(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】半径方向及び軸方向の加速を使用してマイクロニードルアレイを適用するためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20230710BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1486
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577564
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 US2021037511
(87)【国際公開番号】W WO2021257624
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521146056
【氏名又は名称】バイオリンク インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biolinq Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】モアロック, デイビッド マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シリアセン, スコット ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マンスフィールド, ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ガムラン, アンドレ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL07
4C038KL09
4C038KM00
4C038KY02
4C038KY04
(57)【要約】
分析物選択的マイクロニードルアレイセンサ(20)をユーザの皮膚層に挿入するためのデバイス(65)及び方法を本明細書において開示する。デバイス(65)は、本体部分(72)と、陥凹作動部分(66)と、キャリア(71)と、ゲート特徴部と、係合解除特徴部(79)とを備える。作動領域(66)へのユーザ指示による指定された力の適用により、キャリア(71)がゲート特徴部を解消し、それによって、指定された衝撃力及び速度による、ユーザの皮膚表面に向かうマイクロニードルアレイセンサデバイス(65)の加速が引き起こされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物選択的マイクロニードルアレイセンサをユーザの皮膚層に挿入するように構成されているアプリケータデバイスであって、前記デバイスが、
前記ユーザの手によって把持されるように構成されている本体部分と、
前記センサを保持し、前記ユーザの皮膚表面に向かって展開する間にセンサを加速させるように構成されているキャリアと、
前記キャリアの近位端にある旋回部材であって、キャリアが前記旋回部材の周りで半径方向の運動を経ることを可能にするように構成されている、旋回部材と、
工学的嵌合を適用してキャリアを第1の位置に保持するように構成されている捕捉-解放機構と、
前記捕捉-解放機構による圧縮時に形状を変形させるように構成されている解放機構と、を備え、
前記キャリアへのユーザ指示による指定された力の適用により、前記捕捉-解放機構が後退し、前記解放機構が本来の形状に戻り、それによって、指定された衝撃力及び衝撃速度による、前記旋回部材を中心としユーザの前記皮膚表面に向かう円弧状運動での前記マイクロニードルアレイセンサデバイスの加速が引き起こされる、デバイス。
【請求項2】
前記マイクロニードルアレイセンサが、電気化学、電気光学、又は完全電子デバイスである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記マイクロニードルアレイセンサが、ユーザの生理学的流体中の特定の生理学的又は代謝状態を示す、内因性又は外因性の生化学的薬剤、代謝産物、薬物、薬理学的、生物学的、又は薬剤のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記マイクロニードルアレイセンサが、電源、電子測定回路、マイクロプロセッサ、及び無線送信器を包含するハウジングを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記キャリアが、締まり嵌め、摩擦嵌め、プレス嵌め、隙間嵌め、位置嵌め、及び磁気リテーナのうちの少なくとも1つによって前記マイクロニードルアレイセンサを保持するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記旋回部材が、ヒンジ、シャフト、舌部、及び弾性変形可能な膜のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記捕捉-解放機構が、ばねプランジャである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の位置が、前記本体部分内に陥凹している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ユーザ指示による指定された力の適用が、前記ユーザが指で押すことによって媒介される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記衝撃力が0.3N~30Nである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記衝撃速度が0.15m/秒~15m/秒である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
滅菌バリアパッケージアプリケータデバイスであって、前記滅菌バリアパッケージアプリケータデバイスが、第1の開口部と、第2の開口部と、本体部分と、前記本体部分内の第1の位置に工学的嵌合によって保持された分析物選択的マイクロニードルアレイセンサであって、前記分析物選択的マイクロニードルアレイの非感知表面が前記第1の開口部に近接して位置付けられている、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサと、前記滅菌バリアパッケージの前記第2の開口部の上に配設されたフィルムであって、ユーザによって取り外されるように構成されている、フィルムと、を備え前記分析物選択的マイクロニードルアレイの前記非感知表面へのユーザ指示による最小限の力の適用により、前記工学的嵌合が損なわれ、それによって、指定された衝撃力、衝撃速度、及び挿入角度による、第1の位置から第2の位置への、ユーザの前記皮膚表面に向かう直線運動での前記マイクロニードルアレイセンサデバイスの加速が引き起こされる、デバイス。
【請求項13】
前記第1の開口部、前記第2の開口部、及び前記本体部分が、単一の作動要素を備える、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記単一の作動要素が旋回部材を含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記旋回部材が、ヒンジ、シャフト、舌部、及び弾性変形可能な膜のうちの少なくとも1つである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
第1の開口部、第2の開口部、及び本体部分を包含する滅菌バリアパッケージアプリケータによって、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサをユーザの皮膚層に挿入するための方法であって、前記方法が、前記滅菌バリアパッケージアプリケータの前記第2の開口部の上に配設されたフィルムを除去することと、前記分析物選択的センサを包含する前記無菌バリアパッケージアプリケータの第2の開口部をユーザの皮膚上に位置付けることと、前記分析物選択的マイクロニードルアレイセンサの非感知表面に最小限の力を適用することと、を含みユーザが最小限の力を前記適用することによって、前記分析物選択的マイクロニードルアレイセンサを前記本体部分に保持する工学的嵌合が損なわれ、それによって、指定された衝撃力、衝撃速度、及び挿入角度による、第1の位置から第2の位置への、ユーザの前記皮膚表面に向かう直線運動での前記マイクロニードルアレイセンサデバイスの加速を引き起こす、方法。
【請求項17】
前記マイクロニードルアレイセンサが、電源と、電子測定回路と、マイクロプロセッサと、無線送信器とを備えるハウジングを包含し、前記ハウジングが、展開開始、適用角度、衝撃力、速度、及びユーザの前記皮膚の緊縮性のうちの少なくとも1つを制御するように構成されており、前記ハウジングが、前記ユーザからの二次行為を必要とせずに、ユーザ指示による最小限の力の適用時に、前記マイクロニードルアレイセンサから自動的に分離するように構成されている、請求項16に記載のマイクロニードルアレイセンサ。
【請求項18】
前記マイクロニードルアレイセンサが、目的とする装着持続時間の間、前記センサを前記装着者の前記皮膚表面に付着させることを目的とした皮膚に面する接着剤とともに構成されている、請求項16に記載のマイクロニードルアレイセンサ。
【請求項19】
前記皮膚に面する接着剤が、前記フィルムに結合された接着剤ライナを包含し、ユーザによる前記フィルムの前記除去により、結合された前記接着剤ライナが同時に除去される、請求項16に記載のマイクロニードルアレイセンサ。
【請求項20】
前記最小限の力が0.3N~30Nである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
第1の位置から第2の位置への前記直線運動が、前記ユーザへの触覚フィードバック及び可聴フィードバックのうちの少なくとも一方を提示させる、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記衝撃力が0.3N~30Nであり、前記衝撃速度が0.15m/秒~15m/秒である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の位置と前記第2の位置との差が移動距離を規定する、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記最小限の力及び移動距離が、前記挿入速度を規定する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の開口部をユーザの前記皮膚上に位置付ける行為が、前記皮膚に張力を適用する、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記ハウジングが、前記皮膚表面の動きを低減させ、それによって、前記マイクロニードルアレイセンサを装着する間前記皮膚の撓みを低減させるための特徴部を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記滅菌バリアパッケージアプリケータの前記第2の開口部をユーザの前記皮膚上に位置付けると、前記ユーザの皮膚上の前記第2の開口部の中心から半径方向に向けられる引張ひずみが生じる、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
ユーザが最小限の力を適用することが、運動エネルギー貯蔵要素によって補助される、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
分析物選択的マイクロニードルアレイセンサをユーザの皮膚層に挿入するように構成されているアプリケータデバイスであって、前記ユーザの手によって把持されるように構成されている本体部分と、前記ユーザの指によって押されるように構成されている陥凹作動部分と、前記センサを保持し、前記ユーザの皮膚表面に向かって展開する間センサを加速させるように構成されているキャリアと、最小限の力が適用されるまでキャリアの移動を防止するように構成されているゲート特徴部と、展開時に前記センサを解放するように構成されている係合解除特徴部と、を備え、前記作動領域へのユーザ指示による指定された力の適用により、前記キャリアが前記ゲート特徴部を解消し、それによって、指定された衝撃力及び衝撃速度による、ユーザの前記皮膚表面に向かう前記マイクロニードルアレイセンサデバイスの加速を引き起こす、デバイス。
【請求項30】
ユーザ指示による指定された力の適用が、運動エネルギー貯蔵要素によって補助される、請求項29に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明する技術は、分析物の生理学的感知のために、装着者の皮膚に分析物選択的マイクロニードルセンサを適用するための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
循環バイオマーカーを適時に提示することは、特に現代の医療デバイス及び慢性疾患管理において依然として重要な目的である。低レイテンシバイオマーカー又は分析物定量化が必要になる最も適切な例は、糖尿病管理ドメイン内に存在し、連続的血糖モニタリングシステム(CGM又はCGMS)によって対処されている。持続血糖モニタリングシステムは、インスリン又は他の薬理学的薬剤1の給送を含む投薬決定を知らせるためにインスリン依存性糖尿病を有する個人によって広く使用されている。実際、CGMの有効性は、多数の臨床試験及びエンドユーザ研究において過去10年間にわたって実証されており、(定期的なフィンガースティック血液サンプリングによる血糖の自己監視とは対照的な)血糖管理における注目すべき改善が明らかになっている。しかしながら、驚くべきことに、これらのシステムの普及は、芳しくなく、有力な結果に基づく証拠が示唆すること2とは完全に矛盾している。Tanenbaum及び共同研究者3は、真性糖尿病の管理におけるCGMの付着及び使用に対する障害を調査し、糖尿病管理のためにこの変形技術が広範に採用されることを制限しているのは、システムコストが高いこと、信頼性が低いこと、及び全体的にユーザ体験が不十分であることであるという結論に至った。したがって、これらの障害に対処することを目的とするイネーブリング機能は、CGMが広範に採用されることを可能にする。理想的には、コストを削減し、信頼性を向上させ、ユーザ体験を増大させるように位置付けられるこれらのイネーブリング機能のうちの1つは、概して、CGM及び分析物センサの装着者の皮膚に適用するために使用されるデバイス及び方法である。
【0003】
現在の皮下植え込み型分析物選択的センサは、皮下脂肪組織として知られる真皮の下の皮下層において分析物感知動作を実行するように構成されている。同様に、マイクロニードルアレイとして具現化されることが多い皮内分析物センサは、生存可能な表皮又は真皮(真皮乳頭層又は真皮網状層)において、より表面的に感知動作を実行する。皮膚を貫通し、所望の解剖学的領域(又は層)内の分析物選択的センサ内に見出される感知要素を位置付けるために、機械的アプリケータ機構が使用されることが多い。これらのアプリケータは、典型的には、圧縮された機械要素(すなわち、ばね、変形可能材料)又はガスの形態で蓄積されたポテンシャルエネルギーを含み、これは、ユーザによる作動時に運動エネルギーに変換され、上記アプリケータ内に保持された分析物選択的センサを、規定された力、速度、変位、運動量、及び/又は慣性でユーザの皮膚に適用させる。皮膚の所望の層への貫通は、特にマイクロニードル媒介分析物感知のドメイン内での適切な分析物定量化と同等である。実際に、マイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサを適切に挿入するには、極端なレベルの精度が必要であり、現在まで、マイクロニードルが皮膚を貫通するのに必要なエネルギーをポテンシャルエネルギーの形態で蓄積するには、ばね又はピストン駆動機械的機構を使用することが必要であった。実際に、機械的アプリケータの実装は、システムコストを低減して技術の利用可能性を高め、信頼性を改善し、センサを適用するのに必要な複雑さのレベルを低減させてユーザ体験を向上させることを目的とした現在の取り組みに完全に矛盾する。ユーザが提供する力のみによって皮膚の所望の層への適用及びその後の挿入が可能なマイクロニードルアレイ分析物選択的センサは、一般に、CGM及び身体装着型分析物感知がより広範に採用されることを実質的に可能にする。
【0004】
先行技術には以下のものが含まれる。
ハウジングと、マイクロニードルアレイに衝突し、マイクロニードルアレイを標的部位に向かって加速させるためのインパクタとを含むアプリケータデバイスを開示し、インパクタが、マイクロニードルアレイを標的部位に向かって移動させるために弓状経路に沿って移動することができる、Microneedle array applicator device and method of array applicationについての米国特許第9789249号。
例えば、中実の円板及びそれを取り囲む環状体であり得る2つのほぼ同心状の部分を有するマイクロニードルアプリケータを開示する、Applicators for Microneedlesについての米国特許第8821446号が提供されている。
マイクロニードルアレイを哺乳動物に適用するために使用されるアプリケータを開示する、Low-profile microneedle array applicatorについての米国特許第8267889号。特に、マイクロニードルデバイスを皮膚表面に適用するための適用デバイスは、マイクロニードルデバイスに取り付けられた隆起した中央領域を有する可撓性シートと、可撓性シートの周辺部又はその近くの支持部材とを含み、可撓性シートは、シートの主平面に直交する方向に段階的に運動を経るように構成されている。
マイクロプロジェクションアレイ用のアプリケータを開示するApplicators for microneedlesについての米国特許第9687640号が公表されている。一実施形態では、このアプリケータは、エネルギー貯蔵要素を備える。
マイクロニードルデバイスを皮膚表面に適用するためのアプリケータ及び方法を開示する、Force-controlled applicator for applying a microneedle device to skinについての米国特許第10406339号。
マイクロニードルデバイスを皮膚に適用するためのアプリケータ及び方法を開示する、Applicator and method for applying a microneedle device to skinについての米国特許第10300260号。
マイクロニードルを保護するマイクロニードルデバイスを開示するApplicator for microneedle arrayについての米国特許第8579862号は、携帯が容易な形状を有し、マイクロニードルで皮膚を穿刺するステップにおいて小さい針の破損などの問題がなく、薬物を投与するための適切な皮膚穿刺が確保される。
マイクロニードルアレイを給送するための薄型システム及び方法を開示する、Integrated microneedle array delivery systemについての米国特許第10010707号。
マイクロニードルデバイスを皮膚表面に適用するためのアプリケータを開示する、Force-controlled applicator for applying a microneedle device to skinについての米国特許第9782574号。このアプリケータは、マイクロニードルデバイス、ハウジング、及び接続部材を含むことができる。
マイクロニードルアレイアプリケータを開示する、Microneedle array applicator and method for applying a microneedle arrayについての米国特許第9492647号は、美容及び医療用途においてマイクロニードルアレイを適用するように構成されている。
患者の皮膚表面にマイクロニードルパッチを適用するための方法及び装置を開示する、Microneedle patch applicator systemについての米国特許第9415198号は、アプリケータの使用を含む。
所定の力及び速度で皮膚に対してマイクロニードルアレイをスナップ留めするための弾性バンドを有するアプリケータを開示する、Microneedle array applicator and retainerについての米国特許第9174035号。
マイクロニードルアレイを皮膚表面に適用するためのデバイスを開示する、Device for applying a microneedle arrayについての米国特許第9119945号。
マイクロニードルアレイを哺乳動物に適用するために使用されるアプリケータを開示する、Low-profile microneedle array applicatorについての米国特許第8758298号。
【0005】
マイクロニードルアレイをユーザの皮膚層に挿入するための従来のデバイス及び方法は、主としてばね又はピストン駆動アプリケータ機構を活用して、指定された力、速度、及び変位プロファイルによる、ユーザの皮膚表面に向かう埋め込まれたマイクロニードルアレイの直交加速を容易にする。更なる前述の実施形態は、変形可能な膜内の上記センサの保持を含むアプリケータを含む。ユーザは、設定された力に達するまで膜の上部に負荷を適用する。必要な力が達成されると、変形可能な膜が折り畳まれ、センサはユーザの皮膚表面に対して軸方向に加速される。変形可能な膜は、所望の力が達成された後、塑性変形を経る材料から構成することができる。他の実施形態では、変形可能な膜は、金属から構築され、ドームばねの機能を模倣する。上記膜の形状及び材料は、所望の変形力を調整するように修正することができ、場合によっては、膜を作動させる力が上記膜によって適用される力よりも小さくなるように、上記力を増大させるように形状を修正することができる。いくつかの実施形態では、膜は、ユーザによって直接、又はレバー若しくは噛合構成要素によって作動させてもよく、膜によって生成される力を更に増大させる。いくつかの実施形態では、ユーザによる直交力の適用は、アプリケータの幾何学形状によって側方力に変換され、したがって、所望の皮膚層への到達を促進するために、ユーザの皮膚に張力を適用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、マイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサを、ユーザによって適用される力で生存可能な表皮又は真皮の所望の層に挿入することを可能にする方法及びデバイスを教示する。この解決策の目的は、ユーザが、衝突時の適用力、速度、及び挿入角度が確実に制御されるようにしつつ、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサをユーザの皮膚の所望の層に挿入するための方法を提供することである。いくつかの実施形態では、適用は、ユーザによって適用される力のみによって達成されるが、他の実施形態では、ユーザによって適用される力は、エネルギー貯蔵デバイス(すなわち、ばね)からの力によって増強される。ユーザによって適用される力は、センサ又はセンサキャリアが、解消するには適度な力を必要とするゲート又は戻り止め特徴部によって保持される機構によって制御される。衝撃速度は、ゲート特徴部又は戻り止め特徴部を解消するのに必要な力及び移動距離によって制御することができる。挿入角度は、適用機構及び/又は分析物センサデバイス内に存在するガイド要素によって制御される。他の実施形態では、この解決策は、締まり嵌めによってセンサを保持するアーマチュアがユーザによる適度な力によって展開され、それによって規定された衝撃力及び速度仕様まで加速される機構によって可能になる。上記アーマチュアの近位末端は、ヒンジ、継手、又はシャフトの周りを旋回するようになっており、任意選択的に、ばね又は弾性部材などのねじり要素によって補助されてもよい。いくつかの実施形態では、適用機構は、弾性を低減し、挿入の信頼性を向上させるために、適用部位の皮膚を不動にするか、又は適用部位の皮膚に張力を適用するように構成されている。マイクロニードル適用のための先行技術のデバイス及び方法と比較したこれらの手法の利点としては、適用プロセスの簡略化及びそれによるユーザ体験の簡略化、部品費用の削減による商品コストの削減、パッケージサイズの縮小、したがって物流及び棚スペースの縮小、無駄の削減、並びに低減された機械的構成要素数の低減による信頼性の向上が挙げられる。
【0007】
本発明の一態様は、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサをユーザの皮膚層に挿入するように構成されたアプリケータデバイスである。デバイスは、上記ユーザの手で把持されるように構成された本体部分と、上記センサを保持し、上記ユーザの皮膚表面に向かって展開する間センサを加速させるように構成されたキャリアと、上記キャリアの近位端にあり、キャリアを上記シャフトの周りで半径方向に運動を経ることを可能にするように構成されたシャフトと、工学的嵌合を適用してキャリアを第1の位置に保持するように構成されたばねプランジャと、上記ばねプランジャによる圧縮時にその形状を変形させるように構成された解放機構とを備える。キャリアへのユーザ指示による指定された力の適用により、ばねプランジャが後退し、解放機構が本来の形状に戻り、それによって、指定された衝撃力及び速度による、上記シャフトを中心としユーザの皮膚表面に向かう円弧状運動で、マイクロニードルアレイセンサデバイスの加速が引き起こされる。ユーザの皮膚表面の下方の挿入深さは、マイクロニードルアレイが皮膚に衝突するときのマイクロニードルアレイの速度及び質量(運動量)に依存する。
【0008】
本発明の別の態様は、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサをユーザの皮膚層に挿入するための方法である。この方法は、上記分析物選択的センサを含むアプリケータ機構をユーザの皮膚上に位置付けることを含む。本方法はまた、上記アプリケータ機構内のキャリアに最小限の力を適用し、それによって、ばねプランジャを後退させ、変形した解放機構を本来の形状に戻すことを含む。上記解放機構の減圧は、指定された衝撃力及び速度による、上記アプリケータ機構内の第1の位置から上記ユーザの皮膚表面に向かう、シャフトを中心とした円弧状運動でのマイクロニードルアレイセンサデバイスの加速を引き起こす。ユーザの皮膚表面の下方の挿入深さは、マイクロニードルアレイが皮膚に衝突するときのマイクロニードルアレイの速度及び質量(運動量)に依存する。
【0009】
本発明の更に別の態様は、無菌バリアパッケージアプリケータデバイスである。滅菌バリアパッケージアプリケータデバイスは、第1の開口部と、第2の開口部と、本体部分と、上記本体部分内の第1の位置に工学的嵌合によって保持された分析物選択的マイクロニードルアレイセンサであって、上記分析物選択的マイクロニードルアレイの非感知表面が、上記第1の開口部に近接して位置付けられている、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサと、上記滅菌バリアパッケージの上記第2の開口部の上方に配置されたフィルムであって、ユーザによって取り外されるように構成されたフィルムとを備える。上記分析物選択的マイクロニードルアレイの非感知表面へのユーザ指示による最小限の力の適用により、上記工学的嵌合が損なわれ、それによって、指定された衝撃力、速度、及び挿入角度による、第1の位置から第2の位置への、ユーザの皮膚表面に向かう直線運動でのマイクロニードルアレイセンサデバイスの加速が引き起こされる。ユーザの皮膚表面の下方の挿入深さは、マイクロニードルアレイが皮膚に衝突するときのマイクロニードルアレイの速度及び質量(運動量)に依存する。
【0010】
本発明の更に別の態様は、第1の開口部、第2の開口部、及び本体部分を含む滅菌バリアパッケージアプリケータによって、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサをユーザの皮膚層に挿入するための方法である。この方法は、上記滅菌バリアパッケージアプリケータの上記第2の開口部の上方に配置されたフィルムを除去することを含む。本方法はまた、上記分析物選択的センサを含む上記無菌バリアパッケージアプリケータの第2の開口部をユーザの皮膚上に位置付けることを含む。本方法はまた、上記分析物選択的マイクロニードルアレイセンサの非感知表面に最小限の力を適用することを含む。ユーザによって最小限の力が適用されると、上記分析物選択的マイクロニードルアレイセンサを上記身体部分に保持する工学的嵌合が損なわれ、それによって、指定された衝撃力、速度、及び挿入角度による、第1の位置から第2の位置への、ユーザの皮膚表面に向かう直線運動でのマイクロニードルアレイセンサデバイスの加速が引き起こされる。
【0011】
本発明の更に別の態様は、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサをユーザの皮膚層に挿入するように構成されたアプリケータデバイスである。デバイスは、上記ユーザの手で把持されるように構成されている本体部分と、上記ユーザの指で押されるように構成されている陥凹作動部分と、上記センサを保持し、上記ユーザの皮膚表面に向かって展開する間センサを加速させるように構成されているキャリアと、最小限の力が適用されるまでキャリアの移動を防止するように構成されているゲート特徴部と、展開時にセンサを解放するように構成されている係合解除特徴部とを備える。作動領域へのユーザ指示による指定された力の適用により、キャリアがゲート特徴部を解消し、それによって、指定された衝撃力及び速度による、ユーザの皮膚表面に向かうマイクロニードルアレイセンサデバイスの加速が引き起こされる。
【0012】
マイクロニードルアレイセンサは、好ましくは、電気化学、電気光学、又は完全電子デバイスである。マイクロニードルアレイセンサは、好ましくは、ユーザの生理学的流体中の特定の生理学的又は代謝状態を示す、内因性又は外因性の生化学的薬剤、代謝産物、薬物、薬理学的、生物学的、又は薬剤のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている。マイクロニードルアレイセンサは、好ましくは複数のマイクロニードルを含み、各マイクロニードルは垂直範囲が200~2000μmである。マイクロニードルアレイセンサは、好ましくは、電源、電子測定回路、マイクロプロセッサ、及び無線送信器を含むハウジングを含む。マイクロニードルアレイセンサは、好ましくは、目的とする装着持続時間の間、上記センサを装着者の皮膚表面に接着することを目的とする皮膚に面する接着剤を備えている。
【0013】
真皮層は、生存可能な表皮、真皮乳頭層、又は真皮網状層である。本体部分は、好ましくは、ユーザの手による保持を強化するために少なくとも1つのフランジを備える。
【0014】
キャリアは、締り嵌め、摩擦嵌め、プレス嵌め、隙間嵌め、及び位置嵌めのうちの少なくとも1つによってマイクロニードルアレイセンサを保持するように構成されている。シャフトは、好ましくはヒンジである。ねじれは、好ましくはシャフトに適用され、好ましくは可撓性弾性部材によって実現される。可撓性弾性部材は、好ましくは、ねじりばね、板ばね、ばね付き金属部材、又はばね付きプラスチック部材である。ばねプランジャは、好ましくはボールノーズばねである。工学的嵌合は、締まり嵌め、摩擦嵌め、プレス嵌め、隙間嵌め、及び位置嵌めのうちの少なくとも1つである。第1の位置は、好ましくは、本体部分内に陥凹している。解放機構は、剛性又は弾性部材である。解放機構は、好ましくは、センサに保持を更に施すように構成されている。ユーザ指示による指定された力の適用は、好ましくは、0.3N~30Nである。衝撃力は好ましくは0.3N~30Nである。速度は、好ましくは0.15m/秒~15m/秒である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】皮下組織中のグルコースを定量化するように構成された先行技術の針/カニューレベースの分析物選択的センサ(左)、及び真皮中のグルコースを定量化するように構成されたマイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサ(右)の図である。
【
図3】本発明において提案されるマイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサの図である。感知素子(電極)は、分析物選択的センサの遠位領域に配置され、生存可能な表皮又は真皮において測定動作を実行することを目的としている。
【
図4】皮下組織内で動作するように構成された従来のワイヤ/針/カニューレベースの分析物選択的センサ(左)、及び真皮内で動作するように構成された分析物選択的センサ(右)を示す図である。分析物選択的センサ(右)内に含まれる感知要素が、乳頭真皮内に配置されることに留意されたい。
【
図5】乳頭叢の解剖学的位置及び乳頭叢に含まれる構造を示す皮膚の断面の絵画的表現である。
【
図6】表在性及び真皮神経叢及びその神経叢の中に含まれる構造の解剖学的位置を示す皮膚の断面の絵画的表現である。出典:Rose L.Hamm:Text and Atlas of Wound Diagnosis and Treatment。(著作権)McGraw-Hill Education.
【
図7A】現在の皮下植え込み型持続グルコースモニタ(continuousglucose monitor、CGM)システムの図であり、このシステムの対応する機械的アプリケータが示されている。Dexcom(登録商標)G6(商法)(アプリケータ、左)。
【
図7B】現在の皮下植え込み型持続グルコースモニタ(CGM)システムの図であり、このシステムの対応する機械的アプリケータが示されている。Abbott(登録商標)Freestyle Libre(商標)下(アプリケータ、左)。
【
図8】ユーザ指示による力による適用を経ているマイクロニードルアレイ分析物選択的センサの図である。
【
図9】シャフトの周りの半径方向加速度を使用して、ユーザの皮膚へのマイクロニードルアレイ分析物選択的センサの適用を可能にする例示的なアプリケータデバイスの図である。
【
図10】
図9のアプリケータデバイスに装填されたマイクロニードルアレイ分析物選択的センサの図である。
【
図11】所望の力及び速度によって上記センサの適用を可能にするために、マイクロニードルアレイ分析物選択的センサが装填された
図9のアプリケータデバイスを準備している写真である。
【
図11A】自動リリース構成要素が変形している、
図9のアプリケータデバイスの図である。
【
図12】
図9のアプリケータを使用してマイクロニードルアレイ分析物選択的センサを適用することの図である。
【
図13】主要構成要素を表す、
図9の例示的アプリケータデバイスの分解図である。
【
図13A】組み立てられた
図13の例示的なアプリケータデバイスの図である。
【
図14】マイクロニードルアレイの半径方向加速度が、ばね定数k
2とボールばねの変位Δxとの積よりも大きいユーザ指示による力F
pressの適用によって付与される、例示的な適用機構の高レベル機械表現の図である。
【
図15】マイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサを装着者の皮膚に適用することを目的とするピールアンドスティック方法のブロック図である。
【
図16A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図17A】マイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサを、指定された力、速度、及び変位によって装着者の皮膚に適用することを目的とする屈曲圧縮方法の図である。非摂動状態のセンサ。
【
図17B】ユーザによって与えられた指定された力がセンサに適用されている、
図17Aの屈曲-圧縮方法の図である。
【
図18A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図19A】マイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサを、指定された力、速度、及び変位で装着者の皮膚に適用することを目的とした、機械的戻り止め特徴部による屈曲圧縮方法の図である。非摂動状態のセンサ。
【
図19B】ユーザによって与えられた指定された力がセンサに適用されている、
図19Aの屈曲-圧縮方法の図である。
【
図20】マイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサを装着者の皮膚に適用することを目的とした機械的戻り止め特徴部による屈曲圧縮方法の断面図である。
【
図21A】センサがその非摂動状態にある、本発明のデバイスの実施形態の断面図である。
【
図21B】ユーザによって与えられた指定された力がセンサに適用されている、
図21Aのデバイスである。
【
図22】マイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサを、指定された力、速度、及び変位で装着者の皮膚に適用する代替圧縮方法の断面図である。
【
図23A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図24A】本発明のデバイスの実施形態の斜視図である。
【
図25A】センサがその非摂動状態にある本発明のデバイスの実施形態の図である。
【
図25B】ユーザによって与えられた指定された力がセンサに適用されている、
図25Aのデバイスの図である。
【
図25C】ユーザによって適用される「圧迫」/圧力適用プロセスに続いて、センサが上記ユーザの皮膚上に保持されている、
図25Aのデバイスの図である。
【
図26A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図28A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図29A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図30A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図31A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図32A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図32G】展開後の32Aのデバイスの底面斜視図である。
【
図32H】装填位置にある32Aのデバイスの底面斜視図である。
【
図33A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
【
図35】適用中に皮膚にひずみが適用された7つのマイクロニードルを有するアレイの光干渉断層撮影(optical coherence tomography、OCT)分析による代表的な画像である。
【
図36】皮膚が天然状態(外部ひずみが適用されていない)である、7つのマイクロニードルを有するアレイの光干渉断層撮影(OCT)分析による代表的な画像である。
【
図37】皮膚が天然状態(外部ひずみが適用されていない)である、37個のマイクロニードルを有するアレイの光干渉断層撮影(OCT)分析による代表的な画像である。
【
図38】皮膚が天然状態(外部ひずみが適用されていない)である、37個のマイクロニードルを有するアレイの光干渉断層撮影(OCT)分析による代表的な画像である。
【
図39】適用中に皮膚にひずみが適用された、37個のマイクロニードルを有するアレイの光干渉断層撮影(OCT)分析による代表的な画像である。
【
図40】適用中に皮膚にひずみが適用された、機械的アプリケータを用いて適用された37個のマイクロニードルを有するアレイの光干渉断層撮影(OCT)分析による代表的な画像である。
【
図41A】機械的アプリケータ機構の助けなしに装着者に適用されたマイクロニードルアレイ分析物選択的センサの実験的構成の表である。
【
図41B】機械的アプリケータ機構の助けを得て装着者に適用されたマイクロニードルアレイ分析物選択的センサの制御構成の表である。
【
図42】検討された各マイクロニードルアレイ分析物選択的センサ構成によって具現化された、皮膚表面の下方の挿入深さの代表的な棒グラフ及び記述統計である。
【
図43】検討された各マイクロニードルアレイ分析物選択的センサ構成によって具現化された、表皮-真皮接合部の下方の挿入深さの代表的な棒グラフ及び記述統計である。
【
図44】検討された各マイクロニードルアレイ分析物選択的センサ構成によって具現化された挿入深さの分布を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
現在の皮下植え込み型分析物選択的センサは、主に糖尿病用途のためのグルコース定量化の課題に対して実施される持続的な生理学的監視において非常に有用である。これらの分析物選択的センサは、真皮の下の皮下層内の生理的分析物の測定を行うように構成され、ばね又はピストン駆動アプリケータによってこの解剖学的領域に挿入され、このアプリケータは、後退可能なカニューレを含む感知要素を収納する。皮膚感知、及びマイクロニードル媒介分析物選択的感知の分野における新たな開発によって、特に、センサを所望の解剖学的領域に挿入するうえで上記カニューレがもはや必要とされなくなるような簡略化された適用方法が促進されている。
【0017】
図1は、皮下組織中のグルコースの定量化用に構成された先行技術の針/カニューレベースの分析物選択的センサ25、及び真皮中のグルコースの定量化用に構成されたマイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサ20を示す。センサのサイズを明示するために10セント硬貨5が、示されている。
図2は、
図1の拡大図である。
【0018】
図3は、本発明において提案されるマイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサを示す。感知要素30a~eは、分析物選択的センサの遠位領域に配置され、生存可能な表皮又は真皮において測定動作を実行することを目的としている。
【0019】
しかしながら、マイクロニードルの皮膚への挿入の独特の動力学的特性に起因して、これらのマイクロニードルアプリケータの設計は、皮膚の粘弾性応答を解消するように適用機構を設計するために多大な注意を払うことを必要とする。この目的に従って、最小限の指定された衝撃力及び速度を達成して上記粘弾性応答を解消するために、設計要件の一貫したセットを追求しなければならない。更に、変位及び入射角も、生存可能な表皮又は真皮の所望の皮膚層に確実に到達するための基本的な性能である。
図4~
図6は、皮膚の断面の絵画表現である。
図4は、皮膚構造40と、皮下組織43内で動作するように構成された従来のワイヤ/針/カニューレベースの分析物選択的センサ25と、表皮41の下方の真皮42内で動作するように構成された分析物選択的センサ20とを示す。分析物選択的センサ20内に含まれる感知要素は、乳頭真皮内に配置されることに留意されたい。
図5は、乳頭神経叢44及び乳頭神経叢44の中に含まれる構造の解剖学的位置を表す皮膚を示す。以下に、毛50、乳頭神経叢44の毛細血管ループ、真皮乳頭45、乳頭層46、網状層47、皮膚神経叢48、及び乳頭下神経叢49を示す。
図6は、表面及び真皮神経叢及び神経叢の中に含まれる構造の解剖学的位置を表す皮膚を示し、これらの構造には、表皮51、毛細血管ループ系52、乳頭真皮53、表層血管叢54、網状真皮55、深層血管叢56、皮下脂肪57、及び皮下動脈58が含まれる。
【0020】
実際に、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサは、鋭利な突出した感知要素を備え、皮膚の表面のすぐ下に容易に展開することができ、ユーザによって適用される力による挿入を可能にする(必ずしもアプリケータ機構を必要としない)。しかしながら、マイクロニードルアレイベースの分析物選択的センサを所望の皮膚層に確実に挿入するには、力、速度、挿入角度、及び皮膚張力を含む1つ以上の重要な適用パラメータを制御する必要がある。ユーザ集団間の予想されるばらつきに起因して、上記センサの確実な適用及び所望の皮膚層への感知要素の同時挿入を確実に行うには、適用プロセス中にこれらの重要なパラメータのうちの1つ以上を制御する必要がある。先行技術に対するこれらの解決策の注目すべき利点には、機械構成要素の数が減少することが含まれ、これは、大量かつ低コストの製品の要件に整合する。単純化された設計は、コストに直接関係する適用機構のサイズ及び複雑さを低減する。本発明はまた、改善されたユーザ体験を可能にする。ユーザは、上記適用のために扱いにくいアプリケータを使用するのではなく、センサを皮膚表面に「押し付ける」だけでよい。
図7A及び
図7Bに示されるような先行技術において説明されたアプリケータの多くは、複数の構成要素を備え、そのうちのいくつかは、ポテンシャルエネルギーを貯蔵するために利用され、これは、材料費及び商品コストの増大をもたらす。この設計は、システムを取り外し可能な構成要素の最小限のセットに縮小する場合があり、その構成要素の多くは射出成形されてもよく、生産コストが非常に低くなる。
【0021】
図7A~
図7Bは、対応する機械式アプリケータ60a~bが示された2つの現在の皮下植え込み型持続グルコースモニタ(CGM)システムの図である。Dexcom(登録商標)G6(商標)システムを
図7Aに示し、Abbott(登録商標)Freestyle Libre(商標)システムを
図7Bに示す。ユーザ指示による力によるセンサの適用である別の先行技術の方法が
図8に示されている。
【0022】
ユーザの皮膚表面への分析物選択的マイクロニードルアレイセンサの適用を行うために本開示で教示されるアプリケータデバイス65及びアプリケータ機構は、上記センサが工学的嵌合で保持されるアーマチュア71(場合によっては「キャリア」と呼ばれる)の実装に関する。上記アーマチュア71は、ユーザによる作動又は展開イベント時に半径方向又は円弧状に加速されるように構成されている。
図9~
図13Aは、例示的なアプリケータデバイス65を示す。
図10は、アプリケータデバイス65に装填されたセンサ20を示す。
図11は、キャリア71内にマイクロニードルアレイ分析物選択的センサが装填されたアプリケータデバイス65を準備している写真である。上の図は、展開位置にあるキャリア71を示し、下の図は、センサを解放した後の弛緩位置にあるキャリア71を示す。
図11Aには、自動リリース構成要素の変形が示されている。
【0023】
図13は、主要な構成要素を表すデバイス65を分解図で示す。アプリケータデバイス65は、ホルダ72、キャリア71、シャフト73、ねじ付きインサート74、ねじりばね75a~b、ボールノーズ/ばねプランジャ76、ゴムパッド77、ナイロンチップ/止めねじ78、及び自動リリース79から構成されている。
図13Aは、組み立てられたデバイス65を示す。
【0024】
このことは、シャフト73又はピボットによって可能になり、シャフト73又はピボットはピボット点を構成し、このピボット点を中心として、上記半径方向又は円弧状の運動が行われる。上記シャフト73又はピボットは、ばね75又は弾性部材によって任意選択的にねじられ、ばね75又は弾性部材は、ポテンシャルエネルギーの形態で運動エネルギーを蓄える働きをする。代替的な実施形態では、アーマチュア/キャリアは、規定された力で解消することができるゲート特徴部によって皮膚表面から所定の距離に維持される。ユーザがセンサを確実に挿入するのに必要な最小値を下回る力を適用したとき、センサはゲート特徴部によってキャリア内に保持されたままになる。ユーザが上記アーマチュアに最小限の力を適用すると(作動又は展開イベント)、上記アーマチュアに固定された埋め込みマイクロニードルアレイが、全体的に上記アプリケータ機構内の第1の位置から、上記分析物選択的マイクロニードルアレイセンサが皮膚に適用されて上記センサのマイクロニードル構成要素が指定された衝撃力、速度、及び角度でユーザの皮膚層に挿入される第2の位置へ、軸方向又は半径方向/円弧状の軌道で加速されるので、上記ポテンシャルエネルギーは運動エネルギーに変換される。いくつかの実施形態では、ユーザの皮膚は、固定位置に維持されるか、又はその態様を制御するために張力をかけられるかのいずれかである。真皮層は、生存可能な表皮又は真皮のいずれかを、乳頭神経叢、乳頭下神経叢、又は真皮神経叢の近傍に含むことができる。
【0025】
アプリケータ65を使用してセンサ20を適用することが
図12に示されている。アプリケータデバイス65は、ユーザ10の手で把持されるように構成された本体部分、すなわち、ホルダ72から構成されている。ユーザ10は、デバイス65を皮膚上に位置付ける。ホルダ72は、ユーザ10の指によって押されるように構成された陥凹作動部分66を有する。ホルダ72は、キャリア71が押されたときに、センサを保持し、ユーザ10の皮膚表面に向かって展開する間センサを加速させるように構成されたキャリア71を収容する。ボールノーズ/ばねプランジャ76を使用するゲート特徴部は、最小限の力が適用されるまでキャリアの移動を防止するように構成されている。係合解除特徴部は、押された後、
図13に示されるように、自動リリース79を使用して展開時にセンサを解放し、センサ20をユーザ10上の所望の位置に残すように構成されている。
【0026】
半径方向適用実施形態では、ユーザの皮膚に対するセンサの加速度aは、速度vの時間導関数によって与えられ、すなわち、
【0027】
【数1】
ここで、tは時間を指し、θはアーマチュアとユーザの皮膚との間の角度であり、m
aはアーマチュアの質量であり、F
userはユーザによって適用される力であり、k
aはアーマチュアの近位末端においてシャフトに適用されるねじれの定数であり、hは皮膚表面の上方のアーマチュアの高さであり、gは重力による加速度である。この式を積分して、センサの時間依存速度を得ることができる。
【0028】
【0029】
センサが半径方向に運動させられると仮定すると、瞬間加速度は次式によって決定されてもよい。
【0030】
【0031】
図14は、マイクロニードルアレイ20の半径方向加速度が、ばね定数K
2及びボールばね63の変位Δxの積よりも大きいユーザ指示による力F
pressの適用によって付与される機構の高レベル機械的表現を示す。θは、アーマチュア62とユーザの皮膚15との間の角度61であり、k
aは、アーマチュア62の近位末端においてシャフトに適用されるねじれの定数K
1であり、hは、皮膚表面15の上方のアーマチュア62の高さH
1である。
【0032】
図15は、センサ20を装着者の皮膚に適用することを目的としたピールアンドスティック方法のブロック図である。ピールアンドスティックデバイス85は、滅菌紙82と、センサ20を含むバイオテープ83と、非粘着性紙84と、センサ20を保護する保護バイオプラスチックドーム81とから構成される。保護紙ライナ84が除去され、依然として滅菌紙82に取り付けられたバイオテープ83の適用側(前面)及びセンサ20が露出される。ユーザ/装着者10は、適用側(バイオテープ83)を皮膚に向けて滅菌紙82を皮膚表面に適用する。ユーザ10は、滅菌紙82を軽く押し付け、次いで、滅菌紙ライナ82を除去して、センサ20の後面を露出させる。
【0033】
図16A~
図16Hは、ピールアンドスティックデバイス85の斜視図及び分解図を示す。
図16Fは、剥離されたときのデバイス85を示し、分離されて剥離されたデバイス85の2つの部分が
図16Gに示されている。
【0034】
埋め込み式テンショナ実施形態
マイクロニードル開発及び適用産業では、皮膚の収縮/伸張がマイクロニードル挿入の有効性を改善することが一般に認められている。他のマイクロニードル適用デバイスは、典型的には、マイクロニードル及びその担持ハウジングの周縁の外側で皮膚を伸長させる。
【0035】
この伸張は、典型的には、挿入前の予備ステップとして実行され、皮膚は、挿入プロセスの間伸張された状態に保持される。皮膚伸張機構は、典型的には、独立して作動させた運動である。皮膚における伸張の量であるストレッチャの変位は、典型的な応力-ひずみ曲線としてグラフ化することができ、パーセンテージであり(1つの軸上で伸張する場合、約30%であり、これは有効な伸張に典型的である)、したがって、マイクロニードルハウジングの周縁の周りで伸張運動を行うために必要とされる機構は、比較的大きく、複数の作動部品を必要とする。センサの外側のこの比較的大きなマクロ領域にわたって皮膚を伸張することに伴う1つの問題は、疼痛を生じさせる可能性があることであり、第2の問題は、小柄な人の前腕などの身体のいくつかの領域が、マクロストレッチャを無効にすることができるような曲率半径を有することである。
【0036】
埋め込み式テンショナ実施形態の主な目的は、伸張される皮膚の総質量及び面積を最小限に抑えること、挿入の間皮膚を伸張された(疼痛を伴う)位置に保持するのではなく、非常に短期間の間皮膚を伸張させること、及び、アプリケータの操作者による二次処置の必要なしに皮膚を自動的に伸張させることである。
【0037】
図17Aは、センサ20がその非摂動状態にある、屈曲圧縮方法のデバイス100を示す。
図17Bは、ユーザによって与えられた指定された力がセンサ20に適用され、センサ20をユーザの皮膚15に適用することを示す。
【0038】
図18A~
図18Gは、滅菌バリアパッケージアプリケータデバイス90の斜視図である。
【0039】
図19A~
図20は、屈曲-圧縮方法のデバイス110を示す。
図19Aでは、センサ20はその非摂動状態にある。
図19Bは、ユーザによって与えられた指定された力がセンサ20に適用され、センサ20をユーザの皮膚15に適用することを示す。
図20は、センサ20がデバイス110内にどのように封入されるかを示す。
【0040】
本発明は、突出部の基部にリビングヒンジを有する小さい弾性変形可能な突出部からなり、これらの突出部の全てが、ハウジングアセンブリスタックの一部であり、マイクロニードルアレイのすぐ周りに存在するハウジングの下部シールからの半径方向外側に傾斜した突出部として成形される。これらの半径方向外側に傾斜した突出部は、マイクロニードルよりもわずかに長く、マイクロニードルの先端の直前でセンサが皮膚に押し込まれたときに皮膚と接触するのに十分な長さである。突出部の外側への角度及び弾性に起因して、これらの半径方向突出部は、皮膚に圧力を適用するにつれて、効果的な挿入のために皮膚の伸張が必要であるマイクロニードルアレイのすぐ周りの小さい領域のみにおいて皮膚を伸張させ、この包含される領域の外側のいかなる皮膚も伸張させない。これらの小さい成形された突出部は、センサが下向きに加圧されて伸張が生じている間外側に加圧され、基部におけるリビングヒンジ上で回転し外側に変形するときに、同じくシール内に成形され突出部の基部及びリビングヒンジに接続されたキャビティ内に入る。突出部が完全にキャビティ内に入ると、ハウジングの底面は水平(面一)になり、マイクロニードルの挿入を妨げない。このようなキャビティがないと、突出部は、皮膚に圧力を適用し続け、場合によっては、挿入後にマイクロニードルを皮膚から引き抜く。
【0041】
更に、リビングヒンジは、取り付け点から突出部に圧力を適用して突出部をキャビティ内に保持するように設計されている。このことは、突出部が伸長位置から後退位置に移動するときにカム力を適用し、突出部を伸長位置又は後退位置に自然に効果的に保持し、次に突出部が伸長位置と後退位置との間の任意の位置に静止することを可能にする、弧状のリビングヒンジによって達成される。
【0042】
一実施形態では、マイクロストレッチング突出部を、シール又はハウジングを有する1つの部品ではなく、別個の部品として成形することができる。
【0043】
別の実施形態では、マイクロストレッチ突出部が、弾性ではなく剛性プラスチックであってもよく、しかもリビングヒンジを介して作動することができる。
【0044】
別の実施形態では、マイクロストレッチング突出部を、リビングヒンジではなく従来の旋回ヒンジを用いて設計することができる。
【0045】
別の実施形態は、突出部と皮膚との間の摩擦を改善して皮膚に係合するように設計されたテクスチャを先端に有する微小突出部である。
【0046】
別の実施形態は、摩擦/吸着を改善して皮膚に係合するように皮膚に面する表面上に接着剤を有する微小突出部である。
【0047】
別の実施形態は、小さなばねによって作動される微小突出部である。別の実施形態は、様々な数の微小突出部2、3、4、5、6、7、+1などである。
【0048】
別の実施形態は、外向きの弧形状であり、外向きに回転する際に皮膚上を転動するように設計された微小突出部である。
【0049】
別の実施形態は、皮膚を把持するのを助けてより効果的な伸張を行うために端部に小さい鋭利な先端を有する微小突出部である。
【0050】
マイクロニードルの開発及び適用産業では、マイクロニードルを皮膚に挿入する場合、衝突時の速度を所定の最小速度とする必要があることが一般的に受け入れられている。機械的には、釘を効果的に挿入するために慣性力に依存して加速して木片に打ち込むネイルガンに類似している。
【0051】
アプリケータは、マイクロニードルを皮膚からある変位距離だけ離して保持し、次いで、皮膚が弾性的に変形することができる前に挿入を達成するのに十分速い速度でマイクロニードルを加速して皮膚に挿入する。この手法では、典型的にはアプリケータの外形及び表面積を増大させる線形動作スライド又は半径方向動作ピボットが必要になる。この挿入手法はまた、適切な衝撃速度を達成するために制御された力入力を必要とし、トリガが解放されたとき及び衝突時に被験者(ユーザ)をびっくりさせるという残念な結果を有する。
【0052】
本実施形態の主な目的は、マイクロニードルを適用するために必要とされる全体的な外形及び表面積を縮小すること、変位がほとんど又は全くない安定した効果的な挿入を実現すること、びっくりするような音、皮膚が叩かれること、及びユーザ/装着者の疼痛の可能性を回避すること、挿入の物理的特性に関与する人的要因及び物理変数の数を低減させること、垂直からずれた挿入のリスクを低減させること、マイクロニードルのせん断(壊滅的な脆性破壊の原因になり得る)のリスクを低減させること、ユーザからの小さい動きの影響を低減させること、挿入に必要な総衝撃エネルギーを低減させることである。
【0053】
本発明の一態様は、
図21A~
図23Cに示すように、マイクロニードルアレイ20の上方のわずかな距離に懸架された質量122と、マイクロニードルアレイ20と質量との間の金属ばねドーム121とからなるデバイス120である。マイクロニードルアレイは、ユーザによって直接皮膚に押し付けられて、皮膚に接触し、
図21Aに示されるように、金属ドーム121が崩壊する(タクトスイッチと同様の作用)まで質量の上部に下向きの力が適用され、センサアレイ20を保持するハウジングの後部に衝突する経路上で質量を下向きに加速する。最終的な効果は、ハンマー打撃によって釘を挿入することができるのとほぼ同じようにマイクロニードルアレイ20を真皮15に「打ち込む」ことである。本発明では、
図21Aに示すように、針は、打撃力が適用される前に皮膚に押し付けられる。皮膚上への針のこの事前装填は、針を挿入するために必要とされる総エネルギーを低減させる。実施形態は以下のことを含む。圧縮されたばねを使用して、ユーザの指によって押すのではなく質量を加速することができる。複数の衝突及び複数の質量。1つの質量による複数回の衝突。ハウジングの上部からマイクロニードルアレイへの力の伝達を最大化するように設計されたセンサハウジング、及びハンマーの移動距離の増大又は可変。
【0054】
図24A及び
図24Bは、センサ20を保持し、ユーザ取り外し可能な保護カバー126を備える滅菌バリアパッケージング125を示し、ユーザ取り外し可能な保護カバー126は、センサ適用の直前に除去される。
【0055】
図25A~
図25Cは、滅菌バリアパッケージングに一体化された脆弱な要素を備える、工学的破壊適用方法のデバイス130を示す。
図25Aにおいて、センサ20はその非摂動状態にある。
図25Bは、ユーザによって与えられた指定された力が適用されているセンサ20を示す。
図25Cは、ユーザによって適用される「押し付け」/圧力適用プロセスの後にユーザの皮膚15上に保持されたセンサ20を示す。
【0056】
図26A~
図27Bは、工学的破壊適用方法の滅菌バリアパッケージングデバイス135を示す。デバイス135は、センサ20を収容する本体136と、剥離カバー137とから構成されている。いくつかの実施形態では、保護カバー137を取り外すと、滅菌バリアパッケージングの下面上の感圧接着剤を露出させることができる。感圧接着剤は、装着者の皮膚に付着し、センサ適用プロセスの安定化又はセンサ適用前の皮膚へのひずみの適用を実現することを目的としている。
【0057】
図28A~
図28Dは、センサ20を収容する本体141を有するデバイス140を示す。
図28Dは、ユーザによって与えられた指定された力がセンサ20に適用され、ユーザの皮膚15に適用された後のセンサ20を示す。
【0058】
図29A~
図29Dは、センサ20を収容する本体146を有するデバイス145を示す。
図29Dは、ユーザによって与えられた指定された力がセンサ20に適用され、ユーザの皮膚15に適用された後のセンサ20を示す。
【0059】
分析物選択的センサ(SENSOR)は、好ましくは、ユーザの生理学的流体中の特定の生理学的又は代謝状態を示す、内因性又は外因性の生化学的薬剤、代謝産物、薬物、薬理学的、生物学的、又は薬剤を測定するように構成されているマイクロニードル又はマイクロニードルアレイベースの電気化学、電気光学、又は完全電子デバイスである。具体的には、上記マイクロニードルアレイは、200~2000μmの垂直範囲を有し、生存可能な表皮又は真皮内、及び乳頭神経叢、乳頭下神経叢、又は真皮神経叢の近傍に位置する少なくとも1つの分析物のレベルを選択的に定量化するように構成された複数のマイクロニードルを含む。上記マイクロニードルアレイは、電源、電子測定回路、マイクロプロセッサ、及び無線送信器を含むエンクロージャ又はハウジングに収容され、かつ/又は取り付けられる。SENSORは、所望の装着期間にわたって上記SENSORを付着させることを目的とした皮膚に面する接着剤(センサ接着剤)を備えている。
【0060】
センサリテーナ/キャリア(CARRIER)は、センサを定位置に固定し、ユーザの皮膚表面に向かって展開する間SENSORを加速させる役割を果たす。
【0061】
ユーザは、ホルダ(HOLDER)を手で握って、所望の適用領域上にSENSORを位置付ける。ホルダの基部はフランジを含み、フランジは、ユーザがアプリケータを保持するための追加の表面を形成するように構成され、その結果、皮膚上における適用時のSENSORを加速する間の配置の制御が増強される。
【0062】
シャフト/ねじ付きインサート(SHAFT)は、CARRIER用の旋回軸であり、上記CARRIERのHOLDERへの取り付け点である。シャフトは、CARRIERが円弧軌道に従って半径方向に運動することを可能にする。
【0063】
ねじりばね(SPRING)は、貯蔵されたポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換することによってアプリケータが展開された後、SENSORの加速を増大させる。
【0064】
ボールノーズ/ばねプランジャ(BALL)は、所定の干渉を生じさせて、CARRIERを「装填」位置(展開/適用のための準備が完了している)に保持する。BALLによって具現化される張力の調整によって、アプリケータのトリガ力が同時に調整される。SENSORをHOLDERに更にねじ込むと、干渉が増大し、したがって、SENSORを展開するのに必要なトリガ力が増大する。
【0065】
ゴムパッド(PAD)は、追加の摩擦/牽引力を付与して、HOLDERをユーザの皮膚上の所望の位置に固定し、同時に、SENSORの適用中の横方移動の可能性を減少させる。
【0066】
ナイロンチップ(TIP)がBALLを所望の位置に固定し、止めねじとともに使用される。
【0067】
止めねじ(SCREW)は、BALLを所望の位置に固定し、TIPとともに使用される。
【0068】
自動リリース(RELEASE)は、アプリケータを準備する間、SENSORを固定する。RELEASEは、所定の程度の伸展性/柔軟性を特徴とする。準備完了位置では、BALLは自動リリースに圧力を適用し、SENSORを不動位置に固定するように自動リリースを変形させる。RELEASEは、展開された後、RELEASEの初期位置/形状に戻り、SENSORが解放される。
【0069】
図30A~
図30Gは、本発明のばね補助式デバイス300を示す。デバイス300は、適用中の安定性のためのフィンガフランジ301を有する本体306と、舌部302と、ロッキングタブ303と、脚部304と、ばね補助リーフ305とからなる。ロッキングタブ303は、トリガ解放力を制御する。脚部304は、タブ303が圧縮されたときにセンサ20を保持し、タブ303が圧縮解除されたときにセンサ20を自動解放する。
図30C及び
図30Fは、装填位置にあり、トリガされる準備が整った舌部302を示す。
図30D及び
図30Gは、センサが解放された後の弛緩無負荷位置にある舌部を示す。
【0070】
図32A~
図32Hは、フレーム326及びピストン321からなり、自動リリースを備える、2ピースアプリケータデバイス320を示す。ピストン321は
図32Dに示されている。ピストンは、整列レール323、解放タブ322、及び自動リリース脚部325からなる。
図32Eは、解放タブのための上部キャビティ324bと、下部解放タブキャビティ324aと、通気孔327とを示す。解放タブ322は、トリガ力を制御する。自動リリース脚部325は、ピストンを保持し解放する。
図32C及び
図32Hは、装填位置にあり、センサ20を保持しているピストン321を示す。自動リリース脚部325は、装填位置における移動を防止する。
図32E~
図32Gは、トリガされた後のピストン321を示す。
図32Gは、自動リリース脚部325が、無負荷位置においてキャビティ324内で弛緩されていることを示す。
【0071】
【0072】
図34は、機械的適用機構なしで適用されるマイクロニードルアレイベースのグルコース選択的センサが、装着者の真皮中のグルコースを定量的に追跡する能力を実証する時系列データセットである。グルコース測定(Dexcom(登録商標)G5(商標)CGM、YSI(登録商標)Model 2300 Electrochemical Analyzer(商標))並びに定期的較正の、フィンガースティック血液サンプル(Bayer(登録商標)Contour NEXT(商標))との相関が、プロットに提示されている。
【0073】
図35~
図40は、光干渉断層撮影(OCT)分析による画像である。
図35は、適用中に皮膚にひずみが適用された7つのマイクロニードルを有するアレイである。
図36は、7つのマイクロニードルを有するアレイのOCT分析であり、皮膚は天然状態(外部ひずみが適用されていない)である。
図37は、皮膚が天然状態(外部ひずみが適用されていない)である、37個のマイクロニードルを有するアレイのOCT分析である。
図38は、皮膚が天然状態(外部ひずみが適用されていない)である、37個のマイクロニードルを有するアレイのOCT分析である。
図39は、適用中に皮膚にひずみが適用された、37個のマイクロニードルを有するアレイのOCT分析である。
図40は、適用中に皮膚にひずみが適用された機械的アプリケータを用いて適用された37個のマイクロニードルを有するアレイのOCT分析である。
【0074】
図41Aは、機械的アプリケータ機構の助けなしに装着者に適用されたマイクロニードルアレイ分析物選択的センサの実験的構成のデータプロットを示す。
図41Bは、機械的アプリケータ機構の助けを得て装着者に適用されたマイクロニードルアレイ分析物選択的センサの制御構成を示す。
【0075】
図42は、検討された各マイクロニードルアレイ分析物選択的センサ構成によって具現化された、皮膚表面の下方の挿入深さの代表的な棒グラフ及び記述統計である。
【0076】
図43は、検討された各マイクロニードルアレイ分析物選択的センサ構成によって具現化された、表皮-真皮接合部の下方の挿入深さの代表的な棒グラフ及び記述統計である。
【0077】
図44は、検討された各マイクロニードルアレイ分析物選択的センサ構成によって具現化された挿入深さの分布を示すヒストグラムである。
【0078】
本発明を実施する方法400が
図45に示されており、方法400は、ステップ401のように、SENSORをアプリケータに装填することによって始まる。SENSORは、CARRIER内のキャビティに挿入され、それによってCARRIER内に保持される。明確にするために、CARRIERはBALLと係合されていない(すなわち、アプリケータは準備されていない)。更に、RELEASE構成要素は、BALLによって係合されず、RELEASE構成要素の無負荷状態のままであり、その結果、RELEASEとSENSORとの間の係合が緩くなる。RELEASE構成要素がBALLによって変形されないとき、SENSORは、容易に挿入しCARRIERから取り外すことができる。RELEASEは、エラストマ、熱可塑性物質、金属、又は機械的応力を受けたときに弾性変形可能な材料のうちの少なくとも1つから構成されている。
【0079】
次に、ステップ402は、
図11に示されるように、アプリケータを準備することを含む。CARRIERは、BALLがCARRIER内の噛合特徴部に係合するまで上向きに回転され、それによって上記CARRIERが不動になる。CARRIER上の噛合特徴部は、BALLに対する反転形状を有し、CARRIERを指定された場所における固定位置に固定する。CARRIER上の上記噛合特徴部は、RELEASE上の円筒形特徴部と同心である。RELEASE上の円筒形特徴部はシャフトを備え、シャフトは、CARRIER上の円筒形ボア内に直線運動で自由に係合する。BALLがCARRIERと係合すると、RELEASE上の円筒形シャフトがBALLによって変形され、それによって、
図11Aに示すように、RELEASEをSENSORの方向に変形させる。BALLによるリリースの変形時に、上記RELEASEはSENSORを係合させ、SENSORをCARRIER内の特徴部に対して圧縮し、SENSORを固定位置に保持する。SENSORは、上記SENSORをx-y平面内の不動位置(すなわち、回転運動及び並進運動が行われない)に保持する複数の垂直ボスによって安定化される。z軸における動きは抑制されない。RELEASEは、SENSORとの締まり嵌めによって与えられる摩擦力によってSENSORを係合させる。これによって、CARRIERが装填位置にあるとき、及び接着剤ライナを除去する間、SENSORをz軸に保持するのに十分な力が与えられる。
【0080】
次に、ステップ403は、SENSORを用意することを含む。RELEASEがSENSORを係合/固定した状態で、ユーザは、上記センサの皮膚に面する表面から接着剤ライナを除去する。次いで、アプリケータを所望の適用部位上に配置する。HOLDERの外側のフランジをアプリケータの皮膚に面する表面上に配置されたPADと組み合わせると、3つの枢軸全てにおいて所望の位置にアプリケータを固定することが可能になる。この特徴は、SPRING内の蓄積されたポテンシャルエネルギーに起因して必要であり、このエネルギーによって、展開時に、ユーザの皮膚に向かうHEADの急速な加速が生じる。この急速な加速は、HOLDER内で反動が生じることがあり、それによって、システムが不安定になる可能性がある。
【0081】
次に、ステップ404は、SENSORの適用を含む。ユーザは、必要な最小作動力、望ましくは0.3~30ニュートンの作動力が達成されるまでCARRIERを押し下げることによってアプリケータを作動させる。最小作動力を超えると、BALLはCARRIERを解放する。作動力は、BALLの係合量を調整することによって、所望に応じて増減させることができる。適用力及び速度は、作動力及びSPRINGの強度に直接関連する。センサは、ユーザの皮膚に衝突するまで、SPRINGを介して加速されかつ力を適用され、それによって、SENSORを適用する。適用力及び速度は、SPRING剛性/定数を適切に選択することによって調節することができる。SPRINGは、蓄積されたポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換することによって衝撃速度を増大させる。更に、SPRINGは、最終衝撃速度の一貫性を改善して、SENSORを展開するためにユーザが適用する力のばらつきを補償する。CARRIERが展開されると、BALLはもはやRELEASEを変形せず、もはや締まり嵌めが施されないので、SENSORはCARRIERから解放される。現在の実施形態の下では、RELEASEは、SENSORが解放されたときであっても、SENSORを緩く結合し、加速、衝撃、及び適用を通じてSENSOR及びCARRIERを安定化させるのを助ける。このプロセスに続いて、SENSORがユーザの皮膚に適用され、アプリケータを取り外すことができる。SENSORのCARRIERへの固定力は、SENSOR ADHESIVEの皮膚への固定力よりも著しく小さい。これによって、SENSORは、適用された後、アプリケータから容易に解放することができる。代替的な実施形態において、アプリケータは、SPRINGなしで機能するように構成されている。SPRINGがない場合、約5m/秒の目標速度を達成するためにユーザが必要とする力は約30Nに増大する。SPRINGを用いる場合、同じ速度をユーザによって20N未満の力で達成することができる。これらの数値は、SENSOR及びCARRIERの全体的な質量、SPRINGの定数、CARRIERの長さ、及び潜在的に他の変数に依存する。
【0082】
本発明の別の方法410を
図46に示す。ステップ411は、センサを含むアプリケータ機構をユーザの皮膚上に位置付けることを含む。この位置付けは、将来センサを配置する位置を示す。ステップ412は、アプリケータ機構内のキャリアに対して最小限の力を適用することを含む。この力は、ばねプランジャを後退させ、変形した解放機構を本来の形状に戻す。最後に、ステップ413では、指定された衝撃力及び速度によって、アプリケータ機構内の第1の位置から、ユーザの皮膚表面に向かう、シャフトを中心とした円弧状運動でセンサデバイスを加速させる。ユーザの皮膚表面の下方の挿入深さは、マイクロニードルアレイが皮膚に衝突するときのマイクロニードルアレイの速度及び質量(運動量)に依存する。
【0083】
別の方法420は、
図47に示されるように、第1の開口部、第2の開口部、及び本体部分を含む滅菌バリアパッケージアプリケータによって、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサをユーザの皮膚層に挿入するための方法である。この方法420は、ステップ421から始まり、埋め込み式センサを含む滅菌バリアパッケージアプリケータの第2の開口部上に配設されたフィルムを除去する。フィルムを除去すると、分析物選択的マイクロニードルアレイセンサのセンサ表面が露出する。
【0084】
次に、ステップ422では、センサを含む滅菌バリアパッケージアプリケータの第2の開口部をユーザの皮膚上に位置付ける。アプリケータ機構の位置付けは、将来センサを配置する位置を示す。
【0085】
次に、ステップ423は、センサの非感知表面に最小限の力を適用することである。最小限の力を適用すると、センサを本体部分に保持する工学的嵌合が損なわれる。
【0086】
次に、ステップ424では、指定された衝撃力、速度、及び挿入角度によって、第1の位置から第2の位置へ、ユーザの皮膚表面に向かう直線運動でセンサデバイスを加速させる。ユーザの皮膚表面の下方の挿入深さは、マイクロニードルアレイが皮膚に衝突するときのマイクロニードルアレイの速度及び質量(運動量)に依存する。
【0087】
本発明の入力は、CARRIERへのユーザ指示による力の適用を含む。上記のように最小限の指定された大きさの力を適用することは、CARRIERを展開し、SENSORを所定の速度及び衝撃力でユーザの皮膚に対して加速することを目的としている。
【0088】
本発明の出力は、SENSORをユーザの皮膚に適用することを含む。SENSORは、ユーザの皮膚表面に適用され、皮膚に面する接着剤によって所望の位置に保持される。上記適用プロセスによって、上記SENSORのマイクロニードル構成要素が、角質層を貫通して、生存可能な表皮、真皮乳頭層、又は真皮網状層の間質液に到達し、循環する内因性又は外因性の生化学的薬剤、代謝産物、薬物、薬理学的、生物学的、又は薬剤のうちの少なくとも1つの感知動作をもたらす。
【国際調査報告】