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特表2023-530739バランスのとれた耐屈曲性を有するHMS PP発泡シート用のポリプロピレン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】バランスのとれた耐屈曲性を有するHMS PP発泡シート用のポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20230711BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230711BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230711BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08L23/10
C08K3/34
C08J5/18 CES
C08J9/04 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578567
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2021067321
(87)【国際公開番号】W WO2021260097
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】20182505.6
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】ティニス アンティ
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェルト ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】リン イー アン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA88
4F071AB26
4F071AC02
4F071AE01
4F071AE22
4F071AF44Y
4F071AF57Y
4F071AH05
4F071BB03
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC11
4F071BC12
4F074AA24
4F074AA98
4F074AB05
4F074AC32
4F074BA37
4F074BA38
4F074BC12
4F074CA22
4F074CC04X
4F074CC05Y
4F074CC22X
4F074CC32X
4F074CC32Y
4F074CE02
4F074CE46
4F074DA02
4F074DA07
4F074DA08
4F074DA20
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA34
4J002BB11W
4J002BB11X
4J002BB12X
4J002BB14W
4J002DJ046
4J002FD140
4J002FD206
4J002FD327
4J002GF00
4J002GG01
(57)【要約】
本発明は、
- 10~50重量%の再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP);
- 40~89.95重量%の高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)であって、25.0cNより大きいF30溶融強度及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性を有し、F30溶融強度及びv30溶融伸展性がISO 16790:2005に従って決定される、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP);及び、
- 0.05~10重量%の核形成剤(NA);
を有するポリプロピレン組成物、上記ポリプロピレン組成物から形成される発泡シート;上記発泡シートを有する物品及び上記ポリプロピレン組成物を形成する工程を有する方法に関する。さらに、本発明はさらに、発泡シートの形成のための上記ポリプロピレン組成物の使用に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 10~50重量%の再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP);
- 40~89.95重量%の高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)であって、25.0cNより大きいF30溶融強度及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性を有し、F30溶融強度及びv30溶融伸展性がISO 16790:2005に従って決定される、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP);及び、
- 0.05~10重量%の核形成剤(NA);
を有するポリプロピレン組成物。
【請求項2】
再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)が、下記の特性の少なくとも1つを有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物:
a) 230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された3~25g/10minのMFR;
b) ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度。
【請求項3】
再生ポリプロピレン(R-PP)が、少なくとも50重量%の再生高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)を有する再生ポリプロピレン(Rec-PP)である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
核形成剤(NA)がタルクである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物から形成された発泡シート。
【請求項6】
0.5~10mmの厚さ、及び/又は、150~250kg/mの密度を有する、請求項5に記載の発泡シート。
【請求項7】
カバー層(CL)で覆われている、請求項5又は6に記載の発泡シート。
【請求項8】
前記発泡シートと前記カバー層(CL)が直接隣接する、請求項7に記載の発泡シート。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1項に記載の発泡シートを有する物品。
【請求項10】
下記の工程を有する方法:
a)
- 10~50重量%の再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP);
- 40~89.95重量%の高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)であって、25.0cNより大きいF30溶融強度及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性を有し、F30溶融強度及びv30溶融伸展性がISO 16790:2005に従って決定される、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP);及び、
- 0.05~10重量%の核形成剤(NA);
を有するポリプロピレン組成物を製造する工程であって、
再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)並びに核形成剤(NA)を、混合装置中で同時に又は順次混ぜ合わせる工程。
【請求項11】
工程a)の後に下記の工程b)をさらに有する、請求項10に記載の方法:
b) 工程a)で得られたポリプロピレン組成物を発泡させる工程を有する、発泡物品を形成する工程。
【請求項12】
工程b)の後に下記の工程c)をさらに有する、請求項11に記載の方法:
c) 工程b)後に得られた発泡物品からカップ形成する工程。
【請求項13】
再生ポリプロピレン(R-PP)が再生ポリプロピレン(Rec-PP)であり;工程b)、又は、工程c)が存在する場合には工程c)の後に、下記の工程d)をさらに有する:請求項11又は12に記載の方法:
d) 工程b)後に存在するポリマー残部を用いて再生ポリプロピレン(Rec-PP)を形成する工程。
【請求項14】
下記の関係式(I)を満たす発泡シートの製造のための請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物の使用:
耐屈曲性(MD)/耐屈曲性(CD)≦1.2 (I)
(式中、
耐屈曲性(MD)は、SCAN P29:95に従って測定された機械方向における耐屈曲性(mN)であり;
耐屈曲性(CD)は、SCAN P29:95に従って測定された交差方向における耐屈曲性(mN)である。)。
【請求項15】
下記の関係式(II)を満たす発泡シートの製造のための請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物の使用:
100℃における熱伝導率/20℃における熱伝導率≦1.5 (II)
(式中、
100℃における熱伝導率は、ISO 1856:2000に従って決定された、100℃における発泡シートの熱伝導率(m・K)であり;
20℃における熱伝導率は、ISO 1856:2000に従って決定された、20℃における発泡シートの熱伝導率(m・K)である。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡シート(foamed sheet)に適したポリプロピレン組成物、上記組成物から製造された発泡シート及び上記発泡シートから製造された物品に関する。本発明はさらに、上記ポリプロピレン組成物の製造方法及び上記ポリプロピレン組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、使い捨て1回使用ホット及びコールド飲料カップ(hot & cold beverage cup)の材料には、LDPE被覆カートン(LDPE coated carton)及び発泡PSが主に使用されている。発泡PSカップの健康に対する懸念及び環境への有害な影響のために、ポリスチレンカップは多くの国及び/又は都市で禁止され又は禁止されつつある。従って、PE被覆カートンがますます普及してきており、ホット及びコールド飲料カップにおいてPSと置き換わりつつある。しかしながら、LDPE被覆のために上記紙コップは堆肥可能ではなく、パルプとPE被覆を分離する方法が難しく高価なため、リサイクルがやっかいである。従って、再利用性及び環境の観点から、紙コップは理想的な解決方法ではない。
【0003】
従って、紙コップを処分するための実行性のある唯一の方法は、焼却によるエネルギー回収又は使用済みカップを埋め立てごみ処理地に投棄することである。紙コップの環境に関する問題に加えて、バランスのとれていない特性プロファイル、特に、紙コップ製造に使用される紙シートの機械方向(machine direction)と横方向(transverse direction)における耐屈曲性(bending resistance)の相違が問題である。紙コップに関する上記の問題に加えて、特にホット飲料カップの場合には、高温における優れた断熱性能を具備させるという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、近年における開発の目的は、1回使用ホット及びコールド飲料カップに特に適した、使い捨て、再利用可能材料であって、上記の問題を克服した材料を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、
- 10.0~50.0重量%の再生ポリプロピレン(recycled polypropylene)(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(linear polypropylene)(L-PP);
- 40.0~89.95重量%の高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)であって、25.0cNより大きいF30溶融強度(F30 melt strength)及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性(v30 melt extensibility)を有し、F30溶融強度及びv30溶融伸展性がISO 16790:2005に従って決定される、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP);及び、
- 0.05~10.0重量%の核形成剤(NA);
を有するポリプロピレン組成物を提供する。
【0006】
驚くべきことに、本発明のポリプロピレン組成物は、発泡体を形成した場合、機械及び横方向の両方において高い耐屈曲性を有する。さらに、LDPE-被覆カートンとは異なり、温度の上昇とともに熱伝導率が上昇しない。従って、本発明のポリプロピレン組成物はカップの形成に特に適している。
【0007】
本発明の直鎖ポリプロピレンは側鎖(side chain)を含まない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)
高溶融強度ポリプロピレンは分岐しており、従って、ポリプロピレン骨格が側鎖を含む点で直鎖ポリプロピレンとは異なる。一方、非分岐ポリプロピレン、すなわち直鎖ポリプロピレンは側鎖を含まない。側鎖はポリプロピレンのレオロジーに大きく影響する。従って、直鎖ポリプロピレン及び高溶融強度ポリプロピレンは、応力下におけるそれらの流動挙動により明確に区別することができる。
【0009】
一般に、分岐の形成は、特定の触媒、すなわち特定のシングルサイト触媒を使用することにより、又は、化学的修飾により行うことができる。特定の触媒の使用により得られる分岐ポリプロピレンの製造に関しては、EP1892264が参照される。化学的修飾により得られる分岐ポリプロピレンに関しては、EP0879830A1が参照される。このような場合、分岐ポリプロピレンは高溶融強度ポリプロピレンとも呼ばれる。本発明の高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、以下により詳細に記述するように、ポリプロピレン(PP)の化学的修飾により得られる。HMS-PPは、Borealis AGからDaploy(商標)の商品名で市販されている。
【0010】
従って、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、25.0cNより大きいF30溶融強度及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性を有し、好ましくは25.0cNより大きく、50.0cN以下のF30溶融強度及び205mm/sより大きく、300mm/s以下のv30溶融伸展性を有するため、得られるポリプロピレン組成物が良好なせん断減粘(shear thinning)特性を有する。F30溶融強度及びv30溶融伸展性はISO 16790:2005に従って測定される。
【0011】
好ましい態様において、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、
(a) 25.0cNより大きく、45.0cN以下の、好ましくは25.0cNより大きく、42.0cN以下の、最も好ましくは25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度;
及び
(b) 210~300mm/sの、より好ましくは215~290mm/sの、なおより好ましくは220~270mm/s、最も好ましくは225~260mm/sのv30溶融伸展性;
を有する。
【0012】
特に好ましい態様において、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、25.0cNより大きく、45.0cN以下のF30溶融強度及び210~300mm/sのv30溶融伸展性、例えば、25.0cNより大きく、42.0cN以下のF30溶融強度及び215~290mm/sのv30溶融伸展性、又は、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び220~270mm/sのv30溶融伸展性、又は、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び225~260mm/sのv30溶融伸展性を有する。
【0013】
さらに、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、ISO 1133に従って測定された、15.0g/10min以下の、より好ましくは0.5~15.0g/10minの範囲内の、なおより好ましくは1.0~15.0g/10minの範囲内の、例えば1.5~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有することが好ましい。
【0014】
特に好ましい態様において、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、ISO 1133に従って測定された、7.0g/10min以下の、好ましくは0.5~7.0g/10minの範囲内の、より好ましくは0.5~6.5g/10minの範囲内の、なおより好ましくは0.5~6.0g/10minの範囲内の、さらにより好ましくは1.0~6.0g/10minの範囲内の、例えば1.5~5.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0015】
従って、特定の態様の1つにおいて、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、
(a) 15.0g/10min以下の、より好ましくは0.5~15.0g/10minの範囲内の、なおより好ましくは1.0~15.0g/10minの範囲内の、例えば1.5~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃);及び、
(b) 25.0cNより大きい、好ましくは25.0cNより大きく、50.0cN以下の、より好ましくは25.0cNより大きく、45.0cN以下の、なおより好ましくは25.0cNより大きく、42.0cN以下の、最も好ましくは25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度;及び、
(c) 205mm/sより大きい、好ましくは205mm/sより大きく、300mm/s以下の、より好ましくは210~300mm/sの、なおより好ましくは215~290mm/sの、さらにより好ましくは220~270mm/sの、最も好ましくは225~260mm/sのv30溶融伸展性;
を有する。
【0016】
特に好ましい態様において、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、
(a) 7.0g/10min以下の、好ましくは0.5~7.0g/10minの範囲内の、より好ましくは0.5~6.5g/10minの範囲内の、なおより好ましくは0.5~6.0g/10minの範囲内の、さらにより好ましくは1.0~6.0g/10minの範囲内の、例えば1.5~5.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃);及び、
(b) 25.0cNより大きい、好ましくは25.0cNより大きく、50.0cN以下の、より好ましくは25.0cNより大きく、45.0cN以下の、なおより好ましくは25.0cNより大きく、42.0cN以下の、最も好ましくは25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度;及び、
(c) 205mm/sより大きい、好ましくは205mm/sより大きく、300mm/s以下の、より好ましくは210~300mm/s、なおより好ましくは215~290mm/sの、さらにより好ましくは220~270mm/s、最も好ましくは225~260mm/sのv30溶融伸展性;
を有する。
【0017】
従って、特定の態様において、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、0.5~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、45.0cN以下のF30溶融強度及び210~300mm/sのv30溶融伸展性、例えば、1.0~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、42.0cN以下のF30溶融強度及び215~290mm/sのv30溶融伸展性、又は、1.0~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び220~270mm/sのv30溶融伸展性、又は、1.5~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び225~260mm/sのv30溶融伸展性を有する。
【0018】
従って、別の特定の態様において、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、0.5~7.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、45.0cN以下のF30溶融強度及び210~300mm/sのv30溶融伸展性、例えば、1.0~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、42.0cN以下のF30溶融強度及び215~290mm/sのv30溶融伸展性、又は、1.0~6.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び220~270mm/sのv30溶融伸展性、又は、1.5~5.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び225~260mm/sのv30溶融伸展性を有する。
【0019】
好ましくは、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、少なくとも130℃の、より好ましくは少なくとも135℃の、最も好ましくは少なくとも140℃の融点を有する。その結晶化温度は、好ましくは少なくとも110℃、より好ましくは少なくとも120℃である。
【0020】
さらに、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)又は高溶融強度プロピレンホモポリマー(H-HMS-PP)であることができ、後者が好ましい。
【0021】
本発明の目的において、「プロピレンホモポリマー」という表現は、プロピレン単位から実質的になるポリプロピレン、すなわち、少なくとも97mol.%の、好ましくは少なくとも98mol.%の、より好ましくは少なくとも99mol.%の、最も好ましくは少なくとも99.8mol.%のプロピレン単位からなるポリプロピレンを意味する。好ましい態様において、プロピレン単位のみが上記プロピレンホモポリマー中に検出可能である。
【0022】
高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)が高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)である場合には、それは、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えば、エチレン及び/又はC~C12α-オレフィン、特に、エチレン及び/又はC~C10α-オレフィン、例えば1-ブテン及び/又は1-ヘキセン等のコモノマーを有する。好ましくは、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)は、エチレン、1-ブテン及び1-ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特にこれらのモノマーからなる。より具体的には、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)は、プロピレンとは別に、エチレン及び/又は1-ブテンに由来する単位を有する。好ましい態様において、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)は、エチレン及びプロピレンに由来する単位のみからなる。高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)中のコモノマー含量は、好ましくは0.2mol.%より多く、10.0mol.%以下の範囲内、なおより好ましくは0.5mol.%より多く、7.0mol.%以下の範囲内である。
【0023】
この点に関し、高溶融強度プロピレンホモポリマー(H-HMS-PP)又は高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)である高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)について定義した上記コモノマーとは異なる不飽和モノマーをさらに有してよいことに留意されたい。換言すれば、高溶融強度プロピレンホモポリマー(H-HMS-PP)又は高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)は、不飽和単位、例えば、以下に詳細に定義する二官能性不飽和モノマー(bifunctionally unsaturated monomer)及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマー(multifunctionally unsaturated low molecular weight polymer)を有してよく、これらは、プロピレン、エチレン及びその他のC~C12α-オレフィンとは異なる。従って、ホモポリマー及びコポリマーの定義は、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)に関しては、事実上、未修飾ポリプロピレン、すなわち、以下に詳細に定義する化学的修飾により溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)を得るために使用される、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)であるポリプロピレン(PP)を意味する。
【0024】
従って、好ましい態様の1つにおいて、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、
(a) それが高溶融強度プロピレンホモポリマー(H-HMS-PP)である場合には、
(i) プロピレン;及び、
(ii) 二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマー;
に由来する単位;
又は、
(b) それが高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)である場合には、
(i) プロピレン;
(ii) エチレン及び/又はC~C12α-オレフィン、例えば、1-ブテン及び/又は1-ヘキセン、好ましくはエチレン;及び、
(iii) 二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマー;
に由来する単位;
を有する。
【0025】
上記の「二官能性不飽和」又は「多官能性不飽和」は、好ましくは、例えば、ジビニルベンゼン又はシクロペンタジエン又はポリブタジエンにおけるような、2又は3以上の非芳香族性二重結合(non-aromatic double bond)の存在を意味する。(好ましくはフリーラジカルの補助により)重合可能なかかる二又は多官能性不飽和化合物のみが使用される(下記を参照されたい。)。上記二又は多官能性不飽和化合物中の不飽和部位は、それらの化学的に結合した状態において、実際には「不飽和」ではない。なぜならば、上記二重結合は、前記未修飾ポリプロピレンの、すなわちポリプロピレン(PP)の、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)のポリマー鎖への共有結合のためにそれぞれ使用されるからである。
【0026】
上記二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマー、好ましくは数平均分子量(Mn)≦10000g/molを有し、1及び/又は2種以上の不飽和モノマーから合成された多官能性不飽和低分子量ポリマーの、前記未修飾ポリプロピレンとの、すなわちポリプロピレン(PP)との、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)との反応は、熱的フリーラジカル形成剤(thermally free radical forming agent)、例えば熱分解性過酸化物(thermally decomposable peroxide)等の分解性フリーラジカル形成剤(decomposing free radical-forming agent)の存在下で行われる。
【0027】
上記二官能性不飽和モノマーは、
- ジビニルアニリン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン、ジビニルペンタン及びジビニルプロパン等のジビニル化合物;
- アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸アリルメチル及びアリルビニルエーテル等のアリル化合物;
- 1,3-ブタジエン、クロロプレン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、ヘプタジエン、ヘキサジエン、イソプレンおよび1,4-ペンタジエン等のジエン;
- 芳香族及び/又は脂肪族ビス(マレイミド)ビス(シトラコンイミド)並びにこれらの不飽和モノマーの混合物;
であってよい。
【0028】
特に好ましい二官能性不飽和モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン及びジビニルベンゼンである。
【0029】
上記多官能性不飽和低分子量ポリマー、好ましくは数平均分子量(Mn)≦10000g/molである多官能性不飽和低分子量ポリマーは、1又は2種以上の不飽和モノマーから合成されてよい。
【0030】
かかる低分子量ポリマーの例は、
- ポリブタジエン、特に、ポリマー鎖中の異なる微細構造、すなわち1,4-シス(cis)、1,4-トランス(trans)及び1,2-(ビニル)が主として1,2-(ビニル)配置であるもの;
- ポリマー鎖中に1,2-(ビニル)を有する、ブタジエンとスチレンのコポリマー;
である。
【0031】
好ましい低分子量ポリマーは、ポリブタジエン、特に、50.0重量%を超えるブタジエンが1,2-(ビニル)配置にあるポリブタジエンである。
【0032】
高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、1種より多くの二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーを有してよい。なおより好ましくは、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)中における二官能性不飽和モノマー及び多官能性不飽和低分子量ポリマーの合計量は、当該高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)に対して0.01~10.0重量%である。
【0033】
好ましい態様において、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は添加剤(A)を含まない。従って、本発明のポリプロピレン組成物が添加剤(A)を含む場合には、これらの添加剤(A)は、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の製造中において、上記ポリプロピレン組成物中には導入されない。
【0034】
さらに、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、好ましくは、通常、1.00重量%未満の低いゲル含量を有する。好ましくは、ゲル含量は、0.80重量%未満、より好ましくは0.50重量%未満である。
【0035】
上記のように、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、ポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)を、熱分解性ラジカル形成剤で処理することにより得てよい。しかしながら、かかる場合には、ポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(PP)が分解するリスクが高く、これは不利益となる。従って、化学的修飾は、二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーを、化学結合された架橋単位として追加的に使用することにより行うことが好ましい。高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)を得るための適切な方法は、例えば、EP0787750、EP0879830A1及びEP0890612A2に開示されている。すべての文献が、参照により本明細書に取り込まれる。これにより、熱分解性ラジカル形成剤の、好ましくは過酸化物の量は、好ましくは、ポリプロピレン(PP)の量に対して0.05~3.00重量%の範囲内である。通常、熱分解性ラジカル形成剤は、二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーとともに、ポリプロピレン(PP)に、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)に加えられる。しかしながら、最初に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーをポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)に加え、その後に熱分解性ラジカル形成剤を加えるか、又は、逆に、最初に熱分解性ラジカル形成剤をポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)に加え、その後に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーを加えることも可能であるが、好ましさでは劣る。
【0036】
高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の製造に使用される二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーに関しては、上記の項が参照される。
【0037】
上記のように、二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーは、熱分解性フリーラジカル形成剤の存在下で使用されることが好ましい。
【0038】
過酸化物が好ましい熱分解性フリーラジカル形成剤である。より好ましくは、熱分解性フリーラジカル形成剤は、アシルペルオキシド、アルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルエステル(perester)及びペルオキシカーボネート(peroxycarbonate)からなる群より選択される。
【0039】
下記の過酸化物が特に好ましい:
【0040】
アシルペルオキシド:ベンゾイルペルオキシド、4-クロロベンゾイルペルオキシド、3-メトキシベンゾイルペルオキシド及び/又はメチルベンゾイルペルオキシド。
【0041】
アルキルペルオキシド:アリルt-ブチルペルオキシド、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシブタン)、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ジイソプロピルアミノメチル-t-アミルペルオキシド、ジメチルアミノメチル-t-アミルペルオキシド、ジエチルアミノメチル-t-ブチルペルオキシド、ジメチルアミノメチル-t-ブチルペルオキシド、1,1-ジ-(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、t-アミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシド及び/又は1-ヒドロキシブチル n-ブチルペルオキシド。
【0042】
ペルエステル及びペルオキシカーボネート:ブチルペルアセテート、クミルペルアセテート、クミルペルプロピオネート、シクロヘキシルペルアセテート、ジ-t-ブチルペルアジペート、ジ-t-ブチルペルアゼレート、ジ-t-ブチルペルグルタレート、ジ-t-ブチルペルタレート(di-t-butyl perthalate)、ジ-t-ブチルペルセバケート、4-ニトロクミルペルプロピオネート、1-フェニルエチルペルベンゾエート、フェニルエチルニトロ-ペルベンゾエート、t-ブチルビシクロ-(2,2,1)ヘプタンペルカルボキシレート、t-ブチル-4-カルボメトキシペルブチレート、t-ブチルシクロブタンペルカルボキシレート、t-ブチルシクロヘキシルペルオキシカルボキシレート、t-ブチルシクロペンチルペルカルボキシレート、t-ブチルシクロプロパンペルカルボキシレート、t-ブチルジメチルペルシンナメート、t-ブチル-2-(2,2-ジフェニルビニル)ペルベンゾエート、t-ブチル-4-メトキシペルベンゾエート、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルカルボキシシクロヘキサン、t-ブチルペルナフトエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルトルエート、t-ブチル-1-フェニルシクロプロピルペルカルボキシレート、t-ブチル-2-プロピルペルペンテン-2-オエート、t-ブチル-1-メチルシクロプロピルペルカルボキシレート、t-ブチル-4-ニトロフェニルペルアセテート、t-ブチルニトロフェニルペルオキシカルバメート、t-ブチル-N-スクシイミドペルカルボキシレート、t-ブチルペルクロトネート、t-ブチル過マレイン酸、t-ブチルペルメタクリレート、t-ブチルペルオクトエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルイソブチレート、t-ブチルペルアクリレート及び/又はt-ブチルペルプロピオネート。
【0043】
上記のこれらのフリーラジカル形成剤の混合物も考慮に入れられる。
【0044】
適切なHMS-PPは、Borealis AGより市販のWB140HMS(商標)である。
【0045】
ポリプロピレン(PP)
上記のように、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、ポリプロピレン(PP)を、熱分解性フリーラジカル形成剤、及び、任意で二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させることにより得られる修飾ポリプロピレンである。ポリプロピレン(PP)は、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)である。
【0046】
ポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)は、ISO 1133に従って測定された、0.1~45.0g/10minの、例えば0.1~40.0g/10min又は0.1~35.0g/10minの、より好ましくは0.1~30.0g/10minの、なおより好ましくは0.1~28.0g/10minの、いっそうより好ましくは0.1~25.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有することが好ましい。
【0047】
高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、その製造に使用されるポリプロピレン(PP)と、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の骨格が側鎖を含む点で異なる。これに対し、出発生成物、すなわち好ましい直鎖ポリプロピレン(l-PP)を有するポリプロピレン(PP)は、側鎖を含まないか又はほとんど含まない。側鎖はポリプロピレンのレオロジーに大きな影響を有する。従って、出発生成物、すなわちポリプロピレン(PP)、及び、得られる高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、応力下におけるその流動挙動により明確に区別することができる。
【0048】
さらに、上記のように、ポリプロピレン(PP)は好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)である。同じことが以下に詳細に記述するポリプロピレン(PP’)に当てはまり、これもまた好ましい態様において直鎖ポリプロピレン(l-PP’)である。従って、本発明を通じて、「直鎖ポリプロピレン」という用語は、直鎖ポリプロピレンが分岐構造を全く又はほとんど示さないことを示す。分岐がないことにより、直鎖ポリプロピレン、すなわち直鎖ポリプロピレン(l-PP)及び直鎖ポリプロピレン(l-PP’)は、好ましくは、低いv30溶融伸展性及び/又は低いF30溶融強度を特徴とする。
【0049】
従って、直鎖ポリプロピレン(l-PP)は、
(a) 30.0cN未満の、好ましくは27.0cN未満の、より好ましくは1.0cN以上、30.0cN未満の範囲内の、なおより好ましくは1.5cN以上、30.0cN未満の範囲内の、なおより好ましくは2.0cN以上、27.0cN未満の範囲内の、いっそうなおより好ましくは2.5cN以上、27.0cN未満の範囲内のF30溶融強度;
及び、
(b) 220mm/s未満の、好ましくは210mm/s未満の、より好ましくは80~200mm/sの範囲内の、最も好ましくは100~200mm/sの範囲内のv30溶融伸展性;
を有することが好ましい。
【0050】
換言すれば、直鎖ポリプロピレン(l-PP)は、30.0cN未満のF30溶融強度及び220mm/s未満のv30溶融伸展性、好ましくは27.0cN未満のF30溶融強度及び210mm/s未満のv30溶融伸展性、より好ましくは1.0cN以上、30.0cN未満の範囲内のF30溶融強度及び80~200mm/sの範囲内のv30溶融伸展性、なおより好ましくは1.5cN以上、30.0cN未満の範囲内のF30溶融強度及び100~200mm/sの範囲内のv30溶融伸展性、なおいっそうより好ましくは2.0cN以上、27.0cN未満の範囲内のF30溶融強度及び100~200mm/sの範囲内のv30溶融伸展性、例えば2.5cN以上、27.0cN未満の範囲内のF30溶融強度を有することが好ましい。
【0051】
従って、特定の態様の1つにおいて、直鎖ポリプロピレン(l-PP)は、
(a) ISO 1133に従って測定された、0.1~45.0g/10min、例えば0.1~40.0g/10min又は0.1~35.0g/10minの、より好ましくは0.1~30.0g/10minの、なおより好ましくは0.1~28.0g/10minの、なおより好ましくは0.1~25.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃);及び、
(b) 30.0cN未満の、好ましくは27.0cN未満の、より好ましくは1.0cN以上、30.0cN未満の範囲内の、なおより好ましくは1.5cN以上、30.0cN未満の範囲内の、なおより好ましくは2.0cN以上、27.0cN未満の範囲内の、なおいっそうより好ましくは2.5cN以上、27.0cN未満の範囲内のF30溶融強度;及び、
(c) 220mm/s未満の、好ましくは210mm/s未満の、より好ましくは80~200mm/sの範囲内の、最も好ましくは100~200mm/sの範囲内のv30溶融伸展性;
を有する。
【0052】
従って、特定の態様の1つにおいて、ポリプロピレン(PP)は、0.1~45.0g/10minのメルトフローレートMFR(230℃)、30.0cN未満のF30溶融強度及び220mm/s未満のv30溶融伸展性、好ましくは、0.1~40.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、30.0cN未満のF30溶融強度及び210mm/s未満のv30溶融伸展性、より好ましくは、0.1~35.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、1.0cN以上、30.0cN未満の範囲内のF30溶融強度及び80~200mm/sの範囲内のv30溶融伸展性、なおより好ましくは、0.1~30.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、1.5cN以上、30.0cN未満の範囲内のF30溶融強度及び100~200mm/sの範囲内のv30溶融伸展性、なおいっそうより好ましくは、0.1~28.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、2.0cN以上、27.0cN未満の範囲内のF30溶融強度及び100~200mm/sの範囲内のv30溶融伸展性、例えば、0.1~25.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、2.5cN以上、27.0cN未満の範囲内のF30溶融強度及び100~200mm/sの範囲内のv30溶融伸展性を有する直鎖ポリプロピレン(l-PP)である。
【0053】
好ましくは、ポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)は、少なくとも140℃、より好ましくは少なくとも150℃、なおより好ましくは少なくとも158℃の融点を有する。
【0054】
ポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)は、例えば、シングルサイト又はチーグラー ナッタ(Ziegler Natta)触媒を使用することにより、既知の方法で製造することができる。ポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)は、プロピレンホモポリマー(H-PP)、好ましくは直鎖プロピレンホモポリマー(l-H-PP)、又は、プロピレンコポリマー(R-PP)、好ましくは直鎖プロピレンコポリマー(l-R-PP)であることができる。コモノマー含量及びコモノマーのタイプに関しては、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)について先に記載した情報が参照される。好ましくは、ポリプロピレン(PP)は直鎖ポリプロピレン(l-PP)である。なおより好ましくは、ポリプロピレン(PP)は直鎖プロピレンホモポリマー(l-H-PP)である。従って、メルトフローレートMFR(230℃)、融点、F30溶融強度、v30溶融伸展性並びに粒子サイズ及び粒子サイズ分布についてそれぞれ記載したすべての情報が、特に直鎖プロピレンホモポリマー(l-H-PP)に当てはまる。
【0055】
好ましい態様において、ポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)は添加剤(A)を含まない。従って、本発明のポリプロピレン組成物が添加剤(A)を含む場合には、これらの添加剤(A)は、好ましくは、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の製造中において、上記ポリプロピレン組成物中には導入されない。
【0056】
再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)
上記ポリプロピレン組成物は、再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)を有することが好ましい。すなわち、上記ポリプロピレン組成物は、再生ポリプロピレン(R-PP)と直鎖ポリプロピレン(L-PP)の混合物を有してよい。あるいは、上記ポリプロピレン組成物は、再生ポリプロピレン(R-PP)又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)を有する。
【0057】
好ましくは、上記ポリプロピレン組成物は、再生ポリプロピレン(R-PP)及び直鎖ポリプロピレン(L-PP)、すなわち再生ポリプロピレン(R-PP)と直鎖ポリプロピレン(L-PP)の混合物を有する。
【0058】
再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、好ましくは、下記の特性の少なくとも1つを有する:
a) 230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された3~25g/10minのMFR;
b) ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度。
【0059】
一態様において、再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、又は、230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って測定された3~25g/10minのMFRを少なくとも有する。あるいは、再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、及び、230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って測定された3~25g/10minのMFRを少なくとも有する。
【0060】
再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 1133に従って測定された、4~20g/10minの範囲内の、より好ましくは5~15g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を好ましくは有する。
【0061】
好ましくは、再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された、20.0cN未満の、より好ましくは1.0cN以上、20.0cN未満の範囲内のF30溶融強度を好ましくは有する。
【0062】
例えば、再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、好ましくは、ISO 16790:2005に従って決定された、20.0cN未満のF30溶融強度、及び、ISO 1133に従って測定された、4~20g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、より好ましくは、ISO 16790:2005に従って決定された、1.0cN以上、20.0cN未満の範囲内のF30溶融強度、及び、ISO 1133に従って測定された5~15g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0063】
例えば、再生ポリプロピレン(R-PP)は、下記の特性の少なくとも1つを有する:
a) 230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、3~25g/10minのMFR;
b) ISO 16790:2005に従って決定された、25.0cN未満のF30溶融強度;
c) ISO 16790:2005に従って決定された、200mm/sより大きいv30溶融伸展性。
【0064】
例えば、再生ポリプロピレン(R-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された、25.0cN未満のF30溶融強度、及び/又は、ISO 16790:2005に従って決定された、200mm/sより大きいv30溶融伸展性を少なくとも有し、より好ましくは、再生ポリプロピレン(R-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された、25.0cN未満のF30溶融強度、及び、ISO 16790:2005に従って決定された、200mm/sより大きいv30溶融伸展性を少なくとも有し、なおより好ましくは、再生ポリプロピレン(R-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された、25.0cN未満のF30溶融強度、ISO 16790:2005に従って決定された、200mm/sより大きいv30溶融伸展性、及び、230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、3~25g/10minのMFRを少なくとも有する。
【0065】
好ましくは、再生ポリプロピレン(R-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された、205mm/sより大きく、より好ましくは205mm/sより大きく、290mm/s以下のv30溶融伸展性を有する。
【0066】
一態様において、再生ポリプロピレン(R-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された20.0cN未満のF30溶融強度、及び、ISO 16790:2005に従って決定された205mm/sより大きいv30溶融伸展性、及び、ISO 1133に従って測定された4~20g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、より好ましくは、ISO 16790:2005に従って決定された1.0cN以上、20.0cN未満の範囲内のF30溶融強度、及び、ISO 16790:2005に従って決定された205mm/sより大きく、290mm/s以下のv30溶融伸展性、及び、ISO 1133に従って測定された5~15g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0067】
あるいは、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、下記の特性の少なくとも1つを有する:
a) 230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、3~25g/10minのMFR;
b) ISO 16790:2005に従って決定された、25.0cN未満のF30溶融強度;
c) ISO 16790:2005に従って決定された、200mm/sより大きいv30溶融伸展性。
【0068】
一態様において、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、及び/又は、ISO 16790:2005に従って決定された200mm/s未満のv30溶融伸展性を少なくとも有し、より好ましくは、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、及び、ISO 16790:2005に従って決定された200mm/s未満のv30溶融伸展性を少なくとも有し、なおより好ましくは、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、ISO 16790:2005に従って決定された200mm/s未満のv30溶融伸展性、及び、230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、3~25g/10minのMFRを少なくとも有する。
【0069】
好ましくは、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された、190mm/s未満の、より好ましくは100mm/s以上、190mm/s未満の範囲内の、最も好ましくは120mm/s以上、190mm/s未満の範囲内のv30溶融伸展性を有する。
【0070】
例えば、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、ISO 16790:2005に従って決定された190mm/s未満のv30溶融伸展性、及び、230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、3~25g/10minのMFRを少なくとも有する。好ましくは、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、ISO 16790:2005に従って決定された100mm/s以上、190mm/s未満の範囲内のv30溶融伸展性、及び、230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、3~25g/10minのMFRを少なくとも有する。より好ましくは、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、ISO 16790:2005に従って決定された120mm/s以上、190mm/s未満の範囲内のv30溶融伸展性、及び、230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、3~25g/10minのMFRを少なくとも有する。
【0071】
一態様において、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は、ISO 16790:2005に従って決定された20.0cN未満のF30溶融強度、及び、ISO 16790:2005に従って決定された100mm/s以上、190mm/s未満の範囲内のv30溶融伸展性、及び、ISO 1133に従って測定された4~20g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、より好ましくは、ISO 16790:2005に従って決定された1.0cN以上、20.0cN未満の範囲内のF30溶融強度、及び、ISO 16790:2005に従って決定された120mm/s以上、190mm/s未満のv30溶融伸展性、及び、ISO 1133に従って測定された5~15g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0072】
あるいは、再生ポリプロピレン(R-PP)及び直鎖ポリプロピレン(L-PP)を有する上記混合物は、好ましくは、下記の特性の少なくとも1つを有する:
a) 230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、3~25g/10minのMFR;
b) ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度;
c) ISO 16790:2005に従って決定された、100mm/sより大きく、好ましくは100より大きく、290mm/s以下の範囲内のv30溶融伸展性。
【0073】
一態様において、再生ポリプロピレン(R-PP)及び直鎖ポリプロピレン(L-PP)を有する上記混合物は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、及び/又は、ISO 16790:2005に従って決定された100mm/sより大きいv30溶融伸展性を少なくとも有し、より好ましくは、再生ポリプロピレン(R-PP)及び直鎖ポリプロピレン(L-PP)を有する上記混合物は、ISO 16790:2005に従って決定された25cN未満のF30溶融強度、及び、ISO 16790:2005に従って決定された100mm/sより大きいv30溶融伸展性を少なくとも有し、なおより好ましくは、再生ポリプロピレン(R-PP)及び直鎖ポリプロピレン(L-PP)を有する上記混合物は、ISO 16790:2005に従って決定された25.0cN未満のF30溶融強度、ISO 16790:2005に従って決定された100mm/sより大きいv30溶融伸展性、及び、230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、3~25g/10minのMFRを少なくとも有する。
【0074】
例えば、再生ポリプロピレン(R-PP)及び直鎖ポリプロピレン(L-PP)を有する上記混合物は、ISO 16790:2005に従って決定された20.0cN未満のF30溶融強度、及び、ISO 16790:2005に従って決定された100mm/sより大きいv30溶融伸展性、及び、ISO 1133に従って測定された4~20g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、より好ましくは、ISO 16790:2005に従って決定された1.0cN以上、20.0cN未満の範囲内のF30溶融強度、及び、ISO 16790:2005に従って決定された100mm/sより大きく、290mm/s以下の範囲内のv30溶融伸展性、及び、ISO 1133に従って測定された5~15g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0075】
再生ポリプロピレン(R-PP) ポリプロピレン(L-PP)は、再生ポリプロピレン(Rec-PP)であってよく、及び/又は、直鎖ポリプロピレン(L-PP)は直鎖ポリプロピレン(Lin-PP)であってよい。
【0076】
直鎖ポリプロピレン(Lin-PP)は、例えば、シングルサイト又はチーグラー ナッタ触媒を使用することにより、既知の方法で製造することができる。直鎖ポリプロピレン(Lin-PP)は、直鎖プロピレンホモポリマー(Lin-H-PP)又は直鎖プロピレンランダムコポリマー(Lin-Ran-PP)であることができる。
【0077】
直鎖プロピレンランダムコポリマー(Lin-Ran-PP)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えば、エチレン及び/又はC~C12α-オレフィン、特に、エチレン及び/又はC~C10α-オレフィン、例えば1-ブテン及び/又は1-ヘキセン等のコモノマーを有する。好ましくは、直鎖プロピレンランダムコポリマー(Lin-Ran-PP)は、エチレン、1-ブテン及び1-ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特にこれらのモノマーからなる。より具体的には、直鎖プロピレンランダムコポリマー(Lin-Ran-PP)は、プロピレンとは別に、エチレン及び/又は1-ブテンに由来する単位を有する。好ましい態様において、直鎖プロピレンランダムコポリマー(Lin-Ran-PP)は、エチレン及びプロピレンに由来する単位のみからなる。
【0078】
直鎖プロピレンランダムコポリマー(Lin-Ran-PP)中のコモノマー含量は、好ましくは、0.2mol.%より大きく、10.0mol.%以下の範囲内、なおより好ましくは0.5mol.%より大きく、7.0mol.%以下の範囲内である。
【0079】
好ましくは、再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又はポリプロピレン(L-PP)は、少なくとも50重量%の再生高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)、より好ましくは少なくとも75重量%の再生高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)、最も好ましくは少なくとも85重量%の再生高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)を有する再生ポリプロピレン(Rec-PP)である。再生ポリプロピレン(Rec-PP)の残部は、例えば、カップ製造等で使用されるカバー層(cover layers)に由来してよい。
【0080】
核形成剤(NA)
ポリプロピレン組成物(PC)は、1又は2種以上の、好ましくは1種の核形成剤をさらに有する。
【0081】
一般に、ポリプロピレン組成物(PC)は、製造すべき製品に通常使用され、当業者に既知のいかなる核形成剤をも有することができることが好ましい。
【0082】
例えば、適切な核形成剤としては、リン系核形成剤、例えば、モノ-、ビス-若しくはテトラ-フェニルホスフェート、又は、下式で表されるリン酸エステル金属塩の群より選択される有機アルファ-核形成剤が挙げられる。
【0083】
【化1】
【0084】
(式中、R1は、酸素、硫黄又は1~10個の炭素原子の炭化水素基であり;R2及びR3のそれぞれは、水素又は炭化水素又は1~10個の炭素原子の炭化水素基であり;R2及びR3は、互いに同じであっても異なっていてもよく、2つのR2、2つのR3、又は、R2とR3は、結合して、一緒に環を形成してよく、Mは、1価~3価の金属原子であり;nは1~3の整数であり、mは0又は1であるが、ただしn>mである。)。
【0085】
上記の式により表されるアルファ核形成剤の好ましい例としては、下記のものが挙げられる:
ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチル-フェニル)ホスフェート、
ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート、
リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスフェート、
リチウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスフェート、
ナトリウム-2,2’-エチリ-デン-ビス(4-i-プロピル-6-tert.-ブチルフェニル)ホスフェート、
リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert.-ブチルフェニル)ホスフェート、
リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert.-ブチルフェニル)ホスフェート、
カルシウム-ビス[2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert.-ブチル-フェニル)-ホスフェート]、
カルシウム-ビス[2,2’-チオビス(4-エチル-6-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート]、
カルシウム-ビス[2,2’-チオビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスフェート]、
マグネシウム-ビス[2,2’-チオビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスフェート]、
マグネシウム-ビス[2,2’-チオビス(4-t-オクチルフェニル)ホスフェート]、
ナトリウム-2,2’-ブチリデン-ビス(4,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、
ナトリウム-2,2’-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチル-フェニル)-ホスフェート、
ナトリウム-2,2’-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジメチル-フェニル)-ホスフェート、
ナトリウム-2,2’-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート、
カルシウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート]、
マグネシウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート]、
バリウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート]、
ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート、
ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert.-ブチルフェニル)ホスフェート、
ナトリウム(4,4’-ジメチル-5,6’-ジ-tert.-ブチル-2,2’-ビフェニル)ホスフェート、
カルシウム-ビス-[(4,4’-ジメチル-6,6’-ジ-tert.-ブチル-2,2’-ビフェニル)ホスフェート]、
ナトリウム-2,2’-エチリ-デン-ビス(4-m-ブチル-6-tert.-ブチル-フェニル)ホスフェート、
ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-メチルフェニル)-ホスフェート、
ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-エチル-フェニル)ホスフェート、
カリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート、
カルシウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート]、
マグネシウム-ビス[2,2’-エチリ-デン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート]、
バリウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス-(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート]、
アルミニウム-ヒドロキシ-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチル-フェニル)ホスフェート]、
アルミニウム-トリス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert.-ブチルフェニル)-ホスフェート]。
【0086】
リン系核形成剤の第2の群としては、例えば、アルミニウム-ヒドロキシ-ビス[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ-[d,g]-ジオキサ-ホスホシン-6-オキシダート](aluminium-hydroxy-bis[2,4,8,10-tetrakis(1,1-dimethylethyl)-6-hydroxy-12H-dibenzo-[d,g]-dioxa-phoshocin-6-oxidato])及びそのLi-ミリステート(Li-myristate)又はLi-ステアレート(Li-stearate)とのブレンドが挙げられる。
【0087】
また、ソルビトール系核形成剤、例えば、任意に置換されたジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4ジ(エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール等)又は松ロジン(pine rosin)を、核形成剤として使用することができる。
【0088】
さらなる適切なアルファ-核形成剤は、ビニルシクロアルカンポリマー及びビニルアルカンポリマーからなる群より選択されるポリマー性核形成剤である。これらのポリマー性核形成剤による核形成は、触媒を、例えばビニルシクロヘキサン(VCH)等のモノマーとプレ重合させる特別な反応器技術(special reactor technique)により、又は、プロピレンポリマーをビニル(シクロ)アルカンポリマーとブレンドすることにより行われる。これらの方法は、例えばEP0316187A2及びWO99/24479中に非常に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に取り込まれる。
【0089】
本発明のポリオレフィン組成物のための適切なアルファ-核形成剤は、加えて、例えばMacromolecules 2005、38、3688~3695中に記載される核形成剤であり、その開示は参照により本明細書に取り込まれる。
【0090】
ADK NA-11(メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩)及びADK NA-21(アルミニウム ヒドロキシ-ビス[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ-[d,g]-ジオキサ-ホスホシン-6-オキシダート]を含む。)等の核形成剤もまた適切であり、Asahi Denka Kokaiより市販されている。Milliken&Companyから入手できるMillad 3988(3,4-ジメチルベンジリデンソルビトール)、Millad 3905及びMillad 3940は、本発明で使用できる核形成剤の他の例である。
【0091】
本発明の上記組成物に使用できるさらなる市販のアルファ-核形成剤は、例えば、Ciba Speciality ChemicalsのIrgaclear XT 386(N-[3,5-ビス-(2,2-ジメチル-プロピオニルアミノ)-フェニル]-2,2-ジメチルプロピオンアミド)、Milliken&CompanyのHyperform HPN-68L及びHyperform HPN-20Eである。
【0092】
ノニトール系核形成剤、例えば、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-((4-プロピルフェニル)メチレン)ノニトール(CAS番号882073-43-0、例えば、Millad NX8000、供給元Milliken)もまた適切である。
【0093】
さらなる適切な核形成剤は、Clariantより商品名「Hydrocerol」で入手可能な化学発泡剤である。
【0094】
タルクはさらなる適切な核形成剤である。
【0095】
タルクが特に好ましい。好ましい態様において、タルクは、ポリプロピレン組成物(PC)中に存在する唯一の核形成剤である。
【0096】
核形成剤、例えばタルクの粒子サイズd50は、1μm~30μmの範囲内、好ましくは2μm~25μmの範囲内、より好ましくは5μm~20μmの範囲内、最も好ましくは5μm~15μmの範囲内である。
【0097】
添加剤(A)
添加剤(A)は、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)及びその適用の技術分野で有用な任意の添加物であることができる。従って、本発明のポリプロピレン組成物において、すなわち添加剤混合物(AM)の形態で用いられる添加剤(A)としては、抗酸化剤(例えば、立体障害フェノール、ホスファイト/ホスホナイト、硫黄含有抗酸化剤、アルキルラジカルスカベンジャー、芳香族アミン、ヒンダードアミン安定剤、又はこれらのブレンド)、金属不活性化剤(例えばIrganox MD1024)又はUV安定剤(例えばヒンダードアミン光安定剤)等の安定剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の典型的な添加剤は、静電気防止剤又は防曇剤等のモディファイア(例えば、エトキシ化アミン及びアミド、又はグリセロールエステル)、酸スカベンジャー、付着剤(例えばポリイソブテン)、潤滑剤及び樹脂(イオノマーワックス、PE-及びエチレンコポリマーワックス、フィッシャー-トロプシュワックス、モンタン系ワックス、フルオロ系化合物、又はパラフィンワックス)並びにスリップおよびブロッキング防止剤(例えば、Ca-ステアレート、エルカミド、オレアミド、タルク天然シリカ及び合成シリカ、又はゼオライト)である。好ましくは、添加剤(A)は、抗酸化剤(例えば、立体障害フェノール、ホスファイト/ホスホナイト、硫黄含有抗酸化剤、アルキルラジカルスカベンジャー、芳香族アミン、ヒンダードアミン安定剤、又はこれらのブレンド)、金属不活性化剤(例えばIrganox MD1024)、UV安定剤(例えばヒンダードアミン光安定剤)、静電気防止剤又は防曇剤(例えば、エトキシ化アミン及びアミド、又はグリセロールエステル)、酸スカベンジャー、付着剤(例えばポリイソブテン)、潤滑剤及び樹脂(イオノマーワックス、PE-およびエチレンコポリマーワックス、フィッシャー-トロプシュワックス、モンタン系ワックス、フルオロ系化合物、又はパラフィンワックス)、スリップ剤(例えばCa-ステアレート)、ブロッキング防止剤(例えば、エルカミド、オレアミド、タルク天然シリカ及び合成シリカ、又はゼオライト)、又はこれらの混合物からなる群より選択される。
【0098】
好ましい添加剤は、例えばCa-ステアレート等のスリップ剤である。
【0099】
先に概説したように、添加剤(A)は核形成剤を含まない。
【0100】
通常、添加剤(A)の総量は、上記ポリプロピレン組成物の総重量に対して、15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、例えば、0.1~10重量%の、好ましくは0.1~5重量%の、より好ましくは0.2~1重量%の範囲内である。
【0101】
ポリプロピレン組成物
上記ポリプロピレン組成物は:
- 10.0~50.0重量%、好ましくは15.0~40.0重量%、より好ましくは20.0~30.0重量%の再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP);
- 40.0~89.95重量%、好ましくは57.5~84.95重量%、より好ましくは69.0~79.9重量%の高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)であって、25.0cNより大きいF30溶融強度及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性を有し、F30溶融強度及びv30溶融伸展性がISO 16790:2005に従って決定される、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP);及び、
- 0.05~10.0重量%、好ましくは1.0~8.0重量%、より好ましくは4.0~6.0重量%、例えば5.0~6.0重量%の核形成剤(NA);
を有する。
【0102】
別段の記載がない限り、すべての量は、上記ポリプロピレン組成物の総重量に基づくことが好ましい。
【0103】
上記ポリプロピレン組成物中に存在する再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)の総量は、10.0~50.0重量%、好ましくは15.0~40.0重量%、より好ましくは20.0~30.0重量%である。
【0104】
上記ポリプロピレン組成物中に存在する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)であって、25.0cNより大きいF30溶融強度及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性を有し、F30溶融強度及びv30溶融伸展性がISO 16790:2005に従って決定される高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の総量は、40.0~89.95重量%、好ましくは57.5~84.95重量%、より好ましくは69.0~79.9重量%である。
【0105】
上記ポリプロピレン組成物中に存在する核形成剤(NA)の総量は、0.05~10.0重量%、好ましくは1.0~8.0重量%、より好ましくは4.0~6.0重量%、例えば5.0~6.0重量%である。
【0106】
好ましい態様において、再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)以外の他のポリマーの総量は、上記ポリプロピレン組成物中に存在するポリマー材料の総重量に対して、5重量%を超えず、より好ましくは2重量%を超えず、なおより好ましくは1重量%を超えない。
【0107】
上記のように、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)が本発明のポリプロピレン組成物の主要部分である。従って、最終的なポリプロピレン組成物は、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)と類似のレオロジー挙動を示すことが好ましい。
【0108】
従って、上記ポリプロピレン組成物は、25.0cNより大きいF30溶融強度及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性を有し、好ましくは25.0cNより大きく、50.0cN以下のF30溶融強度及び205mm/sより大きく、300mm/s以下のv30溶融伸展性を好ましくは有するため、得られるポリプロピレン組成物に良好なせん断減粘特性を付与する。F30溶融強度及びv30溶融伸展性はISO 16790:2005に従って測定される。
【0109】
好ましい態様において、上記ポリプロピレン組成物は、
(a) 25.0cNより大きく、45.0cN以下の、好ましくは25.0cNより大きく、42.0cN以下の、最も好ましくは25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度;
及び、
(b) 210mm/sより大きく、300mm/s以下の、より好ましくは215~290mm/sの、なおより好ましくは220~270mm/s、最も好ましくは225~260mm/sのv30溶融伸展性;
を有する。
【0110】
特に好ましい態様において、上記ポリプロピレン組成物は、25.0cNより大きく、45.0cN以下のF30溶融強度及び215~290mm/sのv30溶融伸展性、例えば、25.0cNより大きく、42.0cN以下のF30溶融強度及び215~290mm/sのv30溶融伸展性、又は、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び220~270mm/sのv30溶融伸展性、又は、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び225~260mm/sのv30溶融伸展性を有する。
【0111】
さらに、上記ポリプロピレン組成物は、ISO 1133に従って測定された、15.0g/10min以下の、より好ましくは0.5~15.0g/10minの範囲内の、なおより好ましくは1.0~15.0g/10minの範囲内の、例えば1.5~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有することが好ましい。
【0112】
特に好ましい態様において、上記ポリプロピレン組成物は、ISO 1133に従って測定された、7.0g/10min以下の、好ましくは0.5~7.0g/10minの範囲内の、より好ましくは0.5~6.5g/10minの範囲内の、なおより好ましくは0.5~6.0g/10minの範囲内の、なおより好ましくは1.0~6.0g/10minの範囲内の、例えば1.5~5.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0113】
従って、特定の態様の1つにおいて、上記ポリプロピレン組成物は、
(a) 15.0g/10min以下の、より好ましくは0.5~15.0g/10minの範囲内の、なおより好ましくは1.0~15.0g/10minの範囲内の、例えば1.5~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃);
(b) 25.0cNより大きく、45.0cN以下の、好ましくは25.0cNより大きく、42.0cN以下の、最も好ましくは25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度;及び、
(c) 210mm/sより大きく、300mm/s以下の、より好ましくは215~290mm/sの、なおより好ましくは220~270mm/sの、最も好ましくは225~260mm/sのv30溶融伸展性;
を有する。
【0114】
この態様の特に好ましい変形において、上記ポリプロピレン組成物は、ISO 1133に従って測定された、7.0g/10min以下の、好ましくは0.5~7.0g/10minの範囲内の、より好ましくは0.5~6.5g/10minの範囲内の、なおより好ましくは0.5~6.0g/10minの範囲内の、いっそうより好ましくは1.0~6.0g/10minの範囲内の、例えば1.5~5.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0115】
従って、特定の態様において、上記ポリプロピレン組成物は、0.5~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、45.0cN以下のF30溶融強度及び215~290mm/sのv30溶融伸展性、例えば、1.0~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、42.0cN以下のF30溶融強度及び215~290mm/sのv30溶融伸展性、又は、1.0~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び220~270mm/sのv30溶融伸展性、又は、1.0~15.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)、25.0cNより大きく、40.0cN以下のF30溶融強度及び225~260mm/sのv30溶融伸展性を有する。
【0116】
この態様の特に好ましい変形において、上記ポリプロピレン組成物は、ISO 1133に従って測定された、7.0g/10min以下の、好ましくは0.5~7.0g/10minの範囲内の、より好ましくは0.5~6.5g/10minの範囲内の、なおより好ましくは0.5~6.0g/10minの範囲内の、なおより好ましくは1.0~6.0g/10minの範囲内の、例えば1.5~5.0g/10minの範囲内の、又は、例えば1.0~5.0g/10minの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0117】
発泡シート
本発明はさらに、本発明のポリプロピレン組成物から形成された発泡シートに関する。
【0118】
本発明の発泡シート(foam sheet)は、好ましくは、0.5~10mmの厚さ、及び/又は、150~250kg/mの、最も好ましくは175~225kg/mの密度を有する。従って、一態様において、本発明は、0.5~10mmの厚さ、及び/又は、100~300kg/m、より好ましくは150~250kg/m、最も好ましくは175~225kg/mの密度を有する発泡シートに関する。
【0119】
好ましくは、厚さは、0.5~7.5mm、より好ましくは0.5~5.0mm、特に好ましくは0.7~2.5mm、例えば0.7~1.1mmである。
【0120】
上記発泡シートは、好ましくは、光学顕微鏡で決定した、100~500μmの、より好ましくは125~400μmの、最も好ましくは170~320μmのセルサイズ直径を有する。
【0121】
上記発泡シートはさらに、その表面粗さを特徴とする。通常、表面粗さは、3.5μm未満、好ましくは2.5μm未満、最も好ましくは1.5μm未満である。
【0122】
上記発泡シートは、好ましくはカバー層(CL)で覆われている。
【0123】
カバー層(CL)は、好ましくは少なくとも0.85g/cmの密度を有する。
【0124】
好ましくは、カバー層(CL)は、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも65重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%の量のポリプロピレン(CL-PP)を有する。
【0125】
カバー層(CL)がポリプロピレン(CL-PP)を有する場合には、ポリプロピレン(CL-PP)は、230℃の温度及び2.16kgの荷重下でISO 1133に従って決定された、10~26g/10minのMFR2を好ましくは有する。
【0126】
上記カバー層は、最大で50重量%、好ましくは35重量%以下、最も好ましくは20重量%以下の1又は2種以上のフィラーを有してよい。フィラーという用語は、ポリオレフィン組成物中に均一に取り込まれることができる任意の鉱物フィラー(mineral filler)又は非鉱物フィラーを包含すること意味する。上記1又は2種以上のフィラーは、好ましくは、例えば、ガラス線維、タルク、炭素線維、チョーク(chalk)、クレイ(clay)、フリント(flint)、金属炭酸塩、マイカ(mica)、カオリン、ウォラストナイト、長石及びバライト(barytes)から選択される無機フィラーである。
【0127】
ポリプロピレン(CL-PP)は、好ましくは、ポリプロピレンのキャストフィルム、ポリプロピレンのインフレーションフィルム及び二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムからなる群より選択される。より好ましくは、ポリプロピレン(CL-PP)は二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムである。
【0128】
カバー層(CL)の厚さは、好ましくは100μmを超えず、より好ましくは5~40μm、最も好ましくは10~30μmである。
【0129】
上記カバー層は本発明の発泡シートに直接隣接してよい。
【0130】
接着層(adhesive layer)(AL)が、本発明の発泡シートとカバー層(CL)の間に存在してよい。
【0131】
かかる接着層(AL)が存在する場合には、接着層(AL)は、5:95~95:5、好ましくは5:95~50:50、より好ましくは5:95~30:70、最も好ましくは10:90~20:80のPE:PP重量比を有するポリエチレン-ポリプロピレンブレンド(PE-PP)を好ましくは有する。
【0132】
接着層(AL)が存在する場合、その厚さは、通常、カバー層(CL)よりも大きい。
【0133】
接着層(AL)が存在する場合、その厚さは、好ましくは120μmを超えず、より好ましくは20~80μm、なおより好ましくは30~70μm、最も好ましくは40~60μmである。
【0134】
しかしながら、好ましくは、上記発泡シートとカバー層(CL)は直接隣接する。すなわち、本発明の発泡シートとカバー層(CL)の間には接着層(AL)が存在しない。
【0135】
より好ましくは、上記発泡シートと上記カバー層以外のさらなる層は存在しない。
【0136】
物品
本発明はさらに、上記発泡シートを有する、好ましくは本発明のカバー層(CL)で被覆された上記発泡シートを有する物品に関する。
【0137】
上記物品は、容器、例えば、ボトル、カップ、缶、キャニスタ、ボウル又はトレイ;スリーブ、例えば容器のスリーブ;蓋、例えば容器の蓋;フィルム;ブランク;パッド;キャリア;チューブ;基材;パイプ;器;パネル、例えば構造パネル;ライナ、例えばトラックライナ;テープ;ロール又は形材であってよい。
【0138】
上記物品は好ましくは容器である。
【0139】
上記容器は、好ましくは、本発明のカバー層(CL)で被覆された発泡シートを有し、その場合、カバー層(CL)は上記容器の内側に位置する。内側とは液体が入れられる側である。
【0140】
上記容器は、例えば、ボトル、カップ、缶、キャニスタ、ボウル又はトレイであってよい。
【0141】
特に好ましい態様において、上記容器はカップであり、好ましくは、上記カップの本体は本発明の発泡シートを有し、より好ましくは本発明の発泡シートからなる。好ましくは、上記カップの本体は内側にカバー層(CL)を有する。
【0142】
本発明の発泡シートをカップ本体として用いることにより、例えば冷たい飲料や熱い飲料を入れた場合に、優れた断熱性が得られる。さらに、上記カバー層がカップの内側に位置することにより、カップの内側の液体に対して発泡シートの孔が封止されるため、カップ中への液体の吸収は最小限である。通常、カップにおいては、十分な印刷適性を確保するために、カップの外側にカバー層が配置される。しかしながら、本発明の発泡シート自体が良好な印刷適性を有するため、外側にそのための特別な層を設けることは不要となる。
【0143】
方法
先に概説したように、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、ポリプロピレン(PP)、好ましくは直鎖ポリプロピレン(l-PP)を用いることにより製造される。この方法は、ポリプロピレン(PP)を、熱分解性フリーラジカル形成剤、及び、任意で二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させることにより、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)を得る、工程(a)を少なくとも有する。
【0144】
本発明はさらに、下記の工程を有する方法に関する:
a)
- 10.0~50.0重量%、好ましくは15.0~40.0重量%、より好ましくは20.0~30.0重量%の再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP);
- 40~89.95重量%、好ましくは57.5~84.95重量%、より好ましくは69.0~79.9重量%の高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)であって、25.0cNより大きいF30溶融強度及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性を有し、F30溶融強度及びv30溶融伸展性がISO 16790:2005に従って決定される高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP);及び、
- 0.05~10重量%、好ましくは1.0~8.0重量%、より好ましくは4.0~6.0重量%、例えば5.0~6.0重量%の核形成剤(NA);
を有するポリプロピレン組成物を製造する工程であって、
再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)並びに核形成剤(NA)を、混合装置中で同時に又は順次混ぜ合わせる工程。
【0145】
工程a)において、上記ポリプロピレン組成物中に存在する再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)の総量は、10.0~50.0重量%、好ましくは15.0~40.0重量%、より好ましくは20.0~30.0重量%である。
【0146】
工程a)において、上記ポリプロピレン組成物中に存在する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)であって、25.0cNより大きいF30溶融強度及び205mm/sより大きいv30溶融伸展性を有し、F30溶融強度及びv30溶融伸展性がISO 16790:2005に従って決定される、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の総量は、40.0~89.95重量%、好ましくは57.5~84.95重量%、より好ましくは69.0~79.9重量%である。
【0147】
工程a)において、上記ポリプロピレン組成物中に存在する核形成剤(NA)の総量は、0.05~10.0重量%、好ましくは1.0~8.0重量%、より好ましくは4.0~6.0重量%、例えば5.0~6.0重量%である。
【0148】
さらに、本明細書で定義する添加剤(A)が工程a)において任意で存在してよい。
【0149】
上記方法は、好ましくは、工程a)の後に下記の工程b)をさらに有する:
b) 工程a)で得られたポリプロピレン組成物を発泡させる工程を有する、発泡物品を形成する工程、上記発泡物品は好ましくは発泡シートである。
【0150】
より好ましくは、上記方法は、工程b)の後に下記の工程c)をさらに有する:
c) 工程b)後に得られた発泡物品、好ましくは発泡シートからカップを形成する工程。
【0151】
好ましくは、再生ポリプロピレン(R-PP) ポリプロピレン(L-PP)は、再生ポリプロピレン(Rec-PP)であり、上記方法は、工程c)(存在する場合)又は工程b)の後に、下記の工程d)をさらに有する:
d) 工程b)後に存在するポリマー残部を用いて再生ポリプロピレン(Rec-PP)を形成する工程。
【0152】
好ましくは、押出機が上記プロピレン組成物の製造に使用され、より好ましくは、押出機は、運転方向に、供給口(FT)、第1混合ゾーン(MZ1)、任意で第2混合ゾーン(MZ2)、及び、ダイ(D)を有する。好ましくは、押出機は、二軸押出機等のスクリュー押出機である。従って、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)、核形成剤(NA)、再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)、並びに、任意で、核形成剤(NA)とは異なる添加剤(A)(存在する場合)は、供給口(FT)を介して押出機内にフィードされ、その際フィーダーが好ましくは使用され、次いで下流の第1混合ゾーン(MZ1)に送られる。好ましくは、当該第1混合ゾーン(MZ1)における剪断応力は、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)が溶融し、核形成剤(NA)、再生ポリプロピレン(R-PP)及び/又は直鎖ポリプロピレン(L-PP)、並びに、核形成剤(NA)とは異なる任意の添加剤(A)(存在する場合)との混合が開始される程度の大きさである。
【0153】
第1混合ゾーン(MZ1)の後、得られた生成物は、下流の第2混合ゾーン(MZ2)(存在する場合)に送られる。最後に、ポリプロピレン組成物はダイ(D)を介して排出される。
【0154】
第2混合ゾーンが存在する場合、第1混合ゾーン(MZ1)は第2混合ゾーン(MZ2)より長い。好ましくは、第2混合ゾーン(MZ2)に対する第1混合ゾーン(MZ1)の長さの比[mm(MZ1)/mm(MZ2)]は、少なくとも2/1、より好ましくは3/1、なおより好ましくは2/1~15/1、なおより好ましくは3/1~10/1の範囲内である。
【0155】
高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の製造とその後の工程a)に同じ押出機を使用することも可能である。
【0156】
先に概説したように、上記方法は、好ましくは、工程a)の後に下記の工程b)をさらに有する:
b) 工程a)で得られたポリプロピレン組成物を発泡させる工程を有する、発泡物品を形成する工程。
【0157】
発泡プロセスは当業者の知識の範囲内である。かかるプロセスにおいて、ブタン、ブタンとプロパンの混合物、HFC又はCO等のガス状又は液状発泡剤を有する本発明のポリプロピレン組成物の溶融物が、圧力降下により急激に膨張する。好ましくは、例えばブタン又はブタンとプロパンと混合物等の液状発泡剤が使用される。連続発泡プロセス並びに不連続プロセスを適用してよい。連続発泡プロセスでは、ポリプロピレン組成物は押出機内で通常は20バールを超える圧力下で溶融され、気体を含まされた後、ダイを通じて押出され、ここで圧力降下が発泡体の形成を引き起こす。発泡押出におけるポリプロピレンの発泡のメカニズムは、例えば、H.E.Naguib、C.B.Park、N.Reichelt、Fundamental foaming mechanisms governing the volume expansion of extruded polypropylene foams、Journal of Applied Polymer Science、91、2661-2668(2004)中に説明されている。発泡のプロセスはS.T.Lee、Foam Extrusion、Technomic Publishing(2000)中に概説されている。不連続発泡プロセスにおいて、ポリプロピレン組成物(マイクロ)ペレットは圧力下で発泡剤を含まされ、溶融温度未満に加熱された後、オートクレーブ内の圧力が急激に緩和される。溶解された発泡剤は気泡を形成し、発泡構造体を生成する。不連続発泡ビーズの製造は、例えばDE3539352号に記載されている。
【0158】
発泡剤の量は通常、ポリマー組成物及び発泡剤の総重量に対して10重量%未満であり、好ましくは、ポリマー組成物及び発泡剤の総重量に対して5重量%未満である。
【0159】
好ましい発泡剤は、ブタン、及び、ブタンとプロパンの混合物である。
【0160】
先に概説したように、好ましくは発泡シートが形成される。発泡シートの製造方法は当該技術分野において一般的に知られており、特にTW M463649中に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。好ましくは、TW M463649中に記載される方法及び装置が、本発明の発泡シートの製造に用いられる。
【0161】
本発明に例えば従う容器、例えば、ボトル、カップ、缶、キャニスタ、ボウル又はトレイ;スリーブ、例えば容器のスリーブ;蓋、例えば容器の蓋;フィルム;ブランク;パッド;キャリア;チューブ;基材;パイプ;器;パネル、例えば構造パネル;ライナ、例えばトラックライナ;タップ;ロール又は形材容器であってよい物品は、当該技術分野における通常の手順を用いて製造される。
【0162】
使用
本発明はさらに、下記の関係式(I)を満たす発泡シートの製造のための本発明のポリプロピレン組成物の使用に関する:
耐屈曲性(MD)/耐屈曲性(CD)≦1.2 (I)
(式中、
耐屈曲性(MD)は、SCAN P29:95に従って測定された機械方向における耐屈曲性(mN)であり;
耐屈曲性(CD)は、SCAN P29:95に従って測定された交差方向(cross direction)における耐屈曲性(mN)である。)。
【0163】
本発明はさらに、下記の関係式(II)を満たす発泡シートの製造のための本発明のポリプロピレン組成物の使用に関する:
100℃における熱伝導率/20℃における熱伝導率≦1.5 (II)
(式中、
100℃における熱伝導率は、ISO 1856:2000に従って決定された、100℃における発泡シートの熱伝導率(m・K)であり;
20℃における熱伝導率は、ISO 1856:2000に従って決定された、20℃における発泡シートの熱伝導率(m・K)である。)。
【0164】
好ましくは、本発明は、先に概説した関係式(I)及び(II)を満たす発泡シートの製造のための本発明のポリプロピレン組成物の使用に関する。
【0165】
本発明の上記ポリプロピレン組成物、発泡シート、物品及び方法の好ましい特徴は、本発明の使用の好ましい特徴でもある。
【実施例
【0166】
A. 測定方法
別段の定義が無い限り、用語及び決定方法の下記の定義が、本発明の上記一般的記載並びに下記の実施例に適用される。
【0167】
MFR
ポリプロピレンのMFRは、2.16kgの荷重下、230℃の温度にて、ISO 1133に従って決定した。
【0168】
ポリマーの密度
密度はISO 1183-1-方法A(2004)に従って測定した。試料の製造はISO 1872-2:2007に従って圧縮成型により行う。
【0169】
ポリプロピレン中のコモノマー含量
コモノマー含量は、当技術分野で周知の方法で、定量的13C核磁気共鳴(NMR)分光法により較正した基本的帰属の後、定量的フーリエ変換赤外分光法(quantitative Fourier transform infrared spectroscopy)(FTIR)により決定する。薄膜を250μmの厚さにプレスし、スペクトルを透過モードで記録する。
【0170】
具体的には、ポリプロピレン-コ-エチレンコポリマーのエチレン含量は、720~722および730~733cm-1で見られる定量的バンドのベースライン補正されたピーク面積を用いて決定する。プロピレン-1-ブテンコポリマーは767cm-1で評価した。フィルム厚さの参照に基づいて定量結果を得る。
【0171】
溶融温度(T)及び融解熱(H)、結晶化温度(T)及び結晶化熱(H):
溶融温度T及び結晶化温度Tは、5~10mgの試料について、TA Instruments Q2000示差走査熱量測定器(DSC)を用いて、ISO 11357/3に従って測定した。結晶化及び溶融温度は、30℃から225℃の間において10℃/minの走査速度で、加熱/冷却/加熱サイクルにおいて取得した。溶融及び結晶化温度は、それぞれ冷却サイクル及び第2加熱サイクルにおける吸熱及び発熱のピークとした。
【0172】
MFR(230℃)はISO 1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定する。
【0173】
30溶融強度及びv30溶融伸展性
本明細書に記載する試験はISO 16790:2005に従う。
ひずみ硬化挙動は、論文「Rheotens-Mastercurves and Drawability of Polymer Melts」、M.H.Wagner、Polymer Engineering and Sience、Vol.36、925~935頁に記載の方法により決定する。この文書の内容は参照により取り込まれる。ポリマーのひずみ硬化挙動はRheotens装置(Goettfert、Siemensstr.2、74711 ブーヒェン、ドイツの製品)を用いて分析し、すなわち溶融ストランドを既定の加速で引き出すことにより伸長させる。
【0174】
Rheotens実験は工業的スピニング及び押出プロセスを模倣するものである。原理的には、メルトを丸ダイス(round die)を通して押圧又は押し出し、得られるストランドを引っ張る。押出成形物の応力をメルト特性及び測定パラメータの関数として記録する(特に、アウトプットと引張速度の比、実際には伸び率についての測定値)。実験用押出機、HAAKE Polylabシステム及び筒状ダイ(cylindrical die)(L/D=6.0/2.0mm)を備えたギヤポンプを用いて材料を押し出した結果を以下に記載する。ギヤポンプを5mm/sのストランド押出速度に予め調整し、メルト温度を200℃に設定した。ダイとRheotensホイールの間のスピンライン長(spinline length)は80mmであった。実験の開始時に、Rheotensホイールの巻き取り速度を押し出されるポリマーストランドの速度に調節した(引っ張り力0)。次いで、Rheotensホイールの巻き取り速度をポリマーフィラメントが破断するまでゆっくりと増大させることにより実験を開始した。ホイールの加速は十分に小さく、ほぼ定常的な条件下で引っ張り力を測定した。溶融ストランド引き出しの加速は120mm/secである。RheotensはPCプログラムEXTENSと組み合わせて作動させた。これはリアルタイムデータ取得プログラムであり、引っ張り力及び引き出し速度の測定データを表示し保存する。Rheotens曲線のエンドポイント(力対プーリ回転速度)をF30溶融強度及び伸展性値とする。
【0175】
ゲル含量
約2gのポリマー(m)を重量計測し、重量計測した金網内に入れる(mp+m)。金網内のポリマーをソックスレー抽出器(soxhlet apparatus)内で沸騰キシレンにより5時間抽出する。次いで、溶出液を新しいキシレンで置き換え、さらに1時間沸騰を続ける。続いて、金網を乾燥し、再度重量計測する(mXHU+m)。式mXHU+m-m=mXHUにより得られた熱キシレン不溶物の量(mXHU)のポリマーの重量(m)に対する割合を求め、キシレン不溶分mXHU/mを得る。
【0176】
ポリマーの粒子サイズ/粒子サイズ分布
ふるい分析(gradation test)をポリマー試料に対して行った。ふるい分析には下記のサイズの金網ふるい(wire mesh screen)を有するふるいの入れ子構造になったカラムを用いた:>20μm、>32μm、>63μm、>100μm、>125μm、>160μm、>200μm、>250μm、>315μm、>400μm、>500μm、>710μm、>1mm、>1.4mm、>2mm、>2.8mm。試料を最大サイズの篩目を有する一番上のふるいに注いだ。カラム中の下側のふるいの各々は、その1つ上のふるいよりも小さな篩目を有する(上記のサイズを参照されたい。)。底部には受器がある。カラムをメカニカルシェイカー内に置いた。カラムをシェイカーにより振動させた。振動完了後、各ふるい上の物質を重量計測した。次いで、各ふるいの試料の重量を総重量で割って、各ふるい上に保持された百分率を求めた。
【0177】
核形成剤の粒子サイズ
メジアン粒子サイズd50は、Sedigraph 5100(Micromeritics Corporation)を使用して、ISO 13317-3に従って重力液体沈降により決定される粒子サイズ分布[質量パーセント]から計算する。
【0178】
発泡体の密度
Switzerland PRECISA Gravimetrics AG(スイス)の分析用及びセミミクロ精密天秤、比重天秤(XS225A)を使用して測定した;試験方法:アルキメデスの適用、試料の密度を自動計算する。
【0179】
発泡体のセルサイズ直径
発泡体のセルサイズ直径は、Tawainの光学顕微鏡、CBS Stereoscopic microscopeを使用して決定した;
使用した試験方法は、下記の通りである:
1. 発泡材料のストリップを交差方向(CD)および機械方向(MD)に沿って切断する。
2. 発泡材料をフラットクランプで保持し、カミソリ刃を用いて精密に削る。
3. 100×にて顕微鏡の焦点を合わせ、発泡材料上への照明を調節する。
4. CDおよびMD方向において特有のセル(unique cell)それぞれの長さ及び幅の測定を行い、値を記録する。
5. 測定した特有のセルの数をカウントし、値を記録する。
6. CDおよびMD方向において特有のセルそれぞれの全長への3~4の接線に交差するセル壁厚の測定を行い、値を記録する。
7. 第一測定セル群の下部から開始して、上記セル群の中間部まで、上記セル群の上部までの、3回のストリップ全厚の測定を行う。
8. 最下部の完全セル(complete cell)から開始して最上部の完全セルまでの全長測定を行う。
9. 最上部の不完全セルの下部がスクリーンの下部に触れるように、顕微鏡視野を移動する。
10. ストリップの約0.200’’~0.800’’が測定されるまで、新たな特有のセルのそれぞれに対してステップ4~9を繰り返す。全長およびセル組成が重複しないことを確認する。第一測定後の各全長測定は、前回の最上部の完全セルの上部から現在の最上部の完全セルの上部までをとる。
【0180】
発泡体の表面粗さ
株式会社ミツトヨ(日本)の携帯型表面粗さ測定器、モデルSJ-310を使用して測定した。表面粗さ測定器(粗面計とも呼ばれる。)は、接触表面粗さ測定器である。粗さの測定は完全に自動化されており、内蔵ソフトウェアにより行われる。
【0181】
耐屈曲性
機械及び交差方向における耐屈曲性は、スカンジナビア紙パルプ・板紙試験委員会(Scandinavian pulp, paper and board Testing committee)により発行された方法SCAN P29:95に従って決定した。
【0182】
熱伝導率
20℃及び100℃における発泡シートの熱伝導率はISO 1856:2000に従って決定した。
【0183】
発明実施例1(IE1)
発泡シートの製造
1. Borealis AGのDaploy(商標) WB140HMS(ISO 1133に従って測定された2.1g/10minのMFR(230℃);ISO 16790:2005に従って決定された36cNのF30溶融強度;ISO 16790:2005に従って決定された230mm/sのv30溶融伸展性)(HMS-PP)、750kg;本発明のプロセスとして行われた前の製造プロセスにおいて製造された発泡シートのリサイクルにより得られる再生ポリプロピレン(ISO 1133に従って測定された5.8g/10minのMFR(230℃);ISO 16790:2005に従って決定された16.9cNのF30溶融強度;ISO 16790:2005に従って決定された270mm/sのv30溶融伸展性)、248kg;及び、2kgのタルクをドライブレンドする;
【0184】
2. 第1工程で得られた上記ブレンドを、Pitac(台湾)の第1単軸押出機(スクリュー直径90mm;L/D比26)中にフィードする。上記押出機を200℃の温度で作動させて(5つの加熱ゾーン:150℃;200℃;200℃;200℃;200℃)、上記ポリマーを溶融させる;
【0185】
3. 上記ブレンドの総重量に対して3wt%の液体ブタン(発泡剤として)を、上記第1単軸押出機の最終セクション内に注入して、溶融ブレンドを得る;
【0186】
4. 上記溶融ブレンドをPitac(台湾)の第2単軸押出機(スクリュー直径120mm;L/D比34)に通して、上記第2単軸押出機の最後において、上記溶融ブレンドを160℃に冷却する;
【0187】
5. 第4工程の溶融ブレンドを、第2押出機の最後に配置した押出ダイに通し;上記押出機を出る際に、上記溶融ブレンドは急激な圧力降下により大気圧への圧力降下に曝され、上記溶融ブレンド中の上記発泡剤は膨張し、それにより発泡が起こり、発泡構造体が生成される;次いで、上記発泡構造体を、冷却ドラムにおいて100℃未満の温度で冷却して、200kg/mの密度及び0.8mmの厚さを有する発泡シートを得る;
【0188】
6. その後、上記発泡シート及び20μm厚のBOPPフィルムをYC Group(台湾)のインライン押出積層ユニットに通して、上記発泡シートを上記BOPPフィルム上に積層し、2層シートを得る。
【0189】
発明実施例2(IE2)
工程5における発泡シートの厚さが1.0mmであった点を除いては、発明実施例1の手順を繰り返した。
【0190】
比較例1(CE1)
Stora EnsoのCupforma Natura(商標)PE(標準LDPE積層カートンカップ(carton cup))。
【0191】
発明実施例IE1及びIE2並びに比較例CE1の結果を下記の表1に記載する。
【0192】
【表1】
【0193】
上記から分かるように、本発明の組成物により、機械方向及び交差方向におけるバランスのとれた耐屈曲性を有する発泡シートが得られ、ブランクをすべての方向で使用できるため、カップの製造を簡略化することができる。さらに、上記発泡シートは、温度に依存しない優れた断熱性を有する。
【0194】
裁断後、標準紙コップ製造機(Eagle 1000S ACE Pack(韓国))を用いて、製造したシートをカップ製造に使用し、カップの縁を形成するために、加熱部分加工(heating element modification)を行った。
【国際調査報告】