(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】金型移動用搬送装置付きの射出成形システムおよび金型交換方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/10 20060101AFI20230711BHJP
B29C 45/04 20060101ALI20230711BHJP
B29C 33/34 20060101ALI20230711BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230711BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B29C45/10
B29C45/04
B29C33/34
B29C45/26
B29C45/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577405
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 US2021037483
(87)【国際公開番号】W WO2021262485
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(71)【出願人】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】田島 潤子
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM15
4F202AR07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CC01
4F202CR01
4F206AM15
4F206AR07
4F206JA07
4F206JC01
4F206JC09
4F206JL05
4F206JQ06
4F206JQ81
4F206JQ82
4F206JQ90
4F206JT04
4F206JT40
(57)【要約】
射出成形機内に金型を搬送する搬送システムは、前記金型を搬送する搬送装置と、前記搬送装置を移動可能に支持する支持部材とを備え、前記搬送システムに対する改良は、前記搬送装置から前記射出成形機に前記金型を搬送できる第1の位置と、前記第1の位置とは異なる第2の位置との間で、前記支持部材による前記搬送装置のX方向以外の方向への移動をガイドするガイド部材を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機内に金型を搬送するための搬送システムであって、
前記金型を搬送するように構成された搬送装置と、
前記搬送装置を移動可能に支持する支持部材とを備え、
前記搬送システムに対する改良は、
前記支持部材による前記搬送装置の移動をガイドするよう構成されたガイド部材であって、前記搬送装置から前記射出成形機に前記金型が搬送される第1の位置と前記第1の位置とは異なる第2の位置とを結ぶX方向とは異なる方向への前記搬送装置の移動をガイドするように構成されたガイド部材を含む。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記搬送装置の移動を、前記搬送装置が設置された床と平行で、前記搬送装置により前記金型が搬送される搬送方向と交差する方向にガイドするようにさらに構成される、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記搬送装置の移動を、前記搬送装置により前記金型が搬送される搬送方向と平行な方向にガイドするようにさらに構成される、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記支持部材は回転部材であり、前記ガイド部材は前記回転部材に係合するレールである、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記搬送装置の前記ガイド部材の延在方向と交差する方向への移動を規制するように構成される、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記搬送装置を前記第1の位置に固定するように構成される固定部をさらに備える、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記固定部は、前記搬送ユニットを床に固定するように構成される、請求項6に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記固定部は、前記搬送ユニットを前記射出成形機に固定するように構成される、請求項6に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記固定部は、前記ガイド部材上に延在し、前記ガイド部材の延在方向における前記搬送装置の移動を規制するように構成される、請求項6に記載の搬送システム。
【請求項10】
射出成形システムであって、
金型による射出成形を行うように構成される射出成形装置と、
前記金型を前記射出成形機内に搬送するように構成される搬送装置と、
前記搬送装置を移動可能に支持する支持部材とを備え、
前記射出成形システムに対する改良は、
前記支持部材による前記搬送装置の前記金型を前記搬送装置から前記射出成型機に搬送可能な第1の位置と、前記第1の位置とは異なる第2の位置との間のX方向以外の方向への移動をガイドするように構成されたガイド部材を含む。
【請求項11】
前記ガイド部材は、前記搬送装置の移動を、前記搬送装置が設置された床と平行で、前記搬送装置により前記金型が搬送される搬送方向と交差する方向にガイドするようにさらに構成される、請求項10に記載の射出成形システム。
【請求項12】
前記射出成形機は、前記金型に含まれる固定金型を固定する固定プラテンと、前記金型に含まれる可動金型を固定する可動プラテンとを含み、前記金型が前記第2の位置にある状態において、前記搬送装置のフレームの上流端面は、前記可動プラテンに対向する前記固定プラテンの前記第1の方向の面よりも下流側に位置する、請求項11に記載の射出成形システム。
【請求項13】
射出成形システムであって、
金型による射出成形を行うように構成される射出成形装置と、
前記金型を支持面に沿って所定方向に移動させて前記射出成形装置に前記金型を挿入するように構成される搬送装置とを備え、
前記射出成形システムに対する改良は、
前記搬送装置内の交換位置に位置し、前記支持面と平行で前記所定方向と交差する交差方向に前記金型をガイドするように構成されるガイド部材を含み、
前記搬送装置は、第1の金型を、前記第1の金型が前記交換位置に到達するまで、前記所定方向に移動させるように構成され、
前記第1の金型は、前記ガイド部材によって前記第1の金型を前記射出成形システムから搬出するために、前記交差方向にガイドされ、
第2の金型は、前記ガイド部材によって前記第2の金型を前記射出成形システムに搬入するために、前記交差方向にガイドされる。
【請求項14】
射出成形システム内の第1の金型と前記射出成形システム外の第2の金型とを交換するための方法であって、前記射出成形システムは、金型により射出成形を行うように構成された射出成形装置と、前記金型を支持面に沿って所定方向に移動させて前記金型を前記射出成形装置内に挿入するように構成された搬送装置とを含み、この方法は、
前記第1の金型が前記搬送装置内のガイド部材が位置する交換位置に到達するまで前記第1の金型を前記所定方向に移動させるための移動工程を備え、
前記射出成形システムに対する改良は、
前記第1の金型が前記ガイド部材によって前記支持面と平行で前記所定方向と交差する交差方向にガイドされる前記第1の金型を前記射出成形システムから排出するための排出工程と、
前記第2の金型が前記ガイド部材によって前記交差方向にガイドされる前記第2の金型を前記射出成形システムに搬入するための搬入工程とを含む。
【請求項15】
前記排出工程の前に、前記ガイド部材が前記第1の金型に当接するように、前記ガイド部材を上昇させる上昇工程と、
前記搬入工程の後に、前記ガイド部材が前記第2の金型から離間するように、前記ガイド部材を下降させる下降工程と、をさらに備え、
前記交換位置における前記金型は、前記ガイド部材と垂直方向に接触しない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記搬送装置は、前記金型を前記所定方向に移動させるように構成された側面搬送部材を含み、
前記側面搬送部材は、前記金型を前記交差方向に隣接して配置され、
前記排出工程の前に前記側面搬送部材を前記搬送装置から除去する除去工程と、
前記搬入工程の後に前記側面搬送部材を前記搬送装置に取り付ける取付工程と、をさらに備える請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記搬送装置は、前記金型を前記所定方向に移動させるように構成された底部搬送部材を含み、前記底部搬送部材は、前記金型の垂直方向の下側に位置し、前記上昇工程において、前記ガイド部材は、少なくとも前記金型が前記底部搬送部材と垂直方向に接触しなくなるまで上昇される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記搬送装置は、前記金型を前記所定方向に移動させる側面搬送部材を含み、前記側面搬送部材は、前記金型と隣接して前記交差方向に配置され、前記上昇工程において、前記ガイド部材は、少なくとも前記金型の底面が前記側面搬送部材の上面よりも上方になるまで上昇される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法はさらに、
前記上昇工程の前に前記ガイド部材が前記金型を前記交差方向にガイドしないように前記ガイド部材の移動をロックするためのロック工程と、
前記排出工程の前に前記ガイド部材が前記金型を前記交差方向にガイドするように前記ガイド部材の移動をロック解除するためのロック解除工程とを備える。
【請求項20】
前記移動工程の前に前記ガイド部材を前記搬送装置に取り付けるための取付工程をさらに備える、請求項14に記載の搬送方法。
【請求項21】
前記交換位置での前記金型は、前記ガイド部材と垂直方向に接触し、前記ガイド部材は、前記金型を前記所定方向および前記交差方向に移動させるように構成され、前記ガイド部材は、前記金型の下側に垂直方向に位置する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記搬送装置は、前記金型を前記所定方向に移動させるように構成された側面搬送部材を含み、前記側面搬送部材は、前記金型に隣接して前記交差方向に配置される、請求項14に記載の方法であって、
前記排出工程の前に前記側面搬送部材を前記搬送装置から除去するための除去工程と、
前記搬入工程の後に前記側面搬送部材を前記搬送装置に取り付けるための取付工程とをさらに備える方法。
【請求項23】
金型により射出成形を行うように構成された射出成形装置と、
前記金型を支持面に沿って所定方向に移動させて前記射出成形装置に前記金型を挿入するように構成された搬送装置とを備える射出成形システムであって、
前記射出成形システムに対する改善は、
前記金型を前記所定方向に移動させるように構成され、前記所定方向と交差する交差方向に、前記支持面と平行な方向に前記金型に隣接して配置されるように構成される側面搬送部材と、
前記金型を前記所定方向および前記交差方向に移動させるとともに、前記金型の下側に垂直方向に位置する底部搬送部材とを含む前記搬送装置を含む。
【請求項24】
前記側面搬送部材は、前記搬送装置から除去可能に構成される、請求項23に記載の射出成形システム。
【請求項25】
前記底部と搬送部材はボールローラである、請求項23に記載の射出成形システム。
【請求項26】
射出成形システム用の金型であって、前記金型は、
キャビティを形成するための第1の部分および第2の部分と、
前記第1の部分の側面に固定されるように構成された第1の取付板と、
前記第2の部分の側面に固定されるように構成された第2の取付板とを備え、
前記金型に対する改良は、
前記第1の部分の底面に固定されるように構成される第1の支持部材と、
前記第2の部分の底面に固定されるように構成された第2の支持部材とを含む。
【請求項27】
前記第1の取付板および前記第2の取付板は、前記射出成形システムの取付部材によって取付され、
前記第1の支持部材および前記第2の支持部材は、前記取付部材を回避するように、前記第1の部分の底面および前記第2の部分の底面にそれぞれ固定されるように構成される、請求項26に記載の金型。
【請求項28】
前記第2の部分は、前記第1の部分に対して所定方向に移動可能に構成され、
前記第1の支持部材および前記第2の支持部材は、前記所定方向と直交する方向に複数の部材に分割され、前記第1の部分の底面および前記第2の部分の底面と平行である、請求項26に記載の金型。
【請求項29】
前記第1の支持部材は、前記第1の部分の底面と前記第1の取付板の底面との間の隙間を埋めるように構成され、
前記第2の支持部材は、前記第2の部分の底面と前記第2の取付板の底面との間の隙間を埋めるように構成される、請求項26に記載の金型。
【請求項30】
前記金型は、所定方向に配列された複数のガイド部材によってガイドされるように構成され、
前記第1の取付板の底面がテーパ部を有し、
前記テーパ部は、前記所定方向と直交する方向に前記第1の部分の底面と平行に見たときに、前記所定方向に対して傾斜している、請求項26に記載の金型。
【請求項31】
前記金型は、所定方向に配列された複数のガイド部材によってガイドされるように構成され、
前記第2の取付板の底面がテーパ部を有し、
前記テーパ部は、前記所定方向と直交する方向に前記第2の部分の底面と平行に見たときに、前記所定方向に対して傾斜している、請求項26に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型移動用搬送装置付きの射出成形システムおよび金型交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機による成形品の製造は、型締め後の金型への樹脂の射出、樹脂の固化による体積減少を補うための高圧での金型への樹脂の押し込み、樹脂が固化するまでの金型内での成形品の保持、および金型からの成形品の取り出しが含まれる。所望の数の成形品を得るため、上記射出成形工程が繰り返し行われる。
【0003】
1つの金型で所定数の成形を行った後、射出成形機から金型を排出し、次の金型を段取りして射出成形機に挿入し、次の金型で所定数の射出成形が行われる。段取り処理は、多くの場合、時間とリソースを消費し、段取り処理中には、射出成形機が「アイドル」状態になることがある。これは、全体的な生産性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
上述の成形方法において、1台の射出成形機に対して、2つの金型を用いる方法が提案されている。例えば、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号では、射出成形機の両側に搬送装置を配置するシステムが論じられている。
図1は、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号の射出成形システムを示す。このシステムでは、金型を移動させるカートを射出成形機の両側に配置することができる。このため、金型が収容されている射出成形機の内部のメンテナンスを行う際に、カートの存在により、操作者が射出成形機の内部にアクセスすることが困難になる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
金型を射出成形機内に搬送するための搬送システムであって、前記金型を搬送する搬送装置と、前記搬送装置を移動可能に支持する支持部材と、を備え、前記搬送システムに対する改良は、前記搬送装置から前記射出成形機へ前記金型を搬送できる第1の位置と、前記第1の位置とは異なる第2の位置との間で、前記支持部材による前記搬送装置のX方向以外の方向への移動をガイドするように構成されるガイド部材を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付の図面は、本開示の様々な実施形態、目的、特徴、および利点を示す。
【
図6】
図6は、搬送装置を退避位置に移動させた状態を示す。
【
図13】
図13は、X軸方向に移動可能な搬送装置の構成を示す。
【
図16D】
図16Dは、金型内に形成されるテーパのための最小寸法を決定する方法を示す。
【
図19A】
図19Aは、他の実施形態による金型を交換する手順を示す正面図である。
【
図19B】
図19Bは、他の実施形態による金型を交換する手順を示す正面図である。
【
図26】
図26は、金型の底面図および正面図である。 図面全体を通して、別段の記載がない限り、同一の参照番号および符号は、図示する実施形態の同様の特徴、要素、構成要素、または部分を示すために用いられる。図面を参照して本開示を詳細に説明するが、これは説明のための例示的な実施形態に関連して行われる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲および趣旨を逸脱することなく、説明される例示的な実施形態に対して変更および修正を加えることができることを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、いくつかの実施形態を説明しており、当業者に既知の詳細については、特許、特許出願、および他の参考文献に依拠する。したがって、本明細書において、特許、特許出願、または他の参考文献が引用される、または繰り返されるとき、それらは、記載されている提案だけでなくあらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれることを理解されたい。
【0008】
図面を参照して、本開示の一実施形態における射出成形システムについて説明する。各図中の矢印XおよびYは、互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは、地面に対して垂直(直立)方向を示す。
【0009】
図1~
図3は、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号の射出成形システム1を示しており、本明細書では情報/説明の目的のためだけに提供されている。
【0010】
射出成形システム1は、射出成形機2と、搬送装置3Aおよび3Bと、制御装置4とを含む。射出成形システム1は、1台の射出成形機2に対して、搬送装置3Aおよび3Bを用いて、複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する。2つの金型100Aおよび100Bを用いる。
【0011】
金型100A/100Bは、固定金型101と、固定金型101に対して開閉される可動金型102との組である。成形品は、固定金型101と可動金型102との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出することで成形される。固定金型101および可動金型102には、それぞれ取付板101aおよび102aが固定されている。取付板101aおよび102aは、金型100A/100Bを射出成形機2の成形動作位置11(型締位置)に固定するために用いられる。
【0012】
金型100A/100Bには、固定金型101と可動金型102との間を閉状態に維持する自己閉鎖部103が設けられている。自己閉鎖部103により、射出成形機2から金型100A/100Bを搬出した後も、金型100A/100Bが開くことを防止することが可能となる。自己閉鎖部103は、磁力を利用して金型100A/100Bを閉状態に維持する。自己閉鎖部103は、固定金型101および可動金型102の対向面に沿って複数の箇所に配置されている。自己閉鎖部103は、固定金型101側の要素と可動金型102側の要素との組み合わせである。通常、金型100Aおよび100Bの1つに対して2組以上の自己閉鎖部103が設けられる。
【0013】
搬送装置3Aは、金型100Aを射出成形機2の成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3Bは、金型100Bを成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3A、射出成形機2、および搬送装置3Bは、この順にX軸方向に並ぶように配置されている。言い換えれば、搬送装置3Aおよび搬送装置3Bは、射出成形機2をX軸方向において挟むように、射出成形機2に対して横方向に配置されている。搬送装置3Aおよび3Bは、互いに対向して配置され、搬送装置3Aは射出成形機2の左右の一側方に、搬送装置3Bは他側方にそれぞれ隣接して配置されている。成形動作位置11は、搬送装置3Aと搬送装置3Bとの間に位置している。搬送装置3Aおよび3Bは、それぞれフレーム30と、搬送ユニット31と、複数のローラ32と、複数のローラ33とを含む。
【0014】
フレーム30は、搬送装置3Aおよび3Bの骨格であり、搬送ユニット31と、複数のローラ32および33とを支持する。搬送ユニット31は、金型100A/100BをX軸方向に往復移動させ、成形動作位置11に対して金型100A/100Bを排出および挿入する装置である。
【0015】
搬送ユニット31は、モータを駆動源とした電動シリンダであり、シリンダに対して進退するロッドを含む。シリンダはフレーム30に固定され、ロッドの端部には固定金型101が固定されている。搬送ユニット31は、流体アクチュエータ、電動アクチュエータのいずれも使用可能であるが、電動アクチュエータにより、金型100A/100Bの搬送時に、その位置や速度の制御精度の向上を図ることができる。流体アクチュエータとしては、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダを挙げることができる。電動アクチュエータとしては、電動シリンダに加えて、モータを駆動源としたラックアンドピニオン機構、モータを駆動源としたボールねじ機構等を挙げることができる。
【0016】
搬送ユニット31は、搬送装置3Aと3Bのそれぞれに独立して配置されている。しかし、金型100Aおよび100Bを支持する共通の支持部材を用い、この支持部材に対して単一の共通の搬送ユニット31を配置してもよい。搬送ユニット31を搬送装置3Aと3Bのそれぞれに独立して配置した場合は、金型100Aと金型100Bとで搬送時の移動ストロークが異なる場合に対応することが可能となる。例えば、金型の幅(X方向の幅)が異なっていたり、金型の厚み(Y方向の幅)が異なっていたりして、金型を同時に搬送できない場合である。
【0017】
複数のローラ32は、X軸方向に配列されたローラ列を構成しており、Y軸方向に離間して2列構成されている。複数のローラ32は、Z軸方向の回転軸を中心に回転し、金型100A/100Bの側面(取付板101aおよび102aの側面)に接触して、金型100A/100Bを横から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動をガイドする。複数のローラ33は、X軸方向に配列されたローラ列を構成しており、Y軸方向に離間して2列構成されている。複数のローラ33は、Y軸方向の回転軸を中心に回転し、金型100A/100Bの底面(取付板101aおよび102aの底面)を支持して、金型100A/100Bを下から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動を円滑にする。
【0018】
制御装置4は、射出成形機2を制御するためのコントローラ41と、搬送装置3Aを制御するためのコントローラ42Aと、搬送装置3Bを制御するためのコントローラ42Bとを含む。各コントローラ41、42A、42Bは、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置と、センサやアクチュエータに接続されるインタフェース(図示せず)とを含む。プロセッサは、記憶装置に記憶されたプログラムを実行する。コントローラ41が実行するプログラム(制御)の一例は後述する。コントローラ41は、コントローラ42Aおよび42Bと通信可能に接続され、コントローラ42Aおよび42Bに金型100A/100Bの搬送に関する指示を行う。コントローラ42Aおよび42Bは、金型100A/100Bの搬入や搬出が終了した場合に、動作完了の信号をコントローラ41に送信する。さらに、コントローラ42Aおよび42Bは、異常発生時に非常停止信号をコントローラ41に送信する。
【0019】
射出成形機2、搬送装置3Aおよび搬送装置3Bのそれぞれには、コントローラが配置されているが、1つのコントローラで3台全ての装置を制御してもよい。より確実に協調的に動作させるために、搬送装置3Aと搬送装置3Bとを単一のコントローラで制御してもよい。
【0020】
図2は、射出成形機2の側面図を示す。
図3は、固定プラテン61の端面図と、
図2のI-I線の矢印方向から見た図とを示す。
【0021】
図1および
図2を参照して、射出成形機2は、射出装置5と、型締装置6と、成形品を取り出す取出機7とを含む。射出装置5および型締装置6は、フレーム10上にY軸方向に配置されている。
【0022】
射出装置5は、Y軸方向に延びるように配置された射出シリンダ51を含む。射出シリンダ51は、バンドヒータ等の加熱装置(図示せず)を含み、ホッパ53から導入された樹脂を溶融する。射出シリンダ51にはスクリュ51aが内蔵されており、スクリュ51aを回転させることで射出シリンダ51内に導入された樹脂が可塑化され、計量される。スクリュ51aの軸方向(Y軸方向)への移動により、射出ノズル52から溶融樹脂を射出することができる。
【0023】
図2に、ノズル52としての遮断ノズルの一例を示す。吐出口52aを開閉するピン56aが、
図2の開閉機構56として配置されている。ピン56aは、リンク56bを介してアクチュエータ(シリンダ)56cに連結されており、アクチュエータ56cの動作により吐出口52aが開閉される。
【0024】
射出シリンダ51は、駆動部54に支持されている。駆動部54には、スクリュ51aを回転駆動させて樹脂の可塑化と計量を行うモータと、スクリュ51aを軸方向に進退させる駆動モータとが配置されている。駆動部54は、フレーム10上のレール12に沿ってY軸方向に進退可能である。また、駆動部54には、射出装置5をY軸方向に進退させるアクチュエータ(例えば電動シリンダ)55が配置されている。
【0025】
型締装置6は、金型100A/100Bの型締めおよび型開閉を行う。型締装置6には、Y軸方向に順に、固定プラテン61、可動プラテン62、可動プラテン63が配置されている。プラテン61~63には、複数のタイバー64が通過している。各タイバー64は、Y軸方向に延びる軸であり、その一端部が固定プラテン61に固定されている。各タイバー64は、可動プラテン62に形成された各貫通穴に挿入されている。各タイバー64の他端部は、調整機構67を介して可動プラテン63に固定されている。可動プラテン62および63は、フレーム10上のレール13に沿ってY軸方向に移動可能であり、固定プラテン61は、フレーム10に固定されている。
【0026】
可動プラテン62と可動プラテン63との間には、トグル機構65が配置されている。トグル機構65は、可動プラテン63に対して(言い換えれば、固定プラテン61に対して)、可動プラテン62をY軸方向に進退させる。トグル機構65は、リンク65a~65cを含む。リンク65aは、可動プラテン62に回転自在に連結されている。リンク65bは、可動プラテン63に回動自在に連結されている。リンク65aとリンク65bとは、互いに回動自在に連結されている。リンク65cとリンク65bとは、互いに回動自在に連結されている。リンク65cは、アーム66cに回動自在に連結されている。
【0027】
アーム66cは、ボールナット66bに固定されている。ボールナット66bは、Y軸方向に延びるボールねじ軸66aに係合し、ボールねじ軸66aの回転によりY軸方向に進退する。ボールねじ軸66aは、可動プラテン63によって回転自在となるように支持されており、モータ66は、可動プラテン63に支持されている。モータ66は、モータ66の回転量を検出しながら、ボールねじ軸66aを回転駆動する。モータ66の回転量を検出しながらモータ66を駆動することにより、金型100A/100Bの型締めおよび型開閉を行うことが可能となる。
【0028】
射出成形機2は、型締力を計測するためのセンサ68を含み、各センサ68は、例えばタイバー64に設けられた歪みゲージであり、タイバー64の歪みを検出することで型締力を算出する。
【0029】
調整機構67は、可動プラテン63に回転自在に支持されたナット67bと、駆動源であるモータ67aと、モータ67aの駆動力をナット67bに伝達する伝達機構とを含む。各タイバー64は、可動プラテン63に形成された穴を通過して、ナット67bと係合している。ナット67bを回転させることにより、ナット67bとタイバー64との間のY軸方向の係合位置が変化する。すなわち、タイバー64に対する可動プラテン63の固定位置が変化する。これにより、可動プラテン63と固定プラテン61との間の間隔を変化させることができるため、型締力等を調整することができる。
【0030】
成形動作位置11は、固定プラテン61と可動プラテン62との間の領域である。
【0031】
成形動作位置11に導入された金型100A/100Bは、固定プラテン61と可動プラテン62との間に挟まれ、それによって型締めされる。可動プラテン62の移動により、可動金型102の移動に基づく開閉が行われる。
【0032】
図3は、固定プラテン61の中央部の開口部61aを示しており、ノズル52がこの開口部を通って進退する。固定プラテン61の可動プラテン62側の面(内面という)には、複数のローラBRが回転自在となるように支持されている。複数のローラBRは、回転軸を中心としてY軸方向に回転し、金型100A/100Bの底面(取付板101aの底面)を支持して、金型100A/100Bを下から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動を円滑にする。固定プラテン61のX軸方向の両側には、ローラ支持体620が固定されており、このローラ支持体620によって、複数のローラBRが支持されている。固定プラテン61の内面には、X軸方向に延びる溝61bが形成されている。
【0033】
溝61bは、上下に離間して2列形成されている。各溝61bには、ローラユニット640が配置されている。ローラユニット640には、複数のローラSRが回転自在となるように支持されている。複数のローラSRは、回転軸を中心としてZ軸方向に回転し、金型100A/100Bの外面(取付板101aの外面)に接触して、金型100A/100Bを横から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動をガイドする。II-II線断面図に示すように、ローラユニット640は、バネ641の付勢により、ローラSRが溝61bから突出する位置に位置する一方、型締め時には、溝61b内に後退して、ローラSRが溝61bから突出しない位置に位置する。ローラユニット640は、金型100A/100Bの入れ替え時には、金型100A/100Bと固定プラテン61の内面とが接触して内面が損傷することを防止でき、型締め時には、固定プラテン61の内面と金型100A/100Bとが密接することを妨げない。固定プラテン61のX軸方向の両側には、ローラ支持体630が固定されており、このローラ支持体630によって、複数のローラSRが支持されている。
【0034】
固定プラテン61には、固定金型101を固定プラテン61に固定するための複数の固定機構(クランプ)610が配置されている。各固定機構610は、取付板101aと係合する係合部610a、および係合位置と係合解除位置との間で係合部610aを移動させる内蔵アクチュエータ(図示せず)を含む。
【0035】
なお、可動プラテン62についても、固定プラテン61と同様に、複数のローラBRと、ローラ支持体620および630と、ローラユニット640と、可動金型102を固定するための固定機構610とが配置されている。
【0036】
図4Aは、コントローラ41が実行する射出成形システム1の既知の動作の一例を示す。以下の例では、金型100Aおよび100Bを入れ替えながら成形動作を行う場合を示す。
【0037】
ステップS1では、初期設定を行う。金型100Aと100Bの両方に対して、射出装置5および型締装置6の動作条件を登録する。動作条件には、1回の射出樹脂量、温度、射出速度、型締力、タイバー64に対する可動プラテン63の位置の初期値等が含まれるが、これらに限定されない。これらの動作条件は、金型100Aと金型100Bとが同種の金型であっても異なる。1回目の成形動作は金型100Aを用いるので、動作条件として金型100Aに関する条件が自動設定される。また、射出シリンダ51の加温や初回の樹脂の可塑化計量等を開始する。
【0038】
ステップS2では、金型100Aを射出成形機2内に搬送する。モータ66を駆動して、固定プラテン61と可動プラテン62との間の隙間を、金型100Aの厚み(Y方向の幅)よりも少し広くする。次に、コントローラ41はコントローラ42Aに金型100Aの搬入指示を送信し、コントローラ42Aは搬送ユニット31を駆動して、金型100Aを成形動作位置11に搬入する。金型100Aを搬入すると同時に金型100Bを搬出する。金型100Aの搬入が完了すると、コントローラ42Aからコントローラ41へ搬入完了を示す信号が送信される。搬入完了を示す信号を受信すると、モータ66を駆動して、固定プラテン61と可動プラテン62とを金型100Aに密着させる。このときは、成形中に発生させるような型締力を発生させる必要はない。固定機構610を駆動して、金型100Aを固定プラテン61、可動プラテン62にそれぞれロックする。
【0039】
ステップS3では、モータ66を駆動して、トグル機構65を駆動し、固定プラテン61と可動プラテン62とにより金型100Aの型締めを行う。金型100Aに対する射出の準備を行う。アクチュエータ55を駆動して射出装置5を移動し、ノズル52を金型100Aに接触させる。
【0040】
ステップS5では、溶融樹脂の射出および保圧を行う。より具体的には、射出装置5を駆動してノズル52から金型100A内のキャビティに溶融樹脂を充填し、樹脂の固化による体積減少を補うために、上記シリンダ51内の樹脂を金型100A内に高圧で押し込む。センサ68によって実際の型締力を計測する。成形中、金型100Aの温度が次第に上昇することで、金型100Aが熱膨張し、初期の型締力としばらく時間が経過した後の型締力に差が生じる場合がある。よって、次回の型締めの際の型締力を、センサ68の計測結果に基づき補正することができる。
【0041】
型締力の調整は、モータ67を駆動して、タイバー64に対する可動プラテン63の位置調整により行う。このようにタイバー64に対する可動プラテン63の位置の初期値を、センサ68の計測結果に基づいて補正して型締力を調整することで、型締力の精度を高めることができる。タイバー64に対する可動プラテン63の位置調整は、任意のタイミング、例えば、
図4AのステップS7およびS9、
図4BのステップS13~ステップS15のタイミングで行えばよい。
【0042】
ステップS6およびステップS8の処理を、ステップS7と並行して行う。ステップS6では、金型100A内の成形品の冷却時間の計時を開始する。ステップS7では、型締装置6に関連する処理を行う。より具体的には、固定機構610による金型100Aのロックを解除する。ステップS5から所定の時間の遅延後にモータ66を駆動して、トグル機構65を駆動する。これにより、型締力を消失し、固定プラテン61に対して可動プラテン62を僅かに離間させ、金型の入れ替えが可能となる空間を形成する。
【0043】
ステップS8では、射出装置5に関連する処理を行う。例えば、保圧サックバック、ノズルシャットオフ、射出装置5の後退等を行う。保圧サックバックおよびノズルシャットオフは、ノズル52が金型100Aから離れたときに溶融樹脂が垂れることを防止するものである。これらの処理は、ステップS7で固定プラテン61に対して可動プラテン62を僅かに離間させる前の遅延時間中に行ってもよい。
【0044】
保圧サックバックとは、保圧後にスクリュ51aを後退させて、射出シリンダ51内や金型100A/100B内の樹脂圧力を低減するものである。保圧サックバックにおけるスクリュ51aの後退位置は、絶対位置で管理してもよいし、保圧完了後のスクリュ51aの位置に対する相対位置で管理してもよい。射出装置5に設置されているロードセル(図示せず)が測定する樹脂圧力が所定圧まで低下することが検知されるまで、スクリュ51aを後退させてもよい。
【0045】
ノズルシャットオフは、ノズル52の吐出口52aを閉鎖することであり、
図2の例でいえば、ピン56aで吐出口52aを閉鎖する。このような動作により、樹脂が漏れ出ることを抑制できる。次の射出のための樹脂計量の精度も向上できる。以上の処理により、樹脂が漏れ出ることを防止できるが、金型100A/100Bの構造や樹脂の種類によっては、金型100A/100Bとノズル52との間で長い糸状の樹脂が発生する場合がある。この発生を防止するために、ノズル52にエアを吹きつける装置を設置してもよい。
【0046】
ステップS9では、金型100A/100Bの入れ替えを行う。金型100Aを成形動作位置11から搬送装置3Aに搬出し、金型100Bを搬送装置3Bから成形動作位置11に搬入する。コントローラ41はコントローラ42Aに金型100Aの搬出指示を送信し、コントローラ42Aは搬送ユニット31を駆動して、金型100Aを成形動作位置11から搬出する。金型100Aの搬出が完了すると、コントローラ42Aからコントローラ41へ搬出完了を示す信号が送信される。金型100Aは搬送装置3A上で冷却される。このとき、自己閉鎖部103の働きによって金型100Aの閉状態が維持される。
【0047】
搬出完了を示す信号を受信すると、ステップS10で、成形動作の動作条件として金型100Bに関する動作条件を設定する。例えば、金型100Bの厚み(Y方向の幅)、型締力等を成形動作の動作条件として設定する。また、金型100Bに対応した射出速度等の成形条件を設定する。次の射出のための可塑化計量を開始する。モータ66を駆動して、固定プラテン61と可動プラテン62とを金型100Bに密着させる。このときは、成形中に発生させるような型締力を発生させる必要はない。固定機構610を駆動して、金型100Bを固定プラテン61と可動プラテン62の両方にロックする。
【0048】
本実施形態では、ステップS9の後にステップS10を行っている。ただし、成形動作条件の切り替えには時間を要することがあるため、例えば、金型100Aの搬出指示と同時に成形動作条件を切り替えるようにしてもよい。
【0049】
ステップS11では、成形動作が金型100Aおよび100Bに対する初回の成形動作かどうかを判定する。成形動作が初回の成形動作の場合は、処理はステップS3へ戻る。成形動作が初回の成形動作ではない、すなわち2回目、3回目等の成形動作の場合は、処理はステップS12へ進む。
【0050】
上述の処理は、初回の成形動作を説明したものである。したがって、処理はステップS3へ戻る。次いで、金型100Bに対してステップS3~ステップS8の処理が実行される。
【0051】
金型100Bに対するステップS3~ステップS8の処理が実行されると、ステップS9で金型100Bの搬出と、金型100Aの搬入とが行われる。金型100Bは、搬送装置3B上で冷却される。ステップS11では、成形動作が初回の成形動作ではないと判定され、処理はステップS12へ進む。
【0052】
ステップS12では、ステップS6で計時を開始した冷却時間が所定の時間に達したかどうかに基づいて、金型100Aの冷却が完了したかどうかを判定する。冷却が完了した場合は、
図4B中のステップS13~ステップS16の処理を行う。
【0053】
ステップS13では、モータ66を駆動して、固定プラテン61から可動プラテン62を離間する。固定金型101は固定プラテン61に固定機構610により固定され、可動金型102は可動プラテン62に固定機構610により固定されている。したがって、自己閉鎖部103の力に抗して、固定金型101から可動金型102が離間し、金型100Aが型開きされる。ステップS14では、取出機7を駆動して、金型100Aの可動金型102側に残留している成形品を取り出し、射出成形機2の外部へ搬送する。チャック板75が成形品に対向する位置に真空ヘッド74が移動し、成形品を吸着力で保持する。
【0054】
ステップS15では、モータ66を駆動して、可動プラテン62を固定プラテン61に近づける。固定金型101から離間していた可動金型102は、固定金型101に密着して、金型100Aが型閉じされる。射出成形動作が金型100Bを用いているときは、ステップS13、S14、およびS15を実行して、成形品を金型100Bから取り出す。
【0055】
ステップS16では、コントローラ41は、成形品の現在生産数と閾値THとを比較する。成形品の現在生産数は、ROMおよび/またはRAMに記憶される。閾値THは、所望の生産量であり、ステップS1で設定される。成形品の現在生産数が閾値TH未満であれば、フローはステップS3へ戻る。その時点で、上記の処理が繰り返される。
【0056】
成形品の現在生産数が閾値THと等しい場合は、フローはステップS17へ進む。ステップS17~S21の処理は、他方の金型、例えば金型100Bから成形品を取り出すための処理である。
【0057】
ステップS17では、ステップS9と同様に、金型100A/100Bを入れ替える。本ステップでは、金型100Aを成形動作位置11から搬送装置3Aに搬出し、金型100Bを搬送装置3Bから成形動作位置11に搬入する。コントローラ41はコントローラ42Aに金型100Aの搬出指示を送信し、コントローラ42Aは搬送ユニット31を駆動して、金型100Aを成形動作位置11から搬出する。金型100Aの搬出が完了すると、コントローラ42Aからコントローラ41へ搬出完了を示す信号が送信される。
【0058】
搬出完了を示す信号の受信後、ステップS18では、ステップS6で開始した冷却時間が所定の時間に達したかどうかに基づいて、金型100Bの冷却が完了したかどうかを判定する。冷却が完了した場合は、ステップS19へ進む。
【0059】
ステップS19では、モータ66を駆動して、固定プラテン61から可動プラテン62を離間する。固定金型101は固定プラテン61に固定機構610により固定され、可動金型102は可動プラテン62に固定機構610により固定されている。自己閉鎖部103の力に抗して、固定金型101から可動金型102が離間し、金型100Aが型開きされる。ステップS20では、取出機7を駆動して、金型100Aの可動金型102側に残留している成形品を取り出し、射出成形機2の外部へ搬送する。チャック板75が成形品に対向する位置に真空ヘッド74が移動し、成形品を吸着力で保持する。ステップS21では、モータ66を駆動して、可動プラテン62を固定プラテン61に近づける。固定金型101から離間していた可動金型102は、固定金型101に密着して、金型100Aが型閉じされる。射出成形動作が金型100Bを用いているときは、ステップS19、S20、およびS21を実行して、成形品を金型100Bから取り出す。
【0060】
上述したように、本実施形態では、金型100Aおよび100Bの冷却を射出成形機2外の搬送装置3Aおよび3B上で行う。金型100Aと100Bの一方を冷却中に、金型100A/100Bの他方に対して、射出成形機2によって、成形品の取り出し→型締め→射出および保圧といった各処理を行う。型開きおよび成形品の取り出しを射出成形機2で行うため、搬送装置3Aおよび3Bは、型開き機能および成形品の取り出し機能を有している必要がない。したがって、射出成形システムのコストアップを抑制しつつ、1台の射出成形機2で金型100Aおよび100Bを入れ替えながら成形品を製造することができる。
【0061】
金型100Aまたは100Bの一方の冷却に要する時間に、金型交換工程の開始から、他方の金型の取り出し工程、射出工程、保圧工程までと、再度の金型交換工程の完了までの全工程に要する時間が収まれば、生産性が通常の成形に比べて少なくとも2倍に向上する。すなわち、コストアップの抑制に加えて、高い生産性を実現することができる。
【0062】
2倍の生産性を実現するには、金型交換工程の時間にも依存するが、金型100Aおよび100Bの冷却時間が全成形工程(1成形サイクルの時間)の50%以上を占めていれば十分である。自動車や家電、事務機器等の外装部品や電気機械部品に用いられる成形品の多くは、強度確保のため数ミリメートルの肉厚を持つ。このため、全成形工程中、冷却工程が最も長い時間を占め、1成形サイクルの時間に対し、金型100Aおよび100Bの冷却時間が50%から70%に達することも珍しくない。したがって、この種の成形品の生産性向上に上記実施形態は特に有効である。金型100Aの成形サイクルの時間と金型100Bの成形サイクルの時間とが同程度で、1成形サイクルの時間に対する金型100Aおよび100Bの冷却時間が50%以上であれば、特に生産性を向上することができる。
【0063】
成形品の肉厚が1mm程度と比較的薄い場合でも、高い寸法精度が必要な部品や、金型温度として高温が必要な樹脂、あるいは、冷却に時間のかかる結晶性樹脂を使用する成形品の場合は、冷却工程が長くなる傾向がある。上述の実施形態では、幅広い成形品の製造で2倍に近い生産性を実現することが可能である。
【0064】
1成形サイクルの時間に対し、金型100Aおよび100Bの冷却時間が50%未満の場合であっても、冷却時間の有効活用により、通常成形に対して1.5倍や1.8倍といった高い生産性の実現が可能となる。
【0065】
上述の実施形態によれば、1台の射出成形機2で、従来の製造方法による2台分の射出成形機の生産性を得ることができるため、設置スペースや電力使用量を削減することができる。
【0066】
図5A~
図13は、現在の射出成形システムに対する本開示によって提供される改善を示す。既知の射出成形システムの構成要素は、説明の目的のみのために
図5A~
図13の説明に含まれている。
図5A~
図13の以下の説明は、説明の目的のみのために金型Aに関して提供される。
【0067】
図5A~
図5Cは、搬送装置3Aの構成を示す。具体的には、
図5Aは、射出成形機2および搬送装置3Aの上面図を示し、
図5Bは、射出成形機2および搬送装置3Aの正面図を示し、
図5Cは、搬送装置3Aの側面図を示す。
【0068】
図5Aには、Y軸方向に延びるレール300(ガイド部材)が示されている。
図5Bにおいて、レール300は、Y軸方向から見て三角形状であり、搬送装置3Aのフレーム30の底面に設けられた車輪301(回転部材)と係合する。車輪301にはV字状の溝が形成されているので、車輪301はレール300と係合するように構成されている。車輪301はレール300に係合しながら回転するので、搬送装置3Aはレール300に沿って移動する。これにより、搬送装置3AをY軸方向に移動させることができる。
【0069】
フレーム30には、操作者が搬送装置3Aを移動させるためのハンドル302が設けられている。別の例示的な実施形態では、ハンドル302は、異なる表面上に設けられている。
図5Cに示すように、レール300には、搬送装置3AがY軸方向に必要以上に移動しないようにストッパ304およびストッパ305がそれぞれに設けられている。ストッパ304は、搬送装置3Aが射出成形機2から退避する退避位置に対応する位置に設けられている。ストッパ305は、射出成形機2と搬送装置3Aとが一直線上に並ぶ成形動作位置に対応する位置に設けられている。
【0070】
車輪301の移動を規制するロック機構(図示せず)が別途設けられている。ハンドル302の移動とロック機構の移動とを連動させることができる。すなわち、操作者がハンドル302を押し上げるとロック機構が解除され、搬送装置3Aが移動可能となる構成とすることができる。操作者は、ハンドル302を押し上げながら搬送装置3Aを負のY軸方向に押して搬送装置3Aを移動させることができる。搬送装置3A、レール300、ストッパ304、およびストッパ305をまとめて搬送系と呼ぶ。
【0071】
射出成形機2には開口303が形成されている。搬送装置3Aから搬送された金型100Aは、開口部303を通過して射出成形機2内に入る。予め金型100Aに樹脂を注入して冷却処理を完了していれば、金型100Aが射出成形機2内の成形動作位置11に移動した後、取出器7により成形品を金型100Aから取り出す。
【0072】
また、成形品を容易に取り外すことができず、成形品の一部または全部が金型100Aの内部に残る場合もある。金型100Aに成形品を残したまま次の射出成形処理を行うと、金型100Aが変形したり、射出成形システムが故障したりする可能性がある。このため、このような場合には、操作者は、開口部303を介して射出成形機2内にアクセスし、金型100Aから残留成形品を取り外す必要がある。また、金型100Aのキャビティ面(固定金型101と可動金型102の対向面)の清掃等の定期的なメンテナンス作業の際に、操作者が射出成形機2内にアクセスする必要が生じる場合がある。
【0073】
図6は、搬送装置3Aを退避位置に移動させた状態を示す。この構成を
図5Aの構成と比較すると、搬送装置3Aが射出成形機2の開口部303に隣接する位置から後退するため、操作者が開口部303を介して射出成形機2内に容易にアクセスすることができる。フレーム30の端面L2が固定プラテン61の端面L1よりも少なくともY軸の負方向に位置するように搬送装置3Aを移動させることは、操作者にとって十分なスペースを確保することができるので望ましい。これにより、操作者にとっての保守性が向上する。
【0074】
固定プラテン61の端面L1は、可動プラテン62に対向する固定プラテン61の端面であり、フレーム30の端面L2は、搬送装置3Aの移動方向上流側に位置するフレーム30の端面である。すなわち、端面L1よりも搬送装置3Aの移動方向下流側の位置に定着するように搬送装置3Aを移動させる構成が好ましい。
【0075】
次に、搬送装置3Aを退避位置から成形動作位置に戻した後、射出成形機2に対する搬送装置3Aの位置合わせを行うための位置合わせ機構について、
図7A~
図10Cを参照して説明する。上述したように、成形動作位置とは、射出成形機2と搬送装置3AとがX軸方向に一直線に並び、搬送装置3Aから射出成形機2内に金型100Aを搬送できる位置である。
【0076】
図7A~
図7Cは、第1の位置合わせ機構を示す。この構成では、搬送装置3Aは金属製のピンを用いて床に固定されている。床はピン固定部310を含み、搬送装置3Aのフレーム30はピン受け部311を含む。ピン固定部310は、射出成形機2に対して高精度な位置決めを行って予め床に固定されている。
図7Aに示すように、ピン312が挿入されるピン固定部310には、長穴が形成されている。この長穴はX軸方向に延びている。長穴のY軸方向の大きさは、ピン312の大きさに基づいて設計される。
【0077】
搬送装置3AのX軸方向の移動は、レール300と車輪301との間の係合によって制御される。すなわち、レール300と車輪301との間の係合によって搬送装置3AのX軸方向の位置がほぼ変化することなく高精度に維持されるので、ピン312を用いてY軸方向の位置のみを高精度に位置決めすればよい。また、ピン受け部311には、ピン312を挿入するための穴が形成されている。この穴は長穴ではなく、ピン312の大きさに基づいて設計された丸穴である。
【0078】
操作者は、ハンドル302を保持しながら、搬送装置3Aを退避位置から成形動作位置に戻し、ピン受け部311に形成された丸穴とピン固定部310に形成された長穴とが重なる位置で搬送装置3Aを停止させる。ストッパ305は成形動作位置に対応する位置に設けられているので、操作者はまず、車輪301がストッパ305に当接する位置まで搬送装置3Aを移動させる。そして、操作者は、搬送装置3Aの位置を微調整するだけでよい。次に、操作者は、ピン312をピン受け部311に上方から挿入し、ピン312をピン受け部311に通した後、ピン固定部310に挿入する。ピン312をピン固定部310に挿入した後、ピン312が抜けないようにピン312をピン固定部310で固定する。これにより、射出成形機2に対する搬送装置3Aの位置を固定することができ、搬送装置3Aから射出成形機2への金型100Aの搬送を再開することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、ピン固定部310とストッパ305とは独立して設けられている。別の例示的な実施形態では、ピン固定部310の基部は、レール300と重なる位置までX軸方向に延在させてストッパ305を兼用させることができる。本実施形態では、一方のレール300のみならず、両方のレール300を覆うようにピン固定部310を延設することが好ましい。
【0080】
本実施形態では、搬送装置3Aは床に固定されている。別の例示的な実施形態では、
図8A~
図8Cに示すように、搬送装置3Aを射出成形機2に固定することができる。すなわち、ピン固定部310は、床に固定されるのではなく、射出成形機2に固定される。この構成によれば、ピン固定部310が床に固定されている場合、搬送装置3Aが射出成形機2に対して位置ずれしないように高精度に位置を測定する作業負荷が軽減される。本実施形態では、金属製のピンを用いているが、材料強度に問題がなければ、搬送装置3Aの重量を考慮して、このピンには別の種類の材料を用いてもよい。
【0081】
図9A~
図9Cは、第2の位置合わせ機構を示す。この構成では、搬送装置3Aは、
図7A~
図7Cの構成と同様に金属製のピンを用いて床に固定されている。突出部321は床上に位置し、搬送装置3Aのフレーム30上にはピン受け部320が位置している。ピン突起部321は、射出成形機2に対して精度の高い位置決め状態で予め床に固定されている。
図8Aに示すように、ピン受け部320には、ピン突出部321から突出しているピン323が挿入可能な長穴が形成されており、長穴はX軸方向に延びている。長穴のY軸方向の大きさは、ピン323の大きさに基づいて設計される。搬送装置3AのX軸方向の移動は、レール300と車輪301との間の係合によって制御される。
【0082】
搬送装置3AのX軸方向の移動は、レール300と車輪301との間の係合によって制御される。すなわち、レール300と車輪301との間の係合によって搬送装置3AのX軸方向の位置がほぼ変化することなく高精度に維持されるので、ピン323を用いてY軸方向の位置のみを高精度に位置決めすればよい。ピン突出部321は、レバー322を備え、操作者がレバー322を引いたり押したりすることにより、ピン323をZ軸方向に突出または後退させることができる。
【0083】
操作者は、ハンドル302を保持しながら、搬送装置3Aを退避位置から成形動作位置に戻し、ピン受け部320に形成された長穴とピン突起部321に含まれるピン323とが重なる位置で搬送装置3Aを停止させる。ストッパ305は成形動作位置に対応する位置に設けられているので、操作者はまず、車輪301がストッパ305に当接する位置まで搬送装置3Aを移動させる。そして、操作者は、搬送装置3Aの位置を微調整するだけでよい。次に、操作者は、レバー322を引いてピン323をピン突出部321から突出させる。ピン受け部320に形成された長穴にピン323を挿入し、搬送装置3Aの位置を固定する。ピン323をピン受け部320に挿入した後、ピン323が抜けないようにレバー322を固定することが好ましい。これにより、射出成形機2に対して搬送装置3Aの位置を合わせることができ、搬送装置3Aから射出成形機2への金型100Aの搬送を再開することができる。
【0084】
本実施形態では、ピン突起部321とストッパ305とは独立して設けられている。また、別の例示的な実施形態では、ピン突起部321の基部を、レール300と重なる位置までX軸方向に延在させてストッパ305と兼用させることができる。本実施形態では、一方のレール300のみならず、両方のレール300を覆うようにピン固定部310を延設することが好ましい。
【0085】
本実施形態では、搬送装置3Aは床に固定されている。別の例示的な実施形態では、
図10A~
図10Cに示すように、搬送装置3Aを射出成形機2に固定することができる。すなわち、ピン突起部321は、床に固定されるのではなく、射出成形機2に固定される。この構成によれば、ピン突起部321が床に固定されている場合、搬送装置3Aが射出成形機2に対して位置ずれしないように高精度に位置を測定する作業負担が軽減される。
【0086】
なお、本実施形態では、金属製のピンを用いているが、材料強度に問題がなければ、搬送装置3Aの重量を考慮して、このピンには別の種類の材料を用いてもよい。本実施形態では、レバー式の突き出しピンを用いている。別の例示的な実施形態では、操作者がレバーを操作することなく、プランジャ等の部材を用いて、ばねの力によって搬送装置3Aを自動的に固定することができる。
【0087】
図11A~
図11Cは、第3の位置合わせ機構を示す。この構成では、搬送装置3Aは、L字ブラケットを用いて射出成形機2に固定されている。
図11Aに示すように、搬送装置3Aのフレーム30の両側面には、タップ穴を含むプレート334が設けられている。タップ穴には、L字ブラケット332およびL字ブラケット333を介してボルト331が挿入され、プレート334に固定されている。これにより、L字ブラケット332とL字ブラケット333とが搬送装置3Aに固定されている。L字ブラケット332とL字ブラケット333とが射出成形機2にも固定されている。これにより、搬送装置3Aが射出成形機2に対して固定される。搬送装置3AをY軸負方向に移動できるように、ボルト331およびL字ブラケット333は着脱可能である。
【0088】
次に、搬送装置3Aを退避位置から成形動作位置に戻す手順について
図12A~
図12Bを用いて説明する。
図12Aに示すように、搬送装置3Aを移動させる際には、L字ブラケット333を取り外し、L字ブラケット332のみを射出成形機2に取り付けられている。操作者は、ハンドル302を保持しながら、搬送装置3Aを退避位置から成形動作位置に戻し、
図12Aに示す矢印方向に搬送装置3Aを移動させることができる。
【0089】
搬送装置3Aは、Y軸正側に位置する搬送装置3Aのプレート334とL字ブラケット332とが接触する位置で停止する。本実施形態では、
図11Cに示すように、成形動作位置に対応する位置にストッパ305が設けられている。別の例示的な実施形態では、それらを省略することができる。
【0090】
L字ブラケット332に十分な強度を持たせれば、プレート334はL字ブラケット332に当接してストッパ305と同様の役割を果たすことができる。L字ブラケット332をプレート334に固定した後、
図12Bに示すように、L字ブラケット333もプレート334に固定する。これにより、射出成形機2に対して搬送装置3Aの位置を合わせることができ、搬送装置3Aから射出成形機2への金型100Aの搬送を再開することができる。
【0091】
上述した実施形態では、搬送装置3Aを成形動作位置11から退避位置に移動させる際に、搬送装置3Aを固定する固定具や金型100Aに接続されているケーブルを取り外す必要がある。搬送装置3Aを退避位置から成形動作位置11に移動させた後、成形動作を開始する前に、ケーブルを金型100Aに接続する。
【0092】
上述した実施形態は、操作者がハンドル302を保持して手動で搬送装置3Aを移動させる構成について説明した。別の例示的な実施形態では、構成は、操作者からの指示に基づいて搬送装置3Aを自動的に移動させるために別個に設けられ得るモータのようなアクチュエータを含む。
【0093】
上述した実施形態は、搬送装置3AがY軸負方向に移動可能な構成について説明した。別の例示的な実施形態では、搬送装置3Aは逆方向、すなわちY軸正方向に移動可能である。
【0094】
上述した実施形態は、搬送装置3AがY軸方向に沿って移動可能な構成について説明した。
図13に示す別の例示的な実施形態では、搬送装置3Aは、X軸方向に沿って移動可能な構成を含むことができる。この場合、レール300はX軸方向に延びている。なお、
図13に示す構成は、レール300の延在方向以外は、
図7に示す構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。搬送装置3AをX軸方向に移動させる構成では、射出成形機2と搬送装置3Aとの間に操作者が入り込む十分に大きいスペースを確保するために、搬送装置3Aを射出成形機2から数十cm~数mの範囲で離間させることが好ましい。
【0095】
上述した実施形態は、搬送装置3Aが射出成形機2に対して移動可能な構成について説明した。別の例示的な実施形態では、搬送装置3Aの代わりに、搬送装置3BをY軸方向またはX軸方向に移動させることができる。さらに別の例示的な実施形態では、搬送装置3Aおよび搬送装置3Bを移動させることができる。
【0096】
上述した実施形態は、三角形状のレール300とV字状の溝が形成された車輪301とが係合する構成について説明した。別の例示的な実施形態では、凹溝が形成されたレールは、溝に正確に適合する幅を含むローラと係合する。さらに別の例示的な実施形態では、車輪やローラ等の回転部材がレール上に配置され、回転部材と係合する溝が搬送装置3Aの底面に形成されている。
【0097】
さらにまた別の例示的な実施形態では、搬送装置3Aの底面とレールとの間の摩擦力を低減するために、例えば磁石を用いて、レールの溝に係合するスライダが搬送装置3Aの底面に設けられている。本実施形態では、搬送装置3Aの底面に車輪やローラ等の回転部材を設ける必要はない。すなわち、搬送装置3Aに設けられた車輪301や上述したローラやスライダ等の部材は、搬送装置3Aを下方から支持する支持部材である。これらの支持部材は、レール300の延在方向に搬送装置3Aを移動可能に支持する。
【0098】
上述した実施形態では、レール300がガイド部材として床面に配置されている。別の例示的な実施形態では、ローラは搬送装置3Aの底面に配置され、ローラは床面に直接転動する。さらに別の例示的な実施形態では、搬送装置3Aの両側に、搬送装置3Aの移動をガイドする側壁(凸部)を形成し、搬送装置3Aの移動を制御している。すなわち、搬送装置3AをY軸方向に移動させる際には、搬送装置3Aの両側面において側壁がY軸方向に延びる。搬送装置3AをX軸方向に移動させる際には、搬送装置3Aの両側面の側壁がX軸方向に延びる。
【0099】
上述した構成は、射出成形システム1において2つの金型を用いることを前提として説明したが、これに限定されるものではない。上述した構成は、1つの金型を用いる射出成形システムに適用することができる。
【0100】
図14Aは、金型を交換する方向を示す。具体的には、
図14Aは、射出成形システム1内の金型100Aと、射出成形システム1外の金型100Cとを交換するために現在用いられている2方向を示す。金型100Aおよび100CをZ軸方向に交換する場合には、例えばクレーンを用いて金型100Aおよび100Cを交換する。クレーンを使用すると、通常、使用するクレーンを準備するために追加の時間が必要になる。金型100Aおよび100CをX軸方向に交換する場合には、金型100Aおよび100Cを交換する前に搬送ユニット31を取り外す必要がある。搬送ユニット31の取り外しもまた時間がかかることがある。さらに、金型100Cが載置されるカートは、射出成形システム1の隣にX軸方向に配置する必要がある。
【0101】
図14Aに示すように、射出成形システム1のX軸方向のサイズ(長さ)は大きい。このため、X軸方向に、射出成形システム1と、金型100Aおよび100Cを交換するためのカートとを設置するのに工場のフロアスペース等を確保することが困難となることがある。
【0102】
Z軸方向およびX軸方向に金型を交換する上述した制約のため、本開示の以下の例示的な実施形態は、Y方向の金型交換について説明する。
図14Bは、金型をY軸方向に交換する様子を示している。
【0103】
以下の説明は、議論目的のため、搬送装置3Aについて提供する。なお、説明は搬送装置3Bにも適用できる。
【0104】
図15は、金型100Aおよび100CをY軸方向に交換するための構成を示す。具体的には、
図15は、に搬送装置3Aの上面図および正面図を示す。なお、金型100Aは、
図15から省略している。搬送装置3Aは、フレーム30と、搬送ユニット31と、複数のローラ32と、複数のローラ33とを含んでいる。搬送ユニット31は、フレーム30に固定され、搬送ユニット31に接続された金型をX軸方向に移動させる。
【0105】
複数のローラ32は、固定側に配置された複数のローラ32aの列と、可動側に配置された複数のローラ32bの列とを含む。複数のローラ33は、固定側に配置された複数のローラ33aの列と、可動側に配置された複数のローラ33bの列とを含む。複数のローラ32a、32b、33a、および33bは、金型100Aの搬送経路を規定する。
【0106】
金型100Aの取付板101aは固定側の複数のローラ33aに支持され、金型100Aの取付板102aは可動側の複数のローラ33bに支持されている。複数のローラ33aは固定側の支持ベース330aに固定され、複数のローラ33bは可動側の支持ベース330bに固定されている。複数のローラ32aは固定側のガイドベース320aに固定され、複数のローラ32bは可動側のガイドベース320bに固定されている。
【0107】
搬送装置3Aは、金型100AをY軸方向に移動(ガイド)させるフリーローラユニット341を含んでいる。フリーローラユニット341は、フリーローラ34と、フリーローラ34を支持する支持ベース340とを含む。フリーローラユニット341は、搬送装置3Aに固定されていてもよく、または、金型100Aおよび100Cが交換される時のみにフリーローラユニット341が搬送装置3Aに取り付けられるように、搬送装置3Aに対して着脱可能であってもよい。フリーローラユニット341は、支持ベース340をZ軸方向に昇降させるために使用できるジャッキ(図示せず)を含んでいる。この動作のための構成を次に提供する。
【0108】
上述したように、支持ベース330aはガイドベース320aとは物理的に異なる部品であり、支持ベース330bはガイドベース320bとは物理的に異なる部品である。ガイドベース320aおよびガイドベース320bは、それぞれの支持ベース330a/330b上には固定されず、フレーム30上に直接固定されている。支持ベース330aはガイドベース320aと単一の構成要素とすることができ、支持ベース330bはガイドベース320bと単一の構成要素とすることができる。
【0109】
固定側の支持ベース330aおよびガイドベース320aは、フレーム30上に固定されており、フレーム30に対してY軸方向に移動または調整されない。可動側の支持ベース330bおよびガイドベース320bは、フレーム30上に着脱自在に固定され、Y軸方向に調整可能である。支持ベース330bとガイドベース320bとは互いに固定可能であり、支持ベース330bとガイドベース320bとは互いに固定可能である。
【0110】
フレーム30には、X軸方向の異なる位置に、Y軸方向に沿って延びる長穴が形成されている。支持ベース330bおよびガイドベース320bは、締結部材(図示せず)によって長穴の任意の位置に固定することができる。締結部材は、例えば、ボルトおよびナットとすることができる。締結部材および長穴は、支持ベース330bおよびガイドベース320bのX軸、Y軸、およびZ軸方向の位置をフレーム30に対して調整固定する。
【0111】
図16Aは、金型100Aの底面図および上面図を示す。金型100Aは、射出成形機2の固定プラテン61に固定された固定金型101と、射出成形機2の可動プラテン62に固定された可動金型102と、固定プラテン61に接触する取付板101aと、可動プラテン62に接触する取付板102aと、を含んでいる。
【0112】
金型100Aは、金型100AをY軸方向に円滑に移動させるために、取付板101aの底面131に形成されたテーパ部133と、取付板102aの底面132に形成されたテーパ部134とを含んでいる。テーパ部133および134は、底面131および132のそれぞれのX軸方向の全域に形成されている。テーパ部133および134により、金型100AをY軸方向に移動させる際に、金型100Aとフリーローラ34との間の衝突を抑制することができる。取付板101aの底面131は、X軸方向の端部1407および端部1409を含む。取付板102aの底面132は、X軸方向の端部1408および端部1410を含む。領域1411~1414は、固定プラテン61および可動プラテン62の固定機構610が金型100Aをクランプする位置に対応する。
【0113】
固定型101の底面には支持板121が固定され、可動型102の底面には支持板122が固定されている。支持板121、122は、底面131、132間の領域を埋め、金型100AをY軸方向に円滑に移動させることができる。支持板121、122は、
図15に示すフリーローラ34と対向する位置に設けられている。
【0114】
支持板121は、3つの部分に分割されており、各部分は、領域1411および1413に隣接する位置を避けるように設けられている。支持板121aは、領域1411と端部1407との間に、端部1407に近接した位置に固定されている。支持板121bは、領域1411と領域1413との間に固定されている。支持板121cは、領域1413と端部1409との間に、端部1409に近接した位置に固定されている。
【0115】
支持板122は、3つの部分に分割されており、各部分は、領域1412および1414に隣接する位置を避けるように設けられている。支持板122aは、領域1412と端部1408との間に、端部1408に近接した位置に固定されている。支持板122bは、領域1412と領域1414との間に固定されている。支持板122cは、領域1414と端部1410との間に、端部1410に近接した位置に固定されている。支持板121、122は、支持板121、122と、固定機構610とがお互いに接触することを防止するように、領域1411乃至1414の隣の位置を避けるように固定されている。金型100Aと交換される金型100Cは、同様のテーパ部と支持板とを含んでいる。
【0116】
図16Bは、金型100Aの底面の大きさに対する支持板121、122の大きさを示す。具体的には、
図16Bに示すように、支持板121、122の大きさは、金型100Aの底面の大きさよりも小さい。支持板121および122の間には、マージンαが形成されている。これにより、金型100Aの底面への支持板121、122のより容易な取り付けが可能となる。
【0117】
図16Cは、金型100Aの側面図を示す。固定側の取付板101aに取付穴141a、141b、141cが形成されている。支持板121a、121b、121cは、取付穴141a、141b、141cのそれぞれを介してネジ等の締結部材(図示せず)を用いて金型100Aに取り付けられている。また、可動側の取付板102aにも取付穴(図示せず)が形成されている。支持板122a、122b、122cは、支持板121a、121b、121cと同様に金型100Aに取り付けられている。
【0118】
図16Dは、金型100Aに形成されたテーパの最小寸法の決定方法を示す。具体的には、
図7Dは、金型100Aのフリーローラ34およびテーパ部134の拡大正面図を示す。2つのフリーローラ34のY軸方向の間隔をL1で表しており、2つのフリーローラ34のZ軸方向のずれ量をZ1で表している。金型100Aが次のフリーローラ34に移動する直前まで現在のフリーローラ34に接触すると、金型100Aの位置が安定する。これにより、金型100Aのテーパ長L2は、2つのフリーローラ34の間の間隔L1よりも短くなる。すなわち、L2<L1である。
【0119】
フリーローラ34の大きさには個人差があり、フリーローラ34の設置位置にもばらつきがあり、これらは合わせてずれ量Z1を形成する。フリーローラ34のZ軸方向のずれにより、転写時に金型100Aがフリーローラ34と干渉しないように、Z軸方向のテーパの長さはZ2>Z1の関係である。テーパ部133は、テーパ部134と同様の構成を有する。
【0120】
【0121】
図17A~
図17Bでは、連結部材310により、搬送ユニット31と金型100Aとが連結される。なお、金型100Aと金型100Bとを連結するための金型100Bおよび連結部材200は、
図17A~
図17Bから省略されている。
【0122】
図17Aに示すように、フリーローラユニット341は、既に搬送装置3Aに取り付けられている。金型100Aとフリーローラユニット341とは、Z軸方向において重ならない。搬送ユニット31は、金型を交換する際に、金型100AをX軸方向に移動させる。
図17Bに示すように、搬送ユニット31は、金型100Aとフリーローラユニット341とがZ軸方向に重なる位置で、金型100Aを停止させる。この位置を交換位置と呼ぶ。
【0123】
図18Aは、
図18Bと同様の構成を示す。
図18Aでは、金型100Aはフリーローラユニット341の上方に位置しており、金型100Aとフリーローラユニット341とはZ軸方向に重なっている。金型を交換する際には、操作者が搬送ユニット31と金型100Aとの間の連結部材310を取り外す必要がある。操作者はまた、金型100Aと金型100Bとの間の連結部材200を取り外す必要がある。そして、
図18Bに示すように、操作者は、サイドローラ32bが固定されているガイドベース320bをフレーム30から取り外す。これにより、金型100AをY軸方向に移動させるための空間が形成される。
【0124】
次に、
図18Cに示すように、操作者は、例えば、ジャッキを用いて支持ベース340をZ軸方向に上昇させる。これにより、フリーローラ34が支持板121、122に接触する。操作者は、取付板101aの底面131および取付板102aの底面132がそれぞれ底部ローラ33a、33bから離れるまで支持ベース340を上昇させる。この離間距離を
図18Cでは「α」で示す。
【0125】
搬送装置3Aには、フリーローラ34の回転を規制するストッパを設けることができる。ストッパーロックは、金型100Aを上昇させた際に、フリーロー34が意図的に回転した場合に、金型100Aが搬送装置3Aから落下するのを防止するための金型100Aの位置である。
【0126】
そして、操作者は、
図18Dに示すように、搬送装置3Aの一側に金型100A/100Cを交換するためのカート351を配置する。カート351は、ガイドローラ35と、ガイドローラ35が固定された支持ベース350とを含んでいる。ストッパがフリーローラ34の回転を規制する場合には、操作者はストッパを解除する。操作者は、金型100Aをカート351に向けてY軸方向に移動させる。金型100Aは、フリーローラ34およびガイドローラ35によってガイドされて、カート351に円滑に搬送される。
【0127】
図18Eは、金型100Aが搬送装置3Aからカート351に完全に移動した状態を示す。なお、金型100Aのカート351上の位置は、ガイドローラ35の回転を規制するために、ロープ、ベルト、ストッパ等の固定部材(図示せず)を用いて固定することが好ましい。この状態で、操作者は、カート351を搬送装置3Aから遠ざける。そして、例えば、カート351を金型収納場所に移動させることができる。次いで、操作者は、金型100Aをカート351から金型格納場所にアンロードし、新しい金型100Cを金型格納場所からカート351にロードする。そして、操作者は、カート351を搬送装置3Aの片側に移動させる。
図18Fは、金型100Cをカート351から搬送装置3AにY軸方向に移動させた状態を示す。金型100Cは、フリーローラ34およびガイドローラ35にガイドされて、搬送装置3Aに円滑に搬送される。
【0128】
図18Gは、金型100Cが完全にカート351から搬送装置3Aに移動させた状態を示す。次に、
図18Hに示すように、操作者は、例えばジャッキを用いて支持ベース340をZ軸方向に下降させる。取付板101aの底面131および取付板102aの底面132は、それぞれ底ローラ33a、33bに接触する。操作者は、少なくともフリーローラ34が支持板121、122から離れるまで支持ベース340を下降させる。そして、操作者は、サイドローラ32bが固定されたガイドベース320bをフレーム30に取り付ける。操作者は、金型100Cの幅に基づいてガイドベース320bの取付位置を調整する。操作者は、搬送ユニット31と金型100Cとを連結部310で連結し、金型100Cと金型100Bとを連結部200で連結する。これで金型の交換は完了である。
【0129】
上述した実施形態では、搬送ユニット31は、金型100Aを交換位置に移動させる。別の例示的な実施形態では、搬送ユニット31を使用せずに、金型100Aを手動で交換位置に移動させることができる。本実施形態では、金型100Aを移動させる前に、連結部200および連結部310を取り外すことが好ましい。
【0130】
上述した実施形態では、フリーローラユニット341はジャッキを含み、操作者は手動で支持ベース340を昇降させる。別の例示的な実施形態では、アクチュエータ(モータ)をフリーローラユニット341内に設けることができ、支持ベース340は、アクチュエータによって自動的に昇降することができる。
【0131】
上述した実施形態では、操作者は手動で金型100Aを搬送装置3Aからカート351に移動させ、金型100Cをカート351から搬送装置3Aに移動させる。別の例示的な実施形態では、アクチュエータ(モータ)をフリーローラユニット341およびカート351に設けることができる。アクチュエータがフリーローラ34およびガイドローラ35を駆動し、金型100は自動的に移動される。
【0132】
上述した実施形態では、フリーローラ34およびガイドローラ35によって金型100A/100CがY軸方向にガイドされる。別の例示的な実施形態では、ベルト等のローラ以外の回転部材を設けてもよいし、または、Y軸方向に移動可能なスライダを設けてもよい。
【0133】
上述した実施形態では、ガイドベース320bの全ての部分をフレーム30から取り外す。別の例示的な実施形態では、金型100A/100Cのサイズに対応するガイドベース320の一部のみをフレーム30から取り外すことができる。
【0134】
上述した実施形態では、サイドローラ32bが固定されたガイドベース320bをフレーム30から取り外す。別の例示的な実施形態では、フレーム30からガイドベース320bを取り外すことなく、金型100A/100Cの交換を行うことができる。
図19Aおよび
図19Bは、この手順を示す。
【0135】
図19Aでは、操作者は、支持ベース340を
図18Cに示す位置よりも高い位置まで上昇させる。これにより、金型100Aがガイドベース320bを乗り越えることができる。
図19Aでは、金型100Aの底面とガイドベース320bの上面との間のZ軸方向の距離を「β」で示す。
【0136】
そして、
図19Bに示すように、操作者は、交換用のカート350を搬送装置3Aの片側に配置する。操作者は、金型100Aをカート351に向けてY軸方向に移動させる。金型100Aは、フリーローラ34およびガイドローラ35にガイドされて、カート351に円滑に搬送される。この構成により、ガイドベース320bを着脱する手間暇を軽減することができる。
【0137】
上述した実施形態では、サイドローラ32および底ローラ33の他に、金型100A/100CをY軸方向に移動(ガイド)させる機構であるフリーローラユニット341を搬送装置3Aに取り付ける必要がある。また、別の例示的な実施形態では、金型100A/100CをX軸方向に移動させるための底ローラ33の代わりに、
図20に示すボールローラ36を採用することができる。ボールローラ36は、任意の方向に回転可能であり、ボール部361と、ボール部361を支持するための支持部362とを含む。ボールローラ36は、金型100A/100CをX軸方向およびY軸方向に移動させることができる。
【0138】
図21A、
図21B、
図21Cは、ボールローラ36を用いる交換手順を示す。
図21Aでは、複数の底ローラ33aの一列の代わりに複数のボールローラ36aの一列がX軸方向に設置されており、X軸方向に複数の底ローラ33bの一列の代わりに複数のボールローラ36bの一列が設置されている。射出成形時には、ボールローラ36aおよび36bは、金型100AをX軸方向に搬送する。
【0139】
図21Bは、サイドローラ32bが固定されたガイドベース320bをフレーム30から取り外した状態を示す。これにより、金型100AをY軸方向に移動させるための空間が形成される。そして、
図21Cに示すように、操作者は、搬送装置3Aの片側にカート351を配置する。操作者は、金型100Aをカート351に向けてY軸方向に移動させる。金型100Aは、ボールローラ36およびガイドローラ35にガイドされて、カート351に円滑に搬送される。この構成により、フリーローラユニット341を設置する必要がない。
【0140】
上述した実施形態では、ボールローラ36は、フレーム30に沿ってX軸方向に配置されている。別の例示的な実施形態では、ボールローラ36は、金型100A/100Cのサイズに対応するフレーム30の部分にのみ配置することができる。
【0141】
上述した実施形態では、サイドローラ32は、ガイドベース320によってZ軸方向に囲まれている。別の例示的な実施形態では、ガイドベース320の上面に複数の穴を形成することができ、この穴にサイドローラ32の回転軸を挿入することができる。
図22は、この構成の上面図および正面図を示す。
【0142】
図22の正面図に示すように、サイドローラ32a/32bは、ガイドベース320からZ軸方向に突出している。
図22の上面図に示すように、サイドローラ32a/32bは、X軸方向の領域X1には設けられているが、領域X2には設けられていない。領域X1は、射出成形機2に近い領域である。領域X2は、射出成形機2から遠い領域であり、金型100A/100Cの交換位置を含む。サイドローラ32a/32bは、射出成形機2に金型を挿入する際の金型のY軸方向の位置ずれを防止するために、領域X1に設けられている。
【0143】
図23Aおよび
図23Bは、
図22の構成を用いた金型100A/100Cの交換手順を示す。
図23Aでは、操作者は、例えばジャッキを用いて、金型100Aの底面がガイドベース320bの上面よりも高い位置に届くように支持ベース340を上昇させる。
図23Aでは、金型100Aの底面とガイドベース320bの上面との間のZ軸方向の距離を「γ」で示す。この構成では、サイドローラ32a/32bは、ガイドベース320上に設けられているが、交換位置の隣には設けられていない。したがって、操作者は、
図19Aに示すように、金型100Aをより高い位置に上昇させる必要がなく、金型の交換する時に、サイドローラ32を取り外す必要もない。
【0144】
そして、
図23Bに示すように、操作者は、交換用のカート351を搬送装置3Aの片側に配置する。操作者は、金型100Aをカート351に向けてY軸方向に移動させる。金型100Aは、フリーローラ34およびガイドローラ35にガイドされて、カート351に円滑に搬送される。この構成により、ガイドベース320bを着脱する手間暇を軽減することができる。
【0145】
上述した実施形態では、支持板121、122それぞれを3分割して金型100Aの底面に取り付けられている。別の例示的な実施形態では、支持板121、122それぞれは、2つの部分、または4つ以上の部分に分割することができる。
【0146】
図24に示すように、支持板121、122それぞれがクランプ601を避ける形状であれば、支持板121、122を分割する必要はない。
図24に示す支持板121、122は、穴等の空間である領域1415~1418を含む。
【0147】
上述した実施形態では、支持板121、122を金型100Aに固定し、支持板121、122を金型100Aに固定した状態で射出成形動作を行う。別の例示的な実施形態では、支持板121、122は金型を交換する場合にのみ金型に取り付けることができ、支持板121、122は、金型を交換した後に金型から取り外すことができる。この場合、支持板121、122を3つではなく2つの部分に分割し、金型の底面の縁領域にX軸方向に貼り付けると、取り外しをより容易にすることが好ましい。
【0148】
別の例示的な実施形態では、支持板を固定側の支持板121と可動側の支持板122とに分割しなくてもよい。
図25Aに示すように、固定金型101の底面および可動金型102の底面には、1つの支持板123を取り付けることができる。
図25Bは、支持板123が取り付けられた金型100Aの側面図を示す。支持板123は、金型100AからX軸方向に突出している突出部123aを有する。金型100A/100Cを交換した後、操作者は、突出部123aを保持して支持板123をX軸方向に引っ張ることにより、支持板123を金型100Aから取り外すことができる。突出部123aは、ハンドル形状とすることができる。
【0149】
図26は、支持板を設けることなく金型100Aの形状を変更することができる別の例示的な実施形態を示す。固定金型101の底面1419には、クランプされた領域に隣接する位置に溝1415、1417が形成されている。可動金型102の底面1420には、クランプされた領域に隣接する位置に溝1416、1418が形成されている。溝1415~1418のサイズは、金型100Aが他の射出成形機で使用されていることと、クランプされた領域がシフトしたこととに基づいて変化させることができる。
【0150】
上述した実施形態では、金型100Aにテーパ部133、134が形成されている。別の例示的な実施形態では、金型100Aにテーパ部133のみを形成することができ、または金型100Aにテーパ部134のみを形成することができる。
【0151】
搬送装置3Aを参照して、上記に、交換手順を説明した。上記の説明は、搬送装置3Bを用いた交換手順にも適用できる。
【0152】
上述した実施形態では、搬送ユニット31を搬送装置3Aと搬送装置3Bとに設置しており、金型100Aと金型100Bとを交互に射出成形システム1に挿入する構成で、上述した交換方法を実現することができる。これにより、第2の金型を第3の金型と交換しながら、1つの金型で射出成形動作を行うことができる。
【0153】
上述した実施形態では、射出成形システム1に2つの金型を設置している。別の例示的な実施形態では、射出成形システム1に金型を1つだけ設置する構成にも、上記の交換方法を採用することができる。
【0154】
<定義>
説明においては、開示する実施例が完全に理解されるように、具体的な詳細を記載している。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、および回路については、本開示を不要に長くすることを避けるために、詳細には説明していない。
【0155】
本明細書では、ある要素または部分が、別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」と言及される場合、それは、直接にその別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」こともあるし、あるいは介在する要素または部分が存在することもあることを理解されたい。これに対して、ある要素が、別の要素または部分「の上に直接にある」、「に直接に接続されている」、または「に直接に結合されている」と言及される場合には、介在する要素または部分は存在しない。「および/または」という用語を用いるときには、関連して列挙されている項目があれば、そのうちの1つまたは複数のあらゆる組合せを含む。
【0156】
本明細書では、「の下(under)」、「の真下(beneath)」、「の下方(below)」、「の下側(lower)」、「の上方(above)」、「の上側(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」等の空間的に相対的な用語を、様々な図面に示すある要素または特徴の別の(1つまたは複数の)要素または特徴に対する関係を記述する際に、説明を容易にするために用いることがある。しかし、これらの空間的に相対的な用語は、図面に示す配向に加えて、使用時または動作時における装置の様々な配向をも包含することを意図するものと理解されたい。例えば、図中の装置を反転した場合には、別の要素または特徴の「下方(below)」または「真下(beneath)」と記述された要素が、それらの別の要素または特徴の「上方(above)」に配向されることになる。したがって、「の下方(below)」等の相対的な空間用語は、上および下の両方の配向を包含することができる。装置は、その他の配向にすることもでき(90度またはその他の配向に回転させることもでき)、本明細書で用いる空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈されるものとする。同様に、「近位(proximal)」および「遠位(distal)」という相対的な空間用語も、適用可能な場合には、入れ換えることができることもある。
【0157】
本明細書で用いる「約」という用語は、例えば、10%以内、5%以内、またはそれ未満を意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することもある。
【0158】
本明細書では、第1、第2、第3等の用語を、様々な要素、構成要素、領域、部分、および/または区画を説明するために用いることがある。これらの要素、構成要素、領域、部分、および/または区画は、これらの用語によって限定されないものと理解されたい。これらの用語は、単にある要素、構成要素、領域、部分、または区画を、別の領域、部分、または区画と区別するために用いているに過ぎない。したがって、以下に論じる第1の要素、構成要素、領域、部分、または区画は、本明細書の教示を逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、部分、または区画と呼ぶこともできる。
【0159】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することは意図していない。本開示を説明する文脈における(中でも、添付の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a,an)」および「前記/その(the)」という用語ならびに類似の指示語の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈されるものとする。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」および「含有する(containing)」という用語は、別段の言及がない限り、非限定用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるものとする。具体的には、本明細書でこれらの用語を用いるとき、記載する特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを指定するが、明示的には述べられていない1つまたは複数のその他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループが存在すること、あるいは追加されることを排除するものではない。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、単にその範囲に該当する各別個の値について個々に言及する簡略表記法として機能するよう意図するものに過ぎず、各別個の値は、それが本明細書においては個々に記載されたかのごとく本明細書に組み込まれる。例えば、10~15の範囲を開示する場合には、11、12、13および14もまた開示される。本明細書に記載する全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提示するあらゆる例または例示的な言葉(例えば「等の(such as)」)の使用は、単に本開示をより明確にすることを意図するものに過ぎず、別段に特許請求の範囲に記載がない限り、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、特許請求の範囲に記載のない任意の要素が、本開示の実施に必須であることを示すものではないと解釈されたい。
【0160】
本開示の方法および構成は、様々な実施形態の形で組み込むことができ、そのほんの一部が本明細書に開示されているに過ぎないことを理解されたい。それらの実施形態の変形形態は、上述の説明を読めば、当業者には明白であろう。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を必要に応じて採用するものと想定しており、また、本開示が、本明細書に具体的に記載されたものとは別様に実施されることを意図している。したがって、本開示は、適用法により許容されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正形態および均等物を含む。さらに、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、その全ての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせが、本開示に包含される。
【国際調査報告】