(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】PPKTP結晶によるマルチモード受信小型化エンタングルメントソースシステム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/39 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G02F1/39
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501785
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2021113428
(87)【国際公開番号】W WO2022048447
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】202010931398.6
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523011853
【氏名又は名称】済南量子技術研究院
【氏名又は名称原語表記】JINAN INSTITUTE OF QUANTUM TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 飛
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA05
2K102AA34
2K102AA37
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102BD03
2K102CA11
2K102DA01
2K102DA10
2K102DA20
2K102DB02
2K102DB06
2K102DD10
2K102EB02
2K102EB06
2K102EB10
2K102EB12
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】
本発明はPPKTP結晶によるマルチモード受信小型化エンタングルメントソースシステムを開示している。
ポンプ光源1、ポンプ光伝送モジュール、エンタングルメント装置4、第1収集装置5―1及び第2収集装置5―2を含む。第1収集装置5―1と第2収集装置5―2とは構造的に対称していない。第1収集装置5―1は第1マルチモードファイバー、時間フィルタリングユニット6及び空間フィルタリングユニット8を含み、前記時間フィルタリングユニット6は前記空間フィルタリングユニット8の前方に位置する。第2収集装置5―2は空間フィルタリングユニット9及び第2マルチモードファイバーを含む。本発明によって、簡素化した構造で、高い偏光コントラスト比、高輝度、高品質のエンタングルメント光を安定に提供できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PPKTP結晶によるマルチモード受信小型化エンタングルメントソースシステムであって、
ポンプ光源(1)、ポンプ光伝送モジュール、エンタングルメント装置(4)、第1収集装置(5―1)及び第2収集装置(5―2)を含み、
ポンプ光源(1)から出力された光は前記ポンプ光伝送モジュールによって、ポンプ光として前記エンタングルメント装置(4)に入力され、
前記エンタングルメント装置(4)は、前記ポンプ光によってPPKTP結晶に基づいてエンタングルメント光を生成するように配置され、前記エンタングルメント光は偏光方向が互いに直交した信号光とアイドラー光を含み、
前記第1収集装置(5―1)は、前記信号光と前記アイドラー光のうちの一方を受信するように配置され、
前記第2収集装置(5―2)は、前記信号光と前記アイドラー光のうちの他方を受信するように配置され、
前記第1収集装置(5―1)と前記第2収集装置(5―2)とは構造的に対称しておらず、
前記第1収集装置(5―1)のみに、時間フィルタリングユニット(6)及び空間フィルタリングユニット(8)がともに配置され、前記時間フィルタリングユニット(6)は前記空間フィルタリングユニット(8)の前方に位置し、
前記第2収集装置(5―2)には空間フィルタリングユニット(9)が配置され、
前記第1収集装置(5―1)は第1マルチモードファイバーをさらに含み、前記第2収集装置(5―2)は第2マルチモードファイバーをさらに含むことを特徴とするエンタングルメントソースシステム。
【請求項2】
前記時間フィルタリングユニット(6)はナローバンドフィルターを含み、及び/又は前記空間フィルタリングユニット(8、9)は絞りを含む請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項3】
前記第1収集装置(5―1)及び/又は前記第2収集装置(5―2)は、前記信号光又はアイドラー光をコリメーションするコリメーションユニット(10、11)をさらに含み、及び/又は、
前記第2収集装置(5―2)は、前記信号光又はアイドラー光を除いた迷光を除去する迷光除去ユニット(7)をさらに含む請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項4】
前記第1及び/又は第2マルチモードファイバーは、105マルチモードファイバーであり、及び/又は、
前記ポンプ光の波長は405nmであり、及び/又は、
前記ナローバンドフィルターは810nmの中心波長及び5nmの半値幅を有し、及び/又は、
前記絞りは1.5mmの孔径を有する請求項2に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項5】
前記ポンプ光伝送モジュールは、コリメーションデバイス(2)及び集光装置(3)を含む請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項6】
前記コリメーションデバイス(2)は、コリメーションレンズを含み、及び/又は、前記集光装置(3)は集光レンズを含む請求項5に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項7】
前記エンタングルメント装置(4)は、第1光学素子(4―1)及びSagnac干渉リング構造(4―2)を含み、
前記第1光学素子(4―1)は、前記ポンプ光を透過させ、前記エンタングルメント光を反射することを許可するように配置され、
前記Sagnac干渉リング構造(4―2) は、前記ポンプ光によってPPKTP結晶に基づいて前記エンタングルメント光を生成するように配置される請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項8】
前記第1光学素子(4―1)は、ダイクロイックミラーを含み、及び/又は、
前記Sagnac干渉リング構造(4―2)は、二波長偏光ビームスプリッター(4―2―1)、二波長半波長板(4―2―4)、第1二波長反射鏡(4―2―2)、第2二波長反射鏡(4―2―3)及びPPKTP結晶(4―2―5)を含む請求項7に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項9】
前記エンタングルメント装置(4)と前記収集装置(5―1、5―2)との間に設けられる測定装置をさらに含む請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項10】
前記第1及び/又は第2収集装置(5―1、5―2)における前記絞りは1つ、又は2つ、又はより多い請求項2に記載のエンタングルメントソースシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子情報技術分野に関し、特に、PPKTP結晶によるマルチモード受信小型化エンタングルメントソースシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
量子エンタングルメントの概念は、最初に、シュレディンガー及び有名なEPRパラドックスから提出され、近年、物理学及び情報通信などの学科の注目されている研究になっている。量子エンタングルメントは、その特別な性質のため、量子計算、量子暗号通信、量子テレポーテーションなどの面で、著しい応用価値を備えている。今まで、キャビティQED、イオントラップ、量子ドットなどの体系において、何れもエンタングルメント状態を生成できるが、光学系によるエンタングルメント状態は高レート及び高輝度を最も容易に実現するため、大幅に応用されて研究される。
【0003】
今まで、非線形結晶における自発的パラメトリック下方変換(SPDC)過程でエンタングルメント光子ペアを生成することは、最も成熟した方法であり、例えば、中国特許文献CN201721027813.5及びCN201110170177.2を参照すればよい。SPDCは、非線形媒体において、強いポンプ光と、量子真空ノイズによる自然輻射とパラメトリック発振を行うことで生成され、即ち、高周波ポンプ光子はある確率で、信号光子、アイドラー光子という1対の低周波のダウンコンバージョン光子に自発的に分解される。その後、PPKTP(周期的分極KTiOPO4)、PPLN(周期的分極LiNbO3)などの周期的分極の非線形結晶及び擬似位相整合技術によってエンタングルメント光子ペアを生成する解決策が出現し、例えば、中国特許文献CN201810955748.5を参照すればよい。擬似位相整合(QPM)技術は、光学結晶非線形分極率を周期的に変調することで、屈折率分散による光波間の位相ミスマッチを補償する技術である。
【0004】
伝統の非線形エンタングルメントソースの製造方法は、メタホウ酸バリウム(BBO)非線形結晶によってパラメトリック下方変換を行ってから、薄い結晶及び波長板を介して横方向、縦方向の空間ウォークオフの補償を行って、よいエンタングルメントソースを生成する。2004年、MITの科学者は周期的分極リン酸チタニルカリウム(PPKTP)結晶を使用して、エンタングルメントソースの輝度を再び大幅に向上させている。実験室の条件で、PPKTP結晶及びSagnac干渉リング技術によって、エンタングルメントソースの輝度が既に優れた効果に達し、近年、擬似位相整合技術によるPPKTP結晶エンタングルメントソースは既に、高輝度、高品質エンタングルメントソースの最適な選択になっている。
【0005】
従って、従来技術は、いくつかのPPKTP結晶によるエンタングルメントソースシステムを続々提出している。
図1に示すように、例えば、出願番号がCN201810955748.5である中国特許は、いくつかのエンタングルメントソース構造を開示している。「周期的分極KTiOPO4結晶による高輝度エンタングルメントソース研究製造」(物理学報)は、PPKTP結晶によるエンタングルメントソース構造を開示し、
図2に示すように、PPKTP結晶において偏光方向が直交した1対のパラメトリック光を生成した後、ダイクロイックミラー及びロングパスフィルターによってポンプ光とパラメトリック光とを離間させてから、PBSによってパラメトリック光子ペアを離間させ、シングルモードファイバーに結合し、そして、BBO結晶による伝統のエンタングルメント光源より、その輝度は1つのオーダー以上高まっていると記載している。「百キロ量子通信実験によるモバイル統合型エンタングルメントソース」もPPKTP結晶によるエンタングルメントソース構造を開示し、空間フィルタリング及びパターンマッチング技術によって、BBO結晶によるエンタングルメントソースの輝度を1000cps/mwに高める。しかしながら、当該解決策の量子エンタングルメントソースシステムは、相変わらず満足の偏光コントラスト比及び輝度を取得できず、
図3のPPKTP結晶によるエンタングルメントソース構造を採用すれば、その輝度を1つのオーダー以上に高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術的解決策を分析して分かるように、従来のPPKTP結晶による偏光エンタングルメントソースシステムは、出力光学性能(例えば、偏光コントラスト比、輝度及び品質など)、性能の安定性、及び経済性などの面に不足があるため、改善の必要がある。
【0007】
例えば、従来のエンタングルメントソースシステムは一般的に、シングルモード受信エンタングルメント光を採用しているが、シングルモードファイバーは高いコストを有し、電力消費が多く、湾曲が苦手であり、溶接に対する要求が高く、付加的な損失が生じやすくて、洗浄に対する要求が高く、そして、従来技術において、両側収集装置は、完全に対称なデバイス構造を採用しているため、システムにおけるデバイスの数が多く、ある程度で資源を浪費する。特に実験及び教学環境で、上記問題は、システム出力光学性能の不安定及び経済性の問題を招致する。また、収集装置から出力されるエンタングルメント光は偏光コントラスト比、輝度及び品質面で、まだ改善の必要がある。
【0008】
従来技術における上記不足に対して、本発明はPPKTP結晶によるマルチモード受信小型化エンタングルメントソースシステムを提出し、マルチモードファイバー受信エンタングルメント光の概念を採用することを提出し、そのためにエンタングルメントソースシステムの片側収集装置に、時間フィルタリングと空間フィルタリング技術との有機結合によって実現されるエンタングルメント光処理解決策を導入することを初めて提出し、エンタングルメントソースシステムに非対称なデバイス構造を形成することで、マルチモード受信エンタングルメントソースを実現するとともに、エンタングルメントソースの偏光コントラスト比、輝度、品質、安定性及び経済性をさらに向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的に、本発明のPPKTP結晶によるマルチモード受信小型化エンタングルメントソースシステムはポンプ光源1、ポンプ光伝送モジュール、エンタングルメント装置4、第1収集装置5―1及び第2収集装置5―2を含む。
【0010】
ポンプ光源1から出力された光は、前記ポンプ光伝送モジュールによって、ポンプ光として、前記エンタングルメント装置4に入力され、
前記エンタングルメント装置4は、前記ポンプ光によってPPKTP結晶に基づいてエンタングルメント光を生成するように配置され、前記エンタングルメント光は偏光方向が互いに直交した信号光とアイドラー光を含み、
前記第1収集装置5―1は、前記信号光と前記アイドラー光のうちの一方を受信するように配置され、前記第2収集装置5―2は、前記信号光と前記アイドラー光のうちの他方を受信するように配置され、
前記第1収集装置5―1と前記第2収集装置5―2とは構造的に対称しておらず、前記第1収集装置5―1のみに、時間フィルタリングユニット6及び空間フィルタリングユニット8がともに配置され、前記時間フィルタリングユニット6は前記空間フィルタリングユニット8の前方に位置し、前記第2収集装置5―2には空間フィルタリングユニット9が配置され、前記第1収集装置5―1は第1マルチモードファイバーをさらに含み、前記第2収集装置5―2は第2マルチモードファイバーをさらに含む。
【0011】
好ましくは、前記時間フィルタリングユニット6はナローバンドフィルターであり、及び/又は前記空間フィルタリングユニット8、9は絞りである。
【0012】
さらに、前記第1及び/又は前記第2収集装置5―1、5―2は、前記信号光又はアイドラー光をコリメーションするコリメーションユニット10、11をさらに含み、及び/又は、前記第2収集装置5―2は、前記信号光又はアイドラー光を除いた迷光を濾過する迷光除去ユニット7をさらに含む。
【0013】
好ましくは、前記第1及び/又は第2マルチモードファイバーは105マルチモードファイバーであり、及び/又は、前記ポンプ光の波長は405nmであり、及び/又は、前記ナローバンドフィルターは810nmの中心波長及び5nmの半値幅を有し、及び/又は、前記絞りは1.5mmの孔径を有する。
【0014】
さらに、前記ポンプ光伝送モジュールはコリメーションデバイス2及び集光装置3を含む。
【0015】
好ましくは、前記コリメーションデバイス2はコリメーションレンズを含み、及び/又は、前記集光装置3は集光レンズを含む。
【0016】
さらに、前記エンタングルメント装置4は第1光学素子4―1及びSagnac干渉リング構造4―2を含む。第1光学素子4―1は、前記ポンプ光を透過させ、前記エンタングルメント光を反射すると許可されるように配置され、Sagnac干渉リング構造4―2は、前記ポンプ光によってPPKTP結晶に基づいて前記エンタングルメント光を生成するように配置される。
【0017】
好ましくは、第1光学素子4―1はダイクロイックミラーを含み、及び/又は、Sagnac干渉リング構造4―2は二波長偏光ビームスプリッター4―2―1、二波長半波長板4―2―4、第1二波長反射鏡4―2―2、第2二波長反射鏡4―2―3及びPPKTP結晶4―2―5を含む。
【0018】
さらに、本発明のエンタングルメントソースシステムは、前記エンタングルメント装置4と前記収集装置5―1、5―2との間に設けられる測定装置をさらに含む。
【0019】
前記第1及び/又は第2収集装置5―1、5―2における絞りは1つ、又は2つ、又はより多い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、図面を結合して本発明の具体的な実施形態をさらに詳しい説明する。
本発明の実施例又は従来技術における技術的解決策をより明らかに説明するために、以下、実施例又は従来技術の記載の必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に記載の図面は本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、進歩性に値する労働をしないことを前提として、これらの図面に基づいて、他の図面を取得できる。
【
図1】従来技術の1つの量子エンタングルメントソースシステムである。
【
図2】従来技術の別の量子エンタングルメントソースシステムである。
【
図3】従来技術のさらなる量子エンタングルメントソースシステムである。
【
図4】本発明のエンタングルメントソースシステムの1つの例示の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施例を詳しく記載する。以下の実施例は例を挙げて提供され、本発明の精神を当業者に十分に伝達する。従って、本発明は本明細書に開示される実施例に限定されない。
【0022】
図4は、本発明のエンタングルメントソースシステムの1つの例示の構造模式図である。
【0023】
図に示すように、当該エンタングルメントソースシステムは、ポンプ光源1、ポンプ光伝送モジュール、エンタングルメント装置4、第1収集装置5―1及び第2収集装置5―2を含む。
【0024】
ポンプ光源1は、偏光を出力するように配置され、例えば、ポンプレーザによって実現される。1つの例示において、ポンプ光源1は、波長が405nmであるポンプレーザを含む。
【0025】
ポンプ光源1から出力された偏光はエンタングルメント装置4のポンプ光として、ポンプ光伝送モジュールによってエンタングルメント装置4に入力される。
【0026】
図4の実施形態において、ポンプ光伝送モジュールは、コリメーションデバイス2、及び集光装置3を含む。
【0027】
当該実施形態において、コリメーションデバイス2は、ポンプ光源1から出力された偏光をコリメーションし、集光装置3は偏光を集光させる。
【0028】
例示として、コリメーションデバイス2はコリメーションレンズ2を含む。集光装置3は集光レンズ3を含む。
【0029】
図4の例示において、ポンプ光源1の射出中心、コリメーションレンズ2の焦点及び集光レンズ3の焦点は同一直線に設けられている。当業者であれば、ポンプ光伝送モジュールは他の光路構造及び位置関係を有してもよく、ポンプ光源1から出力される光をポンプ光として、所望の状態でエンタングルメント装置4に入力すればよいことを理解できる。
【0030】
エンタングルメント装置4は、第1光学素子4―1及びSagnac干渉リング構造4―2を含む。
【0031】
第1光学素子4―1は、ポンプ光を透過させ、エンタングルメント光を反射することを許可するように配置される。例示として、第1光学素子4―1はダイクロイックミラー(DM)4―1であってもよい。
【0032】
Sagnac干渉リング構造4―2は、ポンプ光によってPPKTP結晶に基づいてエンタングルメント光、即ち、エンタングルメント光子ペアを生成するように配置される。当業者であれば分かるように、当該エンタングルメント光子ペアは、偏光方向が直交した信号光とアイドラー光を含む。
【0033】
図4に示すように、例示として、Sagnac干渉リング構造4―2は二波長偏光ビームスプリッター4―2―1、二波長半波長板4―2―4、第1二波長反射鏡4―2―2、第2二波長反射鏡4―2―3及びPPKTP結晶4―2―5を含む。
【0034】
当該例示において、ポンプ光伝送モジュールによって、エンタングルメント装置4に入ったポンプ光は、まず、ダイクロイックミラー4―1を透過して偏光ビームスプリッター4―2―1に達し、偏光ビームスプリッター4―2―1によって2本の偏光に分解されてから、当該2本の偏光はSagnac干渉リングのループにそれぞれ入って、反対する方向に沿ってループにおいて伝播される。ループの伝播過程で、2本の偏光はそれぞれ半波長板4―2―4、反射鏡4―2―2和4―2―3、及びPPKTP結晶4―2―5を介して、ループにおいて1周循環した後、偏光ビームスプリッター4―2―1に戻って集まり、干渉作用を発揮し、干渉結果は偏光ビームスプリッター4―2―1を介して、異なるポート(反射端及び透過端)によってそれぞれ射出され、信号光及びアイドラー光を含むエンタングルメント光子ペアを提供する。
【0035】
図4を引き続いて参照し、信号光とアイドラー光のうちの一方は偏光ビームスプリッター4―2―1から出力された後、第2収集装置5―2に伝送され、他方はダイクロイックミラー4―1によって反射された後、第1収集装置5―1に伝送される。
【0036】
本発明によれば、第1収集装置5―1及び第2収集装置5―2は非対称のデバイス構造を有するように配置される。
【0037】
具体的に、第1収集装置5―1は、時間フィルタリングユニット6、空間フィルタリングユニット8及び第1マルチモードファイバーを含む。第2収集装置5―2は、空間フィルタリングユニット9、迷光除去ユニット7及び第2マルチモードファイバーを含む。
【0038】
時間フィルタリングユニット6は、エンタングルメント光に対して時間モード選択処理を行う。好適な例示として、時間フィルタリングユニット6はナローバンドフィルター6によって実現される。
【0039】
空間フィルタリングユニット8、9は、エンタングルメント光に対して空間モード選択処理を行う。好適な例示として、空間フィルタリングユニット8、9は絞り8、9によって実現される。
【0040】
迷光除去ユニット7は、エンタングルメント光を除いた迷光を除去することで、ノイズ低減機能を提供する。例示として、迷光除去ユニット7はロングパスフィルター7を含む。
【0041】
本発明によれば、マルチモード受信を実現するとともに、システムの偏光コントラスト比を向上させるために、
図4に示すように、第1収集装置5―1において、時間フィルタリングユニット6は空間フィルタリングユニット8の前方に配置されなければならない。これによって、片側収集装置において、先ず時間、後に空間の方式で、エンタングルメント光に対して時間・空間フィルタリング処理を行うことで、マルチモード受信の高い偏光コントラスト比、高輝度、高品質のエンタングルメント光子ペアを実現できる。また、本発明において、片側(第1)収集装置のみに時間・空間フィルタリングユニットが配置され、同側の収集装置に時間フィルタリングユニット(例えば、ナローバンドフィルター6)及び迷光除去ユニット(例えば、ロングパスフィルター7)が同時に配置されなくてもよいため、従来技術の完全に対称なデバイス構造に比べると、エンタングルメントソースシステム構造を大幅に簡素化して、資源を節約し、実験教学環境において、高品質のエンタングルメントソースを容易に取得できる。
【0042】
さらに、本発明の収集装置において、絞り8、9の孔径の大きさは絞りの配置位置と関係し、絞りが受信端に近いほど、絞りの孔径が大きくされる必要がある。従って、本発明の収集装置において、絞りは受信端に近い場所に設けられる。
【0043】
実験によって証明されるように、エンタングルメントソースシステムの収集装置において、ナローバンドフィルターを導入して、エンタングルメント光に対して時間フィルタリングを行わなくて、絞りの孔径の大きさ及び距離の遠さのみを調節すれば、エンタングルメントソースシステムの偏光コントラスト比は基本的に変更しない。概して、第1収集装置5―1から収集されたエンタングルメント光子に対して、まず、ナローバンドフィルター6によって時間モード選択を行ってから、絞り8によって空間モード選択を行って、結果として、エンタングルメントソースシステムの偏光コントラスト比を著しく高める。
【0044】
好適な実施形態において、マルチモードファイバーは105マルチモードファイバーを採用してもよい。ナローバンドフィルターは810nmの中心波長及び5nmの半値幅を有してもよい。絞りは1.5mmの孔径を有してもよい。以上のように、当業者であれば理解できるように、絞りの孔径はその配置位置に基づいて適切に調整される。好ましくは、本発明のエンタングルメントソースシステムには、絞りの位置決めを実現する絞り位置決め装置が含まれる。例えば、絞り位置決め装置の1つの実施形態において、まず、シングルモードファイバーによってエンタングルメント光子を収集してから、シングルモードファイバーによって赤い光を反射することで、絞りの位置決めを実現する。
【0045】
1つの実施形態において、収集装置における絞りの数量は2つ又はより多くてもよい。
【0046】
さらに、
図4に示すように、本発明の収集装置に、マルチモードファイバーによって受信されるように、エンタングルメント光をコリメーションするコリメーションユニット10、11がさらに設けられてもよい。
【0047】
1つの実施形態において、コリメーションユニット10、11は、コリメーションレンズを含む。
【0048】
当業者であれば理解できるように、本発明のエンタングルメントソースシステムは、学生の実験室課程の実験(異なるエンタングルメント状態の製造/分析、Bell不等式の検査、量子状態トモグラフィー測定、量子鍵配送を行う)、科学実験(量子光学、量子通信、量子情報)に適用されてもよいし、商業応用(暗号化、計測、光学センシング)に拡張されてもよい。
【0049】
例えば、マルチモードファイバーによってエンタングルメント光子を収集した後、時間相関単一光子検出技術を使用して、同時計数採集を行って、偏光コントラスト比を測定することで、単一光子計数、同時計数及び偏光コントラスト比を取得する。
【0050】
好ましくは、特に、エンタングルメントソースシステムは、教学又は科学研究場合に適用されるように設計される場合、実験ニーズに基づいて、エンタングルメントソースシステムに測定装置を配置することで、エンタングルメント光子ペアを測定し、偏光状態の選択を実現し、後続の実験操作を行って、例えば、Bell不等式検査などの他の実験を実現する。
【0051】
1つの実施形態において、エンタングルメント装置4と収集装置5―1、5―2との間には測定装置が設けられている。
【0052】
特に、エンタングルメントソースシステムが教学に適用される実施形態において、第1及び/又は第2収集装置にナローバンドフィルター、ロングパスフィルター及び絞りのうちの任意のいくつかを配置して調節することで、他のエンタングルメントソースシステムと比較実験を行って、例えば、空間フィルタリングと時間フィルタリングとの相互の共同作用による、エンタングルメント光性能に対する改善を了解する。
【0053】
以上から分かるように、本発明のエンタングルメントソースシステムにおいて、片側収集装置のみにおいて、先に時間、後に空間の二重フィルタリング処理をエンタングルメント光に提供することで、マルチモード受信時、偏光コントラスト比を著しく高める。これによって、最少のデバイス、最も資源を節約する方式で、高品質のエンタングルメントソースシステムのマルチモード受信を実現でき、構造全体が簡単、ポータブル、経済であり、出力光学性能が安定且つ光学品質が高く、よい教学及び科学実用価値を備える。
【0054】
さらに、マルチモード受信を許可するため、エンタングルメントソースシステムにおいてマルチモードファイバー受信エンタングルメント光を使用でき、従来技術において、シングルモードファイバーによる問題を克服し、ポータブル且つ経済的であり、特に、教学及び科学研究応用場所に適する。また、従来技術の小型エンタングルメントソースシステムが一般的に完全に対称なデバイス構造を採用し、及び偏光コントラスト比が低い現状と違って、本発明において、片側収集装置のみに空間・時間フィルタリングユニットを配置し、非対称なデバイス配置を形成し、構造でエンタングルメントソースシステムをさらに簡素化し、光学資源を最大限に節約し、偏光コントラスト比及び輝度を高めて、よい教学及び科学実用価値を備える。
【0055】
以上、図面を結合して、具体的な実施例によって本発明を説明したが、ただ例示的であり、本発明の原理を説明するためのものであり、上記実施例は本発明の範囲を限定しない。本発明の精神及び範囲から逸脱しない場合、当業者は上記実施例に対して各種の組み合わせ、補正及び等価置換を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PPKTP結晶によるマルチモード受信小型化エンタングルメントソースシステムであって、
ポンプ光源(1)、ポンプ光伝送モジュール、エンタングルメント装置(4)、第1収集装置(5―1)及び第2収集装置(5―2)を含み、
ポンプ光源(1)から出力された光は前記ポンプ光伝送モジュールによって、ポンプ光として前記エンタングルメント装置(4)に入力され、
前記エンタングルメント装置(4)は、前記ポンプ光によってPPKTP結晶に基づいてエンタングルメント光を生成するように配置され、前記エンタングルメント光は偏光方向が互いに直交した信号光とアイドラー光を含み、
前記第1収集装置(5―1)は、前記信号光と前記アイドラー光のうちの一方を受信するように配置され、
前記第2収集装置(5―2)は、前記信号光と前記アイドラー光のうちの他方を受信するように配置され、
前記第1収集装置(5―1)と前記第2収集装置(5―2)とは構造的に対称しておらず、
前記第1収集装置(5―1)のみに、時間フィルタリングユニット(6)及び空間フィルタリングユニット(8)がともに配置され、前記時間フィルタリングユニット(6)は前記空間フィルタリングユニット(8)の前方に位置し、
先ず時間、後に空間の方式で、信号光とアイドラー光とのうちの一方に対して時間・空間フィルタリング処理を行って、
前記第2収集装置(5―2)には空間フィルタリングユニット(9)が配置され、
前記第1収集装置(5―1)は第1マルチモードファイバーをさらに含み、前記第2収集装置(5―2)は第2マルチモードファイバーをさらに含むことを特徴とするエンタングルメントソースシステム。
【請求項2】
前記時間フィルタリングユニット(6)はナローバンドフィルターを含み、及び/又は前記空間フィルタリングユニット(8、9)は絞りを含む請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項3】
前記第1収集装置(5―1)及び/又は前記第2収集装置(5―2)は、前記信号光又はアイドラー光をコリメーションするコリメーションユニット(10、11)をさらに含み、及び/又は、
前記第2収集装置(5―2)は、前記信号光又はアイドラー光を除いた迷光を除去する迷光除去ユニット(7)をさらに含む請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項4】
前記第1及び/又は第2マルチモードファイバーは、105マルチモードファイバーであり、及び/又は、
前記ポンプ光の波長は405nmであり、及び/又は、
前記ナローバンドフィルターは810nmの中心波長及び5nmの半値幅を有し、及び/又は、
前記絞りは1.5mmの孔径を有する請求項2に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項5】
前記ポンプ光伝送モジュールは、コリメーションデバイス(2)及び集光装置(3)を含む請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項6】
前記コリメーションデバイス(2)は、コリメーションレンズを含み、及び/又は、前記集光装置(3)は集光レンズを含む請求項5に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項7】
前記エンタングルメント装置(4)は、第1光学素子(4―1)及びSagnac干渉リング構造(4―2)を含み、
前記第1光学素子(4―1)は、前記ポンプ光を透過させ、前記エンタングルメント光を反射することを許可するように配置され、
前記Sagnac干渉リング構造(4―2) は、前記ポンプ光によってPPKTP結晶に基づいて前記エンタングルメント光を生成するように配置される請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項8】
前記第1光学素子(4―1)は、ダイクロイックミラーを含み、及び/又は、
前記Sagnac干渉リング構造(4―2)は、二波長偏光ビームスプリッター(4―2―1)、二波長半波長板(4―2―4)、第1二波長反射鏡(4―2―2)、第2二波長反射鏡(4―2―3)及びPPKTP結晶(4―2―5)を含む請求項7に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項9】
前記エンタングルメント装置(4)と前記収集装置(5―1、5―2)との間に設けられる測定装置をさらに含む請求項1に記載のエンタングルメントソースシステム。
【請求項10】
前記第1
収集装置(5―1)及び/又は
前記第2収集装置
(5―2)における前記絞りは1つ、又は2つ、又はより多い請求項2に記載のエンタングルメントソースシステム。
【国際調査報告】