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特表2023-530937E3-リガーゼ系の共動員を介した標的化された異常なα-シヌクレイン種ならびに誘導されたユビキチン化およびプロテアソームクリアランス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】E3-リガーゼ系の共動員を介した標的化された異常なα-シヌクレイン種ならびに誘導されたユビキチン化およびプロテアソームクリアランス
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20230712BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230712BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230712BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230712BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230712BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20230712BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C07D401/04
A61K47/60
A61P25/16
A61P25/28
A61K47/54
C07D417/14
C07D401/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577100
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 US2021037551
(87)【国際公開番号】W WO2021257650
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/040,105
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507183952
【氏名又は名称】ダナ-ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ファーガソン, フルール エム.
(72)【発明者】
【氏名】グレイ, ナサナエル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ティンフー
(72)【発明者】
【氏名】ハガーティー, スティーブン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB02
4C063BB07
4C063BB08
4C063CC11
4C063CC62
4C063DD04
4C063EE01
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF70
(57)【要約】
分解のためにα-シヌクレインタンパク質を標的とする二重特異性化合物(分解剤)が開示される。分解剤を含有する医薬組成物、および神経変性疾患を治療するために該化合物を使用する方法も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
によって表される構造を有する二重特異性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体であって、
前記デグロンは、E3ユビキチンリガーゼに結合する部分を表し、前記リンカーは、前記デグロンと前記ターゲティングリガンドと共有結合し、
前記
【化2】
は、TL-1、TL-2、TL-3、TL-4またはTL-5:
【化3】
(式中、Xは、存在しないか、または
【化4】
であり、
は、ニトロまたはアミノである);
【化5】
(式中、Rは、水素またはメチルである);または
【化6】
(式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、アルキエニルオキシ(alkyenyloxy)、アルキニルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アラルキルアミノ、N-アルキル-N-アリールアミノ、N-アルキル-N-ヘテロアリールアミノ、N-アルキル-N-アラルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルチオ、ハロアルキルチオ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、ヘテロシクロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、シクロアルキルアミノスルホニル、ヘテロシクロアルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ヘテロアリールアミノスルホニル、N-アルキル-N-アリールアミノスルホニル、N-アルキル-N-ヘテロアリールアミノスルホニル、ホルミル、アルキルカルボニル、ハロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニルアミノ、ハロアルキルスルホニルアミノ、シクロアルキルスルホニルアミノ、ヘテロシクロアルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、ハロアルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、N-アルキル-N-アリールアミノカルボニル、N-アルキル-N-ヘテロアリールアミノカルボニル、シアノ、ニトロ、アジド、ホスフィニル、ホスホリル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記R基は、さらに場合により置換されていてもよく、
nは、0、1、2、3、4または5である)、によって表され、
前記
【化7】
は、-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端で終結するポリエチレングリコール鎖、または
アルキレン鎖もしくは二価アルキレン鎖(これらのいずれかは、-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端によって中断されてもよく、および/または-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端で終結してもよい)であり、
前記
【化8】
は、式D1-a~D1-i:
【化9】
【化10】
(式中、
Yは、NHまたはOである)のいずれか1つによって表される、二重特異性化合物、
またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
前記
【化11】
が、式TL-1:
【化12】
によって表される、請求項1に記載の二重特異性化合物。
【請求項3】
がNHであり、Rが存在せず、前記二重特異性化合物が、式(I-1a):
【化13】
によって表される、請求項2に記載の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項4】
がNOであり、R
【化14】
であり、前記二重特異性化合物が、式(I-1b):
【化15】
によって表される、請求項2に記載の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項5】
前記
【化16】
が、式TL-2:
【化17】
によって表される、請求項1に記載の二重特異性化合物。
【請求項6】
前記
【化18】
が、式TL-3:
【化19】
によって表される、請求項1に記載の二重特異性化合物。
【請求項7】
前記
【化20】
が、式TL-4:
【化21】
によって表される、請求項1に記載の二重特異性化合物。
【請求項8】
が水素であり、二重特異性化合物が、式(I-4a):
【化22】
によって表される、請求項7に記載の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項9】
前記
【化23】
が、式TL-5:
【化24】
によって表される、請求項1に記載の二重特異性化合物。
【請求項10】

【化25】
であり、nが1であり、前記二重特異性化合物が、式(I-5a):
【化26】
によって表される、請求項9に記載の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項11】
前記リンカーが、アルキレン鎖または二価アルキレン鎖(これらのいずれかは、-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端によって中断されてもよく、および/または-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端で終結してもよい)を含む、請求項1に記載の二重特異性化合物。
【請求項12】
前記リンカーが、1~10個のアルキレン単位を有するアルキレン鎖を含み、
【化27】
によって中断されるか、または、終結する、請求項11に記載の二重特異性化合物。
【請求項13】
前記リンカーが、-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端または両方の末端で終結するポリエチレングリコール鎖を含む、請求項1に記載の二重特異性化合物。
【請求項14】
前記リンカーが、2~8個のPEG単位を有し、
【化28】
で終結するポリエチレングリコール鎖を含む、請求項13に記載の二重特異性化合物。
【請求項15】
以下の式のいずれか1つによって表される:
【化29】
、請求項1に記載の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項16】
前記デグロンが
【化30】
である、請求項1に記載の二重特異性化合物。
【請求項17】
【化31】
【化32】
【化33】
である、請求項1に記載の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の治療有効量と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、α-シヌクレインの異常な活性によって特徴付けられるまたは媒介される神経変性疾患または神経変性障害を治療する方法。
【請求項20】
前記神経変性疾患がパーキンソン病である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記神経変性疾患が多系統萎縮症である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記神経変性疾患がレビー小体型認知症である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月17日に出願された米国仮特許出願第63/040,105号明細書に対して、35 U.S.C.§119(e)の下に優先権の利益を主張し、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
SNCA遺伝子によってコードされるα-シヌクレインタンパク質は、主に脳に見出される(Stefanis,L.,Cold Spring Harb.Perspect.Med.2(2):a009399(2012))。α-シヌクレインタンパク質は、パーキンソン病の病理学的特徴であるレビー小体の主要な構造成分である(Meade et al.,Mol.Neurodegener.14(1):29(2019))。これらのα-シヌクレイン凝集体は、疾患の発症および進行に寄与すると考えられている。現在、α-シヌクレイン抗体およびワクチンについては、患者におけるα-シヌクレインクリアランスの促進を目的として臨床試験が行われている(Zella et al.,Neurol.Ther.,8(1):29-44(2019))。ただし、α-シヌクレインのクリアランスを促進する小分子療法は報告されていない。臨床現場では、異常なα-シヌクレイン種に対抗するためのこれらの課題を克服するために、改善された治療様式が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Stefanis,L.,Cold Spring Harb.Perspect.Med.2(2):a009399(2012)
【非特許文献2】Meade et al.,Mol.Neurodegener.14(1):29(2019)
【非特許文献3】Zella et al.,Neurol.Ther.,8(1):29-44(2019)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様は、式(I)の二重特異性化合物、
【化1】
ここで、ターゲティングリガンドは、α-シヌクレインタンパク質に結合する基を表し、デグロンは、E3ユビキチンリガーゼに結合する部分を表し、リンカーは、デグロンとターゲティングリガンドとを共有結合する部分を表し、

【化2】
は、式TL-1、TL-2、TL-3、TL-4またはTL-5によって表され:
【化3】

【化4】
は、-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端で終結するポリエチレングリコール鎖、または
アルキレン鎖もしくは二価アルキレン鎖(これらのいずれかは、-R’C(O)N(R’)R’-もしくは-R’C(O)OR’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端によって中断されてもよく、および/または-R’C(O)N(R’)R’-もしくは-R’C(O)OR’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端で終結してもよい)であり、

【化5】
は、式D1-a~D1-iによって表される:
【化6】
【化7】
(式中、X、Y、R、R、Rおよびnは、本明細書で定義される通りである)、
二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体に関する。
【0005】
本発明の別の態様は、式(I)の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の治療有効量と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物に関する。
【0006】
本発明の別の態様では、二重特異性化合物を作製する方法が提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様は、式(I)の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の治療有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む、異常なα-シヌクレインタンパク質活性が関与する神経変性疾患または神経変性障害を治療する方法に関する。
【0008】
いかなる特定の作動理論にも縛られることを意図するものではないが、式(I)の二重特異性化合物(本明細書ではPROTACまたは分解剤とも呼ばれる)は、その機能が損傷したタンパク質をルーチンに同定および除去することである、細胞のユビキチン/プロテアソーム系を介してα-シヌクレインタンパク質の分解を促進すると考えられている。分解剤は、α-シヌクレインタンパク質分子の破壊後、放出され、活性であり続ける。したがって、身体自体の天然タンパク質廃棄系を関与させ利用することによって、本発明の二重特異性化合物は、α-シヌクレインの現在の小分子阻害剤に対する潜在的な改善を表す可能性がある。したがって、分解剤の有効な細胞内濃度は、小分子α-シヌクレイン阻害剤の場合よりも大幅に低い可能性がある。本発明の二重特異性化合物は、公知の阻害剤よりも強力なα-シヌクレインタンパク質阻害剤であり得る。
【0009】
本発明の二重特異性化合物は、改善された薬物動態を含む少なくとも1つの追加の利点を提供し得る。二重特異性化合物を介してE3-リガーゼアダプタータンパク質をα-シヌクレインタンパク質凝集体に動員するための標的化分解技術を使用すると、プロテアソームを介したユビキチン化およびクリアランスがもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aから図1Kは、細胞CRBN標的結合データを示す一連のグラフである。図1Aは、CRBNに結合する二重特異性化合物1の50%阻害濃度(IC50)を示すグラフである。図1Bは、CRBNに結合する二重特異性化合物2のIC50を示すグラフである。図1Cは、CRBNに結合する二重特異性化合物7のIC50を示すグラフである。図1Dは、CRBNに結合する二重特異性化合物8のIC50を示すグラフである。図1Eは、CRBNに結合する二重特異性化合物9のIC50を示すグラフである。図1Fは、CRBNに結合する二重特異性化合物10のIC50を示すグラフである。図1Gは、CRBNに結合する二重特異性化合物11のIC50を示すグラフである。図1Hは、CRBNに結合する二重特異性化合物12のIC50を示すグラフである。図1Iは、CRBNに結合する二重特異性化合物13のIC50を示すグラフである。図1Jは、CRBNに結合する対照AのIC50を示すグラフである。図1Kは、CRBNに結合する対照BのIC50を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本明細書の主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、それとは反対のことが指定されない限り、以下の用語は、本発明の理解を容易にするために示された意味を有する。
【0012】
説明および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別途明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「組成物(a composition)」への言及は、2つ以上のそのような組成物の混合物を含み、「阻害剤(an inhibitor)」への言及は、2つ以上のそのような阻害剤の混合物などを含む。
【0013】
別途記載されていない限り、用語「約」は、用語「約」によって修飾された特定の値の10%以内(例えば、5%、2%または1%以内)を意味する。
【0014】
「含む(including)」、「含む(containing)」または「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義である移行用語「含む(comprising)」は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法工程を除外するものではない。対照的に、移行句「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲で指定されていないあらゆる要素、工程または成分を除外する。移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、明記される材料または工程と、特許請求された発明の「基本的および新規の特性に実質的に影響を及ぼさないもの」とに特許請求の範囲を限定する。
【0015】
本発明の化合物に関して、およびそれらをさらに説明するために以下の用語が本明細書で使用される範囲に関し、以下の定義が適用される。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、飽和した直鎖または分岐鎖の一価炭化水素ラジカルを指す。一実施形態では、アルキルラジカルはC~C18基である。他の実施形態では、アルキルラジカルは、C~C基、C~C基、C~C基、C~C12基、C~C基、C~C基、C~C基、C~C基またはC~C基である(ここで、Cアルキルは結合を指す)。アルキル基の例には、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、i-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、1-ペンチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシルが挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキル基は、C~Cアルキル基である。いくつかの実施形態では、アルキル基は、C~Cアルキル基、またはメチル基である。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「アルキレン」は、炭素および水素のみからなり、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子を有するラジカル基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレンなどに分子の残部を連結する直鎖状または分岐状の二価炭化水素鎖を指す。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残部に結合し、単結合を介してラジカル基に結合し得る。いくつかの実施形態では、アルキレン基は、1~8個の炭素原子を含む(C~Cアルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1~5個の炭素原子を含む(C~Cアルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1~4個の炭素原子を含む(C~Cアルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、1~3個の炭素原子を含む(C~Cアルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1~2個の炭素原子を含む(C~Cアルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1つの炭素原子を含む(Cアルキレン)。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖の一価炭化水素ラジカルを指す。アルケニルには、「シス」および「トランス」配向、あるいは「E」および「Z」配向を有するラジカルが含まれる。一例では、アルケニルラジカルはC~C18基である。他の実施形態では、アルケニルラジカルは、C~C12基、C~C10基、C~C基、C~C基またはC~C基である。例には、エテニルまたはビニル、プロパ-1-エニル、プロパ-2-エニル、2-メチルプロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ブタ-2-エニル、ブタ-3-エニル、ブタ-1,3-ジエニル、2-メチルブタ-1,3-ジエン、へクス-1-エニル、へクス-2-エニル、へクス-3-エニル、へクス-4-エニルおよびヘキサ-1,3-ジエニルが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖状または分岐状の一価炭化水素ラジカルを指す。一例では、アルキニルラジカルはC~C18基である。他の例では、アルキニルラジカルは、C~C12、C~C10、C~C、C~CまたはC~Cである。例には、エチニルプロパ-1-イニル、プロパ-2-イニル、ブタ-1-イニル、ブタ-2-イニルおよびブタ-3-イニルが挙げられる。
【0020】
本明細書で使用される用語「アルコキシル」または「アルコキシ」は、それに結合した酸素ラジカルを有し、結合点である、上で定義されたアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどが含まれる。「エーテル」は、酸素によって共有結合した2つのヒドロカルビル基である。したがって、そのアルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニルおよび-O-アルキニルのうちの1つによって表され得るようなアルコキシルであるか、またはそれに類似している。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「ハロゲン」(または「ハロ」または「ハロゲン化物」)は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「環式基」は、単独で、またはさらに大きな部分の一部として使用される任意の基を広く指し、飽和環系、部分飽和環系または芳香環系、例えば、炭素環基(シクロアルキル、シクロアルケニル)、複素環基(ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル)、アリール基およびヘテロアリール基を含む。環式基は、1つ以上の(例えば、融合した)環系を有し得る。したがって、例えば、環式基は、1つ以上の炭素環基、複素環基、アリール基またはヘテロアリール基を含むことができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「炭素環式」(同じく「カルボシクリル」)は、単独で、またはさらに大きな部分の一部として使用される基を指し、単独であるか、またはさらに大きな部分の一部である、3~20個の炭素原子を有する飽和環系、部分不飽和環系または芳香環系を含む(例えば、アルク炭素環基(alkcarbocyclic group))。カルボシクリルという用語には、モノ-環系、ビ-環系、トリ-環系、縮合環系、架橋環系およびスピロ-環系ならびにそれらの組合せが含まれる。一実施形態では、カルボシクリルは、3~15個の炭素原子(C~C15)を含む。一実施形態では、カルボシクリルは、3~12個の炭素原子(C~C12)を含む。別の実施形態では、カルボシクリルは、C~C、C~C10またはC~C10を含む。別の実施形態では、単環としてのカルボシクリルは、C~C、C~CまたはC~Cを含む。いくつかの実施形態では、二環としてのカルボシクリルは、C~C12を含む。別の実施形態では、スピロ系としてのカルボシクリルは、C~C12を含む。単環式カルボシクリルの代表的な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シクロペント-3-エニル、シクロヘキシル、ペルジューテリオシクロヘキシル(perdeuteriocyclohexyl)、1-シクロへクス-1-エニル、1-シクロへクス-2-エニル、1-シクロへクス-3-エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、フェニルおよびシクロドデシルが挙げられる。7~12個の環原子を有する二環式カルボシクリルには、[4,3]、[4,4]、[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]環系、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ナフタレンおよびビシクロ[3.2.2]ノナンなどが含まれる。スピロカルボシクリルの代表的な例には、スピロ[2.2]ペンタン、スピロ[2.3]ヘキサン、スピロ[2.4]ヘプタン、スピロ[2.5]オクタンおよびスピロ[4.5]デカンが挙げられる。カルボシクリルという用語には、本明細書で定義されるアリール環系が含まれる。カルボシクリルという用語には、シクロアルキル環(例えば、飽和または部分不飽和のモノ-炭素環、ビ-炭素環またはスピロ-炭素環)も含まれる。炭素環基という用語にはまた、1つ以上(例えば、1、2または3)の異なる環式基(例えば、アリール環または複素環)に融合した炭素環が含まれ、ここで、ラジカルまたは結合点は炭素環上にある。
【0024】
したがって、炭素環式という用語は、本明細書で使用される場合、Rがアルキレン鎖である式--R-カルボシクリルの基を指すカルボシクリルアルキル基も包含する。炭素環式という用語はまた、本明細書で使用される場合、Rがアルキレン鎖である式--O--R-カルボシクリルの酸素原子を介して結合した基を指すカルボシクリルアルコキシ基を包含する。
【0025】
本明細書で使用される場合、単独で、またはさらに大きな部分(例えば、アルキル基上の末端炭素原子が、結合点、例えば、ベンジル基である「アラルキル」、酸素原子が結合点である「アラルコキシ」、または結合点がアリール基上にある「アロキシアルキル」)の一部として使用される用語「アリール」は、縮合環を含む単環式、二環式または三環式の炭素環系を含む基を指し、ここで、系内の少なくとも1つの環は芳香族である。いくつかの実施形態では、アラルコキシ基はベンゾキシ基である。用語「アリール」は、用語「アリール環」と区別なく使用され得る。一実施形態では、アリールは、6~18個の炭素原子を有する基を含む。別の実施形態では、アリールは、6~10個の炭素原子を有する基を含む。アリール基の例には、本明細書に記載の1つ以上の置換基によって置換されていてもよいか、または独立して置換されていてもよいフェニル、ナフチル、アントラシル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレニル、1H-インデニル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、ナフチリジニルなどが挙げられる。特定のアリールはフェニルである。いくつかの実施形態では、アリール基は、1つ以上(例えば、1、2または3)の異なる環式基(例えば、炭素環または複素環)に融合したアリール環を含み、ここで、ラジカルまたは結合点はアリール環上にある。
【0026】
したがって、アリールという用語は、上に開示されるように、Rがメチレンまたはエチレンなどのアルキレン鎖である式--R-アリールの基を指すアラルキル基(例えば、ベンジル)を包含する。いくつかの実施形態では、アラルキル基は、置換されていてもよいベンジル基である。アリールという用語はまた、本明細書で使用される場合、Rがメチレンまたはエチレンなどのアルキレン鎖である式--O-R--アリールの酸素原子を介して結合した基を指すアラルコキシ基を包含する。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロシクリル」は、単独で、またはさらに大きな部分の一部として使用される「カルボシクリル」を指し、1つ以上(例えば、1、2、3または4)の炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、N、N(O)、S、S(O)またはS(O))に置換されている飽和環系、部分不飽和環系または芳香環系を含む。ヘテロシクリルという用語には、モノ-環系、ビ-環系、トリ-環系、縮合環系、架橋環系およびスピロ-環系ならびにそれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルとは、3~15員のヘテロシクリル環系を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルとは、3~12員のヘテロシクリル環系を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルとは、3~12員の飽和ヘテロシクリル環系などの飽和環系を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルとは、5~14員のヘテロアリール環系などのヘテロアリール環系を指す。ヘテロシクリルという用語には、3~8個の炭素と1つ以上(1、2、3または4)のヘテロ原子とを含む飽和または部分不飽和のモノ-環系、ビ-環系またはスピロ-環系であるC~Cヘテロシクロアルキルも含まれる。
【0028】
いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、3~12個の環原子を含み、単環、二環、三環およびスピロ環系を含み、ここで、環原子は炭素であり、1~5個の環原子は、窒素、硫黄または酸素などのヘテロ原子である。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、窒素、硫黄または酸素から選択される1つ以上のヘテロ原子を有する3~7員の単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、窒素、硫黄または酸素から選択される1つ以上のヘテロ原子を有する4~6員の単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは3員の単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは4員の単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは5~6員の単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、0~3個の二重結合を含む。前述の実施形態のいずれかでは、ヘテロシクリルは、1、2、3または4個のヘテロ原子を含む。任意の窒素ヘテロ原子または硫黄ヘテロ原子が場合により酸化されていてもよく(例えば、NO、SO、SO)、任意の窒素ヘテロ原子が場合により四級化されていてもよい(例えば、[NRCl、[NROH)。ヘテロシクリルの代表的な例には、オキシラニル、アジリジニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2-ジチエタニル、1,3-ジチエタニル、ピロリジニル、ジヒドロ-1H-ピロリル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、テトラヒドロチエニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキソ-チオモルホリニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ヘキサヒドロチオピラニル、ヘキサヒドロピリミジニル、オキサジナニル、チアジナニル、チオキサニル、ホモピペラジニル、ホモピペリジニル、アゼパニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、オキサゼパニル、ジアゼパニル、1,4-ジアゼパニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、チアゼパニル、テトラヒドロチオピラニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,1-ジオキソイソチアゾリジノニル、オキサゾリジノニル、イミダゾリジノニル、4,5,6,7-テトラヒドロ[2H]インダゾリル、テトラヒドロベンゾイミダゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[d]イミダゾリル、1,6-ジヒドロイミダゾール[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジニル、チアジニル、チオフェニル、オキサジニル、チアジアジニル、オキサジアジニル、ジチアジニル、ジオキサジニル、オキサチアジニル、チアトリアジニル、オキサトリアジニル、ジチアジアジニル、イミダゾリニル、ジヒドロピリミジル、テトラヒドロピリミジル、1-ピロリニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、チアピラニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ジチアニル、ジチオラニル、ピリミジノニル、ピリミジンジオニル、ピリミジン-2,4-ジオニル、ピペラジノニル、ピペラジンジオニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、6-アザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、3-アザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、2-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、8-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、2-アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、8-アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザスピロ[3.5]ノナニル、アザスピロ[2.5]オクタニル、アザスピロ[4.5]デカニル、1-アザスピロ[4.5]デカン-2-オニル、アザスピロ[5.5]ウンデカニル、テトラヒドロインドリル、オクタヒドロインドリル、テトラヒドロイソインドリル、テトラヒドロインダゾリル、1,1-ジオキソヘキサヒドロチオピラニルが挙げられる。硫黄原子または酸素原子と、1~3個の窒素原子とを含む5員ヘテロシクリルの例には、チアゾール-2-イルおよびチアゾール-2-イルN-オキシドを含むチアゾリル、1,3,4-チアジアゾール-5-イルおよび1,2,4-チアジアゾール-5-イルを含むチアジアゾリル、オキサゾリル、例えばオキサゾール-2-イル、ならびにオキサジアゾリル、例えば1,3,4-オキサジアゾール-5-イルおよび1,2,4-オキサジアゾール-5-イルがある。2~4個の窒素原子を含む例示的な5員環ヘテロシクリルには、イミダゾリル、例えば、イミダゾール-2-イル;トリアゾリル、例えば、1,3,4-トリアゾール-5-イル;1,2,3-トリアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-5-イル、およびテトラゾリル、例えば、1H-テトラゾール-5-イルが含まれる。ベンゾ縮合5員ヘテロシクリルの代表的な例には、ベンゾオキサゾール-2-イル、ベンゾチアゾール-2-イルおよびベンゾイミダゾール-2-イルがある。例示的な6員ヘテロシクリルは、1~3個の窒素原子と、場合により硫黄原子または酸素原子、例えば、ピリジル、例えば、ピリド-2-イル、ピリド-3-イルおよびピリド-4-イル;ピリミジル、例えば、ピリミド-2-イルおよびピリミド-4-イル;トリアジニル、例えば、1,3,4-トリアジン-2-イルおよび1,3,5-トリアジン-4-イル;ピリダジニル、特にピリダジン-3-イル、ならびにピラジニルとを含む。ピリジンN-オキシドおよびピリダジンN-オキシドならびにピリジル基、ピリミド-2-イル基、ピリミド-4-イル基、ピリダジニル基および1,3,4-トリアジン-2-イル基は、ヘテロシクリル基のさらに他の例である。いくつかの実施形態では、複素環基は、1つ以上(例えば、1、2または3)の異なる環式基(例えば、炭素環または複素環)に融合した複素環を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、複素環上にあり、いくつかの実施形態では、結合点は、複素環に含まれるヘテロ原子である。
【0029】
したがって、複素環式という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの窒素を含むヘテロシクリル基を指すN-ヘテロシクリル基を包含し、ここで、分子の残部へのヘテロシクリル基の結合点は、ヘテロシクリル基の窒素原子を介する。N-ヘテロシクリル基の代表的な例には、1-モルホリニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、1-ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニルおよびイミダゾリジニルが挙げられる。複素環式という用語はまた、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのヘテロ原子を含むヘテロシクリル基を指すC-ヘテロシクリル基を包含し、ここで、分子の残部へのヘテロシクリル基の結合点は、ヘテロシクリル基の炭素原子を介する。C-ヘテロシクリルラジカルの代表的な例には、2-モルホリニル、2-または3-または4-ピペリジニル、2-ピペラジニル、および2-または3-ピロリジニルが挙げられる。複素環式という用語はまた、上に開示されるように、Rがアルキレン鎖である式--R-ヘテロシクリルの基を指すヘテロシクリルアルキル基を包含する。
複素環式という用語はまた、本明細書で使用される場合、Rがアルキレン鎖である式--O--R-ヘテロシクリルの酸素原子を介して結合したラジカルを指すヘテロシクリルアルコキシ基を包含する。
【0030】
本明細書で使用される場合、単独で、またはさらに大きな部分(例えば、「ヘテロアリールアルキル」(同じく「ヘテロアラルキル」)、または「ヘテロアリールアルコキシ」(同じく「ヘテロアラルコキシ」))の一部として使用される用語「ヘテロアリール」は、5~14個の環原子を有する単環式、二環式または三環式の環系を指し、ここで、少なくとも1つの環は、芳香族であり、少なくとも1つのヘテロ原子を含む。一実施形態では、ヘテロアリールは、1つ以上の環原子が窒素、硫黄または酸素である5~6員の単環式芳香族基を含む。ヘテロアリール基の代表的な例には、チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、イミダゾピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル、プリニル、デアザプリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、1,3-チアゾール-2-イル、1,3,4-トリアゾール-5-イル、1,3-オキサゾール-2-イル、1,3,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-5-イル、1H-テトラゾール-5-イル、1,2,3-トリアゾール-5-イルおよびピリド-2-イルN-オキシドが挙げられる。用語「ヘテロアリール」はまた、ヘテロアリールが1つ以上の環式(例えば、カルボシクリルまたはヘテロシクリル)環に融合している基を含み、ここで、ラジカルまたは結合点はヘテロアリール環上にある。非限定的な例には、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチオフェニル、メチレンジオキシフェニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式、二環式または三環式であり得る。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、1つ以上(例えば、1、2または3)の異なる環式基(例えば、炭素環または複素環)に融合したヘテロアリール環を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、ヘテロアリール環上にあり、いくつかの実施形態では、結合点は、複素環に含まれるヘテロ原子である。
【0031】
したがって、ヘテロアリールという用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの窒素を含む、上で定義されたヘテロアリール基を指すN-ヘテロアリール基を包含し、ここで、分子の残部へのヘテロアリール基の結合点は、ヘテロアリール基の窒素原子を介する。ヘテロアリールという用語はまた、本明細書で使用される場合、上で定義されたヘテロアリール基を指すC-ヘテロアリール基を包含し、ここで、分子の残部へのヘテロアリール基の結合点は、ヘテロアリール基の炭素原子を介する。ヘテロアリールという用語はまた、上に開示されるように、Rが上で定義されるアルキレン鎖である式--R-ヘテロアリールの基を指すヘテロアリールアルキル基を包含する。ヘテロアリールという用語はまた、本明細書で使用される場合、Rが上で定義されるアルキレン基である式--O--R-ヘテロアリールの酸素原子を介して結合した基を指すヘテロアラルコキシ(またはヘテロアリールアルコキシ)基を包含する。
【0032】
本明細書に記載の基のいずれも、置換されていてもよいか、または非置換であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「置換されている」は、そのような置換が、置換されている原子、および置換基の許容される原子価に従っており、置換が、安定な化合物、すなわち、例えば、転位、環化、脱離などによって自発的に変換を受けない化合物を生じるという暗黙の条件を伴って、あらゆる許容される置換基を広く指す。代表的な置換基には、ハロゲン、ヒドロキシル基、ならびに任意の数の炭素原子、例えば、1~14個の炭素原子を含み、1つ以上(例えば、1、2、3または4)のヘテロ原子、例えば、直鎖状、分岐状または環式構造形式でグループ化された酸素、硫黄および窒素を含み得る任意の他の有機基(organic grouping)が含まれる。
【0033】
任意の特定の基について他に開示されていない限り、置換基の代表的な例には、アルキル基、置換アルキル基(例えば、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C)、アルコキシ基(例えば、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C)、置換アルコキシ基(例えば、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C)、ハロアルキル基(例えば、CF)、アルケニル基(例えば、C~C、C~C、C~C、C~C、C)、置換アルケニル基(例えば、C~C、C~C、C~C、C~C、C)、アルキニル基(例えば、C~C、C~C、C~C、C~C、C)、置換アルキニル基(例えば、C~C、C~C、C~C、C~C、C)、環式基(例えば、C~C12、C~C)、置換環式基(例えば、C~C12、C~C)、炭素環基(例えば、C~C12、C~C)、置換炭素環基(例えば、C~C12、C~C)、複素環基(例えば、C~C12、C~C)、置換複素環基(例えば、C~C12、C~C)、アリール基(例えば、ベンジルおよびフェニル)、置換アリール基(例えば、置換ベンジルまたは置換フェニル)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジルまたはピリミジル)、置換ヘテロアリール基(例えば、置換ピリジルまたは置換ピリミジル)、アラルキル基(例えば、ベンジル)、置換アラルキル基(例えば、置換ベンジル)、ハロ基、ヒドロキシル基、アリールオキシ基(例えば、C~C12、C)、置換アリールオキシ基(例えば、C~C12、C)、アルキルチオ基(例えば、C~C)、置換アルキルチオ基(例えば、C~C)、アリールチオ基(例えば、C~C12、C)、置換アリールチオ基(例えば、C~C12、C)、シアノ基、カルボニル基、置換カルボニル基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アミド基、置換アミド基、チオ基、置換チオ基、スルフィニル基、置換スルフィニル基、スルホニル基、置換スルホニル基、スルフィンアミド基、置換スルフィンアミド基、スルホンアミド基、置換スルホンアミド基、尿素基、置換尿素基、カルバメート基、置換カルバメート基、アミノ酸基およびペプチド基が挙げられ得る。
【0034】
ターゲティングリガンドと、標的タンパク質(この場合はα-シヌクレインタンパク質およびその変異体またはミスフォールドした形態)との間の相互作用に関連する用語「結合」は、細胞に存在する他のタンパク質性実体とのターゲティングリガンドの結合が機能的に重要でない可能性があるという点で実質的に特異的である分子間相互作用を指す。本発明の二重特異性化合物は、選択的分解のためにα-シヌクレインタンパク質に結合し、それを動員する。
【0035】
デグロンとE3ユビキチンリガーゼとの間の相互作用に関連する用語「結合」は、典型的には、ターゲティングリガンドと標的タンパク質との間の親和性に等しいかまたはそれを超える親和性レベルを示す場合も示さない場合もある分子間相互作用を指すが、それでもなお、親和性は、標的分解、および標的タンパク質の選択的分解へのリガーゼの動員を達成するのに十分である。
【0036】
概して、本発明の二重特異性化合物は、式(I):
【化8】
によって表される構造を有し、
ここで、ターゲティングリガンドは、α-シヌクレインタンパク質に結合する基を表し、デグロンは、E3ユビキチンリガーゼに結合する部分を表し、リンカーは、デグロンとターゲティングリガンドとを共有結合する部分を表す。
【0037】
ターゲティングリガンド
α-シヌクレインターゲティングリガンドは、式TL-1、TL-2、TL-3、TL-4およびTL-5のいずれか1つによって表される構造を有する:
【化9】

(式中、
Xは、存在しないか、または
【化10】
であり、
は、ニトロまたはアミノである);
【化11】

(式中、
は、水素またはメチルである);または
【化12】

(式中、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、アルキエニルオキシ(alkyenyloxy)、アルキニルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アラルキルアミノ、N-アルキル-N-アリールアミノ、N-アルキル-N-ヘテロアリールアミノ、N-アルキル-N-アラルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルチオ、ハロアルキルチオ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、ヘテロシクロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、シクロアルキルアミノスルホニル、ヘテロシクロアルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ヘテロアリールアミノスルホニル、N-アルキル-N-アリールアミノスルホニル、N-アルキル-N-ヘテロアリールアミノスルホニル、ホルミル、アルキルカルボニル、ハロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニルアミノ、ハロアルキルスルホニルアミノ、シクロアルキルスルホニルアミノ、ヘテロシクロアルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、ハロアルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、N-アルキル-N-アリールアミノカルボニル、N-アルキル-N-ヘテロアリールアミノカルボニル、シアノ、ニトロ、アジド、ホスフィニル、ホスホリル、アリールまたはヘテロアリールであり、該R基は、さらに場合により置換されていてもよく、
nは、0、1、2、3、4または5である)。
【0038】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、式I-1、I-2、I-3、I-4およびI-5のいずれか1つによって表される構造:
【化13】
、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を有し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、RはNHであり、Xは存在せず、二重特異性化合物は、式I-1a:
【化14】
、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表される。
【0040】
いくつかの実施形態では、RはNOであり、Xは
【化15】
であり、二重特異性化合物は、式I-1b:
【化16】
、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表される。
【0041】
いくつかの実施形態では、Rは水素であり、二重特異性化合物は、式(I-4a):
【化17】
、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表される。
【0042】
いくつかの実施形態では、R
【化18】
であり、nは1であり、二重特異性化合物は、式(I-5a):
【化19】

またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表される。
【0043】
リンカー
いくつかの実施形態では、リンカーは、アルキレン鎖または二価アルキレン鎖(これらのいずれかは、-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端によって中断されてもよく、および/または-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端もしくは両方の末端で終結してもよい)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、リンカーは、1~10個のアルキレン単位を有し、
【化20】
によって中断される、または、終結するアルキレン鎖を含む。
【0045】
本発明で使用するのに好適であり得るアルキレンリンカーの代表的な例には、以下が挙げられる:
【化21】
、式中、nは、1~12の整数(「の(of)」は包括的を意味する)、例えば、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~10、6~9、6~8、6~7、7~10、7~9、7~8、8~10、8~9、9~10、ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9および10であり、これらの例には、以下が挙げられる:
【化22】
【0046】
いくつかの実施形態では、リンカーは、-R’C(O)N(R’)R’-(式中、R’は、HまたはC~Cアルキルである)のいずれかの末端または両方の末端で終結するポリエチレングリコール鎖を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、リンカーは、2~8個のPEG単位を有し、
【化23】
で終結するポリエチレングリコール鎖を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、式(I)の二重特異性化合物は、以下の構造のいずれか1つによって表されるリンカーを含む:
【化24】
【0049】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、以下の構造のいずれか1つ:
【化25】
【化26】
、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、以下の構造のいずれか1つ:
【化27】
【化28】
、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表される。
【0051】
デグロン
ユビキチン-プロテアソーム経路(UPP)は、重要な調節タンパク質を調節し、ミスフォールドしたまたは異常なタンパク質を分解する重要な細胞経路である。UPPは、複数の細胞プロセスの中心である。特定のタンパク質基質へのユビキチンの共有結合は、E3ユビキチンリガーゼの作用によって達成される。これらのリガーゼは、500を超える異なるタンパク質を含み、それらのE3機能活性の構造要素によって定義される複数のクラスに分類される。
【0052】
デグロンは、セレブロン(CRBN)であるE3ユビキチンリガーゼに結合し、以下の構造のいずれか1つによって表される:
【化29】
(式中、
Yは、NHまたはOである)。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、以下の構造のいずれか:
【化30】
【化31】
【化32】
(式中、
Yは、NHまたはOである)、
またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、デグロンは
【化33】
である。
【0055】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、
【化34】
によって表され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、以下の構造のいずれか1つ:
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表される。
【0057】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、構造TL1~TL5、L1~L2、およびD1-a~D1-iの組合せによって生成される任意の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表される。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、以下の構造のいずれか:
【化46】
【化47】
【化48】
またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表される。
【0059】
式(I)の二重特異性化合物は、遊離酸もしくは遊離塩基または薬学的に許容される塩の形態であり得る。本明細書で使用される場合、塩の文脈では、用語「薬学的に許容される」は、化合物の生物学的活性または特性を無効にせず、比較的毒性がない化合物を指し、すなわち、塩形態の化合物は、望ましくない生物学的効果(めまいまたは胃の不調など)を引き起こしたり、それが含有される組成物の他の成分のいずれかと有害な方法で相互作用したりすることなく、対象に投与され得る。用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物と好適な酸または塩基との反応によって得られる生成物を指す。本発明の化合物の薬学的に許容される塩の例には、好適な無機塩基に由来するもの、例えば、Li塩、Na塩、K塩、Ca塩、Mg塩、Fe塩、Cu塩、Al塩、Zn塩およびMn塩が挙げられる。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例には、無機酸により形成されるアミノ基の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、4-メチルベンゼンスルホン酸塩またはp-トルエンスルホン酸塩などがある。本発明の特定の化合物は、リシン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミンまたはメトホルミンなどの様々な有機塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。
【0060】
式(I)の二重特異性化合物は、少なくとも1つのキラル中心を有し得、したがって、本明細書で使用される場合、空間内のそれらの原子の配向のみが異なる、個々の化合物のあらゆる異性体を包含する立体異性体の形態であり得る。立体異性体という用語には、鏡像異性体(化合物の(R-)または(S-)配置を含むエナンチオマー)、化合物の鏡像異性体の混合物(エナンチオマーの物理的混合物、およびラセミ体またはラセミ混合物)、化合物の幾何(シス/トランスまたはE/Z、R/S)異性体、および互いに鏡像でない複数のキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオ異性体)が含まれる。化合物のキラル中心は、インビボでエピマー化を受け得る。したがって、これらの化合物について、その(R-)形態での化合物の投与は、その(S-)形態での化合物の投与と同等であると考えられる。したがって、本発明の化合物は、個々の異性体の形態で、かつ他の異性体を実質的に含まず、または様々な異性体の混合物、例えば、立体異性体のラセミ混合物の形態で、作製および使用され得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、式(I)の二重特異性化合物は、同位体の天然存在量を超える量、すなわち濃縮された量で、原子の少なくとも1つの所望の同位体置換を有するという点で同位体誘導体である。一実施形態では、化合物は、重水素または複数の重水素原子を含む。重水素、すなわち、Hなどの比較的重い同位体による置換は、比較的大きな代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加または必要な投与量の減少から生じる特定の治療上の利点をもたらし得るため、状況によっては有利である可能性がある。
【0062】
同位体誘導体に加えて、用語「式(I)の二重特異性化合物」は、N-オキシド、結晶形態(多形としても知られる)、同じタイプの活性を有する化合物の活性代謝物、互変異性体、ならびに化合物の、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒を用いた非溶媒和形態および溶媒和形態の使用を包含する。本明細書に提示されるコンジュゲートの溶媒和形態もまた、本明細書に開示されると考えられる。
【0063】
合成方法
別の態様では、本発明は、式(I)の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を作製するための方法に関する。概して、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体は、化学的に関連する化合物の調製に適用可能であることが知られている任意のプロセスによって調製され得る。本発明の化合物は、様々な実施例に記載され、かつ本発明の化合物を調製することができる非限定的な方法を示す合成スキームに関連して、さらによく理解されるであろう。
【0064】
医薬組成物
本発明の別の態様は、式(I)の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の治療有効量と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。当技術分野で公知の用語「薬学的に許容される担体」は、本発明の化合物を哺乳動物に投与するのに好適な薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを指す。好適な担体には、例えば、液体(水性および非水性の両方の類似物、ならびにそれらの組合せ)、固体、封入材料、ガス、およびそれらの組合せ(例えば、半固体)、ならびに1つの器官、または身体の一部から、別の器官、または身体の一部に化合物を運搬または輸送するように機能するガスが含まれ得る。担体は、製剤の他の成分に対して生理学的に不活性であり、それと適合性があり、対象または患者に有害でないという意味で「許容される」。組成物はまた、製剤のタイプに応じて、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0065】
概して、式(I)の二重特異性化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体は、従来の薬学的実践、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、水簸、乳化、カプセル化、捕捉および圧縮プロセスに従って、所与のタイプの組成物に製剤化され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照)。製剤のタイプは、経腸(例えば、経口、頬側、舌下および直腸)、非経口(例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)および胸骨内注射または注入技術、眼内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮内、膣内、腹腔内、粘膜、経鼻、気管内注入、気管支注入、ならびに吸入)および局所(例えば、経皮)を含み得る投与様式に依存する。一般に、最も適切な投与経路は、例えば、薬剤の性質(例えば、消化管の環境でのその安定性)および/または対象の病態(例えば、対象が経口投与に耐えられるかどうか)を含む様々な因子に依存する。例えば、非経口(例えば、静脈内)投与はまた、二重特異性化合物が、単回投与治療および/または急性病態の場合のように、比較的迅速に投与され得るという点で有利であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、二重特異性化合物は、経口投与または静脈内投与(例えば、全身静脈内注射)のために製剤化される。
【0067】
したがって、式(I)の二重特異性化合物は、固体組成物(例えば、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェおよび坐剤)、液体組成物(例えば、化合物が溶解される溶液、化合物の固体粒子が分散される懸濁液、エマルジョン、ならびにリポソーム、ミセルまたはナノ粒子、シロップおよびエリキシルを含有する溶液);半固体組成物(例えば、ゲル、懸濁液およびクリーム);およびガス(例えば、エアロゾル組成物用の推進剤)に製剤化され得る。化合物はまた、迅速放出、中間放出または持続放出のために製剤化され得る。
【0068】
経口投与用の固形剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末および顆粒が含まれる。そのような固形剤形では、活性化合物は、担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、ならびに追加の担体または賦形剤、例えば、a)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、b)結合剤、例えば、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルジネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシアなど、c)保湿剤、例えば、グリセロール、d)崩壊剤、例えば、架橋ポリマー(例えば、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム))、デンプングリコレートナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤(solution retarding agent)、例えば、パラフィン、f)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土、およびi)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸薬の場合、剤形はまた、緩衝剤を含み得る。同様の種類の固体組成物が、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤中の充填剤として使用されてもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒の固形剤形は、腸溶コーティングおよび他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製され得る。それらは、乳白剤をさらに含有し得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、式(I)の二重特異性化合物は、軟質および硬質ゼラチンカプセルに製剤化され得る。使用され得る代表的な賦形剤には、アルファ化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、フマル酸ステアリルナトリウム、無水ラクトース、微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムが含まれる。ゼラチンシェルは、ゼラチン、二酸化チタン、酸化鉄および着色剤を含み得る。
【0070】
経口投与用の液体剤形には、溶液、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、シロップおよびエリキシルが含まれる。液体剤形は、化合物に加えて、当技術分野で一般的に使用される水性または非水性担体(化合物の溶解度に応じて)、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤など、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有し得る。経口組成物はまた、賦形剤、例えば、湿潤剤、懸濁剤、着色料、甘味料、香味剤および芳香剤を含み得る。
【0071】
非経口投与のための注射用調製物は、滅菌水溶液または油性懸濁液を含み得る。それらは、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用する標準的な技術に従って製剤化され得る。無菌注射用調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液、懸濁液またはエマルジョンであり得る。使用され得る許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張食塩液がある。さらに、溶媒または懸濁媒体として、無菌の固定油が従来使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む任意の刺激の少ない固定油が使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通して濾過することによって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。化合物の効果は、その吸収を遅くすることによって延長させてもよく、これは、水溶性の低い液体懸濁液または結晶性材料もしくはアモルファス材料を使用することによって達成され得る。非経口的に投与された製剤からの化合物の長期吸収はまた、油性ビヒクルに化合物を懸濁することによって達成され得る。
【0072】
ある特定の実施形態では、式(I)の二重特異性化合物は、例えば、多くの場合デポー調製物または徐放性製剤では、器官へのコンジュゲートの直接注射を介して、全身的ではなく局所的に投与され得る。特定の実施形態では、長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与される。注射用デポー形態は、生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)中で化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。化合物の放出速度は、化合物とポリマーとの比、および使用される特定のポリマーの性質を変化させることによって制御され得る。デポー注射用製剤はまた、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョンに化合物を捕捉することによって調製される。さらに、他の実施形態では、化合物は、標的化薬物送達系、例えば、器官特異的抗体によってコーティングされたリポソームで送達される。そのような実施形態では、リポソームは、器官を標的とし、器官によって選択的に取り込まれる。
【0073】
組成物は、頬側または舌下投与用に製剤化されてもよく、その例には、錠剤、トローチおよびゲルが挙げられる。
【0074】
式(I)の二重特異性化合物は、吸入による投与のために製剤化され得る。吸入による投与に適した様々な形態には、エアロゾル、ミストまたは粉末が含まれる。医薬組成物は、好適な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガス)を使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で送達され得る。いくつかの実施形態では、加圧エアロゾルの投与単位は、計量された量を送達するための弁を設けることによって決定され得る。いくつかの実施形態では、例えば、吸入器または注入器に使用するために、化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、ゼラチンを含むカプセルおよびカートリッジが製剤化され得る。
【0075】
式(I)の二重特異性化合物は、本明細書で使用される場合、表皮への製剤の本発明による皮内投与を指す局所投与のために製剤化され得る。これらのタイプの組成物は、典型的には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液およびスプレーの形態である。
【0076】
局所適用のための二重特異性化合物を製剤化するのに有用な担体の代表的な例には、溶媒(例えば、アルコール、多価アルコール、水)、クリーム、ローション、軟膏、油、プラスター、リポソーム、粉末、エマルジョン、マイクロエマルジョンおよび緩衝液(例えば、低張食塩水または緩衝食塩水)が挙げられる。例えば、クリームは、飽和または不飽和脂肪酸、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸(palmito-oleic acid)、セチルアルコールまたはオレイルアルコールを使用して製剤化され得る。クリームはまた、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシ-40-ステアレートを含有し得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、局所製剤はまた、賦形剤を含み得、その例は、浸透増強剤である。これらの薬剤は、好ましくは全身吸収をほとんどまたは全く伴わずに、角質層を通して表皮または真皮に、薬理学的に活性な化合物を輸送することができる。皮膚を通る薬物の浸透速度を高める点でのそれらの効果に関して、多種多様な化合物が評価されてきた。例えば、様々な皮膚浸透促進剤の使用および試験を調査するPercutaneous Penetration Enhancers,Maibach H.I.and Smith H.E.(eds.),CRC Press,Inc.,Boca Raton,Fla.(1995)、およびBuyuktimkin et al.,Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Gosh T.K.,Pfister W.R.,Yum S.I.(Eds.),Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,Ill.(1997)を参照されたい。浸透増強剤の代表的な例には、トリグリセリド(例えば、大豆油)、アロエ組成物(例えば、アロエベラゲル)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクトリフェニルポリエチレン(octolyphenylpolyethylene)グリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N-デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、モノオレイン酸グリセロールおよびモノオレイン酸プロピレングリコール)およびN-メチルピロリドンが挙げられる。
【0078】
局所および他の種類の製剤に含まれ得る(それらが適合性のある範囲で)さらに他の賦形剤の代表的な例には、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、皮膚保護剤および界面活性剤が挙げられる。好適な防腐剤には、アルコール、第四級アミン、有機酸、パラベンおよびフェノールが含まれる。好適な抗酸化剤には、アスコルビン酸およびそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、ならびにEDTAおよびクエン酸などのキレート剤が含まれる。好適な保湿剤には、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素およびプロピレングリコールが含まれる。好適な緩衝剤には、クエン酸緩衝液、塩酸緩衝液および乳酸緩衝液が含まれる。好適な可溶化剤には、第四級アンモニウムクロリド、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチンおよびポリソルベートが含まれる。好適な皮膚保護剤には、ビタミンE油、アラトイン、ジメチコン、グリセリン、ワセリンおよび酸化亜鉛が含まれる。
【0079】
経皮製剤は、典型的には、化合物が親油性エマルジョンまたは緩衝水溶液に製剤化され、ポリマーまたは接着剤に溶解および/または分散される経皮送達デバイスおよび経皮送達パッチを使用する。パッチは、医薬品の連続的な送達、脈動的な送達、またはオンデマンドの送達のために構築され得る。化合物の経皮送達は、イオントフォレーシスパッチによって達成され得る。経皮パッチは、速度制御膜を使用することによって、またはポリマーマトリックスもしくはゲル内に化合物を捕捉することによって吸収速度を遅らせる、化合物の制御された送達を提供し得る。吸収促進剤を使用して吸収を増加させてもよく、その例には、皮膚の通過を助ける吸収性の薬学的に許容される溶媒が含まれる。
【0080】
眼科製剤には点眼薬が含まれる。
【0081】
直腸投与用の製剤には、浣腸、直腸ゲル、直腸発泡剤、直腸エアロゾルおよび保持浣腸が含まれ、これらは、従来の坐剤基剤、例えば、カカオバターまたは他のグリセリド、および合成ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、PEGなどを含有し得る。また、直腸投与または膣内投与用の組成物は、化合物と、いずれも周囲温度では固体であるが、体温では液体であるため、直腸または膣腔で融解し、化合物を放出する好適な非刺激性担体および賦形剤、例えば、カカオバター、脂肪酸グリセリドの混合物、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスおよびそれらの組合せとを混合することによって調製され得る坐剤として製剤化され得る。
【0082】
投与量
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、α-シヌクレインタンパク質活性によって媒介される神経変性疾患または神経変性障害に罹患している患者に対して所望の治療応答をもたらすのに有効な、式(I)の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の量を指す。したがって、用語「治療有効量」には、投与された際に、治療される疾患もしくは障害に正の改変を誘導するか、または疾患もしくは障害の発症もしくは進行を予防するのに十分であるか、または対象の治療される疾患もしくは障害の症状のうちの1つ以上をある程度まで緩和するか、または疾患細胞を単に死滅させるかもしくは疾患細胞の増殖を阻害するか、または疾患細胞内のα-シヌクレインタンパク質の量を減少させる二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の量が含まれる。
【0083】
二重特異性化合物の1日総投与量、およびその使用法は、標準的な医療行為に従って、例えば、主治医が理にかなった医学的判断を使用することによって決定され得る。任意の特定の対象に対する特定の治療上有効な用量は、治療される疾患または障害およびその重症度(例えば、その現在の状態);対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食餌;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路および排泄速度;治療期間;二重特異性化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;ならびに医学分野で周知の同様の因子を含む様々な因子に依存し得る(例えば、Goodman and Gilman’s,The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,A.Gilman,J.Hardman and L.Limbird,eds.,McGraw-Hill Press,155-173,2001を参照)。
【0084】
式(I)の二重特異性化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体は、広い投与量範囲にわたって有効であり得る。いくつかの実施形態では、1日総投与量(例えば、成人の場合)は、約0.001~約1600mg、0.01~約1600mg、0.01~約500mg、約0.01~約100mg、約0.5~約100mg、1~約100~400mg/日、約1~約50mg/日、および約5~約40mg/日の範囲であり得るか、またはさらに他の実施形態では、約10~約30mg/日の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、1日総投与量は、400mg~600mgの範囲であり得る。個々の投与量は、化合物が1日当たりに投与される回数に応じて、所望の投与量を含むように製剤化され得る。例として、カプセルは、約1~約200mgの化合物(例えば、1、2、2.5、3、4、5、10、15、20、25、50、100、150および200mg)を含むように製剤化され得る。いくつかの実施形態では、化合物は、約0.01mg~約200mg/kg体重/日の範囲の用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、1日当たり1つ以上の投与量では、1日当たり0.1~100、例えば、1~30mg/kgの用量が有効であり得る。例として、経口投与に適した用量は、1~30mg/kg体重/日の範囲であり得、静脈内投与に適した用量は、1~10mg/kg体重/日の範囲であり得る。
【0085】
使用方法
いくつかの態様では、本発明は、それを必要とする対象に、式(I)の二重特異性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の治療有効量を投与することを伴う、異常な(例えば、機能不全または調節不全の)α-シヌクレインタンパク質活性を伴う疾患または障害を治療する方法に関する。
【0086】
本発明は、異常なα-シヌクレインタンパク質活性(例えば、α-シヌクレインの上昇したレベル、またはそうでなければ機能的に異常な、例えば、調節解除されたα-シヌクレインレベル)を特徴とするかまたはそれによって媒介される神経変性疾患または神経変性障害を治療することに関する。「疾患」は、一般に、対象が恒常性を維持することができず、かつ疾患が改善されない場合、対象の健康が悪化し続ける、対象の健康状態と考えられる。対照的に、対象の「障害」(または病態)は、対象が恒常性を維持することができるが、対象の健康状態が、障害がない場合よりも不利である健康状態である。治療せずに放置しても、障害が対象の健康状態をさらに低下させるとは限らない。
【0087】
本明細書で使用される用語「対象」(または「患者」)は、示された疾患もしくは障害を起こしやすいか、または示された疾患もしくは障害に罹患している、動物界のあらゆる成員を含む。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物である。該方法は、伴侶動物、例えば、イヌおよびネコ、ならびに家畜、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、および他の飼育動物および野生動物にも適用可能である。本発明による治療「を必要とする」対象は、確実に診断され得る特定の疾患もしくは障害に「罹患しているか、もしくは罹患している疑いがある」可能性があるか、またはそうでなければ、医学専門家がその対象がその疾患もしくは障害に罹患したことを診断し得るかもしくは疑い得るように、十分な数の危険因子、もしくは十分な数もしくは組合せの徴候もしくは症状を呈する。したがって、特定の疾患または障害に罹患している、および罹患している疑いがある対象は、必ずしも2つの別個の群であるとは限らない。
【0088】
本発明の二重特異性化合物による治療に適し得る例示的な神経変性疾患または神経変性障害は、例えば筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、プリオン病、てんかん、脳症、ハンチントン病、運動失調、ジストニア、脳炎、構音障害、アルツハイマー病、多系統萎縮症、自閉症、片頭痛およびレビー小体型認知症が挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患はパーキンソン病である。
【0090】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患は多系統萎縮症である。
【0091】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患はレビー小体型認知症である。
【0092】
本発明の方法は、単回投与または複数回投与(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20回またはそれ以上の投与)で、式(I)の二重特異性化合物またはその医薬組成物を患者に投与することを伴い得る。例えば、投与の頻度は、1日1回から8週間に約1回までの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、投与の頻度は、1、2、3、4、5または6週間にわたり約1日1回からの範囲であり、他の実施形態では、3週間(21日間)の連日投与と、それに続く7日間の「オフ」期間とを含む少なくとも1つの28日サイクルを伴う。他の実施形態では、二重特異性化合物は、2日半にわたり1日2回(BID)(合計5回の投与)、または2日にわたり1日1回(QD)(合計2回の投与)投与され得る。他の実施形態では、二重特異性化合物は、5日間にわたり1日1回(QD)投与され得る。
【0093】
併用療法
式(I)の二重特異性化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体は、神経変性疾患および神経変性障害の治療では、少なくとも1つの他の活性剤と組み合わせてまたはそれと同時に使用され得る。この文脈では、用語「組み合わせて」および「同時に」は、薬剤が同時投与されることを意味し、これは、同じもしくは別個の剤形によって、および同じもしくは異なる投与様式によって、または連続して、例えば、同じ治療レジメンの一部として、もしくは連続した治療レジメンとして、実質的に同時の投与を含む。したがって、連続して投与された場合、第2の化合物の投与の開始時に、2つの化合物のうちの第1のものは、場合によっては、治療部位で有効濃度で依然として検出可能である。順序および時間間隔は、それらが一緒に作用することができるように決定され得る(例えば、それらが他の方法で投与された場合よりも増加した利益を提供するように相乗的に)。例えば、治療薬は、異なる時点で同時に、または任意の順序で連続して投与され得る。ただし、同時に投与されない場合、それらは、所望の治療効果を提供するために時間的に十分に接近して投与され得、これは、相乗的な様式であり得る。したがって、これらの用語は、正確に同時に活性剤を投与することに限定されない。
【0094】
いくつかの実施形態では、治療レジメンは、疾患または障害の治療に使用することが知られている1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて、式(I)の二重特異性化合物または薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を投与することを含み得る。追加の治療剤の投与量は、公知の用量もしくは推奨される用量と同じであるか、またはそれよりも低くてもよい。Hardman et al.,eds.,Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics,10th ed.,McGraw-Hill,New York,2001;Physician’s Desk Reference 60th ed.,2006を参照されたい。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物、および追加の治療剤は、5分未満間隔、30分未満間隔、1時間未満間隔、約1時間間隔、約1~約2時間間隔、約2時間~約3時間間隔、約3時間~約4時間間隔、約4時間~約5時間間隔、約5時間~約6時間間隔、約6時間~約7時間間隔、約7時間~約8時間間隔、約8時間~約9時間間隔、約9時間~約10時間間隔、約10時間~約11時間間隔、約11時間~約12時間間隔、約12時間~18時間間隔、18時間~24時間間隔、24時間~36時間間隔、36時間~48時間間隔、48時間~52時間間隔、52時間~60時間間隔、60時間~72時間間隔、72時間~84時間間隔、84時間~96時間間隔、または96時間~120時間間隔で投与され得る。2つ以上の治療剤は、同じ患者の診察の中で投与され得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、レボドパ、シネメット、サフィナミド、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、アマンタジン、アーテン、コゲンチン、エルデプリル、ゼラパー(Zelapar)およびアジレクト(例えば、パーキンソン病の場合)のうちの1つ以上と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、アリセプト、イクセロン、ラザダイン、ナメンダおよびナムザリック(Namzaric)(例えば、アルツハイマー病の場合)のうちの1つ以上と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、ゼナジン(Xenazine)、ハルドール、クロルプロマジン、リスパダール、セロクエル、ケプラ、クロノピン、セレクサ、プロザック、エピトールおよびデパコン(例えば、ハンチントン病の場合)のうちの1つ以上と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性化合物は、トラゾドン、ゾロフト、ルボックス、ジプレキサおよびセロクエル(例えば、ピック症候群の場合)のうちの1つ以上と組み合わせて使用され得る。神経変性疾患および神経変性障害を治療することが知られている他の活性剤の代表的な例には、ドーパミン作動性治療(例えば、カルビドパ-レボドパ、プラミペキソール(ミラペックス)、ロピニロール(レキップ)およびロチゴチン(ニュープロ、パッチとして与えられる))が挙げられる。PDおよび運動障害のためのアポモルヒネおよびモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害剤(例えば、セレギリン(エルデプリル、ゼラパー)、ラサギリン(アジレクト)およびサフィナミド(ザダゴ(Xadago))、認知障害のためのコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ベンズトロピン(コゲンチン)またはトリヘキシフェニジル)、認知症の行動症状および心理症状のための抗精神病薬、ならびに疾患の発症を遅らせることを目的とした薬剤、例えば、ALS、小脳性運動失調およびハンチントン病のためのリルゾール、アルツハイマー病のための非ステロイド性抗炎症薬、およびパーキンソン病の神経保護のためのカフェインA2A受容体アンタゴニストおよびCERE-120(アデノ随伴ウイルス血清型2-ニュールツリン)。
【0097】
医薬品キット
本発明の二重特異性化合物、および/またはそれらを含有する組成物は、キットまたは医薬品システムに組み立てられ得る。本発明のこの態様によるキットまたは医薬品システムは、式(I)の二重特異性化合物またはその医薬組成物を収容する1つ以上の容器、例えば、バイアル、チューブ、アンプルまたはボトルをその中に密に閉じ込めている箱、カートン、チューブなどのような担体またはパッケージを含む。本発明のキットまたは医薬品システムはまた、化合物および組成物を使用するための印刷された説明書を含み得る。
【0098】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図しているが、特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定することを意図していない以下の実施例を考慮してさらに理解されるであろう。
【実施例
【0099】
実施例1:2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オールの合成
【化49】
【0100】
N-(4-メトキシフェニル)-4-ニトロベンズアミド
【0101】
4-ニトロ安息香酸(30.0g、0.18mol)、4-メトキシアニリン(22.1g、0.18mol)、HATU(81.9g、0.22mol)およびDIPEA(46.4g、0.36mol)の混合物のDCM(2.0L)溶液を室温(rt)で撹拌した。16時間後、液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)では、出発物質の完全な変換が示された。混合物を希HCl溶液(2M、800mL)、飽和NaHCO溶液(1000mL)およびブライン(500mL)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM:MeOH=10:1)によって精製して、表題化合物を黄色固体として得た(45g、収率92%)。LCMS(m/z):273[M+H]
【0102】
N-(4-メトキシフェニル)-4-ニトロベンゾチオアミド
【0103】
N-(4-メトキシフェニル)-4-ニトロベンズアミド(23g、80mmol)およびローソン試薬(16.12g、40mmol)の混合物のトルエン(200mL)溶液を110℃で撹拌した。16時間後、LCMSでは、出発物質の完全な変換が示された。混合物を濃縮して有機溶媒を除去し、残渣をDCM(500mL)で希釈し、希HCl溶液(1M、500mL)、飽和NaHCO溶液(800mL)およびブライン(500mL)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、PE:EtOAc=2:1)によって精製して、表題化合物を黄色固体として得た(17g、収率59%)。LCMS(m/z):289[M+H]
【0104】
6-メトキシ-2-(4-ニトロフェニル)ベンゾ[d]チアゾール
【0105】
N-(4-メトキシフェニル)-4-ニトロベンゾチオアミド(20g、103mmol)およびKFe(CN)(133.61g、412mmol)の混合物を含むNaOH溶液(10%、800mL)およびEtOH(30mL)を還流状態で加熱した。16時間後、LCMSでは、出発物質の完全な変換が示された。混合物を室温(rt)に冷却し、飽和NaSO溶液(200mL)で希釈し、DCM(500mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機物をブライン(500mL)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM:MeOH=10:1)によって精製して、表題化合物を黄色固体として得た(9.2g、収率31%)。LCMS(m/z):286.9[M+H]
【0106】
4-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリン
【0107】
6-メトキシ-2-(4-ニトロフェニル)ベンゾ[d]チアゾール(8.1g、28.3mmol)、Fe粉末(7.9g、141.4mmol)、NHCl(9.08g、169.7mmol)および濃HCl溶液(14.15mL、169.7mmol)の混合物のEtOH(500mL)溶液を80℃で撹拌した。16時間後、LCMSでは、出発物質の完全な変換が示された。混合物を室温に冷却し、Celite(登録商標)のパッドを通して濾過した。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM:MeOH=30:1)によって精製して、表題化合物を褐色固体として得た(8.2g、収率117%)。LCMS(m/z):257[M+H]
【0108】
4-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリン
【0109】
4-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリン(6.1g、23.8mmol)、(HCHO)(4.28g、142.8mmol)およびMeONa(7.71g、142.8mmol)の混合物のMeOH(500mL)溶液を還流状態で2時間撹拌し、次いで、NaBH(7.2g、190.4mmol)を加え、混合物を室温で30分間撹拌し、次いで、加熱して還流した。16時間後、LCMSでは、出発物質の完全な変換が示された。混合物を室温に冷却し、水(1000mL)で希釈し、DCM(500mL×3)を用いて抽出した。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗表題化合物を褐色固体として得(6.8g、収率105%)、これを精製することなく次の工程で直接使用した。LCMS(m/z):271[M+H]
【0110】
2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール
【0111】
4-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリン(800mg、2.96mmol)およびBBr(DCM中1M、29.6mL、29.6mmol)の混合物のDCE(500mL)溶液を-10℃で30分間撹拌し、次いで、室温で撹拌した。3時間後、LCMSでは、出発物質の完全な変換が示された。混合物を真空中で濃縮した。pH8に達するまで飽和NaHCO溶液を用いて残渣を処理し、得られた混合物をDCM(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をブライン(300mL)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM:MeOH=10:1)によって精製して、表題化合物を褐色固体として得た(500mg、収率66%)。H NMR(DMSO-d,400 MHz):δ 7.72(br,3H),7.31(br,1H),6.91(br,1H),6.63(br,2H),6.36(br,1H),2.74(br,3H).LCMS(m/z):257.1 [M+H]
【0112】
実施例2:2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-(6-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イルオキシ)ヘキシルオキシ)イソインドリン-1,3-ジオン(9)の合成
【化50】
【0113】
4-(6-ブロモヘキシルオキシ)-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン-1,3-ジオン
【0114】
2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-ヒドロキシイソインドリン-1,3-ジオン(440mg、1.61mmol)、1,6-ジブロモヘキサン(1176mg、4.82mmol)、NaHCO(676mg、8.05mmol)およびKI(134mg、0.81mmol)の混合物のDMF(21mL)溶液を60℃で撹拌した。6時間後、LCMSでは、出発物質の完全な変換が示された。混合物を水(200mL)で希釈し、DCM(100mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機物を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM:MeOH=30:1)によって精製して、表題化合物を褐色油状物として得た(576mg収率82%)。LCMS(m/z):438[M+H]
【0115】
2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-(6-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イルオキシ)ヘキシルオキシ)イソインドリン-1,3-ジオン
【0116】
4-(6-ブロモヘキシルオキシ)-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン-1,3-ジオン(576mg、1.32mmol)、2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(240mg、0.94mmol)およびKCO(389mg、2.82mmol)の混合物のMeCN(21mL)溶液を80℃で撹拌した。3時間後、LCMSでは、出発物質の完全な変換が示された。混合物を濃縮して、有機溶媒を除去した。残渣を水(100mL)で希釈し、DCM(100mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、分取HPLC(C18カラム、CHCN/HO、0.05%TFAを含有)によって精製して、表題化合物を黄色固体として得た(8.8mg)。H NMR(DMSO-d,400 MHz):δ 8.43(br,1H),7.78-7.74(m,5H),7.57(d,J=4.0 Hz,1H),7.51(d,J=8.0 Hz,1H),7.43(d,J=4.0 Hz,1H),7.03(dd,J=12.0,4.0 Hz,1H),6.64(d,J=8.0 Hz,2H),6.38(d,J=4.0 Hz,1H),5.32(t,J=4.0 Hz,1H),5.07(dd,J=12.0,4.0 Hz,1H),4.22(t,J=6.0 Hz,3H),4.04(t,J=6.0 Hz,2H),2.75(d,J=8.0 Hz,3H),2.00(m,3H),1.79(br,4H),1.53-1.30(m,4H),0.85(t,J=6.0 Hz,1H).LCMS(m/z):612.9 [M+H]
【0117】
実施例3:2-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イルオキシ)-N-(2-(2-(2-(2-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミド(7)の合成
【化51】
【0118】
2,2-ジメチル-4-オキソ-3,8,11,14-テトラオキサ-5-アザヘキサデカン-16-イル メタンスルホネート
【0119】
tert-ブチル(2-(2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバメート(500mg、1.71mmol)、MsCl(391mg、3.41mmol)およびDIPEA(662mg、5.13mmol)の混合物のDCM(20mL)溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、混合物をDCM(200mL)で希釈し、飽和NaCO溶液(150mL)およびブライン(150mL×2)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗表題化合物を黄色がかった油状物として得(538mg、収率85%)、これをさらに精製することなく次の工程で直接使用した。LCMS(m/z):272[M+H-100]、394[M+Na]
【0120】
tert-ブチル2-(2-(2-(2-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチルカルバメート
【0121】
2,2-ジメチル-4-オキソ-3,8,11,14-テトラオキサ-5-アザヘキサデカン-16-イル メタンスルホネート(538mg、1.45mmol)、2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(120mg、0.47mmol)およびKCO(200mg、1.45mmol)の混合物のMeCN(25mL)溶液を80℃で16時間撹拌した。次いで、混合物をDCM(200mL)で希釈し、ブライン(200mL×2)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、PE:EA=10:1~1:1)によって精製して、表題化合物を褐色固体として得た(220mg、90%)。LCMS(m/z):532[M+H]
【0122】
4-(6-(2-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-N-メチルアニリン
【0123】
tert-ブチル2-(2-(2-(2-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチルカルバメート(220mg、0.41mmol)およびTFA(804mg、8.29mmol)の混合物のDCM(12mL)溶液を室温で4時間撹拌した。次いで、混合物をDCM(100mL)で希釈し、飽和NaCO溶液(100mL)およびブライン(100mL)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、粗表題化合物を黄色固体として得(150mg、収率84%)、これをさらに精製することなく次の工程で直接使用した。LCMS(m/z):432[M+H]
【0124】
2-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イルオキシ)-N-(2-(2-(2-(2-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミド
【0125】
4-(6-(2-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-N-メチルアニリン(150mg、0.35mmol)、2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(139mg、0.42mmol)、HATU(265mg、0.70mmol)およびDIPEA(225mg、1.74mmol)の混合物のDMF(12mL)溶液を室温で30分間撹拌した。次いで、混合物をブライン(100mL)で希釈し、DCM(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣を分取HPLC(C18カラム、CHCN/HO、0.05%TFAを含有)によって精製して、表題化合物をオフホワイト色固体として得た(65.8mg)。H NMR(DMSO-d,400 MHz):δ 11.11(s,1H),7.99(t,J=6.0 Hz,1H),7.82-7.74(m,4H),7.59(d,J=4.0 Hz,1H),7.48(d,J=8.0 Hz,1H),7.38(d,J=8 Hz,1H),7.04(dd,J=8.0,4.0 Hz,1H),6.63(d,J=8.0 Hz,2H),6.39(d,J=8.0 Hz,1H),5.11(dd,J=12.0,4.0 Hz,1H),4.78(s,2H),4.16-4.14(m,2H),3.78-3.70(m,2H),3.65-3.40(m,12H),2.92-2.85(m,1H),2.75(d,J=8.0 Hz,3H),2.60-2.50(m,2H),2.08-2.00(m,1H).LCMS(m/z):745.9 [M+H]
【0126】
実施例4:2-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イルオキシ)-N-(5-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]-チアゾール-6-イルオキシ)ペンチル)アセトアミド(8)の合成
【化52】
【0127】
tert-ブチル 5-ヒドロキシペンチルカルバメート
【0128】
5-アミノペンタン-1-オール(2100mg、20.36mmol)、BocO(6664mg、30.54mmol)およびDIPEA(7898mg、61.08mmol)の混合物のDCM(35mL)溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、混合物をDCM(200mL)で希釈し、飽和NaCO溶液(150mL)およびブライン(150mL×2)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗表題化合物を褐色油状物として得(4.5g)、これを精製することなく次の工程で直接使用した。LCMS(m/z):226[M+Na]
【0129】
tert-ブチル 5-ヒドロキシペンチルカルバメート
【0130】
tert-ブチル 5-ヒドロキシペンチルカルバメート(4.50g、22.17mmol)、TsCl(6.34g、33.25mmol)およびDIPEA(8.60mg、66.51mmol)の混合物のDCM(65mL)溶液を室温で16時間撹拌した。混合物を真空中で濃縮し、残渣をDCM(200mL)で希釈し、ブライン(200mL×2)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、PE:EA=10:1~1:10)によって精製して、表題化合物を黄色油状物として得た(2.3g、30%)。LCMS(m/z):258[M+H-100]、380[M+Na]
【0131】
tert-ブチル 5-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イルオキシ)ペンチルカルバメート
【0132】
tert-ブチル 5-ヒドロキシペンチルカルバメート(335mg、0.94mmol)、2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(120mg、0.47mmol)およびKCO(195mg、1.41mmol)の混合物のDMF(12mL)溶液を90℃で4時間撹拌した。混合物を真空中で濃縮し、残渣をDCM(100mL)で希釈し、ブライン(100mL×3)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、粗表題化合物を淡黄色固体として得(167mg、収率80%)、これをさらに精製することなく次の工程で直接使用した。LCMS(m/z):442[M+H]
【0133】
4-(6-(5-アミノペンチルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-N-メチルアニリン
【0134】
tert-ブチル 5-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イルオキシ)ペンチルカルバメート(167mg、0.38mmol)およびTFA(433mg、3.8mmol)の混合物のDCM(35mL)溶液を室温で2時間撹拌した。混合物を真空中で濃縮し、残渣をDCM(100mL)で希釈し、飽和NaCO溶液(100mL)およびブライン(100mL)を用いて洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、粗表題化合物を褐色固体として得(105mg、収率81%)、これをさらに精製することなく次の工程で直接使用した。LCMS(m/z):342[M+H]
【0135】
2-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イルオキシ)-N-(5-(2-(4-(メチルアミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-イルオキシ)ペンチル)アセトアミド
【0136】
4-(6-(5-アミノペンチルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-N-メチルアニリン(105mg、0.31mmol)、2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(134mg、0.40mmol)、HATU(236mg、0.62mmol)およびDIPEA(121mg、0.93mmol)の混合物のDMF(12mL)溶液を室温で30分間撹拌した。混合物をブライン(100mL)で希釈し、DCM(100mL×)を用いて抽出した。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣を分取HPLC(C18カラム、CHCN/HO、0.05%TFAを含有)によって精製して、表題化合物を黄色固体として得た(53.3mg)。H NMR(DMSO-d,400 MHz):δ 11.12(s,1H),8.00(t,J=6.0 Hz,1H),7.85-7.70(m,4H),7.58(d,J=4.0 Hz,1H),7.48(d,J=4.0 Hz,1H),7.40(d,J=8 Hz,1H),7.03(dd,J=8.0,4.0 Hz,1H),6.64(d,J=8.0 Hz,2H),6.40(d,J=8.0 Hz,H),5.12(dd,J=12.0,4.0 Hz,1H),4.78(s,2H),4.02(t,J=6.0 Hz,2H),3.20-3.17(m,2H),2.90-2.80(m,1H),2.75(d,J=8.0 Hz,3H),2.60-2.50(m,2H),2.04-2.02(m,1H),1.77-1.73(m,2H),1.55-1.43(m,4H).
【0137】
実施例5:2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)-N-(2-(2-(2-(2-((4-(6-ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェニル)アミノ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミド(10)の合成
【化53】
【0138】
化合物4-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリン(2g、7.8mmol)の混合物のDCM(40mL)溶液をBBr(39mL、1mol/L)に-78℃で滴下した。混合物を室温で16時間撹拌し、真空中で濃縮した。残渣をEtOAc(100mL)と水(100mL)とに分配した。水層をEtOAc(300mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をCombiFlash(登録商標)(MeOH:DCM=1:20)によって精製して、2-(4-アミノフェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オールを黄色固体として得た(1.2g、64%)。LCMS(ESI):m/z=243.1(M+H);RT=1.48分。
【0139】
2-(4-アミノフェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(1g、4.1mmol)、CsCO(2.66g、8.2mmol)の混合物のDMF(10mL)を室温でBnBr(701mg、4.1mmol)に滴下した。混合物を室温で16時間撹拌した。混合物をEtOAc(50mL)と水(50mL)とに分配した。水層をEtOAc(100mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をCombiFlash(登録商標)(MeOH:DCM=1:20)によって精製して、4-(6-(ベンジルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリンを黄色固体として得た(1.2g、87%)。LCMS(ESI):m/z=333.1(M+H);RT=1.95分。
【0140】
4-(6-(ベンジルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリン(1.2g、3.6mmol)、KI(1.2g、7.2mmol)、アジド-PEG4-Tos(7.2mmol)およびKCO(994mg、7.2mmol)の混合物のDMF(10mL)溶液を室温で3日間撹拌した。混合物をEtOAc(50mL)と水(50mL)とに分配した。水層をEtOAc(100mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をCombiFlash(登録商標)(MeOH:DCM=1:20)によって精製して、N-(2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-4-(6-(ベンジルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリンを黄色固体として得た(0.6g、31%)。LCMS(ESI):m/z=534.2(M+H);RT=2.07分。
【0141】
N-(2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)-4-(6-(ベンジルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリン(0.6g、1.13mmol)の混合物のMeOH(20mL)溶液に、Pd/C(10%、0.2g)を加えた。混合物をH(1atm)下、室温で16時間撹拌し、濾過した。濾液を濃縮し、粗物質をCombiFlash(登録商標)(MeOH:DCM=1:20)によって精製して、2-(4-((2-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)アミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オールを黄色固体として得た(0.3g、31%)。LCMS(ESI):m/z=417.2(M+H);RT=1.39分。
【0142】
2-(4-((2-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)アミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(0.1g、0.24mmol)、2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(80mg、0.24mmol)、EDCI(46mg、0.24mmol)、HOBT(36mg、0.26mmol)の混合物のDMF(2mL)溶液を室温で一晩撹拌した。水(50mL)を反応混合物に加え、反応混合物を濾過して、表題化合物を黄色固体として得た(20mg、11%)。H NMR(400 MHz,DMSO)δ 11.14(s,1H),9.70(s,1H),8.01(s,1H),7.87-7.75(m,1H),7.70(dd,J=8.7,3.2 Hz,3H),7.49(d,J=7.2 Hz,1H),7.39(d,J=8.6 Hz,1H),7.31(d,J=2.3 Hz,1H),6.90(dd,J=8.7,2.4 Hz,1H),6.68(d,J=8.7 Hz,2H),6.34(s,1H),5.12(dd,J=12.8,5.3 Hz,1H),4.78(s,2H),3.60-3.51(m,10H),3.46-3.36(m,2H),3.29(dd,J=21.2,5.5 Hz,4H),2.88(dd,J=21.7,9.9 Hz,1H),2.67-2.54(m,2H),2.09-1.97(m,1H).LCMS(ESI):m/z=732.1(M+H)+;RT=1.71分。
【0143】
実施例6:2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)-N-(6-((4-(6-ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェニル)アミノ)ヘキシル)アセトアミド(11)の合成
【化54】
【0144】
2-ブロモ-6-メトキシベンゾ[d]チアゾール(10g、41.1mmol)、(4-アミノフェニル)ボロン酸(6.76g、49.32mmol)、NaCO(11.34g、82.2mmol)およびPd(PPh(2.36g、2.05mmol)の混合物の1,4-ジオキサン溶液をN雰囲気下で100℃に18時間かけて加熱した。混合物をEtOAc(500mL)と水(100mL)とに分配した。水層をEtOAc(300mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をCombiFlash(登録商標)(PE:EtOAc=1:20から100%EtOAc)によって精製して、4-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリンを黄色固体として得た(7g、66%)。LCMS(ESI):m/z=257.2(M+H)+;RT=1.30分、純度=90%。
【0145】
4-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アニリン(1g、3.90mmol)のDMF溶液に、NaH(280mg、11.7mmol)を室温で加えた。30分後、tert-ブチル(6-ブロモヘキシル)カルバメート(1.30g、4.68mmol)を加え、反応混合物を18時間撹拌した。混合物をEtOAc(500mL)と水(100mL)とに分配した。水層をEtOAc(300mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をCombiFlash(登録商標)(PE:EtOAc=1:20から100%EtOAc)によって精製して、tert-ブチル(6-((4-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェニル)アミノ)ヘキシル)カルバメートを黄色固体として得た(250mg、10%)。LCMS(ESI):m/z=456.2(M+H)+;RT=1.30分、純度=80%。
【0146】
tert-ブチル(6-((4-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェニル)アミノ)ヘキシル)カルバメート(250mg、0.54mmol)のDCM溶液に、BBr(280mg、9.6mmol)を-78℃で加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、真空中で濃縮した。混合物をEtOAc(500mL)と水(100mL)とに分配した。水層をEtOAc(300mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をCombiFlash(登録商標)(PE:EtOAc=1:20から100%EtOAc)によって精製して、2-(4-((6-アミノヘキシル)アミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オールを黄色固体として得た(80mg、44%)。LCMS(ESI):m/z=341.2(M+H)+;RT=1.30分、純度=90%。
【0147】
2-(4-((6-アミノヘキシル)アミノ)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール-6-オール(80mg、0.23mmol)、2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(93mg、0.28mmol)、EDCI(80mg、0.46mmol)、HOBT(55mg、0.46mmol)およびDMAP(56mg、0.46mmol)の混合物のDMF(20mL)溶液を室温で3時間撹拌した。溶液を水で希釈し、EtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を分取HPLCによって精製して、表題化合物を白色固体として得た(30mg、27%)。LCMS(ESI):m/z=656.6(M+H)+;RT=1.64分、純度=98%。H NMR(400 MHz,DMSO)δ 11.14(s,1H),9.69(s,1H),7.96(s,1H),7.80(t,J=7.8 Hz,1H),7.70(dd,J=8.5,4.2 Hz,3H),7.49(d,J=7.2 Hz,1H),7.39(d,J=8.5 Hz,1H),7.31(d,J=2.0 Hz,1H),6.90(d,J=8.6 Hz,1H),6.64(d,J=8.6 Hz,2H),6.32(s,1H),5.12(dd,J=12.9,5.2 Hz,1H),4.78(s,2H),3.11(dd,J=40.7,5.6 Hz,4H),2.96-2.73(m,1H),2.56(dd,J=20.3,11.8 Hz,2H),2.05(s,1H),1.65-1.30(m,8H).
【0148】
実施例7:(E)-4-(4-メトキシスチリル)-N-メチルアニリン(対照B)の合成
【化55】
【0149】
ジエチル(4-ニトロベンジル)ホスホネート(8.0g、30mmol)のDMF(60mL)溶液に、NaOMe(3.24g、60mmol)および18-Crown-6(3.17g、12mmol)を加えた。反応混合物を室温で5分間撹拌し、4-メトキシベンズアルデヒド(4.9g、36mmol)のDMF(25mL)溶液を0℃で滴下した。混合物を室温で1時間、次いで120℃で20時間撹拌した。混合物を水を用いてクエンチし、沈殿物を濾過し、水を用いて洗浄して、(E)-1-メトキシ-4-(4-ニトロスチリル)ベンゼンを黄色固体として得た(3.0g、39%)。
【0150】
(E)-1-メトキシ-4-(4-ニトロスチリル)ベンゼン(3.0g、11.8mmol)の混合物を含む飽和NHCl溶液(40mL)およびMeOH(100mL)に、Fe(6.6g、118mmol)を室温で加えた。反応混合物を還流状態で3時間撹拌した。混合物をCelite(登録商標)のパッドを通して濾過し、MeOHを用いて洗浄した。濾液を真空中で濃縮し、水で希釈した。混合物を飽和NaHCO溶液を用いてpH=8に塩基性化し、EtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、(E)-4-(4-メトキシスチリル)アニリンを淡赤色固体として得た(1.6g、60%)。
【0151】
(E)-4-(4-メトキシスチリル)アニリン(200mg、0.89mmol)および(CHO)(214mg、7.1mmol)の混合物のMeOH(20mL)溶液に、NaOMe(335mg、6.2mmol)を室温で加えた。反応混合物をN下、還流状態で3時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、NaBH(260mg、7.1mmol)を加えた。反応混合物を還流状態で1時間撹拌し、次いで、水で希釈した。混合物をEtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を分取HPLCによって精製して、表題化合物を白色固体として得た(75mg、26%)。H NMR(400 MHz,DMSO)δ 7.44(d,J=8.7 Hz,2H),7.30(d,J=8.6 Hz,2H),6.96-6.80(m,4H),6.52(d,J=8.5 Hz,2H),5.84(s,1H),3.75(s,3H),2.69(s,3H).
【0152】
実施例8:(E)-2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)-N-(2-(2-(2-(4-(4-(メチルアミノ)スチリル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミド(12)の合成
【化56】
【0153】
2-(4-ニトロフェニル)酢酸(18g、100mmol)および4-ヒドロキシベンズアルデヒド(24g、200mmol)の混合物のピペリジン(6mL)溶液を140℃で2時間撹拌した。固体をEtOAcを用いて洗浄して、(E)-4-(4-ニトロスチリル)フェノールを赤色固体として得た(23.6g、98%)。
【0154】
(E)-4-(4-ニトロスチリル)フェノール(1.0g、4.17mmol)、tert-ブチル(2-(2-(2-ブロモエトキシ)エトキシ)エチル)カルバメート(1.3g、4.17mmol)およびKCO(1.15g、8.34mmol)の混合物のDMF(100mL)溶液を120℃で3時間撹拌した。混合物を水で希釈し、EtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムを通して(EtOAc/PE=2/3を用いて溶出)精製して、Int-11を白色固体として得た(950mg、48%)。
【0155】
tert-ブチル(E)-(2-(2-(2-(4-(4-ニトロスチリル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバメート(950mg、2.0mmol)の混合物を含む飽和NHCl溶液(40mL)およびMeOH(100mL)に、Fe(1.13g、20.0mmol)を室温で加えた。反応混合物を還流状態で3時間撹拌した。混合物をCelite(登録商標)のパッドを通して濾過し、MeOHを用いて洗浄した。濾液を真空中で濃縮し、水で希釈した。混合物を飽和NaHCO溶液を用いてpH=8に塩基性化し、EtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、tert-ブチル(E)-(2-(2-(2-(4-(4-アミノスチリル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバメートを淡赤色固体として得た(880mg、98%)。
【0156】
tert-ブチル(E)-(2-(2-(2-(4-(4-アミノスチリル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバメート(880mg、1.99mmol)および(CHO)(477mg、15.9mmol)の混合物のMeOH(100mL)溶液に、NaOMe(750mg、13.9mmol)を室温で加えた。反応混合物をN下、還流状態で3時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、NaBH(605mg、15.9mmol)を加えた。反応混合物を還流状態で1時間撹拌し、水で希釈した。混合物をEtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムを通して精製し(EtOAc/PE=1/2を用いて溶出)、tert-ブチル(E)-(2-(2-(2-(4-(4-(メチルアミノ)スチリル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバメートを白色固体として得た(500mg、50%)。
【0157】
tert-ブチル(E)-(2-(2-(2-(4-(4-(メチルアミノ)スチリル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバメート(500mg、1.1mmol)のDCM(10mL)溶液に、HClのジオキサン(10mL)溶液を室温で加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を真空中で濃縮し、水で希釈し、飽和NaHCOを用いてpH=8に塩基性化した。沈殿物を濾別し、水を用いて洗浄して、(E)-4-(4-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)スチリル)-N-メチルアニリンを白色固体として得た(390mg、100%)。
【0158】
(E)-4-(4-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)スチリル)-N-メチルアニリン(200mg、0.56mmol)、2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(186mg、0.56mmol)、EDCI(161mg、0.84mmol)、HOBT(113mg、0.84mmol)およびDMAP(137mg、1.12mmol)の混合物のDMF(20mL)溶液を室温で3時間撹拌した。溶液を水で希釈し、EtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を分取HPLCによって精製して、表題化合物を白色固体として得た(100mg、27%)。H NMR(400 MHz,DMSO)δ 11.14(s,1H),8.02(s,1H),7.86-7.73(m,1H),7.49(d,J=7.3 Hz,1H),7.40(t,J=7.9 Hz,3H),7.30(d,J=8.6 Hz,2H),6.95-6.78(m,4H),6.52(d,J=8.6 Hz,2H),5.83(d,J=4.9 Hz,1H),5.12(dd,J=13.0,5.3 Hz,1H),4.78(s,2H),4.15-4.03(m,2H),3.82-3.68(m,2H),3.62-3.53(m,4H),3.48(t,J=5.6 Hz,2H),2.99-2.79(m,1H),2.69(d,J=4.8 Hz,3H),2.64-2.52(m,4H),2.04(s,1H).
【0159】
実施例9:(E)-6-(4-(4-(メチルアミノ)スチリル)フェノキシ)ヘキシル2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)アセテート(13)の合成
【化57】
【0160】
(E)-4-(4-ニトロスチリル)フェノール(6.0g、24.9mmol)、6-ブロモヘキサン-1-オール(4.48g、24.9mmol)およびKCO(10.4g、75mmol)の混合物のCHCN(300mL)溶液を80℃で20時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、沈殿物を濾別し、EtOAcを用いて洗浄して、(E)-6-(4-(4-ニトロスチリル)フェノキシ)ヘキサン-1-オールを淡黄色固体として得た(5.0g、59%)。
【0161】
(E)-6-(4-(4-ニトロスチリル)フェノキシ)ヘキサン-1-オール(5.0g、14.7mmol)の混合物を含む飽和NHCl溶液(40mL)およびMeOH(200mL)に、Fe(8.2g、147mmol)を室温で加えた。反応混合物を還流状態で3時間撹拌した。混合物をCelite(登録商標)のパッドを通して濾過し、MeOHを用いて洗浄した。濾液を真空中で濃縮し、水で希釈した。混合物を飽和NaHCO溶液を用いてpH=8に塩基性化し、EtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、(E)-6-(4-(4-アミノスチリル)フェノキシ)ヘキサン-1-オールを淡赤色固体として得た(3.2g、70%)。
【0162】
(E)-6-(4-(4-アミノスチリル)フェノキシ)ヘキサン-1-オール(3.2g、10.3mmol)および(CHO)(2.47g、82.3mmol)の混合物のMeOH(200mL)溶液に、NaOMe(3.9g、72.1mmol)を室温で加えた。反応混合物をN下、還流状態で3時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、NaBH(3.13g、82.3mmol)を加えた。反応混合物を還流状態で1時間撹拌し、水で希釈した。混合物をEtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムを通して精製して(EtOAc/PE=1/2を用いて溶出)、(E)-6-(4-(4-(メチルアミノ)スチリル)フェノキシ)ヘキサン-1-オールを白色固体として得た(3.0g、90%)。
【0163】
(E)-6-(4-(4-(メチルアミノ)スチリル)フェノキシ)ヘキサン-1-オール(182mg、0.56mmol)、2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(186mg、0.56mmol)、EDCI(161mg、0.84mmol)、HOBT(113mg、0.84mmol)およびDMAP(137mg、1.12mmol)の混合物のDMF(20mL)溶液を室温で3時間撹拌した。溶液を水で希釈し、EtOAc(100mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を分取HPLCによって精製して、表題化合物を白色固体として得た(90mg、25%)。H NMR(400 MHz,DMSO)δ 11.13(s,1H),7.79(dd,J=8.4,7.4 Hz,1H),7.49(d,J=7.2 Hz,1H),7.42(d,J=8.7 Hz,3H),7.30(d,J=8.6 Hz,2H),6.98-6.78(m,4H),6.52(d,J=8.6 Hz,2H),5.87(s,1H),5.21-5.05(m,3H),4.15(t,J=6.5 Hz,2H),3.94(t,J=6.4 Hz,2H),2.97-2.80(m,1H),2.69(s,3H),2.62-2.52(m,2H),2.11-1.96(m,1H),1.66(ddd,J=22.0,21.4,15.0 Hz,4H),1.47-1.31(m,4H).
【0164】
実施例10:(E)-1-(4-メトキシベンジル)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オン(対照A)の合成
【化58】
【0165】
2-オキシインドール(2.64g、20mmol)および3-(4-ニトロフェニル)プロパ-2-エナール(3.53g、20mmol)の酢酸(50mL)および37%HCl(1mL)溶液を還流状態で3時間撹拌した。反応物を室温に冷却し、水(500mL)を加えた。固体を濾過し、メタノール中で再結晶化して、Int-18を赤色固体として得た(3g、51%)。LCMS(ESI):m/z=293.1(M+H);RT=1.83分。
【0166】
60%NaH(1.5mmol)に、(E)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オン(1.0mmol)のTHF(5mL)溶液を0℃で加えた。15分後、4-メトキシベンジルブロミド(3mmol)を加え、8時間撹拌した。反応混合物をEtOAc(75mL)で希釈し、有機層を水(50mL×2)および飽和NaCl(50mL)を用いて洗浄し、NaSO上で乾燥させた。粗生成物を真空中で濃縮し、ヘキサン:DCM:EtOAc(10:10:3、v/v/v)を用いて溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を得た。H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.28(d,J=8.6 Hz,2H),7.84-7.68(m,4H),7.53(d,J=12.1 Hz,1H),7.27(s,1H),7.21(dd,J=18.1,13.4 Hz,3H),7.07(t,J=7.6 Hz,1H),6.85(d,J=8.5 Hz,2H),6.78(d,J=7.9 Hz,1H),4.92(s,2H),3.77(s,3H).LCMS(ESI):m/z=413.2(M+H);m/z=413.2(M+H);RT=2.04分。
【0167】
実施例11:3-(2-(2-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)-N-(2-(4-(((E)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)-2-オキソインドリン-1-イル)メチル)フェノキシ)エチル)プロパンアミド(1)の合成
【化59】
【0168】
p-(2-ブロモエトキシ)トルエン(10g、0.046mol)、NBS(12.28g、0.069mol)およびAIBN(1.0g)をCCl(50ml)に溶解し、3.5時間加熱して還流した。室温に冷却した後、反応混合物を飽和NaHCOおよびブラインを用いて洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、真空中で濃縮した。シリカゲル(石油エーテル:EtOAc=9:1)を通した即時濾過により、1-(2-ブロモエトキシ)-4-(ブロモメチル)ベンゼンを白色固体として得た(8g、59.2%)。
【0169】
(E)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オン(2.6g、9mmol)のTHF(50mL)溶液に、60%NaH(0.36g、27mmol)を0℃で加えた。15分後、1-(2-ブロモエトキシ)-4-(ブロモメチル)ベンゼン(8g、27mmol)を反応混合物に加え、48時間撹拌した。EtOAc(500mL)を加え、水(50mL×2)および飽和NaCl(50mL)を用いて洗浄し、NaSO上で乾燥させた。有機層を真空中で濃縮し、PE/EtOAc(10:3、v/v)を用いて溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、(E)-1-(4-(2-ブロモエトキシ)ベンジル)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オンを白色固体として得た(1.5g、33%)。
【0170】
(E)-1-(4-(2-ブロモエトキシ)ベンジル)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オン(1.5g、29mmol)およびNaN(0.4g、58mmol)の混合物のDMF(20mL)溶液を50℃で2時間撹拌した。反応混合物をEtOAc(50mL)と水(50mL)とに分配した。水層をEtOAc(50mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル(PE:EtOAc=5:1)によって精製して、(E)-1-(4-(2-アジドエトキシ)ベンジル)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オンを黄色固体として得た(1.1g、80%)。
【0171】
(E)-1-(4-(2-アジドエトキシ)ベンジル)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オン(1.1g、24mmol)およびPPh(1.23g、47mmol)の混合物のTHF:HO(10:1、30mL)溶液を50℃で24時間撹拌した。水層をEtOAc(50mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層をNaSO上で乾燥させた。有機層を真空中で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=5:1)によって精製して、(E)-1-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オンを白色固体として得た(500mg、47%)。
【化60】
【0172】
2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-ヒドロキシイソインドール-1,3-ジオン(0.54g、19.8mmol)、tert-ブチル12-ヒドロキシ-4,7,10-トリオキサドデカノエート(0.5g、18mmol)およびPPh(0.94g、36mmol)の混合物のDCM(20mL)溶液に、ジエチルアゾジカルボキシレート(0.62g、36mmol)を0℃で加えた。反応混合物を室温で8時間撹拌した。反応物を水(100mL)を用いてクエンチし、DCM(50mL×2)を用いて抽出し、NaSO上で乾燥させた。有機層を真空中で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=4:1)によって精製して、tert-ブチル3-(2-(2-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)プロパノエートを白色固体として得た(300mg、31%)。
【0173】
tert-ブチル 3-(2-(2-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)プロパノエート(0.3g、0.56mmol)の混合物のDCM:TFA(10:2、5mL)溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=20:1)によって精製して、3-(2-(2-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)プロパン酸を白色固体として得た(150mg、56%)。
【0174】
3-(2-(2-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)プロパン酸(150mg、0.3mmol)、(E)-1-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オン(110mg、0.25mmol)、HATU(285mg 0.75mmol)およびDIEA(96mg、0.75mmol)の混合物のDMF(10ml)溶液を室温で3時間撹拌した。混合物をEtOAc(50mL)と水(50mL)とに分配した。水層をEtOAc(50mL×2)を用いて抽出し、合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を分取HPLCによって精製して、表題化合物を赤色固体として得た(8mg、3.5%)。H NMR(400 MHz,DMSO)δ 11.12(s,1H),8.70(dd,1H),8.29(d,J=8.9 Hz,2H),8.08(s,1H),7.86(d,2H),7.82-7.61(m,3H),7.50(d,1H),7.44(d,1H),7.37-7.10(m,4H),7.02(t,1H),6.97(d,1H),6.89(d,2H),6.55(s,1H),5.08(dd,1H),4.88(s,2H),4.37-4.20(m,2H),3.91(t,2H),3.82-3.71(m,2H),3.57(dt,2H),3.48-3.42(m,4H),3.40-3.35(m,2H),3.32(s,2H),3.03-2.76(m,2H),2.70-2.54(m,2H),2.30(t,2H),2.08-1.86(m,2H).LCMS(ESI):m/z 902.0(M+H);RT=1.81分。
【0175】
実施例12:7-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)-N-(2-(4-(((E)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)-2-オキソインドリン-1-イル)メチル)フェノキシ)エチル)ヘプタンアミド(2)の合成
【化61】
【0176】
tert-ブチル7-ブロモヘプタノエート(0.5g、1.8mmol)、2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-ヒドロキシイソインドール-1,3-ジオン(0.6g、2.2mmol)およびKCO(0.745g、5.4mmol)の混合物のDMF(20mL)溶液を50℃で3時間撹拌した。混合物を水を用いて処理し、EtOAc(50mL×2)を用いて抽出し、NaSO上で乾燥させた。有機層を真空中で濃縮し、CombiFlash(登録商標)(PE:EtOAc=5:1)によって精製して、tert-ブチル 7-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)ヘプタノエートを白色固体として得た(300mg、31%)。
【0177】
tert-ブチル 7-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)ヘプタノエート(0.3g、0.56mmol)のDCM:TFA(10:2、5mL)溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=20:1)によって精製して、7-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)ヘプタン酸を白色固体として得た(200mg、75%)。
【0178】
7-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)ヘプタン酸(200mg、0.5mmol)、(E)-1-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル)-3-((E)-3-(4-ニトロフェニル)アリリデン)インドリン-2-オン(360mg、0.5mmol)、HATU(570mg 1.5mmol)およびDIEA(200mg、1.5mmol)の混合物のDMF(30mL)溶液を室温で3時間撹拌した。混合物をEtOAc(150mL)と水(150mL)とに分配した。水層をEtOAc(150mL×2)を用いて抽出した。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を分取HPLCによって精製して、表題化合物を赤色固体として得た(25mg、6%)。H NMR(400 MHz,DMSO)δ 11.12(s,1H),8.27(d,J=8.8 Hz,2H),8.10(dd,J=12.1,8.3 Hz,3H),8.01(dd,J=10.7,4.8 Hz,1H),7.98-7.91(m,1H),7.83-7.74(m,1H),7.56(d,J=15.3 Hz,1H),7.52-7.40(m,3H),7.27(t,J=8.2 Hz,3H),7.07(t,J=7.5 Hz,1H),6.98(d,J=7.9 Hz,1H),6.89(d,J=8.6 Hz,2H),5.08(dd,J=13.0,5.2 Hz,1H),4.88(s,2H),4.13(t,J=6.1 Hz,2H),3.92(t,J=5.5 Hz,2H),3.37(s,1H),3.32(s,1H),2.86(d,J=11.6 Hz,1H),2.70(d,J=24.1 Hz,1H),2.07(t,J=7.2 Hz,2H),1.74-1.60(m,2H),1.54-1.45(m,2H),1.41(s,2H),1.27(d,J=6.9 Hz,2H).LCMS(ESI):m/z 826.0(M+H);RT=1.98分。
【0179】
実施例13:細胞のCRBN標的結合データ。
化合物処理の1日前に、10%FBSを含有する1ウェル当たり50μLのFluoroBrite(商標)DMEM培地(Thermo Fisher Scientific A18967)を有する384ウェルプレートに、mCherryレポーターを含むBRD4BD2-GFPを安定に発現するHEK293T細胞を30~50%の集密度で播種した。0.5%DMSOに標準化したD300e Digital Dispenser(HP)を使用して、分解剤タイトレーション(titration)および100nM dBET6、
【化62】
を分注し、細胞とともに5時間インキュベートした。Acumen(TTP Labtech)を使用して、アッセイプレートを画像化した。実験を3連で行い、非線形フィット可変スロープモデル(GraphPad Software)を使用して、BRD4BD2-eGFP蓄積の50%の増加をもたらす濃度(IC50)の値を計算した。dBET6は、CRBNの公知の結合剤である。アッセイの結果から、本発明の化合物が細胞CRBN結合についてdBET6と競合したことが示された(図1A図1K)。これらのデータは、該化合物が、細胞に浸透し、標的タンパク質分解に必要なE3-リガーゼCRBNに結合することができることを示している。
【0180】
すべての特許刊行物および非特許刊行物は、本発明が関係する当業者の技能のレベルを示すものである。これらのすべての刊行物は、各個々の刊行物が参照により組み込まれるものとして具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0181】
本明細書の本発明は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、例示的な実施形態に多数の修正が加えられてもよく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の構成が考案され得ることを理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
【国際調査報告】