(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】量子ビットをリセットするための方法と配置
(51)【国際特許分類】
H10N 60/10 20230101AFI20230711BHJP
【FI】
H10N60/10 Z ZAA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575402
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 FI2021050503
(87)【国際公開番号】W WO2022003249
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519394241
【氏名又は名称】アイキューエム フィンランド オイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,テンイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,コック ワイ
(72)【発明者】
【氏名】タン,クアン イェン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】モットネン,ミッコ
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AC06
4M113AC44
4M113AC45
4M113AC50
(57)【要約】
【解決手段】量子ビットをリセットするために、1つ以上の量子回路冷凍機があり、それぞれがトンネル接合と制御信号を受け取るための制御入力を備えている。制御信号に応答して、光子支援一電子トンネルがそれぞれのトンネル接合を横切って行われる。量子ビットと量子回路冷凍機の間には容量結合素子または誘導結合素子があり、各量子ビットを量子回路冷凍機に結合させる。量子ビット、量子回路冷凍機、結合素子は、極低温冷却環境下に置かれる。制御入力への共通制御信号線は、室温環境から前記極低温冷却環境に移行している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の量子ビットと、
1つ以上の量子回路冷凍機であって、前記1つ以上の量子回路冷凍機の各々は、トンネル接合と、制御信号を受け取るための制御入力とを備え、前記1つ以上の量子回路冷凍機の各々は、それぞれの制御入力を通じて受け取った制御信号に応答して、それぞれのトンネル接合にわたる光子支援単一電子トンネル形成を可能にするよう構成された、量子回路冷凍機と、
前記複数の量子ビットと前記1つ以上の量子回路冷凍機との間の結合素子であって、前記複数の量子ビットの各々を前記1つ以上の量子回路冷凍機の1つに結合するように構成された、結合素子と、を備え、
前記複数の量子ビットと、前記1つ以上の量子回路冷凍機と、前記結合素子とが極低温冷却環境で動作するように構成された配置であって、
前記1つ以上の量子回路冷凍機の制御入力への共通制御信号線を備え、前記共通制御信号線は、室温環境から前記極低温冷却環境に移行するように構成された配置。
【請求項2】
前記結合素子は、容量結合素子からなることを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項3】
前記結合素子は、誘導結合素子からなることを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項4】
前記1つ以上の量子回路冷凍機は、前記複数の量子ビットの少なくともサブセットに対する共有量子回路冷凍機から構成され、かつ
前記共有量子回路冷凍機のトンネル接合を、前記結合素子の少なくともそれぞれのサブセットを介して前記複数の量子ビットの前記サブセットに結合するための共振器と、を備えた請求項1から請求項3までのいずれかに記載の配置。
【請求項5】
前記共振器は、発振電気信号の共振周波数に合わせた長さを有し
前記それぞれのサブセットの前記結合素子は、前記共振器の前記長さに沿って、前記共振周波数における前記発振電気信号の振動振幅の最大値に対応する点に配置された請求項4に記載の配置。
【請求項6】
前記共振周波数は、前記共振器の前記長さが半波長となる基本共振周波数のn:番目の高調波周波数であり、
前記結合素子が容量結合素子からなる例では前記結合素子が位置する前記共振器の前記長さに沿った前記点のうちn+1個が存在し、
前記結合素子が誘導結合素子からなる例では前記結合素子が位置する前記共振器の前記長さに沿った前記点のうちn個が存在し、
nは、正の整数である請求項5に記載の配置。
【請求項7】
前記1つ以上の量子回路冷凍機は、前記複数の量子ビットの数と同数の量子回路冷凍機から構成され、
前記1つ以上の量子回路冷凍機の各々は、共通の基準電位に接続され、かつ
前記共通制御信号線は、前記制御信号を共通の電位で前記量子回路冷凍機のそれぞれの制御入力に結合するように構成される、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の配置。
【請求項8】
前記配置は、制御可能なデマルチプレクサを備え、
前記共通制御信号線は、前記制御可能なデマルチプレクサを介して前記制御信号を前記量子回路冷凍機のそれぞれの制御入力に結合するように構成され、かつ、
前記制御信号を前記量子回路冷凍機の選択されたもののそれぞれの制御入力に選択的に結合するために、前記制御可能なデマルチプレクサに結合されたデマルチプレクサ制御信号線と、を備える、請求項7に記載の配置。
【請求項9】
前記1つ以上の量子回路冷凍機は、発振信号で制御されるように構成されたRF-QCRであり、
前記共通制御信号線は、前記発振信号を前記1つ以上の量子回路冷凍機の制御入力に伝達するように構成されている、請求項1から請求項8までのいずれかに記載の配置。
【請求項10】
前記1つ以上の量子回路冷凍機は、前記複数の量子ビットの数と同数のRF-QCRからなり、かつ、
前記共通制御信号線からの前記発振信号を前記RF-QCRに分配するためのRFスプリッタと、を備える、請求項9に記載の配置。
【請求項11】
室温環境から極低温冷却環境へ共通の制御信号を導出するステップと、
前記共通の制御信号を1つ以上の量子回路冷凍機のそれぞれの制御入力に結合し、これにより、前記1つ以上の量子回路冷凍機のトンネル接合を横切る一電子トンネルを可能にするステップと、
複数の量子ビットによって放出される光子を用いて前記一電子トンネルを駆動し、前記複数の量子ビットをリセットさせるステップと、
を含む、前記極低温冷却環境において量子ビットをリセットするための方法。
【請求項12】
前記複数の量子ビットの少なくともサブセットと、前記複数の量子ビットの前記サブセットによって放出された前記光子を共有量子回路冷凍機に結合させるための共振器との間の結合を使用するステップと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記制御信号としてバイアス電圧を用い、
前記バイアス電圧の大きさは、前記トンネル接合の超伝導ギャップを克服するのに十分な大きさよりも第1の量だけ小さく、
前記第1の量は、前記複数の量子ビットによって放出される前記光子の光子エネルギーに等しい、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の量子ビットの各々に対して特定の量子回路冷凍機を使用するステップと、
前記特定の量子回路冷凍機を共通の基準電位に結合するステップと、
前記制御信号を、共通の電位で前記特定の量子回路冷凍機に同時に結合するステップと、
を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記特定の量子回路冷凍機のサブセットに対して、前記共通の制御信号を制御可能に逆多重化するステップと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、量子コンピューティングの技術に関する。特に、本発明は、極低温冷却環境に存在する量子コンピューティングデバイスの量子ビットをリセットすることに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導チップは、量子コンピューティングなどのさまざまなアプリケーションで使用されている。超伝導チップの中心にあるのは、2状態の量子力学系である量子ビットである。量子ビットの状態を制御された方法で変化させることは、量子コンピューティングの本質である。
【0003】
量子ビットをリセットするということは、量子ビットから余分なエネルギーを排出すること、つまり、量子ビットを最低エネルギーレベルまで冷却することを意味する。個々の量子ビットをリセットするための方法および配置は、EP3398213として公開された欧州特許出願から知られており、参照により本明細書に組み込まれる。前記先行技術文献に記載された回路素子は、一般に量子回路冷凍機またはQCRとして知られている。これは、通常の金属-絶縁体-超伝導体(NIS)接合で発生させることができる、光子支援単一電子トンネリングとして知られるプロセスに基づいている。NIS接合に適切なバイアス電圧を印加すると、通常の金属から絶縁体を横切って超伝導体への個々の電子のトンネリングが開始される。この単一電子トンネリングにはエネルギーが必要であり、このエネルギーは量子ビットから光子の形で吸収される。光子を放出すると、量子ビットがより低いエネルギー状態に崩壊し、最終的に量子ビットがリセットされる。
【0004】
図1は、極低温冷却環境に配置された量子ビットを含む量子コンピューティングシステムを示しており、量子ビット101、102、および103が例として示されている。任意の数の量子ビットが存在する可能性がある。基本的に、量子コンピューティングシステムの計算能力は、量子ビットが多いほど高くなる。周囲の室温環境に配置された信号処理装置104によって、入力信号が量子ビット101から103に注入され、そこから読み出し信号が得られる。各量子ビットをリセットするために、関連するQCRがあり、そのうちのQCR105、106、および107が例として示されている。各量子ビットとそれに関連するQCRとの間の結合は、量子ビットによって放出された光子が関連するQCRに吸収されることを可能にする任意の適切な形式を有することができる。QCRにおける単一電子トンネリングを活性化するバイアス信号は、QCR制御回路108から来る。これは、
図1に別個の機能ブロックとして示されている。実際の実装では、信号処理装置104の一部とすることができる。
【0005】
図1の既知の配置では、量子ビット制御線とQCRバイアス線の両方の数は、量子ビットの数に比例して直線的に増加する。室温環境と極低温冷却環境との間の信号線の提供は、量子ビットの数が大きくなるにつれて、ますます大きな問題を引き起こす可能性がある。各信号線には特定のスペースが必要であり、極低温冷却環境を作成するために使用されるクライオスタットに特定の熱負荷を引き起こす。これは、室温から極低温環境までの信号経路における熱負荷や信号損失による消費電力の大きさ、システムの占有面積の大きさとなって現れ、量子コンピュータ基盤のスケーラビリティに制限を与えることになる。また、量子コンピュータの数が直線的に増加するため、チップの面積や製造コストが増大し、クライオスタットの冷却電力も増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、室温環境と極低温冷却環境との間のインタフェースにおけるより簡単なハードウェア実装を可能にする方法で量子ビットをリセットするための方法および配置を提供することを目的としている。もう1つの目的は、クライオスタットへの熱負荷を制限して量子ビットをリセットできるようにすることである。さらなる目的は、量子ビットをリセットするためのハードウェアインターフェイスを設計する方法にかなりの自由を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、共通の制御信号が、共通の量子回路冷凍機を活性化することによって、または多数の量子回路冷凍機を同時に活性化することによって、またはその両方によって、複数の量子ビットのリセットに同時に影響を与えるアプローチを使用することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、量子ビットをリセットするための配置が提供される。この配置は、複数の量子ビットと、1つ以上の量子回路冷凍機とから構成される。各量子回路冷凍機は、トンネル接合と、制御信号を受信するための制御入力とを備え、各量子回路冷凍機は、それぞれの制御入力を介して受信した制御信号に応答して、それぞれのトンネル接合にわたる光子支援単一電子トンネル形成を可能にするように構成される。前記配置は、前記複数の量子ビットと前記1つ以上の量子回路冷凍機との間の結合素子を備える。前記結合素子は、前記複数の量子ビットの各々を前記1つ以上の量子回路冷凍機の1つに結合するように構成される。前記複数の量子ビット、前記1つ以上の量子回路冷凍機、及び前記結合素子は、極低温冷却環境下で動作するように構成される。前記配置は、前記1つ以上の量子回路冷凍機の制御入力に共通制御信号線を備える。前記共通制御信号線は、室温環境から前記極低温冷却環境に移行するように構成される。
【0009】
一実施形態によれば、前記結合素子は容量結合素子を含む。これには、寸法決めと製造が比較的容易な非ガルバニック結合の周知の手段によって結合を行うことができるという利点が含まれる。
【0010】
一実施形態によれば、結合素子は誘導結合素子を含む。これには、寸法と製造が比較的容易な非ガルバニック結合の周知の手段によって結合を行うことができるという利点が含まれる。
【0011】
一実施形態によれば、前記1つ以上の量子回路冷凍機は、前記複数の量子ビットの少なくともサブセットに共通の共有量子回路冷凍機を備える。その場合、装置は、結合素子の少なくともそれぞれのサブセットを介して、共有量子回路冷凍機のトンネル接合を複数の量子ビットのサブセットに結合するための共振器を備える。これには、量子ビット数が比較的多いシステムでも、限られた数の量子回路冷凍機しか必要ないという利点がある。
【0012】
一実施形態によれば、前記共振器は、発振電気信号の共振周波数に対して寸法決めされた長さを有する。次いで、前記それぞれのサブセットの結合素子は、前記共振周波数での前記発振電気信号の振動振幅の最大値に対応する前記共振器の前記長さに沿った点に配置することができる。これには、共振器と関連する量子ビットのそれぞれとの間の効率的な結合を達成できるという利点が含まれる。
【0013】
一実施形態によれば、前記共振周波数は、前記共振器の長さが半波長である基本共振周波数のn次高調波周波数である。次いで、結合素子が容量結合素子を含む場合、結合素子が位置する共振器の長さに沿ってn+1個の点が存在し得る。あるいは、前記結合素子が誘導結合素子を含む場合、前記結合素子が配置される共振器の長さに沿ってn個の前記点が存在してもよい。ここでnは正の整数である。これには、利用される共振周波数とリセットできる量子ビット数との間の論理的かつ直感的な関連付けを利用できるという利点が含まれる。
【0014】
一実施形態によれば、前記1つ以上の量子回路冷凍機は、前記複数の量子ビット内の量子ビットと同数の量子回路冷凍機を備える。次いで、前記1つ以上の量子回路冷凍機のそれぞれを共通基準電位に接続することができ、前記共通制御信号線は、共通電位で前記量子回路冷凍機のそれぞれの制御入力に前記制御信号を結合するように構成することができる。これには、非常に正確に定義された一意の共振周波数の量子ビットをリセットできるという利点があり、量子ビット間の干渉と不要な漂遊結合を最小限に抑えることができる。
【0015】
一実施形態によれば、装置は、制御可能なデマルチプレクサを備える。次いで、前記共通制御信号線は、前記制御可能なデマルチプレクサを介して前記制御信号を前記量子回路冷凍機のそれぞれの制御入力に結合するように構成することができる。この配置はまた、前記制御信号を前記量子回路冷凍機の選択されたもののそれぞれの制御入力に選択的に結合するために、前記制御可能なデマルチプレクサに結合されたデマルチプレクサ制御信号線を備えてもよい。これには、必要に応じて量子ビットの目的のサブセットをリセットできるという利点がある。
【0016】
一実施形態によれば、前記1つ以上の量子回路冷凍機は、発振信号で制御されるように構成されたRF-QCRである。次いで、前記共通制御信号線は、前記発振信号を前記1つ以上の量子回路冷凍機の制御入力に伝達するように構成され得る。これには、トンネル接合に支援エネルギーを選択的に注入することにより、量子回路冷凍機の動作を制御できるという利点がある。
【0017】
一実施形態によれば、前記1つ以上の量子回路冷凍機は、前記複数の量子ビット内の量子ビットと同数のRF-QCRを備える。その場合、装置は、前記発振信号を前記共通制御信号線から前記RF-QCRに分配するためのRFスプリッタを備えることができる。これには、室温環境から極低温冷却環境に至る高周波制御ラインの数を、高周波数で制御される回路素子に比べて少なく保つことができるという利点が含まれる。
【0018】
第2の態様によれば、極低温冷却環境において量子ビットをリセットするための方法が提供される。この方法は、室温環境から前記極低温冷却環境へ共通の制御信号を導通させることと、前記共通の制御信号を1つ以上の量子回路冷凍機のそれぞれの制御入力に結合し、これにより前記1つ以上の量子回路冷凍機のトンネル接合を横切る一電子トンネルを可能にし、複数の量子ビットによって放出される光子を使用して前記一電子トンネルを駆動し、これにより前記複数の量子ビットをリセットさせることとを含んでいる。
【0019】
一実施形態によれば、本方法は、前記複数の量子ビットの少なくともサブセットと、前記複数の量子ビットの前記サブセットによって放出された前記光子を共有量子回路冷凍機に結合するための共振器との間の結合を使用することを含む。これには、量子ビット数が比較的多いシステムでも、限られた数の量子回路冷凍機しか必要ないという利点がある。
【0020】
一実施形態によれば、本方法は、バイアス電圧を前記制御信号として使用することを含み、前記バイアス電圧の大きさは、前記トンネル接合の超伝導ギャップを克服するのに十分な大きさよりも第1の量だけ小さく、前記第1の量は前記複数のキュービットによって放出された前記光子の光子エネルギーに等しい。これは、量子回路冷凍機の正確に制御された動作を達成できるという利点を伴う。
【0021】
一実施形態によれば、本方法は、前記複数の量子ビットのそれぞれに特定の量子回路冷凍機を使用すること、前記特定の量子回路冷凍機を共通の基準電位に結合すること、および前記制御信号を前記特定の量子回路冷凍機に同時に共通の電位で結合することを含む。これには、非常に正確に定義された一意の共振周波数の量子ビットをリセットできるという利点があり、量子ビット間の干渉と不要な漂遊結合を最小限に抑えることができる。
【0022】
一実施形態によれば、本方法は、前記共通制御信号を前記特定の量子回路冷凍機のサブセットに制御可能に逆多重化することを含む。これには、必要に応じて量子ビットの目的のサブセットをリセットできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付図面は、本発明のさらなる理解を提供するために本明細書に含まれ、本明細書の一部を構成する本発明の実施形態を示し、本文の記載とともに本発明の原理の理解を助けている。
【
図2】
図2は、量子ビットをリセットするための配置を示している。
【
図3】
図3は、
図2の構成を実施するための第1のアプローチを示している。
【
図4】
図4は、
図2の構成を実施するための第2のアプローチを示している。
【
図5】
図5は、高調波振動モードでの腹の発生を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2は、量子コンピューティングシステムの一部を示している。量子コンピューティングシステムの一部は極低温冷却環境に置かれ、他の一部は隣接する室温環境に置かれる。一例として、極低温冷却環境は、それ自体が室温環境にあるクライオスタットの内部に配置することができる。「室温」という表示は、室温環境の環境条件が、人が住んで働く部屋の環境条件に対応することを実際に要求する制限として解釈されるべきではない。これは、
図2の左側の条件では、極低温冷却環境で見られる温度まで極低温冷却する必要がないことを示している。極低温冷却環境の環境条件は、わずか数ケルビン、またはわずか数ミリケルビン程度の1ケルビンよりかなり低い温度など、非常に低い温度を伴う場合がある。徐々に温度が低下する冷却段階が存在する可能性があるため、極低温冷却環境の一部にのみ最低温度が存在する可能性がある。システムの一部が極低温冷却環境内にあると言うのは、その部分がそのような段階のどの段階にあるかについての立場ではない。極低温冷却環境の環境条件は、高真空を伴う場合もある。これは、関連する低温を維持するための断熱材として周囲の高真空が通常必要とされるためである。
【0025】
図2に示す部分は、特に、量子計算システムの一部として量子ビットをリセットするための構成に関する。この構成は複数の量子ビットを含み、そのうち量子ビット201、202、および203が
図2に例として示されている。量子ビット制御ユニット104は、室温環境に位置する量子計算システムの部分に設けられる。この説明の目的では、量子ビット制御ユニット104の性質および動作は重要ではない。
図2では、量子ビット201-203が量子コンピューティング演算を行うことに関係する何らかの目的を持つことを念のため示しているに過ぎない。
【0026】
この配置は、1つ以上の量子回路冷凍機を備えるQCRブロック204も備える。この技術分野で確立された用語によれば、量子回路冷凍機は、独立型コンポーネントとして設計でき、トンネル接合と制御信号を受信するための制御入力を備える回路素子である。そのような量子回路冷凍機は、制御入力を介して受信された制御信号に応答して、トンネル接合を横切る光子支援単一電子トンネリングを可能にするように構成される。制御信号はバイアス信号とも呼ばれ、DCバイアス信号、パルスバイアス信号、ACバイアス信号のいずれでもかまわない。
【0027】
関連する量の大きさのオーダーの例を示すために、例えば、QCRのトンネル接合の超伝導ギャップが400マイクロエレクトロンボルト(96GHz×h、hはボルツマン定数)とすると、DCバイアス値はeあたり92GHz×hと計算される。ここで、eは電子の電荷である。この場合、バイアス電圧レベルは383マイクロボルトとなる。このようなバイアス電圧を前記例示的なQCRに適用すると、光子支援トンネルが発生するために、周波数4GHzの光子がその差を埋め合わせることができるようになる。励起された量子ビットがQCRに適切に結合された場合、励起エネルギーの対応する部分が、4GHzの光子の形で量子ビットからQCRに移動し、結果として量子ビットが冷却される可能性がある。
【0028】
図2に示すように、配置は、複数の量子ビット201-203とQCRブロック204内の1つ以上の量子回路冷凍機との間の結合205-207を含む。結合205-207は、例えば、複数の量子ビット201-203および1つ以上の量子回路冷凍機の間の複数の容量結合素子または誘導結合素子の間の結合素子を介して行うことができる。かかる結合素子は、複数の量子ビット201-203のそれぞれをQCRブロック204内の1つ以上の量子回路冷凍機と結合するように構成されている。
【0029】
容量結合および容量結合素子という用語は、量子回路の2つの素子を容量結合するために使用できるすべての可能な方法をカバーしている。容量結合素子の例には、平行プレートコンデンサ、フィンガコンデンサ、および集中素子回路が含まれるが、これらに限定されない。同様に、誘導結合および誘導結合素子という用語は、量子回路の2つの素子を誘導結合するために使用できるすべての可能な方法をカバーしている。誘導結合は、例えば、誘導結合素子としてSQUID(超伝導量子干渉素子)を用いることを含む。
【0030】
量子ビット201-203、量子回路冷凍機、および結合素子は、極低温冷却環境で動作するように構成されている。これは、実際には、それらが1つ以上の極低温集積回路または回路モジュールの一部として構築され、その材料が、動作中にクライオスタットで一般的な極低温での動作に適していることを意味する。このような極低温集積回路または回路モジュールは、クライオスタット内の極低温冷却構造に直接的または間接的に取り付けることができるようにも構築されており、それらへのおよびそれらからの外部接続は、クライオスタットへの熱負荷を最小限に抑えることを可能にする技術を用いて製造することができる。
【0031】
図1に示す従来技術の解決策とは対照的に、
図2の配置は、QCRブロック204内の1つ以上の量子回路冷凍機の制御入力209への共通制御信号線208を備える。共通制御信号線208は、室温環境から極低温冷却環境に移行するように構成される。配置のハードウェア面に関しては、室温環境から極低温冷却環境に移行するための信号線を構成することは、量子コンピューティングのセットアップの一部として配置を組み立てることができるように、物理的な信号線とコネクタを構築することを意味し、その一方、システム、および必要なコールドアンカリングおよびクライオスタットへの熱伝導を最小限に抑えるその他の手段を講じることができ、同時に良好な信号伝搬と電磁干渉に対する保護を保証する。
【0032】
室温環境では、QCR制御ユニット210は、1つ以上の量子回路冷凍機の制御入力209に送達される制御信号のソースとして使用され得る。QCR制御ユニット210は、スタンドアローンのユニットであってもよいし、量子ビット制御ユニット104または室温環境内の他のより大きな信号処理エンティティに含まれていてもよい。
【0033】
図3および4は、QCRブロック204を構築するための2つの基本的なアプローチおよび複数の量子ビットへのその結合を示す。
図3に示すアプローチによれば、QCRブロック204の1つ以上の量子回路冷凍機には、複数の量子ビット201-203の少なくともサブセットに共通の共有量子回路冷凍機がある。この配置は、共有量子回路冷凍機のトンネル接合302を、上述の結合素子の少なくともそれぞれのサブセットを介して複数の量子ビット201-203のサブセットに結合するための共振器301を備える。
【0034】
結合を最も効果的に利用するために、共振器301を特定の方法で寸法決めすることが有利である。一般に、共振器の共振周波数は高調波系列を構成し、共振周波数は第1、第2、第3などの高調波周波数として番号付けすることができる。一部の情報源では、最初の高調波周波数は基本周波数、基本共振周波数、またはゼロ次高調波周波数と呼ばれる。高調波周波数および共振器の寸法の特定の特性は、
図5に関して考慮され得る。λ/2(ラムダ/2)伝送線路共振器の場合、最初の高調波周波数は、発振電気信号の全波長501が電気信号の長さ502の正確に2倍になる周波数である。第1高調波周波数での発振電気信号の例が、
図5の実線グラフ503で示されている。
図5に示すように、第1高調波周波数は、λ/2伝送線路共振器の長さ502に沿った2つの電圧の腹504および505を含む。
【0035】
図5の破線グラフ506は、第2高調波周波数における発振電気信号の例を示す。
図5に示すように、第2高調波周波数は、λ/2伝送線路共振器の長さ502に沿った3つの電圧の腹507、508、および509を含む。一般に、n番目の高調波周波数(共振器の長さが1/2波長である基本的な共振周波数の)には、共振器の長さに沿ってn+1個の電圧の腹が含まれる。ここで、nは正の整数である。電圧の腹は、発振電気信号の電圧の振動振幅の最大値と呼ぶことができる。それに対応して、発振電気信号の電流の振動振幅の最大値が存在する。これらは、グラフ501および506の節、すなわち前記グラフが水平軸と交差する点に位置する。
図5の点線グラフ510は、第1高調波周波数および第2高調波周波数での振動からなる複合発振電気信号を示す。
【0036】
励起された量子回路素子(量子ビットなど)と共振器の間の容量結合は、容量結合が共振器の長さに沿った電圧振動の腹またはその近くで行われる場合に最も強くなる。したがって、
図3の共振器301は、発振電気信号の共振周波数に対して寸法決めされた長さを有する。
図3では、量子ビット201-203(のサブセット)への容量結合を行う容量結合素子が、前記共振周波数における前記発振電気信号の腹に対応する共振器の長さに沿った点303、304、および305に位置していると仮定される。
【0037】
励起された量子回路素子(量子ビットなど)と共振器の間の誘導結合は、誘導結合が共振器の長さに沿った電圧振動の節またはその近くで行われる場合に最も強くなる。繰り返すが、
図3の共振器301が発振電気信号の共振周波数に合わせた長さを有すると仮定すると、(サブセットの)量子ビット201-203への誘導結合を行う誘導結合素子が、前記共振周波数における発振電気信号の節に対応する共振器の長さに沿った点に位置する対応レイアウトを提示することができるであろう。
【0038】
励起された量子回路素子は、共振器内で腹が発生する周波数で共振周波数を持たなければならない。
【0039】
容量結合素子または誘導結合素子が、発振電気信号の振動振幅の最大値に対応する「点」にあるという定義は、「点またはその付近」を意味すると理解されるべきである。結合素子を腹または節に配置しようとする理由は、発生する電圧または電流のそれぞれの最大振幅を利用することを目的としているためであり、一般に、電圧が高いほど、または電流が大きいほど、結合より適切に結合に使用できるためである。たとえば、共振器の導体のトポロジーと量子ビットの位置との関係により、腹または節の正確な既知の位置に結合素子を配置することが不可能または不利になる場合は、腹または節にできるだけ近い位置、または上記の目的と他の設計上の考慮事項とのバランスが最適な位置に配置することができる。
【0040】
図4は、QCRブロック204が、複数の量子ビット内の量子ビット201-203と同数の量子回路冷凍機401-403を含む別の基本的なアプローチを示している。量子回路冷凍機401-403の各々は、共通の基準電位に接続されており、
図4における局所接地電位である。共通制御信号線404は、量子回路冷凍機401-403のそれぞれの制御入力に共通電位で制御信号を結合するように構成される。本明細書で先に論じた数値例を取ると、制御信号の共通電位は、例えば、共通基準電位に対して数百マイクロボルトまたは数ミリボルトであり得る。
【0041】
図6は、
図3に示したアプローチに従って量子ビットをリセットするための配置を採用する量子コンピューティング回路の一部を示す。3つの量子ビット601、602、および603と、1つの量子回路冷凍機604が例として示されている。量子ビット601-603は、より大きな量子コンピューティングシステム内のすべての量子ビットのサブセットを構成することができる。量子ビット601、602、および603への容量結合が例として使用されるが、誘導結合も同様に使用され得る。
【0042】
量子回路冷凍機604は、制御入力605を備える。先に説明したように、量子回路冷凍機604は、トンネル接合(
図6には別個に図示せず)を含み、制御入力605を介して受信した制御信号に応答して、トンネル接合を横切る光子支援単一電子トンネリングを可能にするように構成される。同じ量子回路冷凍機604が3つの量子ビット601-603すべてに対して冷却効果を有することができるので、量子回路冷凍機604のその制御入力605に結合される制御信号線は、共通制御信号線と呼ぶことができる。同様に、量子回路冷凍機604は、複数の量子ビット601-603に共通の共有量子回路冷凍機と呼ぶことができる。
【0043】
図6に示す配置は、共有量子回路冷凍機604を量子ビット601-603に結合するための共振器606を備える。結合は、一組の容量結合素子を介して行われ、そのうちの容量結合素子607が例として示されている。共振器606は、発振電気信号の共振周波数に対して寸法決めされた長さを有する。容量結合素子は、共振周波数における発振電気信号の電圧の腹に対応する共振器606の長さに沿った点に配置される。
図5のグラフと比較すると、共振器606は、その長さが半波長である基本共振周波数に対して寸法が決められていると仮定することができる。基本共振周波数の2倍である第2高調波周波数は、その長さに沿って3つの電圧の腹を含み、そのうち2つは共振器606の端部にあり、3つ目は中央にある。
【0044】
図7は、量子コンピューティングシステムの一部と、量子ビットをリセットするための配置を示し、その中で、
図3および
図6を参照して上で説明した原理が任意の数の量子ビットに一般化され、また、ここで、量子ビット701、702、703、および704は、量子コンピューティングシステム内のすべての量子ビットのサブセットを構成するか、量子コンピューティングシステム内のすべての量子ビットである可能性がある(言い換えると、サブセットは適切なサブセットである必要はなく、極端な場合はセット全体になることもある)。
図6と同様に、ここでも容量結合が例として使用されているが、誘導結合も同様に使用することができる。
【0045】
複数の量子ビット701-704は、共通の量子回路冷凍機705を共有する。量子回路冷凍機705の制御入力は、706として示される。配置は、容量結合素子のそれぞれのサブセットを介して共有量子回路冷凍機705を複数の量子ビット701-704に結合するための共振器707を備える。共振器707は、発振信号の共振周波数に対して寸法決めされた長さを有し、容量結合素子は、共振周波数における発振電気信号の腹に対応する共振器707の長さに沿った点に配置される。共振周波数は、共振器707の長さが半波長である基本共振周波数のn次高調波周波数であってもよい。換言すれば、共振周波数の大きさは、基本共振周波数のn倍であってもよい。構成にはn+1個の量子ビットがあり、共振器707に沿って容量結合素子が位置するn+1個の点がある(nは正の整数である)。
【0046】
図示された実施形態間の比較を容易にするために、
図8,
図9および
図10においても容量結合が例として使用される。ただし、誘導結合も同様に使用できることに注意すべきである。
【0047】
図8は、
図4に示されるアプローチに従って量子ビットをリセットするための構成を採用する量子計算回路の一部を示す。量子ビット801、802、803、および804が例として示されている。量子ビット801-804は、より大きな量子コンピューティングシステムにおいてすべての量子ビットのサブセットを構成するか、またはそれらは量子コンピューティングシステムにおけるすべての量子ビットであり得る(言い換えれば、サブセットは適切なサブセットである必要はない。ただし、極端な場合はセット全体になる可能性がある)。
【0048】
図8の配置は、配置内の量子ビットと同数の量子回路冷凍機805、806、807、および808を備える。各量子回路冷凍機805-808は、ここではローカル接地電位である共通基準電位に接続される。量子回路冷凍機805-808の制御入力は、809、810、811、および812として示されている。共通制御信号線813は、制御信号を、共通の電位で、量子回路冷凍機805-808の量子回路冷凍機のそれぞれの制御入力809-812に結合するように構成されている。これは、共通制御信号線813と量子回路冷凍機805-808の制御入力809-812のそれぞれとの間の接続において、それらの間の電位差を生じ得るような共通制御信号線813と制御入力809-812との間のインピーダンスの差がないように達成される。
【0049】
図6および
図7の実施形態においてこの共振周波数は、共振器606または707において、量子ビットへの容量結合が行われる点で電圧の腹を発生させる周波数である。典型的な量子コンピューティングシステムでは、量子ビットはとにかくいくつかの周波数調整能力を備えているので、適切な大きさの少なくとも1つの共通の共振周波数の必要条件は、量子ビットがリセットされる時間の間、適切に周波数調整することによって達成され得る。
【0050】
図8の実施形態では、量子回路冷凍機805-808の各々は、特定の共振器に結合され、そのうちの左端の共振器814は、例として示されている。このような場合、各量子ビット-共振器-ペアは、量子ビットから量子回路冷凍機への光子放出が可能となるように、量子ビットと共振器の共振周波数が共通でなければならず、フォトン支援単一電子トンネル形成のために、量子ビットから量子回路冷凍機への光子放出が可能である。これは、量子ビットとそれぞれの共振器の寸法を適切に設定することで実現可能である。共通の制御信号は、共通の基準電位に対して同じ電位で量子回路冷凍機805-808のそれぞれに現れるため、それぞれのトンネル接合における超伝導ギャップは、それぞれの場合において、共振周波数における光子エネルギーと合計したちょうどその大きさの外部制御信号が単一電子トンネルを可能にするように選択する必要がある。これも適切な寸法にすることで実現できる。
【0051】
図9は、
図4に示したアプローチによる量子ビットをリセットするための配置を採用した量子コンピューティング回路の一部を示し、一定の追加を行ったものである。量子ビット801-803、量子ビット固有の量子回路冷凍機805-807、それらの制御入力809-811、およびQCR固有の共振器(例:共振器814)は、
図8の対応する部分と同様である。
図9の配置は、制御可能なデマルチプレクサ901からなり、これは、共通の入力信号をその出力の選択されたサブセットに、あるいはすべての出力に制御可能に分配することができる装置である。制御可能なデマルチプレクサ901は、極低温冷却環境内に配置されている。共通制御信号線902は、制御可能なデマルチプレクサ901を介して量子回路冷凍機805-807のそれぞれの制御入力809-811に制御信号を結合するように構成される。制御信号を量子回路冷凍機の選択されたもののそれぞれの制御入力に選択的に結合するために、デマルチプレクサ制御信号線903が設けられ、制御可能デマルチプレクサに結合される。
【0052】
図9のような制御可能なデマルチプレクサの使用は、複数の量子ビットの全てまたはそれらのサブセットのみが任意の一度にリセットされるべきかどうかを、ユーザが選択することを可能にする。ユーザによってなされた選択は、選択コマンドとして、デマルチプレクサ制御信号線903を介して制御可能なデマルチプレクサ901に送信され、この信号線は、共通制御線208、404、813、又は902と同様の方法で室温環境から極低温冷却環境へ来ることができる。
【0053】
図10は、
図3および
図4によるアプローチを組み合わせた、量子ビットをリセットするための配置を採用した量子コンピューティング回路の一部を示す。各水平線は、それら全てに共通する共有量子回路冷凍機を有する。例えば、量子ビット1001、1002、1003、及び1004とそれらの共有量子回路冷凍機1005を参照されたい。各水平線はまた、共有量子回路冷凍機を、容量結合素子のそれぞれのセットを介してその水平線上の量子ビットに結合するための共振器を構成する;例えば、共振器1007を参照されたい。共振器は、発振信号の共振周波数に対して寸法決めされた長さを有し、容量結合素子は、共振周波数における発振電気信号の電圧の腹に対応するその長さに沿った点に配置されている。
【0054】
配置は、水平線(または、より一般的には、量子ビットのサブセット)の数と同じ数の量子回路冷凍機からなり(量子回路冷凍機1005、1015、および1025を参照)、これらの量子回路冷凍機の各々は、共通の基準電位に接続されている。共通制御信号線1031は、量子回路冷凍機1005、1015、1025のそれぞれの制御入力1006、1016、1026に制御信号を共通の電位で結合するように構成される。
【0055】
図10のような配置において、共振器1007、1017、および1027は、異なる基本共振周波数のために寸法決めされてもよく、および/またはそれらの長さに沿って異なる数の電圧の腹が存在してもよい。このようにして、量子ビット1001-1004、1011-1014、および1021-1024の異なるサブセットがリセットのために調整される必要がある共振周波数に関して、より柔軟性を達成することができる。
【0056】
図9のような制御可能なデマルチプレクサを、共通制御信号線1031と量子回路冷凍機1005、1015及び1025の少なくともサブセットとの間に追加することができる。これにより、オペレータは、任意の一度にリセットするための水平量子ビット線の所望の数を選択することができるであろう。
【0057】
前述の説明では、1つ以上の量子回路冷凍機への共通の制御信号は、一般に、DCまたは準DC制御信号を運ぶと仮定されている。代替案として、高周波の発振制御信号で制御される、いわゆるRF-QCRを使用することができる。また、DC(または擬似DC)信号と発振信号を重畳した制御信号でもよい。
【0058】
1つ以上のQCRを制御するための高周波制御信号の使用は、QCRトンネル接合に「アシスト」エネルギーを注入するための制御信号の使用に基づくものである。適切に実行された場合、注入されたRFエネルギーの量は、電子が接合を横切ってトンネルするために吸収する光子の数と相関するようにすることができ、これは、ひいては、冷却されるべき量子回路素子のより効果的な冷却を意味する。
【0059】
図11は、
図3を参照して先に説明したアプローチに準拠した共有量子回路冷凍機204としてRF-QCRを使用することを概略的に示している。高周波制御信号は、共通制御信号線208を介してRF-QCR204にもたらされ、そこで、例えば共振器1102を介して共有量子回路冷凍機のトンネル接合1101に結合され得る。共振器1102は必須ではなく、高周波制御信号は、共有量子回路冷凍機のトンネル接合1101にも直接結合され得る。高周波制御信号の周波数は、RF-QCRの共振器301の共振周波数よりもかなり高くてもよく、例えば、RF-QCRの共振器301の共振周波数の2倍又は3倍であってもよい。
【0060】
図12は、
図4を参照して先に説明したアプローチに準拠した複数のRF-QCR1201、1202、及び1203の使用を模式的に示している。高周波制御信号は、共通制御信号線1204を介してRFスプリッタ1205にもたらされ、そこから複数のRF-QCR1201、1202、1203に取られる。この場合、RFスプリッタ1205は、例えば伝送線路で構成されてもよく、当該伝送線路にもたらされる高周波制御信号の周波数は、RF-QCR1201、1202、1203のQCR共振器の共振周波数の倍数であってよい。
【0061】
技術の進歩に伴い、本発明の基本的な考え方は様々な方法で実施され得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、本発明及びその実施形態は、上述した例に限定されるものではなく、代わりに、特許請求の範囲に記載された範囲内で様々に変化させることができる。
【国際調査報告】