(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】被覆方向性電磁鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/00 20060101AFI20230711BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20230711BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20230711BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20230711BHJP
C22C 38/02 20060101ALI20230711BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C23C22/00 A
C21D8/12 B
C21D9/46 501B
C22C38/00 303U
C22C38/02
C22C38/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576881
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 US2021037487
(87)【国際公開番号】W WO2021257608
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520190045
【氏名又は名称】アクサルタ コーティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】ベンツ ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ロモシッツ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンドラー アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4K026
4K033
【Fターム(参考)】
4K026AA03
4K026AA22
4K026BA08
4K026BA12
4K026BB05
4K026CA16
4K026CA18
4K026CA37
4K026DA02
4K026EB10
4K033AA02
4K033EA02
4K033FA01
4K033FA10
4K033HA00
4K033JA04
4K033LA01
4K033MA00
4K033RA04
4K033RA09
4K033SA02
4K033SA03
4K033TA02
4K033TA03
(57)【要約】
被覆方向性電磁鋼板及びその製造方法が提供される。例示的実施形態では、方法は、約2.5~約4質量%のケイ素、約0.005~約0.1質量%の炭素、及び約90~約97.5質量%の鉄を有する溶鋼を製造することを含む。溶鋼は、スラブに鋳造され、その後、表面を有する厚板に冷間圧延される。厚板は、脱炭素焼鈍を用いて脱炭素処理され、その後、再結晶化焼鈍を用いて再結晶化させて、方向性電磁鋼板が製造される。被覆は、表面上を覆って適用され、被覆は、有機物放射線硬化性架橋剤及び光開始剤を含む。被覆は、それを放射線源に曝露することにより硬化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の製造方法であって、下記のステップを含む方法:
溶鋼の総重量を基準にして、約2.5~約4.0質量%のケイ素、約0.005~約0.1質量%の炭素、約90~約97.5質量%の鉄を含む、前記溶鋼を形成するステップ(10);
前記溶鋼をスラブに鋳造するステップ(20);
前記スラブを厚板に冷間圧延するステップ(60)であって、前記厚板が表面を含むステップ;
前記厚板を脱炭素焼鈍を用いて約850~約1,050セ氏温度(℃)で脱炭素するステップ(70);
前記厚板を再結晶化焼鈍を用いて、約700~約1,300℃で再結晶化して方向性電磁鋼板を形成するステップ(80);
前記表面(230)上を覆う被覆を適用するステップ(90)であって、前記被覆(270)が、有機物である放射線硬化性架橋剤を含み、前記被覆(270)が光開始剤を含むステップ;及び
前記被覆を放射線源に曝露すること(100)により、前記厚板(200)の表面(230)上で前記被覆を硬化するステップ(100)。
【請求項2】
前記被覆を硬化するステップ(100)が、前記被覆(270)を電子線、電磁放射線源、又はそれらの組み合わせに曝露するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被覆を適用するステップ(90)が、被覆(270)の総質量を基準にして、約0~約50質量%のシランを含む前記被覆を適用するステップ(90)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被覆を適用するステップ(90)が、被覆(270)の総質量を基準にして、約0~約60質量%の無機粒子を含む前記被覆を適用するステップ(90)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被覆を適用するステップ(90)が、前記無機粒子が、炭酸塩、酸化物、ケイ酸塩、硫酸塩、硫化物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、ならびに前記無機粒子が、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、ランタン(La)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、亜鉛(Zn)及びジルコニウム(Zr)の1種又は複数を更に含む、前記被覆を適用するステップ(90)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記被覆を適用するステップ(90)が、前記被覆(270)が、元素リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、セレン(Se)、ゲルマニウム(Ge)、ランタン(La)、ガリウム(Ga)、鉛(Pb)、タンタル(Ta)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)の1種又は複数を含む、前記被覆を適用するステップ(90)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記被覆を適用するステップ(90)が、前記被覆(270)の総質量を基準にして、約10~約90質量%の量の前記放射線硬化性架橋剤、及び前記被覆(270)の総質量を基準にして、約0.1~約20質量%の量の前記光開始剤、を含む前記被覆を適用するステップ(90)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記厚板を再結晶化するステップ(80)が、再結晶化オーブン(300)中で前記厚板を再結晶化するステップ(80)を含み;及び
前記被覆を適用するステップ(90)が、被覆ステーション(310)中で前記被覆を適用するステップ(90)を含み;
前記方法が、前記厚板(200)を前記再結晶化オーブン(300)から前記被覆ステーション(310)まで移送ローラー(290)上を移送するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記被覆を適用するステップ(90)が、前記放射線硬化性架橋剤がエポキシ化合物、イソシアネート化合物、ポリウレタン化合物、アクリル化合物、ポリアミド化合物、ポリエステル化合物、シリコーン化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、前記被覆を適用するステップ(90)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記被覆を適用するステップ(90)が、前記被覆(270)がクロムをほぼ含まず、それにより、前記被覆(270)中のクロム濃度が、前記被覆(270)の総質量を基準にして、約0.01質量%以下である、前記被覆を適用するステップ(90)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記厚板を再結晶化するステップ(80)が、生産ライン(280)上で前記厚板を再結晶化するステップ(80)を含み、前記生産ライン(280)が、前記厚板(200)を移動させるように構成された移送ローラー(290)を含み、及び
前記被覆を適用するステップ(80)が、前記生産ライン(280)上で前記被覆を適用するステップ(80)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記厚板(200)を再結晶化オーブン(300)から被覆ステーション(310)まで前記生産ライン(280)上を移動させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記被覆(270)が、前記被覆(270)の総質量を基準にして、約20~約80質量%の量の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
方向性電磁鋼板(200)の製造方法であって、下記のステップを含む方法:
電磁鋼板を含む厚板を製造するステップ;
前記厚板を再結晶化焼鈍により、約700~約1,300セ氏温度で再結晶化して方向性電磁鋼板を製造するステップ(80)であって、前記厚板(200)が移送ローラー(290)を含む生産ライン(280)上で再結晶化されるステップ;
前記厚板(200)が前記生産ライン(280)上にある間に前記厚板(200)の表面(230)に被覆を適用するステップ(90)であって、前記被覆(270)が有機成分を含むステップ;及び
前記厚板(200)の表面(230)上で、前記被覆(270)を放射線源(340)に曝露することにより、前記被覆を硬化するステップ(100)であって、前記生産ライン(280)にある間に前記厚板(200)が硬化されるステップ。
【請求項15】
方向性電磁鋼板(200)であって、
方向性電磁鋼板(200)の表面(230);
前記方向性電磁鋼板(200)の前記表面(230)のフォルステライト層(250);
前記表面(230)上を被う被覆(270)であって、前記被覆(270)が、前記被覆(270)の総質量を基準にして、約10~約99質量%の有機成分を含み、前記有機成分が、放射線硬化性架橋剤から形成された高分子を含む、被覆(270)、
を含み、
前記方向性電磁鋼板が、前記方向性電磁鋼板の総質量を基準にして、約0.01~約0.03質量%の炭素、及び前記方向性電磁鋼板の総質量を基準にして、約2.5~約4.0質量%のケイ素を含み;及び
前記方向性電磁鋼板(200)が、異方性磁気特性を有する方向性電磁鋼板を含み、それにより、圧延方向(210)の厚板透磁率が幅方向(220)の厚板透磁率より大きく、前記幅方向(220)は、前記圧延方向(210)に対し垂直である、
方向性電磁鋼板(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年6月17日に出願された米国特許出願第16/903,675号に対する優先権を主張し、この内容は参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に、被覆を有する方向性電磁鋼板、及びその製造方法に関し、更に限定すれば、有機成分を含む被覆を有する方向性電磁鋼板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電磁鋼板は、低磁気ヒステリシス、高磁束密度、優れた鉄損及び高透磁率などの特定の望ましい磁性特性を有する。電磁鋼板は通常、モーター、変圧器、及び他の電気部品に使われ、望ましい磁気特性は、使用中のより低いエネルギー損失をもたらす。電磁鋼板は通常、薄板又は厚板として供給され、いくつかのこれらの厚板は、一緒に積層され、所望の構造が形成される。各厚板は典型的には、絶縁特性を与える絶縁被覆を有し、被覆は、接着、強度、腐食からの保護などの良好な被覆特性を示す。
方向性電磁鋼板は、異方性特性を伴って製造され、そのため方向性電磁鋼板は、1つの方向では、別の方向に比べて異なる特性を有する。従って、透磁率、磁束密度、及び他の特性が、所望の方向で最大化でき、これは、鋼板の配向性が変圧器内で一定のままである変圧器に特に有益である。方向性電磁鋼板は、圧延方向で磁気特性が好適する配向結晶を有する。しかし、結晶は有機成分を分解するのに十分に高い温度での再結晶化焼鈍工程で配向される。従って、方向性電磁鋼板の絶縁被覆は、非有機物であり、多くは、無水クロム酸、クロム酸塩、又は重クロム酸塩などのクロム化合物を含む。クロム化合物は、絶縁体被覆に好ましい水分吸収耐性を与えるが、有害な環境影響を有する六価のクロムを含む処理溶液を生ずる。無機被覆は、脆性で限られた柔軟性を有し、薄片状にはがれ、特に、切削、穿孔、及び打抜き加工操作中に、粉塵を形成する傾向がある。
従って、有機物を含む絶縁被覆を有する方向性電磁鋼板、及びその製造方法を提供することが望ましい。加えて、方向性電磁鋼板を提供し、ならびに切削、穿孔、又は打抜き加工操作後に接着及び保護特性のままで残る絶縁被覆を有し、被覆が腐食及び湿気からの良好な保護を与える、このような鋼の製造方法を提供することが望ましい。更に、本実施形態の他の望ましい特徴及び特性は、添付図面及びこの背景技術と併せて、以下に続く発明を実施するための形態及び添付の特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明の概要】
【0004】
被覆方向性電磁鋼板及びその製造方法が提供される。例示的実施形態では、方法は、約2.5~約4質量%のケイ素、約0.005~約0.1質量%の炭素、及び約90~約97.5質量%の鉄を有する溶鋼を製造することを含む。溶鋼は、スラブに鋳造され、その後、表面を有する厚板に冷間圧延される。厚板は、脱炭素焼鈍を用いて脱炭素処理され、その後、再結晶化焼鈍を用いて再結晶化させて、方向性電磁鋼板に製造される。被覆は、表面上に適用され、有機物である光開始剤及び放射線硬化性架橋剤を含む。被覆は、それを放射線源に曝露することにより硬化される。
方向性電磁鋼板を製造する方法は、別の方法でも提供される。方法は、電磁鋼板の厚板を製造し、再結晶化焼鈍で厚板を再結晶化して、方向性電磁鋼板を製造する。厚板は、移送ローラーを含む生産ライン上で再結晶化される。被覆は、厚板が生産ライン上にある間に厚板の表面に適用され、有機成分を含む。被覆は、被覆を放射線源に曝露することにより厚板の表面上で硬化され、厚板は、生産ライン上にある間に硬化される。
方向性電磁鋼板は、別の実施形態でも提供される。鋼板は、表面にフォルステライト層を有する表面を有する。被覆は、表面を覆い、約10~約99質量%の有機成分を含む。有機成分は、放射線硬化性架橋剤から形成される高分子を含む。鋼は、約0.01~約0.03質量%の炭素、約2.5~約4.0質量%のケイ素を含む。厚板は、異方性磁気特性を有する方向性電磁鋼板であり、圧延方向の厚板透磁率は、圧延方向に垂直な幅方向の厚板透磁率より大きい。
本実施形態は、以降では、以下の図面と併せて説明される。図面では、類似の数字は、類似の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】例示的実施形態による被覆方向性電磁鋼板の製造方法のステップを示すフローチャートである。
【
図2】例示的実施形態による方向性電磁鋼板の斜視断面図である。
【
図3】例示的実施形態による被覆方向性電磁鋼板の生産ラインの一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
次の詳細説明は、本来例示的なものに過ぎず、記載の実施形態の適用又は使用を限定する意図はない。更に、前述の技術分野、背景技術、発明の概要、又は下記の詳細説明で提示されるいずれの理論にも束縛されることを意図するものではない。
方向性電磁鋼板は、所望の配向性で結晶を成長させるために高温再結晶化焼鈍を必要とし、この高温焼鈍は、被覆中に存在し得る有機成分を分解する。しかし、有機物被覆は、有機成分を含まない被覆に比べて、より優れた耐食性、耐湿性、及び処理能力(例えば、切削、打抜き加工、又は穿孔ステップ中に、無傷で厚板に接着したまま残存すること)を提供するので、方向性電磁鋼板を有機物で被覆することが望ましい。方向性電磁鋼板製造工程へ長い熱硬化処理を導入することは望ましくない。
これらの制約を克服するために、例示的実施形態では、再結晶化焼鈍後に有機成分を含む被覆が適用され、被覆が有機物放射線硬化性架橋剤及び光開始剤を含む、方向性電磁鋼板の製造方法が提供される。この場合、方向性電磁鋼板製造工程は、被覆が鋼の表面に適用され、その後、高速硬化のために照射されるように修正される。この手順により、有機成分を含む被覆を有する方向性電磁鋼板が製造される。
【0007】
図1を参照すると、方向性電磁鋼板の製造方法は、次のようないくつかの工程のステップを含み得る:溶鋼の製造ステップ10;溶鋼のスラブへの鋳造ステップ20;スラブの所望の厚みへの熱間圧延ステップ30;任意選択で、熱間圧延スラブの巻き取りステップ40;任意選択で、熱間圧延スラブの巻きを解くステップ50;所望の厚さの厚板を形成するためのスラブの冷間圧延ステップ60;脱炭素焼鈍による厚板からの炭素の除去ステップ70;再結晶化焼鈍で脱炭素処理厚板中の結晶粒を配向させることによる方向性電磁鋼板の形成ステップ80;方向性電磁鋼板の被覆ステップ90;及び硬化のための被覆の照射ステップ100。
【0008】
例示的実施形態では、方法は、所望の組成を有する溶鋼の製造10で開始される。例示的実施形態では、溶鋼は、溶鋼の総質量を基準にして、約2.5~約4.0質量%の量のケイ素元素を含む。溶鋼は、同様に溶鋼の総質量を基準にして、約0.005~約0.1質量%の量の炭素を更に含む。溶鋼中には、次のいくつかの元素が任意に含まれてよい:約250~約450質量百万分率(ppm)(すなわち、溶鋼の総質量を基準にして、約0.025~約0.045質量%)の量のアルミニウム;約300~約500ppmの量の銅;約500~約1,500ppmの量のスズ;0~約150ppmの量の窒素;0~約1500ppmの量のマンガン;0~約600ppmの量の硫黄;0~約1,000ppmの量のリン;ならびに0~約2,000ppmの量の他の不純物。溶鋼はまた、溶鋼の総質量を基準にして、約90~約97.5質量%の量の鉄も含む。
溶鋼は、更なる処理のために、スラブに鋳造される20。スラブは、いくつかの実施形態では、約1,200~約1,320セ氏温度(℃)での中間的加熱工程を通し、その後、スラブが鋼の融点未満まで冷却される。その後、スラブは所望の厚さに熱間圧延され30、熱間圧延スラブは、任意選択で、巻き取られ得る40。熱間圧延スラブが巻き取られる場合には、それは、約550℃~700℃の温度で巻き取られるが、他の温度でも可能である。熱間圧延され、任意選択で巻き取られたスラブは、コイル形態で貯蔵又は移動され得る。熱間圧延スラブが巻き取られる場合は、熱間圧延スラブはその後、さらなる処理のために、巻きを解かれる50。
次に、スラブは、冷間圧延されて、所望の厚みの厚板が形成される60。所望の厚みは、例示的実施形態では、約0.1~約0.6ミリメーターであり得るが、他の厚みも可能である。厚板はその後、脱炭素焼鈍で焼鈍して、厚板から炭素が除去される70。脱炭素焼鈍は、湿潤窒素及び水素雰囲気下で約850℃~約1,050℃の温度で約20~約150秒間であり、これは、続けてアンモニアを含む別の湿潤窒素及び水素雰囲気中で約900℃~約1,050℃の温度での窒化焼鈍が行われ得る。いくつかの実施形態では、脱炭素は、他の温度又は時間での追加の焼鈍を含み得る。脱炭素焼鈍後、厚板は、約100~約300ppm(すなわち、厚板の総質量を基準にして、約0.01~約0.03質量%)の炭素を含み得る。厚板は、任意選択で、約300~約350ppmのアルミニウム、及び約60~約90ppmの窒素も含み得る。厚板の脱炭素は、厚板の磁気時効を減らす又は最小限にするのを助け得る。
【0009】
厚板の脱炭素処理後、それを再結晶化焼鈍により再結晶化させて80、結晶粒を配向させ、方向性電磁鋼板を形成する。再結晶化焼鈍は、例示的実施形態では、約700~約1,300℃の温度で実施され、再結晶化焼鈍は、異なった温度及び特定の時間でのいくつかの別々の焼鈍が含まれ得る。結晶粒の正確な厚板中の配向は、再結晶化焼鈍中に得ることができ、その間に、所望の配向を有する結晶の成長が、異なる配向を含む結晶粒より急速になる。理論に束縛されるものではないが、粒成長工程は、熱により活性化され、特定の結晶は、動力学的又はエネルギー的理由で、他の結晶より「励起されている」という理論がある。より速く成長する結晶は、所望の配向を有する傾向があり、隣接する結晶を犠牲にして、及び元々望ましくない配向を有した結晶が活性化される温度より低い温度で、成長を開始する。これは、所望の配向を有する結晶が結晶成長過程で優位に立つように臨界サイズに達するのを促進する。方向性電磁鋼板は、1回、2回又はそれ超の高温での加熱サイクルを含み、本明細書では、それらの全てが再結晶化焼鈍と呼ばれる。1回又は複数の再結晶化焼鈍の熱サイクル中の正確な温度、タイミング、及び雰囲気は、厚板の厚さ、厚板の組成、及び/又は他の因子に依存する。この再結晶化焼鈍は、鋼の表面上にフォルステライト層を生成する。
【0010】
厚板は、いくつかの実施形態では、被覆されても、又は更に処理されてもよく(図示せず)、上記で概略を述べた一般的工程は、別の実施形態では、修正されてもよい。被覆は、再結晶化焼鈍の前に、その後で、又はその間に、任意に適用可能である。無機被覆には、限定されないが、シリカ及びクロム(VI)を含む多種多様な材料が挙げられる。これらの無機被覆は、フォルステライト層と合わせて、電気絶縁、耐食性、及び湿潤環境での耐久性などの保護を提供できる。また、無機層及びフォルステライト層は方向性電磁鋼板の性能に役立つ引張応力を提供し得る。しかし、無機層はクロム(VI)などの有害化学薬品を含む場合があり、また、粉塵及び剥片を生じる脆性などの欠点を有する場合がある。
【0011】
ここで、
図1の参照に続けて
図2を参照する。方向性電磁鋼板から形成される厚板200は、異方性磁気特性を有し、それにより、磁気特性は1つの方向「圧延方向210」では、別の幅方向220とは異なり、幅方向220は、圧延方向210に対し垂直である。圧延方向210は、スラブが冷間圧延されて厚板200が形成される方向である。圧延方向210及び幅方向220は両方とも、厚板200の表面230に沿っており、厚板200の厚さ240は、厚板200の表面230に垂直である。厚み240は、厚板200の最小寸法に沿って測定される。変圧器で使用するためには、磁気特性は通常、幅方向220よりも、圧延方向210で好ましい。例えば、圧延方向210における厚板透磁率は、幅方向より高い。例示的実施形態では、その厚板透磁率は、幅方向220の厚板透磁率よりも、約20%以上高い。別の実施形態では、圧延方向210の厚板透磁率は、幅方向220の厚板透磁率よりも、約30%以上、又は約50%以上、高い。
【0012】
再結晶化焼鈍中に、選択的粒成長により組織が生じ、フォルステライト層250が厚板200の本体260上に形成され得、フォルステライト層250は、厚板200の表面230上にある。フォルステライト層250は、「ガラス被膜」と呼ばれることもあるが、フォルステライト層250はガラスから構成されてはいない。フォルステライト層250は、ケイ酸マグネシウムを含む。
【0013】
図1を再度参照すると、方向性電磁鋼板200の表面230は、被覆270で被覆され90、被覆270は、
図2に示されている。被覆270は、噴霧、圧延、浸漬、ブラシ掛け、又は任意の他の好適な適用技術により適用され得る。種々の実施形態では、被覆270は、厚板200の1つの表面230に、又は2つ以上の異なる表面230に適用され得る。
図2の説明では、被覆270は、厚板200の上部表面及び底部表面230の上を被って示されているが、厚板200の側面230の上を被ってはいない。しかし、種々の実施形態では、表面230の任意の他の組み合わせが被覆され得る。被覆270は、硬化被覆270が約1~約50マイクロメートルの厚さを有するように適用され得る。
被覆270は、有機成分を含み、無機成分も同様に任意に含んでもよい。本明細書で列挙及び記載の被覆270の成分は、別段の指定がない限り、厚板200に適用された状態の、硬化前の被覆270を意味する。硬化工程中に、化学反応が起こり、それにより、一部の成分は、硬化中に反応又は蒸発する可能性があり、そのため成分又は濃度は、もはや硬化前と同じではないことは、理解されよう。硬化後、被覆270は、硬化被覆270の総質量を基準にして、約10~約99質量%の量の有機成分を含み、有機成分は、放射線硬化性架橋剤から形成された高分子を含む。
被覆270(硬化前、前述のように)は、少なくとも1種の放射線硬化性架橋剤を含み、放射線硬化性架橋剤は、有機物である。放射線硬化性架橋剤は、不飽和二重結合などの少なくとも1種の反応性重合可能部分を有する。放射線硬化性架橋剤は、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ポリウレタン化合物、アクリル化合物、ポリアミド化合物、ポリエステル化合物、シリコーン化合物、アルケン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。しかし、別の実施形態では、他のタイプの放射線硬化性架橋剤を利用し得る。被覆270は、被覆の総質量を基準にして、約10~約90質量%の量の放射線硬化性架橋剤を含む。
【0014】
放射線硬化性架橋剤は、1種の成分を含み得るが、いくつかの実施形態では、2種以上の成分が存在する。例えば、1つのタイプの放射線硬化性架橋剤は、樹脂であってもよく、樹脂は、反応性希釈剤と組み合わせて使用してもよい。樹脂は、被覆270の粘度を高める傾向があり、反応性希釈剤は粘度を下げ、それによりこの2種はバランスを保ち、望ましい粘度の被覆を提供する。反応速度、高分子強度、及び多くの他の因子も同様に、放射線硬化性架橋剤の選択により、バランスされ、硬化される。使用可能な反応性希釈剤(放射線硬化性架橋剤であるもの)は、1種又は複数の不飽和の構造を有するラジカル重合性の化合物である。反応性希釈剤の例としては、限定されないが、スチレン、ビニルトルエン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ブタンジオール、ビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、フタル酸ジアリルエステル、フマル酸ジアリルエステル、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルベンゼン、ジアリルビスフェノールA、ペンタエリスリトール及びテトラアリルエーテルが挙げられる。任意に存在してもよい、他の可能性のある反応性希釈剤としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ及びトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ及びトリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂(メタ)アクリレート、エチレン又はプロピレンオキシドと、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールなどのポリオールとの重付加の反応生成物の(メタ)アクリレート及びオリゴ(エチレングリコール)又はオリゴ(プロピレングリコール)の(メタ)アクリレートアクリルのようなアクリル又はメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0015】
被覆270はまた、少なくとも1種の光開始剤を含む。多種多様な光開始剤を使用可能であり、これらには、限定されないが、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ジアルコキシベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)及びジエトキシアセトフェノンが挙げられるが、別の実施形態では、他の光開始剤も使用可能である。光開始剤は、放射線硬化性架橋剤の架橋を開始できなければならない。被覆270は、被覆の総質量を基準にして、約0.1~約20質量%の量の光開始剤を含み得る。
【0016】
ケイ素化合物は、被覆270の任意成分である。ケイ素化合物は、被覆270の厚板200への接着を改善し、ケイ素化合物は、被覆270中に、被覆270の総質量を基準にして、約0~約50質量%の量で存在し得るが、ケイ素化合物は、別の実施形態では、約10~約50質量%の量で被覆270中に存在し得る。被覆270内のケイ素化合物は、部分的に加水分解された又は完全に加水分解された1種又は複数のシランであってもよい。シランは、アシルオキシシラン、アルキルシラン、アルキルトリアルコキシシラン、アミノシラン、アミノアルキルシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ビスシリルシラン、エポキシシラン、アリルシラン、フルオラルキルシラン、グリシドキシシラン、イソシアナトシラン、メルカプトシラン、アルクルシラン、モノシリルシラン、マルチシリルシラン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリアルコキシシリル)エタン、硫黄含有シラン、ウレイドシラン(例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン及びビニルシラン)、又は他のシラン化合物であってよい。被覆270はまた、シランの代替物として、又は補充物として、上記シランに対応する少なくとも1種のシロキサンも含み得、従って、いくつかの実施形態では、ケイ素化合物は、シラン、シロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、シラン及び/又はシロキサンは、2~5個の範囲の、C原子の鎖長を有し、放射線硬化性架橋剤との反応に好適する官能基を更に含む。
【0017】
1種又は複数の無機成分が被覆270中に存在してもよい。1種又は複数の無機成分は、方向性電磁鋼板200のために有益である被覆270の特定の態様、例えば、耐食性、呈色、被覆の機械的安定性、熱伝導率、電気的特性、及び熱耐久性の改善を促進し得る。例示的実施形態では、無機成分は、被覆270中に溶液、コロイド、分散液、又は他の形態で存在し得る。例示的無機成分としては、限定されないが、炭酸塩、酸化物、ケイ酸塩、硫酸塩及び硫化物が挙げられる。粒子形態の無機粒子の場合には、粒子は、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、ランタン(La)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、亜鉛(Zn)及びジルコニウム(Zr)の1種又は複数を含み得る。粒子形態の無機化合物は、約2ナノメートル(nm)~3,000nmの平均粒径を有し得る。約2nm~約250nmの粒径を有する小粒子はまた、安定化分散液として、又はゾル又はゲルの形態で含まれてもよい。被覆270は、被覆270の総質量を基準にして、約0~約60質量%の量の1種又は複数の無機化合物を任意に含んでもよい。いくつかの実施形態では、被覆270は、被覆270の総質量を基準にして、約5質量%未満などのごくわずかな無機化合物を含む。
【0018】
無機化合物は、被覆270の液体特性、ならびに硬化性保護層の特性を調節するために有益であり得る。このような無機化合物の例には、酸化物、リン酸、硝酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、及び硫化物が挙げられるが、他のタイプの化合物も被覆270中に含まれ得る。例えば、金属を含む無機化合物又は有機化合物が存在してもよく、このような化合物は、次の元素の1種又は複数を含む:リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、セレン(Se)、ゲルマニウム(Ge)、ランタン(La)、ガリウム(Ga)、鉛(Pb)、タンタル(Ta)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)。直ぐ上で列挙した各元素は、1種又は2種以上の無機又は有機物部分と組み合わせて、被覆270に任意に含めてもよく、また、被覆は、直ぐ上で列挙した元素の0、1又は2種以上を含んでもよい。本開示では、成分、部分、又は元素は、別段の指定がない限り、それが0~約100ppmの量で存在する場合、被覆270には存在しないと見なされ得る。例示的実施形態では、被覆270はクロム(Cr)を含まず、それによりCrは、被覆270中に0~約100ppm(被覆270の総質量を基準にして、0~約0.01質量%)の量で被覆中に存在する。
【0019】
多種多様の添加物を被覆270中に含めることが、有益な場合もある。添加物は、適用されたままの液体状態で、又は硬化後の固体状態で、基材湿潤、表面特性、レオロジー特性、粘度、呈色、又は多種多様の他の被覆特性を調節するために含まれ得る。被覆270に含まれ得る添加剤としては、限定されないが、消泡剤、分散剤、湿潤剤、艶消し剤、抗菌薬、増粘剤、着色料、などが挙げられる。0、1又は2種以上の添加物を被覆270に含めてもよい。
【0020】
被覆270はまた、0、1又は2種以上の非反応成分を含んでもよく、非反応成分は、被覆270の総質量を基準にして、約0~約60質量%の量で被覆270中に存在してもよい。非反応成分は、通例の適用条件下で、化学反応に関与しないか、又はその成分の総質量を基準にして化学反応中の構成部分の0.1質量%未満などの無視できる程度に化学反応に関与するのみである、被覆270の特性を調節するために使用される全ての成分を意味する。非反応成分の例としては、限定されないが、非極性希釈剤、極性非プロトン性希釈剤、及び極性プロトン性希釈剤が挙げられる。非反応性非極性希釈剤のいくつかの例には、アルカン、シクロアルカン、ヘテロ環式化合物、芳香族化合物、エーテル、及びいくつかのハロゲン化種が挙げられる。極性非プロトン性希釈剤の例には、限定されないが、プロピレンカーボネート、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ニトロメタンなどのヘテロ原子を含む化合物、及びその他多数が挙げられる。例示的プロトン性希釈剤には、水、アルコール、ポリアルコール、有機酸、1つ又は複数のヒドロキシル基を有するその他の化合物、等が挙げられる。
【0021】
図1で示され、
図2で続けて参照されるように、被覆270を適用後、被覆270は、照射され、硬化される100。被覆は、放射線源340を使用して照射により厚板200上で硬化され、放射線源は、電子線又は電磁放射線源であり得る。被覆270は、放射線源を備えた硬化ユニット中で硬化され得る。種々の実施形態で利用され得る放射線源の例としては、発光ダイオード(LED)、キセノンランプ、水銀ランプ又は部分的にドープされていても、されていなくてもよい他のアークランプなどの紫外放射線源が挙げられる。別の実施形態では、放射線源は、ベータ線発生装置などの電子線源である。別の実施形態では、ガンマ線発生装置も利用可能である。複数の放射線源の組み合わせも利用可能である。種々の雰囲気を硬化ユニットで利用可能である。空気は、1つの可能な雰囲気であるが、いくつかの実施形態では、窒素、アルゴン、キセノン、ヘリウム、二酸化炭素、水素、他の不活性ガス、又はこれらの組み合わせなどの他の雰囲気が望ましい場合がある。
【0022】
いくつかの実施形態では、
図1及び2の参照に続けて
図3で示されるように、厚板200は、生産ライン280で被覆及び硬化される。
図3は、生産ラインの一般概念を示すダイアグラムであるが、具体的詳細は、明確化するために、省略又は単純化されている。生産ライン280は、厚板200を1つの製造工程から次に移送するのを促進するために使用される移送ローラー290を含む。
図3の実施形態では、
図1に示すように、再結晶化焼鈍ステップ80、被覆ステップ90、及び硬化ステップ100が示されている。再結晶化焼鈍ステップ80は、再結晶化オーブン300中で実施され、再結晶化オーブン300は、加熱要素312を含む。
図3で示される実施形態では、厚板200は、生産ライン280に沿って、再結晶化オーブン300から被覆ステーション310まで移送され、被覆ステーション310は、塗布ローラー320を含む。厚板200はその後、生産ライン280に沿って被覆ステーション310から硬化ステーション330まで移送され、1種又は複数の放射線源340を利用して、厚板200の表面230上で被覆270が硬化される。従って、硬化ステーション330は、放射線源340を含む。移送ローラー290を使って厚板200を再結晶化オーブン300から被覆ステーション310まで、及び被覆ステーション310から硬化ステーションまで移送し得、それにより、厚板200は、再結晶化に使用された同じ生産ライン及び工程で被覆される。厚板200の被覆ステーション310から硬化ステーション330への移送のためのエアカーテンの使用などの追加の実施形態(図示せず)も可能である。厚板200の被覆ステーション310から硬化ステーション330への垂直移送も、他の実施形態と同様に可能である。
【0023】
任意の熱源350を硬化ステーション330中に含めてもよく、熱の追加は、硬化工程を加速し得る。熱源350は、赤外線放射源、サーマル熱源(thermal heat source)、あるいは、生産ラインの再結晶化オーブン300などの別の部分からの熱を捕捉するために使用される装置であってよい。厚板200は、再結晶化オーブン300を出た直後に被覆されてもよく、それにより、厚板200は、いくつかの実施形態では、被覆後の硬化工程を加速するのに十分に熱いままであり得る。厚板200は、(a)再結晶化オーブン300、(b)被覆ステーション310、及び(c)硬化ステーション330のそれぞれの中で処理されている間、及びそれらの間で移送される間、同じ生産ライン280上のままである。従って、方向性電磁鋼板200の製造工程は、被覆ステーション310及び硬化ステーション330を含み、そのため、生産ラインを出る最終生成物は、硬化被覆270を含む。厚板200は、任意選択で、被覆及び被覆の硬化後に巻き取られてもよい。
有機成分を含む被覆270は、上述のように、有機成分を含まない被覆に比べて、優れた耐食性、耐湿性、及び処理能力(例えば、切削、打抜き加工、又は穿孔ステップ中に、無傷で厚板に接着したまま残存すること)を提供する。
【0024】
前述の、発明の詳細説明では、少なくとも1つの例示的実施形態が提示されたが、極めて多くの数の変形例が存在することを理解されたい。また、例示的実施形態又は複数の例示的実施形態は、例に過ぎず、本出願の範囲、適用性、又は構成を制限する意図は全くないことも理解されたい。むしろ、前述の詳細説明は、1種又は複数の実施形態の実施のために、当業者に簡便な指針を提供するものであり、これらの実施形態は、例示的実施形態で記載の要素の機能及び配置において、添付の特許請求の範囲で示される範囲から解離することなく、種々の変更をなし得るものであることは理解されよう。
【国際調査報告】