(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】シリコンベースマイクロフォン装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20230711BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20230711BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H04R19/04
H04R3/00 320
H04R1/02 106
H04R1/02 107
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576185
(86)(22)【出願日】2021-02-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 CN2021075883
(87)【国際公開番号】W WO2021248930
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202010520020.7
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522478846
【氏名又は名称】通用微(深▲チェン▼)科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】GMEMS TECH SHENZHEN LIMITED
【住所又は居所原語表記】Room 201, BlocK A, No.1,QianWan Road 1,Qianhaishen Port Cooperative District, Shenzhen, Guangdong 518000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】王 雲龍
(72)【発明者】
【氏名】呉 広華
(72)【発明者】
【氏名】藍 星爍
【テーマコード(参考)】
5D017
5D021
5D220
【Fターム(参考)】
5D017BC03
5D017BC15
5D021CC09
5D021CC11
5D021CC15
5D021CC18
5D021CC19
5D220BA22
5D220BA23
5D220BB00
(57)【要約】
本願は、シリコンベースマイクロフォン装置及び電子機器を提供する。当該シリコンベースマイクロフォン装置は、少なくとも2つの音響導入孔が開設されている回路基板と、回路基板の一側に覆設されるシールドケースと、偶数個の差動式シリコンベースマイクロフォンチップであって、いずれも音響キャビティ内に位置し、各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップのうち、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体が、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体に電気的に接続され、前記1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体が、前記もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体に電気的に接続される、差動式シリコンベースマイクロフォンチップと、取付板であって、音響導入孔と連通する偶数個の開孔が開設されており、少なくとも1つの開孔が第1の領域の音波を取得するために用いられ、少なくとももう1つの開孔が第2の領域の音波を取得するために用いられる、取付板と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの音響導入孔が開設されている回路基板と、
前記回路基板の一側に覆設され、かつ前記回路基板と共に音響キャビティを形成するシールドケースと、
偶数個の差動式シリコンベースマイクロフォンチップであって、いずれも前記音響キャビティ内に位置し、各前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップが、各前記音響導入孔に一対一に対応して設置され、各前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップのバックキャビティが、対応する前記音響導入孔と連通し、各2つの前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップのうち、1つの前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体が、もう1つの前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体に電気的に接続され、前記1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体が、前記もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体に電気的に接続される、差動式シリコンベースマイクロフォンチップと、
取付板であって、前記回路基板において前記シールドケースから離れた側に設置され、偶数個の開孔が開設され、前記開孔が前記音響導入孔と連通し、少なくとも1つの前記開孔が第1の領域の音波を取得するために用いられ、少なくとももう1つの前記開孔が第2の領域の音波を取得するために用いられる、取付板と、を含むシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項2】
各2つの前記開孔のうち、1つの前記開孔は第1の領域の音波を取得するために用いられ、もう1つの前記開孔は第2の領域の音波を取得するために用いられる、請求項1に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項3】
少なくとも2つの音響導入通路構造体をさらに含み、
前記音響導入通路構造体は、前記取付板において前記回路基板から離れた側に接続され、
前記少なくとも2つの音響導入通路構造体のうちの1つは、一端が前記少なくとも1つの前記開孔と連通し、かつ他端が第1の領域の音波を取得するために用いられ、
前記少なくとも2つの音響導入通路構造体のうちのもう1つは、一端が前記少なくとももう1つの前記開孔と連通し、かつ他端が第2の領域の音波を取得するために用いられる、請求項1又は2に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項4】
前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップは、間隔をあけて積層して設置された上部背極板、半導体振動膜及び下部背極板をさらに含み、
前記上部背極板及び前記半導体振動膜は、前記第1のマイクロフォン構造体の本体を構成し、前記半導体振動膜及び前記下部背極板は、前記第2のマイクロフォン構造体の本体を構成し、
前記上部背極板及び前記下部背極板の、前記音響導入孔にそれぞれに対応する部分に、いずれも複数の気流孔が設置されている、請求項1又は2に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項5】
各2つの前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップは、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ及び第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップを含み、
前記第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1の上部背極板は、第1の信号を形成するために、第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2の下部背極板に電気的に接続され、
前記第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1の下部背極板は、第2の信号を形成するために、第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2の上部背極板に電気的に接続される、請求項4に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項6】
前記第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1の半導体振動膜は、前記第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2の半導体振動膜に電気的に接続され、前記第1の半導体振動膜と前記第2の半導体振動膜のうちの少なくとも1つは、定電圧源に電気的に接続するために用いられる、請求項5に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項7】
前記シリコンベースマイクロフォン装置は、制御チップをさらに含み、
前記制御チップは、前記音響キャビティ内に位置し、かつ前記回路基板に電気的に接続され、
前記第1の上部背極板と前記第2の下部背極板のうちの1つは、前記制御チップの1つの信号入力端子に電気的に接続され、前記第1の下部背極板及び前記第2の上部背極板のうちの1つは、前記制御チップのもう1つの信号入力端子に電気的に接続される、請求項6に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項8】
前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップは、シリコン基板を含み、
前記第1のマイクロフォン構造体及び前記第2のマイクロフォン構造体は、前記シリコン基板の一側に積層して設置され、
前記シリコン基板は、前記バックキャビティを形成するための貫通孔を有し、前記貫通孔は、前記第1のマイクロフォン構造体にも前記第2のマイクロフォン構造体にも対応し、前記シリコン基板は、前記第1のマイクロフォン構造体及び前記第2のマイクロフォン構造体の一側から離れて前記回路基板に固定的に接続され、前記貫通孔は、前記音響導入孔と連通する、請求項4に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項9】
前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップは、パターン化された第1の絶縁層、第2の絶縁層及び第3の絶縁層をさらに含み、
前記基板、前記第1の絶縁層、前記下部背極板、前記第2の絶縁層、前記半導体振動膜、第3の絶縁層及び前記上部背極板は、順に積層して設置される、請求項8に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項10】
前記シリコンベースマイクロフォン装置は、接続リングをさらに含み、
前記接続リングは、前記取付板の前記開孔と前記回路基板の前記音響導入孔との間に接続されて、前記開孔と前記音響導入孔との間に気密音響通路を形成する、請求項1に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項11】
前記差動式シリコンベースマイクロフォンチップは、シリカゲルにより前記回路基板に固定的に接続されることと、
前記シールドケースは、前記回路基板に電気的に接続される金属ケースを含むことと、
前記シールドケースは、半田ペースト又は導電性接着剤により前記回路基板の一側に固定的に接続されることと、
前記回路基板は、プリント回路基板を含むことと、のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1に記載のシリコンベースマイクロフォン装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のシリコンベースマイクロフォン装置を含む電子機器。
【請求項13】
外部が第1の領域であり、内部が第2の領域であり、
前記シリコンベースマイクロフォン装置の少なくとも2つの音響導入通路構造体のうち、1つの音響導入通路構造体の他端は、前記電子機器の外部の音波を取得するために前記電子機器から突出し、もう1つの音響導入通路構造体の他端は、前記電子機器の内部の音波を取得するために前記電子機器の内部に位置する、請求項12に記載の電子機器。
【請求項14】
前記シリコンベースマイクロフォン装置の取付板は、前記電子機器のマザーボードである、請求項12又は13に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、音響電気変換の技術分野に関し、具体的には、シリコンベースマイクロフォン装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の発展に伴い、携帯電話などの端末のユーザはますます多くなっている。ユーザの携帯電話に対する要求は、通話だけでなく、高品質の通話効果の提供も含み、特に現在の移動マルチメディア技術の発展に伴い、携帯電話の通話品質がより重要になり、携帯電話のマイクロフォンは、携帯電話の音声ピックアップ装置として、その設計の良否が通話品質に直接影響を与える。現在最も広く使用されているマイクロフォンは、従来のエレクトレットマイクロフォン及びシリコンベースマイクロフォンを含む。
【0003】
既存のシリコンベースマイクロフォンは、音声信号を取得するときに、マイクロフォンのシリコンベースマイクロフォンチップが、受けた音波に作用されて振動を発生させ、当該振動が、電気信号を形成できる容量変化をもたらす。これにより、音波が電気信号に変換して出力される。しかしながら、現在のマイクロフォンのノイズに対する処理効果が低く、出力されるオーディオ信号の品質が影響される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、既存方式の欠点に対して、従来技術に存在する、マイクロフォンのノイズに対する処理効果が低く、出力されるオーディオ信号の品質が影響されるという技術的課題を解決するためにシリコンベースマイクロフォン装置及び電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、本願の実施例に係るシリコンベースマイクロフォン装置は、
少なくとも2つの音響導入孔(「音孔」とも呼ばれる)が開設されている回路基板と、
回路基板の一側に覆設され、回路基板と共に音響キャビティを形成するシールドケースと、
偶数個の差動式シリコンベースマイクロフォンチップであって、いずれも音響キャビティ内に位置し、各差動式シリコンベースマイクロフォンチップが、各音響導入孔に一対一に対応して設置され、各差動式シリコンベースマイクロフォンチップのバックキャビティが、対応する音響導入孔と連通し、各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップのうち、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体が、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体に電気的に接続され、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体が、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体に電気的に接続される、差動式シリコンベースマイクロフォンチップと、
取付板であって、回路基板においてシールドケースから離れた側に設置され、偶数個の開孔が開設され、開孔が音響導入孔と連通し、少なくとも1つの開孔が第1の領域の音波を取得するために用いられ、少なくとももう1つの開孔が第2の領域の音波を取得するために用いられる、取付板と、を含む。
【0006】
第2の態様によれば、本願の実施例に係る電子機器は、第1の態様に係るシリコンベースマイクロフォン装置を含む。
【発明の効果】
【0007】
本願の実施例に係る技術的解決手段による有益な技術的効果は以下のとおりである。偶数個の差動式シリコンベースマイクロフォンチップを用いて音響電気変換を行い、各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップのうち、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップのバックキャビティが回路基板の音響導入孔及び取付板の開孔を介して第1の領域の音波を取得することにより、第1の領域の音波が当該差動式シリコンベースマイクロフォンチップに作用し、かつ当該差動式シリコンベースマイクロフォンチップにより第1の音波電気信号を生成することができる。
もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップのバックキャビティが回路基板の音響導入孔及び取付板の開孔を介して第2の領域の音波を取得することにより、第2の領域の音波が当該差動式シリコンベースマイクロフォンチップに作用し、かつ当該差動式シリコンベースマイクロフォンチップにより第2の音波電気信号を生成することができる。
音波の作用で、差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体と第2のマイクロフォン構造体は、変化量の幅が同じであり、符号が逆である電気信号をそれぞれに生成する。そのため、本願の実施例において、各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップのうち、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体をもう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体に電気的に接続し、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体をもう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体に電気的に接続することにより、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップが生成する第1の音波電気信号と、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップが生成する第1の音波電気信号とを重ねることができる。これで、第1の音波電気信号と第2の音波電気信号において変化量の幅が同じであって符号が逆である同じ音源からの音波信号成分(一般的にはノイズ信号である)を互いに弱めるか又は相殺して、オーディオ信号の品質を向上させることができる。
【0008】
本願の付加的な態様及び利点の一部が以下に説明されるが、これらは以下の説明から明らかになるか、又は本願を実施することによって理解される。
【0009】
本願の上記及び/又は付加的な態様及び利点は、図面を参照した以下の実施例の説明から明らかになり、容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本願の実施例に係るシリコンベースマイクロフォン装置の内部構造の概略図
【
図2】本願の実施例に係るシリコンベースマイクロフォン装置の取付板及び接続リングの概略構成図
【
図3】本願の実施例に係るシリコンベースマイクロフォン装置の単一の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの概略構成図
【
図4】本願の実施例に係るシリコンベースマイクロフォン装置の2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップの接続の概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願を以下に詳細に説明し、本願の実施例の例は図面に示され、図中、全体を通して同一又は類似の符号は、同一若しくは類似の部材又は同一若しくは類似の機能を有する部材を示す。また、既知の技術の詳細な説明は、示される本願の特徴に対して必要ではなければ、省略される。以下に図面を参照して説明される実施例は、本願を解釈するための例示的なものに過ぎず、本願を限定するものとして解釈されることができない。
【0012】
当業者であれば、特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語と科学用語を含む)は、本願の属する技術分野における当業者の一般的な理解と同じ意味を有することを理解することができる。また、一般的な辞書に定義されているような用語は、従来技術の文脈における意味と一致する意味を有するものとして理解されるべきであり、本明細書で定義されない限り、理想化又は過度に形式化された意味として解釈されないものであると理解されたい。
【0013】
当業者であれば理解できるように、特記がない限り、本明細書で使用される単数形「一」、「1つ」、「上記」及び「当該」は、複数形をも含み得る。本願の明細書で使用される「含む」という用語は、上記特徴、整数、素子及び/又はアセンブリが存在していることを意味するが、1つ以上の他の特徴、整数、素子、アセンブリ、及び/又は、それらの組み合せが存在していることや追加されていることを排除しないことをさらに理解されたい。ある素子が他の素子に「接続」又は「結合」されると記載されている場合、当該素子が他の素子に直接接続又は結合されてもよく、中間素子を介して接続又は結合されてもよいことを理解されたい。また、本明細書で使用される「接続」又は「結合」は、無線接続又は無線結合を含む。本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、1つ以上の列挙された関連項目のすべて又はいずれか1つ及びすべての組み合わせを含む。
【0014】
本願の発明者は、研究により、スマートスピーカーなどのIOT(The Internet of Through、モノのインターネット)装置の普及に伴い、ユーザが発声中のスマートデバイスに対して音声コマンドを使用することが容易ではないことを見出した。例えば、音楽を再生中のスマートスピーカーに中断や、ウェイクアップなどの音声コマンドを発するか、又は携帯電話のハンズフリーモード(すなわち、hands-free operation)で通話交流を行う場合では、音声コマンドを使用することが容易ではない。多くの場合、ユーザはIOT装置にできるだけ近づき、固有のウェイクアップワードで音楽の再生を中断してから人間とコンピュータとの相互作用を行う必要がある。これらの典型的な音声相互作用のシーンにおいて、IOT装置が使用中であると、その自体が音楽を再生しているか又はスピーカにより発声しているため、機体内部のノイズが発生する。このようなノイズがIOT装置のマイクロフォンによりピックアップされるため、エコー除去の効果が低くなる。音楽を再生している携帯電話、TWS(True Wireless Stereo、完全ワイヤレスステレオ)イヤホン、掃除ロボット、スマートエアコン、スマートレンジフードなどの内部ノイズが大きいスマートホーム製品では、この現象は特に顕著に現れる。
【0015】
本願に係るシリコンベースマイクロフォン装置及び電子機器は、従来技術の上述した技術的課題を解決することを目的とする。
【0016】
以下、具体的な実施例により、本願の技術的解決手段及び本願の技術的解決手段が上記技術的課題をどのように解決するかについて詳細に説明する。
【0017】
本願の実施例はシリコンベースマイクロフォン装置を提供し、当該シリコンベースマイクロフォン装置の概略構成図は
図1及び
図2に示す通りであり、当該シリコンベースマイクロフォン装置は、回路基板100、シールドケース200、偶数個の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300及び取付板500を含む。
【0018】
回路基板100に少なくとも2つの音響導入孔が開設されていてもよい。
【0019】
シールドケース200は、回路基板100の一側に覆設され、かつ回路基板100と共に音響キャビティ210を形成する。
【0020】
偶数個の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300は、いずれも音響キャビティ210内に位置する。各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300は、各音響導入孔に一対一に対応して設置され、各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のバックキャビティ303は、対応する音響導入孔と連通する。各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のうち、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の第1のマイクロフォン構造体301は、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の第2のマイクロフォン構造体302に電気的に接続され、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の第2のマイクロフォン構造体302は、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の第1のマイクロフォン構造体301に電気的に接続される。
【0021】
取付板500は、回路基板100においてシールドケース200から離れた側に設置され、取付板500に偶数個の開孔が開設され、開孔が音響導入孔と連通する。少なくとも1つの開孔は第1の領域の音波を取得するために用いられ、少なくとももう1つの開孔は第2の領域の音波を取得するために用いられる。
【0022】
本実施例において、偶数個の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300を用いて音響電気変換を行う。なお、
図1のシリコンベースマイクロフォン装置は、2つのみの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300を例として示しているが、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の数はこれに限定されない。
【0023】
いくつかの可能な実施形態において、各2つの開孔のうち、1つの開孔は第1の領域の音波を取得するために用いられ、もう1つの開孔は第2の領域の音波を取得するために用いられる。すなわち、各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のうち、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のバックキャビティ303は、回路基板100の音響導入孔及び取付板500の1つの開孔を介して第1の領域の音波を取得し、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のバックキャビティ303は、回路基板100のもう1つの音響導入孔及び取付板500のもう1つの開孔を介して第2の領域の音波を取得する。
【0024】
具体的には、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aのバックキャビティ303aが、回路基板100の第1の音響導入孔110a及び取付板500の第1の開孔510を介して第1の領域と連通することにより、第1の領域の音波は第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aに作用し、かつ第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aにより第1の音波電気信号を生成することができる。
【0025】
第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bのバックキャビティ303bが、回路基板100の第2の音響導入孔110b及び取付板500の第2の開孔520を介して第2の領域と連通することにより、第2の領域の音波は第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aに作用し、かつ第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bにより第2の音波電気信号を生成することができる。
【0026】
説明の便宜上、本明細書において、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300において回路基板100から離れた側にあるマイクロフォン構造体を第1のマイクロフォン構造体301として定義し、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の回路基板100に近い側にあるマイクロフォン構造体を第2のマイクロフォン構造体302として定義する。
【0027】
音波の作用で、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の第1のマイクロフォン構造体301と第2のマイクロフォン構造体302は、変化量の幅が同じであり、符号が逆である電気信号をそれぞれに生成する。そのため、本願の実施例において、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aの第1のマイクロフォン構造体301aを第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bの第2のマイクロフォン構造体302bに電気的に接続し、かつ第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aの第2のマイクロフォン構造体302aを第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bの第1のマイクロフォン構造体301bに電気的に接続することにより、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aが生成する第1の音波電気信号と第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bが生成する第2の音波電気信号とを重ねることで、第1の音波電気信号と第2の音波電気信号とにおける、変化量の幅が同じであって符号が逆である同音波の信号成分(一般的にはノイズ信号である)を互いに弱めるか又は相殺して、オーディオ信号の品質を向上させることができる。
【0028】
一実施形態において、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300は、シリカゲルにより回路基板100に固定的に接続される。
【0029】
シールドケース200と回路基板100との間に、比較的密閉された音響キャビティ210が取り囲まれるように形成される。音響キャビティ210内の各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300などの素子に対する電磁干渉を遮蔽する役割を果たすために、シールドケース200は金属ケースを含んでもよく、金属ケースが回路基板100に電気的に接続される。
【0030】
一実施形態において、シールドケース200は、半田ペースト又は導電性接着剤により回路基板100の一側に固定的に接続されてもよい。
【0031】
一実施形態において、回路基板100は、PCB(Printed Circuit Board、プリント回路基板)を含んでもよい。
【0032】
いくつかの可能な実施形態において、シリコンベースマイクロフォン装置は、少なくとも2つの音響導入通路構造体(音響導入チャネル構造体とも呼ばれる)をさらに含んでもよい。
【0033】
音響導入通路構造体は、取付板500において回路基板100から離れた側に接続される。
【0034】
少なくとも2つの音響導入通路構造体のうちの1つの音響導入通路構造体は、一端が少なくとも1つの開孔に接続され、他端が第1の領域の音波を取得するために用いられる。
【0035】
少なくとも2つの音響導入通路構造体のうちのもう1つの音響導入通路構造体は、一端が少なくとももう1つの開孔に接続され、他端が第2の領域の音波を取得するために用いられる。
【0036】
本実施例において、少なくとも2つの音響導入通路構造体は、異なる領域の音波を各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300に導いて、各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300に、対応する音波電気信号を生成させることができる。
【0037】
具体的には、
図1に示すように、第1の音響導入通路構造体710の一端は取付板500の第1の開孔510と連通し、かつ回路基板の第1の音響導入孔110aを介して第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aのバックキャビティ303aと連通する。第1の音響導入通路構造体710の他端が第1の領域まで延びていることにより、第1の領域の音波は、第1の音響導入通路構造体710により第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aに導かれて、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aに第1の音波電気信号を生成させることができる。
【0038】
第2の音響導入通路構造体720の一端は、取付板500の第2の開孔520と連通し、かつ回路基板の第2の音響導入孔110bを介して第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bのバックキャビティ303bと連通する。第2の音響導入通路構造体720の他端が第2の領域まで延びていることにより、第2の領域の音波は、第2の音響導入通路構造体720により第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bに導かれて、第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bに第2の音波電気信号を生成させることができる。
【0039】
いくつかの可能な実施形態において、
図3に示すように、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300は、間隔をあけて積層して設置された上部背極板310、半導体振動膜330及び下部背極板320をさらに含む。具体的には、上部背極板310と半導体振動膜330との間、及び半導体振動膜330と下部背極板320との間にいずれも隙間、例えば、エアギャップがある。
【0040】
上部背極板310及び半導体振動膜330は、第1のマイクロフォン構造体301の本体を構成する。半導体振動膜330及び下部背極板320は、第2のマイクロフォン構造体302の本体を構成する。
【0041】
上部背極板310及び下部背極板320のそれぞれの音響導入孔に対応する部分にいずれもいくつかの気流孔が設置されている。
【0042】
説明の便宜上、本明細書において、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300において回路基板100から離れた側にある背極板を上部背極板310として定義し、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の回路基板100に近い側にある背極板を下部背極板320として定義する。
【0043】
本実施例において、半導体振動膜330は、第1のマイクロフォン構造体301及び第2のマイクロフォン構造体302により共有される。半導体振動膜330は、薄く、靭性の高い構造を有してもよく、音波の作用で湾曲して変形することができる。上部背極板310及び下部背極板320は、いずれも半導体振動膜330の厚さよりはるかに厚く、かつ剛性が高い構造を有し、変形しにくい。
【0044】
具体的には、半導体振動膜330と上部背極板310とを平行に配置して上部エアギャップ313を介して隔てられて、第1のマイクロフォン構造体301の本体を形成してもよい。半導体振動膜330と下部背極板320を、下部エアギャップ323を介して隔てて平行に配置することにより、第2のマイクロフォン構造体302の本体を形成してもよい。半導体振動膜330と上部背極板310との間、及び半導体振動膜330と下部背極板320との間は、いずれも電界(非導通)を形成するために用いられることを理解されたい。音響導入孔から入る音波は、バックキャビティ303と下部背極板320の下部気流孔321とを通って、半導体振動膜330と接触することができる。
【0045】
音波が差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のバックキャビティ303に入ると、半導体振動膜330が音波の作用で変形する。当該変形が半導体振動膜330と上部背極板310との間、下部背極板320との間の隙間の変化を引き起こし、半導体振動膜330と上部背極板310との間の容量変化、半導体振動膜330と下部背極板320との間の容量変化をもたらし、すなわち、音波の電気信号への変換を実現する。
【0046】
単一の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300においては、半導体振動膜330と上部背極板310との間にバイアス電圧を印加すると、半導体振動膜330と上部背極板310との間の隙間内に上部電界が形成される。同様に、半導体振動膜330と下部背極板320との間にバイアス電圧を印加すると、半導体振動膜330と下部背極板320との間の隙間内に下部電界が形成される。上部電界と下部電界の極性が逆であるため、半導体振動膜330が音波の作用で上下に湾曲する場合、第1のマイクロフォン構造体301の容量変化量と第2のマイクロフォン構造体302の容量変化量とは、幅が同じであり、符号が逆である。
【0047】
一実施形態において、半導体振動膜330は、多結晶シリコン材料で製造されてもよく、かつ厚さが1ミクロン以下であり、小さい音波の作用下でも変形し、感度が高い。上部背極板310及び下部背極板320は、いずれも剛性が高く、かつ厚さが数ミクロンの材料で製造される。上部背極板310に複数の上部気流孔311がエッチングされ、下部背極板320に複数の下部気流孔321がエッチングされ得る。したがって、半導体振動膜330が音波の作用で変形する場合、上部背極板310及び下部背極板320は、いずれも影響を受けて変形することはない。
【0048】
一実施形態において、半導体振動膜330と上部背極板310又は下部背極板320との間の隙間は、それぞれが数ミクロンであり、すなわち、ミクロンレベルである。
【0049】
いくつかの可能な実施形態において、
図4に示すように、各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300は、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300a及び第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bを含む。
【0050】
第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aの第1の上部背極板310aは、第1の信号を形成するために、第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bの第2の下部背極板320bに電気的に接続される。
【0051】
第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aの第1の下部背極板320aは、第2の信号を形成するために、第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bの第2の上部背極板310bに電気的に接続される。
【0052】
既に詳細に説明したように、単一の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300において、第1のマイクロフォン構造体301の容量変化量と第2のマイクロフォン構造体302の容量変化量とは、幅が同じであり、符号が逆である。同様に、各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のうち、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の上部背極板310での容量変化量と、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の下部背極板320での容量変化量とは、幅が同じであり、符号が逆である。
【0053】
したがって、本実施例において、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aの第1の上部背極板310aで生成される第1の上部音波電気信号と第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bの第2の下部背極板320bで生成される第2の下部音波電気信号とを重ねることにより得られる第1の信号では、第1の上部音波電気信号と第2の下部音波電気信号において同じ音源からのノイズ信号を弱めるか又は相殺して、第1の信号の品質を向上させることができる。
【0054】
同様に、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aの第1の下部背極板320aで生成される第1の下部音波電気信号と第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bの第2の上部背極板310bで生成される第2の上部音波電気信号とを重ねることにより得られる第2の信号では、第1の下部音波電気信号と第2の下部音波電気信号において同じ音源からのノイズ信号を弱めるか又は相殺して、第2の信号の品質を向上させることができる。
【0055】
具体的には、第1の上部背極板310aの上部背極板電極312aと第2の下部背極板320bの下部背極板電極322bとを、第1の信号を形成するために、ワイヤ380を介して電気的に接続してもよく、第1の下部背極板320aの下部背極板電極322aと第2の上部背極板310bの上部背極板電極312bとを、第2の信号を形成するために、ワイヤ380を介して電気的に接続してもよい。
【0056】
いくつかの可能な実施形態において、
図4に示すように、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aの第1の半導体振動膜330aは、第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bの第2の半導体振動膜330bに電気的に接続され、第1の半導体振動膜330aと第2の半導体振動膜330bとのうちの少なくとも1つは、定電圧源に電気的に接続するために用いられる。
【0057】
本実施例において、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aの第1の半導体振動膜330aを第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bの第2の半導体振動膜330bに電気的に接続することにより、2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の半導体振動膜330は、同じ電位を有することができ、すなわち、2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300が電気信号を生成する基準を統一させることができる。
【0058】
具体的には、ワイヤ380を第1の半導体振動膜330aの半導体振動膜電極331aと第2の半導体振動膜330bの半導体振動膜電極331bにそれぞれに電気的に接続してもよい。
【0059】
一実施形態において、各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300が電気信号を生成する基準を一致させるために、すべての差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の半導体振動膜330を電気的に接続してもよい。
【0060】
いくつかの可能な実施形態において、
図1に示すように、シリコンベースマイクロフォン装置は、制御チップ400をさらに含む。
【0061】
制御チップ400は、音響キャビティ210内に位置し、かつ回路基板100に電気的に接続される。
【0062】
第1の上部背極板310a及び第2の下部背極板320bのうちの1つは、制御チップ400の1つの信号入力端子に電気的に接続される。第1の下部背極板320a及び第2の上部背極板310bのうちの1つは、制御チップ400のもう1つの信号入力端子に電気的に接続される。
【0063】
本実施例において、制御チップ400は、前述した各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300から出力され、かつ物理的なノイズ除去を行った2つの信号を受信し、任意に当該2つの信号に二次ノイズ除去などの処理を行ってから、下流の装置又は素子に出力するために用いられる。
【0064】
一実施形態において、制御チップ400は、シリカゲル又は赤色接着剤により回路基板100に固定的に接続される。
【0065】
一実施形態において、制御チップ400は、特定用途向け集積回路(ASIC、Application Specific Integrated Circuit)チップを含む。特定用途向け集積回路チップは、2つの入力を備える差動増幅器を用いてもよい。様々な応用シナリオに応じて、特定用途向け集積回路チップの出力信号は、シングルエンドであってもよく、差動出力であってもよい。
【0066】
いくつかの可能な実施形態において、
図3に示すように、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300は、シリコン基板340を含む。
【0067】
第1のマイクロフォン構造体301及び第2のマイクロフォン構造体302は、シリコン基板340の一側に積層して設置される。
【0068】
シリコン基板340は、バックキャビティ303を形成するための貫通孔341を有し、貫通孔341は、第1のマイクロフォン構造体301と第2のマイクロフォン構造体302とに対応する。シリコン基板340において第1のマイクロフォン構造体301及び第2のマイクロフォン構造体302から離れた側は、回路基板100に固定的に接続され、貫通孔341は音響導入孔と連通する。
【0069】
本実施例において、シリコン基板340は、第1のマイクロフォン構造体301及び第2のマイクロフォン構造体302を支持し、バックキャビティ303を形成するための貫通孔341を有する。音波が差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300に入って、かつ第1のマイクロフォン構造体301及び第2のマイクロフォン構造体302にそれぞれに作用して、第1のマイクロフォン構造体301及び第2のマイクロフォン構造体302に差動電気信号を生成させることに寄与する。
【0070】
いくつかの可能な実施形態において、
図3に示すように、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300は、パターン化された第1の絶縁層350、第2の絶縁層360及び第3の絶縁層370をさらに含む。
【0071】
基板、第1の絶縁層350、下部背極板320、第2の絶縁層360、半導体振動膜330、第3の絶縁層370及び上部背極板310は、順に積層して設置される。
【0072】
本実施例において、下部背極板320とシリコン基板340との間は、パターン化された第1の絶縁層350を介して互いに隔てられ、半導体振動膜330と上部背極板310との間は、パターン化された第2の絶縁層360を介して互いに隔てられ、上部背極板310と半導体振動膜330との間は、パターン化された第3の絶縁層370を介して互いに隔てられることにより、各導電層の間の電気的分離を形成して、各導電層の短絡及び信号精度の低下を回避する。
【0073】
一実施形態において、第1の絶縁層350、第2の絶縁層360及び第3の絶縁層370は、いずれも全面成膜された後にエッチングプロセスによりパターン化されて、貫通孔341の領域に対応する絶縁層部分と電極を製造するための領域の絶縁層部分とを除去することができる。
【0074】
いくつかの可能な実施形態において、シリコンベースマイクロフォン装置は、接続リングをさらに含む。
【0075】
接続リングは、取付板500の開孔と回路基板100の音響導入孔との間に接続されて、開孔と音響導入孔との間に気密音響通路を形成する。
【0076】
本実施例において、接続リングにより、取付板500の開孔と回路基板100の音響導入孔との間に気密性を有する音響導入通路を形成することができ、第1の領域又は第2の領域の音波を差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300に作用するように導くことができる。
【0077】
具体的には、
図2に示すように、第1の接続リング610により、取付板500の第1の開孔510と回路基板100の第1の音響導入孔110aとの間に気密性を有する音響導入通路が形成されている。第2の接続リング620により、取付板500の第2の開孔520と回路基板100の第2の音響導入孔110bとの間に気密性を有する音響導入通路が形成されている。
【0078】
なお、本願の上記各実施例におけるシリコンベースマイクロフォン装置は、単一振動膜(例えば:半導体振動膜330)及び二重背極(例えば:上部背極板310と下部背極板320)で構成される差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300として例示されている。しかしながら、差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300は、単一振動膜、二重背極の形態以外に、二重振動膜、単一背極の形態、又は他の差動式構造であってもよい。
【0079】
同じ発明概念に基づいて、本願の実施例に係る電子機器は、前述したいずれか1つの実施例に係るシリコンベースマイクロフォン装置を含む。
【0080】
本実施例において、電子機器は、携帯電話、TWS(True Wireless Stereo、完全ワイヤレスステレオ)イヤホン、掃除ロボット、スマートエアコン、スマートレンジフードなどの内部ノイズが大きいスマートホーム製品であってもよい。各電子機器には前述した各実施例に係るシリコンベースマイクロフォン装置が用いられるため、その原理及び技術的効果について、前述した各実施例を参照し、ここでは説明を省略する。
【0081】
いくつかの可能な実施形態において、電子機器の外部は第1の領域であり、電子機器の内部は第2の領域である。
【0082】
シリコンベースマイクロフォン装置の少なくとも2つの音響導入通路構造体において、1つの音響導入通路構造体の他端は、電子機器の外部の音波を取得するために電子機器から突出する。もう1つの音響導入通路構造体の他端は、電子機器の内部の音波を取得するために電子機器の内部に位置する。
【0083】
本実施例において、具体的には、
図1に示すように、第1の音響導入通路構造体710の他端が電子機器の外部まで延びていることにより、電子機器の外部の音波は、第1の音響導入通路構造体710により第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aに導かれて、第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300aに第1の音波電気信号を生成させることができる。当該電子機器の外部の音波は、目標音波と、電子機器が動作する際に発生し機器の外部に拡散するノイズとを含んでもよい。好ましくは、目標音波は、音声コマンドであってもよい。
【0084】
第2の音響導入通路構造体720の他端が電子機器の内部にあることにより、電子機器の内部の音波は、第2の音響導入チャネル構造体720により第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bに導かれて、第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300bに第2の音波電気信号を生成させることができる。当該電子機器の内部の音波は、電子機器が動作する際に発生するノイズを含んでもよい。
【0085】
いくつかの可能な実施形態において、シリコンベースマイクロフォン装置の取付板500は、電子機器のマザーボードである。このようにして、電子機器の自体の構造を十分に利用して、製造コストを削減することができ、機器の体積の制御にも役立つ。
【0086】
好ましくは、接続リング600は導電性材料で構成され、回路基板100とマザーボードとの電気的接続を実現し、回路基板100とマザーボードとの間の電気信号の相互作用を実現することができる。
【0087】
本願の実施例を応用すると、少なくとも以下の有益な効果を達成することができる。
【0088】
1、偶数個の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300を用いて音響電気変換を行い、各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のうち、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のバックキャビティ303が回路基板100の音響導入孔及び取付板500の開孔を介して第1の領域の音波を取得することにより、第1の領域の音波が当該差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300に作用し、かつ当該差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300により第1の音波電気信号を生成することができる。
【0089】
2、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のバックキャビティ303が回路基板100の音響導入孔及び取付板500の開孔を介して第2の領域の音波を取得することにより、第2の領域の音波が当該差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300に作用し、かつ当該差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300により第2の音波電気信号を生成することができる。
【0090】
3、各2つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のうち、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の第1のマイクロフォン構造体301をもう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の第2のマイクロフォン構造体302に電気的に接続し、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の第2のマイクロフォン構造体302をもう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300の第1のマイクロフォン構造体301に電気的に接続することにより、1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300が生成する第1の音波電気信号と、もう1つの差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300が生成する第1の音波電気信号とを重ねることで、第1の音波電気信号と第2の音波電気信号において変化量の幅が同じであって符号が逆である同じ音源からの音波信号成分(一般的にはノイズ信号である)を互いに弱めるか又は相殺して、オーディオ信号の品質を向上させることができる。
【0091】
4、少なくとも2つの音響導入チャネル構造体は、異なる領域の音波を各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300に導いて、各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300に、対応する音波電気信号を生成させることができる。
【0092】
5、シールドケース200と回路基板100との間に、比較的密閉された音響キャビティ210が取り囲まれるように形成され、シールドケース200は、金属ケースを含み、金属ケースが回路基板100に電気的に接続され、音響キャビティ210内の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300などの素子に対する電磁干渉を遮蔽する役割を果たすことができる。
【0093】
6、半導体振動膜330は、第1のマイクロフォン構造体301及び第2のマイクロフォン構造体302により共有され、音波が差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300のバックキャビティ303に入ると、半導体振動膜330が音波作用で変形し、当該変形が半導体振動膜330と上部背極板310との間、下部背極板320との間の隙間の変化を引き起こし、半導体振動膜330と上部背極板310との間の容量変化、半導体振動膜330と下部背極板320との間の容量変化をもたらし、すなわち、音波の電気信号への変換を実現する。
【0094】
7、半導体振動膜330と上部背極板310との間にバイアス電圧を印加すると、半導体振動膜330と上部背極板310との間の隙間内に上部電界が形成される。同様に、半導体振動膜330と下部背極板320との間にバイアス電圧を印加すると、半導体振動膜330と下部背極板320との間の隙間内に下部電界が形成される。上部電界と下部電界の極性が逆であるため、半導体振動膜330が音波の作用で上下に湾曲する場合、第1のマイクロフォン構造体301の容量変化量と第2のマイクロフォン構造体302の容量変化量とは、幅が同じであり、符号が逆である。
【0095】
8、制御チップ400は、前述した各差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300から出力された物理的ノイズ除去を行った2つの信号を受信し、任意に当該2つの信号に二次ノイズ除去などの処理を行ってから、下流の装置又は素子に出力するために用いられる。
【0096】
9、下部背極板320とシリコン基板340とが第1の絶縁層350を介して互い隔てられ、半導体振動膜330と上部背極板310とが第2の絶縁層360を介して互いに隔てられ、上部背極板310と半導体振動膜330とが第3の絶縁層370を介して互いに隔てられることにより、各導電層の間の電気的分離を形成して、各導電層の短絡及び信号精度の低下を回避する。
【0097】
10、接続リングは、取付板500の開孔と回路基板100の音響導入孔との間に気密性を有する音響導入通路を形成することにより、第1の領域又は第2の領域の音波を差動式シリコンベースマイクロフォンチップ300に作用するように導くことができる。
【0098】
当業者であれば理解できるように、本願で検討された各種の操作、方法、工程におけるステップ、対策、解決手段に対して、置き換え、変更、組み合わせ又は削除を行うことができる。さらに、本願で検討された各種の操作、方法、工程におけるその他のステップ、対策、解決手段に対しても、置き換え、変更、並べ替え、分解、組み合わせ又は削除を行うことができる。さらに、従来技術における、本願に開示された各種の操作、方法、工程におけるステップ、対策、解決手段に対しても、置き換え、変更、並べ替え、分解、組み合わせ又は削除を行うことができる。
【0099】
本願の説明において、「中心」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語によって示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本願の説明を容易にして簡略化するためのものに過ぎず、言及される装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されなければならないことを示したり示唆したりするものではないため、本願を限定するものであると理解すべきではない。
【0100】
用語「第1」、「第2」は、説明の目的のみに用いられるものであり、相対的な重要性を示したり示唆したりするか、又は示された技術的特徴の数を黙示的に示すと理解すべきではない。そのため、「第1」、「第2」で限定される特徴は、1つ以上の当該特徴を含むことを明示的又は黙示的に示すことができる。本願の説明において、特に断りのない限り、「複数」は2つ以上を意味する。
【0101】
なお、本願の説明において、他の明確な規定及び限定がない限り、用語「取付」、「連結」、「接続」は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定的な接続であってもよく、取り外し可能な接続であってもよく、一体的な接続であってもよく、直接的な接続であってもよく、中間媒体を介した間接的な接続であってもよく、2つの素子の内部連通であってもよい。当業者にとって、上記用語の本願における具体的な意味を具体的な状況に基づいて理解することができる。
【0102】
本明細書の説明において、具体的な特徴、構造、材料又は特点は、任意の1つ以上の実施例又は例において適宜組み合わせることができる。
【0103】
以上の記述は、本願の一部の実施形態に過ぎず、当業者であれば、本願の原理から逸脱することなく、さらに様々な改善や修正を行うことができるが、これらの改善や修正も本願の保護範囲内にある。
【符号の説明】
【0104】
100 回路基板
110a 第1の音響導入孔
110b 第2の音響導入孔
200 シールドケース
210 音響キャビティ
300 差動式シリコンベースマイクロフォンチップ
300a 第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ
300b 第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップ
301 第1のマイクロフォン構造体
301a 第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体
301b 第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第1のマイクロフォン構造体
302 第2のマイクロフォン構造体
302a 第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体
302b 第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップの第2のマイクロフォン構造体
303 バックキャビティ
303a 第1の差動式シリコンベースマイクロフォンチップのバックキャビティ
303b 第2の差動式シリコンベースマイクロフォンチップのバックキャビティ
310 上部背極板
310a 第1の上部背極板
310b 第2の上部背極板
311 上部気流孔
312 上部背極板電極
312a 第1の上部背極板の上部背極板電極
312b 第2の上部背極板の上部背極板電極
313 上部エアギャップ
320 下部背極板
320a 第1の下部背極板
320b 第2の下部背極板
321 下部気流孔
322 下部背極板電極
322a 第1の下部背極板の下部背極板電極
322b 第2の下部背極板の下部背極板電極
323 下部エアギャップ
330 半導体振動膜
330a 第1の半導体振動膜
330b 第2の半導体振動膜
331 半導体振動膜電極
331a 第1の半導体振動膜の半導体振動膜電極
331b 第2の半導体振動膜の半導体振動膜電極
340 シリコン基板
340a 第1のシリコン基板
340b 第2のシリコン基板
341 貫通孔
350 第1の絶縁層
360 第2の絶縁層
370 第3の絶縁層
380 ワイヤ
400 制御チップ
500 取付板
510 第1の開孔
520 第2の開孔
610 第1の接続リング
620 第2の接続リング
710 第1の音響導入通路構造体
720 第2の音響導入通路構造体
【国際調査報告】