IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アストラヴェウスの特許一覧

<>
  • 特表-マイクロ流体液体送出装置 図1
  • 特表-マイクロ流体液体送出装置 図2
  • 特表-マイクロ流体液体送出装置 図3
  • 特表-マイクロ流体液体送出装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】マイクロ流体液体送出装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 11/28 20060101AFI20230712BHJP
   G01F 13/00 20060101ALI20230712BHJP
   G01F 22/02 20060101ALI20230712BHJP
   G01F 25/10 20220101ALI20230712BHJP
   G05D 16/04 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
G01F11/28 A
G01F13/00 321Z
G01F22/02
G01F25/10 Q
G05D16/04 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579926
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2021067045
(87)【国際公開番号】W WO2021259956
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】20305711.2
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244012
【氏名又は名称】アストラヴェウス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ローレント,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,シュエ
【テーマコード(参考)】
5H316
【Fターム(参考)】
5H316AA13
5H316BB01
5H316DD01
5H316DD07
5H316EE04
5H316EE21
5H316EE33
5H316GG04
5H316GG06
(57)【要約】
本発明は、9mm未満の断面および50mL未満の内部容積を有するチャネルと、ガス質量流量計と、圧力制御ユニットとを備える液体送出装置に関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体送出装置(1)であって、
i.送出される液体を収容するのに好適なチャネル(2)であって、前記チャネル(2)は、9mm未満の内部断面および5×10-5未満、好ましくは10-5未満の内部容積Vchannelを有し、前記チャネル(2)は、入口(21)、出口(22)および弁(23)を有する、チャネル(2)と、
ii.前記チャネル(2)の入口(21)に接続されたガス質量流量計(3)と、
iii.前記ガス質量流量計(3)にガスを通過させることによって前記チャネル(2)内の圧力を制御するのに好適な圧力制御ユニット(4)と、
を備える、液体送出装置(1)。
【請求項2】
前記ガス質量流量計(3)と前記チャネル(2)の入口(21)との間に接続されたフィルタ(5)をさらに備える、請求項1に記載の液体送出装置(1)。
【請求項3】
前記ガス質量流量計(3)の内部および前記ガス質量流量計(3)と前記チャネル(2)の入口(21)との間の接続部の内部容積Vconnectは、2×10-5未満であり、好ましくは10-5未満である、請求項1または2に記載の液体送出装置(1)。
【請求項4】
前記ガス質量流量計(3)は、較正液圧抵抗器(32)と、前記較正液圧抵抗器(32)の両端間の圧力差を測定する高分解能差圧センサ(31)とを備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項5】
前記チャネル(2)は、0.1mmと3.4mmとの間の直径を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項6】
前記チャネル(2)は、耐食材料、好ましくは親水性耐食材料、または親水性および/もしくは防汚フィルムでコーティングされた耐食材料で作製される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項7】
channelおよびVconnectの合計の相対変動は、500ミリバールの加圧下で10%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項8】
前記チャネル(2)および前記ガス質量流量計(3)は乾燥しており、周囲圧力を100ミリバール上回るガスで加圧され、前記弁(23)が閉じられているときのガス漏出率は、好ましくは1μL/s未満、より好ましくは0.3μL/s未満、さらにより好ましくは0.1μL/s未満である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項9】
液体送出方法であって、
a)入口(21)と、出口(22)と、弁(23)と、9mm未満の断面と、5×10-5未満、好ましくは10-5未満の内部容積Vchannelとを有するチャネル(2)を準備するステップであって、前記チャネル(2)の入口(21)はガス質量流量計(3)に接続され、前記チャネル(2)は前記入口側にガスを、および前記出口側に送出される液体を収容するステップと、
b)液体が前記出口(22)を通して前記チャネル(2)から送出されるように、圧力制御ユニット(4)を用いて前記チャネル(2)内の圧力を設定するステップと、
c)前記入口(21)を通して前記チャネル(2)に導入されたガスの質量を前記ガス質量流量計(3)で測定するステップと、
d)気体の状態方程式を使用して送出溶液の量を決定するステップと、
を含む、液体送出方法。
【請求項10】
ステップb)、ステップc)およびステップd)は繰り返される、請求項9に記載の液体送出方法。
【請求項11】
前記ガス質量流量計(3)内部および前記ガス質量流量計(3)と前記チャネル(2)の入口(21)との間の接続部の容積Vconnectと、前記チャネル(2)内に収容されるガスの容積との合計である容積Vgasを測定する測定ステップをさらに含む、請求項9または10に記載の液体送出方法。
【請求項12】
前記測定ステップは、少なくとも2回繰り返される、請求項11に記載の液体送出方法。
【請求項13】
前記測定ステップは、
α.前記弁(23)を閉じるサブステップと、
β.前記圧力制御ユニット(4)を用いて前記チャネル(2)内の圧力を設定するサブステップと、
γ.前記入口(21)を通して前記チャネル(2)に導入されたガスの質量を前記ガス質量流量計(3)で測定するサブステップと、
δ.気体の状態方程式を使用して容積Vgasを決定するサブステップと、
を含む、請求項11または12に記載の液体送出方法。
【請求項14】
前記測定ステップは、
・ステップ(a)とステップ(b)との間の較正として、または
・ステップ(a)とステップ(b)との間の較正として、およびステップ(d)の後の制御として、または
・ステップ(b)、ステップ(c)およびステップ(d)が繰り返される場合、ステップ(a)とステップ(b)との間の較正として、およびステップ(d)の後の中間制御として
行われる、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の液体送出方法。
【請求項15】
液体吸引方法であって、
(a)入口(21)と、出口(22)と、弁(23)と、9mm未満の断面と、5×10-5未満、好ましくは10-5未満の内部容積Vchannelとを有するチャネル(2)を準備するステップであって、前記チャネル(2)の入口(21)はガス質量流量計(3)に接続され、前記チャネル(2)は前記入口側にガスを、および前記出口側に送出される液体を収容するステップと、
(b)液体が前記出口(22)を通して前記チャネル(2)内に吸引されるように、圧力制御ユニット(4)を用いて前記チャネル(2)内の圧力を設定するステップと、
(c)前記入口(21)を通して前記チャネル(2)から抜き出されたガスの質量を前記ガス質量流量計(3)で測定するステップと、
(d)気体の状態方程式を使用して、吸引される液体の量を決定するステップと、
を含む、液体吸引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正確な量のマイクロ流体状態の液体、特に粒子懸濁液または細胞懸濁液を送出するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正確な量の液体を送出することは、バイオ医薬品産業を含むバイオ産業において最も重要である。液体が薬物、細胞小器官または細胞などの高活性成分を含有する場合、適切な量を計量して送出しなければならない。有機体の応答が、投与される活性物質の用量に対して線形でない治療において、量の制御は、10μL以下の精度で重要である。さらに、マイクロ流体システムは、このような貴重かつ活性の成分の取り扱いに関連するコストおよび精度の問題に対処するために、バイオ産業において使用されることが多くなっている。マイクロ流体システムが使用される場合、典型的には、約10μL未満の量の精度、時にははるかに良好な精度を制御すること、および反応性が高く、かつ精密な流量制御を実現することが必要である。
【0003】
流体量の比較的正確な送出は、精密容積ポンプによって実現され得る。しかしながら、容積ポンプは、典型的には、流体およびその成分を機械的応力に曝し、機械的応力は、流体またはその成分の損傷をもたらし得る。さらに、精密容積ポンプは、一般に、ポンプの交換不可能な部品表面と、二次汚染源である流体との直接接触を伴う。
蠕動ポンプは、容積ポンプとして機能し、流体と接触するチューブの使い捨て部品の使用を可能にするが、精密なポンピングにはあまり適しておらず、扱われる流体にかかる高い機械的応力を引き起こし得る。これらのポンプは、典型的には、正確かつ反応性の高い流量制御を提供するものではなく、例えば、シリンジポンプは、典型的には、反応性が高くなく、蠕動ポンプまたは膜ポンプは、配置するのに不利であり、かつ典型的には、反応性を低減させる減衰システムの非存在下で、拍動流を生成する。
【0004】
結果として、当該技術分野では、特にマイクロ流体システムへの流体の正確な送出は、流体流量測定およびガス圧コントローラの閉ループ制御のために使用される下流側の流体流量センサと共に、送出流体を加圧するガス圧コントローラに基づいて行われることがより一般的である。ガス圧コントローラおよび流体流量センサは、実際に反応性が高く、それらを組み合わせて使用することにより、良好に制御された流量および迅速な応答時間で正確な流体投与を実現することができる。しかしながら、これらのシステムには不都合な問題がある。
・精密な流体流量センサは高価であり、特に、これらの用途で使用される流量範囲において高感度であるものは高価である。これらのセンサは、較正を必要とし、時間の経過とともに著しいドリフトの影響を受ける場合がある。
・主にコストのために、流体流量センサは使い捨て部品として使用することができず、十分に感度の高い流量センサは流体との直接接触を必要とする。このことにより、バイオ医薬品産業において典型的に許容できない程度の二次汚染が生じる。
【0005】
米国特許第6499515号は、マイクロポンプによって作動されて負圧または正圧を発生させる、マイクロリットルおよびサブマイクロリットル範囲の液体量を配分するガスクッション配分マイクロシステムを開示している。
【0006】
流量センサ情報を必要とせずに圧力コントローラで流れを制御するために、システム使用前の較正手順を使用して、一定の出力圧力および一定の液圧抵抗を有するシステムを使用することが可能である。しかしながら、特に流体中の反応、細胞増殖、時にはいくつかのマイクロチャネルの目詰まりなどにより、1ロットの生物由来製品の製造中に液圧抵抗が一定であることは稀である。
【0007】
さらに、生物由来製品を含有する貴重な流体を、成分回収に都合が良いように小断面容器内に貯蔵することが通常必要である。そのような小断面容器では、特に扱われる流体中に含有される物質の堆積による界面化学特性の粗さおよび変動性が、圧力および不規則なラプラス圧による不規則なメニスカス発達につながり、下流側の流量センサによるフィードバックループなしでの高精度制御の実現を実際に不可能にする。
【0008】
本発明は、ミリ流体チャネルまたはマイクロ流体チャネルに導入されるガスの質量およびこのガスの圧力を測定するための装置に関するこれらの問題のうちのいくつかを克服することを目的とする。次いで、気体の状態方程式を使用して、導入されたガスが占める容積を非常に正確に測定することが可能であり、これはチャネル内で変位した液体の容積に相当する。この装置では、10μL未満の量の精度で液体を送出することができる。
本発明は、を目的とする。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、
i.送出される液体を収容するのに好適なチャネルであって、前記チャネルは、9mm未満の内部断面および5×10-5未満、好ましくは10-5未満の内部容積Vchannelを有し、前記チャネルは、入口、出口および弁を有するチャネルと、
ii.前記チャネルの入口に接続されたガス質量流量計と、
iii.前記ガス質量流量計にガスを通過させることによって前記チャネル内の圧力を制御するのに好適な圧力制御ユニット(4)と、
を備える液体送出装置に関する。
【0010】
一実施形態では、液体送出装置は、ガス質量流量計とチャネルの入口との間に接続されたフィルタを備える。
【0011】
一実施形態では、ガス質量流量計の内部およびガス質量流量計とチャネルの入口との間の接続部の内部容積Vconnectは、2×10-5未満、好ましくは10-5未満である。
【0012】
一実施形態では、ガス質量流量計は、較正液圧抵抗器と、較正液圧抵抗器の両端間の圧力差を測定する高分解能差圧センサとを備える。
【0013】
一実施形態では、チャネルは0.1mmと3.4mmとの間の直径を有する。
【0014】
一実施形態では、チャネルは、耐食材料、好ましくは親水性耐食材料、または親水性および/もしくは防汚フィルムでコーティングされた耐食材料で作製される。
【0015】
一実施形態では、液体送出装置(1)のVchannelおよびVconnectの合計の相対変動は、500ミリバールの加圧下で10%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満である。
【0016】
一実施形態では、チャネルおよびガス質量流量計は乾燥しており、周囲圧力を100ミリバール上回るガスで加圧され、弁が閉じられているときの液体送出装置のガス漏出率は、好ましくは1μL/s未満、より好ましくは0.3μL/s未満、さらにより好ましくは0.1μL/s未満である。
【0017】
本発明はさらに、
a)入口と、出口と、弁と、9mm未満の断面と、5×10-5未満、好ましくは10-5未満の内部容積Vchannelとを有するチャネルを準備するステップであって、前記チャネルの入口はガス質量流量計に接続され、前記チャネルは入口側にガスを、および出口側に送出される液体を収容するステップと、
b)液体が出口を通してチャネルから送出されるように、圧力制御ユニットを用いてチャネル内の圧力を設定するステップと、
c)入口を通してチャネルに導入されたガスの質量をガス質量流量計で測定するステップと、
d)気体の状態方程式を使用して送出溶液の量を決定するステップと、
を含む液体送出方法に関する。
【0018】
一実施形態では、液体送出方法のステップb)、ステップc)およびステップd)は繰り返される。
【0019】
一実施形態では、液体送出方法は、ガス質量流量計内およびガス質量流量計とチャネルの入口との間の接続部の容積Vconnectと、チャネル内に収容されるガスの容積との合計である容積Vgasを測定する測定ステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、測定ステップは、少なくとも2回繰り返される。
【0020】
一実施形態では、測定ステップは、
α.弁を閉じるサブステップと、
β.圧力制御ユニットを用いてチャネル内の圧力を設定するサブステップと、
γ.入口を通してチャネルに導入されたガスの質量をガス質量流量計で測定するサブステップと、
δ.気体の状態方程式を使用して容積Vgasを決定するサブステップと、
を含む。
【0021】
一実施形態では、測定ステップは、
・ステップ(a)とステップ(b)との間の較正として、または
・ステップ(a)とステップ(b)との間の較正として、およびステップ(d)の後の制御として、または
・ステップ(b)、ステップ(c)およびステップ(d)が繰り返される場合、ステップ(a)とステップ(b)との間の較正として、およびステップ(d)の後の中間制御として
行われる。
【0022】
本発明はさらに、
a.入口と、出口と、弁と、9mm未満の断面と、5×10-5未満、好ましくは10-5未満の内部容積Vchannelとを有するチャネルを準備するステップであって、前記チャネルの入口はガス質量流量計に接続され、前記チャネルは入口側にガスを、および出口側に送出される液体を収容するステップと、
b.液体が出口を通してチャネル内に吸引されるように、圧力制御ユニットを用いてチャネル内の圧力を設定するステップと、
c.入口を通してチャネルから抜き出されたガスの質量をガス質量流量計で測定するサブステップと、
d.気体の状態方程式を使用して、吸引される液体の量を決定するステップと、
を含む液体吸引方法に関する。
定義
【0023】
本発明において、以下の用語は以下の意味を有する。
・「気体の状態方程式」とは、質量、圧力、容積および温度の間の関係を定義する熱力学法則を指す。理想気体の法則は、特定の気体の状態方程式である。他の気体の状態方程式としては、特に、ビリアルモデル、ファンデルワールスモデルまたはクラウジウスモデルが挙げられる。
・「長手方向繊維」は、考慮される流体要素の中心長手方向軸を指すか、または流体要素の長手方向軸が明確でない場合、流動操作中の流体要素内の流れ方向を指す。
・「断面」は、考慮される流体要素の長手方向繊維に垂直な断面を指す。
・「圧力パターン」は、流量制御のために装置に加えられる圧力対時間の関数を指す。
【0024】
本発明の特徴および利点は、単なる例として添付図面を参照しながら示されている、本発明の装置の実施形態についての以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の装置の一実施形態を示す概略図である。
図2】本発明の装置の別の実施形態を示す概略図である。
図3】本発明の方法の一実施形態における時間(s)の関数として送出液体の量(μL)を示すグラフである。
図4】Vgasを定義する図1の拡大図である。液体で満たされた容積は斜線で示され、ガスで満たされた容積Vgasは円で示され、ガスおよび液体は界面Iで分離される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
液体送出装置:チャネル(図1
本開示の装置1は、内部容積Vchannelおよびその長手方向繊維の長さLを有するチャネル2を備える。チャネル2の一端は入口21で終端し、チャネル2の他端は出口22で終端する。内部容積Vchannelおよび長さLの限界は、図1において線B(入口21)および線C(出口22)で示されている。
【0027】
弁23がチャネル2上に配置され、チャネル2の開閉を可能にする。弁23は、閉じられたときに出口22からの流体の流出を完全に遮断する。弁23は、チャネル2上の任意の場所に、好ましくは出口22(例えば、出口22の下流側または出口22の上流側)に位置し得る。複数の出口を備える変形形態では、適切な弁機構は、同様に、出口22が閉じられたときに出口22からの流体の流出を完全に遮断することを可能にするものでなければならない。弁23は、例えば、ピンチ弁タイプの弁であり得る。この場合、チャネルはエラストマーチューブセグメントによって形成され得る。あるいは、弁23は、圧力差によって作動される膜ベースの弁であり得、結局は、マイクロ流体タイプの弁であり得る。弁23は、チャネル2の容易な交換を可能にすることが好ましい。
【0028】
チャネル2は、その長手方向繊維に沿った任意の所与の点において、9mm未満の表面積Sの内側断面と、同じ断面における2点間の最大距離に対応する内径Dと、S/Dとして計算される寸法Hとを有する。いくつかの実施形態では、チャネル2は、0.1mmと3.4mmとの間、好ましくは0.2mmと2mmとの間、より好ましくは0.4mmと1mmとの間の内径Dを有する円筒管である。
【0029】
内部容積Vchannelは、5×10-5未満、好ましくは10-5未満である。内部チャネルの低容積は、10μL未満の送出精度を実現するための重要なパラメータである。
【0030】
図1に示されている実施形態では、装置のチャネル2は、圧縮されたコイル構造を呈し、そのため、その長さLは、チャネルが占める容積の2点間の最大距離よりもはるかに大きい、すなわち、少なくとも2倍である。チャネルの圧縮は、人間工学のために必要である。実際、チャネル長Lは、典型的には、例えば、操作者の手の寸法と比較して大きい。チャネルの圧縮はまた、絡み合いまたは衝突のリスクを低減する。好ましくは、その長手方向に沿ったチャネル2の曲率半径は、チャネル2の内径Dの3倍より大きい。より好ましくは、その長手方向に沿ったチャネル2の曲率半径は、チャネル2の内径Dの5倍より大きい。
【0031】
いくつかの実施形態では、チャネル2は、周囲圧力を少なくとも500ミリバール上回る水による加圧を維持する。このことは、500ミリバールの加圧が通常動作で得られるので機能的に重要であり、そのため、このような加圧は、漏出のリスクおよび送出される液体の変化のリスクを回避するために、チャネル壁全体の破裂または重大な透過を生じるべきではない。特に、そのような加圧条件下では、弁23が閉じられている場合、漏出または透過流量は、水で満たされた全チャネル容積の1mL当たり60μg/min未満である必要がある。
【0032】
チャネル2は、周囲圧力を最大500ミリバール上回るガス加圧でごくわずかなガス漏出を示すのが好ましい。このことは、500ミリバールの加圧が通常動作で得られるので機能的に重要であり、少量のガス漏出を識別して数値的に補正することは困難であり、送出される液体の量の誤差につながる。チャネル2は乾燥しており、周囲圧力を100ミリバール上回るガスで加圧され、弁23が閉じられている(すなわち、チャネル出口22からの流体の流出がない)ときのガス漏出率は、好ましくは1μL/s未満、より好ましくは0.3μL/s未満、さらにより好ましくは0.1μL/s未満である。
【0033】
さらに、液体またはガスによるそのような加圧は、ガス容積の増加を変位した液体容積として解釈して、液体送出の精度を低下させることを回避するために、内部チャネル容積Vchannelの10%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満のVchannelの変動をもたらすのが好ましい。500ミリバールで数パーセントの容積変化にもかかわらず、約1%またはさらに1%未満の高い精度の液体送出を実現するために、様々な軽減戦略が可能であり、それらについては方法のセクションで説明する。
【0034】
作動圧力によるVchannel容積変動を低減するために、チャネル2は、好ましくは、比較的硬質であり、少なくともその長さの半分にわたって、軟質エラストマーではなく剛性材料から作製される。最小限のエラストマー材料部分を弁の統合に使用して、システムの使いやすさおよび性能への影響を低減することができる。
【0035】
変位容積の測定における精度の著しい低下を回避するために、装置の使用中に塑性変形または疲労が生じないことが有利である。したがって、好ましい実施形態では、使用中の(すなわち、使用圧力での)管変形率は、材料の降伏変形率よりもはるかに小さい変形率である必要があり、材料は、非常に低い粘性を有する、理想的には粘性を有さない弾性挙動を有するように選択される必要がある。しかしながら、長期間にわたって生じる塑性変形は、定期的な補正較正によって補償され得る。
【0036】
より高い圧力に対する耐性、加圧下でのより少ない漏出または透過流量、および加圧中のチャネル容積のより小さい変動が、一般に好ましい。
【0037】
いくつかの実施形態では、チャネル2は、液体を扱うのに好適な耐食材料で作製される。好ましくは、耐食材料は親水性である。あるいは、耐食材料は、親水性および/または防汚フィルムでコーティングされる。これらの特性は、ラプラス圧を低下させるように、送出される液体とチャネル2との間の表面張力を低下させるのに非常に有用である。加えて、親水性表面は、細胞などの生物学的粒子の接着を阻害し、したがって、チャネル内部の細胞凝集体の蓄積などの問題を制限する。防汚フィルムは同じ利点をもたらす。
【0038】
実施形態では、圧縮されたチャネル部分を支持するために支持体(図示せず)が使用されることが一般に好ましく、例えば、剛性シリンダが使用され、チャネル(例えば、チューブから作製される)に接着され得る。チューブはまた、例えば、その形状を保持する接着剤を用いて、その圧縮された形状で接着され得る。チューブはさらに、円筒形または他の人間工学的外周縁を有する容器内でコイル状に巻かれ得る。チューブはまた、一定間隔のクランプによって支持体に固定され得る。他の実施形態では、チャネルは、1つまたはいくつかの剛性境界部分で形成され、場合によっては固定具の必要性をなくす。チャネルの形状を維持するそのような手段は、特にチャネルの偶発的な脱圧縮のリスクを回避することによって、装置の人間工学を改善する。さらに、圧縮されたチャネルの一部の配置を維持することは、流れが生じる幾何学形状を安定させ、したがって、液体送出に影響を及ぼす幾何学形状依存効果、例えば、流れパターン、チャネル配向に対する沈降力の向き(送出される液体が懸濁液である場合)もまた、安定する。
液体送出装置:ガス質量流量計(図1
【0039】
本開示の装置1は、ガス質量流量計3(図1において点線で区切られている)を備える。
【0040】
ガス質量流量計3は、チャネル2の入口21に接続されており、ガス質量流量計3に流れるガスの質量を正確に測定する。
【0041】
送出液体の量の精度に関して、ガス質量流量計3の内部およびガス質量流量計3からチャネル2への接続部におけるガスの内部容積Vconnectが重要である。内部容積Vconnectの限界は、図1において線B(入口21)および線A(ガス質量流量計の内側)で示されている。
【0042】
実際に、ガス質量流量計3によって測定された質量の変動は、ガス質量流量計3の内部およびガス質量流量計3とチャネル2の入口21との間の接続部の容積Vconnectとチャネル2に収容されるガスの容積との合計である、全ガス容積(Vgas)を決定するために使用される。通常の条件では(すなわち、装置の弾性を補償するために専用の較正が行われる場合を除いて)、チャネル2内の液体容積Vliquidの変動は、Vchannelが一定である場合、ΔVliquid=-ΔVgasとなる。Vconnectが内部容積Vchannelと比較して小さい場合、送出液体の量の推定における誤差は最小限に抑えられる。好ましくは、ガス質量流量計3の内部およびガス質量流量計3とチャネル2の入口21との間の接続部の内部容積Vconnectは、2×10-5未満であり、より好ましくは10-5未満である。
【0043】
ガス質量流量計3は、周囲圧力を最大500ミリバール上回るガス加圧でごくわずかなガス漏出を示すのが好ましい。このことは、500ミリバールの加圧が通常動作で得られるので機能的に重要であり、少量のガス漏出を識別して数値的に補正することは困難であり、送出される液体の量の誤差につながる。ガス質量流量計3は乾燥しており、周囲圧力を100ミリバール上回るガスで加圧されるときのガス漏出率は、好ましくは1μL/s未満、より好ましくは0.3μL/s未満、さらにより好ましくは0.1μL/s未満である。
【0044】
さらに、ガスによるそのような加圧は、ガス容積の増加を変位した液体容積として解釈して、液体送出の精度を低下させることを回避するために、内部容積Vconnectの10%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満のVconnectの変動をもたらすのが好ましい。
【0045】
当業界で知られている、任意のタイプのガス質量流量計3が使用され得る。ただし、精度が高く、応答時間が短いことを特徴とするものが好ましい。
【0046】
いくつかの実施形態では、ガス質量流量計3は、較正液圧抵抗器32と、較正液圧抵抗器32の両端間の圧力差を測定する較正高分解能差圧センサ31とを備える。
【0047】
較正液圧抵抗器32は、ガス流に応答して圧力差を生成することを目的としたガス流のための抵抗性導管を備える。抵抗性導管は、較正液圧抵抗器内を流れるガスが強制的に通される、小断面で比較的長い長さを有するチャネルまたは管であり得る。抵抗性導管は、例えば、十分に制御されたガス流、すなわち、高いガス純度、十分に制御された温度、圧力および流量の下で、その両端間の圧力差を測定することによって較正される。あるいは、両端におけるガスの温度、ガス純度および圧力が制御され、ガス流量が測定され得る。しかしながら、抵抗性導管の幾何学的形状に基づいて較正液圧抵抗器32の液圧抵抗を決定することはより困難であり、推奨されない。実際に、約1パーセントの内径の製造または測定における誤差は、液圧抵抗がチャネル直径のマイナス4乗に依存するので、4パーセントより大きい液圧抵抗較正における誤差をもたらす。
【0048】
好ましくは、抵抗性導管は耐食材料で作製される。実際に、腐食は、管の内面の変化をもたらし、幾何学的変形および液圧抵抗値の変化を引き起こし、精度を低下させ、繰り返し較正する必要性を生じさせる。ステンレス鋼および PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、較正液圧抵抗器の抵抗性導管に好適な材料である。
【0049】
さらに、温度センサ33が、較正液圧抵抗器に追加され得る。温度センサにより、質量流量測定のためにガス密度に対する温度の影響を考慮に入れることが可能になり、ひいては測定精度を高める。
【0050】
高分解能差圧センサ31は、有利には、100msより短い、好ましくは10msより短い応答時間を有する。そのような短い応答時間により、ガス質量流量は、低ドリフトで連続的に監視され得、圧力および流量の迅速な変化は、正確に対処され得る。
【0051】
高分解能差圧センサ31は、有利には、5μg/s未満、好ましくは1μg/s未満のガス質量流量測定値の再現性を有する。
液体送出装置:圧力制御ユニット(図1
【0052】
本開示の装置1は、圧力制御ユニット4(図1において点線で区切られている)を備える。
【0053】
圧力制御ユニット4は、2つの機能を有する。第一に、圧力制御ユニット4は、チャネル2に加わる圧力を圧力センサ41で測定する。ガス質量流量計3が較正液圧抵抗器32を備える場合、ガスが流れている間、チャネル2内の圧力は、高分解能差圧センサ31を用いて測定された、較正液圧抵抗器32によって引き起こされる圧力損失を補正して推定される。第二に、圧力制御ユニット4は、圧力パターンに従って特定の圧力を加える。圧力源42は、ガスをガス質量流量計3に通過させて、その後チャネル2内に流す。ディスパッチャ43は、圧力制御ユニットを圧力センサ41および較正ガス質量流量計3に接続する。
液体送出装置:変形形態(図2
【0054】
液体送出の精度は、特にチャネル2およびガス質量流量計3について、装置の剛性および流体漏出によって影響される。
【0055】
チャネル2およびガス質量流量計3は、周囲圧力を最大500ミリバール上回るガス加圧でごくわずかなガス漏出を示すのが好ましい。チャネル2およびガス質量流量計3は乾燥しており、周囲圧力を100ミリバール上回るガスで加圧され、弁23が閉じられている(すなわち、チャネル出口22からの流体の流出がない)ときのガス漏出率は、好ましくは1μL/s未満、より好ましくは0.3μL/s未満、さらにより好ましくは0.1μL/s未満である。
【0056】
さらに、ガスによる500ミリバールのそのような加圧は、ガス容積の増加を変位した液体容積として解釈して、液体送出の精度を低下させることを回避するために、内部チャネル容積Vchannelおよび内部容積Vconnectの合計の10%未満(すなわち、10%未満のVchannelおよびVconnectの合計の相対変動)、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満のVchannelおよびVconnectの合計の変動をもたらすのが好ましい。
【0057】
本開示の装置1は、図2に示すように、追加の要素を備え得る。
【0058】
ガス質量流量計3とチャネル2の入口21との間に、フィルタまたは含有量センサなどの追加の要素が追加され得る。実際には、そのような要素の内部容積は、この内部容積が内部容積Vconnect(内部容積Vconnectは、液体送出精度のために可能な限り小さいままである)に含まれるので、可能な限り小さくする必要がある。
【0059】
フィルタ5を追加して、加圧ガスに含有される不純物(塵埃、油微小液滴など)がチャネル2に導入されるのを回避することができる。フィルタ5は疎水性フィルタであり、したがってフィルタ内部での蒸気の凝縮を回避することができる。フィルタ5は、典型的には0.2μm未満の細孔を有し、ガス質量流量計3内の扱われる液体の偶発的な流れを阻止するために疎水性材料で作製される。
【0060】
いくつかの変形形態では、ガス質量流量計3の汚染およびその精度への潜在的な影響を回避するために、小さい孔径の追加のフィルタを圧力源42とディスパッチャ43との間に追加することができる。さらに、圧力源42は、好ましくは、周知の組成のクリーンなガスを供給し、ガスは、好ましくは、オイルミストや浮遊微小粒子を含まない。
【0061】
センサ6は、界面の移動を検出するように構成される。このセンサは、チャネルの出口22へのガスの進入またはフィルタ5および/またはガス質量流量計3への液体の進入を防ぐ。つまり、チャネル2に沿って配置された2つのセンササブユニット間の信号差が、ガスと液体との間の界面を示す所定の閾値を超えるとすぐに、チャネル2内の流れが停止される。
【0062】
具体的には、一実施形態では、センサ6は感光性センサであり、チャネル2は透明材料で作製される。この実施形態では、センサ6は、チャネル2の第1の側に一組の光源を備える。チャネル2の第2の面において、センサ6は、一組の光検出器を備える。一組の光源は、一組の光検出器に面している。センサ6は、光源を制御し、光検出器信号を測定する電子機器をさらに備える。光源は一定の割合で発光するので、光検出器によって受け取られるパワーは、光源と光検出器との間の流体の有無によって変調される。このことにより、センサ6による流体検出が可能となる。光源は赤外または可視範囲で発光する電界発光ダイオードであり得、光検出器はフォトダイオードであり得る。より良い精度のために、センサ6は、2対の対向する光源および検出器を備え得る。このことにより、流体先端(すなわちメニスカスまたは界面)の位置が2対の光源および検出器間に位置する時点を検出することが可能になる。図2に示されているこのタイプのセンサにより、流体先端の位置を正確に知ることが可能になり、非常に正確かつ精密な方法で流体を流すことが可能になる。
【0063】
別の実施形態では、センサ6は、音響源および音響検出器、または高周波電磁波源およびアンテナを備え得る。
【0064】
パージライン8は、2回の連続する流体送出の間にチャネル2内に残っている流体の廃棄を可能にする。第1の送出の終わりに、いくらかの液体が入口21とラインCとの間に残り得る。残りの液体は、液体送出装置1によって送出される次の流体による汚染を回避するために、パージライン8を通して容易に押し流される。
【0065】
気泡トラップ9をチャネル2に沿って追加して、例えば残留液膜に起因するまたは液体メニスカスの激しい動きに起因する、液体メニスカスの後退に続いて形成され得る気泡を排除することができる。そのような気泡トラップは、システム機能の中断を回避するために著しいガス漏出を生じさせる必要はなく、したがって、気泡を保持し、それらの合体を誘発し、トラップを通したメニスカス後退後に気泡を主要ガス容積と合体させる、固定容積トラップであることが好ましい。
【0066】
あるいは、別のセンサ6を気泡トラップ9の代わりに追加して、能動的気泡トラップの役割を果たすことができる。この場合、センサ6によって検出された気泡は、パージライン8を通して前記気泡を除去するために、検出された気泡サイズに応じてパージライン8の作動をトリガし得る。
【0067】
熱バランサ44は、チャネル2に注入されるガスの温度を制御するために追加され得る。実際に、容積推定の精度は、ガス密度に影響を及ぼす温度変動によって制限される。本発明の装置内部のガスの温度が一定であるほど、精度は良くなる。
【0068】
同じ目的のために、本明細書において開示される装置全体は、気体の状態方程式を使用するときの誤差につながり得る温度変動を回避するために、サーモスタット制御キャビネット7に含まれ得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、いくつかの較正液圧抵抗器32がガス質量流量計3において使用され得る。特に、較正液圧抵抗器は、差圧センサの圧力範囲で作動することによって高精度を維持しながら、異なる範囲での操作を可能にするために、異なる値の液圧抵抗を有し得る。したがって、同じガス質量流量計3は、較正液圧抵抗器32を適切に選択することにより、異なる流量範囲において高い精度で作動するために使用され得る。この選択は、弁35の開閉によって行われる。
【0070】
いくつかの較正液圧抵抗器32が使用される場合、それらの温度均一性を高め、温度感知の精度の向上につながるように、熱ブリッジ34が較正液圧抵抗器の周りに有利に追加される。
液体送出方法:連続または逐次測定
【0071】
送出液体の量を正確に測定するために、本発明の装置は、以下のように操作され得る。
【0072】
圧力制御ユニット4は、圧力パターンに応じてチャネル内の圧力を設定する。チャネル内の圧力は、圧力センサ41によって連続的に測定される。ガス質量流量計3が抵抗式である場合、すなわち、著しい圧力降下を生じやすい場合、ガス質量流量計3における差圧測定値は、チャネル2内の圧力の値を補正するために使用される。
【0073】
また、ガス質量流量計3は、ディスパッチャ43からチャネル内に導入されたガスの質量を連続的に測定する。
【0074】
時間に関する気体の状態方程式の微分形式を使用して、ガス質量流量計3内部およびガス質量流量計3とチャネル2の入口21との間の接続部の容積Vconnectとチャネル2内に収容されるガスの容積との合計である容積Vgasを連続的に計算することができる。図4は、円で埋められた領域として装置内の容積Vgasを強調表示している。液体中に気泡が存在する場合、それらの容積はVgasに含まれる。
理想気体の法則を用いると、
【数1】
となる。この場合、
【数2】
である。
【0075】
式(I)において、質量変動はガス質量流量計3によって連続的に測定され、温度変動は温度センサ33によって監視され、圧力変動は圧力センサ41によって測定される。経時的な式(I)の連続積分によって、Vgasおよび送出液体の容積を推定することが可能になる。
【0076】
この方法の精度は、一方では、圧力、容積および温度の初期値の認識によって制限され、他方では、ドリフト(測定誤差の蓄積)につながるセンサ(圧力およびガス質量)の精度によって制限される。
【0077】
通常、式(I)における温度の変動に関連する項が相殺されるように、装置はサーモスタット制御キャビネット7内に配置される。
【0078】
様々な圧力パターンが、圧力制御ユニット4によって加えられ得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、圧力は、圧力を低下させることによって流れが停止されるまで一定に設定され、液体が連続的に送出される。圧力変動速度は、悪影響、特に気泡形成を回避するために意図的に制限され得る。図3は、一定の圧力について、送出された量(μL)対時間(秒)を示す。この流体送出のために、チャネル2内の流れを制御する弁23が最初に閉じられ、次いで圧力制御ユニット4によって圧力が50ミリバールに設定される。弁23が開かれると(7秒)、流れ始め、経時的な式(I)の積分によって連続的に測定される。500μLの目標に達すると、弁23が閉じられる。この実験では、送出された量を別の方法で別途に測定し、501μLの量が得られた。500μL(すなわち、約0.2%)の目標に対する約1μLの誤差は、著しく小さく、非常に正確な量の流体を送出する装置の能力を実証している。
【0080】
他の実施形態では、ステップ圧が印加され、次いで、チャネル内の液体の変位によって圧力が緩和する。緩和した後、さらなるステップ圧が印加され、連続的な小さな圧力の印加によって液体が送出される。
【0081】
他の実施形態では、印加圧力および流量は、注入量の最大精度に達するように、送出の終わりに向かって低減される。実際に、送出の終わりに速い流れを急停止することにより、構成部材および制御モジュールの応答時間に起因して、より一層の不正確さが生じる。
【0082】
圧力パターンの任意の組み合わせが使用され得る。
液体送出方法:測定ステップ
【0083】
上記で説明したようにチャネル2内のガス容積の変動を測定するために、液体送出を制御するために考案された装置部分およびチャネルにおけるガス容積(すなわち、Vgas)を正確に測定すること、特に、連続積分のドリフトを低減するために液体送出の前の初期Vgasを測定することが有利である。
【0084】
操作中はいつでも、チャネル2内の流れを制御する弁23は閉じられ得る。次に、決定された圧力増加ΔPが圧力制御ユニット4によって印加され、チャネル2へのガス質量Δmの導入をもたらし、前記ガス質量はガス質量流量計3によって測定される。チャネルが弁23によって閉鎖されているので、液体およびチューブが非圧縮性であると仮定すると、容積Vgasは変化しない。最後に、等温条件で気体の状態方程式を適用し、液体およびチューブが非圧縮性であると仮定することによって、容積
【数3】
を決定することができる。理想気体の法則に関して、
【数4】
であり、式中、Mは使用されるガスのモル質量を表す。
【0085】
最後に、圧力制御ユニット4は、過剰圧力ΔPを緩和するように設定され、初期状態が回復される。
【0086】
この測定が液体送出前に行われる場合、初期Vgasは非常に正確に定義される。
【0087】
好ましい実施形態では、この測定は、印加圧力の段階的な変動ではなく、連続的な変動などの圧力パターンに基づいて行われる。例えば、三角波または正弦波の圧力変動が適用される。この改善は、Vgasを決定するためにセンサの同期を必要とするが、より大きな誤差の原因となるガス流バーストを回避することを可能にする。良好な同期化により、圧力によるVchannelおよびVconnect変動を推定してこれらの変動を補正するために、またはそれらの変動が無視され得ることを検証するために、加圧中にVgasの瞬時測定を行うことがさらに可能である。
【0088】
この方法は、異なる振幅を有する複数の圧力パターンと共に使用されてもよく、装置の較正につながる。したがって、圧力によるVchannel容積変動の数値補正は、送出中に行われ得る。
【0089】
圧力パターンは、Vgasの測定の精度を高めるために平均化され得るVgasの複数の測定値を生成するために少なくとも2回繰り返され得る。繰り返される場合、圧力パターンは同じであっても異なっていてもよい。
液体送出方法:V gas の連続測定による送出量を測定すること
【0090】
本発明の装置を用いた送出液体の正確な測定は、以下のステップで実現され得る。まず、上述したようにVgas1が測定される。次に、圧力制御部4がチャネル2内の圧力を設定する。結果として、チャネル2内に収容された液体が動き始め、出口を通して送出される。液体送出を停止するために、圧力制御ユニット4はチャネル2に加えられる圧力を低下させる。最後に、再びVgas2が測定される。Vgas1とVgas2との差は、送出液体の量ΔVとなる。
【0091】
しかしながら、この方法では、弁23によって流れを中断させることなく送出液体の量を連続的に測定することはできない。
液体送出方法:連続測定および最終制御
【0092】
送出液体の量を測定する好ましい方法は、前述の方法の組み合わせである。
【0093】
まず、初期Vgasが非常に正確に測定される。その後、液体が送出され、上述したように連続測定が行われる。送出すべき量がほぼ送出されたときに、流れは減速され、その後停止され、最終Vgasが制御として非常に正確に測定される。この最終測定は、最終的には、連続測定の補正となる。
【0094】
任意に、Vgasは、連続積分のパラメータをリセットし、ドリフトを回避するために、液体送出の中間段階で非常に正確に測定されてもよい。
【0095】
任意に、測定された送出誤差を補正するために、より小さい大きさの補足的な補正流が実現されてもよい。
液体送出方法:閉ループ制御
【0096】
上記で開示した方法は、閉ループ制御を規定するために、センサ6および/または送出液体の量の連続測定と組み合わせられ得る。
【0097】
閉ループ制御を実現するために、様々な要素が使用され、組み合わせられ得る。
【0098】
圧力制御ユニット4によって加えられる圧力パターンは、特定の用量および流量を実現するように動的に調整され得る特定の圧力を加える。
【0099】
別の実施形態では、制御は流量によって行われてもよく、特定の流量送出プロファイルが経時的に決定され、所望のプロファイルに可能な限り近い液体送出流量に到達するように圧力制御ユニット4が使用される。
【0100】
別の実施形態では、(上記で定義されるような)装置の較正を使用して、流体送出の終了時に加えられる圧力を決定し、前記圧力におけるVchannel容積変動の数値補正を考慮に入れることができる。
【0101】
閉ループ制御の精度は、高分解能差圧センサ31またはガス質量流量計3、センサ6、および圧力制御ユニット4の応答時間に依存する。好ましくは、閉ループ制御の全体的な応答時間は、100msより短く、より好ましくは10msより短い。
液体吸引方法
【0102】
送出方法と同様に、制御された量の液体が本発明の装置によって吸引され得る。圧力制御ユニット4が減圧を適用する場合、液体は出口22を通ってチャネル内を流れる。
【0103】
上述した全ての実施形態は、流れ方向の明確な適応を伴う吸引方法に適用され得る。
【0104】
様々な実施形態を説明および図示しているが、詳細な説明は、本明細書に限定されるものとして解釈されるべきではない。請求項によって定義される本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施形態に対して様々な修正を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体送出装置(1)であって、
i.送出される液体を収容するのに好適なチャネル(2)であって、前記チャネル(2)は、9mm未満の内部断面および5×10-5満の内部容積channel を有し、前記チャネル(2)は、入口(21)、出口(22)および弁(23)を有する、チャネル(2)と、
ii.前記チャネル(2)の入口(21)に接続されたガス質量流量計(3)と、
iii.前記ガス質量流量計(3)にガスを通過させることによって前記チャネル(2)内の圧力を制御するのに好適な圧力制御ユニット(4)と、
を備える、液体送出装置(1)。
【請求項2】
前記ガス質量流量計(3)と前記チャネル(2)の入口(21)との間に接続されたフィルタ(5)をさらに備える、請求項1に記載の液体送出装置(1)。
【請求項3】
前記ガス質量流量計(3)の内部および前記ガス質量流量計(3)と前記チャネル(2)の入口(21)との間の接続部の内部容積connect は、2×10-5未満である、請求項1または2に記載の液体送出装置(1)。
【請求項4】
前記ガス質量流量計(3)は、較正液圧抵抗器(32)と、前記較正液圧抵抗器(32)の両端間の圧力差を測定する高分解能差圧センサ(31)とを備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項5】
前記チャネル(2)は、0.1mmと3.4mmとの間の直径を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項6】
前記チャネル(2)は、耐食材料で作製される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項7】
前記チャネル(2)の内部容積(channel および前記接続部の内部容積(connect の合計の相対変動は、500ミリバールの加圧下で10%未満である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項8】
前記チャネル(2)および前記ガス質量流量計(3)は乾燥しており、周囲圧力を100ミリバール上回るガスで加圧され、前記弁(23)が閉じられているときのガス漏出率は、1μL/s未満である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体送出装置(1)。
【請求項9】
液体送出方法であって、
a)入口(21)と、出口(22)と、弁(23)と、9mm未満の断面と、5×10-5満の内部容積channel とを有するチャネル(2)を準備するステップであって、前記チャネル(2)の入口(21)はガス質量流量計(3)に接続され、前記チャネル(2)は前記入口側にガスを、および前記出口側に送出される液体を収容するステップと、
b)液体が前記出口(22)を通して前記チャネル(2)から送出されるように、圧力制御ユニット(4)を用いて前記チャネル(2)内の圧力を設定するステップと、
c)前記入口(21)を通して前記チャネル(2)に導入されたガスの質量を前記ガス質量流量計(3)で測定するステップと、
d)気体の状態方程式を使用して送出溶液の量を決定するステップと、
を含む、液体送出方法。
【請求項10】
ステップb)、ステップc)およびステップd)は繰り返される、請求項9に記載の液体送出方法。
【請求項11】
前記ガス質量流量計(3)内部および前記ガス質量流量計(3)と前記チャネル(2)の入口(21)との間の接続部の容積connect と、前記チャネル(2)内に収容されるガスの容積との合計である容積gas を測定する測定ステップをさらに含む、請求項9または10に記載の液体送出方法。
【請求項12】
前記測定ステップは、少なくとも2回繰り返される、請求項11に記載の液体送出方法。
【請求項13】
前記測定ステップは、
α.前記弁(23)を閉じるサブステップと、
β.前記圧力制御ユニット(4)を用いて前記チャネル(2)内の圧力を設定するサブステップと、
γ.前記入口(21)を通して前記チャネル(2)に導入されたガスの質量を前記ガス質量流量計(3)で測定するサブステップと、
δ.気体の状態方程式を使用して前記容積gas を決定するサブステップと、
を含む、請求項11または12に記載の液体送出方法。
【請求項14】
前記測定ステップは、
・ステップ(a)とステップ(b)との間の較正として、または
・ステップ(a)とステップ(b)との間の較正として、およびステップ(d)の後の制御として、または
・ステップ(b)、ステップ(c)およびステップ(d)が繰り返される場合、ステップ(a)とステップ(b)との間の較正として、およびステップ(d)の後の中間制御として
行われる、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の液体送出方法。
【請求項15】
液体吸引方法であって、
(a)入口(21)と、出口(22)と、弁(23)と、9mm未満の断面と、5×10-5満の内部容積channel とを有するチャネル(2)を準備するステップであって、前記チャネル(2)の入口(21)はガス質量流量計(3)に接続され、前記チャネル(2)は前記入口側にガスを、および前記出口側に送出される液体を収容するステップと、
(b)液体が前記出口(22)を通して前記チャネル(2)内に吸引されるように、圧力制御ユニット(4)を用いて前記チャネル(2)内の圧力を設定するステップと、
(c)前記入口(21)を通して前記チャネル(2)から抜き出されたガスの質量を前記ガス質量流量計(3)で測定するステップと、
(d)気体の状態方程式を使用して、吸引される液体の量を決定するステップと、
を含む、液体吸引方法。
【国際調査報告】