IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2023-530520有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイス
<>
  • 特表-有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイス 図1
  • 特表-有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイス 図2
  • 特表-有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイス 図3
  • 特表-有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイス 図4
  • 特表-有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイス 図5
  • 特表-有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイス 図6
  • 特表-有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイス 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(54)【発明の名称】有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイス
(51)【国際特許分類】
   C07C 255/51 20060101AFI20230710BHJP
   C07D 239/26 20060101ALI20230710BHJP
   C07D 239/28 20060101ALI20230710BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20230710BHJP
   H10K 50/19 20230101ALI20230710BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20230710BHJP
【FI】
C07C255/51 CSP
C07D239/26
C07D239/28
H10K50/17
H10K50/19
H10K85/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579040
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2021066607
(87)【国際公開番号】W WO2021259790
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】20181386.2
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20181398.7
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20181408.4
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20203457.5
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20203463.3
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20203460.9
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20203458.3
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20203447.6
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/065949
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ニュレン,マクス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ヴダルチク,ヤーコップ ヤチェク
(72)【発明者】
【氏名】ルシュティネッツ,レギーナ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼノ,トーマス
【テーマコード(参考)】
3K107
4H006
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC12
3K107CC21
3K107DD52
3K107DD59
3K107DD72
3K107DD73
3K107DD78
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB92
(57)【要約】
本発明は、有機電子デバイスに使用するための式(I)の化合物、式(IV)の化合物および少なくとも1つの式(IVa)~(IVd)の化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
【化1】

式中、Aは、式(II)から選択され、
【化2】

は、CRまたはNから選択され;
は、CRまたはNから選択され;
は、CRまたはNから選択され;
は、CRまたはNから選択され;
は、CRまたはNから選択され;
(存在する場合)RおよびRは、独立して、CN、CF、ハロゲン、Cl、F、HまたはDから選択され;
(存在する場合)R、RおよびRは、独立して、CN、部分的フッ素化もしくは全フッ素化C~Cアルキル、ハロゲン、Cl、F、HまたはDから選択され;
それによって、R、R、R、RおよびRのいずれかが存在する場合、対応するX、X、X、XおよびXは、Nではなく;
ただし、
およびRの少なくとも1つが存在し、CNまたはCFから独立して選択され;
は、式(III)から選択され、
【化3】

式中、Arは、独立して、置換されたC~C18アリールおよび置換されたC~C18ヘテロアリールから選択され、Ar上の前記置換基は、独立して、CN、部分的フッ素化もしくは全フッ素化C~Cアルキル、ハロゲン、Cl、F、Dから選択され;
R’は、Ar、置換もしくは非置換のC~C18アリール、または置換もしくは非置換のC~C18ヘテロアリール、部分的フッ素化もしくは全フッ素化C~Cアルキル、ハロゲン、F、またはCNから選択され;
式中、アステリクス「*」は結合位置を示し;
式中、それぞれのArは、少なくとも2つのCN基で置換され;
は、式(II)または式(III)から選択され;ならびに、
およびAは、異なって選択される、化合物。
【請求項2】
式(IV)から選択され、
【化4】

式中、Bは、式(V)から選択され、
【化5】

およびBはArであり、B、BおよびBはR’である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、9個未満のCN基を含む、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
およびRの両方が存在し、CNまたはCFから独立して選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R’は、部分的フッ素化もしくは全フッ素化C~Cアルキル、F、またはCNから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Arは、2つの隣接するCN基を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
式(IV)の化合物および式(IVa)~(IVd)の少なくとも1つの化合物を含む、組成物
【化6】
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項の化合物または請求項7に記載の組成物を含む、有機半導体層。
【請求項9】
陽極層、陰極層、および少なくとも1つの有機半導体層、を含む、有機電子デバイスであって、前記有機半導体層は、前記陽極層と前記陰極層との間に配置され、前記有機半導体層は、請求項8に記載の有機半導体層である、有機電子デバイス。
【請求項10】
前記有機電子デバイスは電荷発生層をさらに含み、前記電荷発生層はp型電荷発生層およびn型電荷発生層を含み、前記p型電荷発生層は請求項8に記載の有機半導体層である、請求項9に記載の有機電子デバイス。
【請求項11】
前記有機電子デバイスは、正孔注入層をさらに含む、請求項9~10に記載の有機電子デバイス。
【請求項12】
前記p型電荷発生層および前記正孔注入層は、同じ前記式(I)の化合物を含む、請求項11に記載の有機電子デバイス。
【請求項13】
前記p型電荷発生層および前記正孔注入層は、同一の実質的に共有結合性のマトリックス化合物を含む、請求項11および12に記載の有機電子デバイス。
【請求項14】
前記有機電子デバイスは、電界発光デバイスである、請求項11~13のいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか1項に記載の有機電子デバイスを含む、表示デバイス。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物、式(IV)の化合物および式(IVa)~(IVd)の少なくとも1つの化合物を含む組成物、前記化合物または組成物を含む有機半導体層、前記有機半導体層を含む有機電子デバイス、および前記有機電子デバイスを含む表示デバイスに関する。
【0002】
〔背景技術〕
自己発光デバイスである有機電子デバイス(例えば、有機発光ダイオードOLED)は、広い視野角、優れたコントラスト、迅速な応答性、高輝度、優れた動作電圧特性、および色再現性を有する。一般的なOLEDは、陽極、正孔輸送層HTL、発光層EML、電子輸送層ETLおよび陰極を含み、これらは、基板上に連続して積層される。ここで、HTL、EMLおよびETLは、有機化合物から形成される薄膜である。
【0003】
陽極および陰極に電圧を印加すると、陽極から注入された正孔はHTLを経てEMLに移動し、陰極から注入された電子はETLを経てEMLに移動する。正孔および電子は、EML内で再結合して励起子を生成する。励起子が励起状態から基底状態に落ちると、光が放出される。正孔および電子の注入および流出は、平衡を保つ必要があり、その結果、上述の構造を有するOLEDは、優れた効率および/または長い寿命を有する。
【0004】
有機発光ダイオードの性能は、半導体層の特性の影響を受け得る。有機発光ダイオードの性能は、その中でも、半導体層に含まれる金属錯体の特性の影響を受け得る。
【0005】
有機半導体材料、半導体層、ならびにその有機電子デバイスの性能を改善すること、特に、その中に含まれる化合物の特性を改善することによって、改善された動作電圧および経時的な電圧安定性を達成することが依然として必要とされている。
【0006】
〔開示〕
本発明の一態様は、有機電子デバイスに使用するための式(I)の有機化合物を提供する:
【0007】
【化1】
【0008】
式中、Aは、式(II)から選択され、
【0009】
【化2】
【0010】
は、CRまたはNから選択され;
は、CRまたはNから選択され;
は、CRまたはNから選択され;
は、CRまたはNから選択され;
は、CRまたはNから選択され;
(存在する場合)RおよびRは、独立して、CN、CF、ハロゲン、Cl、F、HまたはDから選択され;
(存在する場合)R、RおよびRは、独立して、CN、部分的フッ素化もしくは全フッ素化C~Cアルキル、ハロゲン、Cl、F、HまたはDから選択され;
それによって、R、R、R、RおよびRのいずれかが存在する場合、対応するX、X、X、XおよびXは、Nではなく;
ただし、
およびRの少なくとも1つが存在し、CNまたはCFから独立して選択され;
は、式(III)から選択され、
【0011】
【化3】
【0012】
式中、Arは、独立して、置換されたC~C18アリールおよび置換されたC~C18ヘテロアリールから選択され、Ar上の前記置換基は、独立して、CN、部分的フッ素化もしくは全フッ素化C~Cアルキル、ハロゲン、Cl、F、Dから選択され;
R’は、Ar、置換もしくは非置換のC~C18アリールまたは置換もしくは非置換のC~C18ヘテロアリール、部分的フッ素化もしくは全フッ素化C~Cアルキル、ハロゲン、F、またはCNから選択され;
式中、アステリクス「*」は結合位置を示し;
式中、それぞれのArは、少なくとも2つのCN基で置換され;
は、式(II)または式(III)から選択され;ならびに、
およびAは、異なって選択される。
【0013】
特に明記されていない限り、本出願および特許請求の範囲の全体を通して、任意のA、B、Rなどは、常に同じ部分を指すことに留意されたい。
【0014】
本明細書において、定義が別途規定されていない場合には、「部分的にフッ素化された」は、水素原子の一部のみがフッ素原子で置換されたC~Cアルキル基を指す。
【0015】
本明細書において、定義が別途規定されていない場合には、「全フッ素化」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたC~Cアルキル基を指す。
【0016】
本明細書において、定義が別途規定されていない場合には、「置換された」は、重水素、C~C12アルキルおよびC~C12アルコキシで置換された1つを指す。
【0017】
しかしながら、本明細書において、「アリール置換」は、1個以上のアリール基による置換を指す。アリール基自体は、1個以上のアリール基および/またはヘテロアリール基によって置換され得る。
【0018】
同様に、本明細書において、「ヘテロアリール置換」は、1個以上のヘテロアリール基による置換を指す。ヘテロアリール基自体は、1個以上のアリール基および/またはヘテロアリール基によって置換され得る。
【0019】
本明細書において、定義が別途規定されていない場合には、「アルキル基」は、飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。アルキル基は、C~C12アルキル基であり得る。より具体的には、前記アルキル基は、C~C10アルキル基またはC~Cアルキル基であり得る。例えば、C~Cアルキル基は、アルキル鎖中に1個~4個の炭素を含み、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチルから選択され得る。
【0020】
アルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基であり得る。
【0021】
用語「シクロアルキル」は、対応するシクロアルカンに含まれる環原子から1個の水素原子を形式的に引き抜く(formal abstraction)ことによって、シクロアルカンから誘導される飽和ヒドロカルビル基を指す。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられ得る。
【0022】
用語「ヘテロ」は、共有結合した炭素原子によって形成され得る構造中の少なくとも1個の炭素原子が、別の多価原子によって置換された状態であると理解される。好ましくは、前記ヘテロ原子は、B、Si、N、P、O、Sから選択され;より好ましくは、前記ヘテロ原子は、N、P、O、Sから選択される。
【0023】
本明細書において、「アリール基」は、対応する芳香族炭化水素中の芳香環から1個の水素原子を形式的に引き抜くことによって生成させることができるヒドロカルビル基を指す。芳香族炭化水素は、少なくとも1つの芳香環または芳香環系(aromatic ring system)を含む、炭化水素を指す。芳香環または芳香環系は、共有結合した炭素原子の平面環または環系を指し、当該平面環または環系は、ヒュッケル則を満たす非局在化電子の共役系を含む。アリール基の例には、単環式基(例えば、フェニルまたはトリル)、単結合によって連結された複数個の芳香環を含む多環式基(例えば、ビフェニル)、および、縮合環を含む多環式基(例えば、ナフチルまたはフルオレン-2-イル)が含まれる。
【0024】
同様に、「ヘテロアリール」の下では、少なくとも1個の当該環を含む化合物中のヘテロ環式芳香族環から1つの環水素を形式的に引き抜くことによって誘導される基が、特に好適であると理解される。
【0025】
ヘテロシクロアルキルの下では、少なくとも1個の当該環を含む化合物中の飽和シクロアルキル環から1個の環水素を形式的に引き抜くことによって誘導される基が、特に好適であると理解される。
【0026】
用語「縮合アリール環(fused aryl rings)」または「縮合アリール環(condensed aryl rings)」は、2個のアリール環が、少なくとも2個の共通sp混成炭素原子を共有する場合に、縮合(fused)または縮合(condensed)していると考えられる状態であると理解される。
【0027】
本明細書において、単結合とは、直接結合を指す。
【0028】
用語「含まない(free of)」、「含まない(does not contain)」、「含まない(does not comprise)」は、蒸着前の化合物に存在し得る不純物を除外するものではない。不純物は、本発明によって達成される目的に関して、技術的な影響を有さない。
【0029】
用語「間に挟まれて接触している」は、中間の層が2層の隣接する層と直接接触する、3層の配置を指す。
【0030】
用語「光吸収層(light-absorbing layer)」および「光吸収層(light absorption layer)」は、同義的に使用される。
【0031】
用語「発光層(light-emitting layer)」、「発光層(light emission layer)」および「発光層(emission layer)」は、同義的に使用される。
【0032】
用語「OLED」、「有機発光ダイオード」および「有機発光デバイス」は、同義的に使用される。
【0033】
用語「陽極」、「陽極層」および「陽極電極」は、同義的に使用される。
【0034】
用語「陰極」、「陰極層」および「陰極電極」は、同義的に使用される。
【0035】
本明細書において、正孔特性は、電場が印加された場合に電子を供与して正孔を形成する能力を指し、最高被占分子軌道(HOMO)準位に応じた導電特性によって、陽極に形成された正孔が、容易に発光層に注入され、発光層中を輸送され得ることを意味する。
【0036】
また、電子特性は、電場が印加された場合に電子を受容する能力を指し、最低空分子軌道(LUMO)準位に応じた導電特性によって、陰極に形成された電子が、容易に発光層に注入され、発光層中を輸送され得ることを意味する。
【0037】
〔有利な効果〕
驚くべきことに、本発明の有機化合物は、当該技術分野で公知の有機電界発光デバイスよりも優れた種々の態様のデバイスを、特に動作電圧および経時的な電圧安定性について可能にすることによって、本発明の根底にある問題点を解決することが見出された。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、前記化合物は式(IV)から選択され、
【0039】
【化4】
【0040】
式中、Bは、式(V)から選択され、
【0041】
【化5】
【0042】
およびBはArであり、B、BおよびBはR’である。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、Aは、AまたはAと同じである。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、式(II)および式(III)は同一ではない。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、前記化合物は、9個未満のCN基、好ましくは8個未満のCN基を含む。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、前記化合物は、少なくとも5個のCN基を含む。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、プログラムパッケージ TURBOMOLE V6.5(TURBOMOLE GmbH、Litzenhardtstrasse 19、76135 Karlsruhe、ドイツ)を用いて、気相中に6~31Gの基底セットを有する混成汎関数B3LYPを適用することによって計算される場合、前記化合物の計算されるLUMOは、≦-4.35eV~≧-5.75eVの範囲であり、好ましくは≦-4.50eV~≧-5.60eVであり、さらにより好ましくは≦4.7eV~≧5.5eVである。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、RおよびRの両方が存在し、CNまたはCFから独立して選択される。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、R’は、部分的フッ素化もしくは全フッ素化C~Cアルキル、FまたはCNから選択される。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、Arは2個の隣接するCN基を含む。本出願において、用語「隣接するCN基」は、Ar中の隣接するC原子に結合しているCN基を指す。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、式(II)は、以下の部分を含む群から選択される:
【0052】
【化6】
【0053】
本発明の一実施形態によれば、式(II)は、以下の部分を含む群から選択される:
【0054】
【化7】
【0055】
本発明の一実施形態によれば、式(II)は、以下の部分を含む群から選択される:
【0056】
【化8】
【0057】
本発明の一実施形態によれば、式(III)は、以下の部分を含む群から選択される:
【0058】
【化9】
【0059】
本発明の一実施形態によれば、式(III)は、以下の部分を含む群から選択される:
【0060】
【化10】
【0061】
本発明の一実施形態によれば、式(III)は、以下の部分を含む群から選択される:
【0062】
【化11】
【0063】
本発明の一実施形態によれば、式(III)は、以下の部分を含む群から選択される:
【0064】
【化12】
【0065】
本発明の一実施形態によれば、式(I)の化合物は、化合物A1~A49から選択される:
【0066】
【表1】
【0067】
本発明の一実施形態によれば、式(I)の化合物は、A1~A24、A32~A43、A46、A48からなる群から選択される。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、式(I)の化合物は、A1~A47からなる群から選択される。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、式(I)の化合物は、以下の構造の1つから選択される:
【0070】
【表2】
【0071】
本発明はさらに、式(IV)の化合物および式(IVa)~(IVd)の少なくとも1つの化合物を含む組成物に関する
【0072】
【化13】
【0073】
本発明はさらに、有機半導体層に関し、前記有機半導体層は、本発明による化合物または本発明による組成物を含む。
【0074】
有機半導体層が本発明による組成物を含むとき、本出願全体を通して、用語「式(I)の化合物」は、上述の組成物も含むことを意図する。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、有機半導体層および/または式(I)の化合物は、非発光性である。
【0076】
本明細書の文脈において、用語「本質的に非発光性」または「非発光性」は、デバイスからの可視発光スペクトルに対する化合物または層の寄与が、可視発光スペクトルに対して10%未満、好ましくは5%未満であることを意味する。可視発光スペクトルは、約≧380nm~約≦780nmの波長を有する発光スペクトルである。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、前記有機半導体層は、陽極と発光層との間に配置される。特に、本発明の一実施形態によれば、前記有機半導体層は正孔注入層である。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、前記有機半導体層は、陰極と発光層との間に配置される。特に、本発明の一実施形態によれば、前記有機半導体層は、電荷発生層、好ましくはp型電荷発生層である。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの前記有機半導体層は、実質的に共有結合性のマトリックス化合物をさらに含む。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、前記p型電荷発生層は、実質的に共有結合性のマトリックス化合物を含む。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔注入層は、実質的に共有結合性のマトリックス化合物を含む。
【0082】
〔実質的に共有結合性のマトリックス化合物〕
有機半導体層は、実質的に共有結合性のマトリックス化合物をさらに含み得る。一実施形態によれば、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、少なくとも1つの有機化合物から選択され得る。実質的に共有結合性のマトリックスは、共有結合したC、H、O、N、Sから実質的になり得、該マトリックスは、任意に、共有結合したB、P、Asおよび/またはSeをさらに含む。
【0083】
有機電子デバイスの一実施形態によれば、有機半導体層は、実質的に共有結合性のマトリックス化合物をさらに含み、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、共有結合したC、H、O、N、Sから実質的になる有機化合物から選択され得、該実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、任意に、共有結合したB、P、Asおよび/またはSeをさらに含む。
【0084】
炭素-金属共有結合を含む有機金属化合物、有機リガンドを含む金属錯体、および有機酸の金属塩は、正孔注入層の実質的に共有結合性のマトリックス化合物として機能し得る有機化合物のさらなる例である。
【0085】
一実施形態では、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は金属原子を欠き、その骨格原子の大部分は、C、O、S、Nから選択され得る。または、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、金属原子を欠き、その骨格原子の大部分は、CおよびNから選択され得る。
【0086】
一実施形態によれば、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、≧400g/molおよび≦2000g/molの分子量Mw、好ましくは≧450g/molおよび≦1500g/molの分子量Mw、より好ましくは≧500g/molおよび≦1000g/molの分子量Mw、さらに好ましくは≧550g/molおよび≦900g/molの分子量Mw、また好ましくは≧600g/molおよび≦800g/molの分子量Mwを有し得る。
【0087】
好ましくは、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、少なくとも1つのアリールアミン部分、あるいはジアリールアミン部分、あるいはトリアリールアミン部分を含む。
【0088】
好ましくは、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、金属結合および/またはイオン結合を含まない。
【0089】
〔式(VI)の化合物または式(VII)の化合物〕
本発明の別の態様によれば、「実質的に共有結合性のマトリックス化合物」とも呼ばれる少なくとも1つのマトリックス化合物は、少なくとも1つのアリールアミン化合物、ジアリールアミン化合物、トリアリールアミン化合物、式(VI)の化合物または式(VII)の化合物を含み得る
【0090】
【化14】
【0091】
式中:
、T、T、TおよびTは、独立して、単結合、フェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、またはナフテニレンから選択され、好ましくは単結合またはフェニレンから選択され;
は、フェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、またはナフテニレンであり;
Ar、Ar、Ar、ArおよびArは独立して、置換もしくは非置換のC~C20アリール、または置換もしくは非置換のC~C20ヘテロアリーレン、置換もしくは非置換のビフェニレン、置換もしくは非置換のフルオレン、置換された9-フルオレン、置換された9,9-フルオレン、置換もしくは非置換のナフタレン、置換もしくは非置換のアントラセン、置換もしくは非置換のフェナントレン、置換もしくは非置換のピレン、置換もしくは非置換のペリレン、置換もしくは非置換のトリフェニレン、置換もしくは非置換のテトラセン、置換もしくは非置換のテトラフェン、置換もしくは非置換のジベンゾフラン、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン、置換もしくは非置換のキサンテン、置換もしくは非置換のカルバゾール、置換された9-フェニルカルバゾール、置換もしくは非置換のアゼピン、置換もしくは非置換のジベンゾ[b,f]アゼピン、置換もしくは非置換の9,9’-スピロビ[フルオレン]、置換もしくは非置換のスピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]、あるいは、置換もしくは非置換の非ヘテロ、置換もしくは非置換のヘテロ5員環、置換もしくは非置換の6員環、および/または置換もしくは非置換の7員環を含む群から選択される少なくとも3個の置換もしくは非置換の芳香環、置換もしくは非置換のフルオレン、または2~6個の置換もしくは非置換の5~7員環を含む縮合環系であって、当該環は、(i)不飽和5~7員環のヘテロ環、(ii)5~6員の芳香族ヘテロ環、(iii)不飽和5~7員環の非ヘテロ環、(iv)6員環の芳香族非ヘテロ環を含む群から選択される縮合環系を含む、置換もしくは非置換の芳香族縮合環系、から選択され;
Ar、Ar、Ar、ArおよびArの前記置換基は、H、D、F、C(-O)R、CN、Si(R、P(-O)(R、OR、S(-O)R、S(-O)、1~20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の直鎖アルキル、1~20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の分岐アルキル、3~20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の環式アルキル、2~20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルケニル基もしくはアルキニル基、1~20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルコキシ基、6~40個の芳香族環原子を有する置換もしくは非置換の芳香族環系、および5~40個の芳香族環原子を有する置換もしくは非置換のヘテロ芳香族環系、非置換のC~C18アリール、非置換のC~C18ヘテロアリール、2~6個の非置換の5~7員環を含む縮合環系であって、当該環は、不飽和5~7員環のヘテロ環、5~6員ヘテロ芳香族環、不飽和5~7員環の非ヘテロ環、および6員環の芳香族非ヘテロ環を含む群から選択される縮合環系、を含む群から同じものが選択されるか、または異なったものが選択され、
は、H、D、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル、1~6個の炭素原子を有する分岐アルキル、3~6個の炭素原子を有する環式アルキル、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基もしくはアルキニル基、C~C18アリール、またはC~C18ヘテロアリールから選択され得る。
【0092】
一実施形態によれば、T、T、T、TおよびTは独立して、単結合、フェニレン、ビフェニレンまたはテルフェニレンから選択され得る。一実施形態によれば、T、T、T、TおよびTは独立して、フェニレン、ビフェニレンまたはテルフェニレンから選択され得、T、T、T、TおよびTのうちの1つは単結合である。一実施形態によれば、T、T、T、TおよびTは独立して、フェニレンまたはビフェニレンから選択され得、T、T、T、TおよびTのうちの1つは単結合である。一実施形態によれば、T、T、T、TおよびTは独立して、フェニレンまたはビフェニレンから選択され得、T、T、T、TおよびTのうちの2つは単結合である。
【0093】
一実施形態によれば、T、TおよびTは独立して、フェニレンから選択され得、T、TおよびTのうちの1つは単結合である。一実施形態によれば、T、TおよびTは独立して、フェニレンから選択され得、T、TおよびTのうちの2つは単結合である。
【0094】
一実施形態によれば、Tは、フェニレン、ビフェニレン、テルフェニレンであり得る。一実施形態によれば、Tはフェニレンであり得る。一実施形態によれば、Tは、ビフェニレンであり得る。一実施形態によれば、Tは、テルフェニレンであり得る。
【0095】
一実施形態によれば、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは独立して、D1~D16から選択され得る:
【0096】
【化15】
【0097】
式中、アステリクス「*」は結合位置を示す。
【0098】
一実施形態によれば、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは独立して、D1~D15から選択され得、あるいはD1~D10およびD13~D15から選択され得る。
【0099】
一実施形態によれば、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは独立して、D1、D2、D5、D7、D9、D10、D13~D16からなる群から選択され得る。
【0100】
Ar、Ar、Ar、ArおよびArがこの範囲で選択される場合、速度開始温度は、大量生産に特に適した範囲であり得る。
【0101】
「式(VI)または式(VII)のマトリックス化合物」は、「正孔輸送化合物」とも称され得る。
【0102】
一実施形態によれば、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、少なくとも1つのナフチル基、カルバゾール基、ジベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基および/または置換されたフルオレニル基を含み、当該置換基は独立して、メチル、フェニルまたはフルオレニルから選択される。
【0103】
電子デバイスの一実施形態によれば、式(VI)または式(VII)のマトリックス化合物は、F1~F18から選択される:
【0104】
【化16】
【0105】
本発明はさらに、陽極層と、陰極層と、少なくとも1つの有機半導体層と、を含む有機電子デバイスに関し、有機半導体層は、陽極層と陰極層との間に配置され、有機半導体層は本発明による有機半導体層である。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、前記有機電子デバイスは少なくとも1つの光活性層をさらに含み、前記少なくとも1つの光活性層は、陽極層と陰極層との間に配置される。
【0107】
本発明の一実施形態によれば、前記光活性層は発光層である。
【0108】
本発明の一実施形態によれば、前記有機電子デバイスは電荷発生層をさらに含み、前記電荷発生層はp型電荷発生層およびn型電荷発生層を含み、前記p型電荷発生層は本発明による有機半導体層である。
【0109】
本発明の一実施形態によれば、前記電荷発生層は、前記光活性層と前記陰極層との間に配置される。
【0110】
本発明の一実施形態によれば、前記p型電荷発生層は、実質的に共有結合性のマトリックス化合物を含む。
【0111】
本発明の一実施形態によれば、前記有機電子デバイスは、正孔注入層をさらに含む。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔注入層は、前記陽極層と前記電荷発生層との間に配置され、好ましくは前記陽極と前記光活性層との間に配置される。
【0113】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔注入層は、本発明による有機半導体層である。
【0114】
本発明の一実施形態によれば、本発明の有機半導体層は、正孔注入層である。
【0115】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔注入層は、実質的に共有結合性のマトリックス化合物を含む。
【0116】
本発明の一実施形態によれば、前記p型電荷発生層および前記正孔注入層は、同じ式(I)の化合物を含む。
【0117】
本発明の一実施形態によれば、前記p型電荷発生層および前記正孔注入層は、同一の実質的に共有結合性のマトリックス化合物を含む。
【0118】
本発明の一実施形態によれば、前記有機電子デバイスは、電界発光デバイスであり、好ましくは有機発光ダイオードである。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、前記有機電子デバイスは、基板をさらに含む。
【0120】
本発明の一実施形態によれば、前記陽極層は、第1の陽極副層および第2の陽極副層を含み、ここで、
-前記第1の陽極副層は、≧4eVおよび≦6eVの範囲の仕事関数を有する第1の金属を含み、ならびに、
-前記第2の陽極副層は、透明導電性酸化物を含み;ならびに、
-前記第2の陽極副層は、前記正孔注入層のより近くに配置される。
【0121】
本発明の一実施形態によれば、前記第1の陽極副層の前記第1の金属は、Ag、Mg、Al、Cr、Pt、Au、Pd、Ni、Nd、Ir、好ましくはAg、AuまたはAl、さらに好ましくはAgを含む群から選択され得る。
【0122】
本発明の一実施形態によれば、前記第1の陽極副層は、5~200nm、あるいは8~180nm、あるいは8~150nm、あるいは100~150nmの範囲の厚さを有する。
【0123】
本発明の一実施形態によれば、前記第1の陽極副層は、真空熱蒸発によって前記第1の金属を蒸着することによって形成される。
【0124】
前記第1の陽極層は、前記基板の一部ではないことを理解されたい。
【0125】
本発明の一実施形態によれば、前記第2の陽極副層の前記透明導電性酸化物は、インジウムスズ酸化物またはインジウム亜鉛酸化物、より好ましくはインジウムスズ酸化物を含む群から選択される群から選択される。
【0126】
本発明の一実施形態によれば、前記第2の陽極副層は、3~200nm、あるいは3~180nm、あるいは3~150nm、あるいは3~20nmの厚さを有し得る。
【0127】
本発明の一実施形態によれば、前記第2の陽極副層は、前記透明導電性酸化物のスパッタリングによって形成され得る。
【0128】
本発明の一実施形態によれば、前記有機電子デバイスの陽極層は、透明導電性酸化物を含む第3の陽極副層をさらに含み、前記第3の陽極副層は、前記基板と前記第1の陽極副層との間に配置される。
【0129】
本発明の一実施形態によれば、前記第3の陽極副層は透明酸化物を含み、好ましくはインジウムスズ酸化物またはインジウム亜鉛酸化物、より好ましくはインジウムスズ酸化物を含む群から選択される群から選択される透明酸化物を含む。
【0130】
本発明の一実施形態によれば、前記第3の陽極副層は、3~200nm、あるいは3~180nm、あるいは3~150nm、あるいは3~20nmの範囲の厚さを有し得る。
【0131】
本発明の一実施形態によれば、前記第3の陽極副層は、前記透明導電性酸化物のスパッタリングによって形成され得る。
【0132】
前記第3の陽極層は、前記基板の一部ではないことを理解されたい。
【0133】
本発明の一実施形態によれば、前記陽極層はAgを含む第1の陽極副層と、透明導電性酸化物、好ましくはITOを含む第2の陽極副層と、透明導電性酸化物、好ましくはITOを含む第3の陽極副層と、を含み;前記第1の陽極副層は、前記第2の陽極副層と前記第3の陽極副層との間に配置される。
【0134】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔注入層は、前記陽極層と直接接触している。
【0135】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔注入層は、前記陽極層と直接接触し、前記陽極層は、前記基板と直接接触し、前記基板は、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板、またはバックプレーンから選択される。
【0136】
本発明はさらに、本発明による有機電子デバイスを含む表示デバイスに関する。
【0137】
〔さらなる層〕
本発明によれば、有機電子デバイスは、上述の層に加えてさらなる層を含んでもよい。それぞれの層の例示的な実施形態を、以下に説明する:
基板
基板は、電子デバイス(例えば、有機発光ダイオード)の製造に一般的に使用される任意の基板であり得る。光線が基板を通して放射される場合、基板は、透明な材料または半透明な材料(例えば、ガラス基板または透明なプラスチック基板)でなければならない。光線が上面を通して放射される場合、基板は、透明な材料および非透明な材料の両方(例えば、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板、シリコン基板、またはバックプレーン)であり得る。
【0138】
陽極層
陽極層は、陽極層を形成するために使用される材料を蒸着またはスパッタリングすることによって形成され得る。陽極層を形成するために使用される材料は、高仕事関数材料であり得、正孔の注入を容易にすることができる。陽極材料はまた、低仕事関数材料(すなわち、アルミニウム)から選択され得る。陽極電極は、透明電極または反射電極であり得る。透明導電性酸化物(例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、二酸化スズ(SnO2)、酸化アルミニウム亜鉛(AlZO)および酸化亜鉛(ZnO))を使用して、陽極電極を形成し得る。陽極層はまた、金属、典型的には銀(Ag)、金(Au)、または金属合金を使用して形成され得る。
【0139】
正孔注入層
正孔注入層(HIL)は、真空蒸着、スピンコーティング、印刷、キャスティング、スロット-ダイコーティング、Langmuir-Blodgett(LB)蒸着などによって陽極層上に形成され得る。HILが真空蒸着を使用して形成される場合、蒸着条件は、HILを形成するために使用される化合物、ならびにHILの所望の構造および熱特性に応じて変化し得る。しかしながら、通常、真空蒸着のための条件は、100℃~500℃の蒸着温度、10-8~10-3トール(1トールは133.322Paに等しい)の圧力、および0.1nm/秒~10nm/秒の蒸着速度を含み得る。
【0140】
HILがスピンコーティングまたは印刷を使用して形成される場合、コーティング条件は、HILを形成するために使用される化合物、ならびにHILの所望の構造および熱特性に応じて変化し得る。例えば、コーティング条件は、約2000rpm~約5000rpmのコーティング速度、および約80℃~約200℃の熱処理温度を含み得る。コーティング後は、熱処理によって溶剤が除去される。
【0141】
HILは、HILを形成するために一般に使用される任意の化合物から形成され得る。HILを形成するために使用され得る化合物の例には、フタロシアニン化合物(例えば、銅フタロシアニン(CuPc))、4,4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、TDATA、2T-NATA、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、およびポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PANI/PSS)が含まれる。
【0142】
HILは、p型ドーパントを含み得るか、p型ドーパントからなり得、p型ドーパントは、テトラフルオロ-テトラシアノキノンジメタン(F4TCNQ)、2,2’-(ペルフルオロナフタレン-2,6-ジイリデン)ジマロノニトリル、または2,2’,2’’-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)から選択されてもよいが、これに限定されない。
【0143】
p型ドーパントは、好ましくは式(I)、または、例えば、2,2’,2’’-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)(CC3)によるラジアレン化合物であり得る。
【0144】
p型ドーパント濃度は、1重量%~20重量%、より好ましくは3重量%~10重量%から選択されることができる。
【0145】
p型ドーパント濃度は、1体積%~20体積%、より好ましくは3体積%~10体積%から選択されることができる。
【0146】
正孔輸送層
本発明の一実施形態によれば、有機電子デバイスは正孔輸送層を含み、前記正孔輸送層は、前記正孔注入層と、前記少なくとも1つの第1の発光層との間に配置される。
【0147】
前記正孔輸送層(HTL)は、真空蒸着、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、印刷、キャスティング、Langmuir-Blodgett(LB)蒸着などによってHIL上に形成され得る。HTLが真空蒸着またはスピンコーティングによって形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であり得る。しかしながら、真空または溶液蒸着のための条件は、HTLを形成するために使用される化合物に応じて変化し得る。
【0148】
HTLは、HTLを形成するために一般に使用される任意の化合物から形成され得る。好適に用いることができる化合物は、例えば、Yasuhiko Shirota and Hiroshi Kageyama,Chem.Rev.2007、107、953-1010に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。HTLを形成するために使用され得る化合物の例は、カルバゾール誘導体(例えば、N-フェニルカルバゾールまたはポリビニルカルバゾール);ベンジジン誘導体(例えば、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、またはN,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD));および、トリフェニルアミン系化合物(例えば、4,4’,4’’-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA))である。これらの化合物の中で、TCTAは正孔を輸送することができ、かつ、励起子がEML中に拡散するのを抑制することができる。
【0149】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔輸送層は、上記のような実質的に共有結合性のマトリックス化合物を含み得る。
【0150】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔輸送層は、上記のような式(VI)または(VII)の化合物を含み得る。
【0151】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔注入層および前記正孔輸送層は、上記と同じ実質的に共有結合性のマトリックス化合物を含む。
【0152】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔注入層および前記正孔輸送層は、上記と同じ式(VI)または式(VII)の化合物を含む。
【0153】
HTLの厚さは、約5nm~約250nm、好ましくは約10nm~約200nm、さらに約20nm~約190nm、さらに約40nm~約180nm、さらに約60nm~約170nm、さらに約80nm~約160nm、さらに約100nm~約160nm、さらに約120nm~約140nmの範囲であり得る。HTLの好ましい厚さは、170nm~200nmであり得る。
【0154】
HTLの厚さがこの範囲内であれば、HTLは、駆動電圧において実質的なペナルティなしに、優れた正孔輸送特性を有し得る。
【0155】
電子阻止層
電子阻止層(EBL)の機能は、電子が発光層から正孔輸送層に移動するのを防止し、それによって電子を発光層に閉じ込めることである。それによって、効率、動作電圧および/または寿命が改善される。典型的には、電子阻止層は、トリアリールアミン化合物を含む。トリアリールアミン化合物は、正孔輸送層のLUMO準位よりも真空準位に近いLUMO準位を有し得る。電子阻止層は、正孔輸送層のHOMO準位と比較して、真空準位からさらに離れたHOMO準位を有し得る。電子阻止層の厚さは、2nm~20nmの間で選択され得る。
【0156】
電子阻止層が高い三重項準位(a high triplet level)を有する場合、電子阻止層は三重項制御層としても記載され得る。
【0157】
三重項制御層の機能は、リン光緑色発光層またはリン光青色発光層が使用される場合に、三重項の消光を低減することである。これにより、リン光発光層からの発光効率を高めることができる。三重項制御層は、隣接する発光層におけるリン光発光体の三重項準位よりも高い三重項準位を有するトリアリールアミン化合物から選択され得る。三重項制御層に適した化合物、特にトリアリールアミン化合物は、EP2722908A1に記載されている。
【0158】
発光層(EML)
EMLは、真空蒸着、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、印刷、キャスティング、LB蒸着などによってHTL上に形成され得る。EMLが真空蒸着またはスピンコーティングを用いて形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であり得る。しかしながら、蒸着およびコーティングのための条件は、EMLを形成するために使用される化合物に応じて変化し得る。
【0159】
本発明の一実施形態によれば、発光層は、式(I)の化合物を含まない。
【0160】
発光層(EML)は、ホストと発光体ドーパントとの組合せで形成され得る。ホストの例としては、Alq3、4,4’-N,N’-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、ポリ(n-ビニルカルバゾール)(PVK)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(ADN)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBI)、3-tert-ブチル-9,10-ジ-2-ナフチルアントラセン(TBADN)、ジスチリルアリーレン(DSA)およびビス(2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾ-チアゾレート)亜鉛(Zn(BTZ)2)が挙げられる。
【0161】
発光体ドーパントは、リン光発光体または蛍光発光体であり得る。リン光発光体および熱活性化遅延蛍光(TADF)機構を介して光を放出する発光体は、それらのより高い効率のために好ましい場合がある。発光体は、小分子またはポリマーであり得る。
【0162】
赤色発光体ドーパントの例としては、PtOEP、Ir(piq)3、Btp2lr(acac)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物はリン光発光体であるが、蛍光赤色発光体ドーパントも使用することができる。
【0163】
リン光緑色発光体ドーパントの例としては、Ir(ppy)3(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)2(acac)、Ir(mpyp)3が挙げられる。
【0164】
リン光青色発光体ドーパントの例としては、F2Irpic、(F2ppy)2Ir(tmd)およびIr(dfppz)3ならびにテルフルオレンが挙げられる。4,4’-ビス(4-ジフェニルアミオスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBPe)は、蛍光青色発光体ドーパントの例である。
【0165】
発光体ドーパントの量は、ホスト100重量部に対して、約0.01~約50重量部の範囲であり得る。あるいは、発光層は、発光ポリマーからなり得る。EMLは、約10nm~約100nm、例えば、約20nm~約60nmの厚さを有し得る。EMLの厚さがこの範囲である場合、EMLは、駆動電圧において実質的なペナルティなしに、優れた発光を有し得る。
【0166】
正孔阻止層(HBL)
ETLへの正孔の拡散を防止するために、真空蒸着、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、印刷、キャスティング、LB蒸着などを用いて、正孔阻止層(HBL)をEML上に形成し得る。EMLがリン光発光体ドーパントを含む場合、HBLはまた、三重項励起子阻止機能を有し得る。
【0167】
HBLはまた、補助ETLまたはa-ETLと称することができる。
【0168】
HBLが真空蒸着またはスピンコーティングを用いて形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であり得る。しかしながら、蒸着およびコーティングのための条件は、HBLを形成するために使用される化合物に応じて変化し得る。HBLを形成するために一般的に使用される任意の化合物を使用し得る。HBLを形成するための化合物の例には、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体およびアジン誘導体、好ましくはトリアジン誘導体またはピリミジン誘導体が含まれる。
【0169】
HBLは、約5nm~約100nm、例えば約10nm~約30nmの範囲の厚さを有し得る。HBLの厚さがこの範囲内であれば、HBLは、駆動電圧において実質的なペナルティなしに、優れた正孔阻止特性を有し得る。
【0170】
電子輸送層(ETL)
本発明の有機電子デバイスは、電子輸送層(ETL)をさらに含み得る。
【0171】
本発明の別の実施形態によれば、電子輸送層は、アジン化合物、好ましくはトリアジン化合物をさらに含み得る。
【0172】
一実施形態では、電子輸送層は、アルカリ有機錯体、好ましくはLiQから選択されるドーパントをさらに含み得る。
【0173】
ETLの厚さは、約15nm~約50nmの範囲、例えば、約20nm~約40nmの範囲であり得る。EILの厚さがこの範囲である場合、ETLは駆動電圧において実質的なペナルティなしに、満足な電子注入特性を有し得る。
【0174】
本発明の別の実施形態によれば、有機電子デバイスは、正孔阻止層および電子輸送層をさらに含み得、正孔阻止層および電子輸送層はアジン化合物を含む。好ましくは、アジン化合物はトリアジン化合物である。
【0175】
電子注入層(EIL)
陰極からの電子の注入を容易にし得る任意のEILは、ETL上に、好ましくは電子輸送層上に直接形成され得る。EILを形成するための材料の例には、当該技術分野で公知の、リチウム8-ヒドロキシキノリノレート(LiQ)、LiF、NaCl、CsF、Li2O、BaO、Ca、Ba、Yb、Mgが含まれる。EILを形成するための蒸着およびコーティングの条件は、HILの形成のための条件と同様であるが、蒸着およびコーティングの条件は、EILを形成するために使用される材料に応じて変動し得る。
【0176】
EILの厚さは、約0.1nm~約10nmの範囲、例えば、約0.5nm~約9nmの範囲であり得る。EILの厚さがこの範囲内である場合、EILは駆動電圧の実質的なペナルティなしに、満足な電子注入特性を有し得る。
【0177】
陰極層
陰極層は、ETL上、または任意のEIL上に形成される。陰極層は、金属、合金、導電性化合物、またはそれらの混合物から形成され得る。陰極電極は、低い仕事関数を有し得る。例えば、陰極層は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム(Al)-リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、イッテルビウム(Yb)、マグネシウム(Mg)-インジウム(In)、マグネシウム(Mg)-銀(Ag)などで形成され得る。あるいは、陰極電極は、透明導電性酸化物(例えば、ITOまたはIZO)で形成され得る。
【0178】
陰極層の厚さは、約5nm~約1000nmの範囲、例えば、約10nm~約100nmの範囲であり得る。陰極層の厚さが、約5nm~約50nmの範囲である場合、陰極層は、たとえ金属または金属合金から形成されていても、透明または半透明であり得る。
【0179】
本発明の好ましい実施形態によれば、陰極は透明である。
【0180】
陰極層は、電子注入層または電子輸送層の一部ではないことを理解されたい。
【0181】
有機発光ダイオード(OLED)
本発明に係る有機電子デバイスは、有機発光デバイスであり得る。
【0182】
本発明の一態様によれば、基板と、前記基板上に形成された陽極電極と、式(I)の化合物を含む正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、陰極電極と、を含む、有機発光ダイオード(OLED)が提供される。
【0183】
本発明の別の態様によれば、基板と、前記基板上に形成された陽極電極と、式(I)の化合物を含む正孔注入層と、正孔輸送層と、電子阻止層と、発光層と、正孔阻止層と、電子輸送層と、陰極電極と、を含む、OLEDが提供される。
【0184】
本発明の別の態様によれば、基板と、前記基板上に形成された陽極電極と、式(I)の化合物を含む正孔注入層と、正孔輸送層と、電子阻止層と、発光層と、正孔阻止層と、電子輸送層と、電子注入層と、陰極電極と、を含む、OLEDが提供される。
【0185】
本発明の種々の実施形態によれば、上述の層の間、基板上、または上部電極上に配置されたOLED層が提供され得る。
【0186】
一態様によれば、OLEDは陽極電極に隣接して配置され、陽極電極は第1の正孔注入層に隣接して配置され、第1の正孔注入層は第1の正孔輸送層に隣接して配置され、第1の正孔輸送層は第1の電子阻止層に隣接して配置され、第1の電子阻止層は第1の発光層に隣接して配置され、第1の発光層は第1の電子輸送層に隣接して配置され、第1の電子輸送層はn型電荷発生層に隣接して配置され、n型電荷発生層は正孔発生層に隣接して配置され、正孔発生層は第2の正孔輸送層に隣接して配置され、第2の正孔輸送層は第2の電子阻止層に隣接して配置され、第2の電子阻止層は第2の発光層に隣接して配置され、第2の発光層と陰極電極との間に任意の電子輸送層および/または任意の注入層が配置される、基板の層状構造を備え得る。
【0187】
本発明による有機半導体層は、第1の正孔注入層および/またはp型電荷発生層であり得る。
【0188】
〔有機電子デバイス〕
本発明による有機電子デバイスは、発光デバイス、または光電池、好ましくは発光デバイスであり得る。
【0189】
本発明の別の態様によれば、有機電子デバイスの製造方法が提供される。当該方法は、以下を使用する:
-少なくとも1つの蒸着源、好ましくは2つの蒸着源、より好ましくは少なくとも3つの蒸着源。
【0190】
適切であり得る蒸着方法は、以下を含む:
-真空熱蒸発による蒸着;
-溶液処理による蒸着、好ましくは、当該処理は、スピンコーティング、印刷、キャスティングから選択され;および/または、
-スロットダイコーティング。
【0191】
本発明の種々の実施形態によれば、以下を使用する方法が提供される:
-本発明に係る式(I)の化合物を放出するための第1の蒸着源、および、
-実質的に共有結合性のマトリックス化合物を放出するための第2の蒸着源;
正孔注入層および/またはp型電荷発生層を形成するステップを含む方法であって、有機発光ダイオード(OLED)のための方法:
-正孔注入層および/またはp型電荷発生層は、第1の蒸着源から本発明による式(I)の化合物を放出すること、および、第2の蒸着源から実質的に共有結合性のマトリックス化合物を放出することによって形成される。
【0192】
本発明の種々の実施形態によれば、本方法は、前記陽極電極上に、正孔輸送層を形成する工程または正孔阻止層を形成する工程からなる群から選択される少なくとも1つの層を形成する工程と、前記陽極電極と前記第1の電子輸送層との間に発光層を形成する工程と、をさらに含み得る。
【0193】
本発明の種々の実施形態によれば、本方法は、有機発光ダイオード(OLED)を形成するためのステップをさらに含み得る。ここで、
-基板上に陽極電極が形成され、
-陽極電極上に式(I)の化合物を含む正孔注入層が形成され、
-式(I)の化合物を含む正孔注入層上に正孔輸送層が形成され、
-正孔輸送層上に発光層が形成され、
-発光層上に電子輸送層が形成され、任意に、発光層上に正孔阻止層が形成され、
-最後に、陰極電極が形成され、
-任意に、第1の陽極電極と発光層との間に正孔阻止層がこの順序で形成され、
-任意に、電子輸送層と陰極電極との間に電子注入層が形成される。
【0194】
種々の実施形態によれば、OLEDは以下の層状構造を有し得、当該層は以下の順序を有する:
陽極、本発明による式(I)の化合物を含む正孔注入層、第1の正孔輸送層、第2の正孔輸送層、発光層、任意の正孔阻止層、電子輸送層、任意の電子注入層、および陰極。
【0195】
本発明の別の態様によれば、本明細書全体を通して説明される任意の実施形態に係る少なくとも1つの有機発光デバイスを含む電子デバイスが提供され、好ましくは、前記電子デバイスは、本明細書全体を通して説明される実施形態のうちの1つにおいて有機発光ダイオードを含む。より好ましくは、前記電子デバイスは、表示デバイスである。
【0196】
以下、例を参照して、実施形態をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の例に限定されるものではない。ここで、例示的な態様を詳細に参照するものであろう。
【0197】
〔図面の説明〕
上述した構成要素、ならびに特許請求された構成要素、および記載された実施形態において本発明に従って使用される構成要素は、それらのサイズ、形状、材料選択および技術的構想について、いかなる特別な除外を受けるものではない。その結果、関連分野において公知の選択基準を制限無しに適用することができる。
【0198】
対象のさらなる詳細、特性および利点は、従属請求項、およびそれぞれの図面の以下の説明において開示される。図面は、例示的な様式で、本発明に係る好ましい実施形態を示す。しかしながら、実施形態はいずれも、必ずしも本発明の範囲すべてを表すものではなく、したがって、本発明の範囲を解釈するために、特許請求の範囲および本明細書を参照する。上述した概要および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図するものであることを理解されたい。
【0199】
図1は、本発明の例示的な実施形態に係る有機電子デバイスの模式断面図である;
図2は、本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の模式断面図である;
図3は、本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの模式断面図である。
【0200】
図4は、本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの模式断面図である。
【0201】
図5は、本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの模式断面図である。
【0202】
図6は、本発明の例示的な実施形態に係る、電荷発生層を含むOLEDの模式断面図である。
【0203】
図7は、本発明の例示的な実施形態に係る電荷発生層を含む積層されたOLEDの模式断面図である。
【0204】
以下、例を参照して、図面をさらに詳細に説明する。しかしながら、本開示は、以下の図面に限定されるものではない。
【0205】
本明細書において、第1の要素が、第2の要素の「上(on)」または「上(onto)」に形成または配置されるものとして言及される場合、第1の要素が第2の要素の上に直接配置され得るか、または、1つ以上の他の要素がそれらの間に配置され得る。第1の要素が、第2の要素の「上に直接(directly on)」または「上に直接(directly onto)」形成または配置されるものとして言及される場合、他の要素がそれらの間には配置されない。
【0206】
図1は、本発明の例示的な実施形態に係る有機電子デバイス100の模式断面図である。有機電子デバイス100は、基板110と、陽極層120と、式(I)の化合物を含み得る正孔注入層(HIL)130と、を含む。HIL130は、陽極層120上に配置される。HIL130上には、光活性層(PAL)170および陰極層190が配置されている。
【0207】
図2は、本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)100の模式断面図である。OLED100は、基板110と、陽極層120と、式(I)の化合物を含み得る正孔注入層(HIL)130と、を含む。HIL130は、陽極層120上に配置される。HIL130上には、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、電子輸送層(ETL)160、電子注入層(EIL)180および陰極層190が配置される。単一の電子輸送層160の代わりに、任意に、電子輸送層スタック(ETL)を使用することができる。
【0208】
図3は、本発明の別の例示的な実施形態に係るOLED100の模式断面図である。図3は、図3のOLED100が、電子阻止層(EBL)145および正孔阻止層(HBL)155を含む点で、図2と異なる。
【0209】
図3を参照すると、OLED100は、基板110と、陽極層120と、式(I)の化合物を含み得る正孔注入層(HIL)130と、正孔輸送層(HTL)140と、電子阻止層(EBL)145と、発光層(EML)150と、正孔阻止層(HBL)155と、電子輸送層(ETL)160と、電子注入層(EIL)180と、陰極層190と、を含む。
【0210】
図4は、本発明の例示的な実施形態に係る有機電子デバイス100の模式断面図である。有機電子デバイス100は、基板110と、第1の陽極副層121、第2の陽極副層122および第3の陽極副層123を含む陽極層120と、正孔注入層(HIL)130と、を含む。HIL130は、陽極層120上に配置される。HIL130上には、正孔輸送層(HTL)140と、第1の発光層(EML)150と、正孔阻止層(HBL)155と、電子輸送層(ETL)160と、陰極層190と、が配置されている。正孔注入層130は、式(I)の化合物を含み得る。
【0211】
図5は、本発明の例示的な実施形態に係る有機電子デバイス100の模式断面図である。有機電子デバイス100は、基板110と、第1の陽極副層121、第2の陽極副層122および第3の陽極副層123を含む陽極層120と、正孔注入層(HIL)130と、を含む。HIL130は、陽極層120上に配置される。HIL130上には、正孔輸送層(HTL)140と、電子阻止層(EBL)145と、第1の発光層(EML)150と、正孔阻止層(HBL)155と、電子輸送層(ETL)160と、電子注入層(EIL)180と、陰極層190と、が配置されている。正孔注入層130は、式(I)の化合物を含み得る。
【0212】
図6を参照すると、有機電子デバイス100は、基板110と、陽極層120と、正孔注入層(HIL)130と、第1の正孔輸送層(HTL1)140と、電子阻止層(EBL)145と、発光層(EML)150と、正孔阻止層(HBL)155と、電子輸送層(ETL)160と、n型電荷発生層(n-CGL)185と、式(I)の化合物を含み得るp型電荷発生層(p-GCL)135と、第2の正孔輸送層(HTL2)141と、電子注入層(EIL)180と、陰極層190と、を含む。HILはまた、式(I)の化合物を含み得る。
【0213】
図7を参照すると、有機電子デバイス100は、基板110と、陽極層120と、正孔注入層(HIL)130と、第1の正孔輸送層(HTL)140と、第1の電子阻止層(EBL)145と、第1の発光層(EML)150と、任意の第1の正孔阻止層(HBL)155と、第1の電子輸送層(ETL)160と、n型電荷発生層(n-CGL)185と、式(I)の化合物を含み得るp型電荷発生層(p-GCL)135と、第2の正孔輸送層(HTL)141と、第2の電子阻止層(EBL)146と、第2の発光層(EML)151と、任意の第2の正孔阻止層(HBL)156と、第2の電子輸送層(ETL)161と、電子注入層(EIL)180と、陰極層190と、を含む。HILはまた、式(I)の化合物を含み得る。
【0214】
図1図7に示されていないが、有機電子デバイス100を密封するために、陰極層190上にキャッピング層および/または密封層をさらに形成してもよい。また、他の種々の変形例が適用されてもよい。
【0215】
以下、例を参照して、本発明の1つ以上の例示的な実施形態を詳細に説明する。しかし、これらの例は、本発明の1つ以上の例示的な実施形態の目的および範囲を限定することを意図するものではない。
【0216】
〔詳細な説明〕
本発明は、単なる例示であり、拘束力のない以下の例によってさらに説明される。
【0217】
式(I)の化合物は、EP2180029A1およびWO2016097017A1に記載されているように調製され得る。
【0218】
〔融点〕
融点(mp)は、上記のTGA-DSC測定のDSC曲線から、または別個のDSC測定からのピーク温度として決定される(Mettler Toledo DSC822e、純粋な窒素の流れの下、加熱速度10K/分で、室温から完全な融解までサンプルを加熱する。4~6mgのサンプル量を、蓋付きの40μLのMettler Toledoアルミニウムパンに入れ、<1mmの穴を蓋に穿孔させる。
【0219】
〔ガラス転移温度〕
ガラス転移温度は、Tgとも称され、℃で測定され、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0220】
ガラス転移温度は、2010年3月に発行されたDIN EN ISO 11357に記載されているように、Mettler Toledo DSC 822e示差走査熱量計において、窒素下で、毎分10Kの加熱速度を用いて測定される。
【0221】
〔速度開始温度〕
速度開始温度(TRO)は、100mgの化合物をVTE源に装填することによって決定される。VTE源として、有機材料の点源が、Kurt J.Lesker Com-pany(www.lesker.com)またはCreaPhys GmbH(http://www.creaphys.com)によって供給されるように使用され得る。VTE源は、10-5mbar未満の圧力で、15K/分の一定速度で加熱され、熱電対で前記源内の温度が測定される。前記化合物の蒸発は、検出器の石英結晶上への化合物の蒸着を検出するQCM検出器を用いて検出される。石英結晶上の蒸着速度は、毎秒オングストロームで測定される。速度開始温度を決定するために、前記蒸着速度はVTE源の温度に対してプロットされる。速度開始は、QCM検出器上で顕著な蒸着が起こる温度である。正確な結果のために、VTE源は加熱され、3回冷却され、第2のランおよび第3のランからの結果のみが使用され、速度開始温度を決定する。
【0222】
有機化合物の蒸発速度に対する良好なコントロールを達成するために、速度開始温度は200~255℃の範囲であり得る。速度開始温度が200℃未満である場合、前記蒸発が急速になり得、したがって、コントロールが困難であり得る。速度開始温度が255℃を超える場合、蒸発速度が非常に低くなり得、低タクトタイムをもたらし得る。VTE源中の有機化合物の分解は、高温への長時間の曝露により生じ得る。
【0223】
速度開始温度は、化合物の揮発性の間接的な尺度である。速度開始温度が高いほど、化合物の揮発性は低い。
【0224】
〔HOMOおよびLUMOの計算〕
HOMOおよびLUMOは、プログラムパッケージ TURBOMOLE V6.5(TURBOMOLE GmbH、Litzenhardtstrasse 19、76135 Karlsruhe、ドイツ)を用いて計算される。分子構造の最適化された幾何学配置ならびにHOMOおよびLUMOエネルギー準位は、気相中に6~31Gの基底セットを有する混成汎関数B3LYPを適用することによって決定される。1個より多いコンホメーションが実行可能である場合、最も低い総エネルギーを有するコンホメーションが選択される。
【0225】
〔有機半導体層が正孔注入層である、透明陰極を有するOLEDの製造のための一般的手順〕
表3の実施例1-1~1-6および比較例1-1について、120nmのAgの第1の陽極副層、8nmのITOの第2の陽極副層、および10nmのITOの第3の陽極副層を含む陽極層を有するガラス基板は、50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断され、水で60分間超音波洗浄され、次いでイソプロパノールで20分間超音波洗浄された。液体膜は窒素流中で除去され、続いてプラズマ処理によって陽極層を調製した。プラズマ処理は、窒素雰囲気中、または98体積%の窒素および2体積%の酸素を含む雰囲気中で行われた。
【0226】
次いで、マトリックス化合物としてのビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン、および式(I)の化合物を、陽極層上に真空中で共蒸着させて、厚さ10nmの正孔注入層(HIL)を形成した。HIL中の式(I)の化合物の割合を、表3に示す。
【0227】
次いで、ビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミンを前記HIL上に真空蒸着させて、厚さ123nmのHTLを形成した。
【0228】
次いで、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9-ジフェニル-N-(4-(トリフェニルシリル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン(CAS 1613079-70-1)を前記HTL上に真空蒸着させて、厚さ5nmの電子阻止層(EBL)を形成した。
【0229】
次いで、EMLホストとしての97体積%のH09(Sun Fine Chemicals、韓国)、および蛍光青色発光ドーパントとしての3体積%のBD200(Sun Fine Chemicals、韓国)を前記EBL上に蒸着させて、厚さ20nmの青色発光の第1の発光層(EML)を形成した。
【0230】
次に、2-(3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンを前記発光層EML上に蒸着させることによって、厚さ5nmの正孔阻止層を形成した。
【0231】
次いで、50重量%の4’-(4-(4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル)ナフタレン-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-カルボニトリル、および50重量%のLiQを共蒸着させることによって、厚さ31nmの電子輸送層を前記正孔阻止層上に形成した。
【0232】
次に、イッテルビウムを蒸着させることによって、厚さ2nmの電子注入層を前記ETL上に形成した。
【0233】
次いで、Ag:Mg(90:10体積%)を10-7mbarで0.01~1オングストローム/sの速度で蒸発させて、厚さ13nmの陰極層を前記電子注入層上に形成した。
【0234】
次いで、ビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミンを前記陰極層上に蒸着させて、厚さ75nmのキャッピング層を形成した。
【0235】
OLEDスタックは、ガラススライドを用いてデバイスを封入することによって、周囲条件から保護される。これにより、さらなる保護のためのゲッター材料を含むキャビティが形成される。
【0236】
〔有機半導体層がp-CGLである、透明陰極を有するOLEDの製造のための一般的手順〕
CGLを含むOLEDについて、表4の実施例2-1および2-2、ならびに比較例2-1を参照すると、ガラス基板は、50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断され、イソプロピルアルコールを用いて5分間超音波洗浄され、次いで純水を用いて5分間超音波洗浄され、紫外線オゾンを用いて30分間再度洗浄されて、基板が調製された。
【0237】
次いで、Agを10-7mbarで0.01~1オングストローム/sの速度で真空蒸着することによって、厚さ100nmの陽極層を前記基板上に形成する。
【0238】
次に、化合物F11、および2,2’,2’’-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)CC3を共蒸着することによって、厚さ10nmの正孔注入層(HIL)を前記陽極層上に形成する。正孔注入層は、8重量%のCC3および92重量%のF11を含む。
【0239】
次に、F11を蒸着することによって、厚さ34nmの第1の正孔輸送層(HTL1)を前記HIL上に形成する。
【0240】
次に、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9-ジフェニル-N-(4-(トリフェニルシリル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミンを蒸着することによって、厚さ5nmの電子阻止層(EBL)を前記HTL1上に形成する。
【0241】
次いで、EMLホストとしての97体積%のH09(Sun Fine Chemicals、韓国)、および蛍光青色ドーパントとしての3体積%のBD200(Sun Fine Chemicals、韓国)を共蒸着することによって、厚さ20nmの第1の発光層(EML1)を前記EBL上に形成する。
【0242】
次に、2-(3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンを蒸着することによって、厚さ5nmの正孔阻止層(HBL)を前記第1の発光層上に形成する。
【0243】
次いで、50重量%の2-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、および50重量%のLiQを共蒸着することによって、厚さ20nmの電子輸送層(ETL)を前記正孔阻止層上に形成する。
【0244】
そして、99体積%の2,2’-(1,3-フェニレン)ビス[9-フェニル-1,10-フェナントロリン]、および1体積%のLiを共蒸着することによって、厚さ10nmのn-CGLを前記ETL上に形成する。
【0245】
次いで、実質的に共有結合性のマトリックス化合物、および厚さ10nmの式(I)の化合物を共蒸着させることによって、p-CGLを前記n-CGL上に形成する。p-CGLの組成物を、表4に示す。
【0246】
次に、F11を蒸着することによって、厚さ81nmの第2の正孔輸送層(HTL2)を前記p-CGL上に形成する。
【0247】
次に、Ybを蒸着することによって、厚さ2nmの電子注入層(EIL)を前記HTL2上に形成する。
【0248】
次に、Ag:Mg(90:10体積%)を10-7mbarで0.01~1オングストローム/sの速度で共蒸着することによって、厚さ13nmの陰極を前記EIL上に形成する。
【0249】
次いで、式F3の化合物を蒸着することによって、厚さ75nmのキャッピング層を前記陰極層上に形成する。
【0250】
OLEDスタックは、ガラススライドを用いてデバイスを封入することによって、周囲条件から保護される。これにより、さらなる保護のためのゲッター材料を含むキャビティが形成される。
【0251】
従来技術と比較して本発明の実施例の性能を評価するために、電流効率を20℃で測定する。電流-電圧特性は、Keithley 2635ソース測定ユニットを使用して、電圧をVで供給し、被試験デバイスを流れる電流をmAで測定することによって決定される。デバイスに印加される電圧は、0V~10Vの範囲で0.1Vのステップで変化する。同様に、輝度-電圧特性およびCIE座標は、それぞれの電圧値について、Instrument Systems CAS-140CTアレイ分光器(Deutsche Akkreditierungsstelle(DAkkS)によって較正された)を使用して、cd/mで輝度を測定することによって決定される。10mA/cm2でのcd/A効率は、輝度-電圧特性および電流-電圧特性をそれぞれ補間することによって決定される。
【0252】
ボトムエミッションデバイスでは、発光は主にランバートであり、%外部量子効率(EQE)で定量化される。効率EQEを%で決定するために、デバイスの光出力は、10mA/cm2で較正されたフォトダイオードを用いて測定される。
【0253】
トップエミッションデバイスでは、発光は前方に向けられ、非ランバートであり、また、マイクロキャビティに高度に依存する。したがって、効率EQEは、ボトムエミッションデバイスと比較してより高くなる。効率EQEを%で決定するために、デバイスの光出力は、10mA/cmで較正されたフォトダイオードを用いて測定される。
【0254】
デバイスの寿命LTは、周囲条件(20℃)および30mA/cmで、Keithley2400ソースメーターを用いて測定され、時間で記録される。
【0255】
デバイスの輝度は、較正されたフォトダイオードを用いて測定される。寿命LTは、デバイスの輝度が最初の値の97%に低下するまでの時間として定義される。
【0256】
経時的な動作電圧Uの増加「U(100時間-1時間)」は、1時間後および100時間後の30mA/cmでの動作電圧の差を決定することによって測定される。
【0257】
〔発明の技術的効果〕
表1に、実施例A1~A57のLUMO準位を示す。LUMO準位は、プログラムパッケージ TURBOMOLE V6.5(TURBOMOLE GmbH、Litzenhardtstrasse 19、76135 Karlsruhe、ドイツ)を用いて、気相中に6~31Gの基底セットを有する混成汎関数B3LYPを適用することによって計算した。
【0258】
【表3】
【0259】
【表4】
【0260】
表2は、式(I)の化合物ならびに比較化合物1および2の物理的特性を示す。
【0261】
より高いTgおよびTmは有益であり得、より高い速度開始温度TRO温度(言い換えれば、より低い揮発性)は、改善された加工工程、特に大量生産において有利であり得る。さらに、表1を参照すると、より低いLUMOは、有機電子デバイスの性能にとって有益であり得る。
【0262】
表3は、比較化合物1(比較例1-1)および本発明の化合物1および2(実施例1-1~1-6)について得られたデバイスデータを示す。
【0263】
表3から分かるように、実施例1-1~1-6の動作電圧および経時的な電圧安定性は、比較例1-1よりも実質的に改善されている。
【0264】
【表5】
【0265】
表4は、比較化合物2(比較例2-1)および本発明の化合物1および2(実施例2-1~2-2)について得られたデバイスデータを示す。
【0266】
表4から分かるように、実施例1-1~1-6の動作電圧および経時的な電圧安定性は、比較例1-1よりも実質的に改善されている。
【0267】
【表6】
【0268】
より低い動作電圧は、特にモバイルデバイスにおいて、改善された電池寿命にとって有益であり得る。
【0269】
改善された経時的な電圧安定性U(100時間-1時間)は、有機電子デバイスの改善された経時的な安定性に有益であり得る。
【0270】
上述の詳細な実施形態における要素および特徴の特定の組み合わせは、例示的なものに過ぎず、これらの教示を、当該教示および参照により組み込まれる特許/出願における他の教示と交換し、置き換えることも明示的に企図される。当業者が認識するように、本明細書に記載されるものの変形、修正、および他の実施形態は、特許請求される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に想起され得る。したがって、上述の説明は単なる例示であり、限定を意図するものではない。特許請求の範囲において、用語「有する(comprising)」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数状態を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその同等物において定義される。さらに、説明および特許請求の範囲で使用される参照符号は、特許請求される本発明の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0271】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態に係る有機電子デバイスの模式断面図である。
図2図2は、本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の模式断面図である。
図3図3は、本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの模式断面図である。
図4図4は、本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの模式断面図である。
図5図5は、本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの模式断面図である。
図6図6は、本発明の例示的な実施形態に係る電荷発生層を含むOLEDの模式断面図である。
図7図7は、本発明の例示的な実施形態に係る電荷発生層を含む積層されたOLEDの模式断面図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】