(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】電気化学セル用の改良された電解液
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0568 20100101AFI20230712BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230712BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20230712BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230712BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230712BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230712BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230712BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230712BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20230712BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20230712BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/38 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579819
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 FI2021050493
(87)【国際公開番号】W WO2021260274
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518111368
【氏名又は名称】ブロードビット バッテリーズ オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ファウストフ アルテム
(72)【発明者】
【氏名】コヴァクス アンドラス
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ10
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
(57)【要約】
本開示では、少なくとも2種のカーボネート溶媒を含む溶媒混合物を含む電気化学セル用電解液が記載される。共溶媒DMC、共溶媒EC、及び共溶媒PCを含む溶媒混合物と、添加剤SCN及びFECとを含み、添加剤SCN及びFECのそれぞれの質量%が5%未満である電気化学セル用電解液も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムジフルオロオキサロトボレート(LiDFOB)を含むリチウム塩と、少なくとも2種のカーボネート溶媒を含む溶媒混合物とを含む電気化学セル用の電解液。
【請求項2】
前記溶媒混合物中の副溶媒対主溶媒の質量比が約3:7~1:1である請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記溶媒混合物中の副溶媒対主溶媒の質量比が約2:8~1:1である請求項1又は請求項2に記載の電解液。
【請求項4】
前記カーボネート溶媒のうちの少なくとも1つがエチレンカーボネート(EC)であり、かつ/又は前記カーボネート溶媒のうちの少なくとも1つがジメチルカーボネート(DMC)を含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項5】
前記カーボネート溶媒のうちの少なくとも1つがプロピレンカーボネート(PC)を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項6】
少なくとも2種の電解液添加剤をさらに含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項7】
前記電解液添加剤のうちの少なくとも1つが、カーボネート型添加剤又はニトリル型添加剤を含む請求項6に記載の電解液。
【請求項8】
前記電解液添加剤のうちの少なくとも1つが非イオン性有機添加剤を含む請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項9】
第2の添加剤がニトリル型添加剤を含む請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項10】
少なくとも1種の非イオン性有機添加剤が、環状カーボネート系添加剤又はジオキソランを含む請求項8又は請求項9に記載の電解液。
【請求項11】
少なくとも1種の環状カーボネート系添加剤が、1,3-環状カーボネート、クロロエチレンカーボネート、及び/若しくはフルオロエチレンカーボネート(FEC)並びに/又はこれらの組み合わせを含む請求項10に記載の電解液。
【請求項12】
少なくとも1種のニトリル型添加剤が、アセトニトリル、アジポニトリル、グルタロニトリル、ピメロニトリル、マロノニトリル(MLN)及び/若しくはスクシノニトリル(SCN)並びに/又はこれらの組み合わせを含む請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項13】
前記電解液がさらなるリチウム塩をさらに含む請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項14】
前記リチウム塩の濃度が0.1~6Mである請求項13に記載の電解液。
【請求項15】
前記さらなるリチウム塩のうちの少なくとも1つが、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF
4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6)、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む請求項13又は請求項14に記載の電解液。
【請求項16】
カーボネート溶媒の種類の数が3である請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項17】
前記3種のカーボネート溶媒がエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びジメチルカーボネート(DC)である請求項16に記載の電解液。
【請求項18】
任意の個々の添加剤の量が、前記電解液の全質量の0.01質量パーセント~15質量パーセントである請求項6から請求項17のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項19】
前記非イオン性有機添加剤のうちの少なくとも1つがフルオロエチレンカーボネート(FEC)であり、かつ/又は前記ニトリル型添加剤のうちの少なくとも1つがスクシノニトリル(SCN)である請求項8から請求項18のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項20】
前記非イオン性有機添加剤の質量割合が電解液の総質量の0.5%~5%であり、かつ/又はニトリル型添加剤の質量割合が電解液の総質量の0.1%~3%である請求項19に記載の電解液。
【請求項21】
電気化学セル用電解液であって、前記電解液中のリチウム塩の少なくとも50%を構成する一次リチウム塩と、共溶媒としてのスクシノニトリル(SCN)及び前記電解液の少なくとも5質量%を構成する1種以上のカーボネート型共溶媒を含む溶媒混合物とを含み、前記カーボネート型共溶媒のうちの少なくとも1つは、SEI形成能力を有し、前記一次リチウム塩はリチウムジフルオロオキサロトボレート(LiDFOB)である電解液。
【請求項22】
1種のカーボネート型共溶媒がフルオロエチレンカーボネート(FEC)である請求項21に記載の電解液。
【請求項23】
1種のカーボネート型共溶媒がFECであり、別のカーボネート型共溶媒がDMCである請求項21又は請求項22に記載の電解液。
【請求項24】
1種のカーボネート型共溶媒がFECであり、別のカーボネート型共溶媒がDMCである請求項21から請求項23のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項25】
二次リチウム塩をさらに含み、前記二次リチウム塩が前記電解液中の全リチウム塩の50%未満を構成する請求項21から請求項24のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項26】
前記二次リチウム塩がホウ素含有リチウム塩である請求項25に記載の電解液。
【請求項27】
前記ホウ素含有リチウム塩がLiDFOB、LiBF
4及び/若しくはLiBOB、又はこれらのいずれかの組み合わせである請求項25に記載の電解液。
【請求項28】
前記電解液が、共溶媒DMC、共溶媒EC、及び共溶媒PCを含む溶媒混合物、並びに添加剤SCN及びFECを含み、添加剤SCN及びFECのそれぞれの質量%が5%未満である請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項29】
請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の電解液と、アノードと、カソードとを含む電気化学セル。
【請求項30】
前記カソードが、リチウムマンガンニッケル酸化物(LMNO)、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)、ニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、コバルト酸化物(LCO)、ニッケルコバルトアルミニウム(NCA)及び/又はリン酸鉄リチウム(LFP)を含む請求項29に記載の電気化学セル。
【請求項31】
前記アノードが、リチウム、炭素及び/又はケイ素を含む請求項21から請求項30のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項32】
アノードが、天然黒鉛及び/若しくは人工黒鉛、ハードカーボン、黒鉛ケイ素混合物、ケイ素、酸化ケイ素(SiO)、ケイ素、LTO(チタン酸リチウム)並びに/又は金属リチウムを含む請求項32に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも2種のカーボネート溶媒を含む溶媒混合物を含む電気化学セル用電解液に関する。本開示はさらに、共溶媒DMC、共溶媒EC、及び共溶媒PCを含む溶媒混合物と、添加剤SCN及びFECとを含み、添加剤SCN及びFECのそれぞれの質量%が5%未満である、電気化学セル用電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能及び低コストの電池は、多くの用途、例えば電気自動車又は電力系統(電気グリッド)のためのエネルギー貯蔵にとって有利である。現在市場のトップを走る電池技術は、リチウムイオン(Liイオン)電池技術である。最新技術のLiイオン電池は、例えば、ある種の黒鉛ベースのアノード、金属酸化物カソード、及び有機電解液を採用する。商業的に好ましいカソード配合物は、典型的には、ニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、コバルト酸化物(LCO)又はニッケルコバルトアルミニウム(NCA)配合物に基づく。しかしながら、これらのカソード配合物の長期の見込みは、コバルトの供給の制限によって妨げられており、これは、電池生産量の将来の増加に対する知られた制約条件である。従って、NCMは最も高いエネルギー密度をもたらすが、そのコバルト含有量はその生産拡張性を制限する。コバルトを回避するために、リン酸鉄リチウム(LFP)カソード材料がしばしば使用されるが、それはエネルギー密度の低下をもたらす。これらのアノード及びカソードのための商業的に好ましい電解液配合物は、カーボネート溶媒とLiPF6電解質塩との混合物に基づく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、LiPF6電解質塩の低い化学的安定性は、電池動作温度範囲を制限し、電池パックの複雑かつ費用のかかる熱管理を必要とする。加えて、熱暴走又は他のセル酷使状態の間、LiPF6は、他の電解質分子と反応し、毒性化合物を生成する。本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの実施形態によれば、電池の安全性及び動作温度範囲を改善するために、低化学的安定性LiPF6電解質塩は、同様の電解質伝導性を与えるより安定な代替塩に置き換えられる。上記電解質は、広範囲のアノード、カソード及びセパレータと適合性であってもよい。従って、本発明の1つの態様は、概して、高温で良好な性能を提供しうるリチウム系電池、例えばリチウムイオン電池用の電解液に関する。この電解液は、高容量リチウム金属酸化物カソード活物質と適合性であってもよい。本発明はさらに、高電流で多くのサイクルにわたって安定的にサイクルすることができる高温(例えば60℃超)耐性電解液に関する。本発明の別の態様は、上記電解液から作製される電気化学セルに関する。これらのセルは、高温耐性及び長いサイクル寿命を示してもよい。
【0005】
本発明の別の態様は、上記の電解液と適合性であってもよいカソード材料である。このカソードはコバルト及びニッケルを含まなくてもよい。
【0006】
少なくとも2種のカーボネート溶媒を含む溶媒混合物を含む電気化学セル用電解液が開示される。このカーボネート溶媒のうちの少なくとも1つはエチレンカーボネート(EC)であってもよく、かつ/又は上記カーボネート溶媒の少なくとも1つはジメチルカーボネート(DMC)を含んでもよい。上記カーボネート溶媒の少なくとも1つは、プロピレンカーボネート(PC)を含んでもよい。当該電解液は、少なくとも2種の電解液添加剤をさらに含んでもよい。この電解液添加剤のうちの少なくとも1つは、カーボネート型添加剤又はニトリル型添加剤を含んでもよい。上記電解液添加剤の少なくとも1つは、非イオン性有機添加剤を含む。第2の添加剤は、ニトリル型添加剤を含んでもよい。少なくとも1種の非イオン性有機添加剤は、環状カーボネート系添加剤又はジオキソランを含んでもよい。少なくとも1種の環状カーボネート系添加剤は、1,3-環状カーボネート、クロロエチレンカーボネート及び/若しくはフルオロエチレンカーボネート(FEC)並びに/又はこれらの組み合わせを含んでもよい。少なくとも1種のニトリル型添加剤は、アセトニトリル、アジポニトリル、グルタロニトリル、ピメロニトリル、マロノニトリル(MLN)及び/若しくはスクシノニトリル(SCN)並びに/又はこれらの組み合わせを含んでもよい。当該電解液は、リチウム塩をさらに含んでもよい。リチウム塩濃度は0.1~6Mであってもよい。少なくとも1種のリチウム塩は、リチウムテトラフルオロボレート(テトラフルオロホウ酸リチウム、LiBF4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPF6)、リチウムジフルオロオキサロトボレート(LiDFOB)、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。カーボネート溶媒の(種類の)数は3であってもよい。この3種のカーボネート溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びジメチルカーボネート(DC)であってもよい。任意の個々の添加剤の量は、電解液の全質量の0.01質量パーセント~15質量パーセントであってもよい。上記非イオン性有機添加剤の少なくとも1つは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。ニトリル型添加剤の少なくとも1つは、スクシノニトリル(SCN)であってもよい。非イオン性有機添加剤の質量割合は、電解液の全質量の0.5%~5%であってもよい。ニトリル型添加剤の質量割合は、電解液の総質量の0.1%~3%であってもよい。
【0007】
一次リチウム塩を含む電気化学セル用電解液が記載される。この一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の少なくとも50%を構成してもよい。当該電解液は、溶媒混合物を含んでもよい。この溶媒混合物は、スクシノニトリル(SCN)を共溶媒として含んでもよい。この溶媒混合物は、1種以上のカーボネート型共溶媒を含んでもよい。このカーボネート型共溶媒は、当該電解液の少なくとも5質量%を構成してもよい。このカーボネート型共溶媒の少なくとも1つは、SEI形成能力を有してもよい。1つのカーボネート型共溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。1つのカーボネート型共溶媒はFECであってもよい。別のカーボネート型共溶媒はDMCであってもよい。1つのカーボネート型共溶媒はFECであってもよく、別のカーボネート型共溶媒はDMCであってもよい。一次リチウム塩は、LiDFOB、LiPF6、LiBF4、LiBOB又はLiTFSIであってもよい。当該電解液は、二次リチウム塩をさらに含んでもよい。この二次リチウム塩は、当該電解液中の全リチウム塩の50%未満を構成してもよい。この二次リチウム塩は、ホウ素含有リチウム塩であってもよい。このホウ素含有リチウム塩は、LiDFOB、LiBF4及び/又はLiBOB又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0008】
電気化学セル用電解液が記載される。この電解液は、溶媒混合物を含んでもよい。この溶媒混合物は、共溶媒DMC、共溶媒EC、及び共溶媒PCのうちの1つ、2つ、又はすべてを含んでもよい。この溶媒は、添加剤SCN及びFECの一方又は両方を含んでもよい。添加剤SCN及びFECの質量%は、それぞれ5%未満であってもよい。
【0009】
記載された電解液のいずれかと、アノードと、カソードとを含む電気化学セル。このカソードは、リチウムマンガンニッケル酸化物(LMNO)、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)、ニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、コバルト酸化物(LCO)、ニッケルコバルトアルミニウム(NCA)及び/又はリン酸鉄リチウム(LFP)を含んでもよい。上記アノードは、リチウム、炭素及び/又はケイ素を含んでもよい。このアノードは、天然黒鉛及び/又は人工黒鉛、ハードカーボン(硬質炭素)、黒鉛ケイ素混合物、ケイ素、酸化ケイ素(SiO)、ケイ素、LTO(チタン酸リチウム、リチウムチタン酸化物)及び/又は金属リチウムを含んでもよい。他のアノード及びカソードも本発明に従って可能である。
【0010】
本発明の電解液は、より高い性能、より安全かつより堅牢かつ拡張可能かつ持続可能な電池を同時に可能する可能性がある。リチウムイオンベースの電池のための本明細書に記載される電解液は、改善された温度耐性を有してもよい。この改善された温度耐性は、車両、グリッド・ストレージ及びグリッド安定化、並びに他の用途における使用のための適切な温度範囲を超えるものであってもよい。特に、当該電解液は、60℃までの、さらには60℃を超える動作温度に好適であってもよい。さらには、当該電解液は、改善された高出力性能及び/又は高電流に耐える能力を提供してもよい。当該電解液は、例えば、いくつかの電池が5C、さらにはそれを超える電流の定電流放電で動作することを可能にしてもよく、10Cのパルス電流放電を超えてもよい。対応する電池は、充放電を繰り返してもよい。本発明の電解液は、改善されたサイクル寿命を提供してもよい。例えば、充電/放電サイクルの数は、1000サイクルを超えてもよく、1500サイクルを超えることさえあってもよく、5000サイクルを超えることさえあってもよい。この電池は、高効率(2C充電/放電における95%を超えるRT効率)で動作することができる場合がある。この電池は、一般の原材料を使用してもよい。電池は、コバルト、ニッケル及び/又は希土類金属を含まなくてもよい。この電池は非毒性であってもよい。この電池は、フッ化水素(HF)等の毒性化合物を生成する可能性を有さない場合がある。この電池は、他の毒性化合物を生成する可能性を有さない場合がある。当該電池は、不燃性であってもよい。当該電池は、好ましくは4.2V±0.5V、より好ましくは4.2V±0.4V、より好ましくは4.2V±0.3V、より好ましくは4.2V±0.2V、最も好ましくは4.2V±0.1Vの最大充電電圧限界を有してもよい。この電池は、その限界の任意の組合せの間の最大充電電圧を有してもよい。当該電池は、好ましくは2.5V±0.5V、より好ましくは2.5V±0.4V、より好ましくは2.5V±0.3V、より好ましくは2.5V±0.2V、最も好ましくは2.5V±0.1Vの放電電圧限界を有してもよい。この電池は、その限界の任意の組合せの間の最小電圧を有してもよい。当該電池は、好ましくは3.8V±0.5V、より好ましくは3.8V±0.4V、より好ましくは3.8V±0.3V、より好ましくは3.8V±0.2V、最も好ましくは3.8V±0.1Vの公称動作電圧を有してもよい。開示される発明の動作電圧及びエネルギー密度性能は、現在市場のトップを走る電池セルの性能と同じレベルであってもよい。これにより、これらの開示された改善は、電池性能を犠牲にしない可能性がある。従って、記載された発明は、産業及び商業にとって有益である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
実施形態のさらなる理解を提供し、本明細書の一部を構成するために含まれる添付の図面は、様々な実施形態を示す。
【0012】
【
図1a】本発明のいくつかの実施形態に係るセル構造の概略図(単一スタック)。
【
図1b】本発明のいくつかの実施形態に係るセル構造の概略図(両面アノード及び両面カソードを有する単一スタック)。
【
図1c】本発明のいくつかの実施形態に係るセル構造の概略図(マルチスタック)。
【
図2】LMFPベースのカソード、人工黒鉛アノード、Liイオン電解液としての、EC:PC:DMC 1:1:3 1%SCN 2%FEC中の1.1M LIDFOBを有する円筒形プロトタイプ。15サイクル(化成を含む)後、動作温度は範囲(+50℃;+65℃)にあり、80サイクル後に室温まで冷却された。
【
図3】LMFPベースのカソード、人工黒鉛アノード、Liイオン電解液としての、EC:PC:DMC 1:1:3 1%SCN 2%FEC中の1M LIDFOBを有する円筒形プロトタイプ。15サイクル(化成を含む)後、動作温度は範囲(+45℃;+55℃)にあり、200サイクル後に室温まで冷却された。
【
図4】LMFPベースのカソード、人工黒鉛アノード、Liイオン電解液としての、EC:DMC 3:7 1%SCN 2%FEC中の1.1M LIDFOBを有する円筒形プロトタイプ。15サイクル(化成を含む)後、動作温度は範囲(+50℃;+65℃)にあり、100サイクル後に室温まで冷却された。
【
図5】LMFPベースのカソード、人工黒鉛アノード、Liイオン電解液としての、EC:DMC 3:7 1%SCN 2%FEC中の1M LIDFOBを有する円筒形プロトタイプ。プロトタイプは室温でサイクルにかけられた。
【
図6】市販の18650円筒形セルと、本発明に係る電解液で作製された18650円筒形セルとの性能比較。A=Samsung(サムスン) INR 18650-30Q。B=1M LDFB ECPCDMC 113 3%FEC 2%SCN。C=1M LDFB ECDMC 37 3%FEC 2%SCN。C=1M LDFB SCNDMC 37 5%FEC。D=1M LDFB SCNDMC 10%FEC。
【発明を実施するための形態】
【0013】
電気化学セル用電解液(電解質)が記載される。本発明の1つの実施形態によれば、当該電解液は、1種以上のリチウム塩を含んでもよい。本明細書中で、リチウム塩は、リチウムを含む塩を指してもよい。このリチウム塩は、一次リチウム塩及び1種以上の二次リチウム塩を含んでもよい。二次リチウム塩の使用は、驚くべきことに、電気化学セルのサイクル安定性を改善することが見出された。二次リチウム塩の使用は、驚くべきことに、電気化学セルの高温サイクル安定性を改善することが見出された。
【0014】
上記1種以上のリチウム塩の濃度は、0.1M超、より好ましくは0.2M超、より好ましくは0.3M超、より好ましくは0.4M超、最も好ましくは0.5M超であってもよい。上記1種以上のリチウム塩の濃度は、6M未満、より好ましくは5M未満、より好ましくは4M未満、より好ましくは3.5M未満、より好ましくは3M未満、より好ましくは2.75M未満、より好ましくは2.5M未満、より好ましくは2.25M未満、最も好ましくは2M未満であってもよい。上記1種以上のリチウム塩の濃度は、例えば、0.1~6M、より好ましくは0.2~5M、より好ましくは0.3~4M、より好ましくは0.4~3M、最も好ましくは0.5~2Mであってもよい。本発明の1つの実施形態では、1種以上のリチウム塩の濃度は0.6~1.9Mであってもよい。本発明の1つの実施形態では、1種以上のリチウム塩の濃度は、0.7~1.8Mであってもよい。本発明の1つの実施形態では、1種以上のリチウム塩の濃度は0.8~1.7であってもよい。本発明の1つの実施形態では、1種以上のリチウム塩の濃度は、0.9~1.6Mであってもよい。本発明の1つの実施形態では、1種以上のリチウム塩の濃度は、1~1.5Mであってもよい。本発明の1つの実施形態では、1種以上のリチウム塩の濃度は、約1.25Mであってもよい。リチウム塩の他の濃度も本発明に従って可能である。上記1種以上のリチウム塩の濃度は、本発明に従って、上限が下限以上である、記載された上限値と下限値との任意の組み合わせの間であってもよい。
【0015】
上記リチウム塩は、例えば、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)、リチウムジフルオロオキサロトボレート(LiDFOB)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミデート(LiTFSI)、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。他のリチウム塩も本発明に従って可能である。リチウム塩は、0.1M超、より好ましくは0.2M超、より好ましくは0.4M超、より好ましくは0.6M超、より好ましくは0.8M超、より好ましくは0.9M超、最も好ましくは1.0M以上の濃度で含まれてもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、1.1M超、1.2M超、1.4M超又は1.5M超であってもよい。リチウム塩は、2.5M未満、より好ましくは、2.2M未満、より好ましくは2.0M未満、より好ましくは1.9M未満、より好ましくは1.8M未満、より好ましくは1.7M未満、より好ましくは1.6M未満、より好ましくは1.5M未満、より好ましくは1.4M未満、より好ましくは1.3M未満、最も好ましくは1.2M以下の濃度で含まれてもよい。特定の実施形態では、リチウム塩の濃度は、1.1M未満、1.0M未満、0.8M未満又は0.5M未満であってもよい。上限が下限以上である、上限と下限との任意の組み合わせが本発明に従って可能である。他の濃度も本発明に従って可能である。
【0016】
本発明の1つの実施形態によれば、当該電解液は、2種以上のカーボネートの混合物を含んでもよい溶媒を含んでもよい。この2種以上のカーボネートの少なくとも1つは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、及び/又はジメチルカーボネートであってもよい。本発明の1つの実施形態によれば、当該電解液は、エチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネート及び/又はジメチルカーボネートの混合物を含んでもよい溶媒を含んでもよい。本発明の1つの実施形態によれば、当該電解液は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及び/又はスクシノニトリル及び/又はジメチルカーボネートの混合物を含んでもよい溶媒を含んでもよい。
【0017】
当該電解液は、電解液添加剤又は共溶媒のいずれかとして用いられる1種以上のニトリルも含んでもよい。本明細書中で、電解液添加剤は、その存在が5質量パーセント以下である電解液成分として定義され、本明細書中で、共溶媒は、その存在が5質量パーセントを超える電解液成分として定義される。好ましい電解液のニトリル型添加剤又はニトリル共溶媒はスクシノニトリルである。他のニトリル型添加剤又はニトリル共溶媒も本発明に従って可能である。
【0018】
当該電解液は、種々の添加剤の同時存在も含んでもよい。この添加剤の1つは、カーボネート型添加剤(カーボネート添加剤)であってもよい。添加剤の1つは、ニトリル型添加剤(ニトリル添加剤)であってもよい。添加剤の種類の例としては、カーボネート型添加剤及び/又はニトリル型添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。具体的なカーボネート型添加剤としては、限定されないが、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を挙げてもよい。具体的なニトリル型添加剤としては、限定されないが、アクリロニトリル、スクシノニトリル、プロパンニトリル、アミノプロピオニトリル、マロノニトリル、ピバロニトリル、アセトンシアノヒドリン、ブチロニトリル、テトラメチルスクシノニトリル及び/又はグルタロニトリルを挙げてもよい。他の種類のカーボネート及び/又はニトリル添加剤を含めて他の添加剤も、本発明に従って可能である。上記添加剤の少なくとも1つは、非イオン性有機添加剤を含んでもよい。第1の添加剤は、非イオン性有機添加剤を含んでもよい。第2の添加剤は、ニトリル型添加剤を含んでもよい。この非イオン性有機添加剤は、環状カーボネート系添加剤(環状カーボネート添加剤)又はジオキソランを含んでもよい。この環状カーボネート型添加剤は、1,3-環状カーボネート、クロロエチレンカーボネート及び/若しくはフルオロエチレンカーボネート(FEC)又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。上記添加剤の少なくとも1つは、ニトリル型添加剤を含んでもよい。このニトリル型添加剤の少なくとも1つは、アセトニトリル、アジポニトリル、グルタロニトリル、ピメロニトリル、マロノニトリル(MLN)及び/若しくはスクシノニトリル(SCN)又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0019】
本明細書中で、環状カーボネートは、下記のR1及びR2が独立した鎖ではなく環を形成しているカーボネートエステル又はカーボネート分子を意味する。環状カーボネートの例としては、ECが挙げられるが、これに限定されない。本発明の特定の実施形態によれば、添加剤は溶媒であってもよく、かつ/又は溶媒は添加剤であってもよい。
【化1】
【0020】
当該電解液はリチウム塩を含んでもよい。1つの実施形態では、LiDFOBがリチウム塩として使用される。LiDFOBの濃度は、0.1M超、より好ましくは0.2M超、より好ましくは0.4M超、より好ましくは0.6M超、より好ましくは0.8M超、より好ましくは0.9M超、最も好ましくは1.0M以上の濃度であってもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、1.1M超、1.2M超、1.4M超又は1.5M超であってもよい。リチウム塩は、3.0M未満、より好ましくは2.5M未満、より好ましくは2.2M未満、より好ましくは2.0M未満、より好ましくは1.9M未満、より好ましくは1.8M未満、より好ましくは1.7M未満、最も好ましくは1.5M未満の濃度で含まれてもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、1.4M未満、1.3M未満、1.2M未満、1.1M未満、又は1.0M未満であってもよい。上限及び下限の任意の組み合わせが本発明に従って可能である。他の濃度も本発明に従って可能である。例えば、上記濃度は、0.5M~2.5M、より好ましくは0.8M~2.0M、より好ましくは0.9~1.7M、より好ましくは約1.0M~約1.5M、より好ましくは約1.1M~1.3M、最も好ましくは約1.2Mの濃度であってもよい。
【0021】
1つの実施形態では、本発明は、リチウム系電池、例えばリチウム電池又はリチウムイオン電池用の電解液に関する。リチウム系電池の電解液は、LiPF6、LiDFOB、LiBF4、LiBOB、LiTFSI、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。LiPF6、LiBF4、LiDFOB、LiBOB、LiTFSI又はこれらの組み合わせの濃度は、0.1M超、より好ましくは0.2M超、より好ましくは0.4M超、より好ましくは0.6M超、より好ましくは0.8M超、より好ましくは0.9M超、最も好ましくは1.0M以上であってもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、1.1M超、1.2M超、1.4M超又は1.5M超であってもよい。LiPF6、LiDFOB、LiBF4、LiBOB、LiTFSI又はこれらの組み合わせは、3.0M未満、より好ましくは2.5M未満、より好ましくは2.2M未満、より好ましくは2.0M未満、より好ましくは1.9M未満、より好ましくは1.8M未満、より好ましくは1.7M未満、より好ましくは1.6M未満、より好ましくは1.5M未満、より好ましくは1.4M未満、より好ましくは1.3M未満、最も好ましくは1.2M以下の濃度で含まれてもよい。特定の実施形態では、LiPF6、LiDFOB、LiBF4、LiBOB、LiTFSI又はこれらの組み合わせの濃度は、1.1M未満、1.0M未満、0.8M未満又は0.5M未満であってもよい。例えば、上記濃度は、0.5M~2.0M、より好ましくは0.8M~1.6M、より好ましくは0.9~1.3M、最も好ましくは約1.0M~約1.2Mであってもよい。LiPF6、LiDFOB、LiBF4、LiBOB、LiTFSI又はこれらの組み合わせは、3.0M未満、より好ましくは、2.5M未満、より好ましくは2.2M未満、より好ましくは2.0M未満、より好ましくは1.9M未満、より好ましくは1.8M未満、より好ましくは1.7M未満、最も好ましくは1.5M未満の濃度で含まれてもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、1.4M未満、1.3M未満、1.2M未満、1.1M未満、又は1.0M未満であってもよい。上限及び下限の任意の組み合わせが、本発明に従って可能である。他の濃度も本発明に従って可能である。例えば、上記濃度は、0.5M~2.5M、より好ましくは0.8M~2.0M、より好ましくは0.9~1.7M、最も好ましくは約1.0M~約1.5Mであってもよい。上限が下限以上である、上限及び下限の任意の組み合わせが本発明に従って可能である。他の濃度も本発明に従って可能である。
【0022】
好ましい実施形態では、上記電解質塩はLiPF6を含まなくてもよい。別の好ましい実施形態では、この電解質塩は、LiDFOB、LiBF4、LiPF6、LiBOB及びLiTFSI塩のうちの2つ以上のものの組み合わせを含んでもよい。別の好ましい実施形態では、上記電解液は、LiDFOBと、LiPF6、LiBF4、LiBOB及びLiTFSIのうちの1種以上とを含んでもよい。LiDFOBは、一次リチウム塩であってもよい。LiDFOB、LiBF4、LiPF6、LiBOB及びLiTFSIは、二次リチウム塩であってもよい。
【0023】
当該電解液は、溶媒混合物を含んでもよい。この溶媒混合物は、少なくとも2種のカーボネート型溶媒を含んでもよい。このカーボネート系溶媒(カーボネート溶媒)の少なくとも1つは、エチレンカーボネート(EC)であってもよい。カーボネート溶媒の少なくとも1つは、ジメチルカーボネート(DMC)であってもよい。カーボネート溶媒の少なくとも1つは、プロピレンカーボネート(PC)であってもよい。本発明の1つの実施形態に係るリチウム系電池の電解液は、1種以上のカーボネート及び1種以上のニトリルからなる溶媒を含んでもよい。この1種以上のカーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及び/又はジメチルカーボネート(DMC)であってもよい。上記1種以上のニトリルはスクシノニトリルであってもよい。上記リチウム系電池の電解液は、1種以上の添加剤を含んでもよい。EC及びDMCが当該電解液中に存在する場合、EC対DMCの質量比は、約1:1~3:7であってもよい。EC、PC及びDMCが当該電解液中に存在する場合、溶媒は、概して、約1:1:1~約1:10:10のEC対PC対DMCの質量比を有してもよい。
【0024】
驚くべきことに、複数のカーボネート型溶媒を含む混合物が相乗効果を示すことが見出された。例えば、EC:DMC溶媒において、DMCは低い粘度を有するが、塩溶解性は乏しい。ECは高い粘度を有するが、塩溶解性は優れている。EC:DMCのブレンドは、粘度が低く、塩溶解性に優れる。カーボネート型溶媒の混合物を含む電解液のさらなる利点としては、動作温度の拡張及びより高いイオン伝導性が挙げられる。
【0025】
本発明に係る電解液の中には、任意の数の種類のカーボネート溶媒が存在してもよい。1種以上の副(マイナー)カーボネート溶媒及び1種の主(メジャー)カーボネート溶媒が存在してもよい。1種以上の副カーボネート溶媒の質量分率は、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.45未満、最も好ましくは0.4以下であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、1種以上の副カーボネート溶媒の質量分率は、0.35未満、0.3未満、0.25未満、0.20未満、0.15未満、又は0.1未満であってもよい。主カーボネート溶媒の質量分率は、好ましくは0.5超、より好ましくは0.55超、より好ましくは0.6以上であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、1種以上の副カーボネート溶媒の質量分率は、0.65超、0.7超、0.75未満、0.80超、0.85超、又は0.9超であってもよい。
【0026】
1つの実施形態では、当該電解液は、少なくとも2種のカーボネート型溶媒を含む溶媒混合物を含む。特定の実施形態では、溶媒混合物中の副溶媒対主溶媒の質量比は、約1:9、又は約1.5:8.5、又は約2:8、又は約2.5:7.5、又は約3:7、又は約3.5:6.5、又は約4:6、又は約4.5:5.5、又は約1:1であってもよい。特定の実施形態では、溶媒混合物中の副溶媒対主溶媒の質量比は、約1:9~1:1、又は約2:8~1:1、又は約3:7~1:1、又は約4:6~1:1であってもよい。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、当該電解液中に2種のカーボネート溶媒「x」及び「y」が存在してもよく、この2種のカーボネート溶媒の質量割合はそれぞれ「ux」及び「uy」である。uyは1-uxであってもよい。xは、副カーボネート溶媒であってもよく、yは、主カーボネート溶媒であってもよい。溶媒中の質量割合ux、すなわち副カーボネート溶媒xのuは、下限値aと上限値bとの間にあってもよく、又はいずれかに等しくてもよい。aは、好ましくは0.01超、より好ましくは0.02超、より好ましくは0.04超、より好ましくは0.07超、より好ましくは0.11超、より好ましくは0.16超、より好ましくは0.20超、より好ましくは0.23超であってもよい。そしてより好ましくは0.25超、より好ましくは0.26超、より好ましくは0.27超、より好ましくは0.28超、より好ましくは0.29超、最も好ましくは0.3であってもよい。bは、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.45未満、より好ましくは0.41未満、より好ましくは0.38未満、より好ましくは0.36未満、より好ましくは0.35未満、より好ましくは0.34未満、より好ましくは0.33未満、より好ましくは0.32超、より好ましくは0.31未満、最も好ましくは0.3であってもよい。本発明の1つの実施形態では、副カーボネートxは、例えば、エチレンカーボネート(EC)及び/又はプロピレンカーボネート(PC)又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよく、主カーボネートyは、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)を含んでもよい。他の主カーボネート及び副カーボネートも本発明に従って可能である。主カーボネート及び副カーボネートの他の質量比も本発明に従って可能である。
【0028】
本発明の1つの実施形態によれば、当該電解液中に3種のカーボネート溶媒「X」、「Y」及び「Z」が存在してもよい。この3種のカーボネート溶媒間の質量割合は、それぞれ「Ux」、「Uy」及び「Uz」であってもよく、「Ux」、「Uy」及び「Uz」の合計は1である。X及びYは、副カーボネート溶媒であってもよい。Zは、主カーボネート溶媒であってもよい。副カーボネート溶媒Xの質量割合Uxは、下限値Axと上限値Bxとの間であってもよく、又はいずれかに等しくてもよい。副カーボネート溶媒Yの質量割合Vは、下限値AYと上限値BYとの間であってもよく、又はいずれかに等しくてもよい。主カーボネート溶媒Zの質量割合Uzは、下限値Azと上限値Bzとの間であってもよく、又はいずれかに等しくてもよい。Ax及び/又はAyは、好ましくは0.01超、より好ましくは0.02超、より好ましくは0.04超、より好ましくは0.07超、より好ましくは0.11超、より好ましくは0.14超、より好ましくは0.16超、より好ましくは0.17超、より好ましくは0.18超、より好ましくは0.19超、最も好ましくは0.2であってもよい。Bx及び/又はByは、好ましくは0.33未満、より好ましくは0.3未満、より好ましくは0.28未満、より好ましくは0.27未満、より好ましくは0.26未満、より好ましくは0.25未満、より好ましくは0.24未満、より好ましくは0.23未満、より好ましくは0.22未満、より好ましくは0.21未満、最も好ましくは0.2であってもよい。Ax、Ay、Bx及びByは、すべて異なる値を有してもよい。Axは、Bx及び/又はByよりも大きくても、小さくても、等しくてもよい。Ayは、Bx及び/又はByよりも大きくても、小さくても、等しくてもよい。Azは、好ましくは0.37超、より好ましくは0.40超、より好ましくは0.42超、より好ましくは0.44超、より好ましくは0.45超、より好ましくは0.46超、より好ましくは0.47超、より好ましくは0.48超、より好ましくは0.49超、より好ましくは0.50超、より好ましくは0.51超、より好ましくは0.52超、より好ましくは0.53超、より好ましくは0.54超、より好ましくは0.55超、より好ましくは0.56超、より好ましくは0.57超、より好ましくは0.58超、より好ましくは0.59超、最も好ましくは約0.6であってもよい。Bzは、好ましくは0.98未満、より好ましくは0.95未満、より好ましくは0.90未満、より好ましくは0.85未満、より好ましくは0.80未満、より好ましくは0.75未満、より好ましくは0.70未満、より好ましくは0.68未満、より好ましくは0.66未満、より好ましくは0.65未満、より好ましくは0.64未満、より好ましくは0.63未満、より好ましくは0.62未満、より好ましくは0.61未満、最も好ましくは約0.60であってもよい。
【0029】
本発明の1つの実施形態によれば、副カーボネート溶媒Xは、エチレンカーボネート(EC)であってもよい。本発明の1つの実施形態によれば、副カーボネート溶媒Yは、プロピレンカーボネート(PC)であってもよい。本発明の1つの実施形態によれば、主カーボネート溶媒Zは、ジメチルカーボネートであってもよい。1つの実施形態によれば、当該電解液中のカーボネート溶媒X、Y及びZの質量比は、それぞれの順序でUx:Uy:Uzであり、Xはエチレンカーボネート(EC)質量割合であり、Yはプロピレンカーボネート(PC)質量割合であり、Zはジメチルカーボネート(DC)質量割合である。Ux、Uy、及びUzは、任意の正の数を取ってもよい。
【0030】
当該電解液は、1種、2種又はそれ以上の電解液添加剤を含んでもよい。任意の個々の電解液添加剤の質量パーセントは、全電解液の0.1質量パーセント超、より好ましくは0.2質量パーセント超、より好ましくは0.4質量パーセント超、より好ましくは0.7質量パーセント超、より好ましくは1.1質量パーセント超、より好ましくは1.4質量パーセント超、より好ましくは1.6質量パーセント超、より好ましくは1.7質量パーセント超、より好ましくは1.8質量パーセント超、より好ましくは1.9質量パーセント超、最も好ましくは2質量パーセント超であってもよい。任意の個々の電解液添加剤の量は、全電解液の5.0質量パーセント未満、より好ましくは4.0質量パーセント未満、より好ましくは3.4質量パーセント未満、より好ましくは3.0質量パーセント未満、より好ましくは2.8質量パーセント未満、より好ましくは2.6質量パーセント未満、より好ましくは2.4質量パーセント未満、より好ましくは2.3質量パーセント未満、より好ましくは、2.2質量パーセント未満、より好ましくは2.1質量パーセント未満、最も好ましくは2質量%未満であってもよい。任意の個々の電解液添加剤の量は、上記下限質量パーセントのいずれかと上記上限質量パーセントのいずれかとの間であってもよい。
【0031】
第1の電解液添加剤は、非イオン性有機添加剤であってもよい。第2の電解液添加剤は、ニトリル型添加剤であってもよい。これらの電解液添加剤は、電解液の質量パーセントとして0.01%超、より好ましくは0.02%超、より好ましくは0.04%超、より好ましくは0.06%超、より好ましくは0.08%超、より好ましくは0.09%超、最も好ましくは0.1%以上の量であってもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、0.11%超、0.12%超、0.14%超、又は0.15%超であってもよい。この電解液添加剤は、電解液の質量パーセントとして15%未満、より好ましくは12%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは9%未満、より好ましくは8%未満、より好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満、最も好ましくは5%未満の量であってもよい。特定の実施形態では、電解液添加剤の濃度は、4%未満、3%未満、2%M未満、又は1%未満であってもよい。上限及び下限の任意の組み合わせが本発明に従って可能である。他の質量パーセントも本発明に従って可能である。例えば、上記濃度は0.05%~10%、より好ましくは0.08%~8%M、より好ましくは0.09%~6%、最も好ましくは約0.1%~約5%であってもよい。
【0032】
1つの実施形態では、上記電解液添加剤の1つ以上は、1種以上の非イオン性有機添加剤であってもよい。1つの実施形態では、非イオン性添加剤はフルオロエチレンカーボネートであってもよい。他の非イオン性添加剤も、本発明に従って可能である。この1種以上の非イオン性添加剤の質量パーセントは、電解液の総質量の0.05%超、より好ましくは0.01%超、より好ましくは0.02%超、より好ましくは0.04%超、より好ましくは0.08%超、より好ましくは0.1%超、より好ましくは0.15%超、より好ましくは0.2%超、より好ましくは0.3%超、より好ましくは0.5%超、より好ましくは0.6%超、より好ましくは0.7%超、より好ましくは電解液の総質量の1%超、より好ましくは1.2%超、より好ましくは1.3%超、より好ましくは1.5%超、より好ましくは1.7%超、より好ましくは1.8%超、最も好ましくは1.9%超、最も好ましくは2%であってもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、2%超、2.5%超、3%超、又は5%超であってもよい。上記添加剤は、電解液の質量パーセントとして、電解液の総質量の10%未満、より好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは4.5%未満、より好ましくは4%未満、より好ましくは3.6%未満、より好ましくは3.3%未満、より好ましくは3%未満、より好ましくは2.7%未満、より好ましくは2.5%未満、より好ましくは2.3%未満、より好ましくは2.2%未満、最も好ましくは2.1%未満、最も好ましくは2%の量であってもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、2%未満、1.5%未満、1%未満、又は0.5%未満であってもよい。上限及び下限の任意の組み合わせが本発明に従って可能である。他の質量パーセントの非有機添加剤も本発明に従って可能である。例えば、上記濃度は0.05%~10%、より好ましくは0.1%~5%、より好ましくは0.5%~4%、より好ましくは約1%~約3%、より好ましくは約1.5%~約2.5%、より好ましくは約1.8%~約2.2%~約2.5%、より好ましくは約1.9%~約2.1%、最も好ましくは約2%であってもよい。有機添加剤の質量割合は、上記下限質量パーセントのいずれかと上記上限質量パーセントのいずれかとの間であってもよく、上限は下限以上である。
【0033】
1つの実施形態では、添加剤は、ニトリル型添加剤であってもよい。このニトリル型添加剤は、第2の電解液添加剤であってもよい。このニトリル型添加剤は、スクシノニトリル(SCN)であってもよい。電解液の総質量に対する第2の電解液添加剤の質量パーセントは、0.05%超、より好ましくは0.01%超、より好ましくは0.01%超であってもよい。0.02%超、より好ましくは0.04%超、より好ましくは0.08%超、より好ましくは0.15%超、より好ましくは0.3%超、より好ましくは0.6%超、より好ましくは1.2%超、より好ましくは1.5%超、より好ましくは1.7%超、より好ましくは1.8%超、最も好ましくは1.9%超であってもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、2%超、2.5%超、3%超、又は5%超であってもよい。この第2の添加剤は、電解液の質量パーセントとして10%未満、より好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満、より好ましくは2.5%未満、より好ましくは2.3%未満、より好ましくは2.2%未満、最も好ましくは2.1%未満の量であってもよい。特定の実施形態では、上記濃度は、2%未満、1.5%未満、1%未満、又は0.5%未満であってもよい。上限及び下限の任意の組み合わせが本発明に従って可能である。他の質量パーセントも本発明に従って可能である。例えば、上記濃度は、0.05%~10%、より好ましくは0.1%~5%、より好ましくは0.5%~4%、より好ましくは約1%~約3%、より好ましくは約1.5%~約2.5%、より好ましくは約1.8%~約2.2%~約2.5%、より好ましくは約1.9%~約2.1%、最も好ましくは約2%であってもよい。
【0034】
上記ニトリル型添加剤はスクシノニトリルであってもよい。ニトリル型添加剤の質量割合は、電解液の総質量の0.1%超、より好ましくは0.2%超、より好ましくは0.3%超、より好ましくは0.4%超、より好ましくは0.5%超、より好ましくは0.6%超、より好ましくは最も好ましくは1%であってもよい。有機添加剤の質量割合は、電解液の総質量の3%未満、より好ましくは2.5%未満、より好ましくは2.1%未満、より好ましくは1.8%未満、より好ましくは1.6%未満、より好ましくは1.5%未満、より好ましくは1.4%未満、より好ましくは1.3%未満、より好ましくは1.2%未満、より好ましくは1.1%未満、最も好ましくは1%であってもよい。ニトリル型添加剤の質量割合は、上記下限質量パーセントのいずれかと上記上限質量パーセントのいずれかとの間であってもよい。
【0035】
驚くべきことに、スクシノニトリル(SCN)が共溶媒として使用されてもよいことが見出された。SCNは、1種以上のカーボネート系共溶媒とともに使用されてもよい。この1種以上のカーボネート系共溶媒は、固体電解質界面(SEI)を形成する能力を有してもよい。好ましくは、このカーボネート系共溶媒は、DMCとFECとの混合物を含んでもよい。FECは、SEIを形成する能力を有してもよい。好ましくは、スクシノニトリル共溶媒は、当該電解液中に好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%の割合で存在する。好ましくは、FEC共溶媒は、当該電解液中に少なくとも1%、より好ましくは少なくとも4%、より好ましくは少なくとも6%、より好ましくは少なくとも8%、最も好ましくは少なくとも10%の割合で存在する。この溶媒混合物は、好ましくはLiDFOB含有電解質塩とともに使用される。実施例に示されるように、そのようなLiイオン電解液は、サイクル安定性の点で現在の最新技術水準の電解液よりも性能が優れており、これはそのLiイオン電解液の産業上の有用性を証明する。
【0036】
さらに驚くべきことに、スクシノニトリル及びFECは、電解液添加剤としてともに首尾よく使用される可能性があることが見出された。この添加剤は、適切に選択された溶媒混合物に添加されてもよい。1つの実施形態では、この溶媒混合物は、EC、PC及びDMC溶媒を含む。驚くべきことに、この組み合わせは電解液のイオン伝導性を改善することが見出された。驚くべきことに、EC、PC及びDMCの同時存在は、スクシノニトリル及びFEC添加剤の使用と相乗的であることも見出された。得られる電解液は、サイクル安定性の点で、現行の技術水準の電解液よりも性能が優れていることが分かっている。サイクル安定性は、産業上の有用性の重要な側面である。この溶媒混合物は、好ましくはLiDFOB含有電解質塩とともに使用されるが、他のリチウム塩も本発明に従って可能である。例示的な実施形態のサイクル安定性は実施例に記載される。
【0037】
上記の発見は、単一の種類の電解質塩、すなわちLiDFOBの使用によって調べられた。この際、LiDFOBは一次リチウム塩であった。他の一次リチウム塩も本発明に従って可能である。LiDFOB、LiBF4、LiPF6、LiBOB及びLiTFSIは、本発明に係る一次リチウム塩であってもよい。驚くべきことに、本明細書では二次リチウム塩と呼ばれる他のリチウム塩を当該電解液に添加することにより、電解液の性能、従って電気化学セル全体の性能が改善される可能性があることも見出された。二次リチウム塩は、リチウムを含有する任意の塩を含んでもよい。二次リチウム塩の例としては、LiDFOB、LiBF4、LiPF6、LiBOB及びLiTFSIが挙げられるが、これらに限定されない。他のリチウム含有塩も本発明に従って可能である。好ましい二次リチウム塩はホウ素含有リチウム塩である。ホウ素含有リチウム塩の例としては、LiDFOB、LiBF4及びLiBOBが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の1つの実施形態では、当該電解液は、一次リチウム塩及びホウ素含有二次リチウム塩を含む。
【0038】
本明細書中で、一次リチウム塩は、当該電解液中のリチウム塩の50%以上、より好ましくは65%超、より好ましくは75%超、より好ましくは80%超、より好ましくは85%超、より好ましくは87%超、最も好ましくは電解液中のリチウム塩の89%超を較正してもよいリチウム塩を意味する。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の約90%を構成してもよい。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の91%超を構成してもよい。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の92%超を構成してもよい。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の95%超を構成してもよい。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の98%超を構成してもよい。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の100%を構成してもよい。
【0039】
本明細書中で、二次リチウム塩は、当該電解液中のリチウム塩の50%未満、より好ましくは35%未満、より好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、より好ましくは13%未満、最も好ましくは電解液中のリチウム塩の11%未満を構成してもよいリチウム塩を意味する。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の約10%を構成してもよい。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の9%未満を構成してもよい。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の5%未満を構成してもよい。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の2%未満を構成してもよい。特定の実施形態では、一次リチウム塩は、電解液中のリチウム塩の1%未満を構成してもよい。1種以上の二次リチウム塩が本発明に従って存在してもよい。
【0040】
本発明の好ましい1つの実施形態では、LiBF4及び/又はLiBOB塩は二次リチウム塩であってもよく、LiDFOBは一次リチウム塩であってもよい。この組み合わせは、電解液性能をさらに改善することが見出されている。好ましくは、LiDFOBは、電解質塩の少なくとも70質量%を構成し、より好ましくは、LiDFOBは、電解質塩の少なくとも80質量%を構成し、最も好ましくは、LiDFOBは、電解質塩の少なくとも90質量%を構成する。本明細書に開示される塩混合物は、純粋なLiDFOB電解質塩の使用と比較して、電池サイクル安定性を改善することが見出された。この電解質塩は、上記で開示された電解液溶媒と組み合わせて使用されてもよい。
【0041】
特定の実施形態では、LiPF6電解質塩の不存在により、高い動作温度での安定なサイクル性能が改善されることが見出されている。
【0042】
本発明に係る電気化学セルは、1種以上の本発明に係る電解液を含んでもよい。当該電気化学セルは、リチウムベースの電気化学セルであってもよい。リチウムベースの電気化学セルの例としては、リチウム電池及び/又はリチウムイオン電池等が挙げられる。電気化学セルは、電気化学セルスタックを含んでもよい。本発明に係る電気化学セルスタックを
図1に示す。このセルスタックは、正極1を負極2から分離してもよいセパレータ3を含んでもよい。セパレータ3は、セパレータを形成するために一般的に使用されている任意のフィルム状材料を含んでもよい。セパレータ3は、非水電解液二次電池の形成に一般的に用いられているフィルム状の材料を含んでよい。セパレータ3は、本明細書に提示されるタイプのセパレータを形成するために一般的に使用されている任意のフィルム状材料を含んでもよい。好適なセパレータの例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンから作製される微多孔性ポリマーフィルム、又はこれら2つの層状組合せが挙げられるが、これらに限定されない。セパレータ、例えば微多孔性セパレータは、ポリオレフィン又はセルロース材料から作製されてもよい。セパレータは、表面改質材料でコーティングされてもよい。この表面改質材料は保護材料であってもよい。表面改質材料は、表面エネルギー調整材料であってもよい。セパレータコーティング材料の例としては、酸化物及び窒化物が挙げられるが、これらに限定されない。酸化物の例としては、酸化アルミニウムが挙げられる。他のセパレータ材料及び表面改質材料も、本発明に従って可能である。
【0043】
電解液(電解質)は、固体、液体、ゲル、又は別の物理的状態であってもよい。電解液は、本明細書に記載されるタイプのものであってもよい。電池セルスタック10の電解液8として固体電解質8又はゲル電解液6が使用される場合には、セパレータ3は、必ずしも設けられる必要はない。セパレータ3の厚さは、本発明によれば、任意の厚さであってもよい。
【0044】
セパレータは、例えば、0.5μm~1000μm、より好ましくは1μm~500μm、より好ましくは2~250μm、より好ましくは4μm~125μm、より好ましくは8μm~60μm、最も好ましくは9~30μm、最も好ましくは約25μmのいずれかであってもよいが、この範囲の外のセパレータ厚さも本発明に従って可能である。
【0045】
正極材料4は、典型的には、カソード活物質を1種以上のバインダ及び/又は1種以上の導電性添加剤と混合することによって製造される。活物質の重量%は、0%超100%未満の任意の値、より好ましくは50%~98%、より好ましくは75%~96%、より好ましくは87%~90%、最も好ましくは約89重量%であってもよい。導電剤の重量%は、0%~100%のいずれか、より好ましくは1%~50%、より好ましくは2%~25%、より好ましくは4%~13%、最も好ましくは6%~9%、最も好ましくは約7重量%であってもよい。導電性添加剤の例としては、アセチレンブラックが挙げられるが、これに限定されない。バインダの重量%は、0%~100%の任意の値、より好ましくは0.5%~50%、より好ましくは1%~25%、より好ましくは2%~12%、より好ましくは3%~6%、最も好ましくは約4重量%であってもよい。本発明に係るバインダの例としては、PVDFが挙げられるが、これに限定されない。
【0046】
カソード材料混合物は、例えば、溶媒中に分散されてもよい。本発明に係る溶媒の例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が挙げられるが、これに限定されない。この混合物は、例えば、スラリー、ペースト、溶液又は懸濁液にされてもよい。次いで、この混合物は、カソード集電体5の片面又は両面に塗布されて、カソード集電体の片面にカソード材料4、又は両面にカソード材料4及び4’を有するカソードが作製されてもよい。カソード集電体は、任意の適切な材料から作製されてもよい。カソード集電体5は、導電性材料から作製されてもよい。この導電性材料は、金属又は合金を含んでもよい。この金属又は合金はアルミニウムを含んでもよい。カソード集電体5はアルミニウムであってもよい。カソード集電体は、メッシュ状の若しくは中実の若しくは穿孔された金属箔又は金属合金箔であってもよい。この金属箔はアルミニウム箔であってもよい。他の金属及び金属箔又は金属合金箔も、本発明に従って可能である。カソード集電体は、本発明に従って任意の厚さを有してもよい。好ましくは、厚さは、1μm~500μm、より好ましくは2μm~250μm、より好ましくは4μm~125μm、より好ましくは8μm~62μm、より好ましくは10μm~31μm、より好ましくは12μm~20μm、最も好ましくは約15μmであってもよい。
【0047】
上記混合物は、任意の適切な温度で乾燥されてもよい。好ましくは、混合物乾燥温度は、50~200℃、より好ましくは100~150℃であってもよい。次いで、乾燥した正極1は圧縮されてもよい。この圧縮は、例えば、プレス又はカレンダーで行われてもよい。カレンダーは、例えば、ロールプレスであってもよい。圧縮は、圧縮された正極1を得るために使用されてもよい。
【0048】
負極材料6は、当該技術分野で公知の任意の手段によって調製されてもよい。好ましくは、この材料は、アノード活物質を1種以上の導電性材料及び/又は1種以上のバインダと混合することによって調製されてもよい。アノード活物質の重量%は、0%超100%まで、より好ましくは50%~98%、より好ましくは75%~97%、より好ましくは75%~95%、より好ましくは87%~94%、より好ましくは91%~93%、最も好ましくは約92重量%であることができる。アノード活物質は、黒鉛が挙げられるがこれに限定されない任意の適切な材料であってもよい。導電性材料の重量%は、100%未満の値、好ましくは0.1%~50%、より好ましくは0.2%~25%、より好ましくは0.4%~12%、より好ましくは0.8%~6%、より好ましくは1.5%~5%、より好ましくは2%~4%、最も好ましくは約3重量%であってもよい。上記導電性材料は、例えば、炭素を含んでもよい。炭素含有導電性材料の例としては、アセチレンブラックが挙げられるが、これに限定されない。バインダの重量%は、100%未満の値、好ましくは0.1%~50%、より好ましくは0.2%~25%、より好ましくは0.4%~12%、より好ましくは0.8%~10%、より好ましくは1.6%~8%、より好ましくは3.2%~7%、最も好ましくは4%~6%、最も好ましくは約5重量%であってもよい。バインダの例としては、CMC+SBRが挙げられるが、これに限定されない。負極2は、正極1について上述したプロセスと同様のプロセスでこの混合物から調製されてもよい。次いで、この混合物はアノード集電体7の片面又は両面に塗布されて、アノード集電体の片面にアノード材料6、又は両面にアノード材料6及び6’を有するアノードが作製されてもよい。
【0049】
アノード集電体7は、任意の適切な材料から作製されてもよい。アノード集電体7は、導電性材料から作製されてもよい。導電性材料は、金属又は合金を含んでもよい。この金属又は合金は銅を含んでもよい。アノード集電体5は、実質的に純粋な銅であってもよい。カソード集電体は、メッシュ状の若しくは中実の若しくは穿孔された金属箔又は金属合金箔であってもよい。金属箔は銅箔であってもよい。アノード集電体は、本発明に従って任意の厚さを有してもよい。好ましくは、厚さは、1μm~500μm、より好ましくは2μm~200μm、より好ましくは4μm~100μm、より好ましくは8μm~50μm、より好ましくは9μm~25μm、より好ましくは10μm~15μm、最も好ましくは約12μmであってもよい。
【0050】
セパレータ3は、正極1と負極2とを分離してもよい。セパレータ3は微多孔性ポリマーフィルムであってもよい。このフィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はその2つの層状組合せから作製されてもよい。ポリオレフィン又はセルロース材料で作製された微多孔性セパレータも、特定の場合において、使用することができる。他のセパレータ材料も本発明に従って可能である。電池セルスタック10の電解液8として固体電解質8又はゲル電解液6が使用される場合には、セパレータ3は、必ずしも設けられる必要はない。セパレータ3の厚さは、好ましくは9~25μmであるが、この範囲の外のセパレータ厚さも本発明に従って可能である。
【0051】
負極2と正極1とセパレータ3とは、積層され渦巻き状に巻回されて、渦巻き型の「ゼリーロール」素子が製造されてもよい。好ましくは、このゼリーロールは、長方形の形状を有してもよい。1つ以上の正極リード通電タブが正極集電体に取り付けられ、次いで電池上部に溶接(溶着)されてもよい。通気口も、例えば、電池の上部に利用可能であってもよい。負極リードは、任意の適切な材料から作製されてもよい。負極リード材料は導電性であってもよい。この導電性材料は、金属又は合金であってもよい。この金属又は合金はニッケルを含んでもよい。上記金属はニッケル金属であってもよい。「ゼリーロール」は、電池缶に挿入されてもよい。負極リードは、負極集電体を電池缶の底部に接続してもよい。電解液6は、任意の手段によって充填されてもよい。この充填は真空充填であってもよい。電池セルは封止されてもよい。この封止は、任意の手段によって行われてもよい。この封止は、絶縁シールガスケットによってもよい。安全性を高めるために、安全弁、電流遮断装置、及びPTC装置も電池に存在してもよい。
【実施例】
【0052】
これより、様々な実施形態を詳細に参照する。
【0053】
以下の説明は、当業者が本開示に基づいて上記実施形態を利用することができるような詳細でいくつかの実施形態を開示する。実施形態の工程又は特徴の多くは、本明細書に基づいて当業者に明白となるので、実施形態のすべての工程又は特徴が詳細に論じられるわけではない。
【0054】
本発明に係る様々なLiイオン電解液の評価のために、外径18mm及び高さ65mmを有する18650フォーマットの円筒形プロトタイプリチウムイオン二次電池セルを組み立てて試験した。単位電池セルスタック10は
図1に記載されている。セパレータ3は、ポリプロピレン、ポリエチレンから作製した微多孔性ポリマーフィルム、又はその2つの層状組合せであった。実施例において、セパレータ3の厚さは、典型的には9~25μmであるが、この範囲の外のセパレータ厚さも本発明に従って可能である。
【0055】
実施例において、正極材料4は、典型的には、約89重量%のカソード材料を約7重量%の導電剤(例えば、アセチレンブラック)及び約4重量%のバインダ(例えば、PVDF)とともに混合することによって製造した。スラリーを調製するために、この混合物を溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP))に分散させた。次いで、このスラリーを、例えば金属箔であってもよいアルミニウム集電体5の片面又は両面に塗布した。この箔は、典型的には約15μmの厚さを有する。このスラリーは、約100~150℃で乾燥されてもよい。次いで、乾燥した正極1をロールプレスでカレンダー加工し、圧縮正極1を得た。負極材料6は、典型的には、約92重量%の負極活物質としての黒鉛、約3重量%の導電性炭素(例えば、アセチレンブラック)、及び約5重量%のバインダ(CMC+SBR)を混合することによって調製した。次いで、典型的には10~15μmの厚さの銅集電体箔7を使用したことを除いて、正極1について上述したプロセスと同様のプロセスで、この混合物から負極2を調製した。負極2及び正極1と、厚さ約25μmの微細孔を有するポリマーフィルム(例えばポリエチレン)から形成したセパレータ3とを積層し、渦巻き状に巻回して渦巻き型電極素子を製造した。好ましくは、このロールは長方形の形状を有する。正極リード通電タブを正極集電体に取り付け、次いで電池上部に溶接した。ニッケル金属製の負極リードは負極集電体を電池缶の底に接続した。螺旋状に巻回した「ゼリーロール」を有する電池缶に電解液を充填し、次いでこの電池セルを絶縁封止ガスケットによって封止した。
【0056】
実施例1)EC:PC:DMC 1:1:3 1%SCN 2%FEC中の1.1M LIDFOB
図2は、LMFPベースのカソードと、人工黒鉛アノードと、EC:PC:DMC 1:1:3 1%SCN 2%FEC中の1.1M LIDFOBの組成を有するLiイオン電解液とを有する円筒形プロトタイプ18650セルの結果を示す。15サイクル(化成を含む)後、動作温度は範囲(+50℃;+65℃)にあった。80サイクル後に、セルを室温まで冷却した。
【0057】
実施例2)EC:PC:DMC 1:1:3 1%SCN 2%FEC中の1M LIDFOB
図3は、LMFPベースのカソードと、人工黒鉛アノードと、EC:PC:DMC 1:1:3 1%SCN 2%FEC中の1M LIDFOBの組成を有するLiイオン電解液とを有する円筒形プロトタイプ18650セルの結果を示す。15サイクル(化成を含む)後、動作温度は範囲(+45℃;+55℃)にあった。200サイクル後に、セルを室温まで冷却した。
【0058】
実施例3)EC:DMC 3:7 1%SCN 2%FEC中の1.1M LIDFOB
図4は、LMFPベースのカソードと、人工黒鉛アノードと、EC:DMC 3:7 1%SCN 2%FEC中の1.1M LIDFOBの組成を有するLiイオン電解液とを有する円筒形プロトタイプ18650セルの結果を示す。15サイクル(化成を含む)後、動作温度は範囲(+50℃;+65℃)にあった。100サイクル後に、セルを室温まで冷却した。
【0059】
実施例4)EC:DMC 3:7 1%SCN 2%FEC中の1M LIDFOB
図5は、LMFPベースのカソードと、人工黒鉛アノードと、EC:DMC 3:7 1%SCN 2%FEC中の1M LIDFOBの組成を有するLiイオン電解液とを有する円筒形プロトタイプ18650セルの結果を示す。プロトタイプは室温でサイクルしていた。
【0060】
上述の実施例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理の例示であるが、実施の形態、使用法及び詳細における多数の改変が、発明的才能を行使することなく、かつ本発明の原理及び概念から逸脱しない範囲でなされうることが当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて、限定されることを意図されていない。
【0061】
図6は、NMCベースのカソードと、人工黒鉛アノードと、異なる電解液組成を有するLiイオン電解液とを有する円筒形プロトタイプ18650セルの室温での結果を示す。
【0062】
当業者には、技術の進歩とともに、基本的なアイデアが様々な方法で実行されてもよいことが明らかである。従って、上記実施形態は、上記の実施例に限定されない。代わりに、それらは請求項の範囲内で変わってもよい。
【0063】
本明細書において先に記載された実施形態は、互いに任意の組み合わせで使用されてもよい。上記実施形態のうちのいくつかは、さらなる実施形態を形成するようにともに組み合わされてもよい。本明細書に開示される電解液又は電気化学セルは、本明細書において先に記載された実施形態のうちの少なくとも1つを含んでもよい。上記の利益及び利点は、1つの実施形態に関連してもよく、又はいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解されよう。上記実施形態は、記載された課題のいずれか若しくはすべてを解決するもの、又は記載された利益及び利点のいずれか若しくはすべてを有するものに限定されない。「ある(an)」項目への言及は、これらの項目の1つ以上を指すことがさらに理解されるであろう。用語「comprising(含む)」は、本明細書において、その後に続く特徴又は行為を含み、1つ以上の追加の特徴又は行為の存在を排除しないことを意味するために使用される。
【国際調査報告】