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特表2023-531036抗炎症化合物およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】抗炎症化合物およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/48 20060101AFI20230712BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230712BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230712BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230712BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230712BHJP
   A61K 31/4035 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C07D209/48
A61P29/00
A61P17/06
A61P1/02
A61P43/00 111
A61K31/4035
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579812
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2021066840
(87)【国際公開番号】W WO2021259860
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】20382538.5
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522496183
【氏名又は名称】バイオホルム,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ビリャヌエバ ゴメス,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラカレ バルマナ,ロレナ
(72)【発明者】
【氏名】コドラ ダッチ,ゾエル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア トレス,ジェイソン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BC11
4C086GA15
4C086GA16
4C086NA20
4C086ZA67
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、N-[2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メチルスルホニルエチル]-1,3-ジオキソイソインドール-4-イル]アセトアミドまたはその塩もしくは溶媒和物およびその新規多形体などの、抗炎症化合物の調製のための改善されたプロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】
またはその塩もしくは溶媒和物を製造するためのプロセスであって、
式中、
およびRは、H、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはC=ORから独立して選択され、式中、Rは、H、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、およびアリールから独立して選択され、
およびRは、H、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、およびアリールから独立して選択され、
は、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、およびアリールであり、
前記プロセスは、以下:
(a)式IIの化合物
【化2】
またはその塩を、式IIIの化合物
【化3】
と反応させるステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
がHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
化合物IIIが、カップリング剤、好ましくは酸活性化剤、より好ましくは、カルボニルジイミダゾール(CDI)、塩化チオニル、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ヘキサフルオロホスフェートベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HBTU)、ヘキサフルオロホスフェートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HATU)、6-クロロ-1-((ジメチルアミノ)(モルホリノ)-メチレン)-1H-ベンゾトリアゾリウムヘキサフルオロホスフェート3-オキシド(HDMC)から選択されるものによって活性化され、好ましくはCDIによって活性化される、請求項1または2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(a)が、好ましくは、アセトニトリル(ACN)、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、およびエタノールから選択され、より好ましくはACNである、有機溶媒中で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(a)が、加熱還流下で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
(b)式Iの化合物を沈殿させるステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
化合物Iが、有機溶媒、好ましくはACN、および水の混合物、より好ましくはACNおよび水の約1:1~1:10の混合物、さらにより好ましくはACNおよび水の約1:6の混合物から沈殿する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
化合物IIIが、化合物IV
【化4】
から合成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
化合物IVが、化合物IIIに変換する前に、化合物V
【化5】
に変換される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
触媒および還元剤の使用を含み、前記触媒が、好ましくは、Pd、Pt、Rh、Ru、ラネーニッケル、Fe、Sn、およびHCl中のZnから選択され、前記還元剤が、好ましくは、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸カリウム、およびギ酸ナトリウムから選択されるギ酸塩、H、水素化ホウ素ナトリウム、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)、およびトリエチルシラン(TES)から選択される、請求項8または9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記触媒の量が、化合物IVの重量に対して触媒約1~10重量%、好ましくは約1.5~2.5重量%であり、好ましくは、ギ酸が還元剤として使用され、Pd、好ましくはPd/Cが触媒として使用される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
化合物IIIの合成が、60℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは35~45℃の温度で実行される、請求項8~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
アニスアルデヒド、3-フェニルプロパンアルデヒド、3-メチル-2-シクロヘキセノン、および6-メチル-5-ヘプテン-2-オンから選択される溶媒中の式Iの化合物の溶液を提供することと、式Iの化合物のそれぞれの溶媒和物を単離することとをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
精製方法をさらに含み、前記方法が、以下:
i.アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、およびエタノール、好ましくはアセトニトリルから選択される溶媒または溶媒の混合物中の式Iの化合物を提供するステップと、
ii.ステップ(i)の混合物を、ステップ(i)で使用された前記有機溶媒または溶媒の混合物に対して5%(v/v)以下の量の酸と接触させるステップと、
iii.任意選択で、ステップ(ii)で得られた混合物を有機アミンと接触させるステップと、
iv.任意選択で、前記溶媒または溶媒の混合物の共沸蒸留によって、反応中に形成された水をステップ(ii)または(iii)で得られた反応混合物から除去して、前記反応混合物の含水量を、KFによる測定で0.2%(w/w)以下に減少させるステップと、
v.ステップ(ii)、(iii)または(iv)で得られた前記反応混合物を、HPLCによる測定で、脱アセチル化不純物の量に対して5~10モル当量の量のアセチル化剤と接触させるステップと
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップ(i)で使用される前記溶媒が、アセトニトリルである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップ(ii)で使用される前記酸が、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸(オルトリン酸としても知られる)、ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびカンファースルホン酸、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
ステップ(ii)で使用される前記酸が、塩酸、酢酸、およびトリフルオロ酢酸、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
ステップ(ii)で使用される前記酸の量が、ステップ(i)で使用された前記有機溶媒または溶媒の混合物に対して3%(v/v)以下である、請求項14~17に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップ(iii)が実行され、ステップ(iii)で使用される前記有機アミンが、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)およびトリエチルアミン(TEA)の群から選択される、請求項14~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(iv)が実行される、請求項14~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記アセチル化剤が、無水酢酸または塩化アセチルである、請求項14~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記アセチル化剤が無水酢酸であり、触媒量の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、2,6-ルチジン、またはp-トルエンスルホン酸ピリジン塩をさらに使用する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
式Iの化合物がアプレミラストである、請求項14~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
請求項1~13に記載のプロセスによって得ることができる、アプレミラストの結晶性アニスアルデヒド溶媒和物、アプレミラストの結晶性3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物、アプレミラストの結晶性3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物、またはアプレミラストの結晶性6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物。
【請求項25】
請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる式(I)の化合物または溶媒和物のいずれか、および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項26】
少なくとも回折2θ角が7.40±0.2°、11.15±0.2°、および26.10±0.2°のピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、アプレミラストの結晶性アニスアルデヒド溶媒和物。
【請求項27】
少なくとも回折2θ角が7.40±0.2°、11.15±0.2°、26.10±0.2°、17.59±0.2°、および16.25±0.2°のピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、請求項16に記載のアプレミラストの結晶性アニスアルデヒド溶媒和物。
【請求項28】
図1に示すような粉末X線ディフラクトグラムパターンを有する、請求項16または17のいずれか一項に記載のアプレミラストの結晶性アニスアルデヒド溶媒和物。
【請求項29】
少なくとも回折2θ角が7.31±0.2°、11.08±0.2°、25.96±0.2°、および11.75±0.2°のピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、アプレミラストの結晶性3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物。
【請求項30】
少なくとも回折2θ角が7.31±0.2°、11.08±0.2°、25.96±0.2°、11.75±0.2°、16.14±0.2°、17.47±0.2°、および25.08±0.2°のピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、請求項19に記載のアプレミラストの結晶性3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物。
【請求項31】
図2に示すような粉末X線ディフラクトグラムパターンを有する、請求項19または20のいずれか一項に記載のアプレミラストの結晶性3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物。
【請求項32】
少なくとも回折2θ角が7.41±0.2°、11.17±0.2°、26.16±0.2°、および17.61±0.2°のピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、アプレミラストの結晶性3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物。
【請求項33】
少なくとも回折2θ角が7.41±0.2°、11.17±0.2°、26.16±0.2°、17.61±0.2°、22.33±0.2°、24.60±0.2°、21.21±0.2°、16.29±0.2°、25.29±0.2°、および23.30±0.2°のピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、請求項22に記載のアプレミラストの結晶性3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物。
【請求項34】
図3に示すような粉末X線ディフラクトグラムパターンを有する、請求項22または23のいずれか一項に記載のアプレミラストの結晶性3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物。
【請求項35】
少なくとも回折2θ角が11.25±0.2°、7.40±0.2°、26.10±0.2°、17.61±0.2°、および17.80±0.2°のピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、アプレミラストの結晶性6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物。
【請求項36】
少なくとも回折2θ角が11.25±0.2°、7.40±0.2°、26.10±0.2°、11.99±0.2°、16.27±0.2°、17.61±0.2°、および17.80±0.2°のピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、請求項25に記載のアプレミラストの結晶性6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物。
【請求項37】
図4に示すような粉末X線ディフラクトグラムパターンを有する、請求項25または26のいずれか一項に記載のアプレミラストの結晶性6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-[2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メチルスルホニルエチル]-1,3-ジオキソイソインドール-4-イル]アセトアミドまたはその塩もしくは溶媒和物およびその新規多形体などの、抗炎症化合物の調製のための改善されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
TNFaレベルの減少、cAMPレベルの増加、およびホスホジエステラーゼ4(PDE4)の阻害は、多くの炎症性疾患、感染性疾患、免疫学的疾患、または悪性疾患の処置のための有用な治療方針を構成する。これらとしては、敗血症性ショック、敗血症、エンドトキシンショック、血行動態ショック、および敗血症症候群、虚血後再灌流傷害、マラリア、マイコバクテリア感染、髄膜炎、乾癬、うっ血性心不全、線維性疾患、悪液質、移植片拒絶、癌、自己免疫疾患、AIDSにおける日和見感染、関節リウマチ、リウマチ性脊椎炎、変形性関節症、他の関節炎症状、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ハンセン病におけるENL、放射線障害、および高酸素肺胞損傷が挙げられるが、これらに限定されない。
【0003】
アプレミラストは、化学的にはN-[2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メチルスルホニルエチル]-1,3-ジオキソイソインドール-4-イル]アセトアミドとして知られているPDE4阻害剤である。これは、中等度から重度の尋常性乾癬、活動性乾癬性関節炎、またはBehcet病に関連する口腔潰瘍の成人患者の治療に適応され、OTEZLA(登録商標)の商品名で経口錠剤として利用可能である。
【化1】
【0004】
アプレミラストは、WO0025777に最初に記載された。その調製のための改善されたプロセスは、次いでEP2420490に記載された。3-ニトロフタル酸および3-エトキシ-4-メトキシベンズアルデヒドから出発して、いくつかの化学変換後に、2つの誘導体A(アミン)およびB(酸無水物)が反応して、アプレミラストをもたらす(スキーム1)。
【0005】
しかしながら、この手法には、いくつかの欠点がある。アプレミラストは、中程度の収率および化学的安定性でのみ得ることができ、分析上の困難に遭遇した。ゆえに、これらの問題を解決する代替経路を見出す必要性が存在する。
【0006】
いくつかの文献は、アプレミラスト、ならびにアプレミラストおよびその塩もしくは溶媒和物の結晶形態を開示する。WO2003080049は、(S)-2-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-1-(メチルスルホニル)-エト-2-イルアミンの立体異性体として(stereomerically)純粋な塩、およびそのキラルアミノ酸塩を開示する。WO2009120167は、N-[2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル]-2,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-1H-イソインドール-4-イル]アセトアミドのいくつかの結晶形態、およびそれらの調製のための方法を開示する。非溶媒和無水形態A、BおよびF、ならびにトルエン(形態C)、塩化メチレン(形態D)、アセトニトリル(形態E)、酢酸エチル(形態G)、およびテトラヒドロフラン(形態H)から選択される有機溶媒とのいくつかの溶媒和物が開示される。WO2016097156は、アプレミラストの結晶性エタノール、n-プロパノール、アセトン、およびメチルエチルケトン溶媒和物を開示する。WO2017033116は、アプレミラストの結晶性p-キシレン半溶媒和物(hemisolvate)、およびアプレミラストの炭酸ジメチル溶媒和物を開示する。WO2017085568は、アプレミラストの結晶性ベンジルアルコール溶媒和物を開示する。
【0007】
アプレミラストの結晶形態Bは、近年、安定性の問題を有すると報告されており、上述されたアプレミラストの結晶形態の大部分は、それらが、医薬品中では、もしあるなら非常に限られた量で使用されなければならない溶媒を含有するため、毒性の問題を有する。加えて、開示された結晶性アプレミラスト溶媒和物は、非常に小さい粒子からなり、乏しい粉末特性のため、薬物製品の医薬品開発を困難にする。
【0008】
本明細書に記載される結晶性アプレミラスト溶媒和物は、高い安定性によって特に特徴づけられ、調製が容易である。加えて、これらは高結晶性に優れ、これにより、それらは高純度アプレミラストの調製に非常に適したものになる。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、本発明は、式Iの化合物
【化2】
またはその塩もしくは溶媒和物を製造するためのプロセスに関し、
式中、
およびRは、H、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、またはC=ORから独立して選択され、式中、Rは、H、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、およびアリールから独立して選択され、
およびRは、H、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、およびアリールから独立して選択され、
は、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、およびアリールであり、
プロセスは、以下:
(a)式IIの化合物
【化3】
またはその塩を、式IIIの化合物
【化4】
と反応させるステップ
を含む。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様のプロセスによって得られる式(I)の化合物または溶媒和物のいずれか、および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物に関する。
【0011】
本発明の第3の態様は、少なくとも回折2θ角が7.40、11.15、および26.10°2θ±0.2°2θのピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、アプレミラストの結晶性アニスアルデヒド溶媒和物に関する。
【0012】
本発明の第4の態様は、少なくとも回折2θ角が7.31、11.08、25.96、および11.75°2θ±0.2°2θのピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、アプレミラストの結晶性3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物に関する。
【0013】
本発明の第5の態様は、少なくとも回折2θ角が7.41、11.17、26.16、および17.61°2θ±0.2°2θのピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、アプレミラストの結晶性3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物に関する。
【0014】
本発明の第6の態様は、少なくとも回折2θ角が11.25、7.40、26.10、17.61、および17.80°2θ±0.2°2θのピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、アプレミラストの結晶性6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物に関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、第1の態様による製造プロセスから得られる式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物の精製方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、非効率的で高価であるとわかっている先行技術の合成プロセスの欠点のない、式(I)の化合物の製造のための改善されたプロセスを提供する。本発明は、式(III)の化合物をワンポットプロセスで製造することができ、3-アセトアミドフタル酸無水物の使用を回避し、したがってこの化合物に関連する分析上の問題を回避する、より短いプロセスを提供する。加えて、反応溶媒は、水を含有してもよいか、または水であってもよい。本発明のプロセスは、単純で、効率的で、かつ環境に優しい、式(I)の化合物を得るための式(II)および(III)の化合物のカップリングを含む。
【0017】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、RおよびRは、H、C~Cアルキル、およびC~Cシクロアルキル、アリール、またはC=ORから独立して選択され、式中、Rは、H、およびC~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、およびアリールから独立して選択され、RおよびRは、H、およびC~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、およびアリールから独立して選択され、Rは、C~Cアルキルである。
【0018】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、1~8個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有し、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、terc-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチルなどであるがこれらに限定されない単結合によって分子の残りの部分に結合する、ラジカル線状または分岐炭化水素鎖を指す。
【0019】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、インデニル、フェナントリルなどであるがこれらに限定されない、5~10個の炭素原子を有する、単一または複数の芳香環を指す。好ましくは、アリール基は6~9個の炭素原子を有し、より好ましくは、アリール基はフェニルである。アリール基は、任意選択で、それらの位置のいずれかにおいて、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシル、カルボキシル、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプト、およびアルキルチオなどの1つ以上の置換基によって置換され得る。
【0020】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、3~10個の構成員、好ましくは3~8個の構成員、より好ましくは3~6個の構成員を有する、安定な単環式または二環式ラジカルを指し、これは、飽和または部分的に飽和し、炭素原子および水素原子のみからなり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびアダマンチルなどであり、任意選択で、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシル、カルボキシル、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプト、およびアルキルチオなどの1つ以上の基によって置換され得る。
【0021】
さらなる実施形態では、RおよびRは、H、C~Cアルキル、およびC=ORから独立して選択され、式中、Rは、C~Cアルキルであり、RおよびRは、HおよびC~Cアルキルから独立して選択され、Rは、C~Cアルキルである。
【0022】
さらに好ましい実施形態では、RはHであり、Rはアセチルであり、Rはメチルであり、Rはエチルであり、Rはメチルである。
【0023】
好ましい実施形態では、式(II)の化合物は、遊離塩基または塩の形態である。式(II)の化合物が塩である場合、塩は、好ましくは、(R,R)-4-クロロタートラニル酸、(R,R)-ジ-p-トルオイル-酒石酸、L-フェニルアナリン(L-phenylanaline)、p-トルエンスルホンアミド、およびN-アセチル-L-ロイシンから選択され、好ましくはN-アセチル-L-ロイシン塩である。
【0024】
より好ましい実施形態では、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである式IIの化合物が使用される。
【0025】
さらにより好ましい実施形態では、式(II)の化合物は、N-アセチル-L-ロイシン塩であり、式中、Rはメチルであり、Rはエチルであり、Rはメチルである。
【0026】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、化合物IIIは、カップリング剤、好ましくは酸活性化剤、より好ましくは、カルボニルジイミダゾール(CDI)、塩化チオニル、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ヘキサフルオロホスフェートベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HBTU)、ヘキサフルオロホスフェートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HATU)、6-クロロ-1-((ジメチルアミノ)(モルホリノ)-メチレン)-1H-ベンゾトリアゾリウムヘキサフルオロホスフェート3-オキシド(HDMC)から選択され、より好ましくは、カルボニルジイミダゾール(CDI)、塩化チオニル、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、およびヘキサフルオロホスフェートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HATU)から選択されるものによって活性化され、さらにより好ましくはCDIによって活性化される。
【0027】
好ましい実施形態では、式IIIの化合物に関連するカップリング剤の量は、3~1モル当量であり得、好ましくは2~1モル当量、より好ましくは1.05~0.95モル当量であり得る。
【0028】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、ステップ(a)は、好ましくは、アセトニトリル(ACN)、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、およびエタノールから選択され、より好ましくはACNである、有機溶媒中で行われる。
【0029】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、ステップ(a)は、加熱還流下で行われる。
【0030】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、プロセスは、(b)式Iの化合物を沈殿させるステップをさらに含む。好ましくは、化合物Iは、有機溶媒、好ましくはACN、および水の混合物、より好ましくはACNおよび水の約1:1~1:10(v/v)の混合物、好ましくはACNおよび水の約1:3~1:9(v/v)の混合物、好ましくはACNおよび水の約1:4~1:8(v/v)の混合物、さらにより好ましくはACNおよび水の約1:6(v/v)の混合物から沈殿する。
【0031】
1つの好ましい態様では、ACNおよび水の混合物は、ACN:水の1:2(v/v)の混合物である。別の好ましい態様では、ACNおよび水の混合物は、ACN:水=1:4(v/v)の混合物である。
【0032】
実施形態では、式Iの化合物を沈殿させるステップ(b)中に、混合物は、プロセスをより良好に制御するために、先行技術WO 2009/120167 A1に記載されたような好適な固体形態(例えば、多形体B)、または本発明で開示される新規多形体から選択される好適な固体形態で種晶添加され得る。好ましくは、混合物は、結晶形態Bで沈殿したアプレミラストのみを得るために、アプレミラストの多形体Bで種晶添加される。他の好適な態様では、混合物は、それぞれのアプレミラスト溶媒和物の沈殿を得るために、アプレミラストアニスアルデヒド溶媒和物、アプレミラスト3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物、アプレミラスト3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物、またはアプレミラスト6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物から選択されるアプレミラスト溶媒和物の固体材料で種晶添加される。
【0033】
好ましい実施形態では、RがHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである式Iの化合物は、ACNおよび水の混合物、好ましくはACNおよび水の約1:1~1:10(v/v)の混合物、より好ましくはACNおよび水の約1:3~1:9(v/v)の混合物、さらにより好ましくはACNおよび水の約1:~1:8(v/v)の混合物から沈殿する。1つの好ましい態様では、ACNおよび水の混合物は、ACN:水=1:2(v/v)の混合物である。別の好ましい態様では、ACNおよび水の混合物は、ACN:水=1:4(v/v)の混合物である。
【0034】
好ましい実施形態では、RがHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである式Iの化合物を含有する反応混合物は、上に記載されたステップ(b)中に、好適な固体形態、好ましくは既知の多形体Bで種晶添加される。好ましくは、混合物は、結晶形態Bで沈殿したアプレミラストのみを得るために、アプレミラストの多形体Bで種晶添加される。他の好適な態様では、混合物は、それぞれのアプレミラスト溶媒和物の沈殿を得るために、アプレミラストアニスアルデヒド溶媒和物、アプレミラスト3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物、アプレミラスト3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物、またはアプレミラスト6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物から選択されるアプレミラスト溶媒和物の固体材料で種晶添加される。
【0035】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、化合物IIIは、化合物IVから合成される。
【化5】
【0036】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、化合物IVは、化合物IIIに変換する前に、化合物V
【化6】
に変換される。
【0037】
化合物Vは、塩酸塩二水和物塩などの塩として単離され得るが、好ましくは、化合物Vは、in situでのみ形成され、単離されることなく化合物IIIに直接変換される。
【0038】
本発明のプロセスは、以下のスキーム2に見られる:
【化7】
【0039】
好ましい実施形態では、本発明のプロセスは、スキーム3に示される:
【化8】
【0040】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)の化合物と式(III)の化合物とをACN中のCDIを使用してスキーム3のように反応させることによって得られ、スキーム1のプロセスを使用するより20%高い収率でアプレミラストをもたらす。また、カップリング反応における溶媒としてACNを使用することは、より穏やかな反応条件、および生成物単離中のより容易なワークアップを可能とする。
【0041】
本発明のプロセスの別の利点は、式(III)の化合物が、スキーム1のプロセスで使用される3-アセトアミドフタル酸無水物に比べて向上した半減期安定性を有し、より高い純度の生成物を得ることである。先行技術の条件下では、化合物IIは二量化し得る。これは、本発明の反応条件下で回避される。本発明のプロセスは、式(III)の化合物の合成における触媒投入を低下させ、より安価な溶媒を使用することによって全体的なコストの削減を可能とする。本発明のプロセスの別の利点は、式(III)の化合物が使用される場合、反応副生成物/不純物の量が最小限に低減されることであり、これは、3-アセトアミドフタル酸無水物の使用は、開環アプレミラスト不純物の形成をもたらし、先行技術のようにアルコールおよび無水酢酸の代わりに、溶媒として水を使用することは、副生成物としての塩の形成の回避し、最終的な不純物の低減を可能とするためである。溶媒として水を使用することは、塩が除去されるという利点を有し、これは、高圧が要求されるため高価なオートクレーブおよび高い安全対策を必要とするHを使用する代わりに、金属水素化物または水素発生剤のような還元剤を使用して化合物IIIを合成することを可能とし、この反応をまた、より環境に優しく、より持続可能なものにする。
【0042】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、プロセスは、触媒および還元剤の使用を含み、触媒は、Pd、Pt、Rh、Ru、ラネーニッケル、HCl中のFe、HCl中のSn、またはHCl中のZnから選択され、還元剤は、好ましくは、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸カリウム、およびギ酸ナトリウムから選択されるギ酸塩、H、水素化ホウ素ナトリウム、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)、およびトリエチルシラン(TES)から選択される。第1の態様のプロセスのより好ましい実施形態では、プロセスは、触媒および還元剤の使用を含み、触媒は、好ましくは、Pd担持C、Pt担持C、Rh担持C、またはRu担持Cから選択される不均一系触媒であり、還元剤は、好ましくは、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸カリウム、およびギ酸ナトリウムから選択されるギ酸塩、H、水素化ホウ素ナトリウム、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)、およびトリエチルシラン(TES)から選択される。
【0043】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、触媒の量は、化合物IVの重量に対して、触媒約1~10重量%、好ましくは触媒約1~8重量%、より好ましくは触媒約1.5~5重量%、さらにより好ましくは触媒約1.5~2.5重量%である。好ましい実施形態では、触媒の量は、化合物IVの重量に対して約2重量%である。
【0044】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、ギ酸が還元剤として使用され、Pd、好ましくはPd/Cが触媒として使用される。
【0045】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、化合物IIIの合成は、60℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは35~45℃の温度で実行される。
【0046】
第1の態様のプロセスの好ましい実施形態では、プロセスは、アニスアルデヒド、3-フェニルプロパンアルデヒド、3-メチル-2-シクロヘキセノン、および6-メチル-5-ヘプテン-2-オンから選択される溶媒中の式Iの化合物の溶液を提供することと、式Iの化合物のそれぞれの溶媒和物を単離することとをさらに含む。
【0047】
一態様では、式Iの化合物、すなわちアプレミラストの結晶性溶媒和物の調製のためのプロセスは、
1)式Iの化合物、すなわちアプレミラストを、有機溶媒および/または水から選択される溶媒に溶解または懸濁させるステップと、
2)共溶媒として、アニスアルデヒド、3-フェニルプロパンアルデヒド、3-メチル-2-シクロヘキセノン、または6-メチル-5-ヘプテン-2-オンからなる群から選択される、溶媒和物を形成するための溶媒を加えるステップと、
3)任意選択で、ステップ(2)の混合物を50~80℃の温度に加熱するステップと、
4)式Iの化合物のそれぞれの溶媒和物を単離するステップと
を含む。
【0048】
ステップ(1)で使用される式Iの化合物、すなわちアプレミラストは、先行技術WO 2009/120167 A1に記載されたような好適な固体形態であり得る。好ましくは、ステップ(1)で使用されるアプレミラストの固体形態は、多形体Bである。
【0049】
ステップ(1)で使用される好適な溶媒は、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、および/または水、またはそれらの混合物から選択される有機溶媒であり得る。好適なケトン溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、または2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、および3-ペンタノン、またはそれらの混合物から選択され得る。好適なエステル溶媒は、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、およびマロン酸エチル、またはそれらの混合物から選択され得る。好適なエーテル溶媒は、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、イソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、および1,4-ジオキサン、またはそれらの混合物から選択され得る。好適な炭化水素溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサン、またはそれらの混合物から選択され得る。好ましくは、ステップ(1)で使用される溶媒は、ケトン溶媒、炭化水素溶媒から選択される有機溶媒、および/または水である。より好ましくは、ステップ(1)の溶媒は、アセトン、シクロヘキサン、および/または水である。
【0050】
ステップ(2)で使用されるアニスアルデヒド、3-フェニルプロパンアルデヒド、3-メチル-2-シクロヘキセノン、または6-メチル-5-ヘプテン-2-オンのいずれかの量は、ステップ(1)で使用された溶媒に対して、0.1~5.0(v/v)、好ましくは0.1~4.0(v/v)、より好ましくは0.1~3.0(v/v)、さらにより好ましくは0.1~2.0(v/v)であり得る。
【0051】
好ましい実施形態では、ステップ(2)で使用される3-フェニルプロパンアルデヒドの量は、ステップ(1)で使用された溶媒に対して、0.3から1.3(v/v)未満である。
【0052】
好ましい実施形態では、ステップ(2)で使用される3-メチル-2-シクロヘキセノンの量は、ステップ(1)で使用された溶媒に対して、0.6から2.0(v/v)未満である。
【0053】
本発明の別の態様は、第1の態様のプロセスによって得ることができる、アプレミラストの結晶性アニスアルデヒド溶媒和物、アプレミラストの結晶性3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物、アプレミラストの結晶性3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物、またはアプレミラストの結晶性6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物である。
【0054】
第2の態様では、本発明は、第1の態様のプロセスによって得られる式(I)の化合物または溶媒和物のいずれか、および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物に関する。好ましい実施形態では、第2の態様の医薬組成物は、アプレミラスト、またはアプレミラストの結晶性3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物、アプレミラストの結晶性3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物、またはアプレミラストの結晶性6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物を含み、錠剤、好ましくはフィルムコート錠の形態である。好ましい実施形態では、第2の態様の医薬組成物は、本発明の第3~第6の態様のアプレミラストの結晶性溶媒和物の少なくとも1つを含む。
【0055】
「医薬的に許容される」という用語は、物質または組成物が、配合物を含む他の成分、それで処置される哺乳類、および/または組成物の投与経路と、化学的および/または毒物学的に適合しなければならないことを示す。第2の態様の医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤として、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤などを含み得る。本明細書で使用される「希釈剤」という用語は、活性剤のバルク体積に加えられて固形組成物を作り上げる、医薬的に許容される賦形剤を指す。結果として、固形組成物のサイズは増大し、これにより、そのサイズが取り扱いに適したものになる。希釈剤は、固形組成物当たりの薬物用量が低く、普通なら固形組成物が小さすぎる場合に便利である。希釈剤は、例えば、微結晶セルロースまたはラクトース一水和物から選択され得る。崩壊剤は、例えば、クロスカルメロースナトリウムまたはクロスポビドンから選択され得る。本明細書で使用される「崩壊剤」は、投与後にその破壊または崩壊を促進するために錠剤に加えられる物質または物質の混合物を意味する。潤滑剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウムであり得る。本明細書で使用される「潤滑剤」は、本発明の組成物と、組成物を圧縮形態に圧縮するのに使用される装置の表面との間の摩擦を低減する物質を意味する。
【0056】
本発明の第3の態様は、少なくとも回折2θ角が7.40、11.15、および26.10°2θ±0.2°2θのピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、アプレミラストの結晶性アニスアルデヒド溶媒和物に関する。好ましくは、粉末X線ディフラクトグラムは、少なくとも回折2θ角が7.40、11.15、26.10、17.59、および16.25°2θ±0.2°2θのピークを含む。より好ましくは、粉末X線ディフラクトグラムは、図1にも示される、少なくとも回折2θ角が7.40、8.99、9.58、10.02、11.15、11.81、13.05、13.62、13.87、15.15、15.44、16.25、17.06、17.59、18.00、19.00、19.20、20.09、20.58、21.21、21.82、22.28、22.58、22.86、23.25、23.72、24.55、24.83、25.23、25.40、25.60、25.75、26.10、27.09、27.28、27.59、27.96、28.24、28.45、28.72、29.09、29.53、30.04、30.29、30.65、30.84、31.10、31.40、31.85、32.27、32.65、33.06、33.39、33.51、34.09、34.34、34.74、35.45、35.82、36.29、36.54、37.02、37.42、38.04、38.49、および38.86°2θ±0.2°2θのピークを含む。
【0057】
本発明の第4の態様は、少なくとも回折2θ角が7.31、11.08、25.96、および11.75°2θ±0.2°2θのピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、式Iの化合物、すなわちアプレミラストの結晶性3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物に関する。好ましくは、粉末X線ディフラクトグラムは、少なくとも回折2θ角が7.31、11.08、25.96、11.75、16.14、17.47、および25.08°2θ±0.2°2θのピークを含む。より好ましくは、粉末X線ディフラクトグラムは、図2にも示される、少なくとも回折2θ角が7.31、8.91、9.49、9.93、11.08、11.75、12.96、13.55、13.76、15.04、15.33、16.14、17.47、17.90、18.92、19.10、19.96、20.44、21.10、21.74、22.14、22.45、22.78、23.12、23.65、24.41、24.73、25.08、25.52、25.64、25.96、26.96、27.13、27.51、27.84、28.09、28.35、28.57、29.36、30.11、30.37、30.53、30.74、30.94、31.21、31.69、32.03、32.48、32.96、33.24、33.44、33.94、34.16、34.55、35.32、35.64、35.77、36.14、36.42、36.87、37.23、37.85、38.66、および39.74°2θ±0.2°2θのピークを含む。
【0058】
本発明の第5の態様は、少なくとも回折2θ角が7.41、11.17、26.16、および17.61°2θ±0.2°2θのピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、式Iの化合物、すなわちアプレミラストの結晶性3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物に関する。好ましくは、粉末X線ディフラクトグラムは、少なくとも回折2θ角が7.41、11.17、26.16、17.61、22.33、24.60、21.21、16.29、25.29、および23.30°2θ±0.2°2θのピークを含む。より好ましくは、粉末X線ディフラクトグラムは、図3にも示される、少なくとも回折2θ角が7.41、9.00、9.60、10.04、11.16、11.82、13.07、13.63、13.90、15.19、15.47、16.29、17.61、18.02、19.02、19.24、20.13、20.62、21.24、21.52、21.84、22.33、22.62、22.88、23.30、23.73、24.60、24.85、25.29、25.63、26.16、27.15、27.34、27.61、28.01、28.30、28.45、28.77、29.23、29.60、30.04、30.45、30.70、30.86、31.38、31.91、32.32、32.68、33.11、33.50、34.15、34.42、34.82、35.17、35.53、35.87、36.15、36.36、36.59、37.11、37.51、38.13、38.51、38.96、および39.55°2θ±0.2°2θのピークを含む。
【0059】
本発明の第6の態様は、少なくとも回折2θ角が11.25、7.40、26.10、17.61、および17.80°2θ±0.2°2θのピークを含む粉末X線ディフラクトグラムを有する、式Iの化合物、すなわちアプレミラストの結晶性6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物に関する。好ましくは、粉末X線ディフラクトグラムは、少なくとも回折2θ角が11.25、7.40、26.10、11.99、16.27、17.61、および17.80°2θ±0.2°2θのピークを含む。より好ましくは、粉末X線ディフラクトグラムは、図4にも示される、少なくとも回折2θ角が7.40、9.04、9.56、10.02、11.25、11.99、13.13、13.85、15.12、16.27、16.46、17.61、17.80、18.09、19.15、20.08、20.55、21.19、21.35、22.09、22.27、22.64、23.12、23.28、23.58、24.07、24.62、25.03、25.22、25.92、26.10,27.32,27.68,27.97,28.21,28.80,29.50,30.28、30.52,30.92,31.17、31.91,32.43,32.78,33.49,33.98,34.28,34.55,34.69,35.38,35.60、35.95,36.06、36.41、36.81、37.27、38.08、38.80、および39.28°2θ±0.2°2θのピークを含む。
【0060】
本発明者らは、第1の態様で開示された製造プロセスから得られる式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物が、溶媒抽出、濾過、蒸留、スラリー化、洗浄、相分離、蒸発、遠心分離、単離、または結晶化などの、従来の精製プロセスによって排除するのが困難な2つの主な不純物を含有し得ることに気づいた。具体的には、未同定(未知の不純物)であり得、実施例に記載されるようなHPLC法によって特性評価される1つの不純物が、約0.3~0.5%(w/w)の量で式Iの化合物中に存在し得る。以下に示す脱アセチル化不純物(VI)である他方の不純物は、約0.3~0.5%(w/w)の量で式Iの化合物中に存在し得る。
【化9】
【0061】
したがって、本発明のさらなる態様は、第1の態様で開示された製造プロセスから得られる式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物の精製のための方法に言及する。精製プロセスは、以下:
i.アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、およびエタノール、好ましくはアセトニトリルから選択される溶媒または溶媒の混合物中の式Iの化合物を提供するステップと、
ii.ステップ(i)の混合物を、ステップ(i)で使用された有機溶媒または溶媒の混合物に対して5%(v/v)以下の量の酸と接触させるステップと、
iii.任意選択で、ステップ(ii)で得られた混合物を有機アミンと接触させるステップと、
iv.任意選択で、溶媒または溶媒の混合物の共沸蒸留によって、反応中に形成された水をステップ(ii)または(iii)で得られた反応混合物から除去して、反応混合物の含水量を、KFによる測定で0.2%(w/w)以下に減少させるステップと、
v.ステップ(ii)、(iii)または(iv)で得られた反応混合物を、実施例に記載されるようなHPLC法による測定で、脱アセチル化不純物(VI)の量に対して5~10モル当量の量のアセチル化剤と接触させるステップと
を含む。
【0062】
本発明の精製方法は、好ましくはRがHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである、式Iの最終化合物の化学純度を、従来の精製プロセスによって排除するのが困難なこれら2つの不純物(すなわち、未知の不純物および脱アセチル化不純物)を低減または排除さえすることによって上昇させる。
【0063】
式Iの化合物は、上に定義されるとおりであり、好ましくはRがHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである。
【0064】
ステップ(i)で使用される有機溶媒は、上に定義されるとおりである。
【0065】
本発明に適したステップ(ii)の酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸(オルトリン酸としても知られる)、ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびカンファースルホン酸、またはそれらの混合物から選択される。好ましくは、ステップ(ii)で使用される酸は、塩酸、酢酸、およびトリフルオロ酢酸である。
【0066】
驚いたことに、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、およびエタノール、またはそれらの混合物、好ましくはアセトニトリルから選択される溶媒の存在下での酸の使用は、式Iの化合物から未知の不純物を低減または排除さえする。
【0067】
ステップ(ii)で使用される酸の量は、先のステップ(i)で使用された有機溶媒または溶媒の混合物に対して5%(v/v)まで、好ましくは4%v/v以下、より好ましくは3%v/v以下であり得る。過剰量のステップ(ii)で使用される酸は、使用される酸の量が多くなればなるほど、反応混合物中で形成される脱アセチル化不純物(VI)が多くなるリスクがあるため、回避さるべきである。したがって、ステップ(ii)で使用される酸の量は、反応混合物から未知の不純物を除去するのに十分な量であり得る。ゆえに、ステップii)を行う前に試料を採取し、発生した不純物の量を調べることが必要な場合がある。好ましくは、酸の量は、0.5%~3.0%(v/v)であり、より好ましくは、ステップ(ii)で使用される酸の量は、先のステップ(i)で使用された有機溶媒または溶媒の混合物に対して0.5%~2.0%(v/v)である。
【0068】
好ましい実施形態では、式Iの化合物の精製のためのステップ(i)で使用される溶媒または溶媒の混合物は、アセトニトリルである。
【0069】
好ましい実施形態では、式Iの化合物の精製のためのステップ(ii)で使用される酸は、塩酸である。
【0070】
ステップ(iii)で使用される好適な有機塩基は、ステップ(i)で使用される溶媒または溶媒の混合物に混和する任意の強有機塩基であり得る。好ましくは、好適な有機塩基は、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)およびトリエチルアミン(TEA)の群から選択され得る。ステップ(ii)で使用される有機塩基の量は、ステップ(ii)で使用される酸に対して2倍(v/v)であり得る。有機塩基は、ステップ(ii)の後に反応混合物中に存在する過剰の酸を除去する。無機塩基は式Iの化合物を分解することがわかっているため、有機塩基が好ましい。好ましくは、ステップ(iii)は実行される。
【0071】
実施形態では、ステップ(v)でアセチル化剤を加える前に、溶媒または溶媒の混合物の共沸蒸留によって、反応中に形成された水をステップ(iii)で得られた反応混合物から除去して、反応混合物の含水量を、KFによる測定で0.2%(w/w)以下に減少させることが好ましい。
【0072】
ステップ(v)で使用される好適なアセチル化剤は、任意選択で4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、2,6-ルチジン、またはp-トルエンスルホン酸ピリジン塩から選択される触媒の存在下における無水酢酸、および塩化アセチルであり得、好ましくは、ステップ(v)で使用されるアセチル化剤は、塩化アセチルである。
【0073】
ステップ(v)におけるアセチル化剤の使用は、好ましくはRがHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである式Iの化合物(すなわちアプレミラスト)から、脱アセチル化不純物(VI)を、再現性のある方法で低減または排除さえする。
【0074】
1つの好ましい態様では、ステップ(v)の後に形成された塩酸は、反応混合物を不活性ガス、好ましくは窒素でバブリングすることによって、またはステップ(v)で得られた反応混合物を上に定義されたような有機アミンと接触させることによって、任意選択で除去され得る。このステップは、結果として生じる生成物の純度をさらにいっそう改善し得る。
【0075】
好ましくはRがHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである式Iの化合物は、本発明の第1の態様のステップ(b)で定義されたような沈殿によって単離され得る。
【0076】
実施形態では、好ましくはRがHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである式Iの化合物は、本発明の第1の態様のステップ(b)で定義されたような沈殿によって単離される。
【0077】
別の好ましい態様では、第1の態様で開示された製造プロセスから得られるアプレミラストまたはその塩もしくは溶媒和物の精製のための方法は、
i.アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、およびエタノール、好ましくはアセトニトリルから選択される溶媒または溶媒の混合物中のアプレミラストを提供するステップと、
ii.ステップ(i)の混合物を、ステップ(i)で使用された有機溶媒または溶媒の混合物に対して3%(v/v)以下の量の、塩酸、酢酸、およびトリフルオロ酢酸から選択される酸と接触させるステップと、
iii.任意選択で、ステップ(ii)で得られた混合物を有機アミンと接触させるステップと、
iv.任意選択で、溶媒または溶媒の混合物の共沸蒸留によって、反応中に形成された水をステップ(ii)または(iii)で得られた反応混合物から除去して、反応混合物の含水量を、KFによる測定で0.2%(w/w)以下に減少させるステップと、
v.ステップ(ii)、(iii)または(iv)で得られた反応混合物を、実施例に記載されるようなHPLC法による測定で、脱アセチル化不純物の量に対して5~10モル当量の量の塩化アセチルと接触させるステップと
を含む。
【0078】
実施形態では、上で定義された精製方法の後に得られるアプレミラストは、本発明の第1の態様のステップ(b)で定義されたような沈殿によって単離される。
【0079】
有利には、上で定義されたような精製方法は、HPLCによる測定で0.3%以下、好ましくはHPLCによる測定で0.2%以下、より好ましくはHPLCによる測定で0.1%以下の未知の不純物の濃度を有する、好ましくはRがHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである式Iの化合物を提供する。上で定義されたような精製プロセスは、実施例に記載されるようなHPLCによる測定で0.3%以下、好ましくはHPLCによる測定で0.2%以下、より好ましくはHPLC法による測定で0.1%以下の脱アセチル化不純物の濃度を有する、好ましくはRがHであり、Rがアセチルであり、Rがメチルであり、Rがエチルであり、Rがメチルである式Iの化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】アプレミラストのアニスアルデヒド溶媒和物のXRPDパターン。
図2】アプレミラストの3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物のXRPDパターン。
図3】アプレミラストの3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物のXRPDパターン。
図4】アプレミラストの6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物のXRPDパターン。
図5】アプレミラストのアニスアルデヒド溶媒和物の熱重量分析。
図6】アプレミラストの3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物の熱重量分析。
図7】アプレミラストの3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物の熱重量分析。
図8】アプレミラストの6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物の熱重量分析。
【実施例
【0081】
以下の実施例は、本発明を限定するためではなく、さらに説明するために提供される。
【0082】
分析測定を以下のように行った:
1)熱重量分析(TGA)の分析条件:
-機器:Mettler Toledo熱天秤TGA/SDTA851e。
-るつぼ:70μlの容量を有するアルミナるつぼ。
-ガス:乾燥窒素50mL/分。
-方法:10℃/分の速度で30℃から300℃に加熱。ブランク曲線は、同じ方法論を用いてあらかじめ行われ、差し引かれた。
2)粉末X線回折(PXRD)分析の分析条件:
試料調製:粉末試料を、厚さ3.6ミクロンのポリエステルのフィルム間に挟んだ。
機器:集束ミラーによる収束ビームの構成、および低吸収フィルム間に挟まれた平坦試料による透過ジオメトリの、半径240ミリメートルの、PANalytical X’Pert PRO MPD q/q粉末回折計。
-CuKa放射線(λ=1.5418Å)。
-作動電力:45kV-40mA。
-0.4ミリメートルのビーム高さを定める入射ビームスリット。
-入射および回折ビームの、0.02ラジアンのソーラースリット。
-PIXcel検出器:有効長3.347°。
-0.026°2qのステップサイズ、および1ステップ当たり300秒の測定時間での、1~40°2qの2q/q走査。
データ取得:粉末回折パターンを、透過ジオメトリでCuKα1放射線を用いてBruker D8 Advanceシリーズ2θ/θ粉末回折システムで取得した。システムは、VÅNTEC-1単一フォトンカウンティングPSD、ゲルマニウムモノクロメータ、90個の位置のオートチェンジャ試料ステージ、固定発散スリット、およびラジアルソーラーを備える。
使用されたプログラム:DIFFRAC plus XRD Commander V.2.5.1によるデータ収集およびDiffrac.EVA V.5.0.0.22による評価
-測定条件:同じ試料を、0.026°の角度ステップおよび1ステップ当たり300秒の時間を用いて、1時間の測定で4~40°の2θ範囲で測定した。
3)高純度液体クロマトグラフィー(HPLC)分析の分析条件:
反応物:TFA(トリフルオロ酢酸)(分析品質);水、HPLC品質;アセトニトリル、HPLC品質
カラム:XBridge C18 3,5μ(150×4.6mm)
〇移動相:ACN:H2O(TFA 0.05%)
〇流量:1.0mL/分
〇移動相勾配:
【表1】
-カラム温度:30℃
-波長:230nm
-注入量:10μm
水相 TFA 0.05%
溶媒:ACN/0.05% TFA(H2O)(40:60)
試料:溶媒50mL中の化合物I 10mg
【0083】
実施例1:式IIIの化合物(アセトアミノフタル酸)の合成
250mLの丸底フラスコに、ニトロフタル酸(式IVの化合物)(5g、23.7mmol)、パラジウム担持チャコール(0.23gのPd/C、含水率55.8%)、およびNaOH 3M(50mL、10vol)を投入した。混合物を、35~40℃に加熱し、pHを、HCOOH(約3.7mL)を注意深く加えることによって10に調節した。反応混合物を4時間撹拌し、その後、ACO(3.91mL、1.75eq)を、35~40℃で30分間、注意深く加えた。反応混合物を、さらに30分間撹拌し、室温に冷却した。触媒を濾過して取り除き、生成物を、HCl(37%)を加えてpH<1にすることによって沈殿させた。混合物を、2時間、0~5℃で撹拌し、濾過し、HCl 1Mで洗浄し、40℃で真空乾燥させた。アセトアミノフタル酸(式IIIの化合物)を、良好な収率(80~85%)および高純度(HPLCで>95%)で得た。
【0084】
実施例2:式IIの化合物((S)-2-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-1-(メチルスルホニル)-エト-2-イルアミンN-アセチル-L-ロイシン)の合成
機械撹拌、温度プローブ、および冷却器を備えた1Lのジャケット付き反応器に、(S)-2-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-1-(メチルスルホニル)-エト-2-イルアミン(50g、183mmol)、N-アセチル-L-ロイシン(30.1g、0.95eq)、およびメタノール(625mL)を投入した。反応混合物を、1時間、加熱還流した。次いで、混合物を、20~25℃に冷却し、20~25℃で30分間した。固体を濾過し、MeOH(50mL)で洗浄した。得られた湿った固体を、MeOH(400mL)とともに反応器に再び投入し、1時間還流し、次いで、0~5℃に冷却し、3時間撹拌し、濾過して取り除いた。ケークを、MeOH(50mL)で洗浄した。この再結晶ステップを、2回繰り返した。(S)-2-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-1-(メチルスルホニル)-エト-2-イルアミンN-アセチル-L-ロイシンを得(収率:35~40%、37g)、ee(HPLC):>99.9%であった。
【0085】
実施例3:式Iの化合物(アプレミラスト)の合成
機械撹拌、温度プローブ、および冷却器を備えた1Lのジャケット付き反応器に、アセトアミノフタル酸(式IIIの化合物)(内部コードAPR-1C)(15.74g、70.54mmol、1.05eq)、およびACN(300mL、10 RV)、1,1-カルボニルジイミダゾール(21.79g、2eq)を、室温で撹拌しながら少量ずつ(portion wise)投入した。反応を15分間撹拌し、(S)-2-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-1-(メチルスルホニル)-エト-2-イルアミンのN-アセチル-L-ロイシン塩(式IIの化合物)(30g、67.18mmol)を、反応器に投入した。混合物を、3時間、加熱還流した。次いで、ACNの50%を蒸留し、混合物を20~25℃に冷却した。水(150mL、5 RV)を、1時間の間に滴下した。混合物を、アプレミラストで種晶添加し、45分間撹拌した。次いで、水(150mL、5 RV)を1時間の間に滴下し、2時間熟成させた。混合物を濾過して取り除き、ケークを水(30mL、1 RV)で洗浄した。湿った固体を、EtOH(225mL、7.5 RV)に懸濁させ、加熱還流した。10分間撹拌した後、混合物を濾過し、RTに冷却し、2時間熟成させた。スラリーを濾過し、ケークをEtOH(30mL、1 RV)で洗浄した。最終固体を40℃で真空乾燥させて、13.0gのアプレミラストを得た(収率80%、化学純度:98.92%、ee 99.5%)。
【0086】
上で得られた湿った固体および最終固体を、実施例に記載されるようなHPLC法によって分析し、下記の表中の以下の結果を得た。
【表2】
【0087】
これら2つの望ましくない不純物(すなわち、未知の不純物および脱アセチル化不純物)を除去するために、上で得られた最終固体をまた、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、メチルtert-ブチルエーテル、アセトンと水との混合物、および異なるpHの水から選択されるいくつかの溶媒で再結晶したが、成功しなかった。
RV:相対体積、Eq:当量、Ee:鏡像体過剰率
【0088】
実施例4:式Iの化合物(アプレミラスト)の合成
機械撹拌、温度プローブ、および冷却器を備えた1Lのジャケット付き反応器に、アセトアミノフタル酸(式IIIの化合物)(15.74g、70.54mmol)、1,1-カルボニルジイミダゾール(10.89g、67.18mmol)、およびACN(300mL)を投入した。混合物を30分間撹拌し、(S)-2-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-1-(メチルスルホニル)-エト-2-イルアミンのN-アセチル-L-ロイシン塩(30g、67.18mmol)を、反応器に投入した。混合物を、3時間、加熱還流した。終了後、ACNの体積の半分を真空蒸留し、次いで、水(225mL)を還流下で注意深く加え、混合物を55~60℃に注意深く冷却した。この温度で、溶液は濁り、混合物を、純粋なアプレミラスト多形体B(0.02%w/w)で種晶添加した。結果として生じる混合物を2時間熟成させて、結晶化を刺激した。オフホワイトの固体が沈殿したら、水(375mL)を55~60℃で注意深く加え、結果として生じる混合物を、3時間で20~25℃に冷却した(すなわち、10℃/分の冷却速度)。得られた固体を濾過し、水(30mL)で2回洗浄した。湿ったケークを、HPLCおよび乾燥減量によって分析して、乾燥固体を推定した。水の量が、KFによる測定で1%未満になるまで、固体を50~60℃で真空乾燥させた。
HPLC:96.73%(0.60%の未知の不純物;0.25%の脱アセチル化不純物)
【0089】
実施例5:実施例4から得られた式Iの化合物(アプレミラスト)の精製
実施例4で得られた固体(5.48g、11.9mmol)を、ACN(27.40mL)とともに反応器に投入した。HCI 37%の水溶液(1%v/v、27.4μL)を加え、結果として生じる混合物を、20~25℃で1時間撹拌した。HPLCによって、以下を観察した:96.33%;0.05%の未知の不純物;2.46%の脱アセチル化不純物)。終了後、ACN(10.96mL)およびTEA(2%v/v、54.8μL)を投入して、過剰のHClを中和し、pH約9~10の溶液を得た。次いで、ACNを50℃で真空蒸留し、この共沸蒸留を、反応中に形成された水のパーセンテージが<0.2%(KF:0.18%)であると決定されるまで、蒸留中に追加のACNを加えることによって続けた。得られた固体に、ACN(10.96mL)および塩化アセチル(0.16mL、5.91mmol、脱アセチル化不純物の%に対して10eq)を、40~45℃で加え、結果として生じる混合物を、40~45℃で1時間熟成させた(HPLC:99.06%;0.01%の未知の不純物;0.04%の脱アセチル化不純物)。終了後、反応混合物を、窒素ガスを溶液にバブリングしながら30℃に冷却した。溶媒ACNを、30℃で真空蒸留した。この蒸留を、2回繰り返して、塩化アセチルの副生成物として形成されたHClを排除した。この排除を、塩化物滴定によって監視した(塩化物0.2%)。溶液を還流温度まで加熱し、水(41.1mL)を還流下で注意深く加え、結果として生じる混合物を55~60℃に注意深く冷却し、この温度で、溶液は濁り、反応を、アプレミラスト多形体B 0.02%(w/w)で種晶添加した。オフホワイトの固体が沈殿したら、水(68.5mL)を55~60℃で注意深く加え、結果として生じる混合物を、3時間で20~25℃に冷却した(すなわち、10℃/分の冷却速度)。得られた固体を濾過し、水(5.48mL)で2回洗浄した。固体を、一定重量まで、50~60℃で真空乾燥させた。3.56gのアプレミラスト(収率65%、HPLC:99.8%、ee>99.7%)が得られた。
【0090】
実施例8:一般的なアプレミラスト共溶媒和物の合成
先の手順に従って最終的なアプレミラストを達成した後、一連の共溶媒和物を、次の手順に従って合成した:アプレミラストを50mLの丸底フラスコに投入し、対応する溶媒を加え、反応混合物を、所望の温度で数時間撹拌した(表1参照)。反応が完了したら、反応を冷却し、溶媒を濾過した。すべての固体を、一定重量まで、45℃で真空乾燥させた。
【0091】
以下の表は、アプレミラスト共溶媒和物の反応条件を示す。
【表3】
【0092】
4つのアプレミラスト共溶媒和物のすべてを分析し、それらの安定性を試験した。
【0093】
安定性試験は、40℃および75%の相対湿度(r.h.)の条件で行われ、4つの共溶媒和物のすべてが、これらの極端な条件で、6ヶ月にわたって変化しないままであることを示した。ゆえに、4つの共溶媒和物のすべては、優れた安定性を示す。
【0094】
実施例9:式Iの化合物(アプレミラスト)のアニスアルデヒド溶媒和物の合成
アプレミラスト(12g、26mmol)およびアニスアルデヒド(24mL、2.0 RV)を、50mLの丸底フラスコに投入し、混合物を、75~80℃で3時間撹拌した。反応が完了したら、反応を、RT、次いで0~5℃に冷却し、2時間撹拌した。生成物を濾過し、シクロヘキサンで洗浄した。固体を、一定重量まで、45℃で真空乾燥させて、10.59gの生成物を得た。
【0095】
生成物を、図1および図5に見られるように、TGAおよびPXRDによって特性評価した。
【0096】
実施例10:式Iの化合物(アプレミラスト)の3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物の合成
アプレミラスト(12g、26mmol)および3-フェニルプロパンアルデヒド(15mL、1.25 RV)を、50mLの丸底フラスコに投入し、混合物を、75~80℃で3時間撹拌した。反応が完了したら、反応を、RT、次いで0~5℃に冷却し、2時間撹拌した。生成物を濾過し、シクロヘキサンで洗浄した。固体を、一定重量まで、45℃で真空乾燥させて、13.96gの生成物を得た。
【0097】
生成物を、図2および図6に見られるように、TGAおよびPXRDによって特性評価した。
【0098】
実施例11:式Iの化合物(アプレミラスト)の3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物の合成
アプレミラスト(12g、26mmol)および3-メチル-2-シクロヘキセノン(36mL、3.0 RV)を、50mLの丸底フラスコに投入し、混合物を、RTで3時間撹拌した。シクロヘキサン(36mL、3.0 RV)を溶液に加え、次いで種晶添加した。混合物を、終夜撹拌し、0~5℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。最終固体を濾過し、シクロヘキサンで洗浄した。生成物を、一定重量(12.72g)まで、45℃で真空乾燥させた。
【0099】
生成物を、図3および図7に見られるように、TGAおよびPXRDによって特性評価した。
【0100】
実施例12:式Iの化合物(アプレミラスト)の6-メチル-5-ヘプテン-2-オン溶媒和物の合成
アプレミラスト(12g、26mmol)および6-メチル-5-ヘプテン-2-オン(24mL、2.0 RV)を、50mLの丸底フラスコに投入し、混合物を、75~80℃で終夜撹拌した。反応が完了したら、反応を、RT、次いで0~5℃に冷却し、2時間撹拌した。生成物を濾過し、MTBE(36mL、3.0 RV)で洗浄した。固体を、一定重量まで、45℃で真空乾燥させて、13.11gの生成物を得た。
【0101】
生成物を、図4および図8に見られるように、TGAおよびPXRDによって特性評価した。
【0102】
実施例13:アセトン中でのアプレミラストの3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物の精製
アプレミラスト(5g、10.86mmol)およびアセトン(10mL)を、50mLの丸底フラスコに投入し、結果として生じる混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、3-フェニルプロパンアルデヒド(3mL)を加え、結果として生じる混合物を、還流温度で3時間撹拌し、24時間で室温に、次いで0~5℃に冷却し、0~5℃で2時間撹拌した。得られた固体を濾過して取り除き、アセトンで洗浄し、一定重量まで、45~50℃で真空乾燥させた。収率:63%。DSC(10℃/分):127.3℃で開始し、129.2℃で最大(104J/g)となる鋭い吸熱ピーク。
【0103】
アプレミラストの3-フェニルプロパンアルデヒド溶媒和物は、上記のようなアセトンの代わりに水中でも得られた。
【0104】
実施例14:水およびシクロヘキサン中でのアプレミラストの3-メチル-2-シクロヘキセノン溶媒和物の精製
アプレミラスト(5g、10.86mmol)および水(20mL)を、50mLの丸底フラスコに投入し、結果として生じる混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、3-メチル-2-シクロヘキセノン(5mL)を加え、結果として生じる混合物を、室温で3時間撹拌した。その後、シクロヘキサン(15mL)を加え、結果として生じる混合物を、室温で24時間撹拌し、0~5℃に冷却し、0~5℃で2時間撹拌した。得られた固体を濾過して取り除き、シクロヘキサンで洗浄し、一定重量まで、45~50℃で真空乾燥させた。収率:68%。DSC(10℃/分):119.5℃で開始し、121.7℃で最大(83J/g)となる鋭い吸熱ピーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】