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特表2023-530744地熱の熱収穫のためのシステム、方法、及び構成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】地熱の熱収穫のためのシステム、方法、及び構成
(51)【国際特許分類】
   E21B 21/08 20060101AFI20230711BHJP
   E21B 23/00 20060101ALI20230711BHJP
   E21B 21/00 20060101ALI20230711BHJP
   E21B 47/10 20120101ALI20230711BHJP
   E21C 25/60 20060101ALI20230711BHJP
   E21C 37/06 20060101ALI20230711BHJP
   F24T 10/13 20180101ALI20230711BHJP
【FI】
E21B21/08
E21B23/00
E21B21/00 A
E21B47/10
E21C25/60
E21C37/06
F24T10/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578608
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021037965
(87)【国際公開番号】W WO2021257923
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/040,316
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/051,364
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522489978
【氏名又は名称】セージ ジオシステムズ インク
【氏名又は名称原語表記】SAGE GEOSYSTEMS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】クック, ロバート ランス
(72)【発明者】
【氏名】リング, レフ, エム.
【テーマコード(参考)】
2D065
【Fターム(参考)】
2D065AA12
2D065AA17
2D065AA30
2D065BA08
2D065BA19
2D065BA32
2D065CA03
2D065EA21
2D065GA01
(57)【要約】
地下層からの地熱エネルギーの抽出におけるフラクチャの成長を制御するシステム、組成、及び方法であり、(i)第1の破砕流体を地下層の中に導入することと、(ii)第2の破砕流体を前記地下層の中に導入することと、を含み、第2の破砕流体の比重は第1の破砕流体の比重とは異なり、それによって少なくとも1つのフラクチャの下方向への成長を制御するようにされ、(i)又は(ii)の少なくとも一方における破砕流体が、少なくとも5の熱伝導率比を有するプロパント粒子を含んでいる。
【選択図】図14

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下層からの地熱エネルギーの抽出におけるフラクチャの成長を制御する方法であって、
(i)第1の破砕流体を地下層の中に導入するステップと、
(ii)第2の破砕流体を前記地下層の中に導入するステップと、を含み、
前記第2の破砕流体の比重は前記第1の破砕流体の比重とは異なり、それによって少なくとも1つのフラクチャの下方向への成長を制御するようにされ、
ステップ(i)又は(ii)の少なくとも一方における前記破砕流体が、少なくとも5の熱伝導率比を有するプロパント粒子を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記少なくとも5の熱伝導率比を有するプロパント粒子が、スズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、ダイアモンド、金、銀、又はそれらの組合せを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロパント粒子が、スズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、又はそれらの組合せを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロパントがスズを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の破砕流体の比重が、分散媒1ガロン当りに含まれる前記プロパント粒子の1ガロン当りのポンドを増減させることによって変えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロパント粒子が少なくとも3.0の比重を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記破砕流体の比重が、坑井が掘削されるときに遭遇する地質に基づいて、さまざまな成長方向を得るために様々なスラリー密度を送り出すように、破砕計画において変えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さまざまな深度での領域が単一のフラクチャリング工程の間に水圧破砕されるために開かれ、各領域が、意図的に前記密度を変化させることによって水圧破砕され、より重い密度の流体はより深い領域にアクセスし、より軽いスラリーはより狭い地層にアクセスするようにする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、リアルタイムでスラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、ダウンホールに送り出されるスラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
フラクチャの成長の速度と方向を示す表面及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
比重が可変のプロパントが使用されて、フラクチャリング工程の間に送り出される様々な密度の流体に対して前記プロパントが沈むか、中立的に浮遊するか、又は浮揚するようにする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
成形したケーシングであって、当該ケーシングの半径方向面積を最大化するように設計され、地層の所与の長さにわたって達成される熱収穫を最大化するように配置されたケーシングを備える、地熱井のためのダウンホール熱交換器。
【請求項15】
地熱井のためのチュービングストリングであって、
外表面と内表面を有し、
当該チュービングストリングの前記外表面はスクリュー形状のストレーキを有し、
前記ストレーキは、当該チュービングストリングに接触している流体の周方向又は螺旋状の動きを生じさせて、熱対流を増加させ且つ熱収穫を最大化することができるようにされた、地熱井のためのチュービングストリング。
【請求項16】
分流すること、有効環状速度を低減すること、及び熱交換を改善することを可能にする複数のリターンホールを有するチューブを備える、地熱井のためのダウンホール熱交換器。
【請求項17】
ダウンホール熱交換器を組み立てる方法であって、外側シェル(ケーシング)の一部分が、ケーシングが設定されてプロパント粒子及びスラリーが逆流できない状態でフラクチャの内側に固定された後に地層を水圧破砕することができるように、少なくとも1つの逆流防止弁を有する、方法。
【請求項18】
前記ダウンホール熱交換器が、アルミニウム合金などの高い熱伝導率の材料で作られている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ケーシング及びダウンホール熱交換器の設置の前に、開放孔が下方に水圧破砕される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ケーシング(前記ダウンホール熱交換器の前記外側シェル)が開放孔の中へ配置され、前記フラクチャが形成されて、次いでチューブが取り付けられて、前記ダウンホール熱交換器の組み立てが完了する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ダウンホール熱交換器が、前記熱交換器を通って地表にまで循環して戻る流体が熱収穫工程の間にダウンホールの層には接触しないように、設計されている、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記破砕流体が、水圧破砕される地層の破砕勾配を超える密度にまで混合された臭化亜鉛ブラインである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
固体微粒子増量剤が前記臭化亜鉛ブラインに加えられて、破砕スラリーの密度をさらに増加させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記固体微粒子増量剤が、臭化亜鉛塩、スズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、ダイアモンド、金、銀、又はそれらの組み合わせである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記臭化亜鉛ブライン又は加重されたスラリーが、開放孔に残されて、ダウンホール熱交換器の少なくとも一部を囲む熱伝導性流体及び/又は熱対流流体とし機能するようにする、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
様々な比重及び/又は熱伝導率の粒子が、ダウンホール熱交換器の外径の周りに沈降して熱伝導性の層を形成して、地層から前記熱伝導性の粒子の層を介して前記ダウンホール熱交換器の外側シェルにまで熱が効率的に伝達するようにされた、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
地下層からの地熱エネルギーの抽出におけるフラクチャの成長を制御する方法であって、
破砕流体を地下層に導入するステップであって、前記破砕流体の比重は地層のフラクチャの拡張圧力を超える圧力を地層に生じさせ、それにより少なくとも1つのフラクチャの下方向への成長を制御する、ステップを有し、
前記破砕流体は、他の高比重の流体の固体を含まないブラインである、方法。
【請求項28】
固体を含まないブライン又は流体が、臭化亜鉛ブライン水、ギ酸セシウムブライン、ギ酸カリウムブライン、ブロマール、ブロモホルム、テトラブロモエタン溶液、ポリタングステン酸ナトリウム、臭素、ツーレ溶液、ジヨードメタン、ヨウ化インジウム、ヨウ化水銀バリウム、クレリチ溶液、液体金属(スズ、ガリウム、インジウム、亜鉛合金、又は水銀など)、又はそれらの組合せを有し、少なくとも5の熱伝導率比を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
スズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、又はそれらの組合せなどのプロパント粒子が、前記流体の比重をさらに調節するために加えられる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記流体が溶融スズである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記破砕流体の比重が、水又はベース流体の含量を変化させることによりブライン密度を増減させることによって、変えられる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記破砕流体の比重が、フラクチャに遭遇して開口した地質に基づいて、さまざまな成長方向を得るために様々な密度を送り出すように、破砕計画において変えられる、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
さまざまな深度での領域が単一のフラクチャリング工程の間に水圧破砕されるために開かれ、各領域が、意図的に前記密度を変化させることによって水圧破砕され、より重い密度の流体はより深い領域にアクセスし、より軽いスラリーはより狭い地層にアクセスするようにする、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、リアルタイムでスラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、ダウンホールに送り出されるスラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力として使用される、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力である、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
比重が可変のプロパントが使用されて、フラクチャリング工程の間に送り出される様々な密度の流体に対して前記プロパントが沈むか、中立的に浮遊するか、又は浮揚するようにする、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
フラクチャ開口圧力よりも大きい静水頭圧が破砕された開放孔で維持されるように、前記ブラインが前記孔に残され、抗口を通して補充される、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
前記ブラインが、前記孔に残され、静水頭圧がフラクチャ拡張圧力を超えるまで補充されて、既存のフラクチャが延びるか又は新たなフラクチャが形成される、請求項27に記載の方法。
【請求項41】
表面圧力が増加するに従って流体が前記フラクチャのネットワーク内に押し込まれ、前記圧力が減少したときに流体が放出されるように、前記表面圧力が坑井内の静水頭にかけられる、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記フラクチャのネットワークから放出された前記流体が加熱される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記加熱された流体が、熱収穫及びそれに続く地表への搬送のために、ダウンホール熱交換器をわたって流れる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記加熱された流体が熱収穫のために地表にまで循環できるように、前記加熱された流体が前記孔の中の端部開口チューブに入る、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
逆流流体が、システムからのエネルギーを捕捉するために、地表のタービンに通される、請求項27に記載の方法。
【請求項46】
地層での背圧を制御して変えるために通常はチョークを通ることになる循環された流体が、代わりに、必要とされる背圧を作り出すために地表のタービンに通される、請求項27に記載の方法。
【請求項47】
後のピーク電力需要の期間の間の放電のために電力を蓄えることができるように大型バッテリが形成されるように、臭化亜鉛ブラインを含む2つの坑井が構成される、請求項27に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
この出願は、2020年6月17日に出願された米国仮特許出願第63/040,316号、及び2020年7月13日に出願された米国仮特許出願第63/051,364号の優先権を主張し、それらの全体が参照により包含される。
【0002】
本開示は、地熱を収穫(ハーベスト)するためのシステム、方法、及び構成に関する。本発明は、地核に向かってより高い温度へのアクセスをもたらす深さにまで地下層を水圧破砕すること、掘削してケースで覆われた坑井を構築すること、地表にまで熱を届けるために同心状の坑井内で動作流体を循環させることを含む。本発明はまた、フラクチャの成長を制御し、熱伝導性材料を有するフラクチャを形成し、地熱にアクセスして地熱エネルギーを収穫するようにし、それをエネルギー源として使用するために地表にまで届けるための、システム、方法、及び構成を含む。
【背景技術】
【0003】
水圧破砕、すなわちフラッキングは、石油及び/又はガスを坑井から抽出するためのよく知られた工程である。フラッキングは、通常、加圧流体を岩石に注入することによって岩石層にフラクチャ(割れ目)を作り出すために使用される。破砕流体の坑井への高圧注入は、岩石層に亀裂を作り出し、その亀裂を通して天然ガスや石油がより自由に流れようになる。流体圧が坑井から除かれると、水圧破砕プロパントの粒子がフラクチャの開口を維持することができる。
【0004】
フラクチャの成長の制御は、フラッキング工程における共通問題である。従来の破砕流体は、通常、地層の破砕圧力勾配(破砕勾配)よりも低い静水頭圧勾配を有し、それによってフラクチャが上方に成長する傾向が生じる。この上方への成長の傾向は、垂直井内で、複数の領域に穴のあいた坑井内に送り出されたほとんどの破砕流体が穴のあいた最も狭い領域にいく、という知られた不満として現れる。2018年11月26日に出願された米国仮特許出願第62/771,501号及び2019年11月26日に出願されWO2020/112857として公開されたPCT/US19/63378号は、石油及びガスにアクセスするための地層のフラッキングを改善するための一技術を提供している。
【0005】
深地層処分場も、核廃棄物を貯蔵するためにフラッキングによって作り出されている。例えば、高い密度を有する破砕流体は、フラクチャを水平方向よりはむしろ下方に拡張していき、廃棄物はポンピングの代わりに重力によって運ばれるとされている。米国特許9,190,181号、9,700,922号、及び9,741,460号に例が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クリーンで再生可能なエネルギー源を提供することができるため、地熱エネルギーの形態での大地からのエネルギーにアクセスすることに関心が集まっている。地熱エネルギーは、潜在的に坑井を掘削してフラッキングすることによってアクセスできるが、地熱エネルギーを抽出するためのシステム、方法、及び構成は、石油及びガスの抽出に適用されるもの及び他のフラッキング工程とはどうしても異なる。地熱エネルギーは、通常、低い(地核に近い)深さで高い圧力と高い温度の条件でアクセス可能となる。熱エネルギーの抽出は、得られた熱を地表にまで過度な熱エネルギーの損失なしに伝達しなければならない点で、液体及びガスの炭化水素の抽出とはかなり異なる。よって、石油及びガスのフラッキングの目的は石油及びガスの採取のために高い浸透性を有するフラクチャを作り出すことであるが、一方で地熱利用のためのフラクチャは熱を得るために熱伝導性である必要があり、これは、地熱利用と比べて、石油及びガスのために作り出されたフラクチャを扱うために2つの異なるアプローチを必要とする。これらの困難性及びそれに対処することに関連した高い先行資本支出のために、地熱エネルギー抽出は、現在、高すぎるか又は手の届かないものとして見られている。
【0007】
当該技術分野において、経済的に地熱エネルギーを抽出できる代替的なシステム、方法、及び構成に対する要求がある。また、地熱エネルギーにアクセスするためのフラクチャの成長の改善された制御を提供することができる、改善されたシステム、方法、及び構成に対する要求もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、大地から地熱エネルギーを抽出するためのシステム、方法、及び構成に関する。
【0009】
本発明はさらに、地下層及びフラクチャをフラッキングして地熱エネルギーにアクセスするためのシステム、方法、及び構成に関する。地熱エネルギーの位置は、地理にも依るが、概して石油及びガスの抽出のために必要となる深さよりも深い。
【0010】
本発明はさらに、地熱エネルギーを抽出するためのシステム、方法、及び構成に関し、1つ又は複数のフラクチャがより高い温度のエリアにアクセスするために作り出され、またフラクチャの下方への垂直な成長がフラッキング工程中に坑井の中に送り出される流体の比重を変えることによって制御されて、地熱井内でのダウンホール熱交換の効率を改善するために、坑井につながった岩石の表面積を増加及び/又は最大化させる。
【0011】
本発明の別の実施形態においては、システム、方法、及び構成は、坑井が掘削されていた深さよりも深い大地の深さから熱を効率的に移動させるために、熱伝導性及び/又は熱対流のフラクチャを作り出すためのものである。
【0012】
一実施形態においては、この開示は垂直なフラクチャを地層に作り出すための独創的な技術を教示しており、好ましくは、フラクチャの成長の少なくとも80%が、地層内で上又は下に成長するように制御されるようにでき、地熱利用に対してはフラクチャの成長の好ましい方向はより熱い岩石に向かう下方である。
【0013】
さらに好ましい実施形態においては、フラクチャの成長の少なくとも85%、90%、又は95%が、地層内で上又は下に成長するように制御されるようにできる。一実施形態においては、フラクチャのサイズが大きくなるほど、上方向又は下方向へのフラクチャの成長の制御のパーセンテージが高くなる。
【0014】
別の実施形態においては、本開示はまた、送り出されるスラリー密度の可変制御による送り出し動作の間に、フラクチャの垂直な成長方向のリアルタイムでの制御を行なうための技術を教示する。
【0015】
別の実施形態においては、本開示は、地層から坑井への伝熱を増加及び/又は最大化するように設計されたプロパント粒子の使用によってフラクチャの熱を伝導する特性を変化させるための独創的な技術を教示する。
【0016】
本発明にかかる一実施形態においては、フラクチャは、地層の熱伝導能力よりも著しく良好に熱を伝導してその熱を坑井にまで伝達することができるプロパント粒子で満たされるようにできる。
【0017】
好ましい実施形態においては、プロパントは、比較的に高い熱伝導率を有する材料を有する。
【0018】
好ましい実施形態においては、プロパント材料は5.0より大きい熱伝導率比を生じさせ、ここで伝導率比はプロパント粒子の熱伝導率を破砕される地層の熱伝導率で割ったものに等しい。
【0019】
別の好ましい実施形態においては、本発明において使用されるプロパントは、スズ、アルミニウム、グラファイト、ヘマタイト、磁鉄鉱、バライト、ダイアモンド、銀若しくは金、又はそれらの組合せを有する。別の例においては、プロパントは経済的に使用可能な材料からなり、例えば、プロパントは、スズ、アルミニウム、グラファイト、ヘマタイト若しくはバライト、又はそれらの組合せを有することができる。
【0020】
別の実施形態においては、本開示は、沈む、中立的に浮遊する、又は混合されたスラリーに対して浮揚するプロパントを加えることによって、垂直なフラクチャに沿って、高い側若しくは低い側に移動するか又は均等に分配するように設計されたプロパントでフラクチャの開口部を優先的に保持するための独創的な技術を教示する。
【0021】
別の実施形態は、地下層における1つ又は複数のフラクチャの垂直方向の成長を制御する方法であって、第1の比重の第1の破砕流体を地下層及びそこに形成された少なくとも1つのフラクチャの中に導入することと、第2の比重の第2の破砕流体を地下層及びそこに形成された少なくとも1つのフラクチャの中に導入することとを有し、第2の破砕流体の比重は第1の破砕流体の比重とは異なり、それにより少なくとも1つのフラクチャの垂直方向での成長を制御するようにされた、方法である。
【0022】
好ましい実施形態においては、スラリー又は流体の比重は、スズ、アルミニウム、グラファイト、ヘマタイト、磁鉄鉱、バライト、ダイアモンド、銀若しくは金、又はそれらの組合せを加えることによって変えられる。
【0023】
好ましい実施形態においては、スラリー又は流体の比重は、スズの固体粒子を加えることによって変えられる。
【0024】
好ましい実施形態においては、スラリー又は流体の比重は、フラクチャ内に一旦配置されると分散媒から沈殿する材料の粒子を加えることによって、変えられる。
【0025】
好ましい実施形態においては、スラリー又は流体の比重は、フラクチャ内に一旦配置されると分散媒から沈殿する材料の粒子を加えることによって変えられ、その材料は、フラクチャの内側(温度が材料の融点を超える場所)で溶融し、よって、液体材料中の対流の流れによる坑井への伝熱を強化しながら高い熱伝導性の熱経路を作り出す。好ましい実施形態においては、材料はスズである。
【0026】
さらに好ましい実施形態においては、スラリー又は流体の比重は、分散媒1ガロン当りのプロパントの1ガロン当りのポンドを増減させることによりスラリー又は流体のスラリー重量を増加及び/又は減少させることによって、変えられる。
【0027】
別の実施形態においては、スラリー又は流体は、少なくとも2.5以上の比重を有する材料を備え、この材料は、スラリー又は流体の密度を増加させて垂直な地下のフラクチャの成長の方向及び/又は速度を操作する。さらなる実施形態においては、スラリー又は流体は、少なくとも3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、又は5.0の比重を有する材料を有する。
【0028】
別の実施形態においては、スラリー又は流体は、破砕される地層に対して少なくとも5.0以上の熱伝導率比を有する材料を有し、この材料は、スラリー又は流体の密度を増加させて垂直な地下のフラクチャの成長の方向及び/又は速度を操作する。さらなる実施形態においては、スラリー又は流体は、少なくとも10、50、100、500、又は1000の熱伝導率比を有する材料を備える。
【0029】
別の実施形態においては、スラリー又は流体の比重は、プロパントを懸濁するために使用される分散媒の比重をフラッキング工程の間に変化させることによって変えられる。
【0030】
別の実施形態においては、スラリー又は流体の比重が、坑井の地質に基づいて可変の成長方向を得るように所定の又は設定されたスケジュールで1つ又は複数のスラリー又は流体の密度を送り出すために、元々の破砕計画の間に変えられる。
【0031】
別の実施形態においては、さまざまな深度での領域は、単一のフラクチャリング工程の間に水圧破砕されるために開かれ、各領域は密度を変化させることによって水圧破砕され、より重い密度スラリー又は流体がより深い領域にアクセスし、より軽いスラリー又は流体がより狭い地層にアクセスする。
【0032】
さらなる実施形態においては、フラクチャの成長の速度及び方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、スラリー又は流体の密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される。好ましい実施形態においては、フラクチャの成長の速度及び方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、自動化されたマニホールドダウンホールに送り出されるスラリー及び/又は流体の密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される。別の実施形態においては、微小地震監視が、フラクチャの成長の方向と伸長を判断するために使用される。
【0033】
別の実施形態においては、フラクチャの成長の速度及び方向を示す地表及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、リアルタイムでスラリー又は流体の密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される。さらに好ましい実施形態においては、フラクチャの成長の速度及び方向を示す地表及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー及び/又は流体の密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力として使用される。
【0034】
別の実施形態においては、比重が可変のプロパントが加えられて、プロパントが、送り出されたスラリー内で、沈むか、中立的に浮遊するか、又は浮揚する。さらに好ましい実施形態においては、複数の比重のプロパントの混合物が、垂直なフラクチャ内でプロパントを垂直方向に均等に分配するように送り出されるか、又は垂直なフラクチャの上部又は下部のいずれかがプロパントによって優先的に開口保持されるように設計される。
【0035】
別の実施形態においては、重いスラリーと軽いスラリーのバッチが、混合されて一緒にされて、スラリー密度を変化させてフラクチャの方向を誘導する。さらに好ましい実施形態においては、スラリー密度が、バッチ混合器でその場で変えられて、ダウンホールに送り出される。
【0036】
地熱運転におけるより複雑な技術的課題の一つは、ダウンホールの地層に接した流体の廃棄である。これらの流体は、陸上生態系に適さない物理化学特性を有する。これらの流体は、処理されて、地下に再注入/廃棄され得る。これらの作業は、廃棄のための追加の坑井の掘削とメンテナンスに加えて、流体の処理と送り出しも必要とされるため、高い経済的コストを必然的に伴う。代替的な実施形態が図16に示されており、これは熱を抽出するために間接的なシステムを使用する。この種の坑井の完成は、熱の抽出を可能とするクローズドループ内を循環する熱分散媒を使用してダウンホール熱を収穫し、分散媒がダウンホールの地層に接しないようにすることを可能にする。よって、地層に接した流体は循環せず、汚染された流体を再注入するための必要なエネルギーなどの環境的及び経済的負荷が低減及び/又は無くなる。腐食及び規模拡張の問題も回避される。主要な不利益は熱回収効率の低下である[Study of geothermal power generation from a very deep oil well with a wellbore heat exchanger. C. Alimonti, E. Soldo]。熱回収の効率は、地層の低熱伝導性に主に相関している。
【0037】
本発明の一実施形態においては、坑井が掘削された後に、開示された技術を使用して水圧破砕して、熱伝導性の亀裂を形成する。高熱伝導性流体がボーリング孔内に配置される。端部が閉じたケーシング/ライナー(ダウンホール熱交換器の外側シェル)が、熱膨張が可能なように配置及び位置決めされる。チューブは、ダウンホール熱交換器を構成するように内側に配置される。この坑井デザインは、坑口を通って環状空間にアクセス可能として、環状空間を熱伝導性流体で満たし、坑井の寿命の間、フラクチャの成長の操作を可能とする。この実施形態においては、クローズドループのダウンホール熱交換器が、水又は液化COなどの様々な流体を加熱するために使用され、その流体は特別に設計された熱交換器を通してダウンホールを循環する。
【0038】
好ましい実施形態においては、成形されたパイプ(例えば図10)が、穴の中に配置されたケーシングの少なくとも一部に対して配置されて、径方向の表面積を最大化し、その表面積はおよそ40%増加させることができ、また地層から熱を受け取ることと直接接触によって流体を加熱することになる内径の表面積を最大化することの両方ともである。
【0039】
別の実施形態においては、流体をダウンホールで循環して熱収穫(熱エネルギーハーベスト)をするために使用されるチュービングストリングは、様々な深さにエントリーポイント(例えば、図9)を有し、ダウンホール地熱井においてあり得る様々な熱分散パターンに対してより良く熱を収穫するように流路を変更することを可能にする。
【0040】
さらなる実施形態においては、インナーチューブをストレーキと共に配置することができ(例えば、図11)、ストレーキは流体の周方向/螺旋状の動きを形成して熱対流を増加させるように設計される。
【0041】
坑井のコストはしばしば地熱発電所オンラインを得るための全体コストの半分を超えるが、開示された技術は、そうでなければ要求されるであろうよりもかなり狭い坑井を使用しながらも、より深くより熱い岩石へのアクセスを可能とすることによって、地熱産業に著しい利点をもたらす。
【0042】
別の実施形態においては、ダウンホール熱交換器が、例えばアルミニウム合金などの、高い熱伝導率の材料で作られる。
【0043】
別の実施形態においては、高熱伝導性のスラリーが、熱交換器を有するケーシングを配置する前又は配置された後に、坑井の中に投入されて、他のケーシングと地層の間の熱抵抗を低減させる。
【0044】
別の実施形態においては、ケーシングを配置する前又はケーシングストリングとともに動作する逆流防止弁(セメント弁(cementing valve)、スライドスリーブ、など)を使用した後に、地層内の高熱伝導性のフラクチャを形成することができる。逆流防止弁の使用により、破砕流体が逆流することを防止し、ケーシング、すなわちダウンホール熱交換器の外側シェルが配置された後にフラクチャが形成されたときに、高伝導性のスラリーがフラクチャの内側に固定されたままにすることを可能とする。
【0045】
別の実施形態においては、静水頭の頂部に増加した圧力をかけることによって、流体が、加熱されることになるフラクチャネットワークの中に押し込まれる。そして、加熱された流体は、かけられた表面圧力を減少させることによって、ダウンホール熱交換器をわたって又は地表にまで環流する。
【0046】
別の実施形態においては、露出した地層のフラクチャの拡張圧力及び/又は破砕開始圧力を超える圧力を付加及び増加させることにより、流体が、加熱されることになるフラクチャネットワークの中に押し込まれる。そして、この伸長した、形成されたフラクチャのエリアが、フラクチャネットワークでの熱収穫のためのさらなるエリアを露出させる。
【0047】
別の実施形態においては、ダウンホール熱交換器が、配置されて、表面圧力が解放されたときにフラクチャネットワークから放出される加熱された流体からの熱を収穫するために使用される。
【0048】
別の実施形態においては、熱交換器とフラクチャネットワークとの間の環状空間が開いたままとなり、加重された流体を抗口で周期的に加えることによって、フラクチャ開口圧力を超える静水頭圧が維持されるようにできる。
【0049】
別の実施形態においては、熱交換器とフラクチャネットワークとの間の環状空間が開いたままとなり、加重された流体を抗口で加えることによってフラクチャの拡張圧力及び/又は破砕開始圧力を超える静水頭圧が生成されるようにでき、熱収穫に利用可能であるフラクチャネットワークに増加した表面積を形成する。別の実施形態においては、ダウンホール熱交換器がなく、フラクチャからの加熱された逆流流体は、熱収穫のために地表にまで循環して戻される。
【0050】
別の実施形態においては、タービンが、坑井からの逆流流体に対してエネルギーを収穫するために使用される。
【0051】
別の実施形態においては、タービンが、チョークの代わりに、ダウンホールのフラクチャに背圧をかけて、流体をフラクチャネットワークの中に押し込むために使用される。別の実施形態においては、臭化亜鉛ブラインを包含する2つの坑井が、電力貯蔵に使用するための大型バッテリを形成するように組み合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】システムの動作の図であり、破砕流体は、概して、地層の破砕圧力勾配よりも小さい勾配を有し、フラクチャは上方向に成長する傾向がある。
【0053】
図2】どのようにして地層の破砕圧力勾配と等しい勾配を有する破砕流体を使用することで、流体の密度を地層の破砕圧力勾配に正確に一致するように維持することができる理想的な地層に、対称的な円板状(ペニー形状)のフラクチャを形成することができるのかを示す図である。
【0054】
図3】どのようにして地層の破砕圧力勾配を超える破砕流体を設計することで、下方向へのバイアスがある状態で上と下の両方に成長するフラクチャを形成するのかを示す図である。
【0055】
図4】どのようにして地層の破砕圧力勾配よりも大きな高密度スラリーに続いて地層の破砕圧力勾配よりも小さい勾配を有する軽い流体を送り出すことで、下方へのフラクチャの成長を促すフラクチャの内側の勾配を生じさせることができるのかを示す図及び記載である。
【0056】
図5】上方へのフラクチャの成長の例の図である。
【0057】
図6】下方及び水平方向へのフラクチャの成長の例の図である。
【0058】
図7】フラッキング工程の間の表面圧力対時間のグラフである。
【0059】
図8】地熱のための深く熱い岩石を標的とするフラクチャの下降操作がどのように機能するかの、単純化した例の図である。
【0060】
図9】従来のダウンホール熱交換器と分流型ダウンホール熱交換器の比較である。
【0061】
図10】ケーシングの表面積を最大化するように設計された成形したケーシングであって、坑井に熱的に結合されたダウンホールの熱源からの熱収穫を改善/最適化するように、ある穴直径を有する坑井の中に通すことができるケーシングの例である。
【0062】
図11】坑井チューブの外径に取り付けられて、飛躍的に有効接触面積を増加させ且つ相対的な垂直方向の流速を減少させるらせん状の流れを作り出す、スクリュー形状のストレーキの例である。
【0063】
図12】核廃棄物の処分のために開発された技術を示す図である。
【0064】
図13】孔内でケーシング無しで実行された下方向への破砕を示す図である。
【0065】
図14図13の水圧破砕された坑井を、熱収穫のために配置されたダウンホール熱交換システムでどのようにしてケーシングするのかを示す図である。
【0066】
図15】伝導性の亀裂を有する本発明の好ましい実施形態を示す図である。
【0067】
図16】ダウンホール熱交換器を備えるクローズドループシステムとしての本発明の好ましい実施形態を示す図である。
【0068】
図17】静フラクチャネットワークへの流体の注入又はフラクチャネットワークからの流体の排出をするために水頭の頂部での表面圧力を変化させる場合の、破砕されたダウンホールの地層のためのダウンホール地熱流体の熱収穫工程を示す図である。
【0069】
図18】熱収穫サイクル中の異なる圧力でのフラクチャを概念的に示した図である。
【0070】
図19】地熱ダウンホールの熱収穫サイクルを示す図である。
【0071】
図20】新たなフラクチャエリアが形成された場合の、ダウンホール地熱流体の熱収穫工程を示す図である。
【0072】
図21】地層フラクチャ内への注入、流体の加熱、及びダウンホール熱交換器にわたる流体の逆流による、周期的な熱収穫の実施形態を示す図である。
【0073】
図22】ダウンホール熱交換器なしでのフラクチャの熱収穫の実施形態を示す図である。
【0074】
図23】熱収穫工程における廃エネルギー捕捉を示す図である。
【0075】
図24】エンルギー貯蔵のための大型バッテリを作り出すための2つの坑井の使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図面及び以下の記載において、本発明のいくつかの特徴が誇張されたスケールで又はいくらか概略的な形態で示されており、従来的な要素の詳細は明確性及び簡潔性の観点から示されていない場合がある。本発明は、異なる態様の実施形態を受け入れる余地がある。本開示は、本発明の原理の例示であると見なされ、本発明をここに図示されて説明されたものに限定することを意図していないことの理解の下で、特定の実施形態が詳細に説明され、図面に示されている。以下に説明される実施形態の異なる教示を、所望の結果物を生じさせるために、別々に又は適した組み合わせで採用できることが十分に認識されるべきである。上述の様々な特性、及び以下により詳細に説明される他の特徴及び特性は、実施形態の以下の詳細な説明を読むことで、また添付図面を参照することで、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0077】
本発明は、地下層からの地熱エネルギーの抽出において成長するフラクチャを制御する方法を含み、該方法は、(i)第1の破砕流体を地下層の中に導入するステップと;(ii)第2の破砕流体を地下層の中に導入するステップと、を有し;第2の破砕流体の比重は第1の破砕流体の比重とは異なり、それによって少なくとも1つのフラクチャの下方向への成長を制御するようにされ、ステップ(i)又は(ii)の少なくとも一方における破砕流体が少なくとも5の熱伝導率比を有するプロパント粒子を含んでいる。
【0078】
本発明の方法は、粒子、又は粒子を含むプロパント粒子、又はスズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、ダイアモンド、金、銀、若しくはそれらの組合せを有するプロパント粒子を採用する。好ましくは、粒子又はプロパント粒子は、スズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、又はそれらの組合せを含む、経済的な材料からなる。さらに好ましい実施形態においては、プロパントはスズである。
【0079】
本発明による方法においては、第2の破砕流体の比重は、分散媒1ガロン当りに含まれるプロパントの1ガロン当りのポンドを増減させることによって変えられる。
【0080】
好ましい実施形態においては、粒子又はプロパントは、少なくとも3.0の比重を有する。
【0081】
一実施形態においては、破砕流体の比重は、坑井を掘削したときに遭遇する地質に基づいた、さまざまな成長方向を得るために様々なスラリー密度を送り出すように、元々の破砕計画の間に変えられる。
【0082】
別の実施形態においては, さまざまな深度での領域が単一のフラクチャリング工程の間に水圧破砕されるために開かれ、各領域が、意図的に密度を変化させることによって水圧破砕され、より重い密度の流体はより深い領域にアクセスし、より軽いスラリーはより狭い地層にアクセスするようにする
【0083】
別の実施形態においては、フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、リアルタイムでスラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される。フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、ダウンホールに送り出されるスラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力として使用される。
【0084】
フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される。フラクチャの成長の速度と方向を示す表面及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力であるようにすることができる。
【0085】
別の実施形態においては、比重が可変のプロパントが使用されて、フラクチャリング工程の間に送り出される様々な密度の流体に対して前記プロパントが沈むか、中立的に浮遊するか、又は浮揚するようにする。
【0086】
図1に示すように、破砕流体がほぼいつも地層の破砕圧力勾配よりも小さい圧力勾配を有する現在の水圧破砕の慣行では、フラクチャは上に成長する傾向がある。この上に成長する傾向はまた、垂直井において、複数の領域に穴が開けられた坑井に送り出されたほとんどの破砕流体が穴のあいた最も狭い領域の中へと進んでいくという、石油業界においてよく聞かれる不満を明らかにする。図1から、最も弱い領域が最も狭い領域である傾向があるため、複数の領域が開口している場合には上側の穴のセットが破砕流体のほとんどを取り込み、また狭い領域が破砕流体を取り込んで表面圧力をより深い領域を開口するのに必要である圧力よりも低く維持するため、より深い領域に対する破砕圧力にまで圧力が到達するのが困難になる。
【0087】
例えば、図1では、完全な円板状(ペニー形状)フラクチャ3が坑井1内のケーシングの穿孔2の周りに存在すると仮定している。坑井内の破砕流体が0.5psi/ftである場合;フラクチャの頂部4での圧力は450psiであり;穿孔2での圧力は500psiであり;フラクチャの底部5での圧力は550psiである。その地層に対する破砕圧力勾配が1.0psi/ftである場合;フラクチャの頂部4での破砕圧力は900psiであり;穿孔2での破砕圧力は1000psiであり;フラクチャの底部5での圧力は1100psiである。ポンプが出力をゆっくり上昇させる場合、抗口での圧力が450+psiに到達すると、900psiの破砕圧力勾配を超えるので、フラクチャの頂部が弱い岩石の中へと上方に成長する。フラクチャの底部は未だに破砕圧力から100psiであることを留意されたい。よって、全ての条件が同じだとすると、表面圧力が坑井を破砕するために使用されたときには、フラクチャは上に成長する傾向がある。
【0088】
このバイアスを是正するために、図2は、どのようにして地層の破砕圧力勾配に等しい圧力勾配を有する破砕流体を使用して、流体の密度が地層の破砕圧力勾配と正確に一致するように維持される理想的な地層において、対称的な円板状フラクチャを形成することができるのかを示している。
【0089】
例えば、図2では、完全な円板状(ペニー形状)フラクチャ3が坑井1内のケーシングの穿孔2の周りに存在すると仮定している。坑井内の破砕流体が1.0psi/ftである場合;フラクチャの頂部4での圧力は900psiであり;穿孔2での圧力は1000psiであり;フラクチャの底部5での圧力は1100psiである。その地層に対する破砕圧力勾配が1.0psi/ftである場合;フラクチャの頂部4での破砕圧力は900psiであり;穿孔2での破砕圧力は1000psiであり;フラクチャの底部5での圧力は1100psiである。ポンプが地表で任意の圧力をかける場合、フラクチャは、全方向に等しく成長し、また対称的に成長する。よって、フラクチャは、対称性のバランスを失って自己バイアス補正により、全方向に成長する。よって、理論的には、全ての条件が同じだとすると、もし真に均質な地層が現場で見つかったならば、破砕流体密度を破砕圧力勾配と全く等しく維持することによって真の円板状フラクチャにフラクチャを誘導する破砕流体を設計することができる。
【0090】
図3には、どのようにして地層の破砕圧力勾配を超える破砕流体を設計して、下方向へのバイアスがある状況で上と下の両方に成長するフラクチャを形成するのかが示されている。
【0091】
図4には、どのようにして地層の破砕圧力勾配よりも大きい高密度スラリーを送り出し、次いで地層の破砕圧力勾配よりも小さい圧力勾配を有する軽い流体を送り出すことによって、下方向へのフラクチャの成長を促進するフラクチャ内の圧力勾配を生じさせることができるのかが示されている。
【0092】
この発明は、垂直方向でのフラクチャの成長の方向を誘導するために体系的に使用することができる低コスト(すなわち、好ましくは、現在の水圧破砕のコストを水圧破砕会社に対して10%以上の増加させないコスト)の破砕流体を設計することを含む。
【0093】
例えば、図3では、完全な円板状(ペニー形状)フラクチャ3が坑井1内のケーシングの穿孔2の周りに存在すると仮定している。坑井内の破砕流体が1.5psi/ftである場合;フラクチャの頂部4での圧力は1350psiであり;穿孔2での圧力は1500psiであり;フラクチャの底部5での圧力は1650psiである。その地層に対する破砕圧力勾配が1.0psi/ftである場合;フラクチャの頂部4での破砕圧力は900psiであり;穿孔2での破砕圧力は1000psiであり;フラクチャの底部5での圧力は1100psiである。ポンプが穴を1.5psi/ftの流体で満たした状態に単に保持する場合、フラクチャの頂部及び底部での圧力は、破砕圧力勾配にわたって(それぞれ)450及び550psiとなる。よって、フラクチャは、下方への成長のバイアスがある状態で、2次元的に全方向に成長する。よって、全ての条件が同じだとすると、岩石の破砕圧力勾配を超える流体の圧力勾配を有することによって下方への成長のバイアスを有するようにフラクチャを誘導する破砕流体を設計することができる。
【0094】
例えば、図4では、また、完全な円板状(ペニー形状)フラクチャ3が坑井1内のケーシングの穿孔2の周りに存在すると仮定している。坑井内の破砕流体が0.5psi/ftであり、穿孔2での圧力が500psiである。フラクチャ内に移された破砕流体が1.5psi/ftである場合;フラクチャの頂部4での破砕圧力は350psiであり;穿孔2での破砕圧力は500psiであり;フラクチャの底部5での圧力は650psiである。その地層の破砕圧力勾配が1.0psi/ftである場合;フラクチャの頂部4での破砕圧力は900psiであり;穿孔2での破砕圧力は1000psiであり;フラクチャの底部5での圧力は1100psiである。軽い0.5psi/ftの破砕流体が1.5psi/ftの破砕流体を移動させて穿孔2に到達すると、表面圧力は450psiとなる。フラクチャの底部を水圧破砕するための圧力は、450psiに等しくされることを留意されたい。フラクチャを上に成長させるのには依然として100psi足りていない。よって、フラクチャは低い圧力勾配0.5psi/ftの流体と1.5psi/ftの流体がフラクチャ内で均衡するまで、完全に下に成長する。よって、全ての条件が同じだとすると、フラクチャの内側の流体が破砕圧力勾配よりも大きい流体によって占められたときに、フラクチャは下に成長する傾向にある。
【0095】
この発明は、フラクチャの配置を飛躍的に改善することができる破砕流体の設計を含む。これは、フラクチャが、飲料用に利用可能な水域に成長しないようにすること、またフラクチャが、炭化水素が標的とされる領域に留まるようにし、領域の外側にまで成長して破砕資源を無駄にしないようにすることを含む、多くの意味がある。
【0096】
最も単純な形態では、破砕流体は、所望の結果を達成するために沈殿速度を制御するように設計された粒子サイズ分布を有する、水/オイル又は他の流体の中の高比重(SG)材料のみを使用するように設計することができる。そのような材料の2つはバライトとヘマタイトであり、4.2と5.4の比重(SG)をそれぞれ有し、両方ともそれらが送り出される殆どの地層よりもかなり高い熱伝導率を有する。
【0097】
図3では、説明のために、暗算を容易にするために極端な例が使用されている。しかしながら、それでもなお、それは実施可能であり達成可能である。1.5psi/ftの流体は、3.46のSGに等しい。水と3.46のSGのバライトスラリーを混合するために、体積で77%のバライトを水に混合する必要がある。しかしながら、類似の3.46のSGスラリーを体積で56%のヘマタイトを使用して、ヘマタイトに混合することができる。摩擦低減添加剤がなかったとしても、そのようなスラリーは、フラクチャの成長方向を制御するためにプロパントとして送り出すことが可能である。一旦送り出されると、フラクチャは、主にそのフラクチャの開始点よりも深く成長する。また、一旦送り出しが止まると、高SGプロパント粒子は、フラクチャの底部に向かって沈降し、坑井に戻る自由な熱流を可能とする熱伝導性の層を形成する。
【0098】
ほとんどの場合、設計技術者はおそらく、破砕開始勾配又はフラクチャ拡張勾配よりも1ガロン当り0.1又は0.2ポンドだけ重いスラリーを設計することを選ぶ。破砕圧力勾配が概して0.6から1.0psi/ftの範囲であるとすると、坑井が5000フィート以上の深さになると、バライト及び/又はヘマタイトと水のみのスラリーは、送り出される粒子サイズの勾配が選択されると、沈殿に必要とされる主要な設計パラメータで、非常に送り出し可能となる。バライトとヘマタイトの両方が、通常の掘削作業に対しては業界固有(API)の粒子サイズを有し、沈殿が課題となる坑井に対してはずっと小さい粒子サイズを有する。重い粒子がフラクチャネットワークの中に深く運ばれる必要がある水圧破砕設計に対しては、ゆっくりと沈降する小さい製品が望ましい場合がある。重い粒子のより速い沈降が望ましい場合には、より大きい、標準APIで認証されたものがうまく機能するであろう。
【0099】
極端な例において、熱効率が最重要でありコストが問題にならない場合には、非常に高い熱伝導率(1000以上の熱伝導率比を有する)小さい粒子を送り出すようにできる。そのような場合に技術的に理想的な粒子には、銀、金、又はダイアモンドの粉末が含まれ得る。
【0100】
あまり極端でない例においては、スズを送り出される粒子とすることができる。技術的には、これは、固体として送り出すことができ、235℃を超えて加熱されたときに液化するので、地熱にとって理想的なプロパントである。液体であるので、熱伝導及び熱対流の両方で坑井に非常に効率的に熱を伝達する。6を超える比重を有するスズは、低い融点(235℃くらい)を有する。液体状態では、温度の高いスズが坑井に向かって上昇して坑井を加熱し、温度の低いスズが加熱されている地球の中心に向かって下方により深く移動するので、スズは、高い熱伝導率比によって、また熱対流によって、坑井に熱を伝達しながら、フラクチャが閉じないのに十分に高いフラクチャ内の圧力勾配を伝達する。セレンは、そのような使用に対してスズに類似する材料である。
【0101】
重い固体の粒子をアルミニウム/砂/セラミック/他のプロパントと水又は他の分散媒とに混合したより複雑なスラリーを生成して、地層とフラクチャに満たされた粒子との間の良好な熱伝導率比を依然として提供しながら、坑井を上又は下に操作するための所望のSGと熱伝導率を達成するようにすることもできる。よって設計技術者は、次の選択肢を有する。1)許容可能な熱伝導率及び密度を有するより低い比重の粒子プロパントを含む破砕流体の間に、重い破砕流体のスラグを断続的に送り出す;2)高SG材料をより低いSGのプロパントに直接混合する;3)2つのスラリー、すなわち、バライト及び/又はヘマタイトなどの良好な熱伝導率を有する高SG粒子で加重された破砕流体と、設計によって必要であればアルミニウム又は砂などのより低いSGのプロパントを有する破砕流体であり、ここで2つのスラリーは、設計及び/又はフィールドデータの要求に基づいて、可変のスラリー密度をダウンホールに送達するように混合することができる。
【0102】
破砕の開始当初は、上方に破砕するのに必要な破砕圧力と下方に破砕するのに必要な破砕圧力との間の差は最小限である。しかしながら、フラクチャ寸法が垂直方向に成長していくにつれて、フラクチャの成長の方向の制御は、この技術を使うことが多くなっていく。垂直井での典型的なサイズのフラクチャにおいては、垂直方向での方向制御は、そのジョブの完了に向かって80%又はそれ以上に良くなり、フラクチャの上方又は下方への成長方向は容易に制御されるようになることが推測される。
【0103】
図8には、どのようにして下方への破砕工程が連続して行なわれるのかを説明するために、簡略化した例が示されている。この例は、どのようにして重い流体を送り出して掘削孔7の底部でフラクチャ6を開始し、そしてより熱い岩石に向かって主に下方向にフラクチャの成長が続けられるのかを説明している。形成されたフラクチャは、高熱伝導性プロパント又は伝導性流体でいっぱいにすることができる。フラクチャは高圧力流体で部分的に満たされてもよく、また、高圧力流体を注入するためにフラクチャを使用することができ、その流体が加熱されて地表に環流されることを可能とする。
【0104】
図9から図11には、ダウンホール熱交換器の概要とその主要部品が示されている。ダウンホール熱交換器は、地熱井で熱収穫するための重要部品である。図9は、分流型ダウンホール熱交換器を示している。複数のリターンホールが分流を形成し、実効環状速度を低減させて、熱交換を改善する。
【0105】
図10は、ダウンホール熱交換器の表面積を増加させる成形パイプを示している。ケーシング穴の直径は、掘削された孔のサイズによって制限される。成形したケーシングジョイントを使用することにより、沈殿するか又はしない高熱伝導性流体でケーシングと地層との間の環状空間が満たされている場合には、ケーシングと地層との間の接触面積を好ましくは最大で40%増加させることができる。窪みがらせん状にされている場合には、接触面積が増加し流体にスパイラル/らせん状の動きを生じさせて、対流熱伝達をより効率的にする。
【0106】
図11は、ダウンホール熱交換器(ストレーキ)のためにらせん流を形成する方法を示す。クローズドループ地熱システムの主な課題は、動作流体とケーシングとの間の接触面積が小さいことである。比較的に高い循環速度では、熱交換は(伝導性に対する)対流項によって支配される。対流項は、軸方向(垂直)の流速に比例し、DHE長さは坑井の深さによって制限される。スクリューの形状で熱交換器を製造してらせん状の流れを準備することにより、飛躍的に実効接触面積が増加し、また相対的な垂直方向の流速が減少する。ダウンホール熱交換器を製造するために3D製造工程を使用することができる。
【0107】
図5では、注入速度及びスラリー密度は一定に維持されてていたにもかかわらず、動作中にポンプ圧力が予想外に低下した。これは、フラクチャが閉じ込め障壁から抜け出して上を覆う地層の中に上方に成長したことの明確な例である。フラクチャは、閉じ込め障壁を突破した後に、最終的に新たな閉じ込め障壁に遭遇するまで、より脆弱な岩石の中に上方に成長し続ける。この発明は、フラクチャの一団が、予め混合されて送り出す準備がされていたか又は実施中に混合される重い流体を送り出すことを可能とし、上方への成長を中断させてフラクチャの成長を下方に誘導する。フラクチャ内の加重されたスラリーの密度が、下方及び外方への成長の兆しが図6に示すように見られるのに十分に大きくなったら、より軽い重量のプロパントスラリーの送り出しを再開することができる。又は、送り出しを停止して、フラクチャ内のプロパントがフラクチャの底部に沈降して、フラクチャの先端を埋め、送り出しが再開されたときに、新たなフラクチャが元の方向とは異なる方向に分岐するようにすることができる。
【0108】
圧力管理された掘削のために既に開発されている、コンピュータ制御プログラム及びコンピュータ制御された圧力マニホールドを、水圧破砕作業の間にリアルタイムで圧力応答を監視してフラクチャを上方向又は下方向にリアルタイムで誘導するためにスラリー密度及び注入速度を調整するように、容易に適用することができる。例えば、軽いプロパントと重いプロパントの予め混合されたスラリーのピットを、自動化されたマニホールドに結び付けることができる。望まない上方への成長を示唆する圧力応答を制御プログラムが確認したら、マニホールドは、ダウンホールに行くスラリーの密度を自動的に増加させるようにできる。同様に、望まない下方への成長がブログラムによって確認されたら、より軽いスラリーを送り出すように自動的に調節することができる。
【0109】
図13は伝導性の亀裂の描写である。流体が坑井から排出されたときにフラクチャが下方に拡張すると、フラクチャは熱伝導性材料でいっぱいにされる。
【0110】
図14は、ダウンホール熱交換器を有するクローズドループシステムである。孔は、2000フィートにわたって、亀裂及び坑井からケーシングストリングの2000フィートの底部を横断して対流によって熱を効率的に分配する熱伝導性流体で満たされている。対流流体が配置された後に、テーパー状のストリングが、底部の8-5/8インチのケーシング、及び頂部の9-5/8インチのケーシングとともに設置され、その内側には5.5インチの断熱されたケーシングが設置される。固定されていないケーシングは、底部から60フィート離れて設定され、これによりケーシングが熱膨張により下方に延びることができるようにする。代替的な実施形態として、2000フィートの底部を、熱交換器に効率的に熱を分配する熱伝導性材料の層で緊密に満たすことができる。この層は、スラリーとしての伝導性材料を送り出して、その送り出しが止められた後に伝導性材料が沈降するようにすることによって、形成することができる。
【0111】
図15には、伝導性の亀裂を有する好ましい実施形態が示されている。ケーシング及び孔は、その孔の底部での破砕開始圧力を超えるダウンホール圧力を与える比重に混合された臭化亜鉛ブラインで満たされている。臭化亜鉛ブラインが飽和しそれでも地層破砕圧力勾配を超えていない場合には、ZnBr塩、バライト、ヘマタイトなどを、加重剤として加えることができる。
【0112】
臭化亜鉛ブラインの静水圧高さが孔の底部での破砕開始圧力を超えると、主に下方向へのフラクチャが成長し始める。流体が坑井から排出されてフラクチャが拡張を続けない高さよりも下の高さにブラインが到達すると、フラクチャは、主に下方向に広がる。フラクチャは、熱伝導及び熱対流によって熱をダウンホール熱交換器に伝達する熱伝導性の臭化亜鉛ブラインで満たされたままとなる。
【0113】
図16には、ダウンホール熱交換器を有するクローズドループシステムが示されている。この実施形態においては、孔は、臭化亜鉛ブラインの静水頭圧がフラクチャに対するそのフラクチャの開口圧力を超える高さにまで満たされている。そしてブラインは、熱をダウンホール熱交換器(8-5/8インチ×9-5/8インチのケーシング)に熱伝導及び熱対流によって伝達する。ブラインは、熱をケーシングストリングを介して亀裂及び坑井から上方に熱対流によって効率的に分配する。
【0114】
一実施形態においては、ブラインは、ダウンホール熱交換器を運転する前に破砕される。図示の例では、テーパー状のストリングが、底部の8-5/8インチのケーシング、及び頂部の9-5/8インチのケーシングととも配置され、その内側に5.5インチの断熱されたケーシングが設置される。代替的な実施形態においては、8-5/8インチ×9-5/8インチのケーシングが、ZnBrブラインでの水圧破砕の前に設置され、そして水圧破砕及び変位が生じ、続いて5.5インチの真空断熱チューブが設置される。熱は、水又はCOなどの流体又は超臨界流体を、9-5/8インチ×5.5インチの環状空間を下方に、そして5.5インチの真空断熱チューブを上方に戻るように送り出すことにより、収穫される。
【0115】
好ましい実施形態においては、8-5/8インチ×9-5/8インチのケーシングは、図10に示すように、開放孔の底部から60フィート離れた位置からZnBrブラインの頂部にまでパイプ形状にされる。ケーシングは固定されておらず、ケーシングは、ケーシングが熱膨張によって下方に延びることができるように、底部から60フィート離れて設置される。
【0116】
動作中、さらなるZnBrブラインを、地層に漏れ出たか又は消失した流体を補うために加えることができる。ZnBrは、古い既に露出している地層の表面エリアが冷えてきたときに、新たな熱源を露出させるために既存のフラクチャを延ばしたり新たなフラクチャを形成したりするために、坑井の寿命の間の如何なるときにでも加えることができる。
【0117】
図17は、表面圧力が地層内のフラクチャネットワークに接している静水頭に働いている実施形態を示している。この実施形態においては、静水頭に作用する圧力は、フラクチャに作用する力がフラクチャ開口圧力に近いか又はそれより上であるが既存のフラクチャネットワークが広がるか又は新たなフラクチャが成長するのに必要となる圧力よりは下であるように常に維持されるように、変えられる。この交互の圧力は、静水頭の頂部の圧力が増加して、流体がフラクチャネットワーク内に注入されるように、フラクチャネットワークに「呼吸」をさせる。その結果、圧力が低下したときに、フラクチャネットワークが閉じて流体を放出する。フラクチャネットワーク内に注入された流体は、加熱された岩石のフラクチャ面の壁の間を通り、そして加熱される。その後に放出された流体は、フラクチャネットワークに入る前の流体よりも熱くなっている。流体のこの「呼吸」は、熱伝導と対流熱伝達を組み合わせて、フラクチャネットワークからの熱収穫を最適化するのを助ける。
【0118】
図17においては、ダウンホール熱収穫の圧力サイクルの間に、圧力が増加すると、フラクチャの幅が図2に示すように増加する。フラクチャの幅が増加すると、水、他の流体、又はスラリーが、フラクチャの中に入る。フラクチャ内部の水は、ダウンホールの地層の熱い壁によって加熱される。サイクルの圧力が減少する部分の間は、加熱された水がフラクチャから坑井の中に排出される。1秒当り、1時間当り、又は1日当りのサイクルは、地層の熱、フラクチャネットワークのサイズ、及びある任意の時間において発電のためのシステムに要求される熱、に相関する。
【0119】
図18及び図19は、理論上の円板状フラクチャが圧力サイクルの様々なステージでどのようにふるまうのかを示しており、圧力が増加したときにフラクチャが広がってより多くの流体がネットワークの中に入ることができ、その後に圧力が減少したときに収縮して流体を放出する。図18は、ケーシング1の穿孔2の周りで成長する円板状フラクチャ3の正面10;静水頭の頂部の表面圧力がフラクチャ開口/閉口圧力に近づいたときの円板状フラクチャ2の側面11;静水頭の頂部の表面圧力が中間サイクルにあるときの円板状フラクチャ2の側面12;静水頭の頂部の表面圧力がフラクチャ拡張圧力に近づいたときの円板状フラクチャ2の側面13、を示している。
【0120】
図20は、どのようにして圧力サイクルの間にフラクチャ拡張圧力を超えて圧力を増加させて、既存のフラクチャネットワークを延ばすか又は新たなフラクチャを形成することができるのかを説明している。この実施形態は、坑井が古く既存のフラクチャの面の近くでの地層の熱が枯渇している場合に重要となる。フラクチャネットワークを延ばすか又は新たなフラクチャを形成することによって、既存のフラクチャ接触面が有している程度にまではその熱が枯渇していない新たな地層の面を露出させることができる。サイクル内でフラクチャ拡張圧力を超える地層への圧力を繰り返すことにより、既存のダウンホールフラクチャを延ばすか又は新たなフラクチャを形成することができる。この形成された新たなフラクチャのエリアは、まだ熱収穫がされていない新たなより熱い岩石の面を露出させる。
【0121】
図21は、上述の「呼吸」工程がダウンホール熱交換器を有する坑井に実施された実施形態を示している。注入工程の間、坑井内の流体はフラクチャネットワークの中に注入されることが分かる。そして、圧力が減少したときに、フラクチャ内の加熱された流体がダウンホール熱交換器をわたって逆流する。収穫された熱は発電するために使用され、電力需要はほとんどの電力系統において一日の間でいつも変動するため、オフピーク時間の間は、流体を加熱のためにフラクチャネットワークの中に注入することができる。そして、電力需要が増加したときに、熱交換器での熱コントラストが増加して電力を供給する能力を増加させるように、加熱された流体をダウンホール熱交換器をわたって逆流させることができる。図21は、ダウンホール熱交換器を有する坑井14;流体が注入されながらダウンホール熱交換器が動作している状態の坑井15;流体が注入され続けている坑井16;及び加熱された流体が流されながらダウンホール熱交換器が動作している状態の坑井17を示している。
【0122】
図22は、上述の「呼吸」工程がダウンホール熱交換器を有さない坑井で実施された実施形態を示している。この実施形態においては、流体は環状空間を下方に流れ、開放孔をわたって、坑井に設置されたケーシングの開口端を上に流れて循環する。この場合には、「呼吸」は、坑井を出てくる流れ上のチョークを開閉することによって遂行される。チョークが閉じられると、背圧が流体を加熱されるためにフラクチャネットワーク内に押し込む。背圧が減少したときには、フラクチャが閉じ始めて、加熱された流体が坑井の外に循環して地表の施設で熱収穫が行なわれるように放出される。流体が地表に到達する位置でチューブ上にチョークを配置することによって、チョーク圧力を増減させて、流体ダウンホールフラクチャネットワークに流体を注入し、またそれから流体を引き出すことができる。
【0123】
図23は、上述の「呼吸」工程がダウンホール熱交換器設計とダウンホール熱交換器を有さないシステムとの両方から逆流エネルギーを取り出す実施形態を示している。ダウンホール熱交換器の場合、タービンは、流れが地表にまで戻ってくるように静水頭の表面圧力が低減されたときに、地表で回収された逆流流体によって駆動する。ダウンホール熱交換器がない場合、エネルギーは、チョークの代わりに、タービン又は他のタイプの発電装置を使用して回収されて、フラクチャネットワークに背圧を形成する。この実施形態においては、フラクチャネットワークの中に流体を押し込むための背圧を形成するためのチョークよりはむしろ、流れは、背圧を形成するためにタービンを通るように変更される。タービン発電機18は、坑井の流体の流れをエネルギーに変換している。この実施形態においては、逆流流体をタービンを駆動するために使用することができる。
【0124】
図24は、2つの坑井がオフピーク時間の間の電力貯蔵のための大型バッテリを形成するために使用されている実施形態を示している。熱交換器にわたって配置された臭化亜鉛を、フラクチャネットワークを開いた状態(フラクチャ開口圧力よりも上)に維持するために使用することができ、又は既存のフラクチャを伸張させ若しくは新たなフラクチャを形成する静水頭圧を形成するためにも使用することができる。ZnBr自体は高価である。しかしながら、オフピーク時間の間に発電された電力を蓄えるためのバッテリ20を形成するためにも使用されるのであれば、それは、その使用に対して実現可能な流体になる。図24は、ZnBr陰極液19を含有する坑井の底部に移動する高密度複合ZnBrスラリーを示している。しかしながら、好ましい実施形態においては、より軽い重量のブラインを陰極液ブラインを貯蔵している坑井の中に送り出しながら、この重い流体は地表でより軽い陰極液ブラインから分離される(図にはセパレータ及びストレージは示されていない)。地表で貯蔵されたこの高密度ブラインは、再充電工程の間に使用される(複合高密度ブラインは、電力が電力系統に送られている放電工程の間に形成される)。地熱井を上述のような電力貯蔵バッテリに結合することによって、需要ピーク期間中にシステムに送るために、オフピーク電力を発電して貯蔵しておくことができる。
【0125】
本発明は、
地下層からの地熱エネルギーの抽出におけるフラクチャの成長を制御する方法であって、
(i)第1の破砕流体を地下層の中に導入するステップと、
(ii)第2の破砕流体を地下層の中に導入するステップと、を含み、
第2の破砕流体の比重は第1の破砕流体の比重とは異なり、それによって少なくとも1つのフラクチャの下方向への成長を制御するようにされ、
ステップ(i)又は(ii)の少なくとも一方における破砕流体が、少なくとも5の熱伝導率比を有するプロパント粒子を含んでいる、方法に関する。
プロパント粒子は、好ましくは、少なくとも5の熱伝導率比を有し、ズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、ダイアモンド、金、銀、又はそれらの組合せを有する。代替的に、プロパント粒子は、スズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、又はそれらの組合せを有する。代替的に、プロパントはスズである。
【0126】
好ましい実施形態においては, 第2の破砕流体の比重が、分散媒1ガロン当りに含まれるプロパント粒子の1ガロン当りのポンドを増減させることによって変えられる。プロパント粒子が少なくとも3.0の比重を有する。
【0127】
前記破砕流体の比重が、坑井が掘削されるときに遭遇する地質に基づいて、さまざまな成長方向を得るために様々なスラリー密度を送り出すように、破砕計画において変えられる。さまざまな深度での領域が単一のフラクチャリング工程の間に水圧破砕されるために開かれ、各領域が、意図的に密度を変化させることによって水圧破砕され、より重い密度の流体はより深い領域にアクセスし、より軽いスラリーはより狭い地層にアクセスするようにする。フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、リアルタイムでスラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される。
【0128】
好ましい実施形態においては、フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、ダウンホールに送り出されるスラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力として使用される。フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される。例えば、フラクチャの成長の速度と方向を示す表面及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力である。比重が可変のプロパントが使用されて、フラクチャリング工程の間に送り出される様々な密度の流体に対して前記プロパントが沈むか、中立的に浮遊するか、又は浮揚するようにする。
【0129】
本発明はまた、成形したケーシングであって、当該ケーシングの半径方向面積を最大化するように設計され、地層の所与の長さにわたって達成される熱収穫を最大化するように配置されたケーシングを備える、地熱井のためのダウンホール熱交換器に関する。
【0130】
本発明はまた、地熱井のためのチュービングストリングであって、外表面と内表面を有し、当該チュービングストリングの前記外表面はスクリュー形状のストレーキを有し、前記ストレーキは、当該チュービングストリングに接触している流体の周方向又は螺旋状の動きを生じさせて、熱対流を増加させ且つ熱収穫を最大化することができるようにされた、地熱井のためのチュービングストリングに関する。
【0131】
本発明はまた、分流すること、有効環状速度を低減すること、及び熱交換を改善することを可能にする複数のリターンホールを有するチューブを備える、地熱井のためのダウンホール熱交換器に関する。
【0132】
本発明はまた、ダウンホール熱交換器を組み立てる方法であって、外側シェル(ケーシング)の一部分が、ケーシングが設定されてプロパント粒子及びスラリーが逆流できない状態でフラクチャの内側に固定された後に地層を水圧破砕することができるように、少なくとも1つの逆流防止弁を有する、方法。前記ダウンホール熱交換器は、アルミニウム合金などの高い熱伝導率の材料で作られているようにできる。前記ケーシング及びダウンホール熱交換器の設置の前に、開放孔が下方に水圧破砕されるようにできる。前記ケーシング(前記ダウンホール熱交換器の前記外側シェル)が開放孔の中へ配置され、前記フラクチャが形成されて、次いでチューブが取り付けられて、前記ダウンホール熱交換器の組み立てが完了する。前記ダウンホール熱交換器が、前記熱交換器を通って地表にまで循環して戻る流体が熱収穫工程の間にダウンホールの層には接触しないように、設計されているようにできる。好ましい実施形態においては、前記破砕流体が、水圧破砕される地層の破砕勾配を超える密度にまで混合された臭化亜鉛ブラインである。
【0133】
好ましい実施形態においては、固体微粒子増量剤が前記臭化亜鉛ブラインに加えられて、破砕スラリーの密度をさらに増加させるようにできる。さらに好ましい実施形態においては、前記固体微粒子増量剤が、臭化亜鉛塩、スズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、ダイアモンド、金、銀、又はそれらの組み合わせである。別の好ましい実施形態においては、前記臭化亜鉛ブライン又は加重されたスラリーが、開放孔に残されて、ダウンホール熱交換器の少なくとも一部を囲む熱伝導性流体及び/又は熱対流流体とし機能するようにする。別の好ましい実施形態においては、様々な比重及び/又は熱伝導率の粒子が、ダウンホール熱交換器の外径の周りに沈降して熱伝導性の層を形成して、地層から前記熱伝導性の粒子の層を介して前記ダウンホール熱交換器の外側シェルにまで熱が効率的に伝達するようにされる。
【0134】
本発明はまた、地下層からの地熱エネルギーの抽出におけるフラクチャの成長を制御する方法であって、破砕流体を地下層に導入するステップであって、前記破砕流体の比重は地層のフラクチャの拡張圧力を超える圧力を地層に生じさせ、それにより少なくとも1つのフラクチャの下方向への成長を制御する、ステップを有し、前記破砕流体は、他の高比重の流体の固体を含まないブラインである、方法に関する。好ましい実施形態においては、固体を含まないブライン又は流体が、臭化亜鉛ブライン水、ギ酸セシウムブライン、ギ酸カリウムブライン、ブロマール、ブロモホルム、テトラブロモエタン(マシュマン:Muthmanns)溶液、ポリタングステン酸ナトリウム、臭素、ツーレ溶液(Thoulets solution)、ジヨードメタン、ヨウ化インジウム、ヨウ化水銀バリウム、クレリチ溶液、液体金属(スズ、ガリウム、インジウム、亜鉛合金、又は水銀など)、又はそれらの組合せを有し、少なくとも5の熱伝導率比を有する。さらに好ましい実施形態においては、スズ、グラファイト、アルミニウム、ヘマタイト、ボーキサイト、又はそれらの組合せなどのプロパント粒子が、前記流体の比重をさらに調節するために加えられるようにできる。別の好ましい実施形態においては、流体が溶融スズである。
【0135】
好ましい実施形態においては、、前記破砕流体の比重が、水又はベース流体の含量を変化させることによりブライン密度を増減させることによって、変えられる。前記破砕流体の比重が、フラクチャに遭遇して開口した地質に基づいて、さまざまな成長方向を得るために様々な密度を送り出すように、破砕計画において変えられることができる。別の実施形態においては、さまざまな深度での領域が単一のフラクチャリング工程の間に水圧破砕されるために開かれ、各領域が、意図的に前記密度を変化させることによって水圧破砕され、より重い密度の流体はより深い領域にアクセスし、より軽いスラリーはより狭い地層にアクセスするようにする。フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、リアルタイムでスラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用されることができる。フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールの圧力及び温度の情報が、ダウンホールに送り出されるスラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力として使用されることができる。フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を変化させてフラクチャの成長を誘導するために使用される。フラクチャの成長の速度と方向を示す地表及び/又はダウンホールのリアルタイムの地震情報が、スラリー密度を自動的に変化させてフラクチャの成長を誘導する自動化されたマニホールドへの入力とすることができる。
【0136】
好ましい実施形態においては、、比重が可変のプロパントが使用されて、フラクチャリング工程の間に送り出される様々な密度の流体に対して前記プロパントが沈むか、中立的に浮遊するか、又は浮揚するようにする。別の好ましい実施形態においては、フラクチャ開口圧力よりも大きい静水頭圧が破砕された開放孔で維持されるように、前記ブラインが前記孔に残され、抗口を通して補充される。前記ブラインが、前記孔に残され、静水頭圧がフラクチャ拡張圧力を超えるまで補充されて、既存のフラクチャが延びるか又は新たなフラクチャが形成される。
【0137】
別の好ましい実施形態においては、表面圧力が増加するに従って流体が前記フラクチャのネットワーク内に押し込まれ、前記圧力が減少したときに流体が放出されるように、前記表面圧力が坑井内の静水頭にかけられる。別の好ましい実施形態においては、前記フラクチャのネットワークから放出された前記流体が加熱される。前記加熱された流体が、熱収穫及びそれに続く地表への搬送のために、ダウンホール熱交換器をわたって流れることができる。前記加熱された流体が熱収穫のために地表にまで循環できるように、前記加熱された流体が前記孔の中の端部開口チューブに入ることができる。逆流流体が、システムからのエネルギーを捕捉するために、地表のタービンに通されるようにできる。地層での背圧を制御して変えるために通常はチョークを通ることになる循環された流体が、代わりに、必要とされる背圧を作り出すために地表のタービンに通されるようにできる。
【0138】
さらに好ましい実施形態においては、後のピーク電力需要の期間の間の放電のために電力を蓄えることができるように大型バッテリが形成されるように、臭化亜鉛ブラインを含む2つの坑井が構成される。

【0139】
下方向へのフラクチャの成長を制御する構想を実証するために現場での実施を行なった。目的は、水平坑井でのフラクチャの上方への成長を最小限にすることであり、その水平坑井は、実際の垂直深さが5398から5424フィートの間で、測定深さで5491から5784フィートの水平部分の近くに処理された穿孔を有する。水圧破砕された穿孔は、垂直方向の成長に対して弱い破砕障壁を有する、ペイゾーンの上部にあった。この場合には、スラリーのバッチは、開口した地層でのフラクチャ拡張勾配を超える密度に混合され、プロパントを担持する通常の破砕流体と交互にされる。
【表1】
【0140】
表1から分かるように、水圧破砕を開始するために、1ガロン当り2ポンドのプロパントを有するスラリーが真水及び2%KCIに混合されて、1ガロン当り9.49の密度を有するスラリーが与えられ、これは、フラクチャ拡張圧力より十分に下であり、また図5に示したそのような発生のサンプルとともに図1で説明されているように、強固なフラクチャの成長障壁に遭遇するまで上方に成長するバイアスを有する。上方への成長で支配されたフラクチャは、ペイゾーンの高い位置のために、この水平坑井に対して問題となっている。
【0141】
軽いスラリーが、低い固体スラリーと共に十分に大きなフラクチャを形成するために最初に送り出され、その結果、フラクチャの任意の特定エリアが固体で埋められた場合に、それに続く高い密度の固体を有するスラリーが、迂回できるより多くのエリアを有するようになった。この軽いスラリーの後に2%KCI水のスラリーが続き、このスラリーは、地層のフラクチャ拡張勾配を超えた1ガロン当り16.77ポンドのスラリーを生成するために加えられた1ガロン当り15.9ポンドのバライトで加重されたものである。この重いスラリーの後に、1ガロン当り2ポンドのプロパントに混合されたKCI水のもう一つのバッチが続く。このプロパントの軽いスラリーと1ガロン当り16.77ポンドの重いスラグとの交互のサイクルは、表1の通りに繰り返され、形成された垂直なフラクチャの低い部分がその地層に対するフラクチャ拡張圧力よりも高い勾配を有する流体で満たされ、フラクチャが下方及び外方に成長して、上方への成長は最小限となる傾向とされた。これらの重いスラリーは、穿孔から出てフラクチャの中に入ると、重力偏析によりフラクチャの下方部分に自然に移動した。孔の下方部分が重いスラリーで満たされた状態を維持することによって、フラクチャの成長が図3及び図4に説明されているように、下方への成長に偏ることを確かにする。。
【0142】
図7の圧力データから分かるように、静水圧の勾配が、送り出されるスラリーの密度変化の間で安定すると、表面圧力はフラクチャの成長が上方向であったときに生じていた一貫した減少を示さない。プロパントを有する1ポンド当り11.74のスラリーの最後の1500バレルが送り出されると、フラクチャの上方への成長の何らかの兆候があった場合(すなわち、一定のポンプ速度を使用しながらも表面ポンプ圧力が時間経過と共に減少し始めた場合)、別の重い16.77ppgスラリーを送り出して上方への成長をもし止まらないとしても軽減はさせて、横方向及び/又は下方向へのフラクチャの成長は続くようにできた。しかしながら、送り出されるスラリーのスケジュールは、設計通りに効果的であった。
【0143】
この現場適用はまた、このアプローチが現場において容易に実施可能であること、及びこれらの高密度スラリーによって地層が容易に水圧破砕されること、を照明している。この坑井は、遠隔地であり、試験されたときにかなりの速度で天然ガスを産出した。
【0144】
代替的に、地熱利用のための本発明にしたがって、上述の方法は、地熱エネルギーの抽出の条件に対して変更することができる。フラクチャは、より大きな割合の重い流体を送り出すことによってより積極的に下方に成長させることができ、及び/又は、スラリーは、水圧破砕される地層に比べて良好な熱伝導率比を有する高比重粒子を使用して、はるかに高い密度(16.77ppg以上で送り出される)にまで加重される。
【0145】
例えば、高比重粒子は、スズ、バライト、ヘマタイト、グラファイト、又は他の如何なる水圧破砕される地層に比べて良好な熱伝導率比を有する高比重粒子、を有し得る。
【0146】
本発明の範囲から逸脱すること無く、上記に変更を加えることができることが理解される。特定の実施形態が示されて説明されているが、この発明の精神又は教示から逸脱すること無く、当業者が修正を加えることができる。説明された実施形態は、単なる例示であり、限定をしない。多くの変形及び修正が可能であり、それらは本発明の範囲内にある。また、例示的な実施形態の1つ又は複数の要素は、省略することができ、また1つ又は複数の他の例示的な実施形態の1つ又は複数の要素と全体的に又は部分的に、組み合わせ、又は置き換えをすることができる。したがって、保護範囲は説明された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は請求の対象の全ての等価物を含むものとする。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】