IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モルフォシス・アーゲーの特許一覧 ▶ ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-530499抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法
<>
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図1
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図2
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図3
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図4
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図5
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図6
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図7
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図8
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図9
  • 特表-抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】抗CD19抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを含む抗腫瘍組み合わせ療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230710BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230710BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230710BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230710BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230710BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230710BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
C07K14/705
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578711
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2021066926
(87)【国際公開番号】W WO2021259902
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】20181309.4
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20210588.8
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】500029420
【氏名又は名称】ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・エンデル
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・フィンガーレ-ロウソン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ピン・チャオ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、癌、特に血液癌、例えば白血病又はリンパ腫など、の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む組み合わせ療法を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む、医薬の組み合わせ。
【請求項2】
前記癌が血液癌である、癌の処置での使用のための、請求項1に記載の医薬の組み合わせ。
【請求項3】
血液癌の処置での使用のための請求項2に記載の医薬の組み合わせであって、前記血液癌が、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である、医薬の組み合わせ。
【請求項4】
NHLの処置での使用のための請求項3に記載の医薬の組み合わせであって、前記NHLが、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される、医薬の組み合わせ。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の使用のための請求項1~4の何れかに記載の医薬の組み合わせであって、前記抗CD19抗体又はその抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドが別個の方式で投与される、医薬の組み合わせ。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の使用のための請求項1~4の何れか一項に記載の医薬の組み合わせであって、前記抗CD19抗体又はその抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドが同時に投与される、医薬の組み合わせ。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の使用のための請求項1~6の何れかに記載の医薬の組み合わせであって、前記抗CD19抗体又はその抗体断片が、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域及び配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む、医薬の組み合わせ。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の使用のための請求項7に記載の医薬の組み合わせであって、前記抗CD19抗体又はその抗体断片が、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の軽鎖可変領域と、を含む、医薬の組み合わせ。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の使用のための請求項8に記載の医薬の組み合わせであって、前記抗CD19抗体が、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)の重鎖を含む、医薬の組み合わせ。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の使用のための請求項9に記載の医薬の組み合わせであって、前記抗CD19抗体又はその抗体断片が、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)の軽鎖を含む、医薬の組み合わせ。
【請求項11】
請求項1~10の何れかに記載の使用のための請求項1~10の何れかに記載の医薬の組み合わせであって、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する前記ポリペプチドが、ポリペプチド性SIRPα試薬又はヒトCD47若しくはヒトSIRPαに特異的に結合する抗体若しくは抗体断片である、医薬の組み合わせ。
【請求項12】
請求項1~11の何れかに記載の使用のための請求項1~11の何れかに記載の医薬の組み合わせであって、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する前記ポリペプチドが、配列NYNMH(配列番号22)を含むHCDR1領域、配列TIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号23)を含むHCDR2領域及び配列GGYRAMDY(配列番号24)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号25)を含むLCDR1領域、配列KVSNRFS(配列番号26)を含むLCDR2領域及び配列FQGSHVPYT(配列番号27)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含むその断片の抗CD47抗体である、医薬の組み合わせ。
【請求項13】
その断片の前記抗CD47抗体が、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号30)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIK(配列番号31)の軽鎖可変領域と、を含む、請求項1~12の何れかに記載の使用のための請求項12に記載の医薬の組み合わせ。
【請求項14】
その断片の前記抗CD47抗体が、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号34)の重鎖と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号35)の軽鎖と、を含む、請求項1~13の何れかに記載の使用のための請求項13に記載の医薬の組み合わせ。
【請求項15】
請求項1~14の何れかに記載の抗CD19抗体又はその抗体断片と、請求項1~14の何れか1項に記載のSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせて前記抗CD19抗体又はその抗体断片を投与するための説明書と、を含む、請求項1~14の何れかに1項に記載の処置のためのキット。
【請求項16】
癌を有するヒト対象を処置する方法であって、
(a)SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを前記ヒト対象に投与することと;
(b)抗CD19抗体又はその抗体断片を前記ヒト対象に投与することと、
を含む、方法。
【請求項17】
ヒト対象において癌のサイズを縮小させる方法であって、
(a)SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを前記ヒト対象に投与することと;
(b)抗CD19抗体又はその抗体断片を前記ヒト対象に投与することと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記癌が、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含むがそれに限定されない血液癌である、請求項16又は17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、白血病又はリンパ腫の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む、組み合わせ療法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
CD19は、2つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン及び大規模な細胞質尾部を含有する免疫グロブリンスーパーファミリーの95kDa膜貫通糖タンパク質である。このタンパク質は、汎Bリンパ球表面受容体であり、プレB細胞発生の最初の段階以降、形質細胞への最終分化中に下方制御されるまで、ユビキタスに発現される。これは、Bリンパ球系統特異的であり、一部の濾胞樹状細胞を除き、造血幹細胞及び他の免疫細胞上で発現されない。CD19はB細胞受容体(BCR)シグナル伝達の正の制御因子として機能し、B細胞活性化及び増殖に対して、及び液性免疫反応の発達において重要である。これは、CD21及びCD81と併せて同時刺激分子として作用し、T細胞依存的抗原に対するB細胞反応に欠かせない。CD19の細胞質尾部は、タンパク質チロシンキナーゼのsrc-ファミリーを介して、下流シグナル伝達経路を惹起するチロシンキナーゼのファミリーと物理的に連結される。CD19は、ほぼ全ての慢性リンパ球性白血病(CLL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)並びに、急性リンパ球性白血病(ALL)及びヘアリー細胞白血病(HCL)を含む白血病の多くの他の異なるタイプにおいて高発現されるので、リンパ起源の癌に対する魅力的な標的である。
【0003】
タファシタマブ(旧名:MOR208及びXmAb(登録商標)5574)は、抗原CD19、B細胞受容体シグナル伝達に関与する膜貫通タンパク質を標的とするヒト化モノクローナル抗体である。タファシタマブは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を促進するようにIgG Fc領域において改変されており、従って腫瘍細胞死滅のための重要な機序を改善し、従来の抗体、即ち非強化抗体と比較して効果が増強される可能性をもたらす。タファシタマブは、CLL、ALL及びNHLにおけるものなどのいくつかの臨床試験で試験されたか又は現在試験されている。これらの試験の一部において、タファシタマブは、イデラリシブ、レナリドミド又はベネトクラクスと組み合わせて使用される。
【0004】
いくつかの抗癌剤の最近の発見及び開発にもかかわらず、CD19発現腫瘍を含む癌の多くのタイプに対する予後不良ゆえに、このようなタイプの癌を処置するための改善された方法又は治療的アプローチが依然として必要とされている。
【0005】
従って、本発明者らは、CD19に特異的な抗体又は抗体断片とSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドとの投与の組み合わせが、B細胞起源の悪性リンパ腫の処置において優れた効果があることを確認し、本発明を完成させた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む、癌の処置での使用のための新規組み合わせを提供する。
【0007】
マクロファージは、全ての組織において存在する自然免疫細胞である。癌において、マクロファージは、細胞シグナルに依存して、腫瘍成長を促進又は阻害し得る。マクロファージのサブセットの特徴から少なくとも2つのサブセットが明らかになっており;1つのサブセット、M2マクロファージは、アルギナーゼを産生し、腫瘍成長を促進し、一方で別のサブセット、M1マクロファージは、亜酸化窒素シンテターゼを産生し、腫瘍死滅に介在する。マクロファージは、抗体依存性細胞貪食(ADCP)などの抗体依存性機序又は抗体非依存性機序を介して死滅させ得る。
【0008】
健康な細胞とは異なり、不必要な老化した又は死んだ細胞は、「イート・ミー(eat-me)」シグナル、即ち「オルタード・セルフ(altered self)」、と呼ばれるマーカー又はリガンドを提示し、次に、好中球、単球及びマクロファージなどの貪食細胞上の受容体によりそれが認識され得る。健康な細胞は、食作用を活発に阻害する「ドント・イート・ミー(don’t eat-me)」シグナルを提示し得;これらのシグナルは、死んだ細胞では下方制御されるか、変化した高次構造で存在するか、又はそれらが「イート・ミー(eat-me)」若しくは貪食作用促進シグナルの上方制御により取って代わられるかの何れかである。健康な細胞上の細胞表面タンパク質CD47及び貪食細胞受容体、シグナル制御タンパク質(SIRPα)のその会合は、アポトーシス細胞クリアランス及びFcR介在性食作用を含め、多重的な様相が介在する貪食を遮断し得る重要な「ドント・イート・ミー(don’t eat-me)」シグナルを構成する。貪食細胞上でのCD47介在性のSIRPの会合の遮断又はノックアウトマウスにおけるCD47発現の喪失によって、生細胞及び非老化赤血球の除去が起こり得る。SIRPocの遮断により、プレ貪食シグナル(pre-phagocytic signals)も存在するそれらの細胞に対して、通常は貪食されない標的の貪食も可能になる。
【0009】
CD47は、単一のIg様ドメイン及び5個の膜貫通領域がある広く発現される膜貫通糖タンパク質であり、SIRPocに対する細胞性リガンドとして機能し、SIRPocのNH2末端V様ドメインを通じて結合が媒介される。SIRPocは、マクロファージ、顆粒球、骨髄樹状細胞(DC)、肥満細胞及び造血幹細胞を含むそれらの前駆体を含む骨髄細胞上で主に発現される。CD47結合に介在するSIRPoc上の構造決定基は、Lee et al.(2007)J.Immunol.179:7741-7750;Hatherley et al.(2007)J.B.C.282:14567-75で論じられ;CD47結合におけるSIRPocシス二量体形成の役割は、Lee et al.(2010)J.B.C.285:37953-63により論じられている。正常な細胞の食作用を阻害するためのCD47の役割と一致して、CD47は、造血幹細胞(HSC)及び前駆体上でそれらの移動期の直前及び移動期の間に一過性に上方制御される、及びこれらの細胞上でのCD47のレベルによって、それらがインビボで貪食される可能性が決定される、という証拠がある。
【0010】
CD47は、現在までに試験された全ての癌において過剰発現される。実際に、正常細胞と比較しておよそ3.3倍、腫瘍上でCD47が過剰発現されることが示されている(Majeti et al(2009)Cell 138:286-289:Willingham et al(2012)PNAS 109:6662-6667)。
【0011】
プログラム細胞死(PCD)及び貪食細胞除去は、損傷細胞、前癌細胞又は感染細胞を除去するために生物が反応する方法の1つである。従って、この生物的反応を生き延びる細胞(例えば癌性の細胞、慢性感染細胞など)は、PCD及び貪食細胞除去から逃れるための工夫された方法を有する。「ドント・イート・ミー(don’t eat-me)」シグナルであるCD47は、多岐にわたる疾患細胞、癌細胞及び感染細胞において構成的に上方制御され、それにより、これらの細胞が食作用から逃れることが可能になる。ある細胞(例えば癌細胞、感染細胞など)上のCD47と別の細胞(例えば貪食細胞)上のSIRPocとの間の相互作用を遮断する抗CD47剤は、CD47発現の上昇を相殺し、癌細胞及び/又は感染細胞の食作用を促進する。従って、抗CD47剤は、多岐にわたる状態/障害を処置するために、及び/又はそれらから保護するために使用され得る。
【0012】
本開示において、発明者らは、CD19を標的とする抗体タファシタマブ(Fc-増強)とCD47を標的とする抗体とを組み合わせ、抗腫瘍活性を評価した。インビトロ及びインビボで、CD47を標的とする抗体とタファシタマブを組み合わせた場合、抗腫瘍効果の顕著な上昇が観察された。
【0013】
まとめると、タファシタマブの投与及び、例えばCD47を標的とする抗体又はSIRPαを標的とする抗体を介した、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントの遮断は、リンパ腫及び白血病治療に対する有望なアプローチを持ち得ることが明らかになる。
【0014】
血液癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせが本明細書中で提供される。いくつかの実施形態では、血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。
【0015】
一態様では、本開示は、血液癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する前記ポリペプチドは、ヒトCD47若しくはヒトSIRPαに特異的に結合する抗体若しくは抗体断片又はポリペプチド性SIRPα試薬である。
【0016】
別の態様では、本開示は、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせた抗CD19抗体又はその抗体断片と、前記抗CD19抗体又はその抗体断片を投与するための説明書と、を含むキットを提供する。一実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する前記ポリペプチドは、ヒトCD47若しくはヒトSIRPαに特異的に結合する抗体若しくは抗体断片又はポリペプチド性SIRPα試薬である。
【0017】
一態様では、本開示は、癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、癌の処置での使用のために、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域及び配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含む配列LCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0018】
一態様では、本開示は、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、前記CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、癌の処置での使用のために、SYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域及びGTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域及びMQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0019】
別の態様では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0020】
別の態様では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、エフェクター機能を有する。別の態様では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、増強されたエフェクター機能を有する。一実施形態では、エフェクター機能はADCCである。一実施形態では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、増強されたADCC活性を有する。さらなる実施形態では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、位置S239及び/又はI332でのアミノ酸置換を含むFcドメインを含み、付番は、KabatにおけるようなEUインデックスに従う。
【0021】
また別の態様では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号9)の重鎖定常領域を含む。
【0022】
さらなる態様では、CD19に特異的な抗体は、
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)の軽鎖定常領域を含む。
【0023】
また別の態様では、CD19に特異的な抗体は、
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号9)の重鎖定常領域と、RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)の軽鎖定常領域と、を含む。
【0024】
また別の態様では、CD19に特異的な抗体は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)の重鎖領域と、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)の軽鎖領域と、を含む。
【0025】
一態様では、本開示は、癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、癌は血液癌である。一実施形態では、血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、血液癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0026】
一態様では、本開示は、癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、CD19に特異的な抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、別個の方式で投与される。
【0027】
一態様では、本開示は、癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、CD19に特異的な抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、同時に投与される。
【0028】
一態様では、本開示は、血液癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、抗CD47抗体又はその抗体断片と、を含む医薬の組み合わせを提供し、抗CD19抗体又はその抗体断片は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の軽鎖可変領域と、を含み、抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号30)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIK(配列番号31)の軽鎖可変領域と、を含む。一実施形態では、血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、血液癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。別の実施形態では、血液癌は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0029】
一態様では、本開示は、血液癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、抗CD47抗体又はその抗体断片と、を含む医薬の組み合わせを提供し、抗CD19抗体又はその抗体断片は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)の重鎖領域と、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)の軽鎖領域と、を含み、抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号34)の重鎖と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSKYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号35)の軽鎖と、を含む。一実施形態では、血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、血液癌は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。別の実施形態では、血液癌は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ADCPアッセイのために使用される細胞株上での関連する表面抗原の抗原発現レベル。1.0E+05個のRaji、Ramos、Daudi又はSU-DHL-6細胞を播種し、50μg/mLのヒトガンマグロブリンで30分間ブロッキング処理し、市販の一次標識抗体又は適切なアイソタイプ対照で30分間染色した。NovoCyte又はNovoCyte Quanteon機器でアッセイ読み取りを行い、NovoCyteソフトウェアでデータを分析した。データは、適切なアイソタイプ対照のMFI値における関心対象の抗原のMFI値の正規化で計算されたMFI(平均蛍光強度)比の値を示す棒グラフで示す。
図2】抗CD47mAbの添加は、タファシタマブ介在性ADCPを向上させる。CFSE染色されたTHP-1細胞をエフェクター細胞として使用し、E:T比2:1で4時間にわたり37℃及び5%CO2で、Cell Trace(商標)Violet染色Raji(A)、Ramos(B)、Daudi(C)又はSU-DHL-6(D)標的細胞とともに同時温置した。100%としての標的細胞上でのゲーティングをADCP分析のために使用した。抗体の非存在下での標的細胞とのエフェクター細胞の温置によって、腫瘍細胞のエフェクター細胞介在性の非特異的食作用を決定し、バックグラウンドADCPと名付けられた灰色の点線としてグラフ上で示す。標的細胞を貪食し、従って両方の使用した染色色素に対して二重陽性であるエフェクター細胞を定量することによって、標的細胞の食作用を測定するためにフローサイトメトリーに基づく読み取りを利用した。食作用のパーセントは、総標的細胞が100パーセントに対応する場合の二重陽性細胞のパーセンテージに相当する。黒点線の曲線はタファシタマブ滴定を表し、一方で3nM抗CD47抗体(クローンB6H12.2)の添加によるタファシタマブ滴定は、黒色の実線で示す。エラーバーは、技術的レプリケートの標準偏差を表す。灰色点線は、抗体添加なしのバックグラウンド食作用を示す。
図3】抗CD47mAbの添加は、タファシタマブ介在性ADCPを向上させる。CFSE染色されたTHP-1細胞をエフェクター細胞として使用し、E:T比2:1で4時間にわたり37℃及び5%CO2で、Cell Trace(商標)Violet染色Raji(A)、Ramos(B)、Daudi(C)又はSU-DHL-6(D)標的細胞とともに同時温置した。100%としての標的細胞上でのゲーティングをADCP分析のために使用した。抗体の非存在下での標的細胞とのエフェクター細胞の温置によって、腫瘍細胞のエフェクター細胞介在性の非特異的食作用を決定し、バックグラウンドADCPと名付けられた灰色の点線としてグラフ上で示す。標的細胞を貪食し、従って両方の使用した染色色素に対して二重陽性であるエフェクター細胞を定量することによって、標的細胞の食作用を測定するためにフローサイトメトリーに基づく読み取りを利用した。食作用のパーセントは、総標的細胞が100パーセントに対応する場合の二重陽性細胞のパーセンテージに相当する。黒点線の曲線はタファシタマブ滴定を表し、一方で3nM抗CD47抗体(クローンB6H12.2)の添加によるタファシタマブ滴定は、黒色の実線で示す。エラーバーは、技術的レプリケートの標準偏差を表す。灰色点線は、抗体添加なしのバックグラウンド食作用を示す。
図4】抗CD47mAbの添加により、タファシタマブ介在性ADCPが上昇する。CFSE染色されたTHP-1細胞をエフェクター細胞として使用し、E:T比2:1で4時間、37℃及び5%CО2でCell Trace(商標)Violet染色されたRaji(A)又はRamos(B)標的細胞と同時温置した。ADCP分析のために100%としての標的細胞上でのゲーティングを使用した。抗体非存在下での標的細胞とのエフェクター細胞の温置によって、腫瘍細胞のエフェクター細胞介在性の非特異的食作用を決定し、バックグラウンドADCPと名付けられた点線の灰色線としてグラフ上で示す。標的細胞を貪食し、従って使用された染色色素の両方に対して二重陽性である、エフェクター細胞を定量することによって、標的細胞の食作用を測定するために、フローサイトメトリーに基づく読み取りを利用した。食作用のパーセントは、総標的細胞が100パーセントに対応する場合の二重陽性細胞のパーセンテージを表す。黒色の点線の曲線はタファシタマブ滴定を表し、一方で3nM抗CD47抗体(クローンB6H12.2)の添加によるタファシタマブ滴定は、黒色の実線で示す。灰色の点線は、抗体添加なしのバックグラウンド食作用を示す。
図5】播種性生存モデルにおけるMOR208及び抗CD47抗体の組み合わせの有効性(MOR208P014)。
図6】Ramos-SCID皮下腫瘍におけるMOR208の組み合わせの有効性(MOR208P015)。
図7】Ramos-NOD-SCID皮下腫瘍におけるMOR208の組み合わせの有効性(MOR208P016)。
図8】MOR208及びCD47/SIRPαチェックポイントの有効性は、エフェクター細胞としてM1及びM2マクロファージを使用したADCPアッセイにおいてRamos細胞の食作用を向上させる。
図9】マグロリマブ+タファシタマブでの同時処置は、異なるリンパ腫細胞の食作用を促進する。蛍光標識されたRaji細胞(A)、Toledo細胞(B)、U2932細胞(C)又はRCK8細胞(D)を、10μg/mLの濃度で37℃にて2時間で、指定された抗体処置と一緒に、エクスビボで分化させたヒトマクロファージとともに2:1の比で同時温置した。細胞表面マーカーCD11bに対する抗体で染色することによってマクロファージを同定し、フローサイトメトリーによって反応を評価した。貪食事象は、腫瘍細胞を貪食したマクロファージに対応する、腫瘍細胞特異的な蛍光シグナルについても陽性である、総マクロファージのパーセントとして定めた。マグロリマブ又はタファシタマブの何れかでの処置によって、リンパ腫細胞の食作用が向上し;この食作用はこの2種類の薬物の組み合わせによって促進された。
図10】マグロリマブ及びタファシタマブは、CA46リンパ腫細胞の食作用を促進するが、組み合わせ効果を示さない。蛍光標識されるCA46(A)又はJVM-2細胞(B)細胞をエクスビボで分化させたヒトマクロファージとともに2:1の比で37℃にて2時間、10μg/mLの濃度の指定の抗体処置と一緒に、同時温置した。細胞表面マーカーCD11bに対する抗体で染色することによりマクロファージを同定し、フローサイトメトリーによって反応を評価した。貪食事象は、腫瘍細胞を貪食したマクロファージに対応する、腫瘍細胞特異的な蛍光シグナルについても陽性である、総マクロファージのパーセントとして定めた。マグロリマブ又はタファシタマブの何れかでの処置によって、CA46細胞及びJVM-2細胞の食作用が向上したが;この食作用はこの2つの薬物の組み合わせによって明確には促進されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
「CD19」という用語は、次の同義語を有するCD19として知られるタンパク質を指す:B4、B-リンパ球抗原CD19、B-リンパ球表面抗原B4、CVID3、分化抗原CD19、MGC12802及びT細胞表面抗原Leu-12。
【0032】
ヒトCD19は、MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRFFKVTPPPGSGPQNQYGNVLSLPTPTSGLGRAQRWAAGLGGTAPSYGNPSSDVQADGALGSRSPPGVGPEEEEGEGYEEPDSEEDSEFYENDSNLGQDQLSQDGSGYENPEDEPLGPEDEDSFSNAESYENEDEELTQPVARTMDFLSPHGSAWDPSREATSLGSQSYEDMRGILYAAPQLRSIRGQPGPNHEEDADSYENMDNPDGPDPAWGGGGRMGTWSTR(配列番号13)のアミノ酸配列を有する。
【0033】
「MOR208」及び「XmAb5574」及び「タファシタマブ」は、表1に従う抗CD19抗体に対する同義語として使用される。表1は、MOR208/タファシタマブのアミノ酸配列を提供する。MOR208抗体は、その全体において参照により組み込まれる米国特許出願第12/377,251号明細書に記載されている。米国特許出願第12/377,251号明細書は、4G7 H1.52 Hybrid S239D/I332E/4G7 L1.155(後にMOR208及びタファシタマブと命名)という名称の抗体を記載する。
【0034】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、抗原と相互作用する、ジスルフィド結合により間が連結される少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含むタンパク質を指す。各重鎖は、可変重鎖領域(本明細書中でVHと略称される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3個のドメイン、CH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、可変軽鎖領域(本明細書中でと略称されるVL)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細かく分けられ得、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域がその間に散在する。各VH及びVLは、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される3個のCDR及び4個のFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。「抗体」という用語は、例えばモノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体及びキメラ抗体を含む。抗体は、何れかのアイソタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであり得る。軽鎖及び重鎖の両方とも、構造及び機能的相同性の領域に分けられる。
【0035】
「抗体断片」という句は、本明細書中で使用される場合、(例えば結合、立体障害、空間的分布の安定化により)抗原と特異的に相互作用する能力を保持する抗体の1つ以上の部分を指す。結合断片の例としては、Fab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片;F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結される2個のFab断片を含む二価断片;VH及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなる断片;VHドメインからなるdAb断片(Ward et al(1989)Nature 341:544-546);及び単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられるが限定されない。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHが個別の遺伝子によりコードされるにもかかわらず、これらは、一価分子を形成するためにVL及びVH領域が対形成する、単一タンパク質鎖としてそれらが作製されることを可能にする合成リンカーによって、組み換え法を使用して連結され得る(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照)。このような単鎖抗体は、「抗体断片」という用語内に包含されるものとする。これらの抗体断片は、当業者にとって公知の従来の技術を使用して得られ、インタクトな抗体と同じように有用性について断片がスクリーニングされる。抗体断片は、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR及びビスscFvにも組み込まれ得る(例えばHollinger及びHudson,(2005)Nature Biotechnology 23:1126-1136参照)。抗体断片は、III型フィブロネクチン(Fn3)などのポリペプチドに基づく足場に移植され得る(フィブロネクチンポリペプチドモノボディを記載する米国特許第6,703,199号明細書を参照)。抗体断片は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒にタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)の対を含む単鎖分子に組み込まれ得、抗原-結合部位の対を形成し得る(Zapata et al(1995)Protein Eng.8:1057-1062;及び米国特許第5,641,870号明細書)。
【0036】
「投与される」又は「投与」は、例えば静脈内、筋肉内、皮内若しくは皮下経路などの注射可能な形態又は粘膜経路による、例えば、吸入のための鼻腔スプレー若しくはエアロゾルとしての、又は摂取可能な溶液、カプセル若しくは錠剤としての、薬物の送達を含むが限定されない。好ましくは、投与は注射可能な形態による。
【0037】
「エフェクター機能」という用語は、抗体のFc領域に起因し得るこれらの生物学的活性を指し、抗体アイソタイプで変動する。抗体エフェクター機能の非限定例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/又は抗体依存性細胞貪食(ADCP);細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御;及びB細胞活性化が挙げられる。
【0038】
「抗体依存性細胞傷害」又は「ADCC」は、ある特定の細胞傷害細胞(例えばNK細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合した抗体によって、これらの細胞傷害エフェクター細胞が抗原を保有する標的細胞に特異的に結合することが可能になり、続いて細胞傷害で標的細胞を死滅させる、細胞傷害の形態を指す。ADCCに介在するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、一方で単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。
【0039】
「補体依存性細胞傷害」又は「CDC」は、補体存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的な補体経路の活性化は、本開示の(適切なサブクラスの)抗体に対する補体系の最初の成分(C1q)の結合により開始され、これはそれらの同族抗原に結合される。
【0040】
「抗体依存性細胞貪食」又は「ADCP」は、マクロファージ又は樹状細胞などの貪食細胞による内部移行による抗体で被覆された標的細胞の排除の機序を指す
【0041】
「血液癌」という用語は、リンパ腫、白血病及び骨髄腫など、造血系起源の組織における異常な細胞成長及び/又は増殖を含む血液由来の腫瘍及び疾患又は障害を含む。
【0042】
非ホジキンリンパ腫(「NHL」)は、リンパ球に由来する不均一な悪性腫瘍である。米国(U.S.)において、発生率は65,000例/年と推定され、およそ20,000の死亡例がある(American Cancer Society,2006;及びSEER Cancer Statistics Review)。この疾患は全年齢で起こり得、通常は40歳を超える成人で発症し、年齢とともに発生率が上昇する。NHLは、リンパ節、血液、骨髄及び脾臓において蓄積するリンパ球のクローン性増殖を特徴とするが、あらゆる主要臓器に関与し得る。病理学者及び臨床医により使用される最新の分類系は、World Health Organization(WHO)Classification of Tumoursであり、前駆体及び成熟B細胞又はT細胞新生物にNHLを整理する。PDQは、現在、臨床試験への移行のために潜行性又は侵攻性としてNHLを分けている。潜行性NHL群は、濾胞性サブタイプ、小リンパ球性リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)及び辺縁帯から主に構成され;潜行性は、新たに診断されたB細胞NHL患者のおよそ50%を包含する。侵攻性NHLは、主にびまん性大細胞型B細胞(DLBL、「DLBCL」又はDLCL)(全ての新たに診断された患者の40%がびまん性大細胞を有する)、バーキット及びマントル細胞(「MCL」)の組織学的診断がある患者を含む。NHLの臨床経過は非常に変わり易い。臨床経過の主な決定因子は組織学的サブタイプである。NHLの殆どの潜行性タイプは、不治の疾患であると考えられる。患者は、最初は化学療法又は抗体療法の何れかに反応し、殆どが再発する。今までの試験からは、早期の治療介入による生存の改善が明らかになっていない。無症状の患者において、これは、患者が症候性になるか又は疾患ペースが加速していると思われるまで「注視し、待機する」ことが容認可能である。時間とともに、疾患は、より侵攻性の組織学に転換し得る。中央値生存は、8~10年であり、潜行性患者は、それらの疾患の治療フェーズ中に3回以上の処置を受けることが多い。症候性の潜行性NHL患者の初期治療は歴史的に、組み合わせ化学療法となっている。最もよく使用される薬剤としては、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CVP);又はシクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾン(CHOP)が挙げられる。患者のおよそ70%~80%は、それらの初期の化学療法に反応し、寛解の持続時間は、2~3年のオーダーで続く。最終的に、患者の殆どが再発する。抗CD20抗体、リツキシマブの発見及び臨床使用によって、奏効及び生存率が顕著に上昇した。殆どの患者に対する現在の標準治療は、リツキシマブ+CHOP(R-CHOP)又はリツキシマブ+CVP(R-CVP)である。リツキシマブ療法は、NHLのいくつかのタイプにおいて効果的であることが示されており、潜行性NHL(濾胞性リンパ腫)及び侵攻性NHL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の両方に対して、第一選択の治療として現在承認されている。しかし、一次耐性(再発した潜行性患者において50%奏効)、獲得耐性(再治療時に50%の奏効率)、完全奏効が稀であること(再発集団において2%の完全奏効率)及び継続する再発パターンを含め、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)の著しい制限がある。最後に、多くのB細胞がCD20を発現せず、従って多くのB細胞障害は抗CD20抗体療法を使用して治療可能ではない。
【0043】
NHLに加えて、B細胞の調節不全の結果起こるいくつかのタイプの白血病がある。慢性リンパ球性白血病(「慢性リンパ性白血病」又は「CLL」としても知られる)は、Bリンパ球の異常な蓄積により引き起こされる成人白血病の一タイプである。CLLにおいて、悪性リンパ球は、正常及び成熟しているように見え得るが、それらは、感染に効果的に対処可能ではない。CLLは、成人における白血病の最も一般的な形態である。男性のCLL発症の可能性は女性の2倍である。しかし、重要なリスク因子は年齢である。新たな症例の75%超が50歳を超える患者で診断されている。10,000例を超える症例が毎年診断され、死亡数は年にほぼ5,000例である(American Cancer Society,2006;及びSEER Cancer Statistics Review)。CLLは、不治の疾患であるが、殆どの症例でゆっくりと進行する。多くのCLL罹患者は、長期にわたり正常及び活動的な生活を送る。ゆっくり発症するため、初期ステージのCLLは一般に、初期CLL介入が生存時間又はクオリティーオブライフを改善しないと考えられるので処置されない。代わりに、経時的に状態を監視する。初期のCLL処置は、正確な診断及び疾患の進行に依存して変動する。CLL治療のために使用される多数の薬剤がある。FCR(フルダラビン、シクロホスファミド及びリツキシマブ)及びBR(イブルチニブ及びリツキシマブ)などの組み合わせ化学療法レジメンは、新たに診断されたCLL及び再発したCLLの両方において有効である。同種骨髄(幹細胞)移植は、そのリスクゆえに、CLLに対する第一選択の治療として使用されることは稀である。
【0044】
白血病の別のタイプは、CLL診断のために必要とされるクローン性リンパ球増加症を欠くCLL変異体と考えられる小リンパ球性リンパ腫(「SLL」)であるが、それ以外には、病理学的及び免疫表現性の特性を共有する(Campo et al.,2011)。SLLの定義は、リンパ節腫脹及び/又は脾腫の存在を必要とする。さらに、末梢血中のBリンパ球の数は、5x109個/Lを超えないはずである。SLLにおいて、可能ならば、リンパ節生検の組織病理学的評価によって診断を確認すべきである(Hallek et al.,2008)。SLLの発生率は、米国においてCLLのおよそ25%である(Dores et al.,2007)。
【0045】
白血病の別のタイプは、急性リンパ球性白血病としても知られる急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。ALLは、骨髄における悪性及び(リンパ芽球としても知られる)未成熟白血球細胞の過剰産生及び継続的な増殖を特徴とする。「急性」は、循環リンパ球(「芽球」)の未分化、未成熟状態を指し、疾患進行が急速であり、未処置のままであった場合、余命が週~月単位であるものを指す。ALLは、小児期において最も一般的であり、ピーク発生率は4~5歳である。12~16歳の小児は、他よりもALLによって容易に死亡する。現在、小児ALLの少なくとも80%が治癒可能であると考えられる。毎年診断される症例は4,000例を下回り、死亡例は年にほぼ1,500例である(American Cancer Society,2006;及びSEER Cancer Statistics Review)。
【0046】
「対象」又は「患者」は、この文脈で使用される場合、げっ歯類、例えばマウス又はラットなど、及び霊長類、例えばカニクイザル(マカカ・ファスシキュラリス(Macaca fascicularis))、アカゲザル(マカカ・ムラッタ(Macaca mulatta))又はヒト(ホモ・サピエンス(Homo sapiens))などを含む何れかの哺乳動物を指す。好ましくは、対象又は患者は、霊長類、最も好ましくはヒト患者、さらにより好ましくは成人ヒト患者である。
【0047】
「改変される」又は「修飾される」という用語は、本明細書中で使用される場合、合成手段による(例えば組み換え技術、インビトロペプチド合成による、ペプチドの酵素性又は化学的カップリング又はこれらの技術のいくつかの組み合わせによる)、核酸又はポリペプチドの改変を含む。好ましくは、本開示による抗体又は抗体断片は、抗原結合、安定性、半減期、エフェクター機能、免疫原性、安全性などの1つ以上の特性を改善するために改変されるか又は修飾される。好ましくは、本開示による抗体又は抗体断片は、ADCCなどのエフェクター機能を改善するために改変されるか又は修飾される。
【0048】
「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定めるために使用される。免疫グロブリンのFc領域は一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。本明細書中で別段指定されない限り、Fc領域におけるアミノ酸残基の付番は、Kabat et al.,Sequence of Protein of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991において記載されるような、EUインデックスとも呼ばれるEU付番系に従う。
【0049】
本開示に従い投与される抗体は、治療的有効量で患者に投与される。「治療的有効量」は、ある疾患又は障害の臨床症状の幾分かの改善を提供するために十分な量を指す。特定の治療目的に有効である量は、疾患又は損傷の重症度並びに対象の体重及び全般的な状態に依存する。数値の行列(matrix of values)を構築し、行列において異なる点を試験することによって、通常の実験を使用して適切な投与量の投与が達成され得、これらの全てが熟練した医療者又は臨床科学者の通常の技術の範囲内であることが理解されよう。
【0050】
「組み合わせ」又は「医薬の組み合わせ」という用語は、ある治療を別の治療に加えて施すことを指す。それ自体、「と組み合わせて」は、同時(例えば同時的)及びあらゆる順序での連続投与を含む。各構成成分は同じ時に又は異なる時点であらゆる順序で連続的に投与され得る。従って、各構成成分は、個別に投与され得るが、所望の治療効果をもたらすように十分に近い時間に投与され得る。非限定例で、第1の治療薬(例えば抗CD19抗体などの薬剤)は、第2の治療薬(例えば抗CD47抗体などの医薬品)の投与の前(例えば1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、8週間、9週間、10週間、11週間又は12週間)に、それと同時に又はその後(例えば1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間若しくは12週間又はそれより長い時間)に、患者に投与され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチド(例えば抗CD47抗体)と、の組み合わせ投与は、相乗的な効果を有する。「相乗作用」、「相乗性」、「相乗的な」及び「相乗的な効果」という用語は、本明細書中で交換可能に使用され、単独で投与される化合物のそれぞれの個々の効果の合計よりも効果が大きい、組み合わせて投与される化合物の効果を指す。
【0052】
本明細書中で開示される医薬の組み合わせの相乗効果は、異なる方法により決定され得る。このような方法の例としては、Chou et al.,Clarke et al.及び/又はWebb et al.の方法が挙げられる。その全体において参照により組み込まれるTing-Chao Chou,Theoretical Basis,Experimental Design and Computerized Simulation of Synergism and Antagonism in Drug Combination Studies,Pharmacol Rev 58:621-681(2006)を参照。その全体において参照により組み込まれる、Clarke et al.,Issues in experimental design and endpoint analysis in the study of experimental cytotoxic agents in vivo in breast cancer and other models,Breast Cancer Research and Treatment 46:255-278(1997)も参照。
【0053】
その全体において参照により組み込まれるWebb,J.L.(1963)Enzyme and Metabolic Inhibitor,Academic Press,New Yorkも参照。
【0054】
発明の詳細な説明
抗CD19抗体
非特異的B細胞リンパ腫におけるCD19抗体の使用は、両方とも参照により組み込まれる国際公開第2007076950号パンフレット(米国特許出願公開第2007154473号明細書)で論じられる。CLL、NHL及びALLにおけるCD19抗体の使用は、その全体において参照により組み込まれる、Scheuermann et al.,CD19 Antigen in Leukemia and Lymphoma Diagnosis and Immunotherapy,Leukemia and Lymphoma,Vol.18,385-397(1995)に記載される。
【0055】
CD19に特異的なさらなる抗体は、全てがそれらの全体において参照により組み込まれる、国際公開第2005012493号パンフレット(米国特許第7109304号明細書)、国際公開第2010053716号パンフレット(米国特許出願第12/266,999号明細書)(Immunomedics);国際公開第2007002223号パンフレット(米国特許第8097703号明細書)(Medarex);国際公開第2008022152号パンフレット(12/377,251)及び国際公開第2008150494号パンフレット(Xencor)、国際公開第2008031056号パンフレット(米国特許出願第11/852,106号明細書)(Medimmune);国際公開第2007076950号パンフレット(米国特許出願第11/648,505号明細書)(Merck Patent GmbH);国際公開第2009/052431号パンフレット(米国特許出願第12/253,895号明細書)(Seattle Genetics);及び国際公開第2010095031号パンフレット(12/710,442)(Glenmark Pharmaceuticals)、国際公開第2012010562号パンフレット及び国際公開第2012010561号パンフレット(International Drug Development)、国際公開第2011147834号パンフレット(Roche Glycart)及び国際公開第2012156455号パンフレット(Sanofi)に記載される。
【0056】
医薬組成物は、活性薬剤、例えばヒトにおける治療的使用のための抗体を含む。医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤をさらに含み得る。
【0057】
患者に投与される、本開示による医薬組成物中に含まれる抗体又は抗体断片の用量は、患者の年齢及びサイズ、症状、状態,投与経路などに依存して変動し得る。この用量は一般的には、体重又は体表面積、年齢に従い、又は個体ごとに、計算される。状態の重症度に依存して、処置の頻度及び持続期間が調整され得る。CD19に特異的な抗体又は抗体断片を含む医薬組成物を投与するための有効な投与量及びスケジュールは、経験的に決定され得;例えば、定期的な評価により患者の進行が監視され、従って用量が調整され得る。さらに、当技術分野において周知の方法を使用して、投与量の種間のスケーリングが行われ得る(例えばMordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0058】
本医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射などのための剤形を含み得る。これらの注射可能な調製物は、公知の方法により調製され得る。例えば、例えば注射に対して従来から使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中で上記の抗体又はその塩を溶解させるか、懸濁するか又は乳化することによって、注射可能な調製物が調製され得る。本開示の文脈において使用され得るCD19に特異的な抗体又は抗体断片を含む代表的な医薬組成物は、例えば国際公開第2008/022152号パンフレット又は同第2018/002031号パンフレットで開示される。
【0059】
投与のある特定の方法、例えば静脈内投与、において、患者の体重に従って薬物を投与することが好ましい。投与の他の方法、例えば皮下投与、において、フラットな固定用量で薬物を投与することが好ましい。熟練者は、ある投与方法でのどの用量が、別の投与方法での別の用量と同等であるかを知っている。具体的な薬物の薬力学は一般的に、必要とされる形態で及び必要とされる有効な用量で薬物を投与するために理にかなった決定において考慮される。
【0060】
本開示に従い投与される抗体は、治療的有効量で患者に投与される。「治療的有効量」は、ある疾患又は障害、即ちNHL及びその合併症の臨床症状を、治癒させるか、緩和するか、又は部分的に抑止するために十分な量を指す。特定の一実施形態では、本開示のCD19抗体は、9mg/kgで投与される。代替的な実施形態では、本開示のCD19抗体は12mg/kgで投与される。また他の実施形態では、本開示のCD19抗体は15mg/kg以上で投与される。
【0061】
本開示の抗体は、異なる時点で投与され得、処置サイクルは、異なる長さを有し得る。本抗体は、毎日、1日おき、週3回、週1回又は隔週で投与され得る。本抗体はまた、少なくとも4週間にわたり、少なくとも5週間にわたり、少なくとも6週間にわたり、少なくとも7週間にわたり、少なくとも8週間にわたり、少なくとも9週間にわたり、少なくとも10週間にわたり、少なくとも11週間にわたり、又は少なくとも12週間にわたり投与され得る。本開示の特定の一実施形態では、本抗体は、少なくとも8週間にわたり少なくとも週1回投与される。
【0062】
SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチド
CD47は、単一Ig様ドメイン及び5個の膜貫通領域がある、広く発現される膜貫通糖タンパク質であり、SIRPocのNH2末端V様ドメインを通じて媒介される結合によりSIRPocに対する細胞性リガンドとして機能する。SIRPocは、マクロファージ、顆粒球、骨髄樹状細胞(DC)、肥満細胞及び造血幹細胞を含むそれらの前駆体を含め、骨髄細胞上で主に発現される。CD47結合に介在するSIRPoc上の構造決定基は、Lee et al.(2007)J.Immunol.179:7741-7750;Hatherley et al.(2008)Mol Cell.31(2):266-77;Hatherley et al.(2007)J.B.C.282:14567-75により論じられ;CD47結合におけるSIRPocシス二量体化の役割は、Lee et al.(2010)J.B.C.285:37953-63により論じられる。正常細胞の食作用を阻害するためのCD47の役割と一致して、これがそれらの移行期直前又は移行期中に造血幹細胞(HSC)及び前駆体上で一過性に上方制御される、及びこれらの細胞上でのCD47のレベルによって、インビボでそれらが貪食される可能性が決定される、という証拠がある。
【0063】
SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、SIRPαへのCD47の結合を減少させる何れかのポリペプチドを指す。適切なSIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤の非限定例としては、抗SIRPα抗体若しくは抗体断片、抗CD47抗体若しくは抗体断片又はポリペプチド性SIRPα試薬が挙げられる。いくつかの実施形態では、適切なSIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗CD47抗体、抗SIRPα抗体など)は、CD47又はSIRPαに特異的に結合し、SIRPαへのCD47の結合を減少させる。いくつかの実施形態では、適切なSIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗SIRPα抗体、可溶性CD47ポリペプチドなど)は、SIRPαに特異的に結合し、SIRPαへのCD47の結合を減少させる。SIRPαに結合する適切なSIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤は、SIRPαを活性化しない(例えばSIRPα発現貪食細胞において)。適切なSIRα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤の有効性は、代表的なアッセイにおいて薬剤をアッセイすることにより評価され得、このアッセイでは標的細胞を候補薬剤の存在下又は非存在下で温置する。本発明の方法での使用のためのSIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗CD47抗体、抗SIRPα抗体、ポリペプチド性SIRPα試薬など)は、薬剤非存在下での食作用と比較して、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも120%、少なくとも140%、少なくとも160%、少なくとも180%又は少なくとも200%)、食作用を上方制御する。同様に、SIRPαのチロシンリン酸化のレベルに対するインビトロアッセイは、候補薬剤の非存在下で観察されるリン酸化と比較して、少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%)のリン酸化の低下を示す。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗CD47剤は、結合時にCD47を活性化しない。
【0065】
いくつかの病原体(例えばポックスウイルス、粘液種ウイルス、シカポックスウイルス、ブタポックスウイルス、ヤギポックスウイルス、ヒツジポックスウイルスなど)は、感染を可能にするために病原性因子として作用するCD47類似体(即ちCD47模倣物)(例えばM128Lタンパク質)を発現し(Cameron et al.,Virology.2005 Jun 20;337(1):55-67)、いくつかの病原体は、宿主細胞において内因性CD47の発現を誘導する。従って、CD47類似体を発現する病原体に感染した細胞は、排他的に又は内因性CD47と組み合わせての何れかで、病原体により提供されるCD47類似体を発現し得る。この機序により、病原体が、感染細胞において、内因性CD47のレベルを上昇させて、又は上昇させずに、(CD47類似体の発現を介して)CD47発現を上昇させることが可能になる。いくつかの実施形態では、ポリペプチド性SIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗CD47抗体、SIRPα試薬、SIRPα抗体、可溶性CD47ポリペプチドなど)は、SIRPαに対するCD47類似体(即ちCD47模倣物)の結合を減少させ得る。いくつかの例では、ポリペプチド性SIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤(例えばSIRPα試薬、抗CD47抗体など)は、CD47類似体(即ちCD47模倣物)に結合して、SIRPαへのCD47類似体の結合を減少させ得る。いくつかの場合では、適切なSIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗SIRPα抗体、可溶性CD47ポリペプチドなど)がSIRPαに結合し得る。SIRPαに結合する適切なSIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤は、SIRPα(例えばSIRPα発現貪食細胞において)を活性化しない。抗CD47剤は、病原体がCD47類似体を提供する病原体である場合、本明細書中で提供される方法の何れかにおいて使用され得る。言い換えると、「CD47」という用語は、本明細書中で使用される場合、CD47並びにポリペプチド性CD47類似体(即ちCD47模倣物)を包含する。
【0066】
いくつかの実施形態では、対象SIRPα-CD47自然免疫チェックポイント阻害剤は、SIRPαに特異的に結合する抗体(即ち抗SIRPα抗体)であり、1つの細胞上のCD47と別の細胞上のSIRPαとの間の相互作用を減少させる。適切な抗SIRPα抗体は、SIRPαの活性化が食作用を阻害するので、SIRPαを通じたシグナル伝達を活性化又は刺激せずにSIRPαに結合し得る。代わりに、適切な抗SIRPα抗体は、正常細胞を超えて感染細胞の優先的な食作用を促進する。他の細胞と比較してより高いレベルのCD47を発現するこれらの細胞は、優先的に貪食される。従って、適切な抗SIRPα抗体は、SIRPαと特異的に結合し(食作用を阻害するためのシグナル伝達反応を十分に活性化/刺激せずに)、SIRPαとCD47との相互作用を遮断する。適切な抗SIRPα抗体は、このような抗体の完全にヒト、ヒト化又はキメラバージョンを含む。ヒト化抗体は、それらの低抗原性ゆえにヒトにおけるインビボ適用に対して特に有用である。同様に、イヌ化、ネコ化などである。抗体は、それぞれイヌ、ネコ及び他の種における適用に特に有用である。関心対象の抗体としては、ヒト化抗体又はイヌ化、ネコ化、ウマ化、ウシ化、ブタ化などの抗体及びそれらの変異体が挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する対象ポリペプチドは、ポリペプチド性SIRPα試薬である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド性SIRPα試薬は、ある細胞上のCD47と別の細胞上のSIRPαとの間での相互作用を低下させる。「ポリペプチド性SIRPα試薬」は、本明細書中で使用される場合、通常はシグナル配列と膜貫通ドメインとの間に置かれる、認識可能な親和性でCD47に結合するのに十分であるSIRPαの一部又は結合活性を保持するその断片を含む。適切なSIRPα試薬は、ネイティブタンパク質SIRPαとCD47との間の相互作用を減少させる(例えば遮断、妨害など)。SIRPα試薬は通常、少なくともSIRPαのドメインを含む。いくつかの実施形態では、SIRPα試薬は、例えば第2のポリペプチドでインフレームで融合される、融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、融合タンパク質のサイズを大きくすることが可能であり、例えば融合タンパク質が急速に循環から除去されないようになる。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域の一部又は全部である。Fc領域は、「イート・ミー(eat me)」シグナルを提供することによって食作用に役立ち、これは、高親和性SIRPα試薬により提供される「ドント・イート・ミー(don’t eat me)」シグナルの遮断を促進する。他の実施形態では、第2のポリペプチドは、例えばサイズ増大、多量体化ドメイン及び/又はさらなる結合又はIg分子との相互作用をもたらす、実質的にFcと同様である何れかの適切なポリペプチドである。いくつかの実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、SIRPαFc-融合タンパク質である。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「抗CD47抗体」は、SIRPαなどのCD47リガンドへのCD47の結合を減少させる、何れかの抗体又は抗体断片を指す。いくつかの実施形態では、適切な抗CD47抗体は結合時にCD47を活性化しない。適切な抗体の非限定例としては、例えばクローンB6H12、5F9、8B6及びC3が挙げられる(例えば、参照により本明細書中に具体的に組み込まれる国際公開第2011/143624号パンフレットに記載のとおり)。適切な抗CD47抗体は、抗体の完全にヒト、ヒト化又はキメラバージョンを含む。ヒト化抗体は、それらの抗原性が低いために、ヒトにおいてインビボ適用に特に有用である。同様にイヌ化、ネコ化などの抗体は、それぞれイヌ、ネコ及び他の種における適用に特に有用である。関心対象の抗体としては、ヒト化抗体又はイヌ化、ネコ化、ウマ化、ウシ化、ブタ化などの抗体及びそれらの変異体が挙げられる。
【0069】
抗CD47抗体は、薬学的に許容可能な賦形剤とともに医薬組成物中で処方され得る。抗CD47抗体は静脈内投与され得る。
【0070】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、CD47への結合についてB6H12、5F9、8B6又はC3と競合する。いくつかの態様では、抗CD47は、B6H12、5F9、8B6又はC3と同じCD47エピトープに結合する。いくつかの態様では、抗CD47抗体は、CD47への結合についてB6H12と競合する。いくつかの態様では、抗CD47は、B6H12と同じCD47エピトープに結合する。
【0071】
表2は、B6H12抗体重鎖及び軽鎖の配列を含有し、B6H12抗体のCDRを示す。
【0072】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、B6H12と同じCD47エピトープに結合し、このB6H12抗体又はその抗体断片は、配列GYGMS(配列番号14)を含むHCDR1領域、配列TITSGGTYTYYPDSVKG(配列番号15)を含むHCDR2領域及び配列SLAGNAMDY(配列番号16)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RASQTISD(配列番号17)を含むLCDR1領域、配列FASQSIS(配列番号18)を含むLCDR2領域及び配列QNGHGFPRT(配列番号19)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。一態様では、前記B6H12抗体又はその抗体断片は、
EVQLVESGGDLVKPGGSLKLSCAASGFTFSGYGMSWVRQTPDKRLEWVATITSGGTYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQIDSLKSEDTAIYFCARSLAGNAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号20)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPATLSVTPGDRVSLSCRASQTISDYLHWYQQKSHESPRLLIKFASQSISGIPSRFSGSGSGSDFTLSINSVEPEDVGVYYCQNGHGFPRTFGGGTKLEIK(配列番号21)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0073】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、CD47への結合についてB6H12と競合し、前記B6H12抗体又はその抗体断片は、配列GYGMS(配列番号14)を含むHCDR1領域、配列TITSGGTYTYYPDSVKG(配列番号15)を含むHCDR2領域及び配列SLAGNAMDY(配列番号16)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RASQTISD(配列番号17)を含むLCDR1領域、配列FASQSIS(配列番号18)を含むLCDR2領域及び配列QNGHGFPRT(配列番号19)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。一態様では、前記B6H12抗体又はその抗体断片は、
EVQLVESGGDLVKPGGSLKLSCAASGFTFSGYGMSWVRQTPDKRLEWVATITSGGTYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQIDSLKSEDTAIYFCARSLAGNAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号20)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPATLSVTPGDRVSLSCRASQTISDYLHWYQQKSHESPRLLIKFASQSISGIPSRFSGSGSGSDFTLSINSVEPEDVGVYYCQNGHGFPRTFGGGTKLEIK(配列番号21)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0074】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、CD47への結合について5F9と競合する。いくつかの態様では、抗CD47は、5F9と同じCD47エピトープに結合する。いくつかの態様では、抗CD47抗体は、IgG4 Fcを含む。いくつかの態様では、抗CD47抗体は、5F9を含むか又はそれからなる。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の方法は、抗CD47抗体5F9の投与を含む。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の方法は、5F9の配列と少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一である配列(軽鎖、重鎖及び/又はCDR)を有する抗CD47抗体の投与を含む。表3は、5F9抗体及びそれらの変異体の配列を含有する。
【0076】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、配列NYNMH(配列番号22)を含むHCDR1領域、配列TIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号23)を含むHCDR2領域及び配列GGYRAMDY(配列番号24)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号25)を含むLCDR1領域、配列KVSNRFS(配列番号26)を含むLCDR2領域及び配列FQGSHVPYT(配列番号27)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む抗体又は抗体断片と同じCD47エピトープに結合する。一態様では、前記抗体又はその断片は、配列番号28、配列番号30及び配列番号32からなる群から選択される重鎖可変領域と、配列番号29、配列番号31及び配列番号33からなる群から選択される軽鎖可変領域と、を含む。一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、配列番号30の重鎖可変領域と、配列番号31の軽鎖可変領域と、を含む。別の態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、配列番号34の全長重鎖と、配列番号35の全長軽鎖と、を含む。
【0077】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、配列NYNMH(配列番号22)を含むHCDR1領域、配列TIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号23)を含むHCDR2領域及び配列GGYRAMDY(配列番号24)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号25)を含むLCDR1領域、配列KVSNRFS(配列番号26)を含むLCDR2領域及び配列FQGSHVPYT(配列番号27)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む抗体又はその抗体断片と、CD47への結合について競合する。一態様では、前記抗体又はその断片は、配列番号28、配列番号30及び配列番号32からなる群から選択される重鎖可変領域と、配列番号29、配列番号31及び配列番号33からなる群から選択される軽鎖可変領域と、を含む。
【0078】
いくつかの態様では、その断片の抗CD47抗体は、配列NYNMH(配列番号22)を含むHCDR1領域、配列TIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号23)を含むHCDR2領域及び配列GGYRAMDY(配列番号24)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号25)を含むLCDR1領域、配列KVSNRFS(配列番号26)を含むLCDR2領域及び配列FQGSHVPYT(配列番号27)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、配列番号28、配列番号30及び配列番号32からなる群から選択される重鎖可変領域と、配列番号29、配列番号31及び配列番号33からなる群から選択される軽鎖可変領域と、を含む。一態様では、抗CD47抗体又はその断片は、配列番号30の重鎖可変領域と、配列番号31の軽鎖可変領域と、を含む。別の態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、配列番号34の全長重鎖と、配列番号35の全長軽鎖と、を含む。
【0079】
いくつかの態様では、その断片の抗CD47抗体は、配列NYNMH(配列番号22)のHCDR1領域、配列TIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号23)のHCDR2領域及び配列GGYRAMDY(配列番号24)のHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号25)のLCDR1領域、配列KVSNRFS(配列番号26)のLCDR2領域及び配列FQGSHVPYT(配列番号27)のLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0080】
一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQGLEWIGTIYPGNDDTSYNQKFKDKATLTADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号28)の重鎖可変領域と、
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYHCFQGSHVPYTFGGGTKVEIK(配列番号29)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0081】
一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号30)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIK(配列番号31)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0082】
一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWIGTIYPGNDDTSYNQKFKDRATLTADKSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号32)の重鎖可変領域と、
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYHCFQGSHVPYTFGQGTKLEIK(配列番号33)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0083】
一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号34)の重鎖と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号35)の軽鎖と、を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、適切な抗CD47抗体は、結合時にCD47を活性化しない。適切な抗体の非限定例としては、クローンB6H12、5F9、8B6及びC3が挙げられる(例えば本明細書中で参照により具体的に組み込まれる国際公開第2011/143624号パンフレットに記載のとおり)。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、ヒトIgG Fc領域、例えばIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4定常領域を含む。一実施形態では、IgG Fc領域はIgG4定常領域である。IgG4ヒンジは、アミノ酸置換S241Pにより安定化され得る(本明細書中で参照により具体的に組み込まれるAngal et al.(1993)Mol.Immunol.30(1):105-108を参照)。
【0086】
処置の方法
癌(例えばCD19+であるものとして同定される癌)を有するヒト対象を処置するか又はヒト対象における癌のサイズを縮小させる方法が本明細書中で開示され、この方法は、
(a)SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを対象に投与することと、
(b)抗CD19抗体を対象に投与することと、
を含む。
【0087】
癌(例えばCD19+であるものとして同定される癌)を有するヒト対象を処置するか又はヒト対象における癌のサイズを縮小させる方法が本明細書中で開示され、この方法は、
(a)抗体2mg/kg体重以上の用量でSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを対象に投与することと、
(b)抗CD19抗体を対象に投与することと、
を含む。
【0088】
一実施形態では、本開示は、癌(例えばCD19+であるものとして同定される癌)を有するヒト対象を処置するか又はヒト対象における癌のサイズを縮小させる方法を提供し、この方法は、
(a)SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを対象に投与することと、
(b)抗CD19抗体を対象に投与することと、
を含み、
癌は血液癌である。いくつかの態様では、血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。いくつかの他の態様では、NHLは、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0089】
いくつかの態様では、癌はCD19+癌である。いくつかの態様では、CD19+癌は血液癌である。いくつかの態様では、血液癌は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。いくつかの態様では、NHLは潜行性リンパ腫である。いくつかの態様では、潜行性リンパ腫は濾胞性リンパ腫(FL)である。いくつかの態様では、潜行性リンパ腫は辺縁帯リンパ腫である。いくつかの態様では、NHLはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの態様では、CD19+癌は、DLBCL、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、未分類のB細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病又は移植後リンパ増殖性障害(PTLD)であり、任意選択的にCD19+癌は、組織病理学、フローサイトメトリー、分子的分類、1つ以上の同等のアッセイ又はそれらの組み合わせに基づいて分類される。いくつかの態様では、CD19+癌は、ダブルヒットリンパ腫である。いくつかの態様では、CD19+癌は、myc-再構成リンパ腫である。
【0090】
いくつかの態様では、対象は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は10を超える癌治療の以前のラインに対して再発性又は抵抗性である。いくつかの態様では、対象はリツキシマブに対して抵抗性である。いくつかの態様では、リツキシマブ抵抗性状態は、何れかの以前のリツキシマブ含有レジメンに対して不応性であるか又はそのレジメン中に進行するか、又は最後のリツキシマブ投与の6ヶ月以内に進行する。
【0091】
一実施形態では、本開示は、癌(例えばCD19+であるものとして同定される癌)を有するヒト対象を処置するか又はヒト対象における癌のサイズを縮小させる方法を提供し、この方法は、
(a)SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを対象に投与することと、
(b)抗CD19抗体を対象に投与することと、
を含み、前記抗CD19抗体又はその抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは別個の方式で投与される。別の態様では、前記抗CD19抗体又はその抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは同時に投与される。
【0092】
別の実施形態では、本開示は、癌(例えばCD19+であるものとして同定される癌)を有するヒト対象を処置するか又はヒト対象における癌のサイズを縮小させる方法を提供し、この方法は、
(a)SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを対象に投与することと、
(b)抗CD19抗体を対象に投与することと、
を含み、前記抗CD19抗体又はその抗体断片は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域及び配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。一態様では、前記抗CD19抗体又はその抗体断片は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0093】
さらなる態様では、前記抗CD19抗体は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)の重鎖を含む。さらなる態様では、前記抗CD19抗体又はその抗体断片は、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)の軽鎖をさらに含む。
【0094】
別の実施形態では、本開示は、癌(例えばCD19+であるものとして同定される癌)を有するヒト対象を処置するか又はヒト対象において癌のサイズを縮小させる方法を提供し、この方法は、
(a)SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを対象に投与することと、
(b)抗CD19抗体を対象に投与することと、
を含み、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する前記ポリペプチドは、ヒトCD47又はヒトSIRPαに対して特異的に結合する抗体又は抗体断片である。別の態様では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、ポリペプチド性SIRPα試薬である。さらなる態様では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、SIRPαFc融合タンパク質である。
【0095】
別の実施形態では、本開示は、癌(例えばCD19+であるものとして同定される癌)を有するヒト対象を処置するか又はヒト対象において癌のサイズを縮小させる方法を提供し、この方法は、
(a)抗CD47抗体を対象に投与することと、
(b)抗CD19抗体を対象に投与することと、
を含む。
【0096】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、CD47への結合についてB6H12、5F9、8B6又はC3と競合する。いくつかの態様では、抗CD47は、B6H12、5F9、8B6又はC3と同じCD47エピトープに結合する。いくつかの態様では、抗CD47抗体は、CD47への結合についてB6H12と競合する。いくつかの態様では、抗CD47は、B6H12と同じCD47エピトープに結合する。
【0097】
表2は、B6H12抗体重及び軽鎖の配列を含有し、B6H12抗体のCDRを示す。
【0098】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、B6H12と同じCD47エピトープに結合し、前記B6H12抗体又はその抗体断片は、配列GYGMS(配列番号14)を含むHCDR1領域、配列TITSGGTYTYYPDSVKG(配列番号15)を含むHCDR2領域及び配列SLAGNAMDY(配列番号16)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RASQTISD(配列番号17)を含むLCDR1領域、配列FASQSIS(配列番号18)を含むLCDR2領域及び配列QNGHGFPRT(配列番号19)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。一態様では、前記B6H12抗体又はその抗体断片は、
EVQLVESGGDLVKPGGSLKLSCAASGFTFSGYGMSWVRQTPDKRLEWVATITSGGTYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQIDSLKSEDTAIYFCARSLAGNAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号20)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPATLSVTPGDRVSLSCRASQTISDYLHWYQQKSHESPRLLIKFASQSISGIPSRFSGSGSGSDFTLSINSVEPEDVGVYYCQNGHGFPRTFGGGTKLEIK(配列番号21)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0099】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、CD47への結合についてB6H12と競合し、前記B6H12抗体又はその抗体断片は、配列GYGMS(配列番号14)を含むHCDR1領域、配列TITSGGTYTYYPDSVKG(配列番号15)を含むHCDR2領域及び配列SLAGNAMDY(配列番号16)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RASQTISD(配列番号17)を含むLCDR1領域、配列FASQSIS(配列番号18)を含むLCDR2領域及び配列QNGHGFPRT(配列番号19)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。一態様では、前記B6H12抗体又はその抗体断片は、
EVQLVESGGDLVKPGGSLKLSCAASGFTFSGYGMSWVRQTPDKRLEWVATITSGGTYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQIDSLKSEDTAIYFCARSLAGNAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号20)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPATLSVTPGDRVSLSCRASQTISDYLHWYQQKSHESPRLLIKFASQSISGIPSRFSGSGSGSDFTLSINSVEPEDVGVYYCQNGHGFPRTFGGGTKLEIK(配列番号21)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0100】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、CD47への結合について5F9と競合する。いくつかの態様では、抗CD47は、5F9と同じCD47エピトープに結合する。いくつかの態様では、抗CD47抗体は、IgG4 Fcを含む。いくつかの態様では、抗CD47抗体は、5F9を含むか又はそれからなる。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の方法は、抗CD47抗体5F9の投与を含む。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の方法は、5F9の配列と少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一である配列(軽鎖、重鎖及び/又はCDR)を有する抗CD47抗体の投与を含む。表3は、5F9抗体及びそれらの変異体の配列を含有する。
【0102】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、配列NYNMH(配列番号22)を含むHCDR1領域、配列TIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号23)を含むHCDR2領域及び配列GGYRAMDY(配列番号24)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号25)を含むLCDR1領域、配列KVSNRFS(配列番号26)を含むLCDR2領域及び配列FQGSHVPYT(配列番号27)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む抗体又は抗体断片と同じCD47エピトープに結合する。一態様では、前記抗体又はその断片は、配列番号28、配列番号30及び配列番号32からなる群から選択される重鎖可変領域と、配列番号29、配列番号31及び配列番号33からなる群から選択される軽鎖可変領域と、を含む。
【0103】
いくつかの態様では、抗CD47抗体は、CD47への結合について配列NYNMH(配列番号22)を含むHCDR1領域、配列TIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号23)を含むHCDR2領域及び配列GGYRAMDY(配列番号24)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号25)を含むLCDR1領域、配列KVSNRFS(配列番号26)を含むLCDR2領域及び配列FQGSHVPYT(配列番号27)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む抗体又はその抗体断片と競合する。一態様では、前記抗体又はその断片は、配列番号28、配列番号30及び配列番号32からなる群から選択される重鎖可変領域と、配列番号29、配列番号31及び配列番号33からなる群から選択される軽鎖可変領域と、を含む。
【0104】
いくつかの態様では、その断片の抗CD47抗体は、配列NYNMH(配列番号22)を含むHCDR1領域、配列TIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号23)を含むHCDR2領域及び配列GGYRAMDY(配列番号24)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号25)を含むLCDR1領域、配列KVSNRFS(配列番号26)を含むLCDR2領域及び配列FQGSHVPYT(配列番号27)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、配列番号28、配列番号30及び配列番号32からなる群から選択される重鎖可変領域と、配列番号29、配列番号31及び配列番号33からなる群から選択される軽鎖可変領域と、を含む。
【0105】
一態様では、抗CD47抗体又はその断片は、配列番号30の重鎖可変領域と、配列番号31の軽鎖可変領域と、を含む。別の態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、配列番号34の全長重鎖と、配列番号35の全長軽鎖と、を含む。
【0106】
いくつかの態様では、その断片の抗CD47抗体は、配列NYNMH(配列番号22)のHCDR1領域、配列TIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号23)のHCDR2領域及び配列GGYRAMDY(配列番号24)のHCDR3領域を含む重鎖可変領域と、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号25)のLCDR1領域、配列KVSNRFS(配列番号26)のLCDR2領域及び配列FQGSHVPYT(配列番号27)のLCDR3領域を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0107】
一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQGLEWIGTIYPGNDDTSYNQKFKDKATLTADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号28)の重鎖可変領域と、
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYHCFQGSHVPYTFGGGTKVEIK(配列番号29)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0108】
一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号30)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIK(配列番号31)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0109】
一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWIGTIYPGNDDTSYNQKFKDRATLTADKSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号32)の重鎖可変領域と、
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYHCFQGSHVPYTFGQGTKLEIK(配列番号33)の軽鎖可変領域と、を含む。
【0110】
一態様では、前記抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号34)の重鎖と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号35)の軽鎖と、を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、適切な抗CD47抗体は、結合時にCD47を活性化しない。適切な抗体の非限定例としては、クローンB6H12、5F9、8B6及びC3が挙げられる(例えば、本明細書中で参照により具体的に組み込まれる、国際公開第2011/143624号パンフレットに記載のとおり)。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、ヒトIgG Fc領域、例えばIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4定常領域を含む。一実施形態では、IgG Fc領域はIgG4定常領域である。IgG4ヒンジは、アミノ酸置換S241Pにより安定化され得る(本明細書中で参照により具体的に組み込まれるAngal et al.(1993)Mol.Immunol.30(1):105-108を参照)。
【0113】
CD19に特異的な抗体又は抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドの治療的有効用量で対象を処置するための方法が提供される。
【0114】
治療的有効用量の適切な投与は、単回用量の投与を伴い得るか、又は毎日、週2回、週1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、年1回などの、用量の投与を伴い得る。いくつかの場合において、漸増濃度(即ち用量増量)の2回以上の投与として治療的有効用量が投与され、(i)用量の全てが治療的用量であるか又は(ii)治療用量以下の用量(又は2回以上の治療用量以下の用量)が最初に与えられ、前記漸増によって治療用量が達成される。
【0115】
CD19に特異的な抗体又は抗体断片又はSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドの初回用量は、注入直後に一定期間、血球凝集を引き起こし得る。理論により縛られるものではないが、多価CD47結合剤の初回用量は、その薬剤に結合されるRBCの架橋連結を生じさせ得ると考えられる。本発明の特定の一実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを初回用量で、及び任意選択的に続く用量で、ある期間にわたり、及び/又はRBC及び薬剤の高い局所濃度がある血液学的微小環境の可能性を低下させる濃度で、患者に注入する。
【0116】
いくつかの実施形態では、CD47結合剤の初回用量は、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、少なくとも約4時間、少なくとも約4.5時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間又はそれを超える時間にわたり注入される。いくつかの実施形態では、初回用量は、約2.5時間~約6時間;例えば約3時間~約4時間にわたり注入される。いくつかのこのような実施形態では、注入液中の薬剤の用量は、約0.05mg/ml~約0.5mg/ml;例えば約0.1mg/ml~約0.25mg/mlである。
【0117】
投与量及び頻度は、患者において抗CD47抗体及び/又はさらなる薬剤(例えば抗CD19抗体)の半減期に依存して変動し得る。例えば抗体断片の使用において、抗体複合体の使用において、SIRPα試薬の使用において、可溶性CD47ペプチドの使用においてなど、このような指針が活性薬剤の分子量に対して調整されることが当業者により理解されよう。投与量は、投与、例えば鼻腔内、吸入などの局所投与、又は全身投与、例えばi.m、i.p.、i.v.、s.c.などのためにも変更され得る。
【0118】
本発明の特定の一実施形態では、抗CD47抗体は、初回用量において、及び任意選択的に続く用量において、ある時間にわたり及び/又はRBC及び薬剤の高い局所濃度がある血液学的微小環境の可能性を低下させる濃度で、患者に注入される。本発明のいくつかの実施形態では、抗CD47抗体の初回用量は、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、少なくとも約4時間、少なくとも約4.5時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間又はそれを超える時間にわたり注入される。いくつかの実施形態では、初回用量は、約2.5時間~約6時間;例えば約3時間~約4時間の時間にわたり注入される。いくつかのこのような実施形態では、注入液中の薬剤の用量は、約0.05mg/ml~約0.5mg/ml;例えば約0.1mg/ml~約0.25mg/mlである。
【0119】
投与方法
SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する1つ又は複数のポリペプチド及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片は、あらゆる順序で又は同時に対象に投与され得る。同時である場合、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチド及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片は、静脈内又は皮下注射などの単回の統合された形態で又は複数の形態で、例えば複数の静脈内又は皮下注入、s.c、注射として提供され得る。SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチド及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片は、一緒に又は個別に、1つのパッケージで又は複数のパッケージに充填され得る。SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチド及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片のうち1つ又は全てが複数回投与で与えられ得る。同時ではない場合、複数回投与間のタイミングは、約1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月又は約1年と同程度に変動し得る。本開示のSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチド及び/又はCD19に特異的な抗体又は抗体断片及びそれらを含む医薬組成物は、キットとして包装され得る。キットは、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチド及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片及びそれらを含む組成物の使用に対する説明書(例えば書面の説明書)を含み得る。
【0120】
いくつかの場合において、癌を処置する方法は、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する治療的有効量のポリペプチド及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片を対象に投与することを含み、この投与は癌を処置する。いくつかの実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する治療的有効量のポリペプチド及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片は、少なくとも約10秒、30秒、1分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、8時間、12時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月又は1年にわたり投与される。
【0121】
本明細書中に記載の方法は、組成物の治療的有効用量、即ちSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチド及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片の治療的有効用量の投与を含み、組成物は、上記のように、標的とされる細胞を実質的に除去するために十分な量で患者に投与される。本組成物の単回又は複数回投与は、患者により必要とされ、許容されるように、投与量及び頻度に依存して投与され得る。処置のために使用される特定の用量は、哺乳動物の医学的な状態及び病歴並びに年齢、体重、性別、投与経路、効率などの他の要因に依存する。
【0122】
実施形態
本開示は、癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供する。
【0123】
一態様では、本開示は、癌の処置での使用のためのCD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、癌は血液癌である。一実施形態では、血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、血液癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0124】
特定の一実施形態では、本開示は、癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、CD19に特異的な前記抗体又は抗体断片は9mg/kgで投与される。代替的な実施形態では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は12mg/kgで投与される。また他の実施形態では、15mg/kg又はそれを超える。
【0125】
実施形態では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、細胞傷害活性を有する。実施形態では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、ADCC誘発活性を有する定常領域を含む。実施形態では、CD19に特異的な抗体はADCCを誘導する。
【0126】
特定の実施形態では、本開示は、癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、この組み合わせの構成成分、CD19に特異的な抗体又は抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは個別に投与される。一実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、CD19に特異的な抗体又は抗体断片の投与前に投与される。一実施形態では、CD19に特異的な抗体又は抗体断片は、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドの投与前に投与される。実施形態では、この組み合わせの構成成分は、同時に、患者において両構成成分(薬物)が活性である時間に投与される。実施形態では、この組み合わせの構成成分は、一緒に、物理的に又は時間的に、の何れかで、同時に、別個に又は続いて、投与される。実施形態では、この組み合わせの構成成分は同時に投与される。
【0127】
特定の実施形態では、本開示は、癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、抗CD19抗体は、週1回、隔週又は月1回投与される。
【0128】
特定の実施形態では、本開示は、癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、CD19に特異的な前記抗体又は抗体断片は12mg/kgの濃度で投与される。
【0129】
特定の実施形態では、本開示は、癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、CD19に特異的な前記抗体又は抗体断片は、第1日における第1の投与後、週1回、隔週又は月1回投与され、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、第8日に初回用に投与される。さらなる実施形態では、第1日における第1の投与後の抗CD19抗体又はその抗体断片は、最初の3ヶ月にわたり週1回及び少なくとも次の3ヶ月にわたり隔週で、投与される。
【0130】
一態様では、本開示は、血液癌患者の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片を提供し、前記血液癌患者は非ホジキンリンパ腫を有し、前記抗CD19抗体又はその抗体断片は、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせて投与される。
【0131】
一態様では、本開示は、血液癌患者の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片を提供し、前記血液癌患者は非ホジキンリンパ腫を有し、前記抗CD19抗体又はその抗体断片は、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせて投与される。一実施形態では、血液癌患者は非ホジキンリンパ腫を有し、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0132】
一実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせた血液癌患者の処置での使用のための抗CD19抗体又はその抗体断片は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。
【0133】
さらなる実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせた血液癌患者の処置での使用のための抗CD19抗体又はその抗体断片は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の可変重鎖と、配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の可変軽鎖と、を含む。
【0134】
本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体又はその抗体断片は、ヒト、ヒト化又はキメラ抗体又は抗体断片である。本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体又はその抗体断片は、IgGアイソタイプのものである。別の実施形態では、抗体又は抗体断片は、IgG1、IgG2又はIgG1/IgG2キメラである。本開示の別の実施形態では、抗CD19抗体のアイソタイプは、抗体依存性細胞傷害を促進するために改変される。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖定常領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fcの付番は、KabatでのようなEUインデックスに従う。別の実施形態では、本抗体は、IgG1、IgG2又はIgG1/IgG2であり、抗CD19抗体のキメラ重鎖定常領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fc付番はKabatでのようなEUインデックスに従う。
【0135】
さらなる実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせた血液癌患者の処置での使用のための抗CD19抗体は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)を有する重鎖と、配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を有する軽鎖と、を含む。
【0136】
一実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせた血液癌患者の処置での使用のための抗CD19抗体又はその抗体断片は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の可変重鎖と、配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の可変軽鎖と、を含むか、又は、配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含む。
【0137】
一実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせた血液癌患者の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の可変重鎖と、配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の可変軽鎖と、を含むか、又は配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含み、抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fc付番は、KabatでのようなEUインデックスに従う。
【0138】
さらなる実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせた血液癌患者の処置での使用のための抗CD19抗体又はその抗体断片は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)を有する重鎖と、配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を有する軽鎖と、を含むか、又は、配列番号7の重鎖及び配列番号8の軽鎖と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性を有する重鎖及び軽鎖を含む。
【0139】
さらなる実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせた血液癌患者の処置での使用のための抗CD19抗体又はその抗体断片は、配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)を有する重鎖と、配列
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を有する軽鎖と、を含むか、又は、配列番号7の重鎖及び配列番号8の軽鎖と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性を有する重鎖及び軽鎖を含み、抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、Fc付番は、KabatでのようなEUインデックスに従う。
【0140】
一実施形態では、本開示は、抗CD19抗体又はその抗体断片を提供し、前記抗CD19抗体又はその抗体断片は、12mg/kgの濃度で投与される。
【0141】
さらなる実施形態では、抗CD19抗体又はその抗体断片は、週1回、隔週又は月1回投与される。さらなる実施形態では、抗CD19抗体又はその抗体断片は、最初の3ヶ月にわたり週1回投与され、少なくとも次の3ヶ月にわたり隔週で投与される。さらなる実施形態では、抗CD19抗体又はその抗体断片は、最初の3ヶ月にわたり週1回投与される。さらなる実施形態では、抗CD19抗体又はその抗体断片は、最初の3ヶ月にわたり週1回投与され、少なくとも次の3ヶ月にわたり隔週で投与される。別の実施形態では、抗CD19抗体又はその抗体断片は、最初の3ヶ月にわたり週1回投与され、次の3ヶ月にわたり隔週で投与され、その後月1回、投与される。また別の実施形態では、抗CD19抗体又はその抗体断片は、最初の3ヶ月にわたり週1回投与され、次の3ヶ月にわたり隔週で投与され、その後月1回投与される。
【0142】
本開示は、癌の処置での使用のためのCD19に特異的な抗体又は抗体断片を提供し、CD19に特異的な前記抗体又は抗体断片は、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせて投与される。
【0143】
本開示は、癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供する。
【0144】
SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチド(例えば抗CD47抗体又は抗体断片)の治療的有効用量は、使用される特異的な薬剤に依存し得るが、通常は、約2mg/kg体重以上、約4mg/kg体重以上、約6mg/kg体重以上、約8mg/kg体重以上、約10mg/kg体重以上、約12mg/kg体重以上、約14mg/kg体重以上、約16mg/kg体重以上、約18mg/kg体重以上、約20mg/kg体重以上、約25mg/kg以上、約30mg/kg以上、約35mg/kg以上、約40mg/kg以上、約45mg/kg以上、約50mg/kg以上、又は約55mg/kg以上、又は約60mg/kg以上、又は約65mg/kg以上又は約70mg/kg以上である。
【0145】
いくつかの実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドの治療的有効用量は、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、45、60又は70mg/kgである。いくつかの実施形態では、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドの治療的有効用量は、20~60mg/kgである。
【0146】
投与される組成物の特定の血清レベルを達成及び/又は維持するために必要とされる用量は、投与間の時間量に対して比例し、投与される用量の数に反比例する。従って、投与頻度が上昇するに従い、必要とされる用量が減少する。用量ストラテジーの最適化は、当業者により容易に理解され、実施される。代表的な治療レジメは、2週間に1回又は月1回又は3~6ヶ月ごとに1回の投与を伴う。本発明の治療的実体は通常、複数の場合において投与される。単一投与量間の間隔は、週1回、月1回又は年1回であり得る。間隔は、患者における治療実体の血液レベルを測定することによって示されるように、不規則でもあり得る。或いは、本発明の治療実体は持続放出処方として投与され得、この場合、より低頻度の投与が使用される。投与量及び頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期に依存して変動する。
【0147】
維持用量は、治療的有効用量であることが意図される用量である。例えば、治療的有効用量を決定するための実験において、異なる対象に対して複数の異なる維持用量が投与され得る。そのようなものとして、維持用量のいくつかは治療的有効用量であり得、他は治療的用量以下であり得る。
【0148】
さらに他の実施形態では、本発明の方法は、癌腫、血液癌、黒色腫、肉腫、神経膠腫などを含め、癌の腫瘍増殖、腫瘍転移又は腫瘍浸潤を処置するか、軽減するか又は予防することを含む。予防的な適用の場合、医薬組成物又は薬剤は、疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動学的な症状、その合併症及び疾患の進行中に呈する中間の病理学的表現型を含め、リスクをなくすか若しくは低下させる、重症度を低下させるか、又は疾患の発症を遅延させるために十分な量で疾患に罹患し易いか又はそうでなければ疾患のリスクがある患者に投与される。
【0149】
本明細書中に記載の組み合わせ薬剤の毒性は、細胞培養物又は実験動物において標準的な薬学的手順により、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)又はLD100(集団の100%に対して致死的な用量)を決定することにより、判定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比率は、治療指標である。これらの細胞培養物アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用について毒性ではない投与量の範囲を組み立てることにおいて使用され得る。本明細書中に記載のタンパク質の投与量は、好ましくは、毒性が僅かであるか又は毒性がない有効用量を含む循環濃度の範囲内に入る。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に依存してこの範囲内で変動し得る。正確な処方、投与経路及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択され得る。
【0150】
癌の処置のための本発明の組み合わせ薬剤の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか又は動物であるか、投与されている他の医薬品及び処置が予防的であるか又は治療的であるかを含む多くの異なる要因に依存して変動する。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマなどのコンパニオン動物、ウサギ、マウス、ラットなどの実験哺乳動物も処置され得る。安全性及び有効性を最適化するために処置投与量を滴定し得る。
【0151】
本開示は、癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む、医薬の組み合わせを提供する。
【0152】
本開示は、癌の処置での使用のためのCD19に特異的な抗体又は抗体断片を提供し、CD19に特異的な前記抗体又は抗体断片は、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせて投与され、投与する段階は、同時に組み合わせて、順序正しく、又は逆の順序で、CD19に特異的な抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを投与することにより行われる。
【0153】
別の実施形態では、本開示は、癌の処置のための薬剤を調製するための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせの使用を提供する。別の実施形態では、本開示は、癌の処置のための薬剤の調製のためのCD19に特異的な抗体又は抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせの使用を提供する。
【0154】
別の実施形態では、本開示は、組み合わせてCD19に特異的な抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを対象に投与する段階を含む、癌の処置での使用のための方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、組み合わせてCD19に特異的な抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを対象に投与する段階を含む、癌の処置での使用のための方法を提供し、投与する段階は、同時に組み合わせて、正しい順序で又は逆の順序で、CD19に特異的な抗体及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを投与することにより行われる。
【0155】
組み合わせ
本開示は、血液癌の処置での使用のための、CD19に特異的な抗体又は抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと組み合わせた、抗CD19抗体又はその抗体断片を提供し、前記抗CD19抗体又はその抗体断片及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、1つ以上の医薬品と組み合わせて投与される。本開示の一実施形態では、前記抗CD19抗体又はその抗体断片及びCD19に特異的な抗体又は抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、医薬品と組み合わせて投与される。本開示の別の実施形態では、前記抗CD19抗体又はその抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断する前記ポリペプチドは、1つ以上のさらなる医薬品と組み合わせて投与される。一態様では、前記医薬品は、さらなる医薬品である。本開示の一実施形態では、前記医薬品は、生物学的又は化学療法剤である。本開示の別の実施形態では、前記医薬品は、治療抗体又は抗体断片、ナイトロジェンマスタード、プリン類似体、サリドマイド類似体、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤又はブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である。さらなる実施形態では、前記医薬品は、リツキシマブ、R-CHOP、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、イホスファミド、メルファラン、ベンダムスチン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、フルダラビン、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドマイド、イデラリシブ、デュベリシブ、コパンリシブ、イブルチニブ又はベネトクラクスである。
【0156】
別の実施形態では、本開示は、血液癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドを提供し、前記抗CD19抗体又はその抗体断片及びSIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドは、リツキシマブ、R-CHOP、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、イホスファミド、メルファラン、ベンダムスチン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、フルダラビン、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドマイド、イデラリシブ、デュベリシブ、コパンリシブ、イブルチニブ又はベネトクラクスと組み合わせて投与される。
【0157】
一態様では、本開示は、癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせを提供し、前記医薬の組み合わせは相乗効果を有する。
【0158】
いくつかの実施形態では、前記相乗効果は、全生存期間(OS)の改善、無増悪生存期間(PFS)の延長、奏効率(RR)の上昇又は癌細胞クリアランスの向上若しくは促進である。
【0159】
いくつかの実施形態では、前記相乗効果は、癌細胞死の増加、癌細胞増殖の低減又は非ホジキンリンパ腫細胞の死滅の増加である。いくつかの他の実施形態では、このような非ホジキンリンパ腫細胞は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DBLCL)、バーキットリンパ腫又はマントル細胞リンパ腫(MCL)由来の細胞株である。いくつかの他の実施形態では、このような非ホジキンリンパ腫細胞は、Raji、RCK8、Toledo、U2932、CA46、JVM-2、Ramos、Daudi又はSU-DHL-6細胞である。
【0160】
いくつかの実施形態では、前記相乗効果は、リンパ腫マウスモデルにおける、生存率上昇、腫瘍体積の縮小又は腫瘍成長の低減である。いくつかの他の実施形態では、このようなリンパ腫マウスモデルは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DBLCL)、バーキットリンパ腫又はマントル細胞リンパ腫(MCL)由来の細胞を使用した異種移植モデルである。いくつかの他の実施形態では、このようなリンパ腫マウスモデルは、Raji、RCK8、Toledo、U2932、CA46、JVM-2、Ramos、Daudi又はSU-DHL-6細胞を用いた異種移植モデルである。
【0161】
別の実施形態では、癌の処置での使用のための抗CD19抗体又はその抗体断片と、SIRPα-CD47自然免疫チェックポイントを遮断するポリペプチドと、を含む医薬の組み合わせは、相乗的な組み合わせである。
【0162】
一態様では、本開示は、血液癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と、抗CD47抗体又はその抗体断片と、を含む医薬の組み合わせを提供し、抗CD19抗体又はその抗体断片は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)の軽鎖可変領域と、を含み、抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号30)の重鎖可変領域と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIK(配列番号31)の軽鎖可変領域と、を含み、前記医薬の組み合わせは、相乗効果を有する。一実施形態では、血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含む。別の実施形態では、前記抗CD19抗体又はその抗体断片及び前記抗CD47抗体又はその抗体断片を含む前記医薬の組み合わせは、相乗的な組み合わせである。別の実施形態では、血液癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。別の実施形態では、血液癌は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0163】
一態様では、本開示は、血液癌の処置での使用のための、抗CD19抗体又はその抗体断片と抗CD47抗体又はその抗体断片を含む医薬の組み合わせを提供し、抗CD19抗体又はその抗体断片は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)の重鎖領域と、
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)の軽鎖領域と、を含み、抗CD47抗体又はその断片は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号34)の重鎖と、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号35)の軽鎖と、を含み、前記医薬の組み合わせは相乗効果を有する。別の実施形態では、前記抗CD19抗体又はその抗体断片と、前記抗CD47抗体又はその抗体断片と、を含む前記医薬の組み合わせは、相乗的な組み合わせである。一実施形態では、血液癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。
【0164】
別の実施形態では、血液癌は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。さらなる実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。別の実施形態では、血液癌はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0165】
抗体配列
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
【表4】
【0170】
【表5】
【実施例
【0171】
実施例1:インビトロでのCD47/SIRPαブロッキング抗体と組み合わせたタファシタマブ(抗CD19mAb)の有効性
CD47/SIRPα遮断と組み合わせたMOR208介在性ADCP活性
インビトロアッセイで、MOR208(タファシタマブ)介在性食作用がCD47/SIRPα遮断においてさらに促進され得るか否かについてこれを試験した。抗CD47(クローンB6H12)機能性抗体と組み合わせたタファシタマブ(抗CD19mAb)の有効性は、抗体依存性細胞貪食(ADCP)アッセイにおいて決定され、THP-1単球性細胞株又はM1及びM2マクロファージをエフェクター細胞とした。この目的に対して、次の癌細胞株の特徴を調べた:3種類のバーキットリンパ腫細胞株(Raji、Ramos及びDaudi)及び1種類のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株(SU-DHL-6)。これらの癌細胞上で、CD19及びCD47抗原発現レベルを定量した(図1)。Raji細胞は、CD19の最大レベルを発現したが、Ramos、Daudi及びToledo細胞もCD19の高い発現を示す。SU-DHL-6細胞株は、CD19発現が低い唯一の細胞株であった。全ての分析した癌細胞株上でCD47が発現され、SU-DHL-6のみが低発現であることが示され得る。
【0172】
エフェクター細胞としてTHP-1単球性癌細胞を使用したADCPアッセイにおいて、Ramos、Raji、Daudi及びSU-DHL-6癌細胞株を試験した。E:T(エフェクター:標的)比1:2でTHP-1細胞と一緒に癌細胞を播種し、3nM抗CD47mAb(クローンB6H12(図2~4))と組み合わせたタファシタマブの滴定シリーズと一緒に、ADCPアッセイにおいて同時温置した。フローサイトメトリーに基づく食作用読み取りを用いてタファシタマブ介在性ADCPにおける抗CD47抗体の有益性を評価し、2つの異なる色素でエフェクター細胞及び標的細胞を染色した(CFSEでTHP-1細胞、及びCell Trace(商標)Violetで癌細胞)。このように、二重陽性細胞の得られたパーセンテージは、食作用のパーセンテージに相当した。
【0173】
さらに、エフェクター細胞として使用されたM1及びM2マクロファージとともにADCPアッセイにおいてRamos癌細胞株を試験した。M1及びM2の世代に対して、マクロファージCD14+単球を健康なボランティアの全血から単離し、6日間にわたり50ng/mL M-CSFを用いてマクロファージに成熟させた。マクロファージは、48時間にわたる10ng/mL IFN-γ及び10ng/mL LPSの添加により、M1表現型に対して極性化されたか、又はM2表現型を維持するために50ng/mL M-CSFでの処置を継続した。マクロファージ表現型マーカーCD80、CD86、CD163及びCD206の発現レベルを分析し、フローサイトメトリーにより確認した。E:T(エフェクター:標的)比1:2でRamos細胞をM1又はM2マクロファージと一緒に播種し、3nM抗CD47mAb(クローンB6H12)と組み合わせたタファシタマブの滴定シリーズと一緒に同時温置した。MOR208及び抗CD47mAb(クローンB6H12)での処置の3時間後にフローサイトメトリーによってADCPを分析した(図8)。
【0174】
結果
ADCPアッセイは、MOR208介在性食作用が3nMの抗CD47mAb(クローンB6H12)との組み合わせ時にさらに促進され得ることを示した(図2~4)。
【0175】
Ramos細胞の食作用における同等の上昇が、M1-並びにM2-極性化マクロファージの両方に対するタファシタマブ及びCD47/SIRPαチェックポイント遮断の組み合わせに対して観察された(図8)。インビトロで、MOR208をCD47/SIRPαチェックポイント遮断と組み合わせた際に、M1-並びにM2-極性化マクロファージのADCP活性が上昇した。全体的に、本組み合わせにより推進される貪食活性の上昇は、M1-極性化マクロファージに対するものよりもM2に対して顕著であった。
【0176】
実施例2:インビボでの抗CD47抗体と組み合わせたタファシタマブの有効性
抗CD47抗体(クローンB6H12)及びタファシタマブの組み合わせ効果を評価するために、2種類の皮下(MOR208P015及びMOR208P016)及び1種類の播種性生存腫瘍モデル(MOR208P014)の何れかでRamosバーキットリンパ腫細胞を用いて3つの有効性試験を行った。
【0177】
Ramos細胞上のヒトCD47(hCD47)とマウスマクロファージ及び好中球で発現されるマウスSIRPα(mSIRPα)との間で結合親和性に差があるので(Kwong et al.2014;Iwamoto et al.2014)、2つの異なる遺伝的マウス系列において有効性を試験した。試験MOR208P014及びMOR208P015において、ヒトCD47-SIRPαチェックポイント相互作用を入念に模倣するために記載される、Balb/c遺伝学的バックグラウンド(SCIDマウス)を使用し、試験MOR208P016において、NOD-SCID遺伝的系列を試験した。NOD-SCIDは、CD47遮断化合物を試験するために文献(Chao et al.2010a;Liu et al.2015;Buatois et al.2018;Kauder et al.2018)において最も広く使用され、mSIRPαチェックポイント結合親和性に対して10倍高いhCD47を有することが報告されており、過剰な抗腫瘍効果をもたらす可能性がある(Huang et al.2017)。
【0178】
単一及び組み合わせた有効性に対する試験読み取りは、腫瘍体積(MOR208P015及びMOR208P016)又は動物生存率(MOR208P014)の何れかであった。
【0179】
方法:インビボ試験-実験の概要及び分析
5~8週齢の雌、C.B-17SCID(CB17/lcr-Prkdcscid/lcrlcoCrl;試験MOR208P014;MOR208P015において)、NOD-SCID(NOD.CB17-Prkdcscid/J;試験MOR208P016において)は個々の業者から購入した(MOR208P015及びMOR208P016:Charles River Laboratories;MOR208P014:Envigo)。12時間明/暗細サイクルで、IVCケージ(type II、ポリスルホンケージ)にケージあたり4~5匹で動物を収容し、実験前に1週間、実験室に順化させた。全ての動物にろ過水及びヌードマウス餌(プラセボ固形試料;Sniff、品目番号V1244-000)を含有する特別なビヒクル又は試験品を与えた。
【0180】
全てのインビボ試験におけるRamos細胞の細胞培養物
懸濁培養において20%ウシ胎児血清、非必須アミノ酸(2mM L-グルタミン)及びピルビン酸ナトリウムを添加したRPMI1640中でRamosヒトバーキットリンパ腫細胞を培養した。注射のために十分な細胞数が確立されるまで、細胞を連続的に継代した。マウスへの細胞皮下接種の前及び後に、細胞を数え、0.25%トリパンブルー排除アッセイを使用して生存能を評価した。
【0181】
MOR208P014-Ramos播種生存モデルにおける有効性試験
腫瘍細胞接種及び無作為化
SCIDマウスにおける適切な同所性腫瘍細胞取得(take)のために、腫瘍細胞接種の2日前に開始して、腹腔内注射を介して1日2回、12時間あけて25mg/kgシクロホスファミドで動物を処置した。細胞接種日(第0日)に、マウスの体重を測定し、(第0日の体重測定に基づき)体重により15の群に無作為に分け、尾部静脈に(100μl中の)1x10個のRAMOS細胞を接種した。
【0182】
処置及び有効性パラメーターの評価
細胞接種の5日後に、抗体処置を開始した。ここで、週に3回、腹腔内注射によりCD47抗体(クローンB6H12;4mg/kg;BioXCell;カタログ番号:BE0019-1;ロット番号:655117M2)を投与した。タファシタマブ(3mg/kg)を週2回静脈内投与し、ビヒクル処置群には、リン酸緩衝食塩水を、これも週2回、腹腔内注射した。全部で3週間、記載された試験品での処置を行った。
【0183】
試験の期間を通して、体重減少、疼痛及び窮迫の徴候、外見及び挙動など、病的状態の徴候を示すことについて動物を入念に監視し、これらは全て動物の試験打ち切りの明らかな原因である。動物生存をKaplan及びMaierグラフにおいてさらにまとめた。
【0184】
統計学的評価のために、ログランク(Mantel-Cox)検定を使用した。GraphPad Prismを使用して全ての統計学的分析を行った。0.05未満のp-値を有意とみなした。
【0185】
MOR208PQ15-Ramos-SCID皮下腫瘍モデルにおける有効性試験
腫瘍細胞接種及び無作為化
C.B-17SCIDマウスへ23ゲージ1/2針を使用して、5x10個のRamos腫瘍細胞(Cultrex基底膜における)を右側腹部に皮下移植した。注射体積はマウス1匹あたり0.2mlであった。第0日として腫瘍移植の日付を記録した。成長する腫瘍が70~150mmのサイズに到達したら、それらの個々の処置群において動物を無作為に分け、処置を開始した。
【0186】
処置及び有効性パラメーターの評価
抗体処置に関して、タファシタマブ(10mg/kg)を週2回投与し、抗CD47(クローンB6H12;4mg/kg;BioXCell;カタログ番号:BE0019-1;ロット番号:655117M2)を週3回投与した。ビヒクル処置群にリン酸緩衝食塩水を週2回注射した。全ての個々の処置は、最長4週間、腹腔内注射を介して行った。
【0187】
第0日に開始して週2回、腫瘍サイズを測定した。楕円体の球(ellipsoid sphere)に対する式(lxw2)/2=mm3を使用して腫瘍体積を計算し、ここでl及びwは、各測定で回収したより大きい及びより小さい寸法を指し、単位密度を仮定する。最初に毎日、処置の初日に体重の変化を監視し、最後の処置の1日後に終了した。瀕死動物、過剰な体重減少がある動物(体重の>25%)又は総腫瘍負荷が3,000mmである動物は、この試験の終了前に打ち切りとした。
【0188】
腫瘍成長の遅延の統計学的評価のために、腫瘍体積が3000mmに到達するまでの時間を示すKaplan及びMeierグラフを作成した。統計学的な差を評価するために、ログランクMantel-Cox検定を使用した。統計学的分析は全て、GraphPad Prismを使用して行った。0.05未満のp-値を有意とみなした。
【0189】
MOR208P016:NOD-SCIDマウスにおけるRamos皮下モデル
腫瘍細胞接種及び無作為化
雌C.B-17SCIDマウスに対して、23ゲージ1/2針を使用することによって、50%(v/v)マトリゲル(ref.356237、Corning)を含有する200μlのRPMI 1640中の1x10個のRamos腫瘍細胞を右側腹部に皮下注射した。腫瘍が100~200mmの平均体積に到達したら、動物を無作為に分け、個々の抗体及びビヒクル対照での処置直後に開始した。
【0190】
処置及び有効性パラメーターの評価
タファシタマブ(10mg/kg、週2回)、抗CD47抗体(クローンB6H12;4mg/kg;週3回;BioXCell;カタログ番号:BE0019-1;ロット番号:655117M2)及びビヒクル(リン酸緩衝食塩水)を最長4週間、腹腔内投与した。
【0191】
腫瘍細胞注射日に開始して、腫瘍を週2回測定した。楕円体の球(ellipsoid sphere)に対する式(lxw2)/2=mmを使用することによって、腫瘍体積を計算した。体重の変化は、最初は毎日監視し、初日に開始して処置の最終日に終了した。瀕死動物、過剰な体重減少がある動物(体重の>25%)又は総腫瘍負荷が2,000mmである動物は、この試験の終了前に打ち切りとした。
【0192】
腫瘍成長の遅延の統計学的評価のために、腫瘍体積が1500mmに到達するまでの時間を示すKaplan及びMeierグラフを作成した。統計学的な差を評価するために、ログランクMantel-Cox検定を使用した。全ての統計学的分析はGraphPad Prismを使用して行った。0.05未満のp-値を有意とみなした。
【0193】
インビボ試験の結果
播種性生存モデルにおけるMOR208及び抗CD47抗体の組み合わせの有効性(MOR208P014)
MOR208処置は、ビヒクル対照と比較して最大40%、中央値生存率を顕著に改善した(p<0.0001****)。さらに、単剤療法における抗CD47(クローンB6H12)抗体でのCD47-SIRPαチェックポイントの遮断により、ビヒクル対照と比較して、動物生存率が最大3倍、顕著に改善した(p<0.0001****)。終末期まで15匹の動物のうち11匹が試験に残った。MOR208及び抗CD47の組み合わせに関して、この傾向はさらにより顕著であった。試験終了まで全15匹の動物が生き残った(B6H12対MOR208及びB6H12:p=0.0348;MOR208対MOR208及びB6H12:p<0.0001****)。組み合わせ処置群の全動物が試験において生き残ったので、生物統計学の評価は、この組み合わせ効果の検出力(power)に関して行い得なかった。インビボ試験MOR208P014からのデータを図5でまとめる。
【0194】
Ramos-SCID皮下腫瘍におけるMOR208組み合わせ有効性(MOR208P015)
方法セクションに記載のように、Kaplan-Meier曲線を使用することによって、腫瘍成長遅延の評価を行った。ビヒクル対照と比較して、MOR208単剤療法については、腫瘍成長の小規模だが依然として顕著な遅延が検出された(ビヒクル対MOR208:p=0.0331)。さらに、抗CD47mAb(クローンB6H12)単剤療法は、ビヒクル対照と比較して最大12%の、腫瘍成長の顕著な遅延を示した(ビヒクル対B6H12:p=0.0003***)。MOR208及び抗CD47mAbの組み合わせの場合、腫瘍成長の遅延がさらにより顕著であった。MOR208単剤療法と比較した腫瘍負荷量の20%の低下及び抗CD47単剤療法と比較した8%の低下が検出された。しかし、この効果は、抗CD47mAb単剤療法対照と比較して有意ではない(p=0.0985)。インビボ試験MOR208P015からのデータを図6でまとめる。
【0195】
Ramos-NOD-SCID皮下腫瘍におけるMOR208組み合わせ有効性(MOR208P016)
試験MOR208P015と同様に、Kaplan-Meier曲線によって腫瘍成長の遅延をまとめる。MOR208単剤療法は、ビヒクル対照と比較して最大11%、腫瘍成長を有意に遅延させた(ビヒクル対MOR208:p=0.0095**)。このモデルにおける抗CD47mAb(クローンB6H12)単剤有効性は非常に顕著であり、ビヒクル対照と比較して腫瘍成長の78%の遅延が観察された(ビヒクル対B6H12:p<0.0001*****)。しかし、単剤療法の有効性はMOR208との組み合わせでより上昇し、個々の単剤療法対照と比較して、非常に有意な効果があった(MOR208対MOR208及びB6H12 p<0.0001****;B6H12対MOR208及びB6H12:p=0.0017**)。インビボ試験MOR208P016からの全データを図7でまとめる。
【0196】
実施例3:マグロリマブ(抗CD47抗体)と組み合わせたタファシタマブの有効性
この試験は、抗CD19抗体(タファシタマブ)とマグロリマブとの組み合わせが、インビトロでB細胞リンパ腫細胞の食作用を向上させ得るか否かを評価するために設計した。
【0197】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DBLCL)、バーキットリンパ腫又はマントル細胞リンパ腫(MCL)の何れか由来の6種類の異なる細胞株を試験した。製造者の指示に従い、各細胞株をCellTrace CFSE色素で蛍光標識した。ヒト単球は、温置及びCD14-結合磁気ビーズを用いた続く精製によって、白血球が濃縮された全血から単離した。ヒト組み換えマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の存在下で7~10日間、得られた単球をインビトロで培養し、次いで回収し、同時培養前にカウントした。10μg/mlの最終濃度で、指示されるように、マグロリマブ及び/又はタファシタマブ処置と一緒に、96ウェル超低接着細胞培養プレートのウェルにおいて、100μlの体積中で50,000個のヒトマクロファージを100,000個のヒト癌細胞と同時培養することによって、貪食反応を行った。37℃で2時間、同時培養物を温置し、次に反応を停止させるために氷に移した。標識される抗CD11b抗体を使用してマクロファージを染色し、反応物をフローサイトメトリー上で分析した。貪食事象は、FMO対照に基づき、CFSE+CD11b+事象として定義した。このような二重陽性事象は、貪食されるCFSE+腫瘍細胞を有するマクロファージに対応する。食作用は、CFSE陽性のマクロファージの割合として表した。
【0198】
試験した細胞株のうち、6種類全てがマグロリマブ(抗CD47)処置のみで食作用の向上を示した。同様に、6種類全てがタファシタマブ(抗CD19)処置のみで食作用の向上を示した。6種類の細胞株のうち、4種類(Raji、RCK8、Toledo及びU2932)は、単剤処置の何れかと比較したとき、マグロリマブ及びタファシタマブの両方で処置した場合に食作用の促進を示した(図9)。6種類の細胞株のうち2種類(CA46、JVM-2)は、タファシタマブ単独と比較した場合、組み合わせの有効性の明らかな促進を示さなかった(図10)。
【0199】
まとめると、この試験は、マグロリマブ又はタファシタマブの何れかでの処置が、B細胞リンパ腫のインビトロ食作用を促進し得ること;及びB細胞リンパ腫のサブセットに対して、2つの薬物の組み合わせが何れかの薬物単独よりも強力であることを示した。これらの結果は、マグロリマブ及びタファシタマブがB細胞リンパ腫を処置するために患者において使用される場合、組み合わせ有効性を示し得るという結論と一致する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2023530499000001.app
【国際調査報告】