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特表2023-531022リサイクル炭素繊維を含む強化PAEK組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】リサイクル炭素繊維を含む強化PAEK組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20230712BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20230712BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20230712BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20230712BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C08L71/00 Z
C08K7/06
C08J5/04 CEZ
C08J3/12 A
B29B17/04 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578800
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2021066427
(87)【国際公開番号】W WO2021259757
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/042,035
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20186867.6
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング, スコット エー.
(72)【発明者】
【氏名】エル-ヒブリ, モハマド ジャマール
【テーマコード(参考)】
4F070
4F072
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA52
4F070AC04
4F070AD02
4F070AE01
4F070DA55
4F072AA08
4F072AB10
4F072AD42
4F072AG05
4F072AH05
4F072AH23
4F072AJ04
4F072AK15
4F072AK16
4F072AL11
4F072AL16
4F401CA14
4F401CA58
4F401CB18
4F401DC04
4F401FA05Z
4F401FA07Z
4F401FA20Z
4J002CH091
4J002CH092
4J002CN032
4J002DA016
4J002FA046
4J002FD016
4J002GN00
(57)【要約】
PEKKに基づく炭素繊維強化ポリマー複合材料を再利用する方法が提供される。炭素繊維強化PEKK複合材料を粉砕することによって得られるチップは、バージンポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーと溶融混合され、炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物を提供する。この炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物から、良好な機械的特性を有する成形された物品を製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物の製造方法であって、
- CF/PEKK複合材料のチップを準備すること、及び
- CF/PEKK複合材料中のPEKKとは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーと、前記チップとを溶融混合すること、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
- CF/PEKK複合材料製の物品を準備する工程、
- 前記物品を粉砕してCF/PEKK複合材料のチップを得る工程、及び
- 前記チップを、前記CF/PEKK複合材料中の前記PEKKとは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーと溶融混合する工程、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CF/PEKK複合材料が、前記CF/PEKK複合材料の総重量に対して0.01重量%~1.00重量%のジフェニルスルホンを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)と溶融混合されたCF/PEKK複合材料のチップの重量が、前記炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物中の炭素繊維の量が前記組成物の総重量に対して5~60重量%であるような量である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶融混合が押出機内で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
CF/PEKK複合材料製の前記物品をチップへと粉砕するために機械的手段が使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)がポリ(エーテルエーテルケトン)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリ(エーテルエーテルケトン)が、約0.05~0.50kPa・sの溶融粘度(400℃、1000s-1で測定される)を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記CF/PEKK複合材料のチップが、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)と、前記CF/PEKK複合材料中の前記少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー及び前記PEKKポリマーとは異なる少なくとも1種のポリマーと溶融混合される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記CF/PEKK複合材料中の前記ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー及び前記PEKKポリマーとは異なる前記少なくとも1種のポリマーが、ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーの群から、好ましくはポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、又はポリエーテルスルホン(PES)ポリマーからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物を物品に成形する工程を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物がペレットの形態である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
PEEKと、前記PEEKとは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)と、前記組成物の総重量に対して10~50重量%の炭素繊維とを含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって得られる炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物。
【請求項14】
- CF/PEKK複合材料のチップが1種以上のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーと溶融混合された組成物が、以下の特性:
- ASTM D638(試験速度:0.5cm/分)に従って、ASTMタイプIドッグボーン試験片(長さ16.5cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で測定される255GPa以上の引張強さ、
- ASTM D790(試験速度:0.13cm/分、5.1cmのスパン)に従ってバー(長さ12.7cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で測定される370MPa以上の曲げ強さ、
のうちの少なくとも1つによって特徴付けられるか、又は
- PEEKと、ポリフェニルスルホン(PPSU)と、ポリエーテルスルホン(PES)とを含む組成物とCF/PEKK複合材料のチップが溶融混合された組成物が、以下の特性:
- ASTM D638(試験速度:0.5cm/分)に従って、ASTMタイプIドッグボーン試験片(長さ16.5cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で測定される160GPa以上の引張強さ、
- ASTM D790(試験速度:0.13cm/分、5.1cmのスパン)に従ってバー(長さ12.7cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で測定される235MPa以上の曲げ強さ、
のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項13に記載の炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の炭素繊維強化組成物を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月22日に出願された米国仮特許出願第63/042035号及び2020年7月21日に出願された欧州特許出願公開第20186867.6号に基づく優先権を主張し、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、炭素繊維とポリアリールエーテルケトンポリマーとを含有する組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炭素繊維強化ポリマー複合材料(CFRP)、すなわち炭素繊維を主要構造構成要素として使用し、熱硬化性又は熱可塑性のポリマーをマトリックス成分として使用する繊維強化複合材料は、多数の製品の製造に使用される軽くて強い材料である。例えば、高性能を維持しながら軽量化するために航空機内の多くの金属部品を置き換えるためなど、それらの需要はここ数年絶えず増加している。これにより、大量の製造残渣及び使用済み製品が発生するようになった。金属とは異なり、炭素繊維複合材料の製造中に生じる廃棄物は、使用済み製品と共に、再利用の選択肢が限られている。従来の金属部品の製造中に生じるスクラップは容易にリサイクルされ、廃棄物は最小限に抑えられる。炭素繊維複合材料では、切れ端やトリム廃棄物の再利用の選択肢は現在限定的であり、主に埋め立てや焼却によって処分されている。
【0004】
これらの方法は、持続可能な処分方法を特定し、廃棄物の蓄積を防止するための解決手段を提供するのみならず、バージン炭素繊維に対する需要の継続的な増加に対応するための環境意識の向上をもたらした。
【0005】
したがって、廃炭素繊維複合材料をリサイクル及び再利用し、それによってそのようにしない場合に発生する可能性のある廃棄物処理の問題を回避するのに有用な方法を特定することが必要とされている。
【0006】
そのポリマーマトリックスがポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)やポリフェニレンスルフィド(PPS)などの設計された熱可塑性ポリマーからなる炭素繊維複合材料の可能性を認識し始めるユーザーがますます増えてきている。熱可塑性ポリマーは、より速い処理時間、増加した靭性、及び無限に近い保存寿命を製造業者に提供する。
【0007】
特に、本発明者らは、熱可塑性マトリックス、特にポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーを含むマトリックスを含む炭素繊維強化複合材料を再利用することの可能性を調べた。
【0008】
メカニカルリサイクルは、繊維強化複合材料の利用可能なリサイクル方法の1つである。一般的に、メカニカルリサイクルは、スクラップ複合材料のサイズを小さくして再利用するために使用される技術である。
【0009】
ポリ(エーテルエーテルケトン)に基づく炭素繊維複合材料(以降CF/PEEK)のメカニカルリサイクルは以前に開示されている。
【0010】
Li H.,Englund K.;“Recycling of carbon fiber-reinforced thermoplastic composite wastes from the aerospace industry”;J.Compos.Mater.,51,1265-1273(2017)及びRamakrishna S.,Tan W.K.,Teoh S.H.,et al.;“Recycling of carbon fiber/PEEK composites”;Key.Eng.Mater.,137,1-8(1997)は、共に、CF/PEEK複合材料の部品のサイズを機械的手段(ハンマーミル並びに/又はシュレッダー及び回転ブレード造粒機)を使用して小さくし、次いで圧縮成形して試験片にし、機械試験を行う方法を開示している。いずれの研究でも、元の複合材料と比較して、リサイクルされたCF/PEEK複合材料を用いて得られた部品の機械的特性が低下することが示された。
【0011】
Schinner G,Brandt J and Richter H.;“Recycling carbonfiber-reinforced thermoplastic composites”,J.Thermoplast.Compos.Mater.;9,239-245(1996)には、バージンPEEK射出成形材料を強化するために粉砕されたCF/PEEK複合材料が使用されたCF/PEEK複合材料のリサイクル方法が開示されている。この論文によれば、リサイクルされたCF/PEEK材料を使用して得られた射出成形片は、同等のバージン射出成形炭素繊維充填PEEK材料に匹敵する特性を有していた。
【0012】
今回、ポリ(エーテルケトンケトン)に基づく炭素繊維複合材料(以降「CF/PEKK」)をリサイクルすることにより、良好な機械的特性を有するリサイクル複合材料を含有するポリ(アリールエーテルケトン)組成物が得られることが見出された。特に、驚くべきことに、リサイクルCF/PEKK複合材料を使用すると、従来技術のリサイクルCF/PEEK複合材料を含むポリ(アリールエーテルケトン)組成物よりも優れた機械的特性を有する炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物が得られることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
したがって、本発明の第1の目的は、CF/PEKK複合材料から得られるチップを炭素繊維源として使用することによって炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物を製造する方法である。
【0014】
CF/PEKK複合材料という表現は、本明細書では、ポリ(エーテルケトンケトン)、PEKKに基づく炭素繊維複合材料を示すために使用される。
【0015】
したがって、本発明の目的は、炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物の製造方法であり、前記方法は、
- CF/PEKK複合材料のチップを準備すること、及び
- CF/PEKK複合材料中のPEKKポリマーとは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(以降「PAEKポリマー」と呼ぶ)及びCF/PEKK複合材料中のPAEKポリマーともPEKKポリマーとも異なる任意選択的な少なくとも1種のポリマー(以降「ポリマー(OP)」と呼ぶ)と、前記チップとを溶融混合すること、
を含む。
【0016】
「炭素繊維強化ポリ(アリールエーテルケトン)組成物」(以降「強化PAEK組成物」)という表現は、ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー及び炭素繊維の群から選択される1種以上のポリマーを含む組成物を指すために使用される。ポリ(アリールエーテルケトン)組成物中の炭素繊維は、不連続の細断炭素繊維である。
【0017】
本発明の目的のためには、「ポリ(アリールエーテルケトン)」という用語は、「PAEK」という用語と互換的に使用され、繰り返し単位の50モル%超がAr-C(=O)-Ar’基(式中、Ar及びAr’は、互いに同じであるか又は異なり、芳香族基である)を含む繰り返し単位である任意のポリマーを指すことが意図されており、モル%はポリマー中の繰り返し単位の総モル数を基準とする。繰り返し単位は、通常以下の式(J-A)~(J-O)からなる群から選択される:
【化1】
【化2】
【化3】
(式中:
- R’の各々は、互いに同じであるか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- j’は、ゼロ又は1~4の整数である)。
【0018】
繰り返し単位(J-A)~(J-O)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、繰り返し単位中のR’と異なるその他の部位への1,2-、1,4-、又は1,3-結合を有することができる。好ましくは、前記フェニレン部位は、1,3-又は1,4-結合を有する。
【0019】
好ましくは、フェニレン部位は、ポリマーの主鎖における結合を可能にする置換基以外の置換基を有さない。すなわち、j’は好ましくは各存在においてゼロである。
【0020】
本発明の方法に適したポリ(アリールエーテルケトン)は、ASTM D2857-95に従って25℃で0.1%の濃度で濃硫酸(最低96%)中で測定した場合に、好ましくは約0.5~約1.8dL/gの範囲の固有粘度(IV)を有する。ポリ(アリールエーテルケトン)は、好ましくは、約0.05~0.65kPa・sの溶融粘度(400℃、1000s-1のせん断速度で測定)を有する。
【0021】
CF/PEKK複合材料中のPEKKポリマーとは異なる任意のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーを方法で使用することができる。
【0022】
適切なポリ(アリールエーテルケトン)の特筆すべき例は、例えばポリ(エーテルケトン)(PEK)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルエーテルケトンケトン)(PEEKK)、及びポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)(PEKEKK)ポリマーである。
【0023】
有利な一実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーは、ポリ(エーテルエーテルケトン)、PEEK、すなわちj’=0であり全てのフェニレン部位が1,4-結合を有する繰り返し単位(J-A)のホモポリマーである。
【0024】
炭素繊維フィラー成形組成物の製造に適した任意のPEEKポリマーを使用することができる。PEEKポリマーは、好ましくは約0.05~0.50kPa・sの溶融粘度(400℃、1000s-1で測定)を有する。
【0025】
或いは、ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーは、PEEK-PEoEKコポリマー、すなわちj’=0でありフェニレン部位が独立して1,2-及び1,4-結合を有する繰り返し単位(J-A)のポリマーから選択することができる。PEoEKポリマーは、典型的には、以下の式(A’)及び(B’)の繰り返し単位を含む:
【化4】
【0026】
典型的には、PEoEKポリマーは、繰り返し単位(B’)の総モル数に対する繰り返し単位(A’)の総モル数の比が95/5~70/30、好ましくは90/10~72/28、より好ましくは85/15~74/26の範囲、例えば約95/5、約90/10、約85/15、約80/20、約75/25、又は約70/30のモル比である、上で定義したポリマーの中から選択される。
【0027】
ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーは、繰り返し単位(J-A)と(J-D)(これらの式中のj’=0であり、全てのフェニレン部位は1,4-結合を有する)とを含むポリマーであるPEEK-PEDEKコポリマーの中から選択することもできる。PEEK-PEDEKコポリマーは、典型的には以下の式(A’)及び(C’)の繰り返し単位を含む:
【化5】
【0028】
繰り返し単位(C’)及び(A’)は、55/45~80/20、好ましくは60/40~80/20、より好ましくは60/40~75/25の範囲の(C’)/(A’)モル比でPEDEK-PEEKコポリマー中に存在する。
【0029】
本発明の一実施形態では、CF/PEKK複合材料のチップは、1種以上のPAEKポリマーと溶融混合される。
【0030】
本発明の別の実施形態では、CF/PEKK複合材料のチップは、1種以上のPAEKポリマー及び1種以上の他のポリマーOPと溶融混合される。
【0031】
典型的には、1種以上のPAEKポリマーは、1種以上の他のポリマーOPの量より多い量で存在する。PAEKポリマーの合計重量は、通常、PAEKポリマーとポリマーOPの総重量の少なくとも50重量%である。
【0032】
ポリマーOPは、ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーとの溶融混合に適した任意のポリマーの中から選択することができる。
【0033】
前記実施形態の一態様では、ポリマーOPは、ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーの群から選択され、以降「PAESポリマー」と呼ばれる。本開示の目的のためには、「ポリ(アリールエーテルスルホン)」又は「PAESポリマー」という用語は、繰り返し単位の少なくとも50モル%が、式(K)の繰り返し単位(RPAES)である任意のポリマーを意味し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく:
【化6】
(式中、
Rは、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
hは、各Rについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数であり、
Tは、結合、スルホン基[-S(=O)2-]、及び基-C(R)(R)-(ここで、R及びRは、互いに等しく又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから選択される)からなる群から選択される)。
【0034】
Tは、好ましくは、結合、スルホン基又は基-C(R)(R)-(式中、R及びRは好ましくはメチル基である)である。
【0035】
適切なポリ(アリールエーテルスルホン)の特筆すべき例は、例えばポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、又はポリエーテルスルホン(PES)ポリマーである。
【0036】
ポリスルホン(PSU)という用語は、式(L)の繰り返し単位を少なくとも50モル%含む任意のポリマーを意味し、モル%は、ポリマー中の総モル数に基づく:
【化7】
【0037】
ポリフェニルスルホン(PPSU)という用語は、式(M)の繰り返し単位を少なくとも50モル%含む任意のポリマーを意味し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく:
【化8】
【0038】
ポリエーテルスルホン(PES)という用語は、式(O)の繰り返し単位を少なくとも50モル%含む任意のポリマーを意味し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく:
【化9】
【0039】
本発明の一態様では、CF/PEKK複合材料のチップが、1種以上のPAEKポリマーと、ポリフェニルスルホン(PPSU)と、ポリエーテルスルホン(PES)とを含む組成物と溶融混合される。
【0040】
組成物は、好ましくは、PEEKと、ポリフェニルスルホン(PPSU)と、ポリエーテルスルホン(PES)とを含む。組成物は、50~60重量%のPEEKと、30~40重量%のポリエーテルスルホン(PES)と、5~10重量%のポリフェニルスルホン(PPSU)とを含むことができ、重量%は組成物の総重量に基づく。
【0041】
疑義を避けるために明記すると、「ポリ(エーテルケトンケトン)」又は「PEKK」という用語は、繰り返し単位(J-B)を少なくとも50モル%含み、j’=0であり、それぞれのフェニレン部位が独立して1,2-、1,4-、又は1,3-結合を有していてもよく、好ましくは前記フェニレン部位が1,3-又は1,4-結合を有する、任意のポリマーを表すことが意図されている。
【0042】
PEKKポリマーは、ポリマー中の1,3-フェニレン結合と1,4フェニレン結合との間の比率によって特徴付けることができる。特に、以下の式(M’)と(P’)の繰り返し単位の比率が異なり得る:
【化10】
【0043】
典型的には、CF/PEKK複合材料中のPEKKポリマーは、上で定義されたPEKKポリマーの中から選択され、繰り返し単位(M’)の総モル数に対する繰り返し単位(P’)の総モル数の比(「(P’)/(M’)比」又は「T/I比」)は、55/45~75/25、好ましくは60/40~80/20、より好ましくは62/38~75/25の範囲である。
【0044】
ポリ(アリールエーテルケトン)がPEKKポリマーである場合、通常、CF/PEKK複合材料中のPEKKポリマーに対する異なるT/I比によって特徴付けられることになる。
【0045】
方法の第1の工程では、CF/PEKK複合材料のチップが準備される。
【0046】
CF/PEKK複合材料のチップは、典型的には、CF/PEKK複合材料製の物品を粉砕することによって得られる。
【0047】
したがって、本発明の方法は、以下の工程を含む:
- CF/PEKK複合材料製の物品を準備する工程;
- 前記物品を粉砕してCF/PEKK複合材料のチップを得る工程;及び
- 前記チップを、CF/PEKK複合材料中のPEKKとは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーと溶融混合する工程。
【0048】
CF/PEKK複合材料製の物品は、いくつかの例を挙げると、複合材料製造プロセスからの廃棄物若しくは切れ端やトリム廃棄物などのプリプレグユニタップ製造残渣、又は厚さの仕様から外れた製品のいずれかであってよく、或いは使用済み製品であってよい。
【0049】
本発明の方法の一実施形態では、物品は、CF/PEKK複合材料の製造中に発生するエッジトリム又はスクラップ廃棄物からなる。
【0050】
前記実施形態の1つの好ましい態様では、CF/PEKK複合材料は、溶融含浸プロセスによって製造された一方向連続繊維強化テープを含む。溶融含浸プロセスは、通常、ポリマーを含む溶融前駆体組成物を通して複数の連続フィラメントを延伸することを含む。前駆体組成物は、含浸を促進する可塑剤及び加工助剤などの特定の成分を追加的に含んでいてもよい。溶融含浸プロセスには、欧州特許第102158号明細書に記載されているような、直接溶融及び芳香族ポリマー複合材料(「APC」)プロセスが含まれる。
【0051】
有利には、CF/PEKK複合材料は、可塑剤としてのジフェニルスルホンの存在下で溶融含浸法によって得られる。CF/PEKK複合材料中のジフェニルスルホンの残留量は、CF/PEKK複合材料の総重量に対して0.01重量%~1.00重量%である。ジフェニルスルホンの量は、0.03重量%~0.90重量%、更には0.04~0.85重量%、好ましくは0.04~0.80重量%であってよい。
【0052】
理論に拘束されるものではないが、CF/PEKKチップ中のジフェニルスルホンの存在が、組成物中のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーとの炭素繊維の結合を改善すると考えられる。
【0053】
別の実施形態では、複合材料は、スラリープロセスによって製造された一方向連続繊維強化テープを含む。例示的なスラリープロセスは、例えば米国特許第4792481号明細書の中で見ることができる。
【0054】
CF/PEKK複合材料は、典型的には20~80重量%、より典型的には40~80重量%の炭素繊維を含む。CF/PEKK複合材料は、複合材料の重量に対して典型的には80~20重量%、より典型的には60~20重量%のPEKKポリマーを含む。
【0055】
CF/PEKK複合材料物品をチップに粉砕する工程、すなわち細断又は切断する工程は、典型的には機械的手段を使用して行われる。ブレード、例えばダイカットブレード又はローラーブレード、ダイカット格子、シュレッダー、又は任意の他の適切な手段など、当該技術分野で公知の任意の機械的手段を使用することができる。CF/PEKK物品をチップに粉砕するためにレーザーが使用されてもよい。
【0056】
CF/PEKK複合材料物品が切断されるチップの長さは、好ましくは3~50mmの範囲、特には5~20mmの範囲である。チップの長さは、CF/PEKK複合材料のチップを少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーに混合するために使用される機械の供給能力に釣り合うようにも選択されるべきである。
【0057】
CF/PEKK複合材料のチップが少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーと溶融混合されると、個々のチップは個々の繊維へと崩壊し、これはその後ポリマー溶融物の中に混合される。このようにして得られる強化PAEK組成物の特性は、チョップドストランド強化ポリマーの特性に対応する。
【0058】
熱可塑性成形組成物を調製するために適した任意の公知の溶融混合プロセスを、強化PAEK組成物の製造に使用することができる。そのようなプロセスは、典型的には熱可塑性ポリマーをポリマーの溶融温度を超えて加熱し、それにより熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって行われる。
【0059】
強化PAEK組成物の調製プロセスは、溶融混合装置内で行うことができる。溶融混合によってポリマー組成物を調製する当業者に公知の任意の溶融混合装置を使用することができる。好適な溶融混合装置は、例えばニーダー、バンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機、及び射出成形機である。
【0060】
チップをポリマー溶融物に添加することにより、溶融物とチップとがより均一に混合され、その結果得られる個々の繊維がポリマー溶融物中でより均一に分布する。
【0061】
押出機を用いて溶融混合が行われる場合、多軸押出機、例えば二軸押出機を使用することができる。二軸押出機は一軸押出機に比べて特に混合効果が優れているため、二軸押出機を使用すると有利な場合がある。
【0062】
少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)及び任意選択的な少なくとも1つの他のポリマーOPと溶融混合されたCF/PEKK複合材料のチップの割合は、最終的な強化PAEK組成物中の炭素繊維の量が組成物の総重量に対して5~60重量%になるような割合である。典型的には、チップの割合は、強化PAEK組成物中の炭素繊維の量が組成物の総重量に対して5~60重量%、更には5~50重量%、好ましくは10~50重量%、更には10~45重量%になるような割合である。
【0063】
本発明の方法によって得られる強化PAEK組成物は、好ましくはペレット材料の形態である。しかしながら、ペレット材料に加えて、強化PAEK組成物は、シート又は押出物の形態をとっていてもよい。強化PAEK組成物がペレットの形態である場合、このペレットは、ポリマー溶融物をペレット化ダイを通してペレット化ナイフによってペレットへと切断することによる通常の方法で製造される。
【0064】
これを行う1つの可能な方法は、最初にポリマー押出物を製造し、これを冷却し、次いでペレットへと切断することである。或いは、及び従来通り、ペレット化ダイを通されたポリマーが、直接面切断される。この切断は空気中で行うことができ、その場合、切断されたペレットは好ましくは冷却液の中に落ちて固化する。水が適切な冷却液の一例である。或いは、水中ペレット化も可能である。この場合、ポリマー溶融物はペレット化ダイを通して冷却液に押し出され、直接ペレットへと面切断される。いずれの場合も、ペレットは冷却液と共に搬送され、その後冷却液が除去されて乾燥される。
【0065】
強化PAEK組成物中の炭素繊維の長さは、第1に、溶融混合機における繊維のせん断に依存し、第2に、ポリマー溶融物から切断されたペレット材料の寸法に依存する。最大繊維長は、個々のペレットの最大の長手方向の広がりに対応する。より長い繊維が望まれる場合には、エッジ長が長いチップに切断するだけでなく、より大きなペレットを製造する必要もある。ペレットは、好ましくは円筒形であり、その最大の広がりは典型的には円筒の高さである。しかしながら、代わりに、より大きな直径とより低い高さを選択することも可能である。しかしながら、繊維は、ポリマー溶融物の供給によって、ペレット化ダイの穴の軸に対して軸方向に実質的に平行な配置で整列するようにされるため、達成可能な最大繊維長を決定するのは、典型的にはペレットの軸方向の広がりである。
【0066】
典型的には、強化PAEK組成物中の炭素繊維は、0.05~10mm、0.05~6mm、更には0.1~5mm、より典型的には0.1~3mmの範囲の平均長さを有する。
【0067】
強化PAEK組成物は、限定するものではないが、押出成形、射出成形、及び圧縮成形などの任意の適切な溶融加工技術を使用して物品へと更に加工することができる。
【0068】
例示的な実施形態によれば、CF/PEKK複合材料のチップが1種以上のPAEKポリマーのみと溶融混合される本発明の方法によって得られる強化PAEK組成物は、以下の特性のうちの少なくとも1つによって特徴付けることができる:
- ASTM D638(試験速度:0.5cm/分)に従って、ASTMタイプIドッグボーン試験片(長さ16.5cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で測定される255GPa以上の引張強さ;
- ASTM D790(試験速度:0.13cm/分、5.1cmのスパン)に従ってバー(長さ12.7cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で測定される370MPa以上の曲げ強さ。
【0069】
更なる例示的な実施形態によれば、CF/PEKK複合材料のチップが、PEEKと、ポリフェニルスルホン(PPSU)と、ポリエーテルスルホン(PES)とを含む組成物と溶融混合される、本発明の方法によって得られる強化PAEK組成物は、以下の特性のうちの少なくとも1つによって特徴付けることができる:
- ASTM D638(試験速度:0.5cm/分)に従って、ASTMタイプIドッグボーン試験片(長さ16.5cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で測定される160GPa以上の引張強さ;
- ASTM D790(試験速度:0.13cm/分、5.1cmのスパン)に従ってバー(長さ12.7cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で測定される235MPa以上の曲げ強さ。
【0070】
このように、本発明により、廃棄物であるCF/PEKK複合材料を原料として使用することにより、強化PAEK材料製の物品の製造が可能になる。強化PAEK組成物は、高付加価値製品の製造に適した優れた機械的特性によって特徴付けられる。
【0071】
強化PAEK組成物は、様々な完成品の製造のために産業界において使用することができる。したがって、本発明の更なる目的は、本発明の更なる目的は、強化PAEK組成物から作られた、又はそれを含む物品である。強化PAEK組成物から製造され得る物品は、特に強さ、剛性及び靭性の高いレベルを必要とするものである。
【0072】
有利には、物品は、射出成形された物品又は押出成形された物品であってよい。
【0073】
物品の非限定的な例としては、バルブシート/シール、ポンプウェアリング、ギア及びスライディングベーン又は医療デバイス固定具、電気器具用のタービン及び/又はタービンハウジングが挙げられる。
【0074】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本願の記載と矛盾する場合、本明細書の記載が優先するものとする。
【0075】
ここで、本発明は、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0076】
材料
CF/PEKK:Cytec Engineered Materials/Cytec Industries Inc.,Woodland Park N.J.から市販されているAPC(PEKK)カーボンプリプレグ;64~67重量%の炭素繊維HexTow(登録商標)AS4Dと33~36重量%のPEKK樹脂(T/I比=72:28;Tg=155℃、Tm=335℃)を含有。
【0077】
CF/PEEK:Cytec Engineered Materials/Cytec Industries Inc.,Woodland Park N.Jから市販されているAPC-2(PEEK);以下を含有。
【0078】
KT880:KetaSpire(登録商標)KT-880P PEEK(Solvay Specialty Polymers USA,L.L.Cから市販)、0.12~0.18kPa・sの範囲の比溶融粘度(400℃の温度及び1000s-1のせん断速度でキャピラリーレオメーターにより測定)を有する。
【0079】
KT890:KetaSpire(登録商標)KT-890P PEEK(Solvay Specialty Polymers USA,L.L.Cから市販)、0.07~0.11kPa・sの範囲の比溶融粘度(400℃の温度及び1000s-1のせん断速度でキャピラリーレオメーターにより測定)を有する。
【0080】
PPSU:RADEL(登録商標)R 5900 PPSU[MFR(365℃/5kg)は26~36g/10分の範囲にある]は、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.Cからのポリフェニルスルホン(PPSU)ホモポリマーである。
【0081】
PES:Veradel(登録商標)A-702 NT PES[MFR(380℃/2.16kg)は、65~85g/10分の範囲にある]は、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.Cからのポリエーテルスルホン(PESU)ホモポリマーである。
【0082】
細断CF:SGL Carbon Fibers,Ltd.からのSigrafil(登録商標)C30 S006 APS。
【0083】
PEPQ:Hostanox(登録商標)PEP-Q(登録商標)、Clariantから入手可能な芳香族有機ホスホナイト溶融熱安定剤。
【0084】
酸化亜鉛:Lanxess Corp.から入手可能なAktiv(登録商標)グレード。
【0085】
基本手順
CF/PEKK又はCF/PEEK材料のテープを、シュレッダーを使用して長さ5~7mm、幅3~7mmのチップに粉砕した。
【0086】
チップは、バージンPEEK樹脂(KT880又はKT890)と、又はPEEK(KT890)とPPSUとPESとを含む組成物と、ZSK-26 Coperion二軸押出機(12バレルセクション、直径26mm、L/D比48)を使用して溶融混合し、更に試験するために試験棒へと射出成形した。
【0087】
同じバージンPEEK樹脂、又はPEEKとPPSUとPESとの組成物を標準的な細断炭素繊維と混錬して同じ重量%の炭素繊維を含む組成物を得てから、これをASTM試験棒へと射出成形することによって、比較の試験片を作製した。
【0088】
ASTM D638(試験速度:0.5cm/分)に従って、ASTMタイプIドッグボーン試験片(長さ16.5cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で引張特性を測定した。
【0089】
曲げ特性は、ASTM D790(試験速度:0.13cm/分、5.1cmのスパン)に従って、バー(長さ12.7cm、幅1.3cm、厚さ0.32cm)で測定した。
【0090】
アイゾット耐衝撃性(ノッチ付き)及びアイゾット耐衝撃性(ノッチなし)は、射出成形したプラーク(10.16cm×10.16cm、厚さ0.32cm)を使用して、それぞれASTM試験法D256及びD4812に従って決定した。試験の結果は表1に報告されている。
【0091】
表1のデータは、炭素繊維源としてCF/PEKK複合材料のチップを使用して得られた強化PAEK組成物(実施例1、実施例2、及び実施例3)が、バージンPAEKとバージン炭素繊維とから得られた強化PAEK組成物(比較例1、比較例3、及び比較例4)と比較して良好な機械的特性を有することを示している。
【0092】
データは、予期しなかったことには、CF/PEKK複合材料のチップを使用して得られた強化PAEK組成物(実施例1)の引張強さ及び曲げ強さが、CF/PEEK複合材料のチップを使用して得られたPAEK組成物(比較例2)の引張強さ及び曲げ強さよりも高いことも示している。
【0093】
強化PAEK組成物がPAEKポリマー以外のポリマー、特にPES及びPPSUポリマーを含む場合にも、良好な機械的特性が得られる。実施例5の強化組成物は、バージン炭素繊維を使用して調製された比較例5の組成物と比べてより高い引張強さ及び曲げ強さのみならず、より高い衝撃強さも示す。
【0094】
【表1】
【国際調査報告】