(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ナノ微粒子組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/277 20060101AFI20230711BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230711BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230711BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230711BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230711BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230711BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230711BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61K31/277
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/02
A61K9/16
A61K47/10
A61K47/28
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568381
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2021065757
(87)【国際公開番号】W WO2021259669
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522435850
【氏名又は名称】アルジアックス ファーマシューティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハッセ,ビルギット
(72)【発明者】
【氏名】クープマンズ,グイド
(72)【発明者】
【氏名】リービッヒ,レナ
(72)【発明者】
【氏名】ボージャーシャウゼン,アンスガー
(72)【発明者】
【氏名】クナイゼル,サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイジドーン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】リッシャー,マシアス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF36
4C076GG05
4C076GG09
4C076GG12
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA081
4C084ZA211
4C084ZB111
4C084ZC351
4C206AA01
4C206HA12
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA61
4C206MA72
4C206NA10
4C206ZA02
4C206ZA08
4C206ZA21
(57)【要約】
本開示は、(a)少なくとも1種の有効成分を含む粒子であって、該粒子が、レーザ光散乱法による測定で、約70nm~約220nmの範囲内である有効平均粒子径を有し、「約2000nm未満の有効平均粒子径」が、重量(体積基準)で、前記活性剤粒子の少なくとも50%が該有効平均粒子径未満の粒子径を有することを意味する、粒子と;(b)少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー性安定化剤と、を含むナノ微粒子組成物であって、該組成物が(aa)約2000nm未満の有効平均粒子径を有する、(Z)-2-シアノ-3-シクロプロピル-3-ヒドロキシ-N-(3-メチル-4-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパ-2-エナミド、(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ヘプタ-2-エン-6-イナミド、2-シアノ-3-シクロプロピル-N-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシアクリルアミド、それらの誘導体、それらの塩およびそれらのプロドラッグからなる群から選択される少なくとも1種の有効成分の粒子と;(bb)少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー安定化剤と、を含む、ナノ微粒子組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の有効成分を含む粒子であって、前記粒子が、レーザ光散乱法による測定で、約70nm~約220nmの範囲内である有効平均粒子径を有し、「約2000nm未満の有効平均粒子径」が、重量(体積基準)で、前記活性剤粒子の少なくとも50%が前記有効平均粒子径未満の粒子径を有することを意味する、粒子と;
(b)少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー性安定化剤と、
を含むナノ微粒子組成物であって、前記組成物が
(aa)約2000nm未満の有効平均粒子径を有する、(Z)-2-シアノ-3-シクロプロピル-3-ヒドロキシ-N-(3-メチル-4-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパ-2-エナミド、(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ヘプタ-2-エン-6-イナミド、2-シアノ-3-シクロプロピル-N-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシアクリルアミド、それらの誘導体、それらの塩およびそれらのプロドラッグからなる群から選択される少なくとも1種の有効成分の粒子と;
(bb)少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー安定化剤と、
を含む、ナノ微粒子組成物。
【請求項2】
前記有効平均粒子径が、約90nm~約210nmの範囲内、より好ましくは約100nm~約200nmの範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の有効成分が、他の賦形剤を含まずに前記有効成分と前記少なくとも1種の表面安定化剤および/またはポリマー安定化剤とを合わせた総乾重量に基づき、約99.5重量%~約0.001重量%の範囲内、好ましくは約95重量%~約0.1重量%の範囲内、より好ましくは約90重量%~約0.5重量%の範囲内の量で存在する、請求項1または2の1項または複数の項に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物を、少なくとも1種の医薬的に許容できる賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の有効成分の粒子を、少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー安定化剤と、請求項1または2の1項に定義された有効平均粒子径を有する前記有効成分の粒子を含む組成物を提供するのに充分な時間および条件下で接触させることを含む、請求項1~4の1項または複数の項に記載の組成物を作製する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の有効成分の1種または複数を含有するナノ懸濁物からの前記ナノ粒子が、流動床乾燥工程、噴霧乾燥工程、押出工程または造粒工程を利用することにより適切な医薬賦形剤または担体上に結合される、固形経口投与剤形を作製する方法。
【請求項7】
請求項1~3の1項もしくは複数の項に記載の組成物、または請求項4に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、対象における神経障害性疼痛および/または中枢神経系の外傷関連障害および/または特定の他の疾患の処置または予防における使用のためのシステム。
【請求項8】
前記ナノ微粒子組成物が、約2000nmより大きな平均有効粒子径を有する請求項1に記載の1種または複数の有効成分を含有する組成物に比較して、哺乳動物対象において低減されたT
max、より高いC
max、およびより高いAUCを有する、請求項7に記載の使用のためのシステム。
【請求項9】
前記ナノ微粒子組成物が、3分以下の崩壊時間を有さない、請求項7および8の1項に記載の使用のためのシステム。
【請求項10】
さらに、特定のヒト疾患の処置に有用な1種または複数の追加的活性剤を含む、請求項7~9の1項または複数の項に記載の使用のためのシステム。
【請求項11】
前記システムが、前記処置に使用され、前記化合物が、末梢の、および/もしくは主に末梢の神経障害性疼痛、または中枢の、および/もしくは主に中枢の神経障害性疼痛の処置において使用される、請求項7~10の1項に記載の使用のためのシステム。
【請求項12】
炎症性疾患、I型糖尿病および/もしくはII型糖尿病、または炎症性疾患を処置するために用いられる、請求項7~10のいずれか1項に記載の使用のためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、改善された生物学的利用度および作用の発現を有する有効成分を含む医薬組成物に関する。さらに本発明は、前記組成物を含む医薬組成物、および医薬品の調製のための前記組成物の使用に関する。最後に本発明は、前記組成物を作製する方法、および前記組成物を使用した特定の疾患の処置のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
A.ナノ微粒子組成物に関する背景
米国特許第5,145,684号には、難溶性治療薬または診断薬の粒子を含むナノ微粒子組成物が記載される。非架橋の表面安定化剤が、その表面に会合されている。
【0003】
ナノ微粒子組成物を作製する方法は、例えば「医薬物質を摩砕する方法」のための米国特許第5,518,187号および同第5,862,999号;「医薬物質を摩砕する連続的方法」のための米国特許第5,718,388号;ならびに「ナノ粒子を含有する治療組成物を調製する工程」のための米国特許第5,510,118号に記載される。
【0004】
具体的な原薬について複数の特許の下に列挙されたナノ微粒子配合物が複数存在する。WO03/103633号には、シトステロールまたはフィトステロールなどの1種または複数のステロールまたはスタノールを含むナノ微粒子組成物が記載される。米国特許出願公開第2008/02133374 A1号には、ソラフェニブまたはソラフェニブの塩を含むナノ微粒子組成物が記載される。米国特許出願公開第2009/0238867 A1号には、アニデュラファンギンを含むナノ微粒子組成物が記載される。 米国特許出願公開第2008/0317843 A1号は、モダフィニルを含むナノ微粒子組成物を対象とする。欧州特許第1658053号には、シルデナフィル遊離塩基の新規なナノ微粒子組成物が記載される。WO03/066021 A2号は、リゾチームを表面安定化剤として含むナノ微粒子組成物を対象とする。別のWO特許出願は、少なくとも1種の難溶性MAPキナーゼ阻害剤と、少なくとも1種の表面安定化剤と、を含むナノ微粒子組成物を対象とする。米国特許出願公開第2008/00220075 A1号には、少なくとも1種の難溶性血管新生阻害剤と、少なくとも1種の表面安定化剤と、を含むナノ微粒子組成物が記載される。米国特許出願公開第2003/0224058 A1号および同第2008/0241070 A1号は、フィブラート粒子が約2000nm未満の平均粒子径を有する、フィブラート組成物およびそれらのインビボ挙動を対象とする。米国特許出願公開第2005/0095297 A1号には、フィブラートと、ビタミンE TPGSと、を含むナノ微粒子配合物または懸濁物が開示される。米国特許出願公開第2019/0117674 A1号は、50~500nmの間の平均径を有するガナキソロンのナノ微粒子組成物を対象とする。米国特許出願公開第2018/0228810 A1号には、約2000nm未満の粒子径を有するメキソキシカム(mexoxicam)粒子を含むナノ微粒子組成物が開示される。米国特許出願公開第2018/0008601 A1号は、ピペラジン化合物のナノ微粒子形態を対象とする。米国特許出願公開第2015/0320682 A1号は、メゲストロールナノ微粒子を対象とする。米国特許出願公開第2013/0243830 A1号は、コルチコステロイド化合物を含有するナノ微粒子組成物に関する。
【0005】
米国特許第6,316,029 B1号は、難溶性有効成分の粒子が2000nm未満の平均径を有する該難溶性有効成分と、少なくとも1種の医薬的に許容できる水溶性または水分散性賦形剤と、の速崩壊型固形経口投与剤形を対象とする。
【0006】
WO03/024424 A1号および米国特許出願公開第2012/0087984 A1号には、有効成分を、該有効成分と少なくとも1種の表面安定化剤とを含むナノ微粒子組成物に形成させることにより、有効成分、特に医薬原料を安定化させるための方法が記載される。
【0007】
WO02/094215 A2号は、難溶性薬物と、該薬物の表面に吸着された表面安定化剤としてのビニルピロリドンおよび酢酸ビニルの少なくとも1種のコポリマーと、のナノ微粒子組成物を対象とする。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0110597 A1号および米国特許第6,375,986 B1号には、難溶性活性剤と、少なくとも1種のポリマー表面安定化剤と、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩(DOSS)と、を含む固形ナノ微粒子組成物が開示される。
【0009】
米国特許出願公開第20020012675号は、ナノ微粒子剤と、律速ポリマーと、を含み、 該薬剤を投与後2~24時間またはより長い時間までの間に放出する、ナノ微粒子組成物の制御放出を対象とする。
【0010】
B.(Z)-2-シアノ-3-シクロプロピル-3-ヒドロキシ-N-(3-メチル-4-トリフルオロメチル)フェニル)プロパ-2-エナミド(AP-325 - INN:ラフルニムス)に関する背景
(Z)-2-シアノ-3-シクロプロピル-3-ヒドロキシ-N-(3-メチル-4-トリフルオロ-メチル)-フェニル)プロパ-2-エナミド(以下にはラフルニムス(INN)またはAP-325(ワーキングネーム)も)およびその誘導体は、中枢神経系(CNS)外傷関連障害の処置において有用である化合物の分類に属する。そのような活性を有する他の化合物が、米国特許出願公開第2016/022688 A1号に記載される。
【0011】
AP-325(ラフルニムス)は、式Iによる以下の構造を有する:
【化1】
【0012】
AP-325の誘導体としても理解され得る類似の有用な化合物が、以下の式II:
【化2】
による(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-[4-(トリフルオロメチル)-フェニル]ヘプタ-2-エン-6-イナミド(FK778-INN:マニチムス)、および以下の式III:
【化3】
による2-シアノ-3-シクロプロピル-N-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシアクリルアミドである。
【0013】
AP-325は、現在、臨床開発中の医薬剤である。薬物の溶解度(
図3参照)に基づけば、AP-325は、6.8(リン酸緩衝剤)の生理学的pHではほとんど不溶性と見なされ得る。低溶解度の有効成分のより良好な特徴づけのために、BCSシステム(=生物薬剤学分類システム)による分類が導入された(Guidance for Industry:Immediate release solid oral dosage forms and FDA,1995)。このBCSシステムは、活性物質の溶解度および透過性を基にして4つのカテゴリーに識別する。AP-325は、7未満のpH値ではBCSクラスII薬物に分類され得る。AP-325の低い溶解度は、薬物取り込みのための本質的吸収場所である小腸(空腸または回腸など)での活性剤の限定された吸収のせいで、経口投与後の身体への吸収に有害な影響を及ぼす。その結果、治療効果が実現され得ない。
【0014】
さらなる先行技術:
米国特許出願公開第2010/297252 A1号は、約2000nm未満の有効平均粒子径を有するメロキシカム粒子を含むナノ微粒子組成物を対象とする。
【0015】
欧州特許第2 632 451 A2号は、神経障害性疼痛および神経障害性疼痛症候群の処置における使用のための化合物および医薬組成物に関する。
【発明の概要】
【0016】
発明の概要
本発明は、詳細には、遊離塩基の形態の(Z)-2-シアノ-3-シクロプロピル-3-ヒドロキシ-N-(3-メチル-4-トリフルオロ-メチル)-フェニル)プロパ-2-エナミド(ラフルニムス、AP-325)、(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ヘプタ-2-エン-6-イナミド、2-シアノ-3-シクロプロピル-N-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシアクリルアミド、それらの誘導体、それらの塩、およびそれらのプロドラッグからなる群から選択される少なくとも1種の有効成分の粒子を含むナノ微粒子組成物に関し、該粒子は、約2000nm未満の有効平均粒子径を有する。本発明の組成物は、好ましくは少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー安定化剤を含む。
【0017】
したがって本発明は、本質的に以下の3種の化合物または有効成分に関する:
・ラフルニムス(INN)としても知られ、好ましくは本特許明細書内でAP-325と称される、上記式(I)による(Z)-2-シアノ-3-シクロプロピル-3-ヒドロキシ-N-(3-メチル-4-(トリフルオロ-メチル)フェニル)プロパ-2-エナミド;および/または
・マニチムス(INN)としても知られ、好ましくは本特許明細書内でFK778と称される(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ヘプタ-2-エン-6-イナミド;および/または
・2-シアノ-3-シクロプロピル-N-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシアクリルアミド。
【0018】
さらに本発明は、上記化合物または有効成分の誘導体、それらの塩およびプロドラッグにも関する。
【0019】
本発明の組成物は、驚くべきことに、2ミクロンを超える粒子径を有する原薬を含む医薬投与剤形に比較して、少なくとも1種の有効成分の実質的に改善された生物学的利用度および作用の発現を示す。
【0020】
本発明の別の態様は、先に記載された組成物を少なくとも1種の医薬的に許容できる賦形剤と共に含む医薬組成物を対象とする。好ましくは該組成物はまた、有効成分の粒子に会合された少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー安定化剤を含む。
【0021】
本発明はまた、先に記載された組成物を作製する方法を対象とする。そのような方法は、少なくとも1種の有効成分の粒子を、少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー安定化剤と、約2ミクロン未満の有効平均粒子径を有する有効成分の粒子を含む組成物を提供するのに充分な時間および条件下で接触させることを含んでもよい。該1種もしくは複数の表面安定化剤および/または1種もしくは複数のポリマー安定化剤は、粒子径低減の前、好ましくはその間、またはその後のいずれかに、有効成分と接触され得る。
【0022】
本発明はまた、上記の組成物のために記載された少なくとも1種の有効成分を含有するナノ懸濁物からのナノ粒子が、流動床乾燥工程、噴霧乾燥工程、押出工程または造粒工程を利用することにより適切な医薬賦形剤または担体上に結合された、固形経口投与剤形を作製する方法を対象とする。
【0023】
本発明はまた、上記の組成物の有効量を対象に投与することを含む、対象における特定の疾患の処置のための医薬システムに関する。
【0024】
本発明はまた、2ミクロンを超える平均粒子径を有する有効成分、例えばAP-325の粒子を含有する医薬システムに比較して、血漿中の有効成分、例えばAP-325のAUC(曲線下面積)の有意な増加、および生物学的利用度の有意な増加を示す、約2ミクロン未満の有効平均粒子径を有する少なくとも1種の有効成分、例えばAP-325の粒子を含有する医薬システムに関する。
【0025】
本発明はさらに、2ミクロンを超える平均粒子径を有する有効成分、例えばAP-325の粒子を含有する医薬システムに比較して、血漿中の有効成分、例えばAP-325のTmaxの有意な減少、および有効成分、例えばAP-325の有意に急速な作用の発現を示す、約2ミクロン未満の有効平均粒子径を有する少なくとも1種の有効成分、例えばAP-325の粒子を含有する医薬システムを対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1a】25℃/60%RHで24か月の期間にわたるAP-325のナノ微粒子組成物(カプセル、実施例7)のインビトロ放出溶解プロファイル。溶解データは、非常に良好な安定性を確認し、経口投与剤形のための欧州薬局方の関連要件を満たす。
【
図1b】25℃/60%RHで24か月の期間にわたりHDPEボトルに貯蔵されたカプセルバッチG0625K102の安定性データ。安定性データから、AP-325ナノ微粒子組成物が、ICH貯蔵条件下で、検討されたパラメータの任意の変化に影響を及ぼさず、検討された貯蔵期間にわたり非常に安定していると見なされ得ることが、実証される。
【
図3】周囲温度での異なる溶媒中のAP-325の溶解度。AP-325は、6.8の生理学的pH(リン酸緩衝剤)でほとんど不溶性と見なされ得る。
【
図4a】ラットにおける薬物動態試験に適用されたAP-325のナノ微粒子組成物(試験1)。
【
図4b】ラットにおける薬物動態試験に適用されたAP-325のナノ微粒子組成物(試験2)。
【
図5a】ラットにおける薬物動態試験の結果表(試験1)。AP-325のナノ微粒子組成物は、同じ用量で高い生物学的利用度を呈する。AP-325の好ましいナノ微粒子組成物(N014)での有意に高いAUCおよびCmax値が、同じ用量のAP-325のマイクロ微粒子組成物に比較して達成され得る。
【
図5b】ラットにおける薬物動態試験の結果表(試験2)。ほとんどのナノ微粒子組成物が、2ミクロンを超えるAP-325粒子(Mikro N064)を含有する組成物より有意に急速なTmax(2時間未満)を有する。AP-325のナノ微粒子組成物は、薬物動態パラメータTmax、CmaxおよびAUCについて、マイクロ微粒子の同等物より優れた性能を有する。
【
図6】イヌにおける薬物動態試験の結果表。該ナノ微粒子組成物は、2時間のTmaxを示したが、2ミクロンを超えるAP-325粒子を含有する組成物は、2.5時間のTmaxを示した。
【
図7】ヒトにおいて急速な作用の発現および用量増加に応じた良好な吸収を実証した、薬物動態試験で適用されたAP-325カプセルのナノ微粒子組成物。
【
図8】乾燥されたAP-325ナノ懸濁物のXRPDデータ、一番下の線:プラセボ、中央下の線:AP-325、上の線:AP-325のナノ微粒子配合物、中央上の線:懸濁されたAP-325。全てのX線パターンが、粉砕工程の後、不変のままであり、有効成分AP-325の結晶性が変化していないことが立証された。
【
図9】25℃/60%RHでのG0625C101(G0625K102の顆粒/中間生成物)の粒度分布(PSD)の比較。PSDは、25℃/60%RH貯蔵条件で24か月の期間にわたり安定したままであり、該投与剤形でのAP-325のナノ粒子の非常に良好な安定性が表される。
【
図10】40℃/75%RHでのG0625C101(G0625K102の顆粒/中間生成物)の粒度分布の比較。PSDは、40℃/75%RHの貯蔵条件で6か月の期間にわたり安定したままであり、該投与剤形でのAP-325のナノ粒子の非常に良好な安定性が表される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の詳細な記載
A.本発明のAP-325のナノ微粒子組成物の追加的な好ましい特徴
1.急速な活性の発現
AP-325のナノ微粒子組成物は、特に2ミクロンを超えるミクロン範囲の粒子を含有するAP-325の組成物に比較して、急速な作用の発現を示す。
図5bに実証された通り、ラットにおいてテストされた3種のナノ微粒子組成物は、2ミクロンを超えるAP-325粒子を含有する組成物より有意に急速なT
max(2時間未満)を有し、1種のナノ微粒子組成物のみが、この試験で同じT
max(約2時間)を有した。この観察は、該ナノ微粒子組成物が2時間のT
maxを示し、2ミクロンを超えるAP-325粒子を含有する組成物が2.5時間のT
maxを示した、
図6および7に表されたイヌ試験で確認された。最後に、該急速な作用の発現は、1.25~2.3時間の間のT
max(median)が認められた、ヒトにおける薬物動態試験(
図7参照)でのAP-325のナノ微粒子組成物でも実証された。
【0028】
実証された急速な作用の発現は、患者に対して高レベルの服薬順守を表すために、上述の神経障害性疼痛および中枢神経系の外傷関連障害の処置において重要である。
【0029】
2.高い生物学的利用度
本発明のAP-325のナノ微粒子組成物は、好ましくは先行技術の非ナノ微粒子AP-325組成物に比較して、同じ用量で高い生物学的利用度を呈し、より小さい用量を必要とする。これは、AP-325のナノ微粒子組成物(N014/N063)がAP-325の非ナノ微粒子組成物(N064/N059)より優れていて、AP-325の非ナノ微粒子組成物の82%に比較してナノ微粒子組成物では有意に高い147%の生物学的利用度を有し、同じ用量で、AP-325の非ナノ微粒子組成物に比較してAP-325の好ましいナノ微粒子組成物(N014)では有意に高いAUCおよびC
max値を有することが、
図5a)および5b)において実証された。
【0030】
3.本発明のAP-325ナノ微粒子の薬物動態プロファイル
本発明は、哺乳動物対象に投与された場合に所望の薬物動態プロファイルを有するナノ微粒子AP-325組成物を提供する。該所望の薬物動態プロファイルは、以下の特徴の1つまたは複数を含み得る:(1)ナノ微粒子AP-325組成物の投与用量のT
maxが、非ナノ微粒子AP-325組成物のものより低くなり得る、(2)ナノ微粒子AP-325組成物のC
maxが、非ナノ微粒子AP-325組成物のC
maxより大きくなり得る、(3)ナノ微粒子AP-325組成物のAUCが、非ナノ微粒子AP-325組成物のAUCより大きくなり得る。これは、
図5a)、5b)および7で報告された比較試験で立証されている。
【0031】
患者あたり5~150mg用量での健常志願者による薬物動態試験では、1.25時間(5mg)~2.3時間(150mg)のT
max(median)、475ng/ml(5mg)~17961ng/ml(150mg)のC
max(mean)および10578h・ng/mL(5mg)~381961h・ng/mL(5mg)のAUCが、
図7に示された通り認められ、AP-325組成物のこのナノ微粒子組成物でのヒトにおける急速な作用の発現および用量増加に応じた良好な吸収プロファイルが実証された。
【0032】
B.組成物
1.AP-325誘導体
AP-325、およびAP-325誘導体として理解され得るさらなる化合物が、[010]、[0011]、[0012]および[0013]段落に記載される。示された化学構造を有する誘導体(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタ-2-エナミド/テリフルノミドは、本特許から除外される:
【化4】
【0033】
2.表面およびポリマー安定化剤
AP-325のナノ微粒子組成物のための1種または複数の表面およびポリマー安定化剤の選択は、簡単でなく、所望の配合物を実現するのに高価な実験が必要となる。1種より多くの表面および/またはポリマー安定化剤の組み合わせが、本発明で用いられ得る。本発明で利用され得る有用な表面安定化剤としては、非限定的に、公知の有機および無機医薬賦形剤が挙げられる。そのような賦形剤としては、様々なポリマー、低分子量オリゴマー、天然生成物、および界面活性剤が挙げられる。表面安定化剤としては、非イオン性、カチオン性、イオン性および双性イオン性化合物が挙げられるが、ポリマー安定化剤としては、セルロース誘導体、多糖、ポリエチレン誘導体、リン脂質、アルギン酸塩および同様のもののような医薬組成物中で広く用いられる周知のポリマーが挙げられる。
【0034】
表面およびポリマー安定化剤の代表例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、タウロコール酸塩のような胆汁酸塩およびグリコール酸ナトリウムのような誘導された塩、デキストラン、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばTween20(登録商標)およびTween80(登録商標)などの市販されるTween、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアラート、コロイド二酸化ケイ素、ホスファート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロールナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、非結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポロキサマー(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるPluronics F68(登録商標)およびF127(登録商標));ポロキサミン(例えば、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの連続付加から誘導された四官能基性ブロックコポリマーであるPoloxamine908(登録商標)としても知られるTetronic908(登録商標))、アルキルアリールポリエーテルスルホナートであるTriton X-200(登録商標);ステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースの混合物であるCrodesta F-110(登録商標)、n-アルキル-ベータ-D-グルコピラノシド;PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、例えばTPGS-1000(登録商標)、リゾチーム、ならびに同様のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
3.他の医薬賦形剤
本発明による医薬AP-325ナノ微粒子組成物はまた、1種または複数の結合剤、充填剤、滑沢剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤を含んでもよい。そのような賦形剤は、当該技術分野で知られる。
【0036】
流動床コーティングまたは造粒工程のためのスターターペレットに適した例は、ラクトース一水和物、微結晶セルロースまたはイソマルトである。
【0037】
充填剤および希釈剤の例は、マンニトール、ラクトース一水和物、ラクトース無水物および様々なデンプン、二塩基性リン酸カルシウム、糖および/または前述のいずれかの混合物であり;結合剤の例は、様々なセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン、Avicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102などの微結晶セルロース、ならびにケイ化微結晶セルロース(ProSolv SMCC(商標))である。
【0038】
圧縮される粉末の流動性に作用する薬剤をはじめとする適切な滑沢剤は、Aerosil(登録商標)200などのコロイド二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルである。
【0039】
適切な崩壊剤としては、軽度に架橋したポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよび加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
発泡剤の例は、有機酸および炭酸塩または重炭酸塩などの発泡剤である。適切な有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸およびアルギン酸、ならびに酸性塩が挙げられる。適切な炭酸塩および重炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、L-リシン炭酸塩およびアルギニン炭酸塩が挙げられる。あるいは発泡剤の重炭酸ナトリウム成分のみが、存在してもよい。
【0041】
甘味剤の例は、スクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテームおよびアセスルファムなどの任意の天然または人工甘味剤である。
【0042】
4.ナノ微粒子AP-325活性粒度分布
本発明の組成物は、約2000nm(即ち、2ミクロン)未満の有効平均粒子径を有する有効成分、例えばAP-325の1種または複数の粒子を含む。本発明の他の実施形態において、前記粒子は、光散乱法、顕微鏡測定、または他の適正な方法による測定で、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満の有効平均粒子径を有する。
【0043】
有効平均粒子径は、好ましくは1400nm未満、より好ましくは900nm未満、より好ましくは300nm未満である。
【0044】
有効平均粒子径は、好ましくは40nmより大きい、より好ましくは50nmより大きい、より好ましくは60nmより大きい。
【0045】
有効平均粒子径は、好ましくは約70nm~約220nmの範囲内、より好ましくは約90nm~約210nmの範囲内、より好ましくは約100nm~約200nmの範囲内である。
【0046】
「約2000nm未満の有効平均粒子径」は、上記の技術により測定された場合に、重量(体積基準)で、前記活性剤粒子の少なくとも50%が有効平均粒子径未満の粒子径を有すること、例えば、重量による粒子の50%が、約2ミクロン未満(または約1900nm未満、約1800nm未満など)のサイズを有することを意味する。
【0047】
有利な実施形態において、該粒子は、静的または動的レーザ回折法(例えば、マルバーンサイザーまたはゼータサイザー)のような最新の分析技術で測定される。例えば、粒子径を測定するためのレーザ光回折の使用は、広く知られる技術である。レーザ回折は、散乱光の平均相対的角度強度(average relative angular intensity)を利用した粒子径測定法である。レーザ光回折を利用して粒子径を測定する機器は、何年も前に複数の異なる製造業者から入手可能になった。全てのレーザ回折機器が、同じ基本的方法を利用して、粒子径を測定する。全てのレーザ回折機器は、非常に均一な波面を有する単色光のビームを要求する。レーザ光のこのビームは、測定される試料粒子に向けられる。光が粒子に衝突すると、光が粒子から回折または散乱する。検出器が、試料材料から様々な角度で散乱した光の相対的平均強度を測定するために用いられる。粒子から複数の異なる角度で散乱した光の相対的強度が分かったら、粒子径および粒度分布が計算され得る。
【0048】
5.ナノ微粒子AP-325ならびに活性の表面および/またはポリマー安定化剤の濃度
ナノ微粒子AP-325ならびに1種または複数の表面および/またはポリマー安定化剤の相対量は、大きく変動し得る。個々の成分の最適量は、例えば親水性-親油性比(HLB)、融点、pH依存的溶解度、pKa値に依存し得る。
【0049】
AP-325の濃度は、他の賦形剤を含まずにAP-325と少なくとも1種の表面および/またはポリマー安定化剤とを合わせた総乾重量に基づき、約99.5重量%~約0.001重量%、約95重量%~約0.1重量%、または約90重量%~約0.5重量%で変動し得る。
【0050】
少なくとも1つの表面および/またはポリマー安定化剤の濃度は、他の賦形剤を含まずにAP-325と少なくとも1種の表面および/またはポリマー安定化剤とを合わせた総乾重量に基づき、約0.5重量%~約99.9重量%、約5.0重量%~約99.9重量%、または約10重量%~約99.5重量%で変動し得る。
【0051】
C.ナノ微粒子AP-325組成物を作製する方法
1.ナノ微粒子AP-325組成物を得るための粉砕
ナノ微粒子組成物を得るためのAP-325の粉砕は、AP-325が難溶性である液体分散媒にAP-325の粒子を分散させた後、ハードグラインディング媒体の存在下で機械的手段を適用して、AP-325の粒子径を所望の有効平均粒子径に低減することを含む。分散媒は、例えば水、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、またはグリコールであり得る。水が、好ましい分散媒である。
【0052】
AP-325粒子は、好ましくは少なくとも1種の表面および/またはポリマー安定化剤の存在下でサイズを低減される。希釈剤などの他の化合物が、粒子径低減工程の間に、AP-325表面およびポリマー安定化剤組成物に添加され得る。分散物は、連続して、またはバッチ方式で製造され得る。
【0053】
D.本発明のナノ微粒子AP-325組成物を用いる方法
1.処置の適用
本発明のAP-325組成物は、とりわけヒトにおける他の疾患および状態、神経障害性疼痛および中枢神経系の外傷関連障害を処置および予防するのに有用である。
【0054】
以下の実施例は、本発明を例示するために与えられている。しかし本発明がこれらの実施例に記載された具体的条件または詳細に限定されないことが、理解されなければならない。
【0055】
E.実施例
1.全般的粉砕条件
これらの実施例の目的は、AP-325およびその誘導体のための本発明の粉砕工程の適用を、限定された量の有効成分(スクリーニング相)で迅速な結果を得るための実験スケール、および臨床試験試料の製造のために本発明の工程の適切さを実証するパイロットスケールで示すことであった。
【0056】
実験スケールでの試験:示された量の水(例えば、精製水)が、酸化ジルコンで作製された小型摩砕容器(およそ45ml容量)内に計量して入れられた。その後、与えられた量の界面活性剤および安定化ポリマーが、成分が完全に溶解するまで、周囲温度で撹拌されながら添加された。その後、記載された量のAP-325またはその誘導体が、撹拌されながら緩やかに添加されて、ほぼ均質な懸濁物を与えた。磁気撹拌棒が取り出されて、適切な径(0.1~1.0mm)の適正な量のイットリア安定化ジルコニウム粉砕ビーズが、懸濁物に添加された。粉砕容器がしっかりと密閉されて、実験用ナノミルチャンバー(FritschのPulverisette7)に固定された。粉砕が、リバースモード機能で適当な時間間隔(2~10時間)を入れて適当な粉砕速度(例えば、600~800rpm)で開始された。粉砕の後、粉砕チャンバーが注意深く開放されて、ナノ懸濁物が粉砕ビーズから分離された。単離されたナノ懸濁物が、静的レーザ回折(例えば、Malvern Mastersizer)により粒度分布(PSD)について測定された。あるいは、試験は、1ml試料容量で、粉砕ビーズと同じ径範囲、および1~4時間の期間にわたり約1500~2500rpmの粉砕速度で、二重遠心分離システム(例えば、Zentrimix380)を用いて実施された。
【0057】
パイロットスケール試験:最初に、所与の量の界面活性剤(例えば、グリココール酸ナトリウム)が、周囲温度で撹拌されながら水(例えば、精製水)に溶解された。その後、ポリマー安定化剤(例えば、ポロキサマー407)が添加されて、この溶液に完全に溶解された。均質な懸濁物を得るために、AP-325の全ての凝集が破壊されて、均質なマイクロ懸濁物が得られるまで、AP-325が、界面活性剤/ポリマー溶液に少しずつ組み入れられた。その後、マイクロ懸濁物が、適切なビーズミル(例えば、Netzsch DeltaVita 300)の粉砕チャンバーに充填され、適正な量のイットリア安定化ジルコニウム粉砕ビーズ(0.1~1.0mm径)が添加されて、粒度分布が最終的に必要となるナノメータ範囲に達するまで、湿式ビーズミリング工程が実施された(スケールに応じて数時間)。典型的なスケールは、約190gのAP-325、約1650gの水、約38gのポリマー安定化剤(例えば、Kolliphor P407)および約15gの表面安定化剤(例えば、グリココール酸ナトリウム)からなった。
【0058】
2.AP-325およびその誘導体のナノ微粒子組成物(ナノ懸濁物)の実施例
AP-325のナノ懸濁物が、[0056]段落にしたがって調製された。
【表1】
【0059】
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ヘプタ-2-エン-6-イナミド/FK778/マニチムスのナノ懸濁物が、[0056]段落にしたがって調製された。
【表2】
【0060】
2-シアノ-3-シクロプロピル-N-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシアクリルアミドのナノ懸濁物が、[0056]段落にしたがって調製された。
【表3】
【0061】
AP-325のナノ懸濁物が、[0057]段落にしたがって調製された。
【表4】
【0062】
3.AP-325および誘導体を含有するナノ懸濁物の粒度分布、安定性、ならびに結晶性の立証
粒度分布が、[0058]段落で得られたAP-325のナノ懸濁物についてレーザ光散乱(例えば、Marvern Mastersizer)により測定された。
【表5】
【0063】
粒度分布が、[0059]段落で得られた(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ヘプタ-2-エン-6-イナミド/FK778/マニチムスのナノ懸濁物についてレーザ光散乱(例えば、Marvern Mastersizer)により測定された。
【表6】
【0064】
粒度分布が、[0060]段落で得られた2-シアノ-3-シクロプロピル-N-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシアクリルアミドのナノ懸濁物についてレーザ光散乱(例えば、Marvern Mastersizer)により測定された。
【表7】
【0065】
粒度分布が、[0061]段落で得られたAP-325のナノ懸濁物についてレーザ光散乱(例えば、Marvern Mastersizer)により測定された。
【表8】
【0066】
粒度分布が(PSD)、[0061]段落で得られたAP-325のナノ懸濁物についてレーザ光散乱(例えば、Marvern Mastersizer)により測定され、特定の時間間隔および貯蔵条件(温度/湿度)の後に再度測定された。結果から、PSDが検討された時間間隔および条件を経て不変であることが確認され、AP-325のナノ微粒子組成物の良好な安定性が確認された。
条件:2~8℃(冷蔵庫)/バッチN077
【表9】
条件:25℃/60%RH(人工気候室)/バッチN077
【表10】
【0067】
粉砕工程の間に有効成分の結晶性の変化(例えば、ポリマー形態の変化)が起こらないことが、重要である。有効成分の結晶性が不変のままであることを立証するために、N073の懸濁物の一部が乾燥され、純粋な有効成分、プラセボ混合物、ならびに懸濁および乾燥された有効成分に対する粉末X線回折(PXRD;例えばSTORE Stadi Pトランスミッションモード、Cu-Kアルファ線)により解析された。
図8から分かる通り、全てのX線回折パターンが粉砕工程の後に不変のままであったため、有効成分AP-325の結晶性が変化しなかったことが立証された。
【0068】
AP-325の得られたナノ微粒子組成物が酸性環境で安定していることが、さらに重要である、というのは、もしそうでなければ、ナノ粒子がそのような条件下で2000nmを超える微結晶に変換されると、「ナノ効果」が簡単に消失するためである。酸性環境で安定性を立証するために、AP-325のナノ懸濁物が、37℃で特定の期間(例えば、1~2時間)にわたり0.06M塩酸(pH=1.2)で処置された。表11に示されたデータから、酸性条件下での本発明のAP-325のナノ懸濁物の良好な安定性が立証される。
【表11】
【0069】
有効成分の分解が、粉砕工程の間に起こる場合がある。AP-325の有意な分解が得られないことを立証するために、ナノ懸濁物が、専用の検証済みHPLC法(例えば、HPLC Agilent 1290機器を用いて)により粉砕後に検討された。表12の結果から、粉砕工程の後に分解が検出され得ず、全ての不純物が非常に低レベルのままであることが立証された。
【表12】
【0070】
粉砕工程の間の粉砕ビーズの衝突からジルコニウムおよびイットリウムの残留物の痕跡を検出するための検討も行い、両方の元素で低ppm範囲で非常に低い痕跡のみがAP-325のナノ懸濁物中で得られることが確認され、意図した使用での本発明の粉砕工程の適切さが示された。
【0071】
4.AP-325のナノ粒子を含有する顆粒組成物のための実施例
ナノ懸濁物そのものの中のナノ粒子のいわゆるオストワルド熟成効果を予防するために、[0057]段落で得られたAP-325のナノ懸濁物が、ナノ粒子が適切な担体上に結合された投与剤形に変換された。示された組成物は、ナノ粒子を粉末配合物に変換する唯一の可能性であり、噴霧乾燥、押出、直接造粒のような他の技術もまた、利用され得る。
【0072】
流動床の層化:[0057]段落で得られたナノ懸濁物に、適切なポリマー安定化剤が、完全に溶解するまで周囲温度で撹拌されながら添加された。さらに、AP-325を含有する完成された層化懸濁物が、流動床コーター(例えば、底部の噴霧ノズルを有するBoschのUnilab)中で適切な担体上に層化された。層化工程には、標準のノズルおよびフィルターが用いられ、入口温度が最大60℃に設定されて、約40℃の生成物温度を得た。噴霧圧は、100kPa(1バール)未満に設定された。典型的なスケールは、[0057]段落で得られた約280gのナノ懸濁物、約9gの追加的ポリマー安定化剤(例えば、ヒプロメロース 6mPa)および約1220gの担体(例えば、イソマルト galen IQ960)からなった。この工程は、スケールに応じて数時間以内に完了された。
【0073】
最終的なブレンディング:[0071]段落の最終的な乾燥ペレットが、周囲温度の適切なブレンダーで適切な滑沢剤と共に数分間ブレンドされて、カプセル充填工程の間の粘着を回避した。典型的なスケールは、AP-325のナノ粒子を含有する約800gのペレット、および18gの滑沢剤(例えば、タルク)からなった。
【0074】
カプセル化:混合物が、カプセル充填機(例えば、Bonapaceカプセル充填機)のペレット注入ユニット(pellet dosing unit)により硬ゼラチンカプセル(例えば、サイズ0)に充填される。表13は、[0071]、[0072]、[0073]および[0074]に従って生成された異なるバッチの概要を与える。
【表13】
【0075】
カプセルの組成:本発明によるカプセル配合剤の典型的な組成が、表14および15に表される。
【表14】
【表15】
【0076】
5.硬ゼラチンカプセル内のナノ微粒子AP-325組成物の粒子径および溶解プロファイル
異なる条件下での安定性テストの間のナノ微粒子組成物のための重要なパラメータは、AP-325のナノ粒子の粒子径および生理学的媒体中での誘導された溶解プロファイルが不変のままであることである。
図9および
図10は、異なる条件での安定性テストの間の粒子径挙動を示す。水に不溶性の滑沢剤(タルク)が、配合物中で用いられてきたが、滑沢剤はレーザ光散乱技術でのPSD測定と干渉するため、粒子径測定は対応するバッチの顆粒で実施された。結果から、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHでの貯蔵条件で24または6か月の期間にわたり不変のままであることが実証され、この投与剤形のAP-325ナノ粒子の非常に良好な安定性が表される。この良好な安定性は、生理学的リン酸緩衝剤中、37℃で25℃/60%RHで24か月にわたる
図1aに表された溶解データによっても確認される。18および24か月での溶解プロファイルの小さな降下は、カプセル内の顆粒の小さな変化(例えば、粘着)に明白に関係するが、全体的放出は、60分後に依然として80%を充分に超えており、経口投与剤形のための欧州薬局方の関連する要件を満たす。
【0077】
6.硬ゼラチンカプセル内のナノ微粒子AP-325組成物の安定性データ
安定性パラメータPSDおよび溶解は、[0076]段落に既に記載されているが、投与剤形の良好な安定性を表すために、さらなるデータもまた重要である。これらの安定性データは、
図1bに要約されており、AP-325のナノ微粒子組成物が、記載されたICH貯蔵条件下で検討されたパラメータの任意の変化に影響を及ぼされず、検討された貯蔵期間にわたり非常に安定していると見なされ得ることを実証している。
【0078】
7.ラット試験のプロトコル(薬物動態試験、
図5a)およびb)も参照)
適用
単回投与としてのp.o.(強制経口投与)
動物の詳細
種:絶食されたスプラグー・ドゥーリー・ラット
性別:雄
実験群および用量
動物は、表16aおよび16bに従って単回投与で処置された。
【表16】
【表17】
【0079】
投与される総容量は、投与日に記録された個々の体重に応じて計算された。血液採取が、24時間以内に複数の時点で実施された。
【0080】
血液試料およそ600μlが、バタフライおよび毛細管を用いて尾静脈から採取された。回収された血液は直ちに、ヘパリンリチウム含有試験管(例えば、Saarstedt)に移されて手によって振とうされ、遠心分離(2,500×gおよび4℃で10分間)までクラッシュアイス上で30分間貯蔵された。上清の血漿が分離されて、ラベル付きプラスチック管に移された。血漿試料は、運搬まで超低温冷凍庫(-80℃)で貯蔵された。
【0081】
分析
ラットにおけるAP-325の薬物動態試験のために、専用のHPLC-MS/MS法が、ラット血漿におけるAP-325の定量のために開発および検証された。
【0082】
8.イヌ試験のプロトコル(
図6も参照)
適用
単回投与としてのp.o.
動物の詳細
種:ビーグル犬
性別:それぞれ雄4匹
実験群および用量
群:2
用量:100mg/動物
【0083】
血液試料が採取され、回収された血液は直ちに、ヘパリンリチウム含有試験管に移されて手によって振とうされ、遠心分離(2,500×gおよび4℃で10分間)までクラッシュアイス上で30分間貯蔵された。上清の血漿が分離されて、ラベル付きプラスチック管に移された。血漿試料は、運搬まで超低温冷凍庫(-80℃)で貯蔵された。
【0084】
分析
イヌにおけるAP-325の薬物動態試験のために、専用のHPLC-MS/MS法が、イヌ血漿におけるAP-325の定量のために開発および検証された。
【0085】
9.ヒト第1相試験のプロトコル(
図7)
適用:5、15、40、100および150mgのAP-325の単回投与(ナノ微粒子組成物)
計画:無作為化プラセボ対照二重盲検
対象:18~45歳の間;BMI 18~29.9kg/m
2;体重≧70kgの健常白人男性対象
【0086】
分析
ヒトにおけるAP-325の薬物動態試験のために、専用のHPLC-MS/MS法が、ヒト血漿におけるAP-325の定量のために開発および検証された。
【0087】
本発明は、(a)約2000nm未満の有効平均粒子径を有するAP-325またはその誘導体の粒子と;(b)少なくとも1種の表面および/またはポリマー安定化剤と、を含むAP-325またはAP-325誘導体組成物のナノ微粒子に関する。
【0088】
さらに本発明は、前記組成物を少なくとも1種の医薬的に許容できる賦形剤と共に含む医薬組成物に関する。
【0089】
さらに本発明は、医薬品の調製のための前記医薬組成物の使用に関する。
【0090】
その上、本発明は、約2ミクロン未満の有効平均粒子径を有するAP-325またはAP-325誘導体を含む組成物を提供するのに充分な時間および条件下で、AP-325またはAP-325誘導体の粒子を少なくとも1種の表面および/またはポリマー安定化剤と接触させることを含む、ナノ微粒子AP-325またはAP-325誘導体組成物を作製する方法に関する。
【0091】
本発明のさらなる態様は、(a)約2000nm未満の有効平均粒子径を有するAP-325またはその誘導体の粒子と;(b)少なくとも1種の表面および/またはポリマー安定化剤と、を含む組成物の有効量を対象に投与することを含む、対象における特定の疾患の処置のためのシステムである。このシステムにおけるナノ微粒子組成物は、約2000nmより大きな平均有効粒子径を有するAP-325またはその誘導体を含有する組成物に比較して、哺乳動物対象において低減されたTmax、より高いCmax、およびより高いAUCを有し得る。このシステムにおいて、該ナノ微粒子組成物は、3分以下の崩壊時間を有さない。該システムは、特定のヒト疾患の処置に有用な1種または複数の活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0092】
要約すると、以下の項目が、本開示の一部である:
1.(a)約2000nm未満の有効平均粒子径を有する、少なくとも1種の有効成分を含む粒子と;
(b)少なくとも1種の表面安定化剤および/またはポリマー安定化剤と、
を含むナノ微粒子組成物。
2.(a)約2000nm未満の有効平均粒子径を有する、(Z)-2-シアノ-3-シクロプロピル-3-ヒドロキシ-N-(3-メチル-4-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパ-2-エナミド、(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ヘプタ-2-エン-6-イナミド、2-シアノ-3-シクロプロピル-N-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシアクリルアミド、それらの誘導体、それらの塩およびそれらのプロドラッグからなる群から選択される少なくとも1種の有効成分の粒子と;
(b)少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー安定化剤と、
を含む項目1の組成物。
3.該有効平均粒子径が、1400nm未満、好ましくは900nm未満、より好ましくは300nm未満であり、特に該有効平均粒子径が、40nmより大きい、好ましくは50nmより大きい、より好ましくは60nmより大きい、項目1または2の組成物。
4.該有効平均粒子径が、約70nm~約220nmの範囲内、好ましくは約90nm~約210nmの範囲内、より好ましくは約100nm~約200nmの範囲内である、項目1~3の1つまたは複数の組成物。
5.経口錠剤、カプセル、サシェ、スティックパック、舌下剤、外用投与剤形、または液体分散物およびゲルからなる群から選択される医薬配合物である、項目1~4の1つまたは複数の組成物。
6.さらに、1種または複数の医薬的に許容できる賦形剤、担体、またはそれらの組み合わせを含む、項目1~5の1つまたは複数の組成物。
7.該少なくとも1種の有効成分が、他の賦形剤を含まずに有効成分と少なくとも1種の表面安定化剤および/またはポリマー安定化剤とを合わせた総乾重量に基づき、約99.5重量%~約0.001重量%の範囲内、好ましくは約95重量%~約0.1重量%の範囲内、より好ましくは約90重量%~約0.5重量%の範囲内の量で存在する、項目1~6の1つまたは複数の組成物。
8.該少なくとも1種の表面安定化剤および/または該少なくとも1種のポリマー安定化剤が、他の賦形剤を含まずに有効成分と少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー安定化剤とを合わせた総乾重量に基づき、約0.5重量%~約99.9重量%の範囲内、好ましくは約5.0重量%~約99.9重量%の範囲内、より好ましくは約10重量%~約99.5重量%の範囲内の量で存在する、項目1~7の1つまたは複数の組成物。
9.該少なくとも1種の表面安定化剤が、アニオン表面安定化剤、カチオン表面安定化剤、双性イオン性表面安定化剤、非イオン性表面安定化剤、およびイオン性表面安定化剤からなる群から選択される、項目1~8のいずれか1つに記載の組成物。
10.該少なくとも1種の表面安定化剤が、グリココール酸ナトリウムを含む、またはそれからなる、項目1~9の1つまたは複数の組成物。
11.該少なくとも1種のポリマー安定化剤が、セルロース誘導体、多糖、ポリエチレン誘導体、リン脂質、アルギン酸塩および同様のものからなる群から選択される、項目1~10の1つまたは複数の組成物。
12.該少なくとも1種の表面安定化剤および/または該少なくとも1種のポリマー安定化剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン、レシチンおよび他のホスファチド、タウロコール酸塩のような胆汁酸塩およびグリココール酸ナトリウムのような誘導された塩、デキストラン、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばTween20(登録商標)およびTween80(登録商標)などの市販されるTween、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアラート、コロイド二酸化ケイ素、ホスファート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロールナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、非結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるPluronics F68(登録商標)およびF127(登録商標);ポロキサミン、例えば、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの連続付加から誘導された四官能基性ブロックコポリマーであるPoloxamine908(登録商標)としても知られるTetronic908(登録商標))、アルキルアリールポリエーテルスルホナートであるTriton X-200(登録商標);ステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースの混合物であるCrodesta F-110(登録商標)、n-アルキル-ベータ-D-グルコピラノシド;PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、例えばTPGS-1000(登録商標)、リゾチーム、および同様のものからなる群から選択される、項目1~11の1つまたは複数の組成物。
13.該少なくとも1種のポリマー安定化剤が、ポロキサマーおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースから選択される、項目1~12の1つまたは複数の組成物。
14.1種または複数の担体剤、結合剤、充填剤、滑沢剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤を含む、項目1~13の1つまたは複数の組成物。
15.マンニトール、ラクトース、ラクトース一水和物、セルロース、セルロース誘導体またはイソマルトからなる群から選択される1種または複数の担体剤を含む、項目1~14の1つまたは複数の組成物。
16.イソマルトを担体剤として含む、項目1~15の1つまたは複数の組成物。
17.充填剤および希釈剤が、マンニトール、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、デンプン、二塩基性リン酸カルシウム、糖およびその前述の混合物からなる群から選択される、1種もしくは複数の該充填剤および/または1種もしくは複数の該希釈剤;ならびに/あるいはセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン、Avicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102などの微結晶セルロース、およびケイ化微結晶セルロース(ProSolv SMCC(商標))からなる群から選択される1種または複数の結合剤を含む、項目1~16の1つまたは複数の組成物。
18.Aerosil(登録商標)200などのコロイド二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルからなる群から選択される1種または複数の滑沢剤を含む、項目1~17の1つまたは複数の組成物。
19.タルクを滑沢剤として含む、項目1~18の1つまたは複数の組成物。
20.架橋ポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよび加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の崩壊剤を含む、項目1~19の1つまたは複数の組成物。
21.クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、アルギン酸およびそれらの酸性塩、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、L-リシン炭酸塩、およびアルギニン炭酸塩からなる群から選択される1種または複数の発泡剤を含む、項目1~20の1つまたは複数の組成物。
22.スクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテーム、およびアセスルファムから選択される1種または複数の甘味剤を含む、項目1~21の1つまたは複数の組成物。
23.項目1~22のいずれか1つによる組成物を、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤と共に含む、医薬組成物。
24.医薬品の調製のための項目23による医薬組成物の使用。
25.項目1~4の1つに定義された有効平均粒子径を有する有効成分の粒子を含む組成物を提供するのに充分な時間および条件下で、少なくとも1種の有効成分の粒子を少なくとも1種の表面安定化剤および/または少なくとも1種のポリマー性安定化剤と接触させることを含む、項目1~23の1つまたは複数の組成物を作製する方法。
26.該接触することが、摩砕、湿式粉砕、高圧均質化、均質化、エマルジョン技術、超臨界流体粒子作製技術、沈殿、またはそれらの組み合わせを含む、項目25の方法。
27.項目1で分別された有効成分の1つまたは複数を含有するナノ懸濁物からのナノ粒子が、流動床乾燥工程、噴霧乾燥工程、押出工程、または造粒工程を利用することにより適切な医薬的賦形剤または担体上に結合される、固形投与剤形を作製する方法。
28.項目2からの少なくとも1種の有効成分のナノ粒子を含む配合物が、錠剤、カプセル、サシェまたはスティックパックに配合される、項目25~27の1つまたは複数の方法。
29.項目1~22の1つもしくは複数の組成物、または項目23の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、対象における神経障害性疼痛および/または中枢神経系の外傷関連障害および/または特定の他の疾患の処置または予防における使用のためのシステム。
30.該ナノ微粒子組成物が、約2000nmより大きな平均有効粒子径を有する項目2の1種または複数の有効成分を含有する組成物に比較して、哺乳動物対象において低減されたTmax、より高いCmax、およびより高いAUCを有する、項目29の使用のためのシステム。
31.該ナノ微粒子組成物が、3分以下の崩壊時間を有さない、項目29および30の1つの使用のためのシステム。
32.さらに、特定のヒト疾患の処置に有用な1つまたは複数の追加的活性剤を含む、項目29~31の1つまたは複数の使用のためのシステム。
33.該ナノ微粒子組成物が、3分以下の崩壊時間を有さない、項目29および30の1つの使用のためのシステム。
34.該システムが、該処置に用いられ、該化合物が、末梢の、および/もしくは主に末梢の神経障害性疼痛、または中枢の、および/もしくは主に中枢の神経障害性疼痛の処置において使用される、項目29~33の1つの使用のためのシステム。
35.該主に末梢の神経障害性疼痛が、以下の神経障害性疼痛の型から選択される型であり、および/または以下の原因の群から選択される原因を有する、項目29~33の1つの使用のためのシステム:
- 全身疾患、例えば糖尿病性神経障害;
- 薬物誘導性病変、例えば化学療法による神経障害;
- 外傷症候群および絞扼症候群;
- 神経根および後部神経節(posterior ganglia)における病変
- HIV感染後の神経症;
- ヘルペス感染後の神経痛;
- 神経根引き抜き損傷;
- 脳神経病変;
- 頭蓋神経痛、例えば、三叉神経痛;
- 神経障害性癌痛;
- 幻肢痛
- 末梢神経、神経叢および神経根の圧迫;
- 傍腫瘍性末梢性ニューロパチーおよび神経節障害
- 癌治療、例えば化学療法、放射線、および外科的介入の合併症;
- 複合性局所疼痛症候群;
- I型病変(以前は交感神経反射ジストロフィーとして知られた);および
- II型病変(おおよそ灼熱痛に対応する);または
主に中枢の神経障害性疼痛が、以下の原因群から選択される原因を有する型である;
- 主に視床である脳病変;
- 梗塞、例えば視床梗塞もしくは脳幹梗塞;
- 視床もしくは脳幹を圧迫する脳腫瘍もしくは膿瘍;
- 多発性硬化症;
- 片頭痛または片頭痛の疼痛(migraine pain)のような中枢性疼痛メカニズムにより引き起こされる頭痛症候群;
- 脳手術、例えば運動障害の症例の視床切開術;
- 脊髄病変;
- 脊髄傷害;
- 脊髄手術、例えば脊髄前側索切離術;
- 虚血病変;
- 前脊髄動脈症候群;
- ワレンベルグ症候群;
- 脊髄空洞症。
35.該神経障害性疼痛が、帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹により引き起こされる)、神経根引き抜き損傷、疼痛性外傷性単神経障害、疼痛性多発神経炎(特に糖尿病による)、中枢性疼痛症候群(潜在的に、神経系の任意のレベルの事実上任意の病変により引き起こされる)、術後疼痛症候群(例えば、乳房切除後症候群、開胸術後症候群、幻肢痛)、複合性局所疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィーおよび灼熱痛)、および/または片頭痛もしくは片頭痛の疼痛である、項目29~33の1つの使用のためのシステム。
36.該神経障害性疼痛が、脊髄傷害および/または脊髄損傷により引き起こされる中枢性疼痛症候群である、項目29~33の1つの使用のためのシステム。
36.該神経障害性疼痛が、慢性神経障害性疼痛である、項目29~36の1つの使用のためのシステム。
37.炎症性疾患を処置するために用いられる、項目29~33のいずれか1つの使用のためのシステム。
44.メタボリックシンドローム、ならびにI型糖尿病(TID)、関節リウマチ、全身エリテマトーデス、重症筋無力症、および多発性硬化症などの自己免疫疾患からなる群から選択される炎症性疾患を処置するため、特に糖尿病を処置するために用いられる、項目37の使用のためのシステム。
44.I型糖尿病および/またはII型糖尿病を処置するために用いられる、項目29~33のいずれか1つの使用のためのシステム。
45.項目1~22の1つもしくは複数の組成物、または項目23の組成物、または項目23の医薬組成物、または項目23の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、患者における対象の神経障害性疼痛および/または神経障害性疼痛症候群および/または特定の他の疾患を処置するための方法。
46.患者がヒトである、項目45による方法。
47.該神経障害性疼痛症候群が、帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹により引き起こされる)、神経根引き抜き損傷、疼痛性外傷性単神経障害、疼痛性多発神経炎(特に糖尿病による)、中枢性疼痛症候群(潜在的に、神経系の任意のレベルの事実上任意の病変により引き起こされる)、術後疼痛症候群(例えば、乳房切除後症候群、開胸術後症候群、幻肢痛)、複合性局所疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィーおよび灼熱痛)、および/または片頭痛もしくは片頭痛の疼痛である、項目45~46のいずれか1つによる方法。
48.該神経障害性疼痛が、脊髄傷害および/または脊髄損傷により引き起こされる中枢性疼痛症候群である、項目45~46のいずれか1つによる方法。
49.該神経障害性疼痛の型が、以下の原因:全身疾患、例えば糖尿病性神経障害;薬物誘導性病変、例えば化学療法による神経障害;外傷症候群および絞扼症候群;神経根および後部神経節の病変;HIV感染後の神経症;ヘルペス感染後の神経痛;神経根引き抜き損傷;脳神経病変;頭蓋神経痛、例えば、三叉神経痛;神経障害性癌痛;幻肢痛;末梢神経、神経叢および神経根の圧迫;傍腫瘍性末梢性ニューロパチーおよび神経節障害;癌治療、例えば化学療法、放射線、および外科的介入の合併症;複合性局所疼痛症候群;I型病変(以前は交感神経反射ジストロフィーとして知られた);およびII型病変(おおよそ灼熱痛に対応する);片頭痛および片頭痛の疼痛;主に視床である脳病変;梗塞、例えば視床梗塞または脳幹梗塞;視床または脳幹を圧迫する脳腫瘍または膿瘍;多発性硬化症;脳手術、例えば運動障害の症例の視床切開術;脊髄病変;脊髄傷害;脊髄手術、例えば脊髄前側索切離術;虚血病変;前脊髄動脈症候群;ワレンベルグ症候群;ならびに脊髄空洞症の群から選択される原因を有するものから選択される、項目45~46のいずれかによる方法。
50.該神経障害性疼痛が、慢性神経障害性疼痛である、項目45~49のいずれか1つによる方法。
51.炎症性疾患を処置するために用いられる、項目45~46のいずれか1つによる方法。
52.メタボリックシンドローム、ならびにI型糖尿病(TID)、関節リウマチ、全身エリテマトーデス、重症筋無力症、および多発性硬化症などの自己免疫疾患からなる群から選択される炎症性疾患を処置するため、特に糖尿病を処置するために用いられる、項目51の方法。
53.I型糖尿病および/またはII型糖尿病を処置するために用いられる、項目45~46のいずれか1つによる方法。
【国際調査報告】