(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】発酵飲料組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20230712BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230712BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20230712BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20230712BHJP
C12N 1/16 20060101ALI20230712BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230712BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230712BHJP
C12P 7/62 20220101ALI20230712BHJP
【FI】
A23L2/38 C ZNA
A23L2/52
A23L2/00 Q
A23L2/00 W
C12N1/16 G
A23L5/00 J
C12N15/11 Z
C12P7/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577600
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2021066903
(87)【国際公開番号】W WO2021259891
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジユエン
(72)【発明者】
【氏名】モッカンド, シリル
(72)【発明者】
【氏名】ゴム‐ブルー, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ, アクセル
【テーマコード(参考)】
4B035
4B064
4B065
4B117
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LE03
4B035LG31
4B035LG37
4B035LG57
4B035LP24
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4B064AD29
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4B117LG06
4B117LG17
4B117LK06
4B117LK25
4B117LL09
4B117LP05
(57)【要約】
本発明は、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物に関する。本発明の更なる態様は、飲料組成物の調製方法である。本発明のより更なる態様は、酵母ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)NYSC5485(CNCM I-5525)である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比が1より大きい、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物。
【請求項2】
酢酸イソペンチルのベンズアルデヒドに対する重量比が1より大きい、請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項3】
酢酸イソブチルのベンズアルデヒドに対する重量比が0.5より大きい、請求項1又は2に記載の飲料組成物。
【請求項4】
酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する重量比が0.5より大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料組成物。
【請求項5】
酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比が10より大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料組成物。
【請求項6】
前記飲料組成物が、レディ・トゥ・ドリンク飲料、飲料濃縮液、可溶性飲料粉末、乾燥させた植物性香料原料及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料組成物。
【請求項7】
飲料調製装置で使用するための容器であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の飲料組成物を収容している容器。
【請求項8】
ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)NYSC5485。
【請求項9】
飲料組成物の調製方法であって、
a.水にカスカラを浸漬して、カスカラ水性抽出物及び浸漬カスカラを生成する工程と、
b.前記浸漬カスカラの存在下又は非存在下で、前記カスカラ水性抽出物を発酵させる工程と、を含み、
前記発酵が、酢酸菌の非存在下で酵母によって行われる、方法。
【請求項10】
前記酵母が、ピキア・クルイベリ、例えばピキア・クルイベリNYSC5485を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酵母が、配列番号1~12の組み合わせに対して少なくとも98%の全体的なヌクレオチド同一性を有する遺伝子配列を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記発酵が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の非存在下で行われる、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
発酵後に、前記浸漬カスカラから前記カスカラ水性抽出物を分離することを含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記カスカラ水性抽出物の前記発酵中に存在する前記浸漬カスカラが、発酵後に、前記カスカラ水性抽出物と一緒に乾燥される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記飲料組成物が、請求項1~6のいずれか一項に記載のものである、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物に関する。本発明の更なる態様は、飲料組成物の調製方法である。
【背景技術】
【0002】
低アルコール飲料において、フルーティー感は消費者から求められるものであるが、多くの人は、香料、特に合成香料が添加された飲料を消費することを好まないと考えられる。ほとんどの低アルコール飲料では、フルーティー感の知覚は高糖含有果実濃縮物を添加することによって達成されていることが多く、これにより糖含量が高くなることから、必ずしも好まれるものではない。
【0003】
カスカラ(Cascara)飲料の人気が高まっている。スペイン語で「殻」を意味するカスカラは、コーヒーチェリーの外側部分である。カスカラ飲料の製造は、コーヒーチェリーの、通常では廃棄されるこの部分を利用する。典型的には、コーヒー豆からコーヒーチェリーの外側部分を取り出し、天日乾燥させた後、お茶と同様に使用して飲料を淹れる。カスカラ飲料は、多くの場合、苦味プロファイルというよりも、酸味を帯びた甘味プロファイルをわずかに有しているので、清涼飲料に理想的である。しかしながら、一部の消費者は、カスカラに「出し過ぎてしまった茶(stewed tea)」の風味を知覚してしまい、楽しむことができない。
【0004】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「含む/備える(comprises)」、「含んでいる/備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを意図している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、現在の技術水準を高めること、及び上記の不便さを少なくともある程度克服する新規な製品を提供すること、あるいは少なくとも有効な代替案を提供することである。本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開させるものである。
【0006】
したがって、本発明は、第1の態様において、2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比が1より大きい、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、飲料調製装置で使用するための容器であって、本発明の飲料組成物を収容している容器を提供する。
【0008】
本発明の第3の態様は、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)NYSC5485(CNCM I-5525)を含むスターター培養物を提供する。
【0009】
第4の態様では、本発明は、飲料組成物の製造方法を提供し、該方法は、
a.水にカスカラを浸漬して、カスカラ水性抽出物及び浸漬カスカラを生成する工程と、
b.浸漬カスカラの存在下又は非存在下で、カスカラ水性抽出物を発酵させる工程と、を含み、
発酵は、酢酸菌の非存在下で酵母によって行われる。
【0010】
驚くべきことに、本発明者らは、酵母でカスカラを発酵させることによって、それらが感覚認知の増強を提供することができることを見出した。特に、フローラル感及びフルーティー感に関係する揮発性物質の濃度の増加に対応して、フローラルノート及びフルーティーノートの知覚が顕著に改善された。酢酸エステルなどの個々の芳香化合物の各レベルにより、アセトン様の異臭又はビネガー/ビール様/ワイン様の発酵ノートのない、バランスのとれた芳香プロファイルが得られた。酢酸菌の非存在下で発酵させることにより、コンブチャなどの従来の発酵飲料に存在する酸による「刺激感(bite)」の発生が回避された。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】様々な酵母で発酵させたブラジル産カスカラ浸出液の官能プロファイルを示す。左側の列:酸味、苦味、甘味。右側の列:フルーティー感、発酵感、フローラル感。試料は、0として設定した参照、及び発酵試料同様に但し酵母非添加で処理した「対照24H」、と比較した。「NYSC5485」は、ピキア・クルイベリNYSC5485による発酵、「NCYC246」は、P.クルイベリNCYC246による発酵、及び「S33」は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)S-33による発酵。
【
図2】様々な酵母で発酵させたメキシコ産カスカラ浸出液の官能プロファイルを示す。左側の列:酸味、苦味、甘味。右側の列:フルーティー感、発酵感、フローラル感。発酵試料を
図1と同様にラベル表記した。
【
図3】様々な酵母で発酵させた後のメキシコ産カスカラ浸出液の、2-フェニルエチルアセテート、酢酸イソペンチル及びイソブチルアセテート(上から順)のレベルをppmで示す。発酵試料は
図1と同様にラベル表記した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
したがって、本発明は、部分的には、2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比が1より大きい、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む(例えばそれからなる)飲料組成物に関する。例えば、2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比は、1.5、3、6、10、15、20、25、30、40又は50より大きくし得る。例えば、2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比は、1~500、例えば5~400、例えば10~200、例えば20~100、例えば20~50、更に例えば22~40であり得る。本発明の一態様において、2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比は、0.8より大きく、例えば0.9より大きい。本発明の一態様において、2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比は、0.8~500、例えば0.9~100である。
【0013】
2-フェニルエチルアセテートは、魅力的なフローラル感のあるバラ様の芳香を有する。高濃度の2-フェニルエチルアセテートはフローラルノートの増強に対応する。ベンズアルデヒドは天然にカスカラ中に存在し、発酵による影響をさほど受けないことから、2-フェニルエチルアセテートとの比において有用な分母となる。
【0014】
本発明の文脈において、カスカラは、コーヒーチェリーの外側部分である。これは、ラムナス・パーシアナ(Rhamnus purshiana)の樹皮であるカスカラ・サグラダとは異なる。コーヒーチェリーは、アカネ科(Rubiaceae)のメンバーであるコーヒー(Coffea)の実である。コーヒーチェリーはコーヒーベリーと呼ばれることもある。コーヒーチェリーは、アラビカ(Arabica(Coffea arabica))、ロブスタ(Robusta(Coffea canephora))又はこれらの果実の混合物であってもよい。
【0015】
加工方法に応じて、2つのタイプのカスカラが利用可能である。ハスクカスカラは、コーヒーチェリー全体を乾燥させた後、脱穀することにより製造される。例えば、本発明によるハスクカスカラは、天日乾燥させたコーヒーチェリーから製造することができる。ハスクカスカラは、コーヒーチェリーの外皮、果肉、ミューシレージ及びパーチメントを含む。パルプカスカラは、コーヒーチェリーを洗浄し、脱パルプすることによって製造される。脱パルプは通常は洗浄水中で行われる。分離したパルプは次に乾燥させる。例えば、本発明によるパルプカスカラは天日乾燥させてもよい。パルプカスカラは、コーヒーチェリーの外皮及び果肉を含む。本発明によるカスカラは、ハスクカスカラ、パルプカスカラ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。本発明によるカスカラは、パルプカスカラであってもよい。
【0016】
カスカラの風味を最適化するために、理想的には、完熟したコーヒーチェリーから製造されるべきである。未成熟なコーヒーチェリーが収穫物中にある程度含まれることを回避するのは困難であるが、例えば、本発明によるカスカラは、主に成熟したコーヒーチェリーから製造することができる。例えば、カスカラを製造するために使用されるコーヒーチェリーの少なくとも80%、例えば少なくとも90%が、赤色であり得る。
【0017】
本発明の文脈において、「発酵」という用語は、微生物の活性が食品又は飲料に変化(典型的には望ましい変化)をもたらすプロセスを指す。発酵は、酵母及び/又は細菌によるものであり得る。発酵は、嫌気性又は好気性であり得る。発酵は、食品の保存及び強化に最も古くから用いられている手法の1つである。
【0018】
「発酵カスカラ」という用語は、酵母などの微生物の活性によりカスカラの有機成分に化学的変化、典型的には望ましい変化がもたらされるプロセスに供された、カスカラを指す。発酵カスカラは、水性媒体中で、例えば酵母により発酵され得る。発酵カスカラは、水性発酵培地に添加して発酵させた後、水性発酵培地から分離して乾燥させた、乾燥カスカラであり得る。発酵カスカラは、例えば酵母のスターター培養物をコーヒーチェリーパルプに添加する「固体(solid-state)」発酵で発酵されていてもよい。
【0019】
「カスカラ抽出物」という用語は、カスカラから抽出された物質、例えばカスカラの水性抽出物を指す。「発酵カスカラ抽出物」という用語は、カスカラ抽出物を発酵させた後のカスカラ抽出物、例えば水性抽出物を酵母などによって発酵させた後のカスカラ水性抽出物を指す。発酵カスカラ抽出物は、乾燥させた発酵カスカラ抽出物であってもよい。
【0020】
ベンズアルデヒドは、天然の原料に一般的に見出される有機化合物であり、特徴的なアーモンド様の匂い及び中程度の匂い閾値を有する。カスカラ、並びに生の及び焙煎されたコーヒー豆中に天然に存在するベンズアルデヒドは、その濃度が比較的低いため、重要なコーヒー臭気物質とはみなされない。
【0021】
酢酸イソアミルとしても知られる酢酸イソペンチルは、バナナに天然に存在する。適切な濃度では、バナナ及びナシに似た心地よいフルーティーノートを提供する。一実施形態において、酢酸イソペンチルのベンズアルデヒドに対する重量比は1より大きい。例えば、酢酸イソペンチルのベンズアルデヒドに対する重量比は、1.5、3、6、10、15、20、25、30、40、50、60又は70超であり得る。一実施形態において、酢酸イソペンチルのベンズアルデヒドに対する重量比は、1~500、例えば5~400、例えば10~200、例えば20~100、例えば50~300、更に例えば40~200であり得る。
【0022】
酢酸イソブチルは、心地よいフルーティーノートを提供する。一実施形態では、酢酸イソブチルのベンズアルデヒドに対する重量比は0.5より大きい。例えば、酢酸イソブチルのベンズアルデヒドに対する重量比は、1、2、3又は4超であり得る。酢酸イソブチルのベンズアルデヒドに対する重量比は、0.5~20、例えば1~15、例えば2~10、更に例えば3~6であってよい。
【0023】
3-メチルブタノールは、発酵中に生成される一般的な揮発性物質であり、主にツンとくる(pungent)ノート及びアルコールノートをもたらす。したがって、酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する比を最大にすると、発酵ノートが最小限であり、より高いレベルのフルーティー感を有する飲料が得られる。一実施形態において、酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する重量比は、0.5より大きい。例えば、酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する重量比は、1、2、3又は4超であり得る。酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する重量比は、0.5~40、例えば1~30、例えば2~20、例えば3~15、更に例えば3~4であってよい。
【0024】
酢酸イソペンチル及び酢酸ヘキシルは、両方ともフルーティーノートを提供するが、酢酸イソペンチルは酢酸ヘキシルよりもはるかに高い臭気強度を有する。したがって、酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する高い比は、飲料中のフルーティー感の強度を示す。一実施形態において、酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比は、10より大きい。例えば、酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比は、100超又は500超であり得る。酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比は、100~1000であり得る。酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比は、200~3000、例えば250~2000、更に例えば500~1500であり得る。一実施形態では、飲料組成物中の酢酸ヘキシルのレベルは0.1ppm未満である。
【0025】
一実施形態において、2-フェニルエタノールのベンズアルデヒドに対する重量比は、2.7より大きい(例えば、2.8、2.9、3.0より大きい)。一実施形態では、エタノールのベンズアルデヒドに対する重量比は、50000未満(例えば40000未満、更に例えば30000未満)である。一実施形態において、2-フェニルエタノールのベンズアルデヒドに対する重量比は、2.7より大きく(例えば、2.8、2.9、3.0より大きく)、エタノールのベンズアルデヒドに対する重量比は、50000未満(例えば、40000未満、更に例えば30000未満)である。
【0026】
一実施形態では、酢酸エチルのベンズアルデヒドに対する重量比は50より大きい。例えば、酢酸エチルのベンズアルデヒドに対する重量比は、100超又は500超であり得る。酢酸エチルのベンズアルデヒドに対する重量比は、50~2000であり得る。酢酸エチルのベンズアルデヒドに対する重量比は、300~1500、例えば500~1100であり得る。酢酸エチルのベンズアルデヒドに対する適切な比は、フルーティーな芳香に関連する。酢酸エチルのレベルが高すぎると、不快な含エーテル性の芳香(含エーテル性の)をもたらし得る。一実施形態において、飲料組成物は、レディ・トゥ・ドリンク飲料、飲料濃縮物、可溶性飲料粉末、乾燥させた植物性香料原料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態において、飲料組成物は、飲料調製用の、飲料を抽出可能な組成物である。飲料調製用の、飲料を抽出可能な組成物としては、可溶性飲料粉末などの完全に溶解する組成物、並びに乾燥カスカラなどの抽出可能成分と不溶性成分とを組み合わせた組成物が挙げられる。飲料組成物は、添加されたビタミンを含んでもよい。飲料組成物は、添加された酸化防止剤を含んでもよい。飲料組成物は、添加された香料を含んでもよい。しかしながら、本発明による発酵は、魅力的なフルーティー香を生成するため、香料の添加は必要ない場合もある。一実施形態では、飲料組成物は、添加された香料を含まない。飲料組成物は、コーヒー豆成分及びカスカラ成分からなってもよい。飲料組成物は、カスカラ成分からなってもよい。飲料組成物は、コーヒー豆成分を含まなくてもよく、例えば、焙煎粉砕コーヒー豆を含まなくてもよく、又は焙煎粉砕コーヒー豆の抽出物を含まなくてもよい。
【0027】
一実施形態において、飲料組成物は、例えば、水で抽出して飲料を生成するための、乾燥させた発酵カスカラ抽出物と焙煎粉砕コーヒーとの混合物である。一実施形態では、飲料組成物は、乾燥させた発酵カスカラ抽出物と、乾燥させた発酵カスカラと、焙煎粉砕コーヒーとの混合物であり、例えば、水で抽出されることで飲料を生成する。
【0028】
レディ・トゥ・ドリンク飲料は、発酵カスカラ浸出液又は発酵カスカラで風味付けされた水であり得る。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、香料又は安定剤などの他の成分を更に含んでもよい。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、炭酸飲料であり得る。レディ・トゥ・ドリンク飲料は、コーヒー(例えば、コールドブリューコーヒー)、茶(例えば、植物カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)の葉、葉芽、小枝又は茎の水性抽出物を更に含んでもよい。
【0029】
乾燥させた植物性香料原料は、カスカラ、焙煎粉砕コーヒー、乾燥させた茶(例えば、植物カメリア・シネンシスの乾燥させた葉、葉芽、小枝又は茎)、乾燥させたハーブティー(例えば、カメリア・シネンシス以外の植物の乾燥させた花、果実、葉、種子又は根)及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。一実施形態では、飲料組成物は、例えば水で抽出して飲料を生成するための、乾燥させた発酵カスカラと焙煎粉砕コーヒーとの混合物である。
【0030】
抽出可能な小分けされた原材料を収容する飲料調製装置(例えば、飲料調製マシン)は、飲料を調製する便利な方法を提供する。このような小分けされた原材料は、一般に、例えばポッド、パッド、サッシェ、パウチ、又はカプセルなどとして構成された容器にパッケージングされる。本発明の一態様は、飲料調製装置で使用するための容器であって、本発明の飲料組成物を収容している容器を提供する。容器は、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのものである。容器は、他の構成の中でも特に、例えば飲料カプセルであってもよい。一実施形態において、容器は、本発明の飲料組成物を収容する。例えば、容器は、乾燥させた発酵カスカラ、乾燥させた発酵カスカラ抽出物、乾燥させた発酵カスカラと焙煎粉砕コーヒーとの混合物、乾燥させた発酵カスカラ抽出物と焙煎粉砕コーヒーとの混合物、又は乾燥させた発酵カスカラ抽出物と乾燥させた発酵カスカラと焙煎粉砕コーヒーとの混合物、を収容し得る。
【0031】
一実施形態では、飲料組成物は、1.2重量%未満、例えば0.5重量%未満、例えば0.2重量%未満、更に例えば0.05重量%未満のエタノール含有量を有する。
【0032】
本発明の一態様は、飲料組成物を調製する方法を提供し、該方法は、
a.水にカスカラを浸漬して、カスカラ水性抽出物及び浸漬カスカラを生成する工程と、
b.浸漬カスカラの存在下又は非存在下で、カスカラ水性抽出物を発酵させる工程と、を含み、
発酵は、酢酸菌の非存在下で酵母によって行われる。
【0033】
本発明の方法によって調製される飲料組成物は、カスカラ飲料、例えば、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料であり得る。本発明の方法によって調製される飲料組成物は、1.2重量%未満、例えば0.5重量%未満、例えば0.2重量%未満、更に例えば0.05重量%未満のエタノール含量であり得る。一実施形態では、本発明の方法によって調製される飲料組成物は、本発明の飲料組成物である。
【0034】
浸漬という用語は、材料を液体に浸し漬けることを指す。カスカラは、少なくとも5分間、例えば、少なくとも10分間、例えば少なくとも30分間、例えば少なくとも60分間、更に例えば少なくとも120分間、水に浸漬され得る。浸漬プロセス中に、カスカラの成分が水に抽出される。浸漬は、4℃~98℃の間、例えば20℃~95℃の間、例えば60℃~95℃の間の温度で行ってよい。カスカラは、発酵性糖質を含有するが、更なる発酵性糖質、例えばスクロース又はグルコースを、カスカラ水性抽出物に添加してもよい。発酵性糖質は、フルクトース又はグルコースであり得る。例えば、発酵性糖質を2~10重量%、例えば3~7重量%のレベルでカスカラ水性抽出物に添加してもよい。カスカラは、浸漬前に粉砕してもよい。
【0035】
発酵が浸漬カスカラの非存在下で行われる場合、カスカラは、例えば、連続向流抽出システムを使用して水中に浸漬され得る。更なる選択肢は、バッチプロセスを使用して水中にカスカラを浸漬することであり、浸漬カスカラは、濾過システムを使用してカスカラ水性抽出物から分離される。浸漬中の乾燥ベースのカスカラ対水の比は、重量で1:1~1:100、例えば重量で1:2~1:95、例えば重量で1:10~1:90、例えば重量で1:30~1:70、更に例えば1.3~1:6であり得る。
【0036】
浸漬の後、カスカラ水性抽出物の温度を、酵母の増殖に適する温度、例えば20℃~37℃、例えば25℃~35℃、例えば28℃~32℃に調整する。温度は、例えば、層流熱交換器を使用して調節することができる。酵母をカスカラ水性抽出物に添加して発酵を開始させる。カスカラ水性抽出物の発酵は、25℃~35℃、例えば28℃~32℃の温度で実施してもよい。カスカラ水性抽出物の発酵は、少なくとも2時間、例えば少なくとも6時間、例えば少なくとも12時間、例えば少なくとも24時間、更に例えば少なくとも48時間実施してもよい。
【0037】
発酵は、3~8、例えば4~6のpHで実施してもよい。
【0038】
発酵は、酵母エキスや酵母ペプトンなどの窒素源の存在下で実施してもよい。発酵は、例えばカスカラ水性抽出物の0.05重量%~0.1重量%のレベルで添加した、バリン、ロイシン、イソロイシン及び/又はフェニルアラニンなどのアミノ酸の存在下で実施してもよい。
【0039】
発酵は、嫌気性、微好気性又は好気性の条件で実施してもよい。例えば、発酵槽内の酸素分圧は、0~30%、例えば1~20%、更に例えば2~10%であり得る。
【0040】
好ましくは、カスカラは、発酵前に加水分解などの化学的処理を受けていない。
【0041】
発酵は、少なくとも103CFU/g、例えば少なくとも104CFU/g、例えば少なくとも105CFU/g、例えば少なくとも106CFU/g、更に例えば少なくとも107CFU/gの初期混合酵母レベルで、1種以上の酵母を添加することによって実施され得る。
【0042】
発酵は、風味プロファイルにおける酸による「刺激感」の発生を回避するために、酢酸菌の非存在下で行われる。一実施形態では、発酵は乳酸菌の非存在下で行われる。
【0043】
一実施形態において、発酵は、サッカロミセス亜種の非存在下で行われる。例えば、発酵は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の非存在下で実施され得る。S.セレビシエは、ワイン製造及びビール醸造に使用される。S.セレビシエは、望ましくないアルコールを生成することに加えて、新鮮な果実のようなノートではなく、「発酵した」、ワインのような、酵母のような風味のノートを生成する。
【0044】
一実施形態において、発酵は、ザイゴサッカロミセス・バイリ(Zygosaccharomyces bailii)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、トルラスポラ・デルブルッキ(Torulaspora delbreukii)、ロードトルーラ・ムチラギノサ(Rhodotorula mucilaginosa)、ブレッタノマイセス・ブルキセレンシス(Brettanomyces bruxellensis)及びカンジダ・ステラス(Candida stellus)からなる群から選択される酵母の非存在下で行われる。これらの酵母は、コンブチャ「茶-真菌」培養物中に一般的に存在する。
【0045】
驚くべきことに、本発明者らは、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)によるカスカラの発酵が、特に良好な結果を与えることを見出した。ピキア・クルイベリで発酵させたカスカラ又はカスカラ抽出物を含む飲料組成物は、心地よいフルーティーな風味及びフローラルな風味を有していた。ピキア・クルイベリは、世界中で、例えば、オリーブ、ブドウ及びコーヒーに天然に存在する。本発明の方法の一実施形態では、酵母はピキア・クルイベリを含む。例えば、発酵中に存在する酵母コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリであり得る。例えば、発酵中に存在する微生物コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリであり得る。例えば、発酵中に存在する本質的に全ての酵母コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリであり得る。更なる例として、発酵中に存在する本質的に全ての微生物コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリであり得る。
【0046】
ピキア・クルイベリNCYC246(あるいはCBS188と命名される)は、ピキア・クルイベリの基準株である。基準株は、例えばNational Collection of Yeast Cultures、Quadram Institute Bioscience(Norwich、英国)から公的に入手可能である。
【0047】
一実施形態では、酵母はピキア・クルイベリNCYC246である。例えば、発酵中に存在する酵母コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNCYC246であり得る。例えば、発酵中に存在する微生物コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNCYC246であり得る。例えば、発酵中に存在する本質的に全ての酵母コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNCYC246であり得る。更なる例として、発酵中に存在する本質的に全ての微生物コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNCYC246であり得る。
【0048】
本発明者らは、ピキア・クルイベリNYSC5485でカスカラを発酵させることによって、特に良好な結果が得られることを見出した。ピキア・クルイベリNYSC5485は、フルーティー感及びフローラル感の強い官能特性を提供するだけでなく、苦味を低減させもする。特に、カスカラの苦い「出し過ぎてしまった茶」のノートが低減された。
【0049】
ピキア・クルイベリは、自然界に広く分布しており、例えばコーヒーチェリー及びオリーブなどの果実に存在する。ニカラグアのコーヒー発酵場で採取・単離されたピキア・クルイベリNYSC5485は、2020年6月23日に、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM),Institut Pasteur,25rue du Docteur Roux,F-75724PARIS Cedex15,Franceに寄託され、寄託番号CNCM I-5525を得た。
【0050】
一実施形態において、酵母は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)である。例えば、発酵中に存在する酵母コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)であり得る。例えば、発酵中に存在する微生物コロニー形成単位の50%超は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)であり得る。例えば、発酵中に存在する本質的に全ての酵母コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)であり得る。更なる例として、発酵中に存在する実質的に全ての微生物コロニー形成単位は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)であり得る。
【0051】
本発明の一態様は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)である。本発明の一態様は、配列番号1に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号2に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号3に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号4に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%又は99.5%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号5に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号6に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号7に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号8に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号9に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号10に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号11に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号12に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列を含む、酵母である。
【0052】
本発明の一態様は、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)を含むスターター培養物を提供する。スターター培養物は、少なくとも103CFU/gのピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)、例えば少なくとも104CFU/gのピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)、例えば少なくとも105CFU/gのピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)、例えば少なくとも106CFU/gのピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)、例えば少なくとも107CFU/gのピキア・クルイベリNYSC 5485(CNCM I-5525)、例えば少なくとも108CFU/gのピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)、更に例えば少なくとも109CFU/gのピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)を含み得る。スターター培養物は、濃縮酵母培養物を乾燥させることによって、例えば濃縮酵母培養物をマルトデキストリンと一緒に噴霧乾燥させることによって、得ることができる。スターター培養物は、凍結保存した後、使用のために解凍して増殖させてもよく、例えば、スターター培養物は、グリセロールを入れたバイアル中で-80℃で凍結してもよい。「スターター培養物」という用語は、任意に高密度培養物を得るために別個のスターター培地中で培養した後に、有機材料の発酵を開始又は実施することができる、生きた微生物を含む組成物を指す。したがって、一実施形態では、本発明のスターター培養物は、適切な培地中でスターター培養物を増殖させることによって得られる高密度培養物であり得る。本発明のスターター培養物はまた、微生物に加えて、緩衝剤及び増殖を刺激する栄養素又は保存剤又は他の担体を含み得る。
【0053】
ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)の遺伝子配列を、PacBioシークエンシング技術を使用して解析した。Qiagen Gentra Puregene Yeastキットを使用してDNA精製を行った。12個のDNA断片を同定した。これらは個々の染色体、すなわち11個の染色体及び1個のミトコンドリアDNA(配列番号4)であり得る。遺伝子配列を、配列番号1~配列番号12として電子的形式で提出する。本発明の方法の一実施形態において、酵母は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12に対して少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列を含む。例えば、酵母は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列を含み得る。
【0054】
本発明の方法の一実施形態では、酵母は、配列番号1に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号2に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号3に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号4に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号5に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号6に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号7に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号8に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号9に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号10に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号11に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号12に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列を含む。
【0055】
本発明の一態様は、飲料組成物を調製する方法を提供し、該方法は、a)水にカスカラを浸漬して、カスカラ水性抽出物及び浸漬カスカラを生成する工程と、
b)浸漬カスカラの存在下又は非存在下で、カスカラ水性抽出物を発酵させる工程と、を含み、発酵は、配列番号1~12の組み合わせに対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の全体的なヌクレオチド同一性を有する遺伝子配列を含む酵母によって実施される。「配列番号1~12の組み合わせ」という用語は、あたかも単一の配列に連結されているかのように、全ての個々のDNA断片に対して配列同一性比較が行われることを意味する。
【0056】
本発明の一実施形態は、飲料組成物を調製する方法を提供し、該方法は、a)水にカスカラを浸漬して、カスカラ水性抽出物及び浸漬カスカラを生成する工程と、
b)浸漬カスカラの存在下又は非存在下で、カスカラ水性抽出物を発酵させる工程と、を含み、発酵は、配列番号1に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号2に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号3に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号4に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号5に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%又は99.5%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号6に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号7に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号8に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号9に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号10に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号11に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列、配列番号12に対して少なくとも95%の同一性(例えば少なくとも98%又は99%の同一性)を有する遺伝子配列を含む、酵母によって実施される。
【0057】
一実施形態では、酵母は、配列番号1~12の組み合わせに対して少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の全体的なヌクレオチド同一性を有する遺伝子配列を含む。
【0058】
一実施形態では、酵母は、配列番号1に対して少なくとも98%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号2に対して少なくとも98%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号3に対して少なくとも98%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号5に対して少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号6に対して少なくとも98%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号7に対して少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号8に対して少なくとも98%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号9に対して少なくとも98%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号10に対して少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列、配列番号11に対して少なくとも98%の同一性を有する遺伝子配列、及び配列番号12に対して少なくとも98%の同一性を有する遺伝子配列を含む。
【0059】
一実施形態では、酵母は、配列番号1と少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号2と少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号3と少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号5と少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号6と少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号7と少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号8と少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号9と少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号10と少なくとも99%の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号11と少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。一実施形態では、酵母は、配列番号12と少なくとも98%(例えば、少なくとも99%)の同一性を有する遺伝子配列を含む。
【0060】
一実施形態において、カスカラ水性抽出物は、発酵後に、浸漬カスカラから分離される。例えば、浸漬カスカラは、濾過システムを使用してカスカラ水性抽出物から分離され得る。発酵後、カスカラ水性抽出物は発酵カスカラ抽出物となる。
【0061】
発酵カスカラ抽出物は、レディ・トゥ・ドリンク飲料としてパッケージングされてもよく、例えばボトル又は缶にパッケージングされ得る。発酵させたカスカラ抽出物に香料及び保存剤などの追加の原材料を添加した後、レディ・トゥ・ドリンク飲料としてパッケージングしてもよい。発酵カスカラ抽出物は、パッケージング前に、酵母及び任意の腐敗性生物を不活性化又は死滅させるために熱処理してもよい。発酵カスカラ抽出物は、パッケージング前に、フィルターを通過させて酵母及び腐敗性生物を除去してもよい。
【0062】
一実施形態において、カスカラ水性抽出物は、発酵後に濃縮される。発酵後、カスカラ水性抽出物を濃縮して液体濃縮物を生成することができ、例えばパッケージングしてそのまま販売してもよく、又は、例えば異なる場所でレディ・トゥ・ドリンク製品を製造するための中間製品として販売してもよい。発酵後のカスカラ水性抽出物(例えば、発酵カスカラ抽出物)は、可溶性飲料粉末などの粉末を生成するために濃縮されてもよい。例えば、発酵後のカスカラ水性抽出物(発酵カスカラ抽出物)を噴霧乾燥又は凍結乾燥によって乾燥させて、可溶性飲料粉末を生成してもよい。例えば、発酵後のカスカラ水性抽出物をマルトデキストリンなどの担体と一緒に噴霧乾燥して可溶性飲料粉末を生成してもよい。可溶性粉末飲料は、パッケージングしてそのまま販売してもよく、又は、例えば異なる場所でのレディ・トゥ・ドリンク製品の製造のための中間製品として使用してもよい。可溶性飲料粉末は、飲料調製装置で使用するための容器に充填されてもよい。可溶性飲料粉末は、他の原材料、例えば、茶、可溶性コーヒー又は焙煎粉砕コーヒーなどの乾燥原材料と組み合わせてもよい。例えば、可溶性飲料粉末は、焙煎粉砕コーヒーと組み合わせて、飲料調製装置で使用するための容器に充填してもよい。可溶性飲料粉末は、飲料ミックスを生成するために、乳粉末又は飲料クリーマー粉末及び任意に糖と組み合わせてもよい。浸漬カスカラの存在下でカスカラ水性抽出物を発酵させた後、浸漬カスカラは発酵カスカラになる。一実施形態において、カスカラ水性抽出物の発酵中に存在する浸漬カスカラは、発酵後にカスカラ水性抽出物から分離され、次いで、例えば回転乾燥機を使用して乾燥される。乾燥させた浸漬カスカラは、飲料調製装置で使用するための容器に充填されてもよく、又は「ティーバッグ」などの透液性のバッグに充填されてもよい。乾燥させた浸漬カスカラは、茶、可溶性コーヒー又は焙煎粉砕コーヒーなどの他の乾燥原材料と組み合わせてもよい。
【0063】
一実施形態において、カスカラ水性抽出物の発酵中に存在する浸漬カスカラは、発酵後にカスカラ水性抽出物と一緒に、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥によって乾燥される。乾燥させた浸漬カスカラ(例えば、乾燥させた発酵カスカラ)は、発酵後の乾燥させたカスカラ水性抽出物(例えば、乾燥させた発酵カスカラ抽出物)と共に、飲料調製装置で使用するための容器に充填されてもよく、又は「ティーバッグ」などの透液性のバッグに充填されてもよい。発酵後の乾燥させた浸漬カスカラ及び乾燥させたカスカラ水性抽出物は、茶、可溶性コーヒー又は焙煎粉砕コーヒーなどの他の乾燥原材料と組み合わせてもよい。
【0064】
発酵カスカラは、例えば酵母のスターター培養物をコーヒーチェリーパルプに添加する「固体」発酵で得られ得る。「固体」発酵という用語は、固体材料に対して行われる発酵を指す。固体状態発酵には、液体の水が存在するが、この用語は、発酵容器中の水溶液中で起こり得るような液体発酵とは対照的に使用される。
【0065】
本発明の一態様は、飲料組成物を調製する方法を提供し、該方法は、
酵母のスターター培養物をコーヒーチェリーパルプに添加する工程であって、スターター培養物が、コーヒーチェリーパルプ1グラム当たり少なくとも104CFU(例えば、少なくとも105CFU、更に例えば少なくとも106CFU)の酵母を提供する工程と、
コーヒーチェリーパルプを発酵させる工程と、
発酵コーヒーチェリーパルプを乾燥させて、発酵カスカラを生成する工程と、
発酵カスカラを水で抽出してレディ・トゥ・ドリンク飲料を生成する工程、又は、
発酵カスカラを容器に充填する工程であって、容器が、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのものである工程と、を含む。
【0066】
酵母のスターター培養物は、液体又は粉末としてコーヒーチェリーパルプに添加してもよい。コーヒーチェリーパルプは、酵母のスターター培養物が添加されるとき、45~55重量%の水分含量を有し得る。発酵は、40重量%を超える、例えば45重量%を超える、更に例えば50重量%を超える固形分含量で起こり得る。
【0067】
発酵がある程度継続している間に、発酵コーヒーチェリーパルプの乾燥を開始してもよい。例えば、コーヒーチェリーパルプをタンクなどの容器に入れ、スターター培養物を添加し、次いで発酵を1~4日間進行させた後、発酵コーヒーチェリーパルプを容器から取り出し、乾燥させてもよい。更なる例として、スターター培養物をコーヒーチェリーパルプに添加した後、コーヒーチェリーパルプを、例えば、ラック又は吊り下げトレイにおいて徐々に乾燥させてもよい。発酵が開始したら、発酵を継続しながらコーヒーチェリーパルプを徐々に乾燥させてもよい。例えば、発酵コーヒーチェリーパルプは、1~30日間、例えば4~20日間の期間にわたって、20重量%未満(例えば15重量%未満)の水分含量まで乾燥させてもよい。乾燥温度は、約40℃未満、例えば約25℃~35℃であり得る。ファンを使用して、コーヒーチェリーパルプが乾燥するまで材料に乾燥空気を吹き付けてもよい。発酵コーヒーチェリーパルプは、日光で乾燥させてもよい。
【0068】
酵母は、ピキア・クルイベリ、例えばピキア・クルイベリNYSC5485であり得る。
【0069】
飲料調製装置に挿入されたとき、飲料調製のための容器は、ポッド、パッド、サッシェ、パウチ、カプセルなどの形態であり得る。
【0070】
固体発酵法のコーヒーチェリーパルプは、本質的にコーヒー豆を含まなくてもよく、例えば、固定表面と移動表面との間でチェリーを圧搾し、コーヒー豆を分離するパルピング機械によって加工され得る。コーヒーチェリーパルプは、例えば10重量%未満のコーヒー豆、例えば5重量%未満のコーヒー豆、例えば1重量%未満のコーヒー豆を含有し得る。
【0071】
固体発酵法のコーヒーチェリーパルプは、コーヒー豆を含むコーヒーチェリーの形態で提供され得る。コーヒー豆は、発酵後にコーヒーチェリーパルプから分離させてもよい。
【0072】
レディ・トゥ・ドリンク飲料は、ボトル又は缶に充填してもよい。発酵カスカラは、水で抽出してレディ・トゥ・ドリンク飲料を生成する前に、茶又は焙煎粉砕コーヒーなどの他の抽出可能な材料と組み合わされてもよい。
【0073】
発酵カスカラは、飲料調製装置に挿入されたときに、飲料の調製のために容器内で焙煎粉砕コーヒーと混合されてもよい。
【0074】
当業者は、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の製品のために記載された特徴を本発明の方法と組み合わせてもよく、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。周知の均等物が特定の特徴について存在する場合、このような均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのごとく組み込まれる。
【0075】
本発明の更なる利点及び特徴は、図及び非限定的な実施例から明らかである。
【実施例】
【0076】
実施例1:カスカラの発酵方法
実験には産地の異なる2種類のカスカラを使用した。すなわち、2018年に収穫されたブラジル産及びメキシコ産のカスカラを湿式処理した後、乾燥させた。最初に、90℃の水1000mL中に20gのカスカラを添加して熱浸出を行い、温度が30℃未満に低下したところで1時間インキュベートした。カスカラを廃棄し、浸出後の水を濾過滅菌(0.2μm)に供して、参照カスカラ浸出液(参照)を作製した。
【0077】
発酵カスカラは、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)、P.クルイベリNCYC246(A.ピキア・クルイベリ)、市販の醸造酵母サッカロミセス・セレビシエ(SafAle S-33、LEsaffre、France)、並びにコンブチャ茶発酵由来の細菌及び酵母の共生培養(symbiotic culture of bacteria and yeasts、SCOBY)ペリクルを含む様々なスターター培養物を用いて浸出液を発酵させることによって、作製した。全ての株(SCOBYを除く)は、グリセロールバイアルから、食用イースト-ペプトン液体培地で増殖させ、log6.5(CFU/g)で参照カスカラ醸造液に接種した。接種した浸出液は全て、微好気条件下、30℃で24時間保存した。インキュベーション後、カスカラを廃棄し、浸出後の水を濾過滅菌(0.2μm)した。更に陰性対照として、何の接種もせずに高温浸出液を30℃で24時間インキュベートする非発酵浸出も行った(対照24H)。全ての最終産物を、官能評価のために濾過滅菌に供した。酵母増殖培地中で発酵させて、様々なスターター培養物の生存率を試験した。
【0078】
実施例2:様々な酵母で発酵させたカスカラの官能分析
様々なバリエーションのカスカラ浸出液の官能プロファイルを、10人のメンバーからなるパネルによって評価した。評価は、使用したカスカラの産地、すなわちブラジル産カスカラ及びメキシコ産カスカラに基づいて2つのセッションに分けた。各セッションにおいて、参照浸出液と、P.クルイベリNYSC5485、P.クルイベリNCYC246、S.セレビシエS-33、SCOBYペリクル、及び非発酵の陰性対照の発酵バリアントを含む、その他複数の試料との間で、比較プロファイリング分析を行った。全ての試料を室温で提供し、全体的な風味強度、フルーティー感、フローラル感、発酵感、酸味、甘味、及び苦味のノートを含む7つの官能属性をパネルによって評価した。参照を0として、-3(はるかに小さい)から3(はるかに大きい)までで構成した強度スケールにより、属性ごとに参照との差異を評価した。
【0079】
結果を
図1(ブラジル産カスカラ)及び
図2(メキシコ産カスカラ)にプロットする。ピキア酵母(NYSC5485及びNCYC246)で発酵させた試料は、甘味、フルーティーノート及びフローラルノートが増強されている。P.クルイベリNYSC5485は、基準株P.クルイベリNCYC246よりも高いフルーティー感強度をもたらす。
【0080】
実施例3:様々な酵母で発酵させたメキシコ産カスカラ中に存在する芳香化合物の分析
ガスクロマトグラム及び質量分析と組み合わせたヘッドスペース/固相微量抽出(HS/SPME-GC-MS)によって、カスカラ浸出液の揮発性物質の半定量的プロファイリングを行った。シングル四重極質量分析計と連結したガスクロマトグラフ(Agilent Technology5973N)を使用した。
【0081】
最初に1.0mLのカスカラ浸出液試料を、10mLスクリュートップヘッドスペースバイアル中で30℃で10分間インキュベートし、その後、SPME繊維(PDMS/DVB、Supelco)を使用して30℃で10分間抽出した。全てのバイアルは、分析前に6℃に冷却したトレイに入れた。揮発性物質を、250℃、スプリットレスモードでSPME繊維から熱的に脱着させ、キャピラリーカラム(DB-WAX、Agilent)で分離した。GCオーブン温度は、最初に35℃で5分間、次いで4℃/分で230℃に上昇、次いで230℃で10分間となるようプログラムした。ヘリウムをキャリアガスとして流量1mL/分で使用した。標的化合物を純粋な標準物質によって同定し、MSD ChemStationソフトウェア(Agilent)で定量した。全ての試料を2回(duplicate)測定した。エタノールの濃度を、GC及び水素炎イオン化検出と組み合わせたヘッドスペース(HS-GC-FID、Agilent Technology 7890B)によって測定した。1.0mLの各試料を、40℃で5分間、10mLヘッドスペースバイアル中でインキュベートし、次いで、1mLをサンプリングし、分割比5でGCに注入した。GCオーブン温度は、最初に35℃で1分間、次いで4℃/分で70℃に上昇、次いで12℃/分で180℃に上昇、次いで2分間保持、となるようにプログラムした。ヘリウムをキャリアガスとして2mL/分の流量で使用した。全ての試料を2回測定した。
【0082】
2-フェニルエチルアセテート、酢酸イソペンチル及び酢酸イソブチルのレベル(ppm)を
図3にプロットする。ピキア酵母(NYSC5485及びNCYC246)で発酵させた試料は、これらの酢酸エステルのレベルが上昇しており、P.クルイベリNYSC5485が最も高いレベルをもたらしている。芳香成分の重量比を以下の表に示す。
【0083】
【0084】
P.クルイベリNYSC5485による24時間の発酵後に産生されたエタノールの量は0.03%であった。
【0085】
ピキア酵母(NYSC5485及びNCYC246)によって発酵させた試料では、2-フェニルエチルアセテート/ベンズアルデヒド、酢酸イソペンチル/ベンズアルデヒド、酢酸イソブチル/ベンズアルデヒド、酢酸イソペンチル/3-メチルブタノール及び酢酸イソペンチル/酢酸ヘキシルの比率が、対照及びS.セレビシエ又はSCOBYによって発酵させた試料よりも高いことが示される。P.クルイベリNYSC5485は、これらの比に関して、基準株P.クルイベリNCYC246よりも高い値をもたらす。
【0086】
実施例4:P.クルイベリNYSC5485の遺伝子配列と基準株P.クルイベリNCYC246の遺伝子配列との比較。
ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)及びP.クルイベリNCYC246の遺伝子配列を、PacBioシークエンシング技術を使用して解析した。Qiagen Gentra Puregene Yeastキットを使用してDNA精製を行った。P.クルイベリNYSC5485について12のDNAフラグメントが同定され、基準株P.クルイベリNCYC246については15フラグメントが同定された。P.クルイベリNYSC5485の遺伝子配列を、配列番号1~配列番号12として電子的形式で提出し、P.クルイベリNCYC246については、配列番号13~配列番号27として提出した。ミトコンドリアDNAは、P.クルイベリNYSC5485については配列番号4であり、P.クルイベリNCYC246については配列番号20である。
【0087】
ソフトウェアOrthoANIuを使用して、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)の遺伝子配列を、P.クルイベリNCYC246と比較した。全体的な平均ヌクレオチド同一性は、97.91%であることがわかった。
【0088】
様々な配列間の対応関係を以下の表に示す。ピキア・クルイベリNYSC5485の複数の配列は、P.クルイベリNCYC246の配列の組み合わせと最も密接に対応しており、その逆もまた同様である。
【0089】
【0090】
基準株P.クルイベリNCYC246は、配列番号1~12のそれぞれに対して、以下に示す最大の同一性で遺伝子配列を含んでいた:
配列番号1:97.85%、配列番号2:97.40%、配列番号3:97.86%、配列番号4:99.02%、配列番号5:98.05%、配列番号6:97.93%、配列番号7:98.12%、配列番号8:97.07%、配列番号9:97.20%、配列番号10:98.33%、配列番号11:97.526%、配列番号12:97.77%
【0091】
本発明の様々な特徴及び実施形態を、以下に付番するパラグラフを参照して説明する。
1. 酢酸イソペンチルのベンズアルデヒドに対する重量比が1より大きい、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物。
2. 酢酸イソブチルのベンズアルデヒドに対する重量比が0.5より大きい、パラグラフ1に記載の飲料組成物。
3. 酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する重量比が0.5より大きい、パラグラフ1~2のいずれか1つに記載の飲料組成物。
4. 酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比が10より大きい、パラグラフ1~3のいずれか1つに記載の飲料組成物。
5. 2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比が0.9より大きい、パラグラフ1~4のいずれか1つに記載の飲料組成物。
6. 酢酸イソブチルのベンズアルデヒドに対する重量比が0.5より大きい、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物。
7. 酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する重量比が0.5より大きい、パラグラフ6に記載の飲料組成物。
8. 酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比が10より大きい、パラグラフ6又はパラグラフ7に記載の飲料組成物。
9. 2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比が0.9より大きい、パラグラフ6~8のいずれか1つに記載の飲料組成物。
10. 酢酸イソペンチルのベンズアルデヒドに対する重量比が1より大きい、パラグラフ6~9のいずれか1つに記載の飲料組成物。
11. 酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する重量比が0.5より大きい、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物。
12. 酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比が10より大きい、パラグラフ11に記載の飲料組成物。
13. 2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比が0.9より大きい、パラグラフ11又はパラグラフ12に記載の飲料組成物。
14. 酢酸イソペンチルのベンズアルデヒドに対する重量比が1より大きい、パラグラフ11~13のいずれか1つに記載の飲料組成物。
15. 酢酸イソブチルのベンズアルデヒドに対する重量比が0.5より大きい、パラグラフ11~14のいずれか1つに記載の飲料組成物。
16. 酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比が10より大きい、発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物。
17. 2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比が1より大きい、パラグラフ16に記載の飲料組成物。
18. 酢酸イソペンチルのベンズアルデヒドに対する重量比が1より大きい、パラグラフ16又は17に記載の飲料組成物。
19. 酢酸イソブチルのベンズアルデヒドに対する重量比が0.5より大きい、パラグラフ16~18のいずれか1つに記載の飲料組成物。
20. 酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する重量比が0.5より大きい、パラグラフ16~19のいずれか1つに記載の飲料組成物。
21. 発酵カスカラ又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物であって、2-フェニルエタノールのベンズアルデヒドに対する重量比が、2.7より大きく(例えば、2.8、2.9、3.0より大きく)、エタノールのベンズアルデヒドに対する重量比が、50000未満(例えば、40000未満、更に例えば30000未満)である、組成物。
22. 飲料組成物の調製方法であって、
酵母のスターター培養物をコーヒーチェリーパルプに添加する工程であって、前記スターター培養物が、前記コーヒーチェリーパルプ1グラム当たり少なくとも104CFU(例えば、少なくとも105CFU、更に例えば少なくとも106CFU)の酵母を供給する工程と、
前記コーヒーチェリーパルプを発酵させる工程と、
前記発酵コーヒーチェリーパルプを乾燥させて、発酵カスカラを生成する工程と、
前記発酵カスカラを水で抽出してレディ・トゥ・ドリンク飲料を生成する工程、又は、
前記発酵カスカラを容器に充填する工程であって、前記容器が、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのものである、工程と、を含む、方法。
23. 前記酵母が、ピキア・クルイベリ、例えばピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)である、パラグラフ22に記載の方法。
24. 前記飲料組成物が、パラグラフ1~21のいずれか1つに記載のものである、パラグラフ22又はパラグラフ23に記載の方法。
25. 前記飲料組成物が、パラグラフ32~37のいずれか1つに記載のものである、パラグラフ22~24のいずれか1つに記載の方法。
26. 前記コーヒーチェリーパルプが、コーヒー豆を本質的に含まない、パラグラフ22~25のいずれか1つに記載の方法。
27. 前記コーヒーチェリーパルプが、コーヒー豆を含むコーヒーチェリーの形態で提供され、豆が発酵後に除去される、パラグラフ22~26のいずれか1つに記載の方法。
28. 前記発酵が、40重量%を超える、例えば45重量%を超える、更に例えば50重量%を超える固形分含量で行われる、パラグラフ22~27のいずれか1つに記載の方法。
29. 容器が、前記発酵カスカラと、焙煎粉砕コーヒーとを含むよう、前記発酵カスカラが前記容器に充填される、パラグラフ22~28のいずれか1つに記載の方法。
30. 飲料を製造するための、ピキア・クルイベリNYSC5485(CNCM I-5525)で発酵させたコーヒーチェリーパルプの使用。
31. 発酵カスカラ及び/又は発酵カスカラ抽出物を含む飲料組成物であって、前記発酵カスカラ及び/又は前記発酵カスカラ抽出物中の、2-フェニルエチルアセテートのベンズアルデヒドに対する重量比が、0.7より大きく、例えば0.8、0.9、1.0、1.5、3、6、10、15、20、25、30、40又は50より大きい、飲料組成物。
32. 前記発酵カスカラ及び/又は前記発酵カスカラ抽出物中の、酢酸イソペンチルのベンズアルデヒドに対する重量比が、1より大きく、例えば1.5、3、6、10、15、20、25、30、40、50、60又は70より大きい、パラグラフ31に記載の飲料組成物。
33. 前記発酵カスカラ及び/又は前記発酵カスカラ抽出物中の、酢酸イソブチルのベンズアルデヒドに対する重量比が、0.5より大きく、例えば1、2、3又は4より大きい、パラグラフ31又はパラグラフ32に記載の飲料組成物。
34. 前記発酵カスカラ及び/又は前記発酵カスカラ抽出物中の、酢酸イソペンチルの3-メチルブタノールに対する重量比が、0.5より大きく、例えば1、2、3又は4より大きい、パラグラフ31~パラグラフ33のいずれか1つに記載の飲料組成物。
35. 前記発酵カスカラ及び/又は前記発酵カスカラ抽出物中の、酢酸イソペンチルの酢酸ヘキシルに対する重量比が、10より大きく、例えば100又は500より大きい、パラグラフ31~パラグラフ34のいずれか1つに記載の飲料組成物。
36. 焙煎粉砕コーヒー又は可溶性コーヒーを含む、パラグラフ31~パラグラフ35のいずれか1つに記載の飲料組成物。
37. 乾燥させた発酵コーヒーチェリーパルプを含む(例えば、それからなる)組成物を収容している容器であって、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するための容器。
38. 組成物が、焙煎粉砕コーヒーを含む、パラグラフ37に記載の容器。
【配列表】
【国際調査報告】