(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】成形性に優れた高強度鋼板及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230710BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20230710BHJP
C22C 38/14 20060101ALN20230710BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C21D9/46 G
C22C38/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578877
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2021007573
(87)【国際公開番号】W WO2021256862
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0073811
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 スン-キュ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ジュン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】ソ、 チャン-ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 ウル-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 サン-ホ
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA05
4K037EA06
4K037EA16
4K037EA17
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4K037FL01
4K037GA05
4K037JA06
(57)【要約】
本発明は、自動車構造部材用などに適した素材であって、低い降伏比とともに高い強度を有し、延性の向上により成形性に優れた高強度鋼板及びこれを製造する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、炭素(C):0.05~0.15%、シリコン(Si):0.5%以下(0%を除く)、マンガン(Mn):2.0~3.0%、チタン(Ti):0.2%以下(0%を除く)、ニオブ(Nb):0.1%以下(0%を除く)、バナジウム(V):0.2%以下(0%を除く)、モリブデン(Mo):0.5%以下(0%を除く)、リン(P):0.1%以下、硫黄(S):0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含み、
微細組織が面積分率20~45%のフェライトと、残部マルテンサイト及びベイナイトで構成され、
前記フェライトのうち未再結晶フェライトが25面積%以下の分率で存在し、平均アスペクト比(長径:短径)が1.1~2:1である、成形性に優れた高強度鋼板。
【請求項2】
前記マルテンサイトを面積分率10%以下(0%を除く)含む、請求項1に記載の成形性に優れた高強度鋼板。
【請求項3】
前記鋼板は、引張強度980MPa以上、降伏強度680MPa以下、延伸率13%以上である、請求項1に記載の成形性に優れた高強度鋼板。
【請求項4】
前記鋼板は、降伏比が0.8以下である、請求項1に記載の成形性に優れた高強度鋼板。
【請求項5】
重量%で、炭素(C):0.05~0.15%、シリコン(Si):0.5%以下(0%を除く)、マンガン(Mn):2.0~3.0%、チタン(Ti):0.2%以下(0%を除く)、ニオブ(Nb):0.1%以下(0%を除く)、バナジウム(V):0.2%以下(0%を除く)、モリブデン(Mo):0.5%以下(0%を除く)、リン(P):0.1%以下、硫黄(S):0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含む鋼スラブを加熱する段階;
前記加熱されたスラブを出口側温度Ar3以上~1000℃以下に仕上げ熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階;
前記熱延鋼板を400~700℃の温度範囲で巻き取る段階;
前記巻き取り後の前記熱延鋼板を常温まで冷却する段階;
前記冷却後に圧下率40~70%で冷間圧延して冷延鋼板を製造する段階;
前記冷延鋼板を連続焼鈍する段階;
前記連続焼鈍後に650~700℃の温度範囲で1次冷却する段階;及び
前記1次冷却後に300~580℃の温度範囲で2次冷却する段階を含み、
前記連続焼鈍段階は、加熱帯、亀裂帯、及び冷却帯が備えられた設備で行い、前記加熱帯の終了温度が前記亀裂帯の終了温度に対して10℃以上高い、成形性に優れた高強度鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記加熱帯及び前記亀裂帯の終了温度は、下記関係式を満たす、請求項5に記載の成形性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[関係式]
10≦加熱帯の終了温度-亀裂帯の終了温度(℃)≦40
【請求項7】
前記加熱帯の終了温度は790~830℃であり、前記亀裂帯の終了温度は760~790℃である、請求項5に記載の成形性に優れた高強度鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記鋼スラブを加熱する段階は、1100~1300℃の温度範囲で行う、請求項5に記載の成形性に優れた高強度鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記巻取後に冷却する段階は、平均冷却速度0.1℃/s以下(0℃/sは除く)で行う、請求項5に記載の成形性に優れた高強度鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記1次冷却は、1~10℃/sの平均冷却速度で行い、
前記2次冷却は、5~50℃/sの平均冷却速度で行う、請求項5に記載の成形性に優れた高強度鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記2次冷却後に過時効処理する段階をさらに含み、
前記過時効処理は200~800秒間行う、請求項5に記載の成形性に優れた高強度鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用素材に適した鋼に関するものであって、具体的に、成形性に優れた高強度鋼板及びこの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、各種環境規制及びエネルギー使用規制によって燃費や耐久性の向上のために高強度鋼の使用が求められている。
【0003】
特に、自動車の衝撃安定性の規制が拡大するとともに、車体の耐衝撃性の向上のためのメンバー(member)、シートレール(seat rail)及びピラー(pillar)などの構造部材は、その素材として強度に優れる高強度鋼が採用されている。このような自動車部品は、安全性、デザインに応じて複雑な形状を有し、主にプレス金型で成形して製造されることから、高強度に加えて高いレベルの成形性が要求される。
【0004】
ところで、鋼の強度が高いほど衝撃エネルギー吸収に有利な特徴を有するが、一般的に強度が高くなると延伸率が減少して成形加工性が低下するという問題点がある。また、降伏強度が過度に高い場合には、成形時に金型から素材の流入が減少して、成形性が劣るという問題がある。
【0005】
一方、自動車用素材として用いられる高強度鋼としては、代表的に二相組織鋼(Dual Phase Steel、DP鋼)、変態誘起塑性鋼(Transformation Induced Plasticity Steel、TRIP鋼)、複合組織鋼(Complex Phase Steel、CP鋼)、フェライト-ベイナイト鋼(Ferrite Bainite steel、FB鋼)などがある。
【0006】
超高張力鋼であるDP鋼は、およそ0.5~0.6水準の低い降伏比を有するため、加工が容易であり、TRIP鋼の次に高い延伸率を有するという利点がある。よって、主にドアアウター、シートレール、シートベルト、サスペンション、アーム、ホイールディスクなどに適用されている実情である。
【0007】
TRIP鋼は、0.57~0.67の範囲の降伏比を有することによって、優れた成形性(高延性)を有する特徴があり、よってメンバー、ループ、シートベルト、バンパーレールなどといった高成形性を要求する部品に適する。
【0008】
CP鋼は、低降伏比に加えて高い延伸率と曲げ加工性によりサイドパネル、アンダーボディ補強材などに適用される。FB鋼は、穴拡張性に優れて主にサスペンションロアアーム、ホイールディスクなどに適用される。
【0009】
このうち、DP鋼は主に延性に優れたフェライト及び強度の高いマルテンサイト2相組織で構成され、微量の残留オーステナイトが存在することがある。このようなDP鋼は降伏強度が低く、引張強度が高くて降伏比(Yield Ratio、YR)が低く、高い加工硬化率、高延性、連続降伏挙動、常温耐時効性、焼付硬化性などに優れた特性を有する。
【0010】
しかし、引張強度980MPa以上の超高強度を確保するためには、強度向上に有利なマルテンサイト相のような硬質相(hard phase)の分率を高める必要があり、この場合、降伏強度が上昇してプレス成形中にクラック(crack)などの欠陥が発生するという問題がある。
【0011】
一般的に、自動車用DP鋼は製鋼及び連鋳工程を介してスラブを製作した後、このスラブに対して[加熱-粗圧延-仕上げ熱間圧延]して熱延コイルを得た後、焼鈍工程を経て最終製品として製造する。
【0012】
ここで、焼鈍工程は主に冷延鋼板の製造時に行われる工程であり、冷延鋼板は熱延コイルを酸洗して表面スケールを除去し、常温で一定の圧下率で冷間圧延した後、焼鈍工程と必要に応じて追加的な粗質圧延工程を経て製造される。
【0013】
冷間圧延して得た冷延鋼板(冷延材)は、それ自体が非常に硬化した状態であり、加工性を要求する部品の製作には適合しないため、後続工程で連続焼鈍炉内の熱処理を介して軟質化させて加工性を向上させることができる。
【0014】
一例として、焼鈍工程は、加熱炉内で鋼板(冷延材)を約650~850℃に加熱した後、一定時間維持することで再結晶及び相変態現象により硬度を低下させ、加工性を改善することができる。
【0015】
焼鈍工程を経ていない鋼板は硬度、特に表面硬度が高く加工性が不足するのに対し、焼鈍工程が行われた鋼板は再結晶組織を有することで硬度、降伏点、抗張力が低くなって加工性の向上を図ることができる。
【0016】
一方、DP鋼の降伏強度を下げる代表的な方法としては、連続焼鈍時のフェライトの大きさを粗大にし、オーステナイトの大きさは小さくて均一に形成する方法が有利である。
【0017】
連続焼鈍工程は、
図1に示したように、焼鈍炉内の[加熱帯-亀裂帯-徐冷帯-急冷帯-過時効帯]を経て行われるが、このとき、加熱帯で十分な再結晶を介して微細フェライト相を形成し、この後、亀裂帯で微細フェライト相から小さくて均一なオーステナイト相を形成した後、冷却中にオーステナイトから微細なベイナイト、マルテンサイト相を形成させながらフェライト相を再結晶させる。
【0018】
高強度鋼の加工性を向上させるための従来技術として、特許文献1は組織微細化による方法を提示する。具体的にマルテンサイト相を主体とする複合組織鋼板に対して組織内部に粒径1~100nmの微細析出銅粒子を分散させる方法を開示する。しかし、この技術は良好な微細析出相粒子を得るために2~5%のCu添加を要求することから、このような多量のCuに起因する赤熱脆性が発生するおそれがあり、製造費用が過度に上昇するという問題がある。
【0019】
特許文献2は、フェライトを基地組織としてパーライト(pearlite)を2~10面積%含む組織を有し、炭・窒化物形成元素(例えば、Tiなど)の添加による析出強化及び結晶粒微細化に起因する高強度鋼板を開示している。この技術の場合、低い製造原価に対して高強度を容易に達成することができるという利点があるが、微細析出により再結晶温度が急激に上昇することになるため、十分な再結晶による高延性の確保のためには、連続焼鈍時にかなり高い温度への加熱が必要であることが分かる。また、フェライト基地に炭・窒化物を析出させて鋼を強化させた従来の析出強化鋼は、600MPa以上の高強度を得るのに限界がある。
【0020】
一方、特許文献3は、炭素を0.18%以上含有する鋼材を連続焼鈍して常温まで水冷した後、120~300℃の温度で1~15分間過時効処理を行うことでマルテンサイト体積率を80~97%に確保する技術を開示する。このような技術は、降伏強度の向上には有利であるのに対し、水冷却時の鋼板の幅方向、長さ方向の温度偏差によりコイルの形状品質が劣化し、ロールフォーミングなどの加工時の部位による材質不良、作業性低下などの問題がある。
【0021】
上述した従来技術から鑑みると、高強度鋼の成形性を向上させるためには降伏強度は下がるが、延性は向上させることができる方法の開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】日本公開特許公報第2005-264176号公報
【特許文献2】韓国公開特許公報第2015-0073844号公報
【特許文献3】日本公開特許公報第1992-289120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の一側面は、自動車構造部材用などに適した素材として、低い降伏比とともに高い強度を有し、延性の向上によって成形性に優れた高強度鋼板及びこれを製造する方法を提供することである。
【0024】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、誰でも本発明の明細書の全体内容から本発明のさらなる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一側面は、重量%で、炭素(C):0.05~0.15%、シリコン(Si):0.5%以下(0%を除く)、マンガン(Mn):2.0~3.0%、チタン(Ti):0.2%以下(0%を除く)、ニオブ(Nb):0.1%以下(0%を除く)、バナジウム(V):0.2%以下(0%を除く)、モリブデン(Mo):0.5%以下(0%を除く)、リン(P):0.1%以下、硫黄(S):0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含み、
微細組織が面積分率20~45%のフェライトと、残部マルテンサイト及びベイナイトで構成され、上記フェライトのうち未再結晶フェライトが25面積%以下の割合で存在し、平均アスペクト比(長径:短径)が1.1~2:1である成形性に優れた高強度鋼板を提供する。
【0026】
本発明の他の一側面は、上述の合金組成を有する鋼スラブを加熱する段階;上記加熱されたスラブを出口側温度Ar3以上~1000℃以下に仕上げ熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階;上記熱延鋼板を400~700℃の温度範囲で巻き取る段階;上記巻き取り後の前記熱延鋼板を常温まで冷却する段階;上記冷却後に圧下率40~70%で冷間圧延して冷延鋼板を製造する段階;上記冷延鋼板を連続焼鈍する段階;上記連続焼鈍後に650~700℃の温度範囲で1次冷却する段階;及び上記1次冷却後に300~580℃の温度範囲で2次冷却する段階を含み、
上記連続焼鈍段階は、加熱帯、亀裂帯、及び冷却帯が備えられた設備で行い、上記加熱帯の終了温度が上記亀裂帯の終了温度に対して10℃以上高いことを特徴とする成形性に優れた高強度鋼板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、高強度を有するにも関わらず、低降伏比及び高延性の確保により成形性が向上した鋼板を提供することができる。
【0028】
このように、成形性が向上した本発明の鋼板は、プレス成形時のクラックやシワなどの加工欠陥を防止することができるため、複雑な形状への加工が要求される構造用などの部品に好適に適用する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】通常的な連続焼鈍工程(CAL)の熱処理ダイアグラムを模式化した図面である。
【
図2】本発明の一側面による連続焼鈍工程(CAL)の熱処理ダイアグラムを模式化した図面であり、
図1のダイアグラム(灰色線)と共に示した。
【
図3】本発明の一実施例による比較例の微細組織写真を示した図面である。
【
図4】本発明の一実施例による発明例の微細組織写真を示した図面である。
【
図5】本発明の一実施例においてフェライト結晶粒のアスペクト比の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の発明者らは、自動車用素材のうち複雑な形状への加工が要求される部品などに好適に用いることができるレベルの成形性を有する素材を開発するために深く研究した。
【0031】
特に、本発明者らは鋼の延性に影響を与える軟質相の十分な再結晶を誘導し、強度確保に有利な硬質相の微細化及び分布度を均一に確保することで目標を達成することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0033】
本発明の一側面による成形性に優れた高強度鋼板は重量%で、炭素(C):0.05~0.15%、シリコン(Si):0.5%以下(0%を除く)、マンガン(Mn):2.0~3.0%、チタン(Ti):0.2%以下(0%を除く)、ニオブ(Nb):0.1%以下(0%を除く)、バナジウム(V):0.2%以下(0%を除く)、モリブデン(Mo):0.5%以下(0%を除く)、リン(P):0.1%以下、硫黄(S):0.01%以下を含むことができる。
【0034】
以下では、本発明で提供する鋼板の合金組成を上記のように制限する理由について詳細に説明する。
【0035】
一方、本発明で特に断りのない限り、各元素の含有量は重量を基準とし、組織の割合は面積を基準とする。
【0036】
炭素(C):0.05~0.15%
炭素(C)は、固溶強化のために添加される重要な元素であり、このようなCは析出元素と結合して微細析出物を形成することで鋼の強度向上に寄与する。
【0037】
Cの含有量が0.15%を超過するようになると硬化能が増加し、鋼製造時に冷却中にマルテンサイトが形成されるにつれて、強度が過度に上昇する一方、延伸率の減少をもたらすという問題がある。また、溶接性が劣って部品として加工する際に溶接欠陥が発生するおそれがある。一方、上記Cの含有量が0.05%未満であると、目標レベルの強度確保が難しくなる。
【0038】
したがって、上記Cは0.05~0.15%含むことができる。より有利には0.06%以上含むことができ、0.13%以下含むことができる。
【0039】
シリコン(Si):0.5%以下(0%を除く)
シリコン(Si)はフェライト安定化元素であり、フェライト変態を促進することで目標レベルのフェライト分率の確保に有利である。また、固溶強化能が良好であることからフェライトの強度を高める上で効果的であり、鋼の延性を低下させることなく、強度を確保するのに有用な元素である。
【0040】
このようなSiの含有量が0.5%を超過するようになると固溶強化の効果が過度になって、却って延性が低下し、表面スケールの欠陥を誘発してめっき表面品質に悪影響を及ぼすことになる。また、化成処理性を阻害するという問題がある。
【0041】
したがって、上記Siは0.5%以下含むことができ、0%は除外することができる。より有利には0.1%以上含むことができる。
【0042】
マンガン(Mn):2.0~3.0%
マンガン(Mn)は鋼中の硫黄(S)をMnSで析出させ、FeSの生成による熱間脆性を防止し、鋼を固溶強化させるのに有利な元素である。
【0043】
このようなMnの含有量が2.0%未満であると、上述した効果が得られないだけでなく、目標レベルの強度を確保するのに困難がある。一方、その含有量が3.0%を超過するようになると溶接性、熱間圧延性などの問題が発生する可能性が高く、同時に硬化能の増加によりマルテンサイトがより容易に形成されるにつれて、延性が低下するおそれがある。また、組織内のMn-Band(Mn酸化物帯)が過度に形成されて加工クラックなどの欠陥発生の危険が高くなるという問題がある。そして、焼鈍時にMn酸化物が表面に溶出してめっき性を大きく阻害するという問題がある。
【0044】
したがって、上記Mnは2.0~3.0%含むことができ、より有利には2.2~2.8%含むことができる。
【0045】
チタン(Ti):0.2%以下(0%を除く)
チタン(Ti)は、微細炭化物を形成する元素であり、降伏強度及び引張強度の確保に寄与する。また、Tiは鋼中のNをTiNで析出させ、鋼中に不可避に存在するAlによるAlNの形成を抑制する効果があって、連続鋳造時のクラックの発生可能性を低減させる効果がある。
【0046】
このようなTiの含有量が0.2%を超過するようになると粗大な炭化物が析出し、鋼中の炭素量の低減によって強度及び延伸率の減少のおそれがある。また、連続鋳造時にノズルの目詰まりを誘発するおそれがある。したがって、上記Tiは0.2%以下含むことができ、0%は除外することができる。
【0047】
ニオブ(Nb):0.1%以下(0%を除く)
ニオブ(Nb)は、オーステナイト粒界に偏析して焼鈍熱処理時にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制し、微細な炭化物を形成して強度向上に寄与する元素である。
【0048】
このようなNbの含有量が0.1%を超過するようになると粗大な炭化物が析出し、鋼中の炭素量の低減により強度及び延伸率が劣化することがあり、製造原価が上昇するという問題がある。したがって、上記Nbは0.1%以下含むことができ、0%は除外することができる。
【0049】
バナジウム(V):0.2%以下(0%を除く)
バナジウム(V)は炭素または窒素と反応して炭・窒化物を形成する元素であり、低温で微細な析出物を形成して鋼の降伏強度を向上させるのに重要な元素である。
【0050】
このようなVの含有量が0.2%を超過するようになると粗大な炭化物が析出し、鋼中の炭素量の低減により強度及び延伸率が劣ることがあり、製造原価が上昇するという問題がある。したがって、上記Vは0.2%以下含むことができ、0%は除外することができる。
【0051】
モリブデン(Mo):0.5%以下(0%を除く)
モリブデン(Mo)は、鋼中に炭化物を形成する元素であり、上述したTi、Nb、Vなどの炭・窒化物の形成元素と複合添加時の析出物の大きさを微細に維持して、鋼の降伏強度及び引張強度を向上させるのに有利な元素である。また、Moはオーステナイトがパーライトに変態することを遅延させるとともに、フェライトの微細化及び強度向上の効果がある。このようなMoは鋼の硬化能向上によりマルテンサイトを結晶粒界(grainboundary)に微細に形成させて降伏比の制御が可能な利点がある。但し、高価の元素としてその含有量が高くなるほど製造原価が上昇し、経済的に不利となる問題があるため、その含有量を適切に制御することが好ましい。
【0052】
上述の効果を十分に得るためには、最大0.5%までMoを添加することができる。もし、その含有量が0.5%を超過するようになると合金原価の急激な上昇を招いて経済性が低下し、過度の結晶粒微細化の効果及び固溶強化の効果により、却って鋼の延性が低下するという問題がある。
【0053】
したがって、上記Moは0.5%以下含むことができ、0%は除外することができる。
【0054】
リン(P):0.1%以下
リン(P)は、固溶強化の効果が最も大きい置換型元素であり、面内異方性を改善し、成形性を大きく低下させることなく、強度確保に有利な元素である。しかし、このようなPを過度に添加する場合、脆性破壊の発生可能性が大きく増加して熱間圧延の途中にスラブの板破断の発生可能性が増加し、めっき表面の特性を阻害するという問題がある。
【0055】
したがって、本発明では上記Pの含有量を0.1%以下に制御することができ、不可避に添加されるレベルを考慮して0%は除外することができる。
【0056】
硫黄(S):0.01%以下
硫黄(S)は、鋼中の不純物元素として不可避に添加される元素であり、延性を阻害するため、その含有量をできるだけ低く管理することが好ましい。特に、Sは赤熱脆性を発生させる可能性を高める問題があるため、その含有量を0.01%以下に制御することが好ましい。但し、製造過程中に不可避に添加されるレベルを考慮して0%は除外することができる。
【0057】
本発明の残りの成分は鉄(Fe)である。但し、通常の製造過程では、原料や周囲環境から意図しない不純物が不可避に混入される可能性があるため、これを排除することはできない。かかる不純物は、通常の製造過程における技術者であれば誰でも分かるものであるため、そのすべての内容を特に本明細書に記載しない。
【0058】
上述した合金組成を有する本発明の鋼板は、微細組織としてフェライトと硬質相(hard phase)であるマルテンサイト及びベイナイト相で構成される。このとき、上記フェライトを面積分率20~45%含み、その他の残部組織は硬質相であることができる。
【0059】
上記フェライト相の分率が20%未満であると、鋼の延性を十分に確保できなくなって成形性が劣化し、一方、その分率が45%を超過するようになると硬質相の分率が比較的低くなって、目標レベルの強度及び成形性が確保できなくなる。
【0060】
本発明の鋼板は、上述した分率範囲でフェライト相を含むことにおいて、上記フェライト中の未再結晶フェライトが25面積%以下の分率で存在し、平均アスペクト比が1.1~2:1であることが好ましい。
【0061】
上記未再結晶フェライトの分率が25面積%を超過するようになると延性が低下し、目標レベルの成形性を確保することが難しくなる。
【0062】
一方、上記未再結晶フェライトの分率が25面積%以下に存在するとしても、平均アスペクト比が2を超過(長径:短径=2超過:1)するようになると、このように延伸された未再結晶フェライトに局部的に変形及び応力が集中されて延性が劣るという問題がある。未再結晶フェライトの平均アスペクト比の下限は特に制限する必要はないが、加工による未再結晶フェライトの形状を考慮すると、上記平均アスペクト比の下限を1.1以上とすることができる。
【0063】
本発明において未再結晶フェライトの分率は、鋼板全体の微細組織分率の基準ではなく、上述したフェライト分率を基準に示したものである。
【0064】
ここで、アスペクト比とは、圧延方向に対する結晶粒度の縦(長径)と横(短径)の比(長径:短径)を意味し、例えば、
図5に示したとおりである。
図5において(a)は、再結晶フェライトの結晶粒度を示した模式図であり、(b)は、未再結晶フェライトの結晶粒度を示した模式図である。なお、本発明においてアスペクト比の値とは、未再結晶フェライトの結晶粒の平均アスペクト比の値を意味する。
【0065】
一方、上記硬質相を構成するマルテンサイト及びベイナイト相は、それぞれの分率について具体的に限定しないが、引張強度980MPa以上の超高強度の確保のためには、マルテンサイト相を全体組織分率のうち10面積%以下(0%を除く)に含むことができる。
【0066】
上述した微細組織を有する本発明の鋼板は、引張強度980MPa以上、降伏強度680MPa以下、延伸率(総延伸率)が13%以上であり、降伏比が0.8以下であって高強度とともに高延性、低降伏比の特性を有することができる。
【0067】
以下、本発明の他の一側面による成形性に優れた高強度鋼板を製造する方法について詳細に説明する。
【0068】
簡略的に、本発明は、[鋼スラブ加熱-熱間圧延-巻き取り-冷間圧延-連続焼鈍]の工程を経て目的とする鋼板を製造することができ、以下各工程について詳細に説明する。
【0069】
[鋼スラブ加熱]
まず、上述した合金組成を満たす鋼スラブを用意した後、これを加熱することができる。
【0070】
本工程は、後続する熱間圧延工程を円滑に行い、目標とする鋼板の物性を十分に得るために行われる。本発明では、このような加熱工程の条件については特に制限せず、通常の条件であれば構わない。一例として、1100~1300℃の温度範囲で加熱工程を行うことができる。
【0071】
[熱間圧延]
上記によって加熱された鋼スラブを熱間圧延して熱延鋼板で製造することができ、このとき、出口側温度Ar3以上~1000℃以下で仕上げ熱間圧延を行うことができる。
【0072】
上記仕上げ熱間圧延時の出口側温度がAr3未満であると熱間変形抵抗が急激に増加し、熱延コイルの上(top)部、下(tail)部、及びエッジ(edge)部が単相領域となって面内異方性が増加して成形性が劣化するおそれがある。一方、その温度が1000℃を超過するようになると圧延荷重が比較的減少して生産性には有利であるが、厚い酸化スケールが発生するおそれがある。
【0073】
より具体的には、上記仕上げ熱間圧延は760~940℃の温度範囲で行うことができる。
【0074】
[巻き取り]
上記によって製造された熱延鋼板をコイル状に巻き取ることができる。
【0075】
上記巻き取りは400~700℃の温度範囲で行うことができ、仮に巻き取り温度が400℃未満であると過度のマルテンサイトまたはベイナイトの形成により熱延鋼板の過度の強度上昇を招き、この後の冷間圧延時の負荷による形状不良などの問題が発生する可能性がある。一方、巻き取り温度が700℃を超過するようになると表面スケールが増加して酸洗性が劣化するという問題がある。
【0076】
[冷却]
上記巻き取られた熱延鋼板を常温まで0.1℃/s以下(0℃/sを除く)の平均冷却速度で常温まで冷却することが好ましい。このとき、上記巻き取られた熱延鋼板は、移送、載置などの過程を経た後に冷却を行うことができ、冷却前の工程がこれに限定されるものではない。
【0077】
このように、巻き取られた熱延鋼板を一定速度で冷却することで、オーステナイトの核生成サイト(site)となる炭化物を微細に分散させた熱延鋼板を得ることができる。
【0078】
[冷間圧延]
上記によって巻き取られた熱延鋼板を冷間圧延して冷延鋼板として製造することができる。
【0079】
このとき、上記冷間圧延は40~70%の冷間圧下率で行うことができる。上記冷間圧下率が40%未満であると再結晶駆動力が弱化して、良好な再結晶粒を得るのに困難があり、一方、上記冷間圧下率が70%を超過するようになると鋼板エッジ(edge)部でクラックが発生する可能性が高く、圧延荷重が急激に増加するおそれがある。
【0080】
本発明は、上記冷間圧延前に熱延鋼板を酸洗処理することができ、上記酸洗処理工程は通常の方法で行うことができる。
【0081】
[連続焼鈍]
上記によって製造された冷延鋼板を連続焼鈍処理することが好ましい。上記連続焼鈍処理は、一例として連続焼鈍炉(CAL)で行われることができる。
【0082】
通常、連続焼鈍炉(CAL)は[加熱帯-亀裂帯-冷却帯(徐冷帯及び急冷帯)-過時効帯]で構成され、冷延鋼板を連続焼鈍炉に装入した後、加熱帯で特定の温度に加熱し、目標温度に達した後、亀裂帯で一定時間維持する工程を経る。
【0083】
本発明では、最終微細組織で再結晶されたフェライトとともに微細なマルテンサイト、ベイナイト相を得るために、連続焼鈍時に[加熱帯-亀裂帯]からなる加熱区間で鋼板に十分な入熱が加えられる方法を構築しようとした。
【0084】
具体的に説明すると、一般的な連続焼鈍工程は加熱帯の最終温度と亀裂帯の温度を同一に制御するのに対し、本発明は加熱帯及び亀裂帯の温度を独立的に制御する特徴がある。
【0085】
換言すると、一般的な連続焼鈍工程では、亀裂帯の開始温度と終了温度を同一に制御するが、これは、加熱帯の終了温度と亀裂帯の開始温度が同一であることを意味する。
【0086】
これとは異なって、本発明は、加熱帯の温度を亀裂帯の温度よりも高く制御することで、加熱区間でフェライトの再結晶をさらに促進することができ、これにより微細なフェライトの形成が誘導され、フェライト粒界に形成されるオーステナイトも小さくて均一に形成することができる。
【0087】
好ましくは、本発明は、上記加熱帯の終了温度を上記亀裂帯の終了温度に対して10℃以上高く制御し、より好ましくは下記関係式を満足することができる。
[関係式]
10≦加熱帯の終了温度-亀裂帯の終了温度(℃)≦40
【0088】
すなわち、本発明は加熱帯の終了温度を亀裂帯の終了温度に対して高く制御するが、その温度差が10℃未満であるとフェライト再結晶が遅延して微細且つ均一なオーステナイト相を得ることが難しく、一方、その温度差が40℃を超過するようになると、過度の温度差によって後続の冷却工程が十分に行われず、最終組織で粗大なマルテンサイトまたは粗大なベイナイト相が形成されるおそれがある。
【0089】
本発明において上記加熱帯の終了温度は790~830℃であることができるが、その温度が790℃未満であると再結晶のための十分な入熱を加えることができなくなり、一方、その温度が830℃を超過するようになると生産性が低下し、オーステナイト相が過度に形成され、後続冷却後の硬質相の分率が大きく増加して、鋼の延性が劣るおそれがある。
【0090】
また、上記亀裂帯の終了温度は760~790℃であることができる。その温度が760℃未満であると加熱帯の終了温度で過度の冷却が要求されるため、経済的に不利であり、再結晶のための熱量が十分でないことがある。一方、その温度が790℃を超過するようになるとオーステナイトの分率が過度になって、冷却中に硬質相の分率が超過して成形性が減少するおそれがある。
【0091】
一方、本発明において上記加熱帯の終了温度と亀裂帯の終了温度との温度差は、加熱帯工程が完了する時点から亀裂帯工程が完了する時点まで加熱手段を遮断することから実現することができ、一例として、該当区間で炉冷処理することができる。
【0092】
[段階的冷却]
上記によって連続焼鈍処理された冷延鋼板を冷却することで目標とする組織を形成することができ、このとき、段階的(stepwise)に冷却を行うことが好ましい。
【0093】
本発明において、上記段階的冷却は、1次冷却-2次冷却からなることができ、具体的には上記連続焼鈍後の650~700℃の温度範囲まで1~10℃/sの平均冷却速度で1次冷却した後、300~580℃の温度範囲まで5~50℃/sの平均冷却速度で2次冷却を行うことができる。
【0094】
このとき、2次冷却に対して1次冷却をより遅く行うことで、この後、相対的に急冷区間である2次冷却時の急激な温度下落による板状の不良を抑制することができる。
【0095】
上記1次冷却時の終了温度が650℃未満であると、低すぎる温度により炭素の拡散活動度が低くて、フェライト中の炭素濃度が高くなるのに対し、オーステナイト中の炭素濃度が低くなるにつれて硬質相の分率が過度になって降伏比が増加し、それにより加工時のクラック発生の可能性が高くなる。また、亀裂帯と徐冷帯の冷却速度が大きくなりすぎて、板の形状が不均一になるという問題が発生するようになる。
【0096】
上記終了温度が700℃を超過するようになると、後続冷却(2次冷却)時に過度に高い冷却速度が要求される欠点がある。また、上記1次冷却時の平均冷却速度が10℃/sを超過すると、炭素拡散が十分に起こることができなくなる。一方、生産性を考慮して1次冷却工程を1℃/s以上の平均冷却速度で行うことができる。
【0097】
上述したように、1次冷却を完了した後には、一定以上の冷却速度で急冷を行うことができる。このとき、2次冷却終了温度が300℃未満であると鋼板の幅方向及び長さ方向に冷却偏差が発生して板形状が劣化するおそれがあり、一方、その温度が580℃を超過するようになると硬質相を十分に確保できなくなって強度が低くなることがある。また、上記2次冷却時の平均冷却速度が5℃/s未満であると硬質相の分率が過度になるおそれがあり、一方、50℃/sを超過するようになると、却って硬質相が不十分となるおそれがある。
【0098】
一方、必要に応じて上記段階的冷却を完了した後に過時効処理を行うことができる。
【0099】
上記過時効処理は、上記2次冷却終了後に一定時間維持する工程であり、コイルの幅方向、長さ方向に均一な熱処理が行われることで形状品質を向上させる効果がある。このために、上記過時効処理は200~800秒間行うことができる。
【0100】
上記過時効処理は、その温度が上記2次冷却終了温度より低く、非制限的な例として280~400℃の温度範囲で行うことができる。
【0101】
上述のように製造された本発明の高強度鋼板は、微細組織で硬質相及び軟質相で構成され、特に最適化された焼鈍工程によってフェライト再結晶を最大化させることで最終的に再結晶されたフェライト基地に硬質相であるベイナイトとマルテンサイト相が均一に分布した組織を有することができる。
【0102】
これにより、本発明の鋼板は、引張強度980MPa以上の高強度を有するにも関わらず、低降伏比及び高延性を確保し成形性に優れることができる。
【0103】
以下、本発明は実施例を挙げてより詳細に説明する。しかし、このような実施例の記載は、本発明の実施を例示するだけであり、このような実施例の記載によって本発明が制限されるものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項と、それから合理的に類推される事項によって決定されるものであるためである。
【実施例】
【0104】
(実施例)
下記表1に示した合金組成を有する鋼スラブを製作した後、各鋼スラブを1200℃で1時間加熱した後、仕上げ圧延温度880~920℃で仕上げ熱間圧延して熱延鋼板を製造した。この後、各熱延鋼板を0.1℃/sの冷却速度で冷却して650℃で巻き取った。この後、巻き取られた熱延鋼板を50%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を製造した。上記各冷延鋼板について下記表2に示した温度条件で連続焼鈍を行った後、段階的冷却(1次-2次)後の360℃で520秒間過時効処理を行って最終鋼板を製造した。
【0105】
このとき、段階的冷却時の1次冷却は3℃/sの平均冷却速度、2次冷却は20℃/sの平均冷却速度で行った。
【0106】
上記によって製造された各鋼板について微細組織を観察し、機械的特性及びめっき特性を評価した後、その結果を下記表3に示した。
【0107】
このとき、各試験片に対する引張試験は、圧延方向の垂直方向にJIS 5号サイズの引張試験片を採取した後、strain rate 0.01/sで引張試験を行った。
【0108】
そして、組織相(phase)中の未再結晶フェライトはナイタール(nital)エッチング後、5000倍率でSEM(走査型電子顕微鏡)を介して観察した。このとき、観察されたフェライト相の結晶粒形状から通常の未再結晶されたフェライトで観察されるsub grainまたは圧延方向に延伸された粒子を未再結晶フェライトで分析し、その分率を測定した。その他の相(phase)などについてもナイタールエッチング後、SEM及びイメージ分析器(Image analyzer)を用いて各分率を測定した。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
上記表1~3に示したように、鋼合金組成と製造条件、特に、連続焼鈍工程が本発明で提案するところを全て満たす発明例1~7は、意図する微細組織が形成されるにつれて、高強度を有しながらも延伸率が優れて成形性の確保が可能であることが確認できる。
【0113】
一方、鋼板製造工程中の連続焼鈍工程が従来と同様に、すなわち、加熱帯の終了温度と亀裂帯の終了温度を同様に適用した比較例1~4、比較例8~10は焼鈍時のフェライト再結晶が不十分であって、本発明で目標とする物性を満足することができなかった。このうち、焼鈍温度が比較的低い比較例1~2、比較例8~9は延伸率が劣化し、比較例1~2に対して焼鈍温度が高い比較例3~4、比較例10は降伏強度が目標レベルを超過した。
【0114】
鋼板製造工程中の連続焼鈍時の加熱帯の終了温度が過度に高く、亀裂帯の終了温度との温度差が60℃である比較例5はフェライト相が十分に形成されなかったのに対し、硬質相(特に、ベイナイト相)が過度に形成されて延伸率が低下した。
【0115】
連続焼鈍時に加熱帯の終了温度と亀裂帯の終了温度との温度差が20℃であるが、亀裂帯の終了温度が低すぎる比較例6も延伸率が劣化した。
【0116】
比較例7は、加熱帯に対する亀裂帯の温度が却って上昇した場合であり、高延性が確保できなかった。
【0117】
図3は、比較例2の微細組織写真、
図4は、発明例2の微細組織写真を示した図面である。
【0118】
比較例2は、未再結晶フェライト相が過度に形成されたことが確認できるのに対し、発明例2は、相対的に十分な分率の再結晶フェライト基地にマルテンサイト相及びベイナイト相が形成されたことが確認できる。
【国際調査報告】