(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】インラインスロット付き導波路アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/10 20060101AFI20230712BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
H01Q13/10
G01S7/03 230
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579847
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2021065803
(87)【国際公開番号】W WO2021259674
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515096169
【氏名又は名称】ギャップウェーブス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ユリウス、ペッテション
(72)【発明者】
【氏名】アボルファズル、ハダディ
(72)【発明者】
【氏名】アッバス、ボソーグ
【テーマコード(参考)】
5J045
5J070
【Fターム(参考)】
5J045AA05
5J045AA26
5J045AB06
5J045DA04
5J045EA02
5J045FA02
5J045HA01
5J045JA03
5J045LA01
5J045MA04
5J045MA06
5J045NA04
5J045NA06
5J045NA07
5J070AB24
5J070AD08
5J070AF03
5J070AK08
(57)【要約】
積層構造を有するアンテナ構成(100)。アンテナ構成は、表面(113)を有する放射層(110)を備える。表面(113)は表面境界(115)によって区切られる。それぞれ第1スロット軸(D3)及び第2スロット軸(D4)に沿って伸びる第1(111)及び第2スロット(112)が表面上に配置されている。アンテナ構成は、放射層(110)に面する分配層 (120)も備える。分配層(120)は無線周波数信号を第1(111)及び第2スロット(112)に分配するように配置される。分配層(120)は、分配層(120)と放射層(110)との中間に第1リッジ導波路を形成するように配置される分配層フィード(122)及びリッジ(121)を備える。リッジ(121)は、湾曲区間(123)を介して第2区間(125)に接続 される第1区間(124)を備える。第1区間(124)は第1リッジ軸(D1)に沿って伸び、第2区間(125)は第1リッジ軸(D1)とは異なる第2リッジ区間(D2)に沿って伸びる。第1スロット(111)は、第1スロットが第1リッジ軸(D1)から第2リッジ軸(D2)に向かう方向にオフセット(A1)されるように第1区間(124)に面して配置される。第2スロット(112)は、第2スロットが第2リッジ軸(D2)から第1リッジ軸(D1)に向かう方向にオフセット(A2)されるように第2区間(125)に面して配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造を有するアンテナ構成(100)であって、
表面(113)を有する放射層(110)であって、前記表面(113)は表面境界(115)によって区切られ、それぞれ第1スロット軸(D3)及び第2スロット軸(D4)に沿って伸びる第1(111)及び第2スロット(112)が表面上に配置されている、放射層(110)、及び
前記放射層(110)に面する分配層(120)であって、前記分配層(120)は無線周波数信号を前記第1(111)及び第2スロット(112)に分配するように配置され、前記分配層(120)は、前記分配層(120)と前記放射層(110)との中間に第1リッジ導波路を形成するように配置される分配層フィード(122)及びリッジ(121)を備える、分配層(120)、
を備え、
前記リッジ(121)は、湾曲区間(123)を介して第2区間(125)に接続される第1区間(124)を備え、前記第1区間(124)は第1リッジ軸(D1)に沿って伸び、前記第2区間(125)は第1リッジ軸(D1)とは異なる第2リッジ区間(D2)に沿って伸び、前記第1スロット(111)は、前記第1スロットが前記第1リッジ軸(D1)から前記第2リッジ軸(D2)に向かう方向にオフセット(A1)されるように前記第1区間(124)に面して配置され、前記第2スロット(112)は、前記第2スロットが前記第2リッジ軸(D2)から前記第1リッジ軸(D1)に向かう方向にオフセット(A2)されるように前記第2区間(125)に面して配置される、
アンテナ構成(100)。
【請求項2】
前記湾曲区間(123)が、前記第1リッジ軸(D1)を前記第2リッジ軸(D2)に対して0度から45度の間に配置する、請求項1に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項3】
前記第1及び第2スロット軸(D3、D4)が平行である、請求項1又は2に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項4】
前記第1及び第2スロットが同じスロット軸 (D3、D4)を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項5】
前記第1(D1)及び第2(D2)リッジ軸が平行である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項6】
前記リッジが、第2直線区間(125)に接続された第1直線区間(124)を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項7】
前記リッジ(121)が3つ以上の区間を有し、前記放射層が各区間に面する各スロットを備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項8】
前記リッジの他の全ての区間が同じ軸に沿って伸びる、請求項7に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項9】
前記第1リッジ導波路の導波路が、前記第1リッジの形に一致するように配置される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項10】
前記導波路の断面において測定された、側壁からリッジ導波路の1つにおけるリッジまでの距離が、前記第1リッジ導波路に沿って、30パーセント未満、好ましくは20パーセント未満、さらに好ましくは10パーセント未満変化する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項11】
前記分配層が複数のリッジを備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項12】
前記分配層フィード(122)が2つのリッジの間に配置される、請求項11に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項13】
前記分配層(120)が第1及び第2リッジを備え、前記分配層フィード(122)は前記第1及び第2リッジの中間に配置され、前記第1リッジの接続区間は前記分配層フィードの中央線からオフセットされて配置され、前記第2リッジの接続区間は前記分配層フィードの前記中央線からオフセットされて配置され、前記接続区間は前記分配層フィード(122)から前記各リッジまで電磁波を誘導するように配置される、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項14】
前記表面(113)上に配置される1つ又は複数の表面電流抑制部材(116)をさらに備え、前記1つ又は複数の表面電流抑制部材はスロット(111、112)から前記表面境界(115)までの表面電流を抑制するように配置される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項15】
前記1つ又は複数の表面電流抑制部材(116)が1つ又は複数の溝を備える、請求項14に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項16】
前記分配層(120)が第1電磁バンドギャップ(EBG)構造(128)を備え、前記リッジ及び前記第1EBG構造は、前記分配層(120)と前記放射層(110)との中間 に少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路を形成するように配置され、前記第1EBG構造は、動作周波数帯域内の電磁波が、前記少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路から、前記少なくとも1つの分配層フィード(122)及び前記少なくとも2つのスロット(111、112)を通る方向以外の方向 に伝播することを防止するようにも配置される、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項17】
前記第1EBG構造(128)が突出要素(126)の反復構造を有する、請求項16に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項18】
プリント回路基板(PCB)層(130)及びシールド層(140)をさらに備え、前記PCB層は少なくとも1つのPCB層フィードを備え、且つ、前記分配層(120)に面し、前記シールド層(140)は前記PCB層に面する、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項19】
前記シールド層(140)が、前記シールド層(140)と前記PCB層(130)との中間に少なくとも1つの第2導波路を形成するように配置された第2EBG構造を備え、前記第2EBG構造は、動作周波数帯域内の電磁波が、前記少なくとも1つの第2導波路から、前記少なくとも1つのPCB層フィードを通る方向以外の方向に伝播することを防止するようにも配置される、請求項18に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項20】
前記第2EBG構造(431)が突出要素(432、434)の反復構造を有し、前記PCB層が接地面及び少なくとも1つの平面伝播線を備えることにより、前記シールド層(140)と前記PCB層(130)との中間に少なくとも1つの第2ギャップ導波路を形成する、請求項19に記載のアンテナ構成(100)。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)を備える、電気通信トランシーバ又はレーダトランシーバ。
【請求項22】
請求項1乃至20のいずれか一項に記載のアンテナ構成(100)を備える車両。
【請求項23】
積層構造を有するアンテナ構成(100)を設計する方法であって、アンテナ構成は、表面境界(115)によって区切られる表面(113)を有する放射層(110)、及び前記放射層(110)に面する分配層(120)を備え、
それぞれ第1スロット軸(D3)及び第2スロット軸(D4)に沿って伸びる第1(111)及び第2スロット(112)を表面(113)上に配置すること(S1)、
無線周波数信号を前記第1(111)及び第2スロット(112)に分配するように前記分配層(120)を配置すること(S2)、
前記分配層(120)と前記放射層(110)との中間に第1リッジ導波路を形成するように分配層フィード(122)及びリッジ(121)を前記分配層(120)上に配置すること(S3)、
湾曲区間(123)を介して第1区間(124)を第2区間(125)に接続すること(S4)であって、前記第1区間(124)は第1リッジ軸(D1)に沿って伸び、前記第2区間(125)は第1リッジ軸(D1)とは異なる第2リッジ区間(D2)に沿って伸びるように、接続すること(S4)、
前記第1スロットが前記第1リッジ軸(D1)から前記第2リッジ軸(D2)に向かう方向にオフセット(A1)されるように、前記第1スロット(111)を前記第1区間(124)に面するように配置すること(S5)、及び、前記第2スロットが前記第2リッジ軸(D2)から前記第1リッジ軸(D1)に向かう方向にオフセット(A2)されるように前記第2スロット(112)を前記第2区間(125)に面するように配置すること、
を含む、方法。
【請求項24】
1つまたは複数の表面電流抑制部材(116)を前記表面(113)上に配置すること(S6)であって、前記1つ又は複数の表面電流抑制部材は、スロット(111、112)から前記表面境界(115)までの表面電流を抑制するように配置される、配置すること(S6)をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ又は複数の表面電流抑制部材(116)が1つ又は複数の溝を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記分配層(120)上に第1電磁バンドギャップ(EBG)構造(128)を配置すること(S7)であって、前記リッジ及び前記第1EBG構造は、前記分配層(120)と前記放射層(110)との中間に少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路を形成するように、また、前記第1EBG構造は、動作周波数内の電磁波が、前記少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路から、少なくとも1つの分配層フィード(122)及び前記少なくとも2つのスロット(111、112)を通る方向以外の方向に伝播することを防止するように、配置すること(S7)、
をさらに含む、請求項23乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1EBG構造(128)が、突出要素(126)の反復構造を備える、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は導波路アンテナアレイに関する。改善された放射パターンを有するアンテナ構成が開示されている。開示されたアンテナアレイは、例えば、電気通信トランシーバ及びレーダトランシーバにおける使用に適している。
【背景技術】
【0002】
無線通信ネットワークは、セルラーアクセスネットワークに使われる無線基地局、例えばコアネットワークのバックホールに使われるマイクロ波無線リンクトランシーバ、及び軌道上の人工衛星と通信する衛星トランシーバなどの無線周波数トランシーバを含む。レーダトランシーバは、無線周波数(RF:Radio Frequency)信号、即ち電磁信号を送受信するため、無線周波数トランシーバでもある。
【0003】
トランシーバの放射構成は、アレイが放射パターン、例えば、高指向性、ビームステアリング、及び/又はマルチビームの形成の高度な制御を可能とするため、しばしばアンテナアレイを備える。アンテナアレイは、低損失であり、且つ整合能力を有する、コンパクトな統合フィードネットワークを構成するスロット付き導波路アンテナ(SWG:Slotted Waveguide Antennas)に基づき得る。しかしながら、アンテナの物理的な寸法が減少するとともに、周波数が増加するため、製造公差が問題となる。これはミリ波周波数において特に問題である。これを克服するために、フィードネットワークは、例えばリッジギャップ導波路など、電磁バンドギャップ(EBG:Electromagnetic Band Gap)構造に基づき得る。
【0004】
幾つかのRFアプリケーションにおいて、アンテナ構成の仰角寸法における放射パターンは、単一の細いビームを備えるべきであり、アンテナ構成の方位寸法における放射パターンは、視野全体で均一であるべきである。これは、理想的なスロットアンテナのアレイにより容易く達成され得る。しかしながら、実際のスロットアンテナ構成は、方位ビーム幅と、方位放射パターンにおけるリップルとの間にトレードオフをもたらす。小さなリップルを有する細い方位ビーム幅は、視野を狭める。一方、大きなリップルを有する広いビーム幅は、ビーム全体で異なる量の電力を送信する。さらに、実際のスロットアンテナ構成は、仰角方向に望ましくないサイドローブをもたらす。仰角方向におけるこれらサイドローブレベルは、通常、方位角が大きい場合に大きい。
【0005】
製造し易く、改善された放射パターンを有するアンテナ構成が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本開示の目的は、製造し易く、改善された放射パターンを有するアンテナ構成を提供することである。
【0007】
この目的は、積層構造を有するアンテナ構成によって少なくとも部分的に達成される。アンテナ構成は、表面を有する放射層を備える。表面は、表面境界によって区切られる。第1及び第2スロットが、それぞれ第1スロット軸及び第2スロット軸に沿って伸び、且つ、表面上に配置されている。アンテナ構成は、放射層に面する分配層も備える。分配層は無線周波数信号を第1及び第2スロットに分配するように配置される。分配層は、分配層と放射層との中間に第1リッジ導波路を形成するように配置される分配層フィード及びリッジを備える。リッジは、湾曲区間を介して第2区間に接続される第1区間を備える。第1区間は第1リッジ軸に沿って伸び、第2区間は、第1リッジ軸とは異なる第2リッジ区間に沿って伸びる。第1スロットは、第1スロットが第1リッジ軸から第2リッジ軸に向かう方向にオフセットされるように第1区間に面して配置される。第2スロットは、第2スロットが第2リッジ軸から第1リッジ軸に向かう方向にオフセットされるように第2区間に面して配置される。
【0008】
これは、先行技術と比べてスロットのより対称的な配置をもたらし、したがってより低いサイドローブレベルを有する放射パターンをもたらす。リッジの変位は、選択的に、スロットを単一の線に対して変位させることと組み合わせて行われてもよく、これも先行技術と比べてスロットのより対称的な配置をもたらす。
【0009】
第1及び第2スロットが同じ方向に伸び、且つ、仰角寸法がスロットの延在方向と一致するアンテナ構成例において、放射パターンは、特に方位角が大きい場合、仰角方向においてより低いサイドローブレベルを有する。アンテナ構成例の仰角寸法における放射パターンも、仰角ゼロ辺りでより対称的であって、これは利点である。さらに、アンテナ構成例は、特に仰角が大きい場合、方位寸法においてより対称的な放射パターンを提供する。放射パターンは方位寸法において(指向性パターンとは対照的に)より均一であって、これは利点である。
【0010】
スロットが同じ方向に伸びる、開示されたアンテナ構成を備えるアレイ例において、アレイ内の異なる列は、先行技術と比べて互いに対する偏差が少ない放射パターンを提供し、これは利点である。換言すれば、アレイ例における列の放射パターンは、アレイにおける列の位置に殆ど影響を受けないため、これは利点である。
【0011】
態様によれば、湾曲区間は、第1リッジ軸を第2リッジ軸に対して0度から45度の間に配置する。好ましくは、第1及び第2スロット軸は平行である。また、好ましくは、第1及び第2スロットは同じスロット軸を有する。加えて、第1及び第2リッジ軸は好ましくは平行である。さらに、好ましくは、リッジが、第2直線区間に接続された第1直線区間を備える。これにより、アンテナ構成は、仰角寸法において単一の細いビームを含み、且つ、方位寸法においては視野全体で均一な放射パターンを提供することができる。
【0012】
態様によれば、リッジは3つ以上の区間を有し、放射層は各区間に面する各スロットを備える。これはアレイを形成し得る。
【0013】
態様によれば、リッジの1つおきの区間は同じ軸に沿って伸びる。他の態様によれば、分配層は複数のリッジを備える。異なる態様によれば、分配層フィードは2つのリッジの中間に配置される。これはアレイを形成する効率的且つ簡単な方法を提示する。
【0014】
態様によれば、第1リッジ導波路の導波経路は、第1リッジの形状に一致するように配置される。導波経路がリッジの形に一致するようにすることは、直線的な導波路と比べて導波路のより一定な特性を提供する。これは、導波路から各スロットまで、遥かに良好な電磁結合を提供する。これにより、例えば放射パターンにおけるリップルをさらに減らすなど、放射パターンのより良好な制御を可能とする。
【0015】
態様によれば、導波路の断面において測定された、リッジ導波路の1つにおける側壁からリッジまでの距離は、第1リッジ導波路に沿って、30パーセント未満、好ましくは20パーセント未満、さらに好ましくは10パーセント未満変化する。これは、導波路に沿ったより良好なインピーダンス整合を提供する。換言すれば、側壁は、リッジの区間の延在方向(又は接線)と同じ又は類似の方向に沿って延在している。好ましくは、リッジのそれぞれの側におけるリッジと側壁との距離は等しく、即ち、リッジに沿った特定の点で、一方の側におけるリッジから側壁までの距離は、他方の側におけるリッジから側壁までの距離と等しい。これはリッジ導波路に対称性を提供し、これは利点である。導波路の断面における距離を測定することは、側壁とリッジとの間の距離を、分配層の表面に沿って、且つリッジの接線に実質的に垂直に測定することとして説明できる。
【0016】
態様によれば、分配層は第1及び第2リッジを備え、分配層フィードは第1及び第2リッジの間に配置され、第1リッジの接続区間は分配層フィードの中央線からオフセットされて配置され、第2リッジの接続区間は分配層フィードの中央線からオフセットされて配置され、接続区間は分配層フィードから各リッジまで電磁波を誘導するように配置される。これにより、スロット間の距離を変えたり、リッジの幅を変えたりすることなく、第1及び第2スロットを異なる方向にオフセットすることを容易にすることができる。
【0017】
態様によれば、アンテナは、表面上に配置される1つ又は複数の表面電流抑制部材を備える。1つ又は複数の表面電流抑制部材は、スロットから表面境界までの表面電流を抑制するように配置される。抑制された表面電流は、改善された放射パターンをもたらす。例えば、第1及び第2スロットが同じ方向に伸びるアンテナ構成例において、放射パターンは、方位寸法においてより低いリップルを有する、広いメインローブを提供することができる(仰角寸法はスロットの延在方向と一致する)。
【0018】
態様によれば、1つ又は複数の表面電流抑制部材は、1つ又は複数の溝を備える。これにより、スロットから表面境界までの表面電流を抑制する簡単で効率的な方法が提供される。
【0019】
態様によれば、分配層が第1電磁バンドギャップ(EBG)構造を備える。リッジ及び第1EBG構造は、分配層と放射層との中間に少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路を形成するように配置される。第1EBG構造は、動作周波数帯域内の電磁波(即ち、電磁伝播)が、少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路から、少なくとも1つの分配層フィード及び少なくとも2つのスロットを通る方向以外の方向に、伝播することを防止するようにも配置される。EBG構造は、コンパクトな設計、低損失、隣接する導波路間の低いリーク、そして製造及び組立公差の緩和を可能とする。さらに、放射層と分配層との間の電気接触が必要ない。これは、高精度の組立が必要でなく、電気接触が確認されなくてもいいため、有利である。
【0020】
態様によれば、第1EBG構造は突出要素の反復構造を有する。これは簡単で効率的な種類のEBG構造である。
【0021】
態様によれば、アンテナ構成はプリント回路基板(PCB)層及びシールド層をさらに備える。PCB層は少なくとも1つのPCB層フィードを備え、且つ、分配層に面し、シールド層はPCB層に面する。
【0022】
態様によれば、シールド層は、シールド層とPCB層との中間に少なくとも1つの第2導波路を形成するように配置された第2EBG構造を備える。第2EBG構造は、動作周波数帯域内の電磁波(即ち、電磁伝播)が、少なくとも1つの第2導波路から、少なくとも1つのPCB層フィードを通る方向以外の方向に伝播することを防止するようにも配置される。第2EBG構造は、低損失及び低リーク、即ち、例えば隣接する導波路間又はPCB層上の隣接するRFIC間の、望ましくない電磁伝播が小さいことを特徴とするコンパクトな設計を可能とする。さらに、第2EBG構造は、アンテナ構成外からの電磁放射からPCB層を保護する。
【0023】
態様によれば、第2EBG構造は、突出要素の反復構造を有し、PCB層が接地面及び少なくとも1つの平面送電線を備える。これにより、シールド層とPCB層との中間に少なくとも1つの第2ギャップ導波路を形成する。これは、簡単で効率的な種類のEBG構造である。
【0024】
また、上記アンテナ構成を備える、電気通信トランシーバ又はレーダトランシーバが本明細書に開示される。さらに、上記アンテナ構成を備える車両が本明細書に開示される。
【0025】
また、積層構造を有するアンテナ構成を設計する方法が本明細書に開示される。アンテナ構成は、表面を有する放射層を備える。表面は、表面境界によって区切られる。アンテナ構成は、放射層に面する分配層を備える。方法は、それぞれ第1スロット軸及び第2スロット軸に沿って伸びる第1及び第2スロットを表面上に配置することを含む。方法は、無線周波数信号を第1及び第2スロットに分配するように分配層を配置することをさらに含む。また、方法は、分配層と放射層との中間に第1リッジ導波路を形成するように分配層フィード及びリッジを分配層上に配置することを含む。方法は、湾曲区間を介して第1区間を第2区間に接続することであって、第1区間は第1リッジ軸に沿って伸び、第2区間は第1リッジ軸とは異なる第2リッジ区間に沿って伸びるように、接続することをさらに含む。また、方法は、第1スロットが第1リッジ軸から第2リッジ軸に向かう方向にオフセットされるように、第1スロットを第1区間に面するように配置すること、及び、第2スロットが第2リッジ軸から第1リッジ軸に向かう方向にオフセットされるように第2スロットを第2区間に面するように配置すること、を含む。
【0026】
態様によれば、方法は、1つ又は複数の表面電流抑制部材を表面上に配置することであって、1つ又は複数の表面電流抑制部材は、スロットから表面境界までの表面電流を抑制するように配置される、配置することをさらに含む。
【0027】
態様によれば、1つ又は複数の表面電流抑制部材は、1つ又は複数の溝を備える。
【0028】
態様によれば、方法は、分配層上に第1電磁バンドギャップ(EBG)構造を配置することであって、リッジ及び第1EBG構造が、分配層と放射層との中間に少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路を形成するように、また、第1EBG構造は、動作周波数帯域内の電磁波(即ち、電磁伝播)が、少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路から、少なくとも1つの分配層フィード及び少なくとも2つのスロットを通る方向以外の方向に伝播することを防止するように、配置することをさらに含む。
【0029】
態様によれば、第1EBG構造は、突出要素の反復構造を備える。
【0030】
本明細書に開示された方法は、異なる測定装置と関連して上述したものと同様の利点と関連している。さらに、本明細書に記載されたいくつかの動作を制御するように適合された制御ユニットも、本明細書に開示される。
【0031】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で別途明確に定義されていない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a/an/the)要素、装置、部品、手段、ステップなど」へのすべての言及は、別途に明記しない限り、要素、装置、部品、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を指すものとして公然と解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明示的に述べられていない限り、開示された正確な順序で実行される必要はない。本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討するときに明らかになるであろう。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に説明するもの以外の実施形態を作成できることを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本明細書は、以下の添付の図面を参照してより詳しく説明される。
【
図1】
図1は、アンテナ構成例の分解図を概略的に示す。
【発明の詳細な説明】
【0033】
本明細書の態様は、添付の図面を参照してより完全に説明される。しかしながら、本明細書に開示される異なる装置及び方法は、多数の異なる形態で表すことができ、ここに開示される態様に限定するもとのして解釈されるべきでない。図面における同じ番号は、全体を通して同じ要素を参照する。
【0034】
本明細書に使われる用語は、開示する態様を説明するためだけであり、発明を限定することを意図しない。本明細書で使われる単数型「a」「and」及び「the」は、文脈が明らかに明示しない限り、複数形も含むことを意図する。
【0035】
図1は、積層構造を有するアンテナ構成100を示す。積層構造は、層と呼ばれる複数の平面要素を備える構造である。各平面要素は2つの側、又は面を有し、厚さと関連されている。厚さは、面の寸法より遥かに小さい、即ち、面は平坦または概ね平面な要素である。いくつかの態様によれば、層は長方形又は正方形である。しかしながら、円又は楕円型を含む、より汎用的な形状も適用可能である。積層構造は、層が互いの層の上に配置されるように積層されている。換言すれば、積層構造はサンドイッチ構造として見ることができる。
【0036】
開示されたアンテナ構成100は、車両用レーダトランシーバなどのレーダトランシーバ、又は通信システムや測位システムなどの無線周波数アプリケーションのために使われ得る。したがって、本明細書にはアンテナ構成100を備える電気通信又はレーダトランシーバが開示される。また、本明細書には開示されたアンテナ構成100を備える車両も開示される。
【0037】
図1のアンテナ構成は、特定の放射要素111、112(
図1には図示せず)を有する放射層110と分配層120とを含む。一般に、分配層120は、複数の放射要素における1つ又は複数の放射要素から又は複数の放射要素に1つ以上の無線周波数信号を分配する。一般に、積層構造のアンテナ構成は、プリント回路基板(PCB)層130及びシールド層140を備える。
【0038】
放射要素の一例はスロットであり、放射層と分配層の組み合わせの一例はスロット付き導波路アンテナ(SWA)である。SWAは、一般に、導波路のブロードサイドの壁に沿って線状に伸ばされて配置された複数のスロットを有する矩形の導波路を備える。このブロードサイドは放射層110として見ることができ、導波路の残りの部分は分配層120として見ることができる。スロットは、一般に、長さが自由空間波長の約半分であり、幅が長さより大幅に短い、例えば幅が長さの10分の1である、矩形又は楕円形である。実質的に長方形である他のスロット形状も可能であり、例えば、ダンベル形状も可能である。隣接するスロットの中心間の間隔は、導波路の側面に沿った等位相の2つの平面間の距離であるガイド波長の約半分である。導波路に沿った無線周波数(RF)信号から各スロットへの電磁結合を制御するために、各スロットは導波路のブロードサイドの中心線から個別に変位されてもよい、即ち、各スロットの中心を中心線から離して配置してもよい。これは、導波路とスロットの整合を制御していると見ることもできる。各スロットへの励起、即ち各スロットへの結合は、導波路内のスロットのアレイからの放射パターンにおけるサイドローブレベル(SSL)に影響を及ぼす。アンテナ構成の遠方界放射パターンは、一般的に、最大値(global maximum)であるメインローブ、即ち、最高出力を継続するローブを含む。サイドローブは局所的な最大値に関連するローブです。SWAにおけるSSLを最小化するために、各スロットの個々の変位を最適化することができ、これは、チェビシェフ分布などの既知の分布から始めることを含んでもよい。高いアンテナ効率を維持するために、スロットは一般的に中心線の両側に交互に配置される。
【0039】
スロットアンテナ配置は、代わりに、
図2に示すように、スロットが反対側のブロードサイドに配置されている導波路の1つのブロードサイドの中心線に沿って内部リッジを備えた規則的な導波路を備える、リッジ導波路に基づいてもよい。スロット付き導波路アンテナのブロードサイドに沿って伸びるスロットは、効果的に励起されるように、リッジの端に面して配置するべきである。このようなスロットは、導波路波長の半分の間隔を持つべきであり、リッジの中心線に沿って交互に変位されて配置するべき、即ち、スロットは1つおきにリッジの同じ端に面し、残りのスロットはリッジの反対側の端に面する。これにより、全てのスロットに、導波路に沿ったRF信号が同位相で供給される。全てのスロットを同じ端に向けて配置することも可能だが、その場合、同位相で供給されるように、2つの導波路波長を離して配置しなければならない。ただし、これはグレーティングローブをもたらすため、実行不可能な選択肢である。SWAに関しては、各スロットの変位が最小限のSSLになるように選択されてよい。
【0040】
図3に示される開示されたアンテナ構成100は、リッジ導波路に基くアンテナ構成において、各スロットに対してリッジの区間を相対的に変位させる。本発明の一実施形態では、全てのスロットが直線上に配置されている。これは、従来技術と比較してスロットのより対称的な配置をもたらし、したがって、特に方位角が大きい場合の仰角方向において、より低いSSLを有する放射パターンをもたらす。リッジの変位は、選択的に、単一の線に対してスロットを変位させることと組み合わせてなされてよく、これも、従来技術と比較してスロットのより対称的な配置をもたらす。
【0041】
言い換えると、積層構造を有するアンテナ構成100が本明細書に開示されている。
図1、3、及び7を参照すると、開示されたアンテナ構成100は、表面113を有する放射層110を備える。表面113は、表面境界115によって区切られる。第1スロット111及び第2スロット112が表面上に配置され、それぞれ第1スロット軸D3及び第2スロット軸D4に沿って伸びる。アンテナ構成は、また、放射層110に面する分配層120を備える。分配層120は、無線周波数信号を第1スロット111及び第2スロット112に分配するように配置される、分配層フィード122及びリッジ121を備える。リッジ121は、湾曲区間123を介して第2区間125に接続される第1区間124を備える。第1区間124は、第1リッジ軸D1に沿って延在し、第2区間125は、第1リッジ軸D1とは異なる第2リッジ軸D2に沿って伸びる。第1スロット111は、第1スロット軸D3が、第2リッジ軸D2に向かう方向に第1リッジ軸D1からオフセットA1されて配置されるように、第1区間124に面して配置される。第2スロット112は、第2スロット軸D4が、第1リッジ軸D1に向かう方向に第2リッジ軸D2からオフセットA2されて配置されるように、第2区間125に面して配置される。
【0042】
しかしながら、第1スロット軸D3が第1リッジ軸D1からオフセットA1されて配置されるという特徴は、軸が平行でない実施、即ち、リッジ121は、湾曲区間123を介して第2区間125に接続される第1区間124を備え、第1区間124は第1リッジ軸D1に沿って伸び、第2区間125は第1リッジ軸D1とは異なる第2リッジ区間D2に沿って伸び、第1スロット111は、第1スロットが第1リッジ軸D1から第2リッジ軸D2に向かう方向にオフセットA1されるように第1区間124に面して配置され、第2スロット112は、第2スロットが第2リッジ軸D2から第1リッジ軸D1に向かう方向にオフセットA2されるように第2区間125に面して配置される場合も含む、広い解釈を与えられるべきである。
【0043】
本構成の一般的な考え方は、改善された放射パターンをもたらすように、従来技術と比較してより対称的なスロットの配置を備えることである。したがって、上記の形状の可能な実装は、第1スロットの幾何学的中心が、第2リッジ軸D2に向かう方向に第1リッジ軸D1からオフセットされる実現を含んでもよく、スロットは、第1及び/又は第2リッジ軸に平行な方向に延在しても延在しなくてもよいことを理解されたい。必要な変更を加えて、第2スロットにも同じことが適用される。これらの形状の全てにおいて、恐らく程度は異なるものの、スロットの対称的な配置の有利な効果が得られる。即ち、本明細書に記載された定義に含まれる形状の一部は、他の形状と比較して僅かに優れた性能を有し得るが、依然として使用可能である。
【0044】
図2及び3は、アンテナ構成例を示す。これらのアンテナ構成は、放射層上で単一方向に伸びる4つのスロットを備える。これら2つの例では、2つのリッジの間に1つの分配層フィードが配置されている。各リッジは、電磁信号を2つのスロットにそれぞれ結合する。
図2では、両方のリッジが1つの軸上に伸びる。グレーティングローブを回避するには、スロットはリッジの中心線に沿って変位され、交互に配置される必要がある。このように、1つおきのスロットがリッジの反対側の端に面する。一方、
図3では、スロットは単一の軸上に配置され、リッジは、1つおきのスロットがリッジの反対側の端に面するように、リッジの区間が変位されて配置される。
図15は、
図3の分配層の上面図を示す。
【0045】
図4A-Fは、
図2のアンテナ構成の放射パターンの異なるカットに対する正規化された指向性を示す。
図4A-Cは、それぞれ、方位角0度、40度、及び80度に対する仰角寸法パターンを示す。仰角寸法は、スロットの延長方向と一致する。
図4D-Fは、仰角0度、15度、及び30度に対する方位寸法パターンを示す。
図5A-Fは、
図3のアンテナ構成と同じ放射パターンカットを示す。開示されたアンテナ構成100は、
図3のアンテナ構成よりも遥かに改善された放射パターンを示す。開示されたアンテナ構成100は、仰角寸法において、特に方位角が大きい場合、遥かに低いSSLを示す。開示されたアンテナ構成の仰角方向の放射パターンも、仰角ゼロの周りでより対称的であり、これは利点である。さらに、開示されたアンテナ構成100は、特に仰角の値が大きい場合に、方位寸法においてより対称的な放射パターンを示す。また、開示されたアンテナ構成100は、(指向性パターンと対照的に)方位寸法においてより均一な放射パターンを示すことが見られ、これは利点である。
【0046】
図6A及び6Bは、アンテナ構成例のリッジ121及びスロット111、112の詳細を示す。1つおきのスロットは、リッジの中心線C1に対して反対側に変位している。
図6Aでは、スロットの中心がリッジの端に面するようにスロットが変位しているのに対し、
図6Bのスロットはそれより小さく、即ちスロットの中心が中心線C1により近いように変位している。
【0047】
図7A-Dは、本開示の例によるリッジ121及びスロット111、112の詳細を示す。
図7Aは、リッジ121が、湾曲区間123を介して第2区間125に接続された第1区間124を備えることを示す。第1区間124は第1リッジ軸D1に沿って伸び、第2区間125は、第1リッジ軸D1とは異なる第2リッジ軸D2に沿って伸びる。湾曲区間123は、第1リッジ軸D1を第2リッジ軸D2に対して0度から45度の間に配置するように構成されてよいが、他の値も可能である。好ましくは、第1リッジ軸D1及び第2リッジ軸D2は平行である。
【0048】
図3及び7AーDでは、リッジは、平面基板127からの長方形の突出要素として示されており、幅及び(基板127に対して垂直の)高さが長さより遥かに小さい。もちろん、角を丸くするなど、他の形状も可能である。リッジの寸法は、リッジの長さに沿って必ずしも均一であるとは限らない。さらに、リッジが多少波打つか、リッジ軸の1つを中心に回転対称でなくても、リッジ軸は依然として存在する。
【0049】
リッジは、第2直線区間125に接続された第1直線区間124を備えてよい。曲線形状など、区間124、125の他の形状も可能である。
図7Aのリッジは2つの区間を有する。しかしながら、リッジ121は、3つ以上の区間を含んでもよい。その場合、放射層は、各区間に面するそれぞれのスロットを備えてよい。さらに、リッジ121の1つおきの区間は、同じ軸に沿って伸びてよい。また、分配層も、
図3及び9に示されるように、複数のリッジを備えてよい。
【0050】
態様によれば、第1リッジ導波路の導波路は、第1リッジの形状に一致するように配置される。導波路をリッジの形状に一致させることは、直線導波路と比較して、経路に沿った導波路のより一定な特性を提供する。これは、導波路から各スロットまで、遥かに良好な電磁結合を提供する。これにより例えばリップルをさらに減らすなど、放射パターンのより良好な制御を可能とする。
【0051】
リッジ導波路は、突出要素を側壁として備えるリッジギャップ導波路であってよく、これについては以下でより詳細に論じる。リッジ導波路は、リッジを有する方形導波路など、他の種類のリッジ導波路であってもよい。導波経路(即ち、電磁波が誘導される経路)の側壁は、長方形導波路のような導電性の壁、又は
図3、9、12、15、17、及び18の突出要素のような電磁バンドギャップ(EBG)構造で構成されてよい。側壁は、分配層の表面に沿って波を閉じ込める構造である。
【0052】
図3で、リッジはそれぞれの導波路のほぼ中央に配置されている。換言すれば、側壁は、リッジの区間の延在方向(又は接線)と同じ又は類似の方向に沿って伸びる。好ましくは、リッジと、リッジのそれぞれの側の側壁との間の距離は等しく、即ち、リッジに沿った特定の点において、リッジから一方の側の側壁までの距離は、リッジから他方の側の側壁までの距離に等しい。これはリッジ導波路に対称性を提供する。要約すると、態様によれば、導波路の断面で測定されたリッジ導波路の1つの側壁からリッジまでの距離は、第1リッジ導波路に沿って、30パーセント未満、好ましくは20パーセント未満、より好ましくは10パーセント未満変化する。導波路の断面で距離を測定するということは、分配層120の表面に沿って、且つ、リッジの接線に実質的に垂直に、リッジと側壁との間の距離を測定することであるとして説明され得る。
【0053】
図3は、分配層フィード122が2つのリッジの間に配置される例を示す。より具体的には、分配層フィード122は、分配層の反対側への貫通孔である。貫通孔の形状及び貫通孔に隣接するリッジの一部の形状は、配電層フィードからリッジへの電磁結合を最適化する、即ち、整合を最適化するように適合させることができる。同軸から導波路への移行など、他の種類のフィードも可能である。
【0054】
分配層フィードは、
図12、17、及び18に示されるように、分配層に沿って配置された分配層フィードリッジを介して1つ又は複数のリッジ121に接続されるように配置されてよい。
【0055】
態様によれば、分配層120は第1及び第2リッジを備え、分配層フィード122は第1及び第2リッジの中間に配置され、第1リッジの接続区間は分配層フィードの中央線からオフセットされて配置され、第2リッジの接続区間は分配層フィードの中央線からオフセットされて配置され、接続区間は分配層フィード122から各リッジまで電磁波を誘導するように配置される。中心線は、2つのリッジに面するスロットを含む列の延在方向に伸びることができる。これにより、スロット間の距離を変えることなく、又はリッジの幅を変えることなく、第1及び第2スロットを異なる方向にオフセットことが容易になり得る。
【0056】
図7B、7C、及び7Dは、第1スロット軸D3が第2リッジ軸D2に向かう方向に第1リッジ軸D1からオフセットA1されて配置され、第1スロット111がリッジの第1区間124に面して配置されることを示す。第2スロット112は、第2スロット軸D4が第2リッジ軸D2から第1リッジ軸D1に向かう方向にオフセットA2されて配置され、第2区間125に面して配置される。必須ではないが、好ましくは、第1及び第2スロット軸D3、D4は平行である。より好ましくは、
図7B及び7Cに示されるように、第1及び第2スロットは同じスロット軸D3、D4を有する。これは、有利に、SSLが低い放射パターンを提供する。しかしながら、
図7Dの実施形態もまた、従来技術より改善した放射パターンを提供する。
図7Bに示されるように、スロットの中心はリッジの端に面してよい。
図7Cに示すように、他の配置も可能である。
【0057】
図8及び
図9は、4x4スロットアンテナ構成例を示す。これらのアンテナ構成は、放射層上で単一方向に伸びる、それぞれ4つのスロットを有する4つの列を含む。これら2つの例では、各列の2つのリッジの間に1つの分配層フィードが配置されている。これらのリッジのそれぞれは、電磁信号を2つのスロットにそれぞれ結合する。
図8では、両方のリッジが1つの軸上に伸びる。グレーティングローブを回避するには、列のリッジの中心線に沿ってスロットを交互に変位させて配置する必要がある。このように、1つおきのスロットは、列のリッジの反対側のエッジに面する。一方、
図9では、スロットは列ごとに単一の軸上に配置され、リッジは、列内の1つおきのスロットがリッジの反対側の端に面するように、リッジの区間が変位されて配置される。
【0058】
図10A-Fは、
図8のアンテナ配置の各列の放射パターンの異なるカットに対する正規化された指向性を示す。
図10A-Cは、それぞれ方位角0度、40度、及び80度に対する仰角寸法パターンを示す。仰角寸法は、スロットの延在方向と一致する。
図10D-Fは、仰角0度、15度、及び30度に対する方位寸法パターンを示す。
図11A-Fは、
図9のアンテナ配置の各列に対して同じ放射パターンカットを示す。開示されたアンテナ構成100は、
図8からのアンテナ構成よりも遥かに改善された放射パターンを提示する。開示されたアンテナ構成100は、特に方位角が大きい場合、仰角寸法において遥かに低いSSLを提示する。開示されたアンテナ構成の仰角方向の放射パターンも、仰角ゼロ辺りでより対称的であり、これは利点である。さらに、開示されたアンテナ構成100は、特に仰角が大きい場合、方位寸法においてより対称的な放射パターンを示す。また、開示されたアンテナ構成100は、方位寸法において(指向性パターンと対照的に)より均一な放射パターンを示すことが分かり、これは利点である。さらに、開示されたアンテナ構成100の異なる列は、従来技術と比較して互いに対して偏差の少ない放射パターンを提供し、これは利点である。換言すれば、開示されたアンテナ構成100における列の放射パターンは、アンテナ構成100における列の位置にほとんど影響を受けず、これは利点である。
【0059】
アンテナ構成100は、表面113上に配置された1つ又は複数の表面電流抑制部材116を備えてよい。1つ又は複数の表面電流抑制部材は、スロット111、112から表面境界115への表面電流を抑制するように配置される。これは、方位寸法におけるリップルが小さく、幅の広いメインローブを有する放射パターンを提供する(仰角寸法はスロットの延在方向と一致する)。メインローブにおけるリップルは、メインローブ内の角度(例えば、方位角など)に対する放射電力の変化である。リップルの振幅が最大放射電力の半分より大きい場合、放射パターンは単一のメインローブを構成しなくなる。リップルは、角度に対して周期的又は非周期的であり得る。
【0060】
放射層110の導電面113は接地面として機能する。表面は良好な電気伝導体、例えば銅を含む。
【0061】
図13は、異なる単一スロットアンテナ構成の方位寸法における放射パターンを示し、スロットは、垂直方向に伸ばされるように配置されている。無限の接地面を備える理想的なスロットアンテナは、方位寸法で180度にわたって完全に均一な放射パターン301を提供する。しかしながら、有限な接地面のために、実際の従来のスロットアンテナは、方位寸法における放射パターン303にリップル304を提供する。このリップルは、302のように、ビームをより細くする代わりに減らすことができる。有限な接地面は、接地面の端及び/又は任意の隣接するスロットで散乱される表面電流をもたらす。ここで、表面電流はスロット開口から発生する。換言すれば、接地面における不連続性が散乱を引き起す。接地面が無限に大きい場合、接地面の端から発生する散乱された表面電流は存在しない。散乱された表面電流は、アンテナ構成から望ましくない放射を引き起こし、スロット開口から発生する放射パターンを乱す。
【0062】
表面電流抑制部材は、表面電流を抑制するため、望ましくない放射を低減する。その結果、表面電流抑制部材は、広いメインローブを維持しながらリップルを低下させるという点で、アンテナ構成の放射パターンを向上する。したがって、表面電流抑制部材を備える開示されたアンテナ構成の放射パターンはより均一であり、
図13の平坦な放射パターン301に似ている。
【0063】
放射層110の表面113は導電性である。しかし、プラスチックフィルムなどで放射層を覆ってもよいことを理解されたい。したがって、アンテナ構成100の外面は、必ずしも導電性であるとは限らない。したがって、例示的な実施形態では、放射層はメタライズプラスチックを含む。そして、プラスチック層のいずれか又は両方の面がメタライズされてよく、即ち、メタライズが表面113を構成してよい。
【0064】
表面113は必ずしも平面であるとは限らない。例えばコンフォーマルアンテナのように、一次元又は二次元で弧状を有する表面など、他の表面形状も可能であることを理解されたい。表面は弧状であってもよい。
【0065】
1つ又は複数の表面電流抑制部材116は、表面境界115に接続して配置され得る。
図14A及び14Bは、例示的な表面境界115の詳細を示す。
図14Aでは、表面境界は90度の角部を含む。このように、表面電流抑制部材は角部と接続して配置される。
図14Bでは、表面境界は丸まれた角部を含む。したがって、表面電流抑制部材は角部近傍410に配置される。表面境界の他の形状も可能であることを理解されたい。また、表面電流抑制部材が表面境界を越えて伸び、それによって表面電流抑制部材が、部分的に表面113上に、且つ部分的に隣接表面420上に、配置されてよいことも理解されたい。隣接表面は、例えば、表面113に対して90度に配置されてよいが、他の角度も可能である。
【0066】
アンテナ構成100の例示的な実施形態では、1つ又は複数の表面電流抑制部材116が表面境界115に接続して配置され、スロット111、112を囲む。ここで、囲むとは、囲まれたオブジェクトの周囲にペリメータを形成することを意味する。しかしながら、機能を損なうことなく、ペリメータに小さな隙間が形成されてもよいことを理解されたい。この種類の構成において、表面電流抑制部材は、表面113上のスロットの任意の向きに対して方位寸法における放射パターンを改善することができ、これは利点である。
【0067】
アンテナ構成の例示的な実施形態では、1つ又は複数の表面電流抑制部材116のうちの少なくとも1つが、スロットの間に配置される。ここで、間に配置されるとは、隣接する2つのスロットの間に引かれた直線上に位置することを意味し、例えば、
図9を参照されたい。
【0068】
アンテナ構成100の例示的な実施形態において、スロットのうちの少なくとも1つは、1つ又は複数の表面電流抑制部材によって囲まれている。
【0069】
開示されたアンテナ構成100において、1つ又は複数の表面電流抑制部材116は、1つ又は複数の電磁吸収体を備えてよい。電磁吸収体は、減衰により表面電流を抑制する。電磁吸収体は、一般に、電磁放射の透過又は反射を減衰させる損失材料(lossy materials)を含む。そのため、電磁吸収体は、優れた電気絶縁体(例えば、ゴム)であるべきでなく、優れた導電体(例えば、銅)であるべきでもない。電磁吸収体の例としては、鉄や炭素を含む発泡体がある。電磁吸収体は、共振、即ち特定の周波数が減衰する(例えば、30GHz)、又は、広帯域、即ち周波数の範囲が減衰する(例えば、1GHzから40GHz)場合がある。ある方向の電磁放射の減衰は、同じ方向の電磁吸収体の厚さに依存する。長さあたりの減衰の一例は、2GHzで10dB/cmである。別の例は、30GHzで150dB/cmである。これら2つの長さあたりの減衰の例示は、開示されたアンテナ構成100に適用され得る。
【0070】
1つ以上の電磁吸収体は表面113の上に配置されてよい。1つ以上の電磁吸収体の少なくとも1つは、迅速且つ費用対効果の高い製造プロセスのために、表面113上にコーティングされてよい。コーティングは、表面113上に電磁吸収材料を噴霧することを含んでよい。さらに、1つ又は複数の電磁吸収材は、接着剤によって表面113に取り付けられてよい。
【0071】
1つ又は複数の電磁吸収体のうちの少なくとも1つは、表面113に形成された凹部に配置されてよい。これにより、1つ又は複数の電磁吸収体を表面113と面一に配置することが可能である。このような配置は、空間を節約し、組み立てを容易にし、且つ、例えばアンテナの組み立て時などに、電磁吸収体が引っかかることを回避するために使用され得る。
【0072】
表面113は、支持層上のメタライズコーティングを含んでよく、1つ又は複数の電磁吸収体が支持層の一部を構成してもよい。したがって、放射層は支持層及びメタライズを含む。支持層上で、表面113の反対側もメタライズされてよい。好ましくは、スロットの内側もメタライズされる。換言すれば、アンテナ構成は、スロットカットアウトを有する支持層を備えてよく、所定の領域以外のすべての表面がメタライズされる。そして、所定の領域は電磁吸収体を構成する。所定の領域は、例えば、支持層がメタライズされている場合、除去可能なフィルムで覆うことができる。
【0073】
開示されたアンテナ構成の例示的な実施形態において、支持層はプラスチックを含み、プラスチックは、アンテナ構成の動作周波数帯域で電磁吸収特性を有する。
【0074】
プラスチックのメタライズは2つのステップで行われてよく、プラスチックの表面を望ましい金属でコーティングする前に、まずプライマーがプラスチックの表面に塗布される。本開示で、プラスチックのメタライズに望ましい金属は、例えば、銅、銀、金など、低損失及び高い導電率を有する。他の多くの金属や合金でも可能である。適切なプライマーの例は、ニッケル、クロム、パラジウム、及びチタンであるが、他の多くの材料でも可能である。したがって、開示されたアンテナ構成の別の例示的な実施形態では、プライマーのみでコーティングされた領域が電磁吸収体を含む。即ち、支持層がプライマーを含む。換言すれば、アンテナ構成は、スロットカットアウトを有するプラスチック層を備えてもよく、全ての表面がプライマーでコーティングされている。その後、所定の領域を除くすべての領域はメタライズされる。所定の領域は電磁吸収体を構成する。
【0075】
1つ又は複数の表面電流抑制部材116は、1つ又は複数の溝を含むことができる。溝は、制御された方法で表面電流を分散させることにより、表面電流を抑制する。溝と相互作用する表面電流は、電磁放射として散乱され、エネルギーが減少し、電流が抑制される。表面境界115及び/又は任意の隣接スロットで散乱される、1つ又は複数のスロットから生じる表面電流は、アンテナ構成100の放射パターンを劣化させる。制御された方法で表面電流を散乱させることによって、所望の放射パターンが維持され得る。溝の内部は、好ましくは導電性である。
【0076】
スロット111、112が、表面113を貫通するカットアウトであって通路を提供するのに対し、溝は、通路を提供しない凹部である。溝はスロットより浅くてよいし、スロットが溝と比べてより浅い又は同等に浅くてもよい。
【0077】
1つ又は複数の溝は、2つの層を含んでよい。より具体的には、溝は放射層110を貫通し、分配層120内に伸びてよい。分配層120内の溝の続きは、放射層内の溝開口の部分と必ずしも大きさが一致するわけではない。例えば、続きがより広くてもよい。分配層120の接続部分の目的は、溝を密閉することである。
【0078】
図9は、放射層110を貫通し、且つ、分配層120内に伸びる溝を有する表面電流抑制部材116の例を示している。ここで、分配層への延長部は、EBG構造を構成する導電性の突出要素126によって囲まれている。EBG構造については、以下で詳しく説明する。EBG構造は、EBG構造の表面に沿って電磁結合を防ぐ。それにより、延長された溝を囲むEBG構造は、溝を効果的に密閉する。なお、
図3では、溝の各端部(310)に突出は存在しないことに留意されたい。これは、機能的に封じ込められる必要のある場所に、いかなる電界も存在しないため、可能である。しかしながら、突出要素は、例えば機械的及びシールドなど、他の目的のためにそれらの場所に選択的に配置されてよい。
【0079】
リッジ導波路は、コンパクトな設計、低損失、低リーク、そして製造及び組立公差の緩和を提供するリッジギャップ導波路であってもよい。この場合、分配層120は、第1電磁バンドギャップ(EBG)構造128を含む。リッジ及び第1EBG構造は、分配層120と放射層110との中間に少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路を形成するように配置される。第1EBG構造はまた、動作周波数帯域内の電磁波(即ち、電磁伝播)が、少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路から、少なくとも1つの分配層フィード122及び少なくとも2つのスロット111、112を通る方向以外の方向に伝播することを防止するようにも配置される。分配層120は、放射層110に直接接触して配置されるか、放射層110からある距離離れて配置され、その距離は、アンテナ構成100の動作の中心周波数の波長の4分の1よりも小さい。
【0080】
少なくとも1つの導波路は、動作帯域内の電磁信号を1つ又は複数の分配層フィード及び/又は1つ又は複数のスロットに結合する。EBG構造は、減衰によって、伝播を防ぐ。本明細書で、減衰するとは、無線周波数信号などの電磁放射の振幅や電力を大幅に低減することと解釈される。減衰は完全であることが好ましく、その場合、減衰と遮断は同等であるが、そのような完全な減衰を常に達成できるとは限らないことを理解されたい。
【0081】
EBG構造は、メタマテリアル構造の一種である。EBG構造表面は、例えば、反復的な導電性ピン、即ち突出要素126、又は反復的な導電性空洞を有してよい。しかしながら、多数のEBG構造が存在する。EBG構造のEBG要素は、一次元、二次元、又は三次元で周期的又は準周期的なパターンで配置される。ここで、準周期的パターンとは、局所的に周期的であるが、長距離秩序を示さないパターンを意味すると解釈される。準周期パターンは、一次元、二次元、又は三次元で実現され得る。例として、準周期パターンは、EBG要素間隔の10倍未満の長さスケールでは周期的であり得るが、EBG要素間隔の100倍を超える長さスケールでは周期的でない。
【0082】
EBG構造は、少なくとも2つの種類のEBG要素を含むことができ、第1種類のEBG要素は導電性材料を含み、第2種類のEBG要素は電気絶縁材料を含む。第1種類のEBG要素は、銅やアルミニウムなどの金属、又は、金や銅などの導電性材料の薄層でコーティングされたPTFE又はFR-4などの非導電性材料から作られてよい。また、第1種類のEBG要素は、カーボンナノ構造又は導電性ポリマーなど、金属の導電率に匹敵する導電率を有する材料から作られ得る。一例として、第1種類のEBG要素の導電率は、1メートル当たり103シーメンス(S/m)を超えることができる。好ましくは、第1種類のEBG要素の導電率は105S/m以上である。言い換えると、第1種類のEBG要素の電気導電率は、電磁放射が第1種類のEBG要素に電流を誘起するほど高く、第2種類のEBG要素の電気導電率は、第2種類のEBG要素に電流が流れないほど低い。第2種類のEBG要素は、選択的に、非導電性ポリマー、真空、又は空気であってもよい。このような非導電性EBG要素タイプの例は、FR-4 PCB材料、PTFE、プラスチック、ゴム、及びシリコンも含む。
【0083】
第2種類のEBG要素の物理的特性はまた、EBG構造を通過する電磁伝搬の減衰を得るために必要な寸法を決定する。したがって、第2種類の材料が空気とは異なるように選択される場合、第1種類のEBG要素に要求される寸法が変化する。その結果、第1及び第2種類の要素の材料の選択を変えることによって、縮小された大きさのアンテナアレイを得ることができる。有利には、そのような選択から縮小された大きさのアンテナアレイを得ることができる。
【0084】
第1種類のEBG要素は、ある間隔を有する周期的なパターンで配置されてよい。第1種類のEBG要素間の距離は、第2種類の要素を構成する。言い換えると、第1種類のEBG要素は、第2種類のEBG要素とインターリーブされている。第1及び第2種類のEBG要素のインターリーブは、1次元、2次元又は3次元で達成され得る。
【0085】
第1又は第2種類のEBG要素のいずれか、又は両方の大きさは、周波数帯域内の電磁放射の空気中の波長よりも小さい。一例として、周波数帯域の中央の周波数として中心周波数を定義すると、EBG要素の大きさは、中心周波数での電磁放射の空気中の波長の1/5から1/50の間である。ここで、EBG素子の大きさとは、電磁波が減衰する方向、例えば、磁気導体として機能する表面に沿う方向のEBG要素の大きさとして解釈される。一例として、円形断面を有し、且つ、電磁放射が水平面内を伝播する垂直の棒を備えるEBG要素の場合、EBG要素の大きさは、ロッドの長さ又は断面の直径に対応する。
【0086】
図2、3、8、及び9に示されるタイプのEBG構造128は、導電性基板127上に導電性の突出要素126を備える。突出要素126は、選択的に、誘電体材料で包まれてよい。
図2、3、8、及び9の例で、導電性の突出要素は第1種類のEBG要素を構成し、選択的に非導電性材料で満たされた突出要素間の空間は、第2種類のEBG要素を構成する。突出要素126は、異なる形状に形成されてよいことを理解されたい。
図2、3、8、及び9で、突出要素は正方形の断面を有する例を示すが、突出要素は、円形、楕円形、長方形、又はより一般的な形状の断面形状で形成されてもよい。
【0087】
突出要素は、導電性基板から離れる方向に長さを有する。一般に、第2種類のEBG素子が空気である場合、突出要素の長さは、中心周波数における空気中の波長の4分の1に相当する。突出要素の上部に沿った表面は、中心周波数で完全な磁気導体に近い。突出要素は単一の周波数でたった波長の4分の1の長さであるが、この種類のEBG構造は、EBG構造が導電性表面に面する場合、電磁波が減衰する周波数帯域を提供する。非限定的な例では、中心周波数は15GHzであり、EBG構造と導電性表面との間を伝播する周波数帯域10から20GHzの電磁波は減衰される。
【0088】
別種類のEBG構造は、空洞が導入された、導電性材料の単一のスラブからなる。空洞は、空気で満たされてもよいし、又は非導電性材料で満たされてもよい。空洞は、異なる形状で形成されてもよいことを理解されたい。一例は楕円形の断面の孔であるが、孔は、円形、長方形、又はより一般的な断面形状で形成されてもよい。一例では、スラブは第1種類のEBG要素を構成し、孔は第2種類のEBG要素を構成する。一般に、長さ(導電性基板から離れる方向)は、中心周波数で波長の4分の1に相当する。
【0089】
図1に示すように、アンテナ構成100は、選択的に、プリント回路基板(PCB)層130及びシールド層140を備える。PCB層は、少なくとも1つのPCB層フィードを備え、且つ分配層120に面し、シールド層はPCB層に面する。
【0090】
PCB層130は、PCB層の片側又は両側に配置された少なくとも1つのRF集積回路(IC)を選択的に含む。少なくとも1つのPCB層フィードは、無線周波数信号をRFICからPCBの反対側、そして分配層へ転送するように配置されてよい。一例によれば、少なくとも1つのPCB層フィードは、配電層120内の対応する開口に接続された貫通孔であり、貫通孔は少なくとも1つのマイクロストリップラインによって給電される。或いは、又は組み合わせて、少なくとも1つのPCB層フィードは、分配層に面するPCB側のRFICから無線周波数信号を分配層に転送するように配置されてよい。態様によれば、少なくとも1つのPCB層フィードが、無線周波数信号をアンテナ構成100から、例えばモデムに転送するように配置される。
【0091】
シールド層140は、選択的に、シールド層140とPCB層130との中間に少なくとも1つの第2導波路を形成するように配置された第2EBG構造を備える。第2EBG構造も、動作周波数帯域内の電磁波(即ち、電磁伝播)が、少なくとも1つの第2導波路から、少なくとも1つのPCB層フィードを通る方向以外の方向に伝播することを防止するようにも配置される。第2EBG構造は、低損失及び低リーク、即ち、例えば隣接する導波路間又はPCB層上の隣接するRFIC間の、望ましくない電磁伝播が小さいことを特徴とするコンパクトな設計を可能とする。さらに、第2EBG構造は、アンテナ構成の外側の電磁放射からPCB層を保護する。
【0092】
第2EBG構造は、突出要素の反復的な構造を選択的に含み、PCB層は、接地面及び少なくとも1つの平面送電線を選択的に含み、それによって、シールド層140とPCB層130との中間に少なくとも1つの第2ギャップ導波路を形成する。少なくとも1つの第2ギャップ導波路は、例えば反転されたマイクロストリップギャップ導波路であってよい。シールド層は、異なる種類の突出要素を含んでよい。例えば、第2導波路を形成するように細くて高いピンを使用してよい。シールド層とPCB層の中間のRFICに適合するように、広くて短いピンを適合させることができる。このようなピンは、伝熱目的でRFICに接触され得る。
【0093】
態様によれば、分配層120は、第1EBG構造128の反対側に配置される第3EBG構造を含む、即ち、第3EBG構造がPCB層130に面する。これにより、分配層120とPCB層130との間にギャップ導波路を形成することができる。これらのギャップ導波路は、PCB層130上のRFICとPCB層フィードとの間で電磁信号を結合するために使用され得る。第3EBG構造は、低損失及び低リーク、即ち、例えば隣接する導波路間又はPCB層上の隣接するRFIC間の、望ましくない電磁伝播が小さいことを特徴とするコンパクトな設計を可能とする。さらに、第3EBG構造は、アンテナ構成の外側の電磁放射からPCB層を保護する。第3EBG構造は、異なるピンを含むことができる。
【0094】
図16を参照すると、本明細書に、積層構造を有するアンテナ構成100を設計する方法も開示されている。アンテナ構成は、表面境界115によって区切られる表面113を有する放射層110、及び放射層110に面する分配層120を備える。方法は、それぞれ第1スロット軸D3及び第2スロット軸D4に沿って伸びる第1スロット111及び第2スロット112を表面113上に配置することS1を含む。方法は、無線周波数信号を第1スロット111及び第2スロット112に分配するように分配層120を配置することS2も含む。方法は、分配層120と放射層110との中間に第1リッジ導波路を形成するように分配層フィード122及びリッジ121を分配層120上に配置することS3をさらに含む。方法は、湾曲区間123を介して第1区間124を第2区間125に接続することS4であって、第1区間124は第1リッジ軸D1に沿って伸び、第2区間125は第1リッジ軸D1とは異なる第2リッジ区間D2に沿って伸びるように、接続することS4も含む。方法は、第1スロットが第1リッジ軸D1から第2リッジ軸D2に向かう方向にオフセットA1されるように、第1スロット111を第1区間124に面するように配置することS5、及び、第2スロットが第2リッジ軸D2から第1リッジ軸D1に向かう方向にオフセットA2されるように第2スロット112を第2区間125に面するように配置することをさらに含む。
【0095】
選択的に、本方法は、表面113上に1つ又は複数の表面電流抑制部材116を配置することS6をさらに含み、1つ又は複数の表面電流抑制部材は、スロット111、112から表面境界115までの表面電流を抑制するように配置される。1つ又は複数の表面電流抑制部材116は、1つ又は複数の溝を備えてよい。
【0096】
ステップS1-S6の一部又は全部は、最適化方式で反復的に実行されてよい。ステップS5では、例えば、オフセットA1及びA2を、可能な限り低いSSLを目標とする最適化スキームにおける最適化変数として使用され得る。例えば、放射パターンの形状に関して、多くの異なる最適化目標が可能である。最適化は、最適化パラメーターの異なる値で異なるアンテナ構成をシミュレートすることで実行できる。
【0097】
本方法は、分配層120上に第1電磁バンドギャップ(EBG)構造128を配置することS7であって、リッジ及び第1EBG構造は、分配層120と放射層110との中間に少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路を形成するように、また、第1EBG構造は、動作周波数帯域内の電磁波(即ち、電磁伝播)が、少なくとも1つの第1リッジギャップ導波路から、少なくとも1つの分配層フィード122及び少なくとも2つのスロット111、112を通る方向以外の方向に伝播することを防止するように、配置することS7をさらに含んでよい。選択的に、第1EBG構造128は、突出要素126の反復的な構造を含む。
【国際調査報告】