IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グリー エレクトリック アプライアンス、インコーポレイテッド オブ チューハイの特許一覧

特表2023-530803フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ
<>
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図1
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図2
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図3
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図4
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図5
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図6
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図7
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図8
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図9
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図10
  • 特表-フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/344 20060101AFI20230712BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
F04C18/344 351M
F04C18/344 361G
F04C29/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552521
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2020139110
(87)【国際公開番号】W WO2022001033
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010606496.2
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517441262
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンス、インコーポレイテッド オブ チューハイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドン、ミンジュ
(72)【発明者】
【氏名】フ、ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、フイジュン
(72)【発明者】
【氏名】ツー、ジャー
(72)【発明者】
【氏名】レン、リーピン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ペンカイ
【テーマコード(参考)】
3H040
3H129
【Fターム(参考)】
3H040AA07
3H040BB05
3H040CC06
3H040CC09
3H040DD06
3H040DD19
3H040DD20
3H040DD23
3H129AA05
3H129AA17
3H129AB01
3H129BB01
3H129BB16
3H129BB42
3H129BB50
3H129CC04
3H129CC19
3H129CC25
(57)【要約】
フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリが開示される。フランジは、フランジ本体10を含み、軸孔11がフランジ本体10に設けられ、背圧溝12が軸孔11の片側に設けられ、連通部13が軸孔11の片側に近接する背圧溝12の側壁に設けられ、連通部13が背圧溝12を軸孔11と連通させ、連通部13が背圧溝12へ潤滑オイルを供給する、又は潤滑オイルを排出するように構成される。連通部13が、フランジ本体10の背圧溝12の、軸孔11の片側に近接する側壁に設けられるという事実、及び潤滑オイルが、連通部13によって適時に背圧溝12に投入され得るという事実により、関連技術におけるフランジと主軸30との間に形成される隙間によってオイルが供給されることに起因する、円滑でないオイルの供給という問題を避ける。前記構造を有するフランジを使用することによって、潤滑オイルが背圧溝12に円滑に入ることができ、安定した確実なオイル圧が、スライディング部40が延びる各角度でスライディング部40の尾部においてもたらされることが可能であり、安定した動作がまた、延びる及び引っ込む最大速度でも維持されることが可能であり、その結果、前記フランジを有するポンプ本体アセンブリの安定性及び信頼性が効率的に改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸孔(11)が設けられたフランジ本体(10)であって、前記軸孔(11)に加えて背圧溝(12)が設けられ、連通部(13)が前記背圧溝(12)の前記軸孔(11)に近接する側壁に設けられ、前記連通部(13)が前記背圧溝(12)を前記軸孔(11)と連通させ、前記連通部(13)が前記背圧溝(12)へ潤滑オイルを供給する、又は前記背圧溝(12)から潤滑オイルを排出するように構成される、フランジ本体(10)
を含むフランジ。
【請求項2】
前記連通部(13)が少なくとも1つのノッチ及び貫通孔を含み、前記ノッチが前記背圧溝(12)の前記側壁に設けられ、前記貫通孔が前記背圧溝(12)の前記側壁に設けられる、請求項1に記載のフランジ。
【請求項3】
複数の連通部(13)があり、前記複数の連通部(13)が離隔して前記軸孔(11)の周囲に配設される、請求項1又は2に記載のフランジ。
【請求項4】
前記連通部(13)が、前記背圧溝(12)の前記軸孔(11)に近接する前記側壁に配置される第1のノッチ(131)を含み、夾角α1が、前記第1のノッチ(131)の両端と前記軸孔(11)の中心との間の接続線によって形成され、A-50°≦α1≦A+50°であり、Aが、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝の外へ第1の初期位置から延び始めるとき、前記スライディング・ベーンの速度がその最大に達するまでの、回転の角度である、請求項1から3までのいずれか一項に記載のフランジ。
【請求項5】
前記連通部(13)が、前記背圧溝(12)の前記軸孔(11)に近接する前記側壁に配置される第2のノッチ(132)をさらに含み、夾角α2が、前記第2のノッチ(132)の両端と前記軸孔(11)の中心との間の接続線によって形成され、B-50°≦α2≦B+50°であり、Bが、前記スライディング・ベーンが前記スライディング・ベーン溝に向かって第2の初期位置から引っ込み始めるとき、前記スライディング・ベーンの前記速度がその最大に達するまでの、回転の角度である、請求項4に記載のフランジ。
【請求項6】
前記連通部(13)が円弧状に構成され、夾角θが、前記連通部(13)の両端と前記軸孔(11)の中心との間の接続線によって形成され、A-50°≦θ≦B+50°又はA-30°≦θ≦B+30°であり、Aが、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝の外へ延び始めるとき、前記スライディング・ベーンの速度がその最大に達するまでの、回転の角度であり、Bは、前記スライディング・ベーンが前記スライディング・ベーン溝に向かって引っ込み始めるとき、前記スライディング・ベーンの前記速度がその最大に達するまでの、回転の角度である、請求項1から3までのいずれか一項に記載のフランジ。
【請求項7】
前記連通部(13)が前記背圧溝(12)の前記側壁に形成されるノッチであり、前記ノッチとフランジ面との高低差がH1であり、前記背圧溝(12)の深さがH2であり、前記フランジ本体(10)の厚さがHであり、H2のHに対する比率が0.1~0.6の範囲にあり、H1のH2に対する比率が0.1~1の範囲にある、請求項1から6までのいずれか一項に記載のフランジ。
【請求項8】
H1≧1mmである、請求項7に記載のフランジ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載のフランジを含む、ポンプ本体アセンブリ。
【請求項10】
シリンダ(20)であって、前記フランジ本体(10)がシリンダ(20)側に配置される、シリンダ(20)、及び
中央部(31)を有する主軸(30)であって、少なくとも1つのスライディング・ベーン溝が中央部(31)に形成され、スライディング・ベーン(40)が前記少なくとも1つのスライディング・ベーン溝の各々に設けられ、主軸(30)を前記軸孔(11)が貫通し、前記中央部(31)が前記シリンダ(20)に配置され、主軸(30)が、前記スライディング・ベーン(40)を回転駆動させて、前記シリンダ(20)において圧縮動作を行うように構成される、主軸(30)
をさらに含む、請求項9に記載のポンプ本体アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2020年6月29日に提出された中国特許出願第202010606496.2号に基づき、同出願への優先権を主張し、同出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ポンプ本体機器の技術分野に、特にフランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
スライディング・ベーン式圧縮機は、他の種類の圧縮機と比較して、単純な部品、偏心構造でないこと、円滑なトルク、及び低振動という利点を有する。その中のスライディング・ベーンは、遠心力又はスライディング・ベーンの背圧によって、スライディング・ベーン溝から押し出され、それによって、シリンダの内壁に当接して、封止を形成するので、安定した確実なスライディング・ベーンの背圧は、スライディング・ベーン式圧縮機の品質に影響する重要な要素である。
【0004】
関連技術における回転ベーン式圧縮機において、スライディング・ベーンが操作中に円滑に外へ延ばされ得ることを確実にするために、背圧チャンバ(主軸のスライディング・ベーン及びスライディング・ベーン溝、上側フランジ背圧溝、並びに下側フランジ背圧溝によって形成されるスライディング・ベーン尾部チャンバ)が、一般的に、スライディング・ベーンの尾部に設けられ、スライディング・ベーンの頭部の前後のチャンバからのガス圧、及びスライディング・ベーン溝の側面上の摩擦などを乗り越え、スライディング・ベーンの頭部が全動作過程において常にシリンダの内部と接触することを達成するために、オイル・プールから高圧のオイルが導入されて、スライディング・ベーンの後部へ推進力を与える。
【0005】
スライディング・ベーンの背圧のためのオイルは、主に、オイル・プールからギヤ式オイル・ポンプによって送り出され、その後、主軸の中心孔及び主軸の中心孔と接続される主軸の側孔を通してフランジ背圧溝に入り、それによって、背圧チャンバを満たす。
【0006】
関連技術における背圧構造に関して、主軸の側孔からのオイルは、図1で示されるように、入る前にある特定の隙間を通過する必要がある。スライディング・ベーンの運動の法則により、スライディング・ベーンは、周期的に変化する速度で、スライディング・ベーン溝において往復運動を行う。スライディング・ベーンが高速で延びるときに、スライディング・ベーンの尾部チャンバの容積が急速に増加し、背圧オイルが適時に補充されるのが困難である。特に圧縮機の高周波動作中に、オイルの補充が適時に行われない場合、スライディング・ベーンの背圧が減少し、その結果、スライディング・ベーンの背圧が不足し、したがって、スライディング・ベーンの両側のチャンバからのガス圧の作用下で、スライディング・ベーンの頭部がシリンダの内壁から離れ、その結果、圧縮機の性能に影響を及ぼす漏出が起こり、スライディング・ベーンが、再び外へ延びるときに、シリンダの内壁と衝突し、それにより圧縮機の信頼性に影響を及ぼす。さらに、スライディング・ベーンが高速で引っ込むときに、スライディング・ベーン尾部チャンバにおけるオイルが適時に排出されることができず、その結果、背圧が高すぎ、スライディング・ベーンの頭部とシリンダの内壁との間の摩擦が増大し、動力消費が増加し、それによって、圧縮機のエネルギー効率及び信頼性に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施例の一態様により、その中に形成される軸孔を有するフランジ本体であって、軸孔に加えて背圧溝が設けられ、連通部が軸孔に近接する側の背圧溝の側壁に設けられ、連通部が背圧溝を軸孔と連通させ、連通部が背圧溝へ潤滑オイルを供給する、又は背圧溝から潤滑オイルを排出するように構成される、フランジ本体を含む、フランジが提供される。
【0008】
一部の実施例では、連通部は、背圧溝の側壁に設けられるノッチを含む、及び/又は連通部は、背圧溝の側壁に設けられる貫通孔構造を含む。
【0009】
一部の実施例では、複数の連通部が設けられ、複数の連通部が離隔して軸孔の周囲に配設される。
【0010】
一部の実施例では、連通部は第1のノッチを含み、背圧溝は軸孔に近接する側の側壁に第1の位置を有し、第1のノッチが第1の位置に形成され、夾角α1が、第1のノッチの両端と軸孔の中心との間の接続線によって形成され、A-50°≦α1≦A+50°であり、Aは、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝の外へ第1の初期位置から延び始めるとき、スライディング・ベーンの速度がその最大に達するまでの、回転の角度である。
【0011】
一部の実施例では、連通部は第2のノッチをさらに含み、第2のノッチが第1のノッチから離隔して配設され、背圧溝は軸孔に近接する側の側壁に第2の位置を有し、第2のノッチが第2の位置に形成され、夾角α2が、第2のノッチの両端と軸孔の中心との間の接続線によって形成され、B-50°≦α2≦B+50°であり、Bは、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝に向かって第2の初期位置から引っ込み始めるとき、スライディング・ベーンの速度がその最大に達するまでの、回転の角度である。
【0012】
一部の実施例では、連通部は円弧状に構成され、夾角θが、連通部の両端と軸孔の中心との間の接続線によって形成され、A-50°≦θ≦B+50°又はA-30°≦θ≦B+30°であり、Aは、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝の外へ延び始めるとき、スライディング・ベーンの速度がその最大に達するまでの、回転の角度であり、Bは、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝に向かって引っ込み始めるとき、スライディング・ベーンの速度がその最大に達するまでの、回転の角度である。
【0013】
一部の実施例では、連通部は背圧溝の側壁に形成されるノッチであり、ノッチとフランジ面との高低差がH1であり、背圧溝の深さがH2であり、フランジ本体の厚さがHであり、H2のHに対する比率が0.1~0.6の範囲にあり、H1のH2に対する比率が0.1~1の範囲にある。
【0014】
一部の実施例では、H1≧1mmである。
【0015】
本開示の実施例の別の態様では、上記の実施例におけるフランジを含む、ポンプ本体アセンブリが提供される。
【0016】
一部の実施例では、ポンプ本体アセンブリは、シリンダであって、フランジ本体がシリンダ側に配置される、シリンダ、及び、中央部を有する主軸であって、少なくとも1つのスライディング・ベーン溝のうちの少なくとも1つが中央部に形成され、スライディング・ベーンが各スライディング・ベーン溝に設けられ、主軸を軸孔が貫通し、中央部がシリンダに配置され、主軸が、スライディング・ベーンを回転駆動させて、シリンダにおいて圧縮動作を行うように構成される、主軸をさらに含む。
【0017】
一部の実施例では、軸孔に近接する側のフランジ本体の背圧溝の側壁に連通部を設けることによって、潤滑オイルが適時に連通部によって背圧溝に運ばれ、したがって、関連技術におけるフランジと主軸との間に形成される隙間によってオイルを供給することに起因する、円滑でないオイルの供給という問題を避けることができる。この構造を有するフランジを使用することによって、潤滑オイルが背圧溝に円滑に入ることができ、その結果、安定した確実なオイル圧が、スライディング・ベーンが延びる各角度でスライディング・ベーンの尾部においてもたらされることが可能であり、安定した動作が、延びる及び引っ込む最大速度でも維持され、したがって、フランジを有するポンプ本体アセンブリの安定性及び信頼性を効率的に改善することができる。
【0018】
本明細書に例示される図面は、本開示のさらなる理解をもたらすために使用され、本開示の一部を形成し、本開示の例示的な実施例及びその説明は、本開示を不適切に限定するのではなく、説明することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】関連技術におけるフランジと主軸との間の隙間による潤滑オイルの供給の概略図である。
図2】本開示によるフランジの第1の実施例の構造図である。
図3】A-Aでの図2の断面構造図である。
図4】本開示によるフランジの第2の実施例の構造図である。
図5】本開示によるフランジの第3の実施例の構造図である。
図6】本開示によるフランジの第4の実施例の構造図である。
図7】B-Bでの図6の断面構造図である。
図8】本開示によるフランジの第5の実施例の構造図である。
図9】本開示の一部の実施例により設けられるフランジに形成される背圧溝での圧力と、関連技術におけるフランジに形成される背圧溝での圧力との比較図である。
図10】本開示の一部の実施例により提供されるポンプ本体アセンブリの構造図である。
図11】本開示の一部の実施例により設けられるスライディング・ベーンの移動速度と回転角との関係の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施例における技術的解決手段が、本開示の実施例において添付の図面と共に以下で明確に及び徹底して説明される。明らかに、説明される実施例は、本開示の実施例の一部のみであり、全ての実施例ではない。本開示における実施例に基づき、創意工夫することなく当業者によって得られる全ての他の実施例は、本開示の保護範囲に含まれることになる。
【0021】
本開示の説明において、用語「中央」、「縦の」、「横の」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直の」、「水平の」、「上」、「下」、「内側の」、「外側の」などによって表される方向又は位置関係は、図面に基づき例示される方向又は位置関係であり、表される装置又は要素が特定の方向を有する、又は特定の方向で構築及び操作されるべきであることを指示する又は暗示するのではなく、本開示を説明する及び説明を簡略化するうえでの単なる便宜上のものであり、したがって、用語は、本開示の保護範囲を限定すると解釈され得ないことが認識される必要がある。
【0022】
本開示の一部の実施例は、関連技術におけるスライディング・ベーンの背圧チャンバへの円滑でないオイルの供給という問題を緩和するために、フランジ及びそれを有するポンプ本体アセンブリを提供する。
【0023】
図2図10に示されるように、本開示の一部の実施例により、フランジが設けられる。
【0024】
フランジはフランジ本体10を含む。フランジ本体10は、そこに形成される軸孔11を有する。軸孔11側で、背圧溝12が軸孔11の周りに設けられる。連通部13が、軸孔11に近接する側の背圧溝12の側壁に設けられる。連通部13は、背圧溝12を軸孔11と連通させ、連通部13は、背圧溝12へ潤滑オイルを供給する、又は背圧溝12から潤滑オイルを排出するように構成される。
【0025】
この実施例では、軸孔11に近接する側のフランジ本体10の背圧溝12の側壁に連通部13を設けることによって、潤滑オイルが適時に連通部13によって背圧溝12に運ばれ、したがって、関連技術におけるフランジと主軸との間に形成される隙間によってオイルを供給することに起因する、円滑でないオイルの供給という問題を避けることができる。この構造を有するフランジを使用することによって、潤滑オイルが背圧溝12に円滑に入ることができ、その結果、安定した確実なオイル圧が、スライディング・ベーンが延びる各角度でスライディング・ベーンの尾部でもたらされることが可能であり、安定した動作が、スライディング・ベーンの延びる及び引っ込む最大の速度でも維持され、したがって、フランジを有するポンプ本体アセンブリの安定性及び信頼性を効率的に改善することができる。
【0026】
連通部13は、背圧溝12の側壁に形成されるノッチであり得る。代替的に、連通部13はまた、背圧溝12の側壁に形成される貫通孔であってもよく、当然ながら、必要に応じて、背圧溝12の側壁にノッチ及び貫通孔の両方を形成することも可能である。
【0027】
一部の実施例では、図2及び図3に示されるように、連通部13は、背圧溝12の側壁に形成されるノッチである。
【0028】
一部の実施例では、複数の連通部13が設けられ、複数の連通部13が離隔して軸孔11の周囲に配設され得る。そのような構成を用いることで、対応する連通部の位置が、スライディング・ベーンの移動状態により設定されることが可能であり、その結果、圧縮動作において、ポンプ本体アセンブリ全体が、スライディング・ベーンが背圧溝の作用下で常に安定した圧縮状態にあることを確実にし、したがって、フランジを有するポンプ本体アセンブリの信頼性を改善することができる。図2図5に示されるように、連通部13は、1つのノッチを有して、側壁に形成されるノッチ構造である。
【0029】
図6図8に示されるように、連通部13は第1のノッチ131を含み、背圧溝12は軸孔11に近接する側の側壁に第1の位置を有し、第1のノッチ131が第1の位置に形成され、夾角α1が、第1のノッチ131の両端と軸孔11の中心との間の接続線によって形成され、A-50°≦α1≦A+50°であり、Aは、スライディング・ベーンの速度がその最大に達するまで、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝の外へ第1の初期位置(すなわち、スライディング・ベーンの作動チャンバが吸気を始める位置)から延びるときの、ポンプ本体アセンブリの主軸と共に回転するスライディング・ベーンの回転角であり、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝から延びる最大速度は、図11に示されるように、回転軸、スライディング・ベーン、シリンダなどの大きさにより、数学的計算によって得ることができ、図11は、スライディング・ベーン溝に沿って延びるスライディング・ベーンの速度がその最大に達するときの回転の角度が105°である、実施例を例示する。図11におけるスライディング・ベーンの移動速度は、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝の外へ延びる速度、及びスライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝に引っ込む速度を含む。
【0030】
連通部13は第2のノッチ132をさらに含み、第2のノッチ132が第1のノッチ131から離隔して配設され、背圧溝12は軸孔11に近接する側の側壁に第2の位置を有し、第2のノッチ132が第2の位置に形成され、夾角α2が、第2のノッチ132の両端と軸孔11の中心との間の接続線によって形成され、B-50°≦α2≦B+50°であり、Bは、スライディング・ベーンの引っ込む速度がその最大に達するまで、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝に向かって第2の初期位置(作動チャンバの吸気及び圧縮サイクルにおいて、スライディング・ベーンは外へ延び始め、予め設定された値に延びた後、スライディング・ベーンは徐々にスライディング・ベーン溝に引っ込む、すなわち第2の初期位置は、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝への引っ込みを行い始める位置である)から引っ込むときの、ポンプ本体アセンブリの主軸と共に回転するスライディング・ベーンの回転角であり、同様に、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝に引っ込む最大速度もまた、回転軸、スライディング・ベーン、シリンダなどの大きさにより、数学的計算によって得ることができる。そのような構成を用いることで、安定した確実なオイル圧が、スライディング・ベーンが延びる各位置でスライディング・ベーンの尾部でもたらされることが可能であり、安定した動作が、スライディング・ベーンが最大速度でスライディング・ベーン溝の外へ延びるとき、及びスライディング・ベーンがその他最大速度でスライディング・ベーン溝に向かって引っ込むときでさえも、維持され得る。
【0031】
一部の実施例では、連通部13は、軸孔11の周りに円弧状に構成され、夾角θが、連通部13の両端と軸孔11の中心との間の接続線によって形成され、A-50°≦θ≦B+50°又はA-30°≦θ≦B+30°である。図2及び図4に示されるように、連通部13はノッチ構造であり、夾角θが、ノッチの両端と軸孔11の中心との間の接続線によって形成され、A-50°≦θ≦B+50°又はA-30°≦θ≦B+30°である。Aは、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝の外へ延び始めるとき、スライディング・ベーンの速度がその最大に達するまでの、ポンプ本体アセンブリの主軸と共に回転するスライディング・ベーンの回転角であり、Bは、スライディング・ベーンがスライディング・ベーン溝に向かって引っ込み始めるとき、スライディング・ベーンの速度がその最大に達するまでの、ポンプ本体アセンブリの主軸と共に回転するスライディング・ベーンの回転角である。
【0032】
図3に示されるように、連通部13は背圧溝12の側壁に形成されるノッチであり、ノッチとフランジ面との高低差がH1であり、背圧溝12の深さがH2であり、フランジ本体10の厚さがHであり、H2のHに対する比率が0.1~0.6の範囲にあり、H1のH2に対する比率が0.1~1の範囲にあり、H1≧1mmである。そのような構成は、背圧溝12へのオイルの供給及びそこからの排出が適時に行われることを確実にし、一方で、ノッチでの潤滑オイルの流れに対する抵抗を減少させることができる。
【0033】
一部の実施例では、フランジは、ポンプ本体機器アセンブリにおいて使用され得る。すなわち、本開示の一部の実施例の別の態様により、上記の実施例におけるフランジである、フランジを含むポンプ本体アセンブリが提供される。
【0034】
一部の実施例では、ポンプ・アセンブリは、シリンダ20及び主軸30を含む。フランジ本体10は、シリンダ20側に配置される。主軸30は中央部31を有し、少なくとも1つのスライディング・ベーン溝が中央部31に形成され、スライディング・ベーン40が少なくとも1つのスライディング・ベーン溝の各々に設けられ、主軸30を軸孔11が貫通し、中央部31がシリンダ20に配置され、主軸30が、スライディング・ベーン40を回転駆動させてシリンダ20において圧縮動作を行う。背圧チャンバが、フランジ本体10の背圧溝12に形成される。
【0035】
一部の実施例では、図10に示されるように、3つのスライディング・ベーン溝が中央部31に形成され、第1のスライディング・ベーン41、第2のスライディング・ベーン42及び第3のスライディング・ベーン43が、3つのスライディング・ベーン溝にそれぞれ設けられる。上述の第1の初期位置は、第1のスライディング・ベーン41が図10で配置される位置であり、その時点で、第1のスライディング・ベーン41は、圧縮動作を完了し、圧縮動作の次のサイクルのためにスライディング・ベーン溝から延び始める。第2の初期位置は、第3のスライディング・ベーン43がその最も遠い位置へ延び、スライディング・ベーン溝に向かって引っ込み始める位置である。
【0036】
図9に示されるように、本開示の実施例によって設けられる背圧溝解決手段において、回転サイクル全体を通じた圧力変化範囲P2-P3が、P1-P4より小さく、本開示の実施例によって設けられる背圧溝の圧力変化が、変動が小さく比較的に円滑であることを示し、スライディング・ベーンの延びる最大速度及び引っ込む最大速度の位置で、本開示の実施例によって設けられる背圧溝の圧力が、関連技術における背圧溝のものより大きく、より良好に、スライディング・ベーンの尾部を着実に支持することができることが分かる。
【0037】
本開示の説明において、部分又は要素を定義するための用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などの使用が、上述の部分又は要素を区別するうえでの単なる便宜上のものであることが認識される必要がある。別段の記載がない限り、上記の用語は特別な意味を有さず、したがって、本開示の保護範囲への限定と解釈され得ない。
【0038】
加えて、一実施例の技術的特徴は、明示的に否定されない限り、1つ又は複数の他の実施例と有利に組み合わせられ得る。
【0039】
最後に、上記の実施例が、本開示の技術的解決手段を限定するのではなく、説明するためにのみ使用されることに留意されたい。本開示は好ましい実施例を参照して詳細に説明されるが、当業者は、彼らが本開示における特定の実施形態への修正を行う、又はその技術的特徴の一部への同等の置換を行うことができることを理解すべきであろう。そして、そのような修正及び同等の置換は、それらが本開示の技術的解決手段の主旨から逸脱しない限り、本開示において保護が求められる技術的解決手段の範囲内に包含されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】