IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センソキュア・アーエスの特許一覧

<>
  • 特表-生理学的センサにおける膜のシール 図1
  • 特表-生理学的センサにおける膜のシール 図2
  • 特表-生理学的センサにおける膜のシール 図3
  • 特表-生理学的センサにおける膜のシール 図4
  • 特表-生理学的センサにおける膜のシール 図4a
  • 特表-生理学的センサにおける膜のシール 図5
  • 特表-生理学的センサにおける膜のシール 図6
  • 特表-生理学的センサにおける膜のシール 図7
  • 特表-生理学的センサにおける膜のシール 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】生理学的センサにおける膜のシール
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20230712BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
A61B5/1473
G01N27/02 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022553188
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2021052580
(87)【国際公開番号】W WO2021175531
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】2003198.5
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.KEVLAR
(71)【出願人】
【識別番号】521370868
【氏名又は名称】センソキュア・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100076222
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】スタイン・イーヴァル・ハンスン
【テーマコード(参考)】
2G060
4C038
【Fターム(参考)】
2G060AA07
2G060AB09
2G060AE19
2G060AF07
2G060AG11
2G060HC15
2G060HD01
2G060JA01
2G060KA01
4C038KK05
4C038KL02
4C038KY11
(57)【要約】
【課題】pCOを測定するために使用できる新しい生理学的センサが求められている。
【解決手段】本発明に係る生理学的センサは、センサ液体により満たされた、二酸化炭素透過膜により少なくとも部分的に囲まれた密閉室と、密閉室内にセンサ液体と接する状態で設けられた少なくとも2つの電極と、膜を支持する支持構造体と、二酸化炭素透過膜を支持構造体に固定するために支持構造体の周りで、二酸化炭素透過膜の上面に巻き付けられる少なくとも1つのフィラメントと、で構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ液体を含み、二酸化炭素透過膜により少なくとも部分的に囲まれた密閉室と、
前記密閉室内に前記センサ液体と接する状態で設けられた少なくとも2つの電極と、
前記二酸化炭素透過膜を支持する支持構造体と、
前記支持構造の周囲で前記二酸化炭素透過膜の上面に巻き付けられて、前記二酸化炭素透過膜を前記支持構造体に固定する、少なくとも1本のフィラメントと、
から構成されることを特徴とする二酸化炭素測定用生理学的センサ。
【請求項2】
前記少なくとも1本のフィラメントが、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、 ポリテトラフルオロエチレン (PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン (ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン (FEP)、ナイロン、アラミド、又はステンレス鋼、のいずれか1つ又は複数から構成されることを特徴とする請求項1に記載された生理学的センサ。
【請求項3】
前記少なくとも1本のフィラメントは、固定媒体により、又はフィラメントを溶着することにより、固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の生理学的センサ。
【請求項4】
前記少なくとも1本のフィラメントは、前記密閉室の基端部側で前記支持構造の周りに巻き付けられた第1のフィラメントと、前記密閉室の先端部側で前記支持構造の周りに巻き付けられた第2のフィラメントとからなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の生理学的センサ。
【請求項5】
二酸化炭素測定用生理学的センサの二酸化炭素透過膜を固定する方法であって、
前記二酸化炭素透過膜を支持構造体上に設けて、前記生理学的センサの密閉室を画成し、
前記支持構造体の周りで前記二酸化炭素透過膜の上面に少なくとも1本のフィラメントを巻き付けて、前記二酸化炭素透過膜を前記支持構造体に固定することを特徴とする二酸化炭素透過膜を固定する方法。
【請求項6】
前記少なくとも1本のフィラメントが、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン、(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ナイロン、アラミド、又はステンレス鋼、のうちのいずれか1つ又は複数から構成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1本のフィラメントを固定媒体の使用により固定する、又は、前記少なくとも1本のフィラメントを当該少なくとも1本のフィラメントの溶着により固定する、ことを更なる特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1本のフィラメントを巻き付ける工程は、前記密閉室の基端部側で前記支持構造体の周りに第1のフィラメントを巻き付け、前記密閉室の末端部側で前記支持構造体の周りに第2のフィラメントを巻き付けることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1本のフィラメントを巻き付ける工程は、前記支持構造体がセンサ液体に浸されている状態で行われることを特徴とする請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的センサに膜を密に取付ける技術、特に、生理学的センサが生体内又は生体外のいずれかで二酸化炭素の分圧(pCO)を測定するセンサである場合の、膜を密に取付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血は、臓器への血液供給が不足していることを表す医学用語である。重症の場合、影響を受けた組織の死(梗塞)につながる可能性がある。虚血の初期及び可逆段階で大
幅に増加するパラメータである、組織のpCOを測定するセンサがある。斯かるセンサ
は、好ましくは、リアルタイムデータを通じて虚血の発症を確認する能力を有する。
【0003】
虚血は、西欧諸国で最も一般的な死因である。従って、例えば、心筋梗塞、脳梗塞、及び1つ又は複数の臓器への低灌流を特徴とする他の状態は、死亡の主要な要因である。
【0004】
虚血が時間内に検出された場合、再灌流、虚血の逆転がしばしば可能である。従って、虚血の早期発見とそれに続く適切な化学的治療(例えば、血栓又は塞栓を溶解するのに役立つストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ又はt-PAなどの薬剤による)又は外科的介入は、罹患した臓器及び患者の命を救うことができる。
【0005】
心電計(ECG)を使用して心臓の虚血を継続的に監視することもできるが、他の臓器は重度の虚血状態になる可能性、そして症状が検出される前に不可逆的な損傷を受ける可能性がある。実際、多くの臓器は、虚血になった際に「沈黙」している。最近、サイレント心筋梗塞の現象がよく認識される。更に、肝臓と腎臓は、臓器の損傷が回復不可になる前に症状を警告することなく、重度の虚血性になる可能性がある。
【0006】
臓器内又は臓器表面のpCOとその臓器の虚血の存在との間には明確な相関関係があることが知られている。組織代謝性酸血症になると、例えば、いずれかの臓器や組織に虚血で起こる嫌気性代謝になると、大量の二酸化炭素が蓄積される。COは、実際には細胞膜を自由に透過し、虚血では、COを外部に運搬する血流がないか制限されるため、虚血組織にCO2が蓄積し、虚血組織内又は虚血組織上でpCOが増加する。
【0007】
一般に、健康な体では、血液(静脈血)中の最大pCOは6~7kPaであり、健康な(好気性)組織における最大pCOは約1~3kPaほど高いが、この最大値は臓器ごとに異なる。腎臓の場合は8~10kPa、肝臓の場合は7~10kPa、腸の場合は8~12kPaである。酸素供給が臨界酸素供給レベルを下回ると、組織で測定されるpCO値は3~10倍に上昇する可能性があり、pCOレベルの上昇は、嫌気性代謝、従って、より適切には、虚血、を明確に示すものである。
【0008】
pCO測定に特に適したセンサは、WO2006/008505に記載されている。このセンサは、少なくとも部分的に二酸化炭素が透過する膜に囲まれた実質的に円筒形のプラスチック支持体を含む。支持体は、その末端部の円錐形の先端と、この先端から基端部方向に延びる本体部分とを有する。本体部分には、その両側に沿って長手方向に延びる2つの金電極が取り付けられている。本体部分の基端部及び末端部のそれぞれには、2つの円錐形の突起が膜を摩擦係合により固定するために設けられており、必要に応じて、補足的に圧着接続が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2006/08505公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来センサには、このように膜で囲まれた密閉室が画成されており、2つの電極が含まれている。該密閉室内には、脱イオン水などの実質的に電解質を含まない液体が収められ、膜及び2つの電極の両方に接している。二酸化炭素が膜を通過すると、上記液体の重炭酸イオン濃度を高め、当該液体の導電率を上昇させる。
【0011】
摩擦係合は膜を十分に固定することができず、圧着接続は望ましくないことにセンサの径を大きくすることが分かっている。そこで、pCOを測定するために使用できる新しいセンサの必要性が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、その第1の観点によれば、センサ液体を含み、二酸化炭素透過膜によって少なくとも部分的に囲まれた密閉室と、該密閉室内にセンサ液体と接するように設けられた少なくとも2つの電極と、二酸化炭素透過膜を支持する支持構造体と、支持構造体の周りで膜の上面に巻き付けられて、二酸化炭素透過膜を支持構造体に固定している少なくとも1本のフィラメントと、により構成された二酸化炭素を測定するための生理学的センサを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
フィラメントを使用して二酸化炭素透過膜を固定すると、センサの周囲の全ての箇所における二酸化炭素透過膜に穏やかで均一な張力を加えることができる。ただ、支持構造体あるいは二酸化炭素透過膜に依然として僅かな不完全部分が残る。
【0014】
少なくとも1本のフィラメントは、支持構造体の周りに少なくとも2回巻き付けることが好ましい。フィラメントは、膜に接する各箇所において半径方向の力を発揮するが、各巻きは他の巻きから切り離されている。つまり、半径方向の力は、巻線の長さ方向に沿って分布するが、連続する複数の巻線ごとの力が蓄積され、その結果としての纏まった力が膜に作用する。これにより、フィラメントは、二酸化炭素透過膜と支持構造体との間に気密シールを創り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
少なくとも1本のフィラメントは、好ましくは、生体適合性で医学的に承認された材料から造られる。様々な例示的な実施形態において、この少なくとも1本のフィラメントは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ナイロン、アラミド、又はステンレス鋼、のいずれか一つ又は複数により形成される。
【0016】
フィラメントは、一本鎖フィラメント又は多本鎖フィラメントであり得る。
【0017】
少なくとも1本のフィラメントは、そのフィラメント自体、支持構造体、及び二酸化炭素透過膜のうちの1つ又は複数に固定され得る。少なくとも1本のフィラメントは、固定媒体によって、又は少なくとも1本のフィラメントの溶着によって固定し得る。固定媒体は、接着剤、接着剤、及びUV硬化性エポキシなどのエポキシのうちの1つ又は複数を含み得る。溶着は、熱、光、又は化学反応などにより、少なくとも1本のフィラメントの端部を溶融又は融合することにより行うことができる。
【0018】
少なくとも1本のフィラメントは、密閉室の基端部側であり得る密閉室の第1の側の支持構造体の周りに巻き付けられた第1フィラメントとすることができる。場合により、少なくとも1本のフィラメントは、密閉室の末端部側であり得る密閉室の第2の側の支持構造体の周りに巻かれた第2のフィラメントでも有り得る。本文脈において、センサの先端は、センサの末端部に配置され得る。この先端は、使用時に、臓器の組織内に配置するように構成し得る。
【0019】
2つの電極は、場合により、支持構造体と少なくとも1本のフィラメントの下の膜との間に延在させることができる。
【0020】
一実施形態では、センサ液体は、脱イオン水又は蒸留水などの実質的に電解質を含まない液体を含み得る。実質的に電解質を含まないということは、液体のイオン浸透圧が37℃で5mM塩化ナトリウム水溶液のイオン浸透圧以下、好ましくは500μM塩化ナトリウム溶液のイオン浸透圧以下、より具体的には10-5~10-6M HCl溶液のイオン浸透圧以下であることを意味する。
【0021】
センサを使用してpCOを決定するメカニズムは簡単である。純粋なプロトン性溶媒、例えば水では、イオン種が少ないため電気抵抗が高くなる。COを追加すると、H及びHCO イオンが(水とともに)形成され、電気抵抗が低下する。センサの抵抗の低下の原因となる唯一の要因は膜を通過するCOであるため、抵抗の変化によりpCOを測定できる。
【0022】
O+COの平衡定数からH+HCO 平衡まで、CO濃度はαpCOに等しくなる(25℃でのαは0.310である)。プロトンの電気伝導率はGH+=349.8S.cm/molであり、ヒドロキシルの電気伝導率はGOH―=198.3S.cm/molであり、重炭酸塩の電気伝導率はGHCO3-=44.5S.cm/molである。HとOHの濃度は逆に変化し、HとHCO の濃度はpCOに正比例する。従って、OHの寄与が最小であるため、溶液の総コンダクタンスは実質的にpCOに比例する。従って、溶液の導電率Gsolutionは次の式で与えられる。
solution=ΘH+[H]GH++ΘOH-[OH]GOH-+ΘHCO3-[HCO ]GHCO3-
ここで、ΘH+、ΘOH-、及びΘHCO3-は、3つのイオン種の活量係数である。
【0023】
以下の表1は、例として、測定されたpCOとpHの値、及び、これに対応するH、OH、及びHCO 濃度の計算値を示すものであり、pCOの増加に伴うHとHCO の増加を示している。
【0024】
【表1】
(pCO及びpHは、標準的な血液ガス分析装置、AB L(R)システム625を使用して37℃で測定した。)
【0025】
センサ液体は、少なくとも1つの金属、又は金属又は半金属イオンをさらに含み得る、即ち、センサ液体は、電解質溶液であり得る。センサ液体に少なくとも1つの金属又は半金属イオンを添加すると、COに対する感度が大幅に向上することが分かった。
【0026】
液体中の金属及び/又は半金属イオンの濃度は、0.01から20ミリモルL-1、好ましくは0.5から18ミリモルL-1、より好ましくは0.1から15ミリモルL-1、さらにより好ましくは、0.5から10ミリモルL-1などの0.25から12ミリモルL-1である。
【0027】
典型的な金属イオンには、遷移金属、又は周期表のグループ1、2、13、又は14の金属が含まれる。本明細書で使用される「半金属」という用語は、典型的な金属と非金属の中間の特性を有する化学元素を指すことが理解されたい。半金属の例には、ホウ素、シリコン、ゲルマニウムが含まれる。
【0028】
1つの好ましい実施形態では、金属及び半金属イオンは、遷移金属、Li、Na、Be、Mg、B、Al、Ga、In、T1、Nh、Si、Ge、Sn、Pb及びF1からなる群から選択される。金属及び半金属イオンの特に好ましいグループは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Ag、Cd、Al、Ga、In及びTlであり、特に、Al、Ni、Ag、Cu、Co及びPdである。
【0029】
好ましくは、金属イオンは、Cuイオンを含む。金属及び/又は半金属イオンの混合物が存在する場合、1つの好ましい実施形態は、Cuイオン及びAlイオンの混合物である。別の好ましい混合物は、Cuイオン、Alイオン及びNiイオンの混合物である。
【0030】
金属又は半金属イオンは、適切な水酸化物、塩、又は必要な金属又は半金属イオンの複合体を添加することにより、その場で生成することができる。変更実施形態において、金属及び/又は半金属イオンは、液体、通常は溶液、に直接添加される単離されたイオンとして提供され得る。更に別の実施形態では、金属及び/又は半金属イオンは、例えば、1つ又は複数の金属が関与する化学的又は電気化学的反応を介して、センサに存在する金属表面又は界面からその場で生成される。
【0031】
一実施形態では、センサ液体は非イオン性賦形剤を含み得る。このようにして、密閉室内のセンサ液体の浸透圧を増加させて、センサ液体の電気的特性に影響を与えることなく、膜を通るセンサ液体の流出を防ぐことができる。賦形剤は、少なくとも等張濃度である必要、つまり、0.9%w/vのNaCl水溶液と同程度の浸透性である必要がある。従って、密閉室内の賦形剤の浸透圧は、0.9%w/vのNaCl水溶液の浸透圧よりも大きく、好ましくは1.8%w/vのNaCl水溶液(等張濃度の2倍)の浸透圧よりも大きくなり得る。4.5%w/vのNaCl水溶液(等張濃度の5倍)よりも高い浸透圧、又は、9%w/vのNaCl水溶液(等張濃度の10倍)よりも高い浸透圧を使用することもできる。
【0032】
密閉室内のプロトン及び重炭酸塩反応に対して不活性であれば、いかなる適切な非イオン性賦形剤も使用することもできる。そのような賦形剤は、センサ液、例えば水にも溶解可能である。この賦形剤はまた、望ましくは、静脈内使用のために認められている医薬賦形剤であり、密閉室に容易に充填できるように低粘度である。同賦形剤は、好ましくは滅菌可能であり、貯蔵安定性を有する必要がある。望ましくは、賦形剤は微生物学的増殖を阻害するものであるとよい。
【0033】
適切な賦形剤はポリエチレングリコール(PEG)であり、現在、好ましい賦形剤はプロピレングリコールである。
【0034】
好ましくは、センサ液体は水性であり、特に好ましくは、それは、上で定義されたように実質的に電解質を含まない水からなる。例えば、イオンの生成又は中和によりCOと反応してコンダクタンスを増減する他の溶媒も同様に使用することができる。しかし、実際には、強酸(HClなど)を0.1~100μM、好ましくは0.5~50μM、特に約1μMの濃度で添加した、又は添加しない、脱イオン水又は蒸留水が特に良好に機能することがわかっている。この少量の酸の添加の機能は、一般に、液体のpHを6以下に維持して、ヒドロキシルイオンによるコンダクタンスへの大きな寄与を回避し、pCOの測定の直線性を維持することにある。
【0035】
pCOセンサは、電極に交流電位を印加して、センサ液に交流電流を発生させることによって機能することができる。センサ液は、コンダクタンスを変えるために二酸化炭素と反応する必要がある。電位は、20~10,000Hz、好ましくは100~4,000Hzの周波数を有し得る。
【0036】
pCO2センサは、100から10,000Hzの周波数で電極間に交互の電位を印加するように配置された電源を備えていても、又は、それに接続可能であってもよい。周波数は1kHzよりも大きいことが好ましい。この周波数は、好ましくは5kHz未満、より好ましくは2kHz未満である。100Hz未満の周波数では、電気分極によりpCO決定の感度が低くなり、さらに機器の応答時間が非常に遅くなる。一方、10kHzを超える周波数では、センサの静電容量のインピーダンスが低いため、感度が再び低くなる。電源は、AC電源、あるいは発振器と組み合わせたDC電源、すなわち、両方合わせてAC電源を構成する組み合わせでもよい。電源は、好ましくは、電極での液体を通る最大電流密度が50A/m以下、好ましくは30A/m以下、より好ましくは20A/m以下、特に10A/m以下であり、最も好ましくは約1A/m以下である。20A/m以上のより高い電流密度値は、例えば、1~10kHzのより高い周波数でのみ使用する必要がある。
【0037】
最小の最大電流密度は検出限界によって決定されるが、10-8A/mまでの値は使用可能である。ただし、最小の最大電流密度は、通常、少なくとも0.1μA/mである。
【0038】
このような電流密度と電圧周波数で作動することにより、また適切な構造を有することにより、センサは、電極の電気分極の結果として生じる精度の大幅な低下なしに、COが入り込む液体のコンダクタンス/抵抗を決定することができる。
【0039】
特に高精度の場合には、電極間の電位又は電流(従って電極間の液体の抵抗又はコンダクタンス)を、電圧発生器又は電源の周波数と同じ周波数に設定されたロックインアンプを使用して決定することができる。
【0040】
さらに、検出にハイパスフィルタを組み込んで、周波数が100Hz未満、好ましくは150Hz未満の電流を除外することが好ましい。フィルタは、受動フィルタ、例えば、コンデンサ及び抵抗器であることが好ましい。電源及び検出器回路を、必要に応じて、センサに含めることができ、この場合、センサが無線であることが望ましいときは、信号を遠隔で検出できる手段、例えばRF送信機のような送信機を備えていることが好ましい。このようにして、例えばリスクのある患者にセンサを埋め込むことができる。電気的に接続された更なる電極を患者に、例えば患者の皮膚に、取り付けることもできる。この更なる電極からの信号は、患者からの電磁ノイズを補償するために、センサからの信号で処理することができるのがよい。
【0041】
電気分極効果は液体と接する電極の表面積を増やすことによって大幅に減少する。例えば、膜の平面から離れた位置にあるウェル(窪み)に電極を配置するか、又は、電極表面を非平面、例えば粗面又は織り目加工面、にすることにより、電気分極効果は減少する。従って、一般に、液体に対する電極の接触面積の比をできるだけ大きくし、膜との接触領域のできるだけ多くにわたって液体の深さをできるだけ浅くすることが望ましい。このようにして、応答時間が短縮され、電気分極が低減され、より低い周波数を使用することができ、浮遊容量の影響が大幅に低減される。
【0042】
電極での抵抗と比して大きな電気抵抗は、液体が膜と接するゾーンで、電極間の液体を通る電気経路の断面積を制限することにより、例えば、電極間の経路の一部の液体の深さを減少させることにより、及び/又は、各電極と液体との間の比較的大きな接触領域を確保することによって、得ることができる。
【0043】
膜における及び電極間におけるセンサ液の抵抗は、電極間の膜を横切る液体通路を画成するための構造要素を用いることにより増加させることができる。例えば、そのような液体通路を密閉室の壁部分にエッチングなどにより形成し、膜をその壁部分を横切る又は該壁部分に接するように配置することによって、膜における及び電極間におけるセンサ液の抵抗を増加させることができる。同様に、多孔質スペーサーを、液体の深さを規定するために、膜と室壁との間に配置してもよい。
【0044】
実際、そのようなスペーサーは、使用時に経験する圧力条件下で、膜が十分に柔軟であり、膜の背後の液体の深さが十分に浅く、測定されたコンダクタンスが圧力によって変化する場合に、使用することが重要である。
【0045】
支持構造体は1つ又は複数のシール面を有し得る。一本の各フィラメントはシール面の1つに巻き付けられるものであってもよい。各シール面は滑らかな円周形状を有していてもよく、好ましくは実質的に円筒形である。
【0046】
必要に応じ、支持構造体は各シール面の先端部側及び/又は基端部側にストッパを備え得る。ストッパの外周はシール面の外周よりも大きくてもよい。その場合、ストッパは巻き付けられたフィラメントがセンサの長手方向に移動するのを妨げることができる。
【0047】
好ましい構成では、支持構造体は長手方向軸を有するセンサ本体で構成され得る。少なくとも2つの電極はセンサ本体の長手方向軸を横切る方向に離間され得る。センサ本体は、センサ本体の長手方向軸から径方向外方に延在する複数の支持部材を備え、隣接する支持部材間に少なくとも1つの液体通路を画成し得る。少なくとも1つの液体通路は電極間に流体通路を提供し得る。膜は、支持部材によって支持され、液体チャネルの外壁を提供し得る。
【0048】
この構成は、臓器への挿入に適した細長い形状を備えたセンサのコンパクトな形態を提供する。更に、支持部材は、膜に物理的支持を提供することができるだけでなく、正確な測定を可能にする小さな断面積の液体通路を画成することができる。
【0049】
上記の電気分極効果を低減化するために、電極は、液体チャネルよりも大きな断面積を有するセンサ本体の凹部に配置され得る。このようにして、電極の周りの電流密度は液体の体積を大きくすることによって減少する。
【0050】
センサの電極は、長手方向に、即ち、センサ本体の長手軸と平行に延出している。同様に、液体通路は、センサ本体の長手軸を横切って、即ち、長手軸に対し垂直に延出している。好ましい構成では、センサは、複数の液体通路を有する。例えば、センサは、少なくとも3つの液体通路を有し得る。
【0051】
支持部材はセンサ本体の長手軸を横切っている。即ち、支持部材は、センサ本体の円周方向において、長手軸に対し垂直であり得る。好ましい配置では、支持部材はセンサ本体の長手軸の周りに形成されたリング状の形態である。支持部材の断面は任意の適切な形状であり得る。例えば、支持部材は、丸みを帯びた、実質的に半円形の断面を有し得、あるいは実質的に三角形、特に鋸歯状の断面を有し得、又更には、実質的に矩形の断面を有してもよい。
【0052】
支持部材は、例えば射出成形によって、センサ本体と一体的に形成することができる。センサは、好ましくは、少なくとも4つの支持部材を有する。センサ本体及び/又はセンサは、通常、円筒形であり得る。膜は、センサ本体を取り囲むように配置することができる。
【0053】
説明された形状は、任意の適切なセンサに適用することができる。好ましい構成では、センサはpCOセンサである。
【0054】
センサが所定の位置にセンサ液フィルムを有するように造られた場合、電極は、好ましくは、センサ液の抵抗率が保管によって著しく変化しないように、不活性材料で構成されるか、又は不活性材料のめっきが施される。適切な不活性材料としては、プラチナ(特にブラックプラチナ)、金、銀、アルミニウム、及びカーボンがある。金が特に好ましい。一般に、不活性電極は溶媒和イオンを生成しないことが好ましい。
【0055】
膜は、COに対して透過性があり、センサ液体の溶媒、いかなる電解質及び水に対しては実質的に不透過性である任意の材料であり得る。ポリテトラフルオロエチレン、例えば、テフロン(R)、シリコーンゴム、ポリシロキサン、ポリオレフィン又は他の絶縁ポリマーフィルムを、例えば、0.5から250μmの厚さで、使用することができる。膜は、一般的に、厚いほどセンサ応答時間は遅くなる。ただし、膜が薄いほど、不均一性や穿孔などの損傷のリスクが高くなる。しかしながら、都合の良いことに、膜の厚さは1~100μm、好ましくは50~100μmである。
【0056】
センサの支持体は、任意の適切な材料、例えば、プラスチックである。好ましくは、材料は、滅菌、例えば、放射線滅菌(ガンマ線を使用)又は熱滅菌(オートクレーブ滅菌で使用される約121℃の温度を使用)において通常使用される条件に耐えることができるものである。熱滅菌の場合、液体は通常、滅菌後に、センサに滅菌充填される。室と膜の壁は、同じ材料、例えばテフロン(登録商標)もよく、自立性を有し、より薄いガス透過性膜である壁となるように機械加工されている。センサは一般的に比較的安価なものでよく、従って、従来技術のセンサとは異なり、使い捨て装置でもよい。更に、電極室は非常に小さくしても問題ない(小型化が克服できないインピーダンス問題を引き起こすセンサを含む従来技術のガラス電極とは異なる)。この構成は、ヒトを含む動物の組織に容易に挿入でき、監視中の組織内に保持することができ、監視が完了したときに容易に取り外すことができるセンサ、特にpCOセンサを提供するものである。
【0057】
この装置は、監視対象の組織に過度の障害を引き起こさないように十分に小さいことが好ましい。結果として、装置は、2mm、好ましくは1mmの最大直径を有し得る。センサは、器官、管、又は組織(脳、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、腸、筋肉又は皮下組織)の表面上又はその中のpCOを測定するのに特に適したサイズ及び構成を有するように容易に製造することができる。これは、移植中及び移植後、集中治療中、傷害後、術後経過などにおいて、臓器、管、又は組織の機能を監視でき、それにより虚血の早期発見が可能になるため、特に重要である。
【0058】
センサによって決定される分圧は、定量化された値である場合もあれば、pCOが虚血又は非虚血を示す1つ又は複数の閾値より上又は下であることを単に示す場合もあり、値はpCO測定部位の位置に応じて変化し得る。
【0059】
センサは、pCOの単一の測定に使用することができ、又はより好ましくは、特に危険にさらされている患者、例えば、不安定なアンギーナを伴うと見込まれる臓器又は組織の移植手術を受けているか又は回復過程にある、冠状動脈バイパス手術から回復過程にあり、外傷(例えば、骨格筋の)に苦しんでおり、又は、血液量減少状態(例えば、ショック)にある、集中治療中の患者の継続的又は反復的なモニタリングに使用することができる。
【0060】
この装置は、それぞれの生理学的パラメータのための複数のセンサを有し得る。例えば、装置は、一連のセンサを有し得る。そのようなセンサは、例えば、二酸化炭素の分圧、酸素の分圧、ヘモグロビンの酸素飽和度、温度、pH又はグルコース濃度のうちの1つ又は複数を測定することができる。現在の好ましい実施形態では、装置は、温度センサ及びpCOセンサからなる。
【0061】
第2の観点によれば、本発明はまた、二酸化炭素を測定するための生理学的センサの二酸化炭素透過膜を固定する方法を提供し、この方法は、二酸化炭素透過膜を支持構造体上に設けて、生理学的センサの密閉室を画成し、支持構造体の周りの膜の上に少なくとも1本のフィラメントを巻き付けて、膜を支持構造体に固定することからなる。
【0062】
生理学的センサは、上述のセンサの特徴のいずれかを有し得、その特徴のいずれかを含み得る。
【0063】
少なくとも1本のフィラメントは、支持構造体の周りに少なくとも2回巻かれ得る。少なくとも1本のフィラメントは、膜と支持構造体との間に気密シールを形成することができる。
【0064】
少なくとも1本のフィラメントは、好ましくは、生体適合性で医学的に承認された材料から作られる。様々な例示的な実施形態において、少なくとも1本のフィラメントは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ナイロン、アラミド、又はステンレス鋼、のいずれか一つ又は複数から形成し得る。
【0065】
フィラメントは、一本鎖フィラメント又は多本鎖フィラメントであり得る。
【0066】
この方法は、少なくとも1本のフィラメントを、例えば、そのフィラメント自体、支持構造体、及び二酸化炭素透過性膜のうちの1つ又は複数に固定することを含み得る。
【0067】
少なくとも1本のフィラメントは、固定媒体を使用することにより、固定することができる。固定媒体は、接着剤、のり、及びエポキシ(UV硬化性エポキシなど)のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0068】
少なくとも1つのフィラメントは、当該少なくとも1本のフィラメントの溶着によって固定し得る。溶着は、熱、光、又は化学反応などによって、少なくとも1本のフィラメントの端部を溶融又は融合することによって行うことができる。
【0069】
巻き線は、閉塞室の基端部側であり得る閉塞室の第1側の支持構造の周りに第1のフィラメントを巻き付けることを含み得る。巻き線は、閉塞室の末端部側であり得る閉塞室の第2側の支持構造の周りに第2のフィラメントを巻き付けることを更に含み得る。
【0070】
一つの実施形態では、巻き付けは、支持構造がセンサ流体に沈められている間に実行され得る。
【0071】
次に、本発明の特定の好ましい実施例を、例としてのみ、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】pCOセンサを組み込んだ感知システムの概略図である。
図2図1のシステムにおけるpCOセンサの測定原理を示す概略図である。
図3】第1pCOセンサの部分的切り取り図である。
図4図3のA―A線に沿った断面図である。
図4a図4において円で囲まれた部分の拡大図である。
図5】膜を除去した第1pCOセンサを示す図である。
図6】膜を第1pCOセンサに固定する方法を示す図である。
図7】膜を第1pCOセンサに固定するために巻き付けられたフィラメントの図である。
図8】第2pCOセンサの斜視図である。
【実施例
【0073】
pCO検知システムは、図1に示すように、使い捨てセンサユニット1、電子表面回路ユニット2、及びモニタユニット3で構成されている。使い捨てセンサユニット1は、包装、滅菌されて出荷される。これは、直径が1ミリメートル未満の膜保護導電率測定用pCOセンサ4と、使い捨てセンサユニット1に統合された温度センサ5とで構成される。ワイヤ6は、コネクタによって、pCOセンサ4及び温度センサ5を電子表面回路ユニット2に電気的に接続する。
【0074】
電子表面回路ユニット2は、センサユニット1との間で信号を送受信し、信号処理を実行し、調整された信号をモニタユニット3に送信する。
【0075】
モニタユニット3は、USBインターフェース18及びLabVIEWソフトウェア(テキサス州オースティンのナショナルインストルメンツコーポレーションから入手可能)を備えた医療用のPC7に基づいている。
【0076】
pCOセンサ4は、図2に示す測定原理に従って、流体中のCO(pCO)のレベル(分圧)の測定に使用される。測定室は、それぞれに電極10が配置された2つの小さなキャビティ9で構成される。2つのキャビティ9は、半透膜12、即ち、センサ4の容積の内外へのCOの移動のみを可能にする膜によって囲まれた1つ又は複数の流体通路11によって接続されている。センサ4はその容積全体がセンサ液体で満たされている。
【0077】
センサ液体は、電解質溶液又は脱イオン水のような実質的にイオンを含まない液体を含む。感知用液体は、場合により、センサ液体の電気的特性に影響を与えることなく、膜12を横切るセンサ液体の流出を防止するために、非イオン性賦形剤を含むことができる。賦形剤は、例えば、2%~40%のプロピレングリコールでもよい。
【0078】
センサ液の導電率はpCOに依存し、容積内の2つの電極10間の導電率を測定することにより、pCOに関する情報を抽出することができる。
【0079】
図3から図7は、pCOセンサ4の第1の実施形態を示す。pCOセンサ4は、射出成形されたプラスチック支持体23を含み、これは実質的に円筒形であり、半透膜12によって囲まれている。支持体23は、その末端部の先端24と、この先端24から基端部方向に延びる本体部分25とを有する。本体部分25には、接着などによって、2つの金電極10が取り付けられている。電極10は、本体部分25の両側面に沿って長手方向に延びており、本体部分25のそれぞれの凹部に収められている。
【0080】
先端24と本体部分25との間には、膜12を固定するためのシール面26が設けられている。これについては、後でより詳細に論じる。同様のシール面26が本体部分25の基端に設けられている。一対のストッパリブ29が、二つのシール面26のそれぞれの基端側及び末端側にそれぞれ設けられている。更に、支持体23のシール面26は、イオンが浸出する可能性のある水膜の形成を回避するために、選択的に疎水性にすることができる。
【0081】
支持体23の本体部分25には複数のリブ27が設けられており、リブ27は丸みを帯びた輪郭を有するように形成されている。リブ27は、膜12に機械的支持を提供し、又、pCOセンサ4が効果的に機能するために必要な流体通路11を画成している。各電極10と複数のリブ27間に形成された流体通路11との間には、電極10が配置された凹部により形成されるリザーバ9が設けられる。リザーバ9は、電気分極効果を低減するために、電極10の周囲に比較的低い電流密度の領域を提供する。
【0082】
図6及び図7に示されるように、製造過程において、膜12はセンサ液体に浸漬された状態で支持体23上に固定されるので、膜12により囲まれた室、電極10、及び複数のリブ27は、センサ液体で完全に満たされる。この室は、図2に概略的に示すpCOセンサ4を形成する。
【0083】
必要に応じて、膜12は、まず先に、センサ液体の外にある支持体23上の一端(例えば、基端部)に固定され、次いで、膜12は、センサ液体に浸された状態にある支持体23の他端(例えば末端部)に固定され得る。したがって、この場合、液体の充填は、2つの膜固定工程の間の別工程で行われる。
【0084】
膜12は、非吸収性縫合糸又は結紮糸に使用されるような生体適合性及び医学的に承認された材料から作られた高強度フィラメント28を使用して支持体23に固定される。例示的な材料には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ナイロン、アラミドなどが含まれ得る。さらなる材料には、有機材料、又はステンレス鋼などの金属材料が含まれ得る。フィラメント28は、単一撚線又は多糸撚線であり得る。
【0085】
フィラメント28は、pCO2センサ4の中心軸を囲むように、支持体23の2つのシール面26のそれぞれの周りで、膜12の表面上に巻き付けられている。これにより、膜12がそれぞれのシール面26に対して圧迫され、膜12と支持体23との間の気密シールを可能にしている。フィラメントの巻き付けは支持体23の上又は膜12の上で始め及び/又は終えることができる。各シール面26の各側にあるストッパリブ29は、シール面26よりも大きな外周を有し、フィラメント28によって圧迫された膜12が支持体23に対して基端部方向又は末端部方向への移動を防止するように作用する。
【0086】
巻き付けの完了後、巻き付けられたフィラメント28は、接着剤、接着剤又はエポキシ、UV硬化エポキシなどの適切な固定媒体で覆われてもよい。又、フィラメント28の端部は、そのフィラメント自体、又は膜12、又は支持体23に、熱、光、化学反応などによる溶融、融着などにより固定することができる。
【0087】
フィラメント28の固定又は融着は、巻き付け中に、同様の手段(加熱、光、化学薬品)、例えば摩擦、により行なわれ得る。
【0088】
pCOセンサ4の周りの膜12の上面に巻き付けられたフィラメント28を使用することにより、支持体23又は膜12のわずかな不備を許容しつつ、pCO2センサ4の周りのすべての箇所において、膜12に穏やかで均一な張力を加えることができる。
【0089】
フィラメント28は、膜12と接触する各点において径方向の力を作用させるが、各巻きはそれ以前の巻きとは離れている。つまり、力は巻きの長さに沿って配分され、巻きの増加とともに、結果的に膜にかかる力として蓄積され、膜12と支持体23との間の気密シールを創り出する。
【0090】
膜12を固定するための高強度フィラメントの使用は、非常に僅かな厚みを加えるだけで強力な締付力を可能にし、マイクロメートル単位の厚さを可能にする。
【0091】
pCOセンサ4は、1つ以上の感知室を有することが可能である。例えば、長手方向の壁部材によって分離された2つの平行な電極10のそれぞれを、支持体23の各側面に設け得る。これにより、支持体23の一方の側の1つの電極10と、支持体23の反対側の電極10の1つとの間に、支持体23の上面の複数のリブ27間の流体通路11を介して、感知室が形成される。残りの2つの電極10の間と支持体23の底面の流体通路11により、同様の感知室が形成される。これらの感知室各々の各電極10は、pCO2センサ4からの電気信号が両方の感知室の導電率を反映するように、他の感知室の対応する電極と電気的に接続される。
【0092】
温度センサ5(図3から図8には図示せず)は、熱電対の形をとり、支持体23の端部に接続することができ、又はケーブル6内に設けることができる。温度センサ5は、pCOの補正計算及び測定された組織温度をモニタ3上に表示するために使用される。これは、医療診断に役立つ。温度センサ5は、最小測定温度範囲が少なくとも33~42°Cで、最小精度は+/‐0.2°Cである。
【0093】
ケーブル6は、pCOセンサ4の電極10及び温度センサ5に電気的及び機械的に接続される。電極10は、ケーブル6の導体の延長として形成されてもよい。ケーブル6と支持体23への接続が十分に強い場合、ケーブル6を使用してセンサユニット1をその使用位置から引っ張ることができる。あるいは、例えばケーブル6と合体させたケブラー線(Kevlar line)を設けて、強力な外部機械的接続を提供するようにしてもよい。
【0094】
膜12は、ケーブル6と共に支持体23から基端部方向に延在して、ケーブル6を囲むようなカテーテルを形成することができる。あるいは、ケーブル6用に別個のカテーテルを設けることもできる。この場合、別個のカテーテルは電極10及び膜12の基端部近くで支持体23に結合してもよい。
【0095】
pCOセンサ4を備えたカテーテルの先端は、外科手術中に臓器組織に0.5~4cm挿入され、最大2週間虚血を監視する。センサユニット1は、筋肉及び皮下組織、ならびに肝臓、腎臓、膵臓、心筋、脳及び腸などの器官における、pCOを測定する整形外科手術及び再建手術において使用され得る。センサユニット1を配置するために挿入ツール(図示せず)を使用することができ、センサチップ24を適所に保持するための固定補助具を使用してもよい。
【0096】
センサユニット1の最大直径は1mmであり、カテーテル先端からセンサ素子までの最大距離は2mmである。pCOセンサ4の最小pCO測定範囲は2~25kPaで、検出可能な最小pCO差は0.2kPaである。pCOセンサ4の応答は20秒未満である。液体室の任意の領域での最大許容測定電流は、測定入力電圧が50mV RMSを超えないとき、j<1mA/cmである。
【0097】
複数の電極10は金メッキされており、それらの総面積は約3mmである。測定周波数fmeasは100Hzより高くする必要がある。より低い周波数では、測定室内の分極効果が測定を支配する。10kHzを超える周波数では、キャパシタンスの低インピーダンスが重大な問題になる。測定抵抗Rmeasureは、500kOhmから7MOhmの範囲である。
【0098】
図8は、管状の膜12の代わりにカプセル状の膜12’を有するセンサユニット1の変更例を示す。図8に示されるセンサユニット1は、図3から図7に示されるセンサユニット1と同じ原理で作動する。しかしながら、端部が開放された管形状を有する膜12の代わりに、膜12’は、末端部が閉じられた管形状を有する。このデザインは、膜をその基端部で支持体23に固定することのみが必要であることを意味する。膜12’は、これまで説明してきたのと同じ方法により、巻き付けられたフィラメント28を使用して固定される。
【0099】
センサユニット1のデザインは2つしか示されていないが、これらのデザインは多くの小さな変更が可能であることは理解されたい。
【0100】
センサユニット1は、5cmから2メートルの長さを有するケーブル6によって、患者の皮膚上に配置された電子表面ユニット2に電気的に接続される。ケーブル/カテーテルの最大直径は1mmで、ケーブル/カテーテルの好ましい長さは約50cmである。ケーブル/カテーテルは柔らかく柔軟性があるため、隣接する組織や臓器を過度に害することはない。ケーブル/カテーテルとその接続部は、通常の使用と「異常な」使用の両方において生じる可能性のある強い引っ張り力に耐えるのに十分な強靭性も備えている。
【0101】
センサユニット1は、滅菌、保管、及び輸送中において、脱イオン化された無菌のエンドトキシンフリー水で覆われることにより、センサリザーバーからの水の正味の損失が実質的にないことが保証されている。
【0102】
図1及び図2に示されるように、電子表面回路ユニット2は、少なくとも5ボルトの電圧及び50mVの電流供給を提供する正弦波発生器13を含み、USBインターフェース18を介して又は電池14によって電力が供給される。ロックインアンプ16の入力をフィルタリング又は平均化するために、フィルタ15が設けられている。消費電流を低減する受動フィルタを使用することができる。プリアンプ17はサーボ機構と組み合わされて信号からDC電流を除去し、電気分解効果を減少させる。サーボ構成によれば、プリアンプの出力はローパスフィルターを介して入力にフィードバックされる。したがって、出力のDC成分のみがフィードバックされ、pCOセンサ4に流れるDC電流がキャンセルされる。このようにして、電極10を劣化させるDC電流がpCO2センサ4を通過しないことが保証される。この段階で使用されるオペアンプは、消費電流が最小で、大きなCMMR値を有する。同時に、バイアス電流は最小である。ロックインアンプ16は、pCOセンサ4からのAC信号を増幅する。これは、オペアンプで構築するか、1kHz未満の周波数での信号検出に少なくとも1%の精度を備えたICパッケージを使用して構築する。フォトカプラ又はコイルカプラなどのガルバニック分配器19が設けられており、モニタユニット3及び関連するケーブル配線18からのノイズの伝達を防止している。通常、ノイズ信号比によりフォトカプラが好まれる。温度センサ5からの信号を増幅するために、温度信号増幅及び調整ユニット20が設けられている。電子表面回路ユニット2は、USBインターフェース18を介して電力が供給される。ただ、バッテリー容量が少なくとも14日間連続監視できれば十分である場合には、再充電可能で交換可能な標準タイプのバッテリー14を任意に使用することができる。電子表面回路ユニット2には、また、オン/オフインジケータLED21、及び必要に応じて、バッテリステータスインジケータが設けられている。電子表面回路ユニット2とモニタユニット3との間の通信は、USBインターフェース18を介して行われる。電子表面回路ユニット2とモニタユニット3との間のUSBケーブルは、軽くて柔軟であり、少なくとも1mの長さ、好ましくは約2mの長さを有している。
【0103】
図1及び図2に示されるように、AC電流は、正弦波発生器13によって生成され、pCOセンサの一方の電極10及びロックインアンプ16に供給される。pCOセンサのもう一方の電極10からのハイパス信号は、フィルタ15を通過して低ノイズアンプ17に送られ、そこからロックインアンプ16に送られ、そこで正弦波発生器13によって生成された基準信号と比較される。信号の位相がずれた成分、つまり望ましくない成分は除去され、信号の残りの部分は増幅される。増幅された信号はpCO(又はコンダクタンス)に比例し、記録又は更なる操作のためにモニタユニット3に送られる。
【0104】
電子表面回路ユニット2はまた、患者の皮膚に電気的に接続された参照電極(図示せず)に電気的に接続されてもよい。基準電極からの信号は、患者によって生成された電磁ノイズの影響について、センサユニット1からの信号を補償するために使用することができる。
【0105】
単一の電子表面回路ユニット2は、いくつかのセンサユニット1から信号を受信し、多重化された出力をモニタユニット3に提供することができる。
【0106】
モニタユニット3は、多数の異なる電子表面回路ユニット2から同時に信号を集めることができるポータブルPC7又は同様のコンピューター装置からなる。モニタユニット3用の電源22は、110Vと230Vの両方で動作する医学的に承認されたタイプのものである。
【0107】
モニタユニット3のソフトウェア機能は、テキサス州オースティンのNational Instrumentsから入手可能な、4つまでの異なる電子表面回路ユニットを同時に取り扱うことができるソフトウェアパッケージである、Labviewにより提供されるものでよい。このソフトウェアは、3つのキャリブレーションポイントと2次キャリブレーション機能を備えたセンサのキャリブレーション機能を提供する。該ソフトウェアは、その他の数のキャリブレーションポイントとその他のタイプのキャリブレーション機能をサポートするように変更できる。このソフトウェアには、定義された時間間隔でpCOセンサ4からの信号を平滑化する機能も有している。測定値に対する少なくとも2つのアラームレベルと、その勾配に対する2つのアラームレベルとを設定することができる。測定値の勾配は個別に定義された時間間隔で計算される。アラームは表示と音声の両方で示される。他のアラームをアクティブにしたまま、一方のアラーム表示を停止することができる。モニタユニット3は、作業(session)中のすべての測定値、パラメータ設定、及びアラームを記録することができる。記録(logging)間隔が30秒の場合、ハードディスクには少なくとも2週間の作業(session)10回分の記憶容量が必要である。作業記録(session log)は、Microsoft Excelで読み取り可能な形式で書き込み可能なデータ記憶媒体に保存することができる。
【0108】
要約すると、pCOの測定のための生理学的感知装置は、二酸化炭素透過膜により少なくとも部分的に囲まれた一つの密閉室を含む。密閉室内には2つの電極がある。この密閉室には、電極と膜に接するセンサ液体が含まれている。二酸化炭素透過膜は、支持構造体の周囲で当該膜の上面に巻き付けられたフィラメントにより生理学的感知装置の支持構造体に固定されている。
【符号の説明】
【0109】
1 センサユニット、2 電子表面回路ユニット、3 モニタユニット、4 pCOセンサ、5 温度センサ、6 ケーブル、9 キャビティ、10 電極、11 流体通路、12 半透膜、13 正弦波発生器、14 バッテリー、15 フィルタ、16 ロックインアンプ、17 プリアンプ、 18 USBインターフェース、20 温度信号増幅及び調整ユニット、21 オン/オフインジケータLED、22 、23 支持体、24 先端、25 本体部分、26 シール面、27 リブ、28 フィラメント、29 ストッパリブ

図1
図2
図3
図4
図4a
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ液体を含み、二酸化炭素透過膜により少なくとも部分的に囲まれた密閉室と、
前記センサ液体と接する状態で前記密閉室内に設けられた少なくとも2つの電極と、
前記二酸化炭素透過膜を支持する支持構造体と、
前記支持構造の周囲で前記二酸化炭素透過膜の上面に巻き付けられて、前記二酸化炭素透過膜を前記支持構造体に固定する、少なくとも1本のフィラメントと、
から構成されることを特徴とする二酸化炭素測定用生理学的センサ。
【請求項2】
前記少なくとも1本のフィラメントが、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ナイロン、アラミド、又はステンレス鋼、のいずれか1つ又は複数から構成されることを特徴とする請求項1に記載された生理学的センサ。
【請求項3】
前記少なくとも1本のフィラメントは、固定媒体により、又はフィラメントを溶着することにより、そのフィラメント自体、前記支持構造体、及び前記二酸化炭素透過膜の一つまたは複数に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の生理学的センサ。
【請求項4】
前記少なくとも1本のフィラメントは、前記密閉室の基端部側で前記支持構造の周りに巻き付けられた第1のフィラメントと、前記密閉室の先端部側で前記支持構造の周りに巻き付けられた第2のフィラメントとからなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の生理学的センサ。
【請求項5】
二酸化炭素測定用生理学的センサの二酸化炭素透過膜を固定する方法であって、
前記二酸化炭素透過膜を支持構造体上に設けて、前記生理学的センサの密閉室を画成し、
前記支持構造体の周りで前記二酸化炭素透過膜の上面に少なくとも1本のフィラメントを巻き付けて、前記二酸化炭素透過膜を前記支持構造体に固定することを特徴とする二酸化炭素透過膜を固定する方法。
【請求項6】
前記少なくとも1本のフィラメントが、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン、(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ナイロン、アラミド、又はステンレス鋼、のうちのいずれか1つ又は複数から構成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1本のフィラメントを固定媒体の使用により、そのフィラメント自体、前記支持構造体、及び前記二酸化炭素透過膜の一つまたは複数に固定する、又は、前記少なくとも1本のフィラメントを当該少なくとも1本のフィラメントの溶着により、そのフィラメント自体、前記支持構造体、及び前記二酸化炭素透過膜の一つまたは複数に固定する、ことを更なる特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1本のフィラメントを巻き付ける工程は、前記密閉室の基端部側で前記支持構造体の周りに第1のフィラメントを巻き付け、前記密閉室の末端部側で前記支持構造体の周りに第2のフィラメントを巻き付けることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1本のフィラメントを巻き付ける工程は、前記支持構造体がセンサ液体に浸されている状態で行われることを特徴とする請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】