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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】流体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/22 20060101AFI20230712BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20230712BHJP
   B05B 9/03 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B65D83/22 100
B65D83/00 K
B65D83/00 G
B05B9/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575840
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 FR2021051108
(87)【国際公開番号】W WO2021260305
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】2006490
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】APTAR FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】Lieu-dit Le Prieure,27110 Le Neubourg,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン, デビッド
【テーマコード(参考)】
3E014
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PD01
3E014PD12
3E014PE03
3E014PE30
3E014PF10
4F033RA14
4F033RA20
4F033RD02
4F033RD09
4F033RD10
4F033RE01
4F033RE11
4F033RE17
4F033RE19
(57)【要約】
【課題】過剰摂取のリスクから使用者を保護する流体吐出装置を提供する。
【解決手段】リザーバー2に収容した流体を吐出する吐出手段3と、吐出手段3を収容する内側本体10と、休止位置と作動位置との間で変位可能に内側本体10に取り付けられたアクチュエーター20を有し、アクチュエーター20が休止位置から作動位置へ変位すると、吐出手段3が1投与分の流体を吐出する流体吐出装置において、ロック位置と解除位置との間で内側本体10に回転可能に取着されたロックリング40と、ロックリング40をロック位置に向かって付勢するバネ60と、モーター80によって回転駆動され、ロックリング40をロック位置から解除位置へ変位させる歯車50と、を備え、ロックリング40は、ロック位置では、アクチュエーター20が軸方向に変位するのを防止し、解除位置では、アクチュエーター20が作動位置へ軸方向に変位するのを可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容するリザーバー(2)と、当該リザーバー(2)に取着されたポンプまたはバルブ等の吐出手段(3)と、を有する流体ディスペンサー(1)と、
前記ディスペンサー(1)を収容する中空シリンダー(11)を有する内側本体(10)と、
吐出オリフィス(21)を有し、休止位置と作動位置との間で軸方向に変位可能に前記内側本体(10)に取り付けられたアクチュエーター(20)と、を有し、
前記アクチュエーター(20)が休止位置から作動位置へ軸方向に変位すると、前記吐出手段(3)が作動し、前記吐出オリフィス(21)を経由して、1投与分の流体が吐出される流体吐出装置であって、
モーター(80)と、
電子制御モジュール(90)と、
前記モーター(80)に接続され、前記モーター(80)によって回転駆動される歯車(50)と、
ロック位置と解除位置との間で前記内側本体(10)に回転可能に取着されたロックリング(40)と、
前記ロックリング(40)をロック位置に向かって付勢するバネ(60)と、を備え、
前記ロックリング(40)は、歯車(50)によってロック位置から解除位置へ変位され、
前記ロックリング(40)は、
ロック位置では、前記アクチュエーター(20)と協働して、前記アクチュエーター(20)が軸方向に変位するのを防止し、
解除位置では、前記アクチュエーター(20)と協働して、前記アクチュエーター(20)が作動位置へ軸方向に変位するのを可能にする、流体吐出装置。
【請求項2】
前記内側本体(10)に固定され、前記モーター(80)および前記電子制御モジュール(90)を収容する外側本体(120)を備える、請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項3】
前記モーター(80)の作動を開始させるための制御ボタン(85)を備える、請求項1または2に記載の流体吐出装置。
【請求項4】
前記アクチュエーター(20)が少なくとも1つの軸方向支柱(26)を含み、
前記ロックリング(40)が少なくとも1つの半径方向突起(43)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項5】
前記ロックリング(40)のロック位置においては、前記少なくとも1つの半径方向突起(43)が、前記少なくとも1つの軸方向支柱(26)と協働して、前記アクチュエーター(20)が作動位置に向かって軸方向に変位するのを防止することと、
前記ロックリング(40)の解除位置においては、前記少なくとも1つの半径方向突起(43)が、前記少なくとも1つの軸方向支柱(26)から角度がずれていることと、によって、
前記アクチュエーター(20)を作動位置に向かって軸方向に変位することを可能にする、請求項4に記載の流体吐出装置。
【請求項6】
4つの半径方向突起(43)と4つの軸方向支柱(26)とを備え、各半径方向突起(43)がそれぞれ軸方向支柱(26)と協働して、前記ロックリング(40)のロック位置において、前記アクチュエーター(20)が軸方向に変位するのを阻止する、請求項5に記載の流体吐出装置。
【請求項7】
前記ロックリング(40)が、軸方向上方に突出する歯(420)を備えた軸方向に可撓性のツマミ(42)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項8】
前記内側本体(10)、またはカバー(30)などの前記内側本体(10)と一体の要素が、第1の窓(350) および半径方向支柱(352)によって前記第1の窓(350)から分離された第2の窓(351)を含む内部形状(35)を有する、請求項7に記載の流体吐出装置。
【請求項9】
前記アクチュエーター(20)が、軸方向下方に延びる軸方向フィンガー(27)を備える、請求項8に記載の流体吐出装置。
【請求項10】
前記ロックリング(40)のロック位置において、前記歯(420)が前記第1の窓(350)内に配置され、前記ロックリング(40)が解除位置に向かって変位することによって、前記可撓性のツマミ(42)が軸方向に変形すると、前記歯(420)が半径方向支柱(352)の背後で第2の窓(351)を通過できるようになり、その後、前記半径方向支柱(352)が前記歯(420)と協働して、前記ロックリング(40)が前記バネ(60)の作用によってロック位置に復帰するのを阻止する、請求項9に記載の流体吐出装置。
【請求項11】
前記アクチュエーター(20)が休止位置から作動位置まで軸方向に変位している間、前記軸方向フィンガー(27)が、前記歯(420)を軸方向下向きに押圧することによって、前記歯(420)と協働すると、前記歯(420)が前記半径方向支柱(352)から切り離され、以てロックリング(40)がロック位置へ復帰するのを可能にする、請求項10に記載の流体吐出装置。
【請求項12】
前記アクチュエーター(20)が休止位置から変位する間に、前記アクチュエーター(20)は前記ロックリング(40)を解除位置とロック位置との間の中間位置に固定する、請求項11に記載の流体吐出装置。
【請求項13】
作動の最後に、前記アクチュエーター(20)が休止位置に復帰すると、前記ロックリング(40)が前記バネ(60)の作用によって自動的にロック位置に復帰する、請求項1から12のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項14】
前記電子制御モジュール(90)は、流体ディスペンサー(1)の各作動後に所定の期間だけ、ロックリング(40)がロック位置から解除位置へ変位するのを阻止する、遅延手段を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の流体吐出装置。
【請求項15】
前記遅延手段は、前記装置の制御ボタン(85)および前記モーター(80)の少なくとも一方をブロックする、請求項14に記載の流体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、特定の状況において、強力で潜在的に致命的な薬物の投与が必要になる場合がある。これは、特定の疾患の治療や、終末期の緩和治療を必要とする人々に特に当てはまる。このような物質の取り扱いには、数回連続して間隔を置かずに投与した場合に発生し得る過剰摂取のリスクを回避するために、細心の注意と非常に安全な投与装置が必要になる。
【0003】
文献US5228586には、請求項1のプリアンブルに記載されたディスペンサーが記載されている。文献EP0114617およびUS2015/320948には、他の先行技術に係る装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5228586号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開0114617号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/320948号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の欠点を被らない流体吐出装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、特に過剰摂取のリスクを回避するために、安全で使用者を保護する流体吐出装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、連続する2回の作動の間に所定の時間ブロックされる流体吐出装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、堅牢で使用時の信頼性が高い流体吐出装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明はまた、製造および組み立てが簡単で安価な流体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、以下を備える流体吐出装置を提供する:
-流体を収容するリザーバーと、当該リザーバーに取り付けられたポンプまたはバルブ等の吐出手段と、を有する流体ディスペンサー、
-前記ディスペンサーを収容する中空シリンダーを有する内側本体、
-吐出オリフィスを備えたアクチュエーターであって、休止位置と作動位置との間で軸方向に変位可能に前記内側本体に取り付けられ、前記アクチュエーターが休止位置から作動位置へ軸方向に変位すると、前記吐出手段が作動し、前記吐出オリフィスを経由して、1投与分の流体を吐出するもの、
-モーター、
-電子制御モジュール、
-前記モーターに接続され、前記モーターによって回転駆動される歯車、および
-ロック位置と解除位置との間で前記内側本体に回転可能に取着されたロックリングと、前記ロックリングをロック位置に向かって付勢するバネと、前記ロックリングは、前記歯車によってロック位置から解除位置へ変位され、前記ロックリングは、ロック位置では前記アクチュエーターと協働して前記アクチュエーターが軸方向に変位するのを防止し、解除位置では前記アクチュエーターと協働して前記アクチュエーターが作動位置へ軸方向に変位するのを可能にする。
【0011】
有利には、装置は、前記内側本体に固定され、前記モーターおよび前記電子制御モジュールを収容する外側本体を備える。
【0012】
有利には、装置は、前記モーターの作動を開始させるための制御ボタンを備える。
【0013】
有利には、前記アクチュエーターは少なくとも1つの軸方向支柱を含み、前記ロックリングは少なくとも1つの半径方向突起を含む。
【0014】
有利には、前記ロックリングのロック位置においては、前記少なくとも1つの半径方向突起は、前記少なくとも1つの軸方向支柱と当接して、前記アクチュエーターが作動位置に向かって軸方向に変位するのを防止することと、前記ロックリングの解除位置においては、前記少なくとも1つの半径方向突起は、前記少なくとも1つの軸方向支柱から角度がずれることと、によって、前記アクチュエーターが作動位置に向かって軸方向に変位できるようにする。
【0015】
有利には、装置は4つの半径方向突起と4つの軸方向支柱とを備え、各半径方向突起はそれぞれの軸方向支柱と協働して、ロックリングがロック位置にあるときにアクチュエーターが軸方向に移動するのを防止する。
【0016】
有利には、前記ロックリングは、軸方向上方に突出する歯を備えた軸方向に可撓性のツマミを備える。
【0017】
有利には、前記内側本体、またはカバーなどの前記内側本体と一体の要素は、第1の窓および半径方向支柱によって前記第1の窓から分離された第2の窓を含む内部形状を有する。
【0018】
有利には、前記アクチュエーターは、軸方向下向きに延びる軸方向フィンガーを備える。
【0019】
有利には、前記ロックリングのロック位置において、前記歯が前記第1の窓内に配置され、前記ロックリングが解除位置に向かって変位することによって、前記可撓性のツマミが軸方向に変形すると、前記歯が前記半径方向支柱の背後で第2の窓を通過できるようになり、その後、前記半径方向支柱が、前記歯に協働して、前記ロックリングが前記バネの作用によってロック位置に復帰するのを阻止する。
【0020】
有利には、前記アクチュエーターが休止位置から作動位置まで軸方向に変位している間、前記軸方向フィンガーが、前記歯を軸方向下向きに押圧することによって、前記歯と協働すると、前記歯が前記半径方向支柱から切り離され、以て前記ロックリングがロック位置に復帰するのを可能にする。
【0021】
有利には、前記アクチュエーターが休止位置から変位する間に、前記アクチュエーターは前記ロックリングを解除位置とロック位置との間の中間位置に固定する。
有利には、作動の最後に、アクチュエーターが休止位置に復帰すると、ロックリングが、バネの作用によって自動的にロック位置に復帰する。
【0022】
有利には、前記電子制御モジュールは、ディスペンサーの各作動後に、前記ロックリングがロック位置から解除位置へ移動するのを所定期間だけ防止する遅延手段を備える。
【0023】
有利には、前記遅延手段は、装置および/または前記モーターの制御ボタンを固定する。
【0024】
本発明のこれらの特徴および利点その他は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられた以下の詳細な説明中からより明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0025】
このようにすれば、前述の欠点を被らない流体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、有利な実施形態に係る吐出装置の分解斜視図である。
図2図2は、装置内の流体吐出ディスペンサーの組み立てを示す分解斜視図である。
図3図3は、図1の装置の側面斜視図であり、装置のロックを解除するステップを説明する。
図4図4は、図3と同様の図であって、流体吐出ディスペンサーを作動させるステップを説明する。
図5図5は、有利な実施形態に係るロックリングの斜視図である。
図6図6は、図5のロックリングの一部の概略詳細斜視図である。
図7図7は、別の角度から見た図5と同様の図である。
図8図8は、アクチュエーターを下方から見た斜視図である。
図9図9は、有利な実施形態に係るカバーの斜視図である。
図10図10は、有利な実施形態に係る歯車の斜視図である。
図11図11は、作動中のアクチュエーターの軸方向変位を示す概略斜視図である。
図12図12は、図11と同様の図であって、ロック解除中のロックリングの回転変位を示す。
図13図13は、ロック位置へ向かって付勢されたロックリングを示す切り欠き斜視図である。
図14図14は、ロックリングと歯車の協働を示す断面図である。
図15図15は、ロック位置にあるアクチュエーター、ロックリング、および歯車を示す切り欠き斜視図である。
図16図16は、解除位置にあるアクチュエーター、ロックリング、および歯車を示す切り欠き斜視図である。
図17図17は、ロック位置にあるロックリングを示す切り欠き斜視図である。
図18図18は、解除位置にあるロックリングを示す切り欠き斜視図である。
図19図19は、ロック位置にあるロックリングの可撓性タブの詳細を示す切り欠き斜視図である。
図20図20は、ロック解除サイクル中のロックリングと歯車との協働を示す切り欠き斜視図である。
図21図21は、ロック解除サイクル中のロックリングと歯車との協働を示す切り欠き斜視図である。
図22図22は、装置の作動サイクル中の可撓性タブの詳細を示す切り欠き斜視図である。
図23図23は、装置の作動サイクル中の可撓性タブの詳細を示す切り欠き斜視図である。
図24図24は、装置の作動サイクル中の可撓性タブの詳細を示す切り欠き斜視図である。
図25図25は、装置の作動サイクル中の可撓性タブの詳細を示す切り欠き斜視図である。
図26図26は、装置の作動サイクル中の可撓性タブの詳細を示す切り欠き斜視図である。
図27図27は、装置の作動中に解除位置にあるロックリングを示す水平断面図である。
図28図28は、装置の作動中に中間位置にあるロックリングを示す水平断面図である。
図29図29は、休止位置に復帰する前のアクチュエーターの垂直断面図である。
図30図30は、アクチュエーターが休止位置に復帰すると、作動の最後にロック位置に戻るロックリングを示す切り欠き斜視図である。
図31図31は、アクチュエーターが休止位置に復帰すると、作動の最後にロック位置に戻るロックリングを示す切り欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
「軸方向」、「半径方向」、「水平方向」、および「垂直方向」という用語は、装置の長手方向における中心軸に関するものである。「頂部」、「底部」、「上方」、「下方」という用語は、図3および4に示す装置の直立位置に関するものである。
【0028】
本発明の主な主題は、流体吐出装置の作動を可能にするアクチュエーターの作動をロックおよび解除することによって、投与量の吐出を許可および禁止する装置である。
【0029】
図面に示す流体吐出装置は、有利には標準タイプの流体ディスペンサー1を備える。このディスペンサー1は、流体を収容するリザーバー2と、ポンプまたはバルブなどの吐出手段3とを備え、その一部はリザーバー2に対して軸方向に変位することができる。吐出手段3は、固定リング4によって、リザーバー2に固定される。吐出手段3は、アクチュエーターがリザーバー2に対して軸方向下向きに変位すると作動する。一般に、リザーバー2に推進剤ガスが入っていない場合には、吐出ポンプが使用され、リザーバー2にガスが入っている場合には、計量バルブが使用される。これらの2つのタイプの吐出手段は当業者によく知られており、この吐出手段は本発明に直接関与しないので、以下では詳細に説明しない。
【0030】
流体吐出装置は、またディスペンサー1を受容する内側本体10と、内側本体10に固定され、電子制御モジュール90を含む外側本体120とを備える。
【0031】
内側本体10は、下側で軸方向に開いた中空シリンダー11を備え、結合手段は、有利には、下側開口部の外面に設けられたねじ山12の形態である。中空シリンダー11は、ディスペンサー1のリザーバー2を受け入れるように意図されている。ディスペンサー1を内側本体10に固定するために、キャップ5が設けられる。このキャップ5は、内側本体10の結合手段と協働するように適合された、雌ねじ6の形態で有利に形成された相補的な結合手段を備える。このため、装置内にディスペンサー1を組み立てるために、リザーバー2が内側本体10の中空シリンダー11の内側に挿入される。次いで、キャップ5を前記内側本体10にねじ込む。この組立方法を図2に示す。この操作モードは、ディスペンサー1内の空のリザーバーを満杯のリザーバーと簡単に交換できることを意味する。装置、特に電子制御モジュール90は、廃棄する代わりに再利用することができる。
【0032】
上側では、内側本体10は、プレート13と、前記プレート13から軸方向上方に延びる中空の軸方向延長部14とを備える。これは、内側本体10と一体に成形するか、または別個に製造してから、任意の適切な方法で前記内側本体10に取り付けることができる。ディスペンサー1が内側本体10内に配置されると、吐出手段3の少なくとも一部は、前記中空軸方向延長部14を横切る。
【0033】
外側本体120は中空であり、任意の外形を有することができる。図示した例では、外側本体120は、ほぼ長方形の形状になっており、内側本体10の前記プレート13の形状に部分的に対応する。外側本体120は、例えばスナップ等の適切な方法によって内側本体10に固定される。有利なことに、外側本体120は、例えば図1から図4に示されるような窓などの1つまたは複数の窓121を備え、電子制御モジュール90の画面91を見ることができるようにする。この画面には、使用説明書、バッテリー充電情報などの情報を表示してもよい。
【0034】
外側本体120は、制御ボタン85を受け入れるための開口部122も有している。変形例として、制御ボタンは、画面91または別の窓に見える別のディスプレイ上の制御ゾーンに置き換えてもよい。この制御ゾーンに指紋検出手段を組み込んで、許可された人または人々だけに装置の作動を許可してもよく、このようにすれば、例えば子供による偶発的な作動を防止することができる。顔認識など、他の認識手段も考えられる。制御ボタンまたは制御ゾーンは、音声コマンド、第三者(医師など)によるリモートロック解除、電子制御モジュールのタイマーまたはソフトウェアによって管理されるコマンド等、他の手段に置き換えることもできる。
【0035】
内側本体10のプレート13上に固定されるカバー30が設けられ、このカバー30は、中空シリンダー31および半径方向フランジ32を備える。中空シリンダー31の内部形状35は、第1の窓350および第2の窓351からなり、第2の窓は半径方向支柱352によって第1の窓350から分離されている。変形例として、プロファイル35は、内側本体10上に設けてもよい。
【0036】
アクチュエーター20は、吐出オリフィス21を備えており、前記カバー30の中空シリンダー31内に組み付けられる。アクチュエーター20は、休止位置と作動位置との間で内側本体10に対して軸方向に変位することができ、作動位置ではアクチュエーター20は内側本体10に対して軸方向下向きに移動する。有利には、アクチュエーターはノーズピース22を備える。ノーズピース22は、その上端が吐出オリフィス21内で終端し、下方に軸方向スカート23を備える。軸方向スカート23は、半径方向軸受け面230を有し、使用者は半径方向軸受け面230を押下して、ディスペンサー1を作動させてもよい。少なくとも1つの軸方向タブ24が、前記軸方向スカート23の半径方向下縁231から軸方向下向きに延出しており、アクチュエーター20をカバー30の中空シリンダー31内に、例えば、スナップ嵌めによって、固定する。図8の例では、直径方向に対向する2つの軸方向タブ24が設けられている。軸方向フィンガー27も、前記軸方向スカート23の半径方向下縁231から軸方向下向きに延びており、その機能については後述する。図8の例では、この軸方向フィンガー27は、直径方向に対向する2つの軸方向タブ24のそれぞれから90°の位置に配置されている。
【0037】
内部では、アクチュエーター20は中空管25を備え、中空管25は、吐出手段3と協働し、吐出オリフィス21内に向かって開口する。中空管25は、好ましくは、噴霧を生成するために前記吐出オリフィスのすぐ上流に設けられた噴霧プロファイルを有する。少なくとも1つの軸方向支柱26が半径方向軸受け面230の下に設けられる。図8の例では、4つの軸方向支柱26(そのうちの3つが見える)が周囲に分布している。これらの軸方向支柱の機能については後述する。
【0038】
装置は、更にロックリング40、前記ロックリング40と協働する歯車50、前記ロックリング40用のバネ60、およびモーター80に関連付けられたモーターホイール70を備え、前記モーターホイール70は前記歯車50と協働する。
【0039】
ロックリング40、歯車50、バネ60およびモーターホイール70は、内側本体10のプレート13上に配置され、カバー30によって所定の位置に保持される。
【0040】
ロックリング40は、ロック位置と解除位置との間で内側本体10の前記軸方向延長部14の周りに回転可能に取り付けられる。バネ60は、ロックリングをロック位置に向かって付勢する。これは、有利には、図13および図15に示すように、一方でロックリング40のスタッド46に固定され、他方で内側本体10のプレート13に設けられた第2のスタッド36に固定される。ロックリング40はアクチュエーター20と協働して、アクチュエーター20の軸方向の動きを選択的にロックまたは許可する。
【0041】
ロックリング40は、中空スリーブ41を有している。中空スリーブ41は、軸方向下縁411に、軸方向に可撓性を有するツマミ42が設けられている。ツマミ42は、前記中空スリーブ41の外側で、中空スリーブ41と軸を同じくし、半径方向に延在する。この可撓性のツマミ42には歯420および開口421が設けられている。歯420は軸方向上向きに突出しており、開口421は歯420の後方に設けられている。ロックリングのロック位置においては、図17図19および図22に示すように、歯420がカバー30の第1の窓350に配置される。ロックリング40が解除位置へ変位すると、図19の矢印で示すように、軸方向に可撓性のツマミ42が軸方向下向きに変形することによって、歯420がカバー30の半径方向支柱352の下を通過し、図18に示すように、第2の窓351内に移動する。有利には、ロック解除サイクルの間、モーター80の回転が、歯車50を経由して伝達されると、ロックリング40の角度オーバートラベルによって、図23に示すように、歯420と半径方向支柱352とのオフセットが発生する。これにより、歯車50の第2の歯の組52がロックリング40の歯45ともはや噛み合っていなくても、モーター80がもはやトルクを加えなくなったときに、歯420が半径方向支柱352の後方にスナップすることが保証される。これにより、さまざまな部品の製造公差にかかわらず、信頼性の高い動作を確保できます。バネ60はロックリング40をロック位置に向かって付勢するので、ロックリング40が解除位置に来るとすぐに、バネ60はロックリング40をロック位置に戻そうとするが、図24に示すように、可撓性のツマミ42の歯420が半径方向支柱352に当接することによって、ロックリング40のロック位置への変位が阻止される。
【0042】
ロックリング40は、前記中空スリーブ41から半径方向外向きに延びる少なくとも1つの半径方向突起43を有する。図面の例では、中空スリーブ41の周囲に分散された4つの半径方向突起43がある。ロック位置では、これらの半径方向突起43は、アクチュエーター20の軸方向支柱26と協働して、アクチュエーターが作動位置に向かって軸方向に移動するのを防止する。反対に、解除位置では、半径方向突起43は、それぞれ軸方向支柱26と角度がずれているので、前記アクチュエーター20を作動位置に向かって軸方向に変位させることができる。図面に示す実施形態においては、図15に示すように、4つの半径方向突起43が、4つの軸方向支柱26と協働することによって、装置が特に頑丈になり、装置の無許可の作動が防??止される。
【0043】
可撓性のツマミ42の反対側に、ロックリング40は平坦部44を備えている。平坦部44は歯45を支持する。歯45が歯車50と協働することによって、歯車50がロックリング40を解除位置に向けて移動させる。平坦部44はまた、有利には、バネ60に固定されたスタッド46を支持する。有利には、ロックリング40は検出手段を有する。検出手段は、電子制御モジュール90と協働して、その位置を通知する。図示した例では、これらの検出手段は、前記平坦部44から軸方向下向きに延伸する軸方向延長部47を備える。
【0044】
歯車50は、歯車50の全周に亘って分布する複数の歯からなる第1の歯の組51を有する。歯車50は、第1の歯の組51の軸方向上方に、第2の歯の組52が設けられている。第2の歯の組52は、歯車50の全周の一部だけに設けられる。図10に示す例では、第2の歯の組52は3つの歯からなる。第2の歯の組52は、ロックリング40の歯45と協働して、図20および図21に示すように、ロックリング40をロック位置から解除位置まで回転させる。
【0045】
モーターホイール70は歯の組71を備え、歯の組71は歯車50の第1の歯の組51と協働する。したがって、モーター80がモーターホイール70を一方の回転方向に回転させると、モーターホイールが歯車50を回転させ、ロックリング40をロック位置から解除位置まで駆動する。
【0046】
電子制御モジュール90は支持体81に固定され、支持体81は内側本体10に固定されており、このアセンブリは前記外側本体120の内部に収容される。この電子制御モジュール90は、やはり支持体81に取り付けられたモーター80を制御し、モーター80はモーターホイール70と協働して、モーターホイール70を回転させる。
【0047】
モーター80は、モーターホイール70に接続されたモーターのシャフトを回転させるのに適した3V直流ギアモーターであってもよい。このモーターは、例えば、再充電可能または再充電不可能な蓄電池または蓄圧器のように、任意の適切な方法で給電してもよい。好ましくは、モーター80が制御されると、モーターホイール70が回転して、歯車50を完全に1回転させる。このようにすれば、まずロックリング40がロック位置から解除位置に向かって回転し、次に歯車50の第2の歯の組52がロックリング40の歯45から切り離される。したがって、ロックリング40が解除位置にあると、もはやモーター80に接続されない。
【0048】
電子制御モジュール90は、装置、特にモーター80および画面91を動作させるために、特にマイクロプロセッサーなどの適切な電子要素を備える。有利には、電子制御モジュール90は、ロックリング40、特にその軸方向延長部47の変位および/または位置を検出するためのスイッチ(図示せず)を備える。したがって、様々な作動段階を検出することができ、特に、ディスペンサー1を作動させて、1投与分の流体を吐出した後、ロックリングがロック位置へ復帰したことを検出することができる。この情報を使用して、所定の時間、デバイスの動作を禁止してもよい。
【0049】
したがって、電子制御モジュール90は、所定の遅延期間が満了した後にのみ新しい作動を許可する遅延手段を有してもよい。遅延手段は、特に、マイクロプロセッサーの内部クロックを含んでもよい。オプションで、リアルタイムクロックコンポーネントを追加してもよい。この一時的なブロックは、好ましくはモーター80の制御に作用し、モーター80が回転して、ロックリング40がロック位置から解除位置に移動するのを防止する。変形例として、制御ボタン85を、所定の期間、非アクティブ化またはブロックしてもよい。有利には、医療関係者などの許可された人だけが、電子制御モジュールにアクセスすることによって、または画面91を介して、前記遅延時間を変更することができる。有利には、画面91は、次の投与量を服用できるおよび/または服用しなければならないまでの残り時間を示す。オプションで、使用者が装置のロックを解除しようとして制御ボタンを押した場合、音声信号および/または視覚信号を提供してもよい。
【0050】
図面に示されている装置の動作をより詳細に説明する。
【0051】
通常の作動サイクルでは、使用者は図3に示す休止位置にある装置を手に取る。この位置では、アクチュエーター20は、ロック位置にあるロックリング40によって固定されているので、軸方向下向きに変位することはできない。
【0052】
装置を作動させるために、使用者はまず電子制御モジュール90にコマンドを発行して、ロックリング40をロック位置から解除位置に変位させなければならない。これを行うには、図の例では、図3の矢印F1に従って制御ボタン85を押す。これによって、モーター80、延いてはモーターホイール70が回転し、歯車50、延いてはロックリング40が図15図17図19および図22に示すロック位置から、図16図18および図23に示す解除位置まで回転する。ロックリング40が変位すると、バネ60に負荷がかかって、ロックリング40をロック位置に戻すように作用する。しかし、歯420がカバー30の半径方向支柱352に当接することによって、ロックリング40は解除位置に固定されるので、ばね60の力が作用しても、ロックリング40はロック位置に戻ることができない。
【0053】
次に、使用者は、アクチュエーター20に軸方向の作動力を加えて、図4の矢印F2に従ってアクチュエーター20を軸方向下向きに変位させることができる。これにより、吐出手段3が作動し、吐出オリフィス21を通して1投与分の流体が吐出される。解除位置では、歯車50の第2の歯の組52がもはやロックリング40の歯45に接続されていないため、ロックリング40がモーター80に接続されていない状態で、モーター80を作動させると、歯車50が完全に1回転する。変形例では、歯車50はモーター80が作動するたびに、完全に1回転するのではなく、例えば、半回転など、任意の角度だけ回転する。この場合には、歯車50の回転角に応じて、ロックリング40の歯45の数および歯車の第2の歯の組52の歯数が設定される。
【0054】
作動の開始から、アクチュエーター20の軸方向フィンガー27を、可撓性のツマミ42の歯420と協働させた状態で、アクチュエーター20は、ロックリング40に対して軸方向に下降する。図25に示すように、軸方向フィンガー27が歯420を軸方向下向きに押すと、歯は半径方向支柱352から外れる。半径方向支柱352による歯420のブロックが解除されると、バネ60がロックリング40をロック位置へ向かって付勢する。しかしながら、ロックリング40の半径方向突起43が、図28に示す中間位置において、アクチュエーター20の半径方向支柱26に対してブロックされたままであるため、ロックリング40はロック位置に戻ることができない。アクチュエーター20が休止位置に復帰したときにだけ、ロックリング40はバネ60の作用によって自動的にロック位置に復帰することができる。なお、アクチュエーター20の作動ストロークの開始時に、歯420が半径方向支柱352から離脱することによって、作動ストロークが不完全なときでも確実にロックするのが好ましい。したがって、複数の部分的な投与量を連続して吐出することはできない。歯420の係合を解除した後、ロックリング40が図28の中間位置にある場合には、図26に示すように、軸方向フィンガー27に可撓性のツマミ42の開口421を通過させて、アクチュエーター20が完全な作動ストロークを作動位置まで継続することができる。
【0055】
作動後、使用者がアクチュエーター20への押圧を解除すると、吐出手段3、特に、吐出手段3の戻りバネ(図示せず)によってアクチュエーター20は休止位置に戻される。
【0056】
その後、デバイスは休止位置に戻り、次の作動は、電子制御モジュール90によって事前に設定されたブロック期間の満了後にのみ可能になる。
【0057】
上記のように、有利な実施形態を参照して本発明を説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者が様々な変更を行ってもよいことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示に係る流体吐出装置は、過剰摂取のリスクを回避するために、安全で使用者を保護する装置として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1………流体ディスペンサー
2………リザーバー
3………吐出手段
4………固定リング
5………キャップ
6………雌ねじ
10……内側本体
11……中空シリンダー
12……ねじ山
13……プレート
14……軸方向延長部
20……アクチュエーター
21……吐出オリフィス
22……ノーズピース
23……軸方向スカート
24……軸方向タブ
25……中空管
26……軸方向支柱
27……軸方向フィンガー
30……カバー
31……中空シリンダー
32……半径方向フランジ
35……内部形状
36……第2のスタッド
40……ロックリング
41……中空スリーブ
42……ツマミ
43……半径方向突起
44……平坦部
45……歯
46……スタッド
47……軸方向延長部
50……歯車
51……第1の歯の組
52……第2の歯の組
60……バネ
70……モーターホイール
71……歯の組
80……モーター
81……支持体
85……制御ボタン
90……電子制御モジュール
91……画面
120…外側本体
121…窓
122…開口部
230…半径方向軸受け面
231…半径方向下縁
350…第1の窓
351…第2の窓
352…半径方向支柱
411…軸方向下縁
420…歯
421…開口
図1
図2
図3
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【国際調査報告】