(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】免疫療法で使用するためのiPSC由来エフェクター細胞型の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230711BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230711BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230711BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230711BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230711BHJP
C07K 14/735 20060101ALI20230711BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230711BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20230711BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20230711BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20230711BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230711BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230711BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20230711BHJP
C12N 15/26 20060101ALI20230711BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230711BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230711BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230711BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230711BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230711BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230711BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230711BHJP
A61K 35/545 20150101ALN20230711BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N5/10 ZNA
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/725
C07K14/735
C07K16/46
C07K14/715
C07K14/54
C07K14/55
C12P21/02 C
C12N15/12
C12N15/24
C12N15/26
C12N15/62 Z
A61P35/00
A61P37/06
A61P31/12
A61P43/00 121
A61K35/17
A61K47/68
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K45/00
A61K35/545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577426
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 US2021038134
(87)【国際公開番号】W WO2021258016
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】312000284
【氏名又は名称】フェイト セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョルダル,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】グッドリッジ,ジョーデ
(72)【発明者】
【氏名】バラマール,バーラム
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG03
4B064AG05
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4H045AA10
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4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
ゲノム操作されたiPSCの指示された分化から得られる機能的に増強された誘導エフェクター細胞を取得するための方法及び組成物が提供される。本明細書で提供される誘導細胞は、改善又は増強された治療効果をもたらす安定した機能的なゲノム編集を備えている。機能的に増強された誘導エフェクター細胞を単独で、又は組み合わせ療法において抗体若しくはチェックポイント阻害剤若しくは追加の細胞と共に含む、治療組成物及びその使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の合成細胞集団を含む組成物であって、
(i)iPSC由来NK細胞を含む第1の合成細胞集団であって、前記iPSC由来NK細胞が、
(a)外因性CD16又はそのバリアントと、
(b)(i)第1のキメラ抗原受容体(CAR)、並びに(ii)細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチド、の一方又は両方と、を含む、第1の合成細胞集団と、
(ii)iPSC由来T細胞を含む第2の合成細胞集団であって、前記iPSC由来T細胞が、少なくとも第2のキメラ抗原受容体(CAR)を含み、前記第2のCARが、TCR遺伝子座の内因性プロモーターの制御下で発現される、第2の合成細胞集団と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記外因性CD16若しくはそのバリアントが、高親和性非切断性の外因性CD16(hnCD16)であるか、又は前記外因性CD16若しくはそのバリアントが、
(a)CD16の外部ドメインドメインのF176V及びS197P、
(b)CD64に由来する完全又は部分外部ドメイン、
(c)非天然(又は非CD16)の膜貫通ドメイン、
(d)非天然(又は非CD16)の細胞内ドメイン、
(e)非天然(又は非CD16)のシグナル伝達ドメイン、
(f)非天然の刺激ドメイン、並びに
(g)CD16に由来せず、同じ又は異なるポリペプチドに由来する膜貫通、シグナル伝達、及び刺激ドメイン、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)前記非天然の膜貫通ドメインが、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、若しくはT細胞受容体(TCR)ポリペプチドに由来するか、
(b)前記非天然の刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、
(c)前記非天然のシグナル伝達ドメインが、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(4-1BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、又は
(d)前記非天然の膜貫通ドメインがNKG2Dに由来し、前記非天然の刺激ドメインが2B4に由来し、前記非天然のシグナル伝達ドメインがCD3ζに由来する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1のCAR及び前記第2のCARが、標的化特異性において同じであるか、又は異なり、前記第1のCAR又は前記第2のCARが、
(i)T細胞特異的若しくはNK細胞特異的なもの、
(ii)二重特異性抗原結合CAR、
(iii)切り替え可能なCAR、
(iv)二量体化されたCAR、
(v)スプリットCAR、
(vi)多重鎖CAR、
(vii)誘導可能なCAR、
(viii)別のCARと共発現されたもの、
(ix)必要に応じて別個のコンストラクト内で、若しくはバイシストロニックなコンストラクト内で、細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/若しくはその受容体の部分長若しくは全長ペプチドと共発現されたもの、
(x)必要に応じて別個のコンストラクト内で、若しくはバイシストロニックなコンストラクト内で、チェックポイント阻害剤と共発現されたもの、
(xi)CD19若しくはBCMAに特異的なもの、並びに/又は
(xii)ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CCR4、癌胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソセリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、癌-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBC1、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、及び病原体抗原のうちのいずれか1つに特異的なもの、である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の前記部分長又は全長ペプチドが、
(a)IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及び/若しくはそれらのそれぞれの受容体のうちの少なくとも1つを含むか、又は
(b)
(i)自己切断ペプチドを用いることによるIL15及びIL15Rαの共発現、
(ii)IL15とIL15Rαの融合タンパク質、
(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断されたIL15/IL15Rα融合タンパク質、
(iv)IL15とIL15Rαの膜結合Sushiドメインの融合タンパク質、
(v)IL15とIL15Rβの融合タンパク質、
(vi)IL15と共通受容体γCの融合タンパク質であって、前記共通受容体γCが天然であるか、若しくは改変されている、融合タンパク質、並びに
(vii)IL15Rβのホモ二量体、のうちの少なくとも1つを含み、(i)~(vii)のうちのいずれか1つは、別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、CARと共発現され得、
必要に応じて、
(c)一過性に発現される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記iPSC由来NK細胞及び/又は前記iPSC由来T細胞が、
(i)HLA-I欠損、
(ii)HLA-II欠損、
(iii)HLA-G又は非切断性HLA-Gの導入された発現、
(iv)lig
-、inR
+、cs-CD3
+、En
+、及びAb
+のうちの少なくとも1つであって、
(1)lig
-は、発現されたアロ抗原において陰性であり、
(2)inR
+は、陰性アロ抗原に対応する発現された不活性化CARにおいて陽性であり、
(3)cs-CD3
+は、細胞表面発現のCD3において陽性であり、
(4)En
+は、少なくとも1つの発現されたエンゲージャーにおいて陽性であり、前記エンゲージャーが、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)又は三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)を含み、かつ、
(5)Ab
+は、少なくとも1つの発現された抗体又はチェックポイント阻害剤において陽性である、もの、
(v)B2M、CIITA、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RAG1、RFXAP、及び染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つにおける欠失又は発現低下、並びに
(vi)HLA-E、HLA-G、41BBL、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A
2AR、TCR、Fc受容体、及び二重特異的又は多重特異的又はユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つにおける導入された発現又は増加した発現、のうちの1つ以上を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
(i)前記アロ抗原が、CD40L、OX40、若しくは4-1BBを含むか、
(ii)前記不活性化CARが、CD40L-CAR、OX40-CAR、若しくは4-1BB-CARを含むか、
(iii)前記BiTE若しくは前記TriKEが、(a)CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、若しくはそれらのキメラFc受容体を含む免疫細胞表面分子、及び(b)B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、若しくはROR1を含む腫瘍表面分子を認識するか、
(iv)前記BiTEが、CD3-CD19、CD16-CD30、CD64-CD30、CD16-BCMA、CD64-BCMA、若しくはCD3-CD33を含むか、
(v)前記TriKEが、CD16-IL15-EPCAM、CD64-IL15-EPCAM、CD16-IL15-CD33、CD64-IL15-CD33、若しくはNKG2C-IL15-CD33を含むか、
(vi)前記抗体が、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、若しくは抗CD38抗体を含むか、又は
(vii)前記チェックポイント阻害剤が、(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A
2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含むチェックポイント分子に対するアンタゴニスト、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ、若しくは(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの1つを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記iPSC由来NK細胞又は前記iPSC由来T細胞が、
(i)1つの所望の組み込み部位に組み込まれた1つ以上の外因性ポリヌクレオチド、又は
(ii)異なる所望の組み込み部位に組み込まれた3つ以上の外因性ポリヌクレオチド、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記所望の組み込み部位が、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα又はβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGITのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記所望の組み込み部位が、TCRα若しくはβ定常領域、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBを含み、必要に応じて、前記TCRα若しくはTCRβ、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBが、前記1つ以上の外因性ポリヌクレオチドをそれぞれの組み込み部位に組み込んだ結果としてノックアウトされる、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記iPSC由来NK細胞又は前記iPSC由来T細胞が、末梢血、臍帯血、又は任意の他のドナー組織から得られるその天然の対応細胞と比較して、
(i)向上した持続性及び/又は生存率、
(ii)自然免疫細胞に対する増加した耐性、
(iii)増加した細胞傷害性、
(iv)改善された腫瘍浸透、
(v)増強又は取得されたADCC、
(vi)バイスタンダー免疫細胞を腫瘍部位に遊走、及び/又は活性化若しくは動員する増強された能力、
(vii)腫瘍免疫抑制を低下させる増強した能力、並びに
(viii)腫瘍抗原エスケープの救済の改善された能力、
を含む特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記iPSC由来NK細胞又は前記iPSC由来T細胞が、末梢血、臍帯血、又は任意の他のドナー組織から得られたそれぞれの天然の対応細胞と比較して、より長いテロメアを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1の合成細胞集団又は前記第2の合成細胞集団がex vivoで修飾される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
iPSC由来NK細胞を含む前記修飾された第1の合成細胞集団が、修飾されていない前記第1の合成細胞集団と比較して、I型NKT細胞、及び/若しくは適応NK細胞の数又は比率の増加を含むか、又はiPSC由来T細胞を含む前記第2の修飾された合成細胞集団が、修飾されていない前記第2の合成細胞集団と比較して、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、及び/若しくはセントラルメモリーT細胞の数又は比率の増加を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
(i)前記iPSC由来NK細胞及び前記iPSC由来T細胞が、100:1~1:100の範囲の比であるか、
(ii)前記組成物が、1つ以上の追加の細胞集団を更に含むか、又は
(iii)前記組成物が、1つ以上の治療剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記追加の細胞集団が調節性細胞を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記調節性細胞が、iPSC由来免疫調節性細胞又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記1つ以上の治療剤が、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分若しくはその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤若しくは放射性部分、又は免疫調節薬(IMiD)を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記チェックポイント阻害剤が、
(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A
2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含む1つ以上のアンタゴニストチェックポイント分子、
(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ以上、又は
(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの少なくとも1つ、を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗体が、
(a)抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、及び/若しくは抗CD38抗体、
(b)レツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、セルツキシマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202、7G3、CSL362、エロツズマブ、及びそれらのヒト化若しくはFc改変されたバリアント若しくは断片、並びにそれらの機能的同等物及びバイオシミラーのうちの1つ以上、又は
(c)ダラツムマブを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記第1の合成細胞集団及び前記第2の合成細胞集団が、別個の集団であるか、又は混合集団に組み合わされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物を養子細胞療法に適した対象に導入することによる前記組成物の治療的使用であって、前記対象が、自己免疫障害、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、癌、又はウイルス感染を有する、治療的使用。
【請求項23】
CAR-T細胞の集団による腫瘍殺傷及び/又は消失を改善する方法であって、
iPSC由来NK細胞を含む合成細胞集団を前記CAR-T細胞の集団に提供して、組み合わせ細胞集団を得ることを含み、
前記iPSC由来NK細胞が、
(a)外因性CD16又はそのバリアントと、
(b)(i)第1のキメラ抗原受容体(CAR)、並びに(ii)細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチド、の一方又は両方と、を含み、前記iPSC由来NK細胞の前記第1のCARが、前記CAR-T細胞のものと同じ又は異なるCAR標的化特異性を含む、方法。
【請求項24】
前記組み合わせ細胞集団が、前記iPSC由来NK細胞の組み合わせを伴わない前記CAR-T細胞の集団のみによる腫瘍殺傷及び/又は消失と比較して、
(i)向上した持続性及び/又は生存率、
(ii)自然免疫細胞に対する増加した耐性、
(iii)増加した細胞傷害性、
(iv)改善された腫瘍浸透、
(v)増強又は取得されたADCC、
(vi)バイスタンダー免疫細胞を腫瘍部位に遊走、及び/又は活性化若しくは動員する増強された能力、
(vii)腫瘍免疫抑制を低下させる増強した能力、並びに
(viii)腫瘍抗原エスケープの救済の改善された能力、
を含む特徴のうちの少なくとも1つ以上を有する細胞を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記外因性CD16若しくはそのバリアントが、高親和性非切断性の外因性CD16(hnCD16)であるか、又は前記外因性CD16若しくはそのバリアントが、
(a)CD16の外部ドメインドメインのF176V及びS197P、
(b)CD64に由来する完全又は部分外部ドメイン、
(c)非天然(又は非CD16)の膜貫通ドメイン、
(d)非天然(又は非CD16)の細胞内ドメイン、
(e)非天然(又は非CD16)のシグナル伝達ドメイン、
(f)非天然の刺激ドメイン、並びに
(g)CD16に由来せず、同じ又は異なるポリペプチドに由来する膜貫通、シグナル伝達、及び刺激ドメイン、のうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
(a)前記非天然の膜貫通ドメインが、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、若しくはT細胞受容体(TCR)ポリペプチドに由来するか、
(b)前記非天然の刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、
(c)前記非天然のシグナル伝達ドメインが、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(4-1BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、又は
(d)前記非天然の膜貫通ドメインがNKG2Dに由来し、前記非天然の刺激ドメインが2B4に由来し、前記非天然のシグナル伝達ドメインがCD3ζに由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の前記部分長又は全長ペプチドが、
(a)IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及び/若しくはそれらのそれぞれの受容体のうちの少なくとも1つを含むか、又は
(b)
(i)自己切断ペプチドを用いることによるIL15及びIL15Rαの共発現、
(ii)IL15とIL15Rαの融合タンパク質、
(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断されたIL15/IL15Rα融合タンパク質、
(iv)IL15とIL15Rαの膜結合Sushiドメインの融合タンパク質、
(v)IL15とIL15Rβの融合タンパク質、
(vi)IL15と共通受容体γCの融合タンパク質であって、前記共通受容体γCが天然であるか、若しくは改変されている、融合タンパク質、並びに
(vii)IL15Rβのホモ二量体、のうちの少なくとも1つを含み、(i)~(vii)のうちのいずれか1つは、別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、CARと共発現され得、
必要に応じて、
(c)一過性に発現される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記CAR-T細胞が、操作されたiPSCから分化され、並びに/又は前記CAR-T細胞が、ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CCR4、癌胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソセリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、癌-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBC1、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、及び病原体抗原のうちのいずれか1つに標的化特異性を有するCARを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記iPSC由来NK細胞及び/又は前記CAR-T細胞が、
(i)HLA-I欠損、
(ii)HLA-II欠損、
(iii)HLA-G又は非切断性HLA-Gの導入された発現、
(iv)lig
-、inR
+、cs-CD3
+、En
+、及びAb
+のうちの少なくとも1つであって、
(1)lig
-は、発現されたアロ抗原において陰性であり、
(2)inR
+は、陰性アロ抗原に対応する発現された不活性化CARにおいて陽性であり、
(3)cs-CD3
+は、細胞表面発現のCD3において陽性であり、
(4)En
+は、少なくとも1つの発現されたエンゲージャーにおいて陽性であり、前記エンゲージャーが、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)又は三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)を含み、かつ、
(5)Ab
+は、少なくとも1つの発現された抗体又はチェックポイント阻害剤において陽性である、もの、
(v)B2M、CIITA、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RAG1、RFXAP、及び染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つにおける欠失又は発現低下、並びに
(vi)HLA-E、HLA-G、4-1BBL、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A
2AR、TCR、Fc受容体、及び二重特異的又は多重特異的又はユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つにおける導入された発現又は増加した発現、のうちの1つ以上を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
(i)前記アロ抗原が、CD40L、OX40、若しくは4-1BBを含むか、
(ii)前記不活性化CARが、CD40L-CAR、OX40-CAR、若しくは4-1BB-CARを含むか、
(iii)前記BiTE若しくは前記TriKEが、(a)CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、若しくはそれらのキメラFc受容体を含む免疫細胞表面分子、及び(b)B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、若しくはROR1を含む腫瘍表面分子を認識するか、
(iv)前記BiTEが、CD3-CD19、CD16-CD30、CD64-CD30、CD16-BCMA、CD64-BCMA、若しくはCD3-CD33を含むか、
(v)前記TriKEが、CD16-IL15-EPCAM、CD64-IL15-EPCAM、CD16-IL15-CD33、CD64-IL15-CD33、若しくはNKG2C-IL15-CD33を含むか、
(vi)前記抗体が、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、若しくは抗CD38抗体を含むか、又は
(vii)前記チェックポイント阻害剤が、(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A
2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含むチェックポイント分子に対するアンタゴニスト、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ、若しくは(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの1つを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
1つ以上の治療剤を提供することを更に含み、前記1つ以上の治療剤が、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、抗体、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分若しくはその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、化学療法剤若しくは放射性部分、又は免疫調節薬(IMiD)を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記チェックポイント阻害剤が、
(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A
2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含む1つ以上のアンタゴニストチェックポイント分子、
(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ以上、又は
(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの少なくとも1つ、を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体が、
(a)抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、及び/若しくは抗CD38抗体、
(b)レツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、セルツキシマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202、7G3、CSL362、エロツズマブ、及びそれらのヒト化若しくはFc改変されたバリアント若しくは断片、並びにそれらの機能的同等物及びバイオシミラーのうちの1つ以上、又は
(c)ダラツムマブを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物を使用して対象を治療する方法であって、
(I)iPSC由来NK細胞を含む前記第1の合成細胞集団を前記対象に投与することであって、前記iPSC由来NK細胞が、
(a)外因性CD16又はそのバリアントと、
(b)(i)第1のキメラ抗原受容体(CAR)、及び(ii)細胞表面発現の外因性サイトカイン又はその受容体の部分長又は全長ペプチド、の一方又は両方と、を含む、ことと、
(II)iPSC由来T細胞を含む前記第2の合成細胞集団を前記対象に投与することであって、前記iPSC由来T細胞が、少なくとも第2のキメラ抗原受容体(CAR)を含み、前記第2のCARが、TCR遺伝子座の内因性プロモーターの制御下で発現され、前記第1のCAR及び前記第2のCARが、標的化特異性において同じであるか、又は異なる、ことと、を含む、方法。
【請求項35】
前記対象が、自己免疫障害、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、癌、若しくはウイルス感染を含む状態を有し、及び/又は前記方法が、前記第1若しくは前記第2の合成細胞集団を単独で使用することと比較して、前記状態の改善の増強を提供する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の合成細胞集団及び前記第2の合成細胞集団が、同時に、又は任意の順序で逐次的に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
1つ以上の治療剤を投与すること、及び/又は追加の細胞集団を投与すること、を更に含み、
前記1つ以上の治療剤及び/又は前記追加の細胞集団が、前記第1の合成細胞集団又は前記第2の合成細胞集団のいずれかと共に、同時に又は逐次的に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記追加の細胞集団が調節性細胞を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記調節性細胞が、iPSC由来免疫調節性細胞又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の合成細胞集団及び前記第2の合成細胞集団が、別個の集団であるか、又は前記対象への投与の前に混合集団に組み合わされる、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記1つ以上の治療剤が、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分若しくはその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤若しくは放射性部分、又は免疫調節薬(IMiD)を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
(i)(a)CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、若しくはそれらのキメラFc受容体を含む免疫細胞表面分子、及び(b)B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、若しくはROR1を含む腫瘍表面分子、に特異的なBiTEもしく記TriKE、
(ii)CD3-CD19、CD16-CD30、CD64-CD30、CD16-BCMA、CD64-BCMA、若しくはCD3-CD33を含むBiTE、
(iii)CD16-IL15-EPCAM、CD64-IL15-EPCAM、CD16-IL15-CD33、CD64-IL15-CD33、若しくはNKG2C-IL15-CD33を含むTriKE、
(iv)抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、若しくは抗CD38抗体を含む抗体、又は
(v)(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A
2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含むチェックポイント分子に対するアンタゴニスト、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ、若しくは(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの1つ、を含むチェックポイント阻害剤、を前記対象に投与することを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
請求項1に記載の組成物を製造する方法であって、
(I)第1の遺伝子操作されたiPSCを分化させて、iPSC由来NK細胞を含む第1の合成細胞集団を得ることであって、前記第1のiPSCが、(a)外因性CD16又はそのバリアントと、(b)(i)第1のキメラ抗原受容体(CAR)と、(ii)細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチドと、の一方又は両方と、をコードするポリヌクレオチドを含み、前記iPSC由来NK細胞が、(a)及び(b)を含む、ことと、
(II)第2の遺伝子操作されたiPSCを分化させて、iPSC由来T細胞を含む第2の合成細胞集団を得ることであって、前記第2のiPSCが、少なくとも第2のキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含み、前記第2のCARが、TCR遺伝子座の内因性プロモーターの制御下で発現され、前記iPSC由来T細胞が、前記第2のCARを含む、ことと、を含み、
それによって、請求項1に記載の組成物を製造する、方法。
【請求項44】
前記外因性CD16若しくはそのバリアントが、高親和性非切断性の外因性CD16(hnCD16)であるか、又は前記外因性CD16若しくはそのバリアントが、
(a)CD16の外部ドメインドメインのF176V及びS197P、
(b)CD64に由来する完全又は部分外部ドメイン、
(c)非天然(又は非CD16)の膜貫通ドメイン、
(d)非天然(又は非CD16)の細胞内ドメイン、
(e)非天然(又は非CD16)のシグナル伝達ドメイン、
(f)非天然の刺激ドメイン、並びに
(g)CD16に由来せず、同じ又は異なるポリペプチドに由来する膜貫通、シグナル伝達、及び刺激ドメイン、のうちの少なくとも1つを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
(a)前記非天然の膜貫通ドメインが、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、若しくはT細胞受容体(TCR)ポリペプチドに由来するか、
(b)前記非天然の刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、
(c)前記非天然のシグナル伝達ドメインが、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(4-1BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、又は
(d)前記非天然の膜貫通ドメインがNKG2Dに由来し、前記非天然の刺激ドメインが2B4に由来し、前記非天然のシグナル伝達ドメインがCD3ζに由来する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第1のCAR及び前記第2のCARが、標的化特異性において同じであるか、又は異なり、前記第1のCAR又は前記第2のCARが、
(i)T細胞特異的若しくはNK細胞特異的なもの、
(ii)二重特異性抗原結合CAR、
(iii)切り替え可能なCAR、
(iv)二量体化されたCAR、
(v)スプリットCAR、
(vi)多重鎖CAR、
(vii)誘導可能なCAR、
(viii)別のCARと共発現されたもの、
(ix)必要に応じて別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/若しくはその受容体の部分長若しくは全長ペプチドと共発現されたもの、
(x)必要に応じて別個のコンストラクト内で、若しくはバイシストロニックなコンストラクト内で、チェックポイント阻害剤と共発現されたもの、
(xi)CD19若しくはBCMAに特異的なもの、並びに/又は
(xii)ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CCR4、癌胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソセリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、癌-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBC1、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、及び病原体抗原のうちのいずれか1つに特異的なもの、である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の前記部分長又は全長ペプチドが、
(a)IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及び/若しくはそれらのそれぞれの受容体のうちの少なくとも1つを含むか、又は
(b)
(i)自己切断ペプチドを用いることによるIL15及びIL15Rαの共発現、
(ii)IL15とIL15Rαの融合タンパク質、
(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断されたIL15/IL15Rα融合タンパク質、
(iv)IL15とIL15Rαの膜結合Sushiドメインの融合タンパク質、
(v)IL15とIL15Rβの融合タンパク質、
(vi)IL15と共通受容体γCの融合タンパク質であって、前記共通受容体γCが天然であるか、若しくは改変されている、融合タンパク質、並びに
(vii)IL15Rβのホモ二量体、のうちの少なくとも1つを含み、(i)~(vii)のうちのいずれか1つは、別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、CARと共発現され得、
必要に応じて、
(c)一過性に発現される、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の遺伝子操作されたiPSC又は前記第2の遺伝子操作されたiPSCが、
(i)HLA-I欠損、
(ii)HLA-II欠損、
(iii)HLA-G又は非切断性HLA-Gの導入された発現、
(iv)lig
-、inR
+、cs-CD3
+、En
+、及びAb
+のうちの少なくとも1つであって、
(1)lig
-は、発現されたアロ抗原において陰性であり、
(2)inR
+は、陰性アロ抗原に対応する発現された不活性化CARにおいて陽性であり、
(3)cs-CD3
+は、細胞表面発現のCD3において陽性であり、
(4)En
+は、少なくとも1つの発現されたエンゲージャーにおいて陽性であり、前記エンゲージャーが、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)又は三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)を含み、かつ、
(5)Ab
+は、少なくとも1つの発現された抗体又はチェックポイント阻害剤において陽性である、もの、
(v)B2M、CIITA、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RAG1、RFXAP、及び染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つにおける欠失又は発現低下、並びに
(vi)HLA-E、HLA-G、41BBL、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A
2AR、TCR、Fc受容体、及び二重特異的又は多重特異的又はユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つにおける導入された発現又は増加した発現、のうちの1つ以上を更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
(i)前記アロ抗原が、CD40L、OX40、若しくは4-1BBを含むか、
(ii)前記不活性化CARが、CD40L-CAR、OX40-CAR、若しくは4-1BB-CARを含むか、
(iii)前記BiTE若しくは前記TriKEが、(a)CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、若しくはそれらのキメラFc受容体を含む免疫細胞表面分子、及び(b)B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、若しくはROR1を含む腫瘍表面分子に特異的であるか、
(iv)前記BiTEが、CD3-CD19、CD16-CD30、CD64-CD30、CD16-BCMA、CD64-BCMA、若しくはCD3-CD33を含むか、
(v)前記TriKEが、CD16-IL15-EPCAM、CD64-IL15-EPCAM、CD16-IL15-CD33、CD64-IL15-CD33、若しくはNKG2C-IL15-CD33を含むか、
(vi)前記抗体が、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、若しくは抗CD38抗体を含むか、又は
(vii)前記チェックポイント阻害剤が、(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A
2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含むチェックポイント分子に対するアンタゴニスト、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ、若しくは(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの1つ、を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の遺伝子操作されたiPSC又は前記第2の遺伝子操作されたiPSCが、
(i)1つの所望の組み込み部位に組み込まれた1つ以上の外因性ポリヌクレオチド、又は
(ii)異なる所望の組み込み部位に組み込まれた3つ以上の外因性ポリヌクレオチド、を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記所望の組み込み部位が、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα又はβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGITのうちの少なくとも1つを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記所望の組み込み部位が、TCRα若しくはβ定常領域、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBを含み、必要に応じて、前記TCRα若しくはTCRβ、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBが、前記1つ以上の外因性ポリヌクレオチドをそれぞれの組み込み部位に組み込んだ結果としてノックアウトされる、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記iPSC由来NK細胞又は前記iPSC由来T細胞が、末梢血、臍帯血、又は任意の他のドナー組織から得られるその天然の対応細胞と比較して、
(i)向上した持続性及び/又は生存率、
(ii)自然免疫細胞に対する増加した耐性、
(iii)増加した細胞傷害性、
(iv)改善された腫瘍浸透、
(v)増強又は取得されたADCC、
(vi)バイスタンダー免疫細胞を腫瘍部位に遊走、及び/又は活性化若しくは動員する増強された能力、
(vii)腫瘍免疫抑制を低下させる増強した能力、並びに
(viii)腫瘍抗原エスケープの救済の改善された能力、
を含む特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項43に記載の方法。
【請求項54】
前記第1の合成細胞集団又は前記第2の合成細胞集団がex vivoで修飾される、請求項43に記載の方法。
【請求項55】
iPSC由来NK細胞を含む前記修飾された第1の合成細胞集団が、修飾されていない前記第1の合成細胞集団と比較して、I型NKT細胞、及び/若しくは適応NK細胞の数又は比率の増加を含むか、又はiPSC由来T細胞を含む前記第2の修飾された合成細胞集団が、修飾されていない前記第2の合成細胞集団と比較して、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、及び/若しくはセントラルメモリーT細胞の数又は比率の増加を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
(i)前記iPSC由来NK細胞及び前記iPSC由来T細胞が、100:1~1:100の範囲の比であるか、
(ii)前記方法が、前記産生された第1及び第2の合成細胞集団に1つ以上の追加の細胞集団を追加することを更に含むか、又は
(iii)前記方法が、前記産生された第1及び第2の合成細胞集団に1つ以上の治療剤を追加することを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項57】
前記1つ以上の追加の細胞集団が調節性細胞を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記調節性細胞が、iPSC由来免疫調節性細胞又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記1つ以上の治療剤が、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分若しくはその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤若しくは放射性部分、又は免疫調節薬(IMiD)を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記チェックポイント阻害剤が、
(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A
2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含む1つ以上のアンタゴニストチェックポイント分子、
(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ以上、又は
(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの少なくとも1つ、を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記抗体が、
(a)抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、及び/若しくは抗CD38抗体、
(b)レツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、セルツキシマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202、7G3、CSL362、エロツズマブ、及びそれらのヒト化若しくはFc改変されたバリアント若しくは断片、並びにそれらの機能的同等物及びバイオシミラーのうちの1つ以上、又は
(c)ダラツムマブを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の合成細胞集団及び前記第2の合成細胞集団を混合集団に組み合わせることを更に含む、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年6月19日に出願された米国仮特許出願第63/041,672号の優先権を主張し、その開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
電子的に提出された配列表への言及
【0002】
本出願は、本出願と共に提出された、2021年6月18日に作成された、36,268バイトのサイズである、056932-527001WO_SEQ_LISTING.txtと題する、ASCIIテキスト形式の配列表のコンピュータ可読形式(CRF)を参照により組み込む。
【0003】
(発明の分野)
本開示は、既製の免疫細胞製品の分野に広く関する。より詳細には、本開示は、in vivoで治療に適切な特性を送達することができる多機能エフェクター細胞を開発するための戦略に関する。本開示の下で開発された細胞製品は、患者由来の細胞療法の重大な制限に対処する。
【背景技術】
【0004】
養子細胞療法の分野は現在、患者由来及びドナー由来の細胞を使用することに焦点が当てられているため、癌免疫療法の一貫した製造を達成することと、恩恵を受ける可能性のある全ての患者に療法を提供することとが特に困難なものとなっている。養子移入されたリンパ球の有効性と持続性を改善して、患者の良好な転帰を促進する必要もある。T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球は、自然免疫及び適応免疫に重要な役割を果たす強力な抗腫瘍エフェクターである。しかしながら、養子細胞療法のためにこれらの免疫細胞を使用することは、依然として困難であり、改善に対する満たされていない要求が存在する。したがって、養子免疫療法においてT細胞及びNK細胞、又は他のリンパ球の可能性を最大限に活用するための重要な機会が残っている。
【発明の概要】
【0005】
応答率、細胞の消耗、輸注された細胞の損失(生存率及び/又は持続性)、標的の喪失又は系統転換による腫瘍エスケープ、腫瘍の標的化の精度、標的外毒性、腫瘍外効果、固形腫瘍に対する有効性、すなわち腫瘍微小環境及び関連する免疫抑制、動員、輸送、及び浸潤など、様々な問題に対処する機能的に改善されたエフェクター細胞が必要である。
【0006】
本発明の目的は、単一細胞由来のiPSC(誘導多能性幹細胞)クローン株から分化した誘導非多能性細胞を生成する方法及び組成物を提供することであり、このiPSC株はそのゲノムに1つ又はいくつかの遺伝子改変を含む。前述の1つ又はいくつかの遺伝子改変には、DNA挿入、欠失、及び置換が含まれ、これらの改変は、分化、増殖、継代及び/又は移植の後、その後の由来細胞において保持され、機能し続ける。
【0007】
本出願のiPSC由来の非多能性細胞には、CD34細胞、造血内皮細胞、HSC(造血幹細胞及び前駆細胞)、造血多能性前駆細胞、T細胞前駆体、NK細胞前駆体、T細胞、NKT細胞、NK細胞、及びB細胞が含まれるが、これらに限定されない。本出願のiPSC由来の非多能性細胞は、同一の遺伝子改変を含むiPSCからの分化を通じて、それらのゲノムに1つ又はいくつかの遺伝子改変を含む。遺伝子操作された誘導細胞を取得するための操作されたクローンiPSC分化戦略では、指示された分化におけるiPSCの発生の可能性が、iPSCの操作されたモダリティによって悪影響を受けないこと、及び操作されたモダリティが誘導細胞で意図したとおりに機能することも必要である。更に、この戦略は、末梢血から取得されたT細胞又はNK細胞などの初代リンパ球を操作する際の現在の障壁、すなわち、そのような細胞はしばしば、再現性と均一性を欠き、高い細胞死と低い細胞増殖を伴う不十分な細胞の持続性を呈する細胞をもたらし、そのような細胞を操作することが困難であることに起因する障壁を克服する。更に、この戦略は、最初は不均質である初代細胞源を使用して別の方法で得られる不均質のエフェクター細胞集団の生成を回避する。
【0008】
本発明のいくつかの態様は、リプログラミングプロセスに続いて、同時に、及びその前に、それぞれ、ゲノム操作の戦略を反映する(I)、(II)、又は(III)を含む方法を使用して得られたゲノム操作されたiPSCを提供する。
【0009】
(I):以下の(i)及び(ii)の一方又は両方を任意の順序で実施してiPSCを遺伝子操作する。(i)iPSCに1つ以上のコンストラクトを導入して、選択された部位での標的化組み込みを可能にし、(ii)(a)選択された部位を認識することができる1つ以上のエンドヌクレアーゼを使用して、選択された部位における1つ以上の二本鎖切断をiPSCに導入し、(b)ステップ(I)(ii)(a)のiPSCを培養して、内因性DNA修復が、選択された部位に標的化インデルを生成することを可能にし、それによって、部分又は完全分化細胞に分化することができるゲノム操作されたiPSCを得る。
【0010】
(II):非多能性細胞を遺伝子操作及びリプログラミングして、(i)非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子と、並びに必要に応じて、TGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、及び/又はROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させて、非多能性細胞のリプログラミングを開始すること、及び(ii)ステップ(II)(i)のリプログラミング中に以下の(a)及び(b)の一方又は両方を任意の順序でリプログラミング非多能性細胞に導入することによって、ゲノム操作されたiPSCを得る。(a)選択された部位での標的化組み込みを可能にする1つ以上のコンストラクト、(b)選択された部位を認識することができる少なくとも1つのエンドヌクレアーゼを使用する、選択された部位での1つ以上の二本鎖切断。次いで、ステップ(II)(ii)(b)の細胞を培養して、内因性DNA修復が、選択された部位に標的化インデルを生成することを可能にする。したがって、得られたゲノム操作されたiPSCは、少なくとも1つの機能的な標的化ゲノム編集を含み、前述のゲノム操作されたiPSCは、部分又は完全分化細胞に分化することができる。
【0011】
(III):リプログラミングして、以下の(i)及び(ii)によるゲノム操作されたiPSCを得るために、非多能性細胞を遺伝子操作する。(i)以下の(a)及び(b)の一方又は両方を任意の順序で非多能性細胞に導入する。(a)選択された部位での標的化組み込みを可能にする1つ以上のコンストラクト、(b)選択された部位を認識することができる少なくとも1つのエンドヌクレアーゼを使用する、選択された部位での1つ以上の二本鎖切断。ステップ(III)(ii)(b)の細胞を培養して、内因性DNA修復が、選択された部位に標的化インデルを生成することを可能にする。(ii)ステップ(III)(i)の細胞を1つ以上のリプログラミング因子と、並びに必要に応じて、TGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤及び/又はROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させて、選択された部位での標的化編集を含むゲノム操作されたiPSCを得、それによって、少なくとも1つの機能的な標的化ゲノム編集を含むゲノム操作されたiPSCを得、前述のゲノム操作されたiPSCは、部分分化細胞又は完全分化細胞に分化することができる。
【0012】
上述の方法の一実施形態では、1つ以上の選択された部位での少なくとも1つの標的化されたゲノム編集は、安全スイッチタンパク質、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質及びペプチド、薬物標的候補、あるいは、ゲノム操作されたiPSC又はそれからの誘導細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、及び/又は生存率を促進するタンパク質をコードする1つ以上の外因性ポリヌクレオチドの挿入を含む。いくつかの実施形態では、挿入のための外因性ポリヌクレオチドは、(1)CMV、EF1α、PGK、CAG、UBC、又は他の構成的、誘導性、時間特異的、組織特異的、若しくは細胞型特異的プロモーターを含む1つ以上の外因性プロモーター、又は(2)AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ2ミクログロブリン、GAPDH、TCR若しくはRUNX1、又はゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む選択された部位に含まれる1つ以上の内因性プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、上述の方法を使用して生成されたゲノム操作されたiPSCは、カスパーゼ、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、改変EGFR、又はB細胞CD20を含むタンパク質をコードする1つ以上の異なる外因性ポリヌクレオチドを含み、ここで、ゲノム操作されたiPSCが2つ以上の自殺遺伝子を含む場合、自殺遺伝子は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、H11、ベータ2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、又はRUNX1を含む異なるセーフハーバー遺伝子座に組み込まれている。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及び/又はそれらのそれぞれの受容体の部分的又は完全なペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドによってコードされるIL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及び/又はそれらのそれぞれの受容体の部分的又は完全なペプチドは、融合タンパク質の形態である。
【0013】
いくつかの他の実施形態では、本明細書で提供される方法を使用して生成されたゲノム操作されたiPSCは、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬物標的候補、免疫応答調節及び修飾、あるいはiPSC又はそれらからの誘導細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、及び/又は生存率を抑制するタンパク質に関連する1つ以上の内因性遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、破壊のための内因性遺伝子は、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、RFXAP、及び染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
更にいくつかの他の実施形態では、本明細書で提供される方法を使用して生成されるゲノム操作されたiPSCは、AAVS1遺伝子座にカスパーゼをコードする外因性ポリヌクレオチド、及びH11遺伝子座に外因性ポリヌクレオチドをコードするチミジンキナーゼを含む。
【0015】
更にいくつかの他の実施形態では、アプローチ(I)、(II)及び/又は(III)は、ゲノム操作されたiPSCを、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、及びROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させて、取得されたゲノム操作されたiPSCの多能性を維持することを更に含む。一実施形態では、少なくとも1つの標的化されたゲノム編集を含む取得されたゲノム操作されたiPSCは機能的であり、分化能があり、同一の機能のゲノム編集を含む非多能性細胞に分化することができる。
【0016】
したがって、一態様では、本発明はまた、2つ以上の合成細胞集団を含む組成物を提供し、この組成物は、(i)iPSC由来NK細胞を含む第1の合成細胞集団であって、iPSC由来NK細胞が、(a)外因性CD16又はそのバリアントと、(b)第1のキメラ抗原受容体(CAR)、並びに細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチド、の一方又は両方と、を含む、第1の合成細胞集団と、(ii)iPSC由来T細胞を含む第2の合成細胞集団であって、iPSC由来T細胞が、少なくとも第2のキメラ抗原受容体(CAR)を含み、第2のCARが、TCR遺伝子座の内因性プロモーターの制御下で発現される、第2の合成細胞集団と、を含む。種々の実施形態では、外因性CD16又はそのバリアントが、高親和性非切断性CD16(hnCD16)であるか、又は外因性CD16若しくはそのバリアントが、(a)CD16の外部ドメインドメインのF176V及びS197P、(b)CD64に由来する完全若しくは部分外部ドメイン、(c)非天然(又は非CD16)の膜貫通ドメイン、(d)非天然(又は非CD16)の細胞内ドメイン、(e)非天然(又は非CD16)のシグナル伝達ドメイン、(f)非天然の刺激ドメイン、若しくは(g)CD16に由来せず、同じ若しくは異なるポリペプチドに由来する膜貫通、シグナル伝達、及び刺激ドメイン、のうちの少なくとも1つを含む。組成物の特定の実施形態では、(a)非天然の膜貫通ドメインが、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、若しくはT細胞受容体(TCR)ポリペプチドに由来するか、(b)非天然の刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、(c)非天然のシグナル伝達ドメインが、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(4-1BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、又はd)非天然の膜貫通ドメインがNKG2Dに由来し、非天然の刺激ドメインが2B4に由来し、非天然のシグナル伝達ドメインがCD3ζに由来する。
【0017】
組成物の種々の実施形態では、第1のCAR及び第2のCARが、標的化特異性において同じであるか、又は異なり、第1のCAR又は第2のCARが、(i)T細胞特異的若しくはNK細胞特異的なもの、(ii)二重特異性抗原結合CAR、(iii)切り替え可能なCAR、(iv)二量体化されたCAR、(v)スプリットCAR、(vi)多重鎖CAR、(vii)誘導可能なCAR、(viii)別のCARと共発現されたもの、(ix)必要に応じて別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/若しくはその受容体の部分長若しくは全長ペプチドと共発現されたもの、(x)必要に応じて別個のコンストラクト内で、若しくはバイシストロニックなコンストラクト内で、チェックポイント阻害剤と共発現されたもの、(xi)CD19若しくはBCMAに特異的なもの、並びに/又は(xiii)ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CCR4、癌胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソテリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、癌-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBC1、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、及び病原体抗原のうちのいずれか1つに特異的なものである。いくつかの実施形態では、細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチドが、(a)IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及びそれらのそれぞれの受容体のうちの少なくとも1つを含むか、又は(b)(i)自己切断ペプチドを用いることによるIL15及びIL15Rαの共発現、(ii)IL15とIL15Rαの融合タンパク質、(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断されたIL15/IL15Rα融合タンパク質、(iv)IL15とIL15Rαの膜結合Sushiドメインの融合タンパク質、(v)IL15とIL15Rβの融合タンパク質、(vi)IL15と共通受容体γCの融合タンパク質であって、共通受容体γCが天然であるか、若しくは改変されている、融合タンパク質、並びに(vii)IL15Rβのホモ二量体、のうちの少なくとも1つであって、(i)~(vii)のうちのいずれか1つが、別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、CARと共発現され得る、ものを含み、必要に応じて、(c)一過性に発現される。
【0018】
組成物のいくつかの実施形態では、iPSC由来NK細胞又はiPSC由来T細胞は、(i)HLA-I欠損、(ii)HLA-II欠損、(iii)HLA-G又は非切断性HLA-Gの導入された発現、(iv)lig-、inR+、cs-CD3+、En+、及びAb+のうちの少なくとも1つであって、(1)lig-は、発現されたアロ抗原において陰性であり、(2)inR+は、陰性アロ抗原に対応する発現された不活性化CARにおいて陽性であり、(3)cs-CD3+は、細胞表面発現のCD3において陽性であり、(4)En+は、少なくとも1つの発現されたエンゲージャーにおいて陽性であり、エンゲージャーが、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)又は三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)を含み、及び(5)Ab+は、少なくとも1つの発現された抗体又はチェックポイント阻害剤において陽性である、もの、(v)TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RAG1、RFXAP、及び染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つにおける欠失又は発現低下、並びに(vi)HLA-E、HLA-G、41BBL、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、TCR、Fc受容体、及び二重特異的又は多重特異的又はユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つにおける導入された発現又は増加した発現、のうちの1つ以上を更に含む。特定の実施形態では、(i)アロ抗原が、CD40L、OX40、若しくは4-1BBを含むか、(ii)不活性化CARが、CD40L-CAR、OX40-CAR、若しくは4-1BB-CARを含むか、(iii)BiTE若しくはTriKEが、(a)CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、若しくはそれらのキメラFc受容体を含む免疫細胞表面分子、及び(b)B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、若しくはROR1を含む腫瘍表面分子を認識するか、(iv)BiTEが、CD3-CD19、CD16-CD30、CD64-CD30、CD16-BCMA、CD64-BCMA、若しくはCD3-CD33を含むか、(v)TriKEが、CD16-IL15-EPCAM、CD64-IL15-EPCAM、CD16-IL15-CD33、CD64-IL15-CD33、若しくはNKG2C-IL15-CD33を含むか、(vi)抗体が、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、若しくは抗CD38抗体を含むか、又は(vii)チェックポイント阻害剤が、(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含むチェックポイント分子に対するアンタゴニスト、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ、若しくは(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの1つ、を含む。
【0019】
組成物の種々の実施形態では、iPSC由来NK細胞又はiPSC由来T細胞が、(i)1つの所望の組み込み部位に組み込まれた1つ以上の外因性ポリヌクレオチド、又は(ii)異なる所望の組み込み部位に組み込まれた3つ以上の外因性ポリヌクレオチド、を含む。特定の実施形態では、所望の組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα又はβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGITのうちの少なくとも1つを含む。他の実施形態では、所望の組み込み部位は、TCRα若しくはβ定常領域、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBを含み、必要に応じて、TCRα若しくはTCRβ、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBは、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドをそれぞれの組み込み部位に組み込んだ結果としてノックアウトされる。
【0020】
組成物の種々の実施形態では、iPSC由来NK細胞又はiPSC由来T細胞は、末梢血、臍帯血、又は任意の他のドナー組織から得られるその天然の対応細胞と比較して、(i)向上した持続性及び/又は生存率、(ii)自然免疫細胞に対する増加した耐性、(iii)増加した細胞傷害性、(iv)改善された腫瘍浸透、(v)増強又は取得されたADCC、(vi)バイスタンダー免疫細胞を腫瘍部位に遊走、及び/又は活性化若しくは動員する増強された能力、(vii)腫瘍免疫抑制を低下させる増強した能力、並びに(viii)腫瘍抗原エスケープの救済の改善された能力を含む特徴のうちの少なくとも1つを有する。組成物の種々の実施形態では、iPSC由来NK細胞又はiPSC由来T細胞は、末梢血、臍帯血、又は任意の他のドナー組織から得られたそれぞれの天然の対応細胞と比較して、より長いテロメアを含む。組成物の種々の実施形態では、第1の合成細胞集団又は第2の合成細胞集団は、ex vivoで修飾される。特定の実施形態では、iPSC由来NK細胞を含む修飾された第1の合成細胞集団が、修飾されていない第1の合成細胞集団と比較して、I型NKT細胞、及び/若しくは適応NK細胞の数又は比率の増加を含むか、又はiPSC由来T細胞を含む第2の修飾された合成細胞集団が、修飾されていない第2の合成細胞集団と比較して、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、及び/若しくはセントラルメモリーT細胞の数又は比率の増加を含む。
【0021】
組成物の種々の実施形態では、(i)iPSC由来NK細胞及びiPSC由来T細胞が、100:1~1:100の範囲の比であるか、(ii)組成物が、1つ以上の追加の細胞集団を更に含むか、又は(iii)組成物が、1つ以上の治療剤を更に含む。特定の実施形態では、追加の細胞集団は調節性細胞を含む。追加の細胞集団が調節性細胞を含むいくつかの実施形態では、調節性細胞は、iPSC由来免疫調節性細胞又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)である。組成物が1つ以上の治療剤を更に含むいくつかの実施形態では、1つ以上の治療剤は、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分又はその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤又は放射性部分、又は免疫調節薬(IMiD)を含む。1つ以上の治療剤がチェックポイント阻害剤を含むいくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含む1つ以上のアンタゴニストチェックポイント分子、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ以上、又は(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの少なくとも1つ、を含む。1つ以上の治療剤が抗体を含むいくつかの実施形態では、抗体は、(a)抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、及び/若しくは抗CD38抗体、(b)レツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、セルツキシマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202、7G3、CSL362、エロツズマブ、及びそれらのヒト化若しくはFc改変されたバリアント若しくは断片、並びにそれらの機能的同等物及びバイオシミラーのうちの1つ以上、又は(c)ダラツムマブを含む。
【0022】
組成物の種々の実施形態では、第1の合成細胞集団及び第2の合成細胞集団は、別個の集団であるか、又は混合集団に組み合わされる。
【0023】
別の態様では、本発明は、組成物を養子細胞療法に適した対象に導入することによる本明細書の組成物の治療的使用を提供し、対象は、自己免疫障害、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、癌、又はウイルス感染を有する。
【0024】
更に別の態様では、本発明は、iPSC由来NK細胞を含む合成細胞集団をCAR-T細胞の集団に提供して、組み合わせ細胞集団を得ることを含む、CAR-T細胞の集団による腫瘍殺傷及び/又は消失を改善する方法を提供し、iPSC由来NK細胞は、(a)外因性CD16又はそのバリアント、並びに(b)第1のキメラ抗原受容体(CAR)と、細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチドとの一方又は両方を含み、iPSC由来NK細胞の第1のCARは、CAR-T細胞のものと同じ又は異なるCAR標的化特異性を含む。様々な実施形態において、CAR-T細胞は、任意の供給源からのCAR担持T細胞を指す。例えば、T細胞は、初代細胞であってもよく、又は細胞株からの細胞であってもよく、自家性又は同種異系の細胞であってもよく、iPSCから分化したものであってもよい。
【0025】
腫瘍殺傷及び/又は消失を改善する方法のいくつかの実施形態では、組み合わせ細胞集団は、iPSC由来NK細胞の組み合わせを伴わないCAR-T細胞の集団のみによる腫瘍殺傷及び/又は消失と比較して、(i)向上した持続性及び/又は生存率、(ii)自然免疫細胞に対する増加した耐性、(iii)増加した細胞傷害性、(iv)改善された腫瘍浸透、(v)増強又は取得されたADCC、(vi)バイスタンダー免疫細胞を腫瘍部位に遊走、及び/又は活性化若しくは動員する増強された能力、(vii)腫瘍免疫抑制を低下させる増強した能力、並びに(viii)腫瘍抗原エスケープの救済の改善された能力を有する細胞を含む。方法のいくつかの実施形態では、外因性CD16若しくはそのバリアントが、高親和性非切断性の外因性CD16(hnCD16)であるか、又は外因性CD16若しくはそのバリアントが、(a)CD16の外部ドメインドメインのF176V及びS197P、(b)CD64に由来する完全若しくは部分外部ドメイン、(c)非天然(又は非CD16)の膜貫通ドメイン、(d)非天然(又は非CD16)の細胞内ドメイン、(e)非天然(又は非CD16)のシグナル伝達ドメイン、(f)非天然の刺激ドメイン、並びに(g)CD16に由来せず、同じ若しくは異なるポリペプチドに由来する膜貫通、シグナル伝達、及び刺激ドメイン、のうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
方法のいくつかの実施形態では、(a)非天然の膜貫通ドメインが、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、若しくはT細胞受容体(TCR)ポリペプチドに由来するか、(b)非天然の刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、(c)非天然のシグナル伝達ドメインが、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(4-1BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、又は(d)非天然の膜貫通ドメインがNKG2Dに由来し、非天然の刺激ドメインが2B4に由来し、非天然のシグナル伝達ドメインがCD3ζに由来する。方法の他の実施形態では、細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチドが、(a)IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及び/若しくはそれらのそれぞれの受容体のうちの少なくとも1つを含むか、又は(b)(i)自己切断ペプチドを用いることによるIL15及びIL15Rαの共発現、(ii)IL15とIL15Rαの融合タンパク質、(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断されたIL15/IL15Rα融合タンパク質、(iv)IL15とIL15Rαの膜結合Sushiドメインの融合タンパク質、(v)IL15とIL15Rβの融合タンパク質、(vi)IL15と共通受容体γCの融合タンパク質であって、共通受容体γCが天然であるか、若しくは改変されている、融合タンパク質、並びに(vii)IL15Rβのホモ二量体、のうちの少なくとも1つであって、(i)~(vii)のうちのいずれか1つが、別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、CARと共発現され得る、ものを含み、必要に応じて、(c)一過性に発現される。方法のいくつかの実施形態では、CAR-T細胞が、操作されたiPSCから分化され、並びに/又はCAR-T細胞が、ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CCR4、癌胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソセリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、癌-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBC1、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、及び病原体抗原のうちのいずれか1つに標的化特異性を有するCARを含む。
【0027】
腫瘍殺傷及び/又は消失を改善する方法のいくつかの実施形態では、iPSC由来NK細胞及び/又はCAR-T細胞は、(i)HLA-I欠損、(ii)HLA-II欠損、(iii)HLA-G又は非切断性HLA-Gの導入された発現、(iv)lig-、inR+、cs-CD3+、En+、及びAb+のうちの少なくとも1つであって、(1)lig-は、発現されたアロ抗原において陰性であり、(2)inR+は、陰性アロ抗原に対応する発現された不活性化CARにおいて陽性であり、(3)cs-CD3+は、細胞表面発現のCD3において陽性であり、(4)En+は、少なくとも1つの発現されたエンゲージャーにおいて陽性であり、エンゲージャーが、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)又は三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)を含み、かつ(5)Ab+は、少なくとも1つの発現された抗体又はチェックポイント阻害剤において陽性である、もの、(v)B2M、CIITA、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RAG1、RFXAP、及び染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つにおける欠失又は発現低下、並びに(vi)HLA-E、HLA-G、4-1BBL、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、TCR、Fc受容体、及び二重特異的又は多重特異的又はユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つにおける導入された発現又は増加した発現、のうちの1つ以上を更に含む。特定の実施形態では、(i)アロ抗原が、CD40L、OX40、若しくは4-1BBを含むか、(ii)不活性化CARが、CD40L-CAR、OX40-CAR、若しくは4-1BB-CARを含むか、(iii)BiTE若しくはTriKEが、(a)CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、若しくはそれらのキメラFc受容体を含む免疫細胞表面分子、及び(b)B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、若しくはROR1を含む腫瘍表面分子を認識するか、(iv)BiTEが、CD3-CD19、CD16-CD30、CD64-CD30、CD16-BCMA、CD64-BCMA、若しくはCD3-CD33を含むか、(v)TriKEが、CD16-IL15-EPCAM、CD64-IL15-EPCAM、CD16-IL15-CD33、CD64-IL15-CD33、若しくはNKG2C-IL15-CD33を含むか、(vi)抗体が、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、若しくは抗CD38抗体を含むか、又は(vii)チェックポイント阻害剤が、(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含むチェックポイント分子に対するアンタゴニスト、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ、若しくは(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの1つ、を含む。
【0028】
腫瘍殺傷及び/又は消失を改善する方法のいくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の治療剤を提供することを更に含み、1つ以上の治療剤は、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、抗体、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分若しくはその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、化学療法剤若しくは放射性部分、又は免疫調節薬(IMiD)を含む。1つ以上の治療剤がチェックポイント阻害剤を含む、腫瘍殺傷及び/又は消失を改善する方法のいくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含む1つ以上のアンタゴニストチェックポイント分子、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ以上、又は(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの少なくとも1つ、を含む。1つ以上の治療剤が抗体を含む、腫瘍殺傷及び/又は消失を改善する方法のいくつかの実施形態では、抗体は、(a)抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、及び/若しくは抗CD38抗体、(b)レツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、セルツキシマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202、7G3、CSL362、エロツズマブ、及びそれらのヒト化若しくはFc改変されたバリアント若しくは断片、並びにそれらの機能的同等物及びバイオシミラーのうちの1つ以上、又は(c)ダラツムマブを含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物を使用して対象を治療する方法を提供し、この方法は、(i)iPSC由来NK細胞を含む第1の合成細胞集団を対象に投与することであって、iPSC由来NK細胞が、(a)外因性CD16又はそのバリアントと、(b)第1のキメラ抗原受容体(CAR)、及び細胞表面発現の外因性サイトカイン又はその受容体の部分長又は全長ペプチド、の一方又は両方と、を含む、ことと、(ii)iPSC由来T細胞を含む第2の合成細胞集団を対象に投与することであって、iPSC由来T細胞が、少なくとも第2のキメラ抗原受容体(CAR)を含み、第2のCARが、TCR遺伝子座の内因性プロモーターの制御下で発現され、第1のCAR及び第2のCARが、標的化特異性において同じであるか、又は異なる、ことと、を含む。特定の実施形態では、対象は、自己免疫障害、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、癌、若しくはウイルス感染を含む状態を有し、及び/又は方法は、第1若しくは第2の合成細胞集団を単独で使用することと比較して、状態の改善の増強を提供する。いくつかの実施形態では、第1の合成細胞集団及び第2の合成細胞集団は、同時に、又は任意の順序で逐次的に投与される。本明細書に記載の組成物を使用して対象を治療する方法の種々の実施形態では、第1の合成細胞集団及び第2の合成細胞集団は、別個の集団であるか、又は対象への投与の前に混合集団に組み合わされる。本明細書に記載の組成物を使用して対象を治療する方法のいくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の治療剤を投与すること、及び/又は追加の細胞集団を投与すること、を更に含み、1つ以上の治療剤及び/又は追加の細胞集団は、第1の合成細胞集団又は第2の合成細胞集団のいずれかと共に、同時に又は逐次的に投与される。いくつかの実施形態では、方法は、追加の細胞集団を投与することを含み、追加の細胞集団は調節性細胞を含む。いくつかの実施形態では、調節性細胞は、iPSC由来免疫調節性細胞又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)である。方法が1つ以上の治療剤を投与することを更に含む、いくつかの実施形態では、1つ以上の治療剤は、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分又はその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤又は放射性部分、又は免疫調節薬(IMiD)を含む。
【0030】
本明細書に記載の組成物を使用して対象を治療する方法の種々の実施形態では、方法は、(i)(a)CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、若しくはそれらのキメラFc受容体を含む免疫細胞表面分子、及び(b)B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、若しくはROR1を含む腫瘍表面分子、に特異的なBiTEもしく記TriKE、(ii)CD3-CD19、CD16-CD30、CD64-CD30、CD16-BCMA、CD64-BCMA、若しくはCD3-CD33を含むBiTE、(iii)CD16-IL15-EPCAM、CD64-IL15-EPCAM、CD16-IL15-CD33、CD64-IL15-CD33、若しくはNKG2C-IL15-CD33を含むTriKE、(iv)抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、若しくは抗CD38抗体を含む抗体、又は(v)(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含むチェックポイント分子に対するアンタゴニスト、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ、若しくは(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの1つ、を含むチェックポイント阻害剤、を対象に投与することを更に含む。
【0031】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物を製造する方法を提供し、この方法は、(i)第1の遺伝子操作されたiPSCを分化させて、iPSC由来NK細胞を含む第1の合成細胞集団を得ることであって、第1のiPSCが、(a)外因性CD16又はそのバリアントと、(b)第1のキメラ抗原受容体(CAR)、並びに細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチド、の一方又は両方と、をコードするポリヌクレオチドを含み、iPSC由来NK細胞が、(a)及び(b)を含む、ことと、(ii)第2の遺伝子操作されたiPSCを分化させて、iPSC由来T細胞を含む第2の合成細胞集団を得ることであって、第2のiPSCが、少なくとも第2のキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のCARが、TCR遺伝子座の内因性プロモーターの制御下で発現され、iPSC由来T細胞が、第2のCARを含む、ことと、を含み、それによって、本明細書に記載の組成物を製造する。製造する方法のいくつかの実施形態では、外因性CD16若しくはそのバリアントが、高親和性非切断性の外因性CD16(hnCD16)であるか、又は外因性CD16若しくはそのバリアントが、(a)CD16の外部ドメインドメインのF176V及びS197P、(b)CD64に由来する完全若しくは部分外部ドメイン、(c)非天然(又は非CD16)の膜貫通ドメイン、(d)非天然(又は非CD16)の細胞内ドメイン、(e)非天然(又は非CD16)のシグナル伝達ドメイン、(f)非天然の刺激ドメイン、並びに(g)CD16に由来せず、同じ若しくは異なるポリペプチドに由来する膜貫通、シグナル伝達、及び刺激ドメイン、のうちの少なくとも1つを含む。製造する方法のいくつかの実施形態では、(a)非天然の膜貫通ドメインが、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、若しくはT細胞受容体(TCR)ポリペプチドに由来するか、(b)非天然の刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、(c)非天然のシグナル伝達ドメインが、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(4-1BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、若しくはNKG2Dポリペプチドに由来するか、又は(d)非天然の膜貫通ドメインがNKG2Dに由来し、非天然の刺激ドメインが2B4に由来し、非天然のシグナル伝達ドメインがCD3ζに由来する。
【0032】
製造する方法のいくつかの実施形態では、第1のCAR及び第2のCARが、標的化特異性において同じであるか、又は異なり、第1のCAR又は第2のCARが、(i)T細胞特異的若しくはNK細胞特異的なもの、(ii)二重特異性抗原結合CAR、(iii)切り替え可能なCAR、(iv)二量体化されたCAR、(v)スプリットCAR、(vi)多重鎖CAR、(vii)誘導可能なCAR、(viii)別のCARと共発現されたもの、(ix)必要に応じて別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/若しくはその受容体の部分長若しくは全長ペプチドと共発現されたもの、(x)必要に応じて別個のコンストラクト内で、若しくはバイシストロニックなコンストラクト内で、チェックポイント阻害剤と共発現されたもの、(xi)CD19若しくはBCMAに特異的なもの、並びに/又は(xiii)ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CCR4、癌胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソテリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、癌-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBC1、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、及び病原体抗原のうちのいずれか1つに特異的なものである。製造する方法の他の実施形態では、細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチドが、(a)IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及び/若しくはそれらのそれぞれの受容体のうちの少なくとも1つを含むか、又は(b)(i)自己切断ペプチドを用いることによるIL15及びIL15Rαの共発現、(ii)IL15とIL15Rαの融合タンパク質、(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断されたIL15/IL15Rα融合タンパク質、(iv)IL15とIL15Rαの膜結合Sushiドメインの融合タンパク質、(v)IL15とIL15Rβの融合タンパク質、(vi)IL15と共通受容体γCの融合タンパク質であって、共通受容体γCが天然であるか、若しくは改変されている、融合タンパク質、並びに(vii)IL15Rβのホモ二量体、のうちの少なくとも1つであって、(i)~(vii)のうちのいずれか1つが、別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、CARと共発現され得る、ものを含み、必要に応じて、(c)一過性に発現される。
【0033】
製造する方法のいくつかの実施形態では、第1の遺伝子操作されたiPSC又は第2の遺伝子操作されたiPSCは、(i)HLA-I欠損、(ii)HLA-II欠損、(iii)HLA-G又は非切断性HLA-Gの導入された発現、(iv)lig-、inR+、cs-CD3+、En+、及びAb+のうちの少なくとも1つであって、(1)lig-は、発現されたアロ抗原において陰性であり、(2)inR+は、陰性アロ抗原に対応する発現された不活性化CARにおいて陽性であり、(3)cs-CD3+は、細胞表面発現のCD3において陽性であり、(4)En+は、少なくとも1つの発現されたエンゲージャーにおいて陽性であり、エンゲージャーが、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)又は三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)を含み、かつ(5)Ab+は、少なくとも1つの発現された抗体又はチェックポイント阻害剤において陽性である、もの、(v)B2M、CIITA、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RAG1、RFXAP、及び染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つにおける欠失又は発現低下、並びに(vi)HLA-E、HLA-G、41BBL、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、TCR、Fc受容体、及び二重特異的又は多重特異的又はユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つにおける導入された発現又は増加した発現、のうちの1つ以上を更に含む。特定の実施形態では、(i)アロ抗原が、CD40L、OX40、若しくは4-1BBを含むか、(ii)不活性化CARが、CD40L-CAR、OX40-CAR、若しくは4-1BB-CARを含むか、(iii)BiTE若しくはTriKEが、(a)CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、若しくはそれらのキメラFc受容体を含む免疫細胞表面分子、及び(b)B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、若しくはROR1を含む腫瘍表面分子に特異的であるか、(iv)BiTEが、CD3-CD19、CD16-CD30、CD64-CD30、CD16-BCMA、CD64-BCMA、若しくはCD3-CD33を含むか、(v)TriKEが、CD16-IL15-EPCAM、CD64-IL15-EPCAM、CD16-IL15-CD33、CD64-IL15-CD33、若しくはNKG2C-IL15-CD33を含むか、(vi)抗体が、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、若しくは抗CD38抗体を含むか、又は(vii)チェックポイント阻害剤が、(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含むチェックポイント分子に対するアンタゴニスト、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ、若しくは(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの1つ、を含む。
【0034】
製造する方法のいくつかの実施形態では、第1の遺伝子操作されたiPSC又は第2の遺伝子操作されたiPSCは、(i)1つの所望の組み込み部位に組み込まれた1つ以上の外因性ポリヌクレオチド、又は(ii)異なる所望の組み込み部位に組み込まれた3つ以上の外因性ポリヌクレオチド、を含む。特定の実施形態では、所望の組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα又はβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGITのうちの少なくとも1つを含む。他の実施形態では、所望の組み込み部位は、TCRα若しくはβ定常領域、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBを含み、必要に応じて、TCRα若しくはTCRβ、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBは、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドをそれぞれの組み込み部位に組み込んだ結果としてノックアウトされる。
【0035】
製造する方法のいくつかの実施形態では、iPSC由来NK細胞又はiPSC由来T細胞は、末梢血、臍帯血、又は任意の他のドナー組織から得られるその天然の対応細胞と比較して、(i)向上した持続性及び/又は生存率、(ii)自然免疫細胞に対する増加した耐性、(iii)増加した細胞傷害性、(iv)改善された腫瘍浸透、(v)増強又は取得されたADCC、(vi)バイスタンダー免疫細胞を腫瘍部位に遊走、及び/又は活性化若しくは動員する増強された能力、(vii)腫瘍免疫抑制を低下させる増強した能力、並びに(viii)腫瘍抗原エスケープの救済の改善された能力を含む特徴のうちの少なくとも1つを有する。製造する方法の種々の実施形態では、第1の合成細胞集団又は第2の合成細胞集団は、ex vivoで修飾される。特定の実施形態では、iPSC由来NK細胞を含む修飾された第1の合成細胞集団が、修飾されていない第1の合成細胞集団と比較して、I型NKT細胞、及び/若しくは適応NK細胞の数又は比率の増加を含むか、又はiPSC由来T細胞を含む第2の修飾された合成細胞集団が、修飾されていない第2の合成細胞集団と比較して、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、及び/若しくはセントラルメモリーT細胞の数又は比率の増加を含む。
【0036】
製造する方法のいくつかの実施形態では、(i)iPSC由来NK細胞及びiPSC由来T細胞が、100:1~1:100の範囲の比であるか、(ii)方法が、産生された第1及び第2の合成細胞集団に1つ以上の追加の細胞集団を追加することを更に含むか、又は(iii)方法が、産生された第1及び第2の合成細胞集団に1つ以上の治療剤を追加することを更に含む。特定の実施形態では、1つ以上の追加の細胞集団は、調節性細胞を含む。1つ以上の追加の細胞集団が調節性細胞を含むいくつかの実施形態では、調節性細胞は、iPSC由来免疫調節性細胞又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)である。方法が、産生された第1及び第2の合成細胞集団に1つ以上の治療剤を追加することを更に含む、いくつかの実施形態では、1つ以上の治療剤は、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分又はその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤又は放射性部分、又は免疫調節薬(IMiD)を含む。1つ以上の治療剤がチェックポイント阻害剤を含むいくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、若しくは抑制性KIRを含む1つ以上のアンタゴニストチェックポイント分子、(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つ以上、又は(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの少なくとも1つ、を含む。1つ以上の治療剤が抗体を含むいくつかの実施形態では、抗体は、(a)抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、及び/若しくは抗CD38抗体、(b)レツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、セルツキシマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202、7G3、CSL362、エロツズマブ、及びそれらのヒト化若しくはFc改変されたバリアント若しくは断片、並びにそれらの機能的同等物及びバイオシミラーのうちの1つ以上、又は(c)ダラツムマブを含む。製造する方法の種々の実施形態では、方法は、第1の合成細胞集団及び第2の合成細胞集団を混合集団に組み合わせることを更に含む。
【0037】
本明細書で提供される組成物及び方法の様々な目的及び利点は、例示及び例として本発明の特定の実施形態が示される添付の図面と併せて以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】iPSC由来細胞における細胞表面発現のサイトカイン又はその受容体のためのいくつかのコンストラクト設計の図解である。IL15は、他の望ましいサイトカインで置き換えることができる例示的な例として使用される。
【
図2】フローサイトメトリーにより決定されたテロメア長のグラフ表示であり、iPSC由来の成熟誘導NK細胞が、成体末梢血NK細胞と比較してより長いテロメアを維持することを示している。
【
図3】CAR-iNK細胞の逐次追加がCAR-iT細胞の細胞傷害性を改善すること、及び標的腫瘍細胞の殺傷がADCCによって更に増強されることを示すグラフ表示である。
【
図4A】RTX Raji親標的(CD19
+、A)及びRaji-CD19KO(CD19
-、B)による増加したE:T比で組み合わされたCAR-iT細胞及びCAR-iNK細胞の直接的な細胞傷害性及びADCC相加効果の評価を示すグラフ表示であり、
図4Aは二重標的化効果を実証しており、
図4Bは、腫瘍抗原エスケープ設定での標的細胞に対するエフェクター細胞コンボ細胞傷害性に更に対処する。
【
図4B】RTX Raji親標的(CD19
+、A)及びRaji-CD19KO(CD19
-、B)による増加したE:T比で組み合わされたCAR-iT細胞及びCAR-iNK細胞の直接的な細胞傷害性及びADCC相加効果の評価を示すグラフ表示であり、
図4Aは二重標的化効果を実証しており、
図4Bは、腫瘍抗原エスケープ設定での標的細胞に対するエフェクター細胞コンボ細胞傷害性に更に対処する。
【
図5A】標的細胞株ARH-77(CD19
+CD20
+)に対するエフェクター対標的比の滴定を示すグラフ表示であり、CAR-iT単独、CAR-iT及びCAR-iNK、並びにリツキシマブと組み合わせたCAR-iT及びCAR-iNKによる抗腫瘍活性についての相加的増加を実証している。
【
図5B】曲線下面積(AUC)として計算され、ヒートマップで図示された、B腫瘍株のパネルに対する、CAR-iT単独、CAR-iT及びCAR-iNK、並びにリツキシマブと組み合わせたCAR-iT及びCAR-iNKの相対活性を示す。
【
図6A】RAJI腫瘍細胞を接種し、(
図6A)リツキシマブ単独、(
図6B)初代CAR-T細胞、並びに(
図6C)CAR-iT、CAR-iNK及びリツキシマブの組み合わせで処置したNSGマウスからの結果を示すグラフ表示である。
【
図6B】RAJI腫瘍細胞を接種し、(
図6A)リツキシマブ単独、(
図6B)初代CAR-T細胞、並びに(
図6C)CAR-iT、CAR-iNK及びリツキシマブの組み合わせで処置したNSGマウスからの結果を示すグラフ表示である。
【
図6C】RAJI腫瘍細胞を接種し、(
図6A)リツキシマブ単独、(
図6B)初代CAR-T細胞、並びに(
図6C)CAR-iT、CAR-iNK及びリツキシマブの組み合わせで処置したNSGマウスからの結果を示すグラフ表示である。
【
図6D】CAR-iT、CAR-iNK及びADCC機能の組み合わせを使用したin vivoリンパ腫モデルにおけるRaji腫瘍細胞の有効な除去を実証する、注射後41日の期間にわたる各マウスのIVIS画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
iPSC(誘導多能性幹細胞)のゲノム改変には、ポリヌクレオチドの挿入、欠失、置換が含まれる。ゲノム操作されたiPSCでの外因性遺伝子発現は、元のゲノム操作されたiPSCの長期のクローン増殖後、細胞分化後、及びゲノム操作されたiPSCに由来する細胞からの脱分化細胞型において、遺伝子サイレンシング、又は低下した遺伝子発現などの問題にしばしば遭遇する。一方、T細胞又はNK細胞などの初代免疫細胞を直接操作することは困難であり、養子細胞療法のための操作された免疫細胞の調製及び送達に障害をもたらす。種々の実施形態では、本発明は、自殺遺伝子及び他の機能的モダリティを含む1つ以上の外因性遺伝子を安定的に組み込むための効率的で信頼できる標的化アプローチを提供し、これは生着、輸送、ホーミング、遊走、細胞傷害性、生存能力、維持、増殖、寿命、自己複製、持続性、及び/又は生存率に関する改善された治療的特性を、指示されたiPSC分化を通じて得られたiPSC誘導細胞にもたらし、この誘導細胞には、HSC(造血幹細胞及び前駆細胞)、造血多能性前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞及びB細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
定義
本明細書で特に定義されない限り、本出願に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈で特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0041】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、したがって変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのみのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0042】
本明細書で使用されるとき、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、本明細書において、冠詞の文法的な対象の、1又は1を超えるもの(すなわち、少なくとも1)を指すために本明細書において使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は1つを超える要素を意味する。
【0043】
代替(例えば、「又は」)の使用は、代替の一方、両方、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0044】
「及び/又は」という用語は、代替の一方、両方又は全てのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「約」又は「およそ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さと比較して、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%もの量で変動する、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。一実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さの±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、又は±1%の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さの範囲を指す。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「実質的に」又は「本質的に」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さと比較して、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%、又はそれ以上である量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」又は「本質的に同じ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さとほぼ同一である、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さの範囲を指す。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「実質的に含まない」及び「本質的に含まない」という用語は互換可能に使用され、細胞集団又は培養培地などの組成物を記載するために使用されるとき、例えば、特定の物質又はその供給源の、95%を含まない、96%を含まない、97%を含まない、98%を含まない、99%を含まないなど、又は従来の手段で測定して検出できないなどのように、特定の物質又はその供給源を含まない組成物を指す。組成物中の特定の成分又は物質を「含まない」又は「本質的に含まない」という用語はまた、そのような成分又は物質が(1)任意の濃度で組成物に含まれない、又は(2)機能的に不活性な低い濃度で組成物に含まれることも意味する。同様の意味が、「存在しない」という用語に適用され得、組成物の特定の物質又はその供給源が存在しないことを指す。
【0048】
本明細書全体を通して、文脈がそうでないことを必要としない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと(comprising)」は、述べられたステップ、若しくは要素、又はステップ若しくは要素の群を含むことを意味するが、任意の他のステップ、若しくは要素、又はステップ若しくは要素の群を排除することを意味しないことが理解されるだろう。特定の実施形態では、「含む(include)」、「有する」、「含む(contain)」、及び「含む(comprise)」という用語は、同義的に使用される。
【0049】
「~からなる(consisting of)」とは、「~からなる」という語句に続く全てのものを含み、かつそれに限定されることを意味する。したがって、「~からなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であり、かつ他の要素が存在し得ないことを示す。
【0050】
「~から本質的になる(consisting essentially of)」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素の開示で指定された活性又は動作を妨害しないか、又はそれらに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「~から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であることを示すが、他の要素は必要に応じたものではなく、列挙された要素の活性又は動作に影響するか否かに応じて存在し得るか、又は存在し得ないことを示す。
【0051】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「追加の実施形態」、若しくは「更なる実施形態」又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での前述の語句の出現は、必ずしも全てが同一の実施形態を参照しているとは限らない。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0052】
「ex vivo」という用語は、一般に、好ましくは自然条件の変化を最小限に抑えて、生体外の人工環境内の生体組織内又は生体組織上で行われる実験又は測定など、生体外で行われる活動を指す。特定の実施形態では、「ex vivo」手順は、生体から採取され、通常無菌条件下で、典型的には数時間又は約24時間まで、しかしながら状況に応じて最大48時間若しくは72時間又はそれ以上を含む、実験装置で培養される生細胞又は組織を含む。特定の実施形態では、そのような組織又は細胞は、収集及び凍結され得、そしてex vivo処理のために後に解凍され得る。生細胞又は組織を使用して数日より長く続く組織培養実験又は手順は、典型的には「in vitro」であると考えられるが、特定の実施形態では、この用語はex vivoと互換可能に使用できる。
【0053】
「in vivo」という用語は、一般に、生体内部で起こる活動を指す。
【0054】
本明細書で使用する場合、「リプログラミング」又は「脱分化」又は「細胞能力の増加」又は「発生能力の増加」という用語は、細胞の能力を増加させるか、又は細胞をより分化していない状態に脱分化する方法を指す。例えば、細胞能力が増加した細胞は、リプログラミングされていない状態の同じ細胞と比較して、より多くの発生可塑性を有する(すなわち、より多くの細胞型に分化することができる)。言い換えると、リプログラミングされた細胞は、リプログラミングされていない状態の同じ細胞よりも分化が進んでいない状態の細胞である。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「分化」という用語は、特殊化していない(「未コミット」)又はあまり特殊化していない細胞が、例えば、血液細胞又は筋細胞などの特殊化細胞の特徴を獲得するプロセスである。分化した又は分化誘導された細胞は、細胞の系統内でより特殊化された(「コミットされた」)位置を呈する細胞である。「コミットされた」という用語は、分化のプロセスに適用されるとき、通常の状況下で特定の細胞型又は細胞型のサブセットに分化し続ける位置まで分化経路を進み、通常の状況下では、異なる細胞型に分化したり、分化度の低い細胞型に戻ったりすることのできない細胞を指す。本明細書で使用されるとき、「多能性」という用語は、生体又は体細胞の全ての系統を形成する細胞(すなわち、胚そのもの)の能力を指す。例えば、胚性幹細胞は、3つの胚葉、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉のそれぞれから細胞を形成できる多能性幹細胞の一種である。多能性は、完全な生物を生じさせることができない不完全な又は部分的な多能性細胞(例えば、エピブラスト幹細胞又はEpiSC)から、完全な生物を生じさせることができるより原始的でより多能性の細胞(例えば、胚性幹細胞)までの範囲に及ぶ一連の発生能である。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「誘導多能性幹細胞」又はiPSCという用語は、誘導又は変更された、分化した成人、新生児又は胎児細胞から産生された、すなわち、3つの全ての胚葉又は真皮層:中胚葉、内胚葉、及び外胚葉の全ての組織に分化できる細胞にリプログラミングされた幹細胞を指す。産生されたiPSCは、天然に存在する細胞を指していない。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「胚性幹細胞」という用語は、胚盤胞の内部細胞塊の天然に存在する多能性幹細胞を指す。胚性幹細胞は多能性であり、発生時に3つの一次胚葉、すなわち、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉の全ての誘導体を発生させる。それらは、胚体外膜又は胎盤に寄与しない(すなわち、全能性ではない)。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「多能性幹細胞」という用語は、1つ以上の胚葉(すなわち、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉)の細胞に分化するが、3つ全てには分化しない発生能を有する細胞を指す。したがって、多能性細胞はまた、「部分的に分化した細胞」と呼ぶこともできる。多能性細胞は当該技術分野で周知であり、多能性細胞の例には、例えば造血幹細胞及び神経幹細胞などの成体幹細胞が含まれる。「多能性」は、細胞が所与の系統での多くの型の細胞を形成し得るが、他の系統の細胞は形成しないことを示す。例えば、多能性造血細胞は多くの異なる型の血液細胞(赤、白、血小板など)を形成できるが、ニューロンを形成することはできない。したがって、「多分化能」という用語は、全能性及び多能性よりも低い発生能の程度を有する細胞の状態を指す。
【0059】
多能性は、細胞の多能性特徴を評価することにより、部分的に決定することができる。多能性の特徴としては、(i)多能性幹細胞形態、(ii)無制限自己再生の潜在能力、(iii)SSEA1(マウスのみ)、SSEA3/4、SSEA5、TRA1-60/81、TRA1-85、TRA2-54、GCTM-2、TG343、TG30、CD9、CD29、CD133/プロミニン、CD140a、CD56、CD73、CD90、CD105、OCT4、NANOG、SOX2、CD30及び/又はCD50を含むが、これらに限定されない、多能性幹細胞マーカーの発現、(iv)3つ全ての体細胞系統(外胚葉、中胚葉及び内胚葉)に分化する能力、(v)3つの体細胞系統からなる奇形腫形成、並びに(vi)3つの体細胞系統からの細胞からなる胚様体の形成が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
これまでに2つのタイプの多能性が説明されており、後期胚盤胞の胚盤葉上層幹細胞(EpiSC)に類似した「プライミング」又は「準安定」状態の多能性と、多能性初期/着床前の胚盤胞の内部細胞塊に類似した「ナイーブ」又は「基底」状態である。両方の多能性状態が上記のような特徴を示す一方で、ナイーブ状態又は基底状態は、(i)雌性細胞におけるX染色体の前不活性化又は再活性化、(ii)単一細胞培養中のクローン性及び生存率の改善、(iii)DNAメチル化の全体的な減少、(iv)発生調節遺伝子プロモーター上のH3K27me3抑制クロマチンマーク沈着の低減、並びに(v)プライミング状態多能性細胞と比較しての分化マーカーの発現低下を更に示す。外因性多能性遺伝子が体細胞に導入され、発現され、その後、得られる多能性細胞からサイレンシングされるか又は除去されるかのいずれかである細胞リプログラミングの標準的な方法論は、一般に、多能性のプライミング状態の特徴を有するようである。標準的な多能性細胞培養条件下で、そのような細胞は、外因性導入遺伝子発現が維持されない限り、プライミング状態に留まり、基底状態の特徴が観察される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞形態」という用語は、胚性幹細胞の古典的な形態学的特徴を指す。正常な胚性幹細胞の形態は、高い核対細胞質比を有し、核小体が顕著に存在し、典型的な細胞間間隔がある、形状が丸くて小さいことを特徴とする。
【0062】
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は、任意の動物、好ましくはヒト患者、家畜、又は他の飼育動物を指す。
【0063】
「多能性因子」又は「リプログラミング因子」は、単独で又は他の薬剤と組み合わせて、細胞の発生能を増加させることができる薬剤を指す。多能性因子には、細胞の発生能を増加させることができるポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び小分子が含まれるが、これらに限定されない。例示的な多能性因子には、例えば、転写因子及び小分子リプログラミング剤が含まれる。
【0064】
「培養」又は「細胞培養」は、in vitro環境における細胞の維持、増殖及び/又は分化を指す。「細胞培養培地」、「培養培地」(各場合で単数は「培地(medium)」)、「補充成分」及び「培地補充成分」は、細胞培養を培養する栄養組成物を指す。
【0065】
「培養する」又は「維持する(maintain)」とは、例えば滅菌プラスチック(又はコーティングされたプラスチック)細胞培養皿又はフラスコ内で、組織又は体外の細胞を維持(sustaining)、増殖(propagating)(増殖)、及び/又は分化させることを指す。「培養」又は「維持すること」は、細胞の増殖及び/又は維持に役立つ栄養素、ホルモン、及び/又は他の因子の供給源として培地を利用することができる。
【0066】
本明細書で使用されるとき、「中胚葉」という用語は、初期胚発生中に出現し、循環系の血液細胞、筋肉、心臓、真皮、骨格、その他の支持組織と結合組織を含む様々な特殊化された細胞型を生じさせる、3つの胚葉のうちの1つを指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「決定的な造血内皮」(HE)又は「多能性幹細胞由来の決定的な造血内皮」(iHE)という用語は、内皮造血転換と呼ばれるプロセスにおいて造血幹細胞及び前駆細胞を生じさせる内皮細胞のサブセットを指す。胚における造血細胞の発生は、側板中胚葉から血管芽細胞を経て決定的な造血内皮細胞及び造血前駆体へと順次進行する。
【0068】
「造血幹細胞及び前駆細胞」、「造血幹細胞」、「造血前駆細胞」、又は「造血前駆体細胞」という用語は、造血系統にコミットしているが、更なる造血分化が可能であり、多能性造血幹細胞(血球)、骨髄前駆体、巨核球前駆体、赤血球前駆体、及びリンパ球前駆体を含む細胞を指す。造血幹細胞及び前駆細胞(HSC)は、骨髄系(単球及びマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、及びリンパ系(T細胞、B細胞、NK細胞)を含む全ての血液細胞型を生じる多能性幹細胞である。本明細書で使用されるとき、「二次造血幹細胞」という用語は、T系統細胞、NK系統細胞、及びB系統細胞を含む成熟骨髄性とリンパ性細胞型の両方を生じさせることができるCD34+造血細胞を指す。造血細胞はまた、原始赤血球、巨核球、及びマクロファージを生じさせる原始造血細胞の様々なサブセットを含む。
【0069】
本明細書で使用されるとき、「Tリンパ球」及び「T細胞」という用語は互換可能に使用され、胸腺での成熟を完了し、体内の特定の外来抗原の同定、並びにMHCクラスI拘束性での他の免疫細胞の活性化及び不活性化を含む免疫系における様々な役割を有する主要なタイプの白血球を指す。T細胞は、任意のT細胞、例えば、培養T細胞、例えば、初代T細胞、又は培養T細胞株、例えば、Jurkat、SupT1などからのT細胞、又は哺乳動物から取得されたT細胞であり得る。T細胞はCD3+細胞であり得る。T細胞は、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1及びTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、制御性T細胞、ガンマデルタT細胞(γδT細胞)、などを含むが、これらに限定されない、任意のタイプのT細胞であることができ、任意の発生段階のものであることができる。追加のタイプのヘルパーT細胞には、Th3(Treg)、Th17、Th9、又はTfh細胞などの細胞が含まれる。追加のタイプのメモリーT細胞には、セントラルメモリーT細胞(Tcm細胞)、エフェクターメモリーT細胞(Tem細胞及びTEMRA細胞)などの細胞が含まれる。「T細胞」という用語は、T細胞受容体(TCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変されたT細胞などの遺伝子操作されたT細胞を指すこともできる。T細胞又はT細胞様エフェクター細胞は、幹細胞又は前駆細胞から分化させることもできる。由来T細胞様エフェクター細胞は、いくつかの点でT細胞系統を有し得るが、同時に、初代T細胞には存在しない1つ以上の機能的特徴を有する。これらの細胞は、それらの最も近い対応する初代細胞と比較した場合に、1つ以上の非天然細胞機能を有するための「合成細胞」と称され得る。
【0070】
「CD4+細胞」は、それらの表面でCD4を発現し、細胞性免疫応答に関連するT細胞のサブセットを指す。それらは刺激後の分泌プロファイルによって特徴付けられ、IFN-ガンマ、TNF-アルファ、IL2、IL4、及びIL10などのサイトカインの分泌が含まれ得る。「CD4」分子は、もともとTリンパ球の分化抗原として定義された55-kDの糖タンパク質であるが、単球/マクロファージを含む他の細胞にも見出される。CD4抗原は免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、MHC(主要組織適合性複合体)クラスII拘束性免疫応答の関連認識要素として関与している。Tリンパ球では、ヘルパー/インデューサのサブセットを定義する。
【0071】
「CD8+細胞」は、それらの表面上でCD8を発現し、MHCクラスI拘束性であり、細胞傷害性T細胞として機能するT細胞のサブセットを指す。「CD8」分子は、胸腺細胞と細胞傷害性及びサプレッサーTリンパ球に見られる分化抗原である。CD8抗原は免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、主要組織適合性複合体クラスI拘束性相互作用の関連認識要素である。
【0072】
本明細書で使用されるとき、「NK細胞」又は「ナチュラルキラー細胞」という用語は、CD56又はCD16の発現及びT細胞受容体(CD3)の不在によって定義される末梢血リンパ球のサブセットを指す。本明細書で使用されるとき、「適応NK細胞」及び「メモリーNK細胞」という用語は互換可能であり、表現型的にCD3-及びCD56+であり、NKG2C及びCD57のうちの少なくとも1つ、並びに必要に応じてCD16を発現するが、PLZF、SYK、FceRγ、及びEAT-2のうちの1つ以上の発現を欠く、NK細胞のサブセットを指す。いくつかの実施形態では、CD56+NK細胞の単離された亜集団は、CD16、NKG2C、CD57、NKG2D、NCRリガンド、NKp30、NKp40、NKp46、活性化及び抑制性KIR、NKG2A、並びに/又はDNAM-1の発現を含む。CD56+は、弱陽性(dim)又は強陽性(bright)発現であり得る。NK細胞、又はNK細胞様エフェクター細胞は、幹細胞又は前駆細胞から分化され得る。誘導NK細胞様エフェクター細胞は、いくつかの点でNK細胞系統を有し得るが、同時に、初代NK細胞には存在しない1つ以上の機能的特徴を有する。これらの細胞は、それらの最も近い対応する初代細胞と比較した場合に、1つ以上の非天然細胞機能を有するための「合成細胞」と称され得る。
【0073】
本明細書で使用されるとき、「NKT細胞」又は「ナチュラルキラーT細胞」という用語は、T細胞受容体(TCR)を発現するCD1d拘束性T細胞を指す。従来の主要組織適合性(MHC)分子によって提示されるペプチド抗原を検出する従来のT細胞とは異なり、NKT細胞は、非古典的MHC分子であるCD1dによって提示される脂質抗原を認識する。2つのタイプのNKT細胞が認識される。インバリアント又はI型NKT細胞は、非常に限られたTCRレパートリー-限定された範囲のβ鎖(ヒトではVβ11)に関連する正規のα鎖(ヒトではVα24-Jα18)を発現する。非古典的又は非インバリアントのタイプII NKT細胞と呼ばれるNKT細胞の第2の集団は、より不均一なTCRαβの使用を提示する。I型NKT細胞は免疫療法に適していると考えられている。適応又はインバリアント(I型)NKT細胞は、TCR Va24-Ja18、Vb11、CD1d、CD3、CD4、CD8、aGalCer、CD161、及びCD56のマーカーのうちの1つ以上の発現によって識別できる。
【0074】
本明細書で使用されるとき、「単離された」などの用語は、元の環境から分離された細胞、又は細胞の集団を指し、すなわち、単離された細胞の環境は、「単離されていない」参照細胞が存在する環境に見出される少なくとも1つの成分を実質的に含まない。この用語は、例えば、組織又は生検試料から単離された、その天然環境で見出されるようないくつか又は全ての成分から取り出された細胞を含む。この用語はまた、細胞が非天然環境、例えば、細胞培養物又は細胞懸濁液から単離された環境で見出されるため、少なくとも1つ、いくつか、又は全ての成分から取り出された細胞を含む。したがって、「単離された」細胞は、天然で見出される場合、又は非天然の環境で増殖、保管、又は存続する場合、他の物質、細胞、又は細胞集団を含む少なくとも1つの成分から部分的又は完全に分離される。単離された細胞の具体例には、部分的に純粋な細胞組成物、実質的に純粋な細胞組成物、及び天然に存在しない培地で培養された細胞が含まれる。単離された細胞は、所望の細胞若しくはその集団を、環境中の他の物質若しくは細胞から分離することによって、又は環境から1つ以上の他の細胞集団若しくは亜集団を取り除くことによって得ることができる。
【0075】
本明細書中で使用されるとき、「精製する」などの用語は、純度を増加することをいう。例えば、純度は少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は100%に増加させることができる。
【0076】
本明細書で使用されるとき、「コードすること」という用語は、ヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)の定義された配列又はアミノ酸の定義された配列及びそれらから生じる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び巨大分子の合成のためのテンプレートとして機能する、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的システムでタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に記載されているコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のテンプレートとして使用される非コード鎖の両方を、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物を「コードしている」ということができる。
【0077】
「コンストラクト」は、in vitro又はin vivoのいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む高分子又は分子の複合体を指す。本明細書で使用されるとき、「ベクター」は、外来遺伝物質の標的細胞への送達又は移入を誘導することができ、標的細胞で複製及び/又は発現することができる任意の核酸コンストラクトを指す。したがって、「ベクター」という用語は、送達されるコンストラクトを含む。ベクターは、線状又は環状分子であり得る。ベクターは、組み込まれることも組み込まれないこともできる。ベクターの主なタイプには、プラスミド、エピソームベクター、ウイルスベクター、コスミド、及び人工染色体が含まれるが、これらに限定されない。ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
「組み込み」とは、コンストラクトの1つ以上のヌクレオチドが細胞ゲノムに安定して挿入される、すなわち、細胞の染色体DNA内の核酸配列に共有結合されることを意味する。「標的化組み込み」とは、コンストラクトのヌクレオチドが、予め選択された部位又は「組み込み部位」で細胞の染色体又はミトコンドリアDNAに挿入されることを意味する。本明細書で使用されるとき、「組み込み」という用語は、組み込み部位での内因性配列又はヌクレオチドの欠失を伴うか又は伴わない、コンストラクトの1つ以上の外因性配列又はヌクレオチドの挿入を含むプロセスを更に指す。挿入部位に欠失がある場合、「組み込み」は、内因性配列又は1つ以上の挿入されたヌクレオチドで欠失されたヌクレオチドの置換を更に含み得る。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「外因性」という用語は、参照分子又は参照活性が宿主細胞に導入されるか、又は宿主細胞に対して非天然であることを意味することを意図している。分子は、例えば、コード核酸を宿主の遺伝物質に導入することにより、例えば、宿主の染色体に組み込むことにより、又は非染色体の遺伝物質、例えば、プラスミドとして導入することができる。したがって、コード核酸の発現に関して使用される用語は、コード核酸を発現可能な形態で細胞に導入することを指す。「内因性」という用語は、宿主細胞に存在する参照分子又は活性を指す。同様に、この用語は、コード核酸の発現に関して使用されるとき、細胞内に含まれ、外因的に導入されていないコード核酸の発現を指す。
【0080】
本明細書で使用されるとき、「目的の遺伝子」又は「目的のポリヌクレオチド配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれると、RNAに転写され、場合によってはin vivoでポリペプチドに翻訳されるDNA配列である。目的の遺伝子又はポリヌクレオチドは、原核生物配列、真核生物のmRNAからのcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)のDNAからのゲノムDNA配列、及び合成DNA配列を含み得るが、これらに限定されない。例えば、目的の遺伝子は、miRNA、shRNA、天然ポリペプチド(すなわち、天然に見出されるポリペプチド)又はその断片、バリアントポリペプチド(すなわち、天然ポリペプチドとの100%未満の配列同一性を有する天然ポリペプチドの突然変異体)又はその断片、操作されたポリペプチド又はペプチド断片、治療用ペプチド又はポリペプチド、造影用マーカー、選択マーカーなどをコードし得る。
【0081】
本明細書で使用されるとき、「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はそれらの類似体のいずれかである、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドの配列は、4種類のヌクレオチド塩基:アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)から構成され、ポリヌクレオチドがRNAである場合、チミンはウラシル(U)である。ポリヌクレオチドには、遺伝子又は遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、EST、又はSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマーが含まれ得る。「ポリヌクレオチド」はまた、二本鎖分子と一本鎖分子の両方を指す。
【0082】
本明細書で使用されるとき、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は互換可能に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基を有する分子を指す。ポリペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならず、ポリペプチドのアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書で使用されるとき、これらの用語は、例えば、当該技術分野では一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも呼ばれる短い鎖と、一般に当該技術分野でポリペプチド又はタンパク質と呼ばれる長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドは、天然ポリペプチド、組換えポリペプチド、合成ポリペプチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0083】
「作動可能に連結された」とは、一方の機能が他方の影響を受ける、単一の核酸断片上の核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列又は機能的RNAの発現に影響を与えることができる場合、コード配列又は機能的RNAと作動可能に連結している(すなわち、コード配列又は機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある)。コード配列は、センス又はアンチセンス方向で調節配列に作動可能に連結することができる。
【0084】
本明細書で使用されるとき、「遺伝的インプリント」という用語は、ソース細胞又はiPSCの優先的な治療属性に寄与し、ソース細胞由来iPSC及び/又はiPSC由来造血系統細胞で保持可能な遺伝的又はエピジェネティックな情報を指す。本明細書で使用されるとき、「ソース細胞」は、リプログラミングを通じてiPSCを生成するために使用され得る非多能性細胞であり、ソース細胞由来iPSCは、任意の造血系統細胞を含む特定の細胞型に更に分化し得る。ソース細胞由来iPSC、及びそこから分化した細胞は、文脈に応じて、「由来」細胞又は「誘導」細胞と総称することがある。例えば、本出願全体で使用される誘導エフェクター細胞、又は誘導NK系統細胞若しくは誘導T系統細胞は、末梢血、臍帯血、又は他のドナー組織などの天然(natural)/天然(native)供給源から取得されたそれらの初代対応物と比較して、iPSCから分化した細胞である。本明細書で使用されるとき、優先的な治療属性を付与する遺伝的インプリントは、ドナー、疾患、若しくは治療応答に特異的である選択されたソース細胞をリプログラミングすることにより、又はゲノム編集を使用してiPSCに遺伝子組換えモダリティを導入することにより、iPSCに組み込まれる。特異的に選択されたドナー、疾患、又は治療状況から取得されたソース細胞の態様では、優先的な治療属性に寄与する遺伝的インプリントには、根本的な分子事象が同定されているかどうかに関係なく、選択されたソース細胞の誘導細胞に渡される、保持可能な表現型、すなわち優先的な治療属性を表す、状況特異的な遺伝的又はエピジェネティックな改変を含み得る。ドナー、疾患、若しくは治療応答に特異的であるソース細胞は、iPSC及び由来造血系統細胞において保持可能な遺伝的インプリントを含んでいてもよく、この遺伝的インプリントには、例えば、ウイルス特異的T細胞又はインバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞からの、予め配置された単一特異的TCR、追跡可能で望ましい遺伝子多型、例えば、選択されたドナーにおける高親和性CD16受容体をコードする点突然変異のホモ接合、及び所定のHLA要件、すなわち、増加した集団でハプロタイプを示す選択されたHLA適合ドナー細胞が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用されるとき、優先的な治療属性には、由来細胞の、改善された生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、免疫応答の調節と修飾、生存率、及び細胞傷害性が含まれる。優先的な治療属性はまた、抗原標的化受容体発現、HLA提示又はその欠如、腫瘍微小環境に対する耐性、バイスタンダー免疫細胞及び免疫修飾の誘導、腫瘍外効果の減少を伴う改善されたオンターゲット特異性、並びに化学療法などの治療に対する耐性にも関連し得る。優先的な治療属性を付与する遺伝的インプリントが組み込まれているiPSCを分化させることから、1つ以上の治療属性を有する誘導細胞が得られる場合、そのような誘導細胞はまた「合成細胞」とも呼ばれる。例えば、本出願全体で使用される合成エフェクター細胞、又は合成NK細胞若しくは合成T細胞は、末梢血、臍帯血、又は他のドナー組織などの天然(natural)/天然(native)供給源から取得されたそれらの初代対応物と比較して、ゲノム改変されたiPSCから分化した細胞である。
【0085】
本明細書で使用されるとき、「増強された治療特性」という用語は、同じ一般的な細胞型の典型的な免疫細胞と比較して増強された細胞の治療特性を指す。例えば、「増強された治療特性」を有するNK細胞は、典型的な未改変及び/又は天然に存在するNK細胞と比較して、増強され、改善され、及び/又は増加された治療特性を有する。免疫細胞の治療特性には、細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、免疫応答の調節と修飾、生存率、及び細胞傷害性が含まれ得るが、これらに限定されない。免疫細胞の治療特性はまた、抗原標的化受容体発現、HLA提示又はその欠如、腫瘍微小環境に対する耐性、バイスタンダー免疫細胞及び免疫修飾の誘導、腫瘍外効果の減少を伴う改善されたオンターゲット特異性、並びに化学療法などの治療に対する耐性によっても明らかにされる。
【0086】
本明細書で使用されるとき、「エンゲージャー」という用語は、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、好中球と、腫瘍細胞との間の連結を形成することができ、免疫細胞を活性化することができる分子、例えば、融合ポリペプチドを指す。エンゲージャーの例には、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)、若しくは多重特異性キラー細胞エンゲージャー、又は複数の免疫細胞型と適合し得るユニバーサルエンゲージャーが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
本明細書で使用されるとき、「表面トリガー受容体」という用語は、免疫応答、例えば、細胞傷害性応答を誘発又は開始することができる受容体を指す。表面トリガー受容体を操作することができ、エフェクター細胞、例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、又は好中球で発現させることができる。いくつかの実施形態では、表面トリガー受容体は、エフェクター細胞の天然受容体及び細胞型とは無関係に、エフェクター細胞と特異的な標的細胞、例えば腫瘍細胞との間の二重特異性抗体又は多重特異性抗体の結合を促進する。このアプローチを使用すると、ユニバーサル表面トリガー受容体を含むiPSCを生成し、そのようなiPSCをユニバーサル表面トリガー受容体を発現する様々なエフェクター細胞型の集団に分化させることができる。「ユニバーサル」とは、表面トリガー受容体が細胞型に関係なく任意のエフェクター細胞で発現及び活性化できることを意味し、ユニバーサル受容体を発現する全てのエフェクター細胞は、エンゲージャーの腫瘍結合特異性に関係なく、表面トリガー受容体によって認識できる同じエピトープを有するエンゲージャーに結合又は連結できる。いくつかの実施形態では、同じ腫瘍標的化特異性を有するエンゲージャーを使用して、ユニバーサル表面トリガー受容体と結合する。いくつかの実施形態では、異なる腫瘍標的化特異性を有するエンゲージャーを使用して、ユニバーサル表面トリガー受容体と結合する。したがって、1つ以上のエフェクター細胞型を使用して、ある特異的な型の腫瘍細胞を殺傷する場合もあれば、2つ以上の型の腫瘍を殺傷する場合もある。表面トリガー受容体は一般に、エフェクター細胞の活性化のための共刺激ドメインと、エンゲージャーのエピトープに特異的な抗エピトープとを含む。二重特異性エンゲージャーは、一方の端の表面トリガー受容体の抗エピトープに特異的であり、もう一方の端の腫瘍抗原に特異的である。
【0088】
本明細書で使用されるとき、「安全スイッチタンパク質」という用語は、細胞療法の潜在的な毒性又はその他の有害作用を防止するように設計された操作されたタンパク質を指す。いくつかの例では、安全スイッチタンパク質の発現は条件付きで制御され、安全スイッチタンパク質をコードする遺伝子をゲノムに永久的に組み込んだ移植された操作された細胞の安全性の懸念に対処する。この条件付き調節は変動する可能性があり、小分子を介した翻訳後活性化及び組織特異的及び/又は一過性の転写調節による制御が含まれる可能性がある。安全スイッチタンパク質は、アポトーシスの誘導、タンパク質合成の阻害、DNA複製、増殖停止、転写及び転写後の遺伝子調節及び/又は抗体媒介性枯渇を媒介する可能性がある。いくつかの例において、安全スイッチタンパク質は、外因性分子、例えば、プロドラッグによって活性化され、活性化されると、治療用細胞のアポトーシス及び/又は細胞死を誘発する。安全スイッチタンパク質の例には、カスパーゼ9(又はカスパーゼ3若しくは7)、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、B細胞CD20、改変EGFR、及びそれらの任意の組み合わせなどの自殺遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。この戦略では、有害事象の発生時に投与されるプロドラッグが自殺遺伝子産物によって活性化され、形質導入された細胞を殺傷する。
【0089】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に活性なタンパク質又はペプチド」という用語は、生物に対して生物学的及び/又は薬学的効果を達成することができるタンパク質又はペプチドを指す。薬学的に活性なタンパク質は、疾患に対する治癒的又は緩和的特性を有し、疾患の重症度を改善、軽減(relieve)、緩和、逆転又は軽減(lessen)するために投与することができる。薬学的に活性なタンパク質はまた、予防特性を有し、疾患の発症を予防するために、又はそれが出現した場合にそのような疾患又は病的状態の重症度を軽減するために使用される。「薬学的に活性なタンパク質」には、タンパク質若しくはペプチド全体又はその薬学的に活性な断片が含まれる。この用語はまた、タンパク質若しくはペプチドの薬学的に活性な類似体又はタンパク質若しくはペプチドの断片の類似体を含む。薬学的に活性なタンパク質という用語はまた、協調的又は相乗的に作用して治療効果をもたらす複数のタンパク質又はペプチドを指す。薬学的に活性なタンパク質又はペプチドの例には、受容体、結合タンパク質、転写及び翻訳因子、腫瘍増殖抑制タンパク質、抗体又はその断片、増殖因子、及び/又はサイトカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書で使用されるとき、「シグナル伝達分子」という用語は、細胞シグナル伝達を修飾、関与、阻害、活性化、低減、又は増大させる任意の分子を指す。「シグナル伝達」とは、細胞内で最終的に生化学的事象を引き起こす経路に沿ったタンパク質複合体の動員による化学改変の形での分子シグナルの伝達を指す。シグナル伝達経路は当該技術分野で周知であり、Gタンパク質共役受容体シグナル伝達、チロシンキナーゼ受容体シグナル伝達、インテグリンシグナル伝達、トールゲートシグナル伝達、リガンド依存性イオンチャネルシグナル伝達、ERK/MAPKシグナル伝達経路、Wntシグナル伝達経路、cAMP依存経路、及びIP3/DAGシグナル伝達経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
本明細書で使用されるとき、「標的化モダリティ」という用語は、細胞に遺伝的に組み込まれて、i)固有のキメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)に関連するときの抗原特異性、ii)モノクローナル抗体又は二重特異性エンゲージャーに関連するときのエンゲージャー特異性、iii)形質転換細胞の標的化、iv)癌幹細胞の標的化、及びv)特異的な抗原又は表面分子の非存在下でのその他の標的化戦略を含むがこれらに限定されない、抗原及び/又はエピトープの特異性を促進する分子、例えば、ポリペプチドを指す。
【0092】
本明細書で使用されるとき、「特異的」又は「特異性」という用語は、非特異的又は非選択的な結合とは対照的に、標的分子に選択的に結合する分子、例えば受容体又はエンゲージャーの能力を指すために使用できる。
【0093】
本明細書で使用されるとき、「養子細胞療法」という用語は、輸注の前にex vivoで増殖している、遺伝子改変された、又は改変されていない、T又はB細胞として同定される、自家性又は同種異系のリンパ球の輸注に関連する細胞ベースの免疫療法を指す。
【0094】
本明細書で使用されるとき、「治療上十分な量」は、その意味の範囲内で、それが参照する特定の治療剤及び/又は医薬組成物の非毒性であるが十分かつ/又は有効な量を含み、所望の治療効果を提供する。必要とされる正確な量は、患者の全体的な健康状態、患者の年齢、並びに治療される状態のステージ及び重症度などの要因に応じて、対象ごとに異なる。特定の実施形態では、「治療上十分な量」は、治療されている対象の疾患又は状態に関連する少なくとも1つの症状を改善、軽減、及び/又は改善するのに十分及び/又は有効である。
【0095】
多能性幹細胞の分化には、培養液中の刺激剤及び細胞の物理的状態の変化など、培養系の変化が必要とされる。最も一般的な戦略は、系統特異的な分化を開始するための共通かつ重要な中間体として胚様体(EB)の形成を利用する。「胚様体」とは、胚の発生を模倣することが示されている三次元のクラスターであり、三次元領域内で多数の系統を発生させる。典型的には数時間から数日である分化プロセスを通じて、単純なEB(例えば、分化を誘発された凝集多能性幹細胞)は成熟を続け、嚢胞性EBにまで成長し、典型的には数日から数週間であるこのとき、それらは、更に分化を続けるように処理される。EB形成は、細胞の三次元多層クラスターにおいて多能性幹細胞を互いに近接させることによって開始される。典型的には、これは、多能性細胞を液滴中で沈降させること、細胞を「U」底ウェルプレート中に沈降させることを含むいくつかの方法のうちの1つによって、又は機械的撹拌によって達成される。多能性培養維持培地で維持された凝集体は適切なEBを形成しないため、EBの成長を促進するために、多能性幹細胞の凝集体には更に分化の手掛かりが必要である。そのため、多能性幹細胞の凝集体は、選択した系統へのキュー誘発を提供する分化培地に移す必要がある。多能性幹細胞のEBベースの培養は、典型的には、EB細胞クラスター内の中程度の増殖の分化した細胞集団(すなわち、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉の胚葉)を生成する。EBは、細胞分化を促進することが証明されているが、環境内の分化のキューに対する三次元構造の細胞の露出に一貫性がないため、様々な分化状態の異種細胞を生じさせる。更に、EBは作成と維持が面倒である。更に、EBによる細胞分化には適度な細胞増殖が伴い、分化効率の低下にもつながる。
【0096】
対照的に、「凝集体形成」は、「EB形成」とは異なり、多能性幹細胞由来細胞の集団を増殖させるために使用することができる。例えば、凝集体に基づく多能性幹細胞の増殖の間、培養培地は、増殖及び多能性を維持するように選択される。細胞増殖は一般に、より大きな凝集体を形成する凝集体のサイズを増加させ、この凝集体は、日常的に機械的又は酵素的に小さな凝集体に解離して、培養内の細胞増殖を維持し、細胞数を増やすことができる。EB培養とは異なり、維持培養培地内の凝集体内で培養された細胞は、多能性のマーカーを維持する。多能性幹細胞凝集体は、分化を誘導するために更なる分化のキューを必要とする。
【0097】
本明細書で使用されるとき、「単層分化」は、細胞の三次元多層クラスターにわたる分化、すなわち「EB形成」とは異なる分化方法を指す用語である。単層分化は、本明細書に開示される他の利点の中でも特に、EB形成が分化を開始する必要性を回避する。単層培養はEB形成の場合でなどの胚発生を模倣しないため、特定の系統への分化は、EB形成での3つ全ての胚葉分化と比較して最小限であるとみなされる。
【0098】
本明細書で使用されるとき、「解離した」細胞は、他の細胞から又は表面(例えば、培養プレート表面)から実質的に分離又は精製された細胞をいう。例えば、細胞は、機械的又は酵素的方法によって動物又は組織から解離され得る。代替的に、in vitroで凝集する細胞は、例えば、クラスターの懸濁液、単一の細胞又は単一の細胞とクラスターの混合物への解離によって、互いに酵素的又は機械的に解離され得る。更に別の代替的な実施形態では、付着細胞は培養プレート又は他の表面から解離され得る。したがって、解離には、細胞外マトリックス(ECM)及び基質(培養面など)との細胞相互作用を破壊すること、又は細胞間のECMを破壊することが含まれる。
【0099】
本明細書で使用されるとき、「フィーダー細胞」又は「フィーダー」は、第2の型の細胞と共培養されて、第2の型の細胞が増殖、増殖、又は分化できる環境を提供する、1つの型の細胞を表す用語であり、フィーダー細胞は刺激、増殖因子、栄養素を提供し、第2の細胞型を支持する。フィーダー細胞は、それらが支持している細胞とは異なる種に由来してもよい。例えば、幹細胞を含む特定の型のヒト細胞は、マウス胚性線維芽細胞又は不死化マウス胚性線維芽細胞の初代培養によって支持することができる。別の例では、末梢血由来細胞又は形質転換白血病細胞は、ナチュラルキラー細胞の増殖及び成熟を支持する。フィーダー細胞は、他の細胞と共培養されるときに、それらが支持している細胞よりも増殖するのを防ぐために、照射又はマイトマイシンなどの抗有糸分裂剤での処理によって、典型的には不活性化され得る。フィーダー細胞は、内皮細胞、間質細胞(例えば、上皮細胞又は線維芽細胞)、及び白血病細胞を含み得る。前述を限定することなく、1つの特定のフィーダー細胞型は、ヒト皮膚線維芽細胞などのヒトフィーダーであり得る。別のフィーダー細胞型は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)であり得る。一般に、様々なフィーダー細胞を一部使用して、多能性を維持し、特定の系統に分化を指示し、増殖能力を高め、エフェクター細胞などの特殊化した細胞型への成熟を促進することができる。
【0100】
本明細書で使用されるとき、「フィーダーフリー」(FF)環境とは、フィーダー又は間質細胞を本質的に含まない、及び/又はフィーダー細胞の培養によって前処理されていない、培養条件、細胞培養又は培養培地などの環境を指す。「前処理された」培地は、フィーダー細胞が培地内で一定期間、例えば少なくとも1日間培養された後に回収された培地を指し、したがって、培地中で培養されたフィーダー細胞によって分泌される増殖因子及びサイトカインを含む、多くのメディエーター物質を含有する。いくつかの実施形態では、フィーダーフリー環境は、フィーダー細胞又は間質細胞の両方を含まず、フィーダー細胞の培養によって前処理もされていない。
【0101】
iPSC及びそれから分化した由来非多能性細胞のゲノム編集若しくは改変、又は非多能性細胞及びそれからリプログラミングされた由来iPSCのゲノム編集若しくは改変との関連で使用されるときの「機能的」とは、(1)遺伝子レベルでは、直接ゲノム編集若しくは改変によって、又は最初にゲノム操作された開始細胞からの分化若しくはそのリプログラミングを介した「継代」によって達成される、所望の細胞発生段階での誘導可能な若しくは一時的な発現など、ノックイン、ノックアウト、ノックダウン遺伝子発現、トランスジェニック若しくは制御された遺伝子発現の成功、又は(2)細胞レベルでは、(i)直接ゲノム編集によって前述の細胞で得られる遺伝子発現改変、(ii)最初にゲノム操作された開始細胞からの分化若しくはそのリプログラミングを介した「継代」によって前述の細胞に維持される遺伝子発現改変、(iii)前述の細胞のより初期の発生段階においてのみ出現するか、若しくは分化若しくはリプログラミングを介して前述の細胞を生じる開始細胞においてのみ出現する遺伝子発現改変の結果としての前述の細胞での下流の遺伝子調節、若しくは(iv)iPSC、前駆細胞又は脱分化した細胞起源で行われたゲノム編集若しくは改変に最初に由来する、成熟細胞産物内に示される増強された若しくは新たに獲得された細胞機能若しくは属性、を介しての細胞機能/特徴の除去、付加、若しくは変更の成功、を指す。
【0102】
HLAクラスI欠損、HLAクラスII欠損、又はその両方を含む「HLA欠損」とは、HLAクラスIタンパク質ヘテロ二量体及び/又はHLAクラスIIヘテロ二量体を含む完全なMHC複合体の表面発現のレベルが不足している、又はもはや維持されていない、又は低減している細胞を指し、減少又は低減したレベルが、他の細胞又は合成方法によって自然に検出可能なレベルよりも低くなっている。
【0103】
本明細書で使用されるとき、「改変されたHLA欠損iPSC」は、改善された分化能、抗原標的化、抗原提示、抗体認識、持続性、免疫回避、抑制に対する耐性、増殖、共刺激、サイトカイン刺激、サイトカイン産生(オートクリン又はパラクリン)、走化性、及び細胞傷害性、例えば、非古典的HLAクラスIタンパク質(例えば、HLA-E及びHLA-G)、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、CD16 Fc受容体、BCL11b、NOTCH、RUNX1、IL15、4-1BB、DAP10、DAP12、CD24、CD3ζ、4-1BBL、CD47、CD113、及びPDL1に関連するがこれらに限定されないタンパク質を発現する遺伝子を導入することによって更に改変されるHLA欠損iPSCを指す。「改変されたHLA欠損」の細胞には、iPSC以外の細胞も含まれる。
【0104】
「Fc受容体」はFcRと略され、認識される抗体の種類に基づいて分類される。例えば、最も一般的なクラスの抗体IgGに結合するものはFc-ガンマ受容体(FcγR)と呼ばれ、IgAに結合するものはFc-アルファ受容体(FcαR)と呼ばれ、IgEに結合するものはFc-イプシロン受容体(FcεR)と呼ばれる。FcRのクラスは、それらを発現する細胞(マクロファージ、顆粒球、ナチュラルキラー細胞、T及びB細胞)と各受容体のシグナル伝達特性によっても区別される。Fc-ガンマ受容体(FcγR)には、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)など、分子構造が異なるために抗体親和性が異なるいくつかのメンバーが含まれる。
【0105】
CFcRと略される「キメラFc受容体」は、天然の膜貫通及び/若しくは細胞内シグナル伝達ドメインが改変されたか、又は非天然の膜貫通及び/若しくは細胞内シグナル伝達ドメインで置き換えられた操作されたFc受容体を記載するために使用される用語である。キメラFc受容体のいくつかの実施形態では、膜貫通及びシグナル伝達ドメインの一方又は両方が非天然であることに加えて、1つ以上の刺激ドメインを操作されたFc受容体の細胞内部分に導入して、受容体の誘発による細胞活性化、増殖、及び機能を増強することができる。標的抗原への抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)とは異なり、キメラFc受容体は、Fc断片、又は抗体のFc領域、又はエンゲージャー若しくは結合分子に含まれるFc領域に結合し、標的細胞を近傍に近づけるか、又は近づけなくとも、分子に結合して細胞機能を活性化する。例えば、Fcγ受容体は、細胞外ドメインでのIgGの結合に応答し、それによりCFcRを生成する細胞内領域において選択された膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、及び/又はシグナル伝達ドメインを含むように操作され得る。一例では、CFcRは、その膜貫通ドメイン及び/又は細胞内ドメインを置き換えることにより、Fcγ受容体であるCD16を操作することによって産生される。CD16ベースのCFcRの結合親和性を更に改善させるために、CD64の細胞外ドメイン又はCD16の高親和性バリアント(例えば、F176V)を組み込むことができる。高親和性CD16細胞外ドメインが含まれるCFcRのいくつかの実施形態では、197位にセリンを含むタンパク質分解性切断部位が除去されているか、又は受容体の細胞外ドメインが非切断性であるように置き換えられて、すなわち、シェディングされないようになり、これにより、hnCD16ベースのCFcRが取得される。
【0106】
FcγR受容体であるCD16には、Fc受容体FcγRIIIa(CD16a)とFcγRIIIb(CD16b)の2つのアイソフォームがあることが確認されている。CD16aは、標的細胞に付着した単量体IgGに結合してNK細胞を活性化し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を促進する、NK細胞によって発現される膜貫通タンパク質である。本明細書で使用されるとき、「高親和性CD16」、「非切断性CD16」、又は「高親和性非切断性CD16」(hnCD16と略される)は、CD16の天然又は非天然バリアントを指す。野生型CD16は親和性が低く、NK細胞が活性化されると、白血球上の様々な細胞表面分子の細胞表面密度を調節するタンパク質分解切断プロセスである外部ドメインシェディングに供される。F176V及びF158Vは、高い親和性を有する例示的なCD16多型バリアントである。膜近位領域(189位~212位)における切断部位(195位~198位)が変更又は排除されたCD16バリアントは、シェディングしない。切断部位及び膜近位領域は、WO2015/148926に詳細に記載されており、その完全な開示は参照により本明細書に組み込まれる。CD16のS197Pバリアントは、CD16の非切断性バージョンである。F158VとS197Pの両方を含むCD16バリアントは親和性が高く、非切断性である。別の例示的な高親和性非切断性CD16(hnCD16)バリアントは、CD64外部ドメインの3つのエクソンの1つ以上に由来する外部ドメインを含む操作されたCD16である。
【0107】
I.増強された特性を持つ養子細胞療法に有用な細胞及び組成物
本明細書で提供されるのは、iPSCから分化した誘導細胞の治療特性を増強しながら、iPSC及びその誘導細胞の分化能及び細胞発生生物学に影響を与えることなくクローンiPSCの調節回路を体系的に操作する戦略である。iPSC由来細胞は機能的に改善されており、選択的モダリティの組み合わせがゲノム操作を通じてiPSCレベルで細胞に導入された後の養子細胞療法に適している。本発明以前には、提供された1つ以上の遺伝子編集を含む改変されたiPSCが修飾された活性を保持しながら依然として細胞発生に入る能力、及び/又は成熟して機能的分化細胞を生成する能力を有するかどうかは不明であった。iPSCから指示された細胞分化中の予期しない失敗は、発生段階の特定の遺伝子発現又はその欠如、HLA複合体提示の要件、導入された表面発現モダリティのタンパク質シェディング、及び細胞の表現型及び/又は機能の変化を可能にする分化プロトコルの再構成の必要性を含むがこれらに限定されない側面に起因する。本出願は、本明細書で提供される1つ以上の選択されたゲノム改変がiPSC分化能に悪影響を及ぼさないこと、並びに操作されたiPSCに由来する機能エフェクター細胞が、iPSC分化後にエフェクター細胞に保持される、個々の又は組み合わせたゲノム改変に起因する増強及び/又は獲得した治療特性を有することを示した。
【0108】
1.hnCD16ノックイン
上記で考察したように、CD16は、Fc受容体FcγRIIIa(CD16a;NM_000569.6)及びFcγRIIIb(CD16b;NM_000570.4)という2つのアイソフォームとして同定されている。CD16aは、標的細胞に付着した単量体IgGに結合してNK細胞を活性化し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を促進する、NK細胞によって発現される膜貫通タンパク質である。CD16bはヒト好中球によって排他的に発現する。本明細書で使用されるとき、「高親和性CD16」、「非切断性CD16」、「高親和性非切断性CD16」、又は「hnCD16」は、様々なCD16バリアントを指す。野生型CD16は親和性が低く、NK細胞が活性化されると、白血球上の様々な細胞表面分子の細胞表面密度を調節するタンパク質分解切断プロセスである外部ドメインシェディングに供される。F176V(いくつかの刊行物ではF158Vとも呼ばれる)は、高親和性を有する例示的なCD16多型アレル/バリアントであり、一方、S197Pバリアントは、CD16の遺伝子操作された非切断性バージョンの一例である。F176VとS197Pの両方を含む操作されたCD16バリアントは、高い親和性を有し、非切断性であり、これは、WO2015/148926により詳細に記載されており、その完全な開示は、参照により本明細書に組み込まれる。更に、CD16の外部ドメインがCD64の外部ドメインの少なくとも一部で本質的に置き換えられたキメラCD16受容体は、ADCCを実行できるCD16受容体の望ましい高親和性と切断不可能な機能も実現できる。いくつかの実施形態では、キメラCD16の置換外部ドメインは、CD64(UniPRotKB_P12314又はそのアイソフォーム又は多型バリアント)のEC1、EC2、及びEC3エクソンのうちの1つ以上を含む。
【0109】
したがって、いくつかの実施形態では、高親和性非切断性CD16受容体(hnCD16)は、F176VとS197Pの両方を含み、いくつかの実施形態では、F176Vを含み、切断領域が除去されている。いくつかの他の実施形態では、hnCD16は、例示的な配列である、それぞれがCD64外部ドメインの少なくとも一部を含む配列番号1~3のいずれかと比較されるとき、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%、又はその間の任意のパーセンテージの同一性を有する配列を含む。配列番号1~3は、それぞれ、配列番号4~6を例示することによりコードされる。本明細書及び本出願全体で使用されるように、2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要のあるギャップの数と各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)である。配列の比較と2つの配列間の同一性パーセントの決定は、当該技術分野で認識されている数学的アルゴリズムを使用して実行できる。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
したがって、本明細書で提供されるのは、本明細書で企図及び説明されている他の編集の中でも特に、外因性CD16(例えば、高親和性非切断性CD16受容体(hnCD16))を含むように遺伝子操作されたクローンiPSCであり、遺伝子操作されたiPSCは、iPSCに導入された外因性CD16を含むエフェクター細胞に分化することができる。いくつかの実施形態では、外因性CD16を含む由来エフェクター細胞はNK細胞である。いくつかの実施形態では、外因性CD16を含む由来エフェクター細胞はT細胞である。iPSC又はそれからの誘導細胞で発現する外因性CD16は、ADCC抗体又はその断片だけでなく、当該外因性CD16及びそのバリアントのCD16又はCD64の細胞外結合ドメインを認識する二重特異性、三重特異性、又は多重特異性のエンゲージャー又はバインダーへの結合にも高い親和性を示す。二重特異性、三重特異性、又は多重特異性のエンゲージャー又はバインダーについては、本出願で以下で更に説明する(以下を参照されたい)。このように、本出願は、以下で更に詳述する状態、疾患、又は感染症の治療における治療的使用に十分な量で、誘導エフェクター細胞上で発現する外因性CD16の細胞外ドメインとの高親和性結合を介して1つ以上の予め選択されたADCC抗体が予めロードされた、誘導エフェクター細胞又はその細胞集団を提供し、上記外因性CD16は、CD64の、又はF176V及びS197Pを有するCD16の細胞外結合ドメインを含む。
【0114】
いくつかの他の実施形態では、hnCD16の天然のCD16膜貫通ドメイン及び/又は細胞内ドメインは、非天然の膜貫通ドメイン、非天然の刺激ドメイン、及び/又は非天然のシグナル伝達ドメインを含むキメラFc受容体(CFcR)が産生されるように、更に改変又は置換される。本明細書で使用される「非天然」という用語は、膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、及び/又はシグナル伝達ドメインが、細胞外ドメインを提供する受容体以外の異なる受容体に由来することを意味する。本明細書での例示では、CD16又はそのバリアントに基づくCFcRは、CD16に由来する膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、又はシグナル伝達ドメインを有さない。いくつかの実施形態では、外因性のCD16ベースのCFcRは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、又はT細胞受容体ポリペプチドに由来する非天然の膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、外因性のCD16ベースのCFcRは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、又はNKG2Dポリペプチドに由来する非天然の刺激/阻害ドメインを含む。いくつかの実施形態では、外因性のCD16ベースのCFcRは、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(4-1BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、又はNKG2Dポリペプチドに由来する非天然のシグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、提供されるキメラ受容体は、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、及びNKG2Dポリペプチドのうちの1つに両方が由来する膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインを含む。CD16ベースのキメラFc受容体の特定の一実施形態は、NKG2Dの膜貫通ドメイン、2B4の刺激ドメイン、及びCD3ζのシグナル伝達ドメインを含み、hnCD16の細胞外ドメインは、CD64又はCD16の細胞外ドメインの全長又は部分配列に由来し、CD16の細胞外ドメインはF176V及びS197Pを含む。CD16ベースのキメラFc受容体の別の一実施形態は、CD3ζの膜貫通ドメイン及びシグナル伝達ドメインを含み、hnCD16の細胞外ドメインは、CD64又はCD16の細胞外ドメインの全長又は部分配列に由来し、CD16の細胞外ドメインはF176V及びS197Pを含む。
【0115】
上述のようなCD16ベースのキメラFc受容体の様々な実施形態は、抗体又はその断片のFc領域に、又は、二重特異性、三重特異性、若しくは多重特異性のエンゲージャー若しくはバインダーのFc領域に、高い親和性で結合することができる。結合すると、キメラ受容体の刺激ドメイン及び/又はシグナル伝達ドメインは、エフェクター細胞の活性化及びサイトカイン分泌、並びに抗体が、又は腫瘍抗原結合成分及びFc領域を有する上記の二重特異性、三重特異性、若しくは多重特異性のエンゲージャー若しくはバインダーが標的とする腫瘍細胞の殺傷を可能にする。理論に制限されることなく、CD16ベースのキメラFc受容体の、非天然の膜貫通、刺激及び/若しくはシグナル伝達ドメインを通じて、又は外部ドメインへのエンゲージャーの結合を通じて、CFcRはエフェクター細胞の殺傷能力に寄与し得、エフェクター細胞の増殖及び/又は増殖の可能性を増加させる。抗体及びエンゲージャーは、抗原を発現している腫瘍細胞及びCFcRを発現しているエフェクター細胞を互いに近接させることができ、これも腫瘍細胞の殺傷の増強に寄与する。二重特異性、三重特異性、多重特異性エンゲージャー又はバインダーのための例示的な腫瘍抗原には、B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、及びROR1が含まれるが、これらに限定されない。腫瘍細胞を攻撃する際にCD16ベースのCFcRを発現するエフェクター細胞を結合させるのに適したいくつかの非限定的な例示的な二重特異性、三重特異性、多重特異性のエンゲージャー又はバインダーには、CD16(又はCD64)-CD30、CD16(又はCD64)-BCMA、CD16(又はCD64)-IL15-EPCAM、及びCD16(又はCD64)-IL15-CD33が含まれる。
【0116】
NK細胞活性化に続いて細胞表面から切断される初代NK細胞によって発現される内因性CD16受容体とは異なり、誘導NK細胞の種々の非切断性バージョンのCD16は、CD16のシェディングを回避し、一定の発現を維持する。誘導NK細胞では、非切断性CD16は、改善した細胞機能の指標であるTNFα及びCD107aの発現を増加させる。非切断性CD16はまた、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、及び二重、三重、又は多重特異性エンゲージャーの結合も増強する。ADCCは、抗体でコーティングされた標的細胞へのCD16の結合を介したNK細胞媒介性溶解のメカニズムである。由来NK細胞に導入されたhnCD16の追加の高親和性特性により、細胞療法を必要とする対象に細胞を投与する前に、hnCD16を介したADCC抗体のNK細胞へのin vitroローディングも可能になる。提示されるように、hnCD16は、いくつかの実施形態においてF176V及びS197Pを含み得、又は配列番号1、2、若しくは3によって例示されるようにCD64に由来する完全又は部分的な外部ドメインを含み得、又は非天然の膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、及びシグナル伝達ドメインのうちの少なくとも1つを更に含み得る。開示されるように、本出願はまた、以下で更に詳しく説明するように、状態、疾患、又は感染症の治療における治療的使用に十分な量の1つ以上の予め選択されたADCC抗体が予めロードされた、誘導NK細胞又はその細胞集団を提供する。
【0117】
初代NK細胞とは異なり、初代供給源(すなわち、末梢血、臍帯血、又は他のドナー組織などの天然/天然源)由来の成熟T細胞はCD16を発現しない。発現した外因性の非切断性CD16を含むiPSCが、T細胞の発生生物学を損なうことなく、外因性CD16を発現するだけでなく、獲得したADCCメカニズムを通じて機能を実行できる機能的な誘導T系統細胞に分化できることは予想外であった。誘導T系統細胞で獲得したこのADCCは、二重標的化、及び/又はCAR-T細胞療法でよく発生する、低下若しくは消失したCAR-T標的抗原の発現、若しくはCARによる認識を回避する変異抗原の発現を伴って腫瘍が再発する、抗原エスケープを救済するためのアプローチとして更に使用できる。上記誘導T系統細胞が、外因性CD16(機能的バリアント及びCD16ベースのCFcRを含む)発現を介して獲得したADCCを含み、抗体が、CARが標的とする腫瘍抗原とは異なる腫瘍抗原を標的とする場合、抗体を使用してCAR-T抗原エスケープを救済し、CAR-T治療でよく見られる標的腫瘍の再発又は再発を軽減又は防止できる。二重標的化を達成しながら抗原エスケープを低減及び/又は防止するこのような戦略は、1つ以上のCARを発現するNK細胞にも同様に適用できる。この抗原エスケープの低減及び防止戦略で使用できる様々なCARについて、以下で更に説明する。
【0118】
このように、本発明の実施形態は、外因性CD16を含む誘導T系統細胞を提供する。いくつかの実施形態では、誘導T系統細胞に含まれるCD16は、F176V及びS197Pを含むhnCD16である。他のいくつかの実施形態では、誘導T系統細胞に含まれるhnCD16は、配列番号1、2、若しくは3によって例示されるようにCD64に由来する完全若しくは部分的な外部ドメインを含み、又は非天然の膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、及びシグナル伝達ドメインのうちの少なくとも1つを更に含み得る。説明されているように、そのような誘導T系統細胞は、抗体の治療効果を高めるためにADCCによって媒介されたモノクローナル抗体で腫瘍を標的とする獲得されたメカニズムを有する。開示されるように、本出願はまた、以下で更に詳しく説明するように、状態、疾患、又は感染症の治療における治療的使用に十分な量の1つ以上の予め選択されたADCC抗体が予めロードされた、誘導T系統細胞又はその細胞集団を提供する。
【0119】
本出願において更に提供されるのは、外因性CD16を含むがこれに限定されない、本明細書において提供されるような少なくとも1つの表現型を有する、ソーティングされた単一細胞及び増殖されたクローンの操作されたiPSCを含むマスター細胞バンクであり、この細胞バンクは、更なるiPSC操作のためのプラットフォームと、組成が明確かつ均一であり、費用効果の高い様式でかなりの規模で大量生産することができる、誘導NK及びT細胞を含むがこれに限定されない、既製の操作された均質な細胞療法製品を製造するための再生可能な供給源を提供する。
【0120】
2.CARの発現
遺伝子操作されたiPSC及びその誘導エフェクター細胞に適用可能なものは、当該技術分野で知られている任意のCARの設計であり得る。CAR、すなわちキメラ抗原受容体は、抗原認識領域を含む外部ドメイン、膜貫通ドメイン、及び内部ドメインを一般に含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、外部ドメインは、シグナルペプチド若しくはリーダー配列及び/又はスペーサーを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、誘導多能性幹細胞(iPSC)、及びCARを含むように操作されたiPSCから分化した誘導エフェクター細胞において発現され、機能するように設計される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、iPSC分化を破壊せず、かつ/又は所望のエフェクター細胞型に向けられたiPSCの分化を促進するように設計される。いくつかの実施形態では、CARは、エフェクター細胞の増殖、持続性、生存率、細胞傷害性、アロ拒絶に対する耐性、腫瘍浸透、遊走、バイスタンダー免疫細胞を活性化及び/若しくは動員する能力、並びに/又は腫瘍抑制を克服する能力を増強する。実施形態では、本明細書で提供されるCARはまた、細胞株の細胞、及び初代供給源、すなわち、末梢血、臍帯血、又は他のドナー組織などの天然/天然供給源からの細胞において、直接発現させることもできる。
【0121】
いくつかの実施形態では、CARは、当該CARを発現するT系統細胞又はNK系統細胞のいずれかを活性化するのに適している。いくつかの実施形態では、CARは、NK特異的シグナル伝達成分を含むことによってNK細胞特異的である。特定の実施形態では、当該T系統細胞は、CAR発現iPSCに由来し、誘導T系統細胞は、Tヘルパー細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、αβT細胞、γδT細胞、又はそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、上記NK系統細胞は、CAR発現iPSCに由来する。いくつかの実施形態では、NK細胞特異的シグナル伝達成分を含むCARはまた、T細胞、又は他の細胞型に適している。いくつかの実施形態では、CARは、T細胞特異的シグナル伝達成分を含むことによってT細胞特異的である。いくつかの実施形態では、T細胞特異的シグナル伝達成分を含むCARはまた、NK細胞、又は他の細胞型に適している。いくつかの実施形態では、CARは、NKT細胞特異的シグナル伝達成分を含むことによってNKT細胞特異的である。いくつかの実施形態では、NKT細胞特異的シグナル伝達成分を含むCARはまた、NK若しくはT細胞、又は他の細胞型に適している。
【0122】
特定の実施形態では、上記抗原認識領域は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダIg、サメ重鎖のみ抗体(VNAR)、Ig NAR、キメラ抗体、組換え抗体、又はその抗体断片を含む。抗体断片の非限定的な例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、Fv、一本鎖抗原結合断片(scFv)、(scFv)2、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗原結合断片(sdAb、ナノボディ)、組換え重鎖のみ抗体(VHH)、及び抗体全体の結合特異性を維持するその他の抗体断片が含まれる。遺伝子操作されたiPSC及び誘導エフェクター細胞に含まれるCARによって標的化され得る抗原の非限定的な例には、ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CCR4、癌胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CD269(BCMA)、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原(例えば、細胞表面抗原)、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソテリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、癌-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBCI、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、及び当該技術分野で公知の様々な病原性抗原が含まれる。病原体の非限定的な例には、疾患を引き起こす可能性のある、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、及び原生動物が含まれる。
【0123】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたiPSC及び誘導エフェクター細胞に含まれるCARの膜貫通ドメインは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、及びT細胞受容体ポリペプチドの天然又は改変された膜貫通領域の全長又は少なくとも一部を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたiPSC及び誘導エフェクター細胞に含まれるCARの内部ドメイン(又は細胞内ドメイン)のシグナル伝達ペプチドは、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(4-1BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、又はNKG2Dのポリペプチドの全長又は少なくとも一部を含む。一実施形態では、CARのシグナル伝達ペプチドは、CD3ζの少なくとも1つのITAM(免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ)に対して、少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0125】
特定の実施形態では、上記内部ドメインは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域を更に含む。上記共刺激シグナル伝達領域は、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、若しくはNKG2D、又はそれらの任意の組み合わせのポリペプチドの全長又は少なくとも一部を含む。一実施形態では、本出願において提供される細胞に適用可能なCARは、CD28に由来する共刺激ドメイン、及び配列番号7に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列によって表されるCD3ζの天然又は改変ITAM1を含むシグナル伝達ドメインを含む。更なる実施形態において、CD28に由来する共刺激ドメイン及びCD3ζの天然又は改変ITAM1を含むCARはまた、CD28に由来するヒンジドメイン及び膜貫通ドメインを含み、scFvはヒンジを介して膜貫通ドメインに接続され得、CARは、配列番号8に対してと少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列を含む。
【0126】
【0127】
別の実施形態では、本出願において提供される細胞に適用可能なCARは、NKG2Dに由来する膜貫通ドメイン、2B4に由来する共刺激ドメイン、及び配列番号9に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列によって表される天然又は改変CD3ζを含むシグナル伝達ドメインを含む。NKG2Dに由来する膜貫通ドメイン、2B4に由来する共刺激ドメイン、及び天然又は改変されたCD3ζを含むシグナル伝達ドメインを含む上記CARは、CD8ヒンジを更に含み得、そのような構造のアミノ酸配列は、配列番号10に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のものである。
【0128】
【0129】
【0130】
非限定的なCAR戦略には、一対の細胞内ドメインの二量体化による、ヘテロ二量体の、条件的に活性化されたCAR(例えば、米国特許第9,587,020号を参照されたい)、抗原結合、ヒンジ、及び内部ドメインの相同組換えでCARを生成する、スプリットCAR(例えば、米国特許出願公開第2017/0183407号を参照されたい)、それぞれ抗原結合ドメイン及びシグナル伝達ドメインに接続された2つの膜貫通ドメイン間の非共有結合を可能にする多重鎖CAR(例えば、米国特許出願公開第2014/0134142号を参照されたい)、二重特異性抗原結合ドメインを有するCAR(例えば、米国特許第9,447,194号を参照されたい)、又は同じ若しくは異なる抗原若しくはエピトープを認識する一対の抗原結合ドメインを有するCAR(例えば、米国特許第8,409,577号を参照されたい)、又はタンデムCAR(例えば、Hegde et al.,J Clin Invest.2016;126(8):3036-3052を参照されたい)、誘導可能なCAR(例えば、米国特許出願公開第2016/0046700号、同第2016/0058857号、同第2017/0166877号を参照されたい)、切り替え可能なCAR(例えば、米国特許出願公開第2014/0219975号を参照されたい)、並びに当技術分野で公知の任意の他の設計が更に含まれる。
【0131】
したがって、本明細書で提供されるのは、ゲノム操作されたiPSCの分化から得られた誘導細胞を含み、iPSCと誘導細胞の両方は、外因性CD16の発現を含むがこれに限定されない追加の改変されたモダリティと共に1つ以上のCARを含む。特定の一実施形態では、iPSC及びその誘導細胞は、hnCD16、及び選択された腫瘍又はウイルス抗原を標的化するCARを含み、ここで、誘導細胞はNK又はT系統細胞であり、そして誘導細胞は、hnCD16結合を介して、同じ腫瘍の二重標的化を達成しながら腫瘍抗原エスケープを回避又は低減するために、CARによって標的化されたものとは異なる腫瘍抗原を標的とする、ADCC抗体又は二重特異性、三重特異性、多重特異性エンゲージャーの1つ以上と共に使用され得る。
【0132】
更なる実施形態では、CARを含むiPSC及びその誘導T系統細胞は、TCR α又はβ定常領域(TRAC又はTRBC)に挿入されたCARを有し、TCRノックアウトをもたらし、必要に応じてCAR発現を内因性TCRプロモーターの制御下に置く。追加のCAR挿入部位には、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGITが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、操作されたiPSCに由来する誘導TCR陰性CAR-T細胞は、CD16(F176V及び/又はS197P)に天然な、又はCD64に由来する外部ドメイン、並びに天然又は非天然の膜貫通、刺激、及びシグナル伝達ドメインを有する外因性CD16を更に含む。TCR nullと、提供される内部ドメインのうちの1つを含むCARとを含むiPSC誘導細胞の特定の一実施形態では、上記誘導細胞はT系統細胞である。別の実施形態では、CARを含むiPSC及びその誘導NK系統細胞は、CARをNKG2A遺伝子座又はNKG2D遺伝子座に挿入し、NKG2A又はNKG2Dノックアウトをもたらし、必要に応じてCAR発現を内因性NKG2A又はNKG2Dプロモーターの制御下に置く。NKG2A又はNKG2D null及びCARを含むiPSC誘導細胞の特定の一実施形態では、上記誘導細胞はNK系列細胞である。
【0133】
3.外因的に導入されたサイトカイン及び/又はサイトカインシグナル伝達
臨床的に適切なサイトカインの全身的高用量投与を回避することにより、そのような行為による用量制限毒性のリスクが減少し、サイトカイン媒介性細胞自律性が確立される。可溶性サイトカインを追加投与する必要なしにリンパ球自律性を達成するために、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及び/又はそれらの対応する受容体のうちの1つ以上の部分長又は全長ペプチドを含むシグナル伝達複合体が細胞に導入されて、サイトカイン自体の発現を伴って又は伴わずに、サイトカインのシグナル伝達を可能にし、それによってサイトカインの毒性のリスクを低減して、細胞の増殖(growth)、増殖(proliferation)、増殖(expansion)、及び/又はエフェクター機能を維持又は改善する。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達のための導入されたサイトカイン及び/又はそのそれぞれの天然又は改変された受容体(シグナル伝達複合体)は、細胞表面上で発現する。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達は構成的に活性化される。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達の活性化は誘導可能である。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達の活性化は、一過性及び/又は一時的である。
【0134】
IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18及びIL21を含むが、これらに限定されない、サイトカインのシグナル伝達のためのタンパク質複合体を細胞に導入するための様々なコンストラクト設計が、本明細書において提供される。
【0135】
図1は、IL15を例として使用したいくつかの構成設計を示す。
図1の設計のいずれかの膜貫通(TM)ドメインは、IL15受容体に対して天然であり得るか、又は任意の他の膜結合タンパク質の膜貫通ドメインで改変若しくは置換されてよい。
【0136】
設計1:IL15及びIL15Rαは、IL15のトランス提示を模倣する自己切断ペプチドを使用して、IL15のシス提示を排除することなく共発現される。
【0137】
設計2:IL15Rαはリンカーを介してC末端でIL15に融合されており、IL15のcis提示を排除することなくトランス提示を模倣し、IL15の膜結合を確保する。組換えタンパク質は、配列番号11に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含み、組換えタンパク質は、シグナルペプチドの下流にIL15プロペプチドを含む。配列番号12は、配列番号11のアミノ酸配列をコードする例示的なDNA配列を記載する。
【0138】
【0139】
設計3:短縮された細胞内ドメインを持つIL15Rαは、リンカーを介してC末端でIL15に融合され、IL15のトランス提示を模倣し、IL15の膜結合を維持し、シス提示及び/又はその細胞内ドメインを介した正常IL15Rによって媒介される他の潜在的なシグナル伝達経路を排除する。IL15Rαの細胞内ドメインは、受容体がIL15応答細胞で発現し、応答細胞が増殖して機能するために重要であると考えられている。そのような短縮化コンストラクトは、配列番号13に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の同一性のアミノ酸配列を含み、これは、配列番号14によって表される例示的な核酸配列によってコードされ得る。短縮化IL15/IL15Rαの一実施形態では、コンストラクトは、配列番号13の最後の4つのアミノ酸残基(KSRQ)を含まない。
【0140】
【0141】
【0142】
当業者は、上述のシグナルペプチド及びリンカー配列が例示であり、シグナルペプチド又はリンカーとしての使用に適したそれらのバリエーションを決して限定しないことを理解するであろう。当業者に既知であり利用可能な多くの好適なシグナルペプチド又はリンカー配列があり、当業者は、シグナルペプチド及び/又はリンカー配列が、シグナルペプチドによって導かれるか、又はリンカーによって連結される機能性ペプチドの活性を変えることなく、別の配列で置換され得ることを理解する。
【0143】
設計4:設計3のコンストラクトはエフェクター細胞の生存と増殖の促進に機能することが示されているため、IL15Rαの細胞質ドメインは、このような設計でIL15を備えたエフェクター細胞の自律機能に悪影響を与えずに省略できることを示しており、設計4は、設計3の別の機能する代替案を提供するコンストラクトであり、Sushiドメインを除いて、本質的にIL15Rα全体が削除され、一方の端でIL15と、他方において膜貫通ドメインと融合し(mb-Sushi)、必要に応じて、Sushiドメインと膜貫通ドメインの間のリンカーを含む。融合したIL5/mb-Sushiは、膜結合タンパク質の膜貫通ドメインを介して細胞表面に発現する。設計4などのコンストラクトでは、IL15の望ましいトランス提示のみが保持されている場合、cis提示を含む、IL15Rαを介した不要なシグナル伝達が排除される。いくつかの実施形態では、Sushiドメインと融合したIL15を含む成分は、配列番号15に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の同一性のアミノ酸配列を含み、これは、配列番号16によって表される例示的な核酸配列によってコードされ得る。
【0144】
【0145】
【0146】
当業者は、上述のシグナルペプチド及びリンカー配列が例示であり、シグナルペプチド又はリンカーとしての使用に適したそれらのバリエーションを決して限定しないことを理解するであろう。当業者に既知であり利用可能な多くの好適なシグナルペプチド又はリンカー配列があり、当業者は、シグナルペプチド及び/又はリンカー配列が、シグナルペプチドによって導かれるか、又はリンカーによって連結される機能性ペプチドの活性を変えることなく、別の配列で置換され得ることを理解する。
【0147】
設計5:天然又は改変されたIL15Rβは、リンカーを介してC末端でIL15に融合され、構成的シグナル伝達を可能にし、IL15膜結合及びトランス提示を維持する。
【0148】
設計6:天然又は改変された共通受容体γCは、サイトカインの構成的シグナル伝達及び膜結合トランス提示のために、リンカーを介してC末端でIL15に融合される。共通受容体γCは、共通ガンマ鎖又はCD132とも呼ばれ、IL2受容体サブユニットガンマ又はIL2RGとしても知られている。γCは、IL2、IL4、IL7、IL9、IL15及びIL21受容体を含むが、これらに限定されない、多くのインターロイキン受容体の受容体複合体に共通するサイトカイン受容体サブユニットである。
【0149】
設計7:IL15の不在下でホモ二量体を形成する操作されたIL15Rβは、サイトカインの構成的シグナル伝達を生成するのに有用である。
【0150】
いくつかの実施形態では、サイトカインIL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18及びIL21、並びに/又はそれらの受容体、の1つ以上は、
図1に示される設計の1つ以上を使用してiPSCに、及びiPSC分化時にその誘導細胞に導入され得る。いくつかの実施形態では、IL2又はIL15の細胞表面発現及びシグナル伝達は、設計1~7のいずれか1つに示されるコンストラクトを介する。いくつかの実施形態では、IL4、IL7、IL9、又はIL21の細胞表面発現及びシグナル伝達は、共通受容体又はサイトカイン特異的受容体のいずれかを使用することにより、設計5、6、又は7に示されるコンストラクトを介する。いくつかの実施形態では、IL7の細胞表面発現及びシグナル伝達は、共通受容体又はIL4受容体などのサイトカイン特異的受容体のいずれかを使用することにより、設計5、6、又は7に示されるコンストラクトを介する。
図1の設計のいずれかの膜貫通(TM)ドメインは、それぞれのサイトカイン受容体に対して天然であり得るか、又は任意の他の膜結合タンパク質の膜貫通ドメインで改変若しくは置換されてよい。
【0151】
CARと外因性サイトカイン及び/又はサイトカイン受容体シグナル伝達(シグナル伝達複合体、又は「IL」)の両方を含むiPSC及びそれからの誘導細胞では、CARとILは別々のコンストラクトで発現され得るか、CARとILの両方を含むバイシストロニックなコンストラクトで共発現され得る。いくつかの更なる実施形態では、シグナル伝達複合体は、
図1のコンストラクト設計のいずれかによって表される形態であり、例えば、CAR-2A-IL15又はIL15-2A-CARのように例示される自己切断2Aコード配列を介してCAR発現コンストラクトの5’又は3’末端のいずれかに連結され得る。そのため、IL15とCARは単一のオープンリーディングフレーム(ORF)にある。一実施形態では、CAR-2A-IL15又はIL15-2A-CARコンストラクトは、
図1の設計3に示されるようなIL15を含む。別の実施形態では、CAR-2A-IL15又はIL15-2A-CARコンストラクトは、
図1の設計4に示されるようなIL15を含む。更に別の実施形態では、CAR-2A-IL15又はIL15-2A-CARコンストラクトは、
図1の設計7に示されるようなIL15を含む。CAR-2A-IL15又はIL15-2A-CARが発現すると、自己切断2Aペプチドにより、発現されたCARとIL15が解離し、解離したIL15を細胞表面に提示することができるようになる。CAR-2A-IL15又はIL15-2A-CARのバイシストロニックな設計により、タイミングと数量の両方で、例えば、単一のORFの発現のための誘導可能なプロモーターなどの、組み込むために選択され得る同一の制御メカニズムの下で、CARとIL15の協調された発現を可能にする。自己切断ペプチドは、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)、Thosea asignaウイルス(TaV)、及びブタテシオウイルス1(PTV-I)(Donnelly,ML,et al,J.Gen.Virol,82,1027-101(2001);Ryan,MD,et al.,J.Gen.Virol.,72,2727-2732(2001))などのアフトウイルス属、並びにタイロウイルス(例えば、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス)及び脳心筋炎ウイルスなどのカルジオウイルス属を含む、ピコルナウイルス科のメンバーで見出される。FMDV、ERAV、PTV-1、及びTaVに由来する2Aペプチドは、それぞれ「F2A」、「E2A」、「P2A」、及び「T2A」と呼ばれることもある。
【0152】
IL15について本明細書に開示されるバイシストロニックなCAR-2A-IL15又はIL15-2A-CARの実施形態は、本明細書で提供される他の任意のサイトカイン、例えばIL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL18、及びIL21の発現も企図される。いくつかの実施形態では、IL2の細胞表面発現及びシグナル伝達は、設計1~7のいずれかに示されるコンストラクトを介する。他のいくつかの実施形態では、IL4、IL7、IL9、又はIL21の細胞表面発現及びシグナル伝達は、共通受容体及び/又はサイトカイン特異的受容体のいずれかを使用する、設計5、6、又は7に示されるコンストラクトを介する。
【0153】
CAR+、IL+及びCD16+を含む1つ以上の属性を含む遺伝子型を含むiPSC及びその誘導エフェクター細胞は、lig-(リガンド陰性)、inR+(不活性化CAR陽性)、cs-CD3+(細胞表面CD3陽性)、En+(エンゲージャー陽性)、及びAb+(抗体又はチェックポイント阻害剤陽性)のうちの1つ以上を含む、表1中の更なる属性のうちのいずれか1つを更に含み得る。
【0154】
4.不活性化CAR及びアロ抗原
CAR、すなわちキメラ抗原受容体は、本明細書に前述したように、抗原認識領域を含む外部ドメイン、膜貫通ドメイン、及び内部ドメインを一般に含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、外部ドメインは、シグナルペプチド若しくはリーダー配列及び/又はスペーサーを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、内部ドメインは、CARを発現するエフェクター細胞を活性化するシグナル伝達ペプチドを更に含むことができる。ここで、表1においてinR+と略記される「不活性化CAR」は、活性化された、又はアロ反応性化されたT、B又はNK細胞上で発現され、それによってそのような細胞を排除又は減少させる、上方調節された表面タンパク質(本明細書においてアロ抗原又はリガンドとも呼ばれ、表1においてlig-と略記される)に特異的な結合ドメインを含むアンタゴニストCARである。操作されたiPSCに由来する合成エフェクター細胞においてそのような不活性化CARを発現させることは、上記誘導エフェクター細胞を使用する既製の同種異系養子細胞療法設定における同種拒絶制御のための解決策である。
【0155】
同種拒絶の問題を回避するには、同種異系レシピエントの組織適合性のために、複数のHLAクラスI及びクラスIIタンパク質が一致している必要があると考えられる。MHCマッチングなしで、同種異系養子細胞療法において研究されてきた1つのアプローチは、HLAクラスIタンパク質及びHLAクラスIIタンパク質の両方の発現を排除又は実質的に低減することである。HLAクラスI欠損は、HLAクラスI遺伝子座(染色体6p21)の任意の領域の機能的欠失、又はベータ2ミクログロブリン(B2M)遺伝子、TAP1遺伝子、TAP2遺伝子、及びタパシンを含むが、これらに限定されない、HLAクラスI関連遺伝子の欠失若しくは発現レベルの低下によって達成できる。例えば、B2M遺伝子は、全てのHLAクラスIヘテロ二量体の細胞表面発現に不可欠な共通のサブユニットをコードする。B2M null細胞はHLA-I欠損である。HLAクラスII欠損は、RFXANK、CIITA、RFX5、及びRFXAPを含むがこれらに限定されないHLA-II関連遺伝子の機能的欠失又は減少によって達成できる。CIITAは転写コアクチベーターであり、クラスIIタンパク質の発現に必要な転写因子RFX5の活性化を通じて機能する。CIITA null細胞はHLA-II欠損である。しかしながら、HLAクラスI発現の欠如は、NK細胞による溶解に対する感受性を増加させる。更に、HLA-I及びHLA-IIの両方における欠損は、同種異系養子細胞のMHC以外のアロ抗原によって媒介されるアロ拒絶を依然として防止しない。更に、ライセンシング、アーミング、又はディスアーミングなど、HLA-I依存性NK細胞教育プロセスは、同種異系ドナー細胞がHLA-I十分である場合でさえ、同種異系ドナー細胞に対するレシピエントNK細胞の反応性、又は部分反応性を引き起こし得る、同種異系細胞に対する先天性免疫応答性に影響を及ぼすと考えられる。
【0156】
アロ反応性化された細胞の上方調節された表面タンパク質/リガンドには、CD40L、OX40、及び4-1BBが含まれるが、これらに限定されない。そのため、対応する不活性化CARは、CD40L-CAR、OX40-CAR、又は4-1BB-CARを含む。したがって、操作されたiPSCに由来する1つ以上の合成エフェクター細胞のレシピエントにおける活性化されたT細胞、B細胞及びNK細胞を排除又は低減することによって、アロ拒絶を回避しながら、同種異系エフェクター細胞においてHLA-I、又はHLA-II、又はその両方を無傷なまま維持する(すなわち、HLA-I野生型、又はHLA-II野生型、又はその両方を含む)ために、本明細書において提供されるようなiPSC及びそれに由来するエフェクター細胞は、少なくとも1つの不活性化CARを含み得る。更に、不活性化CAR発現エフェクター細胞集団の中でのフラトリサイドを回避するために、いくつかの実施形態では、iPSC及びそれに由来するエフェクター細胞は、上記不活性化CARによって特異的に標的化された表面タンパク質において更に陰性であり、したがって、CD40L-CAR/CD40L-、OX40-CAR/OX40-、又は4-1BB-CAR/4-1BB-などの遺伝子型を有する。いくつかの他の実施形態では、iPSC及びそれに由来するエフェクター細胞は、対応する不活性化CARを有しない表面タンパク質においてのみ陰性であり、そのような細胞は、エフェクター細胞を排除することなく、反応性細胞の上記表面タンパク質に対する抗体と組み合わせて使用することができる。
【0157】
5.TCR陰性細胞におけるCD3の細胞表面提示
T細胞の直接編集によって、又は改変された誘導T系統細胞を得るための供給源としてのiPSC編集によってのいずれかで、TCRアルファ又はTCRベータの定常領域(TRAC又はTRBC)を破壊することは、TCRneg T細胞を産生するためのアプローチの1つである。例えば、TRAC又はTRBC中の予め選択された位置で、TRAC若しくはTRBCの内因性プロモーターに、又は外因性プロモーターにのいずれかで作動可能に連結された2A配列の挿入は、TRAC又はTRBCの破壊(又はこの例では短縮化)及びTCR陰性細胞(TCRneg)をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、2Aなどの自己切断ペプチドを使用する標的化された短縮化又は破壊は、必要に応じて、短縮化又は破壊の位置での1つ以上の目的の外因性遺伝子の組み込みと同時に起こり得、組み込まれた遺伝子の発現は、組み込み時に、作動可能に連結された外因性プロモーターによって、又はTCRアルファ又はTCRベータの内因性プロモーターによって駆動され得、これは、TRAC又はTRBC遺伝子座に挿入された1つ以上の外因性遺伝子を発現させながら、TRAC又はTRBCノックアウト、ひいてはTCRnegをもたらす。
【0158】
特定の実施形態では、TCRneg細胞はiPSCである。別の実施形態では、TCRneg細胞はNK系統細胞である。本明細書で使用される場合、「TCR陰性」又は「TCRneg」という用語は、TCR遺伝子発現の破壊に起因するか(T系統細胞:初代又はiPSC由来T系統細胞などにおいて)、又はゲノム中にTCR遺伝子座が存在するにもかかわらずTCR遺伝子発現が天然に存在しないことに起因するか(例えば、iPSC、又はNK系統細胞:初代若しくはiPSC由来NK系統細胞)のいずれかである、内因性TCR発現の欠如を指す。その後の造血細胞へのクローン的に選択された操作されたiPSCの指示された分化は、TCR発現を伴わずに、iPSC由来免疫エフェクター細胞及び/又はその同種集団を生成することを可能にする。
【0159】
このアプローチを使用して得られたiPSC由来TCR陰性T系統細胞(外因性遺伝子組み込みあり又はなし)は、同種異系養子細胞療法において使用される場合、HLAマッチングを必要とせず、低減されたアロ反応性を有し、GvHD(移植片対宿主病)を予防することができる。しかしながら、TCR破壊はまた、細胞内でのCD3サブユニット遺伝子発現にもかかわらず、T細胞表面からのCD3シグナル伝達複合体の排除をもたらすことが見出されている。細胞表面CD3の欠如は、細胞表面CD3認識及び結合を必要とする技術(BiTE、BiKE、又はTRiKE(又は集合的にエンゲージャーと呼ばれる)技術、CD3/CD28 T細胞活性化ビーズ技術、及び抗CD3抗体又はCD3-CAR刺激技術を含むが、これらに限定されない)との不適合性に起因して、細胞の増殖及び/又は生存の能力を変化させ、細胞の機能的潜在能力を低下させ得る。TCR遺伝子の存在にもかかわらずTCRを発現しない細胞、例えば、NK又はNK前駆細胞については、細胞表面CD3複合体、又はその1つ以上のサブユニット若しくはサブドメイン(cs-CD3)は、抗体若しくはその機能的バリアント、及び/又は細胞表面CD3を認識する二重特異的若しくは多重特異的エンゲージャーを含むがこれらに限定されない分子と結合するための細胞表面トリガー受容体として機能することができる。cs-CD3+iPSC及びiPSC由来エフェクター細胞を得るための適用可能なコンストラクト及びゲノム編集方法及び組成物は、国際公開第2020/210398号に詳細に記載されており、その完全な開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0160】
6.エンゲージャー
エンゲージャーは、異なる抗体又はその断片の、2つ以上の単鎖可変断片(scFv)、又は他の機能的バリアント、からなる融合タンパク質であり、エフェクター細胞表面分子又は表面トリガー受容体に結合する少なくとも1つのscFv、及び標的細胞特異的表面分子を介して標的細胞に結合する少なくとも別の1つを有する。エンゲージャーの例には、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)、多重特異性キラー細胞エンゲージャー、又は複数の免疫細胞型と適合し得るユニバーサルエンゲージャーが含まれるが、これらに限定されない。エンゲージャーは、二重特異性又は多重特異性であり得る。このような二重特異性又は多重特異性エンゲージャーは、エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、及び/又は好中球)を腫瘍細胞に誘導し、免疫エフェクター細胞を活性化することができ、CAR-T細胞療法の利益を最大化する大きな可能性を示している。
【0161】
いくつかの実施形態では、エンゲージャーは、同時又は連続投与によって合成エフェクター細胞の集団と組み合わせて使用され、合成エフェクター細胞は、エンゲージャーによって認識される表面分子又は表面トリガー受容体を含む。いくつかの他の実施形態では、エンゲージャーは、iPSCを遺伝子操作すること、及び操作されたiPSCの指示された分化を通じて、合成エフェクター細胞によって発現される二重特異性抗体である。二重特異性若しくは多重特異性エンゲージャー認識、又はそのカップリングに使用できる例示的なエフェクター細胞表面分子又は表面トリガー受容体には、CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、及び本明細書に開示されるキメラFc受容体が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、エンゲージャー認識のために合成エフェクター細胞の表面に発現する外因性CD16は、本明細書に記載されるような、CD16(F176V及び必要に応じてS197Pを含む)又はCD64細胞外ドメイン、並びに天然又は非天然の膜貫通、刺激及び/又はシグナル伝達ドメインを含むhnCD16である。いくつかの実施形態では、エンゲージャー認識のためにエフェクター細胞の表面に発現するCD16は、CD16ベースのキメラFc受容体(CFcR)である。いくつかの実施形態では、CD16ベースのCFcRは、NKG2Dの膜貫通ドメイン、2B4の刺激ドメイン、及びCD3ζのシグナル伝達ドメインを含み、CD16の細胞外ドメインは、CD64又はCD16の細胞外ドメインの全長又は部分配列に由来し、CD16の細胞外ドメインは、F176V及び必要に応じてS197Pを含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、エンゲージャーのための標的細胞は、腫瘍細胞である。二重特異性又は多重特異性エンゲージャー認識のための例示的な腫瘍細胞表面分子には、B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、ROR1が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、二重特異性エンゲージャーは、CD3及びCD19に特異的な二重特異性抗体(CD3-CD19)である。別の実施形態では、二重特異性抗体は、CD16-CD30又はCD64-CD30である。別の実施形態では、二重特異性抗体は、CD16-BCMA又はCD64-BCMAである。更に別の実施形態では、二重特異性抗体はCD3-CD33である。
【0163】
更に別の実施形態では、二重特異性抗体は、エフェクター細胞と腫瘍細胞抗原結合ドメインとの間のリンカーを更に含む。例えば、改変されたIL15が、細胞増殖を促進するエフェクターNK細胞のためのリンカーとして使用される(いくつかの刊行物では、TriKE、又は三重特異性キラーエンゲージャーと呼ばれる)。一実施形態では、TriKEはCD16-IL15-EPCAM又はCD64-IL15-EPCAMである。別の実施形態では、TriKEはCD16-IL15-CD33又はCD64-IL15-CD33である。更に別の実施形態では、TriKEはNKG2C-IL15-CD33である。TriKEにおけるIL15はまた、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL18、及びIL21を含むが、これらに限定されない、他のサイトカインに由来し得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、二重特異性又は多重特異性のエンゲージャーのための表面トリガー受容体は、ときには細胞型に応じて、エフェクター細胞に対して内因性であり得る。他のいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法及び組成物を使用して、例えば、表1に列挙された遺伝子型を含むiPSCを更に操作し、T細胞、NK細胞、又はソースiPSCと同一の遺伝子型と表面トリガー受容体を含むその他のエフェクター細胞へのiPSCの分化を指示し、1つ以上の外因性表面トリガー受容体をエフェクター細胞に導入することができる。
【0165】
7.免疫療法のための抗体
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるゲノム操作されたエフェクター細胞に加えて、状態、疾患、又は指標に関連する抗原を標的とする抗体又は抗体断片を含む追加の治療剤をこれらのエフェクター細胞と共に組み合わせ療法にて使用することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、対象への同時又は連続投与によって合成エフェクター細胞の集団と組み合わせて使用される。いくつかの他の実施形態では、そのような抗体又はその断片は、上記抗体又はその断片をコードする外因性ポリヌクレオチド配列を使用してiPSCを遺伝子操作すること、及び操作されたiPSCの指示された分化により、エフェクター細胞によって発現され得る。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞はCD16バリアントを発現し、エフェクター細胞の細胞傷害性は、ADCCを介して抗体によって増強される。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体、ヒト化モノクローナル抗体、又はキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片は、ウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態では、抗体又は抗体断片は、腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍又はウイルス特異的抗原は、投与されたiPSC由来エフェクター細胞を活性化して、それらの殺傷能力を増強する。いくつかの実施形態では、投与されたiPSC由来エフェクター細胞に対する追加の治療剤として、組み合わせ治療に適した抗体は、抗CD20(リツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ)、抗HER2(トラスツズマブ、パーツズマブ)、抗CD52(アレムツズマブ)、抗EGFR(セルツキシマブ)、抗GD2(ジヌツキシマブ)、抗PDL1(アベルマブ)、抗CD38(ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202)、抗CD123(7G3、CSL362)、抗SLAMF7(エロツズマブ)、並びにそれらのヒト化又はFc改変されたバリアント若しくは断片、又はそれらの機能的同等物及びバイオシミラーを含むがそれらに限定されない。
【0166】
8.チェックポイント阻害剤
チェックポイントは、阻害されていない場合に免疫応答を抑制又は下方制御できる細胞分子、しばしば細胞表面分子である。腫瘍が特定の免疫チェックポイント経路を、特に腫瘍抗原に特異的なT細胞に対する免疫抵抗性の主要なメカニズムとして選択していることが明らかになっている。チェックポイント阻害剤(CI)は、チェックポイント遺伝子の発現又は遺伝子産物を減少させたり、チェックポイント分子の活性を低下させたりして、阻害性チェックポイントをブロックし、免疫系機能を回復させることができるアンタゴニストである。PD1/PDL1又はCTLA4を標的化するチェックポイント阻害剤の開発により、腫瘍学の展望が変わり、これらの薬剤は複数の適応症で長期の寛解をもたらした。しかしながら、多くの腫瘍サブタイプはチェックポイント遮断療法に耐性があり、再発は依然として重大な懸念事項である。本出願の一態様は、CIとの組み合わせ療法で提供されるようにゲノム操作された機能的誘導細胞を含めることにより、CI耐性を克服するための治療アプローチを提供する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、対象への同時又は連続投与によって合成エフェクター細胞の集団と組み合わせて使用される。いくつかの他の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、上記チェックポイント阻害剤又はその断片若しくはバリアントをコードする外因性ポリヌクレオチド配列を使用してiPSCを遺伝子操作すること、及び操作されたiPSCの指示された分化により、エフェクター細胞によって発現される。
【0167】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤又はその断片をコードする外因性ポリヌクレオチド配列は、別個のコンストラクトで又はバイシストロニックなコンストラクトでのいずれかで、CARと共発現される。いくつかの更なる実施形態では、チェックポイント阻害剤又はその断片をコードする配列は、例えば、CAR-2A-CI又はCI-2A-CARのように例示される自己切断2Aコード配列を介してCAR発現コンストラクトの5’又は3’末端のいずれかに連結され得る。したがって、チェックポイント阻害剤とCARのコード配列は、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)にある。チェックポイント阻害剤が送達され、腫瘍微小環境(TME)に浸潤することができる誘導エフェクター細胞によってペイロードとして発現及び分泌されると、それは、TMEに結合すると阻害性チェックポイント分子を打ち消し、CARなどのモダリティを活性化するか、又は受容体を活性化することによって、エフェクター細胞を活性化する。組み合わせ療法の一実施形態では、誘導細胞はNK系統細胞である。組み合わせ療法の別の実施形態では、誘導細胞はT系統細胞である。
【0168】
本明細書で提供される誘導NK系統細胞又はT系統細胞との組み合わせ療法に適したチェックポイント阻害剤には、PD-1(Pdcdl、CD279)、PDL-1(CD274)、TIM-3(Havcr2)、TIGIT(WUCAM及びVstm3)、LAG-3(Lag3、CD223)、CTLA-4(Ctla4、CD152)、2B4(CD244)、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、A2AR、BATE、BTLA、CD39(Entpdl)、CD47、CD73(NT5E)、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2(Pou2f2)、レチノイン酸受容体アルファ(Rara)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、及び抑制性KIR(例えば、2DL1、2DL2、2DL3、3DL1、及び3DL2)のアンタゴニストが含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
いくつかの実施形態では、上述のチェックポイント分子のいずれかを阻害するアンタゴニストは抗体である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダIg、サメ重鎖のみ抗体(VNAR)、Ig NAR、キメラ抗体、組換え抗体、又はそれらの抗体断片であり得る。抗体断片の非限定的な例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、Fv、一本鎖抗原結合断片(scFv)、(scFv)2、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗原結合断片(sdAb、ナノボディ)、組換え重鎖のみ抗体(VHH)、及び抗体全体の結合特異性を維持するその他の抗体断片が含まれ、それらは、抗体全体よりも、製造するのに費用対効果が高く、より簡単に使用でき、又は感度が高くあり得る。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ(抗PDL1 mAb)、アベルマブ(抗PDL1 mAb)、デュルバルマブ(抗PDL1 mAb)、トレメリムマブ(抗CTLA4 mAb)、イピリムマブ(抗CTLA4 mAb)、IPH4102(抗KIR)、IPH43(抗MICA)、IPH33(抗TLR3)、リリムマブ(抗KIR)、モナリズマブ(抗NKG2A)、ニボルマブ(抗-PD1 mAb)、ペンブロリズマブ(抗PD1 mAb)、及びそれらの誘導体、機能的同等物、又はそれらのバイオシミラーの少なくとも1つを含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、多くのmiRNAが免疫チェックポイントの発現を制御する調節因子として見出されるため、上述のチェックポイント分子のいずれかを阻害するアンタゴニストはマイクロRNAベースである(Dragomir et al.,Cancer Biol Med.2018,15(2):103-115)。いくつかの実施形態では、チェックポイント拮抗miRNAは、miR-28、miR-15/16、miR-138、miR-342、miR-20b、miR-21、miR-130b、miR-34a、miR-197、miR-200c、miR-200、miR-17-5p、miR-570、miR-424、miR-155、miR-574-3p、miR-513、及びmiR-29cを含むがこれらに限定されない。
【0171】
いくつかの実施形態では、CARと共発現するチェックポイント阻害剤は、チェックポイント分子、PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39(Entpdl)、CD47、CD73(NT5E)、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxp1、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2(Pou2f2)、レチノイン酸受容体アルファ(Rara)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、又は抑制性KIRのうちの少なくとも1つを阻害する。いくつかの実施形態では、表1に列挙される遺伝子型を有する誘導細胞においてCARと共発現するチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらのヒト化、又はFc改変バリアント、断片、及びそれらの機能的同等物又はバイオシミラーを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、CARと共発現するチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、又はそのヒト化、又はFc改変バリアント、断片又はそれらの機能的同等物又はバイオシミラーである。他のいくつかの実施形態では、CARと共発現するチェックポイント阻害剤は、ニボルマブ、又はそのヒト化、又はFc改変バリアント、断片又はそれらの機能的同等物又はバイオシミラーである。他のいくつかの実施形態では、CARと共発現するチェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、又はそのヒト化、又はFc改変バリアント、断片又はそれらの機能的同等物又はバイオシミラーである。
【0172】
本明細書で提供される誘導細胞及びチェックポイント分子を阻害する少なくとも1つの抗体を含む組み合わせ療法のいくつかの他の実施形態では、上記抗体は、誘導細胞によって、又は誘導細胞内で産生されず、本明細書で提供されるような誘導細胞の投与の前、それと同時、又はその後に更に投与される。いくつかの実施形態では、提供される誘導NK系統細胞又は誘導T系統細胞との組み合わせ療法における1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のチェックポイント阻害剤の投与は、同時又は逐次的である。由来NK系統細胞又は由来T系統細胞を含む組み合わせ治療の一実施形態では、治療に含まれるチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらのヒト化又はFc改変バリアント、断片及びそれらの機能的同等物又はバイオシミラーのうちの1つ以上である。由来NK細胞又は由来T細胞を含む組み合わせ治療のいくつかの実施形態では、治療に含まれるチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、又はそのヒト化若しくはFc改変バリアント、断片及びその機能的同等物若しくはバイオシミラーである。由来NK系統細胞又は由来T系統細胞を含む組み合わせ治療のいくつかの実施形態では、治療に含まれるチェックポイント阻害剤は、ニボルマブ、又はそのヒト化若しくはFc改変バリアント、断片又はその機能的同等物若しくはバイオシミラーである。由来NK系統細胞又は由来T系統細胞を含む組み合わせ治療のいくつかの実施形態では、治療に含まれるチェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、又はそのヒト化若しくはFc改変バリアント、断片又はその機能的同等物若しくはバイオシミラーである。
【0173】
9.本明細書で提供される遺伝子操作されたiPSC株と誘導細胞
上記に照らして、本出願は、少なくともCARをコードする外因性ポリヌクレオチドと、必要に応じて、外因性CD16並びにサイトカイン及び/又はその受容体(IL)バリアントの一方又は両方をコードする外因性ポリヌクレオチドとを含む、iPSC、iPS細胞株細胞、又はそれらからの誘導細胞を提供し(表1中のCAR(CD16/IL))、誘導細胞は、CAR、並びに外因性CD16及びILの一方又は両方をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む操作されたiPSCの分化から得られる機能的エフェクター細胞である。いくつかの実施形態において、誘導細胞は造血系統細胞であり、決定的な造血内皮(HE)の可能性を有する中胚葉細胞、決定的なHE、CD34造血細胞、造血幹細胞及び前駆細胞、造血多能性前駆体(MPP)、T細胞前駆体、NK細胞前駆体、骨髄細胞、好中球前駆体、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、好中球、樹状細胞、及びマクロファージを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、機能的誘導造血細胞は、T細胞、NK細胞、及び調節性細胞などのエフェクター細胞を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、誘導細胞は、NK又はT系統細胞を含む。外因性CD16及びCARの両方を含むiPSC由来のNK系統細胞又はT系統細胞は、抗体とCARが腫瘍の異なる抗原に特異性を有する場合、抗体をCAR標的治療と組み合わせることにより、CAR-Tのみの治療で観察される腫瘍抗原エスケープに関連する腫瘍の再発を克服又は軽減するのに有用である。hnCD16を発現する誘導CAR-T細胞はADCCを獲得しており、CAR標的化に加えて腫瘍を殺傷するための追加のメカニズムを提供する。いくつかの実施形態では、誘導細胞はNK系統細胞を含む。hnCD16とCARを含むiPSC由来のNK細胞は増強した細胞傷害性を有し、T細胞を含むバイスタンダー細胞を動員して腫瘍細胞に浸潤して殺傷するのに効果的である。
【0175】
更に、外因性CD16をコードするポリヌクレオチド及びCARをコードするポリヌクレオチド、並びに、細胞の生存率、持続製、及び/又は増殖に寄与するサイトカインシグナル伝達を可能にする少なくとも1つの外因性サイトカイン及び/又はその受容体(IL)をコードするポリヌクレオチドを含む、iPSC、iPS細胞株細胞、又はそれらからの誘導細胞が提供され、iPSC株は分化を指示して、生存率、持続性、増殖、及びエフェクター細胞機能が改善された機能的誘導造血系統細胞を産生することができる。外因的に導入されたサイトカインシグナル伝達は、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、及びIL21のいずれか1つ、2つ、又はそれ以上のシグナル伝達を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達のための導入された部分的又は完全なサイトカイン及び/又はそのそれぞれの受容体は、細胞表面上で発現する。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達は構成的に活性化される。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達の活性化は誘導可能である。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達の活性化は、一過性及び/又は一時的である。いくつかの実施形態では、細胞表面サイトカイン/サイトカイン受容体の一過性/一時的発現は、レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、エピソーム、ミニサークル、又はmRNAを含むRNAを介する。
【0177】
いくつかの実施形態では、hnCD16/CAR iPSC又はそれからの誘導細胞に含まれる外因性細胞表面サイトカイン及び/又は受容体は、IL7シグナル伝達を可能にする。いくつかの実施形態では、hnCD16/CAR iPSC又はそれからの誘導細胞に含まれる外因性細胞表面サイトカイン及び/又は受容体は、IL10シグナル伝達を可能にする。いくつかの実施形態では、hnCD16/CAR iPSC又はそれからの誘導細胞に含まれる外因性細胞表面サイトカイン及び/又は受容体は、IL15シグナル伝達を可能にする。上記hnCD16/CAR/IL iPSCのいくつかの実施形態では、IL15発現は、
図1の設計3によるものである。上記hnCD16/CAR/IL iPSCのいくつかの実施形態では、IL15発現は、
図1の設計4によるものである。したがって、上述の実施形態の上記hnCD16/CAR/IL iPSC及びその誘導細胞は、in vitro又はin vivoで追加的に供給される可溶性サイトカインに接触することなく、細胞増殖、増殖、増殖、及び/又はエフェクター機能を自律的に維持又は改善することができる。いくつかの実施形態では、hnCD16/CAR/IL iPSC及びその誘導エフェクター細胞を抗体と共に使用して、ADCCを誘導して、腫瘍抗原エスケープ及びその後の腫瘍再発を低減又は排除することにより、CAR標的化腫瘍殺傷と相乗作用させることができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞は、少なくともCARをコードする外因性ポリヌクレオチドと、必要に応じて、hnCD16並びにサイトカイン及び/又はその受容体(IL)バリアントの一方又は両方をコードする外因性ポリヌクレオチドとを含む造血系細胞を含み(表1中のCAR(CD16/IL))、lig-、inR+、cs-CD3+、En+、及びAb+(それぞれ、アロ抗原ノックアウト、不活性化CAR発現、細胞表面CD3発現、エンゲージャー発現、及び抗体発現)を含む属性のうちの1つ以上を更に含み得る。いくつかの実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞は、表1に列挙された遺伝子型を更に含むCAR(CD16/IL)iNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞は、表1に列挙された遺伝子型を更に含むCAR(CD16/IL)iT細胞を含む。
【0179】
いくつかの他の実施形態では、少なくともCARをコードする外因性ポリヌクレオチド、並びに必要に応じて、hnCD16とサイトカイン及び/又はその受容体(IL)との一方又は両方をコードする外因性ポリヌクレオチド、並びにlig-、inR+、cs-CD3+、En+、及びAb+を含む属性のうちの1つ以上を含む、iPSC由来エフェクター細胞(表1を参照されたい)は、HLA-I及び/又はHLA-II欠損を更に含み得る。
【0180】
同種拒絶の問題を回避するために、複数のHLAクラスI及びクラスIIタンパク質は、同種異系レシピエントの組織適合性のために一致している必要がある。本明細書で提供されるのは、HLAクラスI及びHLAクラスIIタンパク質の両方の発現が排除又は実質的に減少したiPSC細胞株及びそれから分化したその誘導細胞である。HLAクラスI欠損は、HLAクラスI遺伝子座(染色体6p21)の任意の領域の機能的欠失、又はベータ2ミクログロブリン(B2M)遺伝子、TAP1遺伝子、TAP2遺伝子、及びタパシンを含むが、これらに限定されない、HLAクラスI関連遺伝子の欠失若しくは発現レベルの低下によって達成できる。例えば、B2M遺伝子は、全てのHLAクラスIヘテロ二量体の細胞表面発現に不可欠な共通のサブユニットをコードする。B2M陰性細胞はHLA-I欠損である。HLAクラスII欠損は、RFXANK、CIITA、RFX5、及びRFXAPを含むがこれらに限定されないHLA-II関連遺伝子の機能的欠失又は減少によって達成できる。CIITAは転写コアクチベーターであり、クラスIIタンパク質の発現に必要な転写因子RFX5の活性化を通じて機能する。CIITA陰性細胞はHLA-II欠損である。
【0181】
一部の細胞型では、HLAクラスI発現の欠如がNK細胞による溶解を引き起こす。この「自己喪失」応答を克服するために、HLA-Gを必要に応じてノックインして、操作されたiPSCに由来するHLA-I欠損エフェクター細胞のNK細胞の認識と殺傷を回避できる。一実施形態では、HLA-I欠損iPSC及びその誘導細胞は、HLA-Gノックインを更に含む。いくつかの実施形態では、提供されるHLA-I欠損iPSC及びその誘導細胞は、CD58ノックアウト及びCD54ノックアウトの一方又は両方を更に含む。CD58(又はLFA-3)及びCD54(又はICAM-1)は、シグナル依存性細胞相互作用を開始し、免疫細胞を含む、細胞の遊走を促進する接着タンパク質である。CD58ノックアウトは、CD54ノックアウトよりも同種異系NK細胞活性化の低減においてより高い効率をもたらし、その一方で、CD58及びCD54の両方の二重ノックアウトは、NK細胞活性化の最も増強された低減をもたらすことが示された。いくつかの観察において、CD58及びCD54二重ノックアウトは、「自己喪失」効果を克服することにおいて、HLA-I欠損細胞に対するHLA-G過剰発現よりも更に効果的である。本明細書で提供されるように、いくつかの実施形態では、HLA-I及びHLA-II欠損iPSC並びにその誘導細胞は、HLA-Gをコードする外因性ポリヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、HLA-I及びHLA-II欠損iPSC並びにその誘導細胞は、CD58 nullである。いくつかの他の実施形態では、HLA-I及びHLA-II欠損iPSC並びにその誘導細胞は、CD54 nullである。更にいくつかの他の実施形態では、HLA-I及びHLA-II欠損iPSC並びにその誘導細胞は、CD58 null及びCD54 nullである。細胞バンクは、更なるiPSC操作のためのプラットフォーム、及び既製の操作された均質な細胞療法製品を製造するための再生可能な供給源を提供し、これらの製品は、組成が明確かつ均一であり、費用効果の高い様式でかなりの規模で大量生産することができる。
【0182】
上記を考慮して、更にいくつかの他の実施形態では、少なくともCARをコードする外因性ポリヌクレオチド、並びに必要に応じて、hnCD16とサイトカイン及び/又はその受容体(IL)バリアントとの一方又は両方をコードする外因性ポリヌクレオチド、lig-、inR+、cs-CD3+、En+、及びAb+を含む属性のうちの1つ以上を含む、iPSC由来エフェクター細胞(表1を参照されたい)は、B2M、CIITA、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RFXAP、RAG1、及び染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つの欠失若しくは発現低下、又はHLA-E、HLA-G、41BBL、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、TCR、Fc受容体、及び二重特異的、多重特異的若しくはユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つの導入された発現若しくは増加した発現を更に含み得る。
【0183】
【0184】
このように、本出願の一態様は、ゲノム操作されたiPSCから分化した2つ以上の合成エフェクター細胞型を含む組成物を提供する。したがって、種々の実施形態では、組成物は、ゲノム操作されたiPSCから分化した合成エフェクター細胞の第1の集団と、ゲノム操作されたiPSCから分化した合成エフェクター細胞の第2の集団とを含む。組成物の一実施形態では、第1の型の合成エフェクター細胞又はその集団(すなわち、第1の集団)は、機能的に増強されたiPSC由来T細胞であり、第2の型の合成エフェクター細胞又はその集団(すなわち、第2の集団)は、機能的に増強されたiPSC由来NK細胞である。いくつかの実施形態では、機能的に増強されたiPSC由来T細胞は、少なくとも(第1の)CARを含む。いくつかの実施形態では、機能的に増強されたiPSC由来NK細胞は、少なくとも(第2の)CARと、CD16バリアント並びに細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長、の一方又は両方とを含む。種々の実施形態では、CD16バリアントは、高親和性非切断性CD16(hnCD16)である。
【0185】
提供されているように、上記の高親和性非切断性CD16(hnCD16)又はそのバリアントの実施形態は、以下のうちの少なくとも1つを含む:(a)CD16の外部ドメインドメインのF176V及びS197P、(b)CD64に由来する完全又は部分外部ドメイン、(c)非天然(又は非CD16)の膜貫通ドメイン、(d)非天然(又は非CD16)の細胞内ドメイン、(e)非天然(又は非CD16)のシグナル伝達ドメイン、(f)非天然の刺激ドメイン、並びに(g)CD16に由来せず、同じ又は異なるポリペプチドに由来する膜貫通、シグナル伝達、及び刺激ドメイン。いくつかの実施形態では、非天然の膜貫通ドメインは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、又はT細胞受容体(TCR)ポリペプチドに由来する。いくつかの実施形態では、非天然の刺激ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、又はNKG2Dポリペプチドに由来する。いくつかの他の実施形態では、非天然のシグナル伝達ドメインは、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(4-1BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、又はNKG2Dポリペプチドに由来する。更にいくつかの他の実施形態では、非天然の膜貫通ドメインはNKG2Dに由来し、非天然の刺激ドメインは2B4に由来し、非天然のシグナル伝達ドメインはCD3ζに由来する。
【0186】
提供されているように、第1の集団中の合成細胞の第1のCAR及び第2の集団中の合成細胞の第2のCARは、合成細胞に標的化特異性を提供する。いくつかの実施形態では、第1のCAR及び第2のCARは、同じ標的化特異性を有する。いくつかの実施形態では、第1のCAR及び第2のCARは、標的化特異性が異なる。いくつかの実施形態では、第1のCAR及び第2のCARは、標的化特異性が同じであるか、又は異なり、第1のCAR及び/又は第2のCARは、第1及び/又は第2のCARが、(i)T細胞特異的、(ii)NK細胞特異的、(iii)二重特異性抗原結合CAR、(iv)切り替え可能なCAR、(v)二量体化されたCAR、(vi)スプリットCAR、(vii)多重鎖CAR、又は(viii)誘導可能なCARであるように、これらの特徴のいずれか1つを有し得る。いくつかの他の実施形態では、第1及び/又は第2のCARは、第1又は第2のCARのいずれかと同じ又は異なる標的化特異性を有し得る、更に別のCARと共発現される。
【0187】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のCARは、必要に応じて別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、細胞表面発現の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチドと共発現される。更にいくつかの他の実施形態では、第1及び/又は第2のCARは、必要に応じて別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、チェックポイント阻害剤と共発現される。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のCARは、CD19又はBCMAに特異的である。他の実施形態では、第1及び/又は第2のCARは、ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CCR4、癌胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソテリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、癌-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBC1、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、及び病原体抗原のうちの少なくとも1つに特異的である。
【0188】
第1又は第2の集団のCAR発現細胞のいくつかの実施形態では、細胞はまた、外因性細胞表面サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチドも発現する。いくつかの実施形態では、外因性細胞表面サイトカイン及び/又はその受容体バリアントは、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、及び/又はそれらのそれぞれの受容体のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの他の実施形態では、サイトカイン及び/又はその受容体バリアントは、(i)自己切断ペプチドを用いることによるIL15及びIL15Rαの共発現、(ii)IL15とIL15Rαの融合タンパク質、(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断されたIL15/IL15Rα融合タンパク質、(iv)IL15とIL15Rαの膜結合Sushiドメインの融合タンパク質、(v)IL15とIL15Rβの融合タンパク質、(vi)IL15と共通受容体γCの融合タンパク質であって、共通受容体γCが天然であるか、又は改変されている、融合タンパク質、並びに(vii)IL15Rβのホモ二量体、のうちの少なくとも1つを含み、(i)~(vii)のうちのいずれか1つが、別個のコンストラクト内で、又はバイシストロニックなコンストラクト内で、CARと共発現され得る。いくつかの実施形態では、細胞表面の外因性サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長ペプチドペプチドは、細胞において一過性に発現される。
【0189】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変されたiPSC及びそれから機能的に増強された誘導有効細胞(iPSC由来のT細胞及びNK細胞が含まれるが、これらに限定されない)は、(i)HLA-I欠損、又はB2M null若しくはlow、(ii)HLA-II欠損、又はCIITA null若しくはlow、(iii)HLA-G又は非切断性HLA-Gの導入された発現、(iv)lig-、inR+、cs-CD3+、En+、及びAb+のうちの少なくとも1つであって、「lig-」は、発現されたアロ抗原において陰性であり、「inR+」は、陰性アロ抗原に対応する発現された不活性化CARにおいて陽性であり、「cs-CD3+」は、細胞表面発現のCD3において陽性であり、「En+」 は、少なくとも1つの発現されたエンゲージャーにおいて陽性であり、このエンゲージャーは、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)又は三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)を含み、「Ab+」は、少なくとも1つの発現された抗体又はチェックポイント阻害剤において陽性である、もの、(v)TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RFXAP、RAG1、及び染色体6p21領域の任意の遺伝子の1つ以上の欠失又は発現低下、並びに(vi)HLA-E、HLA-G、4-1BBL、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、TCR、Fc受容体、及び二重特異性、多重特異性又はユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つの導入された発現又は増加した発現を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、誘導NK又はT細胞を含むiPSC由来エフェクター細胞においてノックアウト又はノックダウンされる上記アロ抗原は、活性化されたレシピエントT、NK又はB細胞において上方調節される、CD40L、OX40、又は4-1BBを含む。いくつかの実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞における上記不活性化CARは、iPSC由来エフェクター細胞におけるノックアウトされたアロ抗原分子に対応する、CD40L-CAR、OX40-CAR、又は4-1BB-CARを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞において発現されたBiTE又はTriKEは、CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、又はそれらのキメラFc受容体を含む少なくとも1つの免疫細胞表面分子、及びB7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、又はROR1を含む少なくとも1つの腫瘍表面分子を認識する。いくつかの実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞において発現されたBiTEは、CD3-CD19、CD16-CD30、CD64-CD30、CD16-BCMA、CD64-BCMA、又はCD3-CD33を含む。いくつかの実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞において発現されたTriKEは、CD16-IL15-EPCAM、CD64-IL15-EPCAM、CD16-IL15-CD33、CD64-IL15-CD33、又はNKG2C-IL15-CD33を含む。
【0192】
iPSC由来エフェクター細胞のいくつかの実施形態では、細胞は抗体を発現し、この抗体は、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、抗体、又は抗CD38抗体を含むが、これらに限定されない。iPSC由来エフェクター細胞のいくつかの実施形態では、細胞はチェックポイント阻害剤を発現し、これは、PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara (レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、又は抑制性KIRを含むチェックポイント分子に対するアンタゴニストを含むが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞における発現されたチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、又はそれらの誘導体若しくは機能的同等物のうちの1つである。更に別の実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞において発現されたチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブのうちの1つである。
【0193】
本明細書で提供されるように、組成物の第1及び第2の細胞集団の、iPSC由来T細胞又はiPSC由来NK細胞を含むがこれらに限定されない合成細胞はそれぞれ、合成細胞の固有の特徴に寄与する1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、iPSC由来T細胞及び/又はiPSC由来NK細胞は、1つの所望の組み込み部位に組み込まれた1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの他の実施形態では、iPSC由来T細胞及び/又はiPSC由来NK細胞は、異なる所望の組み込み部位に組み込まれた3つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、所望の組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα又はβ定常領域(TRAC又はTRBC)、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGITのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの他の実施形態では、所望の組み込み部位は、TCRα若しくはβ定常領域(TRAC又はTRBC)、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBを含む。更にいくつかの他の実施形態では、TCRα若しくはTCRβ、CD25、CD38、CD40L、CD44、CD54、CD58、CD69、CD71、OX40又は4-1BBは、上記1つ以上の外因性ポリヌクレオチドをそれぞれの組み込み部位に組み込んだ結果としてノックアウトされる。
【0194】
2つ以上の合成細胞集団を含む組成物の実施形態では、各集団の合成細胞は、ゲノム操作されたiPSCに由来する。種々の実施形態では、第1の集団は、iPSC由来T細胞の集団であり、第2の集団は、iPSC由来NK細胞の集団であるか、又はその逆である(すなわち、第1の集団は、iPSC由来NK細胞の集団であり、第2の集団は、iPSC由来T細胞の集団である)。いくつかの実施形態では、iPSC由来T細胞の第1の集団及びiPSC由来NK細胞の第2の集団はそれぞれ、末梢血、臍帯血、又は任意の他のドナー組織から得られるその天然の対応細胞と比較して、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する:(i)向上した持続性及び/又は生存率、(ii)自然免疫細胞に対する増加した耐性、(iii)増加した細胞傷害性、(iv)改善された腫瘍浸透、(v)増強又は取得されたADCC、(vi)バイスタンダー免疫細胞を腫瘍部位に遊走、及び/又は活性化若しくは動員する増強された能力、(vii)腫瘍免疫抑制を低下させる増強した能力、並びに(viii)腫瘍抗原エスケープの救済の改善された能力。更に、iPSC由来T細胞及び/又はiPSC由来NK細胞は、末梢血、臍帯血、又は任意の他のドナー組織から得られたそれぞれの天然の対応細胞と比較して、より長いテロメアを含む。
【0195】
2つ以上の合成細胞集団を含む組成物のいくつかの実施形態では、ゲノム操作されたiPSCに由来する第1及び/又は第2の合成細胞は、修飾される。いくつかの実施形態では、第1の集団の修飾された合成細胞は、iPSC由来T細胞であり、第1の集団は、修飾を伴わない第1の細胞集団と比較して、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、及び/又はセントラルメモリーT細胞の数又は比率の増加を含む。いくつかの実施形態では、第2の集団の修飾された合成細胞は、iPSC由来NK細胞であり、第2の細胞集団は、修飾を伴わない細胞集団と比較して、I型NKT細胞、及び/又は適応NK細胞の数又は比率の増加を含む。
【0196】
操作されたiPSCから分化した誘導T細胞を含む第1の合成細胞集団と、操作されたiPSCから分化した誘導NK細胞を含む第2の合成細胞集団とを含む組成物のいくつかの実施形態では、誘導T細胞及び誘導NK細胞は、100:1~1:100の範囲の比である。いくつかの実施形態では、誘導T細胞及び誘導NK細胞は、50:1~1:50の範囲の比である。いくつかの実施形態では、誘導T細胞及び誘導NK細胞は、20:1~1:20の範囲の比である。いくつかの他の実施形態では、誘導T細胞及び誘導NK細胞は、10:1~1:10の範囲の比である。更にいくつかの他の実施形態では、誘導T細胞及び誘導NK細胞は、1:1の比である。
【0197】
操作されたiPSCから分化した誘導T細胞を含む第1の合成細胞集団と、操作されたiPSCから分化した誘導NK細胞を含む第2の合成細胞集団とを含む組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の追加の細胞集団を更に含む。一実施形態では、追加の細胞集団は調節性細胞を含む。別の実施形態では、追加の細胞集団は、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を含む。更に別の実施形態では、追加の細胞集団のMDSCは、iPSCに由来する。
【0198】
本出願の更に別の態様は、それぞれiPSC由来T細胞及びiPSC由来NK細胞を含む少なくとも2つの合成細胞集団に加えて1つ以上の治療剤を更に含む、上記のような組成物を提供する。合成細胞と共に使用することができる抗体及びチェックポイント阻害剤を含むが、これらに限定されない、好適な治療剤を以下に更に詳述する。
【0199】
II.iPSCの選択された遺伝子座における標的化ゲノム編集の方法
本明細書で互換可能に使用されるゲノム編集、又はゲノム編集、又は遺伝子編集は、標的細胞のゲノムにDNAが挿入、欠失、及び/又は置換される一種の遺伝子工学である。標的化ゲノム編集(「標的化ゲノム編集」又は「標的化遺伝子編集」と互換可能である)は、ゲノム内の事前に選択された部位での挿入、欠失、置換を可能にする。標的化編集中に挿入部位で内因性配列が欠失すると、影響を受けた配列を含む内因性遺伝子は、配列欠失によりノックアウト又はノックダウンされる可能性がある。したがって、標的化編集を使用して、内因性遺伝子発現を正確に破壊することもできる。本明細書で同様に使用される用語「標的化組み込み」は、挿入部位での内因性配列の欠失を伴うか又は伴わない、1つ以上の外因性配列の挿入を含むプロセスを指す。対照的に、ランダムに組み込まれた遺伝子は位置効果とサイレンシングの影響を受けやすく、その発現は信頼できず、予測できない。例えば、セントロメア及びサブテロメア領域は、特に導入遺伝子サイレンシングを起こしやすい。相互に新しく組み込まれた遺伝子は、周囲の内因性遺伝子とクロマチンに影響を与え、細胞の挙動を変えたり、細胞の形質転換を促進したりする可能性がある。したがって、セーフハーバー遺伝子座やゲノムセーフハーバー(GSH)などの事前に選択された遺伝子座に外来性DNAを挿入することは、安全性、効率、コピー数制御、及び信頼性の高い遺伝子応答制御にとって重要である。
【0200】
標的化編集は、ヌクレアーゼに依存しないアプローチ、又はヌクレアーゼに依存するアプローチのいずれかによって実現できる。ヌクレアーゼに依存しない標的化編集アプローチでは、相同組換えは、宿主細胞の酵素機構を介して、挿入される外因性ポリヌクレオチドに隣接する相同配列によって導かれる。
【0201】
代替的に、特異的なレアカットエンドヌクレアーゼによる二本鎖切断(DSB)の特異的な導入により、より高い頻度で標的化編集を実現できる。このようなヌクレアーゼ依存の標的化編集は、DSBに応答して発生する非相同末端結合(NHEJ)を含むDNA修復メカニズムを利用する。外因性の遺伝物質を含むドナーベクターがない場合、NHEJは少数の内因性ヌクレオチドのランダムな挿入又は欠失(インデル)をしばしば引き起こす。対照的に、一対のホモロジーアームと隣接する外因性遺伝物質を含むドナーベクターが存在する場合、相同組換えによる相同指向性修復(HDR)中に外因性遺伝物質がゲノムに導入され得、「標的化組み込み」がもたらされる。いくつかの状況において、標的化組み込み部位は、選択された遺伝子のコード領域内にあることが意図され、したがって、標的化組み込みは、遺伝子発現を破壊し、1つの単一編集ステップにおいて同時ノックイン及びノックアウト(KI/KO)をもたらし得る。
【0202】
目的の遺伝子座(GOI)における選択位置に1つ以上の導入遺伝子を挿入して、同時に遺伝子をノックアウトすることを達成することができる。同時ノックイン及びノックアウト(KI/KO)に適した遺伝子座には、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα又はβ定常領域(TRAC又はTRBC)、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGITが含まれるが、これらに限定されない。位置選択的挿入のためのそれぞれの部位特異的標的化ホモロジーアームにより、導入遺伝子が、部位の内因性プロモーター下又はコンストラクトに含まれる外因性プロモーター下のいずれかで発現されることが可能になる。2つ以上の導入遺伝子が、選択された位置(例えば、CD38遺伝子座)に挿入される場合、リンカー配列、例えば2Aリンカー又はIRESは、任意の2つの導入遺伝子の間に配置される。2Aリンカーは、FMDV、ERAV、PTV-1、又はTaVに由来する自己切断ペプチド(それぞれ「F2A」、「E2A」、「P2A」、及び「T2A」と呼ばれる)をコードし、単一の翻訳から別々のタンパク質を産生できるようにする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子及び/又は外因性プロモーターサイレンシングのリスクを低減するために、コンストラクトにインスレーターが含まれる。種々の実施形態では、外因性プロモーターは、CAG、又はCMV、EF1α、PGK、及びUBCを含むがこれらに限定されない他の構成的、誘導性、時間特異的、組織特異的、若しくは細胞型特異的プロモーターであり得る。
【0203】
特異的な標的化DSBを導入できる利用可能なエンドヌクレアーゼには、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、RNA誘導CRISPR(クラスター化等間隔短鎖回分リピート)システムが含まれるが、これらに限定されない。更に、phiC31及びBxb1インテグラーゼを利用するDICE(デュアルインテグラーゼカセット交換)システムも、標的化組み込みのための有望なツールである。
【0204】
ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインに融合したヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。「ジンクフィンガーDNA結合ドメイン」又は「ZFBD」とは、1つ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的な方法でDNAに結合するポリペプチドドメインを意味する。ジンクフィンガーは、亜鉛イオンの配位により構造が安定化されるジンクフィンガー結合ドメイン内の約30アミノ酸のドメインである。ジンクフィンガーの例には、C2H2ジンクフィンガー、C3Hジンクフィンガー、及びC4ジンクフィンガーが含まれるが、これらに限定されない。「設計された」ジンクフィンガードメインは、天然に存在しないドメインであり、その設計/構成は主に合理的な基準、例えば、既存のZFP設計と結合データの情報を格納するデータベースの情報を処理するための置換ルールとコンピュータ化アルゴリズムの適用に起因する。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、及び同第6,534,261号を参照し、また国際公開第98/53058号、同第98/53059号、同第98/53060号、同第02/016536号及び同第03/016496号を参照されたい(これらの完全な開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。「選択された」ジンクフィンガードメインは、その生産が主にファージディスプレイ、相互作用トラップ、又はハイブリッド選択などの経験的プロセスから生じる天然では見られないドメインである。ZFNは、米国特許第7,888,121号及び同第7,972,854号で詳細に説明されており、それらの完全な開示は参照により本明細書に組み込まれる。当該技術分野で最も認識されているZFNの例は、FokIヌクレアーゼとジンクフィンガーDNA結合ドメインとの融合である。
【0205】
TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインに融合したヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。「転写活性化因子様エフェクターDNA結合ドメイン」、「TALエフェクターDNA結合ドメイン」、又は「TALE DNA結合ドメイン」とは、TALエフェクタータンパク質のDNAへの結合に関与するTALエフェクタータンパク質のポリペプチドドメインを意味する。TALエフェクタータンパク質は、感染時にXanthomonas属の植物病原体によって分泌される。これらのタンパク質は植物細胞の核に入り、それらのDNA結合ドメインを介してエフェクター特異的なDNA配列に結合し、トランス活性化ドメインを介してこれらの配列で遺伝子転写を活性化する。TALエフェクターDNA結合ドメインの特異性は、反復可変残基(RVD)と呼ばれる選択された反復位置に多型を含む不完全な34アミノ酸リピートのエフェクター可変数に依存する。TALENは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2011/0145940号により詳細に記載されている。当該技術分野で最も認識されているTALENの例は、TALエフェクターDNA結合ドメインへのFokIヌクレアーゼの融合ポリペプチドである。
【0206】
本発明の方法で使用される標的化ヌクレアーゼの別の例は、標的化Spo11ヌクレアーゼ、目的のDNA配列に特異性を有するDNA結合ドメイン、例えばジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALエフェクターDNA結合ドメインなどに融合したヌクレアーゼ活性を有するSpo11ポリペプチドを含むポリペプチドである。
【0207】
本発明に適した標的化ヌクレアーゼの更なる例には、個別に又は組み合わせて使用されるかどうかにかかわらず、Bxb1、phiC31、R4、PhiBT1、及びWβ/SPBc/TP901-1が含まれるが、これらに限定されない。
【0208】
標的化ヌクレアーゼの他の非限定的な例には、天然に存在するヌクレアーゼ及び組換えヌクレアーゼ、cas、cpf、cse、csy、csn、csd、cst、csh、csa、csm、及びcmrを含むファミリーからのCRISPR関連のヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼなどが挙げられる。
【0209】
一例としてCas9を使用すると、CRISPR/Cas9は、典型的には、2つの主要な成分:(1)Cas9エンドヌクレアーゼと(2)crRNA-tracrRNA複合体とを必要とする。共発現すると、2つの成分が複合体を形成し、PAM及びPAM近位のシーディング領域(seeding region)を含む標的DNA配列に動員される。crRNAとtracrRNAを組み合わせてキメラガイドRNA(gRNA)を形成し、Cas9を選択した配列を標的に導くことができる。次いで、これら2つの成分は、トランスフェクション又は形質導入を介して哺乳動物細胞に送達できる。CRISPR/Cpf系の使用は、典型的には、選択された配列を標的化するようにCpfエンドヌクレアーゼをガイドするために、(1)Cpfエンドヌクレアーゼ(例えば、Cpf1、MAD7、及び当該技術分野において既知の更に多くのもの)及び(2)gNA(これは、多くの場合、tracrRNAを必要としない)を必要とする。
【0210】
DICEを介した挿入は、例えば、phiC31とBxb1などのリコンビナーゼのペアを使用して、各酵素自体の小さなattB及びattP認識部位に厳しく制限されている外因性DNAの一方向の組み込みを提供する。これらの標的化att部位は哺乳類のゲノムには天然に存在しないため、最初に所望の組み込み部位のゲノムに導入する必要がある。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0140665号を参照されたい。
【0211】
本発明の1つの態様は、標的化されたゲノム組み込みのための1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを提供する。したがって、本発明の組成物の第1及び第2の集団の合成細胞は、標的化されたゲノム組み込みのための1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む1つ以上のコンストラクトを使用して産生され得る。一実施形態では、コンストラクトは、所望の組み込み部位に特異的な一対の相同アームを更に含み、標的化組み込みの方法は、コンストラクトを細胞に導入して、細胞宿主酵素機構による部位特異的相同組換えを可能にすることを含む。別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的なDNA結合ドメインを含むZFN発現カセットを細胞に導入してZFNを介した挿入を可能にすることと、を含む。更に別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的なDNA結合ドメインを含むTALEN発現カセットを細胞に導入してTALENを介した挿入を可能にすることと、を含む。別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、Cas9発現カセット及び所望の組み込み部位に特異的なガイド配列を含むgRNAを細胞に導入してCas9を介した挿入を可能にすることと、を含む。更に別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、一対のDICEリコンビナーゼの1つ以上のatt部位を含むコンストラクトを細胞内の所望の組み込み部位に導入することと、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、DICEリコンビナーゼ用の発現カセットを導入し、DICEを介した標的化組み込みを可能にすることと、を含む。
【0212】
標的化組み込みのための有望な部位には、ヒトのゲノムの遺伝子内又は遺伝子外領域であり、理論的には、宿主細胞又は生物に悪影響を与えることなく、新たに組み込まれたDNAの予測可能な発現に対応できる、セーフハーバー遺伝子座、又はゲノムセーフハーバー(GSH)が含まれるが、これらに限定されない。有用なセーフハーバーは、ベクターにコードされたタンパク質又は非コードRNAの望ましいレベルを生成するために十分な導入遺伝子発現を可能にする必要がある。セーフハーバーはまた、細胞を悪性形質転換しやすくしたり、細胞機能を変化させたりするものであってはならない。組み込み部位が、潜在的なセーフハーバー遺伝子座であるためには、理想的には、以下を含むがこれらに限定されない基準を満たす必要がある:配列アノテーションによって判断されるような、調節エレメント又は遺伝子の破壊が存在しないこと、遺伝子密集領域内の遺伝子間領域、又は反対方向に転写された2つの遺伝子の間の収束位置であること、ベクターにコードされた転写活性化因子と、隣接する遺伝子、特に癌関連遺伝子及びマイクロRNA遺伝子のプロモーターとの間の長距離相互作用の可能性を最小限にする距離を保つこと、並びに遍在的な転写活性を示す、広範な空間的及び時間的発現配列タグ(EST)発現パターンによって反映されるような、明らかに遍在的な転写活性を有すること。この後者の特徴は幹細胞で特に重要であり、幹細胞では、分化中にクロマチンのリモデリングが通常、いくつかの遺伝子座のサイレンシングと他の遺伝子座の潜在的な活性化をもたらす。外因性挿入に適した領域内では、挿入のために選択された正確な遺伝子座は、反復要素と保存された配列を欠き、ホモロジーアームの増幅用のプライマーを簡単に設計できるはずである。
【0213】
ヒトゲノム編集、又は具体的には標的化組み込みに適した部位には、アデノ随伴ウイルス部位1(AAVS1)、ケモカイン(CCモチーフ)受容体5(CCR5)遺伝子座、及びマウスROSA26遺伝子座のヒトのオルソログが含まれるが、これらに限定されない。更に、マウスH11遺伝子座のヒトオルソログはまた、本明細書に開示される標的化組み込みの組成物及び方法を使用して挿入するための適切な部位であり得る。更に、コラーゲンとHTRP遺伝子座は、標的化組み込みのためのセーフハーバーとしても使用できる。しかしながら、選択した各部位の検証は、特定の組み込み事象のために特に幹細胞で必要であることが示されており、プロモーターの選択、外因性遺伝子の配列と配置、コンストラクトの設計などの挿入戦略の最適化がしばしば必要である。
【0214】
標的化されたインデルのために、編集部位はしばしばその発現及び/又は機能が破壊されることが意図されている内因性遺伝子に含まれている。いくつかの実施形態では、標的化されたインデルを含む内因性遺伝子は、免疫応答の調節及び修飾に関連する。他のいくつかの実施形態では、標的化インデルを含む内因性遺伝子は、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬物標的候補、免疫応答調節及び修飾、あるいは幹細胞及び/又は前駆細胞、並びにそれらに由来する細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、及び/又は生存率を抑制するタンパク質に関連する。
【0215】
したがって、本発明の別の態様は、ゲノムセーフハーバーを含む選択された遺伝子座、又は本明細書で提供されるような、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、TRAC、若しくはCD38遺伝子座などの継続的又は一時的な遺伝子発現について安全かつ十分に調節されていることがわかっている若しくは証明された事前に選択された遺伝子座における標的化組み込みの方法を提供し、本発明の組成物の第1及び第2の集団の合成細胞は、そのような方法を使用して産生され得る。一実施形態では、標的化組み込みの方法のためのゲノムセーフハーバーは、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ2ミクログロブリン、CD38、GAPDH、TCR、若しくはRUNX1、又はゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む、1つ以上の望ましい組み込み部位を含む。いくつかの実施形態では、標的化組み込みは、組み込みの結果としての遺伝子のノックダウン又はノックアウトが望まれる、1つ以上の遺伝子座にあり、そのような遺伝子座には、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα又はβ定常領域(TRAC又はTRBC)、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGITが含まれるが、これらに限定されない。
【0216】
別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的なDNA結合ドメインを含むZFN発現カセットを細胞に導入して、ZFN媒介挿入を可能にすることと、を含み、所望の組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα若しくはβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、又はTIGITを含む。更に別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的なDNA結合ドメインを含むTALEN発現カセットを細胞に導入して、TALEN媒介挿入を可能にすることと、を含み、所望の組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα若しくはβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、又はTIGITを含む。別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的なCas9発現カセット、及びガイド配列を含むgRNAを細胞に導入して、Cas9媒介挿入を可能にすることと、を含み、所望の組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα若しくはβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、又はTIGITを含む。更に別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、DICEレコンビナーゼの対の1つ以上のatt部位を含むコンストラクトを細胞における所望の組み込み部位に導入することと、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、DICEレコンビナーゼの発現カセットを導入して、DICE媒介標的化組み込みを可能にすることと、を含み、所望の組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα若しくはβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、又はTIGITを含む。
【0217】
更に、本明細書で提供されるように、セーフハーバーでの標的化組み込みのための上述の方法は、目的のポリヌクレオチド、例えば、安全スイッチタンパク質、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質及びペプチド、薬物標的候補、及び幹細胞及び/又は前駆細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、及び/又は生存率を促進するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入するために使用される。いくつかの他の実施形態では、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトは、1つ以上のマーカー遺伝子を更に含む。一実施形態では、本発明のコンストラクト中の外因性ポリヌクレオチドは、安全スイッチタンパク質をコードする自殺遺伝子である。誘導細胞死に適した自殺遺伝子系には、カスパーゼ9(又はカスパーゼ3若しくは7)及びAP1903、チミジンキナーゼ(TK)及びガンシクロビル(GCV)、シトシンデアミナーゼ(CD)及び5-フルオロシトシン(5-FC)が含まれるが、これらに限定されない。更に、一部の自殺遺伝子系は細胞型に特異的であり、例えば、B細胞分子CD20によるTリンパ球の遺伝子改変は、mAbリツキシマブの投与時にそれらを排除することができる。更に、セツキシマブによって認識されるエピトープを含む改変されたEGFRは、細胞がセツキシマブに曝露されたときに遺伝子操作された細胞を枯渇させるために使用することができる。したがって、本発明の一態様は、カスパーゼ9(カスパーゼ3又は7)、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、改変EGFR、及びB細胞CD20から選択される安全スイッチタンパク質をコードする1つ以上の自殺遺伝子の標的化組み込みの方法を提供する。
【0218】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって組み込まれた1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、標的化組み込みのためのコンストラクトに含まれる作動可能に連結された外因性プロモーターによって駆動される。プロモーターは誘導性又は構成的であり得、そして時間特異的、組織特異的又は細胞型特異的であり得る。本発明の方法に適した構成的プロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)、伸長因子1α(EF1α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ハイブリッドCMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)、及びユビキチンC(UBC)プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、外因性プロモーターはCAGである。
【0219】
本明細書に記載される方法によって組み込まれた外因性ポリヌクレオチドは、組み込み部位において、宿主ゲノム中の内因性プロモーターによって駆動され得る。一実施形態では、本明細書に記載される方法は、細胞のゲノムにおけるAAVS1遺伝子座における1つ以上の外因性ポリヌクレオチドの標的化組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性AAVS1プロモーターによって駆動される。別の実施形態では、本明細書に記載される方法は、細胞のゲノムにおけるROSA26遺伝子座での標的化組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性ROSA26プロモーターによって駆動される。更に別の実施形態では、本発明の方法は、細胞のゲノムにおけるH11遺伝子座での標的化組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性H11プロモーターによって駆動される。別の実施形態では、本明細書に記載される方法は、細胞のゲノムにおけるコラーゲン遺伝子座での標的化組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性コラーゲンプロモーターによって駆動される。更に別の実施形態では、本発明の方法は、細胞のゲノムにおけるHTRP遺伝子座での標的化組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性HTRPプロモーターによって駆動される。理論的には、所望の位置での正しい挿入のみが、内因性プロモーターによって駆動される外因性遺伝子の遺伝子発現を可能にするであろう。
【0220】
いくつかの実施形態では、標的化組み込みの方法のためのコンストラクトに含まれる1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、1つのプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態では、コンストラクトは、同じプロモーターによって駆動される2つの隣接するポリヌクレオチド間に1つ以上のリンカー配列を含み、部分間の物理的分離を高め、酵素機構へのアクセスを最大にする。リンカー配列のリンカーペプチドは、関連する機能に応じて、部分(外因性ポリヌクレオチド、及び/又はそこからコードされるタンパク質又はペプチド)間の物理的分離をより柔軟又はより堅くするように選択されたアミノ酸からなり得る。リンカー配列は、プロテアーゼにより切断可能であり得るか、又は化学的に切断可能であり、別個の部分を生じ得る。リンカーにおける酵素的切断部位の例には、エンテロキナーゼ、第Xa因子、トリプシン、コラゲナーゼ、及びトロンビンなどのタンパク質分解酵素による切断のための部位が含まれる。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、宿主によって天然に産生されるものであるか、又は外因的に導入される。代替的に、リンカー中の切断部位は、選択された化学物質、例えば臭化シアン、ヒドロキシルアミン、又は低pHへの曝露時に切断され得る部位であり得る。任意のリンカー配列は、切断部位の提供以外の目的を果たし得る。リンカー配列は、部分が適切に機能するために、別の隣接部分に対する部分の効果的な配置を可能にするべきである。リンカーはまた、部分間のいずれかの立体障害を防ぐのに十分な長さの単純なアミノ酸配列であってもよい。更に、リンカー配列は、例えば、リン酸化部位、ビオチン化部位、硫酸化部位、γ-カルボキシル化部位などを含むがこれらに限定されない翻訳後改変を提供することができる。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、生物学的に活性なペプチドを単一の望ましくない立体配座に保持しないように柔軟である。リンカーは、柔軟性を提供するために、グリシン、アラニン、及びセリンなどの小さな側鎖を有するアミノ酸から主になっていてもよい。いくつかの実施形態では、リンカー配列の約80~90パーセント以上が、グリシン、アラニン、又はセリン残基、特にグリシン及びセリン残基を含む。いくつかの実施形態では、G4Sリンカーペプチドは、融合タンパク質の末端プロセシング及びエンドヌクレアーゼドメインを分離する。他の実施形態では、2Aリンカー配列は、2つの別個のタンパク質が単一の翻訳から産生されることを可能にする。適切なリンカー配列は、経験的に容易に同定することができる。更に、リンカー配列の適切なサイズ及び配列はまた、従来のコンピュータモデリング技術によって決定され得る。一実施形態では、リンカー配列は、自己切断ペプチドをコードする。一実施形態では、自己切断ペプチドは2Aである。いくつかの他の実施形態では、リンカー配列は、配列内リボソーム進入部位(IRES)を提供する。いくつかの実施形態では、任意の2つの連続するリンカー配列は異なる。
【0221】
標的化組み込みのための外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入する方法は、それ自体既知の細胞への遺伝子移入の方法を使用して達成することができる。一実施形態では、コンストラクトは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどのウイルスベクターの骨格を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドベクターは、外因性ポリヌクレオチドを標的細胞(例えば、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo)などに送達及び/又は発現するために使用される。いくつかの他の実施形態では、エピソームベクターは、外因性ポリヌクレオチドを標的細胞に送達するために使用される。いくつかの実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を遺伝子操作に使用して、相同組換えを介して挿入、欠失、又は置換を導入することができる。レンチウイルスとは異なり、rAAVは宿主ゲノムに組み込まれない。更に、エピソームrAAVベクターは、従来の標的化プラスミドのトランスフェクションと比較して、相同指向性遺伝子標的化をはるかに高い割合で仲介する。いくつかの実施形態では、AAV6又はAAV2ベクターを使用して、iPSCのゲノム中の標的部位に挿入、欠失、又は置換を導入する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び組成物を使用して取得されたゲノム改変されたiPSC及びそれらの誘導細胞は、表1に列挙された少なくとも1つの遺伝子型を含む。
【0222】
III.ゲノム操作されたiPSCを取得及び維持する方法
種々の実施形態では、本発明は、1つ以上の所望の部位での1つ以上の標的化編集を含むゲノム操作されたiPSCを取得及び維持する方法を提供し、1つ以上の標的化編集は、増殖されたゲノム操作されたiPSC又はiPSC由来非多能性細胞において、それぞれの選択した編集部位で無傷で機能的であり続ける。標的化編集は、iPSCとそこから誘導した細胞のゲノムに、挿入、欠失、及び/又は置換を導入する(すなわち、選択した部位での標的化組み込み及び/又はインデル)。患者から供給された、末梢血由来の初代エフェクター細胞の直接操作と比較して、本明細書で提供されるようなiPSCを編集及び分化させることによってゲノム操作された誘導細胞を得ることの多くの利点には、主に、本明細書で提供されるような操作されたiPSCにおける使用可能なクローン選択に起因して、操作されたエフェクター細胞の供給源が無制限であること、特に複数の操作されたモダリティが含まれるときに、エフェクター細胞の反復操作を必要としないこと、得られたエフェクター細胞が、若返ってテロメアが伸長し、消耗が減っていること、エフェクター細胞集団が、編集部位、コピー数に関して均質であり、対立遺伝子変異、ランダム突然変異及び発現まだら化がないことが含まれるが、これらに限定されない。
【0223】
特定の実施形態では、1つ以上の選択された部位に1つ以上の標的化編集を含むゲノム操作されたiPSCは、運命維持培地(FMM)として表2に示される細胞培養培地で長期間単一細胞として維持、継代、及び増殖され、ここで、iPSCは、選択された部位で標的化編集と機能改変を保持する。培地の成分は、表2に示される最適範囲内の量で培地中に存在し得る。FMM中で培養されたiPSCは、それらの未分化の、基底又はナイーブプロファイル、培養洗浄又は選択を必要としないゲノム安定性を維持し続けること、並びに3つ全ての体細胞系統、胚様体又は単層を介したin vitro分化(胚様体の形成なし)、及び奇形腫形成によるin vivo分化を容易に生じさせることが示されている。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/134652号を参照されたい。
【0224】
【0225】
いくつかの実施形態では、1つ以上の標的化組み込み及び/又はインデルを含むゲノム操作されたiPSCは、MEK阻害剤、GSK阻害剤、及びROCK阻害剤を含む培地中で維持され、継代され、増殖され、TGFβ受容体/ALK5阻害剤を含まないか、又は本質的に含まず、ここで、iPSCは、選択された部位において無傷で機能的な標的化編集を保持する。
【0226】
本発明の別の態様は、iPSCの標的化編集を通じて、あるいは最初に標的化編集によりゲノム操作非多能性細胞を生成し、次に選択/分離されたゲノム操作非多能性細胞をリプログラミングして非多能性細胞と同じ標的化編集を含むiPSCを取得することを通じて、ゲノム操作されたiPSCを生成する方法を提供する。本発明の更なる態様は、標的化組み込み及び/又は標的化インデルを細胞に導入することによって同時にリプログラミングを受けているゲノム操作非多能性細胞を提供し、接触した非多能性細胞はリプログラミングに十分な条件下にあり、リプログラミングの条件は、非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子及び小分子と接触させることを含む。同時のゲノム操作及びリプログラミングのための方法の様々な実施形態では、非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子及び必要に応じて1つ以上の小分子と接触させることによりリプログラミングを開始する前に、又は本質的に同時に、非多能性細胞に標的化組み込み及び/又は標的化インデルを導入することができる。
【0227】
いくつかの実施形態では、非多能性細胞を同時にゲノム操作及びリプログラミングするために、標的化組み込み及び/又はインデルはまた、非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子及び小分子と接触させることによりリプログラミングの複数日のプロセスが開始された後に非多能性細胞に導入され得、ここで、リプログラミング細胞がSSEA4、Tra181及びCD30を含むがこれらに限定されない1つ以上の内因性多能性遺伝子の安定した発現を示す前に、コンストラクトを担持するベクターが導入される。
【0228】
いくつかの実施形態では、リプログラミングは、非多能性細胞を少なくとも1つのリプログラミング因子、及び必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、及びROCK阻害剤の組み合わせ(FRM;表2)と接触させることにより開始される。いくつかの実施形態では、上述の任意の方法によって産生されるゲノム操作されたiPSCは、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、及びROCK阻害剤の組み合わせを含む混合物(FMM;表2)を使用して更に維持及び増殖される。
【0229】
ゲノム操作されたiPSCを生成する方法のいくつかの実施形態では、方法は、iPSCに1つ以上の標的化組み込み及び/又はインデルを導入してiPSCをゲノム操作し、表1に列挙された少なくとも1つの遺伝子型を有するゲノム操作されたiPSCを取得することを含む。代替的に、ゲノム操作されたiPSCを生成する方法は、(a)1つ以上の標的化編集を非多能性細胞に導入して、選択した部位で標的化組み込み及び/又はインデルを含むゲノム操作された非多能性細胞を取得することと、(b)ゲノム操作された非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子、並びに必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤及び/又はROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させて、選択された部位で標的化組み込み及び/又はインデルを含むゲノム操作されたiPSCを取得することと、を含む。代替的に、ゲノム操作されたiPSCを生成する方法は、(a)非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子、並びに必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、及び/又はROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させて、非多能性細胞のリプログラミングを開始することと、(b)ゲノム操作するために、1つ以上の標的化組み込み及び/又はインデルをリプログラミング非多能性細胞に導入することと、(c)選択された部位で標的化組み込み及び/又はインデルを含むゲノム操作されたiPSCを取得することと、を含む。上記の方法のいずれかは、クローンiPSCを得るために、ゲノム操作されたiPSCの単一細胞ソーティングを更に含み得る。ゲノム操作されたiPSCのクローン増殖を通じて、本明細書で提供されるような少なくとも1つの表現型を有する単一細胞ソーティング及び増殖されたクローン操作iPSCを含むようにマスター細胞バンクが生成される。マスター細胞バンクは、続いて凍結保存され、更なるiPSC操作のためのプラットフォーム、及び既製の操作された均質な細胞療法製品を製造するための再生可能な供給源を提供し、これらの製品は、組成が明確かつ均一であり、費用効果の高い様式でかなりの規模で大量生産することができる。
【0230】
リプログラミング因子は、国際公開第2015/134652号及び同第2017/066634号に開示されているような、OCT4、SOX2、NANOG、KLF4、LIN28、C-MYC、ECAT1、UTF1、ESRRB、SV40LT、HESRG、CDH1、TDGF1、DPPA4、DNMT3B、ZIC3、L1TD1、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。1つ以上のリプログラミング因子は、ポリペプチドの形態であり得る。リプログラミング因子はまた、リプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドの形態であり得、したがって、レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、エピソーム、プラスミド、及びミニサークルなどのベクターによって非多能性細胞に導入され得る。特定の実施形態では、少なくとも1つのリプログラミング因子をコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクターによって導入される。いくつかの実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドはエピソームベクターによって導入される。他の種々の実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドは、センダイウイルスベクターによって導入される。いくつかの実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドは、プラスミドの組み合わせによって導入される。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019/075057(A1)号を参照されたい。
【0231】
いくつかの実施形態では、非多能性細胞は、同一の又は異なる選択された部位での標的化組み込みのための複数のベクターによって、異なる外因性ポリヌクレオチド及び/又は異なるプロモーターを含む複数のコンストラクトでトランスフェクトされる。これらの外因性ポリヌクレオチドは、自殺遺伝子、又は標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質及びペプチド、薬物標的候補、又はiPSC若しくはそれからの誘導細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、及び/又は生存率を促進するタンパク質をコードする遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、siRNA、shRNA、miRNA、及びアンチセンス核酸を含むがこれらに限定されないRNAをコードする。これらの外因性ポリヌクレオチドは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、時間特異的プロモーター、及び組織特異的又は細胞型特異的プロモーターからなる群から選択される1つ以上のプロモーターによって駆動され得る。したがって、ポリヌクレオチドは、プロモーターを活性化する条件下で、例えば、誘導剤の存在下で、又は特定の分化した細胞型で発現可能である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、iPSC及び/又はiPSCから分化した細胞で発現される。一実施形態では、1つ以上の自殺遺伝子は、構成的プロモーターにより駆動され、例えば、CAGにより駆動されるキャパーゼ-9である。異なる外因性ポリヌクレオチド及び/又は異なるプロモーターを含むこれらのコンストラクトは、同時又は連続的に非多能性細胞にトランスフェクトすることができる。複数のコンストラクトの標的化組み込みに供される非多能性細胞は、1つ以上のリプログラミング因子に同時に接触させて、ゲノム操作と同時にリプログラミングを開始でき、これにより、同じ細胞のプールに複数の標的化組み込みを含むゲノム操作されたiPSCを取得できる。このように、この堅牢な方法により、同時のリプログラミングと操作戦略により、選択された1つ以上の標的部位に組み込まれた複数のモダリティを持つクローンゲノム操作iPSCを誘導できる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法及び組成物を使用して取得されたゲノム改変されたiPSC及びそれらの誘導細胞は、表1に列挙された少なくとも1つの遺伝子型を含む。
【0232】
IV.ゲノム操作されたiPSCを分化させることにより合成エフェクター細胞を取得する方法
本発明の更なる態様は、奇形腫形成によるゲノム操作されたiPSCのin vivo分化の方法を提供し、ゲノム操作されたiPSCからin vivoで誘導された分化細胞は、所望の部位で標的化組み込み及び/又はインデルを含む無傷で機能的な標的化編集を保持する。いくつかの実施形態では、奇形腫形成を介してゲノム操作されたiPSCからin vivoで誘導された分化細胞は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ2ミクログロブリン、CD38、GAPDH、TCR、若しくはRUNX1、又はゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む、1つ以上の望ましい部位に組み込まれた1つ以上の誘導性自殺遺伝子を含む。いくつかの他の実施形態では、奇形腫形成を介してゲノム操作されたiPSCからin vivoで誘導された分化細胞は、標的化モダリティをコードするポリヌクレオチド、又は幹細胞及び/若しくは前駆細胞の輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、及び/若しくは生存率を促進するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の誘導性自殺遺伝子を含む奇形腫形成を介してゲノム操作されたiPSCからin vivoで誘導された分化細胞は、免疫応答の調節及び媒介に関連する内因性遺伝子の1つ以上のインデルを更に含む。いくつかの実施形態では、インデルは、1つ以上の内因性チェックポイント遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは、1つ以上の内因性T細胞受容体遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは、1つ以上の内因性MHCクラスIサプレッサー遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは、主要組織適合性複合体に関連する1つ以上の内因性遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα又はβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGITを含むが、これらに限定されない、1つ以上の内因性遺伝子に含まれる。一実施形態では、選択された部位に1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むゲノム操作されたiPSCは、B2M(ベータ-2-ミクログロブリン)をコードする遺伝子における標的化編集を更に含む。
【0233】
特定の実施形態では、本明細書で提供される1つ以上の遺伝子改変を含むゲノム操作されたiPSCは、造血細胞系統又は他の特定の細胞型をin vitroで誘導するために使用され、誘導された非多能性細胞は、選択された部位で標的化編集を含む機能的遺伝子改変を保持する。いくつかの実施形態では、造血細胞系統又は他の特定の細胞型をin vitroで誘導するために使用されるゲノム操作されたiPSCは、凍結保存され、それらの使用直前に解凍される、マスター細胞バンク細胞である。一実施形態では、ゲノム操作されたiPSC由来細胞は、決定的な造血内皮(HE)の可能性を有する中胚葉細胞、決定的なHE、CD34造血細胞、造血幹細胞及び前駆細胞、造血多能性前駆細体(MPP)、T細胞前駆細体、NK細胞前駆細体、骨髄細胞、好中球前駆細体、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、好中球、樹状細胞、及びマクロファージを含むがこれらに限定されず、ここで、ゲノム操作されたiPSCに由来する細胞は、所望の部位で標的化編集を含む機能的な遺伝子改変を保持する。
【0234】
iPSC由来造血細胞系統を得るための適用可能な分化方法及び組成物には、例えば、国際公開第2017/078807号に示されるものが含まれ、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。提供されているように、造血細胞系統を生成するための方法と組成物は、無血清、フィーダーを含まない、及び/又は間質を含まない条件下で、スケーラブルで単層のEB形成を必要としない培養プラットフォームにおいて、iPSCを含む、多能性幹細胞に由来する決定的な造血内皮(HE)を介する。提供された方法に従って分化できる細胞は、多能性幹細胞から、特定の最終分化細胞及び分化転換細胞にコミットした前駆細胞、及び多能性中間体を経由せずに造血運命に直接移行した種々の系統の細胞にまで及ぶ。同様に、幹細胞を分化させることによって産生される細胞は、多能性幹細胞又は前駆細胞から、最終分化細胞まで、及び全ての介在する造血細胞系統にまで及ぶ。
【0235】
単層培養において造血系統の細胞を多能性幹細胞から分化及び増殖させる方法は、多能性幹細胞をBMP経路活性化因子、及び必要に応じてbFGFと接触させることを含む。提供されるように、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞が得られ、多能性幹細胞から胚様体を形成することなく増殖される。次いで、中胚葉細胞をBMP経路活性化因子、bFGF、及びWNT経路活性化因子との接触に供して、多能性幹細胞から胚様体を形成することなく、決定的な造血内皮(HE)の可能性を有する増殖中胚葉細胞を取得する。その後のbFGFとの接触、及び必要に応じてROCK阻害剤、及び/又はWNT経路活性化因子との接触により、決定的なHEの可能性を有する中胚葉細胞は、同様に分化中に増殖される、決定的なHE細胞に分化する。
【0236】
本明細書で提供される造血系統の細胞を得るための方法はEB媒介の多能性幹細胞分化より優れているが、これは、EB形成が適度な増殖から最小限の細胞増殖をもたらし、均一な増殖を必要とする多くの用途で重要な単層培養、及び集団内の細胞の均一な分化を可能にせず、骨が折れ、効率が低くなるためである。
【0237】
提供されている単層分化プラットフォームは、造血幹細胞及びT細胞、B細胞、NKT細胞、及びNK細胞などの分化した子孫の誘導をもたらす決定的な造血内皮への分化を促進する。単層分化戦略は、増強された分化効率と大規模な増殖を組み合わせ、種々の治療用途のための多能性幹細胞由来造血細胞の治療上適切な数の送達を可能にする。更に、本明細書で提供される方法を使用した単層培養は、in vitro分化、ex vivo修飾、及びin vivo長期造血自己複製、再構成及び生着の全範囲を可能にする機能的造血系統細胞をもたらす。提供されているように、iPSC由来造血系統細胞には、決定的な造血内皮、造血多能性前駆細胞、造血幹細胞及び前駆細胞、T細胞前駆体、NK細胞前駆体、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、並びに好中球が含まれるがこれらに限定されない。
【0238】
したがって、種々の実施形態では、決定的な造血系統の細胞への多能性幹細胞の分化を指示するための方法は、(i)多能性幹細胞を、BMP活性化因子、及び必要に応じてbFGFを含む組成物と接触させて、多能性幹細胞からの中胚葉細胞の分化及び増殖を開始させることと、(ii)中胚葉細胞を、BMP活性化因子、bFGF、及びGSK3阻害剤を含む組成物と接触させて、中胚葉細胞からの決定的なHEの可能性を有する中胚葉細胞の分化及び増殖を開始させることであって、組成物は、必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない、ことと、(iii)決定的なHEの可能性を有する中胚葉細胞を、ROCK阻害剤、bFGF、VEGF、SCF、IGF、EPO、IL6、及びIL11からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカイン、並びに必要に応じてWnt経路活性化因子を含む組成物と接触させて、決定的な造血内皮の可能性を有する多能性幹細胞由来中胚葉細胞からの決定的な造血内皮の分化及び増殖を開始させることであって、組成物は、必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない、ことと、を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、方法は、多能性幹細胞を、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、及びROCK阻害剤を含み、TGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない組成物と接触させ、多能性幹細胞を播種及び増殖させることを更に含む。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、iPSC、又はナイーブiPSC、又は1つ以上の遺伝的インプリントを含むiPSCであり、iPSCに含まれる1つ以上の遺伝的インプリントは、そこから分化した造血細胞に保持される。多能性幹細胞の造血系統の細胞への分化を指示するための方法のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞の造血系統の細胞への分化は、胚様体の生成がなく、単層培養形態である。
【0240】
上述の方法のいくつかの実施形態では、取得された多能性幹細胞由来の決定的な造血内皮細胞は、CD34+である。いくつかの実施形態では、取得された決定的な造血内皮細胞は、CD34+CD43-である。いくつかの実施形態では、決定的な造血内皮細胞は、CD34+CD43-CXCR4-CD73-である。いくつかの実施形態では、決定的な造血内皮細胞は、CD34+ CXCR4-CD73-である。いくつかの実施形態では、決定的な造血内皮細胞は、CD34+CD43-CD93-である。いくつかの実施形態では、決定的な造血内皮細胞は、CD34+CD93-である。
【0241】
上述の方法のいくつかの実施形態では、方法は、(i)多能性幹細胞由来の決定的な造血内皮を、ROCK阻害剤と、VEGF、bFGF、SCF、Flt3L、TPO、及びIL7からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカインと、必要に応じてBMP活性化因子とを含む組成物と接触させて、プレT細胞前駆体への決定的な造血内皮の分化を開始させることと、必要に応じて、(ii)プレT細胞前駆体を、SCF、Flt3L、及びIL7からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカインを含むが、VEGF、bFGF、TPO、BMP活性化因子及びROCK阻害剤のうちの1つ以上を含まない組成物と接触させて、T細胞前駆体又はT細胞へのプレT細胞前駆体の分化を開始させることと、を更に含む。この方法のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来T細胞前駆体は、CD34+CD45+CD7+である。この方法のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来T細胞前駆体は、CD45+CD7+である。
【0242】
多能性幹細胞の造血系統の細胞への分化を指示するための上述の方法の更にいくつかの実施形態では、この方法は、(i)多能性幹細胞由来の決定的な造血内皮を、ROCK阻害剤;VEGF、bFGF、SCF、Flt3L、TPO、IL3、IL7、及びIL15からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカイン、並びに必要に応じてBMP活性化因子を含む組成物と接触させ、決定的な造血内皮のプレNK細胞前駆体への分化を開始することと、必要に応じて(ii)多能性幹細胞由来のプレNK細胞前駆体を、SCF、Flt3L、IL3、IL7、及びIL15からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカインを含み、VEGF、bFGF、TPO、BMP活性化因子、及びROCK阻害剤の1つ以上を含まない組成物と接触させ、プレNK細胞前駆体からNK細胞前駆体又はNK細胞への分化を開始することと、を更に含む。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来NK前駆体は、CD3-CD45+CD56+CD7+である。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来NK細胞は、CD3-CD45+CD56+であり、必要に応じて、NKp46+、CD57+及びCD16+であることによって更に規定される。
【0243】
したがって、上記の分化方法を使用すると、以下のiPSC由来造血細胞の1つ以上の集団を取得し得る:(i)iMPP-A、iTC-A2、iTC-B2、iNK-A2、及びiNK-B2から選択される1つ以上の培養培地を使用する、CD34+ HE細胞(iCD34)、(ii)iMPP-A、iTC-A2、iTC-B2、iNK-A2、及びiNK-B2から選択される1つ以上の培養培地を使用する、決定的な造血内皮(iHE)、(ii)iMPP-A、iTC-A2、iTC-B2、iNK-A2、及びiNK-B2から選択される1つ以上の培養培地を使用する、決定的なHSC、(iv)iMPP-Aを使用する、多能性前駆細胞(iMPP)、(v)iTC-A2、及びiTC-B2から選択される1つ以上の培養培地を使用する、T細胞前駆体(ipro-T)、(vi)iTC-B2を使用する、T細胞(iTC)、(vii)iNK-A2、及びiNK-B2から選択される1つ以上の培養培地を使用する、NK細胞前駆体(ipro-NK)、並びに/又は(viii)NK細胞(iNK)、及びiNK-B2。いくつかの実施形態では、培地は以下である:
a.iCD34-Cは、ROCK阻害剤と、bFGF、VEGF、SCF、IL6、IL11、IGF、及びEPOからなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカインと、必要に応じて、Wnt経路活性化因子とを含み、TGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない。
b.iMPP-Aは、BMP活性化因子と、ROCK阻害剤と、TPO、IL3、GMCSF、EPO、bFGF、VEGF、SCF、IL6、Flt3L、及びIL11からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカインとを含む。
c.iTC-A2は、ROCK阻害剤と、SCF、Flt3L、TPO、及びIL7からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカインと、必要に応じて、BMP活性化因子とを含む。
d.iTC-B2は、SCF、Flt3L、及びIL7からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカインを含む。
e.iNK-A2は、ROCK阻害剤と、SCF、Flt3L、TPO、IL3、IL7、及びIL15からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカインと、必要に応じて、BMP活性化因子とを含む。
f.iNK-B2は、SCF、Flt3L、IL7、及びIL15からなる群から選択される1つ以上の増殖因子及びサイトカインを含む。
【0244】
いくつかの実施形態では、上記の方法から得られるゲノム操作iPSC由来細胞は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、GAPDH、RUNX1、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、TCRα若しくはβ定常領域、NKG2A、NKG2D、CD25、CD38、CD44、CD54、CD56、CD58、CD69、CD71、OX40、4-1BB、CIS、CBL-B、SOCS2、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、及びTIGIT、又はゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む、1つ以上の所望の組み込み部位で組み込まれる1つ以上の誘導性自殺遺伝子を含む。いくつかの他の実施形態では、ゲノム操作されたiPSC由来細胞は、安全スイッチタンパク質、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質及びペプチド、薬物標的候補、又は幹細胞及び/若しくは前駆細胞の輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、及び/若しくは生存率を促進するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の自殺遺伝子を含むゲノム操作されたiPSC由来細胞は、チェックポイント遺伝子、内因性T細胞受容体遺伝子、及びMHCクラスIサプレッサー遺伝子を含むがこれに限定されない、免疫応答調節及び媒介に関連する1つ以上の内因性遺伝子に含まれる1つ以上のインデルを更に含む。一実施形態では、1つ以上の自殺遺伝子を含むゲノム操作されたiPSC由来細胞は、B2M遺伝子にインデルを更に含み、B2Mがノックアウトされている。
【0245】
更に、第1の運命のゲノム操作造血細胞から第2の運命のゲノム操作造血細胞を取得するための適用可能な脱分化方法及び組成物は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2011/159726号に示されているものを含む。その中で提供される方法及び組成物は、リプログラミング中に内因性Nanog遺伝子の発現を制限することによって、開始非多能性細胞を非多能性中間細胞に部分的にリプログラミングすることを可能にし、非多能性中間細胞を、中間細胞を所望の細胞型に分化させるための条件に供する。いくつかの実施形態では、本明細書の方法及び組成物を使用して取得されたゲノム改変されたiPSC及びそれらの誘導細胞は、表1に列挙された少なくとも1つの遺伝子型を含む。
【0246】
V.遺伝子操作されたiPSCから分化した組み合わされた合成エフェクター細胞型の治療的使用
本発明は、いくつかの実施形態では、2つ以上の合成エフェクター細胞型、又は異なる合成エフェクター細胞型の2つ以上の集団、を含む組成物を提供し、合成エフェクター細胞のそれぞれは、開示されるような方法及び組成物を使用して、ゲノム操作されたiPSCから分化させられている。いくつかの実施形態では、操作されたiPSCは、増強された機能的モダリティを有する合成エフェクター細胞をもたらす、iPSC由来エフェクター細胞に保持可能な1つ以上の標的化遺伝子編集を含み、遺伝子操作されたiPSC及び誘導合成エフェクター細胞は、細胞ベースの養子療法に適している。一実施形態では、増強された合成エフェクター細胞は、iPSC由来CD34細胞を含む。一実施形態では、増強された合成エフェクター細胞は、iPSC由来HSC細胞を含む。一実施形態では、増強された合成エフェクター細胞は、iPSC由来のプロT又はT細胞を含む。一実施形態では、増強された合成エフェクター細胞は、iPSC由来のプロNK又はBK細胞を含む。一実施形態では、増強された合成エフェクター細胞は、iPSC由来免疫調節性細胞又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、iPSC由来の増強された合成エフェクター細胞は、改善された治療の可能性のために、ex vivoで更に修飾される。一実施形態では、iPSCに由来する増強された合成エフェクター細胞の単離された集団又は亜集団のうちの少なくとも1つは、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、及び/又はセントラルメモリーT細胞の数又は比率の増加を含む。一実施形態では、iPSCに由来する増強された合成エフェクター細胞の単離された集団又は亜集団のうちの少なくとも1つは、I型NKT細胞の数又は比率の増加を含む。別の実施形態では、iPSCに由来する増強された合成エフェクター細胞の単離された集団又は亜集団のうちの少なくとも1つは、適応NK細胞の数又は比率の増加を含む。いくつかの実施形態では、iPSCに由来する、増強された合成CD34細胞、HSC細胞、T細胞、NK細胞、又は骨髄由来サプレッサー細胞の単離された集団又は亜集団のうちの少なくとも1つは、同種異系である。いくつかの実施形態では、iPSCに由来する、増強された合成CD34細胞、HSC細胞、T細胞、NK細胞、又はMDSCの単離された集団又は亜集団のうちの少なくとも1つは、自家性である。
【0248】
2つ以上の合成エフェクター細胞型、又は異なる合成エフェクター細胞型の2つ以上の集団を含み、合成エフェクター細胞のそれぞれが、ゲノム操作されたiPSCから分化している組成物のいくつかの実施形態では、第1の型の合成エフェクター細胞は、機能的に増強されたiPSC由来T細胞であり、第2の型の合成エフェクター細胞は、機能的に増強されたiPSC由来NK細胞である。いくつかの実施形態では、機能的に増強されたiPSC由来T細胞は、少なくとも第1のCARを含む。いくつかの実施形態では、機能的に増強されたiPSC由来NK細胞は、少なくとも第2のCARと、CD16バリアント並びに外因性の細胞表面発現サイトカイン及び/又はその受容体の部分長又は全長、の一方又は両方とを含む。いくつかの実施形態では、2つの異なる型の合成エフェクター細胞は、2つの別個の集団中にある。いくつかの実施形態では、合成エフェクター細胞の2つの別個の集団は、混合集団に組み合わされる(すなわち、2つの集団が混合される)。
【0249】
いくつかの実施形態では、分化のためのiPSCは、由来エフェクター細胞において望ましい治療属性を伝えるために選択された追加の遺伝的インプリントを含み、分化中の細胞発生生物学が破壊されず、当該iPSCに由来する分化造血細胞において遺伝的インプリントが保持され、機能的であることを条件とする。
【0250】
いくつかの実施形態では、多能性幹細胞の遺伝的インプリントは、(i)非多能性細胞をiPSCにリプログラミングする間若しくはその後に、多能性細胞のゲノムにおけるゲノム挿入、欠失若しくは置換を通じて得られる1つ以上の遺伝子組換えモダリティ、又は(ii)ドナー、疾患、若しくは治療応答に特異的である、供給源特異的免疫細胞の1つ以上の保持可能な治療属性を含み、多能性細胞は、供給源特異的免疫細胞からリプログラミングされ、iPSCは、供給源治療属性を保持し、供給源治療属性はまた、iPSC由来造血系統細胞にも含まれている。
【0251】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えモダリティは、安全スイッチタンパク質、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質及びペプチド、薬物標的候補、又はiPSC若しくはそれからの誘導細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、免疫応答調節及び修飾、並びに/若しくは生存率を促進するタンパク質、のうちの1つ以上を含む。
【0252】
更にいくつかの他の実施形態では、iPSC由来造血系統細胞は、以下のうちの少なくとも2つの組み合わせに関する供給源特異的免疫細胞の治療属性を含む:(i)1つ以上の抗原標的化受容体の発現、(ii)改変されたHLA、(iii)腫瘍微小環境に対する耐性、(iv)バイスタンダー免疫細胞及び免疫修飾の動員、(iv)低減された腫瘍外効果を伴う改善されたオンターゲット特異性、並びに(v)改善されたホーミング、持続性、細胞傷害性、又は抗原エスケープ救済。
【0253】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成エフェクター細胞並びに/又は合成エフェクター細胞の第1及び第2の集団を含む組成物は、様々な疾患を治療及び/又は改善するのに有用である。本明細書で提供されるような組成物を使用して対象を治療する方法の一実施形態では、方法は、iPSC由来NK細胞を含む第1の合成細胞集団を投与することであって、iPSC由来NK細胞が、(a)高親和性非切断性CD16(hnCD16)又はそのバリアントと、(b)第1のキメラ抗原受容体(CAR)、及び外因性の細胞表面発現サイトカイン又はその受容体の部分長又は全長ペプチド、の一方又は両方と、を含む、ことと、iPSC由来T細胞を含む第2の合成細胞集団を投与することであって、iPSC由来T細胞が、少なくとも第2のキメラ抗原受容体(CAR)を含み、第2のCARが、前述のTCR遺伝子座の内因性プロモーターの制御下で発現され、第1のCAR及び第2のCARが、同じ又は異なる標的化特異性を有する、ことと、を含む。この方法は、開示されるように、多くの他の利点の中でも特に、細胞傷害性における持続的応答、多抗原標的化を提供し、腫瘍抗原エスケープを克服するのに有効であり、複数系統の適応症において多様な適用を有する。
【0254】
いくつかの実施形態では、iPSC由来造血細胞は、表1に列挙される遺伝子型を含み、当該細胞は、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、若しくはIL21を含む少なくとも1つのサイトカイン及び/若しくはその受容体、又はそれらの任意の改変タンパク質を発現し、少なくともCARを発現する。いくつかの実施形態では、サイトカイン及びCARの操作された発現は、NK細胞特異的である。いくつかの他の実施形態では、サイトカイン及びCARの操作された発現は、T細胞特異的である。一実施形態では、誘導造血細胞のCARは、CD19、BCMA、CD20、CD22、CD38、CD123、HER2、CD52、EGFR、GD2、及びPDL1抗原のいずれか1つを認識する結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原特異的iPSC由来エフェクター細胞は、液体腫瘍を標的とする。いくつかの実施形態では、抗原特異的iPSC由来エフェクター細胞は、固形腫瘍/癌を標的とする。いくつかの実施形態では、抗原特異的iPSC由来エフェクター細胞は、腫瘍抗原エスケープを救済することができる。
【0255】
本発明の合成エフェクター細胞の2つ以上の型を養子細胞療法に適した対象に導入することにより、種々の疾患を治療及び/又は改善することができる。いくつかの実施形態では、iPSC由来造血細胞の2つ以上の型は、同種異系養子細胞療法のために提供される。更に、本発明は、いくつかの実施形態では、iPSC由来エフェクター細胞の2つ以上の型を含む組成物を養子細胞療法に適した対象に導入することによって、上記治療用組成物の治療的使用を提供し、この対象は、自己免疫障害、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、又はHIV、RSV、EBV、CMV、アデノウイルス、若しくはBKポリオーマウイルスに関連する感染症を有する。
【0256】
血液悪性腫瘍の例には、急性及び慢性白血病(急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病、多発性骨髄腫、及び骨髄異形成症候群が含まれるが、これらに限定されない。固形癌の例には、脳、前立腺、乳房、肺、結腸、子宮、皮膚、肝臓、骨、膵臓、卵巣、精巣、膀胱、腎臓、頭、首、胃、子宮頸、直腸、喉頭、及び食道の癌が含まれるが、これらに限定されない。種々の自己免疫疾患の例には、円形脱毛症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、皮膚筋炎、糖尿病(1型)、若年性特発性関節炎のいくつかの形態、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、いくつかの形態の心筋炎、多発性硬化症、類天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、甲状腺炎のいくつかの形態、ブドウ膜炎のいくつかの形態、白斑、多発血管炎を伴う肉芽腫症(ウェゲナー病)が含まれるが、これらに限定されない。ウイルス感染症の例には、HIV-(ヒト免疫不全ウイルス)、HSV-(単純ヘルペスウイルス)、KSHV-(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)、RSV-(呼吸器合胞体ウイルス)、EBV-(エプスタイン-バーウイルス)、CMV-(サイトメガロウイルス)、VZV(水痘帯状疱疹ウイルス)、アデノウイルス-、レンチウイルス-、BKポリオーマウイルス-関連疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0257】
本明細書に開示されるようなiPSC由来造血系統細胞の2つ以上の型を含む組成物を使用した治療は、症状発現時に、又は再発予防若しくは治療のために行い得る。「治療すること」、「治療」などの用語は、本明細書では、概して、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を取得することを意味するために使用される。効果は、疾患を完全に若しくは部分的に予防することに関して予防的であり得、かつ/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する有害作用の部分的若しくは完全な治癒に関して治療的であり得る。本明細書で使用されるとき、「治療」は、対象における疾患のあらゆる介入を網羅し、以下を含む:疾患にかかりやすい可能性があるが、まだそれを有していると診断されていない対象において疾患が生じることを予防すること、及び疾患を阻害する、すなわち、その発症を阻止すること、又は疾患を緩和する、すなわち、疾患を後退させること。iPSC由来造血系統細胞の2つ以上の型を含む組成物は、疾患又は傷害の発生前、発生中又は発生後に投与され得る。治療が患者の望ましくない臨床症状を安定化又は軽減させる進行中の疾患の治療もまた、特に重要である。特定の実施形態では、治療を必要とする対象は、細胞療法により少なくとも1つの関連する症状を抑制、改善、及び/又は改善することができる疾患、状態、及び/又は傷害を有する。特定の実施形態は、細胞療法を必要とする対象が、骨髄又は幹細胞移植の候補、化学療法又は放射線療法を受けた対象、過剰増殖性障害又は癌、例えば、造血系の過剰増殖性障害又は癌を有するか又は有するリスクがある対象、腫瘍、例えば、固形腫瘍を有するか又は発症するリスクがある対象、ウイルス感染又はウイルス感染に関連する疾患を有するか又は有するリスクがある対象を含むが、これらに限定されないことを企図する。
【0258】
本明細書に開示されるようなiPSC由来造血系統細胞の2つ以上の型を含む組成物での治療に対する応答性を評価するとき、応答は、臨床的利益率、死亡までの生存率、病理学的完全奏功、病理学的応答の版定量的測定、臨床的完全寛解、臨床的部分寛解、臨床的安定疾患、無再発生存、無転移生存、無病生存、循環腫瘍細胞減少、循環マーカー応答、及びRECIST(固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors))基準、のうちの少なくとも1つによって測定できる。
【0259】
本明細書に開示されるようなiPSC由来造血系統細胞の2つ以上の型を含む治療用組成物は、他の治療の前、間、及び/又は後に対象に投与することができる。したがって、組み合わせ療法の方法が提供され、これは、追加の治療剤の使用前、使用中、及び/又は使用後の2つ以上のiPSC由来エフェクター細胞型の投与又は調製を含み得る。一実施形態では、組成物は、ゲノム操作されたiPSCに由来する2つ以上の合成エフェクター細胞型を含み、組成物は、iPSC由来NK細胞、iPSC由来T細胞、iPSC由来CD34+ HE細胞、iPSC由来HSC、iPSC由来NKT細胞、iPSC由来B細胞、iPSC由来T前駆体、iPSC由来NK前駆体、及びiPSC由来MDSCのうちの少なくとも1つ又は2つ以上を含み、これらの細胞は、本明細書に開示される方法及び組成物によって作製される。本明細書に開示されるようなiPSC由来造血系統細胞の2つ以上の型を含む組成物は、静脈内、腹腔内、経腸、又は気管投与方法によって同時又は連続的に投与することができる。いくつかの実施形態では、誘導エフェクター細胞の2つの型が同時に投与される場合、各型の細胞は、そのそれぞれの別個の集団中にあるか、又は誘導エフェクター細胞の2つの型は、1つの混合集団で投与される。いくつかの実施形態では、組成物の各集団は、所望の治療目標を達成するために、1つ以上の好適な治療剤と同時に又はその結果として投与される。
【0260】
上述のように、1つ以上の追加の治療剤は、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分又はその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤又は放射性部分、又は免疫調節薬(IMiD)を含む。サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイドなどの免疫調節薬(IMiD)は、NK細胞とT細胞の両方を刺激する。本明細書で提供されるように、IMiDは、癌治療のためにiPSC由来治療用エフェクター細胞と共に使用され得る。
【0261】
iPSC由来エフェクター細胞の2つ以上の型の投与は、追加の治療剤の投与から、時間、日、又は週単位によって時間的に分離することができる。追加的、又は代替的に、投与は、抗腫瘍剤、手術などの非薬物療法などであるがこれらに限定されない他の生物活性剤又はモダリティと組み合わせることができる。
【0262】
組み合わせ細胞療法のいくつかの実施形態では、本明細書で提供されるiPSC由来造血系統細胞の2つ以上の型を含む治療用組成物は、抗体、又は抗体断片である、追加の治療剤を含む。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体、ヒト化モノクローナル抗体、又はキメラ抗体であってよい。いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片は、ウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態では、抗体又は抗体断片は、腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍又はウイルス特異的抗原は、投与されたiPSC由来造血系統細胞を活性化して、それらの殺傷能力を増強する。いくつかの実施形態では、投与されたiPSC由来造血系統細胞に対する追加の治療剤として組み合わせ治療に適した抗体は、抗CD20(例えば、リツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ、イブリツモマブ、オクレリズマブ)、抗CD22(イノツズマブ、モキセツモマブ、エプラツズマブ)、抗HER2(例えば、トラスツズマブ、パーツズマブ)、抗CD52(例えば、アレムツズマブ)、抗EGFR(例えば、セルツキシマブ)、抗GD2(例えば、ジヌツキシマブ)、抗PDL1(例えば、アベルマブ)、抗CD38(例えば、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202)、抗CD123(例えば、7G3、CSL362)、抗SLAMF7(エロツズマブ)、及びそれらのヒト化又はFc改変バリアント若しくは断片、又はそれらの機能的同等物若しくはバイオシミラーを含むがそれらに限定されない。
【0263】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む。チェックポイントは、阻害されていない場合に免疫応答を抑制又は下方制御できる細胞分子、しばしば細胞表面分子である。チェックポイント阻害剤は、チェックポイントの遺伝子発現又は遺伝子産物を減少させるか、又はチェックポイント分子の活性を低下させることができるアンタゴニストである。本明細書で提供される誘導エフェクター細胞との組み合わせ療法に適したチェックポイント阻害剤には、PD-1(Pdcdl、CD279)、PDL-1(CD274)、TIM-3(Havcr2)、TIGIT(WUCAM及びVstm3)、LAG-3(Lag3、CD223)、CTLA-4(Ctla4、CD152)、2B4(CD244)、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、A2AR、BATE、BTLA、CD39(Entpdl)、CD47、CD73(NT5E)、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2(Pou2f2)、レチノイン酸受容体アルファ(Rara)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、及び抑制性KIR(例えば、2DL1、2DL2、2DL3、3DL1、及び3DL2)のアンタゴニストが含まれるが、これらに限定されない。
【0264】
提供される誘導エフェクター細胞の2つ以上の型を含む組み合わせ療法のいくつかの実施形態は、チェックポイント分子を標的とする少なくとも1つの阻害剤を更に含む。提供される誘導エフェクター細胞の2つ以上の型との組み合わせ療法のいくつかの他の実施形態は、2つ、3つ、又はそれ以上のチェックポイント分子が標的とされるように、2つ、3つ、又はそれ以上の阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような組み合わせ療法のためのエフェクター細胞の2つの型は、提供されているような誘導T細胞の集団及び誘導NK細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、誘導T細胞又はNK細胞は、本明細書で提供されるように機能的に増強されている。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、又はそれ以上のチェックポイント阻害剤は、誘導エフェクター細胞の2つの型の投与と同時、前、又は後に組み合わせ療法で投与することができる。いくつかの実施形態では、2つ以上のチェックポイント阻害剤は、同時に、又は一度に1つ(逐次的に)投与される。
【0265】
いくつかの実施形態では、上述のチェックポイント分子のいずれかを阻害するアンタゴニストは抗体である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダIg、サメ重鎖のみ抗体(VNAR)、Ig NAR、キメラ抗体、組換え抗体、又はそれらの抗体断片であり得る。抗体断片の非限定的な例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、Fv、一本鎖抗原結合断片(scFv)、(scFv)2、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗原結合断片(sdAb、ナノボディ)、組換え重鎖のみ抗体(VHH)、及び抗体全体の結合特異性を維持するその他の抗体断片が含まれ、それらは、抗体全体よりも、製造するのに費用対効果が高く、より簡単に使用でき、又は感度が高くあり得る。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ又は3つ又はそれ以上のチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、及びそれらの誘導体又は機能的同等物のうちの少なくとも1つを含む。
【0266】
誘導エフェクター細胞の2つの型及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組み合わせ療法は、皮膚T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、菌状息肉症、パジェット様細網症、セザリー症候群、肉芽腫様弛緩皮膚、リンパ腫様丘疹症、慢性苔癬状粃糠疹、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、CD30+皮膚T細胞リンパ腫、二次皮膚CD30+大細胞リンパ腫、非菌状息肉症CD30皮膚大T細胞リンパ腫、多形性T細胞リンパ腫、レンネルトリンパ腫、皮下T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、頭頸部腫瘍、扁平上皮癌、横紋筋肉腫(rhabdomyocarcoma)、ルイス肺癌(LLC)、非小細胞肺癌、食道扁平上皮癌、食道腺癌、腎細胞癌(RCC)、結腸直腸癌(CRC)、急性骨髄性白血病(AML)、乳癌、胃癌、前立腺小細胞神経内分泌癌(SCNC)、肝臓癌、膠芽腫、肝臓癌、口腔扁平上皮癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、肝内胆管細胞癌、肝細胞癌、骨癌、転移、及び鼻咽頭癌を含むがこれらに限定されない、液性癌及び固形癌の治療に適用できる。
【0267】
本明細書で提供されるような誘導エフェクター細胞の2つの型以外のいくつかの実施形態では、治療的使用のための組み合わせは、化学療法剤又は放射性部分を含む1つ以上の追加の治療剤を更に含む。本明細書で使用する場合、化学療法剤とは、細胞傷害性抗腫瘍剤、すなわち、腫瘍細胞を優先的に殺傷するか、又は急速に増殖する細胞の細胞周期を破壊するか、又は幹癌細胞を根絶することが見出され、腫瘍性細胞の増殖を防止又は低減するために治療的に使用される化学剤を指す。化学療法剤はまた、抗腫瘍性又は細胞傷害性の薬物又は薬剤と呼ばれることもあり、当該技術分野で周知である。
【0268】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、アントラサイクリン、アルキル化剤、スルホン酸アルキル、アジリジン、エチレンイミン、メチルメラミン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、抗生物質、代謝拮抗剤、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、酵素、ポドフィロトキシン、白金含有薬剤、インターフェロン、及びインターロイキンを含む。例示的な化学療法剤には、アルキル化剤(シクロホスファミド、メクロレタミン、メファリン、クロラムブシル、ヘアメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン)、代謝拮抗剤(メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン)、エピポドフィロトキシン(エトポシド、エトポシドオルトキノン、及びテニポシド)、抗生物質(ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ビスアントレン、アクチノマイシンD、プリカマイシン、ピューロマイシン、及びグラミシジンD)、パクリタキセル、コルヒチン、サイトカラシンB、エメチン、メイタンシン、並びにアムサクリンが含まれるが、これらに限定されない。追加の薬剤には、アミングルテチミド、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、アルトレタミン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)、イリノテカン(CPT-11)、アレムツザマブ、アルトレタミン、アナストロゾール、L-アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、セレコキシブ、セツキシマブ、クラドリビン、クロフラビン、シタラビン、ダカルバジン、デニロイキンジフチトクス、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドロモスタノロン、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド、エチニルエストラジオール、エキセメスタン、フロクスウリジン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、フルタミド、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ(2a、2b)、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、メクロレタミン、メゲストロール、メルファリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペメトレキセド、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トペテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビノレルビン、及びゾレドロネートが含まれる。他の適切な薬剤は、化学療法剤又は放射線療法剤として承認され、当該技術分野で知られているものを含む、ヒトへの使用が承認されているものである。そのような薬剤は、多くの標準的な医師や腫瘍学者の参考文献(例えば、Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ninth Edition,McGraw-Hill,N.Y.,1995)又はNational Cancer Instituteウェブサイト(fda.gov/cder/cancer/druglistfrarne.htm)のいずれかを参照でき、どちらも随時更新される。
【0269】
一実施形態では、組み合わせ細胞療法は、CD3エンゲージャーである治療用タンパク質又はペプチドと、ゲノム操作されたiPSCに由来する合成エフェクター細胞の2つの集団とを含み、由来合成NK又はT細胞は、細胞表面CD3(cs-CD3)を含む。いくつかの実施形態では、CD3エンゲージャーは、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、エルツマキソマブ、RO6958688、AFM11、MT110/AMG 110、MT111/AMG211/MEDI-565、AMG330、MT112/BAY2010112、MOR209/ES414、MGD006/S80880、MGD007、及び/又はFBTA05のうちの1つを含む。更にいくつかの他の実施形態では、CD3エンゲージャーは、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、及びエルツマキソマブのうちの1つを含み、由来NK細胞又はT細胞は、CD19、BCMA、CD38、CD20、CD22、又はCD123を標的とするCAR、hnCD16、及びcs-CD3を含む。更にいくつかの追加の実施形態では、CD3エンゲージャーは、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、及びエルツマキソマブのうちの1つを含み、ゲノム操作されたiPSCに由来する合成NK又はT細胞は、cs-CD3、hnCD16、CAR及び1つ以上の外因性サイトカインを含む。
【0270】
治療用組成物に含まれるiPSC由来造血系統細胞の2つ以上の型以外に、対象への投与に適した組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加物)及び/若しくは希釈剤(例えば、薬学的に許容される培地、例えば、細胞培養培地)、又は他の薬学的に許容される成分を更に含むことができる。薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤は、部分的には、投与される特定の組成物によって、並びに治療用組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、本発明の治療用組成物の多種多様な適切な製剤が存在する(例えば、その開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.1985を参照されたい)。
【0271】
これらの薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤は、治療用組成物のpHを約3~約10に維持するのに十分な量で存在することができる。このように、緩衝液は、全組成物の重量対重量ベースで約5%もの多さであり得る。限定されないが、塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの電解質もまた、治療用組成物に含まれ得る。一態様では、治療用組成物のpHは、約4~約10の範囲である。代替的に、治療用組成物のpHは、約5~約9、約6~約9、又は約6.5~約8の範囲である。別の実施形態では、治療用組成物は、当該pH範囲のうちの1つのpHを有する緩衝液を含む。別の実施形態では、治療用組成物は、約7のpHを有する。代替的に、治療用組成物は、約6.8~約7.4の範囲のpHを有する。更に別の実施形態では、治療用組成物は、約7.4のpHを有する。
【0272】
本発明はまた、部分的に、本発明の特定の組成物及び/又は培養物における薬学的に許容される細胞培養培地の使用を提供する。そのような組成物は、ヒト対象への投与に適している。一般的に言えば、本発明の実施形態によるiPSC由来エフェクター細胞の維持、増殖、及び/又は健康を支持する任意の培地は、医薬細胞培養培地としての使用に適している。特定の実施形態では、薬学的に許容される細胞培養培地は、無血清及び/又はフィーダーを含まない培地である。種々の実施形態では、無血清培地は動物成分を含まず、必要に応じて無タンパク質であり得る。必要に応じて、培地は、生物薬学的に許容される組換えタンパク質を含み得る。動物成分を含まない培地は、成分が非動物源に由来する培地を指す。組換えタンパク質は、動物を含まない培地で天然の動物タンパク質に取って代わり、栄養素は、合成、植物、又は微生物の供給源から取得される。対照的に、無タンパク質培地は、実質的にタンパク質を含まないと定義される。当業者は、上述の培地の例は例示であり、本発明での使用に適した培地の配合を決して限定するものではなく、当業者に既知であり利用可能な多くの適切な培地があることを理解するであろう。
【0273】
iPSC由来造血系統細胞は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%のT細胞、NK細胞、NKT細胞、プロT細胞、プロNK細胞、CD34+ HE細胞、HSC、B細胞、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、調節性マクロファージ、調節性樹状細胞、又は間葉系間質細胞を有することができる。いくつかの実施形態では、iPSC由来造血系統細胞は、約95%~約100%のT細胞、NK細胞、プロT細胞、プロNK細胞、CD34+ HE細胞、又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞治療を必要とする対象を治療するための、約95%のT細胞、NK細胞、プロT細胞、プロNK細胞、CD34+ HE細胞、又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の単離された集団を有する組成物などの、精製T細胞又はNK細胞を有する治療用組成物を提供する。操作されたiPSCに由来する合成エフェクター細胞の2つ以上の型を含む、本明細書で提供されるような組成物では、2つの型の細胞の細胞数の比は、100:1~1:100、又は50:1~1:50、又は20:1~1:20、又は10:1~1:10、又は2:1~1:2、又はその間の任意の範囲である。
【0274】
当業者が理解するように、本明細書で提供される方法及び組成物に基づくiPSCに由来する自家性及び同種異系の造血系統細胞の両方は、上述のような組み合わされた細胞型を利用する療法で使用することができる。自家移植の場合、由来造血系統細胞の単離された集団は、対象と完全又は部分的にHLA一致する。別の実施形態では、由来造血系統細胞は、対象とHLAが一致せず、ここで、由来造血系統細胞は、HLA I null及びHLA II nullを有するNK細胞又はT細胞である。
【0275】
いくつかの実施形態では、組成物中の各型の由来造血系統細胞の数は、用量あたり、少なくとも0.1×105細胞、少なくとも1×105細胞、少なくとも5×105細胞、少なくとも1×106細胞、少なくとも5×106細胞、少なくとも1×107細胞、少なくとも5×107細胞、少なくとも1×108細胞、少なくとも5×108細胞、少なくとも1×109細胞、又は少なくとも5×109細胞であり、2つの型の細胞の細胞数比は、100:1~1:100、50:1~1:50、20:1~1:20、10:1~1:10、2:1~1:2、1:1、又はその間の任意の範囲である。いくつかの実施形態では、組成物中の各型の由来造血系統細胞の数は、1用量あたり、約0.1×105細胞~約1×106細胞、1用量あたり、約0.5×106細胞~約1×107細胞、1用量あたり、約0.5×107細胞~約1×108細胞、1用量あたり、約0.5×108細胞~約1×109細胞、1用量あたり、約1×109細胞~約5×109細胞、1用量あたり、約0.5×109細胞~約8×109細胞、1用量あたり、約3×109細胞~約3×1010細胞であり、2つの型の細胞の細胞数比は、100:1~1:100、50:1~1:50、20:1~1:20、10:1~1:10、2:1~1:2、1:1、又はその間の任意の範囲である。一般に、60kgの患者/対象の場合、1×108細胞/用量は1.67×106細胞/kgに変換される。
【0276】
一実施形態では、組成物中の各型の由来造血系統細胞の数は、血液の部分的又は単一の臍帯中の免疫細胞の数であるか、又は少なくとも0.1×105細胞/kg体重、少なくとも0.5×105細胞/kg体重、少なくとも1×105細胞/kg体重、少なくとも5×105細胞/kg体重、少なくとも10×105細胞/kg体重、少なくとも0.75×106細胞/体kg体重、少なくとも1.25×106細胞/kg体重、少なくとも1.5×106細胞/kg体重、少なくとも1.75×106細胞/kg体重、少なくとも2×106細胞/kg体重、少なくとも2.5×106細胞/kg体重、少なくとも3×106細胞/kg体重、少なくとも4×106細胞/kg体重、少なくとも5×106細胞/kg体重、少なくとも10×106細胞/kg体重、少なくとも15×106細胞/kg体重、少なくとも20×106細胞/kg体重、少なくとも25×106細胞/kg体重、少なくとも30×106細胞/kg体重、1×108細胞/kg体重、5×108細胞/kg体重、又は1×109細胞/kg体重であり、2つの型の細胞の細胞数比は、100:1~1:100、50:1~1:50、20:1~1:20、10:1~1:10、2:1~1:2、1:1、又はその間の任意の範囲である。
【0277】
一実施形態では、ある用量の2つの型の由来造血系統細胞が対象に送達される。例示的な一実施形態では、対象に提供される細胞の有効量は、少なくとも2×106細胞/kg、少なくとも3×106細胞/kg、少なくとも4×106細胞/kg、少なくとも5×106細胞/kg、少なくとも6×106細胞/kg、少なくとも7×106細胞/kg、少なくとも8×106細胞/kg、少なくとも9×106細胞/kg、又は少なくとも10×106細胞/kg、又はそれ以上の細胞/kgであり、介在する全ての細胞用量を含み、2つの型の細胞の細胞数比は、100:1~1:100、50:1~1:50、20:1~1:20、10:1~1:10、2:1~1:2、1:1、又はその間の任意の範囲である。
【0278】
別の例示的な実施形態では、2つの型の細胞の細胞数比が100:1~1:100、50:1~1:50、20:1~1:20~10:1~1:10、2:1~1:2、1:1、又はその間の任意の範囲である、対象に提供される細胞の有効量は、約2×106細胞/kg、約3×106細胞/kg、約4×106細胞/kg、約5×106細胞/kg、約6×106細胞/kg、約7×106細胞/kg、約8×106細胞/kg、約9×106細胞/kg、又は約10×106細胞/kg、又はそれ以上の細胞/kgであり、介在する全ての細胞用量を含む。
【0279】
別の例示的な実施形態では、2つの型の細胞の細胞数比が100:1~1:100、50:1~1:50、20:1~1:20、10:1~1:10、2:1~1:2、1:1、又はその間の任意の範囲である、対象に提供される細胞の有効量は、約2×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、約3×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、約4×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、約5×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、2×106細胞/kg~約6×106細胞/kg、2×106細胞/kg~約7×106細胞/kg、2×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、3×106細胞/kg~約6×106細胞/kg、3×106細胞/kg~約7×106細胞/kg、3×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、4×106細胞/kg~約6×106細胞/kg、4×106細胞/kg~約7×106細胞/kg、4×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、5×106細胞/kg~約6×106細胞/kg、5×106細胞/kg~約7×106細胞/kg、5×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、又は6×106細胞/kg~約8×106細胞/kgであり、介在する全ての細胞用量を含む。
【0280】
いくつかの実施形態では、由来造血系統細胞の2つ以上の型を含む組成物の治療的使用は単回投与治療であり、この2つ以上の型の細胞が同時又は連続的に投与される。いくつかの実施形態では、由来造血系統細胞の2つ以上の型を含む組成物の治療的使用は、複数回投与治療である。いくつかの実施形態では、複数回投与治療は、毎日、3日ごと、7日ごと、10日ごと、15日ごと、20日ごと、25日ごと、30日ごと、35日ごと、40日ごと、45日ごと、50日ごとに、又はその間の任意の日数に1回の投与であり、2つの型の細胞の各投与は、同時又は連続的に投与される。
【0281】
いくつかの実施形態では、操作されたiPSCに由来する合成エフェクター細胞の2つの型を含む組成物は、無菌の解凍後のものであり得、ヒト患者/対象への投与に適していて、すぐに投与することができる(すなわち、更に処理することなく投与することができる)。すぐに投与される細胞ベースの組成物は、組成物が、対象への移植又は投与の前に、いずれかの更なる処理又は操作を必要としないことを意味する。他の実施形態では、本発明は、小さな化学分子を含む1つ以上の薬剤の投与前に増殖及び/又は修飾される、2つ以上の型の由来造血系統細胞の単離された集団を提供する。修飾は、由来造血系統細胞を、小さな化学分子、タンパク質、核酸、又は選択された細胞若しくはその細胞成分と接触させることによるものであり得る。iPSC由来エフェクター細胞を含む免疫細胞を修飾するための組成物及び方法は、例えば、国際公開第2017/127755号に詳細に記載されており、その関連する開示は参照により本明細書に組み込まれる。組換えTCR又はCARを発現するように遺伝子操作された由来造血系統細胞については、細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号に記載されている方法を使用して活性化及び増殖させることができる。
【0282】
特定の実施形態では、由来造血系統細胞に対する一次刺激シグナル及び共刺激シグナルは、異なるプロトコルによって提供することができる。例えば、各シグナルを提供する薬剤は、溶液中にあるか、又は表面に結合することができる。表面に結合される場合、薬剤は、同じ表面に(すなわち、「シス」形成で)又は別個の表面に(すなわち、「トランス」形成で)結合され得る。代替的に、一方の薬剤を表面に結合させ、他方の薬剤を溶液中に存在させることができる。一実施形態では、共刺激シグナルを提供する薬剤は、細胞表面に結合することができ、一次活性化シグナルを提供する薬剤は、溶液中にあるか、又は表面に結合される。特定の実施形態では、両方の薬剤が溶液中にあり得る。別の実施形態では、薬剤は、可溶性形態であり得、次いで、本発明の実施形態においてTリンパ球を活性化及び増殖させる際に使用することが企図される人工抗原提示細胞(aAPC)について、Fc受容体若しくは抗体を発現する細胞、若しくは、その開示が参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0101519号及び同第2006/0034810号に開示されるものなど、薬剤に結合する他の結合剤などの、表面に架橋されることができる。
【0283】
投与量、頻度、及びプロトコルのいくらかの変動は、治療される対象の状態に応じて必然的に発生する。投与の責任者は、いずれにしても、個々の対象に対しての適切な用量、頻度及びプロトコルを決定する。
【実施例】
【0284】
次の例は、例示のために提供されるものであり、限定のためのものではない。
【0285】
実施例1-材料及び方法
種々のプロモーターの制御下で自殺系を効果的に選択し、種々のセーフハーバー遺伝子座組み込み戦略と組み合わせて試験するために、単一細胞の継代と高スループットの96ウェルプレートベースのフローサイトメトリーソーティングを可能にする、出願人独自のiPSCプラットフォームを使用し、単一又は複数の遺伝子修飾によるクローンiPSCの導出を可能にした。
【0286】
小分子培養におけるiPSCの維持:iPSCは、培養のコンフルエンシーが75%~90%に達すると、単一細胞として日常的に継代された。単細胞解離の場合、iPSCをPBS(Mediatech)で1回洗浄し、Accutase(Millipore)で37℃において3~5分間処理した後、ピペッティングして単細胞解離を確実にした。次いで、単細胞懸濁液を従来の培地と等量で混合し、225×gで4分間遠心分離し、FMMに再懸濁し、マトリゲルでコーティングした表面に播種した。継代は通常1:6~1:8で、37℃で2~4時間マトリゲルで前もってコーティングされた組織培養プレートに移し、2~3日ごとにFMMを供給した。細胞培養は、37℃、5%CO2に設定された加湿インキュベーターで維持された。
【0287】
ZFNによるヒトのiPSC操作、目的のモダリティの標的化編集のためのCRISPR:ROSA26標的化挿入を例として使用して、ZFNを介したゲノム編集では、200万個のiPSCが2.5μgのZFN-L(FTV893)、2.5μgのZFN-R(FTV894)の混合物及びAAVS1標的化挿入用の5μgドナーコンストラクトでトランスフェクトされた。CRISPRを介したゲノム編集では、200万個のiPSCが、5μgのROSA26-gRNA/Cas9(FTV922)とROSA26標的化挿入用の5μgドナーコンストラクトの混合物でトランスフェクトされた。トランスフェクションは、パラメータ1500V、10ms、3パルスを使用するNeonトランスフェクションシステム(Life Technologies)を使用して行われた。トランスフェクション後の2日目又は3日目に、プラスミドに人工プロモーター-ドライバーGFP及び/又はRFP発現カセットが含まれている場合、フローサイトメトリーを使用してトランスフェクション効率を測定した。トランスフェクション後4日目に、ピューロマイシンを最初の7日間0.1μg/mLの濃度で、7日後に0.2μg/mLの濃度で培地に添加して、標的細胞を選択した。ピューロマイシンの選択中、細胞は10日目に新鮮なマトリゲルコーティングされたウェルに継代された。ピューロマイシン選択の16日目以降に、生存細胞をGFP+iPS細胞のパーセンテージについてフローサイトメトリーで分析した。
【0288】
ゲノム編集されたiPSCの一括ソーティング及びクローンソーティング:ZFN又はCRISPR-Cas9を使用したゲノム標的化編集を含むiPSCは、ピューロマイシン選択の20日後にGFP+SSEA4+TRA181+iPSCの一括ソーティング及びクローンソーティングされた。単一細胞解離標的化iPSCプールを、最適な性能のために新規に作製した、ハンクス平衡塩溶液(MediaTech)、4%ウシ胎児血清(Invitrogen)、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech)、及び10mMのHepes(Mediatech)を含む冷却染色緩衝液に再懸濁した。SSEA4-PE、TRA181-Alexa Fluor-647(BD Biosciences)などのコンジュゲート一次抗体を細胞溶液に加え、氷上で15分間インキュベートした。全ての抗体は、100万細胞あたり100μLの染色緩衝液中に7μLで使用した。溶液を染色緩衝液で1回洗浄し、225gで4分間スピンダウンし、10μMチアゾビブを含む染色緩衝液に再懸濁し、フローサイトメトリーでのソーティングのために氷上で維持した。フローサイトメトリーによるソーティングは、FACS Aria II(BD Biosciences)で行った。一括ソーティングでは、GFP+SSEA4+TRA181+細胞にゲートをかけ、7mLのFMMで満たされた15mLの標準チューブにソーティングした。クローンソーティングでは、100μMノズルを使用して、1ウェルあたり3イベントの濃度で、ソーティングされた細胞を96ウェルプレートに直接排出した。各ウェルには、5μg/mLフィブロネクチンと1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech)が補充された200μLのFMMが予め充填されており、予め5×マトリゲルで一晩コーティングされていた。5×マトリゲルプレコーティングには、1アリコートのマトリゲルを5mLのDMEM/F12に追加し、4℃で一晩インキュベートして適切に再懸濁させ、最後にウェルあたり50μLで96ウェルプレートに加え、37℃で一晩インキュベートする。5×マトリゲルは、各ウェルに培地を加える直前に吸引される。ソーティングが完了したら、96ウェルプレートを225gで1~2分間遠心分離してからインキュベーションした。プレートを7日間静置した。7日目に、150μLの培地を各ウェルから除去し、100μLのFMMと交換した。ウェルは、ソーティング後10日目に追加の100μLのFMMを再供給した。コロニー形成は早くも2日目に検出され、ほとんどのコロニーはソーティング後7~10日の間に増殖した。最初の継代では、ウェルをPBSで洗浄し、30μLのアキュターゼで37℃において約10分間解離させた。長期間のアキュターゼ処理の必要性は、長期間培養で遊ばなかったコロニーのコンパクトさを反映している。細胞が解離しているのが認められた後、200μLのFMMを各ウェルに加え、数回ピペッティングしてコロニーを破壊する。解離したコロニーを、予め5×マトリゲルでコーティングした96ウェルプレートの別のウェルに移し、インキュベーション前に225gで2分間遠心分離する。この1対1の継代は、増殖前の初期のコロニーを広げるために行われる。その後の継代は、3~5分間のアキュターゼ処理と、予めFMMの1×マトリゲルでコーティングされた大きなウェルへの75~90%のコンフルエンシーでの1:4~1:8の増殖で日常的に行われた。各クローン細胞株をGFP蛍光レベル及びTRA1-81発現レベルについて分析した。100%に近いGFP+及びTRA1-81+のクローン株を、更なるPCRスクリーニング及び分析のために選択した。フローサイトメトリー分析はGuava EasyCyte 8 HT(Millipore)で実行され、Flowjo(FlowJo,LLC)を使用して分析された。
【0289】
実施例2-増強された誘導NK及びTエフェクター細胞
CAR発現iPSCからの誘導NK細胞は、本明細書に記載された指示された分化プラットフォームに従って得られた。NK殺傷能力に関連するグランザイムBの生産の増加、並びにエフェクター機能を獲得するためのNK細胞のライセンス状態を付与するKIR2DL3及びKIR2DL1の発現の増加によって示されるように、NK細胞の成熟が合成hnCD16-CAR-IL-15/IL-15Ra iNK細胞で増強された。Nalm6及びARH-77標的細胞株に対するhnCD16-CAR-IL15/IL15Ra iNK細胞のIn vitro細胞傷害性を調べたところ、in vitroでのB細胞悪性腫瘍に対するCAR指向性CD19特異的殺傷及びリツキシマブ誘導性ADCCが示された。
【0290】
内因性調節エレメントの転写制御下にあるT細胞受容体α(TRAC)遺伝子座へのCD19 CARの標的化挿入による末梢血由来T細胞がリプログラミングされ、単一細胞由来のクローンTRAC標的化CAR含有マスターiPSC株(TRAC-CAR TiPSC)が生成された。T細胞分化の約28日目に、由来細胞はTCR発現のない状態で懸濁液中で更に増殖及び増殖することができた。この合成T細胞(TRAC-CAR iT)は、エフェクターサイトカイン(IFNγ、TNFα、IL2)、脱顆粒(CD107a/b、パーフォリン、グランザイムB)の産生、増殖(>85%が細胞周期に入る)、及び活性化マーカーCD69とCD25の上方制御により、CD19抗原チャレンジに対する効率的な細胞傷害性Tリンパ球応答を誘発するin vitro機能を実証した。成熟したTRAC-CAR iT細胞によるIFNγ及びTNFαの産生は、CARを発現する初代T細胞よりも著しく高い。TRAC-CAR iTはまた、腫瘍を抗原特異的に標的とし、CARを発現する初代T細胞で見られる抗原特異的細胞傷害性の変動はない。
【0291】
ここでは、iPSCの指示された分化を通じて得られた成熟iNK細胞に、成体末梢血NK細胞と比較して長いテロメアが含まれていることが更に示されている。テロメア長は、iPSC、成体末梢血NK細胞、及びiPSC由来NK細胞のフローサイトメトリーによって、G
0/1細胞のDNAインデックスを補正した対照(100%)として1301 T細胞白血病株を使用して決定された。
図2に示すように、iPSC由来NK細胞は、成体末梢血NK細胞(p=.105、ANOVA)と比較して、有意に長いテロメア長を維持し、iPSC由来NK細胞の増殖、生存率、持続性の可能性が高いことを示す。同様のより長いテロメア伸長の観察は、iPSC由来T細胞においても見られる。これは、テロメアの短縮が細胞の老化と共に起こり、幹細胞の機能不全及び細胞の老化に関連するという事実と一致する。
【0292】
実施例3-細胞傷害性及び多抗原標的化の複数ラウンドにわたる持続的応答をもたらすエフェクター細胞型の組み合わせ
Raji腫瘍細胞を予め播種した後、CAR-iT(0.3:1のE:T、o/n)を添加し、続いて0.1μg/mLのRTX(リツキシマブ)、又はCAR-iNK及び0.1μg/mLのRTX(0.3:1のE:T比)のいずれかを合計96時間にわたって添加した。
図3に示すように、CAR-iNKの添加は、CAR-iTの細胞傷害性を改善し、これは、ADCCによって更に増強される。
【0293】
別のアッセイでは、Raji親標的(
図4A)及びRaji-CD19KO標的(
図4B)を96ウェルプレートの表面に固定化した。標的を、それぞれの単一型として、又は二重標的化混合物に似るように50/50の組み合わせの共培養で予め培養した。
図4に示されるように、組み合わされたCAR-iT、CAR-iNKは、増加したE:T比で添加されており、この細胞製品の組み合わせは、CD19抗原エスケープ設定において細胞傷害性/標的化を可能にすることが示され(
図4B)、RTXの更なる添加は、ADCCを介した直接的な細胞傷害性の効果を可能にし(
図4A及び
図4B)、標的排除の増強をもたらした。
【0294】
実施例4-多様なB細胞悪性腫瘍における有効性を増加させるエフェクター細胞型とmAbとの組み合わせ
CAR-iT、CAR-iNK及びリツキシマブの組み合わせを、B細胞悪性腫瘍を表す異なる腫瘍細胞株のパネル、並びにエプスタインバーウイルス(EBV)で形質転換された初代B細胞株、例えばARH-77細胞株に対して試験した。
図5Aは、標的細胞株ARH-77(CD19
+CD20
+)に対するエフェクター対標的比の滴定下での、CAR-iT単独、CAR-iT及びCAR-iNK、並びにリツキシマブ(0.1μg/mL)と組み合わせたCAR-iT及びCAR-iNKによる抗腫瘍活性の増加を示す。示されるように、RTXを加えたCAR-iT及びCAR-iNKの両方の組み合わせは、最も高い細胞傷害性を有する。
【0295】
多様なB腫瘍株のパネルに対するCAR-iT、CAR-iNK及びリツキシマブの相対活性を曲線下面積(AUC)として計算し、
図5Bに示すヒートマップに図示する。Nalm-6(CD19
+、CD20
-)を対照として使用して、CD19特異性を確認した。
図5Bに示されるように、多様なB細胞悪性腫瘍にわたる反応性及び反応性の幅は、CAR-iT単独、CAR-iT及びCAR-iNK、並びにリツキシマブ(0.1μg/mL)と組み合わせたCAR-iT及びCAR-iNKの連続添加と共に増加する。
【0296】
RAJI腫瘍細胞を接種されたNSGマウスを用いたin vivoリンパ腫モデルは、リツキシマブ単独によるマウスの処置(7日間にわたる3μg/マウスの3回の投与)が部分的に有効であったことを示す(
図6A及び
図6D)。初代CAR-T細胞によるマウスの処置は、リツキシマブ単独よりも有効であった(
図6B及び
図6D)。CAR-iT、CAR-iNK及びリツキシマブの組み合わせは、41日間にわたってRaji腫瘍細胞を除去するのに最も有効であることが証明された(
図6C及び
図6D)。
【0297】
実施例5-エフェクター細胞型とチェックポイント阻害剤アンタゴニストとの組み合わせ
チェックポイントは、阻害されていない場合に免疫応答を抑制又は下方制御できる細胞分子、しばしば細胞表面分子である。チェックポイント阻害剤は、チェックポイントの遺伝子発現又は遺伝子産物を減少させるか、又はチェックポイント分子の活性を低下させることができるアンタゴニストである。PD1/PDL1又はCTLA4を標的化するチェックポイント阻害剤(CI)の開発により、腫瘍学の展望が変わり、これらの薬剤は複数の適応症で長期の寛解をもたらした。しかしながら、多くの腫瘍サブタイプはチェックポイント遮断療法に耐性があり、再発は依然として重大な懸念事項である。したがって、CI耐性を克服する能力を持つ新しい治療アプローチが必要である。
【0298】
アッセイは、誘導NK細胞が、誘導T細胞を腫瘍微小環境(TME)に動員する能力と、腫瘍部位での誘導T細胞活性化を増強する能力の両方を有するかどうかを示すように設計される。活性化された誘導T細胞の遊走は、活性化された誘導NK細胞によるCCL3、CCL4、CXCL10及び他の可溶性因子の分泌時に実証される。このアッセイでは、hnCD16 iNK細胞を、ADCC誘発抗PDL1抗体の存在下で、高レベルのPDL1を発現するSKOV-3又はSKOV-3-PDL1のいずれかと組み合わせる。一晩のインキュベーション後、上清を収集し、標準的なトランスウェル走化性チャンバーの下部チャンバー内で、上部チャンバー内の誘導T細胞と共に24時間インキュベートする。インキュベーション後、下部チャンバーへの誘導T細胞遊走をフローサイトメトリーによって定量して、活性化されたiNKカラム細胞が誘導T細胞遊走を増強するかどうかを決定する。
【0299】
活性化されると、誘導NK細胞が、インターフェロンガンマ(IFNγ)、CCL3、CCL4、CXCL10、及びCCL22を含む豊富な炎症性サイトカイン及びケモカインの細胞による産生によって証明される直接抗腫瘍能力を示すことは、前に示した。IFNγは、抗腫瘍T細胞活性の調節に重要な役割を果たす。in vivoアッセイでは、NSGマウスに1E7 iNK細胞をI.P.(腹腔内)注射するか、又は5E6活性化誘導T細胞をR.O.(後眼窩)注射するか、又はその両方を行う。4日後、末梢血と腹腔をフローサイトメトリーにより誘導T細胞の存在について評価する。誘導T細胞を受けているが誘導NK細胞を受けていないマウスと比較して、iPSC由来NK細胞をI.P.で受けたマウスは、活性化された誘導T細胞を循環から腹膜へと動員することによって誘導T細胞遊走を増強する誘導NK細胞の能力に起因して、末梢血中の誘導T細胞頻度が減少し、腹腔内の誘導T細胞が増加すると予想された。
【0300】
in vitro三次元腫瘍スフェロイドモデルを利用すると、誘導NK細胞の存在下で誘導T細胞の腫瘍スフェロイドへの増強された浸潤が観察される。緑色蛍光標識された30,000個の誘導T細胞を、単独でSKOV-3ミクロスフェア(赤核)と共に、又は15,000個のiNK細胞と組み合わせてインキュベートし、15時間超にわたって画像化する。誘導T細胞単独ではスフェロイドの中心に侵入できないが、iNK細胞を追加すると、腫瘍スフェロイドへの誘導T細胞浸潤及び腫瘍スフェロイド破壊が促進されると予測される。
【0301】
由来NK細胞と共培養された場合の腫瘍スフェロイドの増強された誘導T細胞浸潤及び増強された細胞傷害性はまた、最大の赤いオブジェクトマスク内の総積分緑色蛍光強度を測定することにより、定量的に示される。誘導T細胞のSKOV-3スフェロイドへの浸潤を、由来NK細胞(1:1比)、CD3+T細胞(2:1比)、又はiNK(1:1比)+iT細胞(2:1比)との24時間の共培養で測定して、由来NK細胞が腫瘍スフェロイドのT細胞浸潤を増強することを示す。
【0302】
3D腫瘍スフェロイドモデルで誘導T細胞及び誘導NK細胞を共培養すると、腫瘍細胞が殺傷され、IFNγ及びTNFαの産生が増強される。1:1のET比のSKOV-3スフェロイド、CD3+T細胞(2:1の比)、又はiNK(1:1の比)+iT細胞(2:1の比))との由来NK細胞インキュベーションの7日後、上清を回収し、TNFα及びIFNγ産生について評価する。iPSC由来NK細胞は、iT細胞とiPSC-NKとの共培養がCD4+及びCD8+iT細胞の両方についてのサイトカイン産生の増加をもたらした場合、スフェロイドモデルにおける固形腫瘍殺傷のためのIFNγ及びTNFαの産生の増強において誘導T細胞と相乗作用する。
【0303】
このように、誘導T細胞の腫瘍部位への動員を促進することにより、及び誘導T細胞の活性化と浸潤を増強することにより、これらの機能的に強力な誘導NK細胞はチェックポイント阻害剤を含む誘導T細胞標的免疫療法と相乗作用をもたらし、局所的な免疫抑制を緩和し、固形腫瘍設定における腫瘍量を低減する能力があることが証明されている。まとめると、これらのデータは、誘導NK細胞及び誘導T細胞を含み、必要に応じて更にチェックポイント阻害剤又は他のT細胞標的化治療剤と組み合わせた、同種異系組み合わせ療法を支持する証拠を提供する。
【0304】
誘導NK及び誘導T細胞コンボによる組み合わせ療法に適したチェックポイント阻害剤は、本明細書に開示されている。
【0305】
誘導NK及び誘導T細胞並びに必要に応じて1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組み合わせ療法は、液性癌及び固形癌の治療に適用可能である。提供された誘導NK及び誘導T細胞コンボ並びに抗免疫チェックポイント阻害剤を含む組み合わせ療法に対する応答性を評価するとき、応答は、臨床的利益率、死亡までの生存率、病理学的完全奏功、病理学的応答の版定量的測定、臨床的完全寛解、臨床的部分寛解、臨床的安定疾患、無再発生存、無転移生存、無病生存、循環腫瘍細胞減少、循環マーカー応答、及びRECIST(固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors))基準、のうちの少なくとも1つによって測定できる。
【0306】
当業者は、本明細書に記載の方法、組成物、及び製品が例示的な実施形態の代表であり、本発明の範囲に対する限定として意図されていないことを容易に理解するであろう。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示された本開示に対して様々な置換及び修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0307】
本明細書で言及される全ての特許及び刊行物は、本開示が関係する当業者の技術水準を示している。全ての特許及び刊行物は、個々の刊行物が参照により組み込まれるものとして具体的かつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0308】
本明細書に例示的に記載された本開示は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つ又は複数の要素、限定又は複数の限定がなくても実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各例において、「含む」、「から本質的になる」、及び「からなる」という用語はいずれも、他の2つの用語のいずれかに置き換えることができる。使用されている用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、示され説明された特徴又はその一部のいずれかの同等物を除外する意図はないが、特許請求される本開示の範囲内で様々な修正が可能であると認識される。したがって、本開示は、好ましい実施形態及び必要に応じた特徴によって具体的に開示されているが、本明細書で開示される概念の修正及び変形は、当業者によってしばしば想到され得、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内である。
【配列表】
【国際調査報告】