(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】中性子捕捉療法装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
A61N5/10 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578781
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2021104137
(87)【国際公開番号】W WO2022002224
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010631538.8
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011060387.1
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417207
【氏名又は名称】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Therapy System Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2060 Wengjiao West Road, Haicang District Xiamen, Fujian Provance, 361026 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼渊豪
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲韋▼霖
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC07
4C082AE01
4C082AP01
4C082AP02
4C082AR01
4C082AR12
(57)【要約】
中性子捕捉療法装置であり、中性子ビームを生成する中性子ビーム照射システムと、中性子ビーム照射治療過程において照射パラメータを検出する検出システムと、プリセット中性子線量を校正する校正システムとを含み、患者に照射される中性子ビームの線量の正確度を根源で確保する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子ビームを生成する中性子ビーム照射システムと、中性子ビーム照射治療過程において照射パラメータを検出する検出システムと、プリセット中性子線量を校正する校正システムとを含む、ことを特徴とする中性子捕捉療法装置。
【請求項2】
校正システムが用いる校正係数は、中性子校正係数K
1及びホウ素校正係数K
2を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項3】
検出システムは、中性子ビームの線量をリアルタイムに検出する中性子線量検出装置と、照射対象の体内のホウ素濃度を検出するホウ素濃度検出装置とを含む、ことを特徴とする請求項2に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項4】
校正システムは、照射対象の位置決め偏差及びリアルタイム中性子線量率の偏差に基づいて、中性子校正係数K
1を得る、ことを特徴とする請求項2に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項5】
式(3-1)、式(3-2)及び式(3-3)を用いて中性子校正係数K
1を計算し、相関式は以下のとおりであり、
【数1】
【数2】
【数3】
ここで、K
pは、位置決め校正係数であり、K
iは、中性子ビーム強度校正係数であり、Dは、中性子線量検出装置が測定したリアルタイム中性子線量であり、D
0は、校正されないプリセット中性子線量であり、Iは、中性子線量検出装置が測定したリアルタイム中性子線量率であり、I
0は、理論的ビーム強度である、ことを特徴とする請求項4に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項6】
校正システムは、照射対象の体内のリアルタイムホウ素濃度及び中性子フラックスに基づいて、ホウ素校正係数K
2を得る、ことを特徴とする請求項2に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項7】
ホウ素濃度検出装置により照射対象の体内の第1のホウ素濃度値を得て、中性子ビームが腫瘍部位に照射される場合に第1のトラックを有し、校正システムは、第1のホウ素校正係数を得て、ホウ素濃度検出装置により照射対象の体内の第2のホウ素濃度値を得て、中性子ビームが腫瘍部位に照射される場合に第2のトラックを有し、校正システムは、第2のホウ素校正係数を得て、第1のホウ素濃度値が第2のホウ素濃度値より大きいと、第1のトラックは、第2のトラックより小さく、かつ第1のホウ素校正係数は、第2のホウ素校正係数より小さい、ことを特徴とする請求項6に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項8】
式(3-4)、式(3-5)及び式(3-6)を用いてホウ素校正係数K
2を計算し、相関式は以下のとおりであり、
【数4】
【数5】
【数6】
ここで、K
bは、ホウ素濃度校正係数であり、K
Sは、ホウ素自己遮蔽効果校正係数であり、Bは、ホウ素濃度検出装置が検出したリアルタイムホウ素濃度であり、B
0は、治療計画におけるホウ素濃度の設定値であり、φ
Bは、ホウ素濃度分布がBである場合、照射対象の体内の熱中性子フラックスであり、φ
B0は、ホウ素濃度分布がB
0である場合、照射対象の体内の熱中性子フラックスである、ことを特徴とする請求項7に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項9】
以下の式(3-7)を用いて校正されないプリセット中性子線量D
0を計算し、
【数7】
ここで、D
Bは、1ppmのホウ素濃度での線量であり、単位がGyであり、B
conは、実際に測定されたホウ素濃度であり、単位がppmであり、D
fは、高速中性子線量であり、単位がGyであり、D
thは、熱中性子線量であり、単位がGyであり、RBE
nは、中性子の生物学的効果比であり、D
rは、ガンマ線量であり、単位がGyであり、RBE
rは、ガンマ生物学的効果比である、ことを特徴とする請求項8に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項10】
以下の式(3-8)を用いて校正されたプリセット中性子線量D
totalを計算し、
【数8】
ここで、D
Bは、1ppmのホウ素濃度での線量であり、単位がGyであり、B
conは、実際に測定されたホウ素濃度であり、単位がppmであり、D
fは、高速中性子線量であり、単位がGyであり、D
thは、熱中性子線量であり、単位がGyであり、RBE
nは、中性子の生物学的効果比であり、D
rは、ガンマ線量であり、単位がGyであり、RBE
rは、ガンマ生物学的効果比である、ことを特徴とする請求項8に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項11】
前記中性子線量検出装置は、前記中性子ビームを受け、かつ信号を出力する検出器と、前記検出器から出力された前記信号を処理する信号処理ユニットと、前記信号処理ユニットから出力された信号を計数して計数率を得るカウンターと、前記カウンターにより記録された前記計数率を中性子フラックス率又は中性子線量率に変換する変換ユニットと、前記中性子フラックス率又は前記中性子線量率を積分して前記リアルタイム中性子線量を得る積分ユニットと、前記リアルタイム中性子線量を表示するディスプレイとを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項12】
前記ホウ素濃度検出装置は、中性子とホウ素と反応により生成されたγ線を検出することにより前記ホウ素濃度を測定し、単位エネルギーのγ線を測定することにより前記ホウ素濃度分布を測定することができるホウ素分布測定システムをホウ素濃度検出装置とする、ことを特徴とする請求項8に記載の中性子捕捉療法装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射の分野に関し、特に中性子捕捉療法装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、例えば、コバルト60、線形加速器、電子ビームなどの放射線療法は、すでにがん治療の主な手段の1つとなった。しかし、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で、腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路での数多くの正常組織に損傷を与える。また、腫瘍細胞により放射線に対する感受性の度合いが異なっており、従来の放射線治療では、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果が高くない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織の放射線損傷を軽減するために、化学療法(chemotherapy)における標的療法の概念は、放射線療法に用いられ、また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では、陽子線治療、重粒子治療、中性子捕捉療法などの、生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている。このうち、中性子捕捉療法は、上記2つの構想を結びつけたものであり、例えば、ホウ素中性子捕捉療法では、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度な中性子ビームの制御と合わせることで、従来の放射線に比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
ホウ素中性子捕捉療法の過程において、患者に放射線照射治療を行う中性子ビーム放射線が強いため、患者に照射される線量を正確に制御する必要がある。治療計画を策定する場合に、中性子照射線量などのプリセット照射パラメータの設定が不正確であり、実際の照射線量の検出が不正確であるという問題が依然として存在する。
【0005】
また、実際の照射過程において、作業者又は医者のミスのため、制御パネルに誤って触れて、命令を誤って入力するか又は関連命令及び照射パラメータを変更することは偶発的に発生するため、医療リスクを増加させる。
【発明の概要】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明に係る、患者に正確な線量の中性子ビームを照射できる中性子捕捉療法装置は、中性子ビームを生成する中性子ビーム照射システムと、中性子ビーム照射治療過程において照射パラメータを検出する検出システムと、プリセット中性子線量を校正する校正システムとを含む。
【0007】
さらに、校正システムが用いる校正係数は、中性子校正係数K1及びホウ素校正係数K2を含む。
【0008】
さらに、検出システムは、中性子ビームの線量をリアルタイムに検出する中性子線量検出装置と、照射対象の体内のホウ素濃度を検出するホウ素濃度検出装置とを含む。
【0009】
さらに、校正システムは、照射対象の位置決め偏差及びリアルタイム中性子線量率の偏差に基づいて、中性子校正係数K1を得る。
【0010】
さらに、式(3-1)、式(3-2)及び式(3-3)を用いて中性子校正係数K
1を計算し、相関式は以下のとおりであり、
【数1】
【数2】
【数3】
ここで、K
pは、位置決め校正係数であり、K
iは、中性子ビーム強度校正係数であり、Dは、中性子線量検出装置が測定したリアルタイム中性子線量であり、D
0は、校正されないプリセット中性子線量であり、Iは、中性子線量検出装置が測定したリアルタイム中性子線量率であり、I
0は、理論的ビーム強度である。
【0011】
さらに、校正システムは、照射対象の体内のリアルタイムホウ素濃度及び中性子フラックスに基づいて、ホウ素校正係数K2を得る。
【0012】
さらに、ホウ素濃度検出装置により照射対象の体内の第1のホウ素濃度値を得て、中性子ビームが腫瘍部位に照射される場合に第1のトラックを有し、校正システムは、第1のホウ素校正係数を得て、ホウ素濃度検出装置により照射対象の体内の第2のホウ素濃度値を得て、中性子ビームが腫瘍部位に照射される場合に第2のトラックを有し、校正システムは、第2のホウ素校正係数を得て、第1のホウ素濃度値が第2のホウ素濃度値より大きいと、第1のトラックは、第2のトラックより小さく、かつ第1のホウ素校正係数は、第2のホウ素校正係数より小さい。
【0013】
さらに、式(3-4)、式(3-5)及び式(3-6)を用いてホウ素校正係数K
2を計算し、相関式は以下のとおりであり、
【数4】
【数5】
【数6】
ここで、K
bは、ホウ素濃度校正係数であり、K
Sは、ホウ素自己遮蔽効果校正係数であり、Bは、ホウ素濃度検出装置が検出したリアルタイムホウ素濃度であり、B
0は、治療計画におけるホウ素濃度の設定値であり、φ
Bは、ホウ素濃度分布がBである場合、照射対象の体内の熱中性子フラックスであり、φ
B0は、ホウ素濃度分布がB
0である場合、照射対象の体内の熱中性子フラックスである。
【0014】
さらに、以下の式(3-7)を用いて校正されないプリセット中性子線量D
0を計算し、
【数7】
ここで、D
Bは、1ppmのホウ素濃度での線量であり、単位がGyであり、B
conは、実際に測定されたホウ素濃度であり、単位がppmであり、D
fは、高速中性子線量であり、単位がGyであり、D
thは、熱中性子線量であり、単位がGyであり、RBE
nは、中性子の生物学的効果比であり、D
rは、ガンマ線量であり、単位がGyであり、RBE
rは、ガンマ生物学的効果比である。
【0015】
さらに、以下の式(3-8)を用いて校正されたプリセット中性子線量D
totalを計算し、
【数8】
ここで、D
Bは、1ppmのホウ素濃度での線量であり、単位がGyであり、B
conは、実際に測定されたホウ素濃度であり、単位がppmであり、D
fは、高速中性子線量であり、単位がGyであり、D
thは、熱中性子線量であり、単位がGyであり、RBE
nは、中性子の生物学的効果比であり、D
rは、ガンマ線量であり、単位がGyであり、RBE
rは、ガンマ生物学的効果比である。
【0016】
本発明の中性子捕捉療法装置には、プリセット中性子線量を校正する校正システムが設置されて、照射対象に照射される中性子ビームの線量の正確度を根源で確保する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る中性子捕捉療法装置の中性子ビーム照射システムの概略図である。
【
図2】本発明に係る中性子捕捉療法装置のビーム整形体の概略図である。
【
図3】本発明に係る中性子捕捉療法装置の中性子ビーム照射システム及び検出システムの概略図である。
【
図4】本発明に係る中性子捕捉療法装置の実施例1の中性子線量検出装置の概略図である。
【
図5】本発明に係る中性子捕捉療法装置の実施例2の中性子線量検出装置の概略図である。
【
図6】本発明に係る中性子捕捉療法装置の監視システムの概略図である。
【
図7】本発明に係る中性子捕捉療法装置の誤操作防止システムと表示部及び入力部が組み合わせられた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術手段及び技術的効果をより明確にし、かつそれらに基づいて当業者が本発明を実施できるようにするために、以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
以下の説明において、用語「第1の」、「第2の」などは、本明細書で様々な素子を説明するために用いられてもよいが、これらの素子は、これらの用語に限定されず、これらの用語は、説明される対象を区別するためのものに過ぎず、いかなる順序又は技術的な意味がない。
【0020】
放射線療法は、がんを治療する一般的な手段であり、ホウ素中性子捕捉療法は、がんを効果的に治療する手段として近年に徐々に多く応用される。
図1~
図7に示すように、照射対象、例えば患者Sに、プリセット中性子線量の中性子ビームを照射して、ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)を行う中性子捕捉療法装置は、中性子ビーム照射システム1、検出システム、監視システム3、校正システム及び誤操作防止システムを含む。中性子ビーム照射システム1は、患者Sに中性子照射治療を実施することに適合する中性子ビームを生成し、検出システムは、中性子ビーム照射治療過程において、中性子線量などの照射パラメータを検出し、監視システム3は、中性子ビーム照射プロセス全体を制御し、校正システムは、プリセット中性子線量を校正し、誤操作防止システムは、関係者が監視システム3に誤った命令及び情報を入力することを防止する。
【0021】
ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素(10B)含有薬物が熱中性子に対して大きな捕捉断面を有するという特性を利用し、10B(n,α)7Li中性子捕捉及び核分裂反応により4He及び7Liという2種の重荷電粒子を生成し、2種の重荷電粒子は、平均エネルギーが約2.33MeVであり、線形エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)が高く、飛程が短いという特徴を有する。4He粒子の線形エネルギー付与と飛程は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、7Li重荷電粒子の線形エネルギー付与と飛程は、それぞれ175keV/μm、5μmであり、2種の重荷電粒子の総飛程が約1つの細胞の大きさに相当するため、生体への放射線損傷を細胞レベルに限定することができる。ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に選択的に集まり、中性子ビームが患者Sの体内に入った後、患者Sの体内のホウ素と核反応して4He及び7Liという2種の重荷電粒子を生成し、4He及び7Liの2種の重荷電粒子は、正常組織に大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を局所的に殺す。
【0022】
図1に示すように、中性子ビーム照射システム1は、中性子ビーム生成モジュール11と、中性子ビーム生成モジュール11で生成された中性子ビームを調整するビーム調整モジュール12とを含む。
【0023】
中性子ビーム生成モジュール11は、患者Sに照射される中性子ビームを生成し、荷電粒子ビームを加速する加速器111と、荷電粒子ビームと反応して中性子ビームを生成するターゲット112と、加速器111とターゲット112との間に位置し、荷電粒子ビームを輸送する荷電粒子ビーム輸送部113とを含む。荷電粒子ビーム輸送部113は、荷電粒子ビームをターゲット112に輸送し、その一端が加速器111に接続され、他端がターゲット112に接続される。また、荷電粒子ビーム輸送部113には、ビーム調節部(図示せず)、荷電粒子走査部(図示せず)などのビーム制御装置が設置される。ビーム調節部は、荷電粒子ビームの進行方向及びビーム直径を制御する。荷電粒子ビーム走査部は、荷電粒子ビームを走査し、かつターゲット112に対する荷電粒子ビームの照射位置を制御する。
【0024】
加速器111は、サイクロトロン、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン又は線形加速器などであってもよい。一般的なターゲット112は、リチウム(Li)ターゲット及びベリリウム(Be)ターゲットであり、荷電粒子ビームは、ターゲット112の原子核クーロン反発力を克服できるエネルギーまで加速され、かつターゲット112と7Li(p,n)7Be核反応を行って中性子ビームを生成し、一般的に検討された核反応は、7Li(p,n)7Be及び9Be(p,n)9Bである。通常、ターゲット112は、ターゲット層と、ターゲット層の一側に位置し、ターゲット層の酸化を防止する酸化防止層とを含み、酸化防止層は、Al又はステンレス鋼で製造される。
【0025】
本発明に係る実施例において、荷電粒子を加速器111で加速してターゲット112と核反応させて中性子源を供給し、他の実施例において、原子炉、D-T中性子発生器、D-D中性子発生器などで中性子源を供給してもよい。しかしながら、本発明に係る、荷電粒子を加速し、ターゲット112と核反応させて中性子源を供給することであれ、原子炉、D-T中性子発生器、D-D中性子発生器などで中性子源を供給することであれ、いずれも混合放射線場を生成し、すなわち生成されたビームは、高速中性子ビーム、熱外中性子ビーム、熱中性子ビーム及びガンマ線を含む。ホウ素中性子捕捉療法の過程に、熱外中性子を除くその他の放射線(放射線汚染と総称する)の含有量が多ければ多いほど、正常組織での非選択的線量沈着の割合が大きくなるため、これらの不必要な線量沈着を引き起こす放射線をできるだけ減少させるべきである。
【0026】
国際原子力機構(IAEA)は、臨床ホウ素中性子捕捉療法に用いられる中性子源に対して、エアビームの品質要素に関する5つの提案を出しており、この5つの提案は、異なる中性子源の長所と短所を比較するために利用できる他、中性子生成経路の選定及びビーム整形体121の設計をする場合の参考として利用できる。この5つの提案はそれぞれ以下のとおりである。
【0027】
熱外中性子束Epithermal neutron flux>1×109n/cm2s
高速中性子汚染Fast neutron contamination<2×10-13Gy-cm2/n
光子汚染Photon contamination<2×10-13Gy-cm2/n
熱中性子束と熱外中性子束との比thermal to epithermal neutron flux ratio<0.05
中性子流とフラックスとの比epithermal neutron current to flux ratio>0.7
注記:熱外中性子エネルギー領域は、0.5eV~40keVであり、熱中性子エネルギー領域は、0.5eVより小さく、高速中性子エネルギー領域は、40keVより大きい。
【0028】
図2及び
図3に示すように、ビーム調整モジュール12は、最終的に患者Sに照射される放射線の汚染を最大限に減少させ、かつ患者Sを治療するための熱外中性子を患者Sの照射される必要がある部位に集束するように、中性子ビーム生成モジュール11で生成された混合放射線を調整する。ビーム調整モジュール12は、中性子ビームを減速し、遮蔽するビーム整形体121と、熱外中性子を患者Sの照射される必要がある部位に集束するコリメータ122とを含む。具体的には、ビーム整形体121は、ターゲット112で生成された中性子ビームを熱外中性子エネルギー領域に減速できる減速体1211と、逸脱した中性子を減速体1211に導いて熱外中性子のビーム強度を向上させる反射体1212と、熱中性子を吸収して治療時に浅層の正常組織に過剰な線量沈着を引き起こすことを回避する熱中性子吸収体1213と、漏れた中性子及び光子を遮蔽して非照射領域の正常組織での線量沈着を減少させる放射線遮蔽部1214とを含む。他の実施例において、熱中性子吸収体が含まれず、減速体又は反射体内に含まれる物質により熱中性子を吸収してもよく、或いは、減速体と熱中性子吸収体とが一体的に設置されると理解されてもよい。他の実施例において、放射線遮蔽部が含まれず、反射体と同じ材質で構成されてもよく、或いは、反射体と放射線遮蔽部とが一体的に設置されると理解されてもよい。
【0029】
減速体1211は、複数の異なる材料を積層して形成されてもよく、減速体1211の材料は、荷電粒子ビームのエネルギーなどの要素に応じて選択され、例えば、加速器111からの陽子ビームのエネルギーが30MeVであり、かつベリリウムターゲットを使用する場合、減速体1211の材料は、鉛、鉄、アルミニウム又はフッ化カルシウムであり、加速器111からの陽子ビームのエネルギーが11MeVであり、かつベリリウムターゲットを使用する場合、減速体1211の材料は、重水(D
2O)又はフッ化鉛などである。好ましい実施例として、減速体1211は、MgF
2とMgF
2を占める重量百分率が4.6%のLiFとを混合して製造され、反射体1212は、Pbで製造され、熱中性子吸収体1213は、
6Liで製造される。放射線遮蔽部1214は、光子遮蔽部及び中性子遮蔽部を含み、光子遮蔽部は、鉛(Pb)で製造され、中性子遮蔽部は、ポリエチレン(PE)で製造される。減速体1211の形状は、
図2に示される双円錐状であってもよく、
図3に示される円柱状であってもよく、反射体1212は、減速体1211の周りに設置され、その形状が減速体1211の形状に応じて適応的に変化する。
【0030】
次に、
図3に示すように、検出システムは、中性子ビームの中性子線量をリアルタイムに検出する中性子線量検出装置21と、ターゲット112の温度を検出する温度検出装置22と、患者Sが治療過程において変位するか否かを検出する変位検出装置23と、患者Sの体内のホウ素濃度を検出するホウ素濃度検出装置(図示せず)とを含む。
【0031】
図4に示すように、中性子線量検出装置21は、中性子を受け、かつ信号を出力する検出器211と、検出器211から出力された信号を処理する信号処理ユニット212と、信号処理ユニット212から出力された信号を計数して計数率を得るカウンター213と、カウンター213に記録された計数率を中性子フラックス率又は中性子線量率に変換する変換ユニット214と、中性子フラックス率又は中性子線量率を積分して中性子線量を得る積分ユニット215と、中性子線量を表示するディスプレイ218とを含む。検出器211、信号処理ユニット212及びカウンター213は、計数率チャネル20を構成する。
【0032】
検出器211は、ビーム整形体121内に配置されてもよく、コリメータ122内に配置されてもよく、ビーム整形体121に近い任意の位置に設置されてもよく、検出器211の位置で中性子ビームの中性子線量を検出することができればよい。
【0033】
中性子ビームの中性子線量をリアルタイムに検出することを実現できる検出器211は、電離箱及びシンチレーションプローブを有し、電離箱構造をベースとするものは、He-3割合計数管、BF3割合計数管、核分裂電離箱、ホウ素電離箱があり、シンチレーションプローブは、有機材料又は無機材料を含み、熱中性子を検知する場合、シンチレーションプローブには、Li又はBなどの高熱中性子捕捉断面元素が多く添加される。2種の検出器内のある元素は、該検出器に入った中性子と捕捉反応又は核分裂反応をして重荷電粒子及び核分裂片を放出し、電離箱又はシンチレーションプローブ内に大量のイオン対を生成し、これらの電荷を収集して電気信号を形成し、信号処理ユニット212によりノイズ低減、変換、分離処理にかけ、かつ電気信号をパルス信号に変換し、電圧パルスの大きさを分析することにより、中性子パルス信号及びγパルス信号を分解する。分離された中性子パルス信号をカウンター213により持続的に記録して、中性子の計数率(n/s)を得る。変換ユニット214は、内部のソフトウェア、プログラムなどにより計数率を演算し変換して中性子フラックス率(cm-2s-1)を得て、中性子フラックス率をさらに演算し変換することにより中性子線量率(Gy/s)を得て、最後に、積分ユニットは、中性子線量率を積分してリアルタイム中性子線量を得る。
【0034】
以下、核分裂電離箱(fission chamber)、シンチレーションプローブ(scintillator detector)及びBF3検出器を例として簡単に説明する。
【0035】
中性子ビームが核分裂電離箱を通過すると、核分裂電離箱の内部のガス分子又は核分裂電離箱の壁部と遊離作用して、電子と正電荷を有するイオンを生成し、この電子及び正電荷イオンは、上記イオン対と呼ばれる。核分裂電離箱内に電界高圧が印加されるため、電子が中央部の陽極ワイヤに向かって移動し、正電荷イオンが周囲の陰極壁に向かって移動することで、測定できる電気信号を生成する。
【0036】
シンチレーションプローブ内の光ファイバなどの物質は、エネルギーを吸収した後に可視光を生成し、電離放射線を利用して結晶又は分子中の電子を励起状態に励起し、電子が基底状態に戻る場合に放出された蛍光は、収集された後に中性子ビームとして検出される。シンチレーションプローブは、中性子ビームと作用した後に可視光を放出して、光電子増倍管を利用して可視光を電気信号に変換して出力する。
【0037】
BF3検出器は、ビーム整形体121に配置されて中性子ビームの照射を受け、BF3検出器内のB元素と中性子とが核反応10B(n,α)7Liを行い、核反応により生成されたα粒子及び7Li電粒子は、電圧により駆動されて高圧電極により収集され、電気信号を生成する。電気信号は、同軸ケーブルにより信号処理ユニット212に伝送されて、信号増幅及びフィルタリング整形にかけられた後にパルス信号を形成する。処理されたパルス信号は、カウンター213に伝送されてパルス計数が行われて計数率(n/s)が得られ、計数率により中性子ビームの強度、すなわち中性子線量をリアルタイムに測定することができる。
【0038】
温度検出装置22は、熱電対(thermocouple)であり、成分の異なる2種の導体(熱電対線材又は熱電極と呼ばれる)の両端が接合されて回路を形成し、接合点の温度が異なる場合、回路中に起電力を生成し、このような現象は、熱電効果と呼ばれ、このような起電力は、熱起電力と呼ばれる。熱電対は、この原理を利用して温度を測定し、媒体の温度を直接的に測定する一端が動作接点と呼ばれ(測温接点とも呼ばれる)、他端が冷接点と呼ばれ(補償接点とも呼ばれる)、冷接点は、表示計器又は付帯計器に接続され、表示計器は、熱電対が生成した熱起電力を表示する。当然のことながら、当業者に周知のように、温度検出装置22は、抵抗温度計などの温度を検出できる任意の検出器211であってもよい。
【0039】
変位検出装置23は、赤外線信号検出器であり、赤外線検出器は、人体から放出された赤外線を検知することにより動作する。赤外線検出器は、外部の赤外放射線を収集し、さらに赤外線センサに集め、赤外線センサは、通常、焦電素子を用い、このような素子は、赤外放射線を受けて温度が変化する場ときに電荷を外部に放出し、検出処理後に警報を発する。このような検出器211は、人体の放射線を検知することを目標とするものである。したがって、放射線感受性素子は、波長が10μm程度の赤外放射線に対して非常に敏感でなければならない。当然のことながら、当業者に周知のように、変位検出装置23は、照射対象の変位変化を検出する任意の検出装置、例えば変位センサであってもよい。変位センサとは、ある参照物に対する照射対象の変位変化に基づいて、照射対象が移動するか否かを判断するものである。当業者にさらに周知のように、変位検出装置23は、照射対象の変位変化を検出することができるだけでなく、照射対象を固定する支持部材及び/又は治療台などの変位変化を検出して、照射対象の変位変化を間接的に知ることができる。
【0040】
患者Sに対して中性子ビーム照射治療を行う過程において、必要に応じて患者Sにホウ素を持続的に供給する。ホウ素濃度の検出は、誘導結合プラズマ分光法、高分解能αオートラジオグラフィー、荷電イオン分光法、中性子捕捉カメラ、核磁気共鳴及び磁気共鳴撮影、陽電子放出断層撮影、即発γ線分光器などにより実現することができ、以上の検出方法に係る装置は、ホウ素濃度検出装置と呼ばれる。
【0041】
本発明では、患者Sが放出するγ線を検出することにより患者Sの体内のホウ素濃度を推定することを例として説明する。中性子ビームが患者の体内に入ってホウ素と反応した後にγ線を生成し、γ線の量を測定することにより中性子ビームと反応するホウ素の量を推定することで、患者Sの体内のホウ素濃度を推定することができる。ホウ素濃度検出装置は、中性子ビーム照射システム1で患者Sに中性子ビーム照射治療を実施する過程において、患者Sの体内のホウ素濃度をリアルタイムに測定する。
【0042】
ホウ素濃度検出装置は、中性子とホウ素と反応により生成されたγ線(478kev)を検出することによりホウ素濃度を測定し、単位エネルギーのγ線を測定することによりホウ素濃度分布を測定することができるホウ素分布測定システム(PG(Prompt-γ)-SPECT)をホウ素濃度検出装置とする。ホウ素濃度検出装置は、γ線検出部及びホウ素濃度計算部を有する。γ線検出部は、患者Sの体内から放出されたγ線に関する情報を検出し、ホウ素濃度計算部は、γ線検出部が検出したγ線に関する情報に基づいて、患者Sの体内のホウ素濃度を計算し、γ線検出部としては、シンチレータ及び他の様々なγ線検出装置が使用されてもよい。本実施形態において、γ線検出部は、患者Sの腫瘍の近傍に配置され、例えば、患者Sの腫瘍から30cm程度離れる位置に配置される。
【0043】
上記中性子ビームの中性子線量を検出する中性子線量検出装置21の検出器211は、パルス検出器に属し、検出器211が分解できる、連続的に入射された2つの中性子の間の最短時間間隔は、パルス分解時間τ(s)として定義される。中性子が検出器211に入射した後のτ時間内に検出器211は他の入射された中性子を正確に記録することができないため、τ時間は、デッドタイムとも呼ばれる。
【0044】
検出器211の中性子検出感度は、検出器211の出力総量と対応する入力総量との比であり、本発明に挙げられた中性子線量検出装置21の検出器211については、入力物理量が中性子ビームであり、出力物理量が一般的に光信号又は電気信号である。出力総量と対応する入力総量との比が高ければ高いほど、検出器211の中性子検出感度が高くなり、中性子検出感度が高ければ高いほど、検出器211の対応するパルス分解時間τがより短くなることがわかる。統計誤差を低減するために、通常、低フラックスのビームは、中性子検出感度が高い検出器211で検出され、高フラックスのビームは、中性子検出感度が低い検出器211で検出される。
【0045】
以下、異なる実施例について詳述し、同じ部材について、異なる実施例において簡略化のために同じ数字が付けられ、類似する部材について、異なる実施例においてそれぞれ同じ数字が付けられるか又は「’」若しくは「’’」が付けられて区別される。
【0046】
図4に示される実施例1において、中性子線量検出装置21は、1つの計数率チャネル20のみを有し、異なるフラックスの中性子ビームの中性子線量を正確に検出するために、
図5に示される実施例2において、中性子線量検出装置21’は、少なくとも2つの計数率チャネル20’を含み、各計数率チャネル20’の検出器211’の中性子検出感度は、互いに異なり、さらに、中性子線量検出装置21’は、加速器111の現在の電力又は中性子ビームフラックスに基づいて適切な計数率チャネル20’を選択する計数率チャネル選択ユニット216をさらに含む。具体的には、実施例2において、中性子線量検出装置21’は、少なくとも2つの計数率チャネル20’と、少なくとも2つの計数率チャネル20’から1つの適切な計数率チャネル20’を選択する計数率チャネル選択ユニット216と、計数率チャネル選択ユニット216により選択された計数率チャネル20’が記録した計数率を中性子フラックス率又は中性子線量率に変換する変換ユニット214と、中性子フラックス率又は中性子線量率を積分して中性子線量を得る積分ユニット215とを含む。
【0047】
2つの計数率チャネル20’をそれぞれ第1の計数率チャネル201と第2の計数率チャネル202として名付け、第1の計数率チャネル201は、中性子を受けて信号を出力する第1の検出器2011と、第1の検出器2011から出力された信号を処理する第1の信号処理ユニット2012と、第1の信号処理ユニット2012から出力された信号を計数する第1のカウンター2013とを含み、第2の計数率チャネル202は、中性子を受けて信号を出力する第2の検出器2021と、第2の検出器2021から出力された信号を処理する第2の信号処理ユニット2022と、第2の信号処理ユニット2022から出力された信号を計数する第2のカウンター2023とを含む。計数率チャネル選択ユニット216は、加速器111の現在の電力又は中性子ビームフラックスに基づいて適切な計数率チャネル20を選択し、変換ユニット214は、計数率チャネル選択ユニット216により選択された計数率チャネル20が記録した計数率を中性子フラックス率又は中性子線量率に変換し、積分ユニット215は、中性子フラックス率又は中性子線量率を積分して中性子線量を得る。
【0048】
通常、加速器111が最大電力にあるときに生成できる中性子フラックスを最大中性子フラックスとして定義し、検出されたリアルタイム中性子フラックスが最大中性子フラックスの2分の1より小さい場合、中性子フラックスが小さいと考えられ、検出されたリアルタイム中性子フラックスが最大中性子フラックスの二分の一以上である場合、中性子フラックスが大きいと考えられる。
【0049】
第1の検出器2011の中性子検出感度は、第1の感度であり、第2の検出器2021の中性子検出感度は、第2の感度であり、第1の感度は、第2の感度より小さい。具体的には、第1の検出器2011は、B4C、Cdなどの大量の中性子吸収材料で包まれるか又は低気圧動作ガスが充填されるか又は小さい寸法に設計されるため、中性子検出感度が低下し、中性子フラックスが大きい場合、第1の検出器2011で検出すると、パルス分解時間による計数率損失を低減することができる。第2の検出器2021は、第1の検出器2011に比べて、少量の中性子吸収材料で包まれるか又はいかなる材料で包まれないか又は高気圧動作ガスが充填されるか又は大きな寸法に設計されるため、第2の感度は、第1の感度より大きく、中性子フラックスが小さい場合、第2の検出器2021で検出すると、低計数率による計数率の統計誤差を低減することができる。
【0050】
それに対応して、第1の計数率チャネル201の中性子検出感度は、第2の計数率チャネル202の中性子検出感度より小さい。計数率チャネル選択ユニットは、加速器111の現在の電力又は中性子フラックスに基づいて適切な計数率チャネル20’を選択し、例えば、加速器111の最大ビーム強度が10mAである場合、加速器111のビーム強度が5mAより大きいと、第1の感度を有する第1の計数率チャネル201の第1のカウンター2013が記録した計数率を選択し、変換ユニット214に伝送して線量の計算に用い、加速器111のビーム強度が5mAより小さいと、第2の感度を有する第2の計数率チャネル202の第2のカウンター2023が記録した計数率を選択し、変換ユニット214に伝送して線量の計算に用いる。計数率チャネル選択ユニットにより正確な計数率を選択し、変換ユニット214に伝送して線量を計算することにより、正確な中性子照射線量を得る。
【0051】
中性子線量検出装置21には、中性子検出感度が異なる少なくとも2つの第1の計数率チャネル201及び第2の計数率チャネル202が設置され、計数率チャネル選択ユニット216が実際の状況に応じて正確な計数率を選択して中性子線量を計算することにより、パルス分解時間による計数率の損失誤差を回避することができるとともに、低計数率による統計誤差を回避することができ、リアルタイム中性子線量の検出の正確度を向上させ、さらに患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度を向上させる。
【0052】
他の実施形態において、計数率チャネル20、20’は、必要に応じて任意の数に設置されてもよい。
【0053】
また、以上に挙げられた実施形態において、加速器111の電力、中性子フラックスなどに基づいて計数率チャネル20を選択するが、他の実施形態において、検出器211と中性子源との距離に基づいて計数率チャネル20’を選択してもよく、例えば、検出器211が中性子源に近い位置に設置される場合、第2の感度を有する第2の計数率チャネル202を選択し、検出器211が中性子源から離れた位置に設置される場合、第1の感度の検出器を有する第1の計数率チャネル201を選択する。
【0054】
上記中性子線量検出装置21の検出器211は、いずれもパルス検出器に属し、一般的に、パルス検出器には時間分解の問題がある。入射された中性子が検出器211と反応して信号パルスを生成し、続くのは1つのτ時間間隔であり、検出器211がこの間隔時間内にさらに生成された他の全ての信号パルスを同一の信号パルスと見なし、このような場合、任意の2つの信号パルスの時間間隔がτより小さければ、2番目のパルスが記録されない。したがって、カウンター213が記録した計数率に偏差が存在し、修正する必要がある。変換ユニット214は、修正済みの計数率Ckに基づいて線量換算係数と組み合わせてリアルタイムで正確な中性子フラックス率、中性子線量率Dt(Gy/s)を得る。
【0055】
再び
図4及び
図5に示すように、さらに、中性子線量検出装置21は、計数率を修正する計数率修正ユニット217をさらに含み、計数率修正ユニット217は、計数率修正計算部、計数率修正係数計算部及びパルス分解時間計算部を含む。
【0056】
計数率修正計算部は、以下の式(1-1)を用いて修正済みの計数率C
kを計算し、
【数9】
Kは、計数率修正係数であり、
C
tは、カウンター213が記録したリアルタイム計数率である。
【0057】
計数率修正係数計算部は、以下の式(1-2)を用いて計数率修正係数Kを計算し、
【数10】
nは、単位時間内にカウンター213が記録したパルス数であり、すなわち単位時間内のリアルタイム計数率(n/s)であり、
mは、単位時間内に検出器211内に実際に生成された信号パルス数であり、すなわち単位時間内に検出器211と反応する中性子数(n/s)である。
【0058】
検出器211に入った中性子について、単位時間内に反応した中性子数がmであり、単位時間内にカウンター213が実際に記録したパルス数がnである場合、計数管が動作できない時間がnτであり、この時間内に計数管に入るが記録されない中性子の総数がmnτであり、すなわち損失計数がm-nであり、導き出して式(1-3)を得る。
【数11】
【0059】
式(1-3)を式(1-2)に代入して、式(1-4)を得る。
【数12】
【0060】
以上の式から分かるように、パルス分解時間τが知られば、カウンター213が記録したパルス数と式(1-4)を組み合わせて計数率修正係数を算出することができ、計数率修正係数を式(1-1)に代入すれば修正済みの計数率を算出することができる。
【0061】
一般的なパルス分解時間の計算方法としては、二線源法及び原子炉電力法があり、この2つの方法は、2つの天然中性子源又は原子炉で計算する必要があり、コストが高い。本発明の実施例において、中性子捕捉療法装置の監視システムによりパルス分解時間を計算し、従来の装置及びリソースを十分に利用してコストを低減する。
【0062】
具体的には、まず、加速器111を低フラックス状態で動作させ、この場合、中性子ビームフラックスは、第1の中性子ビームフラックスI
1であり、このとき、カウンター213が記録した計数率は、C
1であり、低フラックス状態にあるため、理論的には、検出器211がパルス分解時間の影響を受けて記録できない信号パルスが存在することはない。次に、加速器111を高フラックス状態で動作させ、この場合、中性子ビームフラックスは、第2の中性子ビームフラックスI
2であり、このとき、カウンター213が記録した計数率は、C
2であり、この場合に計数率がパルス分解時間の影響を受けるため、一部の信号パルスが記録されず、パルス分解時間計算部は、以下の式(1-5)に基づいてパルス分解時間τを計算する。
【数13】
【0063】
検出器211の位置が変化しなければ、装置を動作させるたびにパルス分解時間を計算する必要がないが、検出器211が長時間動作した後に、性能パラメータが変化して、パルス分解時間の変化を引き起こすため、パルス分解時間を周期的に計算する必要がある。
【0064】
計数率修正ユニット217は、検出器211のパルス分解時間を計算することができ、かつパルス分解時間に基づいて計数率修正係数を計算することによりパルス分解時間による計数率の誤差を修正することができ、リアルタイム中性子線量の検出の正確度をさらに向上させ、ひいては患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度をさらに向上させる。
【0065】
照射治療を行う前に、シミュレーション、計算などにより、患者Sに輸送される必要がある総中性子線量、照射期間の中性子フラックス率又は中性子線量率又は電流及び必要な照射時間、照射角度などの照射パラメータを得て、説明を容易にするために、以上のパラメータをプリセット照射パラメータと総称する。他の実施例において、以上のパラメータの一部又はより多くの言及されないパラメータを含むパラメータは、いずれもプリセット照射パラメータであると理解されてもよく、それぞれプリセット中性子線量(Gy)、プリセット中性子フラックス率(cm-2s-1)、プリセット中性子線量率(Gys-1)、プリセット電流(A)及びプリセット照射時間(s)などと呼ばれる。照射過程において、いくつかの要素が変化するため、検出システムが検出した関連パラメータに基づいて照射パラメータを周期的に調整する必要があり、検出システムが検出した照射パラメータをリアルタイム照射パラメータと名付け、調整された照射パラメータを修正された照射パラメータと名付ける。調整された照射パラメータは、プリセット照射パラメータであってもよく、修正された照射パラメータであってもよい。
【0066】
図6に示すように、監視システム3は、プリセット照射パラメータを入力するための入力部31と、照射パラメータを記憶する記憶部32と、記憶部32に記憶された照射パラメータに基づいて治療計画を実行する制御部33と、検出システムが検出したリアルタイム照射パラメータを読み取る読取部34と、記憶部32に記憶されたリアルタイム照射パラメータ及びプリセット照射パラメータ/修正された照射パラメータを演算する計算部35と、計算部35の計算結果に基づいて照射パラメータを修正する必要があるか否かを判断する判断部36と、判断部36が照射パラメータを修正する必要があると判定した場合に記憶部32における一部の照射パラメータを修正する修正部37と、残りの照射時間又は残りの照射時間及び他の照射パラメータをリアルタイムに表示する表示部38とを含む。
【0067】
プリセット照射パラメータが修正される前に、記憶部32に記憶された照射パラメータは、プリセット照射パラメータであり、修正部37が修正する照射パラメータもプリセット照射パラメータであり、表示部38に表示された残りの照射時間は、プリセット照射時間とリアルタイム照射時間との差であり、表示部38に表示された照射パラメータは、プリセット照射パラメータである。プリセット照射パラメータが修正された後、記憶部32に記憶された照射パラメータは、修正された照射パラメータであり、修正部37が再び修正する照射パラメータも修正された照射パラメータであり、表示部38に表示された残りの照射時間は、修正された残りの照射時間であり、表示部38に表示された照射パラメータは、修正された照射パラメータであり、当然のことながら、プリセット照射パラメータと修正された照射パラメータを同時に表示することができる。
【0068】
他の実施例において、入力部31、記憶部32などを含まなくてもよい。
【0069】
監視システム3と検出システムとは、電気的に接続されるため、検出システムが検出した関連情報を監視システム3に伝送することができ、検出システムにおける中性子線量検出装置21のディスプレイ218と監視システム3の表示部38とは、同じ装置であってもよく、通常、1つの表示パネルである。
【0070】
監視システム3の動作プロセスについては、
図6を参照し、具体的に以下のとおり説明される。
【0071】
S1では、入力部31は、プリセット照射パラメータ、例えば、プリセット中性子フラックス率又はプリセット中性子線量率又はプリセット電流、プリセット中性子線量及びプリセット照射時間、プリセットホウ素濃度などのプリセット照射パラメータを入力し、
S2では、記憶部32は、照射パラメータを記憶し、
S3では、制御部33は、記憶部32に記憶された照射パラメータに基づいて治療計画を実行し、
S4では、読取部34は、検出システムが検出したリアルタイム照射パラメータを読み取り、
S5では、計算部35は、記憶部32に記憶された照射パラメータと読取部34が読み取ったリアルタイム照射パラメータを演算し、
S6では、判断部36は、計算部35の計算結果に基づいて上記記憶部に記憶された照射パラメータを修正する必要があるか否かを判断し、
S7では、判断部36は、記憶部32に記憶された照射パラメータを修正する必要があると判定した場合、修正部37は、記憶部32における最も新しい照射パラメータを修正し、
判断部36は、記憶部32に記憶された照射パラメータを修正する必要がないと判定した場合、修正部37は、修正動作を行わず、
S8では、表示部38は、記憶部32に記憶された照射パラメータに基づいて残りの照射時間又は残りの照射時間及び他の照射パラメータをリアルタイムに表示する。
【0072】
監視システム3の動作プロセスにおいて、読取部34は、リアルタイム照射パラメータを周期的に読み取り、例えば、5分間ごとにリアルタイム照射パラメータを1回読み取り、かつ計算部35に伝送して相関演算を行い、計算部35が演算したところ、リアルタイム照射パラメータとプリセット照射パラメータとの差分値が第1の閾値より大きいか又はリアルタイム照射パラメータが第2の閾値より大きいか又は第3の閾値より小さい場合、判断部36は、照射パラメータを修正する必要があるという命令を与え、次に、修正部37は、記憶部32に記憶された照射パラメータを修正し、逆に、判断部36は、照射パラメータを修正する必要がないという命令を与え、この場合、修正部37は、記憶部32に記憶された照射パラメータを修正しない。例えば、計算部35が演算したところ、中性子線量率とプリセット中性子線量率との差分値又はリアルタイム中性子フラックス率とプリセット中性子フラックス率との差分値又はリアルタイムホウ素濃度とプリセットホウ素濃度との差分値又は修正された残りの照射時間と残りの照射時間(プリセット照射時間と照射が実際に実施された時間との差分値又は前回の修正された残りの照射時間)との差分値が第1の閾値より大きく、或いは計算部35が比較したところ、リアルタイム中性子線量率又はリアルタイム中性子フラックス率又はリアルタイムホウ素濃度が第2の閾値より大きいか又は第3の閾値より小さいことを得る場合である。
【0073】
プリセット照射パラメータが修正される前に、記憶部32は、プリセット照射パラメータを記憶し、表示部38は、残りの照射時間及び他のプリセット照射パラメータをリアルタイムに表示する。プリセット照射パラメータが修正された後、記憶部32は、最も新しい1組の修正された照射パラメータを記憶し、表示部38は、修正された残りの照射時間及び最も新しい1組の他の修正された照射パラメータをリアルタイムに表示する。残りの照射時間以外に、表示部38は、具体的に、どの照射パラメータを実際の需要に応じて選択することができるかをさらに表示し、全ての照射パラメータを表示してもよく、一部の照射パラメータを表示してもよく、通常、表示部38は、残りの照射時間、リアルタイム照射線量、ホウ素濃度などの情報を表示する。
【0074】
本発明に係る実施例において、計算部35は、中性子線量検出装置21が検出したリアルタイム中性子線量Drと入力部31から入力されたプリセット中性子線量D
totalを組み合わせて、計算により、修正された残りの照射時間t
rを得て、ここで、t
0は、プリセット照射時間であり、tは、検出システムが検出したリアルタイム照射時間、すなわち、照射が実施された時間であり、
【数14】
は、t時間周期内の平均中性子線量値であり、Pは、リアルタイム中性子線量とプリセット中性子線量との百分率であり、以下の式(2-1)を用いてPを計算する。
【数15】
【0075】
Pが97%より小さい場合、以下の式(2-2)及び式(2-3)を用いて、修正された残りの照射時間t
rを計算する。
【数16】
【数17】
【0076】
この場合、修正部37は、記憶部32に記憶されたプリセット照射時間又は修正された残りの照射時間を修正するだけでよい。
【0077】
Pが97%以上である場合、修正部37は、患者Sが過剰な中性子を吸収することを防止するために、中性子線量率をプリセット中性子線量率より小さい第1の中性子線量率に調整し、かつそれに応じて照射時間を長くし、第1の中性子線量率は、プリセット中性子線量率の1/7~1/2である。好ましくは、中性子線量率をプリセット中性子線量率I
dの1/5に調整し、すなわち第1の中性子線量率は、I
d/5に等しく、以下の式(2-4)を用いて、修正された残りの照射時間t
rを計算する。
【数18】
【0078】
この場合、修正部37は、記憶部32における残りの照射時間及びプリセット中性子線量率を修正された残りの照射時間tr及び修正された中性子線量率に修正する必要があり、制御部33は、修正された照射パラメータに基づいて治療計画を実行する。他の実施形態において、患者Sが高い中性子線量率の中性子ビームの照射下で過剰な中性子を吸収することを防止するために、中性子線量率をプリセット中性子線量率の1/3、1/4、1/6又は1/7などの他の倍数に調整してもよく、また、修正部37は、Pが90%以上である場合、95%以上である場合又は他の比以上である場合に中性子線量率を調整してもよく、具体的な比は、実際の状況に応じて予め設定されてもよく、当然のことながら、計算部35が計算して得たPの値に基づいて中性子線量率をプリセット中性子線量率より小さい第1の中性子線量率に調整する必要があるか否かを判断せず、プリセット中性子線量、リアルタイム中性子線量とプリセット中性子線量の百分率がどの程度に達すれば、中性子線量率を修正する必要があるかという条件を決定した後、1つの閾値を手動で設定し、かつ入力部31により記憶部32に入力して記憶し、検出されたリアルタイム中性子線量が該閾値以上である場合、判断部36は、照射パラメータを修正する必要があると判定し、修正部37は、起動されて中性子線量率をプリセット中性子線量率より小さい第1の中性子線量率に調整してもよい。
【0079】
以上の実施例において、Pが97%より小さい場合、計算部35は、リアルタイム中性子線量率が変化しないように維持する前提で、プリセット中性子線量の照射を完了するのに必要な照射時間を計算し、他の実施形態において、照射時間が変化しないように維持し、中性子線量率又はホウ素濃度を変化させることにより、プリセット照射時間内に所定の線量の照射を完了するという目的を達成することができ、中性子線量率を変化させる方法は、加速器の電力、ターゲット112のターゲット層の厚さなどを変化させることを含む。以下の式(2-5)を用いて、修正された中性子線量率Irを計算する。
【数19】
【0080】
中性子線量率が中性子フラックス率を変換係数により演算して得られ、中性子フラックス率が中性子計数率を積分して得られるため、中性子線量率を修正することは、中性子フラックス率、中性子計数率を修正することに等しい。
【0081】
この実施形態において、Pが97%以上である場合、患者Sが高い中性子線量率の中性子ビームの照射下で過剰な中性子を吸収することを防止するために、依然として中性子線量率をプリセット中性子線量率の1/5に調整し、かつ式(2-4)を用いて、修正された残りの照射時間trを計算する。
【0082】
照射が実際に実施された時間がプリセット照射時間に達するか又は実際に照射された中性子線量がプリセット中性子線量に達すると、制御部は、中性子捕捉療法装置に照射停止命令を送信する。
【0083】
監視システム3には、記憶部32に記憶された、治療計画を実行するための照射パラメータを修正する修正部37が設置されることにより、患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量がプリセット中性子線量と基本的に一致することを確保し、患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度をさらに向上させ、また、リアルタイム中性子線量とプリセット中性子線量との百分率が97%以上である場合、患者Sが高い中性子線量率の中性子ビームの照射下で過剰な中性子を吸収することを防止するために、中性子線量率を低く調整し、かつそれに応じて照射時間を長くすることも、患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度を向上させるという作用を果たす。
【0084】
以上に挙げられた実施形態において、中性子線量検出装置21から得られたリアルタイム中性子線量に基づいて、プリセット照射パラメータを修正する必要があるか否かを判断し、かつこれらのリアルタイム照射パラメータ及びプリセット照射パラメータに基づいて、修正された照射パラメータを計算する。他の実施形態において、温度検出装置22、変位検出装置23又はホウ素濃度検出装置が検出したリアルタイム照射パラメータに基づいて、所定のパラメータを修正する必要があるか否かを判断し、かつこれらの検出装置が検出したリアルタイム照射パラメータに基づいて、修正された照射パラメータを計算してもよい。例えば、ホウ素濃度検出装置により患者Sの体内のホウ素濃度がプリセットホウ素濃度と一致しないか又は所定の区間範囲内にないことを検出した場合、修正部37は、残りの照射時間を修正するか又は患者体内へのホウ素の輸送速度を修正する。通常、照射治療が終わりに近づく場合、患者Sの体内のホウ素濃度を短時間に修正することが困難であり、この場合、通常、残りの照射時間を修正することを選択する。
【0085】
中性子ビームの照射線量の正確度は、実践治療中に非常に重要であり、照射線量が多すぎると患者Sに潜在的な損傷を与え、照射線量が少なすぎると治療品質を低下させる。プリセット中性子線量の計算部分の計算誤差、及び実際の照射過程でのリアルタイム照射パラメータとプリセット照射パラメータとの間の偏差は、いずれも中性子照射線量の不正確さをもたらすため、実際の照射過程において、照射パラメータをリアルタイムに修正する以外に、プリセット照射パラメータの計算も非常に重要である。したがって、患者Sに実施される中性子照射線量がより正確であることを確保するために、校正システムがプリセット中性子線量を校正する必要がある。中性子ビームのプリセット中性子線量を校正するとき、患者Sの位置決め偏差、リアルタイム中性子線量率の偏差、患者体内のホウ素濃度、中性子フラックスなどの要素による影響を考慮する必要がある。
【0086】
校正システムが用いる校正係数は、中性子校正係数K1及びホウ素校正係数K2を含み、中性子校正係数K1は、位置決め校正係数Kp及び中性子ビーム強度校正係数Kiに関連し、ホウ素校正係数K2は、ホウ素濃度校正係数Kb及びホウ素自己遮蔽効果校正係数Ksに関連する。
【0087】
リアルタイム中性子線量率とプリセット中性子線量率との間の偏差は、最終的に患者に照射される中性子線量の偏差を直接的に引き起こすため、位置決め校正係数Kp及び中性子ビーム強度校正係数Kiを導入して中性子照射線量を修正する。
【0088】
自己遮蔽効果とは、ホウ素濃度が異なる場合、中性子ビームの腫瘍部位に照射されるトラックも異なることである。具体的には、患者Sの体内のホウ素濃度が高ければ高いほど、中性子ビームの透過能力が低くなり、中性子ビームの腫瘍に照射されるトラックが短くなり、中性子ビームがより浅いトラックにおいてホウ素と反応し、逆に、中性子ビームの腫瘍に照射されるトラックが長くなり、中性子ビームがより深いトラックにおいてホウ素と反応する。具体的には、ホウ素濃度検出装置により患者体内の第1のホウ素濃度値を得て、中性子ビームが腫瘍部位に照射される場合に第1のトラックを有し、校正システムは、第1のホウ素校正係数を得て、ホウ素濃度検出装置により患者体内の第2のホウ素濃度値を得て、中性子ビームが腫瘍部位に照射される場合に第2のトラックを有し、校正システムは、第2のホウ素校正係数を得て、第1のホウ素濃度値が第2のホウ素濃度値より大きいと、第1のトラックは、第2のトラックより小さく、かつ第1のホウ素校正係数は、第2のホウ素校正係数より小さい。したがって、中性子照射線量を計算するとき、自己遮蔽効果による中性子ビームの実際照射効果及び照射トラックへの影響を考慮する必要があるため、ホウ素濃度校正係数Kb及びホウ素自己遮蔽効果校正係数Ksを導入して中性子照射線量を校正する。
【0089】
具体的には、それぞれ式(3-1)、式(3-2)及び式(3-3)を用いて中性子校正係数K
1、位置決め校正係数K
p及び中性子ビーム強度校正係数K
iを計算し、相関式は以下のとおりである。
【数20】
【数21】
【数22】
【0090】
ここで、Dは、実際に治療に用いられた線量、すなわち中性子線量検出装置21が測定したリアルタイム中性子線量Drであり、
D0は、校正されないプリセット中性子線量であり、
Iは、実際の中性子ビームの強度で、中性子線量検出装置21が測定したリアルタイム中性子線量率であり、
I0は、理論的ビーム強度であり、すなわち入力部31から入力されたプリセット中性子線量率である。
【0091】
それぞれ式(3-4)、式(3-5)及び式(3-6)を用いてホウ素校正係数K
2、ホウ素濃度校正係数K
b及びホウ素自己遮蔽効果校正係数K
sを計算し、相関式は以下のとおりである。
【数23】
【数24】
【数25】
【0092】
ここで、Bは、患者Sの体内の実際のホウ素濃度、すなわちホウ素濃度検出装置が検出したリアルタイムホウ素濃度であり、
B0は、治療計画におけるホウ素濃度の設定値、すなわち入力部31から入力されたプリセットホウ素濃度であり、
φBは、ホウ素濃度分布がBである場合、患者Sの体内の熱中性子フラックスであり、
φB0は、ホウ素濃度分布がB0である場合、患者Sの体内の熱中性子フラックスである。
【0093】
以下の式(3-7)を用いて校正されないプリセット中性子線量D
0を計算する。
【数26】
【0094】
以下の式(3-8)を用いて治療計画における校正されたプリセット中性子線量D
totalを計算する。
【数27】
【0095】
ここで、DBは、1ppmのホウ素濃度での線量であり、単位がGyであり、
Bconは、実際に測定されたホウ素濃度であり、単位がppmであり、
Dfは、高速中性子線量であり、単位がGyであり、
Dthは、熱中性子線量であり、単位がGyであり、
RBEnは、中性子の生物学的効果比であり、
Drは、ガンマ線量であり、単位がGyであり、
RBErは、ガンマ生物学的効果比である。
【0096】
実際の治療時に、校正システムは、予め策定された治療計画におけるプリセット中性子線量を校正して、患者Sに不正確な中性子線量を実施することを防止する。
【0097】
校正システムは、患者Sの位置決め偏差、リアルタイム中性子線量率の偏差、リアルタイムホウ素濃度などの要素の、プリセット中性子線量への影響を総合的に考慮して、中性子校正係数K1及びホウ素校正係数K2を導入してプリセット中性子線量を校正し、患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度を根源で確保する。
【0098】
実際の治療時に、入力部31がプリセット照射パラメータの入力を完了した後、オペレータは、中性子捕捉療法装置を起動して照射治療を行う。照射が開始された後、入力部31の入力機能がロックされ、関連照射パラメータを再入力することができず、このように照射過程において誤って触れるか又は誤って操作して誤ったパラメータ及び命令を入力することを防止することを保証することができるが、治療過程において理想的な状態とわずかに一致しない場合、照射を停止するか又は異常状態に応じて照射し続け、照射過程においてパラメータをタイムリーに補正するか又は命令をタイムリーに変化させることができない。しかしながら、操作インタフェースをリアルタイムに操作できるように簡単に設定すれば、照射が開始された後に、依然として入力部31により照射パラメータ及び制御命令を入力することができ、このように照射過程において正確な照射パラメータ及び命令をリアルタイムに入力することを保証することができるが、このように照射過程において誤操作による誤ったパラメータ、命令の入力又は操作命令の繰り返し入力をもたらし、さらに照射結果に影響を与えるリスクがある。
【0099】
図7に示すように、中性子捕捉療法装置は、操作インタフェースを有し、操作インタフェースは、上記入力部31、表示部38、情報誤りなし確認ボタン51、照射開始ボタン52、照射一時停止ボタン53、照射キャンセルボタン54及び報告生成ボタン55で構成される。オペレータは、情報誤りなし確認ボタン51を起動して、全ての情報に誤りがないと確認した旨の信号を監視システム3に伝達し、監視システム3は、全ての情報に誤りがないと確認した旨の信号を受信して初めて、中性子捕捉療法装置を起動して中性子ビームを照射するための必要条件を備える。監視システム3は、全ての情報に誤りがないと確認した旨の信号を受信した後、さらに照射開始ボタン52を起動すれば、中性子捕捉療法装置を起動して中性子ビームを照射するための十分条件を備える。中性子捕捉療法装置が起動された後、照射一時停止ボタン53により中性子ビームの照射を一時停止し、照射キャンセルボタン54により中性子ビームの照射をキャンセルすることができる。照射を完了した後、報告生成ボタン55を起動して照射治療に関連する報告を自動的に生成することができる。中性子ビーム照射を一時停止し、すなわち全ての照射パラメータ及び命令が変化しないように維持し、照射開始ボタン52を再び起動することにより元の照射パラメータ及び命令に応じて中性子ビームを照射し、中性子ビームの照射をキャンセルし、すなわち全ての照射パラメータ及び命令をクリアし、中性子ビームを再び照射する場合に照射パラメータ及び命令を改めて入力し、かつ情報誤りなし確認ボタン51及び照射開始ボタン52を順に起動する必要がある。
【0100】
誤操作防止システムには、操作性及び安全性という2つの面の要因を総合的に考慮して、2回確認部及びフールプルーフ部が設置されることにより、安全で、正確な照射を確保するとともに、システムは、リアルタイム操作性が乏しくない。オペレータが全ての情報に誤りがないと確認した旨の信号を中性子捕捉療法装置に伝達するために2回確認部を起動する前に、中性子捕捉療法装置が起動されて照射治療計画を実行することができず、すなわち照射開始ボタン52を起動することができない。フールプルーフ部の起動期間に、照射パラメータ及び命令を修正し、入力できる入力部31及び報告生成ボタン55がロックされる。
【0101】
本発明に係る実施例において、2回確認部は、操作インタフェースでの情報誤りなし確認ボタン51である。医師は、プログラムを起動して治療計画を実行する前に、関連情報を2回確認する必要があり、オペレータは、入力に誤りがないと確認し、かつ情報誤りなし確認ボタン51をクリックすることにより、情報に誤りがないと確認した旨の命令を監視システム3に入力して初めて、装置を起動して治療計画を実行することができることにより、誤操作のため、誤った制御命令を導入する誤入力リスクを低減する。例えば、医師は、患者Sに照射治療を行う前に、患者情報(例えば、氏名、性別、年齢など)及び照射パラメータ(例えば、照射線量、コリメータ番号)などを検証する必要があり、全ての情報に誤りがないと検証した後、操作インタフェースでの情報誤りなし確認ボタン51をクリックして初めて、照射開始機能を起動することができ、そうでなければ、医師が照射開始ボタン52をクリックしても、装置は、起動されて中性子ビームの照射を拒否し、かつ情報未確認の提示を与える。
【0102】
本発明に係る実施例において、フールプルーフ部は、照射開始ボタン52であり、照射開始ボタン52を起動して治療計画を開始した後、入力部31の入力機能がロックされて任意の情報を再入力することができない。具体的には、照射治療を行う前に、関連命令及び照射パラメータを入力部31により入力し、関連照射パラメータ及び命令を監視システム3に入力すると、オペレータは、関連照射パラメータ及び命令が誤っているか否かをチェックし、誤りがないと確認した後、情報誤りなし確認ボタン51を起動し、その後、入力部31がロックされて、入力部31により関連照射パラメータ及び命令を修正するか又は追加することができず、このように、誤入力を防止し、入力部31がアンロックされて初めて関連照射パラメータ及び命令を再び入力することができる。本願に係る実施例において、照射一時停止ボタン53又は照射キャンセルボタン54をクリックした後、照射治療を停止するとともに、関連情報を入力するための入力部31がアンロックされ、この場合、入力部31により関連情報を修正し、追加することができる。当然のことながら、照射治療を完了した後、入力部は自動的にアンロックされる。このように、誤入力を防止するだけでなく、システムの操作性を保証することができる。例えば、医療従事者は、患者Sの情報、照射パラメータなどの情報に誤りがないと確認した後、操作インタフェースでの情報誤りなし確認ボタン51をクリックし、次に照射開始ボタン52をクリックし、その後、システムは、照射治療を開始し、この場合、関連情報を入力するための入力部31がロックされて、情報を入力することができない。
【0103】
照射治療を完了する前に、報告生成ボタン55もロックされ、照射治療を完了してこそ、報告生成ボタン55が自動的にアンロックされ、すなわち治療報告生成機能を起動することができる。
【0104】
フールプルーフ部は、上記例における照射開始ボタン52に限定されず、他の重要なボタン及びパラメータ入力ウィンドウも適用され、そして、2回確認及びボタンによるフールプルーフの実現キャリアは、ソフトウェアであってもよく、ハードウェアであってもよく、例えば、フールプルーフ部は、制御パネルでのキー又はダイヤルスイッチであってもよく、キー又はスイッチがオンにされる前に、いくつかの操作を行うことができず、キーをオンにするか又はスイッチをオンにして初めて、関連操作を実行することができる。
【0105】
本発明に係る実施例において、タッチスクリーンの方式で命令及び照射パラメータを入力し、他の実施形態において、キー(例えば機械的キー)を用いて入力してもよい。
【0106】
誤操作防止システムは、必要な場合にパラメータ設定及び制御命令の入力機能を行うことを保証することができるだけでなく、誤操作又は他の原因によるパラメータの誤入力又は命令の繰り返し入力を低減することができ、装置の動作リスクを低減する。
【0107】
本発明に係る中性子捕捉療法装置の中性子線量検出装置21には、中性子検出感度が異なる少なくとも2つの第1の計数率チャネル201及び第2の計数率チャネル202と計数率チャネル選択ユニット216とが設置され、計数率チャネル選択ユニット216が実際の状況に応じて正確な計数率を選択して中性子線量を計算することにより、パルス分解時間による計数率の損失誤差を回避することができるとともに、低計数率による統計誤差を回避することができ、リアルタイム中性子線量の検出の正確度を向上させ、さらに患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度を向上させ、また、中性子線量検出装置21には、検出器211のパルス分解時間を計算し、かつパルス分解時間に基づいて計数率修正係数を計算することにより、パルス分解時間による計数率の誤差を修正することができる計数率修正ユニット217がさらに設置され、リアルタイム中性子線量の検出の正確度をさらに向上させ、ひいては患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度をさらに向上させる。
【0108】
本発明に係る中性子捕捉療法装置は、さらに監視システム3を有し、監視システム3には、記憶部32に記憶された、治療計画を実行するための照射パラメータを周期的に修正する修正部37が設置されることにより、患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量がプリセット中性子線量と基本的に一致することを確保し、患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度をさらに向上させ、また、リアルタイム中性子線量とプリセット中性子線量との百分率が97%以上である場合、患者Sが高い中性子線量率の中性子ビームの照射下で過剰な中性子を吸収することを防止するために、中性子線量率を低く調整し、かつそれに応じて照射時間を長くすることも、患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度を向上させるという作用を果たす。
【0109】
本発明に係る中性子捕捉療法装置は、さらに校正システムを有し、校正システムは、患者Sの位置決め偏差、リアルタイム中性子線量率の偏差、リアルタイムホウ素濃度などの要素の、プリセット中性子線量への影響を総合的に考慮して、中性子校正係数K1及びホウ素校正係数K2を導入してプリセット中性子線量を校正し、患者Sに照射される中性子ビームの中性子線量の正確度を根源で確保する。
【0110】
以上より、本発明に係る中性子捕捉療法装置は、患者に正確な照射線量の中性子ビームを実施し、かつ装置の操作性を保証する前提で誤操作による装置の動作リスクを低減することができる。
【0111】
本発明に係る中性子捕捉療法装置は、上記実施例に記載されている内容及び図面に示される構成に限定されるものではない。本発明を基礎として、部材の材料、形状及び位置に対して行われた明らかな変更、代替又は修正は、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。
【国際調査報告】