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特表2023-530666不純物を含むホスフェート含有酸性溶液を精製するためのプロセス及びそれを適用するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】不純物を含むホスフェート含有酸性溶液を精製するためのプロセス及びそれを適用するための装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/02 20060101AFI20230711BHJP
   C01B 25/238 20060101ALI20230711BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B01D61/02 500
C01B25/238 Z
B01D61/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576397
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2021065923
(87)【国際公開番号】W WO2021254944
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】20180333.5
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516125587
【氏名又は名称】プラヨン ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Prayon S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ソンヴォー,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヒューバー,ダミアン
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA58Z
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA63
4D006KA72
4D006KB11
4D006KE12R
4D006KE15R
4D006MA09
4D006MA31
4D006MB12
4D006MC03
4D006MC04
4D006MC22
4D006MC27
4D006MC29
4D006MC45
4D006MC57
4D006MC60
4D006MC61
4D006MC62
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB20
(57)【要約】
本発明は、各々メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含むいくつかのナノ濾過メンブレンユニットを含むナノ濾過ステーションを介して不純物を含むホスフェート含有酸性溶液を精製するのためのプロセス及び装置に関し、プロセスは、エントリーラインを介してホスフェート含有酸性溶液を直列に配置されたn2:1メンブレンユニットの第1のメンブレンユニットに供給することを含み、第nのメンブレンユニットから流出する第nの透過物は、ナノ濾過ホスフェート溶液を形成する。本発明の要旨は、3つの透過物の少なくとも1つとホスフェート含有酸性溶液とを組み合わせるように第1のメンブレンユニットの保持物側から分岐してエントリーラインでループを閉じる少なくとも1つの透過物再循環ループの提供である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含むホスフェート含有酸性溶液(P1)を精製するためのプロセスにおいて、下記ステップ、
・ ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を生成するためにエントリーライン(1e)を介して前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)をナノ濾過ステーション(2)に供給するステップにおいて、前記ナノ濾過ステーション(2)が、
o 直列に配置されたn個のメンブレンユニット(M1~Mn)(ただし、n≧1)と、
o 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)及び任意選択的に前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)に直列に配置された第2の回収メンブレンユニット(Mr2)と、
o 任意選択的に第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)と、
を含み、
上述したメンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1)の各々が、メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含む、供給するステップと、
・ 前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と1つ以上の他のフローとを組み合わせることによりインプットホスフェート溶液(Pf)を形成するステップと、
・ 前記インプットホスフェート溶液(Pf)を2つのストリーム:
o 不純物に乏しい第1の透過物(Pp1)及び
o 不純物に富む第1の保持物(Pr1)
に分離するために前記インプットホスフェート溶液(Pf)を第1のメンブレンユニット(M1)に供給するステップと、
・ n>1の場合、第(n-1)の透過物の少なくとも一部分を第nのメンブレンユニット(Mn)に供給するまで、前記第1の透過物(Pp1)の少なくとも一部分を第2のメンブレンユニット(M2)に、以下同様に供給するステップと、
・ 前記第1の保持物(Pr1)を2つのストリーム:
o 不純物に乏しい第1の回収透過物(Ppr1)及び
o 不純物に富む第1の回収保持物(Prr1)
に分離するために前記第1の保持物(Pr1)の少なくとも一部分を前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)に供給するステップと、
・ 前記第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分を
o 前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わせるための前記エントリーライン(1e)、及び/又は
o 前記第1の回収透過物(Pr1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第1のエグジット透過物(Ppe1)及び
・ 不純物に富む第1のエグジット保持物(Pre1)
に分離するための前記第1のエグジットメンブレン(Me1)
の1つ以上に供給するステップと、
・ 任意選択的に前記第1の回収保持物(Prr1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2の回収透過物(Ppr2)及び
・ 不純物に富む第2の回収保持物(Prr2)
に分離するために前記第1の回収保持物(Prr1)の少なくとも一部分を前記第2の回収メンブレン(Mr2)に供給するステップと、
・ 前記第nのメンブレンユニット(Mn)の透過物側から前記ナノ濾過ステーション(2)からの前記ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を送るステップと、
を含み、以下のこと、
・ 前記第1若しくは第2の回収メンブレンユニット(Mr1、Mr2)の1つ以上又は前記第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の透過物側と前記エントリーライン(1e)とを流体連通する1つ以上の透過物再循環ループを提供することと、
・ 前記第1若しくは第2の回収透過物(Ppr1、Ppr2)の1つ以上又は前記第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分を前記エントリーライン(1e)に供給するとともに前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わせて前記インプットホスフェート溶液(Pf)を形成することと、
を特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、n>1であり、且つ前記n個のメンブレンユニット(M1~Mn)の各々が、逐次第1~第(n-1)の透過物(Pp1~Pp(n-1))の各々をそれぞれ2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2~第nの透過物(Pp2~Ppn)及び
・ 不純物に富む第2~第nの保持物(Pr2~Prn)
に分離するために直列に配置され、
・ 逐次第1~第(n-1)の透過物(Pp1~Pp(n-1))の各々の少なくとも一部分が、一連のn個のメンブレンユニット(M1~Mn)の下流に位置するその次の第2~第nのメンブレンユニット(M2~Mn)の保持物側に供給され、
・ 第2~第nの保持物(Pr2~Prn)の各々の少なくとも一部分が、前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側及び/又は一連のn個のメンブレンユニット(M1~Mn)の上流に位置するその前の第1~第(n-1)のメンブレンユニット(M1~M(n-1))の保持物側に供給される、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロセスにおいて、前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)から放出された前記第1の回収保持物(Prr1)の少なくとも一部分が、前記第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の保持物側に供給され、前記第2の回収透過物(Ppr2)の少なくとも一部分が、
・ 前記エントリーライン(1e)に供給されて1つ以上の透過物再循環ループの1つを形成するとともに前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされ、及び/又は
・ 前記ナノ濾過ユニット(2)から送出されてナノ濾過ホスフェート回収溶液(P2r)として回収される、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項3に記載のプロセスにおいて、
・ 前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側と前記エントリーライン(1e)とを流体連通する透過物再循環ループが提供されず、且つ
・ 前記第2の回収透過物(Ppr2)の少なくとも一部分が、前記インプットホスフェート溶液(Pf)の成分として前記エントリーライン(1e)に供給されて、1つ以上の透過物再循環ループの1つを形成する、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%が、前記エグジットメンブレンユニット(Me1)に供給され、且つ前記第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%が、前記第1のエグジット透過物(Ppe1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2のエグジット透過物(Ppe2)及び
・ 不純物に富む第2のエグジット保持物(Pre2)
に分離するために前記第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)の保持物側に供給され、前記第2のエグジット透過物(Ppe2)の少なくとも一部分が、ナノ濾過ホスフェートエグジット溶液(P2e)を形成するために前記ナノ濾過ステーション(2)から送出され、前記第2のエグジット保持物(Pre2)の少なくとも一部分が、前記エントリーライン(1e)に供給されて保持物再循環ループを形成するとともに、前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のプロセスにおいて、
・ 前記第1の回収透過物(Ppr1)
・ 前記第2の回収透過物(Ppr2)、又は
・ 前記第1のエグジット透過物(Ppe1)
の1つ以上の100wt.%が、前記エントリーライン(1e)に供給されて前記透過物再循環ループの1つ以上を形成するとともに前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記第1の回収透過物(Ppr1)と前記エントリーライン(1e)との間に形成された単一透過物再循環ループを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記ナノ濾過ユニット(2)から放出された前記ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)が、前記ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)中に残留する残留カチオン、好ましくは1及び2価カチオンを除去するように及び不純物に乏しい精製リン酸溶液(P3)を形成するように構成されたイオン交換樹脂(3×)を含むイオン交換ステーション(3)に供給されることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)が、
・ 2~25%P、好ましくは15~21%Pと、
・ 1μm超の100ppm未満の粒子、好ましくは1μm超の50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、最も好ましくは1ppm未満の粒子と、
・ 3wt.%未満の合計有機炭素(TOC)、好ましくは1wt%以下のTOCと、
・ 好ましくは4wt%以下のSO、好ましくは1000ppm以下のSOと、
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記不純物が、Al、Ca、Cr、Fe、Mgを含み、且つP2が、P1を基準にして少なくとも90wt.%、好ましくは少なくとも95wt.%、より好ましくは少なくとも98wt.%、さらには少なくとも99wt.%のこれらの不純物の除去率を有することを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載のプロセスで不純物を含むホスフェート含有酸性溶液(P1)を精製するための装置において、前記装置が、前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)をナノ濾過ステーション(2)に供給するためのエントリーライン(1e)と、前記ナノ濾過ステーションからナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を送出するためのエグジットライン(2e)と、に流体連通するナノ濾過ステーション(2)を含み、前記ナノ濾過ステーション(2)が、
・ 前記エントリーライン(1e)に流体連通する前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)の供給源と、
・ 直列に配置されたn個のメンブレンユニット(M1~Mn)(ただし、n≧1)と、
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)及び任意選択的に前記第1の回収メンブレンに直列に配置された第2の回収メンブレンユニット(Mr2)と、
・ 任意選択的に第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)と、
を含み、
上述したメンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1)の各々が、メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含み、
・ 第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側が、
o インプットラインが前記エントリーライン(1e)に流体連通してインプットホスフェート溶液(Pf)を前記第1のメンブレンユニットに供給するためのインプットライン、及び
o 前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に流体連通して第1の保持物(Pr1)をそれに供給するための出口ライン
に流体連通し、
・ 前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側が、
o 前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%と前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)とを組み合わせるための前記エントリーライン(1e)若しくはチャンバー(2c)、及び/又は、
o 前記第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分を前記第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)に供給するための前記第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の保持物側
に流体連通し、
・ 前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側が、任意選択的に前記第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の保持物側に流体連通し、
前記エントリーライン(1e)又はチャンバー(2c)と前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)又は前記第2の回収メンブレンユニット(Mr2)又は前記第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の1つ以上の透過物側との流体連通を含めることにより少なくとも1つの透過物再循環ループが形成されることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、
・ 前記第1のメンブレンユニット(M1)の透過物側が、第2の膜ユニット(M2)の保持物側に流体連通し、その透過物側が第3のメンブレンユニット(M3)に、以下同様に第nのメンブレンユニット(Mn)まで流体連通し、その透過物側が前記エグジットライン(2e)に結合され、
・ 第2~第nのメンブレンユニット(M2~Mn)の保持物側が、
o 所与のメンブレンユニットに先行する第1~第(n-1)のメンブレンユニット、及び/又は
o 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)
の保持物側に流体連通することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物を含むホスフェート含有酸性溶液、例えば、リン酸溶液を精製するためのプロセス及び前記プロセスを行うための装置に関する。本プロセス及び装置は、ホスフェート含有酸性溶液のP収率及びそれからの不純物除去速度の両方を増強するように設計された新規ナノ濾過ステーションを含む。
【背景技術】
【0002】
制限されるものではないが、リン酸溶液をはじめとするホスフェート含有酸性溶液は、たとえば、いわゆる「マーチャントグレード」若しくは「テクニカルグレード」若しくは「フィードグレード」として市場で入手可能であるか、又はフライアッシュ製品からのアタックのように二次ホスフェート源から生成されうる。しかしながら、これらのグレードは、食品、医薬、化学、鋼産業などの多くのより高性能の用途では除去しなければならないかなりの量の不純物をイオンの形態で含有する。不純物としては、典型的には、Al、Ca、Cu、Cr、Fe、K、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Sr、Ti、Cd、As、V、Znなどのカチオンが挙げられる。たとえば、Al、Ca、Cr、Fe、Mgは、一般的には、より多量に存在するかなり代表的な不純物である。しかしながら、各不純物の適合性は、各不純物種に必要とされる除去率を決定する最終用途に依存する。ナノ濾過は、リン酸溶液などのホスフェート含有酸性溶液を精製するためのいくつかのプロセスに使用され成功を収めてきた。
【0003】
ナノ濾過は、メンブレンを通り抜けるナノメートルサイズの貫通細孔を用いたメンブレン濾過ベースの方法である。図10(a)に例示されるように、ナノ濾過用のナノ濾過メンブレンユニット(M1)は、メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含む。ナノ濾過メンブレンは、典型的には、精密濾過及び限外濾過で使用されるものよりも小さいただし逆浸透のものよりもわずかに大きい1~10ナノメートルの細孔サイズを有する。ナノ濾過メンブレンユニットは、その保持物側に不純物を含有する溶液が供給される。不純物に乏しい透過物は、ナノ濾過メンブレンユニットの保持物側から透過物側に向かってメンブレンを通り抜けてナノ濾過メンブレンユニットから流出する。不純物に富む保持物は、ナノ濾過メンブレンユニットの保持物側に保持されてナノ濾過メンブレンユニットの保持物側から流出する。本発明との関連では、「不純物に乏しい[及び]富む」という表現は、前述のナノ濾過メンブレンユニットに供給される溶液の不純物含有率を基準にしており、プロセスでのいずれの他の溶液の不純物含有率にもまったく依存しない。たとえば、プロセスが2つ以上のナノ濾過メンブレンユニットを含む場合、それらのそれぞれの位置に依存して、第1のナノ濾過メンブレンユニットの不純物に乏しい透過物は、第2のナノ濾過メンブレンユニットの不純物に富む保持物よりも高い不純物含有率を有することもありうる。
【0004】
ナノ濾過は、多くの産業用途で使用されてきた。たとえば、オーストラリア特許出願公開第2008202302号明細書には、水を精製するための逆浸透及びナノ濾過プロセスが記載されている。米国特許出願公開第20120238777号明細書には、蒸発させる水の量を減少させることにより実質的エネルギー節約を可能にしてリファイニング終了時に糖を回収するためのナノ濾過プロセスが記載されている。米国特許第6083670号明細書には、フォトレジストとテトラアルキルアンモニウム(TAA)イオンとを主に含有するフォトレジスト現像廃液のナノ濾過プロセス又は若返り処理が記載されている。
【0005】
ホスフェート含有酸性溶液の精製のためのナノ濾過は、国際公開第2013133684号パンフレットに記載されており、この場合、本図11(c)(括弧内の参照番号は、国際公開第2013133684号パンフレットで使用される参照番号に対応する)に例示されるように2つのナノ濾過メンブレンユニットが直列に配置される。メンブレンは、少なくとも1つのアミン官能基、1つの芳香族アミン官能基、1つの酸官能基、及び/又は1つのアルコール官能基を含む少なくとも1種の水溶性ポリマーが吸着された有機ナノ濾過メンブレンである。2つのナノ濾過メンブレンユニットを直列に配置することにより、不純物除去率は増強されるがPの収率は減少する。
【0006】
米国特許第5945000号明細書には、以上で考察された国際公開第2013133684号パンフレットに記載のように、直列に配置された2つ(さらには3つ)のナノ濾過メンブレンユニットを用いてリン酸溶液を精製するためのナノ濾過プロセスが記載されており、この場合、図11(a)及び11(b)(括弧内の参照番号は、米国特許第5945000号明細書で使用される参照番号に対応する)に例示されるように、両方のナノ濾過メンブレンユニットの保持物は、同一ナノ濾過メンブレンユニット又は第1のナノ濾過メンブレンユニットのどちらかの供給用溶液と共に再循環ループで再循環される。このようにして、Pの収率は、国際公開第2013133684号パンフレットのプロセスと比較して増強される。しかしながら、第1及び第2のナノ濾過メンブレンユニットの保持物側と第1、任意選択的に第2のナノ濾過メンブレンユニットの供給用溶液との間に形成される再循環ループは、供給用溶液中の不純物含有率を増加させるという欠点を有する。そのため、米国特許第5945000号明細書に述べられたように、「[保持物]溶液[…]内の汚染物質レベルが、[保持物]溶液をリサイクルすることがもはや経済的でないリン酸量を基準にして十分に高くなる」と、許容できないレベルに迅速に上昇するおそれのあるナノ濾過メンブレンユニットに入る不純物量を低減するために、対応するナノ濾過メンブレンユニットへの流入前に保持物溶液のブリードをレギュラーインターバルで行わなければならない。米国特許第5945000号明細書にはまた、メンブレンの寿命を増加させるために、ホスフェート含有酸性溶液の温度を1~32℃(30°F~90°F)の温度に低下させることが教示されている。
【発明の概要】
【0007】
ホスフェートの現在の市場価格が低い状況では、Pの収率及び不純物の除去率の両方を増強する精製プロセスの必要性が存在する。精製プロセスは、好ましくは、規則的時間間隔でのブリードを必要とすることなく完全に連続である。
【0008】
本発明は、Pの収率及び不純物の除去率を増加させてホスフェート含有酸性溶液を精製するための完全連続プロセスを提案する。本発明のこれらの及び他の利点は、以下のセクションでより詳細に説明される。
【0009】
本発明の目的は、不純物を含むホスフェート含有酸性溶液(P1)を精製するためのプロセスにより達成された。プロセスは、下記ステップ
・ ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を生成するためにエントリーラインを介してホスフェート含有酸性溶液(P1)をナノ濾過ステーションに供給するステップにおいて、ナノ濾過ステーションが、
o 直列に配置されたn個のメンブレンユニット(M1~Mn)(ただし、n≧1)と、
o 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)及び任意選択的に第1の回収メンブレンユニット(Mr1)に直列に配置された第2の回収メンブレンユニット(Mr2)と、
o 任意選択的に第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)と、
を含み、
上述したメンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1)の各々が、メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含む、ステップと、
・ ホスフェート含有酸性溶液(P1)と1つ以上の他のフローとを組み合わせることによりインプットホスフェート溶液(Pf)を形成するステップと、
・ インプットホスフェート溶液(Pf)を2つのストリーム:
o 不純物に乏しい第1の透過物(Pp1)及び
o 不純物に富む第1の保持物(Pr1)
に分離するためにインプットホスフェート溶液(Pf)を第1のメンブレンユニット(M1)に供給するステップと、
・ n>1の場合、第(n-1)の透過物の少なくとも一部分を第nのメンブレンユニット(Mn)に供給するまで、第1の透過物(Pp1)の少なくとも一部分を第2のメンブレンユニット(M2)に、以下同様に供給するステップと、
・ 第1の保持物(Pr1)を2つのストリーム:
o 不純物に乏しい第1の回収透過物(Ppr1)及び
o 不純物に富む第1の回収保持物(Prr1)
に分離するために第1の保持物(Pr1)の少なくとも一部分を第1の回収メンブレンユニット(Mr1)に供給するステップと、
・ 第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分を
o インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するようにホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わせるためのエントリーライン、及び/又は
o 第1の回収透過物(Pr1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第1のエグジット透過物(Ppe1)及び
・ 不純物に富む第1のエグジット保持物(Pre1)
に分離するための第1のエグジットメンブレン(Me1)
の1つ以上に供給するステップと、
・ 任意選択的に第1の回収保持物(Prr1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2の回収透過物(Ppr2)及び
・ 不純物に富む第2の回収保持物(Prr2)
に分離するために第1の回収保持物(Prr1)の少なくとも一部分を第2の回収メンブレン(Mr2)に供給するステップと、
・ 第nのメンブレンユニット(Mn)の透過物側からナノ濾過ステーションからのナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を送るステップと、
を含む。
【0010】
本発明の要旨は、
・ 第1若しくは第2の回収メンブレンユニット(Mr1、Mr2)の1つ以上又は第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の透過物側とエントリーライン(1e)とを流体連通する1つ以上の透過物再循環ループを提供することと、
・ 第1若しくは第2の回収透過物(Ppr1、Ppr2)の1つ以上又は第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分をエントリーラインに供給するとともに少なくとも一部分とホスフェート含有酸性溶液(P1)とを組み合わせてインプットホスフェート溶液(Pf)を形成することと、
を含む。
【0011】
ある実施形態では、n>1であり、且つn個のメンブレンユニット(M1~Mn)の各々は、逐次第1~第(n-1)の透過物(Pp1~Pp(n-1))の各々をそれぞれ2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2~第nの透過物(Pp2~Ppn)及び
・ 不純物に富む第2~第nの保持物(Pr2~Prn)
に分離するために直列に配置され、この場合、
・ 逐次第1~第(n-1)の透過物(Pp1~Pp(n-1))の各々の少なくとも一部分は、一連のn個のメンブレンユニット(M1~Mn)の下流に位置するその次の第2~第nのメンブレンユニット(M2~Mn)の保持物側に供給される。
【0012】
第2~第nの保持物(Pr2~Prn)の各々の少なくとも一部分は、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側及び/又は一連のn個のメンブレンユニット(M1~Mn)の上流に位置するその前の第1~第(n-1)のメンブレンユニット(M1~M(n-1))の保持物側に供給される。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)から放出された第1の回収保持物(Prr1)の少なくとも一部分は、第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の保持物側に供給可能であり、この場合、第2の回収透過物(Ppr2)の少なくとも一部分は、
・ エントリーラインに供給して1つ以上の透過物再循環ループの1つを形成するとともにインプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するようにホスフェート含有酸性溶液(P1)と組合せ可能であり、及び/又は
・ ナノ濾過ユニットから送出されてナノ濾過ホスフェート回収溶液(P2r)として回収可能である。
【0014】
第2の回収透過物(Ppr2)の少なくとも一部分は、インプットホスフェート溶液(Pf)の成分としてエントリーラインに供給して1つ以上の透過物再循環ループの1つを形成可能である。たとえば、第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の保持物側とエントリーラインとの間に形成される第2の透過物再循環ループがすでに存在するので、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側とエントリーラインとを流体連通する透過物再循環ループを有しないようにすることが可能である。
【0015】
好ましい実施形態では、第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%は、エグジットメンブレンユニット(Me1)に供給されるとともに、第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%は、第1のエグジット透過物(Ppe1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2のエグジット透過物(Ppe2)及び
・ 不純物に富む第2のエグジット保持物(Pre2)
に分離するために第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)の保持物側に供給される。
【0016】
第2のエグジット透過物(Ppe2)の少なくとも一部分は、ナノ濾過ホスフェートエグジット溶液(P2e)を形成するためにナノ濾過ステーションから送出可能である。第2のエグジット保持物(Pre2)の少なくとも一部分は、エントリーラインに供給されて保持物再循環ループを形成するとともに、インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するようにホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされる。保持物再循環ループは、透過物再循環ループと混同すべきではなく、後者の循環用溶液は、一般に(とはいえ必ずというわけではない)保持物よりも低い不純物濃度を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、
・ 第1の回収透過物(Ppr1)
・ 第2の回収透過物(Ppr2)、又は
・ 第1のエグジット透過物(Ppe1)
の1つ以上の100wt.%は、であることが好ましい。エントリーラインに供給して透過物再循環ループの1つ以上を形成するとともにインプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するようにホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされる。好ましい実施形態では、ナノ濾過ステーションは、第1の回収透過物(Ppr1)とエントリーラインとの間で形成される単一透過物再循環ループを含む。
【0018】
ナノ濾過ホスフェート溶液(P2、P2e、P2r)をさらに処理することが可能である。たとえば、ナノ濾過ユニットから放出されたナノ濾過ホスフェート溶液(P2)は、ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)中に残留する残留カチオン、好ましくは1及び2価カチオンを除去するように及び不純物に乏しい精製リン酸溶液(P3)を形成するように構成されたイオン交換樹脂を含むイオン交換ステーションに供給可能である。
【0019】
ホスフェート含有酸性溶液(P1)は、好ましくは、
・ 2~25%P、好ましくは15~21%Pと、
・ 1μm超の100ppm未満の粒子、好ましくは1μm超の50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、最も好ましくは1ppm未満の粒子と、
・ 3wt.%未満の合計有機炭素(TOC)、好ましくは1wt%以下のTOCと、
・ 好ましくは4wt%以下のSO4、好ましくは1000ppm以下のSO4と、
を含む。
【0020】
ホスフェート含有酸性溶液(P1)に含有される不純物は、Al、Ca、Cr、Fe、Mgを含みうるとともに、この場合、P2は、P1を基準にして少なくとも90wt.%、好ましくは少なくとも95wt.%、より好ましくは少なくとも98wt.%、さらには少なくとも99wt.%のこれらの不純物の除去率を有する。
【0021】
本発明はまた、以上で考察されたプロセスで不純物を含むホスフェート含有酸性溶液(P1)を精製するための装置に関し、装置は、ホスフェート含有酸性溶液(P1)をナノ濾過ステーション(2)に供給するための、ホスフェート含有酸性溶液(P1)源に流体連通するエントリーライン(1e)と、ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)をナノ濾過ステーションから送出するためのエグジットライン(2e)と、に流体連通するナノ濾過ステーションを含む。ナノ濾過ステーションは、
・ 直列に配置されたn個のメンブレンユニット(M1~Mn)(ただし、n≧1)と、
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)及び任意選択的に第1の回収メンブレンに直列に配置された第2の回収メンブレンユニット(Mr2)と、
・ 任意選択的に第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)と、
を含む。
【0022】
上述したメンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1)の各々は、メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含み、この場合、
・ 第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側は、
o インプットラインがエントリーラインに流体連通してインプットホスフェート溶液(Pf)を第1のメンブレンユニットに供給するためのインプットライン、及び
o 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に流体連通して第1の保持物(Pr1)をそれに供給するための出口ライン
に流体連通し、
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側は、
o インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%とホスフェート含有酸性溶液(P1)とを組み合わせるためのエントリーライン若しくはチャンバー、及び/又は、
o 第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分を第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)に供給するための第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の保持物側
に流体連通し、
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側は、任意選択的に第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の保持物側に流体連通する。
【0023】
本発明の装置は、少なくとも、エントリーライン又はチャンバーと第1の回収メンブレンユニット(Mr1)又は第2の回収メンブレンユニット(Mr2)又は第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の1つ以上の透過物側との流体連通を含めることにより少なくとも1つの透過物再循環ループが形成されるという点で、先行技術の装置と異なる。
【0024】
好ましい実施形態では、第1のメンブレンユニット(M1)の透過物側は、第2のメンブレンユニット(M2)の保持物側に流体連通し、その透過物側は第3のメンブレンユニット(M3)に、以下同様に第nのメンブレンユニット(Mn)まで流体連通し、その透過物側はエグジットラインに結合される。第2~第nのメンブレンユニット(M2~Mn)の保持物側は、
o 所与のメンブレンユニットに先行する第1~第(n-1)のメンブレンユニット、及び/又は
o 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)
の保持物側に流体連通する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明に係るプロセス及び装置の実施形態の模式図を描き、(a)は、単一メンブレンユニットを含む一般的実施形態、(b)~(d)は、図1(a)の一般的実施形態の好ましい実施形態である。
図2図2は、本発明に係るプロセス及び装置の実施形態の模式図を示し、(a)、(b)、(d)、(e)、及び(g)は、単一透過物再循環ループを含み、(c)、(f)、及び(h)は、2つの透過物再循環ループを含む。
図3図3は、本発明に係るプロセス及び装置の実施形態の模式図を示し、(a)は、1又は2つの透過物再循環ループを含み、(b)は、2以上のメンブレンユニットを有して1~3つの透過物再循環ループを含む。
図4図4(a)は、ナノ濾過ステーションの下流にイオン交換カラムを有するナノ濾過ステーションを示し、(b)は、ナノ濾過ステーションの上流に前精製ステーションを有するものを示す。
図5図5は、第1の回収メンブレンユニットからの単一透過物再循環ループを含む本発明に係るプロセスのP収率及び不純物除去率を示し、(a)では第1の回収透過物の100wt.%が再循環され、(b)では第1の回収透過物の10wt.%が再循環され、90wt.%がナノ濾過ホスフェート回収溶液としてナノ濾過ステーションから流出される。
図6図6は、第1のエグジットメンブレンユニットからの単一透過物再循環ループを含む本発明に係るプロセスのP収率及び不純物除去率を示し、(a)では第1のエグジット透過物の100wt.%が再循環され、(b)では第1のエグジット透過物の10wt.%が再循環され、90wt.%がナノ濾過ホスフェートエグジット溶液としてナノ濾過ステーションから流出される。
図7図7は、本発明に係るプロセスのP収率及び不純物除去率を示し、(a)は、第1の回収メンブレンユニットからの単一透過物再循環ループを含み、この場合、第1の回収透過物の5wt.%が再循環され、65wt.%がナノ濾過回収溶液としてナノ濾過ステーションから流出され、30wt.%が第1のエグジットメンブレンユニットに供給されてナノ濾過ホスフェートエグジット溶液として第1のエグジット透過物の回収が行われ、(b)は、第1のエグジット透過物をナノ濾過ステーションから流出させる代わりに第2の透過物ループで再循環させる以外は(a)と同一である。
図8図8は、図9のものと比較可能な結果を生じるようにいくつかの仮定を行って図11(b)に例示される米国特許第5945000号明細書に係るプロセスの不純物除去率を示す。
図9図9は、第1の回収メンブレンユニット及びそれから開始される第1の回収透過物再循環ループを加えて、図8に例示される米国特許第5945000号明細書の先行技術の装置に基づいて、本発明に係るプロセスの不純物除去率を示す。
図10図10は、(a)模式図、(b)直列及び並列に配置されて単一ナノ濾過メンブレンユニットを形成するいくつかのメンブレンの配置(米国特許第5945000号明細書の図4から着想)、並びに(c)直列に配置されて図10(b)のナノ濾過メンブレンユニットの一部を形成するいくつかのメンブレンの配置(米国特許第5945000号明細書の図5から着想)でナノ濾過メンブレンユニットを示す。
図11図11は、(a)及び(b)米国特許第5945000号明細書に係るプロセス及び装置の2つの実施形態、並びに(c)国際公開第2013133684号パンフレットに係る実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のプロセス及び装置は、不純物を含むホスフェート含有酸性溶液(P1)、たとえば、制限されるものではないがリン酸溶液を精製するためのものであり、本プロセスは、エントリーライン(1e)を介してホスフェート含有酸性溶液(P1)をナノ濾過ステーション(2)に供給して、エグジットライン(2e)を介してナノ濾過ステーション(2)から流出するナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を生成することを含む。
たとえば、図3(b)に示されるように、ナノ濾過ステーション(2)は、
・ 直列に配置されたn個のメンブレンユニット(M1~Mn)(ただし、n≧1)と、
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)及び任意選択的に第1の回収メンブレンユニット(Mr1)に直列に配置された第2の回収メンブレンユニット(Mr2)と、
・ 任意選択的に第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)及び任意選択的に第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)と、
を含む。
【0027】
上述したナノ濾過メンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1)の各々は、メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含む。不純物を含む溶液は、ナノ濾過メンブレンユニットの保持物側に供給される。不純物に乏しい透過物は、メンブレンを透過してナノ濾過メンブレンユニットの透過物側に入り、そこでナノ濾過メンブレンユニットから流出する。不純物に富む保持物は、メンブレンにより保持されてナノ濾過メンブレンユニットの保持物側から流出する。以上で説明したように、不純物に「乏しい」及び「富む」とは、所与のナノ濾過メンブレンユニットに対して表されるものであり、この場合、透過物は、ナノ濾過メンブレンユニットに供給される溶液よりも不純物に乏しく、それ自体、保持物よりも不純物に乏しい。又は、逆に、保持物は、ナノ濾過メンブレンユニットに供給される溶液よりも不純物に富み、それ自体、透過物よりも不純物に富む。
【0028】
本発明によれば、インプットホスフェート溶液(Pf)は、ホスフェート含有酸性溶液(P1)と1つ以上の他のフローとを組み合わせることにより形成される。インプットホスフェート溶液(Pf)は、インプットホスフェート溶液(Pf)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第1の透過物(Pp1)及び
・ 不純物に富む第1の保持物(Pr1)
に分離するために第1のメンブレンユニット(M1)に供給される。
【0029】
少なくとも2つのメンブレンユニットが直列に配置される場合(n>1)、第(n-1)の透過物の少なくとも一部分が第nのメンブレンユニット(Mn)に供給されるまで、第1の透過物(Pp1)の少なくとも一部分は、第2のメンブレンユニット(M2))に、以下同様に供給される。第nのメンブレンユニット(Mn)の透過物(Ppn)は、ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を形成してナノ濾過ステーション(2)から出る。装置が、たとえば、図1(a)に例示されるように、単一メンブレンユニット(M1)を含む場合、ナノ濾過ステーションから流出するナノ濾過ホスフェート溶液(P2)は、第1の透過物(Pp1)により形成される。
【0030】
第1の保持物(Pr1)の少なくとも一部分は、第1の保持物(Pr1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第1の回収透過物(Ppr1)及び
・ 不純物に富む第1の回収保持物(Prr1)
に分離するために第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側から第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に供給される。
【0031】
本文書では、フローの「少なくとも一部分」という表現は、フローの非ゼロ部分、好ましくはフローの10~100のwt.%、より好ましくはフローの20~95wt.%、より好ましくはフローの35~85wt.%、より好ましくは40~75wt.%、より好ましくは50~65wt.%を含む部分として解釈されるべきである。同様に、フローの「一部分のみ」という表現は、フローの>0且つ<100wt.%の部分、好ましくは、フローの10~95wt.%、より好ましくはフローの35~85wt.%、より好ましくはフローの40~75wt.%、より好ましくはフローの50~65wt.%を含む部分として解釈されるべきである。
【0032】
第1の回収透過物(Ppr1)のすべて又は一部分は、ナノ濾過ステーション(2)の異なる位置に供給可能である。特定的には、第1の回収透過物(Ppr1)は、
・ インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するようにホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わせるために、一方ではホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされる1つ以上の他のフローの1つを形成するように、他方では第1の透過物再循環ループを形成するように、直接又はチャンバー(2c)を介してエントリーライン(1e)に、並びに/又は
・ 第1の回収透過物(Ppr1)を2つのストリーム:
o 不純物に乏しい第1のエグジット透過物(Ppe1)及び
o 不純物に富む第1のエグジット保持物(Pre1)
に分離するために第1のエグジットメンブレン(Me1)の保持物側に、
供給される。
【0033】
第1の回収保持物(Prr1)の少なくとも一部分は、任意選択的に第1の回収保持物(Prr1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2の回収透過物(Ppr2)及び
・ 不純物に富む第2の回収保持物(Prr2)
に分離するために第2の回収メンブレン(Mr2)に供給可能である。
【0034】
本発明は、第1若しくは第2の回収メンブレンユニット(Mr1、Mr2)の1つ以上又は第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の透過物側とエントリーライン(1e)とを流体連通する1つ以上の透過物再循環ループを形成することにより特徴付けられる。第1若しくは第2の回収透過物(Ppr1、Ppr2)の1つ以上又は第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分は、エントリーライン(1e)に供給されるとともにホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされてインプットホスフェート溶液(Pf)を形成する。
【0035】
言い換えると、1つ以上の透過物再循環ループが形成される。透過物再循環ループは、透過物が所与のナノ濾過メンブレンユニットの透過物側から流れてエントリーライン(1e)又はエントリーライン(1e)に装着されたチャンバー(2c)に戻ってループを形成するときに形成される。
【0036】
図中、下記基準が適用される。各矢印は、装置の2つのコンポーネント間、たとえば、パイプ、チューブなどの間の流体連通を表す。必ずしもそれを具体化するわけではないが、矢印により表わされる各流体連通は、圧力を増加させるためのポンプ、溶液の粘度を制御するための希釈源、たとえば、水性溶液、たとえば、水又は酸性水又は希リン酸、溶液の温度を制御するための熱交換器、装置の2つの逐次ナノ濾過メンブレンユニット間の流量差を補償するためのバッファーなどのいずれか1つ以上を含みうる。
【0037】
ナノ濾過メンブレンユニットは、一般に、単一入口と保持物出口及び透過物出口を含む2つの出口とを含む。あまりにも多いライン交差を回避して図を明確にするために述べておくが、2つの矢印は、ナノ濾過メンブレンユニットの保持物側に達するか又はナノ濾過メンブレンユニットの保持物側若しくは透過物側から離れることが可能である。このことは、ナノ濾過メンブレンユニットが2つ以上の入口又は2つ以上の保持物出口若しくは透過物出口を有するということではなく、単にその2つのフローがナノ濾過メンブレンユニットに流入する前に上流でマージされるか又はそれから流出した後に下流で分割されることをいう。「上流」及び「下流」は、本明細書では、精製プロセス時の溶液のフロー方向を基準にして規定される。
【0038】
同一溶液が2つの異なる流体連通ラインを貫流可能であるとき、バルブが例示される(対向三角形)。2つのラインの各々で流れる溶液の部分は制御可能である。すなわち、各バルブは、閉じるか、部分的に開けるか、又は完全に開けることが可能である。具体例では、たとえば、図7(a)では、各方向に流れるwt.%部分が示される(たとえば、「Ppr1-65」は、Ppr1の65wt.%がエントリーライン(1e)に流れることに対応する)。バルブを閉じることができないとき、流量「Q>0」が示される。たとえば、図1(a)では、点線の円は、3つの可能な透過物再循環ループを同定し、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの透過物再循環ループがプロセスで形成されることを保証するために少なくとも部分的に開けられなければならない(すなわち、Q>0)。
【0039】
図5~9に示される不純物量及びP収率の値は、各個別ナノ濾過メンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1、Me2)の測定性能に基づいて計算される。
【0040】
ホスフェート含有酸性溶液(P1)
ホスフェート溶液とは、本明細書では、HO[P(OH)(O)O]H(式中、n≧1)を含有する水性溶液を意味する。ホスフェート含有酸性溶液(P1)及びナノ濾過ステーション(2)内及びその下流のすべてのホスフェート含有溶液は、オルトホスフェート及び/又はポリホスフェートとして溶解されたリン含有溶液を意味し、そのそれぞれの含有率は、溶液のP含有率に依存する。
【0041】
とくに指示がない限り、すべての%及びppm濃度は、重量%(=wt.%)及び重量ppm(=ppm)で表される。ホスフェートは溶液中でさまざまな形態で存在可能であるので、溶液のホスフェート含有量は、当技術分野で周知のように及び使用されるように、%Pにより示される%当量Pで表される。溶液のホスフェート濃度は、当技術分野では、ときには%当量HPOによりで表される。情報に関して、1%Pは1,38%HPOに対応する。
【0042】
原料ホスフェート溶液(P0)がナノ濾過メンブレンの使用寿命に有害な要素を含有しない場合、それはホスフェート含有酸性溶液(P1)としてナノ濾過ステーション(2)に直接供給可能である。本発明の装置内を流れるいずれの溶液もとくにその粘度を制御するためにいずれの2つの隣接ユニット又はステーション間でも希釈可能であるように、原料ホスフェート溶液(P0)は、水や希リン酸溶液などの溶液で希釈可能である。さもなければ、原料ホスフェート溶液(P0)は、10μm超、好ましくは5μm超、より好ましくは1μm超、より好ましくは0,5μm超、より好ましくは0,22μm超、より好ましくは0,05μm超の懸濁固形粒子、有機物及び油性残留物、並びに沈殿のリスクを呈する元素たとえば、サルフェート塩として沈殿する可能性のあるCa又はBaを除去するために前処理可能である。原料ホスフェート溶液(P0)は、できる限り多くの粒子を排除するために、たとえば、100ppm以下、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、最も好ましくは1ppm未満の少なくとも1μmの粒子を含有するホスフェート含有酸性溶液(P1)を生成するために前処理可能である、
【0043】
1μm超の直径の粒子の。ホスフェート含有酸性溶液(P1)は、4wt%以下のSO4、好ましくは2,5wt%以下、好ましくは1wt%以下、好ましくは0,5wt%以下、好ましくは1000ppm以下のSO4を含有することが好ましい。P0は、3wt%以下のTOC(=合計有機炭素)、1wt%以下のTOC、好ましくは500ppm以下のTOC、好ましくは200ppm以下のTOC、好ましくは100ppm以下のTOCを含有するホスフェート含有酸性溶液(P1)を生成するために前処理可能である。使用されるナノ濾過メンブレンのタイプに依存して、ヒ素及びサルフェートは、ナノ濾過メンブレンにより効率的に分離されないおそれがあり、好ましくはナノ濾過ステーション(2)の前又は後のどちらかで、好ましくはその前に除去される。こうして前処理された溶液は、ナノ濾過ステーション(2)に供給可能なホスフェート含有酸性溶液(P1)を形成する。
【0044】
原料ホスフェート溶液(P0)の起源及びホスフェート含有酸性溶液(P1)を形成するためのその前処理の性質は、P1に存在する不純物の濃度を決定する。精製ホスフェート溶液の最終用途は、各不純物種で達成される不純物除去率を決定する。本発明は、継続して考察されるように、P収率及び不純物除去率の両方を増強して、特定用途で即使用可能な又はその次の精製ステーションたとえばイオン交換カラム(3)に供給可能なナノ濾過ホスフェート溶液(P2、P2r、P2e)を生成するナノ濾過ステーション(2)を提案する。本発明のナノ濾過ステーション(2)により得られうるナノ濾過ホスフェート溶液(P2)は、ホスフェート含有酸性溶液(P1)から除去されるAl、Ca、Cr、Fe、Mgからなる不純物を少なくとも90wt.%、少なくとも好ましくは、95wt.%、より好ましくは少なくとも98wt.%、さらには少なくとも99wt.%有しうる。
【0045】
原料ホスフェート溶液(P0)は、5~85wt.%P、好ましくは10~75wt.%P、好ましくは15~62wt.%P、好ましくは17~54wt.%P、好ましくは37~52wt.%P、好ましくは25~30wt.%Pを有しうる。ホスフェート含有酸性溶液(P1)は、2~25%、好ましくは5~23%、好ましくは10~22%、好ましくは15~21%、好ましくは17~18%に含まれるP含有率を生成するように希釈されることが好ましい。ホスフェート含有酸性溶液(P1)は、好ましくは2以下、好ましくは1以下、好ましくは0.5以下のpHを有する。
【0046】
ナノ濾過メンブレン及びナノ濾過メンブレンユニット
ナノ濾過メンブレンは、非荷電粒子に対して150~200Da程度の低分子量カットオフを有して特異的イオンを分離可能である。ナノ濾過メンブレンは、1~6MPa、好ましくは3~5MPa程度の高圧で操作される。各メンブレンは、通常、チューブを形成するロール状フィルムの形態である。他のメンブレンジオメトリーを利用可能であり、本発明は、いずれの特定ジオメトリーにも制限されるものではない。図10(b)及び10(c)に示されるように(米国特許第5945000号明細書の図4及び5から着想)、単一ナノ濾過メンブレンユニットは、直列(本図10(b)及び10(c)の(m11-m1k)を参照されたい)さらには並列(本図10(b)の(m11-m21)を参照されたい)に配置されたいくつかのメンブレンを含みうる。各ナノ濾過メンブレンユニットの使用は、
・ 不純物を含んでナノ濾過メンブレンユニットの保持物側に供給される供給用溶液、
・ ナノ濾過メンブレンユニットの透過物側から流出する不純物に乏しい透過物溶液(すなわち、供給用溶液よりも少ない不純物を含む)、及び
・ ナノ濾過メンブレンユニットの保持物側から流出する不純物に富む保持物溶液(すなわち、供給用溶液よりも多くの不純物を含む)
により特徴付けられる。
【0047】
懸濁固形材料は、固形粒子が透過率の損失によりメンブレンを阻害する可能性があるとともに摩耗によりそれを劣化させる可能性があるので、ナノ濾過メンブレンに供給される溶液では回避されるべきである。同様に、沈殿のリスクは、特異的不純物の濃度が高くなるにつれて増加する。たとえば、Ca又はBaは、サルフェート塩として沈殿する可能性がある。溶液の不純物濃度は、水及び/又はリン酸溶液の添加による溶液の希釈により減少可能である。水及び/又はリン酸溶液の添加はまた、メンブレンに供給される溶液の粘度を制御するのに有用でありうる。本発明によれば、水及び/又はリン酸溶液は、所要により2つのナノ濾過メンブレンユニット間のいずれかの段階でも溶液に添加可能である。
【0048】
本発明では、ナノ濾過メンブレンは、好ましくは、酸性条件下での金属、たとえば、Al、Ca、Cr、Fe、Mg、Sr、Vなどを含めて、とくに2及び3価カチオンの除去のために選択される。各種ナノ濾過メンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1、Me2)を貫流する溶液は酸性であるので、ナノ濾過メンブレンは、酸性pHに対して耐性でなければならない。本発明で使用されるナノ濾過メンブレンは、好ましくは、ポリマーフィルムを支持する多孔性支持体メンブレンを含む複合メンブレンである。ポリマーフィルムは、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリスルホンアミド、ポリアミン、ポリサルファイド、及びメラミンポリマーの群から選択可能である。ポリスルホンアミドが好ましい。ポリマーフィルムは、好ましくは2μm以下、好ましくは1μm以下の厚さを有する。
【0049】
多孔性支持体メンブレンは、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、セラミック、又は多孔性ガラスから選択可能である。ポリスルホンは、多孔性支持体メンブレンに好ましい。多孔性支持体メンブレンは、1~250μm、好ましくは50~100μmに含まれる厚さを有しうる。
【0050】
第1~第nのメンブレンユニット(M1~Mn)
本発明のプロセス及び装置は、たとえば図1(a)に例示されるように、第1のメンブレンユニット(M1)のみを含みうる。代替的に、図2(b)及び3(b)に例示されるように、それらは逐次第1~第(n-1)の透過物(Pp1~Pp(n-1))の各々をそれぞれ2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2~第nの透過物(Pp2~Ppn)及び
・ 不純物に富む第2~第nの保持物(Pr2~Prn)
に分離するために直列に配置された1超(n>1)のメンブレンユニットを含みうる。この場合、逐次第1~第(n-1)の透過物(Pp1~Pp(n-1))の各々の少なくとも一部分は、一連のn個のメンブレンユニット(M1~Mn)の下流に位置するその次の第2~第nのメンブレンユニット(M2~Mn)の保持物側に供給される。第nの透過物(Ppn)の少なくとも一部分は、ナノ濾過ステーションから流出してナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を形成する。
【0051】
第(n-1)の透過物の少なくとも一部分が第nのメンブレンユニット(Mn)に供給されるまで、第1の透過物(Pp1)の少なくとも一部分が、第2のメンブレンユニット(M2))の保持物側に、以下同様に供給される場合、2つ以上のメンブレンユニット(M1~Mn、n>1)は、直列に配置される。
【0052】
好ましい実施形態では、n=2又は3のメンブレンユニット(M1、M2、M3)である。直列に配置されたいくつかのメンブレンユニット(M1~Mn)は、収率、単一の第1のメンブレンユニット(M1)で達成可能なものよりも高い不純物除去率を生じるが、P収率は実質的に低減する。
【0053】
米国特許第5945000号明細書で提案されるように、第1の保持物(Pr1)は、同一の第1のメンブレンユニットの保持物側(M1)に戻され、第2~第nの保持物(Pr2~Prn)の各々は、一連の第1~第(n-1)のメンブレンユニット(M1~M(n-1))でその前の保持物側に供給可能であるか(図2(b)、3(b)、及び11(b)を参照されたい)、又は同一のメンブレンユニット(M2~Mn)の保持物側に戻すことが可能である(図11(a)を参照されたい)。しかし、発明の背景で考察されるように、かかる保持物再循環ループは、その前の又は同一のメンブレンユニットに供給される溶液中の不純物の蓄積をもたらす。プロセスは、ナノ濾過メンブレンユニットへの供給前に溶液中に存在する不純物量を低減するために、こうして再循環された溶液の規則的間隔での逐次ブリードを必要とするおそれがある。これは最終製品の品質を保証するために必要とされる。これは、図8に例示される米国特許第5945000号明細書に係るプロセスでP1及びPf中に存在する不純物量を比較することにより明確化され、この場合、5ループ後、インプットホスフェート溶液(Pf)は、P1よりも高い不純物濃度(c(Pf))を有する(c(P1)=657ppm<c(Pf)=1707ppm、P1とPfとの間での不純物の相対増加Δcr=(c(Pf)-c(P1))/c(P1)=160%を生じる)。
【0054】
本発明によれば、最初に、第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側から分岐して、1つ以上の追加のナノ濾過メンブレンユニット(Mr1、Mr2、Me1)を介して、エントリーライン(1e)に位置する戻りポイントに戻る少なくとも1つの透過物再循環ループが存在するので、ホスフェート含有酸性溶液(P1)中に存在する量と比較して第1のメンブレンユニット(M1)に供給されるインプットホスフェート溶液(Pf)中に存在する不純物量を低減することが可能になる。図8を参照して以上で考察された米国特許第5945000号明細書に係る装置で観測されるP1とPfとの間の不純物濃度の160%増加とは対照的に、図9に例示される本発明によれば、インプットホスフェート溶液(Pf)は、以上に規定され以下に詳細に記載される第1の回収透過物再循環ループ(1e→Pf→M1→Mr1→1e)のおかげで、P1よりも少量の不純物を有する(c(P1)=657ppm>c(Pf)=554ppm、P1とPfとの間の不純物の相対減少Δcr=-16%を生じる)。ただし、相対変動Δcr=(c(P1)-c(Pf)/c(P1)×100%、且つc(P1)及びc(Pf)は溶液P1及びPfの不純物濃度である。
【0055】
さらに、本発明では、第1の保持物(Pr1)のときと同様に、第2~第nの保持物(Pr2~Prn)の各々の少なくとも一部分を第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に供給することが可能である(図2(b)及び3(b)を参照されたい)。これは第2~第nのメンブレンユニット(M2~Mn)のいずれの上流の不純物も低減する効果を有すると同時に、逐次保持物(Pr2~Prn)中に残留するいずれのPもナノ濾過メンブレンユニットを介して再循環されているので、Pの収率をかなり増加させる。
本発明の要旨は、第1(及び任意選択的に第2~第nの各々)のメンブレンユニット(M1~Mn)の保持物側から分岐して、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)を貫流し、その後、流動して、第1若しくは第2の回収メンブレンユニット(Mr1、Mr2)又は第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)のいずれか1つ以上の透過物側からエントリーライン(1e)に戻る少なくとも1つの透過物再循環ループの存在である。
【0056】
再循環ループ
第1~第nのメンブレンユニット(M1~Mn)を参照して以上で考察されたように、現状では、第1~第nのナノ濾過メンブレンユニットは、第1のナノ濾過メンブレンユニット(M1)の透過物(Pp1)が第2のナノ濾過メンブレンユニットの保持物側に、以下同様に第nのナノ濾過メンブレンユニットまで供給される場合、直列に配置される。
【0057】
n>1個のナノ濾過メンブレンユニットは、同一供給用溶液がn個のナノ濾過メンブレンユニットの保持物側に供給される場合、並列に配置される。これとは対照的に、第1のナノ濾過メンブレンユニットの保持物側と第2のナノ濾過メンブレンユニットの保持物側との間の流体連通は、分岐を形成する。分岐を開始して再循環ループを形成するナノ濾過ユニットは、分岐ナノ濾過メンブレンユニットと呼ばれる。
【0058】
再循環ループは、1つの分岐が分岐ナノ濾過メンブレンユニットからエントリーライン(1e)に位置する戻りポイントに戻るとき、又はチャンバー(2c)などでエントリーライン(1e)に直接流体連通するとき、形成される。1つ以上のナノ濾過ユニットは、分岐ナノ濾過ユニットと戻りポイントとの間に介在可能である。
【0059】
透過物再循環ループは、エントリーライン(1e)の戻りポイントのすぐ上流(溶液のフローに従って)に位置するナノ濾過ユニットとの間の流体連通を形成するラインが前記ナノ濾過メンブレンユニットの透過物側に結合されるときに形成される。同様に、保持物再循環ループは、前記ラインが前記ナノ濾過メンブレンユニットの保持物側に結合されるときに形成される。特定再循環ループは、戻りポイントのすぐ上流に位置するナノ濾過メンブレンユニットの名称により参照される。たとえば、以上に規定される第1及び第2の回収透過物再循環ループは、それぞれ、第1及び第2の回収メンブレンユニット(Mr1、Mr2)の透過物側とエントリーライン(1e)又はチャンバー(2c)との間の流体連通を含む(図2(a)~2(c)及び2(f)~2(h)を参照されたい)。同様に、第1のエグジット透過物再循環ループは、第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の透過物側とエントリーライン(1e)との間の流体連通を含む(図2(d)~2(f)及び2(h)を参照されたい)。
【0060】
本発明のプロセス及び装置は、以下のように規定される3つ透過物再循環ループの少なくとも1つを必要とする。
・ 次のように、すなわち、ホスフェート含有酸性溶液(P1)と1つ以上の他のフローとを混合して、第1のメンブレンユニット(M1)に供給されるインプットホスフェート溶液(Pf)を形成するように、形成される図2(a)に例示される第1の回収透過物再循環ループ。第1の保持物(Pr1)の少なくとも一部分は、第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側から第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に供給され、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)に向かう分岐を形成する。第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分は、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側からエントリーライン(1e)に又はチャンバー(2c)に供給され、1つ以上の他のフローの1つを形成する。第1の回収再循環ループは、次のフロー路:1e→M1→Mr1→1eに従う。
・ 次のように、すなわち、ホスフェート含有酸性溶液(P1)と1つ以上の他のフローとを混合して、第1のメンブレンユニット(M1)に供給されるインプットホスフェート溶液(Pf)を形成するように、形成される図2(e)に例示される第1のエグジット透過物再循環ループ。第1の保持物(Pr1)の少なくとも一部分は、第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側から第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に供給される。第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分は、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側から第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の保持物側に供給される。第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分は、第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の透過物側からエントリーライン(1e)に又はチャンバー(2c)に供給され、1つ以上の他のフローの1つを形成する。第1のエグジット再循環ループは、次のフロー路:1e→M1→Mr1→Me1→1eに従う。
・ 次のように、すなわち、ホスフェート含有酸性溶液(P1)と1つ以上の他のフローとを混合して、第1のメンブレンユニット(M1)に供給されるインプットホスフェート溶液(Pf)を形成するように、形成される図2(g)に例示される第2の回収透過物再循環ループ。第1の保持物(Pr1)の少なくとも一部分は、第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側から第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に供給される。第1の回収保持物(Prr1)の少なくとも一部分は、第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の保持物側に供給される。第2の回収透過物(Ppr2)の少なくとも一部分は、第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の透過物側からエントリーライン(1e)に又はチャンバー(2c)に供給され、1つ以上の他のフローの1つを形成する。第2の回収再循環ループは、次のフロー路:1e→M1→Mr1→Mr2→1eに従う。
【0061】
上述した透過物再循環路の2又は3つはいずれも、本発明によれば、精製ホスフェート酸性溶液の最終用途により必要とされる収率及び不純物除去ターゲットセットに依存して同時に形成可能である。
【0062】
上述した透過物再循環ループはすべて、第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側から分岐して、第1の保持物(Pr1)を第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に供給し、以上に規定される3つの透過物再循環ループは、異なるフロー路に従ってエントリーライン(1e)の同一戻りポイント又はエントリーライン(1e)に提供されるチャンバー(2c)に達する。
【0063】
本発明のプロセスは、ホスフェート含有酸性溶液(P1)と1つ以上の他のフローとを組み合わせることによりインプットホスフェート溶液(Pf)を形成するステップを含む。1つ以上の他のフローは、1つ以上の対応する再循環ループの戻りポイントを形成するエントリーライン(1e)に達する。本発明によれば、1つ以上のフローの少なくとも1つは、第1若しくは第2の回収透過物再循環ループ又は第1のエグジット透過物再循環ループの少なくとも1つからの戻りポイントに達しなければならない。図1(a)及び3(b)に示されるように、上述した透過物再循環ループに加えて、フローはまた、第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)の保持物側から第2の保持物エグジット再循環ループを介して戻りポイントに至りうる。
【0064】
戻りポイントは、エントリーライン(1e)のすぐ上流に位置するナノ濾過メンブレンユニットとの流体連通を形成するラストラインのエントリーライン(1e)への直接接続により形成可能である。代替的に、たとえば、図1(a)及び3(b)に例示されるように、ラストラインは、エントリーラインに提供されるチャンバー(2c)に結合して戻りポイントを形成可能である。チャンバー(2c)は、スタティック又はダイナミックミキサーによる混合、バッファーの形成、溶液の冷却などを含めて、1つ以上の機能を含みうる。
【0065】
上述した透過物再循環ループは、
・ P1よりも低い不純物濃度(c(Pf))を有するインプットホスフェート溶液(Pf)(すなわち、c(Pf)<c(P1))が第1のメンブレンユニット(M1)に供給されてナノ濾過メンブレンの効能を増強するように、ホスフェート含有酸性溶液(P1)の不純物の濃度(c(P1))を低減すること、
・ 失われるおそれのある第1のメンブレンユニット(M1)の第1の保持物(Pr1)中に保持されるP及び任意選択的に後続の第2~第nのメンブレンユニット(M2~Mn)中のものを第1の回収メンブレン(Mr1)を介して再循環することにより、P収率を増加させること、
・ インプットホスフェート溶液(Pf)の粘度を管理すること、
を含めて、複数の利点を組み合わせる。
【0066】
第1の回収透過物再循環ループ
第1の回収透過物再循環ループは、本発明の3つの透過物再循環ループのうち最短である。透過物再循環ループとして3つすべてで、第1の回収透過物再循環ループは、第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側から分岐して、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に第1の保持物(Pr1)を供給する。第1の回収メンブレンユニット(Mr1)のナノ濾過メンブレンを透過した第1の回収透過物(Ppr1)は、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側から流出してエントリーライン(1e)の戻りポイント(又はエントリーライン(1e)に提供されたチャンバー(2c))に至る。
【0067】
図2(a)は、単一の第1のメンブレンユニット(M1)及び単一の回収メンブレンユニット(Mr1)を含むとともに装置の唯一の透過物再循環ループを形成する第1の回収透過物再循環ループを含む実施形態を例示する。第1の回収透過物(Ppr1)の全体がエントリーライン(1e)の戻りポイントに再循環される。図2(b)は、n=3個のメンブレンユニット(M1~M3)を含む類似の装置を示す。バルブにより示されるように、第2(=第(n-1))及び第3(=第n)の保持物(Pr2、Pr3)の各々の少なくとも一部分は、第2及び第3のメンブレンユニット(M2、M3)の保持物側から分岐して第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に供給され、第1の保持物(Pr1)と一緒になって第1の回収透過物再循環ループの供給に寄与する。
【0068】
図8(先行技術=米国特許第5945000号明細書)及び図9(本発明)を参照して以上で考察されたように、図8の先行技術の装置に図9に例示される第1の回収透過物再循環ループを提供すると、不純物選択量は1707ppmから554ppmに低減する(すなわち、=(c(PfFIG.8)-c(PfFIG.9))/c(PfFIG.8)=(1707-554)/1707=68%低減)。これはP1を基準にしてインプットホスフェート溶液(Pf)中の不純物濃度をΔcr=(c(Pf)-c(P1))/c(P1)=160%増加させるのではなく、インプットホスフェート溶液(Pf)中の不純物濃度がP1中よりもΔcr=-16%低いという予想外の効果を有する。このことは当然ながらプロセスの不純物除去率に有益な影響を及ぼす。
【0069】
第1の回収透過物(Ppr1)すべて(=その100%)をエントリーライン(1e)の戻りポイントに直接再循環することが必須というわけではなく、その代わりにその一部分のみを再循環することが可能である。たとえば、エントリーポイントに直接再循環されない相補的部分は、
・ 低性能用途に使用可能なナノ濾過回収溶液(P2r)としてナノ濾過ステーション(2)から送出し、図5(b)に示されるように、ナノ濾過ステーション(2)から送出される第1の回収透過物の90%部分(Ppr1-90=P2r)が、ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)での94wt.%除去率に対して約86wt.%の不純物除去率を有するか、又は
・ 第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の保持物側に流入させ、第1のエグジット透過物再循環ループを形成し、及び/又は高性能用途に使用可能な第1若しくは第2のエグジット透過物(Ppe1、Ppe2)により形成される高品質のナノ濾過エグジット溶液(P2e)を生成するか、
のどちらかが可能である。
【0070】
第1の回収保持物(Prr1)は、ナノ濾過ステーション(2)から送出可能であるか、又は代替的に第2の回収メンブレンユニット(Mr2)に供給可能であり、この場合、第2の回収透過物再循環ループを形成可能である。
【0071】
第2の回収透過物再循環ループ
ホスフェート含有酸性溶液(P1)の6倍~ほとんど8倍の図5~7及び9に報告される高不純物濃度では、第1の回収保持物(Prr1)は、ナノ濾過ステーション(2)から送出可能である。しかしながら、好ましい実施形態では、第1の回収保持物(Prr1)の少なくとも一部分は、ナノ濾過ステーション(2)から送出されず、その代わりに第1の回収メンブレンユニットから分岐して第2の回収メンブレンユニット(Mr2)に送られる。2つの隣接ナノ濾過メンブレンユニットの保持物側間で流体連通が形成されるとき、分岐が形成されることに留意されたい。図1(a)~1(d)、2(c)、2(g)、2(h)、及び3(b)は、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)から分岐して第2の回収メンブレンユニット(Mr2)を含む各種実施形態を例示する。
【0072】
第2の回収透過物(Ppr2)の少なくとも一部分(又はすべて)は、エントリーライン(1e)(又はチャンバー(2c))にフィードバックされ、第2の回収透過物再循環ループを形成する。相補的部分は、中程度に精製されたナノ濾過回収溶液(P2r)としてナノ濾過ステーション(2)から送出可能である。第2の回収透過物再循環ループを提供すると、第1の回収保持物(Prr1)でナノ濾過ステーション(2)から送出されるおそれのあるPを再循環して処理することにより、P収率を増加可能になる。第2の回収保持物(Prr2)は、ナノ濾過ステーション(2)から送出可能である。可能ではあるが、第2の回収メンブレンユニット(Mr2)から分岐して第2の回収保持物(Prr2)が供給される第3の回収メンブレンユニットを含むことは、経済的に関心がもたれるとは思われない。ナノ濾過ステーション(2)から送出して第2の回収保持物(Prr2)の代替用途を見いだすことが好ましい。
【0073】
図2(g)は、
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側とエントリーライン(1e)とを流体連通する透過物再循環ループが提供されず、且つ
・ 第2の回収透過物(Ppr2)の少なくとも一部分が、インプットホスフェート溶液(Pf)の成分としてエントリーライン(1e)に供給され、第2の回収透過物再循環ループを形成する、
実施形態を例示する。
【0074】
言い換えると、第2の回収透過物再循環用ループは、エントリーライン(1e)に戻る図2(g)の唯一の透過物再循環用ループである。第2の回収透過物(Ppr2)中の不純物濃度は、同一P濃度と報告された第1の回収透過物(Ppr1)のものよりも高く、それ自体、第1のエグジット透過物(Ppe1)のものよりも高いので、装置が第2の回収透過物再循環ループのみを含む場合、ホスフェート含有酸性溶液(P1)を基準にしてインプットホスフェート溶液(Pf)中の不純物の有利な低減は低減される。
【0075】
第2の回収透過物再循環ループを用いるとき、図2(c)に例示されるように、第1の回収透過物再循環ループを同時に使用することが好ましい。こうすると、ホスフェート含有酸性溶液(P1)を基準にしてインプットホスフェート溶液(Pf)の不純物濃度をさらに低下させることが可能である。
【0076】
第1のエグジット透過物再循環ループ
たとえば、図2(d)~2(f)及び2(h)に例示されるように、第1の回収透過物(Ppr1)の一部分又はすべては、第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の保持物側に流入可能である。図2(d)、2(e)、及び2(h)は、第1の回収透過物(Ppr1)の100%が第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の透過物側に供給され、図2(f)ではPpr1の一部分のみが第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)に供給され、相補的部分が以上で考察された第1の回収透過物再循環ループを介してエントリーライン(1e)に再循環される装置の実施形態を示す。
【0077】
ナノ濾過メンブレンを透過して第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の透過物側に至る第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分は、第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)とエントリーライン(1e)又はチャンバー(2c)との流体連通を介してエントリーライン(1e)に再循環可能であり、こうして第1のエグジット再循環ループを規定する。図2(e)、2(f)、2(h)に例示される実施形態では、第1のエグジット透過物(Ppe1)の100%は、第1のエグジット透過物再循環ループを介してエントリーライン(1e)のエントリーポイント又はチャンバー(2c)に再循環される。図2(d)では、Ppe1の一部分のみが再循環される。相補的部分は、ナノ濾過ホスフェートエグジット溶液(P2e)としてナノ濾過ユニットから送出可能である。図6(b)から分かるように、99wt.%不純物除去率のナノ濾過ホスフェートエグジット溶液(P2e)は、94wt.%の優れたただしより低い不純物除去率のナノ濾過ホスフェート溶液(P2)よりも高純度である。
【0078】
第1のエグジット透過物(Ppe1)は高純度レベルを有するので、その少なくとも一部分をエントリーライン(1e)に再循環すると、有利には、ホスフェート含有酸性溶液(P1)を基準にしてインプットホスフェート溶液(Pf)中の不純物濃度が低減される。このことは、Ppe1の100%がエントリーラインに再循環される図6(a)及びPpe1の10%のみが再循環される図6(b)でインプットホスフェート溶液(Pf)の不純物濃度を比較することにより例示される。Ppe1の100%を再循環したとき、図6(a)のインプットホスフェート溶液(Pf)中の不純物含有率が907ppmであり、図6(b)に例示されるように、再循環されているPpe1の部分を10%に低減したとき、それは991ppmに上昇したことが分かる。両方の場合に、Pfがホスフェート含有酸性溶液(P1)よりも低不純物濃度を有することに留意されたい。明確にするために述べておくが、それは1000ppmに規格化された。
【0079】
同一の結論は、Ppe1の100%がナノ濾過ホスフェートエグジット溶液(P2e)としてナノ濾過ステーション(2)から送出される図7(a)及びPpe1の100%がエントリーライン(1e)に再循環される図7(b)でインプットホスフェート溶液(Pf)の不純物濃度を比較することにより達成される。図7(a)のインプットホスフェート溶液(Pf)中の不純物含有率は、Ppe1の100%がナノ濾過ステーション(2)からP2eとして送出されるとき、940ppmであり、図7(b)に例示されるようにPpe1の100%がエントリーライン(1e)に再循環されるとき、それは914ppmに減少することが分かる。
【0080】
第1のエグジット保持物(Pre1)の少なくとも一部分は、図2(d)~2(h)、3(a)、3(b)、4(a)、4(b)、6(a)、6(b)、7(a)、7(b)に例示されるように、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に戻して再循環可能である。この第1のエグジット保持物再循環ループは、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に入る不純物濃度を減少する。たとえば、図6(b)は、第1の保持物(Pr1)が5591ppmの不純物濃度を有し、第1のエグジット保持物再循環ループの不在下では、これが第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に直接供給されることを示す。第1のエグジット保持物(Pre1)は、718ppmの不純物濃度を有し、第1の保持物(Pr1)と組み合わせると、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)に供給される溶液Pre1+Pre1の4296ppmへの不純物濃度低減に寄与する。このことが重要であるのは、すべての透過物再循環ループの効能及びナノ濾過ステーション(2)から出るナノ濾過ホスフェート溶液の品質を増強するからである(図5~9の不純物濃度は絶対的なものではなく、1000ppmに規格化されたP1のものを基準にすることに留意されたい)。第1のエグジット保持物再循環ループはまた、ナノ濾過ステーション(2)から送出されるおそれのあるPを再循環することによりP収率を増加させるので有利である。
【0081】
第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)
本発明のある実施形態では、第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%は、第1のエグジット透過物(Ppe1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2のエグジット透過物(Ppe2)及び
・ 不純物に富む第2のエグジット保持物(Pre2)
に分離するために、第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)に直列に配置された第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)の保持物側に供給される。
【0082】
図1(a)~1(d)及び3(b)は、直列に配置された第1及び第2のエグジットメンブレンユニット(Me1、Me2)を含む装置の各種実施形態を例示する。第1のエグジット透過物(Ppe1)の100%が第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)に供給される場合、第1のエグジット透過物再循環ループは存在せず、本発明によれば、第1又は第2の回収メンブレンユニット(Mr1、Mr2)の少なくとも1つの透過物側は、エントリーライン(1e)と共に第1又は第2の回収透過物再循環ループを形成しなければならない。かかる実施形態は、第1の回収透過物再循環ループを含む図1(b)及び第2の回収透過物再循環ループを含む図1(d)に例示される。
【0083】
代替的に、第1のエグジット透過物の一部分のみが、第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)に供給され、相補的部分は、第1のエグジット透過物再循環ループを介してエントリーライン(1e)に再循環される。かかる実施形態は、図1(a)、1(c)、及び3(b)に例示される。これらの実施形態では、第1のエグジット透過物再循環ループが形成され、第1及び/又は第2の回収透過物再循環ループの存在は必須でない。
【0084】
第2のエグジット透過物(Ppe2)の収率はかなり低いが、すでに非常に高い第1のエグジット透過物(Ppe1)のものよりも高い不純物除去率で非常に高い精製レベルを有する。したがって、第2のエグジット透過物(Ppe2)は、有利には、ナノ濾過ホスフェートエグジット溶液(P2e)としてナノ濾過ステーション(2)から送出するとともに高性能用途のために回収することが可能である。
【0085】
第2のエグジット保持物(Pre2)は、有利には、図1(a)~1(d)及び3(b)に例示されるように、第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)の保持物側とエントリーライン(1e)との間で形成された第2のエグジット保持物再循環ループを形成してエントリーライン(1e)に再循環可能である。
【0086】
ナノ濾過ステーション(2)及びイオン交換ステーション(3)
図4(a)及び4(b)に例示される好ましい実施形態では、ナノ濾過ユニット(2)から放出されたナノ濾過ホスフェート溶液(P2)は、ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)中に残留する残留カチオン、好ましくは1及び2価カチオンを除去するように及び不純物に乏しい精製リン酸溶液(P3)を形成するように構成されたイオン交換樹脂(3×)を含むイオン交換ステーション(3)に供給可能である。たとえば、イオン交換ステーション(3)は、Na、K、Mg+2、Ca+2の1つ以上を含むカチオンを除去可能である。
【0087】
図4(a)に示されるように、ナノ濾過回収及びエグジットホスフェート溶液(P2r、P2e)を含むナノ濾過ホスフェート溶液はいずれも、上述したナノ濾過ホスフェート溶液(P2r、P2e)をさらに処理するためにイオン交換樹脂(3×)を含むイオン交換ステーション(3r、3e)に供給可能である。
【0088】
イオン交換樹脂(3×)は、好ましくは強酸陽イオン交換樹脂である。たとえば、強酸陽イオン交換樹脂は、ジビニルベンゼン及びスルホン酸官能基で架橋されたポリスチレンビーズを含みうる。本発明に好適なイオン交換樹脂(3×)は、Dow、Lanxess、Mitsubishiなどから入手可能でありうる。
【0089】
イオン交換ステーション(3)での処理後、ナノ濾過リン酸溶液の合計重量を基準にして少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%P、より好ましくは少なくとも60%P、又は少なくとも62%P、さらには少なくとも76%Pの含有率になるようにナノ濾過ホスフェート溶液(P2、P2r、P2r)を濃縮することが好ましい。溶液の濃度は、水を蒸発するための当技術分野で公知のすべての手段により行うことが可能である。
【0090】
装置
本願はまた、以上で考察されたプロセスで不純物を含むホスフェート含有酸性溶液(P1)を精製するための装置に関する。装置は、ホスフェート含有酸性溶液(P1)をナノ濾過ステーション(2)に供給するためのエントリーライン(1e)と、ナノ濾過ステーションからナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を送出するためのエグジットライン(2e)と、に流体連通するナノ濾過ステーション(2)を含む。ナノ濾過ステーション(2)は、
・ 直列に配置されたn個のメンブレンユニット(M1~Mn)(ただし、n≧1)と、
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)及び任意選択的に第1の回収メンブレンに直列に配置された第2の回収メンブレンユニット(Mr2)と、
・ 任意選択的に第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)と、
を含み、上述したメンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1)の各々は、メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含む。
【0091】
第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側は、
・ インプットラインがエントリーラインに流体連通してインプットホスフェート溶液(Pf)を第1のメンブレンユニットに供給するためのインプットライン(1e)、及び
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に流体連通して第1の保持物(Pr1)をそれに供給するための出口ライン、及び
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に流体連通して第1の保持物(Pr1)をそれに供給するための出口ライン
に流体連通する。
【0092】
第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側は、
・ インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%とホスフェート含有酸性溶液(P1)とを組み合わせるためのエントリーライン(1e)若しくはチャンバー(2c)、及び/又は
・ 第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分を第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)に供給するための第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の保持物側
に流体連通する。
【0093】
第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側は、任意選択的に第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の保持物側に流体連通する。
【0094】
本発明の装置の要旨は、
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)又は第2の回収メンブレンユニット(Mr2)又は第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の1つ以上の透過物側と、
・ エントリーライン(1e)又はチャンバー(2c)と、
の間の流体連通を含むことによる少なくとも1つの透過物再循環ループの形成である。
【0095】
ホスフェート含有酸性溶液(P1)を輸送するエントリーライン(1e)が戻りポイントで終わり、ここで透過物再循環ループがエントリーライン(1e)に接合されてインプットラインになり、インプットホスフェート溶液が第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側に供給されることに留意されたい。エントリーライン(1e)がチャンバー(2c)を備える場合、エントリーラインは、チャンバー(2c)の上流に位置し、且つインプットラインは、チャンバー(2c)の下流に位置する。
【0096】
図1~7及び9は、以上で考察された本発明に係る装置の各種実施形態を例示する。
好ましい装置の選択について、続いてレビューする。単一メンブレンユニット(M1)を有する図1(a)及びn=3個のメンブレンユニット(M1~M3)を有する図3(b)は、本発明のほとんどの実施形態を図式的にまとめており、バルブは、流体連通するいくつかのラインを開けたり、閉めたり、又は部分的に開けたりして、フローを停止したり、又は代替的に、溶液の少なくとも一部分、すなわち、フローの非ゼロ部分、好ましくはフローの10~100のwt.%、より好ましくはフローの20~95wt.%、より好ましくはフローの35~85wt.%、より好ましくは40~75wt.%、より好ましくは50~65wt.%がそれを貫流したりできることを示している。図1~7及び9の残りのものは、図1(a)及び3(b)の装置の特定変形形態を示す。以上で説明したように、図にはいずれのポンプも他のアクセサリーも示されていない。本発明は、要件に依存してナノ濾過ステーション(2)の内外のいずれかの位置に配置されるポンプ、水又は他の溶媒の入口、バッファー、熱交換器、ミキサー(スタティック又はダイナミック)、バルブなどのいずれについてもその不在又は提供が限定されるものではないことは明らかである。上述したコンポーネントのいずれか1つが必要であるか、それをどこに配置するかを決めたり、その寸法を決めたりすることは、当業者の能力の範囲内である。
【0097】
単一透過物再循環ループ
本発明に係る装置の最も単純な形態は、エントリーライン(1e)の上流の最後のナノ濾過メンブレンユニットの透過物側から透過物の100%が流動してエントリーライン(1e)に戻る単一透過物再循環ループを含む。図2(a)及び5(a)は、第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側とエントリーライン(1e)と間の流体連通を有する第1の回収透過物再循環ループのみを有する第1の実施形態を例示する。図2(e)及び6(a)は、第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の透過物側とエントリーライン(1e)との間の流体連通を有する第1のエグジット透過物再循環ループのみを有する第2の実施形態を例示する。最後に、図2(g)は、第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の透過物側とエントリーライン(1e)との間の流体連通を有する第2の回収透過物再循環ループのみを有する第3の実施形態を例示する。
【0098】
上述した第1~第3の実施形態の各々で透過物の100%が対応する透過物再循環ループで再循環される場合、透過物の一部分のみが再循環可能であり、透過物の相補的部分は、ナノ濾過ホスフェート回収又はエグジット溶液(P2r、P2e)としてナノ濾過ステーション(2)から送出可能である。対応する透過物再循環ループとナノ濾過ステーション(2)からのエグジットラインとの間で透過物のスプリットを有する対応する実施形態は、第1の回収透過物再循環ループを有する第1の実施形態に対して図5(b)並びに第1のエグジット透過物再循環ループを有する第2の実施形態に対して図2(d)及び6(b)に例示される。
【0099】
図5(a)及び5(b)並びに図6(a)及び6(b)は、透過物の100%が再循環される実施形態及び透過物の一部分のみが再循環される対応する実施形態で得られたP収率及び不純物除去率を列挙する。図5(a)及び5(b)を比較することにより、単一の第1の回収透過物再循環ループでは、94%の同一不純物除去率でのP収率は、第1の回収透過物(Ppr1)の100%をエントリーライン(1e)に再循環することにより増強され、それぞれ、第1の回収透過物(Ppr1)の完全及び部分再循環の間で88%対80%のP収率を有するので、第1の回収透過物(Ppr1)の一部分のみがエントリーライン(1e)に再循環されることにはあまり関心が払われないことが分かる。
【0100】
図6(a)及び6(b)を比較することにより、単一の第1のエグジット透過物再循環ループでは、第1のエグジット透過物(Ppe1)の部分又は完全再循環は、P収率及び不純物除去率を含めてナノ濾過性能を大きく変化しないことが分かる。しかしながら、第1のエグジット透過物は、99%という非常に高い不純物除去率を有するので、その一部分をナノ濾過ステーション(2)から送出して、高純度レベルを必要とするハイプロファイル用途で使用可能である。
【0101】
図1(b)~1(d)に示されるように、本発明に係る装置は、単一透過物再循環ループ、さらには第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)の保持物側間とエントリーライン(1e)との間で確立された流体連通を有する第2のエグジット保持物再循環ループを含みうる。これは、高精製ナノ濾過ホスフェートエグジット溶液(P2e)を生成すると同時にP合計収率を増加させるという利点をもたらす。
【0102】
2又は3つの透過物再循環ループ
2つ以上の透過物再循環ループは、対応する透過物をエントリーライン(1e)に再循環して戻すように提供可能である。透過物再循環ループを追加すると、追加のループがエントリーライン(1e)の不純物濃度を減少する限り、P収率が増加し、不純物除去率もまた増強される。第1の例は、図2(c)に例示されるように第1及び第2の回収透過物再循環ループを含む。図2(c)では、バルブをどのようにセットするかに依存して、第2の回収透過物(Ppr2)の一部分のみがエントリーライン(1e)に再循環され、相補的部分がナノ濾過回収ホスフェート溶液(P2r)としてナノ濾過ステーション(2)から送出される。しかしながら、この溶液(P2r)は、それ自体限られたP含有率及び不純物除去率を有し、限られた関心しか払われない。しかしながら、第2の回収再循環ループへの再循環では、P1を基準にしてPfでP収率が増強され、不純物濃度が低減することは、非常に興味深い。
【0103】
2つの再循環ループを含む第2の例は、第1の回収再循環ループ及び第1のエグジット再循環ループを有して図2(f)に例示される。この実施形態及び類似のものは、P及び不純物含有率の対応する値と共に図7(a)及び7(b)にも描かれる。P収率及び不純物除去率は両方とも、とくに図7(b)の実施形態では非常に良好であることが分かる。
【0104】
2つの再循環ループを含む第3の例は、第2の回収再循環ループ及び第1のエグジット再循環ループを有して図2(h)に例示される。この実施形態は、第2の回収透過物(Ppr2)と第1のエグジット透過物(Ppe1)との組合せが関与し、P及び不純物の両方でかなり異なる濃度を有する。そのため、この実施形態は、特定の最終用途のみに制限される。
【0105】
当然ながら、本発明に係る装置は、図1(a)及び3(b)に例示されるように、第1及び第2の回収メンブレンユニット(Mr1、Mr2)並びに第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の各々の透過物側をエントリーライン(1e)に連結する3つの再循環流体連通を有するように適切にセットされたバルブを少なくとも部分的に開けて、3つすべての透過物再循環ループを同時に含みうる。
【実施例
【0106】
図5~7及び9は、ナノ濾過プロセスのどの段階でもP及び不純物含有率の対応する値と共に本発明のさまざまな実施形態の実施例を示す。図8は、米国特許第5945000号明細書に記載の比較例に係る装置の対応する結果を示す。本発明に係る図9の実施例の装置は、本発明に係る装置が得られるように第1の回収メンブレンユニット(Mr1)及び第1の回収リサイクリングループを追加した図8の先行技術の装置の変形形態である図8及び9の各ナノ濾過メンブレンユニットのマス回収率は、それらを表すボックス内に示される(たとえば、図8及び9の両方の第1のメンブレンユニット(M1)に示される「83%」は、インプットホスフェート溶液(Pf)の83wt.%が第1のメンブレンユニット(M1)のナノ濾過メンブレンを通り抜けたことを示す)。ナノ濾過ユニットは、TFCタイプ(=薄いフィルム複合材)のナノ濾過メンブレンを含み、さまざまなP及び不純物濃度を有するフィード溶液を用いてパイロットプラントで試験された。特定装置の各段階でのP及び不純物含有率の値は、ナノ濾過メンブレンユニットの個別又は特定配置で測定された経験的結果から計算された。これらの計算値から、各ナノ濾過ユニットへのフィード溶液の粘度をそれらの各々の保持物側に入る前に最適化しなければならないことが示唆される。実際には、これはフィード溶液への水の添加又はそれらの温度の制御により行うことが可能である。
【0107】
実施例は、以上で考察されており、特定最終用途に対応するあらかじめ規定された精製目標を達成するために本発明の装置及びプロセスアーキテクチャーを変更可能であることを示す。
【0108】
図9の実施例と図8に例示される先行技術の比較例とを比較すると、本発明の装置及びプロセスを用いてより高い不純物除去率及び高いP収率が達成されることが分かる。
【符号の説明】
【0109】
1 前精製ステーション
1e エントリーライン
2 ナノ濾過ステーション
2e エグジットライン
2c チャンバー
3 ナノ濾過溶液P2が供給されるイオン交換ステーション
3e ナノ濾過エグジット溶液P2eが供給されるイオン交換ステーション
3r ナノ濾過回収溶液P2rが供給されるイオン交換ステーション
3x Iイオン交換樹脂
M1-Mn 第1~第nのメンブレンユニット
Me1,Me2 第1、第2のエグジットメンブレンユニット
Mr1,Mr2 第1、第2の回収メンブレンユニット
P1 ホスフェート含有酸性溶液
P2 ナノ濾過ホスフェート溶液
P2r ナノ濾過ホスフェート回収溶液
P2e ナノ濾過ホスフェートエグジット溶液
P3 精製リン酸溶液
Pf 第1のメンブレンへのインプットホスフェート溶液
Pp1-n 第1~第nのメンブレンステーションの第1~第nの透過物
Pr1-n 第1~第nのメンブレンステーションの第1~第nの保持物
Ppe1,Ppe2 第1、第2のエグジット透過物
Pre1,Pre2 第1、第2のエグジット保持物
Ppr1,Ppr2 第1、第2の回収透過物
Prr1,Prr2 第1、第2の回収保持物
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】
図2(f)】
図2(g)】
図2(h)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含むホスフェート含有酸性溶液(P1)を精製するためのプロセスにおいて、下記ステップ、
・ ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を生成するためにエントリーライン(1e)を介して前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)をナノ濾過ステーション(2)に供給するステップにおいて、前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)は2以下のpHを有し、前記ナノ濾過ステーション(2)が、
o 直列に配置されたn個のメンブレンユニット(M1~Mn)(ただし、n≧1)と、
o 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)及び任意選択的に前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)に直列に配置された第2の回収メンブレンユニット(Mr2)と、
o 任意選択的に第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)と、
を含み、
上述したメンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1)の各々が、メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含む、供給するステップと、
・ 前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と1つ以上の他のフローとを組み合わせることによりインプットホスフェート溶液(Pf)を形成するステップと、
・ 前記インプットホスフェート溶液(Pf)を2つのストリーム:
o 不純物に乏しい第1の透過物(Pp1)及び
o 不純物に富む第1の保持物(Pr1)
に分離するために前記インプットホスフェート溶液(Pf)を第1のメンブレンユニット(M1)に供給するステップと、
・ n>1の場合、第(n-1)の透過物の少なくとも一部分を第nのメンブレンユニット(Mn)に供給するまで、前記第1の透過物(Pp1)の少なくとも一部分を第2のメンブレンユニット(M2)に、以下同様に供給するステップと、
・ 前記第1の保持物(Pr1)を2つのストリーム:
o 不純物に乏しい第1の回収透過物(Ppr1)及び
o 不純物に富む第1の回収保持物(Prr1)
に分離するために前記第1の保持物(Pr1)の少なくとも一部分を前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)に供給するステップと、
・ 前記第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分を
o 前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わせるための前記エントリーライン(1e)、及び/又は
o 前記第1の回収透過物(Pr1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第1のエグジット透過物(Ppe1)及び
・ 不純物に富む第1のエグジット保持物(Pre1)
に分離するための前記第1のエグジットメンブレン(Me1)
の1つ以上に供給するステップと、
・ 任意選択的に前記第1の回収保持物(Prr1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2の回収透過物(Ppr2)及び
・ 不純物に富む第2の回収保持物(Prr2)
に分離するために前記第1の回収保持物(Prr1)の少なくとも一部分を前記第2の回収メンブレン(Mr2)に供給するステップと、
・ 前記第nのメンブレンユニット(Mn)の透過物側から前記ナノ濾過ステーション(2)からの前記ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を送るステップと、
を含み、以下のこと、
・ 前記第1若しくは第2の回収メンブレンユニット(Mr1、Mr2)の1つ以上又は前記第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の透過物側と前記エントリーライン(1e)とを流体連通する1つ以上の透過物再循環ループを提供することと、
・ 前記第1若しくは第2の回収透過物(Ppr1、Ppr2)の1つ以上又は前記第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分を前記エントリーライン(1e)に供給するとともに前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わせて前記インプットホスフェート溶液(Pf)を形成することと、
を特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、n>1であり、且つ前記n個のメンブレンユニット(M1~Mn)の各々が、逐次第1~第(n-1)の透過物(Pp1~Pp(n-1))の各々をそれぞれ2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2~第nの透過物(Pp2~Ppn)及び
・ 不純物に富む第2~第nの保持物(Pr2~Prn)
に分離するために直列に配置され、
・ 逐次第1~第(n-1)の透過物(Pp1~Pp(n-1))の各々の少なくとも一部分が、一連のn個のメンブレンユニット(M1~Mn)の下流に位置するその次の第2~第nのメンブレンユニット(M2~Mn)の保持物側に供給され、
・ 第2~第nの保持物(Pr2~Prn)の各々の少なくとも一部分が、前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側及び/又は一連のn個のメンブレンユニット(M1~Mn)の上流に位置するその前の第1~第(n-1)のメンブレンユニット(M1~M(n-1))の保持物側に供給される、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロセスにおいて、前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)から放出された前記第1の回収保持物(Prr1)の少なくとも一部分が、前記第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の保持物側に供給され、前記第2の回収透過物(Ppr2)の少なくとも一部分が、
・ 前記エントリーライン(1e)に供給されて1つ以上の透過物再循環ループの1つを形成するとともに前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされ、及び/又は
・ 前記ナノ濾過ユニット(2)から送出されてナノ濾過ホスフェート回収溶液(P2r)として回収される、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項3に記載のプロセスにおいて、
・ 前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側と前記エントリーライン(1e)とを流体連通する透過物再循環ループが提供されず、且つ
・ 前記第2の回収透過物(Ppr2)の少なくとも一部分が、前記インプットホスフェート溶液(Pf)の成分として前記エントリーライン(1e)に供給されて、1つ以上の透過物再循環ループの1つを形成する、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%が、前記エグジットメンブレンユニット(Me1)に供給され、且つ前記第1のエグジット透過物(Ppe1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%が、前記第1のエグジット透過物(Ppe1)を2つのストリーム:
・ 不純物に乏しい第2のエグジット透過物(Ppe2)及び
・ 不純物に富む第2のエグジット保持物(Pre2)
に分離するために前記第2のエグジットメンブレンユニット(Me2)の保持物側に供給され、前記第2のエグジット透過物(Ppe2)の少なくとも一部分が、ナノ濾過ホスフェートエグジット溶液(P2e)を形成するために前記ナノ濾過ステーション(2)から送出され、前記第2のエグジット保持物(Pre2)の少なくとも一部分が、前記エントリーライン(1e)に供給されて保持物再循環ループを形成するとともに、前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のプロセスにおいて、
・ 前記第1の回収透過物(Ppr1)
・ 前記第2の回収透過物(Ppr2)、又は
・ 前記第1のエグジット透過物(Ppe1)
の1つ以上の100wt.%が、前記エントリーライン(1e)に供給されて前記透過物再循環ループの1つ以上を形成するとともに前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)と組み合わされることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記第1の回収透過物(Ppr1)と前記エントリーライン(1e)との間に形成された単一透過物再循環ループを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記ナノ濾過ユニット(2)から放出された前記ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)が、前記ナノ濾過ホスフェート溶液(P2)中に残留する残留カチオン、好ましくは1及び2価カチオンを除去するように及び不純物に乏しい精製リン酸溶液(P3)を形成するように構成されたイオン交換樹脂(3×)を含むイオン交換ステーション(3)に供給されることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)が、
・ 2~25%P、好ましくは15~21%Pと、
・ 1μm超の100ppm未満の粒子、好ましくは1μm超の50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、最も好ましくは1ppm未満の粒子と、
・ 3wt.%未満の合計有機炭素(TOC)、好ましくは1wt%以下のTOCと、
・ 好ましくは4wt%以下のSO、好ましくは1000ppm以下のSOと、
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のプロセスにおいて、前記不純物が、Al、Ca、Cr、Fe、Mgを含み、且つP2が、P1を基準にして少なくとも90wt.%、好ましくは少なくとも95wt.%、より好ましくは少なくとも98wt.%、さらには少なくとも99wt.%のこれらの不純物の除去率を有することを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載のプロセスで不純物を含むホスフェート含有酸性溶液(P1)を精製するための装置において、前記装置が、前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)をナノ濾過ステーション(2)に供給するためのエントリーライン(1e)と、前記ナノ濾過ステーションからナノ濾過ホスフェート溶液(P2)を送出するためのエグジットライン(2e)と、に流体連通するナノ濾過ステーション(2)を含み、前記ナノ濾過ステーション(2)が、
・ 前記エントリーライン(1e)に流体連通する2以下のpHを有する前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)の供給源と、
・ 直列に配置されたn個のメンブレンユニット(M1~Mn)(ただし、n≧1)と、
・ 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)及び任意選択的に前記第1の回収メンブレンに直列に配置された第2の回収メンブレンユニット(Mr2)と、
・ 任意選択的に第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)と、
を含み、
上述したメンブレンユニット(M1~Mn、Mr1、Mr2、Me1)の各々が、メンブレンにより分離された保持物側及び透過物側を含み、
・ 第1のメンブレンユニット(M1)の保持物側が、
o インプットラインが前記エントリーライン(1e)に流体連通してインプットホスフェート溶液(Pf)を前記第1のメンブレンユニットに供給するためのインプットライン、及び
o 前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側に流体連通して第1の保持物(Pr1)をそれに供給するための出口ライン
に流体連通し、
・ 前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の透過物側が、
o 前記インプットホスフェート溶液(Pf)の形成に寄与するように第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分、好ましくは10~100wt.%と前記ホスフェート含有酸性溶液(P1)とを組み合わせるための前記エントリーライン(1e)若しくはチャンバー(2c)、及び/又は、
o 前記第1の回収透過物(Ppr1)の少なくとも一部分を前記第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)に供給するための前記第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の保持物側
に流体連通し、
・ 前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)の保持物側が、任意選択的に前記第2の回収メンブレンユニット(Mr2)の保持物側に流体連通し、
前記エントリーライン(1e)又はチャンバー(2c)と前記第1の回収メンブレンユニット(Mr1)又は前記第2の回収メンブレンユニット(Mr2)又は前記第1のエグジットメンブレンユニット(Me1)の1つ以上の透過物側との流体連通を含めることにより少なくとも1つの透過物再循環ループが形成されることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、
・ 前記第1のメンブレンユニット(M1)の透過物側が、第2の膜ユニット(M2)の保持物側に流体連通し、その透過物側が第3のメンブレンユニット(M3)に、以下同様に第nのメンブレンユニット(Mn)まで流体連通し、その透過物側が前記エグジットライン(2e)に結合され、
・ 第2~第nのメンブレンユニット(M2~Mn)の保持物側が、
o 所与のメンブレンユニットに先行する第1~第(n-1)のメンブレンユニット、及び/又は
o 第1の回収メンブレンユニット(Mr1)
の保持物側に流体連通することを特徴とする装置。
【国際調査報告】