(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(54)【発明の名称】製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5365 20060101AFI20230712BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230712BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230712BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230712BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230712BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
A61K31/5365
A61K9/20
A61P31/18
A61K47/02
A61K47/26
A61K9/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580247
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 IB2021055533
(87)【国際公開番号】W WO2021260567
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521396042
【氏名又は名称】ヴィーブ、ヘルスケア、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】VIIV HEALTHCARE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】イアン、ポール、コン
(72)【発明者】
【氏名】マーク、ロバート、デイビーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン、ヒーフィールド
(72)【発明者】
【氏名】マイケル、ホルトン
(72)【発明者】
【氏名】ニール、モーティマー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA44
4C076BB01
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4C076GG01
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4C086NA02
4C086NA09
4C086ZB33
4C086ZC51
4C086ZC55
(57)【要約】
本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩を含む製剤、そのような製剤を製造する方法、及びHIV感染症の処置、特に小児患者のHIV感染症の処置におけるそのような製剤の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤。
【請求項2】
前記ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩が、ドルテグラビルナトリウムである、請求項1に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項3】
5mgのドルテグラビル遊離酸当量を含む、請求項1又は2に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項4】
前記薬学的に許容可能なイオンがカルシウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項5】
前記カルシウムが、錠剤コア中に最大5%w/wの量で存在する、請求項4に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項6】
香味剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項7】
前記香味剤が、錠剤コア中に最大2%w/wの量で存在する、請求項7に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項8】
スクラロースを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項9】
前記スクラロースが、錠剤コア中に最大2%w/wの量で存在する、請求項8に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項10】
コーティングを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の分散性錠剤製剤を製造する方法であって、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを混合することを含む、前記方法。
【請求項12】
療法に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項13】
HIV感染症の処置に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の分散性錠剤製剤。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の分散性錠剤製剤を患者に投与することを含む、HIV感染症を処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩を含む製剤、そのような製剤を製造する方法、及びHIV感染症の処置、特に小児患者のHIV感染症の処置におけるそのような製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)感染症及び関連疾患は、世界中の主要な公衆衛生問題である。ヒト免疫不全ウイルス1型(「HIV-1」)は、ウイルスの複製に必要な3つの酵素:逆転写酵素、プロテアーゼ及びインテグラーゼをコードするレトロウイルスである。逆転写酵素、プロテアーゼ及びインテグラーゼを標的とする薬物は、広く使用されており、有効性、特に組み合わせて使用した場合の有効性が示されている。
【0003】
しかしながら、HIV感染症は依然として主要な医学的問題であり、世界中で数千万人の人々が感染している。世界保健機関は、2014年に、15歳未満の260万人の子供がHIV-1を抱えて生きていることを報告した。この患者集団のための治療選択肢は改善されたが、追加の抗レトロウイルス剤の小児用製剤が必要である。
【0004】
ドルテグラビルは、インテグラーゼ鎖転移阻害剤(INSTI)である。ドルテグラビルは、インテグラーゼ活性部位に結合し、HIV複製サイクルに不可欠なレトロウイルスDNAインテグレーションの鎖転移ステップをブロックすることにより、HIVインテグラーゼを阻害する。
【0005】
ドルテグラビルの化学名は、(4R,12aS)-N-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチル]-7-ヒドロキシ-4-メチル-6,8-ジオキソ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-2H-ピリド[5,6]ピラジノ[2,6-b][1,3]オキサジン-9-カルボキサミド(CAS登録番号1051375-16-6)である。ドルテグラビルの構造式は以下のとおりである。
【0006】
【0007】
ドルテグラビルナトリウム(TIVICAY(登録商標))は、HIV感染患者の幅広い集団での使用に承認されている。その効力、耐性に対する高い障壁、及び忍容性のためにHIV-1に感染した成人の第一選択処置として推奨されている。6歳~18歳までの子供及び青年にもまた、承認されている。
【0008】
TIVICAY(登録商標)の成人用剤形は、50mg(遊離酸換算)のドルテグラビルナトリウムを含む錠剤である。しかしながら、一部の患者、特に小児患者は、錠剤を飲み込むのが困難であり、通常、異なる経口薬物送達システムを必要とする。特定の患者、特に小児患者におけるHIV感染症の処置における使用に適した、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩の代替製剤の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を提供する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を製造する方法であって、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを混合することを含む、方法を提供する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、療法に使用するための、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を提供する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、HIV感染症、特に小児患者におけるHIV感染症の処置に使用するための、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を提供する。
【0013】
第5の態様において、本発明は、HIV感染症、特に小児患者におけるHIV感染症を処置する方法であって、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0014】
第6の態様において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を、HIV感染症の処置のためのそれらの使用説明書とともに含むキットを提供する。
【0015】
第7の態様において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を、別の治療剤とともに含む組合せを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、様々な飲料水へのドルテグラビルの溶解度(mg/mL:30分後)を示す図である。
【
図2】
図2は、高剪断湿式造粒プロセス後にドルテグラビルナトリウム顆粒を調整する製造プロセスを示すフロー図である。ドルテグラビルは、顆粒内賦形剤と混合され、次いで、核形成を可能にするための水の制御添加、解凝集させる湿式粉砕プロセス(deagglomerating wet milling process)、顆粒を乾燥させるための流動床乾燥プロセス、及び最終的な顆粒サイズの製品を形成するための乾式共粉砕工程(dry comilling step)を行う。顆粒バッチを、硫酸カルシウム二水和物を含む顆粒外成分とブレンドし、その一部を使用して錠剤製剤を製造する。
【
図3】
図3は、5×5mgの錠剤を分散液として与えた場合には、5×5mgの錠剤を口に直接与えた場合と比較して、成人における曝露量に差がないことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise)」及びその変形、例えば、「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」は、「含むが、それに限定されない」というオープンで包括的な意味で解釈されるべきである。
【0018】
本明細書で使用される場合、「分散性錠剤製剤(dispersible tablet formulation)」という用語は、投与前に水相(例えば、水)に分散される錠剤、又は、口に直接投与した後に分散する錠剤を指す。典型的には、分散性錠剤は、水中での崩壊速度及び崩壊した粒子の分散の均一性によって定義される固体の医薬形態である。分散性錠剤製剤は、「経口懸濁液用の錠剤」を指す場合もある。
【0019】
本発明の製剤は、すべての患者、例えば、小児患者、青年患者及び成人患者を処置するために使用され得る。一実施形態において、本発明の製剤は、小児患者を処置するために使用される。本明細書で使用される場合、「小児患者」という用語は、0歳~12歳、例えば、4週間~6か月、6か月~2歳又は2歳~6歳の子供を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、物質に関して「薬学的に許容可能な」という用語は、安全であり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等がなく合理的な利益/リスク比に見合った使用に適していると一般に見なされる物質を指す。賦形剤に関する「薬学的に許容可能な」には、米国食品医薬品局によってヒト又は家畜への使用が許容されると承認されている、補助剤、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒又は乳化剤が含まれる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能なイオン」という用語は、ドルテグラビルの水への溶解度を低下させる溶解度調整剤として添加されるイオンを指す。適切なイオンには、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、薬学的に許容可能なイオンはカルシウムである。
【0022】
したがって、一実施形態において、本発明は、ドルテグラビルの水への溶解度を低下させるための、ドルテグラビルを含む分散性錠剤製剤における溶解度調整剤としての薬学的に許容可能なイオンの使用を提供する。適切なイオンには、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、薬学的に許容可能なイオンはカルシウムである。
【0023】
「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能であり、親化合物の所望の薬理学的活性を有する(又は有する形態に変換可能な)化合物の塩を指す。このような塩には、以下に限定されないが、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等により形成される酸付加塩;有機酸、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、乳酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、オレイン酸、パルミチン酸、プロピオン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸等により形成される酸付加塩;及び親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン又はアルミニウムイオンのいずれかによって置換された場合、或いは、有機塩基、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン等に配位する場合に形成される塩が含まれる。この定義にはまた、アンモニウム及び置換又は四級化アンモニウム塩も含まれる。薬学的に許容可能な塩の代表的な非限定的なリストは、S.M. Berge et al., J. Pharma Sci., 66(1), 1-19 (1977)及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, R. Hendrickson, ed., 21st edition, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, (2005), at p. 732, Table 38-5(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)に見出し得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「塩」という用語には、共結晶(co-crystal)が含まれる。「共結晶」という用語は、2種又は3種以上の分子成分を含む結晶性化合物を指し、例えば、ここで、分子成分間のプロトン移動は部分的又は不完全である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、化合物と1種又は2種以上の薬学的に許容可能な溶媒分子とを含む分子複合体を意味する。溶媒分子の例には、水及びC1-6アルコール、例えば、エタノールが含まれるが、これらに限定されない。溶媒和物が水である場合には、「水和物」という用語が使用される場合がある。
【0026】
本明細書で使用される場合、「%w/w」という用語は、総重量、例えば、その成分が存在する顆粒又は錠剤コアの総重量のパーセンテージとしての成分の重量を意味する。
【0027】
ドルテグラビルの溶解度は、異なる種類の飲料水、例えば、精製水、水道水、異なるブランドのボトル入り飲料水の使用によって影響を受ける(
図1を参照)。この溶解度の違いの理由は、水に通常見られるイオンの存在によるものと考えられている。イオンが存在しない水(精製水)を使用してドルテグラビルを分散させると、ドルテグラビルの溶解度が高くなり、顕著な苦味が見られることがある。
【0028】
適切な薬学的に許容可能なイオンを含む水を分散に使用すると、ドルテグラビルの苦味を大幅に低減することができる。錠剤を分散させるために患者が使用する水は変化するため、本発明によれば、適切な薬学的に許容可能なイオンの存在を確実にするために、薬学的に許容可能なイオンが分散性錠剤製剤に組み込まれる。本発明による分散性錠剤製剤は、改善された嗜好性(palatability)を有し、したがって、向上したコンプライアンスを有する。
【0029】
第1の態様において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を提供する。
【0030】
一実施形態において、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩は、ドルテグラビルナトリウムである。
【0031】
別の実施形態において、錠剤は、約5mgのドルテグラビル(遊離酸当量)を含む。
【0032】
薬学的に許容可能なイオンは、ドルテグラビルの水への溶解度を低下させる溶解度調整剤として添加されるイオンである。適切なイオンには、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、薬学的に許容可能なイオンはカルシウムである。
【0033】
薬学的に許容可能なイオンは、典型的には、薬学的に許容可能な塩、例えば、硫酸塩、例えば、硫酸カルシウムの形態で分散性錠剤製剤に組み込まれる。塩は、無水形態又は水和物、例えば、一水和物又は二水和物であってもよい。別の実施形態において、硫酸カルシウムは、硫酸カルシウム二水和物である。
【0034】
別の実施形態において、薬学的に許容可能なイオンは、錠剤コア中に最大約5%w/wの量で存在する。別の実施形態において、薬学的に許容可能なイオンは、錠剤コア中に約1%w/w~約4%w/wの量で存在する。別の実施形態において、薬学的に許容可能なイオンは、錠剤コア中に約1.8%w/w~約2.6%w/wの量で存在する。さらなる実施形態において、薬学的に許容可能なイオンは、錠剤コア中に約2.2%w/wの量で存在する。
【0035】
本発明の錠剤は、典型的には、1種又は2種以上の追加の賦形剤を含む。賦形剤は、製剤のその他の成分と適合性があり、その受容者に生理学的に無害である必要がある。適切な賦形剤の例は、錠剤製剤の当業者に周知であり、とりわけ、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第7版、2012年に見出すことができる。本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、とりわけ、加工助剤、塩基性化剤、可溶化剤、流動促進剤、希釈剤(増量剤又は充填剤としても知られる)、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、崩壊剤等を指すことを意図している。この用語はまた、甘味剤、香味剤、着色剤、防腐剤及びコーティング剤等の薬剤も含まれる。このような賦形剤は、一般に、錠剤内に混合して存在する。
【0036】
加工助剤の例としては、微結晶性セルロース及びケイ化微結晶性セルロースが挙げられるが、これらに限定されない。錠剤中の加工助剤の量は、一般に、錠剤コア中の約45%w/w~約65%w/wである。
【0037】
可溶化剤の例としては、イオン性界面活性剤(イオン性及び非イオン性界面活性剤の両方を含む)、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又は80)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188又は207)及びマクロゴールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
滑沢剤、流動促進剤及び流動助剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化植物油、パルミトステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、フマル酸ステアリルナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びタルクが挙げられるが、これらに限定されない。錠剤中の滑沢剤の量は、一般に、錠剤コア中の約0.5%w/w~約2%w/wである。一実施形態において、滑沢剤はフマル酸ステアリルナトリウムである。
【0039】
崩壊剤の例としては、デンプン、セルロース、架橋PVP(クロスポビドン)(タイプA又はタイプB)、デンプングリコール酸ナトリウム(タイプA又はタイプB)、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、崩壊剤はデンプングリコール酸ナトリウム(タイプA)である。さらなる実施形態において、崩壊剤はクロスポビドン(タイプB)である。錠剤中の崩壊剤の量は、一般に、錠剤コア中の約9%w/w~約14%w/wである。
【0040】
希釈剤(増量剤又は充填剤としても知られる)の例としては、デンプン、マルトデキストリン、ポリオール(例えば、ラクトース)及びセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、希釈剤は、マンニトール、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース及びラクトース一水和物から選択され得る。一実施形態において、希釈剤はマンニトールである。錠剤中の希釈剤の量は、一般に、錠剤コア中の約13%w/w~約19%w/wである。
【0041】
結合剤の例としては、架橋PVP、HPMC、スクロース、デンプン等が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、結合剤はポビドンである。さらなる実施形態において、結合剤はポビドンK29/32である。錠剤中の結合剤の量は、一般に、錠剤コア中の約1%w/w~約2%w/wである。
【0042】
甘味剤の例としては、スクラロース、スクロース、サッカリン及びポリオール(例えば、マンニトール及びソルビトール)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、甘味剤はスクラロースである。
【0043】
一実施形態において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンと、甘味剤とを含む分散性錠剤を提供する。
【0044】
別の実施形態において、甘味剤は錠剤コア中に最大約2%w/wの量で存在する。別の実施形態において、甘味剤は錠剤コア中に約0.1%w/w~約1%w/wの量で存在する。さらなる実施形態において、甘味剤は、錠剤コア中に約0.6%w/w~約0.8%w/wの量で存在する。
【0045】
香味剤の例としては、イチゴ、オレンジ、バナナ、ラズベリー、桃、パッションフルーツ、ゴールデンシロップ又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。香料は、商業的供給源、例えば、香料企業から容易に入手され得るか、又は当業者によって開発され得る。好ましい香料は、製剤の有効成分の味をマスキングするのに役立つことが理解されるであろう。一実施形態において、香味剤はイチゴである。代表的なイチゴ香料は、天然香料、その合成等価物、人工香料又はそれらの混合物を含み得る。別の実施形態において、イチゴ香料はイチゴクリーム香料、例えば香料企業ジボダンから入手可能なPHS-132963である。
【0046】
一実施形態において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンと、香味剤とを含む分散性錠剤製剤を提供する。別の実施形態において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、硫酸カルシウムと、ストロベリークリーム香料とを含む分散性錠剤製剤を提供する。
【0047】
別の実施形態において、香味剤は、錠剤コア中に最大約2%w/wの量で存在する。別の実施形態において、香味剤は、約0.1%w/w~約0.1%w/wの量で存在する。さらなる実施形態において、香味剤は、錠剤コア中に約0.2%w/w~約0.4%w/wの量で存在する。
【0048】
一実施形態において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンと、甘味剤と、香味剤とを含む分散性錠剤製剤を提供する。
【0049】
一実施形態において、本明細書で提供される錠剤はコーティングされていない。さらなる実施形態において、本明細書で提供される錠剤はコーティングされている。コーティングされていない錠剤を使用することもできるが、臨床環境ではコーティングされた錠剤を提供することがより一般的であり、この場合、従来のコーティングを使用することができる。
【0050】
フィルムコーティングは当技術分野で知られている。それらは、親水性ポリマー材料から構成され得、多糖類材料、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレングリコール);及びその他の水溶性ポリマーを含むが、これらに限定されない。一実施形態において、本明細書に記載される実施形態のフィルムコーティングに含まれる水溶性材料は、単一のポリマー材料を含むが、特定のその他の実施形態において、それは、2種以上のポリマーの混合物を使用して形成される。一実施形態において、コーティングは白色である。
【0051】
適切なコーティングには、ポリマーフィルムコーティング、例えば、ポリビニルアルコールを含むポリマーフィルムコーティング、例えば、Aquarius BP18237 ホワイトフィルムコート又はOpadry OY-S-28876 ホワイトフィルムコートが含まれるが、これらに限定されない。コーティングの量は、一般に錠剤コアの約2%w/w~約4%w/wである。一実施形態において、コーティングは錠剤コアの約3%w/wである。
【0052】
第2の態様において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を製造する方法であって、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを混合することを含む、方法を提供する。
【0053】
一実施形態において、最初に、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩の顆粒は、薬学的に許容可能なイオンを含む顆粒外成分とブレンドする前に、別個に調製される。
【0054】
ドルテグラビル顆粒を作製するために、最初に有効成分を、適切なブレンダー内で1種又は2種以上の上記の賦形剤と混合して材料をブレンドする。一実施形態において、ドルテグラビル(ドルテグラビルナトリウムとして)は、高剪断造粒によって第1の量の賦形剤と混合される。この混合物を湿式造粒及び湿式粉砕し、次いで、顆粒を乾燥させ、次いで、乾式粉砕する。次いで、第2の量の賦形剤を顆粒に添加し、さらにブレンドする。最終的なドルテグラビル顆粒を適切な容器に回収する。ドルテグラビルナトリウム顆粒の製造及びその後のブレンドのフロー図を
図2に示す。
【0055】
一実施形態において、ドルテグラビルナトリウム顆粒は、ドルテグラビルナトリウム、希釈剤、加工助剤、結合剤及び崩壊剤を含む。別の実施形態において、ドルテグラビル顆粒は、ドルテグラビルナトリウム、マンニトール、微結晶性セルロース、ポビドン及びデンプングリコール酸ナトリウムを含む。
【0056】
一実施形態において、ドルテグラビルナトリウム顆粒は、加工助剤、崩壊剤、硫酸カルシウム、甘味料、香味剤及び滑沢剤とブレンドされる。別の実施形態において、ドルテグラビルナトリウム顆粒は、ケイ化微結晶性セルロース、クロスポビドン、硫酸カルシウム二水和物、スクラロース、ストロベリークリーム香料及びフマル酸ステアリルナトリウムとブレンドされる。
【0057】
一実施形態において、本発明の分散性錠剤製剤は、約5mgのドルテグラビルナトリウム遊離酸当量、錠剤コア中で約1.8%w/w~約2.6%w/wの量の薬学的に許容可能なイオン、錠剤コア中で約13%w/w~約19%w/wの量の希釈剤、錠剤コア中で約45%w/w~約65%w/wの量の加工助剤、錠剤コア中で約1%w/w~約2%w/wの量の結合剤及び錠剤コア中で約9%w/w~約14%w/wの量の崩壊剤を含む。
【0058】
別の実施形態において、本発明の分散性錠剤製剤は、約5mgのドルテグラビルナトリウム遊離酸当量、錠剤コア中で約1.8%w/w~約2.6%w/wの量の薬学的に許容可能なイオン、錠剤コア中で約0.6%w/w~約0.8%w/wの量の甘味剤及び錠剤コア中で約0.2%w/w~約0.4%w/wの量の香味剤を含む。
【0059】
一実施形態では、ドルテグラビルナトリウム顆粒及び顆粒外成分をブレンドし、次いで錠剤に圧縮する。
【0060】
打錠方法は、薬学の分野で周知である。技術及び調合は、一般に、その全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.、Easton、PA)に記載されている。錠剤は、圧縮又は湿製成形(moulding)によって作製され得る。圧縮錠剤は、適切な機械において、自由流動形態、例えば、粉末又は顆粒形態にある有効成分及び1種又は2種以上の賦形剤を圧縮することによって調製され得る。
【0061】
別の実施形態において、圧縮錠剤はフィルムコーティングされている。
【0062】
一実施形態において、本発明の分散性錠剤は直径6mmの円形である。本発明の別の実施形態において、本発明の分散性錠剤はコーティングされており、それぞれ約93mgの重量である。
【0063】
第3の態様において、本発明は、療法に使用するための、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を提供する。
【0064】
第4の態様において、本発明は、HIV感染症、特に小児患者におけるHIV感染症の処置に使用するための、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を提供する。
【0065】
第5の態様において、本発明は、HIV感染症、特に小児患者におけるHIV感染症を処置する方法であって、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0066】
本発明の分散性錠剤製剤は、典型的には1日1回投与される。
【0067】
本発明の分散性錠剤製剤は、投与前に水に分散させ得るか、又は口に直接投与し得る(
図3を参照)。
【0068】
本発明の分散性錠剤製剤は、典型的には、所望の治療効果を維持するために無期限に投与される。適切な投薬レジメンは、別個の患者に対する調整を必要とする場合があることは、当業者にはさらに理解される。
【0069】
本発明の分散性錠剤製剤は、典型的には、遊離酸形態において5mgであるドルテグラビルを含む。当業者が理解するように、用量あたりに必要な錠剤の数は、患者の体格に依存し得る。一実施形態において、体重が3kg以上6kg未満の子供には、1日あたり1錠が投与される。別の実施形態において、体重が6kg以上10kg未満の子供には、1日あたり3錠が投与される。別の実施形態において、体重が10kg以上14kg未満の子供には、1日あたり4錠が投与される。別の実施形態において、体重が14kg以上20kg未満の子供には、1日あたり5錠が投与される。さらなる実施形態において、体重が20kg以上の子供には、1日あたり6錠が投与される。
【0070】
第6の態様において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を、HIV感染症の処置のためのそれらの使用説明書とともに含むキットを提供する。
【0071】
一実施形態において、キットは、60個の錠剤、例えば、場合により2gの乾燥剤とともに、チャイルド・レジスタント・クロージャー(child-resistant closure)を備えた60ccのボトルに入った60個の錠剤を含む。別の実施形態において、キットは、投薬用カップ(dosing cup)及びシリンジを含むが、これらに限定されない適切な投薬システムを含む。さらなる実施形態において、キットは、錠剤を分散させる水の量に関する説明書を含む。例えば、1~3錠の用量の場合、錠剤は通常、約5mLの水に分散される。4~6錠の用量の場合、錠剤は通常、約10mLの水に分散される。
【0072】
第7の態様において、本発明は、ドルテグラビル又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能なイオンとを含む分散性錠剤製剤を、1種又は2種以上のその他の治療剤とともに含む組合せを提供する。
【0073】
一実施形態において、その他の治療剤は、核酸系逆転写酵素阻害剤、例えば、アバカビル、ジダノシン、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、フマル酸テノルホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩又はジドブジン;非核酸系逆転写酵素阻害剤、例えば、デラビルジン、ドラビン(doravine)、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン又はリルピビリン;プロテアーゼ阻害剤、例えば、アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、サキナビル又はチプラナビル;融合阻害剤、エンフビルチド;CCR5アンタゴニスト、例えば、マラビロク;シトクロムP4503A阻害剤、例えば、リトナビル又はコビシスタット;インテグラーゼ阻害剤、例えば、ドルテグラビル、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ビクテグラビル又はカボテグラビル;又は、ポストアタッチメント阻害剤(post attachment-inhibitor)、例えば、イバリズマブ-uiykである。
【0074】
そのような組合せの個別の成分は、別個の又は組み合わせられた製剤で、順次又は同時に投与されてもよい。
【実施例】
【0075】
一価及び二価イオンの存在下におけるドルテグラビルの溶解度
500ppmの濃度で特定のイオン(表1を参照)を含む12mLの水に、20mgのドルテグラビルを溶解させることによって、溶解度を決定した。
【0076】
【0077】
ドルテグラビルナトリウム5mgの分散性錠剤
【0078】
【0079】
ドルテグラビルナトリウム5mgの分散性錠剤の仕様
【0080】
【0081】
注釈
*:Ph.Eur./USP/JP
1.放出時にのみ実施される。
2.バッチ放出については、投与単位試験の均一性からの平均結果を適用することができる。
3.プロセス/合成不純物を含まない。
4.0.05%以上のすべての分解生成物が報告される。
5.放出時に試験されていない。安定性に対してのみ実施される。
6.分散精度試験は、製造されている場合、年間最低2バッチで実施される。
7.溶解量の定量化は、HPLC又はUVによって決定される(溶解試験)。
8.水分活性基準(Water Activity criterion)が満たされている場合、MLT(Tier 2)試験は必要ない。水分活性試験が実施されていない場合、又は水分活性の合否基準が達成されていない場合は、MLT(Tier 2)試験を実施する必要がある。
【0082】
ドルテグラビルナトリウム5mgの分散性錠剤の味覚評価
回答者に錠剤を提供し、「非常に良い」から「非常に悪い」までの尺度で味を評価するように依頼することによって、分散性錠剤製剤の嗜好性及び受容性を評価した。全体的な評価を表4に示す。分散性錠剤製剤の味は、大多数の回答者に受け入れられ、調製又は投与に関する問題はほとんど存在しなかった。
【0083】
【国際調査報告】