(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】近赤外シアニン色素およびそのコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C07D 209/24 20060101AFI20230711BHJP
C07D 417/14 20060101ALI20230711BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230711BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230711BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230711BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230711BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20230711BHJP
C07K 7/64 20060101ALI20230711BHJP
C09B 23/14 20060101ALI20230711BHJP
C09B 23/01 20060101ALI20230711BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C07D209/24
C07D417/14
A61K49/00
A61K47/64
A61K47/68
A61K47/54
A61K31/404
C07K7/64
C09B23/14
C09B23/01
C07D403/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567490
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2021066920
(87)【国際公開番号】W WO2021259899
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ブラージ フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ブオンサンティ フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】クリヴェリン フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリス アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】オリオ ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ピッツート ロリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ナポリターノ ロバータ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルブーサ ジョヴァンニ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C063AA05
4C063BB09
4C063CC67
4C063DD42
4C063EE01
4C076AA95
4C076CC41
4C076CC50
4C076DD61
4C076EE41
4C076EE59
4C085HH01
4C085HH11
4C085KA04
4C085KA27
4C085KB56
4C085KB82
4C085LL01
4C085LL13
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZC78
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA35
4H045BA70
4H045EA50
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、光学イメージングの分野に関する。より具体的には、本発明は、改善された物理化学的および生物学的特性を特徴とする近赤外発光を有するシアニンファミリーの化合物ならびに生物学的リガンドとのそのコンジュゲートに関する。本発明はまた、固形腫瘍のイメージングまたは治療法における光学診断薬としてのこれらの化合物の使用、それらの調製方法およびそれらを含む組成物にも関する。化合物は式(I)を有しており、式中、Xは、直接結合または-O-であり;Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC1-C6アルキル、C3-C7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基であり;R1およびR2は各々独立に、-SO3H、-COOH、-CONH2および-COO-C1-C6アルキルから選択される基によって置換された直鎖または分岐のC1-C6アルキルであり;および、R3は、水素、-SO3H、または、-COOHもしくは-CONH-Yによって置換された直鎖もしくは分岐のC1-C6アルキルであり、式中Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC1-C6アルキル、C3-C7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
式中、
Xは、直接結合または-O-であり;
Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキル、C
3-C
7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基であり;
R1およびR2は各々独立に、-SO
3H、-COOH、-CONH
2および-COO-C
1-C
6アルキルから選択される基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルであり;および
R3は、水素、-SO
3H、または、-COOHもしくは-CONH-Yによって置換された直鎖もしくは分岐のC
1-C
6アルキルであり、式中Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキル、C
3-C
7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基である、化合物、
またはその立体異性体または薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)の化合物であって、
式中、Yは、
からなる群から選択される、
化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の式(I)の化合物であって、
式(Ia)によって表され、
式中、X、R1、R2およびR3は請求項1において定義したとおりである、
化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の式(I)の化合物であって、
および
から選択される、化合物。
【請求項5】
式(II)の化合物によって表される、請求項1において定義される化合物(I)のコンジュゲートであって、
式中、
Xは、直接結合または-O-であり;
Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキル、C
3-C
7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基であり;
R1は、-SO
3H、-COOH、-CONH
2および-COO-C
1-C
6アルキルから選択される基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルであり;
R4は、-SO
3H、-COOHおよび-CONH-(S)
m-Tから選択される基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルであり、式中、
Sは、スペーサーであり;
Tは、標的化部分であり;
mは、0または1と等しい整数である;および
R5は、水素、-SO
3H、-COOHもしくは-CONH-Yによって置換された直鎖もしくは分岐のC
1-C
6アルキル、および、基CONH-(S)
m-Tから選択され、式中、Y、S、Tおよびmは上記に定義したとおりであり;
式中、R4およびR5のうちの少なくとも1つは、CONH-(S)
m-Tによって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルである、コンジュゲート、
またはその立体異性体または薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
請求項5に記載の式(II)の化合物であって、
式中、Sは、-(CH
2)
pCOO-、-(CH
2CH
2O)
pCH
2CH
2COO-および-(CH
2CH
2O)
pCH
2CH
2NH-から選択され、式中、pは、0と20の間に含まれる整数である、
化合物。
【請求項7】
請求項5または6に記載の式(II)の化合物であって、
式中、Tは、小分子、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、酵素基質、抗体またはそのフラグメント、およびアプタマーからなる群から選択される標的化部分である、
化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の式(II)の化合物であって、
式中、Tは、インテグリン受容体と相互作用する部分である、
化合物。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか一項に記載の式(II)の化合物であって、
式(IIa)によって表され、
式中、R1、R4、R5およびXは、請求項5に定義されるとおりである、
化合物。
【請求項10】
請求項9に記載の式(II)の化合物であって、
および
から選択される、
化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物であって、
哺乳類における生物医学的光学イメージング適用のための蛍光プローブとしての使用のための化合物。
【請求項12】
請求項11に記載の使用のための化合物であって、
前記イメージング適用が、正常組織の検出を目的としており、血管造影、灌流イメージング、胆管イメージングおよび神経イメージングを含む、
化合物。
【請求項13】
請求項11に記載の使用のための化合物であって、
前記イメージング適用が、原発性腫瘍病変、局所もしくは遠隔転移、または前腫瘍性病変を含む異常組織の検出を目的としており、NIR放射線下で行なわれる、
化合物。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む、医薬診断組成物。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物を、生物医学的光学イメージング適用を実施するための追加のそのアジュバントとともに含む、診断キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学イメージングの分野に関する。より具体的には、本発明は、改善された物理化学的および生物学的特性を特徴とする近赤外発光を有するシアニンファミリーの化合物ならびに生物学的リガンドとのそのコンジュゲートに関する。本発明はまた、固形腫瘍のイメージングまたは治療法における光学診断薬としてのこれらの化合物の使用、それらの調製方法およびそれらを含む組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
色素は、光励起の際に特有の波長の光子を吸収し、量子効率に応じて、通常は、より長い波長において、そのエネルギーの一部を再発光する化学物質である。具体的には、シアニン色素は、ポリメチン架橋に広がり2つの窒素原子間に制限されている非局在化電子系を特徴とする蛍光有機分子である。それらの一部は、好ましい光学特性、低い毒性および水性媒体における良好な溶解度を有しており、生物医学的イメージングのための造影剤として用いることができる。近赤外領域(700~900nm)で発光するシアニン色素は、可視スペクトルで蛍光放射する色素と比較して、より高い侵入深度に起因して、生物医学的イメージング適用に特に有用である。
【0003】
生物医学的イメージングに用いられる近赤外色素のうち、インドシアニングリーン(ICG)は、現在のところヒト用途に承認された唯一の医薬品である。ICGは、血漿タンパク質に対する強い結合(血液プール効果)および肝臓による未結合画分の迅速なクリアランスに起因して(Cherrick et al.,J Clin Invest 1960;39(4):592-600)、組織灌流の評価および血管造影適用に日常的に用いられている。さらに、ICGはまた、診断および介入(蛍光ガイド外科的処置)の手順中の腫瘍イメージングのための治験医薬品として試験されている。ICGは、受動拡散ならびに透過性および滞留性亢進(EPR)効果の組み合わせによって、腫瘍組織内に分布および蓄積する(Onda N.et al.,Int J Cancer 2016;139,673-682)。偽陽性は、非特異的な蓄積特性に起因して、腫瘍イメージングのためのICGの使用と関連する一般的な臨床知見である(Tummers Q.et al.,PlosOne 2015;10(6):e0129766)。
【0004】
検出の感度および特異性を改善するために、過剰発現された腫瘍エピトープを標的とする担体部分(すなわち、生体分子)にコンジュゲートされた色素を利用する、近赤外イメージングのためのさらなる造影剤が開発中である(Achilefu S.et al,J Med Chem 2002;45,2003-2015)。例えば、ICGおよびS0456は、腫瘍標的化部分にコンジュゲートされた近赤外色素の例であり、術中の腫瘍検出のために臨床試験において現在試験されている(Fidel J.et al.,Cancer Res.2015;15;75(20):4283-4291;Hogstins C.et al.,Clin Cancer Res 2016;22(12);2929-38)。
【0005】
適切なイメージング剤を見つけ出す様々な試みにもかかわらず、水性媒体における最適な溶解度および低い凝集性、高い蛍光効率、ならびに最適な生物学的特性を付与する改善された色素を探す必要性が未だ存在している。色素の生物学的特性、特に、アルブミンなどの血漿タンパク質に対する結合親和性は、生体内に投与された時点で、分布および組織蓄積に強く影響し得る。例えば、ヒトアルブミンに対して高い結合親和性を有する色素は、静脈内投与後に血漿区画内に隔離され、低い組織溢出率を有し、その診断適用を強く制限する。さらに、色素の生物学的特性は、色素自体と病理学的組織上の生物学的エピトープを標的とする生体分子とからなるコンジュゲートの組織分布に影響し得る。ヒト血清アルブミンに対する低い結合親和性および非特異的な蓄積が付与された近赤外色素は、生体における適用に好ましい。この必要性は、分子エピトープまたは病理学的組織(例えば腫瘍)に特異的に結合する生体分子に色素がコンジュゲートされた場合に最も重要である。本発明は、これらおよび他の必要性を対処する。
【0006】
WO2002/024815およびWO2007/136996(Li-Cor Inc.)およびWO2004/065491(Schering AG)は、光学イメージング適用に有用であり、水性媒体における高溶解度および生体分子との直接コンジュゲートのための官能基を特徴とする、安定なシアニン色素を報告している。しかしながら、最適な生物学的特性を有する色素を得る方法に関する教示は提供されていない。
【0007】
WO2015/114171は、がん細胞を阻害する薬物の送達のための小分子標的化薬物コンジュゲートを開示している。特に、腫瘍のフローサイトメトリー分析およびインビボイメージングに用いられるIRDye 750コンジュゲート「C6」を報告している。
【0008】
Wada H.et al,Chemical Engineering Journal 2018,340(3):51-57は、術中のpanリンパ節マッピングおよびリアルタイム光学イメージングのためのマンノース-コンジュゲートZW800-1誘導体を用いたNIR蛍光ナノプローブを開示している。
【0009】
Vendrell M.et al,Organic&Biomolecular Chemistry 2011,9(13):4760-4762は、がん細胞における優先的な取り込みを示したNIR蛍光デオキシグルコース類似体CyNE2-DGを報告しており、腫瘍イメージングにおける光学薬剤として検証された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
適切なイメージング剤を見つけ出す様々な試みにもかかわらず、最適な安定性および蛍光効率、ならびに最適な物理化学的および生物学的特性が付与され、生体の光学イメージングのためにデザインされた、改善された色素を探す必要性が未だ存在している。この必要性は、特に、分子エピトープまたは病理学的組織(例えば腫瘍)に特異的に結合する生体分子に色素がコンジュゲートされた場合に最も重要である。本発明は、これらおよび他の必要性を対処する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概して、本発明は、光学イメージングのための造影剤(contrast medium)として有用であり上述の課題を解決することを目指した新規のシアニン色素、または結合部分に対するそれらの対応するコンジュゲートを提供することを目的とする。
【0012】
本明細書に記載される新規のシアニン誘導体は、驚くべきことに、顕著な光学特性および水性媒体における高い溶解度を有する。驚くべきことに、本発明の化合物は、従来技術で公知の近赤外色素と比較して、ヒトアルブミンに関して非常に低い結合親和性を有することが見いだされ、そのことは、これらの化合物が静脈内投与後に用いられる場合に特に有利であり;前記の低親和性は、アルブミンなどの血中に存在する大きなタンパク質による血漿区画における化合物の隔離と、その結果として生じる細胞外スペースにおける効率的な溢出および分布に利用可能な遊離色素の画分の減少とを防止する。
【0013】
新規のシアニン色素は、結合部位として作用する適切な官能基を介して適切な標的化部分に好適にコンジュゲートすることができ、したがって、分子イメージングのための非常に特異的かつ高感度の造影剤を提供する。本発明の化合物の、この低いアルブミン結合親和性は、色素-コンジュゲートの場合に特に重要である。なぜならば、それらの遊離画分(アルブミンに結合していない)のみが、分子標的と効率的に相互作用することができるからである。
【0014】
本発明のさらなる態様は、光学イメージングの方法における使用のための診断薬としての、具体的には、ヒトまたは動物の臓器または組織の光学イメージングにおける使用のための、そのような色素に関し、ここで、イメージングは、臓器の断層撮影イメージングであり、臓器機能のモニタリングは、血管造影、組織灌流イメージング、尿路イメージング、胆管イメージング、神経イメージング、術中のがん特定、蛍光ガイド外科的処置、蛍光内視鏡検査、蛍光腹腔鏡検査、ロボット外科的処置、開放(open field)外科的処置、レーザーガイド外科的処置、光線力学的療法、蛍光寿命イメージング、または光音響もしくは音響蛍光(sonofluorescence)の方法を含む。
【0015】
さらに本発明は、提供される色素、対応するコンジュゲートおよび/またはその薬学的に許容できる塩の調製のための製造プロセス、ならびに診断薬の調製におけるそれらの使用に関する。
【0016】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の少なくとも1つの色素もしくは色素-コンジュゲート化合物、またはその薬学的に許容できる塩を含む、1つまたは複数の生理的に許容できる担体または賦形剤との混合物における、薬学的に許容できる組成物に関する。前記組成物は、ヒトまたは動物の臓器または組織の有用なイメージングを提供するための光学イメージング剤として特に有用である。
【0017】
別の態様では、本発明は、効果的な用量の本発明の化合物の使用を含む光学イメージング技術の使用による、体の臓器、組織または領域の光学イメージングのための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
したがって、本発明の第1の目的は、式(I)の化合物、
式中、
Xは、直接結合または-O-であり;
Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキル、C
3-C
7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基であり;
R1およびR2は各々独立に、-SO
3H、-COOH、-CONH
2および-COO-C
1-C
6アルキルから選択される基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルであり;および
R3は、水素、-SO
3H、または、-COOHもしくは-CONH-Yによって置換された直鎖もしくは分岐のC
1-C
6アルキルであり、式中Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキル、C
3-C
7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基である、
またはその立体異性体または薬学的に許容できる塩を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、式(II)の化合物によって表される対応するコンジュゲート色素:
式中、
Xは、直接結合または-O-であり;
Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキル、C
3-C
7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基であり;
R1は、-SO
3H、-COOH、-CONH
2および-COO-C
1-C
6アルキルから選択される基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルであり;
R4は、-SO
3H、-COOHおよび-CONH-(S)
m-Tから選択される基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルであり、式中、
Sは、スペーサーであり;
Tは、標的化部分であり;
mは、0または1と等しい整数である;および
R5は、水素、-SO
3H、-COOHもしくは-CONH-Yによって置換された直鎖もしくは分岐のC
1-C
6アルキル、および、基CONH-(S)
m-Tから選択され(R5 is selected from hydrogen, -SO
3H, a linear or branched C
1-C
6 alkyl, substituted by -COOH or -CONH-Y, and a group CONH-(S)
m-T)、式中、Y、S、Tおよびmは上記に定義したとおりであり;
式中、R4およびR5のうちの少なくとも1つは、CONH-(S)
m-Tによって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルである、
またはその立体異性体または薬学的に許容できる塩に関する。
【0020】
本発明はまた、合成の変換ステップを用いて式(I)または(II)の化合物を調製するための方法にも関する。
【0021】
本発明はまた、生物医学的光学イメージング適用のための蛍光プローブとしての使用のための式(I)または(II)の化合物も含む。
【0022】
定義
本説明において、別段の提示がない限り、本明細書において用いられる以下の用語および語句は、以下の意味を有することを意図している。
【0023】
「直鎖または分岐のC1-C6アルキル」という表現は、直鎖または分岐鎖であり得る、鎖内に1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル基を指す。例えば、「C4アルキル」は、その意味内に、4個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖を含む。同様に、「C1-C20アルキル」は、1~20個の炭素原子を含むアルキルである。代表的な好ましいアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。別段の定めのない限り、直鎖または分岐のC1-C6アルキルは、一価ラジカル基である。場合によっては、2つ以上の水素原子が上記炭化水素ラジカル基から取り除かれて置換されている「二価」または「多価」ラジカル基であってよい(例えばメチレン、エチレン、イソ-プロピレン基など)。
【0024】
本明細書で用いられる用語「C3-C7シクロアルキル」は、その意味内に、3~7個の炭素原子を含む飽和(すなわち脂環式)炭素環を含む。適切な例は、C5-C7炭素環、例えばシクロヘキシル環を含む。
【0025】
本明細書で用いられる用語「ヘテロシクリル」は、飽和脂環式環、好ましくは5~7員の飽和環を含み、N、OおよびSから選択される環状鎖におけるヘテロ原子をさらに含む。好ましくは、それはテトラヒドロピランを指す。
【0026】
用語「ヒドロキシアルキル」は、1つまたは複数の水素原子がヒドロキシル基によって置換された任意の対応するアルキル鎖を指す。
【0027】
用語「アルコキシ」は、その意味内に、1つまたは複数の酸素原子をさらに含む上記に定義したアルキル鎖を含み;例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシなどのアルキル-オキシ基、および、アルキル鎖に1つまたは複数の酸素原子が割り込んだアルキル-(ポリ)オキシ基が挙げられる。
【0028】
本説明では、用語「保護基」(Pg)は、それが結合する基の機能を保存するように適合された保護基を指す。具体的には、保護基は、アミノ、ヒドロキシルまたはカルボキシル機能を保存するために用いられる。適切な保護基としては、例えば、ベンジル、カルボニル、例えばホルミル、9-フルオロメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、t-ブトキシカルボニル(Boc)、イソプロピルオキシカルボニルまたはアリルオキシカルボニル(Alloc)、アルキル、例えばtert-ブチルまたはトリフェニルメチル、スルホニル、アセチル基、例えばトリフルオロアセチル、ベンジルエステル、アリル、または、そのような機能の保護のために一般に用いられており当業者に公知の他の置換基(例えば、一般的な参考文献T.W.Green and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley,N.Y.2007,4th Ed.,Ch.5を参照)を挙げることができる。
【0029】
さらに、本発明は、所望の式(I)の化合物またはその塩の調製に適切な前駆体または中間体化合物も含む。そのような誘導体においては、R1-R5の官能基、例えばカルボン酸またはカルボキサミドを、上記に定義した適切な保護基(Pg)、好ましくはアルキルまたはエステル基を用いて保護することができる。必要に応じて、Y基のヒドロキシル基も、式(I)または(II)の化合物の調製中に適切な保護基(Pg)で保護することができ、したがって、例えば、アセトキシ、アルコキシまたはエステル基を形成する。
【0030】
「カップリング試薬」という表現は、例えば、カルボキシル部分とアミノ部分との間のアミド結合の形成において用いられる試薬を指す。反応は、以下の2つの連続するステップ:カルボキシル部分の活性化に次いで、活性化されたカルボン酸によるアミノ基のアシル化からなり得る。そのようなカップリング剤の非限定的な例は、以下:カルボジイミド、例えば、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC);ホスホニウム試薬、例えば、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)、[エチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセタト-O2]トリ-1-ピロリジニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyOxim)、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrOP)および3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT);およびアミニウム/ウロニウム-イモニウム試薬、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(ΗBTU)、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(ΗATU)、O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、1-[1-(シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン-アミノオキシ)-ジメチルアミノ-モルホリノ]-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)およびフルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TFFH)または当業者に公知の他の化合物からなる群から選択される。
【0031】
用語「小分子」は、本明細書において、約5000ダルトン未満の分子量を有しており、ヒトを含む動物に投与した場合に生物学的プロセスを調節することが可能な、または生物学的効果を生じさせることが可能な、有機、無機または有機金属化合物を指すために広く用いられる。用語「小分子」はまた、用語「薬物」または「生物学的活性部分」と互換的に用いることもできる。例えば、腫瘍に対して有益な効果を提供し、特異的な生物学的標的に結合することによって患者において局所的または全身性効果を生じる任意の薬剤、活性分子または化合物を含むことができる。小分子はまた、活性化または化学的修飾されて本発明のコンジュゲート色素に共有結合した親薬物の部分または残基を指すこともできる。
【0032】
「活性化されたカルボン酸」という表現は、遊離カルボキシル基よりも求核攻撃を受けやすいカルボキシル基の誘導体を指し;適切な誘導体は、例えば、酸無水物、チオエステル、ハロゲン化アシル、NHSエステルおよびスルホNHSエステルを含み得る。
【0033】
さらに、用語「部分」または「残基」は、分子の残りに直接または適切なリンカーおよび/またはスペーサーを介して適切に結合またはコンジュゲートした場合の、所与の分子の残りの部分を定義することが本明細書において意図される。
【0034】
標的化部分(T)
本発明によれば、標的化部分(T)は、特定の選択性で生物学的標的に結合し、特異的な組織または体の部位における造影剤の蓄積を促進する分子である。一般に、生体系における使用のための天然または合成の分子によって表される。
【0035】
そのような特異的な結合は、目的の組織または細胞の表面上に発現された特異的な生物学的標的と相互作用する、例えば小分子、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、酵素基質、抗体もしくはそのフラグメント、またはアプタマーなどのリガンドを介して達成することができる。
【0036】
本発明の化合物に適切な生物学的標的は、例えば、EGFRまたはHER2などの上皮成長因子(EGF)受容体;VEGFR1またはVEGFR2などの血管内皮成長因子(VEGF)受容体;CAIX、CAIIまたはCAXIIなどの炭酸脱水酵素(CA)酵素;MUC1などのムチン糖タンパク質;GLUT-1などのグルコース輸送体;NHE1などのナトリウム-水素交換輸送体;がん胎児性抗原(CEA)などのがん胎児性糖タンパク質;ケモカイン受容体タイプ4(CXCR4)などのケモカイン受容体;ICAM、EPCAM、VCAM、E-セレクチン、P-セレクチンなどの細胞接着分子;肝細胞増殖因子HGFR(c-met);トランスフェリンのための受容体;EPHA2などのエフリン受容体;FR-αなどの葉酸のための受容体;CD44などのヒアルロン酸に結合する糖タンパク質;BB1、BB2、BB3などのボンベシン受容体;前立腺特異的膜抗原(PSMA)などのN-アセチル-L-アスパルチル-L-グルタメート(NAAG)ペプチダーゼ;および、特にαvβ3、αvβ5、αvβ6またはα5β1インテグリン受容体などのインテグリン受容体であり得る。
【0037】
例えば、インテグリン受容体標的化部分は、配列Arg-Gly-Asp(RGD)を含む線状または環状ペプチドによって表される。このトリペプチドは、受容体に対して高い結合特異性を有しており、細胞膜に存在するインテグリン受容体のファミリーによりリガンドとして認識される。実際に、このRGDモチーフを利用して細胞接着を媒介する、フィブロネクチンまたはビトロネクチンなどのいくつかの細胞外マトリックス糖タンパク質において同定されている。
【0038】
したがって、配列Arg-Gly-Asp(RGD)を含む線状および環状ペプチドおよびペプチド模倣薬、例えば、cRGD、cRGDfK、cRGDyK、cRGDfC、RGD-4C、RGD-2C、AH111585、NC100692、RGD-K5(Kapp et al.,Sci Rep,2017,7:3905)、またはそれらの類似体およびそれらの誘導体は、細胞膜インテグリンが健康組織と比較して上方制御されているがん組織を標的化する結合モチーフの公知の例である。
【0039】
一実施形態では、本発明の化合物は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的化することが知られているベクターにコンジュゲートさせることができ、したがって、前立腺がんの検出およびイメージングを可能にする。これらのリガンドは、例えば、ベクターグルタミン酸-尿素-リジン(EuK)またはEP3636635A1に記載される式「EuX」の他のPSMA結合ベクター、すなわち、別のアミノ酸または類似物に架橋尿素を介して結合されたグルタミン酸、例えばEuFA(グルタミン酸-尿素-3-(2-フリル)-アラニン)、EuPG(グルタミン酸-尿素-2-(2’-プロピニル)-アラニン)、EuE(グルタミン酸-尿素-グルタミン酸)、または他の尿素に基づくペプチド模倣薬、例えば、Benesova et al.,J Nucl Med 2015,56:914-920に記載されるEuK-(3-(2-ナフチル)-アラニン)-トラネキサム酸によって表される。
【0040】
別の実施形態では、本発明の化合物は、治療法に既に使用されている他の小分子、ペプチド、タンパク質または抗体、例えばモノクローナル抗体にコンジュゲートすることができる。薬物アセタゾラミドを含む小分子、例えば、化合物4a、5a、6a、7aおよび8a(Wichert et al.,Nat Chem 2015,7:241-249)、またはそれらの類似体およびそれらの誘導体は、酵素CAIXを標的化する小分子の例である。線状および環状ペプチドおよびペプチド模倣薬、例えばペプチドGE11(Li et al.,FASEB J 2005,19:1978-85に記載)および/またはペプチドL1(Williams et al.,Chem Biol Drug Des 2018,91:605-619に記載)、またはそれらの類似体およびそれらの誘導体は、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的化するペプチドの例である。タンパク質のうち、上皮成長因子(EGF)の誘導体は、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的化する小タンパク質の例である。抗体のうち、パニツムマブおよびセツキシマブは、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的化するモノクローナル抗体の例である。
【0041】
好ましくは、本発明の標的化リガンドは、腫瘍細胞または組織に選択的に結合することができる。特に、それらは、脳腫瘍、乳がん、頭頚部がん、卵巣がん、前立腺がん、食道がん、皮膚がん、胃がん、膵がん、膀胱がん、口腔がん、肺がん、腎がん、子宮がん、甲状腺がん、肝臓がん、および結腸直腸がんから選択される腫瘍に結合することができる。さらに、標的化リガンドは、原発の由来とは異なる組織および臓器における上述のがんの転移の広がりに結合することができる。さらに、標的化リガンドは、異なる組織および臓器における前腫瘍性病変および形成異常に結合することができる。
【0042】
スペーサーS
本発明によれば、Sは、標的化部分を色素から分離するスペーサーである(存在してもしなくてもよい)。スペーサーの存在は、標的化部分および色素が互いに負の相互作用をするリスクがある一部の実施形態について特に関連がある。さらに、スペーサーの存在は、色素が相対的に大きく、標的部位への標的化部分の結合を妨げ得る場合に必要であり得る。
【0043】
スペーサーは、柔軟(例えば、単純なアルキル鎖)または剛性(例えば、シクロアルキルまたはアリール鎖)のいずれかであってよく、それにより、色素が標的から離れて配向される。スペーサーは、生体においてイメージング剤として用いられる式(I)のコンジュゲートの薬物動態および代謝を改変することもできる。
【0044】
親水性スペーサーは、血漿タンパク質との相互作用を減少させ、血中循環時間を減少させ、排泄を促進させ得る。例えば、スペーサーがポリエチレングリコール(PEG)部分である場合、インビボでのイメージング剤の薬物動態および血中クリアランス速度は変更され得る。そのような実施形態では、スペーサーは、バックグラウンド組織(すなわち、筋肉、血液)からのイメージング剤のクリアランスを改善することができ、したがって、高い標的-対-バックグラウンドのコントラストに起因して、より良好な診断画像を提供する。さらに、特定の親水性スペーサーの導入により、造影剤の排泄を肝臓から腎臓へ移行させることができ、したがって、全体的な体内滞留を減少させる。
【0045】
したがって、好ましい一実施形態では、スペーサーは、C1-C20アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはアリール基を含む親水性部分である。好ましくは、スペーサーは、-(CH2)pCOO-、-(CH2CH2O)pCH2CH2COO-および-(CH2CH2O)pCH2CH2NH-からなる群から選択され、式中、pは0と20の間の整数である。好ましくは、pは、2、6または12である。
【0046】
必要でない場合は、スペーサーは好ましくは存在せず、すなわちmは0であり、Sは直接結合を表わす。
【0047】
スペーサー、あるいはスペーサーがない場合の標的化部分は、式(II)の化合物においてR4および/またはR5残基で結合され得る。
【0048】
R4-R5の結合基は、化学結合の形成によって色素を標的化部分にコンジュゲートするのに適切なカルボン酸またはカルボキシアミド残基などの反応性官能基である。
【0049】
例えば、アミン含有標的化部分(T)が式(II)の化合物とコンジュゲートされる場合であって、R4および/またはR5が、カルボン酸によって置換されたアルキルである場合、このカルボン酸は、コンジュゲートを行なう前に活性化試薬を用いてより反応性の形態における転換を通して活性化されてもよく、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルまたは混合無水物を形成する。それから、式(II)の対応する化合物を得るために、アミン含有標的化部分が、生じた活性化酸によって処理されて、アミド結合を形成する。典型的に、この反応は水性バッファー中で行なわれ(DMSOまたはDMF(pH8~9)との共溶媒であってもよい)、または、DIPEA、TEAもしくはNMMなどの有機塩基を含む有機溶媒中で行なわれる。
【0050】
そうでなければ、「非活性化」カルボン酸を用いた直接コンジュゲートが行われ得る。
【0051】
同様に、R4および/またはR5の結合基がカルボキシアミド基である場合は、適切な標的化部分の付着のための手順は同様であるが、リンカーの活性化ステップは一般に必要ではなく、色素および標的化部分は直接処理される。
【0052】
上記式(I)または(II)の化合物は、1つまたは複数の不斉炭素原子(あるいはキラル炭素原子と呼ばれる)を有してよく、したがって、ジアステレオマーおよび光学異性体を生じさせ得る。別段の提示がない限り、本発明は、すべてのそのようなあり得るジアステレオマーならびにそれらのラセミ混合物、それらの実質的に純粋な分割鏡像異性体、すべてのあり得る幾何異性体、およびそれらの薬学的に許容できる塩をさらに含む。
【0053】
非限定的な例として、式(I)または(II)の色素がD-グルカミン基によって置換された場合(Yは、5個のヒドロキシ基によって置換されたC6アルキルである)、本発明は、対応する鏡像異性的に純粋な化合物ならびに任意のそれらの立体異性体、例えば、L-グルカミン基を有する化合物、または、それらのD-/L-光学異性体の任意のあり得る混合物を含む。
【0054】
本発明はさらに、R1、R2/R4および/またはR3/R5の官能基、例えばスルホニル、カルボキシアミノまたはカルボン酸基が、薬学的に許容できる塩の形態であり得る、上記式(I)または(II)の化合物に関する。
【0055】
一実施形態では、本発明は、式(I)または(II)の化合物に関し、式中、Yは、2~5個のヒドロキシル基で置換された直鎖または分岐のC1-C6アルキル、シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明は、式(I)または(II)の化合物に関し、式中、Yは、
からなる群から選択される。
【0057】
より好ましくは、本発明は、式(I)または(II)の化合物に関し、式中、Yは、上記に定義した式(ii)の基である。好ましくは、基(ii)は、化合物の調製においてD-グルカミンを用いることによって得られる以下の立体化学的配置を有する:
【0058】
本発明の別の実施形態は、式(II)の化合物に関し、式中、mは0でありスペーサーSは直接結合によって表されるか、またはmは1でありスペーサーはC1-C20アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはアリール基を含む親水性部分である。好ましくは、スペーサーは、-(CH2)pCOO-、-(CH2CH2O)pCH2CH2COO-および-(CH2CH2O)pCH2CH2NH-から選択され、式中、pは0と20の間の整数である。好ましくは、pは2、6または12である。
【0059】
さらなる一実施形態では、Tは、小分子、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、酵素基質、抗体またはその任意のフラグメントおよびアプタマーから選択される標的化部分である。
【0060】
好ましくは、Tは、ペプチドによって表され、特に、αvβ3、αvβ5、αvβ6、α5β1などのインテグリン受容体と、好ましくはαvβ3インテグリン受容体と相互作用する部分によって表される。
【0061】
好ましい一実施形態では、R1は、-SO3Hによって置換された直鎖C4アルキルである。
【0062】
別の好ましい実施形態では、本発明は、式(I)または(II)の化合物に関し、式中、Yは、上記に定義した基(ii)を表わし、そうでなければ、以下の式(Ia)または(IIa)によってそれぞれ表わされる:
式中、R1、R2、R3、R4、R5およびXは上記に定義したとおりである。
【0063】
特に好ましいのは、表Iaに列挙した式(I)の化合物および表Ibに列挙した式(II)の化合物である。
【0064】
【0065】
【0066】
本発明はまた、結合基を介して標的化部分にコンジュゲートされてもよい近赤外色素である、以下の説明に例示されるように調製される式(I)または(II)の化合物を合成する方法に関する。
【0067】
したがって、本発明は、哺乳類(ヒトおよび動物)における診断生物医学的適用のための光学イメージング剤としての使用のための上記に定義した式(I)または(II)の化合物を提供する。好ましくは、イメージングされる哺乳類対象はヒトである。
【0068】
好ましい一実施形態では、本発明の化合物は、正常(健康)組織または異常(病理学的)組織、特に腫瘍の検出における、イメージング剤としての使用のためのものである。
【0069】
好ましくは、上記に定義される式(I)または(II)の化合物は、例えば血管造影、灌流イメージング、胆管イメージングおよび神経イメージングを含むイメージング技術を用いた正常(健康)組織の検出における使用のためのものである。
【0070】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、異常(病理学的)組織、例えば、原発性腫瘍病変、局所もしくは遠隔転移、または前腫瘍性病変、特に形成異常および過形成の検出における使用のための、上記に定義した式(I)または(II)の化合物を提供する。特に、上記に定義した式(II)の化合物は、好ましくは、個々の患者のガイド外科的処置における腫瘍の縁の検出および境界決定における使用のためのものである。好ましい使用は、前記腫瘍が、例えば、細胞表面上に存在する受容体、酵素、糖タンパク質、脂質ラフト、膜貫通タンパク質、および、血清、血漿または間質空間に存在する可溶性因子から選択される、生物学的エピトープの過剰発現を示している腫瘍である場合である。好ましくは、前記生物学的エピトープは、ビトロネクチン、フィブロジェン(Fibrogen)および/または形質転換増殖因子-β(TGF-β)のためのインテグリン受容体である。
【0071】
本発明はまた、上記に定義した蛍光プローブとしての使用のための式(I)または(II)の化合物を提供し、ここで、腫瘍の検出および境界決定は、NIR放射線下で行なわれる。好ましくは、腫瘍のそのような検出および境界決定は、そのような腫瘍組織を除去する外科的手順前、外科的手順中、または外科的手順後に行なわれる。蛍光ガイド外科的処置手順は、そのような使用の例である。
【0072】
さらに、本発明は、炎症組織、線維化組織、虚血性組織、または異常な代謝速度を有する組織の検出における使用のための上記に定義した式(I)または(II)の化合物を提供する。
【0073】
本発明はまた、以下のステップを含む、組織および細胞をイメージングする方法を提供する:
i)細胞または組織を式(I)および(II)の化合物と接触させるステップ;
ii)イメージング剤によって吸収される波長で組織または細胞を照射するステップ;
iii)蛍光カメラを用いて近赤外発光を検出するステップ。
【0074】
好ましくは、細胞または組織を式(I)または(II)のイメージング剤と接触させる前記ステップは、局部的または局所的適用によって(例えば、噴霧、浸漬、または軟膏、フォームもしくはクリーム塗布によって)、または全身性適用(腸内または非経口投与)によって達成される。
【0075】
本発明はさらに、上記に定義した式(I)の化合物または式(II)のコンジュゲート、および少なくとも1つの薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む、医薬診断組成物に関する。
【0076】
特に、本発明は、式(I)の色素、またはその塩、および1つまたは複数の薬学的に許容できるアジュバント、賦形剤または希釈剤を含む、医薬組成物に関する。
【0077】
あるいは、本発明は、R4および/またはR5が、上記に定義したようにCONH-(S)m-Tによって置換されたC1-C6アルキルである式(II)のコンジュゲート、またはその塩、および1つまたは複数の薬学的に許容できるアジュバント、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物に関する。
【0078】
本発明の別の態様は、上記に定義した式(I)または(II)の化合物を含む診断キットに関する。さらにキットは、光学イメージングを実施するための追加のアジュバントを含むことができる。これらのアジュバントは、例えば、適切なバッファー、容器、検出試薬、または使用法である。キットは、好ましくは、本発明の化合物の静脈内投与のためのすべての材料を含む。
【0079】
本発明の化合物は、イメージング手順の前にイメージングされる臓器または組織へ全身性または局所的のいずれかで投与され得る。例えば、化合物は、静脈内に投与することができる。別の実施形態では、非経口的または経腸的に投与され得る。
【0080】
組成物は、腫瘍、組織または臓器の所望の光学画像を取得するのに効果的な用量で投与され、それは、用いられる化合物、イメージング手順に供せられる組織、用いられるイメージング装置などによって広く異なり得る。
【0081】
イメージング剤の正確な濃度は、実験的条件および所望の結果に依存するが、典型的に0.000001mM~0.1mMの範囲であり得る。最適な濃度は、最小限のバックグラウンド蛍光で満足な結果が得られるまで、体系的な変動によって決定される。
【0082】
投与された時点で、本発明のイメージング剤は、光または組織層を通過することのできる他の形態のエネルギーに曝される。好ましくは、放射線の波長または波長帯は、光感作剤の励起波長または波長帯と同等であり、非標的細胞および対象の残りのもの(血中タンパク質を含む)による低吸収を有する。
【0083】
典型的に、光学シグナルは、観察または機器によって検出可能であり、その応答は、蛍光または光強度、分布および寿命と関連する。
【0084】
合成の説明
式(I)または(II)の化合物の(それ自体としてまたは生理的に許容できる塩の形態での)調製は、本発明のさらなる目的である。本発明のシアニン色素および色素-コンジュゲートは、例えば、以下のセクションおよび実験パートに記載される方法に従って調製することができる。
【0085】
シアニン色素の調製に関する全般的教示は、スルホインドシアニン色素の合成および標識に関するMujumdar R.B.et al.,Bioconjugate Chem.1993,4(2):105-111に見いだすことができる。しかしながら、本発明のシアニンは、当該分野の化合物に存在しない特有の官能化パターンを特徴とし、そのためには適切な合成手法の設定が必要とされた。実際に、他の公知のシアニンとは異なり、本発明の化合物は、異なる方法で誘導体化されるべき3つの機能性部分(カルボン酸またはアミド基)を有しており、したがって、所望の官能基での反応に向かわせるために、ほとんどの場合で保護基の使用が必要である。
【0086】
保護基の除去に必要な強pHおよび温度条件でシアニンを操作すると、シクロヘキセニル-ポリメチン足場の安定性が損なわれることがあり、場合によっては色素がひどく分解されるため、困難が生じることが知られている。
【0087】
さらに、R1-R5のカルボン酸基を脱保護するときに、アミド基-CONH-Yのあり得る加水分解および分解に起因して、さらなる障害に遭遇する場合がある(典型的に、アミド誘導体は、濃縮されたアルカリ媒体中で加水分解し得る。例えば、Yamana et al,Chem.Pharm.Bull.,1972、20(5),881-891を参照)。
【0088】
1つの好ましい実施形態では、部分R4またはR5のための保護基はエステル基である。より好ましくは、エチルエステル基を有利に用いることができる。
【0089】
式(I)のシアニン色素の調製
本発明によれば、式(I)の化合物は、以下のスキーム1に報告される合成ステップの一般的順序によって調製することができる。
【0090】
【0091】
上記スキーム1において、R1、R2、R3、XおよびYは上記に定義したとおりであり、Pgは存在しないか、または適切な保護基である。
【0092】
したがって、本発明のプロセスは以下のステップを含む:
a)適切な量の式(III)および(IV)の5-カルボキシ-2,3,3-トリメチルインドレニンを、ヒドロキシ部分に適切な保護基を有するグルカミン、メグルミン、グルコサミン、トロメタモール、セリノールまたはイソセリノールなどのポリヒドロキシル化アミンで処理するステップ;
b)ステップa)で得られた中間体(V)および中間体(VI)を、2-クロロ-1-ホルミル-3-(ヒドロキシメチレン)-1-シクロヘキセンと反応させて、式(VII)のシアニン中間体を得るステップ(式中、R1、R2、YおよびPgは定義したとおりである);
c)中間体(VII)からY基の保護基(Pg)を除去するステップがあってもよい;
d)中間体(VII)上のクロロ原子を適切な求核試薬で置換して、式(I)の最終生成物またはその塩を得るステップ。
【0093】
ステップa)によれば、ポリヒドロキシル化アミンと誘導体(III)および(IV)の反応は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの溶媒中で、30分~数時間の範囲の適切な時間、室温で、例えばHATU、TBTU、HBTU、PyBOP、DCC、DSCおよびDCC-NHSから選択されるカップリング剤、およびTEA、DIPEA、NMMまたはピリジンなどの有機塩基による、カルボキシレート基の活性化によって行なうことができる。カルボン酸のこの誘導体化は、四級化の前に、アルキル化インドレニンまたはインドールに対して行なうことができる。この場合、スルトンまたはブロモヘキサン酸によるアルキル化の前に、アセチルなどの適切な保護基によってポリヒドロキシル化アミンのヒドロキシル基を保護することが重要である。このアルキル化は、高温で(例えば90℃~180℃)、数時間(典型的には12時間から5日間)溶液を撹拌しながら、ニートで、またはブチロニトリル、スルホラン、1,2-ジクロロベンゼン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドもしくはジメチルスルホキシドなどの高沸点溶剤中で、行なうことができる。
【0094】
ステップb)によれば、反応は、ビスアニリド形態またはビスアルデヒド形態でVilsmeier試薬を用いて行なうことができる(スキーム1で報告される)。反応は、例えばエタノール、メタノール、無水酢酸または酢酸などの様々な溶媒中で、トリメチルアミン、ピリジン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの種々の塩基を添加して、または添加せずに、45℃~120℃の範囲の種々の温度で数時間(典型的に2~24時間)混合物を撹拌して行なうことができる。
【0095】
ステップc)によれば、中間体(VII)の任意の保護基は、例えばT.W.Green and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley,N.Y.2007,4th Ed.,Ch.5に記載の公知の手順に従って、部分Yから除去される。他のクラスのシアニンとは異なり、これらの色素は、酸性pHにおいて、より高温でさえも数時間、より高い安定性を示した。
【0096】
ステップd)によれば、反応は、X-R3置換基に応じて様々なプロトコルを用いて行なうことができる。フェノールまたはその誘導体、例えばフェノール-SO3Hが導入される場合は、色素を、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの無機塩基の存在下、DMSO中で加熱することができる。一方で、クロロがフェニルまたはその誘導体によって置換される場合は、反応は、脱気水中で、または脱気水とメタノール、エタノールなどの共溶媒との混合物中で、酢酸PdまたはテトラキスPdなどのPd触媒存在下で(炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの塩基であってもよい)、より短時間加熱して行なうことができる。
【0097】
R1がR2と同一の意味を有する場合は、1つの反応a)のみを行ない、その後のステップb)は1ユニットの中間体(V)および1ユニットの中間体(VI)の代わりに、2ユニットの中間体(V)または(VI)を用いて行なわれる。
【0098】
あるいは、R1がR2と同一の意味を有しており、-SO
3Hによって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルである場合は、式(I)の化合物は、以下のスキーム2に従って調製することもできる:
【0099】
上記スキーム2において、R1は、-SO3Hによって置換された直鎖または分岐のC1-C6アルキルであり、X、YおよびR3は上記に定義したとおりである。
【0100】
したがって、本発明の別のプロセスは以下のステップを含む:
f)少なくとも2つの同等物インドレニン中間体(III)(式中、R1は、-SO3Hによって置換された直鎖または分岐のC1-C6アルキルである)を、Vilsmeier試薬(ビスアルデヒドまたはビスアニリドの形態)と反応させて、式(IX)の対応するシアニン中間体を得るステップ;
g)中間体(IX)上のクロロ原子を適切な求核試薬で置換して、中間体(X)を得るステップ;
h)適切な量の式(X)の中間体を、例えばグルカミン、メグルミン、グルコサミン、トロメタモール、セリノールまたはイソセリノールなどのポリヒドロキシル化アミンで処理して、式(I)の最終生成物またはその塩を得るステップ。
【0101】
ステップf)によれば、反応は、例えばエタノール、メタノール、無水酢酸または酢酸などの様々な溶媒中で、トリメチルアミン、ピリジン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの種々の塩基を添加して、または添加せずに、45℃~120℃の範囲の種々の温度で数時間(典型的に2~24時間)混合物を撹拌して行なうことができる。
【0102】
ステップg)によれば、反応は、X-R3置換基に応じて様々なプロトコルを用いて行なうことができる。フェノールまたはその誘導体、例えばフェノール-SO3Hが導入される場合は、色素を、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの無機塩基の存在下、DMSO中で加熱することができる。一方で、クロロがフェニルまたはその誘導体によって置換される場合は、反応は、脱気水中で、または脱気水とメタノール、エタノールなどの共溶媒との混合物中で、酢酸PdまたはテトラキスPdなどのPd触媒存在下で(炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの塩基であってもよい)、より短時間加熱して行なうことができる。
【0103】
ステップh)によれば、ポリヒドロキシル化アミンと誘導体(X)の反応は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの溶媒中で、30分~数時間の範囲の適切な時間、室温で、例えばHATU、TBTU、HBTU、PyBOP、DCC、DSCおよびDCC-NHSから選択されるカップリング剤、およびTEA、DIPEA、NMMまたはピリジンなどの有機塩基による、カルボキシレート基の活性化によって行なうことができる。
【0104】
さらなる一実施形態では、本発明のプロセスに従って調製される式(I)の化合物は、公知の合成の条件に従って操作することによって式(I)の別の化合物に好適に転換することができ、以下があり得る転換の例である:
e)式(I)の化合物(式中、R2は-COOHであり、すなわち式(Ib)の化合物である)を、式(I)の対応する化合物に転換するステップ(式中、R2は-CONH
2であり、すなわち式(Ic)の化合物である):
【0105】
ステップe)によれば、式(Ib)のカルボン酸を式(Ic)の対応するカルボキサミドに転換することは、カルボキサミドの調製のために当技術分野で広く知られている様々な方法および実験的条件において達成することができる。一例として、カルボン酸を、最初に適切な活性化されたエステルにおいて転換し、次いで、好ましくは、HBTUなどのカップリング剤の存在下で、NH4Clなどのアンモニウム塩と反応させることができる。
【0106】
式(II)のコンジュゲート化合物の調製
式(I)のシアニン誘導体、またはその塩は、適切な標的化部分とコンジュゲートさせて(スペーサーの挿入があってもよい)、式(II)の対応する化合物を得ることができる。コンジュゲートは、当技術分野で知られている種々の手順に従って、例えば、化合物のカルボン酸基と標的化部分の求核残基の直接カップリングを介して(またはスペーサーがあってもよい)、または、カップリング前にカルボン酸基がより反応性の基、例えばNHSなどのエステルに変換される以前の活性化によって、達成することができる。
【0107】
一実施形態では、NHSエステルの形成を介したカルボン酸の活性化の場合、本発明は、式(XIa)の色素
または式(XIb)の色素
を用いて標的化部分を標識する方法を提供し、
式中、
Xは、直接結合または-O-であり;
Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキル、C
3-C
7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基であり;
R1は、-SO
3H、-COOH、-CONH
2および-COO-C
1-C
6アルキルから選択される基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキルであり;および
R3は、水素、-SO
3H、または、-COOHもしくは-CONH-Yによって置換された直鎖もしくは分岐のC
1-C
6アルキルであり、式中Yは、少なくとも2つのヒドロキシル基によって置換された直鎖または分岐のC
1-C
6アルキル、C
3-C
7シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される基であり、
本方法は、式(XIa)または(XIb)の色素を標的化部分と反応させるステップを含む。
【0108】
上述のプロセスに従って調製された式(I)または(II)の化合物が異性体の混合物として得られた場合、従来の技術を用いて式(I)または(II)の単一の対応する異性体にそれらを分離することは本発明の範囲内である。
【0109】
最終化合物は、従来の手順、例えばクロマトグラフィーおよび/または結晶化および塩形成を用いて単離および精製され得る。
【0110】
上記に定義した式(I)または(II)の化合物は、薬学的に許容できる塩に変換することができる。上記に定義した式(I)または(II)の化合物またはその薬学的に許容できる塩を、続いて、薬学的に許容できる担体または希釈剤によって製剤化して、医薬組成物を提供することができる。
【実施例】
【0111】
[実験的パート]
以下のパートに記載される本発明およびその特定の実施形態はほんの例示であり、本発明の限定とみなされない。それらは本発明をどのように実施することができるのかを示すものであり、本発明の範囲を限定せずに例示を意味する。
【0112】
材料および装置
反応に用いられるすべての化学物質および溶媒は試薬グレードであった。分析グレードの溶媒をクロマトグラフィー精製に用いた。試薬のほとんどは、別段の報告をしない限り、標的化部分を含み市販製品である(例えばパニツムマブ(Vectibix、Amgen;CASNr:339177-26-3);c(RGDfK)(Cyclo(Arg-Gly-Asp-D-Phe-Lys)、Bachem;CASNr:161552-03-0)。
【0113】
すべての合成化合物は、逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって精製し、UV-VIS検出器およびESI源を備えたLC/MS機器を用いた質量分析法によって特徴付けた。分析は、A相CH3COONH4 10mMおよびB相アセトニトリルの勾配を用いてWaters Atlantis dC18 5μm、4.6×150mmカラムで行なった。測定した質量/電荷比を各化合物についてリスト化する。
【0114】
デュアルビームUV-VIS分光光度計(Lambda 40、Perkin Elmer)を用いて本発明の化合物の吸光度(Abs)を決定した。発光/励起(Em/Ex)スペクトルおよび絶対蛍光量子収率(Φ)の測定を、F-3018積分球アクセサリを備えた分光蛍光計(FluoroLog-3 1IHR-320、Horiba Jobin Yvon)で行なった。測定は、種々の色素の最大吸光度で励起波長を用いて行ない、サンプルを450Wキセノン光源で励起した。検出は、光電子増倍管(PMT-NIR)冷却検出器またはTBX-04検出器によって行なった。0.1(光学密度)よりも低い吸光度を有するように色素溶液を注意深く調製して再吸収現象を最小限にした。
【0115】
インビボイメージングの実験は、IVIS Spectrum In Vivo Imaging System(Perkin Elmer Inc.)を用いて行なった。システムは、10狭帯域励起フィルター(30nm帯域幅)および18狭帯域励起フィルター(20nm帯域幅)(430~850nmの範囲)を備える。
【0116】
【0117】
個々のアミノ酸残基の略称は従来のどおりである:例えば、AspまたはDはアスパラギン酸であり、GlyまたはGはグリシンであり、ArgまたはRはアルギニンである。本明細書において言及されるアミノ酸は、別段の指示がない限りL異性体の立体配置であることが理解されるべきである(例えば、略称リストに示されるc(RGDfK)のPheまたは「f」は、D異性体の形態である)。
【0118】
[実施例1:化合物11の合成]
中間体(Va)の調製
5-カルボキシ-2,3,3-トリメチル-1-(4-スルホブチル)-3H-インドール-1-イウム(10.8g、31.9mmol)をN2雰囲気下で乾燥DMF(100mL)中に懸濁し:D-グルカミン(6.9g、38.2mmol)、DIPEA(11mL、63.7mmol)およびHATU(14.5g、38.2mmol)を添加した。溶液をRTで16時間攪拌し、次いで、冷却ジエチルエーテル(200mL)を添加した。混合物を濾過し、固形物を酢酸エチル(2×50mL)で洗浄した。固形物を水中に溶解し、0.1%酢酸アンモニウム/アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥を3回行なって、淡桃色固体(13.6g、80%収率)、HPLC純度(270nm):94%を得た。MS:[M+H]+504.2。
【0119】
中間体(VIIa)の調製
酢酸(8.65mL)を、無水酢酸(10mL)中の中間体(Va)(2.0g、3.98mmol)の懸濁液に添加した。混合物を45℃で加熱し、2-クロロ-1-ホルミル-3-(ヒドロキシメチレン)-1-シクロヘキセン(377.8mg、2.19mmol)を添加して黄色溶液を得た。温度を75℃まで上げて(溶液は緑色-褐色になった)、酢酸ナトリウム(408mg、4.97mmol)を添加して、直ちに緑色溶液を得た。溶液を100℃で3時間攪拌し、次いで、RTまで冷却して、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を水-アセトニトリルに溶解し、水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留して、緑色固体(2.5g、40%収率)を得た。HPLC純度(780nm):90%。MS:[M+H]+1560.5。
【0120】
中間体(VIIIa)の調製
中間体(VIIa)(2.5g、1.59mmol)を水/アセトニトリル1/1(20mL)に溶解し、1N HClを用いてpHを2.2から1.5に調整した。溶液を80℃で16時間撹拌した。粗生成物を、水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥して、緑色固体(1.09g、60%収率)を得た。HPLC純度(780nm)95%。MS:[M+H]+1140.7。
【0121】
化合物11の合成
脱気水(20mL)中の中間体(VIIIa)(1.09g、0.95mmol)の溶液に、4(2-カルボキシエチル)-ベンゼンボロン酸(332mg、1.71mmol)、Pd(PPh3)4(165mg、0.14mmol)および炭酸ナトリウム(181mg、1.71mmol)を添加した。混合物を80℃で16時間、窒素雰囲気下で撹拌した。次いで、RTで冷却後、2N HClでpHを6.5に調整した。粗混合物を水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥して、緑色固体(0.714g、60%収率)を得た。HPLC純度(780nm):99%。MS:[M+H]+1253.5。
【0122】
[実施例2:化合物12の合成]
実施例1で調製した化合物11(56mg、0.0434mmol)を乾燥DMSO(5mL)中に窒素雰囲気下で懸濁した。NMM(19μL、0.174mmol)、HATU(66mg、0.174mmol)およびD-グルカミン(39mg、0.217mmol)を添加した。RTで2時間攪拌後、混合反応物を冷却酢酸エチル(30mL)中に沈殿させ、緑色固体を水に溶解して、0.1%酢酸アンモニウム-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥を3回行なって、緑色固体をアンモニウム塩として得た(69.88mg)。アンモニウム対イオンを除去するために、固形物を水に溶解し、C18カートリッジ上にチャージし、水(2CV)、0.1%HCOOH(2CV)、水(5CV)で洗浄し、水/アセトニトリル1/1で溶出させた。溶媒を真空下で蒸留し、凍結乾燥させて、緑色固体(37mg、60%収率)を得た。HPLC純度(780nm):100%。MS:[M+H]+1419.4。
【0123】
[実施例3:化合物13の合成]
中間体(VIb)の調製
乾燥した丸底フラスコにおいて、2,3,3-トリメチル-3H-インドール-5-カルボン酸(711mg、3.5mmol)を窒素雰囲気下で乾燥DMF(4mL)中に可溶化し、次いで、DIPEA(380μL、4.90mmol)を添加した。RTで30分の撹拌後、乾燥DMF(2mL)中のTBTU(603mg、4.20mmol)の溶液を添加した。RTで1時間の撹拌後、乾燥DMF(2mL)中のD-グルカミン(312mg、3.85mmol)の懸濁液を添加した。一晩後、反応は完了していなかったので、同量のTBTU、DIPEAおよびD-グルカミンを添加し、さらに2時間撹拌した。混合物を真空下で乾燥させ、水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムで精製した。純生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥して、白褐色粉末を得た(888.2mg、70%収率)。HPLC純度(270nm)93%純度、MS:[M+H]+502.57。
【0124】
無水酢酸(3mL)およびピリジン(0.5mL)をこの中間体(888.2mg、2.42mmol)に添加して、時間中に徐々に可溶化する懸濁液を得た。混合物をRTで4時間、窒素雰囲気中に攪拌下で維持した。溶液を真空下で濃縮し、水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムで精製した。純粋な生成物を含む画分を回収し、真空下で濃縮し、凍結乾燥して、白褐色固体を得た(861.4mg、62%収率)。HPLC純度(270nm)97.5%、MS:[M+H]+204。
【0125】
丸底フラスコにおいて、このようにして得られた生成物(1.103g、1.91mmol)および1-ブロモヘキサン酸(933mg、4.77mmol)を、1,2-ジクロロベンゼン(6mL)に可溶化した。混合物を窒素雰囲気下で6時間、130℃で加熱し、次いで、他の1-ブロモヘキサン酸(933mg、4.77mmol)を添加し、反応物を同一の条件下で一晩維持した。粗生成物をジエチルエーテルで洗浄し、溶媒を静かに移し、固形物をアセトニトリルに溶解して、水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムで精製した。生成物を含む画分を回収し、真空中で濃縮して、赤色油状物を得た(861.4mg、62%収率)。HPLC純度(270nm)97.5%、MS:[M+H]+691.0。
【0126】
中間体(VIIb)の調製
乾燥した丸底フラスコにおいて、実施例1のとおりに調製した中間体(Va)(1.170g、2.33mmol)、および(VIb)(1.79g、2.33mmol)を無水酢酸(20mL)および酢酸(5mL)に懸濁した。混合物を、2つの粉末が完全に可溶化するまで45℃で加熱した。次いで、2-クロロ-3-(ヒドロキシメチレン)-1-シクロヘキセン-1-カルボキサルデヒド(430mg、2.49mmol)を添加し、混合物を50℃まで加熱した。酢酸カリウム(237mg、2.89mmol)を添加し、混合物を100℃で2時間加熱した。溶媒を真空下で除去し、粗製緑色固体を、水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムで精製した。生成物を含む画分を回収し、真空中で濃縮し、凍結乾燥して、緑色粉末を得た(1.221g、35%収率)。HPLC純度(780nm)72%、MS:[M+H]+1540.6。
【0127】
中間体(VIIIb)の調製
中間体(VIIb)(701mg、0.33mmol)をアセトニトリル(3mL)に可溶化し、水(15mL)を添加した。溶液を1N HClでpH1.6に酸性化し、80℃で4時間加熱し、次いで、55℃で一晩加熱した。有機溶媒を減圧下で除去し、水溶液を、水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムで精製した。生成物を含む画分を回収し、真空下で濃縮し、凍結乾燥して、緑色粉末を得た(179mg、50%収率)。HPLC純度(780nm)95%、MS:[M+H]+1120.3。
【0128】
化合物13の合成
乾燥した丸底フラスコにおいて、中間体(VIIIb)(115mg、1.03mmol)を脱気水(3mL)に可溶化し、次いで、フェニルボロン酸(22.7mg、1.85mmol)、炭酸ナトリウム(19.6mg、1.85mmol)およびパラジウムテトラキス(17.8mg、0.15mmol)を添加した。混合物を窒素雰囲気下で2時間、80℃で加熱した。溶液を0.1N HClでpH7.15にして、水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムで精製した。生成物を含む画分を回収し、真空下で濃縮し、凍結乾燥して、緑色粉末を得た(99mg、83%収率)。HPLC純度(780nm)98%、MS:[M+H]+1162.2。
【0129】
[実施例4:化合物14の合成]
実施例2のとおりに調製した中間体(VIIIb)(120mg、0.107mmol)の乾燥DMSO(5mL)中の溶液を、フェノール(101mg、1.07mmol)および無水炭酸カリウム(148mg、1.07mmol)の乾燥DMSO(7mL)中の懸濁液に窒素下で滴下した。混合物を50℃で4時間撹拌した。RTに冷却後、冷却ジエチルエーテル(30mL)を添加し、固形物を濾過し、冷却ジエチルエーテルで2回洗浄した。それを水に溶解させ、0.5N HClを用いてpHを11.5から6に調整した。粗固形物を0.1%酢酸アンモニウム-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留した。アンモニウム対イオンを除去するために、pHを1.6に調整し、生成物をC18シリカカートリッジ上にチャージし、水で洗浄し、水-アセトニトリル1:1で溶出させた。溶媒を真空下で蒸留し、水溶液を凍結乾燥して、緑色固体(42mg、33%収率)を得た。HPLC純度(780nm)99.3%。MS:[M+H]+1178.3。
【0130】
[実施例5:化合物15の合成]
実施例2のとおりに調製した中間体(VIIIb)(20mg、0.018mmol)の乾燥DMSO(3mL)中の溶液を、4-ヒドロキシベンゼンナトリウムスルホネート(35mg、0.18mmol)および無水炭酸カリウム(25mg、0.18mmol)の乾燥DMSO(5mL)中の懸濁液に窒素雰囲気下で滴下した。混合物を50℃で4日間攪拌した。冷却ジエチルエーテル(30mL)を褐色混合物に添加し、固形物を濾過し、冷却ジエチルエーテルで2回洗浄した。固形物を水に溶解し、0.5N HClでpHを11.5から6に調整した。溶液は再度緑色になった。粗生成物を水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥して、緑色固体(15mg、65%収率)を得た。HPLC純度(780nm)100%。MS:[M+H]+1257.3。
【0131】
[実施例6:化合物16の合成]
実施例1のとおりに調製した中間体(VIIIa)(30mg、0.026mmol)の乾燥DMSO(3mL)中の溶液を、4-ヒドロキシベンゼンナトリウムスルホネート(14mg、0.08mmol)および無水炭酸カリウム(10mg、0.08mmol)の乾燥DMSO(3mL)中の懸濁液に窒素雰囲気下で滴下した。混合物を80℃で6時間撹拌した。冷却酢酸エチル(20mL)を褐色混合物に添加し、固形物を濾過し、水に溶解し、0.5N HClでpHを11.5から3に調整した。溶液は再度緑色になった。粗生成物を水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥して、緑色固体(14mg、42%収率)を得た。HPLC純度(780nm)97.8%。MS:[M+H]+1277.3。
【0132】
[実施例7:化合物17の合成]
乾燥した丸底フラスコにおいて、実施例1のとおりに調製した中間体(VIIIa)(9mg、0.008mmol)を脱気水(2mL)に可溶化し、次いで、フェニルボロン酸(2.2mg、0.018mmol)および酢酸パラジウム(0.15mg、0.0006mmol)を添加した。混合物を窒素雰囲気下で2時間還流した。溶液を水-アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムで精製した。生成物を含む画分を回収し、真空下で濃縮し、凍結乾燥して、緑色粉末を得た(7mg、75%収率)。HPLC純度(780nm)98%、MS:[M+H]+1184.3。
【0133】
[実施例8:化合物19の合成]
中間体(IXa)の調製
化合物(IIIa)(180mg、0.53mmol)、N-[(3-(アニリノメチレン)-2-クロロ-1-シクロヘキセン-1-イル)メチレン]アニリン一塩酸塩(101mg、0.265mmol)および酢酸ナトリウム(109mg、1.32mmol)を無水エタノール(55mL)に溶解し、溶液を26時間還流した。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を、水/アセトニトリルの勾配を用いてシリカC18カラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥を3回行なって、緑色固体(154mg、72%収率)を得た。HPLC純度(780nm)97%。MS:[M+H]+815.2。
【0134】
中間体(Xa)の調製
中間体(IXa)(40mg、0.05mmol)の乾燥DMSO(4mL)中の溶液を、フェノール(45mg、0.49mmol)および無水炭酸カリウム(68mg、0.49mmol)の乾燥DMSO(8mL)中の懸濁液に窒素雰囲気下で滴下した。混合物を50℃で8時間撹拌した。RTに冷却後、冷却ジエチルエーテル(30mL)を添加し、固形物を濾過し、冷却ジエチルエーテルで2回洗浄した。それを水に溶解し、0.5N HClでpHを12から6に調整した。粗固形物を、水/アセトニトリル勾配を用いてプレパックC18シリカカラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留した。溶媒を減圧下で蒸留し、水溶液を凍結乾燥して、緑色固体(26mg、61%収率)を得た。HPLC純度(780nm)98%。MS:[M+H]+872.1
【0135】
化合物19の合成
TBTU(5.1mg、0.015mmol)を、中間体(Xa)(3.3mg、0.0038mmol)およびDIPEA(6μL、0.031mmol)の無水DMF(5mL)中の溶液に添加した。溶液をRTで30分攪拌し、次いで、セリノール(1mg、0.011mmol)を添加し、溶液を90分攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を、水-アセトニトリルの勾配により溶出するシリカC18カラムでフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、減圧下で濃縮し、凍結乾燥して、濃緑色固体(2mg、53%収率)を得た。HPLC純度(780nm)98.5%。MS:[M+H]+1019.1。
【0136】
同様に、化合物18、20、21、22および23を同様の手順に従うが、異なる水酸化アミンを用い(Y基として)、または、フェノールの代わりにフェニルを有する足場から開始して、上述のように調製した。
【0137】
[実施例9:化合物1の合成]
化合物11(5mg、0.004mmol)を乾燥DMF(3mL)中に不活性雰囲気下で溶解した。DIPEA(6.8μL、0.04mmol)およびTSTU(12mg、0.04mmol)を添加し、溶液をRTで48時間撹拌した。次いで、冷却ジエチルエーテル(20mL)を添加し、沈殿物を濾過し、冷却ジエチルエーテルで2回洗浄して、緑色固体を得た。HPLC純度(780nm):90%。MS:[M+H]+1351。
【0138】
NHSエステルを、1mLのホウ酸バッファー(pH9)中のc(RGDfK)(2.7mg、0.004mmol)の溶液に溶解した。反応物をRTで24時間攪拌し、次いで、生成物を冷却ジエチルエーテル中に沈殿させ、冷却ジエチルエーテルで2回洗浄して、緑色固体を得た。粗固形物を、0.1%酢酸アンモニウム/アセトニトリルの線形勾配を用いてKromasil C8カラムでHPLCクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥を3回行なって、緑色固体(3.9mg、50%収率)を得た。HPLC純度(780nm):97.6%。MS:[M+H]+1840.6。
【0139】
[実施例10:化合物3の合成]
[直接カップリングを介した手順A]
乾燥した丸底フラスコにおいて、化合物13(2mg、0.0017mmol)を、窒素流下RTでDIPEA(0.6μl、0.003mmol)を含むDMF(1mL)中に可溶化した。RTで30分の撹拌後、乾燥DMF(1mL)中のTBTU(0.6mg、0.002mmol)の溶液を添加した。RTで1時間の撹拌後、乾燥DMF(1mL)中のc(RGDfK)(1.4mg、0.002mmol)の溶液を、撹拌溶液中に滴下した。反応物をRTで一晩攪拌し、次いで、溶媒を真空下で除去し、粗生成物を、0.1%酢酸アンモニウム-アセトニトリル勾配を用いて分析用HPLC C18シリカカラムで精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で濃縮し、凍結乾燥を3回行なって、緑色粉末を得た(0.7mg、23%収率)。HPLC純度(780nm)98%、MS:[M/2]+872.8。
【0140】
[NHSエステルを介した手順B]
乾燥した丸底フラスコにおいて、化合物13(5mg、0.0043mmol)を、DIPEA(2.2μl、0.0129mmol)を含む乾燥DMF(2mL)中に可溶化し、乾燥DMF(1mL)中のTSTU(3.78mg、.0129mmol)の溶液を、窒素流の下で室温にて添加した。緑色溶液をRTで一晩攪拌し、次いで、冷却ジエチルエーテルの添加によって生成物を沈殿させた。固形物を遠心分離して、ジエチルエーテルで2回洗浄し、さらに精製せずに以下のステップにおいて用いた。NHSエステルを、ホウ酸バッファー(pH9)(1mL)中のc(RGDfK)(2.2mg、0.0043mmol)の溶液に溶解し、溶液を室温で一晩攪拌した。次いで、0.1N HClを用いてpHを7に調整し、粗生成物を、0.1%酢酸アンモニウム-アセトニトリル勾配を用いて分析用HPLCC18シリカカラムで精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で濃縮し、凍結乾燥を3回行なって、緑色粉末を得た(3.9mg、52%収率)。HPLC純度(780nm)97.7%、MS:[M/2]+872.8。
【0141】
[実施例11:化合物2の合成]
化合物15(6mg、0.0048mmol)を乾燥DMF(6mL)中に懸濁し、次いで、NMM(2.6μL、0.024mmol)およびTSTU(7.2mg、0.024mmol)を添加した。溶液をRTで16時間攪拌した。冷却ジエチルエーテル(30mL)を添加し、沈殿物を濾過し、冷却ジエチルエーテルで2回洗浄した。緑色固体をさらに精製することなく以下のステップにおいて用いた。HPLC(780nm):88%、MS:[M+H]+1354.3。
【0142】
NHSエステルをホウ酸バッファー(pH9)(1mL)に溶解し、ホウ酸バッファー(pH9)(1mL)中のc(RGDfK)(3.4mg、0.0048mmol)の溶液を添加した。溶液をRTで5時間攪拌し、次いで、0.1N HClを用いてpHを6.5に調整し、粗生成物を、0.1%酢酸アンモニウム-アセトニトリルの線形勾配を用いてフェニル-C18カラムでHPLCクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥を3回行なって、緑色固体(6.4mg、71%収率)を得た。HPLC純度(780nm)99.6%。MS:[M+H]+1845.5。
【0143】
[実施例12:化合物4の合成]
化合物14(12mg、0.0102mmol)を乾燥DMF(1mL)に窒素雰囲気下で溶解した。DIPEA(4.8μL、0.0286mmol)およびTBTU(4.6mg、0.0143mmol)を添加し、RTで1時間の撹拌後に、c(RGDfK)(6.15mg、0.0102mmol)を添加した。反応物をRTで16時間攪拌し、次いで、冷却ジエチルエーテル(25mL)を添加し、沈殿物を濾過し、冷却ジエチルエーテルで2回洗浄した。粗固形物を水に溶解し、0.1%酢酸アンモニウム-アセトニトリルの線形勾配を用いてフェニル-C18カラムでHPLCクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、真空下で蒸留し、凍結乾燥を3回行なって、緑色固体を得た(12.3mg、67%収率)。HPLC純度(780nm)98.3%、MS:[M+H]+1763.6。
【0144】
[実施例13:化合物5の合成]
モノクローナル抗体EGFRリガンドパニツムマブ(6mg)をPBS中に5mg/mLまで希釈し、120μLの1.0Mリン酸カリウム(pH9)を添加することによってpHを調整した。化合物15-NHSエステル(実施例11において化合物2について記載したとおりに調製した)を10mg/mlの濃度でDMSOに溶解し;次いで、色素および抗体を2.5:1のモル比で直ちに混合し、室温で暗所に3時間維持した。3時間後、コンジュゲート反応混合物をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡されたZeba Spinカラム上に層化し、1500gで2分間遠心分離し、コンジュゲートを遊離色素から分離した。0.22μmポリエーテルスルホン(PES)膜を通して濾過した後、PBS中のコンジュゲート化パニツムマブ溶液(pH7.4)をSE-HPLC、RP-HPLC、UV/VIS分光光度法によって分析して、濃度および純度を決定した。モルのコンジュゲート比(抗体あたりの結合した色素分子)は1.53であった。
【0145】
[実施例14:化合物6の合成]
小分子CAIXリガンド4a(Wichert et al.,Nat Chem 2015,7,241-249に記載)を、開示されている手順に従って調製し、化合物15にコンジュゲートした。11mgの化合物15(8.7μmol)を1mLのDMF中に溶解し、次いで、4.5mgのPyBOP(8.7μmol)および6μLのDIPEA(35.0μmol)を連続的な撹拌下で添加した。20分後、8mgの小分子4a(13.0μmol)を1mLのDMF中に溶解し、反応混合物に添加して、これをさらに30分間室温で攪拌した。分取HPLCによる精製を50%の収率で行なった。単離された純生成物を、Waters Atlantis dC18カラム(μm、4.6×150mm)を用いてHPLC-UV-VIS-MS-ESI(+)によって特徴付けた。HPLC純度(779nm):99%;MS:[M/2]+929.7。
【0146】
[実施例15:化合物7の合成]
小分子CAIXリガンド8a(Wichert et al.,Nat Chem 2015,7,241-249に記載)を、開示されている手順に従って調製し、化合物15にコンジュゲートした。9mgの化合物15(7.1μmol)を1mLのDMF中に溶解し、次いで、3.7mgのPyBOP(7.1μmol)および5μLのDIPEA(28.0μmol)を連続的な撹拌下で添加した。20分後、11mgの分子8a(11.0μmol)を1mLのDMF中に溶解し、反応混合物に添加して、これをさらに30分間RTで撹拌した。分取HPLCによる精製を50%の収率で行なった。単離された純生成物を、Waters Atlantis dC18カラム(μm、4.6x150mm)を用いてHPLC-UV-VIS-MS-ESI(+)によって特徴付けた。
HPLC純度(780nm):99%;MS:[M/2]+1157.8。
【0147】
[実施例16:化合物8の合成]
9.9mgの化合物15(7.9μmol)を3mLの乾燥DMF中に溶解し、次いで、2μLのNMM(18.2μmol)および7.11mgのTSTU(23.6μmol)を添加し、混合物をRTで2時間撹拌した。化合物15のNHSエステル(HPLC転換85.9%)を25mLの氷冷酢酸エチル中で沈殿させた。沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、N2流の下で乾燥させた。
【0148】
化合物15のNHSエステルを1mLの乾燥DMF中に溶解した。1mLのDMF中に5.74mgのEuK TFA塩(13.43μmol)を溶解することによって調製した溶液を滴下した。次いで、1mL DMF中の13.72μLのDIPEA(7.8μmol)の溶液を滴下した。溶液をN2雰囲気下、RTで一晩攪拌させた。生成物(HPLC転換84%)を25mLの氷冷ジエチルエーテル中に沈殿させ、水/アセトニトリル勾配を用いて溶出する自動化フラッシュクロマトグラフィーシステム(Combiflash Rf+)を備えるプレパック・シリカC18カラム(BIOTAGE(登録商標)SNAP ULTRA 26g)で精製した。所望の純生成物を含む画分を合わせて、真空下で濃縮し、凍結乾燥して、6.65mgの緑色固体を回収した(HPLC純度面積%:98.7%(785nm)および100%(254nm);[M-H]+1558.7)。化合物15からの収率は54.0%であった。
【0149】
[実施例17:化合物9の合成]
9.9mgの化合物15(7.9μmol)を3mLの乾燥DMF中に溶解した。2μLのNMM(18.2μmol)および7.11mgのTSTU(23.6μmol)を添加し、混合物をRTで2時間撹拌した。化合物15のNHSエステル(HPLC転換85.9%)を25mLの氷冷酢酸エチル中に沈殿させた、沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、N2流の下で乾燥させた。
【0150】
化合物15のNHSエステルを乾燥DMF(1mL)中に溶解した。Benesova et al.,J Nucl Med 2015,56:914-920に記載のとおりに調製したEuK-(3-(2-ナフチル)-アラニン)-トラネキサム酸TFA塩(7.23mg、0.00945mmol)のDMF(1mL)中の溶液を滴下した。次いで、DIPEA(6.86μL、0.039mmol)のDMF(1mL)中の溶液を滴下した。溶液を、N2雰囲気下で、RTで一晩攪拌させた。生成物(HPLC転換93%)を25mLの氷冷ジエチルエーテル中に沈殿させ、水/アセトニトリル勾配を用いて溶出する自動化フラッシュクロマトグラフィーシステム(Combiflash Rf+)を備えるプレパック・シリカC18カラム(BIOTAGE(登録商標)SNAP ULTRA 26g)で精製した。所望の純生成物を含む画分を合わせて、真空下で濃縮し、凍結乾燥して、4.25mgの緑色固体を回収した(HPLC純度面積%:99.6%(785nm)および98%(254nm);[M-H]+1894.6)。化合物15からの収率は28.0%であった。
【0151】
[実施例18:光学特性]
水性媒体(すなわち、水/PBS pH7.4)およびヒト血清の化学組成物および光学特性を模倣している臨床化学コントロール血清(Seronorm,Sero SA)において、本発明の化合物をそれらのインビトロでの光学特性の観点から特徴付けた。すべての色素または色素コンジュゲート溶液を新たに調製した。ICGおよびS0456を市販参照として用いた。
【0152】
特に、式(I)の代表的な化合物および式(II)のコンジュゲートの励起および発光の最大値および絶対蛍光量子収率(Φ)を表IIに示す。
【0153】
【0154】
本発明の化合物は、約760nm~810nmの範囲内に含まれる吸収最大値によって特徴付けられる。色素は、標的化部分にコンジュゲートした場合でさえも、近赤外領域における蛍光発光および高い蛍光量子収率を有する。概して、色素およびコンジュゲートは、ICGおよびS0456よりも高い蛍光量子収率を示す。
【0155】
[実施例19:ヒトアルブミン(HSA)の親和性]
本発明の化合物のヒトアルブミンに対する結合親和性の分析を行ない、結果を参照としてのICGおよびS0456と比較した。ヒト血清アルブミン(HSA;Sigma Aldrich,A9511)への結合親和性を、化合物の結合親和性のレベルに従って2つの方法を用いて測定した。
【0156】
第1の方法は、HSAと強く相互作用する化合物に最適であり、HSAを含む溶液における色素のインキュベーション後の吸光度スペクトルピークのシフトの分析に基づく。簡潔には、測定前に、リン酸バッファー中で5分間、25℃で分光光度計において、サンプルを固定濃度(1μM)でHSA希釈物(1×10-6~4×10-4M)とともにインキュベートした。測定は、シフトしたピークの最大吸光度波長で行なった。
【0157】
第2の方法は、HSAに対して低親和性を有する化合物に適切であり、限外濾過後の色素および様々な濃度のHSAを含む溶液の吸光度の変動の測定に基づく。簡潔には、リン酸バッファー中で、各化合物を固定濃度(2μM)でHSA希釈物(1×10-6~4×10-4M)とともにインキュベートした。サンプルをMicrocon装置(10kDa MWCO,Amicon Ultra-0.5 Centrifugal Filter Unit、Ultracel-10メンブレン(Millipore)を備える)において遠心分離し(10,000g、25℃で30分間)、濾液の吸光度測定を、フルオロフォアの最大吸光度波長で分光光度計を用いて得た。
【0158】
両方の方法について、親和定数(K
A、M
-1)を、以下の式を用いて生データをフィッテイングすることによって計算した:
式中、
ΔA/b=測定した吸光度(b=1cm)
K
RL=回帰分析によって計算したK
A(カーブフィッティング)
Δε・回帰分析によって計算したRt(カーブフィッティング)
[L]=アルブミン濃度
【0159】
第1の方法では、ΔA/bは、各サンプルについて測定した吸光度に相当し、一方で第2の方法では、ΔA/bは、互いのサンプルの吸光度に対してコントロールサンプル(HSAなしの色素)の吸光度を差し引くことによって得られる。
【0160】
両方の方法は、第1の方法(HSA KA=215,000M-1)および第2の方法(HSA KA=216,000M-1)を用いて市販シアニン色素IRDye 800CWカルボキシレート(LI-COR Inc.,Lincoln,USA)に対して行なった並行実験によって示されるように、同等の結果を提供することが示された。しかしながら、親和定数の測定は、化合物の親和性レベルの関数として適切な方法を用いた場合に、より正確であった。
【0161】
2つの方法の一方を用いて本発明の代表的な化合物について測定した結合親和性の結果を表IIIに報告し、参照化合物としてのシアニン色素IRDye 800CWカルボキシレート色素について得られた結果と比較する。
【0162】
【0163】
表IIIに示されるように、本発明の色素および色素-コンジュゲートの両方とも、公知の近赤外色素ICGおよびS0456と比較してヒトアルブミンに対する著しく低い結合親和性を示し、親和定数は1桁または2桁低かった。
【0164】
この有利な特徴は、標的化部分と色素のコンジュゲートはヒトアルブミンに対する親和性に影響しないので、本発明の色素において標的化部分とコンジュゲートした場合でさえも保存されている(例えば、化合物2および4)。
【0165】
[実施例20:受容体結合親和性]
式(II)のコンジュゲートの特異的な受容体に対する結合親和性を決定して、分子ベクターの標的化有効性が本発明の色素による標識後に保存されるかどうか評価した。
【0166】
小分子およびペプチド/ペプチド模倣薬のコンジュゲートの例として、代表的なインテグリン-結合コンジュゲートの受容体親和性を、それらのIC50(半数最大阻害濃度)を以前に報告されたように(Kapp et al.,Sci.Rep.2017,7,39805)酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて計算することによって評価した。
【0167】
簡潔には、96ウェルELISAプレートを、カーボネートバッファー(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.6)中の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質ビトロネクチンによって4℃で一晩コーティングした。次いで、各ウェルをPBS-T-バッファー(リン酸緩衝生理食塩水/Tween20、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、2mM KH2PO4、0.01%Tween20、pH7.4)で洗浄し、TS-B-バッファー(トリス-塩類/BSAバッファー;20mMトリス-HCl、150mM NaCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、1mM MnCl2、pH7.5、1%BSA)を用いてRTで1時間ブロッキングした。その間に、化合物および内部標準の希釈系列を余分プレートにおいて調製した。アッセイプレートをPBS-Tで3回洗浄後、50μLの希釈系列を各ウェルに移した。TS-B-バッファー中のヒト組み換えインテグリンαvβ3(R&D Systems、1μg/mL)の溶液50μLをウェルに移し、1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tバッファーで3回洗浄し、次いで、一次抗体抗-αvβ3をプレートに添加した。インキュベーションおよびPBS-Tを用いた3回の洗浄後、二次抗-IgGペルオキシダーゼ標識抗体をプレートに添加し、1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tで3回洗浄後、プレートを3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)の迅速な添加によって展開し、暗所で5分間インキュベートした。3M H2SO4の添加により反応を止め、プレートリーダー(Victor3,Perkin Elmer)を用いて450nmで吸光度を測定した。
【0168】
代表的な化合物1、2および4のIC50をデュプリケートで試験し、生じた阻害曲線を、Windows用GraphPad Prismバージョン4.0(GraphPad Software)を用いて分析した。変曲点はIC50値を定義する。すべての実験は、内部標準としてc(RGDfK)を用いて行なった。
【0169】
c(RGDfK)に結合された試験された分子プローブは、表IVに報告するように、ヒトαvβ3受容体に対する同等の親和性、および非コンジュゲート参照ペプチド模倣薬c(RGDfK)に対する同様の親和性を示した。
【0170】
【0171】
[実施例21:細胞取り込み]
ヒトメラノーマ細胞株WM-266-4(ATCC、CRL-1676)をインビトロモデルとして用いて、代表的なインテグリン結合化合物1、2および4の細胞取り込みを評価した。(これらの細胞の膜上のインテグリン受容体、特にαvβ3の高発現に基づく(Capasso et al.,PlosOne 2014))。
【0172】
約70%コンフルエンスの接着細胞を、化合物1または3(1μM)とともに37°C(5%CO2)で2時間、10%FBS、2mMグルタミン、100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンで補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の存在下でインキュベートした。PBSを用いた2回の洗浄ステップ後、PBS中の0.1mM EDTAを用いて細胞を引き離し、遠心分離し、フローサイトメトリー実験のためにバッファー(PBS、0.5% BSA、0.1% NaN3)中に懸濁した。蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いて、細胞取り込みの尺度として細胞内の蛍光シグナルを検出した。サンプルをアルゴンレーザーで励起し、670nmロングパスフィルターを用いて発光を検出した。蛍光強度の値を、機器ソフトウェアによって生成されたヒストグラム統計から取得した。
【0173】
受容体が介在する細胞取り込みの特異性を評価するために、競合物として高濃度(100μM)の非標識分子ベクターc(RGDfK)の存在下で、細胞を分子プローブとインキュベートすることによって実験を行なった。残存する内在化を、競合物の不存在下での蛍光強度の値を100%とすることによって計算した。
【0174】
さらに、細胞取り込みに対する生物学的流体の効果を評価するために、男性AB血漿由来のヒト血清(Sigma Aldrich,H4522)の存在下で本発明の化合物と細胞をインキュベートする並行実験を行なった。残存する内在化を、血清の不存在下での蛍光強度の値を100%とすることによって計算した。そのような取り込み評価はまた、目的組織および特定の標的化受容体に到達する前に、血管区画を通って拡散するときに血漿タンパク質によって隔離される化合物のパーセンテージの示度を表わす。表Vにおいて、本発明の代表的な化合物2および4の細胞取り込み能力を示す。
【0175】
本化合物は、ヒト血清の存在下で高い細胞取り込みを示した。したがって、本化合物について、細胞における内在化が受容体によって媒介され、ヒト血清タンパク質、特にアルブミンに対する結合によってほんのわずかにしか影響を受けないことが観察され(残存取り込みの約10~20%)、本化合物のヒトアルブミンに対する中程度~低い結合親和性が確認される(実施例10に示されるように、KA=約1~6×103M-1)。さらに、本発明の化合物を、参照化合物ICG-RGD(Capozza et al.,Photoacoustic 2018,11,36-45)およびICG-RGDと同じ方法で調製されたICG-c(RGDfK)と比較した。これらの結果は、ヒト血清の存在下でインキュベートした場合に、本発明の化合物が、驚くべきことに、当技術分野で知られている同様の化合物と比べて、細胞内在化におけるより高い有効性を付与することが見いだされたことを示している。
【0176】
【0177】
顕著なことに、細胞表面上の受容体と本化合物の相互作用も、細胞内の受容体-プローブ複合体の内在化も、コンジュゲート色素構造によって、および特に、化合物の位置Yにおける非常に親水性かつ高度の立体障害を有する部分の存在によって、損なわれなかった。したがって、コンジュゲート色素上の親水性部分の存在は、親水性部分のないコンジュゲートを隔離して結合効率に負の影響を及ぼす血漿タンパク質の存在下でさえも、非常に効率的かつ特異的な受容体結合およびプローブ内在化を与える。
【0178】
[実施例22:動物モデルにおける腫瘍取り込み]
ヒト膠芽腫
腫瘍取り込み実験を、インテグリン受容体、特にαvβ3を過剰発現するヒト膠芽腫(皮下)の動物モデルにおいて行なった。簡潔には、ヒト膠芽腫U87MG細胞(ATCC、HTB-14)を、10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミン、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンで補充されたイーグル最小必須培地(EMEM)中で培養した。雄Balb/c nu/nuマウス、4~6週齢(Charles River Laboratories)に、0.1mLのEMEM中に懸濁した約1000万細胞を皮下移植した(右脇腹)。飼料および水を適宜与えてケージあたり4匹のマウスを収容した。動物に、順化期間(5日)の最後までVRF1(P)滅菌飼料(Special Diets Services Ltd)を与えた。次いで、自家蛍光を減少させる特殊な食物であるAIN-76a齧歯類飼料(照射)(Research Diets)を、実験の終わりまで用いた。腫瘍増殖を、300~600mm3の標的サイズ(細胞移植の3~4週間後)まで、カリパスを用いて縦断的評価(longitudinal assessment)によってモニターした。イメージング実験を、前臨床光学システムIVIS Spectrum(Perkin Elmer)を用いて行なった。
【0179】
インビボイメージングをガス麻酔下で行なった(酸素中のSevofluorane6~8%)。動物に化合物を静脈内注入して(側尾静脈)、投与の24時間後に安楽死させた。関心領域(ROI)を摘出腫瘍および健常筋組織に設定し、シグナル強度を評価した(平均放射効率として表される)。次いで、腫瘍および筋肉(バックグラウンド組織)における蛍光シグナル間の比を計算して、コントラストを評価した。
【0180】
代表的な化合物1および4の腫瘍-対-バックグラウンド比を表VIに示す。これらの結果は、著しく高い腫瘍取り込みを示し、腫瘍特異的な蓄積を示唆している。
【0181】
【0182】
ヒト頭頚部がん
腫瘍取り込み実験を、特にインテグリン受容体αvβ6を過剰発現するDetroit-562細胞を用いて、ヒト頭頚部がん(同所性)の動物モデルにおいて行なった。簡潔には、ヒト咽頭がん腫細胞Detroit-562(ATCC、CCL-138)を、10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミン、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンで補充されたイーグル最小必須培地(EMEM)中で培養した。雄Balb/c nu/nuマウス、4~6週齢(Charles River Laboratories)に、0.03mLのdi EMEM中に懸濁した約250万細胞を、舌の前部に同所性移植した。飼料および水を適宜与えてケージあたり4匹のマウスを収容した。動物に、順化期間(5日)の最後までVRF1(P)滅菌飼料(Special Diets Services Ltd)を与えた。次いで、自家蛍光を減少させる特殊な食物であるAIN-76a齧歯類飼料(照射)(Research Diets)を、実験の終わりまで用いた。腫瘍増殖を、10~20mm3の標的サイズ(細胞移植の7~10日後)まで、カリパスを用いて縦断的評価によってモニターした。
【0183】
イメージング実験を、前臨床光学システムIVIS Spectrum(Perkin Elmer)を用いて行なった。動物に3nmol/マウスで静脈内注入して(側尾静脈)、投与後24時間に、麻酔の過量投与によって安楽死させて、エクスビボでの光学イメージングのために舌を摘出した。関心領域(ROI)を舌の前部(腫瘍細胞移植の部位)および後部領域(健常組織)に設定し、腫瘍-対-バックグラウンド比を得た。
【0184】
化合物1および2の投与の24時間後に行なったエクスビボのイメージングにより、腫瘍細胞を移植した舌部位において明領域が明らかとなった。それとは異なり、舌の後方の健常領域は低いシグナルを示し、健常組織における低い保持が示唆された。本発明の化合物の投与は、表VIIに示されるように、適度の(moderate)(TBR約2)腫瘍-対-バックグラウンドのコントラストで腫瘍の位置を解明する。
【0185】
【0186】
ヒト結腸直腸がん
腫瘍取り込み実験を、低レベルのインテグリン受容体を発現するHT-29細胞を用いて、ヒト結腸直腸がん(皮下)の動物モデルにおいて行なった。簡潔には、ヒト結腸直腸腺がん細胞HT-29(ATCC、HTB-38)を、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンで補充されたMcCoy’s 5A培地中で培養した。雄無胸腺nudeマウス、4~6週齢(Envigo)に、0.1mLの血清フリー培地中に懸濁した約500万細胞を皮下移植した(右脇腹)。飼料および水を適宜与えてケージあたり4匹のマウスを収容した。動物に、順化期間(5日)の最後までVRF1(P)滅菌飼料(Special Diets Services Ltd)を与えた。次いで、自家蛍光を減少させる特殊な食物であるAIN-76a齧歯類飼料(照射)(Research Diets)を、実験の終わりまで用いた。腫瘍増殖を、300~600mm3の標的サイズ(細胞移植の3~4週後)まで、カリパスを用いて縦断的評価によってモニターした。イメージング実験を、前臨床光学システムIVIS Spectrum(Perkin Elmer)を用いて行なった。
【0187】
インビボイメージングをガス麻酔下で行なった(酸素中のSevofluorane6~8%)。動物に目的の化合物を静脈内注入して(側尾静脈)、投与の24時間後に安楽死させた。関心領域(ROI)を摘出腫瘍および健常参照組織(筋肉)に設定し、シグナル強度を評価した(平均放射効率として表される)。次いで、腫瘍および筋肉(バックグラウンド組織)における蛍光シグナル間の比を計算して、腫瘍-対-バックグラウンド比(TBR)を評価した。
【0188】
表VIIIに示されるように、代表的な化合物1および2は、適度の(moderate)腫瘍-対-バックグラウンド比(TBR約4)を示し、健常バックグラウンドから腫瘍組織を明確に線引きするのを可能にした。
【0189】
【0190】
【国際調査報告】