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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】酢酸ビニル製造用触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/04 20060101AFI20230711BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230711BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B01J31/04 Z
B01J37/08
B01J37/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576420
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 US2021036344
(87)【国際公開番号】W WO2021252452
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/037,657
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,スティーブ・アール
(72)【発明者】
【氏名】ドッドソン,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ライユアン
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA08A
4G169BA20A
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BC01A
4G169BC02A
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC06A
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BE08A
4G169BE08B
4G169CB30
4G169DA06
4G169EC25
4G169FB15
4G169FB27
4G169FB43
4G169FB57
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
酢酸ビニルの製造における使用に適切な金-パラジウム触媒の製造方法は、触媒上の金属及び/又は合金を再構造化するために、プロモーターの組み込み後に触媒を高温(例えば、160℃以上)で乾燥させることを含み得る。再編成された触媒は、有利には、触媒活性が増加し、安定性が向上する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持体に水不溶性金化合物及び水不溶性パラジウム化合物を含浸させ、前記多孔質支持体の存在下で水溶性金化合物及び水溶性パラジウム化合物を析出させることによって析出した支持体を得ることと;
前記析出した支持体を洗浄することと;
前記析出した支持体上の前記水不溶性金化合物及び前記水不溶性パラジウム化合物を還元して、金属含浸支持体を得ることと;
前記金属含浸支持体にアルカリ金属プロモーターを含浸させ、金属/プロモーター含浸支持体を得ることと;
前記金属/プロモーター含浸支持体を160℃以上で乾燥させ、触媒を得ることと
を含む方法。
【請求項2】
前記多孔質支持体の前記含浸が、
前記水不溶性金化合物又は前記水不溶性パラジウム化合物である第1の水溶性化合物を前記多孔質支持体に含浸させることと;
前記多孔質支持体の存在下で前記第1の水溶性化合物を析出させることと;
前記多孔質支持体に、前記水不溶性金化合物又は前記水不溶性パラジウム化合物である第2の水溶性化合物を含浸させることであって、前記第1及び第2の水溶性化合物は異なる、ことと;
前記多孔質支持体の存在下で前記第2の水溶性化合物を析出させることと
を含む複数のステップで実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒中の前記金と前記パラジウムとのモル比が約0.01:1~約0.7:1である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属プロモーターのアルカリ金属が、乾燥基準で前記触媒の約0.1重量%~約10重量%で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ金属プロモーターが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸及びそれらの任意の組み合わせのナトリウム塩、カリウム塩又はセシウム塩からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記還元が、水素及び/又は炭化水素を含む気相中で実行される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素がエチレンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記気相が不活性キャリアガスをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記還元が約50℃~約250℃で約1時間~約24時間実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記還元がヒドラジン水和物を使用して液相中で実行される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記還元が約20℃~約50℃で約1時間~約24時間実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記金属/プロモーター含浸支持体の前記乾燥が、約160℃~約250℃で実行される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記金属/プロモーター含浸支持体の前記乾燥が、約10分~約1日実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属/プロモーター含浸支持体の前記乾燥が、窒素、アルゴン、及び/又は空気を含む気体の存在下で実行される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒が、約38.6°~約39.2°の、38°~40°のX線回折ピーク強度の2θ値を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(a)金、パラジウム及び/又は金-パラジウム合金、(b)アルカリ金属プロモーター、並びに(c)多孔質支持体を含み、約38.6°~約39.2°の、38°~40°のX線回折ピーク強度の2θ値を有する触媒。
【請求項17】
前記触媒中の元素金属及び合金として累積した前記金と前記パラジウムとのモル比が約0.01:1~約0.7:1である、請求項16に記載の触媒。
【請求項18】
前記アルカリ金属プロモーターのアルカリ金属が、乾燥基準で前記触媒の約0.1重量%~約10重量%で存在する、請求項16又は17に記載の触媒。
【請求項19】
前記アルカリ金属プロモーターが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸及びそれらの任意の組み合わせのナトリウム塩、カリウム塩又はセシウム塩からなる群から選択される、請求項16、17又は18のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項20】
前記多孔質支持体が、シリカ、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、チタニア、ジルコニア、スピネル、炭素及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項16、17、18又は19のいずれか一項に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
酢酸ビニルは、触媒(例えば、担体に担持されたパラジウム及び/又は金)の存在下で、エチレン、酸素及び酢酸を反応させることによって製造される。さらに、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及び酢酸セシウムなどの化合物を含有させると、酢酸ビニルへの反応の収率及び選択性が向上することが示されている。前記酢酸塩は、支持体に含浸され得、及び/又は反応器への供給物と共に導入され得る。
【発明の概要】
【0002】
以下の図は、本開示の特定の態様を説明するために含まれるものであり、排他的な構成と見なされるべきではない。開示された主題は、当業者及び本開示の利益を有する者が思いつくような、形態及び機能における相当の修正、変更、組み合わせ及び等価物が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、本明細書に記載の触媒の調製のための非限定的な例示的方法のフロー図を示す。
図2図2は、本開示の例示的な酢酸ビニル製造プロセスのプロセスフロー図を示す。
図3図3は、100℃、140℃又は180℃で乾燥させた触媒試料のX線回折(XRD)データである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本開示は、酢酸ビニルの製造での使用に適切な触媒を製造する方法に関するものである。より具体的には、本明細書に記載される方法は、プロモーターの組み込み後、より高い乾燥温度を含む。理論によって制限されることなく、プロモーターによって含浸させた後に160℃以上に加熱することによって、触媒の構造が変化すると考えられる。再構造化された触媒は、向上した触媒活性及び改善した安定性を有利に有し、そのため、酸素侵入の時間が短縮される。理論によって制限されることなく、触媒の再構造化は、PdAu合金組成物が、より熱力学的に好ましいPdAu合金へと再構造化されることに関係すると考えられる。
【0005】
図1は、本明細書に記載の触媒の調製のための非限定的な例示的方法のフロー図を示す。一般に、本開示の方法は、水不溶性金化合物及び水不溶性パラジウム化合物を多孔質支持体102に含浸108させ、多孔質支持体102の存在下で水溶性金化合物104及び水溶性パラジウム化合物106を析出させることによって、析出した支持体110を得ること;析出した支持体110を洗浄112すること;析出した支持体110上の水不溶性金化合物及び水不溶性パラジウム化合物を還元114して、金属含浸支持体116を得ること;金属含浸支持体116にアルカリ金属プロモーター120を含浸118させ、金属/プロモーター含浸支持体122を得ること;並びに金属/プロモーター含浸支持体122を160℃以上で乾燥124させて、触媒126を得ることを含む。
【0006】
水不溶性金化合物104及び水不溶性パラジウム化合物106による多孔質支持体102の含浸108は、(a)多孔質支持体102を水溶性金化合物104及び水溶性パラジウム化合物106の水溶液と混合(又は含浸)すること、次に(b)水溶性金化合物104及び水溶性パラジウム化合物106をそれぞれ水不溶性金化合物及び水不溶性パラジウム化合物として多孔質支持体102上に析出させるために、混合物に析出剤を添加することによって同時に実行され得る。或いは、水不溶性金化合物104及び水不溶性パラジウム化合物106を別々のステップで析出させてもよい。例えば、含浸108は、(a)多孔質支持体102を水溶性パラジウム化合物106の水溶液と混合(又は含浸)すること、(b)水溶性パラジウム化合物106を水不溶性パラジウム化合物として多孔質支持体102上に析出させるために、混合物に析出剤を添加すること、(c)その上に水不溶性パラジウム化合物を有する多孔質支持体を洗浄すること、(d)その上に水不溶性パラジウム化合物を有する多孔質支持体を、水溶性金化合物104の水溶液と混合(又は含浸)すること、並びに(e)水溶性金化合物104を水不溶性金化合物として析出させるために、混合物に析出剤(水溶性パラジウム化合物106に対して用いたものと同一又は異なる析出剤)を添加し、析出支持体110を得ることを含んでもよい。或いは、含浸108は、(a)多孔質支持体102を水溶性金化合物104の水溶液と混合(又は含浸)すること、(b)水溶性金化合物104を水不溶性金化合物として多孔質支持体102上に析出させるために、混合物に析出剤を添加すること、(c)その上に水不溶性金化合物を有する多孔質支持体を洗浄すること、(d)その上に水不溶性金化合物を有する多孔質支持体を、水溶性パラジウム化合物106の水溶液と混合(又は含浸)すること、並びに(e)水溶性パラジウム化合物106を水不溶性パラジウム化合物として析出させるために、混合物に析出剤(水溶性金化合物104に対して用いたものと同一又は異なる析出剤)を添加し、析出支持体110を得ることを含んでもよい。
【0007】
多孔質支持体102は、任意の多様な幾何学的形状を有し得る。例えば、多孔質支持体102の形状としては、球状、タブレット状、円柱状、繊維状、切子状粒子など及びそれらの任意のハイブリッドが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。好ましくは、多孔質支持体102は、約1mm~約10mm(又は約1mm~約5mm、又は約3mm~約8mm、又は約5mm~約10mm)の直径を有する。多孔質支持体102の直径は、光散乱技術又は顕微鏡検査によって測定され得る。好ましくは、多孔質支持体102は、約4mm~約8mmの直径を有する球状である。多孔質支持体102の形状が、記載された正確な形状とは異なる可能性があることは当業者に認識されるであろう。例えば、球状と記載された多孔質支持体102は、概ね球状の形状を有する。
【0008】
多孔質支持体102の表面積は、約10m/g~約350m/g(又は約10m/g~約150m/g、又は約100m/g~約200m/g、又は約150m/g~約350m/g)であり得る。多孔質支持体102の細孔体積は、約0.1cm/g~約2cm/g(約0.1cm/g~約1cm/g、又は約0.5cm/g~約1.5cm/g、又は約1cm/g~約2cm/g)であり得る。表面積及び細孔体積は、ASTM D5601-96(2017)によるBET窒素吸着に従って測定可能であり、及び/又はその測定値から導出可能である。
【0009】
多孔質支持体102の例としては、シリカ、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、チタニア、ジルコニア、スピネル、炭素など、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。多孔質支持体102としては、シリカが好ましい。
【0010】
水不溶性金化合物104の例としては、塩化金(III)、テトラハロ金(III)酸など、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
水溶性パラジウム化合物106の例としては、塩化パラジウム(II)、塩化ナトリウムパラジウム(II)、アルカリ土類金属テトラクロロパラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)など及びその任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
一般に、金はパラジウムよりも低いモル濃度で存在する。析出支持体110(つまり、金属含浸支持体116、金属/プロモーター含浸支持体122及び触媒126)上の金対パラジウムのモル比は、約0.01:1~約0.7:1(又は約0.01:1~約0.1:1、又は約0.1:1~約0.5:1、又は約0.3:1~約0.7:1)であり得る。
【0013】
析出支持体110(つまり、金属含浸支持体116、金属/プロモーター含浸支持体122及び触媒126)上の(塩ではなく金及びパラジウムとしての)金属の総量は、約0.05重量%~約20重量%(又は約0.05重量%~約10重量%、又は約1重量%~約15重量%、又は約5重量%~約20重量%)であり得る。
【0014】
析出の前に多孔質支持体102が水溶性金属塩104及び106に曝露される時間及び温度は変更され得る。時間は、約10分~約2日(又は約30分~約1日、又は約1時間~約6時間)の範囲であり得る。温度は、約20℃~約50℃(又は約23℃~約40℃)の範囲であり得る。
【0015】
多孔質支持体102と水溶性金属塩104及び106との混合(又は含浸)は、任意選択的に加熱しながら成分を一緒に混合し、追加の又は継続した混合を伴うか又は伴わずに時間を経過させることによって実行されてもよい。さらに、含浸中、水溶性金属塩104及び106の水溶液の水分を、任意選択的に、残留混合物の水分が10重量%以下(又は5重量%以下、又は1重量%以下)となるように蒸発させてもよい。混合(又は含浸)ステップには、様々な回転装置、タンブリング装置、又は同等の装置が使用されてよい。
【0016】
析出剤の例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属重炭酸塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属ホウ酸塩、ヒドラジンなど及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、析出剤は、金及び/又はパラジウムの水不溶性塩が水酸化物及び/又は酸化物であり得る、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである。析出剤は、典型的に水溶液である。析出剤の量は、パラジウム及び金の水溶性塩の全てが水不溶性塩の形態で析出することを保証するのに十分な量であるべきである。適切な析出を確保するために、存在する析出剤の量は、水溶性金属塩に存在する全アニオンの量の約1~3倍(又は1.1~2倍)であることが好ましい。
【0017】
析出後の洗浄は、水不溶性金属塩を可溶化しないが、析出プロセスから生じるアニオン(例えば、塩化物)を可溶化する、水(例えば、脱イオン水)又は他の適切な溶媒を用いて実行され得る。好ましくは、洗浄は、約1000ppm以下の前記アニオンが洗浄排水中に存在するようになるまで実行される。
【0018】
析出支持体110を洗浄112後、析出支持体110を還元剤に曝露する。洗浄112と還元114との間に、析出支持体110を乾燥させてもよい(例えば、窒素、アルゴン又は空気などの不活性雰囲気中、約50℃~約150℃の温度で、約30分~約3日間)。
【0019】
還元114は、液相で実行されてもよく、又は気相で実行されてもよい。例えば、液相での還元114は、水性ヒドラジン水和物を用いて実行されてもよい。前記液相法は、約20℃~約50℃(又は約23℃~約30℃)の温度で、不溶性金属塩の少なくとも95モル%(又は少なくとも98モル%)を金属に変換するために十分な時間(例えば、約1時間~約24時間)実行され得る。
【0020】
気相での還元114は、例えば、水素及び/又は炭化水素(例えば、エチレン)を用いて実行されてよい。任意選択的に、例えば、水素及び/又は炭化水素の濃度が、析出支持体110が暴露される気体の累積約0.1体積%~約10体積%(又は約0.5体積%~約5体積%)である気相法において、窒素又はアルゴンなどの不活性キャリアガスが利用されてもよい。気相還元法は、約50℃~約250℃(又は約100℃~約200℃)の温度で、不溶性金属塩の少なくとも95モル%(好ましくは少なくとも98モル%)を金属に変換するために十分な時間(例えば、約1時間~約24時間)実行され得る。
【0021】
還元114によって金属含浸支持体116が得られ、次いでこれをアルカリ金属プロモーター120によって含浸118して、金属/プロモーター含浸支持体122が得られる。アルカリ金属プロモーター120の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのナトリウム塩、カリウム塩、又はセシウム塩、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。カリウム金属プロモーターが好ましい。酢酸カリウムは好ましいアルカリ金属プロモーター120である。
【0022】
金属含浸支持体116がアルカリ金属プロモーター120に曝露される時間量及び温度は変更され得る。時間は、約1分~約6時間(又は約1分~約1時間、又は約30分~約1日、又は約1時間~約6時間)の範囲であり得る。温度は、約20℃~約50℃(又は約23℃~約40℃)の範囲であり得る。
【0023】
金属含浸支持体116とアルカリ金属プロモーター120との混合(又は含浸)は、任意選択的に加熱しながら成分を一緒に混合し、追加の又は継続した混合を伴うか又は伴わずに時間を経過させることによって実行されてもよい。さらに、含浸中、アルカリ金属プロモーター120の水分を、任意選択的に、残留混合物の水分が10重量%以下(又は5重量%以下、又は1重量%以下)となるように蒸発させてもよい。混合(又は含浸)ステップには、様々な回転装置、タンブリング装置、又は同等の装置が使用されてよい。
【0024】
次に、金属/プロモーター含浸支持体122を160℃以上(約160℃~約250℃、又は約160℃~約200℃、又は約200℃~約250℃)で乾燥124して、触媒126が得られる。ここでも、理論によって制限されることなく、(38°~40°の2θのピーク強度においてより低い2θ値を有するXRDデータによって例示されるように)160℃超の温度によって触媒が再構造化されると考えられる。さらに、250℃より高い温度では触媒の焼成が生じ、その結果、触媒の不活性化が始まると考えられる。好ましくは、触媒126は、約38.6°~約39.2°(又は約38.7°~約39.1°、又は約38.8°~約39.1°)の38°~40°のピークXRD強度に関する2θ値を有する。XRDは、in-situセルに装填された粉末試料を用いて行われる。XRD測定は、特に指定されない限り、窒素又は空気の雰囲気中、25℃で行われる。
【0025】
乾燥124は、窒素、アルゴン、又は空気のような不活性雰囲気中、約10分~約1日(又は約10分~約3時間、又は約30分~約8時間、又は約6時間~約1日)実行され得る。乾燥124は、流動床ドライヤー、ベルトドライヤー、又は他の乾燥容器を含むがこれらに限定されない任意の適切なシステムで実行され得る。
【0026】
アルカリ金属プロモーター120は、乾燥基準で触媒126の約0.1重量%~約10重量%(約0.1重量%~約5重量%、又は約1重量%~約7重量%、又は約5重量%~約10重量%)で存在してもよい。
【0027】
したがって、本開示の触媒は、(a)金、パラジウム、及び/又は金-パラジウム合金、(b)アルカリ金属プロモーター、並びに(c)多孔質支持体を含み得、触媒は、約38.6°~約39.2°の、38°~40°のX線回折強度のピークに関する2θ値を有する。
【0028】
本開示の触媒は、気相中のエチレン、酸素、及び酢酸から酢酸ビニルを合成する際に使用され得る。例えば、方法は、本開示の触媒の存在下でエチレン、酸素、及び酢酸を反応させ、酢酸ビニルを製造することを含み得る。
【0029】
本明細書に記載の方法によって調製された触媒は、流動床反応器、気相反応器、又は撹拌槽反応器の方法及びシステムを含む様々な酢酸ビニル合成方法及びシステムで使用され得る。酢酸ビニル合成方法及びシステムの例は、それぞれ参照より本明細書に組み込まれる、米国特許第5,731,457号明細書、同第5,968,860号明細書、同第6,107,514号明細書、同第6,420,595号明細書、同第8,822,717号明細書及び米国特許出願公開第2010/0125148号明細書に記載されている。
【0030】
非限定的な例として、図2は、本開示の触媒が実施され得る例示的な酢酸ビニル製造プロセス200のプロセスフロー図を示す。本発明の範囲を変更することなく、プロセス200に追加の構成要素及び修正を加えることができる。さらに、当業者に認識されるように、プロセス200及び関連システムの説明は、様々なラインを通過する流体を説明するために流れを使用する。各流れについて、関連システムは、対応するライン(例えば、対応する流体又は他の材料が容易に通過し得るパイプ又は他の経路)、及び任意選択的にバルブ、ポンプ、圧縮機、熱交換器、又は明示的に記述されているかどうかにかかわらずシステムの適切な動作を保証する他の装置を有している。
【0031】
さらに、個々の流れに使用される記述子は、前記流れの組成を前記記述子からなるものに限定するものではない。例えば、エチレン流は、必ずしもエチレンのみからなるとは限らない。むしろ、エチレン流は、エチレン及び希釈剤ガス(例えば、不活性ガス)を含んでいてもよい。或いは、エチレン流は、エチレンのみからなってもよい。或いは、エチレン流は、エチレン、別の反応物、及び任意選択的に不活性成分を含んでいてもよい。
【0032】
図示されたプロセス200では、酢酸流202及びエチレン流204が気化器206に導入される。任意選択的に、エタンも気化器206に添加されてもよい。さらに、1つ又は複数のリサイクル流(リサイクル流208及び210として図示される)も、気化器206に導入されてもよい。リサイクル流208及び210は、気化器206に直接導入されるように図示されているが、前記リサイクル流又は他のリサイクル流は、気化器206に導入する前に酢酸流202と結合されてもよい(図示せず)。
【0033】
気化器206の温度及び圧力は、広い範囲にわたって変動してもよい。気化器206は、好ましくは、100℃~250℃、又は100℃~200℃、又は120℃~150℃の温度で動作する。気化器206の動作圧力は、好ましくは0.1MPa~2MPa、又は0.25MPa~1.75MPa、又は0.5MPa~1.5MPaの範囲である。気化器206は、気化された供給流212を生成する。気化された供給流212は、気化器206を出て、酸素流214と結合されて、酢酸ビニル反応器218に供給される前に結合供給流216を生成する。
【0034】
酢酸ビニル反応器218の一般的な動作条件に関して、酢酸ビニルを製造する際のエチレン対酸素のモル比は、好ましくは、酢酸ビニル反応器216中、20:1未満(例えば、1:1~20:1、又は1:1~10:1、又は1:5:1~5:1、又は2:1~4:1)である。さらに、酢酸ビニル反応器216中の酢酸対酸素のモル比は、好ましくは10:1未満(例えば、0.5:1~10:1、0.5:1~5:1、又は0.5:1~3:1)である。酢酸ビニル反応器218中のエチレン対酢酸のモル比は、好ましくは10:1未満(例えば、1:1~10:1、又は1:1~5:1、又は2:1~3:1)である。したがって、結合供給流216は、前記モル比のエチレン、酸素、及び酢酸を含み得る。
【0035】
酢酸ビニル反応器218は、熱交換媒体を介して、発熱反応によって発生する熱を吸収し、その温度を100℃~250℃、又は110℃~200℃、又は120℃~180℃の温度範囲内に制御できるシェル及びチューブ反応器であり得る。また、酢酸ビニル反応器218内の圧力を0.5MPa~2.5MPa、又は0.5MPa~2MPaに維持してもよい。
【0036】
さらに、酢酸ビニル反応器218は、固定床反応器又は流動床反応器であってもよく、好ましくは、本開示の方法によって調製された触媒を含む固定床反応器であり得る。
【0037】
反応器218での酢酸ビニル反応によって、粗酢酸ビニル流220が生成する。変換及び反応条件に応じて、粗酢酸ビニル流220は、5重量%~30重量%の酢酸ビニル、5重量%~40重量%の酢酸、0.1重量%~10重量%の水、10重量%~80重量%のエチレン、1重量%~40重量%の二酸化炭素、0.1重量%~50重量%のアルカン(例えば、メタン、エタン又はこれらの混合物)及び0.1重量%~15重量%の酸素を含むことが可能である。任意選択的に、粗酢酸ビニル流220は、0.01重量%~10重量%の酢酸エチルも含み得る。粗酢酸ビニル流220は、酢酸メチル、アセトアルデヒド、アクロレイン、プロパン、及び窒素又はアルゴンなどの不活性物質などの他の化合物を含んでいてもよい。一般に、不活性物質を除くこれらの他の化合物は、非常に少量で存在する。
【0038】
熱交換器222に粗酢酸ビニル流220を通過させ、粗酢酸ビニル流220の温度を低下させる。好ましくは、粗酢酸ビニル流220は、80℃~145℃、又は90℃~135℃の温度まで冷却される。
【0039】
本明細書に記載のシステム及び方法は、粗酢酸ビニル流220又はその下流の流れ中の1つ又は複数の金属成分の濃度を測定する。上述したように、金属成分の濃度は、とりわけ、システムの健全性及び/又は触媒の健全性を評価するために使用することができる。
【0040】
粗酢酸ビニル流220は、その後、分離器226(例えば、蒸留塔)に搬送されてもよい。好ましくは、液化可能な成分の凝縮はほとんど、又は全く起こらず、冷却された粗酢酸ビニル流220(熱交換器222後)は気体として分離器226に導入される。
【0041】
粗酢酸ビニル流220の成分を分離するためのエネルギーは、反応器218における反応熱によって提供されてもよい。いくつかの実施形態において、分離器226内の分離エネルギーを高めるために専用の任意選択的なリボイラー(図示せず)が存在してもよい。
【0042】
分離器226は、粗酢酸ビニル流220を、オーバーヘッド流228及びボトム流230の少なくとも2つの流れに分離する。オーバーヘッド流228は、エチレン、二酸化炭素、水、アルカン(例えば、メタン、エタン、プロパン、又はそれらの混合物)、酸素、及び酢酸ビニルを含むことができる。ボトム流230は、酢酸ビニル、酢酸、水、及び潜在的にエチレン、二酸化炭素、及びアルカンを含むことができる。
【0043】
オーバーヘッド流228はさらに処理232され得(例えば、さらなる分離を受け、及び/又はエチレン及び/若しくはメタンなどのガスで増強される)、最終的にリサイクル流210が生成する。ここでも、気化器206の供給物としてのリサイクル流210の使用(そのまま、又は以前に別の流れと混合されたもの)は任意選択的である。
【0044】
ボトム流230はさらに処理234され得(例えば、さらなる精製及び分離を受ける)、最終的に酢酸ビニル製品流236及びリサイクル流208が生成する。ここでも、気化器206の供給物としてのリサイクル流208の使用(そのまま、又は以前に別の流れと混合されたもの)は任意選択的である。
【0045】
例示的な実施形態
本開示の第1の非限定的な例示的実施形態は、多孔質支持体に水不溶性金化合物及び水不溶性パラジウム化合物を含浸させ、多孔質支持体の存在下で水溶性金化合物及び水溶性パラジウム化合物を析出させることによって析出した支持体を得ることと;析出した支持体を洗浄することと;析出した支持体上の水不溶性金化合物及び水不溶性パラジウム化合物を還元して、金属含浸支持体を得ることと;金属含浸支持体にアルカリ金属プロモーターを含浸させ、金属/プロモーター含浸支持体を得ることと;金属/プロモーター含浸支持体を160℃以上で乾燥させ、触媒を得ることとを含む方法である。第1の非限定的な例示的実施形態は、さらに、要素1:多孔質支持体の含浸が、水不溶性金化合物又は水不溶性パラジウム化合物である第1の水溶性化合物を多孔質支持体に含浸させることと;多孔質支持体の存在下で第1の水溶性化合物を析出させることと;多孔質支持体に、水不溶性金化合物又は水不溶性パラジウム化合物である第2の水溶性化合物を含浸させることと(第1及び第2の水溶性化合物は異なる);多孔質支持体の存在下で第2の水溶性化合物を析出させることとを含む複数のステップで実行されるもの;要素2:触媒中の金とパラジウムとのモル比が約0.01:1~約0.7:1であるもの;要素3:アルカリ金属プロモーターのアルカリ金属が、乾燥基準で触媒の約0.1重量%~約10重量%で存在するもの;要素4:アルカリ金属プロモーターが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸及びそれらの任意の組み合わせのナトリウム塩、カリウム塩又はセシウム塩からなる群から選択されるもの;要素5:金属/プロモーター含浸支持体の乾燥が、窒素、アルゴン、及び/又は空気を含む気体の存在下で実行されるもの;要素6:触媒が、約38.6°~約39.2°の、38°~40°のX線回折ピーク強度の2θ値を有するもの;要素7:還元が、水素及び/又は炭化水素を含む気相中で実行されるもの;要素8:要素7及び炭化水素がエチレンであるもの;要素9:要素7及び気相が不活性キャリアガスをさらに含むもの;要素10:要素7及び還元が約50℃~約250℃で約1時間~約24時間実行されるもの;要素11:還元が、ヒドラジン水和物を用いて液相中で実行されるもの;要素12:要素11及び還元が約20℃~約50℃で約1時間~約24時間実行されるもの;要素13:金属/プロモーター含浸支持体の乾燥が約160℃~約250℃で実行されるもの;並びに要素14:要素13及び金属/プロモーター含浸支持体の乾燥が約10分~約1日実行されるものの1つ又は複数を含み得る。組み合わせの例としては、要素11(及び任意選択的に要素12)と要素1~10の1つ又は複数との組み合わせ;要素13(及び任意選択的に要素14)と要素1~10の1つ又は複数との組み合わせ;要素7と要素8~10の1つ又は複数との組み合わせ;要素1と要素2~10の1つ又は複数との組み合わせ;要素2と要素3~10の1つ又は複数との組み合わせ;要素3と要素4~10の1つ又は複数との組み合わせ;要素4と要素5~10の1つ又は複数との組み合わせ;及び要素5と要素6~10の1つ又は複数との組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
第2の非限定的な例示的実施形態は、(任意選択的に要素1~14の1つ又は複数を含む)第1の非限定的な例示的実施形態の方法によって製造された触媒である。
【0047】
第3の非限定的な例示的実施形態は、(a)金、パラジウム及び/又は金-パラジウム合金、(b)アルカリ金属プロモーター、並びに(c)多孔質支持体を含み、約38.6°~約39.2°の、38°~40°のX線回折ピーク強度の2θ値を有する触媒である。第3の非限定的な例示的実施形態は、さらに、要素15:触媒中の元素金属及び合金として累積した金とパラジウムとのモル比が約0.01:1~約0.7:1であるもの;要素16:アルカリ金属プロモーターのアルカリ金属が、乾燥基準で触媒の約0.1重量%~約10重量%で存在するもの;要素17:アルカリ金属プロモーターが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸及びそれらの任意の組み合わせのナトリウム塩、カリウム塩又はセシウム塩からなる群から選択されるもの;要素18:多孔質支持体が、シリカ、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、チタニア、ジルコニア、スピネル、炭素及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものの1つ又は複数を含み得る。組み合わせの例としては、要素15と要素16~18の1つ又は複数との組み合わせ;要素16と要素17~18の一方又は両方との組み合わせ;及び要素17と18との組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
第4の非限定的な例示的実施形態は、本開示の触媒の存在下でエチレン、酸素、及び酢酸を反応させて酢酸ビニルを生成することを含む方法である。第4の非限定的な例示的な実施形態は、さらに、要素19:エチレン対酸素のモル比が約20:1未満であるもの;要素20:酢酸対酸素のモル比が約10:1未満であるもの;要素21:エチレン対酢酸のモル比が約10:1未満であるもの;要素22:反応が約100℃~約250℃で実行されるもの;要素23:反応が約0.5MPa~約2.5MPaで実行されるもの;要素24:反応によって、5重量%~30重量%の酢酸ビニル、5重量%~40重量%の酢酸、0.1重量%~10重量%の水、10重量%~80重量%のエチレン、1重量%~40重量%の二酸化炭素、0.1重量%~50重量%のアルカン、0.1重量%~15重量%の酸素、及び任意選択的に0.01重量%~10重量%の酢酸エチルが生成するもの;並びに要素25:要素24及び方法が酢酸ビニルの少なくとも一部を他の生成物から分離することをさらに含むものの1つ又は複数を含み得る。組み合わせの例としては、2つ以上の要素19~21の組み合わせ;要素22及び23の組み合わせ;要素22及び/又は要素23と要素19~21の1つ又は複数との組み合わせ;並びに要素24(及び任意選択的に要素25)と要素19~23の1つ又は複数との組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0049】
他に示されない限り、本明細書及び関連する請求項で使用される成分の量、分子量のような特性、反応条件などを表す全ての数値は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解される。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本発明の実施態様によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る概算値である。少なくとも、請求項の範囲に均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数に照らして、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきものである。
【0050】
1つ又は複数の発明要素を組み込む1つ又は複数の例示的な実施態様を本明細書で提示する。物理的な実施態様の全ての特徴が、明確化のために本願で説明又は示されているわけではない。本発明の1つ又は複数の要素を組み込んだ物理的実施形態の発展において、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約に準拠するなど、開発者の目標を達成するために、多数の実施態様に固有の決定を行わなければならないことは理解され、それは実施によって、また時によって変化する。開発者の努力は時間のかかるものであるかもしれないが、そのような努力は、それにもかかわらず、当業者及び本開示の利益を有する者にとって日常的な仕事であろう。
【0051】
本明細書において、組成物及び方法は、様々な成分又はステップを「含む」という用語で説明されているが、組成物及び方法は、様々な成分及びステップから「本質的になる」又は「なる」ことも可能である。
【0052】
本発明の実施形態のより良好な理解を促進するために、好ましい又は代表的な実施形態の以下の例を挙げる。以下の実施例は、本発明の範囲を限定、又は定義するために読まれるべきではない。
【実施例
【0053】
水溶性金属塩としてNaPdCl及びNaAuCl、析出剤としてNaOH、多孔質支持体としてKA-160(シリカ/アルミナ支持体材料、Sud Chemieから入手可能)、アルカリ金属プロモーターとして酢酸カリウム(KOAc)を用いて、Pd/Au/KOAc含浸KA-160のマスターバッチを調製することによって触媒試料を調製した。KOAcによって含浸させた後、試料をXRD分析用のin-situセルに装填した。窒素含有雰囲気下で、XRD内の試料を100℃、140℃、又は180℃のいずれかの所定の乾燥温度まで昇温させた。XRDデータは、CuK-アルファ源を用いて、36°及び52°の間の2θに関してステップサイズ0.06°で連続的に収集された。相の決定は、ICDDデータベースなどの結晶学データベースとのピークマッチングによって行った。
【0054】
図3は、100℃、140℃、又は180℃における試料のXRDデータである。XRDスペクトルから、100℃、140℃の試料と比較して、180℃では38°~40°のピークが低い2θ値にあることから、温度を上げると触媒の構造が変化することがわかる。より具体的には、38°~40°の最大シグナルに対応する2θ値は、100℃、140℃又は180℃の試料に関して、それぞれ39.4°、39.5°、38.9°である。38°~40°の最大シグナルに対応する2θ値は、室温まで冷却後に維持される。さらに、38°~40°の最大シグナルに対応するそのような2θ値は、他の装置(例えば、オーブン)で同一最大温度まで乾燥させた後に室温まで冷却した他の試料でも観察される。
【0055】
本実施例は、より高い温度に加熱された場合、最終的な触媒の構造が変化することを示す。理論に制限されることなく、この構造変化を見るためには、アルカリ金属プロモーター含浸後の160℃以上の乾燥が必要であると考えられている。
【0056】
したがって、本発明は、言及された目的及び利点並びにそこに内在するものを達成するために十分に適合される。本発明は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかである異なるが同等の様式に修正及び実施してもよいため、上記に開示した特定の実施例及び構成は例示に過ぎない。さらに、以下の特許請求の範囲に記載される以外に、本明細書に示される構造又は設計の詳細について、いかなる制限も意図されない。したがって、上記で開示された特定の例示的な実施例は、変更、組み合わせ、又は修正されてもよく、そして全てのそのような変形は、本発明の範囲及び精神内にあると考えられることは明らかである。本明細書に例示的に開示された本発明は、好適に、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素及び/又は本明細書に開示された任意選択的要素の不在下で実施され得る。組成物及び方法は、様々な成分又はステップを「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、又は「含む(including)」という用語で説明されるが、組成物及び方法は、様々な成分及びステップから「本質的になる(consist essentially of)」又は「からなる(consist of)」こともできる。上記に開示された全ての数値及び範囲は、いくらかの量で変動する可能性がある。下限値及び上限値を有する数値範囲が開示される場合は常に、その範囲内に入る任意の数値及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。特に、(「約aから約bまで」又はその同等物、「約aからbまで」又はその同等物、「約a~b」の形式のもの)本明細書に開示されるあらゆる数値範囲は、より広い数値範囲内に包含されるあらゆる数値及び範囲を規定するものと理解される。また、特許請求の範囲に記載された用語は、特許権者によって明示的に明確に定義されない限り、その平易で通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、それが導入する要素の1つ又は複数を意味するように本明細書で定義される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】