(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】N,N-ジメチルトリプタミンとハルミンとを含む組成物およびキット・オブ・パーツならびに治療におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/437 20060101AFI20230710BHJP
A61K 31/4045 20060101ALI20230710BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230710BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230710BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230710BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230710BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230710BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20230710BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K31/437
A61K31/4045
A61P25/18
A61P25/00
A61P25/22
A61P25/24
A61P3/04
A61P1/14
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578634
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021067051
(87)【国際公開番号】W WO2021259962
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504022504
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ドルンビーラー, ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】コザニッチ, ダフォア
(72)【発明者】
【氏名】シャイデガー, ミラン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZA69
4C086ZA70
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアとを含むキット・オブ・パーツに関する。N,N-ジメチルトリプタミンフマレートと、ハルミン塩酸塩とを含む組成物もまた提供される。さらに、本発明は、N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、
(b)ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと
を含むキット・オブ・パーツ。
【請求項2】
N,N-ジメチルトリプタミンフマレートと、ハルミン塩酸塩とを含む組成物。
【請求項3】
(a)N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、
(b)ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと
を含む医薬組成物。
【請求項4】
(a)が、N,N-ジメチルトリプタミンフマレートおよび医薬的に許容され得るキャリアである、請求項1に記載のキット・オブ・パーツまたは請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
(b)が、ハルミン塩酸塩および医薬的に許容され得るキャリアである、請求項1もしくは4に記載のキット・オブ・パーツまたは請求項3もしくは4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬品として使用されるための、請求項1、4もしくは5のいずれか一項に記載のキット・オブ・パーツ、または請求項3、4もしくは5のいずれか一項に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項7】
精神医学的障害、精神身体障害または身体障害を処置することにおいて使用されるための、請求項6に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記精神医学的障害が、うつ病、ストレス関連情動障害、大うつ病性障害、気分変調症、処置抵抗性うつ病、燃え尽き、不安、外傷後ストレス障害、嗜癖、摂食障害または強迫性障害である、請求項6または7に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【請求項9】
(a)および(b)が経口投与されることにならない、請求項6~8のいずれか一項に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【請求項10】
(a)および(b)が、同時に、または逐次投与される、請求項6~9のいずれか一項に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【請求項11】
(a)が鼻腔内投与される、請求項6~10のいずれか一項に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【請求項12】
(a)が、投与あたり10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンの用量で、好ましくは60分~180分の間の期間にわたって漸増様式で投与される、請求項6~11のいずれか一項に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【請求項13】
(b)が、頬側投与および/または舌下投与される、請求項6~12のいずれか一項に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは医薬組成物。
【請求項14】
(b)が、投与あたり75mg~300mgの間のハルミンの用量で投与される、請求項6~13のいずれか一項に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【請求項15】
(b)の投与の後に(a)の投与が続く、請求項6~14のいずれか一項に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアとを含むキット・オブ・パーツに関する。N,N-ジメチルトリプタミンフマレートと、ハルミン塩酸塩とを含む組成物もまた提供される。さらに、本発明は、N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な情動スペクトラム障害が現代社会では広範囲に広がり、医療における現在の経済的負担の大きな一因であり、その額がスイスでは数百億スイスフランに達し、世界中では桁違いに多い。情動スペクトラムに沿って、最もよく見られる気分障害には、うつ病(大うつ病性障害、気分変調症、二重うつ病、季節性感情障害、燃え尽き(burnout)、産後うつ病、月経前不快気分障害)および双極性障害(これはうつ病および軽躁病/躁病の期間によって特徴づけられる)が含まれる。高い有病率にもかかわらず、利用可能な治療法のほとんどが最適以下の効力を示しており、現在のところ、臨床的利益を確かめるための数週間または数ヶ月間にわたる長期の試行錯誤的取り組みにおいて処方されている。うつ病の全患者の50%よりもさらに少ない患者が、数多くの医薬についての治験を含めて、最適化された標準的処置により完全寛解を示す。したがって、より迅速かつ持続可能な治療効果を有する新規なうつ病治療が緊急に求められている。
【0003】
最近、新規なクラスの即効型抗うつ性向精神化合物(例えば、ケタミン、シロシビンおよびLSDなど)により、不安症およびうつ病の様々な症状が緩和されることが発見された。ケタミンの反復投与は、抗うつ効果を持続させることが示されたが、その常習潜在性のために患者を危険にさらしている。そのうえ、LSDなどの化合物を臨床目的のために使用することの様々な大きな欠点が、その長い作用持続期間(10時間~12時間)に起因して存在する。加えて、LSDおよびシロシビンの両方が急速な耐性をセロトニン作動性受容体において示し(Nichols、2016)、このことはそれらを反復投与レジメンにあまり適さなくしている。
【0004】
対照的に、一般にはBanisteriopsis caapiと、Psychotria viridisまたはDiplopterys cabreranaとから作られる伝統的な在来植物調合物(これは、幻覚剤として知られているアヤワスカ(ayahuasca)と呼ばれる)が、身体的および精神的な健康に対するその有益な効果のためにますます認識されており、このため、アヤワスカは治療的使用のための有望な候補になっている(Dominguez-Claveら、2016)。本明細書中において、幻覚剤は、それを使用する被験者において意識の変化した状態を生じさせ得る薬剤を示す。意識の変化した状態は、正常な覚醒時状態とは異なる状態をどのようなものであれ示し、認知または知覚の変化(例えば、幻覚)、激しい感情、または白昼夢を経験することを包含する場合があり、しかしこれに限定されない。アヤワスカは、肯定的な様々な効果を、心理学的、身体的および精神身体的な病気を有する患者において示すことが示唆されており、ラテンアメリカ地域における自然医学において何世紀にもわたって使用されてきた(Frecskaら、2016)。小規模なパイロット研究において、アヤワスカは、かなりの数の患者が処置の7日以内に再発するケタミンの一過性の抗うつ効果(Sanacoraら、2016)と比較して、迅速な、かつ、より持続した抗うつ特性をうつ病患者において示す(Osorioら、2015;Palhano-Fontesら、2018;Santosら、2016)。そのような作用の機序は理解されていないが、アヤワスカの潜在的治療効果は、不適応性の神経行動学的状態の根底にある神経回路がアヤワスカによりリセットされ得ることに依拠することが仮定される。
【0005】
アヤワスカ調合物は、N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)と、ベータ-カルボリン類(例えば、とりわけ、ハルミン、ハルマリン、テトラヒドロハルミン)との混合物を含む。アヤワスカは、a)無毒性であり、b)常習的乱用潜在性が低く、c)耐性を生じさせず、d)抗うつ剤としての可能性を示す(Dominguez-Claveら、2016;Barbosaら、2012)。DMTが生物学的に利用可能になるためには、経口製剤は通常、(例えば、Psychotria viridis由来の)DMTの植物系供給源を、体内におけるDMTの分解を防ぐための選択的可逆的モノアミンオキシダーゼA(MAO-A)阻害剤として作用するβ-カルボリン類(例えば、Banisteriopsis caapi由来)と組み合わされて含有する(Callawayら、1996)。DMTはセロトニンの構造類似体であり、植物、哺乳動物生物、ヒトの脳および体液を含めて自然界において広く見出される(Barker、2018)。
【0006】
N,N-ジメチルトリプタミンおよびハルミン(7-メトキシ-1-メチル-9H-ピリド[3,4-b]インドール)は、以下に示される化学式によって表すことができる:
【化1】
【0007】
アヤワスカは、うつ病および不安障害を含めて多数の障害を処置することにおいて潜在的に有用であり得ることが示唆されている。例えば、2018年には、アヤワスカの単回投与が処置抵抗性うつ病の症状を小規模プラセボ対照試験において有意に軽減させたことが報告された(Palhano-Fontesら、2018)。別の予備的研究では、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)、モントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、および簡易精神症状評価尺度(BPRS)の不安うつ病下位尺度で測定される場合、ベースラインと、アヤワスカ投与後1日、7日および21日との間でのうつ病スコアにおける最大で82%の統計学的に有意な低下が報告される(Osorioら、2015)。
【0008】
アヤワスカの摂取は安全であると考えられる(Barbosaら、2012)にもかかわらず、アヤワスカは、その臨床的有用性を損なう数多くの望まれない副作用(例えば、悪心、嘔吐、下痢、幻覚)をもたらしている。その副作用の大部分が、(未知の毒性または有害な毒性を有する)植物材料の無作為な混和に起因する最適以下の薬物動態学的/薬力学的特性、およびアルカロイド含有量における変動性(このため、臨床状況における標準化された処方薬としてのその使用が不可能になっている)のせいである可能性がある。そのうえ、アヤワスカが経口投与されると、DMTは血流内に容易に吸収され、潜在的に苦悩を与える副作用を伴って消費者の知覚における急な変化を生じさせる(Ribaら、2003)。
【0009】
上記で概説される副作用の問題を解決するアヤワスカ代替物が、合成アヤワスカとしてもまた知られているファーマワスカ(pharmahuasca)である。ドイツ国特許出願公開DE102016014603A1の開示によれば、ファーマワスカまたは合成アヤワスカの用語は、Banisteriopsis caapi、Psychotria viridis、および/またはDiplopterys cabreranaにおいて自然界に存在し、これらから単離可能な有効成分の群で、ハルミン、ハルマリン、d-テトラヒドロハルミン、N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)、モノ-N-メチルトリプタミン、5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン、5-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミン、2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-β-カルボリン、ハルモール、ハルマロール、テトラヒドロハルモール、同様にまた、それらの天然型および非天然型の立体異性体およびラセミ体からなる、固体形態、液体形態または半固体形態で入手可能である有効成分の群の少なくとも2つのメンバーを含む組み合わせ物、組成物、混合物および調製物であって、有効成分の少なくとも1つが、ハルミン、ハルミノールおよびテトラヒドロハルミン(tetrahydrohamine)ならびにその立体異性体およびラセミ体からなるβ-カルボリン類の群から選択され、かつ、活性物質の少なくとも1つが、N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)、モノ-N-メチルトリプタミン、5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン、5-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミンからなる末端N-置換トリプタミン類を含有する群から選択されることを特徴とする、組み合わせ物、組成物、混合物および調製物に関する。これらの有効成分は、独立して、全体で、または一部で、すなわち、個別に、また、混和で、一緒になって、ならびにいくつかの剤形で、適用可能な場合には塩基またはそれらの天然塩および合成塩の形態で、あるいはN-オキシドとして、イオン交換体または別のマトリックスに結合させて含有されることが可能であり、複合体および包含化合物として存在することができ、合成することができ、そして/または、どのような天然植物材料からであっても抽出によって得ることができ、有効成分の濃度の総和が少なくとも0.0001%である。経口ファーマワスカは、望まれない副作用(例えば、嘔吐、悪心、下痢)を引き起こすことが知られている毒性不明の植物混和物が排除されるために、伝統的アヤワスカと比較して、耐容性がより大きいであろうと仮定された。ウィキペディア(https://en.wikipedia.org/wiki/Pharmahuasca)によれば、50mgのDMTおよび100mgのハルマリンが通常の場合には、ファーマワスカについての一人あたりの推奨投与量である。しかしながら、50mgのハルマリン、50mgのハルミン、および50mgのDMTの組み合わせが試験され、成功している。これらの構成成分は別個のゼラチンカプセルに入れる。ハルマリン/ハルミンを含むカプセルが最初に飲み込まれ、DMTを含有するカプセルが15分~20分の後で投与される。
しかしながら、様々なファーマワスカ組成物が最新技術で知られているが、ファーマワスカの医学的使用は今日まで実証されていないことには留意される。サイケデリック薬物(例えば、DMT)の臨床上の安全性および効力は、適切な用量の選定、サイケデリック体験に対する患者の心理学的期待、およびサイケデリック治療の全過程にわたる専門的精神療法指針を含めていくつかの要因に決定的に依存する。それに加えて、サイケデリック薬物の薬物動態学プロフィルがその心理学的効果の動力学に実質的影響を与えている。血流内へのDMTの吸収が、例えば、(モノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えば、MAO-A阻害剤)と組み合わされる)静脈内投与、吸入投与、または経口的に活性化された投与の後において、急速な動態に従うならば、被験者は最初に、幻覚および不安が付随する失見当識を含む強い主観的効果を報告することが多い(Strassmanら、1994;Ribaら、2003;Ribaら、2015)。したがって、望まれない副作用(例えば、要素幻覚、不安、解離、悪心、嘔吐、および他の身体的副作用)を軽減し、同時に治療効力を最大化し、安全性プロフィルを増大させ、かつ、臨床状況における投与コンプライアンスを保証することが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nichols, D.E., 2016. Psychedelics. Pharmacological Reviews, 68(2), pp.264-355.
【非特許文献2】Dominguez-Clave, E. et al., 2016. Ayahuasca: Pharmacology, neuroscience and therapeutic potential. Brain research bulletin.
【非特許文献3】Frecska, E., Bokor, P. & Winkelman, M., 2016. The Therapeutic Potentials of Ayahuasca: Possible Effects against Various Diseases of Civilization. Frontiers in pharmacology, 7(e42421), pp.35-17.
【非特許文献4】Sanacora, G. et al., 2016. Balancing the Promise and Risks of Ketamine Treatment for Mood Disorders.
【非特許文献5】Osorio, F. de L. et al., 2015. Antidepressant effects of a single dose of ayahuasca in patients with recurrent depression: a preliminary report., 37(1), pp.13-20.
【非特許文献6】Palhano-Fontes, F. et al., 2018. Rapid antidepressant effects of the psychedelic ayahuasca in treatment-resistant depression: a randomized placebo-controlled trial. Psychological medicine, 7, pp.1-9.
【非特許文献7】Santos, Dos, R.G. et al., 2016. Antidepressive and anxiolytic effects of ayahuasca: a systematic literature review of animal and human studies., 38(1), pp.65-72.
【非特許文献8】Barbosa, P.C.R. et al., 2012. Health status of ayahuasca users. S. D. Brandt & T. Passie, eds. Drug Testing and Analysis, 4(7-8), pp.601-609.
【非特許文献9】Callaway, J.C. et al., 1996. Quantitation of N,N-dimethyltryptamine and harmala alkaloids in human plasma after oral dosing with ayahuasca. Journal of analytical toxicology, 20(6), pp.492-497.
【非特許文献10】Barker, S.A., 2018. N, N-Dimethyltryptamine (DMT), an Endogenous Hallucinogen: Past, Present, and Future Research to Determine Its Role and Function. Frontiers in neuroscience, 12, pp.139-17.
【非特許文献11】Riba, J. et al., 2003. Human pharmacology of ayahuasca: subjective and cardiovascular effects, monoamine metabolite excretion, and pharmacokinetics. The Journal of pharmacology and experimental therapeutics, 306(1), pp.73-83.
【非特許文献12】Strassman, R.J. et al., 1994. Dose-response study of N,N-dimethyltryptamine in humans. II. Subjective effects and preliminary results of a new rating scale. Archives of general psychiatry, 51(2), pp.98-108.
【非特許文献13】Riba, J. et al., 2015. Metabolism and urinary disposition of N,N-dimethyltryptamine after oral and smoked administration: a comparative study. Drug Testing and Analysis, 7(5), pp.401-406.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、根本にある技術的課題は、精神医学的障害、精神身体障害および/または身体障害を臨床状況において処置して、副作用が軽減された長期間の効果を提供するために好適である形態でファーマワスカを提供することである。
【0012】
この技術的課題が、本明細書中に示される実施形態、および特許請求項において特徴づけられるような実施形態によって解決される。
【0013】
第一の局面において、本発明は、(a)N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、(b)ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアとを含むキット・オブ・パーツを含む組成物に関する。
【0014】
第二の局面において、本発明は、(a)N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、(b)ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物に関する。
【0015】
本明細書中で言及される化合物、またはその医薬的に許容され得る塩は、その水和物、溶媒和物および多形として存在する場合がある。用語「多形」は、本発明の化合物の様々な結晶構造を示す。これには、結晶形態(および非晶質物)ならびにすべての結晶格子形態が含まれる場合があり、しかし、これらに限定されない。本発明の塩は結晶性であることが可能であり、2つ以上の多形として存在する場合がある。塩の溶媒和物、水和物、同様にまた無水形態もまた、本発明によって包含される。溶媒和物に含まれる溶媒は特に制限されず、医薬的に許容され得るどのような溶媒も可能である。例には、水およびC1~4アルコール(例えば、メタノールまたはエタノールなど)が含まれる。
【0016】
伝統的アヤワスカの欠点に基づいて、本発明者らは、経口投与されたファーマワスカのPK/PDプロフィルおよび耐容性を調べるために10名の健常な男性志願者における非盲検用量設定パイロット研究を行っている。驚くべきことに、実施例に示されるように、本発明者らは、単回経口投与後のDMTおよびハルミンの両方の血漿中濃度における個体間差(これにより、単回経口投与は、再現性のある臨床使用には不適である)を見出している。それによって、ピーク血漿中濃度(これはC
maxとしてもまた示される)が、被験者全体にわたって、実質的にはDMTについては約7倍で、ハルミンについては約50倍で変動した(詳細については実施例1を、一例については
図1および
図2を参照のこと)。同様に、主観的薬物効果が被験者間で劇的に変化し、ピーク強度評点が1(非応答者)から10(応答者)にまで及んでいた。個体間の応答性におけるこのかなりの差は非常に予想外であり、この差から、ファーマワスカが臨床的に適用可能であろうかについて疑いが提起された。
【0017】
驚くべきことに、本発明者らは、DMTおよびハルミンが、胃腸管が回避されるように投与されるならば(言い換えれば、DMTおよびハルミンが経口投与されない場合)、DMTおよびハルミンの血漿中濃度における個体間差に伴う諸問題が克服され得ることを見出している。同じ10名の志願者における第2の非盲検用量応答パイロット研究において明らかにされるように(詳細については実施例2を参照のこと)、DMTおよびハルミンの非経口投与は、応答予測可能性、安全性、耐容性および全般的治療効力の点で、経口ファーマワスカまたは伝統的アヤワスカよりも優れている。
【0018】
サイケデリック薬物の主観的薬物効果、本発明においてはDMTの主観的薬物効果が本明細書中では、VASとしてもまた示される視覚的評価スケール(例えば、強度、好み(liking)、苦悩、覚醒(arousal)、リラクゼーション、不安、制御の消失、視覚的影響)、ならびに、意識変容状態評価尺度(5D-ASC)、ポジティブ・ネガティブ感情スケジュール(PANAS)、カロリンスカ眠気尺度(KSS)、MINDSENS複合指数、自然関連性尺度(Nature Relatedness Scale)、認知の柔軟性尺度、受容および行動に関する質問票II、持続する効果に関する質問票(Persisting Effects Questionnaire)(PEQ)、困難な経験に関する質問票、心理学的幸福・外傷後変化に関する質問票(PWB-PTCQ)、ならびに症状チェックリスト(SCL-90-R)を含めた下記の十分に確立された心理測定ツールによって定義され、評価される。R.Carhart-Harris教授(Imperial College London)の研究グループによって現在検証中である2つのさらなる心理測定ツールを使用することができる:つながりに関する質問票(CQ)、および感情的なブレークスルー質問票(Emotional breakthrough inventory、EBI)。好ましくは、本明細書中で議論されるような十分に確立された心理測定ツールには、意識変容状態評価尺度(5D-ASC)、ポジティブ・ネガティブ感情スケジュール(PANAS)、つながりに関する質問票(CQ)、および感情的なブレークスルー質問票(EBI)が含まれる。
【0019】
好ましくは、一般的薬物効果の視覚的評価スケール(VAS)(例えば、強度、好み、苦悩、覚醒、リラクゼーション、不安、制御の消失、視覚的影響)、および意識変容状態評価尺度(5D-ASC)(Studerusら、2010)が、主観的薬物効果を評価するために本発明において使用される。さらに好ましいVASが、強度、バレンス(valence)、副作用である。5D-ASC評価は下記パラメーターの評価を含む場合がある:大洋感(oceanic boundlessness)(例えば、積極的に経験した自我解消)、不安自我解消(anxious ego-disolution)、幻覚的再構造化(visionary restructuralization)、視聴覚変化、および/または覚醒度低下。ASC質問票の追加の下位次元により、様々な経験的カテゴリー、例えば、幸せに満ちた状態、霊的体験、一体という経験、知覚対象物の変化した意味、視聴覚共感覚、複合心象、基本心象、不安、損なわれた認知および制御、肉体離脱、および洞察力などが捉えられる。これらのパラメーターが、(遡及的評価のために検証された)5D-ASC質問票からの質問に回答することによって、または被験者の意識状態を薬物の効果の下にある間に、(例えば、サイケデリック期間中に定期的間隔で照会される視覚的評価スケールによって)示すことによって、それぞれの被験者によって個別に評価される。サイケデリック物質を使用する被験者は、薬物の効果が低下するのと同時に、サイケデリック物質の影響下での自分の経験について話す必要性を感じることが当業者には知られている。そのため、主観的薬物効果に関する追加の情報を典型的には、また好ましくは、当業者に知られている標準的な確立された手順に従う、半構造化され、かつ音声記録された心理学的面談および/または現象学的面談によって得ることができる。
【0020】
DMTとハルミンとの組み合わせ使用の安全性および耐容性を、DMTおよび/またはハルミンの使用に関連する副作用を軽減することによって増大させることができる。一般的な身体的副作用には、悪心、嘔吐および下痢が含まれる。GI管を本発明の方法に従って迂回することによって、迷走神経求心路の末端における腸5-HT3化学受容体の低下した刺激が達成され、これにより、悪心が少なくなり、嘔吐が少なくなり、胃腸不快感が少なくなる。軽減された悪心は、より少ない物質が嘔吐により失われるため、薬物効果の全般的制御性を改善することが、当業者には知られている。そのため、用量置換について必要性がない。経口ハルミンと、チラミン含有食物生成物との共摂取は、チラミン媒介の交感神経刺激に起因して高血圧クリーゼを引き起こす可能性があることにもまた留意しなければならない。したがって、GI管を回避することは食物不適合性/相互作用のリスクを軽減し、薬物投与前の絶食または特別な食事要件について必要性が全くないか、または必要性が軽減される。
【0021】
伝統的(薬草)アヤワスカは、煎じ汁の官能的特性のために、それを摂取する被験者において下痢を頻繁に生じさせる植物基質(plant matrix)を含有する。これらの有害作用が、GI管を本発明に従って回避することによって排除される。さらに、不都合な毒物学プロフィル(例えば、ハルマリンの存在によって伝えられる毒物学プロフィル)を有する薬草混和物、または身体的不快感を生じさせる他の化合物(例えば、タンニン)の低減された負荷が、本発明の方法に従って達成される。
【0022】
伝統的アヤワスカまたは最新技術によるファーマワスカのさらなる副作用には、薬物作用の初期段階の期間中における精神生理学的苦悩が含まれる。このために、本発明によるDMTの漸増投与により、DMTの血漿中濃度のピークを平坦化する。DMTの血漿中濃度のピークには、
図8Aに示されるように、強い幻覚現象、不安または失見当識が伴い得る。さらに、DMTの短い半減期のために、漸増投与では、そうでなければ、(例えば、LSD、シロシビン、メスカリンについて見られるような)強い長期間の幻覚現象、不安または失見当識を、患者には有害な結果を伴って引き起こし得るDMTの蓄積が防止される(
図8Bを参照のこと)。DMTの漸増投与はさらに、有害な精神的影響または身体的影響の場合には処置の中断を可能にする。さらに、治療域を漸増投与によって安全に達成することができる(高ボーラス用量の初期の苦しめる影響がない)。
【0023】
本発明において、キット・オブ・パーツは、物理的に隔てられて、しかし隣接して保たれる個々の成分(a)および成分(b)の組み合わせを示す。当業者は、キットの成分(パーツ)が投与前に組み合わされることがあること、成分(パーツ)が同時に投与されることがあること、またはキットの成分(パーツ)が逐次投与されることがあることを理解する。逐次投与の場合、キットの成分(パーツ)は典型的には、本発明の効果を得るために、好ましくは30分~120分の間での時間範囲の範囲内で投与される。キット・オブ・パーツの成分は種々の投与経路のために製剤化することができる。小分子薬物は、経口投与経路、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および皮下投与経路を含む)、経鼻(または鼻腔内)投与経路、眼投与経路、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)、経皮投与経路、吸入投与経路および経皮投与経路を介して投与され得ることが、当業者には知られている。本明細書中において、口腔投与経路は、経口投与経路、頬側投与経路および/または舌下投与経路を示すことがあることには留意しなければならない。本明細書中において、成分(a)および成分(b)は、これらの投与経路のいずれかによる投与のために製剤化される場合がある。(a)および(b)は、同じ投与経路を使用する投与のために製剤化され得ることが理解されるし、(a)および(b)は、異なる投与経路を使用する投与のために製剤化され得ることがさらに理解される。
【0024】
本発明によれば、(a)と、(b)とを含む医薬組成物において、(a)および(b)は一緒に混合され、または一緒に包装され、このことは、一緒に投与されるために好適である。小分子薬物は、経口投与経路、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および皮下投与経路を含む)、経鼻(または鼻腔内)投与経路、眼投与経路、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)、吸入投与経路および経皮投与経路を介して投与され得ることが、当業者には知られている。本明細書中において、(a)および(b)が1つの組成物の中に含まれるならば、それらは典型的には、同じ投与経路のために製剤化される。
【0025】
投与量は、特定の患者または被験者のための個々のレジメンおよび投与量レベルを決定するときには、投与経路、疾患の重症度、被験者の年齢および体重、ならびに主治医によって通常は考慮される他の要因に依存する。本発明のキット・オブ・パーツのパーツまたは医薬組成物は、非経口投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、経皮投与、鼻腔内投与、静脈内投与、舌下投与または直腸内投与を含めて、どのような経路を介してであれ投与してよい。
【0026】
本発明のキット・オブ・パーツのパーツまたは本発明の医薬組成物は、当業者には知られている好適に選択された医薬的に許容され得る賦形剤、ビヒクル、補助剤、添加剤、表面活性剤、乾燥剤または希釈剤を混合することによって調製してよく、そして、経口投与、経粘膜投与、非経口投与または局所投与のために好適に適合させることができる。典型的には、また好ましくは、本発明のキットのパーツまたは医薬組成物は、錠剤、口腔内分散性錠剤、粘膜付着性フィルム剤、凍結乾燥物、カプセル剤、サシェ剤、散剤、顆粒剤、ペレット剤、経口用または非経口用の液剤、懸濁剤、坐剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤の形態で投与され、かつ/あるいはリポソーム剤、ミセル剤および/またはミクロスフェア剤を含有する場合がある。
【0027】
用語「医薬的に許容され得る」は、典型的には、また好ましくは製剤において一緒に使用されるとき、または動物を処置するために、好ましくはヒトを処置するために典型的には、また好ましくは一緒に使用されるとき、化合物または組成物が、典型的には、また好ましくは塩またはキャリアが、それ以外の成分と、典型的には、また好ましくは本発明の組成物、または本発明のキット・オブ・パーツのパーツと化学的または毒性学的に適合性でなければならないことを示している。好ましくは、用語「医薬的に許容され得る」は、典型的には、また好ましくは製剤において一緒に使用されるとき、または動物を処置するために、好ましくはヒトを処置するために典型的には、また好ましくは一緒に使用されるとき、化合物または組成物が、典型的には、また好ましくは塩またはキャリアが、それ以外の成分と、典型的には、また好ましくは本発明の組成物、または本発明のキット・オブ・パーツのパーツと化学的かつ毒性学的に適合性でなければならないことを示している。医薬組成物は、当業者には知られている技術によって、例えば、’’Remington:The Science and Practice of Pharmacy’’(Pharmaceutical Press、第22版)に公開される技術などによって製剤化され得ることには留意される。
【0028】
本発明のキット・オブ・パーツのパーツ(a)およびパーツ(b)または本発明の医薬組成物の医薬的に許容され得るキャリアは、限定されないが、任意の医薬的に許容され得る賦形剤、ビヒクル、補助剤、添加剤、表面活性剤、乾燥剤または希釈剤である。好適な医薬的に許容され得るキャリアは、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシ-プロピル-メチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバターである。本発明の医薬的に許容され得るキャリアは、固体、半固体または液体であることが可能である。
【0029】
経口投与のための錠剤、カプセル剤またはサシェ剤は通常、投薬単位で供給され、従来の賦形剤、例えば、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤化剤、滑沢剤、界面活性剤、崩壊剤、着色剤、香料および湿潤剤などを含有する場合がある。錠剤は、この技術分野では広く知られている方法に従って被覆されてよい。好適な充填剤には、セルロース、マンニトール、ラクトースおよび類似の剤が含まれ、または好適な充填剤は好ましくは、セルロース、マンニトール、ラクトースおよび類似の剤である。好適な崩壊剤には、デンプン、ポリビニルピロリドンおよびデンプン誘導体(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム)が含まれ、または好適な崩壊剤は好ましくは、デンプン、ポリビニルピロリドンおよびデンプン誘導体(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム)である。好適な滑沢剤には、例えば、ステアリン酸マグネシウムが含まれ、または好適な滑沢剤は好ましくは、例えば、ステアリン酸マグネシウムである。好適な湿潤剤には、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれ、または好適な湿潤剤は好ましくはラウリル硫酸ナトリウムである。これらの固体口腔組成物は、従来の混合方法、充填方法または打錠方法を用いて調製することができる。混合操作を、活性薬剤を、大量の充填剤を含有する組成物に分散させるために繰り返すことができる。これらの操作は従来的である。
【0030】
本発明のキット・オブ・パーツのパーツは、当業者には知られている好適に選択された医薬的に許容され得る賦形剤、ビヒクル、補助剤、添加剤、表面活性剤、乾燥剤または希釈剤を混合することによって調製してよく、口腔投与、非経口投与または局所投与のために好適に適合させることができる。典型的には、また好ましくは、本発明のキット・オブ・パーツのパーツは、錠剤、カプセル剤、サシェ剤、散剤、顆粒剤、ペレット剤、口腔内分散性錠剤、粘膜付着性フィルム剤、凍結乾燥物、口腔用または非経口用の液剤、懸濁剤、坐剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤の形態で投与され、かつ/あるいはリポソーム剤、ミセル剤および/またはミクロスフェア剤を含有する場合がある。
【0031】
口腔投与のための液体組成物としての本発明のキット・オブ・パーツのパーツまたは医薬組成物は、例えば、水性液剤、乳剤、シロップ剤またはエリキシル剤の形態で、あるいは使用の時に水または好適な液体キャリアにより再構成されるための乾燥製造物の形態で提供されることが可能である。液体組成物は従来の添加剤を含有することができる:例えば、懸濁化剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素化食用脂;乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレアートまたはアラビアゴム;非水性キャリア(食用油を含むことができる)、例えば、アーモンド油、分別ココナッツ油、油状エステル(例えば、グリセリンエステル、プロピレングリコールまたはエチルアルコール);防腐剤、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp-ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸;浸透増強剤、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO);pHバッファー系、例えば、リン酸バッファー、炭酸バッファー、クエン酸バッファー、クエン酸-リン酸バッファーおよび他の医薬的に許容され得るバッファー系;可溶化剤、例えば、ベータ-シクロデキストリン、ならびに所望されるならば、従来の香料または着色剤。口腔製剤にはまた、従来の製剤、例えば、錠剤または顆粒剤が含まれる場合があり、あるいは口腔製剤は、従来の製剤として、例えば、錠剤または顆粒剤として製剤化される場合がある。
【0032】
口腔製剤は必要に応じてさらに、口腔製剤の味覚)知覚を最適化するための味覚遮蔽成分を含む場合がある。そのような味覚遮蔽成分の例は、当業者に知られている柑橘系香味料、甘草系香味料、ミント系香味料、ブドウ系香味料、クロフサスグリ系香味料またはユーカリ系香味料であり得る。
【0033】
鼻腔内投与のための投薬の形態には、点鼻剤の形態での液体キャリア中の活性化合物の液剤、懸濁剤または乳剤が含まれる場合がある。好適な液体キャリアには、水、プロピレングリコールおよび他の医薬的に許容され得るアルコールが含まれる。液滴形態での投与のために、製剤は好適には、例えば、従来の点滴器/閉鎖デバイスを備える容器、例えば、実質的に一定量の組成物/液滴を好ましくは送達するピペットなどを含む容器に入れられる場合がある。この剤形は要求に応じて無菌化される場合がある。この剤形はまた、要求に応じて、補助剤、例えば、防腐剤、安定剤、乳化剤または懸濁化剤、湿潤剤、浸透圧を変化させるための塩、またはバッファーを含有してよい。バッファー系には、例えば、リン酸バッファー、炭酸バッファー、クエン酸バッファー、クエン酸-リン酸バッファーおよび他の医薬的に許容され得るバッファー系が含まれる場合がある。鼻腔内製剤は必要に応じてさらに、香りを最適化するための嗅覚遮蔽成分を含む場合がある。
【0034】
非経口投与のために、本発明の組成物および無菌キャリア、または本発明のキット・オブ・パーツのパーツおよび無菌キャリアを含有する液体投薬単位を調製することができる。非経口用溶液は通常、好適なバイアルまたはアンプルに充填し、密封する前に、化合物をキャリアに溶解し、ろ過によって無菌化し、オートクレーブ処理することによって調製される。
【0035】
補助剤、例えば、局所麻酔剤、防腐剤および緩衝剤を、本発明の医薬組成物またはキット・オブ・パーツのパーツに加えることができる。安定性を増加させるために、医薬組成物またはキット・オブ・パーツのパーツはバイアルへの充填の後で凍結することができ、水を真空下で除くことができる。表面活性剤または湿潤剤を好都合には、本発明の組成物または本発明のキット・オブ・パーツのパーツの均一な分布を容易にするために、医薬組成物に、またはキット・オブ・パーツのパーツに含めることができる。
【0036】
局所用製剤には、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、ガム剤、液剤、ペースト剤が含まれ、または局所用製剤は好ましくは、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、ガム剤、液剤、ペースト剤であり、あるいは局所用製剤は、リポソーム剤、ミセル剤もしくはミクロスフェア剤を含有する場合がある。
【0037】
用語「好ましくは」は、本発明において要求されず、しかし改善された技術的効果をもたらすことがあり、したがって望ましい、しかし必須でない特徴または実施形態を記載するために使用される。
【0038】
本明細書中で言及される数値に関して、別途明確に述べられる場合を除き、数値の最後の小数位が好ましくはその正確度を示している。したがって、他の誤差限界が与えられている場合を除き、最大限界が好ましくは、四捨五入規則を最後の小数位に適用することによって確認される。したがって、2.5の値は好ましくは、誤差限界が2.45~2.54である。
【0039】
DMT(N,N-ジメチルトリプタミン)は、セロトニンおよびメラトニンの構造類似体であるサイケデリック物質である。DMTはまた、ブホテニン(5-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミン)、シロシビン(4-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミンのリン酸エステル)およびシロシン(4-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミン)を含めた他のサイケデリック物質の構造的かつ機能的な類似体である。DMTのさらなる知られている類似体には、モノ-N-メチルトリプタミンが含まれる。本明細書中に列挙されるDMTの類似体もまた、幻覚剤としての活性を示す。さらに、本明細書中に列挙されるDMTの類似体はすべてがモノアミンであり、そのようなものとして、MAO-Aモノアミンオキシダーゼの潜在的基質である。そのため、シロシビン、シロシンおよびモノ-N-メチルトリプタミンもまた、本発明の組成物、医薬組成物、キット・オブ・パーツおよび/または方法において、DMTに取って代わって使用される場合のあることがさらに想定される。特に、シロシンまたはシロシビンが、本発明の組成物、医薬組成物、キット・オブ・パーツおよび/または方法において、DMTに取って代わって使用される場合のあることが想定される。そのような医薬組成物、組成物またはキット・オブ・パーツはまた、シロワスカ(psilohuasca)として示すことができる。シロシンまたはシロシビンをDMTの代わりに含むそのような医薬組成物、組成物またはキット・オブ・パーツが、本発明の医薬組成物、組成物またはキット・オブ・パーツを用いて処置することができる疾患を処置するために使用され得ることが、当業者には考えられる。
【0040】
ハルミン(7-メトキシ-1-メチル-9H-ピリド[3,4-b]-インドール)は、バニステリンまたはテレパチンとしてもまた知られているものであり、ハルメル(harmel)(Peganum harmala)またはBanisteriopsis caapiを含む多くの異なる植物に存在するアルカロイドである。ハルミンはベータ-カルボリン類の群に属する。ハルミンはモノアミンオキシダーゼA(MAO-A)を可逆的に阻害し、しかしモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)を阻害しない。本発明の組成物、医薬組成物、キット・オブ・パーツおよび方法において、ハルミンがMAO-Aの阻害剤として使用される。ハルミンのいくつかの構造類似体には、ハルマリン、テトラヒドロハルミン(tetrohydroharmine)、ハルモール、ハルマロール、テトラヒドロハルモール、2-メチル-1,2,3,4-テトラ-ヒドロ-β-カルボリンが含まれる。本明細書中に列挙されるハルミンの類似体はすべてがMAO-A阻害剤であることには留意される。そのため、ハルマリン、テトラヒドロハルミン、ハルモール、ハルマロール(haramolol)、テトラヒドロハルモール、2-メチル-1,2,3,4-テトラ-ヒドロ-β-カルボリンもまた、本発明の組成物、医薬組成物、キット・オブ・パーツおよび/または方法において、ハルミンに取って代わって使用される場合のあることがさらに想定される。
【0041】
さらに、組成物、医薬組成物またはキット・オブ・パーツは、モノアミンオキシダーゼ阻害剤としてのハルミンの代わりに、別の利用可能な阻害剤を含む場合のあることが想定される。例えば、Aurorix(登録商標)として商用的に知られているモクロベミド(4-クロロ-N-(2-モルホリノ-エチル)ベンズアミド)をこの目的のために使用することができる。本発明の範囲内において使用することができる選択的MAO-A阻害剤のさらなる限定されない例には、ビフェメラン(4-(O-ベンジルフェノキシ)-N-メチルブチルアミン)、ピルリンドール(pirindole)、トロキサトンおよびミナプリンが含まれる。当業者には知られているように、クルクミンをMAO-Aの可逆的阻害剤として使用することができる。
【0042】
本発明によれば、本発明の医薬組成物または本発明のキット・オブ・パーツにおいて、(a)および(b)は、DMTおよびハルミンをそれらの塩基形態で、または医薬的に許容され得る塩としてそれぞれ含む場合がある。医薬的に許容され得る酸付加塩は、非毒性の酸アニオンを形成する酸から形成されるもの、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩または酸性リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、アスコルビン酸塩およびグルコン酸塩であることが、当業者には知られている。しかしながら、この列挙は、限定であることを意味しておらず、医薬的に許容され得る塩はどのような塩であれ、本発明において使用することができる。
【0043】
本発明において、DMTは好ましくは、酢酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、アスコルビン酸塩として使用される。最も好ましくは、DMTはフマル酸塩として使用される。DMTフマレートは、良好な水溶性(典型的には298Kにおいて35mg/mL超)を示し、粘膜吸収のために好適であり、そのため、鼻腔内投与のために好適である。塩基形態でのDMTと比較した場合、DMTフマレートは、より低い頬側吸収を示すことには留意しなければならない。DMTフマレートは、本明細書中では理解されるように、DMTのヘミフマル酸塩を好ましくは示し、これはまた、DMT対フマレートのモル比が約2:1である、より好ましくは2:1である塩として理解されてよい。しかしながら、DMTをその塩基形態で使用することは、頬側投与されるときには口腔粘膜の塩基性腐食により引き起こされる灼熱感によって実質的に制限されることには留意しなければならない。
【0044】
本発明において、ハルミンは、その塩基形態で、あるいはその塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートまたはシトレートとして使用することができる。ハルミン遊離塩基の溶解性が非常に低いことには留意しなければならない。塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートおよびシトレートを含めて、ほとんどのハルミン塩が、低い水溶性(典型的には298Kにおいて35mg/mL以下)を示す。さらに、鼻腔内投与されるときには、これらの塩のいくつかが、鼻粘膜の酸性腐食に起因する被験者によって報告される灼熱感をもたらす。本発明において、ハルミンは好ましくは、遊離塩基として、または塩酸塩として使用される。最も好ましくは、ハルミンは塩酸塩として使用される。
【0045】
したがって、さらなる局面において、本発明のキット・オブ・パーツおよび本発明の医薬組成物は、(a)がN,N-ジメチルトリプタミンフマレートおよび医薬的に許容され得るキャリアである実施形態に関する。さらにさらなる局面において、本発明のキット・オブ・パーツおよび本発明の医薬組成物は、(b)がハルミン塩酸塩および医薬的に許容され得るキャリアである実施形態に関する。
【0046】
本発明の組成物、医薬組成物、キット・オブ・パーツおよび方法は、DMTとハルミンとの組み合わせ物またはこれらの組み合わせ使用に関する。したがって、本明細書中に列挙されるDMT塩またはその塩基形態と、ハルミン塩またはその塩基形態との組み合わせはどのようなものであれ、本発明において使用することができる。したがって、本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物は、塩基形態でのN,N-ジメチルトリプタミンと、塩基形態、塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートおよびシトレートから選択される形態でのハルミンとを含む場合がある。本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物は代替において、酢酸塩としてのN,N-ジメチルトリプタミンと、塩基形態、塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートおよびシトレートから選択される形態でのハルミンとを含む場合がある。代替において、本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物は、硫酸塩としてのN,N-ジメチルトリプタミンと、塩基形態、塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートおよびシトレートから選択される形態でのハルミンとを含む場合がある。代替において、本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物は、シュウ酸塩としてのN,N-ジメチルトリプタミンと、塩基形態、塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートおよびシトレートから選択される形態でのハルミンとを含む場合がある。さらなる代替として、本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物は、クエン酸塩としてのN,N-ジメチルトリプタミンと、塩基形態、塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートおよびシトレートから選択される形態でのハルミンとを含む場合がある。さらなる代替として、本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物は、フマル酸塩としてのN,N-ジメチルトリプタミンと、塩基形態、塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートおよびシトレートから選択される形態でのハルミンとを含む場合がある。代替において、本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物は、アスコルビン酸塩としてのN,N-ジメチルトリプタミンと、塩基形態、塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートおよびシトレートから選択される形態でのハルミンとを含む場合がある。
【0047】
本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物において、N,N-ジメチルトリプタミンは、塩基形態、酢酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩およびアスコルビン酸塩から選択することができる2つ以上の形態で存在してもよいことがさらに想定される。本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物において、ハルミンは、その塩基形態、塩酸塩、アセテート、フマレート、スルフェートおよびシトレートから選択される2つ以上の形態で存在してもよいことがさらに想定される。
【0048】
好ましくは、本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物において、N,N-ジメチルトリプタミンはフマル酸塩として使用され、かつ/またはハルミンは塩酸塩として使用される。最も好ましくは、本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物において、N,N-ジメチルトリプタミンはフマル酸塩として使用され、かつハルミンは塩酸塩として使用される。
【0049】
さらなる局面において、本発明は、N,N-ジメチルトリプタミンフマレートと、ハルミン塩酸塩とを含む組成物に関する。N,N-ジメチルトリプタミンフマレートと、ハルミン塩酸塩とを含む組成物は、本明細書中で定義されるような医薬的に許容され得るキャリアと組み合わされるとき、本発明による医薬組成物を製剤化するために使用することができる。
【0050】
ここでまた、さらなる局面において、本発明は、医薬品として使用するための本発明のキット・オブ・パーツまたは本発明の医薬組成物に関する。
【0051】
ここでまた、さらなる局面において、本発明は、精神医学的障害、精神身体障害または身体障害を処置することにおいて使用されるための、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物に関する。ここでまた、さらなる局面において、本発明は、精神医学的障害、精神身体障害または身体障害を処置するための医薬品の製造において使用されるための、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物に関する。
【0052】
ここでまた、さらなる局面において、本発明は、多数の疾患および障害の処置または防止において使用されるための本発明の医薬組成物または本発明のキット・オブ・パーツを提供する。さらなる局面において、本発明は、多数の疾患および障害の処置または防止のための医薬品の製造において使用されるための本発明の医薬組成物または本発明のキット・オブ・パーツを提供する。前記疾患および障害は好ましくは、下記から選択される:
a)うつ病、うつ病エピソード、大うつ病性障害、気分変調症、二重うつ病、季節性感情障害、処置抵抗性うつ病、双極性障害におけるうつ病エピソード、産後うつ病、月経前不快気分障害、および/またはストレス関連情動障害、例えば、慢性身体障害の患者における燃え尽きもしくはうつ病の処置;
b)不安、例えば、パニック発作、パニック障害、急性ストレス障害、広場恐怖、全般性不安障害、分離不安障害、社会恐怖、特定恐怖症、物質誘発不安障害の処置;強迫性障害の処置、外傷後ストレス障害の処置、愛着障害の処置;ならびに/あるいは注意欠陥障害、例えば、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症および自閉症スペクトラム障害、ならびに/あるいは衝動制御障害の処置;
c)物質関連嗜癖および/または行動嗜癖(例えば、ギャンブル、摂食、デジタルメディア、運動または買い物など)の処置および防止;物質嗜癖、薬物依存、耐性、依存の処置または、アルコール、アンフェタミン類、大麻、コカイン、カフェイン、刺激物質、研究用化学物質、幻覚誘発物質、吸入剤、ニコチン、オピオイド、GHB、解離剤(ケタミン、フェンシクリジンを含む)、鎮静剤、催眠剤または抗不安剤を含む物質からの離脱;喫煙嗜癖の処置;ならびに/あるいは禁煙補助剤として、
d)心理療法および/または精神分析のための支援剤として;
e)機能障害ならびに/あるいは精神障害および身体障害のための診断補助剤として。
f)性機能障害の処置;
g)神経症の処置;および/または深いリラクゼーションを誘導するための薬剤として;
h)瞑想状態の薬理学的誘導のための薬剤として;
i)自身に対する、および他者に対する患者の攻撃的行動に至る傾向の処置;ならびに/あるいは行動障害および社会的有害な行動の処置;
j)失感情症の処置;ならびに/あるいはメンタリゼーションおよび社会的技能の改善(例えば、愛着障害/発達障害、自閉症スペクトラム障害において);
k)オキシトシン放出の刺激;
l)中枢神経系における神経伝達物質の濃度を増加させるための薬剤として;中枢神経系におけるセロトニンの濃度を増加させるための薬剤として;および/または中枢神経系におけるドパミンの濃度を増加させるための薬剤として;
m)神経保護剤および神経再生剤として;老化防止剤、再生剤、老化の徴候の防止および処置として;フリーラジカル損傷からの保護;ならびに/あるいは電離放射線による損傷の保護および改善;
n)食欲調節剤として;体重減少剤として;肥満の処置および防止;摂食障害の処置;脂質代謝および生理的脂肪燃焼の活性化;炭水化物代謝の活性化;生理的グリコーゲン燃焼の活性化;
糖尿病の処置および防止;ならびに/あるいはインスリン抵抗性の処置;
o)炎症の処置;慢性低悪性度炎症の処置、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosis)、炎症性腸疾患、多発性硬化症、1型糖尿病、ギラン・バレー症候群および/または乾癬を含めた自己免疫障害の処置;ならびに/あるいはクローン病および/またはベーチェット病を含めた自己炎症性疾患の処置。
p)免疫応答の刺激;
q)抗新生物剤として;がん、異常な細胞成長および変異の処置および/または防止
【0053】
疾患の上記列挙は、具体的な例として与えられるだけであり、本発明を限定するとして解釈されることにならないことを理解すべきである。上記の中でも、好ましいものは、a)、b)およびc)から選択される1またはそれを超えるものである。
【0054】
したがって、ここでまた、さらなる局面において、本発明は、精神医学的障害が、うつ病、ストレス関連情動障害、大うつ病性障害、気分変調症、処置抵抗性うつ病、燃え尽き、不安、外傷後ストレス障害、嗜癖、摂食障害または強迫性障害である、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物に関する。
【0055】
アヤワスカ(同様にまた、DMT類似体、例えば、シロシビン)は単回投与後、即効性かつ持続した抗うつ薬効力を処置抵抗性うつ病において示すことが、ランダム化比較試験で示されている。同時に、シロシビンまたはアヤワスカの長期間使用者において、常習的乱用潜在性がないこと、および急性毒性または慢性毒性の徴候がないことが見出された(これは、処置抵抗性うつ病の処置のために適応外で現在使用されているケタミンについては当てはまらない)。
【0056】
本発明者らによれば、DMTの経口投与の際に認められるようなDMTの血漿中レベルにおける個体間差(実施例1において明らかにされるような個体間差)は、MAO-A酵素の胃腸発現における個体間差に起因する可能性がある。MAO-Aは胃腸管において内皮で高発現しており、DMTが血液内に吸着され得る(can be adsorbed)前にDMTを分解することができる。ハルミンまたは別のMAO-A阻害剤をDMTと共投与すると、この効果が打ち消されると考えられる。しかしながら、ハルミンの投与された用量は、MAO-A発現レベルが平均を超えている個体の場合には十分でない可能性があり、結果として、低下した経口生物学的利用能がそのような個体については認められる可能性がある。
【0057】
さらに、ハルミンの生物学的利用能が、(実施例1において明らかにされるように)、同じ経口用量のハルミンが投与される被験者の間で被験者毎に異なり得ることには留意される。本発明者らによれば、ハルミンの血漿中レベルにおける個体間差は、ハルミンの肝臓分解における個体間差に起因する可能性がある。ハルミンは主に肝臓酵素CYP2D6によって分解される。この酵素の発現が被験者全体にわたって様々であり、このために、ハルミンの生物学的利用能における違いが生じている。ハルミンの不十分な生物学的利用能は、脳ニューロンのミトコンドリアにおいて発現されるMAO-A酵素による全身DMTの急速な分解を生じさせている。当業者は、この問題を、より多くのハルミンを被験者に投与することによりハルミンの血漿中濃度を増加させることによって解決することができたことは、本明細書中において留意される。しかしながら、被験者に投与されるハルミンの用量を増加させることは、望まれない副作用の蓋然性(ある特定の被験者における高用量のハルミンは、鎮静副作用、嘔吐副作用および/または心血管副作用をもたらすハルミン中毒を生じさせ得る)がハルミンの増加した用量(これは臨床用途と適合しない)に伴って高まることになるので望まれない。そのため、ハルミンの用量を増加させても、本発明の問題は解決されないであろう。
【0058】
したがって、ここでまた、さらなる局面において、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物は、(a)および(b)が経口投与されることにならない実施形態に関する。
【0059】
この実施形態によれば、本発明の医薬組成物、言い換えれば、(a)と、(b)とを含む医薬組成物は好ましくは、食道を通過しないような様式で投与される。言い換えれば、好ましくは、胃腸管が、本発明の医薬組成物の投与において回避される。したがって、本発明の医薬組成物、言い換えれば、(a)と、(b)とを含む医薬組成物は好ましくは、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および/または皮下投与経路を含む)、経鼻(または鼻腔内)投与経路、眼投与経路、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)、および経皮投与経路を介して投与される。より好ましくは、前記医薬組成物は、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)を介して投与される。
【0060】
さらに、本発明によれば、本発明のキット・オブ・パーツのパーツまたは成分、言い換えれば、(a)および/または(b)は好ましくは、それらが食道を通過しないような様式で投与される。言い換えれば、好ましくは、胃腸管が、本発明のキット・オブ・パーツのパーツまたは成分の投与において回避される。したがって、本発明のキット・オブ・パーツのパーツまたは成分、言い換えれば、(a)および/または(b)は好ましくは、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および/または皮下投与経路を含む)、経鼻(または鼻腔内)投与経路、眼投与経路、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)、および経皮投与経路を介して投与される。本明細書中に開示されるように、キット・オブ・パーツの場合のように、(a)および(b)は、一緒に混合されること、および/または一緒に包装されることは要求されず、(a)を、(b)とは異なる投与経路を介して投与することができる。したがって、本発明によれば、(a)を、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および/または皮下投与経路を含む)を介して投与することができ、(b)を、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および/または皮下投与経路を含む)、経鼻(または鼻腔内)投与経路、眼投与経路、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)、および経皮投与経路から選択される投与経路を介して投与することができる。さらに、本発明によれば、(a)を、経鼻(または鼻腔内)投与経路を介して投与することができ、(b)は、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および/または皮下投与経路を含む)、経鼻(または鼻腔内)投与経路、眼投与経路、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)、および経皮投与経路から選択される投与経路を介して投与してよい。ここでまた、さらに、本発明によれば、(a)を、眼投与経路を介して投与することができ、(b)は、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および/または皮下投与経路を含む)、経鼻(または鼻腔内)投与経路、眼投与経路、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)、および経皮投与経路から選択される投与経路を介して投与してよい。ここでまた、さらに、本発明によれば、(a)を、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)を介して投与することができ、(b)は、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および/または皮下投与経路を含む)、経鼻(または鼻腔内)投与経路、眼投与経路、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)、および経皮投与経路から選択される投与経路を介して投与してよい。ここでまた、さらに、本発明によれば、(a)を、経皮投与経路を介して投与することができ、(b)は、非経口投与経路(静脈内投与経路、筋肉内投与経路および/または皮下投与経路を含む)、経鼻(または鼻腔内)投与経路、眼投与経路、経粘膜投与経路(頬側投与経路、舌下投与経路、膣投与経路および直腸投与経路)、および経皮投与経路から選択される投与経路を介して投与してよい。
【0061】
本発明の医薬組成物において、(a)および(b)は一緒に、かつ同時に被験者に投与されることに留意すべきである。本発明のキット・オブ・パーツにおいて、(a)および(b)は、同時に、または被験者に逐次投与され得ることにはさらに留意される。前者の場合において、本発明のキット・オブ・パーツのパーツ(a)およびパーツ(b)は、被験者に対するそれらの同時投与の前に混合することができる。しかしながら、(a)および(b)はまた、別々に包装され、被験者に逐次投与される場合がある。好ましくは、(b)が最初に被験者に投与されることになり、続いて(a)の投与が続く。このようにして、(b)はMAO-Aの阻害剤(すなわち、ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩)を含むので、MAO-Aを(a)に含まれるDMTの投与に先立って、および(a)に含まれるDMTの投与の期間中に阻害することによって、被験者におけるDMTの生物学的利用能が増大し得る。好ましくは、(a)は、(b)の投与後長くても120分で投与される。より好ましくは、(a)は、(b)の投与後30分以降に投与される。しかしながら、この投与レジメンは限定ではないこと、および被験者に依存して、異なる投与レジメンが提案されるかもしれないことには留意される。例えば、投与レジメンに従って、(a)が、(b)の投与後120分を超えて投与されることになった場合、当業者は、必要に応じ、(b)のさらなる用量を被験者に投与することを決定することができる。
【0062】
そのため、ここでまた、さらなる局面において、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物は、(a)および(b)が同時に、または逐次投与される実施形態に関する。さらなる局面において、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物は、(b)の投与の後に(a)の投与が続く実施形態に関する。
【0063】
投与経路は、(a)に含まれるDMTの正確な塩形態に、また、(b)に含まれるハルミンの正確な塩形態に依存し得る。本発明者らは、DMTフマレートが、頬側投与経路を介してその塩基形態でのDMTよりも良好に吸収されることを明らかにしている。同時に、本発明者らはDMTフマレートの高い溶解性および効率的な経粘膜吸収を明らかにしており、DMTフマレートの投与および/または漸増投与のためのDMTフマレート経鼻スプレー剤を開発している。好ましくは、本発明の方法において、(a)は経鼻(または鼻腔内)投与経路を介して投与される。本明細書中において、薬物の経鼻(または鼻腔内)投与経路は、薬物が鼻腔内に、好ましくは鼻粘膜上に吹送される、または滴下注入される投与経路として、言い換えれば、薬物が鼻腔内に、好ましくは鼻粘膜上に投与される投与経路として理解される。
【0064】
そのため、ここでまた、さらなる局面において、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物は、(a)が鼻腔内投与される実施形態に関する。
【0065】
DMTの(ハルミン投与と組み合わされる)鼻腔内投与を、本明細書中に開示されるようにハブ(hub)で徐々に増量しながら達成することができ、このことは個々の用量についての用量設定を可能にし、したがって向精神薬物効果のあまり苦痛的でない側面(例えば、不安、失見当識、幻覚)、および臨床用途のためには好ましいエンパソーゲン(empathogenic)薬物効果の穏やかな開始を可能にする[
図8]。前記漸増鼻腔内投与は、DMTの(舌下投与または頬側投与されたハルミンと組み合わされる)定量鼻腔内投与としてもまた示され、初期段階期間中の穏やかな向精神作用を有し、その後には、前回の連続している漸増DMT投与に依存するエンパソーゲン安定期が続く二相性の作用プロフィルをもたらす。本発明者らは、この投与レジメンが、ファーマワスカによるサイケデリック療法の全般的安全性、耐容性および柔軟性を臨床集団においてますます増大させていると結論づける。
【0066】
さらなる局面において、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物は、(b)が頬側投与および/または舌下投与される実施形態に関する。
【0067】
本明細書中において、薬物の舌下投与は、薬物が口腔粘膜を通して吸収されるように薬物を被験者の舌の下側に置くこととして定義される。さらに本明細書中において、薬物の頬側投与は、薬物が口腔粘膜を通して吸収されるように薬物を被験者の歯肉と頬との間に置くこととして定義される。
【0068】
本発明者らは、調査したハルミン塩のすべて(HCl、アセテート、スルフェート、フマレート、シトレート)によって生じる強い灼熱感のために、ハルミンが、DMTと比較して、鼻腔適用にはあまり適さないことを見出している。そのため、ハルミンを経粘膜経路で送達するための凍結乾燥された分散性錠剤が本発明者らによって開発された。好ましくは、ハルミンは本明細書中ではハルミン塩酸塩の形態で使用される。胃腸投与管(gastrointestinal administration tract)(これはGI管としてもまた示される)を回避すること、したがって初回通過代謝の欠如のために、本発明においては、ハルミン塩酸塩の用量を、経口ファーマワスカの典型的な投与(例えば、実施例1(参考例)において示されるような経口ファーマワスカの投与)における250mgと比較して、150mgに減らすことができる。
【0069】
舌下ハルミンHClと、鼻腔内DMTフマレートとの組み合わせ投与が、安全性、耐容性、生物学的利用能および制御性の点で最良の結果をもたらし、したがって、その後の薬物開発および患者における臨床試験のためのもっぱら好都合な生薬投与経路を表すことが、本発明者らによって明らかにされている。有意により少ないハルミン用量が、経口投与と比較した場合、舌下投与されるときには十分なMAO-A阻害のために必要となる。DMTの鼻腔内投与は、ハルミンの舌下投与と組み合わされると、実施例2において示されるように、薬物組み合わせの経験的な特性を患者の個々の必要性に合わせて調整する際の柔軟性を可能にする。
【0070】
疾患または障害を処置するための方法であって、治療有効量の本発明の医薬組成物または本発明のキットが、疾患または障害を処置することを必要とする動物(好ましくはヒト)に投与される方法を提供することもまた、本発明の一部である。用語「治療有効量」はこの場合には、処置されている状態または疾患の症状のうちの1またはそれを超える症状をモジュレートするために十分である、(a)に含まれるDMT含有成分の量、および(b)に含まれるハルミン含有成分の量、好ましくはN,N-ジメチルトリプタミンが投与あたり10mg~100mgの間である量、好ましくはハルミンが投与あたり10mg~1000mgの間である量、より好ましくはハルミンが投与あたり75mg~300mgの間である量を示す。さらには、疾患または障害を防止するための方法であって、治療有効量の本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットが、疾患または障害を防止することを必要とすると合理的に予想される動物(好ましくはヒト)に投与される方法を提供することもまた、本発明の一部である。用語「治療有効量」はこの場合には、回避される状態または疾患の予想された症状のうちの1またはそれを超える症状をモジュレートするために十分であるそのような量、好ましくはN,N-ジメチルトリプタミンが投与あたり10mg~100mgの間である量、好ましくはハルミンが投与あたり10mg~1000mgの間である量、より好ましくはハルミンが投与あたり75mg~300mgの間である量を示す。本発明の別の好ましい実施形態において、治療有効量は、回避される状態または疾患の予想された症状のうちの1またはそれを超える症状をモジュレートするために十分であるそのような量、好ましくはN,N-ジメチルトリプタミンが投与あたり100mg~160mgの間である量、好ましくはハルミンが投与あたり10mg~600mgの間である量、より好ましくはハルミン投与あたり75mg~300mgの間である量を示す。
【0071】
N,N-ジメチルトリプタミンは、本発明の医薬組成物または本発明のキット・オブ・パーツにおいて、投与あたり10mgを超えて、かつ25mg以下の量で使用することができ、あるいは投与あたり25mgを超えて、かつ50mg以下の量で、または投与あたり50mgを超えて、かつ75mg以下の量で、または投与あたり75mgを超えて、かつ100mg以下の量で使用することができる。ハルミンは、本発明の医薬組成物または本発明のキット・オブ・パーツにおいて、投与あたり75mgを超えて、かつ150mg以下の量で使用することができ、あるいは投与あたり150mgを超えて、かつ225mg以下の量で、または投与あたり250mgを超えて、かつ300mg以下の量で使用することができる。
【0072】
したがって、本発明の医薬組成物または本発明のキット・オブ・パーツは、投与あたり10mgを超えて、かつ25mg以下のN,N-ジメチルトリプタミン、および投与あたり75mgを超えて、かつ150mg以下のハルミン、または投与あたり150mgを超えて、かつ225mg以下のハルミン、または250mgを超えて、かつ300mg以下の量のハルミンを含むことができる。本発明の医薬組成物または本発明のキット・オブ・パーツは代替において、投与あたり25mgを超えて、かつ50mg以下のN,N-ジメチルトリプタミン、および投与あたり75mgを超えて、かつ150mg以下のハルミン、または投与あたり150mgを超えて、かつ225mg以下のハルミン、または250mgを超えて、かつ300mg以下の量のハルミンを含むことができる。本発明の医薬組成物または本発明のキット・オブ・パーツは代替において、投与あたり50mgを超えて、かつ75mg以下のN,N-ジメチルトリプタミン、および投与あたり75mgを超えて、かつ150mg以下のハルミン、または投与あたり150mgを超えて、かつ225mg以下のハルミン、または250mgを超えて、かつ300mg以下の量のハルミンを含むことができる。本発明の医薬組成物または本発明のキット・オブ・パーツは代替において、投与あたり75mgを超えて、かつ100mg以下のN,N-ジメチルトリプタミン、および投与あたり75mgを超えて、かつ150mg以下のハルミン、または投与あたり150mgを超えて、かつ225mg以下のハルミン、または250mgを超えて、かつ300mg以下の量のハルミンを含むことができる。
【0073】
したがって、さらなる局面において、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物は、(a)が、投与あたり10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンの用量で、好ましくは60分~180分の間の期間にわたって漸増様式で投与される実施形態に関する。
【0074】
さらなる好ましい局面において、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物は、(a)が、投与あたり100mg~160mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンの用量で、好ましくは60分~180分の間の期間にわたって漸増様式で投与される実施形態に関する。
【0075】
ここでまた、さらなる局面において、本発明の使用のためのキット・オブ・パーツまたは本発明の使用のための医薬組成物は、(b)が、投与あたり75mg~300mgの間のハルミンの用量で、より好ましくは投与あたり100mg~150mgの間のハルミンの用量で投与される実施形態に関する。
【0076】
本発明によれば、(a)を実質的に一度に被験者に投与することができ、または好ましくは、ある一定の期間にわたって漸増様式で投与することができる。実質的に一度に投与することとは、1分またはそれ未満の期間にわたって一度に投与することを、ここでは意味する。一度に(すなわち、1分未満以内に)投与される高用量(例えば、100mgまたはそれを超える)(a)は幻覚および精神的身体的不快感を生じさせることになるので、高用量の(a)を逐次投与すること(例えば、10mgの(a)を10分~20分毎に投与すること)が好ましい。言い換えれば、好ましくは10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンを、ある一定の期間にわたって、好ましくは240分(4時間)未満にわたって漸増様式で被験者に投与することができる。より好ましくは、10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンを30分~180分の間の期間にわたって漸増様式で被験者に投与することができる。最も好ましくは、10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンを60分~120分の間の期間にわたって漸増様式で被験者に投与することができる。漸増様式によって、10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンが、5分~30分の間の範囲から好ましくは選択される時間間隔毎に少量ずつ投与されることが、本明細書中では理解される。実施例2に記載されるように、N,N-ジメチルトリプタミンを、10mgがプロセス開始時にさらに投与されるとともに、15分毎に5mgずつ120分の期間にわたって被験者に投与することができる。本明細書中において、投与が、2.5mgのN,N-ジメチルトリプタミンフマレートにそれぞれが対応する、鼻腔内スプレーからのハブによって行われる。このようにして、50mgのN,N-ジメチルトリプタミンフマレートが120分の期間内に被験者に投与される。この投与レジメンは例示目的のみのために与えられており、当業者は、N,N-ジメチルトリプタミンの異なる漸増投与レジメンが本発明に従って可能であることを理解することには留意しなければならない。N,N-ジメチルトリプタミンの漸増投与は鼻腔内投与に限定されず、他の投与経路が本発明に従って可能であることにはさらに留意される。ある特定の好ましい実施形態において、60mg~120mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンを60分~120分の間の期間にわたって漸増様式で被験者に投与することができる。
【0077】
(a)を含む持続放出製剤もまた、本発明において使用することができる。したがって、上記で概説されるのと同様の投与レジメンを、一回投与され、しかし、10mgおよび100mgのN,N-ジメチルトリプタミンをある一定の期間にわたって、好ましくは240分(4時間)未満にわたって徐々に放出する持続放出製剤を適用することによって達成することができる。好ましくは、持続放出製剤により、10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンが30分~180分の間の期間にわたって被験者に徐々に放出される。最も好ましくは、持続放出製剤により、10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンが60分~120分の間の期間にわたって被験者に徐々に放出される。様々な持続放出製剤が当業者には知られており、これらには、例えば、マイクロカプセル化プロセスを使用して得られ、ある一定の期間にわたる有効成分の持続した徐々の放出のために構成されるカプセル剤が含まれる。好ましくは、本発明において使用されるための持続放出製剤には、マイクロペレット、ミニ錠剤、マトリックス錠剤、または浸透圧放出経口システムが含まれる。
【0078】
本発明において、本発明の組成物または本発明のキット・オブ・パーツのパーツは好ましくは、投与することが必要な被験者に、好ましくは1週間~4週間の間の継続期間にわたって、より好ましくは2週間の継続期間にわたって週あたり2回または3回、投与される。そのような処置スケジュールは処置ブロックとして示される。本発明によれば、処置ブロック間の間隔が好ましくは2週間~12週間の間であり、より好ましくは6週間~8週間の間である。被験者の必要性(例えば、障害の重症度およびタイプ)に依存して、処置間隔は当業者の判断に基づいて変化し得る。障害のタイプ(例えば、季節性、偶発的、再発性、ストレス関連など)に依存して、処置ブロック間の間隔を上述の期間を超えて延ばすことができる(例えば、1年~2年)。
【0079】
本発明のさらなる局面および/または実施形態が以下の番号づけ項目において開示される:
項目1。 (a)N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、
(b)ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと
を含むキット・オブ・パーツ。
【0080】
項目2。 N,N-ジメチルトリプタミンフマレートと、ハルミン塩酸塩とを含む組成物。
【0081】
項目3。 (a)N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、
(b)ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと
を含む医薬組成物。
【0082】
項目4。 (a)が、N,N-ジメチルトリプタミンフマレートおよび医薬的に許容され得るキャリアである、項目1に記載のキット・オブ・パーツまたは項目3に記載の医薬組成物。
【0083】
項目5。 (b)が、ハルミン塩酸塩および医薬的に許容され得るキャリアである、項目1もしくは4に記載のキット・オブ・パーツまたは項目3もしくは4に記載の医薬組成物。
【0084】
項目6。 医薬品として使用されるための、項目1、4もしくは5のいずれか一つに記載のキット・オブ・パーツ、または項目3、4もしくは5のいずれか一つに記載のキット・オブ・パーツ。
【0085】
項目7。 精神医学的障害、精神身体障害または身体障害を処置することにおいて使用されるための、項目6に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【0086】
項目8。 精神医学的障害が、うつ病、ストレス関連情動障害、大うつ病性障害、気分変調症、処置抵抗性うつ病、燃え尽き、不安、外傷後ストレス障害、嗜癖、摂食障害または強迫性障害である、項目6または7に記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【0087】
項目9。 (a)および(b)が経口投与されることにならない、項目6~8のいずれか一つに記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【0088】
項目10。 (a)および(b)が、同時に、または逐次投与される、項目6~9のいずれか一つに記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【0089】
項目11。 (a)が鼻腔内投与される、項目6~10のいずれか一つに記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【0090】
項目12。 (a)が、投与あたり10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンの用量で、好ましくは60分~180分の間の期間にわたって漸増様式で投与される、項目6~11のいずれか一つに記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【0091】
項目13。 (b)が、頬側投与および/または舌下投与される、項目6~12のいずれか一つに記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは医薬組成物。
【0092】
項目14。 (b)が、投与あたり75mg~300mgの間のハルミンの用量で投与される、項目6~13のいずれか一つに記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【0093】
項目15。 (b)の投与の後に(a)の投与が続く、項目6~14のいずれか一つに記載の使用のためのキット・オブ・パーツまたは使用のための医薬組成物。
【0094】
項目16。 精神医学的障害、精神身体障害または身体障害を処置する方法であって、その必要性のある被験者に、
(a)N,N-ジメチルトリプタミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと、
(b)ハルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、および医薬的に許容され得るキャリアと
を投与することを含み、
(a)および(b)が、同時に、または逐次投与される、方法。
【0095】
項目17。 (a)が、N,N-ジメチルトリプタミンフマレートおよび医薬的に許容され得るキャリアである、項目16に記載の方法。
【0096】
項目18。 (b)が、ハルミン塩酸塩および医薬的に許容され得るキャリアである、項目16または17に記載の方法。
【0097】
項目19。 (a)および(b)が経口投与されない、項目16~18のいずれか一つに記載の方法。
【0098】
項目20。 (a)が鼻腔内投与される、項目16~19のいずれか一つに記載の方法。
【0099】
項目21。 (a)が、投与あたり10mg~100mgの間のN,N-ジメチルトリプタミンの用量で、好ましくは60分~180分の間の期間にわたって漸増様式で投与される、項目16~20のいずれか一つに記載の方法。
【0100】
項目22。 (b)が、頬側投与および/または舌下投与される、項目16~21のいずれか一つに記載の方法。
【0101】
項目23。 (b)が、投与あたり75mg~300mgの間のハルミンの用量で投与される、項目16~22のいずれか一項に記載の方法。
【0102】
項目24。 (b)の投与の後に(a)の投与が続く、項目16~23のいずれか一つに記載の方法。
【0103】
項目25。 前記精神医学的障害が、うつ病、ストレス関連情動障害、大うつ病性障害、気分変調症、処置抵抗性うつ病、燃え尽き、不安、外傷後ストレス障害、嗜癖、摂食障害または強迫性障害である、項目16~24のいずれか一つに記載の方法。
【0104】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1-1】
図1は、ハルミンおよびDMTのPKプロフィルで、両者が口腔投与により与えられるときのPKプロフィル(単回投与;上段パネル;1日目)、またはハルミンが漸増鼻腔内DMT適用とともに頬側投与されるときのPKプロフィル(下段パネル;3日目)を示す。
【
図1-2】
図1は、ハルミンおよびDMTのPKプロフィルで、両者が口腔投与により与えられるときのPKプロフィル(単回投与;上段パネル;1日目)、またはハルミンが漸増鼻腔内DMT適用とともに頬側投与されるときのPKプロフィル(下段パネル;3日目)を示す。
【0106】
【
図2】
図2は、高代謝群(extensive metabolizer)(点線)および低代謝群(poor metabolizer)(連続線)の代表的なPKプロフィルを1日目(経口ファーマワスカ;上段パネル)および3日目(非経口ファーマワスカ;下段パネル)について示す。
【0107】
【
図3-1】
図3は、主観的強度およびバレンス(好み)評点を1日目(経口ファーマワスカ;パート1)および3日目(非経口ファーマワスカ;パート2)について示す。
【
図3-2】
図3は、主観的強度およびバレンス(好み)評点を1日目(経口ファーマワスカ;パート1)および3日目(非経口ファーマワスカ;パート2)について示す。
【0108】
【
図4】
図4は、1日目(経口ファーマワスカ;左側パネル)および3日目(非経口ファーマワスカ;右側パネル)の期間中における望まれない副作用の評点をまとめたものである。
【0109】
【
図5-1】
図5は、1日目(経口ファーマワスカ;左側パネル)および3日目(非経口ファーマワスカ;右側パネル)の期間中における収縮期血圧(丸)および拡張期血圧(三角)、脈拍(四角)、ならびに体温(下段パネル)の時間経過を示す。
【
図5-2】
図5は、1日目(経口ファーマワスカ;左側パネル)および3日目(非経口ファーマワスカ;右側パネル)の期間中における収縮期血圧(丸)および拡張期血圧(三角)、脈拍(四角)、ならびに体温(下段パネル)の時間経過を示す。
【0110】
【
図6A】
図6Aは、1日目(経口ファーマワスカ;点線)および3日目(非経口ファーマワスカ;連続線)の期間中における意識変容状態質問票(5D-ASC)における評点を示す。
【0111】
【
図6B】
図6Bは、1日目(経口ファーマワスカ;点線)および3日目(非経口ファーマワスカ;連続線)の期間中における意識変容状態質問票(5D-ASC)の下位次元を示す。
【0112】
【
図7】
図7は、鼻腔内DMT投与を研究3日目にT90で中止し、その後に、逐次投与の安全性および柔軟性を強調するDMT血漿中濃度における即座の低下が続いた1名の参加者の代表的なPKプロフィルを示す。
【0113】
【
図8】
図8は、血流内への速いDMT吸収によってもたらされる初期サイケデリック期を有する経口ファーマワスカの二相性作用の仮説モデル(上段パネルA)を示す。連続漸増DMT投与(非経口ファーマワスカ、下段パネルB)により、初期サイケデリック期の苦痛的側面(例えば、幻視、知覚のゆがみ、現実感消失、または錯乱)を、薬物のエンパソーゲン-エンタクトゲン影響(例えば、激化した感情、高まった内向性、思いやり、情動的つながり)を維持しながら弱めることができ、このことは、患者集団におけるサイケデリック支援療法についての全般的安全性および耐容性を増大させている。
【0114】
【
図9】
図9は、2名の被験者(すなわち、DMT/ハルミンによる処置に応答した1名、および応答しなかった1名)におけるハルミンおよびDMTの血漿中濃度の比較を示す。
【0115】
【
図10-1】
図10は、研究の1日目および2日目の異なる時点で経口ファーマワスカが投与される被験者の個々の応答を示し(パート1およびパート2)、これにより、A)全般的強度、B)効果の好み、C)覚醒、およびD)身体境界に関する被験者の経験が評価される。図のパート3は、同じ研究集団における非経口ファーマワスカによる主観的効果を示し、これにより、全般的強度、好み、覚醒およびリラクゼーションに関する被験者の経験が研究3日目において評価される。
【
図10-2】
図10は、研究の1日目および2日目の異なる時点で経口ファーマワスカが投与される被験者の個々の応答を示し(パート1およびパート2)、これにより、A)全般的強度、B)効果の好み、C)覚醒、およびD)身体境界に関する被験者の経験が評価される。図のパート3は、同じ研究集団における非経口ファーマワスカによる主観的効果を示し、これにより、全般的強度、好み、覚醒およびリラクゼーションに関する被験者の経験が研究3日目において評価される。
【
図10-3】
図10は、研究の1日目および2日目の異なる時点で経口ファーマワスカが投与される被験者の個々の応答を示し(パート1およびパート2)、これにより、A)全般的強度、B)効果の好み、C)覚醒、およびD)身体境界に関する被験者の経験が評価される。図のパート3は、同じ研究集団における非経口ファーマワスカによる主観的効果を示し、これにより、全般的強度、好み、覚醒およびリラクゼーションに関する被験者の経験が研究3日目において評価される。
【0116】
【
図11-1】
図11は、研究の1日目の経過中に経口ファーマワスカを使用する被験者によって評価されるような副作用を、A)悪心、B)身体的苦悩、およびC)心理学的苦悩に関して示す(パート1)。図のパート3は、同じ被験者集団における非経口ファーマワスカの副作用プロフィルを研究3日目において示す。
【
図11-2】
図11は、研究の1日目の経過中に経口ファーマワスカを使用する被験者によって評価されるような副作用を、A)悪心、B)身体的苦悩、およびC)心理学的苦悩に関して示す(パート1)。図のパート3は、同じ被験者集団における非経口ファーマワスカの副作用プロフィルを研究3日目において示す。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明の様々な改変および変形が、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者には明らかである。本発明が、具体的な好ましい実施形態に関連して記載されているが、特許請求されるとおりの本発明は、そのような具体的な実施形態に過度に限定されるべきでないことが理解されなければならない。実際、本発明を実施するための、関連分野の当業者には明白である記載された態様の様々な改変が、本発明によって包含されることが意図される。
【0118】
以下の実施例は本発明の単なる例示にすぎず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するように解釈してはならない。
【実施例】
【0119】
実施例
参加者および許可:薬物または医薬の現在の使用がなく、身体障害、神経学的障害または精神医学的障害の現在の病歴または以前の病歴がなく、かつ、Axis-I精神医学的障害の家族歴がない、N=10名の健常な男性被験者(20歳~40歳、平均年齢:30.7±5.4歳;18.5~25の間のボディーマス指数)を医学的スクリーニングによって募集した。本研究はチューリッヒ州の州倫理委員会(Basec-Nr.2018-01385)およびスイス連邦公衆衛生局(BAG-Nr.(AB)-8/5-BetmG-2019/009268)によって承認された。すべての参加者が書面によるインフォームドコンセントをヘルシンキ宣言に従って与え、研究の完了に対して金銭的補償を受けた。
【0120】
研究環境:本研究は、調光可能な照明および音響システムを有する快適なリビングルーム雰囲気を提供するための防音されている気候順応した家具付きベッドルームにおいて、日中に行われた。すべての研究日を通して、刺激しない背景音楽を含む標準化された曲目リストが、快適さおよびリラクゼーションの気分を提供するために再生された。実験者が、参加者を監督するために常時、部屋にいた。
【0121】
研究設計:本非盲検用量設定パイロット研究では、30mg対50mgの用量のDMTを伴う250mgのハルミン(単回経口投与-実施例1)の後における、50mgの逐次鼻腔内DMT投与を伴う150mgの頬側ハルミン(実施例2)に対しての急性主観的効果および血液サンプルが調べられている。すべての研究日に、ハルミンがDMT投与の30分前に前投薬された。これは用量設定研究であったため、参加者には好ましい用量範囲(例えば、3日目について50mg)が与えられ、参加者は、安全性および耐容性を高めるために、示された限界(例えば、120分にわたる15分毎に0~5mgのDMT)の範囲内でのさらなる用量投与を中止/継続することができた。
【0122】
採血および分析:血漿におけるDMT濃度およびハルミン濃度の分析のための血液サンプルを左前肘静脈から、-30分(ベースライン)、-15分、0分、薬物投与の15分後、30分後、45分後、60分後、75分後、90分後、120分後、180分後、240分後、300分後および360分後に採取し(経口ファーマワスカ研究)、また、-30分(ベースライン)、-15分、0分、薬物投与の15分後、30分後、45分後、60分後、75分後、90分後、105分後、120分後、135分後、180分後、240分後および300分後に採取した(非経口ファーマワスカ研究)。静脈カテーテルを、被験者をそのサイケデリック体験の期間中に妨害することなく血液サンプルを採取するためにHeidelbergerプラスチックチューブ延長部に接続した。静脈ラインを、ヘパリン化生理食塩水(0.9g NaCl/dLにおける1000IUのヘパリン;HEPARIN Bichsel;Bichsel AG、3800 Unterseen、スイス)のゆっくりとした滴下(10ml/h)により開存性を保った。血液サンプルを直ちに2000RCFで10分間遠心分離し、血漿サンプルをエッペンドルフチューブに移し、液体窒素(約-196°C)において衝撃凍結し、アッセイまで-80°Cで保存した。分析目的のために、DMTをCayman(Ann Arbor、米国)から購入し、ハルミンをSigma-Aldrich(St.Louis、米国)から購入し、DMT-d6をToronto Research Chemicals(Toronto、カナダ)から購入した。すべての他の使用された化学物質は、入手可能な最高等級品であった。サンプル調製のために、200μlの血漿と、50μlの内部標準(IS)(20ng/mlのDMT-d6)と、50μlのメタノール(MeOH)とをチューブに加えた。タンパク質を、400μlのアセトニトリル(ACN)を加えることによって沈殿させ、サンプルを10分間振とうし、2000RCFで5分間遠心分離した。350μlの上清をオートサンプラーバイアルにさらに移し、穏やかな窒素流のもとで蒸発乾固し、250μlの溶離液混合物(98:2、v/v)により再構成した。校正物質サンプルおよび品質管理(QC)サンプルを、MeOHを校正物質溶液またはQC溶液により置き換え、それに応じて調製した。サンプルを、線形イオントラップ四重極質量分析計5500(Sciex、Darmstadt、ドイツ)につながれる超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)システム(Thermo Fisher、San Jose、CA)で分析した。移動相が、水(溶離液A)と、ACN(溶離液B)との混合物(両方とも01%のギ酸(v/v)を含有する)からなった。Kinetex C18カラム(100×2.1mm、1.7μm)(Phenomenex、Aschaffenburg、ドイツ)を使用して、流速を、下記グラジエントを伴って0.5mL/分に設定した:開始条件、0.8分間にわたる98%の溶離液A、これを6.7分で60%に低下させ、その後、0.1分で8%に迅速低下させた。これらの条件を0.9分間保持し、0.5分間の再平衡のために開始条件に切り替えた。質量分析計をスケジュール化多重反応モニタリングお備えたポジティブエレクトロスプレーイオン化モードで操作した。前駆体イオンから生成物イオンへの下記移行を選択した:DMT、m/z 189.1→58.2、DMT-D3、m/z、195.1→64.1、ハルミン、m/z 213.0→169.2。校正標準物における濃度範囲が、DMTについては0.5ng/ml~60ng/mlであり、ハルミンについては3ng/ml~360ng/mlであった。したがって、感度の下限がDMTについては0.5mg/mlであり、ハルミンについては3ng/mlであった。
【0123】
心理測定:主観的効果の強度およびバレンスが、研究期間中を通して、視覚的評価スケール(タッチスクリーンタブレットでの0~100のVAS範囲)により、ベースライン、-15分、0分、薬物投与の15分後、30分後、45分後、60分後、90分後、120分後、180分後、240後分および360分後にモニターされ(経口ファーマワスカ)、また、ベースライン、-15分、0分、薬物投与の15分後、30分後、45分後、60分後、75分後、90分後、105分後、120分後、135分後、180分後、240分後および300分後にモニターされた(非経口ファーマワスカ)。加えて、意識変容状態評価尺度(5D-ASC)(Studerusら、2010)を含めた。定量的心理測定評価が、人々が自分の体験について何を報告するかの現象論に重点を置いて実験日の終わりに向かって音声記録される半構造化された定性的な面談によって補完された。
【0124】
生命徴候および有害作用:参加者は研究医によって、ベースライン、薬物投与の60分後、120分後、180分後および240分後に、身体的不快および精神的不快、呼吸困難、激しい心臓鼓動、胸または腹部の痛み、不快な身体感覚/筋肉痛、頭痛、悪心、嘔吐および失神の質問票に基づく評価(視覚的評価スケール、0~100、またはあり/なし)を含めて、実験期間中を通した(重篤な)有害作用についてスクリーニングされた。生命徴候(収縮期/拡張期血圧、心拍数、体温)が、研究期間中を通して、-30分(ベースライン)、薬物投与の30分後、90分後、150分後、210分後および360分後にモニターされ(経口ファーマワスカ研究)、また、-30分(ベースライン)、0分、薬物投与の30分後、60分後、90分後、120分後、180分後、240分後および300分後にモニターされた(非経口ファーマワスカ研究)。
【0125】
研究薬物:DMTフマレートを下記のように得た:DMTをその塩基形態で、n-ヘプタンを有機溶媒として用いたMimosa hostilis(The Mimosa Company、1069CL、Amsterdam、NL)の根皮からの酸-塩基水性抽出によって得た。DMTを結晶化によって精製し、塩沈殿によりDMTフマレート(CAS:68677-26-9)としてさらに再結晶した。簡単に記載すると、塩基形態でのDMTをアセトンに溶解した(9.82gのDMT遊離塩基を282mLのアセトンに溶解した)。フマル酸もまたアセトンに溶解した(2.89gのフマル酸を414mLのアセトンに溶解した)。その後で、フマル酸溶液を、DMTフマル酸塩を形成させるためにゆっくりとDMT溶液に加えた。溶液を室温で60分間放置すると、DMTフマル酸塩の結晶が現れた。過剰のアセトンをデカンテーションにより除き、DMTフマレートの結晶を100mLのアセトンにより2回洗浄した。その後、DMTフマル酸塩を真空下で乾燥させた。最終生成物を、定量的核磁気共鳴(qNMR)、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定性分析および定量分析に供し、これらにより、98.20%±0.37%の純度が明らかにされた。qNMR分析(Reseachem GmbH、Burgdorf、スイス)によって実施された)に基づいて、研究薬物は、約2:1(1:0.497)のDMT対フマレート比によって特徴づけられると考えられる。ハルミン塩酸塩(ハルミンHCl、98%以上、CAS343-27-1;C13H12N2O・HCl;248.71g/mol)を、Santa Cruz Biotechnology Inc.(Dallas、Texas 75220、米国)から入手した。
【0126】
実施例1.経口ファーマワスカ研究(参考例)
経口製剤:DMTフマレート(1日目についての用量:30mg;2日目についての用量:50mg)を、マンニトールを充填剤として使用して、不透明なサイズ0のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;Interdelta S.A.Givisiez、1762、スイス)カプセルに封入した。ハルミンによるMAO阻害の持続期間、したがってDMTの半減期を延ばすために、持続放出(ER)プロフィルを有するハルミン製剤を開発した。そのため、即時放出(IR)プロフィル(遅延なし)または持続放出(ER)プロフィルのどちらかを有する2つのタイプのハルミンミニ錠剤を製造した。その後、両方の錠剤タイプをカプセルにおいて一緒にして、薬物の一部が直ちに放出され(150mg)、別の割合(100mg)がゆっくり放出される、組み合わせ製造物を形成した。ハルミンのIRミニ錠剤を下記のように得た:ハルミンHClを粉砕し、Glatt打錠機を使用して圧縮して、25mgのハルミンHClを含有するIRミニ錠剤を形成した。ハルミンのERミニ錠剤を下記のように製造した:ハルミンHClを粉砕し、メトセルKとブレンドし、Glatt打錠機を用いて圧縮して、20mgのハルミンHClを含有するERミニ錠剤を形成した。インビトロ溶解プロフィルを欧州薬局方に従って調べた。ハルミンミニ錠剤を不透明なサイズ0のHPMCカプセルに封入し、その結果、前記カプセルは下記のミニ錠剤を含有した:
- 5錠のハルミンHCl ERミニ錠剤(合計で100mgのハルミン)-それぞれのミニ錠剤が、20mgのハルミン塩酸塩と、メトセルKとを含み、その直径が実質的には5mmに等しい。
- 6錠のハルミンHCl IRミニ錠剤(合計で150mgのハルミン)-それぞれのミニ錠剤が、25mgのハルミン塩酸塩と、HPMNとを含み、その直径が実質的には5mmに等しい。
【0127】
用量レジメン:研究の1日目および2日目の期間中、被験者はハルミンおよびDMTの両方を経口製剤として、(最後の食事から10時間超;最後の飲み物から90分超)の空腹時に受けた。250mgのハルミンHCl(150mgの即時放出+100mgの持続放出)を伴う経口前投薬の30分後、被験者は30mgの用量のDMTフマレートを1日目に摂取し、50mgの用量のDMTフマレートを2日目に摂取した。
【0128】
【0129】
薬物動態学プロフィル:PKプロフィル/PDプロフィル(
図1および
図9を参照のこと)に基づいて、DMTの生物学的利用能および向精神効能はMAO阻害剤としてのハルミンの生物学的利用能に依存することが推測される。驚くべきことに、DMTおよびハルミンの両方の血漿中濃度における非常に大きい個体間差が単回経口投与後に見出された(
図9)。ピーク血漿中濃度(これはC
maxとしてもまた示される)が、被験者全体にわたって、実質的にはDMTについては約7倍で、ハルミンについては約50倍で変動し、同様に、ハルミンのピーク値に達するまでの時間(t
max)が60分から270分にまで及んだ(
図1および
図2を参照のこと)。それに従って、主観的薬物効果が被験者間で劇的に変化し(
図3を参照のこと)、ピーク強度評点が1(非応答者)から10(応答者)にまで及んだ。個体間の応答性におけるこのかなりの差は非常に予想外であり、この差から、経口ファーマワスカが臨床的に適用可能であろうかについて疑いが生じた。
【0130】
ハルミンは主に肝臓酵素CYP2D6によって分解される。CYP2D6遺伝子の複数の対立遺伝子バリアントが特定されており、これらは、各自がいわゆる低代謝群(PM)、高代謝群(EM)および超高速代謝群(UM)である個体における低下した酵素活性または増加した酵素活性に関連する(Penas-Lledo&Llerena、2014)。したがって、CYP2D6遺伝子の個体の対立遺伝子バリアントに依存して、ハルミンの生物学的利用能が被験者全体にわたって実質的に異なり得る。伝統的アヤワスカ儀式との関連で確立される食事推奨(例えば、低チラミン食)、およびハルミンによる異なる代謝速度(CYP2D6)に関する研究に基づいて、GI管におけるMAO酵素活性はかなりの個体間変動性を受けやすく、DMT効果の信頼できる標準化が非経口投与によって達成され得るだけであると結論づけられる。経口投与後の一過性の向精神的DMT作用の不均一性および変動性は、より堅牢かつ持続可能な神経行動学的効果をもたらす生薬製剤および投与レジメンにおける変更を余儀なくさせる。
【0131】
心理測定評価:30mgのDMTを伴う250mgのハルミンの経口投与は、平均して十分に許容された。しかしながら、伝統的アヤワスカとの比較での向精神作用は一過性にすぎず、有意にあまり顕著でなかった(向精神作用を有しない4名の非応答者、ほんの短期間のDMT作用を有する3名の部分応答者、典型的な、かつ一時的に圧倒的に強いDMT作用を有する3名の応答者;
図3)。驚くべきことに、DMTの低用量(30mg)対高用量(50mg)による口腔ファーマワスカの間でのVAS評価(例えば、全般的強度、好み、覚醒、身体境界)における際立った差がないこと(
図10、パート1およびパート2)が見出された:このことから、口腔ファーマワスカによる用量予測性が非常に低いという考えが強調される。意識変容状態の5D-ASC評価では、経口ファーマワスカが、サイケデリック支援療法の効力に関する文献に従って症状軽減を媒介すると考えられる変革の経験(例えば、大洋感および幻覚的再構造化)を誘発することが明らかにされた。不安自我解消がないこと、または聴覚変化が認められ、覚醒度低下のレベルが比較的低かった(
図6A)。経験後の定性的な面談(データがここでは示されず)により、定量的な心理測定結果が確認された。
【0132】
生命徴候および望まれない副作用:伝統的アヤワスカを用いた以前の研究と比較して、本明細書中に記載される経口調製物による有意により良好な耐容性(例えば、身体的副作用の低いスペクトラム、とりわけ悪心がより少ないことおよび嘔吐がないこと)が明らかにされている(
図4;
図11、パート1)。一般に、経口ファーマワスカの投与では、心血管パラメーターおよび体温の一過性で、無症候性で、かつ臨床的に有意でない上昇のみが誘発された(
図5):このことから、全般的な非常に良好な安全性プロフィルが強調される。
【0133】
実施例2.鼻腔内/頬側組み合わせ研究(非経口ファーマワスカ)
DMTフマレートの鼻腔内製剤:DMTフマレート経鼻スプレー剤を、DMTフマレートを生理食塩水(0.9g NaCl/dL)に溶解することによって、ハブあたり2.5mgのDMTフマレートの濃度により製造した。その後、この溶液を50μl(Aptar Pharma、78431 Louveciennes、フランス)のハブ体積を有する鼻スプレーPUMPシステムに移した。20%過剰の体積が加えられる合計で50mgのDMTを、空気の吸引を回避し、その結果として投与用量の希釈を回避するために調製した。
【0134】
【0135】
ハルミン塩酸塩の舌下製剤:ハルミン塩酸塩(ハルミンHCl)の口腔内分散性錠剤を、ハルミン/賦形剤溶液を凍結乾燥することによって製造した。そのため、ハルミンHCl(75mg)を、精製水、マンニトール、HPMCおよびレモン香料と混合して、透明な溶液を得た。その後、この溶液をアルミニウム鋳型に容量測定して投入し、-80℃で衝撃凍結し、36時間凍結乾燥した。その後、最終生成物(単位あたり75mgのハルミンHCl)を包装し、乾燥条件(乾燥剤バッグの存在下)および暗所条件のもと、室温で保存した。この製剤はまた、頬側製剤としての使用のためにも好適である。
【0136】
用量レジメン:研究3日目に、ハルミンHClを口腔内分散性錠剤として頬側投与し、一方で、DMTフマレートを鼻腔内スプレー溶液として適用した。150mgのハルミンHClによる舌下前投薬(被験者は、錠剤を下唇と歯肉との間に保つように、かつ、過度の飲み込みを避けるように指示された)の30分後、被験者に、下記の表に従う最大で50mgのDMTフマレートの累積用量を投与した。45、60、75、90、105および120の時点で、希望者は、安全性および耐容性を高めるために、示された限界(例えば、15分毎に0~5mgのDMT)の範囲内でのさらなる用量投与を中止/継続することが許された。60回の柔軟なDMT投与のうちの6回(10%)のみが参加者によって省略された。
【0137】
【0138】
薬物動態学プロフィル:GI管(初回通過代謝、吸収のpH依存性、GI管運動など)を、非経口調製物を用いて、本明細書中ではDMTフマレートの鼻腔内製剤およびハルミン塩酸塩の舌下製剤を用いて迂回することによって、生物学的利用能のより良好な標準化、より低い個体間変動、同様にまた、おそらくはより少ない身体的副作用とのより信頼できる用量応答関係を達成することができる。DMT/ハルミンの口腔投与および非経口投与の後における血漿曲線の分析により、この考えが強調される。
図1に示されるように、DMTフマレート(鼻腔内)およびハルミンHCL(頬側)の両方の非経口投与は、それらの口腔投与と比較して、実質的により大きい生物学的利用能(より大きい曲線下面積;AUC)と、より均一な血漿曲線(減少した標準偏差)とをもたらしている。高代謝群対低代謝群についてのピーク血漿中濃度(c
max)が、被験者全体にわたってDMTについては約2.3倍だけ変動し、ハルミンについてはほんの約3.2倍変動した(
図2を参照のこと)。非経口投与に起因して、250mgのハルミン(経口)の遅延用量を150mgのハルミン(頬側)の非遅延用量に減らし、十分なCNS阻害効果を達成することが可能である。驚くべきことに、ハルミンの頬側送達は、120分間にわたるDMTの反復間欠投与のために好都合である滑らかな持続放出プロフィルをもたらした。そのうえ、治療範囲内時間(TTR)が、DMTおよびハルミンの鼻腔内/頬側組み合わせ適用の後では有意に長くなっている。漸増鼻腔内DMT投与により、直線的に増加する血漿曲線が、比較的小さい標準偏差を伴って得られ、このことから、口腔経路と比較されるこの投与経路の優位性が、すなわち、予測可能性および信頼性の点でさらに強調される。加えて、用量決定のための鼻腔内DMT投与は、様々なDMT用量を漸増的に、かつ逐次投与することができるため、増大した制御性に起因するより良好な安全性プロフィルを提供する。薬理学的介入を、副作用が生ずるならば、いつでも中断することができ、しかし、このことは、遅延型DMT調製物の経口投与に関しては当てはまらない。
図7は、鼻腔内DMT投与をT90で中止し、その後に、T105およびT120での引き続くDMT投与に影響することがないDMT血漿中濃度における即座の低下が続いた1名の参加者の代表的なPKプロフィルを示す。本実施例は、サイケデリック化合物の使用に伴う固有の心理学的リスクを最小限に抑える必要があることを考えれば、患者集団における安全性を改善するための鼻腔内逐次間欠DMT投与レジメンの柔軟性を強調している。
【0139】
心理測定評価:50mgのDMT(鼻腔内)を伴う150mgのハルミンの舌下投与は耐容性が非常によかった(不安、制御の消失、失見当識に関する低いスコア;100のうち70~100の間での「好み」のVAS評価;
図3、パート2、および
図10、パート3を参照のこと)。口腔投与経路と比較して、向精神作用がはるかにより顕著であり、持続し、この結果、改善された応答予測性がもたらされた(10名の被験者のうちの9名がDMT投与後180分まで完全に応答した;
図3、パート2を参照のこと)。経口ファーマワスカと比較して、5D-ASC評価では、より高いレベルの大洋感および幻覚的再構造化、ならびに低いレベルの覚醒度低下が、非経口ファーマワスカにより明らかにされた(
図6A)。下位尺度のレベルでは、より高いレベルの変革の経験(例えば、幸せに満ちた状態、一体という経験、および洞察力)を伴う最適化された経験プロフィルを、非常に低いレベルの不安、肉体離脱、または損なわれた認知および制御を伴って達成することができた(
図6B)。そのような経験プロフィルは幻覚剤に特有であり、最適化された生薬のDMTおよびハルミンの共投与におそらく関連づけられる(
図8もまた参照のこと)。他のサイケデリック剤と比較して、非経口ファーマワスカは認知を損なわず、また、不安または錯乱を誘発せず、したがって心理療法を支援するために非常に適するようである。定性的な面談に基づいて、研究参加者は明らかに、口腔処方よりも非経口処方に賛成した。最も重要なことに、DMTの漸増投与は、投与レジメンを参加者のフィードバックに従って具体化することを可能にし、これにより、投与レジメンははるかにより制御可能になり、したがってサイケデリック経験を通じて参加者を指導するためにより安全になる。参加者らはまた、DMTの漸増投与が、脆弱な患者集団における臨床適用のためにより好都合である薬物のエンパソーゲン特性を維持しながら、サイケデリック経験の初期の苦痛的側面を減弱することに注目している(詳細については
図8を参照のこと)。
【0140】
生命徴候および望まれない副作用:口腔投与と比較して、平均してより少ない身体的副作用(例えば、悪心、苦悩)が非経口投与により生じ、このことは安全性および耐容性のより良好なプロフィルを示していた(
図11、パート2)。嘔吐および下痢は伝統的アヤワスカの一般的な特徴であるが、そのような事例が本発明者らの研究サンプルでは認められなかった。さらなる詳細が
図4および
図5に示される。
【国際調査報告】