(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】直接還元システム及び関連するプロセス
(51)【国際特許分類】
C21B 13/00 20060101AFI20230712BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C21B13/00
F27D17/00 101A
F27D17/00 104G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579999
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2021067704
(87)【国際公開番号】W WO2021260225
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】102020000015472
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510152666
【氏名又は名称】ダニエリ アンド シー.オフィス メカニケ エスピーエー
【氏名又は名称原語表記】DANIELI&C.OFFICINE MECCANICHE SPA
【住所又は居所原語表記】Via Nazionale,41-33042 Buttrio(UD),Italy
(71)【出願人】
【識別番号】514156334
【氏名又は名称】エイチワイエル テクノロジーズ、エス.エー. デ シー.ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】フランコ バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】マルティニス アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス ミラモンテス ホルヘ エウゲニオ
【テーマコード(参考)】
4K012
4K056
【Fターム(参考)】
4K012DA04
4K056AA09
4K056BB10
4K056CA02
4K056DA02
4K056DA22
4K056DA32
4K056DB04
(57)【要約】
本発明は、何らかの理由でガス状水素含有ガスが利用できず、プラント運転においてわずかな調整を伴うガス状炭化水素含有ガスでガス状水素含有ガスを置換することを可能にする場合に、その運転を継続し、高いプロセスの可用性と無視可能な生成損失を保証する可能性がある、ガス状水素含有ガスとガス状炭化水素含有ガスとの任意の割合で運転できる還元システム及び方法を提供する。本発明の還元システムは、効率的に運転し、資本と運転コストを低くするために、新しく、かつ既に構築された直接還元プラントに実装されるように設計される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス循環回路を含む酸化鉄の直接還元のための直接還元システムであって、前記ガス循環回路は、
-前記酸化鉄が充填される還元領域(12)を有する反応器(1)と、
-ガス状水素のガス含有量が80体積%以上であるメイクアップガス状水素含有ガスの第1外部供給源(200)と、
-好ましくはガス状炭化水素の含有量が25体積%以上であるメイクアップガス状炭化水素含有ガスの第2外部供給源(210)と、
-前記反応器(1)の下流に配置され、前記反応器(1)から出た排ガスを回収して処理する回収処理ライン(10)と、
-前記反応器(1)の上流に配置され、前記第1外部供給源(200)からの前記メイクアップガス状水素含有ガス及び/又は前記第2外部供給源(210)からの前記メイクアップガス状炭化水素含有ガスを前記回収処理ライン(10)で処理された前記排ガスと混合することにより得られたプロセスガスを処理し、前記反応器(1)の前記還元領域(12)に前記プロセスガスを供給する処理供給ライン(11)と、を含み、
前記回収処理ライン(10)は、前記処理供給ライン(11)の下流に連通し、
前記回収処理ライン(10)は、前記排ガスから伝熱流体に熱を伝達する少なくとも1つの第1熱交換装置(22)を含み、
前記処理供給ライン(11)は、少なくとも1つの第2熱交換装置(72)を含み、
前記伝熱流体を搬送できるダクト(75)が、前記少なくとも1つの第1熱交換装置(22)を前記少なくとも1つの第2熱交換装置(72)に接続することにより、前記少なくとも1つの第2熱交換装置(72)によって前記伝熱流体の熱を前記プロセスガスに伝達することができ、
前記回収処理ライン(10)はまた、前記排ガスから二酸化炭素を除去する少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)を含み、
前記ダクト(75)は、前記ダクト(75)を前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)に接続する分岐部(76)を有することにより、前記伝熱流体の熱を前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)に完全に又は部分的に伝達することができ、
前記第1外部供給源(200)及び前記第2外部供給源(210)は、前記処理供給ライン(11)又は前記回収処理ライン(10)に接続される、直接還元システム。
【請求項2】
-前記回収処理ライン(10)において前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)をバイパスするバイパスダクト(52)と、
-前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)への前記伝熱流体の流量を調整する第1流量調整装置(62)と、
-前記少なくとも1つの第2熱交換装置(72)への前記伝熱流体の流量を調整する第2流量調整装置(65)と、
-前記バイパスダクト(52)を少なくとも部分的に閉じるか又は開く第3流量調整装置(63)と、
-前記ガス循環回路に供給される前記メイクアップガス状炭化水素含有ガスの流量を調整する第4流量調整装置(32)と、
-前記ガス循環回路に供給される前記メイクアップガス状水素含有ガスの流量を調整する第5流量調整装置(31)と、
-好ましくは、前記メイクアップガス状水素含有ガスの可用性データを示す信号(118)を含む入力データに従って、前記第1流量調整装置(62)に第1制御信号(110)を送信し、前記第2流量調整装置(65)に第2制御信号(111)を送信し、前記第3流量調整装置(63)に第3制御信号(112)を送信し、前記第4流量調整装置(32)に第4制御信号(114)を送信し、前記第5流量調整装置(31)に第5制御信号(116)を送信するように構成される制御ユニット(64)と、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2熱交換装置(72)は、前記処理供給ライン(11)に設けられた加湿器(60)と加熱ユニット(180)との間に配置される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1熱交換装置(22)は、前記反応器(1)と、前記回収処理ライン(10)に設けられた、排ガスから水を除去して脱水ガスを得る少なくとも1つの洗浄冷却ユニット(36)との間に配置され、前記システムは、好ましくは、前記加湿器(60)に温水を搬送するために前記少なくとも1つの洗浄冷却ユニット(36)の吐出ラインを前記加湿器(60)に接続するダクト(54)を更に含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記処理供給ライン(11)は、前記プロセスガスを通過させる第1ダクトに加えて、
-前記プロセスガスの含水量を調整する少なくとも1つの加湿器(60)と、
-前記少なくとも1つの第2熱交換装置(72)と、
-前記プロセスガスを加熱する少なくとも1つの加熱ユニット(180)と、を順に含み、
前記回収処理ライン(10)は、好ましくは、前記排ガスを通過させる第2ダクトに加えて、
-前記反応器(1)から出た排ガスを冷却する前記少なくとも1つの第1熱交換装置(22)と、
-前記排ガスから水を除去して脱水ガスを得る少なくとも1つの洗浄冷却ユニット(36)と、
-好ましくは前記脱水ガスを前記処理供給ライン(11)に圧送する少なくとも1つの圧送装置(42)と、
-前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)と、前記バイパスダクト(52)と、を順に含む、請求項2又は4に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理供給ライン(11)に接続された前記第1外部供給源(200)及び前記第2外部供給源(210)の場合、前記第1外部供給源(200)及び前記第2外部供給源(210)の両方は、前記回収処理ライン(10)の可能な前記圧送装置(42)と前記処理供給ライン(11)の前記加熱ユニット(180)との間、好ましくは、前記回収処理ライン(10)の前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)又は前記バイパスダクト(52)と前記処理供給ライン(11)の前記少なくとも1つの加湿器(60)との間に構成された前記ガス循環回路の延長線上に接続される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記回収処理ライン(10)に接続された前記第1外部供給源(200)及び前記第2外部供給源(210)の場合、前記第1外部供給源(200)及び前記第2外部供給源(210)の両方は、前記少なくとも1つの洗浄冷却ユニット(36)と前記少なくとも1つの圧送装置(42)との間に構成された前記ガス循環回路の延長線上に接続される、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記回収処理ライン(10)の前記第2ダクトは、
-前記回収処理ライン(10)を前記加熱ユニット(180)のバーナに接続し、前記バーナの可燃性ガスとして第1脱水排ガス流が送られる第1分岐ダクト(34)と、
-前記回収処理ライン(10)を前記処理供給ライン(11)に接続し、可能な前記少なくとも1つの圧送装置(42)及び前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)に沿って配置され、第2脱水排ガス流が再循環される第2分岐ダクト(40)と、を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のシステムにより実行される酸化鉄の直接還元のための直接還元プロセスであって、完全に動作する場合、
a)前記回収処理ライン(10)により前記反応器(1)から出た排ガスを回収して処理するステップと、
b)前記第1外部供給源(200)からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は前記第2外部供給源(210)からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスと、前記回収処理ライン(10)において処理された排ガスとを混合することにより得られたプロセスガスを、前記処理供給ライン(11)により前記反応器(1)の還元領域(2)に供給するステップと、を含み、
-前記回収処理ライン(10)の前記少なくとも1つの第1熱交換装置(22)により、前記反応器(1)から出た前記排ガスからの熱を伝熱流体に伝達するステップを更に含み、
前記回収処理ライン(10)において処理された排ガスと混合された前記第1外部供給源(200)からのメイクアップガス状水素含有ガスが前記直接還元プロセスに十分である場合、前記伝熱流体の熱は、前記伝熱流体を前記処理供給ライン(11)の少なくとも1つの第2熱交換装置(72)に搬送する前記ダクト(75)により、前記プロセスガスに完全に伝達されるのに対して、
前記回収処理ライン(10)において処理された排ガスと混合された前記第1外部供給源(200)からのメイクアップガス状水素含有ガスが前記直接還元プロセスに利用できないか、又は十分ではない場合、前記第2外部供給源(210)からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスは、前記排ガス、又は前記排ガス及び前記メイクアップガス状水素含有ガスと混合され、前記伝熱流体の熱は、前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)にそれぞれ完全に又は部分的に伝達される、直接還元プロセス。
【請求項10】
-第1流量調整装置(62)により前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)への前記伝熱流体の流量を調整するステップと、
-第2流量調整装置(65)により前記少なくとも1つの第2熱交換装置(72)への前記伝熱流体の流量を調整するステップと、
-第3流量調整装置(63)により、前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)をバイパスする、前記回収処理ライン(10)に設けられたバイパスダクト(52)を少なくとも部分的に閉じるか又は開くステップと、
-第4流量調整装置(32)により前記ガス循環回路に供給される前記メイクアップガス状炭化水素含有ガスの流量を調整するステップと、
-第5流量調整装置(31)により前記ガス循環回路に供給される前記メイクアップガス状水素含有ガスの流量を調整するステップと、を更に含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
-前記メイクアップガス状水素含有ガスの可用性データを示す信号(118)を含む入力データを供給するステップと、
-前記入力データを処理し、制御ユニット(64)により、
前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)への前記伝熱流体の流量を調整するための第1流量調整装置(62)への第1制御信号(110)、
前記少なくとも1つの第2熱交換装置(72)への前記伝熱流体の流量を調整するための第2流量調整装置(65)への第2制御信号(111)、
場合により前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)をバイパスするバイパスダクト(52)を少なくとも部分的に閉じるか又は開くための第3流量調整装置(63)への第3制御信号(112)、
前記ガス循環回路に供給される前記メイクアップガス状炭化水素含有ガスの流量を調整するための第4流量調整装置(32)への第4制御信号(114)、及び
前記ガス循環回路に供給される前記メイクアップガス状水素含有ガスの流量を調整するための第5流量調整装置(31)への第5制御信号(116)、を送信するステップと、を更に含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1熱交換装置(22)において、前記反応器(1)から出た排ガスの冷却のために水を使用する場合、前記ダクト(75)内の前記伝熱流体は蒸気である、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第1外部供給源(200)からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は前記第2外部供給源(210)からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスの供給は、前記処理供給ライン(11)又は前記回収処理ライン(10)に設けられる、請求項9~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記処理供給ライン(11)に接続された第1外部供給源(200)及び第2外部供給源(210)の場合、前記供給は、前記回収処理ライン(10)の圧送装置(42)と前記処理供給ライン(11)の少なくとも1つの加熱ユニット(180)との間、好ましくは前記回収処理ライン(10)の少なくとも1つの二酸化炭素除去装置(50)又は前記バイパスダクト(52)と前記処理供給ライン(11)の少なくとも1つの加湿器(60)との間に構成された前記ガス循環回路の延長線上で行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記回収処理ライン(10)に接続された第1外部供給源(200)及び第2外部供給源(210)の場合、前記供給は、前記回収処理ライン(10)の洗浄冷却ユニット(36)と圧送装置(42)との間に構成されたガス循環回路の延長線上で行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
前記メイクアップガス状水素含有ガスと前記メイクアップガス状炭化水素含有ガスとの使用割合が異なることによる分子量の差を部分的に又は完全に補償するようにシステムの運転圧力を調整するステップを含む、請求項9~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
循環する前記プロセスガスの分子量を増加させるための窒素の注入と、循環する前記プロセスガス中に存在する窒素を前記反応器内の熱エネルギーのベクトルとして使用するための窒素の注入とを含む、請求項16に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、還元ガスを用いて酸化鉄を直接還元することにより金属鉄を製造する直接還元システム及び関連するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
既知のタイプの還元鉄鉱石(DRI-直接還元鉄)の製造システムは、ペレット状及び/又は塊状の酸化鉄が充填された反応器と、水素及び一酸化炭素を含み反応器内の前記酸化鉄を還元する還元ガスを処理して供給するためのラインと、を含む。還元ガスは、高温で反応室又は反応器に注入される。反応器は、固定床型(static-bed type)、移動床型(moving-bed type)、流動床型(fluidized-bed type)、回転又は釜型(rotary or kiln type)であってもよい。移動床型反応器では、通常、還元ガスを反応器の中央部に導入し、酸化鉄中に逆流して上昇させた後、抽出し、再処理して還元回路にリサイクルする。反応器から出た排ガスに対して脱塵、反応生成物(H2O、CO2)の除去及び圧縮を行った後、メイクアップガス(天然ガス、COG、改質器で得られたガス、Corexガス、Synガス(合成ガス)など)と混合する。新メイクアップガスと適切な処理を経てリサイクルされた排ガスとの混合ガス流は、加熱ユニットに送られ、かつ加熱ユニットにより、還元プロセスに必要な温度、通常850℃を超える温度にもたらされる。
【0003】
更に昇温を目的とした酸素注入が可能な加熱された還元ガス流は、還元対象である酸化鉄がペレット状及び/又は塊状で上方から導入されて下方に流れる反応器に送られ、DRI(還元生成物)は、前記反応器の反対側で抽出され、空気圧輸送システム又は重力又はベルトによって高炉若しくは電気アーク炉、又は酸素変換器、又は製造されたDRIを溶融できる任意の装置に送られる。
【0004】
具体的には、酸化鉄直接還元プロセスでは、金属化度(金属鉄とDRIに含まれる全鉄との比率)の高いDRIを得るために、水素及び一酸化炭素との化学反応により鉄鉱石から酸素を除去する。このプロセスに伴う全体的な還元反応は、周知であり、以下に示す。
Fe2O3+3H2->2Fe+3H2O(1)
Fe2O3+3CO->2Fe+3CO2(2)。
【0005】
水素及び一酸化炭素は、酸化鉄の酸素と反応し、上記反応(1)及び(2)により、水及び二酸化炭素に転化される。H2OとCO2に加えて、反応器から出た排ガスには、未反応のH2とCOも存在する。これらの還元剤を回収する目的で、排ガスは、上述のように処理される。
【0006】
かなりの量の炭素(天然ガス、コーク炉ガス、Corexガス、Synガス(合成ガス)などのガス状炭化水素含有ガス)を含む還元回路に供給されたメイクアップガスの使用は、主に、以下の2つの欠点を有する。
-温室効果ガス排出(CO2)、
-反応器内に流入する還元ガス流に含まれる一酸化炭素(CO)の含有量が比較的多いと、還元反応中に生成する微粉が比較的多くなり、発熱性(exothermic)である一酸化炭素の還元による温度上昇により、クラスターを生成する危険性が高くなり、固形物の移動が阻害される可能性がある。
【0007】
現在使用されているプロセスの方式では、反応器にリサイクルされた排ガスからCO2を選択的に除去することによりCO2排出を低減する(食品工業又はその他の産業用途にも貯蔵されて使用可能である)が、このようなCO2排出は、主に、炭化水素ガス改質器(存在する場合)のチムニー又は還元ガスの加熱ユニットを介して放出される二酸化炭素からなる。他の公知の直接還元プロセスに関して、還元反応器内でメタン改質反応を促進するために天然ガスを供給したり、オフライン改質器で生成された改質ガスを供給したりする上記プロセスでは、反応器内に導入される還元ガスの組成物においてH2/CO比率が良好であることが保証される。
【0008】
現在、CO2排出の更なる低減は、極めて困難である。
【0009】
したがって、前述の欠点を克服できる直接還元システムと関連するプロセスを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、いくつかの実施形態では40Nm3/tDRI以下が有利である二酸化炭素排出の更なる低減を可能とする直接還元システム及び関連するプロセスを開発することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、還元回路の設備をアップセットすることなく、及び/又は、長いシャットダウン期間なしで、様々な種類のメイクアップガス又はその混合物を供給することができる、メイクアップガスの点で柔軟な直接還元システムを開発することであり、供給されたメイクアップガスの変更は、市場での可用性又はコストに基づいて選択される。
【0012】
本発明は、回路を含む、請求項1に記載の酸化鉄の直接還元のための直接還元システムにより、このような目的と本明細書で明らかとなる他の目的を達成する。前記回路は、
-前記酸化鉄が充填される還元領域を有する反応器と、
-ガス状水素の含有量が80体積%以上であるメイクアップガス状水素含有ガス(make-up gaseous hydrogen-containing gas)の第1外部供給源と、
-好ましくはガス状炭化水素の含有量が25体積%以上であるメイクアップガス状炭化水素含有ガス(make-up gaseous hydrocarbon-containing gas)の第2外部供給源と、
-反応器の下流に配置され、反応器から出た排ガスを回収して処理する回収処理ライン(recovery and treatment line)と、
-反応器の上流に配置され、第1外部供給源からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は第2外部供給源からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスを回収処理ラインで処理された排ガスと混合することにより得られたプロセスガス(process gas)を処理し、反応器の還元領域に前記プロセスガスを供給する処理供給ライン(treatment and feeding line)と、を含み、
回収処理ラインは、前記処理供給ラインの下流に連通し、
回収処理ラインは、排ガスから伝熱流体に熱を伝達する少なくとも1つの第1熱交換装置を含み、
処理供給ラインは、少なくとも1つの第2熱交換装置を含み、
伝熱流体を搬送できるダクトが、少なくとも1つの第1熱交換装置を少なくとも1つの第2熱交換装置に接続することにより、前記少なくとも1つの第2熱交換装置によって伝熱流体の熱を前記プロセスガスに伝達することができ、
回収処理ラインはまた、排ガスから二酸化炭素を除去する少なくとも1つの二酸化炭素除去装置を含み、
ダクトは、前記ダクトを少なくとも1つの二酸化炭素除去装置に接続する分岐部を有することにより、伝熱流体の熱を前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置に完全に又は部分的に伝達することができ、
前記第1外部供給源及び前記第2外部供給源は、前記処理供給ライン又は前記回収処理ラインに接続される。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つの第2熱交換装置は、前記処理供給ラインに設けられた加湿器と加熱ユニットとの間に配置される。
【0014】
必要に応じて、少なくとも1つの第1熱交換装置は、反応器と、前記回収処理ラインに設けられた、排ガスから水を除去して脱水ガスを得る少なくとも1つの洗浄冷却ユニットとの間に配置される。
【0015】
好ましくは、加湿器に温水を搬送するために少なくとも1つの洗浄冷却ユニットの吐出ラインを加湿器に接続するダクトを更に含む。
【0016】
本明細書において、「プロセスガス」とは、第1外部供給源からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は第2外部供給源からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスを回収処理ラインで処理された排ガスと混合することにより得られたガスの混合物を意味する。
【0017】
本発明の更なる態様に係る請求項9に記載の、前述のシステムにより実行することができる直接還元プロセスは、完全に動作する場合、
a)回収処理ラインにより反応器から出た排ガスを回収して処理するステップと、
b)第1外部供給源からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は第2外部供給源からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスと、回収処理ラインにおいて処理された排ガスとを混合することにより得られた前記プロセスガスを、処理供給ラインにより反応器の還元領域に供給するステップと、を含み、
-回収処理ラインの少なくとも1つの第1熱交換装置により、反応器から出た排ガスからの熱を伝熱流体に伝達するステップを更に含み、
回収処理ラインにおいて処理された排ガスと混合された第1外部供給源からのメイクアップガス状水素含有ガスが直接還元プロセスに十分であれば、伝熱流体の熱は、伝熱流体を処理供給ラインの少なくとも1つの第2熱交換装置に搬送するダクトにより、前記プロセスガスに完全に伝達されるのに対して、
回収処理ラインにおいて処理された排ガスと混合された第1外部供給源からのメイクアップガス状水素含有ガスが直接還元プロセスに利用できないか、又は十分ではない場合、第2外部供給源からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスは、前記排ガス、又は前記排ガス及び前記メイクアップガス状水素含有ガスと混合され、伝熱流体の熱は、前記少なくとも1つの二酸化炭素除去装置にそれぞれ完全に又は部分的に伝達される。
【0018】
メイクアップガスの第1外部供給源は、市販の純粋なガス状水素の供給源であるか、又は、ガス状水素の含有量が80体積%以上である、ガス状水素を富化した還元ガスの供給源であることができる。メイクアップガス状水素含有ガスは、例えば、天然ガスの部分的な燃焼若しくは改質、そのような種類のガスを生成できる電気分解又は他の任意のプロセスを使用する外部供給源からのガスであることができる。
【0019】
メイクアップガスの第2外部供給源は、好ましくは、天然ガス、コーク炉ガス、Corexガス、合成ガスなどの、ガス状炭化水素の含有量が25体積%以上であるガス状炭化水素含有ガスの供給源であることができる。
【0020】
本発明のシステムと方法により、任意の特定の可用性と利便性に応じて、メイクアップガス状水素含有ガスのみ、又はメイクアップガス状炭化水素含有ガスのみ、又はメイクアップガス状水素含有ガスとメイクアップガス状炭化水素含有ガスとの任意の割合の混合物を回路に供給することによってDRIを製造することが可能になる。
【0021】
したがって、好ましくは、本発明のシステム及び方法により、関連するプラントの改変を必要とせずに、いくつかの作動プロセスパラメータの調整のみを通じて、従来の利用可能な還元ガス源(天然ガス、コーク炉ガス、改質ガス、Corexガスなど)から新たに利用可能な環境に優しい還元ガス源(ガス状水素又はガス状水素富化ガス)への連続的な切り替えが可能になる。
【0022】
代わりに、特に、従来技術では、プラントの再設計と関連する改変のステップを事前に負担することなしに、高い割合でガス状水素を使用することに直接的に切り替えることができない。
【0023】
一例として、前記作動プロセスパラメータは、システム圧力又は注入された窒素量であることができる。
【0024】
メイクアップガス状炭化水素含有ガスのみを使用してシステムを作動させる場合、反応器の出口で測定されるシステム圧力(例えば、5~7bargの間にある)は、メイクアップガス状水素含有ガスのみを使用してシステムを作動させる場合のシステム圧力(例えば、圧力を3~5bargの間に調整できる)よりも高くなる。メイクアップガス状炭化水素含有ガスとメイクアップガス状水素含有ガスとの混合物を使用して作動する場合、システム圧力は、中間圧力となる。
【0025】
一例では、システムの運転圧力(operating pressure)を調整することにより、メイクアップガス状水素含有ガスとメイクアップガス状炭化水素含有ガスとの異なる使用割合に起因しているシステム内に循環するガスの異なる特徴を、部分的に又は完全に補償することが可能になる。このようにして、システム回路内に配置された機器の流体力学的応答は、高圧の炭化水素含有ガス(高分子量ガス)で作動し、低圧の炭化水素含有ガス(低分子量ガス)で作動することの両方で実質的に同等である。
【0026】
特に、システム内に循環するガスの異なる特徴を部分的に又は完全に補償するために、循環するプロセスガスの還元特性を変化させずに分子量を増加させるための、及び循環するガス中に存在する窒素を還元反応器内の熱エネルギーのベクトルとして利用するための、両方の窒素の注入を含む。具体的には、メイクアップガス状炭化水素含有ガスの使用からメイクアップガス状水素含有ガスへの通路は、特にダクト40、54にそれぞれ設けられた圧送装置(pumping device)42、42’において圧力の代償不全(pressure decompensation)を生成する。考えられる解決手段は、メイクアップガス状水素含有ガスを使用する場合、回路内に窒素を注入することである。このようにして、還元ガスの混合物が重くなり、圧送装置が最適に作動する。
【0027】
好ましくは、窒素又は他の適切なガス(例えば、CO2)の注入は、圧送装置で実行される。
【0028】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、伝熱流体が水であることで、蒸気は、第1熱交換装置において生成され、第1熱交換装置と第2熱交換装置とを接続するダクト内を通って搬送される。
【0029】
第1熱交換装置からの蒸気又は他の伝熱流体を第2熱交換装置で利用して、加熱ユニットに向かうプロセス還元ガスの温度を上昇させることにより、エネルギー消費を低減することができる。
【0030】
ガス状水素含有ガスが利用できず、システムが天然ガス、コーク炉ガス、合成ガス、又は他の種類の還元ガスなどのガス状炭化水素含有ガスで作動する必要がある場合に、第1熱交換装置からの蒸気又は他の伝熱流体は、アミン溶液(amine solution)を再生するために、二酸化炭素を除去、例えば、吸収する二酸化炭素除去装置に容易に送られることができる。
【0031】
蒸気又は他の伝熱流体は、第2熱交換装置におけるプロセス還元ガスの予熱及び/又は二酸化炭素を除去する除去装置の運転に柔軟に使用することができる。各用途に対応する蒸気又は伝熱流体の量は、還元システムの回路に供給されるガス状水素含有ガスの量とガス状炭化水素含有ガスの量との割合に従って柔軟に設定される。
【0032】
要するに、本発明の直接還元システムは、設備をアップセットし、一方の供給源から他方の供給源へのライブ変更(live change)を行うことなく、様々な種類のガス状炭化水素含有ガス源及び/又はガス状水素含有ガス源、又は長年にわたって出現している他の還元ガス源をメイクアップガスとして使用して運転することができる。
【0033】
本発明のもう1つの利点は、何らかの理由でガス状水素含有ガスが利用できない場合、運転を継続し、高いプロセスの可用性と無視可能な生成損失を保証する可能性がある。
【0034】
実際、システムの構成により、システム運転に単純な調整を伴うガス状炭化水素含有ガスを使用して、ガス状水素含有ガスを置換することを可能にする。
【0035】
必要に応じて、天然ガスなどの他のガス状炭化水素含有ガスの注入は、前記他のガス状炭化水素を注入する少なくとも1つの装置により、還元領域の下方に配置された反応器の下部、好ましくは円錐状の領域において提供することができる。
【0036】
以下、技術水準に対する本発明の解決手段の更なる利点をいくつか挙げる。
-供給混合物中に存在するメイクアップガス状炭化水素含有ガスの割合に従って、二酸化炭素を除去、例えば、吸収する装置を部分的に又は完全にバイパスすることができ、
-メイクアップガス状水素含有ガスのみが回路に供給される場合、単純な他のバイパスダクトにより、プロセスガスの含水量を増加させてプロセスガス加熱ユニット内の炭素の堆積を防止するために必要な可能な加湿器を完全にバイパスすることができ、
-一般的に、回路に供給されるガス中のガス状水素含有量を増加させることにより、加熱ユニット内の炭素の堆積が極めて制限され、もしあれば、システムを停止して化学的洗浄を行う必要がないので、システムの信頼性及び可用性を向上させ、
-還元ガス流が純粋なガス状水素又はほぼ純粋なガス状水素である場合に、反応器内の改質反応を促進するための追加のエネルギーを必要としないので、加熱ユニットの下流の酸素の注入をオフに切り替えることができ、
-得られるプロセスガスは、好ましくは、CO及びCO2の含有量が比較的低いため、プロセスガスと接触するプロセス水の酸性化は、極めて制限され、水の品質を制御するために水戻りラインでの高価な材料又は化学薬剤の消費の増大を必要とせず、
-反応器内の温度低下を決定するガス状水素による高い鉄鉱石還元度により、クラスターリスク(COによる還元とその発熱反応が膨潤のように典型的である)がほとんどないより定常的な運転が可能であり、
-上昇したガス状水素含有量を備えた市販の純粋なガス状水素又はガス状水素含有ガスの回路への直接導入により、現在のガス状炭化水素含有ガス(天然ガス、コーク炉ガスなど)ベースの直接還元システム(ZRプロセス、ライン改質器によるプロセスなど)の効率を高めることができ、
-還元剤としてCOを使用した場合に特徴的であり、かつ固体流動の停止及び反応器の閉塞の原因となり得る、反応器の起動時のペレットの膨潤の現象は、最小限に抑えられる。
【0037】
本発明の更なる特徴及び利点は、例示的であるが非排他的な実施形態の詳細な説明に照らして、より明らかになる。
【0038】
従属請求項は、本発明の特定の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の説明において、非限定的な例として与えられた添付の図表を参照する。
【0040】
【
図1】本発明に係る直接還元システムの第1実施形態を示す図である。
【
図2】本発明に係る直接還元システムの第2実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1及び
図2を参照して本発明の対象となる直接還元システムのいくつかの例を示しており、直接還元システムは、
-入口ダクト2を介して酸化鉄が充填される還元領域12を有する反応器1と、
-ガス状水素含有量、又は水素ガス含有量が80体積%以上であるメイクアップガス状水素含有ガスの第1外部供給源200と、
-好ましくはガス状炭化水素の含有量が25体積%以上であるメイクアップガス状炭化水素含有ガスの第2外部供給源210と、
-反応器1の下流に配置され、反応器1から出た排ガスを回収して処理する回収処理ライン10と、
-反応器1の上流に配置され、混合ガスを処理して、第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は第2外部供給源210からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスを、回収処理ライン10で処理された排ガスと混合することにより得られたプロセスガスを定義し、反応器1の還元領域12に前記プロセスガスを供給する処理供給ライン11と、を含む回路を含む。
【0042】
回収処理ライン10は、上記処理供給ライン11の下流に連通する。
【0043】
回収処理ライン10は、排ガスから伝熱流体70に熱を伝達する少なくとも1つの第1熱交換装置22、例えば1つの第1熱交換装置のみを含む。
【0044】
有利には、処理供給ライン11は、少なくとも1つの第2熱交換装置72、例えば1つの第2熱交換装置のみを含み、伝熱流体を搬送できるダクト75、好ましくは1つのダクト75のみは、第1熱交換装置22を第2熱交換装置72に接続することにより、第2熱交換装置72によって伝熱流体の熱をプロセスガスに伝達することができる。
【0045】
更に、回収処理ライン10はまた、排ガスから二酸化炭素を除去、例えば吸収する少なくとも1つの二酸化炭素除去装置50、例えば1つの除去装置のみを含む。
【0046】
有利には、ダクト75は、上記ダクト75を二酸化炭素除去装置50に接続する分岐部76を有することにより、メイクアップガス状水素含有ガスが利用できない場合、又は部分的に利用可能である場合に、伝熱流体の熱を上記除去装置50に完全又は部分的に伝達することができる。好ましくは、メイクアップガス状水素含有ガスの可用性データを含む、又はメイクアップガス状水素含有ガスの可用性データからなる入力データに基づいて直接還元システムの運転をより適切に調整するために、本発明のシステムは、
-回収処理ライン10において除去装置50をバイパスするバイパスダクト52と、
-分岐部76に沿って配置され、除去装置50への伝熱流体の流量を調整する第1流量調整装置62と、
-ダクト75に沿って、第2熱交換装置72への伝熱流体の流量を調整する第2流量調整装置65と、
-バイパスダクト52を閉じるか又は少なくとも部分的に開く第3流量調整装置63と、
-ガス循環回路に供給されるメイクアップガス状炭化水素含有ガスの流量を調整する第4流量調整装置32と、
-ガス循環回路に供給されるメイクアップガス状水素含有ガスの流量を調整する第5流量調整装置31と、を含む。
【0047】
必要に応じて、例えば
図2に示すように、制御ユニット64は、メイクアップガス状水素含有ガスの可用性を示す信号118を含む入力データに従って、それぞれ、上記第1流量調整装置62に制御信号110を送信し、上記第2流量調整装置65に制御信号111を送信し、上記第3流量調整装置63に制御信号112を送信し、上記第4流量調整装置32に制御信号114を送信し、上記第5流量調整装置31に制御信号116を送信する。制御ユニット64は、
図1の実施形態にも設けることができる。
【0048】
有利には、本発明の全ての実施形態において、メイクアップ還元ガスの第1外部供給源200は、市販の純粋なガス状水素供給源(99体積%以上)又は80体積%以上、好ましくは85~98体積%以上のガス状水素含有量を有するガス供給源である。
【0049】
80体積%以上のガス状水素含有量を有するメイクアップガス状水素含有ガスの場合、残りの組成物は、一酸化炭素、水、二酸化炭素、メタン、窒素を含むことができる。
【0050】
純粋に例として、メイクアップガス状水素含有ガス組成物は、体積百分率で、
92~96%の範囲内のガス状水素と、
1.5~2.5%の範囲内の一酸化炭素と、
0.2~0.6%の水と、
0.0~0.4%の二酸化炭素と、
0.3~0.9%のメタンと、
2.0~4.0%の窒素と、を含み得る。
【0051】
メイクアップ還元ガスの第2外部供給源210は、天然ガス、コーク炉ガス、Corexガス、合成ガスなどのガス状炭化水素の含有量が25体積%以上であるガス状炭化水素含有ガスの供給源である。
【0052】
上記ガス状炭化水素含有ガスはまた、バイオマス、バイオガス、バイオメタンからのガスであることができる。
【0053】
上記第2外部供給源210は、通常、閉じられるが、上記メイクアップガス状水素含有ガスが不十分であるか又は可用性がない場合に、開かれて、上記ガス状炭化水素含有ガスを回路内で使用することができる。
【0054】
好ましくは、少なくとも1つの第1熱交換装置22は、反応器1に近接するのに対し、少なくとも1つの除去装置50は、反応器1から離れて処理供給ライン11に近接する。
【0055】
有利には、全ての実施形態において、処理供給ライン11は、
-反応器1からの処理された排ガスと、第1外部供給源200及び/又は第2外部供給源210からのメイクアップ還元ガスとを混合することにより得られたプロセスガスを通過させる第1ダクトと、
-上記プロセスガスにおける高いCH4及び重いガス状炭化水素含有量の場合に、プロセスガス中の含水量を調整する少なくとも1つの加湿器60、例えば1つの加湿器のみと、
-第1熱交換装置22からの伝熱流体の熱エネルギーを回収する第2熱交換装置72、例えば凝縮器と、
-反応器1内への導入に適した温度でプロセスガスを加熱する少なくとも1つの加熱ユニット180、例えば1つの加熱ユニットのみと、を含むことができるか、又はこれらからなることができる。
【0056】
メイクアップガス状水素含有ガスのみが回路に供給される場合、単純な他のバイパスダクト80により、加湿器60を完全にバイパスすることができる。
【0057】
上記加熱ユニット180の下流には、プロセスガス流に酸素を注入する酸素注入装置300を設けることができる。
【0058】
本発明のシステムの更なる利点は、回収処理ライン10が、
-反応器1から出た排ガスを通過させる第2ダクトと、
-反応器1から出た排ガスを冷却する第1熱交換装置22、例えば1つの第1熱交換装置のみと、
-排ガスから水を除去して脱水ガスを得る、上記第1熱交換装置22の下流に配置された少なくとも1つの洗浄冷却ユニット36、例えば1つの洗浄冷却ユニットのみと、
-好ましくは脱水ガスを処理供給ライン11に圧送する少なくとも1つの圧送装置42、例えば1つの圧送装置のみと、
-上記少なくとも1つの洗浄冷却ユニット36の下流、好ましくは上記圧送装置42の下流に配置された二酸化炭素除去装置50、例えば吸収装置と、
-回路に供給されるメイクアップ還元ガスがメイクアップガス状水素含有ガスのみである場合に、除去装置50をバイパスするバイパスダクト52と、を含むことができるか、又はこれらからなることができるという事実によって表される。
【0059】
必要に応じて、処理供給ライン11の加湿器60は、洗浄冷却ユニット36の吐出ラインからのダクト54により温水を受けてダクト81により水を吐出する。
【0060】
好ましくは、回収処理ライン10の第2ダクトは、洗浄冷却ユニット36の下流に、
-回収処理ライン10と加熱ユニット180のバーナとを接続し、上記バーナの可燃性ガスとして第1脱水排ガス流を送ることができる分岐ダクト34と、
-回収処理ライン10と処理供給ライン11とを接続し、可能な圧送装置42及び二酸化炭素除去装置50が配置され、第2脱水排ガス流が再循環される分岐ダクト40と、を含む。
【0061】
他の調整装置30、例えば圧力制御弁は、好ましくは、分岐ダクト34に沿って設けられる。
【0062】
加熱ユニット180は、供給源182からの適当な可燃物の燃焼により供給される。可燃物は、分岐ダクト34からの脱水排ガス、純粋なガス状水素、天然ガス、他の炭化水素含有ガス又はそれらの混合物であることができる。
【0063】
図1に示す本発明のシステムの第1実施形態では、ガス状水素含有量が80体積%以上であるガス状水素含有ガスの外部供給源200と、ガス状炭化水素含有量が25体積%以上であるガス状炭化水素含有ガスの外部供給源210とは、処理供給ライン11に接続、例えば直接接続される。
【0064】
特に、上記第1外部供給源200及び上記第2外部供給源210の両方は、回収処理ライン10の圧送装置42と処理供給ライン11の加熱ユニット180との間、好ましくは、回収処理ライン10の二酸化炭素除去装置50又はバイパスダクト52と処理供給ライン11の加湿器60との間に構成された回路の延長線上に接続される。
【0065】
流量調整装置31、例えば圧力制御弁は、好ましくは、外部供給源200と処理供給ライン11とを接続するダクト61に沿って設けられる。同様に、流量調整装置32、例えば他の圧力制御弁は、好ましくは、外部供給源210と処理供給ライン11とを接続するダクト71に沿って設けられる。
【0066】
図2に示す本発明のシステムの第2実施形態では、ガス状水素含有ガスの外部供給源200と、ガス状炭化水素含有ガスの外部供給源210とは、例えば、回収処理ライン10に直接接続される。
【0067】
特に、第1外部供給源200及び第2外部供給源210の両方は、例えば分岐ダクト40に沿って、洗浄冷却ユニット36と圧送装置42との間に構成された回路の延長線上に接続される。このようにして、メイクアップ還元ガスは、その後の圧送装置42により圧縮される外部供給源200、210から低圧で分配されることができる。
【0068】
流量調整装置31、例えば圧力制御弁は、好ましくは、外部供給源200と回収処理ライン10とを接続するダクト61に沿って設けられる。
【0069】
流量調整装置32、例えば他の圧力制御弁は、好ましくは、外部供給源210と回収処理ライン10とを接続するダクト71に沿って設けられる。
【0070】
本発明のシステムの第1実施形態及び第2実施形態の両方では、少なくとも1つのガス状炭化水素含有ガスの注入装置191は、還元領域12の下方に配置されたか又は還元領域12と吐出領域との間の反応器1の遷移領域に直接配置された反応器1の下部、好ましくは円錐状の領域14に、天然ガス、コーク炉ガス、又はバイオマス、バイオガス若しくはバイオメタンからのガスなどのガス状炭化水素含有ガスを注入するように構成されることができる。いずれの場合も、この注入によりDRI炭素含有量を調整することができる。
【0071】
次に、上述した本発明のシステムにより酸化鉄の直接還元を行う、十分な運転時のプロセスの一例について説明する。このプロセスは、完全に動作する場合、
a)回収処理ライン10により反応器1から出た排ガスを回収して処理するステップと、
b)第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は第2外部供給源210からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスと、回収処理ライン10において処理された排ガスとを混合することにより得られたプロセスガスを、処理供給ライン11により反応器1の還元領域2に供給するステップと、を含み、
更に、
-回収処理ライン10の第1熱交換装置22により、反応器1から出た排ガスからの熱を伝熱流体に伝達するステップを含み、
回収処理ライン10において処理された排ガスと混合された第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガスが直接還元プロセスに十分であれば、伝熱流体の熱は、伝熱流体を処理供給ライン11の第2熱交換装置72に搬送して上記第2熱交換装置72を横断することにより伝熱流体全体が第2熱交換装置72に到達するダクト75により、プロセスガスに完全に伝達されるのに対して、
回収処理ライン10において処理された排ガスと混合された第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガスが直接還元プロセスに利用できないか、又は十分ではない場合、第2外部供給源210からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスは、排ガス、又は排ガス及びメイクアップガス状水素含有ガスと混合され、伝熱流体の熱は、二酸化炭素除去装置50にそれぞれ完全に又は部分的に伝達される。
【0072】
したがって、メイクアップガス状水素含有ガスが利用できない場合に、伝熱流体全体は、除去装置50に到達する。代わりに、メイクアップガス状水素含有ガスが利用可能であるが、十分でない場合に、伝熱流体は、除去装置50及び第2熱交換装置72の両方に部分的に到達する。
【0073】
好ましくは、直接還元システムの運転をより適切に調整するために、プロセスは、
-メイクアップガス状水素含有ガスの可用性データを示す信号118を含む入力データを供給するステップと、
-上記入力データを処理し、好ましくは制御ユニット64により、
二酸化炭素除去装置50への伝熱流体の流量を調整する第1流量調整装置62への第1制御信号110、
第2熱交換装置72への伝熱流体の流量を調整する第2流量調整装置65への第2制御信号111、
バイパスダクト52を少なくとも部分的に閉じるか又は開く第3流量調整装置63への第3制御信号112、
回路に供給されるメイクアップガス状炭化水素含有ガスの流量を調整する第4流量調整装置32への第4制御信号114、及び
回路に供給されるメイクアップガス状水素含有ガスの流量を調整する第5流量調整装置31への第5制御信号116、を送信するステップと、を含む。
【0074】
したがって、回収処理ライン10において処理された排ガスと混合された第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガスが直接還元プロセス全体に利用可能で、かつ十分である場合に、第2外部供給源210は、通常閉じられる。制御ユニット64は、それぞれ、第1、第2流量調整装置62、65に制御信号110、111を送信し、第4流量調整装置32に制御信号114を送信することにより、ダクト76及び第2外部供給源210を閉じ、ダクト75を開く。また、上記制御ユニット64は、第3流量調整装置63に制御信号112を送信し、第5流量調整装置31に制御信号116を送信することにより、バイパスダクト52と第1外部供給源200をそれぞれ開く。この場合、除去装置50は、完全にバイパスされる。
【0075】
回収処理ライン10において処理された排ガスと混合された第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガスが直接還元プロセス全体に利用可能であるが、十分でない場合に、制御ユニット64は、ガス状水素含有ガス源200からの制御信号118に従って、
-第2外部供給源210を部分的に開いて回路に供給されるメイクアップガス状炭化水素含有ガスの流量を調整する第4流量調整装置32への制御信号114と、
-回路に供給されるメイクアップガス状水素含有ガスの流量を調整する第5流量調整装置31への制御信号116と、
-還元システムの回路に供給されるガス状水素含有ガスの量とガス状炭化水素含有ガスの量との割合に従って柔軟に設定された、除去装置50への伝熱流体の流量と第2熱交換装置72への伝熱流体の流量をそれぞれ調整する第1流量調整装置62への制御信号110と第2流量調整装置65への制御信号111と、
-還元システムの回路に供給されるガス状水素含有ガスの量とガス状炭化水素含有ガスの量との割合に従って柔軟に設定された、バイパスダクト52を部分的に閉じ、除去装置50に部分的に供給する第3流量調整装置63への制御信号112と、を送信する。
【0076】
最後に、第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガスが利用できない場合に、第1外部供給源200は、通常閉じられる。制御ユニット64は、第1流量調整装置62に制御信号110を送信し、第2流量調整装置65に制御信号111を送信し、第4流量調整装置32に制御信号114を送信することにより、ダクト76及び第2外部供給源210を開くのに対して、第2熱交換装置72に近接するダクト75の部分は完全に閉じる。また、上記制御ユニット64は、第3流量調整装置63に制御信号112を送信し、第5流量調整装置31に制御信号116を送信することにより、バイパスダクト52と第1外部供給源200をそれぞれ閉じる。
【0077】
本発明のプロセスの一例では、反応器1から出た、好ましくは約250~約550℃の温度での排ガスを、回収処理ライン10におけるダクト50に導入し、その冷却のために第1熱交換装置22に取り込む。
【0078】
必要に応じて、反応器1から出た排ガスを冷却するために第1熱交換装置22において水を使用する場合に、ダクト75内の伝熱流体は、蒸気となる。
【0079】
冷却後の排ガスは、ダクト24内を通って洗浄冷却ユニット36に向かって流れ、水を除去して脱水ガスとなる。
【0080】
冷却脱水後の脱水排ガスは、2つの分岐ダクト34、40に分岐される。
【0081】
脱水排ガスの小部分は、脱水排ガスの一部を回路からパージして不活性ガスの望ましくない蓄積を排除することができる圧力制御弁30を有する分岐ダクト34を通って流れる。
【0082】
一方、脱水排ガスの大部分は、分岐ダクト40を通って流れる。
【0083】
第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は第2外部供給源210からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスの供給は、処理供給ライン11又は回収処理ライン10に設けられる。
【0084】
処理供給ライン11に接続された第1外部供給源200及び第2外部供給源210の場合に、上記供給は、回収処理ライン10の圧送装置42と処理供給ライン11の加熱ユニット180との間、好ましくは、回収処理ライン10の除去装置50又はバイパスダクト52と処理供給ライン11の加湿器60との間に構成された回路の延長線上で行われる。
【0085】
図1を参照して、そのような脱水排ガスの部分をリサイクルし、再び反応器1に取り込むために、ダクト40内を流れる脱水排ガスを、圧縮機又は送風機であり得る圧送装置42により押圧する。圧送装置42の下流では、脱水排ガスは、ダクト44を通って流れ、二酸化炭素除去装置50及び/又はバイパスダクト52を通過した後、処理供給ライン11において、第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は第2外部供給源210からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスと混合されて、プロセスガスとなる。ガス状炭化水素含有ガスの供給を必要としない場合に、バイパスダクト52によって二酸化炭素除去装置50を完全にバイパスすることができる。
【0086】
代わりに、回収処理ライン10に接続された第1外部供給源200及び第2外部供給源210の場合、上記供給は、回収処理ライン10の洗浄冷却ユニット36と圧送装置42との間に構成された回路の延長線上で行われる。
【0087】
図2を参照すると、
図1の実施形態とは異なり、ここではダクト40内を流れる脱水排ガスは、第1外部供給源200からのメイクアップガス状水素含有ガス及び/又は第2外部供給源210からのメイクアップガス状炭化水素含有ガスと混合される。上記プロセスガスを処理供給ライン11に取り込むために、圧縮機又は送風機であることができる圧送装置42により、プロセスガスとなる、このようにして得られたガス混合物を押圧する。特に、圧送装置42の下流では、プロセスガスは、ダクト44を通って流れ、二酸化炭素除去装置50及び/又はバイパスダクト52を通過した後、処理供給ライン11に到達する。ガス状炭化水素含有ガスの供給を必要としない場合に、バイパスダクト52によって二酸化炭素除去装置50を完全にバイパスすることができる。
【0088】
全ての実施形態では、プロセスガスは、順に、加湿器60、プロセスガスの温度を上げることができる第2熱交換装置72を通って流れた後、プロセスガスが約850~950℃の温度に達する加熱ユニット180に到着するダクト15を通過する。
【0089】
メイクアップガス状水素含有ガスのみが回路に供給される場合、バイパスダクト80により、加湿器60を完全にバイパスすることができる。
【0090】
加熱ユニット180の下流では、プロセスガスは、反応器1の内側に到達するまでダクト16を通って流れる。
【0091】
上記加熱ユニット180の下流及び反応器1の上流では、ガス状酸素注入装置300により、プロセスガス流にガス状酸素注入を提供することができる。
【0092】
好ましくは、天然ガス、コーク炉ガス、又はバイオマス、バイオガス若しくはバイオメタンからのガスなどの他のガス状炭化水素含有ガスの注入は、少なくとも1つの注入装置191により、上記還元領域12の下方に配置されたか又は還元領域12と反応器の吐出領域との間の反応器1の遷移領域に直接配置された反応器1の下部、好ましくは円錐状の領域14に提供される。
【0093】
ペレット状又は塊状の酸化鉄材料は、反応器1の還元領域12内に上方から供給され、これに対して逆流する高温の還元ガスと反応し、最終的にHot DRIとして吐出される。
【0094】
必要に応じて、酸化鉄材料の粒径は、約2.5~19mmで、好ましくは約3.5~15mmである。
【国際調査報告】