IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボード オブ トラスティーズ オブ ミシガン ステート ユニバーシティの特許一覧

特表2023-530459多能性幹細胞由来の心臓オルガノイド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】多能性幹細胞由来の心臓オルガノイド
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20230710BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230710BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20230710BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/10
C12N5/0735
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577624
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 US2021037808
(87)【国際公開番号】W WO2021257812
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/041,545
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/155,596
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502243376
【氏名又は名称】ボード オブ トラスティーズ オブ ミシガン ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アギーレ,アイトール
(72)【発明者】
【氏名】イスラエリ,ヨナタン ラズ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065BC50
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
心臓オルガノイドを生成するための方法が提供される。前記方法は、多能性幹細胞の細胞凝集体を形成する工程、前記細胞凝集体におけるWntシグナル伝達を活性化させて、前記細胞凝集体を三次元心臓中胚葉に分化させる工程、および、前記心臓中胚葉における前記Wntシグナル伝達を阻害して、前記心臓オルガノイドを形成する工程を含む。前記心臓オルガノイドは、心筋組織、少なくとも1つのチャンバを画定する心内膜組織、前記心筋組織の少なくとも外面上に配置された心外膜組織を含む。前記心臓オルガノイドは、拍動する。前記方法に従って製造された心臓オルガノイドも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓オルガノイドを生成するための方法であって、前記方法は:
多能性幹細胞を含む細胞凝集体を形成する工程;
前記細胞凝集体におけるWntシグナル伝達を活性化させて、前記細胞凝集体を三次元心臓中胚葉に分化させる工程;および、
前記三次元心臓中胚葉における前記Wntシグナル伝達を阻害して、前記心臓オルガノイドを形成する工程、
を含み、
前記心臓オルガノイドは、心筋組織、少なくとも1つのチャンバを画定する心内膜組織、および前記心筋組織の少なくとも外面上に配置された心外膜組織を含み、
前記心臓オルガノイドは、拍動する、
方法。
【請求項2】
前記Wntシグナル伝達を活性化させる前記工程は、前記細胞凝集体を(GSK-3)阻害剤と接触させる工程を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記GSK-3阻害剤は、CHIR99021である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記Wntシグナル伝達を活性化させる前記工程と同時に、前記細胞凝集体を少なくとも1つの成長剤と接触させる工程をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Wntシグナル伝達を阻害する前記工程は、前記三次元心臓中胚葉をポルクピン(PORCN)阻害剤と接触させる工程を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記PORCN阻害剤は、Wnt-C59である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達を活性化させて、前記心臓オルガノイドにおける心外膜前駆組織の量を増加させる工程をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記心臓オルガノイドは、約2mM以上、約7mM以下の濃度のグルコース、および約20pM以上、約250pM以下の濃度のインスリンを含む培地中で生成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記心臓オルガノイドは、約8mM以上、約30mM以下の濃度のグルコース、および約250pM以上、約75nM以下の濃度のインスリンを含む培地中で生成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法に従って製造された、心臓オルガノイド。
【請求項11】
心臓オルガノイドを生成するための方法であって、前記方法は:
多能性幹細胞を含む細胞凝集体を形成する工程;
前記細胞凝集体を第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と約2時間以上、約48時間以下接触させて、前記細胞凝集体におけるWntシグナル伝達を活性化させて、前記細胞凝集体を三次元心臓中胚葉に分化させる工程;
前記三次元心臓中胚葉をWntシグナル伝達経路阻害剤と約24時間以上、約72時間以下接触させて、前記細胞凝集体における前記Wntシグナル伝達を阻害し、前記心臓オルガノイドを形成する工程であって、前記心臓オルガノイドは:
内部および外面を有する三次元主部であって、前記内部が心筋組織を含む、三次元主部;
少なくとも1つのチャンバを画定する心内膜組織;および、
前記外面の少なくとも一部に配置された心外膜組織;を含み、
前記心臓オルガノイドは、拍動する、
工程;ならびに、
前記心臓オルガノイドを第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と約15分間以上、約24時間以下接触させて、前記心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達を活性化させて、前記心臓オルガノイドにおいてさらなる心外膜組織および心外膜前駆細胞を生成する工程、
を含む、方法。
【請求項12】
前記細胞凝集体を前記第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、前記細胞凝集体を、約1μM以上、約15μM以下のCHIR99021を含むWnt活性化組成物と接触させる工程を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記三次元心臓中胚葉を前記Wntシグナル伝達経路阻害剤と接触させる前記工程は、前記三次元心臓中胚葉を、約1μM以上、約15μM以下のWnt-C59を含むWnt阻害組成物と接触させる工程を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記心臓オルガノイドを前記第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、前記細胞凝集体を、約1μM以上、約15μM以下のCHIR99021を含むWnt活性化組成物と接触させる工程を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞凝集体を形成する前記工程は:
前記多能性幹細胞を基材に移す工程;および、
前記基材を、約50g以上、約500g以下で約1分間以上、約10分間以下遠心分離する工程、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞凝集体を形成する前記工程は、-2日目に実行され;
前記細胞凝集体を前記第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、0日目に実行され;
前記三次元心臓中胚葉を前記Wntシグナル伝達経路阻害剤と接触させる前記工程は、2日目に実行され;
前記心臓オルガノイドを前記第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、7日目に実行される、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法に従って製造された、心臓オルガノイド。
【請求項18】
心臓オルガノイドであって:
内部および外面を有する三次元主部であって、前記内部が心筋組織を含む、三次元主部;
前記心筋組織内の少なくとも1つのチャンバを画定する心内膜細胞;および、
前記外面の少なくとも一部に配置された心外膜組織、
を含み、
前記心臓オルガノイドは、拍動し、
前記心臓オルガノイドは、培養多能性幹細胞に由来する、
心臓オルガノイド。
【請求項19】
前記心臓オルガノイド内に少なくとも部分的に埋め込まれた内皮血管系;および、
前記心筋組織内に配置された心臓線維芽細胞、
をさらに含む、請求項18に記載の心臓オルガノイド。
【請求項20】
心臓特異的細胞外マトリックスをさらに含む、
請求項18に記載の心臓オルガノイド。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本出願は、2020年6月19日に出願された米国仮特許出願第63/041,545号、および2021年3月2日に出願された米国仮特許出願第63/155,596号の利益を主張する。上記出願の内容全体が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
〔政府の権利〕
本発明は、国立衛生研究所によって与えられるHL135464の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一部の権利を有する。
【0003】
〔分野〕
本開示は、多能性幹細胞由来の心臓オルガノイドに関する。
【0004】
〔背景〕
この節は、必ずしも従来技術ではない、本開示に関連する背景情報を提供する。
【0005】
心血管疾患(CVD)および先天性心疾患(CHD)はそれぞれ、先進国における主要な死因であり、ヒトにおける最も一般的な種類の先天性欠損である。治療および予防のためにヒト心血管障害を理解することが重要であるにもかかわらず、CVD研究のためのヒト心臓オルガノイドモデルの開発に関する進歩は非常に限定的であり、他の臓器(例えば、腎臓、結腸、腸管、脳)について達成された進歩よりも著しく遅れている。ヒト多能性幹細胞(hPSC)を用いて、インビトロで重要な発生段階を再現し、比較的容易で、高純度で、かつ大量に特定の心臓細胞型を産生することができる。しかしながら、現行の細胞モデルは、それらが表現しようとする組織および臓器の構造的および細胞的な複雑さ(例えば、三次元マトリックスの欠如、無秩序な細胞、および多細胞型相互作用の欠如)とは依然として極めて異なっている。結果として、単離された細胞型が研究されることが頻繁に起こり、他の心臓細胞(例えば、心外膜細胞、心内膜細胞)または疾患表現型に関する細胞-細胞間伝達の寄与を最小化または無視している。ヒト心臓のより忠実なインビトロモデルを産生することは、研究および翻訳用途のための健康状態および病態のより良いモデル化を可能にするので、この技術および知識の差を埋めることには強い需要がある。
【0006】
インビトロヒト心臓モデルの要求を網羅するために、組織工学的手法を用いて、より複雑で多細胞型の三次元心臓組織を製造する重要な試みが、過去20年間にわたってなされてきた。これらの手法は、最終的な構築物をよく制御することを可能にするが、費用がかかり、手間がかかり、容易に拡張可能ではない傾向がある。さらに、これらの手法は、本来の細胞組成(例えば、真皮線維芽細胞またはヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)の使用)および心臓の構成(例えば、心球)を忠実には表していない。これらの手法は、機能的組織をもたらすが、生理学的および構造的関連性、ならびに細胞および細胞外マトリックス(ECM)の複雑さに関しては不十分である。したがって、ヒト心臓によりよく似たオルガノイドが望まれている。
【0007】
〔概要〕
この節は、本開示の一般的な概要を提供するものであり、その範囲すべてまたはその特徴すべての包括的な開示ではない。
【0008】
様々な態様において、本技術は、心臓オルガノイドを生成するための方法であって、当該方法は、多能性幹細胞を含む細胞凝集体を形成する工程、細胞凝集体におけるWntシグナル伝達を活性化させて、細胞凝集体を三次元心臓中胚葉に分化させる工程、および、三次元心臓中胚葉におけるWntシグナル伝達を阻害して、心臓オルガノイドを形成する工程、を含み、心臓オルガノイドは、心筋組織、少なくとも1つのチャンバを画定する心内膜組織、および心筋組織の少なくとも外面上に配置された心外膜組織を含み、心臓オルガノイドは、拍動する、方法を提供する。
【0009】
一態様において、Wntシグナル伝達を活性化させる工程は、細胞凝集体をグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3(GSK-3)阻害剤と接触させる工程を含む。
【0010】
一態様において、GSK-3阻害剤は、CHIR99021である。
【0011】
一態様において、当該方法は、Wntシグナル伝達を活性化させる工程と同時に、細胞凝集体を少なくとも1つの成長剤と接触させる工程をさらに含む。
【0012】
一態様において、Wntシグナル伝達を阻害する工程は、三次元心臓中胚葉をポルクピン(PORCN)阻害剤と接触させる工程を含む。
【0013】
一態様において、PORCN阻害剤は、Wnt-C59である。
【0014】
一態様において、当該方法は、心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達を活性化させて、心臓オルガノイドにおける心外膜前駆組織の量を増加させる工程をさらに含む。
【0015】
一態様において、心臓オルガノイドは、約2mM以上、約7mM以下の濃度のグルコース、および約20pM以上、約250pM以下の濃度のインスリンを含む培地中で生成される。
【0016】
一態様において、心臓オルガノイドは、約8mM以上、約30mM以下の濃度のグルコース、および約250pM以上、約75nM以下の濃度のインスリンを含む培地中で生成される。
【0017】
本技術はまた、上記方法に従って製造された、心臓オルガノイドも提供する。
【0018】
様々な態様において、本技術は、心臓オルガノイドを生成するための方法であって、当該方法は、多能性幹細胞を含む細胞凝集体を形成する工程;細胞凝集体を第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と約2時間以上、約48時間以下接触させて、細胞凝集体におけるWntシグナル伝達を活性化させて、細胞凝集体を三次元心臓中胚葉に分化させる工程;三次元心臓中胚葉をWntシグナル伝達経路阻害剤と約24時間以上、約72時間以下接触させて、細胞凝集体におけるWntシグナル伝達を阻害し、心臓オルガノイドを形成する工程であって、心臓オルガノイドは、内部および外面を有する三次元主部であって、内部が心筋組織を含む、三次元主部、少なくとも1つのチャンバを画定する心内膜組織、および、外面の少なくとも一部に配置された心外膜組織、を含み、心臓オルガノイドは、拍動する、工程;ならびに、心臓オルガノイドを第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と約15分間以上、約24時間以下接触させて、心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達を活性化させて、心臓オルガノイドにおいてさらなる心外膜組織および心外膜前駆細胞を生成する工程、を含む、方法をさらに提供する。
【0019】
一態様において、細胞凝集体を第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる工程は、細胞凝集体を、約1μM以上、約15μM以下のCHIR99021を含むWnt活性化組成物と接触させる工程を含む。
【0020】
一態様において、三次元心臓中胚葉をWntシグナル伝達経路阻害剤と接触させる工程は、三次元心臓中胚葉を、約1μM以上、約15μM以下のWnt-C59を含むWnt阻害組成物と接触させる工程を含む。
【0021】
一態様において、心臓オルガノイドを第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる工程は、細胞凝集体を、約1μM以上、約15μM以下のCHIR99021を含むWnt活性化組成物と接触させる工程を含む。
【0022】
一態様において、細胞凝集体を形成する工程は、多能性幹細胞を基材に移す工程、および、基材を、約50g以上、約500g以下で約1分間以上、約10分間以下遠心分離する工程、を含む。
【0023】
一態様において、細胞凝集体を形成する工程は、-2日目に実行され、細胞凝集体を第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる工程は、0日目に実行され、三次元心臓中胚葉をWntシグナル伝達経路阻害剤と接触させる工程は、2日目に実行され、心臓オルガノイドを第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる工程は、7日目に実行される。
【0024】
一態様において、当該方法はまた、細胞凝集体を第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる工程に加えて、0日目に細胞凝集体を少なくとも1つの成長因子と接触させる工程も含む。
【0025】
本技術はまた、上記方法に従って製造された、心臓オルガノイドも提供する。
【0026】
様々な態様において、本技術は、心臓オルガノイドであって:内部および外面を有する三次元主部であって、内部が心筋組織を含む、三次元主部;心筋組織内の少なくとも1つのチャンバを画定する心内膜細胞;および、外面の少なくとも一部に配置された心外膜組織、を含み、心臓オルガノイドは、拍動し、心臓オルガノイドは、培養多能性幹細胞に由来する、心臓オルガノイドをさらに提供する。
【0027】
一態様において、心臓オルガノイドは、心臓オルガノイド内に少なくとも部分的に埋め込まれた内皮血管系、および、心筋組織内に配置された心臓線維芽細胞、をさらに含む。
【0028】
一態様において、心臓オルガノイドは、心臓特異的細胞外マトリックスをさらに含む。
【0029】
さらなる適用領域は、本明細書に提供される記載から明らかになるであろう。本概要における記載および具体的な例は、例示のみを意図されており、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0030】
〔図面〕
本明細書に記載された図面は、すべてのあり得る実装形態ではなく、選択された実施形態の例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0031】
図1は、本技術の様々な態様に係る心臓オルガノイドを生成する方法を説明するフローチャートである。
【0032】
図2Aは、本技術の様々な態様に係る心臓オルガノイドの説明図である。
【0033】
図2Bは、図2Aの心臓オルガノイドの断面図である。
【0034】
図3は、本技術の様々な態様に従って製造されたスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィー(SD-OCT)撮像系の説明図である。
【0035】
図4A~4Fは、本技術の様々な態様に係るヒト心臓オルガノイド(hHO)におけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すデータを提供する。図4Aは、胚様体においてTNNT2+心筋細胞を分化させるために使用されるプロトコルを示す模式図である。CHIR99021は、0日目で変化する。図4Bは、0~15日目(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)からの、15日間にわたる分化の発生オルガノイドの明視野画像(上段)、および、1日当たり3つの代表的なオルガノイドのDAPI(青色)およびTNNT2(赤色)についての共焦点免疫蛍光画像を示す。図4Cは、4μMのCHIRを用いて分化させた15日目のオルガノイドにおけるDAPI(青色)およびTNNT2(赤色)についての共焦点免疫蛍光画像を示し、サルコメアバンド(スケールバー:25μm)を示す。図4Dは、複数のz平面で取られたオルガノイド内の心筋細胞領域の面積解析を、3つのCHIR99021濃度それぞれについて、オルガノイドそれぞれのDAPI+領域に対するTNNT2+領域の割合として示す(4μMのCHIR99021処理についてはn=10、6.6μMおよび8μMについてはn=6)。図4Eは、hHOの共焦点画像におけるDAPI+領域に対して正規化されたTNNT2+領域の割合を示すグラフである。図4Fは、3つの誘導多能性幹細胞(iPSC)株および1つの胚性幹細胞(ESC)株における拍動頻度を示すグラフである。(数値=平均±標準偏差、一元配置分散多重比較検定;p<0.05、****p<0.0001)
【0036】
図5A~5Cは、本技術の様々な態様に係るhHOにおけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すさらなるデータを提供する。図5Aは、15日目、CHIR99021曝露濃度が4μM(上段)、6.6μM(中段)および8μM(下段)のオルガノイドにおけるDAPI(青色)およびTNNT2(赤色)についての共焦点免疫蛍光画像を示す(スケールバー:500μm)。図5Bは、hHOの1分間当たりの拍動の頻度を示すグラフである。図5Cは、1処理当たりの拍動するhHOの割合を示すグラフである。(数値=平均±標準偏差、一元配置分散多重比較検定;**p<0.01、****p<0.0001)
【0037】
図6A~6Dは、本技術の様々な態様に係るhHOにおいて、第2のCHIR曝露が心外膜細胞分化を導くことを示すデータを提供する。図6Aは、hHOにおいてTNNT2+心筋細胞およびWT1+/TJP1+心外膜細胞を分化させるために使用される改変プロトコルを示す模式図である。図6Bは、複数のz平面で取られたオルガノイド内の心筋細胞領域(TNNT2+)および心外膜領域(WT1+およびTJP1+)の面積解析を、オルガノイドそれぞれのDAPI+領域の割合として示す(各条件当たりn=7)。図6Cは、7日目に第2のCHIR曝露を様々な濃度で行った、DAPI(青色)、WT1(緑色)、TNNT2(赤色)およびTJP1(白色)についての分化15日目のhHOの共焦点免疫蛍光画像を、第2のCHIR曝露なしのコントロール(スケールバー:500μm)に対して、示す。図6Dは、2μMの第2のCHIR曝露を行ったhHOの高倍率画像を示し、TNNT2+心筋組織およびWT1+/TJP1+心外膜組織の近接領域(スケールバー:50μm)を示す。(数値=平均±標準偏差、二元配置分散多重比較検定;p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001)
【0038】
図7A~7Cは、本技術の様々な態様に係るhHOにおいて、第2のCHIR曝露が心外膜細胞分化を導くことを示すさらなるデータを提供する。図7Aは、hHOにおけるDAPI(青色)およびTNNT2(赤色)についての共焦点免疫蛍光画像を示し、オルガノイドの端部付近の心外膜マーカーALDH2A(緑色)およびTPJP1(白色)を示す。図7Bは、7日目に種々の持続時間でCHIR99021を用いて処理されたオルガノイドそれぞれのDAPI+領域の割合としての、複数のz平面で取られたオルガノイド内の心筋細胞領域(TNNT2+)および心外膜領域(WT1+およびTJP1+)の面積解析である。図7Cは、これらの持続時間からのオルガノイドの代表的な共焦点免疫蛍光画像を示す(スケールバー:500μm)。(数値=平均±標準偏差、一元配置分散多重比較検定;p<0.05)
【0039】
図8A~8Eは、トランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図8Aは、RNAシーケンシング(RNA-seq)による心臓オルガノイドトランスクリプトームのK-meansクラスタ分析を示す。胎児の心臓発生と強く関連するクラスタ(例えば、2、10および14)は、9日目以降に現れる。パスウェイエンリッチメント解析もまた、代表的な心臓特異的クラスタについて提供される(下段)。図8Bは、心臓オルガノイド分化過程における第1および第2の心臓領域マーカー(それぞれ、FHFおよびSHF)の遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。図8Cは、心外膜細胞、線維芽細胞、心内膜細胞、および内皮細胞を含む、心臓オルガノイドにおける心臓特異的細胞型集団についての遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。図8Dは、妊娠57~67日目における、心臓オルガノイド、単層分化法、および胎児心臓にわたる心臓機能に関与する主要遺伝子の正規化された比較を示す。図8Eは、心臓オルガノイド、単層分化、および胎児心臓の階層的クラスタ解析を示す。
【0040】
図9A~9Eは、別のトランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図9Aは、遺伝子発現解析を示しており、心臓オルガノイド分化過程よりも多くのFHFおよびSHFマーカーを示す。図9Bは、(左上から右下へ)心内膜細胞、心外膜細胞、内皮細胞、および心臓線維芽細胞を含む、心臓オルガノイドにおける心臓特異的細胞型集団についての遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。図9Cは、心筋細胞マーカーについての遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。図9Dは、心臓組織に存在するECMタンパク質コード遺伝子についての遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。図9Eは、経時的な心臓オルガノイド分化の主成分分析を示す。
【0041】
図10A~10Cは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOにおける心臓領域の発生および心筋細胞の詳細を示す画像である。分化8日目のhHOの共焦点免疫蛍光画像は、強固なHAND1(図10A)およびHAND2(図10B)転写因子発現(緑色)、TNNT2(赤色)、およびDAPI(青色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。図10Cは、15日目のhHOの共焦点免疫蛍光画像を示しており、十分に分化した心室領域(MYL2、緑色)および心房領域(MYL7、赤色)およびDAPI(青色)を含む(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。
【0042】
図11A~11Eは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOの心臓細胞系統組成に関するデータを提供する。図11A~11Dには、hHOを構成する様々な細胞系統の免疫蛍光画像が示される。図11Aは、hHO全体に存在する心臓線維芽細胞マーカーTHY1(緑色)およびVIMENTIN(ホワイト)、TNNT2+(赤色)、ならびにDAPI(青色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。図11Bは、オルガノイド全体にわたる血管の画定されたネットワークを示す内皮細胞マーカーPECAM1(緑色)、ならびに隣接するTNNT2+(赤色)組織およびDAPI(青色)を示す(スケールバー:500μm)。図11Cは、TNNT2+心筋組織に極めて近接するPECAM1+内皮組織の60倍拡大図を示す(スケールバー:50μm)。図11Dは、TNNT2+(赤色)組織のマイクロチャンバ内で高度に発現された心内膜マーカーNFATC1(緑色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。図11Eは、ImageJを用いてオルガノイド面積全体の割合として計算された、hHOにおける平均細胞組成の円グラフである。
【0043】
図12A~12Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOのマイクロチャンバ形成、超微細構造、および電気生理現象を示す。図12Aは、光コヒーレンストモフラフィー(OCT)画像を示しており、マイクロチャンバを明らかにするオルガノイドの断面を示す(スケールバー:500μm)。図12Bは、チャンバ構造(スケールバー:500μm)を明らかにするAF488二次抗体を用いてTNNT2について染色したhHOのライトシート画像を示す。図12Cは、hHOの透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示しており、小胞体(ER)、ギャップ結合(Gj)、グリコーゲン顆粒(Gy)、脂質滴(Ld)、ミトコンドリア(Mi)、核(N)、およびサルコメア(S)を示す(左側のスケールバー:2μm、右側のスケールバー:1μm)。図12Dは、15秒間にわたるマイクロ電極アレイ(MEA)上のオルガノイド(左側)および代表的な活動電位波(右側)の電気生理現象の記録を示す。
【0044】
図13A~13Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関連するデータを提供する。図13Aは、OCT画像の三次元再構成を示す。図13Bは、hHOの明視野画像を示す。図13Cは、中央チャンバを明らかにする9つの異なるオルガノイドの中心の断面を示すOCT画像を提供する(スケールバー:500μm)。図13Dは、FlipGFPトランスジェニックiPSC-L1株に由来するオルガノイドの免疫蛍光画像を提供し、コントロールhHOにおいてはアポトーシスを示さず(左側)、5μMのドキソルビシン(DOX)で処理したhHOにおいては高いアポトーシスを示す(右側)(スケールバー:500μm)。
【0045】
図14は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)チャンバ内の金電極アレイを示すMEA記録システムの説明図である。ここで、本技術の心臓オルガノイドは、インキュベータ内のファラデーケージ内に配置されている。
【0046】
図15A~15Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関して、心臓の分化および発生に対する骨形成タンパク質4(BMP4)およびアクチビンA(ActA)の影響を示す。図15A~15Hはすべて、CHIR単独で分化したhHO(コントロール)およびCHIR+BMP4+ActAで分化したhHO(処理)を比較する。図15Aは、総オルガノイド面積の割合として、心筋細胞および心外膜陽性領域の面積を示すグラフである。図15Bは、オルガノイドの直径(1条件当たりn=8)を示すグラフである。図15Cは、直径を決定するために平均化された、コントロールオルガノイド(左側)および処理オルガノイド(右側)の直径を示す破線を提供する。図15Dは、TNNT2+領域におけるマイクロチャンバの数を示す。図15Eは、細いTNNT2+フィラメントまたは細いチャネルによるマイクロチャンバの分離によって測定されたマイクロチャンバの相互接続性を示し、明確な接続を示す。図15D~15Eにおいて、1条件当たりN=12である。図15Fは、総オルガノイド面積の割合としてPECAM1+組織の量を示す(ImageJ上でMaxEntropy閾値を用いて測定し、25μmの微粒子すべてを分析して小さなスペックルを回避する。1条件当たりn=7)。図15Gは、hHOの免疫蛍光画像を示しており、相互接続されたマイクロチャンバ(黄色の矢印)、TNNT2+フィラメント(白色の矢印)、およびマイクロチャンバを接続するチャネル(緑色の矢印);DAPI(青色);ならびにTNNT2(赤色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:100μm)。図15Hは、hHOの免疫蛍光画像を示しており、DAPI(青色)、PECAM1+組織(緑色)、およびTNNT2+組織(赤色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。(数値=平均±標準偏差、両側の対応のないt検定)
【0047】
図16A~16Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが妊娠糖尿病(diabetes during pregnancy、DDP)誘導CHDの特徴を忠実に再現することを示す。図16Aは、2週間の分化にわたる、正常血糖条件下(NHO、左側)および糖尿病条件下(DDPHO、右側)での10個のhHOの発生後の明視野画像を示す。図16Bは、分化の最初の2週間におけるhHOの面積を示す(平均±標準偏差;n=12;二元配置分散Sidak多重比較検定)。図16Cは、15日目にNHOおよびDDPHOに対して実施された電気生理学的分析を示し;矢印は、不整脈事象を示す。図16Dは、酸素消費速度(OCR)のシーホース分析(seahorse analysis)を示す。図16Eは、正常hHOおよび糖尿病性hHOの細胞外酸性化速度(ECAR)を示す。図16Fは、NHOおよびDDPHOのTEMによる超微細構造分析であり、小胞体(ER)、ギャップ結合(Gj)、グリコーゲン顆粒(Gy)、脂質滴(Ld)、ミトコンドリア(Mi)、核(N)、およびサルコメア(S)を示す。図16Gは、心臓(TNNT2)および心外膜(WT1)形成について分化15日目での共焦点免疫蛍光画像を示す。図16Hは、正常条件下および糖尿病様条件下での心室(MYL2)および心房(MYL7)チャンバ形成についての共焦点画像を示す(スケールバー:500μm)。
【0048】
図17A~17Fは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが健康条件および糖尿病条件における機能的特徴をモデル化することを示すデータを提供する。図17Aは、心管形成および心臓の4つのチャンバへのループの模式図を示す。図17Bは、15日目のNHOおよびDDPHOの明視野画像を示しており、セグメンテーション(赤色の矢印)および初期心臓構造に類似する別々の心臓領域(黄色の矢印)を示す。図17Cは、正常なオルガノイド対糖尿病性オルガノイドの代表的なMEA電気生理学的詳細を示す。図17Dは、正常hHOおよび糖尿病性hHOにおける活動電位μVの振幅の大きさを示す(1条件当たり3回の反復でn>12;対応のないt検定、***p<0.001)。図17Eは、MEAによって記録された正常オルガノイドおよび糖尿病性オルガノイドにおける1分間当たりの拍動の拍動周波数(BPM)を示す(平均±標準偏差、n>5オルガノイド;対応のないt検定、p<0.05)。図17Fは、正常オルガノイドおよび糖尿病様オルガノイドのシーホースエネルギーマップ(seahorse energy map)を示す(平均±標準偏差)。
【0049】
〔詳細な説明〕
実施形態の例は、本開示が完全であり、その範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な組成物、成分、装置および方法の例など、多数の具体的な詳細が記載される。当業者には明らかなように、具体的な詳細が使用される必要はなく、実施形態の例は多くの異なる形態で実施されてもよく、いずれも本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。いくつかの実施形態の例においては、公知の方法、公知の装置構成および公知の技術は、詳細には説明されない。
【0050】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態の例のみを説明することを目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、そうではないことを文脈が明らかに示さない限り、複数形も含むことが意図され得る。用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」は、包括的であり、したがって記載された特徴、要素、組成物、工程、整数、動作および/または成分の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、成分および/またはそれらの群の存在または追加を排除しない。オープンエンドな用語「含む(comprising)」は、本明細書に記載される様々な実施形態を説明し、特許請求するために使用される非限定的な用語として理解されるべきであるが、特定の態様において当該用語は代替的に、「からなる」または「本質的にからなる」などのより限定的かつ制限的な用語であると代わりに理解されてもよい。したがって、組成物、材料、成分、要素、特徴、整数、動作および/または処理工程を記載する任意の所与の実施形態について、本開示はまた、そのような記載された組成物、材料、成分、要素、特徴、整数、動作および/または処理工程からなるか、または本質的にこれらからなる実施形態も具体的に記載している。「からなる」の場合、代替の実施形態は、任意の追加の組成物、材料、成分、要素、特性、整数、動作および/または処理工程を除外する。一方で、「本質的にからなる」の場合、基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼす任意の追加の組成物、材料、成分、要素、特徴、整数、動作および/または処理工程は、そのような実施形態から除外されるが、基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない任意の組成物、材料、成分、要素、特徴、整数、動作および/または処理工程は、当該実施形態に含まれ得る。
【0051】
本明細書で説明される如何なる方法工程、処理および動作も、性能の順序として具体的に判別されない限り、説明または図示される特定の順序でそれらの性能を必ずしも必要とすると解釈されるべきではない。また、特段の記載がない限り、追加または代替の工程が採用され得ることを理解されたい。
【0052】
ある成分、要素または層が別の要素または層の「上にある」、「係合される」、「に接続される」、または「に結合される」と言及されるとき、当該成分、当該要素または当該層は、他の成分、要素または層の上に直接的にあってもよく、直接的に係合されてもよく、直接的に接続されてもよく、もしくは直接的に結合されてもよく、または、介在する要素または層が存在していてもよい。対照的に、ある要素が別の要素または層の「上に直接的にある」、「直接的に係合される」、「直接的に接続される」、または「直接に結合される」と言及されるとき、介在する要素または層は存在しなくてもよい。要素間の関係を説明するために使用される他の語は、同様の様式で解釈されるべきである(例えば、「間に」と「直接的に間に」、「隣接する」と「直接的に隣接する」など)。本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙された項目のうち1つ以上の任意かつすべての組合せを含む。
【0053】
第1、第2、第3などの用語が様々な工程、要素、成分、領域、層および/または区域を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの工程、要素、成分、領域、層および/または区域は、特段の記載がない限り、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの工程、要素、成分、領域、層または区域を、別の工程、要素、成分、領域、層または区域と区別するためのみに使用され得る。本明細書で使用される場合、「第1」、「第2」および他の数値用語は、文脈によって明確に示されない限り、配列または順序を含意しない。したがって、以下に説明する第1の工程、要素、成分、領域、層または区域は、実施形態の例の示唆から逸脱することがなければ、第2の工程、要素、成分、領域、層または区域と呼ばれることもあり得る。
【0054】
「前」、「後」、「内側」、「外側」、「下(beneath)」、「下(below)」、「上(above)」、「上(upper)」などの空間的または時間的に相対的な用語は、図に示されるような1つの要素または特徴と別の要素または特徴との関係を説明する記載を容易にするために、本明細書で使用され得る。空間的または時間的に相対的な用語は、図に示される方位に加えて、使用中または動作中の装置またはシステムの様々な方位を包含することが意図され得る。
【0055】
本開示を通して、数値は、言及された値を概ね有する所与の値および実施形態、ならびに言及された値を正確に有する所与の値および実施形態からの小さな偏差を包含する範囲に対する近似的な測定または境界を表す。詳細な説明の最後に提供される実施例以外に、添付の特許請求の範囲を含む、本明細書中のパラメータ(例えば、量または条件のもの)の数値すべては、「約」が数値よりも先に実際に出現するか否かにかかわらず、すべての場合において、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。「約」は、記載された数値がいくらかのわずかな不正確性を許容することを表す(値の正確性へのいくらかのアプローチを伴う;値に概ねまたは合理的に近い;ほぼ)。「約」によって提供される不正確性が、この通常の意味で当技術分野において他に理解されない場合、本明細書で使用される「約」は、そのようなパラメータを測定および使用する通常の方法から生じ得る変動を少なくとも示す。例えば、「約」は、5%以下、任意に4%以下、任意に3%以下、任意に2%以下、任意に1%以下、任意に0.5%以下、特定の態様においては任意に0.1%以下の変動を含んでもよい。
【0056】
さらに、範囲の開示は、すべての値の開示、および、範囲について与えられた端点および部分範囲を含む、全範囲内のさらに分割された範囲を含む。本明細書において言及される場合、別段の指定がない限り、範囲は、端点を含み、全範囲内の別個の値、およびさらに分割された範囲のすべての開示を含む。したがって、例えば、「A~B」または「約A~約B」は、AおよびBを含む。
【0057】
以下、実施形態の例について、添付の図面を参照してより完全に説明する。
【0058】
本技術は、心臓発生プログラムを操作することによって、hPSCを使用して、hHOを含む、高度に複雑で生理学的に関連する心臓オルガノイドを作製するための小分子ベースの方法を提供する。当該方法は、懸濁液胚様体の特定時点での3つの連続的なWnt調節段階(活性化/阻害/活性化)に主に依存しており、構造、組織化、機能性、心臓細胞型複雑性、ECM組成物および血管新生に関して重要な心臓様構造を生成する。さらに、当該方法は、成長因子ベースのアプローチと比較してより安価であり、処理の点で比較的単純である。当該方法はまた、自動化可能であり、拡張可能であり、高含有量/ハイスループット薬理学的スクリーニングに適している。本技術はまた、当該方法から生成されたhHOも提供する。hHOは、発生中の胚性心臓に対するDDPの作用など、様々な条件および疾患を模し、治療対象を同定するために使用することができる。
【0059】
図1に関して、本技術は、心臓オルガノイドを生成するための方法10を提供する。ブロック12において、当該方法は、多能性幹細胞(PSC)を含む細胞凝集体を形成することを含む。細胞凝集体は、細胞培養フラスコまたはプレートなどの細胞培養基材上でPSCを培養することによって、形成される。PSCは、非限定的であり、例えば、hPSC、ヒト誘導PSC(hiPSC)、任意の他のヒト幹細胞由来多能性細胞、およびそれらの組み合わせを含む、任意のヒト由来PSCであり得る。hPSCの特定の非限定的な例は、hiPSC株iPSC-L1、AICS-0037-172およびiPSCORE_16_3、hESC株H9、ならびにそれらの組合せを含む。PSCを培養するための培地、ならびにPSCを継代培養するための方法および試薬は、当技術分野で公知である。
【0060】
PSCがコンフルエントに達する前に、PSCは、非限定的な例として、Accutase(登録商標)細胞剥離溶液(Innovative Cell Technologies)などの剥離組成物で解離される。解離した細胞を、約100g、約150g、約200g、約250g、約300g、約350g、約400g、約450gおよび約500gを含む約100g以上、約500g以下で、約1分間、約2分間、約3分間、約4分間、約5分間、約6分間、約7分間、約8分間、約9分間および約10分間を含む約1分間以上、約10分間以下遠心分離して、ペレットを形成する。ペレットは、Rho関連キナーゼ(ROCK)阻害剤を含む培養培地において、例えばチアゾビビン、Y-27632、ファスジルおよびそれらの組合せからなる群から選択されるROCK阻害剤を含むEssential 8TM Flex培地において、再懸濁される。ROCK阻害剤は、約750nM以上、約150μM以下など、対応する業者によって推奨される濃度で含まれる。次いで、懸濁したPSCを計数し、所定数のPSCを基材に移す。特定の態様において、基材は、6ウェル、24ウェルまたは96ウェルなどの複数の丸底ウェルを含む超低吸着培養プレートであり得る。非限定的な例として、約2500以上、約15000以下、例えば約2500、約3000、約3500、約4000、約5000、約5500、約6000、約6500、約7000、約7500、約8000、約8500、約9000、約9500、約10000、約10500、約11000、約11500、約12000、約12500、約13000、約13500、約14000、約14500および約15000のPSCを、培養培地中で、96ウェル超低吸着培養プレートの少なくとも1つの丸底ウェルに移すことができる。次いで、基材を、約50g以上約500g以下、約50g、約75g、約100gおよび約150gを含む約50g以上約150g以下で、約1分間、約2分間、約3分間、約4分間、約5分間、約6分間、約7分間、約8分間、約9分間および約10分間を含む約1分間以上、約10分間以下遠心分離して、細胞凝集体を形成する。細胞凝集体を担持する基材は、約37℃および約5%COのインキュベータ中で維持される。培養培地の少なくとも一部は、例えば約24時間後に、交換され得る。細胞凝集体は、三次元構造中で共に結合またはクラスタ化された複数のPSCを含む。三次元構造は、球状であってもよい。
【0061】
ブロック14に示すように、方法10はまた、細胞凝集体における「Wntシグナル変換経路」とも呼ばれるWntシグナル伝達を活性化させて、細胞凝集体を三次元心臓中胚葉に分化させることも含む。既知のWntシグナル伝達経路は、カノニカルまたは非カノニカルとして特徴付けられる。この点に関して、カノニカルWntシグナル伝達経路は、細胞凝集体を心臓中胚葉に分化させる。カノニカル経路の簡単な説明として、Wntは、Frizzledファミリー膜貫通受容体の細胞外領域に結合する。Frizzledファミリー膜貫通受容体は、細胞質リンタンパク質Dishevelledを活性化させる。活性化されたDishevelledは、GSK-3をAxinから解離させることによって、Axin、大腸腺腫症ポリポーシス(APC)およびGSK-3を含む「破壊複合体」を不活性化させ、GSK-3の阻害をもたらす。破壊複合体はβ-カテニンの分解を引き起こすので、破壊複合体の不活性化はβ-カテニンが核に転位することを可能にし、そこで、β-カテニンはTCF/LEFファミリー転写因子の転写共活性化因子として作用する。
【0062】
したがって、Wntシグナル伝達経路は、破壊複合体のβ-カテニン分解能を調節することによって、例えばGSK-3を阻害することによって、またはWntシグナル伝達経路における他のタンパク質を標的化することによって、活性化され得る。Wntシグナル伝達経路活性化因子の非限定的な例は、CHIR99021(GSK-3阻害剤)、塩化リチウム(GSK-3阻害剤)、SB-216763(GSK-3阻害剤)、BIO(GSK-3阻害剤)、ケンパウロン(Kenpaullone)(GSK-3阻害剤)、BML-284、WAY-262611、WAY-316606、LP-922056、ABC99、IQ-1、LY2090314、デオキシコール酸(DCA)、KY-02061、KY-02327、QS11、およびそれらの組合せを含む。Wntシグナル伝達経路活性化因子は、約500nM以上約100mM以下、約750nM以上約1mM以下、約1μM以上約50μM以下、または約1μM以上約15μM以下などの当技術分野で公知の濃度で培養培地に含まれ得る。したがって、Wntシグナル伝達を活性化させることは、細胞凝集体を第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と、約2時間、約6時間、約12時間、約24時間、約36時間および約48時間を含む約2時間以上、約48時間以下接触させることを含む。PSCを分化させることに好適な培養培地は、当技術分野で公知であり、非限定的な例として、B27TMサプリメントマイナスインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640を含む。
【0063】
三次元心臓中胚葉の成長を促進するために、当該方法はまた、細胞凝集体を、心臓成長(すなわち、心臓オルガノイドの成長)を促進する少なくとも1つの成長剤または成長因子、非限定的な例として例えばBMP4、ActA、線維芽細胞成長因子2(FGF2)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)および形質転換成長因子β(TGFβ)、ならびにこれらの組合せと接触させることを含むことができる。成長剤それぞれは、約1fM以上約50μM以下、約1fM以上約1μM以下、または約1fM以上約1pM以下の個別の濃度で培養培地に含まれ得る。非限定的な例として、特定の態様において、BMP4およびActAは、それぞれ約0.1pM以上約1pM以下、および約1fM以上約200fM以下の濃度で培養培地に含まれる。接触させることは、約30分間、約1時間、約2時間、約6時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、またはそれ以上を含む、約30分間以上、約15日間以下実行される。いくつかの態様において、成長剤は、第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と同時に細胞凝集体と接触させられる。したがって、培養培地は、Wntシグナル伝達経路活性化因子および少なくとも1つの成長剤を含み得る。
【0064】
ブロック16に示すように、方法10はまた、三次元心臓中胚葉におけるWntシグナル伝達を阻害して、心臓オルガノイドを形成することも含む。Wntシグナル伝達経路阻害剤は、当技術分野で公知であり、例えばポルクピン(PORCN;Wntをパルミトイル化(Wnt活性に必要な修飾)する)、Frizzled、タンキラーゼ(TNKS;タンパク質分解のためにアキシンを標的化する)、TCF/LEF転写レポーター、破壊複合体、およびDishevelled(Dvl)を標的化する化合物を含む。Wntシグナル伝達経路阻害剤の非限定的な例は、Wnt-C59(PORCN阻害剤)、IWP-L6、(PORCN阻害剤)、IWP-2(PORCN阻害剤)、LGK974、ETC-159、ケルセチン、BC2059、ニクロサミド、XAV939、E7449、IWR-1、G007-LK、ICG-001、PNU-74654、ウィンドルフェン(windorphen)、デリシン、デリシジン、カルノシン酸、ピルビニウム、NSC668036、3289-8625、J01-017a、TMEM88、BMD4702、DK-520、スリンダク、およびそれらの組合せを含む。Wntシグナル伝達経路阻害剤は、約500nM以上約50mM以下、約750nM以上約500μM以下、約1μM以上約50μM以下、または約1μM以上約15μM以下などの当技術分野で公知の濃度で培養培地に含まれ得る。したがって、Wntシグナル伝達を阻害することは、三次元心臓中胚葉をWntシグナル伝達経路阻害剤と、約2時間、約6時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間および約72時間を含む約2時間以上、約72時間以下接触させることを含む。
【0065】
hHOであり得る心臓オルガノイドは、上述のように、内部および外面を有する三次元主部を含み、第1および第2の心臓領域(それぞれ、FHFおよびSHF)の両方を示す。内部は、心筋組織を含む。心臓オルガノイドはまた、心筋組織によって画定される少なくとも1つのチャンバまたはマイクロチャンバも含み、当該少なくとも1つのチャンバまたはマイクロチャンバは、心内膜細胞で裏打ちされている。心外膜組織(心外膜細胞を含む)は、表面の少なくとも一部に配置される。心臓オルガノイド心臓はまた、心臓線維芽細胞および内皮血管系も含む。さらに、心臓オルガノイドは拍動する。心臓オルガノイドのより詳細な説明は、以下に提供される。
【0066】
ブロック18に示すように、方法10はまた、心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達を活性化させることも任意に含む。この第2のWntシグナル伝達経路活性化(すなわち、カノニカルWntシグナル伝達経路活性化)は、心臓オルガノイドにおいてさらなる心外膜組織および/または心外膜細胞ならびに心外膜前駆細胞を生成し、心臓オルガノイドの複雑さを増大させる。好適なWntシグナル伝達経路活性化因子は、上記で議論されている。したがって、心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達は、第2のWntシグナル伝達経路活性化因子によって活性化させることができ、ここで、第2のWntシグナル伝達経路活性化因子は、第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と同じであるか、または異なっている。第2のWntシグナル伝達経路活性化因子は、約500nM以上約100mM以下、約750nM以上約1mM以下、約1μM以上約50μM以下、または約1μM以上約15μM以下などの当技術分野で公知の濃度で培養培地に含まれ得る。したがって、心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達の活性化は、心臓オルガノイドを第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と、約15分間、約30分間、約45分間、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間および約48時間を含む、約15分間以上約48時間以下、約15分間以上約24時間以下、約15分間以上約6時間以下、または約15分間以上約2時間以下接触させることを含む。第2のWntシグナル伝達経路活性化に好適な培養培地は、非限定的な例として、B27TMサプリメントインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640を含む。接触させた後、Wntシグナル伝達経路活性化因子を含む培地を除去し、培地を、例えばB27TMサプリメントインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640などのWntシグナル伝達経路活性化因子を含まない新鮮な培地で置き換えることにより、Wntシグナル伝達経路活性化因子を除去する。
【0067】
ブロック20に示すように、方法10は、心臓オルガノイドを維持することをさらに含む。維持することは、約48時間ごとに培地を交換することによって実行され、その間、心臓オルガノイドは成長し、成熟し、より複雑になり続ける。
【0068】
方法10は、所定の条件下で心臓オルガノイドを生成するように調整され得ることが理解される。いくつかの例示的な態様において、培地は、約2mM以上、約30mM以下のグルコース、および約20pM以上、約75nM以下のインスリンを含み得、ここで、グルコースおよびインスリンの相対的な量は、「正常」または「糖尿病」条件下で心臓オルガノイドを形成するように調整される。例えば、正常な心臓オルガノイドは、生理学的濃度のグルコースおよびインスリン、例えば約2mM以上約7mM以下、または約3mM以上約6mM以下の濃度のグルコース、および約20pM以上約250pM以下、または約100pM以上約250pM以下の濃度のインスリンを含む培地を用いて、方法10を実行することによって、生成することができる。これらの「正常」条件下で、方法10のブロック20の心臓オルガノイドを維持することの間に、心臓オルガノイドが充分なエネルギー源を有することを保証するために、培地に脂肪酸組成物を補充してもよい。脂肪酸組成物は、オレイン酸-ウシ血清アルブミン(BSA)、リノール酸-BSA、またはL-カルニチンのうち少なくとも1つを含み、総脂肪酸濃度は、約150μM以上、約250μM以下である。一態様において、脂肪酸組成物は、約30μM以上、約50μM以下の濃度のオレイン酸-BSA、約10μM以上、約30μM以下の濃度のリノール酸-BSA、および約100μM以上、約150μM以下の濃度のL-カルニチンを含み、例えば40.5μMのオレイン酸-BSA、22.5μMのリノール酸-BSA、および120μMのL-カルニチンを含む。あるいは、糖尿病、例えば妊娠糖尿病またはDDPを患う母親の中で発生中の心臓を模倣する心臓オルガノイドは、本明細書中で「DDP心臓オルガノイド(DDPHO)」と呼ばれ、生理学的濃度より高いグルコースおよびインスリン、例えば約8mM以上約30mM以下、または約11mM以上約25mM以下の濃度のグルコース、および約250pM以上約75nM以下の濃度のインスリンを含む培地を使用して方法10を実行することによって、生成することができる。しかしながら、方法10において使用される培地の他の成分は調整され得るか、または、調整可能な条件下で心臓オルガノイドを生成するために、追加の成分、例えば成長因子、大分子、小分子などが培地に含まれ得る。
【0069】
いくつかの態様において、方法10は、所定の時間スケールを基準にして実行され得る。例えば、ブロック12のPSCを含む細胞凝集体を形成することは、-2日目に実行され得る。ブロック14の細胞凝集体におけるWntシグナル伝達を活性化させて、三次元心臓中胚葉を形成すること(すなわち、第1のWntシグナル伝達経路活性化)は、0日目に実行され得る。ブロック16の三次元心臓中胚葉におけるWntシグナル伝達を阻害して、心臓オルガノイドを形成することは、2日目に実行され得る。ブロック18の、任意に、心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達を活性化させて、心臓オルガノイドにおいて心外膜細胞および心外膜前駆細胞を生成すること(すなわち、任意の第2のWntシグナル伝達経路活性化)は、7日目に実行され得る。ブロック20の心臓オルガノイドを維持することは、7日目から完了まで、または約15日目以降まで、形成され得る。
【0070】
方法10の非限定的な例が以下に提供される。この非限定的な例において、培地は、所定の様式で、例えば「正常」濃度またはDDPに関連する濃度のグルコースおよびインスリンを含むように、調整され得る。
【0071】
-2日目:成長因子低減Matrigel(登録商標)細胞外マトリックス(Corning)上で培養されたサブコンフルエントのPSCをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、それらをAccutase(登録商標)と接触させることによってPSCの細胞懸濁液を調製し、約300gで約5分間、細胞懸濁液を遠心分離し、Essential 8TM Flex培地中でチアゾビビンを用いてPSCを再懸濁し、チアゾビビンを含むEssential 8TM Flex培地を用いて96ウェル超低吸着プレートのウェルにPSCをプレーティングし、96ウェル超低吸着プレートを約100gで約3分間、遠心分離し、96ウェル超低吸着プレートを約37℃および約5%COに設定されたインキュベータ中に載置することによって、ブロック12のPSCを含む細胞凝集体を形成することが実行される。
【0072】
-1日目:チアゾビビンを含むEssential 8TM Flex培地を、チアゾビビンを含まない新鮮なEssential 8TM Flex培地に置き換える。
【0073】
0日目:チアゾビビンを含まないE8 Essential 8TM Flex培地を、第1のWntシグナル伝達経路活性化因子BMP4およびActAを含み、B27TMサプリメントマイナスインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640で置き換え、約24時間インキュベートすることによって、ブロック14の細胞凝集体におけるWntシグナル伝達を活性化させて、三次元心臓中胚葉を形成することが実行される。
【0074】
1日目:培地を、B27TMサプリメントマイナスインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含む新鮮なRPMI 1640で置き換える。
【0075】
2日目:培地を、Wntシグナル伝達経路阻害剤を含み、B27TMサプリメントマイナスインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640で置き換え、約24時間インキュベートすることによって、ブロック16の三次元心臓中胚葉におけるWntシグナル伝達を阻害して、心臓オルガノイドを形成することが実行される。
【0076】
4日目:培地を、B27TMサプリメントマイナスインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含む新鮮なRPMI 1640で置き換える。
【0077】
6日目:培地を、B27TMサプリメントインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含む新鮮なRPMI 1640で置き換える。
【0078】
7日目:培地を、第2のWntシグナル伝達経路活性化因子を含み、B27TMサプリメントインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640で置き換え;約1時間インキュベートし;培地を、B27TMサプリメントインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640(「正常」濃度のグルコースおよびインスリンを模倣する場合には脂肪酸組成物を含む)で置き換え;約48時間インキュベートすることによって、ブロック18の心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達を活性化させて、心臓オルガノイドにおいて心外膜細胞および心外膜前駆細胞を生成することが実行される。
【0079】
9~15日目、またはそれ以降:培地を、B27TMサプリメントインスリン(Thermo Fisher Scientific)を含む新鮮なRPMI 1640で置き換える。
【0080】
図2A~2Bは、上述のように、方法10によって調製され、培養PSCに由来する心臓オルガノイド30の説明図を示し、図2Bは、図2Aに示される心臓オルガノイド30の断面図である。心臓オルガノイド30は、内部34および外面36を有する三次元主部32を含む。三次元主部32、ひいては心臓オルガノイド30は、約0.1mm以上の最長径(最も離れた部分である2点間の距離)を有する。いくつかの態様において、最長径は、約0.1mm以上、約5mm以下である。しかしながら、最長直径は、限定的なものではなく、0.1mmよりも小さくてもよく、または5mmよりも大きくてもよいことが理解される。
【0081】
内側部分34、および、いくつかの態様においては外面36の一部は、心筋細胞を含む心筋組織38を含み、ここで、心筋細胞の少なくとも一部はサルコメアを画定する。さらに、心筋組織38は、心内膜細胞または心内膜組織を含む少なくとも1つの心内膜層40を含む。ここで、心内膜層40は、例えば1個のチャンバ42から約10個以上のチャンバ42までの、少なくとも1つのチャンバ42を画定する。様々な態様において、心臓オルガノイドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のチャンバ42を有し、当該チャンバ42は、マイクロチャンバであってもよい。チャンバそれぞれは、心臓オルガノイドが完全に形成されるときに、例えば第1のWnt活性化の約14日間後に、約50μm以上、約500μm以下の個別で独立した最長径を有する。したがって、チャンバ42それぞれは、心内膜層40で少なくとも部分的に裏打ちされている。心臓オルガノイド30が2つ以上のチャンバ42を有する場合、チャンバ42のうち少なくとも2つ、例えばすべてのチャンバは、相互接続されていてもよい。「相互接続されている」とは、チャンバ42が、例えば心筋組織38または心内膜層40のうち少なくとも1つによって画定されるチャンネル、導管または通路44によって、少なくとも1つの他のチャンバ42と流体連通していることを意味する。
【0082】
心臓オルガノイド30は、心外膜細胞を含む心外膜組織46をさらに含む。心外膜組織46は、外面36の少なくとも一部を画定する。しかしながら、心外膜組織46はまた、内部34内に存在してもよいが、通常は外面36の近傍に存在している。したがって、心筋組織38は、通常は、心外膜組織46と、少なくとも1つのチャンバ42を画定する心内膜層40との間に配置される。いくつかの態様において、心外膜細胞は、上皮間葉転換(EMT)して、心臓線維芽細胞などの他の細胞型を生じ得る。
【0083】
心臓オルガノイド30は、心筋組織38全体に分散した心臓線維芽細胞48、および心臓特異的でありECMタンパク質を含むECM50をさらに含む。内皮血管52(または脈管脈叢)は、外面36上および心臓オルガノイド30の内部34内に配置される。内皮血管52は、毛細血管で流体連通している動脈(例えば、動脈および/または細動脈を含む)および静脈(例えば、静脈および/または細静脈を含む)によって画定される。さらに、十分に成熟したときに、例えば方法10の約6日目の後に、心臓オルガノイド30は拍動する。
【0084】
チャンバ42は、天然に存在する心臓の静脈または動脈に対応し、天然に存在する心臓と肺との間、および天然に存在する心臓と末梢血管系との間を通過する静脈または動脈と流体連通していない。チャンバ42は、心臓オルガノイド30内に収容されており、PSCに由来する内皮血管系52と流体連通している。
【0085】
本技術はまた、心臓オルガノイドを生成するための方法において使用される様々な種類の培地のうち少なくとも2つを含むシステムまたはキットを提供する。当該システムまたはキットは、以下からなる群から選択される少なくとも2つの培地を含む:Essential 8TM Flex培地;B27TMサプリメントマイナスインスリン細胞培養サプリメント(Thermo Fisher Scientific)およびWntシグナル伝達経路活性化因子(例えば、約4μMおよび/または約10μMのCHIR99021)を含むRPMI 1640;B27TMサプリメントマイナスインスリン細胞培養サプリメント(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640;B27TMサプリメントマイナスインスリン細胞培養サプリメント(Thermo Fisher Scientific)およびWntシグナル伝達経路阻害剤(例えば、約2μMのWnt-C59)を含むRPMI 1640;B27TMサプリメント細胞培養サプリメント(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640;ROCK阻害剤(例えば、約2μMのチアゾビビン)を含むEssential 8TM Flex培地;B27TMサプリメントマイナスインスリン細胞培養サプリメント(Thermo Fisher Scientific)を含み、GSK阻害剤(例えば、約4μMのCHIR99021)、BMP4(例えば、約0.36pMのBMP4)、およびActA(例えば、約0.08pMのActA)を含むRPMI 1640;およびそれらの組合せ。いくつかの態様において、システムまたはキット中の培地は、基礎培地(例えば、Essential 8TM Flex培地、RPMI 1640)、ならびに追加成分のアリコート、例えばB27TMサプリメント細胞培養サプリメント(Thermo Fisher Scientific)、B27TMサプリメントマイナスインスリン細胞培養サプリメント(Thermo Fisher Scientific)、Wntシグナル伝達経路活性化因子、Wntシグナル伝達経路阻害剤、ROCK阻害剤、BMP4および/またはActAを含む。システムまたはキットは、本明細書にて記載したように、心臓オルガノイドを生成するために使用することができる。
【0086】
本技術の実施形態は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【0087】
〔実施例〕
〔概要〕
【0088】
CHDは、ヒトにおける最も一般的な先天性欠損を構成し、全生児出生の約1%に影響を及ぼす。これらの障害がどのように発生するのかを理解する能力は、インビトロでヒト心臓の複雑さをモデル化する能力が限定されているために、妨げられている。インビトロでヒトの発生および疾患を研究するために、複雑なインビボ表現型を再現する、より忠実な臓器様のプラットホームを開発することが差し迫って必要とされている。多能性幹細胞を用いた自己組織化によってhHOを生成する例示的な新規の方法が、本実施例において報告される。当該方法は、明確であり、高度に効率的であり、拡張可能であり、高い再現性を示し、スクリーニングおよびハイスループットアプローチに適合可能である。hHOは、完全に規定された培養条件において、化学的阻害剤および成長因子の組合せを使用する2工程のカノニカルWntシグナル伝達調節戦略を使用して、生成される。hHOは、ヒト心臓の発生を忠実に再現し、トランスクリプトームレベル、構造レベル、および細胞レベルで、同齢の胎児心臓組織に類似する。hHOは、よく組織化された多系統細胞型領域の独自性を有し、心臓領域ならびに心房および心室チャンバ、加えて心外膜、心内膜および冠状血管を暗示する、洗練された内部チャンバを発生させ、機能的活性を示す。また、胚性CHDを研究するためのDDPの最初のインビトロヒトモデルを確立することによって、hHOがCHDに関連する複雑な代謝障害を再現できることも示された。グルコースおよびインスリンの増加による形態学的効果および代謝効果は、DDPの効果をモデル化する能力を示している。心臓オルガノイドモデルは、ヒト心臓の発生および疾患における移行研究のための強力で新規なツールを構成する。
【0089】
〔導入〕
【0090】
本実施例は、心臓発生プログラムを操作することによって、hPSCを使用して、高度に複雑で生理学的に関連するhHOを作製するための新規な小分子ベースの方法を記載する。当該方法は、懸濁液胚様体の特定時点での3つの連続的なWnt調節段階(活性化/阻害/活性化)に主に依存しており、構造、組織化、機能性、心臓細胞型複雑性、ECM組成物および血管新生に関して重要な心臓様構造を生成する。さらに、当該方法は、成長因子ベースのアプローチと比較してより安価であり、処理の点で比較的単純である。当該方法はまた、自動化可能であり、拡張可能であり、高含有量/ハイスループット薬理学的スクリーニングに適している。当該方法がヒト心疾患をモデル化するためにどのように使用できるのかを実証するために、本実施例は、発生中の胚性心臓に対するDDPの影響をモデル化する方法(すなわち、オルガノイドシステム)を採用し、当該方法が治療対象を同定できることを実証する。
【0091】
〔材料および方法〕
【0092】
幹細胞培養。本実施例で使用したヒトiPSC株は、iPSC-L1、AICS-0037-172(Coriell Institute for Medical Research;別名AICS)、iPSCORE_16_3(WiCell;別名iPSC-16)およびhESC株H9であった。すべてのPSC株は、多能性およびゲノム完全性について妥当であると確認した。hPSCを、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含むEssential 8TM Flex培地中で、成長因子低減Matrigel(登録商標)(Corning)でコーティングした6ウェルプレート上で、37℃および5%COのインキュベータ中で、60~80%コンフルエントに達するまで培養した。その時点で、ReLeSRTM継代試薬(Stem Cell Technologies)を使用して、細胞を新しいウェルに分割した。
【0093】
PSC単層心臓分化。わずかな改変と共に上記のような小分子Wnt調節戦略を使用して、分化を実行した。簡潔に述べると、分化細胞を、分化0~7日目からはB27TMサプリメントマイナスインスリンを含むRPMI 1640中で維持し、分化7~15日目からはB27TMサプリメント(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI 1640中で維持した。細胞を、分化0日目に24時間、10μMのGSK阻害剤CHIR99021(Selleck)で処理し、分化3~5日目から48時間、2μMのPORCN阻害剤Wnt-C59(Selleck)で処理した。代替の分化プロトコルは、Berteroら("Dynamics of genome reorganization during human cardiogenesis reveal an RBM20-dependent splicing factory." Nature Communications, Vol. 10, No. 1538, 2019)に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0094】
自己組織化hHO分化。Accutase(登録商標)(Innovative Cell Technologies)を用いて、PSCを解離させ、球状体を形成させた。解離後、細胞を300gで5分間遠心分離して、2μMのROCK阻害剤チアゾビビン(Millipore Sigma)を含むEssential 8TM Flex培地に再懸濁した。次いで、hPSCを、Moxi Cell Counter(Orflo Technologies)を用いて計数し、-2日目に丸底超低吸着96ウェルプレート(Costar)に10000細胞/ウェルで播種した。次いで、プレートを、100gで3分間遠心分離して、37℃および5%COのインキュベータに載置した。24時間後(-1日目)、ウェルそれぞれから50μlの培地を注意深く除去し、200μlの新鮮なEssential 8TM Flex培地を加え、最終体積250μl/ウェルとした。プレートをインキュベータにさらに24時間戻した。0日目に、166μl(総ウェル体積の約2/3)の培地をウェルそれぞれから除去し、166μlの、B27TMサプリメントマイナスインスリン(Gibco)を含み、CHIR99021(Selleck)を含むRPMI 1640を最終濃度4μM/ウェルで、0.36pM(1.25ng/ml)のBMP4および0.08pM(1ng/ml)のActAと共に、24時間加えた。1日目に、166μlの培地を除去し、B27TMサプリメントマイナスインスリンを含む新鮮なRPMI 1640で置き換えた。2日目に、B27TMサプリメントマイナスインスリンを含み、Wnt-C59 (Selleck)を含むRPMI 164を加え、Wnt-C59の最終濃度を2μMとし、サンプルを48時間インキュベートした。培地を4日目および6日目に交換した。6日目に、培地を、B27TMサプリメント(Gibco)を含むRPMI 1640で交換した。7日目に、第2の4μMのCHIR99021曝露を、B27TMサプリメントを含むRPMI 1640中で1時間行った。その後、オルガノイドが分析できるようになるまで、48時間ごとに培地を交換した。11.1mMのグルコースおよび58nMのインスリンを含む基礎RPMI培地を用いて、糖尿病状態をシミュレートし、3.5mMのグルコースおよび170pMのインスリンを含むコントロール培地と比較した。
【0095】
レンチウイルス形質導入。製造業者の指示に従って、ZymoPURETM II Plasmid Midiprep Kit(Fisher Scientific)を用いて、FlipGFPプラスミド(Vector Builder)をL1 iPSC株に形質導入した。HEK293tをD10培地(DMEM+10%FBS+1%P/S)中で培養し、後に還元血清OptiMemTM(Gibco、Fisher Scientific)で1時間スイッチした。リポフェクタミン混合物(室温で5分間静置した、100μlのリポフェクタミン2000(Thermo Fisher Scientific)+4mlのOptiMemTM)を、PLUSTM試薬混合物(200μlのPLUSTM試薬(Invitrogen、Fisher Scientific)+4mlのOptiMemTM+20μgのレンチCRISPRプラスミド+10μgのpMD2.gpVSVg(またはpVSVgpMD2.g)+15μgのpsPAX2)と混合し、次いでHEK293t細胞に加え、37℃で6時間インキュベートした。その後、抗菌薬を使用せずに、培地を30mlのD10+1%BSA/フラスコに交換した。48~60時間後、培地を収集し、3000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清をAmicon(登録商標)Filter Unit(Millipore-Sigma)に移し、卓上遠心機中、3200gで30分間、4℃で回転させた。フロースルーを取り除き、処理を繰り返した。濃縮ウイルスをアリコートし、-80℃で保存した。ウイルスアリコートおよびポリブレン(Fisher Scientific)を37℃で解凍した。ウイルスおよびポリブレンを、低程度~中程度のコンフルエントでiPSC-L1に送達し、一晩インキュベートした。翌朝、培地を交換し、細胞を24時間静置した。ピューロマイシンをウェルに加え、選別を約3~5日間続けた。生存しているクローンを収集し、再びプレーティングし、成長させた。
【0096】
免疫蛍光法。hHOを、オルガノイドへの破壊を避けるために切断した1000μLピペットチップを用いて、微量遠心管(Eppendorf)に移し、室温で30分間、4%パラホルムアルデヒド溶液(PBSに溶解)中で固定化した。固定化の後、PBS-グリシン(20mM)中で3回洗浄し、ブロッキング/透過処理溶液(10%ロバ正常血清、0.5%TritonTM X-100、0.5%BSA、PBS中)中、熱ミキサー(Thermo Scientific)上で、4℃で一晩、300RPMでインキュベートした。次いで、hHOをPBS中で3回洗浄し、抗体溶液(1%ロバ正常血清、0.5%TritonTM X-100、0.5%BSA、PBS中)中の一次抗体(表1を参照)で、熱ミキサー上で、4℃で24時間、300RPMでインキュベートした。一次抗体曝露の後、PBS中で3回洗浄し、熱ミキサー上で、暗所の4℃で24時間、300RPMで、抗体溶液中の二次抗体(表1を参照)でインキュベートした。染色されたhHOをPBS中で3回洗浄した後、VECTASHIELD(登録商標)VibranceTM Antifade Mounting Medium(Vector Laboratories)を用いて、ガラス顕微鏡スライド(Fisher Scientific)上にマウントした。90μmのPolybead(登録商標)Microspheres(Polyscience、Inc.)を、スライドとカバーガラス(番号1.5)との間に配置し、共焦点顕微鏡の透過能力に対応しながら、オルガノイドの三次元構造の一部を保存した。
【表1】
【0097】
共焦点顕微鏡法および画像解析。サンプルを2つの共焦点レーザー走査顕微鏡(Nikon Instruments A1 Confocal Laser Microscope;Zeiss LSM 880 NLO Confocal Microscope System)を用いて撮像し、Fiji(ハイパーテキストトランスファープロトコル、imagej.net/Fijiが保障)を用いて画像を解析した。オルガノイド中の組織領域を定量化するため、DAPI陽性細胞を用いて、それぞれのオルガノイド全体にわたる3つのz平面で、該当する対象細胞マーカーに対する正規化を行った。MaxEntropy閾値を用いてPECAM1+組織を測定し、ノイズを除去するために25μm未満を占めるあらゆる染色部位を廃棄した。
【0098】
RNA-seqおよびトランスクリプトーム解析。図6Aに示すように、hHO作製および分化のプロトコルを通じて11の異なる時点で、RNAを抽出した。当該時点は、以下の通りである:0、1、3、5、7、9、11、13、15、17および19日目。それぞれの時点で、8つのオルガノイドを除去し、すべてのサンプルが収集されるまで-20℃でRNAlater(登録商標)(Qiagen)に保存した。製造業者の指示(Qiagen、74104)に従って、RNEasy Mini Kit(登録商標)を用いてRNAを抽出し、QubitTM Fluorometer(Thermo)を用いてRNAの量を測定した。RNAサンプルをMSU Genomics Coreに送り、サンプルの品質を、Agilent 2100 Bioanalyzerを用いて、続いてIllumina(登録商標) HiSeq(登録商標) 4000システムを使用するRNA-seqを用いて、試験した。RNA-seqサンプル処理のために、Galaxyにおいてパイプラインを作製した。簡潔に述べると、サンプルランの品質をFASTQCで評価し、HISAT2を用いてhg38へのアラインメントを行った。featureCountsを用いて総数を取得し、EdgeRを用いて差次的発現解析を行った。さらなる下流バイオインフォマティクス解析を、Phantasus 1.5.1(artyomovlab.wustl.edu/Phantasus)およびToppGeneにおいて行った。
【0099】
OCT分析。図3に示すように、カスタマイズSD-OCT装置100を作製し、心臓オルガノイドの三次元画像を取得した。SD-OCTシステム100は、約1320nmの中心波長および約110nmのスペクトル範囲を有する広帯域照明を提供するための光源として、スーパールミネッセントダイオード(SLD)102(例えば、SLD1325、Thorlabs)を備える。SLD102の出力は、第1のアーム104を通ってファイバーカプラ106に送られる。ここで、出力は、50/50に分割され、サンプルアーム108および基準アーム110に送られる。サンプルアーム108において、光は、第1の偏光コントローラ112を透過し、第1のコリメータ114を透過し、第1のレンズ116および第2のレンズ118を透過して、ガルバノメータ120(例えば、GVSM002-EC/M、Thorlabs)に至り、サンプル124上を横方向に、対物レンズ122を通して光ビームを走査する。基準アーム110において、光は、第2の偏光コントローラ126を透過し、第2のコリメータを透過し、ガラス130を透過し、第3のレンズ132を透過し、ミラー134に至る。SD-OCTシステム100はまた、検出アーム136も備え、シグナルを第3のコリメータ138を通してカスタム設計された分光計140に通過させる。ここで、シグナルは、回折格子142および第4のレンズ144を介して、カメラ146に通過させられる。カメラ146は1024ピクセル線走査カメラ(SU1024-LDH2、センサに制限は無い)であり得、解説格子142は1145線ペア/mm回折格子(1310nmでのHD 1145線ペア/mm、Wasatch Photonics)であり得、第4のレンズ144はf=100mmのF-シータレンズ(FTH100-1064、Thorlabs)であり得る。SD-OCTシステム100の感度は、20kHzのA走査速度で動作する場合、約104dBとして測定される。SD-OCTシステム100の軸方向分解能は、組織において約7mmであると測定される。対物レンズ122に関しては、5X対物レンズ(5X Plan Apo NIR、Mitutoyo)を使用して、約7mmの横断画像解像度を達成し、心臓オルガノイド撮像に使用される走査範囲は約2mm×2mmであった。hHOを、PBSを含む96ウェルプレートに配置し、20kHzのA走査速度で撮像した。得られた心臓オルガノイドのOCTデータセットをまず処理して、補正されたスケールを有するOCT画像を生成した。次いで、スペックルノイズを低減するために、スペックル変調敵対的生成ネットワークを用いて、OCT画像をさらに脱ノイズした。OCT画像の三次元レンダリングを、Amiraソフトウェア(Thermo Fisher Scientific)を用いて実行した。
【0100】
光シート撮像および解析。自学開発のカスタマイズ高速軸方向掃引光シート蛍光顕微鏡を用いた。顕微鏡は、3つの内蔵レーザチャネル(405nm、488nm、および561nm)および832x832μmのFOVを有し、2つのカスタムメイドの多重浸漬高NA対物レンズ(16X倍率、ASI)およびsCMOSカメラ(Andor Zyla 4.2)を備える。固定化オルガノイド撮像は、サンプルをプレート皿に配置し、両面テープ(3M)で固定することによって、達成した。次いで、オルガノイドを水中に浸漬した。ASIコントロールステージは、オルガノイドサンプルを光シート焦点面に入れ、2つの対物レンズを水中に沈めて、撮像のための屈折率に適合させる。走査は、走査ステップ幅を1μmに設定したASIコントロールボックスを用いて実行した。異なるレーザチャネルを有する3つの同一の走査を、1個のオルガノイドに適用した。捕捉後、ImageJを用いて蛍光画像を処理した。
【0101】
TEMサンプルの撮像および撮像。オルガノイドを4%PFA中で30分間固定化し、続いて水中で3回、それぞれ10分間洗浄した。カコジル酸緩衝液(pH7.3)中の1%オスミウムテトロキシド中で、室温で60分間、後固定化を実行した。オルガノイドを水中で2%アガロースに包埋し、操作のために氷を用いて固定化した。次いで、アセトンの連続希釈を、それぞれ10分間、脱水(25%、50%、75%、90%、および100%で3回)のために使用した。撹拌下で各3時間、樹脂のアセトン溶液1:3、2:2、および3:1に浸漬することによって、オルガノイドにSpurr樹脂(Electron Microscopy Sciences)を含浸させ、その後、100%樹脂に24時間包埋し、60℃で一晩重合した。RMC PTXL Leica Ultramicrotomeを用いて超薄切片(50~70nm)を切断し、200メッシュの炭素被覆銅グリッドに収集した。観察前に、すべてのサンプルを、2%酢酸ウラニルおよび1%クエン酸鉛でそれぞれ6分間および3分間、陽性染色した。グリッドは、JEOL 1400 Flash透過型電子顕微鏡を用いて、100keVで検査した。
【0102】
電気生理現象。前述の自学開発のMEAシステムを使用して、個々のオルガノイドの電気的活性を記録した。15mMのHEPESを補充した培養培地中のPDMSウェル内のMEA上に、生きたオルガノイドを配置した。MEAシステムへの損傷を避けるために、低湿度、37℃のインキュベータ内のファラデーケージ内にMEAを配置した。各オルガノイドを30分間記録し、PDMSウェルをオルガノイド間のPBSで洗浄した。
【0103】
シーホース代謝分析。シーホースXFp分析器(Agilent)を使用して、製造業者の指示に従って解糖速度アッセイを行った。それぞれのアッセイにおいて、STEMdiffTM Cardiomyocyte Dissociation Kit (Stem Cell Technologies)を用いて、1条件当たり3つのオルガノイドを別々に解離させた。
【0104】
データの入手可能性。本実施例に示されるすべてのオルガノイドデータセットは、National Center for Biotechnology Information Gene Expression Omnibus repositoryからアクセス番号GSE153185で入手可能である。単層分化法2および胎児心臓のRNA-seqをGSE106690から入手した。本実施例の間に生成および/または分析された他の情報すべては、本明細書に含まれる。
【0105】
統計解析。すべての解析は、ExcelまたはGraphPadソフトウェアを用いて行った。すべてのデータは正規分布を示した。統計学的有意性は、適切ならば、標準的な対応のないスチューデントt検定(両側検定;P<0.05)を用いて評価した。多重比較分析では、適切ならば、TukeyまたはDunnettの検定後補正を用いた一元配置分散が適用された(P<0.05)。すべてのデータは、平均±標準偏差として表され、特に明記しない限り、少なくとも3回の技術的反復を用いた最低3回の独立した実験を表す。
【0106】
〔結果〕
【0107】
Wntシグナル伝達調節によって生成された自己組織化hHO。本方法は、少なくとも4つの最初の管理点を満たすように設計された:(1)高いオルガノイドの品質および再現性;(2)ハイスループット/高含有量フォーマット;(3)相対的に単純(従来の細胞培養装置以外の特殊な装置を必要としない);および(4)最も高い制御性について規定された化学的条件および下流の用途の多様性。本方法は、超低吸着96ウェルプレート中で遠心分離して、続いて誘導前に37℃および5%COで48時間インキュベートすることによって、hPSCを胚様体に集合させることから開始する。他のインキュベーション時間(12時間、24時間)は、分化が開始すると、劣った結果を提供するので、このインキュベーションは、球状体の安定化を可能にし、効率を増加させるために重要である。誘導後、使用済み培地の2/3を除去し、それぞれの培地交換のために新鮮な培地と交換し、使用した様々なシグナルへの曝露を徐々に遷移させた。カノニカルWntシグナル伝達経路活性化因子であるCHIR99021(特異的なGSK-3阻害を介する)、およびWntシグナル伝達経路阻害剤であるWnt-C59(PORCN阻害を介する)への連続的曝露によって、中胚葉および心臓性中胚葉の誘導が達成された(図4A)。hHOの明視野および免疫蛍光画像は、分化プロトコルを通してサイズが有意に増大したことを示す(図4B)。心筋細胞特異的なTNNT2抗体で染色されたhHOの共焦点顕微鏡観察は、オルガノイドが早くも7日目にサルコメアを発生させ始め(図4B)、15日目までに容易に見える明確なサルコメア形成および繊維集合を有することを示している(図4C)。拍動するhHOは、早くも分化プロトコルの6日目に出現し、10日目までにすべてのサンプルに強固で規則的な拍動が出現した(第1および第2の動画は、拍動するhHOを示すように製作された)。最初のWnt活性化のための最適条件を決定するために、0日目に24時間、胚様体を様々な濃度のCHIR99021(4μM、6.6μM、および8μM)に曝露した。15日目に、共焦点顕微鏡観察によって、心臓系統形成についてhHOを評価した(図5A)。試験したすべてのhESCおよびhiPSC株についての最適な心臓性中胚葉の誘導は、心筋細胞単層分化プロトコルについて以前に報告された濃度よりも低いCHIR99021濃度で起こり、これは典型的には10~12μMのCHIRの範囲である。4μMのCHIR99021曝露が15日目に64±5%のTNNT2細胞を含む最も高い心筋細胞含有量をもたらしたことに対して、6.6μMおよび8μMのCHIR99021ではそれぞれ9.6±5%および2.4±2%であった(図4Dおよび5A)。この差はおそらく、発生中のhHOにおける内因性モルフォゲン産生およびパラクリンシグナル伝達に起因するものであり、これは、オルガノイドの三次元環境および固有の自己組織化特性によって与えられたものである。4μMのCHIR99021で処理されたhHOはまた、3つの濃度のうち最良の機能的特性も示した(図5B~5C)。最初のhHO分化プロトコルは、複数のhPSC株(iPSC-L1、AICS-37-TNNI1-mEGFP、iPSCORE_16_3、H9)にわたって、再現可能であった。種々のhPSC株に由来するhHOは、同様の分化効率、拍動距離およびサイズを示した(図4E~4F)。
【0108】
hHOにおける心外膜系統の制御誘導。オルガノイドの複雑さを増大させ、より発生的に関連する構造を作製するために、心外膜細胞の特異的誘導のために単層hPSC分化において成功裏に使用される方法を、適合および改変した。当該方法は、二次心臓系統を誘導するために、分化7~9日目にカノニカルWntシグナル伝達の第2の活性化を含む。この第2の活性化がhHOを刺激して複雑さを増し、心臓発生をよりよく再現するかどうかを決定するために、7日目の第2のCHIR99021曝露の影響(図6A)を試験した。CHIR99021を、様々な濃度(2、4、6、および8μM)および曝露時間(1、2、12、24、および48時間)で、発生中のhHOに加えた。15日目の十分に確立した心外膜(WT1、ALDH1A2、TJP1)および心筋細胞(TNNT2)マーカーの共焦点撮像および定量を用いて、心外膜細胞および心筋細胞の形成の効率を評価した(図6B~6Cおよび7A~7B)。処理が、心外膜前駆細胞および心外膜細胞の形成を強力に促進することが分かった(図6B~6Dおよび7A)。さらに、高濃度または長時間の曝露が、心外膜細胞以外の他の心臓細胞型の形成を著しく阻害し、特に心筋細胞形成に影響することが分かった。分化7日目に2μMのCHIR99021で1時間、1回の処理を行うと、最も生理学的に関連する心外膜対心筋の比率(60%心筋細胞、10~20%心外膜細胞)をもたらした(図6B~6Cおよび7B~7C)。構造的には、心外膜組織の大部分が、オルガノイドの外層上に、および、明確な心筋組織(TNNT2)に近接して、見出され(図6D)、したがって心臓に見出される構造的組織化を再現した。心外膜細胞膜上のTJP1の強力な発現もまた、これらの細胞の上皮表現型を確認した(図6C~6D)。
【0109】
トランスクリプトーム解析は、hHOがヒト胎児心臓発達に厳密にモデル化し、すべての主要な心臓細胞系統を産生することを明らかにする。発生段階およびオルガノイド中の細胞の分子同一性をより良く特徴付けるために、オルガノイド形成の異なる段階でトランスクリプトーム解析を実行した。分化の異なる時点(0~19日目)でhHOを収集した(図8A~8E)。教師なしK-meansクラスタ分析は、オルガノイドが3つの主要な発生段階を進行することを明らかにした:多能性および初期中胚葉コミットメントに関連する0~1日目;初期心臓発生に関連する3~7日目;および、胎児心臓成熟に関連する9~19日目(図8Aおよび9A~E)。遺伝子オントロジーの生物学的過程分析により、心血管の発生および心臓形成を促進する重要な遺伝子回路が同定された(図8A:GSE153185でGene Expression Omnibus(GEO)に寄託された生データ)。hHOにおける心臓発生を従前の方法の心臓発生と比較するために、十分に確立されたプロトコルを用いて、単層iPSC由来心臓分化細胞上のRNA-seqを実行した。RNA-seq結果を、以前に報告された単層心臓分化プロトコルおよびヒト胎児心臓組織(妊娠57~67日目)(GSE106690)から公的に入手可能なデータセットと比較した。すべての場合において、FHFおよびSHF特異性を調節するhHO心臓発生転写因子発現は、単層PSC由来心臓分化において観察されたものと同様であり、胎児心臓組織において観察されたものとよく一致した(図8Bおよび9A)。興味深いことに、遺伝子発現プロファイルは、hHOが、とりわけ心外膜、内皮、心内膜および心臓線維芽細胞集団において、単層分化を受けた細胞よりも高い心臓細胞系統の複雑さを有することを示した(図8Cおよび9B~9C)。これらの結果は、hHOの構造的および細胞的複雑さが著しく向上し、したがってhHOが胎児心臓と一致することを示唆する。このことは、遺伝子発現解析を拡張して、とりわけ、コンダクタンス、収縮機能、カルシウム処理および心臓代謝を含む、古典的な心臓機能に関与するいくつかの広範かつ重要な遺伝子クラスタを調べることによって、確認された(図8D)。特に興味深いことに、hHOは、かなりの量の心臓特異的細胞外マトリックス、胎児心臓に存在するが、単層分化プロトコルには完全には存在しない特徴を産生した(図8Dおよび9D)。主成分分析は、0~19日目からのhHOにおける発生の明確な進行を示した(図9E)。全体として、hHOは、胎児心臓のものと最もよく一致する個々の発現プロファイルを有し、全体的なhHOトランスクリプトームは、階層的クラスタリングによって決定されたように、単層プロトコルのいずれよりも胎児心臓で観察されるものに類似していた(図8E)。
【0110】
hHOは、心臓領域の詳細ならびに心房および心室チャンバの形成を再現する。FHFおよびSHFは、発生中の心臓において見出される2つの細胞集団である。FHFからの細胞は線状心臓管形成に寄与し、続いて、SHFに属する遊走細胞は、さらなる膨張およびチャンバ形成に寄与する。両方の心臓領域を表す細胞の証拠がオルガノイドで見出された。HAND1(FHF)およびHAND2(SHF)は、発生中の心臓における多数の細胞型の調節において重要な役割を果たす塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス(bHLH)転写因子のTwistファミリーの一員である。8日目のhHOの免疫蛍光は、HAND1(図10A)およびHAND2(図10D)細胞のよく分化した分離領域を示しており、FHFおよびSHFの両方の前駆細胞が存在し、それぞれの心臓領域に分離していることを示唆した。ヒト心臓において、左心室は最終的にFHF前駆細胞から形成され、心房はSHF前駆細胞から形成される。したがって、hHOが心房系統または心室系統のいずれかに関与する心筋細胞を含有するかどうかについて、決定を行った。15日目のhHOにおけるMYL2(ミオシン軽鎖-2、心室サブタイプをコードする)およびMYL7(ミオシン軽鎖2、心房サブタイプをコードする)の免疫蛍光は、両方のサブタイプについて心筋細胞陽性を示した。2つの異なる集団は、オルガノイドの異なる領域に局在し、極めて近接しており、ヒト心臓に見られる発現パターンを反映する(図10C)。hHOにおけるHAND1、HAND2およびMYL7転写物の発現は、分化プロトコルを通して増加し、ヒト胎児心臓において観察されたものと同様であった一方、MYL2はより低い程度まで増加した(図9Aおよび9C)。コントラストのために培地にインディアインキを加え、光学顕微鏡を用いて拍動するオルガノイドを記録し、拍動する組織によって囲まれた中央のチャンバ様組織を観察した(第3の動画は、拍動する組織を示すために製作された)。まとめると、これらの結果は、hHOの分化には、心臓領域形成、チャンバの詳細、ならびに心房および心室サブ集団への心筋細胞の詳細が関与することを示唆しており、いずれもヒト心臓発生の再現性をさらに強調している。
【0111】
心臓オルガノイドは、多数の細胞心臓系統を産生し、心臓特異的形態学的機能を獲得する。トランスクリプトーム解析の結果(図8A~8E)は、第2のCHIR99021曝露が他の間葉系統の形成およびhHOのより高い複雑さにつながることを示唆している。この知見を評価するために、二次心臓細胞系統について免疫蛍光解析を行った。共焦点画像は、THY1およびVIMについて陽性である心臓線維芽細胞の存在を確認し(図11A)、これは、文献に記載されている胎児心臓の組成と同様に、hHOにおける組織の12±2%を占めた(図11E)。さらに、共焦点画像は、内皮細胞(PECAM1)の強固な相互接続した網目構造、およびオルガノイド全体にわたる血管様形成を明らかにした(図11B)。より高倍率の画像は、心筋組織に隣接するか、または埋め込まれている内皮細胞の複雑な網目を明らかにした(図11C;第4の動画は、網目および心筋組織を示すように製作された)。共焦点画像スタックの三次元再構成は、hHO組織に絡み合った良く接続された内皮網目構造を示した(第4の動画は網目構造を示し、第5の動画が製作され、これもまた網目構造を示した)。これらの結果は、hHO発生中に、自己組織化内皮血管網目構造が三次元心血管環境に応答して出現し、オルガノイドに冠状動脈様血管網目構造を付加する(これまで観察されなかった現象)ことを強く示唆する。TNNT2内のチャンバ様領域が観察され、チャンバ様の性質を有し、初期心臓チャンバ形成を模倣することが疑われた。心内膜マーカーNFATC1の免疫蛍光解析は、心臓の心内膜裏打ちと同様に、これらの空間を裏打ちするNFATC1細胞の心内膜が形成されていることを明らかにした(図11D)。図11Eは、オルガノイドに対するこれらの種々の細胞集団の寄与の定量化を示す。次に、OCTを使用して、最小侵襲手段を使用してチャンバ特性を特徴付け、したがってチャンバの物理的特性および形態学的特性を保存した。OCTは、典型的にはオルガノイドの中心付近に1つまたは2つの大きなチャンバを有する、hHO内の透明なチャンバ空間を示した(図12Aおよび13A~13C)。内部hHOトポロジーの三次元再構成は、これらのチャンバ間の高度な相互接続性を明らかにした(第6、第7および第8の動画は、相互接続したチャンバを示すように製作された)。チャンバの存在は、全オルガノイドの光シート画像を用いてさらに確認された(図12B)。心臓オルガノイドが比較的大きなサイズ(最大1mm)であることを考慮して、これらのチャンバの形成が内部細胞の死に関連し得るかどうかを検証した。検証を行うために、エフェクターカスパーゼ活性化時に蛍光し、したがってアポトーシスのレポーターである非蛍光人工GFP変異体であるFlipGFPを発現するトランスジェニックhiPSC株を作製した。コントロール条件におけるFlipGFPオルガノイドは、蛍光を示さず、大規模なプログラムされた細胞死がないことを示した(図13D)。この観察は、共焦点撮像中に観察される内部細胞残屑が欠如していることによって、さらに支持される(データは示されていない)。ドキソルビシン処理hHOをアポトーシスのポジティブコントロールとして使用すると(図13D)、細胞死の明らかな証拠があった。
【0112】
hHOの超微細構造分析は、ミトコンドリアに囲まれた明確なサルコメア、ならびにギャップ結合およびT細管の存在といった、同齢のヒト胎児心臓において典型的に見出されるものと同様の特徴を示した(図12C)。機能性を決定するために、電気生理学的活性を測定した。自学開発のマルチ電極アレイ(MEA)センサ150の技術(図14)を開発および使用して、hHO152が、明確なQRS複合体ならびにT波およびP波、規則的な活動電位といった正常な電気生理学的活性を示すことを示した(図12D)。図14に示すように、hHO152に適用されるMEAセンサ150は、インキュベータ156内に配置されたファラデーケージ154内に配置される。記録ボード158は、MEAセンサ150からのシグナルをソフトウェアインタフェース160に中継する。
【0113】
BMP4およびActAは、心臓オルガノイドチャンバ形成および血管新生を改善する。成長因子BMP4およびActAは、初期胚性心臓性中胚葉を模倣し、インビボで心臓領域の詳細を決定する内因性モルフォゲンであるため、小分子Wntシグナル伝達操作の選択肢として、頻繁に使用されている。BMP4およびActAが、小分子Wnt活性化/阻害プロトコルと組み合わせると、インビトロで心臓発生を再現するhHOの能力を相乗的に改善し得ることが疑われた。最適化されたプロトコルの状況で、2つのモルフォゲンをそれぞれ1.25ng/mlおよび1ng/ml(文献に見られる推奨濃度)で、4μMのCHIR99021と併せて分化0日目に加えることによって、BMP4およびActAの効果を試験した。コントロールと処理hHOとの間で、心筋(TNNT2+)または心外膜(WT1+/TJP1+)組織の形成に有意な差は見られなかった(図15A)。しかしながら、オルガノイドのサイズには有意な差が観察され、成長因子で処理したhHOは、直径が約15%大きかった(図15B~15C)。この差は、マイクロチャンバの数および接続性の増加と一致する可能性があり、BMP4/ActA処理hHOは、コントロールhHOと比較して、約50%超が他のチャンバと相互接続されているマイクロチャンバをより多く有した(図15D~15Eおよび15G)。BMP4およびActAで処理したオルガノイドの免疫蛍光および共焦点分析は、PECAM1+組織の面積が400%増加したことを示し、オルガノイド血管形成に対する重要な影響を示しており(図15Fおよび15H)、これはまた、hHOサイズの増大も説明できる。
【0114】
hHOを用いたDDP誘導CHDのモデリング。システムの有用性に関する概念実証として、心臓発生に対するDDPの効果を調査するために、hHOモデルを使用することを決定した。糖尿病は、出産年齢の女性集団の大多数に影響を及ぼし、妊娠最初の3ヶ月間の糖尿病をCHDのリスク増加(最大12%、場合によっては12倍の増加)と関連づける顕著な疫学的証拠があるものの、根底にあるメカニズムについてはほとんど解明されていない。調査を行うために、hHO培養条件を、グルコースおよびインスリンの報告された正常な生理学的濃度(3.5mMグルコース、170pMインスリン、NHO)、ならびに報告された糖尿病条件(11.1mMグルコースおよび58nMインスリン、DDPHO)を反映するように改変した。興味深いことに、正常条件もまた、元々のプロトコルの血糖およびインスリン条件とは異なっていた(ほとんどの培地が、本来はがん細胞培養のために開発され、異常に高い濃度のグルコースを含むため)。NHOは、より高血糖の対象物より遅いペースで発生したが、より良好な物理的組織化を示し、心臓の管状構造の形成、および、その後の、心臓のループおよびチャンバ形成を連想させる種々の明確な領域へのセグメンテーションを示したが(図17A)、細胞死または異常な生理機能の証拠は示さなかった(図16A~16Hおよび17A~17F)。しかしながら、それらの構造はまた、著しく繊細でもあり、容易に損傷し得た(図16A)。NHOおよびDDPHOは、早くも分化4日目に有意な形態学的差異を示した。NHOは成長がより遅く、4~8日目にパターン形成および伸長を示した一方、DDPHOは2週間にわたって球状を維持した(図16A)。DDPHOはまた、1週間の分化後にもサイズが有意により大きく(図16B)、肥大、すなわち、典型的にはすべての臓器において巨人症に罹患している新生児における糖尿病の一般的な転帰を示唆している。電気生理学的分析は、DDPHOにおける活動電位の振幅および周波数の増加を示し(図16Cおよび17B~17D)、糖尿病性オルガノイドにおけるより高い活性を示唆した。解糖および酸素消費についての代謝アッセイは、NHOと比較した場合、DDPHOにおける酸素消費速度の低下、および解糖の増加を示した(図16B、16Eおよび17E)。TEM画像は、DDPHOがサルコメアを囲むミトコンドリアの数が減少し(図16F)、脂質滴の数が有意に多いことを明らかにし、機能不全の脂質代謝を示唆した。これらの表現型はいずれもNHOには見られなかった。心筋および心外膜マーカーの共焦点顕微鏡観察は、形態学的組織化において劇的な差異を示し、予想された通り、DDPHOは心筋組織に囲まれた心外膜組織を含んでいたのに対して、NHOは心筋組織の頂部または横に心外膜組織を含んでいた(図16G)。さらに、正常な血糖条件と比較すると、糖尿病性hHOはMYL2心室心筋細胞の減少およびチャンバの拡大を示し、やはり拡張型心筋症様表現型を示唆した(図16H)。DDPHOにおける構造的/発生的組織化の障害および脂質代謝におけるこれらの差異は、高グルコース/インスリンに曝露された糖尿病患者および新生児に見られる予想される表現型と一致する。以上を総合すると、データは、NHOとDDPHOとの間の有意な分子的および代謝的混乱が、酸化的ストレスの増大、心筋症および脂質プロファイルの変化を示唆するDDPに関する以前の研究と一致することを示唆しており、ヒトオルガノイドにおける代謝障害をモデル化するための重要な一歩を構成する。
【0115】
〔考察〕
【0116】
近年、hPSC由来心筋細胞は、心臓発生、ヒト遺伝性心疾患、治療的スクリーニングおよび心毒性試験の態様をモデリングするための極めて有益な手段となっている。それにもかかわらず、ヒト心臓中に存在する複雑な構造形態および多数の組織の種類は、現行のインビトロモデルに厳しい制限を課している。三次元心臓組織を生成するためのこれまでの試みは、典型的には心筋細胞、および1つまたは2つの他の心臓細胞系統のみを含んだ。ここでは、高度に再現性があり、拡張性があり、新規な分化プロトコルであって、hPSCを用いて、高度な構造的および多細胞型の複雑さを有する生理学的に関連するhHOを生じるプロトコルを作製することが望まれた。GSK-3およびPORCN阻害剤を使用するカノニカルWntシグナル伝達のための多段階操作条件を作成し、最適化した。これらの条件は、胎児心臓と同様の特性を有する自己組織化心臓オルガノイドにおける、ほとんどの心臓系統の形成をもたらす。この方法は、約59%の心筋細胞、15%の心外膜細胞、13%の心内膜細胞、12%の心臓線維芽細胞、および1%の内皮細胞(面積基準)から構成される心臓オルガノイドを一貫して生じ、分化開始から1週間以内に全組織にわたって強い拍動を示す。HAND1およびHAND2系統由来の細胞は心筋、心外膜、心内膜および血管系の発達に寄与するので、これらの細胞型の組織化および詳細は、少なくとも部分的にはHAND転写因子発現によって制御される可能性が高い。FHFおよびSHF両方のHANDマーカーが存在するという事実は、それらが、hHOにおいて見られる構造的および細胞型の複雑さの発達に関与していることを示唆している。特に、hHOは、3つの独立したiPSC株および1つのESC株から首尾よく誘導され、再現性を実証した。心筋細胞の胎児様形態およびhHOの自己組織化特性は、様々な心臓組織間のより高次の相互作用を可能にする多数の心臓細胞系統を含む複雑な三次元構造を示唆する。従来の心筋細胞単層分化法と比較すると、hHOは、コンダクタンス、収縮機能、カルシウム処理、および種々の心臓細胞集団に関連する遺伝子のより高い発現を示し、これは、ヒト胎児心臓から得られた遺伝子発現データによりよく類似する。ヒト胎児心臓組織に高度に再現される複雑なトランスクリプトームの描写は、ヒト心臓発生のモデルとしてのhHOの複雑さおよび妥当性をさらに補強する。
【0117】
ヒト心臓を包み込む上皮である心外膜は、心臓の発生、代謝、脂質ホメオスタシス、および心筋損傷応答を含む多くの心臓プロセスに関与している。心外膜シグナル伝達カスケードは、心臓系統の詳細に不可欠である。胚発生の間、胚性細胞の心臓外クラスタである心外膜前駆器官(PEO)からの細胞は、心臓の表層に遊走して、心外膜を形成する。これらの細胞のいくつかは、EMTを経て、心臓線維芽細胞を含む他の心臓系統を生成することができる。心筋との伝達能力および幹細胞集団を移動させる能力に起因して、心外膜は、心臓再生および修復における研究の重要な焦点となっている。心外膜はまた、糖尿病性心筋症、冠状動脈疾患およびメタボリックシンドロームを含む、複数の種類の心血管疾患および代謝疾患において、基礎的であるが未だ探求されていない役割も果たす。この最後の状況において、心外膜由来脂肪は、大きな膨張を起こし、罹病率と強く相関し、ヒト疾患に対する心外膜の潜在的関連性を強調する。これまでの心外膜分化法に着想を得て、心筋組織に近接する心外膜組織の明確な領域を有する心臓オルガノイドを生成するための条件を作成し、最適化した。これらの心外膜-心筋相互作用は、哺乳動物の心臓発生および機能において重要であり、心外膜細胞は、三次元人工心臓組織(EHT)における心筋細胞成長を増進させ、また、両方の細胞型をラット心臓に共移植すると、内皮細胞産生が増大する。本明細書に記載されているhHOプロトコルは、インビトロにおける生理学的に関連する心外膜-心筋相互作用の研究およびモデル化を容易にするであろう。
【0118】
心臓線維芽細胞が心臓発生および心臓マトリックス産生/組織化において果たす重要な役割は、インビトロモデルにおいて見落とされることが多い。胚発生における心臓線維芽細胞の大部分は、PEOから生じ、発生心臓モデルにおける心外膜誘導の必要性を強調する。これらの線維芽細胞は、hPSC由来の三次元心臓微小組織における心筋細胞の機能性を促進し、そのため、任意のインビトロヒト心臓モデルにおいてそれらが含まれることが最も重要である。hHOの免疫蛍光解析は、細胞-細胞および細胞マトリックス接着に関与する膜糖タンパク質Thy1、および間葉系統の細胞に典型的に見られる中間体フィラメントタンパク質ビメンチンを含む心臓線維芽細胞マーカーの存在を明らかにした。EMTに重要な役割を果たすDDR2、および発生中の血管新生にも重要であるFHFマーカーPDGFRαを含む、他の心臓線維芽細胞マーカーは、RNA-seq分析によってhHO中に見出された。これらの結果は、hHOシステムの複雑さが増加したこと、および胎児心臓組織との密接な類似性を強く示唆する。
【0119】
多くのオルガノイドシステムの深刻な制限は、栄養素の交換および老廃物の除去を促進するための機能的血管網が欠如していることであり、その代わりに、交換および除去は拡散のみに依存している。いくつかの血管新生オルガノイドは、脳、腎臓および血管をモデル化する文献に記載されているが;心臓オルガノイドに記載されているものはない。これらの研究において、血管新生を誘導するために、マウスへの移植、流動下でのオルガノイドの培養、ならびに、内皮細胞のMatrigel(登録商標)/コラーゲンマトリックスへの包埋、および血管網目構造を作り出すための内皮細胞遊走の誘導を含む、様々な技術が使用される。注目すべきことに、hHOの最終的なプロトコルでは、いかなる追加の工程も無しに、強固で相互接続された脈管脈叢の形成が観察された。
【0120】
血管系に加えて、胎児様オルガノイド形成の再現を示す強力な三次元特徴である、相互接続されたチャンバへの自発的hHO再構成も観察された。インビトロでのマイクロチャンバ形成のこれまでの研究は、細胞を含まない領域、筋線維芽細胞周辺部および新生小柱を有する三次元心臓マイクロチャンバを形成するために、限られた領域へのhPSCのマイクロパターン化を利用した。他の報告は、三次元バイオプリントされたhPSCを含む足場を作製し、それらを、2つのチャンバを含む拍動する心臓微小組織に分化させていた。これらの研究において生成された構造は、心臓マイクロチャンバのいくつかの胎児様形成を示した一方で、それらは、心臓成熟および形態形成において重要なプレーヤーである心内膜組織を欠いていた。ここで報告されたhHOは、OCT断面画像に見られる(第6、第7および第8の動画に見ることができる)ように、相互接続されたNFATC1+心内膜細胞で裏打ちされた多数のマイクロチャンバを形成する。COL1A1、COL4A1、COL5A2、FBN1、EMILIN1、HSPG2およびLAMA2(図9D)などの、胎児心臓マトリックスに似たhHOにおける特異的ECM遺伝子の発現は、チャンバ組織化における重大な因子である可能性があり、ECM成分はチャンバ化されたマウス心臓オルガノイドの形成を媒介することが示されている。したがって、hHOにおけるこれらの遺伝子の発現は、将来さらに調査されるべきである。マイクロチャンバはまた、心房様および心室様領域にさらに特定し得、両方の系統由来の心筋細胞がhHO中の別々の領域に見られる。
【0121】
カノニカルWntシグナル伝達経路を操作する小分子阻害剤の使用と共に、BMP4およびActAなどのモルフォゲンを使用して、心筋細胞分化の成功が過去に達成されている。これらの成長因子は、胚における心臓中胚葉の誘導をもたらし、それらを用いる確立された分化プロトコルは、様々な心臓中胚葉前駆体への効果的な分化を示す。近年、FHFおよびSHF形成の詳細において、特定濃度のBMP4およびActAへの勾配曝露が研究されている。hHO分化プロトコルにおける最初のCHIR曝露へのこれらの成長因子の追加は、マイクロチャンバの相互接続性および血管新生の増加などの、形態学的特徴の改善をもたらした。
【0122】
ここ数年間、三次元ヒト心臓組織は、遺伝的および非遺伝的状態(心筋梗塞、薬物心毒性)をモデル化するために使用されてきた。本実施例は、hHOが、十分に研究されていない医学的課題である、DDPにおけるCHDを研究するための貴重なモデルであり得ることを示している。妊娠糖尿病は、新生児CHDの最も一般的な原因の1つである(糖尿病の母親からの新生児の最大12%が何らかの形態のCHDを有する)。分化培地におけるグルコースおよびインスリンの健常濃度および糖尿病性濃度を用いて、hHOの発生過程に及ぼす糖尿病条件の影響を実証した。健常条件で発生したオルガノイドは、パターン形成を含む活発な構造変化を示したが、糖尿病条件におけるhHOは、より大きく球状に発生した。この知見は、心臓管を適切に形成する初期心臓の能力に対する影響に対するヒントであり、心臓管が4つのチャンバへとループするにつれて、心臓の奇形につながる。さらに、糖尿病性hHOのサイズが大きいことは、妊娠DDPの特徴である心肥大の初期徴候を示唆する。ミトコンドリアの明らかな減少、脂質代謝の機能不全、および主要な組織型の構造的組織化の障害は、DDPにおけるCHDの病因を解明するヒントである。今後の研究では、このオルガノイド分化プロトコルを利用して、これらの機能不全および奇形を調査し、治療薬の潜在的標的のハイスループットスクリーニングを実施する。要約すると、本実施例は、発生中のヒト胎児心臓のものを厳密に再現する多細胞型および形態学的複雑さを有する、高度に再現可能でハイスループットのhHO誘導法を記載する。このモデルは、ヒト心臓の発生および先天性心臓欠損の病因を研究するための貴重な手段である。さらに、洗練され改善された成熟プロトコルは、心毒性スクリーニングおよび心血管関連疾患などの成人心臓設定のモデル化を可能にし得る。
【0123】
実施形態の前述の説明は、例示および説明のために提供されている。網羅的であること、または本開示を限定することは意図されていない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は一般に、その特定の実施形態に限定されないが、適用可能である場合、交換可能であり、具体的に図示または説明されない場合であっても、選択された実施形態において使用され得る。同じものがまた、多くの様式で変更され得る。このような変形は、本開示からの逸脱とみなされるべきではなく、すべてのこのような改変は本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
図1図1は、本技術の様々な態様に係る心臓オルガノイドを生成する方法を説明するフローチャートである。
図2A図2Aは、本技術の様々な態様に係る心臓オルガノイドの説明図である。
図2B図2Bは、図2Aの心臓オルガノイドの断面図である。
図3図3は、本技術の様々な態様に従って製造されたスペクトル領域光コヒーレンストモグラフィー(SD-OCT)撮像系の説明図である。
図4A図4A~4Fは、本技術の様々な態様に係るヒト心臓オルガノイド(hHO)におけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すデータを提供する。図4Aは、胚様体においてTNNT2+心筋細胞を分化させるために使用されるプロトコルを示す模式図である。CHIR99021は、0日目で変化する。
図4B図4A~4Fは、本技術の様々な態様に係るヒト心臓オルガノイド(hHO)におけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すデータを提供する。図4Bは、0~15日目(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)からの、15日間にわたる分化の発生オルガノイドの明視野画像(上段)、および、1日当たり3つの代表的なオルガノイドのDAPI(青色)およびTNNT2(赤色)についての共焦点免疫蛍光画像を示す。
図4C図4A~4Fは、本技術の様々な態様に係るヒト心臓オルガノイド(hHO)におけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すデータを提供する。図4Cは、4μMのCHIRを用いて分化させた15日目のオルガノイドにおけるDAPI(青色)およびTNNT2(赤色)についての共焦点免疫蛍光画像を示し、サルコメアバンド(スケールバー:25μm)を示す。
図4D図4A~4Fは、本技術の様々な態様に係るヒト心臓オルガノイド(hHO)におけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すデータを提供する。図4Dは、複数のz平面で取られたオルガノイド内の心筋細胞領域の面積解析を、3つのCHIR99021濃度それぞれについて、オルガノイドそれぞれのDAPI+領域に対するTNNT2+領域の割合として示す(4μMのCHIR99021処理についてはn=10、6.6μMおよび8μMについてはn=6)。
図4E図4A~4Fは、本技術の様々な態様に係るヒト心臓オルガノイド(hHO)におけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すデータを提供する。図4Eは、hHOの共焦点画像におけるDAPI+領域に対して正規化されたTNNT2+領域の割合を示すグラフである。
図4F図4A~4Fは、本技術の様々な態様に係るヒト心臓オルガノイド(hHO)におけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すデータを提供する。図4Fは、3つの誘導多能性幹細胞(iPSC)株および1つの胚性幹細胞(ESC)株における拍動頻度を示すグラフである。
図5A図5A~5Cは、本技術の様々な態様に係るhHOにおけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すさらなるデータを提供する。図5Aは、15日目、CHIR99021曝露濃度が4μM(上段)、6.6μM(中段)および8μM(下段)のオルガノイドにおけるDAPI(青色)およびTNNT2(赤色)についての共焦点免疫蛍光画像を示す(スケールバー:500μm)。
図5B図5A~5Cは、本技術の様々な態様に係るhHOにおけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すさらなるデータを提供する。図5Bは、hHOの1分間当たりの拍動の頻度を示すグラフである。
図5C図5A~5Cは、本技術の様々な態様に係るhHOにおけるWntシグナル伝達指向性心筋細胞分化を示すさらなるデータを提供する。図5Cは、1処理当たりの拍動するhHOの割合を示すグラフである。
図6A図6A~6Dは、本技術の様々な態様に係るhHOにおいて、第2のCHIR曝露が心外膜細胞分化を導くことを示すデータを提供する。図6Aは、hHOにおいてTNNT2+心筋細胞およびWT1+/TJP1+心外膜細胞を分化させるために使用される改変プロトコルを示す模式図である。
図6B図6A~6Dは、本技術の様々な態様に係るhHOにおいて、第2のCHIR曝露が心外膜細胞分化を導くことを示すデータを提供する。図6Bは、複数のz平面で取られたオルガノイド内の心筋細胞領域(TNNT2+)および心外膜領域(WT1+およびTJP1+)の面積解析を、オルガノイドそれぞれのDAPI+領域の割合として示す(各条件当たりn=7)。
図6C図6A~6Dは、本技術の様々な態様に係るhHOにおいて、第2のCHIR曝露が心外膜細胞分化を導くことを示すデータを提供する。図6Cは、7日目に第2のCHIR曝露を様々な濃度で行った、DAPI(青色)、WT1(緑色)、TNNT2(赤色)およびTJP1(白色)についての分化15日目のhHOの共焦点免疫蛍光画像を、第2のCHIR曝露なしのコントロール(スケールバー:500μm)に対して、示す。
図6D図6A~6Dは、本技術の様々な態様に係るhHOにおいて、第2のCHIR曝露が心外膜細胞分化を導くことを示すデータを提供する。図6Dは、2μMの第2のCHIR曝露を行ったhHOの高倍率画像を示し、TNNT2+心筋組織およびWT1+/TJP1+心外膜組織の近接領域(スケールバー:50μm)を示す。
図7A図7A~7Cは、本技術の様々な態様に係るhHOにおいて、第2のCHIR曝露が心外膜細胞分化を導くことを示すさらなるデータを提供する。図7Aは、hHOにおけるDAPI(青色)およびTNNT2(赤色)についての共焦点免疫蛍光画像を示し、オルガノイドの端部付近の心外膜マーカーALDH2A(緑色)およびTPJP1(白色)を示す。
図7B図7A~7Cは、本技術の様々な態様に係るhHOにおいて、第2のCHIR曝露が心外膜細胞分化を導くことを示すさらなるデータを提供する。図7Bは、7日目に種々の持続時間でCHIR99021を用いて処理されたオルガノイドそれぞれのDAPI+領域の割合としての、複数のz平面で取られたオルガノイド内の心筋細胞領域(TNNT2+)および心外膜領域(WT1+およびTJP1+)の面積解析である。
図7C図7A~7Cは、本技術の様々な態様に係るhHOにおいて、第2のCHIR曝露が心外膜細胞分化を導くことを示すさらなるデータを提供する。図7Cは、これらの持続時間からのオルガノイドの代表的な共焦点免疫蛍光画像を示す(スケールバー:500μm)。
図8A図8A~8Eは、トランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図8Aは、RNAシーケンシング(RNA-seq)による心臓オルガノイドトランスクリプトームのK-meansクラスタ分析を示す。胎児の心臓発生と強く関連するクラスタ(例えば、2、10および14)は、9日目以降に現れる。パスウェイエンリッチメント解析もまた、代表的な心臓特異的クラスタについて提供される(下段)。
図8B図8A~8Eは、トランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図8Bは、心臓オルガノイド分化過程における第1および第2の心臓領域マーカー(それぞれ、FHFおよびSHF)の遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。
図8C図8A~8Eは、トランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図8Cは、心外膜細胞、線維芽細胞、心内膜細胞、および内皮細胞を含む、心臓オルガノイドにおける心臓特異的細胞型集団についての遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。
図8D図8A~8Eは、トランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図8Dは、妊娠57~67日目における、心臓オルガノイド、単層分化法、および胎児心臓にわたる心臓機能に関与する主要遺伝子の正規化された比較を示す。
図8E図8A~8Eは、トランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図8Eは、心臓オルガノイド、単層分化、および胎児心臓の階層的クラスタ解析を示す。
図9A図9A~9Eは、別のトランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図9Aは、遺伝子発現解析を示しており、心臓オルガノイド分化過程よりも多くのFHFおよびSHFマーカーを示す。
図9B図9A~9Eは、別のトランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図9Bは、(左上から右下へ)心内膜細胞、心外膜細胞、内皮細胞、および心臓線維芽細胞を含む、心臓オルガノイドにおける心臓特異的細胞型集団についての遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。
図9C図9A~9Eは、別のトランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図9Cは、心筋細胞マーカーについての遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。
図9D図9A~9Eは、別のトランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図9Dは、心臓組織に存在するECMタンパク質コード遺伝子についての遺伝子発現解析(log倍率変化対D0)を示す。
図9E図9A~9Eは、別のトランスクリプトーム解析を示しており、本技術の様々な態様に従って製造された心臓オルガノイドが胚性胎児心臓と同様の多細胞型の複雑さ、発生および成熟段階を再現することを示す。図9Eは、経時的な心臓オルガノイド分化の主成分分析を示す。
図10A図10A~10Cは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOにおける心臓領域の発生および心筋細胞の詳細を示す画像である。分化8日目のhHOの共焦点免疫蛍光画像は、強固なHAND1(図10A)およびHAND2(図10B)転写因子発現(緑色)、TNNT2(赤色)、およびDAPI(青色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。
図10B図10A~10Cは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOにおける心臓領域の発生および心筋細胞の詳細を示す画像である。分化8日目のhHOの共焦点免疫蛍光画像は、強固なHAND1(図10A)およびHAND2(図10B)転写因子発現(緑色)、TNNT2(赤色)、およびDAPI(青色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。
図10C図10A~10Cは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOにおける心臓領域の発生および心筋細胞の詳細を示す画像である。図10Cは、15日目のhHOの共焦点免疫蛍光画像を示しており、十分に分化した心室領域(MYL2、緑色)および心房領域(MYL7、赤色)およびDAPI(青色)を含む(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。
図11A図11A~11Eは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOの心臓細胞系統組成に関するデータを提供する。図11A~11Dには、hHOを構成する様々な細胞系統の免疫蛍光画像が示される。図11Aは、hHO全体に存在する心臓線維芽細胞マーカーTHY1(緑色)およびVIMENTIN(ホワイト)、TNNT2+(赤色)、ならびにDAPI(青色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。
図11B図11A~11Eは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOの心臓細胞系統組成に関するデータを提供する。図11A~11Dには、hHOを構成する様々な細胞系統の免疫蛍光画像が示される。図11Bは、オルガノイド全体にわたる血管の画定されたネットワークを示す内皮細胞マーカーPECAM1(緑色)、ならびに隣接するTNNT2+(赤色)組織およびDAPI(青色)を示す(スケールバー:500μm)。
図11C図11A~11Eは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOの心臓細胞系統組成に関するデータを提供する。図11A~11Dには、hHOを構成する様々な細胞系統の免疫蛍光画像が示される。図11Cは、TNNT2+心筋組織に極めて近接するPECAM1+内皮組織の60倍拡大図を示す(スケールバー:50μm)。
図11D図11A~11Eは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOの心臓細胞系統組成に関するデータを提供する。図11A~11Dには、hHOを構成する様々な細胞系統の免疫蛍光画像が示される。図11Dは、TNNT2+(赤色)組織のマイクロチャンバ内で高度に発現された心内膜マーカーNFATC1(緑色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。
図11E図11A~11Eは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOの心臓細胞系統組成に関するデータを提供する。図11Eは、ImageJを用いてオルガノイド面積全体の割合として計算された、hHOにおける平均細胞組成の円グラフである。
図12A図12A~12Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOのマイクロチャンバ形成、超微細構造、および電気生理現象を示す。図12Aは、光コヒーレンストモフラフィー(OCT)画像を示しており、マイクロチャンバを明らかにするオルガノイドの断面を示す(スケールバー:500μm)。
図12B図12A~12Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOのマイクロチャンバ形成、超微細構造、および電気生理現象を示す。図12Bは、チャンバ構造(スケールバー:500μm)を明らかにするAF488二次抗体を用いてTNNT2について染色したhHOのライトシート画像を示す。
図12C図12A~12Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOのマイクロチャンバ形成、超微細構造、および電気生理現象を示す。図12Cは、hHOの透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示しており、小胞体(ER)、ギャップ結合(Gj)、グリコーゲン顆粒(Gy)、脂質滴(Ld)、ミトコンドリア(Mi)、核(N)、およびサルコメア(S)を示す(左側のスケールバー:2μm、右側のスケールバー:1μm)。
図12D図12A~12Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOのマイクロチャンバ形成、超微細構造、および電気生理現象を示す。図12Dは、15秒間にわたるマイクロ電極アレイ(MEA)上のオルガノイド(左側)および代表的な活動電位波(右側)の電気生理現象の記録を示す。
図13A図13A~13Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関連するデータを提供する。図13Aは、OCT画像の三次元再構成を示す。
図13B図13A~13Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関連するデータを提供する。図13Bは、hHOの明視野画像を示す。
図13C図13A~13Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関連するデータを提供する。図13Cは、中央チャンバを明らかにする9つの異なるオルガノイドの中心の断面を示すOCT画像を提供する(スケールバー:500μm)。
図13D図13A~13Dは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関連するデータを提供する。図13Dは、FlipGFPトランスジェニックiPSC-L1株に由来するオルガノイドの免疫蛍光画像を提供し、コントロールhHOにおいてはアポトーシスを示さず(左側)、5μMのドキソルビシン(DOX)で処理したhHOにおいては高いアポトーシスを示す(右側)(スケールバー:500μm)。
図14図14は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)チャンバ内の金電極アレイを示すMEA記録システムの説明図である。ここで、本技術の心臓オルガノイドは、インキュベータ内のファラデーケージ内に配置されている。
図15A図15A~15Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関して、心臓の分化および発生に対する骨形成タンパク質4(BMP4)およびアクチビンA(ActA)の影響を示す。図15A~15Hはすべて、CHIR単独で分化したhHO(コントロール)およびCHIR+BMP4+ActAで分化したhHO(処理)を比較する。図15Aは、総オルガノイド面積の割合として、心筋細胞および心外膜陽性領域の面積を示すグラフである。
図15B図15A~15Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関して、心臓の分化および発生に対する骨形成タンパク質4(BMP4)およびアクチビンA(ActA)の影響を示す。図15A~15Hはすべて、CHIR単独で分化したhHO(コントロール)およびCHIR+BMP4+ActAで分化したhHO(処理)を比較する。図15Bは、オルガノイドの直径(1条件当たりn=8)を示すグラフである。
図15C図15A~15Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関して、心臓の分化および発生に対する骨形成タンパク質4(BMP4)およびアクチビンA(ActA)の影響を示す。図15A~15Hはすべて、CHIR単独で分化したhHO(コントロール)およびCHIR+BMP4+ActAで分化したhHO(処理)を比較する。図15Cは、直径を決定するために平均化された、コントロールオルガノイド(左側)および処理オルガノイド(右側)の直径を示す破線を提供する。
図15D図15A~15Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関して、心臓の分化および発生に対する骨形成タンパク質4(BMP4)およびアクチビンA(ActA)の影響を示す。図15A~15Hはすべて、CHIR単独で分化したhHO(コントロール)およびCHIR+BMP4+ActAで分化したhHO(処理)を比較する。図15Dは、TNNT2+領域におけるマイクロチャンバの数を示す。図15D~15Eにおいて、1条件当たりN=12である。
図15E図15A~15Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関して、心臓の分化および発生に対する骨形成タンパク質4(BMP4)およびアクチビンA(ActA)の影響を示す。図15A~15Hはすべて、CHIR単独で分化したhHO(コントロール)およびCHIR+BMP4+ActAで分化したhHO(処理)を比較する。図15Eは、細いTNNT2+フィラメントまたは細いチャネルによるマイクロチャンバの分離によって測定されたマイクロチャンバの相互接続性を示し、明確な接続を示す。図15D~15Eにおいて、1条件当たりN=12である。
図15F図15A~15Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関して、心臓の分化および発生に対する骨形成タンパク質4(BMP4)およびアクチビンA(ActA)の影響を示す。図15A~15Hはすべて、CHIR単独で分化したhHO(コントロール)およびCHIR+BMP4+ActAで分化したhHO(処理)を比較する。図15Fは、総オルガノイド面積の割合としてPECAM1+組織の量を示す(ImageJ上でMaxEntropy閾値を用いて測定し、25μmの微粒子すべてを分析して小さなスペックルを回避する。1条件当たりn=7)。
図15G図15A~15Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関して、心臓の分化および発生に対する骨形成タンパク質4(BMP4)およびアクチビンA(ActA)の影響を示す。図15A~15Hはすべて、CHIR単独で分化したhHO(コントロール)およびCHIR+BMP4+ActAで分化したhHO(処理)を比較する。図15Gは、hHOの免疫蛍光画像を示しており、相互接続されたマイクロチャンバ(黄色の矢印)、TNNT2+フィラメント(白色の矢印)、およびマイクロチャンバを接続するチャネル(緑色の矢印);DAPI(青色);ならびにTNNT2(赤色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:100μm)。
図15H図15A~15Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOに関して、心臓の分化および発生に対する骨形成タンパク質4(BMP4)およびアクチビンA(ActA)の影響を示す。図15A~15Hはすべて、CHIR単独で分化したhHO(コントロール)およびCHIR+BMP4+ActAで分化したhHO(処理)を比較する。図15Hは、hHOの免疫蛍光画像を示しており、DAPI(青色)、PECAM1+組織(緑色)、およびTNNT2+組織(赤色)を示す(スケールバー:500μm、挿入図:50μm)。
図16A図16A~16Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが妊娠糖尿病(diabetes during pregnancy、DDP)誘導CHDの特徴を忠実に再現することを示す。図16Aは、2週間の分化にわたる、正常血糖条件下(NHO、左側)および糖尿病条件下(DDPHO、右側)での10個のhHOの発生後の明視野画像を示す。
図16B図16A~16Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが妊娠糖尿病(diabetes during pregnancy、DDP)誘導CHDの特徴を忠実に再現することを示す。図16Bは、分化の最初の2週間におけるhHOの面積を示す(平均±標準偏差;n=12;二元配置分散Sidak多重比較検定)。
図16C図16A~16Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが妊娠糖尿病(diabetes during pregnancy、DDP)誘導CHDの特徴を忠実に再現することを示す。図16Cは、15日目にNHOおよびDDPHOに対して実施された電気生理学的分析を示し;矢印は、不整脈事象を示す。
図16D図16A~16Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが妊娠糖尿病(diabetes during pregnancy、DDP)誘導CHDの特徴を忠実に再現することを示す。図16Dは、酸素消費速度(OCR)のシーホース分析(seahorse analysis)を示す。
図16E図16A~16Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが妊娠糖尿病(diabetes during pregnancy、DDP)誘導CHDの特徴を忠実に再現することを示す。図16Eは、正常hHOおよび糖尿病性hHOの細胞外酸性化速度(ECAR)を示す。
図16F図16A~16Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが妊娠糖尿病(diabetes during pregnancy、DDP)誘導CHDの特徴を忠実に再現することを示す。図16Fは、NHOおよびDDPHOのTEMによる超微細構造分析であり、小胞体(ER)、ギャップ結合(Gj)、グリコーゲン顆粒(Gy)、脂質滴(Ld)、ミトコンドリア(Mi)、核(N)、およびサルコメア(S)を示す。
図16G図16A~16Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが妊娠糖尿病(diabetes during pregnancy、DDP)誘導CHDの特徴を忠実に再現することを示す。図16Gは、心臓(TNNT2)および心外膜(WT1)形成について分化15日目での共焦点免疫蛍光画像を示す。
図16H図16A~16Hは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが妊娠糖尿病(diabetes during pregnancy、DDP)誘導CHDの特徴を忠実に再現することを示す。図16Hは、正常条件下および糖尿病様条件下での心室(MYL2)および心房(MYL7)チャンバ形成についての共焦点画像を示す(スケールバー:500μm)。
図17A図17A~17Fは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが健康条件および糖尿病条件における機能的特徴をモデル化することを示すデータを提供する。図17Aは、心管形成および心臓の4つのチャンバへのループの模式図を示す。
図17B図17A~17Fは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが健康条件および糖尿病条件における機能的特徴をモデル化することを示すデータを提供する。図17Bは、15日目のNHOおよびDDPHOの明視野画像を示しており、セグメンテーション(赤色の矢印)および初期心臓構造に類似する別々の心臓領域(黄色の矢印)を示す。
図17C図17A~17Fは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが健康条件および糖尿病条件における機能的特徴をモデル化することを示すデータを提供する。図17Cは、正常なオルガノイド対糖尿病性オルガノイドの代表的なMEA電気生理学的詳細を示す。
図17D図17A~17Fは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが健康条件および糖尿病条件における機能的特徴をモデル化することを示すデータを提供する。図17Dは、正常hHOおよび糖尿病性hHOにおける活動電位μVの振幅の大きさを示す(1条件当たり3回の反復でn>12;対応のないt検定、***p<0.001)。
図17E図17A~17Fは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが健康条件および糖尿病条件における機能的特徴をモデル化することを示すデータを提供する。図17Eは、MEAによって記録された正常オルガノイドおよび糖尿病性オルガノイドにおける1分間当たりの拍動の拍動周波数(BPM)を示す(平均±標準偏差、n>5オルガノイド;対応のないt検定、p<0.05)。
図17F図17A~17Fは、本技術の様々な態様に従って製造されたhHOが健康条件および糖尿病条件における機能的特徴をモデル化することを示すデータを提供する。図17Fは、正常オルガノイドおよび糖尿病様オルガノイドのシーホースエネルギーマップ(seahorse energy map)を示す(平均±標準偏差)。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
【手続補正書】
【提出日】2023-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓オルガノイドを生成するための方法であって、前記方法は:
多能性幹細胞を含む細胞凝集体を形成する工程;
前記細胞凝集体を第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させることによって、前記細胞凝集体におけるWntシグナル伝達を活性化させて、前記細胞凝集体を三次元心臓中胚葉に分化させる工程を含む、第1の活性化工程;および、
前記三次元心臓中胚葉をWntシグナル伝達経路阻害剤と接触させることによって、前記三次元心臓中胚葉における前記Wntシグナル伝達を阻害して、前記心臓オルガノイドを形成する工程、
を含み、
前記心臓オルガノイドは、心筋組織、少なくとも1つのチャンバを画定する心内膜組織、および前記心筋組織の少なくとも外面上に配置された心外膜組織を含み、
前記心臓オルガノイドは、拍動する、
方法。
【請求項2】
前記第1の活性化工程は、前記細胞凝集体を少なくとも1つの成長剤と接触させる工程をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心臓オルガノイドを第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させることによって、前記心臓オルガノイドにおけるWntシグナル伝達を活性化させて、前記心臓オルガノイドにおける心外膜前駆組織の量を増加させる工程を含む、第2の活性化工程をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記心臓オルガノイドは、約2mM以上、約7mM以下の濃度のグルコース、および約20pM以上、約250pM以下の濃度のインスリンを含む培地中で生成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記心臓オルガノイドは、約8mM以上、約30mM以下の濃度のグルコース、および約250pM以上、約75nM以下の濃度のインスリンを含む培地中で生成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法に従って製造された、心臓オルガノイド。
【請求項7】
記細胞凝集体を前記第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、約2時間以上、約48時間以下の間であり
前記三次元心臓中胚葉を前記Wntシグナル伝達経路阻害剤と接触させる前記工程は、約24時間以上、約72時間以下の間であり;
前記心臓オルガノイドを前記第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、約15分間以上、約24時間以下の間である
請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞凝集体を前記第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、前記細胞凝集体を、約1μM以上、約15μM以下の前記第1のWntシグナル伝達経路活性化因子を含むWnt活性化組成物と接触させる工程を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記三次元心臓中胚葉を前記Wntシグナル伝達経路阻害剤と接触させる前記工程は、前記三次元心臓中胚葉を、約1μM以上、約15μM以下の前記Wntシグナル伝達経路阻害剤を含むWnt阻害組成物と接触させる工程を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記心臓オルガノイドを前記第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、前記細胞凝集体を、約1μM以上、約15μM以下の前記第2のWntシグナル伝達経路活性化因子を含むWnt活性化組成物と接触させる工程を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞凝集体を形成する前記工程は:
前記多能性幹細胞を基材に移す工程;および、
前記基材を、約50g以上、約500g以下で約1分間以上、約10分間以下遠心分離する工程、
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞凝集体を形成する前記工程は、-2日目に実行され;
前記細胞凝集体を前記第1のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、0日目に実行され;
前記三次元心臓中胚葉を前記Wntシグナル伝達経路阻害剤と接触させる前記工程は、2日目に実行され;
前記心臓オルガノイドを前記第2のWntシグナル伝達経路活性化因子と接触させる前記工程は、7日目に実行される、
請求項に記載の方法。
【請求項13】
請求項に記載の方法に従って製造された、心臓オルガノイド。
【請求項14】
心臓オルガノイドであって:
内部および外面を有する三次元主部であって、前記内部が心筋組織を含む、三次元主部;
前記心筋組織内の少なくとも1つの心臓チャンバを画定する心内膜細胞;および、
前記外面の少なくとも一部に配置された心外膜組織、
を含み、
前記心臓オルガノイドは、拍動し、
前記心臓オルガノイドは、培養多能性幹細胞に由来する、
心臓オルガノイド。
【請求項15】
前記心臓オルガノイド内に少なくとも部分的に埋め込まれた内皮血管系;および、
前記心筋組織内に配置された心臓線維芽細胞、
をさらに含む、請求項14に記載の心臓オルガノイド。
【請求項16】
心臓特異的細胞外マトリックスをさらに含む、
請求項14に記載の心臓オルガノイド。
【請求項17】
多能性幹細胞を含む前記細胞凝集体を形成する前記工程は、細胞外マトリックス上で培養されたサブコンフルエントの多能性幹細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する工程、ならびに、前記多能性幹細胞および培地を含む細胞懸濁液を調製する工程を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記心臓オルガノイドは、細胞のヒドロゲルマトリックスへの包埋を行わずに生成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記心臓オルガノイドは、実質的に心筋細胞、心外膜細胞、心内膜細胞、心臓線維芽細胞および内皮細胞からなる、
請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記心臓オルガノイドは、
内部および外面を有する三次元主部であって、前記内部が心筋組織を含む、三次元主部;
少なくとも1つの心臓チャンバを画定する心内膜組織;および、
前記外面の少なくとも一部に配置された心外膜組織、を含み、
前記心臓オルガノイドは、拍動する、
請求項7に記載の方法。
【国際調査報告】