安定性を評価するために、ウイルスストックのアリコートを異なる温度で6時間の期間にわたりインキュベートし、インキュベーション後の感染性ウイルスの量をプラークアッセイにより決定した。異なる賦形剤中で調製されたMV-014-212の2つのストックをこの研究において比較した(
図8D)。結果は、MV-014-212はいずれかの賦形剤中で-80℃および室温において少なくとも6時間安定であることを実証する。
【0199】
MV-014-212の遺伝子安定性をVero細胞中での連続継代により調べた。サブコンフルエントのVero細胞に3連でMV-014-212のアリコートを感染させ、10回の連続する継代にわたり継代した(
図9)。ウイルスRNAを継代0および10から単離し、RT-PCRにより増幅した。ウイルスゲノムのコーディング領域全体の配列をサンガーシークエンシングにより決定した。結果は、3つすべての系列について出発ストック(継代0)と比べて継代10において検出された変動はないことを示した。ワクチン候補はインビトロで遺伝学的に安定であった。
【0200】
MV-014-212複製はアフリカミドリザルにおいて減弱され、wt SARS-CoV-2チャレンジからの保護を付与する
アフリカミドリザル(AGM)はwt SARS-CoV-2(Woolsey et al.(2021)Nat Immunol.22(1):86-98、Cross et al.(2020)Virol J.7(1):125、Blair(2021)Am J Pathol.191(2):274-282、Lee et al.(2021)Curr Opin Virol.48:73-81)およびRSV(Taylor(2017)Vaccine 35(3):469-480)の複製をサポートし、したがってMV-014-212の弱毒化および保護免疫を研究するための適切な非ヒト霊長動物モデルを構成する。
【0201】
AGM研究設計が
図10において描写される。0日目に、AGMに鼻腔内(IN)および気管内(IT)経路を介して各々の部位において1.0mLの3×10
5PFU/mLのMV-014-212またはwt RSV A2を6×10
5PFU/動物の総用量で接種した。AGMはSARS-CoV-2およびRSVの両方について準許容的に過ぎないため、気管内接種は、肺中でのワクチンまたはチャレンジSARS-CoV-2の複製を可能とする必要があった。モック群の動物に同様にPBSをモック接種させた。鼻スワブ(NS)および気管支肺胞洗浄液(BAL)試料を免疫化後12日を通じて収集した。NSおよびBAL試料中のウイルスシェディングを、凍結されなかった新鮮な試料を使用して研究施設においてプラークアッセイにより決定した。
図11A~Bに示される結果は、MV-014-212を接種された動物における感染性ウイルスのレベルおよび鼻分泌物中のシェディングの持続期間は、RSVを接種された動物よりも低いことを示した(
図11A)。RSVについての平均ピーク力価は、MV-014-212接種動物について観察されたものよりも約20倍高かった。これらの結果は、MV-014-212はRSVと比較してAGMの上気道中で弱毒化されることを示す。
【0202】
低いウイルス力価から検出不可能なウイルス力価はまた、MV-014-212またはRSV系統A2を接種された動物の下気道において12日の経過にかけて観察された。両方のウイルスは低いレベルで複製されたが、ピークレベルはMV-014-212についてより早く起こった。この研究においてRSV A2は、肺におけるMV-014-212の弱毒化を実証する能力を混乱させる文献(Cheng et al.(2001)Virology 283(1):59-68;Jin et al.(2003)Vaccine 21(25-26):3647-52;Tang et al.(2004)J Virol.78(20):11198-207;Le Nouen et al.(2014)Proc Natl Acad Sci USA.111(36):13169-74)において報告された野生型RSV A2力価と比較して2~3log低いAGMの下気道におけるピーク力価を示した。その後に、より低いrA2力価はまた、生物学的派生RSV系統と比べてコットンラットの肺において観察され(実施例4および
図12A~Dを参照)、この研究において使用されたrA2は肺において弱毒化されることを示唆した。
【0203】
ワクチン接種後6日目の鼻およびBAL試料を使用して、MV-014-212のスパイク遺伝子の配列解析用のRNAを抽出した。サンガーシークエンシングを使用して、スパイク遺伝子における変動はMV-014-212についての参照配列と比較して検出されなかった。
【0204】
28日目にAGMを1×10
6 TCID
50のwt SARS-CoV-2でチャレンジした。NSおよびBAL試料をチャレンジ後10日間収集した。wt SARS-CoV-2のシェディングをE遺伝子サブゲノムSARS-CoV-2 RNA(sgRNA)のRT-qPCRにより測定した(
図13A~B)。
【0205】
MV-014-212をワクチン接種されたサルは、より高いレベルのSARS-CoV-2 sgRNAを有したwt RSV A2またはPBS(モック)を接種された動物とは対照的にNS試料中で低いまたは検出不可能なレベルのwt SARS-CoV-2 sgRNAを有した。SARS-CoV-2 sgRNAのレベルは、MV-014-212をワクチン接種された動物においてほとんどの時点において検出不可能であったが、1匹の動物は2日目に検出可能なSARS-CoV-2 sgRNAを有し、異なる動物はチャレンジ後4日目に類似した力価を有した。対照RSVおよびPBS群における動物のNSにおけるSARS-CoV-2の平均ピーク力価は、MV-014-212をワクチン接種された動物についてよりもそれぞれ20および250倍高かった。RSV感染動物およびモック感染動物の両方においてwt SARS-CoV-2 sgRNAのシェディングは、4~10日目の鼻分泌物において安定的に減少し、10日目までに両方の群のすべての動物は検出不可能なSARS-CoV-2 sgRNAを有した。
【0206】
MV-014-212でのワクチン接種は、RSV A2を接種されたかまたはPBSをモック接種された動物と比較して肺におけるSARS-CoV-2のクリアランスを増加させた。BAL試料におけるSARS-CoV-2のピーク力価は2日目において起こり、3つすべての処置群において類似していた。肺力価は、MV-014-212ワクチン接種動物において4日目~10日目に検出不可能であったが、SARS-CoV-2は、RSV A2を接種されたかまたはPBSをモック接種された動物において容易に測定された。以前に、微量のsgRNAが接種物において検出されたため(BIOQUAL、未公開の結果)、シェディングの1日目に検出されたシグナルの一部は接種物に帰せられ得る。
【0207】
以上を合わせると、これらのデータは、MV-014-212の単回粘膜投与はAGMをwt SARS-CoV-2チャレンジから保護したことを示す。
【0208】
MV-014-212は、広く中和性のAGMにおけるスパイク特異的抗体応答を誘発し、懸念とするバリアントに対する中等度の保護を与える。
SARS-CoV-2スパイク特異的血清IgGおよび鼻IgAを、MV-014-212、RSV A2、またはPBSで免疫化されたAGMからのそれぞれ血清および鼻スワブにおいて免疫化後25日目にELISAにより測定した(
図14Aにおける概略図および
図14BにおけるIgA標準曲線を参照)。すべての動物は研究の開始時にRSVおよびSARS-CoV-2について血清反応陰性であった。MV-014-212を接種されたAGMは、検出限界に近いスパイク特異的IgGのレベルを有したRSV A2またはPBSを接種されたAGMと比較してより高いレベルの血清中のSARS-CoV-2スパイク特異的IgGを産生した(
図15A)。
【0209】
スパイク特異的IgAはまた、MV-014-212を接種されたサルの鼻スワブにおいて検出された。ワクチン接種の25日後にMV-014-212ワクチン接種動物において鼻スパイク特異的IgAにおける8倍より大きい増加があった(
図15B)。対照的に、RSVまたはモックワクチン接種動物はIgAにおける有意な変化を示さなかった。
【0210】
これらの結果は、MV-014-212の粘膜接種は機能的なSARS-CoV-2スパイクに対する鼻および全身の両方の抗体応答を誘導することを示した。
【0211】
野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはB.1.351バリアントに対する中和抗体が、MV-014-212をワクチン接種されたサルにおいて誘発されたかどうかを決定するために、レポーターウイルスMVK-014-212およびMVK-014-212-B.1.35を使用してマイクロ中和アッセイを実行した。追加のレポーターウイルス、mKate2で標識された野生型組換えRSV A2(rA2-mKate)を陰性対照として含めた。ワクチン接種の前(「前」)および後(「免疫化」)の2頭のAGMについての中和力価を
図15Cに示す。中和における有意な増加が、ワクチン接種後の相同レポーター(MVK-014-212)について観察された(
図17も参照)。B.1.351バリアントに対する中等度の交差中和もまた観察され、バリアントの平均NT50は相同ウイルスについてよりも約7倍低かった。B.1.351バリアントについての中和力価におけるこの低減は、他のワクチンについて報告されたものと同じオーダーである(Planas et al(2021)Nat Med.27(5):917-924、Liu et al.(2021)、上掲、Wang et al.(2021)Nature 592(7855):616-622)。
【0212】
よって、実施例は、MV-014-212への感染は、SARS-CoV-2スパイク特異的粘膜IgA応答を誘導し、バリアントB.1.351を包含する、スパイク発現シュードウイルスに対する血清中和抗体を生成させ、上および下気道においてSARS-CoV-2チャレンジに対して高度に保護的であったことを実証する。
【0213】
考察
MV-014-212は、鼻腔内に投与されてSARS-CoV-2に対する粘膜免疫の他に全身性免疫を刺激するように設計された組換え弱毒生COVID-19ワクチンである。MV-014-212は、コドン脱最適化されたNS1およびNS2遺伝子を発現する弱毒化RSV系統においてRSV膜表面タンパク質F、GおよびSHの代わりに機能的なSARS-CoV-2スパイクタンパク質を発現するように操作された。実際に、MV-014-212の複製は、鼻および気管における粘膜投与後のアフリカミドリザルの気道において減弱され、S ARS-CV-2スパイク特異的粘膜IgAおよび血清IgGを誘発した。さらには、MV-014-212でのワクチン接種は、血清中和抗体を誘導し、SARS-CoV-2チャレンジから保護した。これらのデータは、弱毒生COVID-19ワクチンでの単回粘膜免疫化は非ヒト霊長動物においてSARS-CoV-2に対する保護免疫を誘導できることを示唆する。
【0214】
MV-014-212は遺伝学的に安定であり、ウイルスがVero細胞中で10回連続継代された場合にバリアントの蓄積は検出されなかった。これは、突然変異がVero E6細胞中での継代9において生じたVSV骨格に基づく別の組換え弱毒生COVID-19ワクチン(Yahalom-Ronen et al.(2020) Nat Commun.11(1):6402)と対比される。これらの突然変異の1つは多塩基性S1/S2フューリン切断部位において起こり、別のものは、スパイク細胞質テイルの24アミノ酸切断を結果としてもたらす停止コドンを生成させた。スパイク細胞質テイルの切断はまた、wt SARS-CoV-2(Ou、上掲)またはシュードタイプSARS-CoV-2(Case et al.(2020)Cell Host Microbe 28(3):475-485.e5、Dieterle et al.(2020)Cell Host Microbe 28(3):486-496.e6)を組織培養において増殖させた場合に報告された。アフリカミドリザルの鼻スワブおよびBALからのMV-014-212のスパイク遺伝子もまたサンガーシークエンシングにより分析したところ、変動は参照配列と比較して観察されなかった。したがって、MV-014-212におけるキメラスパイク遺伝子はインビトロおよびインビボで安定な遺伝子型を有するようである。
【0215】
アフリカミドリザルは、RSV(Taylor、上掲)およびwt SARS-CoV-2複製(Woolsey et al.上掲、Cross et al.上掲、Blair et al.上掲、Lee et al.上掲)について準許容的であり、MV-014-212を評価するためにアカゲザルの代わりに選択された。MV-014-212ワクチン接種サルは、RSVおよびPBS免疫化群とは対照的にチャレンジ後のNS試料において低いまたは検出不可能なレベルのwt SARS-CoV-2 sgRNAを有した。MV-014-212でのワクチン接種はまた、肺におけるSARS-CoV-2のクリアランスを増加させた。サブゲノムE遺伝子のRT-qPCRにより検出されたwt SARS-CoV-2シェディングは、RSVおよびPBS免疫化群の上および下気道において1または2日目の早期にピークとなった。これは、ウイルスゲノムのRT-qPCRにより、ならびにAGMにおいてwt SARS-CoV-2/INMI1-Isolate/2020/ItalyについてCross et al.上掲およびWoolsey et al.上掲により報告されたプラークアッセイにより検出されたシェディング動態と類似していた。RSVおよびモックワクチン接種群において観察されたピークSARS-CoV-2サブゲノムRNAのレベルは、非ワクチン接種アカゲザルにおいて観察されたものと同等であった(Corbett et al.(2020)Nature 586(7830):567-571、Vogel et al.(2020)bioRxiv 2020(09.08.280818;doi:doi.org/10.1101/2020.09.08.280818)、Mercado et al.(2020)Nature 586(7830):583-588、van Doremalen et al.(2020)Nature 586(7830):578-582)。
【0216】
MV-014-212でのAGMの免疫化は、粘膜および全身の両方の抗体応答を結果としてもたらした。wt RSV A2またはPBS接種を受けたAGMと比較してMV-014-212ワクチン接種AGMにおいて約100倍多くのスパイク特異的総血清IgGがあった。スパイク特異的IgAもまた、MV-014-212免疫化動物の鼻スワブにおいて検出された。MV-014-212でのワクチン接種の25日後にIgA濃度における約8倍の増加があった。対照的に、RSVまたはモック免疫化サルはIgA濃度における上昇を示さなかった。実験的ヒトチャレンジ研究において、低いRSV F特異的粘膜IgAは、血清陽性成人におけるRSVチャレンジに対する感受性の、血清抗体レベルよりも良好な予測因子であった(Habibi et al.(2015)Am J Respir Crit Care Med.191(9):1040-9)。実際に、スパイクRBD特異的二量体血清IgAは、単量体IgGよりもSARS-CoV-2の中和において強力であることが示された(Wang et al.、上掲)。推測によれば、二量体IgAとして粘膜表面に存在する分泌性IgAは、感染の部位においてSARS-CoV-2の強力な阻害剤として作用する可能性がある。興味深いことに、Sterlin et al.((2021)Sci Transl Med.13(577):eabd2223)は最近、IgA抗体はヒトSARS-CoV-2感染症において早期液性応答を支配し、粘膜ホーミング潜在能力を有するIgA形質芽球は疾患開始の第3週の間にピークとなることを報告した。SARS-CoV-2中和抗体応答における上昇が、MVK-014-212、mKate2発現MV-014-212ウイルスに対して検出された。中和抗体応答はまた、B.1.351、南アフリカからの懸念となるバリアントのスパイクを有するレポーターウイルスに対して検出された。B.1.351に対するNT50は、相同的USA-WA2020スパイクと比較して約7倍低かった。AGMは、RSVおよびSARS-CoV-2に対して準許容的であり、COVID-19からの保護と関連付けられるヒト回復期およびワクチン接種後血清において観察される力価との直接的な比較を不可能にした。保護の相関は、救急使用のために承認されたCOVID-19ワクチンについてヒトにおいて確立されていない。しかしながら、MV-014-212ワクチン接種AGMは、アカゲザルにおいてEUAワクチンを用いて観察されたものと同等のレベルの保護を達成した(Corbett et al.(2020)上掲、Vogel et al.(2021)上掲、Mercado et al(2020)上掲、van Doremalen et al.(2020)上掲)。
【0217】
WHOにより作成された2020年5月14日の「The Landscape of candidate vaccines in clinical development」(ウェブサイトwho.int/publications/m/item/draft-landscape-of-covid-19-candidate-vaccinesを参照)によれば、世界中で臨床開発中のCOVID-19ワクチンが現在、101ある。これらの候補の中で7つのみが鼻腔内ワクチンである(表5)。2つの他の鼻腔内ワクチン候補は弱毒生ウイルスである。これらのワクチン候補とは異なり、MV-014-212は、天然に組換えを起こす傾向がない非セグメント化ネガティブ鎖RNAウイルスである。RNA組換えは、実験室の状況において実験的共感染外で非セグメント化ネガティブ鎖RNAウイルスについて極めて希少であり、再集合(reassortment)のための機序はない(Spaan 2003、Han 2011、Tan 2012)。
【0218】
【0219】
MV-014-212のワクチンプロファイルは、救急使用のために承認されているかまたは臨床開発中の現行のCOVID-19ワクチンの中で独特である。MV-014-212は、鼻腔内に、世界的な免疫化のために潜在的な利点を与えるニードルフリー経路で投与される。鼻腔内経路は、SARS-CoV-2の感染の天然の経路に類似しており、いかなるアジュバント製剤もなしにAGMにおいて粘膜免疫応答および液性免疫応答の両方を生成する。フェーズ1臨床研究材料の製造からの収率に基づくモデリングは、高強度バイオリアクターシステムを使用する中サイズの設備において年間数億もの用量の潜在的な用量出力を見積もった。粘膜に送達された弱毒生ワクチン、例えばMV-014-212は、最小の下流のプロセシングを必要とし、低コストの商品が予期される。さらに、ニードルフリー送達は供給リスクを低減させる。全体として、MV-014-212は、一次ワクチンまたは異種ブースターとして国内および世界的配備のためによく適する。MV-014-212は現行で、フェーズ1臨床試験(NCT04798001)において単回用量鼻腔内ワクチンとして評価されている。
【0220】
材料および方法
細胞および動物
Vero RCB1(WHO Vero RCB 10-87)細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS、Corning)および100I.U./mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、0.25μg/mLのアムホテリシン、0.085g/LのNaCIからなる1X Corning Antibiotic/Antimycotic mixを含有する最小必須培地(MEM、Gibco)中で増殖させた。RCB2細胞はRCB1に由来し、無血清培地中で増殖するように適合されている。この研究において使用されたRCB2細胞を、4mMのL-グルタミン(Gibco)を補充した無血清培地OptiPro(Gibco)中で増殖させた。両方のVero細胞株を37℃、5%のCO2において95%の湿度と共に培養した。
【0221】
アフリカミドリザル(Chlorocebus aethiops)はSt Kittsにおいて得られ、不定の年齢、約3~6kgの体重であった。サルをRSVマイクロ中和アッセイおよびスパイクSARS-CoV-2 ELISA(BIOQUAL)によりRSVおよびSARS-CoV-2について血清反応陰性であることをスクリーニングおよび検証した。動物はまた、獣医スタッフによる身体検査を行って、研究前の適切な健康状態を確認した。各々のAGMは、タトゥーにより独特に同定された。1頭の雄および3頭の雌をMV-014-212およびRSV群に割り当てた。2頭の雌および1頭の雄をモック群に割り当てた。ケージサイド観察は、死亡、瀕死、全般的健康状態および毒性の徴候を含んだ。臨床的な観察は、皮膚および毛皮の特徴、目および粘膜、呼吸、循環、自律神経および中枢神経系、体運動性、ならびに行動パターンを含んだ。各々のサルの体重を投薬期間の開始前および鎮静状態の各々の時点において記録した。AGMの気道におけるMV-014-212複製の全体的な低いレベルと合致して、処置関連と考えられる有害事象はワクチンの接種後に観察されなかった。ワクチン接種後16日目にMV-014-212を接種された1頭のサルは予想外なことに死亡した。死は最後のNSおよびBAL試料収集の4日後に起こった。死の原因の確定的な決定は、肉眼的または顕微鏡的な死後評価に基づいて確認できなかったが;死がワクチン関連であることを示唆する証拠はなかった。さらに、死亡した動物は、この処置群中の他の動物と比較してNS試料中の最低の力価を有し、1つのスワブのみがプラークアッセイの検出限界(50PFU/mL)より高いウイルスを含有し、評価されたいずれの時点においてもBAL中の検出可能な感染性ウイルスはなかった。
【0222】
雄および雌K18-hACE2 Tg(系統#034860、B6.Cg-Tg[K18-ACE2]2Prlmn/J)マウスはThe Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から入手し、ワクチン接種の時点において約8~10週齢であった。
【0223】
動物研究は、すべての関連する地方、州、および連邦政府の規制に準拠して実行し、BIOQUALの動物実験委員会(IACUC)により承認された。
【0224】
プラスミドの構築
組換えMV-014-212および派生ウイルスをアンチゲノムの方向性で細菌人工染色体(BAC)中にT7ポリメラーゼプロモーターの制御下でクローニングした(Hotard et al(2012)、上掲)。組換えMV-014-212およびMVK-014-212配列を含有するBACをDB1-QUADおよびkRSV-DB1-QUADプラスミド(それぞれmKate遺伝子ありまたはなしの弱毒化バージョンのRSVのアンチゲノムをコードする;Rostad et al.(2018)、上掲)からの制限消化およびライゲーションにより構築した。キメラスパイクタンパク質をコードするDNA配列を、適合性のクローニング部位を含有するように設計し、それはTwist Biosciencesにより合成された。kRSV-DB1-QUADプラスミドおよびスパイク挿入物を酵素AatIIおよびSalI(NEB)で消化し、T4 DNAリガーゼ(NEB)を用いて16℃で終夜ライゲートした。Stabl3化学コンピテント細胞(Invitrogen)をライゲーションミックスを用いて形質転換し、クロラムフェニコール耐性について32℃で20~24時間選択した。MV-014-212 BACはMVK-014-212ベクターから、KpnIおよびAatII制限部位の間の断片(mKate遺伝子を含有する約7kb)を除去し、それを制限消化およびライゲーションによりDB1-QUADから抽出された対応する断片で置き換えることにより誘導した。すべての構築物について、コードされるウイルス全体の配列をサンガーシークエンシングを介して確認した。
【0225】
プラスミドrA2-mkate(別名kRSV-A2)の構築はRostad et al.(2016)J Virol.90(16):7508-7518に記載されたものである。
【0226】
ウイルスのレスキューおよび採取
組換えウイルスをRCB2細胞へのBACプラスミドおよび以下:T7ポリメラーゼ、RSV A2 N、RSV A2 P、RSV A2 M2-1またはRSV A2Lタンパク質のうちの1つを各々がコードするpCDNA3.1発現プラスミドに基づく5つのヘルパープラスミドのエレクトロポレーションによりレスキューした。細胞を4mMのグルタミンおよび10%のウシ胎仔血清(Hyclone)を補充したSFM-OptiPro培地中で2継代にわたり回収し、次にCPEが大規模となるまでグルタミンを含む無血清培地中で拡大増殖した。
【0227】
組換えウイルスを、SPGを補充したWilliams E(Hyclone)または単独でのSPG中に、感染細胞を直接的に培地中に剥がし取ることにより採取した。溶解液を激しくボルテックスしてウイルス粒子を放出させ、フラッシュ凍結させた。1サイクルの解凍およびボルテックスを行ってウイルスの放出を増加させた後にストックをアリコート化し、フラッシュ凍結させ、使用まで-70℃で貯蔵した。
【0228】
【0229】
使用されたすべてのウイルスについてのプラークアッセイは、24ウェルプレート中でVero細胞を用いて行った。70%コンフルエンスの細胞に100μlの10倍段階希釈のウイルス試料(10-1~10-6)を接種した。接種を室温で穏やかな振盪と共に1h実行した後に、10%のFBSおよび1X Corning Antibiotic/Antimycotic mixを補充したMEM中に溶解させた0.75%のメチルセルロース(Sigma)を加えた。細胞を32℃で4~5日間インキュベートした後にメタノール中に固定し、免疫染色を行った。MV-014-212およびMVK-014-212のためにウサギ抗SARS-CoV-2スパイクポリクローナル抗体(Sino Biological)およびヤギ抗ウサギHRP共役二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を使用した。rA2-mKateのために使用された試薬はヤギ抗RSV一次抗体(Millipore)およびロバ抗ヤギHRP共役二次抗体(Jackson ImmunoResearch)であった。すべての場合において、ウイルスプラークはAEC(Sigma)で染色した。検出限界は1PFU/ウェルであり、これは100PFU/mlの最小検出可能力価に対応する。
【0230】
RNAシークエンシング
MV-014-212試料からのRNAを、生産者により示唆されるプロトコールにしたがってQIAamp(登録商標) Viral RNA Mini Kitを使用して抽出した。抽出されたRNAの品質および濃度をゲル電気泳動およびUV分光光度法により評価した。抽出されたRNAを、特異的プライマーまたはランダム六量体を使用するInvitrogen SuperScript(登録商標) IV First-Strand Synthesis Systemを使用する逆転写(RT)のための鋳型として使用した。cDNA第2鎖をPlatinumTM SuperFiTM PCR Master Mixを用いて合成した。精製されたPCR生成物を、BigDye(登録商標) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を使用して直接的にシークエンシングした。シークエンシング反応物を、Sephadex G-50精製を使用して精製し、ABI 3730xl DNA Analyzerで分析した。配列トレースをSequencherソフトウェアを使用してアセンブルし、アセンブリーを手動で確認した。この研究のためのRNAシークエンシングはAvance Biosciences Inc.、Houston TXにより行われた。
【0231】
ウエスタンブロット
ウイルスおよび対照組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質(LakePharma、San Carlos、CA)を、Laemmli試料緩衝液(Alfa Aesar、Ward Hill、MA)を用いて95℃で10分間加熱することにより変性させた。タンパク質をSDS-PAGEにより4~15%の勾配のゲル中で分離させ、生産者のプロトコール(BIO-RAD、Hercules、CA)にしたがって転写装置を使用してPVDF膜に転写させた。転写後に、ブロットを脱イオン水中で洗浄し、生産者のプロトコールにしたがってiBind Flexシステムを使用してプロービングした。ウサギ抗SARS-CoV-2スパイク(Sino Biological Inc、Beijing、China)をiBind溶液(Invitrogen、Carlsbad、CA)中に1:1000で希釈した。HRP共役抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch、Philadelphia、PA)をiBind溶液中に1:5000で希釈した。ブロットを脱イオン水中で洗浄し、生産者のプロトコールにしたがってECLシステム(Azure Biosystems、Dublin、CA)を用いて顕色させた。ブロットをRestore Western Blot Stripping Buffer(ThermoFisher、Carlsbad、CA)で剥がし、ヤギ抗RSVポリクローナル抗血清(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)およびGAPDH(6C5)タンパク質に特異的なモノクローナル抗体(ThermoFisher、Carlsbad、CA)で再プロービングした。
【0232】
AGMにおけるウイルスシェディングを検出するためのプラークアッセイ
鼻スワブ(NS)および気管支肺胞洗浄液(BAL)試料を収集し、プラークアッセイによりワクチンシェディングについてアッセイされるまで氷上で貯蔵した。Vero細胞を0.5mL/ウェルにおいて1×105細胞/mLで24ウェルプレート中の培養培地に播種した。プレートを37℃で5%のCO2を含有する加湿インキュベーター中で終夜インキュベートした。試料を、30μLの鼻スワブまたはBALを270μLのDMEMに加えることにより血清を含まないDMEM中に希釈した。計6個の10倍段階希釈液を10-1~10-6でDMEM中に調製した。培地を24ウェルプレートから除去し、100μLの各々の希釈液をVero細胞の24ウェルプレートの複製ウェルに加えた。プレートを室温で一定の振盪と共にRocker 35EZ、Model Rocker 35D(Labnet、Edison、NJ)上で1hインキュベートした。このインキュベーションの終わりに、1mLのメチルセルロース培地(10%のウシ胎仔血清、1x抗生物質/抗真菌剤、および0.75%のメチルセルロースを補充したMEM)を各々のウェルに加えた。プレートを34℃で6日間、5%のCO2を含有する加湿インキュベーター中でインキュベートした。
【0233】
RSVまたはSARS-CoV-2抗体を使用する免疫染色によりプラークを可視化した。免疫染色のために、メチルセルロース培地を吸引し、細胞単層を1mLのPBSを用いて室温で洗浄した。PBSを除去し、細胞を各々のウェルへの1mLのメタノールの添加により固定し、プレートを室温で15分間インキュベートした。メタノールを除去し、細胞を1mLのPBSで洗浄し、続いて1mLのBlotto溶液(Tris緩衝食塩水中の5%の無脂肪乾燥ミルク、Thermo-Fisher)を加えた。プレートを室温で1hインキュベートした。Blotto溶液を除去し、Blotto中に1:500で希釈された0.25mLの一次ヤギ抗RSVポリクローナル抗体(Millipore、Hayward、CA)をRSV感染細胞に加えた。MV-014-212を感染させた細胞を一次ウサギ抗SARS-CoV-2スパイクタンパク質ポリクローナル抗血清(Sino Biologicals、Beijing、CN)で染色した。プレートを室温で一定の振盪と共に1hインキュベートした。一次抗体を除去し、ウェルを1mLのBlotto溶液で洗浄した。
【0234】
RSV感染細胞について、Blotto中に1:250で希釈された0.25mLのロバ抗ヤギHRP共役ポリクローナル抗血清(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)を各々のウェルに加えた。MV-014-212感染細胞について、Blotto中に1:250で希釈されたヤギ抗ウサギHRP共役ポリクローナル抗血清(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)を各々のウェルに加えた。プレートを室温で一定の振盪と共に1hインキュベートした。インキュベーション後に、二次抗体を除去し、ウェルを1mLのPBSで洗浄した。AEC基質を1xAEC緩衝溶液中に1:50で希釈することにより顕色溶液を調製した。計0.25mLの顕色溶液を各々のウェルに加え、赤色の免疫染色されたプラークが目により可視的となるまでプレートを室温で15~30分間、一定の振盪と共にインキュベートした。顕色反応を、プレートを水道水でリンスすることにより終了させた。プラークを計数し、力価を算出した。
【0235】
チャレンジウイルスのシェディングを検出するためのSARS-CoV-2サブゲノムRNAのRT-qPCR
3μL当たり106~107コピーを含有するように希釈された凍結されたRNAストックから標準曲線を作成した。RNAse非含有水を使用して1~107コピー/反応の範囲に及ぶRNA濃度を生成することで対照RNAの8つの10倍段階希釈液を調製した。
【0236】
プレートをApplied Biosystems 7500 Sequence detector中に置き、以下のプログラム:48℃で30分間、95℃で10分間、続いて95℃で15秒間、および55℃で1分の40サイクルを使用して増幅させた。試料1mL当たりのRNAのコピー数を標準曲線に基づいて算出した。
【0237】
組織からのトータルRNAを、RNA-STAT 60(Tel-test 「B」)/クロロホルムを使用して抽出し、続いてRNAの沈殿およびRNAse非含有水への再懸濁を行った。SARS-CoV-2 sgRNAを検出するために、リーダー配列の領域およびSARS-CoV-2からのE遺伝子RNAを検出するためのプライマーセットおよびプローブを設計した。E遺伝子mRNAは複製の間に、sgRNAに独特の5’リーダー配列(ビリオン中にパッケージングされない)を含有するようにプロセシングされ、したがってsgRNAを定量化するために使用され得る。独特のリーダー配列を含むE遺伝子配列を含有する既知の量のプラスミドDNAを使用して1~106コピー/反応の濃度範囲を生成することで標準曲線を作成した。2X緩衝液、Taq-ポリメラーゼ、逆転写酵素およびRNAse阻害剤を含有する45μLのマスターミックス(Bioline、Memphis、TN)を使用してPCR反応物をアセンブルした。プライマーペアを2μMで加えた。5μLの試料RNAを96ウェルプレート中の各々の反応物に加えた。以下の条件:48℃で30分間、95℃で10分間、続いて95℃で15秒間、および55℃で1分の40サイクルを使用してApplied Biosystems 7500 Sequence detectorにおいてPCR反応物を増幅させた。
【0238】
プライマー/プローブ配列を下記に示す:
SG-F:CGATCTTGTAGATCTGTTCCTCAAACGAAC(配列番号127)
SG-R:ATATTGCAGCAGTACGCACACACA(配列番号128)
FAM-ACACTAGCCATCCTTACTGCGCTTCG-BHQ(配列番号129)
【0239】
AGM血清のためのSARS-CoV-2全IgG ELISA
MaxiSorp immuno plate(Thermo-Fisher、Waltham、MA)を、PBS中に調製された100μLの0.65μg/mLのSARS-CoV-2スパイク(Pre-S SARS-CoV-2 Spike、Nexelis)と4℃で終夜インキュベートした。タンパク質溶液を除去し、プレートを、0.05%のTween 20を補充した250μLのPBS(PBST)で4回洗浄した。ブロッキング溶液(5%の無脂肪乾燥ミルクを含有するPBST)を200μL/ウェルで加え、プレートを室温で1hインキュベートした。SARS-CoV-2スパイク特異的IgG(Nexelis)をブロッキング溶液中に希釈し、標準品として使用した。陰性対照血清をブロッキング溶液中に1:25で希釈した。血清試料を1:25で希釈し、続いてブロッキング溶液中に8回、2倍段階希釈した。ブロッキング溶液をプレートから除去し、ウェルを250μLのPBSTで1回洗浄し、続いて100μLの希釈された血清試料および対照を加え、プレートを室温で1hインキュベートした。プレートを250μLのPBSTで4回洗浄し、ブロッキング溶液中に希釈された100μLのHRP共役ヤギ抗サルIgG抗体(PA1-8463、Thermo Fisher、Waltham、MA)を最後の洗浄ステップ後に各々のウェルに加えた。プレートを室温で1hインキュベートし、次に250μLのPBST中で4回洗浄した。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を含有する顕色溶液(1-Step Ultra TMB-ELISA Substrate Solution、ThermoFisher)を各々のウェルに加え、プレートを室温で30分間インキュベートして顕色させた。比色反応を100μLのELISA Stop Solution(Invitrogen)の添加により終了させた。450nmおよび650nmでの吸光度を、SpectraMax iD3マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、San Jose、CA)を使用して分光光度法により読み取った。
【0240】
AGM鼻スワブのためのSARS-CoV-2 IgA ELISA
精製された融合前SARS-CoV-2スパイク抗原(LakePharma)を96ウェルMaxiSorpイムノマイクロプレート(Thermo-Fisher)に吸着させた。陽性対照は、3人のCOVID-19回復期個体からの血清プール(Nexelis)であった。ヒト血清から精製されたIgAを標準品として使用した(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)。IgA標準曲線を生成するために抗ヒトIgA捕捉抗体Mab MT57(MabTech)をスパイク抗原の代わりにプレートに吸収させた。インキュベーション後に、マイクロプレートを250μLのPBSTで4回洗浄し、PBST中の1%のBSAでブロッキングした。精製されたヒトIgA標準品、対照または試料希釈液を次に加え、被覆されたマイクロプレート中でインキュベートして結合させた。プレートを洗浄し、サル抗体に対する交差反応性を有するビオチン化ヤギ抗ヒトIgA抗体(Mabtech)をすべてのウェルに加えた。過剰なビオチン化抗IgA抗体を洗浄により除去し、ストレプトアビジン共役HRP(Southern Biotech)を加えた。TMBを加え、顕色をInvitrogenの停止溶液の添加により停止させた。各々のウェルの吸光度を450nmで測定した。各々の試験プレート上でアッセイされた標準的な全IgA抗体を使用して、任意単位ELU/mLで表されるAGM試料中のスパイクタンパク質に対するIgA抗体の濃度を算出した。測定は2連で行い、平均値を標準偏差と共に報告する。
【0241】
マイクロ中和アッセイ
図18の概略図に示されるように、AGMからの熱不活化された血清を、非必須アミノ酸(Gibco)および抗生物質/抗真菌剤を含むMEM中に段階希釈した。すべての実験は2連で行った。200PFUの所望されるレポーターウイルスを各々の希釈液に加え、室温で1時間インキュベートした。透明底黒色96ウェルプレート(Grenier)中で増殖させたコンフルエントなRCB1細胞に血清-ウイルスミックスを感染させ、1,800×gで30分間、20℃で遠心分離(スピノキュレーション)した。プレートを37℃および5%のCO
2で20hインキュベートした。各々のウェル中の蛍光フォーカスを、Celigo Image Cytometer(Nexcelom)を使用してカウントし、下記の式:
(式中、MINは、細胞のみ(ウイルスなし)を含む対照ウェルにおいて得られたフォーカスの平均数であり、MAXは、ウイルスのみ(血清なし)を含む対照ウェルにおけるウェルからのフォーカスの平均数である。Lは試料ウェル中のフォーカスの数である。)を使用して阻害%に変換した。血清の希釈に対する阻害の得られた曲線を非線形回帰、GraphPad Prism(バージョン9.0.0)のオプション「[inhibitor]vs normalized response-variable slope」を使用してフィッティングした。フィッティングから、IC50を得、NT50をIC50の逆数として算出した。
【0242】
実施例4-MV-014-212はhACE2マウスにおいてTh1偏性細胞性免疫応答を誘発する
ワクチン関連増強呼吸器疾患(VAERD)のマウスモデルは、Th2応答への偏性を伴う1型(Th1)および2型(Th2)ヘルパーT細胞免疫における不均衡は、チャレンジ後の肺病理の増強に寄与することを示唆する(Boelen 2000)。MV-014-212でのワクチン接種後に生成されたTh1およびTh2免疫の均衡を評価するために、ヒトACE-2受容体を発現するトランスジェニックマウスにMV-014-212またはPBSの単回用量を鼻腔内経路により接種した。対照群に、免疫をTh2応答に向けて偏らせることが示されているミョウバン(Corbett et al.上掲)中に製剤化されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質の筋肉内プライムおよびブーストワクチン接種を与えた。28日目に、血清を収集し、全スパイク特異的IgG、IgG2aおよびIgG1をELISAにより測定した。さらに、脾臓を収集し、インターフェロン-γ(IFNγ)およびIL-5を発現する脾臓細胞の数をELISpotアッセイにより測定した。IgG2a/IgG1の比およびIFNγ/IL-5を産生する細胞の比は、Th1にバイアスされた細胞性免疫応答の指標である(Corbet et al.、上掲、van der Fits et al.(2020)NPJ Vaccines 5(1):49)。
【0243】
結果は、MV-014-212は、ELISpotアッセイにより測定された場合にスパイク反応性脾臓細胞を誘導したことを示した(
図19A)。重要なことに、細胞懸濁液がスパイクペプチドプールで刺激された場合にMV-014-212はIL-5と比べてIFNγを発現するより多くの数の脾臓細胞を誘導し、MV-014-212でのワクチン接種はTh1にバイアスされた免疫応答を生成させることを示唆した。MV-014-212群におけるIL-5産生細胞に対するIFNγ産生細胞の比は、ミョウバンアジュバント添加スパイクタンパク質でワクチン接種された群におけるよりも1桁よりも大きく高かった(
図19B)。ELISpotデータと合致して、血清中で検出されたIgG2a/IgG1の比は、ミョウバンアジュバント添加スパイクでワクチン接種された対照群よりもMV-014-212でワクチン接種された動物においてより高かった(
図19CおよびD)。これらのデータは、弱毒生組換えMV-014-212での鼻腔内ワクチン接種は、Th1にバイアスされた抗ウイルス免疫応答を誘導したことを示唆する。
【0244】
考察
マウスモデルにおいて、MV-014-212免疫化は、Th1にバイアスされた細胞性免疫応答を誘発した。より多くのIFNγ産生T細胞が、IL-5分泌T細胞よりもMV-014-212で免疫化されたhACEマウスの脾臓細胞において検出された。さらには、MV-014-212 hACE2マウスにおけるIgG2a/IgG1アイソタイプの比は、ミョウバンアジュバント添加スパイクタンパク質免疫化を受けたhACE2マウスと比較して約1000倍高かった。保護の相関は、救急使用のために承認されたCOVID-19ワクチンについて確立されていない。しかしながら、MV-014-212ワクチン接種AGMは、EUAワクチンで観察されたものと同等の保護のレベルを達成した(Corbett et al.上掲、Vogel et al.上掲、Mercado et al.上掲、van Doremalen et al.上掲)。
【0245】
材料および方法
SARS-CoV-2全IgG ELISA hACE2マウス
SARS-CoV-2スパイクタンパク質をN末端においてスパイクタンパク質シグナル配列に連結し、ヒスチジンタグをタンパク質のC末端に付加した。SARS-CoV-2スパイクタンパク質をHEK293T細胞中で発現させ、Ni-Sepharose Excel(GE)樹脂(Global Life Sciences Solutions、Marlborough、MA)を使用してAKTAクロマトグラフィーシステムにおいて均質まで精製した。MaxiSorpイムノプレート(Thermo-Fisher、Waltham、MA)を、PBS中に調製された100μLの0.5mg/mLのSARS-CoV-2スパイクと4℃で終夜インキュベートした。タンパク質溶液を除去し、プレートを0.1%のTween 20を補充した300μLのPBS(PBST)で3回洗浄した。ブロッキング溶液(5%の無脂肪乾燥ミルクを含有するPBST)を200μL/ウェルで加え、プレートを37℃で1hインキュベートした。SARS-CoV-2スパイク特異的IgGをブロッキング溶液中に希釈し、標準品として使用した。陽性および陰性対照血清をブロッキング溶液中に1:25で希釈した。陽性対照血清は、マウスをSARS-CoV-2 RBDタンパク質で免疫化することによりNexelisにおいて生成された。陰性対照血清はナイーブマウスから得られた。血清試料をブロッキング溶液中に1:25で希釈し、続いて8回の2倍段階希釈を行った。ブロッキング溶液をプレートから除去し、ウェルを300μLのPBSTで1回洗浄し、続いて100μLの希釈された血清試料および対照を加えた。プレートを37℃で2hインキュベートした。インキュベーション後にプレートを300μLのPBSTで3回洗浄し、ブロッキング溶液中に希釈された100μLのHRP共役ヤギ抗マウス抗体(A140-201P;Bethyl Laboratories、Montgomery、TX)を最後の洗浄ステップの後に各々のウェルに加えた。プレートを37℃で1hインキュベートし、次に300μLのPBST中で3回洗浄した。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を含有する顕色溶液(BioRad、Hercules、CA)を各々のウェルに加え、プレートを37℃で30分間インキュベートして顕色させた。比色反応を100μLの0.36N硫酸停止溶液の添加により終了させた。450nmおよび650nmにおける吸光度を、SpectraMax iD3マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、San Jose、CA)を使用して分光光度法により読み取った。
【0246】
スパイク特異的IgG1およびIgG2a ELISA
マウスからの血清試料を-21日目およびワクチン接種後28日目に収集してSARS-CoV-2スパイク特異的IgG1およびIgG2a抗体のレベルをELISAにより定量化した。精製された灌流安定化SARS-CoV-2スパイクタンパク質(SARS-CoV-2/human/USA/WA1/2020、LakePharma)をPBS中に1μg/mLまで希釈し、100μLをMaxisorpイムノプレート(Thermo-Fisher)の各々のウェルに加え、4℃で終夜インキュベートした。プレートをPBST(PBS+0.05% Tween 20)中で4回洗浄し、100μLのブロッキング溶液(PBST+2% BSA)を各々のウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。血清希釈液をブロッキング溶液中で調製し、第1の希釈はIgG1アッセイのために1:25またはIgG2aアッセイのために1:10~1:100とした。SARS-CoV-2スパイクIgG1(Sino Biological)または抗スパイク-RBD-mIgG2a(InvivoGen)をブロッキング溶液中に希釈し、アッセイのための標準品として使用した。
【0247】
ブロッキング溶液を除去し、100μLの希釈された抗体を各々のウェルに加えた。プレートを室温で1hインキュベートし、次にプレートウォッシャーを使用してPBST中で4回洗浄した。次に、それぞれ1:32,000および1:1000に希釈された100μLのHRP共役ヤギ抗マウスIgG1(Thermo Fisher)またはHRP共役ヤギ抗マウスIgG2a(Thermo Fisher)二次抗体を各々のウェルに加え、プレートを室温で1hインキュベートした。プレートをPBST中で4回洗浄した。100μLの1-step ultra TMB-ELISA基質溶液(Thermo Fisher)を各々のウェルに加え、プレートをオービタルシェーカー上で一定の振盪と共に30分間インキュベートした。インキュベーション期間後に、100μLの停止溶液(Invitrogen)を各々のウェルに加え、プレートを450nmおよび620nmにおいてSpectramax id3プレートリーダー(Molecular Devices)で読み取った。
【0248】
MV-014-212ワクチン接種hACE2マウスからの脾臓細胞のELISPOT
ワクチン接種されたACE-2マウスからの脾臓を接種後28日目に収集し、処理まで氷上で10%のFBSを含有するDMEM中で貯蔵した。脾臓を、培地を含有する無菌ペトリ皿上でホモジナイズした。ホモジネートを100μmの細胞ストレーナーを通じて濾過し、細胞懸濁液を氷上の無菌チューブに移した。細胞を200×gで8分間、4℃での遠心分離により収集した。上清を除去し、チューブの縁の残留液体を清潔なペーパータオルを用いて吸い取った。細胞ペレットを2mLのACK溶解緩衝液(155mMの塩化アンモニウム、10mMの重炭酸カリウム、0.1mMのEDTA)に再懸濁することにより赤血球細胞を溶解させ、試料を室温で約5分間インキュベートした。PBSを細胞懸濁液の体積の2~3倍で加え、細胞を200×gで8分間、4℃での遠心分離により収集した。細胞ペレットをPBS中で2回洗浄し、細胞を200×gで8分間、4℃での遠心分離により収集した。上清を除去し、ペレットを2mMのL-Glutamine CTL-Test Media(Cell Technology Limited、OH、USA)中に再懸濁した。懸濁液を100μm細胞ストレーナーを通じて新たな15mLのコニカルチューブ中に濾過し、細胞を血球計を使用してカウントし、適切な細胞濃度で再懸濁した。ELISpotアッセイにおいて使用されるまで細胞を5%のCO2を有する加湿されたインキュベーター中37℃で維持した。
【0249】
マウスIFNγ/IL-5 Double-Color ELISPOT assay kit(Cell Technology Limited、OH、USA)を使用してELISpotアッセイを行った。Murine IFNγ/IL-5 Capture Solutionおよび70%エタノールを生産者のプロトコール(Cell Technology Limited、OH、USA)にしたがって調製した。プレート上の膜を各々のウェルへの15μLの70%エタノールの添加により活性化させた。プレートを室温で1分未満インキュベートし、続いて150μLのPBSを加えた。アンダードレーン(underdrain)を除去してウェル中の溶液を排出し、各々のウェルをPBSで2回洗浄した。Murine IFNγ/IL-5 Capture Solution(80μL)を各々のウェルに加え、プレートをパラフィルムで密閉し、4℃で終夜インキュベートした。Capture Solutionを除去し、プレートを150μLのPBSで1回洗浄した。SARS-CoV-2スパイクタンパク質(PepMix(商標) SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein、JPT Peptide Technologies、Berlin DE)にわたる15アミノ酸の長さのペプチドを含有するペプチドプールを10mg/mLで調製し、100μLを各々のウェルに加えた。コンカナバリンA(Con A)マイトジェン(10μg/mL)を含有する陽性対照を別々の反応混合物に加えた。脾臓細胞をCTL-Test(商標) Medium(Cell Technology Limited、OH、USA)と混合して3,000,000細胞/mLの最終細胞密度を得、100μL/ウェルを大きいオリフィスチップを使用してプレートに加えた。プレートを9%のCO2を含有する加湿されたインキュベーター中37℃で24時間インキュベートした。プレートを各々の洗浄について200μL/ウェルの体積においてPBSで2回、次に0.05%のTween-PBSで2回洗浄し、続いて80μL/ウェルのanti-murine IFNγ/IL-5 Detection Solution(Cell Technology Limited、OH、USA)を加えた。プレートを室温で2時間インキュベートした。プレートを各々の洗浄について200μL/ウェルのPBSTで3回洗浄し、続いて80μL/ウェルのTertiary Solution(Cell Technology Limited、OH、USA)を加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで2回、次に200μL/ウェルの蒸留水で2回洗浄した。Blue Developer Solution(Cell Technology Limited、OH、USA)を80μL/ウェルで加え、プレートを室温で15分間インキュベートした。プレートを水道水中で3回リンスして、顕色反応を停止させた。最終の洗浄後に、Red Developer Solution(Cell Technology Limited、OH、USA)を80μL/ウェルで加え、プレートを室温で5~10分間インキュベートした。プレートを3回リンスして顕色反応を停止させた。プレートをベンチトップ上でペーパータオルに伏せて24時間空気乾燥させた。IFNγ(赤)またはIL-5(青)を発現する脾臓細胞を表すプレート上のスポットをCTL-Immunospotプレートリーダー(ImmunoSpot 7.0.23.2 Analyzer Professional DC\ImmunoSpot 7、Cellular Technology Limited)およびソフトウェア(CTL Switchboard 2.7.2)を使用して定量化した。
【0250】
実施例5-フェーズI臨床試験
この実施例において、COVID-19疾患を引き起こす新規のコロナウイルス、SARS-CoV-2に対するワクチンが評価される。ワクチンは液滴またはスプレーとして鼻に投与される。特に、研究は、SARS-CoV-2に対して血清反応陰性の18~69歳の健康な成人に投与された場合のワクチンの安全性、およびそれに対する免疫応答を分析する。
【0251】
コホートA(18~55歳)は最初に登録される。最初の10人の参加者(群1)はワクチンの投薬1を与えられる。3日を通じた群1安全性データの検討後に、次の20人の参加者(群2)はワクチンの投薬2を与えられる。3日を通じた群2安全性データの検討後に、コホートA中の50人の参加者の最後の群(群3)はワクチンの投薬3を与えられる。群3中の亜群は経鼻スプレーを介してワクチンの投薬3を与えられる一方、残りの参加者は点鼻剤による投与を与えられる。コホートA中の第2の亜群は36日目に第2の同一のワクチン用量を与えられる一方、残りの参加者は(1日目に)ワクチンの単回用量を与えられる。
【0252】
15日を通じたコホートA安全性データの検討後に、コホートB(56~69歳)は登録される。最初の10人の参加者(群4)はワクチンの投薬1を与えられる。3日を通じた群4安全性データの検討後に、次の20人の参加者(群5)はワクチンの投薬2を与えられる。3日を通じた群5安全性データの検討後に、コホートA中の20人の参加者の最後の群(群6)はワクチンの投薬3を与えられる。コホートB中のすべての参加者はワクチンの単回用量を与えられ、点鼻剤による用量を投与される。コホートAおよびBの各々の群内で、前哨投薬アプローチが追加の安全性指標として実行される。
【0253】
転帰指標
決定される一次転帰指標は、自発的有害事象(AE)、非自発的AE、重篤な有害事象(SAE)、診療を要した有害事象(MAE)、およびワクチンにコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する血清中和抗体力価における変化を含む。自発的および非自発的AEは、ワクチン接種直後の期間において決定される。SAEおよびMAEは、研究持続期間全体(約1年)を通じて決定される。ワクチンにコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する中和抗体の血清力価における変化は、ベースラインから29日目を通じて、平均で5週間で決定される。
【0254】
自発的AEの頻度が測定され、重症度によりカテゴライズされる。自発的AEは、ワクチン投与後に起こり得る予め定義されたAEである。
【0255】
非自発的AEの頻度が測定され、重症度によりカテゴライズされる。非自発的AEは、ワクチンに対する原因的関係性にかかわらず、ワクチンを投与された参加者における任意の有害な医学的出来事である。非自発的AEは、ワクチンの使用と時間的に関連付けられる不都合なおよび意図されない徴候(異常な実験室所見を含む)、症状、または疾患を含むことができる。
【0256】
SAEの頻度が測定され、ワクチン関連性によりカテゴライズされる。SAEは、原因的にワクチンに関すると考えられるか否かにかかわらず、生命を脅かすか、または以下:死、入院もしくは既存の入院の延長、正常な生活機能を実行する能力の持続的なもしくは重大な不能性もしくは実質的な妨害、もしくは先天性異常/先天性欠損のいずれかを結果としてもたらすAEである。
【0257】
MAEの頻度が測定され、ワクチン関連性によりカテゴライズされる。MAEは、原因的にワクチンに関すると考えられるか否かにかかわらず、予定外の診療訪問、例えば救急医療(urgent care)訪問、救急一次医療(acute primary care)訪問、救急部門(emergency department)訪問、または医療提供者への他の以前に計画されていない訪問を伴うAEである。予定された医療訪問、例えば通常検診、健康チェック、「健康診断」(check-ups)、およびワクチン接種はMAEと考えられない。
【0258】
ワクチンにコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する血清中和抗体(nAb)力価における変化は、参加者毎にベースラインから29日目を通じて、平均で5週間測定される。
【0259】
決定される二次転帰指標は、(1)ワクチンにコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する血清結合抗体濃度における変化、(2)潜在的なワクチンウイルスシェディングの頻度、規模、および持続期間を含む。
【0260】
血清結合抗体濃度における変化は、参加者毎にベースラインから29日目を通じて、平均で5週間測定される。
【0261】
ワクチンウイルスの任意のワクチン接種後シェディング(ウイルス培養により検出される)の頻度は、投薬群毎におよび全体的にベースラインから29日目を通じて、平均で4週間測定される。ワクチンウイルスのワクチン接種後シェディングが培養により検出される場合、ピークウイルス力価(プラーク形成単位、PFUにおいて測定される)は、投薬群毎におよび全体的にベースラインから29日目を通じて、平均で4週間測定される。ワクチンウイルスのワクチン接種後シェディングが培養により検出される場合、シェディングの持続期間(日数)は、投薬群毎におよび全体的にベースラインから29日目を通じて、平均で4週間で測定される。
この研究のための適格性基準
・研究のために適格な年齢:18歳~69歳
・研究のために適格な性別:すべて
・ジェンダーに基づくか否か:なし
・健常ボランティアの受け入れ:あり
包含基準:
・インフォームドコンセントへの署名日において決定される18歳以上56歳未満(コホートA)および56歳以上70歳未満(コホートB)の健常な成人
・1日目の投薬前においてSARS-CoV-2 RT-PCR(鼻スワブ)陰性
・妊娠の可能性がある女性(WOCBP)またはWOCBPのパートナーがいる男性対象は、インフォームドコンセントへの署名から最終MV-014-212投与後少なくとも3か月間まで、研究参加の間の避妊の実行に同意しなければならない。
・書面によるインフォームドコンセント
除外基準:
・慢性肺疾患(例えば慢性閉塞性肺疾患、喘息、肺線維症、嚢胞性線維症)の診断。解消された小児期喘息は除外的ではない。
・研究プロトコールに詳述されている併存症または他の状態に起因する免疫不全状態
・鼻閉塞(解剖学的/構造的原因、急性もしくは慢性鼻副鼻腔炎、または他の原因に起因するものを含む)
・医療従事者、長期看護またはナーシングホーム施設の居住者または職員、救急応答チーム、またはSARS-CoV-2への曝露の高いリスクを有する他の職業のメンバー、および自宅外で客と対面する職業に従事する者(例えばウェイター、キャッシャーまたは店員、公共輸送またはタクシードライバー)
・スクリーニングの間の血清妊娠検査陽性および/または1日目の尿妊娠検査陽性
・研究参加の任意の期間の間の授乳
・5歳未満の子供または免疫不全者への職業的または家庭内曝露
・PIの見解で、研究参加を不可能にする任意の医学的疾患または状態。これは、対象を傷害の許容できないリスクに置くか、対象をプロトコールの要求を満たせなくさせるか、または応答の評価もしくはこの試験の対象の成功裏の完了に干渉し得る急性、亜急性、間欠性または慢性の医学的疾患または状態を含む。
【0262】
MV-014-212を接種された対象は、ワクチンにコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する中和抗体の血清力価における増加の他に、ワクチンにコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する血清結合抗体濃度における増加を呈することが予想される。
【0263】
本出願の配列表において提供される配列を表8に示す:
【0264】
参照による組込み
本明細書において参照される特許および科学文献の各々の全開示はすべての目的のために参照により組み込まれる。
【0265】
均等
本発明は、その精神または本質的な特徴から離れることなく他の特有の形態において具現化され得る。以上の実施形態は、したがって、すべての点において、本明細書に記載される発明に対して限定的ではなく実例的であると考えられるべきである。本発明の範囲はそのため、以上の記載によってではなく添付の請求項により指し示され、請求項の均等の意味および範囲内に入るすべての変更は、請求項に包含されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】