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▶ ザ プロテイン ブルワリー ビー.ヴイ.の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】新規な食物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20230712BHJP
   A23K 10/10 20160101ALI20230712BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20230712BHJP
   A23L 7/135 20160101ALI20230712BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230712BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20230712BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20230712BHJP
【FI】
A23L33/10
A23K10/10
A23L13/00 Z
A23L7/135
A23L5/00 J
A23L23/00
A23L5/00 M
C12N1/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576480
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2021067067
(87)【国際公開番号】W WO2021259966
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】20181591.7
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520384840
【氏名又は名称】ザ プロテイン ブルワリー ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】The Protein Brewery B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ルネ, エリサ
(72)【発明者】
【氏名】クノーベル, キルステン
(72)【発明者】
【氏名】デ ハーン, アプ
(72)【発明者】
【氏名】デ ラート, ヴィルヘルムス テオドルス アントニウス マリア
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B025
4B035
4B036
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
2B150AA06
2B150AB03
2B150AC15
2B150DD26
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE03
4B018MD06
4B018MD10
4B018MD19
4B018MD24
4B018MD80
4B018ME01
4B018ME02
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF07
4B025LB02
4B025LG56
4B025LP19
4B035LC06
4B035LE01
4B035LG50
4B035LP24
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4B035LP59
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4B042AP27
4B065AA57X
4B065AA67X
4B065AA69X
4B065BD01
4B065BD10
4B065BD11
4B065BD18
4B065CA01
4B065CA13
4B065CA17
4B065CA24
4B065CA41
4B065CA43
(57)【要約】
本発明は、食品、飲料、ペット用食物又は動物用飼料中の材料としての使用のための好熱性真菌のバイオマスを含む組成物に関する。その栄養的組成に起因して、好熱性真菌のバイオマスは、タンパク質及び/又はアミノ酸の供給源として使用することができ、必須アミノ酸、脂質を含み、オレイン酸及びリノレン酸、食物繊維、コリン及びビタミンE等のビタミン、及び鉄等のミネラルを含む。好熱性真菌のバイオマスは、圧縮されたバイオマスケークとして、又は乾燥粉末として入手可能である。したがって、好熱性真菌のバイオマスは、肉代用品及びハイブリッド肉製品における材料として好適である。乾燥粉末の形態において、好熱性真菌のバイオマスは、他の材料と容易に混合させて、パン又はスープ等のベーカリー製品を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)タンパク質及び/又はアミノ酸、b)脂質、c)食物繊維、d)コリン及び/又はビタミン並びにe)ミネラル、のうちの少なくとも1種の供給源として好熱性真菌のバイオマスを含む組成物の、食品、飲料、ペット用食品及び飼料製品のうちの少なくとも1種中での、使用。
【請求項2】
好熱性真菌のバイオマスを含む前記組成物が、a)培地中の液内培養にて好熱性真菌の株を増殖させるステップと、b)篩い、ろ過及びデカンテーションのうちの少なくとも1つによって前記培地から前記真菌バイオマスを回収して、バイオマスケークを生成するステップであって、これにより、好ましくは、篩い済み、ろ過済み又はデカンティング済みのバイオマスケークの乾物濃度が少なくとも12(w/v)%である、ステップと、c)任意選択で、残っている水を圧出することによって前記バイオマスケークを更に乾燥させて、少なくとも20%の乾物濃度を有するバイオマスケークを得るステップと、を含む方法において得られうるケークである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
好熱性真菌のバイオマスを含む前記組成物が、請求項2において得られたバイオマスケークを、粉砕し、温かい空気によって、凍結乾燥によって、好ましくは真空下で、又はフラッシュ乾燥によって、好ましくは7(w/w)%以下の水分含量までのバイオマス粉末へ更に乾燥させることによって得られうる乾燥粉末である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記真菌株が、ラサムソニア(Rasamsonia)、タラロミケス(Talaromyces)、ペニシリウム(Penicillium)、アクレモニウム(Acremonium)、フミコラ(Humicola)、パエキロミケス(Paecilomyces)、カエトミウム(Chaetomium)、リゾムコル(Rhizomucor)、リゾプス(Rhizopus)、テルモミケス(Thermomyces)、ミケリオフトラ(Myceliophthora)、テルモアスクス(Thermoascus)、ティエラウィア(Thielavia)、ムコル(Mucor)、スティベラ(Stibella)、メラノカルプス(Melanocarpus)、マルブランケア(Malbranchea)、ダクティロミケス(Dactylomyces)、カナリオミケス(Canariomyces)、スキタリディウム(Scytalidium)、ミリオコックム(Myriococcum)、コリナスクス(Corynascus)及びコオネメリア(Coonemeria)からなる群から選択される真菌属の株であり、より好ましくは、前記属が、リゾムコルであり、更に好ましくは、前記株が、リゾムコル・プシルス(Rhizomucor pusillus)であり、最も好ましくは、前記株が、リゾムコル・プシルスCBS143028、又は単一のコロニー単離体又はその誘導体である株である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
タンパク質及びアミノ酸のうちの少なくとも1種が、アスパラギン酸、アスパラギン、スレオニン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、シトルリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、システイン、メチオニン及びトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸を含み、好ましくは、前記アミノ酸が、必須アミノ酸であり、より好ましくはスレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、メチオニン及びトリプトファンからなる群から選択される必須アミノ酸であり、最も好ましくはベジタリアン及びビーガン食品中にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
a)好熱性真菌の前記バイオマスが、ベジタリアン又はビーガン食品中で、タンパク質、アミノ酸及び必須アミノ酸のうちの少なくとも1種の(食事)供給源として使用される、
b)好熱性真菌の前記バイオマスが、スポーツ愛好家用の、食物、食物サプリメント又は飲料中で、シトルリンの(食事)供給源として使用される、
c)好熱性真菌の前記バイオマスが、ペット用食物中で、タンパク質、アミノ酸及び必須アミノ酸の供給源として、好ましくは、ペット用食物中で、タンパク質、アミノ酸の標準の動物性又は植物性供給源の代替品として、より好ましくは、タンパク質及び/又はアミノ酸の唯一の供給源として使用される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記好熱性真菌の前記バイオマスが、i)肉代用品、ii)肉材料と非肉材料とを含有するハイブリッド食品、iii)炭水化物に富む食品、iv)精製された粉で作製されたベーカリー製品及びv)ペット用食物、から選択される食品の繊維含有量を富化するために、食物繊維源として使用され、好ましくは、食物繊維が、キトサンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記好熱性真菌の前記バイオマスが、ヒト又はペット用食品中で、好ましくは体重管理又は体重減の必要があるヒト又はペットに、満腹感をもたらすための食物繊維源として使用され、好ましくは前記食物繊維が、キトサンを含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記好熱性真菌の前記バイオマスが、ビーガン又はベジタリアン食品中で、又はペット用食物、好ましくはネコ又はイヌ用食物中で、コリン源として使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記好熱性真菌の前記バイオマスが、レチノール、ビタミンE、リボフラビン、ピリドキシン及び葉酸のうちの少なくとも1種の供給源として使用され、好ましくは、前記バイオマスが、ネコ用食物中でレチノール源として使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記好熱性真菌の前記バイオマスが、鉄源として使用され、好ましくは、前記好熱性真菌の前記バイオマスが、鉄源としてのダイズを置き換えるのに使用され、より好ましくは、前記好熱性真菌の前記バイオマスが、肉代用品中で鉄源としてのダイズを置き換えるのに使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記好熱性真菌の前記バイオマスが、モノ不飽和脂肪酸及びポリ不飽和脂肪酸のうちの少なくとも1種の供給源として使用され、好ましくは、前記バイオマス好熱性真菌が、オレイン酸及びリノール酸のうちの少なくとも1種の供給源として使用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記好熱性真菌の前記バイオマスが、ケーク又は粉末のいずれかの形態で、食品、飲料、ペット用食品及び飼料製品中に、70(w/w)%の最大レベル及び少なくとも1(w/w)%の最小レベルで組み入れるために使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記好熱性真菌の前記バイオマスが、
a)肉代用品であって、42(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は14(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、肉代用品、
b)ハイブリッド肉製品であって、52(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は17.3(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、ハイブリッド肉製品、
c)シリアルベースの食品であって、30(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は10(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、シリアルベースの食品、
d)すぐ食べられる食事の食品であって、16(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は5.3(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、すぐ食べられる食事の食品、
e)すぐ食べられるスープであって、27(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は9(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、すぐ食べられるスープ、及び
f)スポーツ愛好家用の食品であって、70(w/w)%以下の、ケーク形態にある又は粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、スポーツ愛好家用の食品
のための材料として使用される、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか一項に記載の好熱性真菌のバイオマスを含む組成物を含む食品であって、
a)肉代用品であり、42(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は14(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、肉代用品、
b)ハイブリッド肉製品であり、52(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は17.3(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、ハイブリッド肉製品、
c)シリアルベースの食品であり、30(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は10(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、シリアルベースの食品、
d)すぐ食べられる食事の食品であり、16(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は5.3(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、すぐ食べられる食事の食品、
e)すぐ食べられるスープであり、27(w/w)%以下の、ケーク形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマス、又は9(w/w)%以下の、粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、すぐ食べられるスープ、及び
f)スポーツ愛好家用の食品であり、70(w/w)%以下の、ケーク形態にある又は粉末形態にある前記好熱性真菌の前記バイオマスを含む、スポーツ愛好家用の食品
である、食品。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、食物サプリメントの分野、及びヒトの食物と動物用飼料との両方による使用のための置き換え物の分野に関する。
【発明の背景】
【0002】
非動物源からもたらされる高タンパク質含有量を与えることができる食用製品への需要が増加している。個人の健康の気づきの増大に駆られて、タンパク質及び繊維等の非動物源成分を含む食用製品が、動物タンパク質ベースの製品へのより健康的な代替品として考えられている。特に、その組成及びテクスチャにおいて肉を模倣しているが非動物成分からなる食用の肉置換物への需要が増大しており、これは、ウシ等の動物に頼ることを低減し、このような動物が付けるカーボンフットプリントを低減することができる。
【0003】
単細胞タンパク質(SCP)は、肉タンパク質への興味深い代替品であり、朝食用シリアル、パン、パスタ、酪農製品、アイスクリーム、チョコレート及びスープ等の多くの他の食物用途におけるタンパク質源である。真菌性SCPが生成されるとき、それは、肉の製造と比べてよりサステナブルな方法で、糖に富む作物から製造され得、その理由は、SCPが、肉生産に比べて、1ヘクタール当たりより多くのトン量のタンパク質を産生し、窒素排出量がより少ないためである。ヒトの食物又は動物用飼料のためのタンパク質の食事源を製造する1つの方法は、発酵の手段によって「単細胞タンパク質」(SCP)を生成することである(Sumanら、2015、Int J.Curr.Microbiol.Appl.Sci.、第4巻、No9、251~262頁)。この点での発酵は、炭素に富む飼料の、細菌、酵母又は真菌等の微生物細胞からなる、タンパク質に富む製品への微生物変換であると理解される。動物飼料及び食物材料としてのSCPの使用は、微生物細胞が高含有量の必須アミノ酸を有するという更なる利点をもたらす。更に、特に真菌細胞は、微量元素及びビタミンにきわめて富むことが可能であり、発酵飼料を非常に栄養的なものにする。
【0004】
SCPは、ヒト消費用の食品中で既に使用されている。例としては、クォーン(Quorn)(商標)が、真菌フサリウム・ウェネナトゥム(Fusarium venenatum)の発酵による、SCPとして生成されたマイコプロテインを含み、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)及びビオチンを含有する(www.mycoprotein.org)。クォーンは、ソーセージ、カツレツ、バーガー、パティ及びストリップ等の多様な形態において、すなわち肉類似形態において入手可能である。
【0005】
SCP生成の1つの問題は、特に細菌又は酵母での液中発酵の事例において、発酵ブロス中で生成されるSCP-バイオマスの濃度である。別の問題は、高価な酵素が、安価なポリマー炭素源をモノマー発酵性糖へと変換させる必要性である。更に、SCP生成用の中温菌を使用するときに感染を防ぐために、殺菌発酵条件が適用されることが必要であり、これが、高い資本投資及びエネルギー需要に起因して、禁止されたオペレーションコストへと至らせる(WO2018/029353)。これらの問題のうちのいくつかは、高温及び酸性pHにおいて好熱性真菌での液中発酵を用いて非殺菌条件の使用を可能にし、高温及び酸性pHにおいて良好な増殖の好ましい性質を篩い可能な形態及び高いタンパク質含有量と組み合わせる好熱性真菌を選択することによって、検討されてきた(WO2018/029353)。
【0006】
しかしながら、現在入手可能な肉類似形態に加えて、より広い範囲の用途を提供する非動物タンパク質源への必要性が残る。
【0007】
[発明の概要]
第1の態様では、本発明は、a)タンパク質及び/又はアミノ酸、b)脂質、c)食物繊維、d)コリン及び/又はビタミン及びe)ミネラルのうちの少なくとも1種の供給源として好熱性真菌のバイオマスを含む組成物の、食品、飲料、ペット用食品及び飼料製品のうちの少なくとも1種中での、使用に関する。
【0008】
本発明による好ましい使用では、好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、a)培地中の液内培養にて、好熱性真菌の株を増殖させるステップと、b)篩い、ろ過及びデカンテーションのうちの少なくとも1つによって培地から真菌バイオマスを回収してバイオマスケークを生成するステップであって、これにより、好ましくは、篩い済み、ろ過済み又はデカンテーション済みのバイオマスケークの乾物濃度が少なくとも12(w/v)%である、ステップと、c)任意選択で、残っている水を圧出することによってバイオマスケークを更に乾燥させて、少なくとも20%の乾物濃度を有するバイオマスケークを得るステップとを含む方法において得られうるケークであり、又は好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、又はフラッシュ乾燥によって、請求項2において得られるバイオマスケークを粉砕し、温かい空気によって、好ましくは真空下での凍結乾燥により、好ましくは7(w/w)%以下の水分含量までのバイオマス粉末へ更に乾燥することによって、得られうる乾燥粉末である。
【0009】
本発明による好ましい使用では、真菌株は、ラサムソニア(Rasamsonia)、タラロミケス(Talaromyces)、ペニシリウム(Penicillium)、アクレモニウム(Acremonium)、フミコラ(Humicola)、パエキロミケス(Paecilomyces)、カエトミウム(Chaetomium)、リゾムコル(Rhizomucor)、リゾプス(Rhizopus)、テルモミケス(Thermomyces)、ミケリオフトラ(Myceliophthora)、テルモアスクス(Thermoascus)、ティエラウィア(Thielavia)、ムコル(Mucor)、スティベラ(Stibella)、メラノカルプス(Melanocarpus)、マルブランケア(Malbranchea)、ダクティロミケス(Dactylomyces)、カナリオミケス(Canariomyces)、スキタリディウム(Scytalidium)、ミリオコックム(Myriococcum)、コリナスクス(Corynascus)及びコオネメリア(Coonemeria)からなる群から選択される真菌属の株であり、より好ましくは、属は、リゾムコルであり、より好ましくは、株は、リゾムコル・プシルス(Rhizomucor pusillus)であり、最も好ましくは、株は、リゾムコル・プシルCBS143028であり、又は単一のコロニー単離体又はその誘導体である。
【0010】
本発明による好ましい使用では、タンパク質及びアミノ酸のうちの少なくとも1種は、アスパラギン酸、アスパラギン、スレオニン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、シトルリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、システイン、メチオニン及びトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸を含み、好ましくは、アミノ酸は、必須アミノ酸、より好ましくは、スレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、メチオニン及びトリプトファンからなる群から選択される必須アミノ酸を含み、最も好ましくは、ベジタリアン及びビーガン食品中にある。本発明によるより好ましい使用では、a)好熱性真菌のバイオマスは、ベジタリアン又はビーガン食品中で、タンパク質、アミノ酸及び必須アミノ酸のうちの少なくとも1種の(食事)源として使用される、b)好熱性真菌のバイオマスは、スポーツ愛好家用の、食物、食物サプリメント又は飲料中の(食事)源シトルリンとして使用される、又はc)好熱性真菌のバイオマスは、ペット用食物中で、タンパク質、アミノ酸及び必須アミノ酸の供給源として、好ましくは、ペット用食物中で、タンパク質、アミノ酸の標準の動物性又は植物性供給源の代替品として、より好ましくは、タンパク質及び/又はアミノ酸の唯一の供給源として使用される。
【0011】
本発明による好ましい使用では、好熱性真菌のバイオマスは、i)肉代用品、ii)肉材料と非肉材料とを含有するハイブリッド食品、iii)炭水化物に富む食品、iv)精製された粉で作製されたベーカリー製品及びv)ペット用食物、から選択される食品の繊維含有量を富化する食物繊維の源として使用され、好ましくは、食物繊維はキトサンを含む。本発明によるより好ましい使用では、好熱性真菌のバイオマスは、好ましくは体重管理又は体重減の必要があるヒト又はペットに、満腹感をもたらすために、ヒト又はペット用食品中で食物繊維源として使用され、好ましくは、食物繊維はキトサンを含む。
【0012】
本発明による好ましい使用では、好熱性真菌のバイオマスは、ビーガン又はベジタリアン食品中の、又はペット用食物、好ましくはネコ又はイヌ用食物中の、コリン源として使用される。
【0013】
本発明による好ましい使用では、好熱性真菌のバイオマスは、レチノール、ビタミンE、リボフラビン、ピリドキシン及び葉酸のうちの少なくとも1種の供給源として使用され、好ましくは、該バイオマスは、ネコ用食物中でレチノール源として使用される。
【0014】
本発明による好ましい使用では、好熱性真菌のバイオマスは、鉄源として使用され、好ましくは、好熱性真菌のバイオマスは、鉄源としてのダイズに置き換えるのに使用され、より好ましくは、好熱性真菌のバイオマスは、肉代用品中、鉄源としてのダイズを置き換えるのに使用される。
【0015】
本発明による好ましい使用では、好熱性真菌のバイオマスは、モノ不飽和脂肪酸及びポリ不飽和脂肪酸のうちの少なくとも1種の供給源として使用され、好ましくは、バイオマス好熱性真菌は、オレイン酸及びリノール酸うちの少なくとも1種の供給源として使用される。
【0016】
本発明による好ましい使用では、好熱性真菌のバイオマスは、ケーク形態又は粉末形態のいずれかにおいて、食品、飲料、ペット用食品及び飼料製品中に、70(w/w)%の最大レベル及び少なくとも1(w/w)%の最小レベルにおいて組み入れられるのに使用される。
本発明による好ましい使用では、好熱性真菌のバイオマスは、a)肉代用品であって、42(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は14(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、肉代用品、b)ハイブリッド肉製品であって、52(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は17.3(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、ハイブリッド肉製品、c)シリアルベースの食品であって、30(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は10(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、シリアルベースの食品、d)すぐ食べられる食事の食品であって、16(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は5.3(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、すぐ食べられる食事の食品、e)すぐ食べられるスープであって、27(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は9(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、すぐ食べられるスープ、及びf)スポーツ愛好家用の食品であって、70(w/w)%以下の、ケーク形態にある又は粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、スポーツ愛好家用の食品のための材料として使用される。
【0017】
第2の態様では、本発明は、本明細書で定義されている好熱性真菌のバイオマスを含む組成物を含む食品であって、a)肉代用品であり、42(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は14(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、肉代用品、b)ハイブリッド肉製品であり、52(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は17.3(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、ハイブリッド肉製品、c)シリアルベースの食品であり、30(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は10(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、シリアルベースの食品、d)すぐ食べられる食事の食品であり、16(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は5.3(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、すぐ食べられる食事の食品、e)すぐ食べられるスープであり、27(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は9(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、すぐ食べられるスープ、及びf)スポーツ愛好家用の食品であり、70(w/w)%以下の、ケーク形態にある又は粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、スポーツ愛好家用の食品、である食品に関する。
【0018】
[発明の説明]
定義
定義
別段の定義がなされていない限り、本明細書で用いられる技術的及び科学的用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。当業者であれば、本発明の実践において使用されうる、本明細書で記載されているものと類似又は等価の多くの方法及び材料を認めることになるであろう。事実、本発明は、決して本方法に限定されない。
【0019】
本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
【0020】
本発明で用いられるとき、用語「及び/又は」は、記述した事例のうちの1つ又は複数が、単独で、又は記述した事例のうちの少なくとも1つから記述した事例のうちの全てまでとの組合せで、起こりうることを示す。
【0021】
本発明で使用されるとき、「少なくとも」を伴う特定の値は、その特定の値又はそれ以上を意味する。例えば「少なくとも2」は、「2以上」と同じである、すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15などであると理解される。
【0022】
単語「約」又は「およそ」は、数値(例えば、約10)との関連で使用されるとき、好ましくは、その値が、その値の0.1%超又は未満の所与の(10の)値であってもよいことを意味する。
【0023】
用語「単細胞タンパク質」は、「SCP」と略することにしており、本明細書では、単細胞性の細菌、酵母、真菌又は藻類を含む、単細胞性の又は単細胞の状態で存在する生物の細胞から本質的になるバイオマスを指すと理解され、好ましくは乾燥形態にあるこのバイオマスは、ヒトの食物又は動物用飼料中のタンパク質又はタンパク質サプリメントの食事源として好適である。
【0024】
「真菌」は、本明細書では、真核微生物であると定義され、下位区分エウミコティナ(Eumycotina)の全ての種を含む(Alexopoulosら、1962、Introductory Mycology、John Wile&Sons,Inc.、New Yorkにおいて)。用語「真菌」はこのように、糸状真菌と酵母との両方を含む。「糸状真菌」は、本明細書では、下位区分エウミコティナ及びオオミコタ(Oomycota)の全ての糸状形態を含む真核微生物であると定義される(Hawksworthら、Ainsworth and Brisby’s Dictionary of the Fungi、第7版、Commonwealth Mycological Institute,Kew,Surreyにおいて定義された、1983)。糸状真菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合多糖類からなる菌糸体壁によって特徴付けられる。栄養増殖は菌糸伸長により、炭素代謝は絶対好気性である。本発明における使用のための好熱性真菌は、少なくとも45℃、時々は更に56℃超の温度にて増殖する真菌である。
【0025】
用語「発酵」又は「発酵プロセス」は、本明細書では、酸素の存在又は不在下で起こる任意の(大規模な)微生物プロセスとして、工業において使用されるその一般的な定義に従って広く定義され、少なくとも1種の微生物の培養を含み、それにより、好ましくは、微生物は、1つ又は複数の有機基質を消費することを犠牲にして有用な製品を製造する。そのため、用語「発酵」は、本明細書では、それが、微生物が酸素の不在下で炭水化物からエネルギーを抽出する限定された微生物プロセスであると定義されるよりも厳密な、科学的定義よりもはるかにより広い定義を有する。同様に、用語「発酵製品」は、本明細書では、酸素の存在下又は不在下で起こる(大規模な)微生物プロセスにおいて製造される任意の有用な製品であると広く定義される。
【0026】
用語「TOTOX値」、総酸化価(total oxidation value)の略語は、そこに脂肪が暴露された酸化負荷を示すと理解される。TOTOX値は、そこに脂肪が暴露された総酸化負荷を説明するのに使用される、大きさのない数である。この値は、アニシジン価の和及び過酸化価の2倍として算出される。アニシジン価(AnV)は、脂肪の酸化の間のアルデヒド生成の測定値である。この値は、特定の条件下でp-アニシジン(p-メトキシアニリンの慣用名)と反応した脂肪の吸収を表す。これは、脂肪の酸化履歴を特徴付けるのに使用され、その理由は、アルデヒドが、通常、不飽和脂肪酸の酸化を起源とするからである。過酸化価(PV)は、脂肪又は油の酸化の程度の測定値である。この値は、特定の条件下でヨウ化カリウムからヨウ素を解放する、酸化物質、通常はヒドロペルオキシドの品質を示す。PVは、脂肪1kg当たりの活性酸素のミリ当量で表される(Beare-Rogersら、Lexicon of of lipid nutrition(IUPAC Technical Report)、2009、DOI:10.1351/pac200173040685)。80未満のTOTOX値を有する油は、良好な芳香の評価を有すると説明された(JP2014054248)。
【発明の詳細な説明】
【0027】
発明者らは、その間に単純な炭水化物及び非有機窒素源が高栄養価バイオマスへと変換される発酵プロセスを通して製造された、リゾムコル・プシルス株等の好熱性糸状真菌に由来するバイオマスが、圧縮され得(「ケーク」と称される)、最終的に乾燥されて粉末を得ることを見出した。このようにして得られた真菌バイオマスは、その供給源、例えばRh.プシルスが、EU内でヒトの消費の履歴がない場合、欧州連合(EU)内で、新規な食物と考えられる。例えばケーク形態及び粉末形態にある真菌バイオマスは、異なる使用レベルにおける多様な食物カテゴリーにおける材料として使用されうる。そのテクスチャのおかげで、本発明の真菌バイオマスは、多くの食品のための多目的材料となる。ケーク形態にある真菌バイオマスは、肉代用品及びハイブリッド肉製品用の価値ある材料を表す。その粉末形態にある真菌バイオマスは、他の材料と容易に混合されて、その粉様テクスチャのおかげで、パン又はスープ等のベーカリー製品を製造することができる。また、本発明の真菌バイオマスは、動物性及び植物性起源の飼料への代替品である、又はその栄養価を改善する、飼料材料として使用されうる。
【0028】
加えて、発明者らは、本発明の真菌バイオマスが、多数の価値ある栄養成分を含有し、したがってこれらの成分のための食事源として使用されうることを見出した。
【0029】
第1の態様では、本発明は、したがって、食品、飲料、ペット用食品及び飼料製品のうちの1種中に、a)タンパク質及び/又はアミノ酸、b)脂質、c)食物繊維、d)コリン及び/又はビタミン並びにe)ミネラルのうちの少なくとも1種の供給源として好熱性真菌のバイオマスを含む組成物の使用に関する。好ましくは、該組成物は、食品、飲料、ペット用食品及び飼料製品のうちの1種中に、a)タンパク質及び/又はアミノ酸、b)脂質、c)食物繊維、d)コリン及び/又はビタミン並びにe)ミネラルのうちの少なくとも1種の食事源として使用される。用語「の食事源」は、本明細書で用いられるとき、特定の食事成分を含む製品の消費を指す。
【0030】
本発明による使用のための好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、好ましくは、以下の方法のうちの1つにおいて得られる又は得られうる。
【0031】
一実施形態では、好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、a)培地中の液内培養において好熱性真菌の株を増殖させるステップと、b)篩い、ろ過及びデカンテーションのうちの少なくとも1つによって培地から真菌バイオマスを回収してバイオマスケークを生成するステップであって、これにより、好ましくは、篩い済み、ろ過済み又はデカンティング済みのバイオマスケークの乾物濃度が少なくとも12(w/v)%である、ステップと、c)任意選択で、残っている水を圧出することによってバイオマスケークを更に乾燥させて、少なくとも20%の乾物濃度を有するバイオマスケークを得るステップと、を含む方法において得られる又は得られうるケークである。
【0032】
別の実施形態では、好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、上のb)又はc)において得られたバイオマスケークを粉砕し、温かい空気によって、凍結乾燥によって、好ましくは真空下で、又はフラッシュ乾燥によって、好ましくは7(w/w)%以下の水分含量までのバイオマス粉末へ更に乾燥させる、ステップd)を更に含む、上に規定した方法において得られる又は得られうる乾燥粉末である。より好ましくは、水分は5(w/w)%以下である。
【0033】
培地中の液内培養において好熱性真菌を増殖させるための方法、条件及び培地は、WO2018/029353又は米国特許第2019174809号に詳細に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。好ましくは、該方法は、a)発酵性炭素に富む飼料、窒素源、及び真菌の増殖のために必要な更なる成分を含有する培地中で好熱性真菌を増殖させるステップを含む。好ましくは、ステップa)において、真菌は液内培養において増殖させる。好ましくは、ステップa)において、真菌は無殺菌条件下で増殖させる。好ましくは、ステップa)において、真菌は、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54又は55℃又はそれ以上の温度にて増殖させる。好ましくは、ステップa)において、真菌は、5.0、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6又は2.5未満のpHにおいて増殖させる。
【0034】
本発明の方法の一実施形態では、好熱性真菌の株は、好ましくは、化学的に規定された培地中で増殖させる又は培養させる。用語「化学的に規定された」は、化学的に規定された構成成分から本質的になる発酵培地、すなわち培地中で使用される本質的に全ての化学物質の化学的組成が既知である発酵培地について用いられると理解される。
【0035】
そのため、一実施形態では、好熱性真菌の株は、炭素源、窒素源、及び真菌の増殖のために必要な更なる成分からなる、化学的に規定された培地中で培養される。
【0036】
炭素源は、好ましくは、炭水化物及び有機酸のうちの少なくとも1種を含む又はそれらからなる。好ましくは、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、フコース、ガラクトース及びマンノースのうちの少なくとも1種の供給源を含み、それらの中で、グルコース及びフルクトースが好ましく、グルコースが最も好ましい。例えばグルコース及び/又はフルクトースの供給源を含む好適な炭水化物炭素源には、例えばマルトース、イソマルトース、マルトデキストリン、デンプン、グルコースの各シロップ(例えばHCFS等のコーンシロップ)、転化された(ショ糖又は糖ビーツ)スクロース、粗デンプン、液化デンプン(例えばアルファアミラーゼを使用して液化することによる、例えばLiquozyme(Novozymes)又はVeretase(BASF)、イヌリン、ラフィノース、メリビオース及びスタキオースが挙げられる。炭素源中に含まれうる有機酸には、乳酸、酢酸、ガラクトツロン酸、グルコン酸が挙げられる。
【0037】
本発明の方法において使用されることになる化学的に規定された培地中の窒素源は、尿酸、アンモニア、硝酸、アンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム、並びにアミノ酸、例えばグルタメート及びリジンのうちの少なくとも1種を好ましくは含む又はそれらからなる。より好ましくは、窒素源は、アンモニア、硫酸アンモニウム及びリン酸アンモニウムからなる群から選択される。最も好ましくは、窒素源はアンモニアである。
【0038】
真菌の増殖のために必要な更なる成分には、例えば酵素又は酵素補助因子の構成成分である触媒的元素が挙げられる。これらの元素には、例えばマグネシウム、鉄、銅、カルシウム、マンガン、亜鉛、コバルト、モリブデン、セレン及びボリウムが挙げられる。前述した構造的触媒的元素に加えて、カチオン、例えばカリウム及び/又はナトリウムが、対イオンとして機能し、細胞内pH及びモル浸透圧濃度を制御するために、好ましくは存在する。本発明の化学的に規定された培地のための好適なミネラル組成は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第20140342396A1号に記載されている。
【0039】
真菌を増殖させるための(化学的に規定された)培地中に任意選択で含まれうる化合物は、キレート剤、例えばクエン酸、並びに緩衝剤、例えばリン酸一カリウム及びリン酸二カリウム、炭酸カルシウムなど、並びにビタミンである。緩衝剤は、好ましくは、外部pH制御なしの方法を取り扱うときにのみ添加される。ビタミンは、好熱性真菌の正常な代謝のために必要でありうる構造的に関連しない有機化合物の群を指す。真菌は、それらが要請するビタミンを合成するそれらの能力又は不能において広く多様であることが知られる。ビタミンは、前記ビタミンを合成することが不可能な真菌株の発酵培地に添加される必要があるのみである。典型的には、より低い真菌のための化学的に規定された発酵培地、例えばケカビ目(Mucorales)が、1種又は複数のビタミン(複数可)での補給を必要としうる。より高い真菌は、ビタミンの要請を有していないことが多い。ビタミンは、チアミン、リボフラビン、ピリドキサール、ニコチン酸又はニコチンアミド、パントテン酸、シアノコバラミン、葉酸、ビオチン、リポ酸、プリン、ピリミジン、イノシトール、コリン及びヘミンからなる群から選択される。好ましい実施形態では、しかしながら、本発明の方法において増殖させる好熱性真菌は、化学的に規定された培地中にビタミンの存在を一切必要としない株である。事実、発明者らは、属リゾムコルの種、例えば株リゾムコル・プシルスCBS143028、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)CBS143029及びリゾプス菌種CBS143160が、ミネラル培地上で増殖するときでさえ、ビタミンを一切必要としないことを見出した。
【0040】
更に好ましい実施形態では、真菌は、ステップa)において、本明細書で規定した培地中、消泡作用剤の存在下で増殖させる。消泡作用剤は、一般に、当技術分野で周知である(例えば、https://en.wikipedia.org/wiki/Defoamerを参照されたい)。消泡作用剤は、工業的方法の液体中で泡の形成を低減し、妨害する化学添加剤であり、例えば発酵ブロスである。厳密に言えば、消泡剤は、現存する泡を除去し、抗泡剤が更なる泡の形成を防止するのであるが、用語「消泡作用剤」、「抗泡作用剤」及び「消泡剤」は、本明細書では互換的に用いられる。本発明の発酵方法における使用に好適である消泡作用剤は、好ましくは、油系消泡剤、ポリアルキレングリコール系消泡剤及びケイ素系消泡剤のうちの少なくとも1種である。それらの例には、それぞれ、植物油又は鉱油、並びに動物脂、ポリプロピレングリコール(PPG)又はポリエチレングリコール(PEG)及びAntifoam C100K(Basildon Chem.Comp.Ltd.、アビングドン、オックスフォード、イギリス)が挙げられる。消泡作用剤は、好ましくは、食物等級の消泡作用剤である。好ましい食物等級の消泡剤は、クリーンラベルの消泡作用剤である。本発明の方法における使用のために好ましい消泡作用剤は、植物油、好ましくは食用植物油を含む又はそれからなる。本発明の方法における消泡作用剤としての使用のための好ましい(食用)植物油は、キャノーラ(菜種)油、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、亜麻仁油、ピーナツ油、紅花油、ダイズマメ油、ヒマワリ油及び高オレイン酸ヒマワリ油からなる群から選択される油である。
【0041】
一実施形態では、本発明による好熱性真菌のバイオマスを含む組成物を製造するために増殖させる好熱性真菌は、好ましくは糸状真菌である。本発明における使用のために好ましい好熱性真菌は、ラサムソニア、タラロミケス、ペニシリウム、アクレモニウム、フミコラ、パエキロミケス、カエトミウム、リゾムコル、リゾプス、テルモミケス、ミケリオフトラ、テルモアスクス、ティエラウィア、ムコル、スティベラ、メラノカルプス、マルブランケア、ダクティロミケス、カナリオミケス、スキタリディウム、ミリオコックム、コリナスクス及びコオネメリアからなる群から選択される真菌属の株である。より好ましくは、好熱性真菌は、ラサムソニア・コムポスティコラ(Rasamsonia composticola)、タラロミケス・エメルソニイ(Talaromyces emersonii)、リゾムコル・ミエヘイ、リゾムコル・プシルス、テルモムコル・インディカ-セウダティカエ(Thermomucor indica-seudaticae)、ティエラウィア・テリコラ(Thielavia terricola)、ティエラウィア・テレストリス(Thielavia terrestris)、テルモアスクス・テルモフィルス(Thermoascus thermophilus)からなる群から選択される真菌種の株であり、それらの中で、株ラサムソニア・コムポスティコラCBS141695(2016年7月29日に寄託)、テルモムコル・インディカエ-セウダティカエCBS143027(2017年7月21日に寄託)、リゾムコル・ミエヘイCBS143029(2017年7月に21日に寄託)、リゾムコル・プシルスCBS143028(2017年7月に21日に寄託)、テルモアスクス・テルモフィルスCBS528.71及びティエラウィア・テレストリスCBS546.86が好ましい。
【0042】
好ましい実施形態では、好熱性真菌は綱ジゴミケテ(Zygomycete)の株であり、それらの中で、科ムコラケアエ(Mucoraceae)が好ましい。より好ましくは、好熱性真菌は、属ムコル(Mucor)、リゾムコル及びリゾプスから選択される属の株であり、それらの中で、属リゾムコルが好ましい。最も好ましくは、好熱性真菌は、種R・エンドフィティクス(R.endophyticus)、R・ミエヘイ、R・パキスタニクス(R.pakistanicus)、R・タウリクス(R.tauricus)、R・ワリアビリス(R.variabilis)及びR・プシルスから選択される種の株であり、それらの中で、種リゾムコル・プシルスが好ましい。本発明における使用のための前述した好熱性真菌の好ましい株には、ブタペスト条約の規則の下、ウェステルダイク菌類多様性研究所、Uppsalalaan8、3584CTユトレヒト、オランダ(以前はCentraalbureau voor Schimmelcultures、CBSと称されていた)に寄託された株リゾムコル・プシルスCBS143028、リゾムコル・メイヘイCBS143029及びリゾプス菌種CBS143160(2017年8月11日に寄託)が挙げられ、それらの中で、リゾムコル・プシルスCBS143028が最も好ましい。
【0043】
一実施形態では、本発明の方法はバッチ方法であり、より好ましくは、方法の少なくともステップa)はバッチ方法として実施される。好ましい実施形態では、しかしながら、本発明の方法、又は好ましくは方法の少なくともステップa)は、供給バッチ方法、繰り返される供給バッチ方法(ここで、繰り返しで、発酵ブロスの一部が収穫される)又は連続方法であるように実施される。一実施形態では、ステップa)における方法は、炭素限定方法であり、好ましくは、炭素源は、連続的に供給することによって又は間欠的供給によって、増殖限界率において供給される。
【0044】
一実施形態では、発酵に続いて、真菌バイオマスは、EP20161554.9との同時係属出願に記載されている通り、好ましくは少なくとも60℃の温度にて、低温殺菌されうる。好ましくは、バイオマスは、少なくとも70℃の温度にて最大45分間低温殺菌される。好ましい実施形態では、低温殺菌は、パイプヒーター、加熱ブロック又はスチームインフュージョン要素、より好ましくはスチームインフュージョン要素を好ましくは備えたインライン加熱ユニット中で実施され、ここで、インライン加熱ユニットは、任意選択で静的ミキサー等の混合要素を備える。好ましくは、低温殺菌は、最大で5分間、好ましくは、約0.5~約3分間、より好ましくは約1~2分間実施される。好ましくは、低温殺菌は、少なくとも74℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも86℃の温度にて実施される。好ましくは、低温殺菌バイオマスの微生物カウントは、低温殺菌前の供給されたバイオマスと比べて、少なくとも7、好ましくは少なくとも11、より好ましくは少なくとも12のlog10低下を有する。好ましい実施形態では、バイオマスは、約86℃の温度にて約1~2分の滞留時間を有するインライン加熱ユニットを通って流れ、ここで、バイオマスのpHは、好ましくは最大で4.5、より好ましくは最大で3.5である。
【0045】
一実施形態では、抗酸化剤がバイオマスに添加される。好ましくは、抗酸化剤は、バイオマスの低温殺菌前に添加され、例えばEP20161606.7との同時係属出願に記載されている。好ましくは、抗酸化剤は、フリーラジカル捕捉剤、例えばカルノソール;カルノシン酸;ローズマリー抽出物;フラバン-3-オール、例えばエピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、没食子酸エピカテキン;フラボノイド、例えばケンフェロール、ケルセチン若しくはミリセチン;緑茶抽出物;ブチル化抗酸化剤、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール若しくはtert-ブチルヒドロキノン(TBHQ);没食子酸;没食子酸エステル、例えば没食子酸プロピル;カルボン;カフェイン酸エステル、例えばカフェイン酸メチル、カフェイン酸エチル、カフェイン酸フェネチルエステル(CAPE)若しくはロズマリン酸;スペアミント抽出物;ビタミンE、例えばトコフェロール若しくはトコトリエノール;ビタミンA、例えばレチノール、レチノール酸若しくはレチナール;プロビタミンA、例えばカロテノイド、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン若しくはエキネノン;キノロン系抗酸化剤、例えばエトキシキン;又は海草抽出物;又は酸素還元剤、例えばアスコルビン酸若しくはアセロラ抽出物;又はキレート剤、例えばクエン酸若しくはEDTAのうちの少なくとも1種である。好ましくは、得られたバイオマス組成物は、50未満、好ましくは35未満、より好ましくは20未満のTOTOX値を有し、ここで、TOTOX値は、好ましくは、少なくとも6週の間、50未満、より好ましくは40未満のまま残る。
【0046】
次に、真菌バイオマスを、好ましくは発酵培地から分離させる。そのため、一実施形態では、好熱性真菌のバイオマスを含む組成物を調製する方法は、好ましくはb)篩い、ろ過及びデカンテーションのうちの少なくとも1つによる、培地からの(ステップa)において増殖した)真菌バイオマスの回収のステップを更に含む。より好ましくは、バイオマスは、回転ドラムろ過、フィルタープレス、ベルトフィルター、デカンタ遠心分離及び篩いのうちの少なくとも1つによって培地から回収される。好ましくは、バイオマスは、好ましくは100、200、300、400又は500μmを有する、又は細孔の直径0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5又は2mmを有する篩又はスクリーン上で篩うことによって回収される。バイオマスは、篩又はスクリーン上で、連続的な少なくとも2、3又は4ラウンドの篩いによって回収され得、これにより、より小さい直径の細孔が、篩いのそれぞれの続くラウンドにおいて適用される。例えば、2mmの孔直径を用いる第1のラウンドの篩い、1、0.5及び/又は0.1mmのそれに続くラウンドである。任意選択で、篩い済み、ろ過済み又はデカンティング済みのバイオマス(ケーク)の乾物濃度は、水の更なる除去、すなわち乾燥によって更に上昇させる。バイオマスケークは、例えば空気圧を用いた圧縮空気、及び/又は例えばベルトプレス若しくはスクリュープレスを用いた機械的圧搾を用いて、例えば、残っている水(のうちのほとんど)を圧出することによって更に乾燥されうる。このようにして得られたバイオマスケークは、好ましくは、少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45又は5(w/w)%の乾物濃度を有する。
【0047】
別の実施形態では、バイオマスをケークへと圧搾して、任意選択でケークを粉砕し又は押出して、例えば乾燥、好ましくは空気乾燥を可能にすることができる。好ましくは、圧搾された菌糸体バイオマスケークの粒径は、物理的手段によって低減されて、圧搾されたケークの(より効率的な)乾燥を可能にする。これは、任意選択で、当技術分野でそれ自体が既知である押出機を用いて、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8又は2mmの直径を有する穴を通した菌糸体ケークの押出によって行われうる。別法では、ケークの粒径は、粉砕と篩いとの組合せによって低減されうる。粉砕のステップとして、当技術分野でそれ自体が既知である任意のタイプのミル、例えばナイフミル又はハンマーミルなどが使用されうる。圧搾し、粉砕したケークの均質な粒径を得るために、粉砕後に依然として存在するより大きい粒子は、0.5、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.5又は3mmの篩にある細孔直径サイズでの篩いによって、乾燥前に除去しうる。得られた粉砕済みケークは、好ましくは、乾燥前に1mmから3mmの間の粒径を有すると考えられる。押出又は粉砕済みケークの乾燥は、好ましくは、30~70℃の温度にて行われる。次いで、熱い空気が、ベルト乾燥機又は流動床乾燥機で穏やかでコスト効率良くケークを乾燥させる。高温での蒸気乾燥(例えば>80℃)は好ましくは回避され、その理由は、それが、メイラード反応によって、アミノ酸の変性及びベーキング及び更には化学的分解により、タンパク質の消化性に負の影響を及ぼすおそれがあるためである。別法では、押出又は粉砕済みの粉末は、凍結乾燥プロセスにおいて又はフラッシュ乾燥によって、真空下で乾燥される。このようにして得られた乾燥粉末の形態にあるバイオマスは、好ましくは5、4、3、2又は1(w/w)%以下の水分を有する。
【0048】
好熱性真菌バイオマスのケーク形態は、-18℃にて凍結され貯蔵されてもよく、その一方で粉末形態は室温にて貯蔵されうる。
【0049】
タンパク質及びアミノ酸
一実施形態では、本発明の好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、タンパク質の(食事)源として使用される。好ましくは、タンパク質は、アスパラギン酸、アスパラギン、スレオニン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、シトルリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、システイン、メチオニン及びトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸を含む。
【0050】
一実施形態では、本発明の好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、アミノ酸の(食事)源として使用される。好ましい実施形態では、アミノ酸は、アスパラギン酸、アスパラギン、スレオニン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、シトルリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、システイン、メチオニン及びトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0051】
タンパク質は、窒素の主な供給源を表し、ヒトの食事における不可欠なアミノ酸である。両方が、組織増殖及び維持のために基本的である[3]。ヒトの食事における主なタンパク質源は、動物起源(肉、魚、卵、酪農製品)又は植物性、例えばマメ科野菜、ナッツ、穀物性製品である。しかしながら、動物起源のタンパク質が、アミノ酸組成の点で最も高品質なものの中にある。全てのアミノ酸がヒト栄養素において重要であるが、いくつかは、ヒトによって新規に生成され得ず、したがって、食事を通してのみ導入されうる。これらのアミノ酸は、必須アミノ酸であると定義される。ヒトにとって必須であるアミノ酸は、スレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、メチオニン及びトリプトファンである[3]。
【0052】
一実施形態では、本発明の好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、必須アミノ酸を含むタンパク質の(食事)源として使用される。好ましくは、必須アミノ酸は、スレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、メチオニン及びトリプトファンからなる群から選択される。
【0053】
一実施形態では、本発明の好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、必須アミノ酸の(食事)源として使用される。好ましくは、必須アミノ酸は、スレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、メチオニン及びトリプトファンからなる群から選択される。より好ましくは、本発明の好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、全ての必須アミノ酸の(食事)源として使用される。
【0054】
リンゴ酸シトルリンは、スポーツ愛好家が運動性能及び筋肉回復を改善させるための製品として入手可能であり広く使用されている。L-シトルリンの補給は、血管機能を改善することを示し、したがって、運動後、運動性能を改善させ、筋肉疲労を低減させる[4]。その高いタンパク質含有量及び全ての必須アミノ酸の存在のほかに、本発明の真菌バイオマスは、その高いシトルリン含有量のおかげで、スポーツ愛好家用の食物のための良好な材料を表す。一実施形態では、好熱性真菌由来のバイオマスを含む組成物は、シトルリンの(食事)源として使用される。好ましくは、該組成物は、スポーツ愛好家用の食物、食物サプリメント又は飲料中で使用される。
【0055】
本発明の真菌バイオマスの高いタンパク質含有量は、それを、ベジタリアン及びビーガン食品中で動物タンパク質の良好な代替品とする。一実施形態では、したがって、好熱性真菌由来バイオマスは、ベジタリアン又はビーガン食品中で、本明細書で定義しているタンパク質、アミノ酸及び必須アミノ酸のうちの少なくとも1種の(食事)源として使用される。
【0056】
繊維
一実施形態では、本発明の好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、食物繊維の(食事)源として使用される。
【0057】
食物繊維は、ヒトの腸の機能において重要な役割を果たす非消化性炭水化物であると定義される。正常な便通のための、成人(両方のジェンダー)にとっての食物繊維の適切摂取量(Adequate Intake、AI)は、EFSA DRVに従って25g/日と設定された。成人における25g/日よりも高い食物繊維摂取量は、冠動脈疾患のリスク、2型糖尿病のリスクを低下させて体重維持を助けることが示された。更に、食物繊維の多い毎日の摂取量は、結腸直腸がんのより低いリスクに関することが示された[1]。食物繊維は、腸の細菌叢の微生物組成に重要な役割を有する、大腸に生息する細菌によって発酵される。食物繊維の微生物発酵は、ヒトの腸によって吸収されうる多くの他の微量栄養素、例えばビタミン及び短鎖脂肪酸(SCFA)を供給することができる[2]。ヒトの食事中の食物繊維の主な供給源は、全粒穀物シリアル、野菜、果実及びジャガイモである。
【0058】
本発明の好熱性真菌のバイオマスは、比較的高い含有量の食物繊維を有する(10.6gの食物繊維/100g又は37%の乾物)。本発明の真菌バイオマスは、したがって、食品、飲料、ペット用食品又は飼料製品中での使用のための食物繊維の優れた源である。
【0059】
特に、高い食物繊維含有量は、食物繊維を、一般に繊維に乏しい食物に添加することを可能にする。その1つの例は、本発明の真菌バイオマスで作製された肉代用品であり、好熱性真菌由来バイオマスのタンパク質が、肉製品中に含有されている動物タンパク質を置き換えることができ、同時に、真菌バイオマスが、肉代用品を、肉製品からは基本的に不在である食物繊維で富化させる。
【0060】
一実施形態では、本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、したがって、肉代用品又はハイブリッド肉製品である食品中の食物繊維源として使用される。そのテクスチャに起因して、好熱性真菌由来バイオマスのケーク形態は、肉代用品及びハイブリッド肉製品用の材料として特に好適である。
【0061】
同様に、食物繊維及びタンパク質は、ペット用食物中でも必須の微量栄養素である。主なコンパニオン動物、イヌ及びネコは、食物繊維及びタンパク質について、異なる要請を有する。更に、ペットの食事中に必要とされる必須アミノ酸は、ヒトの食事中に必要とされるものとは異なる。最近、ペット用食物のためのタンパク質源は、動物起源の材料(家きん、ウシ、ブタ、魚、卵)又は植物性材料、例えばトウモロコシ、コメ、マメ及びダイズによって表される。加えて、食物繊維は、ペット及び人間の大便の質、体重管理及び満腹にとって重要である[5]。
【0062】
一実施形態では、したがって、本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、食品の繊維含有量を富化するために、食物繊維源として使用される。食物繊維で富化されることになる食品は、i)肉代用品、ii)肉材料と非肉材料とを含有するハイブリッド食品、iii)炭水化物に富む食品、iv)精製された粉で作製されたベーカリー製品及びv)ペット用食物から選択される食品でありうる。より特定すると、食物繊維で富化されることになる食品は、ピザ及びピザ様料理、セーボリーパイ及びタルト、すぐ食べられるスープ、パスタ及び類似の製品、ベーキング製品用のプレミックス(乾燥)、ビスケット、ケーキ、パンケーキ、パン及びロール、ピザベース(調理済み)、グルテンフリーのパン、ポリッジ(乾燥/すぐ食べられる)、シリアルバー、シリアルフレーク及び類似品、ミューズリー及び朝食用混合シリアル、スポーツ愛好家用の食物、体重減のための食物、酪農アイスクリーム及び類似品、発酵乳製品、チョコレート及びチョコレート製品から選択される食品でありうる。
【0063】
一実施形態では、したがって、本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、好ましくは体重管理又は体重減の必要のあるヒト又はペットに、満腹感をもたらすための、ヒト又はペット用食品中の食物繊維源として使用される。
【0064】
微量栄養素
本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、高含有量のコリンを有する(表8)。コリンはヒトの体によって新規に合成されうるが、コリンは依然としてヒトの食事の基本的な成分を表し、その理由は、新規に生成された量が、成人(両方のジェンダー)にとって400mg/日である適切な摂取量に常に十分とは限らないためである[9]。対照的に、コリンは、イヌ及びネコにとって必須のビタミンである。成ネコにとって、コリンの、必要とされる最小の栄養レベルは60mg/kg代謝体重(BW)であり、その一方で成イヌにとっては45mg/kg代謝BWである[11]。したがって、本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、ヒト及び動物の栄養のための良好なコリン源であり、例えばビーガン食品で、一般に良好なコリン源である卵、酪農品及び肉等の動物性製品への代替において、コリン源として使用されうる。
【0065】
一実施形態では、本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、ビーガン又はベジタリアン食品中に、又はペット用食物、好ましくはネコ又はイヌ用食物中に、コリンの(食事)源として使用される。
【0066】
コリンのほかに、本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、ヒト及び/又は動物にとって必須である他のビタミン、例えばレチノール(ビタミンA)、ビタミンE、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)及び葉酸(ビタミンB9/B11)を含有する(表8を参照されたい)。
【0067】
ビタミンEは、抗酸化活性を有することが知られる[13]。ビタミンB2はまた、リボフラビンとしても知られ、ヒトの体内の多様な反応に関与し[14]、その一方でビタミンB6は、アミノ酸代謝、一炭素代謝、グリコーゲン分解及び糖新生及びヘム合成等の異なる代謝経路に重要な役割を果たす[15]。
【0068】
一実施形態では、したがって、本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、レチノール(ビタミンA)、ビタミンE、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)及び葉酸のうちの少なくとも1種の(食事)源として使用される。
【0069】
ビタミンAは、ヒトと動物との両方において、目の光変換の機序において重要な役割を果たす[12]。ビタミンAは、特に、ネコにとって必須のビタミンである[11]。したがって、好ましい実施形態では、本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、ネコ用食物において、レチノールの(食事)源として使用される。
【0070】
ミネラル
本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、高含有量の異なるミネラルを有する(表10)。これは、発酵プロセスの間に添加されるミネラルに起因し、真菌の増殖のために必要とされる。このことは、リゾムコル・プシルスバイオマスのミネラル組成が、異なる食物又は飼料製品中のその用途に基づいて修正されうる及び/又は標準化されうることを意味する。
【0071】
一実施形態では、本発明の好熱性真菌のバイオマスを含む組成物は、カルシウム、マグネシウム、リン、カリウム、亜鉛、鉄、銅及びマンガンからなる群から選択されるミネラルの(食事)源として使用される。
【0072】
本発明の真菌バイオマス中の鉄(Fe)含有率は特に高く、EFSA DRVに従った摂取量評価についての限定的要因を表していた。本発明の真菌バイオマスの発酵において使用された鉄の投与量は、14mg/kgの最終濃度に達するように更に低減されなければならなかった(表10)。
【0073】
本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、そのため、肉代用品が作られる他の植物性製品、例えばダイズの代替において貴重な鉄源であると考えうる(表11を参照されたい)。ダイズ製品は、通常、その高い鉄含有量のおかげで、ベジタリアン又はビーガンの食事中に導入される。しかしながら、ダイズは、アレルギーの場合に、全ての人の食事中に導入されうるわけではない。ダイズは、実際に、主な食物アレルゲンの1つであると考えられている。本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、ベジタリアン及びビーガンの食事中の鉄源としてのダイズを置き換えるのに使用されうる。したがって、一実施形態では、好熱性真菌のバイオマスは、鉄源として使用される。好ましい実施形態では、好熱性真菌のバイオマスは、鉄源を置き換えるのに使用される。より好ましい実施形態では、好熱性真菌のバイオマスは、鉄源としてのダイズを置き換えるのに使用され、より好ましくは、好熱性真菌のバイオマスは、肉代用品中の鉄源としてのダイズを置き換えるのに使用される。
【0074】
脂質
本発明の好熱性真菌由来バイオマスは、乾物ベースで約8(w/w)%の脂肪を含有し、そのうち約16~22(w/w)%は飽和脂肪酸からなり、約50~56(w/w)%はモノ不飽和脂肪酸(ほとんどがオレイン酸)からなり、約27~28(w/w)%はポリ不飽和脂肪酸(ほとんどがリノール酸)からなる。一実施形態では、したがって、バイオマス好熱性真菌は、モノ不飽和脂肪酸及びポリ不飽和脂肪酸のうちの少なくとも1種の供給源として使用される。より好ましくは、バイオマス好熱性真菌は、オレイン酸及びリノール酸のうちの少なくとも1種の供給源として使用される。
【0075】
食品、飲料、ペット用食物及び動物用飼料
更なる態様では、本発明は、本発明の好熱性真菌由来バイオマスを含む、食品、飲料、ペット用食品及び飼料製品に関する。
【0076】
本明細書に記載されているケーク又は粉末のいずれかにある本発明の好熱性真菌のバイオマスは、異なる使用レベルを伴って、異なる食物カテゴリー中の材料として使用されうる。異なる食物カテゴリー中の本発明の好熱性真菌の最大使用レベル(表1)は、本発明の好熱性真菌中に含有される、主要栄養素及び微量栄養素のための欧州食品安全機関(EFSA)食事摂取基準(DRV)に基づき、更に異なる欧州個体群の背景食事に基づく摂取量評価に関して、設定されてきた。
【0077】
一実施形態では、好熱性真菌由来バイオマスは、食品及び飲料のうちの少なくとも1種の中に、欧州食品安全機関(EFSA)食事摂取基準(DRV)に基づいて、好熱性真菌由来バイオマスについての食物の最大使用レベル未満又は等しいレベルにおいて組み入れられる。
【0078】
したがって、好熱性真菌由来バイオマスは、食品、飲料、ペット用食品及び飼料製品中に、ケーク形態又は粉末形態のいずれかにおいて、70、65、60、55、52、50、45、42、40、35、30、25又は20(w/w)%の最大レベルにおいて組み入れるのに使用される。好ましくは、食品、飲料、ペット用食品及び飼料製品は、ケーク形態又は粉末形態のいずれかにある、少なくとも1、2、5、10又は15(w/w)%の好熱性真菌由来バイオマスを含む。
【0079】
一実施形態では、好熱性真菌由来バイオマスは、肉代用品用の材料として使用され、ここで、好ましくは、肉代用品は、42(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は14(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む。そのため、一実施形態では、本発明は、42(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は13(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む肉代用品である食品に関連する。肉代用品は、好ましくは、少なくとも1、2、5、10又は15(w/w)%の、ケーク形態にある好熱性真菌由来バイオマス、又は少なくとも0.5、1、2又は5(w/w)%の、粉末形態にあるものを含む。
【0080】
一実施形態では、好熱性真菌由来バイオマスは、ハイブリッド肉製品用の材料として使用され、ここで、肉含有物の一部は、通常、植物起源のものである他のタンパク質源に置き換えられる。好ましくは、ハイブリッド肉製品は、52(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は16(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む。そのため、一実施形態では、本発明は、52(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は16(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含むハイブリッド肉製品である食品に関連する。ハイブリッド肉製品は、好ましくは、少なくとも1、2、5、10又は15(w/w)%の、ケーク形態にある好熱性真菌由来バイオマス、又は少なくとも0.3、0.6、1.5、3(w/w)%又は4.5(w/w)%の、粉末形態にあるものを含む。
【0081】
一実施形態では、好熱性真菌由来バイオマスは、ベーカリー工業における材料として使用され、例えば穀物(又はマメ科植物)粉の置き換え物として又はそれに加えて使用される。このような穀物及び/又はマメ科植物粉には、穀物粉(例えばコムギ、スペルトムギ、オオムギ、ライムギ、ホラーサンコムギ、エンマーコムギ、ヒトツブコムギ、ライコムギ(グルテンを含有する))、穀物粉(例えばエンバク、トウモロコシ、キビ、ソルガム、キノア、コメ(グルテンフリー))、マメ科植物粉(例えばヒヨコマメ粉、ダイズ粉)、及び塊茎からの粉(例えばジャガイモ粉、タピオカ粉)が挙げられるがこれらに限定されない。ベーカリー製品の例はパンであるが、好熱性真菌由来バイオマスは、他のシリアルベースの食品用の材料としても使用され得、例えばパスタ及び類似品、ベーキング製品用のプレミックス(乾燥)、ビスケット、ケーキ、パンケーキ、ポリッジ(乾燥/すぐ食べられる)、シリアルバー、シリアルフレーク、ミューズリー、パン、グルテンフリーのパン及びピザベース(調理済み)であるがこれらに限定されない。好ましくは、ベーカリー製品は、10(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを、本明細書で開示している穀物(又はマメ科植物)粉の置き換え物として又はそれに加えて含む。そのため、一実施形態では、本発明は、10(w/w)%の、好熱性真菌のバイオマスを、本明細書で開示している穀物(又はマメ科植物)粉の置き換え物として又はそれに加えて含むベーカリー製品に関連する。ベーカリー製品は、好ましくは、少なくとも1、2、5又は10(w/w)の、粉末形態にある好熱性真菌由来バイオマスを、本明細書で開示している穀物(又はマメ科植物)粉の置き換え物として又はそれに加えて含む。
【0082】
好ましくは、シリアルベースの食品は、33(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は10(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む。そのため、一実施形態では、本発明は、33(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は10(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含むシリアルベースの食品である食品に関連する。シリアルベースの食品は、好ましくは、少なくとも1、2、5、10又は15(w/w)%の、ケーク形態にある好熱性真菌由来バイオマス、又は少なくとも0.3、0.6、1.5、3又は4.5(w/w)%の、粉末形態にあるものを含む。
【0083】
一実施形態では、好熱性真菌由来バイオマスは、すぐ食べられる食事、例えばセーボリーパイ、ピザ様料理、セーボリータルト、スープ及びポリッジ中の材料として使用される。好ましくは、すぐ食べられる食事の食品は、16(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は5.3(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む。そのため、一実施形態では、本発明は、16(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は15.3(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含むすぐ食べられる食品である食品に関連する。すぐ食べられる食事の食品は、好ましくは、少なくとも1、2、5又は10(w/w)%の、ケーク形態にある好熱性真菌由来バイオマス、又は少なくとも0.5、1又は2(w/w)%の粉末形態にあるものを含む。
【0084】
一実施形態では、好熱性真菌由来バイオマスは、スープ中で、好ましくは、水、ストック野菜、肉、果実、パスタ、シーズニング、アロマ、香味剤及び安定剤のうちの1種又は複数を含むすぐ食べられるスープ中で材料として使用される。好ましくは、スープは、25(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は7.5(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む。そのため、一実施形態では、本発明は、25(w/w)%以下の、ケーク形態にある好熱性真菌のバイオマス、又は7.5(w/w)%以下の、粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、スープ、好ましくはすぐ食べられるスープである食品に関連する。スープ製品は、好ましくは、少なくとも1、2、5、10又は15(w/w)%の、ケーク形態にある好熱性真菌由来バイオマス、又は少なくとも0.5、1、2又は5(w/w)%の、粉末形態にあるものを含む。
【0085】
一実施形態では、好熱性真菌由来バイオマスは、スポーツ愛好家用の食品中の材料として使用される。スポーツ愛好家用の食品は、例えば、タンパク質源(例えばホエイタンパク質、ダイズタンパク質、マメタンパク質)、香味剤、安定剤、糖、着色剤、最終的にミネラル及びビタミンのうちの1種又は複数を含むプロテインシェイク又はプロテインバーでありうる。好ましくは、スポーツ愛好家用の食品は、70(w/w)%以下の、ケーク状態にある又は粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む。そのため、一実施形態では、本発明は、70(w/w)%以下の、ケーク状態にある又は粉末形態にある好熱性真菌のバイオマスを含む、スポーツ愛好家用の食品、好ましくはプロテインシェイク又はプロテインバーに関連する。スポーツ愛好家用の食品は、好ましくは少なくとも1、2、5、10、20又は40(w/w)%の、ケーク形態又は粉末形態のいずれかにある好熱性真菌由来バイオマスを含む。
【0086】
【表1】
【0087】
食品中でのその使用のほかに、本発明の好熱性真菌のバイオマスは、その構造(ケークと粉末との両方)及び栄養価のおかげで、ペット用食物等の飼料製品のための価値ある代替材料である。そのため、一実施形態では、好熱性真菌由来バイオマスは、ペット用食物中の材料として使用される。本明細書で用いられるとき、用語「ペット」は、家庭イヌ、ネコ、フェレット、ウサギ、ブタなどが挙げられるがこれらに限定されない家庭の又は家庭化された動物を意味する。ペット用食物は、本明細書では、ペットの1種又は複数の栄養的必要性に合う経口消費が意図された組成物を意味することが理解される。ペット用食物は、トリート、チュウ、ビスケット、グレービー、サプリメント、トッパー、及びこれらの組合せから選択されうる。ペット用食物は、栄養的にバランスがとれて完全であってもよくそうでなくてもよい。好熱性真菌のバイオマスは、ペット用食物中で使用されることになる良好な食物繊維、タンパク質及び必須アミノ酸源を表す。ペット食物中の好熱性真菌のバイオマスの量は、異なるペットの栄養的必要性に基づいて規定されうる。一部のペットは、体重管理又は体重減に起因して、それらの食事により注意を払う必要がありうる。この場合、好熱性真菌のバイオマスは、その高い食物繊維含有量のおかけで、ペットに満腹感をもたらしうる。このほかに、好熱性真菌のバイオマスは、標準的な動物性又は植物性ペット食物材料のタンパク質源代替品となりうる。そのため、一実施形態では、好熱性真菌のバイオマスは、ペット用食物中のタンパク質、アミノ酸及び必須アミノ酸の供給源として、好ましくはペット用食物中のタンパク質、アミノ酸の標準的な動物性又は植物性供給源の代替として、より好ましくはタンパク質及び/又はアミノ酸の唯一の供給源として使用される。
【0088】
一般的な定義
本文献及びその「特許請求の範囲」では、動詞「含む」及びその結合語は、単語に続く項目が含まれるが具体的に挙げられていない項目が排除されることはないことを意味する、その非限定的な意味において使用される。加えて、不定冠詞「a」又は「an」による要素への参照は、1つ及び1つだけの要素が存在することを文脈が明らかに要請していない限り、1つ超の要素が存在する可能性を排除しない。不定冠詞「a」又は「an」は、このように、通常は、「少なくとも1」を意味する。単語「約」又は「およそ」は、数値に伴って使用される(例えば約10)とき、その値が、その値の5%超又は未満の、所与の値であってもよいことを好ましくは意味する。本明細書で使用されるとき、「対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。好ましい実施形態では、対象は非ヒトである。
【0089】
本発明の文脈では、評価されることになるパラメーターの減少又は増加は、そのパラメーターに対応して少なくとも5%の値の変化を意味する。より好ましくは、その値の減少又は増加は、少なくとも10%、更により好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、又は100%の変化を意味する。この後者の場合、パラメーターと関連した検出可能な値がもはや存在しない場合がありうる。
【0090】
本文献の全般にわたって、混合物中の物質の量を表すのにパーセンテージが用いられるとき、別段の記載がない限り又は文脈から明示的に明白でない限り、重量パーセンテージが意図される。
【0091】
本発明を、いくつもの例示的実施形態に関して、上に説明してきた。いくつかの部分又は要素の修正及び代替的実践が可能であり、実施形態からの特徴は、可能な場合に組み合わせることができる。文献及び特許文献の全ての引用は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0092】
実施例1:ケーク形態又は粉末形態にあるリゾムコル・プシルスバイオマスの製造
予備培養のために、リゾムコル・プシルス株CBS143028を、KCl0.17g/L、KHPO1.3g/L、NaHPO0.4g/L、クエン酸0.5gr/L、MgSO.7aq0.7gr/L、FeSO.7aq0.03gr/L、CaCl.2aq0.035gr/L、ZnSO.7aq0.04gr/L、MnCl.4aq0.004、CuSO.5aq0.0005gr/L、CoCl.6aq0.0005gr/L、Na2B.10aq0.003gr/L、KI0.0003gr/L、NaMoO.2aq0.0005gr/L、1L当たり11gのデキストロース;1L当たり4gの(NHSO;及び1L当たり7.5gの酒石酸を含有するpH5.5での規定したミネラル培地200ml中で播種した。予備培養を、バッフルを備えた通気性ストップを備えた1Lのエルレンマイヤーフラスコ中、軌道シェーカー中200rpmにおいて46℃にて24時間インキュベートした。次いで、この予備培養を使用して、pHが3.5であり、C源として1L当たり77gのデキストロース、N源として1L当たり1.4gの(NHSOを含み、滴定薬としてNHを補充した、上記した規定ミネラル培地を含有する発酵槽に播種した。真菌を、発酵槽中、供給バッチモードにおいて、12時間の倍加時間において増殖させた。オリーブ油を継続的に供給して50ppmの濃度を維持した。
【0093】
2~5重量パーセントの範囲の乾物含有量に達した発酵ブロスを、振動篩を用いて濃縮して、最小の10(w/w)%乾物を達成した。次いで、バイオマスを抗酸化剤と混合し、低温殺菌する。
【0094】
次に、篩い済みバイオマスを油圧プレスを用いて圧縮して、約29(w/w)%の乾物含有量を有するケークとしてリゾムコル・プシルスバイオマスを得た。
【0095】
バイオマスケークの一部を更に凍結乾燥し、粉砕して(6000rpm、1mmのメッシュサイズ)、約96(w/w)%の乾物含有量を有する、粉末形態にあるリゾムコル・プシルスバイオマスを得た。
【0096】
【表2】
【0097】
実施例2:リゾムコル・プシルスバイオマスの栄養価
そのより低い水分含有量(表2)に起因して、リゾムコル・プシルスバイオマス由来の粉末は、ケーク代替品よりも約3倍高く濃縮する。リゾムコル・プシルスバイオマスの栄養価は、その高いタンパク質及び食物繊維含有量に主に起因する(表3)。
【0098】
加えて、全9種の必須アミノ酸が、リゾムコル・プシルスバイオマス中に含有されている(表4)。このことは、リゾムコル・プシルス由来バイオマスを、ヒトの食事における高栄養価のタンパク質源にする。表3中に示すリゾムコル・プシルスバイオマスのタンパク質含有量が、異なる食品のタンパク質含有量を分析するのに使用する標準方法であるケルダール方法に基づいていることを考慮に入れなければならない。ケルダール方法は、総窒素含有量に基づいており、6.25の標準変換係数を用いて、分析した食品中のタンパク質含有量を推定する。しかしながら、6.25の変換係数は、一定の食品については適当でないことがある。リゾムコル・プシルスバイオマスにおいて、変換係数は、RNA、キチン及びキトサン等の他の窒素源の存在に起因して過剰に推定されることがある。リゾムコル・プシルスバイオマスの真のタンパク質含有量は、この理由のために、アミノ酸分析を通じて、より良好に推定することができる。アミノ酸の中でも、リゾムコル・プシルスバイオマスは、特に高い含有量のシトルリンを有する(表4)。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
リゾムコル・プシルスバイオマスの乾物ベースの食物繊維含有量は、良好な食物繊維源であると知られる他の食品と比べた場合、極端に高い(表5)。リゾムコル・プシルスバイオマスの食物繊維含有量は、クォーンというブランドの肉代用品の主な供給源であるマイコプロテインの食物繊維含有量よりも高くさえある(最大で95%)。
【0102】
【表5】
【0103】
【表6】
【0104】
表6は、リゾムコル・プシルスバイオマスの多様なバッチ中のキチン及びキトサンの含有量を示す。興味深いことに、リゾムコル・プシルスバイオマスは、キチンを繊維として含有しているだけでなく、ほとんど等量の繊維キトサンを含有している。キトサンは、キチンの脱アセチル化形態であり、健康上の有益性が、動物におけるキトサンについて説明される。ヒトのキトサンがまた健康に有益であることになることも予想している[16]。リゾムコル・プシルスバイオマスのうちの9.2(w/w)%ほど多くがキトサンである。これは、マイコプロテイン源のフサリウム・ウェネナトゥムと対照的であり、Finniganらによれば、その食物繊維は3分の1のキチンと3分の2のベータ-グルカンとからなる(1,3及び1,6)[17]。
【0105】
実施例3:リゾムコル・プシルスバイオマスで作製した肉代用品の栄養価
肉代用品ハンバーガーを、28(w/w)%の、21.2%の水を含むケーク形態のリゾムコル・プシルスバイオマス、32.3%のテクスチャード植物タンパク質押出物、1.3%のテクス繊維及びチキン香味剤と共に調製した(材料を混合し、形成し、ロースティング中で185℃にて35秒にわたり、調理オーブン中で170℃にて8分間コーティングし、中心において-20℃の温度に達するまで凍結する)。ベジタリアンハンバーガーと比べ、リゾムコル・プシルスバイオマスで作製した肉代用品のタンパク質含有量(ケルダール分析に基づく)はわずかに低い(表7)。評価したリゾムコル・プシルスバイオマスを有する肉代用品が、わずか28(w/w)%のみのバイオマスケーク含有量で作製し、これが、肉代用品として使用したときのリゾムコル・プシルスバイオマスについて設定した最大レベル(42%w/w)よりもはるかに低いことを考慮しなければならない。このことは、リゾムコル・プシルスバイオマスで作製した肉代用品のタンパク質及び食物繊維含有量が、最終製品中のリゾムコル・プシルスバイオマスのパーセンテージ、及びリゾムコル・プシルスバイオマスと混合された他の材料に従って、修正しうることを意味する。
【0106】
【表7】
【0107】
実施例4:リゾムコル・プシルスバイオマスの微量栄養素含有量
リゾムコル・プシルスバイオマスを、微量栄養素について分析し、ビタミンA、E、及びB群のビタミン等の異なるビタミン、並びにコリンを含む多種の微量栄養素の供給源であることを見出した(表8を参照されたい)。
【0108】
【表8】
【0109】
リゾムコル・プシルスバイオマスは、特に高含有量のコリンを有する(表8)。コリンは、かつてはまた、ビタミンB4とも称されていた[6][7]。コリンは、細胞膜の構造的統合性において、及び人体での異なる代謝経路、例えばメチル代謝、コリン作動性神経伝達、膜貫通シグナル伝達、脂質及びコレステロールの輸送及び代謝において、重要な機能を有する[8]。コリンは、ヒトの体によって新規に合成することができる。しかしながら、コリンは、依然としてヒトの食事の基本的な成分を表し、その理由は、新規に生成される量が、成人(両方のジェンダー)で400mg/日である適切摂取量(Adequate Intake、AI))のレベルに達するのに十分でないと考えられるからである[9]。1998年に、コリンは、医学研究所(IOM)によって必須栄養素であると認められた[8][10]。表9は、リゾムコル・プシルスバイオマスのコリン含有量の、いくつかのタイプの食物のコリン含有量との比較を示す。
【0110】
リゾムコル・プシルスバイオマスケークのビタミンA含有量は、0.3mg/kgである(表8)。しかしながら、ビタミンAはまた、バイオマスの製造中に使用される材料(例えばオリーブ油又は抗酸化剤)にも由来すると考えられる。しかしながら、オリーブ油及び抗酸化剤の使用なしで作製されたリゾムコル・プシルスバイオマスのビタミンA含有量は、依然として0.1mg/kgであり、ビタミンAの少なくとも一部が発酵プロセスの間に真菌によって生成されることを示唆している。
【0111】
ビタミンEについても同じことが起こる。ビタミンEは、オリーブ油中に天然に存在し(NEVOの表によれば、およそ5.1mg/100g)、抗酸化剤中にも存在するようである。リゾムコル・プシルスバイオマスケークのビタミンE(dl-アルファトコフェロールアセテート)含有量は、2.5mg/kgである(表8)。しかしながら、リゾムコル・プシルスバイオマスケークをオリーブ油の使用なく、抗酸化剤の添加なしで生成したとき、依然として、22mg/kgのビタミンE含有量を有し、ビタミンEが、発酵プロセスの間に真菌によって産生されることを示唆している。この点で、オリーブ油及び抗酸化剤なしで作製された真菌バイオマスのビタミンE含有量が、それらの存在下で生成されたバイオマスにおけるよりも高くさえあることに留意することは興味深い。
【0112】
加えて、表8は、リゾムコル・プシルスバイオマスがまた、B群の多種のビタミン、特にビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB6(ピリドキシン)及び葉酸(ビタミンB11、フランス、ドイツ及びアメリカ等のいくつかの国においてビタミンB9とも称される)も含有していることを示している。
【0113】
【表9】
【0114】
実施例5:リゾムコル・プシルスバイオマスのミネラル含有量
表10に示すように、リゾムコル・プシルスバイオマスは、発酵プロセスの間に添加され、真菌の増殖にとって必要である異なるミネラルを多量に含有する。リゾムコル・プシルスバイオマス中の鉄(Fe)含有量は特に高く、EFSA DRVに従った摂取量評価にとって限定因子となった。リゾムコル・プシルスバイオマス製造のための鉄投与量は、14mg/kgの最終濃度に達するように低減させなければならない(表10)。加えて、亜鉛もまた16mg/kgの最終濃度に低減した(表10)。
【0115】
表11は、リゾムコル・プシルスバイオマスの鉄含有量の、多種の他のタイプの食糧の鉄含有量との比較を提示している。表11中の肉製品のうちのいくつかがより低量の鉄を含有するものの、鉄がヘム結合形態において存在しているのでその生物学的利用能がより高いことを認識しなければならない。
【0116】
【表10】
【0117】
【表11】
【0118】
実施例6:リゾムコル・プシルスバイオマスの脂質含有量
上の表3に示すように、リゾムコル・プシルスバイオマスは、乾物ベースで約9(w/w)%を含有する。より詳細な分析は、平均して22.2(w/w)%が飽和脂肪酸からなり、50.1(w/w)%がモノ不飽和脂肪酸(ほとんどがオレイン酸)からなり、27.7(w/w)がポリ不飽和脂肪酸(ほとんどがリノール酸)からなることを示した。リゾムコル・プシルスバイオマスは、このように、モノ不飽和脂肪酸及びポリ不飽和脂肪酸に比較的富む。
【0119】
参考文献
[1] EFSA Panel onDietetic Products, Nutrition, and Allergies (NDA), "Scientific Opinion onDietary Reference Values for carbohydrates and dietary fiber," 2010.
[2] P. Sharma, C.Bhandari, S. Kumar, B. Sharma, P. Bhadwal and N. Agnihotri, "Chapter 11 -Dietary Fibers: A Way to a Healthy Microbiome," in Diet, Microbiome andHealth, Handbook of Food Bioengineering, 2018, pp. 299-345.
[3] EFSA Panel onDietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA), "Scientific Opinion onDietary Reference Values for protein," 2012.
[4] T. Suzuki, M.Morita, Y. Kobayashi and A. Kamimura, "Oral L-citrulline supplementationenhances cycling time trial performance in healthy trained men: Double-blindrandomized placebo-controlled 2-way crossover study.," Journal of theInternational Society of Sports Nutrition, vol. 13, no. 6, 2016.
[5] FEDIAF(European Pet Food Industry), "Nutritional needs for cats and dogs,"2018.
[6] T. Navarra, TheEncyclopedia of Vitamins, Minerals, and Supplements., Infobase Publishing,2004.
[7] F. Macdonaldand R. L. Lundblad, Handbook of Biochemistry and Molecular Biology, Fourthedition, CRC Press, 2010.
[8] Institute ofMedicine (US) Standing Committee on the Scientific Evaluation of DietaryReference Intakes and its Panel on Folate, Other B Vitamins anch Choline,"Dietary Reference Intakes for Thiamin, Riboflavin, Niacin, Vitamin B6,Folate, Vitamin B12, Pantothenic Acid, Biotin, and Choline," 1998.
[9] EFSA Panel onDietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA), "Dietary ReferenceValues for choline," 2016.
[10] S. H. Zeiseland K. A. Da Costa, "Choline: An Essential Nutrient for PublicHealth," Nutrition Reviews, vol. 67, pp. 615-623, 2009.
[11] FEDIAF(European Pet Food Industry), "Nutritional Guidelines For Complete andComplementary Pet Food for Cats and Dogs," 2018.
[12] EFSA Panel onDietetic Products, Nutrition, and Allergies (NDA), "Scientific Opinion onDietary Reference Values for vitamin A," 2015.
[13] EFSA Panel onDietetic Products, Nutrition, and Allergies (NDA), "Scientific Opinion onDietary Reference Values for vitamin E as α-tocopherol,"2015.
[14] EFSA Panel onDietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA), "Dietary ReferenceValues for riboflavin," 2017.
[15] EFSA Panel onDietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA), "Dietary ReferenceValues for vitamin B6," 2016.
【国際調査報告】