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  • 特表-電磁弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20230712BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
F02M21/02 S
F16K31/06 305D
F16K31/06 305E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580242
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2021067162
(87)【国際公開番号】W WO2021260013
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】A50532/2020
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304033177
【氏名又は名称】ヘルビガー ウィーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Hoerbiger Wien GmbH
【住所又は居所原語表記】Seestadtstrasse 25,AT-1220 Wien,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート シュピーグル
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ヴァルトナー
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD03
3H106EE24
3H106GA10
3H106GA13
3H106GC02
3H106JJ02
3H106KK17
(57)【要約】
内部に電気コイル(3)と磁気可動子(5)とが配置された弁ケーシング(2)と、磁気可動子(5)により軸線方向の操作方向に操作可能な、電磁弁(1)を開閉する弁部材(8)とを備えた乾式の電磁弁(1)であって、電磁弁(1)の作動時に、コイル(3)が、弁ケーシング(2)の導磁性の弁ケーシング外壁(2c)を経て磁気可動子(5)に流れる磁束を生ぜしめるようになっている乾式の電磁弁(1)の摩擦を低下させるために、本発明では、弁ケーシング(2)内に、導磁性の磁束部材(12)が設けられており、磁束部材(12)は、弁ケーシング外壁(2c)を経て流れる磁束の少なくとも80%、好適には少なくとも90%、特に好適には100%を、磁気可動子(5)の、コイル(3)に面した可動子端面(5B)に導入する、ということが想定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の燃料を内燃機関の燃焼室または予燃焼室内に吹き付ける乾式の電磁弁(1)であって、内部に電気コイル(3)と磁気可動子(5)とが配置された弁ケーシング(2)と、前記磁気可動子(5)により軸線方向の操作方向に操作可能な、当該電磁弁(1)を開閉する弁部材(8)とを備えており、当該電磁弁(1)の作動時に、前記コイル(3)は、前記弁ケーシング(2)の導磁性の弁ケーシング外壁(2c)を経て前記磁気可動子(5)に流れる磁束を生ぜしめる、電磁弁(1)において、
前記弁ケーシング(2)内に、導磁性の磁束部材(12)が設けられており、該磁束部材(12)は、前記弁ケーシング外壁(2c)を経て流れる磁束の少なくとも80%、好適には少なくとも90%、特に好適には100%を、前記磁気可動子(5)の、前記コイル(3)に面した可動子端面(5B)に導入することを特徴とする、電磁弁(1)。
【請求項2】
前記磁束部材(12)は、前記操作方向に対して横方向で前記弁ケーシング(2)の前記弁ケーシング外壁(2c)に隣接する領域に配置されておりかつ前記操作方向において前記コイル(3)と前記磁気可動子(5)との間に配置されている、請求項1記載の電磁弁(1)。
【請求項3】
前記磁束部材(12)は、好適には閉じられた磁束リングとして形成されている、請求項1または2記載の電磁弁(1)。
【請求項4】
前記磁束部材(12)は、前記弁ケーシング外壁(2c)よりも高い導磁率を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項5】
前記磁束部材(12)は、台形、好適には直角台形の形状の横断面を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項6】
前記コイル(3)は、コイル支持体(4)に配置されており、該コイル支持体(4)の、軸線方向において前記磁気可動子(5)に面した端部(4a)は、前記磁気可動子(5)に対する端部ストッパとして形成されており、これにより、前記弁部材(8)の弁行程を制限するために、作動位置における前記磁気可動子(5)の軸線方向の動きを制限することができる、請求項1から5までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項7】
前記コイル支持体(4)は、プラスチックから形成されており、前記コイル(3)は、前記コイル支持体(4)内に完全に組み込まれている、請求項6記載の電磁弁(1)。
【請求項8】
前記弁ケーシング(2)は、前記磁気可動子(5)の領域にシリンダを形成しており、前記磁気可動子(5)は、前記シリンダ内で軸線方向に可動のピストンを形成しており、操作方向において、前記磁気可動子(5)の、前記コイル(3)とは反対の側の第1の可動子端面(5A)と、対向して位置する弁ケーシング壁(2d)との間に、圧縮室(KR)が形成されており、前記磁気可動子(5)内には、少なくとも1つの絞り開口(13)が配置されており、該絞り開口(13)は、前記第1の可動子端面(5A)を、反対の側に位置する第2の可動子端面(5B)に接続している、請求項1から7までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項9】
前記磁気可動子(5)の周面(5U)には、前記圧縮室(KR)をシールするシール部材(14)が配置されている、請求項8記載の電磁弁(1)。
【請求項10】
前記弁ケーシング(2)の軸線方向端部(E1)には、弁開口(9)が設けられており、前記弁ケーシング(2)には、好適にはガス状の媒体用の少なくとも1つの供給開口(10)が設けられており、該供給開口(10)は、前記弁ケーシング(2)の内部で前記弁開口(9)に接続されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項11】
前記磁気可動子(5)は、可動子軸部(6)を有しており、前記弁部材(8)は、前記可動子軸部(6)とは別個の弁軸部(7)を有しており、当該電磁弁(1)の操作に際して、前記磁気可動子(5)は、前記可動子軸部(6)を介して前記弁軸部(7)を操作する、請求項1から10までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項12】
前記可動子軸部(6)と前記弁軸部(7)との間には、プラスチックから成るバッファ部材(15)が配置されている、請求項11記載の電磁弁(1)。
【請求項13】
前記バッファ部材(15)は、トライボロジ的に最適化されたプラスチック、好適にはポリテトラフルオロエチレンを含むプラスチックから形成されている、請求項12記載の電磁弁(1)。
【請求項14】
前記弁ケーシング(2)内に、ばね部材(11)が配置されており、該ばね部材(11)は、前記弁部材(8)に戻し力を加え、これにより、当該電磁弁(1)の非作動状態において前記弁部材(8)を閉鎖位置に保つ、請求項1から13までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項15】
シリンダヘッドと少なくとも1つの燃焼室とを備えた内燃機関であって、前記シリンダヘッドには、燃焼室または該燃焼室の上流側に配置された予燃焼室に、好適にはガス状の燃料を供給するために、請求項1から14までのいずれか1項記載の電磁弁(1)が少なくとも1つ配置されている、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状の燃料を内燃機関の燃焼室または予燃焼室内に吹き付ける乾式の電磁弁であって、内部に電気コイルと磁気可動子とが配置された弁ケーシングと、磁気可動子により軸線方向の操作方向に操作可能な、電磁弁を開閉する弁部材とを備えており、電磁弁の作動時に、コイルは、弁ケーシングの導磁性の弁ケーシング外壁を経て磁気可動子に流れる磁束を生ぜしめる、電磁弁に関する。本発明はさらに、内燃機関に関する。
【0002】
内燃機関では、液状またはガス状の燃料を燃焼室に供給するために、大抵は機械式、液圧式または電磁式に操作可能な噴射弁もしくは吹付け弁が使用される。電磁式に操作可能な噴射弁もしくは吹付け弁は、一般に電磁弁と呼ばれる。電磁弁は、内燃機関の回転数に関係なく、極めてフレキシブルな弁制御が実現され得る、という利点を有している。例えばこれにより、開放時点と開放継続時間と弁行程とが可変に制御され得、これにより、燃料を調量する際の自由度が高められる。大型エンジン、特に大型のガスエンジンの場合には、ガス状の燃料が直接に燃焼室に供給されるのではなく、燃焼室の上流側に配置された予燃焼室に供給される、予燃焼室原理が多く用いられる。この場合、燃焼可能なガス/空気混合物は、予燃焼室内で点火され、このことは一般に点火プラグを介してかつ/または圧縮に基づき行われる。予燃焼室を起点として、燃焼は、予燃焼室に接続された燃焼室内へ広がる。取付け状態において電磁弁の燃焼室または予燃焼室に面した側では一般に、弁ケーシングに少なくとも1つの弁開口が設けられており、弁開口は、弁部材により閉鎖されている。電磁弁を相応して制御することにより、弁開口は所望のように開閉され、これにより、所定の量の燃料が、燃焼室または予燃焼室内にもたらされる。
【0003】
一般に、電磁弁は通常、弁ケーシングを有しており、弁ケーシング内には、磁界を形成するためにエネルギを供給され得る電気コイルが配置されている。さらに、可動の磁気可動子が設けられており、磁気可動子は、形成された磁界により、大抵は電磁弁の軸線方向に可動である。磁気可動子には、大抵は弁部材が結合されており、磁気可動子により操作される。電磁弁が、電気コイルへの電圧印加により操作されると、磁気可動子と、磁気可動子に結合された弁部材とが移動して弁開口を開放し、これにより、燃料が燃焼室または予燃焼室内へ噴射されるもしくは吹き付けられることになる。このために燃料は通常、所定の圧力に予め圧縮されており、適切な供給開口を介して電磁弁に供給される。大抵は戻しばねも電磁弁内に設けられており、戻しばねに抗して磁気可動子が移動させられるようになっており、電磁弁の作動後に戻しばねは、エネルギ供給部が故障した場合でも弁開口が再び閉鎖されるように働く。
【0004】
液状の燃料用の電磁弁は、大抵は燃料自体が弁用の潤滑剤として使用され得るため、このような弁は通常、可動部分間に小さな摩擦を有している、という利点を有している。欧州特許出願公開第2496823号明細書には、例えば電磁アクチュエータを有するこのような液状の燃料用の燃料インジェクタが開示されている。アクチュエータは、コイルと、弁部材に結合されたディスク形の可動子とを有している。弁部材を介して、ノズルニードルの上側の制御室内の燃料圧が制御され、これにより、ノズルニードルが弁座から持ち上がるようになっている。上位概念に記載の別の燃料インジェクタは、例えば独国特許出願公開第10312319号明細書および欧州特許出願公開第0604914号明細書に開示されている。
【0005】
これに対してガス状の燃料用の電磁弁の場合、燃料は、その潤滑特性の不足に基づき、弁用の潤滑剤としては使用され得ない。したがって、このような弁は、追加的な潤滑手段を有さない、いわゆる乾式の弁と呼ばれることが多い。したがって、特に乾式の電磁弁の場合には、可能な限り効率的な電磁力発生を達成するために、潤滑剤不足にもかかわらず、摩擦が最小限に抑えられることが重要である。例えば独国特許第112012003736号明細書には、コイルと、可動子管に結合された可動子とを備えた天然ガスインジェクタが開示されている。可動子管の端部には、弁開口をシールするシールディスクが配置されている。米国特許出願公開第2019032808号明細書にも同様に、ガス状の燃料用のインジェクタが開示されており、このインジェクタは、導磁性のコイル支持体内に配置されたコイルを有している。インジェクタ内にはさらに、内側の磁気可動子と、内側の磁気可動子を包囲する外側の磁気可動子とが設けられており、内側の磁気可動子と外側の磁気可動子とにはそれぞれ、弁開口を閉鎖するシール部分が配置されている。
【0006】
したがって本発明の課題は、乾式の電磁弁の摩擦を可能な限り簡単に低下させることにある。
【0007】
この課題は本発明に基づき、弁ケーシング内に導磁性の磁束部材が設けられており、磁束部材が、弁ケーシング外壁を経て流れる磁束の少なくとも80%、好適には少なくとも90%、特に好適には100%を、磁気可動子の、コイルに面した可動子端面に導入することにより解決される。磁束部材により、磁束を有利には磁気可動子の方向に変向させることができ、これにより、操作方向において弁ケーシング外壁から、操作方向に対して横方向で磁気可動子に流入する磁束の量を減らすことができる。これにより、磁気可動子に対する横方向力が低下させられ、その結果、磁気可動子のガイドにおける摩擦も低下させることができる。
【0008】
磁束を有利には磁気可動子内へ案内するために、磁束部材は、好適には操作方向に対して横方向で弁ケーシングの弁ケーシング外壁に隣接する領域に配置されておりかつ操作方向においてコイルと磁気可動子との間に配置されている。
【0009】
磁束部材は、好適には磁束リングとして、特に好適には閉じられた磁束リングとして形成されている。これにより、磁束は周方向におけるあらゆる箇所で、有利には磁気可動子に導入され得る。さらに、磁束リングは簡単に製造可能である。
【0010】
好適には、磁束部材は、弁ケーシング外壁よりも高い導磁率を有しており、これにより、磁気抵抗が低下させられると共に、最大限の量の磁束が、磁気可動子の端面に導入され得る。
【0011】
磁束部材が、台形、好適には直角台形の形状の横断面を有していると、特に有利であることが判った。なぜならば、これにより弁ケーシング外壁との大きな接触面が形成され得るからである。
【0012】
好適には、コイルは、コイル支持体に配置されており、この場合、コイル支持体の、軸線方向において磁気可動子に面した端部は、磁気可動子に対する端部ストッパとして形成されており、これにより、弁部材の弁行程を制限するために磁気可動子の軸線方向の動きを制限することができる。好適には、この場合、コイル支持体はプラスチックから形成されており、コイルはコイル支持体内に完全に組み込まれている。これにより、別個の構成部材が必要になること無しに、弁行程を制限する簡単な手段が達成される。
【0013】
有利には、弁ケーシングは、磁気可動子の領域にシリンダを形成しており、磁気可動子は、シリンダ内で軸線方向に可動のピストンを形成しており、この場合、操作方向において、磁気可動子の、コイルとは反対の側の第1の可動子端面と、対向して位置する弁ケーシング壁との間に圧縮室が形成されており、この場合、磁気可動子内には、少なくとも1つの絞り開口が配置されており、絞り開口は、第1の可動子端面を、反対の側に位置する第2の可動子端面に接続している。これにより、弁部材が弁座に当接する速度を低下させる空圧式のダンパが形成される。
【0014】
好適には、磁気可動子の周面に、圧縮室をシールするシール部材が配置されており、これにより、ダンパの効果を改良することができる。
【0015】
好適には、弁ケーシングの軸線方向端部に弁開口が設けられており、弁ケーシングには、好適にはガス状の媒体用の少なくとも1つの供給開口が設けられており、供給開口は、弁ケーシングの内部で弁開口に接続されている。これにより電磁弁は、有利には内燃機関用のガス吹付け弁として使用され得る。
【0016】
好適には、磁気可動子は可動子軸部を有しており、弁部材は弁軸部を有しており、この場合、電磁弁の作動時に、磁気可動子は、可動子軸部を介して弁軸部を操作し、この場合、可動子軸部と弁軸部との間には、プラスチックから成るバッファ部材が配置されている。これにより、電磁弁の閉鎖動作において、磁気可動子の動きが弁部材から切り離され、これにより、弁部材および弁座の摩耗を低下させることができる。
【0017】
好適には、可動子軸部と弁軸部との間に、プラスチックから成るバッファ部材が配置されている。これにより、可動子軸部と弁軸部との間の直接的な接触が回避され、これにより、ノイズ発生ならびに摩耗を低下させることができる。
【0018】
電磁弁の摩擦損失を低下させるために、バッファ部材は、トライボロジ的に最適化されたプラスチック、好適にはポリテトラフルオロエチレンを含むプラスチックから形成されていると有利である。
【0019】
好適には、弁ケーシング内にばね部材が配置されており、ばね部材は、弁部材に戻し力を加え、これにより、電磁弁の非作動状態において弁部材を閉鎖位置に保つことができる。これにより、弁はいずれにせよ、コイルのエネルギ供給が中断されると直ちに閉鎖される、ということが保証される。
【0020】
前記課題はさらに、シリンダヘッドと少なくとも1つの燃焼室とを備えた内燃機関であって、シリンダヘッドには、燃焼室または燃焼室の上流側に配置された予燃焼室に、好適にはガス状の燃料を供給するために、本発明による電磁弁が少なくとも1つ配置されている、内燃機関により、解決される。
【0021】
以下に、本発明の1つの有利な構成を例示的、概略的、かつ非限定的に示す図1を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】1つの有利な構成の電磁弁の断面図である。
【0023】
図1には、本発明による電磁弁1の1つの有利な構成が示されている。図示の電磁弁1は、乾式の弁として形成されており、ガス状の燃料を、内燃機関(図示せず)の燃焼室または燃焼室の上流側に配置された予燃焼室内に吹き付けることを想定されている。電磁弁1は、弁ケーシング2を有しており、弁ケーシング2は、ここでは実質的に筒状に形成されており、弁軸線Aを有している。弁軸線Aの左側では、電磁弁1が閉鎖状態で示されており、弁軸線Aの右側では開放状態で示されている。弁ケーシング2の第1の軸線方向端部E1には、ここではねじ山の形態の取付け部分Bが設けられており、取付け部分Bでもって、電磁弁1を内燃機関のシリンダヘッド(図示せず)に取り付けることができる。もちろん、別の形式の取付けも可能である。
【0024】
弁ケーシング2内には電気コイル3が設けられており、電気コイル3は、中心の弁軸線Aを環状に包囲するように延在している。コイル3には、適切な電気接続部(図示せず)を介して電圧または電流の形態のエネルギを供給することができ、これにより、周知の形式で(電)磁界が形成される。接続部は、電磁弁1の構造的な構成に応じて、例えば弁ケーシング2の半径方向外側に設けられていてよいか、または弁ケーシング2の、第1の軸線方向端部E1とは反対の側に位置する第2の軸線方向端部E2に設けられていてよい。ただしコイル3は、一体に形成されている必要はなく、電気的に接続された複数のコイルセグメントが、弁軸線Aを円形に包囲するように分散されて配置されていてもよい。コイル3は、好適にはコイル支持体4に配置されており、コイル支持体4は、ここでは実質的にコイル3と同様に環状に形成されており、このために弁ケーシング2に設けられた環状の開口内に配置されている。コイル支持体4は、好適には非導磁性である。このことは実質的に、コイル支持体4の導磁性が、磁気回路Mを形成するその他の部分に比べて無視し得る程度に小さいことを意味する。コイル3とコイル支持体4とは、好適には1つの共通の構成部材を形成する。コイル3は、ここでは全体的にコイル支持体4内に組み込まれている、つまりコイル支持体4により全面を包囲されており、コイル3の電気接続部(図示せず)だけがコイル支持体4から適切に導出されている。コイル支持体4は、例えばコイル3の周りに流し込まれる適切なプラスチックから形成されていてよい。
【0025】
弁ケーシング2内にはさらに、軸線方向の操作方向で弁軸線Aの方向に可動の磁気可動子5が配置されている。磁気可動子5は、弁を操作するためにコイル3と磁気的に協働し、このためにコイル3に面した可動子端面5Aを有している。図示の例では、磁気可動子5は実質的に筒状に形成されており、コイル3とは反対の側の軸線方向の第1の可動子端面5Aと、反対側に位置する、コイル3に面した第2の可動子端面5Bと、可動子周面5Uとを備えている。磁気可動子5において例えば図示の例では第2の可動子端面5Bには、中心の筒状の可動子軸部6が配置されており、可動子軸部6は、弁ケーシング2の筒状の開口内で軸線方向にガイドされており、磁気可動子5と同時に軸線方向に可動である。可動子軸部6は、磁気可動子5と一体に形成されていてよいか、または別の適した形式で、磁気可動子5に結合されていてよい。
【0026】
電磁弁1の弁ケーシング2において、ここでは弁ケーシング2の第1の軸線方向端部E1にさらに、弁開口9が配置されている。弁開口9は、磁気可動子5により操作可能な弁部材8を介して開閉され得る。弁部材8は、ここでは実質的に筒状の弁軸部7に結合されており、弁軸部7は、弁ケーシング2の内部で弁軸線Aに沿って延びている。可動子軸部6と弁軸部7とは、互いに固く結合されていてよく、例えば一体に形成されていてよい。ただしこれらは、好適には別個の構成部材として形成されており、これにより、以下でさらに詳しく説明するように、可動子軸部6の動きを弁軸部7の動きから切り離すことができる。図示の電磁弁1には、ばね部材11も弁ケーシング2内に配置されており、ばね部材11は、弁軸部7および弁軸部7に結合された弁部材8に戻し力を加え、これにより、電磁弁1の非作動状態において、弁部材8が閉鎖位置(図1では弁軸線Aの左側)に戻り、弁開口8を閉じるようになっている。
【0027】
電磁弁1を操作するためには、電流または電圧がコイル3に印加され、このときコイル3により、磁束が発生させられる。磁束により、電磁的な引付け力が磁気可動子5に加えられ、この引付け力により、磁気可動子5は操作方向において、ばね部材11の、コイル3に向かうばね力に抗して動かされる。この場合、磁気可動子5に結合された可動子軸部6が弁軸部7を押圧し、これにより、図1の弁軸線Aに沿った下向き矢印により示唆されているように、弁部材8が、弁開口9の閉鎖された閉鎖位置(弁軸線Aの左側)から、弁開口9の開放された開放位置(弁軸線Aの右側)に移動させられる。閉鎖位置と開放位置との間で使用可能な距離は、弁行程とも呼ばれる。
【0028】
コイル3へのエネルギ供給が中断されるか、またはばね部材11の戻し力が(場合により弁部材8の下面に作用する燃焼室内の押圧力により支援されて)コイル3の磁気的な引付け力を上回る十分に低いレベルに達すると直ちに、図1の弁軸線Aに沿った上向き矢印により示唆されているように、弁部材8は開放位置から閉鎖位置に戻される。もちろん、コイル3を相応に制御した場合には、弁行程の無段制御もしくは調整も可能であり、これにより、閉鎖位置と開放位置との間で複数の弁位置も実現され得る。例えば、弁行程は、印加されるコイル電圧またはコイル電流に応じて無段式に制御可能または調整可能である、ということが想定可能である。これにより、例えば好適にはガス状の燃料の流量を、所定の設定された燃焼プロセスに、無段式に適合させることができる。
【0029】
弁部材8は、ここでは実質的に円錐形の弁プレート8aを有しており、弁プレート8aは、弁軸線Aの左側に示されているように、閉鎖位置では弁ケーシング2の弁座にシール式に当接している。弁軸線Aの右側に示されているように、開放位置では、弁部材8は弁座から操作方向に持ち上げられ、弁開口9の所定の横断面を開放する。これにより、好適には予圧縮された媒体、例えばガス状の燃料等が、図1に矢印により示唆されているように、ここでは弁ケーシング2の側方に配置された供給開口10から弁ケーシング2の内部を通り、弁開口9に向かって流れることができる。もちろん、複数の供給開口10が設けられていてもよい。媒体は、例えば蓄え器(図示せず)から供給開口10に供給され得る。弁開口9を介して媒体、例えば燃料は、例えば内燃機関(図示せず)の燃焼室または予燃焼室に供給され得る。
【0030】
図示の例では、弁部材8は弁座を外側から閉鎖しているが、もちろん逆の変化形も可能であり、この変化形では、弁部材8が全体的に弁ケーシング2内に配置されており、例えば液状の燃料用の周知のニードル弁またはインジェクタのように、弁座を内側から閉鎖する。弁座は、弁ケーシング2に直接に配置されていなくてもよく、例えば弁ケーシング2に配置された別個の弁座部材により形成されていてもよい。これにより有利には、弁ケーシング2と弁座部材とに異なる材料が使用され得る。弁座は、弁部材8の閉鎖動作に基づき、機械的に比較的高負荷される領域であるため、弁座部材としては、例えば摩耗の少ない適切な材料、例えば焼入れされた鋼等から成る弁座リングが使用され得る。この場合、好適には、残りの弁ケーシング2に、より廉価な材料が使用され得る。
【0031】
閉鎖状態において弁部材8に弁座の方向で予荷重を加えるばね部材11は、ここではコイルばねの形態で形成されており、コイルばねは、弁軸部7を環状に包囲している。コイルばねは、コイルばね用に弁ケーシング2内に設けられた空間内に配置されており、この空間も、ガス状の燃料が通流する。弁軸部7にはショルダが形成されており、ショルダにはディスクが配置されている。コイルばねは、軸線方向においてディスクと弁ケーシング内の段部との間に配置されており、ばね力を軸線方向で弁軸部7に、ここでは上向きに加える。もちろん、別の適切なばね部材11、例えば皿ばね等が使用されてもよいと共に、ばね部材11は、電磁弁の開放特性に影響を及ぼすために、非線形のばね特性線、例えばプログレッシブまたはデグレッシブなばね特性線を有していることも考えられる。もちろん、図示の構成は例示的なものであるだけに過ぎないと理解され得、電磁弁1の別の構成も可能である。
【0032】
弁軸部7と弁部材8とは、電磁弁1の運転中に発生する、想定されるべき温度、力および圧力に適した1つの材料から製造されている。例えば金属材料が選択された場合、この材料はさらに、電磁弁1を規定通りに使用することが想定された媒体、例えばガス状の燃料に対して十分に耐食性であることが望ましい。
【0033】
電気コイル3にエネルギが供給されると、磁気回路Mを形成する磁束が生ぜしめられる。磁気回路Mは、図1に示唆されているように、弁ケーシング2と磁気可動子5とを経て閉じられる。これにより、磁力が磁気可動子5に作用し、磁力により磁気可動子5は軸線方向においてコイル3に向かって引き付けられ、これにより、弁部材8が開放(または反対に閉鎖)される。磁気回路Mの磁束は、ここではコイル3の半径方向内側で実質的に軸線方向に第1の弁ケーシング部分2aを通り、軸線方向においてコイル3の下側で第1の弁ケーシング部分2aに続いて半径方向外側に延びる第2の弁ケーシング部分2bを経て延びている。磁束は第2の弁ケーシング部分6bから、これに続いて半径方向外側に位置する第3の弁ケーシング部分6cを経て延びており、第3の弁ケーシング部分6cは同時に、弁ケーシング2の弁ケーシング外壁を形成している。磁気回路Mは最終的に、図示の例では軸線方向においてコイル3の上側に配置された可動の磁気可動子5を経て閉じられる。つまり、コイル支持体4を含むコイル3は、ここでは半径方向において第1の弁ケーシング部分6aと第3の弁ケーシング部分6cとの間に形成された環状の凹部に装着されている。
【0034】
弁ケーシング2は少なくとも、磁気回路Mが形成されるコイル3の周囲の領域において、導磁性の材料、例えば強磁性金属から成っている。ただし好適には、弁ケーシング2全体が、同じ強磁性材料から形成されており、このことは、弁ケーシング2の製造を容易にする。同様に磁気可動子5も、少なくとも磁気回路5の領域では、磁気回路5を閉じるために、導磁性の材料から形成されている。ただし好適には、磁気可動子5全体が同じ材料から製造されており、このことは製造を簡単にする。
【0035】
ただし好適には、可動子軸部6は、例えば摩擦の増大により場合により弁部材8の操作力にネガティブに作用し得る不都合な横方向の磁力が可動子軸部6に向かって発生しないようにするために、少なくとも磁気回路5の領域では非導磁性である。電磁弁1は、いわゆる乾式の弁として形成されている、つまり、電磁弁1の可動部分を潤滑する別個の潤滑剤は一切想定されていない。特に、比較的乾燥したガスが燃料として使用される場合にこのような乾式の弁において重要なのは、可動子軸部6と、弁ケーシング2の、可動子軸部6がガイドされている部分(ここでは第1のケーシング部分6a)との間の摩擦を最小限にする、という点である。したがって、このことを達成するために有利なのは、可動子軸部6のガイドにおける摩擦を低下させるために、磁気可動子5および可動子軸部6に作用する横方向力が全くないかまたは最小限である場合である。
【0036】
したがって本発明に基づき、弁ケーシング2内に少なくとも1つの導磁性の磁束部材12が配置されており、これにより、導磁性の弁ケーシング外壁、ここでは第3のケーシング部分2cを経て流れる磁気回路Mの磁束の少なくとも80%、好適には少なくとも90%、特に好適には100%を、磁気可動子5の、コイル3に面した第2の可動子端面5Bに(または磁束の方向に応じて反対方向に)案内することができる。磁束部材12は、ここでは半径方向において、つまり操作方向に対して横方向において弁ケーシング2の弁ケーシング外壁2cに隣接する領域に配置されている。磁束部材12は、弁ケーシング2内で弁ケーシング外壁2cから半径方向内側に向かって延びている。操作方向において磁束部材12は、コイル3と磁気可動子5との間に配置されている。
【0037】
磁束部材12の使用により、より多量の磁束が軸線方向で磁気可動子5内に流入することができる、もしくは弁ケーシング外壁2cから半径方向で磁気可動子5内に流入する磁束の量が減らされる。これにより、磁気可動子5に作用する横方向力を低下させることができ、これにより、可動子軸部6と弁ケーシング2との間の摩擦力を低下させることができる。この摩擦損失の低下によりさらに、弁部材8の操作速度を高めることができ、これにより、極めて動的な開閉動作が実現され得る。特に有利なのは、磁束部材12が、弁ケーシング外壁2cよりも高い導磁率を有している場合である。これにより、好適な磁気回路の磁気抵抗を低下させることができ、その結果、磁束部材12を経て可動子端面5Bに流入する磁束の量を増やすことができる。
【0038】
このことは例えば、有利には、電磁弁1の半径方向延在長さ、ここでは例えば弁ケーシング2の直径を、弁部材8の操作力は実質的に変えずに減少させるためにも利用され得る。それというのも、磁気可動子5を、半径方向においてより小さく形成することができるからである。択一的に、同じ構成サイズの電磁弁1において、弁部材8の操作力を高めることもできる。同時に力の発生効率も高められ、その結果、場合により、より小さく寸法設定されたコイル3が使用され得る。好適には、図示の例におけるような磁束部材12は、好適には閉じられた磁束リングとして形成されており、磁束リングは半径方向において、コイル支持体4の一方の端部4aと、弁ケーシング外壁2cとの間に配置されている。軸線方向において磁束リング12は、コイル3と磁気可動子5との間に配置されている。磁束部材12は、好適には高い導磁率を有する材料、例えば磁気可動子5および/または弁ケーシング2もしくは弁ケーシング2の導磁性の部分と同じ材料から形成されている。
【0039】
電磁弁1の1つの別の有利な構成では、コイル3は、コイル支持体4に配置されており、この場合、コイル支持体4の、軸線方向において磁気可動子5に面した端部4aは、磁気可動子5に対する端部ストッパとして形成されている。これにより、弁部材8の弁行程を制限するために、作動位置における磁気可動子5の軸線方向の動きを制限することができる。図示の例では、磁束部材12は、半径方向において、コイル支持体4の端部4aと弁ケーシング外壁2cとの間に配置されている。磁束部材12は、弁ケーシング外壁2cの内側の段部と実質的に面一になるように配置されていると共に、第1のケーシング部分2aの、磁気可動子5に面した軸線方向の端面と面一になるように配置されている。
【0040】
コイル支持体4の端部4aは、図1に示されているように、所定の長さlだけ、端面から突出している。この長さlは、端部4aを含むコイル支持体4の構造的な構成により設定され得るため、別個の構成部材を必要とすること無しに、弁行程を簡単に制限することができる。この場合、コイル支持体4全体または少なくとも端部4aは、例えば特定のばね特性および/または減衰特性を備えた適切な材料から形成されていてよい。これにより、磁気可動子5が端部4aに当たったときのノイズと、磁気可動子5および端部4aの機械的負荷とを低下させることができる。このことは、ノイズ発生を低下させかつ耐用年数を高めるために有利である。
【0041】
電磁弁1の操作後に、弁部材8が開放位置から再び閉鎖位置へ戻ると、弁部材8はばね部材11の戻し力により、通常、弁座に当接する。このことは、一方では望ましくないノイズ発生につながりかつ他方では弁部材8および弁座の機械的負荷を高めることがあり、このことは、弁部材8および/または弁座における摩耗の増大を招く恐れがある。このことは特に、高い閉鎖速度に有利な大きな戻し力を備えたばね部材11に当てはまる場合がある。このことを防止するために、電磁弁1の1つの別の有利な構成では、電磁弁1に空圧式の減衰手段が設けられている。
【0042】
このために弁ケーシング2は、磁気可動子5の領域にシリンダを形成しており、磁気可動子5は、シリンダ内で軸線方向に可動のピストンを形成している。操作方向において、磁気可動子5の、コイル3とは反対の側の第1の可動子端面5Aと、対向して位置する、弁ケーシング2の弁ケーシング壁2dとの間に、圧縮室KRが形成されている。磁気可動子5内にはさらに、少なくとも1つの絞り開口13が配置されており、絞り開口13は、第1の可動子端面5Aを、反対の側に位置する第2の可動子端面5Bに接続している。
【0043】
磁気可動子5の周面5Uには、さらに好適には、圧縮室KRをシールする適切なシール部材が、例えば周知のピストンシールリングまたはOリングの形態で配置されている。好適には、弁ケーシング2内には、図1に示すように、磁気可動子5の下側の空間を、ばね部材11が配置された空間に接続する放圧開口、特に放圧孔も設けられている。これにより、電磁弁1の開放時にも磁気可動子5の動きが減衰されることを回避するために、磁気可動子5の下側の空間の放圧が実現される。良好な放圧作用のために、放圧孔は、好適には絞り開口13と整合するように配置されている。
【0044】
これにより、電磁弁1の閉鎖時に磁気可動子5の簡単で効率的な減衰が実現され、この場合、減衰特性には、電磁弁1の構造的な構成、特に、第1の可動子端面5Aのサイズ、圧縮室KRの容積、シリンダ内の磁気可動子5のシールの有効性および絞り開口13の数、延在部および横断面が影響を及ぼすことができる。空圧式の減衰により、弁部材8を弁座に当接させる速度を、好適には最大0.5m/sに低下させることができ、これにより、ノイズおよび摩耗を減らすことができる。
【0045】
好適には、減衰特性は、閉鎖動作の開始時には実質的に減衰されない動作が行われ、閉鎖位置の直前で初めて減衰を生ぜしめるように選択される。これにより、電磁弁1を急速に閉じることができるにもかかわらず、弁座への可能な限り穏やかな当接が達成され得る。電磁弁1の急速な開閉は、好適にはガス状の媒体の可能な限り正確な調量を達成すると共に、複数の連続した開閉動作を短時間で実施することができるようにするために有利である。
【0046】
従来、可動子軸部6と弁軸部7とは、互いに固く結合されている、例えば一体に形成されているかまたは溶接されていることが多かった。特に例えば大型エンジンに使用されるような比較的大型の電磁弁1の場合、電磁弁1の可動の構成部材、特に磁気可動子5、可動子軸部6、弁軸部7および弁部材8は比較的大きな質量を有しており、電磁弁1の操作時には無視し得ない程の慣性力を生ぜしめる。したがって、特に磁気可動子5および可動子軸部6の質量に基づき、電磁弁1の閉鎖時に、弁軸部7を介して弁部材8に作用する慣性力が発生する場合がある。図示の例では、閉鎖位置において弁座に弁部材8が当接すると、この慣性力に基づき追加的な引張り力が上向きに作用し、この引張り力は、ノイズ発生と、弁部材および/または弁座の摩耗とにネガティブな影響を及ぼす恐れがある。
【0047】
したがって、電磁弁1の1つの別の有利な構成では、可動子軸部6と弁軸部7とが互いに別個に形成されており、この場合、可動子軸部6と弁軸部7との間には、有利にはプラスチックから成るバッファ部材15が配置されている。別個の構成により、閉鎖動作において、可動子軸部6を含む磁気可動子5の動きと、弁軸部7を含む弁部材8の動きとを切り離すことができる。これにより、弁部材8および弁座に対する負荷を低下させることができる。なぜならば、電磁弁1の閉鎖時に、弁部材8および弁軸部7の質量の慣性力のみが、弁部材8と弁座とに作用するからである。バッファ部材15の配置によりさらに、可動子軸部6と弁軸部7との間の直接的な、特に金属の接触が防止され、これにより、ノイズ発生と、接触面における摩耗をも低下させることができる。
【0048】
バッファ部材15は、好適にはトライボロジ的に最適化されたプラスチック、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で満たされたプラスチックから形成されており、これにより、バッファ部材15の周面と弁ケーシング2との間には最小限の摩擦が生じることになる。特に追加的な潤滑剤無しの乾式の弁において、このことは有利である。なぜならば、これにより電磁弁1の効率をさらに改良しかつ/または操作力を高めることができるからである。コイル支持体4の端部4aが、図示のように磁気可動子5に対する端部ストッパとして使用される場合、バッファ部材15は、さらに有利には、場合により生じ得る、温度に依存した弁行程の変化を補償するように形成されていてよい。このために、バッファ部材15には適切な材料が用いられると共に、バッファ部材15は、磁気可動子5がコイル支持体4の端部ストッパに当接するときの(最大の)弁行程が、温度にわたり可能な限り一定であるように寸法設定される。この場合、補償は少なくとも、電磁弁1の使用に関して想定されるべき温度範囲内で実現されれば十分である。
【0049】
最後に述べておくと、図示の電磁弁1はもちろん例示的なものであるだけに過ぎないと理解され得、基本的な構成および機能形式を明示するために簡略的に示されている。具体的な構造上の構成、例えば寸法設定、材料選択、弁部材8の構成等はもちろん当業者に任されており、電磁弁1の使用分野に左右される。
図1
【国際調査報告】