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特表2023-530881改善されたシールディングを有するステップ付間接加熱カソード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】改善されたシールディングを有するステップ付間接加熱カソード
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/08 20060101AFI20230712BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574742
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2021037642
(87)【国際公開番号】W WO2021257712
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/040,724
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】プラトウ,ウィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】バッサム,ニール
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 修
(72)【発明者】
【氏名】シルバースタイン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ファーリー,マービン
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB05
5C101DD03
5C101DD15
5C101DD16
5C101FF02
(57)【要約】
プラズマを形成するためのイオン源は、キャビティを有するカソードと、カソードステップを画定するカソード表面とを有する。フィラメントは、キャビティ内に配置されており、カソードシールドは、カソード表面を少なくとも部分的に取り囲むカソードシールド表面を有する。カソードギャップはカソード表面とカソードシールド表面との間に画定されており、当該カソードギャップはギャップを通るプラズマの移動を制限するための屈曲経路を画定する。カソード表面は第1カソード直径および第2カソード直径によって画定されるステップ付円筒形表面を有していてよい。カソードステップを画定するために、第1カソード直径と第2カソード直径とは、互いに異なっている。ステップ付円筒形表面は、外表面または内表面であってよい。第1カソード直径と第2カソード直径とは、同心であってもよいし、または軸方向にオフセットされていてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを形成するためのイオン源であって、
前記イオン源は、
カソードと、
フィラメントと、
カソードシールドと、を備えており、
前記カソードは、
カソードステップを画定するカソード表面と、
キャビティと、と備えており、
前記フィラメントは、前記キャビティ内に配置されており、
前記カソードシールドは、前記カソード表面を少なくとも部分的に取り囲むカソードシールド表面を有しており、
前記カソード表面と前記カソードシールド表面との間にカソードギャップが画定されている、イオン源。
【請求項2】
前記カソード表面は、第1カソード直径および第2カソード直径によって画定されているステップ付円筒形表面を含んでおり、
前記第1カソード直径および前記第2カソード直径が互いに異なることで、前記カソードステップを画定する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記ステップ付円筒形表面は、前記第1カソード直径および前記第2カソード直径を画定する外表面を備え、
前記カソードシールド表面は、カソードシールドステップを画定し、
前記カソードシールドステップの輪郭が前記カソードステップに概ね一致することによって、前記カソード表面と前記カソードシールド表面との間の前記カソードギャップが維持されている、請求項2に記載のイオン源。
【請求項4】
前記第2カソード直径は、前記第1カソード直径よりも大きい、請求項3に記載のイオン源。
【請求項5】
前記第1カソード直径と前記第2カソード直径とが同心である、請求項4に記載のイオン源。
【請求項6】
前記第1カソード直径と前記第2カソード直径とは、所定の距離だけオフセットされたそれぞれの中心線を有している、請求項4に記載のイオン源。
【請求項7】
前記カソードギャップは、屈曲経路を画定している、請求項3に記載のイオン源。
【請求項8】
前記ステップ付円筒形表面は、前記第1カソード直径および前記第2カソード直径を画定する内表面を含んでいる、請求項2に記載のイオン源。
【請求項9】
前記第2カソード直径が前記第1カソード直径よりも大きいことによって、前記カソードの厚肉壁を画定する、請求項8に記載のイオン源。
【請求項10】
前記フィラメントと前記カソードの前記厚肉壁との間にフィラメントギャップが画定されている、請求項9に記載のイオン源。
【請求項11】
前記カソードは、遷移領域において中実円筒部から延在している中空円筒部を備えており、
前記キャビティは、前記中空円筒部内に画定されており、
前記カソードステップは、前記遷移領域内に画定されている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項12】
前記カソードシールドは、前記カソードの正面カソード表面を前記プラズマに対して軸方向に曝露するとともに、前記カソードを半径方向に取り囲んでいる、請求項11に記載のイオン源。
【請求項13】
イオン源であって、
内部に画定されたカソードステップを有するカソードと、
内部に画定されたカソードシールドステップを有するカソードシールドと、を備えており、
前記カソードシールドは、前記カソードと前記カソードシールドとの間のカソードギャップを維持するとともに、前記カソードを半径方向に取り囲んでいる、イオン源。
【請求項14】
前記カソードシールドステップは、前記カソードステップに概ね一致している、請求項13に記載のイオン源。
【請求項15】
前記カソードは、遷移領域に近接している中実円筒部から延在している中空円筒部を備えており、
前記カソードステップは、前記遷移領域内に画定されている、請求項13に記載のイオン源。
【請求項16】
前記カソードの前記中空円筒部内に配置されているフィラメントをさらに備えている、請求項13に記載のイオン源。
【請求項17】
前記カソードが第1カソード直径および第2カソード直径を含むことによって、前記カソードステップを画定する、請求項13に記載のイオン源。
【請求項18】
前記第1カソード直径と前記第2カソード直径とが同心である、請求項17に記載のイオン源。
【請求項19】
前記第1カソード直径と前記第2カソード直径とは、所定の距離だけオフセットされた中心線を有している、請求項17に記載のイオン源。
【請求項20】
イオン源のためのカソードアセンブリであって、
前記カソードアセンブリは、
ステップ付カソードと、
ステップ付カソードシールドと、を備えており、
前記ステップ付カソードシールドは、前記ステップ付カソードと前記ステップ付カソードシールドとの間のギャップを維持するとともに、前記ステップ付カソードを半径方向に取り囲んでおり、
前記ステップ付カソードシールドの内表面と前記ステップ付カソードの外表面とは概ね一致しており、
前記ステップ付カソードと前記ステップ付カソードシールドとの間に、屈曲経路を画定している、カソードアセンブリ。
【請求項21】
前記ステップ付カソードは、前記ステップ付カソードの前記外表面に画定された複数のカソードステップを備えており、
前記ステップ付カソードシールドは、前記ステップ付カソードシールドの前記内表面に画定された複数のシールドステップを備えている、請求項20に記載のカソードアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、2020年6月18日に出願された米国仮出願第63/040,724号の利益を主張し、当該仮出願の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、一般的にはイオン注入システムに関する。より具体的には、本発明は、イオン注入システムの様々な態様における、寿命、安定性、および動作を向上させる、改善されたイオン源およびビームラインコンポーネントに関する。
【0003】
[背景技術]
半導体デバイスの製造においては、不純物を半導体にドープするためにイオン注入が用いられる。イオン注入システムは、半導体ウェハなどのワークピースへ、イオンビームからのイオンをドープするために利用されることが多い。これにより、n型またはp型の材料ドーピングを生じさせること、または、集積回路の製造時にパッシベーションを形成することができる。このようなビーム処理は、集積回路の製造時に半導体材料を生成するために、所定のエネルギーレベルかつ、制御された密度で、特定のドーパント材料の不純物をウェハに選択的に注入するために使用されることが多い。半導体ウェハをドーピングするために使用される場合、イオン注入システムは、選択されたイオン種をワークピースに注入して、所望の外因性材料を生成する。例えば、アンチモン、ヒ素、またはリンなどのソース材料から生成されたイオンを注入することは、「n型」外因性材料ウェハをもたらす。その一方、「p型」外因性材料ウェハは、ホウ素(ボロン)、ガリウム、またはインジウムなどのソース材料を用いて生成されたイオンから生じることが多い。
【0004】
典型的なイオン注入装置は、イオン源と、イオン引出デバイスと、質量分析デバイスと、ビーム輸送デバイスと、ウェハ処理デバイスとを含む。イオン源は、所望の原子または分子のドーパント種のイオンを生成する。これらのイオンは、引出システム、典型的には電極のセットによってイオン源から引き出される。当該引出システムは、イオン源からのイオンの流れにエネルギーを与えて導き、イオンビームを形成する。所望のイオンは、質量分析デバイス、典型的には引き出されたイオンビームに対して質量分散または分離を行う磁気双極子の内部において、イオンビームから分離される。ビーム輸送デバイス、典型的には一連の集束デバイスを含む真空システムは、イオンビームの所望の特性を維持しながら、イオンビームをウェハ処理デバイスに輸送する。最後に、半導体ウェハは、ウェハハンドリングシステムを介してウェハ処理装置の内外に移送される。ウェハハンドリングシステムは、処理されるウェハをイオンビームの正面に配置し、処理されたウェハをイオン注入装置から取り出すための1つ以上のロボットアームを有していてよい。
【0005】
イオン源(一般に、アーク放電イオン源と呼ばれる)は注入装置において使用されるイオンビームを生成し、ウェハ処理のために適切なイオンビームへと成形されるイオンを生成するための加熱フィラメントカソードを含みうる。例えば、Sferlazzoらの米国特許第5,497,006号は、ベースによって支持され、ガス封止チャンバに対して配置され、当該ガス封止チャンバ内にイオン化電子を放出するためのカソードを有するイオン源を開示している。Sferlazzoらの特許におけるカソードは、ガス封止チャンバの内部において部分的に延在しているエンドキャップを有する管状導電体である。
【0006】
図1は、従来のイオン注入システムにおいて使用される従来のイオン源10の断面を示す。フィラメント12は、電子の熱電子放出が起こる温度まで抵抗加熱される。フィラメント12とカソード14との間の電圧(いわゆる「カソード電圧」)は、カソード自体が電子を熱的に放出するまで、フィラメントから放出された電子を当該カソードに向けて加速する。このような放出スキームは、産業界では、間接加熱カソード(indirectly heated cathode,IHC)と呼ばれている。カソード14は、例えば2つの役目を有する。すなわち、カソード14は、(i)フィラメント12がプラズマイオンによって衝撃を受けないように保護し、かつ、(ii)その後のイオン化のために電子を供給する。
【0007】
カソード14は、アークチャンバ16に対して負にバイアスされている。カソード14は、アークチャンバ16の内部において、いわゆる「アーク電圧」として存在している。放出された電子は、アークチャンバの中心18に向けて加速される。供給ガス(不図示)がアークチャンバ16内に流入し、放出された電子が続けて当該供給ガスをイオン化する。これにより、プラズマ(不図示)を形成し、アークチャンバ内の引出スリット20を介して当該プラズマからイオンを引き出すことができる。例えば、リペラ22は、プラズマの負の浮遊電位までさらに帯電し、電子をプラズマ内に戻す。これにより、イオン化を促進し、プラズマを高密度化できる。カソード14およびリペラ22によって画定される中心軸24に平行な磁界(不図示)は、放出され戻された電子を概ね閉じ込めて、いわゆる「プラズマカラム」を画定する。したがって、イオン化およびプラズマ密度をさらに改善できる。
【0008】
一般に、カソード14自体は、最初はプラズマイオンによるスパッタリングおよびエロージョン(侵食)により、そして最終的にはカソードのパーミエイション(透過)またはパンチスルー(孔食)により、機能しなくなる。このことは、多電荷イオンビームを調整する場合に特に顕著であり、単電荷イオンと比較した場合に、イオン源の寿命が著しく短くなる。パンチスルーは、典型的には、カソードの壁26が最も薄い位置において生じる。図2は、カソード14の壁26におけるそのようなパンチスルー28を示す。この例では、カソードの正面部30に十分な材料が残っていたにもかかわらず、パンチスルーがイオン源の破損をもたらした。高エネルギーのために多電荷イオンを注入する場合、そのような故障はイオン源において一般的である。ヒ素(As)などの元素は非常に重いので、カソード14の著しいスパッタリングが生じる。さらに、多電荷イオンの場合、実質的により高いアーク電圧が実現されるので、従来のイオン源の寿命がさらに低下する。
【0009】
[概要]
そこで、本開示は、イオン源の効率および寿命を向上させるためのシステムおよび装置を提供する。したがって、本発明の複数の態様についての基本的な理解を促すため、本開示の簡略化された概要を以下に示す。この概要は、本発明の広義の概観ではない。この概要は、本発明の重要または主要な要素を識別することも正確に描写することも意図していていない。この概要の目的は、後に記載する詳細な説明の序文として、本発明の複数の概念を単純化した形で示すことにある。
【0010】
本開示の一態様によれば、イオン源は、プラズマを形成するために提供されている。前記イオン源は、カソードおよびカソードシールドを備えている。前記カソードは、例えばキャビティを備え、前記キャビティ内にフィラメントが配置されている。前記カソードは、カソードステップを画定するカソード表面をさらに有する。前記カソードシールドは、例えば前記カソード表面を少なくとも部分的に取り囲むカソードシールド表面を有する。カソードギャップは、前記カソード表面と前記カソードシールド表面との間に画定されている。前記カソードギャップは、例えばプラズマがカソードの寿命を延長するための屈曲経路を画定する。
【0011】
例えば、前記カソード表面は、第1カソード直径および第2カソード直径によって画定されるステップ付円筒形表面を含む。前記第1カソード直径と前記第2カソード直径とは、例えば、互いに異なっている。これにより、前記カソードステップを画定できる。
【0012】
例えば、前記ステップ付円筒形表面は、前記第1カソード直径および前記第2カソード直径を画定する外表面を備える。前記カソードシールド表面は、前記カソードシールドステップをさらに画定してよい。この場合、前記カソードシールドステップの輪郭は、前記カソードステップに概ね一致する。これにより、前記カソード表面と前記カソードシールド表面との間の前記カソードギャップが維持される。前記第2カソード直径は、例えば、前記第1カソード直径よりも大きく、前記第2カソードシールド直径は前記第1カソードシールド直径よりも大きい。前記第1カソード直径と第のカソード直径とは、同心であってもよいし、または、所定の距離だけ軸方向にオフセットされていてもよい。
【0013】
別の例では、前記カソードの前記ステップ付円筒形表面は、前記第1カソード直径および前記第2カソード直径を画定する内表面を含む。前記第2カソード直径は、例えば前記第1カソード直径よりも大きい。これにより、カソードの厚肉壁が画定される。フィラメントギャップは、例えば前記フィラメントと前記カソードの厚肉壁との間にさらに画定されてもよい。前記カソードの厚肉壁は、前記カソードの寿命を概ね増大させる。
【0014】
前記カソードは、例えば、遷移領域において中実円筒部から延在している中空円筒部を備える。前記キャビティは前記中空円筒部内に画定されており、前記カソードステップは前記遷移領域内に画定されている。前記カソードシールドは、別の例では、前記カソードの正面カソード表面を前記プラズマに対して軸方向に曝露するとともに、前記カソードを半径方向に取り囲んでいる。
【0015】
別の例示的な一態様によれば、イオン源が提供されている。カソードは、前記カソード内に画定されたカソードステップを有する。カソードシールドは、前記カソードシールド内に画定されたカソードシールドステップを有する。前記カソードシールドは、前記カソードと前記カソードシールドとの間のカソードギャップを維持するとともに、前記カソードを半径方向に取り囲んでいる。前記カソードシールドステップは、例えば、前記カソードギャップを維持するとともに、前記カソードステップに概ね一致している。これにより、プラズマが移動するための屈曲経路を提供できる。
【0016】
前記カソードは、例えば遷移領域に近接する中実円筒部から延在している中空円筒部を備える。前記カソードステップは、遷移領域内に画定されている。フィラメントは、例えば、前記カソードの前記中空円筒部内に配置されてよい。前記カソードは、例えば、第1カソード直径および第2カソード直径を含むことによって、前記カソードステップを画定できる。前記第1カソード直径と前記第2カソード直径とは、同心である、または、所定の距離だけオフセットされている。
【0017】
さらに別の例示的な一態様によれば、イオン源のためのカソードアセンブリが提供されている。前記カソードアセンブリは、例えば、ステップ付カソードとステップ付カソードシールドとを含む。前記ステップ付カソードシールドは、前記ステップ付カソードと前記ステップ付カソードシールドとの間のギャップを維持するとともに、前記ステップ付カソードを半径方向に取り囲んでいる。前記ステップ付カソードシールドの内表面は、例えば、前記ステップ付カソードの外表面と概ね一致している。これにより、前記ステップ付カソードと前記ステップ付カソードシールドとの間に屈曲経路を画定できる。前記ステップ付カソードは、例えば前記ステップ付カソードの前記外表面内に画定された複数のカソードステップを備えている。前記ステップ付カソードシールドは、前記ステップ付カソードシールドの前記内表面内に画定された複数のシールドステップをさらに備えている。
【0018】
上述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に十分に説明され、特許請求の範囲において特に記載される構成を含む。以下の記載および添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を詳細に示している。しかし、これらの実施形態は、本発明の原理を用いる種々の方法の一部を示しているにすぎない。本発明の他の目的、利点、および新規な構成は、図面を参照することにより、本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の間接加熱カソードを有する従来のイオン源を示す断面図である。
図2】故障状態にある3つの従来のカソードを示す。
図3】本開示の複数の態様における、イオン源を利用する真空システムの一例のブロック図である。
図4】本開示の複数の態様におけるアークチャンバの一例の模式図である。
図5】本開示の様々な態様における、イオン源チャンバに関連するステップ付カソードおよびステップ付カソードシールドの一例の断面図である。
図6】本開示の様々な態様における、オフセットされたステップ付カソードを有するイオン源チャンバの一例の断面図である。
図7】本開示の様々な態様における、オフセットされたステップ付カソードの一例の平面図である。
図8】本開示の様々な態様における、内側ステップを有するステップ付カソードの一例の断面図である。
【0020】
[詳細な説明]
本開示は、概して、イオン注入システムおよびそれに関連するイオン源を対象とする。より詳細には、本開示は、上述の弱点を保護し、カソード壁のパンチスルーを顕著に遅延させるために、所定の様式でのカソードおよびカソードシールドの構成および形状を示す。したがって、場合によっては、本開示は、本開示のカソードを組み込むイオン源の寿命を2倍に増大させることができる。加えて、本開示は、高エネルギー注入のための後続する加速のための多電荷イオン生成を改善する。したがって、本開示は、概して、イオン注入システムおよびそれに関連するイオン源を対象とする。より詳細には、本開示は、イオン注入システムの寿命、安定性、および動作を改善する、前記イオン注入システムのためのコンポーネントを対象とする。
【0021】
したがって、以下では、図面を参照して本発明を説明するが、全体を通して、同様の要素に対し同様の参照番号が指定され得る。これらの態様の説明は単なる例示であり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の説明では、説明のために、本発明の十分な理解を促すために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、これらの具体的な詳細がなくても本発明を実施できることは当業者には明らかであろう。また、以下に説明する実施形態または例によって本発明の範囲が限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【0022】
また、図面は本発明の実施形態の複数態様を例示するために示されており、したがって、概略的なものに過ぎないと見なされるべきであることに留意されたい。特に、図面に示される複数の要素は、必ずしも互いに一定の縮尺ではない。また、図面における様々な要素の配置は、それぞれの実施形態の明確な理解を促すために選択されている。また、図面における様々な要素の配置は、本発明の一実施形態による実装における、様々なコンポーネントの実際の相対位置の表現であると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本明細書に記載の様々な実施形態および例の構成は特に断りのない限り、互いに組み合わせることができる。
【0023】
また、以下の説明において、図面に示される機能ブロックと、デバイスと、コンポーネントと、要素と、または他の物理的あるいは機能的なユニットと、の間の任意の直接的な接続または結合は、間接的な接続または結合によっても実装され得ることを理解されたい。さらに、図面に示されている機能ブロックまたはユニットが、一実施形態では別個の構成として実装され得ることは理解されるべきである。また、図面に示されている機能ブロックまたはユニットが、別の実施形態では共通の構成において完全にまたは部分的に実装されてもよいし、または代替的に実装されてもよい。
【0024】
イオン注入は、ワークピースの特性を変更するために1つ以上の元素のイオンがワークピース内に向けて加速される、半導体デバイス製造に用いられるプロセスである。例えば、ホウ素、ヒ素、およびリンなどのドーパントをシリコン(ケイ素)に注入して、その電気的特性を変更することが一般的である。例示的なイオン注入プロセスでは、所定の元素または分子がイオン化され、引き出され、静電的に加速されて、高エネルギーイオンビームを形成し、その質量対電荷比によってフィルタリングされ、ワークピースに衝突するように方向付けられる。イオンはウェハに物理的に衝突し、表面に入り、そのエネルギーに関連する深さで表面下において静止する。
【0025】
続いて図面を参照する。図3は、ビーム経路106に沿ってイオンビーム104を生成するためのイオン源102を含むシステム100を示す。ビームラインアセンブリ110は、イオン源102の下流に設けられており、当該イオン源からのビームを受け入れる。ビームラインシステム110は、質量分析器と、加速機構と、角度エネルギフィルタと、を含みうる(不図示)。加速機構は、例えば、1つ以上のギャップを含みうる。質量分析器は、磁石などの磁界発生コンポーネントを含む。質量分析器は、イオンビーム104からのイオンを、質量(例:質量対電荷比)に応じて様々な軌道で偏向させるために、ビーム経路106に交差する磁界を設けるように動作する。磁界を通って移動するイオンは、ビーム経路106に沿って所望の質量の個々のイオンを導くとともにビーム経路から望ましくない質量のイオンを偏向させる力を受ける。
【0026】
システム100には、プロセスチャンバ112が設けられている。プロセスチャンバ112は、ビームラインアセンブリ110からのイオンビーム104を受け入れるターゲット位置を有している。プロセスチャンバ112は、最終的な質量分析を受けたイオンビームを使用した注入のために、ビーム経路106に沿って半導体ウェハなどの1つ以上のワークピース114を支持する。次いで、プロセスチャンバ112は、ワークピース114に向けて導かれるイオンビーム104を受け入れる。異なるタイプのプロセスチャンバ112が、システム100において使用されてもよいことが理解される。一例として、「バッチ(一括)」タイプのプロセスチャンバ112は、回転支持構造上の複数のワークピース114を同時に支持することができる。この場合、ワークピース114は、全てのワークピース114が完全に注入されるまで、イオンビーム104の経路を通過するよう回転させられる。一方、「シリアル」タイプのプロセスチャンバ112は、注入のためにビーム経路106に沿って単一のワークピース114を支持する。この場合、複数のワークピース114が連続的に一度に1つずつ注入され、各ワークピースは、次のワークピースの注入が始まる前に完全に注入される。システム100は、イオンビーム104をワークピース114に対して、またはワークピースをイオンビームに対して、移動させるための走査装置(不図示)を含んでいてよい。
【0027】
イオン源102は、例えば、所望のドーパント元素を含むソースガスをイオン源内においてイオン化することによりイオンビーム104を生成する。イオン化されたソースガスは、続いて、イオンビーム104の形態としてソースチャンバ102から引き出される。イオン化プロセスは、熱的に加熱されたフィラメント、カソードを加熱するフィラメント(間接加熱カソード「IHC」)、または無線周波数(RF)アンテナの形態をとりうるエキサイタによって行われる。
【0028】
図4には、IHCイオン源120が概略的に示されている。例えば、IHCイオン源は、ソースチャンバ122と、1つ以上のガス入口124と、フィラメント126と、ソースチャンバ内において互いに反対側に配置されたカソード128およびリペラ130と、開口132(アークスリットとも呼ばれる)とを備える。加えて、ソース磁石(不図示)は、カソード128とリペラ130との間の軸に概ね沿った磁界134を設けることができる。IHCイオン源120の動作時において、フィラメント126は、電子を放出するために十分高い温度まで抵抗加熱される。次に、当該電子は、フィラメントに対して正の電位(ポテンシャル)にあるカソード128に衝突するように加速される。
【0029】
電子衝突は、カソード128がソースチャンバ122内に電子を熱的に放出するために十分な高温まで、当該カソードを加熱する。ソースチャンバ122は電子を加速するために、カソード128に対して正の電位に維持されている。磁界134は、プラズマカラム136に沿った、カソード128とリペラ130との間の磁力線に沿って、電子を閉じ込めることを助成し、ソースチャンバ122のチャンバ壁138に向かう電子の損失を低減することができる。電子の損失は、典型的には、カソード128の電位にあるリペラ130が電子をカソードに向かうよう反射して戻すことでさらに低減される。励起された電子は、ガス入口124を通じてチャンバ内に供給されるソースガスをイオン化し、プラズマを生成する。イオンは、開口132を通じて引き出され、静電的に加速されて、ソースチャンバ122の外側に配置された電極によって高エネルギーイオンビームを形成する。
【0030】
本開示の様々な例示的な態様によれば、図5は、ステップ付カソード200が示される本開示の一例を示す。図5に示されるように、ステップ付カソード200は、ステップ付カソードの外側円筒壁208の、第1カソード直径204および第2カソード直径206によって概ね画定されるカソードステップ202を備える。ステップ付カソード200の外側円筒壁208のカソードステップ202は、例えば、ステップ付カソードシールド214の内部円筒壁212内に画定されたシールドステップ210と関連付けられている。これにより、第1カソードシールド直径216および第2カソードシールド直径218が画定される。このように、図1に示されるように、従来では単純にストレート(一直線)なシールドによってカソードを囲んでいた代わりに、図5に示される例のステップ付カソードシールド214は、ステップ付カソード200の形状に概ね一致している。これにより、ステップ付カソードの外側円筒壁208は、ステップ付カソードシールドの内部円筒壁212に密接に一致する。図5はステップ付カソード200内に画定された1つのカソードステップ202を示しているが、本開示はステップ付カソードとステップ付カソードシールド214との間に屈曲経路220を提供するための様々な設計をさらに企図する。例えば、図示されていないが、ステップ付カソードシールド214内に複数のシールドステップ210(例えば、ステアケースに類似)を伴って、ステップ付カソード200内に複数のカソードステップ202を設けることにより、屈曲経路220を設けることができる。
【0031】
したがって、本開示は、従来技術に勝る様々な改良を示す。例えば、本発明のステップ付カソード200およびステップ付カソードシールド214は、ソースチャンバ122内のプラズマが、(例えば、カソードからの熱移動を制限するために使用されている)ステップ付カソードの外側円筒壁208の薄部222に到達することを、長期間に亘って概ね防止する。例えば、このような設計は、従来のカソードを用いてAs+++およびAs++++に関して測定された以前の寿命に対して10倍に至るカソード/ソース寿命の向上をもたらすことができる。
【0032】
さらに、多電荷イオン生成のために、図4に示されるプラズマカラム136は、半径方向に小さい。このことは、イオン化の改善、または、実際に多電荷イオンの高引出ビーム電流をもたらすことができる。例えば、図5のステップ付カソード200およびステップ付カソードシールド214は、従来のカソードと比較して、正面カソード表面226におけるより小さい領域224への電子放出をさらに制限する。これにより、図4のプラズマカラム136におけるより小さい半径228を生じさせ、図1のイオン注入装置100におけるより高い多電荷ビーム電流およびスループットをもたらす。
【0033】
図5に示す例では、ステップ付カソード200の外側円筒壁208の第1カソード直径204と第2カソード直径206とは、ステップ付カソードの中心線230において同心である。同様に、ステップ付カソードシールド214の内部円筒壁212の第1カソードシールド直径216と第2カソードシールド直径218とは、中心線230において同心である。
【0034】
別の例によれば、図6図7は、別の実施形態を示す。図6図7の例では、図5のステップ付カソード200およびステップ付カソードシールド214と様々な類似性を有する、オフセットステップ付カソード250およびオフセットステップ付カソードシールド252が示されている。しかしながら、図6図7に示す通り、オフセットステップ付カソード250およびオフセットステップ付カソードシールド252のそれぞれにおける、第1カソード直径256および第1シールド直径258の中心線254は、オフセットステップ付カソードおよびオフセットステップ付カソードシールドの、第2カソード直径264および第2カソードシールド直径266の中心線262から、所定の距離260だけオフセットされている。例えば、図6のオフセットステップ付カソード250は、開口132に近い正面カソード表面226を提供することができる。このことは、従来のイオン源よりもイオンビーム電流をさらに有利に増加させうる。
【0035】
したがって、上述の例と同様にして、オフセットステップ付カソード250内に画定されたオフセットカソードステップ268と、オフセットステップ付カソードシールド252内に画定されたオフセットカソードシールドステップ270とは、同様に、ソースチャンバ272(例えば、図4のソースチャンバ122)内のプラズマが、オフセットステップ付カソードの図6に示される外側円筒壁276の薄部274に、長時間での動作に亘り到達する事を実質的に防止する。
【0036】
別の例によれば、図8は別のステップ付カソード300を示す。ステップ付カソード300は、内径304(例えば、内側表面)における内側ステップ302を追加的にまたは代替的に備えていてよい。上述のパンチスルーは、例えば、薄いカソード壁が従来のカソードの非常に厚い正面部と接続する位置において起こり得る。したがって、図8に示されている本開示の例では、厚肉壁306がフィラメント126に近接して設けられている。これにより、この領域におけるパンチスルーを遅延させ、従来において認識されていたよりもカソード寿命を延長させることができる。このような内側ステップ302をカソード300の内側に設けることにより、例えば、薄いカソード壁308と、プラズマからさらに離れた領域310における高耐熱性と、を維持することができる。これにより、イオン源の優れた動作を助成することができる。例えば、フィラメント126と厚肉壁306との間にギャップ312が設けられている。当該ギャップは、例えば、フィラメントとカソード300の背面(裏面)316との間の背面ギャップ314の約2倍以上である。当該ギャップ312は、例えば、カソード300の正面部318が動作に悪影響を及ぼしうるフィラメント配置の許容誤差の懸念なく、均等に加熱することを可能にする。さらに、本開示は、フィラメント126の曲率および/または屈曲半径をサイジングして、内側ステップ302と関連するギャップ312と背面ギャップ314とを調整することを企図する。
【0037】
したがって、本発明は、例えば最大で10個に至る要因によりイオン源の寿命の改善を提供する。さらに、多電荷イオンの場合、本開示は著しく狭いプラズマカラムを提供する。これにより、電力がより少量になるので、イオン源がより効率的になる。本開示のステップ付カソードは、例えば、カソードの直径をより小さくし、プラズマカラムを狭める。さらに、ステップ付カソードシールドは、ステップ付カソードに近接しており、ステップ付カソードと形状が概ね一致しており、ステップ付カソードシールドとステップ付カソードとの間のギャップを介してステップ付カソードの薄い壁に曝露されないように、イオン源内に形成されるプラズマの拡散を概ね制限する。上述のステップ付カソードおよびステップ付カソードシールドを設けることによって、このようなプラズマ拡散を概ね防止するための屈曲経路またはラビリンスが提供される。このような屈曲経路またはラビリンスを設けることによって、カソードの薄い壁をも提供しつつ、ステップ付カソードの主に正面プラズマ対向部分のみが実質的に加熱される。
【0038】
以上、所定の1つ以上の実施形態に関して本発明について図示および説明したが、上述した実施形態は本発明の複数の実施形態の実施についての例に過ぎず、本発明の適用範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。特に、上述したコンポーネント(アセンブリ、デバイス、回路など)によって実行される様々な機能に関して、そのようなコンポーネントを説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は、別段の指示がない限り、本明細書において例示されている本発明の例示的な実施形態において機能を実行する開示されている構造と構造的に等価ではないが、説明されているコンポーネントの指定された機能を実行する任意のコンポーネント(すなわち、機能的に等価である)に対応することが意図されている。更に、本発明の特定の構成が複数の実施形態のうちの1つのみに対して開示されてきたが、そのような構成はいずれかの所与または特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における1つ以上の構成と組み合わされ得るものである。したがって、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図されている。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】