(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】近赤外自己蛍光イメージングシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20230711BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230711BHJP
A61B 1/313 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61B1/045 618
A61B1/00 551
A61B1/313 510
A61B1/00 511
A61B1/045 615
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577495
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021038303
(87)【国際公開番号】W WO2021258069
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ジャファー ファールーク アミン
(72)【発明者】
【氏名】ティアニー ギレルモ
(72)【発明者】
【氏名】ガーデッキ ジョーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】アルバグダーディ マゼン
(72)【発明者】
【氏名】イケガミ リュータロー
(72)【発明者】
【氏名】カッサブ モハマド
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA22
4C161CC06
4C161HH52
4C161HH56
4C161LL01
4C161QQ04
4C161SS21
4C161WW02
4C161WW05
4C161WW17
4C161WW18
(57)【要約】
患者の病状を診断するためのコンピュータにより実行される方法を提供する。方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、励起源に、動脈の関心領域に向けて励起光を発させる工程と、1つ以上のプロセッサ及び検出器を用いて、動脈の関心領域のイメージングデータを受け取る工程と、1つ以上のプロセッサ及びイメージングデータを用いて関心領域の画像を生成する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、イメージングデータに基づいて、アテローム性プラークのリスク領域を決定する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、アテローム性プラークの決定されたリスク領域に基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定する工程と、を含むことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の病状を診断するための、コンピュータにより実行される方法であって、
前記方法は、
1つ以上のプロセッサを用いて、励起源に、動脈の関心領域に向けて励起光を発させる工程と、
前記1つ以上のプロセッサ及び検出器を用いて、前記動脈の前記関心領域のイメージングデータを受け取る工程と、
前記1つ以上のプロセッサ及び前記イメージングデータを用いて、前記関心領域の画像を生成する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記イメージングデータに基づいて、アテローム性プラークのリスク領域を決定する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記アテローム性プラークの前記決定されたリスク領域に基づいて、前記患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記イメージングデータの最大強度値を決定する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記最大強度値に基づいて閾を決定する工程と、をさらに含み、
前記最大強度値を有するピクセルが、前記アテローム性プラークの前記リスク領域内で定められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アテローム性プラークの前記リスク領域が、前記リスク領域を含まない前記アテローム性プラークの前記領域よりも高い量の不溶性脂質を有し、
前記アテローム性プラークの前記リスク領域が、前記リスク領域を含まない前記アテローム性プラークの前記領域よりも高い量の不溶性鉄を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のプロセッサを用いて前記画像をフィルタ処理して、前記アテローム性プラークの前記リスク領域の画像を生成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記アテローム性プラークの前記リスク領域の前記画像に基づいて、前記アテローム性プラークの前記リスク領域のサイズを決定する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記リスク領域の前記サイズがサイズ閾よりも大きいことを決定する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記リスク領域の前記サイズが前記サイズ閾よりも大きいことに基づいて、前記患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定する工程と、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上のプロセッサを用いて前記画像をフィルタ処理して、前記アテローム性プラークの前記リスク領域の画像を生成する工程が、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、ピクセル強度閾にしたがって前記関心領域の前記画像を閾値処理して、前記アテローム性プラークの前記リスク領域の前記画像を生成する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ピクセル強度閾によって、前記ピクセル強度閾を超える強度を有するピクセルがリジェクトされ、
前記ピクセル強度閾は、
前記イメージングデータ内のピーク信号強度値と前記ピーク信号強度値の0.25倍である第1のピクセル値との間として定められる第1の範囲と、
前記ピーク信号強度値と前記ピーク信号強度値の0.5倍である第2のピクセル値との間として定められる第2の範囲と、又は、
前記ピーク信号強度値と前記ピーク信号強度値の0.75倍である第1のピクセル値との間として定められる第3の範囲と、のうちの少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記信号強度ピーク値は、グローバルなピーク信号強度値である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記画像が第1の画像であり、
前記方法は、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記第1の画像をフィルタ処理して、前記リスク領域を除く前記アテローム性プラークの第2の画像を生成する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記第1の画像から前記第2の画像を差し引いて、前記プラークの前記リスク領域の画像である差分画像を生成する工程と、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アテローム性プラークの前記リスク領域の一部が、前記アテローム性プラークのセロイドを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記第1の画像をフィルタ処理して、前記リスク領域を除く前記アテローム性プラークの前記第2の画像を生成する工程が、閾にしたがって前記第1の画像を閾値処理して前記第2の画像を生成する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記励起源を用いて前記関心領域を励起する前、及び前記検出器から前記イメージングデータを受け取る前に、前記患者にイメージング剤を投与しない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記動脈は頸動脈である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記アテローム性プラークの形状を決定する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記アテローム性プラークの前記形状が形状閾を超えていることを決定する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記アテローム性プラークの前記リスク領域の前記形状が前記形状閾を超えていることに基づいてユーザに通知する工程と、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
患者のアテローム性動脈硬化を診断又は治療するための、コンピュータにより実行される方法であって、
前記方法は、
1つ以上のプロセッサを用いて、励起源に、動脈の第1の関心領域に向けて励起光を発させる工程と、
前記1つ以上のプロセッサ及び検出器を用いて、前記動脈の前記第1の関心領域の第1のイメージングデータを受け取る工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記第1のイメージングデータから、前記動脈のアテローム性プラークを含む前記第1の関心領域のベースライン画像を生成する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記励起源に、前記動脈の前記第1の関心領域の少なくとも一部に向けて励起光を発させる工程と、
前記1つ以上のプロセッサ及び前記検出器を用いて、前記動脈の前記第1の関心領域の少なくとも一部の第2のイメージングデータを受け取る工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記第2のイメージングデータから、前記動脈の前記アテローム性プラークを含む診断画像を生成する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記ベースライン画像と前記診断画像とを比較して、前記ベースライン画像と前記診断画像の対応する領域間の信号強度の増大、減少又は維持を決定する工程と、を含み、
前記第1のイメージングデータの取得のため及び前記第2のイメージングデータの取得のために前記患者にイメージング剤を投与することはない、方法。
【請求項16】
前記第1のイメージングデータを受け取った後に、前記患者に抗酸化剤を投与する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗酸化剤を投与する工程は、前記第1のイメージングデータを受け取った後、かつ励起光が前記第1の関心領域の少なくとも前記一部に向けて発せられる前に実行され、
前記抗酸化剤は、前記アテローム性プラーク内の酸化ストレスのレベルを減少させることによって、前記アテローム性プラークの前記信号強度を減少させるように構成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗酸化剤が、α-トコフェロール、又はN-アセチルシステインのうちの少なくとも1つである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記ベースライン画像と前記診断画像の対応する領域間の信号強度の減少に基づいて、前記アテローム性プラークの安定化を決定する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記ベースライン画像から前記診断画像を差し引く工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記ベースライン画像と前記診断画像の対応する領域間の信号強度の増大に基づいて、アテローム性動脈硬化の進行を決定する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記アテローム性プラークのリスク領域がサイズ閾を超えていることを決定する工程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物をスクリーニングするための、コンピュータにより実行される方法であって、
前記方法は、
1つ以上のプロセッサを用いて、サンプルの関心領域の第1の画像を励起源及び検出器を用いて取得する工程と、
前記第1の画像を取得した後、提案されたアテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物を投与して前記サンプルと接触させる工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記サンプルの前記関心領域の少なくとも一部の第2の画像を前記励起源及び前記検出器を用いて取得する工程と、
1つ以上のプロセッサを用いて、前記第1の画像と前記第2の画像を比較する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記第1の画像と前記第2の画像を比較することに基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像の対応する領域間の信号強度の減少を決定する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記信号強度の減少に基づいて、前記提案されたアテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物がアテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物であると決定する工程と、を含む、方法。
【請求項24】
前記サンプルは生体サンプルである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記信号強度の減少の大きさを決定する工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記信号強度の減少の前記大きさに基づいて、前記提案されたアテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物の有効性を決定する工程と、をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
患者の血管をイメージングするためのイメージングシステムであって、
前記イメージングシステムは、
前記患者の前記血管に向けて励起光を発するように構成された励起源と、
前記患者の前記血管から放出された光を感知するように構成された検出器と、
前記励起源及び前記検出器と通信するコンピューティングデバイスと、を備え、
前記コンピューティングデバイスは、
前記励起源に、前記血管の関心領域の少なくとも一部に向けて励起光を発させ、
前記検出器を用いて、前記血管の前記関心領域のイメージングデータを受け取り、
前記イメージングデータに基づいて、前記患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定するように構成されている、イメージングシステム。
【請求項27】
前記コンピューティングデバイスが、前記イメージングデータを用いて、前記関心領域の画像を生成するようにさらに構成されている、請求項26に記載のイメージングシステム。
【請求項28】
前記コンピューティングデバイスが、
ピクセル閾にしたがって前記画像を閾値処理して、前記アテローム性プラークのリスク領域の画像を生成し、
前記アテローム性プラークの前記リスク領域のサイズ又は形状の少なくとも1つを決定し、
前記アテローム性プラークの前記サイズがサイズ閾を超えていること、又は前記アテローム性プラークの前記形状が形状閾を超えていること、のうちの少なくとも1つを決定し、
前記アテローム性プラークの前記サイズ又は前記形状のうちの少なくとも1つが対応する閾を超えていることを決定したことに基づいて、前記患者が前記アテローム性プラークの前記重度症状を有することを決定するようにさらに構成されている、請求項27に記載のイメージングシステム。
【請求項29】
前記コンピューティングデバイスが、
前記プラークの無リスク領域の画像を生成し、
前記プラークの前記無リスク領域に基づいて酸化ストレス値を決定し、
前記酸化ストレス値に基づいて、前記患者が前記アテローム性プラークの前記重度症状を有することを決定するようにさらに構成されている、請求項27に記載のイメージングシステム。
【請求項30】
前記コンピューティングデバイスが、
前記酸化ストレス値が酸化ストレス閾を超えていることを決定し、
前記酸化ストレス値が前記酸化ストレス閾を超えていることを決定したことに基づいて、前記患者が前記アテローム性プラークの前記重度症状を有することを決定するようにさらに構成されている、請求項29に記載のイメージングシステム。
【請求項31】
血管を有する患者の病状を診断するための方法であって、
前記方法は、
励起源を用いて、前記患者の前記血管の関心領域の少なくとも一部に向けて励起光を発する工程と、
検出器を用いて、前記関心領域のイメージングデータを受け取る工程と、
前記イメージングデータに基づいて、前記患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定する工程と、
前記患者が前記アテローム性プラークの前記重度症状を有することを決定したことに基づいて、酸化脂質誘導酸化ストレスのモニタリング又は治療を伴う治療処置計画が前記患者に必要であることを決定する工程と、を含む、方法。
【請求項32】
前記イメージングデータに基づいて、前記アテローム性プラークのリスク領域を決定する工程と、
前記アテローム性プラークの前記リスク領域の存在に基づいて、前記患者が前記アテローム性プラークの前記重度症状を有することを決定する工程と、をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記イメージングデータに基づいて、前記アテローム性プラークの前記リスク領域のサイズ又は形状を決定する工程と、
前記リスク領域の前記サイズがサイズ閾を超えていること、又は前記リスク領域の前記形状が形状閾を超えていること、のうちの少なくとも1つを決定する工程と、
前記リスク領域の前記サイズ又は前記形状が対応する閾を超えていることの決定に基づいて、前記患者が前記アテローム性プラークの前記重度症状を有することを決定する工程と、をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記治療処置計画が、
前記患者に対する外科的介入と、
前記患者に対する薬学的介入と、又は、
異なるイメージングモダリティから追加のイメージングデータを取得することを含むイメージング介入と、のうちの少なくとも1つである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記治療処置計画が前記外科的介入であり、
前記外科的介入が、
前記アテローム性プラークの位置にステントを展開すること、又は、
前記アテローム性プラークを前記血管から切除することにより前記アテローム性プラークを除去すること、のうちの少なくとも1つである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記励起光は、600nmから800nmの間の波長を有し、
前記イメージングデータは、680nmから880nmの間の波長を有する光から取得された、請求項1、15又は32に記載の方法。
【請求項37】
患者の動脈内のセロイドの存在を示すアテローム性動脈硬化を診断するための、コンピュータにより実行される方法であって、
前記方法は、
1つ以上のプロセッサを用いて、励起源に、動脈の関心領域に向けて550nmから900nmの間の波長を有する励起光を発させる工程と、
前記1つ以上のプロセッサ及び検出器を用いて、前記動脈の前記関心領域のイメージングデータを受け取る工程であって、前記イメージングデータが600nmから980nmの間の波長を有する光から取得されたものである、工程と、
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記イメージングデータを分析することによって、前記アテローム性動脈硬化のリスク値を決定する工程であって、前記アテローム性動脈硬化の前記リスク値は、患者の動脈内のセロイドの量又は濃度を示す、工程と、を含む、方法。
【請求項38】
前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記アテローム性動脈硬化の前記リスク値に基づいて内科的治療を示唆する工程をさらに含み、
前記アテローム性動脈硬化は、患者の動脈内の前記セロイドの濃度を示す、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記内科的治療は、酸化脂質誘導酸化ストレスをモニター又は処理するように設計された治療である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記励起光は、実質的に600nmから実質的に1000nmの間の波長を有する、請求項1、15、23又は31に記載の方法。
【請求項41】
前記励起光は、実質的に633nmの波長を有する、請求項1、15、23又は31に記載の方法。
【請求項42】
前記励起光が、実質的に600nmから実質的に1000nmの間の波長を有する、請求項26に記載のイメージングシステム。
【請求項43】
前記励起光が、実質的に633nmの波長を有する、請求項42に記載のイメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の参照>
本願は、2020年6月19日に出願された、「アテローム性動脈硬化の近赤外自己蛍光(NIRAF)は酸化脂質によって生成される」と題された米国特許出願第63/041,728号に関連し、かつその優先権を主張するものである。本願は、2020年11月12日に出願された、「近赤外線イメージングシステム及び方法」と題された米国特許出願第63/113,124号に関連し、かつその優先権を主張するものであり、当該米国特許出願は全体が本明細書に参照により盛り込まれているものとする。
【0002】
<連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載>
本発明は、いずれも米国国立衛生研究所から与えられたR01-HL-137913及びR01-HL-150538のもとで政府の支援を得てなされたものである。米国政府は本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
アテローム性動脈硬化による心血管疾患は世界中で死亡及び障害の主要な原因であり、心筋梗塞、虚血性脳卒中及び末梢動脈疾患を含む合併症を引き起こす可能性がある。アテローム性動脈硬化は、典型的には炎症及び動脈壁における線維脂肪性プラークの慢性的な蓄積を特徴とする。アテローム性動脈硬化性プラークの成長は可変的であり、個人の生涯の大部分(又はすべて)の間、臨床的に無症状のままであることを含むが、場合によっては、アテローム性動脈硬化性プラークの成長は動脈管腔の緩やかな狭窄を引き起こす可能性があり、これにより組織虚血が引き起こされる可能性がある。より重度の症状では、沈着したアテローム性動脈硬化性プラークが破壊される可能性もあり、沈着したプラークの周囲に血栓が形成されて、虚血及び梗塞(例えば、心筋梗塞、脳卒中など)を引き起こす可能性がある。
【0004】
患者の動脈を通る適切な血流を再取得するためにステント及び他の介入技術を展開することができるが、これらの技術は適切な血流の欠如によって下流組織が損傷された後に展開される。現在のイメージングアプローチでは、イベントを引き起こしうる高リスクプラークの特徴を十分に明らかにすることはできない。したがって、虚血性イベント前のアテローム性動脈硬化性プラークの診断に役立つ近赤外蛍光イメージングシステム及び方法を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示のいくつかの非限定的な例は、患者の病状を診断するための、コンピュータにより実行される方法を提供する。この方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、励起源に、動脈の関心領域に向けて励起光を発させる工程と、1つ以上のプロセッサ及び検出器を用いて、動脈の関心領域のイメージングデータを受け取る工程と、1つ以上のプロセッサ及びイメージングデータを用いて、関心領域の画像を生成する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、イメージングデータに基づいて、アテローム性プラークのリスク領域を決定する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、アテローム性プラークの決定されたリスク領域に基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定する工程と、を含むことができる。
【0006】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、イメージングデータの最大強度値を決定する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、最大強度値に基づいて閾を決定する工程と、をさらに含むことができる。最大強度値を有するピクセルはアテローム性プラークのリスク領域内で定められてもよい。
【0007】
いくつかの非限定的な例では、アテローム性プラークのリスク領域は、リスク領域を含まないアテローム性プラークの領域よりも高い量の不溶性脂質を有することができる。アテローム性プラークのリスク領域は、リスク領域を含まないアテローム性プラークの領域よりも高い量の不溶性鉄を有することができる。
【0008】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて画像をフィルタ処理して、アテローム性プラークのリスク領域の画像を生成する工程をさらに含むことができる。
【0009】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、アテローム性プラークのリスク領域の前記画像に基づいて、アテローム性プラークのリスク領域のサイズを決定する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、リスク領域のサイズがサイズ閾よりも大きいことを決定する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、リスク領域のサイズがサイズ閾よりも大きいことに基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定する工程と、をさらに含むことができる。
【0010】
いくつかの非限定的な例では、上記の1つ以上のプロセッサを用いて画像をフィルタ処理して、アテローム性プラークのリスク領域の画像を生成する工程が、1つ以上のプロセッサを用いて、ピクセル強度閾にしたがって関心領域の画像を閾値処理して、アテローム性プラークのリスク領域の画像を生成する工程を含むことができる。
【0011】
いくつかの非限定的な例では、ピクセル強度閾によって、ピクセル強度閾を超える強度を有するピクセルをリジェクトすることができる。ピクセル強度閾は、イメージングデータ内のピーク信号強度値とピーク信号強度値の0.25倍である第1のピクセル値との間として定められる第1の範囲と、ピーク信号強度値とピーク信号強度値の0.5倍である第2のピクセル値との間として定められる第2の範囲と、又は、ピーク信号強度値とピーク信号強度値の0.75倍である第1のピクセル値との間として定められる第3の範囲と、のうちの少なくとも1つとすることができる。
【0012】
いくつかの非限定的な例では、信号強度ピーク値は、グローバルなピーク信号強度値である。
【0013】
いくつかの非限定的な例では、画像は第1の画像である。方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、第1の画像をフィルタ処理して、リスク領域を除くアテローム性プラークの第2の画像を生成する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、第1の画像から第2の画像を差し引いて、プラークのリスク領域の画像である差分画像を生成する工程と、をさらに含むことができる。
【0014】
いくつかの非限定的な例では、アテローム性プラークのリスク領域の一部は、アテローム性プラークのセロイドを含むことができる。
【0015】
いくつかの非限定的な例では、1つ以上のプロセッサを用いて、第1の画像をフィルタ処理して、リスク領域を除くアテローム性プラークの第2の画像を生成する工程が、閾にしたがって第1の画像を閾値処理して第2の画像を生成する工程を含むことができる。
【0016】
いくつかの非限定的な例では、励起源を用いて関心領域を励起する前、及び検出器からイメージングデータを受け取る前に、患者にイメージング剤を投与しない。
【0017】
いくつかの非限定的な例では、動脈は頸動脈である。
【0018】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、アテローム性プラークの形状を決定する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、アテローム性プラークの形状が形状閾を超えていることを決定する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、アテローム性プラークのリスク領域の形状が形状閾を超えていることに基づいてユーザに通知する工程と、を含むことができる。
【0019】
本開示のいくつかの非限定的な例は、患者のアテローム性動脈硬化を診断又は治療するための、コンピュータにより実行される方法を提供する。この方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、励起源に、動脈の第1の関心領域に向けて励起光を発させる工程と、1つ以上のプロセッサ及び検出器を用いて、動脈の第1の関心領域の第1のイメージングデータを受け取る工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、第1のイメージングデータから、動脈のアテローム性プラークを含む第1の関心領域のベースライン画像を生成する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、励起源に、動脈の第1の関心領域の少なくとも一部に向けて励起光を発させる工程と、1つ以上のプロセッサ及び検出器を用いて、動脈の第1の関心領域の少なくとも一部の第2のイメージングデータを受け取る工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、第2のイメージングデータから、動脈の前記アテローム性プラークを含む診断画像を生成する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、ベースライン画像と診断画像とを比較して、ベースライン画像と診断画像の対応する領域間の信号強度の増大、減少又は維持を決定する工程と、を含むことができる。第1のイメージングデータの取得のため及び第2のイメージングデータの取得のために患者にイメージング剤を投与しなくてもよい。
【0020】
いくつかの非限定的な例では、方法は、第1のイメージングデータを受け取った後に、患者に抗酸化剤を投与する工程を含むことができる。
【0021】
いくつかの非限定的な例では、抗酸化剤を投与する工程は、第1のイメージングデータを受け取った後、かつ励起光が第1の関心領域の少なくとも一部に向けて発せられる前に実行されてもよい。抗酸化剤は、アテローム性プラーク内の酸化ストレスのレベルを減少させることによって、アテローム性プラークの信号強度を減少させるように構成されてもよい。
【0022】
いくつかの非限定的な例では、抗酸化剤は、α-トコフェロール、又はN-アセチルシステインのうちの少なくとも1つとすることができる。
【0023】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、ベースライン画像と診断画像の対応する領域間の信号強度の減少に基づいて、アテローム性プラークの安定化を決定する工程を含むことができる。
【0024】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、ベースライン画像から診断画像を差し引く工程を含むことができる。
【0025】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、ベースライン画像と診断画像の対応する領域間の信号強度の増大に基づいて、アテローム性動脈硬化の進行を決定する工程を含むことができる。
【0026】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、アテローム性プラークのリスク領域がサイズ閾を超えていることを決定する工程を含むことができる。
【0027】
本開示のいくつかの非限定的な例は、アテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物をスクリーニングするための、コンピュータにより実行される方法を提供する。この方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、サンプルの関心領域の第1の画像を励起源及び検出器を用いて取得する工程と、第1の画像を取得した後、提案されたアテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物を投与してサンプルと接触させる工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、サンプルの関心領域の少なくとも一部の第2の画像を励起源及び検出器を用いて取得する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、第1の画像と第2の画像を比較する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、第1の画像と第2の画像を比較することに基づいて、第1の画像と第2の画像の対応する領域間の信号強度の減少を決定する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、信号強度の減少に基づいて、提案されたアテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物がアテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物であると決定する工程と、を含むことができる。
【0028】
いくつかの非限定的な例では、サンプルは生体サンプルである。
【0029】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、信号強度の減少の大きさを決定する工程と、1つ以上のプロセッサを用いて、信号強度の減少の大きさに基づいて、提案されたアテローム性プラーク安定化又は抗炎症化合物の有効性を決定する工程と、を含むことができる。
【0030】
本開示のいくつかの非限定的な例は、患者の血管をイメージングするためのイメージングシステムを提供する。イメージングシステムは、患者の血管に向けて励起光を発するように構成された励起源と、患者の血管から放出された光を感知するように構成された検出器と、励起源及び検出器と通信するコンピューティングデバイスと、を備えることができる。コンピューティングデバイスは、励起源に、血管の関心領域の少なくとも一部に向けて励起光を発させ、検出器を用いて血管の関心領域のイメージングデータを受け取り、イメージングデータに基づいて患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定するように構成することができる。
【0031】
いくつかの非限定的な例では、コンピューティングデバイスが、イメージングデータを用いて関心領域の画像を生成するようにさらに構成されてもよい。
【0032】
いくつかの非限定的な例では、コンピューティングデバイスが、ピクセル閾にしたがって画像を閾値処理して、アテローム性プラークのリスク領域の画像を生成し、アテローム性プラークのリスク領域のサイズ又は形状の少なくとも1つを決定し、アテローム性プラークのサイズがサイズ閾を超えていること、又はアテローム性プラークの形状が形状閾を超えていること、のうちの少なくとも1つを決定し、アテローム性プラークのサイズ又は形状のうちの少なくとも1つが対応する閾を超えていることを決定したことに基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定するようにさらに構成されてもよい。
【0033】
いくつかの非限定的な例では、コンピューティングデバイスが、プラークの無リスク領域の画像を生成し、プラークの無リスク領域に基づいて酸化ストレス値を決定し、酸化ストレス値に基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定するようにさらに構成されてもよい。
【0034】
いくつかの非限定的な例では、コンピューティングデバイスが、酸化ストレス値が酸化ストレス閾を超えていることを決定し、酸化ストレス値が酸化ストレス閾を超えていることを決定したことに基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定するようにさらに構成されてもよい。
【0035】
本開示のいくつかの非限定的な例は、患者の病状を診断するための方法を提供する。患者は血管を有することができる。この方法は、励起源を用いて、患者の血管の関心領域の少なくとも一部に向けて励起光を発する工程と、検出器を用いて関心領域のイメージングデータを受け取る工程と、イメージングデータに基づいて患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定する工程と、患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定したことに基づいて、酸化脂質誘導酸化ストレスのモニタリング又は治療を伴う治療処置計画が患者に必要であることを決定する工程と、を含むことができる。
【0036】
いくつかの非限定的な例では、方法は、イメージングデータに基づいてアテローム性プラークのリスク領域を決定する工程と、アテローム性プラークのリスク領域の存在に基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定する工程と、をさらに含むことができる。
【0037】
いくつかの非限定的な例では、イメージングデータに基づいて、アテローム性プラークのリスク領域のサイズ又は形状を決定する工程と、リスク領域のサイズがサイズ閾を超えていること、又はリスク領域の形状が形状閾を超えていること、のうちの少なくとも1つを決定する工程と、リスク領域のサイズ又は形状が対応する閾を超えていることを決定したことに基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有することを決定する工程と、をさらに含むことができる。
【0038】
いくつかの非限定的な例では、治療処置計画は、患者に対する外科的介入と、患者に対する薬学的介入と、又は、異なるイメージングモダリティから追加のイメージングデータを取得することを含むイメージング介入と、のうちの少なくとも1つとすることができる。
【0039】
いくつかの非限定的な例では、治療処置計画は外科的介入であってもよい。外科的介入は、アテローム性プラークの位置にステントを展開すること、又は、アテローム性プラークを血管から切除することによりアテローム性プラークを除去すること、のうちの少なくとも1つとすることができる。
【0040】
いくつかの非限定的な例では、励起光は、600nmから800nmの間の波長を有する。イメージングデータは、680nmから880nmの間の波長を有する光から取得されてもよい。
【0041】
本開示のいくつかの非限定的な例は、患者の動脈内のセロイドの存在を示すアテローム性動脈硬化を診断するための、コンピュータにより実行される方法を提供する。この方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、励起源に、動脈の関心領域に向けて550nmから900nmの間の波長を有する励起光を発させる工程と、1つ以上のプロセッサ及び検出器を用いて、動脈の関心領域のイメージングデータを受け取る工程と、を含むことができる。イメージングデータは600nmから980nmの間の波長を有する光から取得されたものであってもよい。方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、イメージングデータを分析することによって、アテローム性動脈硬化のリスク値を決定する工程を含むことができる。アテローム性動脈硬化のリスク値は、患者の動脈内のセロイドの量又は濃度を示してもよい。
【0042】
いくつかの非限定的な例では、方法は、1つ以上のプロセッサを用いて、アテローム性動脈硬化のリスク値に基づいて内科的治療を示唆する工程をさらに含むことができる。アテローム性動脈硬化は、患者の動脈内のセロイドの濃度を示してもよい。
【0043】
いくつかの非限定的な例では、内科的治療は、酸化脂質誘導酸化ストレスをモニター又は処理するように設計された治療であってもよい。
【0044】
いくつかの非限定的な例では、励起光は、実質的に600nmから実質的に1000nmの間の波長を有してもよい。
【0045】
いくつかの非限定的な例では、励起光は、実質的に633nmの波長を有してもよい。
【0046】
本開示の上記及び他の側面及び利点は以下の説明から明らかになるであろう。本明細書においては、その一部を形成しかつ本開示の好ましい構成を例示的に示す添付の図面を参照する。しかしながら、このような構成は必ずしも本開示の全範囲を表しているわけではなく、したがって本開示の範囲の解釈は特許請求の範囲及び本明細書を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図2】化合物スクリーニングシステムの概略図である。
【
図4】患者の病状(例えば、アテローム性動脈硬化)を診断するためのプロセスのフローチャートの一部を示す。
【
図5】
図4のプロセスのフローチャートの別の部分を示す。
【
図6】イメージングデータのピクセル分布の各ピクセルについてのピクセル値のグラフを示す。
【
図7】患者のアテローム性プラークの画像の概略図である。
【
図8】患者についてのアテローム性動脈硬化を診断するためのプロセスのフローチャートを示す。
【
図9】患者の病状(例えば、アテローム性動脈硬化)を診断する(又は治療する)ため、又はアテローム性プラーク安定化若しくは抗炎症化合物をスクリーニングするためのプロセスのフローチャートの一部を示す。
【
図10】
図9のプロセスのフローチャートの別の部分を示す。
【
図11】2つの画像及び得られた差分画像の概略図を示す。
【
図12】第1列にNIRAF画像、第2列にフルオレセインイソチオシアネート・チャネル自己蛍光画像を示す。
【
図13】取得されたNIRAF画像に対するNIRAF平均蛍光強度値の周波数を示すヒストグラムを示す。
【
図14】正規化NIRAF平均蛍光強度(「AU」)信号vs頸動脈の分岐部からの距離のグラフを示す。
【
図15】頸動脈プラークNIRAF
90%エリアの種々の画像を示す。
【
図16】頸動脈プラーク切片の種々の画像を示し、NIRAF
90%、SB及びGPAの%陽性エリアを示している。
【
図17】(1)NIRAF
90%とGPA(プラーク内出血)の対応関係、及び(2)NIRAF
90%とSBエリア(脂質)の対応関係の2つのグラフを示し、これは、隣接切片が染色された7個のプラークから得られたn=15の頸動脈切片から得られたものである。
【
図18A】代表的なヒト頸動脈アテローム画像を示す。中央のパネルは、同じ頸動脈標本の蛍光顕微鏡画像を含み、この画像は650nmNIRAF信号(グレースケール)及びNIRAF高倍率画像、並びに隣接切片からの対応するSB、NIRAF及びGPA染色を示す。
【
図18B】
図18Aの緑点線ボックス(すなわち、i))、オレンジ点線ボックス(すなわち、ii))、及び赤点線ボックス(すなわち、iii))からのNIRAFパターン/SBパターン/GPAパターンを高倍率で示す。
【
図19】SB、NIRAF、GPA及びビリルビンの高倍率視野を示し、SBとNIRAFの一貫した共局在性、NIRAF
90%とGPAの中程度の共局在性、及びビリルビンとNIRAFの少ない共局在性を示している。
【
図20】拡散的で点状のSB及びNIRAF信号の両方が、2つの新鮮凍結隣接頸動脈切片(線で分離されている)において明らかである(左側のカラム)。
【
図21】プラーク鉄及びCD68陽性プラークマクロファージを含むNIRAF陽性エリアの頻繁な局在を示す高倍率視野を示す。
【
図22】隣接切片におけるPB及びDAB増強を用いたプラーク鉄の組織化学的検出を示す。
【
図23A】NIRAF画像と、明視野(「BF」)画像上に重ね合わされたNIRAF画像とを示す。
【
図24A】培地のみ(対照)、50μg/mlの天然LDL、若しくは50μg/mlのoxLDLとともに5日間、又は0.5mg/mlのヒトヘモグロビンとともに24時間インキュベートしたTHP-1マクロファージにおける核染色をしたNIRAFの高倍率画像を示す。
【
図24B】LDL処理及びoxLDL処理されたMDMにおける、1日目、3日目及び5日目におけるNIRAF信号の発展の代表的な時間的経過を示す。
【
図24C】5日目におけるNIRAF信号を、20μg/mlのoxLDLとともにインキュベートしたMDMと50μg/mlのoxLDLとともにインキュベートしたMDMとについて比較したものである。
【
図24D】3回の独立した実験の平均値±SEとして示された
図24Cの定量データのグラフを示す。
【
図25】NIRAF、ヘキスト及びBODIPY493画像並びにそれらの組み合わせを示す。
【
図26】細胞数によって調整したNIRAFで定量化されたBODIPY陽性エリア及びBODIPYの共局在エリアの2つのグラフを示す。
【
図27】NIRAF、BODIPY493及びヘキスト画像並びにそれらの組み合わせを示す。
【
図28A】NIRAFとROSとの間の関係を評価するために使用される共焦点顕微鏡画像を示す。
【
図28B】対照のフローサイトメトリーグラフを示す。
【
図28C】LDLのフローサイトメトリーグラフを示す。
【
図28D】oxLDLのフローサイトメトリーグラフを示す。
【
図29A】MDMをoxLDLとインキュベートした後の脂質過酸化ストレスの増大を示すC11-BODIPY染色の代表的な画像を示す。
【
図29B】共焦点顕微鏡から得られたC11-BODIPY脂質過酸化信号の定量を示すグラフを示し、LDL又は対照と比較して、oxLDLとのインキュベーション後の脂質過酸化の有意な増大を示す。
【
図30A】oxLDLと5mMのNAC又は1mMのα-Tocとともに5日間共インキュベートされたTHP-1MDMのNIRAF及びBF画像を示し、oxLDLのみとともにインキュベートされた細胞と比較して、NIRAF信号(赤紫)が減少したことを示す。
【
図30B】抗酸化化合物N-アセチルシステイン(「NAC」)又はα-トコフェロール(「α-Toc」)のいずれかとのインキュベーション後のNIRAF+細胞のパーセンテージでの減少を示すフローサイトメトリー分析グラフを示す。各グラフのx軸はNIRAF信号(10の累乗の増分で、約10
5まで)であり、y軸は細胞数(千の増分で、約四千まで)である。
【
図32A】
図31の画像のカテゴリーに対応するCellROX陽性及びNIRAF陽性の細胞の数の減少を示すフローサイトメトリーグラフを示し、
図32AはoxLDLに対応する。
【
図32B】
図31の画像のカテゴリーに対応するCellROX陽性及びNIRAF陽性の細胞の数の減少を示すフローサイトメトリーグラフを示し、
図32BはoxLDL+NACに対応する。
【
図32C】
図31の画像のカテゴリーに対応するCellROX陽性及びNIRAF陽性の細胞の数の減少を示すフローサイトメトリーグラフを示し、
図32CはoxLDL+α-トコフェロールに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
上述のように、アテローム性動脈硬化性プラークは、急性心筋梗塞、心臓突然死及び狭心症を含む虚血性イベントを引き起こす可能性がある。アテローム性動脈硬化性プラークの心筋梗塞イベントとの関係をよりよく理解するために、冠動脈内イメージング研究によって、急性心筋梗塞を患う特定の患者において、「責任(culprit)」アテローム性動脈硬化病変が、典型的には、破裂した覆っている薄い蓋部(cap)、大きなプラーク上部層部(plaque burden)、及び壊死性脂質に富むコア部を示すことが明らかとなった。これらの研究は心筋梗塞とアテローム性動脈硬化性プラーク組成物との間の関係を明らかにするのに役立つものの、これらの研究はアテローム性動脈硬化性プラークに関連する虚血性イベントの予測又は予防には特に役立たない。実際、一般に、プラーク特異的合併症を予測する血管内及び非侵襲的イメージングの能力は依然として低いままである。
【0049】
近年、近赤外自己蛍光(「NIRAF」)は、特にNIRAFをプラーク内出血(「IPH」)と関連付けて、ヒト頸動脈及び大動脈アテローム性動脈硬化標本を分析するために使用されている。NIRAFはまた、in vivoで冠動脈疾患(「CAD」)患者における線維性アテロームを分析するために、光コヒーレンストモグラフィ(「OCT」)と共に使用されている。これらの研究は有用である一方で、高リスクのアテローム性動脈硬化性プラークを特定(したがって対処)するために必要な予測力をまだ欠いている。
【0050】
本開示のいくつかの非限定的な例は、アテローム性動脈硬化性プラークの高リスク領域(又は換言すればリスク領域)を特定し、アテローム性動脈硬化性プラーク(例えば、アテローム性動脈硬化性プラークのセロイド)の安定性(及び酸化ストレス)の変化をモニターすることができる近赤外自己蛍光イメージングシステム及び方法を提供することによって、これらの欠点(及び他の欠点)に対処する。例えば、本開示のいくつかの非限定的な例は、アテローム性動脈硬化性プラークの高リスク領域を示すことができる不溶性脂質及び鉄の高密度領域に対応する高NIRAF信号強度間の関係を示す。別の例として、本開示のいくつかの非限定的な例は、NIRAF信号と、酸化ストレスの条件下で生成される脂質とタンパク質の不溶性複合体であるアテローム性動脈硬化性プラークのセロイドとの関係を示す。さらに別の例として、本開示のいくつかの非限定的な例は、NIRAF信号と、鉄の存在を含む酸化ストレスとの間の関係-特に、NIRAF信号(例えば、振幅)の増大は酸化ストレスの増大を示す(そしてその逆もまた同様である)-を示す。
【0051】
図1はイメージングシステム100の概略図である。イメージングシステム100は、コンピューティングデバイス102、励起源104及び検出器106を含むことができる。コンピューティングデバイス102は、典型的なコンピューティングコンポーネント、例えば、プロセッサデバイス、メモリ、通信システム、ディスプレイ、入力(例えば、マウス、キーボード、タッチスクリーン、センサなど)、電源などを含むことができる。場合によっては、コンピューティングデバイス102は、デスクトップ、ラップトップ、モバイルデバイス(例えば、タブレット又はスマートフォン)などを含む様々な具体的な形態をとることができる。例えば、場合によっては、コンピューティングデバイスは、励起源104及びその中に配置された検出器106を含むハウジングの外側に配置することができる。他の場合では、コンピューティングデバイス102は、励起源104と、検出器106と、あるいはその両方と同じハウジング内に配置することができる。
【0052】
いくつかの非限定的な例では、コンピューティングデバイス102は、他のコンピューティングデバイス(例えば、デスクトップコンピュータ)と通信するように、プロセッサデバイス、メモリ、通信システムなどを含むことができる。他の場合では、コンピューティングデバイス102は、単純にプロセッサとして実装することができる。コンピューティングデバイス102の実装にかかわらず、コンピューティングデバイス102は、励起源104及び検出器106と通信することができる。このようにして、コンピューティングデバイス102は、これらの構成要素(又はその他)のそれぞれに(例えば、それぞれの構成要素に命令を送信することによって)特定のタスクを実行させることができ、これらの構成要素のそれぞれからデータを受け取ることができる。例えば、コンピューティングデバイス102は、励起源104に、赤色光を含む可視光(すなわち、実質的に380nmから実質的に600nmの範囲の波長を有する電磁波)、又は近赤外光(すなわち、実質的に600nmから実質的に2500nmの範囲の波長を有する電磁波)を発させることができる。いくつかの非限定的な例では、励起源104は、500nmと1100nmの間、又はより詳細には550nmと900nmの間、又はより詳細には600nmと800nmの間の範囲内の光を発することができる。いくつかの特定の場合では、コンピューティングデバイス102は、励起源104に、600nmから700nmの間、より具体的には630nmから635nmの間、若しくは実質的に(すなわち、20%未満のずれを含む、10%未満のずれを含む又は5%未満のずれを含む)630nmの波長を有する赤色光、又は、720nmから780nmの間、若しくは実質的に750nmの波長を有する赤色光を発させることができる。いくつかの非限定的な例では、励起源104は、ある波長範囲内の光を発してセロイドを励起し、ここで励起は赤色及び/又は近赤外線領域内にある。別の例として、コンピューティングデバイス102は、検出器106にイメージングデータを取得させることができる。検出器106は、励起範囲の範囲よりも低いエネルギーである特定の範囲内の光を検出するように構成することができる。例えば、励起源104は、第1の波長を有する光(例えば、赤色光、赤外光)を発するように構成でき、検出器106は、第1の波長よりも(又は実質的に)大きい第2の波長を有する光を検出するように構成される。いくつかの非限定的な例では、550nmから900nmの間の光の励起についての検出範囲は600nmから980nmの間の検出波長範囲に対応し、600nmから800nmの間の光の励起についての検出波長範囲は650nmから880nmの間である。いくつかの非限定的な例では、630nmでの光励起についての検出範囲は680nmから720nm、又は実質的に700nmである。740nmでの光励起についての検出範囲は770nmから810nm、又は実質的に790nmである(例えば、検出範囲が40、20、10又はより狭い場合がある)。具体的な検出範囲は、例えば、使用される具体的なフィルタに依存してもよく、上記の範囲とは異ってもよい。
【0053】
いくつかの非限定的な例では、励起源104は、実質的に600nmから実質的に1000nmの間の波長、又は600nmから1000nmの間の波長を有する光を発することができる。場合によっては、励起源104から発せられる光は実質的に633nmの波長を有することができ、又は633nmの波長を有することができる。
【0054】
いくつかの非限定的な例では、コンピューティングデバイス102は他のコンピューティングデバイスと通信することができる。例えば、コンピューティングデバイス102は、コンピュータ、ラップトップ、スマートフォン、サーバなどであり得る別のコンピューティングデバイス(図示せず)と通信することができ、この場合、励起源104に光を発させること及び検出器106にイメージングデータを取得させることを含む特定のタスクをコンピューティングデバイス102に実行させる別のコンピューティングデバイスを含むことができる。別の例として、別のコンピューティングデバイスは、励起源104からの生データ(例えば、発せられた光の持続時間や、(複数の)波長、強度(又は複数の強度)などを含む発せられた光の特性など)及び検出器106からの生データ(例えば、血管内で光を発するカテーテルシステムの位置、血管内でのカテーテルの向き、取得したイメージングデータなど)を含むデータをコンピューティングデバイス102から受け取ることができる。場合によっては、別のコンピューティングデバイスは、画像(例えば、コンピューティングデバイス102によって再構成されたもの)、分析されたイメージングデータ(例えば、フィルタ処理されたもの)、分析された画像(例えば、閾値が設定されたもの)などを含む処理されたデータをコンピューティングデバイス102から受け取ることができる。場合によっては、他のコンピューティングデバイス(上記の別のコンピューティングデバイスを含む)は、(例えば、下記のプロセスの一部を実行することによって)計算負荷を共有するためにコンピューティングデバイス102と(例えば、WiFi(登録商標)を含む通信ネットワークを介して)通信することができる。このようにして、コンピューティングデバイス102は必要に応じて以下に説明する(例えば、メモリから読み出される)プロセスの一部又はすべての部分を実行することができる。
【0055】
励起源104及び検出器106は典型的な構造とすることができる。例えば、励起源104は、必要とされる光(例えば、実質的に630nmの光、実質的に740nmの光など)の必要な励起波長を提供するように実装することができ、検出器106は、必要な放出波長(例えば、630nmの光励起波長について700nmの光、740nmの光励起波長について790nmの光)を感知するように実装することができる。いくつかの非限定的な例では、励起源104は、レーザ、発光ダイオード(「LED」)、タングステン-ハロゲンランプ、水銀又はキセノンアークランプ等とすることができる。場合によっては、検出器106は、各々が異なる波長又は実質的に異なる波長を有する光を発するように構成された複数の光源(例えば、LED)を含むことができる。例えば、励起源104は、第1の波長(例えば、630nm)を有する光を発するように構成された第1の光源と、第2の波長を有する光を発するように構成された第2の光源とを含むことができる。第2の光源は、例えば、US2010/0092389又はUS2018/055953に記載のプローブのような外部から引き出された(exogenous)プローブの励起波長に対応する第2の波長の光を発するように構成され得る。さらに、光の複数の異なる励起波長は、より大きな特異度を提供することができる。
【0056】
いくつかの非限定的な例では、検出器106は、電荷結合デバイス(「CCD」)、アクティブピクセルセンサ(例えばCMOSセンサ)などを含む二次元(「2D」)センサアレイ(例えばセンサ素子)とすることができる。いくつかの構成では、検出器106は、励起源104からの励起光の波長を含むことができる検出器106によって受光された光の1つ以上の波長の透過を弱める(又は遮断する)ことができる1つ以上の光学フィルタを含むことができる。
図1に示すように、励起源104と検出器106は、シングル又はマルチモード光ファイバを用いてカテーテルシステム108に結合させることができる。例えば、米国特許第9,332,942号明細書、米国特許第10,912,462号明細書又は米国特許第10,952,616号明細書などに記載のシステムのようなカテーテルシステムであり、これらの文献はそれぞれこの教示のために本明細書に参照により盛り込まれているものとする。しかしながら、代替的な構成では、励起源104及び検出器106は、(例えば、細胞培養物、組織スライドなどのイメージングデータを取得するための)患者の外部にあるシステム内に統合させることができる。例えば、この場合、励起源104及び検出器106は、Kodak Image-Station 4000(例えば、Carestream Health、ニューヨーク州ロチェスターを参照)を含むイメージングステーションの一部を形成することができる。
【0057】
いくつかの非限定的な例では、検出器106は、生体ターゲット110(例えば、患者の動脈)の関心領域の三次元(「3D」)イメージングデータを取得するように構成することができる。この場合、例えば、コンピューティングデバイス102は3Dイメージングデータを受け取ることができ、関心領域の3Dボリュームを生成することができる。場合によっては、イメージングシステム100は、米国特許第6,615,063号(「Ntziachristos」)明細書に記載の蛍光媒介型トモグラフィーイメージングシステムと同じように構成することができ、当該文献はこの教示のために本明細書に参照により盛り込まれているものとする。例えば、上記Ntziachristosには3D画像を取得することが記載されており、したがって、励起源104及び検出器106を含むイメージングシステム100は、3D画像を含む1つ以上の画像又は生体ターゲット110の3Dイメージングデータを取得するように構成することができる。
【0058】
図1に示すように、励起源104は励起波長を有する光を生体ターゲット110に向けて発する。生体ターゲット110は励起光を吸収し、放出波長(励起波長よりも低いエネルギー即ち長い波長)の光を放出し、これが検出器106によって検出される。励起源104及び検出器106がカテーテルシステム108と統合されて実装される場合などのいくつかの構成では、生体ターゲット110は患者の血管、特に患者の動脈とすることができる。励起源104及び検出器106がイメージングステーションとして実装される場合などの他の構成では、生体ターゲット110は(複数の)組織スライド、(複数の)細胞培養物(例えば、複数の皿)、又は他のex-vivo生物学的システムとすることができる。
【0059】
図2は化合物スクリーニングシステム120の概略図である。化合物スクリーニングシステム120は、イメージングシステム122、コンピューティングデバイス124及びサンプル操作システム126を含むことができる。イメージングシステム122は、イメージングシステム100と同様に実装することができる。例えば、イメージングシステム122は、励起源128と、検出器130と、励起源128及び検出器130を収容し支持するハウジング132とを含むことができる。場合によっては、励起源128は励起源104と同様に実装することができ、検出器130は検出器106と同様に実装することができる。検出器130は
図2ではサンプル134に対して励起源128と同じ側に配置されて示されているが、代替的な構成では、励起源128はサンプル134の第1の側に配置することができ、検出器130は当該第1の側と反対側のサンプル134の第2の側に配置することができる。この場合、例えば、サンプル134を支持するサンプルホルダ136は、検出器130によって検出できる光の(複数の)波長に対して透過的とすることができる。したがって、サンプルホルダ136は、検出器130によって受光されることとなる光を遮断しない。
【0060】
イメージングシステム122と同じように、コンピューティングデバイス124はコンピューティングデバイス102と同様に実装することができる。例えば、コンピューティングデバイス124は、コンピュータ、スマートフォン、ラップトップであってもよく、又は単にプロセッサであってもよい。コンピューティングデバイス124は、イメージングシステム122及びサンプル操作システム126と通信することができ、したがって、これらのコンポーネントの各々に対する命令を送信することができる。例えば、コンピューティングデバイス124は、励起源128に、サンプル134(又は他のサンプル)に向けて光を発させることができ、検出器130にサンプル134のイメージングデータを取得させることができる。
【0061】
サンプル操作システム126は、サンプルホルダ136を、イメージングシステム122に対して異なる位置に移動させるように構成することができる。例えば、サンプル操作システム126は、各々がコンピューティングデバイス124と通信可能な(複数の)アクチュエータ(図示せず)を含むことができ、それによって、後退及び伸長して、サンプルホルダ136をイメージングシステム122に対して異なる位置に移動させる。例えば、サンプル操作システム126は、第1の線に沿って伸長及び後退可能な第1のアクチュエータと、第1の線に実質的に垂直な第2の線に沿って伸長及び後退可能な第2のアクチュエータとを含むことができる。このように、サンプルホルダ136がサンプルの2Dアレイを含む場合などには、コンピューティングデバイス124は、第1及び第2のアクチュエータを選択的に後退及び伸長させてサンプルホルダ136を移動させて、これにより、サンプルホルダ136の各サンプルをイメージングシステム122と整列させて、それぞれのサンプルのイメージングデータが一度に1つずつ取得されるように構成することができる。このサンプルホルダ136がサンプルの1Dアレイを含む場合などのいくつかの場合では、サンプル操作システム126は単一のアクチュエータを含むことができ、この単一のアクチュエータはコンピューティングデバイス124によって選択的に後退及び伸長されて、各サンプルをイメージングシステム122と整列させて各サンプルのイメージングデータが一度に1つのサンプルずつ取得されるように構成することができる。
【0062】
別の場合では、サンプル操作システム126は、コンピューティングデバイス124と通信するロボットアームを備えることができ、これは、各サンプルを移動させてイメージングシステム122と整列させて、イメージングデータが一度に1つのサンプルずつ取得されるようにすることができる。この場合、例えば、各サンプル134,138,140は、各サンプルホルダが互いに分離されるように各サンプルホルダを有することができ、そして、各サンプルホルダはつかまれ、続いてロボットアームによってイメージングシステム122と整列する(及び整列から外れる)よう移動される。あるいは、ロボットアームは、サンプルホルダ136をつかみ、続いて移動させて、サンプルホルダ136を異なる位置に移動させることができ、これにより、各サンプルを一度に1つずつイメージングシステム122と整列させることができる。いくつかの非限定的な例では、サンプル操作システム126はディスペンサシステム(図示せず)を含むことができる。ディスペンサシステムは、アクチュエータやバルブなどを含むことができ、各サンプル134,138,140の中に化合物(又は化合物のカクテルなどの複数の化合物)を供給することができる。このようにして、コンピューティングデバイス124は、ディスペンサシステムを動作させて、各化合物を(例えば、それぞれのサンプルを支持するウェル内に)一定量供給して各サンプル134,138,140と接触させることができる。
【0063】
いくつかの非限定的な例では、サンプルホルダ136を異なる態様で実装することができる。例えば、サンプルホルダ136は、マイクロプレート、マイクロウェルプレートなどを含むマルチウェルプレートであってもよい。このようにして、各サンプル134,138,140(及びその他)を、各プレート内の各ウェル内に充填することができる。他の場合では、サンプルホルダ136は、複数のペトリ皿を支持するホルダとすることができる。この場合、例えば、各サンプル134,138,140(及びその他)はそれぞれのペトリ皿に充填され、ホルダによって支持され得る。いくつかの非限定的な例では、各サンプル134,138,140(及び他のもの)は細胞培養物(例えば、同じタイプ及び同量の細胞培養物)を含むことができる。さらに、サンプル操作システム126のディスペンサシステムが各サンプル134,138,140(及びその他)に化合物を供給するか否かにかかわらず、各サンプル134,138,140は、抗炎症化合物である可能性を有する異なる化合物、又はアテローム性プラーク安定化化合物、又は同じ化合物(例えば、抗炎症化合物又はアテローム性プラーク安定化化合物であると既に決定されている化合物)の異なる量を含むことができる。例えば、各サンプル134,138,140に異なる化合物を充填することができるが、各異なる化合物は、異なる化合物にわたって同じ量を有することができる(例えば、化合物の量を制御するために)。別の例として、各サンプル134,138,140に同じ化合物(抗炎症性又はアテローム性プラーク安定化特性を有すると既に決定されている化合物)を充填することができるが、各サンプル134,138,140には異なる量の同じ化合物が充填されている(例えば、各サンプルが連続的に希釈されたように)。このようにして、抗炎症性又はアテローム性プラーク安定化性と決定された化合物の量(例えば、濃度)を、その抗炎症特性又はアテローム性プラーク安定化特性に基づいて最適化することができる。
【0064】
いくつかの非限定的な例では、サンプル操作システム126は(異なるサンプル134,138,140を含む)サンプルホルダ136を移動させて、一度に1つのサンプル134,138,140だけが励起源128及び検出器130と整列するようにすることができる。換言すると、サンプル操作システム126はサンプルホルダ136を(例えば、定位置に)移動させて、サンプル134のイメージングデータを(例えば、コンピューティングデバイス124の指示によって)イメージングシステム122によってある時点で収集でき、一方でサンプル138,140のイメージングデータを前記ある時点で収集することができないようにすることができる。その後、イメージングシステム122がサンプル134のイメージングデータを取得した後などに、サンプル操作システム126は、サンプル134,140のイメージングデータが取得できない間に、サンプルホルダ136を(例えば、異なる位置まで)移動させて、サンプル138のイメージングデータをイメージングシステム122によって別の時点で取得できるようにすることができる。このようにして、各々が可能性のある安定化又は抗炎症性化合物を(異なる量で)有する複数の異なるサンプルを、高スループットで(例えば、サンプル操作システム126により、外部モニターをほとんど又は全くしない)スクリーニングすることができる。いくつかの非限定的な例では、イメージングシステム122のハウジング132は、励起源128から発せされた光がイメージングシステム122と整列していないサンプルに向かうことを遮断し、イメージングシステム122と整列していないサンプルから発された光が検出器130によって受光されるのを遮断することができる壁を画定することができる。
【0065】
図3は、イメージングシステム100の特定の実施形態とすることができるイメージングシステム150の一例を示す。イメージングシステム150は、患者の動脈(又は他の血管)内に配置することができるカテーテルシステムとして実装することができる。イメージングシステム150は、励起源152、検出器154、及び励起源152からの光を動脈158などの血管に向ける光ファイバ156を含むことができる。蛍光は、収集され、光ファイバ156によって導光されて、検出器154に送られる。場合によっては、カテーテルにおける励起光を発する部分と、カテーテルにおける蛍光(放出光)が収集され検出器156に送られる部分とは、同じ方向又は反対方向に向いてもよい。
【0066】
図3に示すように、イメージングシステム150は、動脈158の軸方向の軸160の周りで回転方向に回転させることができ、軸160は動脈158の長さに沿って延在し、動脈158内の中央に位置することができる。場合によっては、軸160は、動脈158の湾曲に沿うことができ、したがって軸160も湾曲することができる。いくつかの非限定的な例では、イメージングシステム150を軸160(あるいは、軸160と平行であるか又は実質的に平行である軸)に沿って進めることができ、これにより、イメージングシステム150は、ガイドワイヤ(図示せず)に沿った引き戻し中などに動脈158の追加の縦断面のイメージングデータを取得することができる。ともあれ、イメージングシステム150は、動脈158の複数の視野(FOV)を含むイメージングデータを取得することができる。例えば、検出器154は、カテーテルが回転している間にイメージングデータを取得することによって、複数のFOVに対応するイメージングデータの第1のセットを取得することができる。カテーテルがガイドワイヤに沿って引き戻されるとき、イメージングデータは動脈壁内部の360°の視野を提供する。
【0067】
図4は、患者の病状(例えば、アテローム性動脈硬化)を診断するためのプロセス200のフローチャートを示し、そのすべて又は一部は、1つ以上のコンピューティングデバイス(例えば、コンピューティングデバイス102のプロセッサデバイス)上で実行することができる。202において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、励起源(例えば、励起源104)に励起光を関心血管(例えば、動脈)に向けて発させることを含むことができる。場合によっては、励起源104がカテーテルシステム(例えば、カテーテルシステム108)の一部として実装される場合などには、カテーテルシステム108が患者内で展開され、光ファイバ(例えば、光ファイバ156)が動脈の関心領域に到達するまで脈管系(例えば、患者の動脈系)を通って進む。
【0068】
いくつかの非限定的な例では、プロセス200は、イメージング剤を使用することなく実行することができる。イメージング剤は、外部の電磁気又は超音波を吸収する又は変化させるイメージング造影剤、イメージングシステムで検出される放射線を発する放射性医薬品などを指すことができる。場合によっては、イメージング剤は、体内の画像のコントラストを強調する診断用イメージング剤を参照することができる。したがって、場合によっては、イメージング剤は励起光による関心領域の励起前若しくは励起中に患者に投与されないか、イメージング剤は検出器からのイメージングデータの受信前若しくは受信中に患者に投与されないか、又はその両方である。
【0069】
204において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、動脈の第1の関心領域のイメージングデータを(例えば、検出器から)受け取ることを含むことができる。場合によっては、イメージングデータは、血管の部分の単一の対応FOVを有する単一画像、又は血管の各部分を含む対応FOVを各々が有する複数画像を含むことができる。例えば、検出器が固定されている間は、検出器によって受信される蛍光を用いて、イメージングデータ(例えば、1つのFOVに対応するもの)の一部(又はすべて)を生成することができる。構成にかかわらず、複数の対応するFOVを含むイメージングデータは、アテローム性動脈硬化性プラークエリアが検出器の2D表面よりも大きい場合であっても、アテローム性動脈硬化性プラークエリア全体にトータルで広がることができる。いくつかの非限定的な例では、ブロック204でイメージングデータを受け取ることは、コンピューティングデバイスが動脈の第1の関心領域の3Dイメージングデータを受け取ることを含むことができる。
【0070】
206において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、イメージングデータを用いて第1の関心領域の1つ以上の画像を生成することを含むことができる。1つ以上の画像は、単一のFOVに対応する単一画像か、又は、いくつかが部分的に重なり合う、全く重なり合わない、若しくは全体的に重なり合う複数画像とすることができる。例えば、コンピューティングデバイスは、異なるFOVから複数の画像を再構成することができ、そして、それらを(例えば、画像スティッチングによって)組み合わせて合成画像を形成することができる。イメージングデータが3Dイメージングデータである場合を含むいくつかの非限定的な例では、プロセス200のブロック206は、3Dイメージングデータを用いて、第1の関心領域の3Dボリュームを生成することを含むことができる。
【0071】
208において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、イメージングデータに基づいてピーク強度値を決定することを含むことができる。場合によっては、コンピューティングデバイスは、生成された画像(又は換言すると再構成された画像)からピーク強度値を決定することができ、これは、コンピューティングデバイスが画像内の最大ピクセル値を決定することを含むことができる。他の場合では、コンピューティングデバイスは、イメージングデータ自体(例えば、生のイメージングデータ)を用いてピーク強度を決定することができ、これは、コンピューティングデバイスが最高信号強度値を決定することを含むことができる。さらに他の場合では、ピーク強度値はボクセル値(例えば、3Dイメージングデータ内の最大ボクセル値)であってもよい。
【0072】
いくつかの非限定的な例では、ブロック208において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、イメージングデータに基づいて強度値を決定することを含むことができる。場合によっては、これは、コンピューティングデバイスが、イメージングデータの強度値の分布を決定し、強度値の分布がマルチモーダルであるか否かを決定することを含むことができる。コンピューティングデバイスが、この分布がマルチモーダルであると決定した場合、コンピューティングデバイスは、各ピークと、各ピークについての対応する強度とを特定することができる。そして、コンピューティングデバイスは、各ピークの強度値に基づいて強度値を決定することができる。例えば、強度値は、最高強度値を有するピークと次の最高強度値を有するピークとを含む2つのピークの間に位置する値であってもよい。いくつかの非限定的な例では、同様のプロセスを用いてピクセル値を決定することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、ピクセル位置にわたるピクセル値分布を決定することができる。換言すると、ピクセル値分布は、(例えば、ピクセルの位置に対応する)二次元に及ぶことができる。そして、コンピューティングデバイスは、ピクセル値分布がマルチモーダルであるか否かを決定することができ、マルチモーダルである場合には、各ピークと、各ピークについての対応するピクセル値とを決定することができる。次いで、ピクセル値を、最高ピクセル強度値を有するピークを含む2つのピークの間に位置するピクセル強度値を含む各ピークのピクセル強度値に基づいて決定することができる。この議論はピクセルを参照して記載しているが、場合によっては、ピクセルに代えてボクセルを使用することができ、したがって、ボクセル強度値は、ピクセルを参照して記載したプロセスを用いて決定することができる。
【0073】
210において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、閾(例えば、信号強度閾、ピクセル閾、ボクセル閾など)を決定することを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイスは、決定された強度値(例えば、ブロック208で決定されたピーク強度値)、決定されたピクセル強度値(例えば、最大ピクセル強度値)に基づいて閾を決定することができる。場合によっては、閾は、2つの強度値ピークの間に位置する強度値(例えば、強度値、ピクセル強度値など)に対応することができ、ここで、1つのピークは最高強度値を有するピークである。このようにして、そして以下に記載するように、本開示のいくつかの非限定的な例は、最大強度値に近い強度値が、患者の動脈のアテローム性動脈硬化性プラークの高リスク領域(又は換言するとリスク領域)に相当することを示している。したがって、最高範囲以外の強度値が除外されるように閾を設定することにより、病変であるか又は病変を含み得るアテローム性動脈硬化性プラークの高リスク領域のみを含むように画像を洗練することができる。したがって、高リスク領域を特定、抽出することにより、高リスク領域自体をより容易に評価することができる。場合によっては、高リスク領域は、アテローム性動脈硬化性プラーク内のセロイドの量(例えば、濃度)を示すことができる。換言すると、高リスク領域はアテローム性動脈硬化性プラーク内のセロイドの量と相関し得るため、高リスク領域における増大したサイズは、より大きなセロイド量を示す(逆も同様)。いくつかの非限定的な例では、アテローム性動脈硬化性プラークの高リスク領域は、アテローム性動脈硬化性プラークの狭窄部分に対応することができる。それに対応して、アテローム性動脈硬化性プラークの残りの部分(例えば、高リスク領域を含まない部分)は、アテローム性動脈硬化性プラークの非狭窄部分に対応することができる。
【0074】
いくつかの非限定的な例では、閾は、値(例えば、強度値)、又は範囲(例えば、複数の強度値)であってもよい。例えば、範囲は、実質的に又は正確に最大強度値(例えば、最大ピクセル値、最大ボクセル値)と、第2の強度値(例えば、最大ピクセル値とは異なる第2のピクセル値、ボクセル値とは異なる第2のボクセル値)との間にある範囲によって定めることができる。第2の強度値は、最大強度値のパーセンテージ(例えば、5%、10%、20%、25%、50%、75%、90%など)とすることができる。他の場合では、閾は、2つの強度ピークの間に位置する強度値(例えば、マルチモーダル分布)とすることができ、ここで、1つの強度ピークは最高強度を有するピークである。例えば、閾は、1つの強度ピークが最高強度を有するピークである2つの強度ピークの間の(例えば、強度分布の)谷に存在する強度値であってもよい。別の例として、閾は、分布内の2番目に高いピークの強度値である強度値とすることができる。このようにして、分布内で2番目に高いピークを下回る強度値はすべて、コンピューティングデバイスによって除去することができる。
【0075】
いくつかの非限定的な例では、ブロック210は、コンピューティングデバイスが、分布の強度値の変化が閾値(例えば、傾きの大きさ)よりも大きいことに基づいて閾を決定することを含むことができる。換言すると、閾は、強度値の変化の傾きの大きさが閾値よりも大きい分布内の位置における分布の強度値とすることができる。このようにして、(例えば、高リスク領域に対応する)閾より大きい(又は等しい)ピクセル、強度値、ボクセルなどを維持でき、一方で、閾よりも小さいピクセル、ボクセル又は強度値を除去できる(又は、換言するとリジェクトできる)ように、閾を設定することができる。
【0076】
いくつかの非限定的な例では、ブロック210における閾は、所定の閾とすることができる。例えば、この所定の閾は、プラークの高リスク領域を示す強度値とすることができる。換言すると、閾以上の強度値がプラークの高リスク領域を示す(又は換言すると当該高リスク領域に特徴的である)という決定に基づいて、閾を事前に決定することができる。この場合、例えば、ブロック210は適宜省略できる。
【0077】
図6は、(例えば、再構成された画像の)イメージングデータのピクセル分布の各ピクセルについての(強度値に対応する)ピクセル値のグラフ250を示す。ピクセル分布は、ピークを定めるとともに最大ピクセル値を含む第1のピクセルグループを有する。また、ピクセル分布は、ピークを定めるが、最大ピクセル値を含まない第2のピクセルグループを含む。
図6に示すように、強度閾値252は、第1のピクセルグループのピーク256と第2のピクセルグループのピーク258との間の谷254内の強度値として定めることができる。場合によっては、強度閾値252は谷254の最低強度値の強度値とすることができる。他の場合では、強度閾値260は、ピーク258の最大強度値であってもよいピーク258の強度値とすることができる。
【0078】
強度分布のピークが比較的近いか又は大きく重なり合う場合を含むいくつかの非限定的な例では、コンピューティングデバイスは、ユーザが評価するために、ディスプレイ上にグラフ(グラフ250など)を提示することができる。このようにして、ユーザは、閾を定める強度値又は強度範囲(換言すると強度ウィンドウ)を調整することによって、強度閾を調整することができる。したがって、コンピューティングデバイスは、閾を定める(又はそれを示す)ユーザ入力を受け取ることができる。
【0079】
図4に戻ると、212において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、イメージングデータをフィルタ処理することを含むことができる。場合によっては、これは、コンピューティングデバイスが、強度値(例えば、生の強度値)をフィルタ処理すること、ピクセル値を(例えば、空間的に)フィルタ処理すること、ボクセル値をフィルタ処理することなどを含むことができる。他の場合では、これは、コンピューティングデバイスが、1つ以上の画像(例えば、ブロック206で生成された、又はさもなければ受け取った1つ以上の画像)をフィルタ処理することを含むことができる。いくつかの非限定的な例では、ブロック212は、コンピューティングデバイスが画像を閾値処理することを含むことができる。例えば、ブロック212は、コンピューティングデバイスが、ブロック210において決定された閾に基づいてイメージングデータを閾値処理することを含むことができる。これは、コンピューティングデバイスが、ブロック210で決定された閾を超える(複数の)強度値(例えば、イメージングデータからの生データポイント、ピクセルなど)を除去する(又は置き換える)ことを含むことができる。例えば、閾が閾強度値である場合、コンピューティングデバイスは、閾値よりも低い強度値を有するすべてのピクセルを除去することができる。別の例として、コンピューティングデバイスは、閾値よりも低い強度値を有する各ピクセルを強度値(例えば、強度値0)で置き換えることができる。設定にかかわらず、決定された閾にしたがってイメージングデータ(又は(複数の)画像)をフィルタ処理することにより、高リスク領域ではないイメージングデータ(又は(複数の)画像)の一部を除去し、高リスク領域のみを残すことができる(逆も同様)。このようにして、イメージングデータ(又は(複数の)画像)を共通の特性を有するグループに分けることができ、これにより、これらのそれぞれの領域のより良い分析を可能にすることができる。この議論はピクセルに関連して記載されているが、他の構成では、これらのプロセスは、(例えば、ブロック206で生成される)3Dボリュームのボクセルをフィルタ処理するために実行されてもよい。
【0080】
214において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、イメージングデータ、特にフィルタ処理されたイメージングデータに基づいて、動脈のアテローム性プラークの高リスク領域の(複数の)画像を生成することを含むことができる。例えば、関心領域の1つ以上の画像が既に生成されていない場合(例えば、ブロック206が省略されている場合)には、コンピューティングデバイスはイメージングデータをフィルタ処理(例えば閾値処理)して、強度閾より大きい強度値のみを有するフィルタ処理されたイメージングデータを生成することができる。その後、コンピューティングデバイスは、このフィルタ処理されたイメージングデータを用いて、アテローム性プラークの高リスク領域の画像を生成することができる。他の場合、例えば、動脈の関心領域の1つ以上の画像がブロック206で既に生成され(又は、場合によってはブロック206で受け取られ)、コンピューティングデバイスによって(例えば、ブロック212で)閾値処理された場合には、得られる(複数の)画像は、動脈のプラークの高リスク領域の画像である。いくつかの非限定的な例では、ブロック214は、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの高リスク領域の3Dボリュームを生成することを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイスは、高リスク領域の1つ以上の画像を利用することによってこの3Dボリュームを生成することができるか、あるいは、ブロック212でボクセルをフィルタ処理した結果としてこの3Dボリュームを生成することができる。
【0081】
216において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの高リスク関心領域の画像に基づいて、アテローム性プラークの高リスク領域のサイズを決定することを含むことができる。場合によっては、このエリア(面積)を計算することができ、このエリア(又は(複数の)画像)の1つ以上の寸法を現実世界のサイズに関係付ける測定(例えば、ピクセルの列又は行とミリメートルの間の比)に基づいて適宜拡大縮小することができる。場合によっては、これは、コンピューティングデバイスが、検出器の各ピクセルのサイズを決定し、隣接するピクセル(又は単に合計ピクセル)数を決定して、高リスク領域のエリア(面積)を決定することを含むことができる。(例えば、ブロック214で)アテローム性プラークの高リスク領域の複数の画像が生成された場合を含むいくつかの場合では、コンピューティングデバイスは、複数の画像を(例えば、画像スティッチングによって)組み合わせて、アテローム性プラークの高リスク領域の合成画像を生成することができる。その後、コンピューティングデバイスは、合成画像からアテローム性プラークの高リスク領域のサイズを決定することができる。場合によっては、コンピューティングデバイスは、高リスク領域の3Dボリュームから(そして、場合によっては、ボクセルを現実世界の参照値に関連付ける現実世界のスケーリング値から)高リスク領域のサイズを決定することができる。
【0082】
218において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの残りの部分(例えば、高リスク領域を含まないアテローム性プラークの領域)の画像を生成することを含むことができる。例えば、いくつかの場合では、コンピューティングデバイスは、(例えば、ブロック206で取得された)動脈の関心領域の画像から、(例えば、ブロック214で取得された)アテローム性プラークの高リスク領域の画像を差し引いて、アテローム性プラークの残りの領域の画像を生成することができる。他の場合では、(例えば、ブロック210で取得された)閾をイメージングデータ、(複数の)画像などに適用して、アテローム性プラークの高リスク領域に対応するイメージングデータ(ピクセル)を除去して、アテローム性プラークの残りの部分の(複数の)画像を生成することができる。いくつかの非限定的な例では、これは、コンピューティングデバイスがアテローム性プラークの残りの部分の3Dボリュームを生成することを含むことができる。例えば、これは、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの3Dボリュームから高リスク領域の3Dボリュームを差し引いて、アテローム性プラークの残りの部分の3Dボリュームを生成することを含むことができる。
【0083】
220において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、高リスク領域を含まないアテローム性プラークの(複数の)画像(又は、(複数の)画像を形成するイメージングデータ)に基づいて、酸化ストレス値(例えば、酸化ストレスの量、又は換言すると酸化ストレスの程度を定量化する)を決定することを含むことができる。後述するように、本開示のいくつかの非限定的な例は、信号強度がアテローム性プラークの酸化ストレスに関係していること(例えば、アテローム性プラークの領域が高リスク領域を含まないこと)を示す。したがって、コンピューティングデバイスは、プロセス200のブロック218で取得された(複数の)画像(又は(複数の)画像を形成するために使用されるイメージングデータ)内のすべての強度値(例えば、ピクセル値)を合計し、すべてのピクセル値を平均することなどによって、酸化ストレスの程度に関係する酸化ストレス値を決定することができる。いくつかの非限定的な例では、コンピューティングデバイスは、この酸化ストレス値を表示する又は酸化ストレス閾と比較することができ、酸化ストレス値が閾を超えていることに基づいて、警告を、ディスプレイ上に提示することができるか、又はさもなければユーザに通知することができ、治療処置計画を生成するために使用することができる。アテローム性プラークの残りの領域(例えば、アテローム性プラークの高リスクでない領域)の複数画像が生成された場合を含むいくつかの場合では、コンピューティングデバイスは、複数の画像を(例えば、画像スティッチングによって)組み合わせて、アテローム性プラークの残りの領域の合成画像を生成することができる。そして、コンピューティングデバイスは、合成画像に基づいて、アテローム性プラークの残りの領域の酸化ストレス値を決定することができる。いくつかの非限定的な例では、ブロック220は、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの残りの部分の3Dボリュームに基づいて酸化ストレス値を決定することを含むことができる。例えば、これは、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの残りの部分の3Dボリューム内のすべてのボクセルを合計する(又は平均する)ことを含むことができる。
【0084】
図7は、上記の画像処理工程を図示するために、患者の動脈のアテローム性プラークの画像270,272,274の概略図を示す。例えば、画像270は、高リスク領域278を有するアテローム性プラーク276を含む。画像270,272,274の断面図は簡略化のために大きく示されているが、血管(例えば、動脈)の内壁の画像が考えられる。上記の処理を用いて、例えば、高リスク領域278を画像270から抽出して、アテローム性プラーク276の高リスク領域278のみである画像272を生成することができる。同様に、上記の処理を用いて、例えば、アテローム性プラーク276の高リスク領域278を除去して、残りの領域280のみを含むアテローム性プラーク276の画像274(例えば、アテローム性プラーク276から高リスク領域278を差し引いたもの)を生成することができる。
【0085】
図5に戻って参照すると、222において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの高リスク領域(例えば、ブロック214で生成されたもの)が閾を超えているか否かを決定することを含むことができる。例えば、閾は、アテローム性プラークの高リスク領域のサイズ、アテローム性プラークの高リスク領域の形状、又はその両方を含むことができる。より具体的な例として、コンピューティングデバイスは、(例えば、ブロック216で決定された)アテローム性プラークの高リスク領域のサイズを比較し、そのサイズがサイズ閾を超えるか否かを決定することができ、これにより、アテローム性動脈硬化の病状の存在又は程度の決定を容易にすることができる。場合によっては、サイズ閾は、0.5cm以上(例えば、0.5cm又は実質的に0.5cm)の値であってもよく、実質的に0.5cmから実質的に2cmの間の範囲内の値であってもよい。場合によっては、サイズ閾は、実質的に3.5mm
2であってもよい。いくつかの構成では、サイズ閾は、径方向厚さ(例えば、実質的に75mm)、体積値(例えば、3.5mm
2、4mm
2など)などであってもよい。他の場合では、サイズ閾は、残りの管腔の断面積及び総断面積のパーセンテージとすることができる。例えば、コンピューティングデバイスは、(アテローム性プラークを含む)組織を含まない動脈の位置についての残りの管腔の断面積を、動脈の位置における総断面積で割って、パーセンテージ(例えば、閉塞パーセンテージ)を生成することができる。場合によっては、このパーセンテージは実質的に又は正確に60%であってもよい。さらに別の場合では、サイズ閾はアテローム性プラークの周方向の大きさ(circumferential extent)であってもよい。例えば、この場合、サイズ閾は、動脈の位置において動脈の周囲の実質的又は正確に180度という周方向の大きさとすることができる。
【0086】
いくつかの非限定的な例では、ブロック222において、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの高リスク領域のサイズがサイズ閾を超えている(例えば、より大きい)と決定した場合、プロセス200はブロック226に進むことができる。しかしながら、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの高リスク領域のサイズがサイズ閾を超えていない(例えば、より小さい)と決定した場合、プロセスはブロック232に進むことができる。場合によっては、サイズ閾は、事前にベースライン画像として取得された同じ患者のアテローム性プラークの高リスク領域のサイズの倍数(又は同じサイズ)とすることができる。例えば、このベースライン画像は、プロセス200から事前に(例えば、プロセス200のブロック204の前に)取得することができる。このようにして、サイズ閾は、患者特有の基準点として用いられるように特定の患者に合わせることができ、これにより、例えば、サイズ閾を、コンピューティングデバイスによって、事前に決定された高リスク領域のサイズに関係するように(例えば、事前に決定された高リスク領域のサイズよりも例えば10%、20%、30%、40%、50%大きく)設定することができる。したがって、例えば、ブロック214で生成された(複数の)画像を、アテローム性プラークの高リスク領域の(複数の)ベースライン画像から差し引いて、差分画像を生成することができる。このようにして、すべての正の強度値は高リスク領域のサイズの増大を示し、一方、負の強度値は高リスク領域のサイズの減少を示す。それに対応して、差分画像の強度値の大きさは高リスク領域についてのリスクの増大に対応することができる。
【0087】
いくつかの非限定的な例では、ブロック222は、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークの高リスク領域の形状を決定すること、及び、高リスク領域の形状が形状閾を超えるか否かを決定することができる。場合によっては、高リスク領域の形状を決定することは、コンピューティングデバイスが、高リスク領域の均一性又は均一性の偏差を決定することを含むことができる。例えば、これは、コンピューティングデバイスが、均一な形状(例えば、楕円形)に対応するプラークの高リスク領域の広がり(extent)を決定することを含むことができ、当該広がりとは均一な形状と高リスク領域との間のエリアの重なりの量を含むことができる。別の例として、これは、コンピューティングデバイスが、高リスク領域の外周(perimeter)を決定すること、及び、外周の各湾曲部と湾曲部の対応する曲率半径とを決定することを含むことができる。さらに別の例として、形状閾は、ベースライン画像として事前に取得されたアテローム性プラークの高リスク領域の形状を含むことができる。例えば、形状閾は、(例えば、事前に取得された高リスク領域の合計サイズを増大又は減少させることによって)異なるサイズに拡大縮小された、事前に取得されたアテローム性プラークの高リスク領域と、現在の高リスク領域と、の間の面積(又は体積)の重なりの量であってもよい。このようにして、病状を示すアテローム性プラークの高リスク領域の形状又は比較的良性であるアテローム性プラークの高リスク領域の形状を用いて、形状の変化がアテローム性動脈硬化の病状を示すか否かを決定することができる。したがって、形状閾は、形状(例えば、均一な形状)と高リスク領域との間の面積(又は体積)の重なりのパーセンテージや、曲率半径などとすることができる。場合によっては、コンピューティングデバイスがアテローム性プラークの高リスク領域の形状が形状閾を超えていると決定した場合、プロセス200はブロック226に進むことができる。しかしながら、コンピューティングデバイスがアテローム性プラークの形状が形状閾を超えていると決定した場合、プロセス200はブロック232に進むことができる。
【0088】
いくつかの非限定的な例では、ブロック222において、アテローム性プラークのサイズがサイズ閾を超え、かつ、アテローム性プラークの形状が形状閾を超えた場合にのみ、プロセス200はブロック226に進むことができる。したがって、アテローム性プラークのサイズがサイズ閾を超えていないか、又はアテローム性プラークの形状が形状閾を超えていない場合には、プロセス200はブロック232に進むことができる。しかしながら、他の場合では、アテローム性プラークのサイズがサイズ閾を超える場合、又はアテローム性プラークの形状が形状閾を超える場合のうちの1つのみの場合に、プロセス200はブロック226(又はブロック232)に進むことができる。
【0089】
224において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、酸化ストレス値が閾を超えるか否かを決定することを含むことができる。場合によっては、この閾は、同じ患者についてのアテローム性プラークの高リスクでない領域から事前に取得された酸化ストレス値の倍数(又は同じ)とすることができる(例えば、倍数は、事前に取得された酸化ストレス値の1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍などである)。したがって、サイズ閾と同様に、酸化ストレス閾は、特定の患者に特に調整することができる。他の場合では、酸化ストレス値は、高い酸化状態を示すデフォルト値であってもよい。ブロック224で、コンピューティングデバイスが、酸化ストレス値が酸化ストレス閾を超えている(例えば、より大きい)と決定した場合、プロセス200はブロック226に進むことができる。しかしながら、ブロック224において、コンピューティングデバイスが、酸化ストレス値が酸化ストレス閾を超えていない(例えば、より小さい)と決定した場合、プロセス200はブロック232に進むことができる。場合によっては、ブロック222,224で閾のうちの一方又は両方を超えていた場合、プロセス200はブロック226に進むことができる。場合によっては、例えば、ブロック218で生成された(複数の)画像を、アテローム性プラークの残りの領域のベースライン画像から差し引いて、差分画像を生成することができる。このようにして、(複数の)差分画像のあらゆる正の強度値はその領域についての酸化ストレスの増大を示し、(複数の)差分画像のあらゆる負の強度値はその領域についての酸化ストレスの減少を示し、そして、あらゆるボイド領域(void regions)(例えば、強度が変化しなかったもの)は、その領域についての酸化ストレス値の維持を示すことができる。したがって、対応するように、差分画像の強度値の大きさは、アテローム性プラークの残りの領域についての酸化ストレスの増大(又は減少)の量に対応することができる。これについて画像を参照して記載したが、いくつかの構成では、これは前述の3Dボリュームを用いて実現することができる。例えば、アテローム性プラークの残りの領域の3Dボリュームを、アテローム性プラークの残りの領域のベースライン3Dボリュームから差し引いて、結果として得られる3Dボリュームを生成することができる。
【0090】
226において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、ブロック222,224の1つ又は複数の閾を超えていることに基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有すると決定することを含むことができる。例えば、これは、コンピューティングデバイスが、決定されたアテローム性プラークの高リスク領域に基づいて、又は決定されたアテローム性プラークの高リスクでない領域に基づいて、又はそれらの両方に基づいて、患者がアテローム性プラークの重度症状を有すると決定することを含むことができる。一例として、これは、患者のアテローム性プラークが十分なリスクを有する(例えば、リスクが特定の量を超えている)と決定することを含むことができ、これは、ブロック222,224で1つ又は複数の閾を超えていると決定することを含むことができる。
【0091】
232において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、患者がアテローム性プラークの重度症状を有していないと決定することを含むことができ、これは、コンピューティングデバイスが、ブロック222,224の1つ又は複数の閾を超えていないと決定することを含むことができる。それに対応して、これは、例えば、ブロック222,224の1つ又は複数の閾を超えていない場合に、患者のアテローム性プラークが十分なリスクを有していない(例えば、リスクが特定の量より小さい)と決定することを含むことができる。場合によっては、ブロック232は、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークが安定化したと決定することも含むことができる。例えば、プロセス200の複数の(例えば、2回、3回などの)繰り返しが、ある期間(例えば、週、月、年)にわたって各々が1日より長い間隔を置いた異なる期間に実行され、各々の結果が、コンピューティングデバイスが患者がアテローム性プラークの重度症状を有していないことを決定したという結果になった場合には、コンピューティングデバイスは、アテローム性プラークが安定化した(例えば、したがって、治療処置は不要である)と決定することができる。
【0092】
228において、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、患者がアテローム性プラークの重度症状を有すると決定したことに基づいて、治療処置計画が患者に必要であるとのユーザからの入力を含むことができる。場合によっては、治療処置計画には、薬学的介入、追加のイメージングデータの取得(例えば、追加の自己蛍光イメージング、OCTイメージング、異なる画像モダリティを利用することなど)、外科的介入(例えば、アテローム性プラークの一部又はすべてを切除すること、アテローム性プラークの位置でステントを展開することなど)などが含まれる。特に、治療処置計画は、患者モニタリング及び/又はイメージング頻度を増やすことなどによって酸化脂質誘導酸化ストレスをモニタリングすることを含むことができる。代替的又は追加的に、治療処置計画は、高脂血症薬又は抗炎症薬を含むがこれらに限定されない薬学的処置によるような酸化脂質誘導酸化ストレスの処置を含むことができる。場合によっては、薬学的処置は、コレステロール還元薬、ベータ遮断薬、血液希釈薬(例えば、ヘパリン、ワルファリンなど)、アンギオテンシン変換酵素(「ACE」)阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗血小板薬、利尿薬などが含まれ得る。患者がアテローム性プラークの重度症状を有し、このプラークが酸化脂質誘導酸化ストレスを示すと決定されると、治療処置計画を患者のニーズに特に向けることができる。
【0093】
230において、プロセスは、患者についての治療処置計画を実行することを含むことができる。場合によっては、これは、患者に薬剤(例えば、プラーク安定化化合物)を投与すること、及び(例えば、ブロック204で使用されるイメージングシステムとは異なるイメージングモダリティから)追加のイメージングデータを取得することを含む。さらに、これは、アテローム性プラークの一部(又はすべて)を外科的に除去すること、又は(例えば、予防的に)アテローム性プラークの位置でステントを展開することなどを含む。
【0094】
いくつかの非限定的な例では、プロセス200は、コンピューティングデバイスが、アテローム性プラークに関する情報を含むレポートを生成することを含むことができ、前記情報は、アテローム性プラークの高リスク領域のサイズ、アテローム性プラークの高リスク領域の形状、(例えば、高リスク領域を含まない)アテローム性プラークの酸化ストレスレベル、及び、形状、サイズ又は酸化ストレスレベルの各々が対応する閾を超えているか否か、そしてそうである場合には対応する閾を超えている量、を含むことができる。さらに、レポートは、アテローム性プラークの(複数の)画像(3Dボリューム)、アテローム性プラークが重度か重度でないかの決定などを含むことができる。場合によっては、レポートを生成することに加えて、又はその代替として、コンピューティングデバイスは、コンピューティングデバイスが1つ又は複数の閾を超えていると決定したことに基づいて、警告を発するか、警告をディスプレイ上に提示するか、又はそうでなければ施術者に通知をすることもできる。
【0095】
図8は、患者についてのアテローム性動脈硬化(例えば、患者の1つ以上の動脈におけるセロイドの存在を示すアテローム性動脈硬化)を診断するためのプロセス300のフローチャートを示す。プロセス300の部分のすべて又は一部は、1つ以上のコンピューティングデバイス(例えば、コンピューティングデバイス102のプロセッサデバイスを含む1つ以上のプロセッサ)を適宜用いて実行することができる。さらに、プロセス300は前述したプロセス200に関連しており、したがって、プロセス200の内容はプロセス300に関する(及び適用可能な)ものである(逆もまた同様)。プロセス200と同様に、プロセス300は、イメージング剤を使用することなく完了することができる。
【0096】
302において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが、励起源に動脈の関心領域(例えば、動脈の内壁)の少なくとも一部に向けて励起光を発させることを含むことができ、これはプロセス200のブロック202と同様であってもよい。
【0097】
304において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが、検出器を用いて動脈の関心領域の1つ以上の画像を取得することを含むことができ、これはプロセス200のブロック204,206と同様であってもよい。例えば、これは、コンピューティングデバイスが、動脈の関心領域の異なる部分の異なるFOVの複数の画像を取得することを含むことができる。別の例として、これは、動脈の関心領域の単一FOVの単一画像を取得することを含むことができる。場合によっては、1つ以上の画像を取得することは、コンピューティングデバイスが、イメージングデータを受け取り、イメージングデータから1つ以上の画像を生成することを含むことができる。あるいは、1つ以上の画像を取得することは、コンピューティングデバイスが1つ以上の画像を受け取ることを含むことができる。場合によっては、プロセス300のブロック304は、コンピューティングデバイスが3Dイメージングデータを取得する(又は受け取る)ことを含むことができる。
【0098】
306において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが、動脈の1つ以上の画像(又は3Dイメージングデータ)(又は1つ以上の画像を定めるイメージングデータ)に基づいて、動脈の関心領域についてアテローム性動脈硬化性プラークが存在すると決定することを含むことができる。例えば、これは、コンピューティングデバイスが、強度値を決定するために、1つ以上の画像のすべての強度値を合計し、1つ以上の画像のすべての強度値を平均することなどを含むことができる。そして、コンピューティングデバイスは、強度値を閾強度値と比較することができ、強度値がアテローム性動脈硬化性プラークの存在を示す強度値閾を超えている(例えば、より大きい)とコンピューティングデバイスが決定した場合、コンピューティングデバイスは患者の動脈についてアテローム性動脈硬化性プラークが存在すると決定し、プロセス300はブロック308に進むことができる。あるいは、コンピューティングデバイスが、強度値が強度値閾を超えていないと決定した場合、コンピューティングデバイスは、患者の動脈がアテローム性動脈硬化性プラークを有していないと決定することができ、場合によっては、プロセス300はブロック318に進むことができる。それに対応して、患者の動脈がアテローム性動脈硬化性プラークを有していないとコンピューティングデバイスが決定した場合、コンピューティングデバイスは患者の動脈がアテローム性動脈硬化性プラークを有していない旨の表示をディスプレイ上に提示する(又は施術者へ他の通知をする)ことができる。
【0099】
308において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが、アテローム性動脈硬化性プラークの1つ又は複数の領域について、サイズ、形状、酸化ストレスなどを決定することを含むことができ、これはプロセス200のブロック214,216,218,220と同様であってもよい。例えば、これは、アテローム性動脈硬化性プラークの高リスク領域のサイズを決定すること、アテローム性動脈硬化性プラークの高リスク領域の形状を決定すること、アテローム性動脈硬化性プラークの高リスク領域についての酸化ストレス値を決定すること(例えば、これは、アテローム性動脈硬化性プラークの残りの部分についての酸化ストレス値を決定するために使用されるプロセスと同様であってもよい)を含むことができる。別の例として、これは、アテローム性動脈硬化性プラークの残りの部分(例えば、高リスク領域を含まないもの)のサイズを決定すること、アテローム性動脈硬化性プラークの残りの部分の形状を決定すること、アテローム性動脈硬化性プラークの残りの部分についての酸化ストレス値を決定することを含むことができる。さらに別の例として、これは、アテローム性動脈硬化性プラーク全体のサイズを決定すること、アテローム性動脈硬化性プラーク全体の形状を決定すること、及びアテローム性動脈硬化性プラーク全体についての酸化ストレス値を決定することを含むことができる。
【0100】
いくつかの非限定的な例では、プロセス300のブロック308は、コンピューティングデバイスが、アテローム性動脈硬化性プラークの1つ以上の寸法を決定することを含むことができる。一例として、1つ以上の寸法を決定することは、コンピューティングデバイスが、イメージングデータ(例えば、ブロック304の1つ以上の画像のイメージングデータではない)に基づいて、アテローム性動脈硬化性プラークの長さを決定することを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイスは、光コヒーレンストモグラフィ(「OCT」)イメージングシステム(例えば、これは、本明細書に記載されるイメージングシステムと同様の方法で展開することができる)からアテローム性動脈硬化性プラークのイメージングデータを受け取ることができる。そして、コンピューティングデバイスは、例えば、コンピューティングデバイスがイメージングデータを再構成するによって、アテローム性動脈硬化性プラークの長さ(例えば、動脈の流路に沿って画定される長さ)を決定することができる。別の例として、1つ以上の寸法を決定することは、コンピューティングが、イメージングデータ(例えば、ブロック304の1つ以上の画像のイメージングデータではない)に基づいて、アテローム性動脈硬化性プラークの体積を決定することを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイスは、アテローム性動脈硬化性プラークについての血管内超音波(「IVUS」)イメージングデータを受け取ることができ、そして、アテローム性動脈硬化性プラークの3Dボリュームを生成することができる。場合によっては、コンピューティングデバイスは、アテローム性動脈硬化性プラークの1つ以上の画像と1つ以上の寸法(例えば、決定された長さ、決定された体積など)から、(複数の)強度値間の比を決定することができる。例えば、アテローム性動脈硬化性プラークについての1つ以上の画像のすべての強度値の合計を、強度値とすることができ、これを、アテローム性動脈硬化性プラークの長さ、又はアテローム性動脈硬化性プラークの体積で割ることができる。このようにして、この比によって、強度値を、アテローム性動脈硬化性プラークについての(複数の)基準寸法に正規化することができる。場合によっては、これは、コンピューティングデバイスが、3Dイメージングデータ又は1つ以上の画像を用いて、動脈の関心領域の1つ以上の部分の1つ以上の3Dボリュームを生成することを含むことができる。
【0101】
310において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが、アテローム性動脈硬化性プラークの1つ以上の領域についてのサイズ、形状又は酸化ストレスのうちの1つ以上に基づいて、アテローム性動脈硬化のリスク値を決定することを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイスは、アテローム性動脈硬化性プラークの1つ以上の領域について、そのサイズ、形状、酸化ストレス又はそれらの組み合わせに基づいて、アテローム性動脈硬化のリスク値を決定して、リスクを決定することができる。例えば、対応する閾を超えていること及びその量は、リスク値を増大させ得、一方、対応する閾を超えていないことは、リスク値を減少させ得る。より具体的な例として、コンピューティングデバイスは、アテローム性動脈硬化性プラークの領域の各決定されたサイズを、対応するサイズ閾と比較して、サイズが閾を超えているか否か、また超えているのであればその範囲を決定することができる(例えば、リスク値を増大させるために使用される)。これは形状と酸化ストレス値についても完成させることができる。例えば、コンピューティングデバイスは、アテローム性動脈硬化性プラークの領域のそれぞれの決定された形状を対応する形状閾と比較し、サイズが閾を超えているか否かを決定し、超えているのであれば(例えば、リスク値を増大させるのに)どれだけ超えているかを決定することができる。別の例として、コンピューティングデバイスは、アテローム性動脈硬化性プラークの領域の決定された酸化ストレス値の各々を、対応する酸化ストレス閾と比較して、酸化ストレス値が酸化ストレス閾を超えているか否かを決定し、超えているのであれば(例えば、リスク値を増大させるのに)どれだけ超えているかを決定することができる。
【0102】
(複数の)強度値とアテローム性動脈硬化性プラークの1つ以上の寸法との間の比が決定される場合を含むいくつかの非限定的な例では、コンピューティングデバイスは、この比に基づいてアテローム性動脈硬化のリスク値を決定することができる。いくつかの非限定的な例では、ブロック302から310を、同じ動脈又は異なる動脈に位置する複数のアテローム性動脈硬化性プラークについて実行することができる。この場合、例えば、コンピューティングデバイスは、各アテローム性動脈硬化性プラークについての各リスク値を(例えば、リスク値を合計することによって)組み合わせることができる。したがって、決定されたリスク値はリスク値の組み合わせを含むことができ、ここで、リスク値の組み合わせの各リスク値は(例えば、同じ動脈内又は異なる動脈内の)異なるアテローム性動脈硬化性プラークからのものである。
【0103】
312において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが、1つ以上の領域についてのサイズ、形状及び酸化ストレスのうちの1つ又は複数が、対応する閾を超えている(例えば、より大きい)か否かを決定することを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイスは、アテローム性動脈硬化性プラークの領域の決定されたサイズの各々、及び、アテローム性動脈硬化性プラークの領域の決定された形状の各々、及び、アテローム性動脈硬化性プラークの領域の決定された酸化ストレス値の各々が、対応する閾を超えている(例えば、より大きい)か否かを決定することができる。別の例として、アテローム性動脈硬化の決定されたリスク値を閾リスク値と比較して、決定されたリスク値が閾リスク値を超えている(例えば、より大きい)か否かを決定することができる。そして、コンピューティングデバイスが1つ又は複数の閾を超えていると決定した場合、プロセス300はブロック314に進むことができる。しかしながら、コンピューティングデバイスが1つ又は複数の閾を超えていないと決定した場合には、プロセス300はブロック318に進むことができる。
【0104】
314において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが、1つ又は複数の閾を超えていることに基づいて、患者の治療処置計画を推奨することを含むことができる。このブロック314は、プロセス200のブロック228と同様であってもよい。例えば、これは、薬学的介入、外科的介入、医療機器介入、イメージング介入などを推奨することを含むことができる。場合によっては、薬学的介入は、心臓発作を緩和する薬剤(例えば、ベータ遮断薬)、酸化還元化合物(例えば、炎症低減化合物、プラーク安定化化合物)などを処方すること(又はその処方を示すこと)を含むことができる。いくつかの非限定的な例では、これは、コンピューティングデバイスが、治療処置計画をディスプレイ上に提示すること、処理計画を施術者に通知することなどを含むことができる。
【0105】
316において、プロセス300は、患者についての治療処置計画を実行することを含むことができ、これはプロセス300のブロック230と同様であってもよい。
【0106】
318において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが、1つ又は複数の閾を超えていないことに基づいて、患者に治療処置計画を受けないよう推奨することを含むことができる。例えば、これは、コンピューティングデバイスが、推奨をディスプレイ上に提示すること、推奨を施術者に通知することなども含むことができる。
【0107】
図9は、患者の病状(例えば、アテローム性動脈硬化)を診断(又は治療)するため、又はアテローム性プラーク安定化若しくは抗炎症化合物をスクリーニングするためのプロセス350のフローチャートを示す。プロセス350のすべて又は一部は、1つ又は複数のコンピューティングデバイス(例えば、コンピューティングデバイス102のプロセッサデバイスを含む1つ以上のプロセッサ)を適宜用いて実行することができる。
【0108】
352において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、サンプル(例えば、生体サンプル)をイメージングシステム(例えば、イメージングシステム122)と整列するように移動させることを含むことができる。例えば、これは、コンピューティングデバイスが、化合物スクリーニングシステムのサンプル操作デバイスに、サンプルを(例えば、アクチュエータを伸長させることを介して)移動させて(例えば、化合物スクリーニングシステムの)イメージングシステムと整列させるようにすることを含むことができる。別の場合では、プロセス350のブロック352は、イメージングシステム(例えば、イメージングシステム150)を、アテローム性プラークを有することが疑われる(又は事前に特定された)患者の血管(例えば、動脈)内に移動させることを含むことができる。
【0109】
354において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、励起源に励起光をサンプル又は血管に向けて発させることを含むことができ、これはプロセス200のブロック202と同様であってもよい。例えば、サンプルがイメージングシステムと整列した後、コンピューティングデバイスが励起源に光をサンプルに向けて発させることを含むことができる。別の例として、イメージングシステムを血管に沿って所望の位置まで進めることができ、コンピューティングデバイスは、励起源に、光を血管に向けて発させることができる。
【0110】
356において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、サンプル又は血管の関心領域の第1のイメージングデータを受け取ることを含むことができ、これはプロセス300のブロック204と同様であってもよい。場合によっては、第1のイメージングデータは3Dイメージングデータとすることができる。
【0111】
358において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、第1のイメージングデータを用いてサンプル又は血管の関心領域の第1の画像を生成することを含むことができる。これは、プロセス200のブロック206と同様であってもよい。場合によっては、ブロック352から358は、治療(又は化合物の試験)の前にベースライン画像を生成するプロセスとして機能することができる。場合によっては、これは、3Dイメージングデータである第1のイメージングデータを用いて、関心領域の第1の3Dボリュームを生成することを含むことができる。
【0112】
360において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、化合物(又は化合物のカクテルを含む複数の化合物)をサンプルに投与することを含むことができる。場合によっては、これは、コンピューティングデバイスが、化合物スクリーニングシステムのディスペンサシステムに、(複数の)化合物のある量をサンプルと接触するように供給させることを含むことができる。他の場合では、ブロック360は、(複数の)化合物を患者に投与することを含むことができる。場合によっては、これは、アテローム性動脈硬化性プラークの位置に化合物を(例えば、カテーテルを使用することによって)投与することが含まれる。化合物(又は複数の化合物)は、抗炎症特性、酸化還元特性、アテローム性動脈硬化性プラーク安定化特性などを有すると推測される(又は事前に決定された)化合物とすることができる。場合によっては、(複数の)抗炎症化合物(例えば、カナキヌマブ、コルヒチンなど)を投与すること、抗酸化剤(例えば、イコサペントエチル)などを患者又はサンプルに投与することを含むことができる。
【0113】
362において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、(複数の)化合物がサンプル(又は患者)に投与された後一定期間待機することを含むことができる。場合によっては、この期間は、分、時間、日、週などであってもよい。
【0114】
364において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、励起源(例えば、励起源104)に、プロセス300のブロック354が行われた際の位置のような、サンプル(又は血管)における同じ(又は実質的に同じ)位置に向けて励起光を発させるようにすることを含むことができる。このように、ブロック366はブロック354と同様であってもよいが、但し異なる時点で行われてもよい。例えば、ブロック354,364における励起光は、同じ位置(又は実質的に同じ位置)で生じてもよい。
【0115】
366において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、サンプル(又は血管)の関心領域の少なくとも一部の第2のイメージングデータを受け取ることを含むことができる。ブロック354と同様に、ブロック366はブロック356と同じであってもよいが、但し異なる時点で起こってもよい。場合によっては、第2のイメージングデータは第2の3Dイメージングデータとすることができる。
【0116】
368において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、第2のイメージングデータを用いて第2の画像を生成することを含むことができる。これは、ブロック358で第1の画像を生成するために用いられるプロセスと同じであってもよい。場合によっては、これは、3Dイメージングデータである第1のイメージングデータを用いて第2の3Dボリュームを生成することを含むことができる。
【0117】
370において、プロセス350は、コンピューティングデバイスが、第1及び第2の画像(又は3Dボリューム)を比較して、対応する領域間の強度の変化(例えば、減少又は増大)又は維持を決定することを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイスは、第1の画像(又は第1のボリューム)から第2の画像(又は第2のボリューム)を差し引いて、又はその逆を行って、変化が存在するか否か、そして変化が増大か減少かを決定することができる。例えば、本開示のいくつかの非限定的な例では、より高い強度値がより高いレベルの酸化ストレスを示す(及びその逆を示す)ことを示す。したがって、第2の画像(又は第2のボリューム)を第1の画像(又は第1のボリューム)から差し引いて差分画像(又は差分3Dボリューム)を生成したとき、差分画像(又はボリューム)の正の値の領域が酸化ストレスの増大を意味し、差分画像(又はボリューム)の負の値の領域が酸化ストレスの減少を意味し、ゼロの値の領域は酸化ストレスの変化がないことを意味する。
【0118】
図11は、患者のアテローム性動脈硬化性プラークの異なる時間で取得された2つの画像380,382の模式図を示す。特に、画像380は第1の画像(例えば、化合物の投与前)に対応し、画像382は第2の画像(例えば、(複数の)化合物の投与後かつ期間の待機後)に対応する。
図11に示すように、画像380から画像382が差し引かれて差分画像384が生成される。差分画像は、強度の増大(したがって酸化ストレスの増大)を示す正の強度値を有する領域386と、強度の減少(したがって酸化ストレスの減少)を示す負の強度値を有する領域388と、強度の変化のない(したがって酸化ストレスの変化のない)ことを示す強度値を有さない領域390とを含む。
【0119】
図9に戻って参照すると、場合によっては、画像を比較するのではなく、コンピューティングデバイスは、第1の画像(又は第1の3Dボリューム)から第1の酸化ストレス値を、及び第2の画像(又は第2の3Dボリューム)から第2の酸化ストレス値を、決定することができる。これは、プロセス200のブロック220における酸化ストレス値を決定することと同様であってもよい。例えば、すべてのピクセル強度値の合計、又はすべてのピクセル強度値の平均を、酸化ストレス値とすることができる。そして、コンピューティングデバイスは、第1の酸化ストレス値を第2の酸化ストレス値と比較して、酸化ストレス値の変化を求めることができる。
【0120】
372において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが、投与された(複数の)化合物が、酸化ストレスの減少、炎症の減少又はアテローム性プラーク安定性の向上に成功した(又は成功しなかった)と決定すること(例えば、ブロック370での比較に基づいて)を含むことができる。コンピューティングデバイスが酸化ストレス値が増大したと決定した場合、コンピューティングデバイスは、投与された(複数の)化合物が酸化レベルを減少させなかった(したがって、抗炎症特性、酸化還元特性又はアテローム性プラーク安定化特性を有さない)と決定することができる。コンピューティングデバイスが酸化ストレス値に変化がないと決定した場合、コンピューティングデバイスは、投与された(複数の)化合物が酸化レベルを減少させなかった(したがって、抗炎症特性、酸化還元特性又はアテローム性プラーク安定化特性を有さない)と決定することができる。場合によっては、コンピューティングデバイスが酸化ストレス値に変化がないと決定した場合、コンピューティングデバイスは、例えば第1の画像と第2の画像(又はボリューム)が十分な時間で分離されていれば、アテローム性プラークが安定化したと決定することができる。コンピューティングデバイスが酸化ストレス値が減少したと決定した場合、コンピューティングデバイスは、化合物が酸化ストレスの減少、炎症の減少又はアテローム性プラーク安定性の向上に成功したと決定することができる。
【0121】
いくつかの非限定的な例では、第1の画像及び第2の画像(あるいは第1及び第2の3Dボリューム)をフィルタ処理してアテローム性プラークの高リスク領域を特定し、第1及び第2の画像からアテローム性プラークの高リスク領域を除去することができる。このようにして、酸化ストレス分析から高リスク領域を除去することができる。さらに、画像を差し引く場合も含めて、高リスク領域の周囲の酸化ストレスの増大(例えば、正の強度値による)は、高リスク領域が拡大するリスクにあることを意味することができる。したがって、場合によっては、コンピューティングデバイスは、酸化ストレスの増大がアテローム性プラークの高リスク領域を取り囲むか否かを決定することができ、もしそうであるならば、その増大の程度(例えば、高リスク領域を取り囲む正の値の総面積、高リスク領域を取り囲む正の値を有する連続領域の弧長など)を決定することができる。
【0122】
いくつかの非限定的な例では、各々が、異なる化合物、同じ化合物の異なる濃度(例えば、各サンプルが異なる量の同じ化合物を有する)及び複数の化合物の異なる組み合わせを有する複数のサンプルについて、プロセス350を完了することができる。したがって、プロセス350は、化合物をスクリーニングして、化合物が特性(例えば、アテローム性プラークを安定化する特性、炎症を減少させる特性又は酸化レベルを減少させる特性)を有するか否かを決定するのに用いることができるだけでなく、量に関連する特性の程度を決定するのにも用いることができる。したがって、場合によっては、コンピューティングデバイスは、各サンプルに投与された(複数の)化合物の量に基づいて化合物の最適量を決定することができ、そしてそれに対応する酸化ストレスレベルの減少を決定することができる。
【0123】
プロセス350が血管を使用する場合などのいくつかの例では、コンピューティングデバイスが投与された化合物が成功していないと決定した場合には、プロセス300は異なる化合物を投与するように進むことができる(例えば、プロセルはブロック360に戻る)。代替的に、プロセス350は患者についての治療処置計画の実行に進むことができ、これはプロセス200のブロック230と同様であってもよい。
【0124】
<例>
以下の例は、本開示の側面をさらに説明するために提示されるものであり、本開示の範囲をいかようにも限定することを意味するものではない。以下の例は本開示の例として意図されたものであり、これら(及び本開示の他の側面)は理論により制限されないものとする。
【0125】
ヒト頸動脈アテローム性動脈硬化標本におけるプラーク脂質、セロイド及びNIRAF信号の間の関係が検討された。さらに、酸化低密度リポタンパク質(「oxLDL」)が酸化ストレスを生じさせ得るか否か、またこれが培養ヒト単球由来マクロファージ(「MDM」)についてのNIRAF信号と関係するか否かについても検討された。
【0126】
切除された頸動脈アテローム性動脈硬化標本は、デュプレックス超音波又はCT血管造影法により診断された重度の頸動脈狭窄(70%超えの狭窄)のために頸動脈内膜切除術を受けた15人の患者から得られた。ステント内再狭窄のために頸動脈内膜切除術を受けている患者は除外した。外科的切除後、蛍光反射イメージング及び病理組織学評価の前に、頸動脈標本を氷上に置いた。
【0127】
病理組織学的プロセスに先立ち、新鮮頸動脈標本に対し、蛍光反射イメージング(「FRI」、Kodak Image-Station 4000、Carestream Health社、ニューヨーク州ロチェスター)を、フルオレセインイソチオシアネート・チャネルの自己蛍光(励起/放出 470nm/535nm)チャネルと2つのNIRAFチャネル(励起/放出 630nm/700nm、及び、励起/放出 740nm/790nm)において4秒から64秒の曝露時間を用いて行った。FRIで検出されたエピ蛍光の平均蛍光強度は、Fiji/Image Jを用いて、頸動脈分岐部で測定され、その後、頸動脈分岐部の近位及び遠位から1mmと2mmの距離で測定された(例えば、
図12参照)。
【0128】
図12は、エピ蛍光イメージングにより検出された3つの代表的な新鮮切除ヒト頸動脈内膜切除標本(合計でn=7)のNIRAF画像を示し、共通頸動脈分岐部における内頸動脈の起始部分(破線黄色線)でのNIRAF信号(630nm)の強度の増大を示している。スケールバー=1mmである。
【0129】
ex vivoイメージングの後、頸動脈標本を、標本の最近位から遠位の側面まで、5mmのリング(標本あたり約4個から5個)に切断した。頸動脈標本は、光学的切断温度化合物(n=7の頸動脈標本)内に直接配置するか、又は脱灰液(Cal-Ex(商標)Decalcifier,Fisher Chemical,CS510-1D)内に2時間置いた後、4%PFAに18時間置き(n=8の頸動脈標本)、続いてパラフィン包埋した。その後、光学切断温度化合物及びパラフィン包埋組織を10μmの厚さで切断し、染色用の連続切片6個から8個をスライドグラス上に集めた。
【0130】
蛍光顕微鏡及び明視野顕微鏡検査を、非染色頸動脈プラーク切片に対し、エピ蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse 90i,東京,日本)で行った。3チャンネル自己蛍光が、480nm/535nm(50ミリ秒)、650nm/710nm(1秒)、及び775nm/810nm(3秒)という励起/放出フィルタ(曝露時間)で検出され、後者の2つの自己蛍光チャネルがNIRAFを描写するものである。原因となる(責任)(culprit)及び周辺の(フランキング)(flanking)プラークすべてについて10倍拡大でのスティッチング済画像が得られ、各プラークについて選択された高倍率視野(20倍及び40倍)が得られた。
【0131】
入手可能な画像処理ソフトウェア(Fiji/Image J,NIH)を用いて、エピ蛍光顕微鏡(励起/放出 650nm/710nm)を用いて得られた新鮮凍結頸動脈プラーク切片の10倍のスティッチング済画像について、輪郭を描いてプラーク関心領域(「ROI」)全体を画定した。プラークROI全体を用いてNIRAF信号の平均蛍光強度(「MFI」)を測定した。次に、23個の切片について平均MFIのヒストグラムをプロットした。NIRAF陽性ピクセルは、90パーセンタイルを超えるNIRAF信号強度を有するピクセルとして定義した(235任意蛍光単位以上、NIRAF
90%として表記、
図13参照)。
【0132】
図13は、NIRAF陽性ピクセルを定めるためのカットオフポイントを示す。特に、
図13は、7個の頸動脈内膜切除標本から得られた23個の新鮮凍結プラーク切片からのNIRAF平均蛍光強度(「MFI」)のヒストグラムを示す。NIRAF陽性ピクセルは、ヒストグラムにおいて90パーセンタイルを超える蛍光強度を有するものと定めた(NIRAF
90%、235任意蛍光単位以上の場合)。その後、NIRAF陽性ピクセルエリアを、隣接切片上のズダンブラック陽性ピクセルエリア又はグリコホリンA陽性ピクセルエリアと比較した。平均は201.9439、標準偏差は29.17563、N(サンプル数)は23であった。
【0133】
NIRAF部分に対応するヘマトキシリン及びエオシン(「H&E」)、マッソントリクローム、ズダンブラックB(「SB」)、及びグリコホリンA(「GPA」)について、マッチした組織学的部を分析した。新鮮凍結(n=7のプラークからのn=23の切片)及び4%PFA及びパラフィン包埋プラーク(n=8のプラークからのn=65の切片)を、NIRAF及びプラーク組成の評価のためにFM及び光学顕微鏡を用いて分析した。ズダンブラックBで染色したスライドを、退色を避けるために乾燥直後にイメージングした。グリコホリンA(GPA)免疫組織化学染色を行った(一次抗体:Abcam,ab129024,1:200の濃度で4分間。二次抗体:Biocare,MACH2(商標)ウサギAP-ポリマー,RALPH525。クロモゲン:Biocare,Warp Red Chromogen,WR806)。SBはトリグリセリドと複合脂質の凝集体を染色し、GPAに対する抗体はプラーク内出血(IPH)を区別した。ヒトアテロームにおける不溶性脂質とNIRAFとの関係を特に評価するために、隣接切片のグループをSB染色前にエタノール固定(100%で1時間)した。頸動脈プラークのサブセット(n=5)に対し、3,3’-ジアミノベンジジンテトラ塩酸塩(DAB;Vector Laboratories,SK-4105)を含むPerlのプルシアンブルー染色(ヘキサシアノ鉄酸カリウム(II),Sigma,P3289)を用いて、マクロファージ(CD68;Abcam,ab955)、ビリルビン(LS,LS-C664051)及び鉄の存在を調べるために、免疫組織化学的染色を行った。
【0134】
THP-1ヒト単球(「ATCC」)を35mmガラス底皿(MatTek)上に5×105個という細胞の密度で播種し、10%ウシ胎仔血清及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含むグルタミンを含むGibco RPMI1640培地で培養した。細胞は次に、100nMのホルボール-12-ミリスタート13-酢酸(「PMA」,Sigma Aldrich,P1585)で72時間処理することにより、マクロファージ様細胞(「MDM」)に分化された。分化後、MDMを培地のみ、ヒトヘモグロビン(0.5mg/mL,Sigma Aldrich,H7379)、天然の低密度リポタンパク質(「LDL」)(50μg/ml,KalenBiomedical,770200)、又は酸化LDL(「oxLDL」)(50μg/ml,KalenBiomedical,770202)とともにインキュベートした。各条件について、培地を2日毎に交換した。NIRAF観察のため、非染色細胞又はヘキスト(Life Technologies社、62249)による核染色細胞を、Leica SP8共焦点顕微鏡で励起638nm、放出範囲643nmから713nmで観察した。細胞をBODIPY493/503で染色して(2μM,30分間,Life Technologies社,D3922)、細胞内脂質を可視化した。不溶性脂質を特に評価するために、MDMのサブセットを100%エタノールで15分間処理して可溶性脂質を除去し、4%PFAで固定し、次に蛍光脂質マーカーBODIPY493/503で染色した。細胞質活性酸素種(「ROS」)産生はCellROX-Green染色により評価した(2μM,30分間,Life Technologies,C10444)。MDM細胞内の脂質過酸化を、BODIPY581/591とのインキュベーション(2μM,60分間,Life Technologies,D3861)及び488nm励起レーザによる励起に続いて、共焦点顕微鏡でイメージングした。抗酸化処理試験では、oxLDLインキュベーションと同時に、N-アセチル-L-システイン(5mM,NAC,Sigma Aldrich,A7250)又はα-トコフェノール(1mM,Sigma Aldrich,258024)による処理を開始した。
【0135】
MDMを培地のみ、天然LDL若しくはoxLDLと5日間、又はヘモグロビンと24時間、インキュベートした後、MDMを低温PBSで洗浄し、優しくこすり取って回収した。細胞は低温PBS中に再懸濁され、フローサイトメトリーを受けた。CellROXベースのROS検出のために、細胞をCellROX-Green(Life Technologies,C10444,2μM,30分)とともにインキュベートし、低温PBSで2回洗浄し、その後回収した。サンプルはBD SORP8レーザLSRII(BD Biosciences)及びソフトウェア(Flowjo)を用いて分析された。NIRAF検出には640nm波長レーザと690/40バンドパスフィルタを用い、CellROX検出には488nm波長レーザと515/20バンドパスフィルタを用いた。
【0136】
対応のないスチューデントのt検定又はマン・ホイットニーのU検定を用いて、パラメトリックデータとノンパラメトリックデータのパラメータをそれぞれ2つのグループ間で比較した。データの正規性はシャピロ-ウィルク検定を用いて評価した。頸動脈標本については、クラスカル・ウォリスの一元配置分散分析試験に続いてDunnの多重比較試験(SPSS,v26;IBM登録商標)を用いて、FRIで測定した蛍光強度を分岐部位置にわたって比較した。データは、平均値±平均値の標準誤差(「SEM」)、又は中央値及び四分位範囲(「IQR」)で示す。細胞培養試験については、Fiji/Image Jソフトウェアによって分析された定量データを、少なくとも3回の独立した実験の平均値±SEMとして示す。グループ間の差は、一元配置分散分析とその後の事後(post-hoc)テューキー・クレーマー検定又はゲイムス・ハウエル検定法により調べた。すべての分析について、p<0.5を統計的に有意とみなした。
【0137】
頸動脈内膜切除術を必要とする責任病変は、巨大で脂質に富み、典型的には内頸動脈の起始部分に位置するが、NIRAF信号強度と頸動脈プラークトポグラフィーとの関係は不明である。FRIは、N=7の新鮮切除頸動脈プラーク(無症状患者4例、一過性の虚血性発作又は脳卒中の患者3例、
図12参照)に対して行われた。頸動脈標本にわたる正規化された平均FRI信号強度の分析によって、最高NIRAF信号が、近位及び遠位のフランキング領域と比較して、共通頸動脈分岐部で生じることが示された(p=0.16、
図14参照)。これらの結果は、相対NIRAF信号が、頸動脈血行再建を必要とする患者にとって共通責任部位である内頸動脈の起始部でピークに達することを示す。
【0138】
図14は、正規化NIRAF平均蛍光強度(「AU」)信号対頸動脈の分岐部からの距離のグラフを示す。特に、
図14は、ヒトプラークNIRAF信号が頸動脈分岐部で上昇していることを示す。正規化NIRAFエピ蛍光の定量により、分岐部1mm以内のNIRAF信号強度の有意な増大が示された。示されたデータは、中央値及び四分位範囲である。
*P=0.16(クラスカル・ウォリス検定による)。NIRAF画像は、同じように処理及びウインドウ化された。
【0139】
これまで、プラークNIRAF、脂質含量及びIPHの間の比較関係は決定されていなかった。NIR平均蛍光強度(「MFI」)の検査を用いて、NIRAF陽性ピクセルについてのカットポイントとしての90パーセンタイル、又はNIRAF
90%を定めた(
図13参照)。NIRAF陽性ピクセルを定めるために、カットポイントを235任意蛍光単位以上であると決定した。頸動脈プラーク切片は、全エリア(総面積)の1.3%から20.0%の範囲のNIRAF陽性エリアを示した(7人の患者からのN=23の切片、
図15参照)。各セクションごとに、NIRAF陽性エリアは、SB陽性脂質エリア(r=0.53、P=0.43)及びGPA区別IPHエリア(r=0.57、P=0.23;
図12及び13参照、N=15の切片)の両方と同程度まで有意に対応した。
【0140】
図15は、頸動脈プラークNIRAF
90%エリアの種々の画像を示す。特に、
図15は、NIRAF陽性ピクセルを定めるために、NIRAF
90%カットオフ値(235任意蛍光単位以上)を導出するために使用された頸動脈切片(7個のプラークからのn=23の切片)を示す。各プラークからのグループ化された切片を、色付きの長方形の輪郭で示す。
【0141】
図16は、頸動脈プラーク切片の種々の画像を示し、NIRAF
90%、SB及びGPA%陽性エリアを示している。
【0142】
図17は、(1)NIRAF
90%とGPA(プラーク内出血)の対応関係、及び(2)NIRAF
90%とSBエリア(脂質)の対応関係の2つのグラフを示し、これは、隣接する切片が染色された7個のプラークから得られたn=15の頸動脈切片から得られたものである(
*P<0.5)。NIRAF画像は同じように処理及びウインドウ化された。
【0143】
プラーク切片の追加検査で、SB検出脂質は、一部のプラークエリアでは限局性の高強度NIRAFに対応し、また、他のプラークエリアでは拡散的な低強度信号パターンに対応したことがわかった(
図18A及び
図18B参照)。プラーク切片の高倍率検査では、SB陽性エリアの点状パターンを伴うNIRAFのより顕著な共局在が示された(
図18A及び
図18Bも参照)。ビリルビンの免疫組織化学的染色、IPH後に形成されるヘム分解産物及びNIRAFの源もまた、NIRAFとのわずかな共局在を示した(
図19参照)。特に、NIRAF陽性及びSB陽性ゾーンの一部のエリアは、GPA又はビリルビン染色によって定められたIPHの証拠を示さなかった(
図18Bの上段及び
図19の下段を参照)。
【0144】
図18A及び
図18Bは、ヒトアテロームNIRAF信号が、脂質-タンパク質凝集体及びプラーク内出血と異なって関連し得ることを示す。特に、
図18Aは、代表的なヒト頸動脈アテローム画像を示す。中央のパネルは、同じ頸動脈標本の蛍光顕微鏡画像を含み、この画像は650nmNIRAF信号(グレースケール)及びNIRAFの高倍率画像、並びに隣接する切片からの対応するSB、NIRAF及びGPA染色を示す。スケールバーは1mmである(中央のパネル)。
図18Bは、
図18Aからの緑点線ボックス、オレンジ点線ボックス及び赤点線ボックスからのNIRAFパターン/SBパターン/GPAパターンが高倍率で示されており、(i)GPA(IPH)の非存在下においてSB(脂質)の点状パターンがNIRAFと空間的に重なり合うこと、(ii)点状のNIRAFと重なり合うSB及びGPAの証拠、及び(iii)拡散的なSB染色であって但しNIRAFとGPA信号の両方が欠如していること、を示す。スケールバーは250μmである。NIRAF画像は同じように処理及びウインドウ化された。
【0145】
図19は、IPHのマーカーであるビリルビンとの部分的な重なりを示す。特に、
図19は、SB、NIRAF、GPA及びビリルビンの高倍率視野を示し、SBとNIRAFの一貫した共局在性、NIRAF
90%とGPAの中程度の共局在性、及びビリルビンとNIRAFの少ない共局在性を示している。NIRAF画像は同じように処理及びウインドウ化された。スケールバーは250μmである。
【0146】
NIRAFとプラーク脂質の間のこの新しい関係は、セロイドがNIRAFに寄与するかもしれないという考察を生んだ。NIRAF信号に対する不溶性脂質対可溶性脂質の相対的寄与を評価するために、NIRAFについて蛍光顕微鏡で新鮮凍結切片を検査し、次いで同じ切片にSB染色を行った。次いで、隣接切片を1時間エタノール処理して可溶性脂質成分を除去し、続いてこの切片のSB染色を行った。エタノール処理後、SB染色された切片は、拡散的な低強度NIRAF及びSB信号の消失を示したが、限局性の高強度信号パターンは保存されていた(
図20参照)。
【0147】
図20は、SB及びNIRAF信号がエタノール固定後も局在したままであることを示し、セロイドがプラークNIRAFの源であることが明らになった。特に、
図20は、拡散的で点状のSB及びNIRAF信号の両方が、2つの新鮮凍結隣接頸動脈切片(青線で分離されている)において明らかである(左側のカラム)。2つの切片の各々を1時間、100%エタノール固定した後(右側のカラム)、両方のSB切片は拡散的SB信号(可溶性脂質)の損失を示した。残りの不溶性脂質、すなわちセロイドは、NIRAFとの局在を示す。
【0148】
プラークセロイドは脂質酸化の産物であり、リソソームにおける鉄触媒酸化ストレスの条件下で形成し得る。DAB増強を伴うPerl染色を用いて、頸動脈アテローム切片上のNIRAF陽性エリアにおいて鉄を評価した。NIRAF/SB/GPA陽性エリアは、Perl/DABで検出された第二鉄及び第一鉄、並びにCD68+プラークマクロファージ(
図20及び
図21参照)で局在することが観察された。これらの知見によって、アテローム性動脈硬化におけるセロイド生成に潜む特徴である、アテロームにおける脂質、鉄、及び酸化ストレスの細胞メディエータとNIRAFとの関連が確立された。
【0149】
図21は、プラークNIRAFが鉄及びマクロファージと関連することを示す。特に、
図21は、プラーク鉄及びCD68陽性プラークマクロファージを含むNIRAF陽性エリアの頻繁な局在を示す高倍率視野を示す。PB+DAB:ジアミノベンジジンを含むプルシアンブルー。NIRAF画像は同じように処理及びウインドウ化された。スケールバーは250μmである。
【0150】
図22は、NIRAF陽性プラークエリアにおける鉄の局在を示す。特に、
図22は、隣接切片におけるPB及びDAB増強を用いたプラーク鉄の組織化学的検出を示す。代表的なPB+DAB染色は、NIRAF陽性プラークエリアにおける鉄の存在を示す。スケールバー=250μmである。
【0151】
NIRAF陽性プラークエリアが不溶性及び可溶性脂質並びに酸化ストレスの生成源である鉄の領域と共局在するという知見に基づき、NIRAFが酸化ストレスの条件下でヒト単球由来マクロファージ(「MDM」)においてin vitroで生じる可能性があるという仮説が立てられた。酸化LDL(「oxLDL」)と5日間又はヘモグロビン(「Hb」)と24時間インキュベートした分化THP-1細胞、又はMDMでは、638nmでのNIR光励起後に実質的なNIRAFが検出された(
図22及び
図23参照)。
【0152】
対照的に、LDLとインキュベートされたMDMはNIRAFを生成しなかったが、oxLDLとインキュベートされたMDMはNIRAFを時間依存及び濃度依存するかたちで生成した(
図23A参照)。次に、oxLDL処理又はHb処理された細胞中のNIRAF検出をフローサイトメトリーにより定量したところ、対照と比較して多数のNIRAF+細胞が示された(
図23B参照)。
【0153】
図23は、THP-1ヒトマクロファージにおける、酸化LDL誘導NIRAFの生成を示す。特に、
図23は、THP-1MDMにおける638nm光によって励起されたNIRAFが、共焦点顕微鏡検査(
図23A)及びフローサイトメトリー(
図23B)によって評価されたことを示す。分化後のTHP-1細胞を、培地のみ(対照)、50μg/mlの天然LDL、50μg/mlのoxLDLとともに5日間、又は0.5mg/mlのヒトヘモグロビンとともに24時間、インキュベートした。共焦点顕微鏡(
図23A)及びフローサイトメトリー(
図23B)を用いたNIRAF検出を示す。
【0154】
図24Aから
図24Dは、oxLDLとともにインキュベートされたTHP-1MDMにおけるNIRAF検出を示す。
図24Aは、培地のみ(対照)、50μg/mlの天然LDL、若しくは50μg/mlのoxLDLとともに5日間、又は0.5mg/mlのヒトヘモグロビンとともに24時間インキュベートしたTHP-1マクロファージにおける核染色をしたNIRAFの高倍率画像を示す。
図24Bは、LDL処理及びoxLDL処理されたMDMにおける、1日目、3日目及び5日目におけるNIRAF信号の発展の代表的な時間的経過を示す。
図24Cは、5日目におけるNIRAF信号を、20μg/mlのoxLDLとともにインキュベートしたMDMと50μg/mlのoxLDLとともにインキュベートしたMDMとについて比較したものである。
図24Dは、3回の独立した実験の平均値±SEとして示された
図24Cの定量データを示す。
【0155】
MDMにおいて脂質媒介NIRAF生成の可能性があることを確認するために、BODIPY493/503を用いて細胞内脂質を可視化し、NIRAF生成を同時に評価した。oxLDL処理された細胞は、NIRAFと共局在するロバストな細胞内脂質存在(BODIPY493陽性)を示し(
図25参照)、これは、同様にBODIPY493陽性であるが、NIRAF信号を示さないLDL処理された細胞とは対照的であった。加えて、Hb処理された細胞はNIRAFを示したが、脂質蓄積の証拠は示さず、このことは、NIRAF生成がoxLDL特異的な及びヘモグロビン非依存的な経路を介して起こり得ることを示した。組織病理学的所見を補強すると、可溶性脂質を除去するためのエタノール処理後にoxLDL処理されたMDMは、対照細胞と比較して、BODIPY493と共局在する持続的なNIRAFを依然として示した(
図25参照)。
【0156】
図25は、oxLDLグループにおいて、BODIPY493/503染色によってアクセスされた細胞内脂質が、共焦点顕微鏡においてNIRAFと共局在したことを示す。
【0157】
図26は、NIRAFを細胞数により調整した、定量BODIPY陽性エリア及びBODIPYの共局在エリアの2つのグラフを示し、これらは6回の独立した実験の平均値±標準誤差として示されている。BODIPYの定量は、一元配置ANOVAと、それに続くテューキー・クレーマー検定により分析され、BODIPY/NIRAFの後にゲイムス・ハウエル検定法が行われた。
*p<0.5、
**p<0.01。スケールバーは50μmである。NIRAF画像は同じように処理及びウインドウ化された。
【0158】
図27は、NIRAFが、ヒトマクロファージ内の不溶性脂質、すなわちセロイドと共局在することを示す。特に、
図27は、MDMを、50μg/mlのoxLDLとともに5日間インキュベートし、次いでエタノールで20分間処理し又は対照とし(エタノールなし)、次いでBOPIDY493とともにインキュベートして細胞内脂質を染色したものを示す。ヘキスト染色で細胞核が可視化された。可溶性脂質を除去するためのEtOH(エタノール)固定後、残りの不溶性BODIPY+脂質はNIRAF信号(黄色、右側のカラム)と共局在することが観察された。
【0159】
酸化LDLは酸化ストレスの有力な生成源であり酸化ストレスはセロイド形成を促進することから、oxLDL曝露後のNIRAFの生成における酸化ストレスの役割が評価された。CellROX試薬により評価された細胞内活性酸素種(「ROS」)は、ヒトMDMにおいてoxLDL誘導NIRAFと良好に共局在した(
図28A参照)。フローサイトメトリーによる定量分析により、CellROX陽性及びNIRAF陽性集団は、LDL処理細胞及び対照細胞と比較して、oxLDL処理細胞を増大させることが確認された(
図28A参照)。ROSによって媒介される非酵素的脂質酸化を反映するために、酸化環境の存在がさらに分析された。C11-BODIPY脂質過酸化センサを用いることで、oxLDL処理細胞は、LDL処理細胞及び対照細胞と比較して、より高いレベルの脂質過酸化を示すことが観察された(
図28Aから
図28D参照)。
【0160】
図28Aから
図28Dは、酸化LDL誘導酸化ストレスがNIRAF生成に寄与していることを示す。NIRAF及び細胞内活性酸素種(「ROS」)は、培地のみ(対照)、50μg/mlの天然LDL、50μg/mlのoxLDLとともに5日間インキュベートした後、
図28Aで、つまり、共焦点顕微鏡により、THP-1MDMにおけるCellROXGreen染色によって評価された。4回の独立した実験からの代表的な画像により、oxLDL生成酸化ストレスの条件下でNIRAF信号が増大したことが示される。
図28Bから
図28Dは、NIRAF陽性及びCellROX陽性細胞の両方がoxLDLとのインキュベーション後に増大することを示すフローサイトメトリー分析を示す。3回の独立した実験の代表的な結果が示されている。
【0161】
図29Aは、MDMをoxLDLとインキュベートした後の脂質過酸化ストレスの増大を示すC11-BODIPY染色の代表的な画像を示す。
図29Bは、共焦点顕微鏡から得られたC11-BODIPY脂質過酸化信号の定量を示すグラフを示し、LDL又は対照と比較して、oxLDLとのインキュベーション後の脂質過酸化の有意な増大を示す。データは3回の独立した実験の平均値±SEで示される。
【0162】
oxLDL生成NIRAFにおける酸化ストレスの役割を特に評価するために、2つの異なる抗酸化剤、N-アセチルシステイン(「NAC」)とα-トコフェロール、を用いたNIRAF生成に対する抗酸化処理の影響を調べた。oxLDLとともNAC又はα-トコフェロールの処理を同時にすると、oxLDL処理のみと比較して、5日目でのMDMにおけるNIRAF生成及びROSレベルが大幅に低下することが分かった。
【0163】
図30Aは、oxLDLと5mMのNAC又は1mMのα-Toc(トコフェロール)とともに5日間共インキュベートされたTHP-1MDMを示し、oxLDLのみとともにインキュベートされた細胞と比較してNIRAF信号(赤紫)が減少したことを示す。
図30Bは、NAC又はα-Tocのいずれかとのインキュベーション後のNIRAF+細胞のパーセンテージでの減少を示すフローサイトメトリー分析グラフを示す。3回の独立した実験の代表的な結果が示されている。定量データは一元配置ANOVAと、それに続くテューキー・クレーマー検定により分析した。
*p<0.5、
***p<0.001。スケールバーは50μmである。
【0164】
図31は、抗酸化処理が、ヒトマクロファージにおけるox-LDL生成NIRAF信号を減少させることを示す。特に、
図31は、oxLDLのみとともにインキュベートされた、又はoxLDLと5mMのNAC又は1mMのα-トコフェロールとともに共インキュベートされた5日目のTHP-1MDMにおける、CellROXGreenによって検出された細胞内ROS産生を示す。3回の独立した観察からの代表的な共焦点顕微鏡画像である。NIRAF画像は同じように処理及びウインドウ化された。
【0165】
図32Aから
図32Cは、CellROX陽性及びNIRAF陽性の細胞の数の減少を示すフローサイトメトリーグラフを示す。
【0166】
本開示において、(1)ヒト頸動脈プラークは、プラーク内出血の存在の有無にかかわらず、脂質に富むゾーンでNIRAFを示すこと、(2)プラークNIRAFは、セロイドを含む酸化リポタンパク質の形成のための触媒である不溶性脂質及び鉄と共局在すること、(3)人間単球由来マクロファージ(「MDM」)において、LDLではなく酸化LDLが、ヘモグロビンとは無関係に、NIRAF、脂質過酸化産物及び酸化ストレスを生成すること、(4)抗酸化処理は、酸化LDLにより生成される酸化ストレス及びNIRAFをin vitroで抑制できることを示すことによって、NIRAF生成について新たな洞察がされた。総合的な結果は、酸化脂質誘導酸化ストレスを介するNIRAF生成の新たな経路を実証し、そして、セロイドがヒトアテローム性動脈硬化におけるNIRAFの付加的な源である可能性があるという仮説を支持する。したがって、これらの知見は、ヒトアテローム性動脈硬化の将来の臨床的NIRAFイメージング研究にさらに情報を与える可能性を有する。
【0167】
長く知られてきた不溶性脂質複合体であるセロイドが、酸化ストレスの条件下で生成される潜在的なNIRAF源である可能性があるとの仮説が立てられた。さらに、セロイドはNIRAF信号を有する可能性があるとの仮説が立てられた。ヒトアテローム性動脈硬化の初期の研究では、広範囲の年齢の剖検患者(5歳から88歳)にわたって大動脈及び冠動脈プラーク内のセロイドが検出されたことから、セロイドは過去の酸化イベントのマーカーであり、プラークの進行において役割を果たす可能性があるという推測に至った。ヒト冠動脈及び大動脈プラークを、蛍光(476nm励起)及びラマン(830nm励起)スペクトル顕微鏡法を用いて事前に調べたところ、セロイド内の脂質は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)-次亜塩素酸経路及びフェントン反応に由来する過酸化産物のかたちで主に存在することがさらに示され、炎症及び鉄媒介LDL酸化メカニズムの重要性が強調された。
【0168】
新鮮切除頸動脈内膜切除標本を研究した本開示において、観察からは、セロイドが、NIRAFと脂質及び特に不溶性脂質との関係、並びに酸化ストレスを引き起こす鉄との関係に基づいて、NIRAF信号に寄与する可能性があるというコンセプトが支持される。IPHに続くヘモグロビンによって放出される遊離鉄は、セロイド形成の基礎となる特徴である活性酸素種及び脂質過酸化物の形成を促進し得る。しかしながら、我々はIPHとNIRAFとの部分的な関連を確認した一方で、NIRAF+及びSB+エリアはIPHのエビデンスがないことも明らかになった。この知見は、ヘモグロビンベースの鉄供給とは無関係に脂質ベースのメカニズムが酸化ストレスを介してNIRAFを生成する可能性を示唆している。可溶性脂質を除去するための有機溶媒を用いたin vitroでのプラーク切片及びヒトMDMに関するさらなる実験によって、より強い点状NIRAF信号が不溶性脂質、又はセロイドと共局在することが実際に実証された。
【0169】
セロイド形成の根底にあるメカニズムは複雑であり広範に研究されているが、プラークベースのセロイドからのNIRAF生成の正確なメカニズムは、これまで知られていなかった。セロイドは様々な細胞タイプ及び病状で観察され、その形成が酸化ストレス及び病理学的細胞老化に関連付けられており、一般的にはリソソーム及びオートファゴソーム機能不全に起因する不完全な消化産物の凝集として記述されている。
【0170】
重要なことに、oxLDLの過剰な蓄積は、N-アセチルシステイン(「NAC」)で和らげることができるリソソーム及び小胞体を含む細胞分解メカニズムの機能不全を介して酸化ストレスを誘発することが十分に確立されている。本開示においては、in vitro酸化脂質が、セロイドの形成及びNIRでの自己蛍光を生み出すことができることが解明されている。加えて、oxLDLは活性酸素種(「ROS」)及び脂質過酸化産物をさらに生成した。さらに、本研究におけるNIRAF及びROS生成は、ヒトMDMにおけるNAC又はα-トコフェロールを用いる抗酸化処理によって阻害された。α-トコフェロール補強のアテローム性動脈硬化予防試験ははっきりしないものであったが、近年承認されたイコサペントエチル43のようなより強力な抗酸化剤が、セロイド生成、NIRAF及びアテローム進行の抑制により効果的な可能性がある。NIRAFと酸化ストレスとの関係を考えると、本研究は、セロイドが直接的にアテローム生成促進性であるか否か、これは論争の領域である、を調査することをさらに支持するものである。
【0171】
CAD患者におけるNIRAFの検出は、臨床的に承認されたデュアルモダリティNIRAF光コヒーレンストモグラフィ(「OCT」)血管内カテーテルを用いて最近報告された。本所見は、最高NIRAF信号が内頸動脈の起始部で生じ、典型的な責任部位はIPH又はプラーク破裂の証拠を伴う進行したアテロームを示すことを示した。したがって、現在の知見は、NIRAFがセロイド及びプラーク内出血について報告することができることから、ヒトCADの将来的な冠動脈内NIRAF試験に情報を与え得る。NIRAF範囲におけるセロイドの冠動脈内カテーテルベースの検出は可視光範囲におけるセロイドの検出よりも重要な利点を有し、すなわち、NIR光のプラークへのより大きな透過、並びに、エラスチン及びコラーゲンのような他の実体からの交絡可視光自己蛍光の回避を含む利点を有する。血管内NIRAF信号強度が冠動脈サイズの動脈におけるプラーク進行を予測するか否かを決定するために、今後の研究が計画されている。加えて、現在の知見は、セロイド/IPH信号を経時的に追跡することにより、抗酸化剤療法又は抗炎症療法のプラーク安定化効果を検出する血管内NIRAF-OCTの潜在的価値を支持する。
【0172】
セロイドは水又は有機溶媒中で不溶性であり、分析的NIRAF試験のためにヒトアテロームから抽出することが困難である。それにもかかわらず、プラーク切片及びoxLDL処理されたヒトMDMの両方におけるエタノール固定後の不溶性脂質とのNIRAF共局在の持続によって、セロイドがヒトアテローム内のNIRAF信号に寄与する証拠が提供される。NIRAFを生成するセロイドの特異的分子成分を理解するためには、本研究の範囲を超えたさらなるメカニズム的研究が必要である。最後に、セロイドは、ヘム分解産物(例えば、ビリルビン及びプロトポルフィリンIX)を超えるNIRAFの別の源であると思われるが、NIRAFを示す追加の部分がアテローム中に存在する可能性がある。これらの分子の発見には、リピドーム、メタボロミクス及びプロテオミクスのアプローチを利用したより広範なスクリーニングアプローチが必要であろう。
【0173】
要約すると、この一体化されたヒトアテローム性動脈硬化及びin vitroヒトMDM研究によって、NIRAFが不溶性プラーク脂質、又はセロイドのエリアで起こること、そして、NIRAF生成がin vitroで酸化ストレス及び脂質過酸化産物を生成する酸化LDL経路を介して起こり得ることが実証された。総合的な結果は、酸化脂質誘導酸化ストレスを介するNIRAF生成の新たな経路を示し、セロイドがヒトアテローム性動脈硬化におけるNIRAFの源であることを支持する。これらの知見は、CAD患者におけるNIRAFの将来の臨床的冠動脈内イメージング研究に情報を与え得る。
【0174】
NIRAF生成の根底にあるメカニズムは完全には特徴付けられていない。ここでは、我々はアテローム性動脈硬化におけるNIRAF生成及びヒト単球由来マクロファージ(MDM)におけるin vitroでの脂質及び酸化ストレスの役割を検討した。N=15のヒト頸動脈内膜切除標本において、脂質、IPH及びNIRAF(励起/放出 630nm/650nm)の空間分布を検討した。プラークNIRAFは、ズダンブラック(SB)+脂質(r=0.53,P=0.43)とグリコホリンA(GPA)陽性IPH(r=0.57,P=0.23)の両方と関連した。プラークNIRAFも、脂質、特に不溶性脂質(セロイド)、及び鉄と共に局在した。興味深いことに、一部のNIRAF陽性エリアはSB陽性であったが、GPA陰性であった。NIRAF生成における脂質の役割をさらに調べるために、ヒトMDMを検討した。酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)及びヘモグロビンはMDMにおいてNIRAFを生成したが、LDLは生成しなかった。oxLDL処理されたMDMにおいて、NIRAFは脂質過酸化産物及び細胞内酸化ストレスマーカーと共局在した。抗酸化剤α-トコフェロール及びN-アセチルシステインは、oxLDL処理されたMDMにおけるNIRAF生成及び酸化ストレスを抑制した。ヒトアテローム性動脈硬化及びin vitroのヒトMDMにおいて、NIRAFは脂質、及び特に不溶性脂質、又はセロイドと共局在する。in vitro研究はさらに、酸化LDLがNIRAF、酸化ストレス及び脂質過酸化産物を生成することを示す。総合的な結果は、酸化脂質誘導酸化ストレスを介するNIRAF生成の新たな経路を示し、セロイドがヒトアテローム性動脈硬化におけるNIRAFの源であることを支持する。これらの知見はCAD患者におけるNIRAFのさらなる臨床的冠動脈内イメージング研究に情報を与える可能性がある。
【0175】
近赤外自己蛍光(NIRAF)は冠動脈疾患(CAD)患者で検出可能であり、将来の虚血イベントのリスクのあるプラークを区別し得る。NIRAFは、プラーク内出血又はヘモグロビンとは無関係に、ヒト頸動脈アテローム性動脈硬化における及びin vitroのヒトマクロファージ内の不溶性脂質(セロイド)と関連する。酸化LDLはin vitroでNIRAF、酸化ストレス及び脂質過酸化産物を生成する。抗酸化処理はヒトマクロファージにおけるNIRAF生成を抑制できる。これらの知見は、CAD患者におけるNIRAFの将来の臨床的冠動脈内イメージング研究に情報を与え得る。
【0176】
これらのシステム及び方法について、前述の例示的な非限定的な例で記載及び図示したが、本開示は単に例として記載されたものであり、これらのシステム及び方法の実装の詳細における多数の変更は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるこれらのシステム及び方法の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができることが理解される。開示された非限定的な例の特徴は様々に組み合わせる及び再アレンジすることができる。
【0177】
さらに、本明細書において提供される開示の非限定的な例は、以下の説明に記載されるか又は以下の図面に図示される構成の詳細及び部品の配置への適用に限定されない。これらのシステム及び方法は、他の非限定的な例が可能であり、様々に実装又は実行されることが可能である。また、本明細書において用いられる表現及び用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものであるとみなされるべきではないことも理解されたい。本明細書における「含む」、「備える」若しくは「有する」及びそのバリエーションの使用は、その後に列挙される項目及びその同等物並びに追加項目を包含することを意味する。別途明記又は限定されていない限り、「装着」、「接続」、「支持」及び「結合」との用語及びそれらのバリエーションは広く使用され、直接的及び間接的な装着、接続、支持及び結合を包含する。さらに、「接続」及び「結合」は物理的又は機械的な接続又は結合に限定されない。
【0178】
また、本明細書において用いられる表現及び用語の使用は、説明を目的とするものであり、限定的なものであるとみなすべきではない。本明細書における「右」、「左」、「前」、「後」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上部」若しくは「底部」及びそのバリエーションの使用は、説明のためのものであり、限定とみなされるべきではない。別途明記又は限定されていない限り、「装着」、「接続」、「支持」及び「結合」との用語及びそれらのバリエーションは広く使用され、直接的及び間接的な装着、接続、支持及び結合を包含する。さらに、「接続」及び「結合」は物理的又は機械的な接続又は結合に限定されない。
【0179】
別途明記又は限定されていない限り、「A、B及びCの少なくとも1つ」、「A、B及びCの1つ以上」等に類似するフレーズは、A若しくはB若しくはC、あるいは、A、B及び/又はCの任意の組み合わせを示すことを意味し、A、B及び/又はCの複数の組み合わせの場合又は1つの場合を含む。
【0180】
いくつかの非限定的な例では、方法のコンピュータによる実行を含む本開示の態様は、本明細書に詳細に記載した態様を実現するために、システム、方法、装置、あるいは、プロセッサデバイス、コンピュータ(例えば、メモリに動作可能に連結されたプロセッサデバイス)又は別の電子的に動作されるコントローラを制御するためのソフトウェア、ファームウェア、ハードウエア又はそれらの任意の組み合わせを製造するための標準的なプログラミング又はエンジニア技術を用いる製造物として実装することができる。したがって、例えば、これらのシステム及び方法の非限定的な例は、非一時的なコンピュータ可読媒体上に実体的に具備される命令のセットとして実装することができ、プロセッサデバイスはコンピュータ可読媒体からの命令を読むことに基づいて命令を実行することができる。これらのシステム及び方法のいくつかの非限定的な例は、以下の説明と整合する(又は利用する)自動化装置や、様々なコンピュータハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアなどを含む特殊用途又は汎用コンピュータのような装置を含むことができる。
【0181】
本明細書中において使用される「製造物」との用語は、あらゆるコンピュータ可読装置、キャリア(例えば、非一過性信号)、又は媒体(例えば、非一過性媒体)からアクセス可能なコンピュータプログラムを包含することが意図されている。例えば、コンピュータ可読媒体は、磁気ストレージデバイス(例えば、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気ストリップなど)、光ディスク(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多目的ディスク(DVD)など)、スマートカード、及びフラッシュメモリデバイス(例えば、カード、スティックなど)を含むが、これらに限定されない。さらに、電子メールの送受信や、インターネットやローカルエリアネットワークなどのネットワークへのアクセスに使用されるような、コンピュータ可読電子データを伝送するために、搬送波を使用することができることを理解されたい。当業者は、特許請求の範囲に記載された主題事項の範囲又は精神から逸脱することなく、これらの構成に多くの変更を加えることができることを認識するであろう。
【0182】
これらのシステム及び方法による方法の特定の動作、又は当該方法を実行するシステムの特定の動作は、図中に模式的に示されている場合があり、あるいは本明細書中に記載されている。別途明記又は限定されていない限り、特定の空間的順序における特定の動作についての図中の表現は、必ずしもそれらの動作が特定の空間的順序に対応する特定の順序で実行されることを必要としないことがある。それに対応して、図示されるかさもなければ本明細書に開示されている特定の動作は、これらのシステム及び方法の特定の非限定的な例に対して適切であるように、明示的に図示又は記載されているものとは異なる順序で実行することができる。さらに、いくつかの非限定的な例では、特定の動作を並行して実行することができ、これは、専用の並列プロセッサデバイス、又は大規模システムの一部として相互動作するよう構成された別個のコンピューティングデバイスによって実行することを含む。
【0183】
本明細書においてコンピュータ実行の文脈において使用する場合、別途明記又は限定されていない限り、「構成要素」、「システム」、「モジュール」などの用語は、ハードウエア、ソフトウェア、ハードウエアとソフトウェアの組み合わせ、又は実行中のソフトウェアを含むコンピュータ関連システムの一部又はすべてを包含することが意図されている。例えば、構成要素は、プロセッサデバイス、プロセッサデバイスにより実行されている(又は実行可能な)プロセス、オブジェクト、実行可能物、実行スレッド、コンピュータプログラム、又はコンピュータであってもよいが、これらに限定されない。例えば、コンピュータ上で実行されているアプリケーションとコンピュータの両方が構成要素とすることができる。1つ以上の構成要素(又はシステム、モジュールなど)は、プロセス又は実行のスレッド内に存在することができ、1つのコンピュータ上にローカライズされることができ、2つ以上のコンピュータ又は他のプロセッサデバイス間に分散されることができ、又は別の構成要素(又はシステム、モジュールなど)内に含まれることができる。
【0184】
本明細書中において使用される「コントローラ」及び「プロセッサ」及び「コンピュータ」との用語は、コンピュータプログラムを実行することができるあらゆるデバイス、又は記述された機能を実行するように構成された論理ゲートを含むあらゆるデバイスを含む。例えば、これには、プロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルロジックコントローラなどが含まれる。別の例として、これらの用語は、1つ以上のプロセッサ及びメモリ、及び/又は1つ以上のプログラム可能ハードウエア要素、例えば、いずれかのタイプのプロセッサ、CPU、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、又はソフトウェア命令を実行可能な他のデバイスを含み得る。
【0185】
上記の説明において、上記の処理に関して、これらのプロセスを(適宜)実行する特定のコンピューティングデバイスに関してフレーム化されているが、非一時的なコンピュータ可読媒体(例えば、上述の製造物)が、上記のプロセスのためのコンピュータ実行可能コードを格納できることも理解される。例えば、プロセス200,300(又はその他)を、非一時的なコンピュータ可読媒体に効率的に格納することができる。
【0186】
本明細書中において使用される「イメージング剤」との用語は、外部の電磁気又は超音波を吸収又は変化させるイメージング造影剤、イメージングシステムによって検出された放射線を放出する放射性医薬品などを指す。場合によっては、「イメージング剤」は、体内の画像のコントラストを強調する診断イメージング剤とすることができる。
【国際調査報告】