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特表2023-530847塩酸レミフェンタニルを調製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】塩酸レミフェンタニルを調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/66 20060101AFI20230712BHJP
   A61K 31/4468 20060101ALI20230712BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C07D211/66
A61K31/4468
A61P25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573181
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 GB2021051680
(87)【国際公開番号】W WO2022003364
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2010168.9
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522460852
【氏名又は名称】マクファーラン スミス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】アンドリューズ、スーザン
(72)【発明者】
【氏名】アーチャー、ニコラス
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BC21
4C086NA20
4C086ZA08
(57)【要約】

本発明は、改善された不純物プロファイルを有する塩酸レミフェンタニルを調製するためのプロセスを提供する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸レミフェンタニルを調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液を、塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液と合わせるステップを含み、一方の溶液が、他方の溶液に制御された速度で添加されて、塩酸レミフェンタニルの沈殿を含む反応混合物を形成する、プロセス。
【請求項2】
前記ケトン溶媒が、大気圧(すなわち、1.0135×105Pa)で約160℃未満、例えば約120℃未満の沸点を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ケトン溶媒が、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びジエチルケトンからなる群から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アルコール溶媒が、大気圧で約120℃未満、例えば約100℃未満の沸点を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルコール溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール(n-、i-、又はt-)、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルコール溶媒が、メタノールである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記塩化水素を含むアルコール溶媒が、塩化水素を前記アルコール溶媒中に溶解することによって調製される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記塩化水素が、前記レミフェンタニル塩基に対して化学量論的に又はわずかに過剰に前記反応混合物中に存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液が、前記塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液に制御された速度で添加される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液が、前記ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液に制御された速度で添加される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記制御された添加が、実質的に一定の速度で行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記反応混合物の温度が、一方の溶液を他方の溶液に添加する間、周囲温度以下に維持される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記塩酸レミフェンタニルの沈殿をケトン溶媒で処理するステップを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記塩酸レミフェンタニルの沈殿を1つ以上のアルコール溶媒から再結晶することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された不純物プロファイルを有する塩酸レミフェンタニルを調製するためのプロセスを提供する。
【0002】
欧州特許第383579(B)号(Glaxo Wellcome Inc.)には、レミフェンタニル塩基及び塩酸レミフェンタニルの調製が記載されている。
【0003】
塩酸レミフェンタニル(すなわち、メチル1-(3-メトキシ-3-オキソプロピル)-4-[フェニル(プロパノイル)アミノ]ピペリジン-4-カルボキシレート塩酸塩)に関する欧州薬局方(10.0版)モノグラフは、いくつかの特定の不純物を同定している。特定の不純物のうちの1つは、レミプロパンアミド、すなわちメチル4-[フェニル(プロパノイル)アミノ]ピペリジン-4-カルボキシレートである。レミプロパンアミドは、不純物Aとして記載されている。
【0004】
【化1】
【0005】
モノグラフにおける不純物Aの許容基準は、0.2%以下である。不特定の不純物の許容基準は、各不純物について0.10%以下である。塩酸レミフェンタニル生成物中に存在する全ての不純物の合計は、1.0%を超えることができない。
【0006】
塩酸レミフェンタニルは、強力な医薬品有効成分(Active Pharmaceutical Ingredient、API)である。プラントでは、それは、高効力のスイートにおいて高度に制御された条件下で調製され、事故が発生した場合にすぐに行動を起こすことができるように、当直の看護師がスイート内で働く人々を監視する。
【0007】
曝露の下限は、8時間にわたる時間加重平均(Time Weighted Average、TWA)で1マイクログラム/mの職業曝露限界(Occupational Exposure Limit、OEL)に設定されている。
【0008】
本発明者らは、塩酸レミフェンタニルの大規模製造のための、従来技術の方法よりもより適した、改善されたプロセスを開発した。本発明のプロセスは、ロバストであり、バッチ間で一貫した不純物プロファイルを有する塩酸レミフェンタニルを生成する。要求される規格を満たさない生成物を再処理する必要性を低減又は排除しながら、塩酸レミフェンタニルがより長い貯蔵寿命を示すように、各バッチの不純物プロファイルが、十分に欧州薬局方モノグラフの限度内であることが望ましい。更に、本発明のプロセスは、望ましくない不純物を生成し、その結果、予想可能な不純物プロファイルを有する塩酸レミフェンタニルの生成を防止するものとして本発明者らによって同定されているアルコール溶媒に対してより大きな耐性を示す。
【0009】
定義
用語「周囲温度」は、約15℃~約30℃、例えば約15℃~約25℃の、1つ以上の室温を意味する。
【0010】
用語「からなる(consisting)」は、限定的であり、特許請求される本発明における追加の、列挙されていない要素又はプロセスステップを除外する。
【0011】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、半限定的であり、「からなる」と「含む(comprising)」との間の中間点を占める。「から本質的になる」は、特許請求される本発明の本質的な特性に重大な影響を及ぼさない追加の列挙されていない要素又はプロセスステップを除外しない。
【0012】
用語「含む(comprising)」は、包括的又は非限定的であり、特許請求される本発明における追加の列挙されていない要素又はプロセスステップを除外しない。この用語は、「含むが、これらに限定されない」と同義である。用語「含む(comprising)」は、3つの代替語、すなわち、(i)「含む(comprising)」、(ii)「からなる(consisting)」、及び(iii)「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0013】
用語「不純物」は、望ましくなく存在し、典型的には少量で生じる化合物を指す。不純物は、出発物質中に存在してもよく、反応の過程で生成され、かつ/又は生成物中に存在する。上記の不純物Aは、塩酸レミフェンタニルの欧州薬局方において命名された不純物である。
【0014】
用語「ケトン溶媒」は、レミフェンタニル塩基は可溶性であるが、塩酸レミフェンタニルは不溶性又は実質的に不溶性である、液体ケトンを指す。
【0015】
「スラリー」とは、1つ以上のケトン溶媒中の固体塩酸レミフェンタニルの少なくとも一部の不均一混合物を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、塩酸レミフェンタニルを調製するためのプロセスであって、ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液を、塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液と合わせるステップを含み、一方の溶液が他方の溶液に制御された速度で添加されて、塩酸レミフェンタニルの沈殿を含む反応混合物を形成する、プロセスを提供する。
【0017】
レミフェンタニル塩基は、当該分野で公知の方法を使用して調製され得る。
【0018】
好適なケトン溶媒は、大気圧(すなわち、1.0135×10Pa)で約160℃未満、例えば約120℃未満の沸点を有する。例としては、アセトン、2-ブタノンとしても公知のメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)、4-メチル-2-ペンタノンとしても公知のメチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone、MIBK)、及び3-ペンタノンとしても公知のジエチルケトンが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、ケトン溶媒は、メチルイソブチルケトンである。
【0019】
レミフェンタニル塩基対ケトン溶媒の任意の好適なw/v比は、ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液が生成されるという条件で使用され得る。レミフェンタニル塩基対ケトン溶媒のw/v比は、約1gのレミフェンタニル塩基:約1~約50mlのケトン溶媒、例えば約1gのレミフェンタニル塩基:約5~約30mlのケトン溶媒、例えば約1gのレミフェンタニル塩基:約7~約20mlのケトン溶媒の範囲であり得る。一実施形態では、レミフェンタニル塩基対ケトン溶媒のw/v比は、約1gのレミフェンタニル塩基:約10mlのケトン溶媒であり得る。
【0020】
レミフェンタニル塩基の溶解は、撹拌又は振盪などの補助の使用を通して促進され得る。レミフェンタニル塩基の溶解を補助するために、追加の溶媒が添加され得る。
【0021】
好適なアルコール溶媒は、大気圧下(すなわち、1.0135×10Pa)で約120℃未満、例えば約100℃未満の沸点を有し、塩化水素を溶解することができる。一実施形態では、アルコール溶媒は、無水である。例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール(n-、i-若しくはt-)、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。塩酸レミフェンタニルは、ケトン溶媒にあまり溶解しない。理論に束縛されるものではないが、一方の溶液が制御された速度で他方の溶液に添加される場合、アルコール溶媒の使用がケトン/アルコール溶媒混合物中の塩酸レミフェンタニルの溶解性を増加させ、その結果、塩酸レミフェンタニルの結晶化を遅延させ、より良好に制御するので、形成される不純物の量が減少されると考えられる。
【0022】
一実施形態では、アルコール溶媒はメタノールである。メタノールは、メタノール中の塩化水素の溶液が少量の塩化水素蒸気を生成するという点で、他のアルコール溶媒と比較して更なる利点を示す。更に、理論に束縛されるものではないが、メタノールは、塩酸レミフェンタニルの下流処理中に安定化効果を提供するようである。この安定化効果を以下により詳細に説明する。
【0023】
塩化水素は、室温でガスである。塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液は、塩化水素をアルコール溶媒中に溶解することによって調製され得る。これは、アルコール溶媒を通して塩化水素を泡立たせることによって達成され得る。塩化水素ガスをアルコール溶媒に泡立たせることは、ガスよりも溶液を制御することが容易であり、強力な汚染物質がガス処理パイプを通して吸い戻されるリスクが回避されるので、塩化水素によるレミフェンタニルの直接ガス処理よりもプラントにおいて安全である。
【0024】
塩酸水溶液の使用は、本発明によるものではない。本発明のプロセスは、水に対するいくらかの耐性を有するが、本発明のプロセスにおける水の包含は、レミフェンタニル分子の加水分解を引き起こして、不純物レミフェンタニル酸(欧州薬局方において不純物Cとして同定される)を形成すると考えられる。
【0025】
溶液が氷浴などの冷却手段を使用して周囲温度以下に維持されるように、塩化水素をアルコール溶媒中に泡立たせてもよい。一実施形態では、溶液は、≧約0℃~≦約30℃の範囲の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、溶液は、≧約5℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、溶液は、≧約10℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、溶液は、≧約15℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、溶液は、≦約30℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、溶液は、≦約25℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、溶液は、≦約20℃の1つ以上の温度に維持され得る。一実施形態では、溶液は、≧約15℃~≦約30℃の範囲の1つ以上の温度に維持され得る。
【0026】
最小容量のアルコール溶媒中で高濃度の塩化水素を調製することが望ましく、これにより、反応混合物に添加されるアルコール溶媒の量が制限され、アルコール溶媒中の塩酸レミフェンタニルの溶解性による塩酸レミフェンタニルの収率に対する起こり得る悪影響が防止されるからである。しかしながら、アルコール溶媒がメタノールである場合、HClとメタノールとが反応して時間とともに水及び塩化メチルを形成することができるので、溶媒中の塩化水素の濃度に対する妥協が満たされることが望ましい。したがって、濃度が高いほど、より多くの水及び塩化メチルが生成され得る。塩化メチルは、公知の不純物であるため、塩化メチルの存在は、不利である。本発明のプロセスは、水に対するいくらかの耐性を有するが、水がレミフェンタニル分子の加水分解を引き起こして不純物レミフェンタニル酸(欧州薬局方において不純物Cとして同定されている)を形成すると考えられているので、水の存在は通常不利である。これに関して、HCl/メタノール溶液中の約1.6%までの含水量は、本発明のプロセスに対して有意に有害ではないことが本発明者らによって実証されている。しかしながら、特定の実施形態では、HCl/メタノール溶液中の水の量を約0.5%以下に制限することが望ましい。HCl/メタノール溶液中に存在する水の量は、カールフィッシャー滴定によって決定することができる。更に、塩化メチルは、水と同じ速度で形成されるので、HCl/メタノール溶液中の塩化メチル含有量は、水の量が計算されると推定することができる。水(及びしたがって、塩化メチル)の形成は、本発明のプロセスで使用する前に、HCl/メタノール溶液を少なくとも約-10℃、例えば-18℃の温度で冷凍庫に保存することによって抑制することができる。本発明者らは、少なくとも3ヶ月間-18℃で冷凍庫に保存されたHCl/メタノール溶液が、作製される塩酸レミフェンタニルの品質に悪影響を及ぼさないことを見出した。
【0027】
【化2】
【0028】
アルコール溶媒中の塩化水素の濃度は、約0.5~約5モル、例えば約1~約4モル、例えば約2~約3モルの範囲であってもよい。
【0029】
一実施形態では、塩化水素は、レミフェンタニル塩基に対して化学量論的に又はわずかに過剰に反応混合物中に存在する。塩化水素が過剰に存在する場合、化学量論的反応に必要な量を少なくとも1%超えるモル過剰を提供するように計算される。
【0030】
一方の溶液を制御された速度で他方の溶液に添加する。制御された添加速度は、一方の溶液(例えば、酸性アルコール溶液)が他方の溶液(例えば、ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液)に一度に添加されるバルク添加を含まない。
【0031】
添加速度は、塩酸レミフェンタニルを沈殿させることができる任意の好適な速度であり得るが、塩酸レミフェンタニル沈殿中の過剰な塩化水素及び/又はレミフェンタニル塩基の捕捉を最小限に抑えるか又は排除する速度である。添加速度は、添加される酸性アルコール溶液の量及び濃度、反応の規模、反応容器のサイズ、並びに処理時間の長さを含む様々なパラメータによって適切に適合され得る。
【0032】
一実施形態では、ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液は、塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液に制御された速度で添加され得る。
【0033】
あるいは、塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液は、ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液に制御された速度で添加され得る。この実施形態は、典型的には、強力なレミフェンタニル塩基の取り扱いを最小限に抑えることができるので、健康及び安全性に関してより望ましい。
【0034】
理論に束縛されるものではないが、塩酸レミフェンタニルが溶液から突然沈殿する場合(これは、例えばケトン溶媒が単独で使用される場合に起こり得る)、過剰な塩化水素が沈殿生成物中に捕捉され得ると考えられる。次いで、過剰な塩化水素は、生成物のその後の処理時に望ましくなく放出される場合があり、例えば、その処理段階中に少なくとも1つの他の不純物(例えば、レミフェンタニルイソプロピルエステル不純物)の形成を触媒する場合がある。
【0035】
本発明の実施例6から抽出されたデータは、HCl/メタノール溶液を1回の投入で添加することによって得られた塩酸レミフェンタニル試料のpHが、HCl/メタノールを制御された速度で添加した場合に得られたものよりも約1pH単位低いことを実証している。このデータは、過剰な塩化水素が、バルク/ダンプチャージ添加中に沈殿した生成物中に望ましくなく捕捉されるという理論を支持している。
【0036】
【表1】
本発明によらない
本発明による
【0037】
一方、不十分な塩化水素が反応混合物に添加される場合、レミフェンタニル塩基は、沈殿した塩酸レミフェンタニル生成物中に捕捉され、次いで(加熱時に)逆「マイケル付加」を受けてレミプロパンアミド(不純物A)を発生する場合がある。
【0038】
制御された添加は、約5分~約60分、例えば約7分~約45分、例えば約10分~約30分かかり得る。
【0039】
一実施形態では、制御された添加は、実質的に一定の速度で行われる。添加速度は、反応の規模に依存し得る。例えば、添加速度は、より大規模な反応と比較して、より小規模な反応ではより遅くてもよい(すなわち、より長い時間がかかる)。一実施形態では、添加速度は、約0.01ml/分~約10ml/分、例えば約0.1ml/分~約5ml/分であってもよい。別の実施形態では、添加速度は、約10ml/分~約100ml/分、例えば約20ml/分~約80ml/分、例えば約30ml/分~約70ml/分であってもよい。
【0040】
塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液が、ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液に添加される場合、反応混合物のpHは、約pH8から酸性pHに低下する。本発明者らは、塩酸レミフェンタニル反応混合物が約1.5~約2のpHを有する場合に反応が典型的に完了することを見出した。反応混合物がこの範囲のpHを達成したとき、約1モル当量の塩化水素が添加されたことが決定された。この範囲のpHを正確に目標とするために、初期の塩化水素含有アルコール溶液の大部分(例えば、約70%、約80%、又は約90%)を上記のように反応混合物に添加し、反応混合物のpHをチェックし、残りの部分(例えば、約30%、約20%、又は約10%)を上記のように反応混合物に添加し、続いてpHの最終チェックを行ってもよい。pHが約1.5未満である場合、典型的には過剰な塩化水素が反応混合物に添加されている。
【0041】
pHが約2より大きい場合、典型的には不十分な塩化水素が添加されており、反応混合物は、より多くの塩化水素含有アルコール溶液を添加する必要がある。水湿潤狭範囲pH紙(例えば、約1.7~約3.8)が使用され得る。
【0042】
一方の溶液を他方の溶液に添加する間、反応混合物の温度は、周囲温度以下に維持され得る。一実施形態では、反応混合物は、≧約0℃~約≦30℃の範囲の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、≧約1℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、≧約2℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、≧約3℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、≧約4℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、≧約5℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、≦約30℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、≦約25℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、≦約20℃の1つ以上の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、≦約15℃の1つ以上の温度に維持され得る。一実施形態では、反応混合物は、≧約15℃~≦約30℃の範囲の1つ以上の温度に維持され得る。
【0043】
反応混合物は、制御された添加の間、任意選択で撹拌されてもよい。添加が完了した後、更に一定時間、例えば約1分~約1時間、例えば約5分間、撹拌を続けてもよい。
【0044】
プロセスは、不活性雰囲気(例えば、窒素又はアルゴン)下で実施され得る。
【0045】
プロセスの完了時に、塩酸レミフェンタニルは、濾過、デカンテーション、又は遠心分離によって回収され得る。本発明の生成物がどのように回収されても、分離された生成物を溶媒(例えば、MIBKなどの上記のケトン溶媒のうちの1つ以上)で洗浄し、乾燥させてもよい。乾燥は、公知の方法を使用して、例えば、約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、周囲温度で、任意選択で真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約72時間、実行され得る。あるいは、生成物は、例えば生成物のフィルターケーキに窒素を約1時間~約72時間通すことによって乾燥させてもよい。乾燥条件は、塩酸レミフェンタニルが劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって塩酸レミフェンタニルが上記の温度、圧力範囲、又は条件内で劣化することが公知であるとき、乾燥条件は、劣化温度、真空度、又は条件よりも低く維持されるべきである。
【0046】
本プロセスは、塩酸レミフェンタニルの沈殿をケトン溶媒で処理するステップを更に含んでもよい。ケトン溶媒は、上記のとおりであってもよい。一実施形態では、ケトン溶媒は、メチルイソブチルケトンである。
【0047】
本発明者らは、塩酸レミフェンタニルをケトン溶媒で処理すると、塩酸レミフェンタニル沈殿中に存在し得る過剰な塩化水素が洗い流されることを見出した。
【0048】
塩酸レミフェンタニル対ケトン溶媒の任意の好適なw/v比が使用され得る。塩酸レミフェンタニル対ケトン溶媒のw/v比は、約1gの塩酸レミフェンタニル:約1~約50mlのケトン溶媒、例えば約1gの塩酸レミフェンタニル:約5~約30mlのケトン溶媒、例えば約1gの塩酸レミフェンタニル:約7~約20mlのケトン溶媒の範囲であり得る。一実施形態では、塩酸レミフェンタニル対ケトン溶媒のw/v比は、約1gのレミフェンタニル塩基:約10~約15mlのケトン溶媒であり得る。
【0049】
一実施形態では、塩酸レミフェンタニルは、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒中でスラリー化されてもよい。
【0050】
ケトン溶媒による塩酸レミフェンタニルの処理は、上記のように周囲温度以下で実施され得る。
【0051】
処理ステップは、過剰な塩化水素が全く又は実質的に残っていないことが決定されるまでの期間にわたって実施される。処理ステップの完了は、インプロセス分析によって、例えば、上記のような水湿潤狭範囲pH紙を用いて各ケトン溶媒洗浄物のpHをチェックすることによって決定され得る。
【0052】
塩酸レミフェンタニル沈殿は、ケトン溶媒で1回以上(例えば、2、3、4、5回以上)処理されてもよい。典型的には、処理ステップは、約2時間以内に完了する。
【0053】
処理ステップは、任意選択で、例えば約1分~約1時間撹拌することを含んでもよい。
【0054】
プロセスの完了時に、塩酸レミフェンタニルは、上記のように回収され、洗浄され、乾燥され得る。
【0055】
本プロセスは、1つ以上のアルコール溶媒から塩酸レミフェンタニルの沈殿を再結晶することを更に含んでもよい。アルコール溶媒は、上記のとおりであってもよい。一実施形態では、アルコール溶媒は、n-又はイソプロピルアルコールなどのプロピルアルコールであり得る。
【0056】
塩酸レミフェンタニル対アルコール溶媒の任意の好適なw/v比が使用され得る。塩酸レミフェンタニル対アルコール溶媒のw/v比は、約1gの塩酸レミフェンタニル:約1~約50mlのアルコール溶媒、例えば約1gの塩酸レミフェンタニル:約5~約30mlのアルコール溶媒、例えば約1gの塩酸レミフェンタニル:約7~約25mlのアルコール溶媒の範囲であり得る。一実施形態では、塩酸レミフェンタニル対アルコール溶媒のw/v比は、約1gのレミフェンタニル塩基:約20~約15mlのアルコール溶媒であり得る。
【0057】
再結晶は、塩酸レミフェンタニルの沈殿を1つ以上のアルコール溶媒中に溶解して溶液を形成すること(例えば、反応混合物を加熱還流することによって)と、塩酸レミフェンタニルを溶液から沈殿させること(例えば、反応混合物を周囲温度に冷却することによって)と、を含み得る。精製された塩酸レミフェンタニル生成物は、上記のように回収され、洗浄され(例えば、上記の1つ以上のアルコール溶媒で)、乾燥され得る。
【0058】
理論に束縛されるものではないが、塩酸レミフェンタニル固体がその中に捕捉された過剰な塩酸塩を望ましくなく含有する場合、塩酸塩は、再結晶中に放出され、塩酸レミフェンタニルとアルコール溶媒とのエステル交換を触媒し得る。アルコール溶媒は、塩酸レミフェンタニルが再結晶される溶媒であってもよい。
【0059】
【化3】
【0060】
例えば、塩酸レミフェンタニル沈殿がイソプロピルアルコールから再結晶される場合、塩酸レミフェンタニルのエステル交換は、レミフェンタニルイソプロピルエステル塩酸塩を不純物として生成し得る。
【0061】
【化4】
【0062】
代替的に又は追加的に、アルコール溶媒は、再結晶ステップまで実施することができる初期の処理ステップに由来してもよい。例えば、エタノールは、残留不純物としてメチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone、MIBK)中に存在してもよく、塩酸レミフェンタニルの形成においてMIBKを使用した結果として反応混合物中に導入されてもよい。したがって、エタノールは、HClの存在下で反応し、エステル交換反応を受けてレミフェンタニルエチルエステル不純物を形成し得る。
【0063】
【化5】
【0064】
典型的には、再結晶は、可能な限り迅速に完了する。反応混合物を加熱還流する場合、レミフェンタニルがエステル交換反応を受ける可能性がより高く、またいくらかのレミフェンタニルが分解してレミプロパンアミド不純物を形成する場合があるので、反応混合物を還流に長時間(例えば30分以上)保持することは典型的には望ましくない。
【0065】
塩酸レミフェンタニルが塩化水素を含むメタノールを使用して調製される場合、生成された塩酸レミフェンタニル沈殿は、残留メタノールを含み得る。理論に束縛されるものではないが、残留メタノールは、塩酸レミフェンタニルがメタノール自体以外のアルコール溶媒から再結晶される場合に安定化効果を提供すると考えられる。これは、残留メタノールの存在での塩酸レミフェンタニルのエステル交換が不純物を生成せず、むしろ塩酸レミフェンタニル自体を再形成するからである。
【0066】
【化6】
【0067】
プロセスの完了時に、再結晶された塩酸レミフェンタニルは、上記のように回収され、洗浄され、乾燥され得る。
【0068】
本発明のプロセスを実施する際に、改善された不純物プロファイルを有する生成物(塩酸レミフェンタニル)を得ることが可能であり、特定の実施形態では、再結晶ステップは、任意選択であってもよい。
【0069】
一実施形態では、塩酸レミフェンタニル中の不純物A(レミプロパンアミド)のレベルを有意に低減することが可能であり、この不純物は、欧州薬局方などの公式モノグラフで指定された特定のレベルに制御されなければならない。例えば、塩酸レミフェンタニルに関する欧州薬局方のモノグラフは、不純物Aに関する許容基準が0.2%を超えてはならないことを詳述している。しかしながら、公式モノグラフは、製剤化及びその後のヒトへの投与に好適な塩酸レミフェンタニルに関することを認識することが重要である。この点において、生成キャンペーンにおいて最終的に調製された塩酸レミフェンタニルは、必要とされる基準に適合するために、不純物A及び他の不純物のレベルを十分に許容可能な低レベルに低減するために、いくつかの(又は実際には多くの)精製処理を受けていてもよい。したがって、精製処理は、典型的には、プラントでの処理時間の延長及び生成物収率の損失をもたらす可能性がある。しかしながら、本発明のプロセスを実施する際に、不純物Aの形成を最小限に抑えることができ、したがって、更なる精製の必要性を低減することができる。
【0070】
実施例4(本発明によらない)は、塩化水素によるレミフェンタニル塩基の溶液の直接ガス処理が、一貫した結果をもたらすプロセスではないことを示す。この点で、可変量のレミプロパンアミドがバッチごとに生成される(以下の試料A~Gを参照)。レミプロパンアミドの量は、工業用塩酸レミフェンタニルを再結晶させて純粋塩酸レミフェンタニルを形成することによって減少させることができるが(試料H~Jを参照)、残存するレミプロパンアミドの量は、依然としてバッチ間で一貫していない。例えば、純粋塩酸レミフェンタニルを再結晶することによる追加の処理は、レミプロパンアミドレベルを更に低下させ得るが(試料K参照)、これは、上記のようなプラントでの処理時間の延長及び生成物収率の損失をもたらす。
【0071】
【表2】
【0072】
しかしながら、実施例5及び6は、不十分な塩化水素(実施例5、試料A10)又は過剰な塩化水素(実施例5、試料B10)が添加された場合であっても、本発明によるプロセスにおいて一貫して少量のレミプロパンアミドが生成されることを実証している。
【0073】
【表3】
本発明による
【0074】
実施例6は、塩酸レミフェンタニルの試料を24時間ストレス試験に供した後の、本発明によるプロセスにおけるレミフェンタニルイソプロピルエステル塩酸塩不純物の形成の減少を証明する。実施例6はまた、HCl/メタノールのバルク添加(本発明によらない)とは対照的に、HCl/メタノールの制御された添加速度(本発明による)の後に形成される不純物の総量の減少を証明する。
【0075】
【表4】
本発明によらない
本発明による
【0076】
本発明の実施形態及び/又は任意選択的特徴は、上記で説明されている。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の実施形態又は任意選択的特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせで、組み合わせることができる。
【0077】
以下の実施例を参照して、本発明を更に説明し、実施例は例示することを意図するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0078】
実施例
反応は、窒素雰囲気下で実施した。
【0079】
【表5】
【0080】
HPLC法
レミフェンタニルHPLC法
システム :Thermo Dionex UltiMate 3000
カラム :Waters X-Terra RP18 150×4.6mm、3.5ミクロン
移動相 :以下のように溶液を調製する:
:A 1000mlの水中に溶解し、アンモニア(SG 0.88)でpH9.0に調整した770mgの酢酸アンモニウム
:B HPLCグレードアセトニトリル
流速 :1.5ml/分
温度 :40℃
検出器 :220nmのUV
注入量 :10マイクロリットル
実行時間 :40分
【0081】
【表6】
【0082】
試料溶液(試験溶液(a))
100mg(±10mg)の試料を10mlのメスフラスコに正確に秤量する。メタノール中に溶解し、メタノールで容量まで希釈する。
【0083】
標準溶液(レミフェンタニル溶液(b))
1.0mlの試料溶液をメタノールで100.0mlに希釈する。更に1.0mlをメタノールで10.0mlに希釈する。
【0084】
システム適合性溶液
Remi-N-ベンジルプロピオンアミドエステルシュウ酸塩及びN-ベンジルプロピオンアミドシュウ酸塩のそれぞれ10mg(±1mg)を10mlのメスフラスコに正確に秤量する。メタノール中に溶解し、メタノールで希釈する
【0085】
あるいは、10mg(±1mg)のN-ベンジルプロピオンアミドシュウ酸塩を10mlのメスフラスコに正確に秤量し、1.0mlの試料溶液を添加し、メタノール中に溶解させてメタノールで容量まで希釈する。
【0086】
方法
メタノールをブランク注入する。
【0087】
システム適合性溶液を2回で注入する。
【0088】
Remi-N-ベンジルプロピオンアミドエステルに起因するピークとN-ベンジルプロピオンアミドに起因するピークとの間の分離度(相対保持時間約1.09)は、PhEur法によって計算した場合、2以上でなければならない。
【0089】
標準溶液を三重に注入する。ピーク応答の相対標準偏差は、10%を超えてはならない。
【0090】
標準溶液の1回目の注入におけるRemi-N-ベンジルプロピオンアミドエステルピークの信号対雑音比を計算する。Ph.Eur法によって信号/雑音比から計算した定量限界は、0.05%の報告閾値以下でなければならない。
【0091】
システム適合性要件が満たされない場合、カラム若しくはシステムを修理/交換するか、又は新しい移動相で試験を繰り返す。
【0092】
試料溶液を2回で注入し、ピーク応答を平均する。
【0093】
全ての試料は、分解を回避するために調製されるとすぐに分析されるべきである。
【0094】
このHPLC法は、塩酸レミフェンタニルに関する欧州薬局方モノグラフにおける許容基準を満たす。
【0095】
不特定不純物、%
不特定不純物(%)=[試験溶液(a)中の不純物ピーク面積×0.1]/レミフェンタニル溶液(b)中の平均レミフェンタニルピーク面積
【0096】
実施例1(本発明による)
HClガス化メタノールを使用する塩酸レミフェンタニルの調製
1. 約5.0gのレミフェンタニル塩基を含有する50mlのMIBK溶液(試料A1)を250mlフランジフラスコに添加した。
2. スターラーをダイヤル上で1のすぐ上(約1.2)に設定した。
3. HClガス化メタノール(3M)を20分かけて滴下した。合計3.6mlを添加した。HClガス化メタノールの含水量をKFによって分析し、平均0.75%であると決定した。
4. 塩酸レミフェンタニルを沈殿させるために、HClガス化メタノールの数回の添加が必要であった。HClガス化メタノールを添加すると、反応混合物は、濁った後、固体として沈殿した。レミフェンタニルHClは、イソプロピルアルコールよりもメタノールに可溶性であると仮定された。
5. 反応混合液の試料を抽出し、水湿潤1.7~3.8pH紙を使用してpHを試験した。pHは、1.7(青色)であると決定した。
6. 反応混合物を5分間撹拌した。
7. 固体を濾過し、5mlのMIBKで洗浄した。固体を1時間吸引乾燥した。
8. 固体は、非常に乾燥しているように見えた。N=3.82g。
9. 固体をHPLCによって分析した(試料A2)。
10. 液をHPLCによって分析した(5mlのメタノール中0.5ml)(試料A3)。
11. 液は、数mlの不透明な橙色の液体を含有していた。この液体を除去し、HPLCによって分析した(試料A4)。
【0097】
MIBKスラリー
1. 1.0gの試料A2をバイアルに入れ、MIBK(10ml、10容量)を添加することによって、MIBKスラリーを形成した。
2. 固体を濾過し、1mlのMIBKで洗浄した。固体を5分間吸引乾燥した。
3. 固体は、非常に乾燥しているように見えた(試料A5)。
4. 固体のpHを、0.5gの試料A5を50mlのELGA水中に溶解することによって決定した。pHは、6.05であることがわかった。
【0098】
全ての試料をHPLCメタノールで調製し、上記のHPLC法を使用して分析した。以下の表は、試料A1~A5の不純物プロファイルを示す。
【0099】
【表7】
【0100】
実施例2(本発明による)
過剰な酸及び高い含水量を用いた実験
1. 約5.0gのレミフェンタニル塩基を含有する50mlのMIBK溶液(試料B1)を250mlフランジフラスコに添加した。
2. スターラーをダイヤル上で1のすぐ上(約1.2)に設定した。
3. HClガス化メタノール(3M)を20分かけて滴下した。合計3.6mlを添加した。HClガス化メタノールの含水量をKFによって分析し、平均1.33%であると決定した。
4. 塩酸レミフェンタニルを沈殿させるために、HClガス化メタノールの数回の添加が必要であった。HClガス化メタノールを添加すると、反応混合物は、濁った後、固体として沈殿した。
5. 反応混合液の試料を抽出し、水湿潤1.7~3.8pH紙を使用してpHを試験した。pHは、1.7(青色)であると決定した。
6. 更に3mlのHClガス化メタノールをゆっくり添加し、5分間撹拌した。
7. 固体を濾過し、5mlのMIBK(1容量)で洗浄した。固体を1時間吸引乾燥した。
8. 固体は、非常に乾燥しているように見えた。N=3.8g。
9. 固体をHPLCによって分析した(試料B2)。
10. 液をHPLCによって分析した(5mlのメタノール中0.5ml)(試料B3)。
11. 液は、底に沈降する数mlの不透明な橙色の液体を含有していた。この液体を除去し、HPLCによって分析した(試料B4)。
【0101】
MIBKスラリー
1. 2.0gの試料B2をバイアルに入れ、MIBK(20ml、10容量)を添加することによって、MIBKスラリーを形成した。
2. 固体を濾過し、2mlのMIBKで洗浄した。固体を5分間吸引乾燥した。
3. 固体は、非常に乾燥しているように見えた(試料B5)。
4. 固体のpHを、0.5gの試料B5を50mlのELGA水中に溶解することによって決定した。pHは、6.09であることがわかった。
【0102】
全ての試料をHPLCメタノールで調製し、上記のHPLC法を使用して分析した。以下の表は、試料B1~B5の不純物プロファイルを示す。
【0103】
【表8】
【0104】
実施例3(本発明による)
エタノールスパイク及び高い含水量を用いた実験
1. 約5.0gのレミフェンタニル塩基を含有する50mlのMIBK溶液(試料C1)を250mlフランジフラスコに添加した。
2. スターラーをダイヤル上で1のすぐ上(約1.2)に設定した。
3. エタノール(1ml、2%スパイク)を添加した。
4. HClガス化メタノール(3M)を20分かけて滴下した。合計3.6mlを添加した。HClガス化メタノールの含水量をKFによって分析し、平均1.6%であると決定した。
5. 塩酸レミフェンタニルを沈殿させるために、HClガス化メタノールの数回の添加が必要であった。HClガス化メタノールを添加すると、反応混合物は、濁った後、固体として沈殿した。
6. 反応混合液の試料を抽出し、水湿潤1.7~3.8pH紙を使用してpHを試験した。pHは、1.7(青色)であると決定した。
7. 反応混合物を5分間撹拌した。
8. 固体を濾過し、5mlのMIBK(1容量)で洗浄した。固体を1時間吸引乾燥した。
9. 固体は、非常に乾燥しているように見えた。N=3.89g。
10. 固体をHPLCによって分析した(試料C2)。
11. 液をHPLCによって分析した(5mlのメタノール中0.5ml)(試料C3)。
12. 液は、底に沈降する数mlの不透明な橙色の液体を含有していた。この液体を除去し、HPLCによって分析した(試料C4)。
【0105】
MIBKスラリー
1. 2.0gの試料C2をバイアルに入れ、MIBK(20ml、10容量)を添加することによって、MIBKスラリーを形成した。
2. 固体を濾過し、2mlのMIBKで洗浄した。固体を5分間吸引乾燥した。
3. 固体は、非常に乾燥しているように見えた(試料C5)。
4. 固体のpHを、0.5gの試料C5を50mlのELGA水中に溶解することによって決定した。pHは、5.98であることがわかった。
【0106】
全ての試料をHPLCメタノールで調製し、上記のHPLC法を使用して分析した。以下の表は、試料C1~C5の不純物プロファイルを示す。
【0107】
【表9】
【0108】
予めガス化したHClメタノール溶液を使用して実験室で生成したレミフェンタニルHClの試料(すなわち、実施例1の試料A5、実施例2の試料B5、及び実施例3の試料C5)を、塩化水素で直接ガス処理することによって製造したレミフェンタニルHClのバッチと比較した。
【0109】
【表10】
本発明による
本発明によらない
§未知のピーク<0.05面積%は、表から省略したが、全不純物の面積%は、全てのピークを含む。
【0110】
実施例1~3のレミフェンタニル塩基投入についての不純物プロファイルは、類似しており、全ての反応が類似の出発プロファイルを有していたことを示している。
【0111】
単離された全てのレミフェンタニルHCl試料、すなわちA5、B5、及びC5は、きれいな生成物が得られたことを示す。試料A5、B5、及びC5中に存在する不純物の総量(それぞれ0.24%、0.12%、及び0.07%)は、塩化水素ガスで直接ガス処理することによって生成されたバッチ(それぞれ0.58%、0.40%、及び0.39%)よりも著しく低い。
【0112】
エタノールは、残留不純物としてMIBK中に存在してもよく、MIBKを使用した結果として反応混合物中に導入されてもよい。次いで、それを追加のHClの存在下で反応させて、エチルエステル不純物を形成し得る。エチルエステル不純物は、反応物にエタノールをスパイクしたにもかかわらず、実施例3の試料C5において有意に高いレベルで同定されなかった。
【0113】
実施例4(本発明によらない)
イソプロピルアルコール中の工業用レミフェンタニルHCl及び純粋レミフェンタニルHClの安定性
【0114】
【化7】
【0115】
工業用レミフェンタニルHClは、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone、MIBK)中のレミフェンタニル塩基の溶液を塩化水素ガスで直接ガス処理することによって調製され得る。反応混合物は、HClガスの添加によって約1.5~約3.0のpH範囲に酸性化され得る。工業用レミフェンタニルHClは、溶液から沈殿し、濾過によって単離される。次いで、レミフェンタニルHClをイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、IPA)からの再結晶によって更に精製して、純粋塩酸レミフェンタニルを得てもよい。
【0116】
このようにして生成された工業用レミフェンタニルHCl及び純粋レミフェンタニルHClのいくつかのバッチから試料を採取した。試料の安定性を以下のように評価した:
【0117】
再結晶条件を使用するレミフェンタニルHClのストレス試験
一連の工業用レミフェンタニルHCl及び純粋試料を用いて以下のことを実施した:
1. レミフェンタニルHCl(0.5g)をカルーセル管に充填した。
2. IPA(6mL)を管に充填した。
3. マグネチックスターラーを管に加えた。
4. カルーセルのスイッチを入れ、加熱還流した(82℃)。
5. 更にIPAをいくつかの試料に添加し、追加の4mLのIPAを全ての管に添加した。
6. 溶液が形成された。
7. 試料を時間0で採取した(20mLのメタノール中約1mL)。
8. 2時間が経過した後に試料を採取した(20mLのメタノール中約1mL)。
9. 溶液をその温度で一晩保持した。
10. 24時間が経過した後に試料を採取した(20mLのメタノール中約1mL)。
11. 試料を放置して冷却し、適切に廃棄した。
【0118】
【表11】
12. 各バッチの試料(1.25g)を25mLの水中に溶解した。特定の試料は、HClの添加により溶解するヘイズを示した。試料を上記のHPLC法により分析した:
【0119】
【表12】
【0120】
24時間ストレス試験後のHPLC関連物質データ:
【0121】
【表13】
【0122】
レミプロパンアミド(RemiPPH)レベルは、バッチG及びHから採取された試料を除く全てのバッチにおいて増加した。理論に束縛されるものではないが、レミプロパンアミドの形成の原因がレミフェンタニル塩基の存在である場合、バッチG及びHは、レミフェンタニル塩基を含有しないと考えられる。これらのバッチは、塩形成中にそれらに添加されたHClガスの最大容量を有することが確認された。
【0123】
HCl(水溶液)酸を試料C、D、及びFに添加した場合、ヘイズが除去され、これはレミフェンタニル塩基の存在を示す。溶液E及びHのpHを、pH紙を使用してチェックした。溶液EのpHは、5であり、溶液HのpHは、4であった。これは、工業用試料がレミフェンタニル塩基を含有するという理論を更に確証する。
【0124】
レミプロパンアミドの形成は、純粋試料よりも工業用試料において速く、これは、工業用試料におけるレミフェンタニル塩基のより高いパーセンテージを示す。理論に束縛されることを望むものではないが、再結晶手順は、レミフェンタニル塩基を除去するが、再結晶手順中に使用される高温は、レミプロパンアミド形成を促進し得ると考えられる。
【0125】
実施例5(本発明による)
HClガス化メタノールによるアンダーガス処理
1. 50mLのMIBK溶液を250mLフランジフラスコに添加した。
この溶液は、約5.0gのレミフェンタニル塩基を含有していた(試料A1)。
2. スターラーをダイヤル上で1のすぐ上(約1.2)に設定した。
3. HClガス化メタノール(2M)を滴下し、合計3mLを添加した。メタノールの含水量は、0.22%であった。それは、実験の5週間前に調製し、水の発生を防止するために冷凍庫に保存しておいた。
4. 反応混合液の試料を抽出し、pHを水湿潤pH1~14紙で試験した。pHは、5であった。レミフェンタニルHCl形成のためのpHは、典型的には、1.5~3の範囲である。5のpHは、典型的な範囲よりも高く、反応がアンダーガス化される場合にはそのようになると予想される。
5. 反応混合物を5分間撹拌した。
6. 得られた固体を濾過し、5mLのMIBKで洗浄した。固体を1時間にわたって吸引乾燥した。
7. 固体は、非常に乾燥しているように見えた。N=3.98g。
8. 固体をHPLCによって分析した(試料A2)。
9. 液をサンプリングし、HPLCによって分析した(10mLのエタノール中0.5mL)(試料A3)。
【0126】
MIBKスラリー
1. 固体をフラスコから除去しなかった。MIBKをフラスコに直接添加し、その場でスラリー化した。MIBK(40mL、10容量)を添加した。
2. 固体を濾過し、5分間吸引乾燥した。
3. 固体は、非常に乾燥しているように見えた(試料A4)。N=3.93g。
4. pHは、0.5gの試料A4を50mLのELGA水中に溶解することによって決定した。pHは、5.91であった。
【0127】
全ての試料をHPLCメタノールで調製し、上記のHPLC法を使用して分析した。
【0128】
HClガス処理メタノールによるオーバーガス処理
1. 50mLのMIBK溶液を250mLフランジフラスコに添加した。この溶液は、約5.0gのレミフェンタニル塩基を含有していた(試料B1)。HPLC用にサンプリングしなかった。
2. スターラーをダイヤル上で1のすぐ上(約1.2)に設定した。
3. HClガス化メタノール(2M)を滴下し、合計7mLを添加した。メタノールの含水量は、0.22%であった。それは、実験の5週間前に調製し、水の発生を防止するために冷凍庫に保存しておいた。
4. 反応混合液の試料を抽出し、pHを水湿潤pH1~14紙で試験した。pHは、0であった。レミフェンタニルHCl形成のためのpHは、典型的には、1.5~3の範囲である。0のpHは、典型的な範囲よりも低く、反応がオーバーガス化される場合にはそのようになると予想される。
5. 反応混合物を5分間撹拌した。
6. 得られた固体を濾過し、5mLのMIBKで洗浄した。固体を1時間にわたって吸引乾燥した。
7. 固体は、非常に乾燥しているように見えた。N=3.23g。
8. 固体をHPLCによって分析した(試料B2)。
9. 液をサンプリングし、HPLCによって分析した(10mLのエタノール中0.5mL)(試料B3)。
【0129】
MIBKスラリー
1. 固体をフラスコから除去しなかった。MIBKをフラスコに直接添加し、その場でスラリー化した。MIBK(40mL、10容量)を添加した。
2. 固体を濾過し、5分間吸引乾燥した。
3. 固体は、非常に乾燥しているように見えた(試料B4)。N=2.81g。
4. pHは、0.5gの試料B4を50mLのELGA水中に溶解することによって決定した。pHは、6.20であった。
【0130】
全ての試料をHPLCメタノールで調製し、上記のHPLC法を使用して分析した。
【0131】
再結晶条件を使用するストレス試験
1. 工業用レミフェンタニルHCl(試料A4)を2つのカルーセル管に秤量した。
2. 工業用レミフェンタニルHCl(試料B4)を2つの異なるカルーセル管に秤量した。
3. IPA(12.6mL、14容量)を各管に添加し、加熱還流した。
4. 還流したら、試料A4を含有する管及び試料B4を含有する管をサンプリングし(それぞれ試料A5及びB5)、熱源から取り出し、室温まで冷却した。
5. 固体を単離し、IPA(1mL、試料当たり1容量)で洗浄した。
6. 母液(それぞれ試料A6及びB6)並びに固体(それぞれ試料A7及びB7)をサンプリングした。
7. 残りの2本の管を一晩還流させた後、サンプリングし、同じ試料コードを使用して単離した(A8/B8-還流試料、A9/B9-母液、A10/B10単離された純粋なもの)。
【0132】
試料コードを以下に詳述する。全ての試料は、10mLのHPLCメタノール中の約100mgのレミフェンタニル又は0.5mLの液を使用して作製した。試料を、上で詳述したHPLC法を使用して分析した。
【0133】
【表14】
【0134】
単離された固体及びリスラリー試料-試料A1、A2、A3、及びA4についてのHPLCデータ:
【0135】
【表15】
【0136】
理論に束縛されるものではないが、MIBK中の安定剤は、記載されたHPLC法を使用して検出可能であると考えられる。結果として、MIBKは、HPLCデータにおいて3つのRRTを有するものとして示される。
【0137】
単離された固体及びリスラリー試料-試料B2、B3、及びB4についてのHPLCデータ:
【0138】
【表16】
【0139】
ストレス試験中に採取した試料-試料A5~A10及びB5~B10についてのHPLCデータ:
【0140】
【表17】
【0141】
【表18】
【0142】
結論:
工業用レミフェンタニルHClの形成:
・レミプロパンアミドは、「アンダーガス化」プロセスにおいてのみ検出され、液に完全に失われる。IPAエステルは、オーバーガス化プロセスにおいてより高いレベルで検出され、これは、追加のHClがレミフェンタニル塩基とIPAとの間の反応を触媒するという以前の知見と一致する。
・得られた工業用レミフェンタニルHCl試料のpH値は、類似しており、予想どおりである。これは、過剰な酸が結晶中に捕捉されなかったことを示す。
【0143】
再結晶:純粋レミフェンタニルHClの形成
・アンダーガス化試料(試料A4)をIPA中で加熱し、10分後に単離した場合、レミプロパンアミドは、検出されなかった。この保持時間を24時間に増加させた場合、レミプロパンアミドのその場レベルは、0.60%から増加し、0.33%が固体中に残った。
・オーバーガス化材料(試料B4)で繰り返した場合、レミプロパンアミドレベルは、単離された固体において再び検出されない(IPAエステルは存在したが)。還流時間を24時間に増加させた場合、レミプロパンアミドレベルは、0.48%に増加し、0.25%が固体中に残った。IPAエステルは、オーバーガス化材料を使用した場合、全ての試料において検出される。
【0144】
24時間後に採取した還流試料(試料A8/B8)と実施例4で採取した試料との比較を行うことができる。実施例4では、様々な工業用レミフェンタニルHCl及び純粋レミフェンタニルHClの試料をIPA中に入れ、24時間還流した。レミプロパンアミドレベルは、1~3%であり、この実施例で観察された0.60%及び0.48%よりもはるかに高かった。このことは、本発明の方法が、不十分な塩化水素(試料A8)及び過剰な塩化水素(試料B8)が使用された場合であっても、反応混合物中に残存する未反応のレミフェンタニル塩基が少ないことを示す。IPAエステル不純物のレベル(実施例4では0.23%~9.75%)を0.21%及び0.12%と比較すると、予備ガス化メタノール経路もこの不純物の形成を防止するのに有利であることが示される。
【0145】
この実施例は、レミプロパンアミドレベルを低下させるために、十分なHClを添加しなければならず、再結晶が可能な限り迅速であることが望ましいことを示す。実施例4と比較すると、本発明の方法は、より少ないレミプロパンアミドが形成される結果となる。
【0146】
理論に束縛されるものではないが、塩酸レミフェンタニル形成ステップにおいて導入された残留メタノールは、IPA再結晶ステップにおいて生成物をより安定にし得ると考えられる。これに関して、レミフェンタニルHClが再結晶の前に乾燥されたとしても、残留メタノールが存在するであろう。
【0147】
実施例6(本発明による)
予めガス化したHCl/メタノール溶液のレミフェンタニル塩基への添加速度
リン酸アンモニウム緩衝液の調製
68.5mLのリン酸BPを水で500mLに希釈することによって、リン酸の2M溶液を調製した。次いで、pHをアンモニア溶液(比重0.88)でpH6.8に調整した。
【0148】
レミフェンタニル塩基の調製のためのプロセス
1. 塩酸レミフェンタニル(49.4g)を、オーバーヘッド撹拌機及び温度プローブを備えた1Lフランジフラスコに充填した。
2. 水(ELGA、500mL)及びMIBK(813mL)を添加し、混合物を撹拌した。
3. スラリーのpHを、水酸化アンモニウム(比重0.88)を使用して調整した。目標pHは、8.5~9.0であったが、これを超えていた。pHは、9.5~10.0であることがわかった(24mLを添加)。層は、わずかに曇っていたので、フラスコを25℃に加熱すると溶液が得られ、分離は透明であった。レミフェンタニルHClのこのバッチは、他のバッチよりも酸性であることがわかったので、余分なアンモニアが必要になる場合がある。
4. 混合物を分液漏斗に移した。下の水層を分離し、MIBK層を別のフラスコに移した。
5. 水層を分液漏斗に戻し、MIBK(100mL)で抽出した。
6. MIBK層を合わせた。
7. 合わせたMIBK層をpH6.8のリン酸アンモニウム緩衝液(2×100mL)で抽出した。
8. 合わせたMIBK層を水(100mL)で抽出した。
9. 硫酸ナトリウムを添加して水を乾かした。
10. 溶液を濾過して硫酸ナトリウムを除去した。
11. 硫酸ナトリウムをMIBK(10mL)で洗浄した。次いで、この洗浄溶媒を合わせたMIBK層に添加した。
【0149】
塩酸レミフェンタニルの出発質量が100.0gであったことを除いて、上記と実質的に同じ手順を使用して、MIBK中のレミフェンタニル塩基の第2の溶液を作製した。MIBK中のレミフェンタニル塩基の第1及び第2の溶液を合わせた。
【0150】
メタノール中の3M HClの調製
1. メタノール(200mL)をSchottボトルに量り入れた(メタノールを含む総重量=393.9g)。
2. 充填したボトルを5℃に冷却した。
3. フラスコの上部をParafilm(商標)で覆って、HClガスをメタノールに通して泡立てた。
4. メタノールの重量が53g増加するまで、これを続けた。
5. 290mLのメタノールをフラスコに添加して、HClの濃度を3Mに調整した(3モル溶液は、109.38g/リットル(すなわち、21.87g/200mL)であると計算された)。
6. 充填したボトルを冷蔵庫に保存し、約20mLを含有するバイアルを抽出し、必要に応じて使用した。
【0151】
カールフィッシャー分析を使用前に実施し、実験において詳述する。
【0152】
塩酸レミフェンタニル形成-バルク添加(本発明によらない)
1. 300mLのレミフェンタニル塩基MIBK溶液を1Lフランジフラスコに添加した。溶液は、約30gのレミフェンタニル塩基を含有していた。静置するといくらかの材料が沈殿し、ボトルを65℃のオーブンに5分間入れて固体を再溶解させた。溶液の試料を採取した(試料A1)。
2. スターラーをダイヤル上で1のすぐ上(約1.2)に設定した。
3. HClガス化メタノール(3M)を一度に添加した(30mL)。含水量は、KF=0.09%であると決定された。ヘイズが観察され、溶液から固体が沈殿した。温度を25℃から32℃に上昇させ、フラスコをガスで満たした。pH1.7~3.8の紙を使用してpHを試験し、pHは、1.7(青色)であると決定された。pHメーターを使用したpHは、2.54であった。
4. 反応混合物を5分間撹拌した。
5. 得られた固体を濾過し、30mLのMIBK(1容量)で洗浄した。固体を吸引乾燥した。試料を取り出した。固体のHPLC及びpH分析を実施した(試料A2)。HPLC分析は、以下のとおりである。pHは、4.22であった。
6. 固体を30mLのMIBK(1容量)で2回洗浄した。固体を5分間にわたって吸引乾燥した。試料を取り出した。固体のHPLC及びpH分析を実施した(試料A3)。HPLC分析は、以下のとおりである。pHは、4.31であった。
7. 固体を30mLのMIBK(1容量)で3回洗浄した。固体を5分間にわたって吸引乾燥した。試料を取り出した。固体のHPLC及びpH分析を実施した(試料A4)。HPLC分析は、以下のとおりである。pHは、4.21であった。
【0153】
置換洗浄は、真空を解除し、真空を再び適用する前に浸透させることによって実施した。
【0154】
100mgを10mLのメタノール中に溶解することによってHPLC分析を実施し、0.5gを50mLのELGA水中に溶解し、pHメーターで測定することによってpHを決定した。
【0155】
塩酸レミフェンタニル形成-予備ガス化HCl/メタノール溶液の制御された添加(本発明による)
1. 300mLのレミフェンタニル塩基MIBK溶液を1Lフランジフラスコに添加した。溶液は、約30gのレミフェンタニル塩基を含有していた。静置するといくらかの材料が沈殿し、ボトルを65℃のオーブンに5分間入れて固体を再溶解させた。溶液の試料を採取した(試料B1)。
2. スターラーをダイヤル上で1のすぐ上(約1.2)に設定した。
3. 30mLのHClガス化メタノール(3M)を3mL/分の速度で10分間にわたって滴下した。HClガス化メタノールの含水量は、KF=0.09%であると決定された。ヘイズが観察され、溶液から固体が沈殿した。溶液のpHをpH1.7~3.8の紙を使用して試験し、pHは、1.7(青色)であると決定された。pHメーターを使用したpHは、1.81であった。
4. 反応混合物を5分間撹拌した。
5. 得られた固体を濾過し、30mLのMIBK(1容量)で洗浄した。固体を約1時間吸引乾燥した。1.5gの試料を取り出した。固体のHPLC及びpH分析を実施した(試料B2)。HPLC分析は、以下のとおりである。pHは、5.55であった。
6. 固体を30mLのMIBK(1容量)で2回洗浄した。固体を5分間にわたって吸引乾燥した。1.5gの試料を取り出した。固体のHPLC及びpH分析を実施した(試料B3)。HPLC分析は、以下のとおりである。pHは、5.51であった。
7. 固体を30mLのMIBK(1容量)で3回洗浄した。固体を5分間にわたって吸引乾燥した。1.5gの試料を取り出した。固体のHPLC及びpH分析を実施した(試料B4)。HPLC分析は、以下のとおりである。pHは、5.62であった。
【0156】
置換洗浄は、真空を解除し、真空を再び適用する前に浸透させることによって実施した。
【0157】
100mgを10mLのメタノール中に溶解することによってHPLC分析を実施し、0.5gを50mLのELGA水中に溶解し、pHメーターで測定することによってpHを決定した。
【0158】
再結晶条件を使用する塩酸レミフェンタニルのストレス試験
1. 試料A4、B2、B3、及びB4をカルーセル管に充填した(各0.5g)。
2. IPA(10ml/管)を添加し、管を24時間加熱還流した。
3. 1mLのIPA混合物を10mLのメタノールで希釈することによって試料を分析した(試料A4-1、B2-1、B3-1、及びB4-1)。
【0159】
バルク添加実験で採取した試料-試料A1~A4についてのHPLCデータ。
【0160】
【表19】
【0161】
された添加実験で採取した試料-試料B2~B4についてのHPLCデータ:
【0162】
【表20】
【0163】
ストレス試験後に採取した試料-試料A4-1、B2-1、B3-1、及びB4-1についてのHPLCデータ:
【0164】
【表21】
【0165】
結論
HCl/メタノール溶液を1回の充填で添加することによって得られる固体のpHは、HCl/メタノール溶液を制御された様式で添加する場合に得られるものよりも約1pH単位低い。理論に束縛されるものではないが、これは、形成された結晶中にHClが捕捉されていることを示唆している。これは、IPA再結晶ストレス試験後に得られたHPLC結果によって確認された。試料A4をIPA中で加熱した場合、IPAエステルレベルは、0.56%から0.94%に増加したが、試料B4のレベルは、0.68%(0.56%から)にしか増加しなかった。再び、理論に束縛されるものではないが、これは、IPAエステルの形成を触媒する過剰なHClによるものであると仮定される。
【0166】
レミプロパンアミドは、ほとんど検出されず、これは、全てのレミフェンタニル塩基がレミフェンタニルHClに変換されたことを示していた。これは、レミフェンタニル塩基の溶液を通したHClのガス処理に対する改善である。
【0167】
この実験は、本発明の方法がよりロバストなプロセスを与えることを示す更なる証拠を提供する。それはまた、本発明の制御された添加がIPAエステル不純物の形成を防止するために必要であることを示す。急速な添加は、HClを迅速に捕捉する結晶を形成し、これは、再結晶において、IPAエステルの形成を触媒すると考えられる。
【0168】
実施例7(本発明による)
メタノール中の予めガス化したHClの安定性の評価
メタノール中の3M HClの調製
1. メタノール(100g/128ml)をSchottボトルに量り入れた(メタノールを含む総重量は346.6gであった)。
2. 充填したボトルを、氷浴を使用して冷却した。
3. フラスコの上部をParafilm(商標)で覆って、HClガスをメタノールに通して泡立てた。
4. メタノール重量が少なくとも16g増加するまで、これを続けた。
5. 最終的な重量増加は、18gであった。
6. ボトルを冷凍庫(温度-18℃)に保存し、必要に応じて分析のために約20mlの試料を採取した。
【0169】
カールフィッシャー分析
時間ゼロ:0.088%
1ヶ月:0.0965%
2ヶ月:0.122%
3ヶ月:0.130%
【0170】
この実験は、HClで予めガス化したメタノールの含水量は、増加するが、冷凍庫に保存した場合でさえ、3ヶ月後に0.13%のままであることを示した。実施例1~3は、それぞれ0.75%、1.33%、及び1.6%の含水量を有するHClガス化メタノールを使用した後に高品質塩酸レミフェンタニルを得ることができることを実証する。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸レミフェンタニルを調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液を、塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液と合わせるステップを含み、一方の溶液が、他方の溶液に制御された速度で添加されて、塩酸レミフェンタニルの沈殿を含む反応混合物を形成する、プロセス。
【請求項2】
前記ケトン溶媒が、大気圧(すなわち、1.0135×105Pa)で約160℃未満、例えば約120℃未満の沸点を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ケトン溶媒が、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びジエチルケトンからなる群から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アルコール溶媒が、大気圧で約120℃未満、例えば約100℃未満の沸点を有する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルコール溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール(n-、i-、又はt-)、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルコール溶媒が、メタノールである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記塩化水素を含むアルコール溶媒が、塩化水素を前記アルコール溶媒中に溶解することによって調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記塩化水素が、前記レミフェンタニル塩基に対して化学量論的に又はわずかに過剰に前記反応混合物中に存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液が、前記塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液に制御された速度で添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記塩化水素を含むアルコール溶媒の溶液が、前記ケトン溶媒中のレミフェンタニル塩基の溶液に制御された速度で添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記制御された添加が、実質的に一定の速度で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記反応混合物の温度が、一方の溶液を他方の溶液に添加する間、周囲温度以下に維持される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記塩酸レミフェンタニルの沈殿をケトン溶媒で処理するステップを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記塩酸レミフェンタニルの沈殿を1つ以上のアルコール溶媒から再結晶するステップを更に含む、請求項1に記載のプロセス。

【国際調査報告】