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特表2023-530503局所免疫増感剤を付与するための皮膚パッチ及びガラススワブ
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  • 特表-局所免疫増感剤を付与するための皮膚パッチ及びガラススワブ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】局所免疫増感剤を付与するための皮膚パッチ及びガラススワブ
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20230710BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230710BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230710BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20230710BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20230710BHJP
   A61M 35/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61P17/14
A61P31/22
A61K31/122
A61P37/04
A61K47/20
A61L15/24 100
A61P17/00
A61L15/44 100
A61L15/58 100
A61M35/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578881
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 US2021037277
(87)【国際公開番号】W WO2021257479
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/040,138
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/932,111
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492772
【氏名又は名称】スクエアエックス ファーマシューティカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクタビッシュ、ヒュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C206
4C267
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC07
4C076CC18
4C076CC35
4C076DD55E
4C076FF68
4C076GG00
4C081AA12
4C081BA12
4C081BB02
4C081CA161
4C081CE02
4C081DA02
4C081EA01
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB21
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA10
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZA92
4C206ZB09
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB24
4C267BB31
4C267BB32
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC01
4C267GG02
4C267GG14
4C267GG16
4C267GG41
4C267HH08
(57)【要約】
局所免疫増感剤の局所送達のための単位剤形、デバイス、及びキットが提供される。これらは、皮膚パッチ、ガラススワブ、並びに皮膚パッチ及びガラススワブを含むキットを含む。利点のなかでも、本開示に提示される前記単位剤形、デバイス、及びキットは、より一貫性のある制御された体積の薬液を送達し、過少投与又は過剰投与を防止し、反復投与を防止又は阻止し、薬液が付与されるより一貫性のある皮膚領域を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地の領域の少なくとも一部の上に接着剤が重ねられた前記布地を含むバッキング層を含み、
前記バッキング層には、その領域の一部の上に吸収性ガーゼ層が重ねられており、
前記吸収性ガーゼ層は、媒体(vehicle)と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む、皮膚パッチ。
【請求項2】
前記吸収性ガーゼ層と前記バッキング層との間にバリア層をさらに含み、前記バリア層が前記媒体及び前記局所免疫増感剤に対して不透過性である、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項3】
前記吸収性ガーゼがポリエステルを含む、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項4】
前記局所免疫増感剤が、スクアリン酸エステル、ジフェニルシクロプロペノン、1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼン(DNCB)、1-クロロ-2,6-ジニトロベンゼン、又はウルシオールを含む、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項5】
前記媒体が、クリーム、ローション、鉱油、ワセリン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、イソプロパノール、ブタノール、又はエタノールを含む、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項6】
前記免疫増感剤がスクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)である、請求項4に記載の皮膚パッチ。
【請求項7】
前記媒体がDMSOを含む、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項8】
前記媒体がDMSOであり、
前記局所免疫増感剤が、前記DMSO中に0.1%~5%(wt/vol)で溶解したSADBEである、
請求項6に記載の皮膚パッチ。
【請求項9】
前記吸収性ガーゼ層が前記バッキング層に恒久的に取り付けられている、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項10】
前記吸収性ガーゼ層が前記バッキング層に取り付けられていない、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項11】
液体媒体に溶解した局所免疫増感剤の溶液を含む密閉ガラスアンプルと、
前記密閉ガラスアンプルに取り付けられたフォームアプリケーターチップ(foam applicator tip)と、を含み、
前記密閉ガラスアンプルは、通常の力を有する人が手で絞る(squeeze)ことで破壊可能であり、前記ガラスアンプルが破壊されて逆さにされると、5分以内に前記溶液がフォームチップに浸透し、前記フォームチップが表面に接触すると前記表面を前記溶液で濡らすようになる、ガラススワブ。
【請求項12】
前記ガラスアンプルを部分的に又は完全に取り囲む1又は複数のバリア層をさらに含み、前記1又は複数のバリア層は、前記フォームチップを介した前記溶液以外のガラスの破片及び前記溶液が前記1又は複数のバリア層に浸透して前記ガラススワブを保持する人の皮膚に接触するのを防ぐ、請求項11に記載のガラススワブ。
【請求項13】
前記ガラスアンプルを取り囲み、前記フォームアプリケーターチップまでをシールするポリマーバリア層をさらに含み、
前記ポリマーバリア層は、ガラスの破片及び前記溶液が前記ポリマーバリア層に浸透して前記ガラススワブを絞って破壊する人の指の皮膚に接触することを防ぐように構成されている、請求項11に記載のガラススワブ。
【請求項14】
前記媒体が、DMSO、メタノール、アセトン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、水、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載のガラススワブ。
【請求項15】
前記局所免疫増感剤がスクアリン酸エステルであり、
前記媒体が、DMSO、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、アセトン、又はこれらの組み合わせである、
請求項11に記載のガラススワブ。
【請求項16】
前記スクアリン酸エステルがSADBEである、請求項15に記載のガラススワブ。
【請求項17】
前記媒体がDMSOであり、前記局所免疫増感剤がSADBEである、請求項11に記載のガラススワブ。
【請求項18】
前記1又は複数のバリア層が、ポリマー層及び/又は厚紙層を含む、請求項12に記載のガラススワブ。
【請求項19】
前記溶液中の水が100ppm未満である、請求項14に記載のガラススワブ。
【請求項20】
前記溶液中の水が50ppm未満である、請求項19に記載のガラススワブ。
【請求項21】
前記ガラスアンプル中の前記溶液は、前記ガラスアンプルが破壊されるまではガラスとのみ接触する、請求項11に記載のガラススワブ。
【請求項22】
(a)(1)前記媒体を分子ふるいで処理して媒体から水を除去し、乾燥媒体を生産すること;及び、前記乾燥媒体にスクアリン酸エステルを溶解して乾燥溶液を生産すること、又は
(a)(2)前記媒体にスクアリン酸エステルを溶解して溶液を形成し、その後前記溶液を分子ふるいで処理して前記媒体から水を除去し、乾燥溶液を生産すること;及び
(b)乾燥雰囲気下で前記乾燥溶液を前記ガラスアンプルに充填し、前記ガラスアンプルを密閉して気密シールを形成すること、を含み、
前記アンプル中の前記乾燥溶液は、前記気密シールが破壊されるまではガラスとのみ接触する、請求項11に記載のガラススワブの作製方法。
【請求項23】
前記媒体がDMSOである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記局所免疫増感剤がSADBEである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
(a)布地の領域の少なくとも一部の上に接着剤が重ねられた前記布地を含む接着性バッキング層であって、前記接着性バッキング層には、その領域の一部の上に吸収性ガーゼ層が重ねられている、前記接着性バッキング層、を含む皮膚パッチと、
(b)媒体に溶解した局所免疫増感剤を含む液体又は半液体の溶液を含む密閉容器と、
を含むキット。
【請求項26】
前記皮膚パッチが、前記ガーゼ層と前記接着性バッキング層との間にバリア層をさらに含み、前記バリア層は前記媒体及び前記局所免疫増感剤に対して不透過性である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記密閉容器が、人が道具を使わずに手で開けるように構成されている、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
前記密閉容器がガラススワブであり、前記ガラススワブが、
液体媒体に溶解した局所免疫増感剤の溶液を含む密閉ガラスアンプルと、
前記密閉ガラスアンプルに取り付けられたフォームアプリケーターチップと、を含み、
前記密閉ガラスアンプルは、通常の力を有する人が手で絞ることで破壊可能であり、
前記ガラスアンプルが破壊されて逆さにされると、5分以内に前記溶液がフォームチップに浸透し、前記フォームチップが表面に接触すると前記表面を前記溶液で濡らすようになる、
請求項25に記載のキット。
【請求項29】
人の皮膚に接着性皮膚パッチを適用し接着させることを含み、
前記接着性皮膚パッチは、布地の領域の少なくとも一部の上に接着剤が重ねられた前記布地を含むバッキング層を含み、
前記バッキング層には、その領域の一部の上に吸収性ガーゼ層が重ねられており、
前記吸収性ガーゼ層は、媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む、
制御された用量の局所免疫増感剤を局所的に付与する方法。
【請求項30】
前記適用する工程の前に、
媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む単位用量容器を開けることと、
前記溶液を前記皮膚パッチの前記吸収性ガーゼ層に付与して、前記媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む吸収性ガーゼ層を形成することと、
をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記媒体がDMSOであり、前記局所免疫増感剤がSADBEである、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
局所免疫増感剤は、ある程度少量を皮膚に局所的に付与しても、大部分の人において遅延型過敏(DTH;delayed-type hypersensitivity)反応を誘発する化合物である。局所免疫増感剤の例としては、スクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)、スクアリン酸エチルエステル、一般にモノエステル及びジエステルを含むスクアリン酸エステル、ジフェニルシクロプロペノン(DPCP)、1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼン(DNCB)、及び1-クロロ-2,6-ジニトロベンゼンが挙げられる(Buckley et al., Lee et al.)。
ツタウルシ(poison ivy)とその有効成分であるウルシオールも局所免疫増感剤である。
【背景技術】
【0002】
SADBE、並びにその他の局所免疫増感剤であるジフェニルシクロプロペノン及びDNCBは、尋常性疣贅及び円形脱毛症の治療に成功裏に使用されている。これらの場合、0.05%~2.0%(重量/体積)の溶液が使用される。ほとんどの場合、媒体(vehicle)はアセトンである。前記免疫増感剤はすべてこれらの用途に有効であることが示されている。尋常性疣贅の場合、免疫増感剤は通常約1週間間隔で疣贅が消失するまで繰り返し疣贅に付与される。円形脱毛症の場合、通常週に1回、消失するまで繰り返し頭皮の患部に付与される。
【0003】
SADBEは、頻繁に発症する人における口唇ヘルペス(herpes labialis;cold sores又はoral herpes)の発症予防にも有効であることが示されている(Palli et al., Chang et al.)。唇や病変ではなく、腕に単回投与すると、約4か月間、口唇ヘルペスの発生数が大幅に減少することがわかった(Palli et al., Chang et al.)。その機序は、インビトロで単純ヘルペスウイルス及び他の刺激に晒された末梢血単核細胞(PBMC)におけるインターフェロンガンマ(IFNG)の発現の増加やインターロイキン5(IL5)の発現の減少など、1回の投与が、その1回の投与の8週間後に免疫遺伝子の発現を全身的に変化させることであると考えられる(McTavish et al.)。
【発明の概要】
【0004】
局所免疫増感剤の局所送達のための新たな単位剤形及びデバイスが求められる。利点の中でも、本開示に提示される単位剤形、デバイス、及びキットは、より一貫性のある制御された体積の薬液を送達し、過少投与及び過剰投与を防止し、反復投与を防止又は阻止し、薬液が付与されるより一貫性のある皮膚領域を提供する。前記単位剤形、デバイス、及びキットは、薬液用の容器であって、容器が空気から完全に密閉されており、特定の局所免疫増感剤と反応したり分解したりする水蒸気や酸素を排除するため、保管中に薬液を安定して変化させずに保つのに役立ち、溶液と反応せず溶液によって抽出されない不活性物質であるガラスのみと薬液を接触させる容器も提供する。
【0005】
本発明の実施形態は、保存に対して安定であり、エンドユーザー患者によって便利、安全かつ正確に使用でき、局所薬剤が患者の意図しない皮膚と接触するのを回避し、一貫性のある皮膚領域への一貫性のある体積又は量の薬剤の投与を容易にする、局所免疫増感剤及び他の局所付与薬剤の単位剤形を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態は、(a)布地の領域の少なくとも一部の上に接着剤が重ねられた前記布地を含むバッキング層を含み、前記バッキング層には、その領域の一部の上に(b)吸収性ガーゼ層が重ねられており、前記吸収性ガーゼ層は、媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む、皮膚パッチを提供する。
【0007】
「半液体」との語は、クリーム、ローション、ジェルなど、粘性があるが完全に固体ではない組成物を意味する。
【0008】
別の実施形態は、(a)液体媒体に溶解した局所免疫増感剤の溶液を含む密閉ガラスアンプルと、(b)前記密閉ガラスアンプルに取り付けられたフォームアプリケーターチップ(foam applicator tip)と、を含み、前記密閉ガラスアンプルは、通常の力を有する人が手で絞る(squeeze)ことで破壊可能であり、前記ガラスアンプルが破壊されて逆さにされると、5分以内に前記溶液がフォームチップに浸透し、前記フォームチップが表面に接触すると前記表面を前記溶液で濡らすようになるように構成されている、ガラススワブを提供する。
【0009】
特定の好ましい実施形態において、ガラススワブは、前記(c)ガラスアンプルを取り囲み、前記フォームアプリケーターチップまでをシールするポリマーバリア層をさらに含み、前記ポリマーバリア層は、ガラスの破片及び前記溶液が前記ポリマーバリア層に浸透して前記ガラススワブを絞って破壊する人の指の皮膚に接触することを防ぐように構成されている。
【0010】
別の実施形態は、ガラススワブの作製方法であって、前記ガラススワブは、(a)ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、アセトン、又はこれらの組み合わせである媒体に溶解した、スクアリン酸エステルである局所免疫増感剤の溶液を含む密閉ガラスアンプル、及び(b)前記密閉ガラスアンプルに取り付けられたフォームアプリケーターチップを含み、前記密閉ガラスアンプルは、通常の力を有する人が手で絞ることで破壊可能であり、前記ガラススワブは、ガラスアンプルが破壊されて逆さにされると、5分以内に前記溶液がフォームチップに浸透し、前記フォームチップが表面に接触すると前記表面を前記溶液で濡らすようになるように構成されている、ガラススワブの作製方法を提供する。前記方法は、(a)(1)前記媒体を分子ふるいで処理して(好ましくは乾燥雰囲気下)媒体から水を除去し、乾燥媒体を生産すること;及び、前記乾燥媒体にスクアリン酸エステルを溶解して(好ましくは乾燥雰囲気下)乾燥溶液を生産すること、又は(a)(2)前記媒体にスクアリン酸エステルを溶解して溶液を形成し、その後前記溶液を分子ふるいで処理して(好ましくは乾燥雰囲気下)前記媒体から水を除去し、乾燥溶液を生産すること、のいずれかを含む。前記方法はさらに、(b)乾燥雰囲気下で前記乾燥溶液を前記ガラスアンプルに充填し、前記ガラスアンプルを密閉して気密シールを形成すること、を含み、前記アンプル中の前記乾燥溶液は、前記気密シールが破壊されるまではガラスとのみ接触する。
【0011】
別の実施形態は、(a):(a)(1)布地の領域の少なくとも一部の上に接着剤が重ねられた前記布地を含む接着性バッキング層であって、前記接着性バッキング層には、その領域の一部の上に(a)(2)吸収性ガーゼ層が重ねられている、前記接着性バッキング層、を含む皮膚パッチと、(b)媒体に溶解した局所免疫増感剤を含む液体又は半液体の溶液を含む密閉容器と、を含むキットを提供する。
【0012】
前記キットの好ましい実施形態において、前記(b)密閉容器はガラススワブであり、前記ガラススワブが、(b)(1)液体媒体に溶解した局所免疫増感剤の溶液を含む密閉ガラスアンプルと、(b)(2)前記密閉ガラスアンプルに取り付けられたフォームアプリケーターチップと、を含み、前記密閉ガラスアンプルは、通常の力を有する人が手で絞ることで破壊可能であり、前記ガラススワブは、前記ガラスアンプルが破壊されて逆さにされると、5分以内に前記溶液がフォームチップに浸透し、前記フォームチップが表面に接触すると前記表面を前記溶液で濡らすようになるように構成されている。より好ましい実施形態において、前記ガラススワブは(b)(3)前記ガラスアンプルを取り囲み、前記フォームアプリケーターチップまでをシールするポリマーバリア層をさらに含み、前記ポリマーバリア層は、ガラスの破片及び前記溶液が前記ポリマーバリア層に浸透して前記ガラススワブを絞って破壊する人の指の皮膚に接触することを防ぐように構成されている。
【0013】
別の実施形態は、人の皮膚に接着性皮膚パッチを適用し接着させることを含み、前記接着性皮膚パッチは、布地の領域の少なくとも一部の上に接着剤が重ねられた前記布地を含むバッキング層を含み、前記バッキング層には、その領域の一部の上に吸収性ガーゼ層が重ねられており、前記吸収性ガーゼ層は、媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む、制御された用量の局所免疫増感剤を局所的に付与する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の皮膚パッチの概要図を示す。
図2図2は本発明のガラススワブの概要図を示す。
図3】感作投与後の、最初の新規口唇ヘルペス発症までの日数。このKaplan-Meierグラフは感作投与後の示された日数の間新規口唇ヘルペスの発症がなかった被験者の割合のイベント発生時間(time-to-event)曲線を示す。曲線に沿った丸印は打ち切られた観察を示す。
図4】すべてのモルモットの用量毎の一次刺激性指数(pII;Primary Irritation Index)の1日平均。SADBE皮膚パッチ適用後の平均±SEM一次刺激性スコア。誘導時、動物に皮膚パッチを介して2%、6%、及び18%のSADBEを投与し(0日目)、引き続く30日間、投与部位の評価を実施した。モルモットの皮膚に再度チャレンジし、同じ濃度の2つ目のSADBEパッチ(34日目)を別の場所に適用し、引き続く28日間、投与部位の評価を実施した(用量レベルあたりn=10)。
図5】すべてのミニブタの用量毎の一次刺激性指数(pII)の1日平均。SADBE皮膚パッチ適用後の平均一次刺激性スコア。誘導時、動物に皮膚パッチを介して2%、6%、及び18%のSADBEを投与し(0日目)、引き続く25日間、投与部位の評価を実施した。ミニブタの皮膚に再度チャレンジし、同じ濃度の2つ目のSADBEパッチ(32日目)を別の場所に適用し、引き続く30日間、投与部位の評価を実施した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態は、(a)布地の領域の少なくとも一部の上に接着剤が重ねられた前記布地を含むバッキング層を含み、前記バッキング層には、その領域の一部の上に(b)吸収性ガーゼ層が重ねられており、前記吸収性ガーゼ層は、媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む、皮膚パッチを提供する。この例は図1に示される。
【0016】
皮膚パッチ1はバッキング層2と前記バッキング層の少なくとも一部の上の接着剤3を含む。接着剤はパッチを患者の皮膚へ接着させるためのものである。図1はまた、バッキング層1と接着剤2に重ねられ、吸収性ガーゼ層5の下にあるバリア層4を示す。吸収性ガーゼ5は、任意に、媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液6を含む。
【0017】
バッキング層2及び接着剤3、並びにガーゼ5は、バンドエイド帯等の皮膚パッチに用いられる従来の材料であってよい。例えば、一実施形態における接着剤と合わせられたバッキング層は3M Medical Tape 9916(3M社、米国ミネソタ州セントポール)である。その場合、バッキング層は2.2oz/yd(62g/m)の100%ポリエステルタンスパンレース不織布で、接着剤は感圧性アクリレート接着剤である。バリア層4は任意である。一例では、それは、ポリエステルとエチレン酢酸ビニル共重合体ヒートシール層とのラミネートからなる3M 9733ポリエステルフィルムラミネートである。これはジメチルスルホキシドやその他のほとんどの溶媒に対して不浸透性で耐性があるため、ガーゼ部分に追加されるDMSOがパッチから接着剤やその他の成分を抽出しないことを担保するためのバリアとして機能する。ガーゼ層5は、一実施形態では、Precision Fabrics PFG 0700-00000などのポリエステルであってもよい。ポリエステルもDMSOやその他の溶媒に耐性があり非反応性であるため、ガーゼにとって望ましい。いくつかの実施形態において、吸収性ガーゼ層は、例えば音波溶着によって、接着剤なしでバリア層に取り付けてもよい。
【0018】
一実施形態では、ガーゼ層5中の液体又は半液体の溶液6は、媒体であるジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した、局所免疫増感剤であるスクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)の溶液である。
【0019】
図2は、本発明のガラススワブ1を示す。ガラススワブ1は、媒体、好ましくは液体媒体に溶解した局所免疫増感剤の液体又は半液体の溶液3を含有する密閉ガラスアンプル2を含む。密閉ガラスアンプルは、通常、概ね大気圧の気体を含むヘッドスペース4も含む。前記気体は、空気であってもよく、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスであってもよい。特定の実施形態では、前記気体は乾燥しており、これは、水蒸気がほとんど又は全く含まれないことを意味する。SADBEのように免疫増感剤が水に不安定な場合は、乾燥気体が望ましい。空気を乾燥させることもできるが、より一般的には、乾燥気体は窒素やアルゴンなどの不活性ガスであろう。図2は、ガラスアンプル2を取り囲むバリア層5も示している。特定の実施形態におけるバリア層5は、局所免疫増感剤を溶解する媒体に対して不浸透性であり、免疫増感剤に対して不浸透性である。特定の実施形態では、バリア層5はポリマー、好ましくは半透明又はより好ましくは透明なポリマーである。一実施形態では、バリア層は酢酸酪酸セルロースである。ガラススワブはフォームチップ6も含む。一実施形態では、フォームチップはポリオレフィンから構成される。ポリオレフィンはDMSOやその他の溶媒に不溶で耐性があるため、DMSO-SADBE溶液は何も抽出せず、フォームチップとの接触によっても変化しない。フォームチップ6はバリア層5でシールされている。図2では、それらはカラー(collar)領域7に沿ってシールされている。前記シールは、接着剤によって、又はより好ましくは熱若しくは音波溶着、又はバリア層5を部分的に溶解してフォームチップ6に接着させてシールを形成する揮発溶剤の使用による直接的なシーリングによって行うことができる。
【0020】
バリア層は、複数の材料を含んでもよい。例えば、バリア層は、バリア層の別の部分上のポリマーに連結された、バリア層の一部の上のポリマーブレンド又は厚紙層を含み得る。図2のように、ガラススワブの一端又は両端を覆う厚紙キャップ8が存在してもよい。図2では、ガラススワブの下端を覆う1つの厚紙キャップ8が示されている。厚紙キャップ8は、出荷時にフォームチップ6を覆うリバーシブルで取り外し可能な厚紙のキャップでもあり得、ユーザが厚紙とバリア層の両方を絞ってガラスを破壊する前に、ユーザが取り外してガラススワブの他端に再配置する。
【0021】
ガラスアンプルが破壊されると、溶液3がガラスアンプルから漏出するが、バリア層により制限されるため、ガラス破片や溶液はユーザの指の皮膚に接触しない。続いてユーザはこれを破壊した後にガラススワブを逆さにして溶液3がフォームチップ6に浸透するようにしなければならない。ユーザはガラススワブを破壊した後にガラススワブを絞って溶液がフォームチップに浸透するプロセスを加速させてもよい。フォームチップに溶液が浸透すると、ユーザはフォームチップをユーザの皮膚に軽くたたいたり(dab)拭いたり(wipe)して溶液を皮膚に付与してもよく、皮膚パッチのガーゼ部の上にフォームチップを軽くたたいたり拭いたりして吸収性ガーゼ層に溶液を置いてもよく、その後に皮膚パッチをユーザの皮膚に適用して溶液をユーザの皮膚に投与してもよい。
【0022】
皮膚パッチの有無にかかわらず、ガラススワブは免疫増感剤溶液のある程度決められた量の投与を容易にする。これはまた、過剰の溶液を送達するのを防ぎ、付与された部位から溶液が滴り落ちて指などの非標的領域に接触するのを防ぐ。加えて、これは1回の使用で視覚的に破壊されて損傷する単回使用の容器を提供するため、患者が経時的に複数回投与のために容器を再利用しようとし過剰投与となってしまう可能性が低減される。薬液がフォームチップに浸透してチップが他の表面を濡らすために使用できるようになるのに約30~60秒かかり、またフォームチップは最初及び数分間は飽和していないため、ユーザの皮膚又はパッチに溶液を滴下し難く、最初は不可能である。これらは意図するよりも多くの用量につながったり、非標的領域上に溶液が滴ってしまうことにつながったりするため避けるべきである。ガラススワブは1回の使用後、破壊されたガラスにより視覚的に破壊される。これにより自宅の患者が引き続く投与時に自己投与のために同じガラススワブを再度用いる可能性を低減できる。これは腕への単回投与が3か月以上の発症を予防すること(Palli et al., Chang et al.)、及び腕への単回投与が前記単回投与から8週間後に顕著な全身の免疫変化を引き起こすこと(McTavish et al.)が示された口唇ヘルペスの発症予防におけるSADBE-DMSO溶液にとって意図されたものではない。また、SADBEはDMSO溶液中に少量の水が存在する場合でもかなり不安定であり、DMSOは空気に晒されると空気中の水分を吸収するため、溶液内への水の取り込み及び加水分解によりSADBE濃度が経時的に著しく低下してしまうことから、包装を破壊した後はユーザが容器を再利用することは好ましくない。ガラススワブの酢酸酪酸セルロースバリア層により、反復使用をさせないためのさらなる可視的な合図が提供される。ガラススワブが破壊されてDMSO-SADBE溶液が酢酸酪酸セルロースに接触した後、酢酸酪酸セルロース層は約60分で透明から白色に変わる。バリア層の他のポリマーは、DMSO又は免疫増感剤の他の媒体と接触した後、外観が変化して視覚的に損傷して見えるという同様の特性を有し得るだろう。
【0023】
皮膚パッチは、個別であってもガラススワブと組み合わせても、ガラススワブと同じ利点を有する:これは付与される免疫増感剤溶液の体積及び薬剤が付与される皮膚領域の点で、一貫性のある投与を容易にする。これはまた、過剰の溶液を送達するのを防ぎ、付与された部位から溶液が滴り落ちて指などの非標的領域に接触するのを防ぐ。またこれは、基本的に2回目の投与に使用できない単回用量付与デバイスを提供することにより、同じパッチで、又は1つの皮膚パッチ及び液体又は半液体の局所免疫増感剤溶液を含む容器を含む同じキットで、前記容器がガラススワブであるか否かに関わらず、患者が複数用量を付与しようとする可能性が低減できる。
【0024】
[実施形態]
皮膚パッチの一実施形態において、吸収性ガーゼはポリエステルを含む。
【0025】
皮膚パッチ、ガラススワブ、キット、及び方法の特定の実施形態では、局所免疫増感剤は、スクアリン酸エステル、ジフェニルシクロプロペノン、1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼン(DNCB)、1-クロロ-2,6-ジニトロベンゼン、又はウルシオールを含む。
【0026】
特定の実施形態において、免疫増感剤はSADBEである。
【0027】
特定の実施形態では、媒体は、クリーム、ローション、アセトン、鉱油、ワセリン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、エタノール、又はメタノールを含む。特定の実施形態では、媒体は、DMSO、アセトン、エタノール、又はイソプロパノールを含む。特定の実施形態では、媒体はDMSOを含む。他の特定の実施形態では、媒体は、DMSO、メタノール、アセトン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、水、又はそれらの組み合わせを含む。
【0028】
特定の実施形態では、媒体はDMSOであり、局所免疫増感剤はDMSOに0.1%~5%(wt/vol)で溶解したSADBEである。
【0029】
皮膚パッチの特定の実施形態において、吸収性ガーゼ層は、(直接的に、又はバリア層を介して間接的に)接着性バッキング層に恒久的に取り付けられる。
【0030】
他の特定の実施形態では、吸収性ガーゼ層は接着性バッキング層に取り付けられていない。
【0031】
ガラススワブの特定の実施形態において、ガラススワブは、ガラスアンプルを部分的に又は完全に取り囲む1又は複数のバリア層であって、フォームチップを介した溶液以外のガラスの破片及び溶液が前記1又は複数のバリア層に浸透してガラススワブを保持する人の皮膚に接触するのを防ぐように構成された前記1又は複数のバリア層をさらに含む。
【0032】
特定の実施形態では、バリア層はポリマーバリア層、例えば酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリエステル、又はポリエチレンを含む。
【0033】
特定の実施形態では、ガラススワブは、ガラスアンプルを部分的又は完全に取り囲み、フォームアプリケーターチップまでをシールするポリマーバリア層を含み、前記ポリマーバリア層は、壊れたガラスの破片及び溶液がポリマーバリア層に浸透してガラススワブを絞って破壊する人の指の皮膚に接触することを防ぐように構成されている。
【0034】
本発明の皮膚パッチ、ガラススワブ、方法、及びキットの特定の実施形態において、媒体は、DMSO、メタノール、アセトン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、水、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0035】
本発明の皮膚パッチ、ガラススワブ、方法、及びキットの特定の実施形態において、局所免疫増感剤はスクアリン酸エステル(例えばSADBE)であり、媒体はDMSO、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、アセトン、又はこれらの組み合わせである。
【0036】
本発明の皮膚パッチ、ガラススワブ、方法、及びキットの特定の実施形態において、媒体はDMSOであり、局所免疫増感剤はSADBEである。密閉されたガラスアンプルは空気と水蒸気を排除する恒久的な気密シールを提供し、ガラスアンプルは窒素又は他の不活性ガス又は乾燥空気で満たして水蒸気を制限できるため、ガラススワブはこの組み合わせに特に有利である。これは、DMSOが空気から水分を取り込みやすいところ、SADBEは水によって容易に加水分解され、水分含有量の高いDMSO溶液内では不安定であるため、水分の取り込みを避ける必要があることから、有利である。また、DMSOは多くのポリマーなどの多くの物質を抽出又は溶解する優れた溶媒であるが、ガラスはDMSOに対して完全に耐性を有する。
【0037】
ガラススワブの特定の実施形態において、1又は複数のバリア層は、セルロースポリマー層(例えば、酢酸セルロース又は酢酸酪酸セルロース)及び/又は厚紙層を含む。
【0038】
ガラススワブの特定の実施形態、特に免疫増感剤がSADBE又はスクアリン酸エステルである場合において、溶液中の水は、100ppm未満、又はより好ましくは50ppm未満、20ppm未満、若しくは10ppm未満である。
【0039】
ガラススワブの特定の実施形態において、ガラスアンプル内の溶液は、ガラスアンプルが破壊されるまではガラスとのみ接触する。
【0040】
本発明の一実施形態は、(a)乾燥雰囲気下で媒体(例えば、DMSO又はアセトン)を分子ふるいで処理して媒体から水を除去し、乾燥媒体を生産すること、(b)乾燥雰囲気下で局所免疫増感剤(例えば、SADBE)を前記乾燥媒体に溶解させて乾燥溶液を生産すること、及び(c)前記乾燥溶液をガラスアンプルに充填してガラスアンプルを密閉し気密シールを形成すること、を含み、前記溶液は、前記気密シールが破壊されるまではガラスとのみ接触する、本発明のガラススワブを作製する方法である。好ましくは工程(c)は乾燥雰囲気下(例えば、窒素、アルゴン、又は乾燥空気)で乾燥溶液をガラスアンプルに充填してガラスアンプルを密閉し気密シールを形成することである。
【0041】
本発明の一実施形態は、(a)(1)媒体(例えば、DMSO又はアセトン)を分子ふるいで処理して(好ましくは乾燥雰囲気下)媒体から水を除去し、乾燥媒体を生産すること;及び、前記乾燥媒体にスクアリン酸エステルを溶解して(好ましくは乾燥雰囲気下で)乾燥溶液を生産すること、又は(a)(2)媒体(例えば、DMSO又はアセトン)にスクアリン酸エステルを溶解して溶液を形成し、その後前記溶液を分子ふるいで処理して(好ましくは乾燥雰囲気下)前記媒体から水を除去し、乾燥溶液を生産することを含む、請求項15に記載のガラススワブを作製する方法を提供する。前記方法はさらに、(b)乾燥雰囲気下(例えば、窒素、アルゴン、又は乾燥空気)で前記乾燥溶液を前記ガラスアンプルに充填し、前記ガラスアンプルを密閉して気密シールを形成すること、を含み、前記アンプル中の前記乾燥溶液は、前記気密シールが破壊されるまではガラスとのみ接触する。
【0042】
別の実施形態は、(a)布地の領域の少なくとも一部の上に接着剤が重ねられた前記布地を含む接着性バッキング層であって、前記接着性バッキング層には、その領域の一部の上に吸収性ガーゼ層が重ねられている、前記接着性バッキング層、を含む皮膚パッチと、(b)媒体に溶解した局所免疫増感剤を含む液体又は半液体の溶液を含む密閉容器と、を含むキットを提供する。
【0043】
キットの特定の実施形態において、皮膚パッチは、ガーゼ層と接着性バッキング層との間にバリア層をさらに含み、バリア層は媒体及び局所免疫増感剤に対して不透過性である。
【0044】
特定の実施形態において、密閉容器は本発明のガラススワブである。密閉容器は、スクリューキャップ付きプラスチックバイアル、スクリューキャップ付きガラスバイアル、又は手で壊すことのできるネック付き密閉プラスチックバイアル等、他のタイプの容器であってもよい。
【0045】
キットの特定の実施形態において、密閉容器は、人が道具を使わずに手で開けるように構成されている。
【0046】
本発明の別の実施形態は、人の皮膚に接着性皮膚パッチを適用し接着させることを含み、前記接着性皮膚パッチは、布地の領域の少なくとも一部の上に接着剤が重ねられた前記布地を含むバッキング層を含み、前記バッキング層には、その領域の一部の上に吸収性ガーゼ層が重ねられており、前記吸収性ガーゼ層は、媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む、制御された用量の局所免疫増感剤を局所的に付与する方法を提供する。
【0047】
前記局所的に付与することは、通常、ヘルペスの発症を予防したり、尋常性疣贅を処置したりするなど、局所免疫増感剤で人を医学的に処置するためのものである.
【0048】
制御された用量の局所免疫増感剤を局所的に付与する方法の特定の実施形態において、前記方法は、前記適用する工程の前に、媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む単位用量容器を開けることと、前記溶液を前記皮膚パッチの前記吸収性ガーゼ層に付与して、前記媒体と前記媒体に溶解した局所免疫増感剤とを含む液体又は半液体の溶液を含む吸収性ガーゼ層を形成することと、をさらに含む。この場合、皮膚パッチの吸収性ガーゼ層に溶液を付与する工程の前に吸収性ガーゼ層は局所免疫増感剤溶液を含まなかった。
【実施例
【0049】
<実施例1>
プラセボ対照第I相臨床試験では、口唇ヘルペスの発生頻度が高い患者においてSADBEが次の発症までの時間を延長させたことが示される。
〔方法〕
この探索的二重盲検無作為化プラセボ対照試験は、マサチューセッツ総合病院で2013年11月から2015年9月の間に実施された。過去12か月間に口唇ヘルペスを6回以上発症したと自己申告した18歳から69歳の健康成人は、最初の来院時に腕に局所感作用量投与を受け、その後、この感作投与後の少なくとも2週間後に起きた最初の2つの口唇ヘルペスのエピソードの間、病変に付与された局所治療用量投与を受けた。参加者は、ジメチルスルホキシド単独(プラセボ)、2.0%SADBE感作用量及び0.5%SADBE治療用量投与、又は2.0%SADBE感作用量、0.2%SADBE治療用量投与を受けるように1:1:1で無作為化された。試験はPartners Human Research Committeeの治験審査委員会で承認され、すべての参加者は書面によるインフォームドコンセントを提供した。(clinicaltrials.gov 識別番号NCT01971385)。
【0050】
〔結果〕
54名の患者が試験に登録された。43名の患者が感作用量投与後に研究スタッフと少なくとも1つの形式で(直接又は電話で)コンタクトを取り、有効性データ分析に含まれた。分析されたデータには、9名の男性と34名の女性が含まれる。
【0051】
計画された主要エンドポイントの1つは、最後の治療用量投与から次の口唇ヘルペスの発症までの日数であった。しかしながら、感作のために2.0%SADBEを投与された28人の患者のうち16人では新たな発症が見られず、引き続く治療用量投与を受けなかった。そのため、感作用量投与後の次の発症までの時間を分析した。感作後に最初の発症が起こらなかった患者からのデータは、入手可能であった最後の追跡日で打ち切り、Kaplan-Meierのイベント発生時間(time-to-event)曲線を推測及びグラフ化した(図3)。プラセボ群のイベント発生時間の中央値は40日であったのに対し、2.0%SADBE群では122日以上であり、この差は非常に有意であった(P=0.009)。SADBE感作用量投与に24時間晒された後に1人の患者に発生した自己感作性皮膚炎を除いて、注目された唯一の他の有害事象は感作部位の掻痒と発赤であり、これは2.0%のSADBEの投与を受けた13名の患者及びプラセボの投与を受けた2名の患者に見られた。
【0052】
〔考察〕
本試験は、患者のSADBEによる感作が単純ヘルペスウイルスの発症予防に役立つ可能性があることを示唆している。我々の最初の仮説は、適切な免疫応答を達成するには活動性病変に対する治療が必要であるというものであったが、我々の結果は、この追加の工程は必要ない可能性があることを示唆している。全体として、SADBEは患者の忍容性が良好であった(Palli et al.)。
【0053】
<実施例2>
HSV-1免疫コントロールと相関する免疫特性、及び口唇ヘルペスを頻繁に発症する被験者の免疫特性に対するスクアリン酸ジブチルエステルの効果
〔序論〕
口唇ヘルペス、及び単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の良好又は不良な免疫コントロール(すなわち、口唇ヘルペスのエピソード頻度)と相関する、末梢血単核細胞(PBMC)による免疫遺伝子発現を含む免疫特性の差異、並びにこれらの特性がスクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)の投与後にどのように変化するかを調査した。
【0054】
〔方法〕
HSV-1に対するIgGが陽性で、頻繁に口唇ヘルペスを発症する人(過去12か月間に6回以上のエピソードを自己申告)、まれに口唇ヘルペスを発症する人(過去12か月間に1又は2回のエピソード)、又は過去12か月間に口唇ヘルペスの発生がない人からPBMCを採取した。PBMCを、HSV-1及び真菌抗原(カンジダ)に対する増殖、並びにHSV-1及びカンジダの存在下での免疫遺伝子発現について試験した。採血後1日目に、頻繁に発症する被験者の腕にDMSO中の2%SADBEを1回局所投与し、2週間後と8週間後にPBMCを採取して検査した。
【0055】
コットンスワブを1mlバイアルの液体試験薬に浸し、次に上腕のワセリンで囲まれた直径約10~15mmの領域の内側の部位に塗ることによって投与用量が付与された。付与後、当該部位をテガダーム(商標)ドレッシングで覆い、被験者は、3時間後にドレッシングを取り除き、湿った布で当該部位を拭き取るように伝えられた。試験薬のバイアルを立てた状態で、各被験者に投与する直前と直後に、バイアルの重量を測定した。その差は付与された薬剤の正味質量であった。ほとんどの場合、10mgから20mgの薬液が腕に塗布された。
【0056】
〔結果〕
HSV-1感染の免疫コントロールが良好な(発症が少ない)患者は、免疫コントロールがより不良な患者と比較して以下の点で異なっている。
(1)インビトロで、HSV-1、HSV-1感染細胞抽出物、及びカンジダの全体に対するPMBC増殖が大きい(P<0.01)
(2)熱不活化HSV-1ウイルスで刺激されたインビトロのPBMCにおいて、インターフェロンガンマ(IFNG)及び他の5つの免疫関連遺伝子の発現が高く(それぞれP<0.05)、インターロイキン5(IL5)及び他の2つの免疫関連遺伝子の発現が低い(それぞれP<0.05)。
【0057】
頻繁に発症する被験者はSADBEで1回処置され、56日後、これらの被験者のPBMCは、HCV-1の免疫コントロールが良好な被験者と免疫コントロールが不良な被験者の差異として挙げたのとまったく同じように、同レベルの有意性で、1日目に処置前に採取された同じ被験者からのPBMCと異なっていた。しかしながら、前記1回の投与の2週間後には、これらの遺伝子発現又は増殖測定のほとんどすべてにおいて、PBMCは1日目に回収されたPBMCと差がなかった。したがって、腕に局所的に付与されたDMSO中の2%SADBEの単回投与によって免疫系の変化が誘発されるまでに2週間以上8週間未満かかった。
【0058】
〔結論〕
HSV-1存在下でのPBMCによるインターフェロンガンマ(IFNG)の高発現とインターロイキン5(IL5)の低発現は、口唇ヘルペスの発症の減少と相関し、頻繁な口唇ヘルペスのエピソードを有する被験者の腕へのDMSO中の2%SADBEの単回局所投与は、特に、HSV-1ウイルスの存在下でPBMCにおけるIFNG発現を増加させIL5発現を減少させることにより、HSV-1に対する免疫応答を改善する(McTavish et al.)。
【0059】
<実施例3>
反復性口唇ヘルペスの被験者の発症頻度を減少させるための単回投与スクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)の第II相多施設プラセボ対照試験
本試験は、治験審査委員会の承認と書面によるインフォームドコンセントの後、過去12か月間に4回以上の口唇ヘルペスのエピソードを経験した被験者において5施設で実施された。被験者は、(1)1日目にDMSO中の2%SADBEの1回投与、(2)1日目に2%SADBE、及び22日目に2回目の低用量投与(0.5%)の「ブースター」、又は(3)1日目と22日目のジメチルスルホキシド(DMSO)媒体のみのいずれかを受けるように無作為化された。すべての被験者は1年間追跡した。
【0060】
盲検化された液体試験薬の1mlバイアルにコットンスワブを浸し、次に上腕のワセリンで囲まれた直径約10~15mmの領域の内側の部位に塗ることによって投与用量が付与された。付与後、当該部位をテガダーム(商標)ドレッシングで覆い、被験者は、3時間後にドレッシングを取り除き、湿った布で当該部位を拭き取るように伝えられた。試験薬のバイアルを立てた状態で、各被験者に投与する直前と直後に、そのバイアルの重量を測定した。その差は付与された薬剤の正味質量であった。ほとんどの場合、10mgから20mgの薬液が腕に付与された。
【0061】
適格な被験者(n=140)が登録され、過去12か月の発症数の中央値は6(平均=7.8)であった。1回投与群は、43日目から121日目まで、次の発症までの時間においてプラセボ群より優れていた(p=0.024)(図1)。43日目~121日目の平均発生数:1回投与(0.231±0.125標準誤差)vs.プラセボ(0.610±0.068)(p=0.011)。43日目~121日目に発症した被験者の割合:1回投与(9/39=23%)vs.プラセボ(19/41=46%)(p=0.036)。1回投与のSADBEを投与した被験者では、43日目~121日目の中等度又は重度の発症の平均数も減少した((0.128±0.339)vs.プラセボ(0.390±0.703)(p=0.04)。1日目~365日目の間でも同様であった(1回投与(0.641±0.931)vs.プラセボ(1.341±1.76)(p=0.04))。
【0062】
特に、2回投与群はこれらの同じ測定項目においてプラセボよりも優れていたが有意ではなかった。1回投与が2回投与レジメンよりも優れている可能性がある理由については未調査であるが、低濃度での2回目の投与が1回目の投与の2%SADBEを「寛容化」または下方制御すると仮説を立てている。
【0063】
SADBE処置群で観察された最大の改善は、試験の43日目~121日目の間に起こった。考えられる理由の1つは、SADBEが免疫系に最大の効果を発揮するまでに約6週間かかり、1回目の投与後約3~4か月で効果が徐々に消失し始めることである。
【0064】
最も一般的な有害事象の種類は投与部位反応で、いずれも軽度又は中等度であり、いずれも3か月以内に消失した。これは、高頻度の口唇ヘルペスにおける局所2%SADBEの好ましいリスク-ベネフィットプロファイルを示唆している。
【0065】
<実施例4>
ブタモデルへのSADBE皮膚パッチの適用後の皮膚刺激性と残留薬剤レベルを評価するための非GLP試験
American Preclinical Services試験番号:JLM001-PH50
〔序論〕
SADBEの経皮投与のため、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の2%(w/v)濃度のスクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)を皮膚パッチに添加して、遅延型過敏反応又はその他の皮膚刺激性を試験し、異なる体積と曝露時間でSADBEがどの程度パッチから消失し、したがってどの程度皮膚に浸入すると推測されるか試験した。
【0066】
この試験の目的の1つは、皮膚パッチから皮膚への薬剤溶出の時間経過を決定することであった。このために、パッチをブタの皮膚に適用し、1、3、6、又は24時間後に除去し、抽出して、パッチに残っている残留SADBE薬剤の量を決定した。パッチに最初にロードされた量から減少しているSADBEは、ブタの皮膚に移行したと推測される。
【0067】
さらなる目的は、投与後4週間にわたるブタの皮膚の紅斑及び浮腫を含む、即時及び遅延性の皮膚刺激性を評価することであった。
【0068】
〔材料及び方法〕
皮膚パッチは、接着剤付きの3M 9916ポリエステル不織布バッキング層と同様のポリマーバッキング層、3M 9733ポリエステルフィルムラミネートバリア層、及びPrecision Fabrics Group 0700-00010ポリエステルガーゼ層で構成されていた。ガーゼをバリア層にヒートシールした。ガーゼパッチ面積は約3cmであった。
【0069】
指定した時間にパッチをブタから取り外し、すぐにパッチのリザーバ部分を切り取り、10mlのDMSOを含む50mlチューブに入れた。
パッチを取り除いた直後に、キムワイプを使用してブタのパッチがあった場所をスワブで拭き、皮膚の表面上にあり皮膚に吸収されなかったSADBEの回収を試みた。キムワイプで拭いた後、キムワイプを10mlのDMSOを含む別の50mlチューブに入れた。
【0070】
パッチ又はキムワイプを入れたDMSOのチューブを研究所に運び、200rpmで10分間振とうした後、各チューブからのDMSOを注射用バイアルに入れ、プログラムSADBE3-50μlを使用したC18カラムでのHPLCによってSADBE含有量を分析した。このプログラムでは、SADBEは約24.0分で溶出し、255nmで吸収されるため、255nmでの24.0分のピークの面積を使用してSADBEを定量化した。
【0071】
HPLCプログラムの詳細は次のとおりである。
このプログラムは、HPLCではSADBE3-50μlと呼ばれ、50μlが注入される。
カラム:USP L1(ODS)、250mm×4.6mm、5μm(C18)
アジレント部品番号880995-902
移動相:A:25mM KHPO(pH5)(pH調整なし)
B:メタノール
流量: 1.0mL/分
波長: 255nm、215nm
温度: 室温
注入量:50μl
グラジエント溶出(表1):
【0072】
【表1】
【0073】
〔結果〕
2018年8月6日、パッチの最初のセットを3頭のブタに適用した。パッチはすべて、パッチ上で各ブタの胴体に巻かれた弾性包帯によってブタの所定の位置に保持された。結果を表2に示す。減少して皮膚内にあると推測されるSADBEの正味のHPLC面積は、20μl及び50μlのコントロールから予測される面積から、皮膚に適用された試験パッチから抽出されたSADBEの観察されたHPLC面積を差し引いて計算される。
【0074】
【表2】
【0075】
コントロールは、パッチのリザーバを10mlのDMSOに抽出するこの手順で、パッチからのSADBEの回収が完全であることを示している。
【0076】
2週目:
ブタ4及び5のSADBEパッチテストを2018年8月13日に行った。この場合、いずれのブタのパッチもテガダーム(商標)で覆い、一方のブタでは8月6日と同様にテガダーム(商標)をさらに弾性包帯で覆った。
【0077】
【表3】
【0078】
パッチからの薬剤溶出のまとめと結論:
パッチから失われたSADBEの割合(%)、すなわち皮膚に移行したと推測されるSADBEの割合(%)をパッチごとに計算し、所定の体積(パッチにロードされた2%SADBE溶液の体積)及び時点(ブタにパッチが載せられていた時点)における結果を平均し、弾性包帯によってパッチがブタの所定の位置に保持されていたかどうかにより分類した。結果を以下の表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
パッチから皮膚へのSADBE移行の結論:
弾性包帯は、皮膚への薬剤吸収を増加させた。
1~6時間の時点で、体積が多いほど薬剤移行の割合(%)が幾分又はわずかに低かった。しかしながら、ロードされた薬剤の皮膚への移行割合(%)は、皮膚へ移行した薬剤の絶対量よりも一貫していた。すなわち、体積が20μlから80μlへ4倍増加しても、移行した薬剤の割合(%)は4倍低くはならなかった。
6時間までに、弾性包帯ありで試験したすべてのロード体積において、ロードされた薬剤の80%超が皮膚に移行した。24時間までに、95%超が皮膚に移行した。
【0081】
皮膚刺激性
皮膚刺激性は、表5のようにスコア化された。
【0082】
【表5】
【0083】
これは、各パッチ適用部位で4週間、週3回スコアリングされた。
パッチの適用後及び除去後のいずれの時点においても、いずれの薬剤適用部位にも浮腫がみられたブタはいなかった。したがって、以下のスコアは紅斑のみのものである。
個々のパッチ適用ごとの紅斑スコアを表6に示す。示されているスコアは、パッチ除去時の紅斑スコアであり、そして各パッチ部位について各週に取得した3つのスコアの最高値である。
【0084】
【表6】
【0085】
表6に全体的に見られるように、紅斑スコアは2週目にピークに達し、4週目にはゼロとなった。これは表7に示されており、1、2、及び3週間における、すべてのパッチ、用量、及びパッチ除去時の曝露時間にわたる平均スコアを示している(これらの3週間の各週における各個体の最高スコアの平均)。この遅延型紅斑は遅延型過敏反応の特徴であり、SADBEはヒトにおいて遅延型過敏反応を引き起こすことが知られている。
【0086】
【表7】
【0087】
表8に示すように、投与体積が多く、パッチの着用時間が長いほど、紅斑スコアは高かった。紅斑スコアは、20μlから50μlにかけて大きく増加したが、50μlと比較して80μlの投与量ではさらなる増加はなかった。紅斑スコアの増加は、1時間曝露と比較して3時間曝露で劇的であったが、3時間と比較して6時間及び24時間ではそれほど劇的ではなかった。
【0088】
【表8】
【0089】
皮膚刺激性データのまとめ:
ブタは、紅斑が時間の経過とともに増加し、2週目にピークに達し、4週目までに消失するという遅延型過敏症反応の特徴を有する皮膚刺激性を示した。パッチ適用部位に浮腫を有するブタはいなかった。紅斑は用量及び曝露時間に依存していた。
【0090】
<実施例5>
モルモットモデルにおける非GLPのSADBE皮膚パッチの用量範囲、皮膚刺激性及び毒性評価
〔目的/目標〕
この非GLP試験の目的は、投与部位刺激性、並びに、体重、群の食物消費量、臨床観察、終了前の臨床病理、肉眼的及び組織病理などの毒性エンドポイントについて、皮膚パッチを介して送達された様々な濃度のSADBEの効果を評価することであった。
【0091】
〔試験物質〕
・スクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)(2%、6%、18%、皮膚パッチ)
・皮膚パッチ(正方形4.5×4.5cm)は以下からなる:
- 3M Medical Tape 9916(3M社、米国ミネソタ州セントポール)(2.2oz/yd(62g/m)100%ポリエステルタンスパンレース不織布、感圧性アクリレート接着剤付き)のバッキング層
- 3M 9733ポリエステルフィルムのバリア層
- Precision Fabrics PFG 0700-00010ポリエステルのガーゼパッチ、面積約3cm。ガーゼパッチ領域は直径0.67インチ(1.7cm)(面積2.27cm)の円形で、外周が下のバリア層に音波溶着されているため、音波溶着されていないガーゼ領域のより吸収性の高い中央部分は直径0.55インチ(1.4cm)(面積1.53cm)である。
- 40lbのペーパーシリコーンライナー(スプリットライナー)
【0092】
〔方法〕
この非GLP試験では30匹のモルモット(雌15匹及び雄15匹)を使用した。投与前及び投与後(2、6、又は18%のSADBE薬液20μlをロードした皮膚パッチ)の体重、群の食物消費量、並びに投与部位の紅斑、痂皮形成、及び浮腫のDraizeスコアを記録した。SADBEをロードした皮膚パッチを動物に適用し、約12時間±1時間放置した。約12時間の投与期間の後、Draizeスコアリングによってパッチ部位を評価した。この期間中、毎週の体重と毎週の群の食物消費量を介して、投与後及び試験期間中毎日、毒性の徴候について動物を観察した。28日間の評価期間の後、再チャレンジを実施し、2つ目のパッチ(誘導段階では処置されなかった)を適用し、Draizeスコアリングによって評価した。
【0093】
生存期間の終わりに、標準的な血液学及び血清化学分析のために血液を採取し、動物を人道的に安楽死させた。さらなる組織病理学的評価のために、2回目の投与部位及び頸部リンパ節を剖検で採取した。投与部位を外植し、固定し、埋設した。投与部位を組織学的に調べ、細胞型の存在及び組織反応の評価を行った。
【0094】
〔結果〕
モルモットの皮膚への皮膚パッチによるSADBEの皮膚適用は、試験したいずれの用量でも体重や食物消費量に有意な影響を与えなかった。
【0095】
2%SADBEの1回目の皮膚SADBEパッチ適用はわずかな刺激性を示した。2%での再チャレンジは中等度の刺激性を示した。6%SADBEの1回目の皮膚SADBEパッチの適用は中等度の刺激性を示した。6%での再チャレンジは中等度の刺激性を示した。18%SADBEの1回目の皮膚SADBEパッチの適用は重度の刺激性を示した。18%での再チャレンジは中等度の刺激性を示した。
【0096】
すべての用量で、主にリンパ球、形質細胞、及びマクロファージで構成される炎症細胞の、多発性のまれ~軽度の浸潤の存在が観察され、投与部位内に蓄積されていた。さらに、軽度~中等度の角化症、最小の多発性壊死、及び脂肪浸潤がすべてのSADBE処置部位で観察された。2~6%とは異なり、18%のSADBEでは、最小の多発性壊死、中程度に厚い線維性結合組織の束、及び多発性の軽度の血管新生が処置部位で観察され、これは毒性効果である可能性がある。すべてのSADBE処置群の両方の動物の頸部及び鼠径部のリンパ節切片は、正常範囲内であった。
【0097】
SADBEをロードしたパッチの生物学的分析では、SADBEが動物の皮膚に晒されていない場合、SADBEがパッチ内で12時間を超えて安定であり、明らかなSADBEの損失やSADBEの分解生成物であるSAMBEへの変換がないことが示された。動物の皮膚に12時間晒した後のパッチの分析では、SADBEの大部分がパッチから失われ、モルモットの皮膚に入ったと推測された。
【0098】
皮膚刺激性及び遅延型過敏反応
試験部位での皮膚刺激性を観察し、紅斑及び痂皮、並びに浮腫の両方について、Draizeスケールで試験中毎日スコアリングした。それぞれのスケールは表9及び表10に示され、それぞれ0~4のスケールである。紅斑及び痂皮、並びに浮腫の累積スコアが一次刺激性指数スコアであり、したがって0~8のスケールとなる。
【0099】
【表9】
【0100】
【表10】
【0101】
試験物質SADBE(DMSO中2%、6%、及び18%)がモルモットにおいて皮膚刺激性及び感受性に及ぼす影響を評価するために、Draizeスコアリングシステムを使用して、紅斑反応及び痂皮反応並びに浮腫の投与部位評価を行った。試験物質(20μl)を皮膚パッチにロードし、剃毛したモルモットの皮膚に12時間適用した(誘導段階)。1回目の投与部位の評価は適用後30日間行った。2回目の用量を適用し、投与部位の評価も約5週間行った(チャレンジ段階)。
【0102】
各試験物質用量の一次刺激性指数(pII)を計算し、刺激性を評価した。一次刺激性指数(pII)は、一次刺激性スコアの平均である。一次刺激性スコアは、紅斑/痂皮スコアと浮腫スコアの合計であり、最大の刺激性は8となる。試験期間中の各試験物質用量の毎日の一次刺激性指数(pII)を算出した(図4)。pIIを使用して、試験物質による処置を、無視できる~刺激性なし(0~0.9)、わずか(0.9~1.9)、中等度(2~4.9)、又は重度(5~8)の刺激性に分類する。このスケールでは、2%SADBEは1回目の投与後にわずかに刺激性を示し、2回目の投与後に中等度の刺激性を示した。6%SADBEはいずれの投与後も中等度の刺激性を示した。18%では1回目の投与で重度の刺激性を示し、2回目の投与では中等度の刺激性を示した(図4)。
【0103】
誘導時、28日間の観察期間中、試験したSADBEの最低用量である2%SADBEは、剃毛したモルモットの皮膚に、約17日間持続するわずかな皮膚刺激性を示した。同じモルモットの未投与部位に2%SADBEを再チャレンジすると、皮膚刺激性は軽度~中等度のレベルに達し、約5日間持続し、皮膚適用後約9日で刺激性なしのレベルに戻った。
【0104】
誘導時、28日間の観察期間中、6%SADBEは、約18日間持続する中等度の皮膚刺激性を示し、約23日までにはわずかな刺激性~刺激性なしのレベルに戻った。同じモルモットの未投与部位に6%SADBEを再チャレンジすると、皮膚刺激性は中等度のレベルに達し、約5日でピークに達し、皮膚適用後約14日で刺激性なしのレベルに戻った。
【0105】
誘導時、28日間の観察期間中、試験されたSADBEの最高濃度である18%SADBEは、剃毛したモルモットの皮膚に、約21日間持続する中等度~重度の皮膚刺激性を示し、投与後約27日までにはわずかな刺激性及び刺激性なしのレベルに戻った。同じモルモットの未投与部位に18%SADBEを再チャレンジすると、皮膚刺激性は中等度のレベルに達し、約8日でピークに達し、皮膚適用後約19日で刺激性なしのレベルに戻った。
【0106】
(動物の健康に関する結果)
要約すると、体重、食物消費量、臨床モニタリング、及び臨床病理を評価した。試験中、試験物質の皮膚適用後のいずれの時点においても、いずれの用量でも、モルモットの体重は影響を受けなかった。食物消費量も、試験中、試験物質の皮膚適用後のいずれの時点においても影響を受けなかった。臨床モニタリング観察においても顕著な以上は観察されなかった。
【0107】
(組織病理結果)
試験病理学者により、光学顕微鏡を用いてすべての組織サンプルの組織学スライドを調べた。
【0108】
雌の処置皮膚部位(群1;2%SADBEパッチ):
5つの処置皮膚部位をスコアリングした。主に真皮のリンパ球及びマクロファージで構成された炎症細胞の多発性のまれ~軽度の浸潤がみられた。壊死、血管新生、線維症及び脂肪浸潤は認められなかった。
すべての動物の腋窩及び鼠径リンパ節切片は、正常範囲内であった。
動物番号118037では、斑状の暗赤色変色の肉眼的剖検所見と相関する、腸間膜リンパ節の皮髄領域における軽度の多発性出血がみられた。
【0109】
雄の処置皮膚部位(群1;2%SADBEパッチ):
5つの処置皮膚部位をスコアリングした。主に真皮のマクロファージで構成された炎症細胞の多発性のまれな浸潤がみられた。壊死、血管新生、線維症及び脂肪浸潤は認められなかった。
動物番号116050の右腋窩リンパ節の皮質に、暗赤色変色の肉眼的剖検所見と相関する軽度の多発性出血があった。残りの動物の腋窩及び鼠径リンパ節切片は正常範囲内であった。
【0110】
雌の処置皮膚部位(群2;6%SADBEパッチ):
5つの処置皮膚部位をスコアリングした。主に真皮のリンパ球、形質細胞、及びマクロファージから構成される炎症細胞の多発性のまれ~軽度の浸潤がみられた。動物番号117356、117353、及び117367では、狭い線維性結合の束が認められた。壊死、血管新生及び脂肪浸潤は認められなかった。
動物番号117356の右腋窩リンパ節の髄質に、暗赤色変色の肉眼的剖検所見と相関する軽度の多発性出血があった。残りの動物の腋窩及び鼠径リンパ節切片は正常範囲内であった。動物番号118849では、腸間膜リンパ節の皮質髄質領域に、斑状の暗赤色変色の肉眼的剖検所見と相関する軽度の多発性出血があった。
【0111】
雄の処置皮膚部位(群2;6%SADBEパッチ):
5つの処置皮膚部位をスコアリングした。主に真皮の形質細胞とマクロファージから構成される炎症細胞の多発性のまれ~軽度の浸潤がみられた。壊死、血管新生、線維症及び脂肪浸潤は認められなかった。
動物番号116105の右鼠径リンパ節の皮質に、暗赤色変色の肉眼的剖検所見と相関する軽度の多発性出血があった。残りの動物の腋窩及び鼠径リンパ節切片は正常範囲内であった。
【0112】
雌の処置皮膚部位(群3;18%SADBEパッチ):
5つの処置皮膚部位をスコアリングした。主に真皮のリンパ球、形質細胞、及びマクロファージから構成される炎症細胞の多発性のまれ~軽度の浸潤がみられた。動物番号119069では、中程度に厚い線維性結合の束が認められた。最小の多発性壊死及び血管新生が認められた。脂肪浸潤は認められなかった。
すべての動物の腋窩及び鼠径リンパ節切片は、正常範囲内であった。
【0113】
雄の処置皮膚部位(群3;18%SADBEパッチ):
5つの処置皮膚部位をスコアリングした。主に真皮のリンパ球、形質細胞、及びマクロファージからなる炎症細胞のまれ~重度の浸潤がみられた。動物番号116102、116048及び117906では、狭い~中程度に太い線維性結合の束が認められた。最小の多発性壊死及び軽度の多発性血管新生が認められた。脂肪浸潤は認められなかった。
動物番号116048の右及び左腋窩リンパ節の皮質に、暗赤色変色の肉眼的剖検所見と相関する軽度の多発性出血がみられた。残りの動物の腋窩及び鼠径リンパ節切片は正常範囲内であった。
【0114】
<生物分析結果>
American Preclinical Services試験番号:JLM002-PH00
〔序論〕
ジメチルスルホキシド(DMSO)中の2%(w/v)濃度のスクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)を、SADBEの皮膚投与のための皮膚パッチに添加し、遅延型過敏反応又はその他の皮膚刺激性を試験した。Squarexの研究所で、SADBE含有量の分析、APSにより調製された投与製剤の分析、適用期間中の皮膚パッチ中の試験物質の安定性の決定、及び動物に12時間適用した後の皮膚パッチ中の残留SADBEの試験のため、HPLC分析を実施した。
【0115】
〔材料及び方法〕
皮膚パッチは、接着剤付きの3M 9916ポリエステル不織布バッキング層と同様のポリマーバッキング層、3M 9733ポリエステルフィルムラミネートバリア層、及びPrecision Fabrics Group 0700-00010ポリエステルガーゼ層で構成されていた。ガーゼをバリア層にヒートシールした。ガーゼパッチ面積は1.53cmであった。
【0116】
指定した時間にパッチをブタから取り外し、すぐにパッチのリザーバ部分を切り取り、10mlのDMSOを含む50mlチューブに入れた。
【0117】
パッチを入れたDMSOのチューブをSquarex研究所に運び、200rpmで1時間以上振とうした後、各チューブからのDMSOを注射用バイアルに入れ、プログラムSADBE3-50μlを使用したC18カラムでのHPLCによってSADBE含有量を分析した。このプログラムでは、SADBEは約24.0分で溶出し、255nmで吸収されるため、255nmでの24.0分のピークの面積を使用してSADBEを定量化した。SADBE分解生成物であるスクアリン酸モノブチルエステル(SAMBE)も、12.7分の溶出時間における255nmの曲線下面積によって定量化した。
【0118】
HPLCプログラムの詳細は次のとおりである。
このプログラムは、HPLCではSADBE3-50μlと呼ばれ、50μlが注入される。
カラム:USP L1(ODS)、250mm×4.6mm、5μm(C18)
アジレント部品番号880995-902
移動相:A:25mM KHPO(pH5)(pH調整なし)
B:メタノール
流量: 1.0mL/分
波長: 255nm、215nm
温度: 室温
注入量:50μl
グラジエント溶出(表11):
【0119】
【表11】
【0120】
〔結果〕
表12は、APSにより調製されたバイアルの試験物質分析を示す。DMSOに溶解した2%、6%、及び18%のSADBEの試験物質バイアルは仕様に適合しており、調製後24時間においてSADBEの予測された濃度を示した。
【0121】
【表12】
【0122】
表13は、2%、6%、又は18%のSADBEを20μlロードし、ガーゼ側を上にして空気中に12~24時間放置したパッチの分析を示す。結果は、動物の皮膚に晒されていない場合、SADBEがパッチ内で12時間超安定していることを示した。明らかなSADBEの損失又はSADBEのSAMBEへの変換はなかった。
【0123】
【表13】
【0124】
表14は、付与された各SADBE割合(%)について10匹の動物の10個のパッチの平均として、モルモットの上で12時間後に回収されたパッチ中の残留SADBE及びSAMBE分解産物の量を示す。
【0125】
【表14】
【0126】
結果は、2%パッチでは当初のSADBEの2%未満がパッチに残存し、失われたSADBEのうち12%のみがパッチに残存したSAMBE分解産物として検出されたことを示した。そのため、ほぼすべてのSADBEがモルモットの皮膚に移行したようである。
【0127】
6%のパッチでは、平均してSADBEの11%がパッチに残存し、18%のパッチでは、平均してSADBEの34%がパッチに残存した。そのため、SADBE濃度が増加するにつれて、皮膚への移行効率は低下したが、それでもほとんどのSADBEはパッチから失われ、18%SADBEパッチを使用した場合でも皮膚に移行したと推測される。
【0128】
〔結論〕
いずれの用量でも、投与後及び試験期間を通して毎日、全身毒性の徴候は観察されなかったが、ある程度の皮膚毒性が観察された。皮膚刺激性の一次刺激性指数(pII)によりスコアリングされたように、試験されたSADBEの最低濃度(2%)は、1回目の投与後(数日遅れて)わずかな刺激性を示し、再チャレンジ時に中等度の刺激性を示した。試験された最高濃度(18%)は、1回目の投与後に重度の刺激性を示し、再チャレンジ後に中等度の刺激性を示した。SADBEは2~18%でモルモットの皮膚刺激性を示したため、皮膚刺激性物質かつ皮膚感作性物質である。
【0129】
<実施例6>
ゲッティンゲンミニブタモデルにおける非GLPのSADBE皮膚パッチの用量範囲、皮膚刺激性及び毒性評価
〔目的/目標〕
この非GLP試験の目的は、投与部位刺激性、並びに、体重、群の食物消費量、臨床観察、終了前の臨床病理、肉眼的及び組織病理などの毒性エンドポイントについて、皮膚パッチを介して送達された様々な濃度のSADBEの効果を評価することであった。
【0130】
〔試験物質〕
・スクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)(DMSO中の2%、6%、18%溶液、皮膚パッチ)
・皮膚パッチ(正方形4.5×4.5cm)は以下からなる:
- 3M Medical Tape 9916(3M社、米国ミネソタ州セントポール)(2.2oz/yd(62g/m)100%ポリエステルタンスパンレース不織布、感圧性アクリレート接着剤付き)のバッキング層
- 3M 9733ポリエステルフィルムのバリア層
- Precision Fabrics PFG 0700-00010ポリエステルのガーゼパッチ、面積約3cm。ガーゼパッチ領域は直径0.67インチ(1.7cm)(面積2.27cm)の円形で、外周が下のバリア層に音波溶着されているため、音波溶着されていないガーゼ領域のより吸収性の高い中央部分は直径0.55インチ(1.4cm)(面積1.53cm)である。
- 40lbのペーパーシリコーンライナー(スプリットライナー)
【0131】
〔方法〕
この非GLP試験では合計6匹のゲッティンゲンミニブタ(雌3匹及び雄3匹)を使用した。投与前に、ベースライン体重、群の食物消費量、並びに、将来の投与部位での紅斑及び痂皮形成並びに浮腫のDraizeスコアリング(表1及び表2を参照)を記録した。2、6、又は18%SADBE薬液20μlをロードした皮膚パッチ(動物1匹あたり1パッチ)を動物に適用し、約12時間そのまま放置した。約12時間の投薬期間の後、実施例5と同様に、週5回、21日間、Draizeスコアリングによってパッチ部位を評価した。この期間中、毎週の体重と毎週の群の食物消費量を介して、投与後及び試験期間中毎日、毒性の徴候について動物を観察した。25日間の評価期間の後、動物に再チャレンジを実施し、2回目の投与及び評価段階を30日間行った。生存期間の終わりに、動物を人道的に安楽死させ、完全な剖検を行った。適用後に、パッチ調製に用いられた試験物質バイアル及びミニブタに晒したパッチを回収し、Squarex研究所でHPLCを使用してSADBE含有量及びSADBE分解生成物のスクアリン酸モノブチルエステル(SAMBE)を測定した。
投与部位を外植し、固定し、埋設した。投与部位を組織学的に調べ、細胞型の存在及び組織反応の評価を行った。
【0132】
〔結果〕
ミニブタ皮膚への皮膚パッチを介したSADBEの付与は、いずれの用量でも体重や食物消費量に有意な影響を及ぼさず、このことは試験物質が重大な全身毒性を誘発しなかったことを示唆している。動物は、投与後及び試験期間を通して毎日、顕著な毒性の徴候を示さなかった。
【0133】
皮膚パッチを介してミニブタの皮膚に付与された2%SADBEの1回目のパッチ適用は、中等度の刺激性を示した。2%での再チャレンジは中等度~重度の刺激性を示した。
【0134】
皮膚パッチを介してミニブタの皮膚に適用された6%SADBEの1回目のパッチ適用は、中等度の刺激性を示した。6%での再チャレンジは中等度~重度の刺激性を示した。
【0135】
皮膚パッチを介してミニブタの皮膚に適用された18%SADBEの1回目のパッチ適用は、中等度~重度の刺激性を示した。18%での再チャレンジは、重度の刺激性を示した。
【0136】
試験したすべての用量(2~18%)で、SADBEは1回目の投与で中等度の刺激性を示し、ミニブタの皮膚で皮膚刺激性を示した。試験されたSADBEの最高濃度(18%)は、2回目の投与による再チャレンジで重度の刺激性を示した。したがって、SADBEは皮膚刺激性物質かつ感作物質である。
【0137】
すべての用量で、主にリンパ球、形質細胞、及びマクロファージで構成される炎症細胞の多発性でまれ~軽度の浸潤が、投与部位の真皮に観察された。さらに、軽度~中等度の角化症、最小の多発性壊死、及び脂肪浸潤がすべてのSADBE処置部位で観察された。血管新生及び線維症は、検査したいずれの組織切片にも認められなかった。
【0138】
すべてのSADBE処置群の両方の動物の頸部及び鼠径部のリンパ節切片は、正常範囲内であった。
【0139】
SADBEをロードしたパッチの生物分析は、SADBEが動物の皮膚に晒されていない場合、SADBEがパッチ内で12時間を超えて安定であり、明らかなSADBEの損失やSADBEの分解生成物であるSAMBEへの変換がないことを示した。SADBEはミニブタに適用されたパッチから失われたため、ミニブタの皮膚に入ったと推測される。
【0140】
皮膚刺激性及び遅延型過敏反応
試験部位での皮膚刺激性を観察し、紅斑及び痂皮、並びに浮腫の両方について、Draizeスケールで試験中毎日スコアリングした。それぞれのスケールは実施例5の表9及び表10に示され、それぞれ0~4のスケールである。紅斑及び痂皮、並びに浮腫の累積スコアが一次刺激性指数スコアであり、したがって0~8のスケールとなる。
【0141】
試験期間中の各試験物質用量の一次刺激性指数(pII)を計算した(図5)。pIIは、試験物質による処置を、無視できる~刺激性なし(0~0.9)、わずか(0.9~1.9)、中等度(2~4.9)、又は重度(5~8)の刺激性に分類する。このスケールでは、2%SADBEは1回目の投与後に中等度の刺激性を示し(pII:約3.5)、2回目の投与後に中等度~重度の刺激性を示した(pII:一時的に5でピークに達した)。6%SADBEでは1回目の投与後に中等度の刺激性レベルに達し(pII:約3.0~4.0)、2回目の投与後に中等度~重度の刺激性を示した(pII:一時的に5.5でピークに達した)。18%のSADBEは、1回目の投与では中等度~重度の刺激性を示し(pII:約5.0)で、2回目の投与では重度の刺激性を示した(pII:約6)。
【0142】
誘導時、25日間の観察期間中、試験したSADBEの最低用量である2%SADBEは、剃毛したミニブタの皮膚に、約15日間持続する中等度の皮膚刺激性を示した。同じミニブタの未投与部位に2%SADBEで再チャレンジすると、重度の皮膚刺激性が観察され、約1~2日持続して中等度のレベルに戻り、これは約17日間持続し、皮膚適用後約22日後に刺激性なしのレベルに戻った。
【0143】
誘導時、28日間の観察期間中、6%SADBEも、剃毛したミニブタの皮膚に、約21日間持続する中等度の皮膚刺激性を示した。同じミニブタの未投与部位に6%SADBEで再チャレンジすると、重度の皮膚刺激性が観察され、1日持続して中等度に戻り、これは約19日間持続し、皮膚適用後約22日後に刺激性なしのレベルに戻った。
【0144】
誘導時、28日間の観察期間中、試験されたSADBEの最高濃度である18%SADBEは、剃毛したミニブタの皮膚に、約22日間持続する中等度~重度の皮膚刺激性を示した。同じミニブタの未投与部位に18%SADBEで再チャレンジすると、重度の皮膚刺激性が観察され、5日間持続して中等度に戻り、これは約24日間持続し、皮膚適用後約26日後に刺激性なしのレベルに戻った。
【0145】
(動物の健康に関する結果)
要約すると、体重、食物消費量、臨床モニタリング、及び臨床病理が評価された。いずれの評価でも、動物はSADBEの付与による重大な毒性を経験していないことが示唆された。
【0146】
(肉眼的剖検結果)
剖検では異常は認められなかった。
【0147】
(組織病理結果)
すべての動物からの頚部及び鼠径リンパ節切片は正常範囲内であった。
対照(未処置)部位がないものについては試験物質の相対スコアは計算しなかった。
研究病理学者により、光学顕微鏡を用いて組織サンプルの組織学スライド(H&E)を検査した。2%及び6%のSADBEを投与した動物の処置された皮膚部位では、主に真皮のリンパ球、形質細胞、及びマクロファージで構成される炎症細胞の多発性のまれ~軽度の浸潤が明らかになった。しかしながら、18%SADBEでは、処理された皮膚部位は、主に真皮のリンパ球、形質細胞、及びマクロファージで構成される炎症細胞の軽度~重度の多発性浸潤が明らかになった。検査したすべての切片に軽度~中等度の角化症がみられた。すべての動物の頸部及び鼠径部のリンパ節切片は、いずれの用量でも正常範囲内であった。
【0148】
<分析結果>
American Preclinical Services試験番号:JLM003-PH00
〔序論〕
ジメチルスルホキシド(DMSO)中の2%(w/v)濃度のスクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)を、SADBEの皮膚投与のための皮膚パッチに添加し、遅延型過敏反応又はその他の皮膚刺激性を試験した。Squarex研究所で、SADBE含有量の分析、APSにより調製された投与製剤の分析、適用期間中の皮膚パッチ中の試験物質の安定性の決定、及び動物に12時間適用した後の皮膚パッチ中の残留SADBEの試験のため、HPLC分析を実施した。
【0149】
〔材料及び方法〕
皮膚パッチは、接着剤付きの3M 9916ポリエステル不織布バッキング層と同様のポリマーバッキング層、3M 9733ポリエステルフィルムラミネートバリア層、及びPrecision Fabrics Group 0700-00010ポリエステルガーゼ層で構成されていた。ガーゼをバリア層にヒートシールした。ガーゼパッチ面積は1.53cmであった。
【0150】
指定した時間にパッチをブタから取り外し、すぐにパッチのリザーバ部分を切り取り、10mlのDMSOを含む50mlチューブに入れた。
【0151】
パッチを入れたDMSOのチューブをSquarex研究所に運び、200rpmで30分間~一晩振とうした後、各チューブからのDMSOを注射用バイアルに入れ、プログラムSADBE3-50μlを使用したC18カラムでのHPLCによってSADBE含有量を分析した。このプログラムでは、SADBEは約24.0分で溶出し、255nmで吸収されるため、255nmでの24.0分のピークの面積を使用してSADBEを定量化した。SADBE分解生成物であるスクアリン酸モノブチルエステル(SAMBE)も、12.7分の溶出時間における255nmの曲線下面積によって定量化した。
【0152】
HPLCプログラムの詳細は次のとおりである。
このプログラムは、HPLCではSADBE3-50μlと呼ばれ、50μlが注入される。
カラム:USP L1(ODS)、250mm×4.6mm、5μm(C18)
アジレント部品番号880995-902
移動相:A:25mM KHPO(pH5)(pH調整なし)
B:メタノール
流量: 1.0mL/分
波長: 255nm、215nm
温度: 室温
注入量:50μl
グラジエント溶出(表15):
【0153】
【表15】
【0154】
〔結果〕
表16は、APSにより調製されたバイアルの試験物質分析を示す。DMSOに溶解した2%、6%、及び18%のSADBEの試験物質バイアルは仕様に適合しており、調製後24時間においてSADBEの予測された濃度を示した。
【0155】
【表16】
【0156】
表17は、2%又は6%のSADBEを20μlロードし、ガーゼ側を上にして空気中に12~24時間放置したパッチの分析を示す。結果は、動物の皮膚に晒されていない場合、SADBEがパッチ内で12時間超安定していることを示した。明らかなSADBEの損失又はSADBEのSAMBEへの変換はなかった。
【0157】
【表17】
【0158】
表18は、ミニブタで12時間後に回集されたパッチ中の残存SADBE及びSAMBE分解生成物の量を示す。
【0159】
【表18】
【0160】
結果は、2%パッチでは当初のSADBEの約11%がパッチに残存し、当初のSADBEの1%未満がパッチ上に残存するSAMBE分解生成物として検出されたことを示している。したがって、SADBEの約89%がミニブタの皮膚に移行したようである。
6%及び18%のパッチでは、当初のSADBE量に対するパッチに残存する割合が増加していた。6%のパッチでは、当初のSADBEの35%がパッチに残存した。18%のパッチでは、当初のSADBEの65%がパッチに残存していた。したがって、6%パッチではSADBEの大部分がパッチから離れ、18%パッチではパッチから離れたのは約1/3であったが、それでもパッチから失われたSADBEの絶対量は増加していたため、失われて皮膚に移行したと推測される量はパッチにロードされた濃度に比例する程度を下回っていたものの、パッチにロードされたSADBEの皮膚に入った濃度は増加していたと推測される。
【0161】
〔結論〕
いずれの用量でも、投与後及び試験期間を通して毎日、全身毒性の徴候は観察されなかったが、皮膚毒性が観察された。
【0162】
皮膚刺激性の一次刺激性指数(pII)によりスコアリングされたように、試験されたSADBEのすべての濃度(2~18%)で、1回目の投与後に(数日遅れて)中等度の刺激性がみられ、再チャレンジ時に中等度~重度の刺激性がみられた。試験された最高濃度(18%)では、1回目の投与後に中等度の刺激性がみられ、再チャレンジ後に重度の刺激性がみられた。SADBEは2~18%でミニブタの皮膚刺激性を示したため、皮膚刺激性物質かつ皮膚感作性物質である。
【0163】
<実施例7>
DMSOを充填した皮膚パッチとガラススワブのキット
James Alexander社(米国ニュージャージー州ブレアーズタウン)より0.6mlのDMSOが充填された0.6mlのガラススワブを購入した。ガラススワブは、図2に示されるように、密閉ガラスアンプル(長さ45mm、内径5mm)、上部が平らなポリオレフィン製スワブ(高さ10mm)が付属したものであり、酢酸酪酸セルロースバリア層で包まれ、取り外し可能な厚紙スリーブが付属したものであった。
【0164】
Innovize社(米国ミネソタ州バドネハイツ)から2つのデザインのカスタムメイドの皮膚パッチを購入した。皮膚パッチは図1に示されるように以下の要素が付属したものであった。
・皮膚パッチ(4.5×4.5cmの四角)は以下からなる:
- 3M Medical Tape 9916(3M社、米国ミネソタ州セントポール)(2.2oz/yd(62g/m)100%ポリエステルタンスパンレース不織布、感圧性アクリレート接着剤付き)のバッキング層
- 3M 9733ポリエステルフィルムのバリア層
- Precision Fabrics PFG 0700-00010ポリエステルのガーゼパッチ、面積約3cm。ガーゼパッチ領域は直径0.67インチ(1.7cm)(面積2.27cm)の円形で、外周が下のバリア層に音波溶着されているため、音波溶着されていないガーゼ領域のより吸収性の高い中央部分は直径0.55インチ(1.4cm)(面積1.53cm)である。
- 40lbのペーパーシリコーンライナー(スプリットライナー)
【0165】
2つ目のオプションの皮膚パッチは、ガーゼがPrecision Fabrics Group PFG 0700-00010からなるものである以外は同じである。
【0166】
発明者はバイアルを手で押しつぶし、傾けて軽く1回絞った後、重力にまかせた。1分も経たないうちにフォームチップが湿り、チップで皮膚パッチのガーゼに軽くたたいたり拭いたりすると、パッチを濡らし始めうる状態となった。発明者は、ガーゼの面積の約90%超が視覚的に濡れるまで、フォームチップをガーゼに軽くたたいた。DMSOを添加する直前とDMSOを添加した直後にパッチの重量を量り、付与されたDMSOの正味重量を得た。
【0167】
ガーゼ0700-00010。90%濡らすために38.6mg(10%程度はまだ乾燥スポット)。100%濡らすために41.4mg。軽くたたく方法でできるだけ濡らすためには52mg。
【0168】
別の0700-00010パッチで2回目の実施。完全に濡らすために41.6mg。軽くたたく方法でできるだけ濡らすためには48.7mg。液滴を添加し、重量は85mgになった。液滴は吸収され、滴り落ちなかった。
【0169】
0700-00000布地のパッチ。完全に濡らすために34.4mg(すなわち視覚的に100%濡れており、0700-00010パッチを使用した41.4mg及び41.6mgの測定値と比較される)。さらに濡らすと35.2mg(これは、0700-00010パッチを使用した52mg及び48.7mgの測定値と比較される)。液滴を添加するとガーゼから流れ落ちる。これをキムワイプで拭くと、パッチに残る質量は43.5mgである。
【0170】
別の0.700-00000パッチで2回目の実施。軽くたたく方法で視覚的に100%濡らすために31mg。
【0171】
新規の00000材料は、00010材料よりも湿った境界がシャープであったため、湿った領域が見えやすかった。00010材料はより吸湿性が高く、境界線がシャープでクリアに見えなかったのはおそらくそのためである。00010ガーゼは完全に液滴を吸収できたが、00000ガーゼは、パッチを垂直方向に置くと滴り落ちずには完全に液滴を吸収することはできなかった。
【0172】
〔参照文献〕
Palli MA, McTavish H, Kimball A, Horn TD. Immunotherapy of Recurrent Herpes Labialis With Squaric Acid. JAMA Dermatol. 2017;153:828-829.
McTavish H, Zerebiec KW, Zeller JC, Shekels LL, Matson MA, Kren BT. Immune characteristics correlating with HSV-1 immune control and effect of squaric acid dibutyl ester on immune characteristics of subjects with frequent herpes labialis episodes. Immun. Inflamm. Dis. 2019;7(1):22-40.
Chang ALS, Honari G, Guan L, Zhao L, Palli MA, Horn TD, Dudek AZ, McTavish H. A phase 2, multi-center, placebo-controlled study of single dose squaric acid dibutyl ester (SADBE) to reduce frequency of outbreaks in subjects with recurrent herpes labialis. J Am Acad Dermatol. 2020 Apr 11:S0190-9622(20)30561-2. doi: 10.1016/j.jaad.2020.04.021.
Buckley DA, Du Vivier AWP. The therapeutic use of topical contact sensitizers in benign dermatoses. British Journal of Dermatology 2001; 145: 385-405.
Lee AN, Mallory SB. Contact immunotherapy with squaric acid dibutylester for the treatment of recalcitrant warts. J Am Acad Dermatol 1999;41:595-599.
【0173】
すべての参照文献は参照により本明細書に取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】