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特表2023-530792PTFE複合粉末及びその調製方法並びに当該粉末を含む複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】PTFE複合粉末及びその調製方法並びに当該粉末を含む複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20230712BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20230712BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230712BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230712BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20230712BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20230712BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEW
C08L27/18
C08K3/013
C08L63/00 A
C08L71/12
C08L101/12
C08L67/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541238
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 CN2021098245
(87)【国際公開番号】W WO2022246892
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】202110594664.5
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】522266139
【氏名又は名称】蚌埠壹石通聚合物復合材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】BENGBU YISHITONG POLYMER COMPOSITES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 韶暉
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 雪冰
(72)【発明者】
【氏名】秦 永法
(72)【発明者】
【氏名】蒋 学▲シン▼
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA24
4F070AC19
4F070AC46
4F070AE14
4F070AE27
4F070DA33
4F070DB03
4F070DC02
4F070DC05
4F070DC07
4J002BD15W
4J002CD00X
4J002CF16X
4J002CF18X
4J002CH07X
4J002DB016
4J002DE016
4J002DF016
4J002DG026
4J002DK006
4J002EF057
4J002EG017
4J002EX037
4J002EX067
4J002EZ007
4J002FD016
4J002FD207
4J002GF00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、PTFE複合粉末及びその調製方法並びに当該粉末を含む複合材料を提供し、PTFE粉末の技術分野に関する。前記PTFE複合粉末は、PTFE粉末、無機粉末及び表面処理剤という成分を含む。前記無機粉末は、PTFE粉末の界面を被覆することにより、無機粉末層が形成されている。前記表面処理剤は、無機粉末層を被覆している。本発明により得られた複合材料においては、PTFE複合粉末と基体ポリマーの適合性が従来技術に比べてより優れ、添加量がより多く、その誘電率及び誘電損失がより小さいので、5G材料として用いられることに適している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTFE粉末、無機粉末及び表面処理剤という成分を含み、前記無機粉末は、PTFE粉末の界面を被覆することにより無機粉末層が形成され、前記表面処理剤は、無機粉末層を被覆していることを特徴とするPTFE複合粉末。
【請求項2】
前記PTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の質量比は、100:1~50:0.01~10であり、PTFE粉末の粒子径は、0.2μm~40μmであることを特徴とする請求項1に記載のPTFE複合粉末。
【請求項3】
前記無機粉末は、酸化物、水酸化物、炭化物、ホウ化物、硫化物及び窒化物のうちの少なくとも1つを含み、粒子径が1nm~0.4μmであることを特徴とする請求項1に記載のPTFE複合粉末。
【請求項4】
前記表面処理剤は、シランカップリング剤、チタン酸エステルカップリング剤、アルミン酸エステルカップリング剤、ステアリン酸及びステアリン酸塩のうちの1つ又は複数を含むことを特徴とする請求項1に記載のPTFE複合粉末。
【請求項5】
分散剤及びPTFE粉末を、水と有機溶媒のうち少なくとも1つからなる溶媒に添加することにより、PTFE分散液を得るステップ(1)と、
無機粉末前駆体とステップ(1)のPTFE分散液を均一に攪拌し、pH値をアルカリ性に調整することで、前駆体がPTFE粉末の界面において均一に反応して堆積するようにさせ、ろ過、水洗浄及び乾燥を行うことにより、無機被覆親水性PTFE粉末を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末に対して表面処理剤を用いて処理を行うことにより、有機被覆疎水性PTFE複合粉末を得るステップ(3)とを含むことを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載のPTFE複合粉末の調製方法。
【請求項6】
ステップ(1)においける前記分散剤は、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤のうちの1つ又は複数であることを特徴とする請求項5に記載のPTFE複合粉末の調製方法。
【請求項7】
前記陰イオン界面活性剤は、高級脂肪酸石鹸類、硫酸アルキル類、スルホン酸アルキル類、リン酸アルキル類及びアルキルアミドベタイン類の陰イオン界面活性剤を含み、前記陽イオン界面活性剤は、第四アンモニウム塩類、ハロゲン化ピリジン類、イミダゾリン化合物類及びアルキルホスフェート置換アミン類の陽イオン界面活性剤を含み、前記両性界面活性剤は、アミノ酸型及びベタイン型の両性界面活性剤を含み、前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテル類及びポリオール類の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項6に記載のPTFE複合粉末の調製方法。
【請求項8】
ステップ(1)における前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン及びジオキサンのうちの1つ又は複数を含むことを特徴とする請求項5に記載のPTFE複合粉末の調製方法。
【請求項9】
前記無機粉末前駆体は、硝酸アルミニウム、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸メチル、ケイ酸tert-ブチル、シリカゾル、アルミニウムゾル、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム、アルミニウムトリメチル、アルミニウムトリエチル、アルミニウム第二ブチルアルコール、アルミニウムイソプロポキシドを含むことを特徴とする請求項5に記載のPTFE複合粉末の調製方法。
【請求項10】
ステップ(2)においては、無機粉末、無機粉末分散液及び無機粉末ゾルのうちの少なくとも1つを添加して無機粉末前駆体と共に被覆することを特徴とする請求項5に記載のPTFE複合粉末の調製方法。
【請求項11】
請求項1~4の何れか1項に記載のPTFE複合粉末又は請求項6~10の何れか1項により調製されたPTFE複合粉末を含むことを特徴とする複合材料。
【請求項12】
前記複合材料の基体ポリマーは、エポキシ樹脂、炭化水素樹脂、ポリフェニレンエーテル及び液晶ポリマーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項11に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTFE粉末の技術分野に属し、具体的には、PTFE複合粉末及びその調製方法並びに当該粉末を含む複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(Teflon又はPTFE)は、俗に「プラスチックキング」と呼ばれ、テトラフルオロエチレンの重合により形成されるポリマー化合物であり、優れた化学的安定性、耐食性、密封性、耐汚染性、高潤滑性、非粘着性、電気絶縁性、耐熱性、耐候性、耐摩耗性、高い靭性及び強度を有し、ポリテトラフルオロエチレンのパイプ、棒、ベルト、板及びフィルム等を作ることができる。PTFEは、特定の形状に加工して直接的に使用することができるだけでなく、粉末にして他の材料に充填して複合材料を調製し、他の材料の性能を向上させるための役割を果たすこともできる。
【0003】
しかしながら、PTFEは、結晶化度が高く、界面エネルギーが非常に低いため、PTFEは、界面が疎水性であっても、他のポリマーとの適合性が比較的に低いことを招いてしまう。これにより、PTFE粉末が他のポリマーと複合材料を形成する場合、材料間の界面結合が比較的弱く、相互の粘度が比較的低い。
【0004】
また、PTFEは、優れた誘電特性を有しており、その誘電率(2.1)及び誘電損失(0.0003)が大多数のポリマーより低く、5G高周波高速通信材料に用いられることに非常に適しており、例えば、高周波高速銅被覆ラミネート及びプリント回路基板の製造である。しかしながら、PTFEが銅被覆ラミネート基材として直接的に用いられる場合、硬度が低い等の理由により、加工性能が不十分であるため、従来の銅被覆ラミネートの多くは、エポキシ樹脂を基体として選択する。しかしながら、エポキシ樹脂は、誘電率(3.6)及び誘電損失(0.025)が比較的高いため、5G材料に用いられる場合、その誘電率及び誘電損失を更に低減する必要がある。低い誘電率及び誘電損失を有するPTFE粉末を適切な方法で改質し、他のポリマーとの適合性を向上させることができれば、PTFE粉末は、エポキシ樹脂及び他の基体ポリマー、例えば、炭化水素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPO)、液晶ポリマー(LCP)等の誘電特性改質剤として用いることができ、その誘電率及び誘電損失を更に低減する役割を果たすことができ、それによって、材料側において5Gの高周波高速技術を実現することができる。また、PTFE材料を単独で使用する場合における加工性能が低いという欠点を避けることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した問題を解決するために、現在のPTFE界面改質に用いられる主な方法は、ナトリウムナフタレン溶液化学処理法、プラズマ処理法、高エネルギー光線又は紫外線照射グラフト化法、エキシマレーザー処理法を含む。なお、ナトリウムナフタレン溶液化学処理法は、効果が良く、当該方法は、界面のフッ素原子を除去し、C=C、C=O、COOH等の極性基を導入することにより、界面の親水性を高める。しかし、処理後、PTFEが変色しやすく、長時間空気に曝されると、処理効果が失われやすく、それに大量の廃液を処理する必要があるので、環境保護に不利であり、比較的危険である。また、処理後、PTFEの界面に形成される特定の極性基により、類似する構造を有する物質のみと良く適合し、PTFE粉末と他の物質の結合が制限されてしまう。他の方法は、環境に比較的やさしいが、それらの多くは、固定形状を有するPTFE製品の界面に適用し、粉末形状のPTFEを効果的かつ完全に処理することが困難である。また、プラズマ処理、高エネルギー光線又は紫外線照射グラフト化、エキシマレーザー処理の方法は、使用する設備が高価であり、生産効率が低く、大規模な工業生産が困難であり、改質効果も同じく長く維持することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の目的は、PTFE複合粉末を提供し、PTFE粉末の界面エネルギーが低いことに由来する、PTFE粉末と他のポリマーの界面結合が比較的弱く、適合性が比較的良くないという問題を解決することである。当該粉末の処理効果は、長時間安定が保て、成分を調整することで様々なポリマーと良好な適合性を実現することができる。当該目的は、以下の技術案により実現する。
【0007】
PTFE複合粉末は、PTFE粉末、無機粉末及び表面処理剤(界面処理剤)という成分を含み、前記無機粉末は、PTFE粉末の界面を被覆することにより、無機粉末層が形成され、前記表面処理剤は、無機粉末層を被覆している。
【0008】
前記PTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の質量比は、100:1~50:0.01~10である。
【0009】
前記PTFE粉末の粒子径は、0.2μm~40μmである。
【0010】
前記PTFE粉末は、他の低い界面エネルギーのフッ素樹脂粉末を更に含む。
【0011】
前記無機粉末は、酸化物、水酸化物、炭化物、ホウ化物、硫化物及び窒化物のうちの少なくとも1つを含み、粒子径が1nm~0.4μmである。水に溶けない、化学反応を起こさない上述した形態の無機粉末を選択すれば良い。
【0012】
前記表面処理剤は、シランカップリング剤、チタン酸エステルカップリング剤、アルミン酸エステルカップリング剤、ステアリン酸及びステアリン酸塩のうちの1つ又は複数を含む。
【0013】
PTFE粉末とターゲットポリマーの良好な適合性を最終的に実現し、ポリマーにおけるPTFE粉末の分散を改善し、ターゲットポリマーとの界面結合を強化し、複合材料の性能を改善するために、最終用途のポリマーと良好な適合性を有する表面処理剤を選択することができる。
【0014】
本発明の第二の目的は、PTFE複合粉末の調製方法を提供し、当該方法には、ナトリウムナフタレン処理液が用いられていない。
【0015】
PTFE複合粉末の調製方法は、分散剤及びPTFE複合粉末を、水及び有機溶媒の少なくとも1つからなる溶媒に加えることにより、PTFE分散液を得るステップ(1)と、無機粉末前駆体とステップ(1)のPTFE分散液を均一に攪拌し、pH値をアルカリ性に調整することで、前駆体がPTFE粉末の界面において均一に反応して堆積するようにさせ、ろ過、水洗浄及び乾燥を行うことにより、無機被覆親水性PTFE粉末を得るステップ(2)と、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末に対して表面処理剤を用いて処理を行うことにより、有機被覆疎水性PTFE複合粉末を得るステップ(3)とを備える。
【0016】
ステップ(1)においける前記分散剤は、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤のうちの1つ又は複数である。体系が衝突しない限り、異なる種類の界面活性剤を選択することができる。
【0017】
前記陰イオン界面活性剤は、高級脂肪酸石鹸類、硫酸アルキル類、スルホン酸アルキル類、リン酸アルキル類及びアルキルアミドベタイン類の陰イオン界面活性剤を含むが、これらに限らない。
【0018】
前記陽イオン界面活性剤は、第四アンモニウム塩類、ハロゲン化ピリジン類、イミダゾリン化合物類及びアルキルホスフェート置換アミン類の陽イオン界面活性剤を含むが、これらに限らない。
【0019】
前記両性界面活性剤は、アミノ酸型及びベタイン型両性界面活性剤を含むが、これらに限らない。
【0020】
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテル類及びポリオール類の非イオン界面活性剤を含むが、これらに限らない。
【0021】
ステップ(1)における前記分散剤は、非イオン界面活性剤であることが好ましい。非イオン界面活性剤は、電気的中性、比較的低い臨界ミセル濃度及び比較的低い表面張力を有するので、PTFEエマルジョンに良好な分散性を有させ、エマルジョンの固形分含有量を高めることができる。
【0022】
ステップ(1)における前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン及びジオキサンのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限らない。
【0023】
より良い分散効果を達成するために、好ましくは、ステップ(1)においては、まず、分散剤を溶媒に加え、その後、PTFE粉末を加えて分散を行う。
【0024】
分散効果を更に高めるために、PTFE分散液に対してボールミル粉砕又は粉砕を行う。
【0025】
前記無機粉末前駆体は、硝酸アルミニウム、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸メチル、ケイ酸tert-ブチル、シリカゾル、アルミニウムゾル、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム、アルミニウムトリメチル、アルミニウムトリエチル、アルミニウム第二ブチルアルコール、アルミニウムイソプロポキシドを含むが、これらに限らない。ここで、反応して無機粉末を得ることが可能な他の原材料も前駆体として用いることができる。
【0026】
無機粉末前駆体がオルトケイ酸エチルである場合、均一に被覆する効果を得るために、pH値をアルカリ性に調整した後、均一に攪拌し、その後、酸を加えて触媒作用を与える。前記酸は、フッ化水素酸であることが好ましい。
【0027】
ステップ(2)においては、無機粉末、無機粉末分散液及び無機粉末ゾルのうちの少なくとも1つを加えて無機粉末前駆体と共に被覆しても良い。
【0028】
ステップ(2)に記載の前記撹拌の装置は、磁気撹拌、電気撹拌、超音波分散及びボールミル粉砕のうちの1つ又は2つを含む。ろ過は、真空ろ過、遠心分離、圧力ろ過等を含む。
【0029】
ステップ(2)に記載の前記水洗浄は、脱イオン水に新たに均一に分散させた後に再びろ過し、1~5回の操作を繰り返して行ってもよく、イオン洗浄法で4~15時間連続洗浄を行ってもよい。
【0030】
ステップ(2)に記載の前記乾燥の装置は、ブラスト乾燥オーブン、真空オーブン、マッフル炉、雰囲気炉等を含み、温度が50~350℃であり、2~8時間保温する。
【0031】
本発明の第三の目的は、前記PTFE複合粉末を含む複合材料を提供することである。当該複合材料は、誘電率及び誘電損失が低い。
【0032】
前記複合材料の基体ポリマーは、エポキシ樹脂、炭化水素樹脂、ポリフェニレンエーテル及び液晶ポリマーのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限らない。
【発明の効果】
【0033】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。
【0034】
1、本発明においては、分散剤は、一端が親油性基を有し、一端が親水性基を有するので、調製プロセスにおいては、分散剤の親油性基がPTFE粉末と結合し、無機粉末前駆体が沈殿し、親水性基と結合し、無機粉末がPTFE粉末を被覆することを実現し、無機被覆親水性PTFE粉末が得られる。その後、表面処理剤を用いて無機被覆層を処理し、PTFE粉末とポリマーの良好な適合性を実現する。また、ポリマーの種類により、異なる表面処理剤を選択することができる。既存技術に比べ、適用範囲がより広い。
【0035】
既存のPTFE粉末とポリマーの直接的な界面接触に比べ、本発明は、表面疎水性処理の無機粉末層の過渡により、PTFE粉末とポリマーの界面の直接な接触を、適合性が良い無機粉末とポリマーの接触に変える。よって、本発明により得られたPTFE複合粉末は、ポリマーと良好な適合性を有する。
【0036】
2、本発明のPTFE複合粉末の表面の無機、有機被覆層の性能は、比較的に安定しているので、改質効果を長時間維持することができる。
【0037】
3、本発明の調製方法では、ナトリウムナフタレン処理液等の原材料が用いられておらず、危険が少なく、使用される装置が比較的にシンプルであるので、工業生産に適用することができる。
【0038】
4、本発明により得られた複合材料においては、PTFE複合粉末と基体ポリマーの適合性は、従来技術に比べてより優れるので、添加量がより多く、複合材料の誘電率及び誘電損失がより小さく、5G材料として用いられることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】原材料のPTFE粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】第一の実施形態によるPTFE複合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図3】第二の実施形態によるPTFE複合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図4】第三の実施形態によるPTFE複合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図5】第四の実施形態によるPTFE複合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図6】第五の実施形態によるPTFE複合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図7】第六の実施形態によるPTFE複合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図8】第七の実施形態によるPTFE複合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図9】第八の実施形態によるPTFE複合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図10】第九の実施形態によるPTFE複合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図11】エポキシ樹脂におけるPTFE粉末の分散図である。
図12】エポキシ樹脂におけるPTFE複合粉末の分散図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の技術的手段、作成特徴、達成目標及び機能効果をより理解しやすくするために、以下、具体的な実施形態及び図面を参照しながら、本発明を更に説明する。
【0041】
本発明で用いられる原材料は、以下の通りである。
【0042】
分散剤:臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル
シランカップリング剤:KH560、A-137、A-171
(第一の実施形態)
ステップ(1)においては、1.5gの臭化セチルトリメチルアンモニウム、100gのPTFE粉末を100gの水に加えて均一に分散させることにより、PTFE分散液を得る。
【0043】
ステップ(2)においては、36.76gのAl(NO・9HOを、ステップ(1)のPTFE分散液に加えて均一に攪拌し、アンモニア水を加えてpH値を8~9に調整し、0.5時間(h)攪拌し、真空ろ過し、イオン洗浄機で6時間連続洗浄し、200℃で5時間乾燥することにより、無機被覆親水性PTFE粉末を得る。
【0044】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末を再攪拌し、200gの水に超音波分散させ、1gのエタノール、1gのKH-560、0.25gの水を加え、純粋な酢酸でpHを3~4に調整し、磁気撹拌し、25℃で30分間(min)撹拌し、室温で2時間撹拌し、真空ろ過し、120℃で10時間乾燥することにより、PTFE複合粉末を得る。重量で、PTFE複合粉末の中のPTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の比率は、100:5:1である。
【0045】
(第二の実施形態)
ステップ(1)においては、5gの臭化セチルトリメチルアンモニウム、100gのPTFE粉末を50gの水に加えて均一に分散させることにより、PTFE分散液を得る。
【0046】
ステップ(2)においては、294.12gのAl(NO・9HOを、ステップ(1)のPTFE分散液に加えて均一に攪拌し、アンモニア水を加えてpH値を8~9に調整し、25℃で0.5時間機械攪拌し、真空ろ過し、イオン洗浄機で6時間連続洗浄し、200℃で5時間乾燥することにより、無機被覆親水性PTFE複合粉末を得る。
【0047】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末を再攪拌し、200gの水に超音波分散させ、5gのエタノール、5gのKH-560、1.25gの水を加え、純粋な酢酸でpHを3~4に調整し、磁気撹拌し、25℃で30分間撹拌し、室温で2時間撹拌し、真空ろ過し、120℃で10時間乾燥することにより、PTFE複合粉末を得る。重量で、PTFE複合粉末の中のPTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の比率は、100:40:5である。
【0048】
(第三の実施形態)
ステップ(1)においては、2gの臭化セチルトリメチルアンモニウム、100gのPTFE粉末を150gの水に加えて均一に分散させることにより、PTFE分散液を得る。
【0049】
ステップ(2)においては、73.53gのAl(NO・9HOを、ステップ(1)のPTFE分散液に加えて均一に攪拌し、アンモニア水を加えてpH値を8~9に調整し、25℃で0.5時間機械攪拌し、真空ろ過し、イオン洗浄機で6時間連続洗浄し、200℃で5時間乾燥することにより、無機被覆親水性PTFE複合粉末を得る。
【0050】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末を再攪拌し、200gの水に超音波分散させ、3gのエタノール、3gのKH-560、0.75gの水を加え、純粋な酢酸でpHを3~4に調整し、磁気撹拌し、25℃で30分間撹拌し、室温で2時間撹拌し、真空ろ過し、120℃で10時間乾燥することにより、PTFE複合粉末を得る。重量で、PTFE複合粉末の中のPTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の比率は、100:10:3である。
【0051】
(第四の実施形態)
ステップ(1)においては、2gの臭化セチルトリメチルアンモニウム、100gのPTFE粉末を150gのエタノールに加えてボールミル粉砕により均一に分散させることにより、PTFE分散液を得る。
【0052】
ステップ(2)においては、147.06gのAl(NO・9HOを、ステップ(1)のPTFE分散液に加えて均一に攪拌し、アンモニア水を加えてpH値を8~9に調整し、25℃で0.5時間機械攪拌し、真空ろ過し、脱イオン水に再び均一に分散させた後に再度ろ過し、操作を3回繰り返し、200℃で5時間乾燥することにより、無機被覆親水性PTFE粉末を得る。
【0053】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末を再攪拌し、200gの水に超音波分散させ、3gのエタノール、3gのKH-560、0.75gの水を加え、純粋な酢酸でpHを3~4に調整し、磁気撹拌し、25℃で30分間撹拌し、室温で2時間撹拌し、真空ろ過し、120℃で10時間乾燥することにより、PTFE複合粉末を得る。重量で、PTFE複合粉末の中のPTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の比率は、100:20:3である。
【0054】
(第五の実施形態)
ステップ(1)においては、1.5gの臭化セチルトリメチルアンモニウム、100gのPTFE粉末を100gの水と100gのエタノールからなる溶媒に加えて均一に分散させることにより、PTFE分散液を得る。
【0055】
ステップ(2)においては、73.53gのAl(NO・9HOを、ステップ(1)のPTFE分散液に加えて均一に攪拌し、アンモニア水を加えてpH値を8~9に調整し、25℃で0.5時間機械攪拌し、真空ろ過し、脱イオン水に再び均一に分散させた後に再度ろ過し、操作を3回繰り返し、200℃で5時間乾燥することにより、無機被覆親水性PTFE粉末を得る。
【0056】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末を再攪拌し、200gの水に超音波分散させ、3gのエタノール、3gのKH-560、0.75gの水を加え、純粋な酢酸でpHを3~4に調整し、磁気撹拌し、25℃で30分間撹拌し、室温で2時間撹拌し、真空ろ過し、120℃で10時間乾燥することにより、PTFE複合粉末を得る。重量で、PTFE複合粉末の中のPTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の比率は、100:10:3である。
【0057】
(第六の実施形態)
ステップ(1)においては、2gのポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、100gのPTFE粉末を、200gの水に加えて均一に分散させ、10%の水酸化ナトリウムで体系のpH値を9~10に調整することにより、PTFE分散液を得る。
【0058】
ステップ(2)においては、24.79の水、13.6gのエタノール、35.71gのTEOSを攪拌して混合した後、ステップ(1)のPTFE分散液を加えて均一に攪拌し、25℃で1時間磁気攪拌し、10%のHNOで体系のpHを5~6に調整し、85℃まで温度を上昇させて20時間反応させ、真空ろ過し、イオン洗浄機で6時間連続洗浄し、130℃で5時間乾燥させることにより、無機被覆親水性PTFE粉末を得る。
【0059】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末を再攪拌し、200gの水に超音波分散させ、3gのエタノール、3gのKH-560、0.75gの水を加え、純粋な酢酸でpHを3~4に調整し、磁気撹拌し、25℃で30分間撹拌し、室温で2時間撹拌し、真空ろ過し、120℃で10時間乾燥することにより、PTFE複合粉末を得る。重量で、PTFE複合粉末の中のPTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の比率は、100:10:3である。
【0060】
(第七の実施形態)
ステップ(1)においては、2gのポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、100gのPTFE粉末を、200gの水に加えて均一に分散させ、10%の水酸化ナトリウムでpH値を9~10に調整することにより、PTFE分散液を得る。
【0061】
ステップ(2)においては、12.4gの水、6.8gのエタノール、17.86gのTEOSを攪拌して混合した後、ステップ(1)のPTFE分散液を加えて均一に攪拌し、25℃で1時間磁気攪拌し、10%のHCl溶液で体系のpHを5~6に調整し、85℃まで温度を上昇させて20時間反応させ、真空ろ過し、イオン洗浄機で6時間連続洗浄し、130℃で5時間乾燥させることにより、無機被覆親水性PTFE粉末を得る。
【0062】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末を再攪拌し、200gの水に超音波分散させ、3gのエタノール、3gのKH-560、0.75gの水を加え、純粋な酢酸でpHを3~4に調整し、磁気撹拌し、25℃で30分間撹拌し、室温で2時間撹拌し、真空ろ過し、120℃で10時間乾燥することにより、PTFE複合粉末を得る。重量で、PTFE複合粉末の中のPTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の比率は、100:5:3である。
【0063】
(第八の実施形態)
ステップ(1)においては、2gのポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、100gのPTFE粉末を、200gの水に加えて均一に分散させ、10%の水酸化ナトリウムでpH値を9~10に調整することにより、PTFE分散液を得る。
【0064】
ステップ(2)においては、49.58gの水、27.2gのエタノール、71.43gのTEOSを攪拌して混合した後、ステップ(1)のPTFE分散液を加えて均一に攪拌し、25℃で1時間磁気攪拌し、10%のHF溶液で体系のpHを5~6に調整し、85℃まで温度を上昇させて20時間反応させ、真空ろ過し、イオン洗浄機で6時間連続洗浄し、130℃で5時間乾燥させることにより、無機被覆親水性PTFE粉末を得る。
【0065】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末を高速ミキサーに3gのA-137を加え、500r/minの高速で20分間撹拌し、排出後にオーブンを用いて120℃で30分間加熱することにより、PTFE複合粉末を得る。重量で、PTFE複合粉末の中のPTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の比率は、100:20:3である。
【0066】
(第九の実施形態)
ステップ(1)においては、2gのポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、100gのPTFE粉末を、80gの水と20gのN,N-ジメチルホルムアミドからなる溶媒に加えて均一に分散させ、10%の水酸化ナトリウムでpH値を9~10に調整することにより、PTFE分散液を得る。
【0067】
ステップ(2)においては、49.58gの水、27.2gのエタノール、71.43gのTEOSを攪拌して混合した後、ステップ(1)のPTFE分散液を加えて均一に攪拌し、25℃で1時間磁気攪拌し、10%のHF溶液で体系のpHを5~6に調整し、85℃まで温度を上昇させて20時間反応させ、真空ろ過し、イオン洗浄機で6時間連続洗浄し、130℃で5時間乾燥させることにより、無機被覆親水性PTFE粉末を得る。
【0068】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で得られた無機被覆親水性PTFE粉末を再攪拌し、200gの水に超音波分散させ、3gのエタノール、3gのKH-560、0.75gの水を加え、純粋な酢酸でpHを3~4に調整し、磁気撹拌し、25℃で30分間撹拌し、室温で2時間撹拌し、真空ろ過し、120℃で10時間乾燥することにより、PTFE複合粉末を得る。重量で、PTFE複合粉末の中のPTFE粉末と無機粉末と表面処理剤の比率は、100:20:3である。
【0069】
(比較例)
100gのPTFE粉末を80gの水に加えて攪拌し、その後、3gのKH-560、0.75gの水を加え、純粋な酢酸を加えてpHを3~4に調整し、磁気攪拌し、25℃で30分間攪拌し、室温で2時間攪拌し、真空ろ過し、120℃で10時間乾燥することにより、シランカップリング剤で処理したPTFE粉末を得る。
【0070】
<エポキシ系における異なる粉末の誘電特性の比較>
100部のPTFE原粉末及び第一の実施形態~第九の実施形態で得られたPTFE複合粉末を、それぞれ100部のビスフェノールAエポキシ樹脂に加え、5部の1,2-ジメチルイミダゾールを固化剤として更に加え、混合して均一に分散し、得られた混合物を真空装置に入れて内部空気を除去し、8時間熟成させてから使用待ち、得られた粘稠なものを予熱した型にゆっくりと注ぎ、その後、徐々に勾配で温度を上昇させて固化させることにより、粉末で充填されたエポキシ樹脂複合材料を得る。
【0071】
広帯域誘電スペクトルアナライザーを用い、得られたエポキシ樹脂複合材料の誘電率及び誘電損失をテストし、データを表1に示している。
【0072】
【表1】
【0073】
表1のデータから分かるように、本発明により調製されたPTFE複合粉末がエポキシ樹脂に用いられ、純粋なPTFE粉末に比べ、誘電率が安定している状況において、誘電損失が顕著に低下する。
【0074】
比較例では、シランカップリング剤を用いて処理したが、未処理のデータとほぼ一致している。
【0075】
第一の実施形態~第九の実施形態における原材料のPTFE粉末、調製された無機被覆親水性PTFE粉末、調製されたPTFE複合粉末及び比較例の処理後のPTFE粉末をそれぞれ2gの重量を量り、100mlの水に加えて5分間超音波処理し、可視分光光度計を用いて456nmでの透過率を測定し、親水性と疎水性を特徴付け、データを表2に示している。
【0076】
【表2】
【0077】
PTFE粉末は、完全に疎水性であり、水面に浮くため、測定された水溶液の光透過率は、100%である。比較例でKH560を用いて処理されたPTFE粉末の場合、カップリング剤がPTFE表面に連結できないため、PTFE粉末は、依然として疎水性であり、水面に浮いている。無機被覆後のPTFE粉末は、水において均一に分散して懸濁液を形成し、溶液の光透過率が顕著に低下する。無機被覆親水性PTFE粉末は、表面処理剤で処理された後、親水性から疎水性に変化して水面に浮き、溶液の光透過率が大きくなる。超音波分散後の無機被覆親水性PTFE複合粉末は、安定して懸濁液を形成することができるので、PTFE粉末は、無機粉末と剥離されておらず、無機粉末がPTFE粉末の表面をしっかりと覆っていることが分かる。
【0078】
実施形態のPTFE複合粉末、実施形態の比較例のカップリング剤で処理されたPTFE粉末を、それぞれ同量のビスフェノールAエポキシ樹脂に加えて攪拌した後に放置し、実施形態では、層状化されておらず、比較例では、混合溶液が徐々に層状となり、シランカップリング剤処理が有機物におけるPTFE粉末の適合性を効果的に改善しなかったことが分かった。
【0079】
図2~10と図1を比較して分かるように、無機粉末は、PTFE粉末の表面に被覆層を形成している。
【0080】
図11から分かるように、PTFE粉末は、エポキシ樹脂において凝集している。
【0081】
図12から分かるように、本発明により調製されたPTFE複合粉末は、エポキシ樹脂において均一に分散している。
【0082】
以上、本発明の基本原理及び主な特徴並びに本発明のメリットを説明した。当業者は、本発明が上述した実施形態に制限されず、上述した実施形態及び明細書に記載されている内容が本発明の原理を説明するものに過ぎず、本発明の精神及び範囲から逸脱しなければ、本発明に対して様々な変更及び改良を行うことができるが、これらの変更及び改良が何れも特許請求の範囲に属することを理解すべきである。本発明の保護請求する範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物により定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】