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特表2023-530951自動車の補機駆動装置のためのテンショナー及び当該テンショナーを含む補機駆動装置
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  • 特表-自動車の補機駆動装置のためのテンショナー及び当該テンショナーを含む補機駆動装置 図1
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  • 特表-自動車の補機駆動装置のためのテンショナー及び当該テンショナーを含む補機駆動装置 図20
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】自動車の補機駆動装置のためのテンショナー及び当該テンショナーを含む補機駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
F16H7/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577182
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 IB2021055921
(87)【国際公開番号】W WO2022003624
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】102020000015877
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514100304
【氏名又は名称】ダイコ・ヨーロッパ・エッセ・エッレ・エッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ペンナッツァ
(72)【発明者】
【氏名】エットーレ・ラミン
【テーマコード(参考)】
3J049
【Fターム(参考)】
3J049AA01
3J049BB05
3J049BB13
3J049BB14
3J049BB23
3J049BC03
3J049CA03
(57)【要約】
少なくとも、エンジン(2)の駆動シャフト(4)に接続された第1のプーリ(3)上に、且つ電気機械(7)に接続された第2のプーリ(5)上にベルト(8)を備える、内燃機関(2)の補機駆動装置のためのテンショナーであって、テンショナーは、電気機械のケーシング(13)に固定されるように構成されたベース(11)と、第1の軸(A1)回りでベース(11)に対して回転する第1のリング(15)と、第1の軸(A1)とは別の第2の軸(A2)の回りで第1のリング(15)に対して回転する第2のリング(20)と、第1のリング(15)により担持され、且つそれ自体の軸(PA1)の回りでそれに対して回転する第1の張力プーリ(23)と、第2のリング(20)により担持され、且つそれ自体の軸(PA2)の回りでそれに対して回転する第2の張力プーリ(27)と、第1及び第2のプーリ(23、27)をベルトの各スパン(8a、8b)と接触させるように、第1及び第2のリング(15、20)に対して作用する弾性手段(34)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(2)の補機駆動装置のためのテンショナーであって、前記補機駆動装置(1)が、前記内燃機関(2)の駆動シャフト(4)に接続されている少なくとも1つの第1のプーリ(3)と、電気機械(7)に接続された少なくとも1つの第2のプーリ(5)と、少なくとも前記第1及び第2のプーリ(3、5)に巻回されているベルト(8)とを含んでいる、前前記テンショナー(10)において、
前記テンショナー(10)が、
- 前記電気機械(7)のケーシング(13)に固定されるように構成されているベース(11)と、
- 第1の軸(A1)を中心として前記ベース(11)に対して回転する第1のリング(15)と、
- 前記第1の軸(A1)とは異なる第2の軸(A2)を中心として前記第1のリング(15)に対して回転する第2のリング(20)と、
- 前記第1のリング(15)に装着されている第1の張力プーリ(23)であって、且つ前記第1のプーリ(23)の軸(PA1)を中心として前記第1のリング(15)に対して回転する前記第1の張力プーリ(23)と、
- 前記第2のリング(20)に装着されている第2の張力プーリ(27)であって、前記第2の張力プーリ(27)の軸(PA2)を中心として前記第2のリング(20)に対して回転する第2の張力プーリ(27)と、
- 前記第1のプーリ(23)及び前記第2のプーリ(27)を押圧して前記ベルトのスパン(8a、8b)それぞれに接触させるように、前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)に作用する弾性手段(34)と、
を含んでいる、テンショナー。
【請求項2】
前記第2の軸(A2)が、前記第1のリング(15)の内側に配置されており、前記第1のリング(15)が前記第1の軸(A1)を中心として回転した場合に、前記第1の軸(A1)を中心とする軌道を描く、請求項1に記載のテンショナー。
【請求項3】
前記ベース(11)は、環状に構成されており、
前記ベース(11)と前記第1のリング(15)及び第2のリング(20)とが、前記第2のプーリ(5)の直径より大きい内径を有しており、前記テンショナー(10)が、前記第2のプーリ(5)と干渉することなく、前記電気機械(7)に取り付けられる、請求項1又は2に記載のテンショナー。
【請求項4】
前記ベース(11)が、前記第1の軸(A1)と一致する軸を具備する環状のカラー(14)を含んでおり、
前記第1のリング(15)が、第1のブッシュ(16)によって、前記カラー(14)の回りに回転可能に取り付けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載のテンショナー。
【請求項5】
前記第1のリング(15)が、前記第1の軸(A1)と同軸に配置されている円筒状の内面(30)であって、前記第1のブッシュ(16)の回りに回転する前記内面(30)と、偏心した円筒状の外面(31)であって、前記第2の軸(A2)と同軸に配置されている前記外面(31)とを有しており、
前記第2のリング(20)が、第2のブッシュ(21)によって、前記第1のリング(15)の前記円筒状の外面(31)の回りに回転可能とされる、請求項4に記載のテンショナー。
【請求項6】
規準状態において、前記第1の軸(A1)及び前記第2の軸(A2)を通過する平面が、前記電気機械(7)の正トルク状態及び負トルク状態における前記ベルト(8)の緊張状態のスパンの張力を平衡させる大きさである角度(α)で、前記第2のプーリ(5)に対するベルト巻付角度(θ)の二等分線に対して傾斜している、請求項1~5のいずれか一項に記載のテンショナー。
【請求項7】
前記角度が、前記第2のプーリ(5)に対する前記ベルト(8)の前記ベルト巻付角度(θ)の関数であり、α及びθが度(°)で表され、cが+10°~-10°の範囲の変数であるとして、α=-0.2166θ+97.267+cの関係が成立する、請求項6に記載のテンショナー。
【請求項8】
前記弾性手段が、前記第1のリング(15)と前記第2のリング(20)の間で作用する少なくとも1つのバネ(34)を備えている、請求項1~7のいずれか一項に記載のテンショナー。
【請求項9】
前記バネ(34)が、前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)それぞれと一体化されたハウジング(32,33)それぞれに収容されている端部分(34a,34b)を有している圧縮バネである、請求項8に記載のテンショナー。
【請求項10】
前記ハウジング(32,33)が、前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)それぞれの径方向付加部から成り、前記バネ(34)の前記端部分それぞれのための肩部を形成している径方向の壁(36)によって、周方向の端部それぞれにおいて閉じられた周方向チャネル(35)それぞれを形成している、請求項9に記載のテンショナー。
【請求項11】
前記バネ(34)が、前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)の付加部に掛止されている端部分(34a、34b)を有している圧縮バネであり、前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)に対して接線方向に配置されている、請求項8に記載のテンショナー。
【請求項12】
前記テンショナーが、前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)の回転を抑制するために、第1のブッシュ(16)及び第2のブッシュ(21)のうち少なくとも1つのブッシュに対して軸方向負荷を加える少なくとも1つのバネ(43)を備えている、請求項5~11のいずれか一項に記載のテンショナー。
【請求項13】
前記軸方向負荷が、前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)の一方のリングに作用し、他方のリングが、軸方向において前記一方のリングの少なくとも一部と前記ベース(11)との間に配置されている、請求項12に記載のテンショナー。
【請求項14】
前記バネが、軸方向において前記第1のリングと前記第2のリングとの間に配置されており、互いに対して反対方向において軸方向負荷を前記第1のリング及び前記第2のリングそれぞれに加え、
前記第1のリング及び前記第2のリングのうち一方のリング(20)が、前記ベース(11)に抗して押圧され、他方のリング(15)が、前記ベース(11)と一体化された肩部(44)に抗して軸方向に押圧される、請求項12に記載のテンショナー。
【請求項15】
前記テンショナーが、前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)それぞれに軸方向負荷を加える2つのバネ(43a,43b)を備えている、請求項12に記載のテンショナー。
【請求項16】
前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)が、前記第1のリング(15)と前記第2のリング(20)との相対的な回転を制限するための第1の係合手段(26,45)をそれぞれ含んでいる、請求項1~15のいずれか一項に記載のテンショナー。
【請求項17】
前記第1のリング(15)と前記ベース(11)とが、前記第1のリング(15)と前記ベース(11)との相対的な回転を制限するための係合手段(47,48)をそれぞれ含んでいる、請求項1~16のいずれか一項に記載のテンショナー。
【請求項18】
前記テンショナーが、相対的な取付位置において前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)を互いに対して角度的にロックするためのロック手段(49)を含んでおり、
前記ロック手段(49)が、取付後に解除可能である、請求項1~17のいずれか一項に記載のテンショナー。
【請求項19】
ロック手段(49)が、前記第1のリング(15)及び前記第2のリング(20)の穴(50,51)それぞれに挿入可能なピンを含んでいる、請求項17に記載のテンショナー。
【請求項20】
内燃機関(2)のための補機駆動装置であって、
前記補機駆動装置が、
前記内燃機関(2)の駆動シャフト(4)に接続されている少なくとも1つの第1のプーリ(3)と、
電気機械(7)に接続されている少なくとも1つの第2のプーリ(5)と、
少なくとも前記第1のプーリ(3)及び前記第2のプーリ(5)に巻回されているベルト(8)と、
請求項1~19のいずれか一項に記載のテンショナー(10)と、
を備えている、補機駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
本特許出願は、特許文献1に基づく優先権を主張するものであり、その開示事項の全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、自動車の補機駆動装置のためのテンショナー、及び当該テンショナーを含む補機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関の補機駆動装置は、概して、駆動シャフトに接続されたプーリであって、電気機械のシャフトに接続されるプーリを備え、例えば、調整用システムコンプレッサなど、他の補機を駆動するための1つ又は複数のプーリを備えることができる。補機駆動装置は、前述のプーリとテンショナーの間で動きを伝達するためのベルトをさらに備え、テンショナーは、ベルトの正しい最小の張力レベルを保証し、且つベルトとプーリの間の滑りを阻止するように構成される。
【0004】
電気機械がエンジンにより駆動される交流発電機である従来の補機駆動装置では、テンショナーは、ベルトの弛緩状態のスパンに対して、すなわち、ベルトの動作方向に対して、エンジンの下流の、且つ交流発電機の上流に位置するスパンに対して作用する。
【0005】
自動車においては、可逆性の電気機械が、従来の交流発電機に代えて高い頻度で使用されており、前記可逆性の電気機械は、従来の発電機モードで動作できるだけではなく、例えば、回生制動として(回生状態)、又は内燃機関と組み合わせて動作するさらなるモータとして(ブースト状態)、さらなるモードに従って動作することができる。
【0006】
可逆性の電気機械を使用すると、電気機械がエンジンによって駆動される動作状態において、緊張状態にあるベルトのスパンは、トルクが電気機械により送達されると、弛緩状態のスパンになる。
【0007】
したがって、ベルトの両方のスパンに正しく張力を与えることを保証する様々な解決策が考案されてきた。
【0008】
1つの解決策は、例えば、共通のピン上にヒンジで留められ、各プーリを支持する2つのアームを備えたテンショナーを使用することにある。アームは、プーリをベルトの各スパンとの接触状態を維持するように、互いに接近させる傾向のあるバネの弾性力を受ける。この解決策の例は、特許文献2に述べられている。2つのアームの共通軸は、ベルトの経路内に配置される。
【0009】
アームが枢動するベースの、及びアームの共通の関節軸の周囲に配置されるバネの全体的な寸法は、例えば、2つのプーリだけを有する駆動装置の場合など、空間制約がベルトの経路内に存在する用途に対して、この解決策を不適切なものにする。さらに、プーリに作用する結果として生ずる力に関して、アームの構成は最適なものではない。
【0010】
別の解決策は、テンショナーを電気機械に取り付けることにある。
【0011】
知られた解決策によれば、テンショナーは、電気機械に固定されるように構成されたベースと、電気機械の軸の回りでベースに対して回転し、且つ第1のプーリを支持する第1の環状要素と、電気機械の軸の回りでベースに対して回転し、且つ第2のプーリを支持する第2の環状要素とを備える。
【0012】
バネは、2つの環状要素の間に作用し、環状要素は、第1及び第2のプーリをベルトの各スパンと接触した状態に維持するために、前記要素の間に弾性力を加えるように構成される。
【0013】
前述の解決策に関連する欠点は、回生及びブースト状態において最適に機能できるようにするために、比較的高いベルト張力で動作する必要のあることである。
【0014】
別の知られた解決策によれば、テンショナーは、電気機械に固定されるように構成されたベースと、電気機械の軸の回りでベースに対する、且つ第1のプーリを支持する環状要素と、環状要素にヒンジで取り付けられ、第2のプーリを支持するアームとを備える。
【0015】
この解決策に関連する問題は、電気機械の正トルク状態及び負トルク状態において、対称的な特性を得ることが困難なことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】イタリア国特許出願第102020000015877号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1581753号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、上記で特定した知られたテンショナーに関する欠点を有しない補機駆動装置のためのテンショナーを作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的は、請求項1による補機駆動装置のためのテンショナーにより達成される。
【0019】
本発明をよく理解するために、非限定的な例として、また添付図面を参照して、好ましい実施形態が述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明によるテンショナーを有する補機駆動装置を備えるエンジンの概略的な上面図である。
図2図1の補機駆動装置の概略的な正面図である。
図3図1のテンショナーの第1の実施形態の正面図である。
図4図3の線IV-IVに沿った断面の部分的な斜視図である。
図5図3の線V-Vによる断面図である。
図6図3のテンショナーの分解斜視図である。
図7】軸方向に図6とは反対方向の図3のテンショナーの分解斜視図である。
図8】本発明の様々な実施形態に対する量を比較して示すグラフである。
図9】本発明の様々な実施形態に対する量を比較して示すグラフである。
図10】本発明の様々な実施形態に対する量を比較して示すグラフである。
図11】本発明の様々な実施形態に対する量を比較して示すグラフである。
図12】本発明の様々な実施形態に対する量を比較して示すグラフである。
図13】本発明の様々な実施形態に対する量を比較して示すグラフである。
図14図5の細部における実施形態の変形を示す概略的な部分断面図である。
図15図5の細部における実施形態の変形を示す概略的な部分断面図である。
図16図5の細部における実施形態の変形を示す概略的な部分断面図である。
図17図5の細部における実施形態の変形を示す概略的な部分断面図である。
図18図5の細部における実施形態の変形を示す概略的な部分断面図である。
図19】本発明によるテンショナーの正面図である。
図20】本発明によるテンショナーの第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2を参照すると、番号1は、内燃機関2の補機駆動装置を示す。
【0022】
補機駆動装置1は、軸EAを備えるエンジン2の駆動シャフト4に接続された第1のプーリ3と、軸MAを備える電気機械7のシャフト6に接続された第2のプーリ5と、第1のプーリ3及び第2のプーリ5を互いに接続するベルト8とを備える。補機駆動装置は、例えば、調節用システムコンプレッサなどの、エンジン2の他の補機を駆動するための、図示されていない他のプーリを備えることができる。
【0023】
補機駆動装置1は、電気機械7上に取り付けられたテンショナー10をさらに備え、また
電気機械7(図1及び図5)のケーシング13に固定されるように構成された平坦なフランジ12、及び使用時に軸MAと一致する軸A1を備え、フランジ12から片持ち梁状に軸方向に延びる環状のカラー14を一体化して備えるベース11と、
第1のリング15とフランジ12の間に軸方向に挿入された平坦な環状部分17を有する第1のブッシュ16により、且つ第1のリング15とカラー14(図5)の間に径方向に挿入された、軸A1を有する円筒状部分18により、カラー14の回りで、回転可能にベース11上に支持される第1のリング15と、
その内縁部を囲み、且つそのために、その円周の少なくとも支配的な部分に対してC形状の断面を有するブッシュ21により、第1のリング15の回りで回転可能にベース11上に支持される第2のリング20であって、ブッシュ21は、第2のリング20の内縁部上に適切に押し付けられる、第2のリング20と
を備える(図3図7)。
【0024】
ベース11、及びリング15、20は、第2のプーリ5が存在する中で、電気機械7上にテンショナー10の組立を可能にするために、第2のプーリ5の直径より大きな内径を有する(図5を参照のこと、図では、プーリ5の全体寸法が一点鎖線により概略的に示されている)。
【0025】
第1のリング15は、ピン24及び軸受25により、軸PA1を備えるテンショナー10の第1のプーリ23を回転するように支持する径方向外側の付加部22を備える。第2のリング20は、ベース11のフランジ12の反対側から片持ち梁状に延びる管状の軸方向の付加部26を備え、その上に、軸PA2を備えるテンショナー10の第2のプーリ27が、ピン28及び軸受29により回転可能に取り付けられる。
【0026】
第1及び第2のプーリ23、27は、ベルトの送り方向に従って(図2を参照すると、時計回りに)、第2のプーリ5のそれぞれ上流及び下流に配置されるベルトの各セクション8a、8bと協動するように構成される。
【0027】
本発明によれば、第2のリング20は、軸A1に平行な、それとは別の軸A2の回りで、第1のリング15に対して回転する。軸A2は、第1のリング15の内側に配置され、第1のリング15が回転すると、軸A1の回りで軌道を描く。このために、第1のリング15は、ブッシュ16の円筒状部分18の回りを回転する、軸A1を有する円筒状の内面30と、ブッシュ21を径方向に支持する、軸A2を有する偏心した円筒状の外面31とを有する。
【0028】
第1のリング15及び第2のリング20は、プーリ23、27をベルト8と接触状態に維持し、したがって、使用時に、所定の張力レベルを前記ベルト8に維持する傾向のある弾性力を生成する目的を有するバネ34のための各ハウジング32、33を画定する。
【0029】
バネ34(図3図5)は、リング15、20に対して周方向に配置された円弧状の螺旋圧縮バネである。ハウジング32、33は、各リング15、20の径方向の付加部からなり、バネ34の各端部34a、34bを収容する。ハウジング32、33は、U形状の断面を有し、且つバネ34の両端に対して各肩部を画定する各径方向の壁36により、互いに対して周方向に反対側で閉じられた各周方向チャネル35を画定する。バネ34を中心化するための各突起部37が、壁36から延びる。チャネル35の内側に、プラスチックから作られる半殻38が収容され、前記半殻は、バネ34を収容し、バネとハウジング32、33の間で直接接触するのを阻止する。
【0030】
第1のリング15は、ベース11のカラー14の環状の終端44と第1のリング15の間で軸方向に圧縮される皿バネ43(図5図7)によりベース11のフランジ12上に軸方向にロックされる。皿バネ43と第1のリング15の間の直接接触を回避するために、皿バネ43は、プラスチック材料から作られたコーティング45を備え、それは、その外側縁部を覆っている。
【0031】
第2のリング20の管状の付加部26は、バネ34の最大の長手方向拡大に対応する自由なアーム位置と、バネ34の最大圧縮の位置に対応する負荷停止位置との間において、リング15、20の間の相対的な回転を制限するために、第1のリング15の周辺に設けられた凹部45(図6)の内側に配置される。
【0032】
第1のリング15は、ベース11に対する第1のリング15の回転角を制限するために、ベース11のフランジ12の円弧状の溝48に摺動可能に係合するように構成された突起部47(図7)を底部に有する。
【0033】
ベルト8からの反発力がない状態では、バネ34は、リング15、20を自由なアーム位置に維持する傾向がある。取付けの前に、ベルト8の組立を容易にするように、リング15、20は、その各穴50、51に係合するロックピン49(図3図5)により、相対的な角度取付位置に、互いに対してロックされる。その取付位置は、便宜上、負荷停止位置の近くにある。
【0034】
ベルトが取り付けられた後、ピン49は取り外され、バネ34の作用下で、テンショナーは、概略的に図2で示された規準位置へと進み、その場合、2つのプーリ23、27は、プーリ5に対するベルト8の巻付角度θの二等分線Hに対して対称的な位置にあり、規準状態において、プーリ5に対してベルト8の引っ張りにより得られる方向と一致する。
【0035】
テンショナー10の動作は以下のようになる。
【0036】
通常の動作状態において、エンジン2は、トルクを送達し、電気機械7は駆動されて交流発電機として動作する。
【0037】
この状態において、ベルトのスパン8bは、緊張状態のスパンであり、またスパン8aは、弛緩状態のスパンである。
【0038】
図2で示された規準位置に対して、テンショナー10は、緊張状態のスパン8bによりプーリ27に伝達されたハブ負荷の結果、軸A1の回りで時計回りに回転する。プーリ23及び27を互いに近づくように移動させる傾向のあるバネ34の推力下で、プーリ23は、トルクが変化したとき、同じ事前設定された最小の張力値に維持するように、弛緩状態のスパン8aに作用する。
【0039】
ブーストモードにおいては、電気機械7は、エンジン2のものに加えられる動力(正のトルク)を送達する。これは、ベルトのスパン8bにおける張力を減少させ、且つそのスパン8aにおける張力を増加する傾向がある。他方で、回生モードにおいては、電気機械7は、機械的な動力(負のトルク)を吸収し、したがって、ベルト8のスパン8aにおける張力を減少させる傾向がある。
【0040】
第1のリングの軸A1(前に述べたように、使用時、電気機械7の軸MAと一致する)とは異なる第2のリング20の回転軸A2を使用することは、弛緩状態のスパンにおけるトルク伝達能力を用いて、ベルト8の取付け張力を減少させることができる(動作状態に従って、常に弛緩状態のスパンであると理解される)。
【0041】
図8は、N1~N10として示される、軸A1に対する軸A2の様々な位置を示すグラフである(ここで、X及びY軸は、駆動シャフトの軸からmmで測定された座標を表す)。A1は、軸A2が、電気機械7の軸A1と一致する比較例を示す(駆動シャフトの軸に対して座標210、155である)。
【0042】
図9は、電気機械7のトルクが変化したとき、ベルト8の弛緩状態のスパンにおける張力の傾向を、図8のグラフの点に対して表したグラフである(負のトルク値は回生モードを特定し、また正の値はブーストモードを特定する)。
【0043】
0のトルク値は、ベルト取付け張力に対応し、すべての例に対して同じである(315N)。線A1はまた、この場合、軸A1及びA2が一致する比較例を表す。
【0044】
同じ取付け張力であるとすると、例N1及びN5~N10は、比較例A1に対して、弛緩状態のスパンの大幅に高い張力を決定するが、例N2、N3、及びN4では、弛緩状態のスパンの張力は、回生及びブースト状態の少なくとも一方における比較例より低い。正の例では、N10は、回生及びブースト状態における張力曲線の対称性を示しているので、最もよい(図9のグラフから分かるように、曲線のトルク値の両極端の張力値は、+/-55Nmに等しく、実質的に同じである)。
【0045】
弛緩状態のスパンにおける張力の増加は、ベルトの取付け張力を下げるために利用することができる。
【0046】
図10は、図9のN10の例に対して、取付け張力が、比較例に対して50Nだけ下げた状態を示す(315Nに代えて265N)。図を調べることにより、滑りを生ずる危険のない約-25から+25Nmの通常の動作範囲において、張力は、参照例より低いままであり、これは、摩擦に起因する損失の低下、したがって、消耗の低下を生ずることが容易に分かる。
【0047】
他方で、滑りの問題が生ずるおそれのある高トルクを有する領域では(>25Nmのモジュール)、駆動は、軸A1、A2が一致した場合より一層強固になり、トルク伝達能力が向上される。
【0048】
回生及びブースト状態における弛緩状態のスパンの張力の平衡において、A1と比較されたA2の位置の発生要因を明確化するために、図11は、軸A1から等しい距離に存在する軸A2の位置に対応する様々なさらなる例N11~N16を示す。すなわち、点N11~N16は、中心A1(軸A2はA1と一致する)を有する円周上にある。同じ距離A1~A2であるとすると(図12)、異なる挙動はこれらの点に対応し、そのことから、重要な要因は、A1とA2の間の距離ではないと推論される。
【0049】
正及び負のトルク状態において、テンショナー10の対称的な挙動を得るための決定要因は、規準状態において、軸A1~A2により特定される平面と、軸A1、及び電気機械7のプーリ5上のベルト8の巻付角度θの二等分線H(図2)を含む平面との間に形成される角度であることが、実験的に検証されている。図2で示された2つのプーリだけを備える駆動装置1の対象的なレイアウトにおいて、二等分線Hは、駆動シャフトの軸EAと交差しているが、この状態は、一般的に生じないことに留意されたい。
【0050】
最適な角度αは、巻付角度θの変化に従って変化するようになっており、実験的に決定された関係式:α=-0.2166θ+97.267+cによって表現される。式中、α及びθの単位は、度(°)であり、cは、+10°~-10°の範囲の変数である。
【0051】
値c=0は、正及び負のトルク状態において、図9又は図10の曲線(トルクに応じた張力)の完全な対称に対応する。上記の線形関係は、値c=0に対して図13で示される。
【0052】
cの可変間隔の両極端の値は、取付け張力の5%に等しい前述の曲線において受け入れられる非対称値に基づいて計算される。特に、315Nの取付け張力を用いるN10の例では、c=+10°に対して、15.21Nの不平衡が得られ、又はc=-10°に対して14.98Nが得られ、両方の値は、15.75(取付け張力の5%)より低い。
【0053】
驚くべきことに、前記最適な角度は、プーリ5の直径と、駆動装置のレイアウトの両方に依存しない。
【0054】
プーリシステムは、巻付角度θの二等分線Hに対して対称的であり、また得られたシステムの力は対称的であるので、平面Pは、線Hの一方又は他方の側に無関係に配置することができ(すなわち、プーリ23の方向に、又はプーリ27の方向に)、それぞれの場合において、線Hと角度αを形成する。言い換えると、線Hの両側に配置された平面P上に位置する各軸A2を有するが、同じ角度αをそれと形成する2つのテンショナーは、同一の挙動を有する。
【0055】
上記で画定された平面Pの最適な位置は、テンショナーの規準位置を指す。
【0056】
図14から図18は、ベース11上におけるリング15、20の軸方向及び径方向支持に対する代替的な解決策を示す概略的な部分断面図である。前記解決策は、同じ番号を用いることにより示されており、図3図7を参照してすでに述べられた同一の部分を、又はそれに対応する部分を示し、且つ図5で強調された細部を指す。簡単にするために、支持ブッシュの記述が削除されているが、それらは、早すぎる摩耗を回避し、振動の減衰を制御するために、リング15、20の間で、またベース11及び皿バネ43に対して相対的な滑りがある場合はいつも、軸方向に、且つ/又は径方向に、いずれの場合も介在させる必要がある。
【0057】
図14の解決策において、皿バネ43は、第1のリングと一体の肩部50と、第2のリング20の間に作用し、それらに対して反対方向に軸方向負荷を加える。この方法では、第1のリング15は、ベース11と一体の肩部44に対して軸方向に押され、また第2のリング20は、ベース11に対して押される。
【0058】
図15の解決策では、ベース11と一体の肩部44と、各リング15、20の間に作用する2つの皿バネ43a、43bが存在する。この方法では、第1のリング15の回転の抑制、及び第2のリング20の回転の抑制を独立して制御することが可能である。
【0059】
図16では、第1のリング15は、第2のリング20により軸方向に支持されており、また皿バネ43は、ベース11と一体の固定された肩部44と、第1のリング15の間に作用する。この場合はしたがって、第1のリング15及び第2のリング20は、皿バネ43の軸方向負荷に対して、順次に配置される。
【0060】
図17の解決策では、2つの皿バネ43a、43bが存在し、その一方が、ベース11と一体の肩部44と、第1のリング15の間に作用し、また他方が、第1のリング15と一体の肩部50と、第2のリングの間に作用する。
【0061】
最後に、図18は、皿バネ43が第1のリング15に作用する解決策を示しており、リング15は、ベース11上に、且つ第2のリング20上に同時に載っている。
【0062】
使用される解決策は、第1及び第2のリング15、20の回転の抑制を制御する可能性に影響を有するが、前に述べたテンショナーの全体的な動作を変えることはない。
【0063】
図19及び図20は、すでに述べられた同一の部分、又はそれに対応する部分を区別するために、同じ参照番号を用いて、述べられたテンショナー10とは異なる場合に限って、以下で述べられるテンショナー52を示す。
【0064】
テンショナー52は、バネ34が、第1及び第2のリング15、20に対して接線方向に配置された螺旋牽引バネであって、第1のリング15及び第2のリング20とそれぞれ一体であり、且つその各外側径方向の付加部55、56から軸方向に延びる各くぎ53、54に掛止される各フック形状の端部34a、34bを有する螺旋牽引バネであることに起因して、テンショナー10とは異なる。
【0065】
第1のリング15により担持されるプーリ23の位置、及び第2のリングにより担持されるプーリ27の位置は、テンショナー10に対して反対にされるが、それは、牽引バネ34(テンショナー10における圧縮バネに代えて)は、2つのリング15、20の間で反対方向に相対的な回転を決定するからである。バネ34の効果は、いずれの場合も常に、ベルト8と接触状態にプーリ23、27を維持し、したがって、使用時に、ベルト8における所定の張力レベルを維持する傾向のある弾性力を生成するものである。
【0066】
本発明により作られるテンショナー10、52の調査からは、それが提供する利点は明らかである。
【0067】
特に、第1の軸の回りで回転する第1のリングにより、また第1の軸に対して偏心した第2の軸回りで、第1の軸に対して回転する第2のリングにより、それぞれ担持されるテンショナーのプーリを使用するため、同じトルク伝達能力である場合、テンショナーの全体的な寸法及びコストを実質的に増加させることなく、ベルトの取付け張力を低減することが可能である。
【0068】
さらに、テンショナーが規準位置にある場合、巻付角度の二等分線と所定の角度を形成する平面上に第2の軸を配置することにより、電気機械の正及び負のトルク状態における駆動装置の動作を最適化することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 補機駆動装置
2 内燃機関
3 第1のプーリ
4 駆動シャフト
5 第2のプーリ
6 シャフト
7 電気機械
8 ベルト
8a スパン
8b スパン
10 テンショナー
11 ベース
12 フランジ
13 ケーシング
14 カラー
15 第1のリング
16 第1のブッシュ
17 環状部分
18 円筒状部分
20 第2のリング
21 ブッシュ
22 付加部
23 第1のプーリ
24 ピン
25 軸受
26 付加部
27 第2のプーリ
28 ピン
29 軸受
30 円筒状の内面
31 偏心した円筒状の外面
32 ハウジング
33 ハウジング
34 バネ
34a 端部
34b 端部
35 周方向チャネル
36 壁
37 突起部
38 半殻
43 皿バネ
43a 皿バネ
43b 皿バネ
44 肩部、終端
45 コーティング、凹部
47 突起部
48 溝
49 ロックピン
50 穴、肩部
51 穴
52 テンショナー
53 くぎ
54 くぎ
55 付加部
56 付加部
A1 軸
A2 軸
E エンジン
EA 駆動シャフトの軸
H 二等分線
P 平面
MA 軸
PA1 軸
PA2 軸
α 角度
θ 巻付角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】