(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】アルファ-シヌクレインターゲティング抗体、プログラニュリン及びプロサポシン並びにそれらの複合体、並びにGDNFを分泌する細胞株
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20230710BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230710BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230710BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230710BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230710BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230710BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20230710BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230710BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230710BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230710BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20230710BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230710BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230710BHJP
【FI】
C07K14/47
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N5/10
C07K16/00
C12P21/02 C
A61K38/18
A61P25/28
A61P25/16
A61K38/17
G01N33/531 A
G01N33/53 D
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577574
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021038312
(87)【国際公開番号】W WO2021258074
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522488063
【氏名又は名称】ルンドクヴィスト,ヨーアン
【氏名又は名称原語表記】LUNDKVIST,Johan
【住所又は居所原語表記】Halsovagen 7,14157 Huddinge (SE)
(71)【出願人】
【識別番号】522488085
【氏名又は名称】ウォールバーグ,ラース ユー.
【氏名又は名称原語表記】WAHLBERG,Lars U.
【住所又は居所原語表記】40 Viking Drive,Bristol, Rhode Island 02809 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】522488096
【氏名又は名称】バイヴァーステル,ヘンリク
【氏名又は名称原語表記】BIVERSTAL,Henrik
【住所又は居所原語表記】Norr Maelarstrand 100,112 35 Stockholm(SE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルンドクヴィスト,ヨーアン
(72)【発明者】
【氏名】ウォールバーグ,ラース ユー.
(72)【発明者】
【氏名】バイヴァーステル,ヘンリク
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC03
4B064CC10
4B064CC24
4B064CD21
4B064CE07
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB25
4B065BB37
4B065BC11
4B065BD18
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA20
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084BA42
4C084CA53
4C084DB52
4C084DC50
4C084MA02
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045FA74
4H045GA22
(57)【要約】
プログラニュリンポリペプチド及びプロサポシンポリペプチドからなるヘテロダイマーを発現するように改変された哺乳動物細胞株を含む細胞培養物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラニュリン及びプロサポシンの複合体。
【請求項2】
前記複合体がプログラニュリン及びプロサポシンのヘテロダイマーである、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記複合体が融合タンパク質である、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記融合タンパク質が組み換えによって形成される、請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
前記融合タンパク質が配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、又はそのフラグメントを含む、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
プログラニュリンポリペプチド及びプロサポシンポリペプチドを発現するか、又は発現するように改変された哺乳動物細胞株を含む細胞培養物。
【請求項7】
前記哺乳動物細胞株が遺伝子改変されている、請求項6に記載の細胞培養物。
【請求項8】
プログラニュリン及びプロサポシン前駆体ポリペプチドのサブペプチドを発現するように改変された哺乳動物細胞株を含む、請求項6に記載の細胞培養物。
【請求項9】
前記プログラニュリンが、グリア細胞由来神経栄養因子(GCアーゼ)相互作用のためのプログラニュリンC末端である、請求項6に記載の細胞培養物。
【請求項10】
プログラニュリンを発現する遺伝子及びプロサポシンを発現する遺伝子を含有するか、又はプログラニュリンを発現する遺伝子及びプロサポシンを発現する遺伝子を含有するように改変された哺乳動物細胞株を含む細胞培養物。
【請求項11】
前記プログラニュリン遺伝子がcDNAである、請求項10に記載の細胞培養物。
【請求項12】
前記プロサポシン遺伝子がcDNAである、請求項10に記載の細胞培養物。
【請求項13】
プログラニュリンに対する遺伝子及びプロサポシンに対する遺伝子を発現する哺乳動物細胞株を含む細胞培養物。
【請求項14】
前記プログラニュリン遺伝子がcDNAである、請求項13に記載の細胞培養物。
【請求項15】
前記プロサポシン遺伝子がcDNAである、請求項13に記載の細胞培養物。
【請求項16】
前記哺乳動物細胞株が、マウス骨髄腫細胞(NS0)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO);チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)-K1;ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウス線維芽細胞-3T3細胞;アフリカミドリザル細胞株;間葉性軟骨肉腫-1(MCS);ラット副腎褐色細胞腫(PC)-12;ラット副腎褐色細胞腫(PC)-12A;AT3、ラットグリア腫瘍(C6)細胞;ラット神経細胞株RN33b;ラット海馬細胞株HiB5;増殖因子拡張幹細胞;上皮増殖因子(EGF)応答性ニューロスフェア;哺乳動物の中枢神経系(CNS)由来の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)応答性神経前駆幹細胞;胎児細胞;初代線維芽細胞;シュワン細胞;アストロサイト;β-TC細胞;Hep-G2線条体細胞;オリゴデンドロサイト及びその前駆体;マウス筋芽細胞-C2C12;ヒトグリア由来細胞-Hs683;ヒトグリア由来細胞-A172;HEI193T細胞株;ブタ神経膠芽細胞;神経細胞;ニューロン;アストロサイト;介在ニューロン;ヒト長骨から単離された軟骨芽細胞;ヒト胎児腎臓細胞HEK293;ヒト細胞株HeLa;ウサギ角膜由来細胞(スターツス・セルムインスティトゥート・ウサギ角膜細胞(SIRC));ヒト角膜由来細胞、ヒト脈絡叢細胞、ヒト誘導多能性幹細胞(iPS)由来細胞株、ヒトニューロトロフィン3(NT3)細胞、成人網膜色素上皮細胞株-10(ARPE-19)、循環血管新生細胞(CAC)、不死化ヒト線維芽細胞(MDX細胞)、テロメラーゼ不死化ヒト網膜色素上皮(RPE)細胞株、及び間葉系幹細胞(MSC)からなる群より選択される、請求項6又は10に記載の細胞培養物。
【請求項17】
前記アフリカミドリザル細胞株がCOS-1、COS-7、SCC-1、BSC-40、BMT-10、及びベロ細胞株からなる群より選択される、請求項16に記載の細胞培養物。
【請求項18】
前記ヒト網膜色素上皮(RPE)細胞株がヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)網膜色素上皮-1(RPE-1)である、請求項16に記載の細胞培養物。
【請求項19】
哺乳動物組み換え体産生に対する好ましい細胞株がARPE-19、CHO、CHO-1、HEI193T、HEK293、COS、NS0、及びBHK細胞を含む、請求項16に記載の細胞培養物。
【請求項20】
前記プログラニュリンポリペプチドが配列番号2又はそのフラグメントを含む、請求項6又は10に記載の細胞培養物。
【請求項21】
前記プログラニュリン遺伝子が配列番号1又はそのフラグメントを含む、請求項6又は10に記載の細胞培養物。
【請求項22】
前記プロサポシンポリペプチドが配列番号4又はそのフラグメントを含む、請求項6又は10に記載の細胞培養物。
【請求項23】
前記プロサポシン遺伝子が配列番号3若しくは配列番号5又はそのフラグメントを含む、請求項6又は10に記載の細胞培養物。
【請求項24】
前記細胞株がプログラニュリンを発現する第1の発現コンストラクト、又はプロサポシンを発現する第2の発現コンストラクトを含む、請求項6又は10に記載の細胞培養物。
【請求項25】
前記第1の発現コンストラクトがプラスミドを含む、請求項24に記載の細胞培養物。
【請求項26】
前記第2の発現コンストラクトがプラスミドを含む、請求項24に記載の細胞培養物。
【請求項27】
前記第1の発現コンストラクトがトランスポゾンシステムを更に含む、請求項25に記載の細胞培養物。
【請求項28】
前記トランスポゾンシステムがスリーピングビューティートランスポザーゼシステムである、請求項27に記載の細胞培養物。
【請求項29】
前記トランスポゾンシステムがピギーバックトランスポザーゼシステムである、請求項27に記載の細胞培養物。
【請求項30】
前記第2の発現コンストラクトがトランスポゾンシステムを更に含む、請求項24に記載の細胞培養物。
【請求項31】
前記トランスポゾンシステムがスリーピングビューティートランスポザーゼシステムである、請求項30に記載の細胞培養物。
【請求項32】
前記トランスポゾンシステムがピギーバックトランスポザーゼシステムである、請求項30に記載の細胞培養物。
【請求項33】
前記プログラニュリンポリペプチドが、プログラニュリン-抗体フラグメント融合タンパク質、又はプログラニュリン-抗体フラグメント融合タンパク質を発現する遺伝子を含む、請求項10に記載の細胞培養物。
【請求項34】
前記プロサポシンが、プロサポシン-抗体フラグメント融合タンパク質、又はプロサポシン-抗体フラグメント融合タンパク質を発現する遺伝子を含む、請求項10に記載の細胞培養物。
【請求項35】
前記プログラニュリン-抗体フラグメント又は前記プロサポシン-抗体フラグメントのいずれかの前記抗体フラグメントが、プログラニュリン、プロサポシン、又はその複合体の脳分配及び細胞取り込みを増加させる、請求項33又は34に記載の細胞培養物。
【請求項36】
前記プログラニュリン遺伝子がプログラニュリン-抗体フラグメント融合遺伝子を発現する、請求項10に記載の細胞培養物。
【請求項37】
前記プロサポシン遺伝子がプロサポシン-抗体フラグメント融合を発現する、請求項10に記載の細胞培養物。
【請求項38】
前記融合遺伝子が配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、又はそのフラグメントを含む、請求項36又は37に記載の融合遺伝子。
【請求項39】
前記プログラニュリン-抗体フラグメント融合遺伝子が、プログラニュリン、プロサポシン、又はその複合体の脳分配及び細胞取り込みを増加させるペプチド配列をコードし;更に、前記プロサポシン-抗体フラグメント融合遺伝子が、プログラニュリン、プロサポシン、又はその複合体の脳分配及び細胞取り込みを増加させるペプチド配列をコードする、請求項36、37、又は38のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項40】
前記発現されたプログラニュリン及びプロサポシンが、前記細胞から分泌される前に複合体を形成する、請求項6又は10に記載の細胞培養物。
【請求項41】
前記発現されたプログラニュリン及びプロサポシンが、前記細胞から分泌された後に複合体を形成する、請求項6又は10に記載の細胞培養物。
【請求項42】
前記複合体がプログラニュリン及びプロサポシンのヘテロダイマーを含む、請求項40又は41に記載の細胞培養物。
【請求項43】
前記細胞株からのプログラニュリン、プロサポシン、又はプログラニュリン及びプロサポシンのヘテロダイマーの分泌を刺激する因子を更に含む、請求項6又は10に記載の細胞培養物。
【請求項44】
神経障害を有する患者を処置するためのデバイスであって、
埋め込み型細胞デバイスと、
請求項6又は10に記載の細胞培養物によって産生される細胞株と
を含み、前記細胞株が治療薬を分泌するように設計された、デバイス。
【請求項45】
前記埋め込み型細胞デバイスが前記細胞株を含有するカプセルを含む、請求項44に記載のデバイス。
【請求項46】
前記埋め込み型細胞デバイスが半透膜を更に含み、前記半透膜が、前記埋め込み型細胞デバイス内に置かれた前記細胞株から分泌される前記治療薬の前記膜を通じた拡散を可能にする、請求項44に記載のデバイス。
【請求項47】
前記半透膜が免疫隔離的である、請求項46に記載のデバイス。
【請求項48】
前記デバイスが、前記半透膜内に配されたマトリックスを更に含む、請求項46に記載のデバイス。
【請求項49】
処置を必要とする患者の体内に前記細胞デバイスを埋め込む手段を更に含む、請求項44に記載のデバイス。
【請求項50】
前記埋め込む手段がカテーテルを含む、請求項49に記載のデバイス。
【請求項51】
前記カテーテルが、前記患者の線条体、脊柱管の髄腔内に埋め込みされるか、あるいはくも膜下腔に埋め込まれるように設計される、請求項50に記載のデバイス。
【請求項52】
前記細胞デバイスからの治療薬の送達のための1つ以上の媒介物を更に含む、請求項44に記載のデバイス。
【請求項53】
前記媒介物がポンプ又はシリンジを含む、請求項52に記載のデバイス。
【請求項54】
前記デバイスが経口的、髄腔内、脳室内、又は脳内に埋め込まれる、請求項44に記載のデバイス。
【請求項55】
前記神経障害が神経変性疾患である、請求項44に記載のデバイス。
【請求項56】
前記神経障害がリソソーム蓄積疾患である、請求項44に記載のデバイス。
【請求項57】
前記神経変性疾患が、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、辺縁系優位型加齢性TAR DNA結合タンパク質-43(TDP-43)脳症(LATE)、レビー小体認知症、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、及びリソソーム蓄積障害からなる群より選択される、請求項55に記載のデバイス。
【請求項58】
前記リソソーム蓄積疾患が、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ゲノムと遺伝子の百科事典(KEGG)の疾患、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、ムコ多糖症III及びIV、テイ・サックス病、ファーバー病、並びにその組み合わせからなる群より選択される、請求項56に記載のデバイス。
【請求項59】
プログラニュリン及びプロサポシンの複合体を製造するための方法であって、当該方法が、
プログラニュリンを発現する第1の発現コンストラクトを細胞株に挿入するステップと、
プロサポシンを発現する第2の発現コンストラクトを同一の細胞株に挿入するステップと
を挿入することを含む、方法。
【請求項60】
前記細胞株が、マウス骨髄腫細胞(NS0)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO);チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)-K1;ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウス線維芽細胞-3T3細胞;アフリカミドリザル細胞株;間葉性軟骨肉腫-1(MCS);ラット副腎褐色細胞腫(PC)-12;ラット副腎褐色細胞腫(PC)-12A;AT3、ラットグリア腫瘍(C6)細胞;ラット神経細胞株RN33b;ラット海馬細胞株HiB5;増殖因子拡張幹細胞;上皮増殖因子(EGF)応答性ニューロスフェア;哺乳動物の中枢神経系(CNS)由来の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)応答性神経前駆幹細胞;胎児細胞;初代線維芽細胞;シュワン細胞;アストロサイト;β-TC細胞;Hep-G2線条体細胞;オリゴデンドロサイト及びその前駆体;マウス筋芽細胞-C2C12;ヒトグリア由来細胞-Hs683;ヒトグリア由来細胞-A172;HEI193T細胞株;ブタ神経膠芽細胞;神経細胞;ニューロン;アストロサイト;介在ニューロン;ヒト長骨から単離された軟骨芽細胞;ヒト胎児腎臓293細胞(HEK293);ヒト細胞株HeLa細胞;ウサギ角膜由来細胞(スターツス・セルムインスティトゥート・ウサギ角膜細胞(SIRC));ヒト角膜由来細胞、ヒト脈絡叢細胞、ヒト誘導多能性幹細胞(iPS)由来細胞株、ヒトニューロトロフィン3(NT3)細胞、成人網膜色素上皮細胞株-10(ARPE-19)、循環血管新生細胞(CAC)、不死化ヒト線維芽細胞(MDX細胞)、テロメラーゼ不死化ヒト網膜色素上皮(RPE)細胞株、及び間葉系幹細胞(MSC)からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記アフリカミドリザル細胞株がCOS-1、COS-7、SCC-1、BSC-40、BMT-10、及びベロ細胞株からなる群より選択される、請求項60に記載の細胞培養物。
【請求項62】
前記ヒト網膜色素上皮(RPE)細胞株がヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)網膜色素上皮-1(RPE-1)である、請求項60に記載の細胞培養物。
【請求項63】
哺乳動物組み換え体産生に対する好ましい細胞株がARPE-19、CHO、CHO-1、HEI193T、HEK293、COS、NS0、及びBHK細胞を含む、請求項60に記載の細胞培養物。
【請求項64】
前記第1の発現コンストラクトがプラスミドを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の発現コンストラクトがスリーピングビューティートランスポザーゼシステムを更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記第2の発現コンストラクトがプラスミドを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記第2の発現コンストラクトがスリーピングビューティートランスポザーゼシステムを更に含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞株がバイオリアクター内に含まれる、請求項59に記載の方法。
【請求項69】
前記プログラニュリン及びプロサポシンの複合体を精製するステップを更に含む、請求項59に記載の方法。
【請求項70】
前記プログラニュリン及びプロサポシンの複合体がイオン交換クロマトグラフィーによって精製される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記イオン交換クロマトグラフィーがポリプロピレンプラスチックを用いない、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記プログラニュリン及びプロサポシンの複合体がゲル濾過によって精製される、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
請求項40又は41に記載の方法によるプログラニュリン及びプロサポシンの複合体を含む、神経障害の処置のための治療薬。
【請求項74】
前記治療薬が神経障害に対する処置を必要とする患者に投与される、請求項73に記載の治療薬。
【請求項75】
前記神経障害が神経変性疾患である、請求項74に記載の治療薬。
【請求項76】
前記神経障害がリソソーム蓄積疾患である、請求項74に記載の治療薬。
【請求項77】
前記神経変性疾患が、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、辺縁系優位型加齢性TAR DNA結合タンパク質-43(TDP-43)脳症(LATE)、レビー小体認知症、パーキンソン病(PD)、及び多系統萎縮症(MSA)からなる群より選択される、請求項57に記載の治療薬。
【請求項78】
前記リソソーム蓄積疾患が、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ゲノムと遺伝子の百科事典(KEGG)の疾患、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、ムコ多糖症III及びIV、テイ・サックス病、並びにファーバー病からなる群より選択される、請求項76に記載の治療薬。
【請求項79】
前記治療薬が注射によって前記患者に投与される、請求項73に記載の治療薬。
【請求項80】
前記治療薬がカテーテルによって前記患者に投与される、請求項73に記載の治療薬。
【請求項81】
患者からの流体サンプル中のプログラニュリン及びプロサポシンの相対濃度を検査するための方法であって、前記方法は、
プログラニュリンの濃度を検査するステップと、
プロサポシンの濃度を検査するステップと、
プログラニュリン及びプロサポシンの複合体の濃度を検査するステップと、
プログラニュリン及びプロサポシンの複合体の濃度に対するプログラニュリンの濃度の比率を比較するステップと、
プログラニュリン及びプロサポシンの複合体の濃度に対するプロサポシンの濃度の比率を比較するステップと
を含む、方法。
【請求項82】
前記検査が酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)又は近接ライゲーションアッセイを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記患者からの前記流体サンプルが、ヒト脳脊髄液、血漿、血清、唾液、涙液、母乳、尿、及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記患者の神経障害を診断するステップを更に含む、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記患者の神経障害の進行を評価するステップを更に含む、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記神経障害が神経変性疾患である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記神経障害がリソソーム蓄積疾患である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記神経変性疾患が、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、レビー小体認知症、パーキンソン病(PD)、ゴーシェ病、神経セロイドリポフスチン症、及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記リソソーム蓄積疾患が、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ゲノムと遺伝子の百科事典(KEGG)の疾患、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、ムコ多糖症III及びIV、テイ・サックス病、並びにファーバー病からなる群より選択される、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
患者におけるPGRN、PSAP、及び/又はPGRN/PSAP複合体の絶対レベル及び相対レベルを決定するために用いられるアッセイ。
【請求項91】
前記アッセイが神経障害を診断するために用いられる、請求項90に記載のアッセイ。
【請求項92】
前記アッセイが患者の神経障害の進行を評価するために用いられる、請求項90に記載のアッセイ。
【請求項93】
前記神経障害が神経変性疾患である、請求項90に記載のアッセイ。
【請求項94】
前記神経障害がリソソーム蓄積疾患である、請求項90に記載のアッセイ。
【請求項95】
前記神経変性疾患が、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、辺縁系優位型加齢性TAR DNA結合タンパク質-43(TDP-43)脳症(LATE)、レビー小体認知症、パーキンソン病(PD)、及び多系統萎縮症(MSA)からなる群より選択される、請求項93に記載のアッセイ。
【請求項96】
前記リソソーム蓄積疾患が、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ゲノムと遺伝子の百科事典(KEGG)の疾患、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、ムコ多糖症III及びIV、テイ・サックス病、並びにファーバー病からなる群より選択される、請求項94に記載のアッセイ。
【請求項97】
プログラニュリン及びプロサポシンの複合体を含むバイオマーカー。
【請求項98】
前記バイオマーカーが、神経障害の検出並びに/又は神経障害の予後及び進行の評価のために用いられる、請求項97に記載のバイオマーカー。
【請求項99】
前記神経障害が神経変性疾患である、請求項98に記載のバイオマーカー。
【請求項100】
前記神経障害がリソソーム蓄積疾患である、請求項98に記載のバイオマーカー。
【請求項101】
前記神経変性疾患が、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、辺縁系優位型加齢性TAR DNA結合タンパク質-43(TDP-43)脳症(LATE)、レビー小体認知症、パーキンソン病(PD)、及び多系統萎縮症(MSA)からなる群より選択される、請求項99に記載のバイオマーカー。
【請求項102】
前記リソソーム蓄積疾患が、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ゲノムと遺伝子の百科事典(KEGG)の疾患、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、ムコ多糖症III及びIV、テイ・サックス病、並びにファーバー病からなる群より選択される、請求項100に記載のバイオマーカー。
【請求項103】
前記バイオマーカーが、患者における炎症性疾患、癌、及び肥満関連の病態の検出、診断、及び/又はモニタリングのために用いられる、請求項97に記載のバイオマーカー。
【請求項104】
前記炎症性疾患が、胆石症、脂肪肝疾患、子宮内膜症、炎症性腸疾患、喘息、関節リウマチ、慢性消化性潰瘍、歯周炎、クローン病、副鼻腔炎、肝炎、循環器疾患、関節炎、慢性閉塞性肺疾患、脳炎、髄膜炎、神経炎、及び膵炎からなる群より選択される、請求項103に記載のバイオマーカー。
【請求項105】
前記肥満関連の病態が、2型糖尿病、1型糖尿病、高脂血症、インスリン非感受性、高血糖症、高インスリン血症、低インスリン血症、脂質異常症、高血圧症、及び粥状動脈硬化からなる群より選択される、請求項103に記載のバイオマーカー。
【請求項106】
クローン細胞培養物であって、前記クローン細胞培養物が因子の組み合わせを発現及び放出する、クローン細胞培養物。
【請求項107】
前記因子が神経再生因子である、請求項106に記載のクローン細胞培養物。
【請求項108】
前記因子がリソソームターゲティング因子である、請求項106に記載のクローン細胞培養物。
【請求項109】
前記因子がミスフォールドタンパク質ターゲティング因子である、請求項106に記載のクローン細胞培養物。
【請求項110】
前記神経再生因子が、ニューロトロフィンタンパク質、グリア細胞由来神経栄養因子タンパク質、脳ドーパミン神経栄養因子タンパク質、及び中脳アストロサイト由来神経栄養因子タンパク質からなる群より選択される、請求項107に記載のクローン細胞培養物。
【請求項111】
前記リソソームターゲティング因子が、プログラニュリン、プログラニュリンの誘導体、プロサポシン、プロサポシンの誘導体、プログラニュリン/プロサポシン複合体、グルコセレブロシダーゼ、リソソーム膜タンパク質1、及びカテプシンからなる群より選択される、請求項108に記載のクローン細胞培養物。
【請求項112】
前記ミスフォールドタンパク質ターゲティング因子が、アルファ-シヌクレイン、アミロイドベータ(Αβ:amyloid-beta)タウ、TAR DNA結合タンパク質43、肉腫内融合(Fused in Sarcoma)、ハンチンチン(Huntingtin)タンパク質、及びC9orf由来ジペプチドからなる群より選択されるペプチド、抗体、又は抗体フラグメントである、請求項109に記載のクローン細胞培養物。
【請求項113】
前記ミスフォールドタンパク質ターゲティング因子が機能性ペプチドにコンジュゲートされる、請求項109に記載のクローン細胞培養物。
【請求項114】
前記機能性ペプチドが細胞取り込みを促進する、請求項113に記載のクローン細胞培養物。
【請求項115】
前記機能性ペプチドが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の転写のトランスアクチベーター(TAT)である、請求項114に記載のクローン細胞培養物。
【請求項116】
前記機能性ペプチドが分解経路のトリガーを促進する、請求項113に記載のクローン細胞培養物。
【請求項117】
前記機能性ペプチドが標的タンパク質分解キメラ(PROTAC)である、請求項116に記載のクローン細胞培養物。
【請求項118】
必要な患者に投与される組み合わせ療法であって、前記療法がプログラニュリン、プロサポシン、プログラニュリン及びプロサポシンの複合体、アルファ-シヌクレインターゲティング抗体、並びにアルファ-シヌクレインターゲティング神経再生因子の送達を含む、組み合わせ療法。
【請求項119】
前記プログラニュリン、プロサポシン、プログラニュリン及びプロサポシンの複合体、アルファ-シヌクレインターゲティング抗体、並びにアルファ-シヌクレインターゲティング神経再生因子が、異なる組み合わせで前記患者に投与される、請求項118に記載の組み合わせ療法。
【請求項120】
前記アルファ-シヌクレインターゲティング神経再生因子がグリア細胞由来神経栄養因子(GCNF)である、請求項118に記載の組み合わせ療法。
【請求項121】
前記組み合わせ療法が神経障害を処置する、請求項118に記載の組み合わせ療法。
【請求項122】
前記神経障害が神経変性疾患である、請求項121に記載の組み合わせ療法。
【請求項123】
前記神経障害がリソソーム蓄積疾患である、請求項121に記載の組み合わせ療法。
【請求項124】
前記神経変性疾患が、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、辺縁系優位型加齢性TAR DNA結合タンパク質-43(TDP-43)脳症(LATE)、レビー小体認知症、パーキンソン病(PD)、及び多系統萎縮症(MSA)からなる群より選択される、請求項122に記載の組み合わせ療法。
【請求項125】
前記リソソーム蓄積疾患が、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ゲノムと遺伝子の百科事典(KEGG)の疾患、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、ムコ多糖症III及びIV、テイ・サックス病、並びにファーバー病からなる群より選択される、請求項123に記載の組み合わせ療法。
【請求項126】
細胞株であって、前記細胞株がプログラニュリンペプチド、プロサポシンペプチド、又はプログラニュリンペプチド及びプロサポシンペプチドの複合体を発現するか、又は発現するように改変された、細胞株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[連邦政府が後援する研究及び開発の下でなされた発明の権利に関する声明]
本発明は、米国政府の支援によって行われたものではない。
【0002】
[本出願の一部を形成する配列表に関する声明]
本出願はASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が引用により援用される。前記ASCIIコピーは2020年5月15日に作成され、P9590US00_ST25.txtと命名され、144,484バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、新規のバイオマーカーに対する方法及び組成物と、処置とに関し、この処置は、組み換えタンパク質並びに遺伝子ベース及び細胞ベースの治療法、特に、神経変性疾患及びリソソーム蓄積障害の処置のための、プログラニュリン、プロサポシン、プログラニュリン及びプロサポシンの複合体(本明細書において「プログラニュリン/プロサポシン複合体(単数又は複数)」とも呼ばれる)、アルファ-シヌクレインターゲティング抗体、並びに神経再生因子GDNFを含むがそれに限定されないそれらの神経再生因子の異なる組み合わせの送達のための組み合わせ療法を含むが、それに限定されない。別の態様において、本発明は、アルファ-シヌクレインターゲティング抗体、GDNF、プログラニュリン、プロサポシン、プログラニュリン及びプロサポシンの複合体を発現する細胞株、これらを製造する方法、例えばヒト血清及びCSFなどにおいてこれらをモニタリングする方法、並びに両方の組み換え因子を治療薬か、又は患者にアルファ-シヌクレインターゲティング抗体、GDNF、プログラニュリン、プロサポシン、及びプログラニュリン/プロサポシン複合体を送達するための埋め込み型細胞デバイス内部の細胞株として用いることに関する。
【背景技術】
【0004】
前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal dementia)は、構造的磁気共鳴画像法又はポジトロン断層撮影によって可視化される前頭葉及び/又は前部側頭葉の萎縮を特徴とする神経障害である。FTDは、全ての認知症の症例の10%~20%と推定される。FTDは最も一般的な初老期認知症の1つと認識されており、100,000人当り15~22人が罹患する。徴候及び症状は、典型的に後期成人期、一般的には45~65歳で顕在化する。徴候及び症状は典型的に、社会的行動及び行為の1つ以上の変化、社会的認識の喪失及び衝動制御不良、言語理解障害、進行性の非流暢性失語、並びに顕著な行動の変化を含む。疾患が進行すると、患者は例えば実行機能及び作業記憶の喪失などの、アルツハイマー病と同等の症状を呈することがある。現在、行動症状を管理するための処置、典型的な選択的セロトニン再取り込み阻害剤を除いて、FTDに対する治療法はない。
【0005】
FTDの機構の1つは、グラニュリン(GRN:granulin)遺伝子の変異である。GRNにおけるハプロ不全は、グラニュリンの前駆体の形であるプログラニュリン(PGRN:progranulin)の細胞外レベルの減少として容易にモニタリングされ、それは典型的に遺伝性の形態のFTDをもたらし、かつPGRNの完全な欠失は、リソソーム蓄積障害である神経セロイドリポフスチン症(NCL:neuronal ceroid lipofuscinosis)ももたらす。細胞外PGRNはニューロンによって取り入れられ、異なる機構を介してリソソームに輸送される。加えてPGRNは、リソソームのスフィンゴ糖脂質分解に必須であるサポシンペプチドの前駆体のプロサポシン(PSAP:prosaposin)のニューロン取り込み及びリソソーム送達を促進する。加えて、PGRN変異ニューロンは、リソソームGCアーゼ活性の低下、脂肪蓄積、及び不溶性アルファ-シヌクレインの増加を有する。FTDの患者の脳組織サンプルは、ニューロン中のPSAPレベルの低下を示す。したがって、細胞外PGRNの細胞取り込みの減少と、PGRNが介在するPSAPリソソーム輸送の低下とは、GRN変異によるNCL及びFTDに対する基礎的な疾患の機構であるかもしれない。このことに対して、血漿又はCSF中のPGRN/PSAP複合体、及び疾患においてその発現レベルがどの程度変化し得るかのモニタリング又は特徴付けはまだ誰も行っていない。診断、予後、治療法の開発、及び処置応答のモニタリングのために、それぞれ個々の流体バイオマーカー及び経路バイオマーカープロファイルとして、PGRN、PSAP、及び/又はPGRN/PSAPの絶対レベル及び相対レベルを決定するための特定のアッセイが当該技術分野において必要とされている。
【0006】
PGRN及びPSAPは、互いの発現レベルを調節することに加えて、互いのリソソーム輸送を促進するために物理的に相互作用し、PGRN-PSAP相互作用は、脳内の適切なリソソーム機能を維持するために重要である。しかしこれまでに、細胞外PGRN又はPGRN-PSAP複合体のいずれかの補充によってNCL及びFTDを予防又は処置できることは誰にも示されていない。PGRN-PSAP複合体を、これらの分子実体が神経変性からの保護を行い得る脳までの輸送も可能にするやり方で生成する、効果的な方法が当該技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、本発明は、1つ若しくは複数のアルファ-シヌクレインターゲティング抗体若しくは抗体フラグメント、及び/又はプログラニュリン、及び/又はプロサポシン、及び/又はGDNF並びにそれらのサブペプチド及び誘導体を発現する細胞株に関する。好ましい実施形態において、この細胞株は、例えば細胞株にプラスミドを挿入することなどによって、これらの因子を同時に産生するように遺伝子改変される。様々な実施形態において、アルファ-シヌクレインターゲティング抗体/フラグメント、GDNF及びプログラニュリン及びプロサポシンは、ポリペプチド、サブペプチド、RNA、又はエキソソームRNAとして発現される。
【0008】
本発明によるデバイスには、多くの異なる細胞型が封入されてもよい。これらの細胞型は、周知の公的に入手可能な不死化細胞株、自然発生的に不死化された細胞株、及び分裂する初代細胞培養物を含む。細胞株はいくつかの実施形態においてトランスフェクト又は形質導入されるため、クローンを選択し、増殖させて、細胞を貯蔵する必要があり、細胞又は細胞株はかなりの数の分裂を行い得ることが好ましい。
【0009】
前駆体(progenitor)及び/又は前駆(precursor)細胞を含む多様な細胞から、長期増殖が可能な細胞株が生成されてもよい。多能性及び複能性幹細胞、胚性幹細胞、神経幹細胞、並びに造血幹細胞を含む幹細胞も好適である。
【0010】
本発明の細胞株は、マウス骨髄腫細胞(NS0)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO:Chinese hamster ovary cells);CHO-K1;ベビーハムスター腎臓細胞(BHK:baby hamster kidney cells);マウス線維芽細胞-3T3細胞;アフリカミドリザル細胞株(COS-1、COS-7、BSC-1、BSC-40、BMT-10、及びベロを含む);間葉性軟骨肉腫-1(MCS:mesenchymal chondroSarcoma-1);ラット副腎褐色細胞腫(PC12及びPC12A);AT3、ラットグリア腫瘍(C6);ラットニューロン細胞株RN33b;ラット海馬細胞株HiB5;増殖因子拡張幹細胞;上皮増殖因子(EGF:epidermal growth factor)応答性ニューロスフェア;哺乳動物のCNS由来の塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor)応答性(bFGF応答性)神経前駆幹細胞;胎児細胞;初代線維芽細胞;シュワン(Schwann)細胞;アストロサイト;β-TC(ATCC CRL-11506)細胞;ヒト肝臓癌細胞株Hep-G2線条体細胞;オリゴデンドロサイト及びその前駆体;マウス筋芽細胞-C2C12;ヒトグリア由来細胞-Hs683;ヒトグリア由来細胞-A172;HEI193T細胞株;ブタ神経膠芽細胞;神経細胞;ニューロン;アストロサイト;介在ニューロン;ヒト長骨から単離された軟骨芽細胞;ヒト胎児腎臓細胞293(HEK293:human embryonic kidney cells 293);ヒト細胞株HeLa;ウサギ角膜由来細胞(スタテンス・セルムインスティトゥート・ウサギ角膜(Statens Seruminstitut Rabbit Cornea)(SIRC));ヒト角膜由来細胞、ヒト脈絡叢細胞、ヒト誘導多能性幹細胞(iPS:induced pluripotent stem cells)細胞由来細胞株、ヒトニューロトロフィン3(NT3:neurotrophin 3)細胞、ARPE-19、CAC細胞、不死化ヒト線維芽細胞(MDX細胞)、例えばhTERT RPE-1などのテロメラーゼ不死化ヒトRPE細胞株、間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cells)を含む。
【0011】
哺乳動物組み換え体産生のための好ましい細胞株は、ARPE-19、CHO、CHO-1、HEI193T、HEK293、COS、NS0、C2C12、及びBHK細胞を含む。
【0012】
好ましい実施形態において、細胞株は最大4つの発現コンストラクトを含む。すなわち、プログラニュリンポリペプチド、プログラニュリン遺伝子、プログラニュリンRNA、又はプログラニュリンをコードするエキソソームRNAを発現する第1の発現コンストラクトと、プロサポシンポリペプチド、プロサポシン遺伝子、プロサポシンRNA、又はプロサポシンをコードするエキソソームRNAを発現する第2の発現コンストラクトと、アルファ-シヌクレイン抗体又は抗体フラグメントをコードする遺伝子、RNA、又はエキソソームRNAを発現する第3の発現コンストラクトと、GDNF RNA又はGDNFをコードするエキソソームRNAを発現する第4の発現コンストラクトとである。本発明の実施形態において、発現コンストラクトはプラスミドを含む。更なる実施形態において、プラスミドは、例えばスリーピングビューティー(Sleeping beauty)トランスポザーゼなどのトランスポゾンシステムを含んでもよい。
【0013】
本発明の細胞株によって産生されるプログラニュリン又はプロサポシンは、中枢神経系におけるプログラニュリン、プロサポシン、及びプログラニュリン/プロサポシン複合体の分配及び取り込みを促進する目的のために、抗体のフラグメント結晶化可能(fragment crystallizable)領域(Fc領域)を更に含んでもよい。様々な実施形態において、プロサポシン-Fc又はプログラニュリン-Fc領域の組み合わせは、融合タンパク質、融合遺伝子、又は融合RNAを含む。
【0014】
本発明の細胞株によって発現されるプログラニュリン及びプロサポシンは、細胞株からの分泌の前又は後に典型的に複合体を形成する。この複合体は、プログラニュリンとプロサポシンとのヘテロダイマーであってもよい。
【0015】
本発明の実施形態において、本発明の細胞株は、プログラニュリン又はプロサポシンの細胞株からの分泌を刺激する因子を更に発現する。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明の細胞株は埋め込み型細胞デバイス内に含まれ、その埋め込み型細胞デバイスは、次いで処置を必要とする患者に挿入される。こうした細胞デバイスの例は、一般的に米国特許第8,741,340号;第9,121,037号;第9,364,427号;第9,669,154号;第9,884,023号;第10,835,664号、及び第10,888,526号に見出すことができ、これらは全て引用により援用される。こうしたデバイスは、患者の体内に埋め込まれたときに、細胞株から分泌されたアルファ-シヌクレイン抗体又は抗体フラグメント、プログラニュリン及びプロサポシン及びGDNFを、外傷を繰り返す必要なく患者に効率的に送達することを可能にする。これらの因子は継続的に産生されるため、製剤緩衝剤及びタンパク質の安定性の懸念は必要ない。この安定な細胞株は、2つ以上のエフェクター分子を分泌する単一の薬物物質とも考えられ、これは処置が困難な疾患における新たな治療介入を可能にする。
【0017】
好ましい実施形態において、埋め込み型細胞デバイスは半透膜を含み、この半透膜は、前記埋め込み型細胞デバイス内に置かれた細胞株から分泌された分子が前記膜を通って拡散することを可能にする。更なる実施形態において、この半透膜は、内部の細胞株を患者の免疫系から保護するための免疫分離を行う。別の好ましい実施形態において、埋め込み型細胞デバイスは、中に入れられた細胞株の効率的な生育及び生存を促進するために半透膜内に配されるマトリックスを含む。
【0018】
ある実施形態において、埋め込み型細胞デバイスは、処置を必要とする患者の体内にデバイスを埋め込むための手段を更に含んでもよい。この埋め込み手段はカテーテルであってもよい。デバイスは患者の様々な組織区画に埋め込まれてもよく、好ましくは髄腔内、脳室内、又は脳内に埋め込まれてもよい。埋め込みのための好ましい標的は、患者の線条体、脊柱管、及びくも膜下腔を含む。
【0019】
ある実施形態において、埋め込み型細胞デバイスは、アルファ-シヌクレイン抗体又は抗体フラグメント、プログラニュリン、及びプロサポシンを細胞株から患者の体内の所望の場所に送達することを促進するための媒介物を更に含んでもよい。様々な実施形態において、媒介物はポンプ又はシリンジ又は関連するカテーテルシステムである。
【0020】
本発明の細胞株は、神経疾患又は障害、特に複数の病態を特徴とする障害であるリソソーム蓄積障害又は神経変性疾患の処置に有用であってもよい。本発明の細胞株によって処置可能な神経障害は、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)、アルツハイマー病(AD:Alzheimer’s disease)、辺縁系優位型加齢性TAR DNA結合タンパク質-43(TDP-43)脳症(LATE:limbic-predominant age-related TAR DNA-binding protein-43(TDP-43)encephalopathy)、レビー小体認知症(LBD:Lewy body dementia)、パーキンソン病(PD:Parkinson’s disease)、多系統萎縮症(MSA:Multiple system atrophy)、及びリソソーム蓄積障害を含むが、それに限定されない。本発明の細胞株を用いて処置され得るリソソーム蓄積障害は、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ゲノムと遺伝子の百科事典(KEGG:Kyoto encyclopedia of genes and genomes)の疾患、神経セロイドリポフスチン症(NCL:neuronal ceroid lipofuscinosis)、ムコ多糖症III型及びIV型、テイ・サックス病、ファーバー病、並びにその組み合わせを含むが、それに限定されない。
【0021】
加えて、本発明の細胞株によって産生されるアルファ-シヌクレイン抗体又は抗体フラグメント、並びにプログラニュリン、プロサポシン、並びにプログラニュリン及びプロサポシンの複合体は、神経障害の処置における治療薬として用いるために精製されてもよい。この実施形態において、本発明の細胞株は、大量のアルファ-シヌクレイン抗体又は抗体フラグメント、プログラニュリン、プロサポシン、及びプログラニュリン/プロサポシン複合体を生成するためのバイオリアクター内に含まれていてもよい。更なる実施形態において、プログラニュリン及びプログラニュリン/プロサポシン複合体は、塩析、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、及びイオン交換クロマトグラフィーを含むがそれに制限されないいくつかの生化学的なクロマトグラフィーの方法で精製される。なお更なる実施形態において、本発明の細胞株から単離された組み換えタンパク質は、上記で定義された神経障害の処置を必要とする患者に対する治療薬として投与され得る。様々な更なる実施形態において、その治療薬はポンプ、シリンジ、又はカテーテルシステムを用いて投与される。
【0022】
プログラニュリン及びプロサポシンの複合体は体液中に存在するため、例えばこの複合体を認識するELISAなどの逆免疫に基づく方法によってモニタリングできることを本発明者らは更に発見した。細胞外プログラニュリン/プロサポシン複合体レベルの絶対レベルは、診断並びに薬物曝露及び処置応答のモニタリングのための有用なバイオマーカーであってもよい。加えて、患者からの流体サンプルに存在するプログラニュリン/プロサポシン複合体と比較した非複合型プログラニュリン又は非複合型プロサポシンの比率は、重要な情報を提供してもよく、神経障害に制限されない障害の診断のための有用なバイオマーカーか、又は特に処置開始後の神経障害の予後及び進行を評価するための手段となってもよい。本出願のバイオマーカーは、炎症性疾患、癌、及び肥満関連の病態の診断及びモニタリングに更に用いてもよい。炎症性疾患は、胆石症、脂肪肝疾患、子宮内膜症、炎症性腸疾患、喘息、関節リウマチ、慢性消化性潰瘍、歯周炎、クローン病、副鼻腔炎、肝炎、循環器疾患、関節炎、慢性閉塞性肺疾患、脳炎、髄膜炎、神経炎、及び膵炎を含むが、それに限定されない。肥満関連の病態は、2型糖尿病、1型糖尿病、高脂血症、インスリン非感受性、高血糖症、高インスリン血症、低インスリン血症、脂質異常症、高血圧症、及び粥状動脈硬化を含むが、それに限定されない。
【0023】
様々な実施形態において、非複合型プログラニュリン、非複合型プロサポシン、及びプログラニュリン/プロサポシン複合体の濃度は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA:enzyme-linked immunosorbent assay)、又は任意のその他の免疫に基づくアッセイ原理、例えば電気化学発光、例えばMeso Scale Discovery(登録商標)技術(Meso Scale Diagnostics(登録商標)、ロックビル(Rockville)、MD)、Simoa(登録商標)技術(Quanterix(商標)社、ビレリカ(Billerica)、MA)、HTRF(登録商標)(ホモジニアス時間分解蛍光法(homogenous time resolved fluorescence))(シスバイオ・バイオアッセイ株式会社(Cisbio Bioassays Societe Par Actions)シンプリフィー・ア・アソシエ・ユニーク・フランス・パルク・マルセル・ボアトー(Simplifee a Associe Unique France Parc Marcel Boiteux)B.P.、コドレ(Codolet)、FR)、Alphascreen(登録商標)(PerkinElmer(登録商標)、ウォルサム(Waltham)、MA)、及び/又は近接ライゲーションアッセイなどによって決定されるが、代替的な分析方法を更に用いてもよい。様々な実施形態において、流体サンプルは血漿、脳脊髄液、唾液、涙、又は尿であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、異なるECB細胞株からの条件培地におけるPGRN/PSAP及びPSAP/PGRN ELISAアッセイの結果を示す図である。このアッセイは、ARPE-PGRN、ARPE-PGRN+PSAPコトランスフェクト細胞株と、FLAG(商標)-PGRNトランスフェクト細胞(黒色矢印)とから、PGRN/PSAP複合体の存在を検出することができる。
【
図2】
図2は、以下のECB細胞株からの架橋された条件培地におけるPGRN及びPSAPのウエスタンブロットを示す図である:ARPE-19親細胞株(A)、PGRN(56)、PSAP(#7)、及びPGRN+PSAP+scFv81同時発現株(D5)。矢印は、
図1に示されるELISAの結果と一致するPGRN/PSAP複合体の存在を示す。
【
図3】
図3は、ヒトプログラニュリン、ヒトプロサポシン、又はヒトプロサポシン+プログラニュリンを過剰発現する培養封入細胞(ARPE-19細胞/スリーピングビューティーシステム)からの条件培地におけるELISAのサンプルを説明する図である。プログラニュリン過剰発現デバイスは、ほとんど単量体プログラニュリンを分泌するが、プログラニュリン/プロサポシン複合体も分泌する。プロサポシン過剰発現デバイスは、プロサポシンのみ分泌する。プロサポシン+プログラニュリン過剰発現ECBデバイスは、ほとんどプログラニュリン/プロサポシン複合体を分泌する。cl56はプログラニュリン分泌デバイスであり、D5はプロサポシン+プログラニュリン+scFv81デバイスである。
【
図4A】
図4Aは、プログラニュリン又はプログラニュリン+プロサポシン+scFv81を過剰発現するARPE-19細胞からの条件培地の分子ふるいクロマトグラフィーを図示する図である。
図4Aの生データを、プログラニュリン+プロサポシン+scFv81を過剰発現する細胞(
図4B)及びプログラニュリンを過剰発現する細胞(
図4C)に対してマージすることによって、遊離プログラニュリンはプログラニュリン過剰発現細胞からの画分のみに検出されるのに対し、プログラニュリン+プロサポシンを過剰発現する細胞からの条件培地における全ての分泌プログラニュリンがプロサポシンとの複合体であることが示される。
【
図4B】
図4Bは、プログラニュリン又はプログラニュリン+プロサポシン+scFv81を過剰発現するARPE-19細胞からの条件培地の分子ふるいクロマトグラフィーを図示する図である。
図4Aの生データを、プログラニュリン+プロサポシン+scFv81を過剰発現する細胞(
図4B)及びプログラニュリンを過剰発現する細胞(
図4C)に対してマージすることによって、遊離プログラニュリンはプログラニュリン過剰発現細胞からの画分のみに検出されるのに対し、プログラニュリン+プロサポシンを過剰発現する細胞からの条件培地における全ての分泌プログラニュリンがプロサポシンとの複合体であることが示される。
【
図4C】
図4Cは、プログラニュリン又はプログラニュリン+プロサポシン+scFv81を過剰発現するARPE-19細胞からの条件培地の分子ふるいクロマトグラフィーを図示する図である。
図4Aの生データを、プログラニュリン+プロサポシン+scFv81を過剰発現する細胞(
図4B)及びプログラニュリンを過剰発現する細胞(
図4C)に対してマージすることによって、遊離プログラニュリンはプログラニュリン過剰発現細胞からの画分のみに検出されるのに対し、プログラニュリン+プロサポシンを過剰発現する細胞からの条件培地における全ての分泌プログラニュリンがプロサポシンとの複合体であることが示される。
【
図5】それぞれFLAG(商標)タグscFV及びFc-scFv抗アルファ-シヌクレインターゲティング抗体フラグメントを分泌する培養デバイス及び細胞株からの条件培地における直接ELISA、並びにPGRN及びPSAP及びアルファ-シヌクレインターゲティングFLAG(商標)タグscFv81の過剰発現のために選択された細胞株(上右)と、アルファ-シヌクレインターゲティングペプチドscFv81、scFv113、及びscFv49を過剰発現する細胞株とにおけるアルファ-シヌクレインターゲティングFLAG(商標)タグscFvの免疫細胞化学の結果を示す図である。照射は、Fc-scFv-を過剰発現及び分泌する細胞に対するFITC抗FLAG(商標)及びAlexa Fluor(登録商標)647抗hIgG(モレキュラープローブス社(Molecular Probes、Inc.)、ユージーン(Eugene)、OR)である。
【
図6A】
図6Aは、PGRN/PSAPアッセイ(A)を示し、インビトロで集合した商業的に入手可能な組み換えPGRN(リサーチ・アンド・ディアグノスティック・システムズ(Research and Diagnostic Systems)、ミネアポリス(Minneapolis)、MN)及びPSAP(Abnova(登録商標)社、台北(Taipei)、TW)に由来するPGRN/PSAPの複合体を検出するサンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって生成されたデータを図示し(
図6B及び
図6C)、PGRN/PSAP複合体がヒト血漿(
図6D)及びヒトCSF(
図6E)中に存在して、これらのアッセイによってモニタリング可能であることを示す図である。これらのアッセイは、最初にPGRNを捕捉する(
図6B)か、又は最初にPSAPを捕捉し(
図6C)、その後にそれぞれPSAP及びPGRNに対して特異的な検出抗体を用いることの両方によって、複合体を検出する。
【
図6B】
図6Bは、PGRN/PSAPアッセイ(A)を示し、インビトロで集合した商業的に入手可能な組み換えPGRN(リサーチ・アンド・ディアグノスティック・システムズ(Research and Diagnostic Systems)、ミネアポリス(Minneapolis)、MN)及びPSAP(Abnova(登録商標)社、台北(Taipei)、TW)に由来するPGRN/PSAPの複合体を検出するサンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって生成されたデータを図示し(
図6B及び
図6C)、PGRN/PSAP複合体がヒト血漿(
図6D)及びヒトCSF(
図6E)中に存在して、これらのアッセイによってモニタリング可能であることを示す図である。これらのアッセイは、最初にPGRNを捕捉する(
図6B)か、又は最初にPSAPを捕捉し(
図6C)、その後にそれぞれPSAP及びPGRNに対して特異的な検出抗体を用いることの両方によって、複合体を検出する。
【
図6C】
図6Cは、PGRN/PSAPアッセイ(A)を示し、インビトロで集合した商業的に入手可能な組み換えPGRN(リサーチ・アンド・ディアグノスティック・システムズ(Research and Diagnostic Systems)、ミネアポリス(Minneapolis)、MN)及びPSAP(Abnova(登録商標)社、台北(Taipei)、TW)に由来するPGRN/PSAPの複合体を検出するサンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって生成されたデータを図示し(
図6B及び
図6C)、PGRN/PSAP複合体がヒト血漿(
図6D)及びヒトCSF(
図6E)中に存在して、これらのアッセイによってモニタリング可能であることを示す図である。これらのアッセイは、最初にPGRNを捕捉する(
図6B)か、又は最初にPSAPを捕捉し(
図6C)、その後にそれぞれPSAP及びPGRNに対して特異的な検出抗体を用いることの両方によって、複合体を検出する。
【
図6D】
図6Dは、PGRN/PSAPアッセイ(A)を示し、インビトロで集合した商業的に入手可能な組み換えPGRN(リサーチ・アンド・ディアグノスティック・システムズ(Research and Diagnostic Systems)、ミネアポリス(Minneapolis)、MN)及びPSAP(Abnova(登録商標)社、台北(Taipei)、TW)に由来するPGRN/PSAPの複合体を検出するサンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって生成されたデータを図示し(
図6B及び
図6C)、PGRN/PSAP複合体がヒト血漿(
図6D)及びヒトCSF(
図6E)中に存在して、これらのアッセイによってモニタリング可能であることを示す図である。これらのアッセイは、最初にPGRNを捕捉する(
図6B)か、又は最初にPSAPを捕捉し(
図6C)、その後にそれぞれPSAP及びPGRNに対して特異的な検出抗体を用いることの両方によって、複合体を検出する。
【
図6E】
図6Eは、PGRN/PSAPアッセイ(A)を示し、インビトロで集合した商業的に入手可能な組み換えPGRN(リサーチ・アンド・ディアグノスティック・システムズ(Research and Diagnostic Systems)、ミネアポリス(Minneapolis)、MN)及びPSAP(Abnova(登録商標)社、台北(Taipei)、TW)に由来するPGRN/PSAPの複合体を検出するサンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって生成されたデータを図示し(
図6B及び
図6C)、PGRN/PSAP複合体がヒト血漿(
図6D)及びヒトCSF(
図6E)中に存在して、これらのアッセイによってモニタリング可能であることを示す図である。これらのアッセイは、最初にPGRNを捕捉する(
図6B)か、又は最初にPSAPを捕捉し(
図6C)、その後にそれぞれPSAP及びPGRNに対して特異的な検出抗体を用いることの両方によって、複合体を検出する。
【
図7】PGRN(左)、リソソームタンパク質GBA1(上中央)、及びPSAP(下中央)を探索する免疫細胞化学分析によって作成された画像を示す図である。ヒト患者の初代GBA1変異線維芽細胞(上の行)及びマウス一次皮質ニューロン(下の行)を、培養ARPE-PGRN+PSAP同時発現細胞の条件培地に由来する精製PGRN/PSAP複合体に曝露した。マージ(右の列)は、リソソームタンパク質GBA1に対するPGRN、及び皮質ニューロンに対する精製PGRN+PSAP複合体の十分な細胞内ターゲティングを示す。
【
図8A】
図8Aは、ARPE-PGRN、ARPE-PSAP、及びARPE-PGRN+PSAP細胞株からの条件培地及び精製分泌因子の活性を図示する図である。一次マウス皮質ニューロン(
図8A及び
図8C)並びにヒト初代線維芽細胞(
図8B)を、ARPE-19細胞株からの条件培地(
図8A)並びにARPE-19細胞株からの条件培地からの精製PGRN及びPGRN/PSAP複合体(
図8B及び
図8C)に曝露し、分光法を用いてGBA1活性をアッセイした。
【
図8B】
図8Bは、ARPE-PGRN、ARPE-PSAP、及びARPE-PGRN+PSAP細胞株からの条件培地及び精製分泌因子の活性を図示する図である。一次マウス皮質ニューロン(
図8A及び
図8C)並びにヒト初代線維芽細胞(
図8B)を、ARPE-19細胞株からの条件培地(
図8A)並びにARPE-19細胞株からの条件培地からの精製PGRN及びPGRN/PSAP複合体(
図8B及び
図8C)に曝露し、分光法を用いてGBA1活性をアッセイした。
【
図8C】
図8Cは、ARPE-PGRN、ARPE-PSAP、及びARPE-PGRN+PSAP細胞株からの条件培地及び精製分泌因子の活性を図示する図である。一次マウス皮質ニューロン(
図8A及び
図8C)並びにヒト初代線維芽細胞(
図8B)を、ARPE-19細胞株からの条件培地(
図8A)並びにARPE-19細胞株からの条件培地からの精製PGRN及びPGRN/PSAP複合体(
図8B及び
図8C)に曝露し、分光法を用いてGBA1活性をアッセイした。
【
図9A】
図9Aは、埋め込みの24週間後の病理組織診断によるPGRNデバイスの埋め込みの安全性の画像を示す図である。
図9Aは、埋め込み部位(矢印)の周囲のPGRNの広い分布を示す。
【
図9B】
図9Bは、埋め込みの24週間後の病理組織診断によるPGRNデバイスの埋め込みの安全性の画像を示す図である。
図9Bは、Ki67、GFAP、Iba1、及びCD3を探索することによって、対照と比較して細胞増殖、炎症反応、又は浸潤性T細胞がないことを示す。
【
図10A】
図10Aは、線条体におけるチロシンヒドロキシラーゼ陽性ニューロンのアルファ-シヌクレインによってもたらされる損失のレスキューと、行動改善とによって測定される、細胞デバイスの埋め込みのインビボ活性を示す図である。
図10Aは、PGRN、PSAP、及びPGRN-PSAP複合体を充填したデバイスが、デバイス処置していないラットと比較してニューロンの損失を防止したことを示す画像を選択したものである。
【
図10B】
図10Bは、線条体におけるチロシンヒドロキシラーゼ陽性ニューロンのアルファ-シヌクレインによってもたらされる損失のレスキューと、行動改善とによって測定される、細胞デバイスの埋め込みのインビボ活性を示す図である。
図10Bは、同側と対側との差として提示されるTH免疫反応性の濃度測定分析を図示する図である。
図10Bは、TH及びアルファ-シヌクレインのIHC染色の例を示す(アルファ-シヌクレイン過剰発現は、ヒトアルファ-シヌクレイン遺伝子を保有するAAV9ウイルスを黒質に片側注射することによって誘導した)。
【
図10C】
図10Cは、線条体におけるチロシンヒドロキシラーゼ陽性ニューロンのアルファ-シヌクレインによってもたらされる損失のレスキューと、行動改善とによって測定される、細胞デバイスの埋め込みのインビボ活性を示す図である。
図10Cは、黒質(substantial nigra)に片側AAV9-アルファ-シヌクレイン遺伝子注射を受けたラットにおいて、ECB-PGRNがどのように運動機能を改善するかを示す。
【
図10D】
図10Dは、線条体におけるチロシンヒドロキシラーゼ陽性ニューロンのアルファ-シヌクレインによってもたらされる損失のレスキューと、行動改善とによって測定される、細胞デバイスの埋め込みのインビボ活性を示す図である。
図10Dは、黒質に片側AAV9-アルファ-シヌクレイン遺伝子注射を受けたラットにおいて、ECB-PSAP及びECB-PGRN-PSAP複合体がどのように運動機能を改善するかを示す。
【
図11】
図11は、GDNF+PGRN又はGDNF+PSAP又はいずれかの因子のみを同時発現及び分泌するARPE細胞の細胞株及びインビボ活性を示す図である。
図11Aは、それぞれGDNF、PSAP、及びGDNF+PSAPを発現する異なる細胞株のGDNF及びPSAP ELISA分析を示す。
図11Bは、6-OHDAモデルのラットに対する自発的前肢配置使用行動検査の結果を図示する図である。親細胞(プラセボ)か、又はPSAP、PGRN、GDNF及びPGRN、若しくはGDNF及びPSAPのいずれかを分泌する細胞を含むECBデバイスを線条体内に配置した。ラットの肢が支えられずにぶら下がり、その体長がテーブルの端縁と平行になるようにしてラットを保持した。次いでラットをテーブルの側部まで持ち上げて、前記ラットのヒゲをテーブルに接触させた。ナイーブラットは通常、テーブルの上に前肢を置くことによって応答する。アスタリスクはプラセボデバイスで処置したラットを示す。
【
図12A】
図12Aは、チューブリンを探索する免疫細胞化学によって可視化された神経突起伸長の増加と、対照及びGRN変異キャリアに由来するヒト初代線維芽細胞におけるグラニュリン、プロサポシン、サポシンC、及びGCアーゼ活性の増加とを示す図である。細胞培地にPGRN又はPGRN/PSAPのいずれかを補充することによって、ニューロン当りの平均分岐点カウントが増加する。
【
図12B】
図12Bは、チューブリンを探索する免疫細胞化学によって可視化された神経突起伸長の増加と、対照及びGRN変異キャリアに由来するヒト初代線維芽細胞におけるグラニュリン、プロサポシン、サポシンC、及びGCアーゼ活性の増加とを示す図である。細胞培地にPGRN又はPGRN/PSAPのいずれかを補充することによって、平均神経突起長さが増加する。
【
図12C】
図12Cは、対照及びGRN変異体由来の線維芽細胞の細胞培地にPGRN及びPGRN/PSAPを補充することによって、細胞内グラニュリンが増加することを示す図である。
【
図12D】
図12Dは、対照及びGRN変異体由来の線維芽細胞の細胞培地にPGRN及びPGRN/PSAPを補充することによって、細胞内プロサポシンが増加することを示す図である。
【
図12E】
図12Eは、対照及びGRN変異体由来の線維芽細胞の細胞培地にPGRN及びPGRN/PSAPを補充することによって、細胞内サポシンCが増加することを示す図である。
【
図12F】
図12Fは、対照及びGRN変異体由来の線維芽細胞の細胞培地にPGRN及びPGRN/PSAPを補充することによって、細胞内GCアーゼ活性が増加することを示す図である。
【
図13】PGRN-Hisを混合したARPE-PSAP細胞からの濃縮条件培地を注射したラットからの脳へのPGRN及びPSAPの重複する拡散の画像を選択した図である。より高い拡大率では、これらの脳におけるPGRN及びPSAPの細胞内共局在が検出され、His様及びPSAP様免疫反応性の細胞内共局在も検出され、脳室内(ICV:intracerebroventricular)投与されたPGRN/PSAP複合体は脳内に拡散されて脳細胞によって内部移行されることが示唆された。
【
図14A】
図14Aは、マウス及びラット(FIG.14A)におけるPGRN-Hisを混合したARPE-PSAP細胞からの条件培地のICV投与後の脳への分配、内部移行、及びリソソームターゲティングを示す図である。ラットにおける精製PGRN、PGRN/PSAP複合体、及びPGRN-FcのICV投与(
図14B~
図14D)。ブタにおけるPGRN及びPGRN/PSAP複合体を分泌するデバイスのICV埋め込み後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図E)、及びブタにおける精製PGRNの髄腔内投与後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図F)。投与されたPGRN及びPSAPは、マウス及びラットにおいては免疫組織化学的に可視化され(
図14A~
図D)、PGRN ELISAによって可視化された(
図14E及び
図14F)。
【
図14B】
図14Bは、マウス及びラット(FIG.14A)におけるPGRN-Hisを混合したARPE-PSAP細胞からの条件培地のICV投与後の脳への分配、内部移行、及びリソソームターゲティングを示す図である。ラットにおける精製PGRN、PGRN/PSAP複合体、及びPGRN-FcのICV投与(
図14B~
図14D)。ブタにおけるPGRN及びPGRN/PSAP複合体を分泌するデバイスのICV埋め込み後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図E)、及びブタにおける精製PGRNの髄腔内投与後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図F)。投与されたPGRN及びPSAPは、マウス及びラットにおいては免疫組織化学的に可視化され(
図14A~
図D)、PGRN ELISAによって可視化された(
図14E及び
図14F)。
【
図14C】
図14Cは、マウス及びラット(FIG.14A)におけるPGRN-Hisを混合したARPE-PSAP細胞からの条件培地のICV投与後の脳への分配、内部移行、及びリソソームターゲティングを示す図である。ラットにおける精製PGRN、PGRN/PSAP複合体、及びPGRN-FcのICV投与(
図14B~
図14D)。ブタにおけるPGRN及びPGRN/PSAP複合体を分泌するデバイスのICV埋め込み後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図E)、及びブタにおける精製PGRNの髄腔内投与後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図F)。投与されたPGRN及びPSAPは、マウス及びラットにおいては免疫組織化学的に可視化され(
図14A~
図D)、PGRN ELISAによって可視化された(
図14E及び
図14F)。
【
図14D】
図14Dは、マウス及びラット(FIG.14A)におけるPGRN-Hisを混合したARPE-PSAP細胞からの条件培地のICV投与後の脳への分配、内部移行、及びリソソームターゲティングを示す図である。ラットにおける精製PGRN、PGRN/PSAP複合体、及びPGRN-FcのICV投与(
図14B~
図14D)。ブタにおけるPGRN及びPGRN/PSAP複合体を分泌するデバイスのICV埋め込み後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図E)、及びブタにおける精製PGRNの髄腔内投与後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図F)。投与されたPGRN及びPSAPは、マウス及びラットにおいては免疫組織化学的に可視化され(
図14A~
図D)、PGRN ELISAによって可視化された(
図14E及び
図14F)。
【
図14E】
図14Eは、マウス及びラット(FIG.14A)におけるPGRN-Hisを混合したARPE-PSAP細胞からの条件培地のICV投与後の脳への分配、内部移行、及びリソソームターゲティングを示す図である。ラットにおける精製PGRN、PGRN/PSAP複合体、及びPGRN-FcのICV投与(
図14B~
図14D)。ブタにおけるPGRN及びPGRN/PSAP複合体を分泌するデバイスのICV埋め込み後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図E)、及びブタにおける精製PGRNの髄腔内投与後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図F)。投与されたPGRN及びPSAPは、マウス及びラットにおいては免疫組織化学的に可視化され(
図14A~
図D)、PGRN ELISAによって可視化された(
図14E及び
図14F)。
【
図14F】
図14Fは、マウス及びラット(FIG.14A)におけるPGRN-Hisを混合したARPE-PSAP細胞からの条件培地のICV投与後の脳への分配、内部移行、及びリソソームターゲティングを示す図である。ラットにおける精製PGRN、PGRN/PSAP複合体、及びPGRN-FcのICV投与(
図14B~
図14D)。ブタにおけるPGRN及びPGRN/PSAP複合体を分泌するデバイスのICV埋め込み後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図E)、及びブタにおける精製PGRNの髄腔内投与後に脳ライセートのELISA分析を行ったもの(
図F)。投与されたPGRN及びPSAPは、マウス及びラットにおいては免疫組織化学的に可視化され(
図14A~
図D)、PGRN ELISAによって可視化された(
図14E及び
図14F)。
【
図15】
図15は、AAV-アルファ-シヌクレインラットパーキンソン病モデルにおける、それぞれの治療薬を分泌する封入細胞デバイスの埋め込みから12週間後のPGRN(
図15A)、PSAP(
図15B)、及びPGRN+PSAP(
図15C)の産生を図示した図である。
【
図16】本出願で用いた細胞株の構築に用いたpT2.CAn.PGRNプラスミドのマップを図示した図である。遺伝子配列は、左及び右の逆方向反復/直列反復配列(IR/DR:inverted repeat/direct repeat elements)の間に挿入され、スリーピングビューティートランスポザーゼシステムによって宿主ゲノムに組み込まれる。この例において、スリーピングビューティーシステムによって挿入される遺伝子はPGRN、Neo、及びプロモーター配列(CA)である。このプラスミド配列は配列番号1として記載される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
前頭側頭型認知症(FTD)及びGRN関連の前頭側頭型認知症、GBA1変異に関連するレビー小体認知症(LBD/GBA1)、パーキンソン病(PD)、及びゴーシェ病の患者の脳内では、遺伝子GBA1にコードされるリソソーム酵素のグルコセレブロシダーゼ(GCアーゼ:glucocerebrosidase)の活性が減少する。GCアーゼ活性の回復は、これらの適応症に対する主要な治療目標である。加えて、プロサポシンの変異は、常染色体優性遺伝性PDに関連付けられている。同様に、プログラニュリンをコードする遺伝子に損傷を与えるいくつかの変異がPDに関連付けられている。細胞外投与された組み換えプログラニュリン(PGRN)、プロサポシン(PSAP)、及び組み換えPGRN+PSAP複合体は、ヒト線維芽細胞のリソソームに内部移行されてGCアーゼと共局在し、一次皮質ニューロン(FTD、LBD、進行PD、及びALSに対する標的細胞型)におけるGCアーゼ活性を増加させる。加えて、ARPE-PGRN、ARPE-PSAP、及びARPE-PGRN+PSAP細胞、すなわちECB-PGRN、ECB-PSAP、及びECB-PGRN+PSAP療法の治療製剤に由来する条件培地は、一次皮質ニューロンにおけるGCアーゼ活性を増加させる。このデータは、異なるヒト疾患においてGCアーゼ活性を刺激及びレスキューするために、組み換えPGRN、PSAP、若しくはPGRN/PSAP、又はそれらに対応するECB療法を用いることを支持するものである。
【0026】
シヌクレイン病LBD及びPDに対して、GCアーゼ活性の減少と、アルファ-シヌクレイン病態/レビー小体病態の発達の増加との間には強い関連がある。GCアーゼの刺激と、アルファ-シヌクレインミスフォールディングを標的とする免疫療法とを単一の治療法に組み合わせることには強力な論拠がある。重要なことに、GCアーゼ活性障害の有害な結果は、レビー小体(LB)形成に制限されず、他のやり方でニューロンの健康にも影響を与えて致死的結果をもたらすことが示されている。このことは、レビー小体形成の加速に加えて、疾患の進行、認知症の発達、及び致死率さえもが、GBA1変異を有さないPDと比較してPD/GBA1の方が積極的かつ頻繁であるという事実によって示唆される。よって、GCアーゼ活性の増強とアルファ-シヌクレインターゲティング免疫療法との組み合わせの結果として、複数の治療効果が期待される。本出願の新規のアルファ-シヌクレインターゲティング抗体フラグメントは、次のいくつかのレベルでアルファ-シヌクレイン病態の発達を妨げるように設計されたものである。凝集の阻害、複数のアルファ-シヌクレイン種(単量体、オリゴマー、原線維)への結合、及び広いエピトープカバレッジを示すことによって、できる限り効率的にアルファ-シヌクレイン病態の発達を妨げ、かつシンク効果を誘導する。(PGRN、PSAP、及び抗アルファ-シヌクレインターゲティング抗体フラグメントを分泌するクローンARPE-19細胞株の生成の実現可能性、証明を示す方法ポイント7を参照。)この細胞株は、PDの2つのラット動物モデル(パーキンソンアルファ-シヌクレイン及び6-OHDAモデル)における8~12週間の研究における治療効果を証明する。このために、PGRN、PSAP、及びPGRN+PSAP+抗アルファ-シヌクレイン療法は、両方のモデルにおいて行動に対する正の影響を有する。考察されるとおり、GCアーゼ刺激性因子のプログラニュリン及びプロサポシンと、抗アルファ-シヌクレイン免疫療法とは、PD及びLBD病理学的カスケードの異なるレベルにおいて神経保護を媒介する。これらの活性に加えて、すでに損傷したニューロンの機能を回復させることが求められる。神経再生活性を治療的に媒介することは、前述の神経保護治療薬を補完することによって、できる限り臨床的に有意義な治療法を達成するだろう。GDNFは、動物モデル及び一部の患者において神経再生活性を媒介することが示されている分泌因子である。請求される本発明の一実施形態は、複数の神経保護活性と神経再生活性とを全て単一の治療法において組み合わせたものからなる独自の治療法に向けられたものである。
図1~16に示されるデータによって示されるとおり、処置の2~12週間後のパーキンソン病の6-OHDAラットモデルの行動改善を、次のECB療法によって観察した:ARPE-PGRN、ARPE-PGRN+PSAP+抗アルファ-シヌクレイン、ARPE-PGRN+GDNF、及びARPE-PSAP+GDNF。よってこのデータは、リソソームシグナル伝達及び神経修復の両方を標的とするいくつかの治療因子を同時発現するARPE細胞株に基づく有効なECB療法を生成可能であることを証明する。加えて、パーキンソン病/シヌクレイン病のラットモデルであるヒトアルファ-シヌクレイン過剰発現モデルにおけるECB-PGRN、ECB-PSAP、及びPGRN+PSAP+抗アルファ-シヌクレインの組み合わせの治療活性(行動改善)も示され、パーキンソン病及びその他のシヌクレイン病に対するこれら5つの異なる治療法に対する概念の前臨床的証明が提供され、これは
図1~16に示されるデータによって支持される。
【0027】
GRN関連の前頭側頭型認知症(FTD)は、分泌因子プログラニュリンのハプロ不全によって引き起こされ、プログラニュリンはシグナル伝達を、細胞外で異なる細胞表面受容体を介して媒介することと、細胞内のリソソームのレベルで媒介することとの両方を行い、それはリソソームで例えばカテプシンD、PSAP、及びGCアーゼなどの複数の因子を調節する。PGRNシグナル伝達を回復させることは、GRN関連FTDの主要な治療目標である。FTD/GRNにおけるPGRNの欠損には、ニューロンPSAPレベルの減少及びGCアーゼ活性の低下が付随する。FTD/GRNにおいて細胞内PGRN/PSAP複合体のレベルがどの程度まで影響されるか、又はこの疾患が遊離PSAP及びPGRN/PSAP複合体の細胞外レベルにどの程度(extend)まで影響するかは未知である。
図1~16は、PGRNがヒト血漿及びCSFにおいてPSAPとの複合体であり、したがってFTD/GRN並びにPGRN、PSAP、及びGCアーゼのシグナル伝達に関係するその他の障害の診断に強く関連するバイオマーカーであることを示す。循環PGRN/PSAPの絶対レベルと、循環PGRN/PSAP対遊離循環PGRN及び遊離循環PSAPの相対比との両方が、診断、予後、並びに薬物曝露及び処置応答のモニタリングのために重要であると考えられる。PGRN/PSAPがCSFに存在してヒト皮質と直接接触するという発見は重要であり、PGRN及びPGRN/PSAP複合体の両方が、FTD/GRN病態形成におけるPGRNハプロ不全による神経変性を受けた、最初に発症した脳領域における内在性の細胞外発現された分子であることを示すものである。組み換えタンパク質のIT若しくはICV投与又はPGRN及びPGRN/PSAP複合体のECBに基づく送達の後に、PGRN及びPGRN/PSAP複合体は両方とも脳内に拡散する。更に
図1~16は、脳室内投与されたPGRN/PSAP混合物が脳内で神経突起と共局在することを示す。まとめると、
図1~16に示されるデータは、IT及びICV投与されたPGRN、PSAP、及びPGRN/PSAP複合体がCSF区画から脳及び標的ニューロンに効率的に拡散し、細胞内グラニュリン、プロサポシン、及びサポシンCレベル、並びにGCアーゼ活性をレスキューすることを最終的に示す。このデータは、疾患におけるPGRN及びPSAPレベル並びにシグナル伝達の刺激及び/又は回復を目的とする治療法に対する付随バイオマーカーとしてのPGRN、PSAP、及びPGRN/PSAP複合体に特異的な特異的アッセイが必要であることを支持する。
【0028】
PGRN/PSAP複合体は神経栄養活性を媒介する。
図1~16は、げっ歯類の一次皮質ニューロンの神経突起伸長の刺激を証明する。PGRN及びPSAPの両方が神経栄養因子であることが示されている。
図1~16に示されるデータは、FTD/GRN、FTD/TDPすなわち一般的なTDP病態を有するFTD(GRNハプロ不全である必要はない)、LBD/GBA1、PD及びPD/GBA1、並びにALSにおける神経保護治療薬としてPGRN/PSAPを用いることを示唆及び支持する。
【0029】
神経セロイドリポフスチン症(NCL:Neuronal ceroid lipofuscinosis)は、PGRNの欠損(100%欠損)によって引き起こされるリソソーム蓄積障害である。細胞外投与されたPGRN又はPGRN/PSAP複合体は、内部移行されてリソソームに局在する。加えて、ARPE-PGRN及びARPE-PGRN+PSAPからの条件培地は同じ活性をもたらすため、NCLにおけるリソソームPGRNシグナル伝達をレスキューするために、PGRN又はPGRN/PSAPのECBに基づく投与が用いられる。
【0030】
ALS、FTD、及びADにおいて、TDP病態は最も一般的なタンパク質症である。FTD/GRNにおけるPGRN欠損は、TDP病態に関連する神経変性をもたらす。ALS/TDPのマウスモデルとPGRNを過剰発現するマウスとを交配すると、結果として重症度の低いALS様の表現型が得られたため、PGRNはTDP関連ALSに対する治療薬となると考えられる。この先行技術に基づき、PGRN/PSAPは、ALS/TDP並びにFTD/TDP及びADに対する治療薬として用いてもよい。特に、ALS病態形成(並びにFTD、LBD、及びAD)における主要な領域である脊柱管及び皮質を標的とするPGRN又はPGRN/PSAPのIT投与は、有効な処置として非常に期待できる。
図1~16に示されるデータは、IT投与されたPGRNと、ICV投与されたPGRN及びPGRN/PSAP複合体とが脳内に拡散して、ALS、FTD、LBD、及びADに対する主要な関連区域を標的とすることを示す。PGRN、PSAP、又はPGRN/PSAPのいずれかのCSFから脳への拡散は、これまで誰にも実証されていない。
[実施例]
【実施例1】
【0031】
《ARPE-PGRN細胞株の生成》
ARPE-19細胞(ATCC(登録商標)、マナッサス(Manassas)、VA)をF12/DMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium):栄養混合物(Nutrient Mixture)F-12、Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)(Gibco(登録商標)、cat no.31331-028、10%FCS及びペニシリン/ストレプトマイシン(PEST:penicillin/streptomycin)を補充)(以後「完全培地」と呼ぶ)中で70%の集密度まで生育させた。トランスフェクションの当日に、細胞培地を無血清培地で置換し、ニワトリベータアクチンプロモーター及びCMVエンハンサーの下で共通のヒトプログラニュリン遺伝子を構成的に発現するプラスミドで、細胞をトランスフェクトした。この組み換え発現コンストラクトはネオマイシン選択遺伝子も含んでおり、かつスリーピングビューティー転位因子に隣接していた。スリーピングビューティートランスポザーゼの一過性発現を用いて、PGRN cDNAトランスジーンコンストラクトのコピーを安定に組み込んだ(スリーピングビューティートランスポゾンシステム)。Promega(登録商標)Fugene 6(登録商標)トランスフェクションキット(Promega(登録商標)社、マディソン(Madison)、WI)を用い、製造者の指示に従ってプラスミドを導入した。トランスフェクションの48時間後に、細胞を1:10に分割し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地の存在下で10cm
2の組織培養皿に播種して、ネオマイシン選択マーカーを発現するクローンを選択した。14日後、個々のコロニーを収集し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地に広げた。異なるクローンの細胞株について、R&D Systems(登録商標)抗ヒトPGRN DuoSet(登録商標)キット(R&D Systems(登録商標)、ミネアポリス(Minneapolis)、MN)を用いて分泌PGRNを分析した。更に、ARPE-PGRN細胞のPGRN/PSAP複合体の分泌も分析した(PGRN/PSAP複合体モニタリングの方法についてはセクション12及び13を参照)。前述のPGRN及びPGRN/PSAP複合体アッセイ(
図1)と、条件培地の架橋に続くPGRN及びPSAPに向けられた抗体を用いたウエスタンブロット分析(
図2)とによって決定されたとおり、封入されたARPE-PGRN細胞は、PGRN及びPGRN/PSAP複合体の両方を分泌する。ARPE-PGRNクローン#56を選択して、インビトロで更なる特徴付けを行い、かつインビトロ及びインビボでの治療法の評価のために封入した。
【実施例2】
【0032】
《ARPE-PSAP細胞株の生成》
ARPE-19細胞(ATCC(登録商標)、マナッサス、VA)を完全培地中で70%の集密度まで生育させた。トランスフェクションの当日に、細胞培地を捨てて無血清培地で置換した。Promega(登録商標)Fugene 6(登録商標)トランスフェクションキット(Promega(登録商標)社、マディソン、WI)を用い、製造者の指示に従って、ヒトPSAP cDNAをコードするプラスミド(スリーピングビューティートランスポゾンシステム)で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を1:10に分割し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地の存在下で10cm
2の組織培養皿に蒔いた。14日後、個々のコロニーを収集し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地に広げた。異なるクローンのARPE-PSAP細胞株について、セクション11に記載されるELISAアッセイ(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を用いて分泌PSAPを分析した。封入されたARPE-PSAP細胞はPSAPを分泌するのに対し、PGRNもPGRN/PSAP複合体も検出できなかった(
図3)。
【実施例3】
【0033】
《ARPE-PGRN+PSAP細胞株の生成》
ARPE-19-PGRN#56細胞を完全培地中で70%の集密度まで生育させ、次いで、PSAPをコードするプラスミドのG418選択遺伝子をハイグロマイシン選択遺伝子で置換したこと以外はセクション2に記載されるとおりに、PSAPをコードするプラスミドでトランスフェクトした。培地にGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)(800μg/ml)及びHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス(St.Louis)、MO)(500μg/ml)の両方が含まれることを除いては上記のとおりに、クローン細胞株の生成を達成した。ELISA(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)によって、PGRN及びPSAPの両方を発現するクローン細胞株を識別した。ARPE-PGRN+PSAP細胞からの条件培地の分子ふるいクロマトグラフィーに由来する異なる画分の分析によって評価されるとおり、封入されたARPE-PGRN+PSAP細胞は、ほとんどPGRN/PSAP複合体を分泌する(
図4)。
【実施例4】
【0034】
《アルファ-シヌクレインターゲティングARPE-scFv81細胞株の生成》
ARPE-19細胞(ATCC(登録商標)、マナッサス、VA)を完全培地中で70%の集密度まで生育させた。トランスフェクションの当日に、細胞培地を捨てて無血清培地で置換した。Promega(登録商標)Fugene 6(登録商標)トランスフェクションキット(Promega(登録商標)社、マディソン、WI)を用い、製造者の指示に従って、次のコンストラクト(シグナルペプチド-scFv81-Flag-His)3):
MGILPSPGMPALLSLVSLLSVLLMGCVALPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIYGSGGYTSYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARTYGGRFDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYTYPPTFGQGTKLEIKRTDYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDKAAAHHHHHH(配列番号15)
をコードするプラスミド(スリーピングビューティートランスポゾンシステム)で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を1:10に分割し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地の存在下で10cm
2の組織培養皿に蒔いた。14日後、個々のコロニーを収集し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地に広げた(
図5)。
【実施例5】
【0035】
《アルファ-シヌクレインターゲティングARPE-scFv49細胞株の生成》
ARPE-19細胞(ATCC(登録商標)、マナッサス、VA)を完全培地中で70%の集密度まで生育させた。トランスフェクションの当日に、細胞培地を捨てて無血清培地で置換した。Promega(登録商標)Fugene 6(登録商標)トランスフェクションキット(Promega(登録商標)社、マディソン、WI)を用い、製造者の指示に従って、次のコンストラクト(シグナルペプチド-scFv49-Flag-His)4):
MGILPSPGMPALLSLVSLLSVLLMGCVALPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARSYSAFDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQITGYLFTFGQGTKLEIKRTDYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDKAAAHHHHHH(配列番号13)
をコードするプラスミド(スリーピングビューティートランスポゾンシステム)で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を1:10に分割し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地の存在下で10cm
2の組織培養皿に蒔いた。14日後、個々のコロニーを収集し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地に広げた。scFv49の発現及び分泌を観察した(
図5)。
【実施例6】
【0036】
《アルファ-シヌクレインターゲティングARPE-scFv113細胞株の生成》
ARPE-19細胞(ATCC(登録商標)、マナッサス、VA)を完全培地中で70%の集密度まで生育させた。トランスフェクションの当日に、細胞培地を捨てて無血清培地で置換した。Promega(登録商標)Fugene 6(登録商標)トランスフェクションキット(Promega(登録商標)社、マディソン、WI)を用い、製造者の指示に従って、次のコンストラクト(シグナルペプチド-scFv113-Flag-His)5):
MGILPSPGMPALLSLVSLLSVLLMGCVALPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFYGSGMSWVRQAPGKGLEWVSGISSYGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARANYWHSSLDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSAGLLTFGQGTKLEIKRTDYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDKAAAHHHHHH(配列番号17)
をコードするプラスミド(スリーピングビューティートランスポゾンシステム)で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を1:10に分割し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地の存在下で10cm
2の組織培養皿に蒔いた。14日後、個々のコロニーを収集し、800μg/mlのGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を補充した完全培地に広げた(
図5)。
【実施例7】
【0037】
《ARPE-PGRN+PSAP+scFv81細胞株の生成》
クローンARPE-PGRN細胞を完全培地中で70%の集密度まで生育させ、次いで、セクション3に記載されるPSAPをコードするプラスミドと、セクション5に記載されるコンストラクト(シグナルペプチド-scFv81-Flag-His)をコードするプラスミド(スリーピングビューティートランスポゾンシステム)とでトランスフェクトした。Geneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)(800μg/ml)及びHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)(500μg/ml)の存在下でトランスフェクタントを培養することによって、クローン細胞株の生成を達成した。免疫細胞化学分析(ICC:immunocytochemical analysis)によって、PGRN、PSAP、及びscFv81を発現するクローン細胞株を識別した。PGRN、PSAP、及びscFv81を発現するクローンD5(#D5)を更なる分析のために選択した(
図5)。
【実施例8】
【0038】
《アルファ-シヌクレインターゲティングARPE-Fc-scFv81細胞株の生成》
ARPE-19細胞(ATCC(登録商標)、マナッサス、VA)を完全培地中で70%の集密度まで生育させた。トランスフェクションの当日に、細胞培地を捨てて無血清培地で置換した。Promega(登録商標)Fugene 6(登録商標)トランスフェクションキット(Promega(登録商標)社、マディソン、WI)を用い、製造者の指示に従って、次のペプチド(シグナルペプチド-Fc-scFv81)6):
MPLLLLLPLLWAGALAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIYGSGGYTSYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARTYGGRFDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYTYPPTFGQGTKLEIKGGGGSKPCICTGSEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISQDDPEVHFSWFVDDVEVHTAQTRPPEEQFNSTFRSVSELPILHQDWLNGRTFRCKVTSAAFPSPIEKTISKPEGRTQVPHVYTMSPTKEEMTQNEVSITCMVKGFYPPDIYVEWQMNGQPQENYKNTPPTMDTDGSYFLYSKLNVKKEKWQQGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK(配列番号7)
をコードするcDNAを有する、セクション3に記載されるプラスミド(スリーピングビューティートランスポゾンシステム、Hygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)選択遺伝子)で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を1:10に分割し、500μg/mlのHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)を補充した完全培地の存在下で10cm2の組織培養皿に蒔いた。14日後、個々のコロニーを収集し、500μg/mlのHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)を補充した完全培地に広げた。
【実施例9】
【0039】
《アルファ-シヌクレインターゲティングARPE-Fc-scFv49細胞株の生成》
ARPE-19細胞(ATCC(登録商標)、マナッサス、VA)を完全培地中で70%の集密度まで生育させた。トランスフェクションの当日に、細胞培地を捨てて無血清培地で置換した。Promega(登録商標)Fugene 6(登録商標)トランスフェクションキット(Promega(登録商標)社、マディソン、WI)を用い、製造者の指示に従って、次のペプチド(シグナルペプチド-Fc-scFv49)7):
MPLLLLLPLLWAGALAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARSYSAFDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQITGYLFTFGQGTKLEIKGGGGSKPCICTGSEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISQDDPEVHFSWFVDDVEVHTAQTRPPEEQFNSTFRSVSELPILHQDWLNGRTFRCKVTSAAFPSPIEKTISKPEGRTQVPHVYTMSPTKEEMTQNEVSITCMVKGFYPPDIYVEWQMNGQPQENYKNTPPTMDTDGSYFLYSKLNVKKEKWQQGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK(配列番号11)
をコードするcDNAを有する、セクション3に記載されるプラスミド(スリーピングビューティートランスポゾンシステム、Hygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)選択遺伝子)で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を1:10に分割し、500μg/mlのHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)を補充した完全培地の存在下で10cm
2の組織培養皿に蒔いた。14日後、個々のコロニーを収集し、500μg/mlのHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)を補充した完全培地に広げた。Fc-scFv49の発現及び分泌を観察した(
図5)。
【実施例10】
【0040】
《アルファ-シヌクレインターゲティングARPE-Fc-scFv113細胞株の生成》
ARPE-19細胞(ATCC(登録商標)、マナッサス、VA)を完全培地中で70%の集密度まで生育させた。トランスフェクションの当日に、細胞培地を捨てて無血清培地で置換した。Promega(登録商標)Fugene 6(登録商標)トランスフェクションキット(Promega(登録商標)社、マディソン、WI)を用い、製造者の指示に従って、次のペプチド(シグナルペプチド-Fc-scFv113)8):
MPLLLLLPLLWAGALAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFYGSGMSWVRQAPGKGLEWVSGISSYGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARANYWHSSLDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSAGLLTFGQGTKLEIKGGGGSKPCICTGSEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISQDDPEVHFSWFVDDVEVHTAQTRPPEEQFNSTFRSVSELPILHQDWLNGRTFRCKVTSAAFPSPIEKTISKPEGRTQVPHVYTMSPTKEEMTQNEVSITCMVKGFYPPDIYVEWQMNGQPQENYKNTPPTMDTDGSYFLYSKLNVKKEKWQQGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK(配列番号9)
をコードするcDNAを有する、セクション3に記載されるプラスミド(スリーピングビューティートランスポゾンシステム、Hygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)選択遺伝子)で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を1:10に分割し、500μg/mlのHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)を補充した完全培地の存在下で10cm2の組織培養皿に蒔いた。14日後、個々のコロニーを収集し、500μg/mlのHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)を補充した完全培地に広げた。
【実施例11】
【0041】
《ARPE-GDNF+PSAP細胞株の生成》
ARPE-19-GDNF細胞を完全培地中で70%の集密度まで生育させ、次いで、PSAPをコードするプラスミドのG418選択遺伝子をハイグロマイシン選択遺伝子で置換したこと以外はセクション2に記載されるとおりに、PSAPをコードするプラスミドでトランスフェクトした。培地にGeneticin(登録商標)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)(800μg/ml)及びHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス(St.Louis)、MO)(500μg/ml)の両方が含まれることを除いては前に考察したとおりに、クローン細胞株の生成を達成した。
図11に示されるとおり、ELISA(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)によって、GDNF及びPSAPの両方を発現するクローン細胞株を識別した。
【実施例12】
【0042】
《ヒトPSAPのELISAアッセイ》
捕捉抗体(マウスmAb Abnova(登録商標)cat no.H00005660-M01、0.43mg/ml(Abnova(登録商標)社、台北、TW))をリン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)(HyClone(登録商標)ラボラトリーズ社(Laboratories、Inc.)、サウスローガン(South Logan)、UT)で1:500に希釈し、50μI/ウェルをNunc MaxiSorp(商標)プレート(cat no.442404(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA))に加えた。プレートを室温(RT:room temp)にて一晩(ON:overnight)インキュベートした。次いで反応混合物を捨てた後にウェルをPBS/Tween20(0.1%)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)で3回洗浄してから、各ウェルに150μlのブロッキング溶液(PBS/Tween/BSA(2%))(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー(Tewksbury)、MA)を加えた。RTにて2時間インキュベートした後、プレートをPBS/Tween20(0.1%)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)で2回洗浄してから、PBS/Tween20(0.1%)/1%ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA:Bis(trimethylsilyl)acetamide)(Me3SiNC(OSiMe3)Me)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)で希釈したサンプルを加えた。結合反応物をRTにて2時間置き、次いで除去した後にPBS/Tween20(0.1%)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)で3回洗浄した。次いで、50μl/ウェルの検出抗体(Rb抗PSAP、HPA004426、0.1mg/ml、PBS/Tween20(0.1%)/BSA(1%)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)で1:300に希釈)を加え、反応物をRTにて2時間置いた。更に3回洗浄後、50μl/ウェルの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)コンジュゲート抗Rb IgG抗体を加え、プレートをRTにて1時間インキュベートした。最後にプレートをPBS/Tween20(0.1%)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)で3回洗浄し、1 Step(商標)TMBウルトラ(Ultra)試薬(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を用いた後に1体積の2M H2SO4を加えて反応を停止させて、HRP活性をモニタリングした。その後、Molecular Devices(登録商標)マイクロプレートリーダー(Promega(登録商標)社、マディソン、WI)を用いて450nmの吸光度をモニタリングした。標準物質としてヒト組み換えPSAPを用いた(ABCAM(登録商標)、cat nr:203534(ABCAM(登録商標)PLC社、ケンブリッジ(Cambridge)、UK))。
【実施例13】
【0043】
《ヒトPGRN/PSAP複合体アッセイ(
図6Aに示される)》
捕捉抗体の抗PGRN抗体(hPGRN ELISA DuoSet(登録商標)キット(R&D Systems(登録商標)、ミネアポリス、MN))を製造者の指示に従って希釈し、Nunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレート(cat no.442404(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA))に50μl/ウェルを加えた。反応物を室温(RT)にてインキュベートした。次いで反応物を捨てて、プレートをPBS/Tween20(0.1%)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)で3回洗浄した。その後、約150μlのブロッキング溶液(PBS/Tween/BSA(2%)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA))を加え、プレートをRTにて2時間インキュベートした。次いでプレートをPBS/Tween20(0.1%)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)で2回洗浄してから、PBS/Tween20(0.1%)/BSA(1%)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)で希釈したサンプルを加えた。RTにて2時間インキュベートした後、プレートを3回洗浄してから、PSAPを認識する抗体(抗PSAP、HPA004426、0.1mg/ml、PBS/Tween20(0.1%)/BSA(1%)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)で1:300に希釈)を加えた。反応物をRTにて2時間インキュベートした。3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗Rb IgG抗体を加えて、反応物をRTにて1時間インキュベートした。最後にプレートを3回洗浄し、1 Step(商標)TMBウルトラ試薬(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を用いた後に1体積の2M H
2SO
4を加えて反応を停止させて、HRP活性をモニタリングした。最後に450nmにて吸光度を読取った。標準物質として、ARPE-PGRN/PSAP細胞からの条件培地に由来する精製PGRN/PSAP複合体を用いた。PGRN/PSAPをPBS/Tween20(0.1%)/BSA(1%)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)で希釈した。
図6によって証明されるとおり、組み換えPGRN及びPSAPに由来するPGRN/PSAP複合体のモニタリングはインビトロで集合した。ARPE-PGRN及びARPE-PGRN+PSAP細胞並びにデバイスから分泌され、条件細胞培養培地から精製されたPGRN/PSAP複合体は、このPGRN/PSAP複合体ELISA(全てのCSFサンプルをPBS/Tween20(0.1%)/BSA(1%)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)で1:1に希釈した)によってヒト血漿及びCSFにおいて検出可能である(
図6)。
【実施例14】
【0044】
《ヒトPSAP/PGRN複合体アッセイ(
図6Aに示される)》
捕捉抗体のマウスmAb抗PSAP抗体(Abnova(登録商標)cat no.H00005660-M01、0.43mg/ml(Abnova(登録商標)社、台北、TW))、をPBS(HyClone(登録商標)ラボラトリーズ社、サウスローガン、UT)で1:500に希釈し、50μl/ウェルのNunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレート(cat no.442404(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA))を加えた。プレートを室温(RT)にてインキュベートした後、反応混合物を捨てて、プレートをPBS/Tween20(0.1%)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)で3回洗浄した。次いで、150μlのブロッキング溶液(PBS/Tween/BSA(2%)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA))を加え、プレートを室温にて2時間インキュベートした。次いでプレートをPBS/Tween20(0.1%)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)で2回洗浄してから、PBS/Tween20(0.1%)/BSA(1%)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)で希釈したサンプルを加えた。反応物をRTにて2時間置いて除去し、その後PBS/Tween20(0.1%)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)で3回洗浄した。次いで、50μl/ウェルの検出抗体(ビオチン化抗PGRN抗体、R&D Systems(登録商標)hPGRN ELISA DuoSet(登録商標)キット(R&D Systems(登録商標)、ミネアポリス、MN)、製造者の指示に従ってPBS/Tween20(0.1%)/BSA(1%)(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)で希釈)を加え、反応物をRTにて2時間置いた。更に3回洗浄後、50μl/ウェルのHRPコンジュゲートストレプトアビジン(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を加え、プレートをRTにて30分間インキュベートした。最後にプレートを3回洗浄し、1 Step(商標)TMBウルトラ試薬(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を用いた後に1体積の2M H
2SO
4を加えて反応を停止させて、HRP活性をモニタリングした。最後に450nmにて吸光度を読取った。
図6は、インビトロで集合した組み換えPGRN及びPSAPに由来するPSAP/PGRN複合体のモニタリングを示す。ARPE-PGRN及びARPE-PGRN+PSAP細胞から分泌されたPSAP/PGRN複合体も、このPSAP/PGRN複合体ELISAによって検出可能である(
図1)。分析物として前述の細胞株からの条件培地を用いて、架橋/ウエスタンブロット実験の組み合わせによって、ARPE、ARPE-PGRN、ARPE-PSAP、及びARPE-PGRN+PSAP+scFv81細胞からのプログラニュリン/プロサポシン複合体の放出を更に分析した(
図2)。コンフルエントな細胞培養物をFreeStyle(商標)293発現培地(Invitrogen/Thermo Fisher Scientific(登録商標)、カールスバッド(Carlsbad)、CA)中で96時間条件付けした。次いでBS3架橋剤(25mMストック、H
2O中)(Pierce Biotechnology/Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を最終濃度1mMとなるように加え、反応物を室温(RT)にて1時間保った。その後、1M Tris-HCl(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)(pH8.0)部分を添加(5%v/v)して架橋反応を停止させた。反応物及び対照(架橋剤を添加していない条件培地)のアリコートを4~12%SDS-PAGEゲル(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)に流した後、iBlot技術(Invitrogen/Thermo Fisher Scientific(登録商標)、カールスバッド、CA)を用いてPVDF膜(Millipore Sigma(登録商標)、バーリントン(Burlington)、MA)に転写した。5%のミルク(w/v)を補充したTBS/Tween20(0.1%、v/v)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)に膜を浸し、RTにて1時間置いた。その後、膜をヤギ抗PGRN抗体(AF2420 1:500)(R&D Systems(登録商標)、ミネアポリス、MN))及びウサギ抗PSAP抗体(HPA004426 1:200、HPA)に順に曝露した。それぞれHRPコンジュゲート抗ヤギ及び抗Rb抗体によっていずれかの抗体の標識を検出し、発光基質(Pierce(商標)ECLウエスタンサイエンティフィックブロッティング基質(Western Scientific Blotting Substrate)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)又はLuminata(商標)フォルテ(Forte)ELISA HRP基質(MilliporeSigma(登録商標)、バーリントン、MA))によってHRP活性を検出した。このデータは、全ての細胞株がPSAPを発現するのに対し、PGRNはPGRNを安定に発現する細胞においてのみ検出できたことを支持する。更に、抗PGRN及び抗PSAP抗体の両方によって標識された、ゲルの同じレベルに移動する高分子量のバンドは、ARPE-PGRN及びARPE-PGRN+PSAP+scFv81細胞のみにおいて検出される。したがって、PGRN/PSAP複合体は、PGRN又はPGRN及びPSAPの両方を安定に発現するARPE細胞によって形成及び分泌される。
【実施例15】
【0045】
《封入されたARPE-PGRN、ARPE-PSAP、及びARPE-PGRN+PSAP+scFv81過剰発現細胞の分泌治療因子》
前述の細胞株を前に記載した方法に従って封入した。ここからは、封入された細胞株をそれぞれPGRN-、PSAP-、及びPGRN+PSAPデバイスと表す。全てのデバイスをGibco HE-SFM培地(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)中で37℃、5%CO
2にて2週間から5ヵ月の範囲の長期間にわたり培養した。条件培地のアリコートのPGRN、PSAP、及びPGRN+PSAP分泌を分析した。PGRN-デバイスはPGRN及びPGRN/PSAP複合体の両方を分泌し、PSAP-デバイスはPSAPのみを分泌し、PGRN+PSAPデバイスはPGRN/PSAP複合体のみを分泌する(
図3)。
【実施例16】
【0046】
《ARPE-PGRN、ARPE-PSAP、及びARPE-PGRN+PSAP細胞株からの分泌因子の活性;皮質ニューロンのターゲティング》
225cm
2の組織培養皿内の完全培地中で細胞を集密度まで生育させた。次いで細胞培地をGibco(登録商標)FreeStyle(商標)293発現培地(Invitrogen/Thermo Fisher Scientific(登録商標)、カールスバッド、CA)で置換し、細胞を37℃、5%CO
2にて72時間培養した。その後培地を回収し、Amicon(登録商標)ウルトラ(Ultra)-4遠心フィルター(Millipore Sigma(登録商標)、バーリントン、MA)カットオフ30kDaを用いて濃縮した。マウス一次皮質ニューロンを胎生期17日から調製し、37℃、5%CO
2にて12~14日間培養し(Div12~14)、最終[PGRN]、[PSAP]、又は[PGRN/PSAP]が1μg/mlとなるように濃縮条件培地に曝露した。反応物を一晩置き、その後細胞を固定して、PGRN、PSAP、及びLAMP1を含む異なるリソソームマーカーに対する特異的な抗体を用いた免疫細胞化学分析に供した。
図7はPGRN/PSAP複合体による皮質ニューロンのターゲティングを示し、これは皮質ニューロンに対する非常に強力な相互作用を示す。
【実施例17】
【0047】
《ARPE-PGRN、ARPE-PSAP、及びARPE-PGRN+PSAP細胞株からの分泌因子の活性;GBA1活性の刺激》
225cm
2の組織培養皿内の完全培地中で異なるARPE-細胞株を集密度まで生育させた。次いで細胞培地をGibco(登録商標)FreeStyle(商標)293発現培地(Invitrogen/Thermo Fisher Scientific(登録商標)、カールスバッド、CA)で置換し、細胞を37℃、5%CO
2にて更に72時間培養した。次いで条件培地を回収し、Amicon(登録商標)ウルトラ-4遠心フィルター(Millipore Sigma(登録商標)、バーリントン、MA)カットオフ30kDaを用いて濃縮した。その後、一次マウス皮質ニューロンのDiv12~14を、1μg/mlの最終[PGRN]及び[PGRN/PSAP]にて濃縮条件培地に曝露した。反応物を37℃、5%CO
2にて24時間置き、次いでNunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレート(cat no.442404(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA))から培地を捨てることによって反応を終了させた後に、活性緩衝剤NaCitrate(商標)((クエン酸三ナトリウム二水和物)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)(pH5.4))、Triton(商標)X-100(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)(0.25%(v/v))、タウロコール酸(2-{[(3α,5β,7α,12α)-3,7,12-トリヒドロキシ-24-オキソコラン-24-イル]アミノ}エタンスルホン酸)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)(0.25%(w/v))、及び1mM EDTA(2,2′,2″,2″′-(エタン-1,2-ジイルジニトリロ)四酢酸(2,2′,2″,2″′-(Ethane-1,2-diyldinitrilo)tetraacetic acid))(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)を加え、その後細胞を効率的に溶解させるためにプレートを直ちに-85℃中に置いた。GBA1活性をモニタリングするために、最初にライセートを融解し、氷上で20分間インキュベートしてから、4℃で20000RCFにて20分間遠心分離して細胞片を除去した。上清を収集して2つのアリコートに分割し、それぞれGBA1活性の検査と、タンパク質濃度の決定とを行った。GBA1活性を検査するために、ライセートを1%BSA(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)、1mM 4-メチルウンベリフェリルb-グルコピラノシド((4-MU:4-Methylumbelliferyl b-glucophyranoside)(#M3633)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO))と混合して50μlの体積にし、次いで37℃にて40分間インキュベートした。1体積の1Mグリシン(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)、pH12.5によって反応を停止し、SpectraMax(登録商標)D5シリーズマルチモードマイクロプレートリーダー(Molecular Devices(登録商標)、サンノゼ(San Jose)、CA)を用いて蛍光をモニタリングした(ex=355nm、em=460nm)。
図8は、ARPE-PGRN及びARPE-PGRN/PSAP細胞並びに組み換えPSAPからの条件培地による処理の結果、分化したマウス一次皮質ニューロンにおけるGBA1活性が増加することを示す。
【実施例18】
【0048】
《PGRN-、PSAP-、及びPGRN+PSAP+scFv81デバイスのインビボの機能》
以前に記載された研究概要(トルノエ(Tornoe)Jら、(2012)、リストラティブ・ニューロロジー・アンド・ニューロサイエンス(Restor Neurol Neurosci)、30(3):225-36)と同様の方式でのラットの線条体埋め込みによって、デバイスのインビボの機能を検査した。ラットを4~24週間処置し、次いでデバイスを取り出して、そのPGRN、PSAP、及びPGRN/PSAP複合体の放出をモニタリングすることによって機能を検査した。
図15は、ラットにおける12週間の処置後の3タイプのデバイス全ての機能を示す。次の実験シリーズにおいては、ブタにおける臨床デバイスの線条体内及び脳室内(ICV)留置の後に、PGRN-、PSAP-、及びPGRN+PSAP+scFv81デバイスのインビボの機能を探索した。いずれかの治療法の2~3週間の処置を検査した後にデバイスを回収し、それらの分泌因子の産生を評価した。
【実施例19】
【0049】
《PGRN-デバイスのインビボの安全性》
Sprague Dawley(登録商標)天然ラット(チャールズ・リバー・ラボラトリーズ(Charles River Laboratories)、ウィルミントン(Wilmington)、MA)をPGRN-デバイスで24週間処置したものを屠殺し、脳を回収して、病理組織学的評価のために固定化及びパラフィン包埋(ABCAM(登録商標)PLC社、ケンブリッジ、UK)を行った。曝露、増殖細胞、炎症反応、及び浸潤性T細胞をそれぞれモニタリングするためにヒトPGRN、Ki67、GFAP、Iba1、及びCD3に対して産生させた抗体とともに、冠状切片(5um)をインキュベートした。
図9に示されるとおり、PGRN-デバイスによる24週間の処置の結果、脳内に広いPGRNの分布がもたらされたが、脳神経外科手術自体によって予期されるシグナル(デバイスが置かれた場所の近傍におけるGFAP及びIba様の免疫反応性の増加によって定められる、限定されたアストログリオーシス)以外のシグナルは観察されなかった。
【実施例20】
【0050】
《PGRN-、PSAP-、及びPGRN+PSAP-デバイスの処置は、神経変性の2つの異なるラットモデルにおける治療活性を示す》
ヒトアルファ-シヌクレイン遺伝子を保有するAAV9ウイルスの黒質への注射も受けたラットの線条体に、PGRN-、PSAP-、及びPGRN+PSAP-scFv81デバイスを埋め込んだ(デクレサック(Decressac)Mら、(2012)、ニューロバイオロジー・オブ・ディジーズ(Neurobio Dis)、45(3):939-953)。デバイス埋め込み/ウイルス注射の4、8、及び12週間後に、ラットに行動検査を受けさせた。次いでラットを屠殺し、脳を回収して、病理組織学的評価を行った(
図10)。
【0051】
PGRN-、PSAP-、及びPGRN+PSAP-デバイスを前述のとおりにラットの線条体に埋め込んだ(トルノエ Jら、(2012)、リストラティブ・ニューロロジー・アンド・ニューロサイエンス(Restor Neurol Neurosci)、30(3):225-36)。手術の1週間後にラットに行動検査を受けさせた(
図11)。行動検査の翌日、PD様の神経変性カスケードを引き起こすために、ラットの黒質緻密部に6-OHDAを片側注射した。6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)(サンタクルーズバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology、Inc.)、ダラス(Dallas)、TX)注射の約2週間後及び5週間後に、ラットに上述と同じ行動パラダイムを受けさせた。次いでラットを屠殺し、脳を回収して、病理組織学的評価を行った。PGRN-及びPGRN+PSAP-デバイスの処置は、評価した行動状況の改善を示す(
図11)。
【実施例21】
【0052】
《GDNF+PGRN分泌デバイス、GDNF+PSAP分泌デバイス、及びGDNF+PGRN+PSAP分泌デバイス》
GDNF+PGRN分泌デバイス、GDNF+PSAP分泌デバイス、及びGDNF+PGRN+PSAP分泌デバイスは、神経変性のラット6-OHDAモデルにおける治療活性を示す。ARPE-GDNFと、上記の実施例12に記載したARPE因子細胞株のいずれかとを充填したデバイスの治療活性を、実施例12に記載したとおりに検査した。全ての処置が治療活性を示した(
図11)。
【実施例22】
【0053】
《組み換えPGRN/PSAP複合体の産生のための細胞培養法》
ARPE-19-PGRN+PSAPクローン#D5細胞を完全培地中で培養した。3つのフラスコ(225cm2)をトリプシン処理し(TrypLE(商標)エクスプレス(Express)酵素、Gibco(登録商標)、12605-010(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA))、細胞を550mlの完全培地に再懸濁し、次いでCorning(登録商標)HYPERFlask(登録商標)M細胞培養容器(1720cm2の面積)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)に播種した。播種の3日後に培地を除去し、細胞を2×100mlのPBS(HyClone(登録商標)ラボラトリーズ社、サウスローガン、UT)で洗浄した。次いで、550mlのGibco(登録商標)FreeStyle(商標)293発現培地(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)に1x Gibco(登録商標)ペニシリン-ストレプトマイシン(PEST)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)、Geneticin(登録商標)(G418)(Life Technologies(登録商標)社、カールスバッド、CA)、及びHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)を補充したものを加えた。細胞を37℃、5%C02にて96時間培養した。条件培地を収集し、550mlの新鮮なGibco(登録商標)FreeStyle(商標)293発現培地(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)に1x Gibco(登録商標)ペニシリン-ストレプトマイシン(PEST)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)、Geneticin(登録商標)(G418)(Life Technologies(登録商標)社、カールスバッド、CA)、及びHygromycin(商標)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO)を補充したもので置換した。収集した条件培地は、後で更にタンパク質精製を行うために直ちに-85℃にて凍結した。
【実施例23】
【0054】
《PGRN/PSAP複合体を含有する条件培地の収集及び濃度》
細胞培養培地の凍結バッチを4℃にて一晩でゆっくり融解した。次いで培地を7200rcfにて20分間遠心分離して、死んだ細胞及び細胞片を沈殿させた。更なる処理の前に、粒子の完全な除去を確実にするために、Sarstedt(登録商標)濾過ユニット(0.22umフィルター、ref83.3941.101)(Sarstedt(登録商標)社、ニュームブレヒト(Nuembrecht)、DE)を用いて上清を無菌濾過/脱気した。その後、30kDaカットオフフィルターを装填したAmicon(登録商標)細胞フィルター撹拌技術(cat no.UFSC40001)(Millipore Sigma(登録商標)、バーリントン、MA)を用いて、濾過した条件培地を10倍濃縮した。結果として得られた濃縮物に対して、次いで異なるクロマトグラフィー法を行った。
【実施例24】
【0055】
《PGRN/PSAP複合体の精製》
PGRN/PSAP複合体を精製するために、2つの異なるクロマトグラフィー法を適用した。それぞれイオン交換クロマトグラフィー及び分子ふるいクロマトグラフィー(SEC:size exclusion chromatography)である。最初に、濃縮無菌濾過培地を6mlのジエチルアミノエチルセルロース(DEAE:Diethylaminoethyl cellulose)カラム(Waters(商標)テクノロジー(Technology)社、ミルフォード(Milford)、MA)に流し、0~50%勾配の2M NaCl溶液で溶出した。その後、SDS-PAGEゲル(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)及びPGRN/PSAP複合体アッセイによって画分を分析した。3つの画分においてPGRN/PSAP複合体が識別され、それらはプールされて更にSECを受けた。
【0056】
効率的な分離を確実にするために、HiLoad(登録商標)26/60Superdex(登録商標)200PGカラム(GEヘルスケアプロセス(Healthcare Process)R&D AB、ウプサラ(Uppsala)、SE)を用いた。次の3つの異なるアッセイを用いて、PGRN/PSAP複合体を含有する画分を識別した。PSAP ELISA(実施例5を参照)、PGRN ELISA(hPGRN ELISA DuoSet(登録商標)キット(#DY2420)(R&D Systems(登録商標)、ミネアポリス、MN))、及びPGRN/PSAPアッセイ(実施例5を参照)。これらのアッセイ及びSDS-PAGE分析(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)によって、各画分からのアリコートを分析した。PGRN/PSAP複合体は、遊離PGRNとは異なる画分に溶出する(
図4)。加えて、ウエスタンブロット分析は、PGRN及びPSAPの化学量論がPGRN/PSAP複合体の1:1であることを示唆する。PGRN/PSAP複合体のみを含有する画分をプールして回収した。
【実施例25】
【0057】
《PGRN/PSAPの貯蔵》
PGRN/PSAP複合体を有するプール画分を無菌PBS溶液(HyClone(登録商標)ラボラトリーズ社、サウスローガン、UT)中で一晩透析し、無菌ポリプロピレンEppendorf(登録商標)チューブ(Eppendorf(登録商標)AG、ハンブルク(Hamburg)、DE)中にアリコートし、瞬間凍結して-85℃にて貯蔵した。
【実施例26】
【0058】
《精製PGRN/PSAP複合体の活性、皮質ニューロンのターゲティング》
細胞外投与されたPGRN/PSAPは、マウス皮質一次ニューロンと効率的に相互作用し、内部移行されてリソソームを標的とする。胎生期17日から調製したマウス一次皮質ニューロンを、処理の前にBD Falcon(商標)96ウェル細胞培養皿(BDバイオサイエンシズ(Biosciences)、ベッドフォード(Bedford)、MA)中で37℃、5%CO
2にて14日間培養した。次いで1~5μg/mlに濃縮したPGRN、PSAP、又はPGRN/PSAPのサンプル(Sampled)を加え、培養物を37℃、5%CO
2にてインキュベートした。その後培地を除去し、細胞を固定して、PGRN、PSAP、及びGBA1を含む異なるリソソームマーカーに特異的な抗体を用いた免疫細胞化学分析に供した。
図7によって証明されるとおり、GBA1と共局在するPGRN/PSAP複合体による皮質ニューロンの効率的なターゲティングは、この複合体が内部移行されてリソソームを標的とすることを示唆する。
【実施例27】
【0059】
《精製PGRN/PSAP複合体の活性、GBA1活性の刺激》
細胞外投与されたPGRN/PSAP複合体、PGRN、又はPSAPは、ヘテロ接合GBA1 L444P変異キャリアに由来するマウス一次皮質ニューロン及びヒト初代線維芽細胞におけるGBA1と共局在し、各処理はGBA1を活性化する。胎生期17日から調製したマウス一次皮質ニューロンを、処理の前にBD Falcon(商標)96ウェル細胞培養皿(BDバイオサイエンシズ、ベッドフォード、MA)中で37℃、5%CO
2にて14日間培養した。次いでPGRN、PSAP、又はPGRN/PSAPを10ng/mlの濃度で加え、培養物を24時間インキュベートしてから分析した。ヒト線維芽細胞を集密度まで生育させ、次いでマウス一次ニューロン培養物について前述したとおりにPGRN、PSAP、又はPGRN/PSAP GBA1で処理した。37℃、5%CO
2にて24時間処理した後、Nunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレートから培地を除去することによって反応を終了させて、NaCitrate(商標)((クエン酸三ナトリウム二水和物)(pH5.4)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO))、Triton(商標)X-100((0.25%(v/v))(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO))、タウロコール酸((2-{[(3α,5β,7α,12α)-3,7,12-トリヒドロキシ-24-オキソコラン-24-イル]アミノ}エタンスルホン酸)(0.25%(w/v)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO))、及び1mM EDTA((2,2′,2″,2″′-(エタン-1,2-ジイルジニトリロ)四酢酸)(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、MO))からなる活性緩衝剤を加え、プレートを-85℃中に入れて細胞の効率的な溶解及び破壊を可能にした。GBA1活性をモニタリングするために、最初にライセートを融解し、氷上で20分間インキュベートした後に4℃で20000rcfにて20分間遠心分離して細胞片を除去した。上清を収集して、それぞれGBA1活性及びタンパク質濃度の決定のために2つのアリコートに分割した。GBA1活性のために、ライセートを1%BSA(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)、1mM 4-メチルウンベリフェリルb-グルコピラノシド(4-MU、Sigma-Aldrich(登録商標)、#M3633)と混合して50μlの体積にし、次いで37℃にて40分間インキュベートした。1体積の1Mグリシン、pH12.5によって反応を停止し、Spectramax(登録商標)D5プレートリーダー(Molecular Devices(登録商標)、サンノゼ、CA)を用いて蛍光をモニタリングした(ex=355nm、em=460nm)。
図8は、PGRN、PSAP、及びPGRN/PSAP複合体による処理が、機能GBA1変異の損失に対するヘテロ接合の分化マウス一次皮質ニューロンヒト初代線維芽細胞におけるGBA1活性を増加させることを示す。
【実施例28】
【0060】
《精製PGRN/PSAP複合体の活性、神経突起伸長の刺激》
細胞外投与されたPGRN/PSAPは、マウス一次皮質ニューロン培養物における神経突起伸長を刺激する。胎生期17日からマウス一次皮質ニューロンを調製した。脳を収集し、公知の方法に従って皮質培養物を調製した。(メリノ-セレス(Merino-Serrais)Pら、(2019)、セレブラル・コルテックス(Cereb Cortex)、29(1):429-46。)BD Falcon(商標)96ウェルポリ-L-コート細胞培養皿(BD Falcon(商標)96ウェル細胞培養皿(BDバイオサイエンシズ、ベッドフォード、MA))中のニューロベーサル培地(Neurobasal(商標)プラス培地(Gibco(登録商標)、Life Technologies(登録商標)、カールスバッド、CA)にL-グルタミン、Gibco(登録商標)ペニシリン-ストレプトマイシン(PEST)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)、及び2%B27(抗ヒト白血球抗原B27抗体(ABCAM(登録商標)PLC社、ケンブリッジ、UK)を補充したものに細胞を播種した。播種の6時間後に培地を除去し、90μl/ウェルのニューロベーサル培地(Neurobasal(商標)プラス培地(Gibco(登録商標)、Life Technologies(登録商標)、カールスバッド、CA))にL-グルタミン、Gibco(登録商標)ペニシリン-ストレプトマイシン(PEST)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)、及び0%、0.5又は1%のいずれかのB27(抗ヒト白血球抗原B27抗体(ABCAM(登録商標)PLC社、ケンブリッジ、UK)を補充したもので直接置換した。完全培地による培養物、すなわち2%B27(抗ヒト白血球抗原B27抗体(ABCAM(登録商標)PLC社、ケンブリッジ、UK)が対照の役割をした。次いで、10μlのニューロベーサル培地(Neurobasal(商標)プラス培地(Gibco(登録商標)、Life Technologies(登録商標)、カールスバッド、CA))にL-グルタミンと、Gibco(登録商標)ペニシリン-ストレプトマイシン(PEST)(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)と、10ng/mlのPGRN又はPGRN/PSAPのいずれかとを補充したものを加え、培養物を37℃にて4日間又は約96時間更にインキュベートした。次いで培地を捨てて、細胞を4%ホルムアルデヒド(O=CH
2)(フィッシャーケミカル(Fisher Chemical)、ウォルサム、MA)中で室温にて30分間固定した。その後、固定溶液を捨てて、ウェルをPBS(HyClone(登録商標)ラボラトリーズ社、サウスローガン、UT)で3回洗浄してから次の免疫細胞化学(ICC)分析を行った。固定細胞を最初に室温にてPBS(HyClone(登録商標)ラボラトリーズ社、サウスローガン、UT)/Triton(商標)X-100(t-Oct-C
6H
4-(OCH
2CH
2)
xOH、x=9-10(MilliporeSigma(登録商標)、バーリントン、MA))(0.25%)及びBSA(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)(3%)で1時間処理して、細胞を透過性にし、かつ非特異的タンパク質結合を妨げた。ブロッキング溶液を除去した後、新鮮なブロッキング溶液に1:200に希釈したマウスモノクローナル抗チューブリン抗体((アンタクルーズ(anta Cruz)、G8)(ABCAM(登録商標)PLC社、ケンブリッジ、UK))を補充したものに培養物を暴露し、次いで+4℃にてインキュベートした。その後、細胞をPBS(HyClone(登録商標)ラボラトリーズ社、サウスローガン、UT)/Triton(商標)X-100(MilliporeSigma(登録商標)、バーリントン、MA)(0.25%)及びBSA(Alfa Aesar(登録商標)、トゥックズベリー、MA)(3%)で3回洗浄し、次いでAlexa594ヤギ抗マウスIgG(1:1000)(Alexa Fluor(商標)、Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)及び10ug/ulのビスベンズイミド青色蛍光色素、すなわちヘキスト(Hoechst)染色(ヘキスト(Hoechst)、フランクフルト(Frankfurt)、DE)を補充したブロッキング溶液とともに室温にて1時間インキュベートした。反応混合物の除去後、BD Falcon(商標)96ウェルプレートをPBS/Triton(商標)x-100、すなわちPBS(HyClone(登録商標)ラボラトリーズ社、サウスローガン、UT)/Triton(商標)X-100(MilliporeSigma(登録商標)、バーリントン、MA)で3回洗浄し、次いで暗い環境で+4℃にて貯蔵した後に分析した。Cellomics(商標)技術(ArrayScan(商標)、Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)のハイコンテントスクリーニングプラットフォーム(HCS:High-Content Screening Platform)部分と、神経突起形態ソフトウェア(Data61(登録商標)、CSIRO、キャンベラ(Canberra)、AU)とを用いてニューロンの形態をモニタリングした。
図12に示されるとおり、PGRN/PSAPは、PGRNと同様に神経突起伸長を刺激する。
【実施例29】
【0061】
《精製PGRN/PSAP複合体の活性。脳室内(ICV)投与後の脳への分配、内部移行、及びリソソームターゲティング》
ARPE-PGRN及びARPE-PSAP細胞から条件培地を調製し、濃縮し、緩衝剤をPBSに交換した。組み換えPGRN-His(cat no.2420-PG(R&D Systems(登録商標)、ミネアポリス、MN))をARPE-PSAP細胞からの濃縮条件培地と混合し、ウエスタンブロット分析(
図2)によって示されるとおりPGRN/PSAP複合体を形成した。ARPE-PGRN細胞からのARPE由来PGRN及びPGRN/PSAP複合体をウエスタンブロット分析によって識別した(
図2)。PBS中で調製した反応混合物を、蠕動ポンプ(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、ウォルサム、MA)を用いた脳室内(ICV)注射(Hamilton(登録商標)社、リノ(Reno)、NV)によって、1分当り0.5μlの速度で約2分間検査対象に投与した。ICV注射の3時間後にマウスを屠殺して脳を回収し、固定液(4%ホルムアルデヒドのPBS溶液)に48時間漬け、次いで必要となるまで+4℃の温度でPBS/30%スクロースを含む溶液中で貯蔵した。その後脳をパラフィン包埋(ワイス(Weiss)AThAら(2011)、ベテリナリーパソロジー(Vet Pathol)、48(4):834-8)した後に、次の免疫組織化学分析を行った。以下のPGRN抗体を用いて、ヒトPGRN様及びPSAP様の免疫反応性をモニタリングした。MAB2420及びAF2420(R&D Systems(登録商標)、ミネアポリス、MN)、ペンタHis(抗hisタグに向けられた抗体(キアゲン(Qiagen)、フェンロ(Venlo)、NL))、及びPSAP抗体(Abnova(登録商標)cat no.H00005660-M01、0.43mg/ml(Abnova(登録商標)社、台北、TW)及び(Proteintech(登録商標)cat no.HPA004426、0.1mg/ml(Proteintech(登録商標)、ローズモント(Rosemont)、IL))。適切なHRPコンジュゲート二次抗体とともにインキュベートした後、HRPに対する基質としてのDABによって、PGRN様及びPSAP様並びにHis様の免疫反応性を検出した。
図13は、ARPE-PGRN細胞からの濃縮条件培地と、PGRN-Hisと混合したARPE-PSAP条件培地とを注射したマウスからの、PGRN及びPSAPの脳内への重複する拡散を示す。より高い拡大率において、これらの脳におけるPGRN及びPSAPの細胞内共局在が検出され、His様及びPSAP様の免疫反応性の細胞内共局在も検出され、ICV投与されたPGRN/PSAP複合体は脳内に拡散して脳細胞によって内部移行されることが示唆される。
図14は、実施例23に記載されるとおりに精製された組み換えPGRN-Fc、PGRN、及びPGRN/PSAP複合体が、ラットの脳に取り込まれて広く分布することを示す。加えて、ブタにカテーテルITを介して投与した精製PGRNと、ブタにおける2週間のICV ECB-PGRN処置との結果、PGRNの脳取り込みがもたらされる。よって、IT及びICV送達したPGRN及びPGRN/PSAPは、マウス、ラット、及びブタの脳内に拡散する。
【0062】
[定義]
便宜上、明細書、実施例、及び添付の請求項において用いられる特定の用語をここに集めている。当業者はこれらの定義を本開示に照らして読んで理解するべきである。
【0063】
本明細書において用いられる「バイオリアクター」という用語は、生物学的に活性な環境を支援する任意の製造されたデバイス又はシステムを示す。様々な実施形態において、バイオリアクターは化学プロセスが行われる容器であり、そこには生物又はこうした生物に由来する生化学的に活性な物質が含まれる。このプロセスは好気性でも嫌気性でもあり得る。更なる実施形態において、バイオリアクターは、細胞培養の状況において細胞又は組織を生育させるように設計されたデバイス又はシステムを示すこともある。なおも更なる実施形態において、バイオリアクター内で生育した細胞によって分泌又は産生された分子が収集及び精製されてもよい。
【0064】
本明細書において用いられる、「カプセル」又は代替的に「封入する(encapsulate)」若しくは「封入される(encapsulated)」という用語は、好ましくは、例えば細胞代謝に必須の酸素、栄養素、増殖因子などの流入、並びに廃棄物及び治療タンパク質の外向きの拡散などの、分子の双方向拡散を可能にする半透膜によって細胞を含有する、囲い込まれたデバイス(又は前記デバイスの使用方法)を示す。同時にこの膜の半透過性の性質は、免疫細胞及び抗体が、封入された細胞を異物侵入とみなして破壊することを防ぐ。
【0065】
本明細書において用いられる「細胞株」という用語は、繰り返し又は不確定的に増殖できる単一の前駆細胞に由来する細胞の集団を示す。前駆細胞は、より大きな動物又は植物の器官又は組織に由来していてもよい。
【0066】
本明細書において用いられる「発現(expression)」、又は代替的に「発現する(express)」、「発現する(expressing)」、「発現された(expressed)」、若しくは「発現するために(to express)」という用語は、核酸又はポリヌクレオチドに由来するセンスRNA(mRNA)又はアンチセンスRNAの転写及び安定した蓄積を示す。発現は、mRNAからタンパク質又はポリペプチドへの翻訳も示してもよい。
【0067】
本明細書において用いられる「発現コンストラクト」という用語は、核酸又はポリヌクレオチドがコードするタンパク質又はRNAを発現する目的のために、細胞内にその核酸又はポリヌクレオチドを導入するように設計された任意の分子、ウイルス、又は生物を示す。好ましい実施形態において、発現コンストラクトはプラスミドであってもよい。発現コンストラクトは発現ベクターも示してもよく、これらの用語は交換可能に用いられる。
【0068】
本明細書において用いられる「フラグメント」又は代替的に「そのフラグメント」という用語は、ポリヌクレオチド配列に適用されるときは、参照核酸よりも短い長さの共通部分にわたって参照核酸と同じヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を示す。本発明によるこうした核酸フラグメントは、適切なときは、自身がその構成物であるより大きいポリヌクレオチドに含まれていてもよい。
【0069】
本明細書において用いられる「ヘテロダイマー(heterodimer)」、又は代替的に「ヘテロダイマー(heterodimers)」若しくは「ヘテロダイマー化」という用語は、2つのタンパク質単量体又は複数の単一タンパク質によって形成される巨大分子複合体を示し、ここで2つのタンパク質単量体は2つの異なるタンパク質配列を含む。
【0070】
本明細書において用いられる「免疫隔離的」という用語は、例えば生体高分子、細胞、又は薬物放出キャリアなどの埋め込まれた材料を免疫反応から保護するか、又は免疫反応を最小化する方法若しくは手段を示す。ある実施形態において、埋め込み型デバイスは、デバイスが宿主に埋め込まれた後にデバイスの内側の材料を免疫反応から保護するという点で免疫隔離的であってもよい。
【0071】
本明細書において用いられる「埋め込み型(implantable)」、又は代替的に「埋め込む(implant)」、「埋め込む(implants)」、「埋め込まれた(implanted)」、若しくは「埋め込むために(to implant)」という用語は、宿主の既存の生物学的構造又は機能を置換、増強、又は支持する目的のために、長期間にわたって宿主の体内に導入されるように設計されたデバイスを示す。
【0072】
本明細書において用いられる「マトリックス」という用語は、周囲の細胞に構造的及び生化学的な支援を提供する、例えばポリマー、コラーゲン、酵素、ラミニン、フィブロネクチン、又は糖タンパク質などの細胞外巨大分子の3次元ネットワークを示す。
【0073】
本明細書において用いられる「改変する(modify)」、又は代替的に「改変された(modified)」、「改変する(modifies)」、「改変(modification)」、「改変する(modifying)」、若しくは「改変するために(to modify)」という用語は、物質の単数又は複数の特性を直接的又は間接的に促進、減少、追加、又は除去する、前記物質の任意の変更を示す。
【0074】
本明細書において用いられる「神経疾患」及び「神経障害」という用語は交換可能に用いられ、脳、脊髄、又はその他の神経における構造的、生化学的、又は電気的な異常によって引き起こされる神経系の任意の機能の異常又は障害を示す。
【0075】
本明細書において用いられる「その他のクロマトグラフィー法」という用語は、提出時に当該技術分野において公知であるか、又はその後発見される、調製又は分析のための、混合物の分離のために用いられる任意の技術を示す。
【0076】
本明細書において用いられる「前駆体ポリペプチド」、「タンパク質前駆体」、又は「プロタンパク質」という用語は交換可能に用いられ、例えば分子の断片の切断又は別の分子の追加などの翻訳後修飾によって活性型にできる不活性タンパク質(又はペプチド)を示す。
【0077】
本明細書において用いられる「精製された(purified)」、又は代替的に「精製する(purify)」、「精製された(purified)」、「精製(purification)」、若しくは「精製するために(to purify)」という用語は、濃度を実質的に増加させたか、又は混入物をなくした物質を示す。別様に示されない限り、この用語は必ずしも絶対的な純度を示すものではない。
【0078】
本明細書において用いられる「スリーピングビューティートランスポザーゼシステム」という用語は、スリーピングビューティートランスポザーゼ及びトランスポゾンによってDNA配列を細胞のゲノムに導入する方法、並びに前記方法を実行するための材料を示す。
【0079】
本明細書において用いられる「サブペプチド(subpeptide)」、又は代替的に「サブペプチド(subpeptides)」若しくは「そのサブペプチド」という用語は、もっと大きなタンパク質又はポリペプチドの一部に由来するポリペプチドを示す。ある実施形態において、サブペプチドは、もっと大きなタンパク質又はポリペプチドのフラグメントであってもよい。
【0080】
本明細書において用いられる「治療薬(therapeutic)」、又は代替的に「治療薬(a therapeutic)」、「治療薬物(a therapeutic drug)」、「治療薬剤(a therapeutic agent)」、「治療法(therapy)」、「治療法(therapies)」、「治療計画(a therapeutic regimen)」、若しくは「治療法(a therapeutic method)」という用語は、分子によって処置される対象に対する有益な機能を与える任意の分子(又は前記分子を用いる方法)を示す。治療薬はペプチド、ポリペプチド、単鎖又は複数鎖タンパク質、融合タンパク質、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、リボザイム、及びRNA外部ガイド配列を含んでもよいが、それに限定されない。治療薬は、自然発生する配列、合成配列、又は自然及び合成配列の組み合わせを含んでもよい。
【0081】
本明細書において用いられる「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はその任意のその他の変形の用語は、非排他的な包含をカバーすることが意図される。例えば、構成要素のリストを含むプロセス、方法、品物、又は装置は、必ずしもそれらの構成要素のみに限定されず、明確に挙げられていないか、又はこうしたプロセス、方法、品物、若しくは装置に固有ではないその他の構成要素を含んでもよい。更に、反対のことが明確に述べられていない限り、「又は(or)」は包含的論理和を示し、排他的論理和を示さない。例えば、A又はBという状態は、次のうちのいずれか1つによって満たされる。Aが真(又は存在)かつBが偽(又は不在)、Aが偽(又は不在)かつBが真(又は存在)、並びにA及びBの両方が真(又は存在)。加えて「a」又は「an」という用語の使用は、本発明の構成要素及び構成成分を記載するために用いられる。これは単に便宜上本発明の一般的な意味を与えるために行われたものである。この記載は1つ又は少なくとも1つを含むものと読取られるべきであり、別様を意味することが自明でない限り、単数形は複数形も含む。別様に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料が本発明の実施又は検査に用いられ得るが、好適な方法及び材料は上記に考察されている。本明細書において言及される全ての出版物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、その全体が引用により援用される。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が統制する。加えてこれらの材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、限定することは意図されない。以下の記載において、本発明の実施形態の理解を提供するために、例えば様々なシステム構成要素の識別などの多数の特定の詳細が提供される。しかし当業者は、特定の詳細のうちの1つ以上を伴わずに、又は他の方法、構成要素、材料などによって本発明の実施形態が実施され得ることを認識するだろう。更に他の場合においては、本発明の様々な実施形態の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、材料、又は動作を詳細に図示又は記述していない。この明細書全体にわたる「一実施形態(one embodiment)」又は「ある実施形態(an embodiment)」の参照は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって明細書全体にわたる様々な場所での「一実施形態において」又は「ある実施形態において」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照するものではない。更に、1つ以上の実施形態において、特定の特徴、構造、又は特性が任意の好適な方式で組み合わされてもよい。
【0082】
本明細書において用いられる「及び/又は」という用語は、一方又は他方又は両方を有する可能性と定義される。例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、又はBのみ、又はA及びBの組み合わせを有するシナリオを提供する。請求項が「A及び/又はB及び/又はC」と読取られるとき、その構成はA単独、B単独、C単独、Cを除くA及びB、Aを除くB及びC、Bを除くA及びC、又はA、B、及びCの3つ全ての構成要素を含んでもよい。
【0083】
[頭字語]
便宜上、明細書、実施例、及び添付の請求項において用いられる特定の用語をここに集めている。これらの定義は本開示に照らして読取られ、当業者による理解と同様に理解されるべきである。
AAV アデノ随伴ウイルスベクター(adeno associate virus vector)
AD アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)
ALS 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)
APRE-19 成人網膜色素上皮細胞株19(adult retinal pigment epithelial cell line-19)
bFGF 塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor)
BHK ベビーハムスター腎臓細胞(baby hamster kidney cells)
BMT 骨髄移植(bone marrow transplant)
BSA ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(bis(trimethylsilyl)acetamide)
BSC オナガザル腎細胞(Cercopithecus monkey kidney cells)
CAC 循環血管新生細胞(circulating angiogenic cells)
CD3 表面抗原分類3(cluster of differentiation 3)
CHO チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary)
CDNA1 相補DNA(complementary DNA)
CDNF 脳ドーパミン神経栄養因子(cerebral dopamine neurotrophic factor)
CMV (ヒト)サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)
CNS 中枢神経系(central nervous system)
COS CV-1(サル)起源(CV-1(simian)in Origin)
CSF 脳脊髄液(cerebrospinal fluid)
DEAE ジエチルアミノエチルセルロース(diethylaminoethyl cellulose)
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)
ECB 封入細胞生物送達(encapsulated cell bio-delivery)
EDTA 2,2′,2″,2″′-(エタン)-1,2-ジイルジニトリロ)四酢酸(2,2′,2″,2″′-(Ethane)-1,2-diyldinitrilo)tetracetic acid)
EGF 上皮増殖因子(epidermal growth factor)
ELISA 酵素結合免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay)
FCS ウシ胎仔血清(fetal calf serum)
bFGF 塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor)
FITC フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)
FTD 前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)
FUS 肉腫内融合(fused in sarcoma)
GBA1 β-グルコセレブロシダーゼ(β-Glucocerebrosidase)
GCase グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)
GCFN グリア細胞由来神経栄養因子(glial cell-derived neurotrophic factor)
GDNF グリア細胞由来神経栄養因子(glial cell-derived neurotrophic factor)別称ARMET様タンパク質1
GFAP グリア線維酸性タンパク質(glial fibrillary acidic protein)
GRN グラニュリン(granulin)
HIV ヒト免疫不全ウイルス(human immune-deficiency virus)
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)
HEK ヒト胎児由来腎臓(human embryonic kidney)
Iba1 カルシウムイオン結合アダプター分子1(ionized calcium-binding adapter molecule 1)
ICC 免疫細胞化学(immunocytochemical)
ICV 脳室内(intracerebroventricular)
iPS 誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)
IR/DR 逆方向反復/直列反復配列(inverted repeat/direct repeat elements )
KEGG ゲノムと遺伝子の百科事典(Kyoto encyclopedia of genes and genomes)
LAMP1 リソソーム膜タンパク質1(lysosomal-associated membrane protein 1)、別称リソソーム膜糖タンパク質1、別称表面抗原分類107a
LATE 辺縁系優位型加齢性TAR DNA結合タンパク質-43(TDP-43)脳症(limbic-predominant age-related TAR DNA-binding protein-43(TDP-43)encephalopathy)
LB レビー小体(Lewis body)
LBD レビー小体認知症(Lewis body dementia)
MANF 中脳アストロサイト由来神経栄養因子(mesencephalic astrocyte-derived neurotrophic factor)
MCS 間葉性軟骨肉腫(mesenchymal chondrosarcoma)
MSA 多系統萎縮症(multiple system atrophy)
MSC 間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)
MSO 間葉性軟骨肉腫-1(mesenchymal chondroSarcoma-1)
NCL 神経セロイドリポフスチン症(neuronal ceroid lipofuscinosis)
NT ニューロトロフィン(neurotrophin)
NS0 マウス骨髄腫細胞(mouse myeloma cells)
6-OHDA 6-ヒドロキシドーパミン(6-hydroxydopamine)
PBS リン酸緩衝溶液(phosphated buffer solution)
PC 褐色細胞腫(pheochromocytoma)(12及び12A)
PD パーキンソン病(Parkinson’s disease)
PEST ペニシリン/ストレプトマイシン(Penicillin/Streptomycin)
PGRN プログラニュリン(progranulin)
PROTAC 標的タンパク質分解キメラ(proteolysis targeting chimera)
PSAP プロサポシン(prosaposin)
RCF 相対遠心力(relative centrifugal force)
RN ラットニューロン(rat neuronal)
RNA リボ核酸(ribonucleic acid)
RPE 網膜色素上皮(retinal pigment epithelium)
RT 室温(room temperature)
SCC 扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)
scFv 単鎖可変フラグメント(single chain variable fragment)
SDS-PAGE ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis)
SEC 分子ふるいクロマトグラフィー(size exclusion chromatography)
SIRC スターツス・セルムインスティトゥート・ウサギ角膜(Startus Seruminstitut rabbit cornea)
TAR トランザクティブレスポンス(transactive response)
TAT 転写のトランスアクチベーター(trans-activator of transcription)
TDP TAR DNA結合タンパク質(TAR DNA-binding protein)
hTERT ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase)
TH チロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase)
TMB 3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン(3,3′,5,5′-tetramethylbenzidine)
【0084】
[均等物]
本発明の全範囲は、請求項及びそれらの均等物の全範囲、並びに明細書及びこうした変形を参照して決定されるべきである。
【0085】
別様に示されない限り、明細書及び請求項において用いられる成分及び反応条件などの量を表現する全ての数字は、全ての場合に±5%と定義される「約」という用語で修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対のことが示されていない限り、この明細書及び添付の請求項に示される数的パラメータは近似値であり、本発明によって得られることが求められる所望の特性に依存して変動することがある。
【0086】
上記の考察は、本発明の原理及び様々な実施形態の例示となることが意図される。上記の開示を完全に認識した当業者には、多数の変形、組み合わせ、及び修正が明らかになるだろう。以下の請求項は、こうした変形及び修正を全て包含すると解釈されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】