(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】画像解析方法、コンピュータ・プログラム・プロダクトおよび画像解析装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
A61B8/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578869
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2021066709
(87)【国際公開番号】W WO2021255283
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501276430
【氏名又は名称】テクニーシェ・ユニバーシタイト・アイントホーベン
(71)【出願人】
【識別番号】522492370
【氏名又は名称】ジャイナエコロジープラクティーク ベー.セー.スクート ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ミスキ、マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】スクート、ベネディクタス
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE09
4C601EE11
4C601FE07
4C601JC16
4C601KK31
(57)【要約】
【解決手段】子宮運動の整合度の定量的評価のための画像解析方法は、子宮の記録を取得するステップと、記録内において、少なくとも2つの異なる子宮の領域および/または少なくとも2つの時刻で、少なくとも2つの子宮運動の伝搬波をトラッキングするステップと、少なくとも2つの伝搬波の少なくとも2つの特性の類似度基準に基づいて、子宮運動の整合度を決定するステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮運動の整合度の定量的評価のための画像解析方法であって、
-子宮の記録を取得するステップと、
-前記記録内において、少なくとも2つの異なる子宮の領域および/または少なくとも2つの時刻で、少なくとも2つの子宮運動の伝搬波をトラッキングするステップと、
-前記少なくとも2つの伝搬波の少なくとも2つの特性の類似度基準に基づいて、前記子宮運動の整合度を決定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つの特性は、前記少なくとも2つの伝搬波の方向、主方向、速度、振幅または位相を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
-前記少なくとも2つの特性の時間的または空間的な分散の基準を決定するステップ
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記トラッキングするステップは、半自動的なコンピュータ補助を用いて、連続するトラッキングマーカーが実質的に等距離となるように、前記記録内でトラッキングマーカーを選択するステップを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記トラッキングマーカーは、子宮の解剖学的特徴に合うように、好ましくは子宮内膜の前側および後側に沿って、選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
-前記記録内のトラッキングマーカーの中からトラッキングマーカーの組を選択し、
-前記選択されたトラッキングマーカーの組に基づいてフィッティング曲線を決定し、
-前記フィッティング曲線の変位および回転を決定し、
-前記変位および回転に基づいて、前記トラッキングマーカーの座標を補償する
ことにより、前記記録内で連続するフレームにおけるトラッキングマーカーの動きを補償するステップを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの伝搬波は、ブロックマッチング、オプティカルフローまたは反復的空間ワープを含むオプティカルフローのうちのいずれかの運動評価技術を用いてトラッキングされることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記反復的空間ワープは、現在のフレームから第1のフレームへのオプティカルフローと、前記現在のフレームから第2のフレームへのオプティカルフローと、を結合するステップを含み、
前記第1のフレームは、前記現在のフレームより後のフレームであり、
前記第2のフレームは、前記第1のフレームより後のフレームであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記類似度基準は、交差相関、コヒーレンス、平均二乗誤差、相互情報またはハウスドルフ距離のうちのいずれかを用いて決定されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
-前記少なくとも2つの伝搬波を、好ましくは高速フーリエ変換を用いて、周波数領域で表現するステップと、
-周波数領域で表現された前記少なくとも2つの伝搬波の第1四分位置からのエネルギースペクトルの第1の和を、頸部から底部への伝搬エネルギーとして決定するステップと、
-周波数領域で表現された前記少なくとも2つの伝搬波の第2四分位置からのエネルギースペクトルの第2の和を、底部から頸部への伝搬エネルギーとして決定するステップと、
-前記少なくとも2つの伝搬波の主方向を決定するために、前記第1の和および前記第2の和に基づいて、前記頸部から底部への伝搬エネルギーと、前記底部から頸部への伝搬エネルギーとの比を決定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
-前記少なくとも2つの伝搬波は、前記少なくとも2つの特性に関し、前記子宮の解剖学的特徴に関する少なくとも1つの対称軸に対して、好ましくは前記子宮の子宮内膜に関する少なくとも1つの対称軸に対して、実質的に対称的であるか否かを決定するステップと、
-決定された実質的に対称的であるか否かの結果を、前記子宮の受精の成功の基準として出力するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
子宮以外の発生源に由来する子宮運動をフィルターで除外するステップを含み、
前記子宮以外の発生源は、腸および/または膀胱などの子宮以外の器官ならびに心臓の鼓動、呼吸および取得中のプローブの動きを含む取得運動を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記記録するステップは、2次元(2D)超音波、3次元(3D)超音波、磁気共鳴またはX線画像化のうちのいずれかを用い、
前記記録するステップの記録時間は、20秒以上、好ましくは2分以上、より好ましくは4分以上であることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
命令を記憶したコンピュータ読み取り媒体を備えたコンピュータ・プログラム・プロダクトであって、
前記命令は、プロセッサで実行されたとき、請求項1から13のいずれかに記載の方法を前記プロセッサに実行させるように構成されることを特徴とするコンピュータ・プログラム・プロダクト。
【請求項15】
子宮運動の整合度の定量的評価のための画像解析装置であって、
プロセッサと、メモリと、を備え、
前記メモリは、前記プロセッサ上で実行されたとき、請求項1から13のいずれかに記載の方法を前記プロセッサに実行させる命令を記憶するように構成されることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮運動の整合度を定量的に評価するための画像分析方法およびシステムに関する。さらに本発明は、そのような定量的評価のためのコンピュータ・プログラム・プロダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に見て、約6つに1つのカップルが、妊娠可能な年代(22歳から44歳)での不妊の問題を経験している。こうした不妊症のカップルに適用できる治療法の1つに、体外受精(IVF)などの補助生殖医療がある。2008年には、欧州の250万以上のカップルに対して、IVFが最終手段として使われた。一方最近10年間で見ると、毎年実行されるIVFサイクルの数は20%以上増加している。しかしながら、IVF治療の成功率は依然として30%未満であり、4%の増加にとどまっている。
【0003】
IVFサイクルでは、ホルモン値が検査された後、複数の卵子が採卵され、試験管内で受精される。その後、胚芽が子宮に戻される。子宮壁への胚移植が成功すると、妊娠に至る。
【0004】
胚移植の成功を妨げる原因の1つとして、子宮収縮の機能障害がある。
図1に示されるように、子宮体部は3つの部分、すなわち、外側の漿膜層、子宮内膜と呼ばれる内側の膜および子宮筋と呼ばれる中間の筋肉層からなる。子宮筋の収縮による子宮収縮(UC)は、1937年にディキンソンが、不妊子宮の双手診に基づいて初めて言及した。大抵の場合、UCは子宮内膜周辺で発生し、子宮内膜に沿った波動の伝播として作用する。その結果生じる子宮の変形(運動)は、子宮蠕動(UP)としても知られる。UCおよびUPのパターンは、ホルモンレベルの影響に起因して、月経周期の異なる段階において、方向、頻度、速度および強度などが変化する。特に排卵期には、成熟した卵子が卵巣から開放されると、しばしば逆向きの収縮波が発生して子宮内膜腔内に卵子をとどめ、受精を待つ。しかしながら不妊に悩む女性は、子宮内膜症や子宮腺筋症などの子宮の不調や、内分泌作用の不調などに悩むことも多い。これらの不調はUPに影響し、胚移植のを妨げる原因となることもある。
【0005】
従って、不妊の原因となる子宮活動に関し信頼性の高い評価ができれば、UPがIVFの失敗に及ぼす影響について貴重な知見が得られることが期待できる。
【0006】
現在、UCおよびUPに関するほとんどの評価および特徴づけは、経膣的超音波検査(TVUS)の目視検査を用いた定性的測定に基づく。しかしながら、子宮活動の視覚的特徴づけは、困難かつ主観的である。特に月経周期の後期黄体期や体外受精の胚移植の直前は、他の時期に比べて子宮が静かであることが多いことから、一層困難かつ主観的となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
80件のTVUS記録の目視検査において、UPの方向およびタイミングに関しては、3名の医療専門家間でのみ結果が一致した。言い換えれば、子宮収縮の客観的かつ定量的な分析が存在しないために、UCの特徴づけおよびIVFサイクルの改善が困難となっている。本発明は、こうした欠点の少なくともいくつかを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的の1つは、子宮運動の整合度の定量的評価を与えることにある。
【0009】
本発明の第1の態様は、子宮運動の整合度の定量的評価のための画像解析方法を与える。この方法は、
-子宮の記録を取得するステップと、
-前記記録内において、少なくとも2つの異なる子宮の領域および/または少なくとも2つの時刻で、少なくとも2つの子宮運動の伝搬波をトラッキングするステップと、
-前記少なくとも2つの伝搬波の少なくとも2つの特性の類似度基準に基づいて、前記子宮運動の整合度を決定するステップと、
を含む。
【0010】
従属請求項により、様々な実施の形態が定義される。
【0011】
ここで、少なくとも2つの伝搬波は、同時に2つの異なる子宮領域にあってもよいし、2つの異なる時刻に同じ子宮内にあってもよいし、2つの異なる時刻に2つの異なる子宮領域にあってもよいことに注意すべきである。このことを、本明細書では「少なくとも2つの異なる子宮の領域および/または少なくとも2つの時刻で、少なくとも2つの子宮運動の伝搬波」と表現する。
【0012】
ある実施の形態では、少なくとも2つの特性は、少なくとも2つの伝搬波の方向、主方向、速度、振幅または位相を含む。
【0013】
ある実施の形態では、この方法は、少なくとも2つの特性の時間的または空間的な分散の基準を決定するステップを含む。
【0014】
ある実施の形態では、トラッキングするステップは、半自動的なコンピュータ補助を用いて、連続するトラッキングマーカーが実質的に等距離となるように、記録内でトラッキングマーカーを選択するステップを含む。
【0015】
さらなる実施の形態では、トラッキングマーカーは、子宮の解剖学的特徴に合うように、好ましくは子宮内膜の前側および後側に沿って、選択される。
【0016】
ある実施の形態では、この方法は、
-記録内のトラッキングマーカーの中からトラッキングマーカーの組を選択し、
-選択されたトラッキングマーカーの組に基づいてフィッティング曲線を決定し、
-フィッティング曲線の変位および回転を決定し、
-変位および回転に基づいて、トラッキングマーカーの座標を補償する
ことにより、記録内で連続するフレームにおけるトラッキングマーカーの動きを補償するステップを含む。
【0017】
ある実施の形態では、少なくとも2つの伝搬波は、ブロックマッチング、オプティカルフローまたは反復的空間ワープを含むオプティカルフローのうちのいずれかの運動評価技術を用いてトラッキングされる。
【0018】
さらなる実施の形態では、反復的空間ワープは、現在のフレームから第1のフレームへのオプティカルフローと、現在のフレームから第2のフレームへのオプティカルフローと、を結合するステップを含み、
第1のフレームは、現在のフレームより後のフレームであり、
第2のフレームは、第1のフレームより後のフレームである。
【0019】
ある実施の形態では、類似度基準は、交差相関、コヒーレンス、平均二乗誤差、相互情報またはハウスドルフ距離のうちのいずれかを用いて決定される。
【0020】
ある実施の形態では、本方法は、
-少なくとも2つの伝搬波を、好ましくは高速フーリエ変換を用いて、周波数領域で表現するステップと、
-周波数領域で表現された少なくとも2つの伝搬波の第1四分位置からのエネルギースペクトルの第1の和を、頸部から底部への伝搬エネルギーとして決定するステップと、
-周波数領域で表現された少なくとも2つの伝搬波の第2四分位置からのエネルギースペクトルの第2の和を、底部から頸部への伝搬エネルギーとして決定するステップと、
-少なくとも2つの伝搬波の主方向を決定するために、第1の和および第2の和に基づいて、頸部から底部への伝搬エネルギーと、底部から頸部への伝搬エネルギーとの比を決定するステップと、
をさらに含む。
【0021】
ある実施の形態では、本方法は、
-少なくとも2つの伝搬波は、少なくとも2つの特性に関し、子宮の解剖学的特徴に関する少なくとも1つの対称軸に対して、好ましくは子宮の子宮内膜に関する少なくとも1つの対称軸に対して、実質的に対称的であるか否かを決定するステップと、
-決定された実質的に対称的であるか否かの結果を、子宮の受精の成功の基準として出力するステップと、
を含む。
【0022】
ある実施の形態では、本方法は、子宮以外の発生源に由来する子宮運動をフィルターで除外するステップを含み、
子宮以外の発生源は、腸および/または膀胱などの子宮以外の器官ならびに心臓の鼓動、呼吸および取得中のプローブの動きを含む取得運動を含む。
【0023】
ある実施の形態では、記録するステップは、2次元(2D)超音波、3次元(3D)超音波、磁気共鳴またはX線画像化のうちのいずれかを用いる。同じ実施の形態において、記録するステップの記録時間は、20秒以上、好ましくは2分以上、より好ましくは4分以上である。有利なことに、20秒は、子宮の少なくとも1つの整合の処理可能な部分を取得するのに十分だろう。2分は、少なくとも1つの整合をより確実に取得するのに十分だろう。4分は、より精度を高めるために、複数の整合をより確実に取得するのに十分だろう。
【0024】
本発明の第2の態様は、命令を記憶したコンピュータ読み取り媒体を備えたコンピュータ・プログラム・プロダクトを与える。この命令は、プロセッサで実行されたとき、上記のいずれかの方法を前記プロセッサに実行させるように構成される。
【0025】
当業者は、上記の方法に適用された考察は、コンピュータ・プログラム・プロダクトにも同様に適用可能であり、その逆も然りであることを理解するだろう。
【0026】
本発明の第3の態様は、子宮運動の整合度の定量的評価のための画像解析システムを与える。このシステムは、プロセッサと、メモリと、を備える。メモリは、プロセッサ上で実行されたとき、上記のいずれかの方法をプロセッサに実行させる命令を記憶するように構成される。
【0027】
当業者は、上記の方法に適用された考察は、システムにも同様に適用可能であり、その逆も然りであることを理解するだろう。特にシステムの実施の形態のメモリに記憶された命令は、上記の方法の実施の形態と同様の追加的な命令を含んでもよい。
【0028】
さらに当業者は、システムを実現するのに、一般的なコンピュータハードウェアを用いてもよいし、専用ハードウェアを用いてもよいし、あるいはこれらの組み合わせを用いてもよいことを理解するだろう。さらに、システムの任意の好適な機能または論理部品を実現するのに、ハードウェアで実現された部品に加えて、ソフトウェアを用いてもよいことを理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明に関する上記およびその他の態様および考察は、以下の説明および添付の図面により、より完全に理解されるだろう。
【
図1】本発明の典型的な実施の形態の模式図である。LF段階における生体内記録から取得されたUSフレームであり、子宮のいくつかの解剖学的特徴を示す。
【
図2】本発明の典型的な実施の形態の模式図であり、2D超音波内に配置されたトラッキングマーカー(TMs)を示す。
【
図3A-B】本発明の典型的な実施の形態の模式図である。
図3Aは、運動の補償を示す。
【
図4A-D】本発明の典型的な実施の形態の模式図である。
図4Aは、健康なボランティアの子宮内膜の前側から抽出されたRSRによって生成されたUPの時空間的表現を示す。
【
図5A-B】本発明の典型的な実施の形態の模式図である。
図5Aのバープロットは、胚移植前の16名のIVF患者における整合測定の統計を表す。
【
図6A-B】本発明の典型的な実施の形態の模式図である。
図6Aおよび
図6Bはそれぞれ、UP波動パラメータのブルズアイ表示および3D表現を示す。
【
図7A-B】本発明の典型的な実施の形態の模式図である。
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ、本発明の方法の実施の形態および装置の実施の形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の目的の1つは、子宮運動の整合度の定量的解析のための画像解析方法を与えることにある。本発明はさらに、画像解析を効率的に実行するために、上記に関連する装置およびシステムを与えることを目的とする。さらなる実施の形態は、画像解析ハードウェアデバイスまたはシステムを画像解析方法に統合する装置およびシステムを含む。さらなる実施の形態は、画像解析方法を実現できるコンピュータハードウェアおよびソフトウェア技術を含む。この目的のために、子宮の運動および変形を2Dまたは3Dビデオ記録から抽出するのに、モーショントラッキング技術が適用されてもよい。超音波から磁気共鳴やX線画像法にわたる様々な画像化技術が適用されてもよい。1回または複数回の子宮蠕動運動(収縮とも呼ばれる)中に、子宮の運動および変形が、空間的および時間的に記録されてもよい。特に、運動および変形(径方向、円周方向または経線方向)が、子宮解剖学的に(すなわち、子宮の解剖学的特徴に関して)記録されてもよい。
図2は、本発明の典型的な実施の形態に係る、2D超音波に配置されたトラッキングマーカー(TMs)の模式図である。このマーカーは、経線方向に沿った変形の整合を解析するために、子宮内膜の前側および後側に沿って配置されてもよい。この経腟的記録は、後期卵胞期にある健康なボランティアから取得したものである。一例として
図2に示されるように、径方向の変形が、子宮内膜線の周辺で子宮の経線方向に沿って評価されてもよい。発明のいくつかの実施の形態は、蠕動運動の子宮解剖学的な時空間的発展に基づく、本整合度または蠕動波の評価方法に関するものであってもよい。
【0031】
アプローチの1つは、子宮の異なる領域の間で、伝搬の主方向の時間的発展の類似性を評価することである。一例として、前壁と後壁との間における類似性がある。同様に、異なる領域間の類似性を評価するために、異なる方向の速度自体が評価されてもよい。複数の類似度尺度(例えば、相関、コヒーレンス、平均二乗誤差および相互情報など)が使われてもよい。類似度を評価するために、伝搬方向の他に、子宮の異なる領域における蠕動波の振幅および位相の空間的発展が考慮されてもよい。子宮全体における蠕動波の方向、振幅および位相の分散(例えば、標準偏差)を評価することにより、包括的な整合指標が抽出されてもよい。協調的な収縮は、解剖学的に見て対称(すなわち、子宮内膜線に対して放射対称)であり、効率的な蠕動運動および子宮内膜内におけるより強いマクロストリームに至る。この現象は、子宮機能、望ましい胚移植の実現性および月経期の子宮内膜排出に大きな影響を与える可能性がある。時間的に推定された指標を評価することにより、ある種の運動条件および子宮行動の安定性を評価することができる。
【0032】
ある実施の形態では、本発明は、子宮の経線方向、径方向および円周方向の時空間的な変形分析による子宮整合の評価方法に関する。このような変形は、子宮に沿って伝搬する調和波によって表される。整合は、子宮の異なる領域におけるこうした波の特性の類似度として定義することができる。考慮される特性は、こうした波の少なくとも1サイクル(周期)以上にわたる任意の時間間隔における、伝搬方向、位相および強度の時間発展を含んでもよい。採用される類似度尺度は、相関、スペクトルコヒーレンス、相互情報および二乗誤差を含んでもよい。予め定められた瞬間に、子宮の全領域で測定された波の特性の広がりを評価することにより、整合指標が抽出されてもよい。こうした指標の時間的変化もまた、子宮の安定性またはある種の運動条件における子宮領域の安定性の尺度として評価されてもよい。
【0033】
本発明の様々な実施の形態は、子宮運動の定量的分析のための専用超音波スペックルトラッキングに向けられる。これらの実施の形態では、子宮活動の定量的評価は、自然月経周期中およびIVFサイクル中に、子宮に沿ったUPの伝搬パターンに焦点を当てることによって得ることができる。
【0034】
特に本発明は、伝搬波の速度および方向の評価(例えば、Huang et al. Quantitative ultrasound imaging and characterization of uterine peristaltic waves, IEEE IUS, Kobe (Japan), Oct. 22-25, 2018)の次に、UPの時空間的整合を考慮する。これは、胚移植に役立つまたは障害となる子宮の能力に関する強力な記述子を与えることができる。
【0035】
UCを定量化するには、最初に、超音波(US)記録を用いて子宮運動を評価することが望ましい。USベースのスペックルトラッキングの分野では、2つの主要な運動評価方法、すなわちブロックマッチング(BM)およびオプティカルフロー(OF)が知られている。BMは、画像をブロックにセグメント化し、選択されたマッチング条件に基づき、連続するフレームにおいてこれらのブロックの中で最もマッチするものを探す。一方OFは、ピクセル・トゥ・ピクセルの勾配アプローチであり、2つの連続するフレーム間で、ターゲットオブジェクトの速度を評価する。本発明の望ましい実施の形態は、BMではなくOFである。なぜならOFの方が、サブピクセルの運動に対して感度が高いからである。また反復的空間ワープを実装することにより、OFのトラッキング精度をさらに改善することができる。採用されたOF法は、最適化された後で、次にヒトの体外子宮に関する専用セットアップを用いて試験管内で検証されてもよい。
【0036】
[子宮運動トラッキング]
本発明のある実施の形態は、子宮の2分乃至4分間の2D超音波(US)画像化に基づくものであってもよい。USスペックルは、トランスデューサによって受信された後方散乱超音波エネルギーの干渉によって起こる。典型的に、組織はユニークなスペックルパターンを形成する。このスペックルパターンは、時間的にトラッキングされてもよい。言い換えれば、組織の動きは、スペックルパターンの動きをトラッキングすることにより再生することができる。ブロックマッチング(BM)およびオプティカルフロー(OF)は、組織の動きのトラッキングに広く使われる、2つのスペックルトラッキングアルゴリズムである。
【0037】
BMによるトラッキング結果は、整数個のピクセルに限られる。従ってその精度は、US画像のピクセルサイズに縛られる。これに対し、OFにはそうした制限はない。観測される蠕動波の最大速度は秒速2mm未満(取得フレームレートおよびピクセルサイズは、それぞれ30Hzおよび0.065mm)であったので、子宮の運動は1フレームあたり1ピクセル未満であった。従って正確なトラッキング結果を得るには、OFの方がより好適であると考えられる。
【0038】
OFの原理は「時空間上の位置(x、y、t)にあるピクセルが、時間Δtの間に(Δx、Δy)変位しても、その強度Iは変わらない」という仮定に基づく。すなわち、
I(x、y、t)=I(x+Δx、y+Δy、t+Δt) (1)
【0039】
式(1)の右辺のテイラー展開が与えられる。次のフレームとの間で、時間および空間の変化が十分小さいと仮定すると、この展開の高次の項は無視できる。xおよびy方向に運動するピクセルの速度vは、強度の勾配を用いて以下のように表すことができる。
【数1】
(2)
【0040】
上記の悪条件の方程式を解くためにLukasおよびKanadeは、ブロック内の流れが定常的であると仮定した上で、ピクセルではなくブロックの運動を評価することを提案した((Lucas et al., Iterative Image Registration Technique with an Application To Stereo Vision. Technical report, 1981)。その後、最小二乗推定により、両方向の速度が得られる。その後、推定された速度に基づいて、ターゲットフレーム内のピクセルの位置が更新される。
【0041】
動きが小さいという仮定の下で、反復的改良アプローチを適用することにより、OFの精度をさらに改善することができる。好ましい実施の形態では、最初に、参照フレームとターゲットフレームとの間で、選択されたスペックルパターンの動きをトラッキングするのにOFが適用されてもよい。初期推定値v_1に基づき、ターゲットフレームが2D補完によりワープされてもよい。こうしてスペックルパターンの動きが、参照フレームとターゲットフレームとの間で部分的に回復されてもよい。その後、2回目の反復で、残りの動きの新たな推定値v_2が、参照フレームとワープされたターゲットフレームとの間で導出されてもよい。この処理は、残りの動きvnが非常に小さな値に収束するまで、または反復回数が所定の最大値Nに達するまで、反復的に適用されてもよい。その後、ピクセルの動きの最後の推定値v_endが、初期推定値とすべての残りの動きの総和として計算されてもよい。すなわち、
v_end=
【数2】
v_end
【0042】
反復的改良の適用とは別に、ブロックサイズの適切な選択は、OFが正確なトラッキング結果を得るのに重要である。選択したブロックサイズが小さ過ぎると、トラッキングは、局所的な動きや雑音に対して過度に敏感となるだろう。逆にブロックサイズが大き過ぎると、流れが定常的であるという仮定が成り立たないだろう。ブロックサイズの最適化は、Sammali他により提案された特定の実験的設定を用いて、体外で行われた(Sammali et al., Dedicated Ultrasound Speckle Tracking for Quantitative Analysis of Uterine Motion Outside Pregnancy. IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control, 66(3):581-590, Mar 2019). The optimized block size may be considered 41 x 41 pixels (around 2.6 x 2.6 mm2)。
【0043】
[解剖学的整合機構]
UPはしばしば、子宮筋内ではなく、接合部の子宮内膜近辺で観測される。従ってトラッキングマーカー(TMs)は、各US記録の最初のフレームにおいて、子宮内膜腔の前側および後側に沿って選択されてもよい。
図2に示されるように、子宮内膜に沿ったTMのそれぞれのペアの間が径方向で等距離となるように、半自動的アプローチが採用されてもよい。この実施の形態では、ブロックのオーバーラップを避けるために、最適なブロックサイズとなるように距離が選択されてもよい。しかしグリッドが子宮解剖学に従う限り、別の選択がされてもよい。
【0044】
図3A-3Bは、本発明の典型的な実施の形態の模式図である。
図3Aは、運動の補償を示す。ここで、10個のTMs
midlineは、子宮内膜のミドルライニングに沿って選択される。
図3Bでは、平面外(OOP)運動がn番目のフレームから始まっている。スペックルトラッキングは、2つのTMsで失敗している(白の矢印で示す)。しかし以下で説明するように、子宮内膜の大局的な回転は、連続するフレーム間のフィットされた線によって回復している。OOP運動は、しばしば生体内の2D US記録中に発生する現象である。OOP運動は主に、画像化されたターゲットが、観測面に垂直な第3の方向に動くことによって発生する。OOP運動はまた、プローブの動きの影響や、患者の動きによっても発生することがある。OOP運動が発生すると、トラッキングされるスペックルパターンが観測面の外で運動する。その結果発生するスペックルパターンの非相関により、スペックルトラッキングが失敗するだろう。OOP運動が生体内データに関する2Dスペックルトラッキングの精度に与える影響を軽減するために、2つのステップを用いたアプローチが考えられる。
図3Aに示されるように、最初のステップでは、等方的距離を持つ10個のトラッキングマーカー(TMs
midline)が子宮内膜のミドルライニングに沿って選択されてもよい。記録全体を通して、スペックルトラッキングがTMs
midlineに適用されてもよい。子宮内膜の大局的な変位(x
t、y
t)は、TMs
midlineの動きを水平方向および垂直方向に平均化することにより評価されてもよい。その後、
図3Bに示されるように、TMs
midlineの座標に基づく線形フィッティングを用いて、子宮内膜の回転(θ
t)が評価されてもよい。このようにして、子宮内膜の一部がOOP運動の影響を受けたとしても、大局的な(剛体の)変位および回転は、残りのTMs
midlin)(これは、OOP運動の影響を受けない)によって補償される。
【0045】
記録全体を通した子宮内膜の大局的な変位(x
t、y
t)および回転(θ
t)が得られると、各フレームで以下のようにTMsの座標が更新されてもよい。
【数3】
(3)
ここでNはフレームの数を表す。(X
1、Y
1)は、子宮解剖学的見地から第1フレーム内で選択されたTMsの座標を表す。2番目のステップでは、次のフレームとの間での初期位置からの変位(これは式(3)から導出される)に関してのみ、TMsの計算にスペックルトラッキングが適用されてもよい。従ってTMの位置は、トラッキングによって更新されることなく、(X
1、Y
1)で定義される元の解剖学的位置にとどまっていてもよい。その結果、スペックルトラッキングは、2つの連続するフレームの間にだけ適用されてもよい。こうすれば、たとえOOP運動が非相関やトラッキング性能低下を引き起こしたとしても、トラッキング誤差は、それ以上蓄積することなく2つのフレームの間に限られるだろう。このアプローチでは、トラッキングは一貫した解剖学的位置を表すTMsに関して実行される。これにより、子宮の解剖学および幾何学に関する結果のさらなる解釈が可能となる。US 3Dが得られると、OOP運動もまたトラッキングされ、トラッキング結果はより正確となるだろう。実際子宮の運動は比較的遅いので、典型的な1Hz未満のボリュームレートの3D USを取得すれば、ナイキスト条件を満たし、UPの高精度なトラッキングが実行できるだろう。
【0046】
[径方向の変形速度分析]
変形速度の画像化は、筋肉の局所的または大域的変形を測定するための既知のアプローチである。UPを特徴づけるために、子宮内膜の前側および後側から径方向の変形性速度(RSR)が導出されてもよい。
図2に示されるように、RSRは、各TMsの対同士の径方向の間隔の変化率から計算されてもよい。
【数4】
(4)
ここでD
tは、t番目のフレームにおけるTMsの対同士の径方向の間隔の絶対値を表す。D
1は最初の間隔である。Δtは2つのフレームの間の時間間隔である。Nは記録されたフレームの総数である。参照距離の違いによって、代替的な変形速度が考えられる。例えば、ラグランジュ変形(LS)およびオイラー変形(ES)に基づくものがある。
【数5】
【0047】
しばしばUS記録において、子宮内膜の運動に影響を与える運動源がUCに限られないことがある。他の運動、例えば腸や膀胱といった子宮以外の器官に由来するものや、心臓の鼓動、呼吸、取得中のプローブの動きなどもUSスキャン中に記録される。従って、不要な運動源からの干渉を除去するために、RSR信号にバンドパスフィルタが適用されてもよい。UCは、通常の月経周期中には、毎分0.5乃至4.1収縮の範囲で変化することが知られている。一方IVF治療中には、ホルモンの卵巣刺激に起因して、UCは、より高速に、毎分0.5乃至5収縮の範囲で変化する。従ってバンドパスフィルタの遮断周波数は、目的とする応用に応じて、これらの範囲に従って選ぶことができる。代替的な前処理段階では、対象とする周波数に応じて、記録されたUSループの特異値分解(SVD)フィルタリングを使ってもよい。
【0048】
[子宮整合]
RSR信号に基づき、子宮内膜に沿って伝わるUPの時空間的表現が生成されてもよい。
図4Aでは、UCの頸部から底部への(C2F)明確な伝搬が観測される。
図4Bでは、UCの底部から頸部への(F2C)伝搬が観測される。
図4A-4Dは、本発明の典型的な実施の形態の模式図である。
図4Aは、健康なボランティアの子宮内膜の前側から抽出されたRSRを用いて生成されたUPの時空間的表現を示す。このプロットは、明確なC2F伝搬を示す。
図4Bは、健康なボランティアの子宮内膜の後側から抽出されたRSRを用いて生成されたUPの時空間的表現を示す。このプロットは、F2C伝搬を示す。
図4Cは、(a)の周波数領域表現(k-空間)に相当する。主スペクトルピーク(赤の点で示される)は、第1四分位置および第3四分位置に現れる。これはC2F伝搬を示す。
図4Dは、(b)の周波数領域表現(k-空間)に相当する。主スペクトルピーク(赤の点で示される)は、第2四分位置および第4四分位置に現れる。これはF2C伝搬を示す。
【0049】
UPの速度を評価するために、時空間的表現に2次元高速フーリエ変換が適用されてもよい。これにより、k-空間領域での周波数表現が得られる。
図4Cおよび
図4Dはそれぞれ、
図4Aおよび
図4Bに対応するk-空間表現を示す。主蠕動運動の時間周波数および空間周波数が、スペクトルのピークとして特定されてもよい。こうしたUPの速度(経線方向)v
UPが、以下のように時間周波数f
tと空間周波数f
xの比として計算されてもよい。
【数6】
(5)
【0050】
しかし実際には、時としてより複雑なUPのパターンが観測されることもある。例えば排卵の後に、胚移植を支持するために、しばしば逆伝搬(これは、C2FおよびF2Cの両方の伝搬を示す)が観測されることがある。さらに反跳伝搬(これは、複数の蠕動波の反射および重ね合わせを含む)や、より複雑な伝搬が観測されることもある。
【0051】
より複雑な条件下でUP速度を評価する場合、時空間的表現を時間的にセグメント化するために、ムービング・ウィンドウ法が適用されてもよい。各セグメント内で、時空間周波数を表すk-空間の第1四分位置(C2Fに伝搬するUPを表す)および第2四分位置(F2Cに伝搬するUPを表す)のピークから、C2F方向およびF2C方向のUP速度が明示的に評価されてもよい。これにより、両方向のUP速度の発展が得られる。有利なことに、これにより、UP伝搬のパターンがどのように時間発展するかに関し、より包括的な理解が得られる。好ましい実施の形態では、ムービング・ウィンドウのサイズとして600フレーム(20秒)、ステップサイズとして1フレームが選ばれる。
【0052】
速度の絶対値評価に続けて、伝搬の方向を評価することにより、関連する追加的な情報が与えられてもよい。これは、v
UPの符号により決定されてもよい。C2Fの伝搬は正の符号で表され、F2Cの伝搬は負の符号で表されてもよい。しかし複雑な伝搬パターンが発生する場合、こうした二項分類は適当でないかもしれない。従って、エネルギー比(ER)基準が定義されてもよい。この場合、第1四分位置(E1、C2F伝搬を表す)および第2四分位置(E2、F2C伝搬を表す)から、エネルギースペクトルの和が抽出されてもよい。これは以下のように与えられる。
【数7】
(6)
【0053】
パラメータER(-1から1の間の値を取る)は、時間領域におけるUP整合の指標を表してもよい。有利なことに、これにより、所定の時刻における伝搬の主方向が与えられる。整合された運動は、1(C2F伝搬を反映する)または-1(F2C伝搬を反映する)に近づくERを生む。ERがゼロに近い場合は、逆伝搬および定常波が発生している可能性が高い。
【0054】
局所的に(例えば、前壁または後壁に沿って)UPが主要な方向を示すという事実は、必ずしも効果的な蠕動運動(整合され、子宮内膜腔内にマイクロストリーミングを生成するもの)を保証しない。単純に前壁および後壁に焦点を当てると、整合された効果的な蠕動運動には、子宮内膜の両側で同時に同じ方向を示すUC伝搬が必要だろう。特に排卵中は、胚移植を支持するために、子宮内膜の両側からの筋肉により整合された収縮の発生が重要であるとされている。このようにして、子宮内膜の前側(ERant)からおよび後側(ERpos)から、類似したERが得られると期待できる。UPの時空間的整合を評価するためのコスト関数として、類似度基準、すなわち交差相関(CC)および平均二乗誤差が適用されてもよい。
【0055】
図5A-5Bは、本発明の典型的な実施の形態の模式図である。
図5Aでは、バープロットが、胚移植前の16名のIVF患者における整合測定の統計を表す。成功したIVF(妊娠11週の7名患者)および失敗したIVF(9名の患者)に相当する2つのグループが分けられている。前子宮壁および後子宮壁の間のER類似性が、交差相関および平均二乗誤差を用いて示されている。バープロットは、平均値(青の太いバー)および標準偏差(黒の細いバー)を示す。アスタリスク(*)は、成功したグループと失敗したグループとの間の顕著な違い(p<0.05)を示す。
図5Aおよび5Bは、16名のIVF治療中の患者に関し、ER
antとER
posとの間のCCおよびMSEが、胚移植の前に胚移植および妊娠の成功を予測できることを示している。代替的な類似度基準(例えば、統計依存性および相互情報に基づくもの)を考慮してもよい。主方向(これは、式(6)に従うERによって表される)の次に、異なる領域での類似性に関し、異なる方向の速度の絶対値が評価されてもよい。有利なことに、これにより、やはり伝搬方向に関係する代替的な整合の基準が与えられる。
【0056】
上記は「整合は、子宮の異なる領域において相関した伝搬方向と解釈できる」という原理を支持する。代替的な実施の形態では、整合は、所定の時間間隔における蠕動波の位相の空間的分布によって導出されてもよい。実際、非定常的な特性を無視すれば(例えば、ウィンドウによって時間間隔を制限した場合)、蠕動波P(r_、t)(これは、所定の方向への子宮解剖学的変形(例えば、径方向の変形)を反映する)は、以下のように表すことができる。
【数8】
(7)
rは子宮解剖学に関する空間座標、ωは時間周波数m,φは位相である。位相の合った径方向運動は、整合および効果的な蠕動を表す。一方位相の外れた運動は、非整合を表す。特に180度の位相シフトは蛇行運動を表すが、これは子宮でしばしば観測され、胚移植に影響を与える可能性がある。従って位相の径方向の分散は、整合のさらなる指標となるだろう。所定の領域、器官全体または子宮内膜線周辺における位相φ(r_)の標準偏差(分散)もまた、(dys)整合の包括的な指標として使えるだろう。同じ推論が、式(7)中の他の波動パラメータにも適用できる。抽出された指標の時間的な標準偏差または変化量を評価することにより、一定の条件下での子宮運動の時間的安定性がさらに評価されてもよい。さらに伝搬の方向(ER)と同様に、式(7)中のパラメータの時間発展(例えば、A(r_、t)およびφ(r_、t)が評価されてもよい。また異なる領域における類似性が、提案された類似性基準により評価されてもよい。
【0057】
上記の実施の形態は2D超音波記録を使うが、有利には3D超音波記録を用いて、より正確な情報を得てもよい。その場合のERパラメータは、子宮の全ての領域に関して計算されてもよい。
図6Aおよび
図6Bに示されるように、伝搬方向の表現は、3D空間表現またはブルズアイ表示によって、子宮の全ての径方向セグメントにおけるUPの位相、振幅、周波数および方向(ER)を表す。UP波動パラメータに関し、
図6Aはブルズアイ表示を示し、
図6Bは3D表現を示す。その後、子宮の各セグメントに関して抽出された蠕動波の位相、方向および振幅の類似性によって、包括的な整合が導出されてもよい。孤立した不整合領域(これは、不整合な運動パターンを示す)が特定されてもよい。こうしたツールは、IVF以外の子宮の機能障害および病理、例えば子宮内膜症、子宮腺筋症、筋腫、肉腫などの診断にも有用である。
【0058】
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ、本発明の方法の実施の形態および装置の実施の形態の模式図である。
図7Aに示される方法700は、子宮の記録を取得するステップ701と、当該記録内において、少なくとも2つの異なる子宮の領域および/または少なくとも2つの異なる時刻で、少なくとも2つの子宮運動の伝搬波をトラッキングするステップ702と、少なくとも2つの伝搬波の少なくとも2つの特性の類似度基準に基づいて、子宮運動の整合度を決定するステップ703と、を含む。当業者は、さらなるステップをこの方法に追加するにはどうすればよいかを容易に理解するだろう。
図7Bに示される装置710は、プロセッサ711と、メモリ712と、を備える。メモリ712は、プロセッサ711上で実行されたとき、本明細書に記載の実施の形態の方法をプロセッサ711に実行させる命令を記憶するように構成されてもよい。
【0059】
上記の実施の形態は本発明の限定ではなく例示であること、当業者は様々な代替的な実施の形態をデザインできることに注意する。
【0060】
請求項において、丸括弧に挟まれた符号は請求項を限定するものではない。「備える」という動詞およびその活用は、請求項に記載のない要素またはステップの存在を排除するものではない。ある要素の前に置かれた不定冠詞「a」または「an」は、これらの要素が複数存在することを排除するものではない。装置において別々の論理的実体は、単一かつ同一のハードウェア部品として実現されてもよい。互いに異なる独立請求項に記載された特徴は、適切であれば組み合わされてもよい。
【国際調査報告】